姉「勇者になりたい」妹「えっ」 (33)

とある小さな村


妹「いきなり何言ってんの」

姉「だってさ!かっこいいじゃん!剣と魔法で世界を救うんだよ!」

妹「いや知ってるけど。そんなこと急に言い出して何に影響されたの」

姉「さっき来てたお客さん勇者だったでしょ?」

妹「そうみたいだね。ポーション買っていったよ」

姉「ヒューッ!かっこいい!きっとモンスターとの戦闘で使うんだね!」

姉「私ってば作るばっかりで滅多に使う機会無いもん回復ポーションなんて!」

妹「確かにこんな小さい村で細々商売してる私達は戦いとは無縁だね」

姉「そう!だからこんな場所でずっとのんびりしてたら平和ボケしちゃうよ!」

姉「私と一緒に大いなる冒険の世界へ旅立とう!!」

妹「そう。そんなお姉ちゃんにぴったりのものがあるんだけど」

姉「え、何!?伝説の剣!?黄金の盾!?富!?名声!?」

妹「はいこれ」

姉「? 『ゆうしゃのでんせつ』……?」

姉「って子供向けの絵本じゃん!!馬鹿にしてんの!?」

妹「それで満足しなさい」

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姉「こんな昔の大勇者伝説なんて誰でも知ってるよ!私は今を輝く勇者になりたいの!」

妹「そういう問題?」

姉「そう、世界に光を与える偉大なる勇者……」

姉「平和を愛する民達の期待を一身に背負い、邪悪なる魔物との戦いに打ち勝ち、世を混沌で支配する魔王を見事討伐……」

姉「人々から称えられ、伝説に名を刻み、人気者になってお金も入って毎日ウハウハに……」

妹「ふーん。じゃあご近所の邪魔にならないように遊んできてね。あんまり遠く行っちゃだめだよ」

妹「じゃあ私は仕事に戻るから」

姉「待てーッ!!子ども扱いするなーーッッ!!」ドカァッ

妹「へぶぅっ!?」

妹「私特性超激苦ポーション」

姉「うわあぁっ!?ごめんなさいごめんなさい飲ませないで無理矢理ッ!!」

妹「馬鹿によく効きます」

姉「げほっ!!げほぉっ!!苦い!!ヒイーッ!!」

妹「体当たりすることないじゃんか」

姉「ごほっ……だって話聞いてくれないから……」

妹「何?勇者になって伝説になりたいとか言う極めて無謀で現実性のない夢みたいな話?」

姉「辛辣ッ」

妹「だってそうじゃん」

姉「言ったなー!人間大いなる決意と血の滲む努力を重ねればなんだってできるんだ!勇者にだってなれるんだ!」

姉「そう……夢は叶う……!どりーむ かむ つぅるーぅ……」

妹「叶わない。諦めなさい」

姉「たった二言で全否定するな!!」

姉「ねーいーじゃんかー、なろーよーゆうしゃー。きっと楽しいよ?」

妹「えっ?私もなるの?」

姉「うん」

妹「いやいや。お姉ちゃんがどれだけ間抜け晒そうが関係ないけど私まで巻き込まないでよ」

姉「ひどっ!?それでも私と血の繋がった双子かーっ!?」

妹「同じ腹から産まれてきたはずなのにどうしてこう片方馬鹿になってしまったのか」

姉「え??自分をそう貶める事はないって妹ちゃん!!」

妹「あんたのこと言ってんだよ」

姉「とにかく一緒に勇者になって世界に名をはせよう!」

妹「残念だけど私はそこまで馬鹿になれないから。やりたいなら一人でやって」

姉「冷たい……なんて冷たいの妹ちゃんっ」

妹「そもそもなんで私もなる必要がある」

姉「え?一緒に行きたいじゃん!冒険!」

妹「だから一人でやりなって……」

姉「だめだよ!妹ちゃんと一緒じゃなきゃ!」

妹「なんで……」

姉「だって寂しいじゃん」

妹「そんな単純か」

姉「実は武器と防具も近所の装備屋さんに行って用意してあるんだ二人分」

妹「こういう時だけ謎の行動力……」

姉「ま、まあこんな村で手に入るものだからかなり安物だけど……ないよりましでしょ?はい」

妹「うーん、どれ位戻ってくるかな。未使用だからそこそこいけるよね」

姉「もう売りに出すこと考えないで!!」

妹「だってお金もったいない」

姉「もったいなくないよ!これから使うんだもん!」

妹「……はぁー……じゃあ言うけどね、お姉ちゃんちゃんと戦えるの?」

姉「戦える!」

姉「様になります!」

妹「いやいや」

姉「要するにレベルあげればいいんでしょ?らっくしょーよ!」

妹「現実を甘く見過ぎだ」

妹「モンスターとの戦闘は遊びじゃないんだよ?こっちの命を狙ってくるんだよ?」

姉「わかってらぁ!」

妹「魔法もろくに使えないくせに」

姉「それも今からおぼえるんですー」

妹「計画性が皆無で腹立たしい……」

姉「そ、そこまで言う?」

妹「じゃあポーションの材料用のスライムがいるからちょっと戦ってみてよ」

姉「よしきた!大勇者姉!その腕前をお見せしよう!」

妹「はいじゃあファイト」

王様スライム「」デーン

姉「でかっ!?」

王様スライム「」ベシィ

姉「うひゃあああぁぁぁっ!!」ドサッ

妹「はい負け」

姉「おかしいよ!!なんでそんなのが家にいるの!?」

妹「だからポーションの材料だってば」

姉「どれだけ量作る気なんですかね!?」

妹「いちいち仕入れるのめんどくさいんだよね。これならまとめてお得パックだったから」

姉「お、お得パックって……危険だよ!暴れられたらどうするの!」

妹「え?『ハウス!』って……」

姉「犬!?」

妹「この程度のモンスター倒せないようじゃ勇者なんてなれない」

姉「いやいくら何でも理不尽すぎ!!もっと序盤のモンスターにしてよ!」

妹「根性なしめ」

姉「うぐぐ……さっきからいいように罵られる……!」

姉「じゃあ魔法は!?私ってば才能バリバリだから簡単なやつなら今すぐ覚えられるかも!」

妹「何だその根拠もかけらもない自信は」

姉「ふっふーん♪この初心者向け戦闘魔法入門で早速妹ちゃんを出し抜いちゃうもんねーぇ」

姉「なになにまずせんとうまほうとはいっぱんまほうがくにおけるせんとうをぶんやとしたまほうのことでうんたらかんたら」

姉「よし覚えた!!!!!」

妹「速読」

姉「くらえ炎の魔法!!」

妹「……」

姉「……」

妹「……使えてないじゃん」

姉「あ、あれ、じゃあ氷の魔法!!」

妹「出てないね」

姉「か、雷の魔法!!」

妹「まあ当たり前だよね。お姉ちゃんみたいなヘッポコピーがそんな簡単に魔法を習得できるわけが……」

姉「ビンタの魔法!!!」ベシィ

妹「へぶっ」

妹「関節技の魔法」ギュウウゥゥ

姉「うああああぁぁっっ痛いやめてええギブギブゥゥ!!!」

妹「変な真似しないで」

姉「悔しくて……」

妹「とにかくこれでもうわかったでしょ?お姉ちゃんにはマジで勇者とか向いてないんだってば」

姉「そ、それでも……」

妹「それにとーさんとかーさんから受け継いだ大切なお店なんだからすっぽかすわけにもいかないじゃん」

姉「うーん……」

妹「そんな危険に身を晒す冒険なんかよりも、平和なここで静かに暮らしてるほうがよっぽど幸せだよ」ナデナデ

姉「……」

妹「そう思わない?」ナデナデ

姉「……なぜなでる」

妹「いやなんとなく」

姉「……」

妹「わかったらお店頑張ろうよ。一緒に」

姉「……」

妹「……」ナデナデ

姉「……うん」

妹「……ふー、全く一度言い出したら聞かないんだから」

姉「ん……えっと、ごめんね?ちょっと退屈だと思っただけなの。妹ちゃん」

妹「まあいいけど。割といつものことだし。でもあんまりお店の中で騒ぐ訳にいかないから今度から気をつけてね」

姉「じゃあえっと、ポーション作ってくるね……えへへ」

姉「」スタスタ

妹「……それにしても勇者なんて全く馬鹿げたこと言うよね」

妹「そんなものになったってなんにもいい事ないじゃん」

妹「……」

妹「今日お客さん少ないなー……」

妹「確かに退屈かも……」

妹「……」

妹「」チラッ

絵本「」

妹「……大勇者伝説かあ……」

妹「」ペラッ

絵本『むかしむかしの おはなしです。みながへいわに くらしているよに、とつじょまおうが あらわれ……』

妹「」ペラッ

絵本『「わたしがまおうを たおしてみせましょう」なのりをあげたのは ひとりのゆうかんな わかもの……』

妹「……どれくらい昔の話なんだろ」

妹「」ペラッ

絵本『ゆうしゃはまほうつかいを なかまにしました。まほうつかいは それはそれは うつくしいじょせいで……』

妹「……」

妹「」ペラッ

絵本『ゆうしゃはそうりょを なかまにしました。そうりょもこれまた うつくしいじょせいで……』

妹「……………」

絵本『ゆうしゃはせんしを なかまにしました。せんしもこれまた』

妹「……………………………」

絵本『つんでれけいと、おっとりけいと、ぼーいっしゅけいと、ゆうしゃはじょせいにかこまれはーれむじょうたいでたびを……』

妹「……………………………………………」

姉「ねー妹ちゃんちょっと材料が足りなくなっちゃったんだけどー」スタスタ

妹「……」

姉「あれ?妹ちゃんどしたの」

妹「勇者になろう」

姉「えっ」

姉「えええええっっ!?いきなり何言ってんの!?!?」

妹「さあ旅立とう夢と冒険の世界へ」

姉「ちょちょちょちょっとまって理解が追いつかないんだけど!!私の今の一往復の間に何が!?!?」

妹「お姉ちゃん、一度きりの人生夢は追いかけなきゃ損だよ。自分の夢に向かって突き進め」

姉「ついさっきあんなに否定してたのに!?」

妹「もう装備はそろってるんだ早速レベル上げに出発……」

姉「まままってよお店どうするの!!」

妹「休業」

姉「いったい何が妹ちゃんを変えてしまったの!?」

妹「いやなにもないよ別に可愛い女の子に囲まれて旅したいとか思ってないから」

姉「何!?」

妹「つんでれけい……おっとりけい……ぼーいっしゅけい……」ブツブツ

姉「ちょ、ちょっとぉーっ!!まってよ妹ちゃあぁぁーんっ!!」

期待

どこまで続くかわからないけどとりあえずここまで

期待


こうして ふたりは たびに でた


妹「うーん、勢いよく村を飛び出したはいいけど一体何から始めるべきか……」

姉「はあ、はあ……妹ちゃん早歩きすぎるよ……」

妹「よし、まずはその辺の雑魚を狩ってレベル上げかな」

姉「ほんとにお店空けちゃっていいのかなあ……」

妹「心配なら別についてこなくてもいいけど」

姉「うぬぅー妹ちゃんと一緒にいるもん!」

妹「まあお姉ちゃんが勇者になろうって言いだしたんだから責任もって私の盾になってもらうよ」

姉「盾!?」

妹「さてこの辺でモンスターが出現しそうなところは……」キョロキョロ

スライム「」ピョンッ

妹「あ、でた」

姉「待って妹ちゃん!ここが私が華麗にやっつけて見せましょう!」

妹「え、なに急に」

姉「さっき不甲斐ないところを見せたからね!私がしっかり戦えるってことを証明するのs」

スライム「」ベシィ

姉「ぐへふっ」

姉「残念……私の冒険はここで終わってしまった……」バタッ

妹「よっわ」

スライム「」ヘラヘラ

姉「くっそ!あいつ煽ってやがるな!あんなヘラヘラしやがって!」

妹「いや元からああいう顔なんだと思うけど」

姉「今度はこっちの番だ!くらえ!」ポコッ

スライム「いてえ」

姉「喋ったッ!?」

妹「そりゃスライムも痛い時は痛いって言うんじゃない」

姉「いや明らかに言葉を発するようなキャラクターだとは思えないんだけど!?」

妹「じゃあ聞き間違いかな」

姉「そ……そうだよね、あんな何匹もいるザコモンスターが喋れるわけが……」

スライム「よお嬢ちゃん達、見ない顔だな。新入りかい?」

姉「ダメだだいぶ流暢に喋るぞ!」

妹「突然変異種か何かかな」

スライム「失礼だな、俺は変異種でもなんでもねえ。正真正銘ただのスライムさ。序盤の」

姉「序盤からこんな濃いイベントやってられません!」

スライム「わかるぜ。あんたらもレベルを上げて勇者になりたいクチってえだろ?」

妹「まあそうだけど」

スライム「ヘッ。やっぱりな……全く人間ときたら序盤のモンスターといえば必ず俺達の事だと思っていやがる……」

姉「え、違うの?」

スライム「ヘイ、ベイビー、ここで一つ通りすがりのスライムの愚痴を聞いていかないか……きっと素敵な時間になるぜ」

妹「ノリがわかんないんだけど」

スライム「ここらへんは俺らみたいな低レベルのモンスターが多く生息する旅立ちの大地でな……」

スライム「お前さん達みたいな勇者を志すポッと出が多くやってくるのさ……」シュボッ

姉「タ、タバコ吸い始めた」

スライム「来る日も来る日も調子に乗った自称勇者に殴られ叩かれ踏まれ、経験値を狩りつくされる毎日……」

スライム「結局あいつらは俺達のことなんとも思っちゃいないのさ……俺にも自分の人生があるってのによ」プハァー…

妹「なにこのスライム哀愁がすごい」

スライム「俺の愛しい妻と子供はそんな人間達にレベル上げのため殺されちまった……」

妹「序盤ザコモンスターに似つかわしくない重い過去」

スライム「そうさ、俺は人間にすべてを奪われた……人生も、家族も、何もかも……」

スライム「いいのさ、どうせ俺はしがない序盤のザコモンスター……殺したきゃ殺せよ」

姉「こんなにスライムが倒しにくいのって初めて」

姉「ご、ごめんね?まさかスライムがそんなことまで考えれるなんて思ってなかったの。喋れるなんてびっくりだし」

スライム「そうかい……まあ他の連中はみんな自分の使命をまっとうしてザコモンスター役に徹してるからな……」

スライム「知らないのも無理ないだろう、俺たちに意思があることを……」

姉「えーっと……どうする?妹ちゃん?」

妹「うーん、でも経験値がないとレベルが上がらないし……困ったな」

スライム「そうだ嬢ちゃん達、折角俺の愚痴を聞いてくれたんだ、ついでにもう一つ頼まれてくんネエか?」

姉「えっ、なに?」

スライム「この先にまたいつものように人間に襲われてるスライムがいたんだ」

スライム「いつもなら見過ごすところだがそいつは見たところかなり若いスライムでな」

スライム「あんな若者の未来が奪われるのは俺としてもあまり気持ちいい話じゃねえんだ」

スライム「襲ってる人間は大したことなさそうなチビな盗賊だったぜ。どうにか助けてやってくんねえか」

妹「そうは言っても……私達だってまだレベル1だし」

スライム「もちろんタダとは言わねえ。成功した暁には俺の経験値をやろう」

妹「な、なんかリスクとリターンが釣り合ってない気がするんだけど……」

姉「だってさ妹ちゃん!助けになってあげようよ!」

妹「うーん……まあいいか……で、その盗賊はどこにいるの」

スライム「そこの岩陰だ」

姉「近ッ!?」

盗賊娘「ウッシッシ!さあこのザコスライムめ!ワタシに倒されて経験値をよこせ!」

若スライム「」ブルブル

盗賊娘「ワタシはここでコツコツレベルを上げていつか世界に名を轟かせる大盗賊になる!!さあ死ねスライム!」

若スライム「」ブルブル

妹「うわぁ……いかにも小者ソーな変なヤツが……」

盗賊娘「はぁ!?なんだお前らは!!」

姉「誰も聞いてないのに自分の素性語ってるあたりが今からすぐに倒されますって感じ」

盗賊娘「なんだとぉッ!?」

盗賊「何なんだお前ら!なんで突然現れてワタシをディスってくるんだ!」

妹「ちょっとそこの哀愁漂うスライムに頼まれて」

スライム「いいのさ、どうせ俺はしがない序盤のザコモンスター……」

盗賊「スライムが喋った!?」

妹「あーもういいから。そのリアクションもう私達がしたから」

盗賊「なんでだよ!!ワタシだって驚かないと不自然だろ!!」

姉「そんなことより、ねえ、あの若スライムさんを助けてやって!スライムにはスライムの人生があるの!」

盗賊「ハア?いきなりなに言い出すんだお前は。スライムにそんなご大層なものあるわけ……」

スライム「スライムスぺシウムアタック!!」ギュン

盗賊「うぐほぅっ」ドシャッ

スライム「お前ッ!!二度とスライム達の生き様を馬鹿にするなッ!!」

盗賊「え、ええ……」

姉「ほら!スライム怒ってるよ!」

妹「なんでそんな急にキレだしたの」

盗賊「ス、スライムが人生観を持つくらいに知能があるのはわかった……だがワタシはレベルを上げなきゃならないんだ!」

妹「大盗賊になるって独り言言ってたもんね」

盗賊「独り言って言うな!!」

盗賊「とにかくワタシはお前らの指図なんか受けないぞ!こいつを倒してレベルアップするんだ!」

姉「ダメだよ!かわいそうだよ!やめてあげて!」

盗賊「フン、どうしてもやめさせたいならワタシを倒してみるこったな」

姉「わ、わかりやすい宣戦布告をうけたぞ」

妹「じゃあお姉ちゃん、がんばって」

姉「えっ私だけ!?」

妹「だってめんどくさそうだから」

盗賊「めんどくさそうとか言うな!!」

盗賊「くそうさっきから好き勝手言いやがって!コテンパンにしてやる!」

姉「ででで、できればお手柔らかにお願いシマス」

盗賊「フン、そいつは無理な頼みだな」

姉「うわっ!?よく見たら剣持ってる!?」

盗賊「これくらい当たり前だ。それ比べて何だお前のそのみすぼらしい棍棒は?全くどこの田舎者なんだ」

姉「お、お店で貯めたお金で頑張って買ったんです……」

盗賊「ロクな武器もないのか?話にならんな!ワタシのは一流のサーベルだぞ!」

盗賊「見よ!とある剣士から盗んできてやったんだ!」

盗賊「ウッシッシ!このサーベルが引き抜かれた瞬間、それがお前の最期だ!!」

姉「くそっ!一回きりでこの先出番のなさそうな小者のくせに!」

盗賊「やめろ!!!!」

盗賊「あったまきた!!今すぐ八つ裂きにしてやる!!喰らえ!!」

姉「うひゃああぁ!」

盗賊「んっ……!?」

姉「っ?」

盗賊「なっ、なんだっ??剣が抜けないっ……?」

姉「ど、どうしたの?」

盗賊「おかしい!固い、引き抜けない……」

盗賊「……」

姉「……」

盗賊「もしかして……錆びてる?まさか、これ、ロクに手入れされてない……??」

姉「……」

盗賊「……」

姉「……」スタスタ

盗賊「あっ、ちょっ、まって、タンマッ」

姉「」ボコッ

盗賊「うわああぁぁぁぁっっ!!覚えてろォォォォッッ!!!」

妹「捨て台詞も小者っぽい」

盗賊「うるせえええぇぇどうせワタシにもう出番なんてないんだぁぁぁっ!!」ピューッ

姉「行っちゃった……」

スライム「やったな嬢ちゃん。俺は知ってたぜ。あんたら、やればできるってこと……」

姉「う、うーんどうかな……」

スライム「しかしよくやってくれた。人間の中でもいいやつはいるんだな。見直したぜ」

姉「あっ、うん!ありがと、だからそんなに人間を恨まないであげてね?」

スライム「ヘッ、考えとくよ……」

若スライム「」ブルブル

スライム「よっ、兄ちゃんもう怖がらなくても平気だぜ。あっちのイカす嬢ちゃん達が助けてくれたからな」

若スライム「ほ、ほんとうですか……?よかった、もう僕、殺されるとばっかり……」

妹「またこいつも流暢に喋る」

スライム「約束通り、こいつぁ俺の経験値だ。とっときな」

若スライム「僕からも少ないですが渡させてください。本当にありがとうございました!」


スライムと 若スライムの けいけんちを しゅとくした


ふたりの れべるが あがった


姉「あっ、やった!経験値を合計したらギリギリレベルが上がったよ!」

妹「まず一歩前進だね」

妹「というか別に私達がいなくても何とかなったような気がするんだけど」

スライム「いいのさ……お前達はこんなしがないスライムの話や頼みをしっかり聞いてくれた」

スライム「それだけど十分さ。序盤のザコモンスターにはな……」

妹「なんか最後まで卑屈」

姉「じゃあ妹ちゃん、行こっか!」

妹「そうだね。近くに城下町があるみたいだからそっち行ってみよっか」

スライム「アディオス、嬢ちゃん達。たまには序盤の事、思い出してくれよ……」

姉「ありがとスライムさん!さよなら!」

妹「」ノシ


ふたりの ぼうけんは はじまった ばかりだ

スライム「……行っちまったな。なかなかスリリングな一時だったぜ」

若スライム「……」

スライム「人間の事恨まないであげて、か……フッ、言うねえ嬢ちゃん……」

若スライム「……」

スライム「ん?どうしたんだ兄ちゃん、黙り込んじまって。若いんだからもっと元気出せよ」

若スライム「……父さん?」

スライム「ッ!?!?」

若スライム「まさか、父さん……!?」

スライム「おっ、お前……スラ助か!?いや、そんな……妻も息子も人間に殺されたはず……!!」

若スライム「そうだよ父さん!スラ助だよ!!俺、死んでなかったんだ!!」

スライム「そんなはずはない!俺は確かにこの目で!」

若スライム「確かにあの日、人間に殺されたように見えたかもしれない……」

若スライム「でもギリギリHPが1残っていたんだ!命からがら逃げ出して、それから父さんとは離れ離れになっちゃったけど……」

若スライム「こうしてずっと生きてたよ!」

スライム「ほッ……ほんとに、スラ助なのか……!!?」

若スライム「父さん、帰ろう!!母さんも生きてるんだ!また家族全員で暮らせるんだ!」

スライム「……そんな……」

スライム「すっ……」

スライム「うおおおおおおぉぉっっ!!スラ助ェェェ!!お前、大きくなったなァァァッ!!!」

若スライム「わっ、よしてよ父さん、くすぐったいよ!」

スライム「ずっと、ずっと死んだと思ってたんだ!まさか生きてるなんて……ッうおおおおぉぉぉっ!」


のちにこのおやこが すらいむかいかくをおこし

すらいむたちがへいわにくらせるよのなかをつくりあげるのは まださきのおはなし ……

ここまで

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