勇者「地獄の沙汰も金次第」 2 (281)

前スレ

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あらすじとか登場人物とか書こうと思ったけどミスって消えおった
俺達はあらすじや人物紹介を一から書き直すことを強いられているんだ!

新スレでもどうぞよろしくお願いいたします

 
――――――――――
現在
北の森・勇者達のアジト
所持金:3768G

 
 
ギィィィ……バタン


そとでみはりにたっていた とうぞくがもどってきた……

魔王「盗賊ちゃん、外の様子はどうだった?」

盗賊「大丈夫だよ。この近くには誰もいない」

勇者「そうか……ご苦労だった。見張りを交代しよう」

盗賊「身体の方は大丈夫かい?」

勇者「大丈夫だ、問題ない。君達は休める時に休んでいてくれ」

魔王「……無理すんなよ。こんなこと、オレが心配するのもおかしいかも知れないけど」

勇者「いや、そんなことはない。礼を言わせてくれ。私達が脱出できたのも、君の協力があってこそだ」

魔王「そりゃどうも。まあ、オレってば、女の子のためなら何だってやっちゃうからね」

勇者「……では、私は見張りをしている。何かあったら呼んでくれ」

ギィィィ……バタン

盗賊「……変わんないねぇ、あいつも。根っからクソ真面目なところが特に」

魔王「でもさ……そういうマジメくんだから、敵に回さないで済んでよかったよ」

魔王「オレと勇者がガチでやり合ったら多分、オレ、負けちゃうと思うしさ」

盗賊「そうだね。あたしもそう思うよ。それにあたしや賢者は勇者の味方をしてならなきゃだし」

魔王「羨ましい限りだよ……オレには味方は沢山いても、仲間ってのはあんまりいないしね」
 

 
魔王(……火竜山脈の砦から脱出した後、勇者達を王都に送り届けようとしたけど、勇者に止められた)

魔王(聞いた話じゃ、勇者は竜姫ちゃんを匿ってたのがバレて反逆者扱いされたらしい)

魔王(竜姫ちゃんが拘束されたらしいと聞いて勇者とひと悶着あったけど、まあそれはいい)

魔王(今、王都に戻っても捕まるだけだって、勇者は言った。賢者ちゃん達もそれは同様だろうとも)

魔王(それでこの森の中の小屋をアジトに潜伏して、古代魔法への対策を立ててるんだけど……)

魔王(問題は山積みだ。まず、古代魔法云々に関してのこともそうだけど、そんなのは些細なことだ)

魔王(オレとしちゃあ、もっと身近な……オレの主義として放っておけない問題もあるんだ)

魔王「……ちょっと、僧侶ちゃんの様子見てくるよ」

盗賊「あの子の? ……でも、アンタにできることはないと思うけどね」

魔王「傷ついた女の子を放っておけないのがオレさ。だろ?」

盗賊「そっとしておいてやればいいじゃないか。勇者も生きていたんだし、そのうち乗り越えられるよ」

魔王「でも、励ましてやりたくなるじゃんか。それに……」

盗賊「それに?」

魔王「……いや、なんでもない。それじゃ。盗賊ちゃんも休んでなよ?」

盗賊「お気遣いどうも。ありがたく受け取っておくよ」

魔王「ああ、どんどん受け取っちゃって。オレってば気遣いのできるイケメンだからね」

盗賊「バーカ。さっさと行ってきな」
 

 
ザッザッザッ……

盗賊「……」

盗賊(……魔王、無理してるね。いや、焦れてるのかな)

盗賊(まあ、今は待たなきゃいけない時だね。魔法に関する限り、あたしにできることは少ない)

盗賊(それに……あの勇者の服から落ちてきた灰。あれは魔法を使った後の金貨の搾りかすのはず……)

盗賊(後で確認したら、所持金もかなり減ってたっていうし……魔法を使ったのは間違いないんだ)

盗賊(……そう、それなんだよ。あたしが引っかかってるのは)

盗賊(アレは『魔法を使った後』に出るものなんだ。じゃあ、何の魔法を使ったってんだい?)

盗賊(勇者は回復系じゃ大した数の呪文を持ってなかったはずだし、復活呪文も使えなかったはず)

盗賊(あの時、勇者の身体から出た光も、回復呪文や復活呪文の光じゃなかった……)

盗賊(だとすれば、勇者が生き返った直接の原因は、賢者の復活呪文じゃないってことも有り得る)

盗賊(……気になるけど、今はあたしの胸に秘めておこうか。後で賢者にでも聞くとしようかねぇ)

盗賊(……勇者。アンタ、本当に大丈夫なんだろうね?)
 

 
――――――――――
僧侶の部屋

 
 
かたくとざされたドアのまえに せんしがすわりこんでいる……


魔王「よっ、戦士。僧侶ちゃんの様子はどうだ?」

戦士「……魔王か。僧侶殿は相変わらずだ」

魔王「……まだ、顔見せてくれないか?」

戦士「ああ……やはり俺では、僧侶殿の悲しみを癒すことはできんらしい」

魔王「僧侶ちゃん……勇者を撃ったのがそこまでショックだったんだな」

戦士「あの取り乱しようは尋常では有り得ん。元より心の強い女性ではなかったのだと思うが……」

魔王「勇者の奴。僧侶ちゃんみたいな子にあそこまで好かれてるなんて、ズルイぜ」

魔王(……僧侶ちゃんは自分の行いを覚えていた。自分が勇者を殺しそうになったことを)

魔王(洗脳状態で意識が表に出ていなくても、どんな行為をしたのかは記憶に残るらしくて)

魔王(今じゃ、布団を被って勇者に謝ってばっかりだ。ごめんなさい、ごめんなさいって……)

魔王「……僧侶ちゃんに、勇者以外の奴の言葉は届かないんだろうな」

戦士「おそらくな。だが……」

魔王「だが?」

戦士「言葉が届かないなら行動で示す他あるまい。俺はいかなる時でも、僧侶殿を守ってみせよう」

戦士「なにせ、他ならぬ勇者に頼まれたからな……僧侶殿を頼むと」

魔王「……お前、カッコいいぜ。多分、世界で一番」

戦士「フッ……よもや、魔王に褒められる日が来るとはな」

魔王「ああ。一生の記念日にしてもいいぜ? 『魔王に褒められた記念日』ってね」
 

 
魔王「そういえば、賢者ちゃんは? まだ古代魔法の研究してんの?」

戦士「いや、長老も賢者も今は休んでいるはずだ。ここ数日徹夜続きらしいからな」

魔王「ってことは、勇者の奴、自分も徹夜なのに見張りに立ってるのか……流石のイケメンぶりだぜ」

魔王「つまりそういう勇者だから、賢者ちゃん達にもモテモテなんだろうな……」

魔王「オレがあんなキャラだったら、今頃モテモテ街道驀進中の主人公キャラ間違いなしだったろうに」

魔王「惜しいことしたもんだけど、オレってば根が不真面目だから、ああいう風にはなれないしなぁ」

魔王「ガキの頃から遊んでばっかでさ。勉強も嫌いだし、楽しけりゃいいじゃんって感じで」

魔王「どうせ魔王一族の第三王子だし、将来はどっか田舎の領地で悠々自適と思ってたしさ」

戦士「それが何の因果か、ここで俺達と行動を共にしている……か」

魔王「そうそう。よりにもよって、魔王討伐を標榜してた勇者一行とだぜ?」

魔王「人生塞翁が馬っていうかさ。奇跡の連続だよ、ホント。自分でも信じられないし」

戦士「……奇跡の連続か。確かにそうかも知れないな」

戦士「だが俺は、俺の行動が単なる奇跡の結果だなどと思ってはいない」

魔王「へ? ……つまり?」

戦士「奇跡が形作るのはただ、状況でしかない。そこから先は俺達一人一人の意志に委ねられている」

戦士「俺は俺の意志で僧侶殿を守る。お前はお前の意志で、お前の戦いをすればいい」

戦士「大事なのはただそれだけだ。俺は……それだけでいい」

魔王「……そうだな。そうだよな! 俺もそう思うよ」スック

魔王「じゃ、オレは賢者ちゃんの様子も見てくる。お前も休める時に休んどけよ?」

戦士「ああ。お前もな」 
 

 
ザッザッザッ……
 
戦士「……」

戦士「……起きているだろう? 僧侶殿」

僧侶『…………』

戦士「いいんだ。答えてくれなくてもいい。俺の独り言だと思ってくれて構わない」

僧侶『…………』

戦士「僧侶殿が辛い思いをしたことは……今も自分を責め続けていることは、わかっている」

戦士「だが、今俺が言ったように……例えどんな状況でも、どこへ向かい、何をするかは自分次第だ」

戦士「だから僧侶殿がどのように考え、どのように行動するのか」

戦士「それに口出しする権利は俺にはないだろう。しかし……」

戦士「……俺は、貴女に立ち上がって欲しい。自分の力で。自分の意志で」

僧侶『…………』

戦士「幸い勇者も生きているし、奴には僧侶殿を責めるつもりなど毛頭ない」

戦士「それどころか、僧侶殿に手を汚させてしまったのは、自分の責任だとさえ言っている……」

戦士「……あるいはこれも、貴女にとっては辛いだけかも知れないが……」

戦士「……勇気を出してくれ。次の一歩を踏み出してくれ。それが前に進むということだ」

戦士「俺に言えることは……今は、これだけだ」

僧侶『…………』

 
 
 
僧侶「……勇者さん……戦士、さん……」

 

 
――――――――――
仮設研究室

 
 
まおうがへやにはいると ちょうろうがけんじゃに ひざまくらをしていた


賢者「すぅ……すぅ……」

長老「ム……魔王か」

魔王「おっ、爺さん。賢者ちゃん、やっぱり寝ちゃってたんだ?」

長老「誰が爺さんだ。年寄り扱いをしおって、まったく……」

魔王「だって爺さんだろ? オレなんか100年も生きてないのに、アンタは何歳なんだよ」

長老「知らん。800から先は数えるのをやめたからな」

魔王「ホラ、自分の年齢数えるのをやめてる辺りがもう爺さんじゃん」

長老「やかましい! ……まったく。お前と話しておると、まるで緊張感がないな」

賢者「うぅ……ん……」

魔王「まあまあ。あんまり大声出すと、賢者ちゃん起きちゃうぜ」

長老「フン……そうだな。この娘に免じて許してやるか」

賢者「ぐぅ……」

長老「しかし、この娘も勇者のお供で、王宮の賢者とはな。女子供が戦いに出るなど……」

長老「……何がおかしい? 何をニヤニヤしているのだ」

魔王「いや、だってさ。アンタがそうしてると、ホントに爺さんと孫みたいじゃんか?」

長老「実際は、子と遠い祖先くらいの差があろうがな。人間とエルフの生命の尺度の差というわけだ」

魔王「そうだよな。オレと賢者ちゃんこそ、爺さんと孫くらいの歳の差があるわけだし」
 

 
長老「エルフと人間、それに魔族……わしらは本来交わらざりしモノ同士だ」

魔王「そうかな? そりゃあ確かに、それぞれ同族だけで暮らす方がいいのかもしれないけど」

長老「かもしれないではなく、そうなのだ。それは歴史が証明している」

長老「この古代魔法を巡る争いも、お前達魔族の欲望から発したことではないか」

魔王「……それを言われると弱いんだよなぁ。まあ、仕方ないことだけどさ」

魔王「エルフの里を制圧して古代魔法を奪おうとしたのも、元はと言えば獣王子なわけだし……」

長老「地上世界への宣戦布告も、お前の先代がしたことだ。王国との国交断絶もな」

魔王「……ったく、兄貴達もロクなことしないなぁ。兄貴達のツケは全部オレ持ちかよ」

長老「……それらは確かに、先代の負の遺産かもしれん。だが」

魔王「だが?」

長老「それらの遺産を抱えた上で、お前は何をするつもりだ。その魔王という名を背負って」

長老「わしはエルフの里を束ねる者として。そしてこの娘は、これからの未来を担う者として」

長老「魔王であるお前に聞く権利がある……そうは思わんか」

魔王「……爺さん、そりゃズルイぜ。そんな風に言われると話さないわけにはいかないじゃんか」

長老「ならば、話せばよかろう。わしはそのつもりで言っておるのだからな」

魔王「ハイハイ、わかったよ。年の功には敵わないなぁ」

魔王「……まあ、具体的なことはまだ全然決まってないし、どうすればいいのかもわかんないけど」

魔王「オレは本物になりたいだけだよ。名前や肩書だけじゃない、本当の『魔王』にさ」
 

 
魔王「どうやれば本物なのかはわからないけど、これは実際の価値や定義の話じゃなくて」

魔王「オレの気持ちの問題っていうのが大きいと思う。オレ自身の姿勢っていうか……」

長老「気持ち、か」

魔王「そう、気持ち。今までのオレとの決別っていうか?」

魔王「それはきっと、今まで逃げてたものと、キチンと向き合うってことだと思うんだ」

長老「なら、お前は何から逃げていたというのだ?」

魔王「んー……全部かな。責任とか義務とか、そういう類のモノ全部」

魔王「つまりオレは、マイナスをゼロに戻したいんだ。今までの負債を帳消しにしたいっていうか」

魔王「本物になるなんて大層なことじゃなくて、ただスタートラインに立ちたいだけなんだよ。多分ね」

魔王「そうやって、オレが魔王としてのスタートラインに立てたら……」

魔王「……その時初めて、親父の気持ちがわかると思うし、親父の遺志を継ぐことだってできると思う」

長老「お前の父……30年前の魔王の遺志とは?」

魔王「魔界を変えること、かな」

長老「できると思うのか?」

魔王「やるさ。オレはオレのやり方で、本当の『魔王』になって……魔界を変えてみせる」

長老「……ふん。まったく、こんな若造が魔界の王とは、世も末だな……」

魔王「それもよく言われるよ。じゃ、爺さんもちゃんと休んで体力回復しといてくれよ」

長老「年寄り扱いをするなと言っただろうが! まったく……」
 

 
ザッザッザッ……
 
長老「……」

賢者「……変わった人でしょう、魔王さんって」

長老「……起きていたのか?」

賢者「あんな大声で会話されたら嫌でも起きちゃいますよ。ボク、結構神経質なんですから」

長老「すまん。声が大きいのはわしの性分でな」

賢者「……ふふっ」

長老「……どうした? 何がおかしい」

賢者「いえ……さっき魔王さんが、ボクと長老さんをお爺さんと孫みたいって言ってたでしょう?」

賢者「ボクに言わせてもらえば、魔王さんと長老さんは厳しいお父さんと不出来な息子みたいですよ」

長老「ふん……それは、アレが魔王らしからぬのが原因だな」

賢者「ええ。あの人、魔王らしくないんです。勇者さんが勇者らしくないのと同じくらいに」

長老「奴はもう勇者ではあるまい。反逆者として追われる身となったのだから……」

賢者「……」

長老「あ……いや、すまん。そういうつもりではないのだが」

賢者「いいですよ。ボクだって怒ってるんですから。勇者さんのせいでボクの人生メチャクチャですし」

賢者「……あーあ。これはもう、責任取ってもらうしかないかなー、なんて……」

賢者「……じゃあ、ボクはもう少しだけ寝させてもらいますね。長老さんも休んでください」

長老「そうだな……そうさせてもらおうか」
 

 
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翌日
北の森・勇者達のアジト
所持金:3768G

 
 
けんじゃととうぞくが アジトのなかでたいきしていると けんじゃのもとに 
かみでできたカラスがいちわ とんできた……


盗賊「? なんだい、そりゃ」

賢者「式神です。勇者さんに教えてもらったんですけど、東洋の使い魔みたいなものだって」

盗賊「へぇ、紙で出来てんのかい。よくわからないけどすごいもんだねぇ」

賢者「紙製で処分が容易だし、こっちじゃあまり知られていない技術なのでバレにくいんですよ」

式神「キー!」

賢者「これに王都の様子を探らせていたんですけど……何か情報を掴んできたみたいですね」

盗賊「わかるのかい?」

賢者「勿論です。術者と式神の間だけで通じる、ある種の暗号みたいなものですけど」

盗賊「東の方には変なものが沢山あるって聞いたけど、これも大概だねぇ……」

賢者「勇者さんに報告しますので、盗賊さんも来てください。大事な情報かもしれませんし」

盗賊「そうだね。勇者のところに行こうか」
 

 
ザッザッザッ……

賢者「勇者さん!」

勇者「賢者か。どうしたんだ」

賢者「ボクが王都に放った式神が何か情報を掴んできたみたいなんです」

勇者「そうか……なら、早く解析を頼む」

賢者「わかりました。今、術を解きます」

けんじゃは じゅもんをとなえた
カラスのしきがみは かたちをかえ いちまいのかみにもどった!

盗賊「えーっと……なんだいこりゃ。何て書いてあるんだい?」

勇者「賢者にしかわからないよう暗号化されているんだ。なにせ、紙に書かれた情報だからな」

賢者「そういうことです。えぇと……」

賢者「……!」

盗賊「? どうしたんだい?」

賢者「……勇者さん。良いニュースと、悪いニュースがあります。どっちから聞きます?」

勇者「良いニュースから聞こう。何があったんだ」

賢者「王宮は勇者さんを戦死扱いとし、同時に勇者の称号を剥奪しました」

賢者「公式には死亡扱いになったので捜索も打ち切られたそうですが……」

勇者「……つまり、私はもう勇者ではないから、王宮からの支援は受けられないが」

勇者「反逆者として追手を差し向けられることもないということか……」

盗賊「これが良いニュース、ねぇ……じゃあ悪いニュースは?」
 

  
賢者「……明後日、捕らえた魔族の公開処刑を行うそうです」

勇者「……!」

盗賊「ってことは、つまり……」

賢者「そうです。勇者さんの協力者だった、竜姫さんが……処刑されます」

勇者「竜姫が……」

盗賊「竜姫って……エルフの里で魔王と一緒にいたお嬢ちゃんだろ?」

勇者「そうだ。竜王の娘であり、魔王の仲間だった」

勇者「……」

勇者(今までは王宮の動きがわからなかっただけに、彼女の救出にも動けなかったが)

勇者(王宮の動きが予想より性急だ。急がなくてはならない。竜姫を死なせるわけには……)

勇者(だが、全員で行くわけにもいかない。騒ぎになるのはまずい)

勇者(ならばどうするか。私のやるべきことは決まっているが……)

勇者「賢者、盗賊。皆を集めてくれ」

賢者「……どうするんですか?」

 
 
 
勇者「竜姫救出のために王都に乗り込む。そのためのパーティーを編成したいと思う」

 

 
パーティー編成

安価で竜姫救出部隊のメンバーを決定します

一人目 勇者

二人目 >>22

三人目 >>24

賢者・盗賊・僧侶・戦士・魔王の5人から選択してください
 

魔王を連れていかずしてどうする

…賢者さんで。 ごめんよ盗賊の姐さん…!

ちょっと外出してました。何はともあれ安価了承です

次回は
救出組:勇者・賢者・魔王
残留組:盗賊・僧侶・戦士
という感じになります

ここにきてミス発覚。は、恥ずかしい……!

前スレ>>968
× 賢者「あたしにゃわからないよ。特に魔法のことは」
○ 盗賊「あたしにゃわからないよ。特に魔法のことは」

前にも似たようなミスをやらかした気がするが気のせいじゃなかったぜ!

最近忙しくて続きを書くのが難航しています。お待たせして申し訳ありません。

土日には本編の続きか、苦し紛れの番外編を投下予定です。

 
――――――――――
現在
王都・王宮前広場

 
 
おうきゅうまえのひろばは すうじつまえ まぞくが しきてんにらんにゅうし パニックとなった


いまは ぶそうしたへいしたちがけいびしていて かんけいしゃいがいのたちいりは 
かたくきんしされていた……



そして そのようすをとおくからみつめる ひとりのおとこがいた……

??「……なるほど、厳重だなぁ。こりゃ、夜になってもダメっぽいや」

??「新聞屋とか業者の出入りも制限してるみたいだし、真正面から行くのは無理だな」

??「どこかに秘密の出入り口とかないもんかなぁ? RPGじゃ定番だけどさ」

??「……ま、いいか。細かい作戦はあいつが考えるだろうし、任せるか」

??「どうせ夜まで暇だし、王都の女の子とお茶でも……」

??「……っと。その前に」

おとこは ろじうらにはいると じゅもんをささやいてねんじた!



魔王『……聞こえる? 賢者ちゃん』
  

 
賢者『良好です、魔王さん。王宮の様子はどうですか?』

魔王『ああ。王族が出席してた式典が襲われただけあって、かなり警戒してる』

賢者『当然ですよ。街の人達の反応は?』

魔王『流石に王都に魔族が出たってんで、不安が広がってる。どうもピリピリした雰囲気だ』

魔王『王都に魔族が――竜姫ちゃんが潜伏していたってことは公表されてないみたいだけど』

賢者『でしょうね。そこまで発表してしまうとパニックが広がるだけですから』

魔王『あと夜間外出禁止令が出たみたいで、日中も人や馬車の往来は少なくなってる』

賢者『それは好都合ですね。とりあえず騎士団の巡視に気をつければ……』

魔王『ところで、そっちはどう? 勇者の奴、何か気の利いた作戦でも考えついたかな』

賢者『いえ、今のところはまだ』

魔王『そっか。ま、頑張れとでも言っといてよ』

賢者『了解です。そちらも正体がバレないように気をつけてくださいね』

魔王『大丈夫。賢者ちゃんのかけてくれた変身呪文のおかげで、見た目は人間そのものなんだから』

魔王『でもさ、もうちょっと男前にしてくれてもよかったんじゃない? こりゃちょっと地味すぎるぜ』

賢者『わざわざ地味な容姿にしたんですよ。目立っちゃダメだって言ったでしょう?』

魔王『あ、そうそう。目立っちゃダメってんなら、なんでオレを王都に寄越したんだよ?』

魔王『勇者はともかく、賢者ちゃんは別に悪いことはしてないわけだし、怪しまれたりもしないだろ?』

賢者『残念ですが、ボクも盗賊さんも多分戦闘中行方不明ってことで処理されてるでしょうね』

魔王『ってことは、つまり?』

賢者『ボク達は存在しない人間なんです。向こうにとっては幽霊みたいなものなんですよ』
 

 
賢者『それにボクは友達がたくさんいますから、うっかり接触してしまうと計画が露見する危険も……』

魔王『それだよ。オレ、前から解せないことがあったんだけどさ』

賢者『はい?』

魔王『なんで勇者の奴にも友達がたくさんいるんだろうってさ。あんな根暗でつまんない奴なのに』

賢者『魔王さんと違って、仕事をしっかりやる真面目な人ですから。信頼されてるんですよ』

魔王『う~ん……やっぱオレもああいうクールキャラで売っていくべきだったかなぁ』

賢者『あなたには知性と落ち着きがないから無理ですね』

魔王『……あ、前にもこんなやり取りしたような気がする。どこでだっけ……』

賢者『すこぶるどうでもいいです。あ、そうだ魔王さん』

魔王『なに?』

賢者『指示があるまで暇だからって、女の子をナンパしたりしないでくださいよ?』

魔王『……あ、ああ! 勿論だよ。賢者ちゃんってば心配性だなぁ』

賢者『まあ、いいですけど。それから、今後はこちらからコールがあるまで念話は控えてくださいね』

魔王『なんでさ? オレとしては、賢者ちゃんの声を聞いていたいんだけど?』

賢者『……ボク達の念話を傍受される危険があるからに決まってるでしょうが!』

賢者『いいですか? ボク達のやろうとしてることはテロリストそのものの……』

魔王『ごめん、わかってるよ。オレや勇者のワガママに付き合わせてるってことも』
 

 
賢者『……』

魔王『だけど、助けたいんだよ。竜姫ちゃんを。大事な友達だから。見捨てることなんてできないんだ』

魔王『そりゃあ、元を辿れば竜姫ちゃんを守ってあげられなかったオレのせいだけど……』
  
賢者『……いいですよ、もう。事ここに至っては、責任の所在なんてどうでもいいですし』

魔王『……賢者ちゃん』

賢者『それに、付き合わせてるって言い方は適切じゃありませんよ? 言っておきますけど』

賢者『ボクは元々勇者さんのお供ですから、最後まであの人のサポートをしないといけませんし』

賢者『勇者さんや魔王さんの共通のお友達というのにも、ちょっと興味ありますしね』

賢者『別に強制されてるわけじゃなくて、魔王さんのことも一応仲間としてですね……』

魔王『またまたぁ。素直に言いなって、オレのことが心配なんだろ?』

魔王『いい加減素直になっちゃいなよ。オレならいつでも大歓迎……』

賢者『それだけは絶対に有り得ませんからっ!』

けんじゃとのねんわは いっぽうてきにきられてしまった……

魔王「……う~ん。相変わらず賢者ちゃんツンデレだなぁ」

魔王「さてと……敵地偵察の続きと行きますか。今更観光って気分でもないしね」

まおうは ろじうらからでて ざっとうのなかへまぎれていった……
 

 
――――――――――
同時刻
王都近郊・とある廃墟
所持金:3591G


おうとのちかくにあるはいきょに ゆうしゃとけんじゃが みをかくしていた……

賢者「まったくもう! 魔王さんったら、まるで緊張感がないんですから」

勇者「彼なりに君を気遣っているんだろう。そのことは君も理解しているはずだ」

賢者「……ええ、わかってますよ。魔王さんの考えそうなことくらい」

賢者「あの人は根がお人好しですから、何を考えて、何をしようとしてるのか、わかっちゃうんですよ」

賢者「……一応、魔王のはずなのに。そばにいると全然そんな気がしなくって。調子が狂います」

勇者「そうだな……私も今となっては、勇者として彼を殺す自分が想像できない」

勇者「彼は王になるには優しすぎるのかもしれない。しかし、それは同時に得難い美点でもある」

勇者「竜姫を救い出すメンバーを募った時、真っ先に名乗りを上げたのも彼だった」

勇者「私はもう、勇者の名を失った。だがその代わり、彼と敵対する理由のひとつがなくなった」

勇者「ある意味では、不幸中の幸いだと言ってもいいのかもしれないな」

賢者「……まあ、勇者さんと魔王さんが戦っても、勇者さんの圧勝だと思いますけどね」

勇者「それはどうかな。少なくとも、今の私は確実に勝てる戦いしかするつもりはないが」

賢者「ところで勇者さん。さっきの話、本当なんですか?」

勇者「さっきの話、とは?」
 

 
賢者「王都の地下に、王宮へ続く通路があるって話ですよ。本当にそんなものあるんですか?」

勇者「ああ。研究員時代、何度か実験と調査のために立ち入ったことがある」

賢者「一研究員が立ち入れるような場所にあるんですか?」

勇者「一研究員だからこそ、だ。その地下通路は王立魔法研究所の地下にある」

賢者「研究所に……?」

勇者「王立魔法研究所のような王宮直轄の機関には、有事に備えて地下に避難用の通路が通っている」

勇者「同様の設備は王都のありとあらゆる場所にある。無論、普段は魔法で厳重に封印されているが」

勇者「研究所の地下の封印なら解除方法を知っている。そこから王宮へ侵入できるはずだ」

賢者「そんなものがあったなんて……」

勇者「王宮へ侵入するだけならそれでいいのだが、いくつか問題点もある」

賢者「問題点……ですか?」

勇者「まずひとつに、地下通路の出口の問題だ。竜姫が捕えられているのは王宮の地下牢だが……」

ゆうしゃは メモちょうにペンをはしらせ おうきゅうのかんたんなちずをかいた

勇者「研究所の地下通路の出口はここ。地下牢へ下りる階段からは遠い位置にある」

賢者「確かに……誰にも見つからずに地下牢へ行くのは難しそうですね」

勇者「そしてふたつ目は、研究所へ忍びこむタイミングだ」

勇者「私は勇者に任命されると同時に研究所を辞職し、今は反逆罪で勇者の称号を剥奪されている」

勇者「加えて、公式の記録では死亡扱い……対外的には名誉の戦死とでも喧伝したのかもしれないが」
 

 
賢者「研究所には当然、勇者さんの元同僚の人もたくさんいますよね」

勇者「ああ。かつて私は魔貨式魔導法の研究初期段階で、多数の部署の人間と関わりを持った」

勇者「呪術、占術、薬草学、魔法薬学、魔力工学、魔法生物学……」

勇者「彼らには専門家の見地から多くの助言を貰った。僧侶ともその時期に親交を深めたんだ」

賢者「……今更ですけど、こういうところでの勇者さんの行動力には驚かされますね」

勇者「私は本来こっちが本業だったからな。それはともかく、研究所には知己が多すぎる」

賢者「もしも、死んだはずの人間である勇者さんがある日ひょっこり研究所を訪れたとするなら」

賢者「王宮の直轄で研究を行っている彼らには騎士団への通報の義務が生じる……ってことですね」

勇者「そういうことだ。現状では、彼らにどのように伝わっているのかもわからないが……」

賢者「じゃあ、変身呪文で変装して忍びこむというのは? ボクなら身長や体型まで変えられますよ」

勇者「いや、研究所に入る前にボディサーチが義務付けられている。そこでバレてしまうだろう」

賢者「それじゃどうするんですか? 研究所以外の場所は封印の解き方がわからないんでしょう?」

勇者「そうだな……一時間だけ時間をくれ。その間に考えをまとめよう」

賢者「……わかりました。じゃあ、ボクは装備の点検をしてますからね」

勇者「すまない、ありがとう」

賢者「……」

賢者(……見た感じ、全然変わったところはないんだけどなぁ)

賢者(ボクが覚えている限りの勇者さんそのまんま。やっぱり、盗賊さんの考えすぎじゃ……)
 

 
――――――――――
十二時間前
北の森・勇者達のアジト


賢者「なんですか、話って? わざわざ呼び出したりして……」

盗賊「いやね、ちょいと内緒の話さ。勇者に聞かれても面倒なんだ」

賢者「勇者さんに聞かれて困る話って……」

盗賊「ああ……この間からどうにも気になっちまっててね。どうも勇者の様子がおかしい気がしてさ」

賢者「あの人がおかしいのはいつものことじゃないですか。何を今更……」

盗賊「あたしが言ってるのがそういう意味じゃないって、アンタもわかってるだろ?」

盗賊「そりゃあ確かに、一度死んで生き返って、今じゃピンピンしてるように見えるけど……」

盗賊「あたしゃどうにも引っかかるんだ。違和感っていうかね」

賢者「違和感……ですか」

盗賊「でも、あたしは魔法のこととかサッパリだからさ。だからアンタに調べて欲しいんだ」

賢者「そんなの、勇者さんに直接聞けばいいんじゃないですか?」

??「いや。仮に勇者の身に何かあったのだとしても、奴は答えん。俺にはわかる」

せんしが けんじゃととうぞくのかいわに わりこんできた……

盗賊「戦士……アンタ、僧侶のところにいてやらなくていいのかい?」

戦士「案ずるな。僧侶殿はきっと立ち直ってくれる……俺はそう信じている」

賢者「……戦士さんはどうしてそう思うんです? 勇者さんが答えないって」
 

 
戦士「言うまでもなく、今は我々の今後の挙止進退を左右する大事な時だ」

戦士「古代魔法……特に、竜王が使おうとしているという時空渡りの術式の解析」

戦士「そして件の竜王の娘とやらの救出。どれも一筋縄ではいかん」

戦士「何だかんだと言っても、勇者はパーティを統率するリーダーとして行動している」

戦士「奴の身に何事かあればパーティ全体の士気に関わる。だからこそ奴は隠し通すだろう」

賢者「……」

盗賊「確かに一理あるね。特に、僧侶は気に病むだろうから」

戦士「僧侶殿のことだけではない。今後のためにも憂いは除かれねばならん。だから、賢者よ」

賢者「ボクが勇者さんのそばで見張っていて、もしもの時はフォローできるようにしろ……ですか?」

盗賊「なんだい? 結局アンタも勇者のことが心配なんじゃないか」

戦士「勘違いするな。俺は僧侶殿や、長老のことを考えてだな……」

盗賊「はいはい。そういうことだね、わかってるよ」

賢者「……あの火竜山脈での一件でしたら、勇者さんは完全に回復していたはずです」

賢者「長老さんの処置で外傷は完全に消えていましたし、ボクの復活呪文で蘇生も成功しました」

賢者「お二人の考えすぎですよ。あの人、いつだってあんな感じだったじゃないですか」

賢者「勇者さんがあまりにもいつも通りだから、かえって不安になるのはわかりますけど……」

盗賊「あたしもそうであって欲しいんだけどね。まあ、用心しておくに越したことはないよ」

戦士「俺からも頼む。最も長く勇者と行動を共にしていたお前なら、気づけることもあるはず」
 

 
賢者「……仕方ありませんね。わかりました。勇者さんのことはボクに任せてください」

盗賊「そう来なくちゃね。本当はあたしが勇者について行くつもりだったけど、アンタに任せるよ」

戦士「俺も長老の護衛のためにアジトを離れられんからな。勇者と魔王のフォローは頼む」

賢者「あ、そういえば魔王さんは? 魔王さんにはこのことを話したんですか?」

盗賊「いいや。隠しごとのできるタイプでもないし、あのお嬢ちゃんを助けるのに必死だからね」

盗賊「魔王も魔王で、魔界で大変な思いをしたみたいだから、余計な負担はかけさせたくないよ」

賢者「そのしわ寄せがボクに来てるっていうのが、どうもちょっと不満なんですけど」

戦士「だが、この件に関してお前以上の適任もいまい」

戦士「俺とお前達は出会って日も浅いが、ここ数日で勇者がお前達を信頼しているのはよくわかった」

戦士「だからこそ、俺もお前に任せておこうという気になったのだ」

賢者「まあ、いい加減付き合いも長いですから。しばらく離れてはいましたけど……」

盗賊「でも久しぶりに会っても変わってなくて安心したよ。お互いにね」

戦士「……そうか。やはり、仲間とはいいものだな」

戦士「勇者にせよ魔王にせよ、もっと早くに出会っていたならば、違う関係で有り得たかもしれん」

盗賊「それはアンタのことかい? それとも、あの二人の?」

戦士「……両方さ」
 

 
――――――――――

 
 
賢者(……とはいえ、見た目には全然変化がないし、立ち居振る舞いも……)チラッチラッ


賢者(う~ん……元々がムッツリ研究バカの勇者さんだし、何考えてるか表情に出ないタイプだし)

賢者(やっぱり盗賊さんや戦士さんの考えすぎです。二人とも心配性なんですから)

賢者(バカは死ななきゃ治らないっていうけど、勇者さんなんか殺しても死ななそうな……)

ガタッ!

賢者「!?」

ものおとのしたほうをみると ゆうしゃが まどぎわで ひざをついてうずくまっている……

賢者「勇者さん、どうしたんですか!?」

勇者「いや……大事ない。少し目眩がしただけだ」

賢者「大丈夫ですか? 身体の具合が悪いとか……」

勇者「心配することはない。竜姫救出に支障をきたすことは……」

賢者「……!」

けんじゃは ことばをのみこんだ……!

まどわくをつかむゆうしゃのてに ふるいくぎが ふかぶかとつきささっている……
しかし ゆうしゃのてからは いってきのちもながれていないのだ……!

けんじゃが なにもいえずにいると ゆうしゃは すぐにたちあがった
  

 
勇者「それよりも……考えがまとまった。これから作戦の概要を説明する。いいか?」

賢者「えっ……は、はい。わかりました」

勇者「そうか。ではまず、王都の地下構造物の分布についてだが……」サラサラ

たちつくすけんじゃをしりめに ゆうしゃは ノートをとりだしてなにかをかきつけている……

賢者(今のって……い、いや、でも、ボクの見間違いかもしれないし……運よく血管を避けたのかも)

賢者(……そんな、まさか……勇者さんに限って、そんなこと……!)

けんじゃは いきをのんで ゆうしゃのかおをみあげた

そのごもゆうしゃは かおいろひとつかえず さくせんのせつめいをおこなっていた……
 


 _________|\   
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/
 

今回はここまで。
ようやく忙しい時期も終わったのでペースを整えていきたいと思います。

 
続き投下までもうしばらくかかります。
なので、ちょっと裏話的なアレでも書いて間を持たせる努力を。

大体察しはついていると思いますが、前スレ>>52>>108での安価で
ストーリー展開はある程度の分岐を見せています。
変わっているのは主にパーティメンバーの構成。

>>52では勇者パーティの3人目を決定したわけですが、
1の戦士を選んだ場合、現在エルフの里で仲間になった戦士がかなり前倒しで参戦。
キャラクターは、里を出て修行をしていたという設定にした以外は大体同じ。
獣王子のエルフの里への侵攻の際にちょっと展開を変える予定でした。

2の商人を選んだ場合、魔貨式魔導法の新しい奥義的なアレが発見されたかも。
商人のキャラクターは勇者の兄弟あるいは親戚を予定していました。

>>108では獣王子と僧侶の扱いについて。
1の説得を選んだ場合、獣王子の心境に変化が生じ、無理に勇者を討とうとしなくなり、
結果としてエルフの里の場面で死なずに僧侶枠で勇者&竜姫と行動を共にすることになる予定でした。
同時に獣王子が死なないので獣姫ちゃんも魔王と敵対しません。兄妹共々勇者のことは大嫌いですが。
つまり、このルートでは僧侶は番外編での登場以降出番がないわけです。

2の情報収集を選んだ場合、魔王と竜姫が王都で騒ぎを起こして僧侶を巻き込んでしまい、
僧侶は魔王&竜姫と行動を共にすることになる予定でした。
このルートではそのまま獣王子は死にますが、その後のパーティ編成は勇者・賢者・盗賊と
魔王・竜姫・僧侶のままになります。魔王パーティはすぐ魔界に向かうことになり、
魔界で反乱を起こした獣王軍との戦闘を行うことに。

このスレでの安価がどう影響を及ぼしていくかはまあ、見守っててください。
 

そしてせっかくだから俺は番外編のお題を募集するぜ!

>>74

>>72

実は途中まで書いてはいたり。
でも再安価希望の方が多いようならそのようにします。

>>89まで

再安価希望
不自然なエロと唐突の婦女暴行は勘弁

同じくボツるの残念だが、ストーリー台無しはもっと残念

>>72,>>87ぶち壊し卑猥安価取りタヒね

再安価

>>93

賢者と僧侶と盗賊でガールズトーク

途中まで書いていたものを色々修正しながら再利用。

 
――――――――――
某日
辺境
所持金:0G

 
 
勇者「……」


竜姫「……」

竜姫「……生きておるか、勇者」

勇者「なんとかな。しかし、状況は最悪と言っていい……」

勇者「まさか辺境地域の調査中に竜王軍と遭遇戦になるとはな……」

竜姫「奴ら、わらわの顔を見てもなんとも思わぬ。まったくこれだから田舎者は……」

勇者「それは君が変身呪文で人間の姿になっているからだろう」

竜姫「だとしても、わらわから滲み出る気品優雅さ高貴さ美しさを理解できぬとはマンモス哀れな奴ら」

竜姫「なんというわらわレベルの増上慢! 絶対に許されざる蛮行じゃ」

勇者「自覚はあるんだな……だが」

勇者「撃退には成功したものの魔力も尽き、所持金もない……魔法が使えないのはかなりの痛手だ」

竜姫「わらわも似たようなものじゃ。魔力さえあれば転移呪文ですぐに移動できるものを……」

竜姫「しかもこういう時に限って、僧侶はおらんし……」

勇者「……彼女には、別件で調査に出てもらっていたからな」
 

 
竜姫「確か、新種の魔草が見つかったとか言っておったの」

勇者「魔法薬に関しては彼女の方が専門家だ。王宮からの要請も……ぐぅっ」
 
竜姫「! 大丈夫か、勇者……!?」

勇者「いや……まだ、大丈夫だ。それより君は……」

竜姫「……これからどうするのじゃ。このままでは遠からず全滅じゃぞ……」

勇者「……所持品の中に、魔力を回復させるアイテムがあれば……君を回復させて、転移できる……」

勇者「何かないか……何か……」ゴソゴソ

勇者「……! これは……」
 
竜姫「どうじゃ? 何かあったのか……?」

勇者「ああ……これなら体力と魔力を回復できる。持っていてよかった」

竜姫「それは好都合じゃ。ポーションか何かかのう?」

勇者「魔法薬の類とはまた少し性質が違うが……これだ」

ゆうしゃは えきたいがみちたガラスびんを さしだした

竜姫「……ッ!? ひぃっ!?」ゴトッ

りゅうきは おどろいて びんをおとしてしまった

びんのなかには はまきほどもあるイモムシが えきたいにつけられていた……!
 

 
竜姫「な、なんじゃこれは!?」

勇者「魔触虫、ドレインワームの蜂蜜漬けだ。滋養強壮と魔力回復に高い効能がある」

竜姫「なんでそんな気味の悪いものを持っておるんじゃ!」

勇者「以前行商人から買ったものだな……少々ショッキングな見た目だが、薬効は確かだ」

竜姫「す、捨ててしまえ! そんなもの、早く!」

勇者「それはダメだ。これこそ、私達を救うアイテムだ……」

竜姫「……っ」

竜姫「……ま、まさかとは思うが……それを食べろとでも言うのではあるまいな? わらわに?」

勇者「そうだが」

竜姫「い、い、い、嫌じゃ嫌じゃ! なんでわらわがそんなものを!」

勇者「今はそれしかない……とにかく、魔力を回復させなくては」
  
勇者「心配することはない。話に聞くところではドレインワームはエビに似た味と触感らしい」

竜姫「味の問題ではないわ! わ、わらわは絶対嫌じゃからな! 絶対そんなもの食べぬからな!」

勇者「だが、所持品の中でMPを回復できるものはこれだけなんだ」
 

 
竜姫「そ、そうじゃ。お前がそれを食べて魔力を回復すればよかろう」

勇者「私の転移呪文では二人を同時に運ぶことはできない」

勇者「元より魔貨式魔導法で補っている部分も大きいからな……だが君ならできる」

竜姫「お、お前一人で王都に戻るのじゃ。そして僧侶を連れてくればよい」

勇者「待っている間に君の身に何かあったらどうする。この周辺にまだ竜王軍がいるかもしれない」

勇者「君しかいない。君がやらなければ誰がやる。誰がいる?」

竜姫「そ、それは……」

勇者「大人しくしているんだ」

竜姫「ひっ!」

勇者「心配することはない。すぐに済む」

竜姫「は、離さぬか、この痴れ者がっ」

勇者「二匹、いや三匹か……転移に充分な量の魔力を確保するには……」ゴソゴソ

竜姫「や、やめろ……いやぁ……!」イヤイヤ

勇者「なに、本当にエビの味なら目を閉じていればいい。それならエビだ」

竜姫「目を閉じようが鼻をつまもうが虫は虫じゃろうがっ!」
 

 
勇者「ドレインワームに限らず、パラサイトワームは高タンパク高ミネラルの非常に優れた食材だ」

勇者「ましてこれは食品として生産されているもので、雑菌や寄生虫の心配はない」

竜姫「ならばお前が喰えっ! ひとつと言わず全部喰えっ! わらわは絶対嫌じゃ!」

勇者「だから私が食べてもダメなんだ。君でなければ」

竜姫「い……いやーっ! 助けてーっ! 犯されるーっ!」ジタバタ

勇者「人聞きの悪いことを言わないでくれ」

竜姫「近づくでない! それ以上近づいたら舌を噛み切って死んでやるっ!」

勇者「それは困るな……君が死んだら私も共倒れになる」

勇者「だがそれは君も同じこと。どちらにせよ、今の私達は運命共同体だ」ガシッ

竜姫「ふがっ!?」

勇者「こうやって舌を掴んでいれば私の手を噛むこともできないだろう。さあ、目を閉じていてくれ」

竜姫「うーっ! うーっ!」イヤイヤ

勇者「咀嚼するのが嫌なら丸呑みに……いやしかし、この長さのものを嚥下できるか……?」

竜姫「うっ……うぅっ……」

勇者「暴れるな。瓶の蓋が開けづらい」

竜姫「……うぅぅぅぅ……ふえぇぇぇぇ……」ポロポロ
 

 
勇者「……」
 
竜姫「うえぇぇぇぇん……」

勇者「……」パッ

竜姫「ぐすっ……ひっく……」

勇者「……すまなかった。私がどうかしていた」

竜姫「うぐ、えっく」

勇者「状況が状況なだけに、冷静さを欠いていたようだ。別の方法を考えよう」

竜姫「……」グスッ

勇者「そもそも、答えがひとつしかないと決めつけていたのが私の思い上がりだった」

竜姫「……」

勇者「まさしく君レベルの増上慢だ。私らしくもない」

竜姫「……おい。途中からわらわ個人への攻撃になっておるぞ」

勇者「さっき言ったように、私達は運命共同体だ。一緒に解決策を……」ヨロッ

竜姫「? お、おい。どうし……」

ドサッ
 

 
竜姫「……! 勇者!?」

竜姫「おい、どうしたのじゃ! しっかりしろ!」ユサユサ

竜姫「勇者、お前は……まさか」

りゅうきは ゆうしゃのうわぎを ぬがした
ゆうしゃのからだに むらさきいろのはんてんが うかんでいる

ゆうしゃのからだは どくにおかされていた……!

竜姫「先の戦いで毒を受けておったのか……お前という奴は、こんな身体で」

勇者「……」

竜姫「……何故黙っておったのじゃ! わらわ達は運命共同体ではなかったのか!?」

竜姫「答えてみろ……答えてみろと言っておるのじゃ……」

勇者「……」

竜姫「わらわに気を遣ったのか……それともつまらぬ駆け引きのつもりか」

竜姫「この、大うつけが……!」

ゆうしゃは たおれたまま なにもいわない
いずれゆうしゃがちからつき しにいたることは だれのめにもあきらかだった

やがてりゅうきは ころがったままのビンに しせんをうつした……
 

 
――――――――――
三日後
王都・勇者の部屋
所持金:0G

 
 
勇者「ん……」


ゆうしゃが めをさますと そこはゆうしゃのへやの ベッドのうえだった……

僧侶「勇者さん……!」

勇者「僧侶……? ここは……」

僧侶「勇者さんの……お部屋です……良かった……!」

勇者「私は、どうしてここに……? 竜姫は……」

僧侶「竜姫さんは……そこにいます……」

勇者「?」

そうりょがゆびさしたほうをみると ベッドにつっぷして ねむっている
りゅうきのすがたがあった……

竜姫「ぐぅ……」zzz…

勇者「彼女が、私の看病を?」

僧侶「そうらしい……です……」

勇者「私はどのくらい眠っていたんだ」

僧侶「三日……です……三日前に、竜姫さんが教会に……駆け込んできて……」

僧侶「私も……昨日ようやく戻ってこられて……後から聞いた話なんですけれど……」

勇者「……よく生還できたものだ。竜姫のおかげだな」
 

  
勇者「さて……報告書の提出をしなくては。僧侶、そこの机を使わせてくれ」

僧侶「まだ動いちゃダメです…………絶対、安静です……」

勇者「しかし」

僧侶「……竜姫さん……起きちゃいますよ……?」

勇者「……」

竜姫「ぐぅ……」

勇者「……そうだな。もうしばらくは大人しくしていよう」

僧侶「それじゃあ……私はお粥とか、作りますから……何かあったら呼んでください……」

勇者「ああ、ありがとう」

勇者「……」

竜姫「……」

ゆうしゃは ふとんのうえになげだされた りゅうきのてをにぎり ささやいた

勇者「……ありがとう、竜姫」

そうすると りゅうきはゆうしゃのてを ギュッとにぎりかえしてきた
ゆうしゃは ちいさくわらい ふたたびめをとじた……



竜姫(……この、馬鹿者が)
 

 
勇者「それで、結局アレを食べたのか?」

竜姫「……の、のーこめんとじゃ」

 
 
 
というわけでお題消化に逝ってきます\(^o^)/


――――――――――
某日
酒場

 
 
賢者「んっ……んっ……んっ……ぷはーっ! もういっぱーい!」


盗賊「……ちょっと賢者。もうよしなよ。流石に飲みすぎじゃないかい?」

賢者「何を言いますか。ボクは酔ってなんかいません!」キリッ

盗賊「酔っ払いは皆そう言うもんだよ。ほら、貸しな」グイッ

賢者「あっ、ちょっ……もー! 盗賊さんはそうやってボクを子供扱いにして!」

盗賊「自分の酒量を弁えないのはガキの証さ。こんなところに連れてきておいてなんだけどね」

賢者「ボクは子供じゃありませんよぉ。その証拠にほら、このナイスバディを見てください」

盗賊「ナイスバディ? よく言うよ。中学生みたいな体型しちゃってからに」

賢者「でーすーかーらー、需要に応えてあげてるんですよ。皆さんこういうのがお好きなんでしょ?」

賢者「貧乳、低身長、ショートヘア、ミニスカートから覗くスラッとした美脚。役満ですよ、役満」

賢者「まったくちょろいもんです。そんじょそこいらの貧乳には辿り着けない境地ってやつですね」キリッ

盗賊「そういう発言はファンを減らすからやめときな」

賢者「ていうかよく考えたら貧乳なんてボクだけじゃないですかッ! ナメてんのかド畜生がッ!」ダンッ

盗賊「はいはい」

賢者「盗賊さんといい僧侶さんといい竜姫さんといい、なんでおっぱい偏差値の高い人ばかり……」

賢者「こんなの何かの間違いです! 誰かの陰謀です! 作者の趣味です!」バンバン

盗賊「まあ作者の趣味なのは確かだろうけれどさ」
 

 
賢者「むっ! ちょっとそこ行く僧侶さん! 止まってください」

僧侶「えっ……? な、なんですか……?」ビクッ

盗賊「ちょっと賢者、僧侶にまで絡むのはやめなって」

賢者「まあ座ってください。ほら、ここです」ポンポン

賢者「とりあえず駆けつけ一杯。さあ、どうぞ」

盗賊「……悪いね、この子相当酔っ払っちまってるんだよ」

僧侶「は、はあ……」

賢者「大体ですねぇ。僧侶さんには前から言いたいことがあったんです」

僧侶「な……なんですか……?」

賢者「ぶっちゃけた話、勇者さんのどこらへんをお好きになったんですか?」

僧侶「えっ……? そ、それは……その……」///

賢者「あんな人格破綻者のどこに魅力を感じたんです? どうにも解せません」

僧侶「それは……真面目で、優しくて……とってもかっこよくて……」///

賢者「そんなカマトトぶった反応は要りませんから。まあカマトトでしょうけど」グビグビ

賢者「どうせアレでしょう? 聞きかじりの知識ばかり豊富で異性との交際経験もない処女が」

賢者「勇者さんみたいな胡散臭いイケメンの優しそうな言葉にコロッと行ったんでしょう」

僧侶「そ……そんなこと……ないです……」プルプル

賢者「何が『そんなことない』んです? 処女の方? それともコロッと行った方ですか?」

僧侶「え……えっと……それは……」
 

 
賢者「こんな大きなおっぱいをぶら下げといて……まあ勇者さん相手じゃ何の意味もないですね」グワシッ

僧侶「ひゃうっ……!?」

賢者「おーおー、不規則な生活になりがちの研究職のくせになんですかこのワガママなおっぱいは」モミモミ

僧侶「やぁ……あっ……」

賢者「ボクがこの体型を維持するためにどれだけ頑張っているか……なんか腹立ってきましたね」モミモミ

僧侶「あぁっ……んんっ……」///

賢者「こんなスタイルいいのにどうせ処女なんでしょう? 口だけが達者なトーシロですか」モミモミ

賢者「ただのカカシですね。まったくお笑いです。勇者さんがいたらあの人も笑うでしょう」モミモミ

盗賊「その辺にしときな、賢者。僧侶が困ってるだろ?」

僧侶「はぁ……はぁ……」///
  
盗賊「大体、他人のことを言うんなら、アンタだって恋愛の経験があるようには見えないよ」

賢者「当然です。プロですから」キリッ

盗賊「何が当然なんだか」

賢者「いいですか、盗賊さん。先程盗賊さんはファンについて触れてましたけど」

賢者「例えばボクに付き合ってる男性がいるとか、過去に男がいたとか、処女じゃないとか」

賢者「そんな設定があったらどうなると思います?」
 

 
盗賊「それは、まあ、いいんじゃないかい? 別に自由だと思うけどねぇ」

賢者「その認識は甘いですね。甘々です」

賢者「砂糖と蜂蜜と練乳とガムシロップをコンクリートミキサーにかけてぶちまけたくらい甘いです」

盗賊「その例えはよくわからないけど、どうしてだい?」

賢者「もう20歳を超えてる盗賊さんならいざ知らず、花の17歳のこのボクにそんな設定はありえません」

盗賊「ちょっと表出な」ガタッ

賢者「まあ落ち着いてください。ナイフを突き付けられちゃあビビって話もできません」グビグビ

盗賊「大体、17歳が酒を飲むのもどうなんだい? あたしの故郷じゃ15から飲んでたけど」

賢者「気にしたら負けです。とにかく、男の人っていうのは処女がお好きですから」

賢者「そうじゃなかったら中古だのビッチだの呼ばれて叩かれますからね。仕方のないことです」

盗賊「ファンを減らすどころか敵を増やしてどうするんだい」

賢者「ボクは賢者ですから。真理の探究に余念がないんです」グビグビ

盗賊「それじゃあたしはバカのままで構わないね。真理とやらはあたしにゃ向かない代物みたいだ」

賢者「ええ、真理というのは時として残酷なものです」

賢者「ですが勇者さんもボクと同じことを考えるはずです。あの人もまた真理の探究者ですからね」

盗賊「いや、あの勇者が処女だのなんだのってのはイメージしにくいんだけど」

僧侶「でも、ロリコンの呪いの時も……すごく真摯に……語ってたし……」ムクッ

賢者「おやおや? なんですかそれ? すごく面白そうな匂いがしますよ」
 

 
   ~説明中~
 
賢者「あははははははっ! そんなことがあったんですか!?」ケラケラ

盗賊「く……くくくっ。ホントかい、それ? まさかあの勇者がねぇ」プークスクス

僧侶「は……はい。その時、勇者さん……」

僧侶「女子中学生は老婆だ。女子高生は即身仏だ。そして女子大生は生きる化石に等しい」キリッ

僧侶「なんて……言ってて……」

賢者「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

盗賊「キャラ崩壊なんてもんじゃないねぇ、そりゃ。あいつも大変な目に遭ってたもんだ」

僧侶「それからしばらくの間……勇者さんの、女子小学生を見る目が……ちょっと……」

賢者「ガチでロリコンを拗らせちゃったんじゃないんですか? それ」

僧侶「私も……あんな、熱のこもった目で……見られたい……」///

盗賊「……こりゃ重症だね。恋の病ってやつは、まったく」

賢者「まあお気持ちはわかりますよ。普段の勇者さんはこの世界の何者に対しても冷淡ですからね」

賢者「魔物を解剖する時も、敵に止めを刺す時も、昆虫学者がカブトムシを見るような目をしてました」

賢者「ハッキリ言ってしまえば社会不適合者、サイコパスの類です。単なる変人の枠には収まりません」

盗賊「随分な人物評だね。アンタだって、そんな勇者にずっとついてきたんだろうに」

賢者「ずっと行動を共にしていたからこそです。あの人のことはボクが一番よく知ってますから」

僧侶「む……」
 

 
僧侶「で、でも……私は……勇者さんの好みに、全身全霊全力全開で合わせます……努力します……」

盗賊「いや、それはちょっと危ないんじゃないかと思うけど」

僧侶「勇者さんがロリコンなら……若返りの薬だって作ります……10歳くらいまで若返ります……」

僧侶「勇者さんが望むなら……大統領だってブン殴って……神様だってバラバラにします……」

賢者「……でも、勇者さんって家庭を持つイメージないですよね」

盗賊「そりゃあ確かに。嫁さんや子供といるところなんて想像もつかないよ」

賢者「なんというか、そうですね……教授と同じ人種です、多分」

盗賊「……」

僧侶「教授……?」

賢者「偉大な研究者が、良き夫、良き父であるとは限らない。まあそういうことですよ」

賢者「でも、これはボク達にも言えることだと思いませんか?」

賢者「どんな社会的地位や功績があっても、家庭人として良妻賢母になれるとは限りませんから」

盗賊「そうだね……外へ向かおうとする女ほど、家を守るのには向かないのかも知れないね」

僧侶「……その点で言うと、竜姫さんは……?」

盗賊「あの子かい? う~ん……どっちかと言えばインドア派、なのかねぇ?」

賢者「どちらにせよ、あまりいい母親にはなれそうにありませんけどね」
 

 
賢者「親から子へ、師匠から生徒へ、前の世代から後の世代へ贈り物をするのが人の営みです」

賢者「その逆だって然りのはずです。その営みの本質は、交換ではなく贈与なんです」

賢者「でも尽くされることや捧げられることに慣れ切って、一方通行の贈り物しか求めない人は」

賢者「きっといい親にはなれません。ボクはそう思います」

僧侶「……いいえ……竜姫さんも……最近、変わりましたよ……?」

僧侶「勇者さんに、ちゃんと……お礼とか……謝罪とか……できるようになりました……」

僧侶「……竜姫さんも……勇者さんと一緒に……過ごしているうちに……」

僧侶「たくさんのものを貰って……それで……今、お返しをしようとしてる……」

僧侶「ちょっと……人より、ゆっくりしてるだけ……だと思います……」

賢者「……そうですか? まあ、別にどうでもいいですけれど」

盗賊「まあ、いい傾向じゃないか。成長してるってことだよ」

盗賊「それより賢者。さっきの論はなかなか正鵠を射てると思うよ。贈り物がどうこうっての」

盗賊「嫌いじゃないよ、そういう理屈は。あたしらの近くにもそういう生き方をしてる奴がいるしさ」

賢者「魔王さんのことですか? あの人はただの無節操ですよ。論評に値しません」

盗賊「無節操は無節操かもしれないけど、ロマンチストではあるね」

僧侶「いつだって……他人を愛して、他人から……愛される喜びを……求めてる……」

盗賊「だから、バカみたいに無防備に自分を曝け出して見せるんだね。相手に近づきたいと思うから」

盗賊「ある意味じゃ勇者とは似た者同士だよ。向いてる方向は全然違うけどね」
 

 
賢者「魔王さんは遊び人ですから、きっと浮気しまくりで大変ですよ。誠実な人とは言えません」

盗賊「あいつにとって、女はみんな一緒なのかもね。悪い意味じゃなくさ」

賢者「皆等しく愛すべき対象。ハーレム願望ですかね? 男性の不実を象徴してますよ」

僧侶「女の子は……自分だけを見て、自分だけを……愛して欲しいから……」

僧侶「そういうのは……ちょっと……嫌です……」

盗賊「いいや、魔王は一途で誠実だと思うよ。対象の範囲が広すぎるだけでさ」

賢者「いえいえ、一途というなら戦士さんでしょう。あの人はたった一人しか見てませんよ」

盗賊「ああ……まあ、アレは今時珍しいくらいの一直線っぷりだねぇ」

僧侶「戦士さんは……すごく親切です。家事とか……なんでもやってくれて……」

賢者「えっ?」

盗賊「……アンタら、一緒に住んでるのかい?」

僧侶「戦士さんが、どうしてもって……勇者さんの仲間だし……誰に狙われないとも限らないって……」

賢者「もう手遅れだと思いますけど。僧侶さんを猛烈に狙ってる人が約一名いるんですけど」

僧侶「始めのうちは、不器用で……掃除とかすると……何か壊しちゃったりしてて……」

僧侶「でも……最近は……なんでも器用にこなして……私の欲しいもの、なんでも用意してくれて……」

僧侶「戦士さんは、すごく……紳士な人……です……」

賢者「……あー、こりゃアレですね。戦士さんは」

盗賊「女をダメにする男だね。献身もここまで来ると奴隷と変わんないよ」

賢者「しかも自分から進んで番犬に甘んじる辺り、つける薬ないですね」
  

 
賢者「まあお二人とも粘着質というか愛が重いというかストーカー気質なところがありますし」

賢者「お似合いっちゃお似合いでしょう。きっと気が合うと思います」

盗賊「コラ、あんまり適当なこと言わない。大体、戦士がそうなってんのは僧侶にも原因があるよ」

僧侶「私……ですか……?」

盗賊「そうさ。アンタにその気がないならハッキリとフってやらないと」

盗賊「アンタが勇者にベタ惚れなのは知ってるけど、戦士はどうだい? そういう対象になる?」

僧侶「え……と……わからない、です……でも、いいお友達では……あると思って……ます……」

賢者「うわぁ……ボク戦士さんのことが可哀想になってきましたよ」

盗賊「うまく行くのは今のうちだけで、いつか破綻するよ? キッチリした方がお互いのためさ」

僧侶「でも……戦士さん、すごく一生懸命で……断るのは悪い気が……して……」

賢者「番犬兼家事手伝いに甘んじさせておく方が気の毒ですよ」

盗賊「……それにね、種族の違いだってある。あたしらの10年と戦士の10年は同じじゃない」

盗賊「同じことは魔王や竜姫にも言えることなんだけどね」

盗賊「あたしらが皺くちゃの婆さんになっても、きっと戦士は今のまま。時間の進み方が違いすぎるのさ」

盗賊「そういう色んなこと呑み込んで、それでも一緒に生きていけるんじゃなけりゃ、辛いだけ……」

僧侶「……そう、ですね……私も……そう思います……」

僧侶「生命の尺度の違い……それをどうにも出来なかった人達を……私、知ってます、から……」
 

 
賢者「以前、勇者さんから聞いたことあります。確か海王の」

僧侶「はい……」

盗賊「もし、連れ合いに先立たれたら……か。あたしならどうするかねぇ」

僧侶「後を追うのか……それとも、その人のことを想って……生き続けるのか……」

僧侶「海王は……一緒に逝くことを選んで……きっと今でも、幸せな夢の中で歌い続けてる……」

賢者「それは愛する人の死を認知することを拒んだ、とも解釈できます。死を受け入れられなかったと」

僧侶「でも……きっと、受け入れてしまったら……孤独に耐えられないから……」

盗賊「だけど、あたしはそうありたいとは思わないよ。受け入れて、耐え忍ぶ愛情だってあるはずさ」

賢者「どちらにせよ茨の道です。死を肯定するのも、否定するのも」

賢者「家族、親友、恩師、配偶者。愛する人との死別は、どうしたって辛いですから……」

僧侶「良き時も、悪しき時も……富める時も、貧しき時も……病める時も、健やかなる時も……」

僧侶「二人で一緒に、共有して……克服して……求め合って……愛し合うのに……」

僧侶「死が二人を分かつ時、終わってしまうなんて……悲しすぎます……」

盗賊「……大丈夫、終わらないよ。少なくともあたしはそう思うね」

盗賊「どっちかが先に死んでも残された方には思い出が残ってる。愛して、愛された記憶が残ってる」

盗賊「時間が経って、くすんでも色褪せても、決して消えたりしない」

盗賊「それを記録に残すことも、誰かに語り伝えることもできる。だから、終わったりしないさ」
 

 
盗賊「賢者が言うように、贈り物をするのが人の営みなのだとすると」
 
盗賊「見たもの、聞いたもの、感じたこと。怒りや悲しみや喜び。それに愛してるって気持ち」

盗賊「人が語り伝えるものはみんな、等しく贈り物なのさ。人が命を繋いでいく営みそのもの……」

僧侶「愛情……も……? 人を愛すること、それ自体が……?」

盗賊「そうさ。誰かを愛することは、自然と子供や孫にも伝わって、受け継がれてく」

賢者「そうやって後の世代に伝えていける……だから、愛は消えないと?」

盗賊「元より、これだっていう色や形があるようなもんでもないからね。消えるも消えないもないさ」

盗賊「……おっと。話し込んでたらずいぶんと時間が経っちまったね」

盗賊「これからどうする? 別の店で飲み直すかい?」

賢者「まあ、すっかり酔いも醒めちゃいましたけどね……ボクは遠慮しておきます。明日早いですし」

僧侶「私も……研究所に用事が……」

盗賊「じゃあ解散する? あたしはもうしばらく飲んでるけど」

賢者「そうですね、そうしましょう。じゃあ盗賊さん、おやすみなさい」

僧侶「おやすみ、なさい……」

盗賊「はいよ。じゃあ、また」

ザッザッザッ……
 

  
盗賊「……贈り物、受け継ぐ、語り伝える……ねぇ」

盗賊「変な話しちまったねぇ。盗みで生計立ててるあたしが言う話じゃなかったかな」

盗賊「他人の上前撥ねて生きてるあたしが、何を伝えるってんだか……」グイッ

盗賊「……」

盗賊「……あたしも、伝えなきゃねぇ」

盗賊「伝えなきゃいけないことも、遺していかなきゃいけないことも……」

盗賊「まだたくさん、残ってるはずだから……」

 
 
 
とうぞくは さかずきをかたむけ さけをあおった


のうりにうかんでくるのは ふるさとの さばくのよぞら
そして かぞくのすがただった……
 

テーマは愛です。多分。
あと微妙にパラレル設定です。

キャラクター相関図を整理したら様々な組み合わせを模索しうることに気づきましたが
メイド×盗賊の線も濃厚だと思いました。もうメイドの出番はないでしょうけど。

最近リアル生活が強いられてるので続き投下がもう少し遅くなってしまうかもです
毎度毎度申し訳ありません

 
――――――――――
二日前
王都・式典会場

 
 
りゅうじんたちが しきてんにらんにゅうしたことで かいじょうは パニックにおちいっていた!

ひとのなみにさからって りゅうきは かいじょうにむけて はしっていく!

竜姫(あの大うつけどもめが……! 大した忠義じゃが、今は余計なお世話もいいところじゃ!)

竜姫(今更魔界に……父上のもとに戻ったところで、何になる……!)

かいじょうでは りゅうじんたちと きしだんのたたかいが くりひろげられていた!
きしだんは おうぞくをにがすためのじかんかせぎをしているが しだいにおされていく……!

そのとき ひとりのりゅうじんが りゅうきがかけよってきたのにきづいた

竜人ω「……お嬢! 何故ここへ!?」

竜姫「それはこっちの台詞じゃ。お前達、何をやっておる!」

竜人ω「見ての通りでさぁ……待っててくだせぇ。すぐに騎士団を片付けて王の首を獲ります」

竜姫「そんなこと、誰が頼んだ! わらわは父上のもとになど戻らぬ!」

竜人ω「いいえ、お嬢には戻ってもらわにゃあなりやせん。そのための戦なんでさぁ」

竜姫「貴様……!」ガッ

竜人ω「お嬢がいれば、竜王様の一派に対する掣肘にもなりやす。あなたにはそれだけの価値がある」

竜姫「それが本音かえ? わらわを祭り上げて父上に対抗しようと?」

竜人ω「ええ……ですが、それが全てじゃありません。俺らはお嬢の身を案じて」

竜姫「……話にならぬ。いいから今すぐに退け! いかにお前達が竜王軍の精鋭といえど……!」
 

  
ドォォォォォン!!

竜姫「! 今の爆発は……」

竜人ω「どうした! 何が起きた!?」

竜人ψ「わからねぇ! 奴ら、何をやった!?」

竜姫「風に魔力の残滓を感じるが……高位の爆発呪文……!?」

竜人ω「チィッ……構うものかよ! 怯むな! このまま突っ切れ!」

ウオォォォォォォォ!!

りゅうじんたちは おたけびをあげて とつげきしていく!

竜姫「待て! お前達、退けというのがわからぬか! わらわの言うことが聞けぬのか!?」

竜姫「……くっ! あの大うつけども、完全に頭に血が上っておるではないか!」

竜姫(……)

竜姫(……どうする。このまま、戦闘の混乱に乗じて王都から脱出するか?)

竜姫(じゃが誰の助けもなく王都を脱してどこへ行く? 勇者を追って火竜山脈まで?)

竜姫(現実的ではない。転移呪文は行ったことのある場所にしか行けぬ。行ける場所にも制約がある)

竜姫(それともあ奴らに便乗して、本当に王の首でも獲ってしまうか?)

竜姫(王の首を手土産に父上に許しを乞う? 馬鹿な。そんな選択肢は初めから存在せぬ)

竜姫(じゃが……もはや勇者を待つことも叶わぬ。どうあっても決断せねばなるまい)
 

 
竜姫(……)

竜姫(わらわは、さっきから何を恐れている? 死ぬことか? 戦うことか?)

竜姫(違う。成る程確かに、わらわ自身の生き死により大切なことなど他にあるまい)

竜姫(じゃがそうではない。今のわらわには、それよりも優先されるべきだと感じていることがある……)

竜姫(……)

 
  


 
勇者『私は死ぬつもりはない。必ず帰ってくる』



勇者『だから、私を信じて待っていてくれ』

 
   


 
竜姫(……そうじゃ。何よりもあ奴の言葉が、わらわの胸に突き刺さっておる)

竜姫(わらわは……勇者との約束を違えることを恐れている……)

竜姫「……」

竜姫「しかし、急進派の暴走とはいえ、事態は動いてしまった。後戻りできぬほどに」

竜姫「……もはや、是非もなし……!」
 

 
りゅうきは じゅもんを となえた

あおじろいオーラが りゅうきのからだをおおっていく……
すると りゅうきのからだが じょじょにきょだいかし すがたがへんかしていった!

りゅうきは あざやかなさくらいろの からだをもつ ドラゴンにへんしんした!

りゅうきは つばさをひろげ とびたった!

グオォォォォォォ!!

りゅうきは おたけびをあげ りゅうじんたちと きしだんのたたかいに わってはいった!
しっぽをふるって きしだんをはじきとばし りゅうじんたちにねんわをおくった!

竜姫『お前達、退け! 今は一旦退くのじゃ!』

竜人ψ「お……お嬢ッ!? その姿は!」

竜姫『この姿はダサいから嫌いじゃが、今はそうも言っていられまい……』

りゅうきは くちから もえさかるほのおのブレスをはいた!

きしたちは とつぜんあらわれたドラゴンに あっとうされている!

竜姫『わらわが時間を稼ぐ。お前達は撤退せよ!』

竜人ω「し、しかし!」

竜姫『四の五の言うでない! どのみち、このまま玉砕覚悟で戦うよりマシな選択じゃろうに』

竜人ψ「お嬢……」

竜姫『案ずるな。わらわも適当なところで逃げ出す。さあ、早う行け!』
 

 
竜人ω「……お嬢、ご無事で!」ダッ

りゅうじんたちは うしろがみをひかれるおもいだったが 
りゅうきのめいれいにしたがい そのばをにげだした!

ちりぢりににげだしたりゅうじんたちを みおくって りゅうきはつぶやいた

竜姫『――そうじゃ。それでよい。誰も死にたくはなかろう』

竜姫『さて……』

りゅうきは つばさをはばたかせ ぼうふうをおこした!

ゴォォォォォォ!

騎士α「う……うわぁぁぁぁっ!?」

騎士β「風が……なんてパワーだ……ッ!?」

じゅもんをとなえようとしていた きしたちは このはのようにふきとばされていく!

竜姫『さあ、お前達。サービスじゃ。今のうちにわらわの姿を目に焼きつけておくがいい』

竜姫『父上を倒し、竜族の頂点に君臨するわらわの姿をな!』

グオォォォォォ!!

りゅうきのおたけびが おうとにひびきわたった……!
 

 
――――――――――

 
 
大臣「な、なんなのだ……何故式典に魔族が……しかもあのドラゴンは……!?」ヨロッ


騎士γ「だ、大臣! お気を確かに!」

騎士δ「陛下は既に避難されました。大臣もお早く」

大臣「そ、そうだな……貴様ら、必ずやあの魔族どもを討て。あのドラゴンもだ。奴らを生かして帰すな」

騎士γ「ハッ!」

???「……ああ、あれは違いますね。生粋のドラゴンではありません」

大臣「な……何?」

???「恐らく魔法でドラゴンに化けているんですね。変身呪文にも竜化という特殊な分類が……」

騎士δ「貴様は? どこの所属だ」

呪術師「おっと、失礼しました。僕は王立魔法研究所の呪術師です」

呪術師「僕も式典に出席していたんですが、今しがた逃げてきたところなんですよ」

大臣「ドラゴンに化けている、と言ったか。では倒せるということか?」

呪術師「まあ、そうなりますね。こればかりは変身した術者のレベルによりますけど」

呪術師「しかし気になるのは、あのドラゴンが本気で戦っているように見えないところですね」

呪術師「味方の撤退の時間を稼いでいるようにも見えます。陽動作戦かな?」

大臣「ええい、何でもよい! き、貴様、貴様も騎士団に協力しろ。魔法のことなら専門であろうが」

呪術師「いいえ大臣、僕の専門は呪術で……それに僕は戦闘訓練など受けていませんし」

大臣「何でもよいと言っただろう! さ、さあ行け、すぐ行け、早くしろ。あれを何とかせい!」

呪術師(……やれやれ)
  

 
………………
…………
……

とつじょあらわれたドラゴンは きしだんをあいてに ごかくいじょうに わたりあっていた

くちから ほのおのブレスをはき ほのおやいかずちのじゅもんをあやつる ドラゴンに
きしたちは くせんをしいられていた……

呪術師「あらら……これはまた派手にやってるなぁ」

騎士γ「あのドラゴンは魔法も使えるのか……? やはりあれは竜化している魔族だと?」

呪術師「でしょうね。まあ、そうとわかればやりようはある」

騎士δ「どうするのだ?」

呪術師「とりあえず、奴の注意を引きつけておいてください。僕にいい考えがある」

騎士γ「考えとは?」

呪術師「要するに、相手が呪文で変身しているなら、それを解呪してしまえばいいんですよ」

騎士δ「だが術式構成がわからなければ解呪のしようがないだろう」

呪術師「ええ。だから、もう少し強引な方法を取らせてもらうわけです」

呪術師「つまり……竜化を維持できなくなるくらいに魔力を消耗させてしまえばいい、ってこと」

騎士γ「そんなことができるのか? 本当に?」

呪術師「任せてください。この手の外法に関しては、あなた方より僕らの方に一日の長がある」

騎士γ「……研究所の連中は、騎士団に負けず劣らずの異能集団と聞いていたが……」

呪術師「いやぁ、それほどでも」

騎士δ「お手並み拝見だな。頼んだぞ」ダッ

呪術師「了解。あなた方もお気をつけて」
 

 
きしたちと ドラゴンのたたかいを みまもりながら
じゅじゅつしは じゅつしきをこうちくした
さまざまなどうぐを ひろげ のろいのぎしきのじゅんびを ととのえていく……

呪術師「……さて。ドラゴン相手に使うのは初めてだけど、どうかなぁ」

じゅじゅつしは めをとじ じゅそをとなえた!

てににぎった どくのくさがせいちょうし つぼみがはなひらいていく……
そりかえったくきに げんがてんかいされ どくのくさは ゆみにかわった!

呪術師(この毒花の弓で呪いの矢を射れば、たとえ神が相手でも呪い殺せる)

呪術師(ま、本来の目的である暗殺向きじゃあないが……)

呪術師(状況が状況だ。今は隠密性よりも確実性が重要……!)

じゅじゅつしは ゆみをひき ドラゴンにねらいをさだめた!

やにまりょくがこめられ やじりに むらさきいろのひかりがやどる!

呪術師「魔力充填……OK、良好だ。これからかすっただけでも充分……!」ギリギリ

呪術師「……まだだ……左へもう20センチ……」ギリギリ

呪術師「いい子だ、暴れるな……そのまま……」ギリギリ

……グオォォォォォ!!

呪術師「……今だッ!」バシュッ!

ドラゴンが つばさをひろげたしゅんかん のろいのやがはなたれた!

のろいのやは ドラゴンのかたほうのつばさをうちぬき せなかにつきささった!
 

 
呪術師「――地獄を楽しみな」
 
せなかにつきささったやは くろいきりとなって ドラゴンのからだに きゅうしゅうされていく!
うちぬかれたつばさが みるみるうちに くさりおち きずぐちがどすぐろく そまっていく……!

ズゥゥゥゥゥン……

とびたとうとしていたドラゴンは バランスをくずし そのばにくずれおちた!

どくばなのゆみは じゅじゅつしのてのなかでかれて ボロボロとくずれていった……

のろいにのたうつドラゴンは きしだんに ほういされつつあった
じゅじゅつしは のろいのききめをたしかめるため そのばにむかった

呪術師(……さて、どうなったかな? 呪いはちゃんと効いてるみたいだけど)

呪術師「騎士団の皆さん。大丈夫です? 怪我はありませんでした?」

騎士γ「……流石だ。ドラゴンをこうも容易く」

騎士δ「しかし何故殺さなかった? 貴様なら一撃で仕留めることも不可能ではなかったはず」

呪術師「言ったでしょう? こいつは竜化呪文で変身した魔族だって」

呪術師「ただの魔物なら一発で呪い殺したところですが、相手が魔族だとわかっていたのでね」

呪術師「生かしたまま捕らえて尋問なり何なりすればいいでしょう。僕にしては気を利かせた方ですよ」

騎士γ「成る程な。知識と技術に裏打ちされた余裕というわけか」

呪術師「いやぁ、それほどでも」
 

 
そのとき じめんにたおれているドラゴンのからだに いへんがおきはじめた!

さくらいろのうろこが はがれおち するどいきばや つめは みじかくなり
きょだいなからだは みるみるうちに ちいさくなっていく……

騎士γ「! これは」

呪術師「ほら、僕の言った通りだ。霊障に魔力を吸い取られて竜化を維持できなくなっているんですよ」

騎士δ「よ、よし。完全に変身が解けたら捕らえるぞ」

そうしているあいだにも ドラゴンのへんしんはとけ 
にんげんとかわらないおおきさにまで ちぢんでしまった

からだつきや ながいかみのけから どうやらおんなのようだ……

呪術師「……それにしても、王都のド真ん中で暴れるなんて、とんでもない実力者かとんでもない馬鹿か」

呪術師「せっかくだし顔を見ておこうか。竜化呪文が使えるほどの魔族なんて……」

じゅじゅつしは たおれているまぞくのかおを のぞきこんだ

そして じゅじゅつしは――

呪術師(――?)

みおぼえのないはずの まぞくのかおに どこかデジャヴを おぼえた……
まぞくが きしだんにつれていかれていくあいだ じゅじゅつしは きおくをたどった

そして そのこたえに たどりついたとき――

じゅじゅつしのまわりには だれも いなくなっていた……
 

 
――――――――――
現在
王宮・地下牢

 
 
りゅうきは いたみと きんぞくのこすれるおとで めをさました……


竜姫「ん……くぅっ……」

くらいろうごくのなかで りゅうきは くさりにつながれていた……

すでに へんしんじゅもんで にんげんのすがたをたもつこともできず
きずだらけの まぞくのすがたのまま とらえられている

竜姫「ぐっ……うあぁッ……!」

竜姫「ッ……はぁ、はぁ……」

りゅうきは せなかにふかいきずを おっていた
きずぐちは どすぐろくそまっており げきつうが りゅうきをさいなんでいた……

竜姫(ここは……牢獄? わらわは……捕まった……?)

竜姫(ダメじゃ、記憶が混濁しておる……ハッキリと思い出せぬ……)

竜姫(……それに、背中の傷は何なのじゃ……竜族の再生能力を持ってしても回復できぬとは……)

竜姫(ただの傷ではない。魔力も体力もこの傷に奪われておる……指一本動かすことさえ辛いなど……)

竜姫(……)

竜姫(王都に潜伏していた魔族をただで帰すわけもない……わらわの命運も尽きた、か……?)

竜姫(せめて勇者がどうしているのか知りたいが……あ奴は父上と戦ったのかえ?)

竜姫(僧侶も……あ奴は勇者と違って戦いには向かぬ。無事でいればよいが……)
 

 
???「――ずいぶんな格好だねぇ、竜姫さん」

竜姫「!」

りゅうきが かおをあげると ろうごくのまえに ひとりのおとこがたっていた!

竜姫「お前は……呪術師……?」

呪術師「ああ、やっぱり竜姫さんなんだ。まさかと思ったんだけど、嫌な予感に限って的中するねぇ」

呪術師「しばらくぶり……と言っても、その姿の君と話すのは初めてだけれど」

竜姫「……何用じゃ。まさか、わらわを助けに来たなどとは言うまい」

呪術師「ああ、わかる? 助けてあげたいのは山々なんだけどね」

呪術師「僕は王立魔法研究所の職員で、公務員みたいなもんだからさ」

呪術師「公費で魔法の研究をさせてもらってる以上、国に対してある程度の義理立てをしないといけない」

呪術師「こう見えても僕は愛国者のつもりだからね。魔族の君を逃がすのはちょっとまずいんだ」

竜姫「ならば、何故そこにおる……わらわは見世物ではないぞ」

呪術師「いやぁ、傷の具合はどうかなって思って。どうかな? 痛みと疼きが止まらないんじゃない?」

竜姫「この傷はお前の仕業かえ……?」

呪術師「そうだよ? 対象に呪いをかけて、決して癒えることのない傷を負わせる。僕の専門分野だ」

呪術師「人間相手はともかく、竜族に効くかどうかまではわからなかったんだけど……」

呪術師「まあ、これで研究成果を上の連中に示すこともできた。ある程度の面目は立ったわけだね」

竜姫「……手の込んだことを。それほどわらわが恐ろしいか?」

呪術師「いや、別に。でもまさか君に対して使うことになるとは思ってなかった。残念だよ。本当にね」
 

  
竜姫「……去ね。お前の顔なぞ見たくもないわ」

呪術師「そうだろうね。僕もそう思うよ……君が今一番求めてるのは、多分勇者君だろう?」

竜姫「……」

呪術師「でも大臣や騎士団は、勇者君を魔王軍のスパイと通じていた売国奴だと言っていたよ」

竜姫「売国奴じゃと? 勇者がか? 何を……」

呪術師「君の持ち物を調べたり、探査呪文で魔力の軌跡をトレースしたりしてわかったらしいんだけど」

呪術師「勇者君が君を匿っていたことが露見した。僕もその辺の証言をさせられたよ」

呪術師「詳しくは聞けなかったし、わからないけど……勇者君も無事ではいないだろうね」

竜姫「! それはどういう……うあぁっ!」ズキッ

呪術師「動かない方がいい……さっきも言ったけど、僕には詳しいことはわからない。そんな権限もない」

呪術師「ただの益体のない妄想にすぎないけど……まあ、君がこうして捕まってしまったのだから」

呪術師「君と行動を共にしていた勇者君に何らかの制裁が加えられる可能性は極めて高い。そうだろ?」

竜姫「それは……」

呪術師「まあ、僕個人の感情としてはね」

呪術師「勇者君は国を裏切ってなんかいないし、君もスパイなんかじゃない。そう確信してる」

呪術師「少なくとも僕が魔王軍のお偉いさんなら、君に諜報活動なんか頼まないよ」

竜姫「ふん……よくわかっておるではないか」
 

 
竜姫「じゃが気に食わぬ。そうも理解が及ぶなら、何故に唯々諾々として王宮に従う」

竜姫「わらわ達の件に関して証言をしたとも言ったな? 友を、勇者を売るような真似を……」

呪術師「勘弁してくれ。僕の立場では君の無実を証明することも、牢から出してあげることもできない」

呪術師「何しろ僕は人間で、君は魔族。敵性種族だ。表立って味方をすることはできないんだ」

呪術師「本当にすまないと思ってるよ。思う以外にどうすることもできないけど」

竜姫「……そんな言い訳をするために、わらわの前にノコノコと現れたのか」

呪術師「そういうことになる。情けない奴だと思ってもらって構わないよ」

竜姫「僅かなりとも忸怩たる思いがあるなら、わらわの前から消えよ。お前の一挙手一投足が目に障る」

竜姫「わらわにとってお前など知り合いの知り合いレベルの他人に過ぎん」

竜姫「そんなどうでもいい奴と世間話をする気にはなれぬ。さっさとどこへなりと去るがよいわ」

呪術師「……そうだよね。君はそう言うだろうな。うん。なんだか安心したよ」

呪術師「確かに、これ以上言葉を重ねても君を不愉快にさせるだけだ。僕はこの辺で退散するよ」

呪術師「これが最後になるかもしれないけど……とにかく、一言謝りたかった。それだけ」

竜姫「……聞こえなかったか? わらわはさっさと失せろと言うておるのじゃ」

呪術師「……ああ。それじゃあ、またね」

じゅじゅつしは りゅうきのろうごくのまえから たちさっていった……

やがてじゅじゅつしのあしおとが きこえなくなり ちかにはせいじゃくがひろがっていった……
 

 
――――――――――

 
 
ろうごくをでたじゅじゅつしは だいじんに ほうこくをおこなった……


大臣「――つまり、あの女は何の情報も持たないと?」

呪術師「はい。尋問する意味はありませんね。読心を試みても無益でしょう」

大臣「そんなはずはない! 勇者と通じて王国を転覆させようとしていたに違いないのだ」

呪術師「いえ、彼女はただの女です。魔王軍の工作員ではあり得ません」

大臣「貴様……どれほどの根拠を持って断言するか!? 奴は魔族だぞ……我らの敵なのだ!」

大臣「それが証拠に、式典の場に多数の兵を伴って乱入してきたではないか!」

大臣「初めから陛下の暗殺が目的だったのだ……勇者もそれに手を貸した。祖国に背いたのだ!」

呪術師「……お言葉ですが大臣。彼女が工作員ではなく、難民や亡命者だったという可能性は?」

呪術師「勇者が、戦地で行き場を失った魔族を保護していたというなら……」

大臣「ええい、黙れ! 貴様の意見など聞いておらん!」

大臣「とにかく、明日、予定通りあの魔族の処刑を行う……生かしてはおけぬ。生かしては……」

呪術師「……」

呪術師(……勇者選抜が自分の責任の下で行われたからって、ずいぶん必死になるもんだ)

呪術師(勇者君と竜姫さんの二人と面識のあった僕まで利用して……一介の研究員までをも)

呪術師(まあ、大臣の進退なんて僕には関係ないしどうでもいい。問題は……)

 
 
 
 
呪術師(……勇者君が生きていれば、彼は確実に竜姫さんを取り戻しに来るだろうということかな)

  

王立魔法研究所は王宮直轄の研究機関なので、勇者も僧侶も呪術師もエリートです。
そして勇者や呪術師レベルの変人があと数名ほどいます。

……という設定にすることで外伝や続編のボスとか黒幕とかを作りやすくするテスト。

9月中にはなんとか……もう少しお待ちください

正直忙しすぎワロエナイ
あまり期待せずにお待ちください

ようやく落ち着いてきたので10月中を目途に続きを投下したく思います
ですがあまり期待せずにお待ちくだしあ

10月中と言っておきながらもうすぐ12月

すまぬ……すまぬ……

年内に続きは難しいかもしれない……
本当にすまねえ……今の俺には謝ることしかできねえ……

あけましておめでとうございます。
今月中には必ずや……

 
――――――――――
数時間後
王都・王立魔法研究所裏門前
所持金:3287G

 
 
おうりつまほうけんきゅうじょのまえに えいへいが たっている……


しきてんでのじけんから おうとぜんたいで けいかいが つよまっており
よるのおうとは ひとのおうらいもなく ぶきみに しずまりかえっていた……

衛兵A「しかし、静かだな……外出禁止令が出されていればこんなものか」

衛兵B「式典に魔族が入り込んだとなればこうもなる。しばらくは厳戒態勢が続くよ」

衛兵A「わざわざこの研究所に忍び込もうとするような賊がいるとも思えないが……」

衛兵B「油断は禁物だ。有形無形を問わず、最先端の魔法研究の成果がここに蓄積されているんだ」

衛兵B「ここだって王都の火薬庫だと言っていい。普段はあまり意識しないが、重要度は非常に高い」

衛兵A「なるほどな……技術もまた宝、か」

衛兵B「それに、式典会場の広場で暴れ回った魔族が拘束されたのは知っているだろう?」

衛兵A「ああ。明日の昼に処刑するとかなんとか」

衛兵B「だが捕らえられたのはその一匹だけだ。他の連中はどこかへ逃げ去ってしまっている」

衛兵A「残りの奴らがそいつを助けに来るかもしれないって? まさか」

衛兵B「有り得ない話じゃない。そのまさかを想定して備えておくのが俺達の仕事さ。気を抜くなよ」

衛兵A「了解。何も起きないに越したことはないんだがな……」
 

 
そのとき いちだいのばしゃが けんきゅうじょにむかっていた

よるのまちにひびく うまのひづめのおとにきづいた えいへいたちは
ちかづいてくるばしゃに しせんをよこした

衛兵B「馬車……? 何かの業者か」

衛兵A「おい! そこの馬車、止まれ!」

御者「はい? なんですかね、兵隊さん」

衛兵B「通行許可証を見せてもらおう。現在王都は厳戒態勢を敷いているのだ」

御者「それはそれは……穏やかじゃない話ですなぁ。何かあったんですか?」

衛兵B「知らんのか? 王宮前広場で行われた式典に魔族が乱入し、陛下を亡き者にしようとしたのだ」

御者「なんと、そいつぁ驚きだ。それでこんなに人通りも少ないってわけ……」

衛兵A「そういうことだ。さあ、早く許可証を出せ」

御者「了解しました。ちょいと待ってて下さいな」

衛兵B「……いや、待て」

ぎょしゃは ばしゃのなかに はいっていこうとした
しかし えいへいのひとりが それをひきとめた!

衛兵A「どうした?」

衛兵B「貴様、研究所に出入りする業者だろう。何を運んできた?」

御者「……」

衛兵B「許可証程度なら偽造もできよう。万全を期すなら貨物も検閲しなければならん」
 

 
衛兵A「確かに……何か物騒なものを隠し持っていないとも限らんか」

衛兵B「積荷を検めさせてもらうぞ。許可証はその後だ」

御者「そうですか……わかりました。どうぞどうぞ、好きなだけ見てって下さい」

衛兵B「うむ。足元に気をつけろ、暗いぞ」

衛兵A「ああ」

えいへいたちは ばしゃのなかにふみこんだ……

ばしゃのおくには おおきなきばこが いくつもつみこまれていた

衛兵A「樽や木箱ばかり……見ろ、これなど人が2~3人は収まりそうだぞ」

衛兵B「何を運んできたのだ?」

御者「あー、ちょっと待ってください。今許可証を出しますので」

衛兵B「後でいいと言っただろう! 言え、何を運んできた」

御者「いやぁ、ウチは単なる下請けですし。運んできただけなんですよ。内容に関しちゃ知らされてなくて」

衛兵A「知らされていないだと?」

衛兵B「……開けるぞ。いいな」

御者「へぇ、どうぞどうぞ」

衛兵B「よし……明りを頼む」

衛兵A「OK」
 

 
えいへいAは じゅもんをとなえ まほうのかがりびを だした!
ばしゃのなかが あかるくてらしだされる……

えいへいBは つみにのなかでも いちばんおおきなきばこを あけた

衛兵A「見えるか? 何が入ってるんだ」

衛兵B「いや、まだわからん。緩衝材の木屑が詰まっているが……中には一体何が……」

えいへいBは きばこに てをのばした

そのとき はこのなかから なにものかのてが のびてきた!

衛兵B「ッ!? なっ……」

はこのなかからのびたてが えいへいBのうでをつかみ はこのなかにひきずりこんだ!
えいへいBが はこのなかにのみこまれ ふたがしずかにしまった……

衛兵A「どっ……どうした!? 何が起きたッ!?」

御者「あーっ!」

衛兵A「何だッ!?」

御者「ありましたありました、許可証! これでいいですかね?」

衛兵A「今それどころではない! Bが箱の中に引きずり込まれて……」

御者「はいコレ、確認してください。通行許可証です」

衛兵A「だから今それどころではないと……」

バキィッ!

えいへいAが ぎょしゃのほうへ ふりむくと ぎょしゃはえいへいAにむけて
てっけんをくらわせた!
 

 
衛兵A「がっ……!?」

ドサッ

えいへいAは いしきをうしない そのばにたおれた……

御者「……ふぃー、なんとかうまく行ったな」

ぎょしゃが じゅもんをとなえると ぎょしゃのすがたが みるみるうちに かわっていく……

ぎょしゃは へんしんじゅもんをとき まおうのすがたにもどった!

魔王「もういいぜ、賢者ちゃんに勇者」

まおうがあいずすると えいへいAがのみこまれたきばこから ゆうしゃがでてきた!

魔王「さっきの奴は?」

勇者「催眠呪文をかけた。箱の中で眠っている」

魔王「OK……ていうか勇者、木屑まみれだぜ。ちゃんと落としときなよ」

勇者「そうだな。風の呪文で一気に飛ばしてしまおう」

魔王「……っと、ところで賢者ちゃんは? おーい、賢者ちゃーん?」

ガタッ!

てまえのたるのふたがあき なかからけんじゃが かおをだした!

賢者「うーんっ、くぅっ……て、手伝ってください。抜けなくなっちゃって……」

魔王「やれやれ、賢者ちゃんってば可愛いなぁ」
 

 
賢者「よいしょ……っと。ありがとうございます、魔王さん」

魔王「なんのなんの、お安いご用さ。で、勇者。これからどうするんだ?」

勇者「衛兵は無力化できた。この後は業者を装って研究所に潜入し、地下の封印を解いて王宮へ向かう」

賢者「その前に衛兵の人の血液を採取しておくのも忘れちゃいけませんよ」

魔王「血? 血なんか取ってどうすんのさ」

賢者「血液で符を書いて、この人達のコピー人形を作るんですよ。式神と幻惑呪文を合わせたものです」

勇者「つまり偽装のためだ。彼らの身柄は拘束させてもらうが、衛兵が消えたとなっては不審に思われる」

魔王「なるほどね。代わりにそいつらそっくりの人形を突っ立たせておくってわけ」

賢者「時間がありませんし、手早く済ませないと……」

勇者「コピー人形は君に任せる。それから魔王」

魔王「わかってるよ。オレはここから別行動だろ?」

勇者「そうだ。研究所のセキュリティにより、変身呪文等を使って肉体を変化させている者は通れない」

勇者「だから君には機械王を使っての陽動を頼む。出来る限り派手に動いて騎士団を引きつけてくれ」

魔王「了解、オレに任せときな。でかい花火を打ち上げてやるぜ」

勇者「機械王は市中の貸倉庫で偽装して待機させてある。場所はわかるか?」

魔王「ああ、大丈夫。わかんなくなったら念話で遠隔操作出来るし」

勇者「よし……では、作戦開始だ」
 

 
けんじゃは じゅもんをとなえた

ふだをはりつけられた ねんどのにんぎょうが みるみるうちにぼうちょうしていき
えいへいのすがたに かわった!

賢者「コピー完了、人形を門の前に配置します」

勇者「よし、このまま研究所に入ろう。魔王、君の方も頼んだぞ」

魔王「そっちもうまくやってくれよ。お互い無事でまた会おうぜ」

賢者「竜姫さんを助けたら転移呪文で脱出しますから、魔王さんも適当なところで退いてくださいね」

魔王「わかってるって。まさかオレと機械王だけで王都の騎士団を相手にできるとは思ってないよ」

賢者「わかってるならいいんです……気をつけて」

魔王「……サンキュー、賢者ちゃん」

タッタッタッ……

まおうは ばしゃからおりて はしりさった

ゆうしゃとけんじゃは コピーにんぎょうたちに もんをあけさせ
けんきゅうじょのなかへ はいっていった……
 

 
――――――――――
王立魔法研究所・地下通路
 

ゆうしゃとけんじゃは だれにもはっけんされないまま けんきゅうじょへ しんにゅうし
ちかつうろの ふういんのまえに やってきた……
 
賢者「……ずいぶんあっさり侵入できましたね」

勇者「こんな夜更けに研究所に残っている者も少ない。ただでさえ戒厳令が敷かれている現状だ」

賢者「それで、ここの封印を解いて地下通路を進んで行けば、王宮へ潜入できるんですよね?」

勇者「ああ。封印の魔法式が変更されていないことを祈るばかりだが……ん?」

賢者「? どうかしたんですか、勇者さん」

勇者「……賢者、これを見てくれ」

けんじゃは ゆうしゃがゆびさすさきに しせんをむけた

賢者「これって……封印の魔法式? でも、これじゃあ……」

勇者「そうだ。既に封印は解除され、通路は開放されている」

賢者「……僕達の前に誰かがこの地下通路を使ったってことですか?」

勇者「だが式典の際の騒動の時、ここは使われなかったはずだ。だとすれば」

賢者「この先でボク達を待ちかまえている……罠を張ってる誰かがいるってことですか」

賢者「……でも、妙ですよね。ボク達を罠にはめるつもりなら、どうして封印を解いたままにしておくのか」

勇者「……どちらにせよ進む他ない。竜姫を救うためのルートはここしかないからな」
 

 
ガチャッ

ザッザッザッ……

勇者「周囲を警戒するんだ。探査呪文に反応は?」

賢者「……はい、反応あります。北東の方角、2300m」

賢者「ゆっくりではありますが、こちらに向かっているみたいです」

勇者「研究所の北東……つまりこの通路を抜ける直前、王宮側の出入り口付近か」

賢者「ボク達を待ち構えているのは間違いなさそうですね……でも、反応は一人だけ……?」

勇者「一人? 本当に一人だけなのか?」

賢者「はい。それ以外に目立った反応はありません」

勇者「よし、罠に気をつけて進め。なるべく物音を立てないように」

賢者「了解です。並行して魔力探知を行い、罠を探って……」

勇者「……」

賢者「……勇者さん?」

勇者「どうも先程から腑に落ちない。研究所側の出入り口の封印がこれ見よがしに解かれていることも」

勇者「王宮側の出入り口付近で待ち構えていることもそうだ。それに一人だけとは……」

賢者「単に見張りが増員されただけ……というのも考えづらいですね。大掃除の日でもなさそうですけど」

勇者「私には、何者かが私の行動を読んだ上で、私を待っているように思える」

勇者「……それも、恐らくは私に近しい誰かだ。研究所時代の元同僚といったところか……?」
 

 
賢者「根拠は?」

勇者「確証はない。しかし、タイミングが良すぎるんだ。何故この日この時刻に封印が解かれていた?」

勇者「私がこの地下通路の存在を、その封印の解法を知っていることを承知していたからこそ」

勇者「その人物は、この先で私達を待ち構えることができるのではないか?」

賢者「確かに……じゃあ勇者さんは、こんなことしそうな知り合いに心当たりはあるんですか?」


勇者「何人か心当たりはあるが、確信を持って断言することは難しい。現時点では情報不足だ」

賢者「……その人がボク達の味方をしてくれると思いますか?」

勇者「その可能性も否定できないが、それは希望的観測に過ぎる。彼らも王宮側の人間だ」

賢者「かつてのボクや勇者さんがそうだったように?」

勇者「……ああ」

賢者「……とにかく、先を急ぎましょう。ボク達には時間がありません」

勇者「そうだな……タイムリミットは10時間を切っている。急がなければ……」

 
 
 
???『へぇ。それはいいことを聞いたよ』

  

 
勇者「……ッ! 賢者ッ!」

けんじゃは たんさじゅもんのはんいを しぼりこんだ!
まりょくのはんのうは わずかすうメートルさきにまで せまっている!

賢者「反応……そんな! どうしてこんな近くに……!」

勇者(空間転移……テレポーテーションか……!?)

ゆうしゃは ひだりてににぎりこんだ すうまいのコインに ちからをこめた
それにおうじて けんじゃも せいしんをしゅうちゅうし じゅもんをとなえた……

勇者「――護よ!」

ゆうしゃとけんじゃが じゅもんをとなえると うすいまりょくのベールが ふたりをつつみこんだ!

勇者(私の呪文が物理的衝撃を緩和する鋼体呪文……これで物理攻撃は耐えきれる)

賢者(そしてボクの呪文が対魔法用の障壁。魔法によるダメージをかなりの割合軽減できる)

賢者(探査呪文を維持しながらだとちょっと難しいですけど、これなら敵の攻撃を凌げるはず!)

???『なるほど、呪文耐性を高めるバリアか……流石は勇者君。咄嗟の判断にしては上出来だねぇ』

???『それに……君には会ったことがないねぇ。ひょっとして勇者君のお供かな?』

???『彼の構築していた術式を理解して、すぐにそれを補う呪文を唱えた……大した腕前だよ』

ちかつうろにひびく なぞのこえのぬしは すがたをみせない……

???『しかし、だ。僕が君達を攻撃すると思っているのが、そもそもの誤りなんだよ』
 

 
パチンッ

ゆびをならすおとがひびき それとどうじに いしだたみのすきまから
くろいスライムのようなものが しみだしてきた!

勇者「これは……ッ!」

賢者「暗黒物質……ダークマター!? いけません、勇者さんッ!」

勇者「直接攻撃ではない……この空間ごと私達を封じ込めるつもりか!」

賢者「攻撃! 攻撃呪文でダークマターを払い散らして……!」

???『もう遅い。脱出不可能さ』

勇者「……ッ!」

またたくまに ゆうしゃとけんじゃは つうろにみちていくダークマターに のみこまれていった!

ダークマターは どんどんかさをましていき ちかつうろぜんたいをみたし
やがて すべてがダークマターにうめつくされ……

 
 
 
そして だれもいなくなったちかつうろに せいじゃくがおとずれた……

 

正直忙しすぎて笑えない日々ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか
今年も亀の如き投下ペースで続けていくことが予想されます

ちなみに向こうのスレの続きは2月頭頃を予定しています

多分今月中には続き投下
もうしばらくお待ちください

最近忙しくて宣言通り続きを投下できなかった
すまぬ……すまぬ……

今月中には更新したいと思います(迫真)

4月どころかゴールデンウィークもスルーしてしまい本当に申し訳ありませんでした。

改めて宣言しますが、>>1は本SSを完結させるつもりでいますし、
エタらせるならエタらせるでそう言うつもりです。
とはいえ、今までのような状況はこれからも続きそうで、超不定期更新になってしまいます。
今後は2~3週間に一度くらいの周期で保守しておこうかなとも思ってます。

>>1のSSを読んでくださっている皆さん、これからこのSSを見つける皆さんに少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。

ho

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