とある世界の、とある魔王の城――――
魔王「ん?うーんん…」
側近「魔王さま、お目覚めでございましょうか」
魔王「うん?おお、側近か…」
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側近「この300年、一日千秋の思いで待ちわびておりました」
魔王「300年か…。くそっ、ワシとしたことが勇者とはいえ人間ごときに敗れ
300年もの間眠らされるとは…!」
側近「ええ、あんなのはマグレに決まっています。魔王さまの方が絶対にお強い!」
魔王「当然だろう。そして、300年たった今、もはやあの勇者も生きてはいまい。
今度こそ地上をわが物とするのだ!」
側近「ああ、それがですね」
魔王「うん?」
側近「当時の勇者は確かに寿命で死にましたが…。勇者の血を引く子孫がいるんですよ」
魔王「子孫?」
側近「ええ、魔王さまを300年前に打ち倒したにっくき勇者の子孫です」
魔王「そうか。まぁ、勇者に子孫がいても不思議ではないしな」
側近「運命です。その勇者の子孫が、今度も魔王さまの前に立ちふさがるでしょう」
魔王「何の。300年前はあと少しで勇者の息の根を止める所まで行った。
今度こそは…」
側近「…では、早速ですが魔王さま、勇者をどのように倒すお積りで?」
魔王「うん?そんな物は決まっておろう」
魔王「ワシを倒しにのこのこ向かってくる道中に、強力な魔物を配し…」
魔王「それを切り抜けて来たならば、最後はこのワシが一対一で奴の域の根を…!」
(>>4 域の根→息の根です)
側近「あー…」
側近「多分、それだと無理だと思うんですよねー…」
魔王「ん?なぜだ?300年前は敗れたとは言え、あとひと息のところで…」
側近「この300年で、色々な事が変わったんです」
魔王「変わった?色々?」
側近「そうです。まずですね、魔王さま最後は一対一でなんておっしゃってましたけど」
側近「今の勇者は基本一人では来ません」
側近「仲間と一緒に複数で魔王さまを倒しに向かって来ます」
魔王「えっ複数?勇者一人で来るんじゃないの?」
側近「昔はそうだったかも知れませんが、今は違うんです」
魔王「そ、そうなのか…」
魔王「だ、だが何人いようがワシの極大火炎魔法で一気に灰にしてしまえば…!」
側近「あー、それもちょっと難しいですね」
魔王「なぜだ?」
側近「魔法とか間違いなく無効化したりしてきますよ」
魔王「む、無効化…?」
側近「そうです」
側近「そして逆にこっちに向かって逆に反射するなんて事も…」
魔王「うぬぬ、小器用なマネを」
魔王「そちらがそう来るのであれば、こちらは配下をパワーアップして対応しよう」
魔王「強力な魔物を多数配置すれば、さすがに勇者も無傷では…」
側近「魔王さま、それが…」
魔王「何だ。何か問題でもあるのか」
側近「どうやら勇者一行は向かってくる魔物を逆に手なづけてしまう能力が
あるらしいんですよ」
側近「なので、勇者一行に強力な魔物を差し向けるのはかえって相手の戦力を
増大させるだけかと…」
魔王「何それー?」
魔王「ぐぬぬう、それならワシが自ら直接攻撃で葬ってやるわ!」
魔王「300年前は、人間ごときとナメてかかって素手だったが…」
魔王「今度はしっかり武器を装備する!鋼鉄をも切り裂く魔剣で…」
側近「あー、直接攻撃は一番勝ち目ありませんね」
魔王「なぜだ。鎧ごと真っ二つにすれば、いくら勇者といえども…」
側近「300年前はなかったんですが、今は守備力なんて呪文でいくらでも
上げられるんです。下手をすると鋼鉄以上に堅くなれます」
側近「それにダイヤモンドで出来た防具なんてのもありまして」
側近「いくら鋼鉄を切り裂く魔剣でも、切りかかれば間違いなく刃が欠けますね」
魔王「ダイヤの防具?何それ?どんな成金趣味?」
側近「もしそれに、傷を負わせる事ができたとしても」
側近「回復がハンパないですね」
魔王「回復がハンパないとは?」
側近「ええ。まず回復魔法や薬草は300年前にもありましたよね」
魔王「ああ、唱えたり使ったりすると体力が回復するアレか」
側近「今は死にかけから魔法や道具を使えば一瞬で完全回復するのは当たり前で」
側近「さらに死んでもその場で蘇ります」
魔王「何それ怖っ!」
側近「おっしゃったように、鎧ごと真っ二つに出来たとしても倒せるかどうか」
側近「そして道具でもそれができる所がミソですね。
お陰で回復役でもない者でも回復し放題です」
魔王「面倒だなもう…」
側近「それに、相手も剣で戦ってくれたらいいんですけれど」
側近「最近は、こちらの攻撃が届かない所から銃撃やらレーザーやら…」
側近「あげくに核爆発まで使って攻撃して来るんですよ?」
側近「魔王さまがいくらお強くても、一人ではさすがに…」
魔王「うぬぬう、300年の間に変わりすぎ…」
魔王「くそう、話を聞いていればまるで勝てる気がせぬ。一体どうすれば良いのだ」
側近「簡単です。魔王さまも変わればいいんです」
魔王「変わる?ワシが?」
側近「ええそうです」
側近「勇者がパーティを組んでくるなら、こちらもパーティを組んで応戦しましょう!」
魔王「ええー?誇り高い魔王であるワシが?徒党を組むの?」
側近「向こうが集団で来るのなら、こちらもそれ相応の対応をするのです」
側近「それしか勝つ方法はありませんよ!」
魔王「ワシが、他の者の力を借りて戦うのか…」
側近「あと、新しい呪文も覚えましょう。昔みたく炎だの雷だのだけじゃなく…」
側近「仲間の攻撃力、守備力を上げたり、回復するような呪文を!」
魔王「魔王が仲間の回復する普通ー?」
魔王「威厳なくなっちゃわないそれー?」
側近「それに人間どもが用いる武器や防具、道具もこちらに取り入れるとして…」
側近「あとは、チームプレーで勝利を目指しましょう!」
魔王「ワシ孤高の魔王なのにチームプレー?」
魔王「仲間と手と手をとりあって戦うのー?」
いまの時代に魔王なんてもんが出て来ても、速攻で米軍に倒されてプロパガンダに利用されそう。
側近「グダグダ言ってても仕方ありません」
側近「さぁ、今日から特訓を開始しましょう」
魔王「はぁやれやれ、これも時代の流れか、仕方ない…」
>>19
そういうのも面白そうスね
えひ書いて欲しいなぁ
それから、約半年の年月が過ぎ……
魔王「トレーニング頑張るぞー、セッオー、セッ!」
配下「セッオー、セッ!」
魔王「声出して行くぞー、セッオー、セッ!」
配下「セッオー、セッ!」
魔王「では勇者達を四方から取り囲んで袋叩きにする練習、始め!セイッ!」
配下「セイッ!」
配下「セイッ!」
配下「ヤァッ!」
魔王「100本やったら、次は魔法攻撃を一気に叩き込む練習!」
配下「ッシター!」
配下「サァ!」
配下「声出シテコー!」
側近「魔王さま、調子はいかがでしょうか」
魔王「おお、側近か」
魔王「初めは戸惑う事が多かったが、慣れてくるといい物だな」
側近「それは何よりです」
魔王「チームワークも取れておるし、ワシ自身も仲間の力を底上げする
回復魔法、補助魔法を学習した」
魔王「何だか、今の勇者に勝てそうな予感がしておる」
側近「それはそれは、結構な事で…」
魔王「…ところで、勇者の方はどうした」
魔王「どのくらい、わが城に近づいておる?」
側近「それが…」
魔王「なに?」
魔王「始めの村から一歩も出ていない?」
側近「ええ、そうなんです」
魔王「一体どういう事なのだ?」
側近「ええ、配下にそれとなく探らせてみたら」
側近「『今時こんなコマンド選択式なんてかったるい』」
側近「『これからの時代はオープンワールドっしょー』とかでやる気が出ないとか何とか…」
魔王「な、何だそのオープン何とかとは?」
側近「何やら、何でも自由にできる世界というのが今の時代の主流だそうで」
側近「昔は、勇者は喜びいさんでこの世界を隅々まで巡ったものですけれど」
側近「これも、時代の流れなんでしょうかねぇ…」
魔王「悲しくなるなぁ」
終わり
昔のドラクエ→最近のRPGをイメージして書きました。
読んでくれてありがとうございます
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