高森藍子「宝石になった日」 (38)
初投稿です
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『写真を撮られるのが、苦手で…』
今でも私は、プロデューサーさんのこの言葉が忘れられません。
これはあのときの。
この写真を撮ったときにはあんなことが。
一枚一枚が、そのときそのときを、思い出と一緒に切り取っているようで。
「あ、アルバムの整理してるの?」
「はい、だいぶ写真も多くなってきましたし」
アイドルになってからの、私の身の回りの出来事の、一つ一つを切り取っていった数々の写真。
自分で撮ったもの、未央ちゃん、茜ちゃんに撮って貰ったもの、プロデューサーに撮って貰ったもの。
一人で、二人で、三人で、皆で。
いろんな人と、一緒になって写った、たくさんの思い出。
すると、プロデューサーさんが一枚の写真に目をつけて、
「見て、この写真の藍子ちゃん、目が半開きだ」
「あ、あんまり見ないでください!」
ちょっと恥ずかしい思い出もあるけど…どれも、大切な思い出。
だから、この中にプロデューサーの姿が一つも無いのが悲しいな。
アイドルになって、少しした頃。
プロデューサーさんの写真を撮ろうとしたときに。
『…藍子ちゃんって、写真が趣味なんだよね?』
『はい!』
『…ごめん、実を言うと僕…』
『?』
『写真を撮られるのが、苦手で…』
・・・
あれ以来、私はプロデューサーさんにカメラを向けていません。
苦手、という人に無理強いしたくもないし。
第一、楽しくない気持ちで撮られた写真は、誰だって嫌ですもんね。
…いつかは、一緒の写真に写りたいけど。
「...と、そろそろ時間だね、行こうか」
「あ、そうですね」
「なんか藍子ちゃんと一緒だと、時間が過ぎるのが早い気がする…」
「私も、よく言われます」
何故でしょうか?
移動車中。
「…プロデューサーさん、最近ちゃんと寝てますか?」
「え?」
「クマ、前よりもひどくなってますよ」
「そうかなぁ…」
「そうですよ」
こういうのって、やっぱり自分じゃ気づきにくいんでしょうか?
「…でも、言うほど体に何かあるってワケじゃないしなぁ」
「そうだとしても、私は心配なんです!」
「ははは、心配してくれてありがとう。でも僕は大丈夫だから」
…本当でしょうか?
いつもこの人は少し無理しすぎるので、この言葉を素直に信じていいのかどうか…。
「それに、藍子ちゃんが頑張ってるのに、プロデューサーの僕が頑張らないわけにはいかないでしょ!」
…そう言われると、何も言い返せないじゃないですか。
でも、せめて。
「…無理だけはしないでくださいね」
これだけは言わせて貰いますね。
「大丈夫!心配ないって!」
今日はコレまで、続きは明日にでも。
この作品、最初に、初投稿って言いましたよね?
すんません あれ 嘘言いました
初投稿じゃありません
再開します。
すいません、遅くなってすいません。
サンドリ聴いてたんです、サンドリ聴いてたんです。
「それじゃあ僕はここで、これからディレクターさんと打ち合わせがあるし、終わる頃に車回すから連絡ちょうだい」
「わかりました」
「収録に立ち会えなくてごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
本当は、みてて欲しいけど…
お仕事なら、仕方ないし。
それに一人でも、これからの収録を頑張っていけるようにならないといけませんからね。
「局内にいるから、何かあったら連絡してね」
「はい」
そう言ってプロデューサーさんと別れました。
・・・
「あー…打ち合わせ終わった…もうそろそろ収録終わるか…?だったら先に車回して…………………」
「……………………あれ?………………………………………………………」
「…………」
「……」
「…」
くらっ………
なんだお前もゴキブリ系男子なのか…
・・・
「あーちゃんって、あーちゃんの担当さんのこと好きでしょ」
「…......へ?」
収録終わり。未央ちゃんが急に私に尋ねてきました。
尋ねる、というよりは断定しているようですけど。
「だって今日みたいに収録に担当さんが居ないときなんか元気ないし、その後会ったら嘘みたいに元気になるし」
「え?え?」
「収録前も、『写真を一緒に撮りたい』とか、『無理してないか心配』とか、惚気みたいなこと聞かされたし」
「ちょ、ちょっと」
止まりません。
「あと兄貴がいるからって、私に『男の人へのプレゼントって何がいいかな?』って聞いてきたときもあったよね?」
「み、未央ちゃん、一回ちょっと」
止まりません。
「あれ友達の話ってことにしてたけど、本当はあーちゃんの話でしょ」
「ちょっと!」
止まって。
>>13 はい、そうです、ゴキブリ系男子です。
今日の小便ネタで大笑いしてたゴキブリ系男子です。
>>15
素直でよろしい
構わずに続きを投下しなさい
止まることなく、ある程度これまでのこと(未央ちゃん曰く「証拠」)を言い終えて、最後に
「で、実際のところは?どうなの?好きなの?」
この言葉で、未央ちゃんは締めました。
「………うん」
「やっぱり!!」
肯定すると、勢いよく、食い気味で未央ちゃんはこっちの言葉を肯定してきました。
「いやー、あーちゃんは隠しているつもりだったかもしれないけど、バレッバレだったもん!わかりやすいくらいに!」
「う、嘘…」
一応私もアイドルだから、周りにはバレないようにしていたつもりだけど…。
「そんなに…わかりやすかった?」
「うん、かなり」
どうしよう、自分の顔が赤くなっちゃうのがわかる。
照れとか、恥ずかしさとか、そういうのがごちゃ混ぜになって、なんて言ったらいいのかわからない。
「大丈夫?顔真っ赤だよ?」
「だ、だいじょうぶ…」
嘘です、大丈夫なんかじゃありません。
>>16
ありがとうございます、これからもワンカッパー系ダンボーラーとして頑張ります
「でもねー、向こうは気づいてないと思うよ、あと茜ちんも」
「…」
そう、なんですよね、そこが大きな問題というか…。
…いやいやいや、何も問題なんかじゃありません。
私はアイドルなんだから、色恋とかは御法度ですし。
「まあちひろさんは十中八九気づいているだろうけど」
それは私も気づいていました。
「まああーちゃんなら大丈夫だと思うよ!私、応援してるから!」
「…アイドルとしてそれは」
「いいのいいの!細かいことは後で考えれば!!」
全然細かくないと思います。死活問題です。
「これからは、逐一報告お願いね!」
「それはちょっと、恥ずかしいというか…」
そのときでした。
「高森さん!ちょっと!!」
青い顔をした男の人が、勢いよく楽屋に飛び込んできました。
「君の、君のプロデューサーが――――」
今日はここまでです。続きは明日にでも。
ゲスナー様とこんなところで会えるとは思ってもみなかった。
再開します。
今回で終われ。
・・・
「ごめん」
「許しません」
「…ごめん」
プロデューサーさんが倒れて、救急車で運ばれて、一日がたちました。
プロデューサーさんが目を覚ましたのはついさっき。
「本当に、ごめん、だから…藍子ちゃん、どうか、泣かないで…」
「うぐっ…ぐすっ…」
さっきから私は泣きっぱなしで。
「いや、です、いや…」
不安だった気持ち、怒った気持ち、悲しい気持ち、安心した気持ち。
いろんな気持ちが私の中でごちゃごちゃになって、めちゃくちゃに混じって、涙が止まらなくて。
私はどうしたらいいか、私にはわかりません。
「…ごめん、藍子ちゃん」
ぽすっ、とプロデューサーさんが私の頭に手を置きました。
「心配させてごめん…不安にさせてごめん…心配してくれたのに、ごめん」
いつもライブの前や、収録の前、撮影の前に緊張している私をなでてくれる手。
安心させてくれる手。
「でも、もう藍子ちゃんを泣かせるようなことなんかしない。」
プロデューサーさんはそのまま私の頭に手をいたままで。
「これが、許されるようなことじゃないっていうのはわかってる…自分のせいで、担当のアイドルを泣かせるなんて、プロデューサー失格だ」
私を安心させるためなんでしょうか、少し無理して笑って。
「でも、僕は、藍子ちゃんのプロデューサーでいたい」
こんな事を、平気で言っちゃって。
「もっと、藍子ちゃんをもっとプロデュースしたいんだ…わがままだし、どの口が言ってんだ、って思うだろうけど」
…本当に、ずるいです。
「もう一度だけ、一緒に」
そんなこと言われて、『許しません』『嫌です』、なんて言えるわけ無いじゃないですか。
「…プロデューサーさん」
「ん」
「ちゃんと、休んでくださいね」
「うん」
「無理しすぎないようにしてください」
「わかった」
「ご飯もしっかり食べてください」
「大丈夫」
「もう…倒れたりなんか」
「しない、絶対」
「最後に…これからも、私のプロデューサーでいてくれますか?」
「もちろん、これからも、お願いします」
涙声の私の言葉に、プロデューサーさんは一つ一つ応えてくれて。
その間も、頭の上の手からは、プロデューサーさんのぬくもりが伝わってくるようで。
暖かい気持ちになって。
私はまた、泣き出してしまいました。
・・・
「…落ち着いた?」
「……はい」
よかった、と言いながらプロデューサーさんは手を頭から外しました。
「あっ…」
「ん?」
「あ、いえ、何でもないです…」
ちょっと名残惜しい…なんて、まだ口が裂けても言えませんけど。
…と、言うよりも冷静になって思い返すと私、結構恥ずかしいことを言ってしまったんじゃないでしょうか?
結構、というかなんというか。
「大丈夫?なにか思い詰めてるみたいだけど…」
「だ、大丈夫です!」
プロデューサーさんは少し怪訝そうな顔をしています。
本当に、大丈夫ですから。
・・・
・・
・
「プロデューサーさんはここに立ってください!」
「確かに、迷惑かけた埋め合わせで何でもするって言ったけど…」
プロデューサーさんが元気になって、事務所に戻ってきた次の日。
私は机の上に置いたカメラの位置の調節をしています。
「写真かぁ…」
「何でもいいって言ったのはプロデューサーさんですよ」
苦手、というのはわかってます。
でも、一緒に映った写真がどうしても欲しいんです。
これは私のわがままですけど。
どうしても、どうしても欲しいんです。
多少の無理くらいは許してください。
「…っと、セットしました」
タイマーを起動させて、私はプロデューサーさんの左側に立ちます。
このとき、私はどこか変でした。
「プロデューサーさん、肩にゴミがついてますよ」
「え」
プロデューサーさんが少しこちらに顔を向けました。
このとき、どうして私はこんな事をしてしまったのでしょうか。
やっとプロデューサーさんと写真を撮ることが出来て嬉しかったから?
久しぶりに元気なプロデューサーさんの姿を見て気分が上がっていたから?
もう病院で結構恥ずかしいこと言ってたから?
それでもやっぱり、一番の理由は、
ずっとこうしたかったから、でしょうね。
「ゴミ…ついてないけど」
シャッターが切れるまで、あとちょっと。
プロデューサーさんの顔に、手を伸ばして。
少し、背伸びをして。
むぎゅ。
チュッ。
カシャ。
写真は、その瞬間を、思い出と一緒に切り取って。
「あ、藍子ちゃん、なにを…」
真っ赤な顔のプロデューサーと、
「うふふ♪」
真っ赤な顔の私。
「おあいこ、です♪」
プロデューサーさんが私にかけたぶんの迷惑、私もかけさせてもらいますね。
でも、流石に、これ以上ないくらいに恥ずかしいので。
「レッスン行ってきます!」
顔の熱も引いてないし、心臓はうるさいくらいにバクバクしてるけど、プロデューサーさんが動けない今のうちに、ここから離れないと。
でないと、私も動けなくなってしまいますし。
カメラを手にとって、私は部屋から出て行きました。
・・・
レッスン場まで道中でも、私は赤くなった顔のにやけを止めることが出来ませんでした。
さっきのことを、思い返しては恥ずかしくなって、何でそうしたのか自分を責めて、でもそれ以上に嬉しくて。
「…ふふっ」
唇には、まだあの感触が残っています。
プロデューサーさんも、そうだといいな。
とっても大きな私の迷惑。
これが、迷惑じゃないといいけど。
~完~
これで終わりです、お付き合いいただきありがとうございました。
まだ、藍子ちゃんの『青空リレーション』を聴いてない子は、聴こうね!
もう、藍子ちゃんの『青空リレーション』を聴いたって子も、聴こうね!
そして、藍子ちゃんを大好きになって、生きようね!
前作→
池袋晶葉「酒に火を注ぐ」
池袋晶葉「火に酒を注ぐ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1488973893/)
時間とお暇があれば。
>>35
すいませんタイトル間違えてました
池袋晶葉「火に酒を注ぐ」です
結構前に同じようなタイトルでss書いた?
なんかタイトルに既視感が…
>>37
自分の記憶にはありませんね...
もしかして、先駆者様がいてネタ被りをしてしまったのでしょうか?
だとしたら、その方には申し訳ないのですが...
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