【ミリマス】瑞希「冬将軍さんですか」 (17)

瑞希「寒いぞ……ぶるぶる」

冬将軍「やあやあ我こそは冬将軍也」

瑞希「冬将軍さんですか」

冬将軍「如何にも。その方は名を何と申す」

瑞希「真壁瑞希と申します」

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冬将軍「瑞々しきに希望で瑞希か、良い名であるな」

瑞希「ありがとうございます、両親に感謝しています。冬将軍さんは、名前ですか?」

冬将軍「うむ。冬将軍として産まれし冬将軍其の物である」

瑞希「冬将軍さん……カッコいい名前ですね」

冬将軍「そうであろうそうであろう、余も此の名を誇りとして居る」

瑞希「冬将軍さん、その服は鎧ですか?」

冬将軍「如何にも、六花箔押雪達磨兜に雪化粧塗氷柱威竃蔵胴具足である」

瑞希「とても強そうです」

冬将軍「そうであろうそうであろう、余も此の鎧を誇りとして居る」

瑞希「もしかして、腰のそれは」

冬将軍「余の宝刀であるぞ。神居古潭の名工、霜柱樹氷の鍛えし一振り。銘をして雪崩颪吹雪丸と云う」

瑞希「すごい輝きです……ぴかぴか」

冬将軍「如何して如何して、中々に話の分かる小娘であるな。時にその方、何処から参ったな」

瑞希「東京の765プロから、PV撮影で来ました」

冬将軍「ぴぃぶいとな」

瑞希「PVです」

冬将軍「其は何する物ぞ」

瑞希「音楽に合わせた映像を撮ります」

冬将軍「……えーぞーとやらは、獲れるのか」

瑞希「撮れます」

冬将軍「日に如何程獲れる」

瑞希「物にもよりますが、今回は一週間ほどで一本を」

冬将軍「……えーぞーとやらは、この辺りに成るのか」

瑞希「そうですね、監督の意向次第ですがこの辺りになりそうです」

冬将軍「旨いのか」

瑞希「有名だと聞いたので、きっと上手いです……ワクワク」

冬将軍「……ふむ。余もそのえーぞーを所望するぞ、賞味したい。此れへ持て」

瑞希「今はまだ出来上がってないので、手元にないです」

冬将軍「出来上がっておらぬのか。作っておるのか」

瑞希「はい、作っている最中です」

冬将軍「一週間と申したか」

瑞希「はい」

冬将軍「良し、暫し預けるぞ。きっと味わわせろよ」

瑞希「はい、冬将軍さんも楽しみにしていて下さい」

???「おーい瑞希ー」

瑞希「この声は……プロデューサー、どこにいるんですか?」

P「おーい瑞希ー」

瑞希「プロデューサー、私はここです。おーい、おーい」

P「おーい瑞希ー、……ぞー」

瑞希「プロデューサー、よく聞き取れませんでした。もう一度お願いします」

P「おーい瑞希ー、早……ゃうぞー」

瑞希「プロデューサー、どこですか? おーい、おーい」

P「おーい瑞希ー、早く……ないと、……じゃうぞー」

瑞希「プロデューサー、もう一度お願いします。もう少しで聞き取れそうな」



P「おい、瑞希!早く起きないと、死んじゃうぞ!!」

瑞希(……、……?)

???「っ、目を覚ました! 気が付いたぞ!!」

???「おい、分かるか!? 喋れるか? 体は動くか!?」

瑞希(目が、霞んで、ぼやけて……誰、でしょうか?)

???「早く下も掘り出せ! このままじゃ……!」

???「お、おい! こっちにもう一人埋まってるぞ!?」

???「早く掘り出せ!! おい、おいあんた頑張れ! ツレもすぐ出してやる、もう少しだからな!」

瑞希(ツレ……プロ、デューサー)

???「せーの、よいしょー! もう一回、せーの、よいしょー!!」

???「とにかく暖めねえと……!」

???「! こっちも生きてる、生きてるぞー!!」

瑞希(眠いな……うとうと)

???「おいあんた! もう少しの辛抱だ、今はまだ寝るな!! おい!」

瑞希(……)

???「……い! ……!」

瑞希(……ぐぅ)

瑞希「むむ。ここは……病院でしょうか」

医師「……目が覚めまし……ね。……の調子はどうですか? どこ……痛い所や、お……しな所は?」

瑞希「は、い。少し体が重いですが、何ともないです」

医師「問題な……うですね。何があったかは覚え……いますか?」

瑞希「……?」

医師「ああ、起きてす……のに色々と話し過ぎでし……た午後に来ます、今はゆっくりと休んで下……」

瑞希「は、い。ふぁあ……うとうと」

医師「あはは、それじゃ……さい……」

瑞希「ぐぅ」

???「寒い……寒い……」

瑞希「……あ。プロデューサー」

P「み、瑞希か? どこだ? 寒いんだ、どこにいるんだ?」

瑞希「プロデューサー、私はここです。早く湖から上がって、こっちの焚き火に来て下さい。暖まりますよ」

P「どこにいるんだ瑞希? どこに焚き火なんて……寒い、寒いよ」

瑞希「プロデューサー、こっちです。そっちは反対です、こっちです」

P「こっちか? それともこっちか、どこだ瑞希?」

瑞希「プロデューサー、こっちです。こっちですよ、こっちですプロデューサー」

P「寒い……寒いんだ、もう動けない、寒い……」

瑞希「プロデューサー!」

瑞希「はっ……ここ、は病院。今、はお昼」

医師「おはようございます。ああ、待たせてしまいましたか?」

瑞希「あの、プロデュー……私と一緒にいた男性は」

医師「……まだ目を覚ましません、ですが心ぱ」

瑞希「部屋はどこですか、プロデューサーはどこにいるんですか」

医師「あ、ちょっ!? まだ立ち上がっちゃ」

瑞希「プロデューサーの部屋は、どこですか」

医師「む、向かいの」

瑞希「ありがとうございます。……っ」

医師「あっ待ちなさい! 動けるような体じゃないんだから、ベッドで休んでいないと!」

瑞希「分かりました。では先生が、私をプロデューサーの所まで連れて行って下さい」

医師「ダメだ、と言ってもこっそり抜け出しそうですね。分かりました、車椅子を用意するので少し待っていて下さい」

瑞希「早くお願いします……早く」

医師「さっきも言いかけましたが、心配はいりません。もうじき目を覚ますはずです……さ、着きましたよ」

瑞希「プロデューサー、聞こえますか?」

P「……」

医師「私は部屋の外で待っているので、何かあったら声をかけて下さい」

瑞希「先生、ありがとうございます。プロデューサー、プロデューサー、聞こえますか?」

P「……」

瑞希「プロデューサー、私はここです。私の手の熱、感じていますか?」

P「……」

瑞希「プロデューサー、こっちですよ。プロデューサー、私はここです、こっちですよ」

P「……んが」

瑞希「! プロデューサー、プロデューサー。先生、目を覚ましました、覚め、目をっ」

医師「目が覚めましたか。真壁さん、私は彼と話があるので病室へ、ああ君、この子を向かいの部屋まで」

看護婦「はーい先生」

瑞希「あの、先生」

医師「はい?」

瑞希「……よろしくお願いします」

医師「はい、任せてください」

看護婦「さ、戻りましょうねー」

瑞希「プロデューサー、もう大丈夫なんですか?」

P「瑞希も人の心配してる場合じゃないだろう」

瑞希「私はもう元気いっぱりです……いっぱいです」

P「ははは、呂律も回ってないじゃないか」

瑞希「む、少し噛んだだけです」

P「俺ももうすっかり元気だ。流石にそろそろ退院しないと、仕事が溜まってそうで怖い」

瑞希「プロデューサーは雪崩に飲まれたんですから、もう少しゆっくり休んでも」

P「他人事みたいに言うけど瑞希もだからな? それにしても災難だったよなあ」

瑞希「スタッフの皆さんも、無事だったそうで何よりです……ほっ」

P「不幸中の幸いって奴だな。本当に死人が出なくてよかった」

瑞希「はい、本当に」

P「……なぁ、瑞希」

瑞希「?」

P「ありがとな」

瑞希「私、お礼を言われるようなことは」

P「ああいや、こっちの話だから気にしないでくれ」

瑞希「しました」

P「!?」

瑞希「プロデューサーが目を覚ます前、手を握って、何度もプロデューサーを呼びました」

P「……うん、聞こえた。呼ばれた」

瑞希「生きて帰ってきてくれて、ありがとうございます」

P「あはは、どういたしまして。瑞希も生きて帰ってきてくれて、ありがとう」

瑞希「どういたしまして。それと、ありがとうございます」

P「? それは何のお礼?」

瑞希「プロデューサーが起こしてくれたお礼です」

P「俺が起こした?」

瑞希「はい。あ、こっちの話です」

P「ふー、ん……?」

医師「いえいえ、お礼を言われるようなことじゃ。仕事ですから」

看護婦「どういたしましてー、今度は病院の外で会いましょうね!」

瑞希「あとお礼を言わなきゃいけないのは……あっ」

P「瑞希ー、そろそろ出るぞー」

瑞希「冬将軍さん」

P「冬将軍? ああ、これからどんどん寒くなるだろうなー、今日辺り攻め込んでくるかもなー」

瑞希「そうですね、その前に先手を打たないと……プロデューサー、少し寄って欲しい所があります」

P「いいけど、どこだ?」

P「少し寄るってレベルじゃないんだけど」

瑞希「プロデューサー、送ってくれてありがとうございます」

P「っていうか、なんでまたここに戻りたかったんだ? 俺なんてトラウマになっちゃって足震えてるぞ」

瑞希「ある方と約束をしたので……遅くなりましたがここで撮ったPVのDVDです。じっくりとご賞味く、わわっ」

P「ぅわぷ!? ……凄い風だったな、もう用は済んだのか?」

瑞希「はい、風にさらわれましたけど、多分渡せたと思います。それでは帰りましょうか」

P「ああ、暖かい事務所に帰ろう。シートベルトしたか? よし、出すぞ」

瑞希「……冬将軍さん。見逃してくれて、ありがとうございました」

冬将軍『良き哉』

瑞希「さようなら……また、いつか」



終わり

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