冬馬「俺と765の恋愛事情」2.1スレ目 (278)

冬馬「俺と765の恋愛事情」の2.1スレ目となります。

前スレである2スレ目は早い段階で中断せざるをえなかったので、そちらで投稿した分も改めてこちらで投稿します。



1スレ目 冬馬「俺と765の恋愛事情」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410005181/)




注意!タイトルから察して有り余るは思いますが、この作品は冬馬が主人公の恋愛?物。
765アイドルとの恋愛描写があります。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488710117

冬馬「ん?おい、如月!」

千早「あ」

後輩女「如月千早さん!?あー、本物だ!」

千早「」

冬馬「お前、そういう素人みたいな反応はやめろよな……」

後輩女「す、すいません。えっと961プロ所属でアイドルやらせてもらってます、後輩女です」

千早「ふふ、よろしく」

後輩女「よろしくお願いします!」

冬馬「今日はどうしたんだ?お前もここの局で収録か?」

千早「えぇ。本当は水瀬さんが来る予定だったのだけれど、変わってもらってね」

冬馬「なるほどなぁ……ってあれ、じゃあ今日は俺と共演か」

千早「え?冬馬も出るの?」

冬馬「おう。しかしあれだな、真面目な音楽番組で共演するのなんて何時振りだ?」

千早「音楽番組では私がデビューした頃に一度と、その後すぐに一度で……一年ぶり?いえ、それ以上かしら」

冬馬「そんなになるのか。フェスでは良く同じ会場になったもんだが」

後輩女「あの、そろそろ時間なので向かいませんか?」

冬馬「あー、そうだったな」

千早「聞こえてしまったのだけれど、ランクアップフェスなんですって?」

後輩女「はい!」

千早「もし良ければ私も見学させてもらって良いかしら?」

冬馬「は?」

後輩女「はいOKです!いえ、むしろ来てください!!」

千早「じゃあ行きましょうか」

冬馬「おいおい待て待て、お前何を考えて」

千早「何って、そうね……敵情視察?」

冬馬「Cランクをわざわざか?はっ、冗談」

千早「うふふ、単純に見てみたくなっただけよ」

冬馬「単純に、ねぇ」

後輩女「ーーー!!」No15

千早「……」ハァ

冬馬「……」

千早「貴方の後輩さん、良い感じね。光り方が美希に近いというか」

冬馬「誉め言葉をありがとう。でもどうだろうな、今の段階では良いとも言えるし、先を見て言うならまだまだとも言えるし」

千早「それで良いのよ。今が良いなら、次はもっと良くなるわ」

冬馬「そうか?」

千早「アイドルなんてそういうものでしょう?」

冬馬「ぬ……お前さ、本当に変わったよ」

千早「え?」

冬馬「いや、なんでもねぇ。気にすんな」

千早「?」

審査員「合格は2番と3番と15番。後は帰って良いよ」

千早「合格したわね、やっぱり」

冬馬「ふん、周りのレベルが低いんだよ。CP連中の方が余程良いもん持ってらぁな」

千早「CP……確か美波ちゃん?っていう人が居るのよね」

冬馬「美希から聞いたのか?」

千早「えぇ、えぇ、聞きましたとも。美人なんですって?」

冬馬「そ、そうだな、確かにあの人は美人だよ。性格も良いし、言うことなしの良い人だ」

千早「………そう」シュン

冬馬「(なんでコイツが落ち込んで……あぁ、そうか。そういうところも変わったんだな」

冬馬「変な言い方だが、安心しろ」

千早「?」

冬馬「お前も相当に美人だよ。特に、歌っている姿なんてハッとするくらい綺麗だ。俺が保障する」

千早「あ、あう、あうぅ……あ、ありがとう」//////テレMAX

冬馬「おう(他人の容姿に嫉妬するたぁ、前のコイツからは想像できねぇよなぁ。照れてる姿はそれ以上に考えらんねぇけど」

後輩女「どうでした!?」

千早「とっても良かったわ。ご褒美にこれをあげましょう」スッ

後輩女「ご褒美?………あ!こ、これ、プチ765シリーズのちひゃー人形ですか?」

千早「えぇ」

後輩女「しかも、ビヨンドザノーブルス仕様!!うわぁ、ありがとうございます!!嬉しいです!!」

千早「どういたしまして」

冬馬「あんまり甘やかさないでほしいんだが……お前もだ、他人から物を貰うんじゃねぇ」

千早「うふふ」

後輩女「す、すみません」

冬馬「まぁ良いさ。パフォーマンスは横で見てたが、まぁ及第点だな。細かい所で指摘できるものがあったが、それでもたいしたマイナスにはならないから俺からは言わん。そういうのは自分で気付いて修正していけよ」

後輩女「はい!」

冬馬「後は、スケジュールはちゃんと空けとけよ」

後輩女「へ?」

冬馬「デザート奢ってやるって話だったろ。なんだ、いらないのか?」

後輩女「いりますいります!空けときます!!」

冬馬「ふっ、俺たちはそろそろ時間だから向こうに行くが、気をつけて帰れよ」

後輩女「はい!ありがとうございました!!」

千早「優しい先輩をしているのね、冬馬は」

冬馬「あん?優しい先輩だぁ?」

千早「ええ」

冬馬「ふん、それはあいつが後輩の中で一番の有望株だからだよ。だから気が向けば声も掛けるし、アドヴァイスの一つもする、飯だって……あぁあいつはデザートか、まぁそういうのも奢るさ」

千早「それだけかしら」

冬馬「それだけ?」

千早「いいえ、なんでもないわ………あの子、可愛かったわね」

冬馬「……お前、高槻だけじゃなくアレにも意味の分からん感覚を覚えているんじゃないだろうな」

千早「なんでそこで高槻さんが出るのかとか、言い方が不適切ではないかとか、言いたいことが沢山あるのだけれど……あるのだけれど!!」

冬馬「いやだってお前、高槻さん可愛いって良く言ってたし」

千早「そ、それはそうだけど。私が言いたいのはそういうことじゃなくて」

冬馬「なんだよ」

千早「その…………す、す、すき」

冬馬「あん?」

千早「冬馬はああいう元気な子が好きなのかしらって思っただけ!!」

冬馬「はぁ!?」

千早「そう思っただけよ!本当に!」

冬馬「そ、そりゃあ、ああいうやつは好ましいと思うけどよ、お前が言ってる好きって恋愛対象って意味だろ?ありえねぇ!ありえねぇぇ!!」

冬馬「俺はアイドルだぞ?そういうのはねぇよ」

千早「アイドルも人間よ?好き嫌いくらいあるじゃない」

冬馬「だとしても俺はそういうのは考えねぇようにしてるからな。せいぜい良いなってくらいだ」

千早「じゃあ私……みたいな女は?すっごく面倒な女だけど」

冬馬「はぁ?さっきまでアイドル云々言ってたのにそれかよ……んなもん前に言ったろ?お前みたいな女は好みだぜって」

千早「あ…………くっ」ノタウチガマン

冬馬「(また照れてやがる」

千早「そ、そろそろ控え室に行くわね。また後でー!」ダット

冬馬「……」

P「お、騒がしいと思ったら冬馬じゃないか」

冬馬「?あぁPさんか。如月の付き添いで?」

P「なんで知って……千早に聞いたのか?」

冬馬「さっきたまたま会ってさ」

P「なるほど」

冬馬「それにしても、仕事先で会うのは久々な気がするぜ」

P「あはは、最近は俺が着いていかなくても良くなったからな。美希とか美希とかあずささんとかあずささんとかだと現場に着かない、現場に居ないってザラだったし」

冬馬「あの二人だけじゃねぇか……まぁ改善されたなら良いことだが。双子はどうだったんだ?」

P「あいつらは現場でふざけて叱られるだけだったよ。仕事場にはちゃんと行ってたさ」

冬馬「それって……」

P「まだマシだよ、あぁマシだとも」

冬馬「(苦労してたんだなぁ」

P「それで、千早はもう控え室に行ったみたいだが、お前は行かなくて良いのか?」

冬馬「行くつもりだったんだけどなぁ?」

P「おっと、じゃあ俺が引き止めてしまったんだな、すまない」

冬馬「かまわねぇよ。じゃあな、また飯でも行こうぜ」

P「ああ」

千早「ま、まだ動機が治まらないわ」ドキドキドキ

千早「お、落ち着きなさい私。落ち着け……」ドキドキ

P「千早?入って良いか?」コンコン

千早「は、はい、どうぞ」

P「……調子はどうだ?」

千早「問題ありません。声も出てますし、振り付けもちゃんと」

P「あぁ、そのことなんだがな、千早」

千早「はい?」

P「今日と次の番組、振り付けは最小限で良い。というより、歌に全てを振り切ってしまって構わない」

千早「それは……」

P「そもそもがアメリカでシンガーとして売り出す前提での番組出演だ。演出も下から霧が出る程度に抑えてもらう」

千早「なるほど、歌で魅せろと?」

P「そうだ」

千早「分かりました。今日は全力で歌いたいと思います」

P「頼むぞ」

千早「はい」

司会「……というわけで、765プロダクションの如月千早さんが来てくれました。よろしく」

千早「よろしくお願いします」

司会「最近どう?」

冬馬「(いつも思うんだが、こういう質問って難しいよなぁ」ヒナダンウシロ

千早「そうですね、最近は仕事も落ち着いてきたのでゆっくりと家で音楽を聴いています」

司会「あはは。デビュー当時と比べたら丸い性格になったけど、やってることは変わらないねぇ」

千早「その、いつかはお世話になりまして……」キョウシュク

冬馬「(こいつ、なんかやったのか?」

司会「まぁまぁ若気の至りってやつだね。それで、なにか大事なお知らせがあるって聞いたけど」

千早「はい。実はアメリカでの大きな仕事が決まりまして、少しの間日本を離れて向こうで活動することが決まりました」

スタジオ「おおおおおお!」

司会「期間はどれくらいで?」

千早「今の段階だと詳しくは分からないんですが、短くて一年くらいかなと」

冬馬「(案外長いな」

司会「じゃあ日本での活動はもう少しで一先ず終わりになるんだ」

千早「そうですね。まぁあちらでの仕事が終わればまた此方に帰ってくるので、ぜひまた呼んでいただけたらなーっと思います」

司会「そのときはしっかり呼ばせていただきます。っと準備が整ったみたいなのであちらへどうぞ」

千早「はい」

司会「いやぁそれにしても本当に優しい感じになったねぇ………えー、それでは如月千早さんに歌っていただくのは発売したばかりの新曲「細氷」です。どうぞ」

千早「私、もがきながら歩き出すの。風に揺られモノクロの街も人も夢も朽ち果てて」

千早「もがきながらつまずいても立ち止まれない私に、悲しみや切なさのない光りが待っているよ」

千早「心燃やし尽くすため息 光りに変わるの」

千早「強く、強く。縛ってよ 心の中のスヴェート」

スタジオ「………」

P「」ウンウン

冬馬「(舞台袖でPさんがめっちゃうなずいてる……それもそうだよな」

千早「ありがとうございました!」

冬馬「(本当に、綺麗なもんだ」

春香「はぁ、ツイッターのトレンドに千早ちゃんがいたからアメリカ行きの話だとは思ってたけど」ソファデネコロビ

ツイ「マジ天使」

ツイ「アイドルというか歌姫だよなぁ」

ツイ「スタジオで直接聞いてたけど、本当に迫力が有ったわ。歌に全振りしてる感じが良かった……」

春香「話題になってるのはほとんど歌の方っていうね」

千早「アメリカ側関係者の目を惹くからこれで良いと、プロデューサーには言われたのだけれど」ニヅクリチュウ

春香「でもさぁ、日本を離れるんだからそっちに話題をもっと振って欲しいんだよぉぉ。それは、一生帰って来ないわけじゃないし、今時は結構な人が海外で活動したりするから目新しさはないかもだけどさ?一年って、普通に考えると長いんだからせめて惜しむとかさぁ」

千早「春香がそうやって寂しがってくれるだけで、私は嬉しいわ」ウォークマンシマイツツ

春香「……そっか。千早ちゃんが嬉しいなら私はこれ以上何も言わないよ」

千早「ふふ、ありがとう。春香」カメラヨウイok

春香「別にお礼なんて……ところで、向こうに行く前に優君のお墓参りはするの?」

千早「えぇ」アロマキャンドルモッテ

春香「なら決意表明だね!」

千早「え?」ジュンビカンリョウ

春香「アメリカでの活躍と、冬馬君へ告白をするっていう」

千早「ぜ、前者はともかく冬馬のことは言う必要はないわよね!?」

春香「でもこういう場面で決めないとさ、千早ちゃんは絶対に足を踏み出せないよ?」

千早「それはそうだけど」

春香「何日か前に言ったよね?千早ちゃんは冬馬君から色々貰ってるって……一字一句同じじゃ無いけどさ」

千早「趣味のこと?」

春香「そう」

千早「それとこれになんの関係が」

春香「冬馬君が手の届かない所に行っちゃった時、あの人が関わった物全部に今と同じように向き合える?」

千早「!」

春香「事務所に来てから二年以上親友やってる私が断言してあげる。千早ちゃんはそんな器用なこと出来ないよ」

千早「そ、そんなこと」

春香「違わない。そのアメリカ行きの荷物に入れたカメラもアロマも、そのヘッドホンだって冬馬君と良い物だ!みたいな電話を前にしてたし、家族のこともそうだね。冬馬君のお陰で優君のことも吹っ切れたんでしょう?だからお父さんともお母さんともまた会ってみたいって、関係を修復したいって思ったんでしょう?決裂したら、千早ちゃんは絶対そっちにも変な意識しちゃって、また行き辛くなるよ」

千早「……」

春香「私はね、千早ちゃんが冬馬君の仲が上手く行けば良いなって思ってる。けどそれは、千早ちゃんが冬馬君を好きなことを知っているからじゃなくて、私が千早ちゃんの事が好きだからなんだよ。千早ちゃんのことが大好きだから、千早ちゃんにこれから後悔をして欲しくない……ずっと優君のことで後悔してる千早ちゃんを見ていたし、私自身も後悔しているから、そう思うんだよ」

春香「時間が過ぎれば過ぎるほど、私の中でプロデューサーに好きだって言わなかった事を悔やむ気持ちが強くなってる。それはいつか薄れるのかもだけど、消えることは無いと思う」

千早「……」

春香「ねぇ千早ちゃん。臆病で何かを得ることはないよ。それが好きなものなら、尚更そうなんだよ。千早ちゃんは歌も好きで、冬馬君の事も好きだよね。好きな物の片方に手が届いたんだからさ、欲張ってもう片方にも手を伸ばしたほうが良いって。両手一杯に好きな物抱えられるなら、それって幸せなことだと思うから」

千早「春香……」

春香「……………今日は帰るね。次に泊まりにくるのは、千早ちゃんが帰って来たらかなぁ」

千早「……………それなんだけどね、春香。私はこのマンションを越すつもりはないけれど、一年以上ただ放置しておくのもあれだとおもって、その、貴女にこれを」スッ

春香「鍵?」

千早「この部屋の合鍵」

春香「え!?」

千早「出来れば、たまに来ていて欲しいとおもったのだけれど。駄目かしら」

春香「う、ううん!全然!喜んで来るね!掃除もしっかりしておくから!!」

千早「ありがとう春香………アメリカに行っても頑張るから。それに、冬馬のことも頑張るから!」

春香「ふふふ。両方期待してるね」

春香「なんて背中を押してみたものの……はぁぁ」ヒザマクラゴロゴロ

美希「千早さんに発破掛けるためって言っても、自分の傷をスライディングで悪化させる必要はなかったんじゃない?」マンガヨミヨミ

春香「だってさぁ、千早ちゃんは不器用だし、冬馬君を逃がしたら他の人に好意を持てないで、不幸になる気がしたんだもん。今が最後の説得の機会かなってさぁ、張り切っちゃうでしょう?」

美希「だからってその度に半泣きでミキのところに来るのやめて欲しいの……ハニーのことが今でも好きなら、今からでも告白すれば良いの」

春香「そうすると事務所に居辛くなるでしょ。ただでさえ、プロデューサーと会うたびに頑張って普段通りに振舞ってるのに……」

美希「ならそうやって振る舞い続けて入れば良いって思うな。女が嘘を貫き通せば、それは真になるんだから。ミキもね、一つや二つは通してるの」

春香「うぅぅぅ、美希が大人になって嬉しいような悲しいようなぁぁぁぁぁぁ」スリスリ

美希「ミキだって高校生だし少しはねぇ。逆に春香は変わらない……大学、ちゃんと行ってるんだよね?」

春香「一応ねぇ…………はぁ、あの人が関わった物全部に今と同じように向き合える?なんて千早ちゃんに偉そうに言って自分はこうだもんなぁ」

美希「アイドルだからって高卒なんて許さないって言われて、ハニーに大学行きを決められてたんでしょ?去年の春先に」

春香「そう。あの時は「プロデューサーの母校に入る!後輩ですよ、後輩!!」とか言ってたなぁ……あの時の自分に、助走をつけてアバンストラッシュしたい」

美希「入社した時からハニーは小鳥に惚れてたって言うし、まぁ勝ち目無かったの」

春香「うううう、私とプロデューサーが結ばれる世界線に行きたい」シクシク

美希「……」ナデナデ

千早「……(春香と話してからもう二週間。日本での仕事は終わってアメリカ行きも二日後だというのに」オハカノマエデテヲアワセ



千早『あの、冬馬?夜に会って、少し話せないかしら?』トオカマエ

冬馬『夜?悪い、ちょっと仕事の話があってな。ちょっと無理だ。時間が空くのも明日か明後日か……』

千早『そうなの、じゃあまた電話するわね』

冬馬『あぁ、またな』



千早『今日は時間があるかしら?』ムイカマエ

冬馬『あー、本当に悪い。別件が入っててなぁ』

千早『そ、そうなの。それならしょうがないわね』



千早『その……』キノウ

冬馬『本当っにすまん。色々立て込んでるんだ。しばらくは掛かりきりだ』

千早『う、ううん。ごめんなさいね、気を使わせちゃって。仕事頑張って』

冬馬『おう』





千早「(好きだって言おうと決めたのに、まず冬馬に会えないってどういうこと?時間的に明日がラストチャンスのはずだけど」ムムム

千早「(私はどうしたら良いのかしら……会いに行くのは論外、昨日しばらくは無理って言われたしこれ以上しつこいと嫌われそう……でも、時間を置いたら決心が鈍りそうで怖い」

千早「ううう、どうしようかしら……」

絶対唯一貴音神【お困りのようですね、千早】

千早「!?」

千早「え?え?四条さん?」

絶対唯一貴音神【私は四条貴音ではなく絶対唯一貴音神なのですが……いえ、そんなことはどうでも良いのです。千早、私は貴女の覚悟を見定めておりました。臆病な貴女が愛の告白をすることを決めるには、相当葛藤があったことでしょう】

絶対唯一貴音神【春香に背中を押されたとは言え、踏み出したその勇気に免じて私が手を貸して差し上げます】

千早「その、なぜ春香との事を知ってるんですか?」

絶対唯一貴音神【美希から聞きました!】ウソ

千早「(美希から?春香があの子に話していたなら納得だけれど」

絶対唯一貴音神【時間もあまりないですし、手短に言いましょう。千早、貴女は次に天ヶ瀬冬馬と会った時、必ず想いを伝えることが出来ますか?】

千早「え、えぇ」

絶対唯一貴音神【それが人前であっても?】

千早「出来ません……撮影でもされたら冬馬に迷惑が掛かりますから」

絶対唯一貴音神【私が報道や、一般人のカメラをふさぎます。それではどうです】

千早「なら、いけます」

絶対唯一貴音神【よろしい。では、あめりかへ出立するまでに貴女とあの御仁を絶対に会わせて差し上げましょう。貴女はその時に告白なさい】

千早「あの」

絶対唯一貴音神【はい?】

千早「どこから話しているんですか?」

絶対唯一貴音神【(はて、言われてみると、確かに私はどこから話しているのでしょうか)…………とっぷしーくれっと?でしょうか?】

千早「(何故疑問系なのかしら」

冬馬「一人暮らしするから荷造り手伝ってーとか言うから手伝いに来たのに、何の用意もしてねぇとか馬鹿なんだろうな、お前は」

翔太「あはは、もう三日も前からのことなのに小さいなぁ」

冬馬「……」イラ

北斗「良いじゃないか冬馬。どうせこの数日は暇だったんだろ?」

冬馬「まぁな。ただ、如月から何回か誘いがあったんだよなぁ。あいつももうすぐアメリカ行きだろ?なのに誘いを断りっぱなしで申し訳なかったぜ……」

翔北「え!?」

冬馬「なんだ、如月のアメリカ行きを知らなかったのか?」

翔太「違うよ!誘われてたことに驚いてるの!」

北斗「なんで行かないんだよ!」

冬馬「なんでって、こっちが先約だったからに決まってんだろ。じゃああれか?遊び行くから少し抜けるぜーとか言えば良かったのかよ」

北斗「一概にそれで良いとは言わないけどさ、千早ちゃんは……なぁ?」

翔太「ねぇ?」

冬馬「なんだよ」

翔北「いやなにも(冬馬(君)に惚れてるんだから、離れる前に話をしたかったんじゃないかなぁ……とは言えないしね」

冬馬「?」

北斗「あぁごめん電話だ……この番号誰だろう?携帯みたいだけど」ピピピピピ

冬馬「ストーカーからの無言電話じゃね?」

翔太「マルチの勧誘とか?」

北斗「怖いこと言うな!……はい、もしもって、貴音ちゃん!?う、うん今は時間あるけど……」

翔太「貴音さんだって」

冬馬「こいつ、口説いてたくせに電話番号もしらねぇのかよ」

翔太「脈なし?脈なし?」

北斗「黙ってろ!あー貴音ちゃんじゃなくってこっちの冬馬たちの話で……え?話が早い?冬馬に代われ?」

冬翔「?」

北斗「ほら冬馬」

冬馬「?………もしもし?」

絶対唯一貴音神【こんばんは、天ヶ瀬冬馬】

冬馬「よう、どうした?(こいつの声、どこかで聞いたことあるようなエコーが掛かってんな?」

絶対唯一貴音神【手短に申しますと、明後日の朝方に、少し時間をもらえましょうか?】

冬馬「明後日?ああ、良いぜ」

北斗「(千早ちゃんの出立日か?」

絶対唯一貴音神【そうですか、それは良かった。場所は前に会ったカフェ、要件はその時にお話いたしますのでこれにて失礼……あぁ伊集院北斗に、この番号を登録しても宜しいですよと、お伝えください。それと、一度此方に掛けてくるようにともお願いします】ガチャ

冬馬「……切れたな」

北斗「えぇぇ!?お前に話すだけ話して終わりって……」

翔太「やーい脈なしー」

北斗「……」

冬馬「落ち込むなよ。今の番号、登録して良いって言ってたぜ?んで、一度掛けて来いとも言ってたな」

北斗「マジで!?」

冬馬「おう」

北斗「な、長かった……実家の番号は教えてもらってたけど、携帯の番号知らなかったからそうそう予定合わせられなくって」サメザメ

冬馬「いや、実家の番号教えられてるほうが驚きなんだが」

翔太「それ、やよいちゃんの番号知ってる冬馬君の言うことじゃないよね」

北斗「家に掛けるとさ、すっごい威圧感のある声で「何用でしょうか、伊集院様」とか執事さんに言われるんだぞ?「デートのお誘いです」って言ったらガチャ切りされたことが何度も……」

冬馬「四条と話がしたいっていやぁ良いだけじゃねぇのかよ……」

北斗「俺もそう思って掛けるんだけど、電話口に相手が出るとなぜか正直に話しちゃうんだよなぁ……まぁ良いや。翔太、今日は終わりだろ?俺は帰って貴音ちゃんに電話しないといけないから帰るからな」

翔太「うん、ありがとう」

冬馬「じゃあ俺も帰るかね」

翔太「冬馬君もありがとね」

冬馬「おう。次は新居に呼べよ」

翔太「えー?」

冬馬「呼べよ!?」

冬馬「………」ズズズ

貴音「………モグモグ」

冬馬「おい、お前ら765プロの中では呼び出しといて本題を語らないのが流行ってるのか?」

貴音「はて、お前らとは?」

冬馬「Pさんのことだよ。あの人も、お前らの事務員と付き合い始めたって話をする時に中々切り出してこなかったんだ」

貴音「付き合い始め?となると、私達が結婚の報告をあの方から聞くよりも先に二人の関係を知っていたということですか」

冬馬「そうなるな」

貴音「(事が事だけにそうそう自分の担当アイドルに恋愛相談などは出来ないでしょうが、何故この男に……いや、私にされても困るといえば困ったでしょうが」

冬馬「で、本題はなんなんだよ。いい加減話しても良いんじゃねぇか?」

貴音「そうですね、そろそろといった所でしょうか」

冬馬「?」

北斗「あ、いたいた」

貴音「お待ちしておりました」

北斗「ごめんね、待たせちゃって」

貴音「いえ、時間通りですよ」

冬馬「北斗?なんでお前がここに?」

北斗「何でって言われてもなぁ」

貴音「今から私たちはでぇとですので」

北斗「!そ、そういうこと」

冬馬「……………色々と言いたいことはあるんだが、何から言おうか」

貴音「その皮肉を利かせた物言い、アイドル失格ですよ」

冬馬「どの面ー?どの面でそんなこと言うんだろうなー?」

北斗「あはは」

貴音「まぁ冗談はさておいて」

冬馬「冗談かよ」

貴音「えぇ。天ヶ瀬冬馬、貴方を呼んだのは他でもありません、これを」

冬馬「あん?なんだよ……小包?」

貴音「はい。実はこの荷物、早急に千早へと届けねばならないのです」

冬馬「で?」

貴音「貴方に運んでもらいたいのですが」

冬馬「いやいやおかしいだろ。昨日時間があったんだから渡そうとすれば渡せたんじゃねぇのかよ。てか、今から自分で行けよ」

貴音「これは貴方が届けねばならない物ですよ?」

冬馬「?」

貴音「ほら、バイクに乗っていますし」

冬馬「ますし?」

貴音「バイクに乗っていますから」

冬馬「バイクだけじゃねぇか!!」

貴音「むむむ、手ごわいですね」

冬馬「そもそも何がしたいんだよ、お前……」

貴音「ですからこの小包を」

北斗「話が進まないから貴音ちゃんは少し待って。冬馬、貴音ちゃんは千早ちゃんに気を使っているのさ」

冬馬「はぁ?気を使うだぁ?」

北斗「そう。ほら、千早ちゃんが冬馬に会いたがってたけど、冬馬がスルーするから」

冬馬「スルーなんてしてねぇよ」

北斗「会って無いんだし、同じような物だよ。千早ちゃんはこれから知り合いの居ないところへ行くだろう?その前に仲の良い人間と直接話したいと思うのが人情だし、貴音ちゃんがそれを仲介しようとするのだって人情さ。ならお前が今から会いに行くのも人情だ」

冬馬「なにが、なら、なんだよ……そりゃ今日は仕事ねぇし、誘いを断り続けてた引け目もあるから会いに行くのは良いさ。けどさ、飛行機の時間に間に合わないんじゃね?」

絶対唯一貴音神【貴方が行くまで機材とらぶるが起きますので大丈夫ですよ】

北斗「だ、だからそのモードになるのは止めてくれないかな!?」

冬馬「モード?つーか機材トラブルってテロでもするつもりかよ」

絶対唯一貴音神【てろ?はて、なぜかに起きてしまうトラブルなど、私にはあずかり知らぬ所なのですが?】

冬北「……」

一応前スレまでの投稿で本日は切っておきます。
また長々と書いていくつもりですので、よろしくどうぞ




……

………


P「本当は出立まで見ていたかったんだがなぁ」

千早「急がないと打ち合わせに間に合わないんですから、そっちを優先してください」

P「あぁ、そうだな。千早、悪いんだけど俺は行くから、お前も気を付けるんだぞ?」

千早「ここから何に気を付けるんですか?」

P「それは、ほら、風邪をひかないようにとかな?」

千早「ふふ、いくらなんでもひきませんよ」

P「それもそうだな。じゃあな、俺も来週一度そっちに渡るからそれまでがんばれよ」

千早「はい」

千早「ふぅ………いくらトラブルが発生したとはいえ、一時間以上も足止めされるなんて」

千早「春香はなぜか電話に出ないしラインも帰ってこない、真も我那覇さんも仕事中のはずだから掛けても意味がない、冬馬とは……会えず仕舞いだったし、今更電話するのもね」

千早「結局は縁が無かったってことなのかしら……いえ、四条さんがハッキリと言ったんだもの、まだ可能性はあるわよね」

冬馬「可能性って、なんのだ?」

千早「そんなの決まってるじゃない、冬馬にぃって!冬馬ぁ!?」

冬馬「よう」

千早「ど、どうしてここに?」

冬馬「どうしてって、四条のやつがお前にこれを渡してくれって言ってきてさ、渡しに来たんだよ」コヅツミテワタシ

千早「そ、そうなの……(四条さん、このトラブルを読んでいたのかしら」

冬馬「それにしても、見送りに来たファンやら取材陣やらがすげぇな。ロビー狭しって感じでたくさんいるぞ」ヒーフーミー

千早「えぇ。それでもさっき、といっても一時間前くらいなのだけれど、その時に比べれば少なくなっているのよ?」

冬馬「あれでか?こっそり脇通ろうとしたんだが見つかっちまってな、散々フラッシュ焚かれちまったよ」

千早「トップアイドルが突然現れたらそうなるわよ」

冬馬「いや、俺も騒がれるのも仕事のうちってのはわかってるんだが、少しくらいスルーしてくれよと」

千早「うふふ、ライダースーツなんて物を着たまま空港に入ってくるんだもの、スルーされるわけないわよね」

冬馬「それもそうだよな。時間が押してるみたいだからって着替えずに来ちまった」


冬馬「まぁ、お前の誘いを断りっぱなしになってたし、これからしばらく会えないんだからいい機会っちゃいい機会だったよ、四条からの頼みは」

千早「そうね、私としても四条さんにはいい機会をもらったわ」

冬馬「そうなのか?」

千早「えぇ。貴方に言いたいことがあったから…………ありがとう、大好きよ、冬馬」

冬馬「はっ!?はぁぁ!?お前何言ってんだよ!」

千早「何って、大好きって」

冬馬「じゃねぇよ!お前、アイドルだろうが!そんな変なこと、誰かに聞かれたらどうすんだよ!」

千早「だったら少し声を抑えない?聞こえてしまうわ」

冬馬「うぐっ」

千早「それに……別に私は変なことを言ったつもりはないのよ?」

冬馬「あ?」

千早「私は貴方に【色々】なものを貰っているし、そういうのも含めていつもありがとうっていう意味で「ありがとう」と「大好き」を言ったのだから」


冬馬「な、なんだそういうことかよ。焦らせんなって……」

千早「うふふ。ごめんなさい……ねぇ冬馬。もし今の言葉が異性としての好きって意味だったら、貴方はどうしたかしら?」

冬馬「困る」

千早「え?」

冬馬「困る」

千早「そ、それだけじゃ良くわからないわ」

冬馬「俺もお前のことは嫌いじゃないからな、そういう風に言われちまったら断れねぇよ」

千早「断れないって……迷惑?」

冬馬「違う。俺はまだやりきってねぇから、まだまだアイドルで居たいんだよ。だから今そういわれてもさ、困るんだ。さっき言ったようにお前が嫌いだってわけじゃねぇんだぞ?それは本当だ」

千早「そう……」

冬馬「あぁ」


アナウンス「機内トラブルにより遅れておりました、便の搭乗準備が完了いたしました」ウンタラカンタラ

冬馬「時間みたいだな。じゃあ、俺はそろそろ行くぞ」

千早「えぇ。わざわざありがとう」

冬馬「おう、がんばれよ」

千早「……冬馬」

冬馬「ん?」

千早「目にゴミがついてるわよ」

冬馬「お、まじか」ゴシゴシ

千早「運転中に目に入ったらまずいでしょう?取ってあげるわ」

冬馬「い、いや良いって、自分でやる」

千早「擦ったら目を傷めるわよ。赤くなっちゃったら仕事に障るでしょう。ほら、少ししゃがんで、目を閉じて」

冬馬「お、おう」

千早「ふふ……冬馬?」

冬馬「なんだ?」

千早「ん」チュッ

冬馬「!?」



その時空港にいた凄腕カメラマン悪徳さんは、のちにこう語った。

悪徳「いやね、二人が一緒に仲良く話しているのを遠目で見ていて、ファンの人間も私たちもカメラを向けたりしていたわけですよ」

悪徳「でもまぁ天ヶ瀬冬馬がお相手じゃ色気のあることもあるまいてみんな思ってたんでしょうね」

悪徳「天ヶ瀬冬馬が突然しゃがんで、千早ちゃんが自分の顔と相手のそれを重ねたとき、歓声というか黄色い声というか、とにかくそんな声が大きく飛び交ったものの、誰もそれを記録に残せていなかったのですよ」

悪徳「「何もかも撮り尽す」がモットーの私でさえ、千早ちゃんが真っ赤な顔で天ヶ瀬冬馬になにかを捲し立てているとき、ようやくそこでシャッターを切るほどの体たらく。あとで二人のキスシーンを撮ったという人間に会ってみても、真っ青な顔をした四条貴音とにこにこ笑う男の子のツーショットしか提示してこないので……やはりきっと、誰も写真を撮ってないのでしょうね」

悪徳「だから、どこそこの報道機関が天ヶ瀬冬馬と千早ちゃんの熱愛報道を持ち上げても「証拠もないのに」とか「そこまでして千早ちゃんの足を引っ張りたいのか」とか叩かれるわけで……」

悪徳「さらに言うなら、その後突然湧いて出てきた伊集院北斗と貴音ちゃんの熱愛報道に視線が逸らされたというのもありまして、すぐにこの話はなかったことになっていたのです」








悪徳「そういえば、空港での出来事についていろいろ確認したあと黒井社長に連絡をしたんですが、どうにも他の人間からも連絡があったみたいで天ヶ瀬冬馬を即座に呼び出したみたいですね」


黒井「ということは、だ。先ほど私のもとに来た話は本当だったというのか?」

冬馬「そうなるな」

黒井「キスの証拠が出なかったときは良い、問題なく誤魔化せるんだからな。だが、仮に出てきたらどうするのだ?いや、普通に考えて誰も撮っていないわけがない。誰も撮ってなかっただろうなどと悪徳は言っていたが、あの場には、民間人を含めカメラを持つものが大量にいただろうし……」

冬馬「ツイッターにも写真は出回ってねぇよ」

黒井「今はな。だがお前、というより961プロがその話に否定や肯定といった反応を返せば持っている者がそれを出してくる可能性はあるだろう。ゆえに、こちらとしては一先ずなんの声明も出さんし、お前が何かを言うのも禁止する。いいな?」

冬馬「おう」

黒井「……それで、千早ちゃんとはどうするつもりだ」

冬馬「どうって言われてもなぁ……」

黒井「そもそも、お前はあの子に何と言われたのだ」

冬馬「……言わなきゃ駄目か?」

黒井「言え、洗いざらい全部」

冬馬「あー、うん、そうだなぁ……………」


冬馬「おっ、おま、おまぁ?!」

千早「私は貴方のこと、異性として大好きだから!」カオマッカ

冬馬「さ、さっきは」

千早「さっきはさっき!」

冬馬「お、おう?」

千早「私は前から貴方のことが好きだったのよ?でも、それを貴方に言うのは怖かった。振られたらとか、今の関係を壊したくないとか色々思ったから」

冬馬「……」

千早「でもね、春香に「自分で手を出さないから変わらない関係なんてない」って言われて決めたのよ。自分の気持ちを伝えようって。告白すれば貴方の迷惑になるのは分かってたけれど、伝えないで後悔するよりは良いかなって」

千早「つまりはそういうことなのだけれど……私の告白に対する返事は私が帰ってきてからで良いから」

冬馬「は?」

千早「ふふ、私も貴方と同じよ。まだやりきってないから、満足できるまではアイドルでいたいもの。だから、ね?答えは今度、直接会うときに聞かせてちょうだい」

冬馬「……おう」


冬馬「つーわけなんだが」

黒井「……」

冬馬「……」

黒井「……お前、そこまで好意を持たれるようなことをしていたにも拘らず、のこのこと出立直前に会ったのか?」

冬馬「あそこで告白されるなんてふつうは思わねぇだろ。第一ここまでーって言われてもそんな心当たりなんてねぇぞ?」

黒井「あの、とことんクールだった千早ちゃんが訳もなく惚れるものか!お前が鈍感なだけだろう!?」

冬馬「……そうなのかねぇ」

黒井「まったく。だから私は孤高たれと言っていたのだ………で、お前はどう応える?」

冬馬「さぁな」

黒井「ふん。プロダクションのトップとしては断れと言いたいところではあるが、時間もあることだし好きにしろ。だが……」

冬馬「オッサンの言いたいことはわかっているつもりだ。ケリは自分でつける」

黒井「そうか……下がれ」

冬馬「……」

待ってて貰えたとはありがたひ限りです。
もう死なないように頑張ります

冬馬「……」ズズズ

春香「こんばんわ」

冬馬「おう」メニューテワタシ

春香「ホットコーヒーお願いしまーす!……いやぁ冬馬君に呼び出されるなんて久々だから、春香さん焦っちゃった」

冬馬「そうか」

春香「で、どうしたの?」

冬馬「お前、分かっててそういうこと聞くか?」

春香「分からないから聞いてるんだよ?千早ちゃんを焚き付けたことに対するお叱りとか、逆にそのことに対する感謝とか、まぁ考えられることはいくつかあるしね。それで、どっちなのかな?」

冬馬「……」

春香「?」

冬馬「俺にも、さっぱりだよ」

春香「分からない?」

冬馬「そうだ。文句を言っていいのか、ありがとうと言えばいいのか、これからどうすればと愚痴ってもいいのか……分かんねぇんだよ」

春香「?じゃあなんで私を呼んだの?」

冬馬「今回、損な役回りを演じた馬鹿がいるんだ、一言くらい労ってやらねぇとダメだろって思ってさ」

春香「労う?え、馬鹿?」

冬馬「あぁ。親友の為とはいえ、わざわざ自分の傷抉るようなことを言った馬鹿だ……心当たりは?」

春香「はーい、ありまーす。あ、どうも」コーヒーウケトリツツ

冬馬「……だろうな。自分で動かねぇから変わらないなんて関係はない、だったか。Pさんとのことだろ?」

春香「うん」

冬馬「まったく、煽るにしても自分にダメージのない言い方ってもんがあるだろうに」

春香「あはは、それは美希にも言われちゃったけど、冬馬君もやっぱりそう思うよね。でも、千早ちゃんにはたぶんこういう言い方をしないと駄目だったと思ったから。千早ちゃんは自力じゃ吹っ切れられないだろうし」

冬馬「……」

春香「……」


冬馬「まぁ、俺としては、あいつの気持ちに応えるのは構わないんだ」

春香「?」

冬馬「だが、アイドルでいたい気持ちも強いんだよ。もともと長く現役でいるつもりだったから、決心するのに時間が欲しい」

春香「時間って言っても、千早ちゃんは一年くらいしか向こうにいないんだよ?足りる?」

冬馬「別に、応えるイコールすぐ引退!結婚!ってわけでもないだろ……まぁ、受けると決めたわけではないんだけどな」

春香「え?今の話の流れで言えばYESしかない感じだったよね?なんでNOの可能性も視野に入れてるの……」

冬馬「駄目なのか?」

春香「冬馬君の良心に任せるけど?」

冬馬「そう言われるとNOと言えねえだろ」

春香「言わせたくないしね」

冬馬「そうか」

春香「そうだよ」


冬馬「じゃあ俺はそろそろ帰るぜ。明日からは忙しくなりそうだからな」

春香「何かあるの?」

冬馬「何かもくそもねぇよ。ぜってぇマスコミに張り付かれるだろ、俺」

春香「うふふ、ざまぁ」

冬馬「蹴り倒すぞ」

春香「えぇ?」

冬馬「お前も、他人事みたいに言うけどな、如月の親友として話きかれるんじゃねぇか?」

春香「私は「アイドルがき、キスだなんて」//////ってやるから大丈夫」

冬馬「今照れをどうやって発音した!?」

春香「いや、普通に//////って」

冬馬「……言えねぇぞ?」

春香「変換押し足りないんじゃないの?」

冬馬「変換ってなんだよ!」

春香「え?変換って変換だよ?」

冬馬「……」

春香「?」

告白から一か月後……


冬馬「おい、おっさん」

黒井「なんだ?」

冬馬「あんたマスコミに圧力でもかけてんのか?」

黒井「突然現れたと思えば……何を言いだすんだ」

冬馬「あれから数日は、確かに周りに張り付かれてたさ。だがな、すぐに北斗と四条のスキャンダルが出て俺の話は流れただろ。それ以来まるで俺のほうに話がこねぇ」

黒井「スキャンダルではない。業腹だが北斗と貴音ちゃんの話は事実だ」

冬馬「は?なんだそれ聞いてねぇぞ」

黒井「黙れ、この話は今はする気にならん!……お前の話はそれ以上に簡単だ。証拠がどこにもないし、なによりお前の今までの生活態度で「天ヶ瀬冬馬がキスとかありえないよなぁwwwwwwww」と勝手に鎮火された」

冬馬「……どことなく馬鹿にされてる気がすんだけど」

黒井「面前で膝枕だ腕枕だ、ナデポだニコポだ抱っこだなんだとしているのに浮ついた噂の一つも出てこないんだぞ?誰がお前を甲斐性のある男だと見るか!」

冬馬「う、甲斐性云々については言い返せねぇけどよニコポって」

黒井「煩いぞ天然たらし。私は忙しいんだ。お前はさっさと仕事へ行け!」

冬馬「おう」


冬馬「釈然としねぇ」

翔太「え?」

冬馬「北斗のやつはともかく、俺が普段通りってのがな」

翔太「周りが騒がしいより良いよ……特に、なにも起こしてないのに巻き込まれてる僕からすればね」

冬馬「……」

翔太「それで、どうなの?千早さんとのことは」

冬馬「何かしらの答えは出すさ」

翔太「それは当然だよ。問題は答えた後どうするのかってこと」

冬馬「あと?」

翔太「冬馬君は僕や北斗君と違って、最初からアイドルでしょ?僕も北斗君もいざとなれば他に行くけどさ、冬馬君は?どうするの?」

冬馬「俺がYES出す前提で話すなよ」

翔太「でも出すでしょう?」


冬馬「は?」

翔太「いやさ、あの後すぐはYESかNOで悩んでたみたいだけど、今はそこで悩んでないみたいだし」

冬馬「……お前、案外見てるよな」

翔太「それなりの付き合いだからね」

冬馬「…………まぁその通りだな。俺は確かにあいつの告白にYESを出すつもりではいる」

翔太「つもりなんだ?」

冬馬「まぁな」

翔太「ふぅん。じゃあ出した後どうする?」

冬馬「引退しかないだろ」

翔太「歌手になるとか、タレントに行くとかは」

冬馬「ないな」

翔太「だよね。でもさ、僕が聞きたいのは引退したその後のことなんだよね」

冬馬「引退したら?それまでだろ?」

翔太「あー、うーんそういうことじゃないんだけど………まぁ今はまだ良いか」

冬馬「?」

アイドルとしての終わりまでしか見えてない冬馬。



どうやって収拾つけようか……

告白から八か月後……



ラジオ「アメリカにわたって活動を続けている如月千早さんですが、七週連続で全米チャートのTOP10に入るという快挙を達成いたしました」

ラジオ「曲は細氷。日本を発つ直前に発表し、それを引っ提げてアメリカに乗り込んだわけですが……いやぁ日本の、それもアイドルがこうアメリカで評価されるというのはなかなか感慨深いですね」

ラジオ「世界でSUKIYAKIとして愛される坂本九さんの「上を向いて歩こう」が思い起こされます。はい、じゃあ東から来ましたさんからのリクエスト「上を向いて歩こう」を聞きながらお別れです」


冬馬「…………」

翔太「へえ、千早さん活躍してるんだね」

冬馬「みたいだな」

翔太「確か映画の主題歌も人気あったはずだけど」

冬馬「そうだな」

翔太「あー、さっきまで普通に話してたくせに千早さんの話題が出た途端に考え込むのやめてよね」

冬馬「あ、悪い。だが、どうにもな」

翔太「もう悩んだって仕方ないって」

冬馬「それもそうなんだが」

翔太「(決めたんならさくっと割り切れば良いのに……さすがにこれは、僕にはどうにもできないんだよなぁ」

春香「だからって私に振りに来る?普通」

翔太「えー?でも春香さんが千早さんの背中おしたんでしょう?ならこっちの責任も取ってくれないと困るよー」

春香「いやほら、男は男、女は女ってことで」

翔太「却下。ただでさえ北斗君のことで色々忙しいのに、それ以上のことなんて……本当にね、冗談抜きで僕だけとばっちり食らってるじゃん。なんとかしてよ」

春香「うーん。と言っても私もいろいろ忙しいし……あ、一人だけ、今の冬馬君に適任の人いるかも」

翔太「本当?」

春香「うん。連絡するからちょっと待って」

翔太「お願いしまーす」





春香「無理でした」

翔太「ええー!?」

春香「いやね?向こうに冬馬君とのお話をお願いしたんだけど、「私は生涯現役なんて最初から考えてなかったから参考にならないと思うわ」って断られちゃって」

翔太「もう……で、誰にお願いしてたのさ」

春香「え?日高舞さんだけど」

翔太「ほんと馬っ鹿じゃないのかなー!?」


翔太「冬馬君、日高舞さんに憧れてるんだけど?そんな人に引退とか恋愛の相談なんてできるわけないよ!というか伝説のアイドルにそういう話振らない!!」

春香「でもあの人今はただのお母さんだし」

翔太「なおさら合わせてどうするのさ…………」

春香「でもさ、人気絶頂のトップアイドルが恋愛引退ってところは似てるし」

翔太「冬馬君の問題はそこじゃなくて!引退した後のことを冬馬君自身が考えられてないことなんだって」

春香「あと?引退したらアイドルじゃなくなるだけでしょ?」

翔太「同類だったかぁ……あのね、引退したって人生は続くんだよ?じゃあトレーナーしようかな、とか養成所開こうかな、とかいろいろあるでしょ!なのに冬馬君はそこを考えられないんだよ」

春香「ごめんね、ちょっと簡単に言ってくれない?」


翔太「自分がアイドルをやめることは考えられても、そのあと自分が何をしているかがイメージできないねってこと」

春香「なるほど。そういわれると、私もイメージできないなぁ……」

翔太「春香さんも生涯現役だって言ってるもんね、プロデューサーさんの結婚が決まってからなおさら」

春香「ぐぇ!!!」

翔太「どうしたの!?」

春香「ま、まさか翔太君に傷をえぐられるとは……思わなくてふ、ふいうちは駄目だよぉ」グズッ

翔太「うわー!ごめんね春香さーん!!」

北斗と貴音の話は共通ルートでと思ってたから、千早ルート中の話題に困ってしまった…

冬馬「俺は決めたぞ」

翔太「ふーん?何をー?」ネコロガリ

冬馬「俺はアイドルを続ける!」

翔太「え!?」

冬馬「なんだ、やけに驚くのな?」

翔太「そりゃそうでしょ。千早さんの告白にはOKをだすものだとばかり思ってたのに、NO!なんだから」

冬馬「いや、別にアイツを振るつもりなんて毛頭ないぞ?」

翔太「でも、アイドルを続けるって……」

冬馬「アイドルは続ける!告白も受ける!それだけだろ」


翔太「冬馬君前々からアイドルが恋愛云々なんてーみたいなこと言ってたじゃん?それはいいの?」

冬馬「それは俺も考えてたんだがな…………ずるくないか?」

翔太「え?」

冬馬「Pさんの聞いたんだが、765は恋愛は自由なんだそうだ。それに如月はアイドルというより歌手として売っていくから特に問題視しないんだと」

翔太「それが?」

冬馬「なら俺だって自由にして良いじゃんか。俺は辞めるのに如月は辞めなくて良いとかありえんだろ。だから俺もアイドルを続ける!」

翔太「千早さんも辞めろーとは言わないんだ?」

冬馬「そんな残虐非道なことを誰が言うか!」


翔太「というか、それファンの人たちにはどう説m」

冬馬「言う必要あるか?」

翔太「?」

冬馬「俺が如月と付き合っているって、口外する必要あるのかよ」

翔太「え、いや、ないけど……」

冬馬「だろうぉ?あー、長く深刻に考えてて損したぜ!要は俺が満足するまでアイドル活動を続けられるかが問題だったんだ。それさえ解決しちまえばなんのことはねぇよな!」ドヤァ

翔太「…………(それ、問題の先延ばしじゃないかなぁ」

冬馬「いやぁ、こんなに心が晴れ晴れとしているのは久しぶりだ!翔太、飯でも行くか?」

翔太「あー、うん行くよ(まぁアイドル辞めてどうするかなんて、本当は冬馬君自身で勝手に考えていくことだからね。もう僕が深く関わる必要はないって事でFAだなぁ」

あとは千早が帰ってくるまで小話が少々……

凛「あれ、冬馬?」

冬馬「渋谷か。収録か?」

凛「そうだよ。冬馬も今から?」

冬馬「いや、俺は終わったところだ」

凛「そうなんだ。私は新曲の……」

??「奈緒、奈緒!凛がナンパされてるよ」コソコソ

??「お、おいやめろって加蓮」コソコソ

冬馬「あれ、知り合いか?」

凛「うん、友達」

??「凛~!!」ダキッ

凛「ちょっ、こんなところでじゃれつかないでよ」

??「友達だってさぁ奈緒!」

??「普段「別に、ただの仲間だよ」みたいな感じのくせに、このこの~」

凛「もう!二人とも!」

冬馬「……」


冬馬「この二人も346プロか?」

凛「うん、こっちが加蓮。こっちが奈緒」

加蓮「トライアドプリムスの北条加蓮でーす!」

奈緒「か、神谷奈緒です!あたしもトライアドプリムスだったり……」

冬馬「よろしくな。新曲って言ってたが二人は別録りなのか?」

凛「あー、いやなんていうか」

加蓮「凛は、私たちと一緒で、トライアドプリムスとして来てるんですよ」

冬馬「トライアドプリムスってのはユニットか?三人で?」

凛「そう」

冬馬「NGはどうした?」

凛「今日は別。私はこっちと掛け持ちすることになってて、昨日はあっちで取材が入ってたんだ」

冬馬「大変だな」

凛「冬馬だってソロとユニットで別々にやってるんでしょ?変わらないよ」

冬馬「まぁそう言われればそうだけどな」

加蓮「ねぇ凛」

凛「なに?」

加蓮「今更なんだけど、二人とも知り合いだったの?」

奈緒「ほんと今更だな」

凛「はは。まぁいろいろあってね」

冬馬「あれは、いまだに内緒なのか?」

凛「どうだろ。楓さんとかは知ってるみたいだけどって、楓さんは知ってる?」

冬馬「まぁ、多少な……愉快な人であるのは知ってるよ」

TP「あー」

加蓮「で、どうして知り合いなの?」


凛「……」チラッ

冬馬「良いんじゃないか?言っても」

加蓮「ほらほら、こちらのトップアイドル様が良いって言ってるんだからさぁ」

凛「シンデレラプロジェクトが出来た時に、アドバイザー」

冬馬「アドヴァイザー」

凛「アドヴァイザーとして来てくれたんだ。美希もだけど」

加蓮「美希?」

奈緒「星井美希ちゃんだろ」

加蓮「あぁーって、なんですぐに765の美希ちゃんだってわかったの?」

奈緒「え?いや、シンデレラプロジェクトに二人が来てたの知ってたし」

加蓮「え!?」

奈緒「いや、普通に有名だっただろ。社内に他の事務所のトップアイドルが居て新プロジェクトの部屋にいるんだぞ?話にならないわけがないって」

加蓮「聞いてない……」

奈緒「あの頃の加蓮はレッスン毎に死んでたから会話になってなかったしな。しかたないって」


冬馬「有名だったのか」

奈緒「あぁはい。うちの事務所は変に自分本位なところがあるから特に騒ぎにはならなかったですけどね」

凛「変な敬語」

奈緒「しょうがないだろぉ?馴れないんだから……ってそろそろ時間だぞ二人とも。行かないとやばいって」

加蓮「本当だ。もうこんな時間なんだね」

凛「じゃあね冬馬。つぎに会ったら色々アドヴァイスほしいんだけど」

冬馬「おう、良いぜ」

加蓮「あ、最後に質問してもいい?」

冬馬「おう」

加蓮「如月千早ちゃんとの熱愛報道って本当?」

冬馬「ははは。さて、どうかな」

TP「(シロだなぁ」


伊織「ちょっとあんた」

冬馬「ん?おお、水瀬か。今日はいろんな奴にあうな……お前と局で会うなんて珍しいぜ」

伊織「そんなことはどうでも良いの。あんた、なんで最近やよいの家に来ないのよ?」

冬馬「なんでって言われてもな……って、お前俺が高槻んち居るの嫌がってたじゃねぇか」

伊織「……」

冬馬「……あー、まぁお前になら言っても良いか。口が堅いやつだし」

伊織「なによ」

冬馬「実は、前に如月に告白されてたんだが」

伊織「あれ本当のことだったの!?」

冬馬「おう本当のことだ」

伊織「ふ、ふーん?それで、告白されてどうしたのよ」

冬馬「OKすることにしたんだ」

伊織「……え?」


冬馬「OKすることにしたって言ったんだよ」

伊織「……(まさか、こいつがアイドルを辞める決断をするなんて」

冬馬「だからさ、ほら、一応高槻は女だし?そこの家に入り浸るのも如月に悪いかなって思ってよ」

伊織「そ、そう……」

冬馬「本当は、いままで通り高槻家とは付き合って行きたいんだがなぁ」

伊織「……無理でしょうね、今まで通りなんて」

冬馬「だよなぁ」

伊織「(あんたが思ってる意味とは全っ然違う意味で、無理なのよ……」

冬馬「まぁ、如月とのことが公表できるようになったら一回挨拶に行かないといけねぇしな、そんときには話すさ」

伊織「え!?」

冬馬「ん?」

伊織「あ、あんた、わざわざ止め刺しに行くのやめなさいよ」

冬馬「止め?止めってなんだ?」

伊織「あ、ううん。なんでもないわ……なんでもないから(今から気が重いわよ、ほんとにっ」



告白から一年と少しあと………




冬馬「……」ペラッ

新聞1「如月千早さん、明日に帰国!」

新聞2「凱旋!日本の歌姫が帰ってくる!!」

冬馬「……今のうちに話を通しておくか」





冬馬「と、いうわけなんだが」

P『………………それ、あの出立前の騒ぎのことだよな』

冬馬「そうだ」

P『はぁぁぁ。まじで言ってるのかそれ』

冬馬「そうだ」

P『確かにうちは恋愛禁止とかしてないけどさ、千早が大ブレークしてる今の時期にそれはないだろ冬馬!』

冬馬「告白に答えるだけだ。なんの影響もないだろ」

P『一年越しの告白だぞ?断られたらダメージでかすぎる!!』

冬馬「断るつもりなんてねぇよ」

P『は?い、いや、じゃあお前引退するのか?まだまだこれからなのに?』

冬馬「引退はしねぇよ。告白は受ける、しばらくは黙っててアイドルを続ける。それだけだ」

P『お、おうふ。なるほどな』

冬馬「それで、少し頼みがあるんだよ」

P『?なんだ?』

冬馬「実はな……」

次で千早編はひとまず終わる予定。
真の時と同じで、しばらくしたらその後のことは書きますう


記者「お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。記事になりましたら事務所のほうに送らせていただきますので、どうぞよろしく」

千早「はい、楽しみにしています」

記者「そうそう、日本でまた如月さんの歌が聞けることを嬉しく思います。頑張ってください」

千早「ふふふ、ありがとうございます」







P「帰国したその日にインタビューなんて入れて悪かったな。疲れたか?」ブロロロロロ

千早「いえ、飛行機では寝てましたし、大丈夫です」

P「そうか。だが、自覚できないくらいの疲れはあるだろうからな、今日はあがろう」

千早「プロデューサー?それだと明日の打ち合わせの準備が」

P「あー、いや。それなんだがな、明後日にずらしたんだ。突然で済まないんだけどさ」

千早「そう、なんですか」

P「そうだ」

千早「……」


P「なぁ千早、俺はアイドルのプライベートに踏み入る気なんてないんだ」

千早「突然なにを?」

P「だが、それが恋愛事ともなれば話は別だ……言いたいこと、わかるよな?」

千早「……そ、それは」

P「勘違いはするなよ?別に俺は怒ってるわけじゃないんだから」

千早「え?」

P「確かに、お前と冬馬のキスが噂じゃなくて本当だったのは驚いたし、それならそうと先に言っておけよとかも思ったが」ピキピキ

千早「(お、怒ってる……」

P「うちの事務所は恋愛禁止じゃないしな」

千早「……そうなんですか?」

P「そうでもなきゃ、あずささんに運命の人探しなんて公言させてないだろ」

千早「あ」

P「だからな、一応踏み込ませてもらうということで」ポイッ

千早「?」キャッチ

P「後ろでそれに着替えておけよ」

千早「こ、これって……」


冬馬「わざわざ悪いな、Pさん」バイザーアゲツツ

P「良いさ。下手に店で落ち合われて撮られても困るし……ほら、千早」

千早「……あの、これブカブカなんですけど」ライダースーツ

P「あぁ、元は小鳥さん用のものだからな。サイズが合わないのは勘弁してくれ……冬馬」

冬馬「大丈夫だ。天海にも先に言っといたから、ばれねぇようにやるさ」

P「くれぐれも頼むぞ?騒ぎにだけはするなよ?」

冬馬「わかったわかった」

P「じゃあ、俺は行くから……」ブロロロロ

千早「あ……」

冬馬「ほら、如月。乗れよ」メットワタシ

千早「え、えぇ……」


冬馬「……」ブロロロロ

千早「……(ど、どうしよう。何を言っていいのか分からないわ」ギュウ

冬馬「……悪いな、落ち着いたところで話せなくて」

千早「う、ううん。気にしないで」

冬馬「下手に会ったらマスコミが煩いからな。こんな形でしか無理そうだった」

千早「そうね。私も帰ってきたばかりだし」

冬馬「なに他人事みたく言ってんだ。お前が出立前にキスなんてするからこんな状況なんだろ」

千早「ご、ごめんなさい」

冬馬「良いさ。こういうのも密会って感じで、まぁ悪くはない……Pさん的には困るだろうけどな」ハハ

千早「……」


千早「それで、今日はその……」

冬馬「あの時の答えを言いたくてな。電話で済ませるのもアレだと思ったから、Pさんに頼んだんだよ「道端で下してくれ」って」

千早「そ、そうなの」

冬馬「おう。それでだな、一応お前に聞いておきたいことがあるんだが……」

千早「なにかしら?」

冬馬「向こうにいる間に気が変わって、俺の答えがいらない。なんてことはないか?だったら何も言わずに俺は」

千早「変わらないわ。私の想いはあの時から、何も変わってないから」

冬馬「そうか」

千早「えぇ」



冬馬「……俺はな、お前があっちに行ってからすげぇ悩んだ。それはもう悩んだもんだ」シミジミ

千早「えっと、軽くない?」

冬馬「今はな。ただ最初はしんどかったんだぞ?お前の気持ちを無下にはしたくないし、俺もアイドルを辞めたくないからさ」

千早「ごめんなさい」

冬馬「お前が悪いんじゃないんだ、謝るな」

千早「……」

冬馬「それでだな、俺はお前の気持ちを受けることにした」

千早「くっ!」ギュウウ

冬馬「嬉しいのは分かった、わかったからもう少し緩く!」ギチギチ

千早「」パッ

冬馬「ふぅ……ただ、ひとつだけお前に頼みがあるんだよ」

千早「え?」


冬馬「俺は、まだまだアイドルでいたい。まだ終わりたくない」

千早「……」

冬馬「だから、俺たちの関係を公にするのはまだ先にしたいんだ。その、なんだ、デートとかそういうのもバレないくらいなら行けるだろうけどさ。いや、今までより仲良くしたいと俺も思うけどな?バレるとアイドルが出来ないからさ」

千早「……」

冬馬「その、嫌だよな?こういう、隠すようなの」

千早「え?いえ、全然?」

冬馬「?」

千早「?」

冬馬「嫌じゃないのか?」

千早「えぇ」

冬馬「結構待たせるぞ?」

千早「いつまでも待つから」

冬馬「……そうか」

千早「あなたが不完全燃焼で終われる人じゃないのは知ってるわ。私はあなたのそういうところも好きなの」

冬馬「そうか。助かるぜ」

千早「それよりも、一つ私に言ってないこと……あるわよね?」

冬馬「……」

千早「私はあなたに好きだと言ったわ。けど、私はまだ、あなたにちゃんと言われてない」

冬馬「……」

千早「それくらい、聞かせてもらえるのよね?」


冬馬「……わかった。一度しか言わねぇぞ?」テイシャ メットハズシツツ

千早「えぇ」メットハズシ

冬馬「普段は澄ました顔してるくせに笑うと可愛い顔になるところとか、しっかりしてるようで案外子供だったりとか、そういうギャップがたまらなく好きだ。歌にストイックな姿勢には尊敬もするし、アイドルとしての自覚が出てきて恥ずかしそうに手を振ったりとか、そういうところも俺的にツボに入ってしょうがねぇ」

千早「お、思いのほか恥ずかしいことを言うのね」

冬馬「う、うるせぇなぁ……一度好きなところってのを考えたら、こう、今まで気にしてもなかった部分が好きだってことに気づいちまったんだよ!」

千早「……」

冬馬「と、いうわけなんだが……足りないか?」

千早「いいえ、十分よ。ありがとう、冬馬。それだけで何年でも待てるわ」

冬馬「………できるだけ、早く終わらせるさ」

千早「ふふ、期待してるわね」


物理旅直前から再開



春香「ドキドキッ!全力(物理)三人旅っていう言葉に聞き覚えは?」

冬馬「あん?………あぁ、確かそんな話をされたな。一年以上前に」

春香「一年以上って、あはは、何を言ってるのかちょっとわからないんだけど……」

冬馬「俺にも良くわかんねぇ……」

春香「あぁ、うん、まぁ突っ込むつもりはないけどさ……それで」

冬馬「俺らのほかはどっち?ってことで美希か如月かだろ?」

春香「イエス!」

冬馬「じゃあ美希でファイナルアンサー」

春香「……」ドドドドドドドドドド

冬馬「……」ドドドドドドドドドド

春香「正解はプロデューサーしか知らないから、私にみのさんネタ振られてもねぇ……」

冬馬「お前が勝手にドラムロール鳴らしたんだろうが!俺はミリオネアネタで言ったんじゃねぇよ!!」

春香「テヘペロ」


当日


美希「この三人で温泉ロケだなんて、楽しみなの!」

冬馬「そうだな」

美希「ミキね、温泉のどこが有名とかはわからないけど、温泉饅頭がおいしいところなら幸せだと思うな!」

春香「あ、うん」

美希「………あのね、二人とも。ミキがせっかく盛り上げようとしてるのに、その態度はないの」

冬馬「だってよ……」

春香「なんか嫌な気配しかしないし……どっきりとか、走らされ続けたりしない?」

美希「?物理旅っていうけど、ここは普通の温泉郷なの。そんなに変なことはしないと思うな」

冬馬「わかんねぇぞ?裏山で一日中山菜取りとかさせられるとか」

春香「大きな卓球ラケットを振り回させられたりしそうだよね」

美希「なんでそんな、具体的に意味の分からないことを考え付くの……」

春冬「なんとなく!」


春香「ねぇ、本当に大丈夫?施設のプールで遠泳させられたりしない?」

カンペ「大丈夫です」

冬馬「なんかギャグ聞かされ続けたり、声の大きいやつに走らされたりは……」

カンペ「しません!」

美希「いい加減にするの!もうロケ中だよ?」

冬馬「あはは、悪い悪い」

美希「まったく!」

春香「いやぁでもさ、本当に何もないんだったら良い番組だよね。温泉なんて昔家族で旅行に来たぶりだし」

美希「ミキは何回かロケで来てるかな。あふぅって言ってただけだけどね」

冬馬「俺は結構おっさんに連れてきてもらってたな」

春香「冬馬君の話を聞いてると、黒井社長って案外フットワーク軽いってわかるよね」

冬馬「お前んとこの社長も同じようなもんだろうが」

美希「大きな事務所の社長とうちの社長を比べるのはどうかと思うなぁ」



美希「普通に離れに通されたけど……部屋中に衝立とビニールシートが貼ってあるの」

冬馬「ほら言ったじゃねぇか!なんかぜってぇあるぞ!!」

春香「ねぇ、隙間に目張りしてあるんだけど?これ防音対策だよね?だよね?」

冬馬「うわぁいやだ。何かいやだ」

美希「だ、大丈夫なの。カラオケ大会とかそんなものだって!」

春香「三人で?」

美希「あの、ほら、人気曲当てないと眠れまテンとか……」

冬馬「それのどこが大丈夫なんだよ……」

春香「ひ、ひとまず荷物だけ置いてさ、外でお店でも見て回ろうよ」

冬馬「そうだな。流石に観光地で大騒ぎはないだろうし……」



冬馬「美味いな、この饅頭」

美希「うん!」

春香「はふぅ、はふぅ」

冬馬「お前はなに画面外で火傷してんだ?」

春香「い、いや、お茶が熱くて……」

??「冷たいおひやはいかがですか?」

春香「いただきます………」

??「このおひやは、おひんやりしてますからゆっくり飲んでくださいね」

美希「あ、そのダジャレで思い出したの。確か346の楓?さん?って……」

楓「うふふ、バレちゃいましたね」

美希「そりゃわかるの」

楓「正解した美希ちゃんには、楓ちゃんシールをお近づきのしーるしにあげちゃいます」

美希「ありがとうなのー!」

冬馬「如月じゃなくてよかったな、これ」

春香「千早ちゃんだったら腹筋が爆発しかねないよね」


楓「またのお越しを~」フリフリ

冬馬「この調子だと、またどっかのアイドルとかが出てきそうだな」

美希「ミキ知ってるよ。そういうのフラグって」

!!!「呼びましたか!!!!!?????そうです私!!!!日野茜とおおお!!!???」

???「ナナでーっす!」キャピッ

三人「うるさい……」キーン

茜「あ、まわりの方々すみません!気を付けてはいるんですけど!ついつい声が大きくなっちゃいましてですね!!!」

安部さん「茜ちゃん、お口チャック!チャックです!」

茜「んー!!!」チャックポーズ


冬馬「あの……どなたですか?」

安部さん「キャハっ!歌って踊れる声優アイドル目指して、ウサミン星からはるばるやってきた」

春香「あなべべさん!?あなべべさんじゃないですか!!」

安部さん「安部菜々ですぅ!?」

冬馬「そうですか、それで安部さんは一体どうしてここに」

安部さん「あの、そこはかとなくとてつもない距離感を感じるんですけど」

冬馬「あ、いや、高垣さんからすごい落差だなぁと……年上なのに」

安部さん「17歳です!ナナは17歳ですからね!?」

美希「えっと、茜……さん?ちゃん?そろそろ息をしても良いんじゃ」

茜「ぷはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

冬馬「うるせー!!!」

千早の話、もっと詰めようがあったな。



むりやりGWを休ませておいて、次週以降に全力でしわ寄せするのやめて………


冬馬「で、二人は何のために出てきたんだ?」

茜「決まってるじゃないですか!!宣伝です!!!!」

菜々「それは後、後ですからね?」

茜「そうでした!!温泉に入りに来ました!!!」

菜々「それはもっと後ー!!」

冬馬「帰ってくんねぇかなぁ」

菜々「ええええ!?もう少し構ってくださいよーう」

美希「ミキ的には、理由を言ってくれないと話が続かないかなって思うんだけど……」


菜々「えっとですね、温泉でやるスポーツといえばなんでしょうか?」

冬馬「卓球か?」

菜々「はい!そうです!皆さんにはこれから卓球勝負をしてもらいたいと思います」

冬馬「まーた変なことを……」

春香「どうせ大きいラケット振り回させられるんでしょ……」

菜々「???」

美希「あのね、良く分からないけど今日の二人は色々沸いてるから、気にしないでほしいの」

菜々「は、はぁ?」

茜「はい!そういうことなら、会場までダッシュで行きましょうか!!!皆で走れば楽しいですよ!!」

春冬「へーい」

美希「はーい」


茜「着きました!!」

冬馬「はや!」

春香「一時間も走ってないよ!?」

茜「普通に考えたらそんなに走らないのでは!!!???」

菜々「茜ちゃんに突っ込まれてるって……」

冬馬「もしかしてこれ、マジで普通の番組なんじゃ」

カンペ「最初から普通の番組です!!」

春香「………」チラッ

冬馬「………」チラッ

春香「いやぁ卓球なんてひさしぶりだなぁ、楽しみー」スブリスブリ

冬馬「負けねぇぞ765プロー!」スブリスブリ

春冬「ははははは」

菜々「えーっと?」

美希「気にしないで」ゲンナリ


楓「特設スタジオからお送りするのは「アイドル卓球三番勝負!」!実況解説は私、高垣楓がお送りします」プルタブアケテ

冬馬「……」

楓「おーっと、さっそく選手の入場だー。ドゥードゥードゥドゥー」グビグビ

春香「酔ってない?」

美希「酔ってるの」

茜「酔ってますね!!!!」

冬馬「この人、どういう人なんだよ……」

菜々「25歳児っていえばわかりますかね?」

冬馬「あぁ、なるほどそういう……」

菜々「あと、楓ちゃんはもう出番じゃないはずというか」

美希「えぇぇ?」


ナレーション「このままでは何も進まないので、スタッフが趣旨を説明する」

冬馬「じゃああれか、俺たち三人がゲストと対戦して、負けたやつには罰が与えられるというわけか」

菜々「そうです!」

冬馬「ふーん、で、罰ってなんだ?」

菜々「今日の食事がインスタント麺になります」

三人「……………」

茜「おお!目つきが変わりましたねー!!」

楓「温泉でインスタントは嫌ですもんねぇ」グビビ

菜々「楓ちゃん……あとで常務に怒られるんじゃ」

楓「慣れてまーす、うふふ」


美希「おらおら掛かってくるのー!!」イチバンテ

菜々「お相手は……」

??「私です!!!!!!!」

冬馬「なんでわざわざ名前を隠すんだお前は……」

茜「いやぁ!!お約束と言いますか!!!とりあえずそうしたほうが良いのかなと思ったんです!!!!!!」

美希「なんでも良いから早くするのー!!おいしい山の幸、GETするんだから!!」

春香「山の幸とは限らないけど、頑張れー!」

冬馬「ついでに俺の分も勝っといてくれー!」

美希「はいなのー!!ストレートで7点取ってミキの勝ちだと思うな!!」


美希「負けたの……」シクシク

茜「勝ちましたー!!!!!!」5-7

春香「み、美希が負けた?」アゼン

冬馬「あ、ありえねぇ……」ボーゼン

菜々「そこまで驚くことなんですか?」

冬馬「うちの美希はな、天才なんだ。だから大体勝つんだよ」

春香「美希は冬馬君ちのじゃないけどね!」

冬馬「はー!?美希は俺の妹みたいなもんなんだがー!?だからうちの美希なんだがー!?」

茜「ずっと練習していた甲斐がありました!!!ボンバー!!!!!」

美希「おいしいごはん……」シクシク

冬馬「お、俺の分けてやるからさ、な?」

春香「私のもあげるから、ね?」

茜「(本気で慰めてますね!!!!仲が良いとはすばらしいです!!!!!!」


冬馬「よっしゃあ!俺が仇をとってやる!!!」

春香「頑張れ!!」

菜々「次のお相手はこの方!!」

??「なんていうか自分、状況的にすごくやり辛いんだけど……」

冬馬「!!…………あーあー、ユニットメンバーが泣いてるのに敵に回るなんて、港区の住人も地に落ちたなぁ我那覇さんよぉ」

響「港区言うな!自分は沖縄人だぞ!!」

冬馬「大体なんでお前なんだよ。流れ的に、ここは346のアイドルのはずだろ?」

響「プライベートで温泉に来てたら番組Dに見つかって、番組に引きずり込まれた自分の話するか?するか?」

冬馬「あ、すみません我那覇さん。プライベートとは知らず馴れ馴れしくしちゃって……」

響「引きすぎだぞ!?もっとフランクに来てよね!」

美希「響……」ウルウル

響「み、美希にその顔されると弱いんだけど……でも、自分も赤カブ太の餌を用意して貰うって契約で此処に居るからな!負けないぞ!!!」

春香「よっ!プロ根性!!」

菜々「ううぅ、皆さんのキャラが濃すぎてナナたじたじです……ええい!じゃあ始めちゃってください☆」


響「サー!!!」

冬馬「………やられた」3-7

春香「ダッサ」

冬馬「うぐぉ」グサリ

美希「……」

冬馬「……」

響「じゃ、じゃあ自分はこのあたりで帰るかな、は、はは…………強く生きろ!!!」ダット

冬馬「裏切者ー!!」

菜々「裏切りって、天ケ瀬さんは765プロじゃないですよね?」

冬馬「」グサリ

春香「冬馬君はナイーブだから、刺さないであげてください……」

美希「春香も今刺したばかりじゃ……?」


春香「真打登場!春香さんにお任せ!!!」

冬馬「頼む!勝ってくれ」

美希「もう春香しかいないの!!」

春香「さぁ私の相手は誰だ!!」

菜々「盛り上げってきましたねぇ!!ラストはこの方!」

!!「よろしくおねがいしまぁぁぁぁすぅ!!!!!!!!!!!!」



暗転



茜「良い元気ですね!!!」

愛「元気の良さがアピールポイントなので!!!!」

茜「ほほお!私も負けませんよぉ!!!ボンバー!!!!」

愛「ボンバー!!!!」

冬馬「うるせぇ!!!」ゴン

愛「なんで私だけ!!!???」



春香「それで、愛ちゃんが来たのはなんで?」

愛「家族旅行で来てたら番組Dさんに見つかって……」

冬馬「どんだけプライベートのアイドルを見つけるのがうまいんだ……つーかそんな連中を引き込むなよ」

愛「でも、今度番組で使ってくれると言っていたので気にしません!!」

美希「あぁうんそれはいいんだけど……春香、勝てる?」

春香「あたらきしゃりきのこんちきちん!!」

冬馬「京人かお前は」

春香「いやだなぁ、私は群馬人だよ」

美希「さらっと噓つくのやめようなの」

春香「はーい」

菜々「まだ耳がキーンってしますけど、始めちゃってください!」キーン


春香「ふはははは!!二度あることは三度あるんだよぉぉぉ」クズレオチ

愛「やったー!!ママみてるー!!!??」0-7

冬馬「ストレートじゃねぇか!!!!」

春香「て、てへぺろ………」

美希「ミキ、失望したの。春香は卓球部のエースっぽい雰囲気なのに実力は素人だなんて」

春香「だ、だってぇ」

菜々「(三縦するなんて思ってなかったんですけど)えっと、結果はこんな感じになっちゃったわけですけど……」

楓「皆さんの食事になるはずだった料理は、スタッフさんの晩酌のつまみになりまーす」

菜々「楓ちゃんは食べられませんからね?」

楓「食を食べられないなんて、ショックです」

美希「いっそ笑うしかねぇの」

愛「ご、ごめんなさーーーーい!!!!」ダッシュ


茜「そろそろ宣伝しちゃって良いんですかね!!!!????」

冬馬「勝手にどうぞ」ヤサグレ

茜「はい!!!!来週木曜日にわたしと菜々さんのCDが発売されまして!それを記念に!!……記念にで良いんですかね?」

菜々「記念にで良いと思いますよ」

茜「記念に!!!サイン会をですね、行うので来てください!!!!!!!」

菜々「下にテロップ出てますけどね?場所を言ったほうが」

茜「そうでした!!!!!いやうっかり!!!!!!」キーン

他「!!!」モンゼツ

茜「場所は……えっと、ここ!!!!」テロップ ユビサシ

冬馬「忘れたのかよ!!」


冬馬「騒がしい連中はいなくなったが……わざわざ温泉まで来てインスタント麺かぁ」ズルズルズル

春香「まぁ、これもこれで美味しいし……うん百円っぽい味だね」ズルズルズル

美希「どうせなら塩ラーメンがよかったの……」ズルズルズル

三人「……はぁ」

カンペ「まだ食べてないですよね!?」

冬馬「そのうち食べるんだから同じだろ」

春香「どうせ、やっすい成形麺なんですよねぇ」

美希「ミキ、こういう目に合うなら来なかったのに」

冬馬「やっぱ変な番組じゃねぇか、なぁ?」

春香「うん。そういえばこれからどうするんだろうね、とりあえず歩いてるけど」

??「へ、へいらっしゃい!へいらっしゃい!よってってー」//////

三人「……」

??「へいへいそこの三名様!面妖な顔をしてないでよってってー!」//////

春香「……貴音さん、仕事は選んだほうが良いですよ?」

貴音「貴女に言われたくはありません!!!」


美希「貴音はそんなとこで何やってるの?」

貴音「かっぷらぁめんの売り子をしております」

三人「売り子……」

貴音「私のおすすめはいりませんか?」

冬馬「四条のおすすめならインスタントでも……」

春香「間違いはなさそうだよね」

美希「じゃあ、くーださい!なの」

貴音「七百円になります」

三人「お金とるの!?」


冬馬「あ、普通にうめぇ」

春香「そこらのお店に入るよりよほど美味いよねぇ」

美希「ハフハフ」

貴音「四条貴音監修 魚介の旨みたっぷりらぁめん!税込み七百円で、来月発売ですよ」

美希「えっと、宣伝?」

貴音「その通りです!!」

春香「だとしたら普通に来てほしかったんですけど」

貴音「いえ、もともと私はぷらいべぇとで来ていたのですが」

美希「貴音も?」

貴音「も、とは?」

春香「響ちゃんもさっき来てましたよ」

貴音「響、私に黙って温泉に行くとは……!」

冬馬「ブーメラン投げるのはやめろ!」



貴音『私はぶぅめらんなど投げてはおりませんが?だいじょうぶですか?面妖な頭していませんか?』

冬馬『四条。お前、煽るの下手だな』

美希『普段人を怒らせようなんてしないもんね?』

貴音『私、基本的に善良な人間ですので』

春香『その通りなんだけど、自分で言うかなぁ……』




伊織「それで、この番組のどこが物理とか全力なのよ?」

冬馬「俺に突っ込まれてもなぁ」ズズズズ


ナレーション『美味しいラーメンをふるまわれて元気を取り戻した三人は、いよいよ本日の最難関へと足を踏み入れる!』コノアト CM


冬馬「温泉に入りたいだけなんだが……この壁は一体?」

春香「これってあれだよね、今話題のポンデリング」

美希「ボルダリングなの」

春香「それそれ」

冬馬「いや、ボルダリングは知ってんだよ。問題は……どう見てもSASUKEだろ、これ」

美希「SASUKE?」

冬馬「知らないか?」

美希「うん」

春香「SASUKEっていうのはね、大掛かりのアスレチック的な装置を身体能力だけでクリアしていく競技だよ。昔はすごく面白かったんだけど……」

冬馬「(昔っていつだよって突っ込みはなしにしとくか」


美希「……」YOUTUBEシチョウチュウ

美希「えっと……この人たちはなんなのなの?芸人?」

春冬「ははっ」

美希「誤魔化さないでほしいの」

冬馬「そうだなぁ、初期開催からある程度時間が経ってそういう奴らも目に付くようになったが、大体はアスリート志向の連中だよ」

美希「これならミキでも余裕かなぁ」

春香「それは第一ステージだから簡単に見えるだけで、段々難易度があがるから笑えないというか」

冬馬「俺の知る限り、アイドルでこなせそうなのは菊地と我那覇くらいだな」

美希「冬馬は?」

冬馬「水流を泳ぐところで無理だな。ラストのタワー登りも無理無理」

美希「ふぅん」


響『さぁ和バウバウ!やかな話もそこまで、自分わぉぉぉん!!の話を聞いてヂュイ!!ちょっとお前たち静かにしてくれ』

春香「はーいはーい!」

響『なんだ春香?』

春香「いつまでいるの?」

響『明後日の朝一で帰るぞ?』

春香「えー良いなぁ!私も普通に来たい!!」

響『来れば良いだろ。それより自分の話を聞け!』

三人「はーい」

響『うふん!』

三人「あはん?」

響『せ、咳払いだから変な反応しないで!えっとね、三人にはいまからその壁を登り、横に渡って、三十メートル向こうのゴールに向かってもらうぞ!』

冬馬「渡ったら良いことでもあんのかよ」

響『ここらで一番いい眺めの露天風呂に入れるのと……えっと?夜ごはんがデージ豪華になるんだって』

三人「!!」ギラッ


響『おおう、やる気になったな?』

冬馬「飯は我慢できるが温泉は此処でしか入れねぇからな」クッシン

春香「私はどっちも妥協したくないもん」セノビ

美希「ミキはまぁやるからにはね、負けないし」シンキャク

響『ははは、ちなみにデモプレイ的な映像があるから見てくれ』

三人「デモ?」

響『うん』




貴音「くっ!!」ヨジヨジ

貴音「私、負けません……」ヨコイドウ

貴音「な、なぜ取っ手が離れたところに……と、飛べというのですか!?」

貴音「………と、とうっ!」ピョン

貴音「や、やりましあっ」ツルン


ドボン!!



貴音「………めんような」ドロダラケ




三人「えぇ……」ドンビキ


冬馬「なんで四条の奴が挑戦してんだよ」

響『ラーメン食べ歩きツアーみたいな番組をやりたくないか?って言われて釣られたらしいぞ?』

春香「貴音さん……」

美希「変なところで食い意地張ってるからそうなるの」

響『あ、そんなこと言うと……』

貴音『あとで覚えておきなさい美希』

美希「居たんだ?」

貴音『もちろんです、私は』

響『今の今まで、へび香にビビッて固まってたんだよな?』

貴音『……』

響『いひゃいいひゃい!!』

冬馬「漫才は良いから、進めてくれ」



響『……ステージの説明をするぞ!』

春香「見ればわかるよ?」

響『わからないひともいるでしょ!?まったく……えースタート地点からボルダリングで三メートル上まで登った後、泥池の上を渡るように右に十五メートル行くんだ。ある程度行くと取っ手が小さくなるから注意してくれ?』

響『そうすると貴音が落ちた、取っ手が途切れているところにたどり着くぞ!反動をつけるなりして飛んで渡ってくれ。そこを渡ると着地できる足場があるから、そこで一度体勢を立て直してね。そこからは取っ手がばらばらに上下するエリアにはいるから、タイミングを計って渡り切ればゴールだ!!』

冬馬「なかなか厳しくねぇか?」

響『正直難関は飛ぶところだけだと思うぞ?自分はクリアできたし』

三人「(自分を基準に比べられても……」

響『とういうわけで、誰から挑戦する?』

冬馬「……」

美希「……」

春香「……じゃあさっきと反対の順番で行こうか」

冬馬「お前、俺、美希か」

春香「うん」

美希「おーけーなの」



響『おお!春香が先か』

春香「そうだよ。春香さんの実力見せちゃうからね!」ジャージ

春香「(一番手だし、ある程度まで進んでから落下してドボン!のほうが美味しいよね」

春香「(貴音さんと同じところより、一度着地できる場所まで行って、また登るときに手を滑らせて落ちるほうが面白いかな……うん、これで行こう」カベ ヲ ミアゲ

響『あとな、春香』

春香「なに?」

響『今この温泉街に神長瑠衣さんが来てるらしいぞ?』

春香「……え?」

響『三人の中で一番早く渡り切れたら、番組Dさんが合わせてくれるってさ』

春香「……ちょ、ちょっと待って!もう一回準備運動するから!」

響『わかったぞ』

美希「?」

冬馬「(あいつ、落ちる気だったな?」

美希「ねぇ冬馬?どうして春香はあんなに張り切りだしたの?」

冬馬「ん?いや、今は女優として有名だが神長瑠衣は凄いアイドルだったしな……ファンなんじゃないか?」

美希「へぇ」

響『気のない返事してるけど、美希?お前、前にあの人を目の前で呼び捨てにしてたろ。プロデューサーがびびってたからな?』

冬馬「美希……」

美希「そ、それは二年くらい前のことだから!生意気盛りの時のことだったからノーカンなの!」

春香「」ジーッ

美希「あ、あはは、あはははは」

冬馬「誤魔化しきれんだろ……」

響『そんな失礼な美希の態度に怒るでもなく笑って済ませてくれたんだから、大物だよなぁ』

春香「そうだね……よし!準備できたよ響ちゃん!!」

響『おーけー!じゃあはじめるさー』


春香「よいっしょ!よいしょ!」

冬馬「良いスタートだ」

美希「あっというまに登って行ったけど……」



一番手の春香、憧れの人物に会えるという餌につられて全力で進む。

ボルダリングはなんなくクリア。空中を右に進むことも、これまたなんなくクリア。

取っ手の途切れたエリアで一分少々足踏みしたが、無事飛びつくことに成功し足場に着地する。



響『調子いいな』

春香「ま、まぁね(正直きついんだけどね」ハァハァ

響『でも、すぐに行かないと他の二人のタイムが気になるぞ』

春香「はーい!」


順調といってよかった春香だが、上下エリアで予想外の大苦戦。

隣に移動するタイミングを計れずに、わずか五メートルに三分をかけてしまった。


響『春香のタイムは六分三十秒!いやぁなかなか早かったな!』

春香「……」ハァハァ

冬馬「お疲れ、大丈夫か?」

春香「な、なんとか」

美希「冬馬ぁ」

冬馬「あ、あぁ。できる限りゆっくりとだな」

響『冬馬』

冬馬「なんだ?」

響『さっき愛が来ててさ、家族旅行って言ってたろ?』

冬馬「あ、あぁ」

美希「ダメなの!話を聞いちゃダメ!」

響『会いたくないか?日高舞さんに』

冬馬「悪いな天海。勝負は非情だ」クッシン

春香「酷いよ響ちゃんーーー!!!!」



二番手冬馬、本気でわめいている春香を尻目にシリアスモード。


響『はじめ!』

冬馬「うおおおおお!!」

美希「手加減のtの字もねぇの……」

春香「ひどいよぉ」




ボルダリングも、取っ手を飛ぶことさえあっという間にこなして一時着地地点まで到達した冬馬。

響の言葉を待つことなく再び空中に躍り出て、上下エリアへと向かい、波乱も何もなく鮮やかにゴール!!からの




冬馬「どうだ!」コイヲハジメルポーズ!!!

美希「だ、ダセェの……」

響『ライブの時だとかっこいいんだけどな……タイムは四分十一秒。自分より少し早かったな』

春香「」


春香「……」

冬馬「ふはは、悔しかろう」

美希「ミキ、こんな雰囲気だとやり辛いんだけど……」

響『番組D曰く「ここまで人が変わるとは思わなくって」だ、そうだぞ……』

美希「あー、まぁ、うん。そうだよね……」

響『一応美希にも、張り切りそうな物は用意されてたんだぞ?』

美希「されてた?」

響『佐渡コシヒカリを定期的に送る』

美希「それは嬉しいけど、ミキにはミキマイがあるからねぇ」

響『だよな……番組Dも、美希が自分のブランド米を持ってるとは思ってなかったらしいし』

美希「はぁ、じゃあミキもそろそろ始めようかな。ご飯もお風呂もたのしみー」ボウヨミ




響『おお!四分ジャストだぞミキ!!』

冬馬「はぁぁぁ!!!!????」

美希「やったぜなの」


美希「米!米!」ルンルン

冬馬「はー、まじ空気読めない系女子かよーお前はー」

春香「冬馬君に言われたくないでしょ」プークスス

美希「ふはは、悔しかろうなの!」

冬馬「ぐぬぬ」

響『誰も落ちないのかぁ、一人くらい落ちてほしかったんだけど』

春香「釣り餌が良すぎたのが悪いんじゃない?」

冬美「そうだそうだ」

響『はぁ……バラドルが、都合の良いときだけ本気だすなよ』

三人「バラドルじゃない!」



冬馬「風呂行く前に、一度部屋に戻れって事だったから戻ってはきたが……」

春香「なんか、ビニールシートとか片づけてあるね」

美希「うん。え?さっきまで別番組で使ってた?終わったから撤収した?あとは勝手に使ってくれ?」スタッフミミウチ

春香「おざなりな感覚で部屋を使われるトップアイドルって……」

冬馬「変なことやらされるよりはましだろ」

春香「まぁねぇ、寝起き逆バンジーとかなさそうなだけ良いかぁ」

美希「寝るのが嫌になるからそういう話はやめよう?」ハクシン

二人「はい」

美希「まったく」

冬馬「ははは……よし、ちゃっちゃと風呂入って飯にしようぜ」

春香「え?せっかく露店風呂なのにそこは撮らないの?」

冬馬「黒井プロはさ、グラビア撮影以外での肌色は厳禁なんだよ……」

美希「そうなんだ。じゃあミキたちは撮っちゃうから、出たら部屋に戻ってて欲しいな」

冬馬「おう」



冬馬「(良い風呂だったなぁ……暇になったらまた来よう」ポカポカ

冬馬「(346に行く前と忙しさが変わらなくなってきたし、しばらくは無理そうだが番組改変の時期になったら少しは空くだろうしな」

冬馬「(……まぁ、暇になったらというか、ただいま現在暇なんだけどな!」ジタバタ

冬馬「(あいつら絶対長引くだろ!ただでさえ女の風呂は長いことで有名なのに、撮影も入ったら一時間は普通に越すだろう」

冬馬「(どうすっかなぁ、ゆっくり散歩でも……あぁそうだな、散歩でもしよう」

冬馬「というわけで散歩行ってくるぜ、番組Dさん!!」カメラメセン

番組D『ばれてる!?』

作中で使おうと思ってたシチュエーションに近いことを、まさかAKBシリーズの人間に現実でやられるとは思わなかった……結婚報告とかアニメかよぉ

冬馬「さて、散歩とは言っても……下手に外で歩いて騒ぎになるのも嫌だが、スタッフに見つかるのも癪だし」トコトコ

冬馬「どうすっかなぁ……ん?」

??「その、あのですね?私はですね?」ケータイデンワーー

冬馬「(四条?ここに泊まってたのか」

貴音「ですから、私はらぁめん探求の為にここに参ったのです。美味しいらぁめんには美味しい卵が必要かと思いまして、そのりさーちをですね……いえ、いいえ、温泉卵が食べたくなったからとか、温泉に入りたいからとか私情からの温泉旅行ではありません!」

冬馬「……」

貴音「そうなのです、私はただらぁめんの為によい具材を探しに来ただけで。ええ、ええ、勿論おいしゅうございました、満足ですとも」

冬馬「……」

貴音「美味しいらぁめんがあれば私のもちべーしょんも天高く舞い上がるのでして、仕事にも好影響!!というわけでなので、ぜひとも経費でおろして欲しいと……え、ダメ?美味しいらぁめん作りは私情も私情?そんな!後生です律子……律子!?」

貴音「くっ、美味しい卵が経費で落ちぬとは……もしや、先日こっそり出したそば粉の購入費も」

冬馬「落ちるか!!」

貴音「なにやつ!?」ケータイブンナゲ


冬馬「……おー、いてて」ハラ サスリサスリ

貴音「申し訳ありません」

冬馬「いや、後ろから大声出しちまった俺も悪かったよ」

貴音「それもそうですね」

冬馬「おい!」

貴音「ふふ、冗談ですよ……あなたはどうしてここに?」

冬馬「どうしてもこうしても、俺たちが泊ってるのがここだからな。あっちの大部屋なんだが」

貴音「大部屋?春香や美希も同じ部屋なのでしょうか?」

冬馬「ああ、そうだ」

貴音「む、婚姻関係に無い者が寝食を共にすべきではないと思うのですが……」

冬馬「そ、それは俺じゃなくて番組Dさんにだなぁ……」

貴音「あの御仁は、私たちがらみの仕事では大変な阿呆になりますので、言っても詮無き事です」

冬馬「そうだなぁ、そうなんだよなぁ……」


貴音「それで、本日のろけは終わったのですか?」

冬馬「いいや、まだだ」

貴音「では休憩を?」

冬馬「あぁ。天海と美希は露天風呂で撮影してるけど、俺はな」

貴音「なるほど。確か、そちらの事務所は色々制約があったのでしたね」

冬馬「その通りだけど、よく知ってるな?」

貴音「……とある男に聞きましたので」プイッ

冬馬「?」

貴音「まぁ良いでしょう。では、時間があるのですね?」

冬馬「一応な」

貴音「では、少し付き合いなさい」

冬馬「は?」

貴音「しょっぴんぐと洒落こみましょう」



貴音「ふむ……」ボクトウスブリスブリ

冬馬「そういうの、土産屋の定番だよな」

貴音「えぇ。置いていないほうが珍しいまでありますね」

冬馬「大体買っても邪魔になるだけなんだよ……どこにしまったか忘れちまった」

貴音「私は木刀ではなく本物を幾振りか所持しておりますが、あれらも蔵のどのあたりにあることやら」

冬馬「蔵、本物か……スケールが違うな」

貴音「あなたも買いますか?」マイドー

冬馬「それ買うのかよ!!」

貴音「うふふ」



冬馬「やれやれ、結局買っちまった」フタフリ

貴音「そう言いながら脇差まで買うのですから、男子ですね」

冬馬「うるせぇ」

貴音「さて、私は事務所に持っていくお土産でも買いますが、あなたはどうするのです?」

冬馬「あー、俺も適当に買うぜ。事務所にではないけどさ」

貴音「私は温泉饅頭が良いです」

冬馬「お前に買うなんて一言も言ってないからな!?」

貴音「イケず」モグモグ

冬馬「どこから取り出したんだよそれ……」

てらしー結婚おめでとう!とか、ミリシタ全員可愛いので好き!!とか、アルスラーンコラボかよ神!!!とか言いたいことは色々あるけど一週間寝込んでました!!

冬馬「これと、これと……これとこれだな」モクモク

貴音「そんなに沢山、誰に送るのですか……」アキレ

冬馬「翔太と北斗とおっさんと、あとは……世話になってる家にだ」アトコレモ

貴音「ほほう」

冬馬「これくらいで足りるか……?」

貴音「それで不安になる量とは、大家族なのですか?」

冬馬「おう。にぎやかなもんだよ、あそこはな」アハハ

貴音「随分と楽しそうに話すのですね。頬が緩んでいますよ?」

冬馬「ん、そんなに顔に出てたか?」

貴音「それはもう大きく書いてありました」

冬馬「マジかよ。ちょっと気をつけねぇとなぁ」

貴音「私は、それは直さずとも良いと思いますよ?」

冬馬「そうか?」

貴音「ええ」


冬馬「さて、あとは配送してもらうだけだな」

貴音「そうだろうと思い、先にだんぼうると用紙を貰っておきました」ドヤァ

冬馬「おっ、サンキュ(なぜドヤ顔?」

貴音「いえいえ」カキカキ

冬馬「……」カキカキ

貴音「……事務所用だとしても、まずは自宅に送るべきなのでしょうか?」

冬馬「食いもんだろ?ならクール便で時間指定すればそのまま送っちまっても問題ないと思うんだけどな」

貴音「くうる便?時間指定?」

冬馬「用紙に書いてあるだろ?」

貴音「はて?」

冬馬「ここだよ、ここ」パサパサ

貴音「なるほど」

冬馬「知らなかったのか?」

貴音「いえその、何分初めてなものですから……」

冬馬「お前、配送依頼初体験なのにドヤ顔とか、なかなか可愛いことするよな」ハハハ

貴音「……すけこましも、此処まで極まると罪深いものですね」ボソッ

冬馬「?」


美希「え!?じゃあ冬馬が貴音の初体験の相手なの!?」

春冬「ぶぅぅ!!!」オチャフキダシ

美希「きたないの!」サッ

冬馬「ゴホッ……おまえ、そういうの大声で言うなよな!?」

春香「そ、そうだよ!もう少し慎みをね!?」///

美希「慎み?……あ!そういう意味で言ったんじゃないの!!配送なの、配送……!」///


テロップ「この直前、天ヶ瀬さんは四条貴音さんとお土産探しをしていたようです」


春香「じゃ、じゃあ気を取り直してご飯にしようか?」

冬馬「そうだな……」

美希「むぅ」///

春香「用意おねがいします!」



美希『うぅん!この天ぷらおいしいの!』

冬馬『ほんとにうめぇ……』

春香『山の中なのにエビが新鮮で、ぷりっぷり』

女将さん『専用のいけすがあるので、漁港から生きたまま取り寄せて放してあるんです。なので味が良いんですよ』

三人『へぇ!』



伊織「あんたね、わざわざカップラーメン食べながらこれ見る必要ある?」ズズズ

冬馬「お前が「わざわざ二人しか居ないのに作るのもねぇ」とか言ったんだろ?」ズズズ

伊織「そうだけど……」

???「ただいまー!!!」ガラガラ

冬馬「お、帰ってきたな」

やよい「伊織ちゃーん!!そこで貴音さんと会ったから家に誘っちゃ……あ!?」

貴音「近くを寄ったので、直接お土産をとお邪魔を……」

冬馬「……」

伊織「……あんた、今日はこいつが帰ってくる日だって言ってたじゃない」

貴音「帰ってくる……」

伊織「あ」

貴音「詳しく聞かせなさい」

ーーーーー説明中ーーーーー


貴音「ということは、三年近くからこういう生活をしていると?嘆かわしい」モグモグ

伊織「高槻家とこいつはともかく、私はここ半年くらいで慣れただけで三年は」

貴音「しゃあらっぷです伊織。結局慣れてしまっているのですから同罪ですよ」モグモグ

冬馬「別に悪いことしてるわけでもねぇし、お前に何か言われる筋合いはないんだが?」

貴音「私は、婚姻関係に無いものが寝食を共にすべきではないと、先の温泉街でも申したはずですが……」モグモグ

冬馬「それはお前の価値観だし、寝食を共にって言われても俺が寝るのは大体男部屋でだ。やましいことはなんもねぇよ」

貴音「大体?」モグモグ

冬馬「あとは居間で寝落ちしてるくらいだ」

貴音「……ふむ、やましいことは無いようですね」ゴクン

冬馬「当たり前だ」

伊織「(そういう時、やよいが隣にこっそりと忍び込んでいるのは……まぁ言わなくても良いわよね」


冬馬「つーかお前、なにさっきから食ってんだよ。カロリーメイトか?」

貴音「試作の固形らぁめんばぁですよ」

伊織「それは流石にイロモノすぎない?美味しいの?」

貴音「いえ、格別美味しいというわけでは……正直これ以上食べたくはないのですが、今日中にれびゅぅを書かねばならない上に、作った以上残すわけにもいかず」

やよい「どんな味なんですか?」

貴音「一口食せばわかりますよ。ほら」スッ

やよい「あん」パクッ モグモグ

冬伊「(間接キスか」

やよい「……」モグモグ

伊織「どう?」

やよい「はい」スッ トコトコ

伊織「えぇ?……あむ」パクッ モグモグ



冬馬「どうなんだ?」

伊織「……成形麺と、粉末スープと、安いかやくの味が混ざり切らないで口の中を暴れてる感じ?あと、無駄に海鮮風味が効いててそれも煩いわね」

冬馬「つまり?」

伊織「不味い。ただただ不味い」

貴音「これは失敗作でした。もう少し改良を加えねば売り物になりません……」

伊織「完成させるの?これを?」

貴音「道がいかに険しくとも、必ずやたどり着けるのです」

伊織「どこによ……」

貴音「らぁめん道の彼方へ」

冬馬「いや、どこだよ……」



やよい「伊織ちゃん、貴音さん。具は入ってないけど、お味噌汁飲みます?」

伊織「いただくわ。はぁ、カップラーメン食べた後にらぁめんばぁを食べて、その後味噌汁って……絶対美容に悪いわよ」

貴音「感謝します」

冬馬「俺には?」

やよい「冬馬さんは食べてないからお預けです」

冬馬「ちぇー」

やよい「ふふふ、明日はちゃんと具入りで出しますよ」

冬馬「大根は……」

やよい「はいはい、細切りでちゃんと入れますからー」

貴音「(夫婦?」

P『冬馬、来週の木金土日の内暇な日はあるか?』

冬馬「来週?……金曜と土曜は暇だが、突然なんだよ」マンメンミ

P『前にツーリング行こうって話してたろ?それのお誘いだよ』

冬馬「あれか!良いぜ、行こう行こう!」

P『じゃあ予定は開けておいてくれ』

冬馬「おう、仕事が入りそうでもキャンセルするから大丈夫だぜ」

P『それは大丈夫なんだろうか……まぁ良いか、あとな』

冬馬「ん?」

P『黒井社長とかには言っても構わないんだが、できればうちのアイドルの耳には入らないようにして貰ってて良いか?』

冬馬「なんでだ?」

P『俺がバイク乗ってるの見たり聞いたりすると、自分も連れてけって言うんだよ!前までは年齢で断ってたけど、もう美希以上の連中は断れないし……』

冬馬「あはは、そういうことなら了解だよ」

P『頼むぞ』

冬馬「おう!」


P「と、いうわけで……直接会うのは久しぶりだな」

冬馬「ああ。前に、346で誘われた食事を断ってなきゃ会えてたんだが。良いもの食えたか?」

P「良いもの食えたかーとはいっても、あれは接待に近いものだったからな。居心地が悪かったのなんの……」

冬馬「飛ぶ鳥を落とす765プロでも接待は避けられないか?」ンー?

P「あー、いや、自分がもてなす側ならいくらでも良いんだけどな?あれ、俺もされる側だったんだよ」

冬馬「ほーん?出世したじゃねぇか」

P「からかうなよ」

冬馬「ははは、でも出世したのは事実だろ?三年前にあんたの名前を出しても誰も反応しなかったが、今アイドル業界であんたを知らない奴はそう居ないぜ?」

P「俺みたいな裏方の名前が有名になるほど、春香たちが頑張ってきただけだよ。俺なんてたいしたことはないさ」

冬馬「だが、あいつらだけじゃ此処まで来れてなかった。あんたがいてこその765プロだよ」

P「お前にそういわれると、少し照れるな」

冬馬「そうか」



P「話は変わるが、バイク変えたんだな?」

冬馬「変えたというか、二台目で貰ったんだよ。偶には違うものにも乗りたいしな!」

P「なるほど。とはいえはKTM RC8か、また何とも言えない趣味だな」

冬馬「KTM RC8ってこれの名前か?おっさんのところで一目ぼれして貰ってきたから名前なんて知らなかったぜ」

P「保険はどうしたんだよ。色々書くだろ」

冬馬「こことここにこう書いて~ってやってるうちに終わってたから詳しく見てなかった!見たくもなかったし!!」

P「お前普段は意識高いくせに、そういうところだけは年相応の男の子だよな」

冬馬「ああいうの、面倒くさくてさ……」

P「いや、うん、わかるよ……」

冬馬「ま、まぁ乗れれば良いじゃねぇか!」

P「そうだな!ほらインカム!」

冬馬「あんがとよ!!」

P「ちなみに行先はひたち海浜公園な!!」

冬馬「イズどこ?」

P「茨城県だよ」

月曜から今日まで茨城出張だったよという話

酉テスト

テスト


P「なぁ冬馬」ブロロロロ

冬馬「あー?」ブロロロロ

P「お前、346の件が終わってからまた仕事が増えてきただろ?」

冬馬「おかげさまでな」

P「こっちから一つ仕事依頼したいんだけど、黒井社長に言ってみてくれないか?俺が電話するとなんか物凄く警戒して話にならないんだよ……」

冬馬「別にいいけど、何を警戒することがあるのやら……内容は?」

P「やよいの、さしすせそにまた出て欲しいかなーってさ」

冬馬「あぁアレか」

P「今回はスペシャルでな?伊織と春香と、あと346の子も何人か打診してるところなんだ」

冬馬「おいおい。それ、男一人だと俺が浮かないか?アウェー丸出しなスタジオなんて行きたくねぇぞ」

P「なら律子に頼んで涼君引っ張るからさ、頼むよ」

冬馬「断言したな。それなら良いぜ、やろう」

P「黒井社長には言わなくて良いのか?」

冬馬「さしすせそなら文句はねぇだろ」

P「それは良かった……そろそろ一度、休憩挟むか。次のSAで停まるぞ」

冬馬「はいよ」



冬馬「ふぅ。誰かに合わせて走るってのはなかなか疲れるな」

P「馬力もなにも違うし、初めてだから余計にそうだろう」

冬馬「おう」

P「なに、慣れれば問題ないさ。俺もそうだったしな」

冬馬「なるほどな。そういやPさんは、いつからバイクに乗ってるんだ?」

P「ちゅ、高校からかな」

冬馬「……今、やばいことを聞いてしまった気がするんだが?中学って言おうとしたよな?な?」

P「あっはっは」

冬馬「誤魔化しかた!誤魔化しかたー!!」



P「それにしても、お前もなかなか多芸だよな」

冬馬「そうか?」

P「料理ができる、バイクに乗れる、車の運転もできるしお笑いも」

冬馬「笑いは入れなくて良いからな!?」

P「?」

冬馬「なんで不思議そうにするんだよ……」

P「いやだってお前、春香とコンビだろ?ツッコミもボケも綺麗にこなすし」

冬馬「……」

P「え?」

冬馬「ま、まぁ良いや。それで多芸だなぁって突然どうしたんだ」

P「系統の違う番組に沢山呼ばれてるだろ?なんでもできるから他と組みやすいんだろうなぁって思うんだよ。うちだと響くらいなんだ、何でも出来るの」

冬馬「天海も芸達者だろ、あいつはどうした」

P「春香はアイドルも出るような番組ならともかく、歌唱力を売りにするような番組には出せないよ。あと観光リポも無理だな、温泉で分かった」

冬馬「そりゃそうだな!うん、なるほど!」

P「力強く納得するな……!」


冬馬「というわけで仕事貰ってきたんだが、良いよな!」

黒井「構わん。こっちに迷惑が及ばない限りは好きに選ぶんだな」

冬馬「おう!」

黒井「分かっているとは思うがダブルブッキングだけはするなよ?」

冬馬「大丈夫だよ。スケジュールはしっかり頭に入れてるからさ」

黒井「空いているからと言って過密スケジュールにするのもダメだからな」

冬馬「分かってる分かってる」

黒井「再来月からドラマの撮影が始まるから台本に目を通しておくように」

冬馬「おう!……おう?」

両腕骨折するわ、肋骨折れるわ、片足グチャるわ散々な目にあったけど、ようやく左腕が動くようになったから投稿を再開します


冬馬「……」ペラッ

北斗「冬馬、牛肉使って良いかな?」

冬馬「良いぜ。そっちの段ボールにもやしあるからそれも使ってくれ」ペラッ

翔太「もやしってこれ?この大量に詰め込まれてるやつ?」

冬馬「そうだ」ペラッ

北斗「もやしか、普通に野菜炒めで良いよね」

翔太「じゃあキャベツも入れなきゃ!」

冬馬「そうだな………ああもう!!!」ポイッ

北斗「うん?どうしたんだ?」

翔太「生き方に迷ったの?」

冬馬「ちげぇよ!ドラマの主演なんて初めてなのに、それが恋愛ものだぞ?台本と原作を読んだ感じ結構甘いやつで、しかも身分差?のある学園ものと来た……どう演じたら良いのか分かんねぇんだよ」


北斗「そんなの他の恋愛ドラマとか映画とか色々見てさ、盗むしかないんじゃないか?」

翔太「そうそう、春香さんも前にインタビューで言ってたよ?「とにかく色々見ました!」って」

冬馬「なるほど……お前ら、今日は夜通し恋愛映画パーティーだ!」

翔太「男三人で?」

北斗「ゾッとするんだけど……一人で見てなよ」

冬馬「一人で恋愛ものなんて見てたら、それこそ気が狂いそうになるだろ!?」

翔太「冬馬君の場合、気がどうこうより、恥ずかしくて顔真っ赤になりそうだよね」

冬馬「否定はしねぇけどよ、そういうことじゃねえんだって……」

北斗「まず俺たちは冬馬がやるドラマからして知らないんだけどさ、それは原作とかはあるのか?」

冬馬「ああ、おっさんに台本渡された時に買ってきたからな」

翔太「じゃあ先にそっちを読ませてよ。中身が分からないんじゃ何も言えないしさぁ」

冬馬「おう」ドサッ


北斗「これ、普通に面白いな……」

翔太「そだね。何人か嫌なキャラが居る以外はコメディとしても楽しめるし」

冬馬「だろ?だから余計に困るんだよ、この「大財閥の次期当主で、イケメン且つ優しい。世間知らずなところがあって、天真爛漫な主人公には溺愛気味。怒ると怖い」って属性マシマシな役をやる俺が!」

翔太「あはは、そこは頑張ってよ」

北斗「そうそう。それにしてもこのヒロイン、家が貧乏だけど元気で明るく弟たちが沢山居るって……やよいちゃんみたいじゃないか?」

翔太「あっ、普段冬馬君がやよいちゃんにやってるみたいにすれば良いんじゃないのー?そうすれば楽なんじゃないー?」

冬馬「他人事だと思って適当なこと言いやがって!だが、そうだな。言われてみれば確かに高槻に似てるような気がする……よし!!」

翔北「(本気にした……」

冬馬「そうと決まれば怖いもんなんてねぇな。あとは普通に演技を頑張るしかないぜ」

翔太「撮影が開始する前に、社長に演技指導とか入れてもらったほうが良いんじゃない?」

冬馬「そうだな」




黒井『ダメだ』スピーカーon

冬馬「はぁー!!??」

翔太「え、ダメなの?」ゴロゴロ

北斗「意外だなぁ」ヤサイイタメ!!

黒井『こっちで下手に指導を入れて変な先入観なんて持たせてみろ、向こうで修正できるのか?』

冬馬「そう言われたらそうなんだけどよ、俺は初めてなんだぞ?撮影でNG出しまくりじゃねぇか!」

黒井『最初はだれでもそうに決まってるだろうが。遠慮なくリテイクして屍を晒すんだな』

木星「えー?」

黒井『えーじゃない!!』


毛ガニ関してはバイクに乗ってる時の貰い事故です。
今は家で一人寂しく療養中……左手しか動かないのに会社のデータがPCに飛んで来るから大人しく入力してます。

伊織「アンタがドラマねぇ」

冬馬「こういうので露出すんのは不本意だけどな」

春香「お笑いはいいのに?」

冬馬「俺は笑いを取るつもりも、取ってたつもりもねぇぞ」

春伊「はいはい」

冬馬「ちくしょーーー!!」

涼「本番前に元気ですね……」

冬馬「逆にお前は、昼から何疲れてるんだよ」

涼「さっきまで別件がいくつか入ってて。三時起きですよ」

伊織「男性アイドルの仕事も女性アイドルの仕事も取ってるんだもの、大変よね」

涼「あはは、いやぁでも、面白いから僕としては全然良いんですけどね」

冬春伊「面白い……」

涼「それで冬馬さん、ドラマって何をやるんですか?」

冬馬「恋愛ドラマだよ。あまーい、な」

春香「え、恋愛?」

冬馬「おう」

伊織「顔真っ赤にして、撮影がまったく進まない画が見えるんだけど」

冬馬「うるせぇ!俺もそこまでガキじゃねぇよ!!」

涼「恋愛物って、よく事務所のOK出しましたね。普通色々ありそうなものですけど」

春香「だよね。私も一応そういうのは受けてないし」

冬馬「俺も良く分かんねえんだけどさ、なんかおっさんが入れてきたんだよ」

伊織「黒井社長が?」

涼「内容を知らないってわけじゃないでしょうし……」

春香「まぁ冬馬君の経験値稼ぎってところでしょう!」

伊織「なんの経験値よ?」

春香「え?女性関係」

冬馬「人聞きの悪いことを言うな!!」




やよい「おはようございます!」

スタッフ「おはようございます。皆さん控室でお待ちですよ」

やよい「はーい!」





冬馬「第一、女性関係の経験値なんているか!もう十分間に合ってる!!(アイドル仲間的に」キリッ

春香「この(アイドル的に)色男ー!!」

涼「数多の女を(アイドル的に)泣かせてきただけはありますね」

伊織「色々なところに(たらし的に)手を出してるだけはあるわ」




やよい「…………え?」

台風でどこかの雨戸が部屋に吹き飛んできたから、緊急避難的に馴染みの医者の所に転がり込んでいたら、帰ってから家じゅうびしょびしょでワロタ、ワロタ……


やよい「冬馬さん(ううぅ、冬馬さんがモテるのは嫌っていうほど知ってたけど……」トトトトン

冬馬「ほい」サッ

やよい「ありがとうございます(そんな、もう十分っていうくらいに女の人と関係してるなんて!!」パラパラ

冬馬「これ揚げとくぞ」ジュッ

やよい「はい(伊織ちゃんの言う通り、もっと積極的に行かないと冬馬さんを取られちゃうのかな……も、もう遅いとかないよね」チラッ

冬馬「どうした?」

やよい「……わたし、頑張りますね!!」

冬馬「おおそうか。頑張れよ!応援してるぜ!」

やよい「は、はい」




涼「うーん何がとは言いませんけど、料理と同じくらいには以心伝心していて欲しいですね」

美波「それはどういう?」

涼「いえいえ、何でもないですよ。ところで……」

アーニャ「??」

美波「アーニャちゃんは、その、さっきまで女の子の秋月さんと仕事をしていたから、男の子の秋月さんと会って少しびっくりしてるの」

涼「それはなんというか、すみません……あ、あと僕のことは涼と呼んでくださいね」


春香「(美波ちゃんってことは、前に美希が言ってた冬馬君の親戚の美人なお姉ちゃん?あぁ確かに美人だよねぇ、優しそうだしモテそう)伊織、それ取って」

伊織「(美希が騒いだのも分かるわ。隣の子も美人だし)それってなによ」

春香「(千早ちゃんが海外行ったのは歌手としては良いけど、冬馬君争いには少し遅れるかも……どうしよう)それそれ」

伊織「(家に入り浸っているのをアドバンテージとして見ても、もっと強めにアタックしないと危ないかも……どうしよう)これ?」

春香「(とりあえず……)その右」

伊織「(アイツと無事にくっつかせる為には……)はい」

春香「(伊織は)それは左!」

伊織「(春香は)アンタから見たら右でしょうが!」

伊春「(邪魔)はぁぁぁ!!???」




アーニャ「二人は仲悪い、ですか?」

涼「う、ううん、僕には良く分からないかな、はは……」

美波「冬馬君とやよいちゃんとは違う意味で息が合ってるけど、修羅場なのかな?」



涼「さて、やよいちゃん。そっちの進み具合はどうですか?」

やよい「はーい、そろそろ終わりまーす」

涼「春香さんは?」

春香「終わるよ。うん、たぶん!」

冬馬「多分かよっと、完成だ」

伊織「こっちも完成ね」

涼「じゃあ完成品を持ってこっちまできてくださーい!」

冬馬「おう。美波ちゃんそこ開けてくれ」

美波「うん」

伊織「(実際にちゃん付けて呼んでるのを見ると……)」

春香「(びっくりするなぁ……)」


やよい「はい!今回のさしすせそは、今すっごく活躍しているラブライカのお二人がリクエストしてくれた料理をつくりましたー!」

伊織「メニューは以下の四品よ」



ピロシキ ポトフ
フリカッセ ペリメニ


涼「上二つは美波さんのリクエストでやよいちゃんと冬馬さんが、下二つはアナスタシアさんのリクエストで春香さんと伊織さんが作りました!順々にコメントどうぞ」

冬馬「ポトフは日本で食べられている感じのものを作ったぞ。牛肉と人参、玉ねぎがメインだな。ブロッコリーを入れてみたらシチューみたいになっちまったけど、まぁご愛敬」

やよい「ピロシキは本当はオーブンで焼くものって聞いたんですけど、私は揚げた物しか食べたことがないので揚げてもらいました。中身は……」

冬馬「マッシュポテトと、高槻が自分家用に作ってたリンゴの甘煮を詰めてみたやつの二種類だな」

春香「フリカッセはスタンダードにつくったよ。下手にアレンジするとアーニャちゃんのお口に合うか分からないからね。ただ、生クリームは濃厚なものを使ったから味は期待してほしいかな」

伊織「ペリメニは水餃子みたいな物ね。野菜が詰まっているものとお肉が詰まってるもの二種類あるわ」

アーニャ「どれも美味しそうですね、ミナミ!」

美波「ええ。それに皆、なんだかんだと手際が良くって驚いちゃった。春香ちゃんはお菓子作りが趣味なのは知っていたけど、料理も作れるのね」

春香「お料理はアイドルの基本ですよ!基本!」

冬馬「その定型文聞くの久々だな」

春香「これ、別に定型文なんかじゃないからね!?」


さしすせそ、涼がホストの番組になってる気がする……



とりあえず足が治ったらお祓い行ってきます!


美波「ふーふー」カミノケ カキアゲツツ

春香「……」モグモグ

美波「はふ、はふ、美味しい……」トイキ

伊織「ねぇちょっと誰よ、この無駄に色気振りまく子連れてきたの!」

冬馬「お、俺に向けて言うなって。お前のとこのプロデューサーに言えよ」

伊織「アンタの親戚でしょうが」

冬馬「おい!……すいません!今の所カットで!」

伊織「あ、言っちゃダメなやつだった?」

春香「普通にダメでしょ……」



涼「親戚だったんですね」

美波「ええ」

アーニャ「あー、前にアドバイザーして貰ってたときから、ミナミとトウマ、仲よかったですね」

美波「そうだった?」

アーニャ「ダー」

やよい「あの、後で昔のこと色々聞かせてもらっても良いですか?」

美波「うん、良いよ」

涼「良くわからないんですけど、アドバイザーっていうのも出しちゃダメなんじゃ?」

美波「え?」

冬馬「相手が居ないところで匂わせるくらいなら良いと思うんだが、出来ればあまり言わないほうが良いかもな」



伊織「おわった……まさか、さしすせそでNG出すとは思わなかったわ」

春香「迂闊なミスだったね。まぁ料理のところで出しちゃうより良かったでしょう?」

伊織「ふん、流石に料理でNGは出さないわよ。やよいの家で慣れたし」

春香「そういうこと言ってると次に出るときやばいよ~?」

伊織「不吉なこと言うんじゃない!!」

冬馬「元気だなこいつら」

涼「お二人とも若いから……」

冬馬「お前は疲れすぎだぞ!?早く帰って寝ろ!!」

涼「あ、実は今から夢子ちゃんとデートで」

アーニャ「アイドルがデート?ダメではないのですか?」



冬馬「あぁアナスタシアは知らないのか」

アーニャ「?」

冬馬「こいつは事務所から女子アイドルとしてデビューさせられたんだが、Aランクに上がった時に男だとカミングアウトして、両性アイドルとして活動を始めたんだ」

冬馬「で、俺もそこからは良く分からないが、カミングアウトした直後にアイドルの桜井夢子との交際がバレたんだが……武田さんっていう音楽プロデューサーが祝福っぽいコメントを出したもんだから、誰もそこに触れなくなって、なし崩しに今の状況になったってわけだ」

涼「まぁ、一応デート自体はバレないようにしてるんですけどね」

美波「本当に付き合ってたんだ……噂だと思ってた」

やよい「なんの話ですかー?」

アーニャ「あー、リョウがデートをするって話ですね」

冬馬「それも過労状態でな」

やよい「う?う?」

冬馬「……」カチカチ



「人気恋愛漫画、実写ドラマ化決定!!

主人公の恋の相手役は、初のドラマ出演で主演を務めることになった961プロダクション天ヶ瀬冬馬さん!!」



冬馬「あー、ツイッターとか怖くて見たくねぇなぁ……俺だって好きな作品がアイドル主演とか嫌だし」ウィッ!

冬馬「……もしもし?」

黒井『貴様、また迂闊なことをしたな!?』

冬馬「は?突然なんだよ」

黒井『さしすせそだ!』

冬馬「あぁ、あれか。視聴率は良かったらしいが、何かやったか?」

黒井『美波ちゃん、と言えばわかるだろう!』

冬馬「美波ちゃん?……あっ」

黒井『そうだ!貴様が女の子を名前で呼ぶこと自体少ないのに、今まで公には絡みがなかった相手を名前で、しかも「ちゃん」付けして呼んだんだぞ!』

冬馬「あー、あれか、また熱愛報道か」

黒井『うむ』



冬馬「いつも通り事実無根だし、無視するさ」

黒井『今回はそれで済みそうにないのだが……』

冬馬「なんでだよ」

黒井『今までは相手が765プロだったから「あー相変わらず仲がイイネ!」でファンもスルーしていただろうがな、今回は知らない人間は知らんアイドルだぞ?』

冬馬「だが、俺と美波ちゃんは親戚だし」

黒井『お前のファンも、美波ちゃんのファンもそンなことは知らん!対応を間違えたらお前はともかく美波ちゃんは干されかねんぞ』

冬馬「は!?なんでだよ!」

黒井『放送を全部見た限り、美波ちゃんはお前に気安かったし、お前もほとんど765に対するような気安さだった。普段お前が他人にする対応はもう少しドライだろう?』

冬馬「まぁそりゃ普通は他人に気安くはしないな……」

黒井『だから、知らない人間からしたら「不自然に親密」としか見えんだろうよ。番組内で親戚関係だったと言っておけば良かったものを……』

冬馬「親戚だってこと言っちゃいけねぇと思ったから、カットしてもらったんだが……はぁ」

黒井『それは本当に迂闊だったな。それでなんだが、お前が変に強く違うと言おうものなら余計に拗れかねんだろうから、ほうほうでこれに関する質問をされたときどういう風に回答するかのシミュレーションをする。今から事務所に来い』


冬馬「わざわざそんなことをすんのかよ。質問っつったって、そう沢山されるとは思わないんだが」

黒井『ドラマ関連の取材やらTV出演やら、それらは何本あると思っているんだ?ん?』

冬馬「今から行きまーす!」

黒井『よろしい。無いとは思うが事務所前に記者がいたら「知ってる」奴にだけ顔を向けて「社長に聞いてくれ」と言え』

冬馬「分かった」

黒井『ではまた後で』ガチャッ

冬馬「はぁ。しょうがねぇ、行くか」プルル

冬馬「また電話?あぁ高槻んちか……もしもし?」

長介『冬馬兄ちゃん?』

冬馬「おう長介。どうした?何かあったか?」

長介『姉ちゃんが今日は帰って来るのかなーって言ってたからさ、聞いてみようと思っただけなんだ』

冬馬「そうか」


冬馬『んーそうだなぁ、今日は帰れそうにないかもな。ちょっと問題が起きて、今から事務所にいかねぇとなんなくてさ。いつ終わるかわかんねぇし』

長介「そうなんだ。気を付けてね」

冬馬『サンキュ。今から学校だろ?お前も事故のないようにな』

長介「うん。じゃあまた」

冬馬『おう』ガチャリ



長介「問題が起きたから今日は無理だってさ」

やよい「分かった、ありがとう長介」

長介「うん。でもさ、問題って多分熱愛報道だよね。いつもは大して意識してないのに今回は問題だってさ……姉ちゃん、本当にうかうか出来ないみたいだよ」

やよい「うっ!?」

長介「兄ちゃんすっごく鈍感だし、今のままだと押しが足りないって思うんだけど?」

やよい「お、押し……」

長介「じゃあ俺は学校行ってくるからね、戸締りよろしく」

やよい「う、うん……」



やよい「長介にまで押しがどうって言われちゃった……」

やよい「伊織ちゃんもそう思ってるみたいだし……ううう」

やよい「やっぱり、わたしも名前で呼んでもらった方が良いのかな?名前で呼んでって言えば、少しは意識して貰えたり……」





やよい「と、冬馬さん!?」

冬馬「ん?どうした高槻」

やよい「わたしのこと、名前で呼んでください!?」

冬馬「突然何かと思えばそんなことか。良いぜ、やよい」

やよい「!!」ウッウー!!

冬馬「長介のこともかすみのことも名前で呼んでるし、お前だけ苗字だなんて仲間外れみたいでイヤだよな。悪いな、今までそれに思いつかないで」

やよい「ソウイウコトデハナインデスゥ」






やよい「名前よびじゃ足りないよね、絶対……」



やよい「一応わたしも、二人の時は押してるんだよ?薄着で密着したり、お風呂上りにわざと倒れ掛かったり!」

やよい「なのに」






冬馬「おいおい、女の子がそんな薄着でいるんじゃねぇよ。身体壊すぞ」ウワギパサー!

冬馬「ちゃんと頭乾かせよ。ほら、ドライヤー貸せ」ゴオオオ


冬馬「「まったく、高槻は俺の前だと小さい子供みたいになるな」」ハッハッハッ





やよい「これ以上押すって、どうすれば良いの……?」

やよい「美希さんとか、み、美波さんみたいに女の人らしい身体なら少しは意識してくれるのかな?」チラッ

やよい「……昔と比べたら、成長してるんだけど」ジーッ

やよい「ううう!!冬馬さんが女の人を身体で意識してるはずないですよね!わたしでも大丈夫大丈夫!!」

やよい「うん、大丈夫だから出かけよう……」



やよい「というわけで昔の冬馬さんのこと教えてください!」ガルーン!

凛「が、ガルウィングだ」

未央「なんで765のやよいちゃんがうちに?」

美波「えっと、私が呼んだの」

アーニャ「トウマの話を聞きたいって言ってました、ね?」

やよい「はい!そうです!」

美波「本当は外で会おうと思ってたんだけど……」

杏「熱愛報道出ちゃったもんねぇ」

美波「う、うん」///

やよい「……(これが大人の人の色気!?」

卯月「あの良く分からないんですけど、この話だと美波さんとやよいちゃんってあんまり年齢変わらないんじゃ……」

未央「っしまむー!それは考えちゃダメだよ!」



きらり「そういうことならぁ、きらり達は移動しよっか?」

凛「でも、私もすこし昔話が気にな」

未央「そうだね、移動しよう!!」

凛「未央?」

未央「ちょいとしぶりん聞いて聞いて」コソコソ

凛「なに?」

未央「やよいちゃんと冬馬君はね、前からこう、付き合ってるんじゃないかって噂があってね?」

凛「うん」

未央「あそこにはそう、冬馬君と噂になってる二人がいるわけですよ」

凛「うん」

未央「あんまり顔を挟みたくなくない?」

凛「そういうことなら、そうだね」

未央「よし……じゃあ、みなみんとやよいちゃんだけにしてあげよう!」

美波「……それでね、昔はお正月とか夏休みには家によく来ていたの」

やよい「お父さんと一緒にですか?」

美波「うーん、おじ様はあんまり来ないか、来ても一日くらい居てすぐに仕事に行っちゃったかな。忙しい人だし」

やよい「おじ……さま?」

美波「そ、そこに反応するのね」

やよい「えへへ。えっと昔はってことは今は?」

美波「うん。アイドルになるんだーって小学校の終わりくらいに東京に行ってから何年かはそうでもなかったんだけど、売れてからは冬馬君も忙しいみたいで、今は来ても二三日でに帰っちゃうかな。今年もすこしだけ来ていたみたいだけど、私はこっちに居たから分からなかったの」

美波「まぁ忙しいからすぐにといっても、本当にすぐに帰るようになったのはここ三年くらいなんだけどね」

やよい「う?」

美波「冬馬君ってかなり寂しがり屋だし人見知りだから……上京してからはお世話になってた黒井さんの所くらいでしか落ち着けなくて、だから長い休みの時は私の実家に居るんだろうなぁって前から思ってたんだ。けど、今はどこか別に落ち着ける場所でも出来たのかなって」

やよい「別のって……どうしてそう思ったんですか?(もしかしなくても私の家、だよね?」

美波「……えっと、ここだけの話なんだけど、私は少しの間冬馬君のマンションで間借りしていたの」


やよい「一緒に暮らしてたんですか!!!???」

美波「しーっ!」

やよい「あ、ごめんなさい」ドウゾドウゾ

美波「うん。でも、私が事務所の寮に移るまでの間だから、時間的にはそんなに長くなかったかな」

やよい「そうなんですか(でも、いったい何時なんだろう。アドヴァイザーになってた時に少し帰って来なかったけど」

美波「えぇ。それでね、冬馬君のマンションに居た時違和感があったんだ」

やよい「違和感?」

美波「私が借りてた部屋も、居間もキッチンも、確かに使用されてる感じはしたんだけど……なんというか、言い方が悪いんだけど趣味の物置というか、友達を呼ぶための別宅?って雰囲気だったの。綺麗に整頓された食器とか磨かれてるグラス、冷蔵庫の中は用途ごとに別けて必要以上のものは入れてない」

美波「そこに根差してるっていう生活感がなかった」

やよい「生活感ですか?」

美波「ふふ、だから冬馬君は別の所にいつもいて、そこが落ち着く居場所になってるのかなーって、ただそう思ったんだ……根拠はないけどね?」

やよい「居場所…………そうだと良いです」

美波「えぇそうね、私もそうあって欲しいと思うわ」


伊織「まぁ、考えるまでもなく此処のことよね」

長介「だろうね」

やよい「えへへ、落ち着く居場所かぁ……えへへ」シタゴシラエ シツツ

伊織「……」

長介「どうしたの?」

伊織「なるほどなって、思ったのよ」

長介「?」

伊織「わたし、あいつのこと嫌いだったじゃない?」

長介「うん。家で頻繁にやりあってたよね」

伊織「それでも、すぐに慣れて今ではまぁまぁ仲良くやってる。けど、どうして仲良くなれたのかって少し疑問だったから、それが」

長介「この家を居場所にする人同士だったからと気付いた?」

伊織「そう、って良く分かったわね?」

長介「俺だって、だてに伊織ちゃんだけを見てきたわけじゃないから……ああもう姉ちゃん、浮かれすぎだって!」

伊織「あ、あ、あ、あいつから変な影響受けてんじゃないわよ……!?」

美波はまんざらとかじゃなく、ただ熱愛報道に照れているだけです


冬馬『美波ちゃんとは確かに仲が良いですよ、あはは。まぁ今回の話とは関係ないのであんまり語る気はないですけど』

春香「あー、親戚とは言わないでいつも通りの「無意識ですよ」アピールかぁ」

美希「ミキのほうが仲いいもん」

真美「ミキミキ、親戚に勝負を挑むのはムボーの極みっしょ」

真「くぅ、やっぱりああいう女性らしいほうが良いのかなぁ……」キャッピピ

伊織「居間から無駄な努力をしようとするのは止めなさいよ?」

真「なにをーーー!!??」

冬馬『撮影にかける意気込みですか?自分はドラマは初めてなので、すべてに全力で挑みたいと思います』アイドルスマイル

春香「(営業スマイル上手いなぁ」

真美「あまとうってアイドル以外ガンチューだぜ!!とか言いそうだけど、今回はやる気なのかな?」

伊織「眼中に無いよ。そうねぇ、やるからには本気でやるのがこいつだし……そういう意味ではやる気十分じゃないのかしら」


春香「伊織って、案外冬馬君のこと評価してるよね」

伊織「そりゃあ、まぁね」

真美「いおりんもラブ?ラブなの?」

真「え!?」

伊織「ンなわけないでしょうが!」

P「ただいま戻りましたー」ドアガチャ

一同「おかえりなさーい」

P「ああ、ただいま……社長と小鳥さん、どこに行ったか分かるか?」

美希「小鳥は雪歩と一緒に飲み物の買い出しに行ったけど、社長はサボるから内緒にしてくれって言って出て行ったきりなの」

P「サボりってあの人はもう……」

春香「美希にありのままを伝えて行くなんて、豪胆というかなんというか」



冬馬『台本を読んだ限りでは原作をリスペクトしたものだったので、あとは演じる側の俺たちが原作ファンの方を失望させないように頑張るだけですね』

P「こういうのを見ると、あぁお前はちゃんと対応できるんだなぁ、お前はって思うよ……なぁ?春香」

春香「そうですねぇ。いやぁ私も見習わないとダメですかね」

P「見習ってくれ?ちゃんと見習ってくれよ?お前に関しては時々クレーム入るんだからな?自由すぎるって」

春香「そんなに自由ですか?」

P「突然クッキー配り始めたりノリツッコミし始めるのはどうなんだ?」

春香「いや、極めて普通のアイドルじゃないかと……」

P「そんな普通があるか!!」

伊織「あんた、そんなことやってるの?」

春香「撮影前に配ろうにも、本番にならないと現場に居ない人とかいるし……空気が固いと受け答えもいろいろ固くなるでしょ?だからほぐそうと思って」エヘヘ

美希「気配りの空回りって、むなしくない?」

春香「うぐぁ」




冬馬「」イライラ

翔太「うっわ不機嫌ー」

北斗「つっつくなよ?」

翔太「しないよ。でも今から本番だけどだいじょうぶなの?」

冬馬「大丈夫だ。まったく、昼の生放送とは別に、ラジオ局でまで絡まれるとは思わなかったぜ」

北斗「それでも相手にしてる時はイライラを見せなかったし、たいしたものだよ」

冬馬「応対の練習はしたからな」

翔太「練習は良いけどさ、絶対今日のお便りにもこれは書かれてると思うんだよね。どうする?あらかじめ弾いてもらう?」

冬馬「そうだな……いや一つ二つは通しておこう」

北斗「流石に0は露骨すぎるしね」

冬馬「おう……はぁ鎮静化までが面倒だぜ」

翔北「こっちはとばっちりだけどね!」

冬馬「すまねぇええええ」

両腕完治につき、会社に平常通り通う羽目になって悲しい……

スタッフ「主演天ヶ瀬冬馬さん、クランクインです」

冬馬「よろしくお願いします!」

一同「よろしくお願いします!」

監督「天ヶ瀬君は今回で芝居をするの初体験だろ?色々慣れないこととかもあるかもだけど、頑張ってくれな」

冬馬「はい!」

監督「良い返事だ。スケジュールの都合でヒロイン役の子が居ないけど、他のシーンから撮っていこう!」







冬馬『…………』シバイチュウ カメラニメセン

監督「カット!天ヶ瀬君」

冬馬「はい」

監督「演技は良いんだけど、カメラに目線をやらないで。君が見るべきは、演じている人物が向くべき所だ」

冬馬「はい」

監督「君はカメラに囲まれているけど、君の役は人に囲まれている。そこを意識しようね」

冬馬「分かりました」


冬馬『………』シバイチュウ TAKE5

監督「(んー、765プロの天海君といい天ヶ瀬君といい、無意識にカメラ映りを良くしようとするのはやっぱりトップアイドルだな」

冬馬『……』

監督「(立ち居振る舞いは流石、黒井に色々仕込まれてただけはあるね。御曹司然とした態度にはほとんど指導は要らなかったし」

冬馬『……』

監督「(これなら楽な撮影になりそうだ!」







監督「はいカット!御疲れ様、キリも良いし少し休憩にしようか!」

一同「はい」

美術「天ヶ瀬さん、次のシーンで髪型を少し弄るので、あとでこっちに来てください」

冬馬「わかりました」





翔太「へぇ、なんだかんだ言ってちゃんとやれたんだね」

冬馬「おう」

翔太「じゃあ、少しは楽になったんじゃない?気持ち的にはさ」

冬馬「そうだなぁ、確かにプレッシャーは無くなったがまだ肝心のヒロインとの撮影がないからハッキリとはいえねぇよ」

翔太「鬼門の恋愛シーンだね。ヒロインの子もアイドルだよね」

冬馬「子ってお前、相手はあれで一応年上だぞ」

翔太「えー、そうなの?前に会ったとき無駄に幼いから年下だと思っちゃったー」

冬馬「嫌味な言い方すんなよ!?」

翔太「冬馬君もあれでとか一応とか酷い言い草じゃん……」

冬馬「そりゃあ、実力もないくせに事務所のごり押しで色々なところに出張ってるのはイラつくし、飯誘ってくるのもイラつくし、努力してなさそうなところとかもイラつくが年上なんだぞ?建て前でくらい敬えよ!」

翔太「僕より辛辣過ぎない!?」



アイドル「それで、私としてはぁ」

冬馬「……っすか」

スタッフ「(うわぁ、イラついてますねぇ」

美術「(そりゃあ、差し障りのない返答をしてるのに、何度も何度も来られたら苛立ちもするでしょ」

監督「(一緒に撮影し始めてからもう二日も経つんだから、彼女も距離を考えて欲しいんだけど」

冬馬「監督、少し休憩貰っても良いですか?」

監督「ドウゾドウゾ」

アイドル「あ、じゃあ私も一緒に」

冬馬「電話するところがあるんで」





冬馬『はぁぁぁん!うざいぞ!!!!』

春香「え?え?突然なに??なんなの?」



冬馬『お前さ、俺が出るドラマのヒロイン役の女知ってるか!?』

春香「え?あぁうん」

冬馬『そいつがどうにもうざくて、うざくてな……』

春香「愚痴の電話をしてきたってこと?」

冬馬『そうだ』

春香「あはは、珍しいね。私に電話っていうのもそうだけど、それが仕事の愚痴なのもさ」

冬馬『他にこういう愚痴を言える奴もいないからな』

春香「他の二人がいるんじゃ?」

冬馬『北斗にも翔太にもいつも愚痴ってるからな、言い過ぎはこっちがうざがられちまう』

春香「なるほど」

冬馬『だからな、今日の夜が暇なら飯でも行こうぜ!楽屋で長々電話するのもアレだしな!!』

春香「午後から何もないし良いよ良いよ、終わったら連絡してね」

冬馬『おう!』


美希「親友の好きな人と二人で夜デート?」ヒソヒソ

響「修羅場さー……」ヒソヒソ

春香「事務所で電話してた私もアレだけど、そういうのやめてよ!?」

美希「噂除けにミキも連れてけって思うな」

春香「本音は?」

美希「皆でご飯食べたいの」

春香「と、冬馬君のことじゃないんだ……」

美希「冬馬は結局自分で折り合い付けちゃうと思うし、ただ愚痴を言うより楽しく食べたほうが気が晴れるの!!」

春香「まぁそれはそうかもしれないけどさぁ」

響「とりあえず連れて行けば良いんじゃないか?」

春香「そうだね。じゃあ美希、用意を……」

美希「もう行けるの!!」サイフモッテ

春香「夜、夜だから!」



冬馬「でさ、時間があればこっちに絡んで来てよ……もういい加減にしろって話だよ」モグモグ

春香「アイドルに口説かれるなんてあんまりない経験だよね」

冬馬「別にしたい経験でもないけどな」

美希「はふはふ」モグモグ

冬馬「ほら、頬にご飯粒ついてんぞ」フキフキ

美希「んー」

春香「冬馬君冬馬君!」ホホニソース

冬馬「床で拭いてろ」

春香「えー?」

冬馬「まったく……アイドルが口説いてくるってのも、お前みたいな奴ならやぶさかじゃねぇんだけどな」

春美「……」

冬馬「?」


美希「そういうジゴロ精神があるから言い寄られるんじゃないかな?」

冬馬「ジゴロ精神ってなんだよ!」

春香「会話にしらっと口説き文句をぶち込むのが、ねぇ?」

美希「ねぇ?」

冬馬「言っとくけどな、今のは「天海みたいに真剣にアイドルしてるやつに口説かれるならなぁ」って意味合いだからな?」

美希「それも口説き文句としては破壊力抜群なの」

冬馬「そういうもんか?」

春香「春香さんじゃなきゃグラっと来るかもね」

冬馬「あー……じゃあ、あれだな、こういうのは言わないように気を付けることにするか」

春香「いや、冬馬君じゃ」

美希「無理なの」

冬馬「なんでだよ!」

なぜかメモリが一枚クラッシュして8Gになり、HDDも一枚破損して色々残念なことに……泣きそう



冬馬「そんなこんなで色々あったが……」

翔太「ドラマ撮影、今日で終わりなんだっけ?」

冬馬「俺はな!!」

翔太「一か月で終わるんだもん、短いよねぇ」

冬馬「俺のスケジュールがキツキツだっただけで、普通ならもっとかかるんだろうな。いやぁ時間的には短いけどさ、体感では長い長い……一日拘束されてたり、他の収録終わったら即行くことになったりしてたからなぁ」

翔太「ふぅん、で、手ごたえは?」

冬馬「完璧だ。最初には不安だった恋愛シーンだって、ヒロインを高槻に置き換えてやってたら問題なかったし!」

翔太「え、本当にやよいちゃんを被せてたの?」

冬馬「まぁな。すげぇやりやすかったぜ」

翔太「ええ……?」



冬馬「……」ピンポーン

長介「はいはい、今開けますーって兄ちゃんじゃん。どうしたの、その荷物」

冬馬「お前の姉ちゃんに土産だよ」

長介「土産?」

冬馬「おう。で、居るか?」ドサッ

長介「仕事だけど、たぶんもうすぐ帰って来るよ」

冬馬「そうか。帰って来るのも久々だが、何か変わったことはあったか?」

長介「父さんが正社員になったことくらいかな」

冬馬「お?良かったじゃねぇか」

長介「うん。これで、姉ちゃんも少しは楽になると思うんだけど……俺もバイト増やそうかなぁ」

冬馬「うちの事務所、紹介しても良いぜ?」

長介「あはは、辞めとくよー」


冬馬「だが、そうか、おじさんが正社員か……」アケマスPテキニ カンガイブカイゾ!!

冬馬「ってことは、高槻もいよいよスマホ持っても良いんじゃねぇか?稼ぎ的に考えて」

長介「姉ちゃんは今更って言いそうだけどね」

冬馬「今更というか、今だからこそ持つべきだぜ。あいつも高校生なわけだし、仕事の連絡とかにも便利だからな」

長介「あー……ならさ、兄ちゃんが買いに行くのに付いて行ってあげてよ」

冬馬「俺が?」

長介「ほら、家で持ってるの兄ちゃんくらいだし。参考程度にさ?」

冬馬「なるほど……」

やよい「たっだいまー!!この荷物って何の物ー!?」ガラガラ

長介「おかえり!それは兄ちゃんに聞いて!」

やよい「うんわかっ……冬馬さん!?」

冬馬「おかえり。突然だがケータイ買いに行こうぜ」

やよい「え?」


 
冬馬「これなんかどうだ?」

やよい「は、はい。イイデスネ(……なんでこんなことに」

冬馬「いや、んー、こっちは新しい機種だが機体が大きいから手に余るか。こっちのほうが良いかな……」
 
やよい「あ、あはは(別にスマホとかは、いらないんだけどなぁ……」

冬馬「どうした?」

やよい「え?いえ、なんでもないです」

冬馬「……ケータイ、欲しく無いか?」

やよい「そういうわけじゃないんですけど、その、今のままでもあまり困ってないから」

冬馬「そうか?連絡したいときに家電に掛けないといけねぇのって、結構不便じゃないか」

やよい「でも、家には誰か居ますし伝言してもらえれば」

冬馬「仕事の連絡で急なもんがあったら困るだろう?」

やよい「それはそうなんですけど……」


冬馬「ひょっとしてお前、ケータイを嗜好品みたいに思ってないか?」

やよい「!?」

冬馬「図星かよ!」

やよい「だ、だって……高いし、無くても生きていけるし、ゲームとかたくさん入ってるんですよね?じゃあぜいたく品です!」

冬馬「違う。こんなもんあくまでツール、道具だ。包丁とか鍋と変わんねぇよ」

やよい「でも」

冬馬「でもじゃねぇよ。これは道具、誰かとの連絡をきちんと取るための道具、持ってて良いものなの、オーケイ?」

やよい「ううぅ、でも私だけ持つのも」

冬馬「おじさんとおばさん、長介かすみにも持たせれば良いだろ。家族割だってあんだし、これから長介とかすみも外で遊んだり部活とかで遅くなったりもするんだから、逆に持たせてたほうが安心だって」

やよい「うーん……」

冬馬「あー、じゃああれだ。一回帰って家族で話し合ってみろ。そんでPさんにも話してみろ。絶対持ってたほうが良いっていうから」

やよい「はい」

ケータイ持たせないといい加減話の展開がし辛いぞーってことで買いましょう

かすみ「買わなかったの!?」

やよい「え!?」

かすみ「えって……携帯は絶対持ってたほうが良いし、わざわざ冬馬さんが連れてってくれたんだからさぁ」

母「連絡先を手に入れるチャンスでもあったのにねぇ」

やよい「でも……」

父「やよいが頑張ってくれたおかげで家はもう貧乏ではないし、お父さんももう正社員だ。家計に心配することなんてないんだから、スマートフォンなんて気にせず買いなさい?」

母「そうそう!それにね、お母さんパート先で聞いたんだけど、冬馬君はスマホゲー?っていうのが大好きなんでしょう?バイクは無理だし、フィギュア集めとかも難しいけれどそういうのならやよいもやって話を合わせやすいんじゃないかしら!!」

長介「話を合わせる云々はともかく、765の他のアイドルも冬馬さんもツイッターとかブログとかやってるじゃん?姉ちゃんもそういうのに手を出すべきなんじゃないかな」

やよい「……」

かすみ「というか、冬馬さんはいつも家の電話に掛けてるから留守電に結構メッセージ入ってるじゃない?あれほとんどお姉ちゃんに連絡するための物なんだから、携帯持ったほうが本当に良いよ」

長介「電話に出ないから留守だーって、家に来ないこともあるみたいだし。姉ちゃんに直接電話できるなら「今は留守だけど、どうぞどうぞ!」ってできるんじゃ……まぁ、姉ちゃん次第だけどね」



やよい「と、いう話なんですけど……」

P「…………………………………なぁやよい」

やよい「はい?」

P「お前がスマホを持つ件な、俺は諸手を挙げて歓迎するよ。仕事も入れやすいし、何かと都合も良いからな。だがな、やよい」

やよい「?」

P「俺は、家族レベルで冬馬と仲が良いとは聞いてないぞ!!??」

やよい「あ」

P「アッじゃないだろ!!いつからだ!!!」

やよい「で、でびゅーしてからすぐで……」

P「三年、いや四年近いのか!!!!嘘だろ!!!!」

伊織「うっさいわね!事務所で何騒いでんのよ!」

P「あ、いやすまん。少し驚愕の事実を知ってしまってな……」

伊織「事実?」

P「……冬馬がやよいの家に普通に出入りしているんだと、それもかなり前から!」



伊織「……」

P「デビューしたての頃からってことは、絶対どこかの週刊誌あたりに撮られてるよなぁ……でも、それなら千早の時に出てきてもおかしくはないし……」

やよい「あの」

P「いや、うん。冬馬のことは良いよ。何かあったら961プロで勝手に手を打つだろ」ヤケッパチ

伊織「それでいいの?」

P「今更どうしようもないだろ。付き合いを止めろと言うのも違う気がするし」

伊織「まぁ、そうよね」

P「じゃあやよい。スマホはこっちでも仕事用に一台用意するから、お前は自分用に一台買うこと。それで良いな?」

やよい「え、一台あれば十分じゃ……」

P「仕事とプライベートは別けなさい。スマホの使い方は他のアイドルにちゃんと聞くこと、一応スマホを使う上で注意することを纏めた紙を渡しておくから眼を通しておくこと。以上!」

明けましたらこんにちは。
年末年始は色々あって休みも何もあったもんじゃないけど、親戚の集まりなんていやねぇ……最近の子のお年玉、高杉

帰省先から帰ってきて酔ったテンションで書いたから文が適当だけど気にしない気にしない。

やよい「というわけで家族でスマホを買いに行こうね!」ドン!!

長介「姉ちゃんは兄ちゃんに頼めばいいのに」

やよい「私一人ならそうしてもって思ったけど、どうせ買いに行くならお父さんとかお母さんも一緒に行くほうが楽でしょ?長介もかすみも……浩司はまだダメ。中学生になったらね」

浩司「はーい」

やよい「いい子いい子」ナデリコナデリコ

長介「買いに行くのは良いんだけどさ、キャリアはどうするの?」

やよい「キャビア?」

長介「キャリア、携帯会社のことだよ。auとかソフトバンクとかあるじゃん」

やよい「……なにそれ??」

長介「えぇ?」


長介「昨日冬馬さんには連れてってもらったのは何処?」

やよい「えっと、銀行脇の……」

長介「auだね」

やよい「TSUTAYAだよ?」

長介「うん、TSUTAYAの中にauがあるんだ」

やよい「へぇ……?」

長介「ちなみに冬馬兄ちゃんはauだよ」

やよい「そうなの?」

長介「うん」

やよい「そうなんだぁ……」

長介「auにしようね」

やよい「うん!」


やよい「うううううっうううううう」ズモモモモモ

響「はいさーい!今日も絶好の労働日和だぞーって、やよいはどうしたんだ?」

美希「スマホを買ったんだけど、色々分からなくって混乱してるみたいなの」モグモグ

響「ふーん?何が分からないんだ、やよい?」

やよい「静電容量方式ってなんですかぁ」

響「美希、そのお菓子自分にもくれ」

美希「えぇーやなのー」

やよい「うううう」ポカポカ!

響「叩かないでくれー?」

やよい「だってー!」

美希「だからそんなこと気にしてどうするのーって、ミキはさっきから言ってるんだけど」

やよい「気になっちゃったんですもん……」

響「あー、まぁ、気になったら仕方ないけど……って、今手に持ってる物で調べれば良いだろ!?なんのためのスマホだ!」

やよい「う?」



響「というわけなんだ」

真「ネットで調べることを知ったわけだよね?解決したのになんで今もおっかない顔でスマホの画面を見てるのさ……」

美希「画面に出てくる単語を一々検索してるんだって」アフゥ

真「……なるほど」

やよい「あ!?」

他「!?」

やよい「電池がなくなっちゃいました」

真「な、なんだ、脅かさないでよ」

美希「で、電池……ふふ」プルプル

春香「え?どこにツボがあったの?」

響「電池じゃなくて充電な、やよい」

やよい「はーい」





高木「電池じゃダメなのかね?」コソコソ

音無「わ、私も電池って言っちゃうことありますしセーフセーフ」コソコソ

天ヶ瀬冬馬熱愛発覚!!

お相手はドラマで共演のあの人!!??

関係者の話では、見たこともないような優しい顔をしていたとの情報もある!!

「撮影中とはいえ、あんな愛おし気な表情を浮かべている天ヶ瀬冬馬を見たことがない」とは木星ファンのスタッフの弁!!

つい最近も人気急上昇中の新田美波さんとの熱愛報道があった天ヶ瀬冬馬だが、またも出てしまったか、タラシの素顔!!!!





冬馬「……流石に、サシで食事に行ったこともないあのアイドルと熱愛云々言われるとは思わなかったぞ」

黒井「まぁ事故みたいなものだろう。気にするな」

冬馬「おう」



冬馬「それで、俺はあんたが都合付けて来いって言うから来たんだが?何かあるのか?」

黒井「うむ。実はな、今度パーティーに出席することになったのでお前にも来てもら」

冬馬「おつかれー」

黒井「ええい話は最後まで聞け!お前も出ろ!出るんだ!決まりだ!!」

冬馬「マジかよ……そんな改まって言うってことはあれだろ?961プロの話じゃなくてブラックウェルカンパニーの……」

黒井「うむ。一応私の本職に当たるというアレ関連のパーティーだ」

冬馬「勘弁してくれよ。デビュー前におっさんの家であっちの人間と会ったことあったけどさ、人間的に嫌な感じがしたから行きたくねぇんだって」

黒井「そういうな。私だって本来ならこっちに専念してあっちは任せっきりでいたいんだ。だが……」

秘書「今回は水瀬様もいらっしゃいますので、社長、いえ会長には出てもらわないと困ります」

黒井「ウィ。そういうわけだ」

冬馬「俺には関係なくないか?」

黒井「961プロの顔であるということは、すなわち私がトップに君臨する企業の顔でもあるというわけだ。わかったら来るんだぞ!」スタコラスタコラ

冬馬「うげぇ、本気かよ……」


秘書「社長を責めないで上げてくださいね。あの方は自分の自慢のアイドルを見せびらかしたいだけなんですから」

冬馬「見せびらかすって……」

秘書「……前にブラックウェルカンパニーの集会があったんですが、その時役員に「いつになったらアイドル事業なんてお遊びから本業に立ち返るのか」と言われて偉くご立腹でして」

秘書「「私はアイドル事業を遊びでやってるんじゃないぞ!!」と怒鳴りつけた挙句「文句があるなら次のパーティーでうちの冬馬を見てから言え!!」とかなんとか」

冬馬「なんでそこで俺の名前を出すんだよ!?」

秘書「ですから、あなたが社長の自慢のアイドルだからですよ。役員に私のアイドルはこんなに凄いぞー、カッコいいぞーってやりたいんです」

冬馬「あー、うん。自慢のって言われると少し照れるがそういうことなら出てもいいかな。いや、俺を自慢のアイドルと……ははは」

秘書「(師弟揃っておだてに弱いなぁ……絶賛され慣れているだろうに」


伊織『でね、お父様がやよいも一緒に誘ったらって言うんだけれど……確かオフでしょ?』

やよい「ちょっと待って……うん、何もないよ」

伊織『なら行きましょうよ。特に楽しいことはないと思うけどお食事は美味しいし、マスコミ関係の人も来るって言うから顔合わせくらいには役立つわよ』

やよい「でも私、ドレスとか持ってないけど……」

伊織『ただの立食パーティーだもの、そんなに気取らないで良いわ。適当に事務所の衣装借りて行きましょう』

やよい「えー?それは流石に……」

伊織『汚さなきゃプロデューサーも怒らないわよ。じゃあ、また連絡するから』ピッ

やよい「……パーティーかぁ」

長介「どうしたの?パーティーって聞こえたけど」

やよい「あのね……………………ってわけなんだけど」カクカクシカジカ

長介「場違いだって思ってるんだったらさ、気にしすぎじゃないかな。伊織ちゃんが誘ってきたってことは本当に大したものじゃないんだと思うよ」

やよい「そうかな?」

長介「そうそう」

やよい「じゃあ、そう構える必要はないね。良かった」


やよい「……」ドレスアップ

伊織「うんうん、やっぱりわたしと新藤の見立ては合ってたわね!」オジョウサマスタイル

やよい「いおりちゃん?」

伊織「なによ?」

やよい「はうまっち?」ドレスユビサシ

伊織「え?八十万くらいかしら」

やよい「はち……これ、事務所支給じゃないよね?」

伊織「当たり前でしょう?やよいの為にうちで用意させてたのよ」

やよい「用意って、聞いてから一か月くらいしか経ってないし、サイズだって……」

伊織「一か月あればサイズもわたしが目測で測れるし、ドレスも作れるわよ」

やよい「……」

伊織「騙して悪かったわね」

やよい「ううう、知ってたらパーティーに参加なんてしなかったよぉ」

伊織「だと思ったから教えなかったのよ」ニヒヒ


冬馬「……よし」キッチリ

黒井「うむ、良く似合っているぞ」

冬馬「ああ」

黒井「それにしても、その気合の入った装いはどういうこと風の吹き回しだ?あんなに嫌がっていたのに」

冬馬「ふん、こういう場であんたに恥を掻かせるような恰好は出来ないだろ」

黒井「……」

冬馬「なんだよ」

黒井「なんでもないぞ……だが、お前にこういう場とやらで使える洒落たセンスがあるとは思わなかったな」ジー

冬馬「北斗に付き合ってもらって色々と考えたからな!」

黒井「なるほど、北斗か。納得だ」



やよい「ね、ねぇ伊織ちゃん?」

伊織「ん、何?」

やよい「こんなに人が居るなんて聞いてないんだけど……」

伊織「え?三百人くらいしか居ないじゃない」

やよい「多いよ!?」

伊織「そう?」

やよい「う、ううぅ」

伊織「でも、今日はTV関係の人も来てるし知ってる人も居るでしょ」

やよい「居るけど……」

伊織「そういう人にあいさつに伺えば良いのよ。人の多さに緊張なんてする必要ないわよ」

やよい「そ、そう?」ホッ

伊織「(まぁ人の多さには、だけどね?」


社長「おや、これは黒井社長」

黒井「おお、ブーブーエスの。調子はどうです?」

社長「はは、お陰様でぼちぼちですな。それにしても、珍しいお連れ様ですね」

黒井「珍しい……ははは!そうでしょうなぁ!おい冬馬、挨拶を」

冬馬「天ヶ瀬冬馬です。いつもお世話になっております」アイドルスマイル

社長「いやいやこちらこそ961プロ、もといジュピターには助けられていますよ。ところで、彼はどうしてお越しに?」

黒井「どうしてとは?」

社長「あっはは、天ヶ瀬君はあまりこういった挨拶の場に興味がないと思って居ましてね。実際、長らくあなたの秘蔵っ子だと言われ続けていたものの、今日まで出てきてはいなかった」

黒井「私としては冬馬にはアイドルにだけ集中して貰いたかったのですよ。こういう場は大切なものですが、アイドルには不要なものかと」

社長「大きな仕事とはえてしてこういうところで手に入れるものですが……しかし、見え方が重要なのは同意しましょう」

黒井「ウィ。とはいえ一度くらいは連れてきて勉強させておこうと思ったのでね、今日は連れてきたわけです」

社長「なるほど。天ヶ瀬君も大変だねぇ?忙しいのに」

冬馬「いえ、これも有意義な経験だと思っていますから」

社長「ははは、頼もしい限りで何よりだ」


冬馬「……」ペラペラ

その他「……」オベンチャラン

冬馬「……」ダンショウ

その他「……」クサハエル



黒井「……」ゴクッゴクッ

伊織父「やぁ黒井」

黒井「水瀬か」

伊織父「随分ご機嫌じゃあないかね」

黒井「それは貴様もだろう。珍しく伊織ちゃんが来ているようじゃないか?」

伊織父「珍しいといっても、年一くらいで来てくれるから、君の所の比じゃないさ……。秘蔵っ子を解禁出来たのがうれしいのかな?」

黒井「ふん」

伊織父「(否定はしない、と」

伊織父「しかしあれだね、彼は中々如才なく周りを繋いでいられるようだ。仕込んだのか?」

黒井「いいや。アイドルをやっている時は基本的に排他的だが、それ以外ではそれなりに仲良くやろうとするタチなのだ、奴は。だからあの程度は特に考えもなくやれているんだろう」

伊織父「懐が深いのかな?だからこそ伊織とも仲良くやっていけるのかね……」



黒井「それで、何の用だ?」

伊織父「何だも何も、挨拶だよ挨拶」

黒井「だったら一人で立っていれば良いだろう。すぐにそこらの凡百が近寄って来るだろうから、それの相手でもしておけ」

伊織父「いやいや、有益な相手以外との会話なんて煩わしいだろ」

黒井「では何故こんなところまで来たのだ。今日は特に大きな話があったわけでもないだろうに、わざわざ前もってこっちに来ると言いおって」

伊織父「いや、伊織が次にパーティーがあるとしたならいつだというのでね?今回の話をしたらそこに出たいとだね?」

黒井「だから許可して、貴様も参加したと?」

伊織父「その通り!それに伊織が友人を連れて行くって言うからさ、だったらこういう小さい場のほうが良いかなと」

黒井「ウィ?友人を連れて行くなら大きい会場で行われるほうが良いのではないか?何も初めてというわけではないだろうに」

伊織父「その友人は今回がこういうのは初だよ。君の冬馬君と同じだね」

黒井「伊織ちゃんの友人なのに社交デビューもまだなのか?」

伊織父「ああ」

黒井「なら私も挨拶くらいは済ませておくべきだろうな。で、伊織ちゃんはどこに?」

伊織父「伊織たちならあそこに……おや?」

黒井「居ないではないか」

伊織父「さっきまでは居たんだが……まぁ見かけたら声でもかけてやってくれよ」

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