P「moratorium」 (4)



「兄ちゃんに真美の気持ちなんか分かんないよ」


真美の言葉が頭の中でひたすらリフレインされる中、一歩、また一歩と薄暗い階段をゆっくり上る。

建物の中とはいえ、じっとりと汗が滲み、背中に張り付いたシャツは不快感だけを与えてくれた。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371291696


事務所を飛び出して行った少女。

一瞬の間を置いて追い掛けると、屋上に続く階段に向かう後ろ姿が見え、後に続いた。

年頃の少女に関わり合うという事はつまり『突発的な衝動によるトラブルを未然に防ぐ』という大人として当然の配慮であると日々考えている。

感受性の強い心は常に刺激に敏感で、すぐに傷付き、尚更、慎重に真摯に向き合わなければいけない。


気を使っている事を悟られてはいけないし、気を使わせてると思われてもいけない。

信頼こそが互いの関係を繋いでいくのだから。

所謂、『思春期の少女』への対策を怠るとプロデュース業にも支障をきたし、禍根を残せば、その心は一生閉じたまま、そんな事もありえるのだから。


何が言いたいかといえば、つまり、コミュニケーションの取り方を失敗した。


思想伝達の不具合は偶発的な事故だったが、それを言い訳には出来ない。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom