ジャン「エレンは?」ミカサ「調査兵になる」(26)

短編です

前半ジャンが若干池沼っぽいけど気にしたら負け

ジャン「そうだ。あいつは調査兵になるんだよな」

ミカサ「えぇ」

ジャン「この訓練所に来てからもそればっかだったよな」

ミカサ「そうね」

ジャン「じゃあ俺は?」

ミカサ「憲兵になる」

ミカサ「………のだと思う。私の事じゃないから知らないけど」

ジャン「そうだな。俺は憲兵になる」

ジャン「きっと十位以内にも入れる」

ミカサ「私もそう思う。ジャンは訓練を頑張っているから」

ジャン「そうか、ありがとな」

ミカサ「いえ、事実だと思う」

ジャン「まぁな」

ミカサ「えぇ」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「んでもってだ、俺は憲兵になる」

ミカサ「えぇ」

ジャン「という事はつまり………?」

ミカサ「つまり………?」

ジャン「どこに勤務するか、って事だ」

ミカサ「! 内地に行く」

ジャン「そうだ、ミカサ!内地に行くんだ、俺は」

ミカサ「そう」

ジャン「そしてエレン!あいつはどこの兵団に所属するんだ?」

ミカサ「調査兵団に所属する」

ジャン「そうだな、あいつは調査兵団に入るんだ」

ジャン「全ての巨人を駆逐するんだ、ってやかましかったよな」

ミカサ「まぁ………少しうるさかったとは思う」

ジャン「それであいつは巨人を殺しに調査兵になるわけだが………」

ミカサ「えぇ」

ジャン「巨人ってのはどこにいるんだ?」

ミカサ「壁の外」

ジャン「何で壁の中に入って来れねぇんだ?」

ミカサ「壁が巨人の背より高いから」

ジャン「そうだったな。まぁ1つ壁は破られたがな」

ミカサ「えぇ。それでカルラおばさんは死んでしまって………」

ジャン「あぁ、その復讐のために巨人を殺すんだよな」

ジャン「だが調査兵団は普段、壁の中にいる」

ジャン「巨人は壁の外にいる」

ミカサ「そうね」

ジャン「つまり調査兵が巨人を殺しに行くためには?」

ミカサ「壁の外に出なきゃいけない」

ジャン「あぁ、壁の外に出なきゃならねぇ」

ジャン「そんでもって壁の外は危険だ。何故か?」

ミカサ「巨人は人を食べるから」

ジャン「あぁ、食べられると人は死ぬな」

ジャン「つまり壁の外は凄く過酷な場所だ」

ミカサ「えぇ、いつ死ぬか分からないとても過酷な場所」

ジャン「だよな?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「エレンは、そんな戦場に行かなきゃならねぇ。それは………」

ミカサ「エレンは調査兵になって敵討ちをするから」

ジャン「あぁ、調査兵になりたいがために地獄を見なきゃならねぇだろうな」

ミカサ「きっとそうなると思う」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「でも俺は違う」

ジャン「そんな戦場に行かなくて良い。何故か?」

ミカサ「憲兵になるから」

ジャン「あぁ、俺は憲兵になる。憲兵はシーナでの勤務が許されるからな。巨人に怯える必要は無くなるだろう」

ミカサ「壁の外に出なくても良い」

ジャン「壁の外に出るのは調査兵団の仕事だからな」

ミカサ「えぇ」

ジャン「つまり」

ジャン「俺は憲兵団に入って内地で快適な暮らしをできる」

ジャン「片やエレンは調査兵になって戦い、仲間の死を嘆きながらも命を燃やす」

ジャン「憲兵団の方がどう考えても優遇されてるよな?」

ミカサ「えぇ、命を掛けなくても憲兵の方がお金が入る」

ジャン「憲兵の方が楽で安全で名誉もあるよな」

ミカサ「そうね」

ジャン「それでお前は、きっと十位以内どころか主席で卒業だよな?」

ミカサ「きっとそうなると思う」

ジャン「あぁ、俺もそう思う」

ミカサ「ありがとう………」

ジャン「いや」

ジャン「それで、まぁ………1つ質問があるんだけどよ………今の事を踏まえてだ」

ミカサ「私に?」

ジャン「あぁ、お前にだ」

ミカサ「そう」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「ミカサ。お前は、ここを出たらどこの兵団に所属するんだ?」

ミカサ「調査兵団」

ジャン「………即答だな」

ミカサ「えぇ」

ジャン「なぁ、何で調査兵団なんだ?」

ジャン「お前は十位以内だから憲兵になる権利も持っている」

ミカサ「そうね」

ジャン「さっきも言った通り憲兵団に入った方が安全だ。おまけに楽だし名誉もあるし………主席のお前なら破格の待遇も保障されてる」

ジャン「そうだろ?」

ミカサ「えぇ、あなたの言う通りだと思う」

ジャン「良い事づくめだろ?なぁ、憲兵になりたくないのか?お前は」

ミカサ「なりたくない」

ジャン「………何でだよ?」

ミカサ「エレンが調査兵団に入るから」

ジャン「………」

ミカサ「エレンは私がいなければ早死にしてしまう」

ミカサ「だから私は行くの」

ジャン「エレンを守って自分が死んでもか?」

ミカサ「そんな事は万一にもありえないけど………まぁ、エレンが危なかったら絶対にそうする」

ジャン「エレンが自分の恩人だからか」

ミカサ「えぇ、それにとても大切な人だから………私はエレンを守りたい」

ジャン「………そうか、だからお前は調査兵になるんだったよな」

ミカサ「えぇ」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ミカサ「ジャンは安全を求めて内地に行くの?」

ジャン「あぁ、そうだよ。それこそガキみたいにそう言ってギャーギャー喚いてたな」

ミカサ「えぇ、うるさかった」

ジャン「………ひ、ひでぇな」

ミカサ「ごめんなさい」

ジャン「いや、別に構わねぇよ」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ジャン「………でもな、俺が憲兵た行きたい理由はそれだけじゃねぇんだ」

ミカサ「つまり?」

ジャン「………」

ジャン「ミカサ。俺はお前と一緒に憲兵になりたい」

ジャン「ついでに言えばお前と一緒に暮らしたり………なんて事もぶっちゃけ考えてる………」

ミカサ「………それって」

ジャン「あぁ、そういう事だよ。キショいよな。わりぃ………」

ミカサ「いや、そんな事ない………でも………」

ジャン「ミカサ」

ミカサ「!」

ジャン「お前がエレンを守りたいのと同じくらいに俺もお前を守りたいんだよ」

ジャン「俺はお前に安全な暮らしを送って欲しい。いつ命が尽きるだろうかなんて心配して欲しくねぇんだよ」

ミカサ「………それは………ありがとう」

ジャン「ありがとうじゃねぇよ!俺はお前を守りたい!」

ジャン「………」

ジャン「でも………」

ジャン「俺には無ぇんだよ………お前みたいな強さが」

ジャン「死に急ぎ野郎みたいに勇敢でもない………」

ミカサ「………」

ジャン「ミカサ。俺はお前を守りたいと言ったがぶっちゃけたところダメなんだ」

ミカサ「………?」

ジャン「………」

ジャン「お前が巨人と戦って死にそうになっても俺は助けてやれない」

ジャン「お前みたいに強くねぇからだ」

ジャン「俺は壁の外に出てもきっと勇敢に戦えない。口でどう勇んでもいざとなったら震えてどうにも出来ないと思う」

ジャン「それは、俺にエレンみてぇな強さは無ぇからだ」

ジャン「だから、俺はダメなんだ………お前が調査兵に行ったとしても俺は内地に行く………」

ミカサ「………」

ジャン「くそ野郎なんだよ………お前を守りたいなんてほざいてるくせに結局は自分が一番大事なんだよ………俺は」

ミカサ「………そんな事ない、普通は皆、そうだと思う」

ジャン「そんなのは言い訳だ。俺は弱い」

ジャン「ミカサ。俺は弱いし勇敢じゃねぇし本当にただのくそ野郎だ」

ジャン「でも俺はお前といたい!お前には安全に暮らして欲しいんだ!」

ジャン「こんなのガキみてぇなワガママだってのも分かってる………」

ジャン「だから頼む!俺と一緒に憲兵になってくれ!」

ミカサ「………!」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ミカサ「………ごめんなさい、私はやっぱり調査兵になる」

ミカサ「あなたの言う事も十分理解した。そんな風に思ってくれて嬉しい」

ミカサ「誰かから守られたいと言われたのもあなたが初めてだ」

ミカサ「………でも私は、もう生き方を決めている」

ミカサ「………だからあなたの言う事は聞けない。ごめんなさい………」

ジャン「………!」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ジャン「………なぁ………頼むよ」

ミカサ「………」

ジャン「頼むミカサ………俺を選んでくれ………」

ミカサ「………それは出来ない」

ジャン「絶対お前に不自由な生活なんてさせない………それでもか?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「お前と一緒に憲兵になれたなら俺はいくらでも頑張れる………それでもか?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「………!」

ミカサ「………」

ジャン「! あぁ、そうだミカサ!お前サシャと仲良かったよな?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「憲兵になりゃ多分あいつとも一緒にいれるぜ?」

ミカサ「そうね」

ジャン「………おう、そうだろ?」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ジャン「………それでも憲兵はいやか?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「………」

ジャン「俺は………」

ミカサ「………」

ジャン「きっと誰よりも仕事こなして金も稼ぐ………それでもか?」ポロポロ

ミカサ「えぇ」

ジャン「食い物に困らねぇ暮らしもつくる………それでもか?」ポロポロ

ミカサ「………えぇ」

ジャン「憲兵で一番偉くなって、お前に嫌な思いなんて絶対にさせねぇ!」ポロポロ

ミカサ「………!」

ジャン「なぁミカサ………!」

ジャン「………それでもか?」ポロポロ

ジャン「………それでも俺を選んでくれないのか?」ポロポロ

ミカサ「………」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ミカサ「………えぇ。あなたの事は選べない」

ジャン「………!」

ジャン「………お゛れ゛は!」ポロポロ

ジャン「お前どいっじょにいてぇんだよ!みがざ!!!」ポロポロ

ジャン「いつか死んじまうその日にお前の顔を見て死にてぇんだ!」ポロポロ

ジャン「俺と一緒に………憲兵になってくれ………」ポロポロ

ミカサ「………ごめんなさい。何度も言ってるけどそれは出来ない」

ジャン「………」ポロポロ

ジャン「………」

ジャン「あぁ………」

ジャン「そうか、ミカサ………」

ミカサ「………えぇ」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「………」

ジャン「………いや、始めから分かってはいたよ」

ジャン「お前とエレンの事も、俺がエレンに勝てないって事も………」

ミカサ「………」

ジャン「でも今日お前を呼び出さずにはいられなかった。ごめんな、俺の勝手な都合で」

ジャン「………こうしなきゃ踏ん切りがつかなかったんだ」

ミカサ「気にしなくても良い。私も少しだけだけど………嬉しかったんだと思う、多分………」

ジャン「………多分?」

ミカサ「えぇ………胸のあたりがドキドキして………少し顔があつい………だからきっと私は嬉しいと思っている」

ジャン「!? いや………お前………それって………」

ミカサ「?」

ジャン「………」

ジャン「なぁ、ミカサ。やっぱりお前はエレンを守ることに命を掛けるんだよな?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「………そうか」

ミカサ「………」

ジャン「ははっ!」クスッ

ミカサ「?」

ジャン「じゃあ、そういう事なんだろうな………あぁ、お前はそれで良いよ」

ミカサ「? 何の事?」

ジャン「何でもねぇよ」

ミカサ「………そう」

ジャン「じゃあ、卒業まであと2ヶ月よろしくな?」

ミカサ「えぇ」

ジャン「おう」

ミカサ「………」

ミカサ「それとジャンは憲兵に入っても何も心配いらないと思う」

ジャン「何がだ?」

ミカサ「私なんかよりも、良い人は………たくさんいると思う。ジャンだったら大丈夫」

ジャン「はっ………そんな事考えてたのかよ」クスッ

ミカサ「ご、ごめん………」

ジャン「いや、別に怒っちゃねぇよ」

ジャン「それに当分、お前より良いやつなんて見つけられねぇよ」

ミカサ「どうして?」

ジャン「そういうもんなんだよ」

ミカサ「そう」

ジャン「お前らこそ調査兵になってすぐに死ぬんじゃねえぞ?」

ジャン「そっち行ってもエレンが死に急いでミカサ困らせるようだったら俺が説教してやるよ」

ジャン「調査兵入ったらあいつにはそう伝えておけ」

ミカサ「………分かった」クスッ

ジャン「………」

ミカサ「………」

ジャン「それじゃあな、ミカサ」

ミカサ「えぇ、じゃあ………」


スタスタ…

―――


大きくメラメラと少年兵達を照らす炎はパチパチと微かな音を立て燃えている


かつての仲間を淡々と灰へと変えていく業火を見て彼らは何を思うのか


「あんなに頑張ったのに………全部………無駄だったのかよ………!」


ある者は人間の無力を嘆き


「ごめんなさい………ごめんなさい………」

「………行っても仕方ないだろ、アニ」

「………」


またある者達は己のした事の愚かさ、罪深さを思い知った


この火葬場にいる全員がこの惨状を憎んでいるのだ

―――


「なぁ、お前ら………」ザッザッ…


「所属兵科は何にするか決めたか?」


「俺は決めたぞ」


「俺は………」


「………俺は!」


「…………………………………………」


―――調査兵になる

おわり

終了です。文章力ない自分にしては頑張った方だと思います(笑)

なんとなくジャンミカのようなものが書きたくなったのでやってみました

読んでくれた方ありがとうございます

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