ねぇ、あの女、なんなの? (43)



※この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。

※一次創作作品です。面白そうな話(主観です)を思いついたので投下します。


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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490269346

ある日、知り合いの女からLINEが届いた

「ねぇ、あの女、なんなの?」

はて、どういうことだろう

続けて何かスタンプが送られてくるのかと思いきや、そのメッセージ一通だけだった

スタンプが送られてこないLINEに、何やら不穏な空気を察知した


あの女・・・

女の知り合いは数あれど、あの女と言われる人間は限られてくる

「・・・それってA子のこと?」

とりあえず聞いてみた

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正直なところ、「あの女」というのが本当にA子なのかは分からない

だが一番一緒にいる、それこそお付き合いしてもう三年になるのだが、「あの女」というのが一番合致しそうなのはA子だった

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酉違くね?

>>6
もしかしてアキタコマチ23号 ◆vJy/GhEnaIをご存じですか!?
ご存じでしたらの前提なんですが、板が変わると酉も変わるみたいで・・・こちらの板ではこの酉にさせて頂きます。
すいません。初めての板なので場違いなことをしてしまいましたら遠慮なくお叱りください。


二通続けて送られてきたLINEメッセージに衝撃を受けた

そう、それは「るろうに剣心」に出てくる「二重の極み」のようなものだ

うろ覚えではあるのだが、拳の一振りで二打当てるという技だったはずだ

その二打で対象を木っ端微塵に破壊する、そんな技だ

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>>7
ここだとコテハンは嫌われるから
酉だけにしとくといいぞ


まさに、そのLINEメッセージは、僕にとっての「二重の極み」だ

とくに二通目の破壊力が高い


わけがわからないからだ

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>>9
うわぁん!ほんとですか!?
教えて頂き、誠にありがとうございます!そして大変もうしわけありません・・・


LINEメッセージを送ってきたのはB美。

先日ネットゲームのオフ会で知り合った、フリーターの女の子だ。

ネットゲーム内では活発なやり取りをしていたが、オフ会中はあまり話をできなかった。
だがせっかくだからということでLINEだけは交換した

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口で話すよりも文字で話す方が得意な彼女は、LINE上では饒舌だった。
まぁ話の内容は主にネットゲームのものではあったのだが

狩りのときに一緒に行ったり、アイテム収集を手伝ってもらったりと、仮想空間の中では戦友と呼べる間柄になっていた

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いやいや仮想空間上でも男女だったら周りからはカップルに見られるんじゃないかって?
そう、男女だったらそう見えるかもしれない

だが、二人ともアバターは男だった

だからカップルではなく、戦友である、と

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彼女であるA子もB美の存在は知っている
僕がネットゲームで遊んでいるのを横で見ていたりするからだ

「またこの男とベタベタと・・・こうしてホモは発生するのね」

A子が画面を見て呆れて言うと、僕は

「いや、オフ会に行ったら中身は女の子だったよ」

と説明する

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「中身は女の子だった」というのはA子を少し不機嫌にさせたらしく

「ネットゲームを通しての浮気を彼女に公開するなんて、あんたどんな性癖の持ち主なの?」

「いやいや一緒に遊んでるだけだって」

「しかも浮気相手は男。男同志って、どうやってやってるの?あなたはどうせ、攻められる側なんだろうけど」

「おいおい・・・まるで僕の貞操が奪われたようなこと言うなよ」

「いいわ、とりあえずあんたの身体を確認させてもらうわ」

それから僕は、B美に一旦落ちると言ってから、A子に色々と身体を調べられた。
詳しくは説明したくないし、他人の夜の営みは知らない方がいい。

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とにかく、B美とはネットゲーム上での戦友だった。

しかしそれ以上でも以下でもない。

直接声を聞いた回数も数えるほどしかない。
下手したら五本の指に収まりそうな数である。



そんなB美と、いつの間にか付き合っていた、らしい

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僕はパニックになった。

当然だ。いつの間にか付き合ってることになったのだから。

動揺そのままに「えっ!?付き合ってる!?」とLINEを返そうとした。

実際に文字を打ち込み、送る寸前までは作業済みである

最後の工程である送信ボタンを押すときに、「ちょっと待てよ」と考えた

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多分「付き合ってるかどうか」、ということを聞いても「付き合ってる」と返されるのがオチだ

僕は事の真偽を正すために、一歩踏み込んだ質問をした


「いつから?」

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返信は

「いつってどういうこと?」

というものだった。まぁそうだろう。

僕は続けて

「いや、いつから僕たちは付き合っていたんだい?」

とLINEメッセージを送る

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そうだ。付き合うには、それなりの工程がある。
青春時代には好きだと告白して付き合うことになる。社会人ともなると、好きだという言葉よりも先に好きだということを体で表現していたりもする。

とにかく、その「付き合う」きっかけとなった起点を知りたかった。

B美から、返信が返ってきた

「オフ会で会ったときから」

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オフ会で会ったときから付き合っていた・・・


あのオフ会、楽しかったは楽しかったのだが、先ほども述べたように、B美とはあまり口を交わしていない。

そんなオフ会で、まさか付き合っていると思われるとは、どういうことだろう。


「ありのままに起こったことを話すぜ!」というネットスラング・・・元はジョジョの奇妙な冒険のセリフだが、そんなセリフが脳裏をよぎった。
現に今まさに、ありのままに起こったことを書いている。

ジョジョの奇妙な冒険でいう「スタンド攻撃」を受けていると、こんな気分になるのかもしれないなぁと、若干現実から乖離した思考を始めた

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いかんいかん

現実は、現実なんだ。スタンドは存在しない。

いや、存在はするのかもしれないが、B美がスタンド能力者であると決めつけるには、まだ情報が足りない

僕はこう返信した

「オフ会の、いつから?」

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オフ会というのは、居酒屋の20人ぐらいのスペースで行われたものである。
ちょいちょいと酒をつまみながら、ゲームのことであったり、自身の近況であったり、そんなことを話したりしていた。

B美の声を聞いたことは、五本の指に収まるかもしれないといったが、その五本の指に収まるやり取りの中に

「好きです、付き合ってください」

というやりとりがあったのであれば、それは多分、付き合ったことになるのではないかと思う。

もちろん、僕にはそんな覚えはないのだが。


だが、もし相手に誤解を与えるようなやりとりがあったのであれば、それを謝るべきだし、謝ることで、誤解を解くことができる。

僕たちは付き合っていないんだと。その言葉は、全然別の意味ですよ、と。

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ただ、覚えがない。

類似した単語を言っただろうか。

そういえばその日、居酒屋のメニューにキスの天ぷらがあって、それを注文した際に「キス」と「好き」を聞き間違えたのかもしれない。


馬鹿だと思うだろう。

事実、僕も馬鹿げていると思う。
ただ、そんな馬鹿げた状況が今を生み出しているのだとしたら、その馬鹿を正さねばならない。

思えば何で僕はキスの天ぷらなんて注文したんだろう。
何で僕はキスの天ぷらが好きなんだろう。
何で僕はキスの天ぷらを食べながら飲むビールは格別に美味いと感じてしまうんだろう。
日本人だからだろうか。日本人の血がそうさせてしまうのだろうか。
だったら日本人は皆、僕と同じ様な誤解を与える可能性があるのかもしれない・・・

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思考をあらぬ方向に巡らせていると、B美から

「LINEを交換したときから」

と返ってきた。


やった!

これでキスの天ぷらのせいでないことがわかった!

僕はこれからも、キスの天ぷらを食べていいんだ!

キスの天ぷらのことを、好きいられるんだ!

キスの天ぷらと一緒に、ビールを飲んでもいいんだ!

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そう、キスの天ぷらに対する喜びをひとしきり噛み締めたあと、

「そういえばキスの天ぷらってそこまでいうほど好きではないよな」

と思い直す。

いや、嫌いじゃないけど、「貴方なしじゃいられない!」というほどではない。

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さて、話をLINEに戻そう。

LINEを交換したときからB美との交際は始まっていたらしい。

はて、どういうことだろう。
僕は少し腰を据えて、考えることにした。

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LINEを交換する。即ちお互いの連絡先を交換する、ということであるが、それが「付き合ってる」ということへは結びつかない。

いや、「LINEで繋がる」という言葉はあるが、それはもっと広い範囲での意味であろう。


もしそれが交際を示すものであれば、僕は何股をかけていることになるのだろうか。

狩野英孝のように、謝罪会見でも開くべきであろうか。

さらに言うなれば、異性だけでなく、同性も含まれているわけで、これら全てと交際しているともなれば、僕はどういう性的趣向の持ち主なのであろうか。

いやいや、B美のLINEのメンバーの中にも、僕以外の人間は入っているはずだ。

だから「LINEで繋がる」という言葉は、交際を示すものではないと分かっているはずだ。

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アキタコマチ23号がいるってことは少なくともアキタコマチ1号~アキタコマチ22号までは製造されているってことだよな……
他のアキタコマチ達はなにしてんの?戦ったりしてんの?


・・・はずだ。

・・・はず。

・・・まさか。

・・・いや、そんなはずは。

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>>31
彼らはアキタコマチを卒業して一般企業へ就職しました!


とりあえずB美にLINEの交換をしたからといって交際したことにはならないんだよと送った。
さらに、もしLINEの交換が交際になるのなら、B美もたくさんの人と付き合ってるってことになるだろ?と、そう送った。

返事が返ってきた。

「私、貴方の連絡先しか、入っていないんだけど、貴方は違うの?」

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よっしゃああ!!

僕はガッツポーズをした。

米国人風に「I did it!(やったぜ!)」と言ってみたりもした。


僕がこんなに感動したのは、真・女神転生2のY・H・V・Hを一時間ぐらいかけてやっとの思いでクリアしたときぐらいだ。

「てんばつ」でHPの8分の1を削れると知っていても、知っているにもかかわらず、一時間も攻守せめぎ合う状態を続けていて、それでやっと勝てた。
そんなときの充実感と、同じ感覚を得ている。

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とりあえずB美に、

「LINEで交換したからといって異性交際にはならないんだよ」と、
「携帯電話でも家族のアドレスが入ってるでしょ?LINEのメンバーも同じ意味なんだよ」と、

そうメッセージを送った

これで全て解決するはずだ




・・・ただ、一つの可能性を残して

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それは「B美に家族がいたことはなく、連絡先も誰とも交換したことがない」という可能性だ。


・・・あくまで可能性だ。
しかしそれが事実であれば、とても悲しいことだ。

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それが事実であるならば、僕はそれを受け入れようと思う。

いや、男女の交際を受け入れるというのではなく、友人としての付き合いを、A子を交えて、受け入れていきたいと思う。

人間と触れ合うことの温かみを、それこそ仮想現実上でしか触れ合えなかった、仮想現実で知り得ない情報である、人間の暖かさを、育んでいきたいと思う。

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B美から返事が返ってきた。


どういう返事なのだろうか。

あっ、LINEの交換ってそういう意味ではないのねと納得するような返事なのであろうか。
それとも連絡先はこの僕の、LINEというアプリケーションを通じたものしか知らないというものであろうか。


前者であるのが好ましいが、後者でも構わないと思う。心の準備はできている。


LINEを開く。

それはきっと、明日への扉の、いくつもの扉のうちの、一つを開くのと同じものだ。


~了

以上です。お付き合い頂きありがとうございました。

>>9
ご指摘頂き、ありがとうございます!
本当に・・・半年ROMらないで、投下したい気持ちでいっぱいで投下してしまったもので・・・

重ね重ね、お詫び申し上げます。

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