サターニャ「私の下僕になりなさい!」ガヴリール「あ?」 (49)

ガヴリール「あー……」

ガブリール「いいから、ホントもういいからそういうのは」

ガヴリール「じゃあな、下僕より先ずは友達つくれよ大悪魔様」

サターニャ「だぁああああああああああああああ!!待ちなさい!待ちなさい!!」

サターニャ「何よそれ!?人の話を聞きなさいよ!!」

ガヴリール「……」

すたすた

サターニャ「無視するなぁ!」

ガシッ!

ガヴリール「早く帰りたいんスけど……」

サターニャ「ふっふっふっ、心配せずとも手短に済ませてあげるわ」

サターニャ「事の発端は昨日の…………」

ガヴリール(今日の晩飯どうすっかなー……)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

――――――――


タプリス「たのもー!」

サターニャ「うわっ!」

サターニャ「だ、誰かと思えば……この前の……えーと……」

タプリス「タプリスです!タープーリースー!!」

サターニャ「ああそうだった、確かそんな名前だったわね」

サターニャ「それで?私に敗北した惨めな天使がいきなり尋ねてくるなんて、一体何の用かしら?」

ニヤニヤ

タプリス「ぐぬぬぬ……」

タプリス「天真先輩に会いに来たついでです!アナタへ再び戦いを挑みます!」

タプリス「……確かに、アナタには負けました、それは認めます」

タプリス「でも……でもでもっ!!」

タプリス「私は本当に天真先輩がアナタへ屈服したとは思えないんですっ!!」

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ガヴリール「あー……」

ガヴリール「いいから、ホントもういいからそういうのは」

ガヴリール「じゃあな、下僕より先ずは友達つくれよ大悪魔様」

サターニャ「だぁああああああああああああああ!!待ちなさい!待ちなさい!!」

サターニャ「何よそれ!?人の話を聞きなさいよ!!」

ガヴリール「……」

すたすた

サターニャ「無視するなぁ!」

ガシッ!

ガヴリール「早く帰りたいんスけど……」

サターニャ「ふっふっふっ、心配せずとも手短に済ませてあげるわ」

サターニャ「事の発端は昨日の…………」

ガヴリール(今日の晩飯どうすっかなー……)


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タプリス「たのもー!」

サターニャ「うわっ!」

サターニャ「だ、誰かと思えば……この前の……えーと……」

タプリス「タプリスです!タープーリースー!!」

サターニャ「ああそうだった、確かそんな名前だったわね」

サターニャ「それで?私に敗北した惨めな天使がいきなり尋ねてくるなんて、一体何の用かしら?」

ニヤニヤ

タプリス「ぐぬぬぬ……」

タプリス「天真先輩に会いに来たついでです!アナタへ再び戦いを挑みます!」

タプリス「……確かに、アナタには負けました、それは認めます」

タプリス「でも……でもでもっ!!」

タプリス「私は本当に天真先輩がアナタへ屈服したとは思えないんですっ!!」



二行目修正、早速ガヴがガブになってたミス

ギクッ

サターニャ「な、何を言い出すのかしら……」

タプリス「考えてみればアナタは天真先輩のお宝写真を数枚見せただけです!」

タプリス「実際に天真先輩がアナタに従う姿を私は見ていません!」

サターニャ「ふ、ふんっ!負け犬の遠吠えね!!」

サターニャ「ガヴリールは私に屈服し忠実な下僕となったわ!」

サターニャ「これは事実よっ!」

タプリス「なら…………」


タプリス「証拠を見せてくださいっ!!」

サターニャ「へっ」

タプリス「私の目の前で天真先輩に命令してみてくださいよ!」

タプリス「天真先輩がアナタに屈したのかどうか、直に確かめさせてください!」

サターニャ(ま、まずいわ……)

サターニャ(このままいけば嘘がバレてしまう……)

サターニャ(そうなれば私が勝ち取ったせっかくの対天使の初白星がぁ……)

タプリス「さあさあ!どうしますか!?まさかダメとは言いませんよね!?」

タプリス「もし断るのならば私はアナタが嘘をついていたものとみなします!!」

ふーっ!ふーっ!

サターニャ(くっ……息巻いてる……とても誤魔化しきれそうにないじゃない!)

サターニャ(ど、どうする?多少不審がられてもここは強引にかわすべき……よね?)

サターニャ(でもそれじゃ私の大悪魔としてのプライドが……)

サターニャ「わ…………」


サターニャ「わかったわよ!!!!」

サターニャ「その申し出、受けて立とうじゃない!!」

サターニャ(あああああああああ!!もうなるようになれよ!!!)

タプリス「!!」

サターニャ「ふふふ……後で吠え面かくことになっても知らないわよ……?」

タプリス「そ、そっちこそ!」

タプリス「天真先輩はアナタの言葉なんて聞きません!!」

タプリス「聞くはずありません!!」

サターニャ「………………………」

サターニャ「くっくっくっ……あーはっはっはっ……」

タプリス「な、なにが可笑しいんですか……?」

サターニャ「いやね、お前も物好きねー、と思ったのよ……」

サターニャ「このサターニャ様の……」

サターニャ「悪魔的行為―devil's action―」

サターニャ「によって穢されたガヴリールをわざわざ見たいだなんて……」

バァーンッ!!

タプリス「……ッ!」

ゾクッ

サターニャ(怯んだわね!この場における主導権は貰った!)


サターニャ「さて、本題に入ろうかしら」

タプリス「え……」

サターニャ「日時は明日の夜、場所はこの私の家で良いわね」

タプリス「あ、ああ……はい」

サターニャ(よしっ!)

サターニャ(今からすぐにガヴリールを呼ぶ展開は回避したわ!)

サターニャ(半日程度の猶予さえあればなんとかなる!……はず)

サターニャ(いいえ、なんとかしなければならないのよ!)

サターニャ(なんたって私の沽券に関わる問題なんだから!)

サターニャ「そして私がガヴリールに命令する内容だけど……」

タプリス「そ、それは私が当日に提示します!」

サターニャ「……あら?もしかして無理難題をふっかける気じゃないでしょうね?」

タプリス「違います!そんな悪魔のような考えは持ち合わせてません!」

タプリス「決して不可能なものではなく、原則として天真先輩とアナタの関係を判断しうる内容にするつもりです!」

タプリス「もちろん私が納得するまでこなしてもらいますよ!」

サターニャ「……ふーん、まあ構わないわよ」

サターニャ(ううう、命令内容までは指定できなかったわ……)

サターニャ(でも一応相手は天使だし、そんな大したものは出ないと思っていいわよね)

サターニャ(ふふふ……この勝負、もらったぁ!!)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

――――――――


サターニャ「……というわけよ」

えっへん

ガヴリール「んー……」

ガヴリール「やっぱり今日も調理部に晩飯をご厄介になるとしますかね」

ガヴリール「んじゃあな、サターニャ」

サターニャ「だぁああああああああああああああ!!待ちなさい!待ちなさい!!」


サターニャ「あ、アンタ話聞いてた……?」

ガヴリール「はぁ……聞いてたよ」

ガヴリール「んで?お前のメンツのために私が協力しろと?」

サターニャ「そうよ!」

ガヴリール「断る」

ガヴリール「めんどくせ、アホか」

ガヴリール「今度こそじゃあな」


サターニャ「ふっふっふっふっ……」

サターニャ「ネトゲのせいか知らないけどガヴリール……アンタ最近金欠のようね?」

サターニャ「今日だって調理部へ物乞いに行くようだし」

ガヴリール(もう無視だ無視、つきあってられん)


サターニャ「あーあ、せっかく報酬を用意しようと思っていたんだけどー」

ガヴリール「!!」

サターニャ「一日いや半日、下僕になるだけで数万稼げるかもしれないのにー」

ガヴリール「!!?」

サターニャ「もったいないわねーこんな美味しい話を逃すなんてー」

ガヴリール「さ…………」


ガヴリール「サターニャ様、私のことを下僕だと思ってなんなりと」

サターニャ「ふっ、よろしい」

サターニャ「タプリスの前では私を主人として崇めること!」

サターニャ「いいわね?」

ガヴリール「わかってるって、ちゃんと貰った額分の働きはする」

サターニャ(手痛い出費だったわ……今月はメロンパン買えない……)

サターニャ「じゃあ手はず通りに頼むわよ」

ガヴリール「へいへい」

ガヴリール(癪だけど今回だけはサターニャを敬ってやるさ)


タプリス「お久しぶりです天真先輩!」

ガヴリール「ああ、久しぶりだなタプリス」

サターニャ「ふふふ、どうやら逃げ出さずに来れたようね……」

シャキーン!

ガヴリール(タプリス相手だと、やけに強気だな)

ガヴリール(なんか変なポーズとってるわ)

ガヴリール(かっこいいと思ってんのかな)


タプリス「に、逃げ出すわけないじゃないですか…!」

タプリス「天真先輩は悪魔に屈してないことを証明してみせます……!」

サターニャ「虚勢だけは一人前ねぇ…」

タプリス「あなたこそ…!」

バチバチ!

ガヴリール(おー火花が散ってら)

ガヴリール(なんというか悪いな、タプリス)

ガヴリール(お前の尊敬してた先輩は今、悪魔の下僕やってるよ)


タプリス「……では、始めましょうか」

サターニャ「望むところよ」

タプリス「まず最初に天真先輩、確認しますね?」

ガヴリール「ああ」

タプリス「本当に天真先輩はこの悪魔に従ってるんですか?」

ガヴリール「……そうだよ」


ガヴリール「私はサターニャ様の下僕だ」

タプリス「ッ……!!」

ガーン!

サターニャ「ッ……!!」

ガーン!

ガヴリール(いやタプリスはともかく、なんでサターニャまで衝撃受けてんだよ)


タプリス「あ、あああああ……」

タプリス(き、気をしっかり持つんです私……)

タプリス(天真先輩が無理矢理言わされている可能性だってあります……!)

タプリス(本心からの言葉ではないはず……!)

タプリス(不本意で従ってる場合ならセーフです!)

タプリス(天真先輩の本心を見極めるんです……!)

タプリス(天真先輩!私が先輩を悪魔の手から救い出してみせます!)

ガヴリール「?」

ガヴリール(なんか自己解決して、すぐ立ち直ったな……)


サターニャ(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)

サターニャ(が、ガヴリールがサターニャ様って……下僕ってぇ……)

サターニャ(金で買収した偽りの忠誠だとわかっていても)

サターニャ(すっごく気持ちがいいぃいい!!)

サターニャ(も、もっと言って欲しい……)

サターニャ(ほ、本気でガヴリールを手に収めたくなってきた……)

ガヴリール「……うわ」

ガヴリール(すっげえニヤけててキモいですサターニャ様)


サターニャ「ふふん、これでわかったでしょ?」

サターニャ「ガヴリールの言葉通りよ」

サターニャ「わざわざ私がアンタの目の前で命令するまでもないわ」

タプリス「……いいえ!まだです!」

タプリス「今回の目的は天真先輩が本当に悪魔に心を売ったのか、その真偽を見定めるためです!」

タプリス「この言葉だけでは判断しかねます!」

サターニャ(むむ……そう簡単には引き下がってくれないようね……)

タプリス「天真先輩の心境……お察しします」

ガヴリール「え」

タプリス「悪魔の監視下では、言いたいことも言えないんですね……」

タプリス「ですが、もう少しの辛抱です!」

ガヴリール「う、うん……?」

ガヴリール(……多分、タプリスは私が弱みを握られてると思いこんでるだろうなあ)

ガヴリール(正確には金を握らされたんだけど)

ガヴリール(金銭を受け取った以上、後腐れなくサターニャの望み通りの結末になって欲しいんだが)

ガヴリール(さて、どうなりますかね)


タプリス「先程のは小手調べです!」

タプリス「次からが本番ですよ!」

サターニャ「いいわ、とことんつきあってあげようじゃないの!」

サターニャ「そのぶん真実をつきつけられた時の絶望が深くなるだけよ!」


タプリス「今から私はお題を出します」

タプリス「そして、その通りに……えと、悪魔さんが……」

サターニャ「サターニャでいいわよ」

タプリス「……サターニャさんが天真先輩へ命令を下す」

タプリス「私はその際の一挙手一投足から、お二人が本当に主従関係なのか判定する」

タプリス「これでよろしいですね?」

サターニャ「問題ないわ!」

ガヴリール「わかった」

タプリス「じゃあいきますよ!」

タプリス「まず最初!」



タプリス「『天真先輩に手をつながせなさい!』」



サターニャ「……………………」

ガヴリール「……………………」

サターニャ&ガヴリール「「は?」」

タプリス「……え?」

サターニャ「まったく、どんなのが来るかと思えば……」

サターニャ(とんだ甘ちゃんだわ)

ガヴリール(タプリスのことだから大体はお察しだったが)

ガヴリール(予想以上のヌルゲーだった)

タプリス「な、なんですか、その反応!」

タプリス「当然これだけじゃないですよ!まだ序の口です!」

タプリス「それに天真先輩と手をつなぐことが!どれほどのことかわかってますか!?」

タプリス「私なら鼻血が出ちゃうレベルですっ!!」

サターニャ「アンタの基準で言われても困るわよ……」


サターニャ「この程度どうってことないわね!」

サターニャ「さあガヴリール、私の手をとりなさい」

ガヴリール「はいよ」

ぎゅっ

サターニャ「…………う」

サターニャ(な、なんだか……)

サターニャ(ガヴリールとこうして手をつなぐなんて普通ならありえないし……)

サターニャ(け、結構恥ずかしい……)

ガヴリール(サターニャの手って温かいな)

ガヴリール(ていうか……熱い?)

タプリス(う……)

タプリス(羨ましいですぅ……)


サターニャ「ど、どうかしら!」

サターニャ「ガヴリールは言われた通りにしたわよ!」

サターニャ「だからもう離しても……」

タプリス「ストップです!!」

サターニャ「な、なんでよ!?」

タプリス「……気のせいかもしれませんが」

タプリス「握りかたとか……ぎこちない感じがします」

サターニャ「!!」

タプリス「もしかして……手を握ることはあまりないんですか?」

サターニャ「と、当然じゃない」

サターニャ「そんな仲良しこよしの関係じゃないのよ!」

サターニャ「あくまで上下関係が大前提にあることを覚えておきなさい!」

タプリス「……ふーん、そうですか」

ガヴリール(……いかんな、不審がられてる)


ガヴリール「タプリス」

タプリス「あ……な、なんですか天真先輩?」

ガヴリール「サターニャ様は寛大なお方でな」

ガヴリール「ああ仰っているが、私のほうからじゃれついても戯れてくださるんだ」

ガヴリール「だが、そういうのは大抵二人っきりの時だけでな」

タプリス「ふ、二人っきりぃ!?」

ガヴリール「こうしてタプリスような誰かに見られるのは慣れていらっしゃらないんだろう」

ガヴリール「いつもは自然にこうつないでるよ」

すっ

サターニャ(!?)

サターニャ(ゆ、指が絡まって……!)

タプリス「こ、これは……」

タプリス「恋人つなぎじゃないですかー!!」

ガヴリール「ですよね?サターニャ様?」

にこっ

サターニャ「へっ!?……あああ……えっと……」

ガヴリール「おい……お前がしっかりしなきゃどうしようもないだろ……」ヒソヒソ

サターニャ「わ、わかってるわよっ……」ヒソヒソ


サターニャ「……そうよ!」

サターニャ「ガヴリールは寂しがりやでねえ、こうしてよく主人である私の手を握ってくるのよ!!」

タプリス「そ、そんなバカな……」

サターニャ「どうせアンタはガヴリールと手をつないだことなんてないんでしょ?」

タプリス「ううううっ……」


サターニャ(あわわわ、私とガヴリールの指がっ指がっ……)

サターニャ(お、おちつくのよ……というかなんで私はこうもドキドキしてんのよぉ!!)

ガヴリール(なんか手汗までかき始めたんだけど、大丈夫かサターニャのやつ……)

サターニャ「も、もういいんじゃないかしら?」

サターニャ「相当ショックなようじゃない、勝敗は目に見えたわよ!」

タプリス「……ひ、卑劣です」

タプリス「天真先輩に手をつながせる呪縛を施してるなんて……」

サターニャ「そんなピンポイントなものなんてないわよ!」

タプリス「ま、まだですっ!」

タプリス「天真先輩が悪魔の手に堕ちたと、そう簡単に認めるわけにはいきません!」

ガヴリール(それなりに揺さぶれたようだけど、まだまだ崩せそうにないか……)

タプリス「第二のお題です!」


タプリス「『天真先輩にハグをさせなさい!』」


サターニャ「は、はぁ!?」

サターニャ「アンタね!これって私とガヴリールの主従関係を確かめるためのものよね!?」

タプリス「当然です!昨日からずっと考えてきたんですよ!」

サターニャ「さっきの手をつなぐことといい……」

サターニャ「なんか……ズレてるのよ!」

タプリス「そんなことはありません!」

タプリス「私が天真先輩とそういう関係になったら……と仮定し、してみたいと思い浮かんできたことを書いた真っ当なお題です!!」

サターニャ「ちっとも真っ当じゃないわよッ!!」

タプリス「価値観の違いはこの際置いておいて、二人が本当にそういった関係ならためらいなくできるはずです!」

ガヴリール(天界学校の頃からずいぶん私に懐いてるなと思ってたけど……)

ガヴリール(ちょっと寒けがしてきた……)

タプリス「あ、もちろん私が天真先輩の下僕として命令される側になって想像しましたよ?」

ガヴリール「そ、そうか……」

タプリス「天真先輩さえよろしければ今からでも私にそういった命令を……/////」

ガヴリール「いや、遠慮しとく……」

タプリス「ガーン!」


タプリス「それで!命令するんですか?」

タプリス「降参はいつでも認めますよ!」

サターニャ「め、命令するに決まってるじゃない……」

タプリス「………………」

ジー……

サターニャ(くっ!こちらをさっきよりも注意深く見てる……!)

サターニャ(が、ガヴリールにハグさせる……か……)

サターニャ(うう……手だけでも予想以上にクるものがあったのに……平静装える自信がないわよぉ……)

ガヴリール「……?」

ガヴリール「どうした?早くしろよ」ヒソヒソ

ガヴリール「タプリスにまた不審がられるぞ」ヒソヒソ

サターニャ「あ……う、うん」ヒソヒソ


サターニャ(手をつなぐときもだけど……ガヴリールは何とも思わないの……?)

サターニャ(アンタとはよく競い合ってるし、好敵手であるわけじゃない……)

サターニャ(そんな私達がこういうことすることに、なんの感情も抱かないわけ……?)

サターニャ(ま、まあいつもは私が一方的につっかかってるから、ライバルと思ってるのは私だけかもしれけど……)

サターニャ(私だけこんなにドキドキしててバカみたい……)

サターニャ(……面白くない)


サターニャ「が、ガヴリール!」

サターニャ「私に抱きつくことを許してあげるわよぉ!」

サターニャ「ありがたく思いなさいぃ!」

ガヴリール(声が上ずってんぞ……)

ガヴリール(ホントどうしたんだよ、偉そうに振る舞うのは人一倍得意なくせに)

ガヴリール(わけわかんねー……)


ガヴリール「では、ありがたく仰せのままに」

ハグハグ

サターニャ「っ!」

サターニャ(ガヴリールが私の胸元にぃ!)

ガヴリール(……柔らかいな)

ガヴリール(サターニャって意外と胸あるんだ)

ガヴリール(それにほのかな良い匂い)

ガヴリール(毎日シャンプーとリンスでケアしてんのかな)

ガヴリール(男子中学生みたいな性格してるけど、ちゃんと女の子らしいとこはあるんだよな)

ガヴリール(少なくとも、私よりは)


タプリス「……………………」

タプリス(うううう)

タプリス(うらやま憎らしいです~~~~~~~~~!!!!)

ガヴリール「……?」

ガヴリール「どうした?早くしろよ」ヒソヒソ

ガヴリール「タプリスにまた不審がられるぞ」ヒソヒソ

サターニャ「あ……う、うん」ヒソヒソ


サターニャ(手をつなぐときもだけど……ガヴリールは何とも思わないの……?)

サターニャ(アンタとはよく競い合ってるし、好敵手であるわけじゃない……)

サターニャ(そんな私達がこういうことすることに、なんの感情も抱かないわけ……?)

サターニャ(ま、まあいつもは私が一方的につっかかってるから、ライバルと思ってるのは私だけかもしれないけど……)

サターニャ(私だけこんなにドキドキしててバカみたい……)

サターニャ(……面白くない)


サターニャ「が、ガヴリール!」

サターニャ「私に抱きつくことを許してあげるわよぉ!」

サターニャ「ありがたく思いなさいぃ!」

ガヴリール(声が上ずってんぞ……)

ガヴリール(ホントどうしたんだよ、偉そうに振る舞うのは人一倍得意なくせに)

ガヴリール(わけわかんねー……)


ガヴリール「では、ありがたく仰せのままに」

ハグハグ

サターニャ「っ!」

サターニャ(ガヴリールが私の胸元にぃ!)

ガヴリール(……柔らかいな)

ガヴリール(サターニャって意外と胸あるんだ)

ガヴリール(それにほのかな良い匂い)

ガヴリール(毎日シャンプーとリンスでケアしてんのかな)

ガヴリール(男子中学生みたいな性格してるけど、ちゃんと女の子らしいとこはあるんだよな)

ガヴリール(少なくとも、私よりは)


タプリス「……………………」

タプリス(うううう)

タプリス(うらやま憎らしいです~~~~~~~~~!!!!)



誤字修正

サターニャ(が、ガヴリールってやっぱりちっこいわね……)

サターニャ(こう両手だけで包み込めそうな……)

ハァハァ……

サターニャ(って!なに興奮してるのよ私!!?)


サターニャ(ん……?この臭いは……?)

サターニャ(うっ……!)

サターニャ(この刺激臭……)

サターニャ(ガヴリールのやつ、数日も風呂に入ってないわね……)

サターニャ(汗の臭いが発酵しかけてるわよ……)

サターニャ(…………)

サターニャ(で、でも嫌じゃ、ないかも……)

サターニャ(ガヴリールの元の体臭と混ざり合って、クセになるというか……)

サターニャ(!?)

サターニャ(い、今のナシ!!)

サターニャ(まるで変態の感想みたいじゃない!!)


タプリス「……やっぱり、おかしいです」

タプリス「挙動不審ですよ、サターニャさん」

サターニャ(し、しまった!!)

ガヴリール(ば、バカ!)

タプリス「いつも天真先輩とハグしあってるわけではないとしても、様子が変ですよ?」

タプリス「主人としての態度としては落ち着きがないと言いますか……」

タプリス「すごく違和感を感じます」

サターニャ(あわわわわわわわわわわわわわ)


ガヴリール「タプリス」

タプリス「へっ?な、なんですか天真先輩?」

ガヴリール「お前は誤解しいるんだよ」

タプリス「ご、誤解?」

ガヴリール「ああ、誤解だ」

サターニャ(が、ガヴリールってやっぱりちっこいわね……)

サターニャ(こう両手だけで包み込めそうな……)

ハァハァ……

サターニャ(って!なに興奮してるのよ私!!?)


サターニャ(ん……?この臭いは……?)

サターニャ(うっ……!)

サターニャ(この刺激臭……)

サターニャ(ガヴリールのやつ、数日も風呂に入ってないわね……)

サターニャ(汗の臭いが発酵しかけてるわよ……)

サターニャ(…………)

サターニャ(で、でも嫌じゃ、ないかも……)

サターニャ(ガヴリールの元の体臭と混ざり合って、クセになるというか……)

サターニャ(!?)

サターニャ(い、今のナシ!!)

サターニャ(まるで変態の感想みたいじゃない!!)


タプリス「……やっぱり、おかしいです」

タプリス「挙動不審ですよ、サターニャさん」

サターニャ(し、しまった!!)

ガヴリール(ば、バカ!)

タプリス「いつも天真先輩とハグしあってるわけではないとしても、様子が変ですよ?」

タプリス「主人としての態度としては落ち着きがないと言いますか……」

タプリス「すごく違和感を感じます」

サターニャ(あわわわわわわわわわわわわわ)


ガヴリール「タプリス」

タプリス「へっ?な、なんですか天真先輩?」

ガヴリール「お前は誤解しているんだよ」

タプリス「ご、誤解?」

ガヴリール「ああ、誤解だ」


ライブなので修正は勘弁してくだされ

ガヴリール「人間界に降り立って、私達が一番苦労したのはなんだったと思う?」

タプリス「え?えーと……」

タプリス「やっぱり環境の違いとか、でしょうか……?」

ガヴリール「うん、その通りだ」

ガヴリール「故郷にはなくて人間界に存在するものにいろいろ苦労したもんだ」

ガヴリール「特に冬というものは凄まじかった……」

ガヴリール「おまけに私達が降り立った国は、どうやら人間界でも有数の雪国らしくてな」

ガヴリール「初めてその冬を経験した時は寒くて寒くて死にそうだったよ」

ガヴリール「サターニャ様も相当こたえたようでな」


ガヴリール「サターニャ様はいつも私を抱きしめて暖をとってたんだ」

サターニャ「!?」

タプリス「なななな、なんですってぇ~!!!?」

タプリス「素晴らしすぎる防寒対策じゃないですかぁ~!!!」

ガヴリール「ですよね?サターニャ様?」

にこっ

ガヴリール「ぼーとしてないであわせろ……」ヒソヒソ

サターニャ「あ、え、ええ!!」

サターニャ「ガヴリールは優秀なカイロだったわ!!」


タプリス「で、ですがその話はさっき言ってた誤解と何の関係が……」

ガヴリール「わからないか?」

ガヴリール「今は大分寒さも落ち着いてきた時期だ」

ガヴリール「それなのに今、カイロがわりだった私を抱きしめたら熱くなって当然だろ?」

ガヴリール「サターニャ様が暑がってそわそわするのもおかしなことじゃないさ」

タプリス「な、なるほど……」

タプリス「確かに筋は通ってるような……」

ガヴリール(タプリスがバカで助かった)


サターニャ「た、助かったわ」ヒソヒソ

サターニャ「ありがとう……」ヒソヒソ

ガヴリール(ったく……)

ガヴリール(サターニャの様子がさっきから変だ)

ガヴリール(ここまで機転きかせてカバーしにゃいけんくなるとは……)

ガヴリール(追加料金請求したくなるっての)

サターニャ(ガヴリールカイロ……)

サターニャ(い、いいかも……)

サターニャ(!!そ、そんな想像してる暇ないわ!!)

サターニャ(ど、どうしてガヴリールのことで頭がいっぱいになってるのよ!!?私がおかしいわ!!)

サターニャ(これ以上変なお題出されたら……!)

サターニャ(も、もう限界……)


サターニャ「ど、どうよ……そろそろ降参しなさいよ……」

サターニャ(お願いだからぁ……)

サターニャ(ガヴリールとこんなことし続けたらもっとおかしくなってくよぉ……)

タプリス「はぁ……はぁ……」

タプリス「こ、降参すべきなのかもしれないです……」

タプリス「アナタと天真先輩のエピソードを聞くたび胸が苦しいです……!」

サターニャ(や、やった!!)

タプリス「ですからこれで最後です……!」

サターニャ「」


タプリス「最後のお題は……!」

サターニャ(変なの来ないで変なの来ないで変なの来ないで)



タプリス「『天真先輩にキスさせなさい!』」



サターニャ(ぎにゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!)

タプリス「できればこんなお題出したくありませんでした……」

タプリス「もし目の前でされたのなら私は気が狂うかもしれません……」

タプリス「ですが背に腹は代えられないですッ!!」

タプリス「キスは親しい人間同士の親愛の挨拶としてごく一般的と聞きました!」

サターニャ(そんな習慣はここじゃない遠い異国の文化よー!!)

タプリス「二人は長く人間界に住まわれていますし、かつ主僕関係というのなら自然とできるはずですよね!?」

タプリス「さあ!どうなんですか!?そんなことまでできるんですか!?」

サターニャ「う、うぐ……!」

サターニャ(ガヴリールと……キス……?)

サターニャ(こ、こんな状態でしたら、私……私……)

サターニャ(そ、そういえばガヴリールの様子は……?)


ガヴリール「……」

ガヴリール(う~ん……)

ガヴリール(手つなぎ、ハグときたら順当に……)

ガヴリール(まあ、薄々こうくるかなって感づいてたというか)

ガヴリール(でもな、タプリス)

ガヴリール(お前の発言からなんとかなるかもしれん)

ガヴリール(ふふふ……金を貰った私は我ながら冷静だぞ……)

ガヴリール(サターニャからの軍資金で課金できたり美味いものが食えると思うと、天界時代のように頭が働くんだ)

ガヴリール(さてと――――――)


サターニャ(ご、ごく冷静……!?)

サターニャ(なんでよ!?私達これからキスするかもしれないのよ!?)

サターニャ(いつものアンタなら『は、はぁ!?なんでだよ!!////』『誰がサターニャなんかと……////』って反応じゃないの!?)

サターニャ(なんでそんな平静を装えるのよ!?)


サターニャ(……いや)

サターニャ(装って、ない……?)

サターニャ(もしかして内心、ガヴリールは何とも思ってない……?)

サターニャ(ハグの時も少しも動じず、タプリスを騙したし……)

サターニャ(手をつなぐときだって…………)

サターニャ(…………ガヴリールって、私のこと、何とも想ってないの、かな……)


サターニャ(――――――え?)

サターニャ(ちょっ!?なんで!?)

サターニャ(近い!近いわよガヴリール!?)

サターニャ(わ、私まだ何も命令してないわ!そうよね!?)

サターニャ(ま、まままままままっt……)

ガヴリール「…………」

チュッ

サターニャ(…………あっ)

サターニャ(頬……?)

サターニャ(口じゃ、ないんだ…………………)


ガヴリール「毎回ご命令なさるのが面倒かと思いまして」

ガヴリール「差し出がましいようですが、私のほうから率先してさせていただきました、サターニャ様」

ガヴリール(また下手うって怪しいと思われるのは御免だしな)

ガヴリール(なぜか調子の悪いサターニャなんかアテにしないで、私から動いたほうがいいだろう)

ガヴリール(そのほうがタプリスにもダメージが大きいだろうし)

ガヴリール「『キスは親しい人間同士の親愛の挨拶としてごく一般的』」

ガヴリール「タプリスの言った通り、人間はこうしてキスするんだ」

ガヴリール「『頬』にな」

ガヴリール(キスする箇所を指定されてなくて助かったー……)

ガヴリール(おまけに人が挨拶としてするもの、といった発言)

ガヴリール(なんら矛盾はない、これも立派なキスだ)

ガヴリール(頬くらい諭吉さんの代償と思えば安いもんだ)

ガヴリール(……唇と指定されてたら、どうしようもなかったな、さすがに躊躇するわ)

ガヴリール(さあ、どうだタプリス?)

ガヴリール(これでも頑なに、私とサターニャの主従関係が偽りだと主張し続けられるのか?)


タプリス「て、天真先輩みずからサターニャさんにキス、を…………?」

タプリス「命令も、されずに……?」

タプリス「本当に、本当に、天真先輩は自分の意志でサターニャさんを……?」

タプリス「あ、あわわわ……」

タプリス「あ゛ぁ゛あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガヴリール「!?」


タプリス「…………ま……負けました……」

ガヴリール(び、びっくりしたー……)

タプリス「……天真先輩は……悪魔の……サターニャさんのものでした……」


タプリス「あはっ、あはは、あはははははははははははははははははははは…………」

ガヴリール「お、おいタプリス……?」

タプリス「あはは、嘘だ……嘘ですよ……」

タプリス「ふえぇ……天真先輩……」

タプリス「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…………」

ガヴリール「……ダメだ、壊れてる」

ガヴリール(金のためとはいえ、すげえ罪悪感……)

ガヴリール(マジでスマン)

ガヴリール(ま、数日もすれば元に戻るだろ)


ガヴリール「良かったな」

ガヴリール「お前の勝ちだぞサターニャ」

ガヴリール「…………えーと、ご相談なんですけどねえ、サターニャ様?」

ガヴリール「私結構、上手く働いてサターニャ様の勝利に貢献できたと思うんですよ~」

ガヴリール「お金を頂いた以上、サターニャ様に喜んでもらおうと頑張ったんですよ~」

ガヴリール「ですから、よろしけばもうちょっと報酬のほうを上乗せしてくれると嬉しいかな~……」

ガヴリール「えへへへっ、なーんて」

ガヴリール「大悪魔であるサターニャ様なら気前よくポンッ!と出してくれますよね?ね?」

ガヴリール「よっ!偉大なるサタニキア様!魔界を支配する者!」

ごますりごますり


ガヴリール「……って」

ガヴリール(……おかしいな、さっきから返事がない)

ガヴリール(タプリスに勝った時だって、ちっとも喜ぶ反応がなかったよな……)

ガヴリール「おいサターニャ?サターニャ?おーい?」

ガヴリール「?」


今、この瞬間、この部屋で、壊れている者はタプリスだけか?

否、実はもう一人存在していた

サターニャだ


サターニャ「…………」

サターニャ「キス……ガヴリールと」

サターニャ「キス、しなきゃ……」

ガヴリール「え?なに?」

ガヴリール「よく聞こえなかったんだけど」

サターニャ「……」

ぶつぶつとかすかな声でサターニャは何かを呟いていた

ガヴリールは声を拾えるよう、サターニャに身を近づける

その時だ、不意にサターニャはガヴリールの二の腕を両手で掴む

いや、掴むという表現以上の圧が感じられた

これは拘束だ

ガヴリール「!?」

ガヴリール「さ、サターニャ……?」

当のサターニャは俯きがちで表情が読み取りづらい

が、いつものサターニャではないことは伝わってきた

ガヴリール「わ、悪かったよ」

ガヴリール「ちょっと欲張ったな、ごめん」

ガヴリール「報酬は今のままで十分だ、だから……」

依然、サターニャは手を離してはくれない

金の催促をして怒らせたのではないのか?

ガヴリールは、もう検討がつかない

ガヴリール「く、苦しい……サターニャ……」


サターニャはわからなかった

宿敵のはずなのに、ガヴリールと握手や抱擁をしただけで揺れ動く自分の心が

自分と対照的に、全く意に介さないガヴリールへ不服なことも

ちっともわからなかった

そしてキスをされた、ガヴリールにキスを

嬉しかった、なんで嬉しいのか、わからなかった

でも、不満だった、てっきり唇にしてくれると思っていた

これは思い描いていたキスではない、キスとはカウントされない


サターニャは暗示にかかりやすい、それをネタに天敵のラフィエルにからかわれたこともある

様々な感情がないまぜになり、赴くままサターニャは自己暗示にかかった

ガヴリールとキスをしたい、しなければならないと

対面した赤いゆらめきがガヴリールを飲み込もうとする

ガヴリール「な、何する気……?」

答えが返ってこないだろう問を投げかけながら、一つの可能性が浮かぶ

まさか、そんなバカな

ガヴリール「お、おい!しっかりしろ!」

ガヴリール「とっくにお前は勝ってんだよ!」

ガヴリール「こんなことする必要ないだろ!!」


ごちゃごちゃうるさいわよ、ガヴリール

さっさと塞いでやるわ


ガヴリールが危惧した通り、それは訪れた

ガヴリール「……っ!!!?」

ガヴリール「……んむっ……!?」

ガヴリール「…………………………ッ」

ガヴリール「っはぁ……!!」

ガヴリール「はーっ……はーっ……な、に……かんが……」

ガヴリール「っ!!ぐっ……!」

突然のキスで乱れた呼吸を整えるスキさえ与えず、サターニャは繰り返す

未熟で心許なく、ただ己の欲望のまま貪るだけのものだ

快楽など生まれやしない、ガヴリールには苦痛でしかない

添えられた涙も断じて生理的な悦びからきてはいない、この苦悶に対する回答だ

ガヴリール(いき……がっ……!)

ガヴリール(こい、つ……!)

ガヴリール(むだに、ちからだけっ……!)

ガヴリール(ふりほど、けないッ……!)


タプリス「あはははははははは…………」

タプリス「…………は?」

次第に焦点も定まり、やっと正気を取り戻したタプリスには残酷な光景が用意されていた

落ち着いて観察すればガヴリールが必死に抵抗しているのはわかるはずなのだが、今のタプリスの眼には荷が重い

第三者へ絆を証明し、勝利の余韻に浸りながら愛し合う二人としか映らなかった

ガヴリール(こんなのやだ……っ!)

タプリス「いやぁーーー!!!!!」

タプリス「これ以上見せつけなくたっていいじゃないですかぁーーーー!!!!!」

タプリス「もう嫌ですーーーーーー!!!!!」

サターニャ「……っ!?」

ガヴリール「ッ!!」


本人は意図しなかっただろうが、愛しの先輩を間接的にタプリスは救う形となった

耳をつんざくような悲鳴をあげてタプリスは走り去っていく

没頭していたサターニャも、さすがに間近で発生したノイズに一瞬注意が向いた

ガヴリールはその瞬間に自身の僅かしかない全力を込める


ガヴリール「はなっ……せぇっ!!!」

サターニャ「…………ぁ」

振りほどかれたサターニャはよろめき崩れ落ちた

倒れた際に体へ与えられた衝撃がサターニャをこの世界へ引き戻す


ガヴリール「はー……っはー……っ!ごほっごほっ……!!」

ガヴリール「な……なにしてんだよお前……!!?」

サターニャ「わ、わた……私は……!?」

直前まで自分の犯していた行為にサターニャは恐れおののく

ガヴリールを無理矢理押さえつけてキスを?私が?

信じられない、信じたくない

だが紛れもなく自分が致した事実だ、冷たく鋭い目線で睨みつけるガヴリールがその証拠に他ならない

ガヴリール「ふざけんなよ……!!」

サターニャ「ご、ごめんなさいガヴリール!ごめん……ごめん……!!」

サターニャ「私もどうしてこんなことしたのかわからなくて……っ!」

ダメだ、どう謝罪すればいいのか、どう言うのが最適解か

この短時間じゃ整理しきれない、陳腐な言葉を並べながら、ただただ狼狽えることしかできない

ガヴリール「意味わかんねーよ……!!」

サターニャ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

ガヴリール「………………………………もういい……私、帰るわ……」

サターニャ「あ…………あぁぁぁ……」

話にならないと、ガヴリールはサターニャの自宅を後にする

別れ際に向けられた視線は軽蔑という名の棘を持ち、サターニャの心を深く深く突き刺した

ラフィエル「…………………………………………」

ラフィエル「すごいものを見てしまいましたね……」

ラフィエル(タプちゃんとサターニャさんの対決再び!と知り、ひっそりと遠くから観戦させて頂きましたが……)

ラフィエル(まさかこんな結末になるなんて……)

ラフィエル(面白い面白くないとかいう次元ではないですね……)

ラフィエル「…………」

ラフィエル「これ以上……ここに留まっても仕方ないですね」

ラフィエル「傷心のタプちゃんを慰めにでも行きましょうか……」

重々しい空気から逃れる体のいい理由付けをしながら、ラフィエルもその場を後にした


サターニャ「……」

サターニャ「……私は……なんてことを」

ベッドに横になり、枕へ顔をかぶせながらサターニャは後悔しきっていた

サターニャ(ガヴリールに嫌われちゃった……)

サターニャ(もう今までと同じように話せないのかな……)

そう考えると涙が溢れ出た

しかし、自分のしでかしたことを思えば自業自得でしかない

だからこそ余計涙が止まらない、完全に悪いのは自分だ

サターニャ(時を戻せる商品なんて……)

サターニャ(ない……わよね)

魔界通販のカタログをいくら眺めても、そんな都合の良すぎる商品は存在していなかった


サターニャ「明日……学校……」

サターニャ「行きたくない……でも行かないと……」

サターニャ「ガヴリール……来るかもしれない……」

サターニャ「ちゃんと、謝らなきゃ……」

サターニャ(私……頭悪いからうまく伝えられそうにない……)

サターニャ(なんて説明すればいいんだろう……)


寝られない中、どれほど考えぬこうと明確な解答は導き出せない

一つだけ導き出せた答えを携えて、サターニャは明日の正念場に臨むしかない

サターニャ「私は……」

サターニャ「ガヴリールが、好き」

ヴィーネ「ガヴー?学校行くわよー?」

ガヴリール「…………」

ヴィーネ「ちょっとガヴ、遅刻するわよ?」

ヴィーネ「もう……入るわよ」

ヴィーネ「ほーら、起きなさいガヴ」

ガヴリール「…………行きたくない……」

ヴィーネ「何言ってるのよ、せっかくここ最近出席し続けられてるのに」

ヴィーネ「ここで休んだらまた振り出しよ?」

ガヴリール「いい……」

ヴィーネ「いいわけないでしょ!」

ガヴリール「ちょっ!?やめろよ!!」

ヴィーネ「行、く、わ、よ!!」


ヴィーネ「おはよ、サターニャ」

サターニャ「お、おはよヴィネット……」

ヴィーネ「?」

サターニャ「えと……おはよう、ガヴリール……」

ガヴリール「…………」

サターニャ「あ…………」

ヴィーネ「が、ガヴ?どうしたのよ?」

ガヴリール「……別に」

ヴィーネ「別にって……」

ヴィーネ「ガヴと何かあったのサターニャ……?」

サターニャ「な、なんでもないわ……」

サターニャ「心配しないでヴィネット……」

ヴィーネ「でも……」

ガヴリール「…………ふん」


ヴィーネ「ガヴー学食行きましょ?」

ガヴリール「……わかった」

ヴィーネ「サターニャも行きましょ?」

ガヴリール「……私やっぱパス」

ヴィーネ「が、ガヴ?」

サターニャ「…………ッ……」

ヴィーネ(絶対何かあったわよこの二人……)

ヴィーネ(朝から気まずくてしょうがないわ……)

ガヴリール「帰るぞヴィーネ」

ヴィーネ「え、ええ……」

ヴィーネ(結局今日はサターニャと一言も口きいてなかったわね……)

サターニャ「…………が、ガヴリール、話が……」

ガヴリール「……早くしろよヴィーネ」

サターニャ「ぅ…………」

ヴィーネ(あ~!どうすればいいのよ~!)

ヴィーネ(下手に私が口を挟めば逆効果かもしれないし……)


ラフィエル「ヴィーネさん♪」

ヴィーネ「うわっ!ラフィ!?」

ラフィエル「私との約束を忘れるだなんてひどいですよ~」

ヴィーネ(や、約束……?)

ラフィエル「……☆」ウィンク

ヴィーネ(はっ!そういうことね!)

ヴィーネ「……そうだったわねラフィ、ごめんなさい」

ガヴリール「お、おい、嘘つけよ、お前ら……」

ラフィエル「嘘なんかじゃありませんよ、ガヴちゃん?」

ラフィエル「今日はヴィーネさんと私だけの親睦会なのです♪」

ラフィエル「さっ、行きましょうかヴィーネさん」

ヴィーネ「ええ……」

ガヴリール「ま、待てって!」

ラフィエル(……後は、アナタ次第ですよ、サターニャさん)

ヴィーネ(二人が仲直りできますように……!)


サターニャ(二人共、ありがとう……)

サターニャ「ガヴリール」

ガヴリール「…………」

サターニャ「話がしたいの……」

サターニャ「お願いだから、屋上まで来て」

ガヴリール「………………………………………………はぁ」

ガヴリール「わかったよ……」

サターニャ「この前は、本当にごめんなさい」

ガヴリール「……」

ガヴリール「…………あーすげえ苦しかったわー」

ガヴリール「息止まるかと思ったー」

ガヴリール「しかも、あれが私のファーストになるわけっすよサターニャさん?」

サターニャ「ご、ごめっ」

ここまで来たら変に意地を張っても無駄だと観念したのか、意外なほどガヴリールは茶化した口調でサターニャを責めた

まさかの事態に戸惑いつつも、まだガヴリールが自分へ軽口をたたいてくれることに嬉しさが滲む


ガヴリール「いいよ、もう」

ガヴリール「なんつうか、過ぎたことだし、さ」

サターニャ「ありがとう、本当にごめん」

ガヴリール「いいって」

サターニャ「……………………あのね」

サターニャ「私さ」

ガヴリール「……」

サターニャ「ガヴリールと手をつないだり、抱き合って」

サターニャ「すごくドキドキした」

ガヴリール「……そっか」

サターニャ「だけどなんでこんな気持ちになるのか、自分のことなのに全然わからなくて」

サターニャ「わけわからなくなって」

サターニャ「そしてガヴリールから頬にキスされたとき、頭が真っ白になった、のかな」

サターニャ「多分そうだと、思う」

ガヴリール「…………うん」


サターニャ「ガヴリール、ジュースをね、こぼしたまま放置してたこと憶えてる?」

ガヴリール「……ごめん、憶えてない」

サターニャ「……まだ出会って間もない頃、目の前でガヴリールがゴミ箱に入れようとしたけど外してね」

サターニャ「指摘してもガヴリールは知らぬ顔で、おまけに私に掃除しろって」

ガヴリール「……ああ」

サターニャ「なによコイツ、天使のくせして悪魔みたい、って」

サターニャ「その時から、惹かれ始めてた、のかな」

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