八幡「ネコミミモード」 (16)

ガララ

八幡「…うす」

雪乃「こんにちは。あら、今日は耳当てをしているのね」

八幡「あー…今日は少し寒かったんでな」

雪乃「そうね」

雪乃(今日の比企谷くん、何か髪型に違和感が…?)

八幡「…」スタスタスタ ストン

雪乃「…」ジー

八幡「…」

雪乃「…耳当て、取らないの?」

八幡「…ん?なんて?」

雪乃「だから、その耳当てを外さないの?部室は暖かいでしょう?それにマナーの面からもよくないわよ」

八幡「…礼儀が悪いのは素直に謝る。だが、今日だけは見逃してくれないか?詳しいことは言えないが、頼む」

雪乃「あら、今日はやけに殊勝な態度ね。…外せないのに何か言いたくない事情でも?」

八幡「ああ、そんなところだ」

雪乃「仕方ないわね、その素直さに免じて見逃しましょう」

八幡「すまん」

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ガララ

結衣「やっはろー!」

雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん」

八幡「…うす」

結衣「あれ?ヒッキーここでも耳当てつけたままなの?」

雪乃「あら、授業中もずっとつけていたのかしら」

八幡「…ちょっと耳の形に異常が出てな。あまり人に見せたくないんだ」

雪乃「そこまでひどいのなら病院へ行った方がいいのではないかしら。部活の方は休んで構わないわ」

八幡「いや、日常生活に支障が出るわけじゃないんだ…まあちょっとは出るが、身体的には至って健康だ。医者にかかる必要はない。つーか医者にも見せたくない」

結衣「…ねえヒッキー、今日ずっと思いつめてたよね。その耳のこと、悩んでるならあたしたちに相談してくれないかな…力になれるかは、分からないけど…」

八幡「…条件がある。誰にも言わないと約束してくれ」

結衣「! もちろん!」パァッ

八幡「実は…今朝起きたら耳が綺麗さっぱりなくなっていて…」スッ

雪乃「」

結衣「」

八幡「ふう、耳を開放するとよく聞こえるようになるな。んで…」

八幡「かわりに頭に猫耳が生えてた…どうなってんだこれ…」

八幡「耳当てでなんとか耳を寝かせて、普通耳がある部分を隠していたんだが…やっぱ目立つよな。」

結衣「ヒッキー…」

八幡「いや分かってるよキモいことくらい。俺だって今朝鏡見て引いたから。つーか俺の猫耳とか誰得だよホント」

結衣「いや…けっこう、アリかな…というか、全然可愛いよ?うん…普通に似合ってるし、ねえゆきのん」

雪乃「」

結衣「絶句してるし…」

八幡「ねえよ、ねえ。キモいだけだってこんなの。何?腐った目して猫耳つけてる野郎とかどんな変質者だよ」

結衣「け、結構冷静だねヒッキー…」

雪乃「比企谷くん…あなたずるいわ…私が猫に弱いと知っていてこんな…」フラーッ

八幡「おい待て雪ノ下落ち着け近付いてくんな眼が据わってんぞおいお前よく考えろ猫要素耳だけで他は全部今までの俺だぞ」

雪乃「比企谷くんちょっとその耳を触らせてもらえないかしら?いいわよね?嫌ならもう椅子から立ち上がって逃げているはずよね?ああもう我慢できないわ触るわよ」

八幡「聞いちゃいねーしっていうか眼がマジ怖いわお前」

結衣「ゆきのん…」

雪乃「うふふふふ…」サワサワサワ

八幡「おいやめろそんなにいじるなくすぐったい」ピクピクッ

結衣「ええ!?ヒッキーその耳動かせるの!?」

八幡「ああ、今の俺は耳の部分だけ猫そのものになってるらしいからな」

雪乃「…」サワサワ

八幡「…」ピクピクッ

雪乃「…」ツンツンツン

八幡「…」ピクピクピクッ

雪乃「…」ツン

八幡「いい加減にしろ」バタバタバタ

雪乃「っ!急に耳をバタバタさせないでちょうだい、驚いてしまったわ」

八幡「お前こそ夢中で人の耳突いてんじゃねえよ…くすぐったいっつーの…」

雪乃「人ではなく猫の耳でしょう?」

八幡「屁理屈いうんじゃありません」

結衣「ヒッキーあたしにも触らせて!」

八幡「いやだから俺の耳はおもちゃじゃないからね?これ本人は結構真剣に悩んでるんだからね?」

雪乃「なってしまったものは仕方がないでしょう?観念して、現実を、その猫耳を受け入れなさい。私的にも得だし」

八幡「そう簡単に『耳が猫のものになっちゃいました☆』なんて現実が受け入れられる訳ねーだろ…あと本音漏れてんぞ」

結衣「耳の他は普通なの?他に猫っぽくなっちゃったところとか」

八幡「猫舌…は元からだしな…耳以外は特に…」

雪乃「なら少し試してみましょう」フリフリ

結衣「ゆきのんどこから出したのその猫じゃらし」

八幡(なんでそんなもん学校に持ち込んでるんですかねこの人)

雪乃「さあ比企谷くん、本能の赴くまま飛びつきなさい」フリフリフリ

八幡「あのなぁ…」

雪乃「うふふ…」フリフリ

八幡「…」ペシッ

結衣(うーん、鬱陶しそうに払いのける仕草がまさに猫っぽい)

雪乃「…」フリフリ

八幡「…」ペシッ

雪乃「…」フリフリ

八幡「…」ペシッ

八幡(何故か知らないが手を出さずにはいられない…なんだこれ)

雪乃「…」フリフリフリ

八幡「…ああもう」ペシペシッ

結衣(猫キャラハマッてるなあヒッキー)

八幡「雪ノ下さん、さっきからキャラ変わってません?っていうかさっきから本能のまま振舞ってるのお前の方じゃねーか」

雪乃「…そうね、少し浮ついていたわ、ごめんなさい…あなたが意を決して相談してくれたことだというのに…」シュン

八幡「あ、いや…別にイヤだったって訳じゃ…」

八幡(そんな顔すんなよ俺が悪いみたいじゃねーかよ…)

結衣「ヒッキー、大丈夫だよ、きっと何とかなるから…ね?」ナデナデ

八幡(励ましながら何ナチュラルに人の頭撫でてるんですかね由比ヶ浜さん)

八幡「お、おう…ま、見た目がアレってだけで耳が聞こえなくなったとかじゃないからな…うん」

八幡「…」

結衣「…」ナデナデ

八幡「…」

結衣「…」ナデナデ

八幡「…」

八幡(…何故か分からないけど目が開けられない!)

結衣「…」ナデナデ

雪乃「…比企谷くん?」

八幡「あの、由比ヶ浜、そろそろ手を止めてくれ…」

結衣「あ、ご、ごめん! ///」

八幡(やっべ超気持ちよかったんですけど何だあれ)

八幡(…もしかして猫になりかけてる!?)ガーン

雪乃「…」ジトー

八幡「…なんだよ」

雪乃「…何でもないわ」プイ

八幡「あー…とりあえず部活に支障はないし、依頼人が来るまでラノベでも読むわ」

雪乃「…そう」

結衣「…あ!あたし喉が渇いたから温かい飲み物でも買ってくるね。ちょっと行ってくる!」


ガララ バタン

八幡「…」ペラ

雪乃「…」ジー

八幡「…」耳ピクッ

雪乃「…」ウズウズ

八幡「…」

雪乃「…少しいいかしら」ナデ

八幡「…おう」

雪乃「…ふふ」ナデナデ

八幡「…」ペラ

雪乃「…」ナデナデ

八幡(いかん、瞼が落ちる…)

雪乃「ふふ、目を瞑ってしまっては本が読めないわね」ナデナデ

八幡(普段俺のことを激しく罵倒している雪ノ下がまるで慈しむかのような手つきで俺を撫でている…)

雪乃「…」ナデナデ

八幡(戸惑いはあるが雪ノ下の撫でる手の感触は決して嫌いな訳ではない…むしろ安らぎすら覚える…が)

八幡(正直この状況めっちゃ恥ずかしい!でも感じちゃう!)

八幡(今の俺ってそりゃひどい顔になってんだろうな…ああ逃げたい!恥ずかしい!)

八幡(でも気持ちよくて動けない!だって猫だもの!耳だけだけど!)

雪乃「ふふ、大分気持ちよさそうね?顔に出ているわよ?」

八幡「…否定はしない」

八幡(イヤ!私を見ないで!でもやめないで!…っていうかどんな羞恥プレイだよこれ!今依頼人が来たらどうすんだよ弁解の余地ねーぞオイ!)

八幡「…もう、いいか?」

雪乃「もう少しだけ…」ナデナデ

八幡「ん…」

雪乃「…」ナデナデ

――――――――――――

――――――――

――――


雪乃「…」パチ

雪乃「…夢…だったのね…」

雪乃「そうよね、人の耳が猫のものになるなんて、そんなこと起きるわけがないもの」

雪乃「それにしても嫌な夢だったわ。よりによって比企谷くんが出てくるなんて…そしてあんな…」

雪乃「…」

雪乃「…」枕ギュー

放課後


ガララ

八幡「…うす」

雪乃「こんにちは。…あら、今日は耳当てをしているのね」

八幡「あー…今日は少し寒かったんでな」

雪乃「…」ジー

八幡「…なんだよ?」スッ

雪乃「いえ…普通の耳ね」

八幡「生憎と腐ってるのは目だけだよ。耳はいたって正常だ」

雪乃「はぁ…比企谷くん、あなたにはガッカリだわ」

八幡「なんで会うなり失望されなきゃいけないんですかね…?」

雪乃「ふふっ」


おわり

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