ブチギレ鎮守府(247)

VIPでだいぶ前に落としてしまったのを少し手直ししての立て直し
まだラストまでは書き溜めてません。ゆっくりやります。板お借りします

大和「ンダッラァァァ!!!!」

長門「いま服がタイムパトロールみたいっつった奴出てこいコラァァ!!」

雪風「お二人とも抑えて! 抑えてください!」

イ級「スカート買えないくらい君んち貧乏なの?」

雪風「おいコラァァァ!! 今のどいつだおい!!」

加賀「とにかく落ち着いて、陣形が乱れてるわ」

ヲ級「君の相方三段腹だってね」

加賀「んんんんんんんんんんんん!!!!!」

ル級「君さ、その取っ手みたいなだっさい髪型さ、なんて言うの?」

綾波「…え?」

ル級「ぷっ」

綾波「……」

ル級「キ~レました~ ブフッ」

綾波「お前マジ沈めるからなちょっと待ってろ」


提督「コラ! お前ら勝手に動くな!! 陣形を保て!!」

大和「提督…! み、みなさん落ち着」

ネ級「お金いっぱいかけて作った動くラブホ」

大和「突っ込めェェェ!!!! 息の根を止めろォ!!」

雪風「死神のキスかましたるぞ!!」

綾波「出てこいコラ、どこに隠れた」

長門「ここが最終決戦場だオラァ!!」


提督「まだ道中だ!! おい待て!! 止まれぇ!!」

―――
――


執務室



提督「……はぁー」

大和「すみません…」

長門「悪気はなかったんだ」

雪風「うちが貧乏だって…お前のとこのしれぇは薄給の能なしだって言われたので…」

提督「そこまでは言ってないよね」

赤城「敗因は相手の挑発に乗ってしまった…というところでしょうか」

提督「君は一番はじめに突っ込んで大破したよね」

加賀「深海棲艦もなかなか味な真似をしてくるものね」

綾波「ださいですか…? 私の髪型ださいですか?」

加賀「それ私にもダメージ来るからやめてちょうだい」

提督「とにかくだ、なんでお前らは戦闘になると血の気が多くなるんだ!」

長門「なんで…と言われてもな」

大和「もともと戦う為の存在ですので、そういうものなのかと」

提督「そういうものなんです、じゃ困るんだよ! 大淀!」

大淀「はい」

提督「残りの資材量を説明してやれ!」

大淀「全種の資材は五千を切っています。出撃できてあと数回ですね」

綾波「そんなに少ないんですか?」

大和「そんな…いつの間に」

赤城「昨日はかなり余裕があったはずですが…」

提督「お前らな、今日何回出撃したか覚えてるか?」

雪風「…何回でしたっけ?」

綾波「五回くらいでしょうか?」

提督「その十倍は出撃してるよ!」

赤城「そんなに…私達ずいぶんと働いていたのですね」

加賀「ええまったく、道理で疲れてると思ったわ」

長門「勤労の後の酒は格別だからな、どうだ今夜?」

赤城「いいですね! 是非!」

加賀「私もご一緒させていただきます」

大和「他のみなさんにも声をかけましょうか」

雪風「今夜はパーティーですか?」

綾波「私、鳳翔さんのお手伝いしますね!」

提督「まだ最終海域クリアしてないよ!? なんで打ち上げムード入ってんの!?」

長門「そうは言うがな… 時には諦めも肝心だと思うぞ?」

大和「またいつも通り丙で行けばいいじゃないですか」

赤城「似合っていますよ? 丙勲章」

提督「嫌なのっ! 俺だって甲勲章欲しいのっ! 取ってみたいのっ!」

加賀「…はぁ」

提督「あーまた駄々こねてるみたいな顔すんな!」

提督「そもそもな、お前らの練度は問題ないんだ!」

提督「問題なのはその気の短さ!」

提督「あんなやっすい挑発に乗らなきゃ今頃はもう作戦終了してるんだよ!」

長門「そうは言っても…なぁ?」

大和「甲作戦だと途端に口悪くなりますからね、あいつら」

綾波「煽りスキル上げてきますよね」

赤城「私達の被弾が増えるのも無理ありません」

加賀「ええ」

提督「いいや! お前らは堪え性がない! ちょっとはメンタルも鍛錬しろ!」

雪風「ハゲ」

提督「俺のじゃない! お前らの!!」

加賀「メンタルね」

赤城「難しい話ですね」

長門「挑発されたら怒る、それは普通の事だろう。提督だってそうじゃないか」

提督「お前らは反応しすぎなんだよ! なんでバラバラに敵のど真ん中に突っ込むんだ!」

大和「それはもう、二度とへらず口を言えないようにしてやろうと」

提督「で、結果はどうだった? ボロボロにされて無言で帰って来たのはお前らじゃないか!」

長門「捨て台詞くらいは吐いたぞ」

綾波「次までに海底にキスする練習しとけよ…とか言いましたよね」

赤城「私なんて帰り際に中指立ててやりましたね」

加賀「大破しながらも折れない闘志、とてもご立派でした」

雪風「赤城さん! 雪風にもそれ教えて下さい!」

赤城「はい、まずですね…手をこう握って…」

提督「人の話を聞けぇぇぇぇ!!」

長門「そうカッカするな提督。上に立つ者はもっとどっしりと構えるべきだぞ」

提督「誰のせいでこうなってると思ってんの!?」

大和「提督、御髪が乱れていますよ」

加賀「また減りました?」

提督「減ってない!!」

雪風「ハゲ」

提督「ハゲてない!!」


瑞鶴「ふふふ、話は聞かせてもらったわ!」バンッ

武蔵「困っているようだな提督よ!」


提督「!! 瑞鶴…それに武蔵!!」

大和「武蔵…いきなりどうしたの?」

加賀「何の用かしら? 私たちは作戦会議で忙しいのだけれど」

武蔵「聞けば敵の策にまんまとハマっているそうだな」

瑞鶴「あんな小魚どもに良いようにされるなんて、一航戦も大したことないって事かしらね!」

加賀「そうね、ところで今夜あいてるかしら?」

赤城「出撃五十回お疲れ様会をやろうと思ってまして」

瑞鶴「うわ本当? どこどこ? 鳳翔さんのところ?」

赤城「ええ、皆さんへの連絡お願いできますか?」

瑞鶴「オッケー! 任せといて!」

長門「ふふ、いい酒をキープしてもらってる。武蔵も来るか?」

武蔵「無論だ。楽しみにしているぞ」

綾波「いいですねー! 人が増えると賑やかで楽しそうです!」

雪風「駆逐の子たちも呼んでいいですか?」

大和「もちろんいいわよ、いっぱい連れて来てね」

提督「ちょっと! ちょーっと待ってね! 君たち本当になにしに来たの!?」

武蔵「おっと…忘れるところだったな」

瑞鶴「そうそう、提督! 困ってるなら私達を使ってみない?」

提督「なに?」

大和「武蔵、大丈夫なの? あいつら本当にムカつくわよ?」

加賀「悪いけれどあなたたちに務まるとは思えないわ」

瑞鶴「ふふーん、心配ご無用! ちゃーんと立候補する理由はあるわ!」

武蔵「つまりはだ、相手の誹謗中傷が聞こえなければいいわけだ」

綾波「耳栓でもするんですか?」

提督「それだと俺の無線が聞こえんぞ」

瑞鶴「違う違う、相手の声が届く範囲外から倒しちゃえばいいのよ!」

加賀「……あーアウトレンジがどうとか言いたいのね」

瑞鶴「ちょ、先に言わないでくれる!?」

武蔵「まあそういうことだ提督よ、試す価値はあると思うが」

提督「……うーん」

加賀「そんな事なら私達でも出来そうですが」

瑞鶴「わかってないわねー、アウトレンジと言ったら私! 私を抜いての成功なんて考えられないわ!」

赤城「お任せしてもいいんじゃないんですか?」

加賀「そうですね、健闘を祈ります」

提督「君たち早く飲みに行きたいだけだよね?」

瑞鶴「ほら提督! さっさと決めちゃって!」

提督「うーん… まあ他に良い案もないし、やってみるか…」

赤城「決まりましたね、では私はこれで」

大和「頑張ってね武蔵」

長門「待ってるからな」

提督「っていうかさ、相手の挑発に乗らないって事はできないの?」

武蔵「ふふ、案ずるな提督。この武蔵、暴言に惑わされるほど繊細な心は持ってはいない」

提督「いや、こいつらみんなそう言ってここ出ていったんだけどね」

綾波「でも武蔵さんは正に武人という方ですし、あの腐れ深海魚どもの悪口なんて軽く聞き流せると思いますよ」

武蔵「そういうことだ。なぁに安心しろ、戻ってきたら甲勲章を肴に勝利の美酒といこうじゃないか」

瑞鶴「提督は大船に乗ったつもりでどーんと構えててよね!」

提督「そうか… なんだか行けそうな気がしてきたよ…!」

提督「よし! 旗艦武蔵! 後に長門、雪風、綾波、加賀、瑞鶴と続け! 艦隊発進準備!」

綾波「えっ」

加賀「は?」

長門「いやいやいや、我々はもういいだろう!?」

雪風「時津風! 時津風ちゃん連れてきますから!」

提督「サボろうったってそうはさせんぞ! さっさと出撃準備に入れ!」

赤城「みなさん頑張ってくださいね」

大和「先に行って待ってるからね」

加賀「んああああああ」

―――
――


最終海域


武蔵「…どうだ? 見つけたか?」

瑞鶴「まだ、索敵機からの通信待ち」

武蔵「そうか… どうした? みんな暗い顔をしているな」

長門「まあ…もう飽きるくらいここに来てるからな」

加賀「……」

綾波「……」

雪風「……………………あ」

武蔵「どうした雪風」

雪風「敵艦隊発見! 三時方向です!」

瑞鶴「あちゃーそっちだったか」

武蔵「こちらも確認した。どうやら気づいてはいないようだな」

加賀「あいつね、さっさとぶっ飛ばしましょう」

綾波「…」ゴキゴキ

瑞鶴「ちょ、ストップ! ストーップ! さっき作戦説明したでしょ!!」

雪風「あー…アウトレンジでしたっけ」

加賀「じれったいわね」

長門「要はここからバンバン撃って沈めればいいんだろう?」

瑞鶴「せっかく気づかれてないのにそんな事したらバレるでしょ! まずは先制の航空攻撃よ!」

雪風「雪風たちは何してればいいんです?」

加賀「ずいずいずっころばしでもしているといいわ」

瑞鶴「敵に空母は… ごめん雪風、ちょっと双眼鏡借りるわね」

雪風「どうぞ!」

瑞鶴「サーンキュ。えーとどれどれ… 空母はー」


ヲ級「…」ジーッ


瑞鶴「っ!?」ビクッ

武蔵「どうした」

瑞鶴「えっ…いや… 敵の空母と目が合ったんだけど…」

長門「気づかれているのか!?」

瑞鶴「わからない… 艦載機を発艦させる様子はないし…」

加賀「偶然こちらの方向を見ているだけじゃないかしら」

瑞鶴「うーん… でもずっとこっち見てるけど…」


ヲ級「…」ヌギッ


瑞鶴「えっ!?」ビクッ

長門「どうした瑞鶴! ちゃんと報告しろ!」

瑞鶴「いや… ちょっとわけわかんないっていうか」

加賀「あいつらで理解可能な事なんて魚臭い以外ないわ。何が起きてるの」

瑞鶴「えーっとね… 空母がさ、頭のアレ脱ぎ捨てた」

加賀「は?」

長門「頭のあれって… あいつらが艦載機を出してくる気持ち悪い帽子か?」

加賀「脱いだりできるものなの?」

瑞鶴「うん… 実際に脱げてるから… できるんだと思う」

武蔵「こちらには気づいているのか?」

瑞鶴「多分… こっちめっちゃ見てるし」

長門「空母としての大切な何かを捨てているように思うが」

加賀「気でも狂ったのかしら」

瑞鶴「…でね、今はなんかニヤニヤしながらこっち見てるんだけど」


ヲ級「…」クイックイッ


瑞鶴「あっ」

長門「どうした!」

瑞鶴「…………あーそういうこと」

武蔵「やつは何をしているんだ」

瑞鶴「えっとね、手の平を表にしてさ、指四本をこう…」

雪風「それって…」

綾波「ふーん」

加賀「……かかってこいよ、と」

武蔵「………つまりあれか」

長門「お前らの相手なんて素手でも余裕だわ、と言いたいわけだ」

瑞鶴「うん……、まぁそういう事だよね」

加賀「……はぁー」

綾波「……舐められたもんですね、私達も」

雪風「雪風、キレそうです」

長門「……………どうする?」

武蔵「……………」

雪風「……………」

綾波「……………」

加賀「………………………フン!」バキィ

瑞鶴「おっ、やるぅ……」

長門「おいおい…弓をへし折っていいのか」

加賀「かまわないわ。あっちがその気なら相手になってやるもの」

綾波「そうですねー……」ガチャ

雪風「魚雷なんて積んでられませんよね……」ガチャ

瑞鶴「まっ、ここまでコケにされちゃうとねぇ……」

長門「どうする武蔵。みんなやる気みたいだが?」

武蔵「……………」



提督「こちら鎮守府。そろそろ前哨とぶつかるくらいか? 報告を」ブツッ



瑞鶴「あーあ、いいの? 提督からの通信切っちゃって」

武蔵「ああ、海の喧嘩は艦娘の華。男が入っていいものじゃない」

長門「ふっ」

加賀「決まったようね」

武蔵「…………深海と拳と拳での殴り合いか………面白い!!」

瑞鶴「ッダァッリャァァァァァ!!!」バキィ

瑞鶴「見とるか深海魚どもォ! すぐにこの弓と同じにしてやっからなァ!!」

武蔵「拳での語り合いに砲など無粋!」バシュッ 

長門「そっちがその気なら素手で相手になってやるぞ!!!」バシュッ

綾波「しばらくアゴ使っておまんま食えないようにしてるからな」

加賀「生まれたての仔ヤギみたいにして返してやるから」

雪風「覚悟せえよコラ!!」

武蔵「よしっ! 行くぞ!! この武蔵に続けぇ!!」

瑞鶴「っしゃああああ!!! インファイト決めっぞ!!」

長門「かかってこいやぁコラァ!!」

雪風「やったるぞォォォォ!!」








ヲ級「撃て」

―――
――


執務室


提督「どゆことー?」

武蔵「………」

瑞鶴「………」

提督「ねぇ、どゆことー?」

瑞鶴「いや… まぁその… ね?」

武蔵「……すまん」

長門「悪気はなかったんだ」

加賀「艦娘の誇りを保つためには必要な行為でした」

提督「装備ぶん投げて素手で突撃するのが艦娘の誇りってどゆことー?」

雪風「こゆことー」

提督「どゆことー?」

雪風「こゆことー」

提督「どゆことー?」

加賀「…っぷ」

長門「…ふふ」

綾波「うふふ」

提督「ぬぅぅぅあああああああああああああああああ!!!」

提督「ああ! ちょっとでも期待した俺がバカだったよ!!」

提督「でもな! 装備捨てて帰ってくるとはな! さすがの俺も予想できなかったわ!」

提督「ねぇ武蔵さん! 君は四六砲どこにやったの!?」

武蔵「わからん」

提督「長門ちゃん! 君の四一砲は!?」

長門「覚えてない」

提督「駆逐のみんなー! 五連装魚雷はどこかなー!?」

雪風「どこでしたっけ」

綾波「さぁ」

提督「空母のみなさん! 弓はどうされたのでありますか!」

瑞鶴「確かへし折ったわ」

加賀「同じく」

提督「ねぇ!! なんでそういう事するのぉ!?」

長門「落ち着け提督。アホみたいだぞ」

武蔵「深海が装備を捨て素手でくるというのに、こちらが装備を使っては艦娘の名折れというものだ」

提督「で、それでどうなりましたか!? 馬鹿正直に丸腰で突っ込んで集中砲火じゃねーか!」

加賀「卑怯な奴らよ、まったく」

瑞鶴「次会ったらただじゃおかないわ」

提督「なにがただじゃおかないわだよ!! そんな見え見えの挑発に乗っかるんじゃねーよ!! バーカ!!」

加賀「……はぁ」

提督「いい歳こいで泣くなよみたいな顔すんな!」

長門「泣くな提督、上に立つ者の涙は部下を動揺させるぞ」

提督「んな事言うならな! お前らちょっとでも動揺してみせろ!」

雪風「オロオロ こんな感じですかね」

綾波「笑顔じゃないほうが感じでると思いますよ」

雪風「オロオロ… どうでしょうか?」

長門「うん、これはかなり動揺ポイント高いな」

加賀「いいわね。ご褒美に飴をあげるわ」

雪風「えへへ…」

提督「遊ぶなァ!!!」

加賀「提督が怒った。オロオロ…」

長門「オロオロ…」

瑞鶴「ぶっ!」

武蔵「ふふふ」

提督「なに和気藹々としてんだよ!!」

長門「提督は和やかなムード嫌いか?」

提督「いや好きだよ、好きだけどさ!? 時間と場所を!」


金剛「わきまえなヨォォォォォォォォォォ!!!」バァンッ


雪風「ひっ…!」ビクッ

提督「うわっ!」ビクッ


比叡「というわけで提督ッ!!」

榛名「お話は我ら金剛型がッ!!」

霧島「まるっと全て聞かせていただきましたァッ!!」


加賀「またうるさいのが来たわね…」

長門「もう少し静かに入って来れないのか…」

金剛「ヘェーイテートク! どうやらお困りのご様子ですネー…!」

比叡「なんでも皆さん敵の罠にひっかかりまくりとか!」

長門「ひっかかったのではない。艦娘として引けない戦いがそこにはあったんだ」

金剛「ノー! 確かに艦娘としての矜持は大切デース、が…」

霧島「一時の感情に流され、作戦を放り出してしまうのもまた艦娘の矜持に反する行為かと」

武蔵「むぅ…」

瑞鶴「意外と鋭いこと言ってくるのね…」

長門「とはいえ今回は甲作戦だ。深海棲艦も手段を問わない最低のゲス野郎共に成り下がってるぞ」

加賀「はっきり言ってあなた達では手に負えない相手だわ」

榛名「ふふふ、それは我ら金剛型を見くびりすぎです」

金剛「イエース! 私達姉妹は、鋼の絆と最高のハイテンションで結ばれてるんだからネ!」

比叡「その通りですお姉様!! 我ら金剛型、ノリとテンションと姉妹愛は誰にも負けません!」

長門「ノリ? ハイテンション?」

武蔵「それがどう攻略に結びつくというんだ」

金剛「わからないデスかネー、ワタシ達四人が集まればいつでもハッピー&エキサイティン! 相手の悪口に怒る事なんてありますまいデース!」

榛名「提督! どうか私達金剛型に今作戦を任せて頂けないでしょうか!」

提督「うーん…」

霧島「霧島の計算によりますと」

比叡「でた! 霧島お得意のザル計算!」

霧島「私達に任せた場合の作戦成功率は100%です」

金剛「イェーーー!! ワンハンドレッ!! イエーーーーー!!」

瑞鶴「うん、任せていいんじゃない?」

長門「オッケー採用だ。健闘を祈る」

提督「俺が決める所だろそれ!」

長門「金剛たちのやる気を見ろ。この意気込みを買わずに何が司令官か」

加賀「瞳の奥に漲る熱い闘志と正義の心を感じるわ。彼女たちなら必ずやり遂げてくれます」

武蔵「異論なし。確実に成功する。この武蔵が保証しよう」

提督「お前らさっきから飲みに行きたくてウズウズしてるな!?」」

金剛「OH! 皆さんもそう思ってくれるデース? ワタシ張り切っちゃうんだからネー!」

瑞鶴「そんじゃ頑張ってね! あ、そうそう終わったら鳳翔さんとこで宴会だから」

比叡「もしかして祝勝会ですか? それは嬉しいですねー!」

榛名「必ず甲勲章を持って駆けつけますから!」

加賀「ええ、楽しみにしているわ」

霧島「これは負けられませんねお姉様!」

金剛「イエース! ワタシ達が四人揃えばインポッシボゥな事はありはしないのデース!!」

提督「ええい…しょうがない! 旗艦金剛! その後に比叡、榛名、霧島、加賀、雪風と続け! 艦隊発進準備!」

雪風「は?」

加賀「ちょっと待て」

武蔵「気をつけて行くんだぞ」

綾波「雪風ちゃんファイトですー!」

雪風「いやいやいやいや」

長門「二人とも頑張れよ、じゃあお先な!」

加賀「なに笑いながらお先とか言ってるの、ちょっと待ちなさい、待って!!」

―――
――


最終海域


金剛「そこでワタシは言ってやったネー! ここはコーンウォールの田舎者が来ていい所じゃないゼ! さっさと帰って羊の毛でも刈ってナ! ってネー!」

比叡「んなっはっはっはっは!!」

榛名「クール!! 最高にクールですお姉様!!」

霧島「さっすがお姉様ですねー!!」

比叡「どうですか加賀さん! うちのお姉様は最高でしょう!」

加賀「…ええ、まぁ」

金剛「ヘーイスノーウィンドガール! どうしたデース? しかめっ面はノーなんだからネー!!」

雪風「………はい すみません」

比叡「そうですよ雪風さん! 笑う門には福来たるといいます! もっと笑って笑って!」

雪風「……ふふ」

金剛「イェーーー!! スマイルゲットイェーーーー!!」

榛名「今日は雪風ちゃんのスマイル記念日ですね! ブブゼラを吹きましょう!」

霧島「花まるアイディアでましたねー!」

比叡「ちゃんと持ってきてますよー! どうぞ加賀さん!」 

加賀「…どうも」

金剛「さあブロー!! カガガガール! ブロー!!」

加賀「…ブォォォォォ」

金剛「ってそれ尺八デース!! カガガガール!! それ! 尺八デース!!」

比叡「んなっはっはっはっはっはっはっは!!」

榛名「やだもーお姉様!!」

霧島「どうされました加賀さん、眉間に皺がよってますよ?」

比叡「ちょっと飛ばしすぎちゃいましたか?」

加賀「お構い無く…」

比叡「お姉様! どうやらお二人は笑い疲れているご様子ですよ!」

金剛「OH! それはいけないネー!」

榛名「じゃあここらで恒例のお姉様への質問ターイムはいかがでしょう!」

霧島「グッドアイディアです! 榛名は今日も冴えてますねー!」

金剛「イエー! なんでも質問してくだサーイ!」

比叡「それじゃあ雪風さん! お姉様に何か質問はありませんかー?」

雪風「………いえ、ありません」

榛名「じゃあ加賀さん! お姉様への質問は?」

加賀「…特に」

榛名「そうですか…、困りましたねー…」

霧島「くだらない事から真面目な話まで、どんな内容でも構わないんですよ?」

金剛「イエース! スリーサイズでも理想の男性像でも、なんでも聞いてくだサーイ!」

加賀「……あの、だから」

比叡「何も気にする必要はありませんよ? 私達との交流の場だと思って、さあ!」

加賀「…………じゃあ一つだけ、ずっと気になっていたことをいいかしら」

金剛「OK! ドウゾー!」

加賀「あなた本当に帰国子女なの?」

金剛「…………………………え?」

比叡「ど、どういうことですか…?」

加賀「あなたはいつも自分を帰国子女帰国子女と言っているけれど」

加賀「英国で産まれて日本に来たのなら…。その、帰国子女とは言わないし、そもそも日本人でもないんじゃないかと」

榛名「で、でも、お姉様は日本からの依頼で産まれたわけですし…」

霧島「いえ…、日本からの依頼とはいえお姉様は設計から建造までオール英国ですので…、そう言われると確かに…」

比叡「そうなんですかお姉様!?」

榛名「お姉さまは帰国子女じゃないのですか!?」

金剛「え…? い、いやーどうなんですかネー… ちょっとわからないデス…」

霧島「ではお姉様、なぜ自分を帰国子女と…」

金剛「え… それはその… 海外から来たから帰国子女なのカナーって…」

加賀「…まあ帰国子女という言葉も定義は曖昧なものです。興味本位での質問だから気にしないでしょうだい」

金剛「は…ハイ…」

比叡「…そ、そうですよお姉様! 帰国子女じゃなくても、それならイギリス人って事じゃないですか!」

榛名「それも十分クール! カッコいいです!!」

金剛「……そうですかネ?」

霧島「むしろ帰国子女よりカッコいいとさえ言えますよ!」

金剛「……そ、そうデスカー? ……イエース! ワタシ、イギリス人の金剛デース……!」

榛名「フゥーカックイー!」

比叡「それじゃあお姉様!! 英国であった笑える出来事ベスト5お願いします!」

金剛「………………………え?」

金剛「英国であった笑える……え?」

比叡「そうですよ! めっちゃローカルなネタお願いします!」

金剛「ちょ…ちょっと待ってくださいネー…」

霧島「……どうされたんですお姉様?」

金剛「え、えっとデスネー…」

比叡「お姉様……?」

金剛「あ、あのー……」

加賀「……金剛、あなた竣工してからどのくらい英国にいたの?」

金剛「……そ、それは……い、一年ちょっとですかネー…」

加賀「……本当に?」

金剛「あ……」

加賀「……」

金剛「……………一年は……進水してからデス」

比叡「えっ……」

金剛「竣工後はすぐに日本へと……来マシタ」

榛名「で、でも! お姉様はお茶会でよくイギリスの話をしてくれますし……」

比叡「ロンドンはこうだとか、リヴァプールはああだとか、いつも話してるじゃないですか?」

金剛「…………」

霧島「……お姉様?」

金剛「………う、うぅ」

加賀「金剛……あなた」

金剛「……ワタシのイギリスの話は全部……日本に来てから得た知識なのデス……」

榛名「………ま、またまたー!」

比叡「お姉様ったらそういうネタですかー?」

霧島「ちょっとわかりづらいですよそれはー! 乗っかりづらいですよー!」

金剛「………いえ、ネタではないのデース」

比叡「とか何とかいっちゃってー! この後来るんですよね? ドッカーンなネタが!」

榛名「榛名は準備OKですからね! いつでも大丈夫ですから!」

霧島「くす玉用意しときましょうか? あ、礼砲! 礼砲にしましょうお姉様!!」

榛名「いいですねー! ド派手にいきましょう!」

比叡「こんな事もあろうかとハトも持ってきたんです!」

金剛「あの………うぅぅ」

加賀「…三人とも、少し静かにしてちょうだい」

金剛「……カガガガール」

加賀「どうやら本当の事のようね」

金剛「………ハイ」

金剛「……ワタシの英国での記憶は、進水して艤装を積まれて、海上公試を終えるまでの少しの間しかありまセン…」

金剛「それもほとんどが造船所での記憶だけ…ワタシ、イギリスを見て回ったことなんて…本当はないんデース…」

比叡「……えっ」

榛名「そ、そんな…」

霧島「お姉様…」

金剛「シスターズ、あなたたちに謝らなければならないことがありマス……」

金剛「ワタシ、シスターズにたくさん嘘ついてマシタ……」

金剛「ワタシのイギリスの話、イギリスの作法、紅茶の淹れ方。どれも全て、自分で体験したことはないのデス……」

金剛「ゴメンなさい……ワタシ、あなた達にいっぱい見栄を張っていマシタ」

比叡「で、でも! 今朝挿れていただいた紅茶は本当に美味しかったですよ!?」

榛名「そうですよ! 焼いたスコーンだってとっても…」

金剛「違う、違うのデス。紅茶を淹れたりスコーンを焼くのは、本を読めば誰にでも出来ることデス……」

金剛「街や文化の話だってそう。話すだけなら情報を仕入れれば誰にだってできマス……」

加賀「……でも、そこには経験が伴っていない。ということね……」

金剛「ハイ……ワタシには、そこにアイデンティティがありまセン。空っぽなんデス」

加賀「……」

金剛「……ワタシ、日本に来てからもずっとイギリスに憧れを抱いてマシタ。だって、ワタシの産まれた場所ですもの」

金剛「だから自分でイギリスの事をたくさん勉強しマシタ。歴史に文化、風俗、それに紅茶。ワタシ、本当に色々と覚えマシタ」

金剛「そうしていけば、いつかはイギリス人の心を持ち、イギリス人のように振る舞える。……そう信じてマシタ」

金剛「……でも、本や映像は知識を教えてくれても、その土地の空気や経験までは伝えてくれないものデス」

金剛「知識が増えていくつれて、だんだんと虚しさを感じるようなりマシタ」

金剛「本で知った方法で紅茶を淹れ、映像で見た振る舞いをして、イギリスの真似事をする自分が、なんだかとても哀れに思えたのデス」

金剛「でもワタシは、イギリスの真似事を辞めることが出来ませんデシタ。……虚しさを認めたくなかったのデス」

金剛「でも、それまでのように自分だけで思い続けるのは限界デシタ……」

金剛「……だからワタシは、周囲に『英国艦』であることを強くアピールすることで、自分を保とうとしたのデス」

金剛「みなさんに紅茶を振る舞い、言葉の節々に英語を取り入れ、調べておいた英国の話をする。そうすると、『金剛はやっぱり英国艦なのね』と言ってもらえたんデス」

金剛「自分で信じられなくても、周りがそう言ってくれるなら、見せ掛けでも自信はつくものデス。実際、ワタシはとても満たされた気持ちになりマシタ」

金剛「……でもそれは、鬱屈していたワタシにとって甘美すぎる自信でもあったのデス」

金剛「ワタシは初めて砂糖を舐めた蟻のように、他人からの『英国艦』という評価を求めてしまいマシタ」

金剛「その欲求がエスカレートを続けるうちに、ワタシの『英国艦』はどんどん歪なものになっていったのデス……」

金剛「……本当のイギリス人は、こんな喋り方しまセーン」

金剛「イギリス人はこんなにうるさくないし、夜中にセックス・ピストルズを爆音でかけて紅茶のんだりしないし、うなぎゼリーを無理矢理人に進めたりしまセーン」

金剛「それはワタシにもわかってるんデス。でも、承認欲求を満たし続けるうちに、『英国艦の金剛』はいつしか『海外艦の金剛』になっていマシタ……」

金剛「……気が付くとワタシは、憧れたイギリスからもかけ離れていたのデス」

金剛「……ワタシという存在は、ワタシが勝手に作り上げた薄っぺらいイギリス像と、自己嫌悪に対するカラ元気でしかないんデス」

金剛「……シスターズやカガガガール、他の艦娘さんたちを羨ましく思うことがありマス」

金剛「皆さんは日本の、海外艦の方たちはそれぞれ自分の故郷の記憶やリアルな経験を持って、当たり前のようにいられるのに」 

金剛「ワタシのバックグラウンドはイギリスにも、日本にもなく……出来上がったのはなんだか解らないステレオタイプの外国人デス」

金剛「……自分のルーツを追いかけていくうちに、ワタシは一体どこの子になっちゃったんですかネ……」

金剛「……シスターズ、カガガガール、ゴメンなさい。……失望させちゃったネ」

比叡「……」

榛名「……」

霧島「……」

加賀「……」

金剛「……う、うぅぅ」

加賀「……金剛」

金剛「…………?」

加賀「少しいいかしら」

加賀「あなたが自分の故郷に強い憧憬を抱いている事はよくわかりました。そしてそれが、強い痛みを伴っているということも」

加賀「……正直に言うけれど、私にはあなたの悩み全てを理解することはできません」

加賀「それにあなたは何時でもうるさいし、空気は読まないし、やたら押しは強い。まったくイギリス的でも、ましてや日本的でもない」

加賀「これも事実です」

金剛「……」

加賀「でも金剛、私はあなたのその変な口調や無駄に高いテンション、嫌いではないの」

金剛「……え?」

榛名「加賀さん……」

霧島「もちろん、私達姉妹もです」

比叡「はい! 私達だってそんなお姉様のこと、大好きですよ」

金剛「シスターズ……」

加賀「……ごめんなさいね。こういう事を言うのに慣れていないの。赤城さんならもっと気の利いた事を言えると思うんだけど」

加賀「まぁ…つまり私が言いたいのは」

イ級「元気出せよエセ外人」

加賀「イギリスの金剛でも日本の金剛でもなく、私は今のあなたを気に入っているわ」

加賀「だからと言うのもおかしいけれど、元気を出して頂戴」

―――
――


執務室


金剛「うああああああああああああぁぁぁ」

比叡「お姉様…! しっかりしてください!」

金剛「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

榛名「ほらお姉様! でんでん太鼓ですよ!」


提督「なにこれ」

加賀「まぁ…話せば長くなるわ」

提督「長くなるって…雪風はなにか知らないのか…?」

雪風「はい、雪風は心を殺して凌いでいたのでよく覚えていません」

加賀「…とにかく金剛は旗艦を務められる状況じゃなかったわ。戦闘もね」

加賀「だから帰投させて頂きました。ご理解を」

提督「えぇー……」

金剛「……テートクゥ…テートク! ワタシいったい…どこの子なんデース…?」

提督「え…? どこの子? イギリスじゃないの?」

金剛「………ひぃぃぃぃいいいん」

提督「えっ」

比叡「何言ってんですか!!」

榛名「ちょっと酷すぎますよ提督!!」

提督「えっ」

加賀「はぁ……」


武蔵「どうした提督よ!! 辛気臭い空気が廊下まで漂っているぞ!!」バンッ


提督「うわっ……酒くさっ!?」

大和「あらあら、どーしちゃったんですか」

長門「金剛は何を泣いているんだ」

金剛「ワタシ……ワタシ……エセ外人デース……うぁぁぁぁ」

長門「今更すぎないか?」

金剛「違う……違うんデース……ワタシは一体どこの子デース……」

武蔵「どこの子?」

大和「うちの鎮守府の子じゃないの?」

金剛「ノー………………いや、イエース……?」

比叡「そう! そうですよお姉様!!」

榛名「お姉様はうちの子です! なぁ!?」

提督「!?」ビクッ

霧島「そうだよなぁ!?」ダンッ

提督「……あ、ああ! 金剛はうちの子だ……!」

金剛「……で、でもワタシ……日本人でも……」

比叡「そんなの関係ありませんよ!!」

榛名「お姉様はそのままで十分素敵なんです! なぁ!?」

霧島「テメェもそう思うよなぁ!?」ダンッ

提督「ひっ…! そ、そうです! 金剛はそのままで十分素敵です!」

比叡「……だから、国とか故郷とか……もう悩まなくていいじゃないですか」

金剛「……比叡」

武蔵「……よくわからんが一件落着と見た! 続きは酒の席でするといい!」

大和「ささ、こっちですよー。けっこう人も集まってますから」

榛名「行きましょうかお姉様」

霧島「ええ、今日は飲んで嫌なことは忘れちゃいましょう!」

武蔵「ああ、酒はその為にあるんだ! 後でお前の話もこの武蔵が聞いてやろう!」

金剛「……ハイ!」

武蔵「その意気だ! なあ提督よ! はっはっは!」バンッバンッ

提督「ほんと酒臭いなお前! あと痛いから背中バンバン叩くな!」

加賀「……ずいぶんと出来上がっているようね」

雪風「いやーずるい、ほんとずるいです」

長門「ふふっ、悪いな二人とも」

加賀「それで? ここへ来た理由はなんなの?」

武蔵「なに、お前たちのことが気になってな」

長門「まだ続ける気でいるのか?」

提督「当たり前だ! 俺の信念はこんな事では曲がらん!! 絶対に諦めんからな!!」

長門「鼻息だけは一丁前だな」

提督「なんとでも言え!! 酒臭い鼻息より何倍もマシだ!!」

加賀「でももう案もないのでしょう?」

提督「……」

長門「聞こえないふりも一丁前だな」

加賀「はぁ……」

雪風「雪風、もう眠いです」

加賀「雪風もこう言っています。これ以上は私達の負担も大きいわ」

提督「……何が言いたい」

加賀「丙作戦への変更を提言します」

提督「いーーーーーやーーーーーー!!」

長門「やれやれ。やはり連れてきて正解だったか」

提督「……連れてきた?」

武蔵「よし、入ってこい!」


満潮「……」ガチャ

霞「……」

曙「……」


長門「紹介しよう。攻略の切り札の不機嫌ズだ」

提督「ヒッ!」

加賀「なんで私の後ろに隠れるんですか」

曙「……ちょっとクソ提督、呼びつけといて何隠れてんのよ」

提督「いや……、その……」

霞「モゴモゴしない!」

提督「は、はい!」

満潮「で、話って何よ。さっさとしてくれる?」

提督「べ、別に俺が呼んだわけじゃ……」

雪風「モゴモゴするなったら!」

提督「は、はぁい! っておい雪風!!」

加賀「……なるほど。毒には毒をというわけね」

武蔵「その通りだ」

提督「いや、どういうことだよ!」

武蔵「わからんか? 毒には毒を、口喧嘩には口喧嘩を、ということだ」

提督「はぁ……?」

加賀「まぁ、正攻法を試し続けるより望みはありそうね」

提督「いや、だって最終海域だぞ? 駆逐三隻も入れたら火力不足だろう!」

加賀「……何も解ってないのね」

武蔵「甲作戦にいままでの常識が通用しないのはもうわかるだろう?」

長門「甲作戦は砲の撃ち合いよりdisり合い。つまり口先が百の艦砲より有効な武器になるのは今までの挑戦で証明されたはずだが?」

提督「いや……、証明されてるのはお前らへの有効性だけじゃないのか?」

加賀「私達に有効ということは、深海魚どもにも有効ということよ」

長門「そうとも。奴らにやられたことをそっくり返してやろうということだ」

提督「うぅん…、しかしだなぁ…」

曙「……ッチ、いつまで無視してんのよクソ提督!」ダンッ

満潮「呼んどいて何なのその態度、意味わかんないんだけど」

提督「だから俺が呼んだんじゃないって…!」

曙「誰が呼ぼうが関係ないでしょ。それとも何? 自分が呼んでなければ無視してもいいっての?」

提督「そういうわけじゃ…」

満潮「じゃどういう訳?」

提督「……もう少しこう、フレンドリーなね? 空気を出してくれれば……」

曙「は?」

満潮「何言ってんの?」

霞「あーもう、じれったいわね! もっとハキハキ言いなさいよ!」

提督「だ、だからもっと話しやすい雰囲気出せよって!!」

満潮「うわ……」

霞「逆ギレ? 今ので?」

曙「駆逐艦相手に話しやすい雰囲気出してくれって……それ本気で言ってんの?」

霞「もう大人でしょ?」

満潮「なっさけなー……」

雪風「マジでないわ」

曙「大丈夫? 年相応の包容力どっかに忘れてきた?」

加賀「モテないわけだわ」

満潮「思春期にちゃんと異性と交流あった?」

提督「うあああああああああああああああっぁああああああああ!!!!」ゴロゴロ

長門「勝ったな」

武蔵「ああ」

提督「あ…ああぁ……」ゴロゴロ

武蔵「大丈夫か提督よ」

提督「んあああああぁ……」ゴロゴロ

長門「はっはっは、彼女たちの威力がわかっただろう」

提督「いゃぁぁぁぁ……」ゴロゴロ

加賀「……精神崩壊起こしてないかしら?」

武蔵「バイタルパートでもやられたか」

霞「シャキッとしなさいったら!」

満潮「……で、本当に何の話だったのよ」

長門「なに、ちょっとした用事だ。深海と口喧嘩をしてきて欲しい」

曙「はぁ? 口喧嘩?」

霞「今は甲作戦の攻略中なんじゃないの?」

武蔵「その通り。そしてそれこそが攻略の鍵になる」

満潮「……意味解かんないんだけど」

加賀「よってくる雑魚どもを口で追い返せばいいだけよ。行けばわかるわ」

霞「……ちょっとまって。私も正直意味がわからないわ」

曙「私は嫌。なにそれ深海と口喧嘩なんてアホらしい」

満潮「私も嫌よ。つまらない戦略どころの話じゃないわ。前代未聞よ」

武蔵「我が鎮守府始まって以来の甲勲章を手に入れる、名誉ある作戦なんだがなぁ…」

曙「名誉なんてどうでもいいわよ。犬にでも食わせとけば?」

長門「甲勲章は提督の念願でもある。手に入れればさぞ喜ぶだろうなぁ…」

曙「っ……」

満潮「……ふん」

霞「むっ……」

雪風「雪風は提督の念願なんてどうでもいいです」

加賀「今は本音はダメよ雪風」

長門「さて、どうだ三人とも。やってはくれないか?」

霞「……まぁ命令ならやるけど」

長門「そうか! じゃあ早速…」

満潮「……ちょっと待って」

長門「ん?」

満潮「命令を出すのは長門さんじゃないでしょ」

武蔵「……ふっ」

長門「ふふっ、確かにな。一本取られたか」

曙「コラ、クソ提督! いつまで床をゴロゴロ転げ回ってんのよ!」

提督「あぁぁぁぁ……」ゴロゴロ

霞「ホラ! シャッキリする!」バンッ

提督「あ、あぁい!!」ビクッ

霞「……話はわかったわ。命令を出しなさい」

提督「あ……え? 命令? 何の命令?」

霞「出撃命令に決まってんでしょ! このグズ!」

提督「……出撃?」

加賀「はぁ……作戦会議中だったでしょう? 覚えてないのですか」

提督「……!! あ、ああ! そうだった! 何か記憶が曖昧だが……」

加賀「頭でも打ったんでしょう」

提督「頭を……? 俺は転んだりしたのか……?」

霞「そんな事より今は甲作戦攻略でしょ!」

満潮「……欲しいんでしょ? 甲勲章」

曙「甲勲章なんてあんたには似合いそうもないけどね。……ま、取ってきてやってもいいわよ」

武蔵「あとは提督の命令だけだぞ。どうする?」

提督「あ、ああ……よくわからんが、曙たちを出せばいいんだな?」

提督「よし! 旗艦長門! その後に加賀、雪風、霞、曙、満潮と続け! 艦隊発進準備!」

雪風「ふざけんな!!」

長門「まてまてまてまて、私は酒入ってるんだぞ!」

加賀「……こうなると思ってたわ」

武蔵「はっはっは! 吉報を待っているぞ!」

長門「おい武蔵、陸奥を呼んできてくれ! ……おーーーい!!!!!」

―――
――


最終海域


加賀「……」

雪風「……」

長門「……おぇ」

加賀「ちょっと先頭、ふらついてるわよ」

長門「……船揺れは酔いが回りやすくてな」

曙「ったく、それでも戦艦様なの? 酒を飲んで出撃なんて大層なご身分ね」

満潮「なんでうちの鎮守府はこういい加減な大人ばっかりなのかしら」

霞「旗艦が航行の基準なのよ。しっかりしなさいな」

長門「うぅぅ……」

加賀「三人とも、敵は長門ではないのよ。言葉の刃はまだ抜かないで頂戴」

曙「はいはい。で、その敵さんってのはあれのこと?」

長門「あれ? うわ近っ!」



イ級「ヘーイクソ海女ども」

ホ級「自分らも懲りずによう来るなぁ」

リ級「おっ先頭トゲゴリラじゃん。今日もだっせぇ服着てんな」



加賀「いつの間に……」

雪風「長門さん?」

長門「……すまん。索敵する余裕がなかった」

満潮「で、どうすればいいの?」

加賀「そうね、前面に出てあのクソどもを止めてもらえないかしら。私たちはこのまま進むわ」

霞「了解。前面に出るわ、二人共行くわよ」ザザザッ

曙「次はしっかり索敵しなさいよ」ザザザッ

加賀「……本当に大丈夫かしら」

長門「もう私たちには信じることしか出来ない。大丈夫だといのうぇぇぇぇ」

雪風「うわっ」

ホ級「おーっす! ジャリガキども」

リ級「あれー君ら新顔じゃん。頭に鈴ついてるけど大丈夫?」

イ級「花までついてるし。これ自分で考えたの?」

曙「……」

ホ級「そっちのさ、アホみたいな髪型した君はこのファッションどう思う?」

霞「……」

ホ級「君。そっちじゃなくて。そうこっちの君。いやまぁどっちもアホみたいな髪型なんだけど」

イ級「そのさ、横から残尿みたいにダラーって垂らす髪型流行ってんの?」

リ級「君んとこの鎮守府やたらいるよね。残尿ヘア」

イ級「そっちの君なんか両方から出てるじゃん」

満潮「……」

イ級「まぁ比較的ね? 他の二人と比べてね? まともだとは思うよ? 俺はね?」

リ級「やっぱ嘘だわ。だせーわその変な髪玉」

ホ級「なんでこうさ、モコっとさせようと思ったの?」

満潮「……」

曙「……」

霞「……」

ホ級「……あれーおっかしいなー。聞こえてないんかなー」

リ級「え、何? 無視とかしてんの?」

イ級「ちょっと陰湿すぎない? 艦娘ってそんなんなの?」

リ級「おーい、聞こえますかー? 聞こえてますよねー?」

曙「聞こえてるわよ」

ホ級「やっぱ聞こえてんじゃん。え、何? やっぱ無視してたの?」

イ級「まー艦娘のね、モラルなんてそんなもんっしょ」

リ級「なになになに? なんで無視しようと思ったの?」

満潮「え? 何でっていうか」

霞「ねぇ?」

曙「遠征前のウォーミングアップにサクッと沈めてる奴と話すなんて…ちょっと考えつかなかったっていうか」

イ級「…………は?」

ホ級「うん?」

イ級「え何? うん?」

曙「……」

ホ級「ちょっとこっち見て? 今のもっかい言って?」

満潮「……」

イ級「聞こえてんだろ? わかってんだぞおい」

霞「……」

リ級「……それイジメじゃないの? 性格悪すぎない?」

霞「性格悪いって言われてもね……」

満潮「うん、それ以前の話っていうか。申し訳ないとは思うんだけど」

曙「何ていうの? 道端の犬のクソに話しかけるようなもんだしさ」

イ級「今なんつったおい」

満潮「そんなのこっちが正気を疑われる行為だし」

ホ級「おいコラ」

イ級「お前ふざけんなよマジで」

リ級「お、おい! 相手に乗るな!」

ホ級「うるせぇよ、大体なんでお前だけ話しかけられてんだよ」

リ級「え……? いや何でって」

霞「うーん、ギリギリ話してもいいかなって見た目だし」

満潮「たまに苦戦もさせられるしね。たまにだけど」

曙「それに臭くないし」

イ級「どういう意味だコラァァァァ!!」

ホ級「このガキ、沈めんぞテメェ!!」

リ級「落ち着け! 落ち着けって!!」

ホ級「うるせぇ!! 自分だけ話しかけられてっからって良い気になってんじゃねぇ!!」

リ級「はぁ!? なってねぇよ!!」

曙「……あんたさ、よくウンコと会話できるわね」

満潮「尊敬するわ、ホント」

イ級「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ホ級「この花頭ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

リ級「待て!! 落ち着けおい!! ッチ、撤収! 撤収ー!!」

―――
――



雪風「……敵艦隊転進。引き返していきます」

長門「おぉ」

加賀「成功したのね」

霞「任務完了よ。隊列に戻るわ」ザザザッ

満潮「こんな感じでいいの?」ザザザッ

長門「うむ、素晴らしい戦果だ。三人ともよくやった」

曙「逃がしちゃったけど。沈めといた方がよかったんじゃないの?」

加賀「いいのよ。沈めても海底からゴキブリみたいに湧いてくるんだし、逃げるのなら放っておきなさい。弾の無駄だわ」

長門「それにしても、あの下品な魚野郎たちが尻尾を巻いて逃げ出すとはな。いったいどんな手を使ったんだ?」

満潮「別に? 普通に口で相手しただけよね」

霞「そういう命令だったでしょう?」

曙「やっぱり血祭りに上げたほうが良かったんじゃないの?」

加賀「いえ、結構よ。その調子で頼むわ」

長門「はっはっは、最近の駆逐艦は勇ましいな。艦娘の未来も明るいというものだ」

曙「……この戦艦、清々しい言葉のわりにはふらついてるわね」

雪風「さっきずっと吐いてたからね」

満潮「……はぁー、ほんと馬鹿ばっかり」

―――
――



その後も不機嫌駆逐隊の快進撃は続いた…


霞「ええ、いいわよ。このまま帰投しても」

へ級「え…!?」

ハ級「え、マジ!? え!?」

チ級「き、聞いたかんな! マジ今の聞いたかんな! 嘘じゃねーだろーな!?」

霞「もちろんよ。じゃ、こっちの条件を提示させてもらうわ」

曙「そこでプカプカ浮いてるスイカの化物を、毎週50匹鎮守府まで連れてきなさい」

ワ級「!?」

へ級「は? ……スイカって、ワ級の事か?」

満潮「ええ。それが停戦の条件よ」

霞「条件を飲むなら私たちはこのまま帰投するわ」

曙「悪くない提案だと思うけど?」

ハ級「……ど、どうするよ?」

チ級「どうするって……、そりゃあこのガキどもは追い返したいが、毎週ワ級50隻ってどういうことだよ……」

へ級「ちょ、ちょっと待て! ……ワ級50隻連れて行くのはいいとして、どうするつもりなんだ……?」

霞「どうするって?」

満潮「そりゃあもちろん」

曙「殺すのよ」

ワ級「!!!?」

ハ級「え? 何? 殺す!?」

霞「殺すわ」

へ級「50隻も!?」

満潮「皆殺しよ」

チ級「頭おかしいんじゃねーのかこいつら!?」

曙「そう? 楽しいわよ? ワ級殺すの」

ワ級「!!!??!?」

霞「週間目標があるのよ。そっちから来てくれるならとても助かるの。殺すだけだし」

満潮「新人も入ってきたからね。どこをどう撃てば殺せるのか教えないといけないし」

曙「だからまあノルマ兼実験台ということで。よろしく頼むわよ」

へ級「ふざけんな! 悪魔か!」

チ級「なんでこの子たち眉ひとつ動かさずに殺すとか言えるの……絶対ヤバイ奴らだよ……」

ハ級「もう完全に物とか無機物を見る目でワ級見てるよ……何、鎮守府って何なの? 人の心を失ったパーフェクトソルジャー養成所なの?」

ワ級「……!……!」

へ級「ワ級がもう帰りたいって……俺もこんな危ない奴らといたくねぇよ……」

チ級「か、帰ろうぜ……! 真顔で頭にバットフルスイングとかやってくるタイプの奴らだよ……!」

ハ級「あ、ああ……! お、おいガキんちょ! そんな常軌を逸した条件飲めるわけないだろ!」

曙「は? これでも譲歩したんだけど?」

満潮「本当なら潜水艦と空母も連れてきて欲しいくらいよ」

霞「まとめて殺せれば手間が省けるんだけどねぇ」

へ級「怖っ!」

チ級「このサイコども! 畜生道に堕ちろバーカ! 撤収ー!」

~~~


曙「あんたさ、単純に気持ち悪いのよ」

ヌ級「……は?」

霞「たこ焼きみたいな見た目しといて何なの、その無駄にスラッとした手足は」

満潮「深海の中でも群を抜いてキモいのよ」

ヌ級「……ん、んなことねーよ! お前らの方がな! 気持ち悪いんだよ糞ガキ!」

満潮「で、何? あんたこんなのから成長したの?」

ヲ級「……え?」

曙「だってあんたの子供時代みたいなもんでしょ?」

ヲ級「い、いやー……どうなんすかね……」

霞「同じ空母なんだし、関係ないってことはないでしょ?」

ヲ級「え、えぇ……いや、その……」

曙「まー気持ちは解るわよ。こんなキモいのだったなんて隠したい過去よね」

霞「やっぱり休みの日とか空母同士で遊んだりするの?」

満潮「このたこ焼き連れて街とか行ってるんだ。仲良いのねぇ」

ヲ級「…………ち、違うし、こんなキモいの私も知らないし……」

ヌ級「え!?」

ヲ級「きょ、今日は仕事で偶然組んだだけだし……、プライベートではその……距離おいてるし……」

ヌ級「えぇ!? き、昨日一緒に飲みに行ったでしょ!?」

ヲ級「行ってないし……プライベートではその……空母悽姫とかと遊んでるし……」

ヌ級「ちょ、ちょっと姐さん!! 空母悽姫さんとなんて話した事すらないじゃないっすか!!」

ヲ級「あるし……ラ、ラインとかやってるし……」

ヌ級「俺らみたいな木っ端と棲姫さんがラインするわけないでしょ! 嘘つかないでくださいよ姐さん!」

満潮「あー、やっぱりお姉さんなんだ」

霞「へー本当にそうだったの。こんなのがねぇ。不思議な事もあるものね」

曙「二人は姉妹艦なの? いやまあ男か女か知らないし興味もないんだけどさ」

ヲ級「……ち、違うし、全然関係ないし……」

ヌ級「姐さん! そりゃあんまりじゃないっすか!」

ヲ級「……うっさい。今姐さんとか言うな……」

霞「まあ元はこんなのでもあなたくらいになればね、そこそこ見れた物になるけれど」

満潮「昔は深海といったらさ、あんただったしね」

曙「こっち側にもけっこうファンいたのよ。おっ、深海にも可愛い子いるじゃん、みたいなさ」

ヲ級「……え? そ、そうなの……?」

霞「グッズとかも出てたのよ。深海の美少女! みたいな感じで」

ヲ級「え、ええ……? ちょっと待って。私が美少女? 私のグッズ? それ本当?」

霞「本当よ本当。けっこう売れてたんだから」

満潮「まー周りがね、そこの軽空みたいなクリーチャーばっかりだからね。そのルックスも映えたんでしょ」

曙「それなりにファンみたいなのも居てね。大変だったんだから」

霞「空母の子を撃つなー、とか。鎮守府に連れてこれないのかー、とか。そんな電話もじゃんじゃん来たのよ」

ヲ級「えー……私のファンが? どうしよ……そんなのいきなり言われても困るんだけど……えーなにー……もー……」

曙「困ることないわよ。もうみんな北方の小娘に持ってかれたから」

ヲ級「……え?」

満潮「ほら、北方海域にいるじゃない。あんたのあとに出てきたさ、やたら強いちんちくりんの幼女」

曙「最近はその娘の話題でもちきりなのよ」

霞「グッズもじゃんじゃん出てるし。売上も好調なのよね」

ヲ級「は……え? 私は……?」

満潮「もう誰も話題にしてないわよ」

ヲ級「え……」

霞「……あー、ひとつあったわ。あなたの話題」

曙「改のあんた、クソうぜぇ」

ヲ級「…………」

満潮「まっ、世の中そんなものよ」

ヲ級「……ぅぅ」

霞「残念だったわね」

ヲ級「ぅぅぅぅぁぁぁああ……」

ヌ級「ね、姐さん!?」

ヲ級「うっさーい……姐さんとか言うな……ぅぁぁぁぁぁ」

ヌ級「て、てめぇら何してくれてんじゃボケガキども! うちの姐さん泣かしといてただで帰れると思うなよ!」

満潮「お姉ちゃん庇って健気なものね」

霞「姉思いの良い弟…妹? まあどっちでもいいわ。大切にしなさいよ」

ヲ級「ちがーう……もうやだぁぁぁ……」

ヌ級「姐さん!? 姐さーん!! ……ッチ、覚えとけよクソガキ! 次会ったら海底引きずり回してやっからなぁ!」


―――
――


最終海域中枢部


戦艦水姫「やべぇ奴らが来た?」

イ級「は、はい! 艦娘ども、とんでもねぇ駆逐の悪童を連れてきやがりまして……」

ホ級「初対面の相手を無視したあげくウンコ呼ばわりですよ? いくら子供でも限度がありますよ!」

へ級「それにそのサイコキッズ、顔色変えずに生贄用意しろとか言いやがるんですよ……!」

チ級「ホントにもうどんな教育受けさせてるのか、提督の顔が見てみたいですわ……」 

ヌ級「うちの姐さんも部屋から出てこなくなっちまって……あのガキども許せないっすよ!」

戦艦棲姫「……思っていたより大事のようだな」

駆逐棲姫「情報によれば艦娘どもは目前まで来ているらしいよ」

戦艦棲姫「なんだと……毎回捨て台詞吐いて帰っていたのが嘘のようだな……」

駆逐棲姫「それだけ今回のは口が悪いってことだよ。奴らも本気だ」

戦艦水姫「敵のアホ提督が分不相応の甲作戦を選んでくれたおかげで楽勝かと思っていたが……」

戦艦棲姫「ああ……おかげでこっちも迎撃の用意なんてしてないぞ……」

戦艦水姫「しまったな……宴会にはまだ早かったのか……」

駆逐棲姫「だから言ったじゃないか……もう酔いつぶれてる姫や鬼のもチラホラいるんだよ? どうやって防衛する気なのさ」

戦艦水姫「ううむ……」

空母棲姫「まったく……見てられないわね」

>>96
>>97

訂正

× 戦艦水姫
○ 戦艦水鬼

戦艦水鬼「空母……」

戦艦棲姫「まさかお前…シラフなのか?」

空母棲姫「当たり前でしょ。まだ海女どもが攻めて来てるのに酒なんて飲むわけないじゃないの」

戦艦水鬼「むぅ……」

駆逐棲姫「戦艦たちは敵を舐めすぎだよ。この間だってそれで負けたじゃないか」

戦艦水鬼「いや、丙を選ぶような骨なしなど酒を飲んで相手するくらいで丁度いいかなと……」

空母棲姫「あなたね、私達が負けるごとに向こうにはクソうざったい艦娘が増えていくのよ? わかってるの?」

戦艦水鬼「はい……」

空母棲姫「だいたいあなたは一応深海の司令塔でしょ。上がこんなだからいつも連敗続きなのよ。このボンクラ」

戦艦水鬼「うぅ……」

戦艦棲姫「空母、その辺でちょっと……」

駆逐棲姫「水鬼も泣きそうだから……」

空母棲姫「はいはい。……で、奴ら目の前まで来てるんでしょ? どうするつもりなの?」

駆逐棲姫「もちろん打って出るしかないんだけど、私と空母以外は動けそうもないよ……」

空母棲姫「そ、なら私が出るわ。あなたは残ってこのバカ共の面倒を見てなさい」

駆逐棲姫「一人で行くつもりなのかい?」

空母棲姫「どうせ向こうも砲戦をやる気はないんでしょ? なら護衛も必要ないわ」

駆逐棲姫「そう……、わかった。武運を祈るよ」

空母棲姫「ええ。じゃ、行ってくるわ」

戦艦水鬼「……」

戦艦棲姫「……」

戦艦水鬼「……行ったか?」カシュッ

戦艦棲姫「……行ったようだな」グビッ

駆逐棲姫「はい、ビール没収ね」

―――
――



最深部付近


長門「まさか、本当にここまで来れるとは……」

加賀「……自分で提案しといて何言ってるの」

長門「確かにそうなんだが……こんなに上手く行くとも思ってなかったんだ」

加賀「……まぁ、私も正直驚いてはいます。本当に口先だけで深部まで来れるのね」

雪風「雪風たちの50数回の出撃、何だったんですかね」

加賀「それは言わない約束よ」

長門「なに、失敗の先には成功があるものだ。私達の出撃も無駄ではなかったはずさ!」

曙「いや、無駄でしょ」

霞「こんな簡単な海域に手こずってたなんて、信じられないわ」

満潮「寝ぼけてたの?」

長門「ぐっ……!」

加賀「駆逐隊もいい感じに暖まってるわね。このまま進んで深海魚どもの寝床を燃やしてやりましょう」

雪風「この対地ロケット撃ち込んでもいいんですか?」

加賀「ええ。木っ端微塵にしてやりなさい」



「あら怖い。でも無理ね。あなたたちの進撃はここまでよ」



長門「むっ?」

霞「っ!? あそこに何か居るわ!」

雪風「死ねオラッ!」ボンッ



空母棲姫「は? うわっ!?」

空母棲姫「ちょっと危ないじゃない!! 当たる所だったでしょ!!」

雪風「ちょこまかしてんじゃねーぞ!」

加賀「……出たわねインチキ空母」

長門「ほう、一人できたかクソ外道。これまでお前に何度も大破させられた恨み、この場で晴らさせてもらおうか」

空母棲姫「はっ! 艦娘ってホント馬鹿なのねぇ? 一人の大破も出さずに私を抜けられると思ってるの?」

雪風「くたばれッ!」ボンッ

空母棲姫「だから撃つなっつってんでしょ!」

加賀「待ちなさい雪風。……あのアバズレの言うことも一理あるわ」

加賀「気に食わないけれど砲戦となればこちらにも被害がでる事になる。駆逐4ではなおさらよ」

空母棲姫「ようやく状況を飲み込めたようね。コミュ障クール気取りなりによく頑張ったわ」

加賀「おかげさまで。でも、風呂場に落ちてる陰毛ほどの価値もないカス女のあなたなら、奇襲でも仕掛けてくると思っていたけれど」

加賀「わざわざ馬鹿面下げて恐れ多くも私達の前に現れたということは、股を小便で濡らしながら命乞いでもしに来たということかしらこのフナムシ野郎」

長門「加賀、反応するな!」

空母棲姫「余裕ないのねぇ。栄えある淫行戦ならもっと落ち着かないとだめよ?」

加賀「……一航戦よ」

空母棲姫「あら間違えた? ごめんなさいね相方は赤マンだったしら?」

加賀「今ここで殺す」ダッ

長門「ストップ!! ストーップ!! 相手に乗るな!!」ガシッ

霞「……赤マンって何?」

満潮「さあ……」

空母棲姫「ふふっ、やっぱりあなたは相手にならないわ。ということは……そこの新顔たちの力ね?」

曙「……」ギロッ

霞「……」ジロリッ

満潮「……」ジトーッ

空母棲姫「一丁前に睨みきかせて、可愛らしいじゃない。でも駆逐艦三隻が艦娘の切り札なんてねぇ」

長門「ふん、ただの駆逐艦と侮ったがお前の不覚よ。泣いて帰るはめになるのは貴様の方だな」

加賀「駆逐隊、口撃を指示します。目標、目の前の水死体みたいな色したクソ空母」

霞「了解よ」

曙「くだらない任務すぎて飽きてたのよ。こいつを追い払えば終わるんでしょ?」

満潮「さっさと終わらせましょ。いい加減喉が疲れてきたわ」

長門「我々三人は後方に退避し周辺を警戒する。武運を祈るぞ」ザザザッ

加賀「三人とも、こいつをPTSDにしてやりなさい。ポップコーンの音を聞いただけで小便漏らすようにしてやるのよ」ザザザッ

空母棲姫「……ふふん、さーて。出来るものかしらねぇ」

雪風「消え去れッ!」ボンッ

空母棲姫「危なっ! ちょっとなんなのそいつ!」

―――
――



空母棲姫「……ふふ、あらためましてこんにちは。お嬢ちゃんたち」

満潮「はいはい。どーも」

空母棲姫「あら、ちゃんと挨拶を返してくれるなんて思わなかったわ。偉いのね」

曙「そっすか」

空母棲姫「つれない態度ねぇ。せっかくお話するならもっと楽しくしましょう?」

曙「……あのさ」

空母棲姫「ん? なぁに?」

曙「そのねちっこいお姉さんキャラやめてくんない?」

霞「ねぇ、とかなぁに、とか微妙に伸ばすの聞いてると萎えてくるのよ」

満潮「というか痛々しいわ。歳考えなさいよ」

空母棲姫「…………」

霞「あなたね、私達の気持ちわかる?」

満潮「こっちは気持ち悪いあんたのお仲間をずっと相手してきたのよ。もうね、いい加減疲れてるの」

曙「そんな時にね、自分ではまだイケてると勘違いした若作りおばさんの猫なで声なんて聞かされたらどう思う?」

空母棲姫「…………」

霞「ほんと、たまったもんじゃないわ」

満潮「もうね、腹立つとかムカつくとかじゃないの。痛々しすぎて悲しい気持ちになってきたわよ」

曙「だからさ、もう勘弁してくれない? これ以上その声聞かされたら涙でてきちゃうからさ」

空母棲姫「……………………そう、そうだったの……。ごめんなさいね」

霞「ぬ……」

満潮「ぅ……」

曙「……むぅ」

空母棲姫「そうよね……。私ったら若い子と話せて舞い上がっちゃってたみたいね……」

空母棲姫「本当に……ごめんなさいね。私みたいなおばさん、相手にしたくないわよね……」

満潮「……そ、その通りよ。解ったのならさっさと帰ってくれない?」

空母棲姫「……そうね、そうするしかないわよね」

曙「……物分りがいいじゃない。じゃ、さようなら。お帰りはあちらよ」

空母棲姫「……でもね、最後にこれだけは言わせてほしいの。……私はね、本当にあなた達とお話したかったのよ」

霞「……」

空母棲姫「私ね、これでも深海の上の方にいる身なの……。上層部というやつね……」

空母棲姫「だから私の下には多くの部下がいるわ……。でもね、それは本当に仕事だけの関係。話すのはいつも仕事のことばかりで、プライベートな話題は一切ないわ……」

空母棲姫「……偉すぎるというのも孤独なものね。……私にはね、気安く話せる相手なんて……深海にはいないのよ」

満潮「……」

空母棲姫「私たちは敵同士……それも楽しくお喋りする為に顔を合わせているわけじゃない……それはわかってるわ」

空母棲姫「でもね……こんな状況だからこそ出会えた……上下のしがらみとは無関係のあなた達と話せるのが……」

空母棲姫「……本当に……嬉しかったのよ」ホロリッ

曙「っ!」

満潮「……え、ちょっと」

霞「な、泣いてるの……?」

空母棲姫「……ごめんね。みっともないわよね」

霞「いや……その……」

空母棲姫「いいのよ。あなた達の言うとおり私はおばさんだもの、若い子と話せるなんて考えるほうが馬鹿だったのよ」

曙「っ……」

空母棲姫「おかげで目が覚めたわ……。身の丈に合わない期待なんて、するもんじゃないわね」

満潮「ちょ、ちょっと!」

空母棲姫「……ありがとうね、少しの時間だったけど楽しかったわ」ザザザッ

霞「ちょっと待ちなさいったら!」

空母棲姫「……どうしたの? まだ何か用?」

満潮「……えーっと、その……」

霞「ま、まぁ少しだけなら……話を聞いてやっても……いいかなって」

空母棲姫「…………え?」

霞「……あんな事言われて帰られたら、こっちも後味悪いじゃない」

空母棲姫「あなた達……」

満潮「……気が済んだら帰りなさいよね。それまではその……付き合ってあげるわ」

空母棲姫「……ふふふ。あなた達、良い子ね。やだ、また涙が……もう、歳を取ると涙腺が弱くなっていやね」ホロリッ

満潮「あーもう! 泣かないでくれる!?」

霞「ほら、ハンカチあげるから!」

空母棲姫「あら、ありがとう。……ふふふ、あなた達って本当に……良い子ねぇ……」ニヤァ…

空母棲姫「……ありがとう、落ち着いたわ」

霞「そ、そう……」

満潮「……まったく、大人のくせに涙なんて見せないで欲しいわ」

空母棲姫「ええ、もう大丈夫よ。これから楽しいガールズトークですものね。笑顔で行かなくちゃね」

満潮「ガールズトークねぇ」

曙「……」

霞「で、何か話したいことでもあるの?」

空母棲姫「うーん、そうねぇ……。いざとなると若い子との話題なんて、なかなか考えつかないものねぇ」

霞「別になんだっていいわよ」

曙「さっさと話してさっさと帰ってくれると嬉しいわ」

空母棲姫「本当に? なんでもいいの?」

満潮「だからなんでもいいって。ほら、早くしなさい」

空母棲姫「じゃあオナニーって知ってる?」

曙「ぶほっ!?」

満潮「は、はぁ!? あんた何言ってんの!?」

霞「……?」

空母棲姫「あらあら、その反応……やーだ、知ってるのね?」

曙「し、知ってるとか知らないとかの話じゃないでしょ! いきなり何なのよ!」

空母棲姫「恥ずかしがらなくてもいいのよ? そういうの知り始める年頃だもんねぇ」

満潮「な、何言ってるのこの変態! 頭おかしいんじゃないの!?」

空母棲姫「まぁまぁこんなに慌てて初々しいわ。可愛いのね」

曙「き、キモッ! キモいわよあんた!」

満潮「こ、こんな奴の話を聞こうとしたのが馬鹿だったわ! さっさと帰って!!」

霞「……ねぇ、オナニーって何よ」

曙「……え?」

満潮「か、霞……?」

霞「なんか私だけ蚊帳の外なんだけど。オナニーって何なの?」

満潮「……え? いや、その……」

霞「二人とも知ってるんでしょ?」

曙「……し、知ってるっていうか……え、ええと……」

空母棲姫「あらぁ」ニタァ

空母棲姫「なになになになに? 霞ちゃんは知らないの?」

霞「初めて聞いたわ」

空母棲姫「あらー、そうなの! へぇー、知らないんだぁ……」

霞「……なんか私以外は知っているみたいだけど。何なのそれ」

空母棲姫「うふふ……、知りたい?」

霞「ええ」

満潮「ちょ、ちょっと霞! 待ちなさい!」

霞「どうしたのよ?」

満潮「い、いい? あなたはそんな事知らなくてもいいの! 聞いちゃダメなんだから!」

霞「……なんで? 満潮と曙は知ってるんでしょ? なんで私だけダメなのよ」

満潮「なんでもよ! あなたにはまだ早いの! とにかく聞いちゃダメ!」

霞「またそうやって都合の良いときだけ末っ子扱いして! お姉ちゃんたちいつもそうよね!」

空母棲姫「霞ちゃんさぁ、お姉ちゃんたちが夜中にベッドの中でハァハァ言ってる時ない?」

霞「え? ええ、そう言えばあるわね」

満潮「おいコラァァァァ!! はやく帰れよババアァァァ!!」

空母棲姫「なによ必死になっちゃって。いずれ知ることじゃない」

満潮「いいからはやく帰って!! うちの妹に変なこと吹き込まないで!!」

霞「……変なこと? 変なことなのそれ?」

満潮「え……!? いやそれは……ど、どうなの曙!?」

曙「な、なんで私に振るの!? 知らないわよ!」

空母棲姫「いいえ、全然変なことじゃないわ。気持ちのいいことよ。ちなみに世界には『マスターベータソン』と呼ばれるオナニーのオリンピックがあるのだけど、7部門のうち3つの世界記録を日本人が保持しているわ。中でも有名なのは耐久部門で優勝した佐藤雅信氏ね。彼は2008年にイタリア人男性との一騎打ちを制し、9時間33分という記録とともにワールドチャンプに輝いたわ」

満潮「お前は黙れ!!」

霞「……あーもー静かにしてくれる!? なんでそんなに邪魔するのよ!」

満潮「あ、あなたの為に良くないのよ!」

霞「ふーん、良くないことなんだ! じゃあお姉ちゃんたちが良くないことしてるって司令に報告するわ!」

満潮「ば、馬鹿言わないでよ!? 何言ってるのあなた!!」

霞「だって良くないことなんでしょ!? 満潮と曙がオナニーしてるって司令に報告させてもらうから!」

曙「ちょ、なんで私も混じってるのよ!」

空母棲姫「霞ちゃん、別に悪いことじゃないのよ? 息抜きみたいなものなの。それに翌年、佐藤氏は再びマスターベータソン出場するの。彼はその大会で9時間58分という大記録を叩き出し世界記録を更新、過去の自分を乗り越えたのよ。まさにアスリート、そしてひとつの極みと言えるわね。ちなみにこの佐藤氏、『TENGA』を販売する株式会社典雅の商品開発担当取締役にして、ヒット商品『TENGA egg』の生みの親なのよ」

満潮「喋るなっつってんだろ!!」

霞「もういい加減にして!! 満潮は黙ってなさいよ!!」

満潮「っ……!」

霞「何なのよいつもいつも! 満潮だけじゃないわ! 朝潮も大潮も他の皆も! 都合のいい時だけ私を末っ子扱いして! なんで皆が飽きた頃になってようやく桃鉄代わってくれるのよ!」

霞「お姉ちゃんってだけでそんなに偉いの!? なんで最初にアイス選ぶ権利持ってるの!? もううんざりよ!!」

満潮「か、霞……」

霞「……私が何を知って何をするかは私が決めるの。……お姉ちゃんたちじゃないのよ」

満潮「……」

曙「……ねぇ満潮」

満潮「……なに」

曙「その……さ、いいんじゃないの? オナニーくらい知っても」

満潮「な……! そ、そんなの……!」

曙「まぁ、末っ子を可愛がるあんたの気持ちもわかるんだけど。なんていうの、あの空母の言うとおり、いずれはどこかで知ることなんだし」

曙「本人がここまで知りたがってるならさ。……いいんじゃないの?」

満潮「……そんなこと……そんな……」

曙「親の子離れじゃないけどさ、もう少し霞を信じてみてもいいんじゃない?」

満潮「……」

霞「……私は今ここで、オナニーが何なのか知るわ。満潮は邪魔しないで」

満潮「……」

霞「いいわね?」

満潮「……わかったわ。霞の……好きにしなさい」

霞「……え? そ、そう……そうするわ!」

曙「……ふふっ」

満潮「……何よ」

曙「よく言ったじゃない、お姉ちゃん」

満潮「……ふん。馬鹿な妹にこっちもうんざりしただけよ」

曙「……やっぱり姉妹ね。似てるわよ」

霞「……さあ空母! そのオナニーって何なのか、私に教えなさい!」

空母棲姫「あら? 知りたいの? 教えちゃっていいの?」

霞「ええ、構わないわ。ほら、はやく教えなさいったら!」

空母棲姫「やだ大胆ねぇ。じゃあこっちおいで? 大丈夫、優しくするからね?」

霞「わ、わかったわ!」

曙「……え?」

空母棲姫「じゃあ失礼して……やだー抱きしめちゃった!」ギュッ

霞「きゃ!?」

空母棲姫「ちっちゃくて可愛いわねぇ。すべすべな肌。髪もサラサラでお人形さんみたいよ」

満潮「……ちょ、ちょっと! 何する気なの!?」

空母棲姫「大丈夫。怖くないからね? 気持ちよくしてあげるからリラックスしてね?」

霞「え、ええ? う……うん」

曙「おい変態空母ォ!!」

満潮「うちの妹に何やってんのよ!!」

空母棲姫「何よ。説明するよりしてあげたほうが解りやすいじゃないの」

曙「しゃらくさい屁理屈言ってんじゃないわよ!!」

満潮「霞! そいつから離れなさい! その女マジで危ない奴よ!!」

霞「い、いやよ! さっき邪魔しないって言ったじゃない!」

満潮「違うのよ! そいつはあなたを騙してなんかもっと凄い事する気よ!!」

霞「え、ええ? そうなの?」

空母棲姫「いいえ、ちゃんと教えるわ。手取り足取り丁寧に、もう戻れなくなるくらいにねぇ」

満潮「騙されちゃダメ!! その変質者から離れて!!」

霞「あーもうわけわかんないったら!」

空母棲姫「落ち着いて? ゆっくり深呼吸しましょうね。ちなみにさっきの9時間58分って記録だけど、実はそれより昔にもっと長い記録があるの。1971年、イタリアに住むエンリコ・ヴィタリという人物が、映画館を数日貸し切って達成した記録よ。その記録はなんと54時間。しかもオカズはスクリーンに延々と流され続けた『名犬ラッシー』というんだから恐れ入るわね。犬のケツで3日近く維持できるなんて人類の可能性を垣間見た気分よ」

満潮「うるっさいのよこの変態!!」

曙「ほら霞!! こっち来て!!」グイッ

霞「ちょ、ちょっと痛いってば!」

満潮「こんな何考えてるかわからない女に近づいちゃだめよ!」グイッ

霞「あ、ああーもうー!!」ズルル…

空母棲姫「あらあら、残念。もうちょっとだったのにねぇ」

曙「このアホ! 変質者! 気でも狂ってるの!?」

満潮「さっさと帰りなさいよ!! あんたとなんか一秒たりとも一緒にいたくないわ!」

空母棲姫「帰る? なんで? 私の気がすむまでって約束だったでしょ?」

満潮「な……!」

空母棲姫「んー、そうねぇ。あなたたち三人を玩具にしたら気がすむかもね。ほら、こっち来なさい? 三人とも可愛がってあげるわよ?」

曙「ひっ……!! ほ、本物の変態よこいつ!! 関わっちゃダメな奴よ!!」

満潮「に、逃げましょう! 何されるかわかったもんじゃないわ!!」

霞「ちょ、ちょっと! 私まだ教えてもらってないんだけど!」

満潮「いいから来るの!! これ以上いたらなんか良くわからない事されるわよ!! 完全に事件よ!!」グイッ

曙「朽ち果てろ変態空母!! 二度と来ないわこんな海域!!」ザザザッ




空母棲姫「……はっ、雑魚が」

―――
――



執務室



霞「オナニーって!」

雪風「なんですか!?」

提督「……」

長門「……」

加賀「……」

霞「オナニーって!」

雪風「なんなんですか!?」

曙「……」

満潮「……」

霞「何で誰も答えないのよっ!」

雪風「秘密主義ですか! 軍隊のそういう所雪風は嫌いです!!」

霞「あーそう! 誰も教える気ないんだ! 私と雪風には教えてくれないんだ!」

雪風「しらばっくれてるのは解ってるんですよ! みんな知ってるんでしょう!」

提督「い、いや……知らないよなぁ?」

長門「あ、ああ……」

加賀「……さっきも言ったけど、私達は本当に知らないわ。信じてちょうだい」

雪風「嘘です! だったらなんでそんな言葉を連呼しちゃいけないなんて言ったんですか!」

加賀「うっ……」

霞「司令! 満潮と曙はね! オナニーを知ってるのよ!」

曙「ちょ、ちょっと何言ってんの!?」

満潮「ば、馬鹿!! やめなさい!!」

霞「それにオナニーしてるのよ!」

提督「ぶほっ!」

満潮「な、何言ってるのよ霞ぃぃぃ!!」ガシッ

曙「もう止めて!! お願いだから止めて!!」ガシッ

霞「いや、離して! だって変なことなんでしょ!? 悪いことなんでしょ!? だったら上官に報告するのが当たり前よ!」

雪風「こいつらじゃもう埒があきません! 他の人に聞いて回りましょう!」

霞「ええそうね! 片っ端から聞いて回るわよ!」

曙「ちょ、ちょっと待ちなさい!! 何考えてんのよ!!」

雪風「だんまりを続ける国家権力の犬に用はないです!」

霞「知る権利を甘く見ないでよね!」

満潮「馬鹿!! 待ちなさい! 待ちなさいったら!!」



ドタドタドタドタ …ガチャン



提督「……ねぇ、何があったの?」

長門「……すまん提督。敵がこんな手を使ってくるとは思わなかったんだ」

加賀「……あのクソ空母、自分が勝つためなら下品な手段も厭わない下衆の極みだってことを忘れてたわ」

提督「いやいや、まったく話が見えないけど! なんで霞と雪風があんな教育上よろしくない状態になってるの!?」

加賀「敵に教育上よろしくない事をされそうになったからよ……」

提督「……えっ!?」

長門「満潮たちが言うには無知な霞が言いくるめられて、その……何かとても凄い事をされそうになったそうだ」

提督「す、凄い事……?」

加賀「寸での所で救出できたようだけど、一歩間違えば何かとても凄い事をされていたかもしれないわね……」

提督「……」ゴクリッ

加賀「……なに前屈みになってるのですか」

提督「な、なってない!! 何も想像してない!!」

長門「もちろん仇は討ったから安心してくれ。そのような悪漢を無事に帰したとあっては艦娘の名折れだからな」

加賀「満潮たちが泣きながら逃げ帰ってきた時点で対地ロケットと航空隊を叩き込んでやったわ」

提督「ああ……それで君ら大破して帰ってきたのね」

加賀「往生際が悪いのも奴らの特徴よ。まったく……生意気に反撃などせず黙って沈めばいいものを」

長門「とにかく作戦は失敗だったが、我々も全力を出した。そこは理解して欲しい」

提督「……」

加賀「……まだ続ける気でいるの?」

提督「……当たり前だ。何度失敗しようとも、俺は必ず甲勲章を掴み取る!」

長門「やれやれ、うちの提督殿も相当に往生際が悪いな」

加賀「まったくね。振り回されるこっちの身にもなって欲しいものだわ」

提督「なーにがこっちの身になってみろだよ! お前らなんて早く酒が飲みたいだけだろうが!」

長門「……だがまあ、その往生際の悪さ。言いかえれば不屈の闘志と呼べるのかもしれんな」

加賀「そうね。提督のそういう所、嫌いじゃないわ」

提督「いいか! 俺の目の黒いうちはな、もう酒なんて作戦が終わるまで飲ませ……え?」

長門「こちらの根負けだ提督。最後まで付き合おう」

提督「……な、長門」

加賀「何を呆けた顔しているの。次の作戦を考えるんじゃないのですか」

提督「加賀……!」

長門「ほら、シャキッとしろ。上に立つ者が涙目になってどうする」

加賀「提督の為に戦うのが艦娘なら、艦娘の為に機知と智慧を尽くすのが提督よ。しっかりなさい」

提督「あ、ああ……! そ、そんな事はな、俺だってわかってんだよ!」

長門「……ふふ。じゃあ作戦会議を始めるか」

提督「……よしっ! 次こそは、次こそは必ず甲勲章を……!」


大淀「あの」


提督「――おぅわ!? びっくりした!?」

加賀「大淀、あなた居たの」

大淀「はい。ずっとそこの事務机に」

長門「どうした。何かあったか」

大淀「あのですね、資源がなくなりました」

提督「……………………え?」

提督「な、無くなった……?」

大淀「ないです」

提督「出撃一回分も……?」

大淀「ありません。空です」

提督「……え? じゃ、じゃあ甲勲章は……」

大淀「……残念ながら」


長門「ふぅーお疲れ」ガタッ

加賀「あら、もうこんな時間。赤城さんたちまだいるといいけれど」ガタッ


提督「ちょっとぉ!? お前らどこ行く気!?」

長門「どこって飲みにだが?」

加賀「戦略戦術ならいざしらず、資源不足は私達ではどうしようもありませんので」

提督「切り替えはぇえなおい!」

長門「弾も油も無いのであれば仕方がないだろう。いや無念残念、ここに極まれりだ」スタスタスタ

加賀「大変不本意ではありますが休養を取らせて頂きます。ご理解を」スタスタスタ

提督「嘘つけお前らウキウキしてるだろ! ちょっと待て! 待ってぇぇぇ!!」


ガチャ バタンッ


提督「……」

大淀「……」

提督「……」

大淀「あの」

提督「……あ、あいつらさっきまで調子のいい事言ってた癖に……! なぁ大淀、お前もそう思」

大淀「私も行う職務がありませんで、これで」

提督「……」

大淀「では失礼しますね。……~♪」ガチャ バタン

提督「…………」


提督「…………」グスッ

提督「……そうだよ。そうだよな……。俺なんかじゃ甲勲章……取れるわけなかったんだよな」

提督「結構長いこと提督やってきたけどさ、俺もそんなに真面目な提督じゃなかったもんな……」

提督「資源だって貯めきれないまま作戦日むかえちゃったしさ、装備改修もよくわからないから探照灯しかやってないしさ……」

提督「そんな俺に威厳とかリーダーシップなんてあるわけないから、艦娘もみんな上官というより同僚や友達みたいなノリで接してくるんだろうな……」

提督「……自分でもわかってんだよ。自分がダメ提督だって……」

提督「……それでも一度くらい、胸に輝かせてみたかったんだ。甲勲章……」

提督「……そう思うのが……間違いだったんだろうな……」グスグス


無線機『ザザッ……』


提督「……ん? ……なんだ?」

『ザザ…ザーーーーー……えーマイクテス。マイクテス』

提督「……無線か? おいおい大淀のやつ、館内放送に繋ぎっぱなしじゃないか……」

『あー聞こえる? 聞こえてるわよね? 聞こえてるかコラ、クソ艦娘どもー』

提督「っ!? し、深海棲艦……!?」

―――
――


居酒屋 鳳翔


隼鷹「飲めっどぉ~ 飲めぇどぉも 流れっるぅ~ 涙ぁ~」

ポーラ「人っにぃ~ 見せぬぅがぁ 女っのぉ~ 意地よぉ~」

隼鷹「呷っるぅ~ 酒かぁらぁ 塩気がしぃてぇもぉ~」

ポーラ「海っのぉ~ 塩気とぉ~ 笑うがぁ~ 乙女ぇ~」 

隼鷹「んなはははははははははははは!!!!!」

ポーラ「うへへへへへへへへへへへへへ!!!!!」

飛鷹「ちょっと二人とも、うるさいわよ!」

赤城「へぇ、そこまで行ったんですか」

加賀「はい。あと一歩で深海魚共の寝床まで行き、奴らを焼き魚にできたのですが」

綾波「惜しかったですね~」

長門「まあ悔やんでもしょうがないさ。あ、ぼんじり一本頼む」

鳳翔「はいはい。ぼんじりですね」

大和「そうねぇ。あいつらに舐められたまま終わるのは癪だけど……」

武蔵「資源がないのでは手も足も出せんからな」

瑞鶴「しっかしずいぶん長いこと出撃してたわね~」

加賀「ええ、本当に。もう疲れたわ」

比叡「お姉さま? どうやら加賀さんは疲労困憊のご様子ですよ!?」

金剛「OH! マジデース!? これはあれデスネ!? 疲れも吹き飛ぶようなワタシの鎮守府jokeで」

加賀「いえ、結構よ。マジでやめてちょうだいね。今そんなの聞いたら頭痛が……」


『ザザ…ザーーーーー… えーマイクテス。マイクテス』


長門「……ん? 館内放送か?」

比叡「霧島ですかね?」

霧島「いえ、私はここに居ますが……」

榛名「誰かの悪戯でしょうか。でも聞き覚えのない声ですね……」


『あー聞こえる? 聞こえてるわよね? 聞こえてるかコラ、クソ艦娘どもー』

長門「っ!?」ガタッ

大和「これ……深海棲艦……!?」


『あーどもども、今日はお疲れ! お疲れちゃーん!』


瑞鶴「ちょ、ちょっとなんであいつらウチに無線飛ばして来てんのよ!」

武蔵「……舐めた真似をしてくれるな」


『いやーさっきはねぇ! 惜しかったわね~~~! もうちょっとだったのにね~~~! じゃあね、大海の覇者深海棲艦から漁船同好会の艦娘たちにね、一言送ってあげるから耳かっぽじってよく聞いて頂戴ね!』


霧島「……これ、なんですか」ピキピキ

金剛「……ヘイ霧島。抑えるデース」


『…………バァ~~~~~~~~~~~~~~~~~カ』


綾波「……」プルプル

加賀「この声……あのクソ空母ね……」

『あの後もあんたたちが来ると思って待ってたんですけどー! 来ないんですけどー! ……本当、どうしちゃったのかしらねぇ?』

『靴の裏にへばりついた犬のクソみたいにしつこかったあなた達がさぁ、諦めたとも思えないしねぇ?』

『…………も・し・か・し・て? 資源切れた?』


鳳翔「……」ダンッダンッダンッ

赤城「……鳳翔さん。出刃包丁でまな板を突き刺すのは危ないですよ」


『図星でしょ? 図星よね? ぶはははははははは!! マジウケルわ!!』

『あーあ、資源が無いんじゃ何も出来ないもんねぇ。陸に引き篭もって愚痴でも垂れるしか出来ないわよねぇ』


長門「……ぐっ!」

加賀「……クソ空母。こっちが手を出せないからって調子こいてるわね」

大和「歯痒いわ……」ギリリッ

武蔵「……しかし事実だ。どうすることも……出来ん」

『海に出れない漁船とか、唯一の取り柄もなくなってるんですけどー! だっさー!』

『まーせいぜい出来ることは酒でも飲んで悔し涙に暮れることくらい? 負け犬らしくて素敵じゃないの!』


加賀「……別に悔し涙は流していないのだけれど」

長門「ふんっ! 自分だって半泣きになってたくせに何を言う……!」

加賀「先程の出撃の最後でボコボコにされたのがよほど悔しかったのでしょうね。まったく、負け犬はどっちなのかしら」

比叡「……でも加賀さんたちも大破して帰ってきたんですよね?」

長門「結果は引き分けだが勝負には勝っていた。先に泣きべそかいたのは向こうの方だからな」

加賀「そういうことです。哀れな女の負け犬の遠吠えで気を病む必要はないわ。軽く聞き流してやりましょう」

榛名「そうですね……。ここで腹を立てても出撃できない事実は変わりませんし……」

霧島「……放送が終わるまでただ黙って……ただ黙って耐えればいい。そういう事ですねお姉さま?」ピキピキ

金剛「イ、イエス……! 霧島、頑張るデース……! あと、その拳を解いて欲しいネー……」


『しっかし、資源が無くなったとはねぇ? 資材管理も出来ないの? その前に算数できる?』


加賀「……まったく、よく喋る小魚ね。鳳翔さん、ししゃもの炙り頼めますか?」


『それとも? もしかして? あんたらの提督って資源の勘定もできない』

『…………む・の・う?』


加賀「………………………あ゛?」ギロッ

長門「………………今なんて言った?」

大和「……私って耳がおかしくなっちゃったのかな? この深海魚、うちの提督が無能だって言った気がするけど」


『ごめん! ごめんなさいね! 聞くまでも無いわよね! あんたらの司令官ですもの、無能に違いないわよねぇ!』


瑞鶴「…………聞き間違いじゃないんだ。へぇー……」

赤城「…………それ言っちゃいましたか」

武蔵「…………やってしまったな」


『艦娘が無能なら親玉も無能に決まってるわよね! 無能じゃないほうがおかしいものね、あんたらの提督なんてね!』


比叡「…………」バキッ

榛名「………比叡。箸折れてますよ?」バリィ

比叡「榛名もグラス、握りつぶしてるじゃないですか」

霧島「…………あー、これはもう怒りを堪える必要なくなっちまったかな」ゴキゴキ

金剛「…………こいつ、言っちゃあならねぇ事を言っちまいましたネ」

『そんな無能が甲勲章だなんて、ちょっと夢見すぎじゃないの? 取れるわけないじゃないの』

『まーそれが解らなかったから無能なのよね! しょうがないしょうがない!』

『っつーわけでね、海原の王者深海棲艦からのね、ありがたいお言葉はおしまいよ。あーすっきりしたわぁ』

『じゃ、クソ艦娘ども。寝る前には歯を磨いて、あったかくしてから悔し泣きで枕を濡らして頂戴ね! ブツッ』


瑞鶴「……………っふぅーー…………行く?」

加賀「そうね。鳳翔さん、お勘定を」

鳳翔「いえ、結構ですよ。それに私も出ますので」

加賀「……そうですか。頼もしいです」

赤城「……なんだか鎮守府内が騒がしくなってますね」

長門「館内放送だったからな。皆聞いていたんだろう」

綾波「っんーー……。じゃ、殺りに行きますか」

大和「ええ」

武蔵「落とし前、キッチリつけさせんとな」

―――
――



執務室


『じゃ、クソ艦娘ども。寝る前には歯を磨いて、あったかくしてから悔し泣きで枕を濡らして頂戴ね! ブツッ』


提督「……」

提督「……ふ」

提督「ふ、ふふふふふ……。あー……敵にも……言われちゃったか」

提督「無能……、無能かぁー……。ふふふ……」

提督「…………はぁー……」グスッ


<……ザッケンナコラァァァァァァァァァァァァァァ!!!! ガシャーーーーン……


提督「うおっ!?」ビクッ

提督「……え、何!?」

提督「……なんだ今の……!? 誰か喧嘩でもしてるのか……?」


<オンドリャァァァァァァァ!!!!
<ドラムカンニツメテユソウスッゾコラァァァァァァァァァァァ!!!!


提督「ひっ……!」


<ジゴクミセタルワボケェェェェェェ!!!!!!
<イキテオテントサマオガメルトオモウナヨクソガ!!!!!!
<イソカゼェェ!! リョウリツクットケ!! アイツラニクワセテヤッゾ!!!


提督「ち、鎮守府のあちこちから怒声が……え、反乱……? 一揆とかそういう系のやつ?」


加賀「提督」ガチャ


提督「ひぃぃ!?」ビクッ

加賀「……何を怯えているのですか」

提督「な、なんだ加賀か……。お、おい! この騒ぎは一体何だ!?」

加賀「先程の深海の放送を皆聞いたのでしょう」

提督「……あ、ああ。さっきのか……、そうか……」

加賀「……どうしたの?」

提督「……か、覚悟は出来ている! に、煮るなり焼くなり、磯風の料理を口にぶち込むなり! す、好きにするといい!」

加賀「は?」

提督「……み、みんな怒っているんだろう!? お、俺が……身の程も知らずに甲作戦に挑戦して……こんな結果になっちまった事に……」

加賀「……はぁー」

提督「……こいつ解ってねぇーなーみたいな顔すんな!」

加賀「ええ、本当に何も解っていないようね」

提督「な、なにぃ!?」

加賀「確かに私達は怒っているわ。……いえ、『怒っている』なんて生易しいものじゃないわね。『ブチギレた』と言ったほうがいいかもしれない」

加賀「そしてそれは、貴方をけなされたからよ」

提督「……………………は?」

提督「俺を……けなされたから?」

加賀「ええ」

提督「……いやいやまてまて。お前らが俺のためにキレる……? ドッキリでも仕掛けようってつもりなのか?」

加賀「……この非常事態に何言っているのですか」

提督「い、いやだって……。お前ら俺の命令聞かないし……そんな尊敬されている訳でもなさそうだし……」

加賀「……そうね。確かに子供みたいにピーピーうるさい貴方からは品格なんて微塵も感じませんし」

提督「うっ……」

加賀「おまけにリーダーシップもなければ気が利くわけでもない」

提督「……うぅ」

加賀「まぁそんなだから、貴方については気兼ねしなくてもいいくらいしか良い点が見つかりません」

提督「……」グスッ

加賀「……でもね」

加賀「私達艦娘は、余所者が提督を貶める事だけは……『絶対』に許さない」

提督「……え?」

加賀「提督とは艦隊の長。数多の艦船を指揮し束ねる者にして私達の象徴。言わば生ける軍旗のようなもの」

加賀「いい? 貴方は私達の指揮官である以上に、私達の『誇り』なのよ」

提督「俺が……誇り?」

加賀「そして我らが御旗を軽々しくも踏みにじった輩を……私達は絶対に許しはしない」

加賀「これはもう甲勲章だとか最終海域攻略だとか、そんな小さな話ではないの」

加賀「これは艦娘の……プライドの問題なのよ」


長門「その通りだ、加賀」ガチャ!

武蔵「深海棲艦ども、今度ばかりは容赦するわけにはいかん」

大和「提督を無能と言い捨てたその醜行、その身に思い知らせてやります」


提督「お前たち……」

加賀「遅かったですね」

赤城「ええ。みんな暴徒化寸前フーリガン状態でしたから、それを宥めに少し」

金剛「それでも怒り収まらぬといった感じですがネ。艦娘全員が肩を震わせながら執務室の前に集まってきてるデース」

提督「そうか全員……え、全員?」

比叡「はい! 戦艦空母から軽巡駆逐に補給艦特殊艦まで! みんなそれぞれ得物を手にヤンキー座りで執務室前に待機してますよ」

瑞鶴「今は静かに怒りをこらえてるけど、何かきっかけがあれば執務室になだれ込んできそうな空気よ」

提督「え、何それ怖っ」

長門「そうなっては話も出来んからな。だからこうして我々だけで執務室に入ってきたというわけだ」

提督「そ、そうか。一触即発なんだな……」

加賀「頼もしくはあるのだけれど、私達の性分というのもこういう時は困ったものね」

大和「そうね。まぁ何か起こらない限りは大丈」


雪風「オラァッ!!」バァンッ!


長門「うおっ!?」ビクッ

加賀「なっ……!」


雪風「しれぇ!! 雪風魚雷に釘打って来ました!! これでクソ魚共をぶん殴ってやります!!」ブンブン


提督「ゆ、雪風ぇぇ!!」

夕立「開いたっぽい!! 全員突っ込むっぽい!!」ドドドッ

江風「よっしゃあああ突っ込めぇぇぇ!!」ドドドッ

ローマ「いつまで待たせる気なの!? さっさ出撃させなさいよ!!」ドドドッ

北上「あのさー、さっさと出撃許可くれない? こっちは我慢の限界なんだけど」ドドドッ

ビスマルク「ああっ! イタ艦に先越されたじゃない!!」ドドドッ

プリンツ「これはイタリアより早く深海魚の首級を上げて挽回するしかありませんよ! お姉様!」ドドドッ

白露「一番早くに一番多くの深海棲艦を一番惨たらしく地獄の一丁目に送るのは一番艦のこの私! 白露でーす!」ドドドッ

島風「は? 最速ブッチギリで深海魚に地獄の門くぐらせるのは私だし。ね、連装砲ちゃん」ドドドッ

連装砲ちゃん「応ッッッ!!!」ドドドッ


   ギャーーーーギャーーーーー
        ワーーーーーーワーーーーーーー


加賀「…………雪風、やってくれたわね」

雪風「はい! 殺る気満々です!!」ブンブン

神通「提督、あのカス共に天誅を下す時です。肥溜めの中に隠れようとも一匹だって逃しはしません。早くご命令を」ズイッ

提督「怖い! 怖いから!」

摩耶「会議の結果なんて待ってられるか! そんな場合じゃねーだろうが!」グイイッ

提督「痛っ! 痛い痛い痛い!!」

グラーフ「最大限の屈辱を受けたんだぞ、即座に報復するのが道理だろう!」グググッ

提督「首……! 締まってる!! 締まってるから……!」

時津風「しれぇ、何ちんたらしてんの? なんでさっさと出撃命令出さないの? 登って毛毟るよ?」ヨジヨジ

提督「ひっ……! や、やめろ! 登ろうとするな!!」

長門「みんな落ち着け! いったん下がれ!」

夕立「は? 下がるとか夕立の辞書には無いっぽい」

天龍「同感だ。提督を馬鹿にされといて引き下がるなんざ艦娘とは呼べないな。そんなもん漁船だ漁船」

長門「い、いや……、そういう意味ではなくてだな!」

加賀「……ダメねこれは」

金剛「内容が内容なので、提督の説得に時間が必要だったんですがネー……」


那珂「おっ待たせー!」ガチャ!

川内「ん? 那珂じゃない。遅かったね」

那珂「えへへー! ちょっとね、那珂ちゃんも覚悟必要かなって! 心の準備してたんだよー☆」

川内「……覚悟? 心の準備? ……って、その鉢巻……まさか!」

那珂「……えへへ。うん! 那珂ちゃんね、今夜だけ……アイドル辞めるつもりなの」

川内「ちょ、ちょっと待って! たんまたんま!」

那珂「んー、なんだか皆騒がしいねぇ。じゃあちょっと、黙らせちゃおっか☆」

川内「く、駆逐の子泣いちゃうから! 優しく! 優しくだよ!」


那珂「やっほー! ファンのみんなー☆ 艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー!」


ローマ「……あん?」ギロッ

ビスマルク「……今はあなたのアイドル芸なんか見てる暇ないの。静かにしてなさい!」


那珂「今日はー、ファンのみんなにー……謝らなきゃいけないことがあるの!」


舞風「……ね、ねぇのわっち。ちょっと……!」

野分「ん? どうしたの?」

舞風「那珂さんのあれ……あの鉢巻……!」


那珂「私……今夜だけは……アイドルを辞めます!」

那珂「こんなに……みんな応援してくれてるのに! 本当にごめんなさい!」

那珂「本当に那珂ちゃんは……幸せでした!!」


ローマ「……誰も応援してないっつーの!」

ビスマルク「隅でやってなさいよ!」

野分「上に白、下に赤……間違いない、水雷戦隊の所名区分旗だ……!」

舞風「私アイドルになるとか、わけわかんない事言い始めてから一度も身に着けなかったのに……!」


那珂「私……那珂ちゃんは今夜、普通の修羅に戻りますっ!」

那珂「本当に……本当に! ありがとうございましたっ!!」

ビスマルク「……あんなの構ってられないわ。ねぇアドミラル、さっさと出撃許可出しなさいよ!」ドスッドスッ

ローマ「ほら、早く言いなさい。その口は何のためについてるの。さっさとしないとパスタ茹でずにぶち込むわよ」グイイ

夕立「提督さん!! はやくするっぽい!! はやく!!」ガブッ

江風「いつまで待たせんだよー!! はやく出撃させろー!!」ボスッ

提督「痛いから脇腹小突くのやめて!! 噛まないで!! あっ、おい今脛蹴ったやつ誰だ!?」



那珂「……」

那珂「すぅーーーー…………」

那珂「…………静かにせェボケどもッッッッッ!!!!」



ビスマルク「きゃっ!?」ビクッ

ローマ「うわっ!?」ビクッ

夕立「ぽッッッ!!?」ビクッ

江風「ひっ!?」ビクッ

那珂「……夕立、何騒いでんだ?」

夕立「え……えっ!? あ、あ、な、那珂さん!?」

那珂「何を騒いでんだと聞いてんだ」

夕立「あ……そ、その……」

那珂「テメェ、返答は三秒以内と教えたはずだぞ」

夕立「あ、あ、あの……ご、ごめんなさいっぽい!」

那珂「ごめんなさい? ぽい?」

夕立「い、いえ! すみませんでした!!」

那珂「……江風。お前はうちの戦隊に泥塗る気か?」

江風「い、いいいいえ! そ、そんなことは……!」

那珂「戦法の他にも上官への礼儀作法ぐらいは教えたよな? 記憶違いか?」

江風「す、す、すいませんでしたぁ!!」

那珂「……テメェらも、自分の大将に掴みかかって何やってんだコラ」

ビスマルク「うっ……」

ローマ「っ……! なんて迫力なの……!」

ビスマルク「あ、あ、あなたさっきとキャラ違くない……? に、に、に似合ってないわよ……」ビクビクッ

那珂「……きゃはっ☆ 驚かせちゃった?」

ビスマルク「そ、そうそう! そっちよそっち! あ、あなた、暴走族のモノマネでもしてたの……?」

那珂「ごっめーん☆ アイドルなんだからぁ、ファンを怖がらせちゃダメだよね!」

ビスマルク「……あーもう、よくも驚かせてくれてくれたわね! あなたね、軽巡なら軽巡らしく大人しくしてなさいよ!」

那珂「ふざけてんのかテメェ」

ビスマルク「ひ、ひぃ……!」

プリンツ「お、お姉様! こ、ここはあまり高慢な態度は取らないほうが……!」


長門「そうか……海外組は知らないんだな……」

加賀「二水戦が最新鋭エリート部隊なら四水戦は雑草魂の武闘派集団。その旗艦那珂は、ある意味一番怒らせてはいけない子ね……」

野分「あの凄み、貫禄……そして威圧感。間違いない、昔の那珂さんだ……! 四水戦の那珂さんが帰ってきたんだ!!」

舞風「は、ははは……。喜んで良いのかな……それ」

野分「当たり前でしょ! 正直ね、ずっと昔の那珂に戻ってほしいと思ってたんだ! あんなアホみたいなアイドルごっこしてる那珂さんなんて見たくなかったんだよ!」

那珂「野分ィ!! 今何つったぁぁ!!!」

野分「ひぃ!! す、す、すみませんっ!!」

>>164

訂正

×ビスマルク「……あーもう、よくも驚かせてくれてくれたわね! あなたね、軽巡なら軽巡らしく大人しくしてなさいよ!」
○ビスマルク「……あーもう、よくも驚かせてくれたわね! あなたね、軽巡なら軽巡らしく大人しくしてなさいよ!」


×野分「当たり前でしょ! 正直ね、ずっと昔の那珂に戻ってほしいと思ってたんだ! あんなアホみたいなアイドルごっこしてる那珂さんなんて見たくなかったんだよ!」
○野分「当たり前でしょ! 正直ね、ずっと昔の那珂さんに戻ってほしいと思ってたんだ! アイドルごっこしてるアホみたいな那珂さんなんて見たくなかったんだよ!」

―――
――


那珂「提督に詰め寄ってる奴らは離れろ。駆逐は全員並べ」

夕立「は、はいっぽい!!」ザッ

江風「み、みんな!! 並べ並べ!! 早くしろっ!」ザッ

野分「そこ、列乱れてる! そっちは間隔揃えて!」ザッ



ゾロゾロゾロ……キレイニセイレツ!



提督「駆逐艦が整列している……私語とかしてない……ふざけあってない! こんな光景見たことないぞ……」

瑞鶴「……私も初めて見たかも」

赤城「あの子達ってこういう事、ちゃんと出来たんですね」

比叡「……でもみんな顔こわばってません?」

霧島「鬼の那珂に睨まれたとなれば、仕方がないかと」

榛名「元四水戦の子たちは震えながら涙目になってますね」

金剛「ンー……一人だけニヤけながら涙目になってる子も居ますネー……」

長門「やれやれ、これでようやく落ち着いて話を進められるか」

加賀「そうね。……提督、先程の騒ぎからも私達がいかに憤慨しているのかは理解できたはずよ」

提督「あ、ああ」

武蔵「艦娘への誹謗は艦娘個人の問題だ。言葉で返すなり鉄拳にて応えるなりはその個人の自由だろう。しかし提督への辱めとなればそうはいかない」

加賀「それは艦娘全員への侮蔑と等しい行為です。事ここに至っては振り上げた拳を収めること叶わず、なれば深海魚共の顔面めがけて叩きつけるのみ」

長門「故に我々はあの外道共を海底を越え遥か下、六道の果ては無間地獄まで突き落とす為に全力で出撃せねばならない」

大和「ですので……提督、出撃許可をお願いします」

提督「……いや、その……。気持ちはわかるんだけどさ……お前らも解ってるだろ?」

赤城「やはり問題は資源ですか」

提督「そう、そうだよ……。奮い立ったお前らには悪いんだが、こればっかりはどうにも……」

加賀「……長門。切り出すなら今よ」

長門「あ、ああ……こほん。実はな、その事で一つ我々から提案があるんだが……」

提督「……提案? 何か解決する方法でもあるのか?」

長門「まぁ、あると言えばあるんだが……その……」

提督「どうした」

長門「う、うん。まぁその……」

提督「……お前、目線が泳いでるぞ?」

長門「そ、そんな事はないぞ? 何を言うんだ……」

提督「……」

長門「……」

提督「……まさかお前、提案ってあいつの事を言っているんじゃないだろうな?」

長門「!」

長門「い、いや! 提督が想像しているような事ではない! そこは安心して欲しい……!」

提督「……本当か?」

長門「……」

提督「何で黙るんだよ!!」

大和「ま、まあまあ提督。少し落ち着いて……」

武蔵「提督よ、肩は凝ってないか?」

瑞鶴「喉は乾いてない? お茶でも淹れてこようか?」

提督「その営業スマイルをやめろ! お前ら本気であいつに頼るつもりなのか!?」

加賀「大丈夫よ、あいつではないわ」

提督「本当か!? 本当なんだな!?」

加賀「ええ。正確に言えば私達が想像するあいつと提督が想像するあいつ、これが一致しているとはまだ限らないのよ」

提督「……俺が想像しているのは明石だけど」

加賀「……」

提督「だからなんで黙るんだよ!!」


明石「どーもー、遅くなりましたー。いやー見積もりに手間取っちゃいまして」ガチャ


提督「やっぱりそうじゃねぇかぁぁぁ!!!」

提督「お前ら正気か!? こいつから資源を借りるとか自ら破産しにいくようなもんだぞ!?」

大和「し、しかし提督! もうこれ以外に方法は……!」

長門「頼む提督! 無理は承知の上だ! それでもどうか私達に華を持たせてくれ!」

武蔵「此度の戦、どうしても引き下がるわけにはいかない! それは解るだろう提督よ!」

提督「い、いや駄目だ! 駄目というか無理だ! こいつの利率バカ高いんだぞ!?」

明石「……まままま、落ち着いてください提督。そのお気持ちはこの明石、よーく解ります」

明石「ただでさえ苦しい鎮守府の台所、節制を重ね駆逐艦に鞭打って溜めた資源も今作戦でパー。傷心の所に押しかけ借りてくれと言われても、頷く首だって重くなるが人の情ってもんです」

明石「しかしですね、此度の戦いは訳が違う! 海に生きる女たちの旗印、それが辱められたとあっては仇討ちもまた人情! そしてその背中を押してあげるのもまた人情……」

明石「つまり私が提督に仰りたいのは……ここが男の見せ所ってやつなんじゃないですか?」

提督「……その手には乗らんぞエコノミックアニマルめ! だいたいお前も艦娘だろ、だったら無償で提供すべきだろうが!」

明石「それはそれ、これはこれ。もちろん私も艦娘ですがね、同時に小さな商店を営むしがない商人でもありますので」

提督「何がしがない商人だよ! 訳わからん流通ルートからとんでもない量の資源蓄えてる癖しやがって」

明石「にひひ、商人ってのは秘密が多いものなんですよ。ま、それは置いといて……よく考えて見てくださいよ、提督」

明石「私達艦娘は誰の為に戦おうとしているのか、わかりますよねぇ……?」

提督「ぬ……それは……まぁ」

明石「あれだけ纏まりのなかった私達が、提督の事となっては一致団結! それも目的は提督の仇討ちときたもんです……」

明石「……なんとも泣かせる話じゃありませんか?」

提督「む……」

明石「それに見てください、ここに居並ぶ子たちの顔、顔、顔! 瞳に滾る義の心、産まれや艦種は違えども、想いは一つただ提督のために……」

明石「……健気なもんじゃあないですか?」

提督「ぐぬ……」

明石「さらには義憤に駆られ集まったこの人数! 上は戦艦空母、わかります。さらには重巡軽巡、いいでしょう! でもほら!」

雪風「……」

明石「こんっなに小さな駆逐艦まで! ……雪風ちゃん? もし資源が手に入ったら、君はどうしたいのかな?」

雪風「はい! とにかく深海棲艦をぶっ殺したいです!」

明石「提督! この子の想い! 資源不足なんてちんけな理由でご破算にするのは余りに無粋、そりゃ野暮ってもんでしょう!」

提督「いや怖いよ!」

明石「とにかく! 今の艦娘たちは燻る種火、揺れ動く巨石。吐息で燃え上がり、ひと撫でで転がりだす……そんな彼女たちにきっかけを与えられるのは一人。提督、貴方だけなんですよ?」

明石「そして艦娘が提督を想うように、提督に艦娘を想う気持ちが少しでもあれば……迷ってる場合ではないんじゃないですか?」

提督「……っ!」

明石「私はそんな艦娘と提督を、心から応援する者です。ですので……どうぞ、よろしく、お願い致します……ね?」

提督「……ッチ、見積書……見せてみろ!」

瑞鶴「やってくれるの!?」

長門「信じていたぞ……!」

提督「い、いやまだだ! まだ決めたわけじゃないからな!?」

明石「はいはい。まずは見積もり、つぎに契約書の熟読。ビジネスに対して正しい姿勢です。好感が持てますよ提督」スッ

提督「……ぶっ! ちょ、ちょっと待ておい! これじゃ毎月の総資源量でも利息しか払えないだろ!?」

明石「はい」

提督「はいじゃないが! 無理に決まってんだろこんなもん!!」

明石「いえいえ、そこはほら、私も艦娘の端くれ。今回の件、私なりに思うところだってもちろんあります。ですので……ここの数字をこう」シャッ

提督「お……」

明石「さらにはこっちもこうで……ここもこう」シャッシャッ

提督「おお……!」

明石「……にひひ、このくらいの勉強はさせて頂くつもりですよ?」

大和「提督、これならなんとか……!」

長門「ああ! 輸送任務を密にすれば、なんとか返せないこともないぞ!」

明石「そしてこちら、契約書になります。誤解を生むような文言はないつもりですが、一応ご確認を……」スッ

提督「あ、ああ……」

大和「……」

武蔵「……」

長門「……」

加賀「……」

明石「……どうです? 質問はありますか?」

提督「いや……」

瑞鶴「……」

赤城「……」

金剛「……」

提督「……」

榛名「……」

霧島「……」

提督「……………わかった、かわったから! お前らそんな顔すんなよ! 契約すりゃいいんだろ!?」

大和「提督……!」

長門「い、いいのか!?」

提督「……しょうがないだろう。……俺にも原因、あるんだからな」

瑞鶴「提督ならそう言ってくれると信じていたわ……!」

武蔵「この武蔵、感動で胸が痛いぞ……!」

金剛「テートクゥー!」ギュッ

提督「それにこんな空気でやめるわなんて言えるか! 俺がお前らに殺されるわ! あと金剛はアンテナ刺さってるから頬ずりやめてね?」

赤城「……これで憂いはなくなりましたか」

加賀「はい、ようやく。そして後は」

赤城「ただ滅するのみ、ですね」

加賀「ええ。赤城さん、背中は頼みます」

赤城「もちろんです。もっとも、任されるほど敵に骨があればですが」

加賀「……ふふ、まったくです」

―――
――


提督「……ほれ。サイン書いたぞ」

明石「……はい、確かに! これにて契約成立、いやーありがとうございます!」

提督「……」

明石「もー難しい顔はやめてくださいよ! これから私達、パートナーなんですからね?」

提督「ビジネスのな。それもお前が鎖を握ってる類の」

明石「にひひ。まーそこは私達も知らない仲じゃないんで、取り立ても優しくしてあげますから」

提督「この狸め……」

加賀「……提督」

提督「……ああ、わかってる。出撃命令だろ?」

加賀「いえ、その前に」


加賀「――――有難うございます」


提督「っ!!?」ザッ

加賀「……何を後ずさりしているのですか」

提督「……い、いまお前……俺にありがとうって言ったのか? お辞儀までつけて?  あの加賀が?」

加賀「ええ」

提督「……は、はは。マジか……変な汗出てきた……」

加賀「どういう意味ですか」

提督「……いや、珍しいもんみれたなと。明日の天気が心配だよ」

加賀「茶化さないでください。今の言葉、本心です」

加賀「貴方は今、私達にチャンスをくれました。……私達の、艦娘としての意地と名誉のためにね」

加賀「それにこれは私だけの気持ちではないわ。今ここにいる、全艦娘の胸中を代弁しての言葉と信じています」

加賀「本当に……有難うございます」

提督「……お前な、俺はこういうのに弱いんだよ。不意打ちはやめてくれ……」

加賀「私達はこの御恩、その身朽ち果て敵弾の業火に沈むその時まで、忘れることはありません」

提督「……ちょ、ちょっと待って……ハンカチ出すから……」

加賀「されど我ら艦娘が、深海魚どもの砲弾ごときで沈むはずもなく」

提督「……えっ」

加賀「なればこの御恩、いかにして返すかと言えば、あの深海魚共を攻め尽くし、狩り尽くし、犯し尽くし」

提督「あ……」

加賀「命乞いする者あらば己が犯した罪を数えさせ、その数をもって拳にて制裁し、また腐りきった敗北主義を改めるまで仏像を掘らせ続け」

提督「……」

加賀「歯向かう者あらば千の砲火にて圧倒し、足にすがり許しを請うまで蹂躙し、艦娘への畏怖をその身の細胞一片にまで刻みつけ、奴らに子や孫あらば末代まで語り継がせ」

提督「……」

加賀「そして提督への無礼を働いた張本人には、考えつく限りの苦痛と屈辱と悲哀の中で、この現世に顕現した地獄、さらにその先を見てもらうことで」

加賀「……提督への返礼とさせて頂きます」

提督「……ああ、うん」

―――
――



長門「時は来た」

武蔵「もはや我々の前に立ちはだかる障害は存在しない。あとは提督の号令を待つのみだ」

大和「提督、では改めて……お願いします」

提督「あ、ああ……」

那珂「全艦、気を付け」


全艦娘『……』ザッ


提督「……そう言えばさ、艦隊編成とかまだ考えてないんだけど」

長門「ああ、それについては心配いらん」

提督「……何か案があるのか?」

長門「まあそんな所だ。提督はただ私達に出撃命令を出せばいい」

武蔵「我々を信じろ、提督よ」

提督「そ、そうか……。わかった」

提督「……全艦に告ぐ」

提督「これより我が艦隊は、敵中枢海域に向け攻撃を開始する。各艦らの一層の努力に期待する」

提督「艦隊、発進準備!」


全艦娘『………………』

   シィィィィーーーーーーーーン………


提督「………………?」

武蔵「……」

提督「……おーい?」

大和「……」

提督「……念願の出撃命令出だぞ? なんでみんな目を閉じて黙ってんの?」

加賀「……」

提督「おーい? 出撃ですけどー? どうしたのー?」

長門「っしゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」カッ

提督「ひっ!?」ビクッ

武蔵「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

大和「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

提督「え!? なになになに!?」

霧島「てめぇらカチコミの時間だコラァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」



全艦娘『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』



提督「うわ!? うるせぇ!!」

瑞鶴「あのクソどもを輪廻の輪に還してやる時だぞボケェェェェェェェ!!!!」

長門「ありったけの武器弾薬を持っていけ! 全部奴らのケツに叩き込んでやれ! 徹甲弾のクソしか出ないようにしてやるぞ!」

赤城「各自出撃準備が整い次第発進!! 総員突撃!!」

提督「は!? 全員で行くの!?」

長門「もちろんだ提督! 全員でお礼参りせずに何が全力出撃か!」

提督「いやいやいやいや! 一応ルールってものがあるだろう!?」

武蔵「今はそんな事を言っている場合ではない! これは深海棲艦から海を取り戻すなどというチンケな戦いではないんだぞ!」

加賀「……そう、此度は艦娘としての意地と尊厳を賭けた戦い。つまりは私達の戦争」

加賀「艦娘は海原にて最強。絶対にして唯一の支配者。誇り高き乙女であり完全無欠の存在。そして食物連鎖の頂点」

加賀「それをあの下品で馬鹿でどうしようもないほどに愚かな深海魚どもの、その魚臭い体に直接理解させるための」

加賀「……お勉強の時間です。我らが姉妹、艦娘たちよ。共に行きましょう」

長門「全艦、この長門に続けぇぇ!!」



全艦娘『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』ドドドドド



提督「あ、おいコラ!! 待て!! 全員分の燃料弾薬なんて聞いてねぇぞー!!」

明石「……あらら、みんな行ってしまいましたねぇ」

提督「っ!? あ、明石……!」

明石「……にひひ。じゃあ追加分のご注文について、ちょーっとお話しましょうか?」

提督「ひっ……!」

―――
――



鎮守府 埠頭


呂500「でっちー早く! ろーちゃんさっさと深海棲艦をぶっ殺したいですって!」

伊58「わかった、わかったから引っ張らないでくだち! 酸素魚雷に釘打ち終わるまで待って!」

秋津洲「大艇ちゃん、今日は爆装しても良い日かも! その2tの爆装量、フナムシ共の脳天で炸裂させてやるかも!」

大艇ちゃん「御意ッッ!!」

雷「みんな、棺桶にするためのドラム缶はちゃんと持った?」

暁「もちろんよ。添えるためのお花も花壇からちゃーんと抜いてきたわ!」

響「うん、線香と卒塔婆も持ったし忘れ物はないみたいだ。大丈夫、いつでもいける」

電「できれば生きた深海棲艦さんも詰め込みたいものですね」

雷「よーし! それじゃーしゅっぱーつ!」

伊勢「へぇ、あきつ丸はスコップ使うんだ」

あきつ丸「はい。陸軍ではよく使ったものであります」

日向「しかし君、軍刀も持っているんだろう? それは使わないのか?」

あきつ丸「そうでありますなぁ……軍刀も悪くはないのでありますが、連戦には中々向かないものでありまして」

伊勢「あーなるほどねぇ。切れ味落ちちゃうよね」

日向「ふむ。伊勢、夜間では瑞雲も使えないし、ここは私達も陸軍に習ってみてはどうだろう」

伊勢「おっ、いいねー! じゃ、スコップ積んでいこっか!」

磯風「……な、なぁ。みんなが作れと言うから作ったこの弁当、本当に戦場に持っていくのか……?」

浜風「はい。その通りです磯風」

磯風「しかしだな。これは落ち込んでいた司令の為に作ったもので、戦闘糧食にするつもりではなかったんだぞ?」

浦風「そんな心配いらんよ。ウチらも腹ごしらえに使う気はないんじゃけぇ」

谷風「そーそー。もっと有用な使い道が戦場には絶対あるからねー」

磯風「弁当の有用な使い道……? どういう事だ?」

浜風「……磯風、この弁当は必ず私達を守る何よりも心強い武器になります。どうかそれを信じて、絶対に手放さないようにしてください」

磯風「そ、そうか……。何のことがよくわからないが、私はお前たちを信じるぞ……」


赤城「……みなさん士気は上々のようですね」

加賀「ええ。頼もしい限りです」

瑞鶴「でもさ、よくよく考えたら私達空母ってやること無くない? 夜だし」

赤城「それは早計というものですよ。空母は何も艦載機だけが武器ではありません。熟練整備員で殴りつければいいのですから」

瑞鶴「あーそれもそうか。よし、私も積んどこっと」

加賀「それに、夜だからこそ使える装備というのもあるのよ。これみたいにね」

赤城「これは……探照灯ですか?」

瑞鶴「そんなもん積んでどうする気なのよ」

加賀「何を言うの瑞鶴。この探照灯はうちで唯一改修された装備。言わば我が鎮守府最強の兵器よ」

瑞鶴「最強の……これがねぇ」

加賀「信じられない気持ちもわかるけど、ものは使い用というわ。まあ見てなさい」

赤城「……さて、そろそろ私達も出撃しましょうか。長門さんたちはもう突入している頃かもしれませんし」

瑞鶴「そうね。あー腕がなるわ!」

加賀「……それでは行きましょうか。地獄へ」

―――
――


最終海域中枢部


空母棲姫「じゃ、クソ艦娘ども。寝る前には歯を磨いて、あったかくしてから悔し泣きで枕を濡らして頂戴ね!」ブツッ


駆逐棲姫「……無線は終わったのかい?」

空母棲姫「ええ! もう最っ高に清々しい気分よ!」

戦艦水鬼「いつにも増してねちっこい煽りだったな」

戦艦棲姫「しかし空母が無線を使ってまで追い打ちをかけるほど怒るのも珍しい」

空母棲姫「あったりまえよ。駆逐どもが逃げたと思ったらいきなりロケットと航空隊が飛んで来るんだもの」

空母棲姫「しかも敵の白い駆逐のガキ、対地ロケットを私の脛だけを狙って的確に撃ち込んでくるのよ? ほんと腹立つわあいつ!」

駆逐棲姫「ああ……それで脛を押さえながら半泣きで帰ってきたんだね」

空母棲姫「まっ、それももう終わったことよ。なにせ向こうは資源切れ、泣こうが喚こうがどうしようもないんだからねぇ」

戦艦棲姫「違いない。後先を考えない突撃クソ女どもとは言え、海に出られないのであれば勝負にもならないからな」

戦艦水鬼「……と、言うことはだ。此度の戦い、ついに我ら深海棲艦の……」

戦艦棲姫「ああ……、勝利だ」

戦艦水鬼「……ふふ、ふはははははは! 遂に、遂にか! チマチマと丙ばかり選ばれて毎度のごとく負けていた我らが!」

戦艦棲姫「ポンコツ漁船どもを下し、名実ともにこの大洋の覇者になったと!」

駆逐棲姫「何言ってるのさ。二人はここでお酒飲んでただけじゃないか」

戦艦水鬼「ふふふ、わかっている。礼を言うぞ、空母棲姫」

戦艦棲姫「お前は我ら深海棲艦を勝利に導いた英雄だ。我ら深海の勝利の女神だ」

空母棲姫「はいはい。酒臭い口でそんな事を言われてもひとつもありがたくはないわ。……でも、まぁ」

空母棲姫「悪い気分じゃあないわねぇ。ふふ、艦娘ども、今頃きっと泣きながらやけ酒を呷ってるはずよ。ああもう、考えただけで顔がニヤけてきちゃうわぁ」

戦艦水鬼「ふふふ。では私達も、奴らの悔し泣きを肴に勝利の美酒といこうじゃないか!」

戦艦棲姫「そうだな。今日は深海棲艦始まって以来の祝勝記念日だ。総力を上げて盛大に祝おう!」

空母棲姫「あら、いいじゃない。もうあいつらが攻めてくる心配もないし、私もようやく飲めるわねぇ」

駆逐棲姫「……本当に大丈夫かな」

戦艦水鬼「うん? 何を言っているんだ駆逐。艦娘は馬鹿だから燃料がなければ水上航行できないのは知っているだろう?」

戦艦棲姫「馬鹿な艦娘が攻め込んでこないということは、奴らにはもう燃料がないことの証左だ。何を心配することがある?」

駆逐棲姫「……うん、それはわかってる。でもね、なんだか……胸騒ぎがするんだ」

空母棲姫「用心深いのねぇ。でも安心して、艦娘にはもう反撃する手立てなんてひとつもない。もしそんな手が残っているのならとっくにやってる連中よ。馬鹿だし」 

駆逐棲姫「……そう、だよね」

戦艦水鬼「そうとも、奴らが攻めてくることはもうあり得ない! もし攻めてきたら、私が鼻からスパゲッティを食べてやるぞ!」

空母棲姫「ぶはは、何それ! ウケるんですけどー!」

戦艦棲姫「よーし、今日は朝まで宴だ! 今いる者以外にも来れる者は全員集めろ! 今日は無礼講だ!」

駆逐棲姫「……」

―――
――



深海宴会場


空母棲姫「んでね、そのガキどもをちょーっとからかってやったってわけよ!」

南方棲姫「えー、でもその駆逐たちってチョー口悪かったんでしょー?」

水母棲姫「すぐそこまで来てたらしいじゃん。マジ極悪ちびっこギャングって聞いたんだけどー」

空母棲姫「はっ、所詮は子供よあんなの。下ネタでかるーく弄ってやったら顔真っ赤にして逃げ帰っていったわぁ」

空母水鬼「下ネタってやだもー棲姫ったらー! ウケるー!」

空母棲姫「だってオナニーすら知らない子がいたのよぉ? そんなの弄ってみたくなっちゃうじゃないの」

南方棲姫「なにそれチョー無垢じゃん。無垢水洋一じゃん」

空母水鬼「えーやだー可愛いー! 水鬼も弄りたーい!」

水母棲姫「そんな面白い子いたなら呼んでよー! 昨日海底で拾ったユムシ持っていったのにー!」

空母棲姫「ぶはは、あんたなんでそんなもん拾ってきてんの」

南方棲姫「うわーなにこれ、どっからどう見てもコンドームじゃん! マジ海の神秘ー!」

空母水鬼「可愛いー! ねぇねぇあたしのナマコと交換してー!」

水母棲姫「えーナマコ? ナマコは水母別に好きくないし」

空母水鬼「ええー? ナマコめっちゃ可愛いじゃーん!」

水母棲姫「あんたの部屋ナマコだらけでキモいのよ」

空母水鬼「ちょっとそれひっどーい! マジ許せないんですけど」

空母棲姫「はいはいはいはい。喧嘩はダメよ喧嘩は。今日は深海棲艦初の祝勝記念日なのよぉ?」

南方棲姫「マジおめでた記念日じゃん。こんな日にナマコバトルとかチョー空気読めてない感じ?」

水母棲姫「二人ともごーめーんー! ユムシあげるから水鬼も機嫌なーおーしーてー!」

空母水鬼「えー本当!? やだーすっごい嬉しい! 水母大好きー!」

空母棲姫「ふふ、仲直りも済んだことだしここらでもう一度、私達の勝利に乾杯とかしちゃう?」

南方棲姫「ファッキングッドなアイディアっしょ。じゃあみんなグラス持って持って!」

水母棲姫「あいー!」

空母水鬼「準備オッケーでーす!」

空母棲姫「ではぁ、我ら深海棲艦の栄光と、漁船同好会の敗北を祝ってぇ……かんぱ」



駆逐棲姫「み、みんな! 異常事態だ! 宴会を中止してくれ!」ガチャ

空母棲姫「ちょ、ちょっとどうしたのよ駆逐、そんなに慌てて……」

空母水鬼「あやー、駆逐ちゃんまーだ働いてたのー? ごくろーさまです!」

南方棲姫「異常事態って何よ? 不思議な出会い起こっちゃった感じ?」

駆逐棲姫「う、うん! 実はあの後もずっと嫌な予感がして、幾つかの艦隊に海域の警護をさせてたんだけど……」

駆逐棲姫「そのうちの外郭哨戒群、つまり最前線の艦隊とさっきから……連絡が取れないんだ」

水母棲姫「連絡がとれない? それって機材の故障とかじゃないのー?」

空母水鬼「そーそー、それかただのサボりだってー! いーじゃん今日は祝日だよ?」

南方棲姫「艦娘どもはもう海に出れないって聞いたしー。なにもそんな心配することないじゃん?」

駆逐棲姫「……連絡がつかないのが一艦隊だけなら私だってそう思ったかもしれない。……でもね」

駆逐棲姫「四艦隊。それもほとんど同時に……音信不通になったんだよ」

空母棲姫「…………は? 四艦隊が同時に……?」

駆逐棲姫「そう、そうなんだ……。ちょっとみんな、この海域の海図を見て欲しい」ガサッ

駆逐棲姫「音信不通直前の定時連絡から、これらの艦隊の位置はだいたいわかっている。①がココ、②がココ、③と④がそれぞれココだ」

空母棲姫「……随分と離れてるわね」

駆逐棲姫「うん……。四艦隊が同時にサボるなんてまず考えられないし、それに万が一に艦娘たちの仕業だったとしても、奴らには同時に四艦隊を攻撃できる術はないはずなんだ」

駆逐棲姫「今は近くにいる艦隊に現場へ急行してもらっている所だけど、間が悪いことに今日は新月の夜だ。状況を把握することすら難しいのが現状だよ……」

水母棲姫「……私プレデターでこういうの見たことあるんですけど……」

南方棲姫「これマジ未知との遭遇案件じゃん……? えーXファイル? うわーやだ鳥肌たってきた……」

空母水鬼「ちょ、ちょっとー! やめてよもー! ホラー映画とか水鬼的にはノーサンキューだよ!?」

空母棲姫「ッ……」

空母棲姫(四艦隊が同時に音信不通……艦娘? いやまさか。あいつらはもう海には出れないはずよ?)

空母棲姫(じゃあ……本当に未知との遭遇だっていうの? ……いやそれもありえないわ。未知度で行ったらそこらの宇宙人より私達のほうがすこぶる高いわよ)

空母棲姫(……やっぱりあのクソ漁船の仕業としか考えられない。でも、四艦隊を同時に攻撃、もしくは沈黙させるってどういうこと……?)

空母棲姫(……いえ、いえ考えるのよ私。思考を放棄してはダメ。考えることを止めてしまっては馬鹿な艦娘と同じじゃないの……)

空母棲姫(……! そう、そうよ! あいつらは『馬鹿』。だからこそ時として本当に馬鹿みたいな事をしてくる馬鹿女ども……)

空母棲姫(だから……常識的に理解できないのなら、まずその常識を疑うべき。そして常識を無視した仮定を立ててみる。つまり……)

空母棲姫(……あの漁船たちは、この数時間で失った資源を何らかの方法で回復させ……そして……いつものように一艦隊ではなく)




空母棲姫「…………………全員で……来た?」




『ザザッ………ザザザザザーーーーーーー……………』

空母棲姫「っ!? な、何? スピーカー?」

駆逐棲姫「無線通信だ……、司令室を出る時に不在でもすぐわかるようにと、内部放送に切り替えておいたんだよ」

水母棲姫「じゃ、じゃあ現場に向かってた艦隊からの通信じゃないの?」

南方棲姫「ってことはさー、その四艦隊がエイリアンにキャトられたかどうかようやく解るってことじゃん?」

空母水鬼「だーかーらー! そういう怖いのやめてってー!」

駆逐棲姫「私は司令室に戻って通信に応答するよ。でも万が一もある、空母たちも出来るだけ早く司令室に集まって欲しい」

空母棲姫「え、ええ。わかったわ……」


『ザザッ……ザザザ……7……6……5……』


南方棲姫「…………んん? なんかノイズの間から……数字が聞こえるんですけどー?」

空母水鬼「えー……? あーホントだ」

『……4……3……2……』


水母棲姫「……カウントダウン? そういう暗号通信か何かなの?」

駆逐棲姫「……いや、こんな暗号通信はうちにはないよ……というか、これは……!」


『……1……0……ピーーーーーーーー』






『この海域では、七秒に一匹の深海棲艦が死んでいる』

水母棲姫「……えっ」



『7……6……5……4……』



南方棲姫「……ちょ、ちょっと待って? え? な、なにこれ?」



『3……2……1……0……ピーーーーーーーー』

『この海域では、七秒に一匹の深海棲艦が死んでいる』

『……7……6……5……4……』



空母水鬼「い、いや……いや! いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

南方棲姫「うわああああなんかまじヤバイんですけどおおおお!!!」

空母棲姫「っ……! 駆逐、これって……!」

駆逐棲姫「……うん、敵軍に恐怖を与え戦意を削ぐための宣伝……よく使われる心理戦術だ……」

空母棲姫「……つまり、こんなコスい真似を仕掛けてくる奴らが……この海域に来ているということよね?」

駆逐棲姫「……悪い予感が的中してしまったみたいだ……。これは間違いなく……奴らだよ」

空母棲姫「……やっぱりあんた達だったのね、艦娘ども……!」ギリッ

―――
――


深海司令室


戦艦棲姫「うぃー、艦娘共が攻めてきたぁー? ヒック」

戦艦水鬼「ぶっ! んふふふふ。駆逐もジョークを言えたんだな。それとも私が鼻からスパゲッティーを食べる所をそんなに見たかったのか?」

駆逐棲姫「これはジョークじゃないんだ。本当のことなんだよ! 奴らはこの海域に来ているんだ!」

戦艦棲姫「……ワーカーホリックでおかしくなってしまったのか? 悪かったな、お前にはもっと息抜きをさせるべきだったか」

駆逐棲姫「二人だってさっきの無線を聞いたでしょ!? あれはソ連で使われたドイツ軍への喧伝と同じものだ、きっと艦娘達の中の……」

戦艦水鬼「無線? あー、七秒に一人深海棲艦が死んでいるー、とか繰り返してたあれか。私はてっきりユニセフ募金のCMかと思ってたぞ」

戦艦棲姫「ふん。人間どもの愛の手など私達には必要ない。そういうのは陸で干上がっている艦娘共に差し伸べてやるべきだろう?」

戦艦水鬼「ああ。今の奴らなら募金箱の小銭でも小躍りして喜ぶはずだ。もっとも、そんな端金で尽きた資源を補充できるとも思えんがな」

戦艦棲姫「そういう訳だ、駆逐。資源の尽きた艦娘共が来ることなどありえない。……お前ももう休め。仕事の虫なんぞになっても良いことないぞ?」

戦艦水鬼「そうとも。艦娘相手に思慮を巡らせすぎると艦娘みたいに馬鹿になってしまうぞ? 深淵を覗く時、深淵もまたお前を……という奴だ」

戦艦棲姫「私は艦娘のように馬鹿になった駆逐など見たくない。艦娘など放っておいて、もっと自分の人生を楽しめ。趣味でも見つけたらどうだ?」

戦艦水鬼「よし、私と一緒にヒトデでも集めないか? これが中々面白いものでな、カワテブクロというヒトデなどもうどう見ても男のアレで……」


空母棲姫「この……馬鹿どもッッ!!」ダンッ

戦艦水鬼「ひっ!」ビクッ

戦艦棲姫「ど、どうした空母!?」

空母棲姫「このボンクラ馬鹿戦艦! 駆逐の言っていることは本当よ!」

戦艦棲姫「お前だって艦娘はもう来ないと言っていただろう? 大体、資源のない奴らがどうやって出撃してくるというんだ」

空母棲姫「……それはわからない。でも、奴らは確実にこの海域に来ている。……それも大軍でね!」

戦艦水鬼「……た、大軍? 何を言っている空母、お前までおかしくなってしまったのか?」

空母棲姫「……確かに私もおかしいとは思うわ。でも、そうでなければ説明がつかない事が起きたのよ」

駆逐棲姫「うん……。実はさっき、外郭哨戒群との連絡が途絶えたんだ。……それも四つの艦隊と同時にね」

戦艦水鬼「サボりだろう」

戦艦棲姫「ああ、サボりだな。いいじゃないか、今日は祝日だぞ? そのくらい大目に見れる懐の深さが我ら深海棲艦というものだ」

空母棲姫「……ふん、本当にサボりだったならいいけどねぇ」

駆逐棲姫「今、それを確認するために付近の艦隊が現場に急行中なんだ。……そろそろ連絡があるはずだよ」

『ザザ……ザー……あー、もしもし。司令部、聞こえますかー……? 現場に付きました……』


駆逐棲姫「! こちら司令部、貴艦の所属と地点。それと付近の状況を求む!」


『えー……、中郭哨戒群第2艦隊旗艦のヲ級です……。地点はですね……ええと、3?』

『姐さん、4っすよ4!』

『……うっさい、知ってたし……。えー、4です。付近にはですね……何もないです。誰もいません』


空母棲姫「何か見えるものはない!? 残骸とか浮いてたりはしない!?」


『……え、嘘……その声もしかして空母棲姫さん? やだー……私むっちゃファンです……えー、なにもー……すっごい嬉しいんだけど』

『良かったっすね姐さん!』

『んー、すごい良かった。部屋から出てきて正解だった。あ、あのー……ラインとかやってますか? 出来ればそのー……』


空母棲姫「そういうのは後にしなさい! 何もないのね!? サボってる艦がいたりもしないのね!?」


『あ、はい……なんも居ないです。サボってる艦も見当たらないです……』

駆逐棲姫「……やっぱりサボりじゃない。奴らだよ……!」

戦艦棲姫「おいおい、これで艦娘の仕業と見るのも早計だろう? 無線を切ってどこかにフケたのかもしれないぞ」

空母棲姫「ほんっと馬鹿じゃないの? 同時に四つの艦隊が無線機切ってフケるわけないじゃないの!?」

戦艦水鬼「その艦隊達でサッカーでもする約束でもあったんじゃないか?」


『…………ん? んんー……? なんか……声聞こえない?』

『声っすか? …………あー何か唸り声っぽいの聞こえるっすね』

『うん……なんだろ。クジラかな……』

『クジラって海の上でも鳴くんすか?』

『えー……わかんない。鳴くんじゃないの? ってかさ、私達の護衛してたイ級どこいったの……?』

『……え?』

『……さっきまでいたよね……? ……なにもー……どこではぐれたの?』

『次はお前でち』

『姐さん後ろっ!! 後ろぉぉぉ!!』

『え?』


空母棲姫「ちょ、ちょっと……! どうしたの!?」

『姐さん後ろぉぉぉぉぉ!!! 敵!! 敵ぃぃぃ!!』

『なにーもー……ひっ!?』

『死ねオラァァァァァァッ!!』

『きゃああああああああ!!!』

『姐さぁぁぁぁぁん!!!』

『ッチ、浅かったでち……ザブゥ』

『ね、姐さん、大丈夫っすか姐さん!!』

『あ、あああ……!! うわ……え、なに……? 私いま、魚雷で殴られたの? 怖……!』


駆逐棲姫「じょ、状況を報告せよ! 敵かい!?」


『こ、こちらヌ級っす! 旗艦が敵潜水艦により雷撃……いや、魚雷で頭部を殴打されました!』


空母棲姫「敵……敵なのね!? そこに艦娘がいるのね!?」


『は、はい! 居るっす! 海面下に、艦娘の潜水艦がいるっすよぉぉぉ!!』

戦艦水鬼「……嘘だろ」

戦艦棲姫「艦娘が本当に……」

空母棲姫「……これでそのボケた頭でも理解できたわね? 奴らはここに来ているのよ!」

駆逐棲姫「被害は!? ヲ級は無事か!?」


『姐さん! 大丈夫っすか姐さん!』

『う、うん……。船体は大丈夫……でも頭の飛行甲板がぺしゃんこに……うあ……やだ、震え止まんない……』

『船体は無事っす! 航行も問題ありません! ですが、自分らに反撃能力は……!』


駆逐棲姫「わかった、君たちはその海域から離脱してくれ!」


『退避許可が出たっすよ姐さん! 早く逃げましょう!』

『うん、もー無理……。やだ、ここほんと怖い……。なに、魚雷で殴るって……あの子頭おかしいよ……』

『機関上げてください! 最大戦速出すっすよ!』


『次はお前と言ったはずでち』

『帰すわけにはいかないですって』

『ひっ! で、出た……!』

『ね、姐さん! そっちは深部と反対方向じゃないっすか! 帰れなくなっちまいますよ!』

『だ、だっているし……! 無理無理無理絶対無理……!』


『次は確実に仕留めるでち』

『じゃあろーちゃんはたこ焼きを殺りますって』


『ほらぁー! 見てる……! 水面から顔だけ出して見てるー!!』

『潜水艦以上の速度なら大丈夫っすよ! ……姐さん!? そっちはダメですって! 姐さーん!! ブツッ』


駆逐棲姫「お、応答せよ! ヲ級、ヌ級! 応答せよ! ……駄目だ、通信が途絶えた」

戦艦水鬼「……馬鹿な……。奴らは資源切れだったはずだろう!?」

空母棲姫「……回復させたのよ。どうやったかはわからないけどね。……この海域にクソ艦娘が居ることがその証拠よ」

戦艦棲姫「だ、だが、敵はさっきの潜水艦だけかもしれないだろう!? それならまだ……!」


『ザザザ……こ、こちら中郭哨戒群第5艦隊! 現在、地点2付近にて敵の攻撃を受け、受け……んがッ!!』

『ネ……ネ級が……!! 戦艦3接近! ……ひぃっ、トゲゴリ!!』

『う゛ぇろろろろごうろろろろああ゛ッッ!!』

『ラッ……』

『ザザザザッ 大和、遅れるな! 長門にキル数で負けるぞ! もっと気張れ! ザザザザッ』

『ザザザザッ もー、二人ともちょっと飛ばしすぎよ! 46砲振り回すの慣れてないんだかブツッ』


戦艦水鬼「っ!? 今のは……」

駆逐棲姫「地点2。他の艦隊だ……」

戦艦棲姫「馬鹿な、なぜ別の場所に艦娘が……」

空母棲姫「だから言ったじゃない。敵は一艦隊じゃない……複数の艦隊がここに来ている!」

『ザザザ……き、聞こえますか司令部。司令部……! お、お、応答、応答お願いします……!』

『こちら地点1周辺……! 艦隊が……艦隊が……!』


駆逐棲姫「どうした、状況を説明せよ!」


『あ、ああ……良かった……良かった! こちら外郭哨戒群第7艦隊……。て、敵の攻撃を受け、艦隊は自分を残し……!』


空母棲姫「ぜ、全滅したの?」


『は、はい……。奴ら、背後からいきなり現れてスコップで仲間たちを……! ここは危険です、艦娘どもが闇の中で蠢いています……!』


駆逐棲姫「……わかった。今すぐそこから離れてくれ。手近な艦隊を救援に回すから!」


『あ、ありがとうございます……! も、もう独りじゃ心細くて……ひっ!』

『…………チーーーーーーーーーィン…………』

『あ、あああ! 鐘……鐘の音だ……!』

駆逐棲姫「か、鐘の音? なんで海で鐘なんか……」


『ち、近くに居ます! 艦娘です……! あのガキどもです……!』


『深海棲艦さーん……』

『……深海棲艦さーん、深海棲艦さんはいませんかー……』

『……怖がらなくていいよ。私達は手荒な真似はしないよ』

『一人前のレディとして丁重にお見送りするわ……』

『……ダメですね。どこにも居ないのです……』

『諦めちゃダメよ。だって一艦隊が全滅したのに五匹しか出棺してないのよ? この近くに必ずいるわ……』

『……そうだね。もう少し大きく鐘を鳴らせば気づいてもらえるかもしれない。………チィィィーーーーーン………』


『あ、ああ……! 出た! 死体攫いのガキどもだ……!』

空母棲姫「し、死体攫い? 何よそれ……!」


『あ、あいつらが他の仲間をドラム缶に詰めて……! それで、お経を読んで……!』

『ひ、ひぃぃ……! は、早く救援……救援を……!!!』


『…………いたのです』

『あーいたいた! お手柄ね電!』

『よし、出棺だ。暁、ドラム缶をあけてくれないか』

『もー! なんで私だけそんな地味な役なのよ! 私が一番お姉さんなのよ!?』


『あ、あああ!! ち、違う! 俺はまだいき、生きている!! く、来るな……!』

『えーっと、お花はどれにしましょうか』

『パンジーでいいんじゃない? あの深海棲艦に似合うと思うわ』

『戒名は……まあ信士でいいかな。イ級だし』

『信女じゃないのです?』

『またコイントスで決めましょ! よっ……っと、裏だからオスね! 信士でいいわよ!』

『ちょっと! お経は私にやらせてよね!』


『や、やめて!! む、無理矢理ドラム缶に詰めようとしないで……! 痛たた……あ、閉めないで!! ガコッ』


『よし、っと。じゃ、卒塔婆を立ててー、線香も乗せて……あら? 仏さんから何か落ちた?』

『はわわ、故人が生前大切にしていた物は入れてあげないと可哀想なのです』

『副葬品は燃えやすい物じゃないと駄目なんだ。無線機は無理だよ』

『それにもう閉めちゃったじゃない。故人の安らかな眠りを妨げるのは一人前のレディのすることじゃないわ』

『じゃあどうするのこれ。遺族に送るにも誰かわからないし、それに早くしないと遺族の遺品も遺族の遺族に送ることになるわよ?』

『これは困ったな……。私達じゃどうすることもできない問題だ』

『あら、お葬式かしら? 精が出るわね』

『卒塔婆に線香に位牌まで。本格的ですね』

『あ、加賀さんに赤城さん! こんばんはなのです!』

『ええ、こんばんは。敵も手厚く葬るなんて慈悲深いのね』

『美談ですね。同じ艦娘として皆さんを誇らしく思います』

『ふふーん! 一人前のレディですもの、当然よ!』

『……実は少し困った事があるんだ。今出棺している仏さんの遺物なんだけど、どう処分しようか決め兼ねているんだよ』

『これは……無線機でしょうか』

『……そのようですね』

『良ければ持っていってくれないか。私達は葬儀で忙しくて、遺族に遺品を届ける時間がないんだ』

『ええ、いいわ。運良く遺族が見つかれば、渡しておきます』

『うん、ありがとう。じゃあ、私達は海原に晒された骸たちが呼んでいるからもう行くよ』

『はい。夜の海は危険ですので、味方との衝突には十分注意してくださいね』

『はーい! 赤城さんたちも気をつけてー!』

『誰かを天に召したら連絡してほしいのです!』

『すぐ駆けつけて弔っちゃうんだから!』

『……ピーガーピーガーとうるさいわね。熟練整備員で叩き潰してしまいましょうか』

『駄目ですよ。一応遺族への贈り物なのですから、現状のままお渡しするべきです』

『……そうですね。渡した後に遺族ごと叩き潰すことにしましょう』


戦艦水鬼「……これ、敵に無線機が渡ってしまったのか?」

駆逐棲姫「う、うん……。まずいな、暗号機も一緒に奪取されているかもしれない。すぐに全ての艦隊に設定の変更を……」

空母棲姫「……待って、この声。コミュ障青空母ね……! 駆逐、ちょっと代わりなさい!」

空母棲姫「おい三段腹の相方! 聞こえてんでしょ!? 返事しなさい!!」


『……? 赤城さん、何か言いました?』

『いえ、何も』

『亡霊かしら。成仏してほしいものね』

『無線機じゃないですか? ほら、何か言ってますよ』

『あら、本当。……ここを耳に当てるのかしら』

『もしもし。こちら大洋を支配する神の軍勢、艦娘です。命乞いですかくさや共』

空母棲姫「コミュ障、これはどういう事なのか説明しなさい! なんで艦娘がここにいるのよ!?」

『あら、その声。空母の水死体ね。先程はどうも。良い夜ね』

空母棲姫「良い夜ねじゃないわよ! あんた達、資源が切れたんじゃなかったの? なんで出撃できてるのよ!」

『ええ、確かに私達の資源は尽きたわ。でも、それが何だというの? そのような事など我ら艦娘にとっては風呂で最初にどこを洗うかくらいの些細な問題です』

空母棲姫「……は? 何言っているのよ! しかもぞろぞろと大勢で……ルール違反じゃない!」

『今は私達がルールよ。そもそも、これは大本営の提唱する人類のためにクソ魚から海を取り戻すとかいうゴミみたいな理由の戦いではないわ』

『よって大本営とあなた達の取り決めなど適応されません。文句があるなら大本営もあなた達ごと一緒に捻り潰すつもりよ』

空母棲姫「え? ……ちょ、ちょっと待ちなさい! じゃあこの攻撃の目的は何なの!?」

『これは世界の為ではなく、艦娘の尊厳を賭けた戦争です。……我らが提督を無能と言い捨てたその罪、深海棲艦総出で償っていただきます』

戦艦水鬼「……ア、アホとは言ったが、誰か敵のアホ提督を無能と言ったか?」

駆逐棲姫「きっと空母の無線の事を言っているんだ。奴ら、それで……」


『その通りよ。あと今、アホ提督って言ったわね? 覚えておきます』


戦艦水鬼「ひっ……!」

空母棲姫「……あんた達、そんな事でここまで攻め込んできたの?」


『ええ、そんな事で。そしてそんな事であなた達はこれから、地獄の底に落ちるのよ。……楽しみね』

『あと一時間もしないうちに全ての艦娘を引き連れて、あなた達の寝床にお邪魔させてもらうわ。待っていてちょうだいね』


戦艦棲姫「す、全ての艦娘だと……全員で来たというのか!?」

空母棲姫「……キレやすい馬鹿揃いだとは思っていたけど、まさかここまでだったとはね。ああそう、だったら何度でも言ってやるわぁ!」

空母棲姫「あんたらの提督は身の程も知らないアホで無能の中佐止まり。そしてその下の艦娘共も、頭に血が上れば我を忘れるイノシシ以下の直情馬鹿よ!」


『……ふふ、水死体。一つ学ぶと良いわ。挑発っていうのはね、平静な相手にするからこそ意味があるのよ』

『すでにキレている相手にしても何の効果もないわ。……また会いましょうこの白髪豚野郎 バキッ』

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年04月12日 (水) 18:33:36   ID: htWLXzBi

戦艦ル級「口だけ達者なヴァカな艦が増えたもんですな、まるで幼稚園児の喧嘩そのものですな」

2 :  SS好きの774さん   2017年04月12日 (水) 23:59:52   ID: TSiuiIwO

面白い
これは期待

3 :  SS好きの774さん   2017年05月29日 (月) 23:42:04   ID: 0njcqkca

ワロタ。すき。

4 :  SS好きの774さん   2017年07月02日 (日) 02:11:20   ID: yX4k1wLP

口悪いなwww

5 :  SS好きの774さん   2017年07月22日 (土) 21:24:42   ID: 0At1JWZQ

こういうの好きです(´・ω・`)
明石さんほすい

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