冷泉とうふ店
おばあ「こら!麻子!配達の時間だよ!」
麻子「うぅ…眠い」
おばあ「もうとうふは積んであるからさっさと行ってきな!はい紙コップ」
麻子「なんかいつもより水多くないか?」
おばあ「気のせいだよ、とっとと行ってきな」
麻子「わかった、行ってくる」
秋名峠
みほ「ここが次に交流戦をする所かぁ」
みほ「熱くなれるようなドライバーがいるといいんだけど」
麻子「眠いから速く帰ろ…」
みほ「なに…いまの86…」
みほ「これなら熱くなれるかも…」
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学校
沙織「91年式で130万かぁ高いなぁs13はやっぱ86だよ!86なら現実味あるしとりあえず車はfrじゃなきゃね、ね?麻子?」
麻子「でいくらするんだ?その86って奴」
沙織「えーと30万って言うのがあるよ」
麻子「それで今の所いくら貯まってるんだ?」
沙織「5万ちょっとかな…」
麻子「先は長そうだな」
沙織「いまやってるスタンドのバイトだと夏休みフルで頑張っても12万くらいだし…」
キンコーンカンコーン
麻子「ほら授業始まるからいくぞ」
沙織「だね、行こっか」
放課後
沙織「ねぇ二人協同で86買わない?
二人分合わせればローン払えるし!」
麻子「それは嫌だ、なんでそんなに車が欲しいんだ?沙織の家にも車くらいあるだろ?」
沙織「ダメダメ、お父さんの車はオートマでffでおまけにエンジンディーゼルだよ?あんなの車じゃないよ」
麻子「タイヤが4つついてれば立派に車だと思うが」
沙織「麻子は全くわかってないなぁ」
沙織「やっぱり車は峠に行って楽しくなきゃ」
麻子「峠に行ってなにするんだ?」
沙織「もーコーナーを攻めるに決まってるじゃん」
麻子「楽しいのか?そんなことして」
沙織「楽しいに決まってるじゃん!」
麻子「私は飽きてるんだよなぁ…そういうの」
沙織「???」
ガソリンスタンド
沙織「ねぇー麻子86買おうよー」
麻子「しつこいな、買うなら一人で買ってくれ」
ナカジマ「君たち中々いい趣味してるね、86を狙うなんて」
沙織「でしょ?ナカジマ先輩もそう思いますよね!」
ナカジマ「うん、いい車だよね86」
沙織「ほら見なさい」
麻子「実は私よく知らないんです、その86って奴」
ナカジマ「え!?」
沙織「jsで働いてるのに86知らないなんて赤っ恥もいいところだよ!?」
ナカジマ「まぁ無理もないか92が出たのが君たちがまだ小学校2、3年くらいの時だしね」
麻子「家にも商売で使ってる古い車があるが…」
沙織「もー!86はそんなのとは全然違うの!」
沙織「86買ったらナカジマ先輩のチームいれてもらえますか?私秋名スピードスターズに入るのが夢なんです!」
ナカジマ「もちろん、それより今日は土曜日だからみんな秋名山にみんな集まるよ、君たちも来る?」
沙織「けど私たち車ないから…」
ナカジマ「乗せてってあげるよ」
沙織「え?先輩のs13に?行きます!行きます!絶対行くよね!麻子!」
麻子「私行くなんて行ってないんだけど…」
沙織「お疲れ様でーす」
ナカジマ「お疲れー8時にバス停に迎えにいくから待っててね」
沙織「はーい」
蝶野「好きねぇ、何処の峠に行くの?」
ナカジマ「店長!この辺りで走るって行ったら秋名山しかないでしょ」
ナカジマ「うちのチームは一応秋名山最速を宣言してるんですよ」
蝶野「自称秋名山最速っていうのはゴロゴロいるわよ?」
蝶野「私が現役で走っていたときは自他供に認める秋名山最速がいたわね」
蝶野「しかもその人は今でも秋名山を現役で走ってるわ」
ナカジマ「今でも?私秋名の走り屋なら大体知ってますけどそんなに歳とってる人は知りませんよ?」
蝶野「ナカジマ達とは走る時間がずれてるだけね」
蝶野「その人は今はとうふ屋のおばばだから」
蝶野「朝の4時とかにとうふを秋名湖畔のホテルに下ろしに行くんだけど下って来るときのスピードは一見の価値があるわね」
蝶野「かけてもいいわ、秋名山最速はとうふ屋の86よ」
ナカジマ「とうふ屋の86!?」
夜
おばあ「出かけるかい?」
麻子「沙織と約束があるからな、ちょっと行ってくる」
おばあ「夜遊びするのは勝ってだけど朝は叩き起こすからね」
麻子「うー分かってるよ…じゃあ行ってくる」
秋名峠
麻子「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
沙織「麻子静かに!ナカジマ先輩の気が散るでしょ!」
麻子「そんなこと言ったって怖いものは怖いんだよぉぉぉ」
ナカジマ「無理もないよ誰だって走り屋の車に乗ったらビビるもんだよ」
秋名山頂上
麻子「はぁはぁはぁ」
ナカジマ「ごめんちょっと飛ばし過ぎちゃったかも」
沙織「もー麻子ったら…」
ガソリンスタンド
蝶野「みたことない連中ね、今夜は峠でひと悶着ありそう」
秋名山頂上
ナカジマ「見慣れない車…あのステッカー赤城最速のレッドサンズ…」
みほ「私たちは赤城レッドサンズっていうのチームのメンバーです」
みほ「この峠で最速のチームまたは走り屋が居たら教えてください」
ナカジマ「私たちは秋名スピードスターズってチームやってるけどここじゃ最速だと思ってる」
みほ「なら話は早いです、この秋名山で私たちと交流戦をやりませんか?」
エリカ「どう?地元だけつるんで走ってるとマンネリじゃない?よそのチームと走った方がいろいろ刺激にもなるわよ」
エリカ「はじめはつるんで走って最後に上り下りのアタックをやるの」
みほ「勝ち負けにこだわるつもりはないです
あくまでチーム同士の親睦が目的です」
みほ「どうですか?」
ナカジマ「そこまで言われたら断る理由はないよね?」
ホシノ「そうね」
エリカ「それじゃ来週の土曜10時ってことで」
ナカジマ「うん、わかった」
みほ「今日の所はじっくり走らせてもらいますね」
ホシノ「気後れする事ないわ、私たちも行くわよ!」
ナカジマ「そうだね」
沙織「ナカジマ先輩!」
ナカジマ「見せてもらうよ 赤城最速の西住姉妹の走りを」
沙織「西住姉妹ってあの雑誌にものったことある有名な走り屋ですか!?」
ナカジマ「うん 人よんでロータリーの西住姉妹だよ」
ブーン
沙織「ナカジマ先輩私たちは?」
ナカジマ「ごめんね 本気で走るときは横に人を乗せないことにしてるんだ、後で拾いに来るから待ってて」
麻子「なぁ沙織 走り屋って楽しいのか?そんなに」
沙織「次から次へと全開でカッ飛んでくあの音聞いてなんとも思わないの?血が騒がない?」
麻子「血が騒ぐ…?」
冷泉とうふ店
プルルルル
おばあ「はい、こちら冷泉とうふ店」
おばあ「なんだあんたかい、どういう風の吹きまわしだい?」
蝶野「久しぶりに電話したのに冷たいわね」
蝶野「こないだ配達帰りにすれ違ったわよ、挨拶したのに無視したでしょ?」
おばあ「それはねぉ私じゃないよ」
蝶野「違わないでしょ、あなたの86だったわよ?」
おばあ「今とうふを下ろしにいってるのは私じゃなくて孫の麻子だよ」
蝶野「え…いつからなの?」
おばあ「五年前くらいからかねぇ」
蝶野「五年前って!中一の時から!?」
秋名山
ホシノ「全然ついて行けないじゃない!」
ナカジマ「速い…めいっぱい走ってるのにレッドサンズを一台も捉えられない…」
みほ「どう思う?お姉ちゃん(あの86はいない…)」
まほ「カスばかりだな、うちの二軍でも楽に勝てる、来週はベストメンバーでくる必要もないだろう」
みほ「お姉ちゃんが来ないなら私も!」
まほ「いやみほは走れ、地元の奴らが絶対に破れないコースレコードを作るんだ」
まほ「そうしないと赤城レッドサンズの名は伝説にはならない」
まほ「そして関東全域に最速のコースレコードを残す」
まほ「それが私たちの関東最速プロジェクトだ」
みほ「うん…」
ツチヤ「すごいよ…あの人達根本的になんか違う」
ホシノ「ホームグラウンドでよそ者にちぎられるなんてすごくショック…」
スズキ「けど地元が逃げる訳には行かないでしょ」
ツチヤ「でも根性だけじゃあいつらには勝てないよ」
ナカジマ「今日はもう遅いからまた明日どっかに集まるって話そう」
ホシノ「そうだね 今日は帰ろう」
ナカジマ「走り屋って負けず嫌いな奴が多いんだ」
ナカジマ「地元でよそ者に負けることほど情けないことってないからさ」
ナカジマ「それは走り屋の掟みたいな物なんだよね」
沙織「……」
麻子「……」
夜明
小梅「あれ?まほさんは?」
みほ「お姉ちゃんならもう帰ったよ」
みほ「残ってるのは私たちだけ」
小梅「もうすぐ夜明ですね」
みほ「私たちもボチボチ引き上げようか」
一眠りしてきます
みほ「………」ブーン
みほ「本気で飛ばすとついてこれないね…」
みほ「やっと来た」
みほ「あれ?うちのチームじゃない…」
みほ「MR2?180?」
みほ「クッ…コーナー2つでバックミラーから消して見せます…」
みほ「86!?こないだの!」キィィィィィ
麻子「………」キィィィィィ
みほ「旧式の86をこのFDがちぎれないなんて…」
みほ「この人先を知らない!?この緩い右の後でキツい左なのに…減速しないと谷底にまっ逆さま…」
麻子「…………」
みほ「やっぱりスピードがのりすぎてる…立て直して減速するスペースはもうないし…」
麻子「………」キィィィィィ
みほ「え…慣性ドリフト…」
みほ「あっ……」キィィィィィシュトン
みほ「1つ目の右カウンターは次の左へのフェイントだった」
みほ「この秋名の峠を知り尽くした完璧なスーパードリフト…」
小梅「みほさん!見ました?今の86」
みほ「うん…まさか峠仕様のFDで86に負けたなんて…」
みほ「あの86本当にすごいよ!」
冷泉とうふ店
ナカジマ「まちがいない86だ」
ナカジマ「これかな?店長の行ってた下り最速マシンって」
ナカジマ「見たところどこにでもありそうな86だけど」
ナカジマ「こんな車が今の新しいマシンに勝てる分けないか」
ナカジマ「わざわざ探しに来るなんて私もどうかしてるなぁ」
麻子「あれ?ナカジマ先輩」
ナカジマ「あっ麻子か」
麻子「何してるんですか?こんな所で」
ナカジマ「あれ?ここ麻子の家?」
麻子「はぁ」
麻子「先輩、家の前で何してたんですか?」
ナカジマ「ああ、ちょっと近所に用事があってね」ブーン
ナカジマ「それより本当に車のこと何にも知らないんだね」
麻子「はぁ」
ナカジマ「昨日86なんか知らないって言ってたけど麻子の家にあるあれが86だよ」
麻子「えっ…確かトレノって書いてありましたよ」
ナカジマ「だからトレノが86なの、AE86のレビントレノをひっくるめて86って言うの」
ガソリンスタンド
沙織「えぇー麻子の家に86が!?本当てすか?ナカジマ先輩!?」
ナカジマ「本当だよ」
沙織「もー麻子!なんで内緒にしてたの?」
麻子「しょうがないだろ86だって知らなかったんだから」
沙織「ところで物は相談なんだけど来週の土曜日その86駆り出せない?」
麻子「なんで?」
沙織「決まってるじゃん!私たちもスピードスターズとレッドサンズの交流戦をギャラリーしに行くの!」
沙織「私昨日の一件以来走り屋の世界にゾッコンなの!」
麻子「ああ、暇だったらな」
夜
ホシノ「新品のタイヤいれてるの?」
ナカジマ「うん、タイヤだけでもハイグリップに換えてタイムを稼がないとついでにブレーキパッドも交換するんだ、下りはブレーキが胆だから」
スズキ「やるの?ナカジマ」
ナカジマ「うん、下りは私が走る」
ホシノ「あんまり無理しないでよ?下りはワンミスが命取りになるから」
ナカジマ「分かってるけど少しは無理しないと…地元の意地があるじゃん…」
秋名山
みほ「今日もあの86現れない…地元の走り屋じゃなかったのかな」
みほ「でも秋名の峠を熟知していたし…」
みほ「もう一度ど会ってリベンジしたい」
みほ「スピードスターズなんかどうでもいい…私はあなたに会いに来てる」
ガソリンスタンド
沙織「うわー流石ドリキン土屋圭市!たまらないね!」
ナカジマ「アクセルワークだけでコントロールしてるんだろうね」
沙織「麻子!私たちも早くこういうドリフトきめられるようになりたいね!」
麻子「ああ」ペラペラ
沙織「見なよ!このドリフトすごいよ!」
麻子「ああ」ペラペラ
沙織「麻子!さっきからああ、ああって本当にドリフト知ってるの?」
麻子「ああ、知ってるぞ、ドリフトぐらい」
沙織「じゃあ言って見なさいよ!」
麻子「カーブで」
沙織「カーブで?カーブじゃなくて走り屋はコーナーっていうの!」
麻子「だからそのコーナーで内側に車が流れないように前のタイヤをこう流して」
沙織、ナカジマ「えぇー」
沙織「もーフロントが流れるのはアンダーって言って一番かっこ悪いんだよ!」
ナカジマ「ドリフトって言うのはフロントじゃなくてリアを流すの」
店長「(分かってないのはナカジマあんたの方よドリフト中のマシンっていうのはきほんが的にアンダーステアだから今のは四輪ドリフトをマスターしてないと言えない高度な回答だよ)」
蝶野「ほらお客さんよ!仕事仕事」
ナカジマ「いらっしゃいませー」
ナカジマ「(FD、西住みほ…)」
みほ「ハイオク満タンで」
麻子「はい」
ナカジマ「お客さんずいぶん熱心ですね」
みほ「あなたはスピードスターズの」
みほ「1つ聞いてもいいですか?」
みほ「あなたなら多分知ってますよね、秋名山に出る鬼みたいに速い86のこと…」
ナカジマ「ちょっと知りませんね」
みほ「そんな地元が知らないはずないです!あれだけの車を!」
みほ「わかりました…土曜日の交流戦の秘密兵器って訳ですね……」
みほ「あの86のドライバーに伝えてください、次は負けないと」ブーン
ナカジマ「え…」
ナカジマ「西住みほが負けた…?なんのことだ?」
ナカジマ「そんな86私たちだって知らない…」
麻子「………」
ナカジマ「まさかね…」
朝
沙織「相変わらず寝ぼけた顔してるね」
麻子「だって朝は眠いんだ…」
沙織「そういえば今週の土曜日86忘れないでね!」
麻子「分かってる分かってる」
沙織「私たちも走り屋を目指すならいつか秋名最速って言われたいね」
麻子「私は別にそんなのなりたくないぞ」
冷泉とうふ店
ナカジマ「すいませんー」
おばあ「はいはい」
ナカジマ「(この人が秋名最速の86乗り)」
おばあ「何にする?」
ナカジマ「とりあえず厚揚げください」
おばあ「はいよ」
ナカジマ「あの私ナカジマって言う者ですけど秋名スピードスターズって言うチームやってます」
おばあ「……」
ナカジマ「私実は変わった噂を聞いて来たんです」
ナカジマ「秋名の下りで一番速いのは86に乗ってるとうふ屋って聞いたんです」
おばあ「どこの誰が言ったか知らないけどあたしじゃないよ」
ナカジマ「しらばっくれないでください!この町を探したって86を運転するとうふ屋なんて他にいません!」
おばあ「はい、厚揚げ140円」
ナカジマ「あっはい」
おばあ「まいどあり」
ナカジマ「実は込み入った事情があって…その私の話聞いてくれませんか?」
おばあ「それは困る、仕事中だからね」
ナカジマ「暇そうじゃないですか!他に客もいないし」
おばあ「言いにくいことをズバッと…」
ナカジマ「あっ…ごめんなさい」
ナカジマ「私ちょっと必死なんで…実は赤城レッドサンズってチームからタイムアタックの挑戦をされてるんです」
ナカジマ「レッドサンズにはすごいテクを持った走り屋がいて私たちじゃ対抗できないんです」
ナカジマ「でも…地元の走り屋として負けたくないんです!」
おばあ「それで私にどうしろって言うんだい?」
ナカジマ「冷泉さん…私に秋名の攻め方を教えてください」
おばあ「それは無理な注文だねぇ」
おばあ「ドラテクって言うのは2、3日でどうにかなるもんじゃないよ…どうすれば車が思い通りに動いてくれるのか考えてとことん走り込むしかないんだよ」
おばあ「私なんか現役で走ってた頃は夢の中まで秋名を攻めたもんさ」
ナカジマ「わかりました…また来ます…」
おばあ「悪いねぇ力になれなくて」
秋名山
ナカジマ「もっと速く走らなきゃ」ブーン
ナカジマ「対向車!避けきれない!イン側に逃げて!」
ナカジマ「ふぅ」
ナカジマ「うわぁぁぁ」ドカン
朝
沙織「えぇーナカジマ先輩が事故ったー!いつですか!?」
ホシノ「昨日の夜に秋名の下りでガードレールにてん…」
沙織「それで怪我は!」
ホシノ「酷くはないらしいよ、軽いむち打ち程度だって」
ホシノ「けど精神的には大分まいってるみたい…」
ホシノ「車の方もかなりいっちゃってるらしい」
沙織「じゃあどうなっちゃうんですか!?土曜日の交流戦!」
ホシノ「絶望的かも…とりあえずナカジマの代役たてなきゃ…」
冷泉とうふ店
ナカジマ「すいません!あの厚揚げください!」
おばあ「はいはい、まいど」
おばあ「ん?事故ったのかい?」
ナカジマ「はい…」
おばあ「交流戦まで時間ないだろ?どうするんだい?」
ナカジマ「その件で冷泉さんにお願いがあります」
おばあ「お願い?」
ナカジマ「はい、明後日の交流戦、私の代わりに走ってくれませんか?」
おばあ「えぇー」
ナカジマ「お願いします!冷泉さん」ゴキッ
ナカジマ「うう、首痛い…」
ナカジマ「冷泉さんなら走り屋の気持ちわかりますよね!?」
ナカジマ「地元が負ける訳には行かないんです」
おばあ「今更私みたいな老いぼれが出てもどうにもならないと思うけどねぇ」
ナカジマ「私…秋名で育った走り屋だからレッドサンズが秋名の走り屋全部をバカにしてるのが見え見えで…それでムカつくんです!」
ナカジマ「秋名にだって本当に実力のある走り屋がいることをあいつらに見せたいんです!」
ナカジマ「冷泉さん!あなたならそれができます、何しろ赤城最速の西住姉妹を一度負かしてるんですから!」
おばあ「ん?」
ナカジマ「お願いします!冷泉さん!」
おばあ「うーん」
夜 ガソリンスタンド
ビィィィィィ
蝶野「何よ、今日はもう終わりよ」
おばあ「かたいこと言うんじゃないよ、ハイオク満タンね」
蝶野「生意気ね86の癖にハイオクなんて」
おばあ「あんただろ、あのナカジマって若いのに変なこと教えたの」
蝶野「別に嘘を言ったつもりはないけどそれがどうかしたの?」
おばあ「今日も来たぞ、頭に包帯巻いてギプスつけて自分の代わりに走ってくれだってよ」
おばあ「まぁああいう若いのは嫌いじゃないがね」
蝶野「嫌いじゃないなら代わりに走ってあげたら?」
おばあ「やだね、子供の喧嘩に親が出るようなもんさ」
蝶野「だったら子供の喧嘩に子供を出せばいいじゃない」
おばあ「ん?麻子のことを言ってるのかい?」
蝶野「そう、かなりの腕になってるんでしょ?」
おばあ「まだまだだよ…」
おばあ「秋名の下りならどんな奴が来ても負けないくらいにはなったがね」
おばあ「まぁ私には負けるけどね」
蝶野「またすぐ負けん気を出す」
おばあ「でも誰に似たのか頑固だからねぇ走れって言われて走るかねぇ」
おばあ「まぁあのナカジマって子の包帯に免じて作戦を考えてやるか」
学校
麻子「日曜日にケーキが全品半額だと…少し遠いが車を出せば…」
沙織「またケーキの本読んでる」
夜
麻子「ただいまー」
麻子「そうだ、おばあ今度の日曜日車を使わせて貰うからな」
おばあ「日曜日?ああ…ダメだね」
麻子「なんで?朝の配達はちゃんとやるからさぁ」
おばあ「そういう問題じゃない日曜日は寄合いがあるからそれに乗ってくんだよ」
麻子「うう…なんとかならないか?」
おばあ「どうしてもって言うなら考えてやってもいいぞ」
麻子「本当!?」
おばあ「ただし条件があるよ」
麻子「条件…?」
おばあ「土曜の夜赤城最速とかぬかすスカしたガキを軽くひねってきな」
おばあ「秋名の下りでな」
麻子「なにそれ?」
おばあ「そうすれば車は無条件で貸してやるよ
ガソリン満タンもつけてね」
麻子「ガソリン満タン…(ガソリン代分ケーキが食べれる)」
おばあ「どうするんだい?やるのかい?」
麻子「ちょっと考えさせて欲しい」
まほ「………」カタカタ
みほ「入るよ」コンコン
まほ「みほか、ちょうどよかった聞きたいことがあるんだ」
みほ「なに?お姉ちゃん」
まほ「みほが秋名で見た86だけどそいつの速さを説明できる?理論的に」
みほ「勘弁してよ、お姉ちゃんと違って私はそういうの苦手だから」
まほ「いつも言っているようにドラテクで一番大事なのは頭だよ」
みほ「お姉ちゃんは後ろにつくだけでなんでもわかっちゃうんだよね、相手のドライバーの癖や欠点、足回りの仕上がりまで」
みほ「お姉ちゃんの分析力は化物じみてるよ」
まほ「私から言わせれば何も考えずに走って私とタメはる、みほの方が化物じみてるよ」
まほ「みほの走りに理論が加われば理想的なドライバーなんだけど」
みほ「この前負けたのは熟練度の差…あの86のドライバーやっぱりすごいよ」
まほ「少し興味が出てきた、明日の交流戦私も行ってみるか」
学校
沙織「麻子ーついに土曜日だよ!」
麻子「ん?なんだっけ?」
沙織「やだもー冗談でしょ?今日は交流戦の日じゃん」
麻子「ああ、その事だけどちょっとややこしいことになっちゃってさ」
沙織「まさか都合が悪くなったなんて言わないよね?」
麻子「違う…そうじゃない」
沙織「とにかく約束破ったら絶交だからね!」
麻子「ああ」
冷泉とうふ店
ナカジマ「ごめんください!」
ナカジマ「厚揚げください」
おばあ「ああ、またあんたね」
ナカジマ「冷泉さん!お願いします!今日の交流戦に!」
おばあ「行ってやれるかもしれないよ」
ナカジマ「え?」
おばあ「行ってやれるかもしれないって言ってるんだよ、今夜の秋名山に」
ナカジマ「本当ですか!?」グキッ
ナカジマ「首…いちゃい」
おばあ「大丈夫かい?」
ナカジマ「本当に来てくれるんですか!?」
おばあ「確実とは言えないがけど今の所五分ってとこだねぇ」
おばあ「何時から始まるんだい?」
ナカジマ「タイムアタックは10時からです」
おばあ「10時過ぎてももし86が来なかったらその時は諦めるんだよ」
おばあ「自分達でなんとかしな」
ナカジマ「待ってますよ!冷泉さん!絶対来てくれると信じてます!」
ナカジマ「それじゃ秋名山の頂上で10時に待ってます」
おばあ「弱いんだよねぇああいう熱い奴に」
おばあ「もし麻子がごねたら私が走ろうかねぇ」
ファミレス
モブ「どうなるのかな?今日のバトル」
モブ「レッドサンズはあっちこっちで交流戦しかけて全勝してるって話だぜ」
ナオミ「やる前から結果は見えてる、どうせ秋名の全敗ね、だけど群馬最速はレッドサンズじゃない私たち妙義ナイトキッズよ」
モブ「ナオミさん、そろそろ」
ナオミ「ああ、行きましょう」
ナオミ「速く走ることだけを目的に作られた純血種のサラブレッドR32…赤城の芋ロータリーなんかに負けやしないわ」
ガソリンスタンド
蝶野「山は軽いお祭り状態ね」
蝶野「ナカジマのチームと赤城最速のチームの交流戦のことはあちこちで噂になってるしね」
蝶野「どっちが勝つかな…まぁ麻子のは86はあいつの86だからまず負けないでしょう」
蝶野「私までひさびさに血が騒いで来たわ」
秋名山
ホシノ「こんな大勢のギャラリー秋名じゃ見たことないよ」
ナカジマ「レッドサンズが自らの速さを見せつける為に集めたんだろうね」
ナカジマ「これで負けたら私たちは赤っ恥だよ」
スズキ「ところでさっきの86の話だけど本当なの?ナカジマ」
ナカジマ「うん」
ホシノ「私にはとてもじゃないけど信じられないよ…その86」
ナカジマ「86は86でもただの86じゃないよ」
ナカジマ「西住みほが自分で言ったんだよ
86のドライバーはすごいって」
ナカジマ「私を信じて!必ずあの人は来てくれる」
ホシノ「もし来なかったら?」
ナカジマ「その時はホシノ…チームの看板背負って死ぬ気で走って!」
スズキ「レッドサンズが来たよ!」
バス停
沙織「もー麻子が迎えに来ない…」
沙織「もう間に合わない…しょうがないから原付で行こ」
秋名山
エリカ「タイムアタックは予定通り10時から始めましょう」
エリカ「遅い時間なら一般車の通行がなくてやりやすいから」
エリカ「スタートとゴール地点で無線を二台使ってカウントするのよ、安心してアタッカーが攻められるように」
ナカジマ「なるほど」
ホシノ「あいつら手慣れてるわね」
エリカ「じゃ10時まではフリー走行ってことで」
みほ「来てないよ…例の86」
まほ「どういうことだ?秘密兵器として最後まで隠しておくつもりなのか?」
冷泉とうふ店
おばあ「どうしたんだい?行く気になったかい?」
麻子「うーんあんまり気がすすまない」
おばあ「なんだい勝つ自信がないのかい?」
麻子「うーん」
秋名山10時
みほ「結局86は来てない…」
エリカ「そろそろ時間だからカウントを始めるわよ」
ナカジマ「ダメか…」
ホシノ「どうするの?ナカジマ?」
小梅「こちらゴール地点、今一般車が一台上がって行きました」
ナカジマ「…!ちょっと車種を聞いてもらってい?」
小梅「えっと86です!」
みほ「ついに来たね…」
ナカジマ「来てくれんだ…」
みほ「その86がくるまでカウントは待ってください」
エリカ「わかったわ」
86車内
沙織「ねぇ!麻子!見てすごいギャラリーだよ!」
麻子「静かにしてくれ…」
ホシノ「86が来たわ!誘導するわよ!」
スズキ「オーライオーライ」
沙織「本当にここに止めちゃっていいのかな?」
麻子「いいんじゃないか?」
ナカジマ「麻子じゃない!おばあさんは?」
麻子「はい、おばあに走って来いって言われました」
ホシノ「大丈夫なの?」
麻子「ガソリン満タンかかってますからやらせてくれたら負けない…」
沙織「え?麻子が走るの?どういうこと?」
麻子「そういうことだ」
ナカジマ「もしかして豆腐の配達っておばあちゃんだけじゃなくて麻子もやってるの?」
麻子「いや豆腐の配達は今はワタシだけです」
ナカジマ「そういうことだったのね…やっとのみこめた」
ナカジマ「麻子!下りのアタックは君に任せたよ」
麻子「はい」
沙織「なに言ってるんですか!?麻子なんかに走らせたら事故って死んじゃいますよ!」
ナカジマ「大丈夫だからほら沙織は端で見てようね」
ナカジマ「よく来てくれね ありがとう」
麻子「はぁ」
ナカジマ「ごめん待たせたね!始めよう!」
みほ「待ちくたびれちゃったよ…名前は?」
麻子「冷泉麻子…」
みほ「私は西住みほ…今回は負けないから」
エリカ「それじゃカウント始めるわよ」
エリカ「スタート10秒前!9、8、7、6、5、4、3、2、1!ゴォー!」
みほ「……」ブーン
麻子「……」ブーン
ギャラリー「やっぱり西住みほのFDは速い!360馬力はだてじゃないな!」
ギャラリー「勝負になんねーよ86のフル加速なんて止まって見えたぜ」
ナカジマ「麻子…」
まほ「あの86スタートダッシュを見る限り精々140馬力ってところか…」
まほ「シフトポイントは速いがラリー用のクロスミッションを組んでいるからあれなら秋名のタイトなヘアピンに二速がぴったりあう」
まほ「だからといってみほのFDがあの86に負ける理由にはならない…」
まほ「すごいのは車じゃなくてドライバーなのか…」
麻子「………」ブーン
みほ「遠慮はしないよ…ストレートでちぎるのは不本意だけどこれはタイムアタックだから」
みほ「あの86が二度とバックミラーに映ることはないよ…」
麻子「………」キィィィィ
ギャラリー「こちら第一コーナーすげぇぜ!86のライン!ガードレールから5㎝と離れてなかったぞ
あんなスピードで曲がるやついままで見たことねぇ!」
麻子「……」ブーン
みほ「なんで…差がつまってる!?」ブーン
頂上
沙織「え!?おばあが最速の走り屋なんですか!?」
ナカジマ「店長の話だと今でも下りなら最速らしい」
ナカジマ「そのおばあさんが麻子を代わりに寄越したってことは麻子を信じるしかないでしょ?」
沙織「でもいくらおばあが速くても麻子じゃ…」
ご飯行きます
ナカジマ「実は麻子は一度西住みほに勝ってるらしいんだ」
沙織「麻子があの西住みほに!?」
麻子「………」キィィィィ
ギャラリー「なんだ!あの86!すごいスピードでケツを流しながら突っ込んでその上スゲー速さで抜けてったぞ!」
ギャラリー「いつすっとんでおかしくねぇ!見てるこっちがヒビッちまうぜ」
みほ「追いつかれた…1体何が起こってるの…気が変になりそう…」
麻子「セカンドの立ちあがりは一緒だけど伸びが違うな」ブーン
麻子「ちょっとでも直線が長いとドバッと差が開く」ブーン
ギャラリー「こちらスケートリンク前のストレート!今二台が通過しました!」
ギャラリー「みほさんが煽られてるぞ!
あの86はめちゃはやだ…」
ギャラリー「マジかよ、みほさんのFDがあそこまで追い回されることなんていままでなかったぜ!?」
ギャラリー「この長いストレートで突き放したけどこの先ヘアピンが続くからやばいかも!?」
エリカ「聞きましたか?」
まほ「誤算だったな…秋名にこれほどの凄腕がいるとは」
ギャラリー「すげぇ突っ込みだ!あよ86突っ込み重視のカミカゼ走法だ!恐怖の感覚かけてんじゃねーのか!」
みほ「直線では私の方が速い…それなのに食いつかれるってことはコーナーワークで負けてるってこと…」
麻子「多分おばあはあの車を抜かなきゃ勝ったと認めてくれないだろうな」
麻子「しょうがないな、あれやるか」
麻子「ケーキがかかってるからな…しかけるポイントは…次の5連続ヘアピンカーブだ!」
みほ「今日に限ってFDがやけにのろく感じる!セカンダリータービンが止まってるみたい!?」
まほ「こちら頂上聞こえるか?」
小梅「はい!」
まほ「そろそろ二台が五連ヘアピンにはいるから実況してくれ」
小梅「分かりました!」
まほ「なるべく状況が分かりやすくたのむ」
小梅「了解です!もうすぐ突っ込んで来ます!」
小梅「来ました!みほさんのFDです続いて86ほとんど差がないです!」
小梅「すごい…あの86完璧なブレーキングドリフト…みほさんが突っ込みで負けてる」
小梅「立ちあがりもうまい!ガードレールギリギリです!」
小梅「2度目のヘアピンに入ります!全然差がありません!」
小梅「FDがアウトにいった!86は!」
みほ「ヘアピンなのに減速しない…なんて人…」
麻子「……」ブーン
小梅「86がとんでもないオーバースピードでヘアピンに突っ込んで行きます!ブレーキがイカれたかも!」
麻子「………」バシュ
みほ「なに!今の音!?」
小梅「みほさんが抜かれました!あっけなくインからスパッと!」
エリカ「そんな…それじゃまるっきり状況が分からない!ちゃんと説明しなさい!」
小梅「それが見てた私たちにも…車って言うのはタイヤのグリップのを越えるスピードでは絶対曲がらないもんですよね…それなのにあの86インベタの苦しいラインなのにまるでジェットコースター見たいに変な曲がりかたをしました!」
小梅「何がどうなっているのかさっぱり分かりません!」
ナオミ「フッ私にはわかったわ、あの86が何をしたのか」
モブ「え?」
ナオミ「馬鹿馬鹿しいことだけどあんなことは誰にも絶対真似できないしかもこの秋名でしかありえないこと、フフっとんでもない馬鹿がこの世にはいるもんね」
ナオミ「楽しみがひとつ増えたわ、秋名の下りのスペシャリスト…あいつを仕留めるのはこの私妙義ナイトキッズのナオミだ!」
ギャラリー「こちらゴール地点!エンジン音が聞こえて来た!そろそろ来るぞ!」
ギャラリー「来た!どっちだ!」
ギャラリー「86だ!スゲーどうなってんだ!」
ギャラリー「みほのFDも来た!でもこれだけ離されたらもう追い付けない!」
ギャラリー「86がぶっちぎりだ!」
みほ「350馬力のFDが86に負ける…」
ギャラリー「今ゴールした!86の勝ちだ!」
頂上
ナカジマ「やったぁぁぁぁぁ」
みほ「次は負けないから…」
沙織「勝っちゃったよ!あのお寝ぼけ麻子が!」
ナカジマ「すごい…すごすぎるよ」
ホシノ「やったね!」抱きっ
ナカジマ「うん!」泣
ホシノ「ナカジマ、なに泣いてんのよ」
ナカジマ「なんか知らないけど嬉しくてヒクッ」
ホシノ「あいつにはいろいろ教えてもらおうね…ドリフトとか」
ナカジマ「スピードスターズのステッカー勝手に貼っちゃおうか!」
沙織「その役私がやります!先輩!」
ナカジマ「よーし沙織!任せたよ!」
まほ「私たちの完全な負けだ…潔く認めよう」
小梅「上りのタイムアタックは?」
まほ「上りで勝っても意味はない…」
エリカ「明日には走り屋じゅうにこの噂は広まりますよ」
エリカ「負け知らずだったレッドサンズが秋名の86に負けたって…」
まほ「このリベンジは近いうちにつける…私のFCで」
冷泉とうふ店
麻子「ただいま」
おばあ「ん?」
麻子「ガソリン満タン約束だぞ」
麻子「約束だぞ!」
おばあ「勝った見たいだねぇ、まっやる前からわかってたけどね」
完
麻子「32?それって速いのか?」に続く
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