雅枝「記憶喪失?」咲「うん?」 (64)

久しぶりにSSを書きたくなったて言うか、何て言うか…

咲(……ここ、どこ?)

咲「千、里山?」

咲「……え? 電車間違えたのかな?」

咲(……どうしよう……)

―――――
―――――――――

雅枝「待たんかい! 引ったくり!」

雅枝「ちょっと道空けてや!」

雅枝「そこの中坊、退いてくれ!」

咲「お母さん……お姉ちゃん――え?」

雅枝「はよ退けや! ぶつかるで!」

――――
―――――――

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咲「痛たた……」

雅枝「すまんな。大丈夫か?」

咲「うん。大丈夫だよお母さん」

雅枝「……は?」

咲「お母さん?」

雅枝「……大丈夫やないやん」

咲「お母さんこそ大丈夫?」

雅枝「ん? ああ、大丈夫や。それより、頭見せてみ」

咲「ん」

雅枝「あちゃータンコブなってるわ。少し待っててや……えと……」

咲「咲だよ。本当に大丈夫?」

雅枝「ああ、すまんすまん。大丈夫じゃないかもしらんわ。ほな、少しだけ電話するわ」

洋榎『はいはい。どないしたん?』

雅枝『落ち着いて聞いてくれ』

洋榎『何や? 警察にでもお世話になったんか?』

雅枝『……愛宕姉妹にニューフェイスや』

洋榎『はぁ? オトン単身赴任やで? 流石オカンとは言えショックやわ』

雅枝『何言うてんねん。赤ん坊やない。中坊や』

洋榎『ますます意味分からんわ。家出娘か何かか?』

雅枝『……には見へん』

洋榎『ならあれか? 賭け麻雀で毟れるもん無くなかったから娘を頂いてきたんか? 現役引退した言うてもそれは拙いやろ』

雅枝『流石にそこまで鬼畜やない』

洋榎『なら意味分からん。いや、最初から分からんけど。信じて欲しいんやったら連れて帰ってき。ほな』

雅枝「…………どないしたらええんや?」

――――
―――――――

洋榎「で、連れて帰って来たと」

雅枝「せや。それで、咲をどうするかやけど……どこ行ったか知らんか?」

洋榎「絹に任せたわ。適当に連れ出してもらった。拙かったか?」

雅枝「いや、それでええ」

洋榎「……単刀直入に訊くけど、咲をどないするつもりや?」

雅枝「答えられたら苦労せん。とりあえず親御さんに連絡はした」

洋榎「どうやって?」

雅枝「携帯借りてな。明日、病院連れて行く事は伝えてある」

洋榎「さよか。とりあえず一晩は家に泊めて明日放流。それでええんやな?」

雅枝「しかないやろ。何でこないなことなってん……」

絹惠「何が?」

洋榎「おー。絹、お帰り。咲、どうやった?」

咲「楽しかったよ。お姉ちゃんも来たら良かったのに」

洋榎「また今度やな。楽しみにしてるわ。ほな、麻雀打とか。咲も打つか?」

咲「勿論だよ」

洋榎「よっしゃ。ウチに勝ったら何でも奢ったるわ」

―――――
――――――――

洋榎「三連続でプラマイゼロか……やるやん」

絹惠「咲ちゃん、勝ちにいかんの?」

咲「いつもだよね。私が打ったらこうなるの」

雅枝(……いつも? どない教育したらこない歪な麻雀になるんや?)

洋榎「ああ、せやったな。何としてもプラマイゼロの牙城を崩したるで! 絹、手伝ってや!」

絹惠「はいはい。相変わらず負けず嫌いやなぁ」

雅枝(ただ、それ以上に溢れ出る才能……宮永照や天江衣と似たものを感じる……その芽を育てたいのは教育者としてのエゴやろうな……)

洋榎「オカンも手ぇ抜いたらアカンで」

雅枝「分かってる分かってる。オカンはいつでも全力や」

咲「…………」

絹惠「ほなサイコロ回すで」

―――――
―――――――――

雅枝「と言うわけで、清水谷、江口、園城寺、打ってくれ」

怜「打つんはいいですけど、誰ですか?」

セーラ「まさか」

竜華「監督の隠し子とか?」

雅枝「アホ言うな。ただ……気を抜いたら食われんで」

咲「お母さん、本当にやるの?」

雅枝「当たり前や。この三人に勝てんかったら長野に強制送還や」

咲「……そっか」

怜「訳ありみたいやな。けど、手は抜かんで」

咲「はい。勿論、お願い致します」

セーラ「よろしくな。ま、負ける気はないけど」

―――――
―――――――――

南四局
怜:75000
セーラ:7700
竜華:12300
咲:5000

怜(多分、セーラと竜華も違和感を感じてる……このまま終わるわけがない)

セーラ(宮永照とやった俺やから分かるんやろか。これはこのまま終わらんで)

竜華(一波乱ありそうやな)

咲(……園城寺さん、役満当てないと勝てないけど未来が見えてるっぽいなぁ……どうしよう……)

――――
―――――――


怜(……何やこれ……清一、タンヤオ、二盃口まで見えるで)

二二三三四四六六七七七九 ツモ三

怜(ほぼ一位安全圏。ただ、萬子が殆ど見えてないんは怖いなぁ……一巡先見るか――)

怜「……はは。何やこれ」

竜華「どないしたん? 悪いもんでも見たん?」

怜「竜華、先を見てもどうする事も出来へん未来ってのもあるねん」

セーラ「まさか……いや、ありえへんやろ」

怜「咲ちゃんの勝ちや」

咲「ロン。九連宝燈」

セーラ「そのまさかやな。九面待ち、初めて見たで」

怜「そんな破られ方するとは思ってなかったわ」

竜華「確かにどないしようもないな。咲ちゃん、高校は決まってるん?」

咲「え? いや、その……」

雅枝「その辺にしたり。咲が困ってるわ」

雅枝(化物じみた点数調整能力と、支配。プラマイゼロは意図的に外す事は出来るんか……園城寺に九連当てたのも多分、偶然やない)

雅枝「悪い、少し外すわ」

―――――
―――――――――

雅枝「で、咲は寝たか?」

洋榎「絹と一緒に夢の中や。それで、千里山で打ってきたんやろ?」

雅枝「園城寺から役満当てたで」

洋榎「は? 園城寺ってあの?」

雅枝「せや。それで、咲の様態やけど……頭を打った事による記憶の混濁やって」

洋榎「それがどないして愛宕の人間って認識になんねん。咲、ホンマのオカンや思ってるで。鳥の雛やん」

雅枝「それは分からんそうや。それでや、咲やねんけど」

洋榎「引き取る言うんか?」

雅枝「引き取りって言うか預かりや。向こうの親御さんには連絡した」

洋榎「で、許可を貰ったんか?」

雅枝「そんなところや。オカン、明日長野行くから家よろしくな」

洋榎「……何考えてんねん」

雅枝「麻雀師として咲を育てたいんや。ホンマ最低な親やで」

洋榎「ホンマにな。教育者として立派やとは思うで? けど、親としては軽蔑するわ」

雅枝「はっきり言うやん」

洋榎「オカンの娘やからな。ま、咲の事はウチと絹に任せとき。頭下げてくるんやで」

雅枝「すまんな」

洋榎「……で、咲の入学先やけどどないするん?」

雅枝「無理矢理ねじ込めるのは千里山しかあらへん」

洋榎「……しゃーないか。咲が来れば大戦力やねんけどなぁ」

雅枝「悪いな」

洋榎「かまへんかまへん。さてっと、ウチも寝るわ」

雅枝「お休み」

―――――
――――――――

怜「久しぶりやなぁ。あれからどないや?」

咲「只管麻雀打ってました」

怜「あれからまだ強なってるんか。ええやんええやん。即戦力やで」

咲「私なんてまだまだですよ」

怜「謙遜やでそれ。ま、何でもええんやけど」

咲「そんな事ありませんよ。私、一巡先なんて見えませんから」

怜「見られたら私のアイデンティティーが無くなるわ。しっかしええ天気やなぁ」

咲「いい天気ですね」

雅枝「せやな」

怜「……監、督」

咲「……あ」

雅枝「入学式の最中やで。何してんねん?」

怜「あー。その……体調悪くなったんで咲に看病してもらってました」

咲「……」

雅枝「……さよか。咲、学校ではお母さんやないで」

咲「はい。先生」

雅枝「それでよし。ほな、先生は行くわ」

咲「いってらっしゃい」

怜「部活には復活してますわ」

雅枝「……園城寺、入学式終わったら職員室な」

怜「……え?」

咲「園城寺先輩……」

咲「先生、私も入学式が終わったら職員室に行きます。怜……さんだけが悪いわけじゃないです」

怜「ええこやなぁ。咲、私の妹にならん?」

咲「前向きに考えさせてください」

雅枝「さよか。なら咲も職員室おいで」

咲「はい。すいませんでした」

怜「ほんまええこやなぁ」

雅枝「せやろ。自慢の娘やで」

怜「……親バカ」

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洋榎「ほんで、咲はどないやった?」

雅枝「ああ……園城寺と入学式さぼっとったで」

洋榎「園城寺? あぁ、あの病弱の?」

雅枝「せや」

洋榎「ほーん。あの大人しそうなやつがなぁ」

雅枝「園城寺が大人しい? 何の冗談やねん。体が弱いだけで多分、千里山で一番フリーダムやで」

洋榎「見かけによらんなぁ。けど、そんなんはどうでもええねん。咲、部活に出たんやろ? どやった?」

雅枝「なんや、咲に聞いてへんの?」

洋榎「あー……聞こうと思ったんやけどな……」

雅枝「珍しく濁すやん」

洋榎「何て言ったらええんやろか。その、頬っぺた赤くしてぽーっとしてたみたいな?」

雅枝「ああ。そら聞きにくいなぁ。初日やから一軍には混ぜんかったけど、二軍相手に圧倒しとったで」

洋榎「プラマイゼロで?」

雅枝「いや、知ってるやろ? あの一件以来プラマイゼロの呪いは解けてる」

洋榎「あの無茶苦茶言ったやつか?」

雅枝「せや。まさかあんなにあっさり解呪出来るとは思わんかった」

洋榎「普通なら教会やのにな」

雅枝「それかシャナクやな。ともかく、体験談入部の期間が終わり次第一軍に混ぜてみるつもりや」

洋榎「それまでは様子見ってわけか」

雅枝「特別扱いはせんよ」

洋榎「それがええと思うで」

雅枝「それより、アンタ少しレベルアップしてるな」

洋榎「そらなぁ。言い方はホンマ悪いけどオカンと咲と打つのってめっちゃ経験値高いで」

雅枝「そら嬉しいわ。なんならもう少し打つか?」

洋榎「……絹も咲も寝てるわ」

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怜「せや咲、ちょっとデート行かん?」

咲「デートですか?」

竜華「ええやん。咲、行ってき」

咲「でも部活が……」

怜「大丈夫やって。竜華が何とかしてくれるから」

竜華「任せてや。何とかしたるから息抜きしておいで」

咲「……はぁ。でしたら」

怜「これで咲もサボり組の仲間入りやな」

咲「えぇ……」

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怜「咲、お腹すいたわ」

咲「何か食べます」

怜「んー。せやなぁ、咲は何が食べたい? お姉さんが奢ったるで」

咲「……蟹?」

怜「……え? 蟹?」

咲「はい。蟹です。かに道楽行きたいです」

怜「……たこ焼きやったらあかんの?」

咲「先輩のいいところがみたいです」

怜「……しゃーないな。道頓堀まで行こか」

咲「冗談です。どこかでたこ焼き買って近くの公園で食べましょう」

怜「なんやねん。咲には敵わんわ」

咲「怜さん、優しいですね」

怜「どうやろな。優しいんやったらしっかり部活に参加させてるわ」

咲「……」

怜「どないしたんや?」

咲「あー、その……少し意外だったので」

怜「どうせ私が調子に乗るって思ってたんやろ」

咲「ええ」

怜「まぁ、他に用はあんねんけどな」

咲「用ですか?」

怜「せや。竜華とセーラには頼まれへん。咲やから頼めることがあんねん」

咲「たこ焼き分は恩返ししますよ」

怜「そらありがたいわ」

咲「それで、私だからって言うのは二巡先を見る練習ですか?」

怜「……少し驚いたで」

咲「あの二人に言えなくて私に言えることなんてこれくらいじゃないですか」

怜「せやろか?」

咲「どうでしょう? 案外当てずっぽうかもしれませんよ」

怜「別にどうでもええわ。せやから、咲、お願いや」

咲「お断りします」

怜「……何でや?」

咲「それは怜さんが一番理解してるはずですよ」

怜「……」

咲「心配なんですよ。それに、そもそも一巡先を見ること自体インチキみたいなものじゃないですか。それより先って贅沢ですよ」

怜「そんなん分かってるねん。けど、勝ちたいねん」

咲「白糸台に?」

怜「それは勿論やけど。何よりも咲に」

咲「……チームメイトですよ?」

怜「やからこそ」

咲「……私はともかく、試合でしたら怜さんがマイナスで帰ってくることはないですよ」

怜「買い被りすぎや」

咲「それは自分を過小評価しすぎです。それにーー」

怜「それに?」

咲「それに、万が一ですよ? 怜さんが失点したら私が取り返します。少しだけ、少しだけ可愛い妹分を頼ってください」

怜「さよか。ほな可愛い妹分に可愛い先輩から押し付けさせてもらうわ」

咲「これでこの話は終わりですね。それじゃあ、たこ焼き食べに行きましょう」

怜「え? いや、それは……」

咲「可愛い妹分からのおねだりですよ?」

怜「ほんま敵わんなぁ」

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咲「お姉ちゃん」

洋榎「どないしたん?」

咲「いや、少し眠れなくて」

洋榎「ほーん。ほな、夜遊びでも行くか? 治安最悪やけど」

咲「ううん。少しだけいいかな?」

洋榎「ええよ。そんなとこ突っ立ってないで入ってき」

咲「うん。ありがと。ちょっとそっちに詰めてもらってもいい?」

洋榎「ほら、これで入れるやろ」

咲「ありがと」

洋榎「ええよ。それより咲、部活はどないや?」

咲「サボったら怒られた」

洋榎「オカンにか?」

咲「うん」

洋榎「何やってんねん。オカンそんなんはホンマに嫌いやで」

咲「みたいだね。怜さんが涙目になってたもん」

洋榎「怜さん? ああ、園城寺か。あれらしいやん?」

咲「あれ?」

洋榎「見かけによらずフリーダムなんやろ?」

咲「ほんとにね。授業中に保健室に呼ばれたときはちょっと驚いた」

洋榎「病弱なんは嘘やないねんな」

咲「本当だけど、多分保健室で休んでる半分は仮病じゃないかな。この前はそうだった」

洋榎「咲もえらい先輩になついたもんや。お姉ちゃんちょっと悲しいわ」

咲「それ、嘘」

洋榎「よー見てるわ」

咲「お姉ちゃんの妹だからね」

洋榎「……せやな。咲、部活どない?」

咲「楽しいよ。本当に楽しい。けど、多分、試合ではお姉ちゃんと当たらないかも」

洋榎「なんや? 中堅やないんか」

咲「多分、次鋒か大将だって」

洋榎「由子か恭子と当たるんか」

咲「のよーさんか末原さん?」

洋榎「内緒にしとってな。ウチが代行に怒られるわ」

咲「どうしよっか。お姉ちゃん、お好み焼き食べたいな」

洋榎「ちゃっかりしてるな」

咲「お姉ちゃんの妹だからね」

洋榎「二回目や。まぁ、ウチに麻雀で勝てたらな」

咲「あれ? 最近の成績ってどうなってたっけ?」

洋榎「ウチが2勝勝ち越してるで」

咲「じゃあ次は本気だそうかな」

洋榎「なんや? 手加減してたんか?」

咲「ううん。全力だよ? ただ、人の姿で打つ全力だけどさ」

洋榎「まさか、咲」

咲「そのまさかだよ。私は人を辞めたよ」

洋榎「お前があの伝説の……」

咲「そう。私がその伝説の……なんだっけ?」

洋榎「なんなねん!」

咲「お姉ちゃん、夜中だよ」

洋榎「ああ、すまんすまん。思わずな」

咲「仕方ないなぁ」

洋榎「ちょっと信じてもうたけどな」

咲「流石お姉ちゃん」

洋榎「せやろ流石やろ」

咲「褒めて……まぁ、いっか」

洋榎「明日……咲、楽しみにしてるで」

咲「大丈夫。私は、千里山は負けないよ」

洋榎「なら安心や」

ーーーーーー
ーーーーーーーーーー

怜「全国決まったな」

咲「ええ」

竜華「咲、カッコよかったで」

咲「ありがとうございます」

怜「これで第一関門突破やな」

竜華「せやな。けど、問題もある」

怜「白糸台対策やな」

竜華「これ、予選のビデオやねんけど、監督に渡しとくから帰ったら見とき」

咲「ありがとうございます」

怜「ほな、咲、遊びに行こか」

竜華「もう見逃さんで。ウチも監督にえらい怒られたんやから」

怜「……ケチ」

竜華「ケチでええよ。ほな、練習するで」

ーーーーー
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咲(これをこうして……)

咲「映った映った」

咲「宮永 照?」

咲(……私はこの人を知ってる)

咲「連続和了……照魔鏡……」

咲(宮永 照……)

咲「宮永 照……宮永 さ、き?」

咲「……お姉ちゃん」

咲(……あれ? 私、どうして?)

咲「……」

咲(愛宕……宮永……あれ?)

咲「……私は、誰?」

雅枝「宮永 咲や」

咲「お母、さん?」

雅枝「ああ、混乱してんねんな。ちょっと落ち着き」

咲「……私は宮永 咲?」

雅枝「せや」

咲「お母さんは?」

雅枝「愛宕 雅枝や」

咲「お姉ちゃんは?」

雅枝「愛宕 洋榎と絹恵」

咲「……」

咲(……なんだ、そんなこと)

咲「そっか。うん。思い出した。タンコブはもう治ったよ」

雅枝「さよか。咲、お前には選択肢が二つある」

咲「選択肢?」

雅枝「長野に戻るか、千里山の大将として全国で戦うか。咲が選び」

咲「……決まってるよ。私は千里山の大将の宮永 咲。それと愛宕ファミリーの三女だよ。お母さん」

雅枝「……泣かせてくれるやん」

咲「それは全国優勝までとっておいてね」

雅枝「期待してるで」

咲「うん。任せて」

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洋榎「それでオカン、どないしたん?」

絹恵「久しぶりの家族会議やん」

雅枝「咲が思い出した」

洋榎「仮装パーティーは終わりなん?」

絹恵「なんやちょっと残念やね」

雅枝「いや、アンタら二人は姉妹やって。言うとったで、私は愛宕ファミリーの三女やって」

洋榎「そら嬉しいわ」

絹恵「今さら姉妹辞めろ言われてもなぁ。逆に困るわ」

洋榎「それにええんやない? ネタばらしする手間省けたやん」

雅枝「せやねんけどな、それでもう一個問題がな発覚してん」

絹恵「問題? 咲が長野戻るって?」

雅枝「ちゃうわ。宮永 照の妹やねん」

洋榎「え?」

絹恵「宮永 照ってあの?」

雅枝「それであってるわ」

洋榎「で、何が問題なん?」

絹恵「おねーちゃん?」

洋榎「咲はウチ等の妹でチャンピオンの妹。もしかしたらチャンピオンもウチ等の姉妹かもしらんな」

雅枝「……ええ子やな」

洋榎「キモいわ」

雅枝「前言撤回や」

絹恵「まぁまぁ」

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ーーーーーーーーー

怜「さて、全国大会やけど……その前にやることあるよな?」

咲「そうですね」

竜華「やること?」

咲「ええ。部長、開会式までには戻ってきますね」

怜「せやで。開会式までには戻ってくるなー」

セーラ「おー。遅れそうやったら連絡入れてなー」

竜華「え? 怜? 咲?」

セーラ「竜華、あの二人は言っても止まらん。諦めたほうがええ」

竜華「……せやった。千里山のフリーダムコンビやもんな」

セーラ「後で監督にはどやされるやろうけどな」

竜華「なんか楽しそうやな」

セーラ「大目玉とどっちがええん?」

竜華「……大人しくしてるわ」

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怜「ほんで、ホンマにこっちであってるん?」

咲「多分」

怜「多分? 咲、さっきからどないして分かれ道選んでるん?」

咲「……勘?」

怜「アカンで……私等、迷子やん」

咲「大丈夫ですよ」

怜「その根拠は?」

咲「……勘?」

怜「二回も聞きたくないわ。いや、ホンマにどないするねん……いや、セーラか竜華に電話すればええんやけど」

咲「そうそう、怜さん」

怜「どないしたん?」

咲「喉、乾きませんか?」

怜「あー。せやなぁ。ちょっと乾いたかも」

咲「ちょっと買ってきましょうか?」

怜「いや、ええよ。一緒に行こ。咲一人にしたら迷子になるやろ」

咲「今も迷子なんですけどね」

怜「せやった」

「……咲?」

咲「…………」

怜「……チャンピオン?」

照「どうして千里山に?」

咲「……成り行き?」

怜「言ってたおねーちゃんか。妹さんにはお世話になっております。千里山の先輩です」

照「……ああ、いや、こちらこそ。咲、また麻雀始めたんだね」

咲「うん。お姉ちゃん、まだ怒ってる?」

照「勿論。けど……なんて言ったらいいんだろう?」

咲「ううん。何も。今は千里山と白糸台。面倒なことは後回しにしよう?」

照「咲ってこんな性格でした?」

怜「いや……多分、私の無茶に付き合わせたからやろ。すんません」

照「いや、大丈夫です。ちょっと驚いただけだから」

怜「せやったらよかった。まぁ、長話もあれやから強引に話をおわらせるで。改めてよろしくな、白糸台ーー宮永 照。咲の先輩改め、千里山の先鋒、園城寺 怜です」

咲「怜さんってそんなキャラでした?」

怜「可愛い後輩の前や。ちょっとは格好つけさせてや」

照「……これは楽しみ。咲、白糸台の大将は強いよ?」

咲「ふうん。いいね。一万人の頂点を地につけるならさ」

照「?」

咲「道中は豪華な方がよくない?」

照「……それこそ楽しみにしてる」

怜(口挟めんなぁ……先に飲み物買ってこよ)

咲「首を洗って待っててね」

照「それはこっちの台詞。少し血気盛んになった?」

咲「大阪……特にお姉ちゃん達といるとね、こうなるしかなかったんだよ」

照「お姉ちゃん? え? お姉ちゃん?」

咲「うん。お姉ちゃん」

照「え? え?」

咲「そっか。ちょっとだけネタばらしするとね、私は宮永 咲だし、愛宕 咲でもあるの」

照「え?」

咲「今はこれしか教えてあげない」

照「なんで?」

咲「もっとお姉ちゃんとお話したいからかな? しっかり時間を作って、ゆっくりとね」

照「そっか」

咲「それよりさ、怜さんは?」

照「いつの間にかいなくなってた。それよりさ、ここは?」

咲「…………」

照「…………」

ーーーーー
ーーーーーーーーー

雅枝「園城寺、咲、言い訳は?」

怜「ちょっと他校との交流を深めてました」

咲「……」

怜「咲?」

咲「……はい?」

怜「いや、なんでもあらへん。兎に角監督、堪忍してください」

咲「ごめんなさい」

雅枝「……園城寺、チャンピオン相手にプラスで帰ってきたら許したる」

怜「えらいけったいな条件ですわ。ま、なんとかします」

雅枝「咲……分かってるな?」

咲「全部叩き潰したらいいんだよね?」

雅枝「間違ってないねんけど……お前、誰に似たんや?」

咲「お姉ちゃんかな? 愛宕三姉妹の長女って誰だっけ?」

雅枝「せやった。絹の方の影響が濃いと思ってたんやけどなぁ」

咲「それと、怜さんの影響?」

怜「ちょっと、咲。それ今言ったらあかんやつ」

雅枝「園城寺……大会終わったらゆっくり話そか」

怜「」

ーーーーー
ーーーーーーーーー

準決勝

咲「……」

咲(……怜さん、まさか……2巡先を見てる?)

咲「部長、対局室まで走る準備をしておいて下さい」

竜華「……分かってるで」

セーラ「……怜」

咲(お姉ちゃん……ううん。お姉ちゃんは悪くないんだ。誰も悪くない……けどーー)

咲「……オーラス」

咲(2巡先……? 違う、あれはそれどころじゃない……怜さんの限界ってどこにあるの?)

咲「……」

咲(……本当、強い人)

ーーーーー
ーーーーーーーーー

怜「…………ん……」

咲「起きましたか?」

怜「……咲か。試合は?」

咲「もうすぐ可愛い後輩の出番ですよ。先輩方の頑張りは見ての通りです」

怜「白糸台の背中が見えてるやん。なんか申し訳ないなぁ」

咲「……本気で言ってるなら怒りますよ?」

怜「嘘やって。それより、咲のお姉ちゃんはさすがやなぁ。強かったで」

咲「私のお姉ちゃんですから。チャンピオンですよ? 弱いはずがないです」

怜「せやな。私、健闘したかな?」

咲「はい。文句なしで健闘しました。けど、最後だけは文句言いたいです」

怜「倒れたから?」

咲「それもですけど……」

怜「けど?」

咲「……そんなに私って頼りないですか?」

怜「……そんなこと、あらへん」

咲「じゃあ何で、2巡先……3巡先を見たんですか? 言いましたよね? 少しだけ頼ってくださいって」

怜「……ごめんな」

咲「答えて下さい」

怜「そんなことあらへん。咲より頼りになる大将はおらんと思ってる」

咲「そうですか。とっても嬉しいです」

怜「……そう思うんやったら泣かんとってや」

咲「ーーえ?」

怜「気付いてなかったんか」

咲「違います。これは……その……」

怜「ええから。こっちおいで」

咲「え? そのっーー」

咲(……怜さんの匂いだ。あれ? 私、抱きしめられてる?)

怜「咲、負けんのって悔しいなぁ……えらい悔しい」

咲「はい。だから私に任せて下さい」

怜「頼りない先輩のお願いや。咲、勝ってや」

咲「勿論です。私を頼ってください。それにーー」

怜「それに?」

咲「あの対局を見たんですから、早く打ちたいんですよ」

怜「そらええわ。敵討ち任せるで」

咲「だから、泣き止んで下さい」

怜「ごめんなぁ」

咲「大丈夫ですよ」

咲(全部……叩き潰します)

ーーーーー
ーーーーーーーーー

淡「よろしくー」

咲「よろしくお願いします」

淡「サキってテルの妹?」

咲「……? そうだけど」

淡「そっか。じゃあ期待してもいいのかな?」

咲「しなくてもいいよ。私はお姉ちゃんに勝てないから」

淡「ふーん」

淡(こんな暴力的なオーラを撒き散らしてるのに? 全開のテルより危険だってこれ)

咲「場決め、しましょう」

淡「そうだね」

淡(……本質が見えない……分からない?)

淡(……打てば分かるか)

ーーーーー
ーーーーーーーーー

淡「ツモ。3000・6000」

咲「どうぞ」

淡(東場もこれで終わり……何だこの違和感)

淡「サキさぁ……本当にテルの妹?」

咲「何が言いたいの?」

淡「あまりにも歯応えがなくてさ」

咲「……」

淡「手を抜いてるなら飛ばすよ?」

咲「……ちょっと、言い過ぎじゃない?」

淡「まあ、いいけどさ。木偶がいた方が打ちやすいし」

咲「……やかましいねん」

淡「……へ?」

咲「早く次始めよ? その減らず口を塞いであげる」

淡「ふうん。いいね」

咲「ほら、賽子回して」

淡(これは……まずったかなぁ?)

ーーーーー
ーーーーーーーーー

オーラス

淡(……どうしてこうなった?)

咲「ツモ。3000・6000」

淡(かろうじて2位だけど……40000万点差……)

咲「淡ちゃん、お疲れ様。楽しかったよ」

淡「……お疲れ様、でした」

咲「また決勝でね」

淡(一打が怖いって初めて思った……決勝、私はあの化け物に勝てるの?)

淡「うん。またね」

淡(……違う。まだ負けてない。決勝勝てばいいんだ)

咲(その表情、対局中にしてほしかったかな)

ーーーーー
ーーーーーーーーー

咲「怜さん、可愛い後輩の活躍はどうでした?」

怜「さすがやなぁ。かっこよかったで」

咲「ありがとうございます。でも、決勝でも無理をするんでしょう?」

怜「勿論そのつもりや」

咲「次倒れたら本気で泣きますよ?」

怜「それは堪忍してや。でもな、勝ちたいねん。咲のお姉ちゃん、チャンピオンに勝ちたいねん」

咲「お姉ちゃんと同じくらい負けず嫌いですよね」

怜「ほーん。チャンピオンって負けず嫌いなんや」

咲「いや、お姉ちゃんもですけど……洋榎お姉ちゃん」

怜「愛宕のお姉ちゃんか。ええなぁ咲」

咲「何がですか?」

怜「お姉ちゃんが四人もおって」

咲「四人?」

怜「チャンピオンに愛宕のお姉ちゃん。それと私や」

咲「私とお姉ちゃんに麻雀で勝てたら妹になりますよ」

怜「おー。ほな、頑張らんとな。ちょっと決勝でチャンピオンに妹はもらいますって言ってくるわ」

咲「お姉ちゃん困るだろうなぁ」

怜「てか、愛宕のお姉ちゃん二人は咲に勝ったんか?」

咲「うん。勝ったよ」

咲(プラマイ0なんだけど)

怜「さすが監督の娘やで」

咲「……姫松、残念でしたね」

怜「あら、しゃーないわ。どこが勝ってもおかしないええ試合やった」

咲「ですね。ちょっとだけ外しますね」

怜「……お優しい後輩やね」

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洋榎『おー。咲、おつかれさん。大将戦見たで』

咲「ありがとう。どうだった?」

洋榎『ウチの妹やったら当然やな』

咲「だね。お姉ちゃんは……」

洋榎『負けてもうたなぁ……これは個人戦で晴らさとな』

咲「個人戦では私が立ちはだかるよ?」

洋榎『えっらい薄い壁やな。ちょっとお姉ちゃんが麻雀教えたるわ』

咲「楽しみにしてるね」

洋榎『そんなことより、園城寺大丈夫なん?』

咲「大丈夫だよ。決勝ではちゃんと打てるはずだから」

洋榎『強なってるかもな』

咲「かもしれないね」

洋榎『死にかけて更なるパワーアップを果たした園城寺……』

咲「だといいんだけど」

洋榎『なんや、ツッコミどころやで』

咲「そんな見え見えの待ちに振りたくないかな」

洋榎『精進するわ』

咲「楽しみにしてるね」

洋榎『ほな、決勝頑張りや。絹と応援してるで』

咲「大阪に優勝旗持って帰るね」

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照「……三連覇残念だった」

咲「個人戦三連覇だから文句言わないでよ」

照「咲が千里山にいるんだから文句の一つも言いたくなる」 

咲「あはは。ちょっと事情があってね」

照「事情?」

咲「ちょっと記憶喪失でね」

照「え?」

咲「それで、お母さんの所で暮らしたんだ」

照「え?」

咲「どうしたの?」

照「ちょっと理解が追い付かない」

咲「個人戦で対局したときに鏡で見えなかった?」

照「そこまで万能じゃないよ」

咲「そうなんだ。お姉ちゃんに会いに行こうと思ったんだけどね、大阪に着いちゃったんだ」

照「迷子のスケールがおかしい」

咲「お姉ちゃんに言われたくないかな。それで、お母さん……愛宕のお母さんとぶつかって」

照「記憶が飛んだ?」

咲「うん。本当にこんなことってあるんだね」

照「それで?」

咲「あとは成り行き」

照「そうなんだ。園城寺さんは大丈夫? 個人戦の決勝で倒れたけど」

咲「うーん。どうだろう? 大丈夫なんだけど、その……」

照「そうだね。久しぶりに本気で焦った」

咲「麻雀で倒れたらね」

照「それもだけど」

咲「だけど?」

照「チャンピオン、咲を妹にさせてもらうで。ついでに監督にも怒られたくないねん」

咲「園城寺さんが?」

照「団体の決勝で」

咲「フリーダムだなぁ」

照「倒れた拍子に頭もおかしくなったのかと思った」

咲「お姉ちゃんも大概毒吐くよね」

照「咲ほどじゃない」

咲「私? そんなことないけどなぁ」

照「淡、泣きながら帰ってきたよ」

咲「負けたんだから仕方ないよ」

照「咲に虐められたって」

咲「やだなぁ……」

照「淡と咲の仲だから私は何も言わないけどほどほどにね」

咲「先に吹っ掛けてきたのは淡ちゃんなんだけどなぁ」

照「知ってる。知ってるから私は咲を怒れない」

咲「だね。それよりさ、お姉ちゃん」

照「うん?」

咲「来年、どうしたらいいかな?」

照「来年?」

咲「ちょっと悩むんだよね。大阪に残るか、東京に行くか、長野に戻るのか」

照「好きな所でいいと思うけど、パワーバランスが崩れるよね」

咲「そこまで私は強くないよ」

照「団体のMVPの台詞じゃないよ」

咲「強かったら個人戦2位は私だったよ」

照「1位と2位が引退するんだから咲が繰り上げ1位?」

咲「かもしれないね。でも繰り上げ1位でも大阪最強には私は名乗れないかな」

照「そんなに入れ込んでるの?」

咲「うん。やっぱ大阪最強は怜さんじゃないと」

照「ちょっと興味が湧いた」

咲「嘘。最初から怜さんのことお姉ちゃんも興味津々だったよね」

照「そう思った理由を聞いてもいい?」

咲「個人戦の決勝、私、淡ちゃん、怜さんだよ? 何でわざわざ鏡を使ったの? 打ち方は知ってるはずだよね?」

照「なるほど。納得した」

咲「……お姉ちゃん」

照「うん?」

咲「次は私が勝つからね」

照「……楽しみにしてる」

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怜「んで、戻ってきたんか」

咲「バカじゃないですか?」

怜「辛辣やなぁ」

咲「あそこに座ってるのが私じゃなくて部長だったら対局がなくなってましたよ」

怜「かもしれんな。ええやん? 大事にはならんかったんやから」

咲「ええことないです」

怜「ちょっと関西弁移ってきた?」

咲「かもしれないです」

怜「ええやん。なんか、ええやん」

咲「意味が分からないです。それより、個人戦2位おめでとうございます」

怜「素直にありがとうやな。けど、やっぱチャンピオンは強かったなぁ」

咲「お姉ちゃんですから。ちょっとだけ気になったこと聞いてもいいですか?」

怜「ええよ。何でも答えるで」

咲「団体の決勝から、一体いくつの未来が見えていたんですか?」

怜「気付いとったんか」

咲「私を誰だと思ってるんですか?」

怜「せやったな。私の妹や」

咲「お姉ちゃんの勝ってから言ってください」

怜「厳しいなぁ。ま、半分はクリアしたんや。あと一踏ん張りや」

咲「応援だけしてますよ」

怜「おー。そら負けられんわ」

咲「ただ、ね」

怜「どないしたん?」

咲「あのね……私、団体MVP取ったからさ……」

怜「うん?」

咲「頑張ったからさ、その……褒めて欲しいかなってーー怜お姉ちゃん」

怜「ーーっ……ええよ。おいで」

咲「うん! ありがとう!」

咲(……今日だけですよ)

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竜華「……セーラ」

セーラ「言わんくても分かってる」

竜華「咲と怜って血が繋がってたんか。せやったら怜とチャンピオンは姉妹?」

セーラ「……は? いや、そんなことあらへん」

竜華「なら何でお姉ちゃんなん?」

セーラ「そら……あれや」

竜華「あれ?」

セーラ「……ええんや。咲がめっちゃ可愛い。それでええんや」

竜華「せやね」

セーラ「ほな、覗き見なんて趣味の悪いこと止めて待合室でジュースでも飲もか」

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雅枝「咲、ありがとう。お前のお陰や」

咲「ううん。そんなことないよ。皆が頑張ったから優勝できたんじゃないかな?」

洋榎「せやで。さすがウチの妹やで。オーラスの倍満は痺れたわ」

絹惠「おめでとう、咲。やってくれたなぁ」

咲「ありがとうお姉ちゃん」

洋榎「ま、ウチやったら裏も乗っけとったけどな」

咲「そうだね。私もまだまだやね」

洋榎「せやろ。ほんで、来年はどないするん?」

咲「来年?」

絹惠「せや。別にここは咲の家なんやから気にせんとおってもええんやで」

雅枝「そう言うことや。親御さんには話は通してある。好きにしたらええよ」

咲「……そっか。じゃあ来年もお姉ちゃんとお母さんと楽しくしようかな。怜さんと麻雀しなきゃやし」

洋榎「あのね……私、団体MVP取ったからさ……」

絹惠「頑張ったから、さ。その……褒めて欲しいかなって」

雅枝「お姉ちゃんって呼んであげや」

咲「え? いや……え? なんで知ってるの?」

洋榎「そら、清水谷がめっちゃ自慢してたからな」

絹惠「絹ちゃん! 聞いてや! 咲、めっちゃ可愛いねん! って」

咲「見てたんや……」

雅枝「千里山と姫松は皆知ってるで。多分、三箇牧も」

咲「荒川さん……嫌な予感しかしないんだけど」

洋榎「ま、楽しみが増えてええやん」

絹惠「せやで。楽しまんと損やん?」

咲「……納得できない」

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数ヶ月後

照(……咲に会いに来たんだけど迷った)

照(……サプライズなんてしなければよかった。素直に迎えに来てもらうべきだった)

照(どうしよう?)

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雅枝「待てや! お前、今スッたやろ!」

雅枝「ちょっと道開けてや! 待たんかい!」

雅枝「はよどけや! ぶつかるで!」

照「……え?」

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照「痛い……」

雅枝「いっつ……大丈夫か? って宮永?」

照「うん。大丈夫。多分、たんこぶだけだから」

雅枝「せやったらよかったわ。堪忍な」

照「ケーキが食べたいかな。お母さん」

雅枝「……またかいな」

照「また?」

雅枝「なんでもあらへん。ほな、帰るで。ケーキ買って帰ろか」

カン

拝読ありがとうございました。
また思い付いたらいつか投稿します。

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