演習中にファンタジーRPGのような世界に飛ばされてしまった自衛隊一個中隊
剣と魔法、そしてモンスターがうずまく非現実的な世界で
自衛隊は生き残りを賭けて戦う
【詳細(Wiki)】http://ss.vip2ch.com/jmp/1339271696
・sage推奨
・まとめblogその他への転載はお断りさせていただきます
・リアリティーは営内休
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361332596
翌朝早朝 草風の村
燐美の勇者と麗氷の騎士は、ナイトウルフの住処とおぼしき地点に向けて出発
院生は民家で二人の帰りを待つ
院生「二人とも…大丈夫だよね?」
自分に言い聞かせるように言った院生
院生「…あれ?」
院生ふと、扉の元に何かが落ちているのに気づいた
院生「え、これ…?」
扉に近づき、それを拾い上げる院生
床に落ちていたのは、燐美のペンダントだった
院生「なんで?燐美さん、朝付けていったはずなのに…」
戸惑いつつもペンダントを観察する院生
院生「あ!…紐が切れてる…」
紐は一箇所が弱くなっていたのだろう、そこで切れてしまっていた
院生「燐美さんが帰ってきたら渡さなきゃ…!?」
瞬間、院生をひどく不吉な感覚が襲った
院生「…何…?この嫌な感じ…?」
院生は握り締めたペンダントを不安な目で見つめた
燐美の勇者達は村から少し行ったところの
山の麓の洞窟まで来ていた
燐美の勇者「ここだね…」
麗氷の騎士「ああ」
洞窟内を覗き込む二人
続いて周辺を見渡すが、ナイトウルフの姿はない
燐美の勇者「よし、行こう!」
二人は洞窟内へと踏み入った
周囲を警戒しつつ進むが、ナイトウルフとの接触は無い
麗氷の騎士「不気味なくらい静かだ…本当にここにいると思うか?」
燐美の勇者「さあね、ここじゃなきゃ他のところを…ッ!」
言いかけた所で、燐美は暗闇からの気配を感じた
ナイトウルフD「ガゥゥ!」バッ
暗闇から突如襲い掛かかるナイトウルフ
燐美の勇者「やぁっ!」バッ
ナイトウルフD「ギャォッ!?」ブシュッ
だが、燐美の勇者の反応は早く、ナイトウルフを切り裂いた
ナイトウルフE「ガゥッ!」
間髪入れずに後方から別のナイトウルフが襲い掛かる
麗氷の騎士「はっ!」
ナイトウルフE「ギャゥ!」バシュッ
襲い掛かってきたナイトウルフを撃退し、周囲を見回す二人
燐美の勇者「はぁ…どうやらこの洞窟で間違いないみたい」
麗氷の騎士「そうだな…奥へ急ごう!」
二人は洞窟の奥を目指して走り出す
二人は洞窟内をさらに進む
途中、数匹のナイトウルフの攻撃を受けたが
これらをすべて撃退し、洞窟の奥へとたどり着いた
燐美の勇者「…いた」
洞窟の奥には大きな空間があった
覗き込んでみると、そこには他のナイトウルフの数倍はある
巨大なナイトウルフが居座っていた
足音を立てないよう、ゆっくりと近づく二人
麗氷の騎士「こいつが親玉か、これと比べると虎も子猫だな…」
燐美の勇者「眠ってるのかな?」
ボスと思わしきなナイトウルフは、横になり目を瞑っている
ボスウルフ「…」バチッ
しかし、次の瞬間その目がゆっくりと開いた
燐美の勇者「!」
開かれた目は即座に二人を発見する
しかし、ボスウルフは二人を見つけても慌てることはなく
のっそりと起き上がった
麗氷の騎士「ッ!」
燐美の勇者「…」
ボスウルフに対して身構える二人
ボスウルフは起き上がると大きく伸びをする、そして
ボスウルフ「グォォォォン!!」ゴォォ
燐美の勇者「うわっ!」
麗氷の騎士「くっ!」
二人に向けて吼えたけた
洞窟内を反響し、咆哮は二人へと襲い掛かる
そしてボスウルフは、ゆっくりと二人に向って歩き出した
麗氷の騎士「来るぞ!」
燐美の勇者「麗氷、援護お願い!」ダッ
言うと燐美の勇者はボスウルフ向けて走り出す
燐美の勇者「はぁッ!」ダッ
ある程度接近したところで、地面を蹴り洞窟の天井ギリギリまで跳躍した
燐美の勇者「でやぁぁぁぁッ!」
そして燐美の勇者は、上からボスウルフ向けて切りかかる
シュッ
燐美の勇者「っ!」
しかし剣が振り下ろされる直前に、ボスウルフは横へ跳躍し
それを回避した
燐美の勇者「くっ!」ズザッ
剣撃は空振りに終わり、燐美の勇者は地面に着地
燐美の勇者「まだまだっ!」
着地と同時に地面を蹴り、逃げたボスウルフを追う
燐美の勇者「はぁぁッ!」
再びの攻撃を仕掛ける燐美の勇者
バシュッ
しかしまたしても回避される攻撃
ボスウルフ「グォォ!」ダッ
燐美の勇者「まずっ!」
しかもボスウルフは壁を蹴り反転、逆に燐美の勇者に襲い掛かってきた
燐美の勇者「やぁぁ!」ガッ
燐美の勇者は地面を蹴って跳躍
ドゴォッ!
次の瞬間、先程までいた場所に、ボスウルフの突進が襲い掛かった
燐美の勇者「あぶなかったー!」
ボスウルフ「グォォッ!」
逃げた燐美の勇者に、再び狙いを定めようとするボスウルフ
麗氷の騎士「隙あり!」
その隙を突き、今度は、麗氷の騎士がボスウルフに切りかかった
ボスウルフ「ッ!ガゥッ!」バッ
麗氷の騎士「なっ!」
しかしギリギリのところで、攻撃は回避されてしまった
麗氷の騎士「見かけの割りになんて速さだ!くそ、もう一度!」
追撃を仕掛けようとする麗氷の騎士
燐美の勇者「麗氷、上!」
麗氷の騎士「!?」
上に目をやれば、麗氷の騎士の直上から
別のナイトウルフが襲い掛かろうとしていた
燐美の勇者「やぁぁッ!」
しかし、その攻撃が届く前に、燐美の勇者がナイトウルフを切り捨てた
麗氷の騎士「すまない、勇者様!」
燐美の勇者「ううん全然!それより…!」
ナイトウルフの群れ「グルル…」「ガゥゥ!」「ガルルッ…!」
見れば、辺りには複数のナイトウルフが集まっていた
燐美の勇者「途中で結構倒したと思ったのにな…!」
麗氷の騎士「コイツらは私が引き受ける!勇者様はボスを!」
燐美の勇者「わかった…!」
早めに決着を着けるべく、燐美の勇者は再びボスウルフへと向ってゆく
ナイトウルフF「グルル!」
燐美の勇者「わッ!」
だが、ボスウルフへ向おうとする燐美の勇者に、別のナイトウルフからの妨害が入った
麗氷の騎士「貴様等の相手は私だッ!」
燐美の勇者を狙おうとするナイトウルフを麗氷の騎士が切り裂いてゆく
だが、麗氷の騎士だけで全てを止めることはできなかった
燐美の勇者「このぉ!って、おわっと!」
跳躍し、ボスウルフに切りかかろうとしたが
別の角度からナイトウルフの攻撃を受ける
燐美の勇者「ッ!」ダッ
バランスを崩し、あえなく攻撃を中止し
別の地点へ着地する燐美の勇者
麗氷の騎士「これでは消耗してしまう…!」
一体一体の攻撃は大したことはないが、数に物を言わせた妨害に
次第に追い込まれてゆく
燐美の勇者「これ…マズイかも…!」
アクションシーンは文量が増える…
数分前 洞窟の入り口
洞窟の一口近くに三頭の馬がたどり着いた
草風村人A「ここかい!?」
院生「はい、えっと…ここ間違いないはずです!」
乗っているのは草風村の村人達、そして院生だった
ペンダントを見つけた院生は、不吉な予感を払いきることができず
村人達にそれを訴え、応援を出してもらったのだ
院生「すみません、無理な事聞いてもらって…」
草風村人A「いやいいさ。それより急ごう。
我々だけではあまり長いはできない…!」
洞窟に入り、警戒しつつ中を進んでいく
院生「これは…」
洞窟内には、ナイトウルフの亡骸がいくつも転がっていた
奥に行くほどその数は増える
草風村人B「ここで間違いないようだな…」
院生「燐美さん、麗氷さん…!」
院生は進む足を速める
院生「あそこは…」
草風村人A「奥に空間があるようだな…」
慎重に近づき、影に隠れつつその先を除く
院生「あ!」
そこでは燐美の勇者と麗氷の騎士が、
ボスウルフたちと戦っている
草風村人A「あれがボスか…なんて大きさだ…」
草風村人C「どうする!?」
草風村人B「どうするって…下手に飛び込めば私達まで巻き添えだ…」
何匹ものナイトウルフが二人へと襲い掛かり、
それをなんとか振り払っているのが見える
院生(燐美さん達、あのボスに攻撃したいのに他の個体に阻まれてるんだ!)
院生「ど、どうし…あ!」
院生はカバンの中をまさぐる
院生「これで!」
院生がとり出したのは防犯ブザー
院生「お願い、うまくいって!」
そして院生は、ピンを引き抜くと同時に
防犯ブザーを洞窟の奥へと投げ放った
燐美の勇者「ぜぇ…この、ちょこまかと…!」
燐美の勇者「次こそ…ッ!?」
ボスウルフに向って構えた燐美の勇者に、再び襲い掛かってくるナイトウルフ
燐美の勇者「ええい、くそッ!」ガキンッ
何とかそれを受け流す燐美の勇者
一方で、ボスウルフは高見の見物とばかりにその様子を眺めていた
燐美の勇者「ぐ…ッ!」
ピリリリリリリ!
燐美の勇者「え!?」
ボスウルフ「!?」
突如、けたたましい音が洞窟中に響き渡った
燐美の勇者「な、何!?」
麗氷の騎士「なんだこの音は!?」
二人はもちろんの事、ボスウルフたちもその音に動作を止める
音源である防犯ブザーが洞窟の隅に落下
ナイトウルフの群れ「「「ガルルルル!」」」ダッ
先に防犯ブザーに気がついたナイトウルフたちが、
洞窟の隅へと群がってゆく
院生「燐美さん、チャンスです!」
燐美の勇者「!」
燐美の勇者達も呆気にとられていたが、
掛けられた声によってボスウルフへと振り返る
燐美の勇者「はっ!」
そして燐美の勇者は地面を蹴って飛び上がった
ボスウルフもそれに気がつき、一拍遅れて反応する
だが、その一拍が決定打だった
燐美の勇者「でやぁぁぁぁぁ!」
ザシュッ!
ボスウルフ「グッ!?ギャォォォォォ!!!」
燐美の勇者の一閃がボスナイトウルフの喉笛を掻っ切った
燐美の勇者「ふっ!」シュタッ
燐美の勇者が床に着地する
ボスウルフ「ガゥゥゥゥ…ッ」ドッザァァ
そしてボスウルフはその巨体を地面へと倒し、
地面に血溜りを作った
麗氷の騎士「やったのか…?」
ナイトウルフの群れ「ガゥゥ…」「ギュゥゥ…!」
ボスを失ったことによりナイトウルフたちは戦意を失い
逃走する個体も現れた
洞窟中には狼一匹がやっと通れるほどの穴が複数あり
それらを通って逃げてゆく
麗氷の騎士「ッ!逃がさん!」
だが、逃げ遅れたナイトウルフは麗氷の騎士が追撃し、倒してゆく
草風村人A「こっちにも来たな!」
草風村人B「戦意喪失してる。この程度なら楽勝だ!」
燐美の勇者達が通ってきた道を使う個体もあったが
それらは草風村の村人達によって討たれていった
草風村人A「…よし、これでもう大丈夫だろう」
数分後には洞窟内に残るナイトウルフはいなくなった
院生「っと…」
院生は防犯ブザーを回収し、再びピンを付けた
燐美の勇者「院生さん!」
そこへ燐美の勇者達が駆け寄ってくる
麗氷の騎士「今の音は院生さんが…?」
院生「あ、はい。これで」
燐美の勇者「それ、何?」
院生「防犯ブザーです。町とかで危ない人とかに襲われたときに、
助けを呼ぶための物なんですけど…」
燐美の勇者「へー」
麗氷の騎士「なんにせよ助かったよ院生さん。しかし…なぜここに?」
院生「あの…それは…」
草風村人A「この子がすごい剣幕で訴えて来たんだ。
勇者様達が危機に陥ってるかもしれないって。
だから、こうして来て見たのさ」
言い難そうな院生に代わり、草風村人Aが説明する
麗氷の騎士「まぁ…実際そうだったが。どうして分かったんだ?」
院生「その、これが…」
ポケットからペンダントを出した
燐美の勇者「あ、これ!」
院生「宿に忘れていったのを見つけて…
拾った時に、何か嫌な予感がしたんです…」
麗氷の騎士「成程…」
院生「ごめんなさい!おとなしくしてるように言われてたのに…
それに結果はどうあれ、村人さん達にまで無理を言っちゃって…」
燐美の勇者「そんな!院生さんが謝ることなんてないよぉ!」
麗氷の騎士「そうさ、院生さんや村人さん達が来てくれなかったら
それこそどうなっていたか…」
燐美の勇者「それにね、その不吉な予感手言うのは気のせいじゃないと思うよ?」
院生「へ?」
燐美の勇者はペンダントを院生の目の前にかざし、
突いている結晶を示して見せる
燐美の勇者「このペンダントについてる結晶。星の結晶って言うんだけど、
今回みたいに、不吉な事の前兆とか
そういった物を伝えてくれる効果があるんだ」
院生「そうなんですか、すごい…」
燐美の勇者「うん、前にもコレに助けられた事があってね…」
麗氷の騎士「ところで…そんな大事なものを忘れていた事について、何か弁明は?」
燐美の勇者「ギクゥ!ま、まぁ、かなり気まぐれな効力なんだけどね…!
必ずしもそれを感じとれるわけでも無いし!
院生さんが持っててくれたおかげで助かったわけだし!?」
院生「あはは…」
草風村人A「あんた達…盛り上がってる所悪いが、そろそろ村に戻らないか?
長居はあまり好ましくない」
燐美の勇者「っと、そうだね。はやいとこ戻ろっか」
この話、結構はしょった…
銃が、車両が、近代火器が…出てこないから!
(話ごとカットしてもよかったけど、
異世界人描写も必要かと思ったので)
その両方と言いますか…
院生にも役割はあります(超人的な云々ではないが)
が、それプラス院生の道中で
異世界の人達はいかにもRPG的なことをしてますよ〜
っていうのを表現させてもらいました
蛇足に終わった気がしますが…
時系列は少し遡り早朝
月詠湖の王国 燃料隊野営地
給水トレーラーの近くで、隊員C達が固まっている
各々は歯磨き、洗顔等をしながら話している
隊員C「くっそ、ダリィ…いつまでテントで眠らなきゃなんねぇんだよ…」
隊員D「なんか、木材でバラック的なモンを作るのを考えてるらしいぜ。
それまで待てよ」
隊員C「やってらんねぇ…」ガラガラペーッ
衛隊B「おはよーございます」
その場へ、眠そうな声の衛隊Bが現れる
支援A「よぉ、おはよーさん!」
衛隊B「朝から元気ですね」
隊員C「このバカだけだろ…支援Aの鼾のせいで最悪だったぜ!
お前はいいよな衛隊B!テントを独り占めできてよぉ?」
衛隊B「荷物で一杯の超窮屈なテントですよ?正直体いたい…」
口をゆすぎつつ首の後ろを押さえる衛隊B
隊員C「支援Aの隣で眠ってみろ、それがどんな贅沢かウンザリする程分かるだろうよ?」
衛隊B「知らないままの幸せを、あたしは大事にしていきたいですね」
隊員C「ああそうかよ。ったく…昨日の今日でダルくてしょうがねぇってのによ…」
衛隊B「ああ、聞きましたよ。蜘蛛のオバケと追いかけっこしたんですって?」
支援A「ああ、どこのテーマパークでも味わえねぇスリルだったよなぁ?」
隊員C「ほざいてろ、自衛とおんなじでどうかしてるぜ」
衛隊B「士長がどうかしたんです?」
隊員D「ああ、その化け蜘蛛の話しになるんだがな…」
簡単に昨日の事を説明する隊員D
衛隊B「ひぇー…ほんとうなんですか?」
隊員D「ああ、あんときゃ士長が巨大蜘蛛に食われちまうかとビビッたけどよ…
士長の行動のほうが想定外だったぜ」
衛隊B「口のなかに手榴弾…」
支援A「けどよ、ああいうバケモンを倒す上じゃ、割と上等手段なんじゃねぇのか?」
隊員D「そりゃゲームん中の話だろ?実際あんな状況になったら、
そんなどこじゃないぜきっと」
衛隊B「聞いただけじゃ想像するしかないですけど…
普通、そんな事になったら硬直して動けなくなりますよ?」
隊員D「おまけに、あの化け蜘蛛に罵声を浴びせてたからな。
どんな神経なんだか…」
隊員C「普通な神経じゃねぇ事は確かだな!自衛の野郎、頭のどっかがブチ切れてだろ」
支援A「ありえねぇ話じゃねぇよなぁ…
自衛、過去には樺太の5混(第5混成団)にいたこともあったんだろ?」
衛隊B「5混…?樺太県は第20師団じゃ?」
隊員C「同じだ同じ。一昨年、5混が再編成して20師団になっただろうが。
その一昨年まで樺太で露助共を睨んでたんだ」
衛隊B「ん?一昨年って…」
そんな話をしているところに、自衛が現れた
自衛「よぉ、お前ら」
支援A「よぉーう!」
衛隊B「あ、おはようございます」
隊員C「朝からひっでぇ顔だな」
自衛「産まれつきでな。俺の悪口で盛り上がってるようなら、
お前も一緒にしてやるぞ?」
隊員C「是非とも遠慮させてもらうよ、ブチギレ野郎」
衛隊B「別に悪口言ってたわけでもないですけど…」
自衛「そのままで良いから聞け。
朝飯食っい終わったら分隊を編成して森ん中を漁る。
昨日のヤツの仲間がいないかを探索。
それから木材の切り出し、余裕があれば昨日仕留めたヤツ等の
調査、回収も行う」
隊員D「あれを持って帰るんですか?」
自衛「あの頑丈さだぞ?ほおって置くにはもったいねぇ」
隊員C「やだねぇ、貧乏性だぜ」
自衛「普通科はFV車長指揮で森に入る。一緒に森を漁る施設連中の護衛だ。
衛隊B、衛生があとから来る。お前はヤツから直に指示を受けろ」
衛隊B「わかりました」
二時間後
巨木の切り出しと昨日の巨大蜘蛛の回収のために、車両部隊が森へと入った
施設作業車で木や岩などの障害を除去し、道を切り開き
車両部隊は森の中の湖へと到着した
昨日、超巨大蜘蛛と交戦した崖の上で
隊員Dと装甲戦闘車が湖全体を警戒している
FV操縦手「ひゅー」
FV車長「信じらんねぇ…」
FV車長等が崖下を眺めながら、口々に言う
一晩経って舞い上がっていた湖の土が沈下したのか、
沈んだ超巨大蜘蛛のシルエットは、昨日よりもはっきりと確認できた
隊員D「その台詞も聞き飽きましたよ」
FV車長「ああそう…」
FV砲手「ファンタジーだからって、調子こきやがって…」
FV操縦手「意味わかんねーよ」
その眼下の崖の下、湖の岸では切り倒した巨木を分断し
トラックへの積載作業を行っている
施設A「オッケー!降ろせ!」
施設作業車のアームをクレーン代わりに巨木を吊り上げ
トラックの荷台へゆっくりと降ろしてゆく
施設A「よし、大丈夫だ!ワイヤー外すぞ」
施設車長「一仕事終わりだ。やれやれ…」
ハッチから這い出て、一息つく施設車長
施設車長「しっかし…すげぇな。マジで異世界なんだな」
施設操縦手「ああ…」
辺りを見渡す施設科隊員達
巨木や沈んでいる超巨大蜘蛛もそうだが、
よく観察すれば、その他の生い茂っている花や草木、
時折姿を見せる鳥や小動物
その全てが日本の風景とは異なっていた
一方、岸の側では自衛等が水中を睨んでいる
隊員C「よぉ自衛、やっぱこいつを持ち帰るなんて無茶だぜ」
水中の超巨大蜘蛛を示しながら言う隊員C
自衛「なんとかして殻だけでも引き剥がせねぇか?」
隊員C「水中じゃ無理だろうよ。なんとか陸揚げできりゃ話は別だが、
ゲボみてぇに面倒だぞ。
そんな暇があるとは思えねぇんだがよ?」
自衛「しゃあねぇ、川沿いのヤツだけもって帰るぞ。
なんか使い道がみつかりゃ、こいつの回収を考えようぜ」
隊員C「あー、是非ともそうしてくれ…」
隊員Cはダルそうな声で返答した
支援A「にしてもよ、今日は化け蜘蛛ちゃんファミリーと全くもって
出くわさねぇよな?」
隊員C「そんな自販機みてぇにポイポイ出くわしてたまるかよ。
こいつ同様おねんねしておいて欲しいもんだ!」
隊員Cは愚痴を吐き終えると同時に、無線に通信が入る
特隊A『誰か応答してくれ。こちらケンタウロス2』
通信は他の場所を調査中の特科隊からだ
FV車長『こちらエンブリー、どうした?』
特隊A『湖の東側を探索中に、妙なモンを発見しまして…
例の巨大蜘蛛の類似個体と思われる物が複数』
隊員C「うぇ。マジかよ、最悪だ…」
インカムで通信を聞いていた隊員Cが呟く
FV車長『なんだと?おい大丈夫なのか!?』
特隊A『あー失礼、言葉が足りませんでした。
何が妙かって、発見したのが全部死骸なんです。
それがそこら中に転がってて…』
FV車長『死骸?』
特隊A『丘になってる所がありまして、その周辺に点在しているんです。
詳しい事は調べてみない事には何も』
FV車長『分かった、増援を何人か送るが…念のため十分警戒しろ』
特隊A『分かってます。ケンタウロス2、交信終了』
特科隊との通信を終え、FV車長は今度は自衛に呼びかける
FV車長『自衛陸士長、聞こえたか?どうにもまた面倒事のようだが…』
自衛「実際に目ん玉で確認すんのが早いでしょう。
適当に数人選んで見て来ます」
FV車長『分かった、頼む。ただし十分気をつけてくれ』
自衛「つーわけだ、隊員C、支援A、見に行こうぜ」
隊員C「だと思ったぜ、ったく…」
湖を離れ、森を東に進む自衛等
しばらく進み、報告のあった丘の麓に出た
隊員C「うげ!?」
到着するなり隊員Cが声を上げる
丘の麓、自衛達から少し離れた所に、二匹の巨大蜘蛛の姿があったからだ
隊員C「ああ、糞がっ…!」ガチャ
自衛「慌てるな、よく見ろ」
無反動砲の準備を始めようとした隊員Cを制止し、
巨大蜘蛛を示す
隊員C「んだよ!?…あー?」
巨大蜘蛛はどちらもピクリとも動かず、
良く見れば足がいくつか欠落していた
支援A「何だ、くたばってんのかコイツら?」
隊員C「っだよ糞が!ビビらせやがって!」
自衛「さっき通信で言ってただろうが、お前ぇがビビり過ぎなだけだ」
支援A「言ってやるなよ自衛、隊員Cはガラスのハートだからな!」
隊員C「うっせぇな、黙ってろ!」
特隊A「こいつらだけじゃねぇぜ」
丘の上からの声が会話を遮った
視線を向ければ、特隊Aが丘の斜面を降りてくる
丘の上では他の隊員が周辺を調査していた
自衛「特隊A」
特隊A「さっき無線で言った通り、ここらへんに死骸が転がりまくってる。
上って見渡してみればよく分かるぜ」
丘に上って見渡してみれば、
周辺には多数の巨大蜘蛛の死骸が転がっていた
支援A「わぁぉ!気色悪ぃ光景だなぁ、おぉい」
隊員C「最初のヤツと似たか寄ったかのが数匹、
それより小せぇのが多数か…」
点在する死骸のほとんどは、先程の死骸と同じように
損傷していた
特隊A「俺達も最初に見つけたときはビビったが、どれもピクリとも
動かないんだ」
隊員C「こんなんが全部がうじゃうじゃ動いてたらやってられねぇよ」
特隊A「何があったにせよ、こいつは異常な光景だぜ…」
特隊Aは気味の悪そうな表情で周囲を見渡す
自衛「この蜘蛛共もアレだが、他にもおかしいところは
そんだけじゃ無ぇようだぞ」
支援A「あぁ、なんじゃい?」
自衛「気が付かねぇか?この丘、ただでさえ巨木の多い森ん中で、
やけにサッパリしてるじゃねぇか」
特隊A「ああ、言われてみれば…蜘蛛の死骸に気が行ってたが…」
丘の上は若木だけが少ない密度で生えており、全体的に妙に開けていた
自衛「それだけじゃねぇ、あれも不自然じゃねぇか?」
丘の頂上付近を示す自衛
隊員C「んだこりゃ?」
近寄ってみれば、頂点に近い位置の地面が
まるで火山口のように不自然に沈下している
支援A「火山なのか、この山?」
隊員C「んなわけあるかバカ、環境からしてわかるだろうが。
どうせただの穴ボコだろ?」
言いながら沈下部分の縁をドンと叩く隊員C
ピシピシ ゴゴ…
隊員C「あ?」
聞き覚えのある音と共に、沈下部分に亀裂が走る
支援A「ヘーイ…こいつぁ…」
ガラガラガラ!!
次の瞬間、沈下部分とその周辺が音を立てて崩落した
支援A「ファオ!?やっぱりな!」
自衛「退避しろ!」
大慌てでその場を離れ
どうにか崩落を逃れ、落下を回避した
特隊A「ッ!危なかった…」
自衛「隊員C!二度同じネタをやるんじゃねぇ、バカが!」
支援A「ちょっとバリエーシュン増やそうぜ?」
隊員C「じゃあ次は、心臓が飛び出すようなのをやってやるよ!
昨日からホント糞だぜ!」
安全を確認し、崩落した部分を覗き込む
隊員C「なんじゃこりゃ!?」
その先、丘の地下には空間が広がっていた
自衛はライトで、真っ暗闇の空間を照らす
自衛「成程」
内部を照らすと、内部の全容が把握できた
空間は丘の地下全域に広がっており
その中にも、地上同様いくつもの超巨大蜘蛛の死骸が転がっていた
特隊A「巣か、こりゃあ…?」
隊員C「おえ、気色ワリィ…」
支援A「おい、アレ何だ?真ん中に転がってんの?」
空間のほぼ中央に、巨大な物体が鎮座しているのが見える
支援A「巨大な泥団子か?」
隊員C「あー?バカ良く見ろ、ありゃ化け蜘蛛の胴体だ。
特大のな」
特隊A「ホントかよ…」
中央の蜘蛛の胴体らしき物体は、それだけでも湖の超巨大蜘蛛の数倍はあった
自衛「お前ら、内側見てみろ」
隊員C「あー?」
隊員C等は空間の内側を覗き込んでみる
支援A「なんだありゃ?」
空間の形状はドーム状になっており、その内壁には
空間を支えているらしい
巨大な柱のようなものが見えた
隊員C「ほーう」
支援A「なんだありゃ、まるで柱だぞ?」
隊員C「まるでじゃなくて柱なんだろうよ、
ただし、使用材質“化け蜘蛛の足”100%のな。
成程よーく分かったぜ」
支援A「つまりどういうことだ?」
隊員C「周りの柱は全部、真ん中に転がってる胴体の足だ。
この丘そのものが、あの化け蜘蛛をそのまま骨格にしてできた
奴等の巣ってわけだ」
支援A「そりゃまた、スケールのでけぇ話だな!」
特隊A「信じられねぇ…」
隊員C「鍛冶のヤツが話してた通りだな。
このありえねぇ程デケェのが母蜘蛛で、どんくらい前か知らねぇが
ここに埋まって巣を作ったんだ」
特隊A「若木しか生えてないのは、そん時にここを掘り起こしたからか…」
支援A「で、その奴等のホームがなーんで死骸だらけなんだ?」
特隊A「飢えかなんかじゃねぇか?」
ライトで巣の中をあちこち照らし、内部を調べる
隊員C「なぁ、見るにこいつら、仲間同士で殺しあったんじゃねぇか?」
自衛「だろうな、暴れた形跡がそこらじゅうに見えやがる」
転がっている死骸はどれもひどく破損しており
巣、そのものも荒れている
支援A「殺し合い?なんでぇ?」
隊員C「理由まで知るかよ。元々そういう生態系なんじゃねぇのか?」
自衛「鍛冶のヤツの話ん中には、そんな説明はなかったがな」
隊員C「どうせ、ボケが進んで頭からすっ飛んでんだろうよ」
特隊A「ボケるような年齢だったか?」
自衛「なんにせよ、これで元凶はパーになってることが分かった。
でかい収穫じゃねぇか」
隊員C「ああそうだな、清々するよ!まったく…。
記録して帰ろうぜ?」
森の中での調査、木材並びに巨大蜘蛛の回収が終わり
車両部隊は野営地へと帰還
荒地では、石油の井戸の本格的な補修作業が始まった
特科B「10分経つ前に戻ってきて下さい。底のほうは相変わらず酸素が薄いですよ」
施設B「分かってるよ」
地下での作業のため
拡大補修した整備用の竪穴から隊員が降りてゆく
施設車長「どうだ?こんなもんか?」
施設D「まだ浅い、あと2mは掘り下げてくれ!
そっから先は手作業でやる!」
井戸の側では、井戸そのものの補強のために
施設作業車が地面を掘り起こしてゆく
補修作業は順調に進んでいた
一方その脇で、施設Aが補給と話していた
施設A「切り出した木で柱を作って、井戸の周りに埋め込んで補強します。
櫓とポンプも組みなおして、今のよりもでかい物を作ろうかと」
補給「これで楽に、かつ大量に汲み上げられるようになるな。
問題はそれを使えるようにできるかだが…」
施設A「普通科の隊員C二士が頭捻ってますから、
それに期待しましょう」
補修現場から少し離れた所に設けられた物資、資材置き場
その空きスペースで、隊員Cがなにやら作業をしている
支援A「よぉ隊員C、何を不思議なことやってんだ?」
木材の上で周囲の監視していた支援Aが、降りてきて問いかける
隊員Cは目の粗い布の上に石油ぶちまけ、こやしていた
隊員C「掘り出した石油から異物を抜いてんだよ。
その後に安置してガスを抜き、水を分離させる」
支援A「ほぉ〜?それで燃料の完成ってわけか?」
隊員C「んあわけあるかよ、バーカ」
支援A「あぁ?」
隊員C「いいか、今施設の奴等が掘り出してんのが石油。
んでもって俺様が今やってんのは、そっから不純物を除いて原油にする事だ。
料理で言うなら下ごしらえだ」
支援A「じゃあ、これだけじゃ車は動かねぇってか?」
隊員C「ああ、試しにこいつをぶち込んで見るか?
動かねぇんならまだしも、
最悪、不純物とエンジンが運命の出会いを起こして、
愛のパワーで大爆発かもなぁ?」
支援A「あー…つまりこのままじゃ糞とゲロを混ぜ合わしたも同然ってか?」
隊員C「おめぇにしちゃ冴えてるじゃねぇか。明日は宝石でも降ってくるだろうよ」
支援A「ああそうかよ…じゃあ一体どうすんだ?」
隊員C「前にも言ったろ?蒸留装置が居るってな。
原油を過熱、気化して沸点の違いで分ける。
それで初めてガソリンその他の出来上がりって分けだ」
支援A「ほ〜う」
隊員C「だが、それには温度管理のできる、蒸留塔の変わりになるモンが必要なんだよ。
どうしたもんかねまったく!」
自衛「隊員C、一度切り上げろ」
隊員C「あ?」
作業を行っていた隊員Cに、自衛が近づいてくる
自衛「近場の町に資材の買出しに行くぞ。準備しろ」
隊員C「んだよ、次々面倒臭ぇ!」
自衛「材料が足らねぇってわめいてたのはおめぇだろ?急げよ」
隊員C「あー、分かった分かった」
車列に装備を搭載し、出発の準備が完了
その脇で自衛達は道順を相談している
自衛「目標の街はこっから北だ、鍛冶兄の話によるとな。
国境の近く、星橋の街とか言う街だとよ」
隊員C「具体的にどこだよ?」
82車長「ここだ、こっから北に約20kmちょい。
ここ来る途中で通りをはずれたの覚えてるか?
その通りの先にある街だな」
地図で場所を指し示しながら説明する82車長
隊員C「つまり逆戻りかよ」
隊員D「お前に予知能力でもありゃ、来るついでに買ってこれたのにな」
隊員C「残念だな。んな能力があったら俺は入隊なんかしてねぇよ」
82車長「二曹、直進すればそんなに距離はありません。
このへんはほとんど平地ですし、急がなくても日帰りできるでしょう」
補給「ああ、だが決して警戒を怠るな。十分気をつけてくれ」
82車長「もちろんです。装備は重火器を含め、一定数搭載しました。
ある程度の事態には対処可能です」
自衛「シキツウと俺達普通科で買出し用トラックを護衛する。
目ん玉見開いて見張ってろ」
隊員C「へーへー、楽しいお買い物のために善処しようか」
82車長「では燃料分隊、1250時。物資調達活動に出発します」
補給「1250時、了解。頼んだ」
82車長「よし、乗車!」
自衛「行くぜ」
隊員C「やれやれ…」
普通科組はジープに荷物を放り込み、乗り込んでいく
支援A「とうちゃ〜ん、着いたらおもちゃ買ってよ〜。ってな、うへへへ!」
自衛「その物騒なおもちゃで我慢してろ」
支援Aの軽機を指差しながら言う自衛
隊員C「俺はアイスがいいねぇ!十段重ねのメガトン級のをな!」
自衛「ああ、それでお前ぇが腹壊して死ぬんだろ?最高だな。
隊員D、出発だ」
隊員D「了解」
車列が走り出し、一路星橋の街を目指す
ほぼ同時刻
紅の国 草風の村
麗氷の騎士「準備はできたぞ」
院生「こっちもオッケーです」
ナイトウルフを討伐し、村へと帰ってきた院生達は
治療と休憩の後、出発の準備をしていた
草風村長「本当にもう出発されるのですか?」
草風村人A「ゆっくりして行ってくれていいんだぞ?
あんた達は村の恩人だしな」
麗氷の騎士「ありがたい話ですが、これ以上居座るのは申し訳ない。
昼食をご馳走になった上、食料や物資まで分け与えていただいたんだ」
麗氷の騎士の愛馬には、村から分け与えられた物資が
いくらか括り付けてある
燐美の勇者「特に薬の類は助かったよね」
麗氷の騎士「ああ、私達はなかなか高位の魔法薬には手が出せないからな。
誰かさんの衝動買のせいで」ジロッ
燐美の勇者「あっはっは…」
燐美の勇者はごまかすように笑い、視線を反らした
草風村人A「それはいいさ。ナイトウルフはいなくなったから、
俺達はいつでも収穫や買出しに出れる。
あんた達こそ、もう少し休んでいった方がいいんじゃないか?」
燐美の勇者「それは大丈夫です。それに、お言葉に甘えたいのは山々なんですが、
余裕のある旅路でもないものですから…」
麗氷の騎士「一日も早く、対魔王戦線に合流しないとな」
草風村長「そうでしたな…では、無理にお引止めはできませんな…」
燐美の勇者「すみません、せっかくのご好意なのに…」
草風村人A「この先はどうするつもりなんだ?」
燐美の勇者「露草の町と凪美の町を経由して、笑癒の公国に入ろうと思ってます」
草風村人A「何…凪美の町をか?」
村人の表情が少し渋くなる
院生「?」
燐美の勇者「何か?」
草風村長「最近この国で妙な失踪が起こっているのは
ご存知ですかの?」
燐美の勇者「ええ。風精の町でもそのような噂を…」
草風村人A「この辺はまだいい、露草の町より先…
つまりこの国の中央周りは、この辺以上に不吉な話を多く聞く」
院生「…」
草風村人A「不安になってるせいで、変な憶測が広まってるだけかもしれんが…
一応、気をつけておいてた方がいいだろう」
燐美の勇者「そうですか…わかりました。ありがとうございます」
村を出発した院生達は
次の目的地に向けて歩く
院生「燐美さん、さっきの話って…」
燐美の勇者「うん。どうにもこの国、失踪やらなにやら
いやーな事が起こってるらしいんだよね…」
院生「失踪…」
燐美の勇者「ゴメンね。不安にさせちゃうと思って
院生さんには黙ってたんだけど…」
麗氷の騎士「ここまでになると、話しておかないと返ってまずいだろうな」
二人はこの国の内情が不安定である事と、
風精の町で知った妙な失踪の件を、具体的に院生へと話した
院生「そんなことが…」
燐美の勇者「具体的に何が起こってるのかはボク達も
分かってないんだけどさ…」
麗氷の騎士「国を出るまでは気をつけないとな。
町での滞在中は特にだ」
院生「…滞在もできる限り短くしたほうがいいかもしれません」
燐美の勇者「だね。ゴメンね、ちょっとしんどいかもしれないけど」
院生「いえ、安全には代えられませんから」
燐美の勇者「よし!じゃ、気を取り直していこっか!」
月詠湖の王国
自衛隊野営地から10kmと少しの地点
燃料分隊は、星橋の街への最短ルートを走り
現在はその途中にある森の中の道を進んでいた
ドゴッ!
隊員C「べっ!?隊員D、もっと丁寧に運転しやがれ!」
隊員D「道が悪ぃんだよバカタレ。文句があんなら自分でハンドルにぎりな」
森の中に通っている道はかなり荒れていた
支援A「おぉい、離されてるぜ?」
曲線も多く、車列の真ん中のトラックは
かなり気を使って走っている
だが、そのせいか指揮車との距離が離れつつあった
自衛「輸送D、シキツウから離されてるぞ。速度を上げろ」
輸送D『無茶いわんでください…!さっきからでかい石がそこら中に転がってて…
なんつー道だっ!』
インカム越しに輸送Dの悪態が聞こえてくる
隊員C「やだやだ、これだからファンタジーってヤツは」
隊員D「ファンタジー関係無ぇだろ」
シキツウとトラックの距離はさらに離れる
輸送D「ダメだ、これじゃ追いつけませんよ」
施設A「しょうがない、シキツウに連絡して速度を…」
バッサァ!
輸送D「は?」
突然のできごとだった
地面から複数のロープがシャッターのように表れ
トラックの進行を妨害するように張り巡らされた
輸送D「はあっ!?ッ!」グッ
キキィィィィィッ!
突然の事態に輸送Dが急ブレーキをかけた
隊員D「危ねぇ!?」
隊員Dもブレーキをかける
ジープは即座に停車したが、重量のあるトラックはそのまま直進
ブツッ!ブチィッ!
積載物を含め、3.5t以上の重さのあるトラックは、
容易にロープを引き千切り通過
だがブレーキを掛けたため、少し先で停車した
野盗I「なっ!?罠を…突き破りやがった!?」
野盗J「嘘だろ…!?何なんだ先に通り過ぎた化け物といい…!?
しょうがねぇ、野郎ども行くぞ!」
道の右側の木や茂みから、多数の人影が姿を現した
自衛「敵だ!降車しろ!」
隊員C「冗談だろ…!」
各員は車両から飛び降り、車両を使いカバーする
カンカンカン!
その次の瞬間、複数の矢が車両側面に降り注いだ
隊員D「おえっ!?危ねぇな、糞が!」
野盗I「かかれぇッ!」
野盗集団A「「「うぉぉぉぉッ!!!」」」
矢に続くように野盗たちが茂みから飛び出し、
雄叫びをあげながらに車列へと迫る
自衛「叩っ殺せ!」
襲い掛かってきた野盗に対して、銃撃を開始
ボッ!
野盗I「ぎぇばッ!?」ブシュッ
最も前に突出していた野盗を、隊員Dが射殺した
野盗J「…は?」
隊員C「おい支援A!右っ側を払え、右っ側!」
支援A「オーイェーッ!!!」
ドドドドドドドド!
野盗集団A「げっ!」「うぎゃっ!?」「ぎぇ!?」
野盗J「なぁ!?」
支援A「今日のおやつは鉛弾だぞ!いただきますを言いやがれ!」
予想外の事態に、野盗達に動揺が走った
野盗K「ど…どうなってやがんだぁ!?」
野盗J「魔術師が居るのか!?くそ、怯むな!仕留めるんだ!」
トラック側の隊員も降車し、トラックに隠れつつ応戦する
施設A「シキツウが行っちまったぞ!通隊A、無線連絡しろ!」
通隊A「やってます…!ハシント、こちらデリック4!後方にて正体不明の集団から
攻撃を受けている!現在応戦中だ、至急…」
ドダダダ!ドドドド!
野盗L「うがぁぁ!」
弾幕を掻い潜り、一人の野盗がジープの反対側に迫って来た
自衛「おぉい!」
リロード中だった自衛はそれに気が付き悪態を吐く
野盗L「野郎…」バッ
ドゴ!
野盗L「がぁ!?」
ジープを乗り越えようとした野盗だったが
その腹部に銃床が叩き込まれる
野盗L「うぐ…!?」ガッシ
倒れ掛かった野盗の頭を掴み、こちら側へと引きずり寄せる
自衛「よぉ」
野盗L「は…ぎゃ!?ぐぇッ!?」グチャ
引きずり込んだ野盗の頭を足元の石に数回叩きつけ、殴り殺した
自衛「いい気分だろ?」
隊員C「今のじゃ天国は無理だな」
自衛「当たり前のことを言うな」
カンカン!
隊員C「でっ!?」
ジープの反対側に矢が降り注ぐ
自衛「隊員C、ジープの軽機につけ!」
隊員C「あぁ、ボケがッ!」
隊員Cは悪態を吐きつつ、軽機につくべく後席に上がる
その横、ジープの後ろ側では支援Aがカバーしながら戦っている
ドドド!
野盗弓兵B「ぐぁッ!?」ブシュッ
支援A「やった!入ったぞ!」
自衛「支援A、トラックのほうに移れ!十字砲火を食らわせて
弓兵を黙らせろ!」
支援A「任せとけ」
言うと支援Aは隙を見て、トラック側へと移動する
支援A「へーい!ちょっと場所借りるぜ!」
トラック側に移った支援Aは、キャビン付近にカバーする
輸送D「おおい…図体でけぇんだから、もう少し後ろに居ろよ!」
支援A「なんだよ、つれねぇなぁ!」
カン!カン!
輸送D「っ!」
トラックに降り注いだ矢が、跳ね返って地面に刺さる
輸送D「ああ、クソうぜぇ…!いくら居るんだ?」ドドド
武器C「パーティーでもやってたのかぁ?」
施設A「無駄話をするな、戦闘に集中しろ!背後にも警戒を怠るな!
通隊A、シキツウはどうした!?」
通隊A「数十秒で戻ってきます!…敵は数十名、車列の右側より攻撃して来ている!
到着後は側面より機銃掃射を…!」
支援Aが配置に付いたのを確認しジープ上の隊員Cが発砲を開始する
隊員C「死ね!」
ドドドドド!
弓兵達A「ぎっ!?」「ぎゃぁぁ!?」
支援A「おらおら、こっちだ!」
ドドドドド!
崩れた野盗たちに、支援Aがトラック側から銃弾を浴びせかける
野盗集団B「う、嘘だろ…ぎ!?」ブシュッ「逃げ…ッ!」ブッシュゥ
弓兵達は沈黙し、突撃を試みた野盗たちも十字砲火に食われ
次々倒れていった
支援A「見たか?ウェーフィーッ!!!」
自衛「あと、二匹!」ドドドド
野盗J「どういう事だ…ふざけてやが…げ!?」ブシュッ
野盗K「う、嘘だろ…なんだこいつ等…ひぃ!」
最後の一人が逃げ出し、森の奥へと走っていった
施設A「攻撃が収まったか…安全確認を!」
武器C「異常なし!」
隊員D「オールクリア」
自衛「隊員C、支援A、辺りを見張れ!
隊員D、最後のヤツがどっちに逃げんのか見て来い!」
隊員D「了解!」
隊員Dは最後の一人を追いかけ、森に入ろうとする
隊員C「おい、隊員D!足元には気ぃつけろ」
隊員D「あ?」
隊員C「足元だよ」
隊員Cは先程のロープの罠を示した後、自分の足元を指差す
隊員D「ああ…分かった」
輸送D「指揮車だ」
隊員C「ああー…いいタイミングだぜ、まったく」
隊員Dが追いかけて行った数秒後に、指揮車が戻って来た
82車長「おい、無事か!?」
キューポラ上の82車長が、警戒しつつ安否を聞いてくる
後部ハッチからは特隊A等が降車し、周囲へ展開する
施設A「負傷者は無しだ。だが、いきなりで何がなにやら…」
指揮車と特科隊員に見張りを任せ、他の隊員等は
死体や罠を調べ始ていた
武器C「っ…こりゃひでぇ」
輸送D「いわゆるならず者ってヤツか?」
武器C「顔立ちはヨーロッパ系かぁ?
しかし、いやーなタイミングで出くわしたモンだぜ」
隊員C「タイミングは関係ねぇ、これ見てみろ」
輸送D「?」
茂みの辺りを指し示す隊員C
そこには木々に罠の仕掛けが用意してあったり、茂みをより隠れやすくしたりと
奇襲をかける為の工夫が凝らされていた
隊員C「ここを住処にして、通りがかったヤツを襲ってんだ」
武器C「ご苦労なこった…」
支援A「けどよ、村とか鍛冶んトコでは、こんな連中が
バカンスしてるなんて聞かなかったぜぇ?」
隊員C「こんなゲボッチョふぁんたづぃで、最新の情報が期待できると思うか!?
ここに根付いてまだ数週間ってとこなんだろ」
一方、逃げた野盗を追う隊員D
隊員D「見失っちまった…方向は検討ついたが、どうするか?」
さらに追跡するべきかどうか考える隊員D
隊員D「だがなぁ…ああ、また見つけた」
隊員Dの視線は、木の根元近くの地面に向く
その一点だけ、土や草のあり方がやや不自然だった
隊員D「…これがいい」
隊員Dは適当に両手サイズの石を探し、その上に放った
バサッ
地面からロープが飛び出し、近くの木の枝へとぶら下がる
そこに踏み入った者を吊るし上げる罠だ
隊員D「爆薬付きじゃないだけマシってか…?」
先程からこいった類の罠が、いくつも見つかっていた
隊員D「一度戻るか」
82車長「どうすんだ?今のうちに、森を抜けちまうか?」
施設A「そうは行くか。まだ他にも居るかもしれないのに、
放っておく事はできない」
82車長「森を調べて、居るんなら叩くしかねぇか…」
隊員C「へい、ちょっと待てよ」
異議の声を挟む隊員C
隊員C「それは俺等がやる必要があんのかよ?
街かどっかで報告して、この国の軍にでもやらせりゃいいだろ?
帰りは迂回すりゃいい、とっとと抜けちまおうぜ!」
自衛「いんや、ここで叩くぞ」
隊員C「おぉい!自衛!?」
自衛「ここは野営地からも比較的近い。
皺共みたいに、連中が野営地に難癖つけて来ねぇって保障もねぇぞ。
採掘施設がパーんなるなんざ、考えたか無いぞ」
隊員C「ッ…聞いたかよ、これだぜ!こんな居心地悪ぃファンタジーでも
石油のあるところ戦争有りだ…!」
輸送D「別にあいつらは石油目当てで居座ってるわけじゃねぇだろ」
自衛「何でもいい。言いたい事言ったら、装備を確認して警戒してろ」
隊員C「はいはいはいはい…分ーった分ーった」
愚痴りながら隊員Cはジープへと戻っていった
施設A「なんにせよ、野営地から増援呼んだほうがいいな。
敵の規模も不明瞭だし、我々だけでは不十分だ。
通隊A、野営地へ増援要請を」
通隊A「了解」
装備の確認を行っている所へ隊員Dが戻ってきた
隊員D「戻りました」
自衛「どっちに逃げてったか分かったか?」
隊員D「ええ、大体の方向は分かったんですが…」
隊員C「“足元注意”だったろ?」
隊員D「ああ…お前の言う通りだったよ隊員C」
支援A「何の話だぁ?」
隊員D「この森は罠だらけだ、そこら中に仕掛けてある」
隊員C「嫌な予感的中だぜ!ただでさえ面倒な上に、頼んでもねぇオプションが
付いてきやがった!」
隊員D「何怒ってんだ?」
支援A「ヤツらをぶっ叩くことになったんだけどよ、
隊員Cはご不満なんだってよ」
隊員D「ああ…とにかく士長、この森は下手にフラフラしてられませんよ。
それに、人手や手間を考えると、それなりの人数が潜んでます」
自衛「分かった。隊員D、お前も装備を確認しろ。
とにかく俺達は少しここら辺を漁るぞ」
隊員C「おぉい、こんな物騒な不思議の森を漁れってか?
それによ、ヤツが逃げてった方向にホントに住処があんのかよ?」
自衛「わかんねぇから偵察するんだ。増援が来るまでにできる限り
地形を把握する。可能なら罠の解除もな」
隊員C「ケッ、これだぜ」
自衛「そう腐るんじゃねぇ。連中に余計なオプションの文句を付けに行くぞ」
施設A「俺達はどうする?別ルートで偵察するか?」
自衛「いえ、車両は森の入り口まで後退して待機を。
可能なら簡易陣地を構築して、迫撃砲の設置を頼みます」
施設A「分かった、引き受けよう」
82車長「俺等は同行すっぞ。野営地の所みたいな密林じゃねぇし
シキツウで先行すりゃ、ちったぁマシだろ?」
自衛「決定だ、森の中を偵察する。第2中隊は準備しろ」
隊員D「了解」
隊員C「ああくそ…おもしろく無ぇピクニックだ」
自衛「ああ、それと隊員C。こいつを持ってけ」
隊員C「あ?」
自衛は隊員Cに予備の小銃を渡す
自衛「お前も小銃を使え、拳銃じゃろくに戦えねぇからな」
隊員C「ああ?冗談だろ?ならハチヨンは置いてっていいよな!?」
自衛「ほざくな。両方装備しろ、人手を腐らせとく余裕は無ぇ」
隊員C「最悪が順調に更新中だぜ…」
支援A「よぉ隊員C。まだせいぜい2回オモテってトコだぜ!?
おんぶして欲しけりゃもうちっとがんばれよ!」
隊員C「うるせぇな、黙ってろ」
隊員Cは戦争嫌いの根はやさしいショタっこなんだろうな
>>91 現実から目を背けてるようなので、君ちょっと来なさい
隊員Cのオマージュ元
“デーモン・ベアード”で画像検索
後支連の隊員と車両は、一度森の入り口まで退避
普通科と指揮車は森の偵察に入った
罠は人を目標にした物で、重量のある車両には効力を成さないので
指揮車が森の中を先行する
その先行した指揮車は、少し先で一時停車していた
82操縦手「車長、これ以上は厳しいかと」
道の近くは比較的低かった木立の密度だが、
奥に進むにつれて木立の間隔は狭くなり、指揮車はついに進めなくなった
82車長「ああクソ、行けると思ったんだがな…」
キョーポラ上で悩む82車長
ガサッ
その時、頭上から何かの物音が聞こえた
82車長「は?」
確認すべく視線を上に向けると…
野盗M「おらぁぁぁ!」グォォッ
82車長「おわぁーーーッ!?」
目に映ったのは
木の上から飛び降り
今まさに、切りかかろうとして来る野盗の姿だった
82車長「やっべぇ!?」スッ
ガッキィ!
82車長はとっさに車内に引き込み
振り下ろされた斧はハッチの縁に阻まれた
82車長「…ッ!82操縦手ッ!出せ!」
82操縦手「は!?どっちに!?」
82車長「どっちでもいい、急げェ!!」
ギュキキキキ!
野盗M「おわッ!?ぎっ!?」ドサッ
指揮車が急発進し、野盗はその勢いで指揮車の上で転倒
そのまま車上を後ろへ転がって、指揮車の後方へ転げ落ちた
82車長「後進しろ後進!」
グォォォォ!
ギアを切り替え、82操縦手は指揮車を後進させる
その方向には先程転げ落ちた野盗の姿がある
野盗M「ぐぅぅ…な!ひ!?」
バキボキ!
野盗M「ぐぎゃぁぁ!?」
野盗は後進する指揮車のコンバットタイヤに押し潰され
絶命した
野盗集団C「逃げやがるぞ!」ザッ
「追えッ!」
「バケモンがぁ!」
木立から、隠れていた野盗達が姿を現す
82操縦手「車長!前から連中が複数!」
82車長「蜂の巣を突いちまったぜ!下がれ下がれ!」
指揮車の少し後方
隊員C「どんだけ仕掛けやがったんだ糞共…」
支援A「そろそろ森も飽きてきたよな、今度は海がいいぜ!」
無駄口を叩きつつも、罠の解除はそれなりに進んでいた
特科A「自衛、反対側は大丈夫だ」
自衛「おーし次だ、両翼に展開。前進するぞ」
隊員D「了解」
グォォォ…
支援A「あ、なんだ?」
ゴォォォォォォッ!
両翼に展開して進もうとした所へ、
指揮車が急速後進で突っ込んで来た
支援A「ファーォ!?」
隊員D「危なッ!」
ゴゴゴ…!
そして通り過ぎると、分隊の少し後ろで急停車する
支援A「おーいッ!サプライズは安全を考えろよな!」
自衛「一体どうした!?」
82車長「敵だ!前方でヤツ等の仲間と遭遇した!
木の上から振ってきやがった!他にも来るぞ!」
隊員C「おい、あれだぜ!」
前方を示す隊員C
ザカザカザカ…!
野盗集団C「待ちやがれぇ!」
「殺せぇぇ!」
「うらぁぁぁぁ!」
指揮車を追いかけて来たのだろう
複数の野盗が前の木立を抜けて、走ってくるのが確認出来た
ドス!ドス!
隊員D「だッ!?」
自衛「隠れろォ!」
さらに付近に矢が降り注ぎ、大慌てで遮蔽物へと隠れる
支援A「団体さんのご到着だぜ!」ジャキ
自衛「交戦だぁ!撃ちまくれ!」
支援A「イヤッホォォウ!」
ドドドドド!
野盗集団C「ひがぁッ!」
「ゲッ!?」
「いぎッ!?」
自衛「近づけるな!ぶっ殺せ!」ドドド
隊員D「当たると痛ぇんだぞ!お前らも食らってみろ!」ボンッ ボンッ
ドスッ!ドスッ!
隠れている木や地面にまたも矢が突き刺さる
隊員D「ッ!弓が鬱陶しい!」
自衛「82車長!50口径はどうしたぁ!?」
82車長「やってる!」ガチャ ジャキ
指揮車はゆっくりと前進を再開
82車長が50口径に着く
ヒュルル…ガキン!
82操縦手「おわっ!?」
野盗が投げ放って来た手斧が、フロントの防弾板に当たり跳ね返った
野盗集団D「斧をはじきやがった!?」
「化け物だ、クソッ!」
82車長「この野郎!塗装が剥げるだろうが!」カチッ
ガガガガガガガガ!!!
野盗集団D「ばっ…!?」パキョッ
「えげッ…!?」パキッ
50口径の掃射をまともに食らい、野盗たちの体は弾け飛んだ
自衛「弓兵が見えるか!?アレも潰せ!」
82車長「弾け飛ぶぜ、オイ!」カチッ
ガガガガ!
弓兵達B「うぎッ…!?」ペキッ
「けひッ…!?」ペキョッ
機銃掃射が弓兵達を吹き飛ばす
自衛「撃ち方やめだ!射撃停止しろ!」
銃声が鳴り止むと、周辺に静寂が戻ってくる
隊員D「今ので最後か…」
自衛「集まれ」
指揮車の近くで隊員が集結する
特隊B「こりゃ、ひっでぇぜ…」
82操縦手「今夜、夢に出るな」
野盗達の弾け飛んだ死体に視線をやり、苦い台詞をこぼす
隊員D「だが、これで全部じゃねぇだろう。きっとまだ来るぜ…」
自衛「だろうな」
82車長「自衛、シキツウのこれ以上の直進は無理だ。木立が邪魔で前進できない」
隊員D「どうすんです?」
隊員C「よぉ、これ以上無理に偵察するこたぁねぇだろ?戻ろうぜ!」
自衛「82車長、迂回路を探せ。うまく行けば、ヤツ等のケツを叩き殴れるぞ。
俺達は木立を抜けて前進する」
隊員C「本気かよ!?」
82車長「交戦するのか?」
自衛「タラタラしててもラチが開かねぇからな。
連中、ハイになってるが、その分混乱してやがる。浮き足立ってる所を叩くんだ」
82車長「分かった。特科隊は搭乗しろ、迂回するぞ!」
特隊A「了解!」
自衛「お前らリロードしとけ。隊員D、無線を」
自衛は無線で森の入り口にいる後支連と連絡を行う
自衛「デリック4応答してくれ。こちらジャンカー4。
作戦は変更だ、連中は混乱してる上に躍起立ってる。
俺達は連中の拠点を探して、面倒を起こされる前にそこを叩く」
施設A『デリック4だ。了解したが、決して無理はするな』
自衛「分かってます。それより迫撃砲は?」
施設A『設置は完了した。座標を送ってくれれば砲撃できる』
自衛「了解、交信終了」
82車長「自衛、気をつけろよ。先に行くぜ」
特隊A等を搭載すると
指揮車は方向を切り替え、迂回路を探しに走り去った
隊員C「クソッタレ!結局増援が来る前にこの有様かよ!」
支援A「まぁ、そんな予感はしてたぜ!」
自衛「敵は待っちゃくれねぇぞ。隊員C、先行して罠を警戒しろ」
隊員C「ああ、頼りになるのは俺様だけだからな!苦労するぜ!」
自衛「他は隊員Cのお守だ。目ん玉見開いてよーく見張れ」
自衛達はさらに森を進む
隊員D「…!おい、あれ…」
その途中、隊員Dが前方に何かを見つける
一本の木の根元
そこに、座り込んでもたれかかる人の姿があった
隊員D「ならず者って感じじゃねぇぞ」
隊員C「おい待て!」
近づこうとした隊員Dを隊員Cが止める
隊員C「バカ!どう考えても不自然だろうが!」
隊員D「けどよ、放っとく訳にはいかねぇだろ!士長、俺が行ってきます」
自衛「いいだろう、だが気をつけろ。他は周囲を警戒」
隊員C「知らねーぞ…」
隊員D姿勢を低くして、座り込む人間に近づく
隊員D「っ、死んでるか…?これは…」
その体は動く様子がまったくない
隊員Dは脈を確認しようと首に指を乗せる
プツッ
隊員D「!」
その時、なにかが切れる音がし
それと同時に死体が倒れた
隊員C「隊員D、上だ!」
隊員D「!?」
上を見れば、木の枝に木箱のようなものが仕掛けられている
死体に繋がっていた紐が切れ、その箱が傾くと、
中に入った多数の両手サイズの岩が降り注いできた
隊員D「やべぇ!?」
咄嗟に来た方向に跳躍し、そのまま転がるようにしてそれを回避する
野盗集団E「かかったぞ!」
「行けェ!」
そしてそれを合図にするように、野盗集団が前から襲い掛かって来た
隊員C「ほら見ろ!来やがった!」
ドス!ドス!
隊員D「ッぁ!畜生めがッ!」
各所に矢が降り注ぐ中を、匍匐前進で遮蔽物の木へと戻る
自衛「急げ、カバーしろ!」
自衛はたどり着いた隊員Dの服を掴み、やや強引に遮蔽物へと引き入れた
隊員C「迂闊なんだよ!」ダダダ ダダダ
隊員D「悪かったよッ…野郎っ!」
隊員Dは態勢を整えると
手榴弾のピンを引き抜き、投げ放った
ドゴォッ!
野盗集団E「ぎゃぁぁ!?」
「うげぇっ!?」
野盗達の一部が吹き飛ぶが、少し先には未だに多くの野盗が残っている
支援A「ヘイどうした!?かかってこいや!」ドドドドド
ドス!ドス!
支援A「ファォ!?」
隊員D「木の上にも弓兵!」
支援A「ふざけやがって!」ドドド
チュイン!バシュッ!
支援A「オォイ!枝がお邪魔だぜ!」
木の上の弓兵に向けて撃った弾丸は、折り重なる木の枝に阻まれ
命中しなかった
隊員C「連中は皺共ほどバカじゃねぇ見たいだぜ!
見ろ、ほとんど出てこようとしねぇ!」
野盗達は木などに身を隠し、少しずつ前進してくる
野盗N「…今だ、行…ぎゃっ!」ブシュッ
自衛「おいたは無しだ」
脇から来ようとした野盗を撃ち抜く
自衛「正面だけじゃなく脇に気を配れ、回り込ませるな!」
支援A「おもしろくねぇ連中だぜぇ!」
野盗集団F「こっちだ!」
「殺せぇ!」
「行け行けッ!」
木立の奥からさらに野盗の応援が来る
支援A「増えやがった、バーゲンセール並みだぜ!」ダダダ
自衛「連中の拠点が近いのかもしれん」ドドド
隊員C「けどよ、このままじゃジリ貧だぜ!」
密集する木立が災いし、銃撃だけでは野盗が減っていかない
自衛「仕方無ぇ。隊員D、無線を貸せ!」
隊員D「待って下さい…どうぞ!」
自衛「隊員C、発煙弾を寄越せ!お前が持ってたろ」
隊員C「おらよ!」
隊員Cが投げて寄越す
自衛「おーし、見張ってろ」
自衛は発煙弾を用意しながら、無線機に向けて怒鳴り出す
自衛「デリック4、応答しろ!ジャンカー4だ!迫撃砲支援を要請!
発煙弾を焚くからそこに急速射撃しろォ!」
森の入り口
トラックとジープを遮蔽物に
急ごしらえの防護陣を作り
64式迫撃砲がそこに設置してある
通隊A「急速射撃!?危険だぞ!?」
自衛『いいから今すぐ撃てるだけ撃て。後はこっちでなんとかする。
初弾の調整もいい、ぶっ飛ばせェ!』
通隊A「わ、分かった!」
施設A「…見えた!発煙を視認した!」
隣で通信を聞いていた施設Aが
森の中から立ち上る、色付きの煙を確認する
施設A「200m強か…少し遠めに調整しろ!」
武器C「200m強…よし、いつでもいける!」
施設A「砲撃開始!」
輸送D「了解!」
合図と共に、迫撃砲の脇に待機していた輸送Dが
81mm迫撃砲弾を砲に滑り込ませた
ボヒュッ!
という発射音と共に迫撃砲弾が打ち出された
その直後に、すかさず次の迫撃砲弾を滑り込ませる
野盗集団F「ッ!くそ、良く見えねぇ!」
「ゲホッ!」
「なんだこりゃッ!?」
野盗達は、自分達の足元に投げつけられた物体が
発する煙に、少々戸惑っていた
野盗集団F「だ、大丈夫だ!別に毒じゃねぇッ!」
「驚かしやがって!」
「なめた真似しやがって、殺してやる!」
だが、特に異常が無い物と分かると、
野盗達は再び攻撃を開始しようとする
が…
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥッ—————
野盗集団F「あ?」
「か、風かぁ?」
「な、なんだ、この音?」
突然聞こえ出した異質な音に耳を奪われる、そして…
自衛「来るぞォーッ!」
ボガァン!
ボガァン!
野盗集団F「は…?」ジュッ
「ぎゃぁッ…!?」グボァッ
「ぎぃやぁぁぁ…!?」ブッシャァッ
木立の少し奥に数発が着弾
連続着弾に野盗達が草木や地面共々吹き飛んだ
野盗集団G「な、なんだぁッ!?」「う、後ろのヤツが…!?」
最初の着弾を逃れた野盗達も、
何が起こったのか全く理解できていなかった
自衛「遠いぞ、2度仰角上げろ!手前を吹っ飛ばすんだ!」
自衛が無線に怒鳴ってから数秒後
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ—————
ボガァッ!
ボグァァァァ!
野盗集団G「ま、また!?うぁぁ…!?」ジュッ
「なんだこッ…!?」グッチャッ
今度は手前にいた野盗達が、爆風で細切れになってゆく
バラバラバラッ!
隊員D「ッ!」
支援A「ウォーウ!」
着弾距離が安全範囲ギリギリまで近づき、
爆風に巻き上げられた土砂が降りかかる
隊員C「ぺっ!口に入りやがった!」
自衛「修正要請、俯角へ0.5度下げろ」
ヒュゥゥゥゥゥ——
野盗集団H「あ、あいつらの仕業なのかぁ!?」
「ひぃッ!」
「に、逃げろぉ!」
迫撃砲弾の迫り来る音に野盗達はパニックを起こし
奥へと逃げ出してゆく
ボッガァ!
ボグァ!
ボッガァァン!
野盗集団H「ひぎゃぁぁぁッ!?」グチャッ
「あああーッ!?」ジュゥゥ
「助けッ…!」グッシャァ
だが、着弾した迫撃砲弾が、逃げようとした野盗達を吹き飛ばした
自衛「砲撃停止!前進する、砲撃待機しろ!」
砲撃が停止し、ようやく周辺を見渡せるようになる
地面のあちこちが砲撃で抉れ、多数の木の幹が抉れている
隊員D「………」
そして森の中には、大量生産された
野盗達の細切れの死体が転がっていた
支援A「花火大会としちゃぁ、泥臭かったぜぇ!」
自衛「全くだ。全員生きてるな?行くぞ」
隊員C「ああクソ!泥遊びしに来たんじゃねぇんだぞ…!」
自衛「交互に前進だ。隊員D、俺と先行するぞ!」
隊員D「了解!」
自衛「他は援護だ、行くぞ!」
遮蔽物の木を飛び出し、前方、次の木へと飛び込む
隊員D「っと…!」
自衛「周囲確認しろ!」
ザザッ!
野盗O「く…!うぉぉッ!」
前方の木の影から、生き残りの野盗が飛び出して来る
自衛「邪魔だ!」ドンッ
野盗O「げっ!?」ドシュッ
野盗が倒れ、周囲は再び静かになる
隊員D「…他は居ません!」
自衛「おーし。隊員C、支援A、行け!」
後ろに合図を送り、隊員Cと支援Aが援護の中を駆け抜ける
隊員C「だっ!」ドザッ
支援A「フォーウッ!付いたぜ!」
隊員D「よし…」
隊員C達が次の遮蔽物へ飛び込むのを見届け
反対側に目を移す隊員D
隊員D「ッ…」
そこには、先程の死体が変わらぬ姿で横たわっていた
砲撃による損傷は間逃れたようだったが
胸には死因となったであろう矢が、刺さったままになっている
さらに野盗達から暴行を受けたのか
その顔は腫れ上がり、痣だらけだった
隊員D「…」
隊員Dは警戒しつつ手を伸ばし
かすかに開き、真上を見つめている目を
静かに閉じさせた
隊員C「おい!前方はクリアだぜ!」
自衛「援護しろ!隊員D、前進するだ」
隊員D「…了解!」
少し先では、手負いの野盗達が
体を引きずるようにしながら逃走していた
野盗弓兵B「くそ、昨日みたいに楽勝だと思ったのによぉ…」
野盗弓兵C「い、急ごうぜ…!早く逃げねぇと…」
ボウッ!
野盗弓兵C「ぎへッ!?」バチュッ
野盗弓兵B「…は?」
しかし次の瞬間、片方の野盗の頭が吹き飛んだ
それを間近で見ていたもう一人は、弾け飛んだ脳髄をもろに浴びた
野盗弓兵B「あ……?ひぃぃ!?」
状況を理解した野盗は、
半狂乱になってその場から逃げ出そうとする
ボゥッ!
野盗弓兵B「!?いぎゃぁぁッ!?」
だが、今度は己の腰周りに強烈な激痛が走り、
悲鳴を上げながら倒れた
野盗弓兵B「あ…ああ…」
激痛に苛まれつつもなお、這って逃げようとする野盗だったが
野盗弓兵B「いぎゃぁッ!? 」グォッ
突如、強引にその体を何者かにひっくり返された
野盗弓兵B「あああ…な、ひ?」
そして、その野盗の目に映ったのは、ショットガンのストックだ
隊員D「ッラァァ!!」
ドゴッ!
野盗弓兵B「ぎへっぇ!?」グシャッ
隊員D「この野郎ッ!」
グシャッ!ゴキャッ!
野盗弓兵B「ぎゃ!?ぐぎゃ!?」ゴチャ グチュッ
隊員Dはストックで何度も野盗を殴りつける
野盗弓兵B「ひぎ!や、べで…!」グシュッ グチャッ
野盗の懇願にも耳を貸さずに、何度も殴りつける
隊員D「ッ…お前らが!この野郎…ッ!」ドゴッ ドゴッ
何度も、何度も、何度も…!
グィッ!
一心不乱にショットガンを叩き降ろす隊員Dの肩を
唐突に何者かが掴み
そして、隊員Dを強引に振り向かせた
自衛「隊員D」
隊員D「ッ…!」
隊員Dの目は血走り、その表情からは怒りがありありと伝わってくる
自衛「無駄に時間をかけるな、行くぞ」
隊員D「ッ…了解…了解!」
呼吸を整えながら、隊員Dは野盗に視線を移す
野盗弓兵B「あ、あ…」
ドゴッ!
野盗弓兵B「ぎょごッ!?」グッチャァ
そして本気の一撃で野盗を殴りつけ、止めを刺した
隊員D「糞野郎が…!」
自衛「それでいい」
その場へ隊員Cが駆け寄って来る
隊員C「へい自衛、この辺にはもう残ってねぇみたいだぜ?」
自衛「転がってるヤツの呼吸は確認したか?
全部確認してから前進再開だ」
隊員C「あー…分かったよボス」
これ以降、数レスの間
暴行、残虐シーンなど
人によっては不快感やショックを覚える描写があります
そういった描写を苦手とする方は、十分ご注意下さい
なお、上記のシーンが終了すると同時に
警告解除のレスを掲載いたします
ある所にある小屋の中
野盗P「オラ、こっち向くんだよ」
狼娘「い…嫌…もう、やだぁ…」
暗い小屋の中で、一人の少女を多数の男が囲っている
男達は皆、まともな人間とは思えない風体だ
逆に少女は、狼のような耳や尻尾、体毛こそ生えてはいるが
それ以外は年端も行かない少女のそれだ
野盗Q「これでもか?」グィッ
野盗の一人が狼娘の尻尾を強く引っ張る
狼娘「いぎゃぁ!やめて、言うとおりにしますから!
尻尾痛いぃッ!」
狼娘は目に涙を浮かべて懇願する
彼女はさんざんの暴行により戦意を失い
野盗たちの慰み者となっていた
野盗P「あんなに生意気な口調してたのに、ねぇボス?」
野盗は部屋の奥に居る、一際目立つ大男に話しかける
野盗ボス「所詮犬っころってことだ。まぁ、俺達に歯向かった報いだな
ほぉら、コイツのためにもせっせとやりな」
野盗ボスは何かをつかみ出し、狼娘の横に放り投げた
狼娘「へ…ひ、ひぃ!?」
それは商人Cの生首だ
野盗ボス「かわいそうに、お前のために首だけになっちまって」
野盗P「こいつが救ってくれた命だもんなぁ?
無駄にしないためにも、俺達に尽くしてくれないとなぁ?」
狼娘「は、はぃぃ…ちゃんとやります…
ごめんねみんな…ゴメンね商人C…」
野盗たちの言う事にはなんの筋も通っていないが
酷い精神状態に陥っている狼娘は
うわ言のように謝罪を述べながら、野盗たちに擦り寄る
野盗ボス「ははは、こいつぶっ壊れてきたなぁ!まぁ、ほとんどのヤツを
ぶっ続けで相手したからなぁ?」
野盗P「こいつは、おもしれぇや!」
野盗Q「ハッハッハ!」
狼娘を取り巻き、大笑いする野盗達
野盗K「お、お、お頭ぁ!」
その時、唐突に小屋の扉が開き
一人の野盗が駆け込んで来た
野盗ボス「あー?なんだお前か?さっきの妙なやつ等は片付いたかぁ?」
野盗K「た、大変なんです!連中、妙な魔法を使いやがって…!
近づく前に血を吹いたり、爆発でみんな吹っ飛んじまったりぃ…!」
駆け込んできた野盗は、質問には答えず
青ざめた顔で一気に言い放った
野盗ボス「…あぁ?」
野盗P「は?」
野盗Q「何言ってんだお前?」
野盗の要領を得ない説明に
小屋内の野盗たち怪訝な顔をする
野盗K「ほ、本当だ!応援に行ったヤツも皆やられちまった!
と、とにかく早く逃げましょうぜッ!?」
野盗ボス「バカ言うんじゃねぇッ!」
野盗K「ひっ!?」
野盗ボス「ったく、しょうがねぇ手下共だ。
どーれッ…」
野盗ボスは駆け込んできた野盗を一括すると
億劫そうに立ち上がり、扉へと向う
野盗P「お、ボスが出るんですかい?」
野盗ボス「俺がいっちょ捻り殺してやらぁ、お前らはそのワンちゃんと遊んで…」
そう言いながら、野盗ボスが掘っ立て小屋の扉をくぐった瞬間だった
ボッガァァァァッ!!
視界先、広場の端のほうで戦利品を漁っていた手下達が
炎に包まれてまとめて吹き飛んだ
野盗ボス「……は?」
数分前
隊員C「…あ?おい自衛!あれじゃねぇか?」
前進を続けていると、進行方向に開けた場所が
自衛「停止しろ。隠れて、周囲を見張れ」
茂みに身を隠し、自衛は双眼鏡で広場を確認する
森の中に広場があり、そこに掘っ立て小屋や馬車などが多数
そして、野盗とおぼしき男たちが、
強奪品らしき物を漁っているのが確認できた
自衛「…違ぇねぇようだ。全部隊へ、こちらジャンカー4。
敵の拠点らしき場所を発見した」
82車長『こちらハシント。本当か?どのあたりだ?』
自衛「最初に連中が吹っ掛けて来た所から、南東へ約1kmだ。
森の真ん中に広場がある。そこにごちゃごちゃと色々建ててやがる」
82車長『南東…俺等もおそらく近くにいる。待ってろ、すぐに合流する』
自衛「頼むぞ、交信終了。全員準備しろ」
通信を終え、攻撃の準備に入る
自衛「隊員C、てき弾持ってるな?
あそこに固まってる、お宝に夢中のヤツ等にぶっ込め」
隊員C「分かった」
隊員Cはてき弾を小銃の先にセットする
自衛「ぶっ込んだら、両脇から叩くぞ。隊員Cと隊員Dは右からだ。
支援Aは俺と来い」
隊員D「了解」
自衛「よぉし。隊員C、やれ」
隊員C「オーライ…!」カチッ
隊員Cが引き金を引き、てき弾が野盗たちに向けて飛び込んだ
ボッガァァァァッ!!
野盗集団I「ひぎゃぁッ!?」グチャ
「うげぇぇッ!?」ブチュッ
「ぎへッ…!?」ジュッ
てき弾が炸裂し、強奪品を漁っていた野盗達が、
その強奪品や付近の木箱ごと吹き飛んだ
隊員C「さすが俺!」
自衛「上出来だ。行け、行け!」
自衛達は茂みを飛び出し、襲撃を開始した
野盗集団J「一体なんだぁ!?」
「ひ、火が起こってるぞ!?」
「魔法か!?敵かぁ!?」
突然の事態に、近くに居た野盗達は混乱に陥り
手前の開けた場所へと駆け出してくる
隊員C「出てきたぜぇ!」
支援A「さぁ、食らいやがれッ!」
ダダダ!ダダダ!
ドドドドド!
野盗集団J「ぎゃ!?」ブシュッ
「ぎへッ!?」バチュッ
「うぎゃぁッ!?」ビシュッ
手前に飛び出してきた野盗達は恰好の的だった
左右に分かれた自衛達の十字砲火を食らい
あっと言う間に死体の山となって行く
隊員D「間抜けがぁッ!」
自衛「そのまま右に回れェ!タラタラすんなッ!」
隊員Cと隊員Dは広場の右へと回る
自衛と支援Aは左へ進み、
近場の掘っ立て小屋の影に飛び込んだ
自衛「この先に数匹いる」
そこから先を覗き込むと、また別の野盗たちが固まっているのを見つけた
騒がしくなり、慌ててはいるようだが、
まだこちらには気づいていない
自衛「支援A、どっちかが注意を引くぞ。
もう片方が注意の逸れたあいつらを叩くんだ」
支援A「ファンの相手は俺に任せなぁ!」
支援Aが陽動のために遮蔽物から飛び出す
支援A「ヒャッハァッ!こっちだぜ!かかってきやがれ!」
野盗集団K「な、なんだあの大男!?」
「あいつの仕業か!?ふざけやがって!」
「やっちまえ!」
野盗たちは突然現れた支援Aに注意を奪われ、小屋の向こうから
こちらへと走ってくる
自衛「みんな大好き、焼肉タイムだ」
それを確認し、自衛は武器を小銃から携帯放射器へと持ち替える
支援A「鬼ごっこだ、こっちだぜぇ!」
支援Aは野盗たちの注意を引きつつ
自衛の攻撃範囲から逃れるため、後ろへと下がる
野盗集団K「バカにしやがってぇ!」
「うがぁぁ!」
「待ちやがれぇ!」
野盗たちは怒りと混乱で支援Aにしか目が行かず
死角に潜む自衛に気が付かなかった
一番先頭の野盗が自衛の視界に飛び出してきた瞬間に
自衛は火炎放射器のトリガーを引いた
自衛「焼け死ねぇーーーーー!!!」
ボォァァァァァァァァ!!!
野盗たちの目の前に炎の壁が張られる
勢い良く走りこんで来た野盗たちは、それを回避することができなかった
野盗集団K「ひ!? う、うぎゃぁぁぁッ!?」
「あ、あづぃぃぃぃぃぃッ!?」
「あぎゃあああああーーッ!?」
駆け込んできた勢いのまま、次々と炎へ飛び込んで行く
炎をくぐった野盗達は火達磨となり、周囲をのた打ち回った
野盗集団I「あ…ああ…」ジュゥゥ
「熱…あ…」ボォォ
「…」ボォ
そして一人一人倒れてゆき、やがて動く者は居なくなった
人の焼ける香ばしい匂いが、周囲に充満する
自衛「FV砲手あたりが見たら、そこら中ゲロまみれだな。
支援A、隠れろ!後続が来るぞ!」
支援A「中まで焼けたか?」
支援Aが遮蔽物へと戻った所で、後続の野盗達がその場へ到着した
野盗集団L「な、何が…う、うげ!?」
「ひぃ!?」
後続の野盗達がその光景を見て悲鳴を上げるが、
そこを銃火襲った
ドン!
ドドド!
野盗集団L「いぎゃ!?」バシュッ
「がひぃっ!?」ズチュッ
後続の野盗たちも銃火に倒れ、仲間の後を追った
自衛「弾を確認しろ。前進するぞ」
掘っ立て小屋の影を飛び出して前進
その先に積まれている多数の木箱の影へと隠れる
支援A「すげぇなぁ!自衛、サハリンもこんな感じだったのかぁ!?」
自衛「後にしろ馬鹿が!他にも来るぞ!」
前方には数台の馬車が止めてあり、その影から
野盗たちがワラワラと出てくる
野盗R「くっそぉ!ヤツ等を止めろ!」
野盗S「何なんだチクショウッ!?」
ボウッ!
野盗R「ぎゃッ!?」ブシュッ
一番前を走っていた野盗が
自衛の撃った小銃弾を食らい倒れる
自衛「次!」
野盗S「く!ふ、ふざけんなッ!」
野盗達は錯乱しつつも、クロスボウや
手斧の投擲で応戦してくる
ドス!ドッ!
支援A「ウォウチッ!?」
矢や投擲された斧が近くに突き刺さり
いくつかは頭を掠めた
自衛「気ぃつけろ!」
支援A「ふざけやがって!」ドドド
バキッ!ペキャッ!
野盗集団M「ひッ!?」
「か、隠れろ!」
近くの馬車が穴だらけになり、それに臆した野盗達は
遮蔽物へと隠れてしまう
支援A「あーぅ!ビビリ共、隠れちまった…!」
自衛「落ち着いて撃たねぇからだ!待ってろ、連中に頭を上げさせるな!」
自衛は手榴弾のピンを引き抜き、少し高め投擲した
自衛「派手に行けよ!」
投擲した手榴弾は遮蔽物を通り越し
野盗たちの足元へと転がり落ちる
野盗S「いッ!?あ、なんだこりゃ…?」
転がり込んだ物体を、野盗達が覗き込んだ瞬間
ボグァァッ!
野盗S「あげッ!?」グシュッ
野盗集団M「ひぎゃッ!」ブシャッ
「ぎゃぁぁッ!?」グチュッ
手榴弾は炸裂、周囲の野盗達を肉片へと変えた
野盗集団N「ひぃ!か、体が!肉がぁ…!?」
「い、いやだぁぁッ!」
ここまで仲間達に起こった惨劇を目の当たりにし
野盗達は戦意を喪失し出す
野盗T「に、逃げろぉ!」
そして、一人がそう叫びながら逃げ出したのが口火となり
野盗たちは逃走を開始した
支援A「ヘイ!逃げちまうぜ!?」
自衛「退却させるな!残らずヤツ等のケツに叩き込むんだ!」
野盗達は逃走を始め、森の中へ逃れようとしていた
ゴォォォォ…!
だが野盗たちの足は、森の中から聞こえてくる
唸り声のような音より止まった
野盗集団N「は…は?」
「何だこの音ぉ!?」
それは次第に大きくなり
同時にベキベキと木や茂みを踏む音がする
支援A「ヘイ自衛、この音!」
自衛「ああ」
ちょうどそのタイミングでインカムに通信が入る
82車長『ジャンカー4、こちらハシント。前方に開けた場所を確認。
たぶん合ってるだろう、そっちに出るぞ!』
ゴシャァッ!
ゴォォォォォ!
森の中、自衛達が襲撃を仕掛けた場所の反対側から
茂みや詰まれた木箱などを踏み倒して
指揮車がその姿を現した
野盗T「ぎゃぁぁぁ!?」
野盗集団N「ひ、ひぃぃ!?」
「ば、バケモノだぁーーッ!?」
車上にはキューポラ上の82車長の他、
特科隊員も車体の上に乗って警戒している
82車長『自衛!こいつら敵だな!?撃っていいな!?』
自衛「あぁ正解だ、全部ぶっ飛ばせ!」
82車長『よぉし退避しろ、掃射するぞ!』カチッ
ガガガガガガガガ!!!
野盗T「あぎゃッ!?」パキッ
野盗集団「げひッ!」ペキョッ
「がべッ!?」ビシュッ
50口径が火を吹き、吐き出された12.7mm弾は
逃げ出そうとした野盗達の体を砕き、弾き飛ばして行った
82車長「特隊A、特隊Bと下に降りて露払いを頼む!
前方の構造物周辺を特にだ!」
特隊A「了解、了解!」
ゆっくり前進するシキツウから特隊A達が降りて、
進路確保へと走ってゆく
82車長「82操縦手、一度止めろ」
指揮車は一度その場に停車
自衛達は周囲を警戒しつつ、指揮車へと接近する
自衛「よぉー、割と早かったな」
82車長「森の中に車輪の跡みたいなのがあって、そいつを辿って来た。
きっとコイツ等が馬車とか運び入れるのに使ってたんだ。
で、どうする?」
自衛「連中は戦意喪失して逃走を始めてる。
邪魔なモンを吹っ飛ばして視界を確保、周囲を監視するんだ!
ヤツ等を一匹足りとも逃がすな!」
82車長「分かった。82操縦手、前進だ!
目の前の馬車が邪魔だ、叩き壊せ!」
82操縦手「了解!」
指揮車は前進し、前方に停めてある馬車を破壊
そのまま、野盗の物資が積載されている空間へ踏み込み
その場に居た野盗達と交戦、撃退してゆく
自衛「かなり居やがるぞ。支援A、お前は隊員D達の支援に行け!」
支援A「オーケィ!あいつら寂しくしてるだろうよ!」
野盗ボス「ど…どうなってやがんだぁ…?」
広場の中央にある掘っ立て小屋の前で
野盗ボスが呆然と立ち尽くしている
野盗ボスには、今起こっている全てが理解できなかった
視界の先では手下が突然爆ぜ死に、焼け死んで行き
緑色の巨大な怪物がアジトを食い荒らしている
野盗P「い、一体何が起こってんだぁ…!?」
野盗K「ひぃぃ!い、言っただろぅ、あいつらバケモノだぁ!悪魔なんだぁ!」
野盗Q「あ、悪魔…!?」
野盗K「は、早く逃げ…あぎゃぁ!?」ブシュッ
野盗ボスは逃げようとした野盗を、
自分の巨大な斧で切り裂いた
野盗ボス「ふざけんじゃねぇ…ふざけんじゃねぇぞぉッ!!」
頭に血が上り、激昂した野盗ボスは正常な判断ができず
斧を持って駆け出した
広場の南側(右側)
隊員C達の側からも、野盗たちが逃げ出して行くのを確認できていた
隊員C「見ろよ、連中どんどん逃げ出してるぜ!」
隊員D「ヤツ等に逃げ場なんかあってたまるか…!」
隊員Dは怒気を含んだ声で言いながら、
ショットガンに弾を込めている
隊員D「お前は広場の外枠から反対側に先回りしろ!
俺は内側から行ってヤツ等を追い込む!」
隊員C「お、おぉい!」
隊員Dはショットガンを構え直し、
掘っ立て小屋の集中する中心部へと駆け込んでいった
隊員Dは逃走する野盗たちの背後に回るべく、
広場の中央に並ぶ掘っ立て小屋や馬車を抜けていく
隊員D「無駄に入り組んだ構造しやがって…!
こっちから行けるか?」
一つの掘っ立て小屋の角を曲がった
次の瞬間だった
野盗ボス「ッ!?」バッ
隊員D「はぁ!?」
隊員Dは突如、巨大な斧を持った大男と遭遇した
野盗ボス「ッ!うがぁぁぁッ!」グォッ
大男は隊員Dを目にするなり、巨大な斧を叩き降ろすべく
振りかぶった
隊員D「やっべぇ!?」ダッ
咄嗟に横に飛び、それを回避する隊員D
そしてさっきまで居た場所に、大斧が叩き下ろされた
隊員D「洒落になんねーぞオイ!?」
野盗ボス「クソがぁ…ッ!」
野盗ボスは悪態を吐きながら、地面に突き刺さった大斧を引っこ抜く
隊員D「なんだこのふざけたゴリラは!?」ジャッ
隊員Dはショットガンを野盗ボスに向け発砲
ボッ!
バキョ!ガキッ!
野盗ボス「うがッ!?」
だがなんと、担ぎ直そうとしていた大斧が丁度妨げとなり
散弾は野盗ボスに届かなかった
隊員D「ありえねぇだろ!?ゴリラが!」ジャキ
隊員Dはポンプをスライドさせ、
もう一度発砲しようとしたが
野盗ボス「痛ってぇ、クソがぁ…グォラァァァ!」グォォ
それより前に大斧が横殴りで襲い掛かってきた
隊員D「げぇッ!?」
撃っても斧は直撃する
咄嗟にそう判断した隊員Dは、前方に飛び込んだ
ブンッ!
隊員D「うぉぁッ!?でッ!?」
ギリギリで回避に成功するが、不安定な姿勢で飛び込んでしまったため
隊員Dは受身に失敗する
隊員D「糞ボケが…!うげ!?」
それでも痛みをこらえて起き上がった隊員Dだが
最悪な事に、ショットガンが手を離れてしまっていた
隊員D「やっちまった!」
野盗ボス「死ねやぁぁぁぁッ!」
野盗ボスはすでに次の体勢に移り、
今にも大斧を振り下ろそうとしていた
隊員D「ば!?ざっけんなッ!」
隊員Dは咄嗟の思いつきで野盗ボスに肉薄
ガシッ!
野盗ボス「!?」
そして振り下ろされようとする大斧の柄を掴み、
攻撃を押さえ込んだ
野盗ボス「がぁッ!?離しやがれテメェ…!」
隊員D「ふざけんなクズ…!」
当然お互いに譲らず、
取っ組み合いと同じ状況になる
野盗ボス「ウガァァッ…!」
隊員D「ゴリラがぁ…!」
身長こそ上の隊員Dだが、全体の質量では野盗ボスを下回るため
隊員Dは少しずつに押されてゆく
野盗ボス「オラァァッ…!どうしたぁ…!」
隊員D「うっぜぇぞ…!」
必死に力を込め、大斧を押さえ込んでいた隊員D
隊員D「いい加減に…あ?」
だが次の瞬間、隊員Dは何かに気が付いた
隊員D「やべッ!」
野盗ボス「ッ!?」ドゴッ
そして突如、野盗ボスに蹴りを入れて牽制
野盗ボスが若干体勢を崩した隙を突き、横へと飛んだ
野盗ボス「てめッ!そんなモン利くかよォッ!」
野盗ボスはすぐに態勢を立て直した
一方の隊員Dは、着地したばかりで
未だに起き上がっていない
野盗ボス「ははっ!死ねやぁぁぁぁぁッ!」
野盗ボスは勝ち誇った顔を浮かべ、大斧を振りかぶる
支援A「うひゃへぇーいッ!!!」
ドッガァァッ!!!
野盗ボス「ぎゃがべへェッ!?」グッシャァ
だが、斧が振り下ろされる前に野盗ボスが吹き飛んだ
後ろから突っ込んで来た支援Aが、
野盗ボスに激突したのだ
野盗ボス「げへッ!?」
突然の背後からの衝撃に何の対処もできず、
野盗ボスは地面に叩き付けられた
支援A「俺様参上だぜぇ!拍手喝采で迎えてくれよなぁ!」
身長200cm越え、体重100kg以上
日本人離れした支援Aの激突には、
野盗ボスも一溜まりもなかった
支援A「ヒーヘィーッ!」
隊員D「だぁぁ…糞ッ!」
テンションが上がっている支援Aを無視して、
隊員Dはショットガンを回収、野盗ボスを押えに走る
野盗ボス「ぐ、がぁ…!?なぁ…?」
野盗ボスは不自然な姿勢で地面に叩きつけられ、
全身を強打していたが
それでも、立ち上がろうと必死にもがいていた
隊員D「しつけぇぞッ!」
ドグシャッ!
野盗ボス「ぐげぇッ!?」
隊員Dが野盗ボスの顔面を蹴り付け
野盗ボスは失神、無力化された
隊員D「…よし!ああ…隊員Cじゃねぇけど、クソだったなマジで…!」
隊員Dは野盗ボスを拘束し、周囲の安全を確認
そして愚痴を吐き出した
支援A「へーい隊員D!やばかったようだが、無事でよかったぜぇ!」
隊員D「よかったじゃ無ぇよボケナス…!お前、俺に気付かずに
突っ込んで来やがっただろ!?」
支援A「悪かったってぇ!この巨大ゴリラのせいで見えなかったんだぁ!」
隊員D「よく言う。お前と比べりゃ、こいつも絵本に出てくるかわいいのおさるだ…!」
支援A「うへひゃひゃひゃ!」
隊員C「隊員D!ここに居やがったか!」
その場に隊員Cが駆け寄ってきた
隊員C「おぉい、何してやがったんだ!?制圧はほとんど終わっちまったぞ!?
あぁ?なんだコイツ?」
隊員D「回り込む途中で襲って来やがったんだ。文句ならコイツに言え!」
隊員Dは疲労とイラつきの混じった表情で、
野盗ボスを顎でしゃくった
支援A「おねんね中だけどな!なぁ、見ろやこの巨大な斧!
コイツこんなん使ってやがるのか?」
支援Aは足元に転がっている、野盗ボスの大斧をつまみ上げる
隊員C「あー?こりゃ大層なモンだな!装飾まで入ってやがる!」
隊員D「ああ、コイツここの頭かもしれねぇな。士長を呼んでくれ」
戦闘により瓦礫だらけになった広場の中央に
指揮車が鎮座している
車上では82車長が、制圧支援のため周辺を見張っていた
82車長「…82操縦手、俺は少し車内に下りる。車上に上がって、軽機に着いてくれ」
82操縦手「了解」
82車長は見張りを交代すると、車内へと入り
後部ハッチから外へ出る
そこでは自衛が、森の外で待機中の後支連と連絡を行っていた
自衛「敵拠点の制圧はほぼ完了、現在は生き残りをとっ捕まえてる」
施設A『分かったジャンカー4。こちらも、そっちに応援に行ったほうがいいか?』
自衛「いんや、敵がまだ残ってるかもしれません。
ヤツ等を逃がさないよう、増援が来るまで
森の周辺の哨戒行動を頼みます。」
施設A『了解した、デリック4交信終了』
通信を終えた自衛に、82車長が話しかける
82車長「自衛、もう一帯は大丈夫みたいだ。抵抗してくるヤツも見られない」
自衛「だろうな。連中はあの有様だ」
自衛は少し先を示す
特隊A「ほら、武器を捨てろ。腹這いになれ、手は頭の上だ!」
生き残っていた野盗たちは、武装解除の上で拘束されていた
野盗集団O「う、嘘だろ…」
「うぁぁ…」
最も野盗たちは、拘束される前から呆けて立ち尽くしたり、
腰を抜かして座り込んだりと
戦闘のできる状態ではなかった
特隊A「そうだじっとしてろ。そこのお前違う!手は頭の上っつったろ!」
野盗集団O「ひぃぃ…」
「うう…」
特隊B「手間をかけさせんな」
それを眺めていた所へ、別の通信が入る
隊員C『ジャンカー4ヘッド、自衛聞こえるか?ジャンカー4-2だ』
自衛「隊員Cか、どうなった?こっちは片付いたぞ」
隊員C『こっちも静かになったぜ。それとよ、隊員Dが
ここの頭っぽい野郎を捕まえたんだが、どうするよ?」
自衛「分かったよくやった。そいつをこっちに引っ張って来い。
ここで何してやがったのかを全部吐かせるんだ」
隊員C『あー…この無駄にでけぇのを引きずってくのは
骨が折れそうだ…支援A、お前が運べよ』
支援A『ハッハァ!隊員Cは箸より重たいモンは持ち上げらんねぇもんな!』
隊員C『ああ、お前と違って繊細なモンでな!』
自衛「無駄話してんな馬鹿共。とっ捕まえた連中はこっちでを監視する。
支援A以外は、他に隠れてるヤツがいないか片っ端から漁れ、
いいな?」
隊員C『へいへい分−ったよ!4-2交信終了!』
隊員Dは、生き残り隠れている野盗がいないか
広場内の掘っ立て小屋や馬車を、片っ端から漁っていた
隊員D「こんなもん作る気力があるなら、他の方向に努力しろや」
呆れつつ、まだチェックしていない
最後の掘っ立て小屋を調べにかかる
扉に手をかけ、ショットガンを構え中へと入った
隊員D「…ここもスッカラカンか、もう居ねぇようだな」
殺風景な内部を軽く見回しつつ、掘っ立て小屋を出ようした
ゴソッ…
隊員D「…あ?」
だがその前に、小屋の隅で微かに何かが動くのに気付く
よくよく見れば、そこに誰かがうずくまっているのが確認できた
隊員D「ッ!まだ居やが…ん?」
一瞬、野盗かと思いショットガンを構えた隊員Dだったが
どうにも様子がおかしい事に気が付く
その人物は隊員Dに攻撃してくるでもなく、
なにやら呟いているようだった
隊員D「おい…どうした?」
隊員Dは警戒しつつ接近し、確認しようとする
隊員D「おい、聞こえて…ッ!!?」
次の瞬間、うずくまっている人物の状態を把握し
隊員Dは愕然とした
そこにいたのは、狼のような耳や尻尾、体毛を生やした少女だ
だが、今気にすべきはそういった所ではなかった
狼娘「…しょうにんC…しょうにんC…」ギュッ
彼女の腕の中には、生首が抱かれていた
そして彼女はその生首に目を落とし、
首の主の物であろう名前を、ひたすらに口にし続けている
隊員C「おい隊員D。こっち側はいないぜ、こっちは…げ!?」
隊員Dを呼びに入ってきた隊員Cが、
事態を把握し驚愕の声を上げる
隊員C「おぉい…マジかよッ!?おい、大丈夫かッ!?」
隊員Cは狼娘を容態を確かめるべく近寄る
狼娘「ひ!?い…いや…やだッ!」
だが、隊員Cに気付いた狼娘は、悲鳴を上げながら後ずさった
隊員C「落ち着け、危害を加えるモンじゃ…!」
狼娘「やだ!たすけて!たすけて商人C…!」
隊員Cの声は耳に入っていないのか、
狼娘は商人Cの生首を強く抱き、怯えた声で必死に叫ぶ
隊員C「ッ!ああ糞、錯乱してやがる…!
おぉい!誰か手ぇ貸せ!」
隊員Cは大声で叫びながら、小屋の外へと駆け出して行く
狼娘「いたいのイヤだよ…商人C、たすけて…!」
狼娘は生首を抱きしめ、助けを求めながらガタガタと震え続ける
隊員D「……ッ!」ダッ
隊員C「誰でもいい!とっとと…でっ!?」
隊員Dは扉の近くに居た隊員Cを突き飛ばし、掘っ立て小屋から駆け出す
向うのは野盗たちを拘束してある方向だ
隊員C「お、おい!隊員D!?」
野盗P「ひ、ひぃ…!」
野盗Q「ちくしょう…なんなんだよ…」
野盗たちは、広場の隅にある
掘っ立て小屋の壁に並べられていた
特隊B「無駄に動くな。手は頭の上だ、おとなしく…でっ!?」
野盗たちを監視していた特隊Bだったが、
突如誰かに突き飛ばされる
特隊B「っ!なんだ…隊員D?」
隊員D「…」
突き飛ばしたのは隊員Dだ
彼は気絶した状態で拘束されている
野盗ボスの前に立つ
グッ!
バシッ!ビシッ!
野盗ボス「がへッ!?」
そして野盗ボスの髪を掴み上げると、
顔にビンタを叩き込んだ
野盗ボス「うが…ッ!?な…?」
顔の痛みに目を覚ます野盗ボス
野盗P「お、お頭ぁ…!」
野盗ボス「…な!?…そうだ、思い出したぞ…!」
朦朧としていた野盗ボスだが
野盗の声と周囲の状況を見て、何があったかを思い出したようだ
野盗ボス「クソッ!てめえらただじゃおかねぇぞ!
分かってんのか、この俺様に…ッ!」
ゴスッ!
野盗ボス「!!?…ゲブッ…!?」
言い切る前に、野盗ボスの腹部に鈍痛が走った
隊員Dの膝が、野盗ボスの腹部に叩き込まれたのだ
野盗ボス「ゲホッ!?ゴホッ!」
特隊B「お、おい!隊員Dよせ…べっ!?」
特隊Bが止めに入ったが、隊員Dはそれを振り払う
野盗ボス「ぎ、こ、この野郎ォ!ふざけ…ッ!」
ドガ!
野盗ボス「ギュヒッ!?」
隊員Dは野盗ボスの言葉など聞く気は無く
今度は顔面に膝を叩き込んだ
グチャ!
野盗ボス「ごけぇッ!?」
野盗ボスの頭を掴み直し、
潰れた鼻の頭に二発目を叩き込む
野盗ボス「てへぇ…殺ひてや…」
鼻の他、歯もいくつか折れ、
野盗ボスはまともにしゃべれなくなる
隊員D「この糞が…」
隊員Dの目は、すでに野盗ボスを人として見ていなかった
隊員D「…こいつだ」ガッ
隊員Dは小屋の端に転がっている木材を拾った
それなりの堅さのある木だが、
戦闘の影響か先端が抉れて鋭くなっている
野盗ボス「ひげ…べッ!?」ドガッ
隊員Dは野盗ボスの顔面を蹴り、小屋の壁に叩きつける
そして木片を構え、振り下ろすべく軌道を確かめる
野盗ボス「は…?ひぃ!?おまへ…!?」
その軌道に、野盗ボスも気がついたようだ
粋がっていたその顔が、青く染まって行く
野盗ボス「よへ…!や、やべ…ッ!」
必死に懇願する野盗ボス
だが、隊員Dは冷たい表情のまま木片を振り下ろした
野盗ボス「うびぎゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!?」
自衛「あぁ?」
奇妙な叫び声に、広場の周辺を漁っていた自衛達が
怪訝な顔をする
支援A「なんだぁ?お湯でも沸いたのかぁ?」
自衛「広場だ、戻ってみようぜ」
隊員D「…」
野盗ボス「あぁ…あ…」
野郎ボスの下腹部から股間にかけて、木片が深く突き刺ささり
血がボタボタと倒れている
ガッ!
野盗ボス「あびゃぁッ!?」
隊員Dは野盗ボスに突き刺さる木片に足を掛け、力を込める
ブチィッ! グジュァッ!
野盗ボス「ひげへぇぇッ!!?」
木片が野盗ボスの股間部を抉り、
膀胱などの内臓がビチャッと地面に落ちた
野盗P「ひぃ!?ひ…あ…」
野盗Q「おぷ…うげぇぇぇぇ!」
それを目の当たりにした野盗の一人が、
耐え切れずに嘔吐する
隊員D「勝手に吐くな」
ドゴッ!
野盗Q「ぶげ!?」ビチャッ
隊員Dは嘔吐した野盗を張り倒し
野盗は吐瀉物に顔面を埋めた
隊員D「今度はお前だ」
隊員Dはさらに野盗に手を加えようと手を伸ばす
82車長「隊員D!馬鹿止めねぇかッ!!」
だがその前に、その場に駆けつけた82車長が
隊員Dを止めにかかった
82車長「何してんだ!?正気かお前は!?」
隊員D「まだだ…!」
だが隊員Dは、次の野党に制裁を下すべく
制止を振り切りろうとする
特隊B「だから止まれって!冷静になれ!」
突き飛ばされた特隊Bも起き上がり、
隊員Dを押さえにかかる
82車長「止めるんだ隊員D一士!これは隊員のしていい事じゃないッ!」
支援A「オーゥ…!こりゃきっついな!」
82車長達が隊員Dを必死に止めている所へ、
自衛達が到着する
自衛「おい、何があった?」
82車長「俺にも分からん…おい隊員D、一体どうした!?」
隊員D「こいつ…!ゴミ野郎がッ!」
隊員Dに理由を尋ねるも、彼は野盗に掴み掛からんと暴れ続けている
隊員C「おい隊員D!ッ!おいおい…!?」
少し遅れてその場に駆けつけた隊員Cが、
状況を見て悪態を吐く
隊員C「やな予感的中かよ!吐きそうだぜ…こりゃ!」
自衛「隊員C、一体何があった?」
隊員C「掘っ立て小屋ん中で、ひどい衰弱状態の女を見つけたんだ!
ここのヤツらがやったんだろう。
おまけにツレっぽいヤツの生首抱いてやがった…!」
82車長「ッ!なんだと…!?」
隊員C「それを見た隊員Dが、飛び出して行ってよ…!
で、隊員D先生によるアートが完成してるわけだが…」
隊員Cはえげつ無いといった顔で、野盗ボスを示す
隊員D「この糞共に…!こいつらにはあれ以上の苦痛をだッ!」
自衛「隊員D、一度落ち着け」
自衛は隊員Dに向い、言い聞かせるように話し出す
自衛「こんなゲボ糞共に、貴重な精神を磨り減らす必要も無ぇ。
それより、要救護対象の救護が先だ。優先順位を忘れるな」
隊員D「ッ……了解……」
自衛「野営地に無線を入れろ。衛生隊を寄越してもらえ」
隊員C「連絡ならとっくにしてある。増援に衛隊Bが同行してるってよ。
一時間以内に到着だ、救急車も後発で来る」
自衛「よぉし、よくやった。隊員C、お前は救護を続けろ。
増援到着までにできる限りのことをするんだ」
隊員C「了解だ」
自衛「隊員D、お前も隊員Cを手伝え。少し気を落ち着けろ」
隊員D「…了解」
隊員C「隊員D、行くぜ。お前はシキツウから衛生キットを持ってこい」
隊員D「ああ…分かった…」
82車長「おい、そいつはどうなった?」
82車長は野盗ボスに視線を移す
野盗ボス「………」
野盗ボスは口から泡を吹き出し、足元には臓器のまじった血溜りができている
支援Aが軽く野盗ボスの体を突くと、野盗ボスの体は血溜りに倒れこんだ
支援A「あれまぁ…お陀仏だぜ」
82車長「ッ…おいおい…」
82車長は装甲車帽を脱ぎ、頭をボリボリと掻き毟った
自衛「くたばった野郎に、いつまでも構ってるこたぁねぇ。他にやることは腐るほどあるぞ」
82車長「ああ、分かってる…とりあえず死体の埋葬だ」
自衛「こいつらにやらせりゃ良い。特隊A、支援A、特隊B、
こいつらを適当な場所に連れてって、穴を掘らせるんだ。
ただし使わせる道具は最低限の物だけだ、こいつら同士の会話もさせるな」
特隊A「オーケー、分かった。よしお前ら立て!」ジャキ
野盗P「ひ…!」
野盗Q「あああ…」
野盗たちに銃を突きつけ、広場の端へと連行する
支援A「野郎共、働いてもらうぜ!さっさと動けって!」
野盗集団O「ひぃ…」
「わ、わかったから助けて…」
82車長「やれやれ…こっちを頼む。俺はもう一度通信してくる」
自衛「分かった、行って来い」
野盗の連行を見送った82車長は、指揮車へと駆けていった
特隊B「…士長、ちょっと」
自衛「あぁ?」
それと入れ替わりに、特隊Bが駆け足で戻ってきた
自衛「どうした、特隊B?あいつらの連行は?」
特隊B「すぐに戻ります。ですがその前に、隊員D一士の件でお話が…。
ラハイナ条約上では確かに、彼等は犯罪者として処罰可能です。
ですが犯罪者の現場処罰には、士官か陸戦裁判資格所有者の許可が必要なんです。
処罰も、過失に見合った適切な物で無ければなりません。
先程の隊員D一士の行動は、それらに反しています…!」
自衛「そんなこたぁ知ってる、だが後だ。今は人手が一人でも多く居る」
特隊B「そりゃ、そうですが…」
自衛「隊員Dについては増援が来てから考える。
それより、こいつらがキビキビ働くよう見張ってろ」
特隊B「あー…了解」
数十分後
増援の装甲戦闘車とトラックが到着
指揮車の倍近くの重量のある装甲戦闘車は、
木々を容易に薙ぎ倒し、広場へその姿を現した
FV車長が車長用キューポラから姿を現す
FV車長「呼び寄せられたと思ったら、終わってるとはな…!状況は?」
自衛「今は残党狩り中です。それより衛隊Bは?」
FV車長「一緒だ、兵員室に乗ってる」
衛隊B「よっと」
装甲戦闘車の後部扉が開き、衛隊Bが降車して来た
衛隊B「無線で大体のことは聞きました。救護対象者は?」
自衛「あっちだ、82車長に案内してもらえ」
自衛が指し示した方から、82車長が駆け寄ってくる
82車長「衛隊B!」
衛隊B「救護対象の容態は?」
82車長「ひどい精神状態で誰も近寄せなくてな…。
容態を確認するどころか、発見場所からの移動すらできてない」
衛隊B「了解、とにかく案内して下さい」
82車長「こっちだ」
掘っ立て小屋の中へと入る衛隊B
狼娘「…ひぃ…いや…!」
入ってきた82車長達の姿に、狼娘は怯えながら後ずさる
衛隊B「彼女ですね」
82車長「ああ、ずっとあの状態で下手に近づけん。
見えるか?生首をずっと抱いてる、たぶんあの娘の仲間の物だ…」
衛隊B「わかりました、私がやります」
衛生器具の入った鞄を手に、衛隊Bは狼娘へと近づく
狼娘「ひ…いや…!」
衛隊B「大丈夫、安心して」
狼娘「あ…やだ…いや…!」
安心させようと言葉をかけるも、
狼娘は生首を抱えて必死に逃げようとしている
衛隊B「大丈夫」
狼娘「やだ!痛いことしないで…!やだよ、商人C!」
拒絶の言葉を口にし続ける狼娘
だが、衛隊Bはかまわず狼娘に近づく
狼娘「や!ひ…?」
そして彼女が抱える生首ごと、狼娘を抱き寄せた
衛隊B「大丈夫…」
狼娘「え…あ…」
突然の事態に狼娘は微かに抵抗を見せたが、やがておとなしくなる
衛隊B「…」スッ
それを見計らって衛隊Bは、狼娘に見えないように注射器を取り出す
そしてそれを狼娘の腕に注射した
狼娘「ひ!?」
突然の腕の痛みに動揺を見せる狼娘
狼娘「…あ…」
だが、すぐに衛隊Bの腕の中で気を失った
衛隊Bは気を失った狼娘を毛布でくるみ、用意されていた担架に乗せる
衛隊B「…オーケーです!搬送願います!」
狼娘は他の隊員により、すみやかに掘っ立て小屋から運び出されていった
衛隊B「後は…こっち」
衛隊Bはすばやい手つきで、狼娘の手を離れた生首を袋へと収納
そして衛生器具を消毒し、片付けた
82車長「衛隊B、ご苦労だった。よくやってくれた」
衛隊B「いえ、まだやることは山積みです。衛生一士に指示を仰ぎ、
救護対象の治療に当たります」
82車長「だな。分かった、その遺体はこっちで引き受ける。
後発部隊もあと少しでが到着する、頼むぞ」
衛隊B「分かりました、お願いします」
衛隊Bは衛生器具を手に、掘っ立て小屋を後にした
82車長「よし、遺体は安置所へ持っていけ。小屋内の物品をすべて押収後、
このクソッタレな小屋を撤去するぞ!かかれ!」
増援到着から数時間が経過
森周辺は自衛隊の制圧下となった
野盗たちの住処の各構造物が撤去されていく中、
指揮車の近くで各曹が集まり、話をしている
施設A「潜伏していたのはおおよそ70名前後。
11名を拘束し、内一名が死亡。
残り10名には監視の下、死体の埋葬をやらせてます」
82車長「なぁ、死体には連中とは毛色の違うもあったみたいだがよ」
施設A「ああ、行商人って言うのか…?
とにかく、民間人らしき遺体を6体発見、内一つは首が無かった。
保護した娘が抱いてた首がそれだろう」
FV車長「気分の悪ぃ話だ…」
FV車長の表情が苦いものになる
施設A「各員が色々調べてますが…
早いトコ状況を、こっちの世界の公的機関に引き渡したほうがいいでしょう。
我々だけでは対処に限界があります」
FV車長「だな…」
82車長「明日の朝一から行程を再開し、俺等が目標の街まで行って来ます。
でかい街らしいですし、警察機構くらいあるでしょう」
FV車長「だといいが、何にせよその辺は明日だな。
まず、この辺一体を片付けちまわないと」
施設A「日が落ちる前には片付くでしょう。じゃあ、俺は作業に戻ります」
FV車長「ああ、頼む」
施設Aはバインダーを片手に、作業へと戻っていった
FV車長「…じゃあ、こっちはキナ臭い仕事の準備にかかるか」
指揮車の隣には、後発で到着した救急車が停車している
狼娘は衛隊Bによる処置の後、
救急車へと収容されていた
衛隊B「打撲、並びに擦過傷の処置は終わりました」
衛生『内臓破裂は起こして無いな?』
衛隊Bは救急車内でカルテを記入しながら、
車内無線で野営地にいる衛生と話している
衛隊B「調べましたが、大丈夫です。
後は、軽度の脱水症状を起こしてますが、
点滴により回復しつつあります」
衛生『オーケー。診断上、命に別状は無しだな。
だが油断するな。人間と同じ処置が必ずしも有効とは限らん』
衛隊B「分かってます。しっかし、ホントびっくりですよ」
衛隊Bは狼娘の頭に生える狼耳を、ちょいちょいと突く
衛生B「本当に耳と尻尾が生えてるとは…」
衛生『ああ、まぁこんな世界だ。そういう人種だっているんだろ』
衛隊B「なーんか投げやりですね…?」
衛生『飛ばされて来てから、ウンザリするほど色々と見たからな。
ともかく、容態の変化には十分注意しろ』
衛隊B「分かりました。あ、それとー…」
衛生「分かってる、精神状態だろ?患者が目覚めてみないと分からないが、
状態次第では、カウンセリングが必要かもしれん」
衛隊B「心配だなー…衛生さん、こっちに来てもらう事ってできませんかぁ?」
衛生「しっかりしろ。各所に一人は衛生隊員が居ないとならんから、
俺はここを離れられん」
衛隊B「うぅー」
衛生「あ、ちょい待ち。そういや後発で付いて行った娘がいるだろ?
彼女がどうにかしてくれるとか言ってが」
衛隊B「はい?」
掘っ立て小屋などの撤去が進む一方で、
隊員C達は押収した物品を調べながら積載してゆく
支援A「なーんでこんなチマチマしたことやるんだ?」
隊員C「盗品だから数量を明確に把握して、こっちのお役人に引き渡すんだと」
面倒臭そうに、バインダーをヒラヒラさせる隊員C
隊員C「っつーか、お前はさっきから何してんだよ?」
隊員Cはイラつきながら、脇にいる鍛冶妹を覗き込んだ
女性の協力要員が必要という事で、後発に同行してきた彼女だったが
今現在は広場の端で、地面になにやら描いていた
鍛冶妹「魔方陣描いてんの。邪魔しないよーに」
鍛冶妹はできる限り丁寧に、地面に直径2mほどの円を描いて行く
さらにその円の外枠にもう一つ円を描き、
内側の円と外側の円の間に、奇怪な文字を描き込んでいく
隊員C「その不可思議なお絵かきに、一体何の意味があるってんだ?」
鍛冶妹「昨日森で話したでしょ?遠くに転移するには魔方陣が必要だって」
隊員C「いちいち覚えてるかよ」
鍛冶妹「必要なの。で、あたしの家にも魔方陣が敷いてある、
ここまで言えばわかる?」
支援A「つまり昨日川でやったみてぇに、こっからあんたの家まで
ぶっ飛んで行けるってことかぁ?」
鍛冶妹「そういう事」
隊員C「ああそりゃとんでもなく便利だなぁ!だったらそいつを、
事前に設置しまくっときゃ良かったんじゃねぇのかよ?」
嫌味ったらしく言う隊員C
鍛冶妹「うっさいなぁ…いろいろ制約があるの。
魔方陣その物にも魔力を吸われるから、設置数にも限度があるし」
隊員C「ああそうかい。で、お前の限度はどんくらいだってんだ?」
鍛冶妹「あたしの魔力じゃ5つが限度かなー?
それに、魔方陣が少しでも滲んだり書き換えられたりすると
無効になっちゃうから、
管理できる所じゃないと魔方陣は張れないし」
隊員C「んだよ、中途半端な能力しやがって」
鍛冶妹「悪かったわね」
隊員D「おい、いつまで話してんだ…仕事しろ仕事」
隊員C「ああ、分ーった分ーった!」
隊員Dの注意を受け、隊員C達は作業へ戻る
隊員C「つーか、お前こそいつまでブルーな顔してる気だ?」
隊員D「うっせぇ…」
隊員C「ったく。えー、こりゃ穀物の袋かぁ…ん?」
記録を再開しようとした隊員Cだったが
ふと、彼の目が何かに留まった
隊員C「なんだこりゃ…?」
目に入ったのは、脇に置かれた押収物の一つである小箱だ
それらはどれも、この近辺で使われているヘイゼル硬貨ではない
おそらく野盗たちが襲ったキャラバンなどから奪い、集めていたのだろう
隊員Cは小箱を手に取り、中身を凝視する
隊員D「おぉい、隊員C…!」
またしても作業を中断すた隊員Cに、
隊員Dは注意しようと声をかける
隊員C「おい…誰か小銭落としたか?」
隊員D「はぁ?」
だが、帰ってきたのは要領を得ない質問だった
支援A「おーい、なんだってんだぁ?」
鍛冶妹「どしたの?」
隊員C等の様子に気付き、支援Aや鍛冶妹も集まってくる
隊員C「こいつを見ろ」
隊員Cは集まってきた彼等に、小箱の中身を見せた
支援A「あ?」
隊員D「…おい、これって…」
鍛冶妹「んー?何コレ、他の大陸の硬貨…?」
小箱を覗き込んだ後、
鍛冶妹を除く、隊員D達の顔が怪訝な物になった
隊員C「誰かのイタズラってわけじゃねぇよなぁ…」
自衛「お前等、サボって何してんだ」
隊員Cたちが顔を見合わせていた所に、
自衛が現れる
隊員C「自衛、こいつを見ろ」
自衛「あぁ?」
隊員Cが小箱から一枚の小銭をつかみ出す
それは日本の通貨である100円硬貨だった
自衛「小銭がどうしたってんだ?」
隊員C「ここにあったんだよ!連中から押収したブツの中に混じってやがった!」
自衛「…何だと?」
隊員Cが100円硬貨を投げて寄越し、
それを確認する自衛
自衛「俺等の中の誰かが落としたか?」
隊員C「それは考えにくいぜ。見ろよ、ヤツ等珍しい硬貨を集めてたみてぇだ」
他の硬貨の入った小箱を見せる隊員C
支援A「どうなってんだぁ?」
自衛「分からんが…こいつは愉快な展開じゃねぇか。
FV車長が連中の尋問を開始した所だ。
元持ち主に直に、聞いてみるとしようぜ」
広場の一箇所に、業務用テントが一つ設置してある
中には押収した大小の箱が運び込まれ、テーブル代わりとして置いてあった
FV車長「(憲警科※まがいの事をしなきゃならんとは)」
入り口側に座っているFV車長は、そんな事を思いつつ視線を前に向ける
対面する奥側には、野盗の一人が座らせられていた
両脇には監視の隊員が立っている
FV車長「今からいくつか質問をする。全て正直に答えるように」
野盗P「う、うう…」
野盗はなかなかの大男だが、その顔は恐怖に歪んでいた
FV車長「まずお前達はどういう組織で、何の目的でここに居座っていた?」
野盗P「も、目的も何も…お、俺達はあっちこっち根城を変えながら食いつないでんだ…。
ここも都合がいいから居座ってただけだ…」
FV車長「旅人を襲うのにか?」
FV車長は野盗を睨みつけ、静かに問う
野盗P「ひ…そ、そうだ…」
FV車長「それで、襲った人達はどうした?」
野盗「ほ、ほとんどは殺しちまうよ…たまに適当な働かせたり、
女とかは売りに行ったりするけど…ぎゃッ!」ドガッ
言い終える前に、脇に居た特隊Aが銃床を野盗に叩き付ける
特隊A「平然と言いやがってよ、ゴミカス」
FV車長「落ち着け特隊A。で、売りに行くと言ったな?
具体的にどこにだ?」
野盗「いぎ…ぼ、ボスはくれないの国とか…紅の国のどっかだとか言ってた…!」
FV車長「紅の国?」
特隊A「確かこの国の東の隣国です。で、その紅の国のどこの誰にだ?
どんな組織に売り飛ばしたって!?」
野盗「そ、そこまではしらねぇんだよぉ…!ホントだぁ!
お頭は国のお偉いさんと繋がりがあったらしいが…
ホントそれ以上はしらねぇッ!」
恐怖から逃れようと、野盗の男は必死に言う
FV車長「…嘘は言っていないようだな」
※憲警科 彼等の世界の自衛隊における憲兵、警務科の呼称
野盗P「ほんとにしらねぇんだよぉ…」
FV車長「やれやれ…こいつはいい、連れてけ」
特隊A「行くぞ、立て!」
野盗はテントから連れ出さる
数刻置いて、別の野党が連れて来られた
野盗Q「くそ、畜生!なんなんだお前等は!」
武器C「黙ってろ、座れ」
野盗Q「ぎ!」
入れ替わりに入ってきた野盗が、椅子代わりの木箱に座らせられる
FV車長「我々の質問にだけ答えてもらう。余計なことはしゃべるな」
野盗に言い、尋問を開始しようとする
バサッ
自衛「ちょいと失礼」
そかしその時、テント内に自衛が押し入って来た
テントの外からは、隊員C達が内部を覗き込んでいる
FV車長「自衛陸士長?どうした?」
自衛「ちょっとこいつに聞きたい事が」
FV車長「聞きたい事?何かあったか?」
自衛「見てもらった方が早いでしょう、いいですか?」
FV車長「?…いいだろう」
自衛「よぉし」
ガッ
野盗Q「ひッ…ぎひ!?」
自衛は野盗の首根っこを掴み、顔を机代わりの木箱に押し付ける
そして野党の目の前に、先程の100円硬貨を置いた
自衛「おい、こいつをどこで手に入れた?」
野盗Q「ひぃ…?な、なんだぁ…?」
FV車長「それは…100円玉?どういうことだ?」
自衛「こいつらから押収したブツの中にあったらしいです。隊員Cが見つけました」
FV車長「何…!?」
野盗は事態が飲み込めず、恐怖の混じりの困惑の表情を浮かべていたが、
一方のFV車長達の顔には驚きが浮かんだ
自衛「おい、こいつはお前等がパクった物だな。どこで見つけた?」
野盗Q「し、しらねぇよ…そんなのいちいち覚えて…」
ダンッ!
野盗Q「ひぃぃッ!?」
自衛は野盗の顔ギリギリに、鉈を振り下ろした
自衛「思い出せ」
野盗Q「ひ…ひ…!そ、そうだ…!仲間の一人が話してた!
お、狼の女連れてた商人が、妙な硬貨を持ってたって!」
FV車長「狼の女?保護した娘かのことか?」
野盗Q「たぶんそれだ!た、助けて…!」
自衛「思い出せるじゃねぇか」
自衛は野盗の首を掴み、乱暴に起こし上げる
野盗Q「ひ!?げへぇッ!」ゴシャッ
勢いが付き過ぎ、野盗は椅子代わりの箱ごと倒れ、地面に叩き付けられた
FV車長「そいつは連れて行け」
特隊A「了解。おい、立て」
特隊A等が野盗を立たせ、テントから連れ出した
FV車長「しかし…どういうことだ?」
自衛「元の持ち主はあのねーちゃん達らしい。気がついたら聞いてみましょう。
それまでは他の野郎の尋問を」
FV車長「それしかないか」
空がオレンジ色に染まりだした頃に、粗方の作業は終了
野盗ボスを含む、集めた死体も全て埋め終わった
野盗集団O「ひぃぃ…」
「うぁ、くそぉ…」
野盗P「…た、頼む、助けてくれ…」
野盗Q「くそ…ひぃ…」
広場から少し離れた森の中で、拘束した野盗たちが並べられていた
野盗たちの足元には、縦長の穴が掘られている
野盗たちがその手で掘った物だ
そのはずれでは、監視要員以外の隊員が
机代わりの大箱を囲い、何かを話し合っていた
82車長「執行にあたり、俺が指揮を執る。いいな?」
支援A「うぇー」
隊員C「へいへい」
机代わりの木箱の上には、5.56mm弾が数発用意されている
現在、野盗たちの銃殺を執行するべく、打ち合わせを行っていた
特隊A「なぁ、やっぱ勿体無くねぇか?
そりゃ弾薬はまだ大量にあるけどよ」
隊員C「刃物じゃいけねぇのか?条約にその辺の規定はないはずだろ?」
隊員C等は5.56mm弾をコツコツと叩きながら愚痴る
82車長「戦地での執行は、現場指揮官と資格所有者の判断次第だ。
FV車長等は規定に基づき、銃殺の指示を下した」
自衛「とにかく一発で仕留めろ、無駄弾を使うな」
隊員C「銃殺自体が無駄弾だと思うがね…?だいたいこんなにキッチリやる
必要だってねぇはずだろ?特隊B、お前が許可だけ出しゃいい話だ」
特隊B「ああ、まぁそうなんだが…」
82車長「静かにしろ隊員C。俺達は状況が許す以上、可能な限り
国防法と人道に則り行動する」
支援A「あー、条約にしろ何にしろ、今さらな気もするぜぇ」
隊員C「こんな状況で人道もクソもあってたまるかよ、笑わせんな」
自衛「ごちゃごちゃ吐くんじゃねぇ、大事なのは連中を永久に黙らせる事だ。
とっとと弾いちまうぞ」
82車長「開始する前に、一応聞く。辞退したヤツは…?」
隊員C「そういう事はまず、ドンパチ始める前に聞けってんだ…!」
自衛「異議なしだな?全員準備しろ」
各員は弾倉に弾薬を必要数だけ込め、小銃に装填
射撃位置へと移動する
82車長「監視隊員、安全位置まで離れろ」
野盗たちを見張っていた隊員が、安全のため距離を離す
82車長「特隊B、開始しろ」
特隊B「了解。んん…これより戦争犯罪者に対する戦地簡易裁判を開始。
被告人10名等は戦争目的以外の殺人、窃盗等計四項に違反。
戦場における一級犯罪者とみなし、死刑に処す。
閉廷!」
82車長「引き続き、82車長三等陸曹が執行の指揮を執る。各員は用意せよ」
自衛「しくじるなよ」
自衛達は小銃の安全装置を解除し、射撃の準備を整える
82車長「構え!」
ジャキ!
82車長の号令で、隊員達が一斉に小銃を構える
照準のために数秒置いてから、82車長は言い放った
82車長「撃ェッ!!」
ドドドゥッ!!!ドドゥッ!!
一斉射撃の音が森に響いた
ブシュッゥ!
ドサドサドサッ…!
銃声とほぼ同時に、野盗たち全員が血を噴出
そして綺麗に倒れ、足元の穴へと落ちていった
82車長「………」
監視隊員が穴に近づき、死亡確認するのを見守る
数刻置いてから、監視隊員は死亡確認の合図を示した
82車長「執行を終了する。解散!」
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