杏「あ゛ー…疲れた」


肇「ライブ近いですからね。レッスンも厳しくなってきました」


杏「帰りたい、嗚呼休みたい、眠りたい」


肇「川柳ですか？」


杏「嗚呼は季語だよ、多分」


肇「そう言えば、杏ちゃんってあんまりレッスンサボりませんよね」


杏「普通アイドルはサボんないからね？」


肇「前に聞いていた評判だと、レッスンサボってぐーたらしてるって聞いてましたが…」


杏「昔の話だよ。ってかそれは前に話したじゃん」


肇「ふふ、それもそうでしたね」


杏「文香ちゃんとフレデリカちゃんはもうレッスン終わってるかな」


ガチャ


フレデリカ「へいらっしゃい！」


文香「何になさいますか…？モモとネギマしかありませんが…」


杏「ごめん部屋間違えました」

肇「…何してるんですか？」


フレデリカ「焼き鳥屋ごっこ！」


文香「神保町を歩いていたら…焼き鳥屋さんが閉店してしまうそうで、設備を頂きました」


杏「よく持ってこれたね。あと窓開けても臭いエグいからやめとこっか」


フレデリカ「特製のタレも分けて貰ったよー」


文香「私は塩しか認めませんが」


肇「私も塩派です」


杏「杏も塩派」


フレデリカ「フレちゃんも塩だよー」


杏「タレどうする？」


フレデリカ「朋ちゃんのところに後でもってってあげよっか」


肇「タレだけ渡すって嫌がらせですよ？」

フレデリカ「それで、焼き鳥なにがいーい？」


杏「それじゃネギマ四本モモ二本全部塩で」


肇「あ、それと唐揚げとお茶二つ」


フレデリカ「らじゃー！おしぼりもあるよー」


杏「おお、準備いいね。ってゆーか珍しく本格的なごっこ遊びだね」


文香「…ゆくゆくは、全国展開を…」


杏「二人しか店員いないのに？」


フレデリカ「全国のF付く名前の人に協力してもらおっか」


肇「おしぼり、買ってきたんですか？」


文香「…Fのコンビニで、頂いて来ました」


フレデリカ「お茶と唐揚げもそこで買ったんだー」


杏「既製品かよ」

杏「あー、いい匂いだね」


肇「私達だけで楽しむのはもったいないですね」


フレデリカ「やっぱり全国展開するしかないねー」


文香「…焼けました。どうぞ、シイタケです」


杏「オーダーと違う」


文香「…私の分です」


肇「自由ですね」


フレデリカ「できたよー焼きちくわ」


文香「焼きトウモロコシは、もう少し時間がかかりそうです…」


杏「なに一つオーダー通りのものが出てこないね」

杏「にしても、この屋台と椅子はどこから持ってきたの？」


フレデリカ「縁起良さそうな名前の人が懸賞で当てたんだってさー」


肇「あの方も大概不思議ですね。なんで屋台なんかの懸賞に応募したんでしょう…」


文香「……」


杏「……」


肇「こういう振りをすれば「私が焼き鳥を食べたかったからですっ！」って言って登場すると思ったのですが」


杏「来なかったね。杏も正直来ると思ってた」


フレデリカ「しょーがないから代わりに茄子焼いて食べよっか」


杏「マシュマロとかも焼くとおいしいらしいよ」


文香「…色々と、挑戦してみましょうか」

フレデリカ「じゃーフレちゃんはカップケーキ！」


杏「一回焼いてるものだし、少し加熱するのもアリかもね」


フレデリカ「特製のタレを添えて」


肇「せめて塩にしません？」


杏「じゃー杏はマシュマロかな」


肇「では、私はお煎餅を」


文香「…私は、豚バラを…」


杏「ただの焼肉じゃん」


文香「…レモン汁を添えて」


杏「お、戦争かな？」

フレデリカ「わぁお、チョコが溶けてデンジャラス！」


肇「チョコフォンデュなんかもやりたいですね」


杏「あぁ、この注文した焼き鳥が出てこない感じね。これだよこれ」


文香「…焼き鳥、焼けました」


杏「おお！」


肇「凄い！注文したものが出来上がるなんて！」


文香「…すみません、なくなってしまったので焼き直します」


杏「食ってんじゃないよ」


フレデリカ「焼きマシュマロおいしいねー」


杏「おいそれ杏の」

文香「…ヤキナスも美味しいですね」


肇「面白いほどに私達なにも食べられてませんね」


文香「…ヤキナス…これは実質、私達の勝利なのでは？」


杏「茄子さんと戦ってるの？」


ガチャ！


茄子「呼びましたか？！」


文香「か、茄子さん…わ、私は茄子さんに刃向かおうなどと…」


杏「よっわ」


文香「こ、この不届きもの三人を…茄子様に代わって私が成敗しようと…」


肇「うわぁ…」


茄子「ふふっ、頑張り屋さんな文香さんにはこのつくね串と軟骨串と獅子唐をプレゼントしちゃいます」


文香「よし」


杏「おい」

フレデリカ「獅子唐って時々エグい辛いのあるよねー」


杏「お、ロシアンルーレットやっちゃう？」


肇「何発弾丸が仕込まれているか分かりませんけどね」


文香「…私は、生き残ってみせます」


茄子「私は運がいいですからね、余裕でアタリを引いてみせますよっ！」


フレデリカ「アタシ、生き残ったらママに焼き鳥振る舞うんだー…」


肇「おじいちゃん…見ていて下さい！」


杏「みんな死にたいの？」

杏「…よし、杏はこれにするよ」


フレデリカ「じゃーフレちゃんはこれ！シャイニングドロー！」


文香「…最強のアイドルは、引く獅子唐すら創造します…これです！」


肇「あ、私は普通にヤキナスにします」


杏「ダメ」


肇「…これで」


茄子「残り物には福がありますからね。私はこれにします」


フレデリカ「それじゃー…」


文香「…みなさんの、健闘を祈って…」


みんな「かんぱい！」

杏「からっ！！ってかしょっぱっ！誰だ塩かけまくったの！」


フレデリカ「んぐっ…辛くてチョコがー！」


肇「チョコフォンデュごっこなんてやってる辛っ！！タレ美味しいけど私塩派っ！」


文香「……」バンバンバン！！


茄子「私に刃向かった文香さんには特別辛いものを辛いっ！辛いです！！なんで中に大量の七味が！！」


文香「…ふふっ…辛い…」


杏「お茶5つ！はやく！」


肇「用意したものがこちらになります！」ドンッ

杏「…ふぅ」


肇「私がもしかしたら一番マシだったかもしれません」


文香「…争いはなにも生みません。気をつけましょう」


フレデリカ「あー…天国にいるユニットのみんなが見えたよ…」


肇「まだ死んでないです」


杏「何この闇串焼き」


茄子「まったく…なんで私が…」


杏「獅子唐持ってきた人のセリフじゃないよね」


茄子「知ってましたか？獅子唐ってナス科なんですよっ」

フレデリカ「あ、まだ獅子唐残ってるねー」


杏「杏はもうやだよ」


肇「私も結構です…」


文香「…でしたら、タレのお裾分けついでに朋さんへ…」


茄子「させません！私のユニットの大切なメンバーですから」


フレデリカ「じゃー茄子さんが食べるー？」


杏「完全に私達悪役じゃん」


茄子「あ、やっぱり朋さんにもこの美味しさをお裾分けしたいですね」


杏「おい」


茄子「冗談ですよ？それに、まだこれが辛いと決まった訳ではありませんし」


肇「思いっきりワサビの匂いがするんですけど」

フレデリカ「さーて、そろそろ炭がなくなっちゃうし終わりにしよっか」


文香「ふふっ、楽しかったですね」


杏「そう言えば杏達まだ焼き鳥食べてないんだけど」


文香「…すみません、炭が切れてしまって…んふっ」


肇「すみませんじゃ済みません！」


杏「あぁ、澄み切ってた肇ちゃんの目が泥みたいに…」


フレデリカ「速やかに片そっか」


茄子「スミノフならありますよ？」


フレデリカ「よーし、茄子さん減点！」


杏・文香・肇「いぇーい！」


茄子「え、そう言うシステムなんですか？」


杏「はい、ワサビ入り獅子唐。一口でね」


フレデリカ「チョコつけるー？」


文香「特製のタレもどうぞ」


肇「お茶は用意しておきましたから」

茄子「仕方ありません…南無三！」


杏「…どう？」


茄子「んぐっ…！！！！」


肇「はい、お茶です」


茄子「…ふう…」


フレデリカ「どーだった？」


茄子「獅子唐自体は辛くありませんでした…が、ワサビとチョコとタレが…」


文香「食べ物で遊んではいけませんよ？」


杏「おい」


肇「正論ではありますが…」


フレデリカ「それじゃー今度こそ片そっか」

～翌日～


杏「ねぇ、見間違いでなければさ」


肇「…そうですね、そうだったらよかったんですが」


フレデリカ「…これ普通に食べきれないんじゃないかなー」


文香「…部屋が…獅子唐の段ボールで埋め尽くされてますね」


杏「まぁ、うん」


文香「みんなで協力して、獅子唐パーティでもしましょうか」


フレデリカ「土鍋もBBQセットもあってよかったねー」


肇「正直、事務所の部屋じゃなくて助かりました」


杏「なんで杏の家なんだよ！潰されかけたわ！」