空母のおねえさん (20)

こんばんは。前作「提督の休日」の続きです。提督の休日 - SSまとめ速報
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今回も地の文ありです。途中からシリアスと史実ネタが入ります。

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執務室での書類関係の仕事が終わった。時計を見ると午前零時を少し過ぎていた。
自分の体に注意を払うと、腰と背中が無視できない苦痛を訴えている。
椅子から立ち上がって体を捻ってみたら全身の関節が妙な音を立てた。

提督「これで今日の仕事は終わりにしよう。手伝ってくれてありがとう、赤城」

俺が使っていたものとは別の、秘書艦用の机と椅子に座って作業をしていた赤城が息を吐く。

赤城「まだ装備開発の許可書が残っていますが・・・・・・。いいのでしょうか?」

提督「明日の朝にでも書けばいいさ。もう今日はいい時間だ。君も疲れただろう」

赤城「提督がそうおっしゃるのでしたら。では机は片付けておきますね」

提督「頼むよ」

使っていた道具を二人で片付け、寮に戻っていく赤城を執務室のドアから見送る。

赤城「提督、今日も一日お疲れ様でした」

提督「お疲れ様。気をつけて帰るようにな」

赤城「ええ。ではおやすみなさい」

赤城は廊下の向こうの暗闇に消えていった。俺も自室に戻り、寝支度をする。

書類を処理していくというのは極めて孤独で、単純で、ハードな作業だ。
内容を読んでそれが理にかなっているなら許可を出し、そうでないなら不許可、または保留にする。
報告書の場合は書かれていることを覚え、記録し、次の作戦に繋ぐための参考にする。
単純ではあるが、何時間も続けているとさっきのように体の痛みに悩むことになる。

さらに精神的な負担も凄まじい。
時には高さ10センチ以上にもなる紙の山は見る者の心を叩きのめし、仕事を終わらせようと取り掛かる者の心をズタズタに切り裂く。
今日だってそうだ。赤城が手伝ってくれていなければ、俺は宿題の終わらない子供のように震えていたに違いない。

そんなわけで、俺はいつまでたってもこの書類仕事が好きになれなかった。
それでもやろうという気分になれるのは、これが艦隊の活動に大きく関わっているからだ。
そして何よりも秘書艦の存在によるところが大きい。
彼女たちが一緒に手伝ってくれているおかげで、自分が一人ではないと確信できる。

俺はいつも秘書艦を務めてくれる艦娘には感謝を持って接していた。

カウンターで食事を受け取って空母達の席の一角、赤城の隣に座った。
ここはすっかり俺の所定の席になっている。

提督「やあ、おはよう」

赤城「おはようございます」

瑞鶴「おはよー、提督さん!」

提督「おはよう、瑞鶴」

近くの席の艦娘達に挨拶をして食事に手をつける。
今日は目刺しがメニューに入っていた。兵学校の頃の飯を思い出す食べ物だ。
ありがたくいただこう。

食事中の話題は先日俺が瑞鶴に教えた組み技の事だった。

瑞鶴「ーーそれでね、提督さんが教えてくれたのが、相手の喉に腕を押し付ける技で・・・・・・。何て言うんだっけ」

提督「バーチョーク」

瑞鶴「そうそう、バーチョーク!この前はそれを教えてもらってたんだ」

飛龍「ふーん。それで、瑞鶴はその技を提督に使ったの?」

瑞鶴「練習だからもちろん使ったよ!じゃないと覚えられないでしょ?」

ここでまずい事が起こった。瑞鶴が地雷を踏んでしまったのだ。
地雷の爆発は赤城の右隣の席で起こった。静かではあったがその場を凍りつかせる爆発。
一瞬にして空気が凍てつき、全員が息を呑んだ。
恐るべき怒気が加賀の眼から瑞鶴に向かって放たれていた。

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