花丸「はじめての」ルビィ「キモチ」 (184)
――前作のあらすじ
【前作】ルビィ「ずっと」花丸「友だちだよ」
ルビィ「花丸ちゃんと善子ちゃんの人気が、クラスでもネットでもうなぎ登りとなり」
ルビィ「日に日に、2人が仲良くしている姿を見るのが辛くなっていたルビィは」
ルビィ「ある出来事がきっかけで、授業が始まる前に教室を飛び出してしまいました」
花丸「状況を把握した曜ちゃんから」
花丸「ルビィちゃんが善子ちゃんに『嫉妬』していることを知り」
花丸「図書室で隠れて泣いていたルビィちゃんに、思いの丈を打ち明けたところ」
花丸「お互いに『特別な存在』だったと気付いて、ルビィちゃんと更に絆が深まりました」
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ルビィ「その後いろいろありましたが、善子ちゃんとも無事に仲直り出来て」
ルビィ「次のライブ曲のセンターも、ルビィたち3人が務めることになりました」
花丸「そして、お休みの日にルビィちゃんと長浜城跡で富士山を眺めていた時」
花丸「ルビィちゃんは、まるに……」
ルビィ「今回は、それからしばらく経った後のお話になります」
花丸「少し長いですが、先に前作を読むと話が分かりやすいかもしれません」
※本家で2度も規制が入り投稿失敗したため、こちらで初投稿となります。
――部室
善子・花丸・ルビィ「メインセンター(ずら)?」
果南「そう!」
果南「今回の曲は3人がセンターを務めることになるんだけど」
果南「サビの部分で中央に立つことになるセンターが『メインセンター』ってわけ」
梨子「サビの最初はソロパートから始まる構成だから」
梨子「メインセンターは極めて重要なポジションになるわ」
果南「そこで今回は、3人の内誰がメインセンターをやるか決めて欲しいんだけど……」
善子・花丸「……………………」
ルビィ「そ、それなら、善子ちゃんか花丸ちゃんに……」
花丸「ルビィちゃんにお願いするずらっ!」
善子「ルビィに任せるわっ!」
ルビィ「え…………ピギィ!?」ビクッ
ルビィ「ど、どうして2人ともルビィを?」
ルビィ「ルビィなんかより、2人のほうがメインにふさわしいと思うのに……」
花丸「『なんか』じゃないよ、ルビィちゃんっ!」
ルビィ「……え?」
花丸「ルビィちゃんはまるたちと同じくらいスクールアイドルとして成長しているずら」
花丸「それを大勢のお客さんに見てもらうには、誰よりも目立たないといけない」
花丸「だからルビィちゃんには、是非メインセンターをやって欲しいずらよ!」
ルビィ「で、でも……」
善子「わたしとずら丸は前からそれなりに評価されていたことだし、次はルビィの番」
善子「わたしが認めた最高のリトルデーモンが」
善子「いかにすごい存在か盛大にアピールする時なのよっ!」
善子「あのサイトの管理人も、次のライブを見に来るかもしれないしね」
ルビィ「花丸ちゃん……善子ちゃん……」
果南「どうルビィちゃん?2人から推薦されたけど」
ルビィ「……………………」
梨子「無理にとは言わないわ。ゆっくり考えていいから……」
ルビィ「ううん。ルビィ……メインセンターやりますっ!」
花丸・梨子「ルビィちゃんっ……!」
善子「フフッ、それでこそ我がリトルデーモン4号よ!よく言ってくれたわっ!」
果南「分かった。それじゃルビィちゃんにやってもらうことにするから」
果南「よろしくね、メインセンター!」
ルビィ「うんっ!がんばルビィ!」ニコッ
花丸「はっ…………///」ドキッ
花丸(この間からルビィちゃんを見てると)
花丸(たまに胸がドキドキする時があるずら……)
花丸(そう言えば、千歌ちゃんたちと歌詞を作っていた時もそうだった)
花丸(たまたまルビィちゃんと目があった時も、変に意識しちゃったし……)
花丸(前からルビィちゃんのことを可愛いとは思っていたけど)
花丸(それでもここまでドキドキすることはなかったのに……)
花丸(まる、一体どうしちゃったんだろう……)
ルビィ「……なまるちゃん……花丸ちゃん?」肩トントン
花丸「っ!!///」ハッ
善子「なにボーっとしてるのよ?」
ルビィ「なんだか顔が赤いみたいだけど、大丈夫?」キョトン
花丸「なっ!なんでもないずらよっ!!頑張ってねメインセンター!///」
ルビィ「うん、一緒に頑張ろっ!」
花丸(後日果南ちゃんの振り付けが完成し、ダンス練習が始まりました)
花丸(けれど……)
――数日後 屋上
果南「はいっ。今日はこれでおしまい!」
果南「3人とも遅くまでお疲れ様!」
花丸「はぁ……はぁ……今日も居残り練習キツかったずら……」
ルビィ「結構……ハードだったね……」ハァハァ
善子「果南……センターって、こんなに動くものなの……?」ハァハァ
果南「今回は今まで覚えたステップを数多く取り入れてる上に」
果南「センターの3人は他のみんなよりもさらに動く振り付けだから」
果南「どうしても居残り練習が続いちゃうんだよねえ」
果南「厳しいようだったら、振り付けの難易度を下げてもいいんだけど……」
ルビィ「果南ちゃん……ううん。このままでお願いします」
ルビィ「花丸ちゃんも善子ちゃんもいいよね?」
花丸「ルビィちゃん……」
善子「ルビィ……」
ルビィ「せっかく大勢のお客さんに見てもらうんだもの……」
ルビィ「それなら、最高のパフォーマンスでみんなをあっと言わせたいっ!」
果南・花丸・善子「……………………」ポカーン
花丸「すごいずら……まるで千歌ちゃんみたいだよ、ルビィちゃん!」
善子「この数日で見違えるほど前向きになったわね……」
善子「わたしは異論ないわ。ずら丸もいけるわよね?」
花丸「……みんなが頑張るなら、まるだって負けてられないずらよ!」
果南「分かった。みんながそう言うならこのままの振り付けで進めようか」
果南「でも、無理だけは絶対にしないでね。ダイヤに怒られちゃうから」
ルビィ「うんっ、果南ちゃんっ!」ニコッ
花丸「あっ…………///」ドキッ
花丸(ま、まただ……)
花丸(ルビィちゃんの笑顔を見たら、急に胸がドキドキしてきたずら……)
花丸(居残り練習は辛いけど、それでも一生懸命練習に励むルビィちゃんの姿が)
花丸(キラキラ輝いてて……眩しく見えて……)
花丸(愛おしく感じる……)
花丸(この気持ち、もしかして……///)ドキドキ
善子「おーい、ずら丸~?」手ブンブン
ルビィ「……花丸ちゃん?」
花丸「…………はっ!どうしたの2人とも!?///」
善子「どうしたの?じゃないわよ」
善子「気合い入れようとしてる時に1人だけボーっとしちゃって」
ルビィ「この頃、考えごとしてることが多いみたいだけど、なにかあったの?」ジー
花丸「大丈夫ずらよルビィちゃん!善子ちゃんもごめんね!」アタフタ
ルビィ「そ、そっか」
善子「まぁ、ずら丸がそう言うなら気にしないけどさ」
果南「……………」
――部室
善子「みんな着替え終わったわね」
ルビィ「うんっ」
花丸「いつでも帰れるずらよ」
果南「あー、花丸ちゃん。ちょっとちょっと」
花丸「ずら?」
果南「花丸ちゃんには、この後ちょっとお話したいことがあるから」
果南「悪いんだけど、ルビィちゃんたちは先に帰ってくれないかな?」
ルビィ「う、うん。分かったよ果南ちゃん」
善子「それじゃずら丸、果南。また明日ね」
花丸「うん。また明日ね。善子ちゃん、ルビィちゃん」
果南「気をつけて帰るんだよー」
善子・ルビィ「はーいっ」
――
果南「……2人とも帰ったね」
花丸「それで果南ちゃん。まるにお話って……」
花丸「……あっ、もしかして振り付けのこと!?」
花丸「今日もまるだけたくさん間違えたから、お説教を……」ガクブル
果南「違う違う!ごめんね。もうちょっとやんわり引き止めるべきだったね」
果南「……花丸ちゃん。今、悩みごとを抱えてるでしょ?」
花丸「ずらっ!?」ドキッ
果南「…………図星だね?」
花丸「ど、どうして気がついたずら?……もしかして、果南ちゃんはエスパー!?」
果南「善子ちゃんじゃないんだから、それはないってば」アハハ
果南「花丸ちゃんの最近の様子を見てれば分かるよ」
果南「練習中緊張しているのか、たまに動きがぎこちなくなる時があるからさ」
花丸「ずら……」シュン
果南「前に3人の仲がギクシャクした時」
果南「わたし、なにもしてあげられなかったからさ……」
果南「わたしに出来ることがあればなんでも言って欲しいの」
花丸「果南ちゃん……」
花丸「ありがとう。果南ちゃんになら話してもいいかな」
花丸「それじゃあ、まるの悩み、聞いてもらえるずら?」
果南「うん。果南お姉ちゃんにお任せあれってね!」胸ドン
花丸「あのね?果南ちゃんって……」
果南「うんうん」
花丸「『恋』って、したこと……あるずら?」
果南「うんうん…………え?……恋っ!?///」ドキッ
花丸「ず、ずら……///」
果南「え、ええと……」
果南「どうしてわたしになら話してもいいって思ったの……かなん?///」
花丸「だって、果南ちゃんっていろんな人からモテモテでしょ?」
花丸「だから……恋愛とか、したことあるかなって………」
果南「ご、ごめん……」
果南「わたしもその……恋愛経験、したことないんだ……」シュン
果南「それにわたし、花丸ちゃんが思うほどモテモテじゃないからねっ!?」
花丸「そっか……変なこと聞いてごめんね」
果南「……もしかして、好きな人が出来たの?」
花丸「ずらっ!?どうしてそれを!?」
花丸「やっぱり果南ちゃんはエスパー!?///」
果南「だから違うってば。いきなり恋愛話をしてくるんだもん、バレバレだよ」
花丸「ず、ずら…………///」カアアア
果南「で、どこの誰なの~?」
果南「ルビィちゃんたちには内緒にしてあげるからさ~」ニヤニヤ
花丸「えっ……えっと……」ゴニョゴニョ
果南「えっ……そうだったの!?」
花丸「///」コクリ
――バス車内
ルビィ「花丸ちゃん、今ごろ果南ちゃんとなに話してるんだろう……」
善子「ずら丸、ここのところ振り付けを何度もミスしていたから」
善子「もしかしたら、果南にこっ酷く叱られてるかもしれないわね」
ルビィ「果南ちゃんはそんな厳しい人じゃないよ……」
ルビィ「そんなこと言ってたって知ったら、それこそ果南ちゃん怒っちゃうよ?」
善子「……後生だから絶対に言わないでね?ヨハネとの約束よ?」ガクブル
ルビィ「くすっ、分かってるよ。善子ちゃん」
善子「あとヨハネだからね?」
善子「あの子、昔から鈍臭いところがあったから」
善子「今回の振り付けにはかなり苦労してるみたいね」
ルビィ「前から気になったんだけどさ」
ルビィ「善子ちゃん、昔の花丸ちゃんのことよく知ってるよね?」
善子「そりゃ幼稚園の頃だと一番仲が良かったし」
善子「10年も前の話だけど、割と覚えてるわよ」
善子「キャンプファイヤーで一緒にダンスした時とか」
善子「あの子だけテンポ遅れててさ……全然合わせられなくてね」
ルビィ「……………………」
善子「……ご、ごめんっ!」
善子「別に幼なじみを自慢しているわけじゃないのよ!?」
ルビィ「ううん、そうじゃないの」
ルビィ「花丸ちゃんの昔話を聞けるのはとても嬉しいし……」
ルビィ「でも本当のことを言うとね」
ルビィ「今でも善子ちゃんが羨ましく思う時があるんだ」
善子「ルビィ……」
ルビィ「ルビィ、幼稚園にいた時のことは」
ルビィ「アルバムでも見ないと思い出せないからさ」
ルビィ「先生に叱られたり、意地悪な子にイタズラされたことは覚えてるんだけど」
善子「あー、確かに」
善子「ネガティブな記憶って意外と鮮明に覚えてるわよねぇ」
善子「わたしだって中学の時の痛々しい思い出は鮮明に覚えてるし……」ズーン…
善子「封印したいのに、封印することが許されない、ヨハネの黒歴史……」ガクッ
ルビィ「ははは……」アセアセ
善子「……けどルビィだって、中学の頃はずっとずら丸と一緒だったんでしょ?」
ルビィ「うんっ、図書室で仲良くなってからいつでも一緒だったよ」
ルビィ「運動会の時も、修学旅行の時も、いつも花丸ちゃんと一緒だった」
善子「だったらおあいこよ」
ルビィ「え?」
善子「出会ったのが早いとか遅いとか、そんなの一切関係ない」
善子「お互いに知らないずら丸との思い出があるんだから」
ルビィ「善子ちゃん……そうだね」
――
ルビィ(こうやって、善子ちゃんと2人で会話している時も)
ルビィ(気が付くと、いつも花丸ちゃんのことばかり考えちゃいます……)
ルビィ(みんなで一緒に歌詞を作っていた時も、目があったらドキッとしちゃったし)
ルビィ(最初は、この気持ちがよく分からなったけど……)
ルビィ(いろいろ調べているうちに、この気持ちの正体がだんだん分かってきました)
ルビィ(前に2人で長浜城跡に行った時)
ルビィ(勢いで花丸ちゃんに『あんなこと』しちゃったけど……)
ルビィ(今思い出すとすごく恥ずかしくなってきちゃった……///)カアアア
善子「……おーい、ルビィー?」
ルビィ「……はっ!よっ、善子ちゃん!?///」
善子「ルビィまでどうしたのよ?」
善子「ずら丸みたいにボーっとしちゃってさ。それに顔も赤く……」
ルビィ「大丈夫、大丈夫!ちょっと疲れたのかな……」
善子「しっかりしなさいよ」
善子「今回のライブは、わたしたちが要になるんだから」
ルビィ「うん。ごめんなさい」
――部室
果南「……そっか、ルビィちゃんのことが……」
花丸「あの日以来、お互いに特別な存在だと分かって」
花丸「ルビィちゃんとはもっと仲良くなれたんだけど……」
花丸「その後、いろいろあって……///」ボソッ
果南「ん?」
花丸「ううん!なんでもないずらよ!///」
果南「う、うん。それで?」
花丸「それからと言うもの、一緒に歌詞を作ってる時や練習してる時とか」
花丸「これまで以上にルビィちゃんを意識するようになっちゃって」
花丸「こんな気持ちになるの、生まれて初めてで……」
果南「なるほどね」
果南「だからルビィちゃんと隣同士になると、意識して動けなくなっちゃうんだ」
花丸「ずら……」
果南「じゃあいっそのこと、ドーンと告白しちゃえばいいんだよっ!」
花丸「ずらっ!?そ、そんなの無理ずらよぉ///」
花丸「それにほら、まるたち女の子同士だし……」
果南「恋愛に性別は関係ないっ!」ドーン
果南「大事なのはお互いが想いあうハートだよっ!」(←恋愛経験ゼロ)
花丸「う、うん。けど……」
果南「なんだか煮え切らないねえ、けど?……」
カクカクシカジカ
花丸「……だから、この想いは隠しておくことにするずら。今のままが一番だから」
果南「花丸ちゃん……」
果南(花丸ちゃんの悩みは、わたしが思っていた以上に難題だった)
果南(なんとかしてあげたいけど、いかんせん恋愛したことがないからなぁ)
果南(それに他にも……どうしたらいいものか……)
――バス車内
果南「今日はごめんね。こんな遅くまで残ってもらって」
花丸「ううん。この気持ちを打ち明けることが出来ただけでも良かったずら」
花丸「話を聞いてくれてありがとうずら。果南ちゃん」
果南「う、うん……本当にごめん」
花丸「もう、さっきから謝ってばかりずらよ。果南ちゃんらしくないずら」クスクス
花丸(果南ちゃんには『この想いは隠しておく』って言ったけど……)
花丸(ルビィちゃんが好きという気持ちが)
花丸(日に日に強くなっているのをひしひしと感じるずら……)
花丸(でもこの気持ちは、どうしてもルビィちゃんに打ち明けることは出来ないずら……)
花丸(だって……)
――黒澤家
ダイヤ「さてと。明日も早いですし、そろそろ寝ましょう……」
ルビィ「お姉ちゃん」
ダイヤ「ん?どうしましたルビィ」
ルビィ「あのね、お姉ちゃん……」
ルビィ「お姉ちゃんはさ……『恋』……ってしたことある?」
ダイヤ「…………えっ?」
ルビィ「……はっ、なに言ってるんだろルビィ!」アタフタ
ルビィ「ごめんね!変なこと聞いて」
ルビィ「ルビィもそろそろ寝るね!おやすみなさい!」
ダイヤ「…………ルビィ?」
――ルビィの部屋 ベッドの中
ルビィ「……………………」
ルビィ(練習中は余計なことを考えないように一生懸命頑張ってたけど……)
ルビィ(ルビィ……やっぱり花丸ちゃんのことが……)
ルビィ(『友だち』としてじゃなくて、きっと『それ以上』に)
ルビィ(好き……なんだよね)
ルビィ(この気持ちが日に日に抑えられなれなくなってるよぉ……)
ルビィ(この『初めての気持ち』……どうすればいいんだろう……)ウトウト
ルビィ(ねえ、花丸ちゃんなら、こういう時……どうすr……)ウトウト
ルビィ「すぅ……すぅ……」zzz
――
「……そんなっ!」
「……信じてたのにっ!」
「許さない……」
「絶対に許さないんだからあぁっ!!!」
――
――
ルビィ「…………はっ!!!」ガバッ
ルビィ「はぁ、はぁ…………夢か…………」ドキドキ
ルビィ(どうして今まで気が付かなかったんだろう……)
ルビィ(このまま花丸ちゃんに想いを伝えるってことは……)
ルビィ(嫌だ……それだけは絶対に嫌だっ……!)ジワッ
ルビィ(やっぱり、この気持ちは隠しておこう)ゴシゴシ
ルビィ(今のままでも十分幸せなんだから……)
ルビィ「……どうしよう。まだ夜中の2時なのに」
ルビィ「眠れなくなっちゃったよぉ……明日も早いのに……」グスッ
――翌日 通学路
ルビィ「ふわぁ~……」アクビ
ダイヤ「ルビィ、眠たそうですが大丈夫ですの?これから朝練なのに」
ルビィ「……あっ、ごめんお姉ちゃん」
ルビィ「大丈夫だよ?昨日ちょっと変な時間に起きちゃって……」
ダイヤ「そう……それでルビィ、昨日の話のことなんですけど……」
ルビィ「あっ、花丸ちゃんおはよう」
花丸「おはようずら。ルビィちゃん。ダイヤさん」
ダイヤ「おはようございますわ、花丸さん」
ルビィ「今日も練習、がんばルビィだよ」
花丸「うんっ。がんばルビィずら」
ダイヤ(気のせいか、花丸さんも元気がないように見えますわ)
ダイヤ(それにしても、昨日のルビィの質問はどういう意味だったのかしら……?)
ダイヤ(聞き間違いでなければ、『恋』と聞こえた気がしましたが)
ダイヤ(まさかルビィに限って……)
――校舎 屋上
果南「今日は全員で振り付けを合わせるから、定位置についてね」
千歌「いよいよ花丸ちゃんたちセンターと合わせるのかぁ」
梨子「3人とも、昨日も果南ちゃんと遅くまで練習していたみたいだしね」
曜「合わせる時って、いつもドキドキしちゃうよねっ」ワクワク
善子「リトルデーモンの皆さん……」
善子「ヨハネたちの波長にしっかり合わせて舞い踊るのよっ!」ギランッ
千歌「う、うん。頑張るよ善子ちゃん」アセアセ
善子「ヨハネよっ!」
花丸「……ルビィちゃん」
ルビィ「花丸ちゃん?」
花丸「昨日はごめんね。まるのせいで上手く振り付けが合わせられなくて」
ルビィ「大丈夫だよ。今日のこの練習で成功させよ?」
花丸「う、うん」
――
果南「ワン、ツー、スリー、フォー」
果南「ファイブ、シックス、セブン、エイト……」
果南「はーい、ちょっとストップ!」
花丸「はぁ……はぁ……」
果南「大丈夫?花丸ちゃん。途中からテンポが遅れ始めてるけど」
果南「やっぱり、昨日のこと……」ヒソヒソ
花丸「ううん、大丈夫ずら。ごめんね心配かけて」
果南「そう……それからルビィちゃんも」
ルビィ「ご、ごめんなさい」ハァハァ
ルビィ「おかしいな、昨日はうまくいってたんだけど……」ハァハァ
鞠莉「うーん。花丸とルビィ、なんだか今日はバッドコンディションねぇ」
善子「ずら丸はここ最近ずっとイマイチだったんだけど」
善子「今日はルビィも動きにキレがないわね……」
千歌「なんていうか……2人とも元気がない感じがするんだよね」
ダイヤ「ええ、ルビィは少し寝不足気味なのですが、花丸さんまで……」
果南「……それじゃあ、ズレ始めたところから始めるよ。2人ともいける?」
ルビィ「はい……大丈夫です……!」
花丸「まるも、大丈夫……やるずら……」
善子(その後、何度か合わせたものの)
善子(花丸とルビィの調子が戻ることなく、今日の朝練は終わったわ)
善子(花丸だけじゃなく、ルビィまで……ダイヤは寝不足だって言ってたけど)
善子(理由はそれだけじゃないって、堕天使の第六感が感じるわ……)
善子(一体どうしちゃったのよ2人とも……)
――1年教室
ルビィ「……善子ちゃん、今日はごめんね。うまく合わせられなくて」
花丸「まるもごめんなさい。全然合わせられなかったずら……」
善子「もう、しっかりしなさいよ。わたしたちはセンターでしょ?」
善子「数多の苦難を乗り越えた我々は、『ラブライブ』という名の聖杯まで」
善子「あと一歩のところまで手が届きそうなのだからっ!」ギラン
ルビィ「うん。そうだね……」
花丸「ずら……」
善子(普段なら2人して『のっぽパンソード』で思いっきりツッコミするのに……)
善子(すごく気まずい……これは早急になんとかしないと)
善子(そうだ。あの人なら……)
――お昼休み
キーンコーンカーンコーン
花丸「お昼ずらね」
ルビィ「善子ちゃん、屋上で食べよ?」
善子「ごめん。今日はちょっと用事があるから2人で食べて」
ルビィ「え?どこに行くの?」
善子「えーっと……そうっ!」
善子「ヨハネと同じく魔界に堕天してしまったという同志を捜しに……」
ルビィ「う、うん」
花丸「分かったずら」
善子「……あー、昼休み終わる前には戻るから。じゃあまた後でね」
タッタッタッタッ
善子(わたしの堕天使を見ても全く反応しないなんて……)
善子(やっぱり変よ……2人ともっ!)グッ…
――部室
ガラガラ
善子「ダイヤ、待たせてごめんね」
ダイヤ「いいえ」
ダイヤ「わたくしも善子さんにお聞きしたかったことがありましたので」
善子「こういう時、ダイヤに相談するのが一番だと思ったから……」
果南「やっほー、善子ちゃん」手フリフリ
善子「えっ、果南までどうして?」
果南「実はわたしも善子ちゃんに……」
果南「と言うか、ダイヤにも伝えたいことがあってね。一緒についてきちゃった」
果南「本当は内緒にしたかったんだけど」
果南「状況が状況だから、言うしかないかなって……」
ダイヤ「もしかして、果南さんはご存知なのですか?花丸さんが不調の件……」
果南「うん。実はね、昨日花丸ちゃんと話してね……」
善子「お願い!詳しく教えて欲しいの果南っ!」グイグイ
果南「そんな焦らないでっ!?今から話すから……」
――屋上
花丸「もぐもぐ」
ルビィ「花丸ちゃん、今日ののっぽパンはチョコ味なんだね」
花丸「今日はチョコの気分だったから」
花丸「でも、ちゃんとクリーム味もあるずらよ」ガサッ
ルビィ「そっか」クスッ
花丸・ルビィ「……………………」モグモグ
花丸・ルビィ「あ、あのっ!!」
花丸「ル、ルビィちゃんからどうぞずら」
ルビィ「え、えっと、花丸ちゃんからでいいよ?」
花丸「ううん、ルビィちゃんからっ!」
ルビィ「ルビィはあとでいいから、花丸ちゃんからっ!」
花丸・ルビィ「……………………」シーン
ルビィ「それじゃあ……ルビィから言うね」
花丸「うん」
ルビィ「最近、花丸ちゃんの調子が悪いのって……」
ルビィ「ルビィのせいだったり……する?」
花丸「!!」ドキッ
花丸「ど……どうして、そう思ったずら……?」
ルビィ「うん。練習している時に気が付いたんだけど……」
ルビィ「花丸ちゃんが失敗する時って、ルビィが隣にいる時が多いかなって」
花丸「そ、そうかな……?」
ルビィ「さっきの練習中にもいろいろ思い出してたんだけどね」
ルビィ「もしかして……2人で長浜城跡に行った時から花丸ちゃんは……」
花丸「!!?」ドキドキッ
ルビィ「……ごめんね」
花丸「えっ?」
ルビィ「ルビィが『あんなこと』しなければ」
ルビィ「花丸ちゃん、調子が悪くならずに済んだのかなって……」シュン
花丸「そ、それは違うよ!ルビィちゃんっ!」
ルビィ「花丸ちゃん……?」
花丸「あの時、ルビィちゃんがまるのほっぺに……その……///」
花丸「チュ……チューしてくれた時、確かにすごく驚いたけど///」
花丸「でも、とても嬉しかったずらっ!」
ルビィ「花丸ちゃん……」
花丸「調子が悪いのは、まるが練習に追いつけなくてちょっと焦ってるだけ」
花丸「ルビィちゃんと善子ちゃんが、みるみるうちにダンスを覚えていってるから」
花丸「なんとか2人に追いつこうと焦っちゃって……」
花丸「それにほらっ!」
花丸「善子ちゃんと隣同士の時にも何回かミスがあったでしょ?」
ルビィ「それはそうだけど……」
花丸「だから、ルビィちゃんのせいじゃないずらよ」
ルビィ「花丸ちゃん……」
花丸(まるの言ったこと、半分は本当だけど……)
花丸(あの日からルビィちゃんを意識し始めたのは確かだから)
花丸(半分はウソになるずらね……)
花丸(ウソ付いてごめんね、ルビィちゃん)
花丸(でも、この想いは伝えないほうが、まるたちのためでもあるから……)
――
ルビィ「分かったよ。答えてくれてありがとね」
ルビィ「それじゃあ、次は花丸ちゃんの番だよ」
花丸「まる?あっ、そうか……」
花丸「どうして今日は寝不足だったのかなって」
花丸「ルビィちゃん、朝練がある前日は決まって早寝するでしょ?」
ルビィ「うん。ちょっと怖い夢を見てね、夜中に起きちゃったの」
花丸「そう、だったんだ……」
花丸「もし良かったら、どんな夢だったか教えてくれる?」
ルビィ「う、うん」
ルビィ「その夢には、3人の女の子が出てきてね……」
ルビィ「その内の2人はお互いに友だち以上の好意を持ってて」
ルビィ「1人の女の子が……プ、プロポーズをしたら」
花丸「ず、ずら……」ドキドキ
ルビィ「相手の女の子はすぐに返事をしてくれたの」
ルビィ「『もちろん、喜んでっ!』って」
花丸「それは良かったずらね」ホッ
ルビィ「……でもね」
ルビィ「残されたもう1人の女の子が、告白してるところを見ちゃって……」
ルビィ「告白した女の子に泣きながらこう言ったの」
ルビィ『ずっとみんな一緒だって信じてたのに……』
ルビィ『絶対に許さない』
ルビィ「って……」
花丸「……………………」
ルビィ「ルビィはその光景を物陰から見ていたんだけど」
ルビィ「まるでルビィが許さないって言われたような気がして……」
ルビィ「そこで目が覚めちゃったの」
ルビィ「そのあとなんとか寝ようと思ったけど、なかなか寝付けなくて」
ルビィ「結局あれから2時間くらいしか眠れなかったの……」
花丸「『怖い』というより『悲しい』夢だったずらね……」
ルビィ「うん……そうかもね……」
ルビィ(ごめんね花丸ちゃん、ちょっとウソついちゃった)
ルビィ(実際にはルビィが告白して、その子に直接言われちゃったの)
ルビィ(『絶対に許さない』って)
ルビィ(この想いは胸の奥にしまっておこう……)
ルビィ(正夢になったら大変だから……)
――部室
果南「わたしとダイヤの話の内容を整理すると……」
果南「花丸ちゃんは、ルビィちゃんを友だち以上に好意を寄せているのは確実で」
果南「ルビィちゃんも、ダイヤに『恋をしたことがあるか』と尋ねたということは」
果南「花丸ちゃんに対して恋心を抱いている可能性がある」
果南「花丸ちゃんは『とある理由』で告白することをためらってしまい」
果南「その影響でここ最近練習中ミスを繰り返してる……」
果南「ルビィちゃんは今日寝不足で不調だったみたいだけど」
果南「あの子が朝練がある前日に夜更かしするとは考えにくい」
果南「寝ようにもいろいろと考えごとをしてしまい」
果南「十分睡眠を取れなかった……」
果南「……と、いうことになるんけど」
ダイヤ・善子「……………………」ポカーン
果南「まぁ……2人ともそうなるよね」
果南「わたしだって花丸ちゃんから聞いた時は驚いたもの」
善子「ねえ果南」
善子「花丸が言っていたその『とある理由』って」
善子「わたしたち、まだ聞いてないんだけど……」
果南「うん。花丸ちゃんね……」
果南「善子ちゃんのことを思って、告白するのを諦めたみたいなの」
善子「…………えっ、わたしのことを思って?」
果南「花丸ちゃんね、昨日こう言ってたの」
――昨日 部室
花丸「う、うん。けど……」
果南「なんだか煮え切らないねえ、けど?……」
花丸「もしも、ルビィちゃんに告白して受け入れてくれたとしても」
花丸「善子ちゃんのことを考えると」
花丸「3人とも今のままじゃいられなくなりそうで……」
果南「……ああ。3人とも仲良しだもんね」
果南「もしもルビィちゃんとカップルになったら」
果南「善子ちゃんに寂しい思いをさせるんじゃないかって」
花丸「ずら……」
花丸「まるにとっては、善子ちゃんも『大切な人』だから」
花丸「この想いは隠しておくことにするずら。今のままが一番だから」
果南「花丸ちゃん……」
――
ダイヤ「つまり、今の関係を壊したくないがために、告白を断念したと」
果南「そういうことになるね」
善子「……………………」
ダイヤ「……善子さん。単刀直入にお聞きしたいのですが」
善子「ダイヤ……?」
ダイヤ「花丸さんとはルビィよりも古い付き合いみたいですが」
ダイヤ「善子さんは、花丸さんとお付き合いしたいと思いますか?」
ダイヤ「『友だち』としてではなく、『恋人』として……」
善子「!?」ビクッ
果南「ちょっとダイヤ!それはいくらなんでもストレートすぎじゃ」
ダイヤ「この際、ハッキリさせておきたいのですわ」
ダイヤ「ルビィたちのためにも。そしてなにより、善子さん自身のためにも……」
善子「わたしは……」
善子「わたしは、花丸のことが好き」
善子「もちろん、ルビィのことも好き……」
善子「でも……この好きは『友だち』としての好きなんだと思う」
善子「わたし、恋人どころか少し前まで友だちもろくにいなかったから」
善子「今のわたしには『恋』とか『愛』とか全然分からないもの」
善子「確かに、2人が友だち以上に慕っているかもと聞いた時は驚いたし」
善子「少しだけ、羨ましくも思ったけど……」
善子「でも……花丸がルビィのことを好きになっても」
善子「わたしのことをちゃんと思ってくれていると分かったから」
善子「今は、ちょっとだけ安心してる」
ダイヤ「……分かりましたわ」
ダイヤ「答えてくれてありがとうございます」
果南「Aqoursの中で恋愛経験があるのは誰もいないから」
果南「この問題をどう解決すればいいのか、正直全然分からないんだよねぇ」
ダイヤ「他人の恋愛話をわたくしたちが議論すること自体」
ダイヤ「そもそも間違ってるのかもしれません」
ダイヤ「……ですが、これだけはハッキリ言えます」
ダイヤ「わたくしの大切な妹と、妹の大切な親友……」
ダイヤ「ルビィと花丸さんをなんとかしてあげたい。力になってあげたい」
ダイヤ「Aqoursのメンバーとして、そして姉として……」
ダイヤ「果南さん、そして善子さん」
ダイヤ「無茶なお願いだとは分かってはいますが……」
ダイヤ「どうか、2人の初恋が叶うように協力して頂けますか?」
果南・善子「……………………」
果南「……うん分かった。わたしは協力するよ」
ダイヤ「果南さん……ありがとうございます」
果南「善子ちゃんはどうする?」
善子「…………わたしも、協力するわ」
ダイヤ「善子さんも、ありがとうございます」
善子「でもその代わり、条件があるの」
果南・ダイヤ「条件?」
善子「協力する前に、『2人の本心』がちゃんと聞きたいの」
果南・ダイヤ「2人の本心?」
善子「果南の言ったことは信じてるけど、わたしも確かめてみたいの」
善子「花丸とルビィの本当の気持ちを」
善子「お互いにどれだけ好意を抱いているのか……」
善子「全てが分かったら、2人が告白出来るように協力するわ」
ダイヤ「善子さん……」
善子「だからお願い2人とも。少しだけわたしのわがままに付き合ってくれない?」
ダイヤ「……善子さんがそう仰るのでしたら。お付き合いしますわ」
果南「ヨーソロー!了解でありますっ!」ビシッ
ダイヤ「それ、曜さんのつもりですか?」ジトー
果南「えへへっ……一度やってみたかったんだ」
善子「ありがとう。ダイヤ、果南」
果南「それでコマンダー!どういうプランで行くつもりでしょうかっ!?」
善子「そうね、まず……ってコマンダーはやめて!ヨハネにしてっ!」
――放課後 部室
ダイヤ「千歌さんとも相談をしたのですが」
ダイヤ「ここ連日長時間練習が続いて、皆さん疲れていると思いますので」
ダイヤ「本日はミーティングだけ行い、練習はお休みとします」
果南「休息を取るのも大事だからね。みんなしっかり身体を休めてねっ!」
全員「はーいっ!」
ルビィ「花丸ちゃん、帰りに久しぶりに松月に行かない?」
花丸「いいずらね、それじゃあ善子ちゃんも誘って……」
善子「ルビィ。ちょっといいかしら」
ルビィ「善子ちゃん?」
善子「帰る前にルビィに話したいことがあってね。ずら丸いいかしら?」
花丸「うん、分かったずら」
善子「それじゃルビィ。行きましょうか」
ルビィ「うん」
花丸「善子ちゃん、いつになく真剣な顔してたけど」
花丸「ルビィちゃんに何の話を……」
果南「はーなまーるちゃんっ!」ハグッ
花丸「わわっ、果南ちゃん!?///」
果南「花丸ちゃんにどうしても伝えたいことがあってね」
果南「昨日のことなんだけど……」
――屋上
善子「着いたわ」
ルビィ「善子ちゃん。屋上に来ちゃったけど、ここでお話するの?」
善子「ルビィ」
ルビィ「なに?」
善子「正直に答えて欲しいんだけど……」
善子「あなた……花丸のことが好きなの?」
善子「友だちとしてではなく、それ以上に……」
ルビィ「……っ!!?」ビクッ
善子「どうなの?正直に答えて」
――
善子(わたしの2人の本心を聞き出すためのプランはこう)
善子(連日遅くまで練習が続いていて、ゆっくり話せる機会がないから)
善子(ダイヤが千歌にお願いして、今日の練習をお休みにしてもらい)
善子(わたしは直接ルビィの本心を聞き出す)
善子(その間に果南は、花丸がわたしに本心を言えるように誘導してもらい)
善子(時間を空けて花丸の本心も確かめる)
善子(2人の本心が分かったら、改めてプロポーズ出来るようにダイヤたちと協力する)
善子(少し手間ではあるけど、我ながらナイスアイデア……)
ルビィ「……………………」ポロポロ
善子「……えっ?」
ルビィ「ごめん……なさい……」ポロポロ
善子「ちょ!?なんで泣いてるのよ?と言うかなんで謝るのっ!?」
ルビィ「ごめんなさぁい……善子ちゃあん……」ヒックヒック
――
ジュースゴクゴク
ルビィ「はぁ……」
善子「落ち着いたかしら?」
ルビィ「うん。ごめんね、いきなり泣き出しちゃって」
善子「ホント驚いたわよ。わたしはただ確かめたかっただけなのに」
善子「ルビィの本当の気持ちを」
ルビィ「本当の……気持ち?」
善子「そう」
善子「あの件以来、2人が更に仲良くなったのは誰が見ても分かるし」
善子「なんか、友だち以上の関係に見えるくらいにね……」
ルビィ「うゆ……」
善子「怒らないから、正直に話してみて?」
ルビィ「うん……分かった。あのね……」
――
善子「……そっか。それだけ花丸のことを……」
ルビィ「うん。でも、この想いは花丸ちゃんに伝えないことにしたんだ」
善子「えっ、どうしてよ?」
ルビィ「だって……善子ちゃんに悪いから……」
善子「!!」
善子「……どうして、わたしに悪いと思ったの?」
ルビィ「だって、善子ちゃんと花丸ちゃんは幼なじみだし……」
ルビィ「善子ちゃんも、花丸ちゃんのことが好きだもんね」
ルビィ「もしも……ルビィと花丸ちゃんと両想いになったら」
ルビィ「善子ちゃんに寂しい思いをさせてしまうかもしれなくて……」
ルビィ「それは絶対嫌なの。ルビィは、善子ちゃんのことも好きだから……」
善子「ルビィ……」
ルビィ「実を言うとね、昨日寝不足になったのは、こんな夢を見たからなの……」
――
――――
――――――
ルビィ「は、花丸ちゃんっ!」両肩ガシッ
花丸「ル、ルビィちゃん!?」ドキッ
ルビィ「ルビィ、前から花丸ちゃんのことが……す、好きでしたっ!///」
花丸「っ!!」
ルビィ「ルビィと……付き合ってくだしゃいっ!!///」
ルビィ「あうっ、噛んじゃった……」グスッ
花丸「ルビィちゃん……」
花丸「もちろん、喜んでっ!///」ニコッ
ルビィ「花丸ちゃんっ……!///」パアア
善子「そ……そんなっ!」ガーン
善子「わたしもずら……花丸のことが好きだったのにっ!」
ルビィ・花丸「よ、善子ちゃん!?」
善子「ルビィのこと、信じてたのにっ……!」グスッ
善子「ずっとみんな一緒だって……信じてたのにっ……!!」ヒック
善子「…………許さない」ギリッ
ルビィ「っ!!」ビクッ
善子「あんたのこと……絶対に許さないんだからあぁっ!!!」ポロポロ
――――――
――――
――
――
善子「わたしが、そんなことを……?」
ルビィ「善子ちゃんがそんなことを言う子じゃないのは分かってるけど」
ルビィ「……すごく怖かったの」
善子「まさか、正夢になると思って想いを伝えるのを諦めたと……」
ルビィ「うん……」コクン
善子「この……おバカデーモンッ!」
軽く頭をチョップ
ルビィ「ピギィッ!?」ビクッ
ルビィ「よ、善子ちゃん!?さっき怒らないって……」頭抑える
善子「怒ってるんじゃないの!悲しいのよっ!」
ルビィ「か、悲しい……?」
善子「あのねルビィ。前にずら丸から聞いたけど」
善子「あなたはいつも人に気を使いすぎなのよ」
善子「自分の気持ちにウソついて、無理に人に合わせても辛いだけよ?」
ルビィ「それは、そうかもだけど……」
善子「それに、あなたさっき言ってたじゃない」
善子「わたしに寂しい思いをさせたくないって」
ルビィ「う……うん」
善子「その一言を聞いて、わたしは腹を括ったわ」
善子「絶対にルビィと花丸を両想いにさせてみせるって」
ルビィ「善子ちゃん、どうしてそんな……」
善子「もしも2人がわたしに内緒で付き合っていたら……」
善子「その時は本気で『ハイパー激おこデーモン丸』が降臨していたところだったわ」
ルビィ「ピ、ピギィ……」ガクブル
善子「でも、違った」
善子「ルビィは花丸だけじゃなくて、わたしのこともちゃんと思ってくれていた」
善子「あの時のわたしとは違って……」ボソッ
ルビィ「えっ?」
善子「ううん、なんでもない。それにあなたねぇ……」
善子「何かにつけてわたしと花丸が『幼なじみだから』って言うけど」
善子「昨日も言ったけど、出会ったのが早いとか遅いとか全然関係ないからね」
善子「大事なのは『お互いに好きな気持ちがあるかどうか』なんだから」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「だから、告白するためのお膳立てはするから」
善子「ルビィもしっかり腹を括りなさい」
善子「そしてちゃんと花丸に想いを伝えること!」
善子「ヨハネ様の命令は絶対よ、リトルデーモン4号っ!」ビシッ
ルビィ「うゆぅ……よしこ……ちゃあぁ……」ジワッ
善子「あ~もう、泣くのは告白が成功してからにしなさいっ!」
ルビィ「うん……ごめん、ね……」ゴシゴシ
ルビィ「よしk……ヨハネちゃんっ!」ニコッ
善子「っ!」ドキッ
善子「まったく……本当に世話の焼けるリトルデーモンなんだから……」頭ポリポリ
――
善子(ルビィがわたしのことを見捨てるなんて、絶対にあり得なかったわね)
善子(だって、独りぼっちになる寂しさは、ルビィが一番知っていたんだから……)
善子(元はと言えば、そんな思いをさせてしまったのは、わたしのせいだったわよね)
善子(幼なじみなのをいいことに、花丸を独り占めにしていたから)
善子(その時のルビィの目には、わたしが本当に悪魔に見えていたのかも……)
善子(それでもルビィは、わたしのことを嫌いにならないでくれた)
善子(そればかりか『大好き』だって言ってくれた)
善子(だから今度は、わたしが借りを返す番……)
ピロリーン♪(スマホ通知音)
善子(……どうやら果南、うまく説得出来たみたいね)ホッ
ルビィ「どうかしたの?善子ちゃん」
善子「ちょっとね、ヨハネの同志からテレパシーが送られてきて……」
善子「……そうだルビィ」
善子「協力する代わりに、ヨハネたってのお願いがあるんだけど」
ルビィ「お願い?」
――部室
ガラガラ
花丸「あっ、善子ちゃんおかえり。あれ、ルビィちゃんは?」
善子「ええ、ルビィはちょっと本を探しに図書室にいるわ」
花丸「そうだったんだね」
花丸「…………あのね」
善子「なに?」
花丸「善子ちゃんに、話さないといけないことがあるの」
善子「…………ええ、聞いてあげるわ」
花丸「驚かないで、聞いて欲しいんだけど……」
花丸「実はまる……」
善子「…………」ゴクリッ
花丸「ルビィちゃんのこと……好きになっちゃったの」
花丸「友だちとしてじゃなくて、恋愛的な意味で……」
善子「っ!!」
善子「……………………」フゥ
善子「…………そう」
花丸「あ、あれ?驚かないずらかっ?」
善子「2人が友だち以上に仲が良いことは、最初から分かっていたから」
花丸「……ごめんね」
善子「なんでずら丸が謝るのよ……?」
花丸「まるにとって善子ちゃんは、とても大切な幼なじみなのに」
花丸「ルビィちゃんと両想いになりたいって気持ちが強くなる一方で……」ジワッ
花丸「でも、そしたら善子ちゃんに寂しい思いをさせてしまうんじゃないかって……」グスッ
ギュッ
花丸「よっ、善子ちゃん!?いきなりどうしたの……///」
善子「全くあんたたちは……揃いも揃ってお人好しなんだからっ……!」
花丸「えっ?あんた……たち?」
善子「実を言うとね、さっきルビィにも聞いてきたのよ」
善子「花丸のことが恋愛的な意味で好きなのかって……」
花丸「そ、そうだったの?」
善子「そしたら、あの子あんたと全く同じことを言っていたのよ」
善子『両想いになりたいけど、告白したらわたしに寂しい思いをさせるんじゃないか』
善子「ってね」
花丸「ルビィちゃんが……?」
善子「わたしは、花丸とルビィの本当の気持ちが知りたかった」
善子「2人は間違いなく両想いだった……」
善子「でも2人とも、わたしのことを見捨てないでくれていた」
善子「それが分かっただけで、わたしはとても満足しているわ」
善子「小学、中学と友だちがろくにいなかったわたしに」
善子「高校に入って『最高の親友』が2人も出来たんだから……」
花丸「善子……ちゃん……」グスッ
善子「だからそんな顔しないのっ!これから告白しに行くんでしょ!?」
花丸「…………えっ、告白!?///」
善子「なに言ってるのよ。これから練習でどんどん忙しくなるし」
善子「今日を逃したら、告白するチャンスは大会が終わるまで巡ってこないわよ!」
花丸「それは……そうかもしれないけど……」
善子「ルビィが待っているわよ……図書室で」
花丸「善子ちゃん……」
花丸「分かった……まる、頑張るずら!」
善子「その意気よ、花丸っ!ちゃんと女を見せてきなさいっ!」
花丸「ありがとう、よし……ヨハネちゃんっ!」
善子「!!」
花丸「まる、行ってくるずらっ!」
タッタッタッタッ
善子「……まったく、2人してこういう時だけ『ヨハネ』って呼ぶんだから……」
ダイヤ「善子さん」
果南「善子ちゃん」
善子「ダイヤ……果南……勝手にごめんね」
善子「2人の話を聞いていたら、いつの間にかプロポーズまで進めてたわ」
ダイヤ「いいえ善子さん。2人のために尽力してくれて、ありがとうございました」
善子「わたしの方こそありがとね。今日の練習お休みにしてくれて」
善子「それに果南もありがとう。花丸を説得するの、大変だったじゃない?」
果南「まあ最初は戸惑ってたけど、わたしみたいに後悔して欲しくなかったからね」
果南「『やっぱりお互いに気持ちをぶつけ合った方がいい』って説得したよ」
善子「そっか…………」
善子「…………」
ダイヤ「善子さん」
手を伸ばす
善子「…………」
善子「…………ぐすっ」
善子「ダイヤァ……」ボフッ
ダイヤ「ありがとう。本当にありがとう……」頭ナデナデ
ダイヤ「今はわたくしを実の姉だと思って、いっぱい感情をぶつけて下さい……」
善子「ぐすっ……ひっく……ううううっ…………」ポロポロ
善子(花丸がルビィのことを本当に好きなんだと分かった瞬間)
善子(わたしは、生まれて初めて『恋愛感情』が芽生えたような気がした)
善子(そして芽生えたと同時に、失恋してしまった……のかもしれない)
善子(でも、同時に2人の親友に愛されていたんだと分かって、安堵もした)
善子(このなんとも言えないジレンマに押し潰されそうになった時)
善子(ダイヤは何も言わずにわたしのことを受け入れてくれた……)
善子(ルビィがあそこまでダイヤを慕う理由が、今なら分かる)
善子(この人は、辛くなった時には必ずそばにいてくれるんだ)
善子(前にもこうやって泣いてしまったわたしを慰めてくれたっけ……)
善子(わたしにお姉ちゃんがいたら、こんな感じで慰めてくれてたのかな……)
善子(どうしよう……涙が止まらないよぉ……)
善子「ひっく……ううぅっ……」ポロポロ
ダイヤ「果南さん。2人の様子を見に行って頂けますか?」ヒソヒソ
果南「……分かった。行ってくるよ」ヒソヒソ
――図書室
ルビィ「うーん」
ルビィ「善子ちゃん、『本を探して欲しい』って言ってたけど」
ルビィ「グリモ……なんだっけ?『魔術の本』なんて置いてないよぉ」
ルビィ「しかも『見つけるまで図書室から出られない結界』を張って行っちゃうし」
ルビィ「どうしたらいいんだろう……」ハァ
ガラガラ
花丸「ルビィちゃん!!」ハァハァ
ルビィ「ピギッ!?は、花丸ちゃん!?」
花丸「……なにやってるずら?」
ルビィ「えっと、善子ちゃんから本を探すように頼まれてて……あっ」
善子(告白するためのお膳立てはするから、ルビィもしっかり腹を括りなさい)
ルビィ(あのお願いって、花丸ちゃんと図書室で2人きりにさせるために……)
ルビィ「あのっ、えっと……」
タッタッタッタッ
花丸「ルビィちゃん」両肩ガシッ
ルビィ「ピ……ピギィ!?花丸……ちゃん……///」ドキドキ
花丸「今から……大事な話をするから、聞いて欲しいの……///」ドキドキ
ルビィ「う、うん……」
ルビィ「あっ、実はルビィもね。大事な話があるの///」
花丸「それじゃ……一緒に言う?きっと同じことだと思うから」
ルビィ「……う、うん。分かったよ」
果南「……2人は、あっ、いたいた」ソー
果南(お互いに向き合って……もしかしてこれからっ……!?)
花丸「すぅ~……」
ルビィ「はぁ~……」
――
花丸「ルビィちゃんっ!」
ルビィ「花丸ちゃんっ!」
花丸・ルビィ「ずっと前から好きでしたっ!!」
花丸「まると」
ルビィ「ルビィと」
花丸・ルビィ「付き合ってくだしゃいっ!!」
シーン
果南(か、噛んだ……?)
果南(一番大事なところで噛んだ……!?)
果南(しかも2人同時にっ!!?)
果南(どうしよう。ここで行く訳にもいかないし、どうしたら……)
ルビィ「…………ふふっ」
花丸「…………くすっ」
花丸・ルビィ「あはははははははっ!!」
花丸「ルビィちゃん、『くだしゃい』ってそれはないずらよ~!」アハハハ
ルビィ「花丸ちゃんだって、同じところで噛んだじゃないっ!」アハハハ
花丸「あはははっ、おかしすぎて……涙が出てきたっちゃったずらぁ……」ジワッ
ルビィ「ふ~、ルビィも……笑ってたら涙が出てきたよ……」ポロッ
花丸・ルビィ「……………………」
ルビィ「花丸ちゃああんっ!!」ギュッ
花丸「ルビィちゃああんっ!!」ギュッ
ルビィ「嬉しい……すごく嬉しいよっ……!」ポロポロ
花丸「まるも……やっと本当の気持ちを言うことが出来たよぉ……!」ポロポロ
ルビィ「花丸ちゃん。プロポーズの答え……聞かせてくれる?」グスッ
花丸「もちろん……喜んでっ! ///」ニコッ
花丸「ルビィちゃんも聞かせてくれる?プロポーズの答えを……」
ルビィ「うんっ、ルビィも……宜しくお願いしますっ! ///」エヘヘ
――
果南(良かった……)
果南(一時はどうなるかと思ったけど、これで一安心ね……)ポロッ
果南(あれ?ホッとしたら、わたしまで涙が出てきちゃった)グスッ
ダイヤ「果南さん」
果南「あっ、ダイヤ。プロポーズ……無事に成功したよ」サムズアップ
ダイヤ「そう、良かったですわ……」
善子「…………」
果南「善子ちゃん……もう、大丈夫なの?」
善子「うん……思いっきり泣いたらスッキリしたわ」
善子「告白成功したみたいだから、今から2人を祝福しに行ってくるね」
果南「えっ、ちょっと!善子ちゃ……」
ダイヤ「行かせてあげてください。これが善子さんの望みだから……」
果南「ダイヤ……」
――
ルビィ「えへへっ///」ニコニコ
花丸「ふふふっ///」ニコニコ
善子「……フフッ、そこのお二人さん」
花丸・ルビィ「……あっ」
善子「今からこの堕天使ヨハネが、特別にあなたたちを祝福してあげるわっ!」
善子「堕天したとはいえ、元々は『祝福の女神』に仕えた天使だったわたし……」
善子「このわたしから祝福されるのですから、ありがたく思いなさ……」
花丸・ルビィ「…………善子ちゃああああぁあんっ!!」
ドーンッ!
善子「いたたた……いきなりなにするのよ、2人してっ!」
ルビィ「善子ちゃああん!ありがとうっ!」
ルビィ「本当にありがとぉお……ひっく」ポロポロ
花丸「ぐすっ、まるたちの背中を……押してくれて……」
花丸「ありがとずらぁあ~~!」ポロポロ
善子「っ!!」
善子「な……なによ!……そんなの、当たり前でしょ……!?」ウルッ
善子「友だちが……困ってたら……」
善子「助けて……あげる、のは…………」ウルウル
善子「うっ、うううぅ……」ポロポロ
善子・花丸・ルビィ「うわあああぁぁぁんっ!!」
――
果南(それからしばらく、3人は延々と泣き続けていたけど)
果南(日が落ち始めたので、さすがにわたしとダイヤが止めに入って)
果南(その後、お互いに今回の件を全て打ち明けたよ)
果南(3人とも泣きすぎて目を真っ赤に腫らしていたけど)
果南(とても嬉しそうな顔をしてたなぁ)
果南(おめでとう。花丸ちゃん、ルビィちゃん)
果南(そして善子ちゃんも、本当にお疲れさま……)
果南(あっ、これはあとで調べてみたんだけど)
果南(『悪夢は他人に話すと正夢にならない』って言われてるんだって)
果南(ルビィちゃんは花丸ちゃんと善子ちゃんに自分の悪夢を話したから)
果南(きっといい方向に事が運んだんだろうなって、わたしは思ったんだ)
果南(それにしても……)
果南(まさか1年生たちがわたしたちよりも先に恋に目覚めるとはねぇ……)
――翌日
果南「花丸ちゃんはそのステップをキープして!」
花丸「はいずら!」
果南「善子ちゃんは、花丸ちゃんと対称的に動いて!」
善子「分かったわ!あとヨハネよっ!」
果南「2人が離れたら真ん中からルビィちゃん入ってきて!」
ルビィ「はいっ!」
千歌「すごい……今日は3人とも息ピッタリ合ってるよ」
曜「花丸ちゃんも調子を取り戻したみたいだし、ルビィちゃんも動きが俊敏だよ!」
梨子「やっぱり、昨日しっかり休養を取ったのが良かったのかしら?」
千歌「うんっ。ダイヤさんがお願いしたから、わたしはすぐにOK出したけど」
千歌「まさかここまで良くなるとは思わなったよ~!」
鞠莉「これなら、次のライブもパーフェクトなパフォーマンスが披露出来そうねっ」
ダイヤ「ええ、そうですわね」
――
ダイヤ(あれから、ルビィと花丸さんに『約束事』を伝えました)
ダイヤ(次のライブが終わる前の間は)
ダイヤ(『恋人同士であることを千歌さんたちには秘密にする』こと)
ダイヤ(そして『カップルのような振る舞いはみんなの前では避ける』ことですわ)
ダイヤ(とは言うものの、お互いについ最近恋心を抱いたみたいですし)
ダイヤ(それにあの2人に限って、いかがわしいことはしないとは思いますが……///)
鞠莉「どうかしたの、ダイヤ?顔が真っ赤よ?」
ダイヤ「なっ、なんでもありませんわ!///」
ダイヤ「さぁ、次はわたくしたちの番ですわよっ!」
鞠莉「えっ?ええ……」
ダイヤ(調子を取り戻したルビィと花丸さん、そして善子さんは)
ダイヤ(以降の練習でも大きなミスをすることなく)
ダイヤ(全体練習もうまく行きましたわ)
ダイヤ(そして……)
――ライブ当日
千歌「……いよいよここまで来たね」ドキドキ
梨子「このライブが成功したら、ラブライブが目の前に見えてくるのね……」
曜「よーしっ、今日も張り切っちゃうヨーソロー!」
花丸「……ち、千歌ちゃんっ!」
千歌「どうしたの?花丸ちゃん」
花丸「ルビィちゃんが……ルビィちゃんがっ!」
ルビィ「うっ……ううぅ……」ガクガク
千歌・曜「ルビィちゃん!?」
梨子「どうしたのルビィちゃん!?」
花丸「緊張がピークに達して、動けなくなってしまったずら……」
千歌「そんなっ!?」
善子「無理もないわ。今回のライブ、予想してたよりも規模が大きいんだもの……」
鞠莉「しかもルビィはメインのセンターだから」
鞠莉「相当プレッシャーを感じてるのね……」
花丸「……千歌ちゃん、まるたちの出番まであと何分あるずら?」
千歌「えっと……あと45分ってところかな」
花丸「それじゃ、しばらくの間ルビィちゃんに外に連れて行ってもいいずら?」
千歌「うん、お願いするよ。花丸ちゃん」
花丸「ルビィちゃん、歩ける?」
ルビィ「う……うん……」ヨロヨロ
曜「大丈夫かなルビィちゃん。歩くのもやっとみたいだけど……」
ダイヤ「きっと大丈夫ですわ。花丸さんがついているなら」
果南「うん、わたしもそう思う」
善子「……………………」
善子(……頼むわよ、花丸)
――ライブ会場 屋上
花丸「ルビィちゃん、大丈夫?」
ルビィ「うん……平気だよ」ハァ ハァ
ルビィ「外の空気を吸って少し落ち着いたみたい……」ハァ ハァ
花丸(とても平気には見えないずら……顔が青ざめてるもの……)
ルビィ「そろそろ戻らないと、ステージ始まっちゃうね」フラフラ
花丸「ルビィちゃん、目を閉じてくれない?」
ルビィ「えっ、こう?」
ギュッ
ルビィ「ピギッ!?花丸ちゃんなにを!?胸が顔に……///」
花丸「静かにするずら」
ルビィ「う……うん……」ドキドキ
ドクン ドクン
ドクン ドクン
ルビィ(あっ、花丸ちゃんの心の音……)
花丸(なんだか……とても落ち着く……)
花丸「前に本で読んだことがあるの」
花丸「心音には『心を落ち着かせる効果』があるんだって」
花丸「お母さんのお腹の中にいた時、心臓の音を聞きながら育ったから」
花丸「大きくなっても、聞くと自然に心地良く感じるんだって」
ルビィ「そう、だったんだね……」
花丸「ルビィちゃん、今まで精一杯練習を頑張ったもんね」
花丸「『最高のパフォーマンスでみんなをあっと言わせたい』って」
ルビィ「うん……」
花丸「でも、今はなにも考えなくていいんだよ」
花丸「今はただ、まるの心音を聞いて落ち着くことだけに専念して欲しいずら」
ルビィ「……ありがとう。花丸ちゃん」
ルビィ「でも……」
ルビィ「花丸ちゃんも、緊張……してるんだね?音が早くなってるよ?」
花丸「えへへ、バレちゃったずらか///」
花丸「うん、まるもすごく緊張してるずr……」
ルビィ「ぎゅ~っ!」ギュー
花丸「ずらっ!?ル、ルビィちゃん!?ルビィちゃんの胸が……///」
ルビィ「お返しだよ。ルビィの心の音を聞いて、落ち着いてね?」
花丸「う……うん。ありがとうずら……///」
花丸(あ、これが……ルビィちゃんの心音……)
花丸(すごく、安心出来るずら……)
――
曜「あっ、2人とも戻ってきた」
梨子「ルビィちゃん、大丈夫?」
ルビィ「うん。もう平気。心配かけてごめんなさい」
千歌「さすが花丸ちゃんだねっ」
花丸「うん。でも本当はね、まるもルビィちゃんと同じくらい緊張してたんだ」
鞠莉「そうだったの?全然そういう風には見えなかったけど」
花丸「けど、ルビィちゃんが緊張をほぐしてくれたずら」
曜「本当に仲良しだね2人とも」
ルビィ「えへへへ……///」
――ステージ裏
千歌「……さあ、みんな!」
千歌「『0』から『1』にすることは出来たから……」
千歌「今度はみんなで『1』から『宇宙の果て』までキラキラ輝く光になろうっ!」
花丸「宇宙の果て……随分とスケールが大きくなったずらね」クスッ
善子「フフッ、ここから先は『未知の領域』を切り拓くというわけね……」ギラン
果南「まっ、夢は大きいほうがいいもんね」
ダイヤ「ええ。何がなんでも優勝すると信じていますわ」
鞠莉「なんだか始まる前から相当エキサイトしてきたわっ!」
梨子「わたしも、すごく心が高鳴ってきたっ!」
曜「勢いづいたわたしたちは誰も止められないからねっ!」
ルビィ「ラブライブに向けて駆け抜けルビィ!」
千歌「それから……今日は宜しくね!センターのみんなっ!」
ルビィ・花丸「はいっ!」
善子「ヨハネにお任せよっ!」
千歌「ルビィちゃん。サビ最初は1人で前に立つことになるけど」
千歌「後ろにはわたしたちがついてるから、精一杯頑張ってね!」
ルビィ「うん!がんばルビィ!」
千歌「ふふっ、それじゃ行くよ!Aqours!」
全員「サンシャイーンッ!!」
――数日後 部室
千歌「……それでは!ライブ成功を祝して、カンパーイ!」
全員「カンパーイ!」
紙コップコツン
果南「……いや~、今回のライブ無事に終わって良かったね。見事に優勝出来たし!」
曜「1年生たちがセンターと歌詞を務めた今回の新曲も評判が良かったしねっ!」
千歌「も~曜ちゃん、わたしも歌詞やったんですけどー?」プンプン
曜「あはは、ごめんごめん」
善子「フフッ、勝利の美酒(コーラ)に酔ってしまいそうだわ……」シュワシュワ
鞠莉「みんな、パソコン見て!前に善子と花丸が紹介されたサイトにね」
鞠莉「今度はルビィも『注目スクールアイドル』に紹介されたのよぉ~!」
ダイヤ「な……なんですってっ!?」クワッ
鞠莉『黒澤ルビィは、今まで表立ってアピールすることは少なかったが』
鞠莉『今回のライブではとても情熱的で』
鞠莉『非常に勇気をもらえるパフォーマンスを披露してくれた』
鞠莉「ってね!」
鞠莉「宝石言葉だとルビーは『情熱』と『勇気』という意味が込められてるものね」
ダイヤ「さっすが我が妹っ!」ガッツポーズ
ダイヤ「ルビィが勝利をもたらしてくれたと言っても過言ではありませんわ~っ!!」
梨子「もう、ダイヤさんったら……」クスクス
梨子「ってあれ?花丸ちゃんとルビィちゃんは?」
善子「ああ、あの2人なら……」
――部室外
花丸「はい、ルビィちゃん。ジュース持ってきたずらよ」
ルビィ「ありがとう。花丸ちゃん」ゴクゴク
ルビィ「ぷはぁ~、美味しい!」
花丸「ふふっ、いい飲みっぷりずらね」
ルビィ「うゆゆ……///」
花丸「メインセンター、お疲れさま」
ルビィ「そんなっ、花丸ちゃんだってセンターだったじゃない」
花丸「うん。でも、一番頑張ったのはルビィちゃんだよ」
花丸「今回のライブで、ルビィちゃんがどれだけすごいスクールアイドルか」
花丸「大いにアピールすることが出来たと思うずらよ」
ルビィ「……うん。そうだったらいいな」
千歌「ルビィちゃ~ん!花丸ちゃ~ん!」
千歌「そんなところでなにしてr……」口抑える
善子「ちょっ!?少しは空気読みなさいよ千歌っ!」
千歌「むぐぐぐ~!おういえ(どうして)~!?」ジタバタ
善子「はっ!そ……それは……」
ダイヤ「善子さん。もうライブは終わったから、大丈夫ですわよ」
善子「ダイヤ……」
ダイヤ「ルビィ、花丸さん。こちらへ」
ルビィ「お姉ちゃん……うん」
ルビィ「行こう、花丸ちゃん」
花丸「うん」
ダイヤ「ライブが終わったので、みなさんにお伝えしたことがあります」
ダイヤ「さっ、ルビィ、花丸さん。みなさんにご報告を」
ルビィ「え、えと……あの……」
花丸「ルビィちゃん」
お互いの手を握る
ルビィ「花丸ちゃん……」
ルビィ「あのっ!わたし、黒澤ルビィと」
花丸「わたし、国木田花丸は」
ルビィ・花丸「お付き合いすることになりましたっ!!」
シーン…
千歌・梨子・曜・鞠莉「え?」
――
梨子「……つまり、ライブの練習中に既に告白してたってわけ?」
千歌「全然気が付かなかったよ~」
千歌「あっ、でも、確かにある日を境にルビィちゃんたちの動きが良くなったよね?」
鞠莉「あの時から花丸とルビィは既にラブラブだったわけねえ……」
梨子「今回は『恋の力』で優勝できた、ということなのかしら///」
曜(す、すごい……ルビィちゃんと花丸ちゃん……)
曜(あれからそんなに発展していたなんて……///)ドキドキ
曜(わ、わたしも…………)チラッ
曜「……あっ」
千歌「…………ん?」クルッ
千歌「どうかしたの?曜ちゃん」
曜「う、ううん!何でもないよ……?」
千歌「そう?」キョトン
曜(千歌ちゃん……梨子ちゃんのほうをずっと見てたような……)
曜(ううん、気のせいだよね。きっと)首ブンブン
曜(それに、わたしはまだちゃんと想いを伝えられていないんだもの)
曜(千歌ちゃんが気付かないのも無理ないよね……)シュン
ルビィ「えへへ……///」
花丸「照れるずら~///」
善子「今はこうやって素直になってるけど、あの時は本当に大変だったのよ」
善子「2人ともずっと前から両想いだったのに」
善子「わたしに気を遣って告白出来ずにいたんだから」
花丸「よっ、善子ちゃん!?///」
ルビィ「は、恥ずかしいよぉ~!///」
果南「前回のルビィちゃんの件といい、今回といい」
果南「本当に1年生たちは話題が尽きないねぇ~」ハハハ
鞠莉「……ねえ、果南」
果南「…………え?」
鞠莉「前回も今回も、わたしだけ一切関与してないんだけど……」ジトー
鞠莉「どういうことかしら……?」ニコッ
果南「…………あっ」
鞠莉「『あっ』じゃないわよ!もうっ!」プンプン
鞠莉「恋愛相談なら(雑誌やドラマを見て勉強した)わたしの得意分野だったのに」
鞠莉「なんで何も言ってくれなかったのよぉ~!」
鞠莉「1人だけ抜け駆けして~っ!」
果南「ごめんごめん!今度の休みにパフェおごってあげるから!」
鞠莉「……コーヒーも付けてくれないとヤダ」ムスー
果南「分かったよぉ。それじゃ、美味しいコーヒーが飲めるカフェにしよ?」
善子「……なんだか、向こうもすごいことになってるわね」
ルビィ「あははは……」
ルビィ(こうして、ルビィたちがセンターを務めたライブは終わりを迎えました)
ルビィ(思えば、新曲を作ることが決まってから今日までいろんなことがありました)
ルビィ(その間、善子ちゃんのことを嫌いになりそうになった時もあったけど……)
ルビィ(今では出会った時よりもっと好きになりました。ルビィの大切な親友です)
ルビィ(そして、花丸ちゃんは、ルビィの…………)
――休日 沼津某所
善子(今日はずら丸とルビィがカップルになってから初めての休日ね……)
善子(今ごろ2人してショッピングしたり)
善子(映画を観たりしてデートを楽しんでいるのかしら……)
善子(……なんて思っていたのに)
ルビィ「ここだよ花丸ちゃん、善子ちゃん」
花丸「オラ、ワクワクしてきたずら~!」
善子(どうしてわたしが2人のデートに同行してるの……?)
――沼津港 回転寿司屋
ヘイラッシャーイ!
善子「……しかもどうしてお寿司屋さんなの?」
ルビィ「えっとね、花丸ちゃん回転寿司屋さんに行ってみたいって言ってたから」
花丸「お寿司が回ってる~!未来ずら~!」キラキラ
善子「……じゃなくてっ!」
善子「なんでわたしまで一緒に来なきゃいけないのよぉ!」
善子「せっかく2人の初デートでしょ!?」
ルビィ「だって、善子ちゃんのほうが沼津のこと詳しいし。それに……」
花丸「大勢で食べたほうが美味しいずらよっ!」
善子「やれやれ……わたしは2人の保護者じゃないんだから……」ハァ
善子(…………それに)チラッ
|c||●.□●|| ジー…
善子(出入口前で隠れているあれ……どう見てもダイヤよね?)
善子(そりゃ妹の初デートが気になって尾行する気持ちも分かるけど)
善子(サングラスにマスクにコートって、明らかに不審者じゃない!?)
善子(せめてマスクは外しなさいよっ!?)
※3話の善子の格好みたいな感じです。
ルビィ「このタッチパネルを操作して注文するんだよ」ピッ ピッ ピッ
花丸「たっち……ぱねる?」キョトン
善子「もう、ずら丸の分はわたしが注文してあげるから。なに食べる?」
花丸「ありがとう善子ちゃん。それじゃマグロとイカで!」
ルビィ「やっぱり善子ちゃんがいると心強いね!」フフッ
花丸「ずらっ、善子ちゃんは頼りになるずら!」ニコッ
善子(あー、だからわたしを呼んだのね2人とも)
善子(わたしを孤立させないように『居場所』を作ってくれたんだ……)
善子(本当、揃いも揃ってお人好しなんだから……)
――
花丸「マグロとイカ美味しいずら~!」モグモグ
ルビィ「よかったね花丸ちゃん」サーモンモグモグ
善子「やれやれ」
善子(それにしても……)チラッ
|c||●._●|| 茶碗蒸しモグモグ
善子(ダイヤの視線(サングラス)が気になってお寿司がのどを通らないわ……)
善子(それにさっきからお寿司じゃなくて茶碗蒸しばかり食べてる気が……)
善子(……いけない、ここは別の話題をふらないと)
善子「ねえ2人とも」
花丸・ルビィ「ん?」モグモグ
善子「せっかくカップルになったんだからさ」
善子「『カップルらしい食べ方』してみない?」
ルビィ「カップルらしい……」
花丸「……食べ方?」
ルビィ「……あっ、そうか!」
ルビィ「はい花丸ちゃん、あーんして!」つ サーモン
花丸「えっ!?じゃ、じゃあ……あーん///」パクッ モグモグ
善子「どうよ?ずら丸」
花丸「……うんっ!自分で食べるよりも美味しいずら~!」ニコニコ
ルビィ「よかった~!///」パアア
花丸「それじゃあ、まるもルビィちゃんにマグロあげるずら」つ マグロ
ルビィ「えっ、いいの?じゃあ……///」
善子(はぁ……これで少しはカップルらしいことを……)
ルビィ「あーん///」
善子(……ってちょっと待って。ずら丸のマグロには……)
善子「ルビィ!!食べるの待っ……」
ルビィ「パクッ、もぐもぐ……」
善子「あ」
ルビィ「…………」モグモグ
ルビィ「」ジワッ
花丸「え?」
ルビィ「~~~~~~~~っ!!!」ポロポロ
花丸「ああっ!!?」
花丸「オラのマグロ、わさびが入ってたの忘れてたずら~っ!!」アタフタ
善子「店員さんすみません!大至急お水をくださいっ!!」
|c||;●.Д●|| ガクガクブルブル…
善子(ダイヤ!?気持ちは分かるけど堪えて!!わたしがなんとかするからぁ!!)
――
ルビィ「はぁ……はぁ……」ヒリヒリ
花丸「本当にごめんなさいっ!!」
花丸「ルビィちゃん、わさびが苦手なの分かってたのにっ!」ウルウル
花丸「なんてひどいことを……」グスッ
善子「ずら丸のせいじゃないわ……悪いのは全部わたし」
善子「わたしが2人に食べあいっこを勧めちゃったから」
善子「こんなことになっちゃったのよ……」
ルビィ「ううん……2人のせいじゃないよ……」
善子「ルビィ……」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「花丸ちゃんが食べさせてくれたマグロ……」
ルビィ「とても……美味しかったよ。えへへ」ウルウル
善子・花丸(な……なんて健気なの(ずら)……!)ジーン
――
ルビィ「食後はデザートじゃなくて茶碗蒸しで締めるんだぁ」茶碗蒸しモグモグ
善子「ルビィにしては意外ね」
善子「てっきりアイスで締めるのかと思ってたわ」茶碗蒸しモグモグ
花丸「どうして茶碗蒸しずら?」茶碗蒸しモグモグ
ルビィ「お姉ちゃんがね、プリンが好きなせいか茶碗蒸しも好きなの」
花丸「確かに、どちらも卵で作られる料理だから似てるずらね」
ルビィ「お姉ちゃん、お寿司を食べた最後は決まって茶碗蒸しを頼んでいたから」
ルビィ「いつの間にかルビィも茶碗蒸しで締めるようになったんだ」
善子「なるほどねぇ……」チラッ
|c||●._●|| 茶碗蒸しモグモグ
善子(ちょっと待って。まだ茶碗蒸し食べてるの!?)
善子(好きなのは分かったから、なんでもいいからお寿司食べなさいよっ!)
アリガトウゴザイマシタ-!
花丸「満腹ずら~♪」
ルビィ「すごいね花丸ちゃん。10皿も食べちゃうなんて」
善子「しかも時々、ルビィの分を1貫ずつもらってたから、それ以上ね」
ルビィ「さて、そろそろ深海水族館に行ってみようか」
花丸「そうずらね。PV撮影で訪れた時以来だね~」
善子「……わたしはこれで帰るわ」
ルビィ「えっ、善子ちゃん。でも……」
善子「あなたたち、今日が初デートだってこと忘れてない?」
花丸「忘れてないずらよ。けど……」
善子「2人がわたしに気を遣ってくれてるのはよく分かるわ。痛いほどにね」
善子「だから、もうわたしのことは気にしなくていいから」
善子「あとは2人でゆっくり楽しみなさい。初デートを」
ルビィ・花丸「善子ちゃん……」
ルビィ「わかった。それじゃ2人で行くよ」
花丸「お寿司注文してくれてありがとずら、善子ちゃん!」
善子「気をつけて行ってくるのよ!」
ルビィ「ありがとう!善子ちゃんも帰り気をつけてね~!」
花丸「また明日ずら~!」
善子「…………はぁ、やれやれ」
|c||●.-●|| ジー…
善子「いい加減出てきたらどうなの?」クルッ
善子「ダイヤッ!」
|c||;●.д●|| ピギャ!? コソコソ…
善子「今更隠れたってもう遅いわよ!」サングラスポイッ
ダイヤ「……な、なにをするのです善子さん!?」
ダイヤ「け、警察に通報しますわよっ!?」
善子「おだまらっしゃ~いっ!!」
ダイヤ「ピギャッ!?」ビクッ
善子「こんな怪しすぎる格好して!」
善子「知り合いじゃなかったら真っ先に通報してたわよっ!」ビシッ
ダイヤ「う……うゆぅ……」シュン
――
善子「……で、どうだった?2人の初デートの様子を見て」
ダイヤ「そうですわね」
ダイヤ「一見すると、いつもみたいに友だち同士で出かけるようにしか見えませんが」
ダイヤ「……善子さん、気が付きましたか?」
善子「なにが?」
ダイヤ「ルビィと花丸さん、おめかししてたんですよ」
ダイヤ「ほんの少しですけど」
善子「えっ、そうだったの?全然気が付かなかった……」
ダイヤ「2人のことを前から知ってるわたくしなら、ひと目でわかりましたわ」
善子「……そっか。なんだかんだ言って、2人とも意識していたのね」
ダイヤ「まさか、あの2人が恋仲になるとは思いもしませんでしたわね」
善子「それはわたしも同意見よ」
善子「今までただの仲のいい友だちだと思ってたのに」
ダイヤ「もしかして……未練、残ってます?」
善子「完全になくなった、と言ったらウソになるわね」
善子「でも寂しくはないよ。2人とも優しいから、信用しているし」
ダイヤ「そうですか……」
善子「そういうダイヤだって、今日は果南と鞠莉と一緒じゃないのね」
ダイヤ「鞠莉さん、あれから果南さんに対してはずっとご機嫌ナナメで」
ダイヤ「今は果南さんが必死にご機嫌を取ってるみたいですわ」
ダイヤ「先ほど果南さんからもLINEで連絡がありましたし」
ダイヤ「まぁ前回も今回も、わたくしが鞠莉さんに口止めしていたので」
ダイヤ「わたくしにも責任はあるのですが……」
善子「ダイヤは……寂しくないの?」
ダイヤ「え?」
善子「あの2人だって、もしかしたら……」
ダイヤ「わたくしも善子さんと同じですわ」
ダイヤ「あの2人もお互いにまだ意識していないけど」
ダイヤ「もしかしたら友だち以上の関係になる日が来るかもしれません……」
ダイヤ「けどわたくしも、2人のことを信用してますから、寂しくはありませんわ」
善子「そっか……」
ダイヤ「善子さん」
ダイヤ「もし宜しかったら、今から駅前に行きません?」
善子「え?」
ダイヤ「せっかくこうやって会ったのですから」
ダイヤ「たまにはお出かけしてみませんか?」
ダイヤ「……『お姉ちゃん』と」ヒソヒソ
善子「っ!!///」ドキッ
善子「な……なに言ってるのよ!もうっ……///」
善子「……フッ、いいわ」
善子「特別に堕天使ヨハネが付き合ってあげるっ!」
善子「ダイヤ……おねえ……ちゃん///」
ダイヤ「くすっ、今日だけ特別ですわよ?」
ダイヤ「あと、このことはルビィと花丸さんには内緒ですからね」
ダイヤ「ルビィが聞いたら絶対やきもち焼いちゃいますから」
善子「…………うん///」コクリ
善子「……それにしても、いくらなんでも茶碗蒸し食べすぎでしょ」クスクス
ダイヤ「あ、あの時は茶碗蒸し以外何も口が通らなかったのですわ……///」
――沼津港深海水族館
ルビィ「はぁ~、いつ見てもシーラカンス大きかったね~」
ルビィ「まさにシーラ!カンスッ!って感じで」
花丸「ふふっ、ルビィちゃん。本当にシーラカンスが好きだよね」
花丸「そう言えば、前にまるがプレゼントしたぬいぐるみは……」
ルビィ「うんっ、今はルビィのベッドの横に置いてあるよ」
ルビィ「抱いて眠ると、よく花丸ちゃんの夢が見られるんだぁ!」
花丸「そ、そうなんだね。照れるずら……///」
ルビィ「……帰りのバスまで、まだ時間あるね」
花丸「この周辺で他におすすめスポットはあるずらか?」
ルビィ「うーんとね……あっ、そうだ!もう一度あそこに行ってみない?」
――びゅうお
花丸「そう言えば展望台に登るのは初めてだったずらね」
ルビィ「うん。あの道路見て。あそこまで善子ちゃんを追いかけたんだよね」
花丸「そうだったね。善子ちゃん、あそこで千歌ちゃんと『闇の契約』をして」
花丸「Aqoursのメンバーになったんだよね」
ルビィ「うん。あれからもう半年近く経っちゃったんだよね……」
花丸「あっという間だったずらね……」
ルビィ「ねえ花丸ちゃん」
花丸「なに?ルビィちゃん」
ルビィ「ちょっと長いんだけど、ルビィのお話聞いてくれる?」
花丸「うん、いいよ。聞いてあげるずら」
ルビィ「今まで花丸ちゃんにも一度も言ったことがなかったんだけど」
ルビィ「ルビィ、花丸ちゃんとスクールアイドルを始めた時に」
ルビィ「もう一つ『夢』が出来たの」
花丸「夢?」
ルビィ「うん。それはね……」
ルビィ「花丸ちゃんと、μ'sの凛ちゃんと花陽ちゃんみたいな」
ルビィ「『最高のコンビになりたい』っていう夢を」
花丸「そうだったんだ。まるが凛ちゃんで、ルビィちゃんが花陽ちゃんだね」
ルビィ「うんっ!でも……」
ルビィ「ルビィと花丸ちゃんは、花陽ちゃんたちと違って幼なじみじゃない」
ルビィ「花丸ちゃんの本当の幼なじみの善子ちゃんがAqoursに入ってから」
ルビィ「その夢がだんだんと遠く感じるようになったの……」
ルビィ「あっ、でも善子ちゃんはμ'sで言えば真姫ちゃん?にこちゃんかな?」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「これまでも、花丸ちゃんの隣でステージに立つことは多かったけど」
ルビィ「Aqoursが有名になって、善子ちゃんと花丸ちゃんの人気が出てきて」
ルビィ「いつの間にかルビィだけ取り残されてしまったと思った時は」
ルビィ「完全にその夢を諦めちゃったんだ……ルビィには絶対無理なんだって思って」
花丸「……………………」
ルビィ「例のスクールアイドルサイトの掲示板でも2人の評価が高くてね」
ルビィ「ルビィはその現実をただ受け止めるしかなくて……そしたら」
ルビィ「2人が仲良くしている姿を見るたびに胸がズキッと痛くなってきちゃったの」
花丸「うん…………」
ルビィ「しばらくして『注目スクールアイドル』で2人が大きく取り上げられて」
ルビィ「クラスの子が花丸ちゃんたちに嬉しそうに話してるのを聞いた時」
ルビィ「もうルビィは……Aqoursに必要ないんじゃないかって……」
花丸「…………っ!」
花丸「そんな悲しいこと言わないで!お願いだからっ!!」
ルビィ「ま、待って!?これは前の話だから!」
ルビィ「今はもう思ってないから……ね?」
花丸「あう……早とちりしてたずら。ごめんなさい……」
ルビィ「……でもね」
ルビィ「教室を飛び出して図書室の隅に隠れて泣いていた時に」
ルビィ「花丸ちゃんが駆けつけてくれた時は、本当に嬉しかったんだ」
ルビィ「そしてルビィに『最高の友だち』だと言ってくれた時は」
ルビィ「笑顔を見せたかったのに、嬉しくて涙が止まらなかったよ……」ジワッ
ルビィ「あっ、ごめん……」
ルビィ「思い出したらまた涙が出てきちゃった。えへへ」ゴシゴシ
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「善子ちゃんも、花丸ちゃんと一緒にルビィを探してくれてたんだよね?」
花丸「うん。まると同じくらいに心配してたし、とにかく必死だったよ」
ルビィ「そんな心優しい子を嫌いになりそうになったルビィのほうが」
ルビィ「よっぽど悪い子だったのかもしれないね……」
ルビィ「だから、善子ちゃんと仲直り出来て本当に良かったよ」
ルビィ「まさか善子ちゃんをハリセンで叩くことになるとは思わなかったけど……」
花丸「自分を戒めるために『叩いて欲しい』と言ったんだと思うけど」
花丸「あれは本当に痛そうだったずら……」
ルビィ「……その後、3人でセンターすることが決まって」
ルビィ「ルビィはメインセンターなんて重要なポジションを任されて」
ルビィ「歌詞を作って、歌を覚えて、ダンスも覚えて……」
ルビィ「この1ヶ月間近く本当に大変だったけど、とてもいい経験が出来たよ」
ルビィ「ライブも無事に成功して優勝までしちゃったもんね」
花丸「ルビィちゃん、曲を作る前と比べると、たくましくなったずらよ」
ルビィ「えへへっ、そうかな」
ルビィ「そして、花丸ちゃんに、告白して……」
ルビィ「つ、付き合うようになって」
ルビィ「また、あの『夢』を思い出したの……」
ルビィ「……花丸ちゃん」
ルビィ「花陽ちゃんと凛ちゃんみたいな……」
ルビィ「最高のコンビを目指したいの。ルビィと一緒に」
花丸「…………ルビィちゃん」
花丸「それは出来ないずらよ」
ルビィ「ピギッ!?ダメなの?」ガーン
花丸「だって……まるたちもう、最高のコンビどころか……」
花丸「『最高のカップル』になっちゃったんだから!」エヘヘ
ルビィ「花丸、ちゃん…………」ジワッ
花丸「確かにファンの人たちの声も大切だし」
花丸「善子ちゃんとコンビを組んだほうが喜んでくれる人もいると思う」
ルビィ「うん。2人とも人気あるし、みんなもきっとそう思ってるよ……」
花丸「でもね、まるはルビィちゃんがいい」
花丸「ううん、ルビィちゃんじゃないとダメなの」
花丸「まるはこれからもルビィちゃんと一緒に、キラキラ輝いていきたいっ!」
ルビィ「っ!!」
ルビィ「はなまる……ちゃあん……」ウルウル
花丸「だから、これからも宜しくね」
花丸「ルビィちゃん」ニコッ
ルビィ「うん……うんっ!」グスッ
――
花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「なに?」
花丸「ルビィちゃんに、渡したいものがあるんだけど」
花丸「……受け取ってくれる?」
ルビィ「えっ?いいけど、水族館でお土産は買ってないような……」
花丸「海のほうを向いてくれる?」
ルビィ「こ、こう?でもこれだと花丸ちゃんが見えな……」
ホッペにチュッ
ルビィ「ピ、ピピッピ…………ピギィイイ!!?///」カアアアア
花丸「1ヶ月近くお返しするのが遅くなって、ごめんね///」
ルビィ「花丸、ちゃん……あ、ありがとう……///」
花丸「今は、これが限界ずら……///」
花丸「でも、その内……お互いの……唇に……///」カアアアア
ルビィ「ううん、焦らなくていいよ」
ルビィ「それに……唇は……ルビィもちょっと今は……///」
花丸・ルビィ「///」シュー…
ルビィ「……でも、これだけは何度でも言えるよ」
ルビィ「花丸ちゃんへの『ありのままの気持ち』」
花丸「まるへの気持ち……そっか。まるも言えるよ」
花丸「ルビィちゃんへの『ありのままの気持ち』」
ルビィ「じゃあ、また一緒に言う?」
花丸「うん」
花丸・ルビィ「せーのっ!」
『大好きだよっ!ルビィちゃん!』
『大好きたよっ!花丸ちゃん!』
おわり
ご覧いただきましてありがとうございました。
遅れましたが、アニメ2期決定&花丸ちゃん誕生日おめでとうございます。
2期ではルビィちゃんが高く評価される回があることを切に願っています。
それにしても、電撃G'sマガジンの号外の表紙のルビまるが実に素晴らしい……
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