これはあたしとフレちゃんがフラフラしてたころのおはなし。
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◇◇◇◇◇
あたしはフレちゃんとの出会いを鮮明に覚えている。
それが他人からも劇的に見えるかは自信ないけど、順序もわかりやすいし、まずはここから。
新宿駅東南口は、平日の昼前だったけど、人が2~3mぐらいの距離を保ちながらバラバラの方向へ歩いていた。
冬の東京は、あたしが記憶する三陸沿いや西海岸北部に比べて、だいぶカサカサした空気だった。
おかげでこんな人混みの中でも、あたしの鼻に人の気配を薄くしか感じられなかった。
行く宛のないあたしは、足の気分のままペデストリアンデッキを上った。
うっかり高校の制服を着たままだったけど――家を出る時は、ちゃんと学校に行くつもりだった――
ここの通行人は、昼前にJKがフラフラしていてもさほど気にしないでいてくれるらしかった。
けれど寒い。コートの一枚ぐらい着込んどけばよかったと後悔した。
冷たい空っ風を何処でしのごうかと辺りを見回すと、デッキで何人かが足を止めていた。
その視線の先は、デパートに張り付いたオーロラビジョン。
モニタでは、あたしとほぼ変わらない年頃の淡いピンクの女の子が、
あたしたちの年頃にしては背伸びしたブランドのコスメチックをまとっていた。
もしあたしが空を飛んで、LEDを突き破って、あの女の子のそばにいけたら、
どんなニオイを嗅がせてもらえるだろう。
そういえばあの子は、事務所でちらりと見た気がする。どんな似たニオイ、するのかな。
たまたま、別の日の別の街角で出会ったアイドルとプロデューサーは、いい仕事してるニオイがしたんだけどな。
あたしはそれにつられてアイドル――正確には候補生に――にしてもらった。でもあたしはさっぱりだ。
女の子の姿が最初へループしたのと同時に、あたしはここから離れようと思った。
もっと何もないところに行きたかった。
その瞬間、あたしの粘膜に、薔薇のような華やかな甘さが滑り込んできた。
オー・ド・パルファムの残り香かな。
香水となると伊達を気取ってしまうあたしは、誰にも頼まれていないのに、
そのニオイの一しずくを鼻穴から気道の入り口で撫で回して脳裡で洗った。
「……<ランコム>の、トレゾァのトップノートかな?」
オー・ド・パルファムのトレゾァ。初めの香り(トップノート)は薔薇の香りがする。
それからミドルノート、ラストノートといって、数時間かけて魅惑的なバニラの甘さに変わっていく。この移ろいは揮発性の差で仕掛ける。
あたしの勝手なイメージだけど、日本でこの手のものをまとう女性はそう多くない。
香水を愛用する人が限られてるし、出かける前に一吹きする人であっても、
トップノートとかミドルノートとかいう香りの変化がある古風な香水はあまり見ない――もとい、嗅ぎ取らない。
あたしはニオイの主の洒落者具合に興味が湧いて、嗅球の導くままに足を進めた。
いる。ちょっとだけ離れている。駅入り口の方。
人混みに遮られて、目では見えないけど、わかる。
ニオイが強くなる。トレゾァだけじゃなく、その主のニオイも――女の子だ。間違いない。
年頃はあたしとさほど変わらないだろう。ちょっと濃いかな? おかげでわかりやすい。
もう近くだ。どんな子だろう――
あたしは頭を上げた。
そこでぼうっと立ち尽くしていたのが、フレちゃんだった。
出会った日にあたしが見たフレちゃんの姿は、既に今の面影があった。
細く柔らかそうな金髪を少しだけ遊ばせたボブカットで、うなじを毛先がなでている。
横顔でもわかるぱっちりとした碧色の瞳。薄くて体温が透けそうな白い肌。
その肌に輪をかけて白くふわふわとした織りのセーターが、細い肩と首に絡みついて、
シンプルな黒のミニスカートからは、お人形さんみたいなすらっとした足が無造作に伸びていた。
フレちゃんは、他のせわしない新宿の通行人と違って、その場を一歩も動かないまま、
あたしたちの頭上にある何かに視線を注いでいた。
ついあたしもつられて、フレちゃんと同じ方に顔を向けた。
視線の先には、迷路のごとき鉄道路線図が貼られていた。
駅と路線が多すぎて、始めてみたときは――あたし、こう見えて田舎育ちだったから――
新宿が路線図上のどこにあるかさえ探すのに手間取った。
あたしは、フレちゃんの立ち尽くしている理由を合点した。
そして最初に話しかけたセリフが、
「May I help you?(お困りですか?)」
フレちゃんはびくっとしてあたしの方に顔を向け、
あたしの顔を見てから申し訳なさそうに目を細めて、
「そーりー、あいきゃんすぴーく、じゃぱにーずおんりー」
「いやソレ英語じゃん」
あたしたちは、コミュニケーションにあたって割と初歩的な勘違いをしていたのだった。
「うふふ、なんだー。道を教えてもらいたかったんじゃなくて、道を教えてくれようとしたんだね。
ありがと。でも、大丈夫。アタシ、こう見えて人生の半分以上は東京住まいだから」
フレちゃんに正面からにっこり微笑んでもらって、あたしは内心ドキっとした。
「いやこっちこそ失礼。あたし、てっきり日本語がわからなくて困ってるんじゃないかと思っちゃって」
「アタシったらこんな外見だもんねぇ。実際、半分はフランス人だし」
フレちゃんはそういう扱いに慣れているようだった。あたしはそんなフレちゃんへ勝手に親近感を覚えた。
あたしもアメリカにいた頃は、見た目が完全にアジア人(実際あたしの両親は日本人だし)なので、
謎のアジア言語で話しかけられて困惑した場面が結構あったから。
「それにしても、困ってる外国の人に自分から英語で話しかけるなんて、キミは英語自信あるんだ?」
「そうだね。ちょっと前まで、アメリカの学校にいたから」
「すごいすごい! アタシもちっちゃい頃はパリに住んでたんだけど、フランス語は全然覚えてないや。
アタシと年変わらないぐらいなのに、すごく勉強してるんだね」
フレちゃんの素朴な感嘆にあたしは二度ドキっとさせられた。あたしはそんな立派なもんじゃない。
あたしは飛び級で入ったアメリカの大学も飽きて辞めちゃったし、帰国して潜り込んだ東京の高校も今こうしてサボってるし、
夕方に始めるはずのアイドルの基礎レッスンも、反復がつまらなくてすっぽかそうとしているのに。
するとフレちゃんは、あたしがこの平日の昼間に新宿の繁華街で高校の制服を着込んでいることに気づいたのか、
「あ、別にイヤミで言ったわけじゃないよ? アタシも服のお勉強してて、
今日も講義があるはずなんだけど……なーんか、気乗りがしなくって。こんな気分のときもあるよね。
どう? お暇なら、これからお茶でもしない?」
誘いは渡りに船だった。
乾いた雑踏の中を一人でさまようより、フレちゃんとカフェで一服するほうがよほど魅力的だった。
その日のあたしは朝食も食べていなかったし――家族もルームメイトもいない一人暮らしだと、
適当になっちゃって――あたしは早速フレちゃんとあたりを散策して見つけたルノアールに入って、
カップを片手にモーニングをパクついておしゃべりしたり、お腹がいっぱいになったあとはREMEMBER17を冷やかしたり、
カラオケで客層がまったく読めないようなセトリを作って遊んだり、空が暗くなるまで一緒に過ごした。
◇◇◇◇◇
知り合って一週間も経たないあたり、あたしはフレちゃん家へお茶にお呼ばれした。
最寄り駅まで行ったら、フレちゃんがそこから案内してくれるとのこと。
その最寄駅は恵比寿だった。西海岸で都会の免疫がついたとはいえ、
根が岩手育ちのあたしはまだしゃちほこばってしまう地名だった。
あたしは事務所にあった雑誌をいくつも広げて片っ端からスイーツ特集を調べた。
スイーツ特集は先輩アイドルも絡んでいたせいか、同期の佐藤さんから『ついにあの志希がやる気を出したか!』
と驚かれてちょっと気まずい思いをした。お友達への手土産を物色していたとは言えなかった。
結局あたしは、フルーツの淡い色が優しげなギモーヴを買っていくことにした。
お昼過ぎ、あたしが改札階に立つと、待っていたフレちゃんが気づいて遠くから手を振ってくれた。
フレちゃんは行き交う人の流れでも一際目立つ。まるでアイドルみたいに周りの人の目を集める。
それから東急の路線バスに乗り込んでまた少しおしゃべり。
『前は白・赤・青のトリコロールカラーで、もっとフランスっぽかった気がするんだけどなー』とのことだった。
商業地を抜けて住宅街に入ったばかりのバスストップで降りる。
宮本邸は異国情緒あふれる娘と対照的に、周りの住宅に溶け込んだ自然な外観だった。
バロック調だのロココ調だのが出てきたらどうしようと身構えていたあたしはちょっとほっとした。
しかしそのあたしの安堵は、ほどなくしてまた引き締められるのだった。
あたしがギモーヴの包みを渡すと、フレちゃんは『コーヒーと紅茶、どっちがいい?』と聞いて、
それから奥まった方にあるキッチンへ行き、あたしはリビングで布張りのアームチェアを拝借した。
インテリアは布と木で統一されていた。あたしは家具の造詣がまったくないので、
それらがどんな由来のものかはうかがい知れなかったけれど、
年季の入った木目がきれいに磨かれていて、長い間とても大事に使われていたことだけはわかった。
部屋の隅に小さなフォトフレームがかかっていて、そこにはフレちゃんが家族と思しき人と並んで写真に収まっていた。
真ん中でまぶしく笑うのは明らかにフレちゃん。現在の彼女とほとんど変わらない姿だ。撮られてから何年も経っていないんだろう。
フレちゃんのすぐ右には、パパらしき男性。黒髪の中肉中背で見るからに日本人という感じだが、
わざとなのか知らないけどギョロ目を大きく見開いていた。フレちゃんの眼力の由来が察せられた。
フレちゃんの左側には、金髪碧眼の女性が微笑を浮かべていた。遊びのあるフレちゃんのボブと違って、
こちらの女性は顎できっちりと切りそろえた古風なボブで、サガンやコレットの小説に出てきそうなマダムだった。
(もっともあたしは、フランス女流文学なんて事務所の相川さんが読んでるのを横目で眺めたことしかなかったけど)
家族写真って本当はこういうものなんだろうね。
残念ながら一ノ瀬家でそれを想像することは、あたしの頭脳をもってしても困難だった。
あたしが宮本家の肖像を眺めていると、やがてコーヒーの香りがキッチンからこっちまで届くようになった。
濃い。これは濃い。あたしは前にコーヒー党を気取って買って、
2~3度しか使わないまま放置している自宅のフレンチプレスを思い出した。
そしてフレちゃんは噴水のように香りを惜しげもなく漂わせるコーヒーカップを2つ、
さらにあたしの買ってきたギモーヴを花のように丸く並べたお皿を、それぞれお盆からテーブルに移して、
「マドモアゼル・シキに午後の潤いを――ぼなぺてぃ♪」
と大げさなウエイトレスの真似をしてあたしに勧めてくれた。
あたしはカップに手を伸ばしかけて、その手を宙で止めてしまった。
カップは陶磁器で、ラピスラズリのようなこってりと艶のある青に、桜のような五枚花弁の金彩があしらわれていて、
中の黒く芳しいコーヒーと対を成す瀟洒な装いだった。
「あれ、シキちゃんはもっと薄いほうがお好みだった?」
見るとフレちゃんは、あたしとお揃いのカップでゆったりとコーヒーを楽しんでいた。
「いや、このカップが素敵だなぁって思って」
「これ? ママが独身時代から使ってるんだって。まぁ今はあたしもパパも使うんだけど」
「トレゾァと一緒でママ譲りなんだね」
友達のママの愛用品となると、さすがのあたしもカップを持つ手が強張った。
「トレゾァ――ああ、あれね。香水もアタシ詳しくないからなー。ママがオススメしてくれたのをつけてるだけ。
でも、ステキって言ってもらえるのは嬉しい。つけるときは、気分もお出かけモードになるし」
「カップも、これだけ立派だとコーヒーブレイクの気分も変わってくる気がするよ」
そう言ってカップを口に運んだりソーサーへ下ろすあたしの手は、
カチンと無作法な音を出したり、縁からコーヒーの雫が垂れて金彩を汚したりしないかと恐れて、
フラスコや乳鉢を扱うかのような厳粛さで動いていた。
隣のフレちゃんが、穏やかでくつろいでコーヒーやギモーヴを堪能しているので、
ますます自分の浮き具合が気になってしょうがない。
「あはは、おカタくなっちゃうのは分かるよ。アタシも、ちっちゃい頃はおてんばで、
お行儀を仕込むためか、ある時ママがこれを持ち出して『フレデリカ、今日からこれを使いなさい』って。
馴染むまでしばらくかかったなぁ」
なるほど、フレちゃんの立ち居振る舞いを育てたのはこのカップらしい。
「いやいや、そんなお話を聞いたらますます迂闊には扱えなくなっちゃうよ」
「でも、ステキなものだからこそ普段から大切に使ってあげて、むしろエレガントさを分けてもらおー、
なんて気分でいれば、このセーヴル先生も喜ぶよ」
それからあたしはフレちゃんのパパとママとに顔を合わせることになった。
パパとママの帰りを待つ間、夕食のデザートを一緒に作ろうということになった。
冬の終わり、イチゴの美味しい季節。甘く丸々としたイチゴが八百屋さんを賑わせていたので、
フレちゃんがイチゴタルトを作ろうとアイディアを出して決まった。
イチゴを買ってフレちゃん家に戻ったあと、あたしはフレちゃんが、
冷蔵庫からなんの前触れもなく一晩寝かせた自家製パート・シュクレを出したのを見て、目が点になった。
「できれば一晩、急いでいても2時間は寝かせたいよね。焼き上がりが違うから」
あ、はいフレデリカ先生。あたしも化学畑なもんで、寝かせる意味――グルテンの結合がどうたらという理屈は分かるけど。
なんでそれが用意良くいきなり出てくるんですかねぇ?
フレちゃんがパート・シュクレを麺棒で伸ばしている間、あたしはイチゴのヘタをとってカットしていた。
その時フレちゃんに『フレちゃん家では結構タルトとか焼くの?』と聞いたら、
フレちゃんはこともなげに『うん。いつもはママと二人で。ママのお仕事が休みの日は……割と?』と言った。
宮本家と一ノ瀬家のギャップはどうやら相当に深い。あたしはママとキッチンに並んだ記憶すらないのに。
パート・シュクレを丸いタルト型に敷き込んで焼き上げる。
その間にコーヒーでまた一服。あたしも少しだけセーヴル先生に慣れてきた。
そしてフレちゃんがタルトに塗るナパージュを作る間に、あたしは冷ました生地へイチゴを並べるよう頼まれた。
あたしは切り分けたときを考えてまんべんなく乗るよう――イチゴはどっさりと買って量があったので、
思ったより苦労して――盛り終わってフレちゃんに見せると、フレちゃんは碧眼をぎょっと見開いて、
「わお。さすがアメリカ帰り! ジャクソン・ポロックみたいだね」
あれ、あたし美術はよく知らないけど、ポロックって東海岸だよね?
あたしが居たのは西海岸で――
「でもノンだよシキちゃん、これはミヤモト家の流儀に対してアバンギャルドすぎますねぇ。
イチゴは向きを揃えて、きれいな円を描くように並べるんだよ」
そういってフレちゃんは、あたしにお手本を示そうとして、
ジョルジュ・スーラがキャンバスに色を点描していくように、タルトの外周へ一つ一つイチゴを添えた。
あたしは合点して、エスカルゴの殻じみた渦巻状のパリの区割りを思い描きながら、
放射状の模様が浮かぶようイチゴを並べた。
真ん中の玉座にはあたしとフレちゃんで選んだ、一番大きくて形のいいイチゴを据えた。
それから並べたイチゴの一つ一つに、フレちゃんの作ってくれたナパージュを薄くキラキラするよう刷毛で塗った。
「できた! さいきょう、きゅうきょく、オランジェット!」
フレちゃんの高らかな太鼓判を捺されたイチゴタルトは、あたしが今までに見たどんな風景よりも輝いていた。
あたしはすぐに携帯を取り出してフレちゃんと一緒に記念写真を撮らせてもらった。
それからフレちゃんのパパとママが帰ってきて――どうやらデートだったらしい――
あたしは夕食のご相伴にあずかり、いよいよイチゴタルトのお出まし。
フレちゃんと二人でナイフを入れるときは、聖餐式じみた厳かな気分になった。
(もっとも、あたしは本物の聖餐式なんて出たことないけど)
あたしはフレちゃん家から帰る途中、コーヒーショップを探して豆を買った。
そしてフレンチプレスを探して3度水洗いしてから、フレちゃんを想像しながらエスプレッソを淹れた。
あたし愛用のマグは、綺羅びやかさではフレちゃんのセーヴル先生に遠く及ばなかったけど、
代わりに素晴らしくたくさんのコーヒーを注ぎ入れることができた。
おかげで、濃すぎて飲みきれない量のエスプレッソをうっかり淹れてしまった。
それを飲み干すのに四苦八苦する間、あたしはタブレットでフランスの陶磁器を調べてみて、
フレちゃんの『セーヴル先生』がセーヴル焼きということに気づいたときは、
『アレ、志希ちゃんえらい子と友達になっちゃた?』なんて思っちゃって。
あたしは葛藤の末、そのタブレットでセーヴル先生の代わりにリモージュ先生を注文した。
数日後にリモージュ先生が届くと、あたしは先生へ敬意を払うため、
実験器具を扱うのと同じつもりで――彼女らは水滴一つでへそを曲げちゃう、カップとはまた違ったデリカシーを持っている――
うやうやしく水洗いして迎え入れた。少しだけフレちゃんのエレガントさを分けてもらえた気がした。
◇◇◇◇◇
それからあたしは、フレちゃんにどんどん傾倒していった。
あたしはフレちゃんと出会うまで、世界はあたしに対してあまりにも退屈で融通が利かないものと思っていた。
太平洋を西から東に渡る頃はそんな世界を意地悪だとなじりながらあちこち走り回り、
東から西へ戻る頃にはケチをつけるのに疲れ果てていた。
でもフレちゃんと一緒にいると、一杯のコーヒーが、一切れのイチゴタルトが、
ウソのようにあたしの心を弾ませて、いてもたってもいさせない。
あたしは万事『フレちゃんならどうするかな』と考えて動くようになった。それだけであたしはヒロイン気分に浸れた。
何気ない日常に輝きを見出す時、その見出した人もまたヒロインのように煌めく。
フレちゃんはあたしにとっていつも煌めく『Daily Connoisseur(暮らしの達人)』で、あたしはさながら押しかけ弟子だ。
あたしはフレちゃんと並んで撮ったイチゴタルトの記念写真を、
携帯からプリンタで刷ってフォトフレームに入れて自宅の一番広い部屋の端っこに飾った。
――これはミヤモト家の流儀に対してアバンギャルドすぎますねぇ
こうしてると、あたしがシックじゃない振る舞いをした時に、
フレちゃんの声が聞こえてくるようで、あたしは居住まいを正すのだった。
フレちゃんも、ママから『ちゃんとイチゴを並べなさい』って叱ってもらえたんだろうか。
宮本家の面影を求めて、あたしはリモージュ先生に飽き足らず、<ランコム>のトレゾァまで買ってしまった。
フレちゃんみたいな、薔薇の強く華やかなトップノート――テーマは『幸せに輝く、幸せに包まれる香り』とあった。
トレゾァのニオイそのものは気に入ったし、普段使いにできなくもないお値段だったけど、
あたしはそのニオイと重なって見えるフレちゃんが眩しくて、一吹き以来その瓶を閉じたまま。
フレちゃんがママに選んでもらった香りと思うと、あたしがつけるには恐れ多くて、
時折取り出して、壜の外観を眺めては撫で回すので精一杯だった。
フレちゃんのスタイルを真似てすぐ、あたしはこれまで世界に感じていた退屈が、
他でもないあたし自身を原因とするもの……と認めざるを得なくなった。
どこをさまよっても退屈なわけだ。
要するにあたしは、すべてのことをあまりにも無造作に行っていた。
あたしが唯一傾倒していた香水だって、細かい芳香や色の変化を意識しなければ、その魅力の大半を失うだろう。
あたしは人生のほとんどでその失策をやらかしていたのだ。
何事も無造作にやって、それで人に認められるほどの結果を出せる才能を『ギフテッド』というのであれば、
あたしは人生の味を台無しにしかねない危険な贈り物をもらっていたらしい。
フレちゃんと会える日は、学校や事務所の友達と比べると多くはなかったけど、
あたしは日々フレちゃんとイチゴを並べた時のように、五感を限界まで澄まして日々を貪り食らった。
あたしの意識の食欲を、世界は呆れるほどの広さと濃密さで受け止めてくれた。
特にアイドルのレッスンは見違えるほど鮮やかになった。
ボイスレッスンでは、芳香で空気を染め上げているエスプレッソになりきって喉を震わせ歌声を染み出させた。
ダンスレッスンでは、イチゴの位置を吟味する気分でステップを踏み手足を伸ばした。
そんなあたしの変貌に、プロデューサーは『変なクスリでも飲んだか?』とうっかり呟いて、
あたしの同期のはぁとさんにしばかれてた。
ただビジュアルレッスンは勝手が違った。
なにせあたしは、私服もろくに持っていないぐらい身だしなみに無頓着だったのだ。
身を飾るにあたって根っこの根っこ、他人の視線を推察するという時点であたしは問題があった。
季節は移ろい、春の囁きが聞こえてくる頃。ファッション業界はウサギよりも早く激しく騒ぎ出す。
アイドルの端くれであるあたしにも、その喧騒は耳に入ってきた。
そこでうっかり『志希ちゃん、私服とかほとんど持ってないんだよねー』と事務所でこぼしてしまい、
即座にはぁとさんにがぶり寄られて、オフの一日中お店を連れ回され着せ替え人形にされた。
それにホトホト懲りたあたしは(はぁとさんのエネルギッシュさは好ましいと思うけど、
不慣れなあたしはもっと落ち着いて服を選びたかった)フレちゃんに付き合ってもらうようお願いした。
その日のフレちゃんは、黒レースをあしらったキャミソールの上に、
さらに薄紫の透け感のある長めのキャミソールをもう一枚重ねて、
ボトムスはベージュの活動的なショートパンツだった。
『もうちょっと春に寄せたほうが良かったかな?』とは本人談だけど、
あたしの意識では、どっちがいいか判断しかねた。
あたしはフレちゃんと一緒に春物を見て回った。
フレちゃんに色々アドバイスしてもらったり、逆にあたしがフレちゃんのチョイスに感想をあげたりした。
着せ替え人形になるのもかわりばんこだったので、夕方になる頃の疲れ具合も程よい感じだった。
あたしはフレちゃんと一緒に歩いているだけで刺激的だったのだけど、
フレちゃんはその日あたしと色んなジャンルのお店をハシゴしたのに、結局服は一着もレジに通さなかった。
「今日は、フレちゃんのおメガネに叶う一着は見つからないかなぁ……」
あたしはフレちゃんがどんな服を自分に選ぶか楽しみにしていたので、
まるで自分が何も買えなかったような落胆ぶりで声に出してしまった。
フレちゃんみたいに服飾デザインを勉強してると、こだわりも強くなるんだろうか。
「うーん、今ある服と入れ替えてもいい、ってのは無かったかなぁ」
あたしはフレちゃんの言葉で、アイドルの衣裳部屋並にずらりと服のかかった光景を連想した。
しかし、あたしはその後『ちょっとうちで休んでいきなよ』とフレちゃんに誘われて、
それで頼んで見せてもらった収納は、セーター、ブラウス、パンツ、スカート……
「あれ、意外とスッキリしてるねぇ……」
そこにかかっていた衣類は、何度数えても両手の指で足りた。
上着やアンダーシャツやアクセントがそこにはなかったので、それは別に保管しているのだろうけど、
それにしても衣装持ちを想像していたあたしの予想は大外れだったわけだ。
アメリカのオシャレ面したセレブリティは、クローゼットに入り切らないほど服を詰め込んでおいて、
まだ足りないまだ足りないとノードストロームを右往左往していたのに。
あたしが率直な感想を漏らすと、フレちゃんは、
「パリジェンヌだったらこんなもの……ママの受け売りだけどね。
日本もどっちかといえばパリ寄りじゃないかなぁ。アイテムの数を絞り込んで組み合わせで着回しを考えて、って」
と語った。
そして服飾デザイナー志望者とは(少なくともあたしの観点からは)思えない話が続けて飛び出す。
「今この季節、今のこのアタシの体型にぴったりとくる服なんて……10着も見つけられればいいほうじゃない?」
あたしは、試しに今フレちゃんが着ているキャミソール2枚とショートパンツを着た自分を想像した。
サイズは……まぁ、大丈夫なハズ。しかしそれ以外は、ムリ。
そもそも金髪ショートボブのコーデを、黒髪でロングでウエーブのあたしが着るとか、
頭の先とアウターのカラーリングの時点で『もうちょっと他になかったの?』と思われてしまうだろうし、
たとえ他人にそう思われなくてもあたしが自分でそう思ってしまうのでアウトだ。
「ママが言ってたの。パリジェンヌは、今の季節、今の自分にぴったりとくる服だけをクローゼットに入れる、って。
チェックすることは色々あるよね。カラーやデザインはアタシに合ってるのか。サイズはぴったりか。
出入りする場所や行動範囲に合っているか。地元の気候に合っているか。着心地はどうか。
アタシ自身の趣味に合っているか。買ったあとにしても、ほつれたりヨレたりしてないか……」
「そこらへんを厳しく吟味してくと、10着ぐらいになっちゃう……ってコト?」
その時のあたしは、たぶんフレちゃんの言を芸術家肌のこだわりのように受け取っていたけど、
あたしの内心を見透かしてか、フレちゃんは軽く笑って自説を続けた。
「絞るのはたいへんに感じるかもしれないけど、そのほうがファッションを楽しめる気がするの。
どれ着てもハズレなし! と自信を持ってチョイスしたクローゼットなら、見てるだけで嬉しくならない?」
あたしはフレちゃんの収納を改めて端から端まで見た。
その一着一着が、フレちゃんの微に入り細を穿つセンスのふるいにかけられたお気に入りの品、という。
確かに、いくら気さくなフレちゃんだって、誇らしく思ってなかったら、
こんなプライベートなところをあたしに頼まれて見せたりしないだろう。
まぁ、あたしがあまり食い入るように見つめていたせいか、
すぐに『ハイ、もーフレちゃん秘蔵のコレクションはおしまいっ!』と閉められてしまったけど。
「……それに、服の数が少ないのはいいよ。出かけるときにすぐ服が選べて、そのぶん朝ゆったりすごせる」
「それは大事だね。うん、とっても大事」
もう一つ付け加えられた実利的な理由に、あたしは秒速で首肯した。
「やっぱり、フレちゃんはすごいなぁ」
あたしは扉を閉められたクローゼットを見やり、改めてフレちゃん流への感銘を述べた。
フレちゃんはたくさんのお店を見て回って、自分が着るにふさわしい服をこだわって選び抜いているのに、
あたしときたらプロのアイドルのくせして衣装をスタイリストさんやプロデューサーに投げっぱなしだ。
例えば、ズラリとサンプルを並べた事務所の衣装室から、あたしは自分の衣装候補を10着選び抜けるか。
またスタイリストさんやプロデューサーが選んでくれた衣装に対し(普段着とステージ衣装の違いがあるとはいえ)
フレちゃんの半分でも頭のなかで吟味していたか。漫然と袖を通していなかったか。
これはもったいない。あたしはまだまだ面白いことを見落としてた。
「フレちゃんと話してるだけで、毎日が楽しくて、スタイルも洗練される気がするよ。
フレちゃんみたいなお姉ちゃんがいたら、あたし今よりずっと女の子らしかったかなぁ」
「持ち上げすぎだよ。アタシ、そんなすごいヒトじゃないって」
あたしの賛嘆に対して、フレちゃんは珍しく曖昧な笑みを浮かべた。
「服について、えらそうに語っちゃったけどさ。アタシ、最近まともに大学に行けてないもん。
サボりすぎて友達からレアキャラ扱いされちゃってるぐらい」
「……そういえば、フレちゃんって服のお勉強してるんだよね。
将来はココ・シャネルみたいに、世界にフレデリカ・ミヤモトのブランドを広めちゃう?」
あたしはフレちゃんがデザインしたブランドを夢想した。
服のセンスに自信がないあたしは、服より先に『FREDERICA MIYAMOTO』とサンセリフで記された香水壜が思い浮かぶ。
それはきっとあたしがフレちゃんに気づかせてもらったように、日常の輝きを浮き彫りにしてくれる香りだ。
「ねぇねぇ、もしフレデリカ・ミヤモトのブランドができたら、あたしに香水作らせてよ!
あたし、こう見えて香水は結構自信あるんだ!」
「フレデリカ・ミヤモトのブランド、かー……ブランド立ててモード作れるほどの個性、アタシにあるのかなぁ?」
あたしは絶句した。
フレちゃんをして『個性、アタシにあるのかなぁ?』と言わしめるファッションデザイン業界とは一体……。
そこに詳しくないがゆえに、あたしはますます想像をたくましくした。一体どれだけの逸材がひしめいてる世界なのか。
ひょっとすると個性の濃さで、アイドル業界すら上回ってるかもしれない。
「やっぱりブランドを立てる人はどこか違うらしいね。
アタシは高校時代に『ママ譲りのルックス、生かさないのはもったいない』って友達に勧められて、
ちょっとだけモデルをやってたことがあるから、噂ぐらいなら聞いたことあるけど」
あたしの夢想はフレちゃんの歩くランウェイへ飛躍した。
こりゃデザイナーさんも気合が入るだろう。
下手な服を着せたら、視線が服からフレちゃんに奪われちゃう。
『フレちゃんにモデルの経験があった』という蜜を得て、あたしの空想はハチドリのごとく猛スピードで飛び回った。
はしゃぎすぎちゃって、香水だけじゃなく、コートだの、化粧水だの、バッグだの、ヘアカラーだの、
まだ見ぬフレデリカ・ミヤモトブランドの構想を、フレちゃん当人じゃなくあたしがまくし立てて、
あたしはマダム・ミヤモトやムッシュー・ミヤモトが帰ってきたのにも気づかなかった。
あたしのフレちゃんに対するのぼせっぷりは盲目の境地に達していた。
そして当時のあたしにその自覚はまったくなかった。
誰かに『憧れる』なんて、一ノ瀬志希の人生で初めてだったから。
◇◇◇◇◇
その年の春頃から、あたしは急激に忙しくなった。
プロデューサーいわく『最近の志希はいつも楽しそうに仕事するから』とアイドルの仕事をバンバン入れてきて、
あたしの毎日は夜更かしする余裕もないくらい刺激的になっていた。
ただあたしの意識としては、やはり自分はフレちゃんの模倣だった。
フレちゃんのつもりならいつだって自分はヒロイン気分だから。アイドルにも身が入るというものだ。
ただあちこち飛び回っていたせいで、あたしはしばらくフレちゃんと顔を合わせられなかった。
フレちゃん家は恵比寿で近いから、ちょっとぐらいは時間を作れたけど、
そういうときに限ってフレちゃんの都合が悪く、やり取りは携帯でメッセージを送る程度になっていた。
そうして夏の仕事があらかた終わった頃、
あたしたちの事務所の今年を締めくくるクリスマスのイベントで、あたしがセンターを張ることになった。
あらら、ヒロイン気分が本当のヒロインになっちゃったよ。
あたしの躍進を聞いたはぁとさんがお祝いにサマープリンセス――長野の夏イチゴをくれた。
はぁとさんが『本来は業務用、洋菓子店向けなんだけどね……』なんて言ってたので、
イチゴタルトを作ってフレちゃん家に持っていくことにした。
ちょうどメッセージが滞りがちになって寂しかったから、久しぶりに顔を見たくなった。
居なかったとしても置いてけば食べてくれるよね。
そうと心に決めればあたしはもうパティシエール気分。
押しかける予定日の一晩前にパート・シュクレを仕込んでるときからあたしのテンションは上がりっぱなし。
決行日は浮つくあまりイチゴのカットで自分の指を切りそうになってしまった。
あたしは靴音も軽くアン・ドゥ・トロワ――ワルツのリズムで、
昼過ぎの町中を闊歩してフレちゃん家へ向かう。変装はフレちゃんと一緒に買った赤縁のメガネ。
まぁあの時のあたしはトリップしすぎて明らかに町中で浮いてて変装の意味なかっただろうけど。
そうしてあたしはフレちゃん家の呼び鈴を二度鳴らす。
ピンポンピンポーン――あれ、お留守かな? 念のため――また押す。
もしかしたら夏のパリジェンヌらしくヴィラで過ごしているのかな。一応行くとメッセージは送っておいたんだけど……。
そんなことを考えながらあたしが粘ってると、おもむろに扉がガチャリと押し開けられた。
「やっほーフレちゃん、お久しぶりっ」
「シキちゃん……少し、焼けたね」
あたしはその時、フレちゃんの立ち居振る舞いにかすかな違和感を覚えた。
まるで初めてセーヴル先生を前にして気圧された時のあたしみたいだ。
けれどフレちゃんはあたしを家の中に招き入れてくれた。
あたしは、キッチンペーパーとビニールと飾り付きリボンの包みを開けて、イチゴタルトをテーブルに載せた。
あたしがフレちゃん家までスキップしすぎたせいか、イチゴのアレンジメントが少し乱れていて内心しまった、
と思ったけど、フレちゃんは特に何も言わなかった。
そのあたりになって、あたしは明らかにフレちゃんの様子がおかしいということに気づいた。
いつも濃すぎず薄すぎずぴったりなコーヒーの抽出が少し早かった。
フレちゃんは夏なのに肌が春より真っ白だ――フレちゃんみたいにコーカソイドっぽい肌は、
夏の日光の下でちょっと街を歩くだけで色が変わっちゃうぐらいデリケートなのに。
あたしが作ったイチゴタルトにナイフを入れる所作も上の空だ。
「フレちゃん……もしかして具合悪い?」
そういう意識で見直してみると、フレちゃんの雰囲気も数ヶ月前と変わっているところがポロポロ見つかる。
夏――体臭がわかりやすくなる季節なのに、フレちゃんのニオイは春よりか細い。
大きくて丸い瞳と目は、前は万華鏡のように賑やかにくるくるしてたのに、今はけだるげな瞬きする程度。
もともとほっそりしていたデコルテ周りは、鎖骨や喉がさらに目立つようになっていた。
「風邪なら、イチゴタルトなんて重いかな……フレちゃんを見習って作ってみたんだけど」
あたしはフレちゃんが体調を崩したところなんて見たことなかった。
だからタチの悪い夏風邪でももらっちゃって療養中なのかな、と勝手に思い込んだ。
そうしたあたしの勘違いは、フレちゃんの唐突な一言で引っ剥がされる。
「アタシは……シキちゃんに見習ってもらえるような人間じゃないよ」
あたしの耳はフレちゃんが謙遜を言ったと思った。
でもあたしの目がフレちゃんの顔を改めて眺めて、やっぱりおかしいと思い直した。
フレちゃんの目はテーブルの上の、セーヴル先生とコーヒーとイチゴタルトを見下ろしていた。
フレちゃんが人と会話しているのに、その人の方に目を向けていない――なんて、あたしの経験で初めてだ。
「元気がないなら、なおさら美味しいものでも食べなきゃ。自画自賛だけど、このタルトきれいに美味しくできたと思うよ?
食欲がないなら、せめて上のイチゴだけでも……サマープリンセス、みずみずしいよ!」
フレちゃんはあたしの提案に返事をしなかった。
コーヒーはゆっくりと冷めて香りを失っていった。
「アタシは……シキちゃんに見習ってもらえるような人間じゃないよ」
フレちゃんが視線を注いでいる先には、コーヒーの黒や、セーヴル先生のファットブルーや、
あたしのイチゴタルトのテカテカした赤があったけれど、フレちゃんの目にはどれも虚しいようだった。
フレちゃんの有様に引っ張られて、あたしの浮ついていたテンションも急降下し、
宮本邸のリビングでは、戸惑いと焦れったさがコーヒー粕のように沈殿していった。
もしコーヒー粕の残り具合で占いをしたとしたら、
その時のあたしたちには、これまでで最大の凶相がこびりついていただろう。
「あの……シキちゃんって、売れっ子アイドルだったんだね。知らなくて、ごめんね」
「え? あ、まぁ……そういえば、話したことなかったっけ」
あたしは、フレちゃんに対してアイドルと名乗ったことがなかった。
フレちゃんと出会ってしばらくは、あたしはレッスンサボり常習犯の劣等生だったし、
仕事に身が入るようになってからも、フレちゃんと一緒に歩いていると街角の視線はまずフレちゃんに吸い寄せられるから、
フレちゃんがアイドルであたしが付き人みたいな気分で、自分がアイドルという意識がすっぽ抜けてた。
「アイドルになる前は、アメリカのドクターだったって」
「……確かにそうだけど、もう昔の話だよ」
あたしはアメリカ時代、飛び級で大学に入って薬学をやってた。
その経歴もアイドルとして売れてきてからほじくり返されるようになった(事務所もわざわざ隠そうとしなかったし)。
ただあたしにとっては一度飽きてポイ捨てした道。触れられるのが面倒くさくて、
プロデューサー以外に聞かれたときは適当にごまかしてたし、自分からもわざわざ吹聴しなかった。
「それに比べてアタシは……何をやっても中途半端。
モデルに向いてるからやってみなよって誘われても、長続きしない。
ファッションセンスいいねって言われてそっちの学校進んでも、向いてないんじゃないかって悩んでばっかり」
あたしはフレちゃんの流儀を思い起こした。
確かに、みんながそれぞれに自分に相応しい服をきっちり吟味して……という主義では、
自分のデザインセンスでモードを席巻してニューヨークを自分のロゴで埋め尽くす……
なんてキャピタリズムのニオイが濃い有名デザイナーになんか、なれるとしてもなりたいと思わないだろう。
「でもあたし、フレちゃんに服選び付き合ってもらった時、すごく感銘を受けちゃったよ。
特に着る服の絞り込み方とかこだわりとか、あたしにとっては私服も衣装も見る目が変わるぐらい衝撃的だったもん」
ただ、アパレルでモードを作るばかりが服作りじゃないよね。
あたしたちアイドルの衣装を仕込んでくれる人だけを見ても、
まず大雑把にいってスタイリストさんとライブ衣装のデザイナーさんは別だし、他にも……
あたしが知らなかったり気づかなかったりする色んな人が、まだまだいっぱい頑張ってるに違いない。
「素人のあたしが言うのもなんだけど、フレちゃんならではのセンスやスタイルが活きる居場所、
ここからそう遠くないところにあると思うんだけど、ね」
「……シキちゃんから見た、アタシのセンスとかスタイルって、何なの?」
その問を投げられた瞬間、あたしの中からフレちゃんに伝えたい憧憬と賛嘆が舌と喉の追いつかない勢いで湧いてきた。
しかしフレちゃんは察しが良かった。フレーズとして口から出る前に、顔をチラと見ただけであたしを見透かした。
「ああ、シキちゃんがアタシに言いたいコト、分かる。分かっちゃったよ。
きっとそれは、全部、ぜんぶ……ぜーんぶ、ね、アタシのママの受け売りなんだよ」
あたしは口を開けたままポカンとした。
フレちゃんはあたしに向けていた視線を、またテーブルのイチゴタルトに下ろした。
「アタシが褒めてもらえるときは、いつだってそう。ママからもらったものだけ」
あたしのフレちゃんへの憧憬は、フレちゃんのそよ風程度のつぶやきでサラサラと崩れ始めた。
気づけばあたしは、フレちゃんの胸ぐらをひっつかんで床の絨毯に押し倒していた。
「ダメ、フレちゃん、それは――それ以上、しゃべらないでっ」
「それでいいと、思ってたんだけどね。アタシ、ママが大好きだもん。
でも、ダメ。あたしはママにはなれない。アタシ、パリのコトなんか何も覚えてないもん。
いくら憧れて真似してみたって、パリジェンヌの紛い物。そしてそれは、東京でもおんなじ」
「やだ、やだ、あたしに、聞かせないでっ」
あたしの人生最初の憧れが、海風の前の砂城のごとく吹き散らされる。
あたしは崩れ行くそれを必死でかき抱いた。
心の中がじゃりつく苦味に引っかかれるだけで、それもやがて薄れていく。
「アタシはシキちゃんと違って、何者にもなれないんだ。ママがくれたものがないと、人並みのこともできないの。
シキちゃんみたいな――ギフテッドって言うの?――そのそばは……ちょっと、眩しすぎるかな」
「そんなのいい、どうでもいいから――フレちゃんっ!」
「もうアタシのコトは放って置いてよ。シキちゃんと一緒にいると、アタシ――」
あたしがフレちゃんの左頬を張り飛ばした音と、
玄関からマダム・ミヤモトが扉を開けた音はたぶん重なっていた。
突き倒したフレちゃんと、かぴかぴに乾いたイチゴタルトを置き去りにして、
あたしは『Au revoir(さよなら、またね)』とも言えずに逃げ出した。
家に帰って、リモージュのカップとソーサーを投げ捨てようとして、どうしても掴んだ手を離せなかった。
今更になって涙が溢れてきて、すぐそばにあるはずのリモージュの花柄も金彩もぼやけて見えなくなった。
◇◇◇◇◇
目を開けると、耳障りな振動音がどこからか聞こえてきた。
あたしの携帯が鳴っていた。ディスプレイを見ると、いつの間にか日付が変わって次の朝だった。
振動音は着信で――相手はプロデューサーだった。あたしは携帯の電源をオフにしてまた目を閉じた。
今度はインターホンが鳴った。ピンポンピンポン。
あたしは黙殺した。ピンポンピンポン。ピンポンピンポン。ピンポンピンポーン。しつこいなぁ。
あたしは姿見の前に立った。格好は昨日フレちゃん家に押しかけたときのまま。
あたしは服のシワを軽く伸ばして、顔を洗って、髪を梳かした。
それからパウダーファウンデーションをさっと塗って、チークを乗せて、
マスカラをつけてルージュを引いてから、やかましい玄関へ向かった。
「はぁーい☆ アナタのはぁとにしゅがしゅがスウィーティ☆ しゅがーはぁとの参上だぞ☆」
玄関にはあたしのアイドルとしての同期、佐藤心さん(26)が立っていた。
「あ、はぁとさん。おはよう」
「おはようじゃねーよもう昼だよ! つーか、はぁとを待たせてメイクまでしてたな!?」
「パリジェンヌはどんな日だってナチュラルメイクぐらいするもん」
「はぁ? アンタ帰国子女だけど行ってた先はアメリカじゃなかったっけ」
「……どーでもいいじゃん。それより、はぁとさんはウチにナニか御用?」
はぁとさんは玄関のドアを無理やり開けようとして、無残にもドアチェーンに阻まれた。
「こら! 『ナニか御用?』じゃねーよ! アンタ今日仕事でしょうが。もう時間だよ!
プロデューサーなんか失踪癖が再発したもんだと思って頭抱えてたぞ!
それで片っ端から心当たりを回ることになって、なぜかはぁとまで駆り出されてここまで……」
ああ、そういえばそろそろクリスマスイベント準備にみんな動き出すんだっけ。
「……ご苦労様ですパイセン。コーヒーぐらい飲んでく?」
「パイセンじゃない! あと、はぁとは緑茶党だ☆」
「緑茶は無いかなぁ……」
「とにかく入れろ☆ はぁともいい加減疲れてきたから一休みしたいわ……」
あたしはフレンチプレスを使って濃い目のブラックコーヒーを淹れて、
リモージュ先生に注いではぁとさんに出した。
「お、おう、なんかニオイからして本格的なコーヒーだなぁ……はぁとがオトナだからって、
こんな苦みばしった味をわざわざ淹れなくてもいいんだぞ☆」
「いや、あたしが今ザラザラするぐらい苦いのを飲みたい気分なの……」
「志希ちゃんの好みかよ!」
そんなことを言いつつはぁとさんは神妙な手つきでコーヒーを飲んでいた。
あたしもカフェインのおかげか、思考がクリアになってきた気がした。
「……で、志希ちゃんはナニかあったのかな? はぁとお姉さんにどーんと打ち明けてみろ☆」
はぁとさんったら、何の筋合いであたしのコトに首を突っ込むのか……と思ったけど、
あたしはふと、フレちゃんとの一件でせっかくはぁとさんがくれたサマープリンセスを打ち捨ててしまったことを思い出した。
思い出してしまうと、なんだか後ろめたい。
「ちょっと……友達と、派手にケンカしちゃってさ」
「友達? それって事務所の?」
「違う。あの写真に、あたしと写ってる子」
あたしは部屋の隅に立てかけていた写真立てを指差した。
あたしはそこに、初めてフレちゃんと一緒にイチゴタルトを作った時に撮った記念写真を収めていた。
セーヴル先生の上に乗ったイチゴタルトを真ん中に、あたしとフレちゃんが左右に並んで、笑って……
「おぉ、さすが交友関係がインターナショナル……」
「見た目は完全に欧米人だよね。最初はあたしも勘違いしたもん」
「えっ、違うの? このフランス人形みたいな見た目で!?」
はぁとさんは、あたしとフレちゃんの写真をしげしげと眺めつつ、
「……はぁと、志希ちゃんがサボった理由をプロデューサーに聞かれたら、
『志希がこの子とケンカして仕事できる気分じゃないからです』って報告するの?」
「嘘ではないよ」
「アンタは子供か」
と毒づきつつ、はぁとさんは部屋をキョロキョロと見回した。
「もしかして、フツーの友達じゃない? とか」
「この場合、ナニをもって『フツー』と『notフツー』を分けるのかな」
「いや、だって」
はぁとさんは、写真を元あった場所に立て直した。
「客を通す部屋の中に、たった一枚だけ写真立てに入れられて……ここって家族写真を飾るポジションでしょうが」
家族――家族写真と、はぁとさんは言った。
「家族を差し置いてそんな場所をとってるってことは……よほどの友達なのかな、って思っただけ」
はぁとさんの言葉で、あたしはなぜ自分がキレてしまったかが、一瞬だけ見えた。
「……家族に、なりたかったんだ。あたし」
「家族?」
「宮本フレデリカちゃん――フレちゃんは、日本男児とパリジェンヌの娘で、
パリで生まれて東京で育った、あたしより一つ年上の女子大生だよ」
あたしは、自分の見えかけた思考の道筋を、はぁとさんに喋りかけながら確かめていく。
「フレちゃんは、できるだけ丁寧に生きようとするから、いつもシックでエレガントなの。
日々を輝かせる暮らしの達人。そういうパリジェンヌの流儀を、ママから受け継いでる」
フレちゃんたちパリジェンヌの流儀が息づいているからこそ、パリは花の都と呼ばれ得るんだろう。
「日々の退屈さで狂いそうになってたあたしは、フレちゃんが羨ましくて仕方がなくって、
今年の初めにフレちゃんと出会ってからはフレちゃんの真似ばっかりしてた。その成果は……今のあたし」
「……ステキな友達、なんだねぇ」
でも、あたしがフレちゃんを羨むもっと大きな理由がある。
「そのフレちゃんの流儀が、フレちゃんのママからじっくりしっかり受け継がれたものだってことが、
あたしはたまらなく羨ましかった。あたしのママはあたしに女の子の作法一つ教えなかったのに。
だからあたしはフレちゃんの真似をした。フレちゃんがママから教わったことをなぞっている間は、
あたしもマダム・ミヤモトの娘、フレちゃんの妹――家族になれた気がしたの」
なのにフレちゃんは、あたしがそんなに欲しがっていたものを、
『ママの受け売りだから』と、まさにあたしが欲しがっていたのと同じ理由で、無いもの扱いした。
あたしはそれを聞いてフレちゃんに手を上げてしまった。
「それで、志希ちゃんとフレちゃんはケンカしちゃったのか」
「……あたしだって、かっこ悪い無い物ねだりなんかしたくないよ。でも……ズルい。
あれだけママからいろんなことを教えてもらって、どうして『何者にもなれない』とか言えるの?」
あたしは、それがどうしても納得できなかった。だから、怒っちゃった。
が、はぁとさんはそうじゃなかったらしい。
「はぁとは、どっちかといえばフレちゃんの気持ちのほうが分かるけどなー」
「えっ」
「志希ちゃんは……『赤と黒』って小説、知ってる?」
「……相川さんが話してるのを聞いたことぐらいなら」
「それは知らないって言うんだよ。その『赤と黒』の主人公は、こんなコト言うの」
――二十のころは、世界ということと、その世界でどういう成果をあげるべきかということが、なにごとにもまさる関心事なのだ。
「20歳にもなるとね、自分なりに世の中で何をできるか――つまり自分がこの世の中にいる意味――を、考えたくなるのよ。
何かしなきゃ、なんて焦燥感に突き動かされるの。でも20じゃ力も金も立場もない。だからほんのちっぽけなこともできない。
きっと、フレちゃんもそう考えて、自分のことをちっぽけだと思ったんでしょ」
「でも、あたしはフレちゃんのおかげで――」
「アンタが褒めそやすフレちゃんのいいところは、全部フレちゃんのママンの美点でしょうが。
でもフレちゃんはママのあとを追っかけても劣化コピーにしかなれない。ママの劣化コピーじゃ、
『自分なりに世の中で何ができるか』だって見つけられない……って、気づいたんでしょ。実に若者らしい悩みね」
はぁとさんはフレちゃんと話したこともない癖に、訳知り顔で勝手にうんうん頷いていた。
「はぁとさんったら、普段に似合わず年寄り臭いこと言うよね。26歳かそこらでしょ。
あたし、アメリカの大学ではあなたより年上の研究員と肩を並べてたよ」
あたしが言いがかり気味に噛み付くと、はぁとさんはこれ見よがしに大きなため息をついた。
「だから志希ちゃんは理解しにくいだろうなー。無力感とか劣等感とか縁遠いでしょ。はぁと、アンタと初めて会った時に驚いたよ。
顔に『あたしが本気出したらできないことなんてありませぇん』って書いてあったし。
まぁアンタは実際そうやって人にできないことをやってのけてきたんだろうけど……
もしそんな奴が自分の近くで、自分と同じ立場に居たらどうよ」
「……あっ」
――アタシはシキちゃんと違って、何者にもなれないんだ。ママがくれたものがないと、人並みのこともできないの。
――シキちゃんみたいな――ギフテッドって言うの?――そのそばは……ちょっと、眩しすぎるかな」
「もしかして、はぁとさんも……」
「あーあー、なんでもねぇよ☆ ったく志希ちゃん、アンタってやつは……。
とにかく、ケンカしたならアンタから謝っておきなさい。女の子のほっぺた張り飛ばしたんだから。
そのあとそのフレちゃんが立ち直れるかどうかは、あの子次第でしょ。彼女の人生の問題だもん」
「謝るのは……今日行ってくるよ。家に入れてもらえないかもだけど、直接謝ってくる」
「うん、そうしろそうしろ。あとプロデューサーたちのためにちゃんとクリスマスイベントの準備もしろよ☆」
「でも、さ」
「何、まだなんかあるの?」
「フレちゃんが……『何者にもなれない』なんて、絶対ウソだよね?」
「アンタってやつは本当に……どうして、それをはぁとに聞くのさ」
「だって、少なくともあたしは――」
――フレちゃん、昨日はごめんね。あたし、いきなり乱暴なことしちゃって。本当にごめん。
――で、さ。厚かましいお願いなのは承知なんだけど……もしフレちゃんが、あと一日、
たった一日だけでも、一ノ瀬志希に付き合ってやろう、と思ってくれてるのなら……
◇◇◇◇◇
あたしがセンターを務める事務所のクリスマスイベントの控え室に、
関係者枠としてあたしは宮本家御一行を招待した。
「フレちゃんっ!」
あたしはもう衣装を合わせていてメイクも決めていたけど、
フレちゃんのそばに駆け寄って、左右の頬にキスをするヨーロッパ式の挨拶で迎えた。
(スタイリストさんやプロデューサーにぎょっとしていた)
あたしは呼吸も混ざり合おうかという近さのフレちゃんにだけ聞こえるよう、ささやき声を立てた。
「あたしは、フレちゃんが羨ましかった。というか、フレちゃんとマダム・ミヤモトとムッシュー・ミヤモトと、
つまりフレちゃんたち家族が羨ましかった。あたしもそんな家で育ちたかった」
「シキちゃん……もしかして、ノエル――クリスマスだから、アタシたちを……?」
「まぁ、クリスマスを一緒に過ごして家族気分ってのもあるんだけど、さ」
あたしは数カ月ぶりにフレちゃんのニオイを堪能した。
出会った日と同じ、<ランコム>トレゾァのトップノートの香りがした。
「トレゾァ――Trésorってね、英語でいうTreasureのことなんだ。
意味は、宝物。それから転じて、大切な人のことを表す言葉なの。
フレちゃんはママの大切な人、そしてあたしの大切な人。だから『何者にもなれない』なんて、言わないで」
「……シキちゃん、アタシは……」
あたしはフレちゃんの両肩にギュッと腕を回して抱きついた。
なんか周りからチラチラ黄色い声が聞こえてくるけど、もうあたしはフレちゃんしか気にしてない。
「それでもフレちゃんが迷うなら、あたしから一つフレちゃんに提案があるんだ」
「……それ、ここで聞いてもいいの?」
「フレちゃん、アイドルになろう。アイドルになったら、
フレちゃんは今よりもっとたくさんの人のトレゾァになれる。あたしが保証するよ」
フレちゃんは絶対にアイドルとして上手くいく。
フレちゃんの模倣でアイドルとして成り上がったあたしが、その証明。
「ま、コレはあたしのワガママも含まれてるんだけど」
「シキちゃんの、ワガママ?」
トレゾァ含め、フランス風の香水はトップ、ミドル、ラスト……と、香りが時とともに移ろう。
「フレちゃんと出会った頃のあたしは、トップノート。
今日これからアイドルとしてステージに立つあたしは、ミドルノート。
フレちゃんと過ごした時間のおかげで、あたしはこんなにも鮮やかに生まれ変われた」
やっぱり、フレちゃんはずるい。久しぶりに会って再確認できた。
フレちゃんは薔薇色の日々が服を着て歩いてるように、いつも周りをキラキラさせて、
不安に咽ぶ姿さえ、パリで彷徨う『アメリ』の姿よりあたしを強く長く捕らえたまま。
「だからそのお返しに、フレちゃんのミドルノートをあたしが抽き出したいの。
アイドルやれば、フレちゃんにしかできないことがきっと見つかる――それを一緒に探させて欲しいの」
「……きっと見つかるというのも、シキちゃんが保証してくれるのかな」
「うん、絶対。ぜーったい」
「まぁ、今日のステージで一緒に立つのは、フレちゃんの香りだけで我慢してあげる。
でもいつかは、あたしと並んでステージに立ってね。フレちゃん」
あたしはフレちゃんの体を離して、あたしを待つステージに飛び込んだ。
◇◇◇◇◇
――ある日のオーディション会場
「では次の方、自己アピールをお願いします」
「んー……ジュテーム! シルブプレー? クレーム・ブルレー!
マカローン、クレープ、ババローワー?」
「あの、自己アピールを……」
「……あは、バレちゃってる? そうなのー。
こう見えて、フランス語は全然しゃべれないんだー♪ ってことで♪
はじめましてー! 宮本フレデリカだよー!
見ての通り、コテコテのフランス人……じゃなかった! 日本人とのハーフでーす♪
んーと、高校生の頃はモデルみたいなコトをしてたかなー。
ホラ、アタシ、金髪で青い瞳だし、スタイルもいいじゃん?
学校でもけっこう目立つコだったんだよねー♪」
「オーディションを受けた理由は?」
「今回、オーディションを受けようと思ったのは、ん~……
『ついカッとなってやった』って感じかなー♪」
「……え?」
「あー、コレじゃ違うか。『ついカッとなった人にやられた』みたいなー?
そう、被害者! フレデリカは被害者だったんだよー!」
「つまり……」
「つまり、カッとなった……かどうかはわかんないけど、
友達に応募させられた的な感じだね~♪ あ、でも、やるからには、アタシ、本気だよ。
おはようからおやすみまで全部、シック楽しくエレガントがアタシのモットー♪
ということで、宮本フレデリカをよろしくお願いしまーす!」
(おしまい)
(あとがき)
2月14日は宮本フレデリカさんのお誕生日です。
しかし14日は厳しそうなので前祝いします。おめでとうございます。
(以下ダイマ)
【楽曲試聴】「秘密のトワレ」(歌:一ノ瀬志希)
https://www.youtube.com/watch?v=wD3olymAvN0
【楽曲試聴】「女の子は誰でも」(歌:一ノ瀬志希)
https://www.youtube.com/watch?v=QMtlK6yj5f8
【楽曲試聴】「き・ま・ぐ・れ☆Cafe au lait!」宮本フレデリカ
https://www.youtube.com/watch?v=bLY5EsDn4fM
【楽曲試聴】「ウルトラ リラックス」(歌:宮本フレデリカ)
https://www.youtube.com/watch?v=QeIz-YN11QY
このSSまとめへのコメント
素晴らしいものを見た