けも鳥 未来篇【けものフレンズ】 (14)

けものフレンズ×火の鳥
シリアス注意です

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×暦××××年――――

地球は急速に死にかかっていた


かつそこには巨大な楽園があった

青く流れる草原があった

赤茶けた命あふれる大地があった

緑の蔓延る瑞々しい森があった

生きるものの幸福とやすらぎと愛の賛歌とがあふれていた

だが、いまでは

わずかに点在する沼と、生えてはすぐ枯れていく

果てしない下草の荒れ地だけが残っていた

人類は一切を地下へと持ち込み、そこに「永遠の都」を作った

「永遠」とつけたのは、おそってくるさみしさを忘れようとするためだった



しかし、そこからも離れ、なお地上で暮らしていくことを選んだ者もいたのだった。

「アサダヨ」

「ん………」

「アサダヨ、ハカセ」

ハカセ「わっ、ラッキービーストですか。朝なのはわかったからもういいのです」

ボス「ミマワリ、イクヨ」

ハカセ、そう呼ばれるこの世捨て人は、荒れ果てた地上にある観測ドームに、生物学的な研究所を作り、そこで一台のロボットと共に生活していた。

ハカセ「おはようなのです、ツチノコ」

ツチノコ「ヴァア―――!!ナンだいきなり!」

ハカセ「ハカセですよ、おちつくのです……… 今日も熱心に本を読んでいるようですね」

ツチノコ「なんだ、ハカセか……… これだ」

ツチノコは溶液に満たされた試験管の内側から、外側に据えられた一冊の本を指さした。

ハカセ「『失われた楽園』、コナン・ドイルの冒険小説ですか。もうそんな難しい本が読めるのですね」

ハカセはボスにその旨を記録するように指示をした。
ツチノコはそんな二人を見つめていたが、おもむろにこう切り出した。

ツチノコ「ハカセ、世の中ってすばらしいんだろうな。ツチノコとは言えども、もうこの筒の中はあきあきした。外へ出てみたいんだ」

ハカセ「だ、だめなのです! そのサンドスター溶媒の中から出た途端、おまえは死んでしまうのですよ!」

ツチノコ「でも、いろんな本を読むにつれ、もっともっと知識がほしくなるんだ………、大海原や古代遺跡を調べて、この目で確かめたいんだ」

ハカセ「いいですかツチノコ、それらの本に書かれていることはみんな、人間が地上で栄えていた遠い昔の事なのですよ。今の世界はそんな楽しいところじゃないのですよ」

ツチノコ「うそだ!ハカセはオレをここから出したくないからそんなことを言うんだろう?」

ハカセ「おまえは人造生物なのです!サンドスターと動物の遺伝子を反応させたアニマルガールなんですよ!なんどもわたしは筒の外にアニマルガールを出してみました。でも………みんな死んだ!」

ツチノコ「それでも!オレはツチノコだ!他の動物たちとは違うかもしれないんだ!………一度でいいから出してくれないか」

ハカセは酷く逡巡したが、最後にはボスに指示を出した。

ハカセ「………サンドスター溶媒を抜いてください。臍帯コードをはずして、試験管壁を上へ」

ツチノコ「お、おお………」

ハカセ「出てきなさい、ツチノコ………、いや、わたしの娘」


ツチノコ「ハカセ!見てくれ!オレは外の世界を歩いている!」

ツチノコはよたつきながら数歩前に進んだ。しかし、そこで苦しそうに悶え膝をついた。

ツチノコ「ハ…カセ………!」

ハカセ「ツチノコ!しっかりするのです!」

ツチノコ「手が…!足が!ハカセ………!マ………」

ツチノコは息絶えた。体はシュウシュウと蒸気をあげ、虹色に光る結晶となって弾けていった。

ハカセ「ツチノコ………、やっぱり、おまえも、だめでしたか………」

ハカセ「神様!!憐れみたまえ!!」


だめだ!

だめだ!だめだ!だめだ!

わたしにはつくれない どうしてもつくれない


神様!あなたは偉大です あなたは宇宙をすべ、このおろかな人間をおつくりなされた!

そのあなたがなぜ、みずかららおつくりになられたこの地球を、人間を………滅ぼしつくそうとなさるのです?

その人間がいきのびようとして苦しみながらあがいているのに、

それさえもおとめになるのですか?

ハカセ「わたしは百六十歳です………サンドスターの影響で、姿が昔のままだとしても、私はそれだけ生きたのです。人間の長なのです」

ハカセ「神様、それでも、あなたから見れば塵に等しい一生です。でも、わたしには夢があったのです」

もうこの世には、馬も犬も猫もサルもいない。ライオンやトラやツキノワグマもとっくに滅びてしまいました!チベットスナギツネもです!

だからこそ………わたしは作ろうとしたのです。アニマルガールという形ではあれど、動物たちの個性を残した、継承者たちを………。

でも、産みだされた彼らは自分の力では生きられないのです! 自然の掟に、反してしか生きられない者たちなのです………。

ハカセ「神よ!わたしに生命の秘密を教えるのです、いや、教えてください!」

ハカセ「ほんのちょっぴりでもいいのです。迷路の中のわたしに………謎の鍵を………」


その時、ハカセはドームの外に強く黄金に光る物を見つけた。それは鳥の形をとりながら、こちらへと近づいてきていた。

ハカセ「鳥………? なぜこちらをみつめるのです?ドームの中に入れてほしいのですか?」

その鳥はぐんぐんと形を変え、黄金の服をまとう少女へと変化した。彼女の頭からは一対の黄金の羽が生えていて、その様子はなぜかハカセの胸をつよくかきたてた。

(あなたの訴えを聞いてやってきました)

ハカセ「………テレパシー?話しかけているのはおまえなのですか?おまえは神の使いなのですか?」

(ちがいます。………分身なのです)

ハカセ「分身!? なんの分身?」

(地球の分身です。地球は意志を持って生きている生き物なのです)

ハカセ「どういうことなのかわかりません………」

(わからなくても構いません。でも、この星が徐々に病気で弱って行っているのは、貴女にもわかるでしょう、長)

ハカセ「それは確かに感じるのです。ではどうやって治していけばいいのですか!?」

(貴女には無理です。そして他の誰にも………。地球を救える人間は、ひとりしかいません。その人間は、もうすぐここへ来ます)

ハカセ「え」

(私が道案内しました。その人間は今ここに来ます)


そのころ、吹雪が吹きすさぶ、厳しい雪原を、
ひとりの人間と一匹のけものが、いまにも倒れそうになりながら、歩いていた。

続きはまた次の夜に

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