提督「この事件の犯人は俺だけど、安価でなんとしても逃げおおせる」 (212)

提督(きっかけは大規模作戦が終わったし慰安旅行に行こうと誰かが言い出したからだった)

提督(次に誰かがせっかくだから無人島にバカンスいこうといった)

提督(あれよあれよという間に、話は決まり。俺たちは無人島で一週間休暇を楽しむこととなった)

提督(はじける水しぶき。焼ける砂浜。きらめく太陽。透き通る海原)

提督(みんなとビーチバレーをしたり、海で泳いだり。夜は肝試しや花火にいそしむ)

提督(みなの肌も少しずつ焼けていった。白から茶色へ。まるでそれは欧米文化の侵食。米からパンへ。オウジーザス)

提督(白く輝く肌も美しいが、小麦色の健康的な肌も魅力的だ)

提督(白がダイアモンドの輝きならば、さしずめ茶色は人間国宝が生み出す茶碗の趣。わびとさび。高貴から陶器へ)

提督(だからねーちゃんサンオイル塗ってやんべ。提督のえっちー。げへへへー。なーんてアホな会話をしていたのがはるか昔のようだ)

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提督(バカンスにきて3日目の夜、事件は起こった)

提督(はじめに言っておこう。この事件の犯人は俺だ)

キャアアアアアア

提督(本日未明、つんざく悲鳴)

提督(これから始まるは絶望の序曲か。はたまた俺の滅亡の破局か)

提督(俺は絶対につかまりたくない)

提督(なんとしても逃げ切ってやる!)

提督「どうした!?」

吹雪「あ、あれ……」

提督「なんだこりゃ。あひどいな。部屋がめちゃくちゃだ」

吹雪「それもなんですけど、そこじゃないんです!」

提督「どういうことだ?」

吹雪「あれを見てください!」

提督「……! あれは……? ↓2か?」

提督「連装砲くんか?」

吹雪「そうです!」

提督「せっかくのバカンスなのになんでこんなもん持ってきやがった」

吹雪「私じゃありませんし、問題はそこじゃありません!」

提督「……?」

吹雪「近づいてよくみてください」

提督「ああ」スタスタ

提督「……!」

提督「壊れてるのか?」

吹雪「そうなんです」

提督「まいった。バカンスに装備を持ってきて、さらにそれを壊したとなれば俺の責任問題だな。そうだ。見なかったことにしよう」

吹雪「させませんよ!」

提督「わかったわかった。じゃあ帰ったら明石あたりになおさせるから」

吹雪「問題は! それだけじゃないんです!」

提督「まだなにかあるのか?」

吹雪「私の荷物から↓2がなくなっているんです!」

吹雪「水着がなくなっているんですよ!」

提督「なんだと!?」

吹雪「荒らされた部屋! 壊れている連装砲くん! なくなっている水着! これはどう考えても事件ですよ! 盗難事件です!」

提督「確かに。事件のにおいがするな」

吹雪「そうです!」

提督「よし。その前にもう一度よく探してみよう。どこかにあるかもしれんしな」

吹雪「というか司令官さっさと返してください私の水着」

提督「……え?」

吹雪「司令官でしょ? 犯人」

提督「いやいやいや。……え?」

吹雪「早く返してください」

提督「普通に俺じゃねえよ」

吹雪「だって今この無人島にいる男の人は司令官しかいませんし。一緒に来た女の子たちが盗むとは思えませんし」

提督「証拠もないのに犯人扱いするんじゃありません」

吹雪「いまだったら不問にしますよ」ジー

提督(やべえ。めっちゃ疑われてる)タラー

提督「ふう。いいか吹雪」

吹雪「なんですか?」

↓2言いくるめろ!

提督「お前の推理はわかった。女の子の水着を盗むのは男としか考えられない。だから唯一の男である俺が犯人」

吹雪「そうにきまってます」

提督「なるほど。もっともな推理だ。すばらしい」

吹雪「えへへへ。でしょう?」

提督「ああ。しかし普通過ぎて誰でも考え付くとも言える」

吹雪「え?」

提督「逆にそんなすぐ疑われる行為を俺がすると思うか?」

吹雪「……あ」

提督「水着を盗んだら男の俺が疑われるにきまっとる。しかも無人島だ」

吹雪「で、でもそれを逆手にとってってことも」

提督「何のために? リスクが大きすぎる」

吹雪「……むむむ」

提督「それにただ水着がほしかったら鎮守府で盗むわ。そしたら外部の犯行にも見せかけられるしな」

吹雪「……確かに」

提督「だろう?」

吹雪「……申し訳ありません。司令官。早計でした」

提督「構わんよ。疑いが晴れたようで何よりだ」

吹雪「しかしそれでは犯人は誰なんでしょうか?」

提督「……とりあえずみんなを呼ぼうか。もしかしたら誰か知っているかもしれないしな」

吹雪「はい!」

(……)

比叡「ふ、吹雪ちゃんの水着がぬすまれたーっ!?」

青葉「あらら。これはスクープのにおいがしますね!」

木曽「お前がやったんだろう。吐け楽になれ」

暁「男は狼なのよ。気を付けなさいってことね」

提督「だから俺はやってねえって」

吹雪「そうですよ! 司令官はやってません!」

提督「ってわけなんだけど、誰か知らない?」

比叡「さあ?」

青葉「知りませんねー」

木曽「知らん」

暁「見てないわね」

吹雪「やっぱり、盗まれたんだ……」

提督「ああ。それもおそらく犯人はこの中にいる」

暁「残念ながらそうみたいね」

木曽「この無人島には俺たちしかいないはずだしな。仮に本当に盗難事件ならそういうことになる」

青葉「吹雪ちゃんの水着盗難事件! あふれ出る男のリビドー! やはり無人島は男を開放的にさせるのか! 来週の一面はこれで決まりですね!」

比叡「二面は?」

青葉「次の司令官へのインタビュー記事です!」

提督「だから俺は犯人じゃねーよ」

提督「とりあえず現場に向かってみよう」

吹雪「はい!」

(……)

比叡「うわあ。荒れまくりじゃないですか」

青葉「水着が見つからなくて探し回ったんですかね」

暁「なんで、連装砲くんがいるんだろ」

提督「聞いてくれ。みんなが来る前にざっとだけど部屋捜索をしてみたんだ」

吹雪「何勝手に人の部屋捜索してんですか」

提督「壊れた連装砲くんだけじゃなくてあるものを見つけた」

木曽「あるものだと?」

提督「↓2だ」

提督「これだ」ジャーン

吹雪「ぶっ!」

比叡「ひえー」

青葉「これはなんと大胆な……」

木曽「……アリだな」

暁「変ね。吹雪の体型じゃその水着は着られないと思うけど」

提督「吹雪、これはお前の水着か?」

吹雪「違いますよ! セクハラですよ!」

提督「ははは。悪かったよ」

青葉「でも吹雪ちゃんのものじゃないとしたらなんでそんなものがここに?」

提督「盗んだ犯人が落としていった。ってとこだろうな」

木曽「なるほど。吹雪だけじゃ飽き足らずほかのやつらの水着も盗んだということか」

提督「くそっ! 犯人め! なんてけしからんまねを!」

暁「だったら、もしかして私たちの水着も盗まれてるんじゃないの?」

比叡「確かに。確認してみましょう!」

(……)

提督「……で? どうだった?」

吹雪「みんな盗まれてたみたいです」

提督「ジーザス! なんてやつだ!」

青葉「ところで司令官の水着はどうだったんですか?」

提督「ちゃんとあったけど」

暁「ふーん。あったんだ」

提督「……え?」

木曽「これはもう犯人きまったんじゃないのか?」

吹雪「司令官。私信じていたのに……」

提督「まて。違うぞ」

比叡「往生際が悪いですよ! みんなが盗まれていて一人だけ盗まれていない! だったらその盗まれなかった人が犯人です!」

提督(くそっ! また疑われている!)

↓2言いくるめろ!

提督「待て。誰が盗まれてないなんていった?」

比叡「え?」

提督「水着はあったといったが盗まれていないなんて一言も言ってない」

吹雪「……? どういう意味ですか?」

提督「さっき見たら俺のパンツがなくなっていた」

暁「なんですって!?」

提督「なぜ犯人が俺の水着を盗まなかったは知らんが、パンツは盗まれていた」

木曽「なるほどな。これで盗まれなかった人が犯人という俺たちの推理は破綻したか」

比叡「うーん。なかなかいい推理だと思ったのですが」

提督「だから俺は犯人じゃないって」

木曽「悪かったよ。そう怒るな。俺とお前の仲じゃないか」

提督「しっかしまあ犯人はあれか。両刀使いか」

吹雪「両刀使い?」

青葉「男も女も両方いけちゃうってことですよ」

吹雪「え、えー……」

提督「艦娘だけじゃなく俺のパンツも盗むとは」

暁「いや、むしろ艦娘のほうはカモフラージュで司令官のほうが本命。……だったりして」

提督「ありえるな。ちょっと引くけど」

木曽「仮にそう考えると俺たち艦娘の誰かが犯人というのも現実味を帯びてきたな」

提督「ああ」

こんなところで今日は終わり。付き合ってくれてありがとう

>>3

修正
× 提督「なんだこりゃ。あひどいな。部屋がめちゃくちゃだ」
○ 提督「なんだこりゃ。ひどいな。部屋がめちゃくちゃだ」

比叡「うーん。頭がこんがらがってきました」

提督「とりあえず今日のところはもう寝ないか? 夜も遅いしな」

木曽「賛成だ。みな疲れている。捜査は明日にしよう」

吹雪「あのー、私寝るところがないんですけど」

暁「じゃあ私の部屋にくる? まだベッドに余裕があったと思うから」

吹雪「ほんと? ありがとう! 暁ちゃん!」

青葉「……」

青葉「……」ニヤリ

(……)

提督(……)

提督(危ない場面は何度かあったが)

提督(何とか乗り切ったか)

提督(今のところは順調といっていいだろう)

提督(何せみんな)

提督(事件が起こったことにすら気付いてないからな)

提督(最初に言ったように今夜起こった事件の犯人は俺だ)

提督(事件というのはもちろん吹雪の水着盗難事件のこと……)

提督(ではない)

提督(俺が言った事件というのは……)

提督(今夜起こったもうひとつの事件)

提督(空母蒼龍失踪事件)

提督(この事件の犯人は)

提督(俺だ)


一日目・終了

終わり方が半端だったんできりのいいところまで。続きはたぶん夜

提督「……」

提督「……」フー

提督「今日もなんとかがんばるか」

(……)

暁「あ! 司令官!」

提督「ああ、暁か。おはよう」

暁「うん! おはよう!」

提督「朝から元気がいいなお前は。昨日あんなことがあったっていうのに」

暁「こんなときこそ元気が大事なのよ!」

提督「なるほど。そのとおりだな」

提督「そういえば吹雪の様子はどうだった?」

暁「んー。やっぱりちょっと元気がないみたいだったわ」

提督「まあしょうがないよな」

暁「ところで司令官。ひとつ聞いていい?」

提督「なんだ?」

暁「司令官はあの夜、ずっと別荘にいたの?」

提督「ああ。ずっと蒼龍の看病をしてたよ」

暁「そのときに、怪しい物音とか聞いたりしてない?」

提督「うーん。聞いてないな。あの部屋はなかなか防音性能がたかいみたいだな」

暁「ふーん。でもだったらどうして、吹雪の悲鳴にはすぐに駆けつけられたの?」

提督「……!?」

提督(こいつ……! カマかけやがったな!)

暁「別に司令官を疑ってるわけじゃないの。ただどうしてかなーって思っただけ」

提督「……」

暁「あの部屋の荒れようからして犯人は結構激しく物音を立てたと思うんだけど。連装砲くんも壊れてたし」

提督「……」

暁「ねえ? どうして? 司令官」

提督「……それはな」

↓2 言いくるめろ!

提督「俺がニュータイプだからだ!」

暁「へ?」

提督「暁。黙っていたが実は俺はニュータイプなんだ」

暁「そうなの?」

提督「ああ。だから気付けた。みんなのピンチに駆けつけてこその俺だ」

暁「うーん」

提督「提督の基本スキルだ。すごいんだ」

暁「ま、いっか」

提督「安心しろ。この事件の犯人もニュータイプの俺が必ず暴きだす」

暁「はいはい。すごいすごい」

提督「俺が導いてやる!」

(……)

提督「さて、蒼龍以外はみんなそろったみたいだな」

吹雪「蒼龍さんはまだ寝込んでいるんですか?」

提督「ああ。朝ごはんは持っていったが、まだ寝てたよ」

比叡「心配ですねー。あとでお見舞いに行きましょうか」

提督「風邪がうつるかもしれないからやめとけ」

木曽「じゃあ、そろそろ議論を始めるか」

提督「ああ」

青葉「みんなの水着盗難事件! 犯人はいったい誰なんでしょう?」

提督「まずはみんなのアリバイから聞こうか」

提督「吹雪、お前が部屋に入ったのは何時くらいだ?」

吹雪「えーっとそうですね……。ちょうど打ち上げ花火が終わって、次の花火を持ってくるときだったから……」

暁「たしか、夜の九時くらいね」

提督「九時か。何時くらいから花火をやってたんだ?」

青葉「七時くらいからいだったと思います」

提督「なるほど」

提督「花火を始める前は部屋は荒らされてなかったのか?」

吹雪「はい」

比叡「ってことは犯行時間は七時から九時の間ということになりますね!」

提督「そうなるな。その時間はお前らはずっと花火か」

青葉「ええ!」

提督「とりあえずは四人ともアリバイがあるってことか」

暁「司令官は?」

提督「俺はずっと蒼龍の看病で別荘にいたよ。風邪が治ったら蒼龍に聞いてみるといい」

比叡「じゃあ司令にもアリバイはあるってことですね!」

木曽「……いや、そうとも限らないんじゃないか」

提督「どういうことだ?」

木曽「お前は俺たちがいない間ずっと蒼龍の世話をしてたのか?」

提督「ああ」

木曽「ずっと、付きっ切りでか?」

提督「別にそういうわけじゃない。ずっと女性の部屋にいるわけにもいかないしな」

木曽「なるほど。そうか」

提督「……」

木曽「いや、気を悪くしないでくれ。別にお前が犯人だというつもりはない」

提督(まずいな。木曽はああいっているが明らかに俺を怪しんでる)

↓2言いくるめろ!

提督「あまり言いたくはないんだが」

提督「実は、蒼龍に相談されてな。内容は言えないが大きな悩みを抱えているらしかった。放って置けなくて問いただしたんだが、気を悪くしてしまってな。追い出されてしまったんだよ」

木曽「……」

提督「悪いが木曽、このことはあまり詮索しないでやってくれ。彼女には時間が必要だ」

木曽「……それはわかったが、別に俺は追い出された理由を聞きたいわけじゃない」

提督「え? あ、そうなの?」

木曽「お前って結構天然だな」

暁「話が逸れてるわ。蒼龍さんのことはとりあえず置いといて、事件の話をしましょう」

比叡「はい」

暁「話を戻すけど、司令官は怪しい物音を聞かなかったし、蒼龍さんに部屋を追い出されたのよね?」

提督「ああ」

暁「それって何時くらい?」

提督「えーっと、よく覚えてないけど八時くらいだったかな?」

暁「仮に司令官を犯人じゃないとすると、事件が起こった時間がだいぶ見えてきたわね」

青葉「あー、なるほど。わかりましたよ!つまり事件が起こったのは、司令官が部屋を追い出される前。八時より前ってことですね!」

暁「ええ。蒼龍さんの部屋にいたから物音は聞こえなかった。吹雪の悲鳴で駆けつけてこられたのは、部屋から追い出されたから。こうすると一応のつじつまは合うわ」

吹雪「あ、そっか! だから司令官はすぐに駆けつけてこられたんだ!」

提督「そうだ。それが言いたかったんだ」

木曽「すまなかったな。さっきもいったが別にお前が犯人だと思ってるわけじゃない」

提督「別にいいよ」

木曽「それに俺たちのアリバイも完璧とは言えないしな」

提督「え?」

木曽「事件が起こった七時から八時の間、俺たちは確かに花火をしていたが何もずっと花火をしてたわけじゃない」

吹雪「そういえば、みんな結構お花を摘みに行ったり、水分補給に行ったり別荘にかえってましたね」

木曽「その時間で盗もうと思えばできたはずだ」

青葉「っていってもみんながいついなくなったかなんて正確にはわかりませんけどね」

安価の振り方がちょっと雑だったような気がする。ごめん。
お前らも付きっ切りでやってねーだろってことと、朝に暁と話した、物音が聞こえなかったっていうのが
解答というか突破口の一つでした。

提督「ふー。ちょっと整理してみようか」

比叡「事件が起こったのは七時から八時の間」

提督「その間のアリバイはみんな一応ある」

青葉「うーん。これは、手詰まりですかねえ」

木曽「今の結論は誰でも犯行が可能であるってことくらいか」

吹雪「司令官。ほかに何か議論しておきたいことはありますか?」

提督「そうだな」

↓2議論しておきたいこと

提督「議論というわけじゃないんだが」

吹雪「なんですか?」

提督「よく考えたら俺が最有力容疑者なんじゃないのか?」

比叡「えぇ……」

暁「まあ」

木曽「そうだな」

青葉「自分で言うのもどうかと思いますけどね」

提督「客観的に見てだよ」

吹雪「でもそれがどうしたんですか?」

提督「俺は犯人じゃない。痛くもない腹を探られるのは正直言って気分が悪い」

木曽「気持ちはわかるが」

青葉「あんまり気にしないでくださいよ司令官。最有力っていってもほかのみんなより盗むチャンスが多かったっていう程度ですから」

提督「たしかにその通りだ。盗むチャンスはみんなより多かった。この中にいるものの中では、な」

吹雪「どういう意味ですか?」

提督「ここで、俺はもう一つの可能性を提示する」

暁「可能性?」

提督「この無人島に俺たち以外の何者かがいるって言う可能性だ」

比叡「無人島に私たち以外の誰かがいる? そんなのあり得ませんよ」

木曽「そうだ。この無人島は軍の所有物。誰も住んでるわけがない」

提督「ただ役所に登録されてないだけだ。無断で誰かが住んでるかもしれない」

吹雪「可能性の一つとしてはあり得ますけど……」

暁「否定はできないわね」

提督「それに何者かが人間であるとは限らない」

青葉「深海凄艦ってことですか?」

提督「その可能性もある」

木曽「その何者かの目的は?」

提督「さあな」

木曽「なんにせよ。情報が少なすぎる」

暁「ええ、これ以上は議論は進みそうもないわね」

提督「今日のところはこれくらいにしておくか」

比叡「ああ。考えすぎて頭痛くなってきました……」

吹雪「同じく。アイスでも食べませんか?」

青葉「いいですね! 糖分補給は大事ですよ!」

提督(よし)

提督(なんとか煙に巻けたな)

提督(しっかしまあみんな頭が切れるな)

提督(特に木曽と暁の二人)

提督(こいつらは要注意だな)

提督(さて、夜まで何をするか)

↓2 何する?

提督「水着を盗んだ犯人は、まだ隠し持っている可能性が高い」

提督「だからみんなの持ち物チェックをしよう」

提督「もちろん、女性の持ち物を男である俺に見せるのは恥ずかしいってのはわかる」

提督「俺もつらい。実につらい。だが俺も曝け出そう。何も恥ずかしがることはない」

提督「これはすべて正義のため。頼むみんな。協力してくれ。正義の名の下に」

比叡「いやです」

吹雪「お断りします」

木曽「誰がするか」

暁「いやよ」

青葉「いやーそれはちょっと」

提督「……」

↓2言いくるめろ!

提督「何だお前ら。見られると困るものでもあるのか?」

吹雪「ありますよ!」

比叡「司令はデリカシーってものがないんですか?」

青葉「年頃の女の子にそれをきくのは、ちょっと……」

木曽「さすがの俺もフォローに困る」

暁「いいたいことはわかるけど、言い方ってものがあるでしょ」

提督「いやまあ、確かに。うむ。悪かった」

木曽「だが、持ち物チェックというのはアリだ」

暁「そうね。みんなお互いに持ち物チェックをしましょう」

提督「だろう! よし! 俺が監督としてみて回ろう!」

青葉「ではあっちの部屋でチェックしましょうか」

比叡「司令はもちろんここで待っててくださいね。後で司令の荷物もチェックしますから」

提督「えっ。まあうん。そうだよね。ごめんね」

(……)

提督「……どうだった?」

比叡「特に変わったものはありませんでした。みんなの水着もないままです」

提督「そうか」

青葉「司令官の持ち物は?」

吹雪「こちらも特に。下着はなくなってましたけど」

提督「ああ。履いてないものはあったけどな。同じパンツをはき続ける羽目にならずによかった」

木曽「手がかりはなし、か」

青葉「でも、誰も持ってないってことは、外部犯の可能性もあり得ない話じゃなくなってきましたね」

提督「そうだな」

暁「……そうかしら?」

暁「まだ私たちが探してないところがあるんじゃない?」

提督「……どこだ?」

暁「蒼龍さんの荷物よ」

吹雪「あ!」

木曽「そういえばそうだな」

青葉「そっとしといてほしいっていうから忘れてました!」

提督(……ここでこいつらを蒼龍の部屋に連れて行ったら失踪がばれる)

提督(どうする?)

↓2どうする?

提督「わかった。だがまああいつは相当落ち込んでる。俺一人で行こう」

吹雪「え? でも司令官昨日追い出されたんだから、別の人が行ったほうがいいんじゃ」

提督「いや、俺が行くよ。ちょうどそのことを謝りにいきたかったんだ」

暁「……ま、いっか」

提督「ついでに昼飯も持ってく。少し話が込むかもしれないから先にみんなで飯食っといてくれ」

比叡「了解です!」

(……)

提督「どうだった? 蒼龍の荷物は?」

木曽「シロだ。変わったものはない」

比叡「ちゃーんと水着もなくなってましたよ」

提督「ううむ。やっぱりか……」

暁「うーん。持ち物チェックの成果はなしか」

青葉「あーもう疲れました! 今日のところは捜査も議論も終わり! また明日しましょうよ!」

吹雪「賛成です」

提督「ああ。一晩置いたらなにか思いつくかもしれないしな」

提督(その後俺たちは適当に晩飯を食べて眠りについた)

提督(暁の提案で、一人でいるのは危険ということでみんなは大部屋で寝るらしい)

提督(俺は一人で個室だけど)

提督(七日目の朝に迎えが来るとして。あと二日間か)

提督(どこかで聞いた話だが、上手にうそをつくコツは、うそに多少本当のことを混ぜることだと)

提督(そうすることで自分は全部うそを言っているわけじゃないと安心感を得られ、ばれにくくなるそうだ)

提督(俺もそうだ。今日言ったことはすべて嘘というわけではない)

提督(蒼龍の失踪がばれるのも時間の問題だが)

提督(時間を稼げば稼ぐほど、逃げおおせる可能性も高まる)

提督(俺も、蒼龍も)

提督(なんとしても、逃げ切ってやる)


二日目・終了

今日は疲れたんで終わり。お疲れ様でした

提督「……」

提督「……よし。今日も一日頑張るか」

(……)

提督(今日で蒼龍とみんなが会わなくなって三日目)

提督(そろそろみんなも不審に思ってるかもしれないな)

提督(何とかばれないようにしたいところだが)

提督「ん?」

提督「あそこにいるのは↓2か」

↓2 出会った艦娘。今いる5人の中で

提督「おはよう比叡」

比叡「……ん? ああ司令ですか。おはようございます」

提督「なんだ? ずいぶん眠そうだな」

比叡「ええ。昨日は遅くまで女子会トークに花が咲きまして」

提督「女が五人も集まったらそうなるよなあ。どんな話したんだ?」

比叡「そりゃもう定番中の定番! 恋愛トークですよ!」

提督「誰が誰を好きーとか?」

比叡「そうそう!」

提督「ちなみに俺のこと好きだったやついた?」

比叡「えー、そうですね。まあ、なんといったらいいか」

提督「そのガチでいなかったみたいな反応やめて」

比叡「でも司令はいい人だと思いますよ!」

提督「励ましが雑!」

提督(さて、こいつはわかりやすいというか素直なやつだからな)

提督(聞いたら意外と重要なことを教えてくれるかもしれん)

提督(今日の議論に向けて何か情報を仕入れてたほうがいいか?)

↓2 何の話をする?

提督「そういえば今日はいい天気だけどパンツの色って何色?」

比叡「今日は下、水着です」

提督「あれ? 盗まれてないの?」

比叡「誰が履いてない水着を盗むんですか」

提督「……確かに」

比叡「司令だって盗まれてないでしょう?」

提督「そういやそうだった……」

比叡「どうしました?」

提督「いやなんかどんな使われ方してるのか想像したらすごいブルーになった。今なら下着盗まれた女の子の気持ちがわかるわ」

比叡「それはよかったです。司令にはデリカシーさの欠片くらい持っててほしいですから」

提督「ちなみに今下に履いてる水着の色は?」

比叡「青ですが」

提督「グッド」

比叡「欠片くらいは持っててくださいほんとに」

(……)

提督「おはようみんな」

提督「そろってるみたいだし、今日も議論を始めようか」

吹雪「ちょっと待ってください。蒼龍さんが来てないですよ」

提督「ああ。今日もちょっと気分が優れないそうだ」

比叡「まだ体調が悪いんですか? あまりに酷いようならお医者様に見てもらったほうが」

提督「いや体のほうは大丈夫なんだけど、精神的にちょっとしんどいらしい」

木曽「まあそういう時もある。そっとしといてやろう」

提督「そうしてくれるとありがたいよ」

提督「今日の議題なんだが、なんかあるか?」

吹雪「うーん」

木曽「じゃ俺から出そう。これについてだが」スッ

吹雪「ぶっ!」

提督「ああ。それエロ水着か。吹雪の」

吹雪「だから違いますって!」

木曽「これに関して議論しよう」

暁「賛成よ」

青葉「アリですね!」

吹雪「なんでみんなそんなノリノリなんですか!?」

提督「じゃあこの吹雪の水着についてなんだけど」

暁「ちょっと待って。これが吹雪の水着とは限らないんじゃないの?」

吹雪「そうですよ! きっと犯人が落としたんですよ!」

青葉「確かに! せっかくあれだけ探し回った挙句、見つけた獲物を落とすなんて間抜けな話ですしね!」

木曽「じゃあ誰のだ? 俺は違うが」

比叡「私も違います」

暁「私も」

青葉「青葉のじゃないですよ!」

吹雪「じゃあ司令官のですか?」

提督「ちがうわ。当然のように振るんじゃねえよ。どんだけ性癖倒錯者だ俺は」

暁「ここにいる誰のでもないとすると、答えはひとつね」

木曽「蒼龍のものってことか」

青葉「妥当ですね!」

比叡「まあ、そうなるでしょう」

吹雪「だから言ったじゃないですか!」

提督「……」

提督(まあ実際に蒼龍の物のわけだが)

提督(さて、同意するか反論するか)

↓2 何を言う?

提督「もしかして、俺たちの知らない誰かのってことはないよな?」

暁「誰かって?」

提督「んなもん知らん。俺はまだ外部犯を疑っているからな」

木曽「その可能性もあるっちゃあるが」

提督「だろう?」

暁「じゃあこうしましょう。水着の持ち主かどうか今から蒼龍さんに聞きに行けばいいのよ」

提督「……!」

暁「違ったら、司令官の言う外部犯の線が強くなるわ」

青葉「それが一番手っ取り早いですね!」

提督(しまった。そう来たか)

提督(こいつらを蒼龍のところを行かすわけにはいかない)

↓2 どうする?

提督「……実は黙っていたんだが」

比叡「……? なんですか?」

提督「蒼龍は早朝に病院に搬送されたんだ」

暁「え?」

提督「風邪が悪化して、肺炎になって」

吹雪「ここ無人島ですよ? どうやって搬送したんですか?」

提督「えーっと、そこはほら。救急ヘリで」

木曽「ヘリの音に誰も気付かないわけないだろうが」

提督「……」

青葉「いやー、司令官って意外にわかりやすいですね!」

暁「今の反応ではっきりしたわね。この水着は蒼龍さんのものね!」

木曽「間違いないな」

提督「……」

暁「わかるわよ。司令官。あなたが蒼龍さんをかばっていることくらい」

提督「……!!」

吹雪「大丈夫ですよ! 誰にも言いませんから!」

提督「いや、違うぞ。俺は」

暁「だってこんなエッチな水着を持ってるなんて知られたら恥ずかしいものね。だからかばったんでしょ?」

提督「……ばれちまったか」

比叡「心配しないでください! 私たちは口は堅いほうですから!」

提督「ああ、言わないでくれ。蒼龍に堅く口止めされてるんだ」

提督「その水着の持ち主はわかったけど、それがなんになるんだ?」

木曽「まあどうにもならないがな。ちょっと気になっただけだ」

吹雪「私的には疑いが晴れてよかったです!」

提督「さて、次に話しておきたいことはあるか?」

木曽「ああ、青葉があるってよ」

青葉「ええ!? 青葉ですか!?」

木曽「ほら、お前隠しカメラ仕掛けてただろ。吹雪の部屋に」

提督「なんだと!?」

吹雪「ええ!?」

比叡「なんで早く出してくれなかったんですか! 犯行の現場が写っているかもしれないのに!」

青葉「いや写ってないですよ。だって、カメラ仕掛けたの事件が起こった後ですし」

提督「……え?」

暁「なーんだ。びっくりした」

提督「……なんでそんなことを?」

青葉「ほらよく言うじゃないですか。犯人は犯行現場に戻ってくるって、だからこっそり証拠映像を撮ってあとで使おうと思いまして」

吹雪「よ、よかったあ。着替えとか撮られたわけじゃなかったんだ」

青葉「映像はまだチェックしてないんですけど、なんで木曽さん知っているんですか?」

木曽「吹雪の部屋を捜査してる途中でたまたま見つけてな」

提督「……とりあえず見てみようか」

青葉「……あっ。写りましたよ!」

提督「……何も起こらないな」

青葉「仕掛けたの深夜ですし」

木曽「退屈だ。早送りしてくれ」

青葉「はい」キュルキュル

比叡「……あれ? 誰か入って来ましたよ!」

木曽「これは俺だな。気になって軽く捜査してみた。特に何もなかったがな」

提督「木曽が出て行って、そのまま朝になったか」

提督「次に入ってきたのは、暁か」

暁「私も捜査にね」

青葉「連装砲くんを重点的に調べてるみたいですね」

暁「ちょっと気になったからね。めちゃくちゃに壊されててよくわからなかったけど」

青葉「それで次は吹雪さんですか」

吹雪「はい。荷物だけ取りにいこうかなって」

提督「で、次が木曽か」

木曽「ああ、もう一回ちゃんと調べとこうかと思ってな」

青葉「あ、ここで隠しカメラに気付いたんですか」

木曽「まあな」

提督「ここで映像は終わり、か」

青葉「せっかく仕掛けたのに、特に何も収穫はなかったですね」

比叡「みんな特に怪しい動きはしてなかったですしね」

吹雪「木曽さんは二回目の捜査で何か見つけました?」

木曽「特に何も。隠しカメラくらいか」

提督(隠しカメラの映像に特に変わったものは写ってなかった)

提督(さて、どうするか)

↓2 何を言う?

提督「青葉、他にカメラは仕掛けてないか?」

青葉「ないですよ」

木曽「本当か?」

青葉「……本当はあります」

提督「どこだ?」

青葉「連装砲くんの中です」

提督「あれ、青葉が持ってきたのか」

暁「でも確か調べたときはカメラっぽいのなんてなかったような」

青葉「超小型カメラですからね。でも壊れてたんですよ! あれ高かったのに!」

木曽「なるほど。犯人が連装砲くんを壊したのはそのためか」

提督「めちゃくちゃに壊したのもカメラを探すためってとこだろうな」

提督「そろそろいい時間だな」

暁「今日の議論はこれくらいにしない?」

吹雪「今日もめぼしい情報はありませんでしたね」

比叡「犯人がまだまだつかめませんね」

木曽「材料がなさすぎる。どうしようもないな」

青葉「うう。せっかくカメラまで仕掛けたのに」

提督「じゃあ、今日はこのくらいにしておくか」

(……)

提督(今日も無事議論が終わった)

提督(ここまでは順調だ)

提督(順調にことは進んでる)

提督(さて、夜まで何をするか)

↓2 何する?

提督(……木曽の水着を盗むか)

提督(このタイミングで盗むのは誰も予想だにしてないだろう)

提督(まずありえないからな)

提督(警戒はしているだろうが、リスクを犯すリターンはある)

提督(ここで盗むことによって外部犯に見せ付けられるかもしれない)

提督(そうすれば、惑わせられる。時間を稼げる)

提督(やる価値はある)

提督(といってもどうするかな)

提督(木曽の荷物は大部屋にあるし)

提督(部屋には大体誰かしらいる)

提督(これをどうかしないとどうしようもないな)

↓2 どうする?


提督「大変だ! 木曽!」

木曽「どうした?」

提督「今さっき外でおかしな人影を見かけた」

木曽「何だと?」

提督「もしかしたら、深海凄艦かもしれない」

木曽「お前が言ってた何者か、か?」

提督「ああ。可能性はある」

木曽「……わかった。いってみよう。念のため、他のやつらも連れて行くがいいか?」

提督「頼む!」

(……)

提督(あっさり成功したな)

提督(さて)ゴソゴソ

提督(……これが木曽の水着か)

提督(木曽がまだつけてないから本当にただの水着だが)

提督(さて、後はこれをどこかに処分すればいいわけだけど)

提督(……どうするか)

木曽「何やってんだ?」

提督「……!!」

提督「早いな。もう帰ってきたのか」

木曽「ああ。みんなと見てきたが、特に怪しい人影もなかった」

提督「そうか。じゃあ俺の気のせいかもしれない。苦労をかけた。すまない」

木曽「疲れてるんじゃないか? 今日はもう休め」

提督「じゃあ少し早いがお言葉に甘えて今日は寝させてもらうよ」

木曽「それがいい」

提督(よかった。ばれてはいないようだな)

提督(とっさに水着をポケットにしまっていてよかった)

木曽「……なあ」

提督「なんだ?」

木曽「お前にとって、俺たちは……」

提督「……?」

木曽「いや、なんでもない。忘れてくれ」

提督「……ああ。お休み木曽」

木曽「お休み」

(……)

提督(バカンスにきて3日目に彼女は体調を崩した)

提督(症状自体は単なる風邪のようだった)

提督(はしゃぎ過ぎだ馬鹿。ゆっくりしてろと言ったら彼女は泣き出した)

提督(俺があわてて謝ると、違うの、違うのと言う)

提督(なだめながら話を聞くと、彼女は吐き出すように言った)

提督(死ぬのが怖いと)

提督(今日が楽しいからこそ明日死ぬかもしれないのが怖いと言った)

提督(今日はみんなに囲まれて笑っているのに、明日は一人ぼっちで死ぬかもしれないのが怖いと言った)

提督(出撃するのが。戦うのが。沈むのが怖いと言った)

提督(俺は心のどこかで艦娘はヒーローなのだと思っていた)

提督(誰も倒せない悪の深海凄艦をやっつける不屈のヒーロー)

提督(でも違った。彼女たちは少し力を持っているだけの、ただの女の子だった)

提督(きっと長い間ずっと溜め込んでいたのだ)

提督(それに欠片も気づかなかった自分の間抜けさに呆れた)

提督(力なんて持ちたくなかった。戦う力なんていらなかった)

提督(戦場から逃げ出して、ただの女の子として生きたかった。ただ明日が来るのを楽しみに待つだけの普通の女の子になりたかった)

提督(でも私の代わりなんて誰もいない。空母蒼龍の代わりなんて誰もできない)

提督(だから私がやるしかないんだ)

提督(そう言って彼女は泣いていた)

提督(それを見て俺はどうしようもなく悲しくなって)

提督(このまま二人でどこか遠くに逃げてしまおうかと言った)

提督(言ってしまった)

提督(言い終わらないうちに、自分の馬鹿さ加減に呆れた)

提督(俺は彼女に真剣に向き合おうとせず、最も安易で愚かな提案をしたのだと)

提督(彼女に対する侮辱にも等しい)

提督(でもそれを聞いた彼女は困ったように笑って、言った。駄目だよ。あなたはみんなの提督なんだから)

提督(でも、ありがとう)

提督(その夜、蒼龍は失踪した)

提督(犯人は)

提督(俺だ)

三日目・終了

よし終わり。あと二回くらいの更新で終わるたぶん。お疲れ様でした

提督「……」

提督「ふう」

提督「今日もやるか」

(……)

提督(あの後、木曽の水着は処分した)

提督(……今思うと軽率だった気がするが、やってしまったものは仕方ない)

提督(少なくともまた水着が盗まれたことで混乱はするだろう)

提督(そうすれば俺の目的は半分達成だ。うまくいけば外部犯のせいにもできるかもしれない)

提督(ん? あそこにいるのは↓2か?)

↓2 であった艦娘 5人の中から

提督(……あいつか)

提督(よりによって今一番会いたくないやつだな)

提督「よう、おはよう」

木曽「ああ、お前か。おはよう」

提督「昨日もお前らは大部屋で寝たのか?」

木曽「ああ、おかげで女子会トークとやらに付き合わされて眠い」

提督「今回の女子会トークは何がお題だったんだ?」

木曽「他愛もない話だよ」

提督「コイバナとか?」

木曽「まあ。そんな感じだ」

提督「お前のコイバナには少し興味があるな。誰が好きなんだ教えろよ」

木曽「好奇心は猫を殺すという言葉があってな」

提督「ごめんなさい」

提督(さて、木曽か)

提督(昨日水着を盗んだことはまだばれてないようだな)

提督(こいつは要注意の一人だが、どうするか)

↓1 何の話する?

提督「お前も女の子なんだから、少しは女の子らしい格好したほうがいいんじゃないか?」

木曽「大きなお世話だ。好きでやってるんだ」

提督「いやでも絶対似合うって。お前ってかわいいしな」

木曽「今日はやけに押しが強いな。何なんだいったい」

提督「はっきり言って俺はお前の水着に不満を持ってる」

木曽「は?」

提督「何だあのロングパンツの水着は」

木曽「別にいいだろうが」

提督「よくない。もっとビキニとかが見たいんだよ俺は」

木曽「お前だってトランクスタイプだろう。もっとブーメランとか履いてみろ」

提督「履いてたまるか」

提督「俺のことはいいんだよ。それよりお前だ。水着が盗まれたのもいい機会だ」

木曽「は?」

提督「帰ったら水着を買いに行こう。お前に合う水着を選んでやる」

木曽「……」

提督「どうだ?」

木曽「それもアリだな」

提督「絶対だぞ」

木曽「だがせっかくだからみんなで行こう。またバカンスに行く機会があるだろうしな」

提督「ああ。約束だ」

(……)

提督「みんな集まったようだな」

提督「蒼龍は、今朝声をかけてみたが、返事がなかったからそっとしておいた」

吹雪「そうですか」

提督「たぶん大丈夫だとは思うが、後で様子を見てこよう」

木曽「ああ」

提督「さて、みんな。明日迎えの船が来るから、今日が最後の議論になる」

提督「だから今日なんとしても犯人を突き止めよう。みんな協力してくれ!」

比叡「……違いますよ。司令」

提督「え?」

暁「今からするのは議論じゃないわ。この事件の、解決編よ」

提督「……は?」

ここからは解決編だからもう安価はないです

提督「解決編って、犯人がわかったのか?」

暁「ええ。事件の犯人も、謎も、目的も、全て解けたわ」

提督「なんだと?」

青葉「いやー、気付かれずに色々こなすのはなかなか大変でしたね」

木曽「本当に骨が折れた。せっかく休暇に来たのに逆に疲れがたまっちまった」

吹雪「それより水着ですよ。仲間のためとはいえあの水着結構お気に入りだったのに」

提督「待て。お前らはいったい何の話をしている?」

比叡「……吹雪ちゃん。司令にも教えてあげてください。犯人の名前を」

吹雪「え? わ、私ですか?」

暁「いいな、それ私がやりたかったのに」

吹雪「ご指名とあらばしょうがないですね」

吹雪「コホン。えー、ではいいましょう。犯人は、あなたですね」

吹雪「司令官!」

提督「……!!」

提督「これで何度目だろうな」

提督「俺が犯人だと濡れ衣を着させられるのは」

提督「当然、俺が犯人だと決め付ける根拠があってのことだろうな?」

暁「当然よ」

木曽「立証責任はこっちにある。そうあせるな。ちゃんと説明してやるから」

青葉「あ、木曽さん。こういう時は推理って言ったほうがかっこよくないですか?」

比叡「いいですね! 探偵みたいで!」

提督「……いいからとっとと話を進めてくれ」

暁「じゃあ司令官。まずはこのビデオをみてちょうだい」

提督「青葉が撮った隠しカメラの映像か。昨日見たろ。特におかしいところはなかった」

木曽「いいから見ろ」

(……)

木曽「どうだった?」

提督「同じだ。おかしいものは映ってない」

暁「そうね。確かにおかしいものは映ってないわ」

提督「だろう?」

暁「でも映ってないとおかしいものがあるんじゃないかしら」

提督「……?」

暁「司令官。あなた、どうしてカメラに映ってないの?」

提督「俺があの部屋に入ってないからに決まってるだろうが。それとも俺がカメラに映らないように部屋に入ったとでもいうつもりか?」

暁「言い方を変えるわ。司令官、あなたはどうしてあの部屋を捜査しなかったの?」

暁「司令官はこの事件の捜査に積極的だった。毎朝みんなを集めて議論をしたりしてね」

暁「『ニュータイプの俺が事件を解決してやる。俺が導いてやる』とまで言っていたのに」

暁「あの言葉や積極性とは裏腹に、事件が起きてから一度も吹雪の部屋に入ってない」

暁「これじゃあ、まるで犯行の後に現場に戻って疑われるのが怖いみたいじゃない」

提督「……お前らが来る前に捜査した。あれで十分だと思った」

暁「軽く捜索するだけで?」

提督「……そうだ」

提督「それよりまさかそれだけで犯人扱いするつもりか?」

提督「カメラに映ってない人物が怪しいというなら比叡だって青葉だって映ってない」

比叡「私は別に事件に興味なかったですし」

青葉「青葉はカメラを仕掛けてましたし」

提督「仕方ないから本音を言うよ」

提督「俺も実はそこまでやる気がなかった。最初に犯人にされそうになったしな」

提督「悪かったよ。これからはやる気出すから許してくれ」

木曽「安心しろ。お前を犯人だと思う根拠はもちろんそれだけじゃない」

木曽「話は変わるが吹雪の部屋が荒らされた理由は何だと思う?」

提督「水着を探してたんだろ」

木曽「バッグに入ってあるのにか?」

提督「そんなこと俺たちしか知らんだろうよ。つまり犯人はそれを知らなかったやつ。外部犯だ」

木曽「ではなぜ部屋をあれだけ荒らしたのに財布や下着は盗まなかったんだ?」

提督「水着にしか興奮しない性癖だったんだろ」

青葉「司令官はパンツを盗まれてましたけど」

提督「男のパンツと女の水着にしか興奮しないやつなんだ」

木曽「吹雪の部屋しか荒らされてなかったのは?」

提督「最初に盗みに入ったのが吹雪の部屋で、それ以降は水着がバッグに入っているのがわかったから荒らす必要がなくなった、ってとこだろうな」

木曽「じゃあどうして、吹雪の部屋に蒼龍の水着が落ちてたんだ?」

木曽「このエロ水着は、蒼龍のものだとお前は言ったな」

提督「……蒼龍の部屋で盗んだ後、吹雪の部屋にいったと考えるほかないな」

木曽「蒼龍の部屋は荒らされていたか?」

提督「……いや」

木曽「お前の言うとおり、外部犯だとすると行動がどう考えてもおかしい。バッグに入ってるとわかってる水着以外、何も盗んでないのに吹雪の部屋を荒らす意味がない」

提督「性癖異常者の行動の意味なんて考えても仕方ないと思うがな。吹雪を怖がらせたかったとかそんなところだろ」

木曽「……根本的な帰属の誤りだな。犯人は状況的にそうする必要があったと考えるべきだ」

提督「だったらお前はどうだというんだ?」

木曽「つまり犯人が部屋を荒らしたのは、ほかの目的があった」

提督「いったい何の目的があったと?」

木曽「吹雪に悲鳴をあげさせるためだ」

提督「悲鳴、だと?」

木曽「そうだ。正確には悲鳴をあげさせて別荘にいるみんなを吹雪の部屋に集まらせる必要があった」

木曽「俺たちはその時間、花火をしていたがもしかしたら何かの用事で別荘に帰ってきてるかもしれないからな」

提督「そんなことをして一体何の意味がある?」

木曽「だって逃げようとしてる蒼龍と鉢合わせたらまずいだろ?」

提督「……!?」

木曽「わからないんだったらはっきり言ってやろうか?」

木曽「俺たちの言っている事件ってのは水着盗難事件のことだけじゃない。もう一つの事件。蒼龍失踪事件の犯人も」

吹雪「司令官だと言ってるんですよ!」

提督「……!!!」

暁「最初におかしいと思ったのは、最初の議論の日」

提督「……最初の議論?」

暁「司令官。あなたが犯人じゃないというならどうして、吹雪の部屋を荒らした音に気付かなかったの?」

提督「そりゃあ……。……!!」

暁「気付いたようね。最初の議論で司令官が吹雪の部屋を荒らした音に気づかなかったのは蒼龍さんの部屋にいたからだって言ってたわね?」

暁「蒼龍さんの部屋に行って水着を盗んだ後、吹雪の部屋に行ったのなら、なぜ司令官は犯人と会ってないのかしら?」

暁「司令官が犯人じゃないとすると、犯人が蒼龍さんの水着を盗むタイミングなんてどこにもないのよ」

提督「……水着を盗んだのはそのずっと前だ。蒼龍が寝込む前に水着を盗んで、その後に吹雪の部屋に入った」

提督「蒼龍はたまたま水着が盗まれていることに気付かなかった」

暁「蒼龍さんの水着だけ先に盗んだのは何のために?」

提督「……たまたまだ。ほかのやつのも盗もうと思ったけど、誰かが帰ってきてやめた」

木曽「そうかもしれないな。だがお前が吹雪の部屋で見つけた蒼龍の水着にはもう一つおかしなところがある」

提督「何だ?」

木曽「この水着のことは誰も知らなかった。蒼龍が着ているところを見たことがなかったからな」

提督「それがどうした?」

木曽「なんで犯人は履いてない水着を盗んだ? お前の履いてない下着は盗まれなかったのに」

提督「……さあな」

木曽「それは恐らく、蒼龍の水着も盗まれていると思わせるため」

提督「……」

木曽「蒼龍も盗まれているかもしれないから聞きに行こう。と言われないためにあえて、際どい水着を選んだ」

青葉「気まずさから誰も触れないようにですね」

木曽「全ては蒼龍から目を逸らさせるため。違うか?」

提督「ふう。黙って聞いていれば、馬鹿馬鹿しい」

提督「大体蒼龍が失踪だと? いいか? この島は無人島だ。迎えが来るのは明日」

提督「失踪したところでこの島から出られないと何の意味もないだろう?」

暁「たしかにそうね。この島から移動できる手段がなければ、ね」

提督「……手段があるとでもいうのか?」

暁「だから、使ったんでしょ? 連装砲くんの艦首ユニットを」

提督「……!!」

青葉「艦首ユニットって連装砲くんがいつも乗ってるあれですか?」

暁「そうよ」

暁「どっちが改造したか知らないけど思ったより器用ね。驚いたわ」

暁「まさか連装砲くんの艦首ユニットを使って、擬似的な艤装をつくるなんて」

提督「そんなことができると思うのか?」

暁「じゃあ連装砲くんが壊れている理由をほかに説明できる?」

提督「……カメラがついていたから、見られていると思ったんじゃないか」

暁「カメラは超小型で、私が調べても見つからなかったのに?」

提督「たまたま見つけたんだ」

暁「逆なのよ。めちゃくちゃに壊されていたのは何の部品を使ったのかわからなくするため」

暁「その過程でカメラを見つけた。だからカメラを壊した」

暁「部屋を捜査しなかったのも隠しカメラを警戒して迂闊な動きはできなかったから」

暁「違う? 司令官」

提督「そんな物音に誰も気がつかなかったと?」

暁「自分で言ってたじゃない司令官。あの部屋は防音性能が高いって」

吹雪「つまり、事件の全容はこうです!」

吹雪「蒼龍さんの看病をしていた司令官はなんらかの事情で蒼龍さんの失踪を手伝うことになった」

吹雪「でも失踪をしようにも移動手段がなかったら島から抜け出せない! そんな中見つけたのは青葉さんが連れてきた連装砲くんです!」

青葉「二人きりですからスクープが取れると思ってけしかけたのですが、裏目に出ちゃいました!」

吹雪「連装砲くんの艦首ユニットを改造して、擬似的な艤装を作り、移動手段を作った」

吹雪「あとは誰にも見つからないタイミングで島から脱出する必要があった」

吹雪「そこで思いついたのは水着盗難事件です! 蒼龍さんから水着を預かり、私たちの水着も盗んで、私の部屋を荒らした」

吹雪「恐らく、盗んだ水着は処分したけど、連装砲くんは重すぎて持っていけなかった。だから私の部屋に持ち込んだ。荒れた部屋に壊れた連装砲くんがあったもそこまで不自然じゃない」

吹雪「そして私が帰ってきて悲鳴を上げたタイミングで蒼龍さんは島から抜け出しました」

吹雪「残った司令官は、私がみんなを呼んでくる間に、蒼龍さんの水着を持ってきて私たちにアピールした」

吹雪「『みんなの水着も盗まれているかもしれない』」

吹雪「これで蒼龍さんが逃げる時間を稼ぎ、みんなの行動を制限した」

暁「この仕事量からして一人では到底時間内には終わらない。だから犯人と蒼龍さんは並行して作業を進めたはず、それでも時間はかかったでしょうけど」

木曽「俺たちは三日目の夜は花火をしていた。ちょくちょく別荘に戻っていたとはいえ、水着盗難くらいならまだしも、そこまでの作業はできない。つまりそれができるのは、ずっと蒼龍とともに別荘にいた……」

吹雪「あなたしかありえないんですよ! 司令官!」

提督「……」

木曽「沈黙は肯定とみなすがいいか?」

提督「いや、思わず言うべき言葉を失ってしまった。面白い推理だった。こじ付けもここまでくると才能だな」

木曽「なんだと?」

提督「お前らの推理は実によくできている。素晴らしいよ。だが大事なものを一つ忘れている」

吹雪「大事なもの?」

提督「決定的な証拠だ。お前らが示したのは状況証拠だけだ。確かに今俺は疑わしい。だが決定的な物的証拠が無い限り、俺は無罪だ」

青葉「おお! なんか追い詰められた犯人みたいなことを言い出しましたよ!」

吹雪「ええ。もちろんありますとも」

提督「……!!」

木曽「その前に一つ聞いてくれ。お前がなんでみんなの水着を盗んだか、だ」

木曽「その目的は二つ。一つは蒼龍失踪のタイミングを作るため」

木曽「そしてもう一つは、汚れた水着と下着の処分のためだ」

提督「……」

木曽「連装砲くんの装備を外し、改造しようとなったら服を着たままだと汚れてしまう。だから服を脱いだ。お前はパンツだけ。蒼龍は水着になったんだろう」

木曽「汚れたのは最小限に留められた。だが、困った。汚れたものを処分しようにも、ただなくなったんじゃあ怪しまれる」

木曽「だからみんなの水着を盗んだ。自分たちのがなくなってても怪しまれないよう」

提督「……もしそうだったとして、それがどうした? これ以上、推理をしたところで何の意味も無い」

木曽「その汚れた下着を見つけたとしたら、それが証拠になると思わないか?」

提督「なんだと!?」

木曽「吹雪」

吹雪「はい!」サッ

木曽「どうだ? 機械オイルで汚れたパンツ。間違いなくお前のだろう?」

提督(……違う)

提督(俺は、みんなの水着も俺の下着もはさみで細切れにして海に流した)

提督(だから見つかるはずが無い)

木曽「どうした? まさか違うのか? 違うというならそうといってくれ」

提督(だが、そうとは言えない。言えばその発言こそ俺が犯人だという証拠になってしまう)

提督(恐らくあの下着は俺の持ち物検査のときに盗み出し。木曽が連装砲くんのオイルをつけたもの)

提督(こいつら証拠を、偽造しやがった!)

提督「……今朝見てみたら俺の、下着が盗まれていた」

木曽「奇遇だな。俺の水着も盗まれていた」

提督「履いてないやつだったが」

木曽「ますます奇遇だ。俺のも履いてないやつだった」

提督「……誰が盗んだろうな」

木曽「……さあな。見当もつかん」

提督(証拠を偽造したのは確かだが、それは言えない)

提督(言わなかったらこのままこれが証拠になる、か)

提督(……)

提督「……どこで気付いた?」

木曽「お前を疑い始めたのは、最初の議論の後だな」

提督「ほかのやつもそうか?」

青葉「うーん。というかですね」

比叡「実は四日目の夜に司令抜きで話し合って、みんなもう司令が犯人ってことわかってましたし」

提督「……え?」

暁「一人で寝るのは危険って言う名目で、大部屋で集まることもできたし話し合うには絶好のチャンスだったわ」

吹雪「こんな手に引っかかるなんて甘いですよ司令官」

提督「……じゃあお前らみんな知っていたのか? この事件の犯人も蒼龍の失踪も」

比叡「ええ。まあ」

木曽「悪いな。結果的にはお前を騙すことになった」

提督「……」ドサッ

提督「……ははは。そうか。そうだったのか」

提督(俺は詰んでいたのか。はじめから)

提督(観念した俺はこの事件のことを全て話し、謝罪した)

提督(俺の犯行も、蒼龍の心情も)

提督(みんなは黙って俺の話をきいてくれた)

提督(次の朝、鎮守府から迎えが来て、俺たちは無人島を後にした)

提督(長かった昨日もようやく終わり、クソッタレな明日がやってくる)

提督(このバカンスで俺たちが得たものは、一人だけ欠けた艦隊と小麦色の肌)

提督(失踪した蒼龍は今何を思っているのだろうか)

提督(せめて、笑っていてほしいと願った)

提督(……)

提督(こうして、この事件は幕を閉じた)

解決編終わったので今日は終わり。あとちょろっとエピローグ書いて完結にする予定。お疲れ様でした。

(……)

提督「……」

トントン

提督「入れ」

ガチャ

蒼龍「失礼いたします」

提督「お前か」

蒼龍「不肖蒼龍、図々しくもまたこの鎮守府に帰ってまいりました」

提督「……そうか」

蒼龍「提督、私はどうやら力を使わずに生きられるほど強い人間ではなかったようです」

蒼龍「脱走してから毎晩、夢を見ました。仲間たちが沈んでいく夢」

蒼龍「吹雪が、暁が、木曽が、青葉が、比叡が、そして提督が死ぬんですよ。私の、代わりに」

蒼龍「寝覚めはいつも最悪でした。それからすぐ、ニュースを見て、深海凄艦の犠牲者の情報をチェックするんです」

蒼龍「それで知っている名前が無いことに胸を撫で下ろして、それから一日が始まる」

蒼龍「そんな日々をずっと過ごしていました」

蒼龍「あれほど憧れていた普通の女の子の生活は、ひどく退屈で、鬱屈で、窮屈でした」

蒼龍「おかしいですよね。あんなに逃げ出したかったのに、気がついたら私は鎮守府の前にいたんですよ」

提督「……」

蒼龍「……脱走を企てた私にこの鎮守府に居場所があるなどとは思っておりません」

蒼龍「いかような処分でも受けるつもりです。しかしどうか、私にもう一度チャンスをください!」

蒼龍「どうか! お願いします!」

提督「……お前が何を言っているのか俺にはさっぱりわからん」

蒼龍「しかし! 私は!」

提督「だってお前は今、一週間の営倉行きから帰ってきたんだろう?」

蒼龍「……え?」

提督「罪状は、えーっとなんだっけ? 水着窃盗だっけ?」

吹雪「そうそう。それですよ」

提督「あーやっぱり。何にせよ。お勤めご苦労だった。十分反省したようだし、これからも励め」

蒼龍「え? え?」

提督「お前はあれか。一から十まで言わんとわからんのか」

蒼龍「え、あ」

蒼龍「ありがとうございます!」

提督「ほれ、みんなに顔を見せて来い。心配してたぞ」

蒼龍「はい!」

ガチャ

提督「……なあ。吹雪、俺は甘いか?」

吹雪「ええ甘いですね。その上、嘘つきです。蒼龍さんは一週間の休暇を取っていることになってますし、営倉行きになったのは司令官でしょうに」

提督「……蒼龍には黙っててくれ。みんなの水着盗んだ上に、謹慎になったとか恥ずかしすぎる」

吹雪「それはいいですけど。せっかくみんな許してあげたのに、自分から罰を受けるなんて。司令官はマゾなんですか?」

提督「ちがわい」

提督「しっかしまあお前らの言ってたとおりになったな」

吹雪「だから言ったでしょう? 何も心配要らないって。こんなの中学生の家出みたいなものですよ」

提督「いや、だいぶスケールが違うと思うが」

吹雪「そりゃあ確かに死ぬのは怖いですよ。その恐怖を全く感じないほど蒼龍さんは強くありません」

提督「……」

吹雪「でもその恐怖を乗り越えられないほど弱くもないです。まあ気分転換もできたでしょうからいいんじゃないですか」

提督「結構大事だと思うんだけど、軽いなお前ら」

吹雪「だってそそのかしたのは司令官ですし」

提督「やかましい。お前らも黙ってたし、共犯だ共犯」

吹雪「違いますよ! 善意の第三者ですよ私たちは!」

提督「でも水着盗んだのに許してくれるとは思わなかったよ」

吹雪「全く。司令官は私たちのことを信用してなさ過ぎです」

提督「本当に悪かった」

吹雪「だから木曽さんにも怒られるんですよ。お前にとって俺たちは何なんだって」

提督「反省してる」

吹雪「犯行計画だって、私たちに任せてもらえばもっと華麗にできたのに!」

提督「結構がんばったつもりなんだけど。穴だらけだった?」

吹雪「穴しかなかったです」

提督「ほら、そこはあれだ。俺は多穴主義者だからな」

吹雪「本当に反省してます?」

提督「ごめんなさい」

ガチャ

蒼龍「失礼します」

提督「はええな。ちゃんとみんなに挨拶したのか?」

蒼龍「不穏なうわさを耳にしまして」

提督「うわさ?」

蒼龍「提督がみんなの水着を盗んだっていう」

提督「ああ、そのことか。根も葉もないうわさだ。相手にするな」

蒼龍「……ほんと?」

提督「ほんとほんと。俺は嘘がだいっ嫌いなんだ」

蒼龍「……ちなみに私が預けた水着は?」

提督「魚のえさにしちまったよ」

蒼龍「はあ。もう。わかりましたよ」

提督「わかってくれたようでなによりだ」

吹雪「……ふふっ」

提督「何だ?」

吹雪「いや、それにしても二人ともよく焼けたなーって」

蒼龍「やっぱり? 提督がサンオイルなんて塗るからですよ!」

提督「うーん。確かに我ながらいい色に焼けたな」

吹雪「ええ! 二人とも真っ黒ですよ!」

提督「真っ」

蒼龍「黒?」

吹雪「はい!」

提督「……くくっ」

蒼龍「……ふふっ」

吹雪「ふふふ」

提督(俺たちは馬鹿みたいに笑いあった)

提督(おかしくておかしくてしょうがなかった)

提督(俺たちは共犯者だ)

提督(シロからクロへ。シロが純粋無垢の証ならば、クロは清濁併呑の印)

提督(だとすると俺たちは少しだけ変わってしまったのかもしれない)

提督(でも変わってしまった俺たちはきっと、逃げずに立ち向かえるはずだ)

提督(それでクソッタレな明日に会ったらこういってやるんだ)

提督(ざまあみやがれってな)

提督(なあ、そうだろ? 蒼龍)

終わり

全部流れで書いたから矛盾があると思うけど勘弁勘弁。安価とってくれたみんなありがとう。

過去書いたやつ

暁「行ってきます司令官」

提督「デートに行こう」暁「ランチに行くの?」

提督「安価で艦娘にパネエ質問をする」

提督「とある鎮守府のクリスマスかくし芸大会」

提督「安価で暁にサプライズを仕掛けよう」

暁「変ね。何度推理しても司令官のプリンを盗んだ犯人が私になるわ」

提督「適当な話選手権」

提督「僕は今日もレディの君とデートする」

提督「そろそろバレンタインだし安価で艦娘の好感度を上げよう」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年04月12日 (水) 04:16:46   ID: Oi5cOHK1

暁が珍しく賢い

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