荒木比奈「頑張りたいんス」 (14)
未熟者ゆえ、人称などでミスがあるかもしれません。
どうかご容赦ください。
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比奈「……ぅあー…………」
(ガチャ)
加蓮「お疲れ様でーす。ってあれ、比奈さん。どうしたのソファに寝そべって」
比奈「……瀕死ッス……瀕死なんス…………」
加蓮「……なんか、お疲れみたいだね。あれかな、また漫画描いてて徹夜、とか?」
比奈「……や、そうじゃないッス。……あー、徹夜してたらヤバかったッスねこれは」
加蓮「んー?とりあえず座っていい?この後打ち合わせなんだけど、時間あるんだ」
比奈「あ、どぞッス。……スミマセン、寝たままでいいスか?」
加蓮「あ、いいよいいよ。……それで?どうしたの?」
比奈「いや、別に大したことじゃないんスよ。レッスン超疲れたってだけで」
加蓮「あ、レッスンか。そんなに厳しかったの?今日」
比奈「鬼ッス。まあマストレさんが担当だったんで、妥当っちゃ妥当なんスけど」
加蓮「うわ、マストレさんだったんだ。そりゃ疲れるね」
比奈「寝不足だったら即死だったッス」
加蓮「間違いないね。私たちみたいなインドア系でも容赦ないからなーあの人」
比奈「ッスね」
加蓮「……あれ?でも、マストレさんってライブ直近とかイベント前とか、それぐらいしか付いてくれないよね。比奈さん何か控えてたっけ?」
比奈「や、特には。……ないッスね」
加蓮「だよね。じゃあどうして……あ、Pさんのイヤガラセとか?何かしちゃったの?」
比奈「いやいや、まさか。そんなんじゃないッスよ。……自分でやって欲しいって頼んだんス。今日、たまたまマストレさんフリーだったみたいなんで」
加蓮「え。……なんでまた?比奈さんソッチの気があるの?」
比奈「ないッス。断じて」
比奈「……いや、キツイのはそりゃ間違いないんスけど、やっぱその分だけ、マストレさんのレッスンは力つくと思うんスよ」
加蓮「まあ、それはね?」
比奈「でしょ。なんでまあ、どうせレッスンするんなら、と思ったんス」
加蓮「……えー、すごい熱血。何かあったの?そんなキャラだった?」
比奈「何もないッスよ、別に。……あるのは、これからッスね」
加蓮「これから?……イベントは控えてないってさっき……」
比奈「私個人のはないッス。でもほら、事務所全体で。あるじゃないスか」
加蓮「……あ。……シンデレラガールズ総選挙?」
比奈「そうッス。……ま、今更感はありまスけど、やる気あるとこ見せてれば、今からでも仕事は入るかもしれませんし。そうなったら多少でも票動くかもでしょ?」
加蓮「それで、マストレさんに?……すごいやる気だね」
比奈「絶賛後悔中ッスけどね。『私のレッスンを志望したからには、覚悟はできているんだろう?』って言われて。やー、キツイのなんの」
加蓮「あはは、想像できるなあ。……えー、明後日私もマストレさんのレッスンだよー」
比奈「あ、加蓮ちゃんはライブ近いんでしたっけ。トラプリッスか」
加蓮「うん」
加蓮「頑張らないとね。マストレさんのレッスンはちょっと憂鬱だけど」
比奈「加蓮ちゃんなら大丈夫ッスよ。ずっと頑張ってきてるんスから」
加蓮「あはは、ありがと。同期の比奈さんにそう言ってもらえると、素直に嬉しいかな」
比奈「あー……同期か。そっか、加蓮ちゃんとは同期なんスよねえ」
加蓮「そうだよ?同じ初期組。いやー……人、増えたよねえ」
比奈「ッスね。……ところで加蓮ちゃん、重圧とか、ありまス?後輩ができて、追いかけられて、みたいな」
加蓮「えー?……んー、そんなにないかなあ。ウチの事務所、みんな仲良いし。もしギスギスしてたりだったら、あったかもだけど」
比奈「ッスか」
加蓮「うん。……比奈さんは?あるの?」
比奈「……重圧って訳じゃないスけど、モヤモヤ、みたいな?ムズムズっていうか。そーゆーのは、何かありまスね」
加蓮「あるんだ。……ちょっとびっくりかも」
比奈「え。なんでッスか」
加蓮「……いや、比奈さんってさ、アイドルは楽しんでるけど、どこか一歩引いてる、みたいな?そういうところ、あるのかなって思ってたから」
比奈「……そうッスね。ま、確かに、『絶対トップアイドルに!』とかは私にはないかもしれないッス」
比奈「でもでスね、やっぱり、やるからにはって気持ちもなくはないんス」
加蓮「……そうなんだ」
比奈「ッス。同期のみんなは、どんどん前に進んでるじゃないスか。加蓮ちゃんだけじゃない。奈緒ちゃんや、杏ちゃんとか、春菜ちゃんも色んなユニットで活躍してまス」
比奈「そーいうのを見たときに、ふと思うんスよ。あ、もちろん『おめでとう!』とか『凄い!』って気持ちは先に来るんスけど」
比奈「『私は、どうなんだろう?』って』
加蓮「……そんなこと。比奈さんだって、色んなイベントに出てるし、活躍してるじゃん。ほら、去年の総選挙だっていい位置につけてたでしょ?」
比奈「ありがたい話ッス。本当に。プロデューサーにも、『よく頑張ったな』って褒められたッスよ」
比奈「でもッスね。私の上にはまだたくさんの人がいて、その中には後輩にあたる子もいました。乃々ちゃんとか、美優さんとか、心さんとか、芳乃ちゃんとか。CDデビュー、先越されちゃったッス」
加蓮「それは……」
比奈「悔しいってわけじゃないんス。妬ましいとかはもっとない。みんな、頑張ってたの知ってまスからね。……でも、こう……胸のこの辺りが、ムズムズして、モヤモヤするんスよ」
加蓮「……えっと、なんか、ごめんなさい。分かったようなこと言っちゃって」
比奈「あーあー、そんな、いいんスよ。『自分みたいなのが』って気持ちはずっと持ってまスし。加蓮ちゃんが言ったように、どっか腰引けてるのは間違いないスから」
比奈「……この性分は、たぶん変わんないと思う。プロデューサーのおかげで可愛くなれたと思ってても、やっぱり私より可愛い人はたくさんいて。その人たちもずっと頑張ってきてる」
比奈「だけど、でスね。そんな先行く人たちに、追いつけなくても、引き離されないように。後輩たちに追い抜かれても、追い縋れるように」
比奈「私も、頑張りたいんス」
加蓮「比奈さん……」
比奈「もちろん、追い抜き追い越せって気持ちもありまスよ。ボーッとしてる人は抜かせてもらう所存でス」
加蓮「……比奈さん、結構熱い人だったんだね」
比奈「熱血系の少年漫画も読みまスからね。影響受けてまスよ」
加蓮「ふふっ。奈緒みたい」
比奈「あはは、奈緒ちゃんも影響受けやすいッスからね。そこも魅力ッスけど」
加蓮「だね」
加蓮「……比奈さん」
比奈「はい?」
加蓮「……私は、負けないよ。今回も、これから先も。油断なんて、しないからね」
比奈「……これは強敵ッスね。でも、やってみないとわかんないスよ」
加蓮「ううん、負けない。私も比奈さんに負けないように頑張るって今決めたし」
比奈「……えーと、ちょっとぐらい力抜いてもいいんじゃないスかね。加蓮ちゃんずっと頑張ってきてるんだし」
加蓮「ふふっ、なにそれ。さっきまであんなに熱いこと言ってたのに」
比奈「……言わなきゃよかったッスかね」
加蓮「言ってくれてよかったよ?あらためて、私も頑張らないと、って思ったから」
比奈「んむむ。……まあ、私も全力尽くしまスよ」
加蓮「うん。……あ、もうこんな時間?打ち合わせ、行かないと」
比奈「あ、ほんとッスか。スミマセン、なんか話聞いてもらっちゃって?」
加蓮「ううん、私もタメになったから。じゃあゴメン、私行くね?」
比奈「はい」
比奈「……あ、加蓮ちゃん」
加蓮「うん?」
比奈「……負けないッスよ。加蓮ちゃんたち同期にも、後輩たちにも。CDデビュー、目指してまスから」
加蓮「……うん、受けて立つよ。私だって、シンデレラになりたいからね。比奈さんにも負けたくないんだ」
加蓮「……あと、比奈さん」
比奈「はい?」
加蓮「凄いかっこいいこと言ってるのに、ソファに突っ伏したままだから結構台無しだよ?」
比奈「……仕方ないじゃないスか。座ってるのもしんどいんスから」
加蓮「まあ、わかるけどね。……じゃ、またね!」
比奈「はーい」
(ガチャ バタン)
比奈「……頑張るッスよ。私は」
比奈「……見ててください、プロデューサー」
比奈「ファンのみなさんに、恥じないように……」
比奈「あなたに、『頑張ったな』じゃなくて、ただ率直に、『おめでとう』って、言ってもらえるように……」
比奈「………………」
比奈「………………zzZZ」
*
(コソッ)
杏(……懐かしいアニメの円盤出てきたから鑑賞会しようって言いにきたのになー)
奈緒(言う気分じゃなくなっちまったな。……アタシも頑張らないと)
杏(杏は別にいいんだけどなー)
奈緒(またんなこと言って……でも、実際はちょっと頑張ろうって思ってんだろ)
杏(貴様、直接脳内に……!?)
奈緒(してないしてない。ま、とりあえず毛布だけ掛けてそっとしとこうぜ)
杏(だねー)
春菜(新しい比奈ちゃんに似合うメガネ持ってきたのに……とりあえず、寝るとき用のメガネかけときますね)
杏(やめときなよ。寝て起きてメガネ二つあったらびっくりするでしょ)
春菜(ええ!?でも、こんなに似合うのに……)
奈緒(また起きてるときにした方がいいんじゃないですか?)
春菜(だって、寝るとき用のメガネなんですよ?)
杏(そもそも寝るとき用のメガネってなんだよ)
おしまい。
短いですが、これで終わりです。
総選挙に向けて、こんな抱負を持ってるんじゃないかな、という妄想を書き出して見ました。
ご覧いただいた方、ありがとうございました。
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