小松伊吹「なんだよエスパーか!?」 (17)
伊吹「ふー。ダンスレッスンの後は冬でも結構暑くなるね!」
P「おつかれ。ちゃんと汗は拭いたか?」
伊吹「拭いたよ」
P「水分補給は」
伊吹「した。お母さんみたいだね、P」
P「伊吹はたまに危なっかしいからなあ」
伊吹「他のことならともかく、ダンスに関してなら心配いらないって。何年も続けてることなんだしさ」
伊吹「にしても、あっつー……最近気温上がってきてない?」パタパタ
P「………」
伊吹「ん? どした?」
P「いや。服をパタパタさせてるからチラチラ見えてるんだが、伊吹ってお腹引き締まってるよなあと」
伊吹「お腹? ああ、ここは結構自信あるよ。鍛えた腹筋が構えてるから」
P「運動好きだもんな」
伊吹「なんなら触ってみる? よくわかると思うよ」
P「いいのか?」
伊吹「別に減るもんじゃないし」
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P「そうか。なら失礼して」サワサワ
伊吹「………」
P「おー、本当だ。筋肉がある。ばっちりある」サワサワ
伊吹「………」
通りすがりの奏「あら、伊吹ちゃん大胆ね。乙女の柔肌を白昼堂々と触らせるなんて」
伊吹「………」カアァ
奏「『流れで普通にタッチ許可しちゃったけど、よくよく考えたらめっちゃ恥ずかしいやつじゃん……!』って思ってそうな顔してる」
伊吹「なんだよエスパーか!?」
P「ほうほう。硬く引き締まった筋肉だけでなく、女の子らしい柔らかさを備えたぷにぷにもきちんと存在していて」
伊吹「そこ! レビュー始めるなぁっ!」
別の日
伊吹「おはよう!」
P「おはよう、伊吹。今日も元気そうだな」
伊吹「そりゃあ、アタシの取り柄のひとつだし………む」
伊吹「………」スンスン
P「どうした」
伊吹「タバコの臭いがするような」
P「ああ。さっき一本吸ってきたからだな」
伊吹「そっか……」スンスン
P「タバコの臭い、嫌いか?」
伊吹「んー……好き、ではないかな。嫌いってわけでもないけど」
P「微妙な反応だな。はっきり嫌いと言われたら、俺も禁煙してみようかと思ったんだが」
伊吹「え?」
P「大事な担当アイドルに嫌な思いさせたくもないし。伊吹のためならタバコも我慢できるかもしれない」
伊吹「そっか。アタシのために……へへ」
伊吹「でも、いいや。さっきも言ったけど、べつに嫌いってわけじゃないし。Pが好きなもの、やめさせたくないしね」
P「そう言ってもらえると、こっちとしても助かる」
伊吹「ていうか、むしろどんどん吸っちゃっていいよ。アタシの前でも」
P「そりゃまたどうして」
伊吹「臭いはともかくとして……タバコ吸ってる男の人って、なんか渋くてかっこいいし!」
P「そうか?」
伊吹「そうだよ、たぶん。それに」
P「それに?」
伊吹「………あー、やっぱりなんでもない」
通りすがる奏「『Pのタバコの臭いに征服されるのも悪くないかなー』って顔をしている」
伊吹「なんだよエスパーか!?」
また別の日
伊吹「ダンスはダンスでも、まさか舞踏会のダンスに参加できるなんて。やっぱりアイドルになるといろんな体験ができて楽しいね!」
P「伊吹は、こういう踊りも得意なのか?」
伊吹「専門じゃないけど、人並みにはできるよ? 練習もしたし」
P「さすがだな」
伊吹「せっかくだし、一緒に踊ってみる?」
P「え? いや、俺は参加者じゃないし、あくまで裏方として見に来ているだけで」
伊吹「そんな硬いこと言わない! シャルウィダンス!」
伊吹「ほら……女の子が誘ってるんだからさ」
P「……少しだけなら」
伊吹「やった!」
P「うわっとと」
伊吹「そんなに焦らなくても大丈夫。アタシが合わせるから、自分のペースで足を動かして」
P「わ、わかった……こんな感じか」
伊吹「そうそう! うまいじゃん、P」
P「伊吹のフォローが上手いんだよ。パートナーに恵まれているだけ」
伊吹「そんなに褒めても何も出ないぞ~?」
P「本当のことを言ってるだけだよ。相方を立てるのがうまい、いい女だ」
伊吹「い、いい女……いい女かあ」
伊吹「なんか照れちゃう………わわっ!?」
P「うわっ!」
ばたーん!
伊吹「いてて……ごめん、転んじゃった」
P「俺は大丈夫。そっち、怪我はないか」
伊吹「うん、大丈夫……ヒールが高いからバランス崩しちゃったみたい」
P「靴、見せてみろ。壊れてないか確認するから」
伊吹「ありがとう……」
P「どれどれ……」
伊吹「………」ジーーー
P「うん、問題なさそうだ。足も痛めてないようだし……どうした、じーっと見つめて」
伊吹「あ、ううん。なんでも」
通り過ぎる奏「『このまま足を舐めろと命令したらどうなるのかな……』って顔をしてる」
伊吹「なんだよエスパーか!? って違う違う! そんなこと思ってないし!! Pの真剣な表情に見惚れてただけ……でもないからっ!」
立ち止まる奏「ふふっ、乙女ね」
伊吹「居座るな!」
またまた別の日
伊吹「うーん、風が気持ちいい! あったかくなってきたし、すっかり春だね!」
P「ま、待ってくれ。俺を置いていかないでくれ」
伊吹「あ、ごめんごめん。スケボー走らせてるとつい飛ばしちゃって」
P「俺は慣れてないんだから、スピード出したらすぐ転ぶことを忘れるなよ」
伊吹「大丈夫大丈夫! 転んだってアタシが何度でも引っ張ってあげるから♪」
P「まったく……頼んだぞ」
伊吹「任されよ!」ニコニコ
伊吹「じゃあ、ここからはのーんびり行こうか!」
P「………」
P(スケボーに座って一服する伊吹)
P(短パン姿で若干股を開いて、引き締まった健康的な太ももを見せつけるような体勢になっている)
P「………」
P(これじゃスケボーじゃなくてスケベーだな)
伊吹「今すっごいくだらないこと考えてない?」
P「なんだよエスパーか」
伊吹「アタシのセリフとらないでよ!」
P「気に入ってるのか、このセリフ……」
またまたまた別の日
伊吹「ねえP。今度一緒に映画でもいかない?」
P「いいぞ。どんな映画を観るんだ?」
伊吹「SF映画。評判いいらしいから期待してるんだ」
P「恋愛映画じゃないのか」
伊吹「それも考えたんだけど……恋愛映画見てる時の顔、あんまりPに見られたくない。真っ赤だし」
P「なるほど」
伊吹(そんな感じで、ふたりで映画を観に来た)
伊吹(物語が進むにつれ、息をのむ展開が途切れなく主人公たちを襲ってくる。評判通りの面白さだ)
伊吹(そして、迎えたクライマックスシーン)
伊吹「………」チラ
P「………」
伊吹(て、手とか握っちゃってもいいのかな……)
伊吹「………」ソロソロ
P「…………」モグモグ
伊吹(こ、こいつ~。人がドキドキしてる最中にポップコーン食べてる……こっちの気も知らないで!)
伊吹「なんだよ、エスパーになれよ……」ボソリ
P「………」スッ
P「………」ギュッ
伊吹「あっ……手……」
P「握りたそうな顔してた」ボソッ
伊吹「………なんだよ、エスパーか」ニヘラ
P「エスパーじゃなくてもわかる」
伊吹「………」テレテレ
翌日
早見奏「その映画なら公開当日に見たわ」
伊吹「さすが」
………
……
…
奏「で、どうなの? 最近」
伊吹「どうなのって、なにが」
奏「旦那様との関係」
伊吹「え? い、いきなり聞くんだ」
奏「私、あなたたち夫婦のどっちとも知り合いだもの。気になるのは当然じゃない?」
伊吹「確かに。そうだなあ……最近は、ダンナも仕事が忙しいから。毎日一緒に寝てるけど、週一でできればいいほうかな」
奏「……私、夜の関係については聞いてないんだけど」
伊吹「………」
伊吹「………」カアァ
奏「素敵な自爆をありがとう」
伊吹「わ、忘れてっ! ねっ!!」
奏「どうしようかしらねえ」
伊吹「奏~~」
奏「で? 夜のあれこれは置いといて、実際どうなの? あっちが仕事忙しいと、なかなか時間がとれなくて寂しいとか」
伊吹「うーん。まあ、それはやっぱり感じちゃうかな。でも」
奏「でも?」
伊吹「私が寂しいなあって思ってると、たいてい――」
Prrrrr
伊吹「電話がかかってきて」
奏「出ていいわよ」
ピッ
伊吹「もしもし? どした?」
伊吹「え? 俺の声が聞きたい頃だと思った? なんだよエスパーか!」
伊吹「でも正解だよ。Pの声が聞けてうれしい……へへっ、ストレートに言うとやっぱり照れるね!」
伊吹「うん、うん……じゃあ、お仕事頑張れ! 応援してるぞっ」
伊吹「え? 明日休みになったの? なら、今夜は……あ、うん。そっか……うん。楽しみにしてる……」カアァ
奏「………」
奏「エスパーじゃなくてただのラブラブ夫婦よね」
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
劇場での奏と伊吹のやりとりが好き
過去作
小松伊吹「カラミ奏」
【モバマスSS】泉「プロデューサーのすけべ」
栗原ネネ「まってちがう」
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