モバP「保奈美さん、バレンタインですね」 (28)
モバP(以下P表記)「午前の営業、みんなバッチリこなしてくれたようで。TV出演組と夕方営業組はこれからですが、解散時刻は各々の自由なのでそのお弁当食べたらあがってもらって結構ですよ」
西川保奈美「はい」
P「バレンタインっていいですよね。女の子たちがお菓子を振る舞う姿を見るだけで癒されます。何より企画しやすいし外れないってのが胃に優しい」
保奈美「そうね」
P「甘いの好きですし、営業先の余り物を分けてくれるのも嬉しいです。みんな分けてくれるので、室内が甘い匂いでむせそうになるのがたまに傷ですけど」
保奈美「ふーん」
P「それでですね、保奈美さん」
P「どうか私めに保奈美さんのチョコをお恵みいただけませんか?」
保奈美「駄目ね」
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P「なんで!どうして!画面の中のあなたはこんな色っぽい顔して渡してくれるのに!」
保奈美「早速ぶっこんできたわね。画面の中なら誰だって誰にだってそんな顔するわよ」
P「やめて!なんかエロい!」
保奈美「まぁ、そうね。どうして駄目なのか。教えて欲しい?」
P「この流れで聞くのはなんかちょっと怖いですけど、はい」
保奈美「ちょっと考えればすぐわかる事よ。凄く簡単なこと」
バレンタイン
保奈美「私に風物詩SRなんてあったかしら?」
あれー…バレンタインの位置がおかしい
風物詩の上にルビあると脳内補正してください
P「そんなん関係ないやん!!」ドンッ
保奈美「なぜ関西弁」
P「だってバレンタインは全員分限定ボイスが付いてたじゃないですか!全員分!」
保奈美「テキストはあったけどボイスは付いてないでしょ?」
P「鍛えられてるので幻聴もお手のもんですよ!」
保奈美「どこから突っ込めばいいのかしらね?」
保奈美「夕美さんや乃々ちゃんたちもそろそろ戻ってくるんでしょ?昨日みんなで作ってたチョコの余りでも乞えばいいじゃないの」
P「いや、流石に余ってないですよ。握手会とブッティングさせて手作りのチョコを渡すイベントにしたんですから。そんなもんファンからしたら垂涎モンですよ、残さず狩り取られてますって」
保奈美「まぁ予定数のみ隠さず出してたらそうなっちゃうでしょうね」
P「でしょ?でも保奈美さんなら!海外メーカーのチョコの宣伝に行ってきた保奈美さんなら!期待するに決まってるじゃないですか!」
保奈美「Pさん、あのね?一つ言わせて欲しいんだけど」
P「なんでしょう、できれば甘い声でプレゼントして欲しいです!」
保奈美「あんな高いのPさんに買ってくる訳ないでしょ?」
P「畜生ガッデムッ!!」
保奈美「あとついでに試食してきたわ。何度か食べた事あるけど、やっぱりブランドメーカーは違うわね。舌触りとか、口溶けとか」
P「羨ましい食レポやめてください!今度志保とパフェレポさせますよ!」
保奈美「それ嫌がらせなの?」
P「W2センチ増やしてかな子と同じにしてやる」
保奈美「最近ピンヒールも履くようになったのよね。アレってやろうと思えば人に風穴開けれるのかしら?」
P「謝りますからやめてください」
P「特訓後はW61になっちゃうんですよね、保奈美さんは」
保奈美「アレよね。堂々とプロフィールを女の子に突きつけるなんてギルティでしかないわよね。死刑が妥当かしら」
P「ははは、目が据わってらっしゃる」プルプル
保奈美「これも全て事務所の環境が悪いのよ。手作りお菓子が常備してある事務所なんて抗えるわけないじゃない……」
P「といいつつ食後にかな子お手製チョコクッキーを摘んでいる保奈美さん」
保奈美「なにか?」ミシィッ
P「いやまぁ作りすぎたからってこんなに貰っちゃうと消費するのに困りますよねわかるわかる」
P「じゃあもうそれ一枚でいいのでください」
保奈美「Pさん自分の分あるじゃない」
P「ありますけど。そうじゃないんです。保奈美さんのチョコが欲しいんです」
保奈美「じゃあ今から買ってくる代わりに来週のボディチェック延期してくれる?」
P「あ、それ実はブラフで本当の実施日は明後日になります抜き打ちで」
保奈美「ローファーの踵でも踏み方で肉抉れるって知ってる?」
P「抜き打ちだったのバラしてあげたのに!!」
P「くそう、世界は俺に試練しか与えない」
保奈美「いいじゃない、別に。他の子達からいっぱい貰ってるんだから」
P「本当に欲しい物はいつだって手に入らないものなんですね……」
保奈美「お金積んだって手に入らない物はあるもの」
P「無情なるこの世界……せめて復刻の報いがあらんことを……」
P「それで、保奈美さん」
保奈美「なぁに?」
P「どうしてさっきからずっと、そんな機嫌悪いんです?」
保奈美「どうしてだと思う?」
P「あの、申し訳ありませんが皆目検討がつきませんで……情けないですが」
保奈美「そう。別にPさんが悪いわけじゃないのよ?根本的には、だけど」
P「原因は俺、というわけですよね。参ったなぁ……どうすれば許してもらえます?」
保奈美「自分で考えたらいかがですか?」
P「更に怒らせてしまった…聞き方間違えたかな……」
ガチャリ
森久保乃々「お、お仕事、終わったんですけど……」
P「お、森久保。お疲れさん。どうだった?他の連中は?」
森久保「みなさんキッチン借りてまだ何か作ってるんですけど……森久保は疲れて先に…もう帰って寝たいんですけど」
P「その様子なら大体うまくいったようだな。お疲れさん、机の下にポットと弁当置いといたから食ったらあがっていいぞ」
森久保「あぅ、実は差入れがあって、それでもうお昼十分なんですけど…」
P「そうか、女子寮まで送ろうか?」
森久保「いえ…一人で寮まで歩いて行くんですけど……昨日試食でいっぱいチョコ食べちゃったので……もちくぼにはなりたくないので……」
P「お、おう。まぁ運動するのも大事だよな。気をつけてな」
森久保「…………………………あ、あのぅ。ぷ、プロデューサー、さん」
P「どうした森久保。次の仕事も握手会だぞ」
森久保「む、むーりぃー……ですけど、そっちじゃなくて……」
P「?」
森久保「う、うぅ……」
P「(目が………合った?)」
森久保「こ…これ!チョコ、なんですけど……シンプルで凝ったものとか入ってないですけど、夕美さんに教わって、気持ちだけはしっかり込めたので……」
P「………」
森久保「ど、どうぞ……」
P「………」
森久保「………」
P「森久保ォ!!!!!」
森久保「ひぃっ!!」
P「嬉しいぞ森久保ォ!ありがとな!!」
森久保「も、もう帰るんですけど!お疲れ様でしたんですけど!!」
P「森久保だと思って大事に食べるからなぁ!!」
森久保「むーりぃー……!!」
P「あぁ……こう、なんていうか。森久保見てると俺の中の父性が沸き立つというか……」
保奈美「………」
P「うん、やっぱりバレンタインって最高ですね。保奈美さん」
保奈美「そうね」
P「それでなんですけど、保奈美さん」
P「私めにチョコをーーー」
保奈美「引っ叩くわね?」
P「ちょ、待ってくだヘブッ」
保奈美「正気の沙汰とは思えないわ」
P「正気な人間がここのプロデューサーやるとは思えないんですが」
保奈美「黙って」
P「はい」
保奈美「あのね?別にPさんが誰にチョコ貰おうが、その際にイチャコライチャコラしようがっ、そんなの全然、全っ然ッ、私には関係ないから知ったことじゃないんだけどね?」
P「えっと……はい」
保奈美「さっきからずっと、ずっとよずっと!ジョバンニみたいな光景見せつけられたら気分も下がるに決まってるでしょ!」
P「そんな見境なく女口説きまくる男と一緒にしないでくださいよ」
保奈美「見境なくアイドルに引っ張り込むあなたが言うんじゃないわよッ!!」
P「うわぁ逆鱗に触れた」
※ドン・ジョバンニ
古典派音楽の巨匠、モーツァルトが作曲を手掛けた五大オペラの一つ。物語は女たらしの貴族ジョバンニが次々と傍若無人に女性との関係をもち、最終的には地獄に落ちる愚かな男を演目としている。一同、悪事をなすものの成れの果てはこうなると歌い、それはあんたんを煽るプロデューサー共にも同じ事が言えよう。
保奈美「巴ちゃんから、仁義といいつつ顔を赤らめながら渡されたチョコはどうだった?」
P「最高でしたね。思わず『本命だったら仁愛で浪漫溢れちゃいそうだな』って言っちゃいました」
保奈美「その後の美波さんは?」
P「『美波の本当に魅力的なところはこういうところからわかるよな』って言いました」
保奈美「珍しく朝から居た杏ちゃんは?」
P「抱っこして振り回して掻い繰りかいぐりしてました。というか、保奈美さん全部見てたでしょ?」
保奈美「えぇ。そっぽ向きながら手渡ししてた杏ちゃんも、ハート型にしようと板チョコに歯型入れてた輝子ちゃんも、自爆してたバレンタイン反省会の方々も、みんな見てたわよ」
P「チョコ渡す相手が俺しかいないっていうから、315プロの知り合い紹介しましょうかって言っただけなのに」
保奈美「正座させられてたわね」
P「つらい」
保奈美「でも、手作りから高級な物まで、色んな人から色んなチョコ貰って。満更でもなかったでしょ?」
P「満更どころか至福の一言です」
保奈美「じゃあなんで私のチョコに拘るのよ。一個くらいあろうが無かろうが変わりないじゃない」
P「保奈美さん、俺が欲しいのはチョコの数という虚精神を満たすだけの数字じゃないですよ」
保奈美「でも同僚とチョコの数競ってるんじゃなかった?」
P「保奈美さん。チョコの数を競ってるんじゃないです。チョコに宿った思いの数を競ってるんです」
保奈美「ここまで安っぽい言い訳も中々ないわね」
P「いやほんと、別にチョコの数を本気で競ってる訳じゃないんですよ?お互いただの笑い話に使う為にでしてね?」
保奈美「へぇー?」
P「出来映えや選び方なんかも、色々比較すると面白くて。性格違うのに選んだ物が一緒だったり、同じ種類のチョコを作っても味や見た目が違ってたり」
保奈美「ふぅーん?」
P「そこからユニットの構想を考え始めたり、演出の幅を広げてみたり……馬鹿にならないんですよ?こういうの」
保奈美「でも他の人たちに面白おかしく話しちゃうんでしょ?」
P「語弊がありますよ、話のネタにはしますが本人の尊重を忘れたりはしませんって」
保奈美「そうなの」
P「信じてませんね?」
保奈美「じゃあ約束しなさいよ」
保奈美「そんな笑い話の一つに加えられるんじゃなくて、事務所の一人からのチョコっていう括りじゃなくて。私のチョコだけがPさんにとって特別なチョコなんだって。約束、してよ」
P「え!!?チョコくれるんですか!!?」
保奈美「Pさんって空気読めないの?」
保奈美「今のはそういう流れじゃないでしょ?滅茶苦茶カローレに言った台詞だったでしょ?他の子にはパーフェクトコミュニケーションなのにどうして私はオチ扱いなの?狙ってるの?わざとなの?そういう病気なの?ねぇどうなの?」
P「ごめんなさいごめんなさい。だって本気で貰えないかもって思ってたんですもん」
保奈美「脅し過ぎたわね……途中まではシナリオ通りだったのに」
P「よくわからないけど担当が怖い」
保奈美「理解しようとしないのは逆に賢いのかもしれないわね」
P「んー、それで……結局自分は保奈美さんのチョコを貰えるんでしょうか?」
保奈美「このマイペースさは見習うべきかしらね」
P「褒めてます?」
保奈美「貶してますが?」
P「ですよね」
保奈美「本気で貰う気あるのかしら…」
P「いやまぁ、さっきの話に戻りますけどね?」
P「保奈美さんからのチョコですよ?特別にならない訳がないじゃないですか」
保奈美「……」
P「どうしました?」
保奈美「私、Pさんが怖いわ……ズルいわよこんなの」
P「?」
保奈美「いつか誰かに刺されて死にそうね。私がいうのもアレだけど」
P「えっと、保奈美さん?」
保奈美「なあに?Pさん、そんなお預けくらったアッキーみたいな目をして」
P「………」
保奈美「………」
P「……………」クゥ-ン
保奈美「あぁ、もう」
保奈美「ちゃんと用意してあるわ。ドルチッシモで、口に入れたら忘れられないようなチョコ。私の気持ち、受け取ってくれる?」
そしてPは望んだ物を手に入れた。それが更なる試練への序曲であることも知らずに。
とりあえず、三食チョコとなったPは古典的に鼻血を出して貧血で寝込んだ。頑張れ、プロデューサー!負けるな、プロデューサー!
あとチョコは100個くらい残っている!!
おしまい
卒論発表終わったからノリと勢いで書いた。オチはもう使い古されてるんじゃないかと不安でチョコが食べれない(収穫0)。
はい。依頼出してきます。
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