佐藤さとる先生の訃報に接し、コロボックルの話をちょこっと書いてみたくなりました。
”誰も知らない小さな国”シリーズを読んだことのない人には、ちんぷんかんぷんだと思います。
読んだことのある人もどうかと思うかもしれませんが…。”
豆つぶほどの小さないぬ”の2週間ぐらい後と思ってください。
・・・せいたかさんの家の居間・・・
オチビ「いきなり大好きだ!なんて言っておきながら、その後はほっぽりっぱなしって、人のことなんだと思っているのかしら?!もうちょっとブツブツ………」
ママ先生「ご機嫌悪そうね、オチビちゃん?」
オチビ「あ、いえ、そう言うわけではないんですけれど…」
ママ先生「コロボックル通信のお仕事がうまくいってないの?」
オチビ「いいえ、順調です。印刷機も組み上がりましたし」
ママ先生「だったらそんなしかめっ面しない方が良いわ。せっかくのかわいい顔が台無しよ。おでこにしわが寄っちゃうわ」
オチビ「それは困ります」
ママ先生「でしょ?ニコニコしてた方が良いわよ。だけどそれはそれで目尻にしわが・・・」
オチビ「目尻に?」
ママ先生「あ、オチビちゃんはまだ若いから、気にしなくても大丈夫よ」
オチビ「はあ……」
ママ先生「でもたまには外の空気を吸ってきた方が良いわ。このところコロボックル通信の印刷工場にこもりっきりだったでしょ?風の子とどこか遊びに行ってきたら?」
オチビ「えっ、あっ、でっでも、風の子はまだ記事を書くので忙しくって、その……」
ママ先生「そうなの……。だけど息抜きも大事よ」
オチビ「はい」
・・・翌日のコロボックル通信社・・・
フエフキ「マメイヌが増えてきたのは良いんだけど、面倒を見るのに手一杯でマメイヌ隊の人手が足りないんだ。
ヒイラギノヒコは来週になったら人を回してくれるって言うんだけど、この2,3日は仕掛けた罠を点検に行くやつがいない。
もしマメイヌがかかっていたら……」
ハカセ「2,3日なら飢え死にすることはないだろうけど、マメイヌは神経質だから狭い罠の中に閉じこめられていたら病気になるかもしれない」
風の子「コロボックル通信の方で手一杯なんだけど、でもぼくが行くしか無いか……」
オチビ「あたしが行くわ」
フエフキ「オチビが?駄目だ!」
オチビ「なんでよ!」
フエフキ「女の子が一人で城の外に行くのはよくない。この間だってマメイヌに追いかけられて怖がってたじゃないか」
オチビ「だってあのときはマメイヌ見たの初めてだったんだもの、もう大丈夫よ。
印刷工場もできあがって次のコロボックル通信を発行するまで手が空いてるし。いいでしょ、風の子?」
風の子「うーん、だけど・・・」
オチビ「あたしだってたまには外に行きたいの!」
風の子「何だ、遊びに行きたいだけかい?」
オチビ「そうじゃないけど…ママ先生もたまには外の空気を吸ってらっしゃいって」
ハカセ「ママ先生が言うんならしょうがないな。確かにオチビはこのところ印刷機の組み上げにかかりっきりだったからね、気分転換も大事かもしれない」
フエフキ「しかし・・・」
風の子「ここはオチビに頼もう。もし遅くなるようだったら、ぼくが様子を見に行く」
オチビ「ありがとう、風の子。準備してくる!」ビュッ
フエフキ「あ、待て。行くのは明日・・・」
風の子「もう行っちゃった。まあ、大丈夫だろう、最近ネズミもでてないし」
フエフキ「ああ、そうだな」
・・・翌日・罠を仕掛けた竹林・・・
オチビ「えーと、カタツムリの罠はあの四角い竹の横に……あ、あった」
オチビ「あっ、ふたが閉まってる。マメイヌがかかったんだ!みんなよろこ……あ、2匹いる!」
オチビ「2匹いるのはいいけれど、どうやって連れて帰ったら?入れ物1匹分しかないし…」
オチビ「しょうがないわ、このカタツムリの罠ごと持って帰ろう」
悪戦苦闘・・・
オチビ「重くて持ち上がらない。どうしよう……」
ビュッ
フエフキ「どうした、オチビ」
オチビ「あ、フエフキ。助かった・・・。マメイヌが2匹かかったの。で、罠ごと持って帰ろうと思ったんだけど重くって」
フエフキ「そりゃあ、一人じゃ無理だ。そうだな、罠に蜘蛛の糸で作ったロープをかけてそいつに棒を通して二人で担いでいこう」
オチビ「さすが、マメイヌ隊長さん。一人じゃどうしようも無かったわ」
フエフキ「おだてても何もでないぞ」
オチビ「つまんないの。そう言えば何でここに?」
フエフキ「おまえが予定時間を過ぎても帰ってこないから様子を見に来たんだ」
オチビ「かわいい女の子が心配で迎えに来てくれたのね」
フエフキ「バカ!仲間の帰りが遅ければ心配するのは当たり前だろう!」
オチビ「……よかった…」
フエフキ「よかった?」
オチビ「いつも素っ気ない顔されるから、仲間って認めてくれてないんじゃないかって心配だったの」
フエフキ「そんなことはない。ただ…」
オチビ「ただ?」
フエフキ「ただ、女と話すのが苦手なだけだ」
オチビ「なんだ、心配して損した」
・・・しばらく後・・・
フエフキ「よし、いいぞ。棒のそっち側を担げ」
オチビ「はい。よいしょっと。なんか御神輿みたいじゃない?笛太鼓で拍子をとってくれたら速く進むんじゃないかしら?」
フエフキ「馬鹿なこと言ってるとひっくり返るぞ」
オチビ「大丈夫よ。そう言えば、あたしフエフキが笛を吹くの、ほとんど聞いたことないわ」
フエフキ「そうかもしれないな」
オチビ「もったいぶって出し惜しみしてるの?」
フエフキ「そうじゃない…」
オチビ「最近笛吹くのやめたの?」
フエフキ「いや」
オチビ「じゃあ今度聞かせて」
フエフキ「……。笛を吹くときは気持ちを落ち着けないといけないから…」
オチビ「気持ちを落ち着けないといけないって?何か関係あるの?」
フエフキ「それは・・・」
オチビ「??」
フエフキ「・・・」
オチビ「!!」
フエフキ「・・・」
オチビ「あのう・・・」
フエフキ「・・・」
オチビ「………。あたしね、この間、詩を書いたの」
フエフキ「詩を?」
オチビ「うめがさいたら うめのはなびらに うたをかこう
はなびらひとつに うたがひとつ
かぜがみつけて くばってあるく
でもこれは かぜにあげる てがみなのに
かぜはよめないものだから
シンブン シンブン
はなびらのシンブン・・・」
フエフキ「……そうか」
オチビ「うん」
フエフキ「かぜは手紙を読むのが苦手なんだろうな」
オチビ「うん」
・・・また、しばらく後・・・
フエフキ「おい、城についたぞ」 、
オチビ「ああ、ほんとに重かった。2匹も捕まえてきたらみんな喜んでくれるかな?」
フエフキ「たぶんな」
オチビ「あ、風の子だ…風の子!2匹捕まえてきたわ!すごいでしょ!?」
風の子「やったじゃないか。よくつれて帰れたね」
オチビ「大変だったのよ。だけどフエフキが迎えに来てくれて・・・そうだ!何で風の子が迎えに来てくれないのよ!!」
風の子「なんでって…」
オチビ「”もし遅くなるようだったらぼくが様子を見に行く”って言ったじゃない!!」
風の子「しょうがないじゃないか、忙しくて手が離せなかったんだから」
オチビ「じゃあ、あたしがどうなったっていいって言うの!言ったことには責任もってよ!この間だって……」
風の子「この間?なんかあったっけ?」
オチビ「もう風の子のことなんか知らないっ!!」
風の子「あっ待てよ、オチビ!」
フエフキ「ああいう喧嘩はおまえ達も食べないんだろうな」
マメイヌ「ワン!」
おわり
フエフキにきっちりけじめを着けてもらいたかったんです、何十年も……。でこんな話を書きました。
この話の後
おチビ「ねえ、風の子、マメイヌ一匹貰えないかな?」
おチビ「ねえ、風の子、マメイヌ一匹貰えないかな?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1387488949/l50)
に続きます。気が向いたら読んでみてください
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