桃華「わたくしだけを見て……」 (20)
――2015年9月、事務所
<アイドルマスターシンデレラガールズゥ! スターライトステェージィーッ!
ちひろ「プロデューサーさん、大変な事態になりました!」
ちひろ「ついにアイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージのサービスが開始されましたよ!」
P「おお、ついにですか!」
ちひろ「はい! これからはお仕事だけではなくデレステでも、アイドルのみなさんをプロデュースしてくださいね!」
P「当たり前です! よぉーし、早速アプリをダウンロードして、と……」
ガチャッ!
桃華「ごきげんよう……あら、Pちゃま? そんなに熱心に何をやっていますの?」
P「ああ桃華、おはよう。いやなに、今日からデレステが配信されたから早速プレイしようと思ってな」
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桃華「まあっ! わたくしたちが声のお仕事で収録したゲーム、でしたわよね? ふふっ、Pちゃまもそんなにはしゃいで、小さな子供みたいですわね」
P「そりゃそうさ、ゲームの中でも桃華たちをプロデュースしてやらないとな」
桃華「あまり無理はなさらないでくださいね……わたくしは、あまりゲームのことは詳しくありませんが……」
P「桃華はそういうのは疎そうだからな。おっと、最初から実装されているSSRはこの6人か……誰か引ければいいんだがな」
桃華「何のお話をしていまして?」
P「いやなに、ガチャのラインナップを見ていたんだ。ガチャを引く前に何が出るかを確認しておこうかと主ってな」
桃華(ふふふっ、Pちゃまったら……今回のお仕事、わたくしも声の収録は頑張りましたもの。早くわたくしをプロデュースしてほしいですわ)
P「やっぱり卯月か……蘭子もいいなぁ……」
ちひろ「全部出るまで引けばいいじゃないですか」
桃華「……」
P「最初だしSSRなら誰がいてもいいよな。うーん……」
桃華「Pちゃま」
P「ん、どうした?」
桃華「どうして、わたくしを選んでくださらないのかしら?」
P「え、だって……桃華、まだ実装されてないし」
桃華「えっ……そ、そんなはずは、お仕事で声の収録もしましたのに……!」
ちひろ「まだ実装されいないだけですよ。いま実装されていないアイドルのみなさんは、毎月順番に追加されていくんですよ」
桃華「そんな……それではPちゃまは、わたくしをプロデュースしては……」
P「桃華が追加されたらちゃんとお迎えするさ。それまでは俺も我慢しないとな」
桃華「そ、そうですわよね! Pちゃまは、ちゃんとわたくしのことをプロデュースして――」
P「うーん、SSR衣装で踊らせたいけどなー、でも最初はイベントもないからしばらく様子見でもいいかなぁ」
ちひろ「だから出るまで引けって言ってんだろ」
桃華「Pちゃま……」
……
…………
――2015年11月、事務所
ガチャッ
桃華「ごきげんよう――」
<セーイッパイ! カガヤクゥー!
P「あー、やっぱり卯月も蘭子もみくもみんな可愛いなぁ……MVでプレイするのはちょっとやりにくいけど」シャンシャン!
ちひろ「あらプロデューサーさん、SSR衣装の子がいませんね、どうしたんですか?」
P「それが全然引けなくて……限定の愛梨たちどころか、恒常のSSRも掠りもしなかったです……」
ちひろ「課金が足りないんですよ。1回のガチャを回すときは6桁万円は用意しませんと」
P「それくらい引いているんですけどね……まあ、こういうゲームは年末年始辺りに確率アップのピックアップガチャとかもやりますし、それまではガチャは控えておきますよ」
桃華(6桁……わたくしにとってはお小遣い程度の金額ですけれど、Pちゃまのお給料でそんな額が必要だなんて……!)コソコソ
P「いまはバクメンもSRで埋めてる状態で、まだイベントもそれなりにやれていますし……年末のガチャに期待ですかね」
ちひろ「だから出るまで課金しろとあれほど……」
桃華(Pちゃま、とても辛そうなお顔をなさって……)
……
…………
――2015年12月8日、事務所
バンッ!
桃華「Pちゃま! ようやくわたくしがデレステで実装されましたわ!」タタタタッ!
P「……ああ、桃華か、おはよう」
桃華「さっそくわたくしを……Pちゃま? そんなお顔をして、どうなれましたの?」
P「ああ、いや……今回の月末限定ガチャも見事に爆死してな、アーニャも茜もお迎えできなかったんだ。いまはその爆死跡に残ったSRを育てているところだったんだ……」
桃華「そうでしたの……っ!」ピクッ!
桃華(いまPちゃまがレッスンに選んでいたアイドル……今日実装されたわたくしのカード……)
P「せめてお迎えしたSRくらいは、余っているノーマルをレッスンに使って育ててやらんとな……はぁ、全然SSRなんて来てくれないな……」
桃華「Pちゃま……」
桃華(せっかく、わたくしのカードが実装されましたのに……それに、ゲームは楽しく遊ぶためのものなのに、Pちゃまはいつも辛そうにして……)
桃華(Pちゃまが、わたくしのことを気にも留めなくなったのも……こんなに、辛い思いをなさっているのも……)
桃華(全部、全部悪いのは……!!)
……
…………
――2016年3月末、事務所
ちひろ「プロデューサーさん、大変な事態になりましたよ! 月末の春うららか放課後タイムガシャに桃華ちゃんと拓海ちゃんが追加されました!」
P「そうですか」カタカタカタッ!
ちひろ「あれ、どうしたんですか? 月末ガチャですよ? いつもみたいにガチャ回さないんですか?」
P「回してもSSRが出た試しないし……ほら、それより今日は年度末の最終日ですよ、仕事しないと」
ちひろ「おっと、さすがにそれは私も真面目にやらないと…」
ガチャッ……
桃華「ごきげんよう、Pちゃま」
P「ん、桃華か。おはよう」
桃華「……あら? お2人で何をなさっていましたの?」
ちひろ「それがこの人、ようやくデレステで桃華ちゃんのSSRが実装されたのに引かないって言うんですよ、ヒドイ人ですよね?」
P「いや、だっていくら回してもSSR1枚も引けてないし、1日1回の60ガチャなんてSRすら2回しか来てないし」
桃華「まあ……Pちゃま、桃華は無理にとは言いませんわ。ですが……」
桃華「その、やっぱりわたくしは、ゲームでもPちゃまにプロデュースしてもらいたくて……だから……」
P「桃華……わかったよ、だけどいまは忙しいし、10連1回だけな」スッ……
<チャーンチャーンチャンチャンチャチャチャン! デーッデデッデー!
P「通学姿の桃華か……可愛いな」
桃華「まっ! Pちゃまったら……もうっ」
P「ままあ、10連1回っと……」
<テーレテッ! テテッテー!
P「なっ……!?」ビクッ!
ちひろ「おおっ!」
桃華「どうかしましたの?」
P「こ、これは……し、刺繍付きの封筒……ま、まさか……!」ガクガクブルブル
桃華「これは、当たりなんですの? Pちゃま、早く開けてみてくだしまし」
P「あ、ああ……そんな、まさか……」
『[ローズフルール]櫻井桃華』
P「も、桃華……桃華あああああああ!!」
桃華「まあっ、わたくしのカードですわ! Pちゃま、わたくしをお迎えしてくださってとっても嬉しいですわ!」
P「ああ……桃華、桃華……来てくれたのか……桃華ぁ……」
桃華「あらあらPちゃま、泣くほど嬉しいなんて……ふふっ、桃華がPちゃまのお傍から離れるわけがありませんわ」ナデナデ
P「うっ、うう……桃華ぁ……」
ちひろ「よかったですねー。プロデューサーさん、爆死祭りもようやく終わったんじゃないですか? これからもじゃんじゃんガチャを回し――」
桃華「……」スッ……
ちひろ「……ま、まあ! ほらほらプロデューサーさん、せっかく引いた桃華ちゃんのSSRなんですよ? たくさんMV見てあげませんと!」
P「そ、そうでしたね……よーし、今日は年度末だが急いで仕事片付けて、定時になったら桃華をセンターにしてデレステやるかぁ!」
桃華「ふふっ、わたくしもPちゃまが嬉しそうで何よりですわ♪」
……
…………
――2016年11月9日、事務所
P「……」
ちひろ「ほらほら、課金が足りないんですよ課金が!」
ガチャッ
桃華「ごきげんよう」
ちひろ「あら桃華ちゃん、お疲れ様です」
P「桃華か……」
桃華「あら、どうしましたかPちゃま? お元気がなさそうですけれど……」
ちひろ「それがこの人、今月の月末ガチャも爆死したらしいんですよ。いやあ、引き弱ってこの人みたいな人を言うんですねぇ」
P「桃華のSSRをお迎えしてから、他の限定も、恒常も、フェスも……何も引けないんだ……」
桃華「まあ、それは残念ですわね。でもPちゃま、確か今日は……新しいガチャの更新日でしたわよね?」
P「あれ、そうだっけ……ああ、今日で月末ガチャも終わりか……桃華は詳しいな」
桃華「ふふっ、Pちゃまのことならわたくし、何でも知っておりますもの。そろそろ15時になりますわよ?」
P「そうか……まあ、どうせ恒常枠がピックアップされてもお迎えできないが、見るだけでも……」スッ……
<ピロリローン♪
『プラチナオーディションガシャに新アイドル追加! SSレア櫻井桃華登場!』
P「も、桃華……!」
桃華「まあっ! 今日はわたくしのカードが追加される日でしたのね!」
ちひろ「おっ、桃華ちゃんなら前回も引いてますよね。プロデューサーさん、これならいけるんじゃないですか?」
P「桃華……いや、でも、前回お迎えできたからといって……」
桃華「Pちゃま」スッ
P「桃華……」
桃華「Pちゃまのもとに、他のみなさんが誰も来なくても……桃華だけは、Pちゃまの傍にずっといますわ。だから……」
P「……そう、か……桃華、なら……俺の、傍に……」スッ
<チャーンチャーンチャンチャンチャチャチャン! デーッデデッデー!
P「桃華なら、桃華……」
<テーレテッ! テテッテー!
P「っ!? し、刺繍……!」
『[ディアマイレディ]櫻井桃華』
P「あ、あ……ああ……!」
桃華「Pちゃま……桃華のこと、お迎えしてくださってありがとうございます」
ギュッ……
桃華「たとえ他のみなさんがPちゃまのお傍にいなくとも……桃華だけは、絶対にPちゃまを離しませんわ」
P「桃華、もも、か……う、ううううう……」
桃華「わたくしはここにいますわ。ゲームの中だって……だから、Pちゃまはわたくしだけを見てくださいまし、もうガチャもわたくし以外は……」
P「ああ、ああ……俺には、桃華がいてくれる……それだけで……」
桃華「ふふっ、そうですわね、Pちゃま♪」
……
…………
――数十分後、事務所(廊下)
桃華「もしもし、わたくしです、桃華ですわ。デレステの運営にお電話を回してくださいまし」
桃華「ごきげんよう、櫻井桃華ですわ。PちゃまがわたくしのSSRを引いてくださったのを確認できましたわ」
桃華「ええ、ええ……なので、またいつもどおりPちゃまのIDのSSR排出率を無しに……ええ、それで構いませんわ」
桃華「あとで櫻井の遣いの者に、報酬を持っていかせますわ。では、ごきげんよう」ピッ!
桃華「……ちひろさん、いらっしゃいますの?」
ちひろ「はいっ、はいっ! 千川ちひろ、ちゃんと桃華ちゃんの後ろにいましたよ!」サササッ!
桃華「ええ、お利口さんですわね。こちらの小切手、デレステの運営事務所に届けてくださいませんこと?」サラサラッ
ちひろ「はいっ! 迅速にお届けします!」サササッ!
桃華「ふう……」
……
…………
――数日後、事務所
P「桃華、そろそろ仕事の時間だぞ! 車出しておくから、出る準備をしておいてくれよ!」
桃華「わかりましたわ」
ガチャッ……バタンッ!
卯月「そういえば私、プロデューサーさんと最近、お話できてないです……お忙しいみたいですけど」
楓「そう、ね……私も、しばらく飲みに誘っても、いつも断られて……」
凛「私たちの仕事、ちゃんと見てくれてるけど……なんだか最近、壁を感じるっていうか……」
桃華「……」
桃華(……Pちゃま、Pちゃまも分かっていると思いますけれど、お金があれば、何でも手に入りますの)
桃華(そう、Pちゃまの身も、心も……Pちゃまのお傍にいることができるのは、わたくしだけ……Pちゃまには、それが一番の幸せですもの)
桃華「それではみなさん、わたくし、これからお仕事に行ってきますわ」
卯月「あっ、うん! 頑張ってくださいね、桃華ちゃん!」
桃華「ええ、わたくしにはPちゃまがいてくださいますもの、大丈夫ですわ」
桃華(そう、わたくしの傍に……そうですわよね、Pちゃま……ふふっ♪)
……
…………
桃華END おわり
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