魔王「話を聞かせてくれ…」少女「いいよ」(21)

少女「……あいっ……たぁ……ここどこ?」

少女「暗い……全然先が見えない」

少女「えっと、確か家でテレビ見てて、お母さんが洗濯物畳んでて……それから……?」

少女「思い出せない……どうしよう。私、死んじゃったのかな……」

???「うう……」

少女「っ!?だ、誰!?」

???「く……い、暗い……憎い……暗い……」

オオオォオォオ……

少女(なんだろう、風の音?すごく禍々しい声みたいにも聞こえるけど)

???「誰だ……そこにいるのは……」

少女「わっ!?そ、そっちこそ誰っ!?」

???「……我か。我のことなど忘れてしまったわ」

???「だが、人間は我のことをこう呼んでいたぞ……『魔王』と」

少女「ま、魔王?でも姿が見えないけど」

魔王「そうだ。我は今、霧のようにここに漂っている……」

魔王「あの憎き勇者によって、肉体を奪われ、ここに封印されているのだ……!」

魔王「おお!憎い!憎いぞ……!我と同胞を殺した勇者が……!」

オオォオオオォ……

少女(この風、魔王の声だったんだ)

魔王「……して、人間の女よ。なぜこんな場所にいる」

少女「へ?いや、それは私が聞きたいよ……」

魔王「なんだと?勇者の差し金ではないのか?」

少女「えっと、私がいた世界に勇者も魔王もいなかったんだけど……」

魔王「???」

少女「???」

魔王「我も、勇者もいない世界だと?そんな世界があるわけないだろう」

少女「と言われても……私はそこから来たんだし」

少女「勇者とか魔王とか、異世界系の話でしか聞いたことないよ」

魔王「い、異世界系?まるでお前の世界が正当な世界みたいな言葉だな」

少女「うーん?だって本当にそう呼ばれてるから……」

魔王「なんと……そんな世界があるとは」

少女「私もびっくりだよ。魔王って本当にいるんだね」

魔王「ということは、お前は我のいる世界から違う世界から来たということか」

少女「うん。たぶんね」

魔王「……魔力も持っていない。本当にただの人間のようだ」

魔王「疑ってすまなかった」

少女「いやいや、こっちこそいきなりお邪魔してごめんなさい」

少女「……それで、私そろそろお暇しようかな~とか思ってるんだけど」

魔王「出て行く、ということか?」

少女「うん。家に帰りたいんだけど」

魔王「それは難しいだろうな」

少女「うぇっ!?なんで!?」

魔王「勇者たちは、我から全ての魔力と肉体を奪い、封印した」

魔王「ここは内側からは決して開けられず、時間の概念すらない……」

魔王「我は未来永劫、この暗闇で呪詛を吐き続けるより他無い……なんと口惜しいことか……」

少女「難しいこと言ってるけど、つまり出る方法が無いってこと!?」

魔王「そういうことだ」

少女「えええええ!?」

少女「じょ、冗談じゃない!なんとかして帰らないと……!」

少女「魔王さん、出口に心当たりはない?」

魔王「……この空間は無限だ」

少女「は?」

魔王「強大な魔力で作られた次元の牢獄故、空間は無限に広がっている。恐らく脱出の手がかりすら無いだろう」

少女「………終わった………」

魔王「同情しよう。運が無かったな……」

少女「不運で終わらせないで!?」

少女「うーん、うーん……困った……」

魔王「………異世界の女よ。1つ提案がある」

少女「えっ?何か手がかりでもあるの?」

魔王「いや、それは無いが……」

少女「ないのか……」

魔王「さっきの話が本当なら、お前はこことは全く違う世界から来た、ということだろう?」

少女「そうだけど」

魔王「それなら、お前の世界の話を聞かせて欲しい」

少女「話を?」

魔王「そうだ」

魔王「我がここに封印されてから、どれほどの時間が経ったのかもわからない」

少女「そういえば、ここでは時間の概念が無いって言ってたもんね」

魔王「思えばずっと、勇者への恨み言を吐いていた気がする。だが……」

魔王「有り体に言えば飽いたのだ」

少女「そりゃね……」

魔王「何か変化が欲しい。ずっとこんな暗闇にいたのでは、さすがの我も飽きるというもの」

少女「で、丁度私が来たってわけか」

魔王「そういうことだ。良ければ、お前の話を聞かせてはもらえないだろうか」

少女「うーん。今のところ脱出の手がかりも無いし、いいよ」

魔王「おお!そうか!」

少女「で、何を喋ればいいのかな」

魔王「なんでも良い。こちらの世界と違うのであれば」

少女「そんなこと言われたってなぁ。それに」

魔王「なんだ?」

少女「暗闇の霧に向かって話するのって、バカバカしく見えるっていうか……」

魔王「……独り言のように見えると?」

少女「そう。ちょっと虚しいっていうか……」

魔王「ふむ……では擬似的に実体化しよう」

少女「できるの?」

魔王「無論、本物の肉体ではないが」

*見る間に霧が集まって、その中から人が現れた。
長い銀髪。漆黒のローブ。
そしてその間に揺れる、たわわな胸。

魔王「……こんなものか」

少女「ちょっと待て」

魔王「なんだ?」

少女「えっ、何?魔王って言ったら普通男じゃない?どっからどう見ても女の人だけど?」

魔王「じ、実を言うと、封印されていた期間があまりにも長くて、元の姿を忘れてしまったのだ……」

魔王「だからお前の姿を参考に作り上げた疑似肉体だが……何か間違っていたか?」

少女「参考……?嘘つけェ!その胸のどこが参考だ!?言え!!」

魔王「なぜそう怒る!?まぁ、確かに胸は参考にしていないが……」

少女「畜生!!」

魔王「ま、まぁいいではないか……ほら、こうやってちゃんと実体化したのだし」

少女「なんか納得出来ない……」

魔王「では、そちらの世界の話を」

少女「いいよ。してあげる」

*少女は魔王の後ろから抱きついた。

魔王「……何故、そんな格好をしているんだ……」

少女「お話をしてあげるんだから、これくらいの謝礼はほしいなぁ、と思ってね」ぎゅー

魔王「しゃ、謝礼?これが?喋り辛くないか?」

少女「苦しくなったら膝枕に移行するから大丈夫」

魔王「そ、そうか……」

少女(あ~、胸超柔らかい。癒される……)フニフニ

魔王(な、何か揉まれているような……)

おやすみ。

*以後、魔王に適度のセクハラをしつつ、ゆるく喋るSSになります。
*初心者ですので寛大な心で読んで下さい。

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