勇者「夢も希望もないこの世界で」(14)
---一体、どれだけの者が、命を落としたのだろうか。現在、人類は魔族による支配を受けている。事の発端は3年前、とある人間の国が魔族へ宣戦布告した事。それにより、世界全土を揺るがす戦いが始まり、やっと終結したのが1年前。魔族の支配が始まった・・・
魔族の支配は、控えめに言って最悪だった。男は奴隷の如く働かされ、女は魔族の苗床にされた。老人は殺され、子供は魂を破壊し、その体を魔の者へと作り変えた。
今尚、抵抗を続けている国、勢力は魔族の圧倒的な力によって、壊滅するのは時間の問題だった。---
村人A「・・・なんとか、今日も生き延びれたな。B、奴らにやられた怪我は、大丈夫か?」
村人B「ああ、何とかな。・・・って言いたかったぜ。俺の、右腕・・・」
村人C「酷い・・・Bさんに言いがかりをつけて、右腕を切り下ろしたんだ。絶対に許せない!」
村人A「許せないのは皆同じさ。俺も、妻と子供を連れていかれたんだ・・・!」
村人B「・・・なぁ、もう、彼奴らに従うのを、やめないか」
村人A「!何を言っているんだ、B!そんな事をしたら、俺達だけでなく、俺達の家族まで・・・」
村人C「僕は、Bさんに賛同します。もう、彼奴らの言いなりになんて、なりたく無いんです!例え勝てなくとも、1匹ぐらいあの世へ送ってやらないと、気がすまないんです!!!皆もそうでしょ?!」
---村人Cの言葉に、とある村の村人達は決意を固め、武器を取り魔族へ立ち向かった。結果は・・・惨敗だった。彼らは、1匹も倒せずに全員、無残な死を遂げ、彼らの家族は、一部の優秀な個体を除き、処分された。残された者は、死よりも辛い待遇を受ける事になる。もはやこの世界の人類には、できる事などなく、絶望の中で滅びを待つ他無かった。
しかしこの時には、誰も知らなかった。この、夢も希望も討ち滅ぼされて世界の、たった一つの希望が目覚めようとしている事を---
勇者「・・・」
???「・・・勇者君、気分はどうだね?」
勇者「・・・研究員か。体調に問題は無い」
研究員「それなら良かった。まったく、テストプレイであんなに無理をしてどうするんだい。敵を壊滅させたのは流石だが・・・君は世界の希望なんだ。自分の体に、無理はさせないでくれたまえよ」
勇者「敵を壊滅させるのが俺の使命だ。例え、この身がどうなろうともな」
研究員「まったく・・・ん?勇者君、国王様が面会を希望しているよ。行きたまえ」
勇者「了解した」
国王「久しいな、勇者よ。bx-67地区の魔族部隊を壊滅させたと聞いた時は、驚いたぞ。これは、人類が魔族の支配から脱する日も近いだろう」
勇者「・・・世辞は結構です。要件を」
国王「フム・・・腕が立つだけでなく、頭も切れるか。体はどうかね」
勇者「おかげさまで、この通りです」
国王「ククク・・・いよいよか。勇者よ、今こそ使命を果たす時。魔族を壊滅させ、人間の自由を取り戻して参れ!」
勇者「・・・御意」
国王「これが、貴様用に我が国が用意した武装だ。・・・成果に期待しておるぞ」
---人類の希望になり得る勇者が目覚め、魔族壊滅に向けて行動を始める頃、魔族の頂点、魔王の城でも、新たな動きがあった---
???「魔王様、お身体は如何でしょうか」
魔王「・・・・・」
???「問題がないようで、なにより。魔王様にかけられた封印も、弱まっております。復活の時はそう遠くないかと」
魔王「・・・・・」
???「ただ・・・bx-67地点の魔族部隊の連絡が途絶えております。原因は不明・・・」
魔王「・・・・・」
???「勇者?まさか!奴が魔王様と戦ったのは、一千年前の話ではありませぬか!確かに、あの戦いで魔王様は封印され、私も実態を失いました。しかし、奴は所詮人間!この時代に、行きているなど・・・!」
魔王「・・・・・!」
???「っ!か、畏まりました。早急に、"勇者"なる者の調査を・・・」
---1週間前---
魔物「ゲヒャハー!」 「クケケケwww」 「クキョー!」
人「うわー!」「ひぃ!やめて!やめて!いやー!!!」
魔族「ケッケッケw愚かな人間よ・・・我らが魔族の奴隷として生を終えられることに、感謝するがいい・・・ケッケッケwwwww」
・・・ドゴン!
魔族「む?何事だ!」
魔物「ク、クケー!」
魔族「侵入者だと!?また愚かな人間が攻めてきたのか!それも1人で!さっさとあの世へ送ってやれ!」
勇者「無理な相談はしない方が良い」
魔族「!貴様はっ!」
勇者「お前がここの親玉か。雑魚はもう片付けたぞ」
魔族「(な、なんだと!?いくら彼奴らが雑魚だとはいえ、この俺様でもダメージは免れないほど数はいたはず・・・!だが、奴は無傷!この俺様よりも、実力は上・・・!)クソッタレ・・・ならこれを使うしか無いようだなぁ!」
勇者「!この拠点を爆破するつもりか」
魔族「ああそうとも!悔しいが俺様の実力じゃ貴様には勝てないらしい。ならばここを爆破して、貴様を地獄に送ってやるぜ!」
勇者「貴様も死ぬ気か」
魔族「ハッ!俺様は魔力でバリアを張ることができるんでな!魔力の応用もできない人間が、この爆発で生きていられるかな!・・・そろそろか、アバよ!」シャキン
\\\\\\\\\ドカーン/////////
魔族「へへっ!俺様の魔力をギリギリまでチャージして起こした爆発だぞ!いくらあの野郎が俺様より強くても、木っ端微塵に「なると思うか?」」
魔族「!?」
勇者「そこそこの威力だった。だから、耐久度のテストをさせてもらったのさ。・・・少し亀裂が入ったか。移動に少々干渉はするが、貴様を消すくらい訳はない」
魔族「ま、まて。頼む、た、助けてっ!い、いやだ・・・うわー!!!!」ズバッ
勇者「・・・テストプレイは完了した。即刻、王城へ帰還する」ピシュン
---現代---
???「・・・何ということだ。奴は最近力をつけて来た、幹部候補兵の1体だった。それを、ああも簡単に・・・」
魔王「・・・・・」
???「緑魔!緑魔をここへ!」
緑魔「何か御用でしょうか、側近殿」シュタッ!
側近「緑魔、御主の緑色系魔法陣で、全部隊に緊急魔報だ」
緑魔「・・・内容は」
側近「反逆だ!黒い髪に赤い目!そして、紅い手袋を身に着けている人間を抹殺せよと!」
緑魔「人間・・・ですか。しかし、なぜ、たかが人間1匹に・・・」
側近「私にも確証がある訳ではない。・・・ただ、封印され、力を奪われた魔王様でさえ、新たな勇者の存在を感じている・・・おそらく、その者が勇者だ」
緑魔「!・・・直ちに」ピシュン
-魔王の城- 魔王の間前
???「・・・緑魔」
緑魔「む、青魔か。何か用か」
青魔「先の映像、私も見ていたぞ。あの勇者らしき者が倒したのは、最低クラスの魔族の筈だ。何故そこまで警戒する必要がある?」
緑魔「最低クラスの魔族だが、あれを倒せる者は並の人間にはいまい。それも圧勝だ。脅威になりうる芽は、摘んでおかねばなるまいて」
青魔「一理あるが・・・それだけだ。今の人間どもの資源では、大した装備は作れん。かつて魔王様を討った武具は、我々の支配下にあるではないか」
緑魔「・・・油断していると、命を落とすことになる。あの時のようにな」
青魔「ああ・・・だが!俺はあの時とは違う!今度こそ、勇者を俺が討つ!」
緑魔「・・・そうか」スタスタスタ
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