「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 Part 12 (1000)

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」とは
  2ちゃんねる - ニュー速VIPで生まれた
  都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたりそんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
  まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりと色々活動しているスレです。
  基本的に世界観は作者それぞれ、何でもあり。
  なお「都市伝説と…」の設定を使って、各作者たちによる【シェアード・ワールド・ノベル】やクロス企画などの活動も行っています。
  舞台の一例としては下記のまとめwikiを参照してください。


まとめwiki
  http://www29.atwiki.jp/legends/
まとめ(途中まで)
  http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
避難所
  http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/


■注意
  スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
  本スレとはあまりにもかけ離れた雑談は「避難所」を利用して下さい。
  作品によっては微エロ又は微グロ表現がなされています。

■書き手の皆さんへ
  書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップ推奨(どちらも非強制)
  物語の続きを投下する場合は最後に投下したレスへアンカー(>>xxx-xxx)をつけると読み易くなります。
  他作品と関わる作品を書く場合には、キャラ使用の許可をスレで呼びかけるといいかもしれません。
  ネタバレが嫌な方は「避難所」の雑談スレを利用する手もあります。どちらにせよ相手方の作品には十分配慮してあげて下さい。
  これから書こうとする人は、設定を気にせず書いちゃって下さい。

※重要事項
  この板では、一部の単語にフィルターがかかっています。  メール欄に半角で『saga』の入力推奨。
  「書き込めません」と出た時は一度リロードして本当に書き込めなかったかどうか確かめてから改めて書き込みましょう。

◆用語集

 【都市伝説】→超常現象から伝説・神話、それにUMAや妖怪のたぐいまで含んでしまう“不思議な存在”の総称。厳密な意味の都市伝説ではありません。スレ設立当初は違ったんだけど忘れた
 【契約】→都市伝説に心の力を与える代わりにすげえパワーを手に入れた人たち
 【契約者】→都市伝説と契約を交わした人
 【組織】→都市伝説を用いて犯罪を犯したり、人を襲う都市伝説をコロコロしちゃう都市伝説集団
 【黒服】→組織の構成員のこと、色々な集団に分けられている。元人間も居れば純粋培養の黒服も居る
 【No.0】→黒服集団の長、つおい。その気になれば世界を破壊するくらい楽勝な奴らばかり
 【心の器】→人間が都市伝説と契約できる範囲。強大な都市伝説と契約したり、多重契約したりすると容量を喰う。器の大きさは人それぞれである。器から少しでも零れると…
 【都市伝説に飲まれる】→器の限界を迎えた場合に起こる現象。消滅したり、人間を辞めて都市伝説や黒服になったりする。不老になることもある




これはまだ、この街がどこにでもある田舎の村落だった頃の話
――――野心によって身を滅ぼした、哀れな男の末路


閑話【錬金術師になろうとした男】

昭和中期。戦後の復興も終わりが見えた頃のことだ。
2人の男が田舎道で立ち止まり山を仰いでいた。

「どうですか、水井さん」
「――素晴らしい。その一言に尽きます」

感嘆している男、水井栄夫は"風水師"を生業としている。
風水というのは古代中国で誕生した占術の一種であり、
簡潔に説明するならば『気の流れを物の配置で制御する』思想である。
大地の気に満ちた土地に家屋を建てて家人に恩恵を与え、
凶方には竈や水場を配置して、邪気を燃やすあるいは流して祓う。
建築と密接に関係する占術……それが風水である。

昨今の日本は建築に次ぐ建築、開発に次ぐ開発に沸いていた。
そんな時代であるがゆえに風水師にも仕事が次々舞い込んでくる。
ましてやそれが水井のように実績ある風水師ならばなおさらだった。
そしてついに水井の元にある政治家が大きな仕事を依頼してきた。

「これほど強く……肌で感じるほど気に満ちた土地は珍しい」
「私には分かりませんが、そんなに凄いのですか?」
「風水でいう大地の気には川のように流れがあります。
 その流れが溜まった場所に家を建てるというのが風水の基本です。
 しかしこの土地はその範囲があまりにも広い。何か謂れがあるのでは?」

水井に仕事を依頼した政治家はううむ、と唸り顎を撫でた。

「この地域には山神信仰というのが昔あったとは聞いていますが……」
「いわゆる山岳信仰というものでしょうか?」
「かもしれません。今もあの山には山神を祀った社があります」

政治家は咳払いを一つすると水井に向き直った。

「どうでしょう水井さん。この土地の開発計画……
 都市化計画に、どうか協力していただけませんか?」
「都市化計画、ですか」

政治家は水井から視線を外し広がる田畑や草原に目を向けた。

「私はね水井さん。故郷をうんと素晴らしい場所にしたい
 私をここまで育ててくれた人たちに恩返しをしたいのですよ」
「それが都市化というわけですか」
「そう。田舎なんて馬鹿にされない素晴らしい都市にする
 地元の有力者にはね、もう許しを貰っているんです
 どんな都市にしたいかというのも皆で相談して決めました
 あとは少しずつ内容を詰めていくだけ……どこをどんな区画にするかとかね」

政治家は再び水井の方を向いて頭を下げる。

「私の夢と、皆の期待を裏切りたくはないのです
 だから頼みます水井さん。あなたの力を貸してほしい」

水井は少し考えた様子だったが、やがて口を開き話し始めた。

「頭を上げてください……むしろこちらからお願いしたいくらいだ
 こんなに素晴らしい土地の開発計画に携わることができるというのですから」
「そ、それでは?!」
「お引き受けしましょう。この水井栄夫、一世一代の大仕事になりそうだ」
「ありがとうございます水井さん!いや、水井先生!」

興奮して手を握ってきた政治家に微笑みながら
水井は――心の奥でほくそ笑んでいた。

この水井という男、後の世なら契約者などと呼ばれる類の者であった。
彼がその力……己と契約した『風水』を認識した際の話は割愛するが
とにかく水井がこの力を上手く使ってきたことは確かな事実であった。
彼の『風水』は元来の風水とは大きく異なっている。
元来の風水が川に水車を設置して水の流れを活用するものであるとすれば
水井の『風水』は団扇を使って風の流れを起こすものであり、
既にある流れを動力とする元来の風水と
動力で流れを起こす水井の『風水』は対極に位置していたのだ。

しかし水井はこの特性を使いこなしていた。
貧しさに悩む旧家を訪れれば家具を動かして金回りを良くし
子に恵まれぬ富豪に頼まれれば子宝を授けるという美術品を勧めた。
大地の気という大きな流れに左右される元来の風水と違い
水井の『風水』は部屋の調度品1つで望む気を引き寄せられるのだ。
もっとも代わりに別の気が遠ざかるという側面が無いでもなかったが
水井はそれが表面化しないように気を使っていたし
助言に従って望みを叶えた者たちにとっては
その程度の不運は大した負担にはならず、気づかない者が大半であった。

このやり方に眉をひそめる同業者がいなかったわけではない
しかし彼らもまたかつてない仕事依頼の数に忙殺されるようになっていき
結果として水井は誰の妨害を受けることもなくその名を広めていったのだ。

「門はこちらの方角で……ええ、そこには木を植えてください」
「水井先生、ここの墓地はどうしましょうか?」
「どこですか?……これはこのままがいいですね」

開発計画に携わることになった水井は内心笑いが止まらなかった。
誰もが自分のことを先生と呼んで親しみ、指示に従って開発を進めていく。
水井の指示は大地の気の流れを利用する元来の風水と
意図的に流れを生み出す己の『風水』が複雑に絡み合っており
もはや彼以外にその全容を知ることができる者はいなくなっていた。
だからこそ……誰も水井の企みには気づけない。
自宅として提供されている家への帰路で
水井はこの土地に作り出された新たな気の流れを肌で感じていた。

(あの富豪の家にあった魔術書は本当に役に立ってくれた
 本来の風水と私の『風水』、そして魔法陣の集大成
 これが完成すれば……私は魔術書にあったような
 伝説の"錬金術師"にも匹敵する力を得ることができるだろう)

風水の知識で見抜いた気の流れを己の『風水』で細かく操作する。
さらに西洋の魔術で気の力を高め、増大した力の恩恵を自身が受ける。
この計画が正しく成れば、不老不死すら夢ではないと水井は考えていた。

(もっとも都市の完成はまだまだ先だ。それまで野心は隠さねばならない)

一度誰かに不審に思われてしまえば、その綻びが致命傷になることもありえる。
そう決意を新たにした水井は家の前に見知らぬ老爺がいるのを見つけた。

「あの、我が家に何か御用でしょうか?」
「む。貴方が水井栄夫さん……ですかな?」
「そうですが、あなたは?」
「あの山の神社で神主をやっとる者です」
「ああ、山の神を祀っているという」

そんな者が何の用かと不思議に思った水井は
続く神主の発言で肝を冷やした。

「近頃この土地で妙な力の動きを感じますが、あなたの仕業ではないですかな?」
「(なに?!)……それはどういう意味でしょうか」
「風水というのは大地の気の流れを操ると聞きます
 あなたは開発計画に乗じて……この土地で何をなさるおつもりか」

鋭い目で睨む神主に水井は慌てて抗弁する。

「確かに土地の開発で気の流れが変わった可能性はあります
 大地の気は地形に影響を受けますから、大地を均すだけで
 流れが変わってしまうというのもありえない話ではない
 ですがそれは開発を進める中でどうしても発生する問題です
 それを私が意図してやったかのように言われるのは心外ですよ」

それでも水井を睨んでいた神主だったが
やがて諦めたように目線を山の方に向けた。

「……山神様は今も我らを見守っていらっしゃる
 身の丈に合わないことをすれば罰が当たることでしょう」

そう独り言のように呟いて神主は立ち去っていったが
家に入った水井は内心の苛立ちを抑えることができなかった。

(畜生!まさか気の流れを感じられる奴が他にいるとは
 いや、こんな土地でいないと考える方が無理があったか)

握り拳で柱を叩いた水井はギリッと歯を食いしばると
今後の計画についての修正内容を考え始めた。

(こうなったら計画を早めたほうがいいかもしれん
 時間が経つとかえって気づかれる可能性が高まる
 ならば、重要な部分だけ工期を前倒しにさせて――)

時は流れて数年後のこと

ついに水井が住む予定の邸宅が完成した。
この邸宅は水井が開発計画を利用して作り出してきた
気の流れの影響をもっとも受けやすい土地に建てられた。
この土地にはある手順を踏むことで
気の流れが集約され土地に流れ込む仕掛けが施されている。
それを一身に受けたとき……水井栄夫は生まれ変わるのだ。

(ようやく……ようやく私は錬金術師に、不老不死になれる……)

水井は泥酔した状態で家へと帰ってきた。
邸宅が完成した前祝いとして酒盛りをしてきたのだ。
何年も待った計画を構成する最後の部品の完成に
少々ハメを外してしまったのは無理もない話だろう。
調度品をいくつか巻き込んで倒れこむように寝た水井は
起床後、邸宅完成の式典を開くという有力者たちの言葉を思い出し
慌てて身支度をして家を飛び出した。

この時、彼が自身の不運――遅刻寸前の起床時間――に対して
少しでも疑問を持っていればこの土地の未来は大きく変わっていただろう
しかし彼は気付かなかったのだ。
己の『風水』で作り上げた……隣家の人々から幸福を奪ってでも
自身の不運を散らすはずの『風水』の砦が、己の手で破られていることに……

その後、式典会場に向かっていた水井は工事車両の暴走により
あっけなくその命を散らすこととなった。
土地の開発に協力し続けた水井の訃報に少なくない人々が悲しみ
工事車両を動かしていた男には怒りの声が降り注いだ
男の「角の生えた小人が勝手に動かした」という証言は
誰にも信じることはなく、男は罪に問われて連行されていったという。

こうして野心を抱き行動し続けた風水師は
事を急ぐあまり身の回りを疎かにして身を滅ぼした。
しかし彼の置き土産はいまだにこの土地に残されている。

張り巡らされた気の流れと、忘れ去られた魔法陣は
都市のあらゆるモノにその恩恵を与えている。
人も人ならざるモノも区別せず、善いも悪しきも平等に――――





――――その都市が『学校町』と呼ばれている今も、まだ。





これはまだ、この街が神の座す土地でしかなかった頃の話
――――神に命を捧げた女の、その後を見届けた男の記録


 閑話【神を視る女】

私がこの里に身を置いてそろそろ四年になる
この山も今では里の中と同じように
どこに何があるか分かるほどだ
器量の良い嫁を貰い、子も生まれた
こうして筆をとったのはまさに子のためである
堺からこの里にたどり着くまでの旅の中で
私が何を見て、聞いて、感じたのかを
我が子と、我が孫と、我が子孫、末代まで伝えたいがためである

私は堺の商家の子として生まれたが
生まれた頃から物の怪が見えるので親からも疎まれていた
そんな私だがいつの頃からか怪しい力をもっていた
獣を土中に埋めると願いが叶うのである
私は店が繁盛することを願って埋めてきたが
それが見つかり気味が悪いと幾ばくかの銭と共に
勘当され家を追い出されてしまった

しかしながら私はこの力の話を聞いたという
師に引き取られ物の怪について学ぶこととなった
今の私があるのは師のおかげである
そして私は師に言われて物の怪について知る旅に出た
幾度も物の怪に襲われたが、師の教えが私を守ってくれた

そして私はこの里を訪れたのだ
日も弱くなり一晩の宿を借りようと長の家を探していると
不意に大地が揺れて私は転んでしまった
すると近くの家の軒先に立っていた女が

「あなたは山神様が見えるのか」

と問うてきた
私がなんのことかと尋ね返すと向こうの山を指す
いつのまにか大きな人の姿をしたものが山に腰かけて休んでいた
あれほど大きな物の怪は初めて見ると言えば

「山神様を物の怪などと言うのは不敬である」

と女が言うので、それもそうだと
腰かけている山神なる者に詫びた
すると腹に響くような声で

「構わぬ」

と返ってきたので、山神はこれほど遠くの声が
聞こえるものなのかと目を見開いて驚いたものだ

女は里長の娘であるらしく
里長の家へと案内してくれた
女が言うことには

「山神様が見えない者は、山神様が歩く揺れも分からない」

というので不思議なものだなと私は言った
里長はといえば私が宿を借りることを許してくれたが
いっそ里に住んで娘をもらってくれないか
などと突拍子もないことを言いだした
里長いわく、この里で山神様を見ることができるのは
里長の娘……つまりあの女だけであるという
若い衆は見えぬものが見えるという女を気味悪がり
19にもなって嫁に貰いたがる男がいないのだそうだ
少し気になり女に問うと

「山神様が見える人は少なくなり、祖父の代から現れなくなったらしい」

と答えるのでますます気になる
私が宿をしばらく借りたいと頼むと
里長は快く許してくれた

それからしばらく里に留まるうちに女から聞くことには

「山神様は恐ろしい水神を鎮めるために留まっている」
「水神は蛇のような龍で、年に一度目覚める以外は眠っている」
「ひとたび水神が目覚めれば雨と風と雷を呼び嵐が起こる」
「川の水が溢れ里や畑を呑むことがないように
 山神様が水神と戦うことで力を削いで嵐を弱めている」
「見える人が減ったため祈りが減り山神様は力を失ってきている」

というような話であるようだった

「山神様のために祈る以外のことができないことが悔しい」

と話す女の目から涙が溢れていたことをよく覚えている
私もなんとかならないものかと知恵を出してみるが
師の教えにも荒ぶる神を鎮める方法は無かった
そこで私は女に、山神にも聞いてみてはどうかと言った
するとあの腹に響くような声で

「主の力でそこの娘を埋めればあの龍を封じることもできよう」

と山神が言うので思わず顔をしかめてしまった

なぜ私の力のことを知っていると問えば

「神と祀られるのだから"生贄"の力くらいはそれと分かるものよ」

と山神が答えたので、これはそんな名前だったのかと
今更ながら私の身に宿った力のことを新しく知った

「なにか方法があるのか」

と女が問い迫ってきたので
あるにはあるようだが、それにはあなたの命が必要だ
あなたには己の命を捨てる覚悟はおありか
と隠さず"生贄"と呼ぶらしい私の力のことを教えてやった
すると女は頭を下げて

「どうか村を救ってほしい」

とためらいもなく言うものだから
しかし里長は許さぬのではないかと私は言ってやった
ところが里長のところに行ってみれば
娘がここまで頼むのだから親として許さぬわけにはいかぬ
などと言って女が命を捨てることを許してしまった
もはや私はやらぬと言うこともできず
私はこの忌まわしき力を再び用いることとなったのである

山神が言うことには

「生贄は捧げ物と捧げ処と捧げ時と捧げ方が肝要である」

というのでさらに聞いてみると

「捧げ物は清め、箱に入れて捧げ物であると明らかにする」
「捧げ物の入った箱を神が受け取りやすい処に埋める」

というのが此度の正しき捧げ方であるという
箱を用立てるのは里長に頼み
埋める処は山神が示したので
私は女に、師から学んだ身の清め方を教えつつ
捧げ時というのが来るのを待つこととなった
里に留まってしばらくすると山神が

「龍が起きる兆しがある。今より生贄を捧げる儀式を始めよ」

というので女には身を清めてから来るように言って
私は先んじて木の箱を捧げ処に運ぶこととなった
その間にも空は昼だというのに黒雲に覆われて暗くなり
湿った風が木々を軋ませているのが見て取れ
水神とやらが、いかに恐ろしい物の怪であるかを垣間見たのであった

捧げ処へ女が来るまでに風はさらに強まり
もはやいつ嵐となってもおかしくなかった
やがて女が来たのだが箱に入る前に躊躇うような様子を見せる
どうした、怖くなったかと問うてみると

「私が死んだ後の里の皆が心配だ」

となどと言い出すので
しばらく住んで里に愛着も沸いた
事が終わればお前の代わりに里を見守れないかと
里長に頼んでみるつもりだ、と言ってやると

「それならば心残りはない」

と笑みを浮かべながら箱に入っていった
私は箱の蓋を閉じると、山神に対してこの娘を捧ぐ
代わりに山神に力を与え龍を封じることを願う
と大きく声を張って宣言し力を使った
すると箱は大地に染みるように消え跡形もなくなった

「願いと捧げ物は受け取った。必ずや龍を封じよう」

山神が山を震わすような声で答えると共に
黒雲から雫が落ち始め、龍の咆哮が辺りに響き渡った

「おのれ"ダイダラボッチ"はまた我を邪魔するか」

と雷のように轟く声が聞こえたかと思うと
山神より大きい蛇の姿をした物の怪が空に現れた
灰と黒の鱗が体に雲のような紋様を描き
鼻先から二本の長い髭を生やした神々しい大蛇は
山神を絞め潰さんと巻きつくも引き剥がされ
頭の付け根を握られ苦しい声をあげていた

「お前が見えなくなれば信仰は絶えて力を失うだろうと
 水に毒を混ぜ続けたというのに、その男が全てを崩してしまった」

龍は熱した炭のように赤い眼で私を睨んだ

「人が嵐を恐れる限り我は決して滅びぬ
 いずれ封を破りこの地を水に沈めたあとは
 我が顎門をもってお前の子孫を骸へと変えてくれようぞ」

龍はそれだけ言うと再び山神の手の中で暴れたが
山神が龍の頭を大地に叩きつけると目が光を失い
そのまま山神と共に大地の中に溶けるように消えていった
気づけばあれほどの荒天は収まっており
雲の間から陽の光が山を照らしているばかりであった

それから私は女に言ったとおり
里長に頼んで村に残り、封を見守ることとなった
あれから嵐が起こることはなくなったが
山神の姿を見ることもできていない
しかし忘れてはいけない
龍は封じられただけで消えたわけではなく
山神もまた力を失っただけで消えたわけではないのだ

我が子よ、我が孫よ、我が子孫よ。末代まで忘れることなかれ
いずれ必ず龍は封を破りこの地とお前たちに
その積り溜まった怒りをぶつけることだろう
ゆえに我らは備えなければならない
再び龍を封じこの地を守るために
その命をもって事を収めた女の覚悟に応えるために
我らは生涯をかけて備え、そして戦い続けなければならぬ――――



――――この地の平穏を乱す"物の怪"共と





これはまだ、この街が彼らに干渉され始めた頃の話
――――彼らと殺人鬼の交戦、その推移をまとめた資料


 閑話【契約者対処事例***号0**項】



.

その黒服の今日の仕事は、古い資料の再編纂だった。
基本的に資料は記録年代毎に整理されていることが多い。
しかし事件発生数が増えるにつれ資料や記録の数も増えていき
片端から閲覧して参考資料を探すというのは困難になってきた。
それに伴って都市伝説の種類・系統といったもので
記録を分類した新たな資料の必要性を訴える声も増えたのである。
そうして始まったのがこの再編纂という作業だ。
以来交代制でこの作業は常に行われているのだが、
なにせ記録は膨大な量であり、分類を決めるのも
難しい判断が要求される事例が多々見受けられる。
それゆえに未だに手をつけられていない記録も山のようにある。

そんな未分類資料から黒服は1つの文書を取り出し
分類を決める参考にするべく内容を閲覧し始めた。
年代は……19XX年。"組織"がこの街に人員を派遣し
常駐させるようになって間もない頃のものだ。

読み進めていく内に、この資料はどうやら
当時街を騒がせていた殺人鬼が契約者であることが判明し、
その討伐作戦を決行した際の推移を記録したものらしいと分かった。


殺人鬼はまだ年若い少年と少女の二人組。
以下それぞれ対象A、対象Bと記載する。
対象Aの名前は紫崎琢磨。両親を都市伝説の能力で殺害し
強盗殺人を繰り返しながら街に潜んでいる模様。
契約都市伝説は"ムラサキカガミ"と推測される。
対象Bの名前は石井泉。両親が変死体で発見されており、
恐らく都市伝説の能力で両親を殺害した可能性が高いと考えられる。
対象Aと接触した経緯は不明だが共犯関係であることは間違いない。
契約都市伝説は"水晶ドクロ"と推測される。

初めに黒服を2名送るも失敗。黒服2名は失われた。
次に黒服を8名に増員し向かわせるも失敗し全滅。
二度の失敗と交戦情報からの相手の能力の精査が行われ
想定よりもかなり戦闘能力が高いことが明らかになった。

対象Aの能力は『言霊を用いた目標物の破壊』
現在確認されている言霊は"死"のみであり
これを含む言葉を発生することで意図した効果を発生させる。
効果範囲は声の届く範囲であると推測される。
計10名全ての黒服を体の複数箇所の壊死という形で破壊している。

対象Bの能力は『呪詛』『予知』『念動』等がある模様。
なお呪詛は前述の対象Bの両親の変死から
予知は監視中の対象Aと対象Bの会話から推測されたものである。
念動は対象Bが水晶ドクロを空中で動かしたほか
黒服の動きを不可視の力で阻害した形跡があるため
ほぼ確実に有しているものと思われる。

対象Aと対象Bの危険度を上方修正し
戦闘に長けた契約者2名による対象の討伐計画を申請する

【認可】

計画に参加する契約者は【******】【******】の2名
以下、契約者イ及び契約者ロと記載する

初戦は恐らく予知による待ち伏せを受け失敗
対象Aにより契約者イが喉に、契約者ロが腕に攻撃を受け撤退した
治療効果を持つ都市伝説を用いて回復を早めるものとする
対象Aと対象Bの危険度を上方修正し
次作戦にて陽動のため黒服10名の増員と
契約者【******】の計画参加を申請する

【認可】

以下、追加要員である契約者【******】は契約者ハと記載する

次作戦においては黒服を用いて誘導を行い、対象Aと対象Bの分断を行う
対象Aの担当を契約者イ及び契約者ハとし、対象Aの足止めを試みる
対象Bの担当を契約者ロとし、可及的速やかに対象Bの討伐を遂行する

第二次作戦において対象Aと対象Bの討伐に成功した

黒服による対象Aと対象Bの分断は期待通りの成果をあげ
対象Aのムラサキカガミは契約者ハの
"白い水晶"にて破壊効果の大幅な低減が確認された
対象Bとの戦闘により契約者ロが負傷したものの
大きな支障が出るものではなく、自然治癒で問題ないと考えられる

この結果から今後は戦闘能力だけではなく
都市伝説の相性や対抗都市伝説の効果を鑑みて作戦を遂行することで
都市伝説及び契約者への対処が効率化されるものと考えられる

ここで黒服はこの討伐作戦の記録に、まだ続きがあることに気がついた
やや事務的な討伐推移の記録と共にまとめられていたのは
この討伐作戦に参加した契約者が書いたと思われる走り書きだった
こんな主観に彩られたものでも一応資料の一部として保存するべきなのか……
黒服は頭を悩ませながら、もう一度走り書きに目を通した


この記録を読む誰かのためにこれを残します
私は彼の姿を直接見て彼の怒りを直接聞きました
彼は両親に虐待を受け、都市伝説で両親を殺害したといいます
次に路地裏で犯されそうだった彼女のため、また殺人を行いました
彼と彼女は大人を信用していませんでした
彼の硝子のようにひび割れた背中に無数の火傷跡が見えました
彼女の背中にはミミズ腫れが幾つもあると彼は言っていました
そして浮浪児である彼らを助ける者もいませんでした
だから彼らは大人を、世界を憎んでいると言いました
信じて助けたいのはお互いだけだと言っていました

それでも危険だから、私たちは彼らを消そうとしました
どんな事情があろうと罪は罪であり、罰があるべきでしょう
そのことに異存はありません。それでも思うことはあります
******さんは首を断ち斬った彼女に反撃されました
私たちも彼の最後の足掻きに意識を失いました
でもその間際、私は確かに女の子の声を聞いたのです
「生きて。私の力を使って、もう一度だけでも」という懇願を
気づけば彼らの死体は消えていました
黒服さんは討伐が完了したと淡々と告げました
しかし私は思いました。討伐したなんてとんでもない
私たちはこの世に悲しい怪物を生み出したのではないか、と

だからどうか、これを読んだ人に教えてほしいのです

私たちはどうすれば彼と彼女を救えたのですか?
両親を殺した直後に彼を捕まえる?
それとも彼と彼女と出会った時に?
あるいは、私たちはもっと彼らの話を聞くべきでしたか?



――――私たちが彼と彼女を討伐したのは、正しい対処でしたか?


                            閑話【了】

都市伝説"トンカラトン"は路地裏に隠れてようやく一息ついた。
語られている通りに人を襲おうとしたが、逆に何者かの襲撃を受けたのだ。
細長いものに巻き付かれた自転車は恐ろしい力で引きちぎられてしまった。
このまま走って逃げるのか、意を決して襲撃者に立ち向かい撃退するのか……

そんなことを考えるトンカラトンを上から見つめる者がいた。
正面に(▼)マークの描かれた覆面で顔を隠し
トレンチコートに中折れ帽を着用したその人物は、
腕に巻きついている細長い布を下に向かって数本伸ばすと
音もなくトンカラトンの首へと巻きつけ
彼が反応するよりも早く布を引っぱりその首をへし折った。


[警邏記録 G.K記]

注射男     1体 
赤マント    2体 
トンカラトン  1体

今日だけでこれらの都市伝説を始末した
学校町を漂う嫌な匂いに惹かれてやってきたハエ共だ
やはり元を叩かなければキリがなさそうだが
あいにく俺には原因を探るために使えるツテがない
この街でいったい何が起こっているのか
それが分かるまではハエを消すことに注力しよう

相生真理にとって幼馴染の奇行はよくあること
もうとっくに慣れている……と自分では思っているつもりであった。
風呂上がりに自分以外いないはずの家のリビングで
仮装でもしているかのような格好をして
手帳に何事か書き連ねている幼馴染を見つけるまでは。

「邪魔シてルゾ。窓の施錠ハ忘レルな、都市伝説に襲わレかねない」
「……気をつけるわ。都市伝説以外に不審者が入ることもあるみたいだし」

乾いた物が擦れ合うような声で話す幼馴染の忠告に皮肉で返す。

「それで、なんでその格好してるの?またヒーローごっこ?」
「ソのようなものダな。最近ハ、都市伝説の出現数ガ増えていルようダ」
「だからヒーローごっこするわけ?その格好、えーと……なんだっけ?」
「"ゴルディアン・ノット"ダ」
「そうそう、そんな名前だったわね。それ」

(▼)模様の覆面で顔を隠し、トレンチコートを羽織って中折れ帽を被る。
全身に巻きつく細長い布と縄、胴体にだけ巻きついた二本の鎖。
某アメリカンコミックのヒーローをモデルにした幼馴染の描くヒーロー像。
それが目の前の"ゴルディアン・ノット"だ。正直不審者にしか見えないが。

「おじさんとおばさん、反対しなかったの?いや、黙ってやってるのか」
「ソのことダガ、家出シてきた」
「……ごめん、なんて?」
「家出シた」
「はぁ?いやいや、学校とかあるでしょ?」
「荷物なラ持ってきていル」
「ここか!滞在先もとい家出先は私の家か!!」

一軒家のくせに両親は海外を飛び回っているため
部屋が余っているのは事実だ……しかし私を巻き込むなと言いたい。

「今この街で戦闘向きでハない契約者が一人暮らシなのハ不安ダ」
「それは……まあそうかもしれないけど」
「俺なラ大抵の都市伝説ハ倒セル」
「だから家に置いとけと?」
「悪い話デハないダロう?」

確かに私の契約都市伝説"小玉鼠"では
都市伝説に襲われたとき対処しきれるか疑問がある。
それを言われると強行には反対できない。
……なにより幼馴染の頼みである。あまり無下にもしづらい。

「分かったわよ。しばらく置いてあげる」
「感謝スル」
「でもちゃんとおじさんたちにも顔見せなさいよ?」
「元よりソのつもリダ」
「あとずっと気になってたんだけど」

覆面の下で顔を隠した幼馴染が
訝しげな表情をしたのが、なんとなく分かった。

「なんでずっとその声なの?」
「この後また警邏に行くかラダガ?」
「えー……もう夜の11時だけど」
「今日ハ土曜日ダ」
「まあいいけど、せめて私だけのときくらい普段通り話さない?」
「"ゴルディアン・ノット"デいル間ハこのままと決めていルかラ断ル」

それだけ言うと幼馴染は階段を上がっていってしまった。
窓から入ってきたと言っていたから、靴も窓のそばにあるのだろう。
おそらくそのまま窓から出て行くに違いない。

「……合鍵渡しとこ」

いつも窓から出入りされるのは流石に困る。
そう思って合鍵を幼馴染に渡すべく、私も階段を駆け上がっていった。

                                 【第一話 了】

[警邏記録 G.K記]


警邏中に"くねくね"を倒した後、組織の活動を目撃した
相手は"ひき子さん"だったようだが
戦闘していた契約者は危なげなく倒しているように見えた
できることなら契約都市伝説も確認したかったが
黒服の方がこちらに気づいたようだったので撤退する
この距離で俺に気づく相手と戦闘の駆け引きができると考えるほど
自分の力を過信しているつもりはない
それと"組織"の追手かと思い撒こうとした相手は知り合いだった
鼻が利くというのは俺の強みでもあるが
対策と、さらにその対策を考える必要がありそうだ

学校町南区 喫茶店「ヒーローズカフェ」

「――というわけでうちにいますので」
「連れ戻したほうがいいか?」
「いえ、それはいいです。あ、でも食費とかがちょっと」
「分かった。後で届けるよ」

相生真理は幼馴染の家である"ヒーローズカフェ"に来ていた。
喫茶店に思い入れのある幼馴染の母、瑞希さんが提案し
夫である幼馴染の父、美弥さんが承諾して始めたというこの店だが
いたるところにヒーローもののフィギュアやポスターが飾られている。
さらに店内のテレビではヒーロー系の映像が営業中に流され
隅に置かれた本棚には海外のヒーローコミックまで置かれている。
断言しよう。幼馴染がああなったのはこの両親のせいだと……!

「今日は光の巨人なんですか?しかも海外の」
「流して欲しいって私物の持ち込みがあったんだ」

そして悲しいかな、私もそれなりに知識を植えつけられている。
うちの両親は昔から家を空けることが多かったので
私は頻繁に両親の知り合いである篠塚夫妻に預けられてきた。
東区の家を第一の家とすると、ここは第二の家のようなもの。
なので今回は一言断って居住スペースに上がり込み
美弥さんが休憩に入るのを待っていたわけである。
……家出した子の動向とか、店の中でする話じゃないし。

「でも止めないんですか?」
「最近街の雰囲気がおかしいのは俺たちも感じているからな
 しかし俺も瑞希も昔みたいに我武者羅には戦えない
 ならやらせてみるのもいいんじゃないか、と思うわけだ
 まあ何も考えてないわけじゃない。一応見張りにザクロをつけてある」

ザクロさんは美弥さんの契約都市伝説で
"ブラックドッグ"という火を吹く能力を持った大きな黒い犬だ。
底なしのスタミナと体格に見合ったパワーに犬の俊敏性も併せ持つ。
おまけに嗅覚を始めとする知覚能力も高く、人間としての姿まで有している。
私の小玉鼠なんて足元にも及ばないハイスペックである。
なるほど。居住スペースにいないのは幼馴染についているからかと納得した。

「"怪奇同盟"が活動停止状態でなければ、まだやりようはあったんだがな」
「怪奇同盟……ですか」

怪奇同盟の名前は、今まで何度も耳にしている。
それが私の両親と幼馴染の両親が所属していた集団の名前だからだ。
両親はこの集団に所属することが縁で出会ったと聞いている。
だが、現在怪奇同盟は活動できない状態にあるのだという。

そもそもこの街は都市伝説をよく引き寄せるとかで
いくつか都市伝説に関連した名のある集団が拠点を置いているそうだ。
例えば"組織"と"首塚"……この2つは両親の話でもたまに名前が挙がっていた。
組織は都市伝説の存在が表に出ないよう活動している集団らしい。
黒服と呼ばれる者たちと"組織"の庇護下にある契約者によって構成され
危険な都市伝説を狩り、後ろ盾のない契約者を保護しているとか。
しかし昔は巨大な集団であるため派閥争いがあったようだとも
組織の構成員と話す機会があった両親や篠塚夫妻からは聞いている。
首塚はそんな組織に対して反感を抱いた、
かの有名な平将門の怨念なる都市伝説が率いるという集団だ。
自主自立に重きを置く比較的自由な気質の集団であると聞いている。
現在は彼らも組織に対して積極的に抗争を起こすことはないという。
では肝心の怪奇同盟はどんな集団だったのかと
美弥さんに聞いたことがある。その時美弥さんは

「自警団という表現が一番近いんじゃないか」

と言ってから私に説明をしてくれた。
怪奇同盟の行動規範は街とそこに住む人々を都市伝説の脅威から守ること。
確かにこれなら自警団という言葉が相応しいだろう。

では何故彼らが活動できなくなったのか
怪奇同盟には"首塚"でいう将門公のように明確なトップがいた。
都市伝説"墓場からの電話"であるという彼女は"盟主"を名乗り
学校町に点在する墓地を起点にこの街を裏から監視しつつ
構成員である盟友(同志と言い換えてもいいかもしれない)と共に
組織や首塚、あるいはその他の集団と牽制しあいながら
この街を守るために戦い続けていた。
特に20年ほど前は盟友たちの前にその姿を何度も現すほど
精力的に動き大きな事件の解決に尽力していたという。

だが15年ほど前に、彼女は姿を見せなくなった。
どころか彼女の眷属のような立場である幽霊……
"墓守"たちですら彼女の動向がつかめない状況であった。
それでも盟友たちは各自で自警活動を続けていたが
盟主を欠いたことで集団として活動することは難しくなっていた。
それから数年経ち学校町の都市伝説による被害が減り
街が比較的安定した状態になったことを受けて
暫定的なリーダーであった東の墓地の"墓守"は
盟主の動向が分かるまで"怪奇同盟"としての活動を停止し
都市伝説と関わりのない表の生活に注力するよう盟友たちに通達した
こうして怪奇同盟は今のように名ばかりが残る状態になったのである。

「怪奇同盟は無くなったわけじゃない
 俺や瑞希は今でも所属しているつもりだし
 真理ちゃんの両親だってそうなんじゃないかな」
「そう、だと思います」

私の両親は学者だ。それも民間伝承や神話、都市伝説を研究している。
たぶん海外を飛び回っているのも2人にとっては戦いなのだと思う。
彼を知り、己を知れば、百戦危うからず。という言葉がある。
いずれ来るかもしれない戦いのために知識を蓄え備えようとしているのだ。
それが最終的には街と人を、私を守ることに繋がると信じている。
私を放っていることには不満の言葉しか出ないが
たまに帰ってくるとこれでもかと構い倒してくるので
愛されていないとは思っていない。

「それはそれとして、もっと頻繁に帰ってきてほしいですけどね」
「俺もそれは思う。学者ってのはそんなに大変なのかね」
「…………まあ、たぶん、そうなんじゃないですか」

喧嘩腰になりやすく行動力のある母と、妻の押しに滅法弱い父。
帰国が延期になる理由の3分の2くらいは母の暴走の結果だと
気がついてしまったのは何年前だったか……
お願いだから他国で人様に迷惑をかけるくらいなら早く帰ってきてください。
思わず手を組んで天に祈った私を美弥さんが不思議そうに見たが、些細なことだ。

                                         【第二話 了】

空中を滑るように移動し隙を窺う"モスマン"に対して
覆面の人物……ゴルディアン・ノットもまた地上から
モスマンを地に落とす機会を待っていた。
やがてしびれを切らしたのか音もなく突撃してくるモスマンが
間合いに入ったとみるやいなや、ゴルディアン・ノットは
両腕に巻き付いた布と縄のほとんどをモスマン目掛けて撃ち出し、
回避しきれなかった布の一本がモスマンに絡まったのを感じとると
すかさずその一本を引っ張りモスマンを地面に叩きつける。
追加で布を、縄を絡ませながら何度も地面へと叩きつけるうちに
やがてモスマンは光の粒となって消えてしまった。


[警邏記録 G.K記]

モスマンを1体倒した
空を飛び回る蛾を叩くのは面倒だが
光へ近づこうとする限りできないことではない
本当に厄介なのは空を飛びながら水をかけるセミだ
これも何か対策を打つ必要がある
問題は多いがこれくらいは解かなければ
難題を断つことなどできないだろう

相生真理が玄関の扉を開けると、珍しい人物が立っていた。

「文さん?こんにちは、どうしたんですか?」
「こんにちは、真理ちゃん。兄さんに頼まれて結ちゃんの分の生活費をですね」
「あー、そういうことですか。とりあえずあがってください」

篠塚文さん。中学一年生の私と同い年くらいにしか見えない彼女は
美弥さんの妹、つまり我が幼馴染の叔母にあたる。

「結ちゃんはどうしてますか?」
「今は部屋にいる……はずですけど」

そう言って部屋の前まで文さんを案内し、扉をノックする。

「入っていいよー」

返事が戻ってきたのを確認して扉を開けると
手帳に何かを書き込む幼馴染の少女の姿がそこにあった。

「あれ、文さん?なんでここに」
「結ちゃんがここで居候してるっていうから生活費を届けに来たんですよ」
「なるほどなー」
「私も無理に帰ってこいとは言いませんけど
 たまにはちゃんと帰ってお父さんに顔を見せてくださいね」
「はーい」

なんというか、仲のいい姉妹の会話を見ているようである。
外見年齢が近いからそう見えるのか、それとも……

「話は変わりますけど、能力を使ってみてどうですか?」
「んー……別になんともないと思うけど」
「私の時とはまた別のパターンですからね。何かあったらちゃんと伝えるように」
「あいあい」

文さんは都市伝説から人になり、その後都市伝説として契約者を得たという
簡単には説明しづらい、ややこしい経歴がある。
その結果、契約時から肉体の成長が止まってしまったそうだ。
そして誕生したのが見た目は子供、頭脳は大人の稀少存在というわけだ。

結もまた文さんと同じ……ではないが、奇妙な運命を背負って生まれている。
彼女の両親、美弥さんと瑞希さんは"都市伝説化した契約者"だ。
都市伝説と契約した者はたまに、その力を制御しきれず
あるいはその力を使いすぎてしまった結果、人間ではなくなることがある。
例えるなら、吸血鬼の力を使いすぎて自らが吸血鬼に変じるような……
都市伝説に呑まれる、などと表現するその現象を2人はその身に受けた。
それゆえに2人の外見は、10代後半の頃から変わらないままだという。
そんな2人から生まれた娘は、残念なことに普通ではなかった。

"ドラゴンメイド"
ヨーロッパに伝わる半竜半人の乙女。
それが篠塚結……私の幼馴染が生まれ持った都市伝説としての性質。
彼女は人間でありながら都市伝説でもある、異質な存在だった。
都市伝説の力を持ちながら、都市伝説と契約することができる。
ハッキリ言おう。私の幼馴染はバケモノである、と。

「ハッキリ言おう。私の幼馴染はバケモノである」
「そんなことを言うのはこの口かー」

文さんが帰った後の部屋で、言葉の刃を携え斬りかかった私に
結は何が楽しいのか笑顔で近づいてきて、私の両頬をぐにんと引っ張った。
……結は自分がバケモノであることを認めている。
同時にバケモノであるからこそ、自分が何者で、どうあるべきなのか。
その答えを探しているのだと私に言ったことがある。
ゴルディアン・ノット。あるいはゴルディアンの結び目。
その意味するところは"手に負えないような難問"。
彼女のヒーロー像は、彼女なりの答えなのだろう。
古代の王ゴルディアスがどのような答えを期待して
複雑で固い結び目を用意したのかは誰にも分からない。
しかしアレクサンドロス大王は自分なりの答えで結び目を解いてみせた。
それと同じなのだ。彼女は己の答えで、道を切り拓こうとしている。

「んー、そろそろ日が暮れるねー。着替えるからちょっと部屋出てくれる?」
「はいはい」

部屋を出ると中からゴソゴソと音がして、しばらくすると再び中へ呼ばれた。

部屋の中にいたのは篠塚結ではなく"ゴルディアン・ノット"だった。

「夕食の前に俺ハ警邏に行ってくル」
「言うと思ったよ。気をつけてね」
「ああ……済まない。いつも迷惑をかけル」
「いいよ。幼馴染の頼みだからね」

乾いた物が擦れあうような声で詫びる幼馴染に苦笑しつつも言葉を返す。
(▼)模様の覆面の下ではきっと、縦長の瞳孔を持つ瞳を伏せ
ところどころ鱗に覆われた顔で申し訳なさそうにしているのだろう。
その様子を想像して吹き出しそうになったが、なんとかこらえられた。

「実は今日、文さんが肉を買ってきてくれたからね
 帰ってきたらホットプレートで焼肉パーティーだよ」
「ソうか。楽シみにシておく」

一見そっけなく返したようだが、付き合いの長い私は誤魔化せない。
今、声がちょっと上ずったね?

「でハ、いってきまス」
「うん、いってらっしゃい」

今日も私の幼馴染が無事に帰ってきますように。
私は静かに手を組んで、いつものように天へと祈った。

                                    【第三話 了】

【逢魔時】とは、いわゆる夕方、日没前後の昼と夜が移り変わる時刻を指す。
黄昏時とも呼ばれ、その語源は「誰そ彼」……そこの彼が、誰なのか分からないという意味だ。
夕日に照らされた人は黒い影となって表情を覆い隠される。
故にこの時間帯、人影の中に魔に属するモノが紛れ込むと、ある地方では伝えられた。

そして今日もまた、日が沈む――――

日没の約六分前、西区のある廃工場付近に雷鳴が轟いた
雲の少ない快晴の茜空の下、廃工場の長い影に包まれて
対峙するのは赤いマントに身を包んだ男と、白装束の女
尋常でないところを挙げるとすれば、男の方は都市伝説"赤マント"であり――

「あら、外してしまいましたか……少々眠りすぎたようですね」

――――女の身体が半透明で、実体を伴っていないということだろう

紫電に焦がされた地面を意に介さず女に襲いかかる赤マント
だがその攻撃は空を切り、女の反撃がその身を撃ち貫く
辺りに肉の焼けた匂いが漂うが、それもすぐ風に散らされた

「ああ、感じます……私のいない間にまた悍ましいモノがこの地に入り込みましたか」

誰も見る者のいない廃工場の敷地内で、女が独白する

「もはやこれまで、もはやこれまで……穏便に済ませることは、もうできない」

その様子はどこか陶然としているようで、目は中空を見つめるばかり
見ている者があればこう思っただろう。この女は正気ではないのだ、と

「この地にあるべきは人の営みだけ。それを脅かす怪異は、都市伝説は、イラナイ」

女がパンと手を打つと、廃工場の影から蠢くモノ達が体を起こす。
それはまるで、黄昏時の人の影そのもの。逢魔時に現れる、魔性のモノの姿。

「然らば全て、排しましょう。除けましょう。払いましょう。滅しましょう」

影を従えた女が、妖しく見える笑みを浮かべて宣告する

「この地を守るため、人の明日を守るため……私はどこまでも戦いましょう」

日が沈み切ると、陽炎のように女と影達は揺らいで消え去った
しかしそれが夕陽の見せた幻ではないことに、気付いた者もいた

学校町某所

「んー…………こりゃマジで動き出したか?」

男は紙製の人形のようなものを机に置いて立ち上がった

「準備は万端、とも言い難いが……やることは変わらねえか」
「とうさま、ごはんできたってば」
「おお悪い。すぐ行く」

年内にケリをつけてえなあ、などと考えながら
男は女の子に手を引かれて部屋を出て行った
机の上の紙人形は、いつの間にか消えていた


学校町 東区のある墓地にて

「あの、先生?どうかしましたか?急に黙っちゃって」
「……透風さん。いえ、南の墓守」
「! なんですか、東の墓守」
「今晩にも"牛の首"を使います。心の準備を」
「いったい何が……?」
「わかりません。ですが、何かが起こるのは間違いないでしょう」

半透明の身体の男、"東の墓守"遠野弥彦は
半透明の女の子、"南の墓守"間瀬透風に答えつつ、なお考える

(彼女が気づいていないということは、盟主様の気配は勘違いだったのか?)
(悩んでる先生もやっぱりいいなぁ)

どんな時でも己の欲望に忠実な彼女はさておき
彼の懸念が真実であると彼らが知るのは、もう少し先の話である……

今日も学校町の一日が終わる
同時に、長きにわたった"彼女"の沈黙も破られた
それが仮初の平穏に終わりを告げる合図だったのかどうかは

 まだ、誰にも分からない――――


【Next Generation】
【Event "Strangeness of twilight"】
【Shall we play?】

昼と夜が移り変わる逢魔時。出歩く者が少ないのはどこも変わらない
繁華街を有する南区であろうと、人目につかない場所というのは存在する
そんな場所で――たとえば廃ビルの裏の少し広い路地裏――何が起ころうと
都合よく助けが来るなどということは、期待できないのだ

「きゃああああああ!!」

上半身だけの女の子が、飛んでくる壊れた看板に弾かれ壁に叩きつけられる
人間であれば既に死んでいてもおかしくない姿だが、彼女は必死に体を起こす
なぜなら彼女は都市伝説"テケテケ"であり――目の前の敵と交戦中なのだから

「テケテケッ! くそ……なんだっていうんだよ!!」

落ちていた金属製のパイプのようなものを振り回して
周りを囲む人型の影のようなものを牽制しながら、テケテケの契約者は叫ぶ
しかし彼らを襲った敵は、幽霊のような半透明の女性は答えない
代わりにテケテケに向け突き出された半透明の右手が放電を始める
テケテケも危険を感じて動こうとするが、ダメージから体が思うように動かず

「やめろおおおおおおおおお!!!」

少年の叫びも虚しく、路地裏に紫電が迸った。

「……え?」

テケテケは我が目を疑い、思わず声を漏らした。
自分がやられれば契約者が危ない……その一心で最後まで足掻くため
彼女は紫電が自分に向かって放たれる瞬間まで目を閉じなかった

だから彼女は目撃したのだ。都合のいいヒーローの、都合のいい登場シーンを

上から落ちてきた誰かは目の前に何かを突き出し、そこに紫電が吸われていった。
それは板のようなもので、よく見れば誰かの頭の上にも二枚ほど
板のようなものが突き出ていた。わずかな光を反射するそれは……

「鏡……」
「かめん、らいだー……?」

ハッとして契約者である少年の方に目を向け、また目を疑った
少年を囲んでいたはずの影は消え去り、代わりに大きな黒い犬が佇んでいる
赤く燃えるようなその瞳は、半透明の女性に視線を向けていた

「お久しぶりです美弥さん。消えてください」
「ザクロ、彼らを頼む」

半透明の女性の周囲に火の玉が現れ仮面ライダー(?)に降り注ぐ
しかしライダーは誰かに話しかけると、逆に火の雨の中へ駆け出した

「今のうちに逃げますわよ」
「え?あ……は、はい……?」
「テケテケ!大丈夫か?!」

テケテケに声をかけ、左手で首根っこを掴んで引っ張り上げたのは
黒いスーツを身に纏った長い黒髪の女性だった
彼女の右腕には少年が抱え上げられており、心配そうに声をかけてきた

「あの、あなたたちは……」
「これから跳びますので、口を閉じないと舌を噛みますわよ」

とぶ、とはどういうことか……と聞く前に女性は跳躍した。
1.5人分の重量など意に介さぬように壁を蹴り上に向かう。
彼女は近くのビルの屋上に飛び乗るとようやく動きを止め、二人を下ろした

「被害者、回収してきましたわ」
「お疲れ様ですザクロさん。義姉さん、行っていいですよ」
「オッケー!新技『結界武装』を試してくるわ!」
「ほどほどにお願いします」

テケテケがグロッキーな契約者を心配する横で
屋上に居た活発そうな女性と小学生くらいの女の子が
黒髪の女性と何かを話すと、活発そうな女性がいきなり飛び降りた
その体が何故か光っていたのは、おそらく見間違えではないのだろう

「すみません。助けるのが少し遅くなってしまったようで」
「い、いえ……あの、あなたたちは一体何者なんですか……?」

声をかけてきた女の子に、テケテケはようやく質問する
女の子は少し考えた様子を見せ、口を開いた。

「……ただの都市伝説と契約者ですよ。あなたたちと同じです」


一方、路地裏での戦闘は仮面ライダーこと篠塚美弥が押されていた。

「やっぱりパンチやキックは効かないか……そらっ!」

左手から紫電を放とうとした半透明の女性……盟主の前で
美弥がおもむろに両手を打ち合わせると、ガシャンと音がして
盟主の左腕が二枚の鏡によって食いちぎられるように消し去られた

都市伝説"マスクドヒーロー"と化した人間である
篠塚美弥は、戦闘形態への変身能力を有している
また契約している都市伝説と一体化することで
さらに異なる戦闘形態へ変化することもできる
今の美弥は"合わせ鏡の悪魔"であるアクマと一体化した
ツインミラーフォーム……パワーと装甲性能に長けており
鏡を操った特殊攻撃を駆使する戦闘形態になっていた
物理攻撃もエネルギー攻撃もまるで効かない盟主の前では
鏡を介した特殊攻撃くらいしか有効打にならないとを考えての選択だ

だがツインミラーフォームすら盟主の前では力不足だった
左腕が消失したことにも動揺せず、即座に右手が放電を始める
美弥は一歩引き放たれた紫電を構えた鏡に吸わせることで凌いだ

「粘りますね。ではこれでどうでしょう?」
「(うわ、あれはマズいよ契約者!)」

盟主を囲むように八ヶ所で放電が始まる
精度よりも数を重視した同時攻撃に、アクマが焦る

「街の被害はなるべく避けるんじゃなかったのか?」
「これくらいしなければ貴方は倒せそうにありませんので」

そう答え攻撃を開始しようとした盟主を――

「どぉりゃあああああああああああ!!!」

――――弾丸のように突っ込んできた彼女の蹴りが穿った

"超人"篠塚瑞希。夫と肩を並べる契約者だった彼女は
元々優れていた身体能力が人間の限界を超え、ついに都市伝説と化した
その動きは音すらも置き去りにし、ソニックブームが身体を傷つける
それに対して彼女が見つけた答えが、契約都市伝説であり義妹である
篠塚文……都市伝説"座敷童"の境界を定め、結界を作る能力であった
身体と外の境界に結界を纏って装甲と為す……名付けて『結界武装』

この新技の嬉しい誤算として、結界の霊体すら遮る性質が上手く働き
彼女は実体のない都市伝説すら殴ることができるようになっていた
音速に迫った彼女の蹴りは盟主の胴体を消し飛ばし
盟主は苦々しげな表情のまま消えていった。恐らく撤退したのだろう

「悪い、助かった」
「いいっていいって!美弥が救助しなきゃ私も突っ込めなかったし」

篠塚瑞希の高速戦闘は周囲に被害が出やすい
さらにいえば結界を全身に纏うまで少し時間がかかる
そのため先に美弥達が駆けつけて被害者を救助し
装甲性能に優れた美弥だけが残って盟主を惹きつけることで
瑞希がより良いパフォーマンスを発揮できる環境を整えたのだ

「でさ、どう思う?」
「確かに盟主様だったが……様子がおかしいのは確かだな」

かつては怪奇同盟の主力として肩を並べて戦った身だ
あの頃の盟主と比べると、あまりにも攻撃的になりすぎている

「東の墓守……遠野さんに報告はするにしても、まあ今後やることは決まってるな」
「どんな敵が相手でも、街と人々の平和は私たちが守る!」
「ああ。それがヒーロー、そして怪奇同盟のやり方だ」

決意を新たにした夫婦は、夜の帳に閉ざされた路地裏から
仲間が待つ屋上へと跳び上がっていった。不運な被害者を家に帰すために


――――その路地裏から紙の鳥が静かに飛び立ったのを、見た者はいなかった

夏休みも半ばを過ぎたある日のこと
相生家に電話の着信音が鳴り響いた

「――――肝試し?学校で?」
『うん。真理ちゃんも来るよね?』

なぜ行くのが前提なのか。それよりちょっと整理させてほしい

「あのさ、学校って普通夜は施錠されてるでしょ」
『鍵が壊れて施錠できない場所が一階にあるんだよね』
「……監督の先生とか」
『いないよ』
「…………本気なのね?」
『真理ちゃんもしかしてこういうのダメなの?』
「いや、そういうわけじゃないけど」
『うーん、どうしても嫌なら来なくてもいいけど』
「まあできれば、あんまり行きたくないというか……」
『でも篠塚さんは来るって言ってたよ』
「行きます」
『じゃあ夜の11時集合だから』
「時間遅くない?」
『じゃあまたね』

電話が切れた。受話器を置いて、ゆっくりと息を吐く
…………あのバカを問いたださなければ
私は幼馴染を詰問すべく、飲み物を用意して部屋へ向かった

「で、どういうつもり?夜の中学校なんて明らかに危険じゃない」
「んー、それはそうなんだけどねー」

ベッドの上でゴロゴロしていた結が起き上がって座り直す
視線がコップに向かっているが、飲み物の前に回答が欲しい

「登校日があったでしょー?その時に集まって計画しててさー」
「ああ、草むしりの日に……それで?」
「私も最初止めようと思ったんだけどさ、全然聞いてくれないしー」
「普段一人のあんたがいきなり話しかけても、そりゃそうなるでしょ」
「いかんのいー」

頬を膨らませる結だがこれは自業自得だろう
完全な人ではない結は、人と距離をとりたがる傾向がある
人が嫌いだからではない。人ではない自分が人とどう接するべきか
至極真面目に思い悩んだ結果そうなったのである……不器用かっ!
もちろん話しかければ普通に答えるし、当たりが強いわけでもない

ところがここである要素が足を引っ張った。容姿である
結の母親である瑞希さんは十人中九人が美人と答える容姿で
ここに持ち前の明るさが加わり高校生時代男女問わず人気があった
……という風に美弥さんからは聞いている。その結果として
仲良くしていた美弥さんは同級生から睨まれたとか。これはたぶん事実なのだろう

結も母親の容姿の良さをしっかり受け継いでいる
可愛いというより美人という言葉が似合う顔立ち
同年代と比べて細身でスラッとした体型
加えて人に踏み込まず人に踏み込ませずという立ち回り
この結果、私の幼馴染は学校ではまるで『孤高の花』であるかのように
扱われている……というか周囲も接し方に困っているようだ
色々探ろうとしてものらりくらりと誤魔化され
分かることといえば私の幼馴染であり仲が良いということくらいらしく
であれば接触するのは私に任せて遠巻きに眺めるほうが
よほど気が楽なのだろう。いい子なんだけどなぁ、趣味以外

「だからねー、止められないなら一緒に行って万が一に備えようかなって」
「そういうことか……というかそういうのは私にも教えておきなさいよ」
「真理ちゃんまで誘われるとは思ってなかったんだもん」

どうやら気を使ってくれていたらしい
確かに私も好き好んで深夜の学校になんて行きたくはない
が、それはそれとしてみんなの中に結を一人放り込むのも……うん

「とにかく今回は私も参加します」
「うん!みんなと真理ちゃんは私が守るからね!」
「はいはい」

とはいえ本当に何かが起これば私ばかり守るわけにもいかないだろう
私も万が一に備えなければ。結に飲み物を渡しながら、心の中で呟いた

そして肝試し当日、夜の11時
私は電話をかけ誘ってきた友人の両肩を掴み揺さぶっていた

「半数以上!ドタキャンって!おかしいでしょ!!」
「あはは、ごめんごめん!まさかここまで集まりが悪いとはねー」

首とポニーテールと自己主張の激しい胸を揺らしながら彼女が苦笑する
というかブラジャーはちゃんと着用してほしい。後ろの男子絶対困ってるから
当初は私と結を含め、10人で行うはずだった肝試し
蓋を開けてみれば、集まったのは私たちと彼女以外は男子一人だけ
他の6人はといえば、2人は親の目を盗めず外出できないということだが
残り4人はゲームがしたいとかテレビが面白いとかで来ないそうだ
そりゃあ同級生に危ないことはしてほしくないが、これはあんまりだろう

「ま、元々適当に夜の学校見て回って帰るだけなんだしさ。気楽にやろうよ」
「むしろこのまま解散でいいんじゃないかと思うんだけど……」
「えー、せっかく来たんだから真理ちゃんと肝試ししたーい」
「ちょっと結?」
「俺も、来たからにはやりたいって思うんだが……相生さんは嫌なのか?」
「…………あー、もう!分かったわよ!行けばいいんでしょ行けば!」
「そうこなくっちゃね!じゃ、ついてきて。鍵かかってないとこ案内するから」

そう言って彼女が近くの低いフェンスを乗り越えていく
続いて竹刀袋らしきものを背負った男子がフェンスを越えた
最後に大きめの鞄を抱えた結とウエストポーチを確認した私が越える、と

「結」
「うん」

フェンスを越えると空気が明らかに変わったように感じる
結も同じように感じたようで、隣の彼も違和感があるのか眉をひそめていた
もっとも彼女だけは立ち止まった私たちに首をかしげていたが
どうやら予想通り、肝試しは何事もなしとはいかないようだ……

「よし、ちゃんと開いてる……ところでさ」
「なに?」
「せっかく一緒に肝試しやってるんだし、改めて自己紹介でもしない?」

校舎に侵入可能な窓を確認していた彼女がそう言った
といっても、結の方に視線を向けているので、主に結のことが気になるのだろう

「なら私からやるわ。相生真理。結の幼馴染よ」
「えっと、篠塚結。真理ちゃんの幼馴染だよー」
「……真面目にやってよ!」
「だっていまさらでしょ自己紹介なんて」

仮にも同じクラスで数ヶ月一緒だったのだ
懇切丁寧に自己紹介をするほうが変だろう

「あー、じゃあ次は俺が。半田刀也(はんだとうや)だ。怪談とか大好きだ」
「ぐぬぬ……潮谷豊香(しおたにゆたか)!私も怪談好き!」
「あ、私もー」
「私も嫌いじゃないわ」
「この便乗犯!!」

どうしろというのか

「紹介してよ!謎めいた篠塚さんの真実の姿ってやつを!!」
「ないわよそんなもの」

例のヒーローごっこはむしろ仮初の姿なのでウソにはならない
そして結は尻尾が生えたりもするが、紛う事なく人間だ
ならば普段見せている姿もまた真実の姿。つまり話すことはない

「く……ま、まあそれは置いておいて。ここから校舎に入れるわけよ」
「ならさっさと行きましょ。早く帰りたくなってきたし」
「真理ちゃんに同意ー」
「あー……俺も長居はしたくない、かな」
「あんたたち盛り上がり悪くない?!」

いやだって、ねえ?

「とにかく入るわよ!ふっ……ほら、さっさと入って入って!」
「はいはい。よっ、と。ありがと結」
「お安いご用だよー。よいしょ」
「内履き下駄箱に置きっぱなしなんだよな……っと」
「よっし、じゃあ出発!……まずは玄関ね」
「おう、助かる」

豊香が意気揚々と先頭に立ったところで、私と結と彼が窓を振り返る
……校庭に墓石が立ち並び、土の下から青白い手が伸びているのが見える

「"墓地を埋め立てた学校"ってことね」
「やっぱすぐ帰った方がよかったか……?」
「なんとかなるよ。ね、真理ちゃん!」
「いやあんたは大丈夫だろうけど……えーっと、半田君は?」
「一応付いてきてもらってる。ほらアレ」
「どこ?……ああ、"テケテケ"か。戦闘は?」
「俺はともかく彼女はそれなりにできる方、だと思う」
「うーん……じゃあパパッと終わらせたほうがいいわね。一応近くに呼んどいて」
「わかった」
「ちょっとー!?なんでついてこないのよ!!」
「はいはい。今行くから」
「……なあ、潮谷さんさ」
「私と結に聞かれても分からないからね」

雰囲気的に(あと結の嗅覚曰く)彼女も契約者のはずなのに
緊張感がなさすぎではないだろうか。鈍感なのか大物なのか……
なんにせよ、今はこれ以上の厄介事が舞い込まないことを祈るばかりである

ダメでした。何故か開いていた玄関から"ゾンビ"っぽいのがなだれ込んできた
いくらなんでも防犯がザルすぎるでしょ?!

「いやあああああこないでええええええええ!!!?」
「豊香邪魔!ひっつくな!結、頼んだわよ!!」
「ああ、任セロ」
「篠塚さん顔怖っ?!変身系か!!?」
「危ないから刀也さんも下がってください!ここは私が抑えます!」
「でもテケテケ、この数は……!」
「問題ない。俺ダけデ十分ダかラ、テケテケハ反対側の警戒を頼む」
「えっ?!でも刀也さんのご友人を危険に晒すのは」

結を説得しようとしたテケテケの頭上をビュンと影が横切る
結の背中側から黒い鱗に覆われた長い尻尾が伸びて死体の群れに振るわれたのだ
迫ってきた死体の群れが紙屑のように元いた方へ吹き飛ばされていったのを見て
半田君とテケテケは呆然としているようだ。まあ無理もないが……

「ドうシた?一階に留まルのハ不味ソうダ、二階に上ガルゾ」
「いやいやいや!えっ、なに、篠塚さんそんなに強かったのか?!というか声が違う!」
「結は基本週六で都市伝説退治しに行ってるわよ」
「えっ。私と刀也さん週末くらいしかそういうのやってないんですけど……」
「のんきに会話してないで篠塚さんの言う通りに逃げよう?!」
「じゃあ早く立ってよ」
「ごめん真理ちゃん。腰抜けたから担いで」
「無茶言わないでよ。半田君、手伝ってもらっていい?」
「お、おう。で、どうやって運ぶんだ?」
「とりあえず脇に腕を通すように後ろから抱えて。私が足持つから」
「分かった……テケテケは先に階段を登って警戒してくれ」
「分かりました」

半田君が指示を出すとテケテケが階段を駆け上っていった
結の方は……うん、安定して追い払ってる。とはいえ早く上に行こう


「ところで半田君」
「なんだよ」
「たぶん豊香の胸を触ることになると思うけど私が許可する。思いっきりやれ」
「はぁ?!」
「ちょっと真理ちゃん!!?」
「下手に遠慮して力抜いたら落としかねないでしょ。どうせ減るものじゃないし」
「減るよ?!心の中の大切な何かがゴリゴリ削れちゃうよ!!?」
「…………あ、ダメだ。触らないようにすると思ったより力入らねえ」
「でしょう?というわけで豊香。覚悟決めなさい。緊急事態なんだから」
「うー…………や、優しくしてね?」
「いや落とさないようにしっかり持ってね?それじゃそろそろ行くわよ」
「わ、分かった……よっ!」

半田君と二人がかりで発育良好な分、重量のある豊香を抱えて二階に上がる
豊香はその間ずっとこっちを睨んでいた。気持ちは分かるけど必要だったのだ。許せ
さて二階は……ひとまずゾンビに先回りはされていないようだ

「二階に異常なし!」
「分かった、スグ向かう!」

結に声をかけてしばらくは鈍い音が鳴り響いていたが
やがて静かになったかと思うと、顔や喉に黒い鱗を生やした結が上がってきた

「ゾンビは?」
「殴っていたラ消えた。数は多いガ随分と脆いようダ」
「とはいえまた出てきそうよね……どうしたのそわそわして」
「着替えたい」
「……手短にね」
「ああ」

結が鞄を開けていつものトレンチコートと覆面を身に着け始める
こんな時でも格好は気になるのか。と思っていると豊香が話しかけてきた

「みんな……契約者だったのね」
「気づいてなかったの?」
「全然。って、もしかして真理ちゃんは分かってたってこと?」
「結もね。あと半田君もでしょ?」
「まあ、そうだな。流石に何と契約してるのかは分からないけどさ……」
「そんなの私と結だって知らなかったわよ」
「えぇー、なんでみんなそんなに分かるの?」
「雰囲気かな」
「というか豊香が鈍感すぎるんじゃない?」
「そんなバカな」

心なしか肩を落とした様子の豊香だが、すぐ顔を上げて話を続けることにしたようだ

「私の契約都市伝説は"蛤女房"よ。飲むと回復するポーション的なものが作れるわ」
「えっ、尿から?」
「違うわよ!手に湧かせたりもできるの!」
「……も、ってことは尿自体に効果はあるのね」
「の、ノーコメント……」

その反応はもう答えを言ってるようなものだと思う
それにしても回復系は珍しいと聞いた覚えが……となると

「所属は?」
「しょ、所属?」
「あ、俺とテケテケはフリーだから。今のところ困ってないから"組織"のは断った」
「組織のは、っていうと……"首塚"あたりにも接触されてる?」
「前に危ないとこ助けられて名前聞いたくらいだよ。よければ来るか?とは言われたけど」
「助けられたといえばこの前の、かめんらいだー?の方々は何者だったのでしょうか?」
「フリーだったのかもな。ライダーって都市伝説扱いなのかって驚いた……相生さん?」
「……ねえ、そのライダーってショートヘアの女の人か、黒い犬と一緒にいなかった?」
「え?ああ、確かにどっちもいたけど。もしかして知り合いなのか?」
「それ、"怪奇同盟"って集団に所属してる人。というか結のお父さんよ」
「マジかよ……世間は狭いってこういうことなんだな」
「でも怪奇同盟というのは聞いたことがないですね?」
「トップが不在で実質解散状態らしいわよ。良かったら今度会いに行く?」
「本当か!色々話を聞いてみたかったんだよなー!」
「よかったですね刀也さん!」
「ねえ待って。私が置いてけぼりだから!所属ってなに?!組織?首塚?なんのことよ!?」
「潮谷さん……」
「豊香どっちも知らないんだ……」
「その哀れむような感じやめてくれる!?」

いやまあ、実際のところ知らない可能性はあってもおかしくない
契約したとして目立つようなことをしなければ目をつけられることもないはず
半田君は積極的に都市伝説退治をしているようだから接触しやすかったのだ
しかし豊香の都市伝説は戦闘向きではない。表立って動いたことがなかったのだろう
逆に言えば表立って動いていたならば既にどこかに勧誘されていなければおかしい

「そもそも豊香、どうやって契約したのよ」
「昔海水浴に行った時、砂を掘ってたらすごく大きい貝を見つけたの
 それを使って遊んで最後に海に投げたんだったかな……で、最近になって
 夢の中に女の人が出てきて、実はあの時契約してましたって色々説明された」
「なにそのパターン初めて聞くんだけど……待って、昔っていつ?」
「えーっと5年前かな」
「小2から?よく襲われなかった、って豊香は小学校卒業後にこっち来たんだっけ?」
「そうだけど……襲われるってどういうこと?」
「契約者は都市伝説に襲われやすいって聞いたことない?」
「初耳なんですけど?!」

たぶんその夢の女の人、蛤女房なんだろうけど色々抜けてそうな気がする
あと半田君とテケテケは小6の11月頃に出会ったそうだ。意外と最近だ
そんな話をしていると着替え終わった結、もといゴルディアン・ノットが近づいてきた

「待たセたな。ソレデ、ここかラドうやって脱出すル?」
「一番早いのはあんたに窓から運んでもらうこと。でも気になるのよね、この状況」
「ねえ篠塚さんなんでそんな格好してるの?」
「俺もソレは気になル。ソもソも正面玄関の扉ガ開いていルのハ、おかシいダロう」
「確かに妙だよな。普通は施錠されてるはずだし」
「そのマスク手作りとか?ねえ篠塚さんってば」
「何者かが既に校舎に侵入しているということでしょうか……?」
「可能性はあるわね。ゾンビの出たタイミングからして、私たちとほぼ同時だったのかも」
「半田君とテケテケちゃんは気にならないの?気になるでしょ?」
「そういえばゾンビたちが出始めたの、俺たちが入ってすぐだったよな」
「しかも彼らは普段施錠されている玄関から入ってきた。開いてると知っていたのよ」
「奴ラハ我々デはなく施錠を解いた侵入者を追ってきた。ソう言いたいのか?」
「本当に可能性でしかないけどね。でもこれが事実だとすれば……」
「無視しないでよ!!」

豊香が地団駄を踏んでいるが、大事な話をしているのでそういうのは待ってほしい

「私たちの選べる道は二つ。このまま帰ること。もう一つは調査をしてから帰ること」
「俺とシてハ、真理にハスグにデも帰ってほシいところダガ……」
「あれ、篠塚さん真理ちゃんの呼び方変えた?」
「冗談でしょ。私一人で帰宅するくらいならあんたと一緒にいる方が安全よ」
「確かに篠塚さん強いみたいだからな」
「ゴルディアン・ノット、ダ」
「あー……今はゴルディアン・ノットだから、ってさ」
「どういうこと?」
「ああ、ヒーローネームってことか!分かるよそういうの!」
「まあ長いし適当に省略して呼んであげてくれる?」
「えっと、じゃあ……ゴルディーさん?」
「hmm......ゴーディ、デいい」
「おー!愛称もかっこいい!」
「えー、そう?」

男子と結のセンスについていけないのは喜ぶべきなのだろうか
もっとも、ヒーローネーム自体に首をかしげている豊香より染まっている自覚はあるが

「それより刀也さん、私たちは……」
「おっと、そうだな……といってもここまで来て引き下がるのもかっこわるいだろ」
「そうですよね!それなら私は、全力で刀也さんを助けるだけです!」
「ありがとうテケテケ。頼りにしてるからな」
「お任せ下さい!」

そうこうしているうちに半田君は覚悟を決めたようだ
となるとあとは一人だけだが……

「豊香に選択肢はありません。ついてきなさい」
「ひどくない?!」
「逆に聞くけど一人でどうやって脱出するつもりなのよ」
「…………私も連れて行ってください」
「よろしい」

全員の意思は固まった。なら次にやるべきことは――――

「後ろ三秒後行くわよ!3、2、1、ゼロぉ!!」

後方に放り投げた"小玉鼠"が破裂し爆風と共に血肉を撒き散らす
体勢の崩れた"動く人体模型"をテケテケが体当たりで空中に浮かすと
半田君が鉄パイプをフルスイングして叩き壊す。戦い慣れを感じるいい連携だ
手の中に戻った小玉鼠を今度は何も言わず前方のゾンビの群れへ放り込む
ゴルディアン・ノットも心得たもので布紐でそっと落下位置を調整してくれる
群れの中に小玉鼠が落ちたのを見て即座に爆破。ゾンビがいくつか消えたようだ

「ぎゃー!!肉片飛んできたー!!?」
「安心して。小玉鼠の肉片はしばらくすれば消えるから」
「しばらく私このままなの?!」
「戦ってもないのにごちゃごちゃ言わない!……にしても、多いわね」

言ってるそばから後方にまた新しい人体模型がやってくる
幸い"人骨で作られた骨格標本"も人体模型も同時に1つずつしかいられないようだ
後方にゾンビは回り込んでいないので敵が2体だけなのは助かる
なにせ前方では階段を上がってきたゾンビの群れが渋滞を起こしているのだ
ゴルディアン・ノットも奮闘しているがなかなか数が減ってくれない
二階から上は一通り調べた。もう一階しか手がかりを得られそうな場所は残っていない
それなのにいざ降りようとしたら上に向かって溢れ出してくるゾンビたち
慌てて二階廊下に下がったのが裏目に出た。強引に通るべきだったのだ

「手ガ足リないな」

ガシャリとゴルディアン・ノットの胴体に巻きつく鎖が音を立てる
しかしそれに続く幼馴染の呟きを私は否定する

「進展はしているわ。無理をする必要はないでしょ」
「時間ハ有限ダゾ」
「でも手札を切るには早すぎる」
「……なラ、ペースを上ゲルとシよう」

ゴルディアン・ノットの腕や体に巻きついていた布が、縄が、さらに鎌首をもたげる
それは糸と共に紡がれた女性の負の感情から、蛇の姿に変じた帯の妖怪
拡大解釈により蛇の異名である"朽ち縄"をも操るようになった彼女の契約都市伝説
"機尋"――繊維を束ねて形作られた無数の蛇が、主たる女の心の赴くままに牙を剥く
まあ、所詮は布と縄なので牙はないのだが……数の暴力はそれだけで脅威となりうる

長さすら自在の無数の布と縄がゾンビを締めつけ、時に四肢を千切って捨てる
ゾンビの消えるスピードは早まったがゴルディアン・ノットの動きは鈍ってきた
いくら人外とはいえ無数の蛇を操りながら肉弾戦というのは難しいのだろう
ここが踏ん張りどころだと自分の心を叱咤して小玉鼠をゾンビに放る
できるだけ爆発の威力を上げ、より効果的に倒すため群れの奥へ向かって投げる
正直、投げる腕が辛くなってきたがここで私が休むと他の負担が増えるわけで
結局のところ無心で投げて起爆するしか私にできることはないのであった
だから豊香。投げるのに邪魔だから話しかけたり縋りつくのやめてくれないかな?

「刀也さんあれ!」
「おいおい、マジかよ……」

豊香を軽く蹴っ飛ばして引き離していると後ろで動きがあったようだ
人体模型と骨格標本、その後ろから近づいてきたのは……

「"歩く二宮金次郎像"……しかも石像じゃなくて青銅製か」
「真理ちゃん真理ちゃん!これマズいんじゃないの?!」

お荷物状態の豊香に指摘されるのは癪だが、実際状況は悪い
後ろは半田君とテケテケに私の援護があってなお拮抗していたのだ
ここで敵の増援が現れたということは……このままだと後ろが崩れる
どうする?進むことも引くこともできない。足りないのは、戦力……

「やるしか――――」
「――――お前達、伏セていロ!」

ゴルディアン・ノットの声に思考の海から意識が浮上する
見えたのは前方から後方に伸びる、複数の布と縄……それが向かう先は

「早く伏せる!」
「ふぎゃっ?!」

ハッとして状況を分かっていない豊香の頭を掴み、強制的に伏せさせる
廊下にどこかぶつけたらしく痛そうな音と悲鳴が聞こえた。ごめん
チラッと後ろを見るとテケテケは伏せ、半田君は横に飛び退いていた
そしてその奥、布と縄で縛り上げられた二宮金次郎像が持ち上がり……
ゴウッと音を立てて私たちの頭上を通過する。その先にはゾンビの群れ
まるでボウリングでもしているかのようにゾンビという大量のピンが
二宮金次郎像という大質量のボールに弾かれて光の粒へと変わっていく

「走って!階段まで!!」

叫ぶと同時に豊香の手を引っ張って走り出す
廊下からゾンビが一気に減った今が一階に降りるチャンスだ
まだ残る少数のゾンビを消していくゴルディアン・ノットの横を抜けて
階段で未だにひしめき合っているゾンビ達に小玉鼠を放り投げる

「これで……どうよ!」

着弾と同時に今夜一番の威力で起爆。耳に痛い破裂音と
ビリビリと空気を震わせる爆風が階段に空間をこじ開けた

「よし、ゴーディは先に降りて蹴散らして!後は私がやる」
「心得た」
「半田君は豊香をお願い」
「分かったけど、相生さんは?」
「残りを足止めするわ。早く行って!」
「でも……」
「刀也さん行きますよ!」

全員が横を通り抜けたのを確認して小玉鼠を放り、爆破する
集まりかけていたゾンビと人体模型、骨格標本が
まとめて吹き飛んだのを確認して私もみんなの後を追った

「おい、アレなんだ?!」

半田君の声に一階廊下の奥へと目を凝らす
ひしめくゾンビの向こうに白い巨大な何かが暴れるのが見えた

「あの辺りは……なるほどね。ゴーディ、白いのに向かって!」
「分かった!」

ゾンビを蹴散らすゴルディアン・ノットの背中を追うように
肩で息をする豊香を連れて半田君やテケテケと共に移動する
後ろから追いつこうとするゾンビを小玉鼠を散らしていると
遠目で見えていた白いものの姿がハッキリと見えるようになった

「なにこれ……紙で出来た巨人と、ゾンビが戦ってる?」
「いや頭に角がある。巨人というより鬼じゃないか?」

豊香と半田君が何か言っているが、たぶんコイツは……

「ゴーディ!」
「分かっていル」

ゴルディアン・ノットの腕から布と縄が飛び出し鬼を拘束する
振りほどこうとする鬼を、ゴルディアン・ノットが尾で打ち据えた
そして私は……

「二人とも伏せて!」
「へぐぅ?!」
「潮谷さん?!」

豊香の後頭部を掴んで強引に伏せさせるのと同時に
小玉鼠を鬼とは反対の方向に投げつける。そこには

「紙で出来た鳥?!」
「鼻が……鼻が潰れたぁ……」
「テケテケさんお願い!」
「分かりました!」

突撃するも小玉鼠に撃ち落とされた鳥に
テケテケが組み付き床に叩きつけると、鳥はバラバラの紙片になった

「……こレデドうダ?」

鬼の方を見ると、ゴルディアン・ノットが頭部に掌底を叩き込んだところだった
頭が爆散するように吹き飛び、体も後を追うように紙片へと変わっていく

「よくわかんないけど……終わった、のか?」
「終わってない終わってない!だってほらゾンビが!」

豊香の言う通りゾンビが徐々に包囲を狭めて迫ってくる
だが……

『持ち場に戻れ』

威厳を感じる声がすぐ近くの扉の中から発せられる
同時にゾンビは私たちに興味を失ったように踵を返して歩いて行った

『下校時間は過ぎているぞ。君たちも早く帰りなさい』
「……ど、どういうこと?」
「もう肝試しは終わりってことよ」

混乱している豊香の手を引っ張って玄関の方へ歩いていく

「あれ、校長室だよな?てことはあの声は……」
「"歴代校長の写真が動く"とかそのあたりだと思うわ」
「校長だから学校の都市伝説に命令できる、ということでしょうか?」
「たぶんね。何かしら命令出してるのがいそうだな、とは思ってたから」

半田君とテケテケに受け答えしながら考える
二階での襲撃が執拗だったことから、都市伝説に司令塔……
何かしら命令を出している存在がいる可能性は考えていた
問題は私たち以外のもう一方の侵入者だ
紙で出来た鬼と鳥。あれは恐らく――――

「なぁ真理」
「ん、なに?」
「肝試シハ楽シかったか?」

覆面の下に表情を隠して冗談を言う彼に、私も意味深な笑みで言葉を返す

「ま、あんたがいたから退屈はしなかったかな」

                                      【了……?】

――中学校から少し離れた電柱の上に人影があった

「で、陽動の"式神"は両方とも潰されたと」
『ああ。でもまぁ、問題ねえよ。肝心の仕込みは済んだんだろ?』
「ひっひっひ……当たり前だよぉ。儂にかかればちょちょいのちょいさね」
『相変わらず気味の悪い話し方になってるな……しかし見られちまったか』
「消すかい?」
『消すまでもねえよ。それより次だ』
「そうかい。やれやれ、婆使いが荒いねえ」
『だから俺より年下だろうが……』

その言葉を最後に電柱の上から人影は消える
この街の深い夜闇に紛れて、今日も誰かが策謀を巡らせる――


                               【第四話 了】

某都市の空港で、一人の女性が電話をかけていた。

「もしもし篠塚さん?オレオレ、相生澄音。さっき帰国したんだわ」

怪奇同盟の一員、相生澄音。レミングという鼠の群れを手足のように操る
都市伝説"死の行軍"の契約者である。彼女は夫であり戦友である相生森羅こと
"相対性理論の理解者は世界に三人"という都市伝説の契約者と共に世界を巡り
各地でフリーランスの契約者として都市伝説と戦う旅をしていた
もっとも名目上は各地の遺跡の発掘を手伝う、考古学者としての仕事なのだが

「真理は元気?え?ああ……いやいやそんな、迷惑じゃないって。たぶんな」
「真理がどうかしたのかい?」
「あ、ちょっとゴメンな。……おいもやし、話は後にしろよ」
「苛立つとその呼び方になるのやめてくれない?……しかし結ちゃんと同棲中とはね」
「くっそ教える前に知ってるのほんと腹立つ!……あー、お待たせ篠塚さん」

話を再開した澄音に背を向けて、森羅は同行者と話を始める

「でも本当にいいんですか?寄り道に付き合わせてしまうことになりますが」
「久々の学校町ですからね。できれば固まって動きたいのですよ」
「私も妻に同意見です。用心するに越したことはありませんよ」

相生夫妻と同行するのは向こうの空港で再会した時任開司と時任夜空……
"ソニータイマー"の契約者と、"サンチアゴ航空513便事件"の契約者だ
彼らも怪奇同盟の一員であり海外(主にアメリカ)の情勢を
調査するという名目で若い頃から日本と海外を往復している同志であった
一応表向きは日本と海外両方で輸入雑貨を扱った商売をしているらしいが
二人共意味深な笑みを浮かべて黙ってしまうので詳しいことは森羅にも分からない
森羅の能力は耳で聞いた言葉に反応するので、彼らも分かっていて黙るのだろう
森羅自身も深入りするつもりはさらさらなかった。命に関わりそうなので

「それじゃあ、それまで真理をよろしくお願いします。はい、また後日……ふう」
「話は終わったかい?」
「ああ、終わったよ。しっかし久しぶりに真理の顔が見れるなあ!」
「その前に仕事だけどね」
「……おう」
「じゃあ、行きましょうか。まずは食事からかな?」
「ええ、そうしましょう。いい時間ですからね」
「寿司食おう寿司!」
「澄音、落ち着きなよ……寿司でいいですか?」
「構いませんよ。私も食べたいですし。夜空は?」
「私も寿司は久しぶりなので。楽しみです」
「じゃあ適当な回転寿司でも探しましょうか。それでいいよね?」
「おう!早く寿司食おう!」

子供のようにはしゃぐ妻を見て、森羅は苦笑しながら店を探し始めた。
彼らが学校町に入るのは、もう少し先の話である――――

ある日の逢魔時、学校町東区にて

「やってきました学校町!でもなんか嫌な感じがするような?」

首をかしげたのは匂い立つような美しい女性
男なら生唾を飲み込むであろうメリハリのある肢体を包むのは
艶めくレザーらしき質感の黒いスーツとスカート、そして黒のハイヒール
豊かな金髪は西日を浴びて第二の太陽であるかのように輝いている
赤茶色の瞳でキョロキョロと周囲を見渡す彼女の背後で
"逢魔時の影"がゆっくりと身をもたげ、白磁のような首に手を伸ばすが

「ほいっ」

一閃。女性の手に現れた鞭が目にも止まらぬ速さで影を打ち据えた
襲いかかる影の集団をまるで舞い踊るような動きで躱しつつ
女性は口笛を吹きながら右手の鞭を振るって影を散らしていく
やがて日が落ちきる頃には、彼女を襲った影の集団は片付けられていた

「此処も相変わらず……なのかな?生身じゃなかったのが残念
 ま、今は元気いっぱいだし。じゃなかったらこんなとこ来ないけどね」

一年ほど前の話だ。中東のとある紛争地帯で
睨み合う二つの勢力の大部隊が一夜にして両者壊滅という事件があった
彼らは命に別状こそないものの生気を失い数週間寝込むことになったという
この地域を監視していたある組織はこれをある種の都市伝説の仕業と断定
彼らを"捕食"したとみられる存在を危険視し同業組織に警鐘を鳴らした
そしてまた別の悪魔祓いを専門とする欧州の組織が
事件の犯人と思われる都市伝説をルーマニアで補足し討伐にあたった

――――だが、この討伐作戦はあろうことか失敗した

彼らの誤算は二つ。討伐対象が近年発生した若い個体であると見誤ったこと
そして敵を侮った結果、戦力を逐次投入してしまったことである
作戦の失敗によりこの組織は内部の腐敗が浮き彫りとなり解体され
その人員は他の集団、組織へと吸収されたらしいが、これはまた別の話である

さて悪魔祓いを片っ端から返り討ちにしていった犯人がどうなったかといえば
無事に欧州から逃げおおせて現在は極東のとある街を訪れていた
彼女がいまだ無名でありながら悪魔祓いをあしらえるほど強くなったのも
特定の界隈では魔境、特異点と忌まれる彼の地に一時期滞在していたことと
まったく無関係というわけでもないだろう

そう、彼女は学校町に帰ってきたのだ。よりにもよってパワーアップして
彼女こそは名無し宿無し文無しの三重苦を抱える永遠の放浪者
戦場を無に返す平和と性愛の使者。そして獄門寺在処のかつての敵

「と・り・あ・え・ず……久しぶりにアメちゃんに会いにいきますか!」

女性の瞳が赤く輝いたかと思うと、その背中に蝙蝠のような黒い羽が生える
かくして夜の空に一人の悪魔が飛び立った
彼女の今の目的はただひとつ。かつての旧友との再会である

"サキュバス"……新たなトラブルメーカーが街を訪れたことを
皆が(主に獄門寺在処が)知る時は、そう遠くなさそうである――――


                            【了】

北区にある小さな雑貨屋。
店内にはフランス人形やアジアン雑貨、奇妙な形のオブジェなどが雑然と並んでいて、店と言うよりは物置という印象だ。
事実、店主が趣味で収集したり買い取ったりしたものを並べているため物置と呼んでも間違いではない。

「来たぞー、爺」
「いらっしゃい葉ちゃん、夢魔ちゃん」
「うぃーす」

引き戸に取り付けられたチャイムを派手に鳴らしながら入店する葉、そして静かに続く夢魔。
葉は手ぶらなのに対し、夢魔は唐草模様の風呂敷包みを手にしている。
夢魔は風呂敷をカウンターに置いて広げると、そのまま店内を物色し始めた。
爺と呼ばれた店主は広げられた荷物を一つ一つ手に取り整理する。
それらは木の蔓、糸や羽根で丁寧に作られた
御守りだった。

「最近何か変わったことはあったか?」
「そうじゃなあ、近所の畑が荒らされとった事くらいか……後は犬がうるさいとか……」

葉と店主が雑談をしている時、夢魔は店内に飾ってある人形を見ていた。
古びてはいるが、よく手入れのされたビスクドールだ。

「……」
「…………」

夢魔はただじっと、人形の透き通るような碧眼を見ている。

「………………」
「……………………」

正面から、まっすぐに、覗き込むように。
その視線に堪えきれず、人形が、目をそらした。
夢魔はそらした先に回り込んで、なおも覗き込む。
人形の顔は変わっていないはずなのに、最初よりも表情がひきつって見える。

「葉、葉。このビスクドール、シャイガール」
「そうか、ならそれも持ってこい」

店主との世間話は終わったらしく、葉は買い物をして会計を済ますところだった。
御守りを入れていた風呂敷で、今度は買った物を包んでいく。
人形も隙間に詰め込む。

「むぎゃ」
「渡したやつ、大きいのは店先に吊るすやつだからな。古いのは燃やしていいから」
「何かすごい重そうなんだけど、あたしが持つの?」
「いつもすまないねぇ、御守り、わりと売れてるから」
「ねえ、あたしが持つの?」
「御守り以外売れてるの?」
「ねえったら」

結局、夢魔が荷物を持って店を出た。

店を出て山の方へと、道なりに歩く二人。
この辺りは、学校町の他の場所に比べて自然が多く人通りも少ない。
だからと言ってまったく無いわけでもないので、夢魔は翼も角も隠したままで、飛ぶなんてもっての他である。
しばらく進んでいると、三差路に差し掛かった。

「よし、夢魔。少し待ってて」
「早くしてねー」

そういうと、葉は道の脇にある岩へ近づいた。
岩には文字が彫ってあり、それが道祖神であることを示していた。
子孫繁栄や、厄を遠ざける目的で設置されるものである。

「最近は信仰する奴も少ないからなぁ。片付けとかないと」
「荷物重いよー」

愚痴をこぼしつつ、片方は掃除、もう一方は待ちぼうけ。
夢魔に関しては元の膂力から考えて、実際に重い訳ではなく気分の問題であり、要するに退屈なのだ。

しばらくした頃、夢魔の後ろから犬の鳴き声がした。
夢魔が振り向くと足下に黒い色の小型犬がいた。

「キャンキャン!」
「ん? 野良か? よーしよし」
「夢魔ー、あんまりそれに構うなよー」

掃除しながらも注意を促す葉。
それを聞き流して、夢魔は犬を撫でる。
犬も嬉しいのか、しっぽを振っている。

「付き纏われるぞー」
「ねーあんな意地悪言っ……ぅおう」

犬の違和感に気付いて、一歩離れた。
その犬の足が、全て後ろ向きになっていたのだ。
まるで足を取り外して、180度回転させてから、また取り付けたように。
しかしその犬は、まるで普通の犬のように、鳴いて飛び跳ねている。

「森へお帰り、こっちはお前の場所じゃない」
「キャンキャン!」

葉に促され、犬はしばらく駆け回った後、山の方へ駆けていき、茂みに潜り込んで見えなくなった。

「……心臓に悪い」
「ああいうのが来ないように、これが設置されてるんだが……みんな忘れてるんだ。
  まぁ今のは弱ってるみたいだからすぐに消滅するだろう。
  普通は山の主とかが、変なのが発生したり山の外に出たりしないようにしてると思うんだが……」
「居ないんじゃないの?」
「山に流れてる力を見る限り、居ない訳ではないだろう、居ないならもっと枯れてるはずだから。
  上手く管理出来てないのか、あるいは別のところから地脈が流れてるのか……よその山だから、その辺は分からんし管理もできん」
「ふーん」
「用事もすんだし早く帰るぞ」
「じゃあ荷物……」

夢魔の返事を聞く前に、葉はすたすたと先に行く。
夢魔の呟きは空しく風に流されていった。


昼と夜とが入れ変わり、そして混じり合う逢魔時。
夕焼けによって赤く染められる風景。
影は濃くなり、内に含まれるものを覆い隠していく。


「都市伝説……いや、契約者ですね」
「こんばんは。今日は夕焼けが綺麗だね」

半透明の女性、誰が見ても幽霊と判断するであろう存在に声をかけられ、
しかし詠子は楽しそうな微笑みを浮かべたまま、まるでご近所に挨拶する調子で応えた。

「都市伝説は、全て排除しなければ」
「えーそうなんだ。わたしはみんな仲良くしてほしいと思ってるから、それは困っちゃうな?」

女性が腕を詠子へ向けて突き出す。
腕の先からは放電が始まり、それと共に殺気が膨れ上がっていく。
それを感じていないのか、もしくは気にしていないのか、詠子の微笑みを浮かべたまま変わらぬ調子で問いかける。

「ふふっ、じゃあ、わたしとちょっと遊ぼっか?」
「都市伝説の戯れでどれ程の犠牲が出たことか……!」

詠子は後ろへ跳んで、雷撃の発射直前に同じ姿形の4人に分裂したが、1人は直撃して消滅した。
3人はそれぞれ距離を取り、左右に散った2人は女性の上空へ向けて投石する。
ちょうど石が女性の真上に差し掛かった時、それらは真下へと進路を変えて高速で落下し始めた。
しかし石は女性の身体をすり抜けて地面と衝突し粉々に砕け散り、女性には傷ひとつ与えられていない。

「やっぱり透けちゃうね。ならこれはどうだろう?」

詠子はバッグから取り出した光線銃の引き金を数度引いた。
幾つもの光線が女性に向けて放たれるも、接触した瞬間に光線は消滅し、投石と同じく何の効果もなかった。

「光線銃……組織の黒服ですか。都市伝説の管理などする前に全て消し去ればよいです」
「あれ、もしかして吸収してるの?」
「ねえ、どうしようか」
「”トビオリさんっ”」
「これ幽霊にも効いたっけ」

女性が周囲に目を向けた時、いつの間にか詠子の数は10人以上に増えていた。
相談したり、移動し続けたり、逢魔時の影の相手をしたり、それらの中で目に止まったのは、目を瞑り大きくジャンプしている個体だった。
タンッと地面を強く踏む音が響き、その余韻が消え去る前に女性は反射的に複数の雷撃を飛ばし、数人をまとめて消し飛ばした。
音が響いた瞬間に、その個体が一番危険だと感じたからだ。

「”トビオリさん”」
「あ、弾切れちゃった」
「”トビオリさっん”」
「”トビオリさんっ”」
「羽虫のようにわらわらと、切りがない……!」

しかしいくら消しても詠子の数は減らない。
消えた分だけ分裂したり、物陰から現れたりして増えているからだ。
さらに攻撃や撹乱、何もせず空を見上げていたりとバラバラに動き、それぞれのタイミングでジャンプを繰り返す。
撃ち漏らした個体の着地音が、周りの音に紛れてしまう小さな音にも関わらず、女性まで響いてくる。

そして3回目の着地音が響いたとき、いきなり視線の高さが下がった、と女性は感じた。
女性が自身を確認すると、幽体である自分の足が圧縮されたかのように潰されているのを認識したが、それでも雷撃は止めることはしなかった。

「あっすごいね、半分潰すくらいしたつもりだったんだけど、あなた強いのね。でもこれで終わりかな」

詠子が視線を上げたのに釣られ女性がそちらに目をやると、キラリと光るものが見えた。
その形は銃弾、その色は銀色で、紛れもなく退魔の力を持った銀の銃弾だった。
真上から身体を貫かれ、女性は苦しみの表情を浮かべたまま、ふっと姿を消した。

「消滅……逃げた、のかな?」

女性の消えた場所まで歩いて行き、周囲を見回すが、気配は感じられない。
その場でしゃがんで地面にめり込んだ銃弾を確認する。

「あ、これもう退魔の力使いきっちゃってる。うーん、光線銃も調子悪いから組織寄って行こうかなぁ」

詠子は、前に連絡を取ったのはいつだったかな、と思い出しながら、電話で組織に連絡し事後処理の連絡を入れた。

続かない

K-No.の事務所にて
「と、いう訳でウチの神子が襲われたわ」
「言っちゃ何だけどよく無事だったわね?1人だったんでしょ?」
「封印が解けてたのよ、不意をついて再封印したけど、失敗してたら色々終わってたわ」
「死んでも厄介ごと押し付けてくんだから勘弁してほしいわあのクソ親父」
望の報告に影守と希は疲れた様に息を吐く。
「誰かに勘付かれた可能性は?」
「それは無いでしょ、先先代K-No.0のアカシャ年代記自体は結構知られちゃってるけどそれが遺伝する事は私とアンタ達、後は大樹さん、翼、美緒さんの6人しか知らないし、あの一瞬で勘付いた奴がいてもそれを見落とす程アカシャ年代記は甘く無いわ」
「ならそちらは気にしなくて良いか…むしろ問題は」
「逢魔時の影…面倒ね、被害は着実に増えてる」
「現状じゃ原因もよくわかってないしなぁ…気が滅入る」
「何かパーっと明るいイベントとか無いかしら」
3人が深くため息を吐くと外からK-No.2…獄門寺在処が書類を抱えて戻ってきた。
「在処ぁ…こんな気が滅入ってる時に書類なんて…」
「と言われると思って明るい話題もってきましたよ!」
「?」
「じゃーん!」
そう言って在処が広げた書類に書かれていた文字は

「「「合同戦技披露会!?」」」
「数年ぶり開催許可!しかも今回はフリーランス枠も有りですって」
「………運営は?」
「モチロンウチ(K-No.)ですよ」

在処の言葉に影守は改めて深くため息を吐いた。

続く?

戦えて、守れるだけの力があって、その上で目の前で友達がバラバラにされたとして。
色んな物が崩れ落ちて、何もかも分からなくなった死の間際に…より強い力を求めるのは間違いでしょうか?


黒く焦げた裏路地。
プスプスと煙を上げる焦げたアスファルトの匂いが鼻に付く。
「まーたアンタか、新島」
「影守の娘サンじゃないか、久しぶりだな」
私の視線の先にいるのは新島愛人、本人は何一つ悪行を成したわけではないがその在り方や異常性から悪名高い新島友美の息子。
「もう少し綺麗にやれって神子に言われなかった?」
「言われたから綺麗に焼いたつもりだったが…」
道ごと焦がすなっての
「まぁ、逢魔時の影…雑魚相手にこれはやり過ぎだったか」
「厄介な相手に違いはないけどね…」
「数だけの雑魚だとアンタの趣向には合わないか」
「止めてよ、人を戦闘狂みたいに」
「どの面下げその台詞言ってんのかな…」
私、ディスられてる?

「今この場で討伐してやろうか?ファイアドレイク」
「手加減して俺に勝てると思ってるのか?」
「アンタごときに奥の手出す必要があるとでも?」

新島愛人の体から炎が上がる。
私の周囲に包丁が浮かび上がる。

「「!!」」

お互いの放った攻撃は、されどお互いに当たる事は無く、共にその後方にいた影を貫いた。

「ここじゃ邪魔が入るな」
「だね…あぁ、そうだ」
ポケットから姉貴分からもらった広告を取り出す。
「ほら」
「………合同戦技披露会…またやるのか」
「今回はフリーも参加自由だ、来なよ、遊んだげる」
「ここなら邪魔せずにやり合えると…良いだろう」

弱い人が嫌いです。
弱い自分がもっと嫌いです。
弱いと自分は自分でいる事すら許されないのだから…


続く

「よくこんなの作ったわね…」
「鏡の中にも鏡は持ち込めるからね、試してみて正解だった」

合同戦技披露会の会場、鏡の中に作られた仮想空間には闘技場と言うべきか大勢の観客を収納できるスタジアムがそびえ立ち、その中央には複数枚の鏡が円形に並べられている。
上空には巨大なモニターが複数吊るされており、戦場の様子が映し出されていた。

「一般人の目に付かないように大人数を収納できる空間を鏡の中に、更に鏡の中に持ち込んだ鏡を使ってその中に模擬戦用の広大な戦場を構築、前回の経験生かしてこの数年間色々試してたけど役に立って良かったよ」

鼻を書きながら笑う詩織に望も眼を細める。
思えば自分をコピーした都市伝説でしかなかった存在が、契約者も持たずに単独で成長と進化を遂げ続けている。
(まぁ、私をコピーした時点で私と擬似契約に近い状態になってたんでしょうけども)

「ま、そういう事なら今後も頼らせてもらうわ、こっちで管理できる空間は貴重だもの」
「この中なら変なのが紛れ込んでもある程度の察知できるしね」
「実際は?」
「怪しい行動をとれば分かるってレベル」
まぁ、セキュリティとしては及第点だろう。
でだ、後ろを振り返れば夥しい数のゾンビ達が右往左往しながら屋台を組み立て続けている。
「…アンタ達は何やってんの?」
「人がたくさんくるんですよ!」
「儲け時ですよ!」
「今回は俺らは参戦しませんし賑やかしと飲食担当させてもらいます!」
「第5~9小隊買い出し!1~4で設営いそげ!!」
「ゾンビがやってる屋台って客来るのかしら」
「衛生面に不安が残るわね…」

「撮影は前回同様希のキューピーが、観客の誘導は?」
「そっちも希がK-No.の黒服を動かすって言ってたわ、ほら」
望が指差す先にはメイド服姿の女性の一団の姿が、眼を引くとすればその衣装よりも各関節に走った分割線だろう。
「医療班にも回すって言ってたけど…あんだけのマネキンを同時に操作してるんだから影守と希もいよいよ化物ね」
「いんや、あれ殆ど自立させてるみたいよ?希の制御下なのは確かみたいだけど…司会実況はウチの神子を出すわ、後はあの子が何とかするでしょう」
会場、人材必要な物は大体揃えた。
後は………

「ここに集まる連中からどれだけ情報を引き出せるか」
「狐か大淫婦か、盟主さんの尻尾位は掴みたいよね…」

第二回合同戦技披露会…その開催は目前まで迫っていた。

続く

「……それじゃあ、籠を運ぶ役目、頼んだよ」
「へぇ。責任重大なお仕事任せてもらえて光栄やわぁ……しっかり務めさせていただきます」
「相手が相手だしね。慎重にやらせてもらうよ」

 まだ寒い季節でもないだろうに薄手のマフラーを身に着けた男性が、二人の男性に指示を出している
 一人は、二メートルをも越える、体格もいいお男。もう一人は対照的に細く、重たいもの等持ったら腕どころか体の芯がぽっきりオレてしまいそうな体格をしている
 二人の返事を聞いて、マフラーの男性……鮫守 幸太はよし、と頷く
 そうしてから、今度はもうひとり、控えていた女性へと声をかけた

「夢塚さんも。協力してもらって悪いね」
「いえ、保護されている立場なんですし、これくらいは」
「保護しているからこそ、なるべくならもっとゆっくりしてもらいたいんだけど」

 夢塚と呼ばれた女性は、幸太の言葉にそう苦笑して返した
 彼女は一年前、学校町外で「狐」からの誘惑をギリギリのところではねのけ、その結果「狐」の駒に襲撃されていたところを、たまたまそこを通りがかった「首塚」の構成員によって救出され、そのまま「首塚」に保護されている契約者だ
 「忠犬ハチ公が渋谷の街を守っている」の契約者であり、結界を作り出す能力がある
 今回、その能力が必要となり協力してもらう事になったのだ
 用意された籠に、彼女の能力が発動されている

「どうする?合同戦技披露会は見学していく?」
「あ、いえ。そっちは遠慮しときます。「首塚」で保護している子供逹に絵本を読んであげる約束しているので」
「わかった。それじゃあ、子供達待たせるのも悪いね。戻ってていいよ」
「リリカちゃん、鴆はんもいるから大丈夫とは思うけど、後でわてらも行きますね。みんな、やんちゃそやしえらいでしょうし」

 大柄な男がそう言うと、夢塚ははーい、と返事をして、ぱたぱたと戻っていった
 さて、と幸太は視線を、「首塚」の中でもひときわ暗い、ある場所へと向けた

「……じゃ、あの方を呼んでくるよ。籠に入ったら君達を呼ぶから。離れてて」
「鮫守さんは大丈夫なんですか?」
「平気。あの方とは、将門様と一緒にいる時に会った事あるし。将門様の加護が僕には効いているから」

 細身の男にそう答え、幸太はその暗闇の向こうへと、足を踏み入れる
 自分達が所属している「首塚」の首領たる、平将門がこの度誘った、ある人物を迎え入れるために


 「第二回 組織 首塚 その他 合同戦技披露会」
 今回はフリーランス………特にどこぞの組織に所属していると言う訳ではない、と言う者も参加可能であるが故、参加者は以前よりも多くなりそうだ
 そして、それを見学しに来る者も、以前より多いということである

「こんにちは、神子さん」
「よぉ」
「あ、龍哉、直斗。来たのね」

 司会実況を任されたため、その準備をしていた神子のもとに龍哉と直斗が顔を出した
 直斗の方は契約者ではないものの、興味を持って龍哉についてきたらしい
 ……直斗らしい、と神子はこっそりと思った
 この幼馴染は、都市伝説と契約するには器が小さすぎて無理であるのだが、その反動なのか都市伝説や契約者への興味は人一倍、強い

「後で遥や憐、灰人も後で来るはずだぜ。あと、優は参加するつってたな。晃は見学に回るつってたけど」
「え、優参加するの?………うん、まぁ優らしいけれど。ちなみに、龍哉。龍一さんは?」
「お父さんは、お仕事が忙しいので、本日は来られないそうです」

 あらら、と苦笑する
 忙しいものは、仕方ない
 龍哉の父親である龍一は、「獄門寺組」と言う組の組長であるため、常に忙しいのだから

「……あ、それと。鬼灯さんは?」
「興味を持ってはいらしたのですが。「首塚」主催ということで、将門様と遭遇するのが嫌だ、とおっしゃられまして」
「鬼灯、将門様の事苦手だもんな」

 仕方ないさ、と肩をすくめてみせる直斗
 …そう言えば、鬼灯は昔から……少なくとも、神子逹が知っている頃から、将門の事を苦手としていた
 なるべくなるべく、関わらないように遭遇しないようにしていたのを覚えている

「他、誰来るかわかってる?」
「…そう言えば、診療所の先生がいらっしゃる、と灰人さんがおっしゃっていたような」
「かなえは、今日は薙刀の教室あるっつってたから来ないだろうし……」

 戦技披露会が始まるまで、しばし、情報交換を始める
 今回の戦技披露会で、どのような人物が出場するのか
 …情報を集める、と言う意味もあるとはいえ、楽しみなのも、また事実なのだ




 

 ちゅっちゅちゅー、と。ノロイが気配を感じ取ったのか、声を上げた
 次いで、望と詩織も近づいてくる気配に気づき、そちらに視線を向ける

「やぁ、こんにちは」

 足音と気配を隠す様子もなくやってきたのは、フリルたっぷりの黒いゴシックロリータ衣装に身を包んだ男性
 覚えのある姿に、望はその人物の名前を口にする

「小道 郁、だったかしら。何かご用」
「おや、名前を覚えてもらっていたとは光栄だ………上司に言われてね、これを渡しに来たんだ」

 はい、と郁が詩織に渡したのはタブレット型PC
 どういうことか?と説明を求める視線に郁は言葉を続けた

「学校町に在住している事がわかっている、フリーランスの契約者のデータだ。まぁ、「組織」………CNoが把握している範囲のものだから、完全なデータではないけれどね」
「なるほど。KNoである私が、それを受け取ってもいいの?」
「構わないよ。そもそも、CNoが所有している情報は、SNoが持っている極秘情報なんかと違って申請許可もわりとかんたんに降りる資料が多いのだしね」

 ふむ、と詩織はタブレットPCを起動させて、データを確認する
 契約都市伝説が完全に知られている者から、何と契約しているのかはっきりしない者まで、結構な数が記録されている

「フリーランスの契約者も今回は参加可能、との事だからね。そういうデータがあった方がいいんじゃないか、というのが上司の言葉だよ」
「貴方の上司は、確か門条 天地だったわね……一応、跡でお礼をいうべきかしらね。ちなみに、肝心のその上司は?」
「ものすごく参加したがっていたのだが、書類仕事が山ほどあってね」

 恐らく、周囲に止められたのだろう
 仕事があるのなら、仕方ない
 と、言うか。天地が参加したら会場派手にぶち壊した可能性が高いため、ある意味助かったといえるのかもしれない

「それじゃあ、僕は見学に回らせてもらうよ。かなえは来ていないけれど、慶次君は来ていてね。見学に回るそうだから、そっちについておくよ」
「あぁ……「カブトムシと正面衝突」の契約者だっけ?あれ、そいつの担当黒服は?」
「わが上司が仕事に巻き込んだよ」

 …彼なりに「見張る」ためだろうな、と郁はこっそりとかんがえていた
 このところ、天地は愛百合の動向を見張っている様子だったから

「……無事、何事もなく終わるといいね」
「不吉なフラグたてるのやめてくれる?」

 失礼、と笑って、郁はこの場を後にした

 ……さて、どのような契約者が参加するのか
 とても、とても、楽しみだ



「……それでは。「第二回 組織 首塚 その他 合同戦技披露会」、これより開始します」

 その開始の音頭を取ったのは、「首塚」所属で側近組の一人である幸太
 ……将門の姿は、その場にはいない

 かわりに、何やら御簾によって四方を囲んだスペースが作られており、その横には籠が置かれている
 どうやら、籠に乗って運ばれてきた人物が御簾の中にいるらしい

 ……そして、気付ける者は気づくだろう
 御簾と籠に、かなり強い結界が貼られている事に
 それは、中に入る者を守るためと言うよりも………その中に入る者から、周囲を守るために貼られたもので、あるような

「「首塚」首領将門公は、本日所用により欠席となります。よって、代わりに……」

 御簾の中からの圧倒的な威圧感を気にしている様子もなく、幸太はにっこり微笑み、言葉を続けた

「将門公がお呼びしました、「長屋王」が。この度の合同戦技披露会を観戦なさります」

 「長屋王」
 きちんと日本史を勉強した者ならばわかるだろう
 それは、かつての実在の人物
 そして、日本最古の怨霊
 将門に勝るとも劣らぬその圧倒的な気配を御簾の中から漂わせながら、それは小さく、笑った



 ……これにて
 「第二回 組織 首塚 その他 合同戦技披露会」が、開始された





to be … ?

「……ね、憐」
「んー?どしたっす?あきっち」

 ひとまず、いつでも治療班に回れるように備えておきながらも、今は見学席にいた憐
 晃に声をかけられ、首を傾げた
 手にスマホを持ったまま、晃はぽそ、ぽそ、と問う

「…「教会」、からは誰が来たの?……付き添いで来た、って、聞いた」
「あ、俺も気になってた。学校町に滞在している「教会」面子って数少ねぇだろ。こういうの出たがるような奴いたっけか?」

 遥も、く、と憐に近づいて問う
 ここに神子か咲夜がいればツッコミをいれそうな距離だが、残念ながら二人共いない
 ついでに言うと、優も参加枠の方に入っているため、ここにいない。ツッコミが深刻に足りない

「えっと、参加するのはー………あ、今から、試合始まるっすよ」

 憐の言葉に、その場にいた皆の視線がモニターへと集まった
 ……そして、遥が「げっ」とでも言いたそうな表情を浮かべる

 そのモニターに映し出された光景は、試合開始と同時に試合会場全体が、一気に凍りついていっている様子だった



 逃げたい
 その青年は、心からそう思った
 あ、なんかのハリウッド映画でこんなシーンあった気がする。とも同時に思っている辺り、ちょっとは余裕がある
 あくまで、ちょっとだ。ちょっとでしかない

 全力疾走している彼が通った後の道が、左右の壁が、バキバキと凍りついていっている
 恐らく、放置すればこの会場全体が凍りつくのではないだろうか

「じょうっだんじゃねぇ!」

 叫びつつも、走る、走る、走る
 フリーランスの契約者である彼が合同戦技披露会に参加したのは、己の実力をアピールするためだった
 そのつもりであったのだが、それが叶う予感は、あまりない
 対戦相手がどうやって決まったのかは彼にはわからないのだが(案外、あみだくじとかなのかもしれない)、とにかく自分は運が悪いようだ
 当たった相手が、悪い

 氷で出来た翼を羽ばたかせ浮かび上がっているその男は、司祭のような服装をしていた
 その翼もあって天使を連想させるかもしれない。が、天使があんなサド顔浮かべるとは思いたくない
 試合開始と同時にふわりと浮かび上がり、そしてあの司祭を中心点として、辺りが凍りつき始めたのだ
 手加減も何も合ったものではない

「……せめて、一撃っ!」

 だが、逃げてばかりでは参加した意味もない
 ざわり、契約都市伝説の能力を発動させる

 体が、動物の毛で覆われていく。筋肉が肥大化し、爪が伸びていく
 遠吠えのような声を上げると、彼は勢い良く地面を蹴って跳び上がった。直後、その地面もびしり、と音を立てながら凍りつく
 壁を蹴り、どんどんと跳び上がり、空を飛ぶ司祭へと向かって、豪腕を振り下ろそうと……

「なるほど、人狼か」

 それは猫のような目を細めて、嘲笑った

「それじゃあ、届かねぇな」

 振り下ろした爪先が、司祭に当たるその直前
 ぴしり、とその爪が凍りつき出した時にはすでに遅く
 「狼少年」の契約者であるその青年の意識は、氷の中に閉ざされた




「……なんで、よりによってあの氷野郎が来たんだ」
「カイザー司祭とジェルトヴァさんは、こういうの興味なくって。で、メルセデス司祭が「暇つぶしだ」っつって出る気満々だったんで。俺っちがお目付け役としてつかされたっす」

 先に名前を出した二人は仕事で忙しく来られなかったのだから、仕方ない
 ……とは言え、憐があの男相手にブレーキになれるか、と言うとなれるはずもなく

 「クローセル」という悪魔そのものである男、メルセデスは、試合会場を完全に凍りつかせながら楽しげに笑っていたのだった






続かない

 第二回 組織 首塚 その他 合同戦技披露会
 死ぬまで戦うわけではないが、当然のごとく負傷者は出る
 そして、その負傷者を治療する治療班と言うものが当然の如く、存在しているのである
 治療班には「組織」や「首塚」の構成員だけではなく、他組織やらフリーランスの治癒能力持ち契約者も参加していた
 治癒能力を持つ都市伝説契約者は貴重だ
 都市伝説やらそれに類する存在は数多存在すれど、その中で治癒能力を発動できる者は一割にも満たないと言われている
 同じ治癒能力にしても、個々によってどれだけ治癒できるかも変わってくる
 戦技披露会においては、怪我人が出るにしてもただの切り傷打撲だけですまない場合もあるため、様々な状況に対応できるよう、人材が集まっていた

「いやぁ、だとしても。ここまで見事に氷漬けとは」
「芯まで凍ってたらアウトだよな、これ」

 じゅわぁ
 メルセデスによってかっちんこっちんに凍らされた狼少年を解凍する灰人と診療所の「先生」
 灰人は治療系都市伝説ではないものの、「切り裂きジャック」との契約の影響にプラスして診療所の手伝いもしているせいか治療技術はある
 よって、「先生」の助手として治療班に参加していたのだ

 戦技披露会の出場者になるつもりは灰人にはなかった
 未だ、油断すると「切り裂きジャック」として暴走しかねない自分が出場しても、他者の迷惑になるだけだ
 それなら、治療班に回っていた方がいい
 性格的に色々と問題がある「先生」ではあるが、治療技術については本物だ
 契約都市伝説に頼らない治療技術も持っているのが、ありがたい。性格に問題はあるが

「…そう言えば、「先生」。あんたも試合に参加するんじゃなかったのか?」

 予備の包帯を取り出しながら、灰人は「先生」に問うた
 だいぶ解凍されてぷるぷるしている狼少年の治療を続けつつ、「先生」が答える

「正確には、私ではなく私の作品が参加、だね」
「………ちょっと待て。猛烈に嫌な予感がしてきたぞ」
「なぁに、大丈夫大丈夫。自立行動するし、殺さない程度の加減するように設定してあるから」

 …それでも嫌な予感しか無い
 ちょうど手が空いていた事もあり、灰人は試合会場を映し出す画面へと視線を移した


 戦闘のための空間が広がる
 町中を思わせるフィールド………では、ない
 それは荒野を思わせる舞台だった
 少し風を感じるが、突風と言う程ではないため、特に問題はない

「……先生も、またすごいもの作ったわね」

 それを見上げて、優はそう口にした

 でかい
 説明不要と言いたくなる程に、でかい
 それは、土で形作られたゴーレムだ
 ヘブライ語で「胎児、未完成、不完全」を意味する名を持つそれは、「生命なき土くれ」とも呼ばれる
 無機質な材料に生命を吹き込み作られる魔法生物とも言われる
 ユダヤの伝承によるとラビ(律法学者)がカバラの秘術によって作り出すとされており、ユダヤ人を差別や圧政から守るために創造されたと言う
 ……最も、今ではゲームで魔導師が作り出す存在として、広く知られているのだろうが

 戦技披露会に参加した優の対戦相手
 それが、このゴーレムだった
 診療所の「先生」が作ったゴレームだ
 ……あの人は医者として働いてはいるが、元々本業は「創り出す」存在だった。それを思い出す

「まぁ、幸いにして材料は土みたいだし……それなら、いける!」

 っば、と能力で出現させた赤いちゃんちゃんこを羽織る
 「赤いちゃんちゃんこ」としての戦闘能力を引き出し………一気に、ゴーレムへと接近した
 ゴーレムの動きは、とろい。スピードでは圧倒的に優が勝っていた

「どぉんっ!!」

 ごがぁんっ!!と、優の拳がゴーレムの頭を木っ端微塵に粉砕した
 頭を失いながらも、ゴーレムはぶぅんっ、とその太い腕を振り回したが、優は己へと襲いかかったゴーレムの右腕を安々と蹴り崩す
 頭と右腕を失い、ゴレームはふらふらとバランスを崩し

 粉々に砕け散っていたその頭と、腕が。破壊された事によってまき散らかされた土を吸い寄せていきながら、再生していく
 しかも、ただ再生していくだけではない
 この荒野のフィールドの地面の土をも少し削り取っていっており、右腕が先程よりも一回り大きくなっている

「そう簡単には終わらないか……おぉっと!!」

 重力に任せて振り下ろされたゴーレムの腕を、両腕をクロスさせて受け止めた
 ミシミシミシッ、と、地面が重量によってヒビ割れていく

「せぇいっ!!」
 

 がごしゃぁあああん!!
 受け止めていたゴーレムの腕を、ぽんっ、と弾き飛ばした後、そのままアッパーカットで破壊
 そうしてから、とんとんっ、とゴーレムと距離を取った
 闇雲に破壊していても、辺りの土を使って再生してしまう
 ならば、どうするべきか
 ゴーレムの「弱点」を、知識の中から引っ張り出す

「……確か、特定のワードの頭部分削ればいいのよね。ロレーナさんが言うには」

 そこさえ壊せば良いのなら、どうすれば良いのか
 優は静かに拳を握りしめ、ゴーレムを睨みつけた



「どこだと思う?「אמת」の文字が刻まれているのは」

 モニターから試合の様子を見ながら、遥がそう口にした
 はて、と、龍哉は首を傾げる

「どこなのでしょう?少なくとも、表面上はどこにあるのか、わかりませんね」
「……内部に隠している、のだと思う。ゴーレムの弱点だから」

 珍しくスマホには視線を落とすこと無く、じっとモニターを見つめる晃がそう続けた
 そう、「אמת」の文字はゴーレムの弱点だ

「「אמת」の一文字、「א」を消して「מת」にしてしまえば、ゴーレムは活動が止まるっすからね」

 ゴーレムの体には、「אמת」と刻まれており、それが原動力となる
 しかし、その一文字を削り「מת」(死んだ)にしてしまえば、活動を停止
 ゴーレムは、ただの無機物へと戻るのだ
 つまるところ、攻撃されるとまずい弱点である
 本来の伝承であれば額にその文字が書かれた羊皮紙が張られていると言うが、診療所の先生が作り上げたゴーレムは、ゴーレム本体のどこかに文字を刻んでいるタイプらしい
 すなわち、戦いながら文字を見つけるしかないのだ

「確かに、表面上見えねぇが……なんでだろうな」
「すっげー、嫌な予感を感じるっすね」

 憐の言葉に、遥が頷く
 直斗や神子がこの場にいたら、同じく頷いていた事だろう

 そして、モニターに映し出されているゴーレムは、優の攻撃によってあちらこちらに穴が空いたりしつつ再生を繰り返し

『ーーーー見つけたぁ!!』

 優の声が、モニター越しに響き渡った



 おい
 おい、ちょっと待て

「おい、そこのセクハラの権化。どこに文字刻み込んでいるんだ」
「確かに私はおっぱいと太ももの観察者であるという自覚はあるがセクハラはせんぞ。YESおっぱい、NOタッチだ」

 違う、今言っているのはそういうことじゃない
 とりあえず、後で一発殴ろう、と灰人はそう心に誓った

 モニター越しに見えた、「先生」が作成したゴーレム
 その………人間で言うと、股間の部分。そこに「אמת」の文字が刻まれていたのだ
 セクハラと言いたくなっても悪くないだろう

「場所的に、女性は触りたがらんだろうし、男性は攻撃を躊躇するだろう?」
「ナイスアイディアみたいに言うな」

 確かに、言われてみればその通りなのかもしれない
 かもしれない……………が

「たった今、優がゴーレムの股間の「אמת」の「א」を打ち砕いたぞ」
「おや」

 うん
 優に、そんな事を気にするデリカシーがあるか、と問われれば、「ない」と断言するのが幼馴染である灰人の意見である
 きっと、他の幼馴染組も、全く同じことを考えただろう

 優は、男の急所くらい、平気で攻撃する

 まぁ、どちらにせよ、「先生」は一発殴ろう
 もう一度、そう心に誓いながら、崩れたゴーレムの残骸踏みつけながら勝利のポーズを取る優の姿をモニター越しに眺めたのだった






終われ

「「ごん、お前だったのか。いつもくりをくれたのは。」。ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。兵十は、火なわじゅうをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました…………」

 おしまい、と
 絵本を読み終えてリリカはぱたんっ、と絵本を閉じた
 ……それを合図に、リリカの読み聞かせを聞いていたちみっこ逹の目に、ぶわっ、と涙が浮かぶ

「ごん、かわいそう……」
「かわいそうー……」

 ぴぃいいいいいい、と泣き出してしまった子も出た
 その状況に、リリカはあわわっ、と慌てる

「あ、あれ?ど、どうして!?」
「リリカちゃんの読み聞かせ、上手やったからね」

 あわあわしているリリカの様子に、大男……舘川 無(なし)は苦笑した
 そう、リリカの絵本の読み聞かせがあんまりにも上手だった為、ちみっこ逹が感情移入してしまって泣き出したのだ
 ……読み聞かせに「ごんぎつね」を選んだ時点で、予測しておくべきだった事態かもしれないが

 ぴぇえええええ、と泣いている子供逹を、鴆がそっと撫でる
 そうしながら、リリカと無にしせんを向けた

「勝手元にお菓子と飲み物あるから、子供達の分、持ってきてくれる?」
「あ、は、はい」

 勝手元……つまりは、台所だ
 「首塚」所有の離れ小島に匿われるようになって一年、この館の構造もだいたいは覚えている
 リリカは立ち上がると、無と共に台所へと向かった

「うーん……「忠犬 ハチ公」の絵本の方が良かったでしょうか」
「どちらにせよ、同じ結果になったと思うんやけどもなぁ……にしても、リリカちゃんは犬が好きやね」
「はい!大好きです!!」

 それはもう、と笑うリリカ
 だからこそ、「忠犬ハチ公が渋谷の街を守っている」の都市伝説と契約したようなものだ
 ……そのせいで、大変な目にもあったのだが
 台所で子供逹用のお菓子を取り出しつつ、リリカは一年前の事を思い出し、小さく、震えた

「…結界を張る能力って、貴重なんですね」
「そうやね。都市伝説契約者の中でも結界を張る能力は、治癒系能力者と同等に貴重だと聞いとるよ」

 飲み物と人数分のコップを取り出しながら、無が教えてやる
 リリカは、今まで他の都市伝説契約者とはあまり接触してきていなかったのだ
 学校町の都市伝説発生率と契約者の数が異常なのであって、学校町ではない場所で生活していたリリカにとっては、それが当たり前だったのだろう
 「首塚」に匿われるようになってから、契約者の数に驚いていたのだし

「聞いた話では、「怪奇同盟」の関係者で「座敷童」の契約者の子が、結界に関してエキスパートらしいけど……他にいたかなぁ」
「なるほど……私も、結界能力がなければ襲われなかった………うぅん、でも襲われたけど、結界能力のお陰で助かったし……」
「リリカちゃんは、「狐」の誘いを断って襲われたんやったね」

 そうなんです、とリリカはちょっぴり、ぐでり、とした
 ……アレは、本当に怖かった

「妾の配下になれ、って言われたけど。嫌な予感が拭えなくて断って……その瞬間に配下の人に襲われて、怖かったです」
「栄ちゃんと藤沢君と一緒に、あそこ通りすがらなかったら危なかったなぁ……」

 リリカを保護した時の事を思い出し、しみじみと無はそう呟く
 たまたま、転移系能力者と一緒にあの場を通りすがってよかった
 そうじゃなければ、結界を張る能力があるとはいえ、危なかっただろう

「軽自動車だのバイクだの、びゅんっびゅん突撃してきて……あれ、結界なかったら、死んでたのかな」
「……そうかもなぁ」

 ぞわわわわっ、とリリカは体を震わせた
 できれば忘れたいが、そうそう忘れられる事でもない


 記憶に刻まれたあの顔は、なかなか忘れられない
 あの時の「狐」が使っていた人間の少女の顔と、「狐」の命令によってリリカへの攻撃を開始した、あの契約者の、顔を




to be … ?

 試合と試合の合間、神子は参加者の資料に目を通していた
 その横に、郁が持ってきたフリーランスの契約者の資料のデータが入ったタブレット型PCが置かれている
 試合の実況を任せられたため、こちらの資料も参考に実況しようという試みである

「次の組み合わせで出るフリーランスの契約者は………」
「あぁ、こいつだろ。「九十九屋 九十九」」

 ほら、と隣りにいた直斗が、勝手にタブレット型PCをいじってそのデータを出した
 ここに直斗がいるのは、実況の手伝いでだ
 神子の幼馴染グループのうち、誰に手伝ってもらおうか、となった際に直斗が「面白そうだから」と立候補したせいである
 …もしかしたら後で誰かに交代するかもしれないが、ひとまずは直人が担当だ

「どれどれ……契約都市伝説は「不明」。まだわかってないのね」
「契約者なのはわかってても能力分からない、とかはよくあるんじゃないのか?特にフリーランスの奴だとさ。契約都市伝説がバレてると、弱点もバレたりするし」

 それもそうね、と頷く神子
 直斗の言う通り、どこの組織にも所属していないような一匹狼タイプの契約者には自分の契約都市伝説をあなるべく明かさないようにする者も多い
 特に、その契約都市伝説を利用して「仕事」するようなものであれば、なおさらだ
 都市伝説との契約によってどのような力を発揮できるかは、たとえ同じ都市伝説であろうとも個々によって変わってくる
 能力の使い方によっては、契約都市伝説が何であるのかわからないというのもざらだ
 だが、その都市伝説特有の「弱点」と言うやつはどうしても共通しがちであり、都市伝説がバレれば弱点も見抜かれ、対策されるという可能性が高い
 特定の組織に頼らず、能力を仕事に活かして生活しているような者であれば、契約都市伝説がバレるのは避けたいところだろう
 この、「九十九屋 九十九」と言う青年も、そういったタイプなのかもしれない

「えぇと、表向きは針金アートの展示と販売の店を経営………「表向き」。ね」
「そう、表向きだな」

 九十九屋 九十九に関する資料
 それには、この一文が記されていた

『暗殺等に関与の疑いあり。完全な証拠はまだないが、報酬次第でそのような仕事も請け負うらしい』





 

 試合会場は、町中を思わせる作りとなっていた
 隠れながらの戦闘も可能なフィールドである
 彼女、篠塚 瑞希は油断なく、前方で微笑んでいる青年を見据えた
 茶色い髪をオールバックにし、薄手のセーターにジーンズと言うラフな服装をしている
 両手をジーンズのポケットにつっこんで、特に構えた様子もなく立っている
 しばし、相手の様子を警戒していたが………あちらから攻撃してくる様子も、ない
 …恐らく相手もまた、動くのを待っているのだろう

「仕掛ける気がないのなら、こっちから!」

 「超人」と呼ばれる所以を、この若者に見せてあげるとしよう
 すぅ、と一呼吸
 すでに、全身に結界を纏い終えている
 前方にいる青年……九十九屋 九十九へと向かって、一気に距離を縮めようとした

 薄く、九十九屋が笑って見えて
 きらり、何かが……

「………っ!!」

 ぞくり、と悪寒を感じて
 っば、と後方へと大きく跳んで再び九十九屋と距離を取る

 瑞希と九十九屋の間
 そこにいつの間にか細い、細いワイヤーが何本も張られていたのだ
 そのまま突っ込んでいたら、このワイヤーによってずたずたに引き裂かれたことだろう

「流石に気づくか」

 相変わらずポケットに両手を突っ込んだまま、九十九屋は笑った
 つい一瞬前まで、そこにワイヤー等なかったはずだ
 つまり……あのワイヤーは、九十九屋が出現させた、と言うことなのだろう
 見れば、九十九屋の周囲に、まるで結界でも貼っているかのように無数のワイヤーが張られていた
 これをかいくぐって攻撃するのは、少々骨か

「……それなら!」

 だんっ、と地を蹴り飛び上がる
 そして、勢い良く、すぐ傍の壁を蹴り壊した
 九十九屋の頭上から瓦礫が降り注ぐ。たとえ、ワイヤーを貼っていようとも重量で押しつぶせるだろう

 さぁ、どうでるか

 瑞希としては、これで九十九屋を倒せるとは思っていない
 ただ、これで相手がどう動くか、見るだけだ

 かくして、九十九屋は瓦礫の下敷きになどならなかった
 くんっ、と、まるで何かに引っ張られるように斜め上へと跳び上がり、瓦礫を避ける
 そうして、とんっ、と、空中に「立った」

(……違う。あれ、ワイヤーの上に立ってる?)

 そう、張り巡らせていたワイヤーの上に立っている
 ワイヤー自体が九十九屋の体重に耐えられるのかという疑問はあるが、よくよく見れば九十九屋自身の体にもやや太めのワイヤーが絡みついており、恐らくワイヤーを使って自身を宙吊りにしているような状態なのだろう

「なるほど、ワイヤー使い、と」
「そういう事だね」

 空中から見下ろし、九十九屋は笑う
 …両手はまだポケットの中に入れたまま。隠し玉でもあるのだろうか

 …思考する時間等与えない
 そうとでも言うように、四方八方、建物の影から太いワイヤーが飛んできた
 恐らく、試合開始前に申請を出して仕掛けておいたものなのだろう
 襲いかかるワイヤーを、瑞希はひらひらと避けていく

「それで、あなたはそこで高みの見物?」
「そりゃ、接近されたらヤバそうな相手にわざわざ接近するほどバカでもないしな」

 ッガ、ッガ、ッガ、ッガ、ッガ!!と、九十九屋が操っているのだろうワイヤーが地面へと突き刺さり、辺りを切り裂いていく
 嵐のような猛襲をさばきながら………視界の端にうつった物を、瑞希は見逃しはしなかった
 先程、九十九屋の頭上に落とそうとした瓦礫
 それに、くるくる、くるくるとワイヤーが巻き付いていっていて
 ぐぅんっ、と。全面にワイヤーが巻きつけられた大きな瓦礫が持ち上げられた
 それはそのまま、ごうっ、と轟音を上げて、まるで巨大なハンマーのように瑞希へと叩きつけられた




to be … ?

(危ない危ない……)

ワイヤーに包まれた瓦礫を大きく避けて、瑞希と九十九屋の距離がさらに開く
反射的に手が出そうになったが、今日までの都市伝説との戦闘経験がそれを押しとどめた
突然その場に張られたことといい瓦礫に巻きつく器用な動きといい
ワイヤーが技術ではなく都市伝説によって操作されているのは明白である
下手に接触すればこちらを絡めとるくらいのことはすると考えるべきだ

(これが結なら引っ張り合いに持ち込むんだけど、ワイヤーじゃちょっとね)

瑞希の娘である篠塚結は、契約した都市伝説"機尋"で細い布や縄を自在に操る
しかし九十九屋が操るのはワイヤーだ。細いため掴みにくく切断力がある
義妹にして契約都市伝説の彼女がこの場にいれば物の数ではないだろうが
あいにくと今回は自力のみでの結界武装だ。本職と比べれば強度は数段劣る
ワイヤーには極力触れないよう立ち回るしかない、と瑞希は結論づけた

ワイヤーを避けつつも瑞希は再び壁を蹴り壊して瓦礫を作り出す
そして手頃な大きさのものを掴むと九十九屋に向けて投擲した
両手を使って二個同時。しかし飛来する瓦礫を九十九屋は危なげなく対処する
迎撃するように瓦礫にワイヤーが巻きつき、勢いを殺したうえで放り捨てられた
その様子を確認すると瑞希は再び手近な建物を蹴り壊して瓦礫の山を作る
両手で掴んだのは人の背丈にも届く大きな瓦礫。流れるような動きで
瓦礫を投げると、迫るワイヤーを避けるためすぐにその場から飛び退いた

(これは避けるか。最初と同じね)

流石に重量があるとそう簡単には防げないようだ
その割にはワイヤーが巻きつく動きを見せていたのが気になるが……
少し開きすぎた距離を詰めようと追いかければ、簡単にその答えは出た
先ほど投げた瓦礫がワイヤーに巻き包まれて横合いから殴りかかってくる
地面がひび割れるほど踏み込んで、迫る即席ハンマーの横を高速ですり抜ける
単純に反対方向へ避けなかったのは鈍く光る即席の罠を目の端に捉えたからだ
まったく油断も隙もない。ここまでやりにくい相手は久しぶりである
もっとも、攻め手の尽くを避け続けられている向こうも同じ気持ちかもしれないが

 

(とはいえこのままじゃジリ貧よね)

小出しにして時間を稼いでいるが、瑞希が全力を出せる時間はそう長くない
具体的には急速にカロリーを消費していくので長引くと空腹で倒れるのだ
一応申請したうえで懐にチョコレートを忍ばせているものの
多少行動時間を延長したところで事態が好転するということはないだろうし
食べるところを見られればあからさまな持久戦に持ち込まれる可能性もある

(せめて彼の、接近された時の札くらいは切らせたいところだけど)

流石に遠隔攻撃と持久戦で完封されるのは戦う者としての矜持が許さない
目標は至近距離で一撃入れること。そのためには無理をしてでも
相手の意識を逸らして距離を詰め切るための"一拍"を作り出さなければならない
整理しよう。遠距離でこちらが使える手は2つだけ
大きめの瓦礫を投擲すること、そして距離を詰めること。とてもシンプルだ
まずは瓦礫を用意する必要がある。ワイヤーの結界を押しつぶせて
相手が避けることに集中したくなるような大きなものをだ
例えば家屋が丸ごと向かってくれば流石に驚くことだろう
できればそれを連続で行えればより効果的だ。他に投げられそうなものは……

「あ」

思わず声が出る。なんで思いつかなかったのだろうか
周囲にある大質量をぶつけるのであれば、何も横ばかり見る必要はない
  ・
 下から抜き取ってしまえばいいのだ

(なんにせよ仕込みが必要ね。バレないように動けるかしら?)

チラリと九十九屋の表所を伺うが、不敵な笑みを浮かべるばかり
対抗するようにニッと笑ってから強く地面を踏み砕き走り出す
ワイヤーを避けつつ、原型を留めるように家屋の下側を破壊する
巨大な瓦礫を投げつけながら、地面を踏み割り駆け抜ける
たまに物陰でチョコレートを貪ってカロリーを補給しつつ―――準備は整った

「反撃開始といきますか」

口元を拭った瑞希の顔には獰猛な笑みが浮かんでいた
      ケモノ         カリウド  
凶暴な都市伝説が熟練の契約者に牙を剥かんと迫る――――

                                         【続】

 相手が慎重に動いている様子に、九十九はふむ、と思考を巡らせた
 ひとまず、高所から相手の動きを観察してはいるが………どうやら相手は地面にヒビを入れ続けているようだ
 一体、何をしようと言うのか

(……まぁ、せっかくだ。利用させてもらうか)

 前もって、この戦闘部隊に仕掛ておいたワイヤーの量はかなりのものである
 ワイヤーの質量で押しつぶせなくもない、とは思うが……

(相手は身体能力強化系に見えるな。皓夜ほどの怪力かどうかまではわからないが)

 どちらにせよ、質量で押しつぶすと言うのもつまらない
 もう少し「遊んで」、相手の能力を観察させてもらおう

 ……いつか、あの女性が。自分達にとって脅威となるかもしれないのだから
 備えておく事に、こしたことはないのだ


 ……カリ……………カリ、カリ、カリ………

「………?」

 今、何か聞こえた?
 瑞希は警戒し、辺りを見回した
 目視できる範囲に、ワイヤーは見えないが

 ……カリ、カリ…………ガリガリッ、ガリ

 本当に、本当に小さな音
 油断していれば聴き逃してしまうような、それほどまでに小さな
 その音を、瑞希は聴き逃しはしなかった
 そして、数多の都市伝説と戦ってきた経験が告げる。「跳べ」、と
 本能からの警告に従い、一足でその場から一気に跳んで移動した

 ほんの一瞬前まで瑞希が立っていたその、足元から
 ガリィッ!!と、何かを削るような音と共に、ワイヤーが飛び出してきた
 瑞希を貫くことに失敗したワイヤーは、また地面の下へと戻っていく

(いつの間に………、まさか、これ、私が作ったヒビを通って?)

 そう、瑞希が自身の作戦の為に割り続けていた地面のヒビ
 ワイヤーは、そこから飛び出してきたのだ
 つくもが瑞希の作戦に気づいたかどうかはまだわからないが、どうやら彼は、瑞希の作り出したヒビを逆に利用しようと考えたらしい
 恐らく、地面を割り続ければ割り続ける程に、そのヒビをワイヤーが這っていき、そこから攻撃してくるのだろう

(聞こえてきていた音は、ワイヤーが地面の中を進んでいる音だったのね)

 微妙にヒビがつながっていなかった箇所は、削るようにして繋いでいたのだろう
 元から広い九十九の攻撃範囲が、更に広がったということだ

 それでも、瑞希は不敵に笑う
 すでに、こちらの支度は整っている
 …仕掛ける事は、出来る
 ぽんっ、と口の中に一口大のチョコレートを放り込み、もぐもぐっ、と飲み込むと
 仕掛けるべく、動き出した


「………!」

 ごぉおおおおお、と轟音が聞こえた気がした
 投げつけられた、二つの家屋
 …家を投げつける等、非常識極まりない攻撃だ
 この空間だからこそ許される荒業といえるだろう
 だが、このくらいならば、避けられ………

「は?」

 瑞希がとった行動を前に、九十九は思わず、魔の向けた声をあげた
 …思えば、先程の家屋もこちらに投げつけられた訳ではなかった
 ただ、彼女は、烏賊置く二つほぼまるごとを、「上空に放り投げた」のだ
 そしてその直後、地面へと手を突っ込み、地面をまるでちゃぶ台返しでもするかのように、宙へと放り投げてきたのだ

「これは、ちょっと洒落にならな……っ!!??」

 ごがががっ!!と
 滞空していた家屋二つが、連続で蹴り出される
 己に巻きつけていたワイヤーを操り、それを避けるべく移動した
 あれは、流石にワイヤーで受け止めきれる質量ではない
 家屋を避けながらも、更にこちらへと向かう攻撃を補足する
 先程ちゃぶ台返しされた地面が、そのまま突っ込んできているのだ
 

 ……不意打ち用に隠していたワイヤーも使ってしまうが、仕方ない

 ぎゅるるるっ、と、ワイヤーがあちらこちらの地面から、建物から、一気に飛び出す
 そしてそれらは、まとめて、九十九に向かってきている地面だった物へと巻き付いて
 ギャリギャリギャリギャリギャリ、と耳障りな音を立て………地面だったその塊は、バラバラになった
 これであれば、ワイヤーでじゅうぶんに防ぐことが出来る

「……なるほど」

 ふと、口を出たこの言葉
 果たして、どちらが発したものか

 恐らく、地面を「抱えて」突進してきていたのだろう
 破壊したそれの向こう側から、瑞希が飛び出してきた


 危なかった
 大きな塊は避けていたから受け止めきれないのだろう、とは思っていた
 ……が、「破壊できないとは言っていない」と言うやつだったのか
 嫌な予感を感じて、とっさに少しだけ後ろに引いてよかった

 どちらにせよ、接近は出来た
 すぅ、と息を吸い込んで

「            !!!!」

 肺に蓄えた空気を、口を通して一気に外へと撃ち出した
 モニター越しに見ている人逹にも結構な大音量として聞こえたかもしれないが、仕方ない。ちょっと我慢してもらおう

 大音量による一喝
 至近距離でのそれに、さしもの九十九もポケットに突っ込んでいた両手を出して耳をふさいだ
 多分、鼓膜は破れてない………だろう、多分、きっと、恐らく
 万が一破れていても、治療班の人が頑張ってくれると信じるまで

 本命につながるための。「一泊」が生まれた
 そのまま、攻撃の体勢へと入る

「ハリネズミは、好きか?」

 ……ふと、耳をふさいだままの九十九がそう呟いた

 気づく。九十九がポケットから手を出したことで、辺りにばらまかれたものに
 きらきらと、宙に投げ出された、無数の針
 いや、これは針ではない
 正確にはこれも「ワイヤー」だ。先端を尖らせ、短く切った
 重力に従い、地面へと落ちていこうとしていたその無数の短いワイヤーは、九十九の、未だ不明の契約都市伝説の能力によって操られて

 四方八方から、一斉に、瑞希に向かって発射された






to be … ?

辺りにばらまかれたのは、無数の針状に加工されたワイヤー
それが四方八方から、一斉に、自分に向かって発射された

――――それがどうした?

迷わず脚に力を込めて空を蹴る。"超人"の脚力がそれを可能にしている
射出された針の雨と九十九屋に向かって進む体が衝突する
主に体の前面が針に覆われたようになるが、大した問題ではない
どころか運のいいことに両目とも無事だ。左耳はちょっとちぎれたようだが
肉薄したところで九十九屋の服から不意打ちのようにワイヤーが飛び出した
まだ接近用の札があったようだ。さらに体にワイヤーが突き刺さる。だが、

「届いた……!」

九十九屋の右肩を瑞希の左手が掴む。即座にワイヤーが出てきて
左手をズタズタに切り裂いていくが、肩の骨がビキッと音を鳴らすほど
強く掴んだ左手はそう簡単には外れない。というか外さない
"超人"篠塚瑞希は満身創痍だった。土埃に塗れ、無数の針が突き刺さり
左耳は欠け、ワイヤーに巻きつかれ、体力は残り少なかった
しかし彼女は知っていた。どれだけ周囲に被害が及ぼうが
ここは他に人もいない仮初の空間であって大したことにはならない
どれだけ怪我をしてしまおうが治療だって受けられる
ましてや彼女は"超人"である。そもそもこの程度の傷、時間があれば治る
そうした取り返しのつく諸々を使い尽くして得ることができた
現在の彼女と九十九屋の距離は――――紛れもなく、彼女の間合いであった

ワイヤーに邪魔されつつも大きく振りかぶられた右腕を見て
笑みが引きつった九十九屋九十九が何かを言おうとして口を開く
 

しかし

「引き分けね。いい勝負だったわ」

少し遅かったようだ
掴まれて逃げ場のない九十九屋の鎖骨付近に瑞希の右拳が叩き込まれ
痛みゆえか衝撃で揺さぶられたか、九十九屋の意識は闇に沈んでいった
九十九屋の意識が無くなったということは、あれほど手ごわかったワイヤーが
一時的に制御を失うということでもある。つまり二人は落下を始めた

「あー……私が下になるべきよね」

実のところもう少し強めに殴るつもりだったのだが
カロリー切れで最後の一撃はちょっと弱まってしまっていた
つまり空を蹴って落下を和らげるとかはできないので
せめて頑丈な瑞希が下になっておけば多少彼へのダメージは軽減されるだろう
チラッと九十九屋を見るが、フリではなく完全に気絶しているようだ
とはいえ死なないようにギリギリ手加減したのが弱まった一撃
おまけにワイヤーの仕込まれたセーターだ。防御力は多少あるはず
せいぜい鎖骨にヒビが入ったかちょっと折れたくらいだろう
治療を受ければすぐに健康体になれると思う。まあ推測でしかないが
そんなことを瑞希が考えているうちに瓦礫の山に落下した二人
ところがモニターに映る二人はまるで動く様子を見せなかった

「…………お腹が減って動けない。助けて」

フリーの契約者「九十九屋九十九」 VS 怪奇同盟所属「篠塚瑞希」
二人の戦技披露は両者行動不能で幕を閉じたのであった

                          【治療風景に続く】

 さーて、と言うように、その「先生」は瑞希の負傷具合を見つめ、こう結論づけた

「治療してもらえる事わかっていたからと言って、人妻がここまで怪我を顧みないのはどうかな、って思わなくもない」
「それって、人妻関係あるの?あと、お腹減って本当動けないので何かください」
「おおいに関係ある………我が助手よ、こちらのご婦人の為に何か食べ物持ってきてくれ。確か、「夢の国」が屋台出していたと思うから、そこから。間違っても……」
「わかってる。間違っても死人の屋台で買ってはこない」

 衛生上問題ありまくりだろ、等と言いながら灰人が治療室を後にした
 先程の篠塚 瑞希と九十九屋 九十九の対戦は引き分けで終わった
 が、怪我の具合から言えば、明らかに瑞希の方が重傷だ
 あちらこちらにワイヤーによる刺し傷切り傷。ついでに言えば地面に落下した時の全身打撲
 左耳はちぎれているし、しかも、ワイヤーの弾丸は刺さりっぱなしである
 ワイヤーの弾丸は深く刺さってしまっているものは、そう簡単に抜けるような状態ではなくなってしまっている為、仕方ない部分もあるが

 まずは突き刺さったままのワイヤーを外さなければ、と「先生」が考えていると……ぱたぱたと、治療室に近づいてくる足音
 その足音から誰が来たのか感じ取ったのか、「先生」は扉が開くと同時に告げる

「すまんが、こちらのご婦人の治療を頼めるかな?我が助手の従兄弟よ」
「わかってるっす、その為に来たんすから」

 治療室に飛び込んできたのは、見学者席で試合を見ていたはずの荒神 憐だ
 試合の結果から、重傷者が出たことがわかって急いでやってきたらしい

「うむ、頼む………っと、その前に。人妻の上に乗っかるというある意味役得だったそちらの青年、もう意識はあるね?」
「役得も何もないと思うが、意識ならある。どうかしたか?」

 ぱちり、と
 負傷者用の寝台に寝かせられていた九十九が、目を開いた
 どうやら、試合が終わって少しして意識が戻っていたらしい
 起き上がるのはまだ億劫なようで、首だけ動かして「先生」を見る

「今、君が問題なく能力を使える状態なのであれば、こちらのご婦人に突き刺さったままのワイヤー、全部一気に抜いて欲しいのであるが、できるかな?」
「………出来るが、その瞬間に出血が始まるぞ」
「構わん。我が助手の従兄弟な少年よ。ワイヤーが抜けたらすぐに治癒出来るね?」
「はぁい、出来るっすよ」

 寝台に寝転がったまま動けません状態の瑞希に憐は近づいていき、す、と手をかざした
 その様子を見て、九十九が能力を発動する
 瑞希に突き刺さったままだった針のようなワイヤーが、一気に全て、抜ける
 

 血が流れで始めるよりも先に、憐が治癒を開始した
 ばさりっ、と憐の背中に光り輝く天使の六枚翼が出現し、瑞希にかざした手のひらからぽぅ、と淡く白い光が溢れ出す
 暖かな光が注ぎ、瑞希の傷が治癒されていく
 全身の刺突による傷を、ワイヤーで切り裂かれた傷を、落下時の全身打撲を
 ……そして、千切れた左耳まで、治癒によって再生していく

「うむ。やはり「ラファエル」の本気の治癒はすごいな」

 憐のその治癒の腕前を見つめながら、「先生」はしみじみとそう口にした
 彼もまた人ならざる力によって他者を治癒する事ができるが、それは薬等を使っての治癒である
 憐のように、直接癒やすのとはまた違うのだ

「俺っちは、まだまだっす。腕一本再生しろー、とか言われたらすげー時間かかるんで」
「最終的に再生させられるんなら、十分にすごくない?」

 痛みが消えた自身の体の様子に少し驚きながら瑞希がそう問うたが、憐は首を左右にふる

「俺っち自身がまだまだ未熟なせいで、「ラファエル」の力なら歩Bらい治せるはずの傷を治療できない、とかもよくあるんで。もっと、力使いこなせるようにならないと」

 へらり、と笑いながらそう答える
 謙遜している、と言う様子でもなく、心からそう考えているように

「……………君は。自分の力を、少し重たく受け止めすぎだと思うがねぇ」

 ぽそり、と、「先生」が口にしたその言葉が、憐に届いていたかどうかは、わからない




 ……なるほど、これはすごい
 九十九は素直にそう感心していた
 こちらには治癒の力は向けていなかったのだと思う
 だが、治癒の力の余波なのだろうか。あの六枚翼が展開されると同時に辺りに飛び散り、その羽根が届いていた九十九の体のまた、治癒されていたのだ
 よくてヒビが入っていたはずの鎖骨の辺りの痛みが、完全に消えている

(貴重な治癒能力者、しかも能力も高い………「聞いていた通り」だ)

 その、高校生にしては少し小柄な憐の姿を、九十九ははっきりと記憶したのだった






to be … ?

第二回合同戦技披露会の会場にマイク越しの音声が響き渡る。
「決着!決着です!!九十九屋九十九VS篠塚瑞希!!
 結末は両者起き上がれずドロー!!」
「二人共医務室に運ばれていくな、舞台の修復も始まった」
「この辺自動化されてるから良いわよねー、さぁここまでで三試合どれもコレもドハデな試合だった訳ですが!!」
「派手と言うか被害が尋常じゃないな・・・」

スピーカーを通して響く声は実況籍の神子と直斗の物、契約者と都市伝説犇くこの会場では貴重な一般人となる。
実況とはいう物の実際の所実況しようにも参加者の動きが激しく追いつかない為、試合と試合の間の間を持たせるのが主な仕事になっているが。

「あのクラスの契約者同士がぶつかるとそうもなるわねー、それを隠蔽してる組織の苦労が察せられるわ・・・・・・しっかし、これまでの勝者を見るとメルセデス司祭に優に第三試合に関してはドローだけど・・・組織が一寸情けないぞー!」
「組織と首塚がメインだが、確かに今のところ組織と首塚がそれほど目立ってない」


「フフフ、言われてるわよ、大樹さん」
「いや、それよりもですね・・・」
会場の一角、限られた人間しか近づかないVIPルームの傍に敷かれているブルーシート。
その上には弁当の類が広げられ、一組の男女が座っていた。
いや、座っていたと言うよりも正確には・・・
「そろそろ退いてもらえないでしょうか?」
「嫌よ」
ブルーシートに座っていた大門大樹を逃がさぬ様にと、その膝の上に大門望が陣取っている状態だ。
「一応仕事中なのですが・・・」
「奇遇ね、私もよ・・・・・・ハイ、大樹さん、アーン」
大樹の膝に納まりながらも器用に弁当箱から中身を大樹の口へと運んでいく。
「・・・あーん・・・・・・こんな事してて良いんでしょうか」
「良いのよ、ってかコレも仕事の内よ」
「と、言いますと?」
「各組織の交流の場を設け友好を深め、いざと言う時の連携を密にしつつ、お互いの戦力を披露し、己が勢力を誇示、更には後進に先達の力を見せる・・・と言うのが表向き」
甘える様な素振りで大樹の胸に頬を寄せる望・・・端から見れば子供がじゃれてる様にしか見えないがコレで30超えてるのだから質が悪い。
「・・・表向きと言うのは?」
「こういう場に参加するフリーランスは興味本位の輩も多いでしょうけど、選手として参加しているとなると話は別・・・己の力の誇示か、腕試しか、それとも別の目的か・・・好戦的な奴等よね、そういうのでこちらが見落としていた存在を認識するいい機会だわ」
「我々が見落としていたフリーランスの脅威を表に出すと?」
「在処の発案よ、最近狐だとか影とか世間が騒がしくなってきているから、ここで活躍したフリーランスで、組織が把握してなかった奴が居れば、そいつはかなり怪しいって事にならない?」
「成る程」
「あの子なりに子供達の危険の目を少しでも摘みたかったんでしょうね
 だから大樹さんはここで私を甘やかしつつ試合を観戦するべきだわ」
「あの・・・・・・見回りや情報収集を行いながら観戦と言うのは・・・」
「別に良いけどその代わり私が欲求不満で夜が凄いわよ?
「・・・・・・・・・次の試合が始まるようですね」


「ここらで一寸良い所見てみたい!そんな訳で次の試合は組織からこの人!!」
神子の言葉と共に舞台に現れたのは黒いスーツ姿の女性
「C-No.所属の契約者!影守美亜!!」
「続けてもう一人はフリーランスだ」
直斗の言葉と同時に少年が飛び込む。
「・・・新島愛人!!」
「コレより、第四試合開始!!」

続く

 

「黄。ここで何をしてるの?」
 嫌悪感も露わに声を掛けてきたのは藍。
 ここは南区の廃工場。「凍り付いた碧」のアジト。
「お前たちは知らなくていい」
 黄はそれだけ答えると、また黙々と作業に戻る。
 先日接触した、「あの御方」の配下の者たち。初めて会った、志を同じくする者…悪くはない。
(これぐらいでいいか)
 廃工場だけに、金属類には事欠かない。ワイヤーだけは近くの別の廃工場から調達してきたが、鉄やニッケル製の物品は、工場内のものでほぼ賄えた。
「なになに?」
「黄じゃない。藍の部屋で何してるの」
「鉄材に、金属塊…こんなものを人の部屋に運び込んで、何してるんだ」
「いずれ知ることになる。今はまだいい」
 その時にはもう手遅れだがな。黄は藍たちに気取られぬようにほくそ笑んだ。
「お前等こそ、いつも飽きずにつるんで、今日は何処へ行くんだ」
 黄が皮肉めいた笑いを向けると、キラは黄の目の前に一片の紙片を差し出した。
「合同戦技会…なんだこれは」
 訝しげな様子の黄に、キラが薄い胸を反らして答える。
「だれでも参加できるんだってさ。一応トモダチいないあんたにも教えてあげるわよ」
「あいにく俺は興味ない」
「そう?じゃあ」
 澪の一言を残して、一行はアジトから出て行った。
「…ふん」

 ところはかわって戦技会会場。
「慶次さん」
「なんだ、ο(オウ)-Noのところのガキ共か」
「強硬派」と「穏健派」凡そ相容れない者同士の会話など、いい雰囲気になりそうもない。こういう場を取りなすのが得意なのは真降だ。
「チビ達が出るって言い出して。僕たちはお目付役兼手合わせ役です」
「ってことは…」
「ええ。次の試合は僕と澪ちゃんです」
「ふーん」
 慶次はま、がんばれやとだけ答えて、眼前の試合に集中している。
「それじゃ、僕たちはこれで」

 慶次から離れた轟九と真降は、互いに目線を交わした後、慶次に視線を戻した。
 …正確には、慶次を冷たく見つめる、彼の担当黒服に。
「…兄さん」
「…ああ、相当ヤバいな、あれ」



「コレより、第四試合開始!!」

実況席から流れた試合開始の一言。
その言葉が終わるが早いか、新島愛人の両腕が飛んだ。

「!?」

驚愕に見開かれた目が、僅かに後方を確認し、見えたのは背後の建物に包丁で縫いつかれた自信の両腕、そして・・・

「遅い」

両腕を落とすのとほぼ同時に自身の背後に移っていた、影守美亜の足が、腹に叩き込まれるのとほぼ同時に両の足が自身から切り落とされる瞬間だった。

『ま・・・まなとぉぉぉぉぉ!?』
『見えなかったな・・・』
『え!?ちょッえぇ!?龍哉!居るよね?!一寸こっち来て解説ー!!』

実況席が酷く混乱している様子が聞こえてくるが無視して良いだろう。
そう結論付けて切り落とした足を踏みつける。
コレで両腕と両足を取った、胴体は蹴った際に勢いをつけ過ぎて前方の建物に激突、そのまま瓦礫の下敷きに。

「戻れ」

突き刺した手足の返り血を浴びた12本の包丁が自身の周囲を囲むように浮遊する。
内の4本は刃渡りが凡そ70センチ程、ここまで来ると刀にしか見えないがマグロの解体等で使われる立派な包丁である。

「これで、私の勝ちで良いよね?」
「流石にそれは困るかな」
「・・・何?都市伝説発動する前に斬っても駄目なわけ?」

愛人を沈めた瓦礫の下から火柱が噴出し徐々に人の形へと整っていく。

「行き成り四肢切断とは品がないな」
「手足切られたなら大人しく死んでろよ」

愛人を中心に周囲に炎が燃え移る。
美亜の周囲を刃物が12、24、48、96、192とその本数を膨れ上がらせ愛人へと打ち出されるがその全てが炎と化した愛人の身体をすり抜けていく。

「炎を斬れると思っているならお笑い種だ!!」

愛人の体から放たれた炎は意思を持つかの様に美亜を囲み

「その程度!!」
「まだあるのかよ!?」

美亜を中心に追加で展開された包丁が250本
その全てを無作為に射出し炎を掻き揺らし、その一瞬を突いて飛び出す。

「次!!」

更に追加で200本程を展開。
宙に浮いている包丁を足場に上へ上へと高度を上げていく。

「空に逃げる気か」
「いやだって、アンタ能力的に下は危険域だからさ・・・」

新島愛人の都市伝説ファイアドレイク、ドラゴンの一種とされその体は炎でできていたと言う。

「ま、確かに炎さえあれば俺は無敵だ」
「その炎を自前で用意できるから質が悪い・・・」

最早地上は火の海で、言い換えるならその燃え盛っている火全てが新島愛人だ。

「さぁ、俺を攻略できるか?影守サン?」
「正直詰みに近いけどさ・・・ま、奥の手はあるし足掻くよ」

フィールドに散らばってた刃物が美亜の元へと集まっていき、更に虚空から後続の包丁が排出される。

「おいおいおいおい、いくつ溜め込んでやがった・・・」
「父さんにも見せた事のない、これが私の限界一杯・・・4000本!!」

4000の包丁が空を覆い・・・

「土台ごと刻み潰す!!」
「全て焼きつくす!!」

まるで天井が落ちていくかのように同時に地に向かって放たれた包丁と、フィールド全体から湧き上がった火柱がぶつかり合った。

続く

「はい、お呼ばれしたのでお邪魔させていただきます」
「うん、ごめんね、龍哉。私達じゃちょっと見えないからさ……」
「確かに、美亜さんは素晴らしいスピードですね」
「すごくのんびりしたテンポで言ってくれてるけど見えてるのね、やっぱり」

 ややぽわん、とした様子で勝負の様子を見ている龍哉
 が、愛人と美亜、二人の戦闘を一瞬たりとも見逃している様子はない
 生まれついての才能と今までの戦闘経験によって培われた動体視力なのだろう

「愛人の奴も無茶するよな。まぁいつものことだが」
「はい、ですが。その件について、治療室にいる「先生」から連絡が。憐さんが泣きそうになっているそうで」
「……愛人ー、後で遥に睨まれる覚悟しとけー」

 愛人の実力はわかっているつもりだ
 あの程度で怯むはずがないということもわかっている
 …それでも、あの優しい幼馴染は泣きそうになっているのだろう
 直斗はその事実を理解する
 ちゃらちゃらとした軽い調子の仮面をいくら被ろうとも、その根っこが変わることはない

 ……ずっと知っている
 だからこそ、その危険性も、よくわかっているつもりなのだ



 あぅあぅあぅ、と画面に映し出される戦いにおろおろしている憐
 瑞希の治療が終わっても、また大怪我する人がいるかもしれないから、と言って治療室に残っていたのだ
 愛人の契約都市伝説の能力の性質上、腕や足がもげようともどうと言うことはない、と言うことは憐もわかっているはずだ
 そうだとしても、幼い頃から見知っている相手が傷つく事を悲しんでいる

(こういうところを見ていると、本当、戦闘には不向きな子なのだがねぇ)

 それでも、いざ戦闘となれば母から借りている「シェキナーの弓」で容赦なく敵対者を撃ち抜けるのが憐だ
 心を痛めていない訳ではないのだろうが、それを押し殺して戦える
 遥や、「教会」のあの異端審問官は憐の優しい面を思い、なるべく戦わせないように動くらしいが……

(あの凍れる悪魔の御仁は、それを「馬鹿げている」とでも言うのだろうね)

 さて、今のうちに次の治療の準備をするとしよう
 瑞希に渡すための食事を買いに行った灰人も、そろそろ戻ってくるだろうし
 愛人と美亜の怪我の具合によっては、憐にだけ任せるのではなく、自分も働かなければならない
 微妙にスプラッタ感あふれるその戦いを、特に怯えた様子もなく驚いた様子もなく眺めながら、「先生」はどこまでもマイペースだった


 だから、気づいていたとしても気づいていなかったとしても、何も言わない
 泣き出しそうな顔で試合の様子を見ている憐を、さり気なく観察している者がいた、その事実に




to be … ?

もともと不利な試合という事は承知している。
物理攻撃しか使えない自分と、物理無効の新島愛人。
部の悪い賭けなのはわかっていたから野鎌達は今回連れてきていなかった。
が…

「ここまで!?」
「抜いた!」

ぶつかり合った包丁と炎、しかし炎の勢いは止まず壁を抜いて正確に自身へ向かってくる。
咄嗟に体を振って避けた…と思ったが

「クソ…」
「まずは一本、さっきのお返しだな」

左腕の肩から先が無い。
気の遠くなる様な痛みが逆に意識を失う事を許してくれない。

『腕が!腕が!?』
『消し炭ですね』

実況の声で大体の状況はわかる。

「全力だったんだけどな…」
「相性が悪かったな、にしても追い詰められてる割には顔が笑ってる様に見えるが」

当然じゃないか

「このままじゃ死んじゃうよね、私」
「早めに治療しないと危険だな」
「でも、負けるのヤだからまだ続けたいんだよね」
「なら、その意思が取れるまで焼き尽くす」
「なら、焼き尽くされる前にアンタ倒さないとね」
「できるか?」

愛人から放たれた炎が今度は右腕を焼いた。

「これで二本」

痛い痛い痛い、ホント痛い。
しかも腕が無くなったからバランスも取りづらい。
父さん怒ってるかなぁ…母さんは確か見に来ては無いはず無いよね?無いと言って、こんな姿見られたら何言われるか…

「追い詰められてるなぁ、私」
「まだ折れないのか?」
「トーゼン」

だってさ

「こんなに楽しくなってきたのに?」
「……」
「このままじゃ、負ける、負けて運が悪けりゃ死ぬ、助けは期待できない、てかいらない、私1人で何とかしたい、ほら、今私こんなに試されてる、これで終わりか?お前はどこまでやれるんだ?まだやれる事はあるんじゃないか?って、勝つも負けるも生きるも死ぬも私次第」

こんなに楽しい事あるか。

「そういうのは勝ち目がある時だけだろ?あんたの攻撃は俺には届かないぞ?」
「そーだね」

一応、新島愛人の能力に攻撃を通せる契約者は結構いる。
実際3年前、望さんははないちもんめでこいつを縛ったし、翼さんの能力でこいつは本体を直接焼かれた、そうでなくとも例えば炎熱を無力化する獄門寺在処、水を操る獄門寺龍一、父さんのかごめかごめなら炎化してても本体の首を切り落とすだろう。

「けどさ、私の目指してる所に行くならこれくらい乗り越えなきゃさ」
「何?」

さぁ、勝負だ、勝つか負けるかは多分五分五分。

「はぁ!」

生き残っていた包丁で地面を突き刺し土を跳ね上げ瓦礫を砕き砂埃を上げる。

「目潰しのつもり…!?」

放たれた炎が私の足を貫くがそれよりも包丁が円陣を組んで私を囲う方が早かった。
父さんにも誰にも見せた事のない本当の切り札、行くよ…

「かごめかごめ」
 

騒めく観客席、会場は影守美亜が起こした砂煙で何も見えない。

『ちょっとちょっと何も見えないんだけど!カメラさん音声も拾えないの!?』
『無茶言うな!』
『………あっ』
『こんどはなに!?』

龍哉の上げた驚きの声に会場に目をやると煙から何かが勢いよく放り出され…

『おい、アレは…』
『愛人……愛人!?』

地面に落ちて転がる愛人。
そして煙の向こうから現れたのは…

『影守美亜!』
『あ、腕治ってる』
『………神子さん、愛人、あれ意識完全に飛んでます』
『えっ?マジで?んーじゃあ勝者影守美亜ー!!ちょっと影守さん!観客席に見えない状態で決着とか勘弁してくださいよ!!』

医務室に運ばれる愛人とキューピーに引きずられていく美亜。
何も見えなかった件で観客に謝罪する神子と直斗。
それらを尻目に龍哉は先ほどの光景を思い返す。

煙の中でぶつかり合った何か、愛人と美亜だとしか思えない。
しかし

(あれは、人間だったのでしょうか…?)

僅かに捉えた輪郭。
それには…

(翼に尾があった)

疑問は尽きない、しかし隣を見れば神子達は次の試合の準備に移っている。

(今は飲み込んでおくべきですか)

龍哉は疑問を口にする事なく、意識を次の試合へと切り替えた。

続く

 はらはらと、輝く羽根が舞い散る
 それは、この治療室全体を覆うかのように………

「えーっと、腹パン?腹パンだけっすよね?腕とかまたうっかりぼろっとちぎれた状態にはならないっすよね?」
「OK、落ち着こうか、少年。とりあえずダメージは腹パンだけっぽいから治療もそこだけでいいと思うよ。だからその天使の翼しまおう?私の仕事無くなりそうなレベルで治療室に治癒の力ばらまかれまくってるよ?後で倒れるからやめよう?」

 えぅえぅと、泣きそうになりながら憐が愛人の治療を行っている
 モニター越しに戦闘の様子を見ていたとはいえ……と言うよりも、見ていたからこそ余計にこの有様なのだろう
 決着の瞬間がよく見えなかった
 そのせいで、愛人が見た目はせいぜい腹パンされた程度の怪我に見えるが、内部はボロボロなんじゃないかとか心配してしまっているのだ

「美亜さん、本当にほんっとうに、腹パンだけっすよね?実は内臓ドログチャぁになってるとか、ないっすよね?」
「うん、大丈夫。大丈夫だから、泣きそうな顔で言わないで。なんか後が怖い」
「……なら、いい……いや、腕やら脚やらずばずば切ってた時点であまりよくねーっすけど………とりあえず、美亜さんの怪我も愛人の怪我治療し終わったら治療しますね。美緒 さんに、美亜さんの戦いっぷりはお知らせ済っすから」
「私は、疲れ切ってるだけだから治療はいらな……」

 …………………

 Why?

「待って、さっきなんて」
「え?腕やら脚やらずばずば切ってた時点であまりよくねーっすけど…って」
「そこじゃなくて!最後!」
「美緒 さんに、美亜さんの戦いっぷりはお知らせ済っすから……ってところっす?」

 あぁああああああ、と言う心境に陥る美亜
 いつの間に、本当にいつの間に!?

「あえて言うなら、私が少年に頼まれて試合の様子をフルスペックハイビジョンな感じで君の母君へと動画でLIVE中継しておいた!母親として、娘の様子は心配だろうしね!!」
「ちょっとぉおおおおお!?」
「ちなみに、つい先程、父君の方にも動画で試合の様子は送りつけたから安心したまえ!!」

 良い笑顔で親指たててくる「先生」
 いや、安心できない、と美亜は頭を抱えるしか無い

「いや、泣きそうな顔の少年にお願いされると私も弱くてねぇ、後が怖い意味で」

 等と呑気に笑いながら、「先生」はこれっぽっちも悪く思ってない様子で言い切った
 跡でお覚えていろ、と恨みがましく睨みつけた

「あ、ちなみに服ボッロボロでちと再生は難しいね。予備の服としてナース服とバニーガールスーツとメイド服g」

 ずごすっ!!
 あ、戻ってきた灰人に背後から蹴り倒された
 めきゃっ、とちょっと背中を踏まれている先生から視線を外しつつ、美亜は治療室のベッドの中に潜り込んだのだった





終われ

 愛人と美亜の試合が終わって、次の試合までの休憩時間の事
 二人の試合開始前にその姿を見つけていた晃は、とことこ、と近づいていった
 そうして、くっくっ、真降の服の袖を引っ張った

「え?……あぁ、晃君ですか。こんにちは」
「……こんにちは。真降君も、試合を見に?」
「はい。まぁ、出場するチビ逹のお目付役兼手合わせ役かねてですが……そちらは」
「………試合、見に来た。優は出るけど、自分含めてみんなは、出ない」

 試合に出ないのだから、神子の手伝いで実況の方に……とも、ちょっと考えていたのだが
 そもそも、自分ではうまくしゃべれないから無理だろう、と晃は実況係は辞退していた
 TRPGでGMをやっている際はすらすらと喋る事ができても、それ以外では少し、喋るのは苦手だ
 ………TRPGやる時のように、誰かになりきっていれば実況が出来ただろうか。流石に、試す気にはなれないが

「……さっき」
「?」
「愛人と美亜さんの試合の、前。慶次さん逹、見てた?」

 そう、愛人逹の試合が始まる前
 真降が慶次と郁の様子を見ていた辺りから、晃は真降逹の姿に気づいていた
 …遥の方は、気づいていたかどうかわからない。治療室に向かった憐の事で頭の半分以上が使われていたはずだから
 事実、今も遥はまだ真降の方に気づいていないようだ

「気になること………あった?」
「……まぁ、少し」

 ちらり、真降がもう一度、慶次と郁を見る
 二人は、試合の合間にフリー契約者の資料に目を通しているようだった
 あの契約者は来ていないらしい、等と話しているのが少し、聞こえてくる

「彼の担当黒服が彼を見る視線が、少し……」
「………?………慶次さんの担当黒服、郁さんじゃ、ない」
「あれ?」
「………慶次さんの担当、は。赤鐘 愛百合の方。ANo」

 少し考えている様子の真降
 納得がいったのか、あぁ、と声を上げる

「そうだ、郁さんはかなえさんの担当でしたね」
「ん、そう………郁さんも、慶次さんと一緒にいる事、結構多いけど」

 ややこしい、とは晃も思う
 強行派である愛百合からの影響を少しは薄めようとしているのか、慶次はかなえと郁と共に行動する事も多いのだ
 最近では、その二人どころか天地と組むことすらあると言うが

 ……と、真降が「あれ?でもそれじゃあ……」と、新たな疑問が浮かんだようではあったが

「…あ、次の試合、始まる」

 そう、次の試合が始まる
 遥が「げ」と言う声を上げているのが聞こえてきた

 次の試合の出場者の片割れは、遥が「絶対にかなわない」と常に言っている、あの人だ
 





 対戦相手であるその女性を、キラはじっと観察した
 長い黒髪は頭の天辺でポニーテールにされており、銀色のリボンで結ばれている。翡翠色の瞳は、まっすぐにキラを見つめ返してきていた
 武器らしい武器は持っていない。服装はパーカーにジーンズと、戦闘用なのか地味な格好だ

(……日景 アンナ。「首塚」所属……日景 翼とセシリアの娘にして長女。日景 遥の姉)

 キラがすでに持っている情報は、それくらいだろうか。確か、遥より二つ年上……今年で18歳だったはず
 対してアンナの方は、どの程度キラの情報を持っているのだろう
 実はお互い、契約都市伝説に関する情報は与えられていない
 試合の中で、相手の契約都市伝説を見抜け、と言うことなのだろうか

『それでは、第5試合、開始っ!!』

 開始の合図
 小さく、アンナが笑った

「はーい、それじゃあ………年下相手でも、容赦はしないわよ?」

 アンナが、静かに構えた
 あれは、何の格闘技の構えだったか………どちらにせよ、戦闘方法は接近戦か
 契約都市伝説も、接近戦闘向きのものなのだろうか
 油断なく、キラは手元に氷の剣を作り出そうと………

「え?」

 ……どろり、と
 氷の剣の表面が、溶け始めた
 それに驚いた瞬間、アンナが地を蹴り接近してくる
 繰り出された拳を避け、一旦、距離を取った
 もう一度、氷の剣を作り出しながら、ちょうどよい距離を保とうと

 ぐちゃり

「っ!?」

 地面の感触が、おかしい
 見れば、どろり、と、地面が溶けてきているような……

(これは……彼女の契約都市伝説の正体と、能力を把握しないと、危ない)

 アンナもアンナで、キラの契約都市伝説を見定めようとしている気配がある
 どちらが先に見抜くことが出来て対応できるか、まさに、それが求められようとしていた



to be … ?

 観客席では、試合に出る準備をしていた澪や、試合観戦をしていた藍が、異変に気づいていた。
「変だね。いつものキラなら、迷わず突っ込んで行くのに」
「同士桃に考えがあるとは思えないし、相手の能力に足止めされてるのかも」
 酷い言いようだが事実だ。実際、今のキラに策らしい策はない。だが闘志は損なわれてはいなかった。
(地面のこの様子…ぬかるんでるのか、あるいは…溶けてる?)
 そう判断したキラは地面に向けて吹雪を放つ。
「凍れ!」
 ぴきぴきと音を立て、融けかけた地面がアンナに向けて凍り付いていく。
「だぁあああああ!」
 すかさず凍った地面の上を全力疾走。アンナとの距離を詰めて氷の剣を振りかざす。

 どろり

 またしても、氷の剣が溶け出すが、キラは構わず振り下ろした。切れ味は犠牲になっても、打撃には使えるはずだ。
「っ!」
 氷の剣を紙一重でかわしざまに、アンナの蹴りがキラの脇腹を掠める。
「…っ!ととっ」
 蹴りのダメージ自体は大したことはないものの、融けた地面に足を取られてよろめいた。
「隙あり」
 キラの体勢が崩れたのを見逃さなかったアンナの、続けざまの蹴りがキラを襲う。
「わっ!っよっと!」
 キラも紙一重で続けざまの蹴りをかわしていくが、融けた地面に足を取られる自分の方が接近戦では不利と悟り、距離を取ろうと下がる。
「さーて、どうしたもんかな…」
 物を溶かす都市伝説。「コーラは骨を溶かす」を拡大解釈しているか、はたまた他の都市伝説か。
「これならっ!」
 アンナに向けて吹雪を放つ。
「!」
 正確には、アンナの足下に向けて。
「これは…」
 アンナの両足が、地面に氷で封じ込められている。
「いまのうちっ!」
 どうせ溶かされてしまうのだ。その前に速攻で片を付けなければならない。
「いっけえええ!」
 じゅっ

 嫌な音を立てて、アンナの足下の氷が溶ける。間一髪、氷の剣をかわした。


 観客席では。
「ね、藍、あの都市伝説なんだと思う?」
「そうね…いくつか候補はあるけれど」


続く

 ……なるほど、凍らせる能力なのだろう
 何度溶かしても、氷の剣を出してくる。それだけではなく、足元も凍らせてくる

(相性の問題で言うと、普通に考えればこっちが有利なんでしょうけれど)

 それでも、油断はしてはいけない
 アンナは、そう考えていた
 勝負において最も危険なのは、油断、慢心、そして軽率
 慎重たれ、しかし大胆たれ
 慢心していても勝負に勝てるのは、「首塚」首領たる「将門」様のような圧倒的な存在だけ
 そして、自分にはまだ、それだけの圧倒的な力はない
 だから、油断しない。慢心しない。軽率な考えは抱かない
 本当であればもう少し距離を詰めて攻撃を続けたいところであるが、あまり接近し続けるのも危険だろう
 ……一瞬で凍りつかされてしまえば、そこまでなのだから

(あの子の能力の効果範囲がわかればいいんだけど……)

 こちらの能力が届く範囲は「視界が届く範囲」……自分の父親と同じだ
 彼女、桐生院 キラの能力が視界が届かない範囲まで届く場合、こちらは不利となるだろう

(それでも、相手の動きはまずは封じたいわね)

 だから、発動する
 自身が契約している都市伝説による能力を
 先程までは足元を「溶かす」ことで動きを封じようとしていたが、そちらはすぐに対処される
 ならば、別のものを溶かすとしよう
 幸いにして、この銭湯ステージは町中をイメージした作りになっている
 …町中以外のステージだったのは、優とゴーレムの試合くらいだろうか
 戦いを魅せやすいステージとなると、町中の方がいいのだろうかと勝手に考えながら………見た先は、キラの周辺の建物

 能力を使い、効果が発動するまで少し時間がかかってしまうのがこの能力の欠点だ
 前もってある程度能力を発動させていた地面に、先に効果が現れる

「っわ、わわ……!?」

 キラの対応は早い
 すばやく地面を凍らせて溶けた地面に足がめり込むのを防ぎ、こちらへと氷の剣を生成しながら接近してくる
 その攻撃を避けながら、能力の発動を続ける

 ……そろそろ、いける!

 キラが作り出した地面の氷を利用して、滑るように移動してキラから距離を取った
 そして、能力により「温度をあげていた」建物へと止めを刺すように強く、能力を使った


 溶けた、融けた
 キラが立っている位置の左右の建物が、地面が
 ほぼ同時に、溶け融ける
 足元のバランスを崩した上で、建物のいち部を溶かし、崩した建物の上層を彼女に向かって崩していく
 一歩間違えば下敷きになって大惨事だが……恐らく、大丈夫だろう
 彼女も契約者なのだから


 溶かす事、融かす事
 それが、アンナが契約した「人肉シチュー」の能力だ
 見える範囲の者の、物の温度をあげていき、融点に達した時点で溶かし融かす
 その都市伝説で語られている、長時間風呂で煮込まれ煮崩れた女性のように溶かし崩すのだ
 本来、人間にしか効果が及ばないその能力を契約によって人間以外の物体にすら効果が及ぶようになった
 ……もっとも、元から実体のないものには効果が及ばないのだが


 ………さぁ、どう動く?
 圧倒的質量をキラの頭上へとふらせながら、アンナは次のキラの動きを警戒した



to be … ?

 はらはら、はらはらと
 何か、羽毛のようなものが降り注いでくる感触
 羽毛のようなそれはふんわりと暖かく、優しく

「………まな?」

 呼んできた声は、かつてそう呼んできた声よりもう少し成長した声だった
 …昔からそうだった。優や晃、神子の事はそのまま呼んでいたが、他の面子の事は「なお」とか「はる」と少しだけ縮めて呼んできていた
 怖がりで臆病ではあったけれど、信じた相手には人懐っこかった
 それは、三年ぶりに会って、話し方も雰囲気も、「表向き」が全て変わっても同じだった
 そうして

「………っ」
「あ、ま、まだどっか痛い?大丈夫?どこ、痛い?」

 はらはら、はらはらと
 輝く羽根が舞い散る
 憐の「ラファエル」の能力によるものだろう
 この舞い散る羽根にも治癒の力があると知ったのは、目の前で怪我した誰かを見て憐がパニックになり、能力を暴発させた時だった
 あの時、怪我をしたのは誰だったか………

「少年、ストップー。本格的に私の仕事がなくなると言うか、一歩間違ったらこの治療室が君の羽根で埋まるからやめよう?」

 ……聞き覚えあるようなないような大人の男性の声
 ようやく意識がはっきりしてきて、目を開く
 こちらを見下ろし、泣き出しそうな顔をしている憐と、目があった
 やはり、背中から「ラファエル」としての天使の翼が出ている
 先程まで……否、今現在まで降り注いでいる羽根は、やはり憐の治癒の羽根だったようだ
 それは、まるでこちらを埋めるように降り注ぎ続け………
 …………………待て

「憐、待て、待った。埋もれる。窒息する」
「窒息はせんと思うけれど、ふっわふわのものに埋もれたある意味幸せ状態かもしれんよ?」
「そこのおっさんは憐を止めたいのかもっと能力使わせ続けたいのかどっちだ!?」

 先程にも聞こえた声の男性に、相手が誰かも確認せずにツッコミを入れた
 がばっ、と起き上がる。体の痛みは消えている。が、急に起き上がったせいか、くらり、目眩がした

「まな、まだ寝てないと……」
「いや、憐、大丈夫だ」

 えぅえぅと泣き出しそうになっている憐の様子は、昔と何も変わっていない
 ……何年経とうとも、その根っこはそのままなのだろう

「……本当に?本当に、大丈夫?我慢とか、していない…?」
「していない。大丈夫だ。そこまで心配しなくてもいい」

 そうだ、憐は昔から心配しすぎだ
 ……いや、昔よりも、心配性になっているような?

「………なら、いいんだけど」

 うつむくその顔と、喋り方は、昔と同じかそれ以上に弱々しく

「……………咲季さんみたいにいなくなってしまうのは…………嫌だよ」

 そう呟いた声は、小さく、震えていた



「……あの少年は、本当に怖がりであるねぇ」

 ちくちくと、美亜用の服を作りながらそう口にした「先生」
 …なお、彼女の体のサイズは測っていない。「目測でわかっているから大丈夫」との事だが、そちらの方が大丈夫じゃないのではないだろうか

「怖がりにも程があると思うけど……後、服は穴だらけなだけだから別に作らなくとも」
「失った恐怖が大きすぎたから仕方ないのだろうね。そしてお嬢さんの服に関しては、年頃のお嬢さんがそんなボロボロの服ではいかんよ……っと、できた」

 す……と、「先生」が完成させた服
 それは腰部がコルセット状になっているハイウエストの暗色のスカートに、白いブラウス
 腰のクビレを際立たせ、胸が大きい場合ボンキュッボンを強調させ、ブラウスで清純な雰囲気を醸し出させる………

 ごがすっ!!

「普通の服にしろっつったろ」
「はっはっは。我が弟子よ、後頭部踏みつけられると流石にちょっと痛いぞ」

 みししっ、と灰人に後頭部踏みつけられている「先生」の様子に、「あぁ、いつもこうなんだな」と謎の納得をした美亜であった





to be … ?

 御簾の向こう側の気配が、小さく笑ったのがわかった

「楽しまれているようですね」

 幸太が声をかけると、「あぁ」と短く、返事が返ってくる
 御簾越しであっても、モニターに映し出される試合の様子ははっきりと見えているらしい
 楽しんでいるのならば、何よりだ
 なにせ、将門公からの頼みとは言え、無理に来てもらっているのだし………

「……他の連中から、見物の権利を勝ち取ったかいがあったと言うものだ」

 …………
 …どうやら、将門の知り合いの祟り神の中から、誰が試合の見物に来るかでちょっとした勝負事があったらしい
 どこで勝負したのかわからないのだが、勝負の現場が大変な事になっていそうである
 もっとも、幸太にとっては学校町での出来事でないならば、あまり関係ない事だが

(今のところ、おかしな動きをする者もなし、か)

 白面九尾の狐、バビロンの大淫婦、「怪奇同盟」の盟主
 これらのうち、いずれかの尻尾をつかめたら
 そのような目的もあって、今回の第二回合同戦技披露会は開催された訳だが

(どこまで、尻尾を出してくるだろうね)

 そして、尻尾を出してきたとして
 「その情報を掴んだ者がどれだけ、情報を流してくる」だろうか?

(……どう転んだとしても。「狐」に関わる物語の結末は、変わりはしないのだろうけれど、ね)

 ほんの一瞬だけ、「鮫守 幸太」ではなく「ハッピー・ジャック」としての顔になり
 しかしすぐに元に戻って、幸太は試合を映し出すモニターへと、視線を戻した



 御簾の中で、長屋王はくつろいだ様子で試合を見ていた
 「もにたー」とやらは彼が生きていた時代からすれば妖術の類にも見えるものだが、流石に時代が移り変わっている事は理解している
 今の時代にはそのような技術もあるのだろう、と言うことで納得している
 そもそも、自分達のような存在が「都市伝説」と呼ばれている時点で、自分逹の時代とは違うのだ

(……しかし、なかなかに面白いものだ。これならば、「曾我兄弟」にでも譲ってやってよかったか………】

 …いや、ここで馬鹿な騒ぎを起こさすような輩を牽制する意味では、自分が来るのが正解だっただろう
 己は、大きな問題が発生しないようにとの抑止力なのだから

 ちらり、御簾の隅に置かれた、小さな犬の像を見る
 この御簾の中から、己の祟り神としての力が漏れ出さないための結界を張るために、何だったかの契約者が置いていった物だ
 ここに来るまでの籠の中にも置かれていたところを見ると、これが結界能力発動の鍵となるらしい

(…結界を張った者は、「狐」から逃げていて将門の元に保護されたのだったな………「狐」め、随分と暴れたらしいな)

 幸い、己の膝下は「狐」に荒らされていない
 あちらも祟り神や神に相当する者が守護する土地にはあまり積極的に手を出さなかったのか、それともたまたま、狙われなかっただけか
 …どちらにせよ、将門の完全な膝下ではないとはいえ、あの男が執着している学校町と言う土地に手を出した時点で、今後さらに派手に動くことに違いはない

(学校町に入ってからは、「狐」当人の動きは一切ないようだが………何か企んでいるにしても、妙だな)

 気配も何もかも消え失せ、配下すらも「狐」を見つけられずにいるらしいとの話も聞く
 …まるで、「狐」自体が消え失せてしまったかのような状況

(………何者かに、「封印」でもされたかのような)

 だとしたら、封印したのは誰なのか
 何故、封印した事実を他者に話していないのか………


 「長屋王」には、現状推察しか出来ない
 なにせ、彼はこの「物語」のゲストキャラに過ぎず、「物語」に深く関わるわけではないのだから
 ただ、彼はこのように考える
 何者かが「狐」を封じているのだとして、しかし、それを「首塚」や「組織」等にも一切知らせていないのは、その者に何か考えがあるのだろう、と




to be … ?

 観客席にて。
「藍はどう思う?」
「あの溶けるような崩れかた…『コーラは骨を溶かす』を拡大解釈してるのかも」
 澪は頷きつつ、思索を巡らせる。
「溶ける…崩れる…もしかして」
「何か考えがあるの」
「あるじゃない、他にも人体が溶ける都市伝説」
「…あ!」
 緑は話についていけず不満げだ。
「話が見えない。お前ら何が言いたいんだ」
「藍、せーので言うわよ」
「早く言え」

『人肉シチュー』

 観客席の憶測はさておいて、キラは頭上に降りかかる溶け崩れた家屋の対処を急いだ。
(これだけの建物を全部凍らせるヒマはない。それなら…)
 頭上に力を集中し、降りかかる建物を凍らせる。
「行けっ!」
 そのまま左右と足下に張り巡らせた氷をアンナの方まで延ばしてゆく。
 分厚い、氷のトンネルが出来た。
「たあああああっ!!」
 氷の上を滑りながら手元に氷を生み出す。先の尖った細い棒。氷の槍だ。
 ひゅんと投げると、アンナはなんと言うことのないようにひらりとかわす。
「かかった!」
「!?」
 下半身の違和感に気づいたアンナが視点を下げる。
 …下半身が全て、分厚い氷に覆われている。氷の槍は、下半身を凍らせる間、注意を逸らせる罠だったのか。
「これっくらいなら、直ぐには溶かせないでしょー!」
 キラは拳を氷で固め、アンナに向かって振りかぶる。
「アイス・ナックルパーンチ!」


「この勝負、同士浅葱はどうみるの?」
「互いの能力を喰い合っているうちは互角、だとおもう」
「同士桃の攻撃範囲は、どれくらい?」
「一応、視認できる範囲全て。吹雪はもう少し広範囲に出せるけど。それより…」
「それより?」
「戦況が膠着状態になって、決着を急ぐと、キラが危なくなる」
 キラはせっかちだしね、と澪は苦笑いして、拳をアンナに振り下ろそうとするキラに、真剣な眼差しを注いだ。



続く

 建物を溶かし崩すような大技を使った
 その時点で、「あぁ、焦れてきたんだな」と遥は判断していた
 なにせ、自分の姉である。ある程度考え方はわかる

(……と、なると。こりゃ「奥の手」使うかもしれないな)

 「奥の手」はいくつか持っているはず
 そのうちの一つは確実に使うだろうな、と

 その遥の予想は、すぐに当たる事となる


 振りかぶられた拳を、アンナは確かに見ていた
 下半身の分厚い氷を溶かすには間に合わないはずだった

 そう、「氷を溶かす」のは、間に合わない

「…………え?」

 ぐちゃっ、と
 キラの目の前で、アンナの体が「溶け崩れた」
 すかり、キラの拳は空を切る

「どこに……!?」

 分厚い氷での中には下半身すら、残っていない
 慌てて覗き込めば、どうやら地面を「溶かして」地面に逃げ込んだらしい……と、言うよりも

(まさか、「自分の肉体も溶かし崩せた」!?)

 先程からの能力の及ぶ範囲を見るに、視界の範囲内を溶かし崩しているのだろう、と言うのはわかっていた
 なるほど、たしかに自分自身にも視線は届くだろうが………

(……待って。自分を溶かす、なんて無茶をやって………そもそも、「溶け崩れた」状態で視界の届く範囲、ってどれくらい?)

 警戒して辺りを見回す
 どこから、飛び出してくるのか、とそこを警戒し……

 ………ぼごぉっ!!

「っわわ!?」

 キラが立つ位置、その周りをぐるっ、と囲むように、地面が一気に崩れ落ちた
 バランスを崩しそうになり、急いで体勢を立て直す
 そして、その直後………溶け落ちた地面の向こう側から、アンナが飛び出してきた


 少しだけ、遡る
 実況席から試合の様子を見ていた神子は、アンナの体が溶け崩れた瞬間、思わず「うわぁ」と声を上げていた

「慣れないなぁ、アンナのあの「奥の手」」

 自らの肉体に向かって「人肉シチュー」の能力を使い、溶かし崩す
 アンナが使う「奥の手」の一つだ
 溶け崩れた状態でもアンナの意思は残っており、痛みを感じる事もなく、その溶け崩れた状態のまま自由に行動出来る
 若干、視界の広がる範囲が狭くなるのが欠点、とは当人が言っていた言葉だが、溶け崩れた体を広範囲に広げれば、広がった分視界が届く範囲は広がるのだから、半分詐欺だ
 しかも、溶け崩れた状態から元の姿に戻るのは、ほぼ一瞬で完了してしまう
 当人が能力を使いこなす為に努力した結果とはいえ、なかなかに反則気味だろう

(ただ、流石に長時間溶け崩れた状態ではいられない、とも言ってたのよね。となると………)
「……こりゃ、アンナさん本気になってきたな」
 

 神子の思考を知ってか知らずか、そう口に出した直斗
 そう、先程までも決して手加減していた、と言う訳ではないのだが、本気でもなかった
 しかし、あの奥の手を使った以上、本気と見ていいだろう

「そうなりますと、そろそろ………」

 次にアンナが使う、今まで使っていた能力
 「人肉シチュー」の応用で発動可能なその能力を使うだろうと、龍哉が口に出しかけたのと
 アンナが、それを使いだしたのは、ほぼ同時だった


 繰り出された蹴りを、キラは分厚い氷を作り出す事で不正だ
 しかし……

(攻撃が、さっきまでよりも重たい!?)

 それだけ、ではない

「早………」
「遅いっ!!」

 っひゅっひゅっひゅ、と連続して繰り出される蹴撃
 早い
 一撃一撃のスピードも、上がっているのだ

「まさか、身体能力が上がって…………熱!?」

 攻撃を避けながら、気づく
 自分の、足や腕の部分だけ、「体温が上がってきている」と

 ……一定ラインよりも体温をあげられたら、溶かされる!!

 ひゅうっ、と自分の足と腕を氷で覆い、体温を下げる
 が、相手は能力を発動し続けているのだ
 遅かれ早かれ、溶かされる可能性はある

「なら、一気に……」
「……決める!!」

 相手も、考える事は一緒だったのか
 アンナのスピードが、さらにあがった

 半ば残像すら残しながら、一気にキラの懐へと潜り込んで

「ーーーーーーっ!!??」

 重たい一撃
 いや、一撃ではない。連撃を浴びたのだと理解したのと
 キラの意識がぶつりっ、と途絶えたのは、ほぼ同時だった


「ーーーーっふぅ」

 きゅう、と気絶したキラを見下ろし、アンナは息を吐き出した
 「人肉シチュー」の能力を自分に使用し、「意図的に体温をあげる」事によって、「熱量エネルギーを身体能力へと変換させる」
 ……父親である日景 翼が、「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力を自分自身に使う事によってやっていることと同じ事を、アンナもまた出来た
 ただ、父親とは違いかなり最新の注意を使いながらでなければ間違って自身の肉体を溶かし崩してしまうため、精神力の消耗が激しい
 使いだしたからには、一気に勝負を決めるしかなかったのだ

「…に、しても。自分を「溶かし崩す」のも、「溶かし崩さない程度に体温を上げて身体能力をあげる」のも、使わないつもりだったのに」

 使わなければ勝てなかった
 つまり、自分はまだまだ、と言うことである

 もっと、鍛錬が必要である
 アンナはそう、自覚したのだった




to be … ?

 キラとアンナの戦いの決着がつき、(主にアンナが)戦闘舞台を派手に壊したので修復と言うか次の試合までの準備というその時間
 慶次はフリー契約者の情報をタブレットPCで確認していた
 郁が望逹に渡した物と同じ情報だ
 普段。CNoが管理している情報をここまで自由に見る機会は慶次にはないため、これを機会に試合の合間合間に読み込んでいた

「……「人間にも発情期が存在する」の契約者は、流石に来てねぇか」
「そのようだね。まぁ、いくらでも悪用できる都市伝説と契約しながらも、それを悪用せずに何年も過ごしている人物だ。どこの組織にも加わっていないようだし、今後もそのつもりであるなら、こういう目立つ場には現れないだろうね」

 何人か、契約都市伝説の関係や当人の人間性から「要注意」となっている者を主に確認し、この会場に来ているかどうか探してみる
 今のところ、その手の人物で目立っていたのは「九十九屋 九十九」くらいだろうか
 他も、ちらちらと姿は見かけたが試合にはまだ参加していなかったり、そもそも参加する気がなさそうな者のようであった

「………っと、どうやら、次の試合のようだよ」
「ん?あぁ、そうか………って」

 ちょっと待て
 モニターに映し出される会場の、その中央に立つ人物の姿に、慶次はそのツッコミの言葉を叫びそうになったのを、すんでのところで、押さえ込む事に成功した


「……それでは、次の試合は特別試合。スペシャルマッチとなります!」

 実況席にてそのように言いつつ、「大丈夫なのかなぁ」ともちょっぴり思う神子
 そう、スペシャルマッチ、である
 それも、1対多数の
 モニター越しに映る会場のど真ん中に、全身「白」と言い表したくなるような男の姿があった

「「組織」X-No,0事ザン・ザヴィアー!本来なら色々仕事でこういう場に参加できないはずなのですが、明日で日本に滞在していられる時間が切れるとの事で……」
「日本で発生中の仕事に手を付けると半端になるから、と言う理由で仕事に手を付ける訳にはいかない、と」

 「マリー・セレスト号」と「さまよえるオランダ人」の多重契約をしてしまい飲み込まれたザン
 能力は強大であるが、欠点として「さまよえるオランダ人」の特性により、一つの場所に長い間とどまる事ができないのだ
 今回も「狐」の件やら「怪奇同盟」の盟主暴走の件やら、本来上位Noも仕事は山積みであるはずなのだが、そちらの仕事をさせてもらえないための、今回の試合への特別参加だ
 ……もっとも、ザンにとっても、これに参加することである程度情報を集めようという意図があるのかもしれないが

「えー、流石に「組織」上位Noとなると、ヘタな人とぶつかっても瞬殺が予想されます。よって、今回は特別ルールとして、ザン・ザヴィアーと他多数の契約者との1対多数の戦いとさせていただきます」
「ザンさんの勝利条件は、参加者全員を気絶、もしくはギブアップさせる事。他の参加者の方々は、誰か一人でもザンさんに一撃を加えられた時点で勝利となります」

 他にも、ザンは一部の能力に関しては使用しない、などの制限がある
 制限があってちょうどいいくらいなのだ、あの「組織)上位Noは
 一時期「組織」を離れていたあの男が「組織」に戻った事は、「組織」にとって大きな利益である事だろう

「…………では、説明終わり!試合開始!!」

 神子が試合開始を宣言すると同時
 ザンの周辺の空間がぐにゃり、歪んで

「あっ」
「おー、さっそくやったな」

 ザンの周辺に出現した大量の海水と巨大な烏賊の姿に、直斗は感心したような声を上げた


 ビルが立ち並ぶオフィス街のような戦闘フィールド。その地面を海水で満たしていく
 もしかしたら溺れた奴がいるかもしれないが、多分大丈夫だろう。死にはしない

 己の周辺にはクラーケンを出現させ、ザンは海水の上に立ちながら辺りを見回す
 自分以外は全員倒せばいい。なんともシンプルな事だ

「さぁて、どこから来る?」

 遠距離からの狙撃か、それとも正面から来るか
 警戒していると……近づいてくる、気配
 水中から迫るそれに気づくと同時、ザンはクラーケンの足へと飛び乗って、高く跳ぶ
 その瞬間、一瞬前までザンの立っていた位置をがぶりっ、と
 巨大な生物の牙が、空振った


「…………でっか!?」

 ザンへと襲いかかった巨大生物を見て、思わずそう口にした神子
 龍哉は、モニターをじっと見つめて首を傾げる
 

「ずいぶんと、大きな鮫ですね。どのような都市伝説でしょうか?」
「……「メガロドン」辺りじゃね?UMA系の。確か、それと契約してるフリー契約者の情報あったよな」

 直斗がそう口にすると、えっと、と神子はタブレットPCで「組織」から渡されたフリー契約者の情報を見る
 そうすると、たしかに、いた
 「メガロドン」との契約者が

 メガロドン自体は、約1,800万年前から約150万年前にかけて実在したとされる巨大鮫である
 その歯の化石は、日本においてはしばらく「天狗の爪」とも呼ばれていたと言う
 一時期は最大個体の全長は40メートルはあるだろうとも言われていたが、流石に否定されており、推定値で約13メートルや20メートルと言われている

 ……が、今現在、ザンへと飛びかかり、再び水中へと潜った巨大鮫の姿は、全長40メートル程であった
 メガロドンは今現在も生存している、と言う生存説としての都市伝説のメガロドンなのだろう
 契約者本体とは別にメガロドンが出現するタイプなのか、契約者自身がメガロドンに変化するタイプなのかは、わからないが………前者であった場合、契約者は海水に飲み込まれずに無事だと言うことだろうか

「しかし、巨大クラーケンと巨大鮫の対決………」
「前にみんなで見た、鮫映画を思い出します」
「うん、ちょっと思い出すけど、流石にあれはハリケーンと一緒に飛んできたり………は………」

 …モニターに、ちょっぴり信じられないものが、映る

「おー、すげぇな。メガロドンってビルを泳ぐのか」
「泳ぐわけないでしょ!?いや、たった今、泳いでるけど!?」

 そう、そうなのだ
 メガロドンが、ビルの側面を「泳いでいる」。まるで、ビルの側面を「海面」として認識しているかのように

 某国において、何故か鮫系パニック映画は人気があるのかB級C級Z級と低予算っぽい鮫映画は多い
 その中で、「鮫がこんなとこ泳ぐ訳ねぇだろ!?っつか、こんなところに鮫でるか!?」と言うのがあったりなかったりするが………それの影響でも受けたのだろうか

 とにかく、ビルの側面を泳いだメガロドンは、そのままビルから飛び出してザンへと襲いかかっている
 ぐるりっ、とクラーケンの足に捕らえられ、みしみしと潰されそうになってはいるが……海面を、すぅー、すぅー、と巨大な鮫の背びれが横切る
 どうやら、メガロドンは複数いるようである

「ちなみに、他の参加者は……?」
「あ、溺れている人を回収している方が」

 モニターの済を、時折ふっ、ふっ、と船の影がよぎっていたのを、龍哉は見逃していなかった
 ボロボロの漁船が、契約者以外の人間も救助している最中らしい

 今のところ、ザンへ攻撃を加えているのはメガロドンだけだが………まだまだ、攻撃参加者は増えそうだ


 海水を出してもらえた事は、彼にとっては幸運だった
 「首塚」所属、「良栄丸事件」の契約者である良永 栄(さかえ)は、自らの契約都市伝説で生み出した漁船でもってザンが大量召喚した海面を進んでいた
 大地も走れるこの漁船だが、流石にスピードが落ちてしまうのだ
 だが、こうして海面であれば本来のスピードで移動出来る
 自身は船の制御に集中し、船とともに召喚した乗組員のミイラにおぼれている他の契約者を回収させていく
 ザンへの攻撃も行いたいが、今は他の契約者の回収が優先である
 自分以外の契約者に、ザンへの有効な攻撃を行える者がいるかもしれないのだから

「……っと、うわ!?」

 が、油断はできないようだ
 ミイラが回収しようとした相手が契約者ではなく、ザンの能力で呼び出された狂える船員で襲い掛かってくる事もある
 慌てて、ミイラ逹に命じて再び海へと突き落としたが、他の回収した契約者も同じように狂える船員に応戦している
 そう簡単には、終わらせてはくれない、と言うことだ



 まるで水没した都市のようになった戦闘フィールド
 そこを舞台に、ただ一人を狙った戦いは、まだ始まったばかりである








to be … ?

医務室にて
「……………咲季さんみたいにいなくなってしまうのは…………嫌だよ」
「居なくなりはしない、その為の力だ」
まぁ…確かに
「親父お袋は愚か姉さんまで失踪してる現状信じろと言うのは酷かもしれんが……俺だって置いてかれる気持ちはよく分かってる積りだ、燐や遥よりは長生きする予定だしなぁ」
だから泣くなと、年上の幼馴染の頭を撫でてため息をつく。
しかしさっきの試合、買ったと思ったが負けた。
いや、何となく美亜が最後に撃った能力のタネはわかってるので最初から焼き殺すつもりで行けば勝ててた可能性は高い。
反省点は多い。

『……それでは、次の試合は特別試合。スペシャルマッチとなります!』
「スペシャルマッチ?」
医務室のモニターから聞こえてくる声に思わず首を傾げる。
見れば隣のベッドで先生とやらが作った服に袖を通してる美亜も同じ様子だ。

『「組織」X-No,0事ザン・ザヴィアー!本来なら色々仕事でこういう場に参加できないはずなのですが、明日で日本に滞在していられる時間が切れるとの事で……』
「「……………」」
『えー、流石に「組織」上位Noとなると、ヘタな人とぶつかっても瞬殺が予想されます。よって、今回は特別ルールとして、ザン・ザヴィアーと他多数の契約者との1対多数の戦いとさせていただきます』
「燐スマン」
「先生、この服もらって行きますね」
「「ちょっとX-No.0ボコってくる!」」
「ダメー!?」
「組織の上位ナンバー相手に戦うチャンスなんだよ!?」
「美亜さん、アンタご両親にバレてヤバイってさっき言ってたじゃないか」
「お小言確定してるなら後どんだけ暴れても関係ないよね!?」
「俺はさっきの反省点を見直したいからだな」
「まなはさっきあんだけ無茶したんだから絶対安静!!」
ギャーギャー言い合いしてる間にも試合は進んでいき…場面が少し動いた。

『さぁ、いぜん勢いを増すクラーケンvsメガロドンのB級クリーチャー対決!まるでアルバトロスの映画だ!?』
『鮫映画に鮫が出てくるだけでも評価できるな……お?』
実況席から上がる疑問の声。
モニターに映るは宙に浮かぶ無数の刃物がクラーケンの足をメッタ刺しにする光景。

「……………」
医務室の全ての視線が美亜に突き刺さる。
「い、いや…私じゃないよ?」
「て、なると誰が………」


クラーケンの足の上で戦場を見渡していたザンの目がそれをとらえた。
クラーケンの足をメッタ刺しにした刃物の群れ。
それは正確には刃物では無く…
「刃物を握った腕?」
こんな事をする存在に少しだけ心当たりがある。
刃物が飛んできた方へ目をやる。
やはりいた。

宙に浮かぶ無数のメイド姿のマネキン人形の群れ。
それぞれが手に大型の刃物や鈍器、あるいは盾を装備している。
人材不足を解消する為に投入された都市伝説によって稼働する自律駆動型のマネキン人形。
K-No.の黒服達。
そして、それらを統括し操る存在がいるとすれば………いた。

「加減が効かないかごめかごめと刃物は縁を切るは使用禁止、となると今回は私しか使えないわよ?」
「それで十分…なんて言える相手じゃないが手数は足りてる、暴れるにはちょうどいい」
「実戦からかなり離れてるけど勘鈍ってない?」
「ならここで取り戻すさ」
「OK、行くわよ契約者」
「あぁ、行くぞ希」
組織の幹部、No.0の1人にして唯一の人間。

「K-No.0」
「腕試しです、付き合ってもらいますよ…X-No.0」

影守蔵人が参戦した。

続く?

「…K-No,0まで出ているとなると、やっぱり参加し」
「駄目ーーーっ!?まなっちはまだ絶対安静ーっ!!」

 引き続き、ザン相手のスペシャルマッチに参加しようとする愛人を引き止める憐
 愛人の様子にちょっとは精神的な余裕が出てきたのか、喋り方が3年前からのものに戻りつつある

「…つーか、先生!先生もっとちゃんと止めて!今、この現場で一番医療知識しっかりしてる人!!」
「うむ、まぁ止めてもあまり効果がない予感しかないのであるが。とりあえず、そこな少年」
「何だ?」

 何やら、また新たに布を手にしている「先生」に声をかけられ、とりあえずそちらを見る愛人
 にこり、と「先生」は特に怒っている様子もなく笑ったままで、こう告げる

「先ほどまで、私があちらのお嬢さんの服を優先して作っていたのでうっかり忘れがちであると思うが、今の君は全裸だ。流石に医務室出るのやめよう?」

 そう、そうなのだ
 「先生」が女性優先だと言わんばかりに服がボロボロになった美亜の服の作成を優先していた為見落としがちかもしれないが、愛人は今現在全裸なのだ
 あの戦闘の結果全裸になって、そのままだったとのである

 この姿のまま、バトルフィールドに向かうというのは、大変と問題がある

「…シーツまとえば」
「チラリズム満載になるねぇ。どちらにせよやめようか」

 ちらり、愛人が憐を見れば、「絶対安静じゃないと駄目」とでも言わんばかりの表情
 ちらり、今度は灰人を見れば、「いいからおとなしくしておけ」と言わんばかりの表情

 ………総合して考えた、結果

「構わない、行く」
「駄目ーーーーっ!!」

 がっし!!
 それでも行こうとした愛人を、憐が全力で止めた

「憐、あのな。戦闘中は服が破けようが全裸になろうが、そんな事を気にしているようじゃ勝てる勝負にも勝てなくなるんであって……」
「それは戦闘中や緊急事態の話であって、今のお前は戦闘中じゃないし、あの戦闘はお前がどうしても参加しなきゃいけないような緊急性のあるものじゃない」

 憐に対して喋っていた愛人だったが、そこに灰人が容赦なくツッコミを入れた
 っち、と愛人はこっそり舌打ちする

「とりあえず、憐。離せ」
「離したら、まなっち、即戦いに向かうでしょ?」
「あぁ」

 ごがっ

「~~~~っ!?」
「清々しいまでに即答しない」
「あ。アンナさん」

 いつの間に、治療室に来ていたのだろうか
 アンナがごんっ、と愛人にげんこつ喰らわせ、強制的におとなしくさせた
 瞬間的に身体能力を強化して、強めにげんこつしたらしい。じんじんと痛むのか、愛人が頭を抑えている

「先生、大丈夫とは思うんだけど、ちょっと診察してくれるかな?遥が「念の為診てもらって来い」ってうるさくて」
「うむ。来なかったら我が助手に呼んでこさせようと思っていたからちょうど良かった。肉体を溶かし崩して戻す、と言うことをやったのだからね」

 憐が撒き散らしてしまった治癒の力がこもった羽毛を半分避けつつ、椅子を引っ張り出してくる先生
 取り出していた布地を、一旦端に置いた
 ……愛人の服の替えをなんとかするのは、またもや後回しになったらしい

「ほら、まなっちー。そもそも、冷静に考えたらもう選手受付終わってると思うから参加無理っすー。ここで大人しく見てるしか無いと思うっす」
「っく……なんという事だ………!」

 がっくりと、愛人がうなだれている間にも、モニターには試合の様子が映し出され続けている


 ………また、少し、戦況が動き出そうとしていた
 




 無数のマネキン人形の群れを見て、さて、とザンは思案する
 普段と違い、今回は試合であり、自分は一部の能力を使用しない、と言うことになっているのだ
 どう片付けたらいいものか………と、言うより

「影守、希。お前ら仕事はどうした」

 そう、仕事
 希が操るキューピー人形逹はこの試合の撮影を続けているはず……であるし、観客の誘導も、あのメイド姿のマネキン逹が動いているはずである
 医療班……は、問題ないのだろう。そもそも、あの「先生」が本気で仕事をするのなら、一人でも十分なのだし、本気で仕事をするのなら

「私の制御下ではあるけれど、殆ど自立行動させてるから大丈夫よ」
「この試合に参加した程度で、それらの制御が外れる訳でもないからな」
「なるほど」

 ……ただ、これは仕事があるからと今回の戦技披露会に参加できない天地が悔しがりそうではある
 後で教えておいてやろう

「だが、クラーケンを攻撃しているだけじゃあ、俺には届かないぞ?「クラーケンの足を落とせばいい」と思っているわけでもないだろう?」

 確かにクラーケンの足は滅多刺しにされている
 されてはいるが、この程度でどうにかなるクラーケンではない……と、言うよりも、それ以前に
 ザンが召喚できるクラーケンは一体ではない
 ざばぁあああっ、ともう一体。今度はタコ型のクラーケンが出現した
 それに、ザンの能力はクラーケンを呼び出す事だけではなく………

「撃ち方用意っ!!」

 と、その時
 突如として、少女の声が響き渡った
 その直後

「ーーーーー撃てぇっ!!!」

 そのような号令と共に
 大砲の発射音が、連続して響き渡った


「なんかすごい事になったーっ!?ザンに向かって、大砲が連続発射されてる!?って言うか、大砲ってここまで連射できたっけ!?それと何、あの海賊船!!??」

 思わず一気にツッコミする神子
 モニターに映し出されているのは、巨大な海賊船
 それが海賊船であるとわかるのは、その大きな帆は黒く、中央にドクロマークが描かれていたからだ

「……黒髭辺りじゃないか?海賊の。あの船、大砲40門近くあるだろ?「クイーン・アンズ・リベンジ」……アン女王の復讐号だと思うんだが」
「よく見てるわね、直斗。それと、よくそれで黒髭だってわかるわね」

 海賊黒髭
 それは、都市伝説ではない……が、伝説的な海賊と呼んで良い存在である
 大航海時代が終わった直後の海賊時代、その時代に生まれ落ち、大暴れした大海賊………エドワード・ティーチこと黒髭
 一般の船人だけではなく他の海賊逹からも恐れられたと言うその男は、ところどころに導火線が編み込まれた豊かに蓄えられた黒い髭が特徴であり、爛々と光る目は地獄の女神そのものである、とも言われた
 部下からすら悪魔の化身と恐れられたその男はカリブ海を支配下に置き、酒、女、暴力に溺れ莫大な財産を手に入れた
 世界でもっとも有名な大海賊であり、海賊としてのイメージを決定づけた大悪党である

 今、ザンに向かって大砲を撃ちまくっているその巨大な船は、その黒髭が使っていたと言う海賊船「クイーン・アンズ・リベンジ」………日本語で言うところのアン女王の復讐号のようだ
 40門もの大砲から、絶え間なく、連続してザンを攻撃し続けているが……

 だが、その猛撃はザンには届いていない
 ザンとその海賊船との間に、巨大な闇が生み出され、それが大砲の攻撃を全て飲みこんでしまっているからだ
 まるでブラックホールのようなその闇は、ザンが「マリー・セレスト号」の神隠し説の応用で生み出したものである
 その闇はザンと影守との間にも生み出され、マネキンの接近を防ぎ始めた

「あぁ、あの能力は使用可能だったのか」
「防御に使うのはオッケー。攻撃に使ったら問答無用で相手死にかねないから駄目だけど」
「なるほど、通りで「メガロドン」相手は使ってない訳だ」

 神子の説明に、直斗は納得したような声を上げた
 あの闇に飲み込まれると、その部分は容赦なく消滅させられてしまう
 生きた人間に使うと、高確率で一撃必殺になりかねないのだ
 死亡者を出す訳にはいかないので、攻撃には使えない

 ………だから、ザンを攻撃し続ける「メガロドン」に対して使えないのだ
 複数出現しているメガロドンであるが、その中のどれかが、契約者が変化した姿である可能性を否定できない
 故に、メガロドン相手には使えない
 ザンは「メガロドン」の攻撃を、ずっとクラーケンによって防ぎ続けている
 

「ただ、あれだけ闇の範囲が広いとモニター越しだとちょっと状況わかりにくくなっちゃってるわね」
「ですね。それに、闇の範囲が広すぎて、狙撃が難しくなったようです」
「そうねー………って、龍哉待って。狙撃って何」
「試合開始してすぐの頃から、ザンさん、ずっと狙撃され続けていましたよ。さりげなく、クラーケンの足で防いでいましてけれど」
「え、マジ?」

 はい、と神子に対して龍哉は頷いて見せた
 オフィス街のような戦闘舞台、その立ち並ぶビルのどこかに狙撃手が潜んでおり、ザンを攻撃し続けていたらしい
 最も、さり気なく防がれ続けている為、あまり効果はないようだが……

「あぁ、ザンさんも動きましたね」
「え、え?」

 囲まれた闇の中
 いつの間にか、ザンの姿が消えていた


「撃て撃て撃てぇっ!!弾幕を薄めるなぁっ!!」
「はっはぁ!!今の御時世で、ここまで派手にぶっ放せるとは思っていなかったぜ!野郎共、マスターの指示通り撃ちまくれぇ!!!」

 甲板の上で、前髪をカチューシャでしっかりとまとめているせいで少々でこっぱちに見える海軍提督のような服装をした少女と、いかにも海賊と言った出で立ちの豊かな黒髭を持った男が船員に指示を出し続ける
 「海賊 黒髭」の契約者である外海 黒(とかい くろ)と、契約された存在である黒髭は、それはもう生き生きと攻撃を繰り出していた
 「クイーン・アンズ・リベンジ」を召喚し、それに付属する船員逹と共に戦うと言う戦闘方法が主流であるが為、現代社会においては非常に戦いにくくて仕方がなかったのが、ここでは思う存分に戦えるのだ
 楽しいに決まっている
 相手は「組織」のNo,0クラス、これくらいやっても問題あるまい

 自分達の攻撃によって仕留められるか、と問われると………絶対に出来る、と断言出来ないのは少々悔しいが
 だが、こちらが絶え間なく攻撃し続ける事によって、他の者へのザンの注意が引きつけられるならば、一撃を当てるチャンスくらいにはなるだろう

 と、その時
 何かに気づいた黒髭が、黒の腕を引いた

「……!マスター。こっちだ!」
「っむ!?」

 ごぅんっ、と
 ザンが生み出した闇の範囲が狭まったと思うと、ごぅっ!!と、クラーケンの烏賊足が横薙ぎに襲い掛かってきた
 人間の身長を有に超える野太い烏賊足が、「クイーン・アンズ・リベンジ」のマストを掠める
 ぐらり、と風圧で船が多少揺れた
 これくらいならば、問題は…………

「……ったく、再生能力はともかく、身体能力強化なし、となればこういう手段とるしかないんだよな」

 先程、烏賊足の被害を免れたマストのすぐ傍で白いコートが、はためいた

「貴様……っ!?」
「おい、マスター。あの野郎、さっきの烏賊足で自分自身をここまで運ばせたみてぇだぞ」

 いつの間にか船に乗り込んでいたザンの姿に警戒する黒と、どうやってここまで移動してきたのかを見抜いたようにそう口にする黒髭
 …その通りである、黒髭の言うとおりに、ザンはここまで移動してきた
 生み出した闇でもって、烏賊足に己の身を包ませる様子を誰にも見せようとせず、こうして移動してきたのだ
 かなり、無茶苦茶な移動方法である
 ザンのように優れた再生能力持ち……と言うより不死身でなければ、衝撃で死にかねない

「むちゃくちゃな………っだが、わざわざこちらに飛び込んでくれるとは!」

 船に乗り込まれては、大砲による攻撃は使えない
 だが、自分達が使える能力はこの「クイーン・アンズ・リベンジ」の召喚使役だけではない
 海賊が扱う武器………カットラスやフリントロック銃を手元に出現させる事もまた、出来るのだから
 黒は手元にフリントロック銃を出現させ、ザンへとその銃口を向けた

 外海 黒は、その外見通りの年齢な中学二年生である
 いかに黒髭と言うトップクラスの海賊と契約していたとしても、当人の戦闘経験はさほど多い訳ではない
 故に、彼女は気づけなかった
 あたりに漂いだした、アルコールの香りに
 彼女が契約している黒髭の方が先に気づいて

「ばっか、マスター。今すぐ逃げ………っ」

 黒髭の言葉が終わるよりも先に
 ニヤリ、笑ったザンを中心に、爆音と爆風が撒き散らされた
 

 「マリー・セレスト号」。乗組員が誰一人残っていない状態で漂流していたところを発見されたその船には、様々な都市伝説が語られた
 何故、船員が誰一人残っていなかったのか、そこには様々な説が好き勝手に唱えられた
 それらの中には「船員が皆神隠しにあってしまった」だの「クラーケンに襲われた」だのと言うものがあり、ザンの能力はそれらに由来したものなのだ
 そして、その様々な説の中にはこんなものも存在する
 「船の中には、空になったアルコールの樽が9つあった。すなわち、それらの樽からアルコールが漏れ出し、船内にアルコールのモヤが発生。それを見て船が爆発すると危険を感じた船員が船を脱出した」と言うもの

 その説の応用であろう大爆発は、黒と黒髭を吹き飛ばし………更にいえば、「クイーン・アンズ・リベンジ」そのものをも、吹き飛ばした
 黒髭は黒を抱え込み、海面へと着水する

「ぷはぁっ!!……マスター、気絶していねぇだろうな!?」
「げほ……っ。見くびるな。この程度で意識を飛ばすものか」

 黒髭に抱えられた状態で、海面から顔を出す黒
 気絶してしまえばそこで失格だ。そう簡単に意識は飛ばせない
 しかし………

「ティーチ、すぐに船に戻……」
「戻りてぇのは、山々なんだがな」

 二人の目の前で、「クイーン・アンズ・リベンジ」が沈んでいっている
 ザンが起こした爆発でマストが吹き飛んだ上、船底まで穴を空けられてしまったらしい
 「クイーン・アンズ・リベンジ」はたとえ沈められようとも、また召喚は出来る………ただし、一度沈められた場合、最低24時間後でなければ、改めて召喚はできない

「あの男は……」
「向こうだ」

 黒髭が指した先。再びクラーケンの足に乗ったザンが先程までと同じ位置へと移動しようとしている最中だった
 ……届かせられる攻撃手段が、なくなってしまった
 もはやリタイアも同然の状況に、黒は悔しげにザンをにらみあげた


 繰り出され続ける影守からの攻撃と、何処かから繰り出され続けている狙撃。そして「メガロドン」の攻撃を防ぎながらザンは考える
 どうやら、こちらの様子を伺っている者も複数いるようだ
 先程の海賊船相手だけではなく、もうちょっと、仕掛けてやろうか

 クラーケン逹へと、指示を出す
 まだ海面には姿を出していないクラゲ型クラーケンは引き続き待機させ、烏賊型とタコ型へと司令を飛ばす

 巨大な烏賊の足とタコの足が、暴れ狂い出す
 あちらこちらのオフィスビルを薙ぎ倒し、飛びかかってきた「メガロドン」をぐるり、絡め取って

 ぶぅんっ、と
 全長40メートルもの巨体の「メガロドン」を、影守に向かって、投擲した




to be … ?


「影守!!」
こちらに向かって落ちてくるメガロドン・・・回避はまぁ間に合わない。
地上ならともかく、今は空中で、それも浮遊してるのではなく、周囲に浮かせたバラバラキューピーを足場に跳躍してるだけだ。
「希、来い!」
希が自分に捕まったのを確認すると同時に刀を鞘に納め居合いの構えを取る。
やる事は今までとかわらない。
「かごめかごめ」
次の瞬間影守の姿はその場から消え、メガロドンより遥か上空で、黒服の首が一つ飛んだ。

『K-№0が消えた?』
『かごめかごめの瞬間移動能力!?』
『あらかじめ上に待機させていた黒服さん達が一人を囲む形を取っていたのですね』

影守の「かごめかごめ」は斬首の歌。
囲った対象の行動を制限し、あらゆる条件を無視しその背後への移動と斬首が一体化した都市伝説である。
「かごめかごめを回避に転用したのか」
「普通にやっちゃ避けれませんでしたし、貴方と同じで攻撃には使えませんが回避ではその限りじゃない」
そう、影守の「かごめかごめ」もまた一撃必殺、模擬戦では本来使用できる能力ではない。

「っと、助かった・・・大丈夫か?」
影守が片手で握っている今しがた切った部下の首に声をかける。
「はい、首のパーツが真っ二つですが部品交換で即座に復帰可能です」
「あんたは一度下がって部品の交換を、残りは4体1組で散開、常に中央に1体置いて残り3体で囲むように動きなさい、影守の回避で首が破損した場合は速やかに離脱、首の部品交換が済み次第復帰、良いわね?」
戦場に召還された全てのマネキンから了解の声が上がる。
「行け!」
指示通りに4人一組となった黒服達が四方八方からザンに迫る。
「黒服程度でどうにかなると・・・」
投げられたメガロドンを避け、クラーケンの攻撃をかわし、闇による足止めすらくぐりぬけた一部の黒服達は、しかしてザンに届かずあるいは返り討ちになる、が
「は思ってませんが」
そのザンに直接返り討ちにされた黒服の首を切り落としながら影守と希がザンの目前に現れる。
「どれか一組でも肉薄できれば後は俺達が届く!」
「有りかよそれ」
「都市伝説の応用なんて言ったもん勝ちでしょう」
「違いない、が・・・ここは俺の領域だぞ?」
そう、影守とザンがにらみ合っているこの場はクラーケンの足の上・・・つまり
「お前等だけ振り落とすのは簡単だよな」
「影守、それ位想定済みよね?」
「・・・・・・どうしよう」
「もっかいやり直せ」
ザンのその一言でクラーケンの足はうねり、影守は海へと落下していった。

続く?

(治療室はここですね。少し遅くなりましたが、そろそろ治療も終わっているでしょうか)

心の中で呟きながら歩いてきたのは、大きく見積もっても中学生くらいの見た目の女性
かつて都市伝説から人となり、人から都市伝説に返ったレアケース
自在に境界を定め、表裏を分け隔てる結界能力を持つ防衛のエキスパート
篠塚文。篠塚瑞希と契約した都市伝説"座敷童"にして、瑞希の夫である美弥の妹だ

(兄さんは笑って流していましたが、義姉さんには体を大事にしてもらいたいものです)

治療の最中に邪魔するのも迷惑かと思い、時間潰しに兄へと事の次第を電話してみれば
「瑞希が問題ないと思ったんだったら、大丈夫だろ」と笑って切られてしまった
もしやアレは信頼という名の、のろけだったのだろうか。と頬を膨らませつつ文は中に入る

「……なんですかこの有様は」

治療室は大量の羽が撒き散らされていた。状況が分からず中を見渡すと
翼を生やした人……よりも寝かされている見知った人物に目がいく。というか瑞希だった

「文、よく来てくれました。割と真面目に口以外動かないので助けて。料理はそこの人が」
「そこまで満身創痍になる必要あったんですか?……すみませんうちの義姉が」

周囲に頭を下げて近くの男性から料理を受け取り、瑞希の口に突っ込んでいく

「ほういえばふぁ」
「飲み込んでから話してください」
「……んくっ。そういえばさ、アレ」

瞬く間に消化されたとでもいうのか、いやその辺りは突っ込みきれないことの多い瑞希だが
彼女が右手でモニターの方を指差す。今映っているのは……

「スペシャルマッチで"組織"の幹部と対決ってすごいですよね……それで?」
「うん。いや今ちょっと色々乱戦で荒れてるけど、ほらビルの上」
「ビルの上…………あれ?」

水没したオフィス街。水面下からいくつものビルが突き出ている
一瞬、その屋上の一つに人影が見えた……というか、見覚えのある衣装が……

「ゴルディアン・ノット…………え、参加させたんですか?!」
「うん」

あっけらかんと言う瑞希に対して、文は思わず額に手をついて俯いた
 

戦技披露会。"組織"幹部のX-No.0ことザン・ザヴィアー対複数というスペシャルマッチ
水没したオフィス街へと変わった戦場は序盤から既に混沌とし始めていた
なにせ最初の一部の参加者が水に呑まれてしまったうえに
クラーケンvs巨大な"メガロドン"という大怪獣バトルが勃発
さらに挑戦者としてK-No.0という組織の大物二人目が殴り込みをかけたのだ
見方を変えると、彼ら以外は大量の水に即応できず出鼻をくじかれたか
あるいは一旦、様子見をすることにしたか。このどちらかなのであろう
そんな中、主戦場から離れたビルの屋上に佇む者がいる
トレンチコートに中折れ帽を被り、黒い逆三角模様の覆面を被った怪しい人物
ゴルディアン・ノット。高所に移動し水を逃れた彼は静かに観察を続けていた
彼が様子見を続ける間にも戦場は動く。海賊船が砲撃を開始し砲撃音が響き渡る
しかしザンの周囲に展開された闇が肝心の砲撃を無力化している
そこまで確認してゴルディアン・ノットは視線を主戦場から、眼下の水面に向けた
おもむろに腕や脚に巻かれた細布や縄がしゅるしゅると動き始め――


「…………うわぁ」
「思ったより派手にやるわね」

治療室でモニターを見つつ、文は絶句し瑞希は面白そうに呟いた
注目しているのは怪獣大決戦でもNo.0同士の戦いでもない。見知った者の動向だ
隣の屋上に渡されたロープを巻き取って、人影が別の屋上へ飛び移る
その間にも下から漂流者を装っているらしい狂える船員が
細布に絡めとられ水面から上空に釣り上げられる
さらに他の細布がその体に絡んで……ブチリと力任せに引きちぎられた
恐ろしいことにこれを数体分同時に、素早くこなしながら
無事なビルの屋上へと移動を繰り返し主戦場に近づいているのである

「相変わらずなんというか、凄まじい戦い方ですね……」
「そういうの気にしてないみたいだから」

篠塚結が使う"機尋"の恐ろしいところは、一本一本に無視できないパワーがあることだ
今は移動しながらだが本腰を入れて操作を始めると手元で布が分裂し始めて
数の暴力と化すこともある。まあそれを軽くあしらえるのがそこの篠塚瑞希なのだが

「あ、海賊船爆発した」
「何が起こってるのかサッパリ分からないんですけど……」
「X-No.0が何かしたってのは分かるのにねー」
 

さて、主戦場に近づきつつあったゴルディアン・ノットだが
残念なことにクラーケンが暴れたことで進む先のビルはほぼ倒壊していた
しかし彼は一旦立ち止まると、ある方向を見つめる
そして長すぎる距離を苦もなくロープを渡して、無事そこに降り立った
そう、沈みかけている海賊船"クイーン・アンズ・リベンジ"に

「…………難題ダ。ダかラこソ、挑戦シガいガあル」

ゴルディアン・ノットの体を中心に細布とロープが爆発的に広がる
伸長自在の繊維の束がボロボロの船体に巻きつき、ついには覆い始めた
同時に沈みかけていた船が少しずつ浮上し始める
水面下で無数の布が柱のように絡まり合ってつっかえ棒のように
船底と地面を押し離そうとしているのだ。だが……

「hmm......」

さしもの彼にも当然限界というものがある。無理やり沈没を防いでも
元のように動かすことはできない。どうにか動かしても亀の歩みだ
このままでは狂える船員が乗り込んだり、クラーケンのいい的となるだろう
ではどうするのかといえば、答えはこうである

「……あレガいいか」

呟くと崩れたビルの残骸に向けてさらなる布やロープを幾重にも渡す
そして布を縮めることでビルの残骸に向けて船体を引っ張り動かす
近づいたところで今度は船底から伸ばした布の柱で船体を持ち上げた
船底がほぼ水面より上に出て、ビルの残骸に船底が引っかかる
傍から見れば座礁したようにしか見えないが
なんにせよこれで船が水没することは一時的とはいえ防ぐことができる
なお彼が船に降り立ってからここまで1分もかかっていない
クラーケンに襲われることを考えてのスピード勝負で
彼は簡易的だが固定砲台を作り上げたのだ。まあ、肝心の砲手がいないのだが

「サて、ここかラドうスルベきか……」

必要のない布やロープを巻き戻しながらゴルディアン・ノットは独白する
戦闘はまだまだ、始まったばかりであった

                             【続】

 観客席の片隅にて。
 黒髪を顎のあたりで切りそろえ、ベレーを被った、浅倉澪・マリアツェル―にしか見えない少女、しかしその正体は澪の母親、浅倉ノイ・マリアツェルがお手製の弁当を広げていた。
「さー、召し上がれ!」
 いの一番に手を付けたのはキラと轟九。
『いっただきまーす!』
 ノイお手製のおにぎりにかぶりつき…動きが停止する。
「む…」
「ぐ…」
「?どーしたの?ふたりとも」
 その様子を見た柳と緑がおにぎりを口に運ぶ。
「うん!ノイちゃんの作るものなら、何でも美味しいよ!」
 あてにならない柳に代わり、緑が事実を告げる。
「…このおにぎり、甘いぞ」
 ノイはしばしぽかんとして、数秒後。
「うそー!」
 自身もおにぎりを口に運び、がっくりと肩を落とす。
「粗塩とお砂糖、間違えちゃったんだ…」
 慌ててフォローを入れようとしたのはキラ。
「ま、まあおかずは食べられるし!ほら緑、あんたもフォローしなさい、あんたの将来の義理の母なのよ!」
 その言葉にはてなマークが飛び交う大人たち。
「義理の…?」
「母?」
 よせ止めろと制止する緑を押しのけ、キラが堂々と宣言した。
「緑はねー!澪のボーイフレンドなの!」
 しばしきょとんとする大人たち。一瞬おいて。
「…澪に、ボーイフレンドだと!」
「澪ちゃん、ホントなの!?」
「澪ってば遅ーい。あたしが澪くらいの頃には、もう柳と」
「ちっ、違う、違う!」
 緑の必死の否定も、大人たちには届かない。
「いいじゃない、緑」
「藍!ああもう、なんで女ってやつはこうなんだ!」

 周囲の喧噪とは離れたところで、澪は熱心にザンとメガロドン、それに海賊船の戦いを眺めていた。
「澪ちゃん、興味ある?」
 澪の様子を見てとった真降が水を向ける。
「うん。あれと戦えたらおもしろいかなって」



続く

 さて、治療室は忙しくなっていた
 原因は、只今行われている、X-No,0ことザンとのスペシャルマッチだ
 試合開始と同時にザンがステージの地上を海水で満たしてしまった為、それに対応しきれず溺れて気絶した者がどんどこと治療室に運ばれ続けているのだ
 更に、ザンが戦闘舞台に立ち並んでいたオフィスビルを派手に破壊した結果、初手の海水を逃れて潜んでいた者が烏賊足もしくはタコ足になぎ倒されて気絶したり、落ちて溺れたりで更に気絶者が増えた
 治療室には憐が撒き散らしてしまった治癒の力がこもった羽根が大量にあるとは言え、溺れた者に関してはきちんと処置をする必要がある

「……それを、こうしてパッパッと対応出来てんだから。やっぱり優秀なんだよな、あんた」
「はっはっは、もっと褒めても良いのだよ、我が助手よ」

 が、だ
 そうしてたいへんと忙しいさなか、「先生」は特に慌てた様子もなく、てきぱきと対処していっていた
 治療室のベッドに、どんどんと治療を終えた患者が寝かされていく
 灰人ももちろん手伝っているが、それにしても早い
 一人で数人分もの仕事をこなしていっている

「これ、私はそろそろ回復したし、邪魔になるかしら?」

 次々と患者が運ばれてくる様子に、瑞希がそう「先生」に問うた
 ある程度食べた為、動けるようにはなっている

「あぁ、いや。念の為、検査をしたい。治療はすでにすんでいるが、何かしら身体に問題がおきていては困るしね」
「特に問題はないと思うけれど……」
「自分ではそう思っていても、知らず知らずのうちに何か起きている、ということはあるものさ」

 手慣れた様子で治療していきながら、「先生」は瑞希にそう告げた
 ぼろぼろと問題発言をしている「先生」であるが、一応医者としてはしっかりしているし、優秀であるらしい

「に、しても。全くもってあの御仁は容赦がない事だ。一部「今回はこれは使わない」と言うような制限があるからこれですんでいるのであろうなぁ」
「そうね、ぜひとも戦いたかった………!」
「やめよう、ご婦人。あの御仁容赦ないのと烏賊足タコ足にご婦人のような女性が絡め取られたら青少年の何かが危ない」
「何言っているんですか、この医者」
「殴りたかったら殴って大丈夫だぞ」

 文のツッコミに、灰人がそう助言した
 助言と言って良いのかどうか不明だが、殴っても問題ないらしい
 灰人にとって「先生」は師匠のような存在であるはずであり、この扱いでいいのかと問われそうではあるが、少なくとも灰人はこの扱いを問題であると感じていないようであるし、「先生」も全く気にしていない

「……あれは、昔と変わっておらんね、本当に」
「?…貴方は、ザンの事を以前から知っているのですか?」
「まぁね。私は「薔薇十字団」所属だ。「組織」から逃げ回っていた頃のあの御仁とは何度も会っているよ」
「………貴方、年齢いくつなの」

 思わず、そう口に出す瑞希
 この「先生」とやら、外見年齢は20代半ばから後半程度に見える
 しかし、ザンが「組織」から逃げ回っていた頃、となると20年以上も前の話になる
 都市伝説関係者となると、幼少期からそれらに関わっていた可能性があるとはいえ、「薔薇十字団」所属でザンと接触していた、となればそれなりの年齢になるはずなのだ
 瑞希の言葉に、「先生」は楽しげに笑って

「さてね。見た目よりは爺のつもりであるよ」

 と、そう答えた


 ………ザンとのスペシャルマッチは、まだ、続いている
 


 ざざざざっ、とボロボロの漁船が「クイーン・アンズ・リベンジ」へと近づいていく
 ゴルディアン・ノットがそちらに視線を向けると、そこから黒と黒髭が飛び出し、「クイーン・アンズ・リベンジ」へと乗り込んできた

「何者かは知らんがよくやった、褒めてつかわす!これで、また大砲による攻撃が可能だ」

 黒は、ない胸をはりながらそうゴルディアン・ノットへと告げた
 彼女は、相手が何者であろうとも常にこの態度を崩さない
 そのせいで中学校の教師からは再三注意されているのだがお構いなしだ
 故に、この場においても初対面(実は初対面ではない可能性があるのはさておく)であるごルディアン・ノットに対してもこのような態度だった

「この船の持ち主か……砲撃ガ、可能なんダな?」
「あぁ、そうだ。「大海賊 黒髭)と契約している外海と言う。無事な砲台があれば、可能だ」

 ザンの起こした爆発によって、大砲も何門か破壊されてしまっている
 流石に、40門もの大砲での一斉発射は流石に不可能だろう
 ……少なくとも、20門程度は無事なようであるが

「どうする、そっちの船に残るのか?」

 と、下の方から、声
 黒と黒髭をここまで運んだ栄が、良栄丸から声をかけたらしい
 「クイーン・アンズ・リベンジ」の周辺には、まだザンが呼び出した狂える船員の姿はないようで、良栄丸に救出された契約者逹もほっと息をついているようである

 今、この段階になってようやく
 少しは、参加者同士で話し合えそうではあるが

「…………」

 クラーケンを操り、飛びかかる「メガロドン」の攻撃をいなしながら
 ザンが、何かを探し始めていた





to be … ?

半壊した海賊船"クイーン・アンズ・リベンジ"の元に集まった参加者達
今回のスペシャルマッチの条件が1対多の戦いであることを考えると
これは貴重な機会である。そう判断したのだろうか、栄に返答する外海を
半ば押しのけるようにしてゴルディアン・ノットが甲板から下へ顔を覗かせる

「おい、少シ聞きたいのダガ」

突然出てきた黒い逆三角(▼)の覆面男(?)に参加者達が思わず沈黙する
彼らの驚き、あるいは困惑をよそにゴルディアン・ノットは言葉を重ねた

「あのザンという男に一撃入レル自信があル奴ハいルか?」
「それは、どういう意味だ?」

困惑する彼らを代表して良永栄が意図を尋ね返すと
ゴルディアン・ノットは乾いた物が擦れるような声で説明を始める

「見たとこロあの男、遠距離かラの攻撃ハほボ無力化シてシまうラシい
 役割を分けルベきダロう。あの男に攻撃スル者と、デカブツを抑えル者とダ」
「そういうことか……」
「今ここに集まっていル者達にも戦闘のやり方デ向き不向きがあルハズダ
 俺ハ近接戦闘もデきルガ、本気デやルなラデカブツの方ガ相手シ易いかラな」
「何か手があるのか?」
「切ル手札くラいハ当然持っていルとも。ソレデ、お前達ハドうなんダ?」



参加者達が集まってザンを倒す手立てを考え始めた頃
メガロドンとザンが操るクラーケンの戦いに変化があった

「……ん?」

モニターを見ている者にはザンが唐突に何もない水面を注視したように見えた
その下にクラゲ型クラーケンが潜んでいることを知っているのは
指令を出したザンのみ。仮に途中で誰かが気がついたとしても水中だ
そう簡単に手が出せるものではない……そのはずだったのだが
 

クラゲ型クラーケンから伝わってきた意思は「攻撃を受けた」と「とても疲れた」だ
疲れたと訴えるほど攻撃に抵抗したのだとすれば、流石に気づかないのはおかしい

(つまり……攻撃を受けた結果、疲労させられたか?)

抵抗を指示するが、思ったように動けず攻撃を受け続けているらしい
その結果どんどん疲労が酷く……動きが悪くなっていく悪循環に陥っている
これ以上は隠れていても無意味と判断し、ザンは一度クラゲ型を浮上させることにした
ゆっくりと水面上に顔を出したクラゲ型クラーケン……その頭の上に、誰かいる

「ぷはぁ……ん~、やっぱり空気があるってステキっ」

水に濡れて体に張りつく金色の髪をかきあげながら
黒いマイクロビキニで豊満な肢体を申し訳程度に隠した美女が立ち上がる
しばらくキョロキョロ周囲を見回したかと思うと

「イエ~イ!在処ちゃん見てるぅー?お姉さんが帰ってきたゾ☆」

唐突にカメラ目線でダブルピースをしながら謎のアピールを行った
さらにウインクをした瞬間に何故か彼女の周囲でピンク色のハートマークも飛んだ
モニターの向こうで一部の人々が困惑と混乱の渦に飲み込まれたのとは対照的に
ザンは内心のアレコレに蓋をして冷静にタコ型クラーケンに攻撃を指示する
ふざけた格好と態度だがクラゲ型を疲弊させたと思われる相手を放っておく理由もない

「うわっとと?!……もう、女性にはもっと優しくしなきゃダメよ?」

タコ型の触手による薙ぎ払いに対して、彼女は空中に逃げた
コウモリのような黒い羽に赤く輝き始めた瞳。そして攻撃により引き起こされた事象
ザンが脳内で彼女の都市伝説の正体を絞り込む。恐らく――

「まったく!おイタをする子にはお姉さんがお仕置きしちゃうよ!」

ヒラリヒラリと触手を避けながら、ついにタコ型の上に降り立ちしゃがむ女性
例の攻撃が来るとタコ型に振り落とすよう指示を出し

「なに?」

一瞬。本当にわずかな時間、驚きでザンの意識に空白ができる
想定とは違った攻撃方法、そんなこともできるのかという思考の逸れ
本来なら特に問題なかったはずのそれは、エネルギーを充填した直後の
彼女にとって千載一遇のチャンスであり……結果、彼女はやり遂げた

「きたきたきたぁ!これはもう在処ちゃんの評価うなぎのぼり待ったなしでしょ☆」

タコ型クラーケンの体表にいくつものハートマークが浮かぶ
予想外なことにタコ型クラーケンの支配権が彼女に奪われていた
彼女への警戒レベルを引き上げながら、ザンは面白そうに笑みを浮かべた

                                             【続】

 ゴルディアン・ノットの問いかけに……少し悩んだのは、栄
 その様子に、クラーケンがビルを薙ぎ倒した際に落下し、良栄丸に救出されていた蛇城が気づいた

「できそうな者に心当たりが?」
「…あぁ、いや。俺の知らない奴だから断言は出来ない。ただ、「ずっと攻撃機会を狙っている」奴がいる事は、把握している」

 この試合が始まってすぐ、ほんの一瞬だけ良栄丸に乗り込んできた存在
 足場がほしい、とそう言ってきた相手の条件を飲んだ結果、今、「メガロドン」が複数出没していると言ってもいい

「……そういえば。かなりの速度で動き回っている影がちらほら見えましたね」
「確かに、視界の済をちラほラと黒いものガ横切ってハいたな……」
「忍者みたいな格好していたから、ようはそういう都市伝説なんだとは思うが。しっかりとどんな能力かは聞いていない。この感じだと、気配遮断やスピード強化とかそういうったもんだとは思うんだが」

 今のところ、接近しきれていないようではある
 烏賊やタコの触手の合間を掻い潜れていないのだろう

「烏賊やタコを抑えるんなら、「メガロドン」……と言いたいんだが、現状防がれてんだよなぁ。ビルに潜って不意打ち、もやっているはずなんだが。それでも駄目か」
「クラーケンの攻撃を引きつけてくれているだけありがたいと思うべきか。しかし、あの男。どれだけのクラーケンを呼び出せるのだ」

 ちらり、ザンの様子を見ながら黒がそう呟いた
 烏賊型とタコ型のクラーケン。それに加えて、水中にも何やら、いる
 生半可な契約者であれば、一体の召喚使役が精一杯だろうところだが、「マリー・セレスト号事件」に飲まれたザンはザンは、その都市伝説のうちの「クラーケン説」だけで、三体同時召喚使役等やってみせるのだから、規格外だ

「クラーケンにゃ、ドラゴンみてぇな姿やら、シーサーペントみてぇな姿やら説がたくさんあっからな……エビやらザリガニやらの甲殻類の姿で描かれた事もある。そこら辺まで召喚して操れたりしたら、流石にこっちの手が足りなくなるぜ」
「流石に、そこまでの数の同時使役はないだろう………ないよな?」
「途中から気弱になんなよ、マスター………大砲は、やっぱせいぜい使えて20門だな。爆発でだいぶやられた」

 さすが本来は海の男と言うべきか、黒髭はクラーケンに関する知識もある
 ……あったとしても、絶望に傾く情報が増えるだけに終わったが
 一応、警戒すべき事が増えたと思えば良いのだろうか

「そちラの女性ハ?一撃、当てラレルか?」
「…口惜しい事ですが、難しいですね。何度も狙撃を試みましたが、クラーケンによって防がれました」

 昔と違い、サングラスとマスクは外すようになったものの、相変わらず口裂け女と誤解されそうな赤いコート姿の蛇城が答えた
 にょろり、胸元からは「白い蛇」が顔を出し、ちろちろと舌を動かしている
 この「白い蛇」の力で多少は水を操れるものの、残念ながらこの大漁の海水をどうにかできるか、と言うと別問題である


 そして、彼らがそうして話し合っている間に、再び戦況は動き出す
 サキュバスの出現と共に
 




「神子さん、視界を塞がれますと、試合状況が見えないのですが。お母さんの名前が呼ばれた気がしますし」
「うん、何ていうかね。龍哉には見せちゃいけないものが映ってる気がしてね。ワタシ的にはあぁ言うのも見たほうがいいと思うんだけど、後で蛇城さん辺りがうるさそう」
「蛇城さん参加してるしなー。ザンじゃなくてサキュバス狙撃しなけりゃいいんだけど」
「そうねー。とりあえず直斗、サキュバスの姿写メとるのやめなさい」

 神子の言葉に、直斗はっち、と小さく舌打ちした
 まぁいい。恐らく、晃辺りがちゃんとムービーで撮ってくれていると信じよう

「タコの支配権奪われたのか、あれは………っと?」

 画面越しに、ニヤリと笑うザンの表情を見て
 あぁ、まだ呼んでない奴呼ぶ気だな、と直斗は感づいた


 影がさした
 自分の頭上に、何かが出現したのだ、とサキュバスは気づく
 先程から、烏賊型クラーケンに迎撃されまくっているメガロドンが飛んできたわけではない。何か、別の……

「……!?」

 ぐわっ!!と
 サキュバスの頭上に出現したそれを見て、サキュバスがまず抱いた感情は

「グロッ!?」

 耐えきれずに、思わず口に出してしまった
 そう、グロい
 あえて言うなら、短めの触手がびっしりと生えているような、そんなものが……サキュバスに向かって、落ちてきている
 慌てて避けようとするのだが、そのクラーケン並の大きさのものが落ちてくるとなると、回避は非常に困難であり
 サキュバスに操られているタコ型クラーケンが慌てて撃退しようとしたのだが、触手を絡みつかせて引っ張ろうにも、同程度のパワーのものに落下の勢いが加わっている訳で……

 サキュバスの頭上に召喚された、ヒトデ型クラーケンは、そのまま容赦なくサキュバスへと襲いかかった


 あのヒトデ型まで呼ぶのは久しぶりだ
 疲れているクラゲ型はしばらく休ませるとして、烏賊型だけだと少し防御に不安があるか

「……そうなると、他にも呼ぶべきだな」

 そう呟くザンの後方から、ビルの残骸から飛び出してきた「メガロドン」が襲いかかる
 その巨大な牙はザンへと………届かない

 メガロドンのその巨体が、叩き落される
 ごぅんっ、と腕を振り上げた、それは。これまで召喚されてきたクラーケンと同程度の大きさの…………ザリガニ型クラーケンだった




to be … ?


戦技披露会。
組織のX-No.0であるザンVSその他大勢というむちゃくちゃなスペシャルマッチ。
開始早々に水没したビル街と化した会場ではそれぞれが自分の能力を活かして動いていた。
その中で主に救助を行っている良栄丸、そのぼろぼろの船の操舵室の屋根の上にY-No.660、黒服Yは立っていた。
見た目はどこにでもいる普通の黒服であるが、目立つ所を上げるとすれば、背中に1.5mほどの巨大なライフルを背負っていることか。
髪も服もびしょ濡れの状態ではあったが、特に戦闘に支障はないようだ。
人差し指と親指を立て銃の形にし、ザンをいる方向へ向けると。

「アーマーショット(徹甲弾)、装填」

手の横の空中に黒色の弾丸が現れる。
まるで、そこに見えないリボルバー式拳銃があるかのように、6発ずつ円形に計12発が浮いている。

「発射」

宙に浮いていた銃弾は左右に別れて弓なりの軌道を描いてザンへと飛んでいく。
しかし隙間を狙ったにも関わらず、クラーケンの触手の滑らかな動作によって全て防がれてしまう。
的に対して弾が小さ過ぎるのか、ほとんどダメージも通ってはいないようだ。
黒服Yは新しく弾丸を作り出してはあらゆる角度、さまざまな軌道を取って発射するものの、その全てはクラーケンに防がれてしまう。
撃ちながら反応を観察し、次はどう撃てばよいのか考えていく。
タコ型のクラーケンはおそらく攻撃用で、接近してきた者を薙ぎ払うべく動いている。
イカ型はおそらく防御用、頻繁には攻撃せずに守りを固めているようだ。
威嚇するかのようにゆらゆらさせている触手が、魔弾を防いだ時と同様にたまに位置を変えていることから、他にも遠くからの攻撃を受けていることが窺える。
1対多数という状況で、クラーケン2体を使役して防御を固めたうえで攻撃までしている。

「……うん。無理だね」

そう言いつつも今度は背負っていたライフルを手に取り構えた。
銃口からは黒い霧のようなものが溢れている。

「よーし、ちょうどチャージ完了したぞ」

守りが固いなら、守りを崩せるほどの一撃を。
脚を前後に開き反動に備える。
ストックを肩に当て、慎重に狙いを定める。
衝撃に負けぬようにしっかりと脚を踏ん張る。
通用するかどうか分からないなら、とりあえず今撃てる最大出力で。

「行け、ブラックジャベリン!」

発射の反動で肩が軋む。
風が唸りをあげて吹き抜ける。
放たれた魔弾は一直線にクラーケンへと突き進む。
そして触手に突き刺さると肉を抉りとるように蹂躙し、大砲で撃たれたかのような大穴を開けた。

続く

支配権を奪われたタコ型に代わってザリガニ型が投入されたため
依然としてメガロドンはクラーケン二体を突破することができずにいた
ザンはチラリとタコ型に絡みつかれるヒトデ型を見たものの
すぐメガロドンの契約者を探すべく目線を外した

(あそこまでやれる奴がこの程度で終わらないのは分かりきったことだしな)

気絶でもして支配権を手放してくれればそれに越したことはないが、本命は時間稼ぎだ
ヒトデ型はさっそく例の攻撃……エナジードレインを受け始めている
そこまでは予想の範疇だ。巨大なクラーケンが疲弊し切るまで生命力を奪うのに
どれだけ時間がかかるかはクラゲ型が攻撃された時の状況を元に推測できる
さらにクラーケン一体分を平らげられたところでこちらにそれほど影響はない
だがこの間にメガロドンをなんとかできれば状況は大きくこちらに傾くだろう
そう考えるザンの目の前で烏賊型の触手が一つ、穿たれた


一方、良栄丸とクイーン・アンズ・リベンジに集まった参加者達は
依然としてザンとクラーケンに対抗する有効な手段を見出せずにいた
主戦場となっているザンの周囲でなにやらクラーケンがやられたり
逆に増えたりといった動きはあったが、状況が良くなったとも言い難い

「この海水が無ければやりようはありそうですが……」
「そうは言ってもなぁ」

この状況に適応できる能力者ではいまいち攻めきれていないのが現状だ
蛇城が言うように海水が無ければ取れる手が増えるとは栄も思っている
しかしそれで勝てるかも分からないし、そもそも海水をどうにかする手段がない
さらに言えば海水を一旦どうにかしてもまた水没させられる可能性が高い
どう考えても八方塞がりだろう……そう思っていると
 

「要スルに足場ガ必要なのダロう?」
「確かにそういう話だが、もしやできるのか?」

覆面の男の発言に黒が聞き返す。確かに彼の能力はどうやら布や縄を操作できるらしい
それならば一時的に足場を組むこともできるだろうが……少し心許ないのが正直なところだ

「手札を切レバ、10分ダけ足場を作ルことガデきル」
「10分だけか」
「ああ。暴走サセないためにもソレガ限界ダ」
「ちなみになにをするつもりか聞かせてくれるか?」
「水面上に布と縄を張リ巡ラセ足場を編む。修復も随時可能ダ」
「ふむ……範囲はどうだ」
「街一つやレないことハないガ、負担ガ大きい。会場の端まデハ勘弁シてくレ」
「待て待て待て」

今こいつはなんと言った。街一つを布と縄で覆えるということか
10分だけだとしても、地形を変えるという点ではザンと似たようなことができると

「お前それ、本当か?」
「このゴルディアン・ノット。この場デ出来ないことを言うほド、阿呆デハないつもリダガ」
「船一つ覆い包む奴が切札を使うと言うんだ。それくらいは出来てもおかしくはないだろう」
「ああ、切レと言うなラスグにデもやレルゾ。一度切レバ試合中ハもう使えんガ」

栄は今更ながら知った覆面男の名前も含めてどうしても怪しく思わざるをえなかったが
黒のほうはクイーン・アンズ・リベンジの一件もありこの話に信憑性があると感じていた
有効な手段は未だ見つからず、しかし議論は着実に進展していた――

                                                   【続】

「あれと戦ったら、面白そうかなと思って」
 澪の言葉に素早く反応したのはキラ。
「澪もそう思う!?あたしも行きたーい!」
「だめよ同士桃。あなたもう負けたでしょ」
「あーあー。あそこで食らうなんて。やっぱり体術もやっとけばよかったかなー」
「まあまあ、勝負なんか時の運なんだから」
 キラを宥める柳に便乗して、ノイも言い切る。
「うん。一生懸命戦ってるキラ、カッコ良かったよ!それで十分じゃない?」
「ノイさん…」
 ちょっぴりうるうるするキラの頭上に、不意に黒い影が現れ…落下する。

 ひゅる…どしーん!!

 わずかな風切り音と共に落下してきた少女は、キラの頭上にものの見事に衝突した。

「…!き、キラ!?」
「キラっ!」
 黒い影の衝突で一発KO、気絶したキラに、隠れシスコンの真降と親友の澪が駆け寄る。
 黒い影の正体は少女。年の頃なら7~8歳程度の、白いフリルいっぱいのブラウスに、タックと共布フリルがたっぷり施された白いジャンパースカート。
 肩ぐらいまでのピンク色の髪には赤い薔薇が両端にあしらわれた、レースたっぷりのやはり白いヘッドドレス。所謂白ロリといった格好だ。
「…まほろ?」
 ノイの口から、学校町から姿を消した親友の名がぽろりとこぼれる。
「あたしは、ひかりよ」
「ひかり?それがあなたの名前?」
 少女は頷き、一通の手紙を出すと、ノイに向かって差し出した。
「これ読んでね」
 はてなマークが飛び交う一同を余所に、「ひかり」が両手を天に差し上げる。
 その手の中に、少女の身の丈以上の長さの、無骨だがそれ故に美しい、銀の槍が現れた。
「アカシックレコードに接続…データロード完了!よしっ!」
 そしてひかりは、一同に向かってばいばいと手を振った。
「じゃーあたし、あのザンって人と戦ってくるから、そのキラって子、救護室に運んであげなよ。じゃーまたあとでね!」
「ちょっと待って、あなた一人じゃ危ない!」
「澪ちゃん、僕も行くよ、水上戦なら足場がいるだろう?」
 慌てて澪と真降がひかりの後を追う。
 残されたノイたちがひかりに渡された封筒を開けると、ひらりと落ちたのは一枚の便せん。

『ボクのムスメのひかりを、学校町で修行させたいのですよ。よろしくですよ。 幻』
「幻…!」
「ああもう分かってたよ。こういう手紙書く子だっていうのは、つくづくわかってた…でも。帰ってきてくれたんだね」
 

 ノイは感激しきり、柳は文句は言いつつも、内心ではノイの親友が戻ってきたこと、ノイが喜んでいることを喜んではいた。
「じゃ、俺たち、こいつを救護室へ運んできます」

 「場所ちょっと貸してね?」
 クイーン・アンズ・リベンジの舳先にちょこんと陣取ったひかりは、お辞儀をした。
 他の選手たちは不審顔。いくら契約者とは言え、こんな年端も行かない子どもが戦えるものなのか?
「わー!ロブスターだー!」
 ザリガニ型クラーケンを見たひかりは歓声を上げ、手鏡を取り出した。
 「アルキメデスの鏡」この都市伝説との契約で、ひかりは鏡さえあれば、光と熱を自在に操ることが出来る。
 手鏡の照準をザリガニ型クラーケンに合わせようとするが…
「あーもう!あっちこっち動いて、ねらいがさだめられない!」
 気がついたら、フィールド内の水がちょっとした温泉くらいの温度になっていた。
「こうなったら、水温をもっともっと上げて、みんなゆでちゃえば…!」
「参加者で溺れている奴もいるんだ。やめてやれ」
 他の参加者が止めに入ったその時。
「ひかりちゃん、大丈夫?」
「全く、いきなり水の温度が上がるから、氷が溶けて溺れるところだったよ」
 凍らせた水を足場にして、澪と真降がクイーン・アンズ・リベンジにたどり着いた。
「さっ、どうする?澪おねえちゃま、真降おにいちゃま?」
「あれ?ひかりちゃん、なんで…」
「あたしたちの名前を知っているの?」
 問われたひかりは手にした自らの銀の槍を、さも大事そうに抱きしめた。

「アカシックレコード、だよ」



続く?

「K-No.0ともあろう者が情けない…」
「それは自虐でしょうか?K-No.02」

宙に浮くマネキンと希が見下ろすそれは巨大な烏賊型クラーケンの足に絡め取られているK-No.0 影守である。

「返す言葉もない…」
「そんなんだから教え子にも舐められてんのよ、アンタは、私の契約者なんだからもっとしっかりと……」
「これで愛想尽かさないのだからK-No.02も大概底抜けの阿保かお人好しかと」
「最近アンタ等私に対してキツくない?」
「いえ、人形と人形使いと言う立場上別に逆らえない鬱憤を晴らしているとかそういうことはございませんよ?」
「ええ、何がメイド服だよもっとマシな服着せろやボケとか思っていても口にはしませんよ?」
「してる、今めっちゃ口にしてるよ!?」
「「「何のことやら」」」

マネキン一同の言葉に希は宙に浮いたまま膝を抱える。

「覚えてなさい、この模擬戦終わったら辱めてやる」
「格下の煽りで逆ギレとか小物臭が半端ないですよ」
「もう少し心にゆとりを持ちましょう」
「余裕の無い女性はモテませんよ?」
「同年代のK-No.1(望)やK-No.2(在処)が旦那は愚か子供までいるのに1人独り身で焦るのは分かりますが」
「あんた等マジで覚えてろよ!?」
「いっそ誰か紹介して貰えばどうでしょう?」
「どこの馬の骨ともわからん輩に希はやれんぞ」
「………親の過保護も嫁き遅れの原因でしたか」
「いや、別に紹介とかされても…」
「そもそも未だに初恋拗らせて引きずってる時点で負け組ですよね、先に進める筈無いですよね」
「相手が結婚どころか子供までいるのに未だに引きずるのは流石にどうかと」
「いやしかし義娘兼契約都市伝説として手元に置いたK-No.0も悪いかと」
「その辺りどうなんです?」
「答え辛いわ!」

まぁ確かに聞かれても答え辛い。
あの頃のゴタゴタとか美緒との関係とか一言では説明しにくいし。

「てかさっさとこれ解いて戦線に復帰するぞ!」
「私達に捨て身同然の戦いさせておいて失敗とかしばらくやる気になれません」
「「なれません」」
「仕方ないわね……」

先程まで膝を抱えていた希がゆらりと立ち上がる。
顔は笑っているがその目は笑っていない。

「影守…しばらくそこでぶら下がってなさい………ちょっと私は八つ当た……X-No.0ぶっ飛ばしてくるから」
「えーと…希?」
「自立させてたバラバラキューピーの制御権全部私に戻して強制操作、そのまま全機時限自爆装置起動!」
「「「「「「「「ちょっ!?」」」」」」」」
「目標X-No.0、全機まとめて突っ込みなさい?」
「強制特攻とかそれが人のやる事でしょうか!?」
「残念ね、私人じゃ無いもの」
「これが初恋拗らせた恋愛敗者の闇ですか…」
「いいからとっとと行けや」
「「「「この鬼!悪魔!喪女!」」」」

そんな叫びと共にマネキン達はザンへと突撃し、大きくな爆炎が上がった…

続く?

実況席にて
「神子さん、僕は何時まで視界を塞がれていれば良いのでしょう?」
「うーん、もう暫くかなぁ・・・具体的にはアレがやられるまで」
「しかし、見えなければ実況もままなりません」
「気になるなら後でこの神子姉さんが手取り足取り個人授業やって上げるから今は我慢しといてねー」
「神子、何気にトンデモ無いこと言ってるけどお前大丈夫か?」
「ハハハ、私こそ蛇城さんに狙撃されそう・・・あ、絵里さんに齧られるのが先かな?直斗、そん時はフォローよろしく」
「神子さん、大丈夫ですか?」
「一寸顔色悪いぞ?」
「うーん、ちょっとしたら落ち着くと思う・・・・・・・・・あの何だっけ、飛びこんできたロリっこ?ひかりちゃん?何かあの子が出てきた辺りからこう体の内側がゾワゾワする感じがね?何か妙なテンションになると言うか・・・・・・」

所変わってvip席
「・・・あら?」
「望さん?」
「・・・このスペシャルマッチ、アカシャ年代記・・・アカシックレコード関係の契約者が混ざってるわね」
「何ですって?」
「神子が何かゾワゾワしてるわ・・・多分そこまで極端な影響は無いし大丈夫だと思うけど・・・・・・この件で下手に動く方が危ないわ、何かあるって言ってる様な物だもの・・・あ、希が自爆した」
「影守さんは放置ですか・・・」
「元人間の都市伝説にとって契約者はそれ程重要じゃないから・・・・・・まぁ、影守も見せるべきものは見せたし仕事は済んだと思って良いんじゃないかしら?」
「仕事?」
「攻撃用、それも一撃必殺のかごめかごめを回避に使ったでしょ?都市伝説は使い方次第だって言う実演よ、それにここでザンに一撃与えて見なさいな、そんだけ出来て前線にも出ずに後進育成・・・現場からすればふざけんなって今でも言われてるのに風当たりが余計キツクなっちゃう」
「現場との軋轢が?」
「そりゃあねぇ・・・それなりに戦えるのに前に出ずに後ろに引きこもってる訳だし、しかも首塚とか獄門寺組とか外部の人間で上位No.固めて・・・・・・事の経緯とか立場をちゃんと把握してる昔っからの連中ならそうでもないけど、最近入ってきたような連中の陰口は酷い物よ?」
「成る程」
「組織も一枚岩じゃないとはよく言った物だわ・・・・・・あ、戦場が・・・・・・いえ、ザンが動いたわ」

続く?

 それに、一番はじめに気づいたのは蛇城が契約している白蛇だった
 すぅ、と首を伸ばし、空を見上げ始める
 その様子に、実況者の約一名を後で狙撃すべきかどうかわりと本気で悩んでいた蛇城が、白蛇に問う

「……?どうしました?」
「巫女よ、どうやら一雨きそうだぞ」
「雨?……あれ、戦闘フィールドって、お天気変わるんだっけ?」

 蛇城と白い蛇のやり取りに澪が首を傾げ、頭上を見上げ

「…………え?」

 いつの間にか、戦闘フィールドの空、と呼べる高さに、黒い雨雲が出現し始めていた
 それも、戦闘フィールド一帯、全てを覆うような……

「……!そちらの白い蛇、水の操作できますか!?」
「可能です」

 何かに気づき、慌てた様子の真降の問いかけに蛇城が答えた、その直後

 ーーーーーざぁあああああああああああああああああああああ!!!


「あっ」
「やっぱやったか。思いっきり画面見えにくくなるが、仕方ねぇか」

 実況席で、呑気にそんな声を上げる直斗
 戦闘フィールド全体に、強烈なスコールが降り注いでいる
 視界も、音も、何もかもかき消してしまう程のそれを発生させたのは、間違いなくザンだろう
 彼の「マリー・セレスト号」には、スコールを発生させる能力もあったはずだ

「神子さん。現場がよく見えない状況でありましたら、そろそろ目隠ししている手を外してくださっても良いかと」
「カメラがサキュバスどアップにしちゃうと言う事故を否定しきれないからまだ駄目」
「駄目でしたら、仕方がありませんね」
「龍哉、もうちょっと粘れ。あと、神子。お前が絵里さんに噛まれそうになっても俺はフォローしないぞ。ポチ辺りに頼め」
「人語理解できる程度に頭いいとは言え子犬に頼れってのもどうよ」

 ここまで酷いスコールが振られるとまともに実況は出来ない
 龍哉が目隠しを外されたとしても、流石に難しいだろう
 ………ただ

「……おや?何か聞こえましたね」
「え?」
「………だな。何か、鳴き声みたいなのが」

 微かに、微かに
 スコールの音に混じって、何か……


 雨の音が、視界も何もかも塗りつぶしていく
 それでもかろうじて、そのスコールは良栄丸とクイーン・アンズ・リベンジの周辺へは降り注いでいなかった

「ギリギリ、間に合ったようですね」
「助かった。こんだけ酷い雨だと良栄丸も少しヤバイ」

 蛇城が契約している白蛇が、水を操る力で持って、この辺りのみ雨が届かぬようにしてくれたのだ
 ただ、本当にごく狭い範囲のみである。雨を防げているのは
 ザンがいる辺りなど、この位置からは全く見えなくなってしまった
 ヒトデに襲われたサキュバスもどうなったかわからない
 なお、余談ながらヒトデは基本肉食なのだが……死人を出してはいけない試合なので、食われては居ないだろう。多分
 


「雨か………ソろソろ、動かなけレバ危ないかもシれんな」
「…そうだね。この雨に乗じて、X-No,0が何か仕掛けてくるかもしれない」
「動くべきか。号令をかければ、すぐにでも大砲は発射出来……」

 黒が、大雑把にザンがいた方向を見据えながら、そう口にした………その時

「……ッマスター!5時の方向だ!」

 この大雨の中でもかろうじて見えるのか、それとも経験からくる勘か
 黒髭が、己の契約者たる黒へと警告を飛ばした
 その警告に、黒は黒髭が告げた方向へと向き直り

「撃ち方用意っ!!………撃てぇ!!」

 黒が司令を出したその瞬間、クイーン・アンズ・リベンジに無数の船員が現れた
 それらは大砲を構え、黒が見据える方向へと砲撃を開始する

 ーーーーークルァアアアアアアアアア

 スコールによる轟音の向こう側から、何かの鳴き声が、響き渡る
 一瞬だけ、ゆらり、と、巨大な影が見えた

「…おい。ありゃシルエットから見てシーサーペントだぞ」
「シーサーペント、と言っても形状色々いるからなんともいえないが……それっぽいな」

 黒髭と栄は、見えたそれをシーサーペントである、と判断した
 先程の20門もの大砲の砲撃で、それにどの程度ダメージが入ったかはわからない
 ひかりもまた、微かに見えるシーサーペントと思わしきシルエットに攻撃しようと………

「……栄!」

 と
 栄しかいないはずの良栄丸の操舵室の中から、別の男の声がした
 数人がぎょっとしてそちらを見ると、操舵室の中にあった大きな箱の蓋が開いており、そこから男が顔を出している

「深志?お前、見つかったらヤバいから隠れてろって………」
「もうバレた!「メガロドン」がザンの闇で防がれ始めてる。それと、あのシーサーペントっぽいクラーケンの他に、もっとドラゴンよりの顔のクラーケンがこっちに向かってきてる!まだ少し遠くてはっきり見えないが、他にももう一体!」

 栄から深志と呼ばれたその男が、そう警告した
 その発言内容に、気づいた者が数名

「「メガロドン」の契約者か」
「あぁ、そうだ……召喚使役型とバレたから、ザンが遠慮なく闇で「メガロドン」を攻撃し始めたんだろ。視覚は共有できるが、ダメージ共有はないからな」

 近づいてくる影に関しては、「メガロドン」との視覚共有で確認したらしい
 今も、深志は視界を半分、「メガロドン」と共有し、何匹もの視界を切り替えて状況を確認し続けていて

 その「メガロドン」の一体が、巨大なハサミによって切り裂かれ、消える
 ヒトデ型クラーケンと共にサキュバスに襲いかかっているザリガニ型クラーケンとはまた別に、はさみを持つ個体………エビ型クラーケンが、ゆっくりと良栄丸へと近づいていっている

 別方向、良栄丸の真下からは、翼を持たぬ巨大な竜の姿をしたクラーケンが
 さらにもう一体、先程クイーン・アンズ・リベンジの砲撃を受けたシーサーペント型クラーケンが
 それぞれ、良栄丸へと襲いかかろうとしていて


 ……そして、さらにもうひとつ、クラーケンとは別の攻撃手段をいつでも放てるように構えて
 さてどう動くか、と、ザンは笑った



to be … ?


突如降り始めた豪雨によって視界は遮られた。
海賊船からの砲撃によって、豪雨の奥に一瞬だけ大きな影が見えたが、黒服Yにはそれが何なのかは分からなかった。
他の参加者の会話の内容を聞くに、シーサーペント型のクラーケンらしいことは分かった。
そもそも分からないなら黒服Yも会話に加われば良いのだが、最初にタイミングを逃して以降、どうにも入れないでいる。
どうせ参加しても新しい情報を出せるわけでもないし、自分が考えたことは誰かが似たような事が言ってるからなど思って、結局そのままである。
そんな状態のまま黒服Yはシーサーペントのか影が見えた方向を見ていたが、あまりダメージを与えられてないように感じた。
攻撃をしようとする気配が衰えてないからだ。
そして、足下からも這い上がってくるような悪寒を感じた時、すぐさま操舵室の屋根から飛び降りた。
いきなりの行動に着地地点の近くにいた者が驚いていたが、構わず船の縁に駆け寄り下を覗きこんだ。
何が居るのかは分からないが、何かが下から攻撃しようとしているのは分かった。
波打って奥がほとんど見えない海面にライフルを向けると、

「クラックショット(破砕弾)装填! ごめん、ちょっと足支えてて!」

クラックショット。
貫通力の高いアーマーショットに対して、クラックショットはほとんど貫通力を持たない。
かわりに、着弾時に弾丸の持っているエネルギーを全て解放する。
つまり着弾した箇所で破裂し、その衝撃でダメージを与える技である。
今、ライフルを囲むように、数十発の弾丸が現れている。

「ちょっと揺れるかも。クラッカー!」

技名の合図と共に、すべての弾丸が海中へ発射される。
弾丸は、迫ってくるクラーケンへと向かっていき、その直前で全ての弾丸が一点に集まり、お互いに衝突しあい、一斉に破裂した。
重なりあった衝撃は、指向性を持った衝撃波となって、クラーケンの眼前で炸裂した。

続く

ザンの能力により豪雨に覆い隠された会場
良栄丸とクイーン・アンズ・リベン周辺のみがこの影響から逃れていた
逆に言えばその他は例外なく豪雨の只中に存在するということだ

「もー、いきなり乗りかかるなんて大胆……って、なにこれ!?」

水上、もといクラーケンの上で戦っていたサキュバスも例外ではない
すっかり萎びたヒトデ型をタコ型に持ち上げさせてみれば
周囲は先の見えない豪雨という状況だ。しかし彼女の動揺は長く続かなかった
雨の中からザリガニ型クラーケンがはさみを突き出して、それどころではなくなったのだ
タコ型を強く叩いたはさみだがその軟体にはあまり効いた様子はない
肝心のサキュバスの方もまた、タコ型の上を転がって難を逃れていた
タコ型はヒトデ型を放り捨てるとザリガニ型に絡みつき動きを封じにかかる
抵抗するザリガニ型の上に、タコ型の触腕を伝ってサキュバスが飛び乗った

「雨痛い!風強い!こうなったら……効率は悪いけど速さ重視で行きますか!」

サキュバスの体に翼や尻尾が生え、彼女の瞳が赤く輝く
体の表面から、あるいは翼や尻尾が変化しぬらぬらとした触手が現れる
伸びた触手はタコ型とは別にザリガニ型の体に絡みついて

「お姉さんの全力、見せちゃうんだから☆」

ニッと笑うと同時、サキュバスの体や触手に触れたところから
ザリガニ型の生命力が吸収されていく。身悶えるザリガニ型だが
タコ型に押さえつけられている状態ではサキュバスを振り落とすことも叶わない
だが速さ重視とはいえ相手は巨体のクラーケン。吸い尽くすのに一分はかかる
様相の変化したこの会場で一分という時間は果たして短いのか、長いのか
大量の精気を溜め込みつつも、サキュバスは内心焦りを感じていた
 

ところ代わって良栄丸とクイーン・アンズ・リベンジに集まった契約者達
彼らは豪雨に包まれた会場と、メガロドンの契約者である深志の証言から
ザンが攻勢に出始めたということを否応無く認識させられていた
豪雨の限定制御に大砲での砲撃、水中での爆音……彼らはそれぞれ
自身の持つ能力を駆使してザンの攻勢に抗い反撃の機会を探す
そしてそれは覆面の彼も、例外ではない

「外海」
「む、なんだ?見ての通り忙しいのだが」
「帽子を預かってくレ。俺もデル」
「おわっ!?」

返答も聞かず中折れ帽を黒の頭に被せると甲板を歩き
クイーン・アンズ・リベンジの舳先から水面を見下ろすゴルディアン・ノット
彼のトレンチコートからザンのものにも似た闇が溢れ体を包み始めた
彼が覆面を脱ぐと同時に頭部も闇に包まれて見えなくなり……

「おい!水中には今クラーケンが――――」

気づいた黒の声は聞こえなかったのか、無視されたのか
ゴルディアン・ノットは空中に身を投げ出し、水中へと落ちた

 ゴォン    ゴォォン

水中から先ほど黒服の男の銃撃が齎した破裂音とは明らかに違う
まるで鉄の壁に重いものを打ち付けるような鈍い音が響く
立て続けに二回、三回と繰り返す音に数人が水中に意識を向け

 バキンッ

鎖が断たれる鋭い音が、鳴り響いた

最初に事態を理解したのはメガロドンの契約者、深志だった
視界を共有しているメガロドンの目に映っているのは
先ほど攻撃を受けて一旦良栄丸から距離をとったドラゴン型クラーケン
その首に掴みかかる黒い鱗を纏った巨大な腕だった
豪雨の向こうでドラゴン顔のクラーケンが水中から顔を出し
続いてヒレのある足、どっしりとした体がなんとか見えたところで
何名かがドラゴン型を持ち上げる巨大な黒い腕という異常に気づく

 ――――――ギュラァアアアアア

腕から逃れるように咆哮をあげつつ身をよじるドラゴン型に対し
黒く長い鞭のようなものが水中から現れてその身を打ち据えた
やがて水中から出てきたのはビルを悠々と見下ろす巨体
ドラゴン型クラーケンにも劣らないドラゴンに似た頭部
左右に一本ずつ、さらに背から長く伸びた一本の合計三本の腕
ビルを軽く越す体高よりさらに長いように見える尻尾
全身は黒い鱗に包まれており、その姿は直立した黒いドラゴンと形容するほかない
強いて言うならば翼の類がないことが特徴かもしれない

 ヴァアオオオオオオオオウウ

黒いドラゴンの咆哮が一瞬、雨の音すらかき消した。思わず数名が耳を抑える
さらなる異変に最初に気づいたのは、やはり深志だった
水中を縦横無尽に何か細いものが行き来しながら水面へと向かっている
やがて隙間なく編まれた繊維製の足場が水面に浮上する
少し離れたところではシーサーペント型のクラーケンが
まるで水揚げされる魚のように水中から引きずり出されていた

「……怪獣映画再び」

誰かが漏らしたその言葉に、周囲が心の中で同意した

                                     【続】

「戦技披露会?」
「そうっす」

 すっかり肌寒くなった頃、ボクは憐君から戦技披露会へのお誘いを受けた。

「組織や首塚が合同で開催するイベントっす。すずっちも来ないすか?」
「うーん。でも、ボクどこにも所属してないよ。行ってもいいのかな?」
「問題ないっす! 契約者なら、観戦も試合への参加も自由っすよ」
「そっか。なら、行ってみようかな」
「わかったす」

 そんな経緯で、ボクは戦技披露会に来た訳なんだけど……。

「何、この怪獣大決戦!?」

 ひたすら、度肝を抜かされっぱなしだった。

「No,0ってあんなに強いの!?」
「そりゃ、No,0は各Noのトップだからな。チートで当たり前なんだよ」

 取り乱すボクに比べ、トバさんは冷静。クラーケンと黒い竜の戦いを見ながらも、呑気に寝そべっている。
 周りを見ると、殆どの人が同じように落ち着いた様子だった。屋台の料理を食べたり、仲間同士で話したりと思い思いに過ごしている。あのくらい、驚くことじゃないとばかりに。
 契約者ってすごい、ボクは改めて思った。
 
「……ボクも、いつかはこうなるのかな」
「何の話ですか?」
「あ、ううん。何でもないよ、緋色さん」

 笑みを浮かべ誤魔化す。

「それより、ボクちょっと治療室まで行ってくるから」
「お友達に会いにいくんですか?」
「うん。何か食べたくなったら渡した財布で買ってね」

 ボクは、二人に背を向け歩き出した。

――続く?――

ーー戦技披露会 

「三尾、お前は医務室に行け」

戦技披露会の当日、いきなり三尾はそう告げられた。

「医務室ですか?」
「ああ、そこで治療の補助をしろ。もう話は通してある。
 今日は治療系のが集まってるからな、お前の能力の参考にできることがあるかもしれん」
「ありがとうございますっ、葉さま」

医務室での治療の仕事となると、他の仕事を同時こなす事はできない。
だから、三尾が今日やろうと思っていた事を、他の人に頼むために確認すると、既に他の人達へ割り振られていた。
おそらく葉が先にやっていたのだろう、こういうイベント事となると手際が非常に良い。
なぜ普段からこの性能を発揮してくれないのか。
問いただした所で逃げるか、はぐらかされるかのどちらかなのを、長く仕えている三尾はよく知っている。
むしろ、流れに逆らうと労力が増えるだけなので、そのまま流れに乗った方が結局早く済む。
手際よく身支度を整えた三尾は、小走りで部屋を出ていった。
それを見送った葉は大きく背伸びして呟いた。

「よっし、これでゆっくり観戦できるな」



ーー医務室

三尾が戦技披露会会場内の医務室に行くと、すでに連絡は来ていたらしく治療のサポートや備品の整理などを指示された。
能力的にも止血の即効性はあるものの、傷自体の治癒には時間がかかるため、治療するとしても軽症の患者のみだろう。
医務室なので、白衣か何か着た方がいいのだろうかと思い、先生と呼ばれていた白髪の男性に尋ねると、

「では服が汚れてはいけないからこのナース服を」
「なに着せようとしてんだっ!」

どこからか純白のナース服を取り出した白髪の男性は、即座に少年によって蹴り飛ばされた。
その弾みで服は三尾の手元へ飛んでくる。
三尾は生地や縫い目などを確認するが、コスプレ用ではなく、実用に耐えうるちゃんとしたものだ。
デザインとしてはややスカート丈が短いようだが、普段夢魔が三尾に着せようとする服と比べると露出も少ない。
見た感じではサイズもちょうど良さそうである。

「ありがとうございます。着替えて来ますね」


ーーー


着てみるとサイズは体のラインに沿ってぴったりだった。
一般的な半袖タイプのもので、左前に並んでいる大きなボタンで留めるタイプだ。
丈は太ももの中程まで見える、やや短めのもの。
受け取った時には気付かなかったがオーバーニーソックスとナースキャップも入っていた。
全て着用して、再び白髪の男性の所に行くと、

「うむ、私の見立てに間違いはなかっ」

白髪の男性はセリフの途中で少年にまた蹴り飛ばされた。

続く?

「……おや、「アカシックレコード」か。実に懐かしいねぇ」

 恐らく、そう口にした当人は、本当に何気なくそう言っただけなのだろう
 そもそも、あの「組織」X-No,0とのスペシャルマッチの現場に「アカシックレコード」などという規格外の都市伝説契約者が本当に参加しているのかどうかは不明である
 だが、そうだとしても、その可能性が少しでもあるのならば、この場を一刻もはやく離れるべきだ、とそう感じた
 「先生」と呼ばれている白髪赤目の白衣の男が件の言葉を口にしたのは、スペシャルマッチの様子を映し出している画面を見ながらだった
 それだけで、ほんの少しでも「アカシックレコード」の契約者、もしくはそれに類似した能力の持ち主が、この治療室に来る可能性があるのならば
 ここから離れるべきだろう、何かしらの理由で、己について調べられる前に

「……運ばれてくる人数も増えてきたし、俺はもうここを出るが。構わないか?」
「うん?治療は終わっているし、違和感や痛みが残っていないなら、問題ないよ」
「あぁ、どこも痛みは残っていないよ」

 なら良し、と「先生」とやらは笑って、こちらの対戦相手だった女性の診察に入った
 こちらが与えた傷も治療したのだし大丈夫だと思うのだが、「念の為」だそうだ
 恐らく、都市伝説やその使い方の関係なのだろう
 「人肉シチュー」の契約者についても、己の肉体を溶かすと言う使い方をしていたせいか、当人に目立った怪我がなくとも診察していた
 万が一がないようにしっかり診察している、そういうことなのだろう

(…記憶方面を読まれる、と言うことはなかったから、良かったな)

 そうなっていたら、まずかった
 自分が「あの方」の配下であることは、絶対に知られてはいけないのだ

 九十九屋 九十九はす、と治療室を出ると、観客席へと向かって歩き出した
 途中、治療室に知り合いでもいるのかそちらに向かっている少年とすれ違いながら、思案する

(診療所もやっていると言う「先生」とやらの治癒能力がどんなものか見たかったんだが………まぁ、いいか。別の治癒能力者を確認できた。聞いていた話通り、あちらの治癒能力はかなり優秀だな)

 「ラファエル」の契約者、荒神 憐。「ラファエル」の治癒能力に特化した契約者であると言う話は本当だった
 あれは「使える」
 「あの方」が見つかり次第、あの少年を誘惑してこちらに引き込むべきだろう
 治癒能力者が一人いるかいないかで、生存率と言うものは大きく変わる

(あの少年の精神的な弱みもわかった。うまくやれば、「あの方」が見つかる前でもこちらに引き込めるな)

 大きな収穫を得られた
 この情報を、今後に活かさなくては

 観客席が並ぶエリアへと入っていくその時、ふと、冷たい空気を感じたが九十九屋はあまり気にせず観客席へと向かい
 ………自分を見ていた、凍れる悪魔の視線に、気づくことはなかった
 


 空井 雀がそっと治療室を覗き込むと、そこは忙しさのピークは脱したようだった
 スペシャルマッチの初手で溺れた人達の処置はもう終わったのだろう
 ぐっしょり濡れている服を乾かしている者や、まだ意識が戻らない……と言うより、気絶からスヤァへとモード移行した者がベッドで寝ていたりしているが、慌ただしい様子はない
 そんな中で、雀は自分を戦技披露会へと誘った相手を探す

「……あ、いた」

 憐は、ちょうど溺れた拍子に怪我をした人の治療をしているところだった
 ぽぅ、と掌から溢れ出す白い光が、傷を癒やしていっている
 傷を癒やす様子は以前にも、見た
 以前と違うのは、憐の背中から淡く輝く天使の翼が出現していた事だ
 よくよく見ると、治療室の床や寝台の上に羽根が散らばっている

「おや?怪我人かな?」

 と、何やら女性を診察していたらしい白衣の男性が雀に気づいた
 診察は終わったようで立ち上がり、雀へと視線を向けて

(………あれ?)

 何か
 じっと、「視」られたような
 そんな感覚を、確かに感じた

「……っと、すずっち。来たっすね」

 その感覚は、憐に声をかけられたことで途絶える
 怪我人の治療が終わったらしい。普段通りのへらりとした笑顔を向けてきた

「わが助手の従兄弟よ、もうそろそろ、その翼はしまっても大丈夫だよ。君も疲れただろうし、だいぶ羽根が散らばっているから治癒の力はそれで十分だ」
「ん、そうっす?……あんま疲れてないし、平気っすけど」

 と、白衣の人に言われて憐はすぅ、と天使の翼を消した
 白衣の人の言い分からすると、散らばっている羽根にも治癒の力があるのだろう………ようはこの治療室は今、治癒の力に満ち溢れていると言っていいのかM沿いれない

「そちらの少年、知り合いかい?」
「はぁい。クラスメイトっす」

 へらん、と笑って白衣の男性に答えている憐
 ぱたぱたと、雀に駆け寄ってきた

「大丈夫?忙しくない?」
「ん、平気っすー。俺っちは、「先生」やかい兄のお手伝いしてるだけっすから」

 雀の問いに、憐はへらりと答えてくる
 一応、その顔に疲労の色は見えないが、実際のところはどうなのだろうか

「他のみんなも来ているんだよね?龍哉君や直斗君、神子ちゃんは実況やってるみたいだけど…」
「来てるっすよー。はるっち逹は観客席にいるはずっす。後で合流するっす?俺っちはっもうちょいこっちのお手伝いしてるっすけど………」
「君は、もう休んでも大丈夫なのだけどねぇ」

 白衣の男性が苦笑する
 そうして、こっそりと、雀に話しかけてきた

「……すまんが、少年。後で彼をここからなんとか連れ出してくれるだろうか?」
「え?」
「当人、顔に出さないようにしているが、これだけ治癒の羽根をばらまいたのだからだいぶ疲労している。ヘタをシたら倒れかねんからね」

 それは困る、と
 「あとで怒らられるのは私だからねぇ」と、自分のことだというのにまるで他人事のように言いながら、白衣のその人は苦笑したのだった


to be … ?

 医務室に来たボクは、いきなりお医者さんに頼みごとをされた。

「……すまんが、少年。後で彼をここからなんとか連れ出してくれるだろうか?」
「え?」

 それは、憐君をここから連れ出して欲しいというもの。
 どうやら、治療の羽を出しすぎたせいで疲労しているらしい。このままだと、倒れる可能性もあるとの事だった。

「わ、わかりました!」

 あまりに予想外な出来事。ボクは、慌てて返事をした。

「頼むよ。そう焦らなくていいから」

 お医者さんは、軽く微笑みながら次の怪我人の下に向かっていった。
 入れ替わりに、憐君が話しかけてくる。

「すずっち、『先生』と何の話してたっすか?」
「え。いや、大したことじゃないよ。それよりも凄いね。この部屋中の羽根、全部憐君が出したんでしょ」
「そうっすよ。このくらい、朝飯前っす! なんで、もうちょっと治療を――」
「も、もう十分じゃないかな!! ほら、あのお医者さん。『先生』も羽根だけで十分だって言ってたし」
「いや、念には念を入れるっす!」
「入れちゃうかー!」

 説得の失敗に、ボクは一人頭を抱えた。うん、もうちょっとコミュ力を上げる必要がありそう。
 さてさて、次はどうしようかと考えていると鶴の一声が飛んできた。

「憐、ここはもういいから休んでこい」
「ちょっと、かい兄まで何っすか。俺っち、まだまだいけるっす」
「いいから、行ってこい。お前が倒れたりしたら患者も心配する」
「え?」
「もしかしたら、自分達のせいで倒れたんじゃないかと思うかもしれない」
「そ、それは……」

 かい兄と呼ばれる人の説得に憐君は揺れた。自分のことだけでなく、患者さんの話を持ち出されたのが効いたらしい。
 そして。

「……わかったす。あと少ししたら休憩に入るっす。すずっち、それまで待ってもらっていいっすか?」
「うん!」

 内心、ほっと一息つきながら返事をする。完全に、あの人のおかげだけど目的は達成できた。……後で、機会を見てお礼をしておこう。
 憐君が離れていき、一人残されたボクはテレビに目をやり

「エビフライ!?」

 絶句した。

続く?

戦場に現れたクラーケンと同等、あるいはそれ以上の体躯を誇る黒い二足歩行型のドラゴン
この姿こそがゴルディアン・ノットの切札であり、彼の真骨頂であった
"機尋"と並ぶ彼のもうひとつの契約都市伝説。それは"鎖室エリア"
某駅の鎖で封鎖された扉と、その奥から現れた黒く大きな五本足のトカゲという都市伝説
この都市伝説は彼が生来持つ都市伝説を補助・強化する形でその力を発揮した
平素は都市伝説としての力に制限をかけて万が一の暴走という危険を減らし
有事には体を巨大化させ腕などの部位を増やして戦闘能力を向上させることも可能
さらには機尋の使用にも支障なく、むしろ普段以上に使うことができるのだから
まさに切札と称するに相応しい能力であると言えるだろう
だが無論のこと、この切札にも欠点が存在する。それが時間である
制限をかけて抑えていた力を強化して解放するというのは
人間と都市伝説の間を行き来する彼にとって、天秤を大きく傾ける行為に他ならない
一度大きく傾いた天秤はそれだけ平衡へと戻るのに余計な時間がかかる
力を解放し続けた時間に比例した期間、都市伝説側へ性質が固定されてしまう
それが鎖室エリアによる強化による欠点であり、彼がこの能力を多用できない理由だ

背から伸びる腕が掴んだドラゴン型クラーケンの首を潰さんとばかりに握りこまれる
時折鞭のように振るわれる尻尾に打たれながらも暴れて抵抗するドラゴン型
ゴルディアン・ノットは空いていた両腕を使いドラゴン型の体を押さえにかかった
その腕の表面から解けるように布や縄が剥離してドラゴン型を拘束していく
動きが緩慢になったドラゴン型、その前足を噛み千切らんと
ゴルディアン・ノットは巨大な口を開き、咆哮をあげて牙を突き立てた
ミシミシブチブチという骨が軋み肉が裂かれる音が豪雨と強風の中に消える
だが突然、風雨を貫くようにして水流がゴルディアン・ノットの背に襲いかかった
背後からの攻撃に体勢を崩し、ドラゴン型を取り落としつつ振り向いた彼は
鎌首をもたげて口を開き、ゴポゴポと喉奥に水を蓄えたシーサーペント型を睨む
再び水流が放たれると同時、大量の海水が再び会場を水で満たさんと放たれた

ヴァアオオオオオオオオウウ

再び黒いドラゴンの咆哮が会場の空気をビリビリと揺らした
 

咆哮と呼応するように侵食する海水を逆に飲み込むように足場全体がせり上がっていく
シーサーペント型の放った水流は、対抗するようにいくつも屹立した布と縄の柱で
勢いを幾分か散らされつつも再びゴルディアン・ノットに直撃した
しかし水流に逆らうようにゴルディアン・ノットはシーサーペント型との距離を詰め
その体を三本の腕と巨大な顎で捕まえ持ち上げにかかった

 ―――――クルァアアアアアアアアア

己に食らいつく黒いドラゴンに三度目の水流をぶつけようと口を開くシーサーペント型
その頭部を"四本目の"黒い腕が殴りつけ、口を抑えて閉じさせる
ゴルディアン・ノットは鎖室エリアの能力を使い体に新たな部位を追加したのだ
さらにギョロリと後ろ向きに一対、新たに生えた両眼が背後に迫るドラゴン型を睨み
長い尻尾が迎撃のために振るわれる。同時にシーサーペント型を掴んだ腕と顎には
その体を引きちぎろうと力が込められていく。布と縄に覆われながら
黒いドラゴンの四本の腕と顎によって引っ張られ続けたシーサーペント型は
ついに断末魔の咆哮を上げながら体を引き裂かれて活動を停止したのであった
動かなくなったシーサーペント型の体を放り捨てたゴルディアン・ノットは
尻尾で牽制していたドラゴン型に向き直り、咆哮と共に掴みかかった


「もー!いったいどこにいるのよ!!」
一方、無事にザリガニ型から生命力を奪って虫の息に追いやったサキュバスはといえば
あまりの風雨の強さから完全にザンの姿を見失って困っていた
「というかこれカメラ中継できてるの?在処ちゃんにお姉さんの活躍見せられなくない?!」
こんな時にカメラの心配をするのは余裕の現れか、それとも変わり者の証明か
なんにせよハート柄のタコ型クラーケンを連れて彼女は足場の上を移動していく
その先にあるはずの、座礁した海賊船を目指して

                                        【続】

 一方その頃。クイーン・アンズ・リベンジの上では。
「わーい!おっきなエビ!エビフライにしたら、なんにんまえかなあ」
 鋏を振り上げたエビ型のクラーケンを前に、上機嫌の幼女と苦笑いをする黒髪の少女に、色素の薄い青年。
「さて澪ちゃん、どうしようか?」
 肩をすくめて問う真降に、澪は銀の大鎌を呼び出し、
「殺ります?」
 紫色の瞳を眇め、いたずらっぽく笑う澪。本気か否か真降にも判断が付きかねる。
「いや、死人は出さない事になっているし、都市伝説といえど、それは良策じゃないね」
「じゃあ真降さんには良策が?」
 真降はまあねとだけ応えると、とととっと前に走り出していった幼女に視線を向けた。
「とりあえずお手並み拝見といこうか。危なくないように目は配るよ」

「ふぁいやー!」
 ひかりが手鏡をかざすと、周りの気温が俄に上がり、炎が巻き起こる。
 エビ型クラーケンが鋏を振り回し抵抗すると、炎が風にかき消され、鋏と胴体の一部に熱が入り、赤く染まる。
「殻の焦げる、いい匂いが…」
「いやいや、食欲をそそられる匂いだね、これは」
 突然浴びせられた熱に、エビ型クラーケンは鋏を振り回して怒り狂った。
「あれー!?エビフライにならないの。おかしいなあ」
 手鏡をのぞき込み首を傾げるひかりに、年長者たちは苦笑いだ。
「ひかりちゃん、エビはね、衣を付けて油で揚げないと、エビフライにはならないんだよ」
 しっかり者の澪が、珍しく斜め上なアドバイスをした。
「やっぱり、はじめからこうすればよかったー!」
 ひかりは無骨な銀の槍を掲げ、何事か呟く。
「全知全能なる記録。その光と闇よ。わが意に応えその記すところを書き換えんことを」
 天上から光が降り注ぎ、エビ型クラーケンは…
 一尾の、巨大エビフライと化していた。
「えびー!」
 様子を見ていた澪と真降は茫然自失。
「そんな、バカな…」
「これが、『ロンギヌスの槍』…『アカシックレコード』の力…」
 エビ型…否、エビフライ型クラーケンは、自らに起こった変化もつゆ知らず、鋏をふりふりひかりに向かってゆく。
「えびー!」
「ひかりちゃん、危ない!」
 間一髪、真降が水面ごとクラーケンの下半身を凍らせて動きを封じる。
「これで当面は凌げるね」
「でも…時間の問題ですよね、これ」
 クラーケンが氷を割る前に、何とかしなければならない。
 

「全身凍らせることは、可能ですか?」
「時間があるなら」
「分かりました。時間の稼ぎ方を考えます」
 二人の会話は、それで十分だった。


その頃観客席では、一人の少女がもじもじそわそわしていた。
「神子、どうしたの」
「んっ…いや、なんでも…」
(なんだろ、この…体の中をかき回されるような、変な感じ)
 なにかを感じ取るように、闘技場で銀の槍を手にした幼女に、視線を向けた。


続く

 神子が、まるで何かを感じ取っているかのようにそわそわとしている
 その様子に気づいた直斗は

「………………厄介な能力使いやがった」

 と、ぼそり、実況のマイクには入らないよう、そう呟いた
 その声は、忌々しそうな、今にも舌打ちしそうなものだったが

「?何か言った?」
「いや、何も」

 神子に問われた時には、普段通りの軽い調子の声に戻っていた
 そうしながら、神子に告げる

「とりあえず、さっきからそわそわしてるみたいだけど。この試合終わったらすぐ手洗い行けよ。こういう場で漏らしたら属性付けられるぞ」
「そういう意味でそわそわはしてないっ!?」

 力いっぱいの神子のツッコミを軽く流しながら、直斗は試合会場を映し出すモニターに視線を戻した
 激しいスコールによって、ほぼ何も見えないも同然の状態が続いているが……

「龍哉、今、どんな状態になってる?」

 龍哉なら、自分達より多少は見えているであろう
 そう判断し、直斗は龍哉に問うた
 ようやく、龍哉が神子の目隠しから解放されたおかげで、もう少しマシに実況できそうだ
 そうして、龍哉はその問いに答える

「そうですね。ザンさんが呼び出していましたエビ型のクラーケンが、エビフライになりましたね」
「「何が起きてる試合会場」」

 思わず、直斗と神子の言葉が重なった
 本当に何が起きている、試合会場

「……まぁ、どちらにせよ。そろそろ決着つくだろ」
「どうしてそう思うの?」
「思ったより時間かかってるし。そろそろ、ザンが焦れてくるだろうからな」

 スペシャルマッチの試合の経緯を思い返す
 ザンは「試合の最中に武器を補充していた」のだ
 そろそろ、それを使うだろう、と。直斗はそう確信していた


 次々と特攻し、自爆してくる人形逹をクラーケンの足で防ぐ
 ただ、そろそろ決着をつけるべきだな、とザンはそう考え出していた
 さて、人形を特攻させまくっている彼女をどうしようか………

 ごぅんっ

「あ」
「影守ーーーーっ!?」

 あっ
 何気なくクラーケンの足で特攻を防いだら、クラーケンの足で絡め取ったままだった影守が人形の自爆特攻をもろにくらった
 あれ、生きてるだろうか

「っく……なんて酷い事を……!」
「会話聞いてた感じ、人形に八つ当たりで自爆特攻させてる時点でお前も酷くないか?」

 希の言葉にザンは思わずツッコミを入れた
 が、希はそれを華麗にスルー(と言うより聞かないフリ)して、ザンを睨みつけた

「しかも、さっき影守に当たったので人形ストックがほぼ尽きた……!なんて事なの……!」
「そら、あんだけ特攻かましまくったら残機なくなるわ」

 自業自得だろう、とツッコミを入れながら、ザンは傍らにブラックホールを思わせる穴を空けた
 その真っ黒な空間を見て、希が警戒する

「…それ、攻撃には使っちゃ駄目なんでしょ?今回は」
「あぁ、「直接」攻撃に使うのは、駄目だな」

 そう、「直接」は駄目だ、「直接」は
 ……だが、この使い方なら許される
 漆黒のその向こう側から顔を覗かせ始めたそれに、希は対応しようとして………
 




 時は、ほんのちょっぴりだけ遡り

「はぁい、来ちゃった♥」

 ようやく、クイーン・アンズ・リベンジと「良栄丸」の辺りまで移動完了したサキュバス
 そこにいた面子に、ウィンクを一つ飛ばし

 ………っぱん、と、銃声が響き渡った

「危なっ!?いきなり撃ってくるなんて大胆……♥」
「……っち、外しましたか」

 何があったか、と言えば。蛇城がサキュバスを見た瞬間、問答無用で発砲したのである
 残念ながら(?)、サキュバスが支配権を奪い取ったタコ型クラーケンによって防がされたようだが

「味方を銃撃するのはどうかと思うんだけど」
「若に見せてはいけない姿をしていたので、今のうちに撃ち落としておくべきだと判断しました」

 黒服Yのツッコミにもこの反応を返す蛇城
 反省している様子はない、と言うより、隙あらばまた撃ち込む構えだ

「そのタコの支配権、完全に奪い取っているのか?突然、支配権を奪い返され、タコが暴れだすなどということはないだろうな?」
「大丈夫大丈夫、そう簡単に支配権奪い返されるほど、お姉さんは甘くないぞ♥」

 ゴルディアン・ノットの帽子を抱えた外海に問われ、セクシーポーズとりつつ答えるサキュバス
 そう、彼女とて熟練の実力者サキュバスである
 一度誘惑して支配権を奪った存在を、そう簡単に奪い返されたりはしない
 そう、やる気がなくならない限りは………

「在処ちゃんにお姉さんの活躍見せなきゃいけないんだもの、無様な姿は晒さないんだから」
「念のため言うが、奥方様……在処様は、会場には来ていないぞ」
「えっ」

 蛇城からの容赦なき言葉に、一瞬霧散しかけるサキュバスのやる気
 が、ギリギリのところで、サキュバスは耐えた
 落ち着こう、淫魔はクールかつ情熱的であれ。会場に来ていなくとも、後で録画映像を見たりとかあるかもしれない。どちらにせよ無様な姿を晒す訳にはいかないのだ

 と、茶番を切り上げ、真面目にこの状況をどうすべきかとなった、その時

「………あ?」
「黒髭、どうかしたのか?」
「…今、爆音がしなかったか?」

 直ぐ側の音しか聞こえない…どころ、その音さえかき消しかねないスコールが降り注ぐ中、黒髭が何やら聞きつけた
 そして、その音は彼にとって聞き覚えのある、馴染みのある音であり

 直後、この場にいる全員が悪寒を感じた
 びちびちっ、と、タコ型のクラーケンがビチビチと暴れだす

「っきゃ!?あれ、どうしたの?」

 サキュバスが問いかけるが、タコ型クラーケンは人語を話すことはできない
 代わりに、びっちんびっちん足で海面を叩き、何かを訴え……その足の動きが、おかしい
 何か、痺れているような

「痺れ………まさか!」

 深志が慌てて、辺りを泳がせていた「メガロドン」と視界を共有した
 近場を泳がせていた「メガロドン」の視界が、それを捕らえる

「げ……っ栄、今すぐ「良栄丸」をこっから移動させろ!」
「無茶言うな。海水がなくなった分、スピードが落ち……っ!?」

 しゅるり、と
 何か、半透明の細いものが「良栄丸」に絡みついてきた
 黒服Yと蛇城が絡みついてくる触手のようなそれを銃撃するが、後から後から伸びてくる

「なにこれ!?」
「クラゲ型のクラーケンだ!サキュバスに吸われた後放置されてんのかと思ったら、一旦引っ込めて召喚し直しやがったんだな!?」

 澪の叫びに応える深志
 そういえば、サキュバスに生気を吸われ放置されていたはずだったのだが………スコールが降り注ぎ始めて以降、姿が見えないと思ったらそういうことなのだろう
 スコールに紛れて、接近してきていたらしい
 触れた瞬間に相手を痺れさせるであろうその触手から、「良栄丸」に乗り込んでいる面子は距離を取る

「…でも、このお船を沈めるだけのパワーはないのかな?」

 エビフライ型クラーケンがびたーんびたーんと己の進撃を封じる氷を破壊しようとしている様子を横目で見つつ、ひかりはクラゲ型クラーケンの触手の様子に首を傾げた
 

 そう、どうやら、「良栄丸」を沈めるようなパワーはクラゲ型クラーケンにはないらしい
 もしも、沈められるのならばこれだけ絡みつかせた時点でとっくにやっているはずだ
 では、このクラゲは何の為に?

「まるで、ここから移動させないために絡みついているような……」

 そう、口にしたのは誰だったか
 その言葉が最後まで続く前に、クイーン・アンズ・リベンジ、「良栄丸」、そして黒いドラゴンと化していたゴルディアン・ノットの真上に、漆黒の闇が生まれる
 触れたものを容赦なく吸い込み消し去るその闇の向こう側から、何かが、無数に………

「…あれは、まさか」
「クイーン・アンズ・リベンジが放った大砲の弾!?」

 そう、黒と黒髭が容赦なくザンに向かって撃ち込みまくっていた大砲の弾
 ザンの能力で闇の向こう側に吸い込まれていたそれらが、一斉に姿を表して
 希相手にやったように、大砲の弾は容赦なくザンへの挑戦者逹に降り注いだ


 厄介な連中は一箇所に集まっていたようである
 召喚しなおしたクラゲ型クラーケンで「良栄丸」の動きを封じ、そこに吸い込んでストックしておいた大砲の弾を返しまくる
 これで、「良栄丸」は落ちるだろう
 大砲の弾だけで落ちなかったら、他にも過去に吸い込んだ攻撃を放出していけばいい

「あとは、あそこに合流していない、まだ潜んでる奴一人ずつ見つけて落としていけば終わるだろ」

 そうじゃなくとも、これだけのスコールだ
 運が良ければ、もう落ちているだろう
 このエリアから回収されていないところを見るに、まだ気絶していないらしい影守の方も、もう少し強めにクラーケンに絞めさせて落とせば………

「っと」
「が!?」

 ザンへの奇襲を試みた小さな人影が、イカ型クラーケンの太い足に叩き落された
 ずっと、気配を潜ませ攻撃のチャンスを狙っていたらしい
 ザンが攻勢に転じた様子を見て、今仕留めなければ挑戦者側は勝てない、と踏んだか
 叩き落された、忍びのような服装の人影は、そのまま地面へと落下していって

 ぺふしゅるんっ、と
 イカ型クラーケンの足に、そっと抱きとめられた

 スコールがゆっくりと晴れていく

「…………やりやがった」

 ぽつり、呟いたザンの右肩
 そこに、小さな苦無がざっくりと、突き刺さっていた



【戦技披露会 スペシャルマッチ ザンへ一撃を加える事に成功しました 挑戦者側の勝利です!】




to be … ?


 合同戦技披露会の会場を歩き回っていた舞は、知った顔を見て挨拶をしに行った。
「黒服Dさん。それにはないちもんめの嬢ちゃん。お久しぶり」
 気付いた二人は舞を見て一瞬目を細め、それぞれ納得したように頷いた。
「ええ、久しぶりね」
「お久しぶりです」
「いやぁ、将門サンに酌でもしてやろうと思って行ったら本人居なくてさ、
ごみごみしてるとこ行っても疲れるからVIP席に誰か知り合いいねえかなって歩いてたらいい感じに寛いでるの見つけちまった」
 舞は手に持った酒を置いて二人の傍に立つと、少女が確認するように口を開いた。
「あなた、半分ここに居ないわね?」
 はないちもんめの契約者、望の言葉に舞は頷き、
「まあ、いざという時に俺たちの意思でここから抜け出せるように、な。別の異界が体に干渉してるんだ。自衛自衛。
 それより、さっきのX-No.0の戦闘、凄かったな! リアル怪獣映画だぜ!」
 そう言うと、舞は二人とこれまでの試合について軽く意見を交換した。
 あらかた話した上で、舞は懐かしむように目を細め。
「今回の参加者にもけっこういるっぽいけど、学校町の契約者って今もかなり居るんだろ?」
「私達が外見年齢相応だった時と比べるとあまり変わらないか、少し少ないくらいよ」
「ってことはかなり異常だな」
 苦笑が漏れる。
「それでもなんとかしていくわ」
「おお! 立場がある奴のそういう言葉はかっこいいぜ」
 手を打ち鳴らして応えた舞は、「しっかし……」と二人に視線をやる。
「Dさん、その絵面けっこう犯罪ちっくだな」
「恥ずることのない夫婦のワンシーンよ。ねえ、大樹さん?」
 当の本人は観戦用のモニターを見つめている。試合はまだ始まっていないのにだ。
 舞としてはからかってやろうかと思ったが、それより先に望が言う。
「今更ナンバーで大樹さんを呼ぶのってどうなの?」
「出会い時点でそれだったからなあ、今更ってのもある。それに、俺たちにとってDさんのDは≪組織≫でいう№のDとはまた違う意味あいがあるからなあ」
 望が「そうなの」と頷き、大樹がスクリーンこら目を移した。
「舞さん、そのお酒は?」
 舞は嬉しそうに瓶を振る。
「ここに来る前にフィラちゃんに頼んでVIP席進入許可のお礼に行ったらヘンリエッタ嬢ちゃんが逆にくれたワイン。なんと本物の≪悪魔の蔵≫の代物だそうだぜ」
 美味し過ぎて盗み飲みが多発したためにそれを防ぐ意味を込めて流れた悪魔の蔵の噂があるが、本物ということは、本当に悪魔がいる蔵から持ってきたのだろう。
「≪組織≫の備品でないことを祈りたいわね」
「あの方でしたら大丈夫なはず……です」
 大樹は相変わらず胃がキツそうだ。その不憫な姿に郷愁じみた親愛を舞は感じる。
「しっかし、文字通り尻にしかれちゃってるね、Dさん」
 望は大樹の足に収まっている。犯罪的な画とは言ったが、これはこれで微笑ましい。
 大樹はこほん、と咳払いし、
「一応、仕事もしておりますのでご容赦を」
「いや休めよ」
 思わずツッコミをいれるが彼は聞かないだろう。それは望の顔を見ればよく分かる。
 これは彼の不治の病なのだと思いながら、舞はこの二人にも縁が深い契約者が試合に出ていた話を蒸し返す。
「そういえばさ、チャラい兄ちゃん――いや、翼さん、か。あいつの娘大きくなったよな」
「ええ、時間は過ぎていきますね」
 大樹が感慨深く頷く。
 

「始めはあの兄ちゃんが産んだんじゃないかと思ったもんだ……」
「ああ、≪801穴≫との契約が一部界隈で疑われてたみたいね」
「そんな騒ぎも、もう十年以上前なんだもんなあ」
 舞も深く時間を噛みしめる。
 普段はあちこちを転々としては≪マヨヒガ≫に迷い込んだ者の相手や問題の解決などを行っているものだが、
後進の本格的な育成なんてものに手を出してみるのも面白いかもしれない。
「舞さんは今日はお一人ですか?」
 大樹の問いにいや、と舞は手を振る。
「元T№1と0。それに昔≪首塚≫に居たモニカって子と、その契約都市伝説の≪テンプル騎士団≫が来てるよ。
フィラちゃんは≪首塚≫の本島に行って昔の仲間と話してるんじゃねえかな」
 言っていると、妙齢の女と初老の男がやって来た。
「ここに居たか、舞」
「やあ、いろいろ買って来たよ」
 元T№の1と0。高坂千勢と高部徹心は、二人揃って大量の袋を持っていた。
 徹心は隻腕に≪夢の国≫のロゴが入ったものをいくつも下げている、千勢も同じ物を持っていたが、それ以外にテキ屋の屋台で買ったかのようなビニール袋があった。
「ああ、ちょっと面白そうな屋台を見つけてな、ちょいと買ってきた」
 指差す先にあるのはどう見ても死人が働いている屋台だ。手を振ってきているが、その動きで肉が剥がれ落ちそうで見ていてハラハラする。
 ……あれ、食品に混ざってないか?
 舞と同じことを思ったのか、望が言う。
「衛生的に大丈夫なの?」
 千勢は「大丈夫大丈夫」とあっけらかんと言って地面に座り、
「≪桃源郷≫の桃を毎日食ってるんだ。今更異物を食った所で死にゃしない」
 ここら辺の無頓着っぷりは舞にはまだ理解できない。
 徹心が苦笑で「まあ、こちらでもお食べください」と言って≪夢の国≫産の食べ物を渡す。
 舞は世界一有名なネズミの顔の形をしたピザを受け取り食すことにした。
「そういえば、Tさんはいらっしゃらないんですか?」
 大樹があたりを見回しながら言うと、望が「あ」と応じる。
「そういえば、急遽Tさんの名前が今日の参加者に追加されてたらしいわよ」
 大樹がおお、と唸り、千勢が笑う。
「あれはせっかくの機会だからと言って過去の負債を精算しに行ったよ。これにて晴れて昔のT№は円満に≪組織≫から離れることができるというわけだ」
「過去の精算?」
 望の疑問に、徹心が応じる。
「昔……たしかR№の物資調達の責任者の女性だったかな? 彼女直々にエリクサー合成の際の副産物として出来たアルコールを返却してくれと言われていてね」
「当時徹心は引きこもってたから、これを知ったのはしばらく後に出された≪組織≫の季刊誌でなんだ。
 たまに痴漢術みたいな面白いネタがあったので愛読していたが、ちと海外に出てる間に購読を忘れていた……。今ではどうなっているのだろうな」
「よく考えたら≪神智学協会≫との決戦の前に≪組織≫での資料を処分していた時、あの時破り捨てたあれの中に請求書があったんだろうなと思うんだけれど……」
「いかんな徹心」
「破り捨てていたのは君だよ」
 そんな幹部達の光景を見つつ、舞はこう思う。
 ……世界よ、これが≪組織≫だ……っ!
「ああ、そういえばそんな呼びかけもありましたね」
 大樹が思い出している呼びかけは、もう何十年も前のものだ。自分が所属している№でもないのにそれを覚えているということは、その時かなり胃を痛めていたのだろう。
「参加することで≪組織≫に対する負債を帳消しにするとなると、普通の参加の仕方ではないんでしょう? 連戦でもするの?」
 望の言葉に、舞は首を振る。
「俺らはただの契約者でしかねえからそんな大それたことはしたかねえな。
 ヘンリエッタの嬢ちゃんとかに掛け合ってここら辺を落としどころにしてもらうかとなったのは……まあ、あれだ」
 モニターに視線をやると、そろそろ次の試合が始まりそうだった。
「参加したのはいいけど、警戒されて相手が居なかった子の相手をするって感じかな」
「あら、ぼっちの子が居たの……ねえ、それってもしかして」
 望が言いかけた言葉の後を引き継ぐように、実況が次の対戦カードを告た。
『次の試合は…………≪夢の国≫と――T?』
『なんなのこのあからさまな偽名』
 舞は頷く。
「相手は夢子ちゃんだ」
 


   ●

 舞は実況の声を聞いて二人に問うた。
「この声、Dさんと嬢ちゃんの娘さんの声か?」
「ええ、そうよ」
「≪組織≫に提出されている偽の情報そのままで紹介するようにお願いしていますので、面倒なことにはならないと思いますよ」
 会場がどよめく中でそんな会話をしていると、実況がプロフィールを読む声が聞こえた。
『えー、Tは、かつて≪組織≫に存在したT№に所属しており、
№0を含めて構成員全てが≪組織≫を去るきっかけとなった≪神智学協会≫との≪太平天国≫後継を巡る争いの最中、
上位№から年季明けということで≪組織≫脱退を許可された構成員とのことです』
 説明にほう、と頷きが会場のそこかしこで上がる。元≪組織≫所属ということである程度の戦闘はできるだろうと判断したのだろう。
『続きまして、≪夢の国≫ですが、これは説明するまでもありませんね。彼のテーマパークにまつわる都市伝説の集合体です。
過去に諍いもありましたが、今回は≪組織≫≪首塚≫と共に屋台なども出して戦技披露会の盛り上げに一役買っております。
――是非屋台に買い物しに来てね。って、これただの宣伝じゃないの』

『未確認情報ですが、どうやら≪夢の国≫はかつて≪神智学協会≫とT№の決戦の際、戦闘参加者の友人として参戦したことがあるとのことです』
『決戦には≪首塚≫からも幹部クラスが参戦したという話も出ていますね。こうしてみるとこの対戦カードはなかなか因縁深いとも言えます』
 宣伝に続いた男の声での補足説明に、舞はそういうことになってるのかと内心で呟く。
 その横で、千勢が莞爾と言う。
「縁だな」
「こういう運びになった発端がどさくさに紛れて請求書や返還要求を破り捨てたことだというあたり、
親の因果が子に報いていてなんとも味わい深いね」
「私は良い息子を持っただろう徹心」
「不憫でならないよ」
 そんな会話の周りからは「あの胡散臭い名前の奴、かわいそうに」というニュアンスの言葉が聞こえてくる。
 舞としては不思議なシンクロに頷くしかないが、
「知らないって怖いわね」
 望が言い、スクリーンが試合会場を映した。
 


   ●

 試合会場は無人の繁華街をモチーフにした場所だった。
 左右に商業施設らしい背の高い建物が並ぶ無人の目貫通りに、数メートルの間を空けてTさんと夢子は向かい合っていた。
「今回催しの相手になってくださったこと、≪夢の国≫の王たる私、夢子の名において感謝いたします」
 可憐に、それでいて威圧感のある夢子にTさんは会釈を返した。
「この度は王にまみえる幸運にあずかったこと、感謝いたします」
 Tさんが礼から顔を上げると、夢子が歯に何か挟まったような顔をしていた。
 彼女は少し考えた末に、手を上げて指を一つ鳴らす。
「よし」
 改めて、と言うように夢子は簡素なワンピース型の服の裾をつまんで華麗に堂々とカーテシーを決めた。
「≪夢の国に流れるカラス避けの電波≫を拡大したものを流しました。映像と音は届きますが、声だけは拾えませんよTさん」
「そうか」
 Tさんは、口元を隠して楽しそうに笑う夢子に親しい口調で言う。
「今回の件だがな、俺たち……というか母さんがやらかした件への精算という意味合いもあるので俺の方にもメリットはある。お互いにその辺りの感謝は無しにしよう」
「あら、そうなのですか。あの方も愉快なお人ですね」
「まあ、たまに起こるならそういう判断でもいいのだがな」
 Tさんは肩の力を抜き、次の呼吸で気を引き締めた。
「ともあれ、せっかくだ。十分に力を尽くさせてもらう」
「ええ、私たちも、力を入れてかかります――このような機会、滅多にございませんもの」
 夢子の表情があけすけに楽しげなそれから、奥に何かを隠した意味深なものに変わる。
 戦技披露会ということで、今回Tさんと夢子はそれぞれに戦闘に際して条件を付けていた。
 曰く、 
 ≪夢の国≫は主要なマスコットは全て屋台で出張らせた状態で戦う。
 Tさんは生身一つで戦闘する。
 ≪夢の国≫は王を対戦相手の可視範囲内に存在させる。
 攻防の様こそこの見世物の華であるため、Tさんは戦術的に優位を得るためであっても隠伏や遁走を極力行わない。
 アトラクションを長引かせず、短期決戦にする構えだ。
 それらの条件でもって互いをどう倒すか、Tさんも夢子も考えていた。

   ●

 ……≪夢の国≫があらゆる手を尽くしてくるならば、俺一人では決して敵わない。

 ……Tさんがあらゆる手を尽くしてくるのならば、≪夢の国≫はおそらくその総力を挙げても落とされてしまう。

 しかし、

「この限定条件下ならば」
「勝たせていただきます」

 こうして試合が始まった。


『あー、申し訳ございません。どうやらお二人の声を拾うことができない不具合が発生してしまっているようです。
皆さまにおかれましてはそのまま観戦ください』
 実況がそう知らせてくる。
 傍目にも≪夢の国≫が何かしたのは明らかだが、試合続行には問題はなさそうでなによりだと舞は思う。
 体に干渉している≪夢の国≫から漏れる声を聞くに、二人はやる気満々らしい。
 ……あんま大きな怪我をするようなことにならなければいいんだけどな。
 あの二人の様子では、それは難しそうだ。
「あんなに戦意に満ちていてくれると主催者側としては嬉しいかぎりね」
 そう言いつつ、望は舞に目を向ける。
「声を消しても唇が読める奴らには無意味よ。いいの?」
「まあ、何を言ってるのか完全に読み取るのは難しいだろうし、
もしTさんと夢子ちゃんの親密さに気付かれても昔Tさんが≪夢の国≫に招待されたことがあるからとか、そんなふうに言い張ればいいだろ」
「まあ、そうね。音声に完全に残されているわけでもなし、気にする必要もないか」
 画面の中ではTさんの体の各所が光り始めていた。
「そろそろ動く」
 千勢が言うと同時、Tさんが一気に距離を詰めて夢子の肩と足にそれぞれ自分の手と足を引っ掻けた。
 接近の勢いを利用して横回転させるように夢子を転ばせにかかったTさんは、倒れかけの夢子の腹に続けざまに膝を入れた。
 ……うわっ。
 その絵面に思わず自分の腹を押さえてしまう。
 その間にも、Tさんは止まらずに夢子を蹴り上げている。
まるでサンドバッグか何かのようだなどと思っている間に一分近く経ったが、Tさんの攻撃は続くし夢子は反撃をしない。
 ……反撃どころか夢子ちゃん、ろくに防御もしてないんじゃないか?
 一切防御をしているように見えない夢子の様子に、舞は少し違和感を覚えた。
「夢子ちゃん、なんで攻撃を防がないんだ?」
 もう気を失っているというわけでもないだろうと思って言うと、答えてくれる声があった。
「馬鹿息子は今≪ケサランパサラン≫への祈祷による身体強化で格闘戦を仕掛けているな。
 あれは直接やってみると分かるが、くせ者だ」
「ってーと、どういうこった?」
「同じ力の入れ方でも、発揮される力が祈りの具合によって異なるんだ。
これは戦闘慣れしていればいる程に無意識下で行われる力の入れ具合による動きの先読みを裏切ってくるから感覚が狂わされることになる」
 へえ、とリカちゃんが感心した後に首を傾げ、
「でも、夢のお姉ちゃん、近くで戦うこと、あんまりないの」
「そうだぜ。夢子ちゃんはあっちこっちに瞬間移動してヒットアンドアウェイするタイプだから格闘戦ばりばりってわけじゃねえ。
 素人ならあれ、逆に避けやすいんじゃねえの?」
 

 その問いに、千勢は指を二本立てた。
 一本の指を曲げ、
「馬鹿息子の動きに対して先読みを行わず、
見たままで対応することになるから素人の方が避けやすいというのは正しいが、素人が反応できる速度で攻撃は行われていない」
 それに、と千勢はもう一本の指を曲げる。
「馬鹿息子の足元を見てみろ」
 言われるがままに見てみると、なんとも面妖なことに、
「地面が光ってたりするな」
「そうだ。いやらしいことに足を踏むごとに地面になんらかの幸せを願っているらしい。
その結果、偶然にも足元が崩れたりといったことが起きているようだな。
 そうした仕組まれた偶然の積み重ねで何発かに一発。夢子が体勢を立て直そうとするタイミングだろう、
体が動いた瞬間に攻撃が決まっている瞬間がある」
「動いた瞬間には一発当たってるってことか?」
 そのような動きには記憶があった。
 ……ルーモアの所のカシマさんができるって言ってた気がするな。あれはたしか……。
「無拍子ってやつか」
「擬似的なものになるが、その通りだ。あれは素人ではどうしようも無い」
 千勢は食料を漁りながら話を締める。
「認識を二重にずらした攻撃に対応できないのなら、あの距離では夢子は不利だ」

   ●

 的確に呼吸のタイミングを潰す攻撃を受けながら、夢子はこのままでは鞠つきの鞠扱いされてしまうと考えていた。
 一撃もらうごとに視界が暗転し、明らかに内蔵がダメになっている。
 Tさんもこちらが不死なものだからか、加減をしてくれるつもりはないようだ。
 ……では、
 そろそろ反撃でしょうか、と夢子は来る一撃に対して急所を晒した。

   ●

 Tさんは夢子が敢えて体の中で骨も無く肉も薄い部分を晒し、反射的なものも含めた防御手段の一切を捨てて一撃を受けたのを感じた。
 深く肉に足先がめり込む。
 人体相手ならばそれがどこだろうと骨を砕いて内蔵を潰せる一撃だ。それが人体の特に柔い部分に入った。
 致命の一撃。だが、その手応えにTさんが感じたのは焦りだった。
 ……しまった。
 蹴りの反動で力を失った夢子の体が遠くに飛ぶ。追いすがるために一歩動かなければならない位置だ。
 思考のタイミングを潰すように叩き込んできた攻撃のテンポがずらされる。
 身をもって空けられたその一瞬で、
 ――≪夢の国≫の王様はね?
「どこにでも居て、どこにも居ないんだよ?」
 Tさんが姿勢を下げると、その直上を風切り音が走っていった。
 大げさなほど反った刃を振り抜いた夢子が笑みで告げる。
「攻守交代。です」
 


   ●

 攻撃を抜けた夢子が、今度は転移しながらTさんに次々と攻撃を繰り出していた。
 さっきまでと攻撃する側と受ける側が入れ替わった状態だ。
「これが、≪夢の国≫の中に一人しかいないがどこにでも居る住人という都市伝説。偏在化の力か」
「どう思う徹心?」
「うーん、僕では対応できないね。あれを受け切れるのは勘がいい者だけだろう。僕はその辺りはさっぱりだ」
「あれ、わざと隙作って攻撃を誘ってるわね。ある程度手管をわきまえているのならあっちの方が消耗は少ないのかしら」
 望の言葉に徹心は「そういうものなのか」と感心する。
 ≪夢の国≫が在る所にはどこにでも、住人と一緒に王様が居る。
 どこにでも居るから、攻撃の当たる場所には居ない。
「どこにも居ない夢のお姉ちゃんにどうやったら攻撃を当てることができるの?」
 リカちゃんが肩で首をかしげるので舞は少し考えてみた。
 これまで夢子に攻撃を当てる人は結構居た。攻撃を当てる方法は有る。
 それを事実として理解した上で、舞は結論を出す。
 ……分からん!
 なのでこの場の誰かに問うことにした。
「どうやって当てるんだ?」
「核となる王様は一人必ず存在しているということが肝だな」
 なんかよく分からない生き物の肝を食べながら千勢が言う。

   ●

 夢子が背後に現れるのを読んだTさんは、身を捻りながら肘を打ち込んだ。
 読みは当たり、Tさんの肘に骨を砕く手応えが来る。
 と、同時に足元のアスファルトが突然砕けてバランスが崩れる。体が後方に傾いて、その胸先を刃物が薙いで行く。
 幸運にも攻撃を逃れたTさんの目の前で「あれ?」という顔をしている夢子は骨を砕かれているはずなのに平気そうだ。
 ……もう治っているのか……。
 刃物が振り直される前に夢子を殴りつけようとした拳が空を切る。
 消えた夢子の次の一撃が来る前に、Tさんは道の端に跳んだ。
 跳びながら商業施設のセールを告知する幟を片手に一本ずつ取り、着地の際に幟の竿を地面で削って先端を尖らせる。
 夢子が、今度は眼前で腰だめにテーブルナイフを構えた状態で現れるので、Tさんは足腰の強化を願いもう一歩後ろに跳んだ。
 射程からTさんが離れたのを見て動きを止めた夢子に向けて、Tさんは両手に持った幟に加護を付与して投擲する。
「わっ!?」
 驚いた顔の夢子が消失する。
 次の瞬間、彼女はガードレールの上にしゃがみこんで座っていた。
「あぶないあぶな――」
 その彼女めがけて光の玉が一つ向かっていた。
「っ」
 Tさんが、幟の投擲と同時に夢子を追うよう願った光の玉を放っていたのだ。
 夢子はその場から転移して回避するが、光の玉は尚も彼女を付け狙う。
 夢子は追ってくるそれを見て、首を傾けた。
「困ってしまいましたね」
 そんな言葉を残して夢子は消え、次の瞬間にはTさんの直上に現れた。
 抱きつくように両手を広げた夢子が迫り、Tさんは勘か、それともその行動も読んでいたのか、自然な動作で一歩を下がった。
 すかされた夢子は空の腕を虚しく抱きしめて不満げに言う。
「いけずです」
 その背後には光の玉が迫っている。
 それを気にしているのかいないのか、夢子は両手の指で×を作ってまた消える。
 彼女を追っていた光の玉は、追尾対象の消失に対応しきれず、勢いを残したままTさんに向かって来た。
 Tさんが回避しようとすると、背後から声が割って入る。
「だぁめ」
 背からTさんの両脇に両手が突き出す。
 細く華奢なそれは夢子のものだ。
 Tさんを拘束して逃さないつもりらしい。
 迫る自身の攻撃を視界に入れながら、Tさんは口を開いた。
「点では当てるのが難しいか」
「王を討つならば並の幸運では足りませんよ」
「なるほど」
 Tさんが頷くと、柔らかい物に何かが突き刺さるぐちゃ、という粘着質な音が聞こえ、彼を締め付けようと迫ってきた夢子の腕の動きが止まった。
「では、もう少し工夫をこらす」
 Tさんがその場で身を回した。
 背後に居た夢子は右肩から左脇を抜けた幟によって地面に縫いとめられていた。
 Tさんの背後では、迫っていた光弾がもう一本の幟に貫かれた破裂音がする。
「体内から拘束してくれと願をかけた。幸せの圏内に引きずり込んだぞ」
 夢子がワンピースをみるみる赤く染め、血の泡を零しながら言う。
「っ……お、みごと……っ」
 こいつで勝つことができれば幸せだと願い、Tさんは掌を夢子に向けた。
「破ぁ!」
 


   ●

『大金星でしょうか? 今、幟に貫かれた≪夢の国≫が、なんか謎の光に飲まれました……っ』
 そして、Tさんから放たれた光の残滓が消えた後。幟に貫かれた夢子の姿はなかった。
 あるのは、大通りを下水が見えるまで抉り抜いて対面にあったビルに穴を空けた光の軌跡だけだ。
「うわぁ、Tさんえぐい攻撃をしましたね」
「決めるにはよいタイミングだったのです。あそこで変にためらえば幸運を侵食した≪夢の国≫がまた反撃に出ていましたよ」
「あ、ユーグのおっちゃんにモニカ」
「おや、そちらは……たしか」
「Dさん、紹介しとくぜ。こっちが元々≪首塚≫で匿われてたモニカって子で、こっちの騎士のおっちゃんが≪テンプル騎士団≫のユーグだ」
 挨拶をする二人の内、蜂蜜色の髪をした大学生くらいの女性、モニカが舞に言う。
「あの……ここってVIP席になりませんか? 勝手に入ってきちゃってますけど……」
「≪組織≫の知り合いにOKとってあるから大丈夫だって。それに、ほら、ユーグのおっちゃんが自分の正体まったく隠そうとしないせいで人が多いところだと注目されるだろ?」
 望がユーグの甲冑を見て納得する。
「あー、いかにもって感じですものね。教会の連中なんか、心中複雑になりそうだわ」
 ユーグが鼻で笑って言う。
「そのようなこと、いちいち気にしても仕方ありません。やましいことなど無いのですから、堂々としていればいいのです」
「騎士殿はそれくらいの意気でモニカを襲ってやればいいのにな」
 海洋生物っぽい何かの肉の串を食中酒といただく千勢が試合会場を眺めながら言うと、騎士が反論する。
「それとこれとは話が違います千勢。道を共にするという約束を違えず、傍に侍る騎士として私は在るだけです」
「あら、でもそんな騎士様のせいで私も成長が止まってしまいましたし、いろいろな意味でこんな体にされてしまった責任をとってくださってもいいのではありませんか?」
 この二人はここ数年相変わらずの関係だ。
いつまでユーグがモニカを突っぱねられるかを見ているのが楽しいので積極的な手出しはしていないが、これはもう時間の問題だろう。
 ……陥落するとしたらそのおっぱいにだな?! ええ?!
「……舞、何か私に言いたいことでもあるのですか?」
「いや? ただ、その時が来たらどういじめようかとか考えてる」
「そうです。盛大にいじめてあげてくださいな」
「お嬢様、いじめはいけません」
 至極まっとうなことを言いながら、ユーグはこういう話題の時にいつもするように露骨に話の流れを変える。
「ところで、今のでどれだけのダメージを与えられたとお嬢様は考えますか?」
「あの状態からの攻撃です。これで王様本人は相当な痛手を負ったのではありませんか?」
 それにいつも乗っかってあげるモニカの優しさ溢れる解答に対して、その場のほとんどの者が首を横に振った。
「そうだね、たしかに≪夢の国≫の核に一撃を見舞えたけれど、せいぜい一回殺したといったところだから、まあ効果は微々たるものだと思うよ」
「殺したら死んじゃうんじゃないの?」
 そう言ってリカちゃんが首を捻る。
 よく考えると頭のおかしい会話を理解できずにいるらしい。頭に浮かぶ疑問符が見えるようだ。
 徹心のおっちゃんは言葉を探すように宙を眺め、
「あの子と戦うなら対人戦闘だと思ってはいけないってことかな」
 リカちゃんが首を捻りすぎて人体では再現できない珍妙な状態になる。
「伝わらないかー」と徹心が困った笑みを浮かべる。
 と、実況が≪夢の国≫の健在を告げた。


   ●

「本命をあの追跡弾と思って他をあまり気にかけていませんでした。油断です」
 Tさんの目の前に出てきた夢子には傷一つ付いていなかった。
 隠しているとか、そういうことはありえない。
 なぜなら、
『≪夢の国≫、これ、全裸ですけど大丈夫なんでしょうか?』
 夢子は未完成な少女のものにも、これこそが完成形である美術品のようにも見える自らの体にぺたぺた触れて、興味深げに頷いた。
「寺生まれってすごいですね!」
「いや……服くらい着たらどうだろう」

   ●

「ダメージ受けると服が破れるってどこの漫画よ」
「ああ夢子ちゃん、もう少し恥じらいを持つようにって言ってるのに……」
 望と舞がそれぞれ言う。その横で騎士の目を塞ぎながらモニカがスクリーンを眺め、
「大事な部分に光が映り込んでいて見えないですね」
 撮影班は頑張っているのかちょくちょくアングルを変えてくるが、謎の光は見事に局部を隠していく。
 それを見るにつけ、モニカは幼い頃から折に触れて感じることを呟いた。
「寺生まれってすごいなぁ」

   ●

「ふふ、衣服なんて無くても困りはしませんよ」
 夢子はそんなことを言いながら、長い髪で胸元を隠してみたり、気に入らないのか肌蹴てみたりしている。
 正面からそれを見せられているTさんはこめかみを押さえつつ、
「そうはいかんだろう。マスコットたちが慌てている姿が目に浮かぶ」
「でも、Tさんが隠してくれていますし、私としてはあなたになら裸も内蔵も全部見せても差し支えありません」
「俺はあるのだが」
 Tさんの言葉を受け流して、夢子はくすくすと笑いながら解放感全開で両手を大きく広げた。
「ああ、楽しくなってきちゃいました。
 それでは第二幕です。
 もっと楽しみましょう――私の王子様!」

 大の字で裸を見せつけていた夢子が敵意の欠片も感じさせないままに髪の中からテーブルナイフを抜いて投げつけた。
 あんな自然体で攻撃されたら、ナイフが刺さっても誰に攻撃を受けたかなんて分からないんじゃないかと思いながら舞が試合を見ていると、
唇を読んだらしい望が口を開いた。
「あら、あの子ったらあんなこと言ってるわよ」
「あれなぁ、夢子ちゃんが≪夢の国の創始者≫から助けられた時にあの場に居た人が王子様認定されてるから、
黒服さんも俺もあの子の王子様なんだよな」
「ほう……」
「嬢ちゃん怖い怖い」
 舞は笑い、
「夢子ちゃんが恋をすることは生涯ないよ。
 あの子は王様であってお姫様であり、少女であって女性でもあるんだけど、それよりもなによりも≪夢の国≫だからな。
国は民や文化を愛することはあっても人に恋をしねえ」
「……なんというか、あなた、賢くなったわね……」
「これでも博士号持ちだぜ!」
 人や、単なる生命とも異なるもの。それが≪夢の国≫という存在だ。
 とはいえ、元人間である彼女は感情をもっている。長い付き合いから推察するに、特に喜楽の感情が強く出るタイプであり、
「あー、ありゃ結構テンション上がってるな」

   ●

 ナイフを弾いたTさんの目は、夢子が消えた代わりに、一瞬前まで存在しなかった建物が屹立している様を映していた。


   ●

 モニカが「あ」と呟く。
 試合を映すカメラの映像が乱れたのだ。
 映像がガタガタと音をたてて揺れ、見ていると酔いそうになる。
 思わず目を逸らそうとしたモニカは、スクリーンに一瞬表示された世界一有名なネズミのロゴを見た。
 それを期に、映像が安定する。
 しかし、試合を観戦する者達は回復した映像に違和感を覚えることとなった。
 スクリーンに映し出される映像のアングルがそれまでとは明らかに違うのだ。
 ≪夢の国≫がまた何かしたのだろうと判断していると、主催者に近しいらしい≪組織≫所属の夫婦がため息交じりに言うのが聞こえた。
「……会場、乗っ取られたわね」
「後でカメラは返してくださいね」
「まあ、たぶん返してくれるんじゃねえかな」
 舞が答えているが、目線を合わせようとしていないので自信はないのだろう。
 おお、と観戦者が唸る声が聞こえてくる。
 スクリーンの中ではカメラが映し出す光景が、アングルなど問題にならないレベルで異変をきたしていた。
 カメラがゆっくりと周りを映していく動きに合わせて建物群があぶり出しのように、
あるいは元からそこにあったものが騙し絵のごとく別の姿を観察者に認識させたかのように、ファンシーなものへと変わっていく。
 そんな自分の視覚か脳を疑いたくなるような光景を360度分じっくりと見せつけたカメラが最後に映したのは――

   ●

 Tさんは、つい先程までは近代的な大通りだったはずの道の奥に忽然と現れた山を見ていた。
 急峻な岩肌からは勢い良く水が流れており、その源泉である山の頂には夢子が居る。
 そして彼女の足の下には巨大な影があった。
 黒い表皮に、人など楽に丸呑みにしてしまいそうなその巨体は、
「クジラ……モンストロか?」
「山鯨です!」
「俺の知る山鯨は四つ足なのだが」
「気にしては負けです。先程の鮫を見て思いつきました! ビルを泳ぐ鮫がいるなら山に浮かぶクジラが居てもいいのです!」
「なら鮫を出せばよかったのではないか? 人間に捕えられた魚を探す作品で出ていたろう」
「大きさをりすぺくと? しました。それに原作では彼は鮫です!」
 夢子は胸を張って得意満面な顔だ。
 そんな彼女はデフォルメされたおかげで一目で不機嫌なのだと解る表情のクジラの上で仁王立ちになり、Tさんを指差した。
 その指とTさんを結ぶように、急流の流れが続いている。
 Tさんは、足元を流れる下水――から姿を変えた整えられた水路を見て、また山に視線を戻す。
「……それはマスコットでは?」
「あやつり人形の男の子はグレーゾーンと言ってました」
 今頃、その子の鼻が伸びているのかいないのか、不意に賭けをしたくなる。
 そんなTさんをよそに、高みで夢子が告げる。
「幸運では回避できない、面の攻撃をお見舞いしますね」
 


   ●

『ピノキオのクジラですかね?』
『≪夢の国≫からTまで一直線の道になっています。これは急いで逃げなければまずいのではないでしょうか』
 実況を聞きながら、千勢が謎肉を齧る。
「クジラか……先程の海産物達といい、今日は漁に出たくなる日だな」
「あれって食えるのか?」
 千勢と舞の感想にユーグが唸る。
「なぜこの国の人間はなんでも食べようとするのだ……」
「国民性かなぁ」
 徹心が苦笑で言葉を重ねる。
「さて、クジラがあの急流を下ってくるしかないというのなら、回避はそう難しくはないのかな?」
 ユーグが首を振る。
「あれはまずい。私も過去に苦労させられた……」
 大樹が同意する。
「あれは……狙われていますね」

   ●

 Tさんはその場から動くに動けない状況に陥っていた。
 水路を挟むようにして並び立っている建物の中から無数の視線を感じたのだ。
 物陰や扉の隙間、窓の格子の奥からそれらの視線は来る。
 こちらの一挙手一投足を綿密に観察しているようなのにどこか子供の尾行ごっこのようにおざなりで、
こちらを見て楽しげに笑う声が聞こえてくるようなのにもかかわらず密やかで張り詰めたような、
そんなどこかにズレを感じさせる歪な気配
――≪夢の国≫の住人の気配だ。

 おそらくTさんが動けばそれがスタートの合図となって建物から攻撃が飛んでくるのだろう。
 そうなれば蜂の巣かハリネズミになった後にクジラの餌食だ。
 クジラに狙われているにもかかわらず回避のための行動を一切取らないTさんの様子に、
自分たちが狙っていることがばれたと遅ればせながら悟ったのか、もはや隠す気もないらしい気配が重圧として押し寄せてくる。
 そんな下々の様子を把握しているのか、夢子はクジラの頭の上にぺたんと座りこんだ。
 裸の王様に座られたせいか、明らかにクジラの顔がデレデレとしたものになる。
 それに反応してか、周りから感じられる住人の気配がガラの悪いものに変化した気がする。騒がしい。
 ともあれ、夢子は慕われているようだ。
 ……重畳重畳。さて、強引に逃げようか。
 そう考えて移動しようとしたTさんは、足首に違和感を得て目を向けた。
 左足に、異様に長い手が絡みついていた。
 その手の先は排水口の中へと続いている。
「――っ」
 気配が多すぎて水路に潜んでいたモノの気配に気付くことができなかった。
 まずい、と思う間に建物のそこかしこから飛び道具が放たれた。
 



   ●

 石から光線銃までを含めた雑多な攻撃がTさんが居る場所を穿っていく。
 飛び道具が着弾する衝撃で土埃が舞い上がって視界が塞がれるが、夢子はTさんの位置を電波で把握している。
 それによると、Tさんは射撃の集中箇所にて現状健在。
 物量で穿つ面の攻撃はTさんをその場に釘付けにすることに成功したようだ。
「それでは――」
 夢子は手を振り上げ、叫んだ。
「スプラッシュ!」
 発声と同時に足元のクジラが急流を下り始めた。
 クジラの巨体は山肌を削りながら攻撃の収束地点に向けて駆け下っていく。
 その進路を塞ぐように、投擲用の槍が幾本か突き立てられた。
 槍が地面に刺さると、その周囲が何かを主張するように発光する。
 幸福の加護で補強し、道を塞ぐつもりだろうか。
 彼に物が渡る可能性があるような攻撃は控えるように指示しておくべきだったろうかと思うが、たった数本の槍ではいくら幸福で固めようとも、この巨体を止めることはできまい。
 だから、と夢子は結論する。
「いっちゃえ!」
 言葉に応じるようにクジラが潮を噴く。
 元、目抜き通りを抉っていったクジラは、Tさんが居る位置で土砂ごと唐突に跳ね上がって地面ごと彼が居る位置を丸齧りにした。
 盛大に座礁したクジラが潮を噴いて土埃を鎮める。
 淡水に濡れる体に心地よさを感じながら、夢子は息を吐いた。
「あー、スリル満点でした」
 満足の言葉は、こう続く。
「ね、Tさん?」
 問いに対して、荒い息で返答があった。
「たしかに、丸呑みにされそうになるのは、心臓に悪いな」
 そう言ってTさんはクジラの口の端から出てきた。
 クジラがなんとかTさんに噛み付こうと口をモゴモゴさせるが、額に立ったTさんがバランスを崩すことはない。
 食べることは諦めたのか、泥で汚れた体を水で流す彼を振り落とそうとするかのようにクジラが身を揺する。
 流石に立っていられなくなったのか、額から飛び降りて地面に逃れたTさんは、クジラから距離を取る。
 彼に合わせるようにカメラも下がり、距離を空けたことによってTさんがクジラに齧られなかった理由がはっきりと観戦者にも明かされた。
 クジラの口には槍がつっかえ棒として挟み込まれていたのだ。
 クジラが悔しそうな呻き声をあげて口を閉じようとする。その動きに合わせて槍は今にも壊れそうにきしむが、なんとか耐えていた。
 そのつっかえ棒の結果として、Tさんは泥で汚れてはいるものの、それ以外に目立った外傷は見られない。
 夢子は頬に手を当てる。
「それはもはや幸運ではなく、幸いを鍵にして運命を捻じ曲げていますね」
 そう零した夢子は、ぺちん、と音を立ててクジラの表皮を叩いた。
 同時に、クジラの口から煙が漏れ出す。
 Tさんはそれを見て、体を発光させた。
 彼が何らかの行動に出る前に夢子は告げる。
「私たちの方が早いです」
 クジラが口から何かを吐き出した。
 それは≪夢の国≫の住人だった。
 ≪夢の国≫側の新たな行動に合わせるように、建物群からの攻撃が再開される。
「――っ」
 Tさんの体を中心にして結界が張られ、攻撃の第一陣は防がれる。
「まだ、このまま押し切ります」
 彼の結界が、途切れず続けられる攻撃に耐え忍ぶ音を聞きながら、夢子は次の指示を出した。
「とつげき!」
 声に従ったのはクジラから吐き出された住人達だった。
 彼らは皆、手に黒い球体に縄の導火線という、デフォルメされた爆弾をそれぞれ抱えており、当然の如くそれには火が着いている。
そんな者たちが銃火飛び交う中へと突撃した当然の帰結として、
 大爆発が起こった。

   ●

 爆発の余波は、ファンシーさを追究した結果歪な形になっていた建物群のいくつかを吹き飛ばしていた。
 瓦礫の中からはそれぞれ個性的な腕が伸びては自分たちの無事を知らせている。
 そんな彼らに手を振り応えると、夢子はその手を打ち合わせた。
 ぱん、と射撃音の中でも耳に通る音がして、建物の瓦礫の下から何かがせり上がってきた。
 電飾できらびやかに飾られたそれは、場違いなほどに愉快なメロディーを流して移動を開始する。
 パレードのフロートだった。
 女性型の住人が慌てて持ってきた新しいワンピースを頭から被されながら、夢子は言う。
「第三幕――≪夢の国≫(わたしたち)のパレードをお楽しみください、ね?」


『圧倒的な物量で圧してるわね』
『T選手は大丈夫なんでしょうか?』
 実況の声を聞きながら、千勢は≪夢の国≫の甘味に手を出す。
「ここまで囲まれた状況に追い込まれてしまったのなら、一度撤退して立て直すしかないわけだが、
それは馬鹿息子たちが取り決めたルールでは違反か。王自らが前線ではしゃいでいるからまだ勝ちの目はあるが、さて、どうするのかな?」
 スクリーンの中では光の玉がいくつも飛んでいる。
 でたらめな方向へ光が飛んでいくのを見るに、盲撃ちではないだろうか。
 実況がTさんがここから勝ち目があるのかと煽る声が聞こえ、それを受けた形で千勢は一人ごちる。
「≪夢の国≫は不死者をその構成員とする不死の国だが、倒せないということはない。
 私の経験から言うと、不死者は殺し続ければいずれ死ぬ」
「千勢姉ちゃん、なんかすっげえバカっぽい」
「とはいえ事実だね」
 徹心が支持するとそれだけで何故か発言に説得力が出る。
「なるほど……っ」
 舞が真剣に頷く姿にこれも人徳かと思いながら、千勢は言葉を継ぐ。
「そもそもこの世に存在するもの全てがいずれ壊れ死に滅びゆく。
物も生命も現象も概念もいずれは果てる。そんな世界の中で不死を装っている以上、その不死には綻びがあったりする」
「あー、昔に物品系都市伝説で不死になってた奴がいたんだけど、道具が失われて不死を失ったな。つまりそういうことか?」
「それも一つの例だな」と応じて続ける。
「≪夢の国≫には、その不死性によって病に倒れてからも死ねずに苦しみ狂った創始者が居たな。その狂う、というのも人格破壊という一つの殺害方法だ」
「あ、病は効くっていう部分を狙って夢子ちゃんを襲ってきた奴も居たぜ」
 その試みが行き着く先は≪夢の国≫の消滅ではなく、発狂した夢子の統治による≪夢の国≫再びの狂化であった。
「でもそれじゃあ≪夢の国≫を倒すってことには繋がらねえな」
 それが実現していたら、世界は今よりもう少し殺伐とした方向に舵をきっていたのだろうと千勢は思う。
「と、まあそんなわけで死ぬまで殺し続けるというのは、彼女については、この試合のルールや画的にもあまりおすすめの方法ではないな。
 馬鹿息子も美少女を殺しまくるヒール役を務めたくはなかろう」
 千勢の結論に頷きつつ、大樹が手を挙げた。
「それでは、創始者が病に倒れてから冷凍睡眠によって眠っていたという都市伝説にあるように、氷漬けにしてしまうというのはどうでしょうか?
 夢子さんも≪夢の国≫の主である以上、凍結による封印と、指揮者不在による≪夢の国≫の混乱は対≪夢の国≫の手段として有効だと思うのですが」
「アレは≪冬将軍≫と正面から対決して消滅させている。やるならよほどのものでなければ封印しきる前に何らかの脱出手段を使われてしまうだろう」
 ユーグが、こちらも手を挙げて応じる。
 つまり、と受けたのは望で、
「元TNo.0のおじさんがさっき言ってたけれど、≪夢の国≫……彼女を個人として捉えたらいけないのよね。
それこそ国落としをするつもり――国という概念を落とす気でいなければいけないと、そういう方向で考えてみるとどうなの?」
「そうだね……≪夢の国≫の領域から夢子君を隔離する。あるいは、≪夢の国≫を侵食して彼女の領域を奪ってしまうというのはどうだろう? 彼女の不死性を剥ぎ取れないかな?」
「いえ、元TNo.0。夢子さん自体が≪夢の国≫でもあるので不死性の剥奪はできないでしょう」
「黒服さんの言うとおりだな。つってもそれで夢子ちゃんの力を大きく制限できるってのは試合が始まった時の夢子ちゃんと今のテンション爆上げな夢子ちゃんを比べりゃあ分かる」
 スクリーンの中ではいつの間にか存在していた火山が唐突に噴火して、狙いすましたかのように噴石が射撃の集中する辺りに降り注いでいる。
 千勢はチュロスの先端でスクリーンを指し、
「そう。国土を荒らす、というのは有効な方針であるわけだ。少なくとも≪夢の国≫の核である王を引っ張り出せるか、彼の国を撤退に追い込める。
 手段としては数で侵略をかけるのもいいし、天災規模の攻撃を長時間継続させるというのもいいだろうな
――それに対する処置に耐える覚悟が仕掛ける側にも必要だが」
「そうなると、終末論系の都市伝説は応手として使えますね」
 モニカが仮に終末論を操れる者がいた場合、どのような結果になるのかを想像するように目を細める。
「王を捕らえた上で叩き込むことができれば勝てるやもしれません」
 ユーグがモニカの肩に手を置き、大樹と徹心、舞が思考の正しさを肯定するように頷く。
 

「でも」
 舞が言い、その後を千勢が引き継ぐ。
「馬鹿息子はそれらの大規模な攻撃手段を持っていない」
 食後の酒に手を出した千勢が「代わりに私が出ておけばよかったか……」とのたまい出すのを見るに、彼女は良い気分のようだ。
 野球観戦をするおじさんとか、そんな気分なのだろう。
「Tさんは、攻撃の規模で国を傷つけることは叶わないのですよね」
「ええ、そうなると、彼は別の手段を考えなければなりません」
 モニカの言葉に答えを理解しているらしいユーグが応じる。
 騎士が答えを知っていると見て取ったモニカは眉間に皺を寄せて考え始め――会場がどよめく声を聞いた。
 見ると、城が浮いていた。

   ●

「以前からこのお城、なかなか攻撃力が高いんじゃないかと思っていたのです」
「その思考の出所如何では試合後に少し説教の必要があるかもしれんな」
「より尖ってるから眠り姫版よりも灰かぶり姫版の方が強いという結論に満場一致で達しまして」
「皆まとめて反省会だ」
 灰被り城が宇宙船と海賊船の艦隊に上下逆さまで吊り上げられている。
 上下逆さなのは先程の発言どおり、尖った方が下の方が攻撃力が強そうだからだ。
 ……そろそろ建て直しを検討していましたし、よい機会ですね。
 そんなことを思いながら、夢子は空に鎮座坐する白亜の城を見上げた。
 視界の端でTさんが放つ光弾が城の先端をかすって空に消えていく。
 フロートと住人からの攻撃は続いていて、時たま爆発音などが聞こえてきているが、
Tさんの声はその中から無事を報せるように聞こえてくる。
 返答一つに応じるようにパレードのフロートが一つ破壊される。
マスコット勢が居ないとはいえなかなかのハイペースだが、フロート破壊の間隔は攻撃開始時よりも開いている。
 彼は常に動き続けて体力を削られているのだ、このまま時間をかければ制圧することも可能だろう。
 そう、国という概念の前では一個人が抗しきれるはずがない。
 そうは思うが、
 彼とは倒し、倒され、助けられ、共闘した仲だ。その強さは理解している。
彼ほどの英雄ならば一国を一人で相手取ることも可能かもしれない。
 ……油断はなりません。
 今後、何かしらの手段による形勢逆転の可能性がある以上。
物量で押さえ込んでいる今、大物で押し潰して早々に決着をつけるのが最善の一手。
 だから、
「城の落下が目に見えているのに降伏をしないのも、きっと生き残るあてがあるからですよね?」
 そんな信頼をもって、
「これにて終幕です!」
 遠慮なく、夢子は城を落とした。
 


   ●

 落下したおとぎ話の城は、地面を打撃しながら砕けていった。
 地面が鳴動して、土砂と建材と住人が土煙のように舞い上がる。
 巨大な建造物が自重によって先端から順番に潰れては崩壊していく様子は、
子供の積み木遊び染みたコミカルさと相まって現実感がなく、しかし崩壊に巻き込まれていく建物を見るに見まごうことなき現実だ。
 収まる気配がない土煙を眺めながらユーグが呆れ顔で言う。
「今日はよく建物が投げつけられる日ですね」
「祭りだからな。ほら、トマト投げる国もあるんだから城投げる国もあるさ……っと、ありゃあ……」
 舞が目を凝らす。
 ≪夢の国≫では、収まらない土煙に紛れて人の形をしたもやが発生していた。
 よく見ると、崩れた城の窓やら隙間やらからもやは出てきているようで、それらは普通の
≪夢の国≫の住人とは違う体の欠損のしかたをしている。
 具体的には、体や顔に分かりやすく包帯などを巻いており、
「なんつーか、分かりやすく衣装を整えた幽霊って感じだな」
「あれならば、落下に巻き込まれようとも瓦礫に埋もれようとも動き続けることができるね」
 舞が感想し、徹心が評する。
 1000人目を求めているという都市伝説が囁かれる、≪夢の国≫の999人の幽霊達だ。
「お兄ちゃん、だいじょうぶなの?」
 城の落下が収まって惨憺たる光景の一部が見えるようになったせいか、リカちゃんが流石に心配そうに訊く。
 そんな人形の小さな頭を撫でて舞は頷いた。
「大丈夫大丈夫。リカちゃんも知ってるだろ?
 寺生まれはすげえんだ」


 夢子は逃げていた。
 転移に転移を重ね、倒れた建物を壁にし、崩れきれずに残った城の一室に隠れるが、その彼女を追って光の玉が群れになって追ってくる。
「撃って!」
 号令に応じて空から大砲や光線が降ってきた。
 光弾を上から叩き潰すつもりだった砲撃は、しかし光を消すことはできずに地面に突き刺さる。
 思い起こせば、おかしかったのだ。
 Tさんの光弾は、願いさえすればその通りに飛ばすことができる。にもかかわらず、
制圧戦に持ち込んでからというもの、彼の光弾はこちらに当たっている様子がなかった。
 願掛けをする余裕すらないのだと判断していたが、こうなってみて理解が及ぶ。
彼が砲撃に押し込められている間に放っていた光弾は全て夢子を囲い込むために放たれていた。
 それに気付いた時には既に手遅れだった。
 ……失敗しました。
 城を落として自分から今回投入したパレードと住人の大半を一時戦闘不能にしてしまった。
 現在行われている空からの砲撃で彼を倒すのは、建物からのそれでも仕留めることができなかった以上、難しいだろう。
「というか、城の下敷きになってどうしてあの方は生きてらっしゃるのでしょうか」
 あの人は、そう、あくまで一生命体のはずなのに。
 砲撃に紛れてゴーストがTさんに襲いかかっているはずだが、彼に対して幽霊を差し向けるのは流石に相性が悪い。
 光弾の囲みから転移しつつ、こうなればTさんの所に自ら飛び出してみようかと考えていると、目の前に当のTさんがいた。
「あ……」
 砲撃が彼を避けて降る中、両手に幽霊を掴んで消滅させたTさんは夢子を迎える。
「導いてくれる幸福を招くことに成功したようだ」
「幽霊を掴まないでくださいよ、不条理ですねえ」
 既に光弾が追いつき周りを囲っている。
 Tさんの体は各所が光っており、夢子が何らかの動きを見せればその瞬間に彼女に攻撃が殺到するだろう。
 

 ……逃げることは、たぶんできますね。
 が、この光の群れだ。すぐに囲いは追いつくだろうし、態勢を立て直すことを考えれば彼の可視範囲外まで逃れておきたい。
 しかしそれはルール違反。≪夢の国≫のアトラクションとしては興行失敗だ。
 ……いつの間にか形勢逆転ですね。
 悩む夢子にTさんの言葉が来る。
「意趣返しでもあったんだ。≪ケサランパサラン≫との契約者としての俺が≪夢の国≫に勝てるのか、とな
 だが、俺一人では君にはどうやら届かないようだ」
 Tさんは肩をすくめた。
「なので、ここからはいつかの祭りの続きをしようと思う」
 そう言って、Tさんは口端を吊り上げた。
「以前は革命になってしまった国落としの続きだ。
 あの創始者のように住人達に裏切られてくれると俺としては楽なのだがな。
どうだろうか、≪夢の国≫。今ひとたびの落陽を迎えないか?」
 その言葉に、夢子は自身でも珍しいと思う感情を得ていた。
「……そのようなことを言わないでください」
 一度溢れれば、言葉は止まらない。
「あのような方と、一緒にしないでください」
 淡々と感情を言葉に変換していくごとに。この場を一時やり過ごそうという考えが選択肢から消えていく。
「私達は、あのような在り方を変えようとしてここまで来たのです」
 変化を否定できる者はいないと胸を張って言えると夢子は思う。万人にそう思われるよう努力をしてきた。
 だからこそ、
「私を解き放ったあなたが、それを言わないでください。なにより」
 両の手を広げて大切に思う皆に王は告げる。
「≪夢の国≫の皆は、これまで誰一人として、≪夢の国≫を裏切ったことなどありません」
 彼らが反旗を翻すとすれば、それは為政者に対してのみだ。
「そして、皆の信任を受けた私は王として告げます。私はこの国の旗を巻くことはありません」
 夢子が手を上げると袖の中から抜き身のナイフが飛び出した。
「たとえ相手があなたの全てでも、です!」
 感情の正体を怒りに近しいなにかだと感じながら彼女は転移を行う。
 Tさんの背後に回ってなんの変哲もないナイフを――狙いを定める余裕もなく突き刺そうとする。
 突き立てることができれば内蔵売買の都市伝説で相手の力を奪い吸収して勝ちが決まる。
 が、Tさんの体は夢子が触れる寸前に振り返った。
「今後の課題は夢子ちゃん本人の近接戦能力かな」
 そして、試合開始直後に見せられたあの認識できない動きで光が放たれる。
「破ぁ!」
 反応出来ないそれは、しかし夢子にしてみれば食らって尚自身の攻撃を続けられる一撃のはずだった。
 だが、
 ……え?
 その一撃は、先程夢子を呑んだ光の一撃とは種類が違った。
 バラバラに刻まれても行動を繋げられるはずの体が動きを止める。
 自身を確立させるための大切な何かが失われたような脱力感。
 それは、夢子をして自身を構成する目に見えない要素が直接削られるという、未知の感覚を得る一撃だった。
「――――」
 


   ●

 倒れた夢子にTさんが近づいてくる。
 周りには光の玉が油断なく浮いており、その外には住人が集い始めている。
 空にはファンタジーとSFの混成艦隊があって、土台部分が残った城が噴火と決壊した水路の音を背景に哀愁を漂わせて聳えている。
 自分が暴走してしまった際に見る最期の景色はきっとこれだろうとぼんやり思いながら、夢子は口を動かす。
「≪寺生まれで霊感の強いTさん≫……その力、今回の戦闘で今、始めて使いましたね」
 挑発に乗って啖呵まで切ってこれだ。夢子は自身の至らなさに呆れてしまう。
それでも住人達が伝えてくる意思が彼女を心配するものであると知覚して、先程の感情を洗い流すような笑いが込み上げてきた。
「都市伝説殺しの力を使うにあたって逃げられなくなるタイミングをはかっていたんだ。いきなり使ってこれを警戒されてしまうと勝ち目がなくなってしまうのでな」
「私は死が遠いので、いろんな殺され方を体験したつもりなのですが、初めての感覚です……戦ってみてわかりました。なるほど、貴方の在り方は私たちとは少し違うのかもしれませんね」
 都市伝説として己を構成している部分を抉られている。この感覚を言葉に替えるには己の中に体験が足りなかった。
 ……せめてこれを受けた経験が過去にあれば、あんな行動はとらなかったのにな。
 そんな一撃を食らわせたTさんは降ってくる噴石を砕きながら「大した違いはないさ」と言い、頭を下げた。
「それよりも、先程は済まなかった。あのタイミングを逃せば勝てないと思ったんだ」
「いじわるを言う人は嫌いです」
 首を背けると、Tさんはどう言葉をかけようか迷うように唸り、
「あー……今度、舞やリカちゃんと一緒に遊びに行くので許してはくれないか?」
 夢子は深く息を吸い込んだ。
 一瞬吸い込んだ空気が体内に取り込まれずに漏れだしていくような感覚に襲われる。
 負傷の種類としては自分の内蔵売買の都市伝説と同列の攻撃だろうと思うが、これはきつい。
 ……≪冬将軍≫様は、よく耐えたものですね。
 違和感無く動かすことができるようになった上半身を起こして砲撃も噴火もやめさせると、さて、と状況を確認する。
 Tさんは自分を狙っている。
 自分は中途半端に転移で逃げると光弾の陣に囚われるだろう。遠くに逃げるのは試合の形にならない。……やはりルール違反だ。
 住人に光を破壊させようとすれば住人が光を食らう。不死の住人とはいえ、あの攻撃では再生も一瞬では済むまい。
 空の船を落とすことを含め、住人たちが総攻撃をしても、これまでの様子を見るに、Tさんは逃げ延びられる。
いつまでもは続かないだろうが、この距離で互いに喰らい合えば形成不利なのは彼が作った檻の中で王という核を天敵に対して晒し続ける夢子だ。
 

 Tさんの困り顔を納得として、夢子は言った。
「よろしい。特に許します。そして……私の負けですね」
「そうか」
 Tさんは体から力を抜くと、大儀そうに伸びをした。
「なんとか、判定で俺の方が優勢か」
「ええ。悔しいですけれど、今後の課題も見えました。それで良しとしましょう」
「そうだな。近接戦闘もだが、挑発にも乗らない落ち着きが必要だな。煽るのならば母さんが天下一品だ、今度語録を作らせようか」
「挑発はですね、あなただから熱くなってしまったのですよ」
 Tさんは夢子の発言の意を取りかねたのか首を傾げた。
 それに対して答えるつもりはない。夢子はTさんの疑問を微笑で流す。
 先の発言を意味を正確に伝えられる必要のない言葉だと判断したのか、Tさんは話題を変えた。
「が、まあ無名の俺が勝つと正直まずい。≪マヨヒガ≫も満員御礼になったら安穏な生活が崩れるし、
≪夢の国≫を与しやすいと考える手合いが荒らしにこないとも限らん」
「そうですね。私も格闘戦を指南して頂きたいですし、そのためにもお互いの安穏とした生活は護らなければなりませんね」
 笑う夢子が「どうぞ」と示すと、地面には棺が現れていた。
「キスすると目が覚めると評判のベッドです」
「寝ないようにしなければな」
 Tさんが苦笑して棺型ベッドに寝転がると、周囲に浮遊していた光が消え失せた。
 同時にもやと土煙が沈静化する。
 アトラクションの終了だ。

『≪夢の国≫の勝利です!』
 

 実況が告げるのを聞きながら、目を閉じたTさんが思い出したように言う。
「カメラを返しておくように。それと、この異界も返還しよう」
「はい。では、会場に戻ったら宴とまいりましょう。舞さんがおいしいお酒をお持ちのようですよ」
 Tさんが頬を緩めた。
「それは楽しみだ」
 弓なりに曲がる瞼を見やりながら彼女が手を打つと、≪夢の国≫は異界を返還して消え去った。

   ●

「さて、じゃあ俺そろそろ行くわ。また会おうぜ」
 試合終了を確認した舞が手を振ると、彼女が連れて来ていた者達がそれぞれ礼を言って会場に散り始める。
 気付けば買ってあった食料がなくなっている。相応の時間が経ったのだ。
「夫婦水入らずにしてやらねえとな。俺達は一足先に宴だ」
 そう言いながら舞が足を向ける先にはTさんと夢子が居た。
「お久しぶりです」
 そう大樹たちに挨拶をしたTさんは、舞から瓶を渡される。
 どういう経緯でもらった酒なのかの説明を聞き、Tさんは実に嬉しそうに笑った。
「それはそれは、礼状を出さねばな」
「だな。せっかくもらった酒だし、一足先に俺達は俺達でお疲れ様会して飲んじゃおうぜ」
 舞が言うと、夢子が心底無念そうに言う。
「舞さん、申し訳ないのですが私はこれから少し、マスコットの皆からお説教を受けなくてはいけないようです」
 夢子が≪夢の国≫の屋台の方を見るので舞が目で追いかけてみると、屋台に詰めているマスコットが妙な威圧感で夢子を見ていた。
「あー、そりゃついてねえな」
「いえ、いいのです。後の説教のことを考えなくなるくらいに楽しかったのですから」
 夢子は舞に微笑みかける。
「次回は舞さんもリカちゃんも、一緒にアトラクションを楽しみましょうね」
「あんまり激しいもんじゃなけりゃ遊びにいくぜ」
「そうおっしゃってくれるから大好きです」
 そう言って夢子は舞に抱き着く。
「絶対に、ぜったいにまた来てくださいね?」
 犬か猫のように体を擦り付けると、リカちゃんを舞の肩から攫い上げ、夢子は名残惜しそうに舞から離れた。
「では、苦行に挑んでまいります……。リカちゃんも一緒に、ね?」
「おつきあいするの」

 仕方ない、というように応じたリカちゃんを撫でると、夢子は大樹と望に向かって頭を下げ、
「それでは、また後で。あなた方もしばらくは夫婦水入らずでお過ごしください」
 夢子はリカちゃんを胸元に抱いたまま忽然と姿を消した。
 そして気付いてみれば、周りには大樹・望夫妻と自分達しか居ない。
「……あ、そうか、だからリカちゃんを連れてったのか」
「の、ようだな」
 Tさんと舞は顔を合わせて笑い合う。
「そんなもの、今更気にしなくてもいいのにな」
 とはいえ、せっかく気を遣ってもらったのだからと、舞はTさんの腕に両手を絡めた。
「で、どっか怪我とかしてねえのか? ん?」
「わざわざ言わなくともその内治る」
「じゃ、それまでどっかで木陰で休もうぜ。ほら、Dさんと望嬢ちゃんみたいな感じでさ。俺が枕になってやるよ」
 そう言ってその場から離れながら、舞は大樹と望に手を振った。
「邪魔したな。また、今度はキナ臭くない時にゆっくり茶でもしようぜ。
なんなら家に来てくれてもいいしさ」
 むしろ大樹については≪マヨヒガ≫の家具を持って帰ってもらうべく無理矢理宴会にでも招こうかと考える舞の背に、二人の声が届く。
「ええ、よろしくお願いするわ。またね」
「お元気で」
 見送りの言葉に「おう」と答え、舞とTさんは会場のいずこかへと姿を消した。

 「先生」による診察を終えて、アンナはぐぅ、と背伸びしながら観客席へと戻っていっていた
 ついでに、「夢の国」が出している屋台で何か買っていこうかと思って、そちらへと足を向けた時だった

「アンナ」
「え?……あ、お父さん」

 声をかけられ、立ち止まる
 肩まで伸ばされた金の髪は毛先が赤や緑など色とりどりカラフルに染められている……と、言うか、そもそもその金髪自体、確か染めたものだったとアンナは記憶していた
 褐色の肌も、日焼けによるもの。元は色白だと聞いている
 自分の父親だと言うのに、せいぜい20代後半くらいに見えるのは………何故だろう
 飲まれた訳でもないのに妙に若々しい点に関しては、「血筋ではないだろうか」と言うのが祖父の言い分だった。そういえば、祖父も年齢のわりにはだいぶ若く見える

 とまれ、アンナを呼び止めたのは彼女の父親である日景 翼だった
 「首塚」においては古参メンバーの一人であり、「首塚」首領の平将門の側近の一人でもある
 アンナにとっては、誇らしい父親である

「「先生」に診察してもらってきたか?」
「えぇ。遥に言われたから」
「言われる前に行けよお前も。全身溶かしたとなると、何か異常起きる可能性高ぇんだぞ」
「はーい。特に異常感じなかったし、大丈夫だと思ったんだけどな」
「油断はするな、って遥共々、言われてんだろうが」

 わかってる、と苦笑してみせるアンナ
 アンナ当人としては少し心配しすぎでは?とも思うのだが、翼は翼で都市伝説の影響が知らず知らずのうちに強くなっていた事があるそうなので心配なのだろう
 …それに、遥の件もあるのだし、心配しすぎくらいがちょうどよいのかもしれない

「とりあえずさ、「先生」が大丈夫、って言ってくれたんだから大丈夫よ。そういうとこで嘘つく人じゃないもの、「先生」は。性格色々問題あるけど」
「……まぁ、たしかにそこは安心か。性格には問題ある奴だが」

 当人が聞いていたら笑いながら抗議しそうな事で父娘同意する
 事実、あの「先生」は若干性格に問題があるのだから、仕方ない

「私は、これから「夢の国」の屋台で何か適当に買って戻ろうと思ってたけど。お父さんは?」
「俺は、ちょっと話したい奴いるからそいつ探してた………糞悪m,メルセデス見てないか?」
「氷の司祭様?……試合に出てたのを見た以外は、見てないけれど」

 なにせ、あの試合は一瞬で終わった
 メルセデスは傷一つついていなかった為、治療室にも行っていないだろう
 案外、自分の出番はもう終わったから帰っているかもしれない

「そうか………わかった。もうちょい探してみる」
「見つけたら連絡する?」
「あぁ。頼んだ………っと、そうだ。お袋も来てるから、見かけたら適当に挨拶しとけ」
「マドカさんも来てたんだ。わかった」

 年齢の割には気持ちが若く(父に言わせれば「年甲斐もない若作り」らしいが)、祖母と呼ぶには抵抗がある祖母が来ていると知ってアンナは少しうれしい気持ちになる
 きちんと、挨拶しておかなければ

 それじゃあ、と別の道へと歩きだした父を見送り、自分も屋台へと歩きだして

「……そういえば、お父さん。氷の司祭様に何の用事なのかしら」

 と、小さく、アンナは首を傾げた


「そうかい。そっちも大変なんだねぇ」
「えぇ、多少は………でも、マドカさんだって、旦那様が社長ともなれば、大変なのでしょう?」
「あたしゃ、会社の経営関連はさっぱりだからねぇ、その方面は一切ノータッチだから」

 楽させてもらってるよ、とマドカが笑う
 その様子に、彼女もまた小さく笑った
 今でも占い師を続けている彼女だが、夫は「大」がつくレベルの富豪である
 彼女は彼女で、それなりに気苦労があるはずの立場だ
 果たして、どちらの立場の方がより気苦労が多いか………となると、そこは個人差が出るところになるが
 ただ、一つ言えること
 それは、二人共立場ある人間の妻であると同時に、自分も旦那も都市伝説契約者である、と言う共通点があり

「近頃は、「狐」とやらの方でむしろ神経尖らせてる感じだねぇ、あの人は」
「あぁ………それは、あの人も同じですね。「薔薇十字団」も関わっている「アヴァロン」と言う場所に、「狐」に誘惑されかけた人が入り込みそうになったとかで……」
「……そういや、うちの人もそんな事を言ってたねぇ………ヨーロッパの方の色んな組織が混乱しかけたそうだね。「レジスタンス」なんて大変だったとか」

 自然と、このような会話になることもある
 どちらも亭主がヨーロッパを拠点とする組織とつながりがあるから、余計なのだが
 

「今は日本の、それも学校町に来てるんだろう?あんた、占いは昔通りテントでやってるって言うけれど、大丈夫なのかい」
「えぇ………「薔薇十字団」の方が、警護についてくださっていますので、なんとか。マドカさんは……」
「こっちも、亭主の部下が警護についてくれてるから、なんとか」

 約20年ぶりの、学校町での大事件だ
 あちらこちらバタバタとしているし、危険も増える

 ………マドカにとっての孫も巻き込まれた二度の事件は、彼らにとっては大事件であっただろうけれど、学校町全てを巻き込む程ではなかった
 これほどまでに大きな事件は、本当に久しぶりなのだ

「……色々、心配ではあるんだけどね」
「あるのですけれどね」

 戦技披露会、その観客席から試合を見ながら、2人はそっと笑う

「…割合、大丈夫そうなんだよねぇ」
「そうなのですよね」

 なにせ、平和な学校町であっても、これだけの若い契約者が存在している
 そして、少し悲しい事ではあるが戦い慣れている
 …きっと、大丈夫なのだろう

(………そう、きっと、大丈夫)

 大丈夫なのだ
 彼女は、そう信じるしか無い

 …………たとえ
 たとえ、学校町の今後を占ってみた、その際に引いたカードが
 いつの間にか混ざっていた、白紙のカードだったのだと、しても


 もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ
 ハムスターのごとく、ご飯を食べているちみっこがいる
 赤いはんてんを羽織ったそのチミっ子は、それはそれは美味しそうに、「夢の国」の屋台で買ったパストラミのサンドウィッチを食べていた
 その様子に、彼女を膝の上に座らせている赤いマントの男は少しほっとする
 ようやく、「夢の国」に対するわだかまりが薄らいできた証拠だろう
 そうじゃなければ、「夢の国」が提供する物を口にするのも嫌がっていた可能性が高いのだから

「ん、これ美味しいのです!赤マント、そっちのチョコクロワッサンとスイートポテトパイもよこすのですよ!」
「赤いはんてんよ、買ってきた物を君一人で食べ尽くすつもりかい?あんまり食べすぎると、いくら都市伝説とは言え太………よーし、落ち着こうか、はんてんをひっくり返そうとするのはやめたまえ」

 はんてんをひっくり返して「青いはんてん」状態になろうとした赤いはんてんに、そっと要求された物を差し出す赤マント
 赤いはんてんは、ぱぁああああ、と表情を輝かせてそれらを受け取ると、またもきゅもきゅもきゅ、と食べ始めた
 ……このライスブレッドだけでも、奪われる前に食べておこう、と判断し、赤マントはそれを己の口へと運ぶ

「はむ……に、しても。すげー戦いっぷりなのですよ」
「うむ、そうだな。やはり私は参加せずとも正解であった」
「赤マントだったら、数秒でノックアウトな可能性もあったのです」

 まぁな、とあっさり答える赤マント
 X-No,0ことザンとのスペシャルマッチに参加しようかとも考えたが、結局やめたのだ
 今現在、学校町を騒がせている問題の一つである赤マント事件、それに自分が関わっていない事を示すチャンスではあったが、相手が相手なので「役に立てそうにもないな!」と判断して男らしく参加しない事にしたのだ
 ……なお、余談であるが。赤マントが参加していた場合、転移能力でもって一瞬でザンに接近できる為、一瞬で勝負をつけることができたのだが、赤マントはそれに気づきつつもスルーしていた
 根本的に、当人が戦闘に向いていない……ということにしているのだから、仕方ない

「「狐」とか、久々に騒ぎが色々あるですからね。あんまし外出歩けないし、こう言う時だけでも思いっきり羽目をはずすですよ。だから、後でまたもうちょっと「夢の国」の屋台の食べ物買いに行くですよ!」
「全くもってその通りだな。我々のような契約者なしの都市伝説はおとなしくしているに限る。で、赤いはんてんよ。その屋台に払う代金だが」
「当然、赤マントが払うのです」
「うん、わかっていたがね!」

 ……まぁ良い、彼女が元気であるのなら
 赤マントはそう結論づけて、己の財布が瀕死となる覚悟を決めたのだった



to be … ?

 ひやり、と辺りの空気が冷え込んでいる
 その事実を気にした様子もなく、その男は思案していた
 悪魔としての本性を表には出していないものの、その男がこの場にいると言うただそれだけで、空気が冷え込む
 こうして能力が漏れ出しているのは、思考の海に沈んでいるせいなのかもしれない

(さて、どうするか……)

 軽く首を振ると、ぱきぱきと空気中の水分が凍りつく音がした
 じわりと染み出す力の余波で生まれた小さな氷の結晶は、すぐに空気中に溶けて消える

(試合ではつまらない雑魚にあたったが、他に面白い奴はいたな。これからどう動くか、楽しませてもらうか)

 彼、メルセデスは悪魔である正体がバレた今も、様々な裏取引の結果「教会」にとどまり続けている
 メルセデス自身、「教会」に所属したままの方が自分にとって都合よく動けるのか、そのまま所属し続けているのだ
 故に、今の彼は(一応)「バビロンの大淫婦」の捜索自体は真面目にやっていた
 今回の戦技披露会への参加も、「バビロンの大淫婦」絡みの契約者がいないかの確認が主な目的である
 自分の対戦相手を含め、今まで試合に参加していた者逹。そして観客席にいる連中からは、「バビロンの大淫婦」の気配は一切、なかった
 ようは本来の仕事に関してはハズレだ
 その代わり、見つけた「面白い」もの
 この情報をどう活かすか、考え込んでいた時だった

「あぁ、居やがった」
「あ゛?……お前か」

 声をかけながら近づいてくる気配に、メルセデスは小さく舌打ちする
 …辺りの気温が、平常通りに戻る
 メルセデスから溢れ出ている冷気の影響が消えた訳ではない
 近づいてくるその人物の周囲が、ほのかに温かいのだ

「よぉ、氷野郎」
「よぅ、暖房野郎」

 「首塚」側近組筆頭。「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者。日景 翼
 能力的に相性が悪いはずのその男が、睨みつけるような表情を浮かべながら近づいてくる様子に、メルセデスは楽しげに笑った



 正直なところ、翼としてはこの凍れる悪魔の事は苦手だ
 セシリアと結婚した事で年上の義弟となったカラミティは随分懐いているらしいが、翼にとっては「厄介な相手」以外の何物でもない
 今も、何か面白い玩具でも見つけたような表情を浮かべてきている

「俺に何か用か?」
「あぁ、「狐」絡みの件でな」
「………「狐」、ねぇ?「教会」は「狐」関連はほぼ動いちゃいねぇんだ。俺は情報らしい情報は持っていないぜ?」

 残念だったな、と肩をすくめてくるメルセデス
 そんな彼に翼は疑いの眼差しを向けた

「おぉ、怖い怖い。こっちとしては現状、「狐」サイドから直接ちょっかいかけられてもいないからな。そっち絡みは積極的に動けないんだよ」
「ヨーロッパの方で「アヴァロン」に「狐」辛みのやつが侵入仕掛けたんだろ?ありゃ、「教会」にとっても問題なんじゃねぇのか?」
「表向き、「関係ない事になっている」。直接命令がこないかぎりは、積極的に動く理由にならねぇな」
「「教会」としては、か。じゃあ、お前個人としては?」

 「狐」絡みで、この男は何か知っている
 翼はそう確信していた
 メルセデス当人の性格を考えると「狐」に加担していると言う事はないだろうが、何かしら情報を掴んでいるのは確かなのだ

(「教会」本部から、何か資料を取り寄せてたっつーし……ちょっとでも、何か聞き出せれば、と思ったんだが)

 …自分では、少し聞き出すには難しいかもしれない
 メルセデスに気づかれぬよう、翼は小さく、舌打ちした





to be … ?

「いやはや、派手にやったよねぇ、彼も。流石と言うべきか」

 等と口にしながら、「先生」はてきぱきと怪我人逹の手当てを終えていた
 次いで、行っているのは何やら服の作成

 ……くしっ、とくしゃみの音が治癒室に響き渡った
 ザンとのスペシャルマッチは挑戦者側の勝利となった訳だが、ザンが返した「クイーン・アンズ・リベンジ」の大砲の弾が降り注いだ「良栄丸」と「クイーン・アンズ・リベンジ」は見事に撃沈した
 そんな中でも、重傷者が出なかったのは幸いだ
 あの場に居た誰頭が、とっさに防御でもしたのかもしれない
 一番の重傷者は大砲の弾の直撃を受けたらしいサキュバスだが、契約者ではなく都市伝説(それも、結構な実力者)であるおかげか、意識が飛んだ状態であったものの今はすぷー、と心地よさ気な寝息を立てている
 どちらにせよ、船が撃沈した以上、そこに乗っていた者逹は水中に落ちたのだ
 スコール+クラーケン召喚の歳に付属するらしい海水に落ちてしまえば、ずぶ濡れにならない方がおかしい
 よって、スペシャルマッチ参加者のほとんどがずぶ濡れ状態になり、大きなバスタオルに包まっている状態だ
 着替えはあまり、どころかほぼ用意されていなかった為、また「先生」が作っているのである
 …………なお、「具体的にきちんとリクエストしておかなければ、どんなデザインの服が出されるかわからない」と言う事実は、灰人が一気に運ばれてきた怪我人の治療に専念した為、伝え忘れたままである
 今現在、白衣が作ってる服は思いっきりフリルたっぷりの物なのだが、はたして誰用なのだろうか

 もっとも、大半がバスタオルに包まっている中、そうではない状態の者もいる
 一人は、ゴルディアン・ノット
 その出で立ちのせいもあり、ずぶ濡れ度はかなり高いのだが「大丈夫ダ」の一点張りだ
 「先生」は「後でちゃんと診察させてもらうよ」と言っていたのだが、それに関しても「大丈夫」と告げている
 大砲の弾を受けこそしたが、ダメージを受けた際の形態が形態だった為か、さほど大きなダメージとならなかったのだ
 一応、水分は絞ってきた……つもりであるし、急いで着替える必要もないはず、と当人は判断しているのかもしれない
 もう一人、ずぶ濡れの服を脱ごうともせず、バスタオルにも包まっていない人物
 それは、スペシャルマッチにてザンに一撃を当てる事に成功した忍び装束の人物だった
 目元がかろうじて見えるだけのその忍び衣装は、スコールに晒された為にぐっしょりと濡れている
 ゴルディアン・ノット同様、一応絞って水分は落としたようであるが、忍び装束越しでも小柄で細身とわかる体付きの為、心配そうに見ている者もいる(主に、まだ治療室から出ていなかった憐)

「…お前ハ、ソロソロソの装束を脱いデ、着替えた方ガ良いのデハないか?」

 ゴルディアン・ノットがそう声をかけたが、その忍びは声を発する事もなく、ふるふる、と首を左右にふるだけだ
 ぽた、ぽた、と水滴が床に落ちる

 この忍び、治療室に来てからと言うもの、一言も言葉を発していない
 「先生」が治療を行う為に診察しようとした際も、手で軽く制してふるふる、と首を左右にふってみせた
 診察なしでの治療は困難……と思われたが、憐が治療室にばらまいてしまった治癒の羽がまだあった為、それで治療sをシたから怪我はもう問題ないだろう
 ただ、そのずぶ濡れ状態では風邪を引きかねない
 そして、ずっと口を聞く様子がない
 声を出せない、と言うよりも、むしろ……

「そういえば、試合中も身振り手振りだけで話していなかったような………声がでない?」

 ずぶ濡れの髪をタオルで拭きながら深志が問うたが、ふるふる、とまた首を左右に振ってきた
 「喋れない」のではなく「喋らない」。そういうことなのだろう
 顔は隠す。体型も、細身とはわかるが忍び装束ゆえ細部はわからない。そして声も出さない、となると

「まぁ、大方「レジスタンス」所属だろ。それなら、正体は隠すわな」

 黒髭がそう口にした瞬間
 ぴくり、その忍びの身体が小さくはねた
 黒髭の言葉に、バスタオルに包まっていた黒が首をかしげる

「どういうことだ?」
「あのな、マスター。「レジスタンス」は元々、少数精鋭でのステルスや潜入捜査が得意なんだよ。「MI6」には流石に負けるが、スパイの数もかなりいる」
「正体がバレたらまずい、と」

 なるほど、と真降は納得した様子だ
 中には堂々と「レジスタンス」所属である事実を公言している者もいるが(灰人の母親なんかがその例だ)、「レジスタンス」所属の大半は、おのれが「レジスタンス」所属である事を公言することはないという
 この忍びも、そうした「レジスタンス」の一員であるならば、正体を晒すような真似はしない、そういう事なのだろう

 そうではない、と言う可能性は、この時、治療室に入ってきた男によってあっさりと否定された

「そういう事なんだよ。まだその子は自分の正体バラせるだけの子じゃねーんだわ」

 ひょこり、と治療室に顔を覗かせた大柄な男の姿に、「げ」と黒髭が嫌そうな顔をした
 オールバックにして逆立てた銀髪にサングラス、ライダースーツという出で立ちの、どうやらヨーロッパ方面出身らしい外見の男だ

「おや、「ライダー」殿。日本に来ていたのか」
「おーぅ。お仕事あるんでねー。さて、「薔薇十字団」の「先生」よ、うちの、回収してっていいな?」

 「ライダー」と呼ばれた男は、そう「先生」に告げた
 …黒髭が、先程までは「先生」の視線から黒を守るようにしていたのが、「ライダー」相手からも守るような位置へと移動した事に、気づいた者はいただろうか?





to be … ?

 すくり、と忍びが立ち上がった
 とととっ、と「ライダー」と呼ばれた男性に近づいていき………そっ、とライダーの背後に隠れた
 まるで、人見知りの子供のような行動だ
 単に、「正体が見抜かれる可能性」を減らそうとしただけなのかもしれないが

(……こりゃ、この中に顔見知り、もしくは、少なくともあの忍者が知ってる奴がいる、って事か)

 そのように黒髭は考えた
 ……そう言えば、自分の契約者の方をなるべく見ないようにしている

(マスターの学校関係者か……もしくは近所に住んでいるか。はたまた契約者の親の会社関連か………どっちにしろ、あまり関わり合いたくはねぇな)

 「レジスタンス」にはあまり関わり合いたくない
 それが「海賊 黒髭」としての考えである
 契約者である黒が関わると言うのならわりと全力で止めるだが、今後どうなる事やら

(「レジスタンス」とは何度かやりあってるし、関わり合いたくねぇ……味方にできりゃ心強いだろうが、あそこは支部っつか、「どこに対するレジスタンス」かによって違うしよ)

 ようは、色々と面倒だから嫌だ、と言う理由なのだが
 ……後で、契約者に、もうちょっときっちり「レジスタンス」について説明しよう
 この時、黒髭はそう強く、心に決めた


「一応、服越しとは言え治療はした。ただ、何かあったら、すぐに連絡………こっちに、その子の正体が知られたくなかったら、そちらの治療役に頼んでちゃんと見てもらうように」
「おーぅ。一応、確認はしとくわ。傷残ったら可哀想だし」

 手元で何やら作業しながらの「先生」の言葉に、ライダーは軽い調子でそう返した
 見た目からシて日本人ではないようなのだが、日本語ペラペラだ。それを言うなら、「先生」も明らかに日本人ではないのだが

「あんたは、スペシャルマッチに参加しなかったのか」
「いやぁ、本国の上司に参加していいかどうか確認したら「僕は面倒かつつまらない仕事中なのに、そんな面白そうな事参加するなんてズルい」って却下された」

 栄の言葉に、ライダーは肩をすくめながらそう答えている
 どうやら、上司は日本には来ていないらしい
 参加したかったんだがなぁ、とライダーは残念そうだ……どこまでが本心かは不明だが

「じゃ、そういう事で。この子の着替えはこっちがなんとかするけど、他のスペシャルマッチ参加者逹は風邪引くなよ」

 そう言うと、ライダーはひらひらと手を振りながら、治療室を後にした
 忍びはその後をついていき………ぺこり、一礼してから、治療室を出た
 不意打ちとはいえ、ザンに一撃を与えたあの忍びは、どこの組織にも所属していなかったのであればスカウトがあちこちからきた可能性があるが、「レジスタンス」にすでに所属していると判明したならば、そういったスカウトも来ないのだろう
 ライダーがわざわざ忍びを迎えに来たのは、そう言ったスカウトの類が来ないように、「レジスタンス」所属の者であると知らしめるために来たのかもしれない

「……ある意味、過保護だねぇ」
「?何が??」

 ライダー達を見送りながら、ぽつり、「先生」が口にした言葉が耳に入ったのか、ひかりは首を傾げた
 「なんでもないよ」と「先生」は笑いながら、作業を続けている
 ひかりはもう一度首を傾げて……が、特に気にする事でもないと判断したのか、思考を切り替える
 彼女が考えることは、一つ

「せっかく、おっきなエビフライ作ったのになぁ……」

 そう、これである
 あの巨大なエビ型クラーケンをせっかくエビフライにしたのに、食べることが出来なかった
 彼女は、それがとっても残念なのだ

「せめて、ひとくち食べたかったな…」

 と、そう口にすると
 

「ふむ、しかしお嬢さん。あのスコールの中にさらされていたならば、あのエビフライ、水分でぶよぶよになってしまって味が落ちていたのでは?」

 ……………
 「先生」の言葉にっは!?となり、ガビビビビン、とショックを受けるひかり
 そう、誠に残念ながら、「先生」の言う通りだろう
 かなりの水分に晒されたであろうエビフライは、揚げたてさくさくの美味しい状態ではなかったのだ
 美味しく食べる事など、あの試合会場にスコールが降り注いでいた時点で無理だったのだ
 ガーンガーンガーン、とショックで固まった後、若干、涙目でぷるぷるしだしたひかり
 と、そこに「先生」が救いの手を差し伸べる

「さて、お嬢さん。可愛らしい服がずぶ濡れになってしまっているからね。はい、乾くまでこちらを着ているといいよ」

 ひらりっ、と
 「先生」が、先程までずっと作っていたそれを広げてみせると、ひかりが「わぁ」と嬉しそうな声を上げた
 それは、可愛らしい、黒いゴスロリのワンピースだったのだ
 首元のリボンやスカートを見るに少々デザインは古めかしいが、ひかりにぴったりなサイズである

「おじさん、ありがとう!」
「どういたしまして。さて、次作るか」
「だから、せめてリクエスト聞いてから作れ」

 っご、と灰人に脳天チョップツッコミをしたが、「先生」はスルーしてさっさと次の服を作り上げている
 どうやら、また女性物を作ろうとしているらしい。レディーファーストだとでも言うのだろうか
 なんとなく楽しげに、「先生」はその作業を続けていた


(……際立っておかしなところはない、よね?)

 「先生」の様子を何気なく伺いながら、三尾は少し不思議に思っていた
 この「先生」に関して、実は「組織」で少し、話を聞いたことがあるのだ
 三尾が担当する仕事絡みではない為、又聞きだったり噂が大半なのだが、共通している事は一つ
 「あの「先生」は厄介だ」と言う事
 何故、よりにもよって学校町に来たんだ、と、学校町に来た当初、天地が頭を抱えていた様子も見たことあるような。ここで「先生」を見ているうちに、それを思い出した
 ……何故、そのような評価なのか?
 治療の手伝いをしつつ何気なく観察していると、「海賊 黒髭」は自分と自身の契約者に関しては、「先生」に治療されないように、と言うより、接近すらされないようにしている事に気づいた
 契約者の方はともかく、黒髭の方はかなり「先生」を警戒している
 その警戒っぷりは、「先生」が学校町に定住し始めた頃の天地にどこか似て見えて

(彼に聞けば、わかるのかな)

 と、聞く聞かないはともかくとして、三尾はそう判断したのだった


to be … ?

忍びが「ライダー」と呼ばれた男性と共に退室してから少しして

「……ソロソロ頃合いか」

唐突に乾いたものが擦れるような声でそう呟くと、
ゴルディアン・ノットはゆっくりと外海の方へ近づいた

「外海、帽子を」
「うむ。確かに返したぞ」

外海が差し出した中折れ帽をグローブをはめた手で受け取ると
ゴルディアン・ノットはまだ湿った様子の▼模様が描かれた覆面の上から被った

「シかシ今回ハ試合にこソ勝てたガ、己の未熟サを痛感スル戦いダった」
「確かにそうかもしれないな……」

ゴルディアン・ノットの言葉に悔しそうな表情を見せる外海
それが見えているのかいないのか、彼は言葉を続けた

「俺ガヒーローを名乗レル日はまダ先のようダ
 目と手の届く者スラ守レないようデハな……」
「……だがお前は、最後のあの時に」
「結果を伴わない過程に大シた意味ハない
 それは過程の無い結果もまた然リ……
 二つが揃ってようやく、俺ガ目指ス在リ方となルのダ」

外海の言葉を遮って言い捨てると
ゴルディアン・ノットは背を向けて歩こうとする
 

「待て」

その背にもう一度、外海が言葉を投げかける

「余計な世話かもしれないが、本当に診察を受けなくていいのか?」

戦場で言葉を交わし共闘した相手に対して
外海は純粋な善意、その体を心配して確認の問いかけをする

「大丈夫ダ」

そして返された言葉に「ああ、やはりそう答えるか」と思って

「ソレにあの男に体を見セルのハ、少々気乗リシない」
「………………うん?」

続いた言葉に違和感を覚えて、声を漏らした頃には
ゴルディアン・ノットは治療室を出て行った後だった


                                           【続】

 治療室を出て少し歩いたところで、ゴルディアン・ノットは冷たい空気を感じた
 比喩表現ではなく、本当に空気が冷たい
 まるで、真冬の寒空の下を歩いているかのような冷気
 完全に乾ききっていない布の表面が、ぱきり、凍ったような

 冷気の主はすぐに見つかる
 司祭服を着た髪の長い男その男を中心に、辺りに冷気が広がっている
 戦技披露海が始まってすぐ、その実力を見せつけていた「教会」所属の男だ
 契約者……ではなく、契約者付きの都市伝説。飲まれた存在でもなく、契約者本人は戦技披露会には参加せず、単体で参加したという変わり種だ

 男は、何やら思案している様子だった
 己が強い冷気を発しているのだという自覚もあまりない様子だ
 このように辺りに冷気が漏れているせいか、辺りに他に人影は見えない
 別の通路を通るべきか、とゴルディアン・ノットが考えだした、その時

「あーっ!メルセデス司祭様、駄目っすよ。冷気、思いっきりダダ漏れ状態っす!」

 後方から、そんな声がした
 振り返ると、ぱたぱたと少年が駆け寄ってきていた
 ゴルディアン・ノット……にではなく、レイキの発生源たる男、メルセデスにだ
 少年の姿は見覚えが合った、と言うよりつい先程までいた治療室で見た顔だ
 ぱたぱたと忙しく「先生」の手伝いをしていたうちの一人で、「先生」から「休もう?君がばらまいた羽で十分治療できるから君はもう休もう??」と何度か言われていた……確か、憐とか呼ばれていたか
 憐の背後、もう一人同じ年頃の少年が居て、駆け出した憐のあとを追いかけてきている
 メルセデスは憐に声をかけられた事に気づいたようで、顔を上げ………冷気が、弱まっていく

「もう。考え事してる時に冷気ダダ漏れになるの悪い癖っすよ」
「別に、このふざけた催し物の参加者ならこの程度平気だろ」
「戦闘向きじゃねー人もいるっすし、冷気が弱点な人もいるだろうから、っめ、っす」

 自分より有に頭一つ以上大きい上、正体を隠す必要もないからか悪魔独特の威圧感を放つメルセデス相手に、慣れているのか恐れた様子もなく注意をしている
 …もっとも、憐のような少年の注意等、メルセデスは意に介していないようだが
 その事実は憐も理解しているようで、むぅー、と少し困ったような顔をしてこう続ける

「……カイザー司祭様も、気をつけるように、って言ってたでしょう」
「っち」

 あからさまな舌打ちをして、漏れ出していた冷気が完全に止まった
 契約者の名前なのだろうか。流石にそれを出されると従わざるをえないのだろう
 メルセデスは、ゴルディアン・ノットや憐の後から駆けてきた少年にも気づいたようで、この場を立ち去ろうとし

「あぁ、そうだ、憐」
「何っす?」
「………「見つけた」からな」

 ぴくり、と
 一瞬、憐の表情が強張った様子を、ゴルディアン・ノットは確かに見た

 メルセデスはそのまま、すたすたとどこかへと立ち去っていってしまう

「憐君、どうしたの?急に走り出して……」
「あ、えーっと。なんでもないっすよ、すずっち。問題は解決したんで」

 追いついてきた少年に、へらっ、と笑いながら答える憐
 そうして、ゴルディアン・ノットにも視線を向けて

「んっと、メルセデス司祭の冷気の影響、受けてないっす?凍傷とかの問題なさげっす?」

 と、心配そうに問いかけてきた

「あぁ。特に問題ハない」
「そっか、ならいいんすけど………じゃ、すずっちー、観客席戻る前に、何か屋台で買っていこう。死人の屋台以外で。死人の屋台以外で」
「大事な事だから2回言ったんだね……って、死人の屋台?」

 ぱたぱたと、少年二人は立ち去っていく
 憐の方は少しふらついているようにも見えたが、とりあえずは大丈夫なのだろうか

 ……あのへらりとした笑みに、一瞬強張った瞬間の、感情を一切感じさせない表情の影は、なかった





 

 時刻は、少し遡る

「年頃のレディの身体に何かあっては大変だし、きちんと検査したかったのだが」

 仕方ないねぇ、と退室していくゴルディアン・ノットを見送りながら、「先生」はぽつり、そう呟いた
 ……つぶやきつつ、また服を完成させている

「うむ、こんなところか。フリルをもう少しつけても良かったが、他の者の服も作る必要ある故、これで」
「わぁ、見事にフリルいっぱいのホワイトロリータ」
「白き衣纏いし死神がいても良かろうて」

 はい、と「先生」から渡された、フリル多めのホワイトロリータワンピースを受け取る澪
 恐ろしいことに、サイズを聞いてもいないのにサイズがぴったりだ
 目測で、完全にサイズを把握したというのだろうか

(……「先生」。もちろん、これは本名ではなく通称。所属は「薔薇十字団」。学校町にやってきたのは三年前……)

 …そのような「先生」の様子をチラ見しながら、三尾は考える
 やはり、きちんと思い出せない
 「先生」に関して、特に天地が何か言っていた気がするのだが、三年前と言えば久々にバタバタしていた時期であったし、そもそもYNoはCNoとさほど親しく付き合いがあるわけでもない
 元々、他のNoからの情報が不足しているとも言うが

 念のため、もうちょっと知っておくべきではないか
 そう感じたのは、黒髭が異常なまでに「先生」を警戒しているせいだ
 灰人の「先生」に対する扱いのぞんざいさ(一応師弟関係らしいのにいいのだろうか)のせいで、「先生」が危険人物とは思えないのだが、あそこまで露骨に警戒していると流石に気になる

「連絡先の交換?」
「あぁ。このところ、「狐」だの人を襲う赤マントの大量発生だの……それに、誘拐事件が相次いでいるとも聞く。私は組織だった集団とはほぼ縁がなく、都市伝説関連の情報源が乏しくてな……少しは情報がほしい」

 なので
 黒髭の契約者たる黒が、「首塚」所属である栄と何やら話している間に、三尾はこっそりと黒髭に近づいた

「あの、ちょっといいですか?」
「あ?……「組織」か。何か用か?」

 三尾に声をかけられ、黒髭は怪訝そうな表情を浮かべた
 少し警戒されている気がしたが、構わず問う
 流石に、小声でだが

「「先生」の事、警戒しているようですが。何故です?」
「……お前、「組織」だろ。あの白衣のことわかっているんじゃないのか」
「立場上……と言うか所属Noの性質上、そういった情報が少し入りにくいものでして」
「…マジか」

 把握していなかったのか、と言うように黒髭が少し頭を抱えたような
 ちらり、と黒髭は「先生」と灰人の様子をうかがってから、三尾に告げる

「あの白衣、元は指名手配犯だぞ」
「え」
「何が原因かまでは知らねぇが、発狂して正気失って、かなり色々やらかした奴だぞ。「組織」「教会」「薔薇十字団」「レジスタンス」、全てを敵に回して戦いきった化物だ」

 ちらり、三尾はまた、「先生」を見る
 ……正気を失っている様子はない

「今は、一応正気に戻ってるらしいぜ。じゃねぇと、指名手配も解除されないし、「薔薇十字団」に所属も出来ねぇだろ」
「でしょうね。天地さんが頭を抱えていたのは、そういう事ですか」

 恐らく、だが
 「先生」が学校町に来たのは、学校町が様々な意味で特殊な場所だからだ
 いくつもの組織の勢力がひしめき合い、しかし全面戦争にはならない場所
 …そこに「先生」を置くことによって、かつて指名手配されていた頃に買った恨みで何かしら起きないように、との処置なのだろう

「しかし、今はもう指名手配されていないのであれば、警戒する必要は…」
「ある。正気戻ったつっても、腹の底では何考えてるかわかりゃしねぇ。今、噂の「狐」絡みじゃないだけマシではあるが」
「そこは断言するんですね?」
「……断言してぇんだよ。あれが「狐」の勢力下に入っていたら、シャレにならねぇ」

 吐き捨てるように、黒髭は言い切った

「いくら俺だって、「賢者の石」と契約したと言われるような奴とは戦争したくねぇよ」





to be … ?

スレ立て、代理転載お疲れ様でした

では、これより投下させていただきます
時間軸的に「戦技披露会」と同時間軸になります

 カタカタとキーボードを叩く音と、さらさらと紙の上にペンを走らせる音がする
 普段はそれなりの人数がいるはずのその部屋に、今いるのは二人だけだ

「他のC-Noの方々はどうしましたの?」

 愛百合はキーボードを叩きながら、ややむすっとした調子でそう問うた
 書類を確認し、サインを入れながら天地は答える

「それぞれ別の仕事を割り振ってる」
「郁は、「組織」と「首塚」の合同戦技披露会に行ったと聞いたけれど」
「それも仕事だ。慶次と組んで「組織」以外の参加者、及び観戦者に関する情報収集」
「……慶次君の担当は私なのに、どうして彼が?」

 つ、と天地がペンを走らせる動きが止まった
 ちらり、愛百合の表情を確認し、ため息をつく

「慶次は、お前から少し離れて色々勉強すべき時期だからな。お前がべったりついたまま、って訳にもいかないだろ」
「あら、私、あの子を息子のように思いながら、色々教えてきたつもりよ?」
「だからこそだ。今のままだと、お前の色が強すぎる」
「……それでは、いけないのかしら?」

 伺うような視線が天地へと向けられた
 天地は特に迷うこともなく回答する

「ただ一人の黒服にだけ影響され続ける、ってのはあまりいい傾向じゃねぇな。自覚のあるなし関わらず、視野が狭まる可能性が出てくる」
「それを言ったら、二十年以上もたった一人の黒服に担当され続けた契約者もいるでしょう?」
「あれは例外だ。っつか、あのヤンデレコーラを担当できるのがただ一人しかいねぇ。その上、あのヤンデレコーラが担当黒服の影響受けてるかっつーと受けてない上にヤンデレ加速傾向だ」

 愛百合が口にしたそれが誰であるのか即座に理解し、言葉を返す
 あの兄弟愛こじらせすぎた上、最近では家族愛も盛大にこじらせようとしているヤンデレと他の契約者を同じように扱ってはいけない
 取扱い注意なあの男の担当が大門 大樹以外になったならば、それこそ制御不能になるのは目に見えている

「かなえはまだ、契約者やってる同級生からの影響受けられるが、慶次の方は大学通ってる訳でもないし、そうはいかないだろう。お前がいない状態で他の奴と接触させて、勉強させるのが一番なんだ」
「……納得いかないわねぇ。手塩にかけて育てた子に、悪い影響が出ないか心配よ」
「そこは、育てた身として育てた相手を信頼してやれよ」

 それはそうなんだけど……と、少し渋っているような表情を愛百合は浮かべてくる
 まるで、実の子のように面倒を見ている契約者を心から心配しているように、そう見えるのだが………

(本当に、心配しているんだったらいいんだがな)

 表に出すことなく、天地に化けているディーデリヒ・ダンジェルマイアはそのように考えた
 「組織」DNo上位陣が一人、実質DNoの親衛隊と呼ばれるメンバーのうちの一人である彼は「ドッペルゲンガー」であり、何者にでも化けることが出来る
 本物の天地から依頼され、こうして天地に化けて愛百合を見張っている訳なのだが

(ダレンを殺そうとしてきた連中と、同じ雰囲気がするんだよな………天地が「狐」の件とは別に警戒している訳だ)

 「狐」の件に乗じて何かしでかすかもしれない、と言う警戒ゆえなのだろう
 「狐」絡みでも、今現在、警戒している相手がいるようではあるが……

(ハンニバルの言うことばかり聞いていた餓鬼が、立派に考えるようになったもんだ)

 愛百合の今までの働きぶりや過去の実績に関する資料の内容を思い返しながら、ディーデリヒ天地のふりをしながらの愛百合の観察を続けていた



 一方、その頃
 学校街・獄門寺組本家にて

「……以上が、こっちで掴んでいる情報だ。「狐」のスパイに関しては、引き続き、俺の権限で極秘で調査を続ける」

 そのように、天地は報告を終えた
 「狐」に関する情報交換会。「組織」「首塚」「教会」「レジスタンス」と言う大きな組織だけではなく、「獄門寺家」「マッドガッサー一味」も加わっての、ある意味で豪華な顔ぶれだ
 未だに「組織」が他の組織と交流していると文句垂れてくるような奴(代表例:愛百合)もいる為、この会議への参加は極秘だ
 もっとも、天地以外にも似たような事情を抱えている者がいないと言う訳でもない
 今まさに資料に目を通しているカイザーもその筆頭だろう
 普段の面子ならともかく、今、「教会」本部から派遣されているジェルトヴァが嫌がる顔をしそうだ
 そうした点を考えると、将門が「良し」と言えばほぼ問題がなくなる「首塚」や、同じく龍一の方針に組員の大半が賛同して動く「獄門寺組」は少しうらやましい所だ。トップの判断ありきである為、そのトップにかかる重圧は恐ろしい事になるが

(いっそ、「レジスタンス」くらいのバランスがちょうどいいのかもしれないな)

 ちらり、視線を向けた先では「レジスタンス」において所属している事実と名前が知られている荒神 ウル
 学校街在住の日本人と結婚したため、学校街にとどまっている事も増えたが、元々はヨーロッパを中心に世界中の「レジスタンス」支部を周っていた、「レジスタンス」でも上位の実力者
 上下の関係が「組織」等と違って厳密ではなく、支部によって行動方針や敵対対象が変わる「レジスタンス」であれば、今のように他組織との情報交換会も問題はないのだろう

「「教会」では、子飼いの契約者が何人か行方不明、か」
「はい。大半は殺害された可能性が高いのですが……一人だけ。学校街で目撃談がありました」
「アメリカではオカルトミュージアムで封印・管理していたはずの「アナベル」が姿を消したそうだ。他の諸々のヤバイ物が表に出なかったのは幸いといえば幸いだが」

 カイザーとウルがそれぞれ、資料に書き記していた情報を改めて口に出した
 確か、「教会」子飼いの契約者の中で行方不明となっており、かつ、学校街で目撃談があったのは「死神を閉じ込めた樽」の契約者だったはずだ
 死神に分類される都市伝説を問答無用に無力化して閉じ込める能力を持っている
 死神でさえあればどの国のどのような伝承であろうとも無力化する上、場合によっては契約者まで無力化出来ることはわかっている
 と、なると、他に気になる事は

「その「死神を閉じ込めた樽」の契約者、死神以外を樽に閉じ込めることは?」
「………出来ない、となっていますね。少なくとも、「教会」ではそう把握しています」
「じゃあ。出来る可能性もある、と言う事ね?」

 カイザーの返答を聞いてそう口に出したのは「首塚」の面子として来ていた鮫守 虎吉
 そろそろ結構な年齢になっているはずだが、相も変わらず女の姿をしている。「父親と母親、両方こなす」と言う彼の誓いは、息子が結婚しても続いているらしい

「否定はできません。行方不明になる前は出来なかったとしても、行方不明になってから出来るようになった可能性もありますので」
「死神だけを閉じ込めるんなら、死神に該当する奴を出さなければいいだけの事だが、それ以外もとなると厄介度が増すな………どう対処しろってんだ」

 小さく唸る
 少なくとも、死神相手であれば問答無用で閉じ込める樽の能力
 死神以外にも効く場合もそうなのかどうか……「もしも」の可能性ばかり考えても仕方ないと言われるかもしれないが、警戒するにこした事はない
 都市伝説に関することは、少し警戒しすぎるくらいがちょうどよいのだと、ここに集まっている者逹はよくわかっていた

「狐の一派に襲われた子を一人、「首塚」で保護してはいるけど……彼女を襲った相手はだいぶ攻撃的な能力だったみたいだから、「死神を閉じ込めた樽」ではないのよねぇ」
「あぁ、車やらバイクやら、弾丸みたいに飛ばしてきたって奴か……超能力系統でサイコキネシスか、とも思ったが」
「そもそも、サイコキネシスだったら、当人に対して使いそうなものだが……」
「……だよなぁ。正体がわからない以上、こいつも要警戒、か。鬼灯が持ってた情報ん中にも、それらしい能力の奴はいなかったからな」

 獄門寺家の客人となっている鬼灯
 三年前から「狐」を追い続け、時に戦闘となり「狐」に従う者逹を薙ぎ払ってきたあの男は、久々に獄門寺家に着くやいなや「狐」に従う者逹の情報を、自分が把握している限り龍一に提供した
 その情報を龍一が「首塚」等に流す事によって、「狐」に誘惑された者はかなり捕まったり………捕まる直前に自ら命を絶ち、死んだり消えたりしていった
 今現在、「狐」に誘惑されるなりなんなりして配下となり、かつ生き残っている者は数える程度だ

「アメリカの「ピエロ人形」の契約者、ヨーロッパの「ファザー・タイム」。日本の、どの伝承の奴かまでは不明だが「鬼」か」
「姿を消した時期から見て、「アナベル」や「死神を閉じ込める樽」の契約者辺りも加わっている可能性がありますね」

 他にも、まだ戦力が居る可能性はある
 鬼灯は、全ての「狐」の配下を把握できた訳ではないのだから
 それでも、だいぶ追い詰めてきたはずだ
 後は、「狐」………「白面金毛九尾の狐」本体を見つけ出すだけなのだが、それに関する情報は現状、ほぼない
 なんとかしなければ

「……「白面金毛九尾の狐」に「バビロンの大淫婦」。人を襲う「赤マント」の大量発生に、「怪奇同盟」の盟主の暴走。ほんっと、一気に発生しやがって」
「「バビロンの大淫婦」に関しましては、本当、申し訳ないです」

 天地のぼやきに、カイザーが心底申し訳なさそうにそう言った
 本来は「教会」がなんとかしなければいけない案件が学校町まで流れてきた結果、他組織まで巻き込む事態となってしまっているのだ
 一応、まだ「教会」所属であるカイザーとしては胃が痛い問題だろう

「将門様が、「何か、学校町全体に違和感を感じる」とも仰っていたし……何かしら、起こっているのかもしれないわね」
「あぁ。そう言えば「ライダー」も。学校町に来てすぐ、地理を把握するためにざっとバイクで回った後に「何か妙な感覚がする」と言っていたな。あいつは感知系能力は持っていないから、ただの勘だとは思うが……」

 ふぅ、とため息を付きながらの虎吉の言葉に、ウルも憂鬱そうにそう言った
 …恐らく、「ライダー」とのやらは勘が良いのだろう。いい意味でも、悪い意味でも


 情報が回る、伝わる、新たに湧き出る
 自分達とその家族を、身内を
 学校町を、世界を

 何かを守るために、彼らは力を合わせる

 いくつもの組織が、集団が、害なす者を狩るべく動き続けていた



to be … ?

花子さんの人、投下お疲れ様です
改めて書かれると、この時間軸の学校町ヤバイですね
各組織・集団の皆様の健闘を祈ります

>>200
「バビロンの大淫婦」はクソ雑魚状態になってるから割合どうでもいいとして、「狐」と盟主様と「凍り付いた碧」がやばい

>>201
「狐」陣営はその3つだと保有戦力トップっぽいので危険
次点の「凍り付いた碧」は思想的に危険というか虐殺起こってるみたいだからなぁ……
盟主は時間帯限られてるのと一般への被害がほぼないからマシかもしれない

スレ立てと転載作業、お疲れ様です
遂にR板ですね……

花子さんの人も乙です
獄門寺本家が拠点になるんですね
気になったのは「アナベル」です
これは都市伝説が実在化したものではなくて、本物の方でしょうか……?

「次世代ーズ」は現在ですと9月頃のお話になると思います
行きます

>>203
>「狐」陣営はその3つだと保有戦力トップっぽいので危険
いやまぁ、「狐」陣営も戦闘苦手なのもいるんで大したことは……
ない、って言いたかったね(九十九屋から視線をそらしながら)

>>204
拠点、って訳じゃないですが、内緒の情報共有会だったので獄門寺家が集まりやすかったんでしょう

>これは都市伝説が実在化したものではなくて、本物の方でしょうか……?
ぶっちゃけ、本物も都市伝説として動いていいかな、て

Q つまり?
A モノホンが都市伝説本体として勝手に動いているイメージです

概要(仮)

これは、「学校町」という通称をもつ町にやってきた、高校生の男子の話です
彼はある目的をもってこの町へやってきました
いずれ、彼の口から理由が語られるでしょう


この町には、「都市伝説」という存在と、それと契約を結んだ「能力者」が実在します……


 

 
 美人さんと出会ったあの雨の夜から数日後の晩、俺は相変わらず逃げ回っていた
 しかも今度の相手は都市伝説じゃない、嬉しいことに「組織」所属の契約者ときたもんだ

「馬鹿じゃないの」

 感激のあまりつい本音が漏れる
 全く涙まで出てきやがったぜ畜生

 歳の近そうな女の人でしかも美人さんと出会えたもんだから、てっきりツキが回ってきたものと勘違いしていた
 そうではなかった、良いことが起これば漏れなく悪いことも起こるとはよく言ったものだ

 隠す気の全くない殺気が迫ってくる
 後方からの霊圧を伴ったそれは未だに俺を追跡していた
 なんで俺をここまで追い回すんだ!? 以前の赤マントの方がまだ可愛げがあったぞ!?

「馬鹿じゃないの」

 走りっぱなしで正直余裕はないが吐き捨てずにはいられない
 今は兎に角逃げなければ
 ねっとりと絡み付いてくる大気を振り切るように脚を動かす






 時は少しだけ遡る

 俺は夜中に学校町の東区を散歩していた
 四月から不定期に始めた夜の散歩は今じゃ日課になりつつある
 ここはもう半年近く歩き回ってるが、まだまだ分からないことが多過ぎだ
 東区は学校町の中で最大の区域だと耳にした覚えがあり、町の中央も東区に含まれるらしい
 なので散歩の範囲はかなり広く、予めポイントを決めて散策しないとあっという間に迷いだすことになる

 ここ最近は東区の北側ばかり見て回っている
 個人的には北側のニオイは好きだし、山に近くてのどかな雰囲気がある

 だが

 俺は顔を上げて前方の校舎を見た
 学校町内で最大と言われている中学校だ
 古い学校のようで近いうち創立80年か90年を迎えるらしい
 三年前、この中学で10人もの女子生徒が屋上から飛び降りた
 そしてそれは飛び降りなんかではなく、中学の教師が生徒を突き落としていた
 犠牲者の中には教師の実の娘も含まれていたらしい

 ひどい話だ

 評論家気取りの連中は近頃の親世代の価値観や責任感の崩壊を批判している
 ワイドショーが昨今の孤児の急増について特集を組んだりするのも今となっては珍しくない
 俺だってある意味親に捨てられたような身だし、この突き落とし事件にしてもどこか他人事とは思えなかった

 で、だ
 何故俺が中学校のフェンスをよじ登って中へ侵入しているのか
 単純な話、敷地に沿って遠回りするより校庭を抜けて行った方が近道という真実に気付いたからだ
 

 
 校庭を突っ切って近道するのは今回が初めてじゃない
 自分が見た限りだと警備員さんは巡回していないようだった
 万が一誰かと鉢合わせしたりしたら、謝罪して近道しようとしただけだと説明するつもりだ

 校庭特有の砂の感触を踏みしめつつ、夜の闇の中にある校舎の方へ目を向ける
 物静かな中にもどことなく剣呑な空気を感じるのはこの中学の持つ歴史の重みか、先の事件現場だからなのか
 とにかく足早にここ突っ切ろうと校舎から前方へと視線を動かして、思わず立ち止まった


 誰かが、いる


 先程までニオイも気配もまるで何も無かったが、確かに誰かが立っている
 人物のシルエットからして警備員さんでは無さそうだ

「何度か見かけた顔だ」

 その声は思いの外、若い
 若いというか中学か高校くらいと見るべきか
 下手すると俺と歳が近いかもしれない、あと多分男だ

「不思議な気配だな、気配が殺したかと思えば微かに気配を滲ませる、それを不定期に繰り返している」

 俺が固まっているうちにも、そいつはゆっくりとこっちへ歩を進めてきた

「当初は何かの合図かとも思ったが、まあいい。契約者だな?」
「っ!?」

 息を、飲んだ
 悟られたか?
 さらに一点気付く
 目の前のそいつは腰に刀を差していた

 咄嗟に感覚を全開にする
 何やら古いニオイだが間違いなく都市伝説由来のソレだ
 加えて特有の臭気を微かに感じる
 思わず舌打ちしたくなった

「『組織』所属の契約者か……!?」
「いかにも」

 こちらの問いに、野郎は即答
 少々まずいぞ、遂に『組織』関係者と遭遇だ


「このような場所で会ったのも何かの縁だ、是非手合わせを願いたい」
「お断りだ!」

 切るように告げて明後日の方向へ地面を蹴った
 何がなんでもこの場から逃げないと!

 だが、不意の殺気

 勢いづけて逃げ出そうとした脚を急停止させた直後、逃走先の前方の地面が破裂した
 両腕で顔を庇い飛来する砂石に耐える

「背を向けて逃げ出すとは、いい度胸だ」
「ふざ、け……っ!!」

 

 
 どうやら俺を逃がすつもりは無いらしい
 手合わせがしたいらしい野郎を睨み、先程破裂した地面の方に視線をやる

 地面は破裂したのではなく、青白い光を発する槍が刺さっていた
 俺の逃げ道を封ずる為に投げたものだ
 地面からやや離れた方を見れば、槍を投げた主がいた

 古めかしい甲冑を纏った人物は全体から青白い光を発している
 武者だ、どこをどう見ても武者だ、しかも俺の推測が正しければ都市伝説だ
 恐らく野郎が契約している個体だろう
 その表情は影の所為で全く見えないがこちらに注意を向けているのは嫌でも分かる
 何故って新たに槍を肩に担ぐようにして構えていたからだ

 まるで槍投げ選手のようだ
 俺が逃げようとしても更に槍を投げて牽制するつもりだ、そういう意志を感じる
 てかおかしいだろ!? あんな長柄の槍って普通投げて使うもんじゃ無いだろ!?
 しかも甲冑着込んだままで槍を投げてくるっておかしいだろ!?
 普通は弓で狙うだろ!! いや射られても困るけども!!

「これで心置きなく勝負ができるというものだ」
「一方的に仕掛けてきやがって何が『心置きなく勝負』だ、アンタ」

 率直な感想が口を衝いて出る
 あちらは既に抜刀しており、よほどやり合いたいらしい
 いや、色々言いたいことはあるが、相手は『組織』だ
 道理と誠意が通用する相手とは思えない

 手合わせすると見せかけて、隙を突いて逃げる
 もうこれしかない

「参る」
「ふざけやがって……!」

 右手を前方へ差し出す
 手元から“黒棒”を生成し、同時に一気に距離を詰める

「ッしィ――ッ!」

 息を吐きながら右薙ぎを狙って“黒棒”を振るう、がヤツは受けた
 鍔迫り合いに持ち込む積りは無い、さもなくば引き技で俺がアウトだ
 足元が砂地だからかやけに滑るが知るか! 向かって左側へ回り込む

 相手より速く、もっと速く! 打ち込まれる前に!

 大地を摺るように足を捌き、野郎と距離を取る
 相手の体を注視、既に脚へ力を込めている。間合いを詰めて斬りかかる積りか
 チャンスは今だ

 “黒棒”の形成を崩し、鞭のようにしならせた
 そしてそのまま一気に、ヤツの脚に目掛けて一撃をぶち込んだ

 が、ヤツはこれを

 「面白いな」

 普通に捌いた

 

 
 剣客は下半身の防御が疎かになるので実戦では先ず脚を狙え、と言ったのは誰だったか
 少なくともこれは実戦を生きる刀使いには通用しない話だ
 ああそうとも、かつて刀使い相手に下半身ばっか攻めた挙句一本取られまくったのがこの俺だ

 そしてやり合って分かったが目の前の相手は強い、間違いなく強い
 俺はそもそも刀使いでは無いが、それでも相手の力量くらいは分かる
 こちらの攻撃を捌きつつ余裕でこちらの隙を観察しているのが嫌でも伝わってきた

 相手は正眼に構え、改めてこちらに相対している
 今度こそ突っ込まれたら間違いなくヤバい
 ならば

 鞭状の“黒棒”を引き寄せ、再度前方へ叩き付ける
 但し、今度はヤツにではなく、地面に向かってだ
 抉られた砂石は野郎目掛けて飛散した

「っ!?」

 野郎が息を飲む気配を掴んだ
 身を翻して、あの鎧武者の方へ疾走
 武者の方は先程のように槍を構えているが、遅い
 かなり距離はあるが“黒棒”の射程内だ、迷うことなく武者へと打ち込む
 鞭は武者の片脚に絡まった――そのまま引き戻すように“黒棒”を振るうと武者はそのまま転倒

 急げ急げ急げ!

 この隙に逃げ出さなければ俺が危ない
 足を動かし、ようやくフェンスに辿り着くと縋るようによじ登りフェンスを跨いで――校庭の方を見た
 先程の野郎は抜き身の刀を握ってこっちへ疾走していた
 おまけにその横に仲良く並ぶように鎧武者も槍を担いで走って

「ボエェーッ!!??」

 俺は間抜けな声と共にフェンスから転落した
 飛んできた槍がフェンスに突き刺さり、衝撃で揺さぶられたからだ
 校庭側に落ちなかったのは幸いだ! てかあの体勢から投げるのかよ!?
 槍は俺がいた所の大体横に突き刺さってるぞ!? 本気で俺を殺す気だったのか!?

 驚いている暇はない
 俺は転げるように逃げ出した






 無我夢中でかなり走った
 以前赤マントに追い掛けられた時より頑張った気がする

 後方を確認するがもう霊圧も殺気も無い
 撒いたか? 撒けたのか、俺!?

「っしゃァァあああーッッ!!」

 謎の喜びのあまり思わずガッツボーズだ


 

 
 俺には肉親はいないが仇ならいる
 その一つが「組織」だ
 とはいえ態々敵対するほど俺も向こう見ずではない
 向こうから突っ込んでこない限りはな!

 しかし、だ
 今回の出来事に関してはかなりまずい気がする
 今夜のことが切っ掛けで、ある日突然「組織」がやって来たらどうしようかね
 「組織」に歯向かった貴様は不届千万! よって死刑! ってな具合にだ
 この町に来る前に色々想定した中でもかなり良くない方のパターンだ


 「狐」が討伐されるのを見届けるまで、果たして俺は逃げ切れるだろうか


 思わず溜息が出る
 まだ起こってないことを悩んでても仕方ない、今は考えるのを止めにした

 ガムシャラに走った所為で自分が今どこを歩いているのか本格的に分からなくなっている
 多分東区の真ん中辺りだろう、遠方より微かに繁華街の喧噪が聞こえる
 とりあえず、以前と同じように南区を目指すか

 そうだな
 曇掛かった夜空を仰ぐ

 本格的に自主トレを再開しよう
 もう暫く夜間徘徊もとい夜の散歩は控えよう
 あと近道だからって中学校へ侵入&校庭を横断するのはもう止めよう

 そう決意した

















□■□

投下が三が日中に間に合わなかった……
しかも未だにピュアなラブコメパートに未到達……おのれ

今回も事件などの関係を間違えないよう頑張りましたが
ツッコミなどあれば是非とも


書いててふと気付いたのは
今回の舞台の東区最大の中学は、土川咲李さんの母校だと思うのですが(wiki調べ)
結ちゃんと真理ちゃんが肝試しに入ったのも、東区の中学でしょうか……?

今回もwikiで調べながら書いていました
学校町の中学校は東区最大の中学以外にも、各区に一校ずつあるようですね
しかし東区中学は古く、また五角の一点でもあるので、色々考え込んでいました


>>205
こいつぁ失礼しました
しかしこの密集具合は凄まじいものが……慣れてなければ胃がヤラれそうです(率直な感想)


本当に胃が痛くなってきた……wikiも纏めないとだな
オマケ挟んで後に、いよいよヒーローズカフェにお邪魔します
今日中にまた来ます

次世代ーズ投下、お疲れ様です

結と真理は東区の中学校通いとして書いてます。そういや明言してなかった気がする
ぶっちゃけ中学生は特別な事情以外東区最大の中学校に集めればいいと思うの(暴論)

あとすごくどうでもいい話なんですが
親世代の美弥と瑞希の出身高校が不明です。中央高校じゃないのは確定なんですけど
盟主「設定のよりにもよってそこが穴空きってバカなんじゃないですか?」
誰と同じ、あるいは違う高校かっていう話はした覚えがあるんですけどね?
例えばルーモアのサチさんとは同じ、中央高校の獄門寺君とは別、みたいな
でも肝心の、じゃあどこの高校なのかって話を明言した覚えも記録も見当たらない
たぶん南区の商業高校か、東区にある……かもしれない中央ではない高校なの、かな?
アクマ「かもしれないって、それ恐らくスレで一番詳しくなきゃいけない人が言う台詞じゃないよね」
(目逸らし)

おはようございます、次世代の人乙ですー

三年前の事件は、一般に知られている情報はそんな感じで問題ないです
事情知ってる人に聞けば、真実を話してくれるかもしれないし話してくれないかもしれません
(聞きたいなら、情報伝えるネタ書くよ)

>今回の舞台の東区最大の中学は、土川咲李さんの母校だと思うのですが(wiki調べ)
はい、咲李やこちらの次世代キャラは、みんなそこの中学校出身です
戦技披露会で出した外海 黒や謎の忍びも、そこの中学校にかよっています

>しかしこの密集具合は凄まじいものが……慣れてなければ胃がヤラれそうです(率直な感想)
俺もそう思う(鎮痛な面持ち)


>>213
あー、お二人の出身高校、アクマの方がどこの高校だって仰ってたようなきがするんだが、俺も思い出せない
力になれず申し訳ない

 
改めまして花子さんの人に感謝の土下座orz
「狐」の話ですが、「学校町に移動するまでの間に近隣の町で事件を起こしていた」
という部分に言及していくことになりそうです、よろしくお願いします……


>>213
篠塚さんの出身高校ですか?
自分が見た限り、wikiの「設定一覧 学校町」に載ってました


>754 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/15(水) 22:49:54.93 ID:d0IkWHY30
>ちなみに町の中央付近に高校がひとつ。
>東区の南側に「怪奇同盟」本部の墓地と、アクマの契約者の通う高校があります。
>それと東側のどっかにもう一つ高校があったかもしれん。
>
>中学校は大きいひとつの他に、各区内にひとつずつはある。
>小学校は東区のみ、三つ。


東区の高校だという記憶がありましたが、東区には高校が二つあるんですね
あと、避難所だったと思うけど「中央高校はブレザーで東高校はセーラー」というのを覚えています
ああとも、ハッキリ記憶しておりますの!(血走った笑み)
セーラー服が好きですの……! セーラー服が大好きですのォォ……!!(血走った笑い)
真面目な話、地味に3年近く溜めこんでいたネタを出します(ぬるり)


>>214
>(聞きたいなら、情報伝えるネタ書くよ)
おお! ありがとうございます! いよいよ花子さん所の方と接触だろうか
ただ、そうですね、次世代ーズの“彼”に関する情報をもう少し出してからでもよろしいでしょうか
今の段階だと彼はあまりにも学校町の契約者を警戒してるフシがあるので、次回でここをばくはつします
彼は南区商業高校の生徒なのですが……本当に大丈夫なのかコイツ

 
 面白い人間を見つけた
 それが流石 丈(さすが たけし)の、“彼”に対する最初の印象だった
 前々から見かけることはあったが契約者である可能性に至ったのは最近だ

 不思議なことに“彼”からは全く気配を感じなかった
 いや、気配はあるはずだがかなり「薄い」のだろうと当初は考えていた

 だがそうではなかった

 見掛ける内の数度だけ、強い気配が放たれるのを察知したのだ
 違和が疑惑に変わり、流石は意を決して彼に接近することにした

 平日夕方の南区
 “彼”を見つけたとき、流石は一度だけすれ違うように歩いた
 最接近の機会に意識を集中させ“彼”の気配を感じ取るためだ

 そのときの“彼”の気配は至極「薄かった」
 だが、ごくわずかに都市伝説の気配がした


 “彼”は契約者かもしれない


 気配を断つことができる契約者はそう珍しいものではない
 それにこの町には大量の契約者が居住しているのだ
 珍しいことではない

 だが流石はわずかに感じ取った都市伝説の気配の中に何かを感じた
 是非手合わせをしてみたい、その思いを抱いたのは丁度そのときだ
 “彼”には何かがある、流石の直観はそう断じていた

 で、あれば
 いつ会うべきか
 これが問題だ

 “彼”は南区でよく見掛けたが、秋口より東区でも姿を見るようになった
 夜間に歩き回っている所を確認できたのは流石にとって僥倖だった
 流石も早速、夜間の徘徊を開始した






 そして

「何度か見かけた顔だ」

 夜中、東区中学の校庭にて

 初めて“彼”に話し掛けたとき、流石は歓喜と緊張で震えていた
 相対して分かったが、背は自分より高く、年齢は思っていたよりも近そうだった
 当初は成人しているのかと思っていたが、もしかしたら高校生くらいかもしれない

「不思議な気配だな、気配が殺したかと思えば微かに気配を滲ませる、それを不定期に繰り返している
 当初は何かの合図かとも思ったが、まあいい。契約者だな?」
 

 
 自分が何を話しているのかは最早どうでも良いことだ
 早く、早く手合わせがしたい

 普段はこういった衝動に衝き動かされることなど無い
 “彼”、目の前の男にはやはり何かがある
 流石はその答えが知りたかったのだ

「『組織』所属の契約者か?」
「いかにも」

 “彼”の声色は敵意を含んでいたが、契約者かという向こうの問いに、内心流石は打ち震えていた
 “彼”が契約者であるという確信があったわけではないが、これではっきりした
 “彼”は契約者とは何かを知っている

 更にだ、“彼”は自分が「組織」所属であることを見抜いていた
 やはりこの男は只者ではない! 早く仕合いたい!

 だが

「手合わせを願いたい」
「お断りだ!」

 あろうことか“彼”は逃げ出そうとした
 しかし、そのようなことは想定の内だった
 予め待機させていた契約都市伝説、「校庭に現れる落ち武者の霊」に“彼”の足止めをさせる

 怒りと喜びが腹の底を渦巻く
 逃げるとは何事だ、是非仕合せてもらう
 “彼”は怒っているようだが、それはこちらの話だ
 手合わせを放棄して逃げ出そうなど、決して許されることでは無い

 “彼”は憤慨したように、黒色の木刀状の物体を創造した
 間違いなく“彼”は契約者だ、それに加えて“彼”の気配は未だに微弱である
 通例、契約者が能力を発動する際、平時よりも気配が強くなるが、“彼”にはそれが無い
 やはりこの男、何かがある

 “彼”が先んじて木刀を振るってきた
 その一撃を受けてこちらも刃を向ける
 流石は昂る興奮を抑えることができない
 “彼”は油断なく立ち回り、距離を取ろうとする
 勝敗が決するまで、この男を離すわけにはいかない!

 不意に“彼”の姿勢が崩れる

 片手持ちで振るってきた木刀状のそれが変形した
 まるで鞭のように波打ちながら、自分の脚に直撃しようとする

「面白いな」

 この男、創造した物質を柔軟に変形させることもできるらしい
 中々の熟練者に違いない、思わず笑みが零れそうになる
 今度はこちらから攻めようと刀を構える
 それが自分が払うべき礼というものだ


 だが

 

 
「っ!?」

 あろうことか、“彼”は鞭と化した木刀で校庭の土砂を抉り飛ばしてきた
 飛散した石と砂から顔を庇い刀を構え直した時、既に“彼”は逃走し、武者の霊を転倒させていた

 頭に血が上った

 なんという奴だ
 仕合いを放棄して逃げ出すなど
 しかも目潰しなどと汚い手を使って


 その腐った性根を斬り殺してやりたい所だ


 奴は既に校庭のフェンスをよじ登っていた
 起き上がった武者の霊、直正衛門は手に持った槍を振り被って投擲
 槍は奴の横に直撃し、フェンスを揺さぶり、奴は奇声を上げてフェンスの向こう側へと転落した


 追跡し、叩きのめす


 流石と武者の霊は疾走した
 必ず捕らえて、そのふざけた精神に手合わせの何たるかを注入するのだ






 結果、流石と武者の霊は“彼”を見失った
 東区中学を抜けて街道を走り回った挙句、二人は三叉路に出ていた

「ふむ」

 先程よりも幾分か頭が冷めてきた
 “彼”と仕合うため、力量をはかるために挑んだのだが

「悪いことをしたか……?」

 顧みれば“彼”は手合わせに消極的だった
 いや、あからさまに嫌がっていたと見た方が適当だ

 むう、流石は思案する
 興奮のあまり激情に流され、結果として好機を逸したと見るべきだ
 万が一、次回“彼”に出会ったときは、今晩の非礼を詫びた方がいいだろうか

 一抹の申し訳なさを心の片隅に抱いた、そのとき


「ぬゥッ!?」
「……何者だ」


夜道、前方に新たな影
怪しい風体の二人組が立っていた
 

 
 見たところ、前の一人は麦わら帽子にコートという出で立ち
 だがコートから覗く体や腕には深紅の包帯が巻かれているではないか
 その後ろに控える者は羽織りも何もなく、露骨に全身を深紅の包帯で覆っている

「『トンカラトン』か?」
「如何にもッ!!」

 麦わらの者は低い声でそう唸ると、大仰な身振りで前へ歩み出る!

「おゥ、おゥおゥおゥおゥ! しッかと耳にするがいいッ!
 我が名は『朱の師団』四番隊副隊ちょ――つオッッ!?!?」


 不意に鋭い殺気
 直後、道路の舗装が爆ぜた


 即座に受け身を取り、コンクリート塀の陰に潜り込む
 気配は上方からだ、遮蔽物で身を庇いつつ様子を窺うと上空に何かが滞空していた
 大きな翼をはためかせているそれは、人の形をしているがそうでは無い

「あれは『モスマン』か?」
「ぬゥゥ! 名乗りの途中で不意打ちを仕掛けるなどッ! アヤカシの風下にも置けヌ奴ッ!!」

 大声で抗議する方を見やれば、先程の「トンカラトン」二人組も遮蔽物に身を隠し上空の狼藉者に怒鳴り散らしている
 それだけではない、二人組の内の一方は、どこから取り出したのか拳銃のような物を「モスマン」に向けているではないか

 乾いた発砲音が夜の静寂を切り裂く
 だが、「モスマン」は怯んだようには見えない
 それどころか、羽搏きを続ける翼が一瞬、不気味に揺れた

 大気を叩くような音と共に「トンカラトン」の近くのアスファルトが炸裂
 どうやら、上空の「モスマン」は何らかの射撃能力を持っているようだ

 ふと流石が横を向くと、武者の霊は新たな槍を創造し投擲の構えを見せていた
 流石が止める間もなく、武者の霊は槍を投擲
 しかし「モスマン」には到底届かない

「駄目だ、直正衛門。民家に被害が出る」

 流石は再度槍を投げようとした武者の霊を制した
 正面を切ってきた「トンカラトン」はともかく、上空の「モスマン」はまずい
 遠距離の攻撃方法を持たない我々では手の打ちようがない

 流石は携帯を取り出し、専用回線へ架電した
 これは迷うことなく流石が所属する「組織」の対処すべき事案だ

「こちら“オサスナ”、学校町東区で『トンカラトン』二体、『モスマン』一体と会敵
 位置情報は送信通りだ。現在、『モスマン』の攻撃を凌いでいる」

『位置を特定した。これより応援を送る
 「狐」の配下の可能性もある、十分に警戒せよ』

「了解」

 通信を切り、状況に備える
 “彼”のことは「組織」に報告する積りは無い
 あれは自分の失態であり、故に自分で片づけるべき件だ
 流石はそう判断して、目前の状況へと意識的に注意を払った

 我々と、「トンカラトン」、そして「モスマン」
 襲撃してきた「モスマン」の方は討伐するとして
 「トンカラトン」の方も、出方次第では捕縛が必要になるだろう
 流石は、能力によって創造された刀を引き寄せ、状況の観察を続ける

 少年の名は流石丈
 中学三年生の男子にして武者の霊の主
 そして、「組織」強硬派に所属する、「契約者」である




□□■

 


Q.(現在の時間軸は9月の頭頃(?)なので、合同戦技披露会は未来の出来事になるのですが)
  サスガ君は合同戦技披露会に出場しないんですか?


A.

流石「……」

流石「告知は受けたが出場できなかった」
流石「担当の黒服に出場するなと釘を刺された」
流石「戦技は見世物では無い、というのが理由だ」
流石「所属契約者の能力を明かしたくない、というのが本当の理由ではないだろうか」

流石「ちなみに披露会への見学参加も許されなかった」
流石「不服だ……」










 高校一年生
 初恋の人には「ガキっぽいから」という理由でフラれた


「組織」所属の契約者
 名前は流石 丈(さすが たけし)で強硬派所属の中学三年生男子
 契約した都市伝説は「校庭に現れる落ち武者の霊」
 彼女や好きな人はいないし興味もない


落ち武者の霊
 通称「直正衛門」、本名は不明
 契約の影響か、常に面頬で顔面を隠している
 嵌ってしまった女性のタイプはニャーKBのフササ(本命)


「朱の匪賊」兄者
 絶賛花嫁募集中


「朱の匪賊」ヤッコ
 上に同じ








 

 
前回(>>207-211)の裏の話
流石……
「評判や期待のとおりの事実を確認し、改めて感心するさま。なるほど、たいしたもの。」という意味の名詞だが
人名と名詞ではゴッチャになるとややこしい
今回は漢字で書いたが、これからは様子を見つつカタカナで書くかも


花子さんの人に土下座しますorz
全部暴露してやるんだ!!
次世代ーズに登場した「トンカラトン」集団は
実は「狐」の勢力を加勢するために学校町にやってきたんだ!!
まだ二人組しか出てませんが実際は学校町内に大勢潜伏しています。合流できるかどうかは別の話です
もう一度花子さんの人に土下座orz


次回はいよいよ「ヒーローズカフェ」1回目の訪問です
男がナンパされます
よろしくお願いします

次世代ーズ投下、お疲れ様です
うーんこの漂う戦狂いの雰囲気……組織の人材は厚い(棒)

>>215
ありがとう……ありがとう……!
wikiの方にあったのか、手持ちのメモにないから見てなかったが
というかこのくらい覚えておけよ俺と思わずにはいられない

そしてそうか、東区が高校二つでセーラーとブレザー……
確かにそんな会話した気がする。ということは瑞希はセーラー美少女戦士だったのか()
そして在処ちゃんはブレザーと。なるほどなあ

夕食支度前に覗いたら投下きてた。乙でしたー
戦闘狂の気配を感じる!
なんか、仲良くなれそうな人に覚えがががあ

>ただ、そうですね、次世代ーズの“彼”に関する情報をもう少し出してからでもよろしいでしょうか
はーい、了解です
もしも、三年前の事件が起きた中学校を調べたい、とか言う事情があるなら、楽に中学校に侵入できる(と言うか、堂々と入れる)方法あるよ、とも提示しておきますね

>今の段階だと彼はあまりにも学校町の契約者を警戒してるフシがあるので、次回でここをばくはつします
ここに、契約者ではなく、かつ三年前の事件の事を知っており、都市伝説や契約者の事をよく知っている男がいてな(直斗をじっと見る)

>実は「狐」の勢力を加勢するために学校町にやってきたんだ!!
何……だと……ww

すでに魅了済か、魅了済でないかだけ確認して大丈夫でしょうか
あいつ、学校町に入ってから(作品内時間軸的に3月から)、とある理由で一切、一切配下を増やせていないのですよ

 
いま書いてますが今夜中に間に合うかなァ……


>>222
瑞希さんは今でも高校の制服持ってたりするんだろうか、
ふと罰当たりなことを思い至りましたが……どうなんですか!? 着たりするんですか!?


>>223
ありがとうございます
ここで書くのもアレかなと思い、裏設定スレに置いておきました
ツッコミ所ありましたらどうぞお気軽にお願いします……します……
当初、あの長い話を順序立てて花子さんの人に意向確認していくつもりでした
本当に……本当に申し訳ありません……orz

あと、中央高校のイケメンズと接触した場合、男は絶対に挙動不審になる
直斗さんの場合、男の二言三言を聞いただけで彼の身上と目的を見抜くと思います
男は誤魔化そうとするが、真の目的の方も見抜くと思いますね!
その為の情報開示をですね、早い所進めてですね……

絶対にここから甘々なラブコメに持って行ってやる……!

>>224
……あるかもしれんけど、サラシで後年膨らんだ部分潰さないと着れないんじゃないかな
そしてそこまですると体が動かしづらいので戦闘に支障が出る。だから普段はまず着ない
美弥は成長が当時から完全に止まっているので今でも普通に着れると思いますが

確認したけど上がってなかったからセルフ代理投下

“出会い”とは時に残酷である



「あれ、何か動いた?」



決して交わるはずのなかった一人と一人



「――――何ダ、“アレ”ハ?」



やがて彼等は邂逅し



「ヘビでもいるのかな? 野生のヘビとか興奮だわ。おーい」



「私ハアノヨウナ“異形”ヲ見タ事ガ無イ……一体何ダ!?」



そして



「つってヤマカガシやマムシだったらどうしよ…う?」

「待テ! オ前ガ何者カ……ッ、光ッ――――――」






―――――――開闢の時だ。がっひゃっひゃっひゃ……

「…何あれ」

黄昏町という町がある
時は2004年8月、熱いナイフのような日差しの中、セミの合奏が響くその黄昏町の山奥
小学校低学年程の少年―――黄昏裂邪は、不思議そうに独り呟いた
それもその筈である
ガサガサと草の中を動くヘビか何かを追いかけていた彼にとって、その光景はあまりにも想定外だった
木に凭れ掛かる人間……の、ような“何か”
黒いローブを身に纏い、顔は窺い知れない
いや、本当に顔はあるのだろうか
覗き込めば忽ち飲み込まれてしまうような、見るからに黒しかないそれは、
まるで闇がローブを纏い形を持っているかのようだった
仮に裂邪が現実を見過ぎ、常識に埋もれた大人だったなら正気を保てなくなるだろう
だが彼は幼かった
ヘビじゃないけど凄い奴見つけた――――そのくらいにしか気に留めていなかった

「ねぇねぇ」
「……子供カ……何ノ用ダ?」

胃を揺さぶるような重い声で、“何か”は答える
よく見れば、肩で息をしているようだった

「えっと…誰? てか、人間?」
「…質問ガ多イナ……マァ、良イダロウ
 少年…都市伝説トイウノヲ知ッテイルカ?」
「あ、知ってる知ってる、「口裂け女」とか「トイレの花子さん」とかでしょ?
 ……え、もしかして都市伝説なの!? うわーナマで初めて見た」
「騒ガシイナ…如何ニモ、我々ハ「シャドーマン」ト呼バレル都市伝説ダ
 都市伝説ハ、同種デモ性質ガ異ナル場合ガ多イ…
 我々ハ人知レズ影ヲ彷徨イ渡リ歩ク……ソウヤッテ今日マデ過ゴシテキタ」
「今日までって?」
「クフフフフ…我ナガラ馬鹿ナ事ヲシタモノダナ
 我々ハ光ニ弱クテナ…少シ外ニ出レバ、コノ様ダ」
「ッ……死んじゃう、のか?」
「人間ニ譬エレバ…ソウナルナ
 コノ世カラ我々ハ跡形モ無ク消エル
 強イテ言エバ、オ前ノ記憶ノ片隅ニ残ル位ダロウ」
「おい、消えるって…死ぬってそんなことなのかよ
 辛いとか悲しいとかないのか!?」
「人間ヤ他ノ生物、或イハ他ノ都市伝説ニハアルダロウ…私ニソンナ便利ナ感情ハ無イ
 只、私ハコノ世界ヲ見タカッタ」
「……世界?」
「ドウイウ理由デ、ドウイウ工程デ我々ガコノ世ニ生マレタノカ…
 分カリ得ナイガ近付ク事ハ出来ヨウ
 コノ世ニ存在スル全テノ生物、事象、光景―――――ソノ全テヲ記憶シタカッタ
 最早戯言デシカ、無イガナ……全テガ、遅カッタ」
「遅くないよ。まだ、間に合う」
「……何?」

裂邪は、「シャドーマン」の傍でしゃがみ込むと、
顔をのぞきながら、すっ、と手を差し伸べた

「…何ノ真似ダ?」
「ボロっちい本に書いてた。都市伝説は、人とケイヤクできる
 どうやればいいか分かんないし、どうなるかも分かんない
 でも、ケイヤクすればお互いに強くなれるって…そう書いてたと思うんだ」
「正気カ? オ前モ死ヌカモ知レンゾ」
「俺は死なない。俺にも夢があるんだ
 お前と…「シャドーマン」と、同じ」
「ッ……」
「俺も生き物が好き。黄昏町の山も川も、いっぱい遊んでいっぱい探した
 違う。こんな小さな町で生き物を見たいんじゃない
 ライオンやパンダ、ジンベエザメ、ホッキョクグマ、ペンギン
 この世界の生き物を、ありのままで見てみたい
 頑張って生きてる姿を、そのままで
 だから……一緒に行きたいんだ、「シャドーマン」と」
「少年…」
「ねぇ、「シャドーマン」…俺と、契約しない?」

裂邪が言い終えるや否や、「シャドーマン」の身体が、僅かに震え始めた
笑っているのか、それとも泣いているのか
それはもう、誰にもわからない

「…強カナ少年ダナ…良カロウ、気ニ入ッタ
 ドノ道消エユクコノ命……オ前ニ預ケヨウ!!」

瞬間
裂邪がふと、己の両掌を広げてみた
熱い
何かが流れ入ってくるような、不思議な感覚
今までに感じたことのない体験が、暗に成功したことを知らせてくれる
都市伝説との、契約を

「こ、これって、成功したのか―――――うおっ、「シャドーマン」?」

気が付けば「シャドーマン」は、すくっと立ち上がっていた
こちらもまた、不思議そうに辺りを見回して

「……何トイウコトダ……奇跡カ?」
「おぉ、元気になったじゃん!
 あれ? でも光、苦手じゃ…」
「成程、契約スレバ都市伝説モ力ヲ得ルト聞イタガ…コレ程トハ
 少年ヨ、有難ウ。オ前ハ命ノ恩人ダ」
「え、あ、いや、その…ウヒヒヒ、バカ、照れるだろ」
「ダガ…都市伝説ノ契約者トナッタ今、何ガ起コルカ分カラナイ
 我々モ尽力スルガ…常ニ死ト隣合ワセダトイウコトヲ忘レルナ」
「大丈夫大丈夫、俺喧嘩強いし
 あ、そうだ、「シャドーマン」」
「ム?」

「折角だから名前決めようぜ?
 ほら、「シャドーマン」って長いし」
「名前…我々ニハ無カッタ文化ダガ、良イダロウ」
「よし! じゃあ今日からお前は“ツキカゲ”な!」
「エッ」
「え? ダメ?」
「イヤ、何カコウ……シックリコナイ」
「んーじゃあ……何かない?」
「ソウダナ…“シェイド”、ハ如何ダ?」
「おーカッコいい! んじゃ改めて、俺は黄昏裂邪! よろしくなシェイド!
 あともう一つ、“我々”って言ってたけど、シェイドって一人じゃないの?」
「…ホウ、随分面白イ所ニ気ガ付クナ」
「生き物観察大好きだからね」
「先ズ質問ダガ、『カツオノエボシ』ヲ知ッテルカ?」
「電気クラゲって言われる猛毒のクラゲだね
 でも本当はクラゲじゃない、それは見た目が似てるだけ
 幾つものヒドロ虫っていう小さな生き物が集まって、それぞれの役割を持って1匹の生き物に……
 え、ってことはどっかに違う形の「シャドーマン」が幾つもいるってこと?」
「…私モモウ一ツ聞コウ。年齢ハ?」
「ん? 8歳。小学2年生」
「ア、ソウ……ソノ通リダ
 移動ヤ捕食、ソレゾレニ長ケタ個体ノ“私”ガ影ノ中ニイル
 私ハ“脳”―――思考ヤ記憶、ソシテ意思疎通ヲ司ル」
「マジか! すげぇな、じゃあ1回出してみ―――――――――――――、て、」

ふら、と膝をつき、少し呼吸が荒くなる
裂邪は自身に何が起こったのか分からなかったが、それでも気づいた
――――死ぬかと思った、と

「ドウシタ?」
「…なんか、影の中のシェイドを意識したら…」
「ソウ、カ……恐ラク、未ダソノ時デハ無イノダロウ
 オ前ガ成長シタ時……ソノ時ハ見ラレルダロウナ」
「うーん、残念だけど、まぁいっか」
「デハ私ハ戻ルトシヨウ
 必要トアラバ呼ンデクレレバ良イ
 我々ハ、常ニ影ノ中ニイル」

そう言って、すぅっ、とシェイドは裂邪の影の中へと消えていった
「じゃあな」と呟いて、裂邪は笑みを浮かべて山の中を歩き出す
陽は傾き始め、黄昏時を迎えようとしていた












自宅の押し入れに隠してあった1冊の古い本
父親に強く叱られたが、その内容はしっかりと覚えていた

「ウヒヒヒヒヒ……ヒハハハハハハハハハハ!!
 本当に…本ッ当に出来るんだ、世界征服!
 これからシェイドと一緒に! 邪魔する奴らをぶっ殺して!!
 この綺麗な地球を、俺のものにするんだ!!
 ヒハハハハハハ!! ヒィッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

山奥に、少年の高笑いが木霊する









(ウワァ………大丈夫カ、コノ先……)







   ...to be continued

改めて新スレ乙ですのン
戦場も変わって心機一転、今年も宜しくお願いします

一言で表すならば――――順調

全て、順調に進んでいる

奴の――――黄昏裂邪の成長が





2004年8月、弟より少し遅れて契約者になった黄昏裂邪だが、
奴にしか無いもの……“黄昏の呪い”、それも“初代”と同じものを持っていた
だが、まだ覚醒していなかった
必要なものは、“質”と“量”
故に全てを整えた

「のっぺらぼう」として倒された我が分身が「蠱毒」の呪いを乗せたとも知らず、
小娘が集めた6,000もの都市伝説を我武者羅に倒した愚か者よ
既に十分な力を持ちながら、拠点を学校町へと移り第2段階へ
予め作っておいた元人間の都市伝説と接触させ、さらに契約にも成功し、
次々と他の都市伝説とも契約を結んでいった
ひどく遠回しになってしまったが、“贈り物”も気に入ってくれたようだ
面白いことに“XADOMEN計画”のディシリオン・ダークナイトや、
「生命エネルギー」の作った合成都市伝説とも契約している
そして……




遂に―――――覚醒めた




あれから10年の月日が流れた
“我”が遊んでやっても対等に相手が出来る程になった
だがまだ足りない
早く上り詰めて来るがいい
この“我”と肩を並べるほどの高みに!!










「来てやったぞ、黒幕」
「……む?」

薄紅色の風が吹く、弥生の終わり
黒尽くめの少年――黄昏裂邪は、とあるビルの屋上でローブを靡かせる男を呼び止めた
その顔は全くと言って良い程、印象に残らない、何とも言えない顔であった
説明しようとすれば、想像しようとすれば、脳味噌が悲鳴を上げる
あれは果たして、貌なのか、と――――

「これはこれは…何故ここに?」
「この間中央高校を卒業したんだ
 俺は晴れてR-No.の任務を熟すだけの社会人になる訳だが……どうもすっきりしないんだ
 俺やミナワ、ナユタにローゼちゃん―――幾多の人々の人生を引っ掻き回して滅茶苦茶にする、
 そんな奴がこの世の中にのさばってるってんなら…そいつを片付けなきゃ、“Rangers”の名が廃る」
「つまりどういう事だ」
「お前の物語は今日で最後(レッツト)だ、ニャルラトテップ!!―――――――解放!!」

スマートフォンをバックルに翳せば、金の枝のペンダントが黄金の鎌へと変化する
同時に、背後に侍るようにシェイド、上空から理夢とミナワ、ウィル、ナユタ、
そしてビルの下からゆっくりとビオが顔を出し、男を――ニャルラトテップを包囲した

《砲撃用意,完了》
『あの世でゼノン達に宜しくしてくれたまえ』
「ここで会ったが百年目ェ! 潔くお縄に入んなせぇ!!」
「テメェの見せる悪夢はお終いだ! 俺様が食ってやる!!」
「私の……お父さんと、お母さんの……仇……貴方だけは、許せません!」
「…裂邪ト会エタノハオ前ノオ陰ダ、礼ハ言オウ
 然シコレ以上ノ愚行ハ認メル訳ニユカン」
「がっひゃっひゃっひゃ…全員集合ということか」
「何が可笑しい?」
「何が、だと? 滑稽な事しかないでないか!
 ここにいる者達は、“我”という存在があってここにいるのだぞ!?
 それが今、我を殺そうとここに集った…がっひゃっひゃっひゃ!! 「ティンダロスの猟犬」を得た人間を思い出す
 あらゆる時間と空間に同時に存在するこの“這い寄る混沌”を殺せば、
 待ち受けるのは時間逆説という更なる混沌だ!!
 我はこの世の人類に力を与えた! ある者は繁栄、ある者は破滅!
 幾重にも積まれた成功と失敗の輪廻が無となるのだぞ! それを理解しているのか、貴様らは!?」
「知るか! 正されたものは乱したい、乱されたものは正したい! それだけだ!!
 お前が消えてカオスがやってくるなら、俺が秩序ある世の中に戻してやる!!」
「がひゃっ………その意気や、良し!!」

突如飛び上がったニャルラトテップを、ビオの機関銃とチタン弾の雨が捉える
が、それらは何らかの力によって寸でで止められ、跡形もなく消失した

《命中0,目標損傷0,理解不能...?》
「今のって…魔法か何かですか!?」
「がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!
 この程度、全ての魔導書を暗記している我にして見れば動作もないことだ!
 貴様等もこの弾丸同様、片腕で捻り潰す事も出来る!
 我には何者も打ち勝つ事は出来ん――――“神”さえも!!!」
「なら簡単だ、俺が“神”を超えれば良い!! 覚悟しろ邪神!!」
「まぁ……そう焦るな、黄昏裂邪
 まだその時ではない」

ヴッ……………ン
裂邪の目の前に、闇が広がった
声を聞き、裂邪はシェイド達も同じ状況である事と、何処かに閉じ込められた訳ではないことが分かった

「っち、何のつもりだ!?」
「なぁに、これから少しばかり旅を楽しんで貰おうと思ってな?」
「旅だと!? ふざけんな! 姿を見せろ!!」

辺りを見回す裂邪
だが、何処を見ても闇、闇、闇
終に彼は気づいてしまった
視界の外にある、光
これは闇に覆われているのではない
闇が、目の前に“立っている”…そして裂邪の視界を遮るように動いていたのだ、と
それに気づくや否や、更に声がする

《異常発生,異常発生,亜電磁力反応eeeeeeerrorrrrrrrrrrr》
「何だこれッ、吸い込まれt」
「きゃあっ!! ご主人さm」
「ッ!? ミナワ!理夢!ビオ!!」
「一体ェどんな術をっ、お、おわぁっ!?」
「ウィル!! 何が…!?」
「ク……ニャルラトテップ! 何ヲシテイル!?」
「言っただろう? 旅をしてもらう、と
 その闇は扉……その先にはこの世界とは限りなく近く、果てしなく遠い世界」
『まさか…並行世界へのっ、くぅっ!?』
「ナユタ!?……並行世界、だと?」
「その通り
 貴様等の知らぬ、異なる時間の流れる世界……
 当然、我のような空間干渉能力を持っていなければ帰ってくることすら儘ならない
 要はつまり、暫しの別れだ」
「フザケタ事ヲ…!! 今直グニ貴様ヲッ、ヌゥッ!?」
「シェイド!!……ニャルラトテップ!!
 見ていろ、俺は必ず帰ってくる!!
 お前を夢幻泡影に帰すまで、俺は絶対に滅ばない!!」
「がっひゃっひゃっひゃ……楽しみだ。しかし
 さらばだ、黄昏裂邪」



ほんの、一瞬
闇が消え、そこに立つのは一人だけ
ニャルラトテップ、ただ一人
2015年3月末
黄昏裂邪は、この世界から消滅した











【 夢幻泡影Re: † Catastrophe of Crawling Chaos 】











   ...to be continued

あれこれ考えた結果、一番書きたいものを書こうと
というわけで時代は2015年、裂邪が(確か)高校卒業直後です
めちゃくちゃすっ飛ばしとるけど…この話が書きたかったんや…

【それは日記帳……と言うよりも、正確には自身の考えを書きなぐるためのメモ帳に近いようだ】
【小さいが分厚く、表紙は革製でしっかりしている。長く愛用している物のようだ】
【その一部のみ、抜擢する】


20XXねん ○がつ×にち

ぼくはみんなとはなにかちがうらしい
ときどき、みんなとかんがえがずれる
なんでおなじじゃないんだろう

20XXねん ■がつ▲っか

みんなちがうのはあたりまえ、とおとうさんがいった
でもやっぱり、ぼくだけなにかちがうのはきっとへんなのだとおもった
みんなにはないしょにしたほうがいいとおもう

20XXねん ×がつ×にち

(書いた文章が黒く塗りつぶされている)
としでんせつにおそわれた
たぶん、こわかったのだとおもう
みんながしんでしまうのがなによりもこわかった
(続きは真っ黒に塗りつぶされている))


20XX年 ●月◇日

しられないようにしなくては
きっと、ぼくはいじょうなのだ
しられたら、みんなにきらわれるかもしれない
かくさなければ

20XX年 ◇月◎日

さくりさん、と言う人がやさしくしてくれた
でも、あの人はとしでんせつけいやくしゃじゃない
としでんせつのこともしらない
あまりかかわるべきではない

20XX年 △月●日

さくりさんがけがをした
どうして、かばったのだろう
どうして、あの人はにげなかったのだろう
にげだしたほうが、ずっと楽だと思うのに

20XX年 △月▽日

あの人はやさしい
やさしいけど、お人よしすぎる
ふかいりさせるべきじゃない

20XX年 ◇月●日

ほおずきさんが「あのじょうちゃん、都市伝説につけこまれやすいぞ」と言っていた
せいしつ上、そういうのがわかりやすいらしい
「都市伝説のえいきょうをうけやすい」とも言っていた
気をつけるようにつたえておかないと

【ここより数年分、取り留めのない穏やかな日々について書かれている為省略】

20XX年 ◆月□日

咲季さんは来年受験生だ
どこの高校に行くつもりなの、と聞いたら「中央高校」と答えられた
それなら、自分もあそこに行こうか
皆で同じ高校に行けたらいいな

20XX年 ■月◎日

みんなの前では、時々隠せない
本当なら隠さなければならないのに

でも、知られても嫌われなくてよかった
咲季さんには知られないようにしないと

20XX年 ◆月×日

愛人がいなくなった
どこに行ってしまったんだろう
【「探索・監視を要請すべき?」と言う一文に線が引かれて消されている】

20XX年 ◎月□日

飛び降りがあった
事故?自殺??

20XX年 ◎月◎日

東区に新しい診療所
「先生」がどんな人か確認しに行く

20XX年 ◎月◆日

また飛び降り
他殺?(都市伝説絡みの可能性あり。調査開始)

20XX年 ◎月×日

「狐」が学校町に入り込んでいるとのこと
いくつかの組織や集団が警戒し始めている
気をつけるよう言われた

20XX年 ◎月△日

犯人→咲季さんの父親?
証拠を固める必要あり
咲季さんには気づかれないように

20XX年 ◎月◇日

「組織」ANoの黒服が咲季さんに接触していたのを確認
咲季さんが思い悩んでいる
何を吹き込まれたのだろうか




20XX年 ◎月●日

咲季さんが死んだ
絶対に許さない、殺すなんて生ぬるい、もっと苦しめなければ



.

20XX年 ◎月○日

証拠確保、踏み込む
【三行ほど、真っ黒に塗りつぶされていて読めない】

20XX年 ●月●日

鬼灯さんが「狐」を追いかけに行くと言って学校町を出た
何かわかったら、先々で伝えてくれると約束してくれた
行き先もわかっている、生存報告もしてくれる
安心できる

愛人や咲季さんのようにいなくなってしまう訳じゃない
大丈夫

【約2年と数カ月分程記述を省略】

20XX年 3月26日

「狐」、学校町侵入を確認
見つけ次第対処

20XX年 3月27日

「狐」、力と人格消滅?
もしくは、何らかの事情で表に出なくなっている
要観察・監視
「組織」過激派、もしくは強行派に知られた場合、宿主ごと始末される可能性あり
宿主の生命を優先するものとし、皆以外には極秘とする

20XX年 3月29日

「狐」の配下が学校町に入ってきているはず
鬼灯さんから、近々日本に戻るとの連絡
「狐」の移動した跡にいる「狐」配下を始末しながら来るとの事
学校町にも来てくれるはず

20XX年 4月23日

「狐」の人格・能力、共に表面化する様子なし

20XX年 6月9日

「教会」から異端審問官が派遣されるとの事
あの人でほっとした。他の異端審問官は面倒
「バビロンの大淫婦」、時期が悪い。見つけ次第処分

20XX年 7月××日

愛人が帰ってきた
「狐」「バビロンの大淫婦」どちらの影響も受けていない事を確認
心配させた借りはそのうち返してもらう
【小さく、「生きていてくれてよかった」と続けられている】


20XX年 8月1日

「狐」相変わらず人格・能力共に表面化せず
「バビロンの大淫婦」と接触するとまずいかもしれない

20XX年 8月8日


Xを確認
手を出しにくい立場
彼女に何かあっては困る
【小さく「先生」に協力要請の必要あり?と追記されている】





to be … ?

メインキャラの誰かの日記もどきぽい
愛人君が帰ってきた月とか適当です。はないちもんめの人に焼き土下座
何月か修正あったらご連絡ください。wiki掲載時に修正します

 

 注文したアイスティーを一口飲む
 美人さんの方はココア系の飲み物を口にしていた
 何やら飲んだらめっちゃ元気が出そうな感じのドリンク名、だったはずだ

 怒涛のヒーロー攻勢が引いた為か、心に余裕が――生まれない
 美人さんと二人、喫茶店で話をしているという今の状況に意識が行ってしまう
 どこか愁いを帯びた美人さんは俺みたいなのがそう易々と出会える相手では無いし、こんな機会は二度も無いだろう

 そもそも、あの雨の日に出会ったとき
 俺が咄嗟に口走ったお茶のお誘いに彼女は「また今度」と答えた
 この語の意味するのは女性がよく使うという奥ゆかしい断り文句のはずだ
 事実コンビニで買ったエンタメ雑誌にもそう書いてあった

 そこから本当に誘われるだなんて、完全にアウェーだ
 いや嬉しいんだけども! 気恥ずかしいほど嬉しいんだけども!

 しかもアレだぞ? チェリーボーイをキルするような格好だぞ!?
 美人さんの胸元に目が行ってしまいそうになるのを理性が抑えに掛かる
 彼女は今、店内のテレビの方に視線を向けているから少し見てもバレ――じゃなくてっ!!


 俺の脳みそでは早くも理性と欲望がシーソーがっこんがっこんを始めていた

『いいですか早渡、素直に欲望を開放なさい。そしてこのビューティーをホテルに引っ張り込め! やるべきことをやれ! この童貞野郎!』

 欲望の側に陣取っているのはエンジェル早渡だ、こいつは常に俺をピンクの世界に引きずり込もうとする

『駄目だ脩寿! お前アレだろ! 男を磨くって自分に誓っただろ! 流されるな! 自分の欲望に敗けんじゃねえ!』

 対して理性を司るデビル早渡はかつて俺が心に決めたことを想起させてくれる真の友人なのだが、常に劣勢気味の奴だ

 『いい加減無駄な努力は止めるのです、早渡。お前が望みに望んだ巨乳女子ですよ? 土下座して頼み込んでとっととそのおっぱいに埋もれろ!!』

 負けるなデビル早渡! 負けるな俺! 俺は自分を超えるって決めただろうがッ!!


「あの、いいかしら?」

 美人さんの声に我に返れば、彼女はこちらを見て笑っていた
 先程よりもクスクス笑っている

「え、あー、なんか、おかしかったっすか……?」
「ごめんなさい。あなた今、ものすごい顔していたわ。百面相」

 俺の中の葛藤が顔に出ていた、だと?
 全てを見透かされたかもだ、顔面が燃え上がるように熱い
 恥ずかしい……、どこかに穴があったら真っ先に飛び込みたいくらいだ

「そろそろ、お互いに、自己紹介、しませんか?」

 美人さんは一頻り笑った後でそう提案してきた
 涙が滲むほどおかしかったのか
 ほんとに恥ずかしい

 とにかく自己紹介だ
 こういうのはレディーファーストで無いことくらい俺でも分かるぞ、お先に行こう
 

次世代の人乙です
甘酸っぱいデートのような光景にニヤニヤ
美人に弱いなぁww


>一方淫婦に対する思い切りの良さが怖い
「バビロンの大淫婦」に対して思い切りがいいのであって、大淫婦が憑いてるだろう人間に対しては温情を見せると信じて……!(打ち切り風)

花子さんとかの人乙ですの
日記調の話って好きだわ
好きなのになかなか書けないから辛いわ
その対象の変化を表すのにはもってこいなんだけどな、狂っていく様とか

次世代ーズの
人乙ですの
「シャドーピープル」と契約した美少女だと
これはお持ち帰りd(影に飲まれました


>>244
英題を訳すと“這い寄る混沌の結末”になるぜ
つまりそういうことだぜ!
あととんでもなく斜め上に話が進むことをここでお詫びするぜ(ぇ

次世代ーズ投下お疲れ様です

>厨房にいた男性の方は店長だろうか
>そういえば店を出るとき俺を見ていた気がする
美弥(店内放映リストにアンパンマンを加えなきゃな……)
とか思いながら見送ってましたね間違いない
ご当地ヒーローも抑えてる放映リスト、いったいどうなってるんですかね?

しかし美弥君、成長止まって高校生の頃のままの、若い姿でいる割に
渋い雰囲気纏えるなんてずいぶん努力したんだろうなと思いました
でも確かに美弥のヒーローイメージはハーフボイルドライダーに影響受けてるはずなので
こういう方向に向かうのは当然か。これたぶん結ちゃんは父親も手本にしたんだな……

あとね早渡君、その大和撫子っぽい見た目のは君の思ってるような女性ではないぞ
君がこの間遭遇したような戦闘狂が入ったヒーロー(ヒロインではない)なんやで……
盟主「そもそも篠塚一家全員見た目詐欺なのでは?」
へ、変身してない結ちゃんは見た目とそこまで差異はないし(震え声)

>>256
>その対象の変化を表すのにはもってこいなんだけどな、狂っていく様とか
クトゥルフTRPGなんかだと日記見かけたらヒントゲットのチャンスよな(ただしSAN値チェックの危険性あり)

>これはお持ち帰りd(影に飲まれました
無茶しやがって……

>>257
>あとね早渡君、その大和撫子っぽい見た目のは君の思ってるような女性ではないぞ
>君がこの間遭遇したような戦闘狂が入ったヒーロー(ヒロインではない)なんやで……
普段は大和撫子で、戦闘時のみ戦闘狂って素敵じゃね?(お前の好みは聞いてない)

>盟主「そもそも篠塚一家全員見た目詐欺なのでは?」
見た目詐欺とかよくあるよくある(一部自キャラから全力で視線をそらしながら)

>>258
>普段は大和撫子で、戦闘時のみ戦闘狂って素敵じゃね?(お前の好みは聞いてない)
良いか悪いかでいえば良いと思います(目逸らし)
でもね、ヒロイン力は低いんじゃないかなーって
アクマ「逆に聞くけどヒロイン力高いキャラクターってうちのメンバーだと誰なのさ?」
小さい頃遊んでくれたお姉ちゃんというエピソードを有しながら
相反する妹属性を持ち料理上手で一途な想いを向ける篠塚文って娘がですね
アクマ「何も間違ってないはずだけど、そもそもその設定がおかしい」
あと云百年処女で乙女的反応が期待できる盟主様かな
盟主「張り倒しますよ?」

>>259
>ついでに魔術が載ってたり
あるある

>>260
>でもね、ヒロイン力は低いんじゃないかなーって
えっ、それなりにヒロイン力ある方では


なお、うちの連中で一番ヒロイン力高いのは、次世代編だと推定憐辺りですかね(視線をそらしながら)

>>261
>えっ、それなりにヒロイン力ある方では
そうかバトルモノであることを踏まえると戦闘能力が高いのは
相棒的な方向性からヒロイン力がそこそこ高く見える……?


うーん、ヒダル神の契約者が小学校を襲撃して
子供たちを人質にとって組織に金を要求する話とか
思いついたけどすぐ対処されそうだから目的を変えた方が良さそうだ

 
皆さん乙です

>>255
確かに早渡は美人に弱い
いや弱いかな……まあ弱いな
後、場のノリと空気に乗ってしまう所がある

>>256
実は夜さんを出すにあたりシャドーマンの人の目が怖かったことをここで白状しますの……
夜さんは学校町にあの伝説の「シャドーマン」の契約者、黄昏裂邪氏がいることを知らないはずだ

>>257
なんかもう本当に恐れ多いです
美弥さんはゴルディアンと逢魔時の方でかなり渋めの雰囲気があったので
多分こうだろうと書いた結果が8話でございます
感謝ですの!

>あとね早渡君、その大和撫子っぽい見た目のは君の思ってるような女性ではないぞ
早渡「えっ? えっ??」
彼は一応鼻が利くという設定がありますが能動的に感覚を開かないといけない点と
場の雰囲気に乗ってしまいやすい面があるので8話で「カフェ」に行った時
篠塚さん夫妻が契約者である事には全く気づいてませんね

あと、アクマの人に確認しておきたいんですが
美弥さんは半田刀也君や早渡のことをどう呼称しますでしょうか
2度目の訪問時に美弥さんにご挨拶となるはずなので今のうちにご確認でございます……


この場で日向ありすがどんな子かバラしてやりたい衝動と戦っている
彼女は元主人公枠のはずかしいことの被害担当である

 


 日が大分西に傾いた学校町の東区
 高校近くの路地、電柱の影に隠れるようにして彼女は佇んでいた

 東区高校のセーラー服を着た彼女は携帯に目を落とす
 つい先程同じクラスの友人から彼女宛に送信されたメッセージだ


   『 ありすごめーん(。・ε・。)
     あと5分くらいで終わるから待ってて(人ゝω・)
     スマン八(-_-;)  』


 今日はこの友人と一緒に級友のバイト先へ遊びに行く積りだったのだが
 肝心の友人は何かの仕事を少し残しているらしい、HRの前にそういう話を聞いた

 仕方ない、待つか。彼女はメッセージを読んで嘆息する
 とはいえ友人を待つ彼女は急いでいるわけでもない
 今日は図書室も休みだし、時間はある


 彼女のもとへ一人の警察官が近づいてきたのはそのときだった
 少女は顔を上げる前より彼の存在を察していた


「すいません、こんにちは」

 少女は眼鏡越しに、目の前に立つ警察官を見詰めた
 警察官の顔は不気味なほどに無表情だ

「少し調査にご協力頂きたいのですが」
「その前にいいですか?」

 肩ほどまでの髪を揺らして彼女は警察官の手元を観察する
 彼の手は腰に吊られた拳銃のホルスターに置かれていた

「最近、不審者が増えてるみたいなんですけど」
「ええ。ですから私達も東区を警邏していまして、その調査を」
「その不審者というのは、お巡りさんの格好をしているらしいんです」

 警察官の言葉を遮るように話すと、彼は無表情のまま押し黙った

「学校側からも通達が出てるんですけど
 お巡りさんは最近、必ず 二人で パトロールするようになったらしいんですよ」

 眼前の男の瞼が小さく震えた

「申し訳ないんですけど。お巡りさんの警察手帳を見せてもらえません?」


 一瞬の沈黙の後
 警察官の手が銃把に掛かった




 

 

 だが
 警察官を装った男が、銃を抜き取るよりも速く



「                        」



 彼女は何かを小さく呟いていた


 その瞬間
 警察官は雷に打たれたように硬直


「んんんっ♥ んんん゙ん゙ん゙っ♥」


 そのままアスファルトへ倒れ伏してしまった


「きっ♥ ぎも゙ぢい゙い゙ぃ゙ぃ゙っ♥」


 男の口から低く唸るような譫言が漏れ出る
 その内容が何やら変質者めいていた点はひとまず措こう


「はぁ……、『偽警官』、これで四人目ね」

 少女は忌々しげにかぶりを振ると倒れた「偽警官」を眼鏡越しに睨みつける
 そして嘆息しながら独り言のように呟いた


「何やってるのかしらね、『組織』は」





















□□■

 
× 篠塚さん夫妻は契約者
○ 篠塚さん夫妻は都市伝説化した元契約者

やってしまった……すいませんorz



憐さん……憐ちゃん……うふふ

次世代ーズ投下お疲れ様です
増加する偽警官被害か。組織も対応する件が増えて大変だろうなぁ

>>263
あー、組織に要求するならその方向のほうが良さそうですね
具体的に何を要求しているのかは明言しないでいけばいいかな
文章にできるかちょっと考えておこう

>>264>>267
あれだけアワアワしてたら気づかないのは仕方ないよね……
都市伝説が喫茶店開くって想像もしづらいだろうし
ましてや容姿に都市伝説の特徴があるわけでもない
契約者の話を始めた時にここで話していいのか?
と気づければ早かったんだろうけど、あの様子じゃそんな余裕はなさそうだ

>美弥さんは半田刀也君や早渡のことをどう呼称しますでしょうか
呼称かー、男子学生だからひとまず苗字+君ってところかな?
それ以外は苗字+さんなんじゃないかな。真理ちゃんは真理ちゃんだけど
夫婦とか家族で人が来た場合は名前で呼びそうなもんだけど
瑞希に関してはあの通り学生相手なら名前+君(ちゃん)でいいと思います

次世代の人乙でーす!
偽警官も増えてるか……また「組織」のお仕事増えちゃう
頑張れ「組織」。頑張れまた仕事が増えるだろう大樹。書類仕事が増えるだろう天地も頑張れ


さて、何を優先して書くかな
戦技披露会で書きたいものは大体書いた(はず)だから、後は何か反応返すネタあったら書くくらい(のはず)だし
襲撃ネタか、いい加減「バビロンの大淫婦」ちょっとはだすか?

次世代ーズの人乙ですのン
偽警官…何があったのか教えて貰おうかうへへへ(同じ目に遭いました

>>264
恐れるな!誇りを捨てるな!
さあ迷わず行くんだ! GONG鳴らせ!(雄々しく舞い踊る次世代ーズの人
ジャムプロはおいときーの
被りは寧ろ俺は嬉しい、能力とか使い方が気になるし
そしていつから伝説化したんだw

>>268
「悪魔の囁き」レベルの都市伝説が要求されたに違いない
とか妄想するのも楽しいなぁ


あー雨だー
昨日月が暈被ってたしなー
仕事やだー

 
皆さん乙です


>>268-269
アクマの人、ありがとうございます
今週金曜までに二度目の訪問回まで行けるかな、と思います
そして美弥さんへの挨拶が終われば情報開示が完了しますの

>>270
>偽警官も増えてるか……また「組織」のお仕事増えちゃう
(遠い目)
「組織」のお仕事……まだ増えるかもです(目逸らし)

>>271
ぎ、銀河の海にダイブですか!?(モンキーダンス踊りながら)
高奈先輩には色々頑張ってほしいですが果たして……!
あと偽警官を倒した女子は自分は変態ではないと頑なに信じています
そして地の文おじさんは主に彼女に恥ずかしいことをさせます

行きます
 

 


次世代ーズ

 前回は>>265-266です
 これまでのお話はwikiの編集を待ってね!


 

 




 色々あったがもう金曜だ、早いな
 何だかここ最近は都市伝説絡みの出来事が多い
 この町に越してきた四月から動いてはいたものの進展は遅かった

 四月に人面犬のおっさんとその仲間に出会えたのは良かったが、その後はさっぱりだ
 空七の一件も大家さんの一件も「怪奇同盟」の盟主さんに挨拶する件も進展は殆ど無かった

 それが九月に入って一気に動き出しそうな気がする
 高奈先輩と友達になったことがそれを予感させて仕方がない
 不思議な話だ、もしかしたら四月からの行動が今につながっている?
 まさかな

 そして一気にといえば美人さんとの出会いも増えた、気がする
 具体的にはやっぱり高奈先輩との出会いだったり「ヒーローズカフェ」の店員さんだったりする
 商業の女子に心が砂漠になったときや合コンの数合わせで参加したときの顛末に比べたら凄い進展だ
 もしや本当に“ツキ”ってヤツが俺の方向に向き始めたのだろうか
 まさかな

 ただし、だ
 今になって一番不安なのはこの後のことだ
 良いことが起これば漏れなく悪いことも起こる、という格言がある
 実際、最初に高奈先輩と出会えた後日、俺はなんか変なの(組織の変なの)に絡まれてしまった
 いやあえらい目にあったぜ、あの夜は

 俺の予感が正しければ、そろそろ悪いことが起きるのではないか
 あのなんか変なのに追い回された一件は決して小さい出来事ではないぞ
 用心には用心を重ねた方がいいに決まっている、現に今もうっすらと赤マントにニオイがするからな

 そう、赤マントだ
 四月頃から学校町内で都市伝説を見ることはあった
 何せここは学校町だ、都市伝説を目撃する確率は決して低くない
 だが最近は幾らなんでも増え過ぎじゃないか、他の人が目撃しててもおかしくない

 気になるのは今の時点でニオイを感じるという一点だ
 俺の知る限り、徘徊性の都市伝説は日中と人っ気のある場所は避ける
 実際この学校町にしても、都市伝説を見る時間帯は圧倒的に夕方と夜が多い
 夕方はともかく、日の出ている内に目撃したことはほとんど無かった
 じゃあこの赤マント臭は何なんだろうね

 立ち止まる

 今、俺は東区にいる
 あのなんか変なのの一件以来、夜間の散歩はしていない
 してはいないんだが、東区の散策は下校のついでに続けていた
 そして今は夕方だ、つまりもう都市伝説が出没してもおかしくない時間帯だ

 まさか、近くに赤マントがいるのか?
 俺は感覚を開いてニオイをよく確認しようとした



「助けてくださぁーい!」

 

 


 悲鳴だ

 今のは確かに女の子の悲鳴だ
 距離は近いぞ、丁度この近くから聞こえたはずだ

 直前まで考えていた内容の所為でまさか赤マントが出たのかと疑問がよぎる
 いや、そんなことは現場を確認すれば一発で答えが出る
 俺の足は既に動いていた

 声の聞こえた場所へ走る



「助けてぇぇー!!」



 曲がり角に入ったとき、俺は悲鳴の主を見つけた
 恐らく転んだのだろう、道路に倒れて手で顔を覆っていた
 おさげロールというべきかドリルな髪が目を引く制服姿の女の子だ

 そして女の子の前にいるのは――赤マントじゃねえか!! 奴らは二体いるぞ
 気色悪いことに手をわきわきさせながら、徐々に女の子に対して距離を詰めていた

 迷う理由など全く無い、俺は速歩でこちらに近い方の赤マントに近づいた
 奴らがこちらに気づいた気配は無いが当たり前だ、俺は気合で気配を閉じている

 夕方とはいえまだお天道様は沈んでないんだ、悪いことができると思うなよこの野郎


「 跪け 」


 肩を手で叩くと同時、赤マントの体は膝から地に崩れる
 余所見している猶予など無い、崩れた赤マントの脇をすり抜けてもう一体へ間合いを詰める

 後ろから胸ぐらを掴むように手を回すと同時に腰の辺りを装束ごと引っ掴んだ
 慌てた様に赤マントは身を捩るが逃がす積りなど無い、引き寄せながら足を払い、そのまま後方へ投げ飛ばした

 赤マントの悲鳴を聞いたがそんなものは無視だ
 女の子に近寄り、肩に手を掛けて膝裏に手を滑り込ませた

「ひっ、ひィィィっ!?」
「ちょっ、ごめんね! 逃げるよ!!」

 女の子をお姫様だっこで抱き上げるとそのまま前方へ疾走
 抱き寄せて分かったがこの子は契約者じゃない、普通の一般人だった
 ニオイだ、契約者特有のニオイが無い、あと体重軽いな!?
 一瞬余計なことが頭をよぎったが、振り払う

 今は赤マントから逃げるぞ














 

 




 先程の場所よりも開けた十字路に出た
 後ろはどうだ、奴らの気配は――無い、ニオイも無い

 今回も上手く逃げられたんだろう、警戒するに越したことは無いがひとまず安心だ

「あのー……、君、大丈夫? 立てる?」
「……こ、怖かったですの」

 女の子は全身がふるふる震えて涙目になってる
 血の気が引いているのを見るに余程怖かったんだろう

「立てるかな、よっ」
「きゃひっ、あっ、ご、ごめんなさい! まだ、無理ですのー……」

 足からゆっくり下ろしたが膝が凄く震えている、確かに無理だ

「ちょっと待ってね、おぶるから。よっ」
「あう、ご、ごめんなさい!」

 素早く立ち位置を変えて女の子をおぶった
 まさか施設時代の救護実習で習った技術がここで活きるとはな

「あの、ありがとうございます。あの変な人達に追い掛けられて、怖くて、転んで」
「あ、あー……、そうだったの」

 彼女は凄い大声で助けを呼んでいたが、俺以外に人を見なかったな
 そもそも都市伝説が徘徊しているときって人の気配がかなり薄くなることが多い
 東区は閑静とはいえ一応は住宅街だから悲鳴を聞いて誰かが来てもおかしくないんだが

「あれだよ、ほら! 最近はなんか変質者が多いみたいだから、大通りを通った方がいいよ!」
「うぅぅー、気をつけますの……。でもアルバイトに遅れるからよく近道を通ってましたの……」
「……アルバイト?」
「はい、五時からですの……」

 五時かー、おぶってるから時計を確認できないけど勘が正しければもうすぐ五時じゃないかな?

「……バイト先まで送ろうか?」
「えっ? あっ、あのっ、すいません! よろしくお願いしますのっ!」

 OK、女の子の頼みは引き受けるのが、ほら、男としてなんかアレだ
 話を聞けば、バイト先というのが東区のかなり奥の方にある喫茶店らしい

「商業高校の方ですの?」
「うん、早渡脩寿って言います、よろしくね」
「私はコトリーと申しますの! 高校一年生ですの!」
「マジかっ!? てっきり中学生だと思ったけど!! てか俺とタメだよ!? 敬語使わなくてもいいよ!?」
「まあそうでしたの!? でも私は普段からこういう話し方ですわ!」

 女の子の制服は東区高校のでも東区中学のでも無いので別の区の中学かと思ったぜ
 話を聞けば辺湖市新町の高校に通ってるらしい、背丈からして中学生だと判断したが甘かったな

 コトリーちゃんは先程よりも大分落ち着いたらしい、素の彼女はかなり朗らかな女の子のようだ


「ちょっと急ぐね」
「あう、お願いしますの!」


 いくら変質者(赤マント)に襲われたとはいえバイトに遅刻はまずいよね
 コトリーちゃんを抱え直すと足を速め、東区の奥へと急いだ



□■□

 

次回投下24時間以内にいけるかな……?
お話の中の「「怪奇同盟」の盟主さんに挨拶する件」は次の次の次(13)で詳しく出ます
早渡は盟主さんがたいへんなことになっていることを全く知りません
何故彼が墓地で墓守さんと接触しなかったのかも暴露するぞ

次(11)と次の次(12)を24時間以内に……行けるかなあ……

ところで盟主さんの現状がめっちゃエロく感じるのは果たして自分だけでしょうか?

あと今回出た女の子は10月時点で出すと宣言していたドリルの子です
ttp://ux.getuploader.com/tosidennsetu/download/90/09.png
ユメウサギさんの着せ替えキャラメイクをお借りしました
着てる服はバイト先の制服でこの上からエプロンを着ます

コトリー「やりましたの! やっとですの! よろしくお願いしますの!」

 

いままでのあらすじ

 大変!学校町に「白面九尾の狐」(誘惑特化)がいるだけでも厄介なのに、「バビロンの大淫婦」までやってきちゃった!
 ただでさえ学校町は「赤マントの大量発生」に伴う子供の失踪事件が相次いでいたり、都市伝説や契約者を襲う謎の存在がわんさか湧いている最中なの
 このままじゃあ、学校町がかつてのように事件起きまくり物騒さ120%突破の安心して住めない町になっちゃう!
 死なないで、「組織」で仕事している人達の胃!
 貴方達が頑張ってくれれば、一般の人に都市伝説絡みの事件を隠蔽させ続けられるんだから!

次回「また黒服Dこと大門 大樹の胃が死にそうで怖い」

 デュエルスタンバイ!!







と、言う冗談はさておき、今までのお話はまとめwikiの「次世代の子供達」をご参照ください
ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/4996.html

 それは、己にとって最大レベルの屈辱だったのだ

 「バビロンの大淫婦」は、そのように考える
 己の誘惑に一切屈する事がなかった「教会」の異端審問官の男
 そのような相手であったとしてもたやすく堕としてきていた
 だと言うのに、あの異端審問官には「バビロンの大淫婦」としての誘惑が効かなかったのだ
 あの異端審問官の意志力が強かったのか、それとも、心に強く、強く想う相手がいたのか、はたまたその両方か
 とにかく、「バビロンの大淫婦」に誘惑される事がなかったあの男はよ、容赦なく燃え盛る鞭を振るい………それによって、彼女は顔に大きな傷を負った
 適当に操っていた人間共を捨て駒にし、片割れたる七つ首の獣すら捨てて必死にあの場から逃げて……

(……あぁ、なんて忌々しい)

 思い出しただけで、血が逆流したような感覚を覚える
 この手で八つ裂きにする事は………残念ながら、できない
 彼女は「バビロンの大淫婦」の堕落しきった女としての側面をもって生まれた存在だ
 戦闘力は騎乗にしていた七つ首の獣に完全に依存していた為、その獣が死んだ今、彼女に戦闘手段はない
 逃げ込んだ極東のこの国の、この町で、戦力となる者を誘惑し、手駒にしなければ
 ……それも、現状、難しいのだが

 「バビロンの大淫婦」が潜伏しているのは、小さなアパートだった
 こんな狭苦しい場所でこそこそと隠れ住まなければならない状況事態、彼女にとって屈辱的でしかない
 そして、彼女が隠れ住むその部屋に………鏡は、ない
 本来、鏡があるはずの洗面台にすら、鏡はなかった。ただ、割れた鏡の残骸が微かに残っている程度だ

(忌々しい、忌々しい……っ!この、傷さえなければ………!)

 顔の半分以上を覆う、大きな火傷痕
 こんなもののせいで、魅了の力をうまく行使できなくなってしまっていた
 これでは、まともに手駒を増やすことすらできない


 ……積んだ、と
 そう諦めてもおかしくない、その状況で。しかし「バビロンの大淫婦」は諦めない
 生きるために、この世の全てを堕落させる為に、堕落せぬ者は全て殺し尽くすために
 諦めることなく、次の手を考え続ける


(肉体を、変えなければ)

 こんな傷跡のある肉体ではなく、別の身体に
 若く、美しい女の体に乗り換える必要がある
 この町、学校町にたどり着いてから、「教会」に見つからぬようにしながら獲物を探し続けて

(……あの時、見た。あの少女に)

 …そう、あの少女
 複数人で楽しげに歩いていた少年少女逹の中で、己の肉体にするにふさわしい少女が一人、いた
 あの少女の肉体を奪えば、どんな相手でも籠絡する事ができるだろう
 どうやら、少女の周囲には契約者も多いようだ
 少女の肉体を奪ったならば、周囲の人間から籠絡していって………この学校町全てを、堕としてしまおう


 斧が顔を傷つけた者への忌々しさと、少女の肉体を奪ってからの計画立てを同時に行いながら
 「バビロンの大淫婦」は未だ、静かに、学校町に潜伏を続けていた

 まだ、少女は気づかない

「………っきし」
「おや、咲夜さん。風邪でもひかれましたか?」
「うーん?……大丈夫だと思うんだけど」

 自らが、恐ろしい相手に目をつけられた事実に

「最近、ぐっと冷え込んできてるからな。気をつけろよ」
「えぇ、気をつけるわ。インフルエンザにはまだ早いとは思うけど………ただの風邪でも、怖いしね」

 少しずつ

「風邪のひきはじめかもしれないっすから、今日は暖かくして早めに寝るっすよ?夜更かしはっめ、っすー」
「大丈夫。元々美容のために夜更かしはしないわ」
「さすが、徹底してるわよね、その辺」

 ……少しずつ

「そりゃ、美容は気をつけるわよ女ですもの……そうやって気をつけてる私の美に、一切気づかない連中もいるんだけd」
「憐も、風邪気をつけろよ?お前、昔から体調崩すと一気に悪くなりやすいし……」
「主にあんたの事よ、このナチュラルホモ筆頭ぅうう!!!」
「あだっ!?」
「はるっちーっ!?」

 己の運命が、転がり始めている事に
 …否

「……いつもの事だから、気にしなくていいと思う」
「憐の肩に手を回した時点で自業自得だから、放置しなさい、憐」

 とっくの昔に、己の運命は転げ落ち続けていた事に
 彼女はまだ、気づかない


to be … ?

安定のタイトル入れ忘れ
とりあえず、フラグを太くしておいた

皆さん投下お疲れ様です
やっとバビロンの大淫婦出てきたけどこれ次の登場シーンでコロコロされそう(真顔)

>>270
戦技披露会は……打ち上げやるみたいな話ありませんでしたっけ(うろ覚え)

>>277
外出身の契約者が怪奇同盟に言及する貴重なシーンじゃないかな?これ
地方団体だから知名度なんてお察し、のはずなんだけどな。不思議だ(本気で首傾げ)

>ところで盟主さんの現状がめっちゃエロく感じるのは果たして自分だけでしょうか?
(洗脳されて操られている強い味方女性と考えるとわからなくも)ないです

※ 注意 ※

これからお見せする話は“並行世界”という設定をより明確に表現するにあたり、

当スレの意向を1980°程反れた内容となっております

苦手な方、というよりは「いやいやそれはないんじゃないの?」という方は、

裂邪編さえ読めばそれとなーく分かるように作る予定ですので読み飛ばして下さって構いません

何卒、ご理解とご協力をお願い申し上げます

「…ん……ッ!!」

目が覚めた
と同時に、紫色の長髪の少年―――ナユタは飛び起きた
反射的に「ティルヴィング」を構えたが、警戒を解くと様々な情報が頭に流れてくる
倦怠感
目覚めたばかりだというのに、長旅でもしたかのような疲れ
違和感
学校町に蔓延っている都市伝説達の気配が、微塵も感じられない
そして、僅かな温もり
気が付けば、彼はベッドの上だった

「お、気ぃついたみたいやな」
「見りゃわかるだろ!ってか、大丈夫か? 酷く魘されてたが」
「腹減ってねぇか? カップ麺で良けりゃ作るぜー」

我に返り、ナユタは3人の男を認識する
関西弁で話す、黒い短髪で糸目の男
心配そうな表情を浮かべる、茶色がかったセミロングの男
部屋の奥に食事を取りに行った、黒いロングヘアで耳にピアスをつけた男
何れも十代後半くらいで、赤を基調とした同じ服装をしていることから、
彼等は何処かの学生であると推測できた
見たことがある服だな、とナユタは思うが、うまく思い出せない

「……すまない、少々取り乱した
 感謝するよ、どうやら僕は君達に助けられたようだね」
「お、日本語話せたのか、良かった
 厳密には他の奴がお前を見つけたんだ、海岸で気を失ってるところをな
 …あぁ、俺は相成 英雄(アイナリ・エイユウ)」
「ワイは三頭 京也(ミガシラ・キョウヤ)や、よろしゅう」
「カップ麺出来たぞー、あ、俺ぁ双首 運命(フタクビ・サダメ)な」
「食事まで、すまない…僕はナユタ。改めて礼を言う、ありがとう
 ところでここは何処かね、日本で間違いはないか?」
「(見た目の割に口が達者やなぁ)ズルズル
 せやで、ここは西アカデミア島、オシリスレッド寮の103号室や」
「……えーっとすまない、もう一度言ってくれたまえ」
「西アカデミア島の、オシリスレッド寮103号室や」ズルズル

ナユタは聞き覚えがあった
勿論、彼の知る日本の領土にそんな地名は存在しない
だが、確かに彼の記憶には存在した
裂邪に見せられた、アニメや漫画に登場したものだということを

(まさか……『遊戯王GX』の並行世界に飛ばされたのか?
 しかも、あの作品に登場したのは本校とノース校……ここは西だと言った
 本編ではないスピンオフ…二次創作……何とも言えないがそんな世界に…
 しかし仮にそうだったとして、こんな世界の話を本スレに上げる気なのか作者は?)
「ナユタ?」ズルズル
「え、あぁ、西アカデミア島か、そうだったのか
 ということは君達はこの……デュエルアカデミア・ウェスト校の生徒で、決闘者だ、と?」ズルズル
「ん? お前も決闘者だろ?」ズルズル
「えっ」
「あ、ナユタと一緒に流されてたんだ、デッキ
 確認したら無事だったよ。奇跡、って奴だな」ズルズル
「さすがに濡れてもうたら、大事なカードとさよならせなあかんでな」ズルズル

ふと、食事の手を止め、傍らに置かれていたデッキケースを取った
裂邪に譲って貰ったものであり、デッキのカードも全て、自分が組み上げたものに間違いなかった

(……こんなものを持って歩いてた覚えはないのだが…まぁ、好都合か)
「ふぅ、ごっそさん。んじゃ、ゼロ呼んでくるわ、目ぇ覚めたってな」
「ゼロ?」
「お前を助けた奴だ。本名じゃないが、この学校の連中は皆そう呼んでる」
「へぇ…(カイザーやサンダーのような決闘者…相当腕が立つということか)」
「あ、せやったら。ナユタ、待っとる間一戦やらへん?」
「む?」
「っちょ、ズリぃ!? 抜け駆けすんなよ京也!?」
「はよゼロ呼んで来いw いや、ナユタって見た目からして中等部くらいやろ?
 最近の中等部ってどんなもんなんやろか、と思うてな?」

「って俺等オシリスレッドだからな!? 下手したらお前がのされちまうぞ!?」
「ええから行ってこいっちゅうに、なんやったら決闘録画しとくさかい」
「ぃ、よーし、んじゃ行ってくらぁ…」
「おいちょっと待て、ナユタはさっき目が覚めたばかりだぞ?
 もう少し様子を見てから」
「いや、受けて立つよ
 腹ごなしにしても、起床後の準備運動にしても丁度良い
 何より、果たし状は素直に受け取る心情でね」

若干、だが
ナユタはこの並行世界の雰囲気に流されつつあった
カードゲームは普通、テーブルの上や床で出来るものだが、
彼は「ティルヴィング」を手に取ると、京也や英雄と共に外に出て、京也と広く距離を取った
その時に初めて気づかされたのだ

「……あれ? ナユタ、デュエルディスク持っとらへんの?」
「あ」
「そういえば…あの剣とデッキしか見当たらなかったな」

現実を見たのも束の間
「ティルヴィング」を持っていた右腕が紫色に燃え上がり、
なんとデュエルディスクを象り始めた

「「うおおおおおおおおかっけぇ!!」」
「いやいやこれは嘘だよ! こんな能力がある訳が!?」

ちゃんとデッキをセットできる始末
はふ、と溜息を吐くナユタ
彼は悟った。どうにでもなる事もある、と

「……準備をしたまえ京也君
 君が何をしようとも、僕は全てを拒絶する……!」

そしてノリノリである

「ええで! 太古の力、見せたるわ!」

京也のデュエルディスクも展開する
かたや文字盤に、かたや紫炎が浮かび上がり、“8000”と表示される
そして両者の掛け声と共に戦いの火蓋が切って落とされるのだ

「「決闘!!」」

京也 LP8000
ナユタ LP8000

「先攻は譲ってあげよう。念の為だが、先攻1ターン目はドローフェイズは行われない…良いね?」
「そんなん常識や、ワイのターン!
 ワイは『俊足のギラザウルス』を特殊召喚や!」

フィールドに現れたのは、細身で小型の肉食恐竜
涎を垂らしながら、踊るように軽やかなステップで辺りを警戒している

俊足のギラザウルス ATK1400

(おぉ……これがヴァーチャル・ソリッド・ビジョン……凄い迫力だね)
「『俊足のギラザウルス』が特殊召喚に成功した時、相手は墓地からモンスターを蘇生できるんやけど…
 ま、1ターン目やから何もおらへんわな
 さらにワイは『ギラザウルス』をリリース! 『暗黒ドリケラトプス』をアドバンス召喚!」

突如、細身の肉食獣は巨大な嘴の餌食となる
縄張りは、より巨大かつ強靭な主のものとなった
全身は黒というよりは暗く、相反して派手な羽毛がびっしりと全身を覆う
その草食獣は、地響きを立てながら、威嚇するようにカンカンと嘴を甲高く打ち鳴らした

暗黒ドリケラトプス ATK2400

「ほう…1ターン目からアドバンス召喚か」
「攻撃はどうせ出来へんし、どう来るか分からへんからな、様子見や
 カードを1枚セットして、ワイはターンエンド」

京也 LP8000 手札3

「では僕のターン……の前にここまで空気になってしまっている英雄君に台詞をあげよう」
「え、あ、えーと…ほ、ほっといてくれ」
「どうも。僕のターン、ドロー……ふむ
 速攻魔法『手札断札』を発動
 互いに手札を2枚墓地に送り、2枚ドローする」
「あらら、手札事故かいな?」
「いやぁついてなかったね」

京也 手札3→1(捨『大くしゃみのカバザウルス』『ジュラック・ヴェロー』)→3
ナユタ 手札5→3(捨『沼地の魔神王』『エクリプス・ワイバーン』)→5

「…ここで墓地に送られた『エクリプス・ワイバーン』の効果発動
 デッキから光属性または闇属性の、レベル7以上のドラゴン族モンスター1体を除外する
 僕は『裁きの龍』を除外しよう」
「『裁きの龍』やて?……【ライトロード】かいな?」
「さて、どうかな?
 僕は『召喚士アレイスター』を召喚するよ」

ナユタの場に現れたのは、白衣を纏った銀髪の青年
手に持った魔導書らしき書物と楔のような杖からは、何か異様なオーラが溢れ出している

召喚士アレイスター ATK1000

「攻撃力1000? あかんなぁ、ワイの『暗黒ドリケラトプス』は2400や!」
「『アレイスター』は戦闘より魔術に長けていてね
 場に出た瞬間に、デッキから『召喚魔術』を手札に加えられるんだ」
「そいで?」
「見せてあげるよ。魔法カード『召喚魔術』発動
 『召喚魔術』は通常、手札のモンスターしか融合素材に出来ないけど、
 『召喚獣』モンスターを融合召喚する場合はフィールド、墓地から除外することで素材に出来る」
「ゆ、融合召喚やて!?」
「フィールドの『アレイスター』、墓地の『エクリプス・ワイバーン』を融合
 上級召喚魔術、レベル9
 魔法名ディシリオン・ダークナイト
 彼の地より、あらゆる概念を掻き消す輝ける戦車を、ここに呼び出さん
 融合召喚――――純白の機械騎士、『召喚獣メルカバー』!!」

紫炎に叩き付けられるカードの縁取りは、紫
専用の『融合』魔法カードで行われる融合召喚は、名の通り複数の決められたモンスターを掛け合わせることで成立する
今、2体のモンスターが、1体の強力なモンスターとなって出現したのだ
それにしてもやはりこのナユタ、ノリノリである

召喚獣メルカバー ATK2500

「除外された『エクリプス・ワイバーン』の効果を発動しておくよ
 除外しておいた『裁きの龍』は僕の手札にやってくる」
「2500……成程な、それやったらワイの『暗黒ドリケラトプス』も」
「さらにもう1枚……『召喚魔術』を発動」
「「2枚目!?」」
「ギハハハ……良いことを教えてあげるよ
 『召喚魔術』は『召喚獣』モンスターを融合召喚する場合…相手の墓地のモンスターも素材に出来るんだ」
「ッ!? ワイの、モンスターを……!?」
「京也君の墓地に眠る『俊足のギラザウルス』、
 そして僕の墓地の『沼地の魔神王』を『アレイスター』の代わりに融合
 上級召喚魔術、レベル8
 魔法名ディシリオン・ダークナイト
 彼の地より、マグマの如き荒々しさ、大地の如き堅牢さを持つ巨人を、ここに呼び出さん
 融合召喚――――その腕で全てを原初に帰せ、『召喚獣メガラニカ』!!」

島がそのまま人になった――――――それはそんな姿をしていた
全身にマグマが煮えたぎり、地震のような揺れを轟かせながら、それは鈍重に歩く
ぎょろり、と不気味な一つ目で、我々を見下ろしながら

召喚獣メガラニカ ATK3000

「攻撃力……3000……!?」
「『青眼の白龍』と同じ攻撃力………!?」
「(この世界の3000基準はまだ『青眼』なのかね)
 さて、そろそろバトルフェイズと行こうか
 『メルカバー』で『暗黒ドリケラトプス』を攻撃」
「かかったなぁ! 罠カード『炸裂装甲』発動や!
 攻撃モンスターは木っ端微塵! 『メルカバー』はさよならや!」
「言っただろう? 僕は全てを拒絶する、と
 『メルカバー』の効果発動! 手札の罠カード『魔法名―「大いなる獣」』を捨て、
 同じ種類のカード効果、つまり罠カードの効果を無効にし……除外する」
「なっ……てことは、」
「攻撃は続行! “ディヴァイン・チャリオット”!!」

京也 LP8000→7900

「ぐっ……」
「そして『メガラニカ』の直接攻撃…“マザー・コンティネンタル”!!」

京也 LP7900→4900

「…な、なかなかやるやないか、見直したで中等部
 ワイも負けとれへんわ! 今逆転したるからよぉ見とれ!!」
「あー、申し訳ない
 もう君のターンは来ないよ」
「ハ?」
「知ってるだろう? 速攻魔法は自分ターンのバトルフェイズなら手札から発動できる
 速攻魔法『法の聖典』! 『召喚獣』をリリースし、属性の異なる『召喚獣』を融合召喚扱いで特殊召喚する
 僕は『メルカバー』をリリースし、融合の術式を構築
 中級召喚魔術、レベル7
 魔法名ディシリオン・ダークナイト
 彼の地より、穢れた魂を聖なる炎で焼き尽くす死の三人組を、ここに呼び出さん
 融合召喚――――煉獄よりの死神、『召喚獣プルガトリオ』!!」

召喚獣プルガトリオ ATK2300

「融合モンスターから……別の融合モンスターやと!?」
「バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターは当然問題なく攻撃ができる
 『プルガトリオ』の直接攻撃、“トリニティ・イラプション”!!」

京也 LP4900→2600

「~~~~~~っ!!………な、なんや、結局残っとるやないか
 はったりもええ加減に」
「見たまえ、僕の手札は残り2枚
 1枚は『エクリプス・ワイバーン』で加えた『裁きの龍』だ
 もう1枚が分かるかね?」
「……まさか…また速攻魔法ォ?」
「御名答。手札の『裁きの龍』を捨て、速攻魔法『超融合』発動
 フィールドの『メルカバー』と『メガラニカ』を、融合させる」
「融合モンスター2体を、さらに融合だと…!?」
「っちゅうか、『裁きの龍』が手札コストとか勿体ないやろ!!」
「“勿体ない”で決闘が通るとは思わないことだね
 バトルシティで海馬瀬戸が見せてくれたように、“神”のカードをリリースしなければならない時が来るかも知れない
 何かを捨てなければ、何かは得られない……僕がそうだったように」
「…何?」
「最上級召喚魔術、レベル10
 魔法名ディシリオン・ダークナイト
 六つのエレメントを宿した、禍々しくも神々しい“彼の地”を、今ここに呼び出さん
 融合召喚――――全てを受け入れ拒絶せよ、『召喚獣エリュシオン』!!」

脳のような、星のような何か
そこから伸びる骨のような身体のような何か
それらを覆う薄い膜と、それを支えるアーチ状の手のような翼のような何か
それは果たして生物なのだろうか
天使か、悪魔か―――神なのか
誰にもわからないが、それ故に、ナユタはそう呼んだのだろう――――“彼の地”と

召喚獣エリュシオン ATK3200

「…やはり僕は……敗北すらも拒絶する……
 『エリュシオン』で直接攻撃、『ビーイング・ノット・ユートピア』」

京也 LP2600→0

ソリッド・ビジョンが消え、決闘の決着を知らせる
疲れたようにどさっと地面に腰を下ろした京也に、ナユタと英雄が駆け寄った

「いやぁ……舐めとったわ、あかんなぁ
 めっちゃ強いやん、中等部やばいわ」
「…うん、お褒めに預かり光栄だ、と言っておこうかな」
「連続融合召喚……見てて物凄い迫力だったな……
 ところで、さっきの言葉はどういう意味d」
「ヒッハハハハハハハハハwwww
 超すげぇじゃん今の! 超決闘してぇ!!」
「「あ、ゼロ」、それとお帰り運命」
「ギリッギリ終わりかよ! もうちょっと粘れよ京也!!」

ナユタは硬直した
何処かで聞いた声、そして笑い方―――――ゆっくりと、振り向いた
運命が連れてきた、“ゼロ”と呼ばれる男
黒尽くめの服装、右目が隠れるような長い前髪、平均的な背丈
都市伝説もいない、何もかも知らない世界で、ただ一つだけ、同じだったこと
紛れもなく、目の前にいる彼は

「……マスター?」



   ...to be continued

という訳で皆様乙、これから話見てくるの

ナユタのやってきたのはなんと『遊戯王』の世界
そしてそこには裂邪そっくりな男が――――ッ!?
という感じですが、酷い裏話があるので避難所のどこかに書いてこようかしら

>>294
まぁ、俺は戦技披露回関連はどうしても書くべきやつは大体書いちゃった(はず)なので
後は他のキャラがこちらのキャラと何か会話とか情報引き出しやりたいなら答えるし、会って縁をつなぎたいなら会わせるし、打ち上げはじまったら何かしら反応させるかなくらい

俺の場合、今ちょっと事件起こす順番で悩んでるってのもある
襲撃を後に持ってくるか前に持ってくるかで、襲撃中の連中の様子若干変わるからな…

>>295
せっかくだから結ちゃんには交友関係を広げてもらいたいんだよなぁ
まずは治療室に戻って外海さんと(素)顔合わせかな?
あとこっちは、そう、サキュバスがまだ眠ってるね……ど、どうしよう……?

二択だったらダイスで決めればいいんじゃないですかね(適当)


よし一応書けたし投下します

「はぁっ……はぁっ……」
(マズいマズいマズいマズい……!)

私、相生真理は油断していたのかもしれない
最近遭遇していなかったから、組織やその他が狩っていることを知っているから
多少は対処する自信があったから、幼馴染が「守る」と言ってくれたから
だから……忘れていた。この街がどれほど危険な場所なのかということを

(数全然減らな、あっぶな?!近すぎる、爆発の威力は上げられないか……)

"逢魔時の影"のことを話には聞いていた
それでも出会わないと、出会っても対処できると思っていたのだが……
買い物帰りに突然地面から立ち上がるように周りを囲まれて、どうしろというのか
咄嗟に"小玉鼠"を爆破して包囲を抜けただけ及第点は貰えると思う

(確かこの先に袋小路が……っぶない?!)

私の小玉鼠の弱点は一度に一体しか召喚できないこと
どうしても爆破した後、もう一度爆破するまでに時間が空いてしまう
無限に四方八方から湧き出す影の波状攻撃は相性が悪いと言わざるを得ない
こうなったら壁を背にして日が落ちきるのを待つのが得策だろう

(確かここを曲がったところに、)
「……あ」

目の前には袋小路にぎゅっと詰まった影の群れ
後ろからは手を伸ばし私の背に追いすがる影の群れ
完全に囲まれたと知って、思わず足を止め声を漏らした私は……

このあと訪れる激痛に、歯を食いしばって耐えるしかなかった

日没の約三分前、雲のない快晴の茜空の下
学校町北区の路上で影に囲まれ男と女が対峙していた
片方は作務衣に雪駄を履き、煙草を咥えた中年の男
そしてもう片方は黒髪を靡かせ白装束に身を包んだ……半透明の女性

「ようやく会えたなあ、オイ。手間取らせやがって」
「あなたは契約者、ですね。消えなさい」
「うるせえ」

男の言葉に反応するように右手を伸ばし、紫電を飛ばす女性
しかし男の懐から飛び出した何かが紫電とぶつかりあって相殺する
それを見た女性は周囲に無数の火の玉が灯していく

「ったく、時間もねえし用件だけ伝えさせてもらうぞ――」

男が右腕を振るって紙のようなものをバラまくと
紙は路上に落ちず矢のように女性に放たれていき
またそれを迎撃するように火の玉が男性へ放たれる
紙と火の玉の弾幕がぶつかり合った末に残ったのは……
火の玉を相殺して佇む男と、紙に穿たれ腹と腕の欠けた女性の姿であった

「テメエは俺が殺してやる。ああ勘違いするなよ、女の方じゃない
 なあ、全部見えてるし聞こえてんだろ?知らないとでも思ってたか?
 もう一度言う。テメエは俺が殺してやる。それで全部終わらせるから覚悟しとけや」

男は煙を吐き出しながら、そう言った

東区の中学校のテニスコートで、潮谷豊香は部活仲間に声をかける

「ねえ今、揺れなかった?」
「豊香の胸が?」
「地震の話だからっ?!」
「胸には自信がありますって?もってる女は言うことが違うよねー。いっぺん死ぬ?」
「生きるっ!!」
「あ、やっぱり揺れてたよね。震度2くらいかな……あれ?雨?」
「なに言ってんの。今日は一日快晴……つめたっ!ウソ?!」

ぽつり、ぽつりと降り出した雨に彼女達は慌てて片付けを始める
それが終わった頃には、揺れのことなどすっかり忘れてしまっていた



薄闇の中消えていく女性を見届けた男は
咥えていた煙草の火を消すと踵を返し

「ああそうだ。お前もどこの奴だか知らねえが、お仲間に伝えとけ
 『こっちの邪魔はするな。邪魔するようならただじゃ済まねえぞ』ってな」

こちらを睨みつけてそう告げると、歩き去っていった

……男が視界から完全に消えたのを確認してから移動を始める
この件をどう伝えるべきか、考えながら――――

……重い体を動かして、玄関の扉を開く

「もー、真理ちゃん。用事があるとは聞いてたけど
 こんなに遅いなんて聞いてない……真理ちゃん?!血が出てるよっ!!?」

慌ててかけよってきた結に買い物袋を突き出して持たせ、靴を脱ぐ

「大丈夫よ……見ての通り、ただの鼻血だから……」
「どう考えても大丈夫な様子には見えないんだけど。え、まさか何かに襲われた……?」
「ほんと大丈夫だから、心配しないで……あーでも、ちょっとお願い」
「な、なに?」
「今日の食事当番代わって……ちょっと寝てたい、から……」
「合点だよ真理ちゃん!そ、それで本当に何があったの?私何を塵にすればいいの?」
「…………いいから、寝かせて」

あたふたしながら周りをうろうろする結に「大丈夫」を連呼して
自室に戻った私は、着替えもせずベッドに倒れ込んだ

(……心配かけちゃった、な)

自分の軽率な行動と、結に泣きそうな顔をさせたことを後悔しながら
私の意識は暗転していった――――


余談だが、この翌日からしばらく結は私にべったりくっついて
まったく離れようとしなくなった。それこそトイレの時ですら……
軽率な行動は己を苦しめると、身を持って実感させられる一件だった

                                 【了】

逢魔時の怪、イベント進行です
どうやら盟主の暴走について何か知っていそうな男がいる、ということが
名も無い一人の組織の契約者または首塚のメンバーあたりから伝わった、かもしれない
あと意味深な地揺れと降雨が起こりましたが、こちらからも何か感じた人がいる、かもしれない
かもしれないばかりですが、次があったらたぶんもっと大きく動きます

あ、視点がグルグルしてますがこういう感じです
相生真理→名も無い契約者→三人称視点→名も無い契約者→相生真理

アクマの人乙でーす
イベント進行したな……俺も進めなければ
意味深な地揺れと降雨に、勘がいい組が気づくかもしれないし気づいても動くかどうかは別なのだ

>二択だったらダイスで決めればいいんじゃないですかね(適当)
うーむむ……どうすっかなぁ
具体的に言うと、死亡フラグ組が死ぬのが先か襲撃が先かって感じだからなぁ
描写が一部ガラっと変わってしまう

>>302
地揺れは地脈への干渉(エネルギーの引き出し)に付随して起こりました
降雨は雲が明らかに不自然な動きしてるので雨乞いや水操作能力の関与が疑われるでしょうね

>>302
なるほど。ならば襲撃を先にして死亡フラグ組の生存を少しだけ引き伸ばしましょう
……伸ばしてるうちになにか死亡フラグに介入あるかもしれないし(自分でやるとは言っていない)

>>303
んなこったろうと思ったぜ!

>なるほど。ならば襲撃を先にして死亡フラグ組の生存を少しだけ引き伸ばしましょう
こう言われたが、考えた結果「死亡フラグ片付けてからの方が、襲撃の時切羽詰まった感じでていいな!」って結論になりつつありましてね
つまり、だ


死亡フラグ組と関わりたい人、関わりたいなら今のうちにな!
遅くなっても今月中には死亡フラグ組の死亡確定者は死亡し、介入次第でどうなるかわからん組の生死と生き残った人が物語からフェードアウトするかどうか決まるんで!!

なぜか知らんが安価が被ってしまっているな。寝よう(迫真)

あ、中年の男は避難所で雑談を見ていた皆さんならお察しの通り
北区の神社の神主です。まあ名も無き契約者はたぶん顔知らなかったんでしょうね
名前は贄守幸彦、40代後半です。次に出てくるのはいつかな(目逸らし)

>>304
確かカブトムシの慶次君にフラグ立ってたのは覚えてる
…………どうやって介入したものかなー(腕組み)

>>305
>…………どうやって介入したものかなー(腕組み)
ぶっちゃけ、助けるだけなら「通りすがりの仮面ライダーだ!」して怪我してる人を治療するだけでも大丈夫っちゃ大丈夫です
少なくとも死亡するかどうか微妙なうちの一人は結構な重傷な予定だけど

>>306
>ぶっちゃけ、助けるだけなら「通りすがりの仮面ライダーだ!」して怪我してる人を治療するだけでも大丈夫っちゃ大丈夫です
なるほどうちは治療(意味深)シーンに備えて潮谷豊香を待機させればいいのか(納得)

 
シャドーマンの人乙です!
「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約し(て、決闘の火蓋を切って落とし)た能力者達」、ありだと思います
ルールの方は、昔なんかを生け贄にしてデーモンの召喚を召喚した頃からどうなってるのか分からないんですが
しかし「ゼロ」なら分かるぞ、その昔シャドーマンの人が避難所で語ってたかつての主人公だったかの記憶があります

アクマの人も乙です!
真理ちゃんは逢魔時の影の方に襲われたのか、何をされたのか心配です
神主さんの能力発動をみて、まさか「陰陽道」の能力者かと慌てて避難所を確認したらばっちり書いてあった……
あと神主さんめっちゃワイルドな御方やん……

>>286
>外出身の契約者が怪奇同盟に言及する貴重なシーンじゃないかな?これ
言われてみればそうですね
あれです。むかし学校町を訪問したときに養い親が世話になって……
説明するより書いて出した方が速いかもしれないので頑張ります!

流れが速いな、食らいついていかないと
行きます
 

 



「メゾン……ド、ラルム?」
「はい! 『ラルム』ですの!」



 学校町東区、のさらに奥
 コトリーちゃんは東区の奥がバイト先だと話していた
 だが厳密に見るとここは既に学校町ではなくて東区に隣接する町だ
 引っ越してきたばかりの頃に地図と睨めっこして学校町の範囲を追ったのでよく覚えている

 俺は今、コトリーちゃんのバイト先にいた
 俺の隣にいるドリル髪な女の子が赤マントに襲われていたコトリーちゃんだ
 彼女をおぶって逃げ出した後バイトへ行く途中だったと言うのでここまで送ったんだ
 襲われたショックで腰が抜けていたようだがもう大丈夫そうなのでお店の前で彼女を下ろした

 バイト先だという喫茶店を眺める
 店の前の看板には「メゾン・ド・ラルム」とあった
 白いレンガの外壁だ、鉢植えの緑色がよく映えている
 こういう例えが正しいかは分からないが可愛い雰囲気のお店だ

 よし、帰ろう!

「じゃあ、コトリーちゃんバイト頑張ってね」
「あっ待って下さいっ!」

 腕を掴まれた

「あのっ! 助けてもらったお礼がしたいですの! ご馳走させて下さいっ!」
「いいよそんな! 悪いって!」
「わ、私の問題ですわ!」

 コトリーちゃんは俺の腕を両手で握っている
 しっかり掴んで離す気は無いようだ、意外と力強いな!?

「助けてもらったのに何もお礼しないだなんて、私が納得できませんの!」

 ((> x < ;)))みたいな顔して俺をお店の中へくいくい引っ張り込もうとする
 わ、分かったから! ちょ、分かったから! ああもうなんてこった!

「わ、分かったよ! 入る! 入るから!」

 彼女は既に扉へ手を掛けていた
 ドアベルが大きく響く、何故だか緊張してきたぞ

 意外と広めの喫茶店だった
 シックな内観だがやっぱりその雰囲気は可愛い感じだ

 今の時間帯は然程混んでいるわけではないらしい
 喫茶店の中では年配の女性客が数名談笑をしている

 お店の外装から薄々予想はしてた
 正直言って10代の野郎が入っていいようなお店では、ない


 

 


 今の気分を率直に話すと
 可愛いウサギさん達の村に突如薄汚い野良犬がやって来た! って感じだろうか

「いらっしゃいませー」

 奥から出てきた店員さんと目が合う
 コトリーちゃんと同じ年くらいの子だ、思わず会釈してしまった
 ん? 何だろう、店員さんが口に手を当ててめっちゃ目を見開いてこっち見てる

 俺か? 俺なのか?
 まだ何も悪いことはしてないはずだけど何だ!?
 何かやってしまったのか俺!? まさかドレスコード違反か!?

「あらまあコトリーヌちゃん! 彼氏さん連れて来たのぉ?」

 いきなり横から声が掛かり心臓が飛び出しそうになった
 そちらを見れば先程の年配女性客の一人だろうか、ニコニコ顔で近づいてきている

「違いますのっ!! 私、さっき変質者に追い掛けられましたの!! この方が助けてくれましたの!!」
「あらまっ!! 変質者ですってぇ!? 怖いわねぇ! 気を付けなきゃダメよぉ!!」
「あうっ! わ、分かってますのっ!」

 おばちゃん特有のテンションを前に若干圧倒される
 それと今の会話だと何だか俺こそがその変質者ではないのかという錯覚にだな

「今の時間は空いてますの! テーブル席で待ってて下さい! こっちですの!」

 おばちゃんを振り切るようにしてコトリーちゃんに引っ張られ奥の席に案内された
 ありがたいことに先程のおばちゃんグループからは離れたテーブル席だ

「ちょっとてんちょーに話をつけてきますの! そのままお待ちくださいませね!」

 パタパタと奥の方へ行くコトリーちゃんを目で追う
 入れ違いに先程会釈した店員さんがこっちへやって来た

「いらっしゃいませ。あの、『ラルム』へようこそ」

 お水とメニューを持ってきたことに軽く会釈で応じる
 テーブルにお水を置いてくれた手は白く――ふるふる震えてるぞ?
 思わず店員さんの顔を見ると、めっちゃ赤い顔をして俺の目を見ていた

「あの……脩寿くん、だよね……?」
「!?」



 待て



 学校町に来てから女性に名前呼びされたことは一度もない、これは確実
 そしてこの店員さんは俺の名前を知っている。つまり俺のことを知っているわけで

 過去に会ったことがあるってことだよな。ならば、この子は一体、誰だ?

 

 


 高校に入って真っ先に叩き込まれたのは次のことだった
 世の女性の容姿には二種類あってそれは「美人」と「カワイイ」である、と
 これに関しては酷い目にあったので、この命題は世の中の真実として俺の中に君臨している

 そして目の前の店員さんは10人中10人の早渡が「カワイイ」と即断するタイプの女の子だ
 この天使のような顔立ちならば、いくらボンクラな俺の頭にも記憶として焼き付いているはずだ

 俺の脳みそがフル回転を始める
 商業の子では無い、確実だ。こんな可愛い子は商業にはいない
 商店街で会ったことがある? いや無い、会ったのは年上の方々ばかりだ
 勿論、俺がこのお店に来たのは初めだから過去にここで出会ったということは無い

 ならば学校町に来る前に出会った?
 七つ星団地で厄介になっていたときに? 無い、誓っていい

「あの、覚えてないかな? ナナオの施設で、一緒だったんだけど……。覚えてないよね……」


 最後の可能性に行き当たる前に、彼女が答えをくれた


「嘘っ……!? ナナオの、施設の!?」
「っ……うん! 脩寿くんはANクラスだったよね、私は普通クラスだったから」


 まさかだ
 まさか、この町でナナオ時代の子と出会えるなんて、思ってなかった


「あのっ、あのね……。私、脩寿くんに助けられたことがあって。それで覚えてて」
「えっ、えっ?」
「あの、初等部のときに施設にいっぱい犬が入ってきて、そのとき、脩寿くんに助けてもらったんだけど」
「ああ……あああ!!!」


 思い出した。いや、言われるまで思い出せなかった
 チャイルドスクール時代の話だ、大量の野犬が施設内に入り込んできた事件があった
 忘れもしない。俺が初めて人前で都市伝説――ANを発現させたときだ。忘れられるわけがない

 そしてあのとき
 俺は一人の女の子を助けた記憶がある
 遠い過去の話だ、でも今でもはっきりと、思い出せる

「あの、白い子犬を助けようとして飛び出してった、あの、女の子……?」
「……っ!! 覚えて、たんだ。……うんっ、そうです。あのとき助けてもらった、はいっ!」
「言われて思い出したよ、うん! でもまさか、本当にあの時の?」


 なんということだ
 まさかあの子とこんな形で再会するとは


「脩寿くん、本当に覚えてたんだ」
「いやあ、言われて思い出して言うのもアレだけど。忘れられないや」


 そうだ、忘れられるはずがない
 あの事件は表向き、施設内に野犬が入り込んだということになっている
 だが本当は違う。あれは何者かが作為的に引き起こした人狼の襲撃だった

 当時、俺がその事実を知ったのはもう少し後になってからだ


「あの、……ええと。ごめん、名前を聞いても、いいかな」
「えっ、あっ……はい。  千十です。遠倉千十って言います」
「千十ちゃん」


 駄目だ、初めて聞く名前だ
 だけど、知らなかったとは言いたくなかった


「俺の名前は、あの、もう知ってると思うけど」
「うんっ! 早渡、脩寿くん。ずっと覚えてたよ!」

 何だか恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた
 しかもこの状況、というか感情は、物凄いデジャブだ
 それもそうだ、高奈先輩のときのそれと非常によく似ている


 

 


「脩寿くんは、ナナオ出た後にすぐ学校町に来たの?」
「え? ああ、いや違うんだ。実は俺、今年の四月にこっちに越してきたばかりで」
「そうだったんだ」
「千十ちゃんは、ナナオの後にこっち来たの?」
「うん、お姉ちゃんと一緒にすぐここに来て、中学校からずっとこっちで」


 そうか、ナナオが潰れた後にすぐ学校町へ引っ越してきたのか


「あのっ、脩寿くん。もし良かったら、あの、……お友達になって下さいっ!」
「えっ嘘、あの、えっ、いいの? 本当に? 嬉しいよ!」


 千十ちゃんからの突然の申し出に、嬉しさのあまり挙動不審さに加速が掛かりそうだ

 てか最近凄いな、俺
 高奈先輩に続いて可愛い女の子と友達になれるとは
 四月からの不毛具合と比較したら何だこれは雲泥の差だぞ

 まさか“ツキ”ってヤツが非常に猛烈な勢いで俺に接近しているのではないだろうか


「俺もほら、引っ越してきて心細かったんだ
 まさかナナオ時代の子と再会できるなんて思ってなかったし」

 友達が増えるってのと、特に女の子の友達が増えるってのは大きい
 友達自体はいるにはいるが商業のダチ公は野郎ばっかりだし
 そもそも、それはそれ、これはこれで話が別だ!!

「ええと、あれだ。連絡先を教えた方がいいよね?」
「あっ……、ごめんなさい。今アルバイト中だから、携帯をロッカーに置いてあって」
「えっあっそうか、ごめん! じゃああの、俺の連絡先を書いて渡すね」
「いいの!? ごめんなさい! あのっ、ありがとう!」

 ペンは、持ってる
 男の流儀ってわけじゃないがボールペンは常に携帯してる
 だが紙が、ない

 辺りを見回すがそれらしい物はない
 いや、ある。テーブルの上の紙ナプキンだ
 一枚抜いてボールペンを手に取り、電話番号とメルアドを書くことにした

 何だか気恥ずかしくなってきたぞ
 紙が無いとはいえ紙ナプキンに書くことになるとはな
 俺も高奈先輩に倣ってこれからはブレザーにお洒落な便箋を忍ばせておこう


「千十~、てんちょーが呼んでますの~!」


 ビビってペンを取り落としそうになった
 コトリーちゃんがこっちへ近づいてきている

「えっ、あっ、ごめんタマちゃん! 今行きますっ!」

 んなっ!? アドレスを渡しそびれてしまった
 ていうかまだ書いてる途中だ、間に合わなかったか

「これは私からのお礼ですわ! 無料ですわ! ごゆっくりどうぞ、ですわ!」

 コトリーちゃんはお店の制服に着替えていた
 カップに入った紅茶とケーキの乗った皿をテーブルに置こうとする
 急いでアドレス書きかけの紙ナプキンを脇の方へどけた

 

 

「メニューはお下げしますの」
「ああ!? ちょっ、コトリーちゃん待って!」

 考えるより先にコトリーちゃんを止める
 駄目だ、これを食べてハイ終わりは駄目だ!
 それにほらあれだ、俺はお金を払っていないし!

「あの、コトリーちゃん。俺、ここで晩ご飯を食べていくことにするよ」
「あら、そうですの? ……まさか、早渡さん。気を遣ってますの?」
「いや違うよ、ほらあの! お腹もグーペコだしさ!」

 実にジャストタイミングで腹の虫が鳴った
 運が良いとしか思えない、グッジョブだ腹の虫!

「初めて来たお店だし、折角だから奮発して美味しいの食べて帰りたいんだ!」
「むー……、何だか気を遣われてる気がしますけど、……じゃあ分かりましたの!」

 コトリーちゃんはむうと唸っていたが、やがてメニューを見せてくれた
 よし、これでもう少し喫茶店に長居できるな!

「なんかコトリーちゃんのオススメってある?」
「『ラルム』はフレンチとイタリアンって建前ですの、あくまで建前ですの。例えばこの――」


「やあ、君! どうも初めまして!」


 出し抜けに真横から声を掛けられてビックリした
 ついでにコトリーちゃんも「いぴッ!?」と変な声を上げて驚いていた

 いきなり声を掛けてきた人を見る
 若い男性だ、格好からして喫茶店のスタッフさんだ
 業務用の帽子を被ったその人は俺を見ながらニコニコしている


「うちのコトリーちゃんを助けてくれたんだってね!
 本当にどうもありがとう! これも何かの縁だと思ってね!
 どうかな!? もし良ければ君も一緒に『ラルム』で働かないかい!?」

「ちょっ、てんちょー!? やめて下さい!! お客様ですのよ!?」
「あ、あー、すいません。俺、他にバイトしてて」

「掛け持ちでもいいから! 本当にお願いだよ! ウチは女の子しかいないんだ!
 男独りでやってるとさ、時折無性に泣きたくなることがあるんだよね! 頼むよ!!」


 その男性はニコニコしながらそんなことを言う
 途中から俺の手を取ってお願いしてきたが、その目は泣きそうになっていた
 繰り返すが、顔は笑っていて、目が泣きそうになっている


「てんちょー! お客様困ってらっしゃいますの! それにキッチンはどうしましたの!?」
「大丈夫!! 千十ちゃんが一人でやってるから!!」
「何やってますの!? 早く! キッチンに! 戻って下さいませ!!」
「そっちの男の子がウチでバイトしてくれるって言うならすぐにでも戻るよ!!」

「すいません、時間が……無いっす」

「ほらぁ!! お客様困らせるのやめて! 早くキッチンに戻って! ですの!!」


 店長さんはコトリーちゃんに背中を押されて半ば無理矢理奥へと押しやられていった
 かなり落ち込んでる様子が店長さんの背中から伝わってくる
 そんなに男手が欲しかったのか、店長さん……


 

 

 コトリーちゃんが肩で息しながら戻ってきた

「早渡さん、ごめんなさい。普段は悪いてんちょーじゃありませんの」

 凄くバツの悪そうな顔をしている
 こっちが申し訳ない気分になってきた
 もういっそのこと、この喫茶店で働いてみるか?

「でもこれ以上スタッフ増やしたら、てんちょー怒られてしまいますの」

 話を聞くと、喫茶店の数字はその道ウン十年のパートさんが管理しているそうだ
 店長さんでは務まらないらしく、パートさんには完全に頭が上がらないらしい

「ところで早渡さん。千十とはお友達でしたの?」
「えっ、ああ。どうも幼馴染だったみたいで。俺もさっき知ってさ、ビックリだよ」
「そうでしたの!?」

 ただ何というか、幼馴染という言葉が適当かどうかは分からない
 俺は千十ちゃんを知ってたが、顔と名前は覚えていなかった

「運命というものですわね……。羨ましいですわ、羨ましいですわ」

 コトリーちゃんは妙な関心の仕方をしている

「ちょっと! ちょっと待ってて、ですの!」

 コトリーちゃんは少し慌てた様子で奥の方へ行ってしまった


 ふとテーブルに広げられたメニューに目を落とした
 確かにイタリアンだ、あとフレンチだったか。でも建前がどうとか言ってたな

 その前に、だ。書きかけのアドレスを書き上げなきゃ
 脇に除けた紙ナプキンを手に、連絡先の残りを書き込む

「あのっ、……脩寿くん」
「!」

 顔を上げると千十ちゃんが戻ってきた
 思わず席を立った

「千十ちゃん、これ。お願いします!」

 書き上げたばかりの連絡先を両手で差し出し、お辞儀する

「あっ、こ、こちらこそよろしくお願いしますっ!」

 千十ちゃんも、それを両手で受け取ってくれた

 顔を上げると奥からコトリーちゃんがこっちを窺っていた
 「よしっ!」とガッツポーズを取っている

「初いわねぇ♥」

 そこへおばちゃんの声が掛かる
 先程の年配女性とその同席のおばちゃんズがめっちゃニヤニヤしながらこっちを見ていた

 まさか一部始終を全部見られてたのかよ、んっとーに恥ずかしいな!!

 千十ちゃんの方を見ると彼女の顔は耳まで真っ赤になっていた
 俺も同じ気分だ、今なら顔から火が出せそうな勢いだ










□□■

 
ようやくラブコメパートか?
ありがとうとごめんなさいと恥ずかしいが頻出ワードですが
このワードが減れば減るほど距離が近づいていく、はずですよね多分

あと現世代と次世代の間にどういった技術革新があったのか分かりませんが
彼らが持ってる携帯はスマホでいいのだろうか

24時間以内に投下という話でしたが、実際は42時間後になってしまい……よんじゅうにじかん……?!


 

 




 夢を、見ていた

 もう遠い昔の話だ

 親のいない俺は施設で育った

 そこでANと契約を結んで訓練を受けた

 次世代を担う人材になっていく為の訓練だった

 だけど、俺達は然程そういったことを意識していなかった



   『みんな、昨日のおさらいだ。三つの合言葉、覚えてるね?』



 誰もがあの人に憧れていた

 俺にとってもあの人は憧れだった

 誰もがあの人になろうと頑張っていた



   『器の大きさはー?』


     『『『じゅーにんといろー!』』』



 懐かしい

 もう戻ってくることのない日々

 これはあの頃の記憶の欠片に過ぎない



   『力の強さはー?』


     『『『おもいのつよさー!』』』



 俺はあの人には、なれなかった

 それを知ったとき俺は初めて早渡脩寿になろうとした

 そして――今の俺はどうだ。なれたのだろうか、早渡脩寿に



   『技の形はー?』


     『『『そーぞーりょくー!』』』



 もう、分からない

 今となっては、何も

 俺が何者なのかどうかすら




 俺は、今、夢を見ている

 全てが、夢なら、良かったのに



 

 



「――、――」


 目が覚めた
 時計を確認すると深夜二時半
 いつもの起床時間だ、バイトの準備をしないと

 酷く懐かしい夢だった
 上体を起こして軽く頭を振った
 もう少し続きを見てたかった気もするが、起きなきゃな

 携帯を弄ってメールを確認する


『今日はありがとうございました!
 これからも、どうぞよろしくお願いします!』


 顔が緩みそうになる
 喫茶店で晩ご飯を食べた後、おばちゃんズに絡まれてしまい
 途中店長さんの度々の乱入もあって、結局閉店間際まで喫茶店で過ごしてしまった

 帰宅して後に届いたのが、この千十ちゃんからのメールだ
 商業のダチ公の話ではツイッターやらラインやら色々あるらしいが詳しくは知らない
 千十ちゃんの電話番号とメルアドだけで俺にとっては十分だった

 ここで一つ罪を白状しなければならない
 千十ちゃんを南区のホテルに連れ込んでお互いに欲望を吐き出すという刹那の妄想は
 今となっては数枚のティッシュと共に、秋の夜が作り出す影と闇のあわいへと消えていった

 今となっては後悔している
 一応本気で言ってるんだ、これは
 こんな気分になったのは初めてだったと言い訳する積りは無い
 ああそうとも、俺は最低のクソ野郎だ。言い訳などできるはずが無い

 罪悪感が酷い
 全部俺の劣情が悪い



 強く頭を振って欲望の残滓を追い出す

 もう一度、千十ちゃんからのメールを眺めた

 施設時代の子に再会できるとは思わなかった
 小さい子犬を助ける為に、野犬の群れが疾駆する校庭に進んでいった、あの子と

 目を閉じた
 こうして出会えたことを大切にしたい

「千十ちゃん、か」

 いい友達でいたい
 理由もなくそう思えた










□□■

続けて乙ですのー!
おぉう、幼い時の記憶ぅ……

> 今となっては数枚のティッシュと共に、秋の夜が作り出す影と闇のあわいへと消えていった
(そっと温かい眼差しで見守る)


>彼らが持ってる携帯はスマホでいいのだろうか
少なくとも、こちらの次世代子供キャラ逹が持ってるのはスマホですね
親世代から20年くらい後の世代なんで、ぶっちゃけスマホよりもうちょっと高性能なもん出てる気がしますが書き手の想像力が追いつかないというかぷち近未来SFみたいなもんしか浮かばなくて自重した

>24時間以内に投下という話でしたが、実際は42時間後になってしまい……よんじゅうにじかん……?!
十分速いと思うよ!思うよ!!


あ、そうそう
脩寿君……学校町最大の中学校で三年前に起きた事件、詳しく知りたい?
知りたい場合、また中学校の辺り、行ったりします?

 
早渡サイテー、な回です
今後こんなお下品な話が時々来ます
おもらしも多分来ますし、エッチなのも……あるかなあ?
次世代ーズはこんなお話ですので、学校や職場で読む時はどうか後ろの人にお気を付けください

>>319
早渡「マジっすか!? いいんですか!?」
ただ早渡としては三年前の事件よりも「狐」の動向の方が気になってると思います
彼は本当に「狐」が学校町にいるのか確信が持てていません
自分以外の誰かから「多分まだ潜伏してるよ」と言われたら安心するはず
いや待て、三年前の事件も真相を辿れば「狐」に行き着くので……つまりだ
早渡「いやもう『狐』の情報が無いんで誰か助けて下さい」
早渡が中学校近辺に行くとしたら放課後~夕闇の時間帯だと思います
夜間はほら、組織の怖いヤツ(>>207-211参照)に追われて以降徘徊を控えてますので

実は中央高校組と高奈先輩が知り合いだった、という体で行く方向も考えましたが
さすがにそれは花子さんの人の都合に関わるので

ところでこれ大体九月くらいの話になるのか
すると花子さんの人の>>280-281の話は、10~11月くらいだろうか
……急がないとだな

>(そっと温かい眼差しで見守る)
ありがとうございます……ありがとうございます……orz

次回は裏設定のアレを本編で暴露しつつ
北区神社へお詣りの後に「ヒーローズカフェ」2度目の訪問(挨拶)です
具体的には次の点に答えます
・なんで早渡は学校町に来たの?
・早渡が言ってた盟主さんへの挨拶ってなに?

長くなりそうなので途中で断定的に分割する
アクマの人、お世話になります……orz

 



>>319
三年前の事件か……
改めて状況を考えると、世間話として振られたら
早渡「あー、なんか胸糞悪い事件があったっぽいですね」
と乗ってくると思います

お夕食は麻婆だー、と夕食作り始める前にレス

>>320
>早渡が中学校近辺に行くとしたら放課後~夕闇の時間帯だと思います
よし、それなら将門様とセットで遭遇じゃないルートでいけるな(何やろうとしてた)
「狐」が学校町にいる事に関してはきちんと情報渡そう

遭遇時期、9月で大丈夫……かな?

>実は中央高校組と高奈先輩が知り合いだった、という体で行く方向も考えましたが
問題ないのですぜ?

>すると花子さんの人の>>280-281の話は、10~11月くらいだろうか
あ、これ11月です
戦技披露会もハロウィンも終わった後
……11月前半から半ばくらいじゃないですかね



>>322
ありがとうございます
9月で大丈夫です
あと大事なことを忘れてましたので
前のように裏にアレしておきました、アレです
どうもすいません

>あ、これ11月です
い、急ごう……

所用に出向き、そして書く
wikiもだな

ごちそうさまでした

>前のように裏にアレしておきました、アレです
確認しておきました
なるほど了解。大丈夫なんとかなるなる

>い、急ごう……
俺の書くスピード遅いから大丈夫大丈夫

皆様乙ですの
によによしたりハラハラしたり忙しいスレだな!(褒め言葉

>>308
>ルールの方は、昔なんかを生け贄にしてデーモンの召喚を召喚した頃からどうなってるのか分からないんですが
その時代で止まってると…今のルール説明したらパンクするなぁ(割とマジで
あれから融合、儀式以外に3つの召喚法が登場してですね

○『チューナー』というモンスターを使って2体以上が1体の強力モンスターになる『シンクロ召喚』!
●同じレベルのモンスターを“重ねる”! レベルじゃないよ“ランク”だよ! 回数制限付き強力効果目白押し『エクシーズ召喚』!
☆魔法カードになるモンスター!? 2つの『スケール』で5体同時召喚を狙え! 可能性の架け橋『ペンデュラム召喚』!

アニメの新シリーズが始まる度に追加されて……今年の春にまた始まるらしいがどうなるんだ

>しかし「ゼロ」なら分かるぞ、その昔シャドーマンの人が避難所で語ってたかつての主人公だったかの記憶があります
ちょっとまって心当たりがない
俺以上の記憶力の持ち主だと……!?

次世代ーズ投下お疲れ様です

神主登場は10月~11月前半かな?こっちの黒幕いつ出るんだろうか(震え声)

>>308
おっさんで風格出そうとしたらああなりました。酒と煙草は神主の命(迫真)
能力についてはその通り「陰陽道」の「式神」です
ざっくり説明すると「紙を媒介に呪術を行使する」能力ですね
紙で獣や妖を象って操り、攻防様々な呪符で魔に立ち向かう退魔師をイメージ
なお戦闘用の呪術しか使えないので占術方面では全く使えません
弱点?色々書き込まれた紙のストックが無くなれば
残るのは生身ですのでそうなってから囲んで叩きましょう

あ、真理ちゃんは心配しなくても大丈夫ですよ
作中で彼女もそう言ってますから……ね?

>神主登場は10月~11月前半かな?こっちの黒幕いつ出るんだろうか(震え声)
なるほど、それなら「狐」騒動最終決戦中のどさくさに紛れて盟主様にちょっかいだしても許されるな!!(?)

>弱点?色々書き込まれた紙のストックが無くなれば
燃やそう

>作中で彼女もそう言ってますから……ね?
おにいちゃん!
ぼく、とってもいやなよかんがするよ!!

>>327
>なるほど、それなら「狐」騒動最終決戦中のどさくさに紛れて盟主様にちょっかいだしても許されるな!!(?)
許されます(断言)
そして狐終わったらそのまま盟主様完全暴走からの黒幕登場に繋げたい(願望)

>燃やそう
水で濡らされるのはどういうわけか対策してるみたいだが
炎熱系能力者に片端から焼却させるのは普通に効きそう(真顔)

>おにいちゃん!
>ぼく、とってもいやなよかんがするよ!!
いやほんと闇落ちとかそういうのは一切ないですからご安心ください
相生真理はいつだって篠塚結の味方です!(笑顔)

次世代の人へ
ちょっと避難所の裏設定スレで質問ぶん投げたのでお時間ある時に確認していただけると幸い

>許されます(断言)
やったぜ(将門様がなんか数名と作戦会議初めたの見ながら)

>炎熱系能力者に片端から焼却させるのは普通に効きそう(真顔)
なるほど

>相生真理はいつだって篠塚結の味方です!(笑顔)
ぼくしってるんだ
このすれでそのてのえがおをしんじちゃだめだって(震え)

>>329
>やったぜ(将門様がなんか数名と作戦会議初めたの見ながら)
あっ(察し)
とうとう首塚が介入してくるんですね。まだ会話ほぼ通じないけど頑張ってね……
あとキスシーンは生身でできる機会を後で用意するからもうちょっと待ってて将門様

>ぼくしってるんだ
>このすれでそのてのえがおをしんじちゃだめだって(震え)
ところでこれはそんなに重要な話ではないのですが
相生真理の母親、相生澄音の契約都市伝説は"死の行軍"で
いわゆるネズミの一種を召喚して使役する能力なんですよね
そして遺伝なのか鼠系の都市伝説と親和性がある真理は小玉鼠と契約しています
それから父親、相生森羅の方は"相対性理論の理解者"という
都市伝説と契約しているんですよね。仰々しい名前の割に
何か話を耳で聞くと関連する事柄を連鎖的に知るという地味な能力ですけど
…………父親の遺伝子はどうなったんでしょうねえ?(首傾げ)

>>330
将門様が神主に軽めの祟り(箪笥の角に小指ぶつけたりおみくじ引くとよくて凶だったりくじ引き全部外れる程度)やってもいいかって顔してるの

>とうとう首塚が介入してくるんですね。まだ会話ほぼ通じないけど頑張ってね……
ちょっとなー、強引だけど正気保たせる方法できないかな、って

>…………父親の遺伝子はどうなったんでしょうねえ?(首傾げ)
やっぱりこのすれのひとのえがおはしんようしてはいけなかった

>>331
>将門様が神主に軽めの祟り(箪笥の角に小指ぶつけたりおみくじ引くとよくて凶だったりくじ引き全部外れる程度)やってもいいかって顔してるの
やめたげてよぉ?!wwwww

>ちょっとなー、強引だけど正気保たせる方法できないかな、って
ふむ、毒抜きするのかな?といっても正気になったとして盟主から出てくる情報はまるで核心には触れないぞ……?

・なんらかの干渉を土地(地脈)ごと受けているが、何をされているのか詳しくは分からない
・そのため恒久的に暴走を止めるには土地から盟主を剥がす必要があるが
 霊体はラジコンのようなものなので霊体と土地を遮断しても霊体が霧散するだけ
 さらに言えば調整役を失った場合、膨大なエネルギーがどう暴発するかが予想できない
・どこかに土地の力(地脈や魔法陣のアレ)が流されているようだが場所の特定はできていない
・元凶の心当たりはない(黒幕の能力を知らない&黒幕の干渉がまだ間接的であるため)
・例の男?見覚えはあるのですが……ここ20年の移住者ではないと思います(盟主、神主のことはほぼ頭から抜けている模様)

出せそうな情報羅列したけどほんと盟主役に立たないなァ。特に最後
盟主「だ、だって神主って代替わりしますし今代はまるで表に出てこなかったですし……」
神主「目立たないように20年以上隠れて準備し続けてた俺の努力が実を結んだな」
※本編時間軸でまったく名前も姿も出てこなかった理由付けはこうなりました

>やっぱりこのすれのひとのえがおはしんようしてはいけなかった
結局のところ真理ちゃんは多重契約者で華麗に影をぶっ飛ばして能力の代償払っただけってのが揺るぎない真実です

>>341
>やめたげてよぉ?!wwwwwwwwww
致命的じゃないから大丈夫!(?)
「何か……おかしい………っまさか!?スタンド(都市伝説)攻撃を受けている!?」ってなるかなーって

>ふむ、毒抜きするのかな?といっても正気になったとして盟主から出てくる情報はまるで核心には触れないぞ……?
ちょっくら強引なその方法で正気保たせる事できたら、地脈的なものの影響で暴走ってのは確定情報として与えられそうだし
まぁ何より、盟主様が暴走状態なのが嫌なんでしょう、将門様

あと、最近気づいたが、神社の神事の回数減ってるの、獄門寺家や日景家が「あれ?」って気づきそうな気もしてきてな…(記録とってそうだから)

>結局のところ真理ちゃんは多重契約者で華麗に影をぶっ飛ばして能力の代償払っただけってのが揺るぎない真実です
うわーぉ

>>342
>致命的じゃないから大丈夫!(?)
死ななきゃ安いね(おめめグルグル)

>ちょっくら強引なその方法で正気保たせる事できたら、地脈的なものの影響で暴走ってのは確定情報として与えられそうだし
情報が増えるのはよいことです。じゃあもっと積極的に情報出してよという意見には目をそらします(棒)
将門様は女性に優しい素敵なお方です(ヨイショ)

>あと、最近気づいたが、神社の神事の回数減ってるの、獄門寺家や日景家が「あれ?」って気づきそうな気もしてきてな…(記録とってそうだから)
ぶっちゃけあからさまに減ってるから気づいてると思いますよ
なんで神事が行われないのかという真意がひた隠しにされていただけですから
年齢設定から逆算すると分かるんですけど、現神主って就任当時20歳くらいの若造なので
先代が急死してよくわかってないバカ息子が業務放棄してるくらいにしか思われていなかったのではないかと(※盟主はそう思ってる)

>うわーぉ
例えるならロールシャッハの友人ナイトオウル二世は激痛と疲労を代償に
スーパーオジマンディアスとなることができるが、その度にDr.マンハッタン化していくみたいな?(わかりづらい)

>>343
>死ななきゃ安いね(おめめグルグル)
まぁ問題は「スタンド(都市伝説)による攻撃かっ!?」って感づく事はできても、しょぼすぎて将門様の祟りだとは気づかれないだろうなー、ってことですね
ただ、攻撃を受けた事とちょっと後述する事で、自分のやってることがバレてるか…?と言うプレッシャーはかけられるかな、って思ってます

>ぶっちゃけあからさまに減ってるから気づいてると思いますよ
>先代が急死してよくわかってないバカ息子が業務放棄してるくらいにしか思われていなかったのではないかと(※盟主はそう思ってる)
あぁ、あからさまに減ってるなら、古い家とか学校町にいる社長組で「もう継いで長いんだから、神事は真面目にやりなさい」的プレッシャーかけられるな
うち、獄門寺家の龍一のように都市伝説契約者がその中に交じるわけで。万が一神主さんが都市伝説契約者を察知できる場合、前述の将門様の祟りとあわせて、自分がやっていることがバレている…と言うプレッシャーになるかなー、って

なお、プレッシャーかけてる側(旧家&社長組)に自覚あるかどうかは別とする

>スーパーオジマンディアスとなることができるが、その度にDr.マンハッタン化していくみたいな?(わかりづらい)
Dr.マンハッタンでマーベルでも屈指の強キャラじゃなかったっけ

みなさんお疲れ様です
うぃきを整理してついでに時系列表をつくりました
ひょうというよりはリストとよぶべきしろものだが
なにかこれかいておいてほしいなどご要望があればどしどしおたよりをおねがいします

>>344
状況が動き始めた現在は何かやってることがバレてもそれほど気にしないんじゃないかなー?
神主がやってきたことって本人の認識だと大事の前に小事を切り捨ててるようなもので
状況的に後ろめたいことをやってるのがバレたし自重しよう、という段階はもう過ぎてるんですよね
ここで動くのをやめた結果、黒幕に対処できなかったらまず死ぬのは一般市民だぞ、と悪びれなく言いそう

神主の行動の理由は
いずれ黒幕が復活して周辺地域ごと一族を滅ぼしにかかる
→なら子孫に先送りせず俺が黒幕をぶっ倒して負の遺産を精算する
しかし危険な賭けになるのは間違いないのでバレたら余計な横槍が入るかもしれない
→周囲を騙してギリギリまで気づかれないように準備を進めよう
……お前もうちょっと頼れる奴いなかったのかよとは思う(神主陣営、神主含め3名)

ただそうですね、神事やれーっていう地元民からの突き上げは
流石に神主も対処せざるをえないだろうというのも事実なので……
たぶん本編と次世代編の間にあった事件の少ない時期というのは
神主が突き上げくらって真面目に神事をやっていた期間なんじゃないですかね?
じゃあ現在はどうなっているのかといえば、たぶん効果が出ないように神事の工程を変更してる……

>Dr.マンハッタンでマーベルでも屈指の強キャラじゃなかったっけ
チート化するかは分からないけど人間性をどんどん喪失していく模様
とはいえ作中では影響ないですけどね。孫世代があったらその頃には都市伝説化してるかも?


>>345
編集お疲れ様です。この感じだと冬の項目すごく膨らみそうだなあ

次世代の人wiki更新乙でーす

>>346
いや、旧家とかのプレッシャー云々に関しては、神主が何かやらかそうとしてるって知らなくてもやりそうだな、って思い付いてしまって
神主さん結婚してたっけも含めて(お見合い写真の山を抱えてそうな人を見ながら)

>ここで動くのをやめた結果、黒幕に対処できなかったらまず死ぬのは一般市民だぞ、と悪びれなく言いそう
「わかった、対処すればいいんだな?」って答えそうなのがいる

>しかし危険な賭けになるのは間違いないのでバレたら余計な横槍が入るかもしれない
次世代連中が人のこと言えないんだが、こっちの次世代連中は盟主様関連は「鬱陶しい」とは思ってるけど手を出す気がないんだよなぁ
若干名、辛辣な事言いそうなのはいるが

>……お前もうちょっと頼れる奴いなかったのかよとは思う(神主陣営、神主含め3名)
神主さん……言いにくいが、頼れるお友達とかおらへんかったん……?(そっと見守りながら)

>編集お疲れ様です。この感じだと冬の項目すごく膨らみそうだなあ
狐編は秋(11月)で終わるから問題ないな!

>>347
>神主さん結婚してたっけも含めて(お見合い写真の山を抱えてそうな人を見ながら)
神主は結婚してないです。お付き合いしている人もいないです
でも元孤児の女の子と一緒に住んではいます。どうやって引き取ったのかは知らないですが(目逸らし)

>「わかった、対処すればいいんだな?」って答えそうなのがいる
対処に協力すると確約が得られるなら情報も開示してくれると思いますよ
どうにも信用できなくて自分から協力要請はしていませんが
それはそれとして戦力は多い方がいいとも思ってるはずなので

>次世代連中が人のこと言えないんだが、こっちの次世代連中は盟主様関連は「鬱陶しい」とは思ってるけど手を出す気がないんだよなぁ
>神主さん……言いにくいが、頼れるお友達とかおらへんかったん……?(そっと見守りながら)
人間自分のことで手一杯ですからね。逆にそういうものだと思ってるから
悪い方向(今はどうにかなってるんだから未来に任せる)に相手の意見が傾くことを警戒して協力要請できてないんですが
ついでに言えば風水師水井がやらかした(らしい)という件を伝え聞いていたり
気がついたら組織という外様の集団が街にガッツリ入り込んでたりという状況下で
どこに目があるのか分からないし外様は信用しきれないしで、むしろ2人味方がいるだけ頑張った方なのでは……?
それはそれとしてこう書いてみると神主めちゃくちゃ人間不信っぽいですけどね……

>>348
>神主は結婚してないです。お付き合いしている人もいないです
大量のお見合い写真持っていかなきゃ(決意)

>対処に協力すると確約が得られるなら情報も開示してくれると思いますよ
協力要請する為にも、神主さんがやらかしてる事知らないと駄目だしなー
そして、協力するにしても「その件については協力するが、神事減らした事によって起こったことの責任はとってもらうよ」ってのもいるだろうし

>どこに目があるのか分からないし外様は信用しきれないしで、むしろ2人味方がいるだけ頑張った方なのでは……?
よく頑張ったがやはり……もうちょっと戦力欲しかったな……
「信頼しきれなくとも、利用できる奴作ればよかったじゃん」って言いそうな奴がいるので正座させておく

>>349
神主「事を終えるまで妻を娶るつもりはないぞ……?(引きつった笑顔)」
なお責任案件については残りの生涯かけて尽力してくれると思いますよ
というかその責任を投げ出すような人間なら、積極的に負の遺産を精算しようとか思わないでしょうし

>よく頑張ったがやはり……もうちょっと戦力欲しかったな……
>「信頼しきれなくとも、利用できる奴作ればよかったじゃん」って言いそうな奴がいるので正座させておく
利用できるやつを作るために行動することそれ自体が
目を向けられるデメリットを伴うとか考えてたんじゃないですかね……
やっぱりこの神主だいぶ人間不信入ってるじゃないか(震え声)
こいつ絶対過去になんかあっただろ……

>>350
>神主「事を終えるまで妻を娶るつもりはないぞ……?(引きつった笑顔)」
神社の跡取りについてとか考えてますか、40代ともなると結婚相手も限られてきますよとか言う言葉と共にお見合いおばさんのごとく持ち込まれるお見合い写真を楽しみにな!(許可出たら書くかもしれないし書かないかもしれない)(優先順位敵には後ですが)

>というかその責任を投げ出すような人間なら、積極的に負の遺産を精算しようとか思わないでしょうし
都市伝説云々知ってる人ならその辺話せば結婚しない事情わかってくれるかもしれないが、都市伝説云々わかってない人だと上記の理由でお見合い写真の山が

>やっぱりこの神主だいぶ人間不信入ってるじゃないか(震え声)
雑談によって明らかになっていく神主さんの人間不信よ……


花子さんの人、乙です
いよいよ咲夜さんにスポットがあたるんでしょうか?
ところで最近かなえさんが酷い目に遭う(婉曲表現)夢を見たんですが疲れてるのかな……

>>325
シンクロ召喚までなら何とかって感じです
5D'sのキングとDホイールの活躍を何度か目にしたので……
あと今は生け贄召喚とはいわずにアドバンス召喚ということも初めて知りました

因みに>>311で出た遠倉千十さんは「とおくらせと」と読みます
せんじゅではないですし海馬コーポレーションの社長でもありません
決闘者でもない……と思う。多分


そして今回の話ですがガチガチというより雰囲気だけ感じて頂けたら幸いです(ふんわりと)
行きます

 




「実は。以前から、あなたのことを、見ていたの」

 文脈が違えば心拍数が一気に上がりそうな発言だ
 もちろん色んな意味で

「五月、だったかしら。『組織』の黒服を、遠巻きに見ている、あなたを、見たことが、ある」
「ああ、ばっちり見られてたわけっすね。俺」

「そのときから、声をかけたいと、思っていたわ」




 週明けの放課後、俺は高奈先輩に誘われて町を案内されることになった
 四月に引っ越してきたとはいえ、もう学校町のあちこちは見て回った
 だがこういう好意には素直に甘えたい

 学校町は大まかに四つの区域に分けられることは知っていたが
 北区の山から流れる川によって分割できることは先輩に教えられて知った

 この日は彼女の提案もあって俺達は北区の神社を目指していた
 放課後すぐの約束だったので俺も先輩も制服のままだ
 先輩の私立のブレザー姿は新鮮だった




「早渡君は。『組織』を、避けているの?」

 そうだ
 率直に言えばそうだ
 俺は「組織」を避けている

 「組織」。社会の害悪となる都市伝説を駆逐し、その力を管理する集団だ
 だが連中がやっていることはそれだけじゃない。都市伝説の隠蔽もまた彼らの職分だ
 そして俺が「組織」を避ける理由はそこに関わってくる。正しく言うと彼ら「組織」は俺にとって仇だった

 先輩は俺が「組織」を避けていることは勘付いていたのか
 先輩に見られてたというときの行動があからさま過ぎたのだろうか
 もしかしたらあのとき、「組織」の黒服も俺の方に気付いてたかもしれない

「私も、よ。早渡君」
「え……?」

 俺が答える前に、先輩が口を開いていた
 横に並んだ先輩の顔を見る。いつもの穏やかな表情だ

「私も、『組織』とは関わらないように、しているわ」
「『組織』に加われって強要されたんすか?」
「いいえ、そうではないの」

 先輩は穏やかな声で答えた

「私の、好きだった人は。『組織』の黒服に、殺されたの」
「ッ……!?」


 理由は、重過ぎるものだった


「あの人は。黒服と刺し違えたけれど。私は、あの人を、助けられなかった」


 

 

 訊くべきでは無かった。あまりにも軽率過ぎた
 何と声を掛ければいいんだ

「早渡君」

 先輩と目が合う。表情は柔らかい

「気にしないで。あの人は、私のここに、いるわ」

 そう言いながら自分の胸に手を当てる

「先輩……」
「それに、ね」

 先輩は何故か悪戯っぽく笑った

「一年に一度は、あの人に、逢えるから。それが、私にとっての、楽しみなの」
「逢えるん、ですか?」
「ええ。年に一度だけれど」

 先輩はどこか遠くを見ている

「だけど、今年は、ケンカ別れしてしまったから。来年、来てくれるか、心配ね」
「あの。それって……?」
「お盆に、戻ってくるのよ。あの人。まだ、未練が、あるの」

 そう話しながら、先輩はもう一度悪戯っぽく笑う
 それは未だ見たことのない、先輩の不思議な表情だった
 思わず目を逸らした。俺なんかが見てはいけない気がしたんだ

「あの人。私に、まだ。未練があるの。意地っ張りだから、絶対に、認めようと、しないけれど」

 でも、と高奈先輩は言葉を続ける

「だからって、逢えるからといって。『組織』のやったことを、忘れられる、わけではない
 黒服にも、それなりの、理由があって、あの人を、始末しに、きたと思う。でも
 だからといって、『組織』を許せるほど。私は、大人じゃない」

 それが、高奈先輩が「組織」と関わらない理由
 そりゃそうだ。最愛の人をぶっ殺しに来た連中を許せるはずがない

 実は今の話で色々聞きたいこともある
 先輩に恋人がいたことや、お盆に死者が戻ってくる伝承が実在するのか
 だが今は、それを訊くべきときでは無い。俺なんかが訊いて良いことでも無い

 ぐっと抑え込む

「俺も、『組織』とは関わりたくないです」

 正直このタイミングで切り出していいのか迷う
 だが「ヒーローズカフェ」を後にしたとき俺は決めたはずだ

「昔話をすることになるんですけど。いいっすか?」



 高奈先輩は頷いた


 

 

「俺は親がいなくて、施設で育てられたんですよ。『七尾』って知ってますか?」
「ええ。知っているわ。でも、『七尾』は、確か」
「はい。丁度俺が六年のときに潰れました」


 俺がいた施設は、簡単に説明すると養育施設と保幼小中高一貫校が一緒になった感じの学校だ
 こうまとめてしまうと我ながら凄い所にいたんだな、俺
 それはいいとして、だ

 ここ20年のうちに急増した孤児の問題は社会にとっても解決すべき問題だった
 背景については色々議論があるけど今は措こう

 そうした問題に対処しようと動いたのがこの国の大企業だ
 彼らは積極的に教育や児童福祉の部門を創設して問題解決に乗り出した
 「七尾」もまたそうした複合企業の一つで、俺はその「七尾」の施設でお世話になった

 勿論この話には裏がある
 大体20年くらい前にこの国の政界の裏でとんでもない計画が進んでいた
 隠蔽され続けてきた都市伝説の存在を利用して政治・経済界の両面で莫大な利益をあげようと
 一部の政治家と都市伝説業界の関係者が結託して長期的規模の壮大な陰謀を巡らせていたのだ

 医療を例に取ろう
 現行の製薬産業に対して所謂“霊薬”が登場したらどうなるだろう?
 優れたお医者さんに対して“治癒系の契約者”が登場したらどうなるだろう?
 都市伝説由来の存在や技術や製造物が現行の市場において圧倒的優位性を持つのは言わずとも明らかだ

 そして、そうした力を一部の者達が独占できるとしたらどうなるだろう?

 美味しいパイがそこにはある
 今までには無かった、美味しくて大きなパイが

 かくして暗黒メガコーポとも呼ぶべきこの国の一部の大企業はその素敵な可能性に目をつけた
 都市伝説業界は、彼らにとって新たなパイであり、金のなる木であったというわけだ
 木になる果実を口にすればどんな結果を招くのか、彼らは熟慮しなかったようだ

 そして当然の話だが、都市伝説業界の番人達はこれを看過しなかった
 どう考えても荒唐無稽過ぎるこの陰謀は実行前に阻止された
 そのとき動いた勢力の一つが、恐らく「組織」だ
 結局、陰謀家達は人知れず粛清された
 そこまではいい

 裏の世界を知った大企業の幾つかは、この夢の市場を諦められなかった
 彼らは都市伝説業界の番人達の目を盗んで、何とか夢の力を手中に収めようとした

 だが結局の所、彼らは表の人間だ
 やりたくても出来ることには当然限界がある
 彼らには知識も技術も無く、ましてや実在化した都市伝説の何たるかを知らない

 だから彼らは「基礎研究」を進めた
 番人達の目を盗みながら、ゆっくりと、しかし、着実に
 そうした「基礎研究」に手を出した大企業の一つが、そう、「七尾」だった

 「七尾」は孤児達の中で適正のある子を調査・特定した
 来るべき都市伝説の市場を担っていく人材を育成するためだ
 適正のある子供達は一つのクラスに集められ、集中的な訓練を受けることになった

 ところで、「七尾」時代の終盤に俺はこんな話を聞いたことがある
 都市伝説に適正を示す子供達は10年ほど前をピークに明らかに増加傾向にあった
 そのほとんどが“孤児”だ、孤児の増加と子供の契約適合者の増加は軌を一にしていた
 まるで社会全体が“学校町”になったかのようだ、研究者の一人がそう零したのを覚えている



 話を戻そう


 

 

「ニュースで、何度か、目にしたわ」
「表向きはスキャンダルでしたからね、施設の子に性的虐待って」


 「七尾」は俺が小学校六年に相当する学年のときに解体された
 施設職員が組織ぐるみで性的児童虐待の問題を隠蔽していたのが発覚したからだ
 この事件がきっかけとなって世間の批判を浴びた「七尾」は、遂に児童福祉の部門を潰すことになる
 同時に「七尾」系施設の子供達は新たな受け入れ先を探す難民と化した
 当時のワイドショーは連日「七尾」問題で大賑わいだった

 ニュースでは以上のように報道されている
 だがこれはあくまで表向きの理由だ
 なら真相は? お察しの通りだ


「早い話が『七尾』も裏で都市伝説の研究を進めてて、それがバレたんですよ」


 少し話が込み入るが、性的虐待自体はあった

 実際に施設の教職員が子供達に猥褻行為をやらかし問題になったことは以前にも何度かあった
 というか普通に逮捕者も出したし、報道もされたし、お役所の内部調査も行われたが
 その度に七尾のお偉いさん達は「誠に遺憾であり」の一点張りで切り抜けていた

 それが先の性的虐待の隠蔽報道のときには施設解体にまで発展したのだ
 何故今回はここまで? と思う者あり、ようやく潰れたかと思う者あり
 評論家気取りの御仁共は銘々が好き勝手に意見を宣っていた

 施設を解体するに際して、叩けば幾らでも出る埃を利用したと見るのが適当な所だろう


「研究の一環で『七尾』は都市伝説に適正のある子を特定して、契約させて、訓練してたんです」
「それは、つまり、早渡君も」
「はい。俺もそこでANと契約して、教育されました。あ、“AN”ってのは実在化した都市伝説のことです」


 俺も今でこそ都市伝説と呼んでいるが、実際にこの“都市伝説”という語を使うときはある種の前提に立っている
 つまり、それが話としての都市伝説ではなくて、話が実在化した存在を意味する語であること
 そして、実在化したのは狭義の都市伝説だけとは限らないこと
 こうした前提だ

 「七尾」ではこれを“Actualized Narratives”、「顕在化した語り」とのニュアンスを持ったANという語で呼んでいた
 俺達のような適正ありの子供達は、契約書の形で封印されたANと契約を結び、能力者となった
 そして同期の連中と一緒にANのお勉強が始まったというわけだ


「俺もANクラスのメンバーとして同期の奴らと一緒に訓練されました。それで」

 言葉を区切る
 俺達は既に東区を抜け、北区に入っていた
 北区は学校町でも静かな雰囲気をたたえた場所だ

 神社までもう少し距離があるだろう

「『組織』はANクラスの奴らを確保したかったんだと思います」

 

 

「俺達は『組織』が襲撃するって話を聞いて
 先生達に半分無理矢理『七尾』から叩き出されました」

「『組織』が、来たのね?」
「はい、俺も自分の目ではっきり見ました」


 「組織」が襲撃する、という話を聞かされた
 突然の話だった。襲撃の実に数時間前の時点だ
 俺達ANクラスの連中は文字通り這う這うの体で逃げ出した


「俺もダチと一緒に逃げた所を黒服に追跡されて、ヤバかったっす」
「大丈夫、だったの?」
「はい、本格的にヤバいってときに
 『七つ星団地』って所の兄ちゃん達に助けられました
 それで、俺とダチは助かったんです。助かったんすけど」


 高奈先輩の顔を見た
 これを、話すべきだろうか
 先輩はじっと俺を見詰め返している

 先輩に嘘を吐きたくなかった


「同じANのクラスに、初恋の幼馴染がいたんですよ」


 アイツのことだ


「まあ施設解体の日に告って、すごいフラれ方しちまったんすけど」


 アイツは「組織」に連行された。アイツは自分から「組織」に随っていた
 そんな話を聞いたのは「七つ星」に厄介になって大分経ってからだ

 今となっては確かめようもない話だが、「組織」はアイツを回収したがっていたらしい
 その理由は予想がつく。アイツは優秀で強力な契約者だった
 彼女は「七尾」の最高傑作と呼ばれた存在だ


「アイツは『組織』に連行されて、それで俺は『七つ星』で世話になって」


 俺は「七つ星」で用心棒見習いの傍ら、アイツの情報を集めていた
 アイツが学校町にいるという真偽不明な情報を耳にしたのもその頃だ


「で、俺が『七つ星』でバウンサーとして本デビューしてから一年くらい経ったときに」


 あの日のことは今でも思い出す


「アイツが死んだって話を聞きました。組織の命令で『狐』討伐戦に駆り出されて、殺されたと」


 「組織」に首輪を付けられ、連中に飼育されることになったアイツは
 当時から問題になっていた「狐」を討伐する非公式の作戦に参加したそうだ


 で、死んだ


 

 


「早渡君」


 先輩は立ち止まった
 それは静かな声だった


「あなたは、その子の。仇を、討つために、学校町へ、来たの?」


 目を、見返す
 強い意志を感じる眼差しだった
 俺の目を、心を、突き刺すように見詰めている

 俺は首を横に振った


「『狐』は強いって聞いてます。正直俺が勝てる相手じゃないっす」


 自覚はある
 相手は強力な精神干渉能力、“魅了持ち”だ
 加えて強すぎる配下で周囲を固めているという話だ、到底太刀打ちできる相手ではない


「『狐』の連中も色々やらかしてるわけですから、ほら
 『組織』とか『首塚』とかに目を付けられてるわけじゃないっすか
 だから、多分、そういう勢力が『狐』を討伐するんじゃないかって、そう思ってます」


 既に「狐」はお尋ね者だって話だ、いずれ誰かが倒すだろう
 きっと誰かが、倒してくれるはずだ。この町の、誰かが。きっと


「俺は。 ――『狐』の討伐を見届けるために、学校町へ来ました」


 高奈先輩は黙って俺の話を聞いていた
 だが、何か言いたげな目で俺を見詰めていた

 先輩から視線を外す


「だから、そういう過去のこともあって『組織』とは関わりたくないっす
 『七尾』が裏で都市伝説研究やってて目を付けられたんだから、自業自得なんすけど」


 「組織」にも「組織」なりの理由があったのだろう
 だが、そんなものは結局あちら側の都合に過ぎない


 「七尾」に非があったとしてもだ
 俺にとって、あそこは家のようなものだった
 親に捨てられたような俺にとって、縋るのはあそこしか無かった

 

 


「『組織』相手に挑もうなんて思っちゃいません
 ただ、今はもう。連中とは関わりたくないだけっす」


 「組織」が憎くないと言えば大嘘になる
 控えめに言って連中は俺にとっての仇なことには変わりない
 育ててくれた場所を壊し、初恋のアイツを死に追いやった連中だ


 そうは言っても
 相手は「組織」、強大な勢力だ
 連中を敵に回すほど俺は無謀でも無いし、勇敢でも無い
 向こうから積極的に仕掛けてこない限りは、こちらも事を構える積りは無い



「神社、見えてきましたね」



 ようやく目的地が見えてきたな

 正確には山の上の神社へと続く、長い石段だ
 最初に神社へ来たときは登るのに一苦労するんじゃないかと思ったもんだ


「早渡君」


 高奈先輩に呼ばれる
 先輩は先程と同じ眼差しで俺を見詰めていた


「あなたの、幼馴染の子の、名前。聞いても、いいかしら」


 秋の風が通り抜ける
 俺は先輩の目をしばらく見詰め返し、神社の石段の方へ顔を背けた


「九宮空七(くみや うるな)です」



 俺達は石段へと進んだ










□■□


長いので全体を四分割しました
急いでつけ加えると七尾施設解体と襲撃は別個の事項です
襲撃の方は「組織」の暗黒面(まだ息がある)が関与しているものと
穏健派の一部が勘付いてる頃とは思いますが……?

今回は早渡の怒りの方にフィーチャーしてますがコイツの「組織」と「七尾」に対する感情はもう少し複雑
だが果たして彼は本当に「組織」と関わらずにいられるのだろうか(いや、無理)

これで大方の情報開示は終わったか?
次の投下は金曜あたりに……間に合うだろうか

次世代の人乙ですー
穏健派は、まぁ感づいてるだろうなぁ
天地辺りが「いい加減にしろよ」と思っていたり、いざとなれば「狐」騒動のどさくさに紛れて始末してやろうかとか穏健派と思えないこと考えてそうで(奴は元過激派)

>だが果たして彼は本当に「組織」と関わらずにいられるのだろうか(いや、無理)
まだ書けてないが、クロスさせていただくネタで関わるかもね!(非情)


さて、調子良ければ今夜中にクロスネタ書けてない事をごまかすように何らかの情報提示ネタ投下できたらいいね

 戦技披露会の試合と試合の、その合間の事

「しっかし、死者は出さない事ってなってるって聞くが。派手にやる奴が多いな」

 試合を見た感想として、慶次が一番強く抱いたのはそれだった
 思ったより、かなり派手に能力を使っている者が多い
 あれでも、「切り札」や「隠し玉」は出さなかった契約者もいるのだろうが、それでもかなり容赦なく能力を使っていた者がいた印象がある
 一歩間違えば死者が出ていたのでは、とも

「まぁ、治療係として「先生」が呼ばれているそうだからね。それを知っている人なんかは、ちょっとくらいの大怪我でも大丈夫と判断したんじゃないかな」

 慶次のつぶやきにそう答えたのは郁
 「ちょっとくらいの大怪我」はだいぶ矛盾しているのではツッコミを入れたくなったが、ぐっと、押さえ込み
 「先生」、と言うその名前に、脳裏に浮かぶのは診療所の某白衣が頭に浮かび、「あれか……」と言う心境だ

「あのセクハラの権化、そんなに優秀なのかよ」
「そうだね。色々と問題もある人物だが、優秀ではあるよ。色々と問題もある人物だが」

 2回言っている
 大事な事なので2回言った、と言う奴なのだろうか

「「薔薇十字団」所属だったよな、あの白衣。学校町にいる「薔薇十字団」メンバーは数が少ないからあいつが優秀なのかどうか判断し難いんだが」
「優秀だよ。彼、アハルディア・アーキナイトは能力だけを見れば優秀なんだ………だからこそ、「薔薇十字団」も「組織」も、他の組織も困っているんだろうけれどね」

 そう言いながら、郁は苦笑してきた
 慶次は、あの「先生」が元指名手配だった事くらいしか知らないし、どのような罪状で指名手配を食らっていたのかも知らない
 ただ、三年前に天地が盛大に頭を抱えていた事を覚えているだけだ
 愛百合から「あの男は信用しちゃ駄目よ」と言われていたので、常に警戒するようにはしていたが
 慶次がそう考えていると、郁がふぅ、と小さくため息を付いて

「……そう。優秀だ。それ故に。天地も今回の「狐」の件で、彼相手の交渉に頭を悩ませているのかもしれないね」

 と、そのように口に出したのだから

「あ?………どういうことだよ」

 慶次は、その言葉に反応する

「あぁ、君はANo所属だから聞いていなかったかもしれないね………「狐」が、今年に入って学校町に侵入したらしい。そこは把握しているね?」
「当たり前だろ。確か、3月だったか?「狐」が学校町に侵入したらしいのは」

 周辺がバタバタしていたから覚えている
 かなえが青い顔になっていて、ひどく不安そうであったし
 ……もっとも、それ以降、「狐」の所在はわからないままのようだが……

「そう、3月の「狐」が学校町に入り込んだと言うその日。「狐」の反応が消えた、その時………その場に、あの「先生」がいたらしいんだよ」
「……どういうことだ?」
「どういうことなんだろうね?」

 肩をすくめてくる郁

 「狐」の反応が消えた、その時
 その場に「先生」がいた?

「当人は、その場にいた事は認めているけれど「狐」がいた事は知らない、って言っているらしくてね」
「ただ、問題人物でもあるし怪しい、ってか?」
「そういう事さ。怪しい、けれど黒とも言い難い。だから、君達にはその情報が渡っていなかったんだよ」

 なるほど、と悔しいが慶次としてもその意見は認めざるをえない
 この情報を愛百合が知ったら、「先生」に対して徹底的に尋問を開始し、少しでも怪しいと判断したら処分すべき方向で考えたはずだ
 問題の多い人物とはいえ、「薔薇十字団」所属である
 喧嘩を売られない限りはどの組織に対しても中立を保つあそこに、喧嘩を売りたくないだろう

「一応、君には話したが。愛百合には伝えないでくれよ」
「わかってるよ。それに、あの「先生」が本当に優秀なら、愛百合がヘタに動いたとして、俺と愛百合じゃ太刀打ちできねぇんだろ」
「だろうね」
「わかってても、即答されるとムカつくな」

 事実なら、仕方ないのだが
 ……さて、この情報をどう判断すべきか
 慶次は考え込みながら………郁に気づかれないように、ひっそりとスマホを操作して、メールを送っていた



to be … ?

クロスオーバーネタ書けてないので出し忘れていた情報ぶん投げてお茶を濁す
具体的にどの試合の合間とか書いてないので、戦技披露会に来ていた人は自由にこの会話聞こえちゃって問題ないです


こりゃ駄目そうだ
皆様は体調にお気をつけください
インフルエンザが流行しているそうです

全く本編と関係ないんですがアクマの人に質問です
ネックおばさんとRBの電波ジャック深夜ラジオは
次世代編でも絶賛放送中なんでしょうか
あ放送回が好きでした……


改めまして花子さんの人乙です!
慶次さん、何だか順調にフラグを立ててない……?
しかし逆に言えば戦技披露会までは彼の安全が保障されている!
それ以降は……慶次さん超頑張れ

>>372
×……あ放送回が好きでした
○……あの放送回が好きでした
..orz.....

金曜には間に合わなかった
余裕もってやった方がいいな
行きます


●次世代ーズ

 前回のお話は>>359-365です
 wikiはhttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/5139.htmlにまとめられています



●読んでなくても何となく理解できるあらすじ

 彼、早渡脩寿は学校町南区に通う高校一年生の男の子
 この四月に学校町へ引っ越してきたんだ
 九月に入ってからは、美人な先輩と友達になったり
 すごく美人な店員さんと出会ったり、組織の変なヤツに追い回されたり
 同じ施設出身の女の子と再会したり、色々素敵なコトが起こっているぞ!

 この日は美人な先輩に学校町を案内されることになって
 北区の神社に行くことになったんだ
 道すがら早渡は自分の生い立ちについて先輩に教えるんだけど
 コイツは養育施設の出身で、そこで都市伝説と契約した能力者だったんだ
 色々あって施設は「組織」に潰されて、幼馴染は「組織」に連行されたんだけど
 実はその幼馴染、数年前の「狐」討伐戦で死んじゃったんだって!
 早渡は「狐」の討伐を見届けるために学校町へやって来たんだけど……
 一体これからどうなっちゃうんだろうね!

 え? トンカラトン? マジカル☆ソレイユ……?
 ごめん……、何のことだかさっぱり分からないや……



●三行あらすじ

 美人な先輩に学校町の案内に誘われた!
 先輩と一緒に神社に行くことになった!
 神社に着いた

 



「早渡君は。引っ越してきたとき、神様に、ご挨拶、した?」
「初めて学校町に来たときすぐ神社に行きました。そういうの大事っすよね」



 放課後、高奈先輩に身の上話をしつつ北区の神社へやって来た
 学校町の案内ついでに神社へ行こうというのは先輩の提案だ
 そして俺達は今、神社へ続く長い石段を上っている
 にしても何故神社に?



「学校町にはね、七不思議が、あるの」

 先輩の話によると、学校町には古くから伝わる七不思議が存在する
 そしてそれには表と裏があるらしい

「裏の、七不思議は。契約者にも、関わるものなの」

 高奈先輩はこれから、この内の一つを俺に教えてくれるという

「裏七不思議、ですか」
「そう。その一つは」


 長い石段を上り切った
 これで神社に来るのは三度目になるだろうか
 神域特有の雰囲気を肌で感じながら、拝殿の方へ顔を向ける


「『組織』から、隠れるための、おまじない」










 鳥居の前で一礼し、神域へと入った
 鳥居をくぐる際に体全体にかすかな抵抗を感じる

 平日の夕方前だからか、参拝者は俺達以外に見当たらなかった
 だが気配はある。それはここが力を有した“場”である徴なのかもしれない

 普段“神”をそこまで意識することの無い俺にとっても、ここが何であるのかは分かる


 背筋を正す

 手と口を清めた後、拝殿へ向かった

 

 
 会釈と共に、手持ちの十円玉を賽銭箱へ入れる


(あら。――ごめんなさい、早渡君。清めの十円玉を忘れてしまったわ)
(ああ、大丈夫っすよ、多分)

 鳥居をくぐる前に先輩から一通り話は聞いていた
 “おまじない”には予め清めておいた十円玉が必要らしい
 だが、まあなんだ。こういうのに大切なのは信心の方だろう。きっと

 それに、先輩の好意はありがたいが俺は既に「組織」の奴とかち合っている
 今後「組織」絡みでやばい事態に発展しなければ、俺としてはそれだけで御の字だ


 雑念を頭の中から追い払う
 緒を引くと大きな音を立てて鈴が鳴った

 深い礼を二度繰り返す
 そして二度柏手を打った
 拝殿に音が大きく反響する


(そして、おまじないを、唱えるの)


 拝殿に手を合わせたまま、目を閉じる


「どうか私を『組織』から隠してください、どうか私を『組織』から隠してください……」



     どうか私を『組織』から隠してください



 目を開く
 拝殿にもう一度、礼をした

 神前の気配は神社へ入ったときから変わらずに在る
 その空気を感じながら、軽い一礼と共に下がった


 拝殿を後にする


 神社に限らず、神域へ来ると常にこの感覚に囚われる

 「視られている」という感覚だ

 だがここで振り返るのは失礼だ

 それくらいは言われずとも理解できる


 もしかしたら、これこそが「神の坐す」顕われなのかもしれない

 

 

 一度拝殿へと向き直って一礼した後に、鳥居を出た
 高奈先輩は石段の近くで待っていた

 来るときは意識しなかったが、神社は北区の山にある
 この場所からは学校町を一望できる

 傾きかけた陽が町全体を照らしていた
 これからやって来る黄昏時が、やがて町を包むだろう

 夏が終わり少し涼しくなった秋の風が吹き抜ける
 町を背にしてこちらを見る先輩の髪は、風を受けてそよいでいた


「学校町は、好きになれそう?」
「分かんないっす」

 先輩の問いに答える

「ただ、不思議な町だって思ってます」
「そう」


 遠い街並みに目を向ける

 この町に都市伝説や契約者がいて
 この町に「組織」やその関係者がいて
 そして、この町の中に俺や高奈先輩がいて

 そのことがどことなく不思議に思えた


「私は、この町が、好きなの」

 先輩は髪に手を当てながら、町の方へ顔を向けた

「早渡君。――私に、力になれることは、ない?」
「……『狐』のことを訊きたいっす」

 そう、「狐」だ
 奴も、奴の配下もまたこの町にいる。いるはずなのだ
 四月から自分なりに動いてはみた。だが、全く手掛かりが無い

 先輩は知っているのだろうか


「ごめんなさい。私にも、よく、分からないの」

 そう答えながら、高奈先輩は石段を下り始めた
 俺も先輩の後に続く

「『狐』は、三年前にも、この町へ来たわ。知っている?」
「はい、そういう話も聞きました」
「そして、『狐』は、学校町へ、戻ってきた」

 それが今だ

 

 

「あれは、警戒すべき、存在ね。私も、消息が、知りたかった」

 先輩の言葉に耳を傾ける

「関わりたくない、とはいっても、相手のことを、知らなければ
 備えることが、できないから。だから、私も、それなりに、調べていたの」

 先輩は石段を下りながら顔を俺の方へ向けた

「多分、『狐』は。まだこの町に、いるわ
 何故、この町に、戻って、来たのかも。何故、この町に、留まって、いるのかも
 何故、姿を、隠し続けて、いるのかも。その、理由は、全く、分からないけれど、ね」

「そうっすか……」

 「狐」は、多分まだいる
 ただし、この町のどこかで息を潜めている

 息を吐いた
 大きな手掛かりが得られたわけではない

 だが
 少しだけ、ほんの少しだけ、前へ進めた気がする

「あの、先輩。いいっすか」

 俺には隠し続けてることが多い
 これでも一応自覚はしてる積りだ

 石段の途中で立ち止まった先輩に、一歩近づく

「耳を借ります」

 そう告げた後に、一瞬後ろめたさが脳裏をかすめていった
 先輩から情報を得て、自分の情報を先輩に伝える
 これは、先輩が嫌う行為では無かったか?

(ギブ・アンド・テイク、という、考え方。好きでは、ないの)

 少しの後悔が頭をもたげた
 でも、先輩に隠し事をしたくない
 高奈先輩はここまでしてくれているのに

 躊躇いを振り切るように先輩の耳に顔を近づける
 先輩の髪からは花のような香りがした
 両手で筒を作って耳を包む


 秘密の話を、伝えた
 顔を、離す


 「先輩、あの……」
 「言わないわ、誰にも。約束します」
 「あの、ありがとうございます」

 

 

「でも」

 そう言いながら、先輩は悪戯っぽく笑った

「迂闊ね、早渡君。石段を下りて、話した方が、良かったのでは、ないかしら?」
「え、なんで……ですか?」
「だって」

 神様に、聞かれてしまったかも、しれないでしょう?

 先輩はそう続けて微笑んだ
 なるほど、神様か
 そこまでは考えてなかった

 俺は思わず頭を掻いた





 石段を下り終え掛けたときだった

 数段先を行く先輩の後頭部を漫然と眺めながら、ふと疑問に感じた
 どうして先輩はここまで俺によくしてくれるんだろう

 思い切って尋ねてみた

「私は、自分が、お節介焼きだって、自覚はあります」

 先輩はそう答えた

「時々それで、相手に、迷惑を掛けたりするけれど
 早渡君は。迷惑だった、かしら。はっきり教えて、ね」

「いえそんな! 嬉しかったっすよ!」
「そう……」
「それに先輩みたいな美人さんと出会えるとは思ってなかっ……お」
「ありがとう。お世辞でも、嬉しいわ」
「いえ、あの」

 余計なことまで口から出てしまった
 そのなんだ、恥ずかしい……!
 思わず手で顔面を覆った
 俺の今の言葉は控え目に見ても失言だよね!!

「私も、大変なときには
 早渡君に、助けてもらうかも、しれないけど
 そのときは、どうか、よろしく、お願いしますね」

「あっ勿論っすよ!」

 これには即答する。ただ、どうなんだろう

 これこそ失礼な考えかもしれないが
 先輩にとって大変なことってあるのだろうか
 何だか全部自分独りで解決しそうな雰囲気あるけどな
 

 

 俺達は石段を下り切った
 余談になるが階段というのは上るときより
 下るときの方がしんどいのは俺だけだろうか
 ついでに言うと下るときの方が何というか怖さもある

「早渡君」

 先輩が俺に声を掛ける

「何か、他に。訊いておきたいことは、あるかしら?」
「そうっすね……」

 考える
 実は四月から全然進展の無かった一件がある

 先輩は知っているだろうか
 折角の機会だ、訊いてみよう


「先輩、あの」


 陽はゆっくりと西へ傾きつつある
 空はだんだんと朱に染まりつつある時分だ


「先輩は、『怪奇同盟』って知ってますか?」



















□■□


前回、大方の情報開示は終わったと言いましたが
訂正します、全然まだまだじゃないか!!
怖いなあ……土曜中にどこまでやれるかなあ

七不思議ネタにタッチしましたが突っ込みあればよろしくお願いします
以前チラ裏スレで話題が上った七不思議の裏表ですが未完成でした
七不思議って現世代と次世代とでは内容に変遷が生まれたりしそうだが
そこはどうなんだろうか……

あと神社の描写についてです
避難所とwikiを見つつよく分からない部分は省いて書いたが
果たしてこれで良かっただろうか
手水舎があるかどうか曖昧でしたが多分ありますよね?
神主さんは高校生二人組がやって来たことに絶対気付いてるはず

ようやく本題に入りました
話がヒーローズカフェ二度目の訪問へ移ります
ここから段々テンションがおかしくなっていきます
今日中にあと一、二発行きたいです

次世代の人乙でーす
体調、お大事にね。風邪気味状態が延々続いてる俺が言えたことじゃないけど
すまねぇな、早渡君……君とクロスオーバーさせるネタ、普通に「組織」メンバー関わってくるわてへぺろ
つまりはクロスオーバーネタ頑張る。こ、今月中に書ければいいのですが。そもそもフラグ連中なんとかするの今月中の予定だからなんとかせねばね


>慶次さん、何だか順調にフラグを立ててない……?
…さて、彼は一体、誰にメールしたんだろうね
まぁメール自体はフラグにあまり関係ないんだけど()

 学校、と言うものに通った経験はない
 「組織」内部で教育自体は問題なく受けられるし、表向きの学歴も「組織」によって用意される
 都市伝説事件に関わる上での心構えも当然のように教えられる。「組織」の一員として生きていくのであれば、学校に通う必要性等全くない

 ……そう、考えていたのだが

「日常に溶け込むんだったら、やっぱ学校は通った方がいいと思うぜ」

 花屋にて、花束を作ってもらうのを待っている間に直斗はそう言ってきた
 花の種類は色々とあるようだが、店員が一人だけと言う店だ。店員が花束作りに集中している間なら、多少きわどい話題でも大声でなければ大丈夫そうだ

「潜入捜査とかもやるんだったら、余計にな。「一般人」装えるかどうかは重要だろ」
「まぁ、そうだけどよ………俺だって、一般人装うくらいは」
「できてないぞ」

 さらり、と直斗は断言してきた
 むっ、としたくなるが、直斗は一応「一般人」と言う枠組みに入れても良い人間だろう
 そんな人間から見て、自分は「一般人」と言うには違和感がある、そういう事か
 直斗が、言葉を続けてくる

「一般人、っつーには隙がないっつか……空気が違うんだよ。一般人が考えるところの「裏の人間」みたいな雰囲気がある」
「……そんなにか?」
「そんなに。やっぱ気づいてなかったか」

 断言され、考え込む
 何故、そのような違和感がでてしまっているのか
 原因があるとすれば

「…俺が、「一般人の生活」を経験した事がほとんどないせいか」
「「組織」の一員になったのって、小学生の頃だろ?それ以来学校に通ってないなら、どうしても考え方とかでも違い出るんだろうな」

 ……やはり、そのせいか
 10歳で両親が死んで以降、そのまま学校にも通わなくなった
 「組織」の一員として学び、生き続けた
 そうか、そんなに、自分はあの頃と思考がズレているのか

「「組織」の方でも、あんまそこら辺ズレすぎないように、とはしているはずだろうけれど、それでもどうしても「違和感」は出るもんだよ。一般人の「日常」とは、どっかズレてるんだ」
「じゃ、お前はどうなんだよ」

 直斗とて、都市伝説に関わり続けている
 自身が契約者ではないにしろ、契約者と、都市伝説と当たり前のように接し続け、都市伝説事件に巻き込まれたことも一度や二度ではない
 そんなこいつは、一般人の日常とやらとは剥離した日常を過ごしているはずだ
 こちらの問いに、直斗は笑う

「間近で、都市伝説知らない人間の生活も見てきているからな。そこまでズレてるつもりはないぜ。少なくとも、都市伝説知らない奴らと接する時は一般人のつもりだし」
「……そんなもんか」
「そんなもんだよ」

 そうやって話しているうちに、花束ができたようだ
 直斗が、やけに色々花の種類を選んでいたせいで時間がかかったらしい

「おまたせいたしました。オダマキ、ユリ、ロベリア、マリーゴールド、ラベンダー、カンナ、ホオズキ、ザクロ。以上でよろしいですね?」
「はい……うん、黄色いユリだ。これで問題ないです」

 出来上がった花束を受取り、直斗が料金を払っている
 しかし、本当、色々と選んだものだ
 一種類でもいいだろうに

(まぁ、こだわりがあるんだろうな)

 ……なにせ、直斗が買った花束は、死者へ手向ける為の物なのだから




 三年前のあの事件、「土川 咲李」の死の瞬間を見てしまったこいつらは、よく事件現場である中学校に行って、花を手向けているらしかった
 以前、ちらりとかなえに聞いてみたが、かなえは墓参りはしているが、現場へ花を手向けには行っていないらしい
 ……「行けない」、と、そう言っていた。彼女が死んだその現場へと足を踏み入れる事自体が怖いようだ
 まだ中学生だった頃も、その場には近づかないようにしていたそうだから
 とにかく、こいつらは花を手向けによく行っている
 全員で行ったり、2,3人の都合がついた者で行ったり………ただ、今の直斗のように、当時の関係者でもない者と行く事はほぼないはずだ

(「三年前の事件について、改めて聞きたい」って言ったらこれだからな……)

 現場で話す、と、直斗はそう言っていた
 だから、自分もこれに付き合う事にしたのだ

(愛百合には、黙っていた方がよさそうだな。これ)

 このところ、愛百合に黙っていることが増えた気がしないでもないが、仕方あるまい
 どうにも、愛百合は直斗を警戒しているような節がある。「あぁ言う、勘のいい子はちょっと苦手」と言っていた
 直斗の方は………一見、あからさまに警戒しているようだが、実際はそれほどでもないのだが
 愛百合の元で知ることができない情報は、今のところ直斗から仕入れていることが多い
 直斗からは「他にも情報源作っておけ」とは言われているが……

「情報源の候補、いるだろ。ほら、今から行く中学校にも通ってる……」
「あいつだけは嫌だ」
「即答かよ」

 情報源の話になったら、こんな流れになった
 即答にきまっている
 誰が、あんなクソ生意気な奴に

「そう嫌うなよ、あいつ、情報収集は優秀なんだろ?」
「確かにそうだが……そうだが、やっぱ嫌だ」
「そこまで嫌いか」

 直斗は苦笑してくるが、人間、どうしても馬が合わない相手と言う奴はいる
 そういう事だ

「まぁ、あいつはやめとくとしても他に見つけとけって。俺からの情報は、なるべくそうしないようにはしてるけど俺の色眼鏡入る事あるし…………」

 ……と
 直斗が、足を止めた

「どうした?」
「……あそこの奴」

 直斗が視線を向けた先
 そこにいたのは……中学生、には見えなかった
 放課後の、帰宅している中学生逹よりも年上。高校生くらいだろうか。直斗と同年代くらいのように見える
 足を止めて、中学校の校舎の方を見ている

「お前みたいな、卒業生じゃないのか?」
「……いや、覚えがない」

 そう言って、少し、探るように直斗はそいつを見ていた
 が、ふと、何か思い付いたような顔をすると、そのまますたすたと、そいつに近づいてく

「なぁ、あんた。ここに用あんの?」
「え?」

 突然話しかけられ、そいつが驚いたように直斗を見る
 こちら側から、直斗の表情は見えないのだが……恐らく、笑っているんじゃないだろうか

「用事あるんなら、俺逹と一緒に入るか?俺、ここの卒業生だから、入るんだったら俺の用事にちょこっと付き合うなら入れるぜ」

 まるで、取引を持ちかけようとするかのように、直斗はそいつに告げる

「「三年前」に死んだ彼女に花供えるのに、ちょっと付き合ってもらうだけだから、すぐに終わるよ?」

 「三年前」、と
 直斗がそこを強調するように言ったのも
 …そこにいるそいつが、その「三年前」と言う単語に一瞬、反応を見せたような気がしたのも

 気の所為、では、ないのだろう





to be … ?

どっせーい、と言うことで次世代の人に焼き土下座なクロスオーバーをそぉいっ!
名前出していませんが、直斗が声をかけたのは早渡君です
これに、どう答えるか悩んで書けないでいたのですが、そっとキラーパスする事に決めた駄目作者がこちらになります
直斗の申し出に答えれば、堂々と中学校敷地内入れます&「三年前」の事件について直斗から聞けます&「狐」がまだ学校町にいる、と言う事を知る事ができるでしょう

と、同時に。今から避難所の裏設定スレに、作者様向け情報もぶん投げてきますね


花子さんの人、ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!
やったな早渡! 直斗くんと友達になれる(かもしれない)ぞ!
早渡「えっ!? えっ!?」
この面子でピエロなバーガー屋さんに夕食に行くのは面白そうだぞ!
早渡「はい!?」
今書いてるのと並行してレスを用意しますね!! 某スレも確認しました!

ところでこれは大体九月頃でいいんでしょうか……
具体的には早渡がサスガ君から逃げ出した晩以降でもいいのだろうか
あと、慶次さんは映画好きだったりしますか?
過去に投下された話でそういうエピソードがあったのでつい確認をと思いまして

>>386
>やったな早渡! 直斗くんと友達になれる(かもしれない)ぞ!
直斗が楽しげに笑って早渡君を見てる

>ところでこれは大体九月頃でいいんでしょうか……
はい、それくらいの時期です
なので、残念ながら戦技披露会より前なので、戦技披露会で得る情報を慶次はまだ知らない。慶次は

>あと、慶次さんは映画好きだったりしますか?
はい、三年前辺りから結構見るようになって、わりと仕事人間だった彼の数少ない趣味です
天地の影響だと言う事実に彼は気づいていません

「ネックと」「RBの」
「「「ラジオde都市伝説NEO!!!」」」
「司会は私、ネックおばさんと」
「RBでお送りする」
「私もいますよ~」

「さて久しぶりに放送するこのラジオ、みんな覚えてるかしらね?」
「この番組は"深夜のラジオ番組に変な声が聞こえる"という
 都市伝説の力を借りて、学校町南区に存在する
 ラジオスタジオを占拠し不定期に放送されている」
「私でーす」
「……という設定で行われるメタ視点のコーナーだ
 主な役割は本編中で書ききれなかった設定等を公開することだな」
「まあ、メタ視点で進行する割に件のラジオ番組の声が私たちには
 収録・放送中聞こえていなかったりと完全に切り離されてはいないわけだけど」
「あー、それは一応理由があるんだが……」
「私のことですねっ!」
「なによ理由って」
「このラジオde都市伝説はメタ視点かつ作中でも架空の番組だが
 設定上ラジオスタジオ自体は南区に存在するし件の都市伝説もそこにいる」
「えーと……つまり?」
「作中でいつでもラジオスタジオを使うことができるけど
 もし使う場合は変な声が混じるぞ、という……施設紹介だ」
「いやそんなの察せないから!?」
「ご利用いつでも待ってまーす」
「と、前置きはここまでにしてお便り紹介のコーナーに移るぞ」

「最初はPN【日輪刀】さんからのお便りね
 『学校町の役所や病院はどこにあるんですか?』ですって」
「この手の施設は大体南区にあると思うが……病院か」
「何かあるの?」
「ああ、廃病院がどこかにありそうだと思ってな
 広い用地が確保できそうな西区とかそうじゃないか?
 工場の作業員向け団地なんかもあっておかしくない場所だ
 人がいるのだから医療機関が近くにあっても違和感がない気がするぞ」
「実際の病院の立地条件ってどうなんでしょうねー?」
「曖昧ね……まあ、とりあえず質問の回答としては『南区にある』ってことで」

「では次のお便りだ。PN【レッツゴー風水師】さんからだな
 『学校町の七不思議と裏七不思議とはなんのことだ?教えてくれ』だそうだ」
「あー、それ聞いちゃうのね。簡単に言うとどちらもお遊びなんだけど……」
「詳しく言うとー?」
「表の方は学校町内で起こる怪奇現象を指すものとしているわ
 地方特有の都市伝説みたいなものだと思えばいいんじゃないかしら」
「ハンバーグとかか?」
「懐かしい話持ってきたわね。まあ、そういうことだけど
 で、その真実を解明していくというストーリーがあったかもしれないって感じね」
「過去形ということは回収されないのだな」
「一部は回収されているけれどね。それで裏のほうだけど、メタネタよ」
「私たちと同じですか?」
「書いてきた設定の穴を不思議として濁したり
 キャラクター個人の謎に焦点を当てて七不思議認定したり
 そういう遊びね。メタ視点の話だから裏七不思議としてあるらしいわ」
「結論としては……『使われなくなった玩具である』とでも言うべきか?」
「わりとひどい!」
「……まあ、その、いいんじゃないかしら。ええ……」

「いよいよ最後のお便りみたいね。PN【クリスタルスカル】さんから
 『ヒーローズカフェと篠塚家、相生家の情報が知りたい』だそうだけど」
「情報というと……ひとまず現時点の情報をいくつか回答しておこう
 篠塚家の家屋は南区にあり一階がカフェ、二階が生活スペースになっているようだ」
「最初は住居と店舗を別にするつもりだったらしいけれど
 一つにまとめてしまった方が扱いやすいということでこうなったそうよ」
「住人は篠塚夫妻と篠塚文、アクマとザクロと少年幽霊となっている
 少年幽霊というのは親世代夢の国編の後から出ているキャラクターだな」
「本編にはほぼ絡んでない子よね。あとは……九月以降稀にサキュバス」
「また居候するのか……?店に降りてきてしまうとひと悶着ありそうだな」
「次に相生家だけど、東区にある二階建ての一軒家よ
 住民は相生真理と客室で居候中の篠塚結ね
 それと十月くらいから相生森羅・澄音夫妻が帰宅しているとのことよ」
「そういえばこの客間にまつわる話がひとつあるのだが……」
「なによ?」「なんですか?」
「この一軒家は澄音さんが主導して購入した家なのだが
 夫婦で一部屋、一姫二太郎で三部屋だ!と言って決めたらしい」
「えっ、それって……」「どういうことですー?」
「昨今勘違いされることもあるが一姫二太郎というのは
 女の子1人男の子2人ではなく、長男の前に女の子を一人……という意味だ」
「そうだったんですか?!」
「まあそれを後々、夫の森羅君に説明された澄音さんは
 顔を真っ赤にして森羅君を蹴り飛ばし夫婦別室を決定したそうだ」
「それで四部屋のうち現在余っている部屋が客室扱いされていると」
「そういうことだな。回答としてはこんなところでいいだろう」

「久しぶりとはいえけっこう長くなったわね」
「今後があるかは分からないがな」
「この類は雑談として話せばそれでよかったりするものね……」
「わざわざラジオ放送の体でする必要がない、というな……」
「世知辛いですー……」
「と、とにかく今夜の放送はここまで!」
「次回放送は完全未定。機会があれば、やるかもしれん」
「そういうわけで」
「「「ラジオde都市伝説、また次回!!」」」

「最後に声からのお知らせでーす!
 学校町南区の【ラジオスタジオ】では利用者を募集中!
 管理者にレンタル料を支払えばあなたの声が電波に乗ります!
 放送枠の空きはまだまだたくさんあるので是非ご利用ください!
 詳しくは南区電波塔下の多目的ビル受付にてご確認を!以上、声でした!」

                                          【了】

アクマの人乙ですのー!
久々のラジオde都市伝説!
裏七不思議の真実wwwwww

アクマの人、乙です!
これは……裏七不思議ネタで出したのはマズかったかな
高奈(クスクス笑っている)
早渡「えっ? じゃああのおまじないって効果、ないんすか……?」
真相はアクマの人のみぞ知る、という所でひとつ……

次世代ーズの人、花子さんの人投下お疲れ様です

さてご要望があったので次世代編入って初のラジオネタです
ラジオスタジオから電波に乗せて味方に伝令とか
使えそうで使えないネタなので使われてないですが南区にちゃんと設備はあります
ラジオde都市伝説自体はメタネタなので作中世界では放送されてませんが……

>>381
神社については社務所と本殿の地下があることを除けば
とくに変わったこともない小さめの神社だと思います。たぶんね
神様に内緒話が聞かれたかどうかはご想像にお任せします
ただ普通の会話は神主に盗聴されてるかもしれない……

>>392
詳しくは覚えてないですけどだいたいこんなもんですよwwwwww
表の方はいくつか自分の書いてる話で使ってますけど裏は本当にただのメタネタ

>>393
……しかし逆に言えば裏七不思議は作中世界に影すらないということで
今回のように使ってもらうのは大歓迎です!
もちろん表の方も残り3つだったかな?埋めちゃってもいいですよ
大丈夫、七つより多かったり足りなかったりが七不思議のお約束ですから
今のままでもいいし使いすぎて数がオーバーしても何も問題はありません


改めまして、アクマの人乙です
三人(人?)ともお元気そうで良かった
あと久し振りにラジオを見れて懐かしい気分に

>>387
そうかー、慶次さんやはり映画好きだったか
三年前から見るようになったかー
三年前からかー

>>394
よし! ありがとうございます!
おまじないに効果があるかはゆくゆく明らかになるだろう……
 

 

「『怪奇同盟』……、は。知っています」
「マジでッ!? マジっすか!? ぃやったぁぁァァァっっ!!!」
「あの、早渡君。でも」



 神社を後にして、俺と高奈先輩は神社の石段前にいた
 来た道を戻るようにして町の中央を抜けて南区に戻る積りだ

 先輩に何か訊きたいことはあるか尋ねられ、俺は「怪奇同盟」について訊いた

 本来なら四月の時点で済ませておくべきお遣いだった
 学校町に来る前、「七つ星団地」で世話になった養い親に頼まれたのだ
 なんでも、かつて養い親が学校町を訪れたとき「怪奇同盟」の盟主さんという方にお世話になったらしく
 そのときのお礼も兼ねて挨拶に行ってほしいというものだった

 ところが色々あり、盟主さんはおろか「怪奇同盟」にも接触できない状況が続いていた
 こちらの一件は本当にどうしようか悩んでいた所だ
 やっぱりこういうことは訊いてみるもんだな!



「早渡君、あの。『怪奇同盟』は
 もう、かなり前に、活動を、休止しているわ」

「へっ……!?」

 あれ? 今、先輩はなんて言った?
 「怪奇同盟」は、活動休止?

「えっ? えっ!?」
「それも、私が小さい頃の、話よ?」

 ちょ、ちょっと。どういうことなの?

「そっ……、そんな……っ!!」

 予想外の事態だ
 だが養い親が学校町を訪問したのは確かかなり昔という話だったはずだ
 そのときから今日に至るまでに「怪奇同盟」が解散した可能性は普通に考えられる

 だけども! とはいえだ!

「盟主さんは、まだこの町にいるんですよね……!?」

 俺の一言で高奈先輩は考え込んでしまった
 これはあれか、本格的に万事休すってやつなのか
 いやまあ養い親に事情を説明すれば済む話ではあるのだが

「私の、知り合いに。『怪奇同盟』に、所属してた方が、いるけれど。会ってみる?」

「マジっすか!? いいんすか!? お、お願いしますっ!!」

 渡りに船だ! もうこの機会にお遣いを完遂するっきゃない
 先輩の提案に俺は即座に飛びついた

 

 

「やー、実は知り合いの人面犬のおっさんに『怪奇同盟』とは墓地で接触できるって聞いたから
 四月から今までずーっと頑張ってたんすけど、『墓守』さんと全く出会えなくて困ってたんすよ!」

「あら。早渡君、『墓守』さんのことは、知っているの?」
「ええもう、『怪奇同盟』の幹部ポジションだって聞いてました」

 そうだ、人面犬のおっさん曰く「墓守」さんを介せば「怪奇同盟」とも連絡が取れる
 それで俺は四月からずっと頑張ってたんだ

「『怪奇同盟』と接触して挨拶を済ませようと南区の墓地に月一で通ってたんすよ」
「墓地に、……月一で?」
「はい! 『墓守』さんと接触できるのって満月の夜って話ですから!」
「満月の、夜?」

 うん? 高奈先輩が眉をひそめているが
 何かまずいことでも言ってしまったのか?

「早渡君。どういう方法で、会おうとしたの?」
「どういう方法って、そりゃ――」


 俺が人面犬のおっさんから聞いた、「墓守」さんを呼び出す儀式は中々骨が折れるものだった
 その手順は以下の通りだ

 ①まず満月の夜、正子の刻に墓地へ潜入
 ②墓地の周囲を四つん這いになって時計回りで一周する
 ③その後、墓地の中心に移動し、四つん這いのまま三回まわる
 ④そして恥を捨てて遠吠え
 ⑤正しい手順で行えば、このとき「墓守」さんから電話が掛かる

 一言も漏らさずに聞き出したので間違いない


「それで俺はちゃんとその手順通りにやって!」

 最初の月は午前三時過ぎまで粘ったが、結局「墓守」さんから連絡は無かった

「それから月に一度、満月の夜は必ず墓地に通い!
 五月は『墓守』さんに忠誠を誓うために昔のドラマの真似して!」


 『早渡! 「墓守」が現れないのはお前に忠誠心が足りないからだ!
  お前の至心をきちんと示して「墓守」の信頼を勝ち取るんだ!
  ほらァッ! 行けェッ! 武田鉄也ァッ!!』

  『了解! 一番、早渡脩寿! 行きますッ!』

  『僕はァッ!! 死にませェェーーンンッッ!!』

  『もっと気合い入れろ!!』

  『貴方がッ!! 好きだからァッ!! 僕はァァッ、死にませェえ゙ーーン゙ン゙ッッ!!』


「七月は『墓守』さんに往年の名曲を真心込めて歌って!!」


 『早渡! 「墓守」が一向に現れないのはお前の信心が足りないからだ!
  お前のその「墓守」への想いを態度で示して信頼をゲットしろ!
  ホラっ! グズグズすんなッ! やしきたかじんッッ!!』

  『了解! 一番、早渡脩寿! 心を込めて歌いますッ!』

  『やっぱ好ッきゃねェェンン....... やっぱ好ッきゃねェェえェェンン......』

  『もっと気合い入れろ!!』

  『くッやしいけど あかン゙...... あン゙た よう 忘れられェェん゙ン......!!』


 思い出してる内に興奮してきたな、少し落ち着こう
 我に返ると、高奈先輩が両手で頭を抱えて蹲っていた

「先輩? どうしました? まさか、体調悪いんですか!?」
「今の、話を、聞いて、眩暈が、したわ……」

 

 

 先輩はよろよろ立ち上がった
 何故か笑うのを我慢しているようにも見えるが、気の所為かな?

「あなたに、その話をした、人面犬というのは、まさか、半井さん?」
「あっ、知ってるんすか?
 白い毛色で、自称北海道犬の、半井のオッサン!
 そうっすよ! あの人面犬のオッサンから聞いたんです!」
「やっぱり、半井さんね……」

 先輩が片手を揚げて俺を制した
 目には涙が浮かんでいるが、本当に大丈夫か?

「あのね、早渡君。『墓守』さんと、接触するのに、そこまでしなくて、いいのよ」
「えっ?」
「携帯を持って、墓地の近くまで行けば。接触自体は、それだけでいいの」
「……はい?」

 なんだって?
 そこまでする必要、ない?

「もしかすると。奇行の所為で、『墓守』さんに、警戒されていた、可能性もあるわ」

 ひょっとして
 俺、騙されてたのか?
 半井のオッサンに? マジで?

 嘘だろ!?

「半井さんには、私から、言っておきます。――全く、あの人面犬さんは。本当に、もう」

 つまり、俺はこの半年近く騙されていたというわけか
 そうか、そういうことなのか。あの人面犬めが

「とにかく。『怪奇同盟』の、関係者の方に、連絡を、入れるわね」
「あっ、お願いします!」

 先輩は携帯を取り出してどこかに電話を掛け始める
 俺は彼女を眺めていたが、意識は半分以上引っ張られていた

 さっきの先輩のあの表情は要するに笑いたいのを堪えてたわけだ
 恥ずかしいのと騙されたという思いが胸の底でミックスジュースになりつつある
 近くに墓穴があれば進んで飛び込みたい気分だ

「早渡君。今日でも、都合がつく、という話だけれど
 どうする? 今日、会ってみる?」

「いいんすか!? あっ、じゃあ是非!!」
「時間は。そうね、余裕を持って、2時間後に、する?」
「いいえ! 1時間後でお願いします!」
「……大丈夫?」
「まかせてくださいっ!!」

 先輩に頼んで1時間後に会いに行くことになった
 善は急げだ、こういうときは


 

 

「1時間で、準備、間に合う?」
「一旦家に帰って支度する必要があるっすね!」
「本当に、間に合うかしら? やっぱり、2時間後の方が」
「心配は無用っすよ!! ぅおーい、タクシー!!」
「早渡君!?」

 絶妙なタイミングでタクシーを発見
 空席のようだ、こっちへ近づいてきた

「金なら俺が出しますッ!
 俺は一度家に戻って渡す物取って来ますけど
 先輩とはどこで待ち合せたらいいっすかね?」

「……そうね、南区の。『ヒーローズカフェ』の前で、会いましょう」
「『ヒーローズカフェ』っすね! 分かりました!」

 先輩をタクシーへ半ば押し込む形で飛び乗る
 一旦家に帰って、「ヒーローズカフェ」の前で先輩と会う
 それから「怪奇同盟」の関係者へ会いに行く。完璧な流れだな!



 このとき、俺はようやくお遣いを完遂できるという思いに駆られる余り
 何故、先輩が待ち合わせ場所を「ヒーローズカフェ」の前にしたのか深く考えなかった
 その答えは待ち合わせのときにあっさりと提示されることになる










          ●



 高奈は学校町南区、「ヒーローズカフェ」の前にいた
 あの後、タクシーで北区から南区へ移動して、高奈は途中で降車した
 聞けば、早渡の居住先は東区に近い南区のようで墓地に近い場所に在るらしい

(すぐ戻ってきますんで先輩は先に行ってて下さい!)

 そう言われ、彼女は一足先に待ち合わせ場所へ来ていたのだ

(10分くらいで来ますんで、すいませんマジで!!)

 やはり余裕をもって2時間後と伝えるべきだったのではないか
 そんなことを思いながら「ヒーローズカフェ」を眺める

 そういえば、大事なことを伝え忘れたが
 早渡君は分かっているのだろうか

 脳裏にそんな考えがよぎる


「すいませんッ! お待たせしましたッ!!」


 不意に後方から声
 振り返れば、早渡がいた
 先程のタクシーが足早に去っていく所だった


 

 

 端的に述べると、このとき高奈夜は早渡脩寿の格好を見て絶句していた


 折り目正しいパンツに革靴、これはいい
 中から着ているシャツも商業の制服のものではない、これもいい

 問題は彼が羽織っているジャケットだった

 その露骨なシマウマ柄は何だ?
 普通の店ではお目に掛かれない一品である
 少なくとも、衆目を引くには十分過ぎるほどの代物であった

「えっ、これっすか!? これに気付くとは流石先輩っすね!!
 『七つ星団地』にいた頃、兄弟子にこれがお前の正装だって言われたんすよ!!
 何か大事なことがあるときは、これを着てビシッと決めろって!! オーダーで仕立てた一品モノっすよ!!」

 彼の言葉に高奈は今度こそ眩暈を覚えていた
 彼はどこまで本気なのか? しかし彼は至って大真面目だ

 突っ込むべきなのか?
 彼の兄弟子というのは、まさか、半井さんと同族なのではないか?

 片手で頭を押さえつつも、彼女はどうにか踏みとどまった
 妙なタイミングで笑いが込み上げてくるが、これもどうにか抑える


「早渡君。お願いよ……、せめて、上は脱いで、行きましょう……? ね……?」
「ええッ!? これは、あれっすよッ!? 正装なんすよッ!?」


 興奮して抗議する早渡を宥めつつ
 そのジャケットはやや華美過ぎるという理由を付けて
 どうにか高奈は早渡に上着を脱いでもらうことに成功した

 早渡君とは一度、正装の概念について改めて話をする必要があるだろう

 そんなことを考えながら、ひとまず目先のことに意識を向ける
 高奈は携帯を取り出しこれから会う相手に連絡を取ることにした

「篠塚さん。高奈です。ええ、今は、お店の前に。はい
 ただ、大分早く、準備できて、しまったので。ええ、いいんですか?
 分かりました。それでは、これから、向かいます。裏からで、いいのですね? はい。それでは
 ――行きましょうか、早渡君」

「ええと、先輩。その人達とはどこで会うんですか」
「『ヒーローズカフェ』よ」
「中で待ち合わせなんすね」
「と、いうより」

 やはり早渡君に伝え忘れていたようだ

「『怪奇同盟』の関係者は、このお店の、店主さん夫婦なのよ」
「えっ!? あっ、マジっすかッ!?」
「先程、伝え忘れていたわ。ごめんなさいね」
「そ、そうだったんだ……。知らなかった……」

 店舗の裏から回ってほしいという話だった
 今回は居住スペースで話をすることになるかもしれない

「瑞希さんは、お店の方だと、思うから
 今から会う方は、美弥さん。『カフェ』の店主さんです」

「篠塚、美弥さんっすね?」

 早渡と確認し合いながら、高奈は彼を先導して中へと入っていった











□■□


半井さん
 人面犬のおっさん
 自称北海道犬の人面犬
 第1話で早渡にモスマンの情報を伝えたおっさんでもある





アクマの人に感謝の土下座ですorz
次回美弥さんとご対面です
これでやっと挨拶を果たせる
この時点で早渡はまだあの美人な店員さんと
店主さんが夫婦な事実に気付いていない……

「怪奇同盟」は活動休止という話でしたが
早渡は「同盟」が解散したと思い込んでいます
高奈先輩はそこの所はしっかり理解してるはず
早渡は大丈夫なのだろうか

あと、南区の墓地の位置は学校町の南東でいいのだろうか
五芒星の一点でしたよね、wiki理解が正確なら合ってるはず
話の中でも触れましたが早渡の自宅(?)の近くです
南区の墓守間瀬さんが一体早渡をどう認識していたかは謎です
正直なところ間瀬さんが墓地を留守にしてた可能性すらありうる

早渡はゼブラジャケットがお気に入りですが
それはそれとして正装の概念がずれてる辺り
「七尾」での教育成果が地味に表れているようだ
 

 



          然れど我は我が足躓くばかり我が歩滑るばかりにて在りき



 

 



「普通だな」

 学校町東区
 町内一の規模を誇る中学校を眺める

 あのなんか変なの(「組織」の変なの)に追い回された一夜から
 俺は夜中の徘徊もとい散策を控えていた

 だが陽のある内なら散策し放題だ
 というわけでこの日の放課後、あの因縁の場所である東区中学に来ていた

 夜中と違い、そこまで怖い雰囲気は無い
 放課後の中学校は何というか普通だ
 ただ、何なんだろうなこの空気は

 漫然と校舎の方を見やりながら、フェンスに沿って歩いていた
 ようやく見つけた、俺がなんか変なのから逃げるときに乗り越えたあの場所だ

 フェンスの一部が破れている
 あの鎧武者の亡霊が槍をぶん投げて突き刺さった箇所だ

 まあ修繕されることは無いだろう
 不自然な破れ方とはいえ、別段目立つというわけでも無い

 ただね
 こうして跡が残っているというのは、何やら不気味な物を感じなくもないね



 そんなことをぼんやり考えながら、校舎の方を眺めていたときだった



「なぁ、あんた。ここに用あんの?」
「え?」

 突然、誰かに話し掛けられた
 誰さんですか?

「用事あるんなら、俺逹と一緒に入るか?
 俺、ここの卒業生だから、入るんだったら俺の用事にちょこっと付き合うなら入れるぜ」

 花束を持った野郎だった
 俺と同世代だ、大体分かる
 そいつはニコニコしながら誘ってきた

「『三年前』に死んだ彼女に花供えるのに、ちょっと付き合ってもらうだけだから、すぐに終わるよ?」
「えっ、いや」

 唐突だったもんだから、やや返答に困った

「別に用があるわけじゃないよ?」
「あ、そう」

 思わずそんな言葉が口を衝いて出る
 同時に彼の言葉を頭の中で反芻していた

 「三年前」に死んだ彼女に花を供えにきた
 なるほど、手向けか。ひょっとして関係者かな?

「あー、ただ。『三年前』に亡くなった子達に、手は合わせたいよ」

 俺の口は既にそう答えていた

 

 

 後ろからもう一人の男が近づいてきた
 こいつの連れだろうか、俺より幾分か年上のようだ

「あ?」
「おん?」

 男と目が合った
 率直に言うと、悪い意味で一般人ぽくない雰囲気だ
 何というか、ずかずかと近づいてくる

「……前にどっかで会ったか?」

 そんなことを尋ねてきた
 覚えがあるような、無いような

 別に野郎の顔は覚えない主義ってわけじゃ無いが
 こんな特徴的な空気のお兄さんはそうそう忘れそうにないけどな
 でも覚えは無い

「知り合いか?」
「いや……」

 花束野郎の質問に、雰囲気ワイルド(婉曲表現)野郎は俺から目を逸らさず首を傾げて答えた
 怖いなあ、このワイルド野郎

 何秒か視線が絡む

 不意に、ワイルド野郎から特有の臭気を感じた
 思わず舌打ちしたくなるのを堪えた

 また「組織」関係者かよ!?

 臭気はこのワイルド野郎からだ
 なんてこった、考えなしに返答するんじゃなかった
 なんてことは表に出さず、ワイルド野郎と花束野郎の様子を窺う


「じゃあ、中に入るか」


 花束野郎の提案に、取りあえず従うことにした
 ここで急に断って逃げたら逆に不自然かもしれない
 取りあえず二人に付き合ってそれからグッバイするとしよう
 まだお天道様も空にあるわけだからな、何かしてくるってことは無いだろう

 多分な


 背中を見せる二人の後に従いながら、感覚を押し拡げた

 うわ、間違いない
 特有の臭気が一際強くなる
 ワイルド野郎の方は確実に「組織」関係者だ

 花束野郎はどうなんだ
 こちらは全くニオイが無かった
 

 

 ニオイの無い者が存在することは別段珍しいことでは無い

 先天的な体質でニオイ ――いや、もうこの呼び方は止そう
 先天的な体質で“波”を放出しない者はいるし、契約ANの特性で“波”を絶てる者もいる
 更に言うと、“波”の隠蔽自体は専門的な技術の習得により誰であっても出来ることだし
 “護符”の効果を利用して“波”を絶つことも可能だ

 実際、かつて俺が育った「七尾」の施設では、ANクラスの全員が“波”の隠蔽を教え込まれた
 “波”を知覚できるかどうかは先天的な部分に多く依存するが
 隠蔽は後天的に獲得可能な技術に属する

 幾ら鼻が効くからって、それが大きなアドバンテージになるわけでは、無い
 それに鼻が効く奴を騙して嵌める方法なら幾らでもあるからな
 過信は出来ない才能という奴だ

 但し、「組織」所属の契約者も黒服も、何故か“波”の隠蔽が全く出来てない奴が多い
 敢えて隠蔽していない、と見た方が適切かもしれない
 まるで見つけてくださいとでも言わんばかりに

 ワイルド野郎の背中を睨みながらそんなことを考える

 もしかするとこの花束野郎も「組織」所属だが、技能的にはワイルド野郎よりも遥かに上なのかもしれない
 “波”の隠蔽は難しい、ってわけでは無いもののそれでも俺はかなり下手くそな方だ
 花束野郎にわずかな嫉妬を覚える、俺も「組織」の奴に敗けてらんねえな!

 取りあえず勝手にそう納得して感覚を閉じた
 こいつらは要マークだ、気を付けないとな



 校門をくぐり、放課後を迎えた東区中学へと入る



 独特の空気感は相変わらずだ
 この静寂さと得体のしれない薄気味の悪さは昼とか夜とか関係ないらしい

 前を行く二人から、ふと校舎の方へ視線を移す
 頭から血を流した女の子が虚ろな表情で笑いながらこちらを見ていた
 感覚を開かずとも分かる、あれは人間では無い

 何気なくその子に向かって手を振った

 びくりと肩を震わせた、こちらに気付いたようだ
 校舎の物陰に隠れるように飛び込んで、――そっと窺うようにこちらを覗いている

 前を行く野郎二人はあの可愛い女の子に気付いてるかな?


「どうかしたか?」
「ん?」

 花束野郎が立ち止まり、こちらをじっと見詰めていた

「あ、いや。可愛い子がさ、さっきニコニコしながらこっち見てて」

 そう答えつつ、校舎の物陰へ再度目を向ける
 もうあの子はいなかった


 恥ずかしがり屋さんだなあ


 心の中で笑いながら、俺は二人に続いた







□■□


「組織」関係者が眼前にいるのに女子中学生(?)の方を眺めるとは、余裕だな早渡
この調子だと、死ぬぞ?

花子さんの人に感謝の土下座ですorz
花束野郎だのワイルド(婉曲表現)野郎だの
失礼なことを言ってますが、※あくまで早渡の主観です
慶次さんは今時の若者スタイルをしているとのことですが
早渡は彼を雰囲気ワイルド(婉曲表現)と表現しました
突っ込みはどうぞ遠慮なくどうぞですはい……

そして非常に申し訳ないです
言い訳は本文中にある通りなんですが
加えて早渡の盛大な思い違いの所為で
彼は直斗君が「組織」所属の凄い奴と思い込んでます
なんというか本当にすいませんorz
早渡なら適当に殴っておいてくださいorz
早渡「えっ? 俺、殴られるの……?」
 

次世代ーズの人投下お疲れ様です
先の方は予告通りのコメディパートだったわけですが……
早渡君って純真おばかだったのか(ひどい言い草である)

ところで彼の行った墓地の担当が間瀬透風こと南の墓守だったら
「先生、最近変な人が墓地に来てて……しばらく一緒にいてくれませんか?(建前)」
(先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥先生♥(本音))
……こうなるんだよなぁ。たぶん一番ヤバイのを選んだことになる
これが北区か西区だと墓守不在で、東区の遠野弥彦先生は……
ワンチャン出現して近所迷惑だろうと説教?たぶんこれが当たりクジ

>>402
>あと、南区の墓地の位置は学校町の南東でいいのだろうか
>五芒星の一点でしたよね、wiki理解が正確なら合ってるはず
そして五芒星の一点が南東の墓地なのは合っています
合っているんですが、私そこ"東区"として書いてる……!
盟主の本来の定位置であるそこは"東区で最も古い墓地"なんです(震え声)
なので"早渡君そもそも行くべき墓地を間違えていた説"を提唱しますね……?


えっと、ヒーロズカフェ訪問の時間は週明け放課後の神社行ってから一時間だから……ふむ

都市伝説4コマ風劇場


瑞希「もしもし結?来客あるから1時間後に厨房のヘルプを……自警活動?ふーん」

瑞希「もしもし真理ちゃん?結こっちに引っ張ってきて。そう、一時間後までに」

 結(私は幼馴染に逆らうことができない)
真理「というわけで向こう行きましょうか。ちなみに拒否した場合」

真理「嗜 好 品 予 算 全 カ ッ ト」
    サイフ
 結「(弱みを握られている――)
   ……はい、ちゃんと行くのでそれだけはご勘弁を」(平伏)


     ~      ~     ~

時間帯的に学校帰りの学生とかがご飯食べに来てそうですが
こういう感じで補充要員が来るので美弥だけでなく瑞希も出していいんですよ?
裏口から入ったときに中学生女子組が慌てて引き継ぎしてるかもしれない
話が長くなる場合はお店でご飯食べれば厨房や給仕のメンバーとも出会えそうですね


>>408
ありがとうございます

ンなァァあああああああああッッッ!?!?!?
やっちまったァァあああああああアアアアッッ!!!!

ご指摘、本ッ当にありがたうございます!
大変だこれは……なんということだ……!!

“早渡が行くべき墓地を間違えていた説”、有り難くすがらせて頂きたい所存であります!!
そうだ、全部責任を早渡に押しつけよう……!!
本当にありがとうございます! 申し訳ありません!

「カフェ」訪問の時間帯ですが、暴走タクシー利用と早渡自身の暴走により予定の1時間より早くなりそうです(なんだと)
「カフェ」は営業時間中ですので、居住スペースかバックヤードで挨拶することになるものと……
こちらもツッコミ等ありましたら、どうかお気軽にお願いします……!!

と書いてる内に……!!

>>409
ありがとうございます!!
ありがとうございます!!
これは篠塚さん夫妻に挨拶しないと……!!

次世代の人とアクマの人乙ですー!

あー、なるほどこう考えたか……まぁなんとかなるなる、むしろ早渡君、直斗がごめんな!
あいつ、多分、警戒よりもからかいが先行するわ!()

そして、頭から血を流している子だが、かつての飛び降り犠牲者絡みで大丈夫かな
特に決まってないとかなら、こっちで処理つけちゃいますが

弱み(お財布)握られると弱いな、仕方ないな


>>411
こちらこそありがとうございます!
からかい……大歓迎ですの!
流血の子は「繰り返す飛び降り」という怪談系の子ですが
そこまで深く考えてなかったのでお任せします!

早渡の振れ幅すごいな……
 

テレビに我が地元がでているのをのんびり見る

>>412
やったぜ(ガッツポーズ)
直斗のちょっとした特技を見せられるかもしれません

>そこまで深く考えてなかったのでお任せします!
あいさー、了解です

>>410
ああ、早渡君がどんどん契約者のギャグ面に堕ちていく……(※なお提案した人)
そんな早渡君には厨房の合法ロリ、給仕の長身美人、女子中学生2人と
計4人の女性と顔を繋ぐ機会を作ってあげましょうねー
まぁ中身はブラコン、忠犬、ヒーロー、仄かに香る百合の花と現状碌なのがいないんですがね
大人しく自分の近場のヒロインを攻略するんだな……

でもワンチャン潮谷豊香なるモブ女子中学生が客の中にいる可能性もあるんだよなぁ

>>411
>弱み(お財布)握られると弱いな、仕方ないな
結に家計を任せるとヒーローグッズ等をバンバン購入しかねないので真理ちゃんがお金を管理しています
真理ちゃんは趣味らしい趣味が料理くらいなのであまりお金を使わない模様。まあ結の世話もあるからね
一方、篠塚家はきっとアクマがアイスねだって美弥がDVD/BD大量に買って瑞希がコミック大量に買って
年長者モードの文から雷が落ち時計を確認したザクロが仲裁に入るまでがパターン化されているに違いない

  文「夫婦揃って勢いづくとなかなか止まらない人たちなので……特にヒーロー関係」
似た者夫婦なところあるから仕方ないね
 真理「結もそのあたりで確かな血の繋がりを感じるわよね」
文もブラコン方面で暴走するからそこも確かに繋がってるよ
アクマ「サキュバス絶対兄に近づかせないウーマン」
  文「あの悪魔は百害あって一利あるかどうかくらいなので妥当な対応だと思いますけど……」


>>414
早渡「やー、自慢じゃないんですけど『七尾』の頃はANクラスのバカ2トップって言われてて」(本当に自慢にならない)

早渡は場のノリと空気に乗りやすいというか何というか
まさしく純真おばかでございます

>そんな早渡君には厨房の合法ロリ、給仕の長身美人、女子中学生2人と
>計4人の女性と顔を繋ぐ機会を作ってあげましょうねー
何だか本当にもう……ありがとうございます!
豊香さんを目撃した場合、早渡の多感な少年ハートの挙動が更に不審になるな!

そして前回のレスで動揺するあまり確認を忘れてしまったのですが
早渡が訪れた墓地というのが「南区の墓地」ではなく「南東の古い墓地」だった場合
盟主様ご不在(?)のために留守番している墓守さんも皆無、ということになるでしょうか……?
もしそうなら話中で瑞希さんにツッコミ入れてもらおう……!
瑞希さん「そこね、南区じゃなくて東区の墓地」
早渡脩寿「えっ……??」

続いてですが
重大なミスがあったのでこの場で訂正です
>>406の第4ブロック

>幾ら鼻が効くからって、それが大きなアドバンテージになるわけでは、無い
>それに鼻が効く奴を騙して嵌める方法なら幾らでもあるからな

「鼻が効く」の部分は「“波”を知覚できる」の誤りです。wikiで訂正します
早渡に関して「鼻が利く」との表現は一種の比喩で、本当に嗅覚が鋭いかは不明です
本来の意味で嗅覚が鋭敏なのは次世代組だと、ゴルディアン・ノットさんや遥君になるのではないかな……?

週末までに間に合うか?

もっそりもっそり続き構想
今週中に間に合え俺

>>414
>結に家計を任せるとヒーローグッズ等をバンバン購入しかねないので真理ちゃんがお金を管理しています
そらお財布管理されるわ
そして、夫婦よ……ww

>>415
そうだ。ちょっと質問
「“波”を知覚」すると言う技術、「七尾」にしか知られてない感じかな?


えひるきゅうけい
時間が……ない

>>416
好い質問です、有り難い質問でもあります
今手元にメモがないので記憶を頼りにお答えします
現世代編の話で出るはずでしたが、「組織」では波の研究をある程度推進していて
ダークエイジの頃には過激派か中立派に各個体の波形を収集して解析して分類するセクションがありました(過去形)
隠蔽技術ですが、護符をつかってもいいし契約者なら一応誰でも訓練可能な方法があります
早渡でよければ教えられるよ! あと、訓練の特性上魔術や錬金を扱う勢力は知ってるはずです
波については(時間無いから)夜の避難所で勘弁したください……

だがこの場で言おう! ここまで長引いたのは全部あいつがわるい!!

人の所為にしてはいけない……
反省します……

>>416
興奮のあまり>>417で全然ご質問の内容にお答えしておりませんでした……
改めてお答えします

波そのものに関する「知識」はある程度種々の勢力に拡散・共有されていると思いますが
少なくとも現世代編の時点で「知覚」する「技術」は(完全には)確立されていなかったはずです
(「隠蔽」の技術ならある程度知られてるのではないかな……と思います)
その代わり、波を「知覚」する「天性」を持つ者が存在することは現世代から知られていたはず
天性持ちを実験に使えるだけのノウハウが蓄積してきたのは次世代の時間軸で、という感じになるでしょうか

不明な点や懸念されてる点があれば、遠慮なく避難先に投げてもらえると助かります

>>隠蔽技術ですが、護符をつかってもいいし契約者なら一応誰でも訓練可能な方法があります

三尾「ジャック(切り裂きジャック)さんに戦闘訓練をして貰ったときに、
  『相手に刃が触れる瞬間まで殺気(斬るという意識)を出すな』と言われてその通りにしていたら、
  周りの人に、動きが読みづらいとか攻撃が分かりづらいと言われ出したんですけど、もしかしてそれの事なんでしょうか」

夢魔「サキュバス同士で集まってると周りにアレな影響出ることあるから普段から抑えてたら、影が薄い、居たの?とか言われる始末」

葉 「段ボール被ればいいんじゃないの?」





神社が神事をサボり出したのって現代編の前後からかしら
もしかしたらサボり出した頃から
葉が結界とか呪いの持ちがわるいなぁとか文句言ってるかも知れない

>>415
>豊香さんを目撃した場合、早渡の多感な少年ハートの挙動が更に不審になるな!
中学一年生のくせにドタプンしてますからね。蛤女房ってこわい(棒)

>早渡が訪れた墓地というのが「南区の墓地」ではなく「南東の古い墓地」だった場合
>盟主様ご不在(?)のために留守番している墓守さんも皆無、ということになるでしょうか……?
いえ盟主不在の間は東の墓守が監視してますね。元々遠野せんせーの管轄ですし
各地区の監視役が墓守で、盟主はトップであり地区に縛られないが
それはそれとして活動の起点となる定位置がある。と書いて伝わりますかね?
例えると支部のトップが墓守で東は本部勤めの同位階、盟主はそのさらに上……みたいな
なので「南東のもっとも古い墓地」であれだけの奇行をやっていた場合
単純に今まで東の墓守にただの変人だと思われて接触されていないだけでしょうね

>本来の意味で嗅覚が鋭敏なのは次世代組だと、ゴルディアン・ノットさんや遥君になるのではないかな……?
まあ流石に犬並みに精密に嗅ぎ分けられるってわけじゃないでしょうけどね。ほぼフレーバー?
たぶん変身して身体能力が向上する内に嗅覚強化が入ってて普段の結は人並みの嗅覚だと思われます

>>416
>そして、夫婦よ……ww
学生時代から二人共わりとノリノリだったからこうなっても不思議じゃない!
でも書いてる私自身も喫茶店がすごく儲かるとは思ってないので
金銭に余裕が出てきては買う、の繰り返しで文がいなかったら本当に経営破綻していた可能性も……?

>>419
>神社が神事をサボり出したのって現代編の前後からかしら
前後というか現代編開始前……一年か二年前とかじゃないですかねー
その頃の契約者達は初期からバンバン戦っているわけですし
サボってすぐ特異点化するかはちょっと疑問なので多少時間経過があったんじゃないかと

昨晩は別件で早めに片付けたい事できてたので覗いてなかったマン

>>417-418
……ふむ
他の組織でも知ってそうなのがいる、となると……(自キャラで知ってそうなのを数名じっと見る)
でもまぁ、潜入任務とか潜入捜査でもない限り、隠してない奴の方が多そうだ

その情報が必要になるかどうかは未定ですが、後でちょいと避難所の裏設定スレで質問投げておくです

>>420
>まあ流石に犬並みに精密に嗅ぎ分けられるってわけじゃないでしょうけどね。ほぼフレーバー?
次世代編だとこっちのキャラだと嗅覚特化はポチがいるが、流石にそれほどじゃない感じか

>金銭に余裕が出てきては買う、の繰り返しで文がいなかったら本当に経営破綻していた可能性も……?
ブレーキがいてよかった

>>419
ありがとうございます
三尾さんの言う技術が「相手に刃が当たる瞬間まで能力の照準と発動を閉じたままにする」場合なら、自分のイメージする波の隠蔽に重なります
が、「能力を使わずに」例えば純粋にナイフと体術だけで行う場合なら恐らくそれ別の戦闘技術です……
エーテルさんの人がそういう(後者の)技術を「組織」で教えてるのを示唆してた覚えもありますが、ここはエーテルさんを問い詰めてみたい所です

夢魔さんの方は気配を絶つ技術も関わってくるでしょうか
昨夜避難所に置いたもののなかには「波と気配は違う」とあったんですが、個人的には似たようなものの気もする
葉様、段ボールって……

>>420
ありがとうございます

>いえ盟主不在の間は東の墓守が監視してますね。元々遠野せんせーの管轄ですし
>各地区の監視役が墓守で、盟主はトップであり地区に縛られないが
>それはそれとして活動の起点となる定位置がある。と書いて伝わりますかね?

ありがとうございます
遠野先生申し訳ございません、うちのバカがご迷惑を……
早渡(これ謝罪に行かないといけない……)

>>421
ありがとうございます
承知しました。より詳しいお話は来週になるかもしれません
それまでに詳しい内容を探すか本人に聞きに行きます。本当にすいません……

>>383-384から、次世代の人の>>403-406へと続いて、その続きと言うか返答ネタを投下開始であります
遅くなって申し訳ない

 ーーーー花房 直斗
 昭和の中期、学校町の開発計画が進んでいた頃に学校町に移り住んできた花房家の生まれ
 今まで、その家系から契約者が出た形跡は一切なし。どうやら、血縁的に器が小さい者が生まれやすく、契約に結びつきにくいらしい
 そういった家系自体は、珍しいものでもないから気にならない
 例えば、現在のK-No0の伴侶の家系もまた、心の器が小さく、都市伝説との契約はほぼ不可能だと聞いている
 都市伝説と関わっているからと言って、全てが都市伝説契約者とは限らない、そういう事だ
 最も、契約者になれない以上、都市伝説能力によって身を守る事ができない為、誰かに守ってもらうなりしなければ、そう言った契約者でもないのに都市伝説と関わる者は早死するのが関の山だが

(こいつの場合、今、この現状では俺に守られる事前提でいやがるな)

 中学校の前で声をかけた奴相手にも、無防備に背中を見せている直斗を見てそう感じた
 非契約者を守るのは、「組織」に所属する契約者としては当然の事だ
 だから、もし、直斗が声をかけた奴が危険な契約者であった場合、自分が直斗を守るのは確かに当然の事なのだが………それを前提で動く、と言うのも度胸があると言うか、何と言うか

(餓鬼の頃から、都市伝説契約者と接しし続けていて感覚が狂ってる……?………いや、そういう感じでもないんだが……)

 接触の機会が増えても、この花房 直斗と言う少年に関して、今なお完全には理解しきれていない
 何もかもを軽く考えているようで、その裏で何か企んでいるような………自分を「大したことない存在」に見せようとしているような、そんな印象が拭えない

(……どちらにせよ、あいつに関しては俺が少し警戒しておくべきか)

 ちらり、と自分達の後をついてきている、直斗と同程度の年代と思える少年を見る
 …どこかで、見たことがあるような、ないような
 後で、「組織」の資料室で確認するか、もしくは……

(愛百合に………いや、天地に確認とるか)

 愛百合は、立場の関係上、情報から隔離される事もある
 天地に聞いたほうが確実だろう

 そのように考えているうちに、そこに到着した
 校舎の壁際に、花や小さなぬいぐるみが、いくつも供えられている
 直斗逹以外にも、土川 策季を慕っていた者逹が、今もこうして花を供えに来ているのだろう

 そっと、直斗が膝をついて花を供えるると、軽く手を合わせ、静かに目を閉じた
 自分も、軽く手を合わせ、黙祷する
 …そうしてから、ちらり、と、自分達の後をついてきていたそいつを見た
 自分と直斗の両方を警戒してきている様子だが………

「あぁ、そうだ。慶次」

 と、黙祷を終えた直斗が立ち上がり、こちらに声をかけてくる

「彼女。「繰り返す飛び降り」。やっぱ、まだいるみたいだ。「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」からは解放されてるようだが、完全に「繰り返す飛び降り」になっちまってるみたいだ」
「あ?………あぁ、目撃情報あると思ったら、やっぱりそうか。人を襲っていないにしても、後で穏健派辺りが様子見した方が……」

 ………
 待て

「って、おい」
「都市伝説関係者以外の前で、都市伝説の話するな、ってか?大丈夫だって、そいつも契約者みたいだし」

 直斗は、笑いながらそいつを見た
 その言葉に、そいつが警戒の色を強めたのがわかる

「それがわかる、って事はやっぱり「組織」の契約者……」
「え、違うけど」
「えっ」
「えっ」

 うん?
 …………うん?

「こいつ、契約者じゃねぇぞ。「組織」所属でもないし」
「えっ」
「うん。俺、器小さすぎて契約一切できない。「薔薇十字団」の「先生」から太鼓判押されたレベルで器極小だから無理」

 えっ、と言う、意外そうな顔でそいつは直斗を見ている
 …こいつが「組織」の契約者だと思っていたのか
 何故、そんな愉快な間違いを

「えっ、マジで……えー……」
「疑いの眼差し向けられても、それが事実だよ。都市伝説の事は色々把握しているが、契約しちゃいない」

 直斗は肩をすくめて、そいつにそう言った
 まだなお、疑いの眼差しを向けていたそいつだったが、何やら「ん……?」と首を傾げている
 その様子を見て、直斗が小さく、笑ったように見えた

「「三年前」、ここで起きた事件。その事を、知りたいか?」

 誘うように、直斗がそいつに言う

「表向き、ニュースで報道されたような事じゃない、真実を」
「…何故、俺がそれを知りたいと?」
「どうせ、「狐」絡みだろ?卒業生でもないようなのに、この学校の様子確認してたの」

 「狐」
 その言葉に、そいつは確かに反応した

「俺は、あの事件の当事者だし……今も「狐」絡みに首を突っ込んでいる。だから、話せるよ」
「……おい。そんな無警戒に話していいのか」

 流石に、直斗を押しとどめる
 今、目の前にいるこいつが「狐」の信奉者、もしくは誘惑されている奴ではないとは保証できないのだ
 だと、言うのに

「大丈夫だって。こいつは「狐」に誘惑はされてない」

 何故か、自信満々に、直斗はそう言い切ってきた
 こいつは時々、根拠もないのに自信たっぷりに断言する事があり……何故か、それは事実であることが多い
 都市伝説と契約できない代わりに、天才的な直感でも備わっているんじゃないか、と疑いたくなるレベルだ

「味方は多いにこしたことはないし、こっちでわかってる「狐」絡みの情報渡しておけば、被害も減るかもしれないし?」
「お前なぁ……」

 直斗の言うこともわからないではない、のだが
 万が一、こいつが「狐」の関係者だったらどうするつもりなのか
 直斗自身は「こいつは「狐」関係者ではない」と妙な確信を得ているから、警戒が薄いのかもしれないが

「それにさ、慶次。「あいつ」がまだ帰ってないようだったら、あいつ呼んで、現場の様子を「再現」してもらえば、何があったかわかりやすく説明できるs「あいつの協力得るのはごめんだ」えー」

 却下する
 あのクソ生意気な後輩の手を借りるのだけは嫌だ
 えー、と直斗は残念そうだが、嫌だ

「…まぁ、そこら辺の判断も、こいつ次第ってことで」

 直斗の視線が、そいつへと移る

「……知りたい?詳しく。当時の「狐」の姿も確認できるかもしれないけど?」

 誘うように、誘うように
 情報という餌をぶら下げ、直斗はそいつを試すように、笑っていた



to be … ?

俺の切腹焼き土下座は始まったばかりだ!orz

と、言うわけで。本当遅くなって申し訳ない、返答ネタです
すまない、早渡君なんか怪しいけど直斗は普通に情報渡してくれるよ!
なお、事件当時の現場の様子を「見たい」なら、慶次はすっげー嫌がってるけど見せることができる契約者を呼ぶようですよ
現場見たいなら、屋上へ移動して会話になるかと。そうじゃないなら別の場所でも問題ないけど

 「「疑いの眼差し向けられても、~」の辺りから、早渡君は直斗から非契約者の波を感じると思うの


>>サボってすぐ特異点化するかはちょっと疑問なので多少時間経過があったんじゃないかと

となると雑貨店の話が現代編のより前で、現代編以降文句言ってて、少し後に店が閉店する、と言う事に今なった


>>三尾さんの言う技術が「相手に刃が当たる瞬間まで能力の照準と発動を閉じたままにする」場合なら、自分のイメージする波の隠蔽に重なります

鎌鼬の能力の訓練なので前者になるのかな
ジャックの武器がカッターでもナイフでも同じように斬れる理由として、『斬ろうとして斬っているから斬れる』と答え、
意志を刃に乗せる斬術を三尾に体得させるための最初の一歩(にしては難易度が高い)の段階のセリフ
結果、戦闘中の出力の高度な制御が可能になり出力のブレや波が消えて、動きが読みづらくなったと
こう考えると隠蔽というよりは、常に小さく一定を保ち、瞬間的な放出を可能にする制御ですね
孫悟空がスカウターで拾えない程度の戦闘力の増減をする時のような


>>葉様、段ボールって……
>>葉様だからなぁ(謎の納得をしている)

段ボールはプロの傭兵しか使えない技術なので素人は安易に真似しないように(相手にも因るがすぐばれる)
なお、人の入れる大きさの不審な段ボールや藁の塊には近づかないようにしましょう



詠子「波っていうのが何なのかはよく分からないけど、都市伝説か人間かは見れば分かるよね」
 
えっ

 静かな空間に、水音が一つ、響く
 明かり一つ無いその空間で、男は水の中に腰まで浸かり、静かに料の眼を閉じていた
 男の長い髪が水面に浮いて、ゆら、ゆら、と揺れる
 ここではない何処かへと意識を向けて、何かを探しているようだった

「…………あぁ」

 時折、水音が響くだけだった空間に、他の音がようやく響く

「なるほど、そこか」

 男が、閉じていた眼を開く
 その視線は、この暗闇ではない別の場所を睨みつけているようだった

「見つかったか」

 と。男の背後から、別の声
 男が身を半分ほど沈めているその水場の縁で、じっと男を見ていたもうひとりの男
 あぁ、と、水に身を沈める男は頷いた

「厄介だ。あぁ、実に厄介だ。そうして、実に、腹が立つ」
「……かと言って、お前の立場上、安々と関与するわけにもいくまい」
「道真公よ。我は祟り神。で、あると同時に国を守護する神が一人である」

 ちゃぷり
 水の中から、男が手をあげる
 掌の水は、清涼な水面から顔を覗かせたにも関わらず、真っ黒で汚れた物だった
 こぼれた汚れた水は清涼な水面へと落ちて、やがてその黒と穢はかき消される

「学校町。あの土地だけの問題で収まると思うか?土地神だけの問題だと切り捨てられるか?……否。道真公も、わかっているであろう」
「……八岐大蛇の再来。そうとでも言いたいか。将門公」

 ちゃぽり
 水へと身を沈める将門は、道真の言葉に嘲笑う
 いいや、と首を左右に揺らした

「アレと比べる等、流石にあの大蛇への侮辱であろうよ。大蛇であれば、もっと早く盟主は狂わされていたであろうからな」
「それでは」
「再来、とまでは行かぬが」

 ゆらり
 将門の周囲を、朧な影が揺れる
 彼が常に待とう悪霊、怨霊の類が、将門の感情に呼応したように、嘆き出す

「それでも、厄介だ。一つ土地のち脈が狂い続ければ、毒され続ければ、この国はどうなるであろうなぁ?」
「………そういう事になるな」

 深々と、道真がため息をつく
 つまるところ、将門が学校町で、久々に堂々と動く口実が見つかってしまった、と言うことになる
 将門が、嘲笑う
 己の記憶に揺らされながら

「あぁ、憎らしい。憎らしい我が護る者へと手を出す等、憎らしい。それも、あの時と同じく、また蛇とは!!」


 平将門
 「首塚の祟」としての彼は、何度か人間と契約を結んだ事があった
 たいていは復讐心にかられてからのものであり、将門との契約の下復讐を成し遂げ……その後は、将門に飲まれて彼の一部である悪霊怨霊の類となったか、それとなり果てる前に将門に斬られる事を望み、将門もその望みに答えて斬り捨ててきた

 その将門と契約し、しかし生命をかけての復讐にかられていた訳でもなく、最後まで人間として天珠を真っ当して死んだ者がただ一人、いた
 契約が続いていたその間、今は学校町等と通称で呼ばれているあの土地で、「八岐大蛇」と呼ばれる存在が目覚めかけた事があった
 「八岐大蛇」と化した「草薙の剣」の契約者の意思が「八岐大蛇」の中に残っていた事、将門の契約者を始め強力な契約者が揃っていた事により、その土地どころか国の危機は去ったものの、将門の契約者は心から信頼していた親友の一人を永遠に失ったのだ
 その悲しみと怒りは、当時契約していた将門にも移り、その環状は今尚、こうして燻りだす事がある
 あの時以来、将門は蛇が好きではない


「憎き、憎き蛇よ。さて、どうしてやろうか。その蛇を開放せんとする者も、見つけねば、祟らねば。どのような目的があろうとも、この国に仇なす者を祟らねば」

 揺れる、揺れる
 「平将門の首塚の祟り」は、いつ本格的に発動してもおかしくない状態になっていた

 …その様子に、道真はもう一度、ため息をつく
 もし、万が一、この眼の前の祟神が感情任せに暴走したならば、それを押さえ込む役割は、また、自分に回ってくるのだろうと、そう予感しながら






……………続?

アクマの人への焼き土下座案件投下完了
そう言えば、将門様の様子書いてなかったね、と
どうやら、この20年間、学校町で何かあってもおとなしい事が多かったようです

………が、過去に彼が経験したこと(以前、避難所のどっかでぽろっと話したことがある奴)の記憶が、学校町での現在の一部異変を過剰にとらえてしまっているようです

花子さんの人お疲れ様です

>>421
>次世代編だとこっちのキャラだと嗅覚特化はポチがいるが、流石にそれほどじゃない感じか
そんなところですね。目と耳が曇った時に頼りにできる程度には嗅覚に優れるというイメージ
目の前で目と耳を誤魔化すように逃走されてから短距離追跡することはできても
残留した匂いを頼りに警察犬のごとく足跡を辿ることはできない……といったところかな?

>>432
あっ、ついに将門公に黒幕の正体が掴まれ始めてる
というか八岐大蛇と比較したら大抵の蛇型の化生は下だと思います(真顔)
ここで適当に黒幕に強がらせると「毒も地脈への介入も本職じゃないのだぞ」
とか言ってくれます。嵐の化身だからね……本職は天候操作(荒天)だから……
蛇城さんところの白蛇様とXNo.0のスコール発生能力を足すとたぶん近くなるのでは

>>434
>ここで適当に黒幕に強がらせると「毒も地脈への介入も本職じゃないのだぞ」
本職じゃあろうがなかろうが、地脈を乱しているならよろしい敵だな、って言う

将門様の痛恨の勘違いは、「地脈を乱す者がいる→それが蛇っぽい→八岐大蛇の時の嫌な思い出→あの時のように国家転覆を企む類か」って考えちゃってる事じゃないかな、って
一箇所の土地の地脈が乱れると、国全体に影響が出る、と言うような考え方をしているようです
で、その勘違い絡みで、「地脈を乱す何者かがあの土地には封印されていた模様→それを解こうとしている者がいるようだ→なるほど、国家転覆を狙う不届き者か祟ろう」になっている
そのせいで、道真から「狩りにも一応時として神がそう頻繁に事件に関わるな」とブレーキかけられてたのが、ブレーキはずれようとしている気がしないでもなく
まぁ、地脈の乱れは道真も「どげんかせんといかん」ってなってるでしょうけど


花子さんの人、乙です
将門公と道真公が動く……?
これ、水神様の一件がかなりのハードモードに……?
とはいえ水神様は土地神様なので、地の利は水神様にある(と思いたい)



はい、私も
いきます

 



 約束は1時間後だったが少々早く来てしまっただろうか
 緊張が高まっていく感触を胸の内に覚えながら
 高奈先輩に促されて、扉の中へ


「あ、ちょっと待っててね!」


 「ヒーローズカフェ」の裏から回って中へ入ると
 以前会った美人の店員さんと、女の子二人が慌ただしく動いていた

 もしかして、いや、もしかしてじゃない
 俺は早く来てしまったようだ、いくらなんでも急ぎ過ぎたか

「こんにちは。結さん、真理さん」
「こんにちは高奈先輩」
「おー、夜さん」

 高奈先輩が女の子達と挨拶を交わしている
 二人とも俺達より年下のようだ、中学生くらいだろうか
 店員さんと何か早口で話している子に視線が吸い寄せられた
 その子の面影は、店員さんになんだか似ている
 まさか店員さんの妹さんなのだろうか?

「話で聞いたお客さんって、そちらの?」
「ええ、関係者よ」

 先輩はもう一人の子と話をしていた
 お客、とはつまり俺のことなのか? 不意に視線があった

 頭を下げる

「初めまして、商業一年の早渡です」
「こちらこそ。相生と言います」
「同じく、篠塚でーす」

 店員さんと話してた子も挨拶を返してきた
 不意に目が合う。背中が熱くなるのを感じた
 篠塚ちゃんも相生ちゃんも、何というか、美しい子だった
 年下の子だろうが美人さんは美人さんだ、はっきり言い切っておく

 てか何だこの空間
 何というか美女密度が高過ぎないかな?
 野郎独りだと、ちょっとかなりアレだぞこれは!?

「シマウマかー」

 篠塚ちゃんの声に意識を引き戻される
 彼女は俺の腕の一点を眺めていた

 分かるぞ
 彼女が見ているのは俺が腕に掛けているジャケットだ
 これは先輩にさっき謎の説得されて仕方なく脱いだゼブラ柄の一品モノだ
 当初、俺はこれ着てビシッと決めて「怪奇同盟」の店主夫妻に挨拶する積りだったんだ

「うん、いいと思います!」

 にっこり、というよりは、にんまりした表情で彼女はそう評した
 その言葉に思わず頬がほころびそうになる

 どうやら彼女はこのジャケットの良さを分かってくれたようだ!
 先輩には派手過ぎるから脱いで頂戴とお願いされたが
 年下の美人さんにそう思ってもらえると嬉しいぜ!

「ありがとう」

 嬉しさを抑えつつ感謝を伝える

「早渡君。美弥さんが、待っているわ」

 二人に軽く頭を下げた俺は
 先輩の後に続いて、階上へと上がった


 

 

 「ヒーローズカフェ」は一階が店舗で、二階が住居になっているらしい
 俺達は其処へお邪魔することになった

 どうも落ち着かない
 最初は元気よく挨拶して盟主さんへの贈り物をお渡しするはずだった

 それだけのはずだったんだ
 それがまさか、ここまで緊張してくるとは

 落ち着け、しっかしろ早渡脩寿
 俺は今、大事なお遣いを果たそうとしてるんだ

「はい、どうぞ」

 美人の店員さんが俺達の分の飲み物を出してきた

「次お店で出す予定の新作だから、遠慮なく飲んでね」
「ありがとうございます」

 お礼と共にドリンクを受け取る
 グラスに入っているのは澄んだ青い飲み物だった

 あれ? 美人さんは確か一階にいた筈じゃ
 一緒に上がってきたわけでもないのに、いつの間に?

「美弥さん、こんにちは」
「いらっしゃい高奈さん。そうか、この子が」

 思わず飛び上がりそうになった
 遂に、「ヒーローズカフェ」の店主、「怪奇同盟」の美弥さんに会うことになった

 一礼して、美弥さんを見る
 あの方だ。以前ここに来たとき厨房に立っていた方だ

 間近で会い、驚いた
 美弥さんは意外な程に若かった
 前に見たときはてっきり渋い雰囲気の似合う紳士だと思っていた
 いや、今も変わらずその雰囲気を纏っている
 しかしその外見は、ひょっとすると俺と同世代なのではと錯覚する程だ
 まさか、ここまで若い方だとは思わなかった

 美弥さんの横に美人さんが歩み寄る
 俺達を見て、彼女は微笑んでいた

「自己紹介ね。私は篠塚瑞希。で、こっちが旦那の美弥です」
「『怪奇同盟』の、篠塚美弥です。よろしく」
「ちなみに下に居たのが、私達の娘とそのお友達」

 マジかよ!?
 お二人は夫婦だったのか!?
 このお二人が「怪奇同盟」の店主さん夫婦だったのか!?

 しかも何気に重要ワードが飛び出したよな!?

 あの子は、妹さんじゃなくて娘さん!?
 下で会った篠塚ちゃんは、美弥さんと美人さんの娘さん!?

 落ち着け、俺!!
 莫迦が!! これが落ち着けるか!!

 そのなんだ、美人さんはまだ10代でないかという外見だ
 それこそ、篠塚ちゃんと奥さんが姉妹じゃないかと思う程の!!
 それが、何だって!? 娘だって!? 美人さんが人妻!? そして母親!?

「ほら、ドリンク飲んで落ち着いて」
「あっ、す、すいません!」

 瑞希さんに促されるまま飲み物に口を付ける
 喉から胃へと冷たい感触が滑っていき、清涼感が広がった

 そうだ、落ち着け俺
 てか、こっちから挨拶しなきゃ駄目だろ俺!

 篠塚さん夫婦に深く頭を下げる


 

 


「改めましてご挨拶します! 今年三月まで『広商連』の『団三郎』圏内にあります
 『七つ星団地』に身を置いていました、早渡脩寿と申します! 今年四月から商業高校に通っております!
 お忙しい中申し訳ありません! この度は『七つ星』の養い親から『怪奇同盟』の盟主様への贈り物をお渡ししたく参りました!」

「そうか、『広商連』にいたのか」
「『団三郎』系は……、美弥、知ってる?」
「一応な」

 お二人ともどうやら知っていたようだ
 胸を撫で下ろす。良かった、スムーズに行きそうだ





 「広商連」
 正式には「広域商業協同組合連合会」という長ったらしい名前がある
 字面だけじゃ何だ? となるが、要するに都市伝説やその関係者がひしめくマーケットのようなものだ

 この国には昔から怪異が実在し、怪異と関わる人々がいて、そうした者達が独自のネットワークを築いていた
 特に「商い」に関するネットワークは柔軟にして強固なもので、表の人間達には知り得ない独自の市場を作り上げていた

 そして、各地に存在する裏の市を結び合わせるのが、この「広商連」というわけだ
 「広商連」は特に三つの勢力に大別することができ、それぞれ日本三名狸伝説にあやかった名を持っている
 つまり、「団三郎」系と、「芝右衛門」系、「太三郎」系だ。聞いた話ではなんでも、狸は商いの神様、ということらしい
 このうち東日本では、やはりというか「団三郎」系の影響力が最も強く、当然「七つ星団地」も「団三郎」系の勢力圏にある

 「団三郎」系は「宮内庁」のお墨付きを得て商業をやってるとかそういう話を耳にしたこともあるが
 最も有名なのは「『組織』嫌いの『首塚』遠慮」というフレーズだろう

 「組織」嫌い、というのは字の如く、「団三郎」勢力圏内の市場に対して「組織」の介入を許していない、という意味だ
 どうも昔、市場に流れてきた危険な「呪宝」を奪取しようと「組織」の者が強引な武力介入をやらかしたらしく
 「広商連」が止めに入った所、無関係の民間人を含む多数の死傷者を出す事態にまで発展したそうだ

 それ以降、「広商連」、特に「団三郎」系では市場への「組織」の介入に対して過激になっており
 「組織」関係者が市へ潜入しようとした所を水際で取り押えているという話だ
 というか、俺も実際そういう仕事をやったことがあった

 ただまあ、「組織」が市場を監視しておきたいという理由も理解できる
 市、マーケットというと聞こえは良いが、実態は闇市に近く、文字通り色々な連中がひしめいている
 その中には普通「ならず者」と呼ばれる手合いも存在するのであり、曰く付きの盗品が流れてくることもままある
 もっとも、先の事件以来「広商連」も店側への監視を厳しくしているようで、外部から付け込まれないように頑張っているらしいが

 そして、「首塚」遠慮、というのはかなり語弊のある表現だ
 外部からは信じられないかもしれないが、「団三郎」勢力圏では「首塚」、特に平将門様に対する信仰が今なお篤い

 人だろうが怪異だろうが、年配の方々は大抵、将門様を「新皇様」と崇めているし
 自分達が飯を食っていけるのは新皇様のお陰だ、そう語っていた爺様がいたことは今でも覚えている

 こういう具合なので、将門様の勢力、「首塚」の者が市を訪れたとなれば、当然の如く大騒ぎになる
 なんというか、「お殿様が下町にやって来た!」レベルのお祭り状態になるらしい

 そうなると市の管理者や「広商連」としては
 「商売の都合上、色々と差し支えが出来てしまうので、可能ならば控えて頂けると……」という感じになる
 とはいえ「首塚」からの使者ともなると、もう立派な上客であり、あからさまにそういう態度を取れるはずがない

 つまり「首塚」遠慮という表現は、管理者側の複雑な心境を吐露した程度のものだ


 

 


 ただ、「組織」もそうだが、「首塚」の者も、消耗品のお買い物程度の用事で市へ来ることはまず無いだろう
 先に話したように、商いの実態は闇市に近い。一応、伝承や都市伝説関係の物品を手広く揃えている、とはいえだ

 例えるとこんな具合だ
 「河童の秘薬」伝承が伝わる地域から、我こそが本家だと名乗る家が複数現れ、銘々が「秘薬」を作り、それを「霊薬」として売りに出す
 その中には勿論詐欺師のような連中も混じっていて、「秘薬」と称して単に片栗粉を練っただけの物を堂々と売りに出す奴もいる
 つまり、市に並ぶ品々は玉石混淆で、商品を見極める“目”というのがお客の側にも要求されるというわけだ
 中には安価な掘り出し物が存在するのかもしれないが、そんな良い話は滅多に無い

 結局、金に糸目を付けないのなら、いくら値が張っても安定した品質の物を入手できる「ゴブリンマーケット」等を利用した方が早い
 「組織」にしても「首塚」にしても、「広商連」のマーケットよりもグレードの高い所で調達するだろう
 つまりはそういうことだ

 大分長くなったが、「七尾」から逃げ出した俺と友人を拾ってくれたというのが
 「広商連」は「団三郎」勢力圏内の「七つ星団地」という所だった
 なんか霊獣の毛を編んで作った素材や、正体不明の保守サポートをやったりしているらしいが
 実はかなりお世話になったにも関わらず、「七つ星」の提供するウリというのが今でもよく分かっていない

 が、とにかくだ
 「怪奇同盟」の方とようやく挨拶できたわけだ
 やったぜ親父殿! 遂に俺はお遣いを完遂できそうだ!!



「なるほど。高奈さんから話は聞いたけど
 四月から『怪奇同盟』に接触しようとして上手くいかなかったらしいね」
「あ、はい。南区の墓地で『墓守』さんとお会いしようと頑張ってみたんですけど、全く」

 高奈先輩がどこまで話したのかは分からないが
 多分、俺が非常に恥ずかしい行為に及んだことは既に伝わっているはずだ

 とりあえず今はそのことを考えないようにしよう

「南区の『墓地』って話だけどね。脩寿君、念のため墓地の場所を聞いてもいい?」

 瑞希さんがそんなことを尋ねてきた

「ああ。あの、学校町の南東、って言えばいいでしょうか。自宅の近くの墓地なんです」
「うーん」

 あれ?
 なんかまずい答え方だったか?

「その墓地だとすると、『南区』の墓地じゃなくて『東区』の墓地だな」
「……えっ?」
「東区で一番古い墓地よね。あそこなら東の『墓守』さんの管轄の筈だけど」
「あっ、えっ?」
「早渡君の一連の奇行が原因で、遠野さんに変態と思われたかもしれないな」
「ああ、あのっ、あそこって『南区』じゃ無かったんですか……?」
「脩寿君、あそこは『東区』よ」

 ……OK
 どうやら俺は壮絶な思い違いをしていたらしい
 しかも、やはりというか俺の恥ずかしい行為についてもバッチリ把握していたようだ


 恥ずかしいッ!!
 めっちゃ恥ずかしいッッ!!
 穴があったら全力で飛び込みたい気分だ!
 顔面から火の手が上がってるんじゃないかと思うほど、熱い!


「まあ、四月に引っ越してきたんじゃ仕方ないわ。東区って広いし」
「す……すいません」

 瑞希さんのフォローに、思わず顔を覆いたくなる
 学校町の地理に関しては完全に頭に叩き込んだはずなのに
 まさか、やっちまうとは……。もう消え入りたい。全力で消え入りたい


 

 


「あの、それで……盟主様は、何か具合が悪いんでしょうか
 先程高奈先輩から『怪奇同盟』が活動休止状態だと話は聞いたんですけど」

 死にそうな声でようやく疑問を搾り出す
 べ、別に話題を逸らそうってわけじゃないんだ
 ただ、高奈先輩の話でも挙がってた盟主さんの件が引っ掛かっていたからだ

「『怪奇同盟』は無くなったわけではないんだ」

 美弥さんがそう答える

「ただ、今は少し難しい状況でね」

 言葉少なに語る美弥さんの口調に
 どことなく歯切れの悪さが混じっているのは気の所為では無いはずだ

「そうだったんですか」

 それだけしか言えない
 俺のような奴が立ち入って良い話題では無い
 心の中で美弥さんと瑞希さんに失礼を詫びて、持ってきた贈り物を持ち直す

「すいません。盟主様への贈り物です。昔、お世話になったお礼だそうです」

 美弥さんに贈り物を両手で受け渡した

「よろしくお願いします。多分、越州の秘酒です」
「分かった。こっちで預かっておくよ」
「ありがとうございます」

「盟主様ってお酒好きだっけ」
「……」

 瑞希さんの問いに、美弥さんは無言だった

 空間に静寂が訪れた
 しばしの沈黙のなかで俺は固まる
 何かを話すべきだろうか、しかし、何を?


 そこでようやく気が付いた

 室内が沈みかけた夕陽の赤で満たされていたことに

 何故か、奇妙な気分になった

 以前もこの場に居たかのような、不思議な感覚だった


「早渡君」


 美弥さんと目が合う

 最初に出会ったときのように、美弥さんは俺をじっと見詰めていた

 自分の視線が瑞希さんの方へ揺れる

 瑞希さんもまた、俺の目に眼差しを向けていた


 不思議な気分だった

 まるで、世界の時が止まったような

 

 



 美弥さんが静かに告げる


「一つ、伝えさせてくれ」


 美弥さんの言葉に、俺の心が震えていた


「この町にも様々な意思が渦巻いているし、ときに衝突したりもする」


 何故だかは分からなかった


「そんなとき、何が正しいのか分からなくなることもある」



 だが、俺は胸の奥で何か熱いものが震えるのを感じていた



「理屈ではないんだ。この町も、人も。勿論、都市伝説も、契約者も。――だから」



 俺の魂が、震えていた



「君自身が感じ取ったことを大切にしてほしいんだ」



 夜の黒と、夕の赤とが混じり合う、この時分



「この町へ来た君の歩みが、実り多いものであることを願っているよ」



 このとき、確かに
 俺は美弥さんからその言葉を受け取ったのだ























          早渡脩寿
          ようこそ、“学校町”へ



「次世代ーズ」 16 「はじまり」
 

 
①「広商連」の話題が出たとき


瑞希さん「脩寿君って、『七つ星団地』ではどういうことをやってたの?」

早渡脩寿「ああ、初めはバウンサー(用心棒)見習いで、一年後くらいに本デビューって感じで」
高奈先輩「そういえば、そんなことを、話していたわね」

瑞希さん「バウンサー?」 ガタッ ☜ 席を立った
美弥さん「瑞希」

瑞希さん「……」 ☜ 暫く無言で美弥さんを見る
瑞希さん「……」 スッ ☜ 早渡を見つつ着席

早渡脩寿(えっ? ええ?? い、今のは一体)



②墓地の思い違いがはっきりした直後


瑞希さん「墓地で本当にそんなことしたんだ!?」
早渡脩寿「すいません、その話はマジ勘弁してください」 ☜ 顔が赤い

瑞希さん「ちょっと此処で実演してもらえる?」
美弥さん「瑞希」

早渡脩寿「え、ええ、ええー……」


早渡脩寿「僕はァァッ!! 死にませェェーーんんッッ!!」 ☜ 店舗に気を遣いつつ声量調整済み
瑞希さん「もっと気合い入れて!!」
早渡脩寿「僕ばァ゙ァ゙ッ、死に゙ま゙ぜェ゙え゙ーーん゙ん゙ッッヌ゙!!」 ☜ 顔面真っ赤
高奈先輩「ふ、ふふ……さ、さわた、クフッ フフフッッ」 ☜ 笑うの我慢限界
美弥さん「……」 ☜ 静かに見守っている


真理さん「階上(うえ)から変な声しなかった?」
結ちゃん「愉快な人だねー」
文さん  「……」 ☜ 黙々とフライパンを振るっている



③お遣い完遂


早渡脩寿「今日は本当に有難うございました!! それでは失礼します!!」
高奈先輩「待って、早渡君」 ガシッ
早渡脩寿「えっ、あっちょっ」

高奈先輩「話を、聞いて、いなかったの? お店に、回るわよ」 グイグイ
早渡脩寿「えっ? えっ、えっ?」

高奈先輩「学校町の、地理を、瑞希さんが、食事がてら、教えるって。言っていた、でしょう?」
早渡脩寿「言ってましたっけ!?」

高奈先輩「ほら、行くわよ」 グイグイ
早渡脩寿「あっちょっ、せんぱっ、力強ッ!?」

 
④「ヒーローズカフェ」再来店


早渡脩寿「今の時間って学生とかで混んでますよね?」
高奈先輩「席を、予約してくれた、らしいわ」

ザクロさん「いらっしゃいませ」

早渡脩寿「   」 ☜ 心をなんか撃ち抜かれた

高奈先輩「どうした、の? 早渡君」
早渡脩寿「『ヒーローズカフェ』って美女濃度が危険域に達してません!? パネぇっすよ!! もう臨界突破っすよ!!」 オロオロ

高奈先輩(今日の早渡君は、何だか、とっても、愉快ね) クスクス



⑤カレーライス


瑞希さん「というわけで! はいっ! 今期イチオシの『キレンジャーのカレー』!」

結ちゃん「私が作りました!」 フンス
文さん  「仕込みを担当しました」

早渡脩寿(普通のカレーだよな……?)
早渡脩寿(なんか他のお客さんの視線も感じるんだけど)

早渡脩寿「い、いただきます」 パクッ

早渡脩寿「 (*ω*) 」
早渡脩寿「がぁぁぁぁあああああっっっ!?!? 舌の上にぃぃぃっっっなんか来てるぅぅぅゥゥッッッ!!!???」

高奈先輩「早渡君、もう少し、静かに」

早渡脩寿「舌がアアアアァァァァァァッッっ!!! 燃えるよおおにぃぃぃいいイッッ!!! 熱いヨォォおおおおオオオッッっっ!!!」 (小声)

高奈先輩「そうかしら? そこまで、辛くは、無いわ」 ☜ 辛いの平気

早渡脩寿「熱い゙ヨ゙ォォおおおおオ゙オ゙オ゙ッッっっ!!!」 (小声) ☜ 苦手じゃないけど耐性が無い



⑥胸中


早渡脩寿「熱い゙ヨ゙ォォおおおおオ゙オ゙オ゙ッッっっ!!!」 (小声) ☜ 口から熱気を噴いてる

結ちゃん「わーお」
真理さん「天井焦げなきゃいいけど」

高奈先輩「……」
高奈先輩(早渡君……、あなたは、ただ「狐」の討伐を見届けに来たわけでは無いのね) ☜ 早渡を見つめている
高奈先輩(あなたは九宮空七さんが生きていると信じている) ☜ 心中の発話は流暢
高奈先輩(九宮さんを探しに来たのね……学校町に)


美弥さん(秘密の多い少年だな……) ☜ 早渡と高奈先輩を見守っている

文さん  (スパイスはもう少し攻めても良かったかな) ☜ 二人を見守る美弥さんを見つめている



早渡脩寿「あ……。慣れたらなんだか、甘く感じる」 モグモグ ☜ 涙目



 

 


Q.「首塚」へは挨拶に行かなくてもいいのですか?



A.
早渡「えっ、いや、『七つ星』とは直接関係あるわけじゃないし」
早渡「てかそれ以前に恐れ多過ぎだろ!!??」
早渡「俺はそもそも居候みたいな身分だったし、そんな大役こなせるわけがないだろ!!」
早渡「『怪奇同盟』の盟主さんに会うって話を振られたときも心臓バクバクもんだったんだぞ!?」





アクマの人に感謝の土下座でございますorz
当初は美弥さんに挨拶してお酒を渡す流れでしたが
御陰様で瑞希さんとも顔合わせが出来て良かったです
お店に出向いた後の流れがダイジェストになってしまいましたが
ご指摘等がありましたら遠慮なく頂けますとありがたいです……orz
アクマの人、ありがとうございました
早渡はこれ以降篠塚さん方から要請があれば馳せ参じると思いますので
その際は使って頂けますと幸いで御座います……

早渡って美人に弱いだけなのでは? と思わざるえない

この場を借りて敢えて質問したいのですが
アクマの人と、花子さんの人、東区最大の中学校の制服については御存じでしょうか!?
wikiで調べられるだけ調べてみましたが、これといった情報がありませんでした
気になる。セーラーに学ランか、はたまたブレザーなのか

投下中、半分意識が寝てた……危険だ
今日中に花子さんの人へのアンサー、間に合うか!?

次世代の人乙でしたー
将門様………広商連の闇市、そちらの事情一切気にせずに顔出したこと、あるんだろうなぁ……(やりかねないので遠い目をする)
割合暇な祟神仲間誘って行ったりしてたら大惨事の予感しか無いので一人で行ったのだと信じたい
そして、大丈夫だよ早渡君、上等な日本酒持っていけば将門様上機嫌で対応してくれると思うよ、って言おうとしたら、現状、盟主様関連の方に将門様集中してっから、対応するの「首塚」の別の誰かだわ!
多分、翼か、幸太のどっちか

>アクマの人と、花子さんの人、東区最大の中学校の制服については御存じでしょうか!?
あ、やべぇ、設定あったかどうかすら覚えてないぞ
脳内イメージはセーラー服だったが

次世代ーズの人、お疲れ様です
結の美的センス……いやそういえばゼブラーマンという映画があったような……?
で、広商連というのは全国規模の集団と。学校町は"組織"が睨んでるから影響力が低そう
そして早渡君!実は場所は間違ってないんだよ!南区だと思ってたのが間違いなだけでね!
というわけで早渡君、ようこそ"学校町(魔境)"へ(絶対こういう意味で言ってるよね)

さて……
>「よろしくお願いします。多分、越州の秘酒です」
>「盟主様ってお酒好きだっけ」
……これは、『七つ星団地』の意図をどう受け取るべきか。美弥の無言も分かる

>>435
すごい。何がすごいって言われてみると本当にそうとしか見えなくなってきたことがすごい

・地脈を乱すと国全体に影響が出る
→黒幕は毒を流し地脈からエネルギーを少しずつ奪っている(守護者干渉&封印破り準備)
 →それはそれとして風水師水井が地脈の周りを滅茶苦茶にしてるが大丈夫か?
・地脈を乱す封印された何者か
→例えるなら川に毒を流しつつ不当に水利を得ている。黒幕は許されない!!
 →ところでここまで流れが滅茶苦茶なのは故水井って人の仕業なんですけど
・それを解こうとしている者
→コラテラルダメージだ。それより黒幕は絶対倒す。人々のためにも絶対倒す
・国家転覆を狙う不届き者
→水井のことか。アイツは死んだよ

ところで将門公達の懸念の半数以上にに水井が関わっているのだがどういうことだこれは
アクマ「残当」

>>436
>とはいえ水神様は土地神様なので、地の利は水神様にある(と思いたい)
実のところ水神にあるのは強力な天の利(天候操作)で地脈は多少干渉できる程度
字のごとくの地の利(地脈ブースト等)があるのは盟主と全盛期の山の神デイダラボッチ
しかし盟主はどちらかというと地脈に干渉される側の存在なので
地の利を逆手に取られたような形になり、山の神は信仰がほぼ無くなって弱体化が著しい
一方水神の力の源は嵐への恐れなので治水技術が進み弱体化はしているにしても
人々が台風ヤバイなーと思う程度には力を保持しているので山の神よりは現状強いのです
つまりなんだ、元は人とはいえ祀られて神になるほど有名な存在相手だと
天災の化身とはいえ無名の神ではハードモードにならざるをえないのではなかろうか

>>445-446
>アクマの人と、花子さんの人、東区最大の中学校の制服については御存じでしょうか!?
これなんだったかな決めてたかなあ?!(覚えてない)
花子さんの人が獄門寺の妹さん出したときセーラー服で出したりしてなかったですっけ(縋るような目)

>>447
>結の美的センス……いやそういえばゼブラーマンという映画があったような……?
懐かしいなぁ。父が買ってた漫画雑誌に乗ってた漫画版ちらっと読んだことあるような

>ところで将門公達の懸念の半数以上にに水井が関わっているのだがどういうことだこれは
なんという残当状態

一応、学校町の地脈が本格的にヤバイ事になった場合に供えて、学校町廻りで一部神様クラスがスタンバってるイメージです
地脈の乱れの影響が、よそにいかないように抑えるために

>→コラテラルダメージだ。それより黒幕は絶対倒す。人々のためにも絶対倒す
祟り神パワーがアップをはじめています

>花子さんの人が獄門寺の妹さん出したときセーラー服で出したりしてなかったですっけ(縋るような目)
俺のひよこ並のとりあたまで覚えているとでも
どうだったっけなー、言われるとそんな気がするような、しないような……?

ん?そういえば早渡君はまだ篠塚夫妻他の正体に気づいていない……?
ちゃんと自己紹介しなきゃ(迫真)

○『七つ星団地』から『怪奇同盟』の盟主への贈り物が酒だった件について
これの意図はなーんだ?……実際なんだと思う?
アクマ「世話になったって言ってたわけだし盟主様のことは知ってるんだよね」
  結「そもそも盟主様?っていうのは幽霊なんでしょ?……お酒飲めるの?」
 美弥「普通は飲めない。あと俺の頃はバンバン霊体化してたが
     もっと前に世話になってる場合は霊体化できることを知らない可能性もある」
 真理「盟主様イコール『墓場からの電話』という認識なら……普通のお供えとして?」
  文「それが一番穏当な推測ですね。単純に礼儀的な贈り物です」
 美弥「問題はこれが首塚寄りらしい団三郎系と関わる集団から贈られたことだ……」
 瑞希「将門公は盟主様と一緒に酒を飲んだって聞いてるからねー……」
ザクロ「その時はお酒自体が霊体でも飲むことができる特殊なものだったと伺っていますわ」
アクマ「だから渡されたお酒がそういうのだったらまだよかったんだけど……」
 瑞希「早渡君、特に何も言ってなかったのよねー」
 美弥「つまり渡されたものは普通のお酒の可能性が高い
     ついでにいえば盟主様は飲食できないことがとっとしたコンプレックスらしい」
  文「それに関しては将門公が飲食できることへの嫉妬がほとんどみたいですけどね」
 美弥「だから将門公と飲食したという情報だけ聞いて善意で酒を贈った可能性もあるわけだ」
 瑞希「穿って見るなら……全て知った上で『怪奇同盟』を挑発している可能性もあるのよね」
アクマ「それは流石に過剰反応だと思うけど」
 真理「本命:礼儀的な贈り物、対抗:無知の刃、大穴:挑発行為ってひどい三択ですね」
 美弥「早渡君は何も知らなそうだが、かといって大穴を警戒しないわけにもいけないだろう」
 瑞希「それで無言の間ができて、その後沈黙をごまかすために適当言ったと」
 美弥「適当じゃないからな?普通にこの街で必要な心構えだからな?」
アクマ「……魔境だからね」
  結「慣れれば普通だよ」

>>448
>一応、学校町の地脈が本格的にヤバイ事になった場合に供えて、学校町廻りで一部神様クラスがスタンバってるイメージです
これも全部水井って奴の仕業なんだ。おのれ水井!
山の神がデイダラボッチになるまで力を戻してやれば水井の負の遺産も水神も解決するんだけどねえ……
山や湖を作る国(土地)作りの神の名は伊達ではないのだ。まあ戻す手段が見当たらないので無理なんですけど

>祟り神パワーがアップをはじめています
神主はベリーハードか……

>>449
> 真理「本命:礼儀的な贈り物、対抗:無知の刃、大穴:挑発行為ってひどい三択ですね」
顔を覆うしかない

>山や湖を作る国(土地)作りの神の名は伊達ではないのだ。まあ戻す手段が見当たらないので無理なんですけど
他の神様ー!力ちょこっとわけてー!
みんなでちょっとずつ出せば足りるよ大丈夫日本の神様八百万!!

ところで、俺のイメージ的に「狐」編最終決戦は11月です
11月と言えば「神無月」。そう、本来「神様」は出雲に集まって大宴会やるはずの時期である
が、現状、将門様は盟主様関連警戒中。道真公もなんかの時に供えて将門様の後ろでスタンバイ
地脈の乱れを警戒し、学校町周辺にも一部神様スタンバイ

………頑張れ神主、宴会への参加が出遅れてしまう(ヘタしたら出席すらできない)恨みと言う名の神様の八つ当たりから逃げ延びろ!


そうですね……
誤解が生じる前に急ぎ……


>>449 その①
>ん?そういえば早渡君はまだ篠塚夫妻他の正体に気づいていない……?
全く気付いておりません
今回の時点で早渡も深入りする勇気は無いかと


>>449 その②

○番 外 編
早渡「はわわわわわ……」 ☜ 震えている
先輩「贈り物の、解釈を巡って、とんでもないことに、なりつつあるわね」
先輩「早渡君、何とかできるなら、早めに、何とかした方が、いいわ」

早渡「はわ、はわわ……」 ☜ 電話を掛ける
早渡「もしもし、早渡です! 彦さん!? 彦さんですか!?
    実はかくかくしかじかで、『怪奇同盟』の方々に盟主様への贈り物をお渡ししたんですけど!
    なんか、『礼儀的な贈り物』なのか『飲めないことを知らずに贈った』のか
    『「怪奇同盟」に対する挑発行為』じゃないかって話になりつつあるんですけど!?
    た、助けて下さい!!」

彦  『脩寿、落ち着け。お前の説明が足りない部分が多かった為に誤解を生んだ可能性がある』
彦  『まず伝えるべきことは、「団三郎」、「広商連」は「首塚」寄りの勢力では無い、という点だ』
彦  『将門公を信仰する者は数多い。しかし、それは「広商連」が「首塚」に与していることを示すものでは無い
    「広商連」はあくまで市の管理者だ。そして「商い」を扱う勢力だ。ここを忘れるな

    独自性を護るために、各地の在野勢力との関係は飽くまで付かず離れず、だ。特定の勢力と癒着するものでは無い
    付き合いがあるとしても、それは個人的なレベルに留まる。本来はな
    まあ、今回に関しては親父殿が書状を用意してくれたらその点は誤解されずに済んだのだがな』
彦  『続いて、親父殿がお前に託したのは「秘酒」だ。この意味は分かるね?』
早渡「すんません、分かりません……!」
彦  『(深いため息) 「来訪の神事」は知っているだろう。あれは神と人との饗宴であり、その席で用意される酒は、人も神も共に喫しうるものだ
    「秘酒」というのは実体では無い存在であっても味わうことのできる酒であり、「同盟」の「盟主」も召し上がることができる
    安心しなさい、親父殿は「盟主」のことを知っている。まずはお前から、言葉足らずだった所を詫びて、その旨を説明しなさい』
早渡「すんません、言われた内容伝えます」
彦  『それでも拗れるようなら、もう一度電話をしなさい。親父殿から説明してもらうとしよう』
早渡「すんません、頑張ります」

この後滅茶苦茶説明、でしょうか

仮に盟主様が健在で早渡が「怪奇同盟」と接触した場合
説明不足の状況如何では早渡が高奈先輩ごと消し炭にされていた可能性も……?

「広商連」は日本各地に点在する、裏の市を結ぶネットワークのようなものですかね
各地の在野勢力とはあくまで付かず離れずというスタンスです
「首塚」は恐れ多いお客様、という感じでしょうか。御霊の神格に対しては何処であってもそんな感じだと思う


 


 俺達は東区中学の敷地内にいた
 花束野郎とワイルド野郎の後についていく


 やがて彼らは立ち止まった


 校舎の壁際に花やぬいぐるみが捧げられていた

 その意味を、理解する

 花束野郎は静かに膝をつき、手を合わせていた

 俺もそれに倣う
 目を閉じて献花されたその場に、頭を下げる


 ある日、突然友人がいなくなる
 そしてそれが悪意に因るものだと知れる
 日常が、ある日を境に、抉り取られ、侭に置かれる

 三年前のある日
 その事件の“後”を生きる者達にとって
 それは決して、過去の出来事などでは無い
 取り返しのつかない結果が、未だに現在へ引き続いている

 この場がそう語っている


 不意に頭の中をアイツの後姿が掠めていった

 九宮空七
 俺の手の届かない何処かで命を落とした、そう言われているアイツ

 彼女の祈りの声が、耳元で聞こえた気がした

 俺にそれを口にする資格があるのか、未だに分かっていない
 ただ、犠牲者の冥福を祈らずには居られなかった


  (――全能の神、大なる憐憫(あはれみ)を以て
   我らが愛する此の者の霊魂(たましひ)を召し給ひたれば――)


 アイツの言葉を、俺は胸の中で繰り返していた




















 

 


 どうも視線を感じる
 相手は誰だか分かっている、ワイルド野郎の方だ
 どうやら最初に会ったときから俺のことを警戒しているらしい

 それもそうだ
 相手は「組織」所属だ
 こちらを警戒しない理由がない

 まあこっちだって警戒してるんだけどね


「あぁ、そうだ。慶次」


 おもむろに花束野郎が立ち上がった
 祈りを済ませたようだ


「彼女。「繰り返す飛び降り」。やっぱ、まだいるみたいだ
 『富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる』からは解放されてるようだが
 完全に『繰り返す飛び降り』になっちまってるみたいだ」

「あ?……あぁ、目撃情報あると思ったら、やっぱりそうか」


 うん

 「繰り返す飛び降り」、そして「樹海に引き込み自殺者」ね
 どっちとも怪談系のAN、都市伝説のお話だね

 なんでこんな当たり前な風に、しかも俺の前で話し始めたんだろうね

 花束野郎に視線を向けた


「人を襲っていないにしても、後で穏健派辺りが様子見した方が……って、おい」


 流石だワイルド野郎
 だが、声色からして演技では無いらしい

 それかよっぽどの演技派なのか


「都市伝説関係者以外の前で、都市伝説の話するな、ってか? 大丈夫だって、そいつも契約者みたいだし」


 どの時点で見抜いていたのかな?
 流石は「組織」所属の実力者ってわけか
 てか、なんでこのタイミングでこんなこと言い出したんだ?


「それがわかる、って事はやっぱり『組織』の契約者……」


 あれ?
 今の、俺の声だよな?
 俺が喋ったんだよな? ――何やってんだ俺は!?!?

 ま、待て
 やばいやばいやばい
 うっかりにも程があるぞ!?

 今のは失言どころじゃない
 俺も契約者、さもなくばAN関係者ですと白状したようなものだ!

 どうする?
 どうする、俺!?


「え、違うけど」
「えっ?」
「えっ?」


 

 

 はい?

「こいつ、契約者じゃねぇぞ。『組織』所属でもないし」

 ワイルド野郎は何やら呆気に取られたような顔をして、そんなことを告げてきた

「うん。俺、器小さすぎて契約一切できない
 『薔薇十字団』の『先生』から太鼓判押されたレベルで器極小だから無理」

 おいこら花束野郎!
 いきなり何を言い出しやがる!?

 落ち着こうか、自分
 今、こいつ何と言った?

 『薔薇十字団』と『組織』は今だけ無視だ
 “器”が小さいから、契約ができない、だって?

 つまり、自分は契約者じゃない
 そう言いたいわけか、この花束野郎

「疑いの眼差し向けられても、それが事実だよ
 都市伝説の事は色々把握しているが、契約しちゃいない」

 花束野郎は肩をすくめる
 まるで俺の心を先読みしたかのようなタイミングだな

 いいぜ? 乗ってやろう
 仮にあんたが「契約者」じゃ無いとしよう
 さらに譲って、「組織」所属でも無いとしよう


 じゃあ何故

 何故、俺が契約者だと知ったんだろうな?

 怪しいなあ

 すごく怪しいなあ


 もう一度、感覚を開いてみた


 おや

 今は人間の、非契約者のニオイがするな

 お前ニンゲンか!! 美味そうだな!! 喰っちまうど!! ヒャハッ!!

 勿論ふざけている場合じゃない

 一応、非契約者とはいえ“波”を隠蔽する技術自体は身に付けられる
 だがコイツの場合、最初は全く“波”を知覚させず、今だと非契約者の“波”を放出している
 完全に“波”を遮蔽するよりも、特定の“波”だけを隠蔽して、只の人間を装うのは難易度が高い筈だ

 コイツも“波”が読めるのか?
 だとしたら仮に、「契約者」じゃないとしても納得がいくし
 「契約者」だが俺相手に嘘を吐いていると取ってもおかしくはない

 もしかして、「俺(花束野郎)はお前(つまり俺)より格上だ」という言外のアピールだろうか
 だったら何故俺に対してそこまでするんだ?
 まさか、コイツ――

「――『三年前』、ここで起きた事件。その事を、知りたいか?
 表向き、ニュースで報道されたような事じゃない、真実を」

「何故、俺がそれを知りたいと?」

「どうせ、『狐』絡みだろ? 卒業生でもないようなのに、この学校の様子確認してたの」

 はい、出ました
 「狐」。テストに出る重要ワードですねー

 だからなんでお前が俺の考えてることを読んでるんだよ!?!? この花束野郎!!!!

 

 

 確かに俺は「狐」の情報について欲している
 何故そんなことまで悟っているんでしょうね、彼は

 怪しいなあ

 すごく怪しいなあ

 本心を白状するとちょっと怖いよ、彼

「俺は、あの事件の当事者だし……今も『狐』絡みに首を突っ込んでいる。だから、話せるよ」
「……おい。そんな無警戒に話していいのか」

 そうだそうだ!
 無警戒過ぎるだろ!!
 心の中だけでワイルド野郎に賛成する
 大体何を考えてるんだろう、この花束野郎

 なんだか、俺の目の前に極太の釣り針をぶら下げているような
 そんなことをされてる気分だ

「大丈夫だって。こいつは『狐』に誘惑はされてない
 味方は多いにこしたことはないし、こっちでわかってる『狐』絡みの情報渡しておけば、被害も減るかもしれないし?」

「お前なぁ……」

「それにさ、慶次
 『あいつ』がまだ帰ってないようだったら、あいつ呼んで
 現場の様子を『再現』してもらえば、何があったかわかりやすく説明できる――」

「あいつの協力得るのはごめんだ」

 なるほど、ワイルド野郎の名は慶次と言うらしい
 しかも話題は俺を放置し怪しげな内容へ移っている
 何? 現場の様子の再現? 怪しいなあ、すごく怪しい

「…まぁ、そこら辺の判断も、こいつ次第ってことで」

 そして俺に振るわけですね

「……知りたい? 詳しく。当時の「狐」の姿も確認できるかもしれないけど?」

 知りたい、主にあんたのことが
 聞いてるのか? お前のことだぞ、この花束野郎

 何が面白いのか、目の前のこの男は笑いながらそう問い掛けてきた
 きゅう、とまるで狐みたいな笑い方するのな、お前さん
 ひょっとしてお揚げとか好きじゃないかな?

「あんたのことが知りたいなあ」

 こうなりゃヤケだ

「俺か?」
「手を、握ってもいいかな」

 正直、これを言っていいのか、迷った
 だがここまで来て「狐」について知りたくないかと誘惑してきたわけだ

 まずは目の前のコイツが何者なのか
 嘘を吐いていないのか、話はそれからだ

「握手、してもいいかな」

 花束野郎は笑顔のまま、無言で手を差し出してきた

「おい、ちょ」

 ワイルド野郎が凄い表情をしている
 俺と花束野郎を交互に見ているが、何だ?
 何だか俺を危ない人を見るような目で睨んでいるな

 言っとくが、俺は危険人物でも何でも無いぞ
 怪しいのはあんたらの方だ!



 

 


 野郎の手を叩くように手を掴む

 握手だ


「――ッ!?」


 ……嘘だろ!?
 マジかよ、本当にコイツ嘘を吐いて無かったのか!?

 端的に述べるとコイツの“回路”は閉じていた
 何が言いたいかっていうと、コイツは契約者じゃない
 しかも、過去に契約していたわけでも無い

 契約したことがあるなら“回路”は開いたままだ
 流石に“回路”の偽装についてまでは、俺の知る限り考えられない

 待って、本当に嘘吐いてなかったわけかよ!?

 しかも、だ
 「組織」所属ならある筈の特有の臭気も、無い
 コイツは「組織」に所属している関係者というわけでも無い、そういうことか


 だとしたら色々と不可解だ
 何故、俺が契約者だと見抜いた?
 “波”読みだけできる非契約者だってことなのか?
 だとしたら何故、俺が「狐」について探っていることを知っていた?

 信じたくはないが、まさか天性レベルの直観か何かで見抜いていたのか?


 目を、見る
 野郎も俺から目を逸らさなかった

 何考えてるのかよく分からない目だ
 俺の偏見だが、心に闇を飼ってそうだ
 正直こんな状況じゃなきゃ友達になりたい――なりたくないよ! 怖いよ!

 花束野郎が、にやりと笑った気がした
  “信じてくれていいぜ”
 そんな言外のメッセージを受け取る

 まるで俺を試すかのように


 手を、離した

 ワイルド野郎の視線が痛い
 今やワイルド野郎は完全に変質者を見るような目つきで俺を凝視していた

 やめろ、そんな目で俺を見るな


「で、どうする?」


 花束野郎は先程と変わらぬ笑顔だ
 お前さん余裕綽々だな、緊張とかいう言葉と無縁じゃないかな?

 そうだな
 花束野郎は、俺さえ良ければ「狐」の情報を話すと、そう誘う


 

 


 そして、「三年前」にここで起こった事件の真実も教えてやる、そう誘う
 花束野郎は明言はしていないが、口振りからしてどうやら「狐」が事件に関わっているようだ


(受け取る代償として、対価を払わないと、いけない。あなたは、そう考えている)
(だから、訊きたいのに、何も、訊けずにいる)


 あの日、高奈先輩に言われた言葉だ
 そうだ、先輩と友達になったあの日、俺は掴んだ筈だ

 自分から動かなければ何も得られないんだ、と


 その上で、だ
 まず、ワイルド野郎の方を見やる
 「組織」所属の怖い奴だ、マイナス一点

 次に花束野郎だ
 相変わらずの笑顔だな、てかそれが普段の顔か?
 嘘は吐いていない、っぽいんだが何だか怪しすぎる、マイナス一点

 ……話だけ聞いておこうかな?
 事件の話の方は、なんか再現とか言ってたが
 それが実際には精神干渉系能力だったりすると危ないよな

 ああとも、自衛の心得ってやつだ


「分かった」


 息を吐く


「俺は『狐』について知りたいんだ」
「何故だ」

 ワイルド野郎の声は何処か鋭い

「俺を振った初恋の人の、仇……それが『狐』、って言ったら理解してもらえる?」

 ワイルド野郎は黙って俺を睨んでいる
 実はこれ、自分で言っててかなり恥ずかしい
 神社で高奈先輩と話したときもそうだったが、なんだよ俺
 まだ空七に未練たらたらじゃねえか、何というか恥ずかしくなってきた

「話を聞けるだけ聞かせてよ」
「決まりだな」

 花束野郎は笑顔のままだ
 ただ何だろうか、どこか嘲るような色が混じっているのは気の所為か?
 果たして俺の気の所為だろうか? 俺が単に自意識過剰になってるだけか?

 笑われてる気がする
 恥ずかしい

「『三年前』の事件についてはどうする?」

 事件の再現にまで付き合うか、という問いか
 それについては、悪いが断らせてもらうぜ――


「その話さ、わたしも混ぜてくれない?」

 

 


 咄嗟に、声のした、横へ振り向く


 女の子が立っていた

 先程の、女の子だった

 頭から血を流している女の子

 この中学の制服を着ているが、もう人間では無い存在


 女の子は、普通に話し掛けてきた


「それさ、上の飛び降りの話でしょ? わたしも知りたい」


 女の子の、目を見る

 先程とは違う、その表情は虚ろでは無い

 彼女は、目に光を宿していた


「君さ」

 そう言いながら、女の子は花束野郎を指差す

「うちの後輩でしょ?」

 続いて、俺を見た

「君は、他所の中学?」

 最後にワイルド野郎を眺める

「君は、……うーん」
「あ゙……!?」

 ワイルド野郎はえらい表情で女の子を睨んでいた
 半身で身構えている

 何考えてんだワイルド野郎!?
 人間では無いといえ、年下の女の子相手に凄むとか最低だぞ!?

 いやまあ、警戒するのは分かりますよ?


 あ、待てよ


「なあ、いいか?」

 俺は花束野郎に持ち掛ける

「この女の子も一緒に再現を見せてくれるって言うなら
 そっちの方も、漏れなく俺も付き合うけど、どうする?」

 どうなんだ、おい
 これは完璧に予想外の事態だよな?
 さあどうする花束野郎? どうするんだ?

「いいけど?」
「えっ」

 彼の即答を、思わず聞き返す

 花束野郎は笑顔のままだ
 なんでこんなに余裕なんだ、コイツ


 納得がいかない







□■□


花子さんの人に感謝申し上げますorz

>>383-384 花子さんの人
>>403-406 次世代ーズ
>>425-426 花子さんの人
の続きでございます
恐らく、「怪奇同盟」へのご挨拶を済ませた後の時間になるのではないでしょうか……
時間軸は改めて確認します
花子さんの人、ありがとうございます
何かご指摘等あればお気軽にレス頂けるとありがたいですorz

再現映像の方ですが、早渡は警戒心が完全に解けてないので
ショッキングな再現映像が飛び出そうが表面上は仏頂面でを通しそうですが
内心バクバクで多分肩がビクッてなったりすると思います
女の子の方も良い反応しそうですが、具体的にどうなるのかは……
恐らくですが、再現が終わった後に忽然と姿を消すかもしれません


>>446
ご年配の方々は将門様の御姿を見れば御利益があると信じているのではないかと
泣きながら拝んだりとか

「首塚」へのご挨拶とは恐れ多い……

○夜中(※本編とは関係ありません)

親父『脩寿、「首塚」へ挨拶に行きなさい』
早渡「はい?」(どの口で言ってやがりますか親父殿!?)
親父『 行 く の だ 』
早渡「   」
早渡(『同盟』の皆さんに誤解された件って、勢力の政治の部分も関わってるよな
    そもそも「七つ星」の名前も出さずに単に養親の個人的御礼って話にしときゃ良かったのか……?
    でも親父殿にはきちんと名前を出して挨拶しろと言われたし……
    でもでも結局『同盟』にはあらぬ誤解を与えてしまったわけで、そんな俺が『首塚』へも挨拶に行ったら、かなりまずくない?
    『同盟』と『首塚』って話の限りじゃ何やら剣呑な雰囲気っぽいし、俺もヘマをやったわけだし、そんな中で俺が『首塚』行ったりしたら)

早渡「……」 ☜ トイレへ
早渡「   」 ☜ 便座を開く
早渡「オロロロロロロロロロ、オボロ、オロボボボボボボボボ」

※あくまで早渡個人の主観です(😊)
……早渡
養い親の個人的なお礼という点を強調すべきだったんじゃないか、早渡
いや、自己紹介で「団三郎」の名を出した時点である意味詰んでたかもな、早渡


>>447
思ったよりも水神様包囲網が強固になっており
この一件、いったいどうなるんでしょうか……


>>446-448
制服の件、ありがとうございます
ツンデレ妹さんのログですね

次世代の人乙でしたー
早渡君、直斗がごめんな!
そして、早渡君が花言葉とか詳しかったら、直斗が供えた花束見て「あれっ?」ってなった可能性あるので知らないっぽくてよかったな、直斗!
【※直斗が花言葉を意図して、花束の花を選んだかどうかは不明です……が、作者的には一応選んで描写しました】

> 今やワイルド野郎は完全に変質者を見るような目つきで俺を凝視していた
もしかして:慶次、早渡君を遥もしくは「先生」と同じような目で見た

>ショッキングな再現映像が飛び出そうが表面上は仏頂面でを通しそうですが
(ショッキング度どれくらいになるかなぁ、とちょっと考えている)

あ、そうだ直斗、血塗れの女の子の名前、わかってていいかな(避難所の裏設定スレで決めた奴)
それと、彼女が何番目の犠牲者か決まってなかったら、こっちで決めちゃっても大丈夫かな?

>恐らくですが、再現が終わった後に忽然と姿を消すかもしれません
「連絡先交換したいから、逃げられないようにしないと」って考えてる直斗が見えた

>ご年配の方々は将門様の御姿を見れば御利益があると信じているのではないかと
ご利益………(今回のような状況でなけりゃ、昼間から酒飲んで寝てる将門様を見る)(静かに目をそらす)

>※あくまで早渡個人の主観です(😊)
早渡くーーーーーんっ!?

>>450
>他の神様ー!力ちょこっとわけてー!
これが作中世界でできれば盟主暴走イベントはすぐ終わる!
生贄みたいな短期的ではない方法で山の隠し神をデイダラボッチに戻せば
後はそのまま学校町の契約者達に適度に存在を認識させて
擬似信仰状態にしとけば安定した土地の管理者が復活する!
……水神とのバトルもスキップされますけどね!!!!

>………頑張れ神主、宴会への参加が出遅れてしまう(ヘタしたら出席すらできない)恨みと言う名の神様の八つ当たりから逃げ延びろ!
幸彦「おかしくねえか?俺だけ明らかに風当たり強いだろ……」
残当

>>451
>全く気付いておりません
>今回の時点で早渡も深入りする勇気は無いかと
元々お使いで訪問しただけで目的は別だから仕方ないね
この一家に深入りすると瑞希と模擬戦やる羽目になりそうだし

>彦  『まず伝えるべきことは、「団三郎」、「広商連」は「首塚」寄りの勢力では無い、という点だ』
ふむふむ。あくまで団三郎派の多数が個人的に将門公を個人的に信奉しているだけって感じかな

>「秘酒」というのは実体では無い存在であっても味わうことのできる酒であり、「同盟」の「盟主」も召し上がることができる
あー、あの秘酒ってワードはそういうもののことを表すんですね
特定の醸造所の一般販売されてないお酒的なニュアンスなのかなと思ってました
なお盟主様健在なら飲めるかどうかすぐに確かめてみて事なきを得た可能性が高いです
篠塚一家が誰も見分けられなかった&秘酒という名称を知らなかったがゆえの混乱です

>>459
>『同盟』と『首塚』って話の限りじゃ何やら剣呑な雰囲気っぽいし
剣呑()なのはトップ同士だけなんだけどアレは実際に見ないと伝わらないよなあ(真顔)


>>460
ありがとうございます
実は話を書くに当たって最初に調べたのが花言葉でした
あまりのラインナップにわーお★と思いましたが、そうですね
高奈先輩かコトリーちゃんが一緒ならすごい形相で直斗くんを凝視してたでしょうね
千十さんも一緒だと顔が青くなったのではないかと
花言葉、良いものですね……非言語のメッセージといいますか……

名前は是非是非使って頂けたら
中学出身者はみんな彼女を知ってるのではないでしょうか
直斗くんは知らないとおかしいので、どしどしお願いします
順番の決定も是非お願いします
ただ不安なのが女の子が携帯持ってるのか、そもそも使用可能か色々不明ですがそちらも花子さんの人にお任せします……


>>461
すいません、うちの物知らずがご迷惑を……
早渡「篠塚さん、本当に申し訳ありませんでした!!」
秘酒という名称は仰る通り、秘蔵の酒、という程度のニュアンスなんですが
養い親が都合したのは神に捧げるために創られた酒っぽいので、つまり神も(勿論、盟主様も)人も怪異も口に出来るものです
神道系の隠された聖域で醸されたものでしょうか……そこまでは分からない……
「秘酒」ではなくて、正しくはちゃんとした名前があったはずですが、それを思い出せず、ひとまず「秘酒」と呼んでます。すいません本当に
多分、Tさんがいれば一目で解決してくれたはず……!
「団三郎」についても仰る通りです、ありがとうございます
実際に将門様ゆかりの社にはビジネスの御利益があったはずです

>>462
>あまりのラインナップにわーお★と思いましたが、そうですね
直斗が悪意なしで花を選んでいた場合、直斗の花選びのセンスがないと言うことになりかねないラインナップであった
ホオズキだけは選んだ意味ちょっとあるって決めてるんですが、花言葉関係ねーのよなこれが
一応、選んだ花の花言葉は避難所チラ裏にぶん投げた

>花言葉、良いものですね……非言語のメッセージといいますか……
良いものです(赤いチューリップと黄色いチューリップを供えていそうな憐を見ながら)

>名前は是非是非使って頂けたら
>順番の決定も是非お願いします
やったぜ

>ただ不安なのが女の子が携帯持ってるのか、そもそも使用可能か色々不明ですがそちらも花子さんの人にお任せします……
そこら辺も決めていいなら決めて書くよー

>実際に将門様ゆかりの社にはビジネスの御利益があったはずです
将門様が祟り神以外としてちゃんと仕事してた(感動している)

>>462
>養い親が都合したのは神に捧げるために創られた酒っぽいので、つまり神も(勿論、盟主様も)人も怪異も口に出来るものです
オーケー。さて次の問題は盟主暴走中ってことだが
……説明しないとマズいよなあ、今の学校町の状況的に(汗)



さて忘れかけの戦技披露会、あるいは水神の独白って手もあるか
他に何か書きたいもの……潮谷と半田の日常でもいいな……あとデュラハン出したい……


大事なことを忘れていた

>>460
>もしかして:慶次、早渡君を遥もしくは「先生」と同じような目で見た
仰る通りです……
いいね! 🌠👍😊🌠

>>463
>そこら辺も決めていいなら決めて書くよー
是非お願いします!

女子「わたしの方が先輩だからね! うやまって!」
早渡「はい……」

少なくとも早渡とは上のようなやり取りがある
実は女の子は実体があるもののように書いていたのですが
果たして問題ないのだろうか……

>>464
>オーケー。さて次の問題は盟主暴走中ってことだが
……提案なのですが
「同盟」ご挨拶後の数日後の逢魔時に早渡&先輩を
盟主様と遭遇させて(主に早渡が)ボコボコになる所を
……書いた方がよろしいでしょうか……?
そうすれば説明の手間が省けると思ったのですが
ただそうなると「カフェ」三回目の訪問になってしまうので
流石にアクマの人のご判断を仰ぎたいです
その暁には早渡が両目から血を流すことになる(絶対に)





○深夜(※勿論本編ではありません)

やっ『そうかぁ、脩の字も大変だったなぁ』
早渡「最初は和やかに進みそうだったんで、バクバクもんでした……
    あと、「秘酒」ってそういう意味があるって初めて知りましたよ」
やっ『いや、「秘酒」はまんま、とっておきの酒ですってくらいの意味だよ
    文脈で判断してもらうのは無理があるよな。脩の字、こういうときは
    「オミワ」ですって説明すれば良かったかもな。「神饌」でも通じた筈だぜ』
早渡「なんすか、それ」
やっ『まんま、神様でも飲み食いできるモンだよ
    神さんってダイレクトに物の気を接種できるんだけどな
    やっぱ口から食べたいってこだわりある向きも多いんだよ
    で、神職たちは精進潔斎して専用の食事を用意するんだ、わかるか?』
早渡(分からない……)
やっ『神道神事を勉強しとけよ。お前、これから“西”の陰陽や修験の連中と殺り合うなら
    基礎体力ないとヤバいぞ? 今後、今日みたいな付き合いも増えるかもしらんしなぁ』
早渡(えっ? 付き合い増えるって? えっ?)「やっさん、あの、具体的には何をすれば」
やっ『まず記紀読め。時間あんなら有職故実にも目ぇ通しとけ
    良かったなぁ脩の字! 勉強する時間たっぷりあんだからよぉ!』
脩寿「うっす、あざーす」
やっ『まっ、近いうち「首塚」にも挨拶行かされると思うから、頑張れな』(ブツッ)
早渡「えっ、ちょっ、えっ?」

オミワは御味酒や御三輪と書きます。酒です(調べたらあった)
神饌は「御饌」とも書きます。「ミツケ」とも言うのではないでしょうか

アクマの人、花子さんの人に土下座でございます……orz

他の人の介入の余地……と言うより介入の下準備と言うか遭遇しやすくする為にも、死亡フラグ連中片付けるの2月に延期しますね
ただ、「バビロンの大淫婦」てめーは駄目だ。今日か明日にはゴートゥーヘルだ
【※時間軸的には「バビロンの大淫婦」さよならの直後に死亡フラグ組の運命決定シーンになります】

>>464
>……説明しないとマズいよなあ、今の学校町の状況的に(汗)
「狐」もやばいが、遭遇率的には盟主様暴走による人を襲うアレコレの方がやばいからなぁ

>>465
>仰る通りです……
大変、早渡君がホモだと思われる()

>是非お願いします!
了解デース
「三年前」の事件の様子を再現の際、彼女が飛び降りる瞬間も再現していいものかどうか(言えば、そこだけ飛ばしてくれる程度の気遣いはある契約者の模様)

>実は女の子は実体があるもののように書いていたのですが
>果たして問題ないのだろうか……
問題ないのよ
早渡君を押さえつけてもらうの頼めるし

>やっ『まっ、近いうち「首塚」にも挨拶行かされると思うから、頑張れな』(ブツッ)
早渡君頑張れ♥頑張れ♥
運が良ければ着物美女と出会えるぞ!
【※運が悪いとオール男祭です】


お昼、いかがお過ごしでしょうか

>>466
ありがとうございます

>「三年前」の事件の様子を再現の際、彼女が飛び降りる瞬間も再現していいものかどうか
是非お願いします
早渡の意思は置いとくとして是非お願いします

>早渡君を押さえつけてもらうの頼めるし
あ、あー……
(これ、敢えて黙ってた方が面白いかも……)
お願いします!!
彼女、力は強いのか……いいと思います!👍

あと「首塚」訪問はかなり後になりそうですね
「怪奇同盟」さんに対する早渡の不手際が正史(本編)に入るとしたら、早渡もヤバいと思いますし
流石に「七つ星」の養い親も空気読むはずなので

あと、これは単なる確認ですが
>死亡フラグ連中片付けるの2月に延期しますね
これに合わせて「狐」の終結も延びますでしょうか?

>>465
いや、二回目の訪問の時に早渡君が帰る前に説明しちゃいましょう
今は逢魔時が危険なこと、危険とされる理由くらいは言っといた方が自然だ
怪奇同盟の現状についての説明にもなりますし……
まあそれはそれとして日没前の時間帯にまったく出歩くなとか意外と難しそうだし
遭遇したい時は遭遇しちまえばいいんですよ!!ちょっと不運と踊っただけ!

>その暁には早渡が両目から血を流すことになる(絶対に)
この一文が激しい戦闘のたびに目から血が出るという意味だとすると
早渡君はいずれ「マリア像」というあだ名がつきそうですね
アクマ「それはない」

>神饌は「御饌」とも書きます。「ミツケ」とも言うのではないでしょうか
御饌(6歳)「みけはみけですにゃん」ニャーン
ここで唐突な登場予定キャラクター紹介
元孤児で贄守さん家の居候みけちゃん。神主陣営の1人です
式神をちょっと操れるけど真に求められる役割は名前の通りだぞ☆

>>466
>「狐」もやばいが、遭遇率的には盟主様暴走による人を襲うアレコレの方がやばいからなぁ
一般人は鬼に食われ子供らに襲われ、契約者なら影と盟主に襲われる
こう書くと世紀末めいてますが、まあ学校町は魔境だしな(思考停止)

>>467
>「怪奇同盟」さんに対する早渡の不手際が正史(本編)に入るとしたら、早渡もヤバいと思いますし
うーん、秘酒の意味をお互い分かってなさそうなのが正史になるとして
まさか早渡君にあのキャラクター会議をそのままぶつけるのは流石にないだろうし
正史だと別ルートから秘酒がどういうものか調べて穏当に解決されるんじゃなかろうか……?

温泉帰りほっこほこぉ

>>467
>早渡の意思は置いとくとして是非お願いします
はーい、了解です

>お願いします!!
なお、当初は直斗が早渡君の背後にいつの間にかいて「ばっくすたっぷー」ってやろうかとも思いましたが、早渡君の警戒度合いが強いので延期

>これに合わせて「狐」の終結も延びますでしょうか?
調子良くかければ2月中に終結に迎えるだろうけど、調子悪かったら伸びるだろうなぁ

>>468
>一般人は鬼に食われ子供らに襲われ、契約者なら影と盟主に襲われる
やばい(やばい)
だからこそ、あちこち急いで解決しようとしてる訳で
鬼の方は、こちらの次世代連中も見つけようとしてるんですが、見つけれてないんですよね
何故でしょうね、鬼の彼女は「狐」連中が随分念入りに隠し守ろうとしてますね

>こう書くと世紀末めいてますが、まあ学校町は魔境だしな(思考停止)
「組織」が頑張って隠蔽とかやってるおかげで一般人に知られてないからまだ大丈夫だと信じたい


皆さんお疲れ様です

>>468
ありがとうございます

>いや、二回目の訪問の時に早渡君が帰る前に説明しちゃいましょう
ありがとうございます……!
私は決して急ぎはしません! アクマの人のペースで書いて頂ければと思います

>この一文が激しい戦闘のたびに目から血が出るという意味だとすると
>早渡君はいずれ「マリア像」というあだ名がつきそうですね
いえ、その……盟主様の前で、非常に申し上げにくいのですが……
高奈先輩の防御と早渡の気合と根性で防ぎきれなかった雷撃を
間接的にアレした早渡は、体内を殺ってしまい、目から出血、的な
そういう……(震え声)

>式神をちょっと操れるけど真に求められる役割は名前の通りだぞ☆
早渡「はわわわ」

>正史だと別ルートから秘酒がどういうものか調べて穏当に解決されるんじゃなかろうか……?
ありがとうございます、申し訳ありません……!
早渡の説明不足に端を欲しますが、メタ的には説明を端折った私の責任!
御迷惑をお掛けしました。ありがとうございます

>>469
温泉帰りですか、羨ましい

>「ばっくすたっぷー」ってやろうかとも思いましたが、早渡君の警戒度合いが強いので延期
ギャグ的な文脈なら100%まともに食らいますね、それでキレる
最終的な判断も含めて花子さんの人にお任せします!

ここからはあくまで私の独り言ですが、仕掛けられてキレた場合、早渡は当然直斗くんに詰め寄るでしょうね
危ないので誰かが止めてくれることを祈ろう、そして( ╬◣ 益◢)顔の早渡が「グゥゥオオァアアッッ!!!!」とかいうわけです
「おンまァケツんアナん中ンゆぃ突こで足腰ガタガタなるンあ゙掻ぃ混ざンだらが!! あァ゙あ゙ッ!?
(肛門に指を入れて足腰ガタガタになるまで掻き混ぜて差し上げましょうか? ね?)」と叫ぶと思います
それを聞いた慶次さんの早渡を見る目が……お下品ですね、すいません、これ以上は止めます……

早渡に少し余裕がある場合は「何だよ、俺とマット運動がしたいのか?」とか言うでしょうね
「いいぜ、付き合ってやるよ。いい声で鳴かしたるわ。泣いたって離さねえからな……」とか言いながら睨みます
それを聞いた慶次さんは……これ以上は私の人格が疑われそうなので止めます……

どちらの場合も直斗くんはニコニコしてそうですが、そこの所も含めて判断は花子さんの人に委ねます!

ところで女の子の方ですが、生前の学年を咲李さんと同学年か三年生でイメージしてました
ですが明言してませんでしたので、そちらも花子さんの人に全面的に委ねたいです


“波”については先週、避難所の雑談スレに掲載しましたが詳しい内容についてはまだ掛かりそうです
全ては全く整備を進めずにこの設定を使っちまった私の責ですので、詳しく聞きたい方は私に直接質問してくだされば、と思います……

>>470
>それを聞いた慶次さんの早渡を見る目が……お下品ですね、すいません、これ以上は止めます……
>それを聞いた慶次さんは……これ以上は私の人格が疑われそうなので止めます……
>どちらの場合も直斗くんはニコニコしてそうですが、そこの所も含めて判断は花子さんの人に委ねます!
これ、どっちのパターンでも慶次から早渡君への評価大変な事になるのでは(真顔)
女の子からの早渡君への視線も心配になるが大丈夫か
そもそも、直斗の「ばっくすたっぷー」は背後から相手にするりっと首筋に抱きついて喉元に人差し指当てて耳元で囁きながらだが大丈夫か?

>ですが明言してませんでしたので、そちらも花子さんの人に全面的に委ねたいです
いえっさー、了解しましたの(フラグめいたものを考えながら)

>>471
大丈夫か? ではなく、大丈夫♥(うふふ)
そこの所も含めてお任せします
そしてですが、直斗くんの特技ってまさかのBack stabか……!?
こわいなあ、是非お願いします
全盛期の早渡なら背後に回った相手のキンタマを掴んで離さずにコリコリすると思うが流石に今はどうかな……
まあ、お任せします



そして アクマの人にご相談、というか伺いたいのですが、「陰陽道」の契約者についてご意見を聞きたいです
今はあくまで参考程度なんですが、だいぶ後々に「陰陽道(メイン)」と「陰陽道(サブ)」の2タイプの契約者を登場させるかもしれません
メインの方は本格的に「陰陽道」と契約した者で、幅広い術が使える反面、契約コスト重めで大抵は単個契約なタイプ
サブはというと、「陰陽道」と部分的に(限定的に)契約してしまったが為に行使出来る術が予め限定されていて、出力も密度もメインタイプに及ばず土壇場でのパワーアップも出来ないが
契約の軽さが強みで、体術やその他の契約都市伝説の補助として使えるので、それなりの軽さと臨機応変さで勝負! なタイプ
例えるなら、RPGの魔法職タイプと限定的に魔法も使える剣士タイプという感じでしょうか(剣士の魔法は本職よりは弱いですね?)
何がしたいかというと、笛の人がやってたようなことをやりたい(やりたい)
具体的にいうと、符術で敵を翻弄しつつ刀剣系の伝承で殴りかかるデコ眼鏡な戦闘凶な小学生の女の子を出したい(出す)
いかがでしょうか……

>>469
>鬼の方は、こちらの次世代連中も見つけようとしてるんですが、見つけれてないんですよね
>何故でしょうね、鬼の彼女は「狐」連中が随分念入りに隠し守ろうとしてますね
「狐」側の秘密兵器か何かか。最大戦力は九十九屋さんではなかった……?

>「組織」が頑張って隠蔽とかやってるおかげで一般人に知られてないからまだ大丈夫だと信じたい
そういえば一般人も都市伝説に襲われる対象で数も馬鹿にならないはずなのに
外部から人が流入してきてアミューズメントな施設も作られてって不思議だよねー
という雑談をしたような覚えがありますが、一般人を軽視した組織の一部署が暴走して
事件を隠蔽しつつ人口は一定数保つように人を呼び込んでいた時期があった……
みたいなブラックジョークを思いつきました。実際はどういうことになってるんだったかな?

>>470
一週間後にまた来てください。本当の続きってやつをお見せしますよ(棒)

>間接的にアレした早渡は、体内を殺ってしまい、目から出血、的な
それ満身創痍と致命傷の間くらいじゃない?ギャグ補正ないと即入院だよ??

>>471
>直斗の「ばっくすたっぷー」は背後から相手にするりっと首筋に抱きついて喉元に人差し指当てて耳元で囁きながらだが大丈夫か?
なんか面白そうなこと聞いたからうちのわかいおんなのこでシミュレートしてみよう
…………真理ちゃんは冷静に悲鳴あげたし、結に至っては即変身して尻尾ぶん回してた
期待通りの顔真っ赤は潮谷ちゃんくらいか。サキュバスは説明不要(迫真)

>>472
笛の人がやってたようなこと……悪役ロールプレイ?(首傾げ)
さて、キャラクターに関してはそんな感じで問題ないんじゃないかなー?
神主も符術に素手喧嘩混ぜたようなスタイルの予定で武器類は使わないし
みけちゃんは式神を一度にひとつ使役できる程度ですし意外と被らないもんだ

今夜中に間に合うかな?ドキドキチキンレース!_(:3」∠)_

>>472
>そしてですが、直斗くんの特技ってまさかのBack stabか……!?
ばっくすたっぷー、はあくまでも特技の副産物ですかね

>>473
>「狐」側の秘密兵器か何かか。最大戦力は九十九屋さんではなかった……?
まぁ、腕力は間違いなく、鬼のあの子がトップでしょう。おなかすいたー、で弱っていたとしても
ただ、広範囲攻撃とかに関しては九十九屋が上だと思う
九十九屋の怖いとこは、スタンド使いで言うところの成長性がBだって事だしな……

>みたいなブラックジョークを思いつきました。実際はどういうことになってるんだったかな?
そういうブラックショークではなかった、と思う
……不思議と、死の運命に囚われた人でも集まりやすいんですかね

>なんか面白そうなこと聞いたからうちのわかいおんなのこでシミュレートしてみよう
ちなみに、直斗の「ばっくすたっぷー」、特定対象にしかできません

 時間がない
 時間がないのだ
 早く、早くしなければ


 私には時間がない
 早く、力を取り戻さなければ

 夕日が完全に沈みきり、夜と言う暗闇が学校町へと完全に降り立った
 人の文明が進むたび、夜の暗闇は人間が生み出す光によって狭められていっているが……人間逹は気づけていない
 闇を狭めれば狭める程に、光ある場所から見える闇が恐ろしく見える事に
 闇を狭めれば狭める程に、闇はより濃く、深くなっていくその事実に
 気づかぬままに、光を増やし闇を駆逐したのだと勝ち誇る人間共の、何たる愚かな事か

 ……しかし
 ならば、そんな愚かな人間の思いから生まれたのだという、己は

(……どうだって、いい)

 どうでもいい
 そんな事を考える必要性等ない
 愚かな人間が、己のような存在を生み出したのだとしたら、それは誘惑され滅びる事を願っている、と言う事
 ならば、その望みを叶えてやれば良いだけの事

 あぁ、そうだ
 人間は、本当に愚かだ
 その望みを叶えてやろうと言うのに、それを邪魔してくるのだから

(その為にも、顔を………肉体を、新しくしなければ……!)

 夜の闇の中を、光を避けるように渡り歩き、次の宿主を探す
 目をつけている相手はいるのだ
 それさえ、見つけ出せば……

「……!」

 気配と、聞こえてきた小さな歌声に足を止める
 誰かが、薄暗さの恐怖から逃れるように鼻歌でも歌いながら近づいてきているようだった
 とっさに隠れ、その行動に苛立ちが高まる
 何故、隠れなければいけない
 この顔の、傷跡さえなければ………!

(……隠れなくても、いいじゃない)

 そうだ、何故、隠れ続けなければならない
 どうせ、近づいてきているのは人間だろう
 人間一人程度であれば、今のこの顔であっても、薄暗さに隠されて誘惑の邪魔にならない
 顔こそ傷ついたが、己には声が、肉体が残っている
 ……人間程度、誘惑できる

 す、と近づいてくる影の様子を伺う
 それは、ハイティーンの少年だった
 顔立ちや髪と瞳の色から見て、日本人ではないか、もしくはハーフか……どちらでもいい
 ここで一人でも誘惑してしまえば、盾にするなりなんなり、使い用はいくらでもある
 息を潜め、気配を潜め、その少年に、近づき、手を伸ばす
 少年の肩に手が触れそうになった、その時だった

 ーーーーぞくっ、と
 激しい悪寒と………熱を、感じた

「っあ、ぁああああああああああ!!??」

 熱い
 熱い、熱い熱いあついあついあついあついあついアツイアツイアツイアツイあついぃいいいいいいい!?

 覚えのある熱だった
 幾重にも叩き込まれる、殺意の篭った熱
 己は、この熱を知っている
 忘れる事など、あるはずもない
 この熱は、己の顔に火傷を刻み込んだ熱なのだから



「………見つけたぞ」

 冷たい声も、聞き覚えがある
 忘れるはずもない
 己の顔に火傷と言う醜い傷をつけた男の事を忘れるはずも、ない

 少年の背後に、その男はいた
 「教会」の異端審問官、ジェルトヴァ
 ヨーロッパにおいて、「教会」と敵対する者………特に、悪魔や魔女と呼ばれる類の者で、この男を知らぬ者などいないだろう
 「教会」に敵対する者を容赦なく狩り続けてきた、元「十三使徒」候補の一人でもある異端審問官
 それは、己へと向けられた死神に等しかった

「レン、下がれ」
「はい……ジェルトヴァさん、お気をつけて、っす」

 レンと呼ばれた少年は、素直にジェルトヴァの背後へと下がった
 こちらを見る表情に怯えはない
 幾重にも枝分かれした燃え盛る鞭を叩きつけられ、半身を焼かれたこの姿を見ても怯えていないその様子は、ただの人間ではなかった

(……っ契約者!)

 戦いに慣れている、契約者だ
 かすかに、己にとって嫌な気配がするような、しないような
 どちらにせよ、まずい
 まずい、まずい、まずい、まずい
 肉体が、持たない
 痛みが、熱が、体の半分以上を支配して、まともに動かす事すらできない

(この、肉体を………「捨て」なければ……!)

 一刻も早く、この肉体を離れて次の肉体へと移らなければ
 この際、目をつけていたあの少女でなくとも構わない
 とにかく、次の肉体へと………!

 一方的に結んでいた契約を断ち切る
 己が抜け出したその肉体は、もはや元の肉体の主の自我すら残っていなかった肉体は倒れ込んだまま動かなくなる

 実態を持たない己の姿を、ジェルトヴァも、レンとか言う少年もしっかりと目で追ってくる
 ジェルトヴァが再び振るった鞭を、すんでのところせ避けて逃げる
 なりふりなど、構っていられない
 肉体を得ていない状態が続けば、己は消滅してしまうのだ
 どこか、どこかに、人間は、肉体は……

 角を曲がり、曲がり、少しでも姿を隠すようにしながら逃げて………

「………!」

 「運命」と言うものに、感謝する
 己の目の前から、携帯端末を弄りながら歩いてきている少女は、間違いなく、己が「次の肉体に」と目をつけていた、少女
 そのまま、素早く近づき、手を伸ばす

「……え?」

 実態を伴わぬとはいえ、ここまで近づけば気づくのか
 少女はこちらを見て、間の抜けた声を上げてきたが……もう、遅い

 少女に触れる
 そのまま。肉体へと入り込み



「ーーーーーーーーーーえ?」


.

 ……見失った
 その失態に、ジェルトヴァは舌打ちする
 あの「バビロンの大淫婦」は、人間の肉体を奪った状態でなければ存在できない
 もはや元の人間の魂は消え失せ、動く肉塊でしかなかったあの肉体であっても、「バビロンの大淫婦」が入っていれば、死体にはならない
 しかし、「バビロンの大淫婦」が肉体を捨てた今、あの肉体は一気に腐り果て、先に受けていた鞭の炎によって、そのまま燃やし尽くされて消えた
 肉体を捨てたあの状態では長時間行動はできない
 ジェルトヴァと憐の肉体を奪うと言う行動は行わなかったのだから、別の肉体を見つけなければ消えてしまう
 死に物狂いで逃げるそれを、逃してしまうとは

「……っすみません」
「お前が謝る必要はない。私のミスだ」
「………でも」

 憐は、少し不安そうな表情を浮かべていた
 「シェキナーの弓」を持っている状態だったならば、と、そう考えたのかもしれない
 普段、母親であるフェリシテから借りている「シェキナーの弓」を、今、憐は持っていなかった
 「バビロンの大淫婦」「狐」だけではなく、他にも物騒な事件が多発している今、母から身を守る術を奪ってしまっていることに申し訳無さを感じた憐が、母に返していたのだ
 憐が「シェキナーの弓」を所持していたままであれば、逃げる「バビロンの大淫婦」を追撃できたかもしれないが

(……私が、仕留め損ねたのが、悪い)

 憐には責任はない
 責任があるのは、自分だ

 とにかく、「バビロンの大淫婦」の気配を追い続ける
 何度も角を曲がり続け、そして

「………何?」

 消えた
 「バビロンの大淫婦」の気配が……完全に、消滅した
 この学校町から、「バビロンの大淫婦」の存在が、完全に消え失せたのだ

 そこに、人影はなかった
 ただ、スマートフォンが地面に落ちている
 キラキラと煌くピンク色のケースに入っていて、白い顔に赤い目をした黄色い尻尾の狐の人形がついたストラップがついている

「……………咲夜?」

 ジェルトヴァが拾い上げたそのスマートフォンを見て
 憐は、真っ青な顔で、そう呟いた




to be … ?

ばいばい、「バビロンの大淫婦」!!
と、言うわけでごん太い死亡フラグがたっていた「バビロンの大淫婦」はこれでさよならです
後日、投下する事になる死亡フラグが片付くシーンは、このシーンとほぼ同時刻になります
………ので、もし、ここで真っ青になっている憐から話を聞きたい、と言う場合、ここに通りすがって話を聞く事は可能ですが、その場合そのキャラクターは【死亡フラグ組】を助けることができなくなるでしょう
治療役として憐へと連絡が飛び、憐がそこに向かうのについていく事はできるでしょうが、まさに死にかけている存在を通りすがりに見つけて助ける、なんて事は不可能になります
なので、今回投下したシーンにとおりすがりたい人は、ご注意を
他死亡フラグ組は来月(っつーか明日から)のうちに投下したいね


鳥居の人が待ち遠しい……
シャドーマンの人にも伺いたいことがある……


花子さんの人乙です
「淫婦」が憑いてた人は救済されるかもと避難所かでみた覚えがありましたが、なるほど……
心配なのはジェルトヴァさんだ、今回のが本当に「教会」の失態だとしたらジェルトヴァさんがメルさんにネチネチいじられないか心配です

そして自分は重大な思い違いをしていたようです
>>467で「死亡組の処置を2月に延期するのに合わせて「狐」終結も延びますか?」と尋ねましたが
これ、「『作中の時間』で2月に延びたのか!(やった!)」という意味で捉えてしまい、壮絶な勘違いをしていました……
状況的に考えてまず有り得ませんね、なんでこんな思い違いを……花子さんの人、すいません
ということは今回の>>475-479の話は作中時間で11月の頭になって、集結は11月中になるのですよね
花子さんの人が投下スケジュール的な意味で、2月中に「狐」を終結させるとしたら……僕も頑張らないと早渡が間に合わねえぞ……(頑張ろ)


先に宣言しておこう、作中時間で「11月の月初以降」、大量の「ピエロ」が学校町に侵入します
こっちは「トンカラトン」の集団とは異なり、人を襲います
初旬の段階ではまだ積極的にではありませんが、姿を隠しながらも、非契約者・非契約都市伝説を集中的に狙って拉致・暴行しようとします
個々はこれといって都市伝説由来の能力を持っていませんが銃器や刃物・鈍器等を所持しています
モブエネミーにお困りの方は是非ご利用ください

>>473
ありがとうございます
是非よろしくお願いします……
笛の人の話は好きなのですが、その中に陰陽師が暗躍する話がありまして
wikiを調べたのですがおかしい……「鬼ごっこ」では無かった……まだ纏められていない話かな? その話を見て、いいなあと思っておりました

>>481
>心配なのはジェルトヴァさんだ、今回のが本当に「教会」の失態だとしたらジェルトヴァさんがメルさんにネチネチいじられないか心配です
あれなー
完全に「教会」の失態とも言い切れないのよな
誰の失態かと言われると誰の失態でもないかもしれないし、誰もが失態していたのかもしれません

>ということは今回の>>475-479の話は作中時間で11月の頭になって、集結は11月中になるのですよね
える いいことおしえてやる
正式には、終結は同じく11月頭だ
何故なら、時間軸的に考えると昨晩投下分の話の次の日には「狐」編終結になるかrなあ!!

>先に宣言しておこう、作中時間で「11月の月初以降」、大量の「ピエロ」が学校町に侵入します
>こっちは「トンカラトン」の集団とは異なり、人を襲います
やったね大樹、仕事が増えるよ!(胃薬わたしながら)


>>482
ありがとうございます
聞いて良かったあ……

>正式には、終結は同じく11月頭だ
>何故なら、時間軸的に考えると昨晩投下分の話の次の日には「狐」編終結になる
昨晩の話が11月1日の出来事だとしたら、11月2日には終結となりますか
ハロウィンの後に合わせてきたんだなあ……これは短期決戦になりそうだなあ

ありがとうございます!
>>481で宣言した「ピエロ」の侵入時期ですが「未定」となりました

>>383-384 俺
>>403-406 次世代ーズの人
>>425-426 俺
>>452-458 次世代ーズの人

の、続き投下はっじめるよー
次世代ーズの人、遅くなってしまって大変申し訳無い

 慶次は、携帯を手に連絡を取り始めていた
 中学校の前で直斗が声をかけた相手が、「三年前」の事件について聞く事にしたうえ、現場の再現について同意した事
 さらに言うと、そこに現れた「繰り返す飛び降り」の少女がその現場に立ち会うという点についても、直斗が一切気にしなかった事
 ……その結果、慶次が、現場を再現する事が可能な契約者……心から気が合わないと言う契約者を呼び出す事になったからだ
 直斗は彼と顔見知りではある(そういえば、中学の先輩後輩と言う仲だ)が、連絡先は交換し合っていなかったのだ
 舌打ちしながら慶次は連絡を取り始め、今現在

「少し離れていてもわかるレベルで、電話の向こうの相手と険悪と言うか罵りあっているように見えるんだが」
「そういや、あいつら、絶望的に仲悪かったわ」
「気づくの遅いよな?」

 かなり機嫌悪そうに電話している慶次の様子を見ての直斗の呟きに、中学校の前で直斗が声をかけた少年………早渡がそうツッコミを入れた
 直斗の表情的に、もしかしたら最初から二人が(彼曰く)絶望的に仲が悪い事をわかっていて、わざと慶次に連絡させたのかもしれない
 が。実際のところどうなのか。それがわかるのは直斗当人だけだ
 そして。直斗当人が楽しげに笑うだけで他の感情を表に出そうとしない以上、直斗以外が知る事はほとんどないのだろう

 一方、彼らによる「三年前」の現場再現に付き合う事になった「繰り返す飛び降り」の少女だが
 直斗が供えた花束を見て、何やらむぅ~。と声を上げる

「直斗君、花選びのセンスない」
「え。なんで?」

 突然、少女に言われてきょとん、とする直斗
 だって、と少女は言葉を続ける

「あれ、全部死者に供えるようなお花じゃないよ。直斗君、咲季と仲良かったじゃない」
「えー、そうかな?」

 少女の言葉に、直斗は納得いっていない様子だった
 彼なりに考えて選んだ花のようなので、率直に「センスない」と言われると若干ショックなのだろうか
 二人の会話の様子に、首を傾げる早渡

「……二人共、知り合い?」
「知り合い、って言うか。名前は知ってるよ。彼ら、有名人だったもの」

 早渡の問いに、先に答えたのは少女の方だ
 有名人、と言うのは確かにその通りだろう
 直斗と言うより、主に目立っていたのは遥とか遥とか遥とかなのだろうが、早渡にはそこまでわからないだろうし伝わらない

「…………東 一葉(あずま いよ)。「三年前」の事件の九人目の犠牲者。咲季さんはあの野郎の能力の影響で飛び降りた訳じゃないから、実質最後の犠牲者と言っていい」

 「繰り返す飛び降り」の少女に関して
 直斗は、このように口にした
 彼女のことを一方的に知っていた、とでも言うように
 直斗から知られていた事が意外だったのか、一葉は「あれ?」と言う表情を浮かべる

「どうして、私の名前を知ってるの?」
「さっき言った通り。「三年前」の事件の犠牲者だからだ。当時、俺達はその事件について調べていたからな。知っているよ。あの野郎が能力を解除して「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」から解放されたら、今度は「繰り返す飛び降り」になったっつー不運さ含めて印象に残ったんだ」
「人をアンラッキーガールみたいに呼ぶのはやめてね?」

 むぅうう、と直斗の言葉にむくれる少女……一葉
 事実だから、と直斗は悪びれた様子もない

 ……本来、直斗の方が年下であったはずだと言うのに、命を落とし、その瞬間で年をとる事ができなくなった一葉の方が年下に見えてしまう、と言う奇妙で、見ようによっては悲しい光景だ

「それよりー!なんで、あんなお花選んだの。もっと無難に、死者に供えるお花あるでしょ。お花屋さんで供える花ですって言えば作ってくれるでしょ」
「そう言われても。マリーゴールドとラベンダーは咲季さんも好きな花だったし」

 一葉の言葉に、直斗はそう答えている
 花を選ぶ基準は、一応存在していたらしい
 その結果が、一葉曰く「死者に供えるにふさわしくない花束」なのだが

「ホオズキは…………咲季さんは、鬼灯さんの事が好きだったんだと思うから」

 ほんの僅か、誰かに対して同情しているような表情で、直斗はそう続けた
 二人の会話に耳を傾けていた早渡は、少し考えて問う

「……お前は。そのサクリさん、って人と、仲良かったのか?」
「んー、まぁ、それなりに仲は良かったつもりだよ。俺より、皆の方が仲良かったと思うけど」
「そうか……どんな人だったんだ?」
「どんな人、か」

 まだ話がまとまってないのか、慶次が電話越しに言い合っている声をバックミュージックに、直斗は答え始める


「優しくて、お人好しで、世話焼きで、おせっかいで、哀れで………」

 答えている表情は、先程までと同じ通りに笑顔だったが



「ーーーーーー愚かだった」

 そう、小さく、小さく
 聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声量でそう口にした、その瞬間
 本当に、瞬間的に………表情と言うものが、完全に消え去っていた


.





 ……納得いかない

「なんで、俺が呼んでも来ねぇのに「直斗が力借りたがってる」で来るんだよ」
「あいつには、まだ借り返してねぇし」

 本当、気に食わない
 こいつ、栗井戸 星夜(くりいど せいや)とはとにかく、反りが合わない
 どうして、こんな餓鬼の力を借りなければいけないのか

「よぉ、悪いな星夜。お前の契約都市伝説の力借りるのが一番手っ取り早いからさ」
「受験生呼び出してんじゃねぇよ、あんたも」

 一方、直斗は気楽な様子で星夜に声をかけて、辛辣な視線を浴びている
 その視線をあびても、けろりとして気にしていない様子だが
 いくら星夜の契約都市伝説が、情報収集向きであって戦闘向きではないとはいえ、ここまで不用心なのはどうかと思う

 とにかく、皆で屋上へと向かう事になった
 屋上には今でも鍵がかかっていないらしく、職員室に鍵を借りる事もなく直斗と星夜の先導に従って歩く

 ……ちらり、とホモ(?)野郎の様子を警戒する
 直斗は完全に不用心にこいつと握手していたが、その瞬間に何かされたらどうする気だったのやら
 「繰り返す飛び降り」相手も同様だ。警戒心が足りなすぎる

 屋上は、どこにでもある学校の屋上……とは、少し違っていた
 それは、恐らく屋上の縁にあるフェンスのせいだ
 屋上全体をぐるりと囲むそのフェンスは、通常、学校の屋上に取り付けられているフェンスと比べて、遥かに高いのだ
 しかも、フェンスの上の部分はまるでネズミ返しか何かのように内側に向けて斜めになっていた
 ……それこそ、「フェンスを乗り越えて飛び降りる」と言うことが、できないように

「私が通ってた頃は、普通のフェンスだったんだけどな」

 その異様なフェンスを見て、一葉がそのように口にした
 彼女もまた、その「普通のフェンス」を飛び越え、この屋上から飛び降りたのだろう

 直斗は、フェンスを少し見て……が、すぐに興味を失ったように視線をそらした

「再現してから説明した方が、多分早いな。星夜、頼めるか?」
「わかった………疲れるんだからな、これ」

 ぶつくさ言いつつも、星夜は集中し始めた
 警戒している様子のホモ(?)野郎を、星夜も警戒してはいるようだったが……ちら、と、こちらを見てきた
 恐らく、「何かあったら、お前がなんとかしろ」と、そういう事なのだろう
 わかっている、と言うように視線を返してやる

「……時期指定、「事件関連」のみ……範囲指定、屋上全体………地上までは範囲に含めないからな。範囲広げりゃ広げるほど、疲れるんだし」

 そのように口にする星夜の左目が、ちか、ちかっ、と輝き始めた
 首元の辺りでくくっている星夜の長い髪が、湧き上がる力の流れによって揺れて
 …星夜の契約都市伝説の能力が、発動する

 刹那、辺りの風景が変わった
 屋上である事に変わりはない
 しかし、屋上のフェンスが、一般的な高さの物へと変化しており、空は正午ごろの青空。屋上のあちらこちらに、生徒の姿が現れる

「これは……」
「「残留思念」。この場所で、かつて起きた事の再現だ」

 そう、星夜の契約都市伝説は「残留思念」……と、そういう事になっている

 厳密には違うのかもしれないが、少なくとも星夜自身は「残留思念」であると認識しているし、契約によって行使できるようになった力からもそうであろうと周囲も認識していた
 その力は、先程口にした通りだ
 起きたことの、再現
 今は、この屋上で起きたことを再現しているのだ
 姿を現した生徒逹も、あくまで「再現」されたものであり、こちらの存在など気にも留めない

 やがて、屋上の扉が開き、一人の少女がすたすたと、フェンスへと向かう
 特に深刻な表情をしている訳でもなく、ごくごく自然に。まるで「ちょっと遊びに行ってくるね」と言うような、そんな様子で
 フェンスに近づいた彼女は、これまた自然にフェンスをよじ登りだした
 あまりにも自然に登りだしたものだから、周囲の生徒も異常さに気づかない
 誰かが気づいた時には、彼女はすでにフェンスを登り終えており

「せぇのっ!」

 と
 まるで、ハードルでも飛び越えるような気軽な声を出して
 そのままあっさり、悲鳴もあげずに、飛び降りた
 辺りの生徒逹が、悲鳴を上げ始め…………まるで、録画された映像の早送りのように、一気に周囲の時間が流れ出す
 星夜が、事件に関係のない部分を飛ばしているのだろう

 空の様子の移り変わりから察するに、最初の飛び降りから二日程たった頃
 誰もいない夕暮れの屋上に、現れたのは男子生徒だった 口笛を吹きながら、気軽な様子でフェンスによじ登り、そして

「よいせ、っと」

 これまた、なんとも気楽な声をだして
 深刻な様子も、暗い様子も何もなく、ごくごく日常的な表情のまま………飛び降りた

 また、早送り
 飛び降りる、飛び降りる
 皆、暗い様子は一切なく、ごく普通に、まるで日常の延長線のように飛び降りていく

 ……ちらり、ホモ(?)野郎の様子を確認する
 仏頂面で、星夜の能力で再現されている現場を見ているようだが、時折、肩がビクッ、と震えているようだった

 再現が、続く
 そのうち、九人目の犠牲者である東 一葉が姿を現し、やはり、彼女も気楽な様子でフェンスをよじ登って、飛び降りた

 ……そうして
 今までとは、雰囲気が、変わる

 屋上に姿を現した十人目の犠牲者は、今までの犠牲者とは違い、決意に満ちた表情だった
 その顔を、資料で見たことがある

(土川 咲季……!)

 「三年前」の事件の犯人の、娘
 彼女は、フェンスをよじ登り、乗り越えて、屋上の縁に立った
 下を見ることはなく、薄暗い空を見上げて、深呼吸をしている

「……私が、やらないと」

 小さく、呟く
 悲痛さはない、決意に満ちていた
 戦うのだ、と、そんな意思に満ちていた

「みんなが、巻き込まれたら大変だもの。みんなが、死んでしまうのは………嫌だもの」

 決意に満ちたその表情で、一歩、踏み出す

「………ごめんね、さよなら」

 飛び降りる瞬間、そう口にして
 その瞬間の表情は、笑顔で

 土川 咲季は、再現されたその光景の中で、飛び降りた



 二人分の足音がする
 一人は土川 羽鶴。土川 咲季の父親にして、「笑う自殺者」と「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」の多重契約者。「三年前」の事件の犯人
 もうひとりは、女だった
 長く伸びた稲穂色の髪に金色の瞳の、色気たっぷりの美しい女
 その姿を見た瞬間に、ざわり、と悪寒を感じる
 本能的に、関わってはいけない相手なのだと理解した

「いいの?娘なんでしょう?」

 女が羽鶴に問う
 羽鶴の背中にしなだれかかりながら、耳元で囁きかけるように
 女の問いかけに、羽鶴はくつくつと笑っていた

「いいさ。どうせ、ここから飛び降りたら取り込めるのだしな。せいぜい、役に立ってもらえばいい」
「酷い人」

 くすくすと。女が笑う
 その笑い顔は、狐を連想させた

「でも、あまり一箇所で続けると面倒な連中に感づかれるわよ。そろそろ、移動しましょう?」
「あぁ、そうだな。誰に気づかれようとも、取り込んでしまうだけだが」

 くつくつ、くすくすと、不快な笑い声が響く
 二人は、重なりあうように歩きながら屋上から姿を消した

 また、辺りの光景が早送りされて
 一瞬
 フェンスの向こうに、何か、巨大な竜の翼のような……


「ーーーーーっ。ここまで」

 ぶつんっ、と
 突然、映像が途切れたような感覚
 辺りの風景が元通りになる
 星夜を見ると、脂汗をかいて荒く呼吸していた
 どの程度の再現でどれだけ体力を消耗するものか把握していなかったのだが、少なくとも今回の再現はかなり疲れたのだろうか

「星夜、大丈夫か?」
「……だりぃ。しかも、推定「狐」だろう女の辺り、ヘタしたらもっていかれそうになった」
「うん、今度何か奢るから勘弁な」

 ぐでっ、とその場に座り込んだ星夜に直斗が苦笑した
 流石に、悪かったと思っているらしい

 さて、と
 直斗はホモ(?)野郎に振り返った

「………さて、どの辺り、主に説明ほしい?聞きたいあたりを重点的に説明するけど」

 と、そのように、問いかけた




to be … ?

っつー訳で、改めて遅くなって申し訳ない。次世代ーズの人へのキラーパス完了です
書いてる最中に
>恐らくですが、再現が終わった後に忽然と姿を消すかもしれません
について、早渡君のことだと思ってたけど「あ、これ一葉ちゃんの事だな?」って気づいたので、一葉ちゃんによる「あててんのよ」式押さえつけはボツとなりました
ついでに早渡君の警戒度も高いのでばっくすたっぷー、も延期です(中止とは言っていない)

とりあえず、直斗は早渡君に聞かれた事は素直に答えるでしょう
寒風吹きすさぶ屋上で話すのが嫌だったら、フォーチュン・ピエロ辺りに移動して会話になるかなぁ、って(慶次の奢りで)

途中送信

Q どうして慶次、早渡君の事ホモ(?)野郎って呼んでるの?
A ヒント:早渡君が直斗と握手したあとの慶次からの早渡君への視線

Q つまり?
A どう見ても俺の焼き土下座案件です。ありがとうございましたorz


花子さんの人、お疲れ様です
やったーっ!! 花子さんの人ありがとうございます!
慶次さんもありがとうございます! 彼は段々苦労人の雰囲気が濃くなってますが

いよいよ東さんと新しく栗井戸くんの登場だな、名前カッコいいな栗井戸くん

しかし早渡もまさかホモ(?)野郎だと思われてるとは思ってもないだろうな
これは完全に悪ノリした自分の責任!



ではまずこちらから先に行きます

 

 深夜、学校町北区

 闇夜の静寂に沈んだこの地区で
 彼らは微かな灯りの中、酒を酌み交わしていた

 幸いなことにこの町には住人のいない廃屋が多い
 彼らが今夜潜伏しているこのプレハブの廃工場もそうだ
 棲み処を持たない彼らにとっては身を潜めるのに好都合だった

「まこと、長閑な町よな」

 独り言のように口にし、酒で満たされた杯を傾ける
 その者は着流しのような和服に身を包んでいるのだが
 袖から覗く腕も、時折小さく揺れる頭も、深紅の包帯に覆われている

 そればかりではない
 その者に酌する者も、その者の近くに座す者達もまた
 肌を隠すかのように紅い包帯で体中を覆っているではないか

 そして、彼の者からやや距離のある場に控える者達は
 白い包帯を体に巻き付けており、その姿は木乃伊を彷彿とさせる
 しかしその白い包帯の者達でさえ上腕には紅い包帯が一巻き結えられていた


 「朱の匪賊」

 彼らは「トンカラトン」のみで構成された都市伝説集団である
 「朱の師団」と自称する彼らは、その年の夏から学校町に潜入していた
 幾多もの有力な勢力がひしめくこの町に危険を冒してでも辿り着かねばならなかった

 全てはある目的の為に


「兄上の遺志を継ぎ、『十六夜の君』を助力せねばならない
 それこそが我々、四番隊の使命だ」


 「十六夜の君」と呼ばれる者がいた
 強力な護衛を伴っているとはいえ、彼女は複数の勢力から狙われていた

 救わねばならなかった

 斯くして「朱の匪賊」三番隊は動いた
 しかし健闘虚しく彼らは壊滅し、死に体の三番隊隊長は
 唯一生き残った部下と共に四番隊の本拠である信濃の山間へ逃げ延びた

 余命僅かという状況の中、彼は告げた

『己に代わり、「あの御方」の配下と合流し、加勢してはくれまいか』

 義兄弟の契りを交わした四番隊隊長は
 三番隊隊長の遺言を引き受けることに決めた

 だが義を誇りとする「朱の匪賊」とはいえ筋は通さねばなるまい
 本来ならば彼らの長「師団長」へと開申しなければならない一件であった

『どうか、団長には内密にしてほしい』

 それは義兄の頼みにより止められることとなった
 義弟も、死に際の懇願に対し深く問うことはしなかった

 四番隊は、唯一生き残った三番隊の者を加え
 義兄の弔いの後、「十六夜の君」の本隊を探し出すこととなった

 彼女は「狐」と呼ばれ、恐れられ、あるいは蔑まれていた
 一刻の猶予も無い、直ちにこの者達を加勢せねばならなかった
 

 

「中之条よ」

 暫しの沈黙の後、着流しの「トンカラトン」が口を開く
 彼こそがこの場に集う「匪賊」、その四番隊の長であった
 姓を「包」、名を「六郎」と謂い、この名は「師団長」より賜ったものだ

「此処へ来てひと月余りになる
 我々は未だに『十六夜の君』に会えぬままだ」

「何分、『あの御方』の敵が多い町です
 恐らく身を潜めているものかと思われます」

 頭を下げ、本心を押し隠しながら中之条は応答する
 彼が三番隊唯一の生き残りであり、四番隊の先導を担っていた

 この町、学校町へ来た理由は
 他ならぬ「あの御方」が此処に居るという情報を掴んだからだ
 そして四番隊もその後を追うように学校町へ入り込んだのである

 しかし
 肝心の「あの御方」の配下とは一向に出会えぬまま
 徒に時間だけが過ぎ行き、今はもう九月になってしまった

「大胆な御方よな、『組織』の塒に潜り込むとは」

「この町で成すべきことがあるのでしょう」

 そう、「あの御方」は一度この町へ立ち入ったと聞いている
 三年程前の話だ、そのとき「あの御方」はこの町から姿を消している

 そして今回
 「あの御方」の手勢は再びこの町に姿を現した

「早くお会いせねばなるまい」

 隊長の言葉に中之条は再び頭を下げる
 そうだ、四番隊は早く「あの御方」に会わねばならない
 彼ら四番隊は我ら三番隊とは異なり「あの御方」の「洗礼」を受けていない

 彼らに状況を訝しまれる前に、「あの御方」の下へ引き入れねば

 中之条の心中にはじっとりとした焦燥が張り付いている
 最大の不安は、自分自身が「十六夜の君」の顔を知らぬことだ
 「あの御方」と御目見えしたとき、中之条は顔を上げることが出来なかった

 恭順の欲と共に畏怖の念を感じたのだ

 この町に残る微かな気配を探っているが成果は挙がらない
 「あの御方」の配下と出会うことが出来れば良いのだが
 中之条は臍を噛む思いで現状の打開を模索していた

 とはいえ、あの御威光を忘れられる筈がない
 あの恍惚は正しく天にも昇るかのような心地だった
 嗚呼、早く「あの御方」とお会いせねば、早く四番隊を引き合わせねば

 中之条の本心を知らず、今宵彼らは酒を酌み交わす
 ところで、と隊長の近くに控えた深紅の「トンカラトン」が話題を変えた

「隊長殿、副隊長と副々隊長の件は如何致しましょう」

「構わん、放っておけ。彼奴輩も餓鬼では無い」

 大方嫁獲りでしょう、別の配下がそう呟き、つられて数体が笑う
 隊長もまた相好を崩し小さく頷いた後、杯の残りを一気に呷った


 

 

「して、皆、忘れてはならぬ」

 傍に控える者から酌を受けながら
 隊長、包六郎は先程より声を張り上げた

「この町には今、『一ツ眼の鬼灯』が居る!」

 酒宴の雰囲気が一気に引き締まる
 闇夜のもたらすよりも深い静寂が場を支配した

「己れとの勝負をあしらい続け、神聖であるべき戦場に唾する不届者よ!!」



 その者は「一ツ眼の鬼灯」と呼ばれていた
 元は人の身であったようだが「人言の物怪」と誓った挙句に「呑まれた」者だ
 彼の者が振るう力の凄まじさは、四番隊の本拠である信濃に於いても聞こえる程であった

 当然の如く四番隊隊長もまた彼に挑んだ
 そして仕掛けた手合を悉く去なされることとなった

 最後に遇ったのは、もう何年も前のことになるか
 とある寂れた町の小さな公園、奇しくも誰彼時の出来事である

 『ぬゥゥっっ!! 「一ツ眼の鬼灯」ィッ!! いざッ尋常にィ勝負ゥゥっっ!!』

 四番隊隊長、包六郎は抜刀し彼の者へ迫った

 そして四番隊の部下がその場へと駆けつけた所、既に「一ツ眼の鬼灯」の姿はなく
 そこにあったのは、公園内で生真面目にも犬の鳴き真似を続ける乱心した隊長の姿であった



「彼奴の力で味わわされた屈辱の味、決して忘れては居らぬッ!!」

 隊長の言葉尻に怒りが滲む
 そう、彼にとって今回この町を訪れたのは
 積りに積もった雪辱を果たすための意味もあるのだ

「今度こそ彼奴と雌雄を決し、その首級を挙げる――ッ!」

「「「応ッッ!!」」」


 隊長の怒号に、配下の「トンカラトン」が応じた
 四番隊隊長、包六郎はこのとき並々ならぬ怒気を放っていた



 彼らは「朱の匪賊」
 「狐」の手勢に加勢する為にやって来た、「トンカラトン」の集団である





□□■


有言実行しました
「朱の匪賊」の学校町訪問動機です

花子さんの人に土下座ですorz
鬼灯さんに土下座な言及をしましたが
日本中も旅して回って、かつては「組織」の討伐対象
でもあったようなので、その筋では有名な筈だとばかりに書きました
不都合があったらお気軽にレスを頂ければと思いますorz

そして「朱の匪賊」が「狐」の配下に合流する切っ掛けを作りました
裏でのやり取りからかなりお待たせして申し訳ありませんorz

「朱の匪賊」側はスタンバイOKです
ここからは花子さんの人の判断に委ねます
果たして「朱の匪賊」は「狐」編決着までに合流できるのか

ちなみにこの部分ですが
>彼の者が振るう力の凄まじさは、四番隊の本拠である信濃に於いても聞こえる程であった
完全に彼らの主観です
鬼灯さんにしてみればお門違いもいい所ですねorz

また副隊長と副々隊長は過去に登場済です
詳しくは以下のリンク先をご覧ください

http://www29.atwiki.jp/legends/pages/5136.html
http://www29.atwiki.jp/legends/pages/5130.html





以下は「朱の匪賊」について

 「朱の匪賊」は結構個体数がいますが
 一箇所に固まるとまずいと判断したのか各地区に分かれて潜伏してます
 東区と北区は特に潜伏個体が多いのではないでしょうか


 彼らは「朱の匪賊」鉄の掟のため
 非契約者を「畜人」と見下していますが襲いはしません
 むしろ「弱い者」と見做して害な都市伝説に襲われてたら守ろうとするかな

 ただし、都市伝説や契約者相手だと話は別です
 積極的に勝負を仕掛けていこうとするので要注意です
 都市伝説相手だと強いかどうかを判断して仕掛けると思います


 ●で囲んだ部分は平時の彼らの方針ですが
 「狐」の手勢に加われば、「狐」の方針に服従すると思います

 ちなみに彼らは日本刀を所持していますが自転車は使うか不明です
 全身真っ赤の包帯の内、数名はバイクを所持しているかもしれません

 「朱の匪賊」のトンカラトンは、真っ赤な包帯で体を巻いているか
 白い包帯の奴も腕に一巻きの真っ赤な包帯を結んでいるので見分けがつきます

 全身真っ赤な包帯の方は、白い包帯の方より格が上です
 撃剣の腕前も全身真っ赤な方が断然上です
 副隊長、副々隊長はまあ強いです
 隊長も強いのですが、鬼灯さん相手だと必ず敗けます
 (書いてて思ったけど、隊長は鬼灯さんに命を取られなかったことを感謝した方がいいような)

 「朱の匪賊」配下のトンカラトンは、「切った相手をトンカラトンに変化させる」能力を無許可では使えません
 鉄の掟でそう定められており、その上、真っ赤な包帯のトンカラトンで無ければ能力を使えないのです
 しかも能力を使っていい相手は、「自分より同格か格上の敵に対してだけ」と決まっています
 強い奴を「トンカラトン」に引き込むことが相対した敵への礼儀である、という感じです

 能力行使の際には、普段使っている日本刀とは別に
 「赤刀」と称する刀身がこれまた赤い刀剣を生成し、敵を斬るか刺すことで発動します
 斬られた相手はトンカラトンとなって、「朱の匪賊」に服従しますが
 それが契約者だった場合、トンカラトンになった後も元の能力を使えます
 この点こそが「朱の匪賊」の個体が持ってる能力の特徴ではないでしょうか

 あと全員ではありませんが遠距離攻撃翌用に入手経路不明な拳銃を持っています
 危ない人たちが密造か密輸して更に怪しげな改造を加えたオハジキではないかな

 彼らが学校町に潜伏する期間は八月から「狐」の問題が解決するまでの間(十一月迄?)です
 モブの敵に悩んだら是非ご利用ください




>>497

× お門違いもいい所
○ 迷惑なことこの上ない

鬼灯さん、すいませんでした……orz

今夜中に間に合うか?

次世代ーズの人乙でしたー
鬼灯の扱い、あれで問題ないですよー
あいつがだいぶ丸くなったのは、ここ二十年くらいですしね
ちなみに、恐らく鬼灯だと「広商連」の闇市とかにも顔出したことありそうです。情報収集とかもかねて
なお、日本全国どころか、日本以外もほいほい移動していた模様。ザン程じゃないにしろ、あいつもフットワーク軽くて神出鬼没です

ついでなので、この書き込み終えたら裏設定スレでちょっとした情報出すね(鬼灯絡めてくれたお礼)

>慶次さんもありがとうございます! 彼は段々苦労人の雰囲気が濃くなってますが
あいつも、どっちかってとツッコミ役だからなぁ……
だが、安心しろよ慶次、星夜もツッコミ属性だからな。ツッコミ属性っつか直球マジレス族とも言うんだが

>これは完全に悪ノリした自分の責任!
実にすまない早渡君

>果たして「朱の匪賊」は「狐」編決着までに合流できるのか
あ、これ最終決戦でいてくれると学校町のあっちこっちで騒動起こせるな、って思ったのでなんとか合流させたいです

>鬼灯さんにしてみればお門違いもいい所ですねorz
鬼灯にしてみればそうだろうなぁw
鬼灯の実力、能力をはっきり知ってる者からすれば「ある意味あってる」って言う者もいるかもですが(実力の評価が人によって大きくわかれる鬼灯/当人は「自分は弱い」の一点張り)

> (書いてて思ったけど、隊長は鬼灯さんに命を取られなかったことを感謝した方がいいような)
鬼灯「生命までとったら後々面倒そうなんだが」
 コレ、生命とらなくても面倒な事になっているのでは(名推理)


>>499
ありがとうございます
裏にも行って参りました
鬼灯さん、あんたは……orz





今夜中に間に合うか不安なので先に宣言します
>>481 >>483で言及した「ピエロ」の件を更新します



「ピエロ」について

期間
・「ピエロ」は【「狐」戦の一ヶ月程前から】学校町に出没を始めます(恐らく作中の十月頃からか)
・「ピエロ」は【「狐」戦終結後の数時間後まで】出没しますが、それ以降学校町から完全に消失します

場所
・「ピエロ」は【学校町全域に】出没します
・「ピエロ」の学校町侵入経路は【不明】です

対象
・「ピエロ」は【人・都市伝説・施設】を襲撃します
 出没序盤の段階ではまだ積極的にではありませんが
 姿を隠しながら【非契約者や非契約都市伝説を集中的に狙って】拉致・暴行します

手法
・「ピエロ」の内、ほとんどの個体は【都市伝説由来の能力を持っていません】が
 【銃器や刃物、鈍器等で武装】しています
 また、終盤段階では【悪戯グッズやオモチャに偽装した爆発物や悪質な凶器を使用する】可能性もあります

目的
・「ピエロ」の目的は【不明】ですが、学校町に【恐怖と混乱をもたらそう】と目論んでいます
・また「狐」戦当日は、一般社会(非契約者の社会)の注意を引くレベルの【テロ行為を実行しよう】とします
 とは言っても、用意周到に計画された物ではなく、完全に行き当たりばったりな物となるでしょう

戦闘
・「ピエロ」各個体は【並の成人男性とほぼ同レベルの身体能力】です
・「ピエロ」にとっては恐怖を与えることが優先事項なので【銃器等の武器はまず見せびらかせてから使用】します
 【爆発物も同様に、まず爆発物の存在を明言した後に使用】するでしょう
 とはいえ、【出没序盤の段階では】警察や「組織」の注意を引くことを避けようとするので
 【銃器や爆発物の使用は控える】かもしれません
・「ピエロ」は相手が契約者や強い都市伝説であることを悟ると
 【芝居がかった言動で慌てふためく演技をする】か【軽口を叩きながら応戦しよう】とします
・捕獲しようとすると【おどけたように自害】します
・討伐の場合も同様に【芝居がかった言動を取りながら死亡・消滅】します
・死に瀕しても軽薄な態度を崩しませんが
 状況によってそれが面白いと「ピエロ」が判断すれば【ふざけた芝居で命乞い】をします




彼らの元ネタとなる都市伝説は「道化師の扮装で子供を拉致・殺害する誘拐団」です
また、彼らのビジュアルの元ネタは、2014年頃からYouTubeを中心に流行している「Killer Clown Prank」です
気になる方はこのキーワードで検索してみてください



彼ら「ピエロ」は「狐」編には直接関わってきませんが
「狐」と完全にタイミングを合わせる形で学校町へとやって来ました

また、彼ら「ピエロ」は「次世代ーズ」本編の問題と直接関わりませんが
次世代編で進行中の問題に関与しています


モブエネミーにお困りの方は是非ご利用ください

昨晩投下したネタで、星夜の外見描写ほとんどなかったわって事実に気づいた俺です。すまねぇ
長い髪を首元辺りでくくってるくらいしか書いてねぇわ!
ついでに、三白眼と言う目つき悪い感じで、身長は「現在成長期なんだろうな」って感じです。中学三年生

>>500
>鬼灯さん、あんたは……orz
人間時の記憶は曖昧ですが、本能的な部分では覚えているでしょうね

そして、「ピエロ」の件了解でーす

花子さんの人、次世代ーズの人、お疲れ様です

>>400
バビロンの大淫婦がついに消えた、か……死亡フラグ組が回収の時ですね
うちはなんかこう、適当にタイミング見計らって救援するために待機のつもり

>>500
うわピエロめんどくさい!非契約者狙う辺りがストレートにめんどくさい!!
そのうえ一般社会の気を引くテロ行為とか組織他の胃痛がマッハじゃないですかー!!
根絶やしにしなきゃ(使命感)


それはそれとしてなんかそれっぽいのようやくできたので投下します
>>437-444の続き、早渡君二回目の訪問時の出来事です。4レスくらいの短いやつですが

世界を赤く染め上げていた夕陽は既に沈み、街を夜の帳が覆う頃
学校町の地理や施設について一通り頭に詰め込まされ
カウンター席に突っ伏す早渡脩寿に篠塚美弥が声をかけた

「早渡君、こんな時間まで滞在してもらって悪いんだけど
 もう少し時間をもらえるかな?聞かせたい話があってね」
「あ、はい。それは構いませんけど……」
「高奈さんもいいかな?」
「はい。大丈夫です」

ガバッと顔をあげて答えつつ何の話かと身構えた早渡とドリンクを飲む高奈の前で
美弥は店内を見渡すと、瑞希と厨房にいた女の子を呼んで指示を出す

「瑞希、ちょっと表のを裏返してくれ。文は防音頼む」

美弥の言葉に頷いた瑞希は入口の看板をいつもより早く[CLOSED]に変える
女の子……篠塚文は美弥と同じように客の少なくなった店内を見渡して

「……大丈夫そうですね。わかりました」

と言ったかと思うと小さく右手を動かした

「んっ!? なんですかこれ?」

薄く光る膜のようなものが囲み早渡が驚きと困惑の声をあげる

アクマの人乙ですー
情報譲渡は今の学校町では非情に大事なのだ
そうだよ、情報譲渡って普通にこんな感じでやるもんだよ。直斗、後で正座な

>>502
>根絶やしにしなきゃ(使命感)
暴れた時に備えて、召喚系で多数召喚できる系(天地とか、ちょっと違うがカイザー、メルセデス等)がアップを開始すべきな気はちょっとしている

うんまあ、美弥が最後になんか言ってましたが
これは彼が将門様がこの件をどう思っているのか、まったく知らないからです
親交があったことは重々承知しているだけになおのことって感じですね

それは置いといて早渡君にはそろそろ美弥達の正体に気づいてもらおう
ちなみに「上にもう一度呼んで話せばよかったのでは?」と思うかもしれない
ぶっちゃけ私も一瞬そう思ったがその、時間帯を考えるとたぶん上階で結が"アレ"してるので
邪魔になりそうなことはしない親心ってやつでしょう。たぶん


>>507
多数を同時に相手できる人たちには頑張ってもらいたいですね
うちで多数召喚ってなると相生母のレミング召喚だから戦闘力が……
澄音「斥候とか見張りでなら使えるけどなー」
森羅「万能な能力なんてそれこそひと握りだから仕方ないよ」
そういえば夢の国の頃、燃えるカラスなんてのも出したけど今どうしてるんだろう(首捻り)

>>508
>これは彼が将門様がこの件をどう思っているのか、まったく知らないからです
>親交があったことは重々承知しているだけになおのことって感じですね
(とっくに知っててわりとガチ怒案件だからなぁ…)

>多数を同時に相手できる人たちには頑張ってもらいたいですね
なお、一つ、悲しいお知らせがあります
「狐」サイドのこっちが出してる中で一人、多数同時召喚型がいる

さて今夜はそろそろおやすみなさい
次に書くのは戦技披露会の休憩室か、死亡フラグ組の救援かなぁ……

>>509
>(とっくに知っててわりとガチ怒案件だからなぁ…)
悲しいことにあながち的外れな忠告じゃない模様
戦技披露会終了後に将門様に盟主の話題振ったら露骨に機嫌悪くしそうですし……
まあ流石に公以外の首塚メンバーなら、うっかり振っても過剰反応することはないだろうけども

>「狐」サイドのこっちが出してる中で一人、多数同時召喚型がいる
過労注意報と栄養剤出しときますね(目逸らし)

>>510
おやすみー

そして、気づいたの
こちらで出した星夜、中学三年生なのでもしかしたらちらっと見たことあるかも……?(教師に対しても直球マジレスしまくる奴なので、ある意味有名です)

>戦技披露会終了後に将門様に盟主の話題振ったら露骨に機嫌悪くしそうですし……
まざ、機嫌悪くしそうです
多分、披露会終了後も顔出さないんじゃないかな……戦技披露会だって、知り合いの祟り神に見学任せてるんだし

ちなみに、将門様に盟主様の様子伝えたのは大樹です
あとで胃薬でもあげて

>過労注意報と栄養剤出しときますね(目逸らし)
こ、こっちで出すのは本体ぶっ倒せば一斉に消えますし(精一杯のフォロー)


アクマの人お疲れ様です
そしてありがとうございます!
早渡の挙動不審ぷりが目に見えるようだぜ……
美弥さんに振られたのだから早渡が何を話すかですが

早渡「質問よりも、理解するのに精一杯で……」

篠塚さん都市伝説化の話と盟主さまの件で早渡の動揺はキャパをこえてる! はず!

ここは自分が書くパートなのですが
まず「奇行の件で墓守さんに謝りたい」と伝えますね
首塚訪問も「今の所」予定はないと答えます(つまり今後行くし、早渡は首塚を畏怖してる)
仮に行くとしても盟主さまのことは話しませんとお約束もします
その後、神社での道すがら先輩に話した内容をそのまま美弥さんに話すかもしれないが……美弥さん、よろしいでしょうか?


>>501
ありがとうございます
早渡から直斗くんへの質問は作中でまとめて出します!
>>491でご指摘のいよっち先輩が姿を消す件は分かりづらい説明ですいませんでしたorz
この時点でいよっち先輩は姿を消してるかな?
一応直斗くんには早渡といよっち先輩の連絡先を伝えられる準備をしておこう
この点についても何かあればお気軽にレス頂けたらと思います

ちなみに「朱の匪賊」は北区を中心に「狐」勢力の皆さんを捜していますね


>>502
「ピエロ」はいやらしいことをします
具体的にはガソリンスタンドをばくはつさせたりします
人はころさずにこうそくして一カ所にあつめるのですが……
がんばってわるい「ぴえろ」をやっつけよう

>>512
>この時点でいよっち先輩は姿を消してるかな?
姿消しちゃってるかどうかは、次世代ーズの人様におまかせするですよ

>一応直斗くんには早渡といよっち先輩の連絡先を伝えられる準備をしておこう
やったー、連絡先ゲットだ
直斗が「友だちになろう」って言う表情してるよ

>ちなみに「朱の匪賊」は北区を中心に「狐」勢力の皆さんを捜していますね
……ごめんな、「朱の匪賊」のみんな!(北区あんまりいかない「狐」勢力)

>がんばってわるい「ぴえろ」をやっつけよう
聞いてアロエリーナ
…「狐」の最終決戦時、こちらのキャラの召喚した幽霊武者逹が学校町中で暴れまわる予定でしてね
けれど、何故でしょうね。速攻でそれらに対処しはじめる連中がいます
えぇ、「絶対、何か起きるな」って準備整えていたかのように、いつ、何が起きてもすぐに戦えるように準備してた連中がいます

つまるところ、他に暴れるのがでてきてもまとめて対処します

>>511
>こちらで出した星夜、中学三年生なのでもしかしたらちらっと見たことあるかも……?
そういえば……黒さん含めて中学生組でレッツパーリィしなきゃ(なお面子の濃さ)

>ちなみに、将門様に盟主様の様子伝えたのは大樹です
残当。今度の胃薬は漢方を試しましょうねー

>こ、こっちで出すのは本体ぶっ倒せば一斉に消えますし(精一杯のフォロー)
本体が一番強くて取り巻きから倒さなきゃいけないパターンはわりとよくあるわけですが(真顔)

>>512
早渡君が相槌打つマシーンになっていたのは動揺後の挙動不審であって
決して私が喋らせることを面倒がって意図的に台詞を減らしたわけではない(目逸らし)

>篠塚さん都市伝説化の話と盟主さまの件で早渡の動揺はキャパをこえてる!
後半はともかく前半はヒーローズカフェ内での警戒・索敵を怠ったのが悪い
そんなことでは20年前の学校町では生きていけなかったぞ!(高校生に嘘と無茶を平然と言う外道)

>まず「奇行の件で墓守さんに謝りたい」と伝えますね
それなら時間が許す場合、墓地に連れていって取り次ごうとしますかねー
美弥が変身して、早渡君をザクロ(犬形態)にでも乗せてピョーンピョーンと夜の街を移動
……しようと外に出る辺りで一旦ゴルディアン・ノットとバッタリかな(二階で着替えてた)
そして4名で墓場に行く。残る謎は真理ちゃんと夜先輩の帰宅タイミングくらい

>その後、神社での道すがら先輩に話した内容をそのまま美弥さんに話すかもしれないが……美弥さん、よろしいでしょうか?
えーと、早渡君が暗黒メガコーポの謀略で組織に初恋の人を使い潰された話のことかな?
話すのは別に構いませんよ。でも美弥の反応かあ……
関連報道は知ってるし組織ならやりそうだな、くらいにしかならなそう


というか美弥達は学校町の一般的な都市伝説契約者っぽい存在だから
戦闘力はあっても組織や首塚みたいな情報網みたいなのはないのですぞ
その辺の契約者から情報が流れてくることはあるだろうけどそのくらいです!

皆さん乙です
次世代組が面白いことになってきてる
しかもネックおばさんが6年振りに復活したらしいので飛んできた
これは投書しないとな

P.N.花子の友達の友達
「都市伝説経験の豊富なネックお姉さんに相談です
私は外見が小学生の女子(怪談)で好きな人がいます
それは人間の小学生の男の子なのですがある時私の好敵手の花子(仮名)もその子を狙ってると知りました
そのうえ外見が中学生で私より胸が大きいテケさん(仮名)もその子を狙っているそうなのです
しかも素性を隠して近づくっていう汚い手を使った花子が男の子と仲良くなったみたいなのです
私も男の子とは仲がいい自信はありますがこのままだと花子かテケさんに取られてしまいます!
私は男の子とちょっとエッチな大人の契約行為をしたいのですがどうすればいいのかアドバイスをお願いします!」

P.N.お年寄りは大切にしろ
「次世代に入ってから全く触れられてないのじゃが
怪奇同盟に在籍してた「富士の樹海は方位磁針が使えない」の爺さんは健在かのう
元気じゃといいんじゃがのう…くわばらくわばら」

P.N.やまだたろう7さい
「次世代で夫婦になった人達全員に質問です
プロポーズの台詞とその答えはどういうものだったんですか
あとお嫁さんオアご主人のいいところを制限時間以内にのろけてください」

P.N.男子の金玉潰したい
「沢渡君はホモ疑惑が浮上してますが結局男と女のどっちが好きなんですか?
そろそろもげますか?」




「あれが、人の心を保ったまま飲み込まれた事が、幸であるのか不幸であるのかは、我にはわからん」

「ただ、あれは今でも愛されているのだろうし、あれもまた忘れてしまってはいるが根底では愛しているままなのだろうな」



.

「とうとうたらり たらりら」

 「一ツ眼の鬼灯」等と、一部では呼ばれる男が、再び学校町へと姿を現す前

「たらりあがり ららりとう」

 「狐」の情報を追いかけ、追いかけ、日本どころか世界中を回っていた頃の事

「ちりやたらり たらりら」

 かつて人間であったが、今は人ではなくなったこの男は

「たらりあがり ららりとう」

 ただ、「狐」を追い続けていただけではなく
 時として、騒動も起こしてしまっていたのだが


 果たして、当人はそれをどの程度まで、覚えているのだろうか

 その街で一番大きな桜の木
 公園のど真ん中のそこに、鬼灯はいた
 三味線を傍らにおいたまま、桜の木の根本辺りをゆっくりと歩き回りながら、静かに何やら口遊む

「とうとうたらり たらりら」

 意識して口にしている訳ではないらしい
 目を閉じて手にした煙管タバコからゆらゆらと煙を登らせながら、思考を泳がせ口遊む

「たらりあがり ららりとう」

 誰に聞かせる訳でもないそれが、静かに風に流される
 それは流され、ただ消える

「ちりやたらり たらりら ………」
「変なお歌ー」

 消える、はずだった
 かけられた声に、鬼灯は閉じていたまぶたを開いた
 いつの間にやってきたのだろうか、小さな男の子がそこにいた
 何やら、チラシのような物を持った男の子は、鬼灯をじっと見上げていた

「おじさん、お顔けがしてるよ?おめめ、痛くないの?」
「あ?……あぁ。こりゃ古い傷だ。今はもう、痛くねぇさ」

 右目の傷を指摘され、鬼灯は笑った
 まだ「人間」だった頃の傷。傷跡こそ残っているが、今は痛みなどない
 何故、このような傷を負ってしまったのか忘れてしまう程に、遠い遠い昔に負った傷なのだから

 だからこそ、鬼灯は己の顔の傷等より、気になるものがあった

「で?坊主。お前さんは、その傷、痛くないのか?」
「え?えっと……」

 そう
 その男の子は、怪我をしていた
 長袖の服を着ているせいでわかりにくいが、服の下のあちらこちらに傷があるのだ
 それは、まるで

(……虐待か)

 煙管タバコを持つ指先に、ほんの僅か、力がこもる
 何かが、燻るような感覚

「えっと、えっとね………い、痛くないよ、大丈夫!」

 鬼灯に問われた男の子は、笑った答える
 その笑顔が、必死に作り出したものであろう事は容易に想像できた



 ーーーーーーピシッ

.


「…?」

 何か聞こえたのだろうか
 男の子は、きょろきょろと辺りを見回して首を傾げた
 鬼灯は、そんな男の子をじっと見下ろし

 ……何かの気配に気づいたのか、空を見上げた
 そうして、舌打ちする

「………坊主、「呼ばれた」な?」
「え?」
「あー、迂闊だった。もっと早く気づくべきだったな。こんな時間に、坊主みてぇなのが外に一人でいる事自体が異常なんだ」

 空は、雲ひとつなく……ぽっかりと、月が浮かんでいた
 そう、今の時刻は夜
 こんな小さな子供が出歩く時刻などでは、ない

(虐待している親だったら、夜中に子供を放り出した、という可能性もあったが……)

 違う
 この子は「呼ばれた」のだ
 感じるその気配に気づき、鬼灯の表情が険しくなる



 ーーーーーービキッ

.

「あれ、また……」

 男の子は、聞こえた音に首を傾げる
 それが何の音であるのか、男の子にはわからなかった
 何かにヒビが入った音に似ている、が、違う

 「呼ばれた」な、と、鬼灯に言われたその理由を、男の子は薄ぼんやりと理解していた
 夕暮れ頃、親に家から叩き出されて、けれど外で泣いていた事が親にバレるととても痛い事をされる為、泣くのをこらえていた時

 声をかけられたのだ
 賑やかな、賑やかな音楽と共に

『君もおいでよ!』

 渡されたのは、サーカスのチラシ
 渡してきたのは、優しそうなピエロだった

『楽しい楽しい、夜のサーカスに君もおいでよ!』

 行きたい、と思った
 でも、行くことはできないだろうな、とも思った
 きっと、おかあさんと、おかあさんの「おとこ」は許してくれないから

 けれど、自分は夜になって、家から出た
 夜中に、勝手に外に出ようとすると見つかって、痛い事をされるはずだったのに、不思議と見つかる事もなく
 チラシを手に、サーカスへと行こうとして

『とうとうたらり たらりら』

 聞こえてきた声に、足が止まって
 桜の木の下に居たその男に、近づいて……

「……坊主、下がってろ」

 ゆらり、と
 鬼灯の体が揺れる
 現れたそれらを、鬼灯はまっすぐに睨みつけていた

 それは、サーカス
 サーカスのテントと、サーカスの団員逹が、そこにいた
 先程まで確かにいなかったはずだと言うのに、それはそこに現れていたのだ

「「サーカスが子供をさらう」。あぁ、サーカスに売られる、って話の別パターンだな。また現れ始めたか。あぁ、鬱陶しい」

 苛立ちを含んだ声で、鬼灯はサーカス達を睨みつける
 男の子は……怯えていた
 夕暮れ時、チラシを渡してくれた優しそうなピエロ
 それは、今、男の子の事を獲物を見るような目で見ていた

「何、あれ……」
「都市伝説。それも、子供をさらって自分の一部にするような奴だ。そうして、取り込めば取り込む程に力を増す。いつぞやの「夢の国」を思い出す」

 空気が震える
 男の子は、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった

 けれど、足が動かない
 まるで、地面に吸い付いてしまったかのように、動くことができない
 ピエロ逹サーカス団を「恐ろしい」と感じながら、目をそらすことができない

 不気味に笑うピエロ
 ぐにゃぐにゃと、タコのように柔らかな体を持つ男
 ナイフをジャグリングする少年
 玉乗りする愛らしい犬
 ライオンを引き連れた妖艶な美女

 みんな、みんな
 男の子を、獲物を狙う目で、見つめる

「坊主、あのサーカスに行きたいか?」

 鬼灯の、その問いに

「……や、だっ、嫌だ……!」

 声を絞り出し、男の子は答えた
 嫌だ。嫌だ
 あんなモノのところには、行きたくない

 家に帰るのも嫌だけれど、あれについていくのも、絶対に嫌だった

 男の子の言葉に、鬼灯はほんの少しだけ、ほっとしたように笑った

「あぁ、それでいい……さぁて、坊主は嫌がっている。それでも、連れていくのか?」

 鬼灯が、今度はサーカス団に問うた
 その問に、サーカス団は言葉では答えない
 ただ、声ならぬ声を発しながら、殺意をのせて鬼灯と男の子へと迫った



 ーーーーッミシ、ミシ、ミシ


.

「あぁ、そうかい、そうだろうな。獲物を逃がすわけがねぇよなぁ、てめぇらは」

 バキッ、と
 鬼灯は手にしていた煙管タバコをへし折る

「あぁ、そうか、そうか………お前も「同じ」か、連中と同じか……………お前も奪うのか、あいつらのように奪うのか」



 ーーーービシッ、ピキッ、ミシミシ……ッ


.

 先程から聞こえていた、音が
 鬼灯から聞こえてきていた音なのだと、男の子はようやく気づいた

「……どうせ、また「見ている」だろっ!その坊主、連れて行け!」
「………仕方ないなぁ。君が連れていけばいいじゃないか」

 ぽんっ、と
 誰かに肩を叩かれて、びくり、男の子は体をはねらせた
 男の子の背後に、いつの間にか姿を現していたのは、女の人のようだった
 顔は……見えない
 ぼんやりとしていて、よくわからない

「私に任せても、「首塚」へと預けるくらいしかできないんだよ。現状、一番安全なのはあそこだから………と、言っても」

 女の人は、はぁ、とため息を付いて
 きゅ、と、優しく、男の子の手を握った

「行こう。頼まれたからには、君を連れていかないとね。安全な場所へ」
「え、ぁ、で、も……」
「彼なら心配いらないよ。あぁして、「プッツン」したら、そう簡単には止められないから」

 サーカス団員逹が、あと、一歩という所まで、鬼灯へと迫る
 女の人は、その様子から視線をそらし、男の子の手を引いて歩き出す
 手を引かれると、先程まで動かなくなっていた足はいつの間にか動き出して
 何も見えない、暗い先へと手を引かれていく

「「狐」絡みで苛立っていたところに、彼の大嫌いな要素がてんこ盛りできたんだ。そりゃあプッツンするだろうよ。と、言うか、君のその状態を見て、よく、即座にプッツンしなかった。ちょっとは昔よりマシになったかな」
「え、えぇと……」

 わけがわからなかった
 男の子は、この状況を何一つ、理解できなかった

 辛うじて、薄ぼんやりとわかるのは
 女の人に、自分は助けられようとしている事

「おねえさんは、誰……?」
「私かい?…名前はないんだよ。鬼灯は、彼女らとは違って私には名前をくれなくてね。だから、私はただの「神隠し」でしかないんだよ」

 すまないね、と女の人は苦笑する
 女の人と共に、先の見えない暗闇へと足を踏み入れていると……背後から、轟音が鳴り響いた
 そして、絶叫のような……悲鳴のような、声

「振り向いてはいけないよ」

 女の人は、男の子に優しく言う

「あぁなった鬼灯は、鬼灯であって、鬼灯ではないのだろうからね」

 言葉の意味はわからなかった
 ただ、振り向いたらいけないのだと、そう言われて言うとおりにして
 男の子は、そのまま暗闇の向こう側へと……………神隠しされた









 翌朝、一人の男の子が行方不明となり、その母親が児童虐待の罪にて逮捕された
 匿名の通報があったらしい
 男の子は、結局行方はわからぬままだった

 そして、もう一つ
 公園に、巨大な………地面から、何かを引っこ抜いたような痕が残っていたらしいが
 その事実は、いつの間にか誰の記憶からも、忘れ去られていたという



「あれは、「通り悪魔」なんぞと契約した癖に、何と言おうか……あぁ、いや、だからこそ、「通り悪魔」とも契約したのだろう。相性も良いのだろうよ」

「恐らく、あれには善や悪といった括りなど意味あるまい」

「だからこそ、我らに親しい存在へもなれたのだろうだから






to be … ?



花子さんの人、お疲れ様です
鬼灯さんこれめっちゃ強いですよね
公園の木ごとぶっこ抜いたのか、鬼灯さん
これならきっと「ピエロ」相手でもやってくれる!


>>514
>そういえば……黒さん含めて中学生組でレッツパーリィしなきゃ(なお面子の濃さ)

そういえば以前登場したサスガ君は確か西区の中学だった記憶があるが
果たして彼は中学生組に混ざれるのだろうか(現在中学三年生)


>>517
>「沢渡君はホモ疑惑が浮上してますが結局男と女のどっちが好きなんですか?

早渡「待って、これ俺関係ないよね!? 早渡じゃなくて沢渡だし!!」
しかしながら推定読みサワタリで、且つ現在ホモ疑惑が浮上しているのって
知り得る限り一人しか思い当たらないんですが……
早渡「でもこれ『ラジオde都市伝説』振りだし! 俺関係ないし!」
ここは大人しくアクマの人の反応を待とう……


>>533
>公園の木ごとぶっこ抜いたのか、鬼灯さん
あ、ごめん、これ違うの
公園の木は無事です。そのまんまです

ただ、何か巨大なものを引っこ抜いたあとがわりと傍にあっただけです

>果たして彼は中学生組に混ざれるのだろうか(現在中学三年生)
星夜が中学三年生だぜ(混ざれるかどうかは別)

>早渡「待って、これ俺関係ないよね!? 早渡じゃなくて沢渡だし!!」
(優しく見守る)



>>534
>公園の木は無事です。そのまんまです
えっ

>ただ、何か巨大なものを引っこ抜いたあとがわりと傍にあっただけです
やだ、こわい……!


ところで一つ、悲しいお知らせがある
鬼灯の目の傷左右間違えてた(顔を覆う)(wiki掲載時に修正します)

>>535
>えっ
桜の木は無傷です

>やだ、こわい……!
一番の問題点は、鬼灯がその大暴れしたであろう最中の記憶ないし前後の記憶も曖昧って事でしょうか


●次世代ーズ

 これまでのお話は次のようになっています

 >>383-384 花子さんの人
 >>403-406 次世代ーズ
 >>425-426 花子さんの人
 >>452-458 次世代ーズ
 >>486-490 花子さんの人

 wikiはhttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/5139.htmlにまとめられています



●何となく理解できるあらすじ
 彼、早渡脩寿は学校町南区に通う高校一年生です
 この四月に学校町へ引っ越してきました
 九月に入ってから「次世代ーズ」本編が始まりました
 これまでに美人な先輩と友達になり、すごく美人な店員さんと出会い
 組織の変な奴に追い回され、同じ施設出身の女の子と再会しています

○お遣い編
 先輩(高奈夜)に北区神社に誘われたことが切っ掛けで
 早渡は以前から養親に頼まれていた「怪奇同盟」盟主様への挨拶を遂行します
 盟主様には会えませんでしたが、「怪奇同盟」の一員である篠塚さん夫妻に会い
 盟主様への贈り物を預かってもらうことになりました
 その後、篠塚美弥さんから現在盟主様が所在不明になったこと
 そして、盟主様が契約者を襲いだした、という話が語られました

○「狐」編 ☜ 今回はこちら
 お遣いから数日経った放課後
 早渡は以前、組織の変な奴に追い回された東区最大の中学校に来ていました
 そこで出会ったのは「狐」について知っているという少年と「組織」所属の青年でした
 早渡は警戒しながらも少年の話に乗ります
 そして三年前の中学で起きた事件の「再現」に付き合うことになります



●三行あらすじ
 花束野郎の提案に乗った
 今から三年前の事件の「再現」を見る
 頭から血を流した「繰り返す飛び降り」の女の子も一緒


 


 色々あって三年前の事件の「再現」を見ることになった
 見ることになってしまった、と取るべきか
 とにかくだ

 ワイルド野郎が携帯越しの相手と剣呑なやり取りを繰り広げている
 どうやら「再現」する契約者がこの中学に在籍しているらしく
 その子を呼び出している、らしい
 らしいのだが

「電話の向こうの相手と険悪と言うか罵りあっているように見えるんだが」
「そういや、あいつら絶望的に仲悪かったわ」

 俺が思わず率直な感想を口にしたのに対し
 花束野郎は楽しげに笑いながら応じた

 花束野郎は「再現」の契約者の連絡先を知らなかったというが
 この顔を見てると、わざとワイルド野郎に連絡を入れさせたような気がしてならない


 なんて野郎だ


「直斗君、花選びのセンスない」

 今や露骨な罵倒と化したワイルド野郎のやり取りを背景に
 「繰り返す飛び降り」の女の子が唐突に喋り出した

「あれ、全部死者に供えるようなお花じゃないよ。直斗君、咲李と仲良かったじゃない」
「えー、そうかな?」

 女の子のどこか非難めいた口振りに花束野郎は首を傾げている
 そうか、あんた直斗って言うのか。覚えたからな

 にしても、どことなく違和感を覚える

 花束野郎もこの中学出身のようだし女の子もそうなんだろうが
 何というか二人とも普通に会話しているこの状況に違和を感じる

 二人は顔見知りかもしれないが
 一応訊いてみるか

「知り合い、って言うか。名前は知ってるよ。彼ら、有名人だったもの」

 先に答えたのは女の子の方だ
 有名人ね、確かにこの花束野郎には得体のしれない大物感がある

「東一葉(あずま いよ)。『三年前』の事件の九人目の犠牲者
 咲李さんはあの野郎の能力の影響で飛び降りた訳じゃないから、実質最後の犠牲者と言っていい」

 花束野郎が続けてきた
 なるほど、女の子は東ちゃんと言うらしい
 俺より年下に見えるが実際の彼女は年上かもしれない

「どうして、わたしの名前を知ってるの?」

 東ちゃんが野郎にそう尋ねる

「さっき言った通り。『三年前』の事件の犠牲者だからだ
 当時、俺達はその事件について調べていたからな。知っているよ
 あの野郎が能力を解除して『富士の樹海の自殺者の幽霊が人間を引き込んで自殺させる』から解放されたら
 今度は『繰り返す飛び降り』になったっつー不運さ含めて印象に残ったんだ」

「人をアンラッキーガールみたいに呼ぶのはやめてね?」


 

 

 何というか
 花束野郎って重要な情報をさらりと出してきやがる
 やっぱこいつは怪しい、そして信用できない。要警戒だな

 しかし野郎の話が確かなら、三年前の事件に「狐」が直接関わったわけでは無いらしい
 東ちゃん含め、被害者達は「樹海に引き込む自殺者」の契約者によって犠牲になったようだ

 なら「狐」は? 事件の裏で糸を引いてたのか

「それよりー! なんで、あんなお花選んだの?
 もっと無難に、死者に供えるお花あるでしょ
 お花屋さんで供える花ですって言えば作ってくれるでしょ」

「そう言われても
 マリーゴールドとラベンダーは咲李さんも好きな花だったし」

 半ば思考に意識を引っ張られながら二人の会話を耳にする
 サクリさん? その名前、さっきも聞いたな

「ホオズキは……
 咲李さんは、鬼灯さんの事が好きだったんだと思うから」

 サクリさんに、ホオズキさん?
 ホオズキさんって、まさか、あの「鬼灯」さんだろうか

 いや、まさかな

 それより、サクリさんというのは事件関係者なのか
 花束野郎はそのサクリさんと仲が良かったんだろうか

「んー、まぁ、それなりに仲は良かったつもりだよ。俺より、皆の方が仲良かったと思うけど」

 澄ました表情で野郎は答えた
 サクリさんってどんな人だったんだろうな

「どんな人、か」

 ワイルド野郎の罵倒合戦を聞き流しながら
 俺は、質問に答える花束野郎の表情を見ていた



「優しくて、お人好しで、世話焼きで、おせっかいで、哀れで、―――――― 愚かだった」



 一瞬だけ

 野郎の「何か」が澱んだ

















 

 

 ややあって、「再現」を担当する契約者がやって来た

「なんで俺が呼んでも来ねぇのに『直斗が力借りたがってる』で来るんだよ」
「あいつには、まだ借り返してねぇし」

 ワイルド野郎は非常に不機嫌そうだ
 この場に現れた件の契約者も野郎を睨みつけている

 長い髪の少年だ、三白眼の凶相でこっちに一瞥をくれた

 率直な感想を言おう
 この子怖い。それに尽きる

 彼が花束野郎と言い合ってるのを聞きながらそっと東ちゃんの方を窺った

 こっちを見てた
 彼女は黙ってVサインを突き付けてきた












 全員揃って校舎の屋上へ向かう

「わたしが通ってた頃は普通のフェンスだったんだけどな」

 東ちゃんはフェンスの方を眺めている

 屋上を囲うように張り巡らされたフェンスは内側に向かって返しが付いていた
 なるほど、事件の後に再発防止、つまり飛び降りを防ぐ為に設置されたわけだ


「再現してから説明した方が多分早いな。星夜、頼めるか?」
「わかった……疲れるんだからな、これ」


 花束野郎に文句を垂れつつ「再現」担当の少年は集中を始める
 いよいよ始まるわけだ

 ワイルド野郎の方を横目で窺うとこっちを露骨に警戒していた
 「再現」担当の方も先程から俺を警戒しているようだ

 流石「組織」の所属契約者だ

 ただね
 なんでこう露骨に警戒感を、しかも俺に向けるかな
 警戒するならもっとこう、ばれないようにさり気なくやるだろ

 心中で溜息を吐いていると“波の先触れ”が周囲の空間に走り始めた
 「再現」担当の子が能力を発動するらしい、いよいよ始まるのか


 唐突に景色が変わった


 これが再現映像か
 フェンスの丈が低くなっており
 空も夕方から青空に変化している
 太陽の位置からして正午頃だろうか
 

 

「『残留思念』。この場所で、かつて起きた事の再現だ」

 それが「再現」担当の子の能力らしい
 本当だろうか? “波”から推測するにこれは事象改変系に近い気もするが
 だがそんなことを気にしている暇は無い

 再現された風景の中を中学の生徒達が歩き回る
 やがて、一人の少女がフェンスへと向かっていった
 顔色も表情も普通、その子は自然にフェンスをよじ登り、これを越えた

「せえのっ!」

 そしてそのまま、それも自然な所作で、飛び降りた
 再現された映像内のニオイまでを判別できる程の力は、俺には無い
 しかしこれが能力の影響によるものだというのは分かる

 不意に早送りのように再現映像が進み出した
 次に再生されたのは、夕暮れの屋上から飛び降りる男子の姿だ
 これも表情は先程の女の子と同様に普通、ごく自然にフェンスの向こうへ落ちていった

 あ、待て
 これはちょっとやばくないか

 この調子で犠牲者全員の飛び降りが再生されていくなら
 当然東ちゃんの場面を見せられることになるわけで
 いや、さっきの時点でそれは分かっていたが

 これはまずい気がする

 東ちゃんの方を窺う
 彼女は俺より少し前に立っている為、その表情は分からない

 まずいよな

 悟られないようにじりじりと彼女の傍へ近づいていく
 東ちゃんの後姿は、どことなく虚ろに見えた
 そのことがどうしようもなくやばく感じた

 そして
 今や彼女の横顔が見える位置まで近寄れたとき

 再現映像の中に東ちゃんが現れた

 他の野郎共の方へ視線を走らせる
 まあそうだろう、どいつも涼し気な表情で再現を眺めている

 そして
 再現の中の東ちゃんがフェンスの向こう側へ消えた瞬間

 俺は本物の東ちゃんの方に目を向けた

 目が、合う
 彼女は、俺を見ている

 東ちゃんの目には光が無かった
 ただ、その顔は今にも泣きそうに歪んでいた

 不意に東ちゃんは人差し指をある一点へと向けた

 まるで、俺に何かを伝えるかのように

 彼女は声に出さなかったが、その唇は何かを伝えようとしていた

               さ く り

 その言葉の意味を理解したとき、俺は彼女の指し示す方を見た
 

 
 彼女が居た

 この人がサクリさんか

 サクリさんの表情はどこか決意に満ちていた

 彼女もまた、先程の子達のようにフェンスへ向かっていった

「私が、やらないと」

 それは小さな呟きだった

 だが、その声ははっきりと聞こえた

「みんなが、死んでしまうのは……嫌だもの」

 確かにそう聞こえた

 こっちの位置からはサクリさんの顔は窺えない

「ごめんね、さよなら」

 だが、彼女が飛び降りる瞬間

 サクリさんは笑っていた。確かに、そう感じた





 そして

 何者かが屋上へ現れた
 三年前の事件については知っていることがある
 情報が確かなら、教師が生徒を屋上から突き落とし
 そして犠牲者の中には、教師の実の娘が含まれていたと

 二人組の内、一人は恐らく、その教師だ
 そして「樹海に引き込む自殺者」の契約者だろう

「いいの? 娘なんでしょう?」

 教師の背に寄り添うように、もう一人が彼に話し掛けた


 よお、「久しぶり」だな
 それとも「はじめまして」になるか?


「いいさ。どうせここから飛び降りたら取り込めるのだしな。せいぜい役に立ってもらえばいい」
「酷い人」

 二人組のもう一方、その女が嗤う
 教師と女の囁き合いはまるで恋人同士のようだ

「でもあまり一箇所で続けると面倒な連中に感づかれるわよ。そろそろ移動しましょう?」
「ああそうだな。誰に気づかれようとも取り込んでしまうだけだが」

 二人は重なるようにして屋上から立ち去った

 その直後、再現の景色が加速する

 そして

 再現が終了する直前

 一瞬だけ、それが映し出された

 フェンスの向こう側に、巨大な竜の翼

 解説は不要だ、その主は強力な殺意を放っていた

 そして、凄まじい怒りを孕んでいた



 なるほど、ね
 

 

「ここまで」

 完全に再現が終了した
 周囲の景色が、再現以前のものへと戻る
 「再現」担当の少年は荒い呼吸を繰り返しており
 花束野郎が声を掛けている

 大丈夫なのか?

 俺も「再現」担当の方を見ているとその少年と目が合った
 「気遣いは無用だ」と言いたげだが、凄い目で俺を睨んでくる

 大丈夫なんだろう、きっと



 俺は東ちゃんの方へ振り向こうとした

 その寸前、右手を後ろへ引かれる錯覚がした

 いや、錯覚では無いな

 彼女が俺の手を引いたんだ


 振り向く


 東ちゃんは居なかった

 視線を巡らせるが、屋上から居なくなっていた

 行ってしまったのか

 不意に右手に違和感
 俺は小さな紙切れを握っていた
 よく見ると、ルーズリーフの切れ端のようなものに数字の羅列が記されている

 感覚で分かった、これは東ちゃんの電話番号だ
 そして、なるほど。そういうことか

「さて」

 花束野郎が俺に話し掛けてきた
 野郎の調子は、先程と相変わらずにこやかなままだ

「どの辺り、主に説明ほしい?
 聞きたいあたりを重点的に説明するけど」

「俺はますますあんたのことが知りたくなったよ」

 花束野郎から視線を外さず、先ずそう答えた

 視界の端でワイルド野郎が俺を睨んでいるのを感じる
 「再現」担当の少年がワイルド野郎に何かを話し掛けている
 野郎は少年に、何やら押し殺した早口で何かをまくし立てている

 一応、そっちを少しだけ窺った

 ワイルド野郎の話を聞いていた少年は
 今度こそ俺の方を、完全に汚物を見るかのような視線で睨みつけてきた

 何なんだよ、全く

 そいつらから視線を外し、再度花束野郎に向き直る

 

 

「長くなりそうなら、場所を替えようか?
 多分あいつが何か奢ってくれるだろうし」

 花束野郎から嬉しい提案だ
 あいつ、というのは、花束野郎の肩越しに俺を睨んでいるワイルド野郎のことらしい

 個人的には「組織」の奴に借りを作りたくないし
 むしろ、こっちが金払ってでも話を訊きたいくらいだ

 いいや、俺が金出してでも質問に答えてもらう

「で、何が聞きたい? 俺のことだけか?」

 そうだな
 訊きたいことは山程あるんだが


 内容を絞ろう


 「狐」について教えてやるという話だったんだから
 ここは「狐」中心で質問した方が良いだろう

「そうだな、じゃあまずは
 東ちゃんとサクリさんって何年生?」

「そんなことを聞きたいのか?」

 相変わらず野郎はにこやかだ


「『狐』のことを訊いていいってんなら」

 俺はそのまま言葉を続ける

「『狐』の『今の体』は、誰かな?」


 ほんの一瞬だけ
 花束野郎の「何か」が澱んだ

 あくまで俺の印象だ

 だが引く積りは全く無い


 「狐」の今の体は誰なのか

 そもそも
 「狐」に魅了されたらどんな感覚になるかを説明できるのか
 「狐」に魅了されてた奴で、その魅了から解除された奴を知っているか
 「狐」に魅了された奴は、魅了されている間のことを覚えているのか
 「狐」に魅了されてる奴は、今どれくらい居るのか知っているか

 そして
 あんた方の「狐」に対する勝算はどれくらいのものか
 花束野郎、あんた自身は「狐」をどうしたいのか



 説明してやるというのなら
 是非訊いてみたいな、俺は














□■□


○質問内容
 早渡が直斗くんに質問する内容を整理しますね

 ①東ちゃんとサクリさんって何年生?
 ②「狐」の今の体は誰?
 ③「狐」に魅了されたらどんな感覚になるか説明できる?
 ④「狐」に魅了されてた奴の魅了解除の成功例を知ってる?
 ⑤「狐」に魅了された奴は「魅了されてる間のこと」を覚えてる?
 ⑥「狐」に魅了されてる奴って今の時点でどれくらい居るか知ってる?
 ⑦君たちの「狐」に対する勝算はどれくらい?
 ⑧直斗くんは「狐」をどうしたい?


 そして、本編中では言及されていませんが以下のことも追加で質問します
 完全に直斗くんに向けて質問しています

 ⑨好きな子のタイプは?
 ⑩好きな子、いる?
 ⑪サクリさんのフルネームと、漢字でどう書くかを教えて



○質問中の早渡

 直斗くんの回答が終了するまで、早渡は完全に無表情になります
 直斗くんから逆に何かを尋ねられた場合
 適当に受け流しはしても、答えに窮することは無いと思います
  例)
  それは分からない → ああ、そうなんだ
  何故そんなことを訊く? → 訊きたいから訊いただけだよ

 回答が全て終了するまで、早渡は直斗くんを無表情で観察し続けています


 慶次さんの勘が鋭いと、このときの早渡から異質な薄気味悪さか
 慶次さん自身が寒くも無いのに鳥肌の立つ感覚に見舞われるかもしれません



はい
完全に早渡の主観でお送りしています

今回も花子さんの人に土下座でございますorz
何かあればレス頂けるとありがたいですorz

花子さんの人パートを読み返しながら書いたのですが
いよっち先輩(東一葉)は咲李さんのこと呼び捨てなんですよね……

そして今更だが、直斗くんと慶次さんの服装ってどうなんだろう
慶次さんは私服だろうけど、直斗くんの方は中央高の制服かな?

連絡先については質問タイム後の別れ際に伝えると思います
その際に早渡は直斗くんにいよっち先輩の電話メモを渡しますよ
「東ちゃんがあんたにあげるってさ」とか言う

今回も少しだけ鬼灯さんに言及しております

>>499
>ちなみに、恐らく鬼灯だと「広商連」の闇市とかにも顔出したことありそうです。情報収集とかもかねて

完全に個人的な偏見ですが、風流な御方ということで色街の淫魔や絡新婦にも人気の高そうな鬼灯さん
亜人な子供達にも懐かれている……はず!


>>513
>直斗が「友だちになろう」って言う表情してるよ

やったな早渡! 友達が増えるぞ!!
早渡「……」 ☜ 完全に直斗くんから目を逸らしその表情は んでいる
角田「……」 ☜ 汚物を見るような目つきで早渡を凝視している


さあ今夜が勝負だ

次世代ーズの人乙ですー
どんどんと怪しく見られていく直斗の未来はどっちだ(なお、当人怪しく見られてもかけらも木にしていない模様)
返答ネタ、構想開始していくですよ
あぁ、ちなみに
場所移動してフォーチュン・ピエロで返答する事になると思うんだけど、星夜おまけでついていかせます?それとも帰らせます?


> そして、本編中では言及されていませんが以下のことも追加で質問します
追加で何聞いているんだ早渡君w

>慶次さんは私服だろうけど、直斗くんの方は中央高の制服かな?
うん、制服
なんで、どこの高校かはわかるでしょうね
調べれば、普通に名前や親の経歴も出てくる。先祖まで遡って調べるのは難しそう

>連絡先については質問タイム後の別れ際に伝えると思います
やったぜ

>完全に個人的な偏見ですが、風流な御方ということで色街の淫魔や絡新婦にも人気の高そうな鬼灯さん
なるほど、そんな感じか(鬼灯になついてる「神隠し」ともう一体女性キャラを思いながら/神隠しはこないだのネタでぽろっと出た子だけど「狐」騒動には関わらず。もうひとりも出る予定今んとこないです)

>やったな早渡! 友達が増えるぞ!!
身内より「「友達になろう」って台詞から、某ゲロ以下吸血鬼が連想される」と言われました
ちげーよ、そんな悪のカリスマポーズとったりしないよ普通に笑顔だよ



>>536
>一番の問題点は、鬼灯がその大暴れしたであろう最中の記憶ないし前後の記憶も曖昧って事でしょうか
こわい


>>547
>星夜おまけでついていかせます?それとも帰らせます?
是非一緒に行きましょう!
そして高いの食べるんだ星夜くん!
直斗くんも奢るとか言ってただろう!?

しかしフォーチュン・ピエロか……
早渡  (もう豆腐でいいよ)
ソレイユ「土方歳三バーガーください」
早渡  「……どちらさま?」
いよっち「あっ、じゃあ勝海舟バーガーで!」
早渡  「東ちゃん!?」

>追加で何聞いているんだ早渡君ww
一応早渡なりの理由があります
しかし⑨⑩は完全に慶次さんと星夜くんの視線がこわいな

>調べれば、普通に名前や親の経歴も出てくる。先祖まで遡って調べるのは難しそう
早渡もさすがにそこまではやらないかな
仮にやるとすると、やっぱり慶次さんの視線がこわい

>なるほど、そんな感じか
鬼灯さんを見る女性の目を考えるとこわい……

>ちげーよ、そんな悪のカリスマポーズとったりしないよ普通に笑顔だよ
早渡は完全に目を合わせようとしていない!

>>548
>是非一緒に行きましょう!
OK、ついていかせます

>しかし⑨⑩は完全に慶次さんと星夜くんの視線がこわいな
(星夜は人のこと言えるかなぁ、って顔)
(いや、ホモではないんだけど、こいつもちょっと誤解招く発言と行動がある人物対象にあるんだよね)

>鬼灯さんを見る女性の目を考えるとこわい……
ただまぁ鬼灯も、色街での女遊びはさらっとはするだろうけれど、本気で誰かに入れ込む事はきっともうないんだろうし
「神隠し」の彼女の言葉婆さん扱いしてるし、もう一人に関しては子供扱いだし

>早渡は完全に目を合わせようとしていない!
直斗「解せない」
慶次&星夜「「解しろ」」

あ、やっべ

次世代ーズの人様ー
ちょいと、早渡君からの質問で「慶次にはちょっと聞かせたくない答え」が直斗的に含まれています
質問自体、全部フォーチュン・ピエロに移動してからやります?
それとも、質問はフォーチュン・ピエロにつく前に途中まででもやっちゃった事にします?
どちらにするかで、その「慶次にはまだ聞かせたくない情報」をどう早渡君に渡すか変わる


>>550
了解です!
早渡的にはなるべく正確な情報が欲しいし
なにより「組織」関係者を警戒してるので移動中のやり取りでも大丈夫です!
なんなら、ピエロで解散した後に呼び止めても早渡は応じますよ!

>>551
>なんなら、ピエロで解散した後に呼び止めても早渡は応じますよ!
良かった(ほっとしている)
では移動中もやり取りしてた方向性で考えていこう


●次世代ーズ

 これまでのお話は次のようになっています

 >>359-365 次世代ーズ
 >>374-380 次世代ーズ
 >>397-401 次世代ーズ
 >>437-444 次世代ーズ
 >>503-506 アクマの人様

 wikiはhttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/5139.htmlにまとめられています



●何となく理解できるあらすじ
 彼、早渡脩寿は学校町南区に通う高校一年生です
 この四月に学校町へ引っ越してきました
 九月に入ってから「次世代ーズ」本編が始まりました
 これまでに美人な先輩と友達になり、すごく美人な店員さんと出会い
 組織の変な奴に追い回され、同じ施設出身の女の子と再会しています

○お遣い編 ☜ 今回はこちら
 先輩(高奈夜)に北区神社に誘われたことが切っ掛けで
 早渡は以前から養親に頼まれていた「怪奇同盟」盟主様への挨拶を遂行します
 盟主様には会えませんでしたが、「怪奇同盟」の一員である篠塚さん夫妻に会い
 盟主様への贈り物を預かってもらうことになりました
 その後、篠塚美弥さんから現在盟主様が所在不明になったこと
 そして、盟主様が契約者を襲いだした、という話が語られました

○「狐」編
 お遣いから数日経った放課後
 早渡は以前、組織の変な奴に追い回された東区最大の中学校に来ていました
 そこで出会ったのは「狐」について知っているという少年と「組織」所属の青年でした
 早渡は警戒しながらも少年の話に乗ります
 そして三年前の中学で起きた事件の「再現」に付き合うことになります



●三行あらすじ
 「怪奇同盟」へのお遣いを済ませた
 美弥さんから色々と事情を聞かせて頂いた
 早渡の脳みそはパンク寸前であった


 


 ヒーローズカフェで夕食を取った後
 俺は篠塚さんのご厚意で学校町の地理と施設について一通り教えて貰った

 正直、この時点で頭がパンクしそうだった

 その上、厨房で調理をしていた女の子、文さんが美弥さんの実妹であること
 美弥さんも瑞希さんも文さんも、既に都市伝説と化した存在であることを聞いた

 俺の頭はショート寸前だった

 言い訳したい
 篠塚さんが「怪奇同盟」の所属であること
 そして、養い親から「怪奇同盟」の盟主さんへ挨拶に行くよう言われたことから
 篠塚さんも都市伝説関係者であるとは予想していた

 まさか夫婦揃って都市伝説と化していたとは、予想を軽く超える事態だ

 先程から震えが止まらない
 高奈先輩はそんな俺を見て笑いを堪えているようだが
 先輩は篠塚さん夫妻と文さんがそういった存在であることを知っていたのだろうか

 確かに、“波”を読めば篠塚さん達の状況を知り得たかもしれない
 でもそんな失礼なことはできるはずがなかった
 相手は、篠塚さん夫妻だ
 そして今回の挨拶先の方々でもある

 訪問先の方の“波”を読むなど、先方の許可なく相手の領域に空間転送するようなものだ
 言ってみれば、ホストの玄関のドアを蹴破って土足で押し入るような行為だ
 そんなことが許される相手ってのは、敵対者か警戒対象くらいだ
 篠塚さん相手にそんな無礼が働ける筈が無かった

 だが
 雰囲気的に美弥さんが熟達者であることは伝わってきた
 ということは恐らく、瑞希さんもまた歴戦の強者なんだろう

 正直、怖れすら感じる

 特に怖れの感情を抱いたのは、文さんに対してだった
 最初、能力が展開されたときは驚きの余り声を上げてしまった
 話によれば美弥さんと俺達の声が外へ届かなくなるように能力を行使したらしい
 その微かな光を発する膜に包まれたとき、心地よい圧迫感を感じた
 これは完全に俺の主観だが、文さんの能力は“西”の護法に似ているようで、少し異質だった
 きっと強力な術を編むことが出来る人なんだろう、そう感じた



 ほんの一瞬だけ
 もし美弥さんが俺の親父であったら、という考えが脳裏を過っていった

 莫迦か俺は
 感傷もいい所だ



 そして
 美弥さんは「怪奇同盟」の盟主さんについて話をしてくれた

 盟主さんは今まで所在不明だった

 盟主さんが精力的に活動していたのは今から20年も前に遡る
 美弥さんもその頃に「怪奇同盟」に加わったそうだ

 そして、その5年後
 つまり今から15年前に盟主さんは姿を消した

 

 

 元々緩やかな集団だったという「怪奇同盟」は
 それを契機として活動を休止することになった

 時は流れ、現在
 盟主さんは姿を現した
 人を襲う、都市伝説として

 盟主さんは、「逢魔時の影」と呼ばれる日没直前に出現する怪異を率いており
 美弥さんは実際に盟主さんの姿を確認し、交戦した

 率直に白状しよう
 盟主さん、やばいよ
 話を聞く限りではかなり危険だ

「敵に回ってみるとなかなかどうして戦いにくい相手だよ
 そういうわけで今、怪奇同盟は活動休止状態で、盟主様には会えない状況なわけだ」

「よ、よくわかりました……」

 そういう事情があったとは
 全く無知なままで篠塚さんを訪ねてきたのか、俺は

 正直、この時点で俺の脳は煙を上げていた
 盟主さんは今でも夕暮れ時には町内を徘徊している
 それ以上のことを考えようにも、脳みそはもうオーバーヒートしていた

「そういえば、早渡君は『首塚』とも接触をするつもりか?」
「え゙っ、いや、それは多分無い……と、思います、けど」

 反射的にそう答えてしまった
 美弥さん、今、「首塚」と話したか?

「もし『首塚』のメンバーと話す場合
 特に『首塚』のトップである将門公と話す機会があったら、盟主様の話題は出さないでくれ」

「そ、それはどういう……まさか『首塚』と『怪奇同盟』は敵対してたり?!」

「いやまあその、敵対はしていないし正直これも俺の憶測というか……
 とにかく向こうから振られない限り、盟主様の話題は控えたほうがいい
 でないと面倒なことが、起こらないとは思うんだが……頭の片隅に留めておいてくれ」

 頷くより外無かった

 「首塚」か
 将門様の率いる勢力だ
 確か、学校町も活動圏内だったか

 行くことは無いだろう、多分
 あって欲しくない、絶対に
 だって、怖いんだぞ?
 あの将門様だぞ
 怖い

 とはいえ、だ
 不安材料が無いわけでは無い
 つまり、「七つ星」の養い親、俺が世話になっている親父殿だ
 あの爺さん、「首塚」にまで挨拶に行ってこいとか言わないだろうな

 頼むから言わないでくれ
 そう祈らずには居られない

 しかし、美弥さんの話から推すに
 「怪奇同盟」と「首塚」は過去に何らかのやり取りがあったようだ
 どういったやり取りがあったのかは怖くて聞けないが
 「首塚」とも渡り合う「怪奇同盟」はかなり強力な集団に違いない
 そう思わずには居られなかった
 

 

「うんまあ、そういうわけで俺から伝えたいことはこれくらいだけど、何かあるかな?」
「すいません、正直、訊きたいことより、理解するのに、精一杯で……」

 自分が情けなくなる
 顔を上げると、美弥さんはこっちを見ていた
 「まあ、無理もない」といった表情だろうか

「でも、多分、『首塚』には行かないと思います」

 美弥さんに答える為に
 というより、自分自身に言い聞かせる為に
 もっと言うと、そんな未来が絶対起きませんようにと祈る為に

 そう答える

「……万が一行くとしても、約束します
 絶対に、盟主さんのことは話しません」

 更に付け加える
 美弥さんに言われたからには従う積りだ
 そもそも「首塚」を訪れなければその必要も無い筈だ!
 だからきっと大丈夫! 心の中でそう自分に言い聞かせる

 そこで唐突に思い出した
 「墓守」さんの件だ、俺は「墓守」さんに謝罪しないといけない

 俺は「怪奇同盟」に接触しようと
 四月から毎月満月の晩に東区の墓地で
 かなりの失礼をやらかしてしまっていたんだ
 たとえそれが、人面犬のおっさんに乗せられたものだったとしても、だ

 俺は無礼の数々を「墓守」さんに謝らなくてはならない
 これは、美弥さんに相談しなくてはならない問題だろう

「美弥さん、あの」

 俺はつっかえながら、どうにか言葉にする

「さっき話した、墓地で騒いだ行為についてなんですが
 『墓守』さんに謝罪がしたくて、その、どのようにすればいいでしょうか」

「そうだな」

 美弥さんは少し考え

「もし良いなら、今夜にでも『墓守』に会いに行こうか?」
「い、いいんですか!? マジっすか!?」

 そう答えてくれた

 これはあれか
 美弥さんにお供する形で謝罪に行けるということだろうか
 これは、本当は喜んではいけないのかもしれないが、すごくありがたい!

「良かったわね、早渡君」

 先程から黙っていた高奈先輩も、どこか安心した表情でそんなことを言ってきた

「でも、ごめんなさい。私は、そろそろ、帰らないと
 子供達は、ご飯を食べていると、思うけれど、少し、心配で」

 はい?
 子供?

 少しの間、俺は硬直した

 

 

 結局、高奈先輩にそれ以上のことは訊けず
 俺は店を出る先輩を見送ることしか出来なかった

「大丈夫よ、早渡君」

 店を後にする際、先輩は俺にそう告げた

「『墓守』さんは、きっと、許してくれるわ。きっと、ね」

 何故「きっと」を二度言うんです、先輩
 ちょっと不安になってくるんですけど、先輩

 勿論、そんなことを口にして言える筈も無く

 俺は独り、ヒーローズカフェに残ることとなった


「俺は変身するとして」

 思わず美弥さんの言葉に耳を疑う

 えっ? 今、変身と言ったか?

「早渡君はザクロに乗ってもらおう、その方が速い」

 はい?
 俺が? ザクロさんに、乗る?

「えっ、あのっ、ぎゃ、逆じゃないんですか!?」

 俺の動揺に、美弥さんは「?」という顔をしている

 いや!! その顔は俺がすべき表情ですよ!?

 ザクロさんというと、あの長身の美人な店員さんだ
 俺が、ザクロさんに、乗るだって? 逆じゃないのか?
 むしろ乗る、というか踏まれるべきは、俺の方じゃないのか!?
 いやそもそも乗る乗られるってのは、墓地に行くのとどういう関係が!?

 あ、そういうことのか!?
 俺が踏まれることで既に反省済みだと「墓守」さんに示すための

 そういう事前準備的なアレなのか!?


 俺の脳みそは既にばくはつしていた


「あああ、あのっ! 俺っ! 鎖で縛られた方がいいっすか!?」
「早渡君、さっきから何を言っているんだ」

 美弥さんの突き刺さる眼差しが痛いが、今はそれどころじゃない!
 とにかくどうにかしないと、俺の中の俺が大変なことになってしまう!!



 このときの俺は幾つかの点で盛大な勘違いをしていた
 そのことを悟るのは、本当にほんの少しだけ先の話だ


















□■□


アクマの人に感謝の土下座orz
何かありましたらお気軽にレスを頂ければと思いますorz

今回も早渡の主観まみれですが
途中から書いてる自分の頭もあたたかくなっていました

今回の早渡の動揺項目ですが

 ①まず美弥さんが変身できること
 ②ザクロさんに早渡が乗ること 「逆じゃないですか!?」

となっております
この時点で早渡はザクロさんがブラックドッグなことを知らない
もし万が一美弥さんがザクロさんの説明を事前にしていたとすると
早渡の方は完全に説明が頭に入っていなかったことになるという……
美弥さん、ザクロさん、早渡がご迷惑をお掛けしますがどうかよろしくお願いしますorz

そして、改めましてになるのですが
暗黒メガコーポの件は、今回削ることにしました
その節はアクマの人と美弥さんにご迷惑を……
早渡の内面はこの時点で色々ギリギリで信頼できる人に話してしまいことがあるのだが
今回は色々ちょっとした事情が重なって見送ることにしました
もしかしたら終盤まで伏せられることになるかもしれない

この後の墓守さんへの謝罪に関してですが

 ①毎月満月の夜に東区の墓地をお騒がせしました! と白状した後に
 ②大変申し訳ございませんでした!! と即! 土下座モードに移行!

という形になると思います

この点についても何か御座いましたら
お気軽にレスを頂ければ、と思いますorz


高奈先輩がハートマークを飛ばす話はかなり先のことになりそうです

皆様乙です
そしてまず1つ注意事項を

冷静に考えると
「あれ、このまま遊戯王の世界書き続けると他の世界が誤解されない?」
とか
「てかまず都市伝説もクソもない世界をざっと書くのはすごい罪悪感がががまじしゃん」
とか
そんなことが脳裏に過ぎったので

他の並行世界に飛んだ人たちも書いちゃおうと
ナユタの次はこいつだ!

ちょっと待ってすごくごめんなさい
あげようとしたタイミングで嫁が迎えに来いって
後であげますのorz

「………ん」

彼女―――シェイドは目が覚め、ゆっくりと起き上がる
混沌とした頭の中を少しずつ整理していく
裂邪達と共に邪神ニャルラトテップと対峙した、と思いきや、闇の中に吸い込まれ―――そこで記憶が切れる

「目が覚めたようですわね」

聞き慣れた声
視線を横にやると、2人の少女
椅子に腰かけた緑の髪の小柄な少女と、腕を組んで立っている長い赤髪の少女
共通して、黒いスーツを着ており、とても険しい表情をしていた

「…ローゼに蓮華か……すまない、私はどれ程の間眠っていた?」
「え?」
「ちょっと待ってください…何故我々の名を知っているのですか?」
「何?」

思わず、彼女達の姿を二度見した
確かに己が知っている2人―――ローゼ・ラインハルトと六条蓮華、その者の筈だった
険しかった表情が、一層険しくなる
反比例するように、折角整理された頭の中が混沌へと沈んでいった

「…確認させてくれ…2015年3月××日……お前達はR-No.0とR-No.1……ここは「組織」本部の医務室…違うか?」
「えぇ…クイズ番組でしたら見事に優勝を飾れますわ、ですが…
 申し訳ございませんけれど、ワタクシ達は貴方のことを存じ上げませんの」

改めて記憶を掻き回し、行き着いた答え
「並行世界」――――確かにニャルラトテップはそう言った

(「UFO」と契約した裂邪のいた世界は、裂邪によって支配されてしまったらしいが…
 しかしこの世界は少なくとも、我々といた世界と似たような世界のようだ)
「……R-No.0、率直に申し上げますが
 突如この本部に出現し、更に我々の名前を知っているとなると、
 何処かの敵対組織のスパイと判断するしかないと思います」
「いえ、断定するには早すぎますわ
 意外に「予知夢」のような情報系の都市伝説かも知れませんし
 それに何時間も眠ってらっしゃったのですから、余程お疲れなのでしょう?」
「あ、あぁ、まあ…(2人の性格もほぼ同じ、か…)」

柔らかくも張り詰めた空気を、優しく壊したのは2つのドアノック
気づいたローゼがドアに近寄り、外の人物に声をかけた

「はい、何方かしら」
「R-No.i(イマジナリー)だ。事情はR-No.3から聞いた」
「ナイスタイミングですわ、貴方の意見もお聞きしたかったの。どうぞお入りになって」

今の声は――――――――アイディアロールする間もなく、がちゃりとドアは開けられた
黒尽くめの服装に、大きな傷のある右目を隠す長い前髪
そして、首元に輝く金色の枝のペンダント
おれは己の契約者である、黄昏裂邪その人――――の筈だが
どう見ても幼かった
本当にそうなのか?―――疑問は刹那に掻き消された
何故なら視線があった裂邪――R-No.iと言うらしい――が、明らかにこちらを見て驚いているからだ

「R-No.i、こちらの女性が件の――――」
「し、シェイド!!」
「「っ!?」」
「シェイドだろ!? なあ!?」
「…私が分かるのか?」
「あたり、前だろ……ウヒ、ヒ…シェイド」

言葉が詰まった裂邪は、シェイドを抱きしめると、小さく震え始めた
否、泣いていた

「…れつ、や?」
「シェイドぉ……会いたかった……」
「そ、そんな…何故、シェイドさんが? それも、人間の姿で?」
「…無礼をお許し下さい、シェイドさん。ワタクシ達は貴方を歓迎致します
 そして、教えて頂けないかしら? 貴方の知っている事を。 勿論、こちらの情報も共有いたします」

ローゼは、頬に一筋の涙を流しながら、シェイドにそう言った




















この世界の話をまとめるとこうだ

2011年10月末の「南極事件」
『ラグナロク・レンディーヴィル』を発動し、β-No.0を倒した裂邪は都市伝説を制御しきれず暴走
事態を収拾する為、この世界のシェイドも契約の解除を申し出、実行に移した
ところが裂邪はそれを認めず、一度契約を切った7つの都市伝説全てと再契約を行った
ここまでは元の世界と同じだったのだが

結果は失敗に終わった
裂邪の器が破綻し、都市伝説に飲まれてしまったのだ
何とか裂邪自身は人の形も、記憶も留めるに至ったのだが、
他の都市伝説、つまりシェイドやミナワ達の姿はその場にも、地球上の何処にも存在しなかった
暫く彼は精神的に再起不能に陥ったが、やがて立ち直り、
家族やその他の関わった人間から自分の記憶を消す事で「組織」R-No.の一員となった
R-No.iとして―――――



「……それで外見が変わってなかったのか」
「飲まれたことにより、中学生から成長がストップしていますからね」
「何よりも、彼にとっては“家族”の喪失…
 期間の長かったシェイドさんや、お互いに想っていたミナワさん……
 楽しい事や辛い事を共有してきた皆さんを失った事がショックだったようです
 ワタクシも同じ経験を背負ってきましたわ…ですから、他人事には思えませんでしたの」
「それで、R-No.か………ところで、何故“i(虚数)”なんだ?」
「本人の希望です。自分を存在するのか分からない、役に立たないもの、と見ているようです」
「……随分マイナス思考だな」
「実際は、どんな任務も卒なくこなして下さるのですけれど…一匹狼なところもありまして」
「そう、か………ありがとう、大体分かった」

すくっ、と立ち上がり、シェイドはドアノブに手をかけた

「あの、どちらへ?」
「裂邪の…失礼、R-No.iの様子を見に行く
 「並行世界」とはいえ、少し心配だ」
「あ、でしたら私もご一緒しますが」
「大丈夫だ、幸いにも本部の構造は私のいた世界と等しいからな」

「並行世界」とは、決して交わることのない、違う終点へと向かうレールのことだ
それぞれのレールは見える景色が違うこともある
だが、シェイドの立つこのレールは、同じレールのある一点から分岐したもの
目覚めてから少ししか経っていないが、シェイドは瞬間毎にここが自分の走るレールではないことを忘れてしまいそうになっていた
慣れた通路を歩いていけば、“R-No.i”と書かれたドアの前に辿り着く
自分のいた世界では、ここは“Rainbow”と書かれた休憩室だった
そんなことを思い出しながら、彼女はゆっくりとドアを叩く

「…入れ」

感づいたのだろうか?
誰とも聞かぬ間にそう言われ、気にせず入るシェイド
既に落ち着いたらしい裂邪がベッドに寝転がっていた身体を起こす

「…R-No.i、だったか」
「裂邪で、良い」
「そうか…どうやら、大丈夫そうだな」
「……その。さっきは悪かった
 ちょっと気が動転しちまってた」
「構わん。事情は聞いた……寧ろ、お前がお前のままで良かったよ」
「…てか、女だったんだな。初めて知ったわ」
「元の世界の裂邪にも言われた
 言っておくが、「シャドーマン」は本来の姿も性別も存在しないからな?」
「ウヒヒ…違う世界の俺も、俺なんだな」
「あぁ、全く変わらんよ……たまに強がってみたりとかな」
「ん?――――――っちょ!?」

ゆっくりと近寄ると、シェイドは優しく、裂邪を抱きしめた
元のシェイドを知っているとはいえ、人間の姿を見たのはここ数時間が初めてである
裂邪は顔を赤らめ、目を泳がせた

「しぇ、シェイド! 何をやって」
「お前は私を“親”だと言ってくれた」
「―――――――っ!」
「再契約を結ぶ直前だった……あの言葉が、私はとても嬉しかった
 だから、こそ…あの直後に私が消えてしまったお前の気持ちが、深く突き刺さってくる
 私は構わない。お前がこの3年間、内に秘めてきたことを爆発させろ
 今、この時だけは…私は裂邪の、母親だ」
「ばっ、馬鹿言ってんじゃッ……
 ふざ、けんなよ…我慢して、たのに……う、ぅぁ……」
「辛かったろう…よく頑張ったな、一人で
 私一人ですまない…私だけ、お前に会いに来てっ……すまない……」
「あやまってんじゃねぇよぉ……!!」

3年、日に直せば凡そ1700日、積み重ねられた号哭
かつては無かった親心のお陰で、シェイドの身体も震えていた
小さな部屋の中、二人きり
泣き声は、約2時間も響き渡った



   to be continued...


シャドーマンの人、お疲れ様です

今回は喪失感が凄い
以前、平行世界の裂邪さんの話があっただけに
今回のは余計こわく感じました

一番キたのは冒頭ローゼさんと蓮華さんとのやり取り

平衡世界というのは別の世界ではなく
在り得たかもしれないもう一つの世界だと思うので
本編のれっちゃんも、もしかしたらこうなっていたのかと思うと……

「南極事件」が大きな分岐点だったんだなあ
ここからシェイドがどう帰還するかを心待ちにしよう

ところでこの世界のれっちゃん
黒服化した後も何らかの能力を有しているのだろうか


改めまして、シャドーマンの人お疲れ様です
シャドーマンの人が来たぞ……!

このタイミングを失うとまずそうなので
シャドーマンの人に二点、伺ってもよろしいでしょうか!?



一点目なんですが
次世代編で「組織」の新ナンバーを出そうと思っています

正直これ以上増やすとまずいかな……と悩みましたが
次世代編で新結成されるナンバー(マイナーナンバー)を出すことに決めました
ただ、そのナンバーなのですが、避難所で予約状況を確認しました


>53: シャドーマンの契約者@ゼローグ最強 ◆7aVqGFchwM :2014/09/26(金) 00:42:12 ID:OZ9VWhc.
>恒例の記憶漁りターイム
>
>三面鏡人のπ-No
>私のβ-No
>ファントムさんの人のΩ-No、Δ-No、……あと一つド忘れしたorz
>プラモデルの人のο-No
>鳥居を探す人のо-No
>
>俺の記憶はこんなもんか…
>あとχ-No、х-No、Я-Noは予約してますのン

ファントムさんの人のもう一つは、φナンバーでした


ここからが本題です
「次世代ーズ」では当初σ(シグマ)ナンバーを使おうと思っていましたが
シャドーマンの人が予約していた記憶があります(避難所ログでは探せませんでした)

「次世代ーズ」現在の希望としては

第一希望 ∂ナンバー ☜ 現在、最有力候補
第二希望 σナンバー ☜ 今回は見送ろうか考え中
第三希望 щナンバー

となっています

∂(デル)ナンバーを出そうと思っていますが
シャドーマンの人、そして皆さま、よろしいでしょうか?


そして、二点目のお伺いです
実は「次世代ーズ」を書き始めるにあたって
「黄昏裂邪さんに憧れている子供達を出したい」と考えていました

流石にこれはシャドーマンの人に確認しないと! な内容でしたので
今になってシャドーマンの人に確認を取る形になってしまいました……orz
彼らを、出してもいいでしょうか……?

「夢幻泡影Re:」1話の時点で既に裂邪さんの二つ名が知られていることや、
「夢幻泡影 † 虹と烏」で、外部にも裂邪さんの名が知られていること、
次世代編「夢幻泡影Re:eX」の合同戦技会で、裂邪さんのファンが沢山いること、
等から(もしかしたら、これは行けるのでは……?)と考えてました!!

シャドーマンの人乙でしたー
平行世界とは、すなわち「ifの可能性」の世界だからなぁ……
「もしも、あの時あぁしていなかったら」ってな

>>567
>シャドーマンの人、そして皆さま、よろしいでしょうか?
俺的には特に問題ないのですよ

あと、ついでに次世代ーズの人に確認したかったんだ
早渡君、鬼灯の事知ってるっぽいけど、早渡君自身は鬼灯と接触したことあるのかな

>>569
ありがとうございます
鬼灯さんには直接会ったことは無いです!
ただ、闇市で有名な方っぽいので早渡も話というか
噂は聞いてるはずだというイメージで書いてました

よーし色々終わった
と思ったら何か重要そうな質問がきてた!?

>>567
長らく留守にしてて申し訳ない、そして早速

>一つ目
今のところ、俺はσを使う予定はないけど…誰かに薦めた覚えはあるな;
俺的に「組織」はデカいから、構成員はどんだけいても問題ないんじゃないかな、と勝手に思ってる
それこそかつてのH-No.の影に埋もれて悪事を働いてた連中とか

∂-No.か、カッコいいな
活躍に期待ですの

>二つ目
寧ろこれは「え、裂邪でいいの!?」ってなりますわw
もっと良い人いるよ!

二つ名を広めた大本は、実は『エフェクター』を取引していた『黒い男』ことニャルラトテップという
会場のファンの大半はR-No.の女性構成員だという
それでも良ければどうぞ♪


>>571
多分会釈はすると思います
(もしかすると鬼灯さんかな?)とはなるでしょうけど
それ以上は……て所かと思われます


>>572
ありがとうございます!
ありがとうございます!!
やった! これでダイレクト裂邪さんリスペクトができる!

>∂-No.か、カッコいいな
>活躍に期待ですの

ありがとうございます
現段階では結成したての小規模な編成になりそうです
派閥的には穏健派ですが、推薦者が過激派になりそう
ボス(女性)には過激派に負けないように頑張ってもらいます

>二つ名を広めた大本は、実は『エフェクター』を取引していた『黒い男』ことニャルラトテップという
>会場のファンの大半はR-No.の女性構成員だという

そういうことだったんだ……
だとすると、かなり面白いことになりそうです
がんがん書き進めていこうと思うのでよろしくお願いします!


そして、今まで黙っててすいません!
「次世代ーズ」の中の人は、昔、社長出勤者と名乗っていた者です
近い内に昔のトリップで改めて挨拶できると……いいなあ、と思ってます!

「次世代ーズ」のピエロ戦では、昔色々書いた単発のキャラを一気に出す予定です
こちらもどうぞよろしくお願いします……!

リアルに叫んでしまった



ぎゃああああああああなただったのか!!っっw
今さらながらお久しぶりですw


>>574
本当にお久しぶりです……!
以前はかなりお世話になりました!
最後に頑張ってたのは確か2013年中頃くらいだから
もう3年か……!?

「次世代ーズ」を書きつつ
今まで放置してた単発等を時期に合わせてまとめつつ
「次世代ーズ」その他次世代編となんかそれっぽいことして
……ってのが現時点の作戦ですね

次世代編全体は
現世代編を書いてた作者の皆さんへのリスペクトなんですが
早渡脩寿のお話に関して言えば
「夢幻泡影」と「恐怖の大王」リスペクトなので
が……頑張ります!

R-No.888の乱野憐子さん
懐かしいキャラなんですが、ピエロ戦で出す気満々でございます
彼女は現世代編の頃から同じRナンバーのパッチさんに
片想いをしてた覚えがありますが、果たして恋は実ったのだろうか……?
ナンバーID拝命の節は本当にありがとうございます……!

※ 時間軸的に次世代組がバレンタイン当日どうなってるかわからんので、中学三年生時点でお送りします

神子「バレンタインだねー」
優「そうねー」

神子「相変わらず、遥がものすごい量のチョコ会得しててこっちから投げる必要ないわよね?」
遥「確かにこれ以上は持ち帰るのめんどい」
優「あ。そこは同意しちゃうんだ?」

神子「後でちょっと分けてよ」
遥「まぁ、わけてもいいけど」

遥「ただし、憐からもらう(予定)のチョコはやんねーぞ」
神子「憐はあんたにチョコあげないと思うから余計な心配しなくてよろしい」

 チョコもらえて当たり前系男子




憐「はい、みこっちとゆうっち、バレンタインのプレゼント」
神子「えっ」

優「あぁ、そっか。憐のお母さんフランスの人だから、そっち式じゃない?」
神子「そういえばそうだったわね」

神子&優((憐から渡された花【オレンジ色の薔薇】を見る))

神子「憐のこう言うところって、誰に似たんでしょうね」
優「母親似か突然変異じゃないかしら」

 さらっと気障な事やらかす事案
 なお、オレンジのバラの花言葉は「無邪気・絆・健やか・信頼」です


直斗「遥が紙袋一杯どころじゃすまない量のチョコを貰うのはわかる。龍哉や憐が結構もらってんのもわかる」

直斗「俺と晃へのチョコの量がそれらを比べてせつなすぎる件」
神子「むしろ、あんたらへの分が普通量よ」

直斗「家族と優と神子以外からもらってないんだぞ!」
神子「だからそれが普通!主に遥がもらう量がおかしいの!!」
直斗「解せない!」
神子「解しろ!」

晃(…ネット小説のファンから手作りじゃないチョコなら送られてきてるのは黙っとこう)

 直斗がモテないのは父親譲りじゃないですかね



龍哉「絵里さん、学校でちょこれーとをたくさん頂いたので、一緒に食べましょう」
絵里「おや、ありがとうございます、坊っちゃん」

絵里「お茶を用意しておきますので、坊っちゃんは制服を着替えてきてくださいね」
龍哉「はい、わかりました」

建築衆「おっ、エリー、何や……って………」
絵里(すんすんすんすんすん、とチョコレートの匂いチェック)

龍哉「戻りました………絵里さん、建築衆のみなさんが何か怯えたように走って行かれたのですが」
絵里「ホラーゲームでもやっていたんじゃないですか?」

 多分、変なもの入ってないかの匂いチェックだった模様


はないちもんめの人にそっと土下座して終わる

次世代ーズの人との続きネタまだ書き上がってないのでお茶を濁す
もげろとかリア充爆発しろの標的にされそうな気がしたがこいつらなら大丈夫だべ

>>573
鬼灯の方が知ってたら、早渡君と会ったら早渡君の所属の情報バレるなー、って思ったので互いに面識ないなら一安心

>「次世代ーズ」の中の人は、昔、社長出勤者と名乗っていた者です
(ちょっとそんな気がしてたのひみちゅ)


花子さんの人、お疲れ様です
いいですね、羨ましいぞチョコレート
遥さんは憐ちゃんから貰えたのかな?

>直斗「俺と晃へのチョコの量がそれらを比べてせつなすぎる件」
>直斗「家族と優と神子以外からもらってないんだぞ!」
早渡「ンンー……!!」 ☜ めっちゃニヤニヤしてる
しかし早渡も人のことを笑えないはずだ

>>577
>早渡君と会ったら早渡君の所属の情報バレるなー
なるほど、鬼灯さんなら知っていてもおかしくはないですね

>(ちょっとそんな気がしてたのひみちゅ)
(ゝ v ・) パ゙チコーン🌟

>>578
そういえば、続き書くために読み直したりしていて気づいた

> 花束野郎の「何か」が澱んだ

直斗、多分、あの質問の時もただにこにこ笑ってたと思う


>遥さんは憐ちゃんから貰えたのかな?
憐「あげてねーっすけど、なんか問題あったっす?」
 遥涙拭けよ

>早渡「ンンー……!!」 ☜ めっちゃニヤニヤしてる
早渡君、いい事教えてあげる
只今クロスさせていただいている話で出してる星夜、遥程じゃないにしろ紙袋一杯になる程度はもらってる

>なるほど、鬼灯さんなら知っていてもおかしくはないですね
もしかしたら、ちらーっと姿見たことあるかもしれないですが、覚えているかどうかは不明

これまでのお話

>>383-384 俺
>>403-406 次世代ーズの人
>>425-426 俺
>>452-458 次世代ーズの人
>>486-490 俺
>>538-544 次世代ーズの人


……と、言うわけで、ハイパー説明回はっじめるよー!

 星夜の様子を伺う
 多少、顔色が悪くなり呼吸が荒くなってはいるが……まぁ、大丈夫だろう
 こいつが契約している「残留思念」は、過去の記憶を読み取る以外にも、先程のように再現することができる
 ただ、再現する際に………その再現した記憶に「持って行かれる」事があるのだと言う
 特に、都市伝説事件の現場を再現する場合、関わった都市伝説や契約者が強力であったり、強すぎる感情が感じられると持って行かれる事が多いようだ
 先程の再現でも、「狐」らしき女が出た辺りで持って行かれそうになったと言っていた

(……つっても、発動を終えたのは、完全に「ベオルギウスのドラゴン」に持って行かれかけたからだろうが……)

 恐らく、「三年前」の事件関連のみの再現をするつもりだったのだろうが………そうなると、確実に「三年前」の事件の終わりまで再現してしまう事になる
 すなわち、「ベオウルフのドラゴン」の契約者たる日景 遥と、「切り裂きジャック」の契約者たる荒神 灰人
 その二人が殺意と怒りが臨界点突破した状態で暴走している、その現場をだ
 そりゃあ、「持って行かれ」そうにもなるだろう
 再現範囲に地上を含めていなかったから、灰人の分は再現しなかったにせよ、遥の分は再現しかけていたのだから

「「先生」のとこに行くか?」
「……急ぐ必要はねぇ。念の為、あとで診てはもらうが」

 星夜の返答にわかった、と頷いておく
 「残留思念」を使用して体調に影響が出ている以上、都市伝説絡みの医学知識持ちに診てもらうにこした事はないのだ
 その相手が、「組織」所属の者ではないと言う事実は多少問題ではあるが、幸い、あの「先生」は「薔薇十字団」所属だ。セーフとしておこう

 星夜の様子を確認し終えて、辺りを見回す
 「繰り返す飛び降り」………東 一葉の姿は、いつの間にか消えていた
 自らが飛び降りた瞬間をも再現されて、存在まるごと消えたか、それともここから退散したのか
 どちらなのかはわからないが、今後どうなるかは彼女次第だろう
 そこに首を突っ込むつもりはない
 自らに関連の「仕事」が回ってくればそれをまっとうするまでだが、そうでなければ関わる気はなかった

「どの辺り、主に説明ほしい?聞きたいあたりを重点的に説明するけど」
「俺はますますあんたのことが知りたくなったよ」

 と、直斗とホモ(?)野郎の会話が聞こえてきた
 しまった、直斗逹の方に意識を向けて警戒するのを忘れ………待て
 何を発言しているんだ、あのホモ(?)野郎
 (?)を取り除いてやろうか

「………慶次。あいつ、直斗が警戒度合い低めの調子で傍にいたからあまり気にしていなかったが、誰だ?」

 呼吸を整えながら、星夜が問うてくる
 そう言えば、ちゃんと説明していなかった
 ……と、言うか。直斗はあれでも軽快は多少しているのか
 星夜が「警戒度合い低め」と言っているのならば、腹立たしいがそれは正しい事なのだろう
 そういった点を見抜く技量は、悔しいながらも星夜の方が上だ
 とにかく、星夜の質問に答える事にする
 ホモ(?)野郎には聞かれないように、小声の早口で

「何者か詳しくは知らないが、推定契約者。いきなり直斗と握手したがって、握手した後にじっと直斗を見つめてた」
「何だその危険人物一歩手前」
「俺が知りたい」

 あまりうれしくない事に、星夜と意見があった
 そうか、こいつから見ても、あのホモ(?)野郎は危険人物認定一歩手前か
 直斗も直斗で、身近にナチュラルホモがいて慣れているからと言って、対応がゆるすぎるだろもっと警戒しろ
 どちらにせよ、あのホモ(?)野郎が現状、多々な理由から警戒しなければいけない事実はそのままだ

 こっちの方でそのように考えている間に、向こうはある程度話が進んだのか
 直斗が、こちらに顔を向けてきた

「なぁ、ここで「狐」関連について話すってのもなんだし、場所移動しようと思うんだけど」
「あ?……そうだな。一般人が、屋上に来ないとも限らないし」

 ……最も、「三年前」の事件以降、屋上に来る奴なんてあまりいないだろうが
 直斗逹は、時々、屋上に花を供える事もあると言っていたが、やはりあのような事件があったとなると屋上に行きたがる生徒はいないだろう
 が、念の為だ

「わかった。じゃあ、こっから一番近いフォーチュン・ピエロ行こう。慶次の奢りで」
「待て」

 おいこら待て
 何故、俺の奢りだと確定している

「星夜も来るか?慶次の奢りだし」
「だから待て」
「あぁ、でも星夜、先に「先生」んとこ行って診察受けてくるか?さっきも「残留思念」使ってる間に持って行かれそうになったみたいだし」
「人の話聞け」

 俺が奢ること前提で話を進めるな
 まだ、俺は了承していない

「……いや、まだ痛みが出てきている訳でもなし、こいつに奢らせてから行く」
「てめぇもてめぇで了承すんな!?」

 星夜この野郎、俺に奢らせる気満々ときた
 少しは遠慮しろ

「つぅか、直斗。なんで俺が奢る前提なんだよ」
「慶次が一番年上なのと、俺、さっき花買うのに金使い切った」

 清々しい笑顔で言い切りやがった
 確かに、少しずつとは言え数種類の花を買っていたから結構な出費だとは思うがこの野郎

「こっちでわかった事あったら、また情報流すからそれでチャラにしてよ。「組織」じゃ手に入れにくい情報も渡すからさ」
「………今回だけだぞ」

 仕方ない
 愛百合経由では入らない情報も多い現状、直斗からの情報は有益だ
 これくらいは、情報料と思っておこう
 直斗が、ホモ(?)野郎にこちらが了承したことを伝える
 屋上から、校舎内へと入っていって……ふと、視線を感じた
 ちらり、そちらを見ると、この学校の生徒らしき、短い髪をしてメガネを掛けたおとなしそうな女子生徒が、こちらの様子を伺っている
 星夜が、その視線に気づいて

「先、行ってろ。すぐに追いかけるから」

 とそう言って、その女子生徒に近づいていく
 どうやら、知り合いらしい

 「組織」所属の人間である、と言う意識は強い星夜だが、こうして「日常」もしっかりと送っているのだろう
 あの女子生徒は、星夜にとっての「日常」の一つであるようだった

(都市伝説云々を知らない、「日常」しか知らない奴との交流も大事とは聞くが……)

 それを考え、ふと、直斗を見る
 身の回りに都市伝説関係者が多いこいつにとって、「日常」はどの程度残っているのだろうか、と



 門のところで改めて星夜と合流し、中学校近くのフォーチュン・ピエロへと向かう
 直斗は親に「夕食、友だちと食べて帰るから」と連絡していた
 その後は、何やら思考を巡らせながら歩いている
 ホモ(?)野郎からの質問は、大体屋上で先に聞いていたらしく、直斗は答えるべき内容を頭で整理しながら歩いているようだった
 「与えていい情報」と「与えるべきではない情報」を、今のうちにまとめておいているのだろう
 こいつの場合、質問された件についての答えを全て知っていたとしても、「与えるべきではない情報」だと判断したら答えなかったり、適当にはぐらかすくらいはするはずだ
 そういった点、直斗はそれなりにうまい。診療所のくそ白衣に見習わせたいくらいには
 フォーチュン・ピエロに到着し、皆で適当に注文して席について
 さぁて、と直斗が笑って、ホモ(?)野郎を見る

「それじゃあ、順番に質問に答えていくな」
「………わかった」

 ーーーすぅ、と
 ホモ(?)野郎の表情が、消えた
 直斗の答えに集中するためか、それとも、別の意図があるのか

 流石に、この店で騒ぎは起こさないと思うが(騒ぎが起きたら、ここの厨房でバイトしている某「首塚」メンバーが飛び出してくるだろう)、一応警戒はしておく

「まず、「東 一葉と咲季さんの学年」。俺より一個上だから、今でも生きていたならどっちも高校二年だな。事件当時の学年を言うなら、中学二年」
「………ふむ」
「次、「「狐の今の体は誰か?」……これは、知らない。流石にそれを知っていたら、それなりの対応するし」
「…そうか」
「続けて。「「狐」に魅了されてる奴が現時点でどれくらい居るか」。これは、わかっている範囲で答えるぞ。俺も鬼灯さんから教えられた以外はあまり把握できていないし」

 そうして答えた直斗によると、現時点で「狐」に魅了されている事確定なのは十数名程度
 …その中で、「狐」に近い位置にいたであろう者は3人
 アメリカ出身の「いつの間にか家にあるピエロ人形」の契約者であり、アメリカでは指名手配犯でもあるアダム・ホワイト
 ヨーロッパ出身であり「ファザータイム」と言う死神の一種の契約者であるミハエル・ハイデッガー
 契約者であるミハエルが「狐」に誘惑されているのであれば、契約都市伝説である「ファザータイム」も誘惑されているのだろうが、直斗は誘惑されている人数には含めていなかった。契約者と別行動を取ることがほとんどないと聞いているから、カウントしなかったのかもしれない
 そして、最後………「鬼」
 「鬼」と言う存在は日本各地、どこにでもいると言って良い為どの「鬼」であるかまでは不明
 少なくとも、「酒天童子」や「茨木童子」等ではないらしい。ただし、人食い鬼である事は確定
 「狐」に魅了されている者の人数だけを聞かれたのだが、ある程度要注意の契約者の情報まで与えたのは直斗なりのサービスなのだろうか

 ここまで話したところで、注文していたメニューがまとめて来たので一旦休憩
 ホモ(?)野郎に関しては、注文の際「適当でいい」とぬかしてきた為、オムライス(300グラム)にチキンがついている奴にしてやった
 「エビがマヨネーズの海で泳いでいる」と評価されるバーガーを注文しなかった点についてはありがたく思って欲しい
 あのオムライス、確か男でも量多くて残すことがあるとか聞いていたが、食べ盛りの年頃だろうし問題ないだろう、多分
 直斗はチーズカレーとヨーグルトシェイクで、こっちは適当に一番人気のセットメニュー。星夜はポテトとオニオンリングがセットでついてくるナイフとフォークで食べること前提のハンバーガーを、思ったよりもきちんとナイフとフォークを使いこなして食べている
 こういうところが、微妙に苦手なんだ、こいつは

「……「狐」に対する勝算はどれくらいか、って質問だけど」

 ごくり
 口にしていた物を飲み込み、直斗がホモ(?)野郎に答える

「お前の言う「君達」が、俺を含めてどの辺りを指しているのかわからないから、俺と、俺の親友達で戦ったとして、と言う前提で答えるよ」
「……あぁ」
「「狐」相手だけなら、ほぼ100%勝てる」

 直斗は、そう断言した
 ……まぁ、そりゃそうだろう

「あの「狐」は、当人の戦闘力はないに等しいからな」
「そういう事。こっちの総戦力考えれば、負ける方が難しい」

 星夜の言葉に、直斗はにこにこと笑いながら答えた
 だとしても、なんという自信だ

「誘惑能力については考えないのか」
「あぁ、あれな。誘惑してくる事がわかっていれば、対応できるから問題ない。むしろ、誘惑しようとしてくりゃその分隙ができる」

 なるほど
 誘惑に対する対応については、鬼灯にでも聞いたのかもしれない
 あの男、何度か「狐」と対面していて、誘惑に打ち勝っているのだし

「さて、次……「狐をどうしたいのか」」

 直斗は、笑う
 ごくごく自然に、世間話でもするかのようなノリで答えていく

「正直、今、誰にも見つけられずに気配すら感じさせない状態のまま、消えて。消え去って、二度と復活してほしくないかな」

 その答えは
 「どうしたいのか」と言うよりも「そうなってほしい」と言う願望にも近いように聞こえたが

「まぁ、消えるにしてもそれなりに苦しんで欲しいのかもしれないけど。消えてくれるならまずはそれでいいや」

 それが一番楽だし、とそう答える
 ホモ(?)野郎は、直斗の返答を終始無表情で聞いている
 その無表情の中に、妙な薄気味悪さと言うか………「異質」さを感じる
 まさか「異常(アブノーマル)」の類かと考え、一応、警戒を強めておく
 「異常(アブノーマル)」関係となると、通常の都市伝説契約者では対処しきれない特殊例がありすぎる為、天地への報告は必須になるし、へたをしたらそこからSNo案件になるだろう
 …そうなったら、本当に面倒臭い事になりそうだが

 カレーを食べ終わったところで
 直斗が、残りの質問に答え始める

「えーと、次は……俺の好きな子のタイプ、だっけ?」
「「ちょっと待て」」

 はもった
 嬉しくない事に、星夜とハモった
 いや、ツッコミいれたくもなる
 何聞いてんたこのホモ野郎
 もう(?)は完全にとるぞホモ野郎

「好きな子っつか、好みのタイプなー。ヒステリー起こさなくてメシマズじゃない、優しい子がいいな」
「お前も真面目に答えるなよ!?」

 ツッコミを入れて問題ないはずだ
 これくらいはツッコミ入れても許されるはずだ
 何、真面目に答えているんだ直斗も
 ナチュラルホモが身近にいるとこういうことが平気になるのか

「で、次。俺に好きな子がいるか、だけど」
「直斗、身の危険感じたらすぐに言えよ」
「うん、ありがとうな星夜。大丈夫だよ」

 よく言った星夜
 今回は褒めてやる

「好きな子、いないよ。大事な親友逹ならいるけど」

 答えなくてもいいであろう質問にまで、直斗は笑って答える
 そう、ずっと笑っている
 にこにこと、楽しげに
 友人と世間話でもしているかのようなノリは、ずっと変わらないままだ

「えーと、次。咲季さんのフルネームと、どう漢字書くかな。ちょっと待って」

 席に常備されているアンケート用のペンを取り、ついでに制服の内ポケットから小さな黒い革製の表紙のメモ帳を取り出した直斗
 メモのページを一枚破ると、さらさらと書いていく
 「土川 咲季」、と

「「土川 咲季(つちかわ さくり)」、これが、咲季さんのフルネーム。これでいいか?」
「……あぁ」
「うん、じゃあ。これで質問には答えたな」

 お役目終了、と言った表情の直斗
 今度は、逆に直斗から質問するのかとも思ったが、その様子は見えない
 ホモ野郎に質問しない代わりに

「なぁ、慶次と星夜は、さっき俺が言ってた以外に、「狐」に誘惑された奴で厄介なやつの情報って持ってるか?」

 と、こちらに問うてきた

「そう言われてもな……こっちも、さっきお前が話した情報以外はあまり。一つ、あるっちゃあるがかなり曖昧な情報だし」
「曖昧?」
「相手の契約都市伝説と、その能力がはっきりしていない。契約者自身の目撃者も「生きていない」。その程度の情報だ」

 最後の一口を食べ終えた星夜が、こちらの答えを補足する
 そう、何やら厄介な奴がいるらしい事はわかっているのだが、情報が不確定すぎるのだ
 あまりにも不確定すぎて、話す事も少々ためらわれる

「「三年前」の時点で「狐」傘下にいたと思われる奴なんだが。西洋剣の扱いに長けた奴が返り討ちにあってる」

 こちらが、情報を出すのをためらっているうちに、星夜が続けた
 そういえば、その時に死んだ西洋剣の扱いに長けた奴とやらは、こいつの先輩格だったか。かけらも尊敬はしていなかったようだが

「そいつの遺言。「剣の支配権が奪われた」。意識も朦朧としていたし、真実かどうかはわからねぇ。ただ、そいつの死因は、そいつが扱っていたはずの剣でばっさり斬られた事だ。支配権つっても、それは都市伝説で作られた物でもないただの西洋剣だった」
「………なるほど。うん、いい情報だ。ありがとう」

 本当に感謝したように直斗は言ってきた
 情報を重要視する直斗らしい


 情報交換を終えて、店を出る
 外は、だいぶ日が落ちて暗くなってきていた
 すっかり、日が落ちるのも早くなってきている

「直斗、1人で帰るつもりか?」
「んー、いや。途中まで星夜と帰る方向一緒だし厳密には1人じゃないよ。それにこれくらいの時間帯なら、逆に「逢魔が刻の影」とは遭遇しないだろうし」

 確かに「逢魔が刻の影」と呼ばれる奴らが出没する時間帯とはズレているが……他にも厄介なものが多数いるのが今の学校街だから、もう少し気をつけるべきだと思う
 星夜がいるとはいえ、こいつの契約都市伝説は戦闘向きではないのだし
 ……だと言うのに、直斗は「大丈夫」と自信満々に言う
 根拠などないに等しい自信だと言うのに、何故かこいつが言うと本当に大丈夫なんじゃないかと錯覚しそうになる
 実際、今までも大丈夫だったのだから、こいつはかなりの幸運に愛されているのだろう
 星夜の事も同時に送ることになる為若干腹立たしいが、護衛していってやろうか、と考えていたその時

「あ、直斗君、星夜君。慶次さん。こんばんは」

 かなえの声がして、そちらを見た
 見ると、長い何かを包んだ布袋を持った、かなえの姿
 …あぁ、そうだ。そういや、今日はかなえの薙刀の稽古がある日だった
 その帰りか
 さり気なく、ホモ野郎の視線からかなえを遮る
 かなえは、ホモ野郎の方を見て首を傾げたようだったが、俺達の誰かの知り合いだと思ったのか追求はしなかったようだ

「かなえ、習い事お疲れ様。今から帰り?」
「うん。あ、でも、ちょっとお買い物してから、帰るけど……」

 直斗の問いに、かなえはそう答える
 買い物してから、となると……今の時間帯、かなえ1人で大丈夫だろうか
 いや、厳密には「岩融」がいるから、1人ではないのだが

「かなえ、念の為送っていくか?」
「え?えっと……」

 こちらの申し出に、おたおたとするかなえ
 直斗が、そんなかなえににこっと笑って告げる

「送ってもらったら?女の子の独り歩きは物騒だし」

 直斗も、かなえが厳密には「1人」ではない状態だとわかっているだろうに、こう言っている
 かなえは「んっと…」と、直斗の方を見たが

「俺は、大丈夫」

 と、自信満々に笑いながら直斗が答えるものだから、うん、と、頷いてくる

「えっと、それじゃあ、慶次さん、お願いしてもいいですか……?その、正直、暗い中1人で歩くのはちょっと、怖くて」

 「岩融」さんがいても、と小声でこっそりとつけたしていた
 まぁ、都市伝説が傍にいるとはいえ、都市伝説以外の一般不審者に対してどの程度都市伝説能力で対抗していいかどうかは個人意見がわかれるところだ
 かなえは、なるべく都市伝説関係者以外には都市伝説で対抗したくないのだろう

「わかった……じゃあ、直斗、気をつけろよ。ついでに星夜も」
「余計な世話だ」

 つい、と星夜はそっぽを向いてきた
 相変わらずの態度に逆に安心する

「……一応、あのホモ野郎をしっかり警戒しとけよ」
「わかってる」

 念の為、星夜と小声でそのようにやり取りして
 俺はかなえを送っていく為に、直斗逹とわかれた

 慶次とかなえを見送り、直斗はほっと笑ってみせる

「うん、いいタイミングでかなえが来てくれた」

 と、そのように口にした
 直斗の様子に、星夜が首をかしげる

「直斗?」
「いやな。ちょっと、「慶次には聞かせにくい答え」をしなきゃいけない質問もされてたからさ」

 そう星夜に答えながら、直斗はちらりと早渡を見た
 中学校の屋上で質問を聞いていた際、直斗が言うところの「慶次には聞かせにくい答え」をしなければいけない質問を受けた際
 直斗は、口には出さず、スマホのメモに打ち込んだ画面を見せて、こう早渡に伝えていたのだ

『ちょっと、慶次に聞かせにくい答えをしなきゃいけない質問がいくつかあった。これから行く店で、じゃなくてその帰り道にででも答える』

 と、そのように
 なので、慶次に帰り道についてこられると、少々面倒だったのだ
 ……もっとも、直斗は「かなえが習い事の帰り道、この辺りを通る」事を想定していたのだが

「俺には聞かせていいのか?」
「うん、星夜はもう知ってる事だし……じゃ、歩きながら話そうか」

 三人でゆっくり、歩きながら
 直斗が、早渡からの残りの質問に答えていく

「「「狐」に魅了されたらどんな感覚になるか説明できるか」、についてだけど……俺は無理。誘惑された奴って、そのまんま死んでる奴多いし。「三年前」の事件の犯人たるあいつは生きてるけど、なんかまともな受け答えできない状態で都市伝説犯罪者専用刑務所にいるから話聞けないし」
「そうか……」
「………でも」

 でも、と
 にっこり笑いながら、直斗は続ける

「説明できるかもしれない奴に1人、心当たりがある」
「…心当たり?」
「そう。問題は、あの人の説明が理解できるかどうかだけど」

 やや曖昧な答えに、早渡は無表情のまま、直斗に観察するような視線を送る
 直斗の答えに、星夜が「あぁ」、と声を上げた

「…なるほど、「先生」の事か」
「そうそう、そういう事」
「……「先生」、と言うと?学校の?」
「いいや。住宅街にある診療所の「先生」。都市伝説契約者で、所属は「薔薇十字団」……ただ、数年前まで、ちょっとワケアリで発狂してたらしくてさ」

 その発狂していた理由に関しては、「狐」は全く関与していないのでさておく
 ただ、その発狂していて、世界各地で毒をばらまいたりを筆頭に色々やらかしてしまい、複数の都市伝説関連組織から指名手配を食らっていた「先生」は、その発狂期間中に一度「狐」に遭遇している
 しかも、だ

「「先生」は発狂していた間に「狐」に誘惑されて、それを解除されてる」
「……「狐」が自ら誘惑を解除した?」
「そうそう。誘惑された直後に即、だったらしいよ。当人の証言だから、信じるかどうかは別として。少なくとも、過去に「狐」に誘惑されて、解除された事は確かさ」

 あまりにも、特殊例だ
 「狐」に誘惑され、しかしそれを即座に解除された、等
 他に例はない

「「先生」に聞けば、お前から最後の質問である「「狐」に魅了された奴は「魅了されてる間のこと」を覚えてるかどうか」についてもわかると思う。これも、俺だと答えられなくてさ」
「…そうか」

 なるほど、と
 早渡は直斗からの返答を聞き終えて、思考を巡らせている様子だ

「慶次に聞かせたくないってのは、「先生」が「狐」と遭遇した事がある、って事か」
「そう。現時点で慶次にその情報聞かせても、「先生」へのいらない疑い持ちそうだからさ……マシにはなってきたけど、今でもまだ、愛百合の影響が多少あるし」

 星夜の言葉に、直斗は肩をすくめてみせた
 どうしても、「先生」に胡散臭いと言うような視線を向けがちな慶次にこの情報を聞かせるのは、まだ早い、と判断したらしい
 だから、こうして慶次の居ない場で情報を渡したのだ



「これで。本当に質問には全部答えたけど……本当に、質問はこれだけでいいか?今なら出血大サービスでもっと教えるけど?」
「…随分、情報を教えてくれるんだな」
「そりゃもちろん。お前が情報を知る事が、こっちにとっての情報料なんだからさ」

 どういうことか、とでも言いたげな早渡だが、直斗は笑うだけで答えない
 代わりに、答えたのは星夜だ

「まぁ、中途半端にわかってる状態で「狐」やら別の事やらに巻き込まれて敵になられても、鬱陶しいし邪魔なだけだからな」

 そう、ズバりと
 直斗であれば、流石に多少は空気を読んだり相手を気遣う等して言わない事を、ばっさりと言ってのけた
 彼、栗井戸 星夜はこういう少年なのだ
 相手が誰であろうとも、言いたい事はド直球でばっさりと言ってしまう
 それが、自分より立場が上のものであろうともおかまいなしに言ってしまうものだから、大人からすれば星夜は「扱いにくい相手」になりがちだ
 学校の成績的には問題がないと言うのに、推薦がとれなかったのはそのせいだと言う事は星夜自身もわかっているのだが、改める気はさらさらない様子である
 慶次が星夜と仲が悪いのも、星夜のこのド直球マジレスマンとしての側面のせいなのだが、この場においては特に関係はない

「邪魔、ときたか」
「うん、まぁな。「狐」の他にも「バビロンの大淫婦」やら、「怪奇同盟」の盟主様の問題やら、「赤マント」の大量発生やら子供の誘拐やら何やら、一気に起きて本当面倒くさいし、鬱陶しいしさ」

 色々同時におきすぎ、と直斗はぼやく

「だから、お前にもなるべく情報は知ってほしいし、面倒くさい事態にはなってほしくない。だから、情報は出来る限り渡すよ。だから、聞きたいことあったら先にぼんぼん聞いてくれたほうが楽」

 色んな意味で、と直斗は笑う

「……さぁ。まだ聞きたい事は、あるか?」

 自分が教えられる範囲で教えるよ、と
 楽しそうに笑いながら、そう、早渡に告げた




to be … ?

投下完了。無駄に長くなっちゃってごめんよぉ
次世代ーズの人に焼き土下座です
とうとう、慶次からの早渡君への評価が「ホモ(?)野郎」から「ホモ野郎」へとランクアップしたようです
なお、残念なことに星夜からの評価もほぼ同じです。こいつぁひでぇや

何か追加で質問ありましたら、直斗は答えるでしょう
今回投下した分で答えていたのと同じように、ニコニコ笑って、まるで世間話でもしているように答えます
今回の答え、明らかに嘘が一つ含まれているんですが、その時も嘘をついている、と言うそぶりも見せず、脈拍も呼吸も普通通りで答えました
その「嘘」を「嘘である」と見抜く場合、最初から直斗を信用していないと見抜けないかもしれません
……もっとも、信用していない場合、他の「正しい情報」も全てウソと錯覚しても知らぬ

ちなみに、星夜と直斗はこれから「先生」の診療所行くつもりなので、「先生」から話聞きたい場合は同行可能となります

 …ここはどこだろう。
 どこか、高いところから遙か下を見下ろしている。
 身体の自由が利かない。
 腕が勝手に死神の鎌を振り上げる。

 やめて。

 身体の自由を取り戻そうと、懸命にもがくが果たせない。
 やめて。殺さないで。大切な人たちがいるの。

 あたしの意志に反して、鎌がゆっくり振り下ろされる。

 音すらも消し飛んだ静寂と光の中、死の嵐が吹き荒れて―

「…夢?」
「澪、気がついた?」
 そこは、牢獄のような殺風景な一室。
 そうだ。小学校に連れて行かれて、緑たちの狼藉を止めようとして、航たちが現れて―
「そうだ!航たちは!?」
 わかんない、とキラは肩をすくめた。
「気がついたようね、お二人さん」
 声に振り向くと、ドアが開いていて、黒衣の少女が佇んでいた。
にこにこ。
にこにこ。
それはそれは無邪気な笑顔を浮かべながら。
「がら空きよ!」
 キラが氷の剣を出そうとした、その瞬間―
「―!?」
 氷の剣ごと、腕が凍り付いていた。
「な!?動かせな…!」
 いつの間にかキラの両足も、床に縫い止められるように凍り付いている。
 身動きできずにじたばたするだけのキラに、真白が近づき―

ばしんっ

「邪魔なのよ。あなたたち」

 頬に広がる熱で、真白に平手打ちされたのだと理解して、キラの頭に血が上る。
「何すんのよ!」
「やめなさい!」
 真白を止めようと動きかけた澪の足元も、いつの間にか氷で封じられていた。
 氷の拘束を解こうと試みるキラに

ばしんっ
ばしんっ

 続けざまに平手打ちを浴びせる真白。
 大人しくなりはしたが、真白を睨む目の光までは失われないキラと、奥でただふたりを見つめることしか出来ない澪に、真白は勝ち誇ったように宣告した。
「碧。ふたりに処遇を宣告してちょうだいな」

 ドアの間から、ひとりの少年が姿を現す。背後に数え切れないほどの霊を纏って。
(なるほど。碧は真白が霊で操っていたのね)
 真白が加入してからの組織の変質も、そう考えれば説明が付く。おそらく配下にしている「黒」や、さらわれた子供たちも、霊を憑依させて操っているのだろう。
(真白も契約者に違いない。赤マントはそのままで説明が付くとして、霊を操る都市伝説ってなんだろう)

「君たちに宣告する」

 碧が綺麗だが空虚な声を紡いだ。

「君たちを組織の反逆者、裏切り者として『コキュートスの氷』で永久に封じ込める処刑を行う。日時は明日、正午」
「明日って…!」
「いきなりすぎるわよ!ってかこの氷何とかしなさいよ!これもあんたなの?」「ひとつだけ聞かせて、真白」
 静かな声は澪のもの。
「あなたは『凍り付いた碧』でなにがしたいの?あなたの目的は何?」
 去りかけていた真白は、澪を振り返って一言。
「貴女には教えてあげない」

「明日だって…」
 澪が呟く。氷の拘束は解けているが、部屋に鍵がかけられていて、出ることは不可能。
「ああもう!氷さえなかったら逃げられたのに!これも真白の都市伝説かな」
「その可能性もあるわね。さっき碧が言っていた『コキュートスの氷』…でも、本当に厄介なのは、霊を操る能力の方」
「碧もナオトたちも、完璧操られちゃってるもんねー。どうしたもんかしら」
「わかんない。除霊の出来る契約者でも連れてこないと…」
「兄貴たちに連絡が出来たらなー。探してもらうんだけど」
 キラは「圏外」と表示された携帯を眺めた。
「で、どうする、明日」
 ただでやられる事はないだろう、とキラは澪に話を振る。
「そうね…」
 処刑が公開処刑なのか、あるいは秘密裏に行われるものなのかで、条件は違ってくる。

「お前たち」
 部屋の外で少年の声がする。
「緑!」
 澪がその名を呼ぶと、しっ、と呟く少女の声。藍だ。
「あんまり騒がないで。こっそり来てるの」
 がちゃがちゃ、金属音の後にかちゃりと音がして、部屋のドアが開く。
「早く出ろ」
 するりとふたりは、開いたドアから部屋の外へ出る。相変わらず殺風景な廃工場だが、出られただけでもふたりの気持ちは違う。
「たーすかったぁ!」
「ありがとう、緑。でもどうして、あたしたちを助けてくれたの?」
 緑はふんと鼻を鳴らした。
「別にお前たちを助けた訳じゃない。真白(あのおんな)にいっぱい食わせてやりたいだけだ」
「同士浅葱…いえ、澪。あなたなら何か、真白に対抗する策があるでしょう?」
 澪は大げさに肩をすくめる。
「ずいぶん買い被られているのね、あたし」
「あなたたちを助けようって言ったのは、私じゃなくて緑なのよ。いけすかないけど頭はいいから、ですって」
 澪は微笑んで緑に向き直る。
「ありがとう、緑」
「勘違いするなよ、お前のそのこざかしい頭を利用してやりたいだけなんだからな」

「赤い顔で強がっても説得力ないですよ、緑くんww」
 キラが混ぜっ返すと、緑の顔はますます赤くなる。
「で、お前ならあるんだろ。あいつに対抗する手が」
「うん。あるよ。出来れば使いたくはないけど…」

澪の策。それは。
「死神」
真白を死神の能力で葬り去ること。最終にして、最強の手段。



続く


花子さんの人、お疲れ様です!
そしてありがとうございます!
人見知り(?)な早渡の代わりに御礼を言います
直斗くん、かなりの部分を教えてくれてありがとう!
本人は素直に認めないだろうが早渡は情報提供に感謝してますよ

>>579
>直斗、多分、あの質問の時もただにこにこ笑ってたと思う

※あくまで早渡の主観です
警戒してるので、色々余計な部分まで怪しく見えるんですよ
今まで書いてきた中にも、警戒心のあまり直斗くんをそう見てる箇所がちらほらあります

現時点で早渡の心境は半信半疑ですので
直斗くんが嘘をついてる情報は見抜けないと思います
むしろ

>>588
>……もっとも、信用していない場合、他の「正しい情報」も全てウソと錯覚しても知らぬ

完全に信用してないわけじゃないけど
完全に信用してるわけでもないって感じなので
貰った情報は「とりあえず頭に置いとこう」と思ってるかな

>ちなみに、星夜と直斗はこれから「先生」の診療所行くつもりなので、「先生」から話聞きたい場合は同行可能となります

是非に!
>>545で出した③④⑤の答えを早渡も知りたがってるので
診療所へ是非お邪魔させてください
「先生」相手だと早渡は敬語で話をします
灰人くんが診療所に居た場合は、やはり敬語になる

ところで、今まで直斗くんに対する呼称が「あんた」「君」「お前」と混在してたので
「次世代ーズ」の方は、これ以降「君」で統一します!

ちなみにですが
慶次さんがかなえちゃんの付き添いで別れた時点で
既に早渡の無表情モードは終わっています
ただ、診療所で「先生」の話を聞く際は相槌も打たずに真剣に傾聴します
質問等は「先生」の話が終わってから尋ねると思います
質問については「次世代ーズ」パートを投下後に併せて出しますね

>さり気なく、ホモ野郎の視線からかなえを遮る

いいですね、この部分
早渡をホモ野郎と見なしてる一方で
早渡からかなえちゃんを護ろう(?)とする慶次さんの紳士さが感じられる
この時の早渡ですが、色々あって
かなえちゃんの存在を正しく認識できてない可能性があります

>かなえは、ホモ野郎の方を見て首を傾げたようだったが、俺達の誰かの知り合いだと思ったのか追求はしなかったようだ

あ、あー……
(……花子さんの人、今の段階では本編とは絡みませんが)
(かなえちゃんは中学時代って友人が結構居た方でしょうか)
(「次世代ーズ」の東中出身者(女子二人)が同期のかなえちゃんのことを知ってるか、友達だった可能性があるので)
(一応、そのことをお伝えしておきます……)


>>589
鳥居の人もお疲れ様です
やった遂に続きが来たぞ!!
キラちゃん……強いなあ
この状況でも冷静な澪ちゃんに芯の強さを感じる

>「勘違いするなよ、お前のそのこざかしい頭を利用してやりたいだけなんだからな」
>「赤い顔で強がっても説得力ないですよ、緑くんwwww」

あ、これってやっぱり緑くんは澪ちゃんのことが……
だとすると今のままだと完全に尻に敷かれそうだぞ
いいのか、緑くん
澪ちゃんの小悪魔チックな所は一体ご両親の誰に似たんだ!!(ぬるり)

処刑の日と襲撃の日は日程的に近いのかな?
なるべく皆生き延びてほしい

さあて今日中

>>593
>診療所へ是非お邪魔させてください
はーい、了解!その方向で今のうちに大体の流れ考えておこう

>ただ、診療所で「先生」の話を聞く際は相槌も打たずに真剣に傾聴します
なるほど(「先生」が真面目に答えてくれるかどうかを考える)(静かに頭を抱える)

>(かなえちゃんは中学時代って友人が結構居た方でしょうか)
……程々?
特別多くもないし、少なくもない……って感じだったかな

>(「次世代ーズ」の東中出身者(女子二人)が同期のかなえちゃんのことを知ってるか、友達だった可能性があるので)
可能性あるなら友達だった事でも良いのですよ



これまでの流れでございます

>>383-384 花子さんの人
>>403-406 次世代ーズ
>>425-426 花子さんの人
>>452-458 次世代ーズ
>>486-490 花子さんの人
>>538-544 次世代ーズ
>>581-587 花子さんの人

今回の話は質疑応答の整理っぽい部分です
詳しくは>>545と、花子さんの人の>>581-587をご覧ください


 

 結局、ワイルド野郎の奢りで話を聞く形となり
 花束野郎は俺の質問に答えてくれることになった

 全員で中学校近くの「フォーチュン・ピエロ」に向かう
 以前に一度だけ寄ったことがあったようなチェーン店だ
 確か、ハンバーガー屋だよな? もう記憶があやふやだ

 店に着いて、花束野郎は俺の質問に答え始めた


 まず、東ちゃんとサクリさんは当時中学2年生だった
 つまり東ちゃんは俺より一つ上だということになる

 「狐」の今の体が誰なのかについては「知らない」そうだ

 「狐」に魅了されている者は
 今の時点で分かっているだけで十数名程度
 但し、花束野郎が答えた中にはヤバそうなのが混じっていた

 「ピエロ人形」の契約者であるアダム・ホワイト
 「ファザータイム」の契約者であるミハエル・ハイデッガー
 そして、人を食うという「鬼」

 花束野郎は「狐」の手勢について結構細かく教えてくれた
 逆に言うと、手勢の素性と能力は既に割れているということか


 ワイルド野郎の奢りを食べながら、花束野郎は回答を続ける


 狐に対する勝算は、「『狐』相手だけならほぼ100%勝てる」
 なるほど、随分な自信だ
 “魅了”についてもそこまで深刻には捉えていないらしい
 明言はしなかったが魅了に対する策を持っていることが窺えた

 だが本当だろうか
 本当にこいつらは勝てるのか
 確かに「狐」単体だけならやりようもあるかもしれない
 事実、花束野郎も「『狐』だけなら」と仮定した上で答えていた

 恐らく花束野郎も分かっているんだろうが
 問題は「狐」の取り巻き、側近達の方だろう
 花束野郎は口にしなかったし、俺の方もあくまで真偽不明な情報止まりだが
 現在、「狐」の手勢にはあの「アナベル」が混じっているという噂を掴んだことがある

 それだけじゃない
 まさか「ファザータイム」が居るとは思わなかった
 聞いた話が本当なら、「ファザータイム」は時を止めるかそれに類する能力を有していた筈だ

 花束野郎、本当に大丈夫なのか?
 手勢の方は明らかにヤバいのばっかりだぞ



 狐をどうしたいのかについて
 野郎は「消えて二度と復活してほしくない」と答えた

 まあそりゃそうなんだろうが
 一貫して笑顔のまま答えるこいつに
 俺は、若干の薄気味悪さを感じなくも無かった



 花束野郎の好きなタイプは
 「ヒステリー起こさなくてメシマズじゃない、優しい子」
 そして、「好きな子はいない」、「大事な親友逹ならいる」らしい

 そして最後に
 俺は彼からサクリさんの名前を教えてもらった







 

 
「慶次と星夜はさっき俺が言ってた以外に
 「狐」に誘惑された奴で厄介なやつの情報って持ってるか?」

 質問へ一通りの回答が終わったタイミングで
 花束野郎は、ワイルド野郎と「再現」担当の子、栗井戸君にそう振った

 ワイルド野郎は話すのを躊躇っていたが
 情報が曖昧であると前置きして、手勢の契約者について話し出した

 曰く、その者は「三年前」の時点で「狐」の手勢に加わっており
 その者にやられた奴は「剣の支配権が奪われた」と言い残した

「なるほど。うん、いい情報だ。ありがとう」

 花束野郎のお礼を耳にしながら考える

 何なんだろうな、一体
 施設に居た頃から能力の断片情報を聞いて契約ANを当てる問題は凄く苦手だった
 花束野郎には今の話で能力の見当がついたんだろうか、俺は奴の顔を盗み見た




 回答が終わり、店を後にする

 ワイルド野郎はしばらくして俺と野郎の群れから抜けた
 女の子を送らないといけないらしい

「一応、あのホモ野郎をしっかり警戒しとけよ」

 おい、ばっちり聞こえてるぞ




「うん、いいタイミングでかなえが来てくれた」

 ワイルド野郎が女の子と連れ立って行った後
 花束野郎は笑いながらそう口にした

「いやな。ちょっと、『慶次には聞かせにくい答え』をしなきゃいけない質問もされてたからさ」

 彼は訝しむ栗井戸君にそう応じる

 そうだ
 先程、花束野郎は携帯で俺にこう指示したんだ

『ちょっと、慶次に聞かせにくい答えをしなきゃいけない質問がいくつかあった
 これから行く店で、じゃなくてその帰り道にででも答える』

 どうやら花束野郎はワイルド野郎と単に仲が良い間柄では無いらしい
 その点に関して深入りはしない方が良さそうだ


 そうして、花束野郎は店内では伏せていた回答を再開した


 「狐」の魅了を受けた際の感覚について、やはりというか花束野郎では答えられないらしい
 まあ仕方のない話だ。かなり突っ込んだ所を聞いた自覚はある

 だが、野郎はこの質問に答えられる相手を知っていた

 「先生」だ
 野郎が先程東中で話していた「薔薇十字団」の「先生」
 彼は東区で診療所を開いているらしく、彼なら答えられるかもしれないようだ

 正直、この質問は駄目元だった
 回答が聞けるというなら奇跡に近い

 話によれば、「先生」は直接「狐」の魅了を受けて、即座に解除されたらしい
 「先生」本人が魅了を解除したのか、それとも「狐」が魅了を解いたのか
 あるいは、別の何者かが「狐」の魅了を解除したのか
 話の限りでは判然としない

 「先生」であれば魅了時の身体感覚について答えられるかもしれない、というのはこうした故らしい
 正直、精神干渉の影響で主観が歪んでいた場合、明瞭な答えが得られる可能性は凄く低い
 だが聞くだけの意味はありそうだ
 

 

 ところで、何故ここまで俺の質問に答えてくれるのか、についてだが

「お前が情報を知る事が、こっちにとっての情報料なんだからさ」
「まぁ、中途半端にわかってる状態で『狐』やら別の事やらに巻き込まれて敵になられても、鬱陶しいし邪魔なだけだからな」

 花束野郎と栗井戸君に言わせればそういうことらしい

 なるほど、そりゃそうだな

 ただ、つまりそれは
 「何も知らない奴なら、巻き込まれようが敵になろうが、それは構わない」ということなのだろうか

 いや、これを訊くつもりはない
 意味のないことだ


「まだ聞きたい事は、あるか?」
「今の所は訊きたかったことも分かったし。十分だな、ありがとう」


 訊きたいことは粗方訊いた
 そして答えも返ってきた
 今は整理するときだ



 だが、それは


「『先生』に話を聞いてみたいよ」


 「先生」から残りの質問の答えを確認してからだ



「いいよ。星夜の診察ついでに。『先生』に聞いてみよう」

 花束野郎は先程と全く変わらない笑顔のまま、そう応じた

















□■□



花子さんの人に感謝orz
診療所へ繋ぐべく整理という形でまとめました

早渡は直斗くんの回答に満足しています
そして、これ以上質問を出すことはできないでしょう
早渡としては「先生」から「狐」の話を聞いてみたいと思っています

直斗くんへ質問はしませんが
代わりに早渡は以下のことを「先生」に尋ねます
タイミング的には「先生」の話を最後まで聞いた後に質問すると思います


 ⑫「狐」の能力への対処法(「魅了」への対策)が知りたい

 そして、前回の>>545、③④⑤の質問のどれか一つでも良いので
 「先生」が真面目に答えてくれた場合、早渡は以下のことも追加で尋ねます

 ⑬「『狐』が一度、学校町から離脱した後の話なんですが
   別の町で『狐』の手勢のうち、恐らく別動隊が、何者かに『魅了を上書きされて』
   その結果、別動隊の多くが何者かの命令の所為で自害したそうです
   この出来事についてご存知ですか?」
 ⑭(⑬について)
   「そんな事が可能でしょうか?」


この点、何かありましたらレス貰えればと思いますorz



以下は所感です

>只今クロスさせていただいている話で出してる星夜、遥程じゃないにしろ紙袋一杯になる程度はもらってる

モテるのだな星夜君
罪な男だな

>ちらり、そちらを見ると、この学校の生徒らしき、短い髪をしてメガネを掛けたおとなしそうな女子生徒が、こちらの様子を伺っている

星夜君の話してた子の外見イメージはFGOのマシュ似かな?
「次世代ーズ」の中の人はFGOをよく知らないのですが……

>ただ、その発狂していて、世界各地で毒をばらまいたりを筆頭に色々やらかしてしまい

お待ちっ!?
まさか「ウパス」の頃の
アレがアレだった事件の主犯は
「先生」、あなただったのか……!?

>複数の都市伝説関連組織から指名手配を食らっていた「先生」は

この点について、今の早渡は完全に忘れてるでしょうが
「七尾」に居た頃、「先生」の話を聞いたことがあるかもしれません
指名手配になっていたなら、「研究員」や「教師役」が知っていた可能性が高く
それをANクラスの子たちに話していたかもしれない

現在の早渡はむしろ動物的直観で
「先生」がエロい方面の偉い先生であると捉えて
崇敬というかリスペクトの念を抱きそうでこわいなあ

書いてて何だか、上記の質問が
「真面目な話のフリしてちょっといかがわしい話を始める『先生』と
 それを相槌も忘れて真剣な表情で聞く早渡と、それを見ながらニコニコしてる直斗」
という絵面に思えてきたのだが、果たして大丈夫か

そして、早渡の「狐」戦に対するスタンスですが
当初はなんかこう高い場所から「狐」戦を観察して
「とうとう始まったか」「終わったか……」とか言う積りだったようだが
この調子だとそもそも早渡、お前さん本当に「狐」戦を観戦できるのか……?

>>594
>……程々?
>特別多くもないし、少なくもない……って感じだったかな
なるほど
男子から密かに人気があったりしたのかな

>可能性あるなら友達だった事でも良いのですよ
ありがとうございます
了解です、この点も練ります

乙ですのー!
ホモ野郎聞こえてたかwまぁ仕方ないな、よくある事だ(よくないです)
では、続き構想していこう
早渡、「先生」がどんな人か、とかは聞くだろうか
聞いた場合、話を聞きに行くのが不安になる可能性はあるが()

>代わりに早渡は以下のことを「先生」に尋ねます
質問了解でーす!

>モテるのだな星夜君
「不良に憧れるとかそういうたぐいの一過性のもんだろ」って当人は言ってた

>星夜君の話してた子の外見イメージはFGOのマシュ似かな?
言われて気づいた。確かに外見、マシュっぽいな!?

>「先生」、あなただったのか……!?
やらかしてました
まぁ、毒事件終わった後もまだ発狂続いてあっちこっちでやらかして、おとなしくなったのはここ数年です

>指名手配になっていたなら、「研究員」や「教師役」が知っていた可能性が高く
少なくとも「組織」「教会」「薔薇十字団」「レジスタンス」から指名手配食らってた事は確定なんで、他んとこからも指名手配食らってた可能性はあり
知っているかもです
ただ、当時の指名手配写真を見ていたならば、その写真よるかーなーり、若返ってると感じるでしょうけど

>崇敬というかリスペクトの念を抱きそうでこわいなあ
まさかのww

>という絵面に思えてきたのだが、果たして大丈夫か
あ、大丈夫
「先生」が答えてくれるシーン、恐らく直斗は同席してないです(帰るように言われて帰る可能性)
なので、連絡先の交換とかのシーン書かねばとなっているのが今現在

>この調子だとそもそも早渡、お前さん本当に「狐」戦を観戦できるのか……?
(ちょっと考えてみる)
……え、えーっと。「狐」戦で「狐」以外が倒されたところで、「狐」がいる現場に他の人も集まって問題なし仕様にする予定です
なので、倒される瞬間見れる事は確か

>男子から密かに人気があったりしたのかな
ちょっとぽっちゃり気味ではあるが、ぽわんとして優しい子なので中身を見るタイプの男子には好かれてたかも
なお、どうでもいい事だがかなえからの星夜の評価は「ちょっと怖い子」だったりします



>>600
ありがとうございます!

「先生」、外見が若返ってるのか……
エロい人かつエラい人リスペクトなのは
早渡がスケベだからですね。はい、彼はきっとスケベです

連絡先の交換、早渡は応じますよ
いよっち先輩の電番メモは「東ちゃんが君にってさ」って渡し
早渡の連絡先も直斗くんが良ければ伝えますね……
そのとき、質問に答えてくれたお礼を伝えます

但し、スマホのビームでアドレスやり取りした場合
早渡の体がビクンビクンしながら「なんかひわいだ! こういうのなれない! えろい!」
とかわけのわからないことをくちばしるので。なおとくん、ちゅういしてね!

「狐」戦の件、了解です
問題はその場に駆けつけるのが間に合うかどうか……
間に合え!! 早渡には頑張ってもらう

>ちょっとぽっちゃり気味ではあるが、ぽわんとして優しい子なので中身を見るタイプの男子には好かれてたかも
ご回答、ありがとうございます(ぬるり)
もしかすると「次世代ーズ」の変態共(コメディタイプ)が若干名徘徊するかと思います(失礼)
きっと慶次さんがやっつけてくれると願っておりますorz


もさもさカキカキ

>>601
>「先生」、外見が若返ってるのか……
指名手配書だと、5,60代くらいの外見だからなぁ

>連絡先の交換、早渡は応じますよ
やったぜ

>早渡の体がビクンビクンしながら「なんかひわいだ! こういうのなれない! えろい!」
どこがひわいなのかwwww
どうしよう、直斗はつっこんでくれない!
え、えーとえーと、星夜か灰人頑張って!

>問題はその場に駆けつけるのが間に合うかどうか……
直斗が連絡してくれると信じて…!

>もしかすると「次世代ーズ」の変態共(コメディタイプ)が若干名徘徊するかと思います(失礼)
セコム(「岩融」さん)がアップをはじめました


レスポンス漏れがあったので、急ぎ

>>600
>早渡、「先生」がどんな人か、とかは聞くだろうか
>聞いた場合、話を聞きに行くのが不安になる可能性はあるが()

聞いても聞かなくても問題ありません!
親の見てる前で幼い子供達を美味しそうに食べた(性的に? 食事的に?)
とかのエピソードが出たら流石に引きそうですが、早渡だし後は平気かな……

「……ッ!!!」
「ん、目が覚めたか?」

彼―――裂邪が起き上がった直後に声をかけたのは、碧眼金髪の若い男性だった
裂邪には、彼に会った覚えがないし、ここが何処かも分からない
状況を整理し、ようやく言葉を紡ぐ

「…悪い、ここは何処だ?」
「俺の家だ。町の人間に『突然、人が現れた』って聞いて、駆け付けたらあんたが倒れてた…
 それが大体4時間くらい前の話だ」
「そうか…世話になった」

そういって立ち上がるや否や、男性は裂邪を止める

「おい、何処へ行くんだ?」
「仲間が…“家族”がはぐれてしまった。探さなきゃならん」
「悪いことは言わん、外には出ない方がいい
 どうしてもというなら……俺も付いていこう」

す、と男性が裂邪に差し出したものは、黒いスカーフだった
ゆっくりと手に取るが、何の力もない本当にただのスカーフのようだ

「…これは?」
「すまないが、それでなるべく顔が分からないようにしてくれ
 別人なのは分かっているんだが……どうも、あんたは“アイツ”に似ている」
「“アイツ”……?」

考えを巡らせ、思い出す
「並行世界」―――ニャルラトテップにシェイド達もろとも、異世界に飛ばされたらしい
繋がりは感じられるが、途轍もなく遠くに、幽かに感じる程度だ
尤も、皆が生きていると分かれば、裂邪にとってはとても有難いことだ
そして、更に思い出したのはかつてあった出来事
「UFO」と契約した自分との死闘
「並行世界」の何処かには、悪に染まった自分がいる
この世界も、その可能性がある

「よく分からんが、受け取っておこう
 そういえば名前を聞いてなかったな、霧雨 真弓(キリサメ・マユミ)だ」
「変わった名だな。マックス・ゴドウィンだ」

細心の注意を払い、偽名で名乗った裂邪は、
スカーフで口元を覆うと、マックスと名乗った男性の同行で家を出た
扉を開けると、太陽の光に目が眩む

「………何だ、ここは?」


真っ先に見当たるのは、そうとしか思えない機械仕掛けの巨大な建造物
そして、上空を引っ切り無しに飛び交う、球体型のカメラ付き飛行物体
それらに見下ろされたこの町は、この上ない程寂れた街並みだった
補装もされていない大通り
道行く人々の身なりはどれも修繕の跡があり、中には素足で歩く人もいた
更には、家があったであろう瓦礫の山も散見され、
傍に蹂躙された花束が添えられてあった

「………」
「驚いたか? 全部“アイツ”の……この星の支配者の仕業だ」
「っ…支配者、だと?」
「あぁ。4年前だったか……何の音沙汰も無かったのに突然あちこちで暴れ始めやがった
 何の罪もない人達を、あぁやって……」
「…もういいマックス、有難う」
「くっ……す、すまない、真弓……」

声を震わすマックスを、そっと宥める裂邪
同時に、嫌な予感が脳裏を過ぎる

「マックス!」

声のした方を向けば、駆け寄る女性
耳が隠れるくらいの短い黒髪で、背は少し低めだが豊満な胸が揺れる

「カスミ」
「そちらが、例の?」
「ん、霧雨 真弓だ。真弓、彼女はカスミ・アンドウ。俺の仲間だ」
「仲間?」
「霧雨さん、ですか?」
「真弓でも構わないが」
「ええと、響きが女の子っぽかったので…」
「…悪かったな」
「ハハハ、ところでカスミ、何かあったのか?」
「はい、先程別部隊からの通信で…城の方で動きがあったと」
「やはりか……真弓、一旦俺の家へ戻ろう――――――」
「避けろ!!」

裂邪の声、咄嗟に散る3人と、一筋の光条
地面を溶かす一閃の先にあったのは、怪しく輝く金属光沢の“何か”だった
喩えるなら恐竜―――それも、全身を装甲と重火器で埋め尽くした化け物である
先程の光条を放った口腔内の砲身
両手足に鋭く光る爪、太い尻尾
一際目立つのは、背中にブースターと共に装備された、
長い三本の刃で構成された2基のクローだろうか
あまりにも既知感が漂うその姿を見て、裂邪はゆっくりと、呟いた

「……バーサーク……フューラー……!?」

それは何故、ゾイドだったのか
多少小型でカラーリングも異なるが、そんなことはどうでもいい
問題は前にも同じ経験をしたことだ
バーサーク・フューラーは2基のクローを広げ、
電光を散らせながら、裂邪に向って走り出した

「真弓!」「霧雨さん!」
「ちっ」

胸のペンダントが黄金の鎌に変化し、
裂邪は鎌――「レイヴァテイン」を大きく振るい、斬撃を放った
が、バーサーク・フューラーのクローに触れた瞬間、跡形もなく掻き消えた

「何っ!?――――――ぐぅっ!?」

どずっ!!
重い一撃が裂邪の腹部を貫き、大地を赤く染める

《キリサメ・マユミぃ? 『レインボウ』……“虹”なんて大層な名前だなぁ!?》
「っ……そのっ、声は……!!!」

「真弓を離せ!!」

何処からともなく雷を放つ巨大な鎚を召喚したマックスが、バーサーク・フューラーに稲妻と鉄塊をぶつける
しかし先刻と同様、展開したクローによって何事もなかったように無力化され、
マックスはクローによって弾かれてしまった
危うく瓦礫に身を打ち付けられそうになる彼を、カスミが美しい布を伸ばして受け止めた

「大丈夫!?」
「俺は……だが真弓が!」
《ヒハハハハハハ!! まだレジスタンスが残ってたとはなぁ!!
 だがこいつは偽名を使ってお前等を騙してたんだぜぇ!?》
「ヒヒッ………随分とッ、器の小さい…小悪党で……おぶっ!?」
《あ゙ぁ? 聞こえねぇなぁ? 霧雨 真弓……いや、》

短い前足の爪を引き抜き、器用にクローで裂邪を掴み、高々と持ち上げる
はらり、と口元を覆っていたスカーフが、風に舞って飛んでいった
刹那、カスミが息を飲んだ
裂邪の素顔を見て、目を見開いている
何故なのか? そう疑問を投げかけるのは、この世界ではナンセンスだ
カスミの反応は、当然だったのだ

《黄昏 裂邪………ビンゴ》

バーサーク・フューラーの頭部のハッチが開く
小学生くらいだろうか、軍服を着た子供だった
だが、裂邪にははっきりと分かった
先程、カスミは何故驚いたのか
それは裂邪が、瓜二つだったのだ
この星の――――かつて“地球”と呼ばれたこの星の、支配者に

「久しぶりだな、黄昏 裂邪……俺を殺した大罪人!!」
「……生きて、やがったか……「並行世界」の俺……!!」


   ...to be continued

皆様乙
だいぶ短くなってしまったな……まぁいっか(

今回は裂邪くん
異世界で立ちはだかるのは、あの……!?



シャドーマンの人、お疲れ様です
生きてたのか並行世界の軍服裂邪……
確か奴はティルヴィングでやられた筈だがまさか

個人的に「マックス・ゴドウィン……ゴドウィン!?」となったりしましたが
霧雨真弓で虹という所で膝を打ちました
いま求められているのはこうした柔軟な発想力なのかもしれない



>>603だと分かりづらいので訂正します
自分で読み返して(……?)となりましたので……

改めまして

>>600
>早渡、「先生」がどんな人か、とかは聞くだろうか
>聞いた場合、話を聞きに行くのが不安になる可能性はあるが()

花子さんの人にお任せしてもよろしいでしょうか
早渡が尋ねてもOKですし、尋ねなくても問題はありませんよ
尋ねた場合、「人を殺した」くらいなら「なるほど」で済ませますが
「大量殺戮」とか聞いたらぎりぎり「なるほど……」で済ませると思います
「殺戮と破壊の限りを尽くして、ついでに子供も食べた」レベルになると
思わず「えっ」と聞き返して「よく処刑されなかったね!?」と驚く筈

そこの所も含めて、花子さんの人にお任せしたい所存であります

シャドーマンの人乙デース
生きてたのかお前ーーーーっ!?
正直にびっくりですよ

>>608
>そこの所も含めて、花子さんの人にお任せしたい所存であります
いえっさ、了解です
大丈夫、答える内容的にそう言うのじゃないし早渡君ならむしろ気にしないっぽいことに気づいたから(早渡君をエロガキを見る暖かな眼差しで見つめながら)

 
 日没後からかなり経過した時分、学校町南区



 既に“人払い”が布置されたその区画で
 “モヒート”は「偽警官」の握っていた拳銃を切り裂いていた

 悲鳴を上げてしゃがみ込んだ「偽警官」を睨みつけ
 “モヒート”は暗褐色のレイピアをその都市伝説へと突き付ける

 「偽警官」が震える手から取り落とした回転式の拳銃は
 半分以上が消失しており、その断面は熱で溶けた蝋のように歪んでいた

 断面からは未だに煙が立ち昇っている
 まるで拳銃を劇薬か何かで溶かされたかのようだ

 “モヒート”
 彼女は「コークロア」と契約した、「組織」強硬派所属の契約者である
 つい先刻、彼女は「偽警官」と対峙し、彼が攻撃する前に拳銃を切断した
 彼女が生成したレイピア状のコーラは、能力により対象の切断面を溶解させる


「“オサスナ”! そっちは!?」


 まだどこか幼さの残る彼女の声は、現場に居るもう一人の契約者へと向けられていた

 “オサスナ”
 彼もまた“モヒート”と同じく、「組織」に所属する契約者である
 “オサスナ”は“モヒート”に背を向けるようにして、もう一人の「偽警官」と相対していた

 こちらの「偽警官」もまた、地面に崩れ落ちるように身を縮ませて震えていた


「おっ、俺達はっ! ただっ、『周旋人』に言われてっ!」
「学校町へやって来たのか」


 大きく乱れる呼気と共に吐き出される言葉を、“オサスナ”が静かに続けた
 彼の言葉を耳にした「偽警官」は大きく肩を慄かせた


「分かるだろっ!? しゅ、就職に、有利になんだよっ!」
「『組織』所属の者を殺して実績を作ることが、か?」


 “オサスナ”の言葉に、恐怖の余り「偽警官」は息を飲む


「『都遣』への就職の為、か」


 「偽警官」はもう何も答えなかった
 “オサスナ”を凝視する眼には先程までの悪意や闘争の炎はなく
 ただ、彼ら「組織」所属契約者に対する恐怖一色に染まっていた


「その考えは改めた方がいい」
「お前達『偽警官』を公序騒擾の嫌疑で拘束する」


 “オサスナ”の言葉の直後、現場に到着した「黒服」の宣告が重なる
 恐らく彼らの担当が派遣した「純粋な黒服」だろう
 複数名で現れた黒服は、手際よく「偽警官」二人を捕り押えていく




 “オサスナ”は「黒服」達がその場から立ち去るに際してもなお
 連行される「偽警官」の背中を見送り続けた







□□■

 



“オサスナ”
 中学三年生。西区の中学校在籍
 本名は流石 丈(さすが たけし)で「組織」強硬派所属
 契約した都市伝説は「校庭に現れる落ち武者の霊」である
 彼の活躍は>>216-219を参照されたい


“モヒート”
 中学一年生、女子。多分、東区の大きな中学校に在籍している
 「コークロア(_Mod.A)」の契約者であり、「組織」の強硬派に所属

 基礎拡張能力は「コーラの形態制御」
 彼女の能力はコークロアの「溶かす」能力に特化している

 コーラを特定の形状に固定するのが得手で
 彼女自身は特にレイピアやフルーレ等の刺突主体の武器にするのを好む








 

コーラレイピア、かっけぇな……
不定形な武器って好きだわ、って俺の作品そんなんばっかだな(ちら、と裂邪を見る

もう1本書けた、次はこいつだ

「ぐえぇ……もう食えねぇぞ馬鹿主ぃ……ッッ!!!」

飛び起きた、と同時に涎を拭う白髪の少年――理夢
目覚めたのは綺麗に整頓された部屋のベッドの上
当然、理夢には心当たりがなかった

「…夢食いが夢見てどうすんだっての……んなこたぁいい
 ここは何処だ? 確か、闇に飲み込まれてそっから……」
「声がしたと思えば。目が覚めたようだね」

「ん?」と横目にやると、湯気の立つ食事を持って立つ、青年の姿
白を基調とした衣服に身を包み、眼鏡をかけたその青年は、優しい笑みを見せる
明らかに成人しているように見えるが、その雰囲気はまるで

「……主の弟?」
「主?」
「あぁいや悪ぃ、こっちの話だ
 なんか、世話になったみてぇだな」
「いやいや。このマンションの前に倒れててね
 職業柄、放っておく訳にもいかなかったもので
 外傷もなかったし、脈も異常なし、呼吸に乱れもなかったから、
 ちょっと部屋で休んで貰っただけだよ」
「あー……医者か何かか?」
「まだ新米だけどね。白河 数弥(シラカワ・カズヤ)と申します」
「俺様は………えーと………夢野 理夢だ、邪魔して悪かったな」
「あ、今起きたばかりだから、体力つけないと
 お口にあうか分からないけど、どうぞ」
「え、あ、な、何か悪ぃな、何から何まで…」

立ち上がりかけたのを座りなおし、理夢は数弥が作ってくれた食事を食べる
心なしか病院食のような献立だったが、問題なく完食した

「ふぅ、美味かった、ごっそさん」
「お粗末様でした。ところで…帰る当てはあるのかな?」
「ギクッ」
「道端で倒れてるような人だから、もしやと思ったけど
 何か事情がありそうだね
 暫く泊まっていくと良いよ。どうせ、僕一人しかいないし」
「…いや、俺様としちゃ有難いんだがよ…迷惑じゃねぇのか?」
「困ってる人は助けたい、というのが僕の信条なんだ
 手が届かないところにまで行ってしまうのは、もっと辛いからね」

「洗い物してくるよ」、と数弥は食器を持って部屋を出た
その後ろ姿は、言葉とは裏腹に悲しげに見えた
事情を抱えているのは自分だけではない――――単細胞な理夢でも、それくらいは理解できた

「今なんかすっげぇ酷ぇこと言われた気がする」

洗い物を終えた数弥が買い物に行くというので、理夢はそれに同行した
健康に気を遣って、数弥は基本的に徒歩で移動するらしい
理夢としては、どういった世界に来てしまったのか確認する為には好都合だった
と言っても、空飛ぶ車が飛び交っている訳でも、焼け野原にテントが立っている訳でもない
学校町と似たような、少し賑やかな街、といった感じだった

「綺麗な街だな、俺様がいた町みてぇだ」
「…ん? ということは誰かに連れてこられた、と?」
「いやっ!? そそういう訳じゃ(流石に別の世界から飛んできたなんて言えねぇ…)」
「でも外傷、というか、争った形跡もなかったし
 どこからともなくワープしてきた、みたいな感じかな?」
「ドキッ」
「あはははは、冗談だよ」

冗談でもないのだが―――――と考えていた時に、数弥の足が止まった
どうやら、遥か前方を見ているようだが

「おい、何かあったのか――――――――――あん?」

理夢が見たものは、何とも言えない“モノ”だった
飛行する襤褸切れのようなそれは、顔もあれば手もある、強いて言えば足がない
「幽霊」と言えば分かりやすいのだが、理夢は違和感を抱いた
都市伝説の気配が、ない
だが、別な気配を感じるのだ
「獏」が主食とするものの一つ、“病気”の気配が

「……何だ、あれ」
「『病威怪(ヤマイケ)』だ」
「は?」

「幽霊」―――もとい『病威怪』と呼ばれたそれは、凄まじい速さで2人の間を駆け抜ける
瞬間、突風が吹き抜け、アスファルトや家屋を大きく引き裂き、爪痕を残す
何だこれ――――――――そう思うのも束の間、『病威怪』はUターンし、またやってくる

「んにゃろ…」
「待って理夢くん、あれは普通の人間じゃ太刀打ちできないよ」
「んじゃどうやって」
「僕に任せて――――――ハックシュン!!!」

突然の、大きなくしゃみ
あっけにとられた理夢だったが、その直後だった
先程と同じ勢いの突風が吹き、『病威怪』を押し退けたのだ
あんぐり、と口を開ける理夢
刹那に怯んだ『病威怪』だったが、すぐさま突風と共に数弥に接近する

「……恐らく“風邪”の『病威怪』だね……だったら僕も同じだ」

数弥の右腕が、赤々と燃え上がる
振りかぶった拳は、迫りくる『病威怪』に見事にクリーンヒットした
意外にも音はないが、『病威怪』は顔から綺麗に崩れ去り、
勢いの強い風を残して消滅してしまった
じゅるっ、と数弥は鼻をすする

「ふう、またあとで薬を飲まないと」
「え、てか、え? 数弥、なんだよあれ」
「理夢くんは初めてかな?」
「あぁ、何もかもちんぷんかんぷんだ」
「ま、あまり知られてないからね
 少し前、ある医療研究グループの研究発表の時、不慮の事故が起こった
 その日を境に、不思議な現象が発生するようになったんだ
 風邪や中毒、炎症……一般に病気として知られるものの症状が、
 明らかに大袈裟に発症する…今の僕みたいにね
 専ら『病威(ヤマイ)』って呼ばれてる。英語だとPowered Illinessだったかな」
「病気が……大袈裟に?」
「と、もう一つ。今の…『病威怪』と呼ばれるものが出現するようになった
 生物ではないし、幽霊のようないるかどうかわからないものでもない
 物質として存在しているらしいけど……その実態はまだ謎の部分が多い」

チーン、とポケットティッシュで鼻をかむ数弥
紙くずを手持ちのゴミ袋に入れて仕舞うと、さらに話を続けた

「…そして、世界にも一握りしか観測されていない、『病威』を操る人間
 人は彼等を、『病威誰(ヤマイダレ)』と呼ぶ
 僕はその一人……“風邪”の『病威誰』だ」



   ...to be continued

やっべ2レスで収まっちまった……いつか加筆修正しよう…



何言ってんのか全く分からんと思うんだが
元のストーリーは、俺が大場つぐみ(DEATH NOTE等)の都市伝説を聞いた時
「あれ、てことは漫画書けなくてもストーリーだけ考えれば…」
とかアホなこと考えて本気でジャンプ用に練った結果、話が纏まらずに構想だけで終わった話です
要は『病威』っていう異常現象の力を持った人間が『病威誰』、化け物が『病威怪』、という
モデルがあれなんで感づくとは思うが、数弥には兄がいます

鳥居の人も来てたのか……くっ(何故悔やむ
あれこれ返事してないの多いなぁ

>>566
実はリアルに考えていた別ルートだったという
やっぱし裂邪は皆とわいわい騒いでる方がいいなーと思ったので今のルートに(ほぼ書けてない訳だがorz
あの世界のれっきゅんは……次をお楽しみに☆

>>569
思えばターニングポイント結構あるんすよねぇ
「レイヴァテイン」と初めて契約した時は別ルートで蓮華と三角関係まっしぐらだったしw
その世界も書こうか迷ったけど断念しましたorz

>>575
大王はともかく何故俺なんだ!(
燐子ちゃん懐かしいなーてか再登場嬉しい
てかパッチに恋だと……手足の生えた「ケサランパサラン」だった筈だが(ぁ

>>608
すぐ傍に漫画『5D's』が落ちてたからってのは秘密
偽名も割と適当に「虹…レインボウ…雨と弓か」みたいな(もっと男っぽい名前にしたかったけどな!

>>609
何故奴は生きてたのか!?
続きを乞うご期待!(いつになるか分からんが!orz

運が良ければ今夜中に返答ネタ投下できるんで次世代ーズの人ちょっとまってね

>「違うですよ? 俺はエロガキ違うですよ?」
(暖かな眼差し続行)

そして、残念なお知らせです
「先生」、猥談とかエロ話題はふられたらするけど積極的にやる訳でもないんだよな
女性の3サイズとか体重は平気でバラすけど

>>383-384 俺
>>403-406 次世代ーズの人
>>425-426 俺
>>452-458 次世代ーズの人
>>486-490 俺
>>538-544 次世代ーズの人
>>581-587 俺
>>596-598 次世代ーズの人

と、言うわけで引き続きハイパー説明回はっじめるよー




   世界は毒で満ちている

   否、世界とは毒によって作られているものである



                      Ahuldea・Arkynayth

 夕日が完全に地平線へと飲み込まれ、夜の闇が降りてくる
 チカチカと街灯に明かりが灯り、せっかくの夜と言う支配者の体は虫食いのように削られた

 三人が向かっている先は、住宅街にある「先生」の診療所
 かつて「狐」に誘惑され、それが解除されてもなお生きていると言う特例
 その証言は、貴重なものだろう
 ……貴重なもの、の、はずなのだ、恐らく

「あぁ、そうだ」
「何だ?」
「もし、「先生」の言う事がやけに遠回りだったり、わかりにくい表現してきたとしたら、その時は頑張れ」

 頑張れ
 なんとも他人事であり無責任な言葉である
 が、直斗としても、このように言うしかないのだ。「先生」に関しては
 もっとも、突然、そんな事を言われた早渡としては怪訝な表情を浮かべるしかないのだが

「情報を聞き出すのに難儀する相手、と言う事か?」
「情報自体は、割合話してくれる。ただ、さっきも言ったように遠回しな言い方だったり、表現がわかりにくかったりするんだよ」

 運が良ければ問題なく聞き出せる、と直斗は言う
 若干、「先生」と言う人物について不安になったのか、それともどんな人物か興味でも抱いたのか

「その「先生」って、どういう人物なんだろうか」

 と、早渡が尋ねると

「おっぱい星人」
「ど変態」

 直斗と星夜が、ほぼ同時に即答した
 そう、即答である
 常日頃から、「先生」をそう思っていると言う証拠だろう

「一応、悪人ではないよ。善人でもないけど」

 続けて、こう評価した直斗と

「善悪の区別がついてない節があるのと、頭のネジが数本飛んでる節はある。現時点では正気だとは言うが、見ようによっちゃ今でも狂人だ」

 更に続けて、こう評価した星夜
 人によっては、「先生」と対面する事を戸惑いそうな説明に聞こえなくもない
 当人逹としては、ただ真っ正直に答えているだけだろうが

「基本的に、子供には親切な方だから大丈夫だと思うよ」

 と言う直斗のフォローでどれだけ挽回できたかは謎だ

 そんな会話を交わしつつ歩いていると、診療所が見えてきた
 ちょうど、入り口のところで「本日の外来受付終了」の札を下げようとしていた、直斗逹と同年代か一つ年上程度の少年が直斗逹に気づき、視線を向けてくる

「直斗、どうし……あぁ、星夜は診察か?」
「や。灰人。こんばんは」
「おぅ、「いつも通り」のだ」

 「いつも通り」で何の事なのか理解したのか、外来受付終了の札を下げながらもその少年…荒神 灰人は扉をあけた
 そうしてから、早渡へと視線を向ける

「そっちは?」
「「先生」に聞きたいことがあるって言うから、案内してきた相手」

 早渡が答えるよりも早く、灰人にそう答える直斗
 灰人は少し、早渡に警戒するような視線を向けたが「…まぁ、ここならなんとかなるか」と呟き、早渡にも中に入るよう促した

 診療所の中に入ると、待合室………と、カーテンで仕切られた診察室がちらり、と見える
 「先生」はどうやら診察室にまだいるようだった
 カーテン越しで、ちょうど足しか見えないが椅子に腰掛けているようだ

「ん、我が助手、お疲れ様。冷蔵庫に入っとる娘が作ったアップルパイ持って帰って良いよ。なので、できれば君の母君に、そろそろ私の扱いもうちょっとマシにしてほしいと伝言を……」
「「先生」、診察」

 カーテン越しに聞こえてくる「先生」の言葉を遮りながら告げる灰人
 おや?と「先生」がひょこり、顔を覗かせる
 さらりと白い髪が揺れて、眼鏡の奥の真紅の眼差しが星夜をとらえた

「あぁ、君か、星の少年。「残留思念」を使ったあとの不調かい?」
「不調は出てないが、「三年前」の事件があった場所で能力を使ったから、念の為だ」
「おや、「また」かい?……まぁいい。おいで。さて、あとの2人は付き添いかな?」

 「先生」の言葉に、星夜は慣れた様子で診察室へと入っていく
 その様子を見送りながら、直斗はにこにこと答えた

「半分はその通り、もう半分は、こいつが「先生」に聞きたい話があるって言うから、連れてきたんだ」
「ふむ。そちらの確か顔を合わせたことがないはずの少年が、かね?」

 早渡をじっと見つめながら、「先生」は記憶の中から以前遭遇したことがあるかどうか、探っているようだった
 すぐに思い当たる記憶の中に早渡の姿はなかったようで、「恐らく初対面」と判断したようだ

「こちらの少年の診察が終わってからで良ければ、聞きたいことがあるなら答えるよ。隣の部屋で待っているといい。そっちならお茶もあるから」
「はい、わかりました」

 年上相手、と言うか大人相手だからか、きちんと丁寧に対応する早渡
 そんな早渡に、直斗は「こっちこっち」と慣れた様子で手招きした
 待合室の隣の部屋の扉を開けている
 開けたその向こう側には、大きめのテーブルが一つと、いくつかの椅子が置かれているのが見えた

「…ずいぶんと、この場所に慣れた様子だな?」
「こっちの部屋、みんなで遊ぶ時に使わせてもらってたりするから」
「診療所への用事じゃないのか」

 いいのかそれ、とツッコミ入れるように言う早渡だが、いいんだよ、とむしろカーテンの向こう側の「先生」が答えてきた

「そちらの部屋は普段は使っておらんしね。有効活用してもらえるなら、それで良いさ」
「「先生」もこう言ってるし、問題ないよ」

 にこにこ笑いながら、その部屋に入っていく直斗
 早渡も、その後に続いた
 部屋の中には急須や茶筒、湯呑み、保温ポット等も置いてあり、直斗はこれまた慣れた様子でお茶をいれはじめる
 他にも、部屋の隅に置かれている机の上には何冊も本が並んでいた。民俗学やら古事記のような日本の古い神話・民話に関わる物が随分と多い
 休憩室、兼物置みたいな扱いなのだろうか、

「随分、若い先生なんだな…」
「あの白衣を見た目通りの年齢だと思わない方がいいぞ」

 早渡の呟きに、部屋に入ってきた灰人がそう告げた
 「先生」の正式な年齢については灰人もはっきりとわかっていないが、少なくとも3,40年前にはすでに大人だった事はわかっている
 それを考えれば、20代後半程度に見えるあの外見通りと思わない方が良いのだ

 それと、と
 灰人は早渡から直斗へと視線を移して告げる

「直斗、帰る時は同行していくからな。また、学校町の物騒度があがってきているから」
「えー、別に俺一人でも平気だけど……まぁ、星夜もいるんだし、わかった」

 あっさり、灰人の言葉を了承する直斗
 直斗の返事に、灰人は「よし」と頷いて、荷物を取ってくると言ってその部屋を出た
 部屋には直斗と早渡だけが残される

 直斗は、のんびりお茶を飲む構え入った……ようだったが、「あ」と思いだしたような顔になり

「そうだ。スマホのメールでもTwitterでもLINEでもいいから、アドレス交換しよう」
「えっ?」
「連絡先、わかってた方がいいだろ?後々わかった追加情報とか教えやすいだろ。連絡手段は鳩だ、とか言われたら流石に住所教えるのはアレだけど」
「安心してくれ、鳩はない」
「うん、それは良かった」

 そういう知り合いもいるから、とぽそっと呟く直斗
 どうやら、特殊な知り合いもちらほらといるらしい
 直斗の申し出に、早渡はわかった、と頷いて。自分のスマートフォンを取り出した


 診察を終えて、星夜が休憩室兼物置に入る

「診察終わっ………なんでそいつ、気持ち悪い動きしてんんだ」

 星夜が部屋に入ってまず見たもの
 それは、なんかビクンビクンしている早渡の姿だった
 「えろい」だのなんだの口にしているようだったが、星夜はそっと早渡から距離を取る
 直斗の方は、早渡の様子をむしろ面白がっているようだった

「面白いやつだからいいじゃん……星夜、診察結果、どうだった?」
「今回は特に問題なし。様子見で一週間は「再現」はするなっつわれたが」

 軽く眉間をもみながら、星夜は直斗に答える
 答えている間に、ビクンビクン状態から回復したらしい早渡が正気に戻った

「診察が終わった、って事は「先生」に話を聞いてきて大丈夫か」
「話聞くんだったら、さっさと行っとけ。向こうは夕食まだだっつってたから」

 わかった、と部屋を後にする早渡
 その早渡に「頑張れよ」と、直斗は他人事のように笑って、ひらり、手をふって見送った



 診察室に入ってきた早渡に、「先生」はどうぞと椅子を勧めた
 普段は患者が座るのであろうその椅子に早渡が腰掛けると、さて、と「先生」は早渡を見つめた

「さて、ホモの少年よ」
「タイム」

 ストップ
 「先生」の言葉を一旦、止める早渡
 何であろうか、と首を傾げる「先生」に

「俺、ホモじゃないです」

 と、至極真っ当なツッコミを入れた
 彼としても、流石にそこはツッコミいれたい、と言うか誤解されたくないポイントだったようだ

「そうかね?うむ、了解した。星の少年が、君のことをそう表現していたので、そうなのかな?と思っておった」
「風評被害です。違います。女の子の方が好きです」
「OK、実に安心した。尻の心配をせずに君と会話できそうだ………さて、改めて、私に聞きたいことがあるそうだね?」

 「先生」は、穏やかに早渡を見つめ、問う
 はい、と早渡は頷いて。その表情が引き締まる

「…「狐」についてです。「先生」は、以前、「狐」からの誘惑を受けて、しかし、それが解除された、と聞いています」

 早渡の言葉に、「先生」はおや、と声を上げる

「その件絡みかい?そうなると、20年近く前の話になるよ。あまり参考にならんかもしれん」
「構いません。話してくださいますか?」
「参考になるかならないか、微妙な意見でも良ければね」

 穏やかに笑い、そう答えた「先生」
 ならば、と早渡は質問を開始する

「それじゃあ、まずは。「狐」に誘惑された時、どんな感覚になるんですか?」
「感覚、か。強烈な惚れ薬と麻薬を与えられた感じ、かな。「狐」がこの世で絶対的に正しい存在であると感じ、彼女の為に生命をかけてでも尽くしたくなる。それ以外、考えられなくなる………どの程度強い誘惑を受けたか、にもよるが。そんな感じかな」

 すらすらと、「先生」は答える
 幸いな事に、さほどわかりにくい説明でもない

「なるほど。続けて。先程も言いましたが、「先生」は「狐」に誘惑されて解除された成功例の1人だと言う事ですが。どうやって解除されたのですか?」
「解除法か。参考にならんだろうが、「狐」自ら、誘惑を解除してきたのだよ」
「……「狐」が自ら?」

 その通り、と「先生」は微笑み、頷く
 自力で解除した訳でもなく、第三者に解除してもらった訳でもない
 「狐」が自ら、解除した
 だから、「参考にならない」と「先生」は言うのだ

「何故、「狐」が自ら、わざわざかけた誘惑を解除したのか。まぁ恐らく、誘惑をかけられた当初の私は絶賛発狂中であった故、誘惑された直後に「狐」を毒殺しようとしたからだろうね」
「毒殺」
「うん、毒殺」

 にこり、と
 なんでもない事のように笑いながら、「先生」は続けた

「発狂当時の記憶こそあれ、当時抱いていた感情に関する記憶は曖昧故に今の私には当時の私の思考パターンをはっきりと理解しきれんのだが、推測するに「この世界で生き続けてもそれは彼女にとって不幸でしかない。ならば、彼女のために彼女を殺そう」と考えたのではないかね」

 ほぼ推測で申し訳ないが、と「先生」は早渡にそう告げる

 「先生」もきちんと覚えていない事だが、先程の「先生」の推測はほぼ当たっている
 当時の彼にとっては、それが「正しく彼女(「狐」)の為になる行動」であると信じて疑わなかったのだ
 が、「狐」からしたら、いきなり毒殺を試みられてはたまったものではなかっただろう
 相手が、人間以外から見ても理解できない存在であると気づいた「狐」は、とっとと誘惑を解除して逃げ出したのだ
 人間的にも、人間以外の存在的にも、生存本能として至極真っ当な判断である
 当時の「先生」は、関わるだけで死の危険があるような、猛毒を通り越した「死毒」そのものだったのだから

 ……とはいえ、「先生」は当時、己がやらかした事は記憶しているものの、当時の自分の「危険性」に関してはいまいち理解できていない
 そして、早渡は当時の「先生」については全く知らない(はず)
 そのあたりの事情についてはわからないままである
 なので、早渡は次の質問に入った

「わかりました。次の質問……は、「狐」に誘惑されていた時の事を覚えているかどうか、なんですけど。先程答えていた事から考えると」
「あぁ、覚えているね。誘惑の強度による違いや個人差がある可能性はあるが、少なくとも、私は100%覚えている。その瞬間に抱いた感情に関して曖昧な部分があるのは、私が発狂状態から正気に戻る際に首から上を綺麗にぶっ飛ばされせい故、誘惑されていた事は全く関係ないし」

 答えるついでに、ぽろっと酷い情報が漏れ出す

 「先生」としてはただ事実を話しているだけ、と言う感覚のようであり、しかし、同時に自分の事を喋っていると言うのに、まるで他人事のように話していた
 そんな「先生」について、早渡がどのように考えているかは「先生」はわかってはいないだろうし、特に気にしてもいないのだろう

「少なくとも、「先生」はしっかり覚えている、と。それじゃあ、次の質問。「狐」の能力……魅了の力への対処法が知りたいんです」
「対処法。すなわち、魅了により誘惑されない方法が知りたい、といったところかな?」

 はい、と真剣な表情で頷く早渡
 それなら、と「先生」は穏やかに早渡を見つめながら答える

「なるべく「狐」と接触しない事、触れ合わない事、視線を合わさない事、言葉を聞かない事。基本はそこだね。「狐」の魅了は視覚聴覚触覚、ありとあらゆる感覚に働きかけてくるものだから。ぶっちゃけた話、遭遇しないにかぎる」

 「狐」そのものと遭遇しない事
 それが一番の対処法である、と、そのように「先生」は断言してみせた

「遭遇してしまった場合に備える、としたら。「大切な存在」を作っておきなさい」
「大切な存在?」
「そう、誰よりも大切な、大切な存在。絶対に、他の何者もがその座に収まるなど許されない。それほどに大切な存在。たとえ、無意識下に思う相手でもいい。それがあれば、魅了に耐えられる事もあるそうだよ。「通り悪魔」の御仁等は、それによって魅了に抵抗したね」

 もっとも、と
 続ける言葉を口にしていたその時、「先生」はほんの少し、同情しているような、静観しているような、哀れんでいるような、そんな表情を浮かべた

「あの御仁の場合、誘惑されないのは、「狐」に対する激しい怒りがあるからかもしれんね。それを思えば、「狐」に対する怒りや憎悪が一定以上ある場合も、魅了されずにすむのかもしれん………何分、データが少なくてね。断言できる段階ではない」

 にこやかで穏やかな表情に戻る「先生」
 早渡は、そんな「先生」に。さらに質問を投げかける

「あの……「先生」は、「三年前」の時点で、もう学校町にいたんですよね?」
「あぁ、そうだよ」
「それなら………「三年前」、『狐』が一度、学校町から離脱した後の話なんですが別の町で『狐』の手勢のうち、恐らく別動隊が、何者かに魅了を上書きされて。その結果、別動隊の多くが何者かの命令の所為で自害したそうです……この出来事についてご存知ですか?」

 真剣な表情で、まっすぐに「先生」を見つめて、早渡はそう問うた
 早渡のその質問に、「先生」は「ふむ?」と記憶を探る

「ん、んー……すまんな。その話は、私は把握していないね。少なくとも「薔薇十字団」はつかんでいない情報だ」
「……そう、ですか………その。そんな事、って可能なんでしょうか?」
「狐の魅了を上書き、の件についてかな?」

 はい、と頷く早渡
 すると、「先生」は

「理論上は十二分にありえることだ」

 と即答した

「そもそも、魅了系にかぎらず、精神に影響を与える能力というやつは、同じく精神に影響を与える能力によって上書きが可能なんだ。支配系能力に関しても同じだね。たとえば、「はないちもんめ」による支配を「スパニッシュフライ」による魅了で上書きするようにね」
「魅了にかぎらず、精神に影響を与えたり他人を支配するような能力を持った者なら可能、と言うことですね」
「その通り。もっとも、その能力の使い手の力量が「狐」より上でなければ難しいけれどね。魅了能力によって対抗し支配権を奪うのならば、なおさらだ。別の精神系・支配系能力であれば、魅了で対抗するよりは楽であろうが。それでも難しいと思うよ」

 「先生」が答え終えると、早渡は「先生」の回答によって得た情報を頭のなかで整理しているのか、考え込んだ表情になった
 まだ質問すべき事がないか、考えているのかもしれない


「………世界は、「毒」でできている」


 その時
 「先生」がそんな事を、ぽつり、と口にした
 思わず早渡が顔を上げると、「先生」は先程までと同じ穏やかな表情のまま、言葉を続けてきた

「世界は毒に満ちており、人は毒によって生き、毒によって殺される。人は毒がなければ生きられず、人は毒があるからこそ死んでいく。世界とはそのようにできている。故に、人は毒を理解しなければ生き続けられない」

 緩やかに、穏やかに
 それが、世界の絶対の法則である、と断言している訳ではなく
 少なくとも、「自分にとっては世界とはそういうものなのだ」とふと口にしたくなってしていると言うような、そんな声音だった

「思い込みとは猛毒である。無知とは猛毒である。しかして、全てを知ったとして毒に殺されぬ訳ではない。逆に、全てを知ったが故に「絶望」と言う名の致死量の猛毒によって殺される事もまたある」

 早渡を穏やかに見つめて
 子供を見守る大人のような表情で、「先生」は続ける

「知りなさい。たくさん、たくさん。君にとって必要な事を。「自分にとって都合のいい真実」ではなく「真なる真実」を見つけてごらん。sの真実が君にとって絶望だったとして、その絶望という猛毒に負けないくらいの、希望と言う猛毒を見つけてご覧。そうすれば、大概のことは、きっと大丈夫さ」

 穏やかに、静かに、緩やかに、「先生」は早渡にそう告げた




 その言葉がどのような意図から贈られたものであるのか、贈られた当人である早渡に伝わったかどうかはわからない
 少なくとも、「先生」自身、完全に伝わらなくてもいいと感じて発言したものなのかもしれない

 ただ、穏やかに早渡を見つめる「先生」の表情は、子供を教え導く者のものだった




to be … ?

と、言うわけで。早渡君からの質問全部答えた……はず。見逃しあったら申し訳ない
もし、追加で質問とかあったら「先生」はそれも(答えられるなら)答えてくれるかと

あと、早渡がもう質問なくて帰るなら、「先生」が携帯の番号教えてくれると思う
何かあったら来なさい、って感じで。都市伝説事件絡みの負傷やらなんか変な影響受けたー、とかも診る事を伝えてくるかと


そしてすまねえ、連絡先交換シーンうまく書けなかったのでそっと飛ばした()普通に連絡先交換したんでしょう
星夜も、交換希望すれば交換に応じてくれます
直斗逹は、早渡君が「先生」から話を聞いている間に帰ってそうなので、星夜との連絡先交換チャンス、「先生」から話し聞く前だけですけど(無理矢理突っ込めなくもない、と思う)

あ、いけね。注意事項っぽいの忘れてた
「先生」、基本的に人のことを名前で呼ばないし、自分の名前も名乗りません
「先生」自身の名前については尋ねられれば答えますが、他の人の名前に関しては一部を除き口にする事はレアケースになります
「○○の少年」とか「○○のお嬢さん」とか、そんな呼び方になる
「こいつの事、「先生」なんて呼んでる?」ってのあったら質問してくだされば答えます


花子さんの人、お疲れ様です
そしてありがとうございます!!
まさか「先生」からこんな言葉を頂けるとは!
いまの早渡の心境的にはエロ抜きにしても「先生」に尊敬の念を抱きますね
思えば早渡は七尾を出てから良い大人と出逢う機会が増えた
篠塚さんに「先生」に……早渡、本当に大丈夫か!?


>>626
早渡から質問はもう無いはずです
十分過ぎるほどお話を聞かせてもらって良かったです!
雰囲気が許せば先生と猥談始めそうですが
流石に初対面だし、何より夕食前ですのでそろそろ失礼するかもですね

先生の連絡先、ありがとうございます
連絡先交換シーンの件も了解です! 自分が書こう
星夜くんとの交換についても了解です
早渡は本来、「組織」関係者とは関わりたくないのですが
なぞのこうふんにうかされてる早渡は「ぷりーづ」と言いながら連絡先を伝えます
そしてさらにこうふんするぞ! めんなのめがしんぱいだな!
こちらも自分が書きましょう

>>627
こちらも了解です!

No.0戦後の医務室
>>195の続き


「いくら俺だって、「賢者の石」と契約したと言われるような奴とは戦争したくねぇよ」

『先生』についての尋ねた三尾に、黒髭は吐き捨てるように言った。
その都市伝説の名を聞けば、黒髭の苦々しい口調にも納得がいく。
能力の内容にもよるだろうが、もし三尾が一人でその「賢者の石」と相対すれば、ひとたまりも無いだろう。
時間があるときに、暴走した能力者を鎮圧する専用の部隊を編成を考えてみるのも良いかもしれない。
……Y-No.にその役目が回ってくるとは思えないが。


ともあれ、『先生』を警戒する理由は分かった。
これ以上の詳細は自分で資料なりを調べた方がいいと判断する。


黒髭の様子を窺うと、三尾と会話中でもしていたように、契約者である外海の方を気にかけていた。
三尾がそちらを見ると、連絡先の交換はもう終わったらしい。

「ところで、もうお帰りですか?」
「ああ、用が済んだら帰るつもりだ」
「でしたらこれをどうぞ、外海さんへ。鎌鼬の傷薬です」

三尾はコンパクト容器を黒髭に手渡した。
蓋を開けると、鮮やかな緑色の軟膏が入っており、微かに爽やかな匂いが広がる。
容器をよく見れば、丁寧にも注意書きの書かれたシールまで貼ってある。
黒髭が三尾を見ると、三尾は微笑んだまま小首をかしげた。

「何故、わざわざ俺に渡す」
「契約者さん思いの方のようですから。不審なモノは近づかせたくはないと思いまして」

危険な物ではないかの確認は必要でしょう、と続ける三尾。
出会ったばかりの、それも『組織』の所属者からの物なら、なおさら必要だろう。
疑われるのを、拒否されるのを承知した上での、それでも善意からなる贈り物。

「不要でしたら戻していただいて構いません」

手で促された方を見ると、似たような容器が何個も入った籠が置かれていた。
医務室の様子を見た限りでは、この薬は使っていないようだ。
配るためにわざわざ持ってきたのだろうか。

「それでは私はこれで。お話ありがとうございます」




今さらで短過ぎるが闘技大会の話
せっかくなんで傷薬を配ってみる
返却すると微笑んだままだけどすごく寂しそうな表情します

普通の会話の時は基本的に誰とでも、相手を安心させるような健全なる笑顔で人と接します
なので明るく真面目で良い子に見える事でしょう

それとイケメンドクターをチラチラ見てる美少女ナースの図はいろんなことが想像できそうです

 
やる気のない黒服の人、お疲れ様です
三尾さんはYナンバーの幹部というイメージがあったので
こういう一面が見れたのは新鮮だった

三尾さんの髪型がどうなっているのかは以前避難所で解説されていたが
夢魔さんのときのようにビジュアルが公開されるのではないかと
ひそかに期待している……



>>612
ありがとうございます
コーラレイピアは彼女の武器です
ここからムチのように一気に形状を変化させるのが
彼女の今後の課題でしょうかね

不定形の武器か……
ソレイユと高奈先輩を除くと生成で不定形な武器を得手とするのは
早渡と彼女くらいだろうか……もっと居た気もする……



そして花子さんの人!
すいません! まだ全体が出来ていません!
申し訳ないです、出来てる分を先に出します!
 

 

 俺達が東区の診療所に着いたのは
 丁度外来受付終了の札が下げられようとしたときだった

「直斗、どうし……ああ、星夜は診察か?」
「や、灰人。こんばんは」
「おぅ、『いつも通り』のだ」

 札を下げようとしていたのは俺達と歳の近そうな人だった
 どうやら花束野郎と知り合いらしく、診療所の扉を開けながら応じた

 視線が合った
 一応会釈をする
 向こうはこっちを警戒していた

「そっちは?」
「『先生』に聞きたいことがあるって言うから、案内してきた相手」

 まぁ、ここならなんとかなるか
 彼からそんな呟きが聞こえた、気がする

 もうどうにでもなれ
 折角ここまで来たんだから話を聞いて帰る積りだ

 彼の警戒を意識的に無視して診療所の中へと入った





「『先生』、診察」

 札の人がカーテンに仕切られた部屋の向こうへと声を掛ける
 直前、カーテンの向こうから何か喋っているのが聞こえた
 あれは診察室で奥に居るのが「先生」なのか

 「先生」は札の人を「我が助手」と呼んでいるようだった
 俺達と歳は近そうだがこの診療所で働いているんだろうか

 助手さんの声に部屋の向こうから「先生」が顔を出してきた
 白い髪の、思いの外若そうな人だった
 この人が「先生」か

「あぁ、君か、星の少年。『残留思念』を使ったあとの不調かい?」
「不調は出てないが、『三年前』の事件があった場所で能力を使ったから、念の為だ」
「おや、『また』かい? ……まぁいい。おいで。さて、あとの2人は付き添いかな?」

 栗井戸君と話した後、「先生」はこちらに話を振ってくる

「半分はその通り、もう半分は、こいつが『先生』に聞きたい話があるって言うから、連れてきたんだ」
「ふむ。そちらの確か顔を合わせたことがないはずの少年が、かね?」

 花束野郎が答え、「先生」は俺を眺めながら尋ねる
 俺も「先生」の顔は初めて見た。絶対に初対面だ

「こちらの少年の診察が終わってからで良ければ、聞きたいことがあるなら答えるよ
 隣の部屋で待っているといい。そっちならお茶もあるから」
「はい、わかりました」

 「先生」の厚意に頭を下げた
 花束野郎が俺を手招きした
 待合室の隣の部屋だ

 なるほど、花束野郎の勝手知った場所ってわけか

「こっちの部屋、みんなで遊ぶ時に使わせてもらってたりするから」
「診療所への用事じゃないのか」

 野郎の言葉に思わず突っ込んだ
 診療所に遊びに、って良いのかそれは

「そちらの部屋は普段は使っておらんしね。有効活用してもらえるなら、それで良いさ」
「『先生』もこう言ってるし、問題ないよ」

 「先生」も野郎もそんな風に答える
 果たしていいのだろうか?

 

 

 部屋の中へ入った花束野郎は手慣れたようにお茶の準備を始める
 休憩室のような場所なのか、ここは

「随分、若い先生なんだな……」

 花束野郎に対し、「先生」に対する率直な感想を口にした

「あの白衣を見た目通りの年齢だと思わない方がいいぞ」

 俺にそう返したのは、俺の後ろに居た助手さんだ
 何だ、見た目通りの年齢では無い、ということか?
 あれで実際はかなり歳が行ってるとかなのだろうか

「直斗、帰る時は同行していくからな。また、学校町の物騒度があがってきているから」
「えー、別に俺一人でも平気だけど……まぁ、星夜もいるんだし、わかった」

 野郎と助手さんのやり取りを漫然と耳にしながら部屋を見回す
 助手さんは部屋に入ったかと思えば、荷物を取ってくると言ってすぐに出て行った

 立っているのもなんだし、座るか
 花束野郎の方は完全にくつろいでいる

「そうだ。スマホのメールでもTwitterでもLINEでもいいから、アドレス交換しよう」
「えっ?」

「連絡先、わかってた方がいいだろ? 後々わかった追加情報とか教えやすいだろ
 連絡手段は鳩だ、とか言われたら流石に住所教えるのはアレだけど」

「安心してくれ、鳩はない」
「うん、それは良かった」

 どうやら俺と連絡先の交換がしたいらしい
 ほう、俺相手にナンパとはいい度胸だなこの野郎
 真面目に振り返ると、正直今でもこいつに関しては半信半疑だ
 さっきは面倒臭い事態になるのは御免なので情報を教えると話していたが

 実際はどうなんだろうな
 ただまあ、こいつのお陰で「狐」関係の件も進んだ、気がする

「ありがとな、色々教えてくれて」
「別に。どうってことないよ」

 相変わらずのニコニコ顔で野郎はそう答えた
 次いで俺は右手に納まっていたあの紙切れを渡す

「あと、これ。東ちゃんが君にあげるってさ」
「ん、どうも。これは電話番号か?」
「かもな」

 さて、次は俺の番だな
 携帯を出して野郎とのアドレス交換に応じる
 最近の携帯は凄いようで、互いにかざすだけでやり取りが出来るらしい

 あ、待て。商業でも新学期の頃に思ったが、これ危なくないか
 互いの携帯が近い距離で一番大事な個人情報をやり取りだ
 一番大事な物がこんな近い距離で、だぞ? 危なくないか?

 野郎は既に携帯を取り出して、俺のに向かってかざしていた

「あっ、ちょっ、まっ!!」
「え?」

 遅かった。データは一瞬にしてやり取りされた



 

 

 こいつの大事なのが俺の中に流れ込み
 俺の大事なのがコイツの中へ入っていく

 なんて変態的なんだ!
 なんでこいつこんな平気な顔してられるんだ!?

「なんかひわいだ! こういうのなれない!!」

 よりによって花束野郎とこんなことをやるだなんて!
 俺はこいつに犯されたのか?
 それとも俺がこいつを犯ってしまったのか!?
 それが問題なんじゃない! どっちにしても大問題だ!

「すごいひわい! えろい! このへんたい!!」

 なんて奴だ!! なんでこいつはニコニコしてられるんだ!?
 こいつはアレか!? 真正の変態で俗に言うドSなのか!?

 望んでも無いのに体がびくびくしてしまう
 そしてそれを止められない! なんてこった!
 俺はどっちかというと女の子とこういうのやりたかったよ!!

 乱れた呼吸を抑えながら、震える手で携帯の画面を確認した

 「花房直斗」。それが野郎の名前らしい

「何これ、『青い歯』?」

 悪いが俺は自分のことで精一杯だ!
 そっちは自分で何とかしてくれ、花束野郎、もとい花房君!

「えーと、さわたり、しゅーじゅ、でいいのか? 面白い名前だな」
「診察終わっ……なんでそいつ、気持ち悪い動きしてんだ」

 声の方に首を捻った。栗井戸君だった

「面白いやつだからいいじゃん。……星夜、診察結果、どうだった?」
「今回は特に問題なし。様子見で一週間は『再現』はするなっつわれたが」
「診察が終わった、って事は『先生』に話を聞いてきて大丈夫か」

 ようやく交換ショックから心身回復しそうだ。俺はどうにか立ち上がった

「話聞くんだったら、さっさと行っとけ。向こうは夕食まだだっつってたから」
「いやその前にやることがある。栗井戸君、携帯を出せ」
「は?」

 栗井戸君、悪いが君に拒否権は無いぞ
 俺がさっき花束野郎にされたのと同じ気分を味わってもらう

「さあ、携帯を出すんだ! ぷりーづ!!」

 携帯を持つ手を掴み、半ば強引に俺の携帯を近づける
 無慈悲にも、データのやり取りは一瞬だった

「ひひぃぃいンっ!! おれはまけないっ!! このひわいさにっ!!」
「お前『先生』に質問する前に、先ず頭を診てもらえ」

 体が勝手にびくびくするのが抑えられない!
 まるで汚物を見るかのような栗井戸君の視線が突き刺さる
 でももう何も怖くないぞ。嘘、やっぱ怖い。栗井戸君、目が怖い




 そうか、「先生」は俺の頭も診てくれるのか。なら安心だな

「わかった」

 それだけ返事をして、俺は診療室に向かった




「おい、何だこれは。データが文字化けしてるが」

 背後から何か聞こえたが、とりあえず無視した
 

 
はいっ! 今日はここまでっ!
花子さんの人、本当に申し訳ないorz
ひとまず直斗くん達がもうそろそろ帰るっぽいので
最後のやり取りの辺りまで先行して投下しました
続きは……も、もうちょっとで出来ます!
(鍋から火柱が上がっており、厨房には黒煙が立ち込めている)

「先生」とのやり取りですが、今週末迄には出したいです
>>627に関して「先生」は早渡のことを「ホモの少年」以外だとなんて呼ぶかなーと……
これは次世代ーズのほうで考えよという件ですね、失礼しましたorz

あと、当夜なんですけど
もしかしてうっすらと霧が立ち込めていたりするでしょうか?


過去の話で早渡は女の子達とスマホビームでアドレス交換しなくてよかったです、本当に
危険すぎる

高奈「                              ♥」
千十「    ♥                               ♥」
早渡「ちッ違うンだぁぁぁぁぁぁっっ!!」 ☜ 無論、上記は全て彼の妄想である
 

次世代ーズの人乙ですー
安心してくれ、俺も明日には死亡フラグ片付けるネタ投下したいのにまだ書けてなくてな!!()

アドレス交換時の反応wwwwwww
星夜のツッコミ、うん、あいつなら言うわwwww
安心して、「先生」、一応頭も診れるよ!

「先生」「え、頭開いて中を見ろと?」

違う、そうじゃねぇ

>>>627に関して「先生」は早渡のことを「ホモの少年」以外だとなんて呼ぶかなーと……
んー、そうだな
たとえば、所属組織がわかったら、その組織名+少年になる可能性もあるんですが
面白い少年、辺りかな。今の印象だと(隣部屋でのやりとりが聞こえたらしい)

>もしかしてうっすらと霧が立ち込めていたりするでしょうか?
そこら辺、特に決まってなかった
霧が立ち込めていたほうが都合いいなら、そういうことで問題ねーですよ

>危険すぎる
本当にな!

 
>>638
ありがとうございます
呼び方は宿題にします
「迷い子の少年」か「骨の少年」か
「面白い少年」か

霧の夜についてもよくよく考えておこう

早渡の危険性ですが
他にも
バイブで震えてる携帯の上に
もう一個別のバイブ中の携帯を乗せます
早渡は動揺します
異常です

最初はピュアなラブコメと言ってましたが
どんどん早渡の変態告白録になりつつあるよ
 

>>639
なお、大穴として「変態の少年」の可能性(やめたげてよぉ!案件&お前が言うな案件)

>早渡は動揺します
(生暖かく見守る構え)




   過去の遺物は、未来への遺産を残すためにあるべきである






                         Ahuldea・Arkynayth

 学校街は、秋も終盤に入るとすっかり冷え込むようになる
 特に、日が落ちてからの冷え込みが顕著だ
 息を吐き出すと、とたんに白く染まり上がる
 猿宮 木光はタクシーに乗らなかった事を後悔しながら家路を急いでいた
 いつものバスを乗り逃してしまったとはいえ、タクシー代を渋るべきではなかったかもしれない
 風邪を引いてしまったら、どちらにせよ病院代がかかってしまう
 それに、だ

(このところ、行方不明事件が起きてるって噂聞くしな……)

 あくまでも「噂」でしかないのだが、ちらほらとそんな話を聞くのだ
 オカルト話がむちゃくちゃ苦手な同僚がその話を聞いてしまい、「一人で帰るの怖いから一緒に帰ってください」と職場仲間に土下座で頼んでいた事を思い出す
 こうやって夕日が半分以上沈んだ暗い中を一人で歩いている時に思い出す内容ではないとわかっちるのだが、一度意識しだすと気になって怖くなってきてしまう

(ダメだダメだ、別のことを考えろ。そう、俺は明日休みなんだ。その間に撮り溜めしておいた「気功の騎士」を視聴するんだ。続き楽しみだったし、その事を考えよう)

 自分に言い聞かせ、早足で歩いて行く
 今日は帰ったらもうさっさと寝る
 そして、明日の撮り溜めドラマ視聴フルコースに備えるのだ
 早足でずんずん、ずんずん歩いて行く彼を、静かに追う影があったのだが、それに気づくこともなく………





 その男を、愛百合は静かに追っていた
 このところ発生している行方不明事件。犯人候補が多すぎて「組織」としては胃痛と頭痛のタネの一つであるのだが、愛百合は早い段階から、それを「狐」の配下逹の仕業であるとあたりをつけていた
 「狐」の配下の中に人食いの鬼がいる事がわかっているのだ
 その鬼の「餌」として人間を確保しているのだろう、そう考えたのだ

(どうせなら、派手に人を襲ってくれた方が確保もしやすいのだけれど………仕方ないわね。あっちは、潜もうとしているのだし)

 派手に、一気に大量の人間を襲ったならば、即座に「組織」だけではなく他の都市伝説組織も退治に動いていて、片付けられた事だろう
 しかし、相手は静かに潜み、人を食うにしても周期を開けて見つからぬようにしている
 ……だが、その周期は確実に縮まってきていた

(嗅ぎつけられてきているのだと、向こうも気づいているでしょうけれど。「狐」が飼っている鬼は、どうやら人間を食べなければ存在していられないタイプのようね)

 恐らく、弱ってきているのだ
 人間を食べ続けなければ体が弱り、存在を維持できないのだろう
 人々の思い、噂等によって生まれ存在を維持し、契約によってその存在を強固にするのが都市伝説であるのだが………時折、いるのだ
 何か特定のものを食らっていなければ生きていけないような、己の存在を維持することが難しい都市伝説が

(半端者。そうしなければ存在できない軟弱者………と、なれば大した相手でもないわね。おびき出してまで始末する価値があるかどうかが微妙なのは残念だわ)

 そうやって、人々の思いや噂だけでは存在を維持できない都市伝説と言うのは、【通常であれば】存在が不安定で力も弱いものが多い
 つまり、「狐」配下の人食い鬼は大したことのない存在なのだろう、と愛百合は判断した
 それでも、「狐」配下を討伐なり捕縛なりできれば、少しは「組織」内で発言権を増すことができる
 今の「組織」における「強行派」の立場を少しは向上させることに繋がるだろう

(なんとか天地の目を盗んで、慶次だけじゃなくて郁君とかなえまで連れだしたんですもの。成果を残さなきゃね)

 愛百合がとった作戦はこうだ
 「狐」配下が餌として選びそうな、犠牲者となりそうな人間……たとえば、夕方から夜へと変わっていく頃に一人で歩いている人間、数名程に目をつけ、行動を監視する
 愛百合の「隙間女」は、隙間にひそんでいる間は、複数の「隙間から見える光景」を見ることができる為、複数を同時に見張る事もできた。この能力については、愛百合の隠し玉のような能力……隙間から隙間への「転移」能力でもある為だ……なので、今現在その能力を伝えているのは信頼できる唯一唯一人だけだ。なので、慶次逹には「「狐」の配下が事件を起こしそうな場所を見張っている」と偽っている
 とにかく、そうして後をつけて……「狐」配下の者がその人間を襲ったところを、現場を押さえてそのまま討伐、もしくは確保する。そういう作戦だ。愛百合は、「組織」の通信機の電源を入れっぱなしにし、今現在別行動をとっている慶次や郁と常に会話が通じる状態にしている。位置情報も伝わっているから、合図さえだせば即座に動き出せるのだ
 すなわち、「明らかに一般人に犠牲者が出る」作戦である。甘い作戦しかたてられない「穏健派」が嫌がる作戦だ
 しかし、愛百合に言わせれば、この方が確実なのだ
 相手とて言い逃れの出来ない状況で追い詰めてしまうのが一番である。相手に逃げ道を与えるべきではないのだ。連中はそれをわかっていない
 実際、この作戦を口にしていたら、確実にかなえは参加を躊躇しただろうし………このところ、余計な知恵を与えられている慶次も難色を示したことだろう。全く、面倒ったらありゃしない。やはり、慶次はそろそろ切り捨てなければ

「…………!」

 と、そうして思考を巡らせていた時だった
 後をつけていたうちの一人の後を、何者かが気配を殺して尾行し始めたのだ
 姿を確認し、愛百合は笑う

(見つけた……!アダム・ホワイト。「ピエロ人形」の契約者!)

 ピエロの扮装をしていない状態だが、あの顔はアメリカでの指名手配書で確認済みだ。間違いない
 あの男の契約都市伝説の能力は「いつの間にか家に忍び込んでいても気づかれない」と言うものであるから、獲物を見定める尾行の最中等にはあの目立つ扮装はしない、と言うことなのだろう
 気配を押し殺し、獲物と見定めたのだろう男性の後をつけている
 恐らく、住居を特定し、忍び込んで気絶させ仲間の元まで連れ去るつもりか

(襲っているところを確保、もしくは討伐………の、つもりだったけれど。相手が「狐」の配下だとはっきりわかっている相手なら、今、捕らえてもいいかもねぇ)

 そう、アダム・ホワイトはすでに「狐」の配下になったのだと、はっきりと特定されている
 ならば、姿を見つけ次第、確保して問題ないはずだ
 一般人に犠牲を出すとうるさい連中も、それなら文句はないだろう

 アダム・ホワイトにできるだけ近づける隙間を探す
 背後から強襲できるような隙間がいい
 懐から、光線銃を取り出す
 「隙間女」の能力をいじくり回してできるようになった「手帳の隙間に他者を収納する」という能力を発動させるには、ある程度相手を痛めつける必要がある
 光線銃で適当に痛めつけたところを回収するとしよう

 隙間から、静かに愛百合は腕を出す
 光線銃を構え、アダム/ホワイトに狙いをつけて




 ガシリ


.

「え?」

 腕を、掴まれた
 そのまま、隙間から引きずり出される

「な、ぁ………っ!?」

 己を引きずり出した相手を、愛百合は見た
 それは、壁から腕を突き出していた
 まるで、壁から腕そのものが生えているかのように見えた
 ずるり、と、壁の中からそれが姿を現す
 大柄で、その癖痩せっぽちという矛盾したような体格で、角を生やした鬼
 鬼の頭の上には、布製の抱き人形が乗っていて。その人形はじぃ、と愛百合を見て、笑っていた
 ニカッ、と鬼はまるで無邪気な子供のような笑顔を浮かべて

「いただきます」

 がしり、と愛百合の頭を掴みながら、そう言って
 愛百合が悲鳴を上げるよりも早く


 ブチィッ


 と
 その頭は、胴体から引きちぎられた







「ーーーーーっ!」

 愛百合との通信が途絶えた
 それも、普通の途絶え方ではない
 「通信機が壊れた」事によって、途絶えたのだ

 ちらり、と慶次は郁の様子を確認する

「え、と。二人共、どうしたの……?」
『合図が出たのか?』

 慶次と郁の様子を見て、傍で待機していたかなえと「岩融」が反応した
 郁は、いつも通りの冷静な口調でかなえに告げる

「いや、どうにも様子がおかしくてね……もう少し、様子を」
「ーーーーっかなえ、今すぐ、ここから離れるぞ!」

 郁の言葉を遮り、慶次がかなえにそう告げた
 え、とかなえは驚いた様子で、慶次を見る

「け、慶次さん……?」
「慶次、向こうで何が起きたのか、はっきりしないんだ。今は様子を見たほうがY良い」

 郁が慶次を咎めるようにそういった
 が、慶次はやや強引にかなえの腕を掴み、郁を睨みつけた

「お前、「組織」の黒服の通信機が壊れる条件、知ってるだろう……!あの通信の切れ方は、通信機がぶっ壊れた切れ方だろうが」
「………!」
「しかも、直前までの通信機の位置は、こっから近い。「何か」あったのだとしたら、向こうだってこっちに気づく!」

 「組織」の黒服が使う通信機は、当然のことながら特殊なものだ
 複数の通信機や電話と同時につながる事ができ、ある一定の条件を満たさなければ、どれだけ過酷な環境で使おうとも壊れる事がない
 そして、その通信機が壊れる、唯一の条件は

(愛百合の通信機が「壊れた」んなら………っもう、愛百合は「死んでいる」って事になる!)

 通信機の持ち主の黒服が「死亡」する事。それが、「組織」の黒服が扱う通信機が壊れる、唯一の条件だ
 所持者が死亡した後、通信機から情報が流出しないようにするためにそうなっているのだ、と慶次は天地から聞いたことがあったのだ
 だからこそ、慶次にはわかる
 愛百合はすでに死んでおり、そして………愛百合を殺害した相手は、愛百合がこちらに救助を求める隙すら与えぬ間に殺せるだけの実力がある相手なのだ、と
 もしかしたら、向こうは一人ではなく複数人いる状況だったのかもしれない
 そうなると、自分達だけで対処できるかどうか、わからない

(とにかく、天地に報告するにしても、ここから離れて……)

 一刻も早く、この場を離れるべきだ
 慶次は焦るのだが、かなえの方はいまいち、状況を理解しきれていない
 ………ただ、「岩融」が、今、この状況の危険さを理解したようだ

『主、その男のいう通りだ。離れるぞ』
「う、うん、わかった……あの、郁さ」

 ん、と
 かなえは、郁にもこの場を離れるよう、促そうとしたのだろう

 その言葉は、届かない

「え………ぁ、れ」
『!!』

 郁の姿が、消えていた
 代わりに、そこには一つの樽が………人間一人分くらいが入りそうな大きさの樽が、転がっていた

 他者を樽に閉じ込める能力を持つ契約者が「狐」の配下になっている可能性は聞いていた
 本来は特定条件を満たした相手しか閉じ込められないはずなのだが、その条件を満たさない相手も閉じ込められるようになっている可能性がある、とも
 情報は、たしかに正確であったようだ……「こうなっているかもしれない」という、その可能性の段階のものすら

(っつか、今、その能力を使える契約者は「どこ」にいる……!?いくらなんでも、視界が通っていない先にいる相手を閉じ込めるのは無理だろ!?)

 ならば、向こうはこちらを「見ていた」はずだ
 一体、どこから見ているのか
 住宅街と繁華街の中間辺り、あちらこちらに人が隠れられそうな場所はある……ある、が。完全に身を隠しながら一方的にこちらの様子を確認するのは難しいはず
 あたりの建物の窓も見たが、こちらを確認している者の姿はない
 「岩融」も辺りの気配を探っているようで、それらしい気配が見つかっていないようだ
 敵が待ち構えている方向へと逃げるわけにもいかない。数秒、かなえと「岩融」があたりを探って

「…慶次さん、こっち!」

 かなえが指し示した方向へと、かなえと「岩融」と共に駆け出す
 ……駆け出す、つもりだった


 ドンッ、と、何かを貫いたような音がして


「…………っ」
「……ぇ」

 ごぽっ、と
 慶次の口から、赤が溢れ出す

 ぽっかりと
 慶次の腹部に、ぽっかりと……穴が、空いていた
 ちょうど、自販機で売っている缶の円周程度の大きさの、穴が
 かん、かん、かん………と乾いた音がして、血塗れの空き缶が地面をバウンドし、そのままコロコロと転がっていく
 あの空き缶で貫かれたのだ、と、そう理解した

「ーーーーーーっ!!」

 駆け寄ろうとしたかなえに、「逃げろ」と言おうとして
 しかし、その言葉は紡がれる事なく、代わりに再び大量の赤を………血を、その口から吐き出した





「慶次さん………っ慶次さん!?」

 倒れた慶次にかなえが駆け寄る
 じわじわと、地面に慶次が流す赤がにじみ出ていっていた

 かなえは、完全にパニック状態になってしまっていた
 己の担当黒服が樽に閉じ込められ、共に組んで行動することが多かった慶次がこのような状態になり……それらが、ほんの一瞬でなされた事に、思考がついていけていないのだ

 何が起きているのか
 どこから、誰が攻撃してきたのか
 攻撃手段が、あの転がっている空き缶である、と言うことまでは「岩融」にも理解は出来ている。しかし

(何だ?……一体、「何との契約者」だ……!?)

 空き缶を、弾丸のように飛ばした?
 そのようなことができる契約都市伝説があるのだろうか、「岩融」には判断しきれない
 ただ、彼に判断出来たのは一つ

(今すぐ、主と……ついでに、この男を連れて、この場を離脱しなければ)

 このような時、契約者から離れることができない己の身が恨めしくなる
 かつての己の使い手であったとされる武蔵坊弁慶のように、主を逃がすことができれば良いのだが、主と離れられない存在であるがために、それはかなわない
 よって、主を連れて逃げ出すことが、今、この場における最善なのだ

 躊躇なく、「岩融」は主たるかなえと、血を流し続けている慶次の二人を抱え上げた
 己の巨体で、二人を包み込むようにして持ち上げ、駆け出す

 ぴくり、と
 慶次が小さく身じろぎした事実に、気づかぬまま






 うまくいった、と
 アダムは、ほっと胸をなでおろした

(確かに、その通りだった。こうやって姿を現せば、「組織」のやつが罠に引っかかる、と)

 あの男の「作戦」は、見事に成功した
 こうして無事、皓夜の食料を確保できたことにほっとする

「九十九、ヴィットリオ。2人は先に戻っててくれ。後は、俺が皓夜とアナベル連れて戻るから」
「いいのか?」
「今夜は、さらに皓夜の食料を確保するんだろう?……そっちの方じゃ、俺は何も出来ない。2人は向こうでも出番があるんだ。休んでてくれ」

 アダムがそう言うと、九十九屋は異論があるような表情だったが

「九十九。お前、最近頭痛がするって言ってただろう。向こうは手強い契約者がいるようだし、お前が全力を出せないのはまずい」
「………わかった、油断するなよ、アダム」
「んじゃ、悪いけど任せたぜ」

 ひょこりっ、と、アナベルが「壁から」顔を出すと、がしり、九十九屋とヴィットリオの腕を掴んだ
 2人はアナベルに手を引かれ、壁の向こう側へと消えていく

 アナベルの能力を借りて、壁を透過しているのだ
 壁を抜けている間は呼吸ができないらしいのだが、そこまで分厚い壁を通り抜けるような事さえしなければ問題はない

 ヴィットリオの能力は壁をすり抜け透過して、ほんの少しだけ顔を出して行った
 相手に見つかったとしても、すぐに引っ込めばいいだけの事………一番警戒すべき「カブトムシと正面衝突」の契約者に気づかれることがなかったのは、幸いだった
 「隙間女」の能力を持っていたらしい女黒服をおびき寄せた後は、念の為適当な建物の中に避難していたアダムだったが、これなら隠れていなくともなんとかなったかもしれない

「アダムー、2人を向こうに出してきたわよ」
「あぁ、わかった。アナベル、俺を皓夜の傍まで連れて行ってくれるか?」
「ん、わかったわ、任せて!」

 元気に答えて、アナベルはこちらに飛びついてきた
 抱き人形であるその体を抱きかかえてやりながら、壁に向かって歩く
 アナベルと触れ合っている事により、アナベルの物質透過能力がこちらに分け与えられ、壁をすり抜けて外へと出る

 外では、皓夜がガツガツと女黒服を食らっているところだった
 飢えきっていたからだろうか、ものすごい勢いで食べており………もう、足の部分を食べ終えようとしているところだった」

「んー、まだたべたいー」
「皓夜、向こうに、まだ皓夜が食べられるお肉があるのよ、行きましょう!」

 ぴょんっ、とアナベルが皓夜に飛び移った
 アナベルの言葉に、皓夜はやったー、と口の周りを真っ赤に染めながら無邪気に笑う


 ーーーーズキ、ズキ、と、感じる頭痛を無理やり無視する


「逃げられる前に、行くか。油断するなよ」

 先程、九十九屋が「カブトムシと正面衝突」の契約者に致命傷を与えてはいるが、即死ではなかったのだ
 手痛い反撃が飛んでくる可能背は、十二分にある
 わかったー、と言って駆け出す皓夜の後を、アダムは追いかけていく

 位置は、近い
 角を曲がると、ちょうど、巨体の男……恐らく、少女の方の契約都市伝説だろう……が、ハイティーンの少女と、「カブトムシと正面衝突」の契約者を抱きかかえて、逃走しようとしているところだった

「にがさないー!」

 その背中へと、皓夜が飛びかかろうとする

 刹那、アダムは、見た
 巨体の男に抱えられた「カブトムシと正面衝突」の契約者が、口から血を流しながらも皓夜を鋭く睨みつけていた事に
 その傍らに、一匹のカブトムシが、やや薄れた状態ながらも姿を表そうとしていた事に

「っ皓夜、避けろ!」
「ふぇ?」

 皓夜が避ける事は、間に合わない
 ひゅんっ、と風を切るような音がして



 放たれたカブトムシが、貫いた

あ、いつもの「to be … ?」を入れ忘れたorz

とりあえず、宣言通り、死亡フラグ実現

現状は

・愛百合の死亡確定
・「狐」サイドの一人の死亡確定
・郁が樽で捕獲されている状態
・慶次重傷
・かなえパニック状態でほぼ何も出来ない
・慶次とかなえを連れて「岩融」が逃走中

と、いったところです
一週間以内に、逃走している三人への追手が向けられるシーンを書くつもりです
それ以降にどなたか他の作者様からの横やりが入らない限り、慶次も死亡が確定&かなえの以降の物語からのフェードアウトが確定します
「狐」サイドでの死亡者が誰か、についてもその時に書くね
なお、慶次の死亡確定するまでの期限は、今月中に俺が死亡シーンを書くまでです
それまでに他の作者様の手で助けられた場合は死亡はしません。すぐに現場復帰できるかっつーと微妙ですが

 
朝から刺激的な展開を読んでしまったぁ……

花子さんの人、お疲れ様です
愛百合さんに黙祷……惜しい人が逝ってしまった
黒服を美味しく平らげる程に皓夜ちゃんは餓えているのか、なるほど

岩融さんが二人を連れて逃走した、ということは
郁さん in 樽 は実質その場に放置ということだろうか
つまり、逃走組と郁さんは別々に助ける必要がある……?

きっと他の作者さんが動いてくれると願って次世代ーズの方は様子見ですが
音沙汰がなければ慶次さん達の方へあれを遭遇させます
はい、彼に食事を奢ってもらった早渡に働いてもらう

但し次世代ーズが動くと漏れなく「ピエロ」もやってくる
これ以上のハードモードはさすがの慶次さんも御免だろう
実際は「ピエロ」より「狐」配下の追手の方が脅威ですが

ところで気になったのですが
>慶次も死亡が確定&かなえの以降の物語からのフェードアウトが確定
これはかなえちゃんが「転校」してしまうということでしょうか
いやその前に、慶次さんが助かればかなえちゃんもフェードアウトせずに済むってことですよね
これはつまり慶次さんとかなえちゃんの仲が進展する可能性があるってことですか!?
そもそも慶次さんは彼女に気があるようだけどかなえちゃんが彼をどう思ってるのかはまだ不明ですよね!?
そこの所はどうなんですか!? 花子さんの人!!(興奮した面持ち)

>>650
>つまり、逃走組と郁さんは別々に助ける必要がある……?
ヒント:実は郁は助けなくともなんとかなるっちゃなる
まぁ、助けられたらそれはそれでちょっと後の展開変わるけど

>但し次世代ーズが動くと漏れなく「ピエロ」もやってくる
わーぉ

>これはかなえちゃんが「転校」してしまうということでしょうか
「転校」はしません
……が、「岩融」との契約解除、都市伝説絡みの記憶全消去して「組織」からも抜けます
生きてはいるものの、もはや物語に絡むことは一切なくなり、モブ生徒と同じ扱いとなります

>これはつまり慶次さんとかなえちゃんの仲が進展する可能性があるってことですか!?
さぁ?(非情)

>>593
遅ればせながら次世代ーズの人乙ありでーす
>キラちゃん……強いなあ
>この状況でも冷静な澪ちゃんに芯の強さを感じる
女の子は強く可愛くそして少々毒がなければ!というのが自分のポリシーですので
あと澪に関しては、自分の能力と常に自問自答しながら育った経緯がありますので。そんなところも描写できたらいいんですが

>だとすると今のままだと完全に尻に敷かれそうだぞ
>いいのか、緑くん 愛があればいいのです

澪ちゃんの小悪魔チックな所は一体ご両親の誰に似たんだ!!(ぬるり)
善良バカップルな両親を横目にしながら育ちました

「ネックと」「RBの」
「「「ラジオde都市伝説NEO!!!」」」
「司会は私、ネックおばさんと」
「RBでお送りする」
「第二回ですよー」
「今回は投書がいくつか届いていたのでお便り紹介とその回答が主な内容だ」
「捏造じゃなくて外部から届くってラジオっぽいわねー。まあラジオだけど」
「ラジオなんですよ」

「最初のお便りはP.N.お年寄りは大切にしろさんからだ
 『次世代に入ってから全く触れられてないのじゃが
  怪奇同盟に在籍してた"富士の樹海は方位磁針が使えない"の爺さんは健在かのう
  元気じゃといいんじゃがのう…くわばらくわばら』……とのことなので調査してみた」
「結論から言うと……既に亡くなっているようね」
「お悔やみ申し上げます……」
「一応説明を入れておくが、この老契約者は"夢の国"襲撃事件の際に
 学校町防衛のために戦った"怪奇同盟"所属契約者の一人だ
 投書の通り、"富士の樹海は方位磁針が使えない"と契約しており
 方向や距離の感覚を狂わせる能力で夢の国の住人の侵攻を押し留めていたようだな」
「でもひとつ気になる情報があるのよね。彼が大切にしていた方位磁針は
 どうも彼が亡くなるより前に、お孫さんの手に渡っているらしいの……つまり」
「そのお孫さんが契約者となっている可能性もある、というわけだ」
「話を聞いた感じ、無事に成長していれば20代前半くらいになるみたいよ」
「意外と若いです」
「ふむ……もしかすると、お年寄りは大切にしろさんが
 どこかですれ違っている……ということもありうるわけだ」
「これで若い男女の話ならロマンチックなんだけどね」

「次のお便りは……ちょっと長そうね。P.N.花子の友達の友達さんから
 『都市伝説経験の豊富なネックお姉さんに相談です
  私は外見が小学生の女子(怪談)で好きな人がいます
  それは人間の小学生の男の子なのですがある時
  私の好敵手の花子(仮名)もその子を狙ってると知りました
  そのうえ外見が中学生で私より胸が大きいテケさん(仮名)もその子を狙っているそうなのです
  しかも素性を隠して近づくっていう汚い手を使った花子が男の子と仲良くなったみたいなのです
  私も男の子とは仲がいい自信はありますがこのままだと花子かテケさんに取られてしまいます!
  私は男の子とちょっとエッチな大人の契約行為をしたいのですが
  どうすればいいのかアドバイスをお願いします!』……またすごいのがきたわね」
「恋愛相談の範疇だとは思うが、さてどう答えるのだ経験豊富なネックお姉さんよ」
「私の経験って主に恋人に裏切られてバラバラにされるまでの話よ?
 うーん、とりあえずお便りを見ての率直な意見から言わせてもらうと
 どこまで関係を進めたいのかは置いといて、その男の子の気持ちは考えているかしら」
「男の子の気持ちというと、他に好きな子がいるかもしれないということか?」
「そうじゃなくて、私たちって人間からすると宇宙人同然の存在でしょ
 人間と都市伝説の恋愛なんて基本上手くいかない可能性の方が高いと思うのよ」
「言いたいことは分からないでもないが……」
「小学生の頃に人外と恋愛してました、なんて経験あったら
 絶対その後の男の子の人生に影響が出るわよ
 それも関係を進展させればさせるほど、多大な影響がね……」
「夢も希望もない話です」
「ちょっと言い過ぎじゃないか?」
「言い過ぎでいいのよ。当事者なら考えたくないことだもの
 外野すらなにも言わないまま突っ走って後悔するほうが悲劇的よ」

「とはいえ悲観した話ばかりというのもなんだから助言するわよー」
「お前、切り替え早いな」
「花子の友達の友達さんがするべきなのは
 自分の抱いた感情を色々と男の子に曝け出すこと!
 好意なら好きなところ、嫉妬ならどうしてそう思ったのか理由を一緒にね」
「それが重要なのか?」
「重要だと思うわよ。小学生の男の子に女の気持ちを
 ましてや都市伝説の気持ちを理解しろなんて酷な話だわ
 まずは相手に自分の抱く色々な気持ちを知ってもらうの
 そうすれば少しずつ男の子の方も感情の機微に鋭くなっていくはずよ」
「ふむ……」
「男の子が恥ずかしがって反発したとしても
 そこは外見以上の包容力で受け止めてあげなさい
 そうやって続けていけば必ず貴方に真摯に応えてくれる日が来るわ」
「なんというか気が長そうな話になってきたな」
「最初に言ったでしょ。人間と都市伝説の恋愛は上手くいかないって
 元々が難しい話なんだから一時の過ちで作った関係なんて脆いものよ」
「そういうものか」

「まあそれはそれとして大人の契約行為がしたいなら
 経験があるほうが大人っぽいとか適当な理由をつけて
 男の子を煽って乗り気にさせてからキスをしなさい
 そして練習とか理由をつけて何度もキスをしていくのよ
 キスをするのが当たり前の関係まで持ち込めば彼は立派なキス中毒よ」
「おい」
「だって、このままだとはぐらかしただけで質問に答えてないじゃない?」
「確かにそういう流れでしたけどー」
「あ、小学生ってことだからキスから先は気を付けなさいよ
 下手なことしたらむしろ男の子側がトラウマになるかもしれないから」
「色々台無しだな……そろそろ次のお便りにいこう」

「これはP.N.男子の金玉潰したいさんから
 『沢渡君はホモ疑惑が浮上してますが結局男と女のどっちが好きなんですか?
  そろそろもげますか?』とのことだが……これ宛先うちで合ってるんだよな?」
「間違いなくうちへの投書よ。でも沢渡ってあの子よね、次世代ーズの」
「素早く渡ると書いて早渡君だな。まあアレか、絡みがあったからなぁ」
「その関連でこっちに送られてきたと……
 ではお答えしますけど、作中描写を見た感じ普通に女の子好きみたい」
「初恋も女の子、女の子と知り合って喜ぶ
 これで男好きだったらとんでもない食わせ者だぞ」
「ただここまでのアレコレを見ているとねー
 可愛い男の子だったら意外にコロッといくんじゃないかしら」
「いわゆる男の娘と書くオトコノコだな。親世代の女装男子君とか」
「そういうわけだから『基本女好きだが両刀の素質アリ』ってことで」
「後半のもげますか?はどうする?」
「んー、これも見ていて思ったのだけれどもげる可能性はわりとあるわ」
「あるんですか?」
「ふむ。その心は?」
「戦闘で下半身が吹き飛んだうえでなぜか組織に治療されて
 第一声『お、俺の息子は無事か?!』とか言いながら布団めくったり
 組織に治療されたという事実に葛藤してみたりって展開がありそうだから」
「ギャグとシリアスが折り重なっているからこそ
 シリアスシーンの合間にギャグ要素として挟まれるということか」
「ないとも言い切れないでしょう?
 というわけでそっちの回答は『シリアスシーンを待て』で」
「主役の股間が吹き飛ぶシリアスシーン……それは本当にシリアスなのか」
「大怪我だからシリアスでいいのよ。最悪死んじゃうし」

「最後のお便りはP.N.やまだたろう7さいさんから
 『次世代で夫婦になった人達全員に質問です
  プロポーズの台詞とその答えはどういうものだったんですか
  あとお嫁さんオアご主人のいいところを制限時間以内にのろけてください』」
「ひとまず篠塚夫妻と相生澄音の二人から回答をもらっているので再生しとくぞ」

「プロポーズか。俺から『結婚しよう』の一言だったな」
「いや色々過程が抜けてるから。えーと、私が完全に都市伝説化
 つまり呑まれたって自覚した時にね。戦闘直後だったんだけど
 私が『これでお揃いね』って軽い気持ちで言ったら
 美弥が思いっきり抱きしめてきて、震えた声で『結婚しよう』って」
「……俺はその、瑞希に色々苦労させていたから
 俺を助けるために契約させてしまったり、そのせいで人から外れていったり
 恋人になるまでも俺が怖気づいてばかりで、その先に進むのも怖くて
 でもその時はそういうのが全部ごちゃまぜになって……気がついたらプロポーズを」
「えーと、これは笑い話として聞いてほしいんだけど
 その時の周囲の皆の温度差がすごかったのよ
 美弥が泣き始めて、文ちゃんはすごい睨んできて
 アクマが下手な口笛吹いてザクロはキャーって感じで
 渦中の私は正直ついていけなくて……この場をどう収集つけようとか考えてたわ」
「あー……まあそういうことがあって、後日お互いの両親に話をして、結婚をした」
「まあでもあんまり変わらなかったわよね。その頃もう同棲してたし」
「だなー。……ん?時間がないからいいところを早くのろけろ?」
「あ、そういえば時間決まってるんだっけ。えーとじゃあ、せーのっ」
「「すごく連携しやすい」」

「……いやあの、ちょっといいか?
 篠塚さんのところの録音、まったく参考にならないんだが」
「なんだよいいところが『連携しやすい』って。もっとあるだろなにかしら」
「え、森羅のいいところ?うーん……まあ色々あるかなあ
 オレが下手打ってもちゃんとフォローしてくれるし
 普段も自然と車道側を歩いてくれたり、頑張ったら褒めてくれるし」
「……キャラが違う?そりゃまあ、森羅の前で言うのは
 オレも流石に恥ずかしいから昔みたいに脚が出ることもあるけどよ
 目の前にいなきゃそれなりに素直に言えるさ。昔とは違うんだよ昔とは……」
「えーとあとなんだったか。プロポーズ……プロポーズなあ」
「森羅が急に俺の親に挨拶したいってかしこまって言ってきてさ
 いやお前たまに会ってるだろーとか思ってたんだけどな
 なんか親と会うなりすげー畏まって『娘さんを僕にください』って」
「正直混乱した。付き合ってるとかそういうつもりは
 ……まあちょっとはあったけど、まだ相方って印象強かったし」
「今にして思うと順番が逆だよな。先にオレになんか言えよって話
 でもまあ、そこが森羅なんだよ。色々知ってるけどちょっとズレててさ」
「……そこからは早かったぞ。篠塚さんのとこと違って
 契約者なだけでオレたちは人間だし、普通に結婚式挙げて
 普通に新居を探して、普通に新婚旅行に行ってみて……って感じだ」
「これでいいか?いい、そうか。なら安心したわ」

「というわけでインタビュー結果はこんな感じだったぞ」
「時任夫妻については『シークレットです』の一言で断られたわ」
「秘密の多い人たちですね」
「……っと、そろそろいい時間だな」
「そうね。じゃあ今回の放送はここまでにしましょうか」
「次回放送は未定。お便りはいつでも募集中だ。と、いうことで」
「「「ラジオde都市伝説、また次回!!」」」

                                  【了】

久しぶりの投下
>>517の投書を元にラジオネタです

さーて介入する人多そうだけどこっちも動けるかなあ……

アクマの人乙でーす
おぉ、あのおじいちゃまのお孫さん、契約者になる可能性もあるのか
そして可愛い男の子か………(憐をちらっと見る)



>>652
>近々介入しまーす!次世代ズで一人だけ、フリーで動けるのがいるので、そいつを差し向けます。7歳児だけどね!
今夜中にでも追って向かうシーン投下すっからちょっとまってね!(昨日から腹痛瀕死の顔で)

皆さん乙です
ラジオが更新されたぜ!
ネックおばさんが真面目に回答してて胸が熱くなった
アクマの人は告白シーンを絶対に本編で書くべき!
ニヤニヤが止まらんかった
それと次世代の人ごめんなさい
沢渡君と誤字ってるが本当は早渡君なんだわ…
>>533はつまり…すまんな早渡君

志望フラグをへし折りに行くの
人数はいくら多くてもいいと思うの

 痛みの感覚はなかった
 このところ、ずっと感じていた頭痛もない

 痛みどころか、他の感覚も感じなくなってきている
 まだ、辛うじて視覚や聴覚は生きているようだが

 あぁ、違う
 一つ、感じられる感覚があった

(……寒い)

 寒い
 寒い、寒い、寒い
 確かに今は冷え込んできている時期ではあるが、それ以上に寒い

(あぁ、そうか)

 自分は死ぬのか、と
 アダムは己の状況を理解した






「アダム?」

 皓夜は、呆然とした表情で倒れ込んだアダムを見た
 自分に向かって飛んできた、小さな虫のようなもの
 あのままだったら、自分はアレに貫かれたいたのだろう
 しかし、自分は生きている。どこも貫かれてなどいない
 代わりに、アダムが倒れていて、その胸元に小さく穴が開いていた
 じわ、じわ、とそこから赤が滲み出てくる

 庇われたのだ、と皓夜はようやく理解した
 あの瞬間、アダムが渾身の体当たりでこちらを突き飛ばして、代わりにあの一撃を食らったのだ

「アダム……アダムッ!?」

 アナベルが、悲鳴のような声をあげながらアダムに近づく
 皓夜がアダムに突き飛ばされた際に、皓夜の頭から落っこちていたらしい
 じわじわと広がっていく赤を前に呆然としていた皓夜もはっと我に返り、アダムに駆け寄る

 アダムは倒れ込んだまま、ぴくりとも動かない
 つ、と口元からも、血が流れ落ち始めていた

「アダ、ム。アダム、ねぇ」

 手を伸ばして、皓夜は躊躇した
 自分の力では、アダムに触れたら余計にひどい事になってしまうのではないか
 このまま、助からなくなってしまうのではないか
 思考が混乱し、皓夜はそのまま硬直してしまった
 一方アナベルは、ぺちぺち、とアダムの頬を叩いて起こそうとしている
 そうして叩かれても、アダムはやはり、反応がない
 赤が広がるだけで、目を覚まさない

 こういう時、九十九屋が居たならばもっと冷静に対応したのだろう
 だが、彼は今、この場にいない
 アダムが、「今夜やるべき事」の為に休ませるべきだ、と判断して、先に帰してしまったから
 皓夜やアナベルが戸惑ったりパニックになるような不慮の事態が起きた場合は、アダムが対応するつもりだったのだろう
 ……しかし、その肝心のアダムが、この状態なのだ
 皓夜もアナベルも、冷静な判断を下す、と言うことが出来ない

 ばたばたと近づいてくる足音が聞こえ、とっさにそちらに警戒の視線を向けると、近づいてきていたのは「後から合流するね」と言っていた唯で

「ちょっと!?ねぇ、何があった訳!?敵はどこ!?」

 彼女もまた、血を流して倒れているアダムの姿にパニックに陥っているようだった
 「狐」の配下に加わって以降、彼女とて皓夜が人を食らっている姿を何度か見たことがある。人が死にゆく瞬間を見てきたことがある
 ……だが、それらはあくまでも「自分には何の関わりもない連中の死」でしかなかった
 己にとって身近な人間が死にゆく所など、見たことがなかったのだ
 まだ女子高生でしかない、都市伝説と契約しているとはいえ、仲間の死が身近であった事などない彼女が冷静でいられるはずがなかった

「あ、っち。むこう。にげて、った」

 獲物となるはずだった奴らが逃げていった方向を指すので、皓夜は精一杯だった
 てんてんと血の跡が残っている。追うことは難しくないだろう

 それでも、皓夜は逃げた連中の後を追う気になれなかったのだ
 そんな事よりも、アダムのことが心配でならなかったから

「わかった、あっちね!」

 皓夜の指した先を見て、唯が能力を発動する
 唯の背後に、軍勢が現れる
 おぼろげに揺れる、鎧武者の群れが
 「夜、学校の校庭に落ち武者の軍勢が現れて合戦を行う」。それが彼女、唯川唯の契約都市伝説である
 その能力は、己が戦う力を得る以外に、こうして落ち武者の軍勢を呼び出し、操ること

「行って!」

 唯が指示を飛ばすと、落ち武者逹は不気味なうめき声を上げながら血の跡を追っていった
 彼女自体はアダムに駆け寄り………彼のその状態を見て、さぁ、と顔を青ざめさせていた

 アダムの顔から、血の気がどんどんと失せていっていた
 呼吸も、どんどんとか細くなっていっている

 死んでいこうとしている

 それに気づき、しかし、皓夜には何も出来ない
 彼女は、殺すことと食らう事しかできないのだから

 アナベルも、何もできない
 彼女は救う人形ではなく、呪い、そして殺す人形だから

 唯も、何も出来ない
 彼女は軍勢を呼び、軍勢と共に戦う力しかないのだから

 自分逹と同じように、皓夜にとって「おかあさん」のような彼女に従う者の中で、この状況をどうにかできる者など、誰一人いなかったのだ
 ファザー・タイムなら、もしかしたらどうにか出来たかもしれないが………きっと、彼はどうにもしてくれなかっただろう。あの死神は慈悲深くもあるが、「それが正しく死ぬ時」であるならば、それを正しく執行させようとするのだから

 誰も、死にゆくアダムを救うことが出来ない
 ……死にゆくところを、見ている事しか、できない

「か、ふ………」
「……!」

 かぱっ、と
 大量に赤を吐き出しながら、アダムの体が小さく、動いた
 瞼が押し上げられ、そして……皓夜を、じっと、見た



 ほんの一瞬、夢を見ていたのだと思う
 まだ、自分が「家庭」と言う中にいた頃の記憶
 あぁ、そうだ。あの狐についていってから、こっそりと行っていた仕送りができなくなっていた
 あの子は、きちんと生活できているだろうか?
 あの子を連れて行った彼女はしっかりとしていたし、あの子の事も愛してくれていたから、大丈夫だと信じたいが

「……や、こ、うや」

 夢に浸ったまま死んだほうが楽だったかもしれない
 かけられていた能力の効果が途切れた今、そちらに浸ったままの方がきっと楽だった

 それでも、そのまま終わる気にはなれなかった
 あの子に似ていない、けれどどこか似ている存在が、飢えによって死に近づいている事実は、記憶から消えないのだから

「っ、アダム、しゃべった、ら……血が……」

 あの子が、皓夜が狼狽えている
 アナベルと唯もそうだ。あぁ、唯はここに駆けつけてしまったのか、悪いものを見せてしまった

 声は、ほとんど出ない
 心臓が止まりかけている、と言うより、もうほぼ止まっているだろう
 それでも、やらなければならない
 ろくでなしの自分が、最期にできることがある

「……っ皓夜、俺を、食え……!」
「…………え?」

 皓夜逹があっけにとられた表情になるが、構わず喋る
 時間がないのだ

「俺を、食えば………もう少し、体が持つ、だろ………っあまり、うまい肉じゃあないだろうが」
「……!や、アダム、ゃ、だ」

 ふるふると、震えるように皓夜が首を左右に振った
 嫌だ、と
 食べたくない、と

「アダム、何言ってるの!それより、なんとか治療、しないと…」
「間にあわ、ない……死んでからじゃあ、あまり栄養にならないん、だろ。だから、今のうちに、早く、食べろ」

 アナベルの言葉を遮り、まっすぐに皓夜を見つめて告げる
 視界が完全にぼやけてきた
 皓夜がどんな表情をしているのか、もう、見えない

「食べろ、皓夜。生きろ。生きて………もうちょっと生きて、お前のやりたいように、やれ」

 ……もう、聞こえない
 何か言ってきているのかもしれないのだが、聞こえない
 暗い、くらい中へとそのまま、吸い込まれていくような

 その感覚を打ち切るように、ぶつんっ、と
 何もかもが赤く染まり上がって

 あぁ、最期に、「子供」の為に役に立てたか、と
 そう、安堵して、眠った
                                      to be … ?

遅くなってごめんなっ!!(切腹)

はい、「狐」サイド、一番説得可能の可能性があったアダムの死亡が確定しました
その死体は、静かに食われその場には血の跡だけが残ることでしょう

そして、逃亡した「岩融」逹には落ち武者の軍勢が追いかけに向かっています
誰の助けも入らず追いつかれた場合、「岩融」が破壊寸前まで追い詰められます(それでも、かなえは護りきりますが)
破壊寸前のところでこちらのキャラの助けが入り……まぁ、慶次は助からないでしょう、その段階だと



んでな、書いてる最中に気づいたんです
郁が閉じ揉められた樽な、多分な、九十九屋とヴィットリオが持ち帰ってる最中だと思うんですよ
郁助ける場合はそっち行ってな
ただ、その時点でヴィットリオが「狐」側だとわかってるot「狐」側に他者を樽に閉じ込める契約者がいる、ってわかってる人じゃないと救出できないのでは?って気づいたんです
いや、助けられなくともどうにかなるんでいいんですが

アクマの人乙ですー。小学生の恋愛になんで答えだ!
花子さんとかの人乙ですー。アダムさん死んじゃうのか…そして追手は武者集団か。次の土曜日までには横槍入れます。ちょっと微調整に日にちが要りそうだ

 岩融は走る。
 狼狽えるかなえと重傷の慶次を抱えて。
 だが、背後に気配を感じる。しかも集団のものだ。
 追いつかれるのは時間の問題か。
 いざとなれば自分は破壊されても主たるかなえを守ろうと決意した、その瞬間。
「まってー!」
 甲高い幼い声が聞こえて、思わず岩融が立ち止まった、その時。

たっ、と靴音がして、郁のような黒を基調とした、ゴシックロリータのドレスを纏った少女、というより子どもが空から降ってきて―岩融たちと武者たちの間に降り立った。そのまま岩融たちに速度を合わせて走り出す。
「だいじょうぶ?かなえおねえちゃま、慶次おにいちゃま」
 いきなりの、あまりにも場にそぐわない闖入者に、かなえはもちろん、慶次も思考が追いつかない。
「何故…主たちの名前を知っている」
 代わって問いただすのは岩融。
「わかんないとおもうからおしえてあげるね。あたしはひかり。『観測』はしてたのに、たすけにくるのがおくれてごめんね」
「…観測?」
 岩融も首を傾げる。この子どもからは確かに都市伝説の気配を感じる。が。「観測」とはなにか。
 ひかりはとててっ、と武者達と間を置いて、かなえ達を庇うように立ちふさがった。
迫る武者たちを恐れるでもなくひかりは「ロンギヌスの槍」を掲げ、祈るように唱える。
「万能なりし『記録』よ。「槍」の持ち主たる新宮ひかりと、そに害なす者との空間を『虚無』に書き換えよ!」
 槍が光り、「記録」すなわちアカシック・レコードに接続される。
 目映い光に武者たちは立ち止まり、岩融も、かなえも、目の前の空間が光すらも閉じこめる「虚無」に変じてゆくのを、ただ茫然と見つめていた。
 いや、ただ見ていたというより、手を出せば危ない、という直感がほぼ全員に働き、何も出来なかった、というのが正しいところだ。
 数秒で、武者達の周囲を取り囲むように、空間が「虚無」で隔てられていた。
「えいっ」
 ひかりが小石を拾い、「虚無」に向かって放る。
 小石は音すら立てずに、融けるように砕けるように、ただ「消えて」いった。
「!」
 ひかりを除く全員が息を呑む。
 ひかりは子どもとも思われない、ひどく酷薄な笑みを浮かべ言い放つ。
「見ての通りだから、近づかない方がいい。ああなりたいなら別だけど」
それでも武者たちは突進する。自らを隔てる「虚無」に向かい、次々と崩れ消えてゆく。

「ひかりちゃん…」「『狐』の配下。彼等の命までは取らない…別に取ってもいいんだけど、それは『その役割』に定められている人に譲る」
「役割…?」
 かなえが首を傾げたところでひかりの表情が、ひょんと子どもらしい満面の笑顔になり、くるりと武者達に背を向けた。
「かなえお姉ちゃま、急ご?慶次おにいちゃま、早く治してあげないと」
「え、ええ…」
 岩融と、戸惑うかなえ、重傷の慶次を連れて行った。

「このへんでいいかなっと!」
 ここまで来れば追っ手もわからないだろう、廃工場に身を潜めた、四人。
「慶次おにいちゃま、いまなおしてあげるからね」
 奥まった一室に慶次を横たえたかなえと岩融は、無骨な銀の槍の穂先を見つめる。

「聖なる神殺しの槍よ、そが殺したる神の奇蹟を示したまえ」

 慶次の傷口の上に掲げられた槍の穂先に、慶次が流すそれと同じ、深紅が浮かび上がり、ぽたぽたと滴る。
 滴り続けるそれは、やがて慶次の腹に空いた穴全体を覆い…
「…う?」
 慶次が、呻きながら身を起こす。

 傷が、塞がっていた。
「慶次さん…!」
 かなえが両手を口元にあてる。涙目だ。
「ありがとよ、チビ…ひかり、とか言ったか」
「うん!」
 ひかりはにこにこ笑って頷いた。
「きずはふさいだけど、まだたいりょくはもどってないから、むりしないでね、慶次おにいちゃま」
「ああ…ところで、なんで俺たちの名前を知ってる?なぜあのタイミングで俺たちの前に現れた?」
「ひみつー」

 えへへ、と笑うひかりの傍らで、かなえがはっとしたように顔を上げる。
「そうだ!郁さん!」
「それもだいじょうぶだよ」
 ひかりは、子ども用のらくらくスマホを取り出してふたりに見せた。
 そこには

「真降おにいちゃま」

 と示された通信履歴。
「ちゃんとそれも『観測』したよ。たすけにいってもらってるの」


続く

思ったより早く横やり入れられました。
郁さんの救出は続きにて失礼!

乙ですー!


…………あ、やっべ。慶次起きた
で、郁に助け……助け、来ちゃう………?

あ、んー。ちょっとまってな
慶次起きたなら、特殊ルート入ります。一発で意識戻る段階まで行くと思わなかったわ
急いで書くんでちーっと待ってや

乙ありでーす!
>…………あ、やっべ。慶次起きた
あ、展開早すぎました?

>で、郁に助け……助け、来ちゃう………?
もしあれなら、郁さんが自力でなんとかした後駆けつける、というのも考えていますが…

 傷が、治っている
 目の前のこの「ひかり」とか言う少女が自分を治療したのだとわかった

 そして、この少女は言う
 郁に関して、「たすけにいってもらってる」と………

「……ッ待て!」
「みゃ?」

 慶次が鋭く言葉を飛ばしたことでびっくりしたのか、きょとん、とするひかり
 かなえと「岩融」も、驚いたように慶次を見る

「慶次さん……?」
『おい、どうした』
「助けに行ってるって言ったな?そいつら、今すぐ引き返させろ!」

 え、と
 慶次以外の三人の頭に疑問符が浮かぶ
 「何故?」と

 仲間である郁を助けに向かっているはずだと言うのに、何故?

「慶次おにいちゃま、どうして?」

 素直に尋ねるひかり
 慶次は、携帯を取り出しつつ………ちらり、かなえを見て、少し迷ったような表情を浮かべて

「………天地からの、指示だ」

 絞り出すように、それだけ、答えた
 何かはっきりと「隠している」。「言えないことがある」のだと、相手が子供であってもわかってしまうような状態だ

『慶次。何を隠している』
「………」

 「岩融」に促されても、慶次は答えない
 …「言えない」のだ
 「この場に、かなえが居る」から


 言えるはずがない
 天地の予想通りだった、と
 彼が予想した通りに、「こちらの襲撃は阻止された」のだと

(流石に、向こうがガチ戦力揃えて待ち構えている、って点までは予測しきれてなかったんだろうが………ッ本当、最悪の予想に限ってあてやがる!)

 いや、予想と言うよりも証拠を揃えてきた結果、と言うべきなのかもしれない
 どちらにせよ、天地は気づいていた
 だからこそ、慶次に「郁の行動や言動で不信な点があったらすぐに連絡するように」と慶次に指示を出していたのだ





「いいか、慶次。恐らく、「組織」から「狐」側に情報が流出していた原因。裏切り者のXは、小道 郁だ」




.

 閉ざされた空間の中、郁は笑う
 作戦は成功した、と

(皓夜に「餌」を食らわせる事ができた。彼女に関しては「絶対に死なせてはならない」とあの方から命じられている)

 その為に、郁は愛百合を「餌」として提供する事にした
 彼にとって、特別な存在でもある彼女を差し出す事は心が引き裂かれるように苦しいが、仕方ない事だ
 だって、あの方の命令の方が大事なのだから

(後は、皆のところまで運んでもらって、合流だ。その後は……「先生」は、僕が対処するとしよう。荒神 憐にも目をつけたようだが、あちらが手に入らなかった時の保険は必要だからね)

 笑う、嘲笑う
 裏切り者のXは、静かに静かに、その本性を現していた




to be … ?

はい





………と、言うわけで特殊ルート、「組織」にいた「狐」側のスパイ、裏切りのX早期判明な特殊ルート突入だよやったね!!!(虚無顔ダブルピース)

えー、そんな訳でな?
これ、郁助けに向かうやろ?
最悪、九十九屋&郁のタッグと勝負になります
もっと最悪なパターンは、九十九屋が「狐」サイドであるとわかっていて敵対する場合、九十九屋が「相手を逃してはならない」となって、ガチ本気モード入ります
九十九屋の契約都市伝説も早期判明するかもしれないぞ!(白目)

乙っした
面白い展開になってきたな
あと花さんの相変わらずのブラックさにwktkが止まらん

あ、ごめん、書き忘れ
慶次、かなえがいるんで喋りたがらないですが、強めに問い詰めれば渋々、郁が裏切り者であった事実を教えてくれると思います

>>678
一応、郁が裏切り者である点については伏線ちょこっと出してたつもりなので俺悪くない
「これ伏線、ってわかんねーわ!」だったらごめん

ついに動くのか!

ところで、ひかりと他の他の方々の関係ってどこかで結ばれてました?
忘れちまってて、復習しないと

投下お疲れ様です
アダムが庇って死ぬんだろうなーと思ってたら本当に死んでて現場のお通夜感がヤバイ
で、追跡はスピード解決したから本命(逃走補助or治療)の介入はもういいか
あとは九十九屋さんたちにちょっかいかけるかどうかだが……(>>677)と……
流石に日が完全に落ちた頃だろうし暴走盟主という鬼札も使いづらい状況(使うな)
下手なキャラクターでいくと最悪戦力差で自動キャラロストしかねないし
……本気の瑞希をぶつけるだけぶつけて情報引きずり出す??(ぐるぐるおめめ&CoCTRPG思考)

>>661
匂わせる程度しかできない裏設定なのでキャラ化の目処は立ってないです
そもそもこの能力じゃ大したことができないというのもあります

>>662
なんでやネックおばさんいつも真面目やろ!
そのせいで裏で何言わせるかすごい悩みましたが
これがサキュバスあたりならギャグ一辺倒でもよかったんですけどね
あとでっちあげた告白シーンは……まあ、はい。気が乗ったらってことで……(頭抱え)

>>667
いやいや絶対小学生の恋愛じゃないよこの投書
どう見ても合法ロリータがウブなショタを誑し込もうとしてる図でしょう(迫真)


皆さん、お疲れ様です
ひとまずお先にお答えします

アクマの人、お久しぶりです……!
やはり沢渡は早渡だったか……!(白目)
慶次さんが回復した時点で既に
東区のあちこちで「ピエロ」が動いているかと思います

そして花子さんの人と鳥居の人、お疲れ様です
ひかりちゃんの登場で「ピエロ」のボルテージが一気に上がりました!(やったね!)
慶次さん達の下へ「ピエロ」10ダースと危険な暗殺者2名が主に牽制目的で向かうと思いますが(予定)
なんだ、ええと、頑張ってね♥(笑顔)

花子さんの人に質問です
この時点で「狐」は覚醒してます?
御都合があれならノーコメントでもだいじょうぶですが!

まずは「先生」とのお話タイムを書きあげないと……

もういっそ偽早渡こと沢渡君(ホモ)とか出せばいいのではないだろうか(迫真)
しかしピエロ他が来るならそっちに加勢して共闘コミュニケーションもいいかも

さて九十九屋さんの情報を引き出す(※目的変わってる)には……
1番 本家座敷童の結界で武装した瑞希を突っ込ませて再戦
2番 マスクドライダーファイナルフォーム登場
3番 人間性を犠牲にしてゴルディアン・ノットが肉体再生能力に任せたゴリ押し
4番 人間性を犠牲にして真理ちゃんが秘めた能力を使ってアクションシーン
5番 ここでまさかの新キャラ参戦
6番 なにもしない。そもそも急いで情報を得る必要はない(正論)
どーれだ?あと介入理由は「不審な樽がある」でいいんじゃないかと思わなくもない(棒)

>>682 >>684
>アダムが庇って死ぬんだろうなーと思ってたら本当に死んでて現場のお通夜感がヤバイ
ぶっちゃけ愛百合死ぬところはさらっと書けたけどアダム死ぬとこ書いてて完全お通夜モードだった

>……本気の瑞希をぶつけるだけぶつけて情報引きずり出す??(ぐるぐるおめめ&CoCTRPG思考)
……九十九屋がガチ状態の場合、だいぶ危険ですよ
アダムが死んだことわかると覚醒モード入るし

>どーれだ?あと介入理由は「不審な樽がある」でいいんじゃないかと思わなくもない(棒)
大きさがワイン樽くらい(重さもそれくらいに偽造できてる)なので、最悪ワイン樽運んでる最中ですで誤魔化されるかな、それだと

>>683
>慶次さん達の下へ「ピエロ」10ダースと危険な暗殺者2名が主に牽制目的で向かうと思いますが(予定)
>なんだ、ええと、頑張ってね♥(笑顔)
慶次起きたろ?
天地に連絡行くだろ?
……現場に、約三名程向かう人がいる模様です
しかも、約二名は早めに到着します
ピエロ頑張れ♥頑張れ♥

>この時点で「狐」は覚醒してます?
ヒント:死亡フラグ組が片付いたシーンはバビロンの大淫婦死亡とほぼ同時

>>685
>……九十九屋がガチ状態の場合、だいぶ危険ですよ
デスヨネー
九十九屋さんの能力は「鉄(あるいは金属全般)を自在に動かす」がほぼ確定でしょうから
最悪ヘモグロビンを介して血液にすら干渉しかねないと想定すると
安定してちょっかいかけられるキャラクターがだいぶ限られてしまう

>大きさがワイン樽くらい(重さもそれくらいに偽造できてる)なので、最悪ワイン樽運んでる最中ですで誤魔化されるかな、それだと
これも考えると情報をもらっているか、樽が不審なものであることを
確信できるようななんらかの手段を持っている必要がありますね
まあこっちはまだ条件が楽で、都市伝説の気配が云々をできれば突っ込めそうな気もするんですが……

どのみち九十九屋さん以外にも敵が一緒にいるわけでリスクは高いですし
本命の介入は終わってるわけですから、それこそ今後のシーンで
九十九屋さんと対峙する役割の人に全部お任せしてしまっていい気もしますね
まあそれはそれとして中の人が情報引っこ抜きたくてうずうずしてるんですがね

アクマ「いっそ誤魔化される前提で通りすがりの目撃者という形の接触もありなんじゃない?」
 真理「それは何か意味があるんですか……?」
  結「肝心なところで関われていないにも関わらず関われた気がするだけ?」
 盟主「ロストが心配ならしてもいいキャラクターを突っ込めばいいんです。サキュバスとか」
サキュ「待って♥」
つまり適当に男を物色しようとうろうろしてたら偶然遭遇して会話していくサキュバス……?
サキュ「待って♥」

>>686
>九十九屋さんの能力は「鉄(あるいは金属全般)を自在に動かす」がほぼ確定でしょうから
まぁ、そういう事ですね、奴は
その都市伝説的に、相手によってはガチ一撃必殺出来てしまう
そうじゃなくとも、九十九屋カッコガチは「てめーなんでラスボスじゃねぇんだ」枠なんで

>これも考えると情報をもらっているか、樽が不審なものであることを
>確信できるようななんらかの手段を持っている必要がありますね
樽に関しては、ヴィットリオの情報が戦技披露会の裏で獄門寺家で行われていた会議で出ているので、時間軸的にその会議の後なのでそっから情報もらってた事にしていいっちゃいいです
「組織」がヴィットリオの情報を手に入れる為、大樹経由で「怪奇同盟」に情報いってた事にしても問題ないです

>九十九屋さんと対峙する役割の人に全部お任せしてしまっていい気もしますね
なお、最終決戦で九十九屋は2人同時に相手する予定である
頑張れ九十九屋頑張れ

>つまり適当に男を物色しようとうろうろしてたら偶然遭遇して会話していくサキュバス……?
(暖かく見守る)

あ、また書き忘れ

>まあこっちはまだ条件が楽で、都市伝説の気配が云々をできれば突っ込めそうな気もするんですが……
これだけだとまだ誤魔化されるかな
「「妖精の分前」をこの樽に発動している最中でして」とか言い訳しようがある

>>687-688
>その都市伝説的に、相手によってはガチ一撃必殺出来てしまう
甲冑着込んでるタイプとか普通に返り討ちにされますねコレ

>「組織」がヴィットリオの情報を手に入れる為、大樹経由で「怪奇同盟」に情報いってた事にしても問題ないです
>「「妖精の分前」をこの樽に発動している最中でして」とか言い訳しようがある
うちは親世代なら介入の名目は立つわけかー。子供達はどうだろうな
逆にサキュバスとかほぼ確実に聞かされてないだろうから通行人以外できねえや
誤魔化されないで検問してバトルするか、誤魔化されて適当に会話するだけの意味ない絡みか……

えーと、今って九十九屋さんとヴィットリオの二人で郁入り樽を持って
夜道を移動中って感じでいいのかなこれ

>>689
>甲冑着込んでるタイプとか普通に返り討ちにされますねコレ
完全アウトですねー。返り討ち確定です

>えーと、今って九十九屋さんとヴィットリオの二人で郁入り樽を持って
>夜道を移動中って感じでいいのかなこれ
過去に人閉じ込めて樽運んでた時もそうなんですが、台車に樽載せてからころ押して移動してます
押してるのはヴィットリオの方ね。九十九屋はそれに付き添ってる

>>大きさがワイン樽くらい(重さもそれくらいに偽造できてる)なので、最悪ワイン樽運んでる最中ですで誤魔化されるかな、それだと
>>「「妖精の分前」をこの樽に発動している最中でして」とか言い訳しようがある

トビオリさん「ふーん、ずいぶん大きな妖精さんなんだね。お仕事頑張ってね」

トビオリさんならこのくらい意味深なこと言って通り過ぎる
中身知らないけれども、樽を見て中身をそう感じたから言っちゃった感じ
表情もにこにこしながら言うから余計に気味が悪い


慶治君ちゃんと回復してもらって良かったな
トビオリさんだったら「お薬要る?」とかわざわざ聞いてから
鎌鼬の傷薬(Lサイズ)を傷口に塗りたくって激痛を与えるという暴挙を行う
それだけやってもただの応急措置でしかない

因みに葉とトビオリさんの倒しかたが自分でも分からない
Mp切れかやる気切れを誘うしか手がない


九十九屋さんが服の金属操るから
全裸になっても問題ないサキュバスは適任じゃないかな

 

●今までのお話

>>383-384 花子さんの人
>>403-406 次世代ーズ
>>425-426 花子さんの人
>>452-458 次世代ーズ
>>486-490 花子さんの人
>>538-544 次世代ーズ
>>581-587 花子さんの人
>>596-598 次世代ーズ
>>620-525 花子さんの人
>>634-636 次世代ーズ ☜ これの続きです



●あらすじ

早渡脩寿は東区最大の中学校で怪しい二人組に遭遇する
それは「狐」について情報を持つ花房直斗と「組織」所属の角田慶次だった
警戒しながらも花房の提案に乗った早渡は
居合わせた元犠牲者で都市伝説に飲まれてしまった東一葉と共に、彼等に付き合うことになる

「残留思念」の契約者、栗井戸星夜の能力により
「三年前」の事件の再現を体験した後、東は姿を消す
その後、早渡は彼ら三人から「狐」に関する話を聞かされ
早渡の質問に答える為に東区診療所の「先生」の下へ案内された



●あらすじ三行

早渡は今から「先生」に話を聞く
>>545の③、⑤と>>599の⑫、⑬、⑭について質問する
「先生」は開口一番に早渡のことを「ホモの少年」と呼んだ! ひどい!


 

 






「さて、ホモの少年よ」
「タイムッ!!」

 診察室に入った俺に椅子を勧めた「先生」は
 俺が腰掛けた直後にそう呼んだもんだから、思わず止めに入った

 何だって? ホモの少年?

「俺、ホモじゃないです」

 はっきり主張しておくが俺は女の子が好きだ
 そして今は強くそのように主張すべきだろう
 絶対に、断固として、だ

「そうかね? うむ、了解した。星の少年が、君のことをそう表現していたので、そうなのかな? と思っておった」
「風評被害です。違います。女の子の方が好きです」
「OK、実に安心した。尻の心配をせずに君と会話できそうだ」

 星の少年とは栗井戸君のことか
 どうやら栗井戸君は俺に気があるらしいな
 あンにゃろう覚えとけよ、中学生だからって一つ違いなだけだし容赦は無しだからな

「さて、改めて。私に訊きたいことがあるそうだね?」


 そうだ
 俺がここへ来た理由だ
 先程から色々あったが、忘れたわけでは無い

 いよいよ質問だ


 とはいえ、いきなり切り出していいのか、迷う
 そもそも花束野郎は「聞きたい話がある」というアバウトな伝え方しかしてなかった
 この話をいきなり振っていいのか? しかも、この話題は「先生」にとってもかなりナイーブな部分じゃないのか?

 迷っている時間は無い
 切り出すしかない

「『狐』についてです。『先生』は以前、『狐』からの誘惑を受けて、しかしそれを解除されたと聞いています」
「その件絡みかい? そうなると、20年近く前の話になるよ。あまり参考にならんかもしれん」
「構いません。話してくださいますか?」
「参考になるかならないか、微妙な意見でも良ければね」

 単刀直入に話してみると、「先生」は笑顔で応じてくれた
 正直、少しほっとした。どうやら答えてくれるらしい

「それじゃあまずは
 『狐』に誘惑されたとき、どんな感覚になるんですか?」

「感覚、か。強烈な惚れ薬と麻薬を与えられた感じ、かな
 『狐』がこの世で絶対的に正しい存在であると感じ、彼女の為に生命をかけてでも尽くしたくなる
 それ以外、考えられなくなる。……どの程度強い誘惑を受けたか、にもよるが。そんな感じかな」

 なるほど
 俺は「先生」の言葉に頷く
 「先生」の話した誘惑の感覚は、典型的な魅了の症状だった
 ここに来る前に花束野郎もとい花房君が
 「先生の表現は分かりにくい」と話していたが、この感じなら大丈夫そうだ

「なるほど。続けますね
 先程も言いましたが、『先生』は『狐』に誘惑されて解除された成功例の1人だと言う事ですが
 どうやって解除されたのですか?」

「解除法か。参考にならんだろうが『狐』自ら、誘惑を解除してきたのだよ」
「『狐』が自ら?」

 思わず発した俺の言葉を、「先生」はその通り、と肯定した
 「狐」が自発的に魅了を解除した? 何故?


 

 

「何故、『狐』が自ら、わざわざかけた誘惑を解除したのか
 まぁ恐らく、誘惑をかけられた当初の私は絶賛発狂中であった故
 誘惑された直後に「狐」を毒殺しようとしたからだろうね」

「毒殺」
「うん、毒殺」

 道中、栗井戸君は「先生」がナチュラルに狂ってる的な話をしていたが
 「先生」が茶目っ気で話を誇張していないのなら、かつて本当に発狂していたらしい

「発狂当時の記憶こそあれ、当時抱いていた感情に関する記憶は曖昧故に
 今の私には当時の私の思考パターンをはっきりと理解しきれんのだが
 推測するに『この世界で生き続けてもそれは彼女にとって不幸でしかない
 ならば、彼女のために彼女を殺そう』と考えたのではないかね」

 ほぼ推測で申し訳ないが、そう「先生」は付け加えて微笑んでいる

 整理するか
 「先生」は当時発狂しており、その最中に「狐」と遭遇した
 そして「狐」の魅了を受けた「先生」は「狐」の為に彼女を毒殺しようとした
 こんな世界で生きていくのは不幸だし、可哀想だから殺してあげるね
 そういう理由で「先生」は「狐」を殺そうとしたのか
 「狐」からすればたまったものでは無いだろう
 そんな所だろうか

 今はそういう感じで理解しておこう

「わかりました。次の質問、は、『狐』に誘惑されていた時の事を覚えているかどうか、なんですけど
 先程答えていた事から考えると」

「あぁ、覚えているね。誘惑の強度による違いや個人差がある可能性はあるが、少なくとも、私は100%覚えている
 その瞬間に抱いた感情に関して曖昧な部分があるのは、私が発狂状態から正気に戻る際に
 首から上を綺麗にぶっ飛ばされせい故誘惑されていた事は全く関係ないし」


 今
 今、「先生」は、何と言った?

 首から上をぶっ飛ばされて?

 多分、婉曲表現だろう

 花房君もそんなことを話してただろう

 表現が遠回りで分かりにくい、と

 だが


 俺は「先生」の顔を見上げた
 相変わらず「先生」はにこやかな顔で俺を見返している


 でも、「先生」は生きている

 多分この人は、強い人だ

 そして、知っているんだ








 

 

「少なくとも、『先生』はしっかり覚えている、と
 それじゃあ、次の質問なんですが。『狐』の能力……、魅了の力への対処法が知りたいんです」

「対処法。すなわち、魅了により誘惑されない方法が知りたい、といったところかな?」

 答える「先生」の表情は穏やかだった

「なるべく『狐』と接触しないこと、触れ合わないこと、視線を合わさないこと、言葉を聞かないこと
 基本はそこだね。『狐』の魅了は視覚聴覚触覚、ありとあらゆる感覚に働きかけてくるものだから
 ぶっちゃけた話、遭遇しないに限る」

 まあ、そりゃそうだ
 正直、「狐」みたいなやばい存在には関わらないに限る
 それに尽きる話なんだ、本来なら

「遭遇してしまった場合に備える、としたら
 ――『大切な存在』を作っておきなさい」

「大切な存在?」

「そう、誰よりも大切な、大切な存在
 絶対に、他の何者もがその座に収まるなど許されない。それほどに大切な存在
 たとえ、無意識下に思う相手でもいい。それがあれば、魅了に耐えられることもあるそうだよ
 『通り悪魔』の御仁等は、それによって魅了に抵抗したね」

 やや「先生」の表情が陰った
 いや、何か憐れんでいるような表情だ

「あの御仁の場合、誘惑されないのは、『狐』に対する激しい怒りがあるからかもしれんね
 それを思えば、『狐』に対する怒りや憎悪が一定以上ある場合も、魅了されずにすむのかもしれん
 ――何分、データが少なくてね。断言できる段階ではない」

 『通り悪魔』の御仁、とは
 その言葉を聞いて思い浮かんだのは「ホオズキさん」の名前だ
 しかしそれは、大分前に噂で聞いた程度の話だ
 そういえば中学校でも花房君がホオズキさんの名前を出してたな
 まさか「先生」もホオズキさんと知り合いなのか
 そりゃ有名人っぽいからな

 いや、でもそれは今訊く話じゃない


 「狐」と行き遭ってしまったとき
 大切な存在が、心を助けてくれるかもしれない、か

 大切な存在、か
 居るのか、俺に
 俺なんかに


 多分、もう居ない
 空七はもう往ってしまった
 死んだ、とかそういう話じゃない
 七尾が焼けたあの夜、あの時点で、もうアイツとは終わった

 そもそも俺は
 言うほどアイツのことが好きだったのか
 今でもよく分かっちゃいない

 その程度の話だ
 それだけの話なんだ

 吹っ切るべきは俺の方だ








 

 

「あの、『先生』は『三年前』の時点で、もう学校町にいたんですよね?」
「あぁ、そうだよ」

 顔を、上げた
 これも「先生」に訊いておいた方が良いかもしれない
 「先生」なら、多分、何かを知っているのかもしれない

 機会は今しか無い

「それなら
 『三年前』、『狐』が一度、学校町から離脱した後の話なんですが
 別の町で『狐』の手勢の内、恐らく別動隊が、何者かに魅了を上書きされて
 その結果、別動隊の多くが何者かの命令の所為で自害したそうです
 ――この出来事について何かご存知ですか?」

 先生はふむ、と思案しているようだった

「ん、んー
 すまんな。その話は、私は把握していないね
 少なくとも『薔薇十字団』はつかんでいない情報だ」

 ややあって「先生」はそう答える
 駄目、だったか

「そう、ですか
 その。そんな事、って可能なんでしょうか?」

「狐の魅了を上書き、の件についてかな?」

 「先生」の問いに俺は頷いた

「理論上は十二分にありえることだ」

 やはりというか、即答だった

「そもそも、魅了系に限らず精神に影響を与える能力というやつは
 同じく精神に影響を与える能力によって上書きが可能なんだ。支配系能力に関しても同じだね
 例えば、『はないちもんめ』による支配を、『スパニッシュフライ』による魅了で上書きするようにね」

「魅了に限らず精神に影響を与えたり他人を支配するような能力を持った者なら可能、と言うことですね」

「その通り
 もっとも、その能力の使い手の力量が『狐』より上でなければ難しいけれどね
 魅了能力によって対抗し支配権を奪うのならば、なおさらだ
 別の精神系・支配系能力であれば、魅了で対抗するよりは楽であろうが。それでも難しいと思うよ」

 俺の確認を「先生」は肯定した

 つまりはそういうことらしい
 「狐」の魅了を上書きする能力があり
 実際に上書きした実例があるなど、悪夢のような話だ
 考えたくはない。だが、これは確かに俺が耳にした話だった


「世界は、『毒』でできている」


 「先生」の声で意識が引き戻された

 顔を上げる
 「先生」は先程と変わらず、穏やかな表情のままだった

「世界は毒に満ちており、人は毒によって生き、毒によって殺される
 人は毒がなければ生きられず、人は毒があるからこそ死んでいく
 世界とはそのようにできている。故に、人は毒を理解しなければ生き続けられない」

 

 

 俺に語る「先生」の声は
 どこまでも穏やかだった

 俺に語っているのでは無いのかもしれない
 彼は、まるで心中を吐露するかのように言葉を続けた

「思い込みとは猛毒である。無知とは猛毒である
 しかして、全てを知ったとして毒に殺されぬ訳ではない
 逆に、全てを知ったが故に『絶望』と言う名の致死量の猛毒によって殺される事もまたある」

 「先生」の話を聞いて、思い出した
 この世には毒性学(トキシコロジー)という学問があるらしい
 その世界では、「この世のありとあらゆる物を毒として定義する」
 だから、人は毒無くしては生きていくことができない。そういう話だった

 「先生」が言いたいのはそういうことでは無いのだと思う
 俺は先生の目を見詰めた

「知りなさい。たくさん、たくさん。君にとって必要な事を
 『自分にとって都合のいい真実』ではなく『真なる真実』を見つけてごらん
 その真実が君にとって絶望だったとして、その絶望という猛毒に負けないくらいの『希望』と言う猛毒を見つけてごらん
 そうすれば、大概のことは、きっと大丈夫さ」

 彼の声は、どこまでも穏やかで
 それでいて、優しかった

 耳に痛い話だった
 いや、身につまされると言った方が正しい


 息を吸う


 「先生」のような人と早く出会っていれば
 俺は、俺達は、道を誤ることは無かったんじゃないか


 いや、違う
 俺は


 今はもう
 何も


「あの」


 思わず声を発していた


「あの、ありがとうございます」


 今の俺には重過ぎる言葉だ
 正直、受け入れられるか自信が無い

 「先生」の目を見る

 その眼差しはどこか、温かった






 

 

 「先生」にお礼を伝え、俺と「先生」は診療室を出た
 とうに日は暮れて、外は暗くなっているだろう

 休憩室を覗くと既に誰も居なかった
 あいつら、先に帰ったわけか

 花房君、もとい花野郎が連絡先の交換を提案したのは
 先に帰る積りだったからなのか

 そう言えば、助手さんも花野郎に帰りがどうのと話していた筈だ
 あの連中、俺を警戒してた割に俺だけ残して先に帰るとはな

 何というか納得がいかん
 少々複雑な思いに駆られる

「さて、変態の少年」
「タイムッ!!」

 「先生」が出し抜けに声を掛けてくる
 思わず突っ込まずにはいられなかった
 「先生」、何言ってんですか!? さっきの余韻が台無しだよ!!

 思わず「先生」を睨む
 診療所に来る前に聞いた話では
 この人も中々性癖が捻じ曲がってるらしいじゃないか

 正直、初対面で無ければ色々話を聞き出したいくらいだ

「まあ、自分がちょっとアレって自覚はありますけども」
「うむ」

 「先生」はにこやかなまま相槌を打った

「もう時間も遅い。君もそろそろ帰りたまえ
 最近はこの町も平時より物騒になってきておるからね」

「そうします。今日は本当にありがとうございます
 いきなりだったのにここまで答えて下さって」

 頭を下げると「先生」は片手を向けて制した

「それとこれを渡しておこう」

 そんなことを告げながら、「先生」はメモ用紙を差し出した
 電話番号が書き込まれていた

「何かあったら、いつでも連絡しなさい」
「あ……、あの、ありがとうございます!」

 「先生」は笑いながらひらひらと手を振る

「端末で連絡先を交換、となると、君の心身には障りがあるようであるからね」

 ぬっ

 そうか、つまり
 「先生」にも休憩室でのやり取りを把握されてたわけか

 それもばっちりと
 ぐぬぬ






□□■

 



神は以色列に向ひ心の清き者に對ひて真に惠有り
然れど我は我が足躓くばかり我が歩滑るばかりにて在りき
此は我惡き者の榮ゆるを見てその誇れる者を嫉みしに依る
彼等は死るに苦しみ無くその力は反りて堅し
彼等は人の如くに憂に在らず人の如く艱難に遭ふ事無し
此の故に傲慢は裝飾の如く其の頸に巡り強暴は衣の如く彼等を覆へり
彼等肥太り其の眼飛び出で心の慾に勝りて物を賣るなり
又嘲笑を為し惡を以て暴虐の言葉を出だし高ぶりて物言う
其の口を天に置きその舌を地に普く往しむ
此の故に彼の民は此処に翻り水の滿ちたる杯を搾り出して
曰く 神如何で知り給はんや至上者に知識あらんやと
視よ彼等は惡き者なるに常に安かにしてその富しく加れり
誠に我は徒に心を清め罪を犯さずして手を洒ひたり
其は我終日悩みに遭ひ朝ごとに責を受けしなり
我若し斯る事を述んと謂しならば我汝が子輩の代を誤せしならん
我此等の道理を知らんとして思ひ巡ししに我が眼甚く痛たり
我神の聖處に往て彼等の結局を深く思へる迄は然りき   (Psalm 73:1-17)







 

次世代ーズの人乙ですー
やはりホモの少年呼びは嫌かw
とりあえず、栗井戸は君には気がないと思うから安心しておくんだ!
あいつが気があるのは別のやつや!(なお恋愛的な意味かどうかは微妙なラインの模様)
「先生」にとって、全然ナイーブな問題じゃないんだなぁ、これが
そしてごめんな、婉曲表現じゃねーんだわ!ついでに言うと首から上ふっ飛ばしてきたのは天地な!
変態の少年採用されたwwwwwwww


さて、無事、早渡君に情報渡す関連のお話は終わった訳で
…次に俺が書くべきは「朱の匪賊」が「狐」組に合流するシーンなんだが、合流シーン、次世代ーズの人の方で構想あったかな
ないなら、そちらにおまかせするが
どちらにせよ、俺、シリアス書く前にコメディ書きたいですが(死んだ目)


あ、ちなみに避難所のチラ裏に、特殊ルートはいらなかった場合こうなってたよ、みたいなのぶん投げておいたのでお暇な方はどうぞ


>>691
>それだけやってもただの応急措置でしかない
まぁ、「先生」辺りの治療も痛いから問題ないさ

>因みに葉とトビオリさんの倒しかたが自分でも分からない
ザンの異空間飲み込み
将門様の祟り
「先生」によるハイパーポイズンカーニバル
俺がぱっと思い付いたできそうなのはそのあたり……?他にもあるかもしれんが

>全裸になっても問題ないサキュバスは適任じゃないかな
せんせー、サキュバスさんが全裸だったとしても九十九屋が金属装備してるとです

 

花子さんの人、遅れて申し訳ありませんorz
そしてありがとうございます! 続きを上げました
思えば早渡への情報提供から長きに亘り……お世話になりました
色々あった、本当に色々あった



>>653
>愛があればいいのです
(遠い目)


>>657
>「そういうわけだから『基本女好きだが両刀の素質アリ』ってことで」
貴重なご意見ありがとうございます!

>「戦闘で下半身が吹き飛んだうえでなぜか組織に治療されて
> 第一声『お、俺の息子は無事か?!』とか言いながら布団めくったり
> 組織に治療されたという事実に葛藤してみたりって展開がありそうだから」
>「ギャグとシリアスが折り重なっているからこそ
> シリアスシーンの合間にギャグ要素として挟まれるということか」
>「ないとも言い切れないでしょう?
> というわけでそっちの回答は『シリアスシーンを待て』で」
貴重なご意見ありがとうございます! 是非参考にさせて頂きます!!
実は早渡のチン♂がもげる展開を本気で考えていました
でもお下品だし、しかしR板だし、と迷っていましたが、ラジオを読んで決意がつきました!
ありがとうございます!!


>>662
早渡でしたか
やはりそうでしたか……
P.N.「男子の金玉潰したい」さんの質問については後程こちらからも回答しますね!


改めまして花子さんの人、お疲れ様です
今にして思うとアダムさんが助かるルートもあったのでは、とか思ったりしました
優しい人って早く死にますね、「いい奴は死んだ奴だけ」とは言ったものです
実は次世代ーズ、郁さんではなくかなえちゃんの方を疑っていました
冷静に考えると黒服の方で絞るべきでしたねorz
Cナンバーの書庫でのやり取りとか

鳥居の人も、お疲れ様です
なんという投下速度! 次世代ーズも見習わないとです
やっぱりひかりちゃんは強いな……その強さが眩しすぎる
>>683で先走った「ピエロ」の件は再度説明致します


>>684
>もういっそ偽早渡こと沢渡君(ホモ)とか出せばいいのではないだろうか(迫真)
是非参考にさせて頂き!

>しかしピエロ他が来るならそっちに加勢して共闘コミュニケーションもいいかも
分かりました! 頑張ります!
(どこでかち合うかはまだ未定です。何かあればお気軽にレスを願います)


>>685
花子さんの人、ありがとうございます
改めて経緯を説明します(整理中、暫しお待ちを)


>>700
ありがとうございます!!
匪賊合流シーンは全面的にお任せしたい所存です
(邂逅シーンが全く見えない)
もう、なんなりとお使い下さいませ!
もしあれなら私がからっぽの頭で書きますがどのようにしましょう?♥
花子さんの人の良きにどうぞ!


 

>>701
>今にして思うとアダムさんが助かるルートもあったのでは、とか思ったりしました
だいぶ初期から死亡確定枠だったからなぁ、あいつ……
ただ、数少なく時期によっては説得可能な奴で、多少「狐」サイドの情報くれる奴でもありました
どちらにせよ、最期は皓夜を庇って死亡確定だったのです

>実は次世代ーズ、郁さんではなくかなえちゃんの方を疑っていました
裏切り者が誰かは多少ミスリードもいくつかやったりしていたので成功していたとそっとガッツポーズ

>>>683で先走った「ピエロ」の件は再度説明致します
ところでな、ピエロが学校街で暴れだすとするだろ?
それを聞いて「いっそ、死亡フラグ組片付いた夜に「狐」サイド片付けてもいいんじゃね?ピエロとまとめて処理できね?」ってなりつつあるのがこちら
それやる場合、「凍りついた蒼」への襲撃イベントボツっちゃうんですけど

>匪賊合流シーンは全面的にお任せしたい所存です
了解でーす
ただ、こっちが書くにしてもちょっと待ってな
コメディを……シリアスないシーンを、まず、書きたい………(アダムの死亡シーンで色々力尽きている)

 

まずはお詫びを……
深夜のテンションで>>683を書いてしまい申し訳ありません
明らかに説明不足が過ぎました

「ピエロ」については>>500で宣言した通りです
そして今進んでいる慶次さんの死亡介入の件は時期的に終盤段階です
ここから「ピエロ」は変な(?)動きを始めますが、彼等の【目的】がバレるとかなりまずいですよ
そして「ピエロ」は学校町侵入の以前から
学校町に複数の「全知か、それに類する感知系能力者」が存在することを知っていました
具体的に言うと、「アカシック・レコード」や「怪人アンサー」等といった存在です
そしてそうした能力者への対策の為に、専門の索敵チームを結成しました
>>683で話した2名の暗殺者というのは、「アブラカダブラ」の契約者、「海からやってくるモノ」の契約者です

「ピエロ」は、新宮ひかりちゃんの能力発動を察知し、牽制の為に刺客を送り込もうとしているのです


整理します
①「ピエロ」は「全知系感知・察知能力者」について警戒しています
②そして①の能力者対策のために、専門チームを作りました
③②のチームが今から向かいます
④狙いはひかりちゃんの牽制です


この展開、さすがに鳥居の人の許可なしだとまずいなあ、と気づき、謝罪でございます……
どうもすいません。次世代ーズの馬鹿野郎が先走ってしまい……


【参考】
・ピエロ 10ダース;
戦闘担当

・「アブラカダブラ」の契約者;
事象改竄系

・「海からやってくるモノ」の契約者;
対感知・予知系能力者戦用人員


 

 

>>702
おお、なんという……
アダムさんのご冥福を祈ろう
アダムさんに寒い思いはさせたくない
何人かそっちに行くと思うのでよろしくね、アダムさん

>裏切り者が誰かは多少ミスリードもいくつかやったりしていたので成功していたとそっとガッツポーズ
してやられました

>それを聞いて「いっそ、死亡フラグ組片付いた夜に「狐」サイド片付けてもいいんじゃね?ピエロとまとめて処理できね?」ってなりつつあるのがこちら
頑張ります(震えている)
しかし「凍りついた蒼」襲撃は鳥居の人が気合入れてるのでワタシはそちらを見たい(見たい)

>コメディを……シリアスないシーンを、まず、書きたい………(アダムの死亡シーンで色々力尽きている)
花子さんの人……(ノД`)・゜・。
匪賊をギャクコメキャラにしても良いのですぞ!(>>496の時点で既に)



避難所も確認しました
郁さんについてですが……本当にやれるか分かりませんので
ここからは次世代ーズの独り言として聞いて下さい
郁さんが「先生」の前に到達する前に、「早渡脩寿」と「東一葉」が介入を企てます
二人は郁さんを無力化・拘束した後、「先生」かその関係者に次のように告げます
「悪いがこの黒服は我々『ピエロ』が回収させてもらう。今まで騙して悪いね」
同じ頃、早渡は右手首を切断する重傷を負い、いよっち先輩は溺死寸前という状況です

こればかりは本当に予定が未定です

 

>>703-704
>④狙いはひかりちゃんの牽制です
ふむ

…あー、でも現場にまだ慶次がいて、で、慶次が天地に連絡したとなると……
それに、相手は実体あるんだよな
うん、現場に駆けつける予定の人が対応できる
駆けつけるのは、チラ裏の方にぽいしておいた想定されていたルート次第では駆けつけていた2人な

>しかし「凍りついた蒼」襲撃は鳥居の人が気合入れてるのでワタシはそちらを見たい(見たい)
俺もきっちり、襲撃時にどう動くか考えてて最後は派手に爆発させたいね♥って思ってたので書きたいが、まぁ流れ次第かなぁ
なにせ、慶次の意識がすでに戻ってるおかげで、直斗にも連絡いきそうだしな…

>匪賊をギャクコメキャラにしても良いのですぞ!(>>496の時点で既に)
貴殿はエスパーか

>郁さんについてですが……本当にやれるか分かりませんので
避難所であぁ書いてたけど、郁、死亡フラグ回避の可能性もあります
正直最終決戦で、郁が向かう先は2つ想定されてるんですよね
で、郁がスパイだとバレたと認識する場合は「先生」の方にいかないんですよ
スパイだとバレたと認識していなくて「先生」のところに行ったとしても、死なないパターンはあります………死んだ方が幸せだったと思うんだけど

あ、そうだ
早渡くーん、直斗から「今度の日曜日みんなで遊ぼうぜー、「先生」の診療所に集合なー」ってメールきたらどうする?
来る?(本筋と全く関係ないもの書こうとしている顔で)

 

>>706
お誘いだ!! 嬉しい!!
でも、早渡は土日、バイトなのです……(ノД`)・゜・。
彼の日常までまだ書き及んでいない次世代ーズに罪があるのだが
多分「ごめんバイト」とか悔しそうな顔で返信する
間接的に言及してるのは>>318ですね
このときは金曜に「ラルム」へ行って土曜は2時半に起きて準備、って感じです


あと、皆さんにお尋ねします
ここはR板らしいんですが、きわどい語句は伏字で行く方針でしょうか?


冷静になってみると
>>704の独り言は無かったことにしたい……
ハードモードまっしぐらじゃないか! だし、自分は黒い人じゃないんだ(信じて)

 

>>707
おっと、土日バイトか
つまり、土日以外に誘われた場合(「今日の放課後、診療所に集合な!」とか)だとくるかな?4

>ここはR板らしいんですが、きわどい語句は伏字で行く方針でしょうか?
R板となると、あんま気にしなくていいかなぁ、って勝手に思ってる

>ハードモードまっしぐらじゃないか! だし、自分は黒い人じゃないんだ(信じて)
(遠巻きに見守る白の軍勢)

次世代ーズの人、投下お疲れ様です

>>690
>過去に人閉じ込めて樽運んでた時もそうなんですが、台車に樽載せてからころ押して移動してます
なるほど台車で運んでるのか。まさか抱えてるのかと勘ぐったけど流石になかった

>>691-700
>全裸になっても問題ないサキュバスは適任じゃないかな
>せんせー、サキュバスさんが全裸だったとしても九十九屋が金属装備してるとです
総合すると衣服は能力で作ってるから金属ゼロのサキュバスは意外と対峙時に有利……?
ま、上書きできるほど魅了強くないと思うんで、会っても本当に話して終わりになりそうですけどねハハハ

>>701
>実は早渡のチン♂がもげる展開を本気で考えていました
あれれーこれ余計なこと言っちゃったかなー?早渡君南無

>>703
>ここから「ピエロ」は変な(?)動きを始めますが、彼等の【目的】がバレるとかなりまずいですよ
>①「ピエロ」は「全知系感知・察知能力者」について警戒しています
あー、これ相生森羅の能力がバレると排除対象になりそうだなぁ

相生森羅の契約都市伝説:"相対性理論の理解者"
能力…耳にした会話からランダムかつ連鎖的に情報を得ていく

確か偵察から齎される僅かな情報を元に、盤面を把握してレミングを追加する
"死の行軍"の参謀的役割をイメージして夢の国編で投入したキャラクターだったはずなんですよ
何故か次世代編でメインキャラクターの親として名前出してますけども
時期的にもう学校町入りしてるだろうし、その話も書かなきゃ……

>>707
>ここはR板らしいんですが、きわどい語句は伏字で行く方針でしょうか?
雰囲気によっては伏字にしますが、基本は婉曲的な表現を心がける感じ……?
R板なので特段伏せなくてもいいとは思いますけど

あ、寝る前に次世代ーズの人にも一個質問

へーい早渡君、君、「人狼」やった事あるー?

>>709
>なるほど台車で運んでるのか。まさか抱えてるのかと勘ぐったけど流石になかった
皓夜だったら抱えて運ぶけど、九十九屋やヴィットリオの体格だと樽の大きさ的に抱えてもってくの大変かと

 

>>708
>>709
ありがとうございます
伏字の件は考えておきます

>>708
>つまり、土日以外に誘われた場合(「今日の放課後、診療所に集合な!」とか)だとくるかな?4
是が非でも早渡を行かせましょう

併せて
>>710
>へーい早渡君、君、「人狼」やった事あるー?
早渡は人狼に苦い思い出があるようですが、多分モノ自体をやったことは無いですね
恐らく七尾時代にディプロマシーかパラノイアに参加させられて散々な目に遭ったのではないでしょうか
(大方、当時の彼はゲームについてあまり理解してない)
ただ彼は何度か人狼系の「ゾンビー・タウン」というパーティーゲームを七尾時代にやってるはず
こっちの方は次世代ーズの中の人もモノを少しだけ見ましたが「……???」って感じでした

あと普段はあんな感じの早渡ですがゲーム上だと嘘を吐くのが上手です
彼の意外(?)な一面ですが書く機会は無かった

>>709
>あー、これ相生森羅の能力がバレると排除対象になりそうだなぁ
確かに相生さんは対象になります
排除というより契約都市伝説の特性で対象を発狂させます
能力効果の詳細は今夜中に上げたい

>時期的にもう学校町入りしてるだろうし、その話も書かなきゃ……
>>77-78の続きになるでしょうか
楽しみにしております……

 
これは花子さんの人への質問なのですが
某契約者さんは、かなえちゃんの薙刀「岩融」の支配権も奪えますでしょうか
「刀は魔を断つ」といった類や「大通連」も例外では無いということでしょうか

>>711
>是が非でも早渡を行かせましょう
よし、じゃあ書けるな!(すでにちょっと書き始めていた)

>あと普段はあんな感じの早渡ですがゲーム上だと嘘を吐くのが上手です
うん、それなら人狼参加大丈夫そうだな
似たようなゲームならやった事あるみたいな発言させとこうか

>某契約者さんは、かなえちゃんの薙刀「岩融」の支配権も奪えますでしょうか
剣の支配権を奪った契約者についてかな?

正直に答えますと、「支配権」は奪えません
ただ、薙刀を動かしにくくなる……と言うか勝手に動かされたりはするかな
「支配権」は奪えないのです、「支配権」は
詳しくは避難所の裏設定スレでね!

>>703
>「ピエロ」は、新宮ひかりちゃんの能力発動を察知し、牽制の為に刺客を送り込もうとしているのです
>慶次さん達の下へ「ピエロ」10ダースと危険な暗殺者2名が主に牽制目的で向かうと思いますが(予定)
>なんだ、ええと、頑張ってね?
やっちゃっていいのよー
ピエロの襲来を「観測」したひかりが、桐生院兄弟呼び戻す展開にしてもいいしね
ひかりはフィジカルな戦闘力は「ふつうの子ども並」なので、戦闘スタイルとしては「アカシックレコードに接続して事象の書き換え(改竄)」か、ロンギヌスの槍本来の治癒能力を使った治療になると思われます。

>>680
>ところで、ひかりと他の他の方々の関係ってどこかで結ばれてました?
いや、他の方のキャラは「先生」と面識がある、という程度ですね。絡みは大歓迎ですよ!

>>713
ちなみに、慶次が天地に連絡するから現場にこちらからも誰か向かうよー

>>711
>排除というより契約都市伝説の特性で対象を発狂させます
知ったら発狂……"くねくね"みたいな感じかな

>>713
そういえばひかりちゃんの事象改竄ってどのくらいの範囲でどこまで出来るんですかね?
その辺りの指標が気になるのですがどこかに設定置いてありましたっけ

 



>>668-669 鳥居の人
>>674-676 花子さんの人



 

 

『慶次、何を隠している』

 「岩融」に問い質され、しかし、角田は沈黙を守った
 一瞬、静寂が空間を支配する

 此処は廃工場
 その一室に居るのは紅かなえと彼女の契約都市伝説「岩融」
 そして、先程まで致命傷を負っていた角田慶次と
 その傷を一瞬にして癒した新宮ひかりだ

 彼らは「狐」の追手を振り切り
 角田の傷を治癒する為にこの廃工場へと身を潜めた
 それも一時のことだろう。彼らは直に動く
 いや、動かなければならない

 角田は端末を操作し終え、顔を上げた
 紅と視線が合う
 彼女の眼に宿るのは恐怖と不安
 そして幾許かの安堵だろうか

 彼は静かに息を吐いた

 立て続けに事が起こっているのだ
 一刻の猶予も無い

 この内の誰かが、行動を起こそうと
 あるいは口を開こうとした


 瞬間だった


 破裂音と共に工場全体が揺さぶられる
 鼓膜を叩く衝撃と腹の底に響く振動とは
 間違いなく、爆発によって齎されたものだ

 その場に居た全員が、既に身構えていた


 襲撃だ


 何者かがこの廃工場に来ている


(連中か?)


 角田は思考を巡らせている
 「狐」の手勢が差し向けた追手か
 連中が追いついたとしても不思議では無い
 あの場へ突如現れた少女、ひかりの能力で追手を削いだとはいえ
 あれで連中が追撃の手を緩める筈が無い

 だが

「ちがうよ、慶次おにいちゃま」

 当のひかりが角田の思考を先読みしたようなタイミングで言葉を発する
 少女は一室の入口を、否、その向こう側を凝視していた

「『ピエロ』がきてるの」
「『ピエロ』だと!?」

 少女の言葉に角田は舌打ちする
 只でさえ緊急の事態に、厄介なのが増えやがった
 彼が心中でそう吐き捨てたとしても無理な話では無い

 「ピエロ」
 十月の月初から既に「組織」においても報告は上がっていた
 非契約者を選択的に狙うというその手口は過去有数の陰湿さだ
 おまけに彼らの行動は
 まるでその存在が一般人に知られても構わないという程になり振り構わぬものだった
 戦力評価では決して脅威という程では無いが
 隠蔽の観点からすると即時叩き潰さなければならない敵として、侮れるものでは無かったのだ

 

 
(時間が無ェッ! 全部まとめて捻り潰す……!)

 しかし
 角田が動き出すその前に


 既に事態は進み出していた


「アブラカダブラ(私が話す通りになる):敵の射程は歪み、我々を狙うこと叶わず」


 今のは何だ
 角田は警戒を強めた
 確かにそれは人の声だった
 囁くような声だが、しかし、明確に聞き取れた

 横を見ずとも彼は悟る
 「岩融」は薙刀を構えていた
 ひかりもまた半身で部屋の入口に相対している


「アブラカダブラ(この言葉のように消滅せよ):壁がすごい邪魔」


 それは一瞬だった
 室内の壁面が音も無く消失した
 今や彼らはだだっ広い廃工場の中に居た


「やあやあやあやあやあやあ、こんばんは」


 声の主を睨む
 その男は両手を大きく横へ広げ、佇んでいた
 まるで私は全てから解放されているとでも言いたげな姿勢で

 この時点で角田は複数の気配を掴んでいた
 此処に居るのはこの男だけでは無い。かなりの数が潜んでいる
 こちらからは影となっているが、男の横に矢張り何人かの人影があった

 その男はタートルネックの私服に身を包んでいる
 「ピエロ」特有の道化師の格好はしていなかった


「ああ、最初に言っとくけど僕らは『組織』の雑魚に用は無いんだ」


 気安い口調で男は話し掛ける
 「ピエロ」の手勢を警戒する角田らに向かって

「そっちのお嬢さんに用があってね」
「ひかりに?」

 男の言葉に少女は訝しんだ
 一体何故に「ピエロ」は彼女に用があるというのか

「そっちの子の力能がね、ちょっと僕らにとって都合悪くってさ」

 男の口調はまるで友人に話すような馴れ馴れしいものだった

「いやさあ、予想はしてたんだよ
 Kナンバーの関係者に『アカシック・レコード』か、それに類する能力者が居るって情報は僕らも掴んでた
 でもこんな早い段階で出てくるとは流石に想定してなかったんだよね
 で、お嬢さんもそっち系の契約者だっけ。ああ、可愛いお洋服だね。お母さんに用意してもらったのかな?
 まあね、正直お嬢さんみたいなイレギュラーがこうも早々と出てきてもらっちゃあ、こちらとしてもひッッじょーに都合が悪いんだ
 ――というわけで」
 

 

 男は芝居がかった所作で片腕を腹の前で曲げ、会釈のように頭を下げる
 しかし、その顔は角田らの方へ向けたままで
 彼はニコニコと笑っていた


「早々に退場してもらおう」
「可愛い子だね。ゴシックって言うんだっけ」


 いつの間にか、タートルネックの男の横にもう一人が並んでいた
 くたびれたスーツを着たその男は、タートルネックの若者よりかなり老けていた
 しかしその表情は若者のそれに比して軽薄ではない、人の好さそうな笑顔を浮かべている


「お嬢さん、俺を 読んで ご覧よ。君と一緒に楽しく遊びたいな」


 この状況で無ければ、なるほど、優しそうなおじさんとして見ることも出来たかもしれない
 しかし、それはこの場所にあって、却って不気味な気配を滲ませていた

「ひかり、駄目だ。『観測』するな」

 角田はそのとき、無意識にそう言い切っていた
 ひかりの方を向くことが出来ない
 眼前の男達を前に視線を逸らしてはいけない
 彼の直観がそう警告を発していたのだ


「ンンんーーッッ!! んン゙ン゙ーーッッ!!!」


 出し抜けに奇声が廃工場内を木霊した
 紅が息を飲む声が耳に飛び込む

 奇声が上がったのは丁度真横からだ
 角田は咄嗟に眼だけをそちらへ滑らせた


「ン゙ーーッッ!! んギぃぃぃィィィィイイイいいイイイイイイイッッ!!」


 奇声の主は、果たして「ピエロ」だった
 道化の装束に身を包み白地に赤の化粧が闇の中に浮かんでいる


「オホォ!! おほォ!! かわいいオマンコが二ッッ人もいるヨおぉぉォォぉ!!」
「一刻も早く俺のザーメンを種付けしないとなのだァッ!!」
「やべえ!! 即ハボ!! 即ハボ!!」
「キメセクしたひ……キメセクしたひよぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」


 下卑た欲望を隠しすらしない彼らの奇声がこれでもかと耳朶を打つ


「かなえ、俺の後ろから離れるな」


 連中から視線を反らさず、角田は抑えた声で紅に告げた
 怒気と殺意を眼前の敵から隠し、照準を合わせる
 連中とはかなり距離が開いているが
 この距離なら殺れる

 角田は能力を発動した


 だが
 

 


「やあ、いいカブトムシじゃないか」



 角田が発動した筈の甲虫はあるべき空間に無かった

 タートルネックの青年はニコニコと笑いながら片腕を掲げて示した

 その者の手にはカブトムシが握られていた

 けたたましい羽音が手中から響いている


「その若さでここまで練り上げたなんて、感嘆に値するよ
 きっと労苦は相当のものだったんじゃないかな」


 何が可笑しいのか、青年は笑いながら角田に語り掛ける


「でも、所詮は『組織』の飼い犬だ。勿体ない
 『組織』にこんな素敵な才能を使い潰されるだなんて。あの連中も酷いことをするなあ」


 不意に
 男の軽薄な笑顔に、悪意が混ざった


「ABRACADABRA(私が話す通りになる):少女が創った障壁よ、ウザい。消えろ
 ――じゃあ、  お返し  するね」


 大気を叩くような音と共に
 青年の手から甲虫が射撃された


 射線は紅かなえに向けられていた


 瞬前、既に「岩融」は動いていた

 弾道を見切り、構えた薙刀を一閃

 甲虫は「岩融」の一撃によって破壊されていた


「ああー、惜しい」


 青年はニコニコと笑いながら、先程と同じ口調で角田に話し掛けてくる


「そっちのお嬢さんの腕を断(と)る積りだったんだけどなぁ」


 紅の顔面からは血の気が引いていた
 切り裂かれた袖に手を当てるが、怪我は無い

 あの瞬間、「岩融」はカブトムシの弾丸を切り捨てていたが
 断たれた甲虫の片割れは勢いを殺すこと無く、紅の腕を掠めていたのだ

 角田は甲虫を奪った青年に剣呑な眼差しを向ける
 怒りの針はとうに臨界を振り切っていた

「上書きされてる」

 彼はひかりの声を背中に聞いた

「いつのまに――あたし、書き換えたはずなのに」


(最ッ高に厄介な展開になってきたじゃねぇか――)








□■□

次世代ーズの人様乙ですー

………ふむ
ちょっと、ここに劇薬突っ込ませていい?(訳:「先生」突っ込ませていい?)

 

花子さんの人様、鳥居を探すの人様に土下座申し上げますorz
「ピエロ」ってこんな汚い連中なのでこれは頂けないという事で御座いましたら
即刻お申し付けください!! 次世代ーズからのお願いで御座います!


>>722
どうぞ……!
というか、全員ぶっ殺して構いません
ただ、何というか、タートルネックの野郎とスーツの優しそうな野郎は
ぶっ殺されてからが勝負って感じで、数時間後に普通にリスポーンしてきます
あと、殺し方が甘いと、即座に欠損部位を再生して、「アブラカダブラ」の事象改竄で同じ手法で仕返ししてくるので要注意です
軒並み実体を全部消し飛ばす感じだといいと思います

あと「ピエロ」に関してですが
作中現在ですと、こんなのが東区を中心に暴れ始めています
なお「ピエロ」については>>500をご覧ください……こっちもいい加減更新しないと……


 

>>723
よし、「先生」出番だ!
よって、ここで「先生」に好き勝手させるなら、「先生」が郁相手に好き勝手やるシーンやる必要なくなるから郁の相手が「先生」じゃなくなったぞやったな郁!(他の相手候補で生き延びられるとは言っていない)

>ぶっ殺されてからが勝負って感じで、数時間後に普通にリスポーンしてきます
なるほど了解
安心してください、「先生」も死んでもリスボーンできます(安心とは)

>作中現在ですと、こんなのが東区を中心に暴れ始めています
(やっぱこの日の夜に「狐」編ラストまで突っ走るべきでは?って顔)

おっといけねぇ、書く上で質問が
ピエロサイドの人逹ー、「先生」の事とか「レジスタンス」の事知ってるー?
「先生」の事については、具体的に発狂時代の事知ってる-?

 
>>725
どちらも、「ピエロ」は知らないが男二人は概要だけ知ってるって感じですね
概要っていっても裏の業界で語られてる程度の情報という感じです

あと「ピエロ」は痛くされると痛いと……言うかな……
少なくとも男二人は半身が飛ぼうが死のうが笑いながら「楽しい」言うだけです

 

>>726
>どちらも、「ピエロ」は知らないが男二人は概要だけ知ってるって感じですね
オッケー、わかった
やったな「先生」、昔の名声(汚名)知ってそうな人だよ!

>あと「ピエロ」は痛くされると痛いと……言うかな……
今んとこ、轢き逃げアタックしか食らわせてないから大丈夫


とりあえず、すでに書き始めてたのもっさもっさ書いていくね
人狼ゲームネタはその後な!()

うーんピエロやべえなと思ってたら、暗殺者2人のほうがやばい
と思ったけどやっぱりピエロもやばかったからとにかく全部やばい(語彙力がアバラカダブラ)

大人しくしてても知っちゃいそうだし森羅に"海からやってくるモノ"対策したほうがいいかなー
適当に身代わり人形みたいなの持たせとけば防げないかなー、うーん……

 

>>713
恐れ入ります!
お言葉に甘えさせてもらいました!
ひかりさん、大丈夫です! 「ピエロ」より貴女の方が断然強い
じゃああの二人組は? ……もう少々お時間を下さい
能力の詳細を今夜中に出せず申し訳ない……

>>716
>知ったら発狂……"くねくね"みたいな感じかな
まさしくその通りです
拡大解釈の方向性で攻性防壁かファイアウォールのようなスタイルになっています
こちら、スーツのほほえみおじさんの方となります

>>727
次世代ーズは決して急いではおりません!
どうぞご安心して書いて下さい!

 


>>728
流石でございます
その手はささやかながら有効です
あと笊や籠を使用するのも気休め程度ですが効果があります

とりあえず、今夜中に「先生」来ちゃった♥とひかりちゃんとか逃がす辺りは投下するんでちーっと待ってな
逃がす先は……「組織」管轄の病院かな。天地とかが待ち受けてる

で、ピエロが本格的に暴れてるんなら、「狐」騒動決着もこの日の夜に本当にズレこませるべきかなー、と本格的に悩む次第である
一気に片付けたほうが楽だよね。盟主様の問題も含めて

>>729
こういうのはスピード勝負だってばっちゃが言ってた

(ところで、「海からやってくるモノ」って日本産かな?という疑問)
(もしそうだったら、時期的に「先生」が日本産の水霊とか水神とか対策を勉強後)

 どうするか
 慶次は必死に考える
 一応、天地に緊急連絡のメールはいれた
 この場に、誰かしら駆けつける可能性はある、あるのだが

(問題は、「誰」が来るか……)

 ある程度戦闘ができる人員が向けられるはずではある
 だが、「ある程度」しか戦闘が出来ないのでは、この場は駄目だ
 もっと、理不尽に立ち向かえるような、そんなレベルでなければどうにもならないのではないか
 そのように、慶次は感じたのだ
 天地がこちらに向かわせることができる人員で、そんな奴はいただろうか……

 そうして、必死に思考を巡らせていた、その時だった
 何か、聞こえてくる
 その音は、外から聞こえてきていた
 様々な音が混ざり合っているが、具体的に言うと暴走族が乗っていそうなバイクのエンジン音と走行音、何かと何かがぶつかったような音と絶叫

 ……バイクの音+何かと何かがぶつかった音+絶叫?

 慶次以外にも、その音ははっきりと聞こえていた
 そして、それらの音を聞いた全員が、外で起こっている何かに気づいたのだろう
 誰もが一瞬………本当に、ほんの一瞬だったはずだ………この建物の入口を見たのと、それは、ほぼ同時だった

 工場の入口から、シルバーなメタリックが飛び込んできた
 耳にうるさい爆音を響かせながら、その銀色に輝く改造バイクは工場内にいたピエロメイクの者逹へと、一切合切遠慮なしの突進を開始する
 バイクを運転しているライダースーツに銀髪の男の背後に、もう一人誰か乗っているようで、白衣がはためく

(………白衣?)

 白衣である
 見間違いでなければ、白衣だ
 ……まさか

 ギギギギギギッ、と嫌な音をたてながら、バイクが慶次逹の前で急ブレーキをかけて停まり………その白衣が、降りた

「やぁ、カブトムシの青年!天使の御仁に行けと言われたから来たよ!」
「よりによっててめぇか、くそ白衣ぃいいっ!!」
「うん、それだけ叫べるならとりあえず大丈夫だな!」

 あっけにとられている様子のかなえやひかりに構う様子なく、「先生」は朗らかに笑う
 緊張感あふれるこの場にやってきたのだと言う自覚などさっぱりないのではないか、と疑いたくなるような朗らかな笑顔だ

「まぁ、そちらのお嬢さんが怪我しとるのはなんとかしたいが………ん、んー、先にあっちを片付けねばならんかね」

 つ、と
 「先生」がタートルネックの男とスーツの男を見た
 眼鏡の奥で、血のように赤い瞳が興味深げに彼らを見つめる

 向こうも、突然の闖入者に流石に驚いているようだった
 いきなり、こういう場に都市伝説能力なしで(なしのはずだ。さっきの轢き逃げアタックは都市伝説能力が働いているようには見えなかった)突撃してくる馬鹿がいるとは思わないだろう
 都市伝説能力者であれば、都市伝説能力を使って乱入してくるものだろう
 何故、バイクで轢き逃げした
 ちらり、とバイクを運転していたそいつを見ると、銀髪にサングラスにライダースーツ
 ……慶次は見覚えが合った
 戦技披露会の会場に来ていた「レジスタンス」のメンバーだ。確か、「ライダー」とか呼ばれていたはず

「……待て。なんで天地がよこした人員なのに、「レジスタンス」の奴がいやがる?」
「天使の御仁から連絡きた時、ちょうど診療所にいたので足代わりに」
「バイク改造してもらった分の代金代わりにここまで連れてきたぜ」

 さらりと、「先生」と「ライダー」はそう答える
 そう言うのであれば、恐らくそうなのだろう。何かが引っかかるが

 ようやく、相手は混乱から回復したのだろうか
 タートルネックの男が声を上げる

「これはこれは………「死毒」アハルディア・アーキマンに、「レジスタンス」の「ピーターパン」の部下が一人、「ライダー」とは。「死毒」がこの街に来ていた事は知ってたけれど、まさか「ライダー」までとは」
「……懐かしい呼び名だね」

 タートルネックの男の言葉に、「先生」はやんわりと微笑む
 苦々しい表情、ではない。本当に懐かしそうに、やんわりと微笑んでいた
 彼にとって、「死毒」とは発狂時代の色々とやらかしていた頃の異名であり、苦い思い出しか無いはずなのだが……
 ……否、違う
 彼にとっては、発狂時代の事もまた「苦々しい思い出」ではないのだろう
 俺の過去として。ただ「あった事」として飲み込んでしまっているだけなのだ

「「ライダー」がいると言う事は、「ピーターパン」も?」
「安心しな、ちょろい上司ランキングナンバー1なうちの上司は、只今アヴァロン補修に駆り出されてて日本に来る暇もねぇよ」

 バイクのエンジンをふかしながら「ライダー」はタートルネックの男にそう答えた
 そうかい、と男は笑う

「それは良かった。彼もまた、イレギュラーと言うべき厄介な存在だからね。これ以上イレギュラーに増えられてはこまる」
「それは同感だな。あの御仁にこっちに来られると我々も困る」

 うんうん、と何故か「先生」がタートルネックの男の言葉に同意している
 ……どうやら、「ライダー」の上司とやらは、ひかり同様イレギュラーになり得る存在であるらしい
 「レジスタンス」の上位幹部ともなれば「組織」の上位幹部と同じくらいのとんでもクラスがいる事は確実なので、あまり驚きはしないが

「あ、あの、「先生」……」

 かなえが、怯えたように、不安そうに声を上げた
 「先生」は、かなえに優しく笑いかける

「あぁ、大丈夫だよ、お嬢さん。少なくとも、お嬢さん逹はちゃんと逃がすさ。そういう事は、大人の仕事だからね」
「逃がす?ここから?」

 スーツの男が、「先生」をじっと見つめる
 そうだよ、と、「先生」は笑う

「どうやら、お嬢さん逹のメンタル面にあまり良くなさ気な者がたくさんいるみたいだしねぇ」

 とんとんっ、と「先生」が床を軽くつま先で叩いた
 その瞬間、「ライダー」の乗るハデッハデなバイクの傍らに、地面からサイドカーが生えた
 違う、生えたのではない
 「先生」が、廃工場の床を材料に、瞬時に錬成したのだ

「「賢者の石」、厄介ですね。あなたもある種、イレギュラーと言っていい」
「おや、私はそこまで万能ではないよ………万能だなんて、そんな「猛毒」、残念ながら私は手に入れられなかったよ。なにせ、天才ではなく凡人なのでね」

 ゆるゆると笑いながら、ついでにヘルメットを錬成する
 出来たヘルメットは、三人分

「薙刀の御仁、一度、お嬢さんの中に戻ってくれるか。サイドカーをつけたとは言え、流石に君が乗る余裕はあるまい。サイドカーにお嬢さん逹2人、「ライダー」の御仁の後ろにカブトムシの青年一人。それで希望の明日へレディゴーしようか」
「おじちゃま?……おじちゃまは、どうするの?」

 ひかりが、「先生」を見上げて問う
 …その通りだ
 先程「先生」が言ったように「ライダー」のバイクに乗り、ここを離脱するのだとしたら「先生」はどうするのか
 この場に、取り残される事になる

「なぁに問題ない、なんとかなるさ」

 ひかりの問いにも、「先生」は普段と何も変わらぬ様子で答えた
 穏やかな表情も、優しく笑う表情も、何もかもそのままだ

「ずいぶんと余裕だね」
「いやぁ。君達こそ、余裕であろ?ここまでのおしゃべりやら準備やら、きっちり見逃してくれているではないか。うん、実に優しい!とりあえず初手でこちらの脳天にバズーカぶっぱしてきた天使の御仁とは違う」

 にこにこと「先生」は笑う
 はいはい、と慶次逹にヘルメットを渡すと、す、と「ライダー」の前に立つ
 この場にいる全員、自分が相手しよう、とでも言うように

「ほら、早く行きなさい……と言うか、行ってくださいお願いします。私は戦うこと自体ヘタであるし、そのせいか年頃のお嬢さんに見えていい戦い方ではないのだよ」
「…てめぇの場合、戦いのうまいヘタの問題じゃねぇだろ」

 ぼやきつつ、慶次は半ば強引に、かなえとひかりにヘルメットを被せていく
 そうしながら、「岩融」に告げた

「一旦、戻れ……離脱するしかねぇからな、ここは」
『……っわかった。主、戻るぞ』

 ふっ、と「岩融」の姿が掻き消えた
 完全にパニックからは脱出しきれていないかなえを急ごしらえのサイドカーに載せ、その膝の上にひかりも載せた
 慶次自身もヘルメットをかぶると、「ライダー」の後ろへと乗る

「逃がすとでも……」
「逃げるさ!」

 ライダーが、バイクのハンドルについていたスイッチを押す

 ………ハンドルに、スイッチ?

 慶次が疑問に思うよりも早く、彼らの乗るバイクの前方部分に、キュィイイイン……っ、と光が集まって

「ABRACADA…………っ!?」

 タートルネックの男が、「ライダー」が行おうとしている何かを阻止しようとして
 が、その口からは「アブラカダブラ」の呪文ではなく、血が吐き出された

 バチ、バチバチッ、と、いつの間にか「先生」の周囲に赤黒い光が放電するように輝き始めている
 その輝きは、「先生」が手掛けた「賢者の石」が、何かしらの能力を発動する際のもの
 かつて、「先生」も開発に関わった「賢者の石」の出来損ないもまた、それを埋め込んだ人物を再生させる際にそんな光を発していたと言う

 何をされたのか、タートルネックの男は気づく
 瞬間的に、己の周囲の空気を「毒」に変えられたのだ、と

 血を吐き出すというタイムラグのせいで、間に合わない
 「ライダー」の乗る派手な改造バイクに収束された光は、そのまま、どぉん!!という派手な音と共に、レーザービームとして打ち出され
 発射の瞬間、そっと横にそれた「先生」を微妙に巻き込みながら、前方にいた者逹を容赦なく、焼いた
 あまりの眩しさに、かなえやひかりにその様子が見えたかどうかは、わからない

 ごぅんっ!!とエンジンが唸りを上げて、轟音と共に四人を載せたバイクは廃工場から走り去っていってしまった



「うん、腕によりをかけて改造してよかったと言うべきかな」

 バチバチッ、と赤黒い光を発生させながら、うっかりとレーザーに巻き込まれた体を再生させる「先生」
 「ライダー」に頼まれて、あのバイク(「ライダー」の上司の物だった気がする)を改造したかいがあった
 ミサイルだけではなく、やはりレーザーも積んで正解だったのだ
 ミサイルもレーザーも、男のロマンである
 ドリルを詰めなかった事が、若干後悔であるが今後、また改造の機会があったら積ませてもらおう

「……やってくれるね」

 さて、ピエロ連中は轢き逃げアタックや先ほどのレーザーでそれなりに倒したものの、タートルネックの男とスーツの男は、まだ無事だ
 タートルネックの男も、口から血を吐き出し続けてはいるが、まだ軽めの毒であるからか致命傷ではない

「良いのかな?……あなたは確か、正気に戻った後、むやみにどの毒をばらまかないよう、約束させられていると聞いているけれど」
「可愛らしいお嬢さん逹が襲われていたのであるからね。そちらを助けるためならば問題ないさ。誰かを助けるためであれば多少毒をばらまいてもいい、問題ない、と言われている」

 にっこり、「先生」は笑って答えた
 そう、問題ない
 これから自分が行う事も、何も問題はないのだ

「さて、諸君。彼らを追いかけたいかもしれないけれど、駄目だよ」

 毒が満ちる
 この廃工場全体を覆うように、毒が回る
 床も、壁も、天井も、窓も、空気も、何もかも何もかも
 全てを「先生」が毒へと変えていく
 何か動作をする事なく、ただ、「先生」の周囲でバチバチと赤黒い輝きが生まれるたび、高速で錬成がなされていく

「大丈夫、即死はさせない。その前にやらないといけない事もあるからね」

 白衣の内側から、「先生」がメスを取り出す

「多分、素直に口割ってくれないだろうし、一応素直になるお薬も使うが、それでも駄目だったら頭をかっさばいて中身を見ないとね。緊急事態だし、まぁ良かろう」

 「死毒」が笑う
 彼は、ある意味で発狂状態から正気へと戻った存在である
 だが、そもそも、「元から正気ではなかった」とも言える存在である


 彼に罪悪感はない
 どれだけ残虐な事であっても、残酷な事であっても、「必要」と判断したならば、やり遂げる

「さぁ、私のスペシャルな毒のフルコースを、どうぞ」

 致死量の毒が襲う
 人体を麻痺させる毒が、体の機能を殺す毒が、ありとあらゆるものを腐食させる毒が
 一斉に、この場にいる者逹へと襲いかかった




to be … ?

土下座の準備はできているか?
俺はできている(バンジー切腹土下座を決めながら)

つー訳で、突貫なので荒くて申し訳ない
「先生」来ちゃった♥&ひかりちゃん達を逃しました
「先生」がこのままやっていいなら遠慮なくいきます。今夜はこれ以上書くのちと無理なんで今回はここまでなのです

「先生」の性能としては、「賢者の石」による即時再生と錬成(主に毒物)がメインです
他者の脳みそかっさばいて、そっから情報を得る、なんて事もやります(なお、後でとある人にめったくそ怒られる模様)

 
花子さんの人、お疲れ様です
次世代ーズは鳥居の人の反応を正座待機します……!
「先生」が登場したときの謎の安心感は何なのだろう
ところでバイク改造されて大丈夫なのか、上司
真降君の方も心配だ……


>>713
>ひかりはフィジカルな戦闘力は「ふつうの子ども並」なので、戦闘スタイルとしては「アカシックレコードに接続して事象の書き換え(改竄)」か、ロンギヌスの槍本来の治癒能力を使った治療になると思われます。
ありがとうございます
タートルネックの野郎も事象改竄の能力でございます

>>731
>で、ピエロが本格的に暴れてるんなら、「狐」騒動決着もこの日の夜に本当にズレこませるべきかなー、と本格的に悩む次第である
ご安心ください(あんしん)
彼らはじゃれてる程度でまだ人目をうかがってます
「ピエロ」的には完全に「前夜祭」のノリでやってます
つまりこれは序の口で、未だに本番が始まっていない(ほんわか)

>>732
洒落怖のコメントでは「海難法師」との関連性を指摘する向きもありましたが
彼の能力に関してはあくまでも正体不明のモノという感じですね

>>736
早速ネタばらしですが
野郎二名はなんと、脳がありません! 内臓も無いぞう!
……勿論タネもシカケもあるんですが、そういうことです
こちら、本来現世代編で出す筈だった「組織」は暗黒面由来の技術になります
 

花子さんの人、投下お疲れ様です
「先生」はあらゆるものを毒に変えるフレンズなんですね。すっごーい
天敵はユニコーンかな?

>>729-730
>拡大解釈の方向性で攻性防壁かファイアウォールのようなスタイルになっています
>あと笊や籠を使用するのも気休め程度ですが効果があります
ザルとカゴか……元の洒落怖?を読んでおいたほうが理解が早そうだし読んどこう(まだ読んでない)

>>731
>で、ピエロが本格的に暴れてるんなら、「狐」騒動決着もこの日の夜に本当にズレこませるべきかなー、と本格的に悩む次第である
>一気に片付けたほうが楽だよね。盟主様の問題も含めて
もういっそコレに便乗して色々進めてもいいような気がしてきた
たぶん暴走盟主様、次は雨天時にも活動するようになります
あと心持ち学校町だけ雨乞いされて平年より雨がよく降るようになる

>>737
>野郎二名はなんと、脳がありません! 内臓も無いぞう!
内蔵ってどのくらいのレベルで無いんですかね
むしろ何なら体に残ってるんでしょうか?

>>737
>ところでバイク改造されて大丈夫なのか、上司
上司は「なんで人のバイク勝手に持っていってしかも改造しちゃってんの!?」って抗議するんですが、「ライダー」が「見てみて上司、レーザーつけてもらった!」って披露すると「すげー!かっこいい!」ってはしゃぐから大丈夫
ちょろい上司ランキングナンバー1は伊達じゃない

>つまりこれは序の口で、未だに本番が始まっていない(ほんわか)
どちらにせよ、暴れてるんなら適当に処理に動く人も余裕あったら書こう
この辺は大人のお仕事だな

>彼の能力に関してはあくまでも正体不明のモノという感じですね
うーん、残念
なら、ひさごの呪術は盟主様関連と言うか蛇な水神用にとっておこう()

>野郎二名はなんと、脳がありません! 内臓も無いぞう!
「先生」「なんだつまらん。じゃあ、跡形もなく処分する方向性で大丈夫かな。個人的に、脳も内蔵もなく生きている存在の解剖はしたいが、再生されると面倒であるし」
【朗報?】郁の「先生」との対戦可能性再び浮上【悲報?】

>>738
>天敵はユニコーンかな?
ユニコーンとかが浄化してくれば毒は浄化されますね
それならば毒じゃないもの錬成して戦うまでなんですが

>たぶん暴走盟主様、次は雨天時にも活動するようになります
「狐」最終決戦で途中雨を降らせるかどうか悩むだけの

>>632持っておけばなにかの役に立つと考えそうだし

三尾がY-No.の常備薬としていつも補充してるからいくらでもあるよ!

>>633
元から優しく真面目な上に、あまり仕事しない奴とかベタベタ甘えてくる奴とかいて余計に真面目に

"善い行いをしましょう、例え偽善だと言われても"

スリーテイルってどんな髪型かはっきりしないよね、ツーサイドアップ?ポニテとしか言えないよね、参考資料も少ないし
服に関しては不思議の国のアリスのエプロンドレス?みたいなのの黒色を想定


>>686最悪ヘモグロビンを介して血液にすら干渉しかねないと想定すると
看守の鉄分を奪って脱獄するんですね分かります


>>700他にもあるかもしれんが

全部必殺技じゃないですかやだー


>>737こちら、本来現世代編で出す筈だった「組織」は暗黒面由来の技術になります

頭痛と胃痛に悩まされる黒服を助けるための技術ですね

もそもそと昨晩ぶん投げたシーンの続きを構想していく
俺……そのシーン書き終わったら人狼ゲームやってるとこ書いて、その後に匪賊が「狐」配下ズに合流するシーン書くんだ……後、余裕あったらテロ活動開始したピエロをお掃除するシーン……
……書くべきシーン増えてるねいつの間にか!?


>>740
>看守の鉄分を奪って脱獄するんですね分かります
それなんてマグニートー
原作ではチートすぎて出版社から「自重しろ」って言われたって伝説があると聞く

>全部必殺技じゃないですかやだー
必殺技じゃないと仕留められる気しないとです

 

鳥居の人様、お待たせしました
これから暗殺者2名の能力詳細を投下します


「ピエロ」自体は10月から出没してるので
「組織」やこの間に遭遇してる人は存在を知っています

「ピエロ」については>>500をご覧ください


しかし、以下の彼ら(暗殺者2名)についてはいきなり登場しました

能力については裏設定レベルの細かいところまで入っていますが
大まかに捉えてもらえたら、と思います


 

 

○海からやってくるモノ

▽元ネタ
 ttp://syarecowa.moo.jp/116/18.html

▽一言で言うと?
 理解したら発狂する

▽契約者
 スーツの人の好さそうな笑顔の(中年)男性

▽能力

①範囲内の予知・察知能力へのカウンター発動(攻性防壁)
  射程圏:学校町全域カバー

  契約者の男性A(以下、A)が意識的に開始しなければならないが
  意識するのは能力開始時と能力終了時で良い(トグル型発動)

  射程圏内で予知・察知の能力者B(以下、B)が
  当該能力を発動したのを条件として、①の能力効果が自動で発動する

  能力効果が発動すると、Bの主観内に寂れた漁村のイメージが流入する
  イメージ内には「海からやってくるモノ」(以下、モノ)が存在し
  その姿をBが認識した時点で、以下「影響」の項目に揚げた症状を誘発する
  特にモノの顔面を認識した時点で即座に「影響」の(5)を誘発する

  射程圏内で能力を発動するBの総数は①の能力発動に影響を及ぼさない
  しかし、基本的にAから距離が離れるにつれ
  Bの能力発動時にイメージ内でモノを視認する確率が下がる
  この場合、Bは漁村のイメージを視認するが、モノの存在を視認する確率は下がる
  言い換えると、BがAに近づくほどモノを視認する確率が高くなる

  Bが大抵の予知・察知系能力者の場合
  射程圏内において、Bが能力を発動して漁村のイメージが流入した際、
  最初の一度だけ、Bの能力が強制的に切断されることがある

  これは、Bを保護しようとする能力側の自己防衛機構によるものである
  これが唯一の「警告」となる

②モノの発現
  射程圏:中距離(Aの視界が届く範囲)

  Aが意識している間のみ発動可能
  Aが②を発動すると射程圏内にモノを発現する
  この際、潮の匂いに混じった生臭さを感じることが出来る
  ②により発現したモノは射程圏内を自律行動する
  モノを視認した対象は、、以下「影響」の項目に揚げた症状を誘発する
  特にモノの顔面を認識した時点で即座に「影響」の(5)を誘発する
  ※対象が射程圏外からモノを視認したとしても「影響」を誘発します

③直接リーディングへの対抗発動(ファイアウォール)
  射程圏:∞

  Aが発動を意識せずとも、条件を満たすと同時に発動する
  発動条件は、BがAを直接、能力によって読み取ろうと能力を発動した時点である
  Bの主観内にモノの顔面のイメージが流れ込み、Bは即座に「影響」の(5)を誘発する

▽影響

  モノを視認した対象は以下の症状を誘発する
  数字が大きくなるほど深刻度が上がる

(1)見当識失調
  現在の時間や、自分の居る場所、自分や他人が分からなくなる
  対象の持つ「いま・ここ・わたし」の感覚が失調する

(2)言語機能失調
  脈絡に沿った会話が困難になる
  これは発話・書記ともに影響を及ぼす
  重症化すると意味のある発声が困難になる

(3)錯乱


(4)急性の自殺衝動


(5)発狂→自殺
  この段階に達すると事態の悪化は一方的に進む


※原話の特性により、後遺症が残る可能性があります

 

 

○アブラカダブラ

▽元ネタ
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%80%E3%83%96%E3%83%A9


▽一言で言うと?
 契約者の思い描いた通りに事象を改竄する


▽契約者
 タートルネックの青年


▽能力

①「私が話す通りになる」

  契約者の青年A(以下、A)が想像した事象で現実を上書きする
  しかし、「出来ること」と「出来ないこと」があり
  特に強力な都市伝説・契約者の内部に干渉することは困難である
  (不可能というわけではないが能力の処理に時間が掛かる)
  また、魔法陣上で①の能力を発動すると通常時に比して能力の程度が増す


②「この言葉のように消滅せよ」

  基本的に①と同様の能力である
  こちらの場合、物体を消失させる他に
  Aや対象の物理的・精神的な失調を「取り除く」ことが出来る
  この能力は原話の「病気の治癒」のモチーフを引き継いだものと言える


※彼は発動時、確実を期す為に詠唱していますが
  実は、別に詠唱しなくても①、②ともに発動可能です

  詠唱時の構文は「アブラカダブラ( (①か②) ):( 改竄内容 )」となりますが
  ご自由にアレンジして頂いて構いません



ひかりちゃんの事象改竄能力を上書きするような描写を>>721の時点で行っておりますが
この時点で、彼女はタートルネック野郎が同種の能力者であることに気付いている、と思います

2名とも弱点らしい弱点はなく、逆に言えば全身を蒸発させるような方法が有効な対処法ですが
「ピエロ」消失までの期間、彼らは肉体が破壊されても数分~数時間後に再出現します

また、「海からやってくるモノ」に関しては、原話の特性上
笊や籠を用いることでモノに遭遇したときの影響をある程度抑えることが出来ます
「次世代ーズ」の早渡脩寿ならば、頭からすっぽり被ることを提案します


 

(ところで俺、ひかりちゃん逹逃した後の「先生」のシーン書いて大丈夫なんだろうかどうなんだろうか)
(まだ出だししか書いてないから書かないほうがいいなら書かないんだが)

 
>>745
次世代ーズ振りかな?
あの続き(>>733-735)を書いて下さるなら次世代ーズは大歓迎であります!
 

>>746
あ、良かった。じゃあ書いていくとですよ
殺していいのなら遠慮なく殺すし

なお、脳みそないと言う情報を頂いたので膝枕脳クチュと言うニッチがボツになったよやったね

 
>>745
ああ、あとタートル野郎ですが「先生」こと「死毒」と戦い合えることに
心の中では狂喜乱舞していますね
なかなか表には出さないと思いますが
 

>>748
どうせならおっぱい大きい美人のおねーちゃんに狂喜乱舞してほしかった、と「先生」は証言しており(どうでもいい)

 毒が満ちる
 辺りの空気そのものを毒へと変えたのだから、通常の生物であれば呼吸すらままならない
 吸い込んでしまえば呼吸器官をやられる。それだけではなく体を内側からどろどろに溶かしてくる
 …そもそも、この現場にいる事自体、危険なのだろう
 空気も、床も、天井も、壁も、窓も
 この場の全てが毒へと錬成され変えられたのだから
 この廃工場の外までは毒は漏れ出していないものの、確実にこの土地は駄目になるだろう
 そのような状況を作り出した「先生」自身が頑張って治せなくもないのだが………少なくとも、現時点でこの「先生」がそこまで考えているかどうか、となると微妙であった
 「先生」の顔に浮かんでいる表情は、明らかに楽しんでいるもの


 久々に、良い実験体が見つかった、と。そうとでも言いたそうな表情だった


 たんたんっ、と「先生」が足元を踏み鳴らす
 踊るように、奏でるように
 バチバチと赤黒い光を放ちながら、毒を生み出していく

 タートルネックの男とスーツの男はまだ、立っている
 しかし、他のピエロ逹は悲惨な状況だった
 溶けているのだ、内側から、外側から
 悲鳴もあげられず、逃げる事もできず、ぐちゃり、と溶けて溶かされ崩れていく
 その状態で死んでいられたならば、きっと楽だったのだろう
 せめて、痛覚だけでも消えていてくれていたならば楽なのだろう
 だが、「先生」の作り上げた毒はそれを許さない
 ピエロ逹は、痛みと言う痛み、苦しみと言う苦しみを味わいながら、生きながらにして溶かされ続けていた

「さすがは「死毒」と言うべきか。残酷な事をする」
「ん?……ふむ。ふむ?」

 スーツの男の言葉に、「先生」は不思議そうに首を傾げた
 その間も、とんとん、たたたんっ、と足元を軽く踏み鳴らし続ける

「ん、んー………あぁ、そうか。これは「残酷」に入るんだったね。まぁ、いいや。我が上司いわく「外道は苦しみながら死ね」との事だから、オッケーオッケー許される」

 うんうん、と何やら自分に言い聞かせるように頷いている「先生」
 残酷、と言うものの基準すら、「先生」はいまいち理解できていない

「生かしたまま溶かすとかも、コーラの御仁もやってるし……うん、やっぱりオッケーだね!駄目だった時は仕方あるまい、私が怒られればそれで終わる」
「本当に、このまま生きてここから帰るつもりらしい」

 タートルネックの男は笑う
 吐き出した血は、拭う事なくいつの間にか消えていた
 足元を踏み鳴らす「先生」を真っ直ぐに見据え、彼は唱える

「ABRACADABRA(私が話す通りになる):毒は全て、アハルディア・アーキマンへと返る」

 能力が発動する
 「先生」が生み出した猛毒が、全て、「先生」へと返っていく

 返っていっている、はずだった
 しかし、「先生」には何の変化も訪れない

「我が子(毒)に負ける程には、耄碌しておらんよ」
「……まぁ、そうだろうね」

 そもそも、己が生み出す毒に負けてしまうのであれば、今、この場に立っていられたはずがないだろう
 「先生」が生み出した毒は、彼自身には効かないのだ
 たんたんたたたん、ステップを踏みながら、「先生」は更に口を開く

「ABRACADABRA(私が話す通りになる)」

 穏やかに笑みを浮かべて、「先生」がこの言葉を口にする

「君達は逃げられない」

 ほんの少し、悪戯めいた声音でそう告げる
 その瞬間、スーツの男も、タートルネックの男も、自身の足に違和感を覚えた
 足が、重たい
 先程までの毒に侵されていた状態とは、また違う
 まるで、逃げられないように縛り付けられているような、そんな感覚だ

「なるほど、なるほど!ABRACADABRAは、古代には熱病や炎症の治療に使われていた呪文であったと記憶しているが、今はその気になればこんなふうにも使えるのか!なるほど、楽しい!!」
「自身で契約していない都市伝説の力まで使うのはやめて欲しいね」
「魔術要素があるなら、ちょこっとくらいなら許されようよ。私は「賢者の石」の契約者であるからして」

 楽しげに笑いながら、そう告げる
 「賢者の石」は、最高レベルの魔術媒体ともなり得るものだ
 それにくわえて、「先生」は元々、人間であった頃から……「賢者の石」の契約者となる前から、「薔薇十字団」に所属していたのだ
 魔術的教養をある程度身につけており、扱い方を心得ている

 「賢者の石」の使い方としてかなりイレギュラーではあるが、他の魔術的都市伝説の真似事もできるらしい………もちろん、何かしらの制限・制約は存在するのだろうが

「ふむふむ。しかし。君のその「ABRACADABRA」は、事情で現実を上書きすると言う、それこそ間違えば万能足り得るものであるが。流石に制限があるか。できん事もある………いや、時間がかかって、まだ発動しとらんだけかな?」
「何故、そう思うんだい?」
「君のその力が真に万能で何だってできるのであれば、さっさと私を殺せば良いではないか。それをやらん、と言う事は。できないもしくは時間がかかるのだろう?」

 少なくとも、「先生」はそのように理解した
 殺さずとも、さっさと無力化するなりなんなりしてしまえばいいのにやらないのはそういう事なのだろう、と考えたのだ
 それと、と「先生」はスーツの男へと視線を移す

「君は、私に何をしてくれるんだい?……それとも、予知能力・探知系能力・察知系能力に対するカウンターしか出来ないタイプかな?」
「……やっても、すぐに毒で溶かされるだろうし。そもそも、すでに発狂済の相手が更に発狂するかどうか」
「私、今は正気のつもりであるのだけれどなぁ」

 スーツの男の言い分に、解せぬ、と言う表情の白衣
 しかし、すぐにまた、笑顔に戻る
 たんたん、とととん、たん、たたたんっ、と足元で刻み続けるステップは続く
 バチバチ、バチバチと、毒を生み出し続け……

 それだけではないのでは
 タートルネックの男も、スーツの男もそれに気づいたが
 それと同時に、「先生」は緩やかに、穏やかに、笑った

「それじゃあ、この毒もちょっと借りて使おうか」




「ーーーーーっ!」

 一瞬、ざわざわとしたものを「ライダー」は感じた
 この学校町に来てから、ずっと妙にぞわぞわしたものを感じていたのだが……それが、ほんの少し「動かされた」ような「引っ張り出された」ような、そんな感覚

「どうした?」
「いや、なんでも。あえていうなら「先生」がなんかした気がしただけさ」

 それは何かろくでもないことが起きる予兆じゃねぇのか、と背後から慶次の突っ込みが飛んできたが、スルーする「ライダー」
 なんかあったら「ライダー」が怒られたり踏まれたり椅子にされたりするだけだと思うので、「ライダー」的にはあんまり問題がないのだ
 怒られるのを嫌がって、派手なことはしないはずだし、多分

「さて、っと。このまんま「組織」の病院に行くつもりだが。そっちのガールもそれでいいのか?」
「ガールって、私?」
「おう、そうだぜ」

 サイドカーで、かなえの膝の上に座っていたひかりにそう告げる「ライダー」
 彼女が、郁の救出に向かったのだという者と合流するつもりであれば、そちらに送るつもりらしい

「っあ、あの、ら、「ライダー」さん、前方に。また……」

 と、あわあわとかなえが口を開く
 彼らが乗るバイクの前方、ピエロの影が見えた
 どうやら、学校町内で何かしら動き出しているらしい

「オッケー、じゃ、見たくなかったら目を閉じとけ!」
「おい、待」
 て、と慶次が言うよりも早く、「ライダー」がバイクのハンドルを決められた方法でひねった瞬間
 けたましい銃声音が響き渡り、バイクから発射されたガトリングの弾はピエロ達を次々打ち抜き、そのまま道を爆走していったのだった




.

 毒が沸き立つ
 地面から……地脈から、毒が取り出される
 本来、この土地の地脈の影響をダイレクトに受けるとあるものにだけ通じるはずの毒は、取り出された瞬間に「先生」によって改造される
 改造された毒は、地面からゆるゆると登り上り、スーツの男とタートルネックの男の精神を蝕みだした

「ーーー世界は毒で出来ている」

 バチバチと、自身を中心に赤黒い輝きを放ちながら、歌を歌うように言葉が紡がれる

「世界に満たされた毒を、我々はほんの一部しか知らない。しかして、自覚さえしてしまえば、後はその力を強めれば、その毒はたやすく全てを殺しえる」

 溶ける
 すでに原型すら残さず、細胞のひとかけらすらも残されずに溶かされていったピエロ逹のように、彼ら二人も溶かされ始める
 先程までの毒よりさらに数段上の猛毒が、辺りへと満たされる

「私も、毒なのだろう。君逹もまた、毒だ。毒を持って毒を制せよ。彼らの目的を達成させるためにも、君逹と言う毒は、私という毒にて制圧しよう」

 溶けよ、解けよ、融けよ、と
 ゆるりるりらと言葉は紡がれ、その言葉すら毒になる
 子守唄のように言葉は紡ががれ、耳を心を精神を犯し、眠りにつかせようとする
 二度と目覚めることがないように、最後の子守唄を贈るように言葉を紡ぎ、毒を贈る

「眠りなさい、溶けなさい、消えなさい。舞台から観客席へと突き飛ばさせてもらおう。目覚めてしまわないように、ずっと、その穏やかで苦しい悪夢が続くように」

 タートルネックの男が、何か告げようとした
 スーツの男が、何か告げようとした

 その言葉を遮るように、「死毒」はわらった



「君達がいると、彼らの「物語」に支障が出かねない。彼らが「最初から決まっていた通り」に「物語」を進められるように。障害を排除するのもまた、大人の役目であろうよ」


 溶かし切る
 消し去りきる

 その強い意志を持って、「死毒」は二人を殺しに、否、「消し去り」にかかった




to be … ?

様々な方面への土下座完了
「先生」がだいぶ口滑らしてますが大丈夫かどうかは知らない

はい、後半部分で「先生」、盟主様を蝕んでいる毒を、微妙に地脈から「ちょっと借りるね♥」して取り出し改造してそーっれ!と二人にプレゼント
そっから、本格的に溶かし消しに向かった模様
なお、なんで地脈の毒引っ張り出したかって「知ってるよ」って牽制だと思う、多分
時期的に、とあるルートから「先生」は学校町の地脈の状態とか把握しているので

ちなみに、毒は部分的にちょっと(勝手に)借りた感じなので、盟主様の状態には影響でないと思う
瞬間的に、毒が弱まったりはするかもしれないけど即座に元に戻るんじゃないですかね恐らく

花子さんとかの人乙でーす
先生の穏やかなはっちゃけっぷりが怖い。
>>738
>真降君の方も心配だ……
オーケー、心配ない
>タートルネックの野郎も事象改竄の能力でございます
おお!ガチバトルさせてみたい!世界の編集合戦!(迷惑を振りまく予感しかない)

>>740
>服に関しては不思議の国のアリスのエプロンドレス?みたいなのの黒色を想定
それ知ってる
すんげえ可愛いのに実際着て歩くと「メイドさん」とか言われちゃって殺意MAXになるやつなんだぜ!

 

花子さんの人、お疲れ様です!
「先生」を慶次さんが危険視するのも頷けます
危険人物ってレベルじゃないぞ、たまげたなあ……
でも個人的に「先生」がここまでやってくれて非常に感動している
承知しました、次世代ーズが続きを書いて鳥居の人へのバトンタッチ準備を進めましょう

両方ともひかりちゃんにやっつけてもらえるように手筈を整えますが
構いませんかね!? 花子さんの人!!
その場合、次世代ーズが>>750-752の続きを引き受けます


>>738
>内蔵ってどのくらいのレベルで無いんですかね
>むしろ何なら体に残ってるんでしょうか?
体の中には人口肉だかなんだかで造ったモツのイミテーションが詰まっております
と言いたい所なんですが……
食事とか排泄とかどうなってんだ、って感じですがそっちはOKなんです


>>740
>頭痛と胃痛に悩まされる黒服を助けるための技術ですね
流石でございます
上手い返し方ですね
しかしこの方法では残念ながら頭痛と胃痛を解消できません
お薬飲んだ方が効率的です


>>754
>>真降君の方も心配だ……
>オーケー、心配ない
真降君、頑張ってね……

>おお!ガチバトルさせてみたい!世界の編集合戦!(迷惑を振りまく予感しかない)
こちら承知しました
「ピエロ」は学校町に迷惑を振り撒きに来たので全部押し付けてしまって問題ありません

 

 

あと、こちらに関してなんですが……


>>722
>ところでな、ピエロが学校街で暴れだすとするだろ?
>それを聞いて「いっそ、死亡フラグ組片付いた夜に「狐」サイド片付けてもいいんじゃね?ピエロとまとめて処理できね?」ってなりつつあるのがこちら
>それやる場合、「凍りついた蒼」への襲撃イベントボツっちゃうんですけど

>>731
>で、ピエロが本格的に暴れてるんなら、「狐」騒動決着もこの日の夜に本当にズレこませるべきかなー、と本格的に悩む次第である
>一気に片付けたほうが楽だよね。盟主様の問題も含めて


花子さんの人、申し訳ない
次世代ーズの中の人は完全に勘違いしていました

当初、死亡フラグ組のフラグが折れた時点ではまだ夕暮れだと思い込んでいました
バビロンの淫婦消滅時点で既に日が暮れて夜になっていたんですね


>>476
>夕日が完全に沈みきり、夜と言う暗闇が学校町へと完全に降り立った

>>685
>ヒント:死亡フラグ組が片付いたシーンはバビロンの大淫婦死亡とほぼ同時


と、いうことは次世代ーズが口走った以下の件は
完全に修正しなければならなくなりました


>>723
>あと「ピエロ」に関してですが
>作中現在ですと、こんなのが東区を中心に暴れ始めています


このとき具体的に「ピエロ」が何をしたかったのかというと「下校中の児童・生徒の襲撃」です
で、勿論次世代ーズの面々もこの時点で阻止の為にしゃしゃり出る予定だった

しかし、日没後の夜ともなると最早やれるのは「東区の住宅街で放火ごっこ」くらいですね……
「ピエロ」は住宅とついでに仲間を放火します。そして笑います。そして死にます……


……花子さんの人
本当にごめんなさい!! やっぱり二日に分けよう!! ……という謝罪&提案です
「凍りついた蒼」への襲撃イベントあり、盟主様の出現の機会ありで、介入の余地を広げるんだ!!

如何でしょうかね、花子さんの人(本当にすまない)
次世代ーズの馬鹿野郎のこの提案をどう思いますかね、鳥居の人とアクマの人(無茶振りは承知の上!)

 

昨日の雪からして、もう雪ふらねーだろ、うん(北の大地は4月でも降る時は降るので覚悟は決めながら)

そして、俺は今重要なことに気づいた
「ライダー」あいつ、現時点で自身の都市伝説能力一個も使っちゃいねぇ(「先生」に改造してもらったバイクしか使ってない)

>>754
>先生の穏やかなはっちゃけっぷりが怖い。
あいつはあぁ言う男だから……今でもやっぱり危険視されてんのはこのせいでしょう

>>755
>危険人物ってレベルじゃないぞ、たまげたなあ……
当人なりに、「これやったら怒られるからやらないでおこう」って線引はあるようなのですが、「先生」なりの基準なので多分「先生」以外には微塵も理解できない
なお、今回やった事は踏まれるレベルで怒られる模様

>両方ともひかりちゃんにやっつけてもらえるように手筈を整えますが
問題ないですよー
とりあえず、「先生」自身は毒食らっても平気。負傷は「賢者の石」で回復
ただ、流石に頭から上をぶっ飛ばされると再生に若干時間かかるので、隙ができるかもしれません
っつか、どろどろに溶かしていっている時点で、溶けた細胞とかがどっかいっても気づかない可能性に今気づいた

>>756
>バビロンの淫婦消滅時点で既に日が暮れて夜になっていたんですね
ぶっちゃけ、こっちの書き方がわかりにくかっただけなんでこっちが悪い

>「ピエロ」は住宅とついでに仲間を放火します。そして笑います。そして死にます……
なるほどー
放火しようとしてる人逹片付けるシーンはさらっと書いてオッケーな感じかな?(大人組をちょっと動かしたいだけ)

>「凍りついた蒼」への襲撃イベントあり、盟主様の出現の機会ありで、介入の余地を広げるんだ!!
了解デース
よし、「タンクローリーだっ!」ができそうだ(ネタバレにならない程度のやりたかった事暴露)

あ!!

ただ、慶次やかなえ辺りと別行動とってからの方がいいかもしれない、ひかりちゃんとピエロの二人との対決
具体的に言うと、かなえのSAN値が色々やばい

 
この場を借りて白状しとこう
>>704の特に後半を書いてから夜うなされることに気付いた
多分夢で鎧武者かなにかを見た気もしますが
あれはきっと「東一葉を苦しめるとは何事か」というお叱りの声だと解釈し
いよっち先輩にはこの期間、安全な所に居てもらおうかと考えています

早渡のハードルは上げる
千十ちゃんのハードルは……どうしよう


>>757
>なお、今回やった事は踏まれるレベルで怒られる模様
「先生」無茶しやがって……はい、次世代ーズの無謀の所為ですね……
廃工場の毒が除染されることを祈ろう

>問題ないですよー
>とりあえず、「先生」自身は毒食らっても平気。負傷は「賢者の石」で回復
了解です!


>>758
>放火しようとしてる人逹片付けるシーンはさらっと書いてオッケーな感じかな?(大人組をちょっと動かしたいだけ)
どうぞどうぞ!
次世代ーズ側にも「ピエロ」の所業に激おこの子がいますのでね

>よし、「タンクローリーだっ!」ができそうだ(ネタバレにならない程度のやりたかった事暴露)
一体何をするつもりなんだ!!


>>759
こちらも記憶に留めます


避難所裏も確認しました
花子さんの人ありがとうございます
 

>>760
>廃工場の毒が除染されることを祈ろう
「先生」が頑張って除染すると信じて……!(打ち切り漫画風)

>次世代ーズ側にも「ピエロ」の所業に激おこの子がいますのでね
はーい、余裕あったら書きます

>一体何をするつもりなんだ!!
(視線をそらす)
(うまくできるかどうかは知らない)

>避難所裏も確認しました
ついでなんで伝えう
避難所裏設定スレに書いた情報の、最後の部分
そこで言う「一定条件」なんですが、少なくともジェルトヴァはその条件満たさせる事ができます
他にもできる奴ちらほらいるけど、そこだけ先に暴露

花子さんの人、投下お疲れ様です
??「我に断りなく我が力を用いるなど不届きである」ワナワナ
そう思うなら直接神罰与えたらいいんじゃないですかね。コイツじゃ勝てないと思うけど

>>739
>「狐」最終決戦で途中雨を降らせるかどうか悩むだけの
戦い終わった直後に襲撃されるんですかね(棒)

>>743-744
>①範囲内の予知・察知能力へのカウンター発動(攻性防壁)
>射程圏内で予知・察知の能力者B(以下、B)が
>当該能力を発動したのを条件として、①の能力効果が自動で発動する
……これ一時的にでも被害が洒落にならないくらい怖いことになる可能性があるか?
ザルやカゴで影響を抑えられるとはいっても無くすことはできないわけで
予知・察知の類を行うことが学校町全域で危険になった事実は変わらないから
あるかわからんけど"組織"のその手の部門が機能不全起こしたり
例えば市井に紛れて占い師装ったモブ契約者等に被害が出たりしそう
後遺症云々を考えると記憶消去(忘却)で完全に影響を除けるかも怪しいし
狂死した原因を探ろうとしたら発狂するなんて最悪の二次災害すら想定できる

>③直接リーディングへの対抗発動(ファイアウォール)
>発動条件は、BがAを直接、能力によって読み取ろうと能力を発動した時点である
Aを直接"読み取る"って具体的にどういう行動が当てはまります?
読心とか含めて「Aの内面を能力で調べる」行為全般がアウトなんでしょうか?
攻性防壁範囲外からAの足跡をなんらかの能力で情報的に辿った場合にも炎壁が発動しますか?

>①「私が話す通りになる」
>しかし、「出来ること」と「出来ないこと」があり
>(不可能というわけではないが能力の処理に時間が掛かる)
処理に時間がかかるとありますが、では処理が中断される条件はなんでしょうか?
倒しても再出現するというのは生存の要、本体が別にあるということだと類推したのですが
その場合、契約者Aの本体以外を倒しても処理が中断されないのであれば
能力の発動を一度許した時点で対峙相手の消失がほぼ実行されるということになりますよね?

>>755-756
>体の中には人口肉だかなんだかで造ったモツのイミテーションが詰まっております
>食事とか排泄とかどうなってんだ、って感じですがそっちはOKなんです
イミテーションで食事と排泄も行われるってことは
多少頭や腹をかっさばいた程度だと見分けがつかないのか
それとも見たことがある人()ならばイミテーションとわかる程度なのか

>本当にごめんなさい!! やっぱり二日に分けよう!! ……という謝罪&提案です
>「凍りついた蒼」への襲撃イベントあり、盟主様の出現の機会ありで、介入の余地を広げるんだ!!
つまり二日目はあいにくの終日雨天……?

>>761
>そこで言う「一定条件」なんですが、少なくともジェルトヴァはその条件満たさせる事ができます
つまり銀の弾丸を心臓にブチ込むと九十九屋さんはデッドエンド?
でもこっち方面だと拡大解釈前提で某イタズラ妖精くらいしか思いつかないデス

次世代ーズの人、もうひかりちゃんとピエロの人達との二次遭遇書き始めてっかな
まだなら、こっちで一旦慶次とかなえを天地んとこに置いてきて、かなえにこれ以上SAN値チェック入らないようにするシーンもついでに書きますが


>>762
>??「我に断りなく我が力を用いるなど不届きである」ワナワナ
「先生」「後でオマケつけて返す故、神としての寛大さで許してもらえるとありがたいね」

>戦い終わった直後に襲撃されるんですかね(棒)
こう考えるんだ
「狐」編から引き続いてそっちの問題も解決させりゃいい、って(将門様とか一部がアップ開始中)

>つまり二日目はあいにくの終日雨天……?
終日雨天は風邪引いて体壊しそうなのいるんで勘弁したげてください(晃をじっと見ながら)
ただでさえ、一部地域めっちゃ冷え込むと思うんで

「狐」編戦闘中に雨降り出す感じにすりゃなんとかなる……かな?

>つまり銀の弾丸を心臓にブチ込むと九十九屋さんはデッドエンド?
銀の弾丸は普通に止めそう
っつか、ジェルトヴァ別に銀の武器持ってないかな。「教会」から支給されたら銀の剣くらいは使うかもしれないけど

>>763
>「狐」編から引き続いてそっちの問題も解決させりゃいい、って(将門様とか一部がアップ開始中)
狐解決から一気に水神現界までやるのはまず私が書ききれるかな(震え声)

そういえば、そろそろ水神の毒の動向がちょっと変化し始める頃なのかなー
本格的な復活に際して邪魔されないため、さらに学校町内の水という水に別の毒を流し始めます
平素であれば不都合はありませんが、水神が完全に封印を脱すると
毒が活性化、水を経由して体内に蓄積された毒が対象(学校町の住民)の意識を奪い眠らせます
ただし契約者や都市伝説は平気です。一時的に眠気が発生するくらいで問題ありません
結果として一般人に見られず水神をフルボッコできるように舞台が整うわけです。タイムアタックしようね!

>「狐」編戦闘中に雨降り出す感じにすりゃなんとかなる……かな?
ただの雰囲気が天気に現れた描写に見えて実は伏線なわけですね
意外とスムーズにいきそう……?

>銀の弾丸は普通に止めそう
あら、「教会」関連で聖別された武器が苦手な悪魔系の伝承なのかと思ったのだけれど違ったかな
そうなると契約都市伝説から考えて水か炎の鞭が鍵……?

>>764
>結果として一般人に見られず水神をフルボッコできるように舞台が整うわけです。タイムアタックしようね!
「つまりは好き勝手やっていいんだねやったー!」してる「先生」の様子を「先生」の上司にチクろう

>ただの雰囲気が天気に現れた描写に見えて実は伏線なわけですね
お、いけそういけそう
天気の移り変わりに何かしらを感じ取るのもいるだろうけれど

>あら、「教会」関連で聖別された武器が苦手な悪魔系の伝承なのかと思ったのだけれど違ったかな
悪魔系ではないのですよ、ってかアクマの人ややる気ない黒服の人辺りはそろそろ正体察してるかと思ってた。発言的に

他に操れない条件満たせそうなのはカイザーに遥に………一番楽に条件満たさせる事できるのは翼か

>>765
九十九屋さんはマグニートーしてるのかなと思って
遠回しにマグニートーの話題振ったら
普通にマグニートーって名前出てきたから違うのかなと思ってた
それかとあるのレールガンの美琴みたいな能力か
空き缶はレールガン(コイルガン?)で射出したのかと

弱点は翼が簡単ってことは加熱の可能性が高い
だとすると溶けるか、導体の抵抗値を上げるか、磁化を解くのかだと推測
針金を磁化して操るの難くね?とかは無しで

>>765
>「つまりは好き勝手やっていいんだねやったー!」してる「先生」の様子を「先生」の上司にチクろう
後始末のことは考えなきゃいけないから好き勝手できるかどうかは微妙な線だね!

>天気の移り変わりに何かしらを感じ取るのもいるだろうけれど
もちろん水神が影で天候操作してます

>ってかアクマの人ややる気ない黒服の人辺りはそろそろ正体察してるかと思ってた
どう動くのかは分かったが原理がわからん!って感じですね
追加のヒントを見るに>>766でやの人が言った通り加熱が弱点だとすると
能力自体はもしかして磁気操作が主なのかな?自在針金は置いといて

 
>>762
>……これ一時的にでも被害が洒落にならないくらい怖いことになる可能性があるか?
(さしあたりの目標としては)完全にそれ狙いです

>Aを直接"読み取る"って具体的にどういう行動が当てはまります?
>読心とか含めて「Aの内面を能力で調べる」行為全般がアウトなんでしょうか?
Aの素性や思考といった「記憶」と呼ばれる全般に、Bの能力が接触したらアウトです
ピンポイントでAを特定した上でリーディングするとか、近くにいる人間の記憶が勝手に流れ込むとかで無ければ
まずそういった行為自体に出る局面はほとんど無いかもしれませんが

>攻性防壁範囲外からAの足跡をなんらかの能力で情報的に辿った場合にも炎壁が発動しますか?
先に結論を言うと発動しません
ここからがキモですが、BがAの射程圏内で能力発動した際には初回の一度だけ強制的に予知系能力が切断されます
ここでBは「なんかやばいのがいる」と気づくはずです
Bが能力発動の一歩手前で踏みとどまって微妙に能力を発動するか
「やばいやつ」の「足跡」のみに限定してリーディングすれば、Aを追跡できます
それでも高リスクな行為であることには変わりなく、BとAの距離が縮まればモノを見せられる可能性があります

幸いなことに「先生」は「海からやってくるモノ」の契約者の顔と能力を知っています
廃工場に居合わせた全員も「海からやってくるモノ」の契約者の顔を知っています

ちなみにですが、「海からやってくるモノ」の能力が発動して、>>743の影響(5)を誘発すると
Bの精神状態に関係なく、「発狂→自殺」の流れに呑まれます
その時点で影響を受けたBを拘束&記憶消去すれば……あくまで応急処置ですが一応阻止はできる

また、「海からやってくるモノ」の契約者自体に戦闘能力はありませんが護衛が付いています

>処理に時間がかかるとありますが、では処理が中断される条件はなんでしょうか?
後述しますが真っ先に挙がるのが「現在のAの肉体を破壊すること」です

>倒しても再出現するというのは生存の要、本体が別にあるということだと類推したのですが
鋭いご指摘です。その通りです

>その場合、契約者Aの本体以外を倒しても処理が中断されないのであれば
この点ですが、「契約者Aの本体以外」という語が「現在のAの肉体」を意味し
「契約者Aの本体以外を倒」すという表現が「現在のAの肉体を破壊する」ことを意味するなら
Aの能力処理は中断されます

強力な事象改竄能力が行使される前提として、能力主体Aが対象を知覚・認識していることが重要です
能力主体Aが知覚・認識できない対象を改竄することは困難ですよね?
早い話がAの認識外から動体視力を遥かに上回る速度、かつ有無を言わさぬごり押しでAの頭部を破壊すれば阻止! 可能です

>イミテーションで食事と排泄も行われるってことは
(アクマの人、違うんです。そういうわけではないんですよ)

>多少頭や腹をかっさばいた程度だと見分けがつかないのか
>それとも見たことがある人()ならばイミテーションとわかる程度なのか
臓器になんかシリアルナンバーっぽいのが刻印されてるので「あれ?」と思うはず

何故彼ら暗殺者が肉体を破壊しても死なず、リスポーンできるのか
ネタを知っているのは、本人達以外だと「組織暗黒面の関係者」か「早渡脩寿ら七尾AN関係者」です
少なくとも早渡は暗殺者2名の所属勢力と不死のネタを知っています
どう倒せばいいのかまでは分かりません


>>763
>次世代ーズの人、もうひかりちゃんとピエロの人達との二次遭遇書き始めてっかな
その前にまず二人組を「先生」の前からデリートする場面を書かないとですね! 今書いているが明日になるかもしれない!

>まだなら、こっちで一旦慶次とかなえを天地んとこに置いてきて、かなえにこれ以上SAN値チェック入らないようにするシーンもついでに書きますが
あいさー! 了解です!


アクマの人とやる気のない黒服の人が
九十九屋さんの能力を特定しようと追い込みに掛かっておられる……!

そう言えば五行的に火剋金で金は火に弱いですね(多分そういうことでは無い)
 

とりあえず先に時間軸的に前の早渡君を遊びに誘うネタ書いてたんですが、おい、1レス分書いてまだ遊びに入ってねーぞ&気軽に書くネタのはずが微妙に伏線っぽいの入ってんぞ俺

>>766
>>767
今、「あれ、そう言えばあいつの契約都市伝説、知名度どれくらいや……?」ってなってるのがこちら()
ん、んー……そこまでマイナーでもないと思うがどうだ……?
一応、「伝承」とか「民話」とか「神話」とか言うレベルではなく、「都市伝説」の類なんだが

>後始末のことは考えなきゃいけないから好き勝手できるかどうかは微妙な線だね!
後始末さえできるんなら目撃者考えずにヒャッハーできるんだよね?って顔を「先生」がしてるのでやっぱ上司にチクろう

>もちろん水神が影で天候操作してます
他の天候操作系も能力使ったら実力拮抗勝負かな
具体的に言うと、雪降らせる事できるやつが居る

>>768
>その前にまず二人組を「先生」の前からデリートする場面を書かないとですね! 今書いているが明日になるかもしれない!
あいさー、了解
俺も明日には慶次とかなえを天地んとこに置いていくシーン書こう
そのシーンを、ピエロの火付け遊びしてる子逹をお仕置きするシーンと一緒に投下すりゃいいんだし

>>768
>(さしあたりの目標としては)完全にそれ狙いです
もしもし組織メン?(ポプテ感)

>Aの素性や思考といった「記憶」と呼ばれる全般に、Bの能力が接触したらアウトです
ふむふむ。逆にこれに触れなければ攻性防壁のみで済むわけか

>その時点で影響を受けたBを拘束&記憶消去すれば……あくまで応急処置ですが一応阻止はできる
自殺前に目撃したであろう時間帯の記憶を消せば対症療法にはなる、と

>強力な事象改竄能力が行使される前提として、能力主体Aが対象を知覚・認識していることが重要です
なるほど。感覚器官の集中している頭部を破壊することで能力を中断させられるということですかね
処理中に能力主体Aの視覚を奪う等で知覚・認識の妨害を試みた場合はどうなりますか?

>(アクマの人、違うんです。そういうわけではないんですよ)
>臓器になんかシリアルナンバーっぽいのが刻印されてるので「あれ?」と思うはず
えーと、本物と同等の見た目と一部機能を有した人工臓器が入ってる、ということなのかな?
脳の見た目をした臓物はあるけど機能自体はないハリボテだったり
胃腸は見た目と消化機能を備えたほぼ本物と同じような代物だったりって感じで

>>769
>一応、「伝承」とか「民話」とか「神話」とか言うレベルではなく、「都市伝説」の類なんだが
し、知っていることと結びつけられるかどうかは別だから……知らない話の可能性もあるけども

>後始末さえできるんなら目撃者考えずにヒャッハーできるんだよね?って顔を「先生」がしてるのでやっぱ上司にチクろう
まあその通りなんだけど上司=サンがどう思うのかはこちらの管轄外である

>他の天候操作系も能力使ったら実力拮抗勝負かな
>具体的に言うと、雪降らせる事できるやつが居る
水神が発生させるのは嵐(暴風雨)だから降雪能力は十分妨害になりますね
どれくらい拮抗するかは……降雪都市伝説の知名度や契約者の力量と
日本人(本州?)の台風コエー感情+地脈ブースト小とのぶつかり合いになる……?


>>九十九屋さんの能力を特定しようと追い込みに掛かっておられる……!
金属を磁力で動かすというスタンダード能力だとして攻めて見たが
ここで頭を柔らかくしてぐちゃぐちゃにして変化球で攻めてみよう


針金を操っているように見えるけれども、あれは、実は、

大量のハリガネ虫を操っていたんだ
硬化したミミズでもいい
能力としてはハリガネ虫に見立てた物をハリガネ虫に変化させ操る能力だ
有刺鉄線を変化させれば新種のとげありハリガネ虫の誕生だ
硬化能力が高くとも所詮は虫、焼けばいちころだ
候補としてはミミズバーガーやモンゴリアンワームを極大解釈(拡大解釈ではない)したもの等







真面目に答えると候補は
磁力ならテスラコイル関連、富士樹海コンパス
電気ならサンダーバードとか雷神、ミョルニル(熱くて持てなくなるから)
材質からヒヒイロカネ(用意しろとか言ってた)

鼻風邪に負けない心を持ちたい。あと蜜柑ください蜜柑食えば大体の鼻風邪は治る
もうちょいで投下するよー

>>770
>まあその通りなんだけど上司=サンがどう思うのかはこちらの管轄外である
上司いわく「やらかした内容によって踏むか椅子にするかが決まる」との事です

>水神が発生させるのは嵐(暴風雨)だから降雪能力は十分妨害になりますね
なるほど、妨害にはなるか
だってさ、メルセデス

>>771
まぁ、大体しぼられてきますわな
鬼灯の「通り悪魔」以外の契約もそろそろ見抜かれそうだなーって思ってます

 夜の街をピエロが蠢く
 さぁさ今日は前夜祭、みんなで楽しくキャンプファイヤー
 どうせなら、でっかく派手に、賑やかに!
 だから立派な焚き木を探そう
 大きな大きなキャンプファイヤーする為に

 あぁ、そうだ、あれなんかがいい
 大きな塀に囲まれていて、あそこに火をつければさぞや目立つだろう!

 ピエロ逹はそこへと向かう
 学校町、東区、その一角。古くからの家が立ち並ぶ通り
 大きな門に刻まれているその文字は…………

「みー」

 声がした
 猫の鳴きマネをしているような、小さな女の子の声

「みぃ?ピエロさん?」

 ちょこーん、と
 門のところに、一人の少女が立っていた
 おかっぱ頭に真っ白なブラウス、真っ赤な吊りスカートと言う格好の、小学生くらいの少女
 ピエロ逹にとっては「獲物」と認定するにふさわしい外見の少女だった
 ただ、その少女はにぱ~っ、と愛らしい笑みを浮かべて

「ピエロさん逹は、見つけたら対処するの!」

 と、そのように口にした
 その瞬間、水が、激流が、ピエロ逹を飲み込む
 「トイレの花子さん」、本来、学校のトイレでしかその実力を発揮できないはずの存在は、長きに渡る契約によって強化されていた
 多少なりとも水辺があれば、激流を呼び出せるように……そう、例えば、この屋敷の庭にある小さな人工池程度の水辺であったとしても、そこから水を引き出すのだ
 激流でピエロは流され……いつの間に開いていたのか、マンホールから下水道へと落ちていく
 その下水道から、激流の音に混じって悲鳴やら絶叫やらが混じっているのを聞くに、どうやら下水道で「下水道の白いワニ」でも待ち構えていたらしい。もしかしたら他にも、下水道に潜む怪物系がご飯の時間とばかりにスタンバっていたのかもしれない
 激流からなんとか逃れた数名のピエロは、みーみー笑う少女へと攻撃を仕掛けようとする
 ただ、それよりも早く何かが一人のピエロを貫いた
 そして、耳元で囁く声

「どうせ火をつけるなら、もっと面白いとこがあるだろう?」

 声が染み込む
 どろり、と思考の奥へ奥へと、囁き声が染み込み、思考を支配する

 ……あぁ、そうだ
 もっと、キャンプファイヤーにふさわしい場所がある
 そこの方が、仲間が一杯いるから楽しい
 きっと、楽しい

 貫かれたはずの傷が存在しない事にも、周囲で仲間逹が切り倒されていった事にも気づかぬまま、そのピエロはふらふらと、自身の本拠地へと帰っていった



 ゆらゆらと、鬼灯は煙管煙草の煙を登らせる
 ひとまず、この辺りにいた道化装束の連中は始末した
 龍一の様子を伺えば、何やら思案している様子

「……で、どうすんだ?」
「…このまま見回る。花子さんは、在処と一緒に家で待機」
「はーい!」
「それと………すまない、鬼灯。手伝ってくれるか?」
「ま、宿泊代代わりだ。それくらいなら構わねぇが。俺ぁ戦力にゃならねぇぞ?」
「…………どの口がそれを言うのか」

 鬼灯の返答に、龍一は小さく、ため息をはきだした
 ……が、ほんの少し、笑っている
 笑っている余裕があるのなら、大丈夫だろう

「龍一さーん。どうして私はお留守番なんですか。さっきも、「あまり前に出るな」って言われて攻撃できていませんし」
「………周辺に与える被害の大きさを考慮した」
「知ってた!!」

 待機中だった在処の言葉に龍一が淡々と返答し、その返答にショックを受けた在処を、花子さんがみーみーと慰めた
 龍一が、音もなく歩きだす
 鬼灯もふらり、その後に続いた

 夜の街に剣閃が踊り、道化逹が切り捨てられていく………





 彼女は、自分達が住まう家の屋根の上に立っていた
 夜の闇の中、限られた明かりしかない中であっても、彼女は慣れた様子で倒すべき相手を見つける

「…んー、とりあえず、射程圏内に入った連中はこっちが片付けりゃいいっすかね」

 息子と同じ軽い口調で、彼女はそう呟いた
 息子と同じ金の髪を隠すように黒いコートのフードを目深にかぶると、弓を構える
 今まで息子に貸し出していた「シェキナーの弓」、その弦をぎりり、と引き絞る
 その手元に、光り輝く矢が出現し………っひゅ、と、やや斜め上に向かって、放つ
 放たれた矢は、輝きながら曲線を描き……ばしゅんっ!!と、それは数十本もの矢へと分裂し、天から獲物へと降り注いだ
 突然の上空からの攻撃にピエロ逹は対応しきれなかったのか、放火する事叶わず次々と射抜かれていく

「はい、1グループ片付いたー、っと」

 軽い調子で、彼女……フェリシテは、次に射抜くべき獲物を探す
 「教会」においても指折りの射手たる彼女に狙いをつけられたが最後、獲物はそのまま射抜かれるしかない

 「運悪く」屋根の上で射抜く対象を探す彼女を見つけたピエロもいた
 そのピエロ逹は、その建物を「キャンプファイヤー」にするべく、近づいていくのだが

「駄目だよ」

 笑う声
 ごぽっ、とコーラの泡が弾けるような音がして

「俺達の家族に、手は出させないからね」

 くすくすと笑う声
 コーラの波はあっという間にピエロ達を飲み込み、骨も残さず溶かし尽くした



 北区でキャンプファイヤーを行おうとしていたピエロ逹は、遠吠えを聞いた
 犬の……いや、違う。犬よりも大きな生き物の、遠吠え

 何かが恐ろしいスピードで接近してくる
 近づいてきた気配に振り返った一人のピエロは、バクンッ!!と頭を巨大な獣に喰われた
 唸り声をあげる獣……マリ・ヴェリテのベートは、瞬時に人狼の姿へと変わると、そのままピエロ逹相手に暴れだした
 ベートだけではない
 もう一人、ベートより遅れてこの場へと飛び込んだ一人の男が

「ーーーーー動くなっ!!」

 と威圧の声をあげると、数人のピエロは一瞬、動きを止めてしまい、その隙をつかれて叩きのめされ、地面にひれ伏していく
 暴風のように荒れ狂う二人から辛うじて逃れたピエロは、視界の先にあった古ぼけた教会へと近づいていく
 やや盛り上がった土地の先にあるそこをキャンプファイヤーにしようと、階段を登って……

 ずるり、と
 「十三段目」を踏んだその瞬間、そこから手が伸びてきた
 伸びてきた手はピエロを掴み、そのまま階段の中へと引きずり込んでいく
 引きずり込まれていくピエロが最後に目にしたのは、冷たく見下ろしてくる、黒いコートを着て銀のピアスを身に着けた男だった



.





 再び、東区
 ピエロ逹は、潮の匂いを感じた
 海に面していない学校町で、潮の匂い
 その香りがする方向を振り返る

 そして、見た
 地面を、まるで海面のように走る、巨大なサメの背びれを
 ピエロ逹が対応するよりも早く、サメは地面から飛び出してその顎(アギト)へとピエロ達を招き入れた
 瞬間的に巨大なサメを避ける事ができたピエロ逹も、無事ではない
 何者かの視線を感じたと思ったら、その体が焼け焦げ始めたのだ
 体を焼かれる痛みに叫び声をあげながら、ピエロ逹はそのまま火にかけたまま放置されたステーキのように、無残に焼け焦げていった

 ざっ、と地面を船が滑る
 栄が動かす「良栄丸」には、「メガロドン」に契約者である深志と、もう一人………「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者である、日景 翼が乗っていた
 「良栄丸」で街中を移動し、「メガロドン」でピエロを攻撃。「メガロドン」が逃した相手は翼が「日焼けマシンで人間ステーキ」で焼き倒す。焼いた相手は、改めて「メガロドン」の餌だ

「…こりゃ、今夜中は見回りしたほうがいいかもしれないな」
「確かに……翼さん、大丈夫ですか?」
「俺は一日くらいの徹夜は平気だ。お前らこそ、明日も大学の講義あるんだろ、平気か?」

 翼の問に、栄も深志も「大丈夫」と頷いた
 …なお、二人共「一日くらいは講義サボっても大丈夫(明日は特に大事な講義ない)」と言う意味で頷いたのだが、その点まで翼に伝わっているかどうかは不明だ

「ま、今夜はこのままピエロ狩り、と」

 海面ではないため、超スピードが出るわけではないが、ピエロを追う事には支障はない
 栄は船を操り、夜の街のピエロ狩りの為に進み続けた



 ……東区のとある河川敷は、酷く冷え込んでいた
 ひゅうひゅうと、まるで真冬の……否、真冬を通り越した寒さがその場を支配している
 凍りついたピエロ逹、芯まで凍って、自分達に火を付けてあたたまる事すらできやしない

「………ったく、うぜぇ」

 ひゅうひゅうと、冷気を放ちながら、凍れる悪魔………メルセデスは毒づいた
 酷く苛立った表情で、凍りついたピエロの一人を蹴り砕く

「うぜぇ、うぜぇ………人がのんびりしようって場所で、ぐだぐだくだらねぇ、うるせぇ」

 苛立ちをそのままに、メルセデスはすぐ傍の橋の下へと冷気を叩きつけた
 橋の下を流れる川の水が、一瞬でビキビキと凍りつく

「蛇も、ピエロも、どいつもこいつもかもうざってぇ……!」

 抱えるいらだちを、隠そうともしない
 学校町は、ここ20年程、特別大きな事件もなく平和だった
 …だからと言って、腑抜けていたわけではないのだ、この町の契約者逹は
 むしろ、20年前よりさらに強く、つながりは強固となっている事を、彼はよくよく理解していた
 そんな学校町でわざわざ事件を起こすなど、財宝欲しさに竜の洞窟に入り込む愚か者のする事だ
 入り込んだ者が勇者であればまだチャンスは残っていようが、大抵は財宝を手に入れる事なく命を落とす

 ……そうだとしても、うるさいのは腹が立つ
 つまりは、そういうことなのだろう
 
「大淫婦も「狐」も放って置いてもどうにでもなるが、他がうぜぇ。まとめて凍りつかせてやろうか」

 かつて、学校町をまるごと氷漬けにしようとした事もある凍れる悪魔は苛立ち続ける
 今はまだ、契約者から止められている事もあり、全力で力を振るうことはない


 今は、まだ



.








 かなり乱暴な運転の末、慶次逹を載せたバイクは「組織」管轄の病院へと到着した
 入り口のところで、天地が待ち構えている

「来たか………かなえ、生きてるか?」
「はい……なんと……か……」

 ぷっしぅ
 かなえが、若干魂を吐き出しそうになっているが、とりあえず大丈夫そうだ
 どうやら、「ライダー」の豪快すぎる運転で若干、頭がくらくらしているらしい

「ま、とりあえず無傷で送り届け完了ー、っと。へい、ガール。ここで降りるか?それとも、ガールのブラザー逹と合流か?」
「うん、合流したいな」
「OKOK、じゃ、ガールを送ってくるぜ」

 慶次とかなえを降ろすと、「ライダー」はひかりをサイドカーに載せたまま、再び灰知りだした
 実体化した「岩融」に支えられながら、かなえが「あっ」と声を上げる

「まだ、お礼言ってない…」
「今度、顔合わせた時にでも言っとけ。向こうはさほど気にしてないだろ」

 そう言いつつ、天地は慶次逹を病院の中へと入れる
 …中へと入れば、ここ20年で強化された「組織」管轄病院に貼られている結界によって、敵対者の侵入はある程度防げる
 職員にも戦闘をこなせる者が多数いる為、対処できるだろう

「とにかく、どっちも生きて戻ってくれてよかった………俺のミスで、危険な目に合わせた」

 ぼそり、天地はそう口に出した
 その言葉が意外だったのか、慶次は少し驚いたように言う

「あんたも謝るんだな」
「俺をなんだと思ってんだ」

 天地の突っ込みに、慶次は視線をそらした
 この程度の軽口叩ける余裕があるならば、良しとしたようでこれ以上の追求を天地はしなかった

 ただ天地はちらり、かなえの様子を見る
 顔色などから察するに、かなり限界が近い
 しばらく休ませるべきだろう

「ひとまず、星夜が待機してるから、星夜に読ませる。だから、特別証言する必要は……」
「待った、天地。それはまずい」

 天地の言葉を、慶次が遮った
 何故か、と言うような表情の天地に、「岩融」が続けた

『我らは、探知系や感知系などの能力に対して、反撃する能力を持つ者と接触した。あの少年の能力で読み取った場合、その反撃を受ける可能性がある』
「……なるほど。厄介だ」

 面倒なことを、と忌々しげに天地が呟く
 …その忌々しげな声にすら、かなえは小さく、怯えたように震えた

「……わかった。星夜に読ませるのは、その能力の持ち主が死ぬなりなんなりしてからだ。その代わり、普通の検査と治療は二人共受けろ」
「おう」
「……は、はい」

 診察室へと三人を誘う天地
 これからどう動くべきか、頭痛を感じながらも思考を巡らせ続けていた




to be … ?

次世代ーズの人と鳥居の人への土下座完了
ヒャッハーしだしたピエロ君逹の処理と、かなえと慶次をひかりちゃんと放しました
「ライダー」はひかりちゃんを彼女のお兄ちゃん逹のところへ届けるでしょう……その最中に襲われたら、ひかりちゃんが対処できそうなら任せます
ひかりちゃんが無理っぽかったら、バイクからミサイルとかレーザー発射します(いい加減都市伝説能力を使え)

 


●おもなできごと



「狐」

>>475-479 花子さんの人
 ・この話で「バビロンの大淫婦」が消滅



「死亡フラグ組」 ※「狐」と同時刻

>>641-648 花子さんの人
 ・赤鐘亜百合死亡

>>663-665 花子さんの人
 ・アダム死亡

>>668-669 鳥居の人
 ・ひかり、角田慶次の致命傷を癒す

>>674-676 花子さんの人
 ・裏切者が小道郁だと発覚

>>718-721 次世代ーズ
 ・「死亡フラグ組」の下へ「ピエロ」到達
 ・「ピエロ」付の暗殺者2名、現場に介入

>>733-735 花子さんの人
 ・上記現場に「死毒(「先生」)」と「ライダー」介入
 ・「ライダー」、全員を回収し現場から離脱
 ・「死毒」、能力を発動

>>750-752 花子さんの人
 ・「死毒」、暗殺者2名の抹消を宣告

★今から投下する話★ ☜ >>750-752の続きになります



「ピエロ」 ※「狐」、「死亡フラグ組」とほぼ同時刻

>>773-776 花子さんの人
 ・「ピエロ」、東区、北区で放火活動を企てるも都市伝説・契約者集団に阻止される
 ・「ライダー」、病院で角田慶次と紅かなえを降ろし、ひかりを送迎




 

 

「イメージと違って意外だったよ」

 スーツの男は、最早涼しい顔でそんな言葉を吐いていた
 「死毒」が彼ら二人を障害と呼び、排除すると宣告したにも関わらず、だ

「研究者タイプかと思ったけど、ポエティックな台詞を口にするなんて」
「ふむ?」

 応じる「死毒」の物腰は一貫して穏やかなものだった
 この状況にあって、白衣の彼からは殺意が全く感じられない

「何を勘違いしたのかは知らないが、わた」


 「死毒」が発せたのはそこまでだった
 代わりに、彼の口からは大量の血の塊が吐き出される


「ここまで辛い思いをしたのは」

 息を吐き、ようやくタートルネックの青年が口を利く
 やれやれといった体で首を横へ振っていた

「神話クラスの毒をたらふく盛られたとき以来だ。いやあー、辛いね
 こんな存在を野放しにするほど『組織』の弱体化は進んでしまった、と言うべきかい?」

「嘆かわしいねえ」

 青年の質疑を、勝手にスーツの男が引き継ぐ

「ところで『カダブラ』の、『死毒』に何をしたんだい?」
「別に何も」

 スーツの疑問に、青年は素っ気なく答えた

「直前に生成して僕らに流し込んできた『毒』の方が興味深くてね
 『毒』というよりむしろ、祟神の『霊威』のような性質だと推測したのだが
 『死毒』が僕らを抹殺しようと色々弄った『毒』を、僕が本来の『霊威』に戻してあげて
 ついでに『ソレ』が引き起こす『結果だけ』を『拡大解釈』して且つ『死毒』の体内に『返して』やっただけさ」

 そう言いつつ、彼は「死毒」の方を見やった
 「死毒」は、未だに口から血を吐き溢し続けている
 しかし、彼はその状況にあってなお、穏やかな表情を保ち続けていた

「さて、『死毒』。お互い多忙な身だ、手短にいこう」

 青年は勿体ぶった所作でおもむろに「死毒」と向き直る
 青年とスーツの男とは「死毒」が奪用した地脈由来の毒に侵された筈だ
 しかしそれにも関わらず、何故、彼らは平然と先程のように振る舞っているのか?

「僕らを逃がさない積りのようだが、悪いね。逃げさせてもらう」



『ならば何度でも言おう

 ABRACADABRA(私が話す通りになる):君達は逃げられない』



 「死毒」の声が、響く
 しかし、声は「死毒」から漏れ出たものでは無い
 廃工場全体が振動を起こし、その声が響いたのだ



 

 

「やれやれ、最早無茶苦茶だな」

 タートルネックの青年は大仰に肩をすくめる
 その瞬間、「死毒」の吐き出す血の勢いが増した

「今度は工場全体をスピーカー替わりかい?」
「まあ、俺達も随分無茶苦茶やってるけどね」
「さて、『死毒』」

 青年はスーツのぼやきを無視して話を続けた

「悪いがあなたの『毒』の支配権を頂いた
 大気中の『毒』の濃度が下がっているのを理解して頂けるかな?
 あなたが創造した『毒』を、たった今、この町の上空に『送信』していてね
 今夜中に猛毒の雨がこの町の人々を襲い蝕んで殺す。余興のおまけとしては最高だな」

 言いたいことを一通り告げた
 そんな満足気な顔のまま、ようやく青年はスーツの方に視線を移した

「『海から』の、言い残しておきたいことは?」
「そうだな」

 スーツの男は一瞬考え、「死毒」の方を見た
 「死毒」は依然として穏やかな顔のままを保っているが
 その周囲に放電のように発される赤黒い光は激しさを増していた

「あのお嬢ちゃん、ひかりちゃんだっけ。俺はあの子に殺されたい」

 あとね、そうスーツは続ける

「『死毒』、あなただって年頃の娘さんを飼っていれば分かるだろう?
 誰だって、娘が可愛いんだよ」

「親馬鹿というのは怖ろしいものだね」

 やれやれと苦笑しながらタートルネックの青年は
 スーツの男の肩に手を掛けた

 瞬間

 大きな破裂音を轟かせてスーツの男が爆発した
 爆発したというより、今や血の霧が周囲に拡散しているだけた

「そろそろお別れだ、『死毒』」
『本気で逃げ果せる心積りのようであるね』
「そりゃあ、あなたの『呪文』を僕は『無視』できるしね」

 朗らかに微笑みながら青年は「死毒」に返答する
 まるでそれは遊び疲れた少年の屈託のない笑顔のようでいて
 しかしこの凄惨な空間にあって、異様な不気味さを孕んだものだった

「『死毒』、僕からも頼むよ」

 そう告げて、青年は明後日の方向を見た


「薙刀の子とカブトムシの子に伝えてくれ

 『いずれまた逢おう』って」


 青年が話し終わった直後
 スーツのときと同じく彼の肉体は爆散した




「いやはや」

 彼らが爆発した直後、「先生」の吐血は収まったようだった
 しかし彼らは自ら生命を絶って此処から消えたわけでは無いらしい

「全く、一体あの少年達は何がしたかったのかな?」

 此処へ突入したときから全く変わらぬ穏やかな表情のまま
 「先生」は独り、誰に向けるでもなくそう呟く

 そして、不意に「先生」は天を仰ぎ見た

 先にあるのは夜の闇に染まった廃工場の天井だが
 「先生」はその先にあるものへと眼差しを向けているかのようだった
 

 






“学校町”の遥か上空
高度10キロの程の位置にその者達は静止していた
此処は気温も低く、大気の濃度も地表のそれとはまるで違う
その空間に居続けられるのは、その者達もまた契約者である故か


「よぉー、聴こえてんだろ? 『先生』」

 二人の内、一人が下を見ながらそう呟く
 下と言っても、その者達の周囲には完全な闇が広がっていた
 彼方にある地表で頼りなく明滅する朧げな人工光だけが唯一の目印という程度だ

「あいつが打ち上げた『毒』はこっちで何とかするから」
「来ます。█████、揺れに備えて」

 二人の内のもう一人が警告を発した

 直後
 闇の中にあって一際暗い影が空間を奔った

 「アブラカダブラ」の契約者が「先生」から奪った『毒』だ
 それは海蛇の如く激しく身を捩らせるように暴れまわっている
 不規則に大気中を蠢くそれは、あたかも幽鬼のような外形を取っていた


「『死毒』の生成物が所有権を奪取されて大気中で拡散
 広範囲の雨雲に溶けた後で地表へと降り注ぐ、といった所ですか
 本当になんて悪意を――これだから事象改竄系の契約者とは関わりたくないんです」

「お前だって同系の力だろ、███」

「ちょっと黙ってて」


 その者は軽口を叩く仲間を威嚇すると
 杖腕を真っ直ぐに『毒』へと向けた
 掌を『毒』へと翳す



 閃光
 と共に、轟音
 その刹那、間違いなく空間は切り裂かれていた



 雷電

 その者の掌から放たれたのは白い雷電だ
 雷電は一瞬にして『毒』に直撃し、その効果を失効させていた


「うっし、決まったな!」
「今のは絶対に『組織』の注意を惹きました。離脱します」

「おーしおしおし、んじゃ『先生』
 こっちの『毒』は何とかしたからな、そっちの『毒』は自分で何とかしろよ! 分かったか!」

 地表に向かって言いたいことを一方的にまくし立てると
 その者はもう一人の腹に腕を回した



 鋭い破裂音が大気を叩く
 その者達はその瞬間、“この世界”から消失した






 

 




「全く、勇ましいご婦人方だ」


 「先生」は朗らかに微笑みながらそう言葉を漏らした

 タートルネックの青年がダイレクトに彼の体内へと仕掛けたようだが
 「先生」は一切それを気にする素振りを見せない
 今となっては完全に癒えたようだ

 彼が佇む廃工場には既に人影は無かった
 「死毒」の力能に苦しんでいた筈の「ピエロ」は
 既に抹殺され、その骸は完全に消滅した後だった


「さて」


 「先生」は改めて工場内を見回す
 毒を撒き散らしたのだから仕方のないことだ
 工場内は彼の創造した毒によって完全に汚染されていたのだ


「ご婦人の頼みとあっては、ん、んー……」


 「先生」は顎に手を当て
 何やら考え込んでいたが


「まあ、除染については
 優先順位も込みでこれから考えるとしよう」


 誰に話し掛けるでもなく
 そう口にしながら独り、穏やかに笑った




























□■□

 鼻歌を歌いつつ、「先生」は廃工場の中を歩き回る
 ふらふら、ふらふらと、ステップを踏むように
 しかし不思議と、「先生」が歩きまわれば歩き回る程に、辺りの毒の汚染が和らいでいく
 バチバチ、バチバチと、赤黒い輝きを生み出しながら、汚染を薄め、新たなる空気を錬成し、毒を消していく

 生み出すだけではなく、消すくらいはできるのだ
 だからこそ、彼は「死毒」と呼ばれていた頃、「組織」「教会」「レジスタンス」「薔薇十字団」その他諸々から、危険視されてきたのだ

 そんな彼は、今現在「薔薇十字団」に改めて所属し、野放しに………

「……おぉっと着信。しかもこの着信メロディーは「姫君」から」

 …なっている訳ではないのだ、一応
 どう見ても野放しにしか見えないが、野放しではないのだ、一応、一応
 スマートフォンへの着信に、「先生」は笑みを浮かべたまま、応じる

「はい、私…………OK、「姫君」。言い訳させて。私は悪くない。向こうが事象改竄系だったのが悪い」

 電話の向こう側、大変と怒っているであろう「姫君」の言葉に、「先生」は笑みを浮かべたまま応対する
 困っているような、相手をなだめているような、娘に嫌われて言い訳している父親のような、そんな様子で言葉を続ける

「まぁ、私でもどうにか出来たが、勇ましいお嬢さんがなんとかしてくれたって事で良かろうて。あのお嬢さんがいなかったら、私が改めて錬成して、対蛇用の毒に変えたまでであるが………っあ、待って。蛇は敵。この学校町的にトップクラスになんとかしないといけない敵だから」

 話しながらも、歩き続ける
 錬成を続ける
 こうして、いくつもの事を同時にやりこなす事もまた、この「先生」の才能なのだろう
 かのカラミティ・ルーンとは別の意味で「天才」であり「天災」
 今現在、まともに「先生」の手綱をとれるのは「姫君」のみだろう
 少なくとも、「先生」は「姫君」に怒られる事は嫌がる
 ……主に、踏まれたり椅子にされたり足蹴にされたりするからと思われるが

「まぁ、とりあえず。あれを殺しきるのはちょっと骨が折れそうだね。今回、溶かそうとして駄目だったので最初から蒸発させる方が早かろうて………ここが日本でなければレッツ★核融合と行きたいが……うん、流石にやらんて、大丈夫大丈夫」

 ぴたり、足を止める
 ……除染が完了したようだ
 トントン、タタンッ、と軽く床をつま先で叩き、「先生」は笑う

「……最も、私以外が殺すかもしれんけどね。その時はその時よ。アレと同等のものがいるなら研究対象としてちょっと欲しいなー、って思わんでもないが、君に怒られそうだから自重する、うん」

 トンッシャットントントン、シャットントンシャッ、シャットンシャッシャッシャッ、トンシャッシャッシャッ、トントンシャットンシャッ、トンシャットンシャッシャッ、トンシャッ、シャットンッシャッシャットン
 まるで、モールス信号でも送るように、つま先で床を叩き、こすりながら
 緩やかに、穏やかに、「先生」は微笑み

「……さて、除染は完了したよ。さぁ、私はどう動けばいいのかな、「姫君」。私に命令(オーダー)を。私は君の道具だ。道具として、君が命じるがまま、何でも作ってみせるし、殺してみせようではないか」

 微笑む、微笑む
 穏やかに、穏やかに
 研究者の顔で、父親の顔で、騎士の顔で

 「先生」は、ただ一人上司と認める存在たる「姫君」の為に、笑うのだ



to be … /

次世代ーズの人乙でーす
「先生」の除染&上司との電話越しの会話シーンにて、お返事を返させていただきます
信じられないだろ、これでも「先生」野放し状態じゃないんだぜ(遠い目)

なお、「先生」に上司という存在がいる事は、「組織」とかにはあまり知られていません
天地辺りは知ってますが、それ以外だとこちらの次世代組でも知ってる奴あまりいないんじゃないかな
直斗も「そういうのがいるっぽい」とまだ断言出来てない状態ですし

「先生」に上司がいる事を知っている人は、とある共通点持ちです
その共通点はまだ秘密

おっとしまった、ミス
「先生」に上司居ることを知っている人の共通点、天地は含みません
あいつは割りと例外

 

   この話には穏やかな暴力・グロテスク描写が含まれています
   苦手な方は>>793までスキップして下さい

   この話は>>773-776の続きになります


 

 

 学校町、東区
 夜の訪れたこの区画に発砲音が響く

 「ピエロ」の一人が仲間の道化を射殺した
 殺されたのは「一ツ眼」の影響を受けた道化である

 光の粒に包まれ完全に消滅したのを確認した所で、漸く彼は銃を下ろした

「『一ツ眼』に、『死毒』に、『クローセル』に、……あとは何だ」
「あとは将門公とゼロナンバーに、暗黒竜辺りが出てこれば最高っすね」

 銃を持っているのは「ピエロ」は「火遊びごっこ部隊」の隊長クラスの道化だ
 彼は先程まで決して見せることの無かった疲れた表情を隠そうとしていなかった
 部下は彼の顔色を怪訝そうに窺っている。隊長の顔には不安の色がちらついていた

「連絡は?」
「無いっす。つまり順調ってことっすね」
「正直な所、先走り過ぎたかと思ったんだが」
「考え過ぎっすよ、それに俺達って」

 殺されてナンボってとこ、あるっしょ?
 部下はウインクを飛ばしながらそんなことを言う

「だがまだ完全に確認できたわけじゃ無い、そうだろ?」
「そっすね、でも連絡じゃそっちはノーコメっすよ」
「……俺達の行動については?」
「そっちもノーコメっす」

 よし、隊長はそう応えた
 どうやら決心が着いたようだ

「俺達はそのまま暴れるぞ。油断するな。エンジョイする前にキルされたらパーだからな」
「言われる間でも無ェ」

 部下の道化は下品な笑みを浮かべて空を仰ぐ
 突如、無数の花火が天へと上がり、上空で炸裂した
 その直後、ピエロ達の奇声があちこちから響き出した

 火遊びは何も放火だけとは限らない
 賑やかなパーティーは既に始まっているのだ
 エンジョイしなきゃソンソン、ハッピーになってこそ
 「ピエロ」がここまで頑張った甲斐があるというものだ

「じゃあ、いっちょファックに精を出すか」

 隊長クラスのピエロは派手な衣装の袖を捲くって
 腕の血管に覚醒剤の詰まったシリンジを突き立てた





「あれ人妻ってマジ!?」
「マジマジ!! 興奮するよなァァーッ!!」

 「ピエロ」の視線の先に居るのは、家屋の屋根に立つ人影だ
 暗視ゴーグルを使った所で黒いフードを被った人物である所までしか視認できない
 しかし、「ピエロ」達はその人影の下へと我先に殺到しようとしていた

 無論、「ピエロ」の願望が叶うことは無い
 天空から降り注ぐ眩い数多の矢は次々と道化達を刺し貫いていった

「人妻ってことは、そういうことナンだよなァーッッ!!」
「むしろ孕まされたいくらいだよッッ!! 俺をレイプしてくれェッ!!」
「人妻た~~ンっ!! 早く俺を殺してぇぇン~~っ!!」

 「ピエロ」達は嬉しそうに絶叫しながら争うように矢に射殺されていく

「おおッ♥ おおおおオオオ♥♥おおおおおオオっっ♥♥♥」

 胸を、腹を、そして頭を貫通されてなお、その道化は興奮の声を止めなかった

「いいッ♥ ああッ! もっとだっ♥ クひンッ♥ たまんないよ゙ぉ゙ッ!♥♥!」

 道化は装束の下で今日何度目になるか分からない絶頂に達していた

 

 

「……?」

 最初に異変に気付いたのは「メガロドン」の契約者、深志だった
 彼は「メガロドン」の挙動に何らかの違和を覚えた

(水が、粘りついてる?)

 「メガロドン」と「良栄丸」が現在移動しているのは水上では無い
 だがこの違和感は何だ。この絡み付いてくるかのような感覚は

 深志は「良栄丸」を操縦する良永栄の方を見た
 良永も異変を察知しているようだった

「深志、どうした」

 二人の様子に日景翼も勘付いたらしい
 深志は良栄の方に一瞥をくれた後、日景の方を見た

「粘度が上がっているような。藻が絡んでくるような感触で」
「『メガロドン』のか?」

 日景の問いに深志が首肯する

「翼さん、これは『サルガッソー』かもしれません」

 良栄は既に違和の正体に気付いていた
 「魔の海、サルガッソー」。多くの船舶が行方不明になったという「魔の海域」の伝説だ

「なるほど、お前らの能力に便乗して仕掛けてきたのか」
「ただ、状況から考えるとそこまで力が強くは無いです。遠距離から発動してるものかと」
「深志、お前の方は? なんなら藻を“焼き切る”か?」
「いえ、大丈夫です。これくらいなら引き千切れる」

 日景は二人の顔を確認して頷いた

「分かった。だが無理はするな。何か異変を感じ取ったらすぐに言えよ?」

 警戒するに越したことは無い
 「ピエロ」が何らかの契約者と組んで行動している可能性が浮上している今
 いくら警戒しても警戒し過ぎることは無い。むしろ今は過信こそ排除すべき要因だ

 三人の契約者は「ピエロ」達を倒しながら前進し続ける
 但し、船上の警戒は先程よりも高まっていた





 東区

「燃ーえろよ 燃えろーよー ニンゲン燃ーえーろー
 火の粉を巻き上ーげー 町ごと焦がせー、っと!」

 陽気な声色で歌でも口ずさみながら
 「ピエロ」はアスファルトにガソリンを撒き散らしていた
 住宅街の道路を火炎で暖めて火の海を再現するのが目下の目標である

「退路を断つって何気に大事だよなぁ~」

 呑気そうにガソリンを散布した後、彼は頭からガソリンを被った
 そしておもむろにライターを取り出し

 直後、彼は爆発した

 炎上する「ピエロ」から引火し、一気に火が燃え広がる
 その光景を見た他の「ピエロ」達もまた、興奮気味に頭からガソリンを被り出す

「たのッ! たのたのたのッ!! 楽しいィィィぃぃィいいいイいいいいいいイイっッッ!!」

 炎へと飛び込み、炎上は激しさを増した
 真っ赤に燃える炎の中からは、彼らの狂笑が響いていた



「何考えてるの、あいつら……!」

 

 

 少女は込み上げる恐怖を無理矢理抑え付けていた
 そして視界の隅に燃料タンクを持った道化達が躍り出て
 民家の方を指差し、行動を起こそうとしているのを認めたとき

 彼女は物陰から飛び出していた

 杖ともう片方の手を前方に掲げる
 すると炎上していたアスファルトの炎が急速に減衰し始めた

 道化達は一斉に異変に気付いたようだ

 「ピエロ」達が彼女の下へ殺到しようと身動ぎする前に
 彼女は呪文を唱えていた

「レン・ファイスッ!!   (爆破して!!)」

 豪快な爆発音と共に「ピエロ」達の体が吹っ飛ばされた
 同時に減衰していた筈の地面を焦がす炎が、彼女の呪文により勢いを取り戻した

「あっやばッ! そんな積りじゃ!!」
「ソレイユ、下がっていて」

 慌てふためく彼女の脇からもう一人の少女が現れた
 途端に残りの「ピエロ」達と炎が勢いを削がれていく

 炎は“影の手”により炎上を阻まれ
 道化達もやはり無数の“影の手”によって動きを封じられていく

「私、そんな、そんな積りじゃ無かったの、わたし……!」
「落ち着きなさい、ソレイユ」

 軽いパニックを起こしているソレイユに彼女は宥めるように声を掛ける
 その女は黒い袖無しのドレスに身を包んでいた
 胸元と背中の露出が多いタイプのものだ

「ノクターン、ごめん。私、小さい頃から火事が……
 放火なんて絶対許せなくて、それで」

「ソレイユ、大丈夫よ。火は、じき、消えるわ」

 ソレイユの背中に手を掛けながらノクターンは周囲を見回していた
 「シャドーピープル」の能力によって発現した“影の手”は
 その場の道化全員を拘束することに成功したようだ

「そろそろ、『組織』が、来るわ。行きましょう」

 彼女は酸素を阻まれて勢いを失った火の手をもう一度確認し、ソレイユを促した
 周囲からは突如拘束されて興奮している「ピエロ」達のくぐもった奇声が微かに聞こえる

 「シャドーピープル」の“腕”は強力とはいえ
 光のある場所では本来の力を発揮することは困難だ
 それ故、ノクターンは能力を鎮火に使えるか懸念していたのだが
 その心配は杞憂に終わったようだ

 ノクターンはソレイユの肩に手を回す
 直後、二人は忽然とその場から消失した










 

 



 場は替わって、西区

 早渡脩寿は己の愚鈍さを呪っていた
 すんでの所で早渡は路地裏へと転がり込み
 直後、先程まで立っていた空間を複数の殺気が切り裂いていく

「う、ぐ……お……!」

 激痛に、耐える
 もう慣れてしまった感覚とはいえ
 この状況にだけは決して慣れてならない筈だ

 早渡は左手で制服のネクタイを解き
 その一端を歯で咥えると、右手首に巻き付けて縛り上げた

 何だってこんなときに携帯を忘れるんだよ、俺は!!

 早渡は心の中で毒づいていた
 汗が滝のように滲んで流れ落ちる
 今はただ激痛が過ぎゆくのを待つしか無い

 幽かな光が差し込んでくる路地の方を見やった
 早渡は自分の右手首から先が地面に落ちているのを確認する

「ク、ソが……!!」

 早渡は今、右手首から先を切断されていた
 切断面はどす黒く変色し、粘度の高いタール状の体液が垂れ出していた



 不意に奴の羽音が響いた



 奴は片方の翅を損壊していた
 かつて早渡が奴の翅を破壊したからだ
 意趣返しにしちゃ上出来だ、少なくとも奴はやり遂せた
 不意の出会い頭に鱗粉を弾丸のように放って右手を切り落とすとは
 だがまだ足りないのだろう。早渡を殺すまで手を緩めることは無いのかもしれない

 「モスマン」が翅を震わせる不穏な低音が耳朶を打つ
 アレは路地裏に身を潜めた早渡の所へ、緩慢に、しかし着実に距離を詰めていた

「く、そ、ったれが……!!」

 逃げるか戦うか
 いずれを選択しても危険な状況だ
 早渡は単に切断されただけでは無く、鱗粉の猛毒に侵されているからだ



 どうする!?
 ここからどうする!?



 早渡は今、近づいてくる「モスマン」の翅音を聴きながら
 頭を必死に回転させていた





 

 

 そして、東区


「しかし『死毒』に向かって『残酷なことをする』だなんて、その口がよく言うよ」

「おや、先程のやり取りかい? 言葉の綾さ」


 中央高校に近いその場所で、二人組は談笑に興じていた


「それを言うなら、君もまるで耄碌したかのような台詞を吐いていたが
 話している内にそういう気分にでもなったのかな? それとも『死毒』に頭をやられたかい?」

「多分ね」


 タートルネックの青年の皮肉を、スーツの男は人の好さそうな笑顔で流した


「ところでひかりちゃんだけど、やっぱり無理なのか」

「あの子だって考え無しじゃないさ。現にこっちが追跡しようにも
 空間の情報を完全に隠蔽し切ったようだね。凄いものだよ、全く」

「ということは本格的に連絡待ちか」

「センセ方、お車のご用意が出来ました!」


 二人組の下へ、数名の「ピエロ」が馳せ参じる
 先頭の道化が恭しく頭を下げるがその所作は却って芝居掛かって見える


「本ッッ当にあの女の子に執着しているようだね、『海から』の」

「まあね。でも焦ってはいないよ」


 相変わらずにこやかな表情のまま
 スーツは「ピエロ」達に促されて車輌へと歩を進める


「だって夜は長いんだからさ。ねえ?」












□■□

 

花子さんの人、お疲れ様です
「先生」がすごく怖い
「先生」はもしや美しい女性に踏まれたりするのも吝かではない御方なのだろうか

次世代ーズの方は暗殺者2名の撤退と
同時刻の次世代ーズ連中の動向を投下でございます

……花子さんの人と、フェリシテさんに土下座です!orz
相変わらず「ピエロ」はきたない

ちなみにですが、「サルガッソー」の契約者はワンレングスな文系女子大生のお姉さん
胸は中々結構大きい方ですね、きっと

今夜中にレスへの回答まで出来る自信が無いです……
シャドーマンの人もお気をつけて下さいね! 特に睡眠不足には気をつけて!


 

 
>>793に関してですが
「サルガッソー」の契約者のお姉さん、まだ学校町に到着していません
今向かおうとしている所かもしれない
性格はぽやぽやした感じの大人しい人です
 


>>770水神が発生させるのは嵐(暴風雨)だから降雪能力は十分妨害になりますね

合わさって霙の猛吹雪になったりしないかね


>>741必殺技じゃないと仕留められる気しないとです

あ、忘れてた
葉の方は封印術や魔除けが効くわ
特に山に関する民間信仰系のやつ
直接会ったことあるイクトミなら知らなくても、察してるはず


>>771
割りと適当な事書いてるけどアレだ
たまにはこういう発想も必要だと思いますまる


モブ敵の群れっていいよね
後腐れなく全滅させれるし
このピエロ達って都市伝説でいいんだよね
人じゃないよね

 

改めまして花子さんの人、お疲れ様です
東区で放火ごっこに興じる「ピエロ」は親世代が対処か
真打登場! 花子さんの人の所の花子さんがいつ登場するかってずっと待ってたんだ!
あとフェリシテさんが息子さんと同じ口調だったりマッドガッサー勢力も健在そうだったり
メルさんが相変わらず(?)だったりと色々安心しました

次世代ーズは鳥居の人の反応を窺いつつorz
9月と11月の時間軸を行ったり来たりしよう……


「ピエロ」戦に関しまして
ゲリラ的な介入は大歓迎でございますので、一応ここに名言しておきます
ほら、名乗らずに昔のキャラクターをぼかしたまま投入して乱闘してそのまま去るとか……


>>770
アクマの人、ありがとうございます

>なるほど。感覚器官の集中している頭部を破壊することで能力を中断させられるということですかね
そうなります
なのですが、問題は下記

>処理中に能力主体Aの視覚を奪う等で知覚・認識の妨害を試みた場合はどうなりますか?
次世代ーズが混乱しそうなので以前のレスでは明言しませんでしたが
「アブラカダブラ」の契約者が対象を認識する際、必ずしも五感に依存するわけでは無いって所がアレです
具体的に言うと死角からの攻撃を気配読んで対処したりもする
とはいえ、初手の不意打ちで意表を突くのであれば有効です

有効なのですが、例えば目を潰したら潰したで
「カダブラ」の契約者が「目を潰されたんだな」と認識したら
事象改竄により目を再生すると同時に反撃
二度同じ手を使おうとすると、やはり事象改竄で同じ手をそっくりそのまま返す
等、ハードルが上がっていきます

整理すると不意を突けば結構効き目がある(Aの能力の中断も狙える)
だがAに悟られて対処されるとアウト、です

>脳の見た目をした臓物はあるけど機能自体はないハリボテだったり
こっちに関しては完全にそうです


>>771
最初は次世代ーズも「ハリガネムシは人体に寄生する」の契約者かなあ、と思っていました
避難所で「直接接触するとタダでは済まない」と花子さんの人も話していた記憶がある
しかし、「大通連」「小通連」といった霊威の曰くがある業物までハリガネムシ化できるのか疑問が湧いたので
結局この説でアタリをつけるのは保留にしました……できるとしたらヤバいぞ九十九屋


……
……整理しよう

①触れると危ない(こともある)
②火に弱い
③紐状の物体を操(ったりもでき)る

……早渡脩寿の契約能力と被り気味なのが怖い(こわい)


>>796
「狐」戦終了後の数時間後まで「ピエロ」は倒し放題
彼らは完全に都市伝説的存在です
何人処分したらヤバ気なトラップが発動、とかそういうことは無い

>このピエロ達って都市伝説でいいんだよね
>人じゃないよね
「東京喰種:re」のダーク演出みたいな展開ですかね?
現時点だとまだ起こっていません

寄生系の能力で操った無実の一般人にピエロのお面と銃器を与えて
レッツパーリィッ!! 的なイベントは「狐」戦の本格的な開始前後に起こる可能性が濃厚

 

 

●大きな流れ

○九月
・早渡脩寿、「怪奇同盟」への御挨拶を果たす
・早渡、花房直斗や「先生」から「狐」の話を聞く ☜ これの続きです


○十月
・「ピエロ」、学校町へ潜入 ☜ まだ投下されていない
・夢と浪漫がいっぱい★


○十一月
・戦技披露会、開催
・「バビロンの大淫婦」、消滅
・「狐」、始動
・「ピエロ」、「狐」に便乗して本格的な活動開始



●今までのお話

>>383-384 花子さんの人
>>403-406 次世代ーズ
>>425-426 花子さんの人
>>452-458 次世代ーズ
>>486-490 花子さんの人
>>538-544 次世代ーズ
>>581-587 花子さんの人
>>596-598 次世代ーズ
>>620-525 花子さんの人
>>634-636 次世代ーズ
>>693-699 次世代ーズ ☜ これの続きで、これで最後



●あらすじ
 早渡脩寿は、花房直斗と出会い
 彼から「狐」に関する情報を受け取った
 更に彼の誘いに乗り、診療所の「先生」からも話を聞く
 もう夜を回った。早渡は診療所を後にした



 

 

 もう完全に日は落ちて一帯は完全に闇に包まれていた
 暦の上では九月だが、まだ夏の終わりが後を引いている

 蒸し暑い


 俺は「先生」にお礼を告げて診療所を後にした
 今日起こったことを頭の中で整理しながら

 まず東中学で花野郎こと花房君と
 「組織」所属のワイルド野郎に出会った
 続いて、「三年前」の飛び降り事件の犠牲者で
 今や都市伝説となった東ちゃんこと東一葉と遭遇して
 ワイルド野郎に呼ばれて来た「再現」の能力持ち、栗井戸君と出会う
 そして、最後は診療所の「先生」。なるほど、俺の頭は今や完全に疲れている


 今日はもう、早く帰って休もうか
 花房君や「先生」から聞かせて貰った話は明日もう一度整理しよう


 しかし、まさか
 今日の内に「組織」契約者二名と関わることになるなんてね
 しかも花房君は「組織」所属では無いと主張していたけど
 あの口振りからして内情に詳しいと見做して良いだろう


 これを機に「組織」とずぶずぶになるとか?
 否定できない所が怖い


 ただ、これで「狐」については確信が得られた
 やはり「狐」はこの町に居る。それが明確に掴めたのは大きい


 とはいえ、気は重い
 未だに「先生」の言葉が胸の底で渦巻いている


 息を吐きながら空を仰いだ
 そうして初めて気付いたのだが
 空に雨雲が広がり出しているようだ
 体中に纏わりつく湿度と蒸し暑さの正体はこれか


「お、少年。今帰りか?」


 不意に誰かに声を掛けられた
 振り向く前に正体は分かっていた。「口裂け女」だ


 首だけ捻ってそちらを向いた
 Tシャツにジーンズというラフな格好の女だ
 適当に散髪されたのか髪の長さが不揃いなのに目が行った


「最近は物騒だからね。早く帰んなよ」
「あっ、はい」


 それだけ答えて足早にその場を離れる
 「口裂け女」は漫然と空を眺めているようだった


 都市伝説には少なくとも二つのタイプが居る
 一つは、オリジンに服従してオリジンの通りに行動するコードの内部に留まり続けるタイプ
 そしてもう一つは、経験知を獲得してオリジンに無い行動を取る、コードから脱したタイプだ


 コードに忠実なタイプがANとして最も強い、なんて話も聞いたが
 大嘘もいい所だ。経験知を積んだANの方が圧倒的に強くてヤバい
 そして、彼らがその気になれば人間のように生活していくことも出来る


 この町には、後者の都市伝説がかなり存在する
 そして社会に溶け込み普通の人と変わらぬ暮らしを営む者も居る
 多分、あの「口裂け女」もそうなんだろう。それがこの町、学校町の了解だ


 俺が人面犬の半井さんから最初に教えられたのは、確かそういう話だった
 

 








 商業高校の制服を着た少年が
 完全に曲がり角の向こうへ消えたのを確認して
 「口裂け女」、ヨグ坂ルルはもう一度空へと視線を向けた


 夏の末から「連中」の姿を見掛けるようになったが
 数が増えてきている気がするのは気の所為では無い
 何処からか「学校町」へと入り込んで来ているのだろうか


 そして今夜も「連中」の数体が
 北区の方から西区の彼方へと上空を飛行していた


 まるで何かを探しているかのように


「あれさあ」


 誰に語るでもなく、ヨグ坂は独り言ちた
 音も無く飛行する「連中」、「モスマン」の群れを見上げながら




「絶対、学校町を監視してるよなあ」
































□□■

こんばんは、何故か専ブラからだと>>800があぼ~んになっちゃって読めない俺です。なんでさ(※専ブラ以外からは普通に見れてます)

次世代ーズの人乙ですのー
まぁ、ある意味情報一気に渡しすぎたっちゃ渡しすぎたか
だがすまねぇな、「狐」編も最後に向かっていってるから、情報は一気に渡したいんだわ(メメタァ)


とりあえず「狐」編前夜で後俺が書くべきは襲撃事件くらいか
ついでに、「先生」がなんか準備してるのと

どっちにしろ、今度こそ人狼して遊ぶネタ書いてる最中だけどな!(急いで書きたいシーン優先して後回しになってた)
そのうえで次世代ーズの人に質問ー
東一葉ちゃん、中学校から離れられる?(存在的に、自身が飛び降りた校舎からあまり離れられない可能性あるんで念の為)

次世代ーズの人アンド花子さんとかの人乙でーす!
うん、ひかりのパートは読み返しつつ必死で考える!
とりあえずピエロ片付けて、ひかりファンその1(違う)と決戦させないとなー。さしあたりピエロ戦書いて次世代ーズの人の反応まとう

 
>>803
専ブラで見れない……
NG Wordだろうか、「淫婦」が引っ掛かったのだろうか
それとも「早渡」ないし「早渡脩寿」ってワードが卑猥過ぎて引っ掛かったのか……!?

>だがすまねぇな、「狐」編も最後に向かっていってるから、情報は一気に渡したいんだわ(メメタァ)
こちらこそごめんなさいね! 本当に!
2015年くらいから投下してたらもっとゆったりできたろうに……

>そのうえで次世代ーズの人に質問ー
>東一葉ちゃん、中学校から離れられる?(存在的に、自身が飛び降りた校舎からあまり離れられない可能性あるんで念の為)
東中訪問直後かな?
であれば大丈夫かもしれませんが、若干ハイライト消えたマグロ目かもです
一応9月中の話として元の話に取り込まれ掛けて、そこから脱する回を書くつもりですが(後回しも辞さない覚悟)
少なくとも最新の11月時点だと衣食住と睡眠の概念を再獲得して誰かの家に居候している筈
こちらとしては完全に花子さんの人の都合にすり合わせる気満々です


>>804
ありがとうございます!
了解です、状況により花子さんの人やアクマの人が颯爽と介入する、かもです
現時点だとひかりちゃんはライダーさんと一緒か……
真降君、気をつけて
 

>>805
なんで見れないのやら
俺がまだ専ブラきちんと使いこなせてないせいで理由わからんでごめんな
専ブラ以外からは見れてるんで大丈夫っちゃ大丈夫なんですが

>であれば大丈夫かもしれませんが、若干ハイライト消えたマグロ目かもです
ありゃま、了解です
時期的には戦技披露会終了から「バビロンの大淫婦」バイバイの間なので、居候時期か
ご返答感謝ですのー

>一応9月中の話として元の話に取り込まれ掛けて、そこから脱する回を書くつもりですが(後回しも辞さない覚悟)
星夜で東ちゃんとちょっと会話するネタ思い付いてたから余裕あったら書きたいので、内容的にその取り込まれかけの時期になるな
書けるかどうかわからんので書けんかったらすまない

>現時点だとひかりちゃんはライダーさんと一緒か……
「ライダー」が真降君逹のところにひかりちゃんを送ろうとしているところですね
なお、サイドカーついてる状態なのでバイクをスカイバイクモード(「先生」に改造してもらってつけた機能。後で上司に自慢する予定)にはできない模様

 
>>806
毎度、誤解を招く表現で申し訳ない
いよっち先輩時系列はこうなってます


●九月

・早渡、いよっち先輩と東中で出会う
 ↑マグロ目いよっち先輩はこの期間です↓
・上記の一週間以内の夜に取り込まれ(?)小イベント発生
 ・その夜の内に、いよっち先輩は「自分」を取り戻す
 ・そしてその夜の内に居候先を確保

※これ以降、生前と変わらぬ元気ないよっち先輩に!


↓↓ 早渡の金で「マジカルスイート」のドーナツを堪能したり ↓↓
↓↓ 東中学組出身者に会いに行ったり ↓↓


●十一月

・「ピエロ」は危ないからおるすばん??


こんな感じです
なので

>時期的には戦技披露会終了から「バビロンの大淫婦」バイバイの間なので、居候時期か
この時期だと完全に生前と変わらぬ元気ないよっち先輩ですね
お目目はキラキラしてます

>星夜で東ちゃんとちょっと会話するネタ思い付いてたから余裕あったら書きたいので
全然問題ないと思う
 

>>807
なるほど、了解でつの
星夜が東ちゃんに接触するとしたら、以前リレー状態でクロスさせていただいた「狐」に関する情報を早渡君に渡しまくった話から一週間もたたないうちだと思うんで、マグロ目状態で接触できる
……が、問題は、星夜が容赦なくズゲズゲ言いまくるって事なんですよ
現状、都市伝説に取り込まれかけているであろう彼女に対し、そのまま存在し続ける事のリスクやら何やら、メリットデメリット含めて全て話してしまう
その上で、「これからどうしたのか」決断を迫りかねない、と言うことです(乱入者来て彼女から答えを聞くシーンまで書くつもりはないが)
そこら辺、まずそうだったら星夜がうまく東ちゃんに接触できなかった、みたいなネタに変更になります

>↓↓ 早渡の金で「マジカルスイート」のドーナツを堪能したり ↓↓
早渡君のお財布生きて

 
>>808
>星夜が東ちゃんに接触するとしたら、以前リレー状態でクロスさせていただいた「狐」に関する情報を早渡君に渡しまくった話から一週間もたたないうちだと思うんで、マグロ目状態で接触できる
>……が、問題は、星夜が容赦なくズゲズゲ言いまくるって事なんですよ
>現状、都市伝説に取り込まれかけているであろう彼女に対し、そのまま存在し続ける事のリスクやら何やら、メリットデメリット含めて全て話してしまう
>その上で、「これからどうしたのか」決断を迫りかねない、と言うことです(乱入者来て彼女から答えを聞くシーンまで書くつもりはないが)
>そこら辺、まずそうだったら星夜がうまく東ちゃんに接触できなかった、みたいなネタに変更になります

何の問題もありませんね!!
GOなのですよ!!

(栗井戸君がどんな顔するか分からん選択をするかもしれんぞ、彼女は)
 

とりあえず、お遊びネタ書いてたら「何この長さ」ってなったので一旦これから投下するわ
これ、肝心の遊んでるシーン短くなりそうな予感もしているが()

>>809
それなら問題ないな
……書けるかどうかわからんが!!(書きたいネタと書かないといけないシーンがたまってる顔で)(これ今月中に「狐」編決着無理やな!)

>(栗井戸君がどんな顔するか分からん選択をするかもしれんぞ、彼女は)
(どんな選択かはわからんが、

 その日、学校の授業を終えた早渡が「先生」の診療所に向かっていたのは直斗からのメールがきっかけだった

『今日の放課後、みんなで集まって遊ぼうぜ。「先生」の診療所に集合な』

 一方的である
 完全に一方的である
 一応「用事あるなら連絡なしで来なくてもいいよ」とも書いてあったが、確実に「予定なくて来るだろう」と見越しているような内容だった
 とりあえず、実際予定もなかった為、こうして「先生」の診療所に向かっているのだ

 診療所が見えてきたところで、気づく
 「先生」の診療所には小さな駐車場が併設されているのだが、そこに、一台のバイクが停まっていた
 そのバイクがまた、派手なのだ
 めっちゃくっちゃに派手なのだ
 何が派手かと言えば、まず、塗装がシルバーメタリック。それも、綺麗に磨かれていてピッカピッカである。昼間だったら、太陽の光を浴びてギンギラ輝いているんじゃないかと言う色合いだ
 更に言うと、改造というべきか、カスタムと言うべきか……とにかく、原型からかなり色々いじくり回したであろう事が、バイクに詳しくない素人でもわかるレベルの姿になっていたのだ
 こんな見た目のバイク、世界に一台しかないに違いない、そう断言できるレベルのもの。恐らく、学校街を走っていてもかなり目立つことだろう
 こうして診療所の駐車場に停まっている、と言うことは診療所を訪れている患者が乗ってきた物なのだろうか

 何気なくバイクの方を見つつ、診療所から出てきた、短い髪に眼鏡の年下の少女とすれ違いつつ、早渡は診療所に入る

『ーーーーでは、すまないが。もしもの時は頼んだ。こちらが動かんでも、誰頭が動くとは思うが』
『「教会」の凍てつく悪魔辺りが出張ると別な意味で大惨事の予感するしな』
『うん、あの御仁が苛ついて動いた場合は実に危険な予感がするね。どの季節であろうとも』

 と、中に入ると、何やら会話が聞こえてきた
 早渡の英語の聞き取り能力が高ければ、このように聞こえていた事だろう
 一方は「先生」の声。もう一方は、早渡にとって聞き覚えのない声だった
 そのもう一方の姿は、すぐに視界に入ってきた
 「先生」と向かい合って話している男性、この人だ
 真っ赤なライダースーツを着ている辺りを見ると、あの派手派手なバイクの持ち主でもあるのだろう。銀髪をオールバックにし逆立て、サングラスをかけている。明らかに西洋系の人間の顔立ちだ
 その男性が、早渡に気づいて、振り返る

「っと、患者か?悪ぃな、坊主。話は終わったとこだから、「先生」に用事あんならどうぞ」

 男性は早渡に対し、流暢な日本語でそう告げた
 「先生」にそれじゃあ、と声をかけて、診療所を後にする

「おや、迷い子の少年………あ、もしかして、直斗に呼ばれたのかい?」
「はい。みんなで遊ぼうって……いいんですか。この診療所使って」
「オッケーオッケー。以前、君も入った休憩スペース使うんだろうし問題ない………っと、しまった。あっち散らかっていたな」

 片付けないとね、と休憩室の扉を開ける「先生」
 「先生」が言う程に散らかってはいないようだったが、テーブルの上に本が散らばってあったり、煙草の箱がいくつか置かれているのが見える

「あれ、「先生」、煙草吸うんですか?」

 休憩室の机の上に置かれていた、いくつもの煙草の箱を見て何気なくそう口にする早渡
 髪の色や白衣と言う「白」のイメージを他者に与えるこの「先生」に、煙草というイメージが浮かばなかったのかもしれない
 「更級日記」「蛇にまつわる民話全集」「日本書紀」「仁徳記」「遠野物語」「地脈・龍脈」などといった本を休憩室の隅に片付けつつ、「先生」は問いに答える

「いや、吸わないよ。ただ、ちょっと調べたい事があってね。成分とか毒性とか」
「毒性」
「うん、毒性」

 蛇は煙草のヤニを嫌うと言うしね、と独り言のように付け足しつつ、「先生」は本は隅の方の机の上に、煙草はきちんと鍵付きの箱に仕舞い込んだ
 どうやら、診療所には早渡が一番乗りだったらしい
 患者は先程の少女と男性……男性の方は患者と言うより客だったようだが……の他にはいないようだ

「お茶でも淹れてこよう、座って待っているといいよ」
「あ、いいえ。お構いなく……」

 と、早渡が答えた。その時

「あ、早渡。先についてたんだ」

 ひょこり、と、休憩室に直斗が顔を覗かせた
 そして、その直斗の背後から、ぬぅ、と。もっと大柄な少年が顔を出す

「そっちの奴か、お前や灰人が言ってたの」
「あぁ、そうだよ」

 その大柄な少年は、直斗から早渡の事を聞いていたらしい
 早渡に、確認するような視線を向けている

「あ、前、慶次さんや直斗君と一緒にいた人…」
「へーぇ、その人がそうなんだ」

 ひょこ、ひょここっ
 もう二人、今度は少女が顔を出した
 片方の少しぽっちゃりとした少女は、早渡も以前、ちらりとだが顔を合わせている

 早渡がそれを覚えているかどうかはさておき、少女の方は早渡の顔を覚えていたようだった
 もう一人、すらりと細い少女の方は早渡とは初対面
 しかし、彼女もまた直斗から早渡の事を聞いていたようであり、存在を認識している

「え、俺どれだけの範囲に存在広められたの?局地的有名人?」
「俺は友達にちょっと話しただけだよ。面白いのが居たって」
「「面白いの」に関しては意義を申し立てたい」

 直斗の言葉に早渡が突っ込む
 何故、自分が「面白いの」と認識されてしまったのか、早渡自身には理解できない
 …いや、それよりも、だ

「「友達にちょっと話した」って言ったけど、どの程度の範囲だ。本当に、どのくらいの範囲だ」
「大した範囲じゃないって、友達周りだけだから。その後に拡散された場合は知らない」

 そう言いつつ、ちらり、直斗は視線をほっそりとした少女の背後に向けた
 早渡もそちらを見ると、そこには少女にどこか似た顔立ちの少年が居て、スマートフォンを手にしている
 視線に気づいたのか、こてん、と少年は首を傾げる

 スマートフォン+拡散

 なんとなく嫌な予感がしたのは、早渡の気の所為ではないのかもしれない
 そんな早渡の心境とは別に、「先生」は直斗逹に声をかける

「ん、君達も来たね。これで全員かい?」
「いや、龍哉は一旦家に帰ってから来るっつってたし、憐も灰人と用事すませてからくるって」
「そうか。とりあえず、来る予定の人数を教えてくれるかい?その人数分、お茶を用意しよう」

 大柄な少年の返答に、「先生」は笑う
 直斗とともにやってきた少年少女逹も皆、「先生」とは顔見知りであるらしい
 にこり、直斗は早渡に笑い

「せっかくだし、みな、自己紹介しようか。ちなみに、安心しなよ。全員、都市伝説について把握している面子しか今日は来ないから」

 と、そう告げた



「はいはーい、お待たせしましたー、っす」
「あ、みんな先に来てたのね」

 憐や灰人、それに神子が診療所に到着したのは、遥逹の早渡への自己紹介が一段落した頃
 彼らも早渡の事は直斗から聞いていたようで、すでに早渡と言う人物について(微妙に偏った情報ながらも)認識していた
 ただ
 ここに一人……否、一匹、早渡の事を知らないものが連れ込まれた

「…犬?」
「きゅぅん?」

 ぱたぱたぱた
 憐に抱っこされて尻尾をふっている子犬
 首輪に「Ⅺ」のチャームをつけた柴の子犬だ
 早渡を見上げ、愛らしく首を傾げている

「ここ来る前にー、閑古鳥寄ったら、ポチがついてきたそうだったんで連れてきたっすー」
「閑古鳥寄ったのは、ここ借りる場所代買ってきたようなもんだ」
「そういうわけだから、はい、「先生」。閑古鳥のミートパイ。後で食べてね」

 憐、灰人、神子が順々にそう口にした
 はい、と神子からパイが入った箱を受け取り、「先生」は笑う

「あぁ、あそこのミートパイか。自家製のミートソースが美味しいのだよね。ありがとう。冷蔵庫にしまってくるよ。ついでに、君達の分のお茶もいれよう」

 そう言って、休憩室を出る「先生」
 憐はそっと、ポチを床におろした
 ぐぅ~っ、と背伸びをして、ポチは大きくあくびをする

「……と、言うか。子犬を診療所に連れてきて大丈夫なのか?」
「前々から、たまに連れてきてるし大丈夫なんじゃない?」

 早渡のもっともな疑問に、そう答えたのはほっそりとした少女……優だ
 優の言うとおり、ポチもこの場所に慣れているのか、緊張している様子はない
 代わりに、てちてちてち、と早渡に近づいて………すんすんすん、と匂いを確認しだした
 すぐに興味をなくしたのか、ぷい、と早渡にそっぽをむいて憐の足元でじゃれ付き始める

「あとは龍哉逹か」
「…龍哉、遅れるなんて、珍しい」
「それと、直斗。後は誰を呼んだの」
「え?えーと、星夜はメール送っといたけど「忙しいから無理」って返事きて……」
「この時期の受験生を遊びに誘うな」

 灰人の突っ込みに「息抜きって事でいいじゃん」と肩をすくめる直斗
 会話から、彼らの関係性が少し見えてくるかもしれない
 たとえば、星夜が来ないという点にかなえがほっとしたように見えた様子などからも、だ

「咲夜は、今日は少し体調悪いっつってたから参加辞退だし、愛人(まなと)や雀も用事あるって言ってて、東先輩はちょっと遅れるって言ってたから、後は…」

 と、直斗が言葉を続けようとした時だった

「おまたせいたしました」

 休憩室の扉が開き、入ってくる和装の少年、龍哉
 どうやら、一旦家に帰った際に着替えてきたらしい
 それはいい
 龍哉はいいのだ
 問題は、その後ろに連なっている二人

「あぁ、そうそう。後は鬼灯さんと慶次」
「こちらに来る最中に、慶次さんとお会いしたのでご一緒させていただきました」
「うん、龍哉の背後で慶次が鬼灯さんをものすっごい睨んでて、鬼灯さんがそれを完全にからかう目で見てるわよ」

 神子のその突っ込みの通り
 龍哉の背後には鬼灯と慶次の姿があって
 戻ってきた「先生」が「げ、私に対して当たりがきつい者×2」と呟くまで、あと数分であった



 直斗が呼んだメンバーは全員揃った
 龍哉逹が「先生」のいれたお茶を飲んでいる間に、早渡は質問する

「それで、これだけの人数集めて、どんな遊びを?」
「んー?人狼だよ。脩寿、やった事ある?」
「似たようなのなら。人狼はやった事ないな」

 直斗からの返答。続けての質問にそう答える早渡
 「ゾンビー・タウン」と言うパーティーゲームならプレイした事がある彼だが、人狼はやったことがない
 ぼんやりと、役職やらの名前は聞いたことあるかもしれないがしっかりとしたルールはわからない、と言うところだ

「ふむ、なるほど。迷い子の少年は初心者、と………では、通常ルールでやった方がいいね」
「個人的には、今、「先生」がそっと片付けた「闇鍋」って書かれた黒い小箱気になるんですが」
「流石に初心者がいると言うのに闇鍋やろうぜ!と言うほど鬼畜ではないよ」
 
 す、と「闇鍋」とおどろおどろしい赤文字で書かれた黒い箱を片付ける「先生」
 ……と、言うか

「お前、診察はいいのか」
「休憩中の札かけてきたから大丈夫。この時間なら、一戦くらいは参加できるさ」

 慶次の突っ込みに、「先生」は涼しい顔で答えた
 日頃の患者の来る率から、この時間帯は患者はほとんど来ない、とわかっているらしい

「とは、いえ、GMとして最後まで参加、はできるかどうかはわからん。GMは「通り悪魔」の御仁に任せた。君がここに連れてこられたのも、恐らくはGM任せる為であろうて」
「大体その通りだが、俺だって普通に参加するために来てんだよ。最初くらいはGMやってやってもいいが」

 「先生」に抗議する鬼灯だが、少なくとも最初はGM……人狼と言うゲームにおける、進行役をやってくれるらしい
 ゆらゆらと手元で煙管を弄びながら、何やらカードを受け取っている

「ちなみに、「通り悪魔」の御仁。ここは一応診療所なので煙草は」
「安心しろ。今吸ってるのは緑茶だ。それと白衣、さっきの茶、何いれた。かすかに気配がしたぞ」
「うむ、緑茶なら良し!ちなみに本日出した茶は、全てエリクサー入りだ」
「そうか、わかった。じゃあこの人数なら配役は……」
「待って。突っ込み入れなきゃいけない単語が聞こえた」

 「先生」と鬼灯の会話を聞いていた早渡が、そう声をあげた
 そう、突っ込みをいれなければいけない、先程の会話は
 早渡以外、突っ込みを入れる気配がないがツッコミを入れなきゃいけない予感がしたのだ、彼は
 はて?と「先生」は首をかしげている

「何か、問題があっただろうか。煙管は、煙草以外も吸えるぞ。紅茶とか砂糖とか」
「紅茶はものによっては煙管で吸うとまずいぞ。やめとけ。緑茶はまだいける。砂糖は油断すると粉塵爆発起こすから初心者はやめとけ」
「なるほど、ってそうじゃない。突っ込みはそこじゃない」

 そう、そこじゃない
 突っ込むべきところは、そこではないのだ
 もっと重要単語が聞こえてきていたのだから

「さっき、茶にエリクサーいれた、って」
「うん、君逹に出した分も、全てそうだったよ?」

 なんと言う無駄遣い
 確かに、美味い紅茶ではあったが、無駄遣いだ

 言葉が出てきていない早渡に、神子が告げる

「安心しなさい。この「先生」がいれたんなら、まず本物だから」
「心配点はそこじゃなくて」
「うっかり猫耳とか生える薬を「なんとなく作っちゃったし捨てるのもったいない」って理由でいれられた訳じゃねーっすし、問題ないっすよ」

 憐の続けての言葉に、ますます「待った」と言いたくなる早渡
 他の面子は、かなえを覗いて大体慣れている様子だ
 エリクサーいりの茶に慣れていいのだろうか
 あまり良くない気がする

 ……確かに、なんらかの形で害が出るわけではないので、いいと言えばいいのかもしれないが

「ほんっと、なんで飲まれてないのか不思議よね、この人」
「……飲まれそうで飲まれてない事、わりと、ある。「教会」のカイザーさん、みたいに」

 ぼやくような神子の言葉に、晃がぼそ、ぼそ、と続けた
 契約した都市伝説に「飲まれかけ」、もしくは「どう考えても飲まれるだろなんで飲まれていないんだ」と言う例は、そこそこ存在するのだ
 「先生」も、そうした例の一人である
 当人がその点をどう考えているのか不明だが、少なくとも彼の契約都市伝説は「エリクサー」を気軽に使えるような都市伝説である、と言うことだ

「そこの白衣の行動が理解しがたいのはいつもの事だ。あまり真面目に考えんな、坊主」

 くつくつと、鬼灯はそう言って笑った
 そうして、カードを軽くシャッフルしながら、続ける

「んじゃあ、早速始めるか?」

 カードのシャッフルは、終わった
 ……さぁ、遊戯を始めよう




to be … ?

各方面に対して焼き土下座
真降君の名前出し忘れた事に投下終えてから気づいたわ鳥居の人すまねぇ!
多分、誘ったんだけど用事あって無理だった組だったと思われる

そして、ごめんな早渡君、一気に色んな人と知り合わせちゃった

 
花子さんの人お疲れ様です
そして、ありがとうございます
もうゲーム本編は花子さんの人に委ねよう

うーむ……ゲーム開始前から早渡の不審ぷりが目に見える
まさかの茶にエリクサー……!? ロクさんがどんな顔するか分からないな……!
 

>>816
乙ありでーす
一応、どういう配役で書いていくかは決まってるので一週間以内には続きぶん投げたいところです

>うーむ……ゲーム開始前から早渡の不審ぷりが目に見える
前回、野郎としか知り合わせなかったので今回は女の子三人だよ!(問題はそこではない)

>まさかの茶にエリクサー……!? ロクさんがどんな顔するか分からないな……!
「賢者の石」の契約者であるが故にできる事である
時期的に、地脈からの……ってより、アクマの人様の水神の件について知っているが故でしょうね、このエリクサー
どれだけ効力あるかはわからないけれど、体に溜まっているであろう水神の毒を少しでも薄めようとしています。なので、お茶自体学校町の水じゃないミネラルウォーターか、伝手でどっかから手に入れた都市伝説系の水かもしれない

(そういや、昨晩ぶん投げたネタで早渡君に遭遇した人達が都市伝説契約者かとか「組織」所属か否か、とかわかるかどうかの一覧表必要だっただろうか、と言う顔)
(もし必要だったら、避難所の裏設定スレ辺りにぶん投げておくよ)

 
>>817
>前回、野郎としか知り合わせなかったので今回は女の子三人だよ!(問題はそこではない)
良かったな早渡!

神子さん……(記憶が正しければ)スレンダーな美人さん
優さん……スレンダーな美人さん
かなえちゃん……ぽやっとしており、かわいい

さあ喜んでいいぞ早渡!

早渡「……」 (顔を背けてこちらを見ようとしない)

どうした早渡!? 喜べよ!!

早渡(あの人、やっぱり三味線弾きのホオズキさんでは……? いやまさか……)


>>818
この時の早渡の動向までフォローアップ出来るだろうか……
最終的な判断を花子さんの人にお任せしたいです(ごめんね♥)
 

そう言えば今日はホワイトデーですね。もらった人達、お返しはしたかな?
最近では「ホワイトデーには四倍返し」みたいな風潮が出ているという噂を聞いたが、そうなると「ホワイトデーは三倍返し」の契約者の能力は強化されるのだろうか
等とどうでもいい事を思い付いたりしました

>>819
>早渡(あの人、やっぱり三味線弾きのホオズキさんでは……? いやまさか……)
(早渡君が鬼灯が三味線弾きの鬼灯であると確定させられるような情報出せたらいいなぁって顔)

>最終的な判断を花子さんの人にお任せしたいです(ごめんね♥)
あい、了解でーす
一応、今回は一覧表出さないでおこう、それなら
必要になったら言ってね

次世代ーズの人、花子さんとかの人乙でーす
個別への反応は明日返しますですすまんな

 
>>819の「三味線弾きのホオズキさん」という表現は
少し反省しなければなりません

「三味線弾き」とは文字通りの意味の他に
言動で相手の調子に合わせたり惑わしたり
と言った意味があります

鬼灯さんの能力等も踏まえてこの表現を考えると
全く間違っているというわけでは無いものの
鬼灯さんの昔馴染が皮肉交じりに呼ぶなら兎も角
彼のことは知っているが、それほど深く知らない
者達からすれば、「三味線弾き」とは鬼灯さんに対し
失礼なニュアンスを帯びるので、闇市の者達が呼ぶとしたら
「地唄師匠の鬼灯先生」か「鬼灯の旦那」辺りが
穏当な所でしょうか
闇市ではきっと鬼灯さんはモテると思う(老いも若きも)


敵だと率直に「一つ眼の鬼灯」と呼ぶ筈だと考えると
うーむ……


>>820
ありがとうございます
ついでと言ってはなんですが
二つお尋ねしたいことがあります
紅かなえさんが東一葉さんと出会った場合
どういった反応が想定されるでしょうか
(これもまた未定)

紅さんはよくドーナツバーに行ったりするのでしょうか
(鳥居の人にも土下座orzなお話)

引っ張る理由が全く無いので、このタイミングでお話ししますと
「次世代ーズ」の遠倉千十が、以前話した東中学出身者になります


>>821
体調にはくれぐれもお気をつけ下さい
周囲では未だインフルエンザが蔓延しているので
 

>>821
無理せんようにね
反応とかは余裕ある時でいいのよ

>>822
当人はあんまり気にしないような気がする(三味線弾き」と呼ばれる事)

>闇市ではきっと鬼灯さんはモテると思う(老いも若きも)
鬼灯になついてる猫又(「狐」編では登場予定なし。現状、学校町が危ない気配を感じたのか、鬼灯が安全地点に強制退避させた)がめっちゃ毛を逆立ててそう

>紅かなえさんが東一葉さんと出会った場合
>どういった反応が想定されるでしょうか
多分初見だとッピャ!?って感じでびっくりするんじゃないかなぁ
かなえは、咲季と仲が良かった(と言う想定)の東ちゃんの事を知っています
が、彼女が今なお、都市伝説に取り込まれた状態である事は把握していません
最初はびっくりするし、三年前の事件のトラウマ思い出して挙動不審になるかもしれませんが、「岩融」が落ち着かせるので大丈夫でしょう
事情さえわかれば、落ち着いた対応になります

>紅さんはよくドーナツバーに行ったりするのでしょうか
ドーナッツバーはあんまり行かないかな
「閑古鳥」にはよく行きます。そこのスイーツが好きみたいですね

>>823
ありがとうございます
記憶に留めます

>かなえは、咲季と仲が良かった(と言う想定)の東ちゃんの事を知っています
>が、彼女が今なお、都市伝説に取り込まれた状態である事は把握していません
分かりました! 覚えておこう

>ドーナッツバーはあんまり行かないかな
>「閑古鳥」にはよく行きます。そこのスイーツが好きみたいですね
ううむなるほど、確認して良かった
序盤でかなえちゃんといよっち先輩を
無理に出会わせる必要があるか、もう一度よくよく考えます……
「閑古鳥」によく行くということは、やはり決め手は金魚鉢パフェかな!?

>>824
>「閑古鳥」によく行くということは、やはり決め手は金魚鉢パフェかな!?
それと、ポチ可愛いからかな(ラブリー看板ペットは強い)
そして、「閑古鳥」関連で作者向け情報として出さなきゃいかん事あった事思い出したので、一応裏設定スレに投げておきます

>>815
>真降君の名前出し忘れた事に投下終えてから気づいたわ鳥居の人すまねぇ!
>多分、誘ったんだけど用事あって無理だった組だったと思われる
オーケー問題ない
「凍り付いた碧」関連で動いてたかもしれん、あくまで裏方で

「お兄ちゃまたち、郁おにいちゃまはだいじょうぶ。こっちをてつだってほしいな」
 端末のメール画面に表示されたそれに、轟九と真降は踵を返し、メールに添付された地図の地点上…おそらくそこでの合流がもっとも最適であると「観測」したのだろう場所に向かっていた。
 と、人影が見える。しかも複数。
「真降、あれなんだ」
「さあ…都市伝説かな」
 近くまで走ると、彼等の奇態な風体と、放火などという穏やかならざる行為に、ふたりの眉が顰められる。
「ヒャッハー!燃やせ燃やせ!」
「大人は皆殺し、子どもは拐かしだー!」
「やっちまえー!」
 炎を取り囲みガソリン缶片手に暴れる彼らに、桐生院兄弟の動きは素早かった。
「させないよ!」
 真降がたん、と手を地に付けた。
 その瞬間、手を始点として地面が凍り付いた。その範囲は急速に広がり、周囲を氷の世界に変えてゆく。
「ぉあ…」
 ものの数秒で、ピエロたちは氷の彫像に変わり…
「せいっ!」
 轟九の一撃で、ひとり残らず、木っ端微塵に砕け散った。
「なんだありゃ」
「とりあえず急ごうか。ひかりちゃんが心配だし」
 だが。
「奴さんら、素直に通してくれなさそうだぜ」
「愚かな連中だね、仲間の最期を見ても怖くはないのかな?」
 不適に笑う兄弟に、数を頼んだピエロが襲いかかりつつあった。



続く

皆様乙
とりあえず1本書けたので久々の投稿

今のところ
ナユタ シェイド 裂邪 理夢
をあげてるはず

さあ、今日はこいつだ

「…えへへへ……ご主人様ぁ……あぅ……う?」

むくり
青い髪の少女―――ミナワは恍惚とした表情で目覚め、起き上がる
余程良い夢を見ていたのだろう
が、瞬時に顔色が変わる
見慣れぬ景色、否、見慣れてはいる
だが、先程までは“ここ”にいなかった筈だ

「あれ、ここ…ご主人様のご実家の……」
「良かったぁ、魘されたり寝言言ったりしてても随分寝てたから心配したよ」

声、それも少女らしい
ふと気が付けば、安堵の表情を浮かべる裂邪の、

「ふえ!?」

ミナワの頭がパニックに陥る
確かに裂邪の顔である
だが服装や声は完全に少女である

「えっと……もう一人の“私”と一緒にいた子、だよね?
 私のこと覚えてるかな?」
「………あ!!」

そう、彼女は思い出した
かつて「並行世界」から現れた、「UFO」と契約した裂邪との戦い
そして、共に戦った、「マッドガッサー」に少女にされたという「ダークマター」と契約した裂邪
いや、

「サクヤさん、ですか!?」
「あはは、その名前も覚えててくれてたんだ」
「はい! でも、どうしてここへ?」
「それは私のセリフだよ、家の前で倒れてるんだもん
 結構眠ってたけど……疲れてるっていうか、何かあったの?
 あともう一人の私もいないし…他にも何人かいたよね」
「えーっと……」

ミナワは潜る、記憶の海
突然の真っ暗闇
それは、“這い寄る混沌”によって齎された
次々と消える声

「…ニャルラトテップ……そうです、私達はニャルラトテップと戦って、それで…」
「へ? そっちの世界は『クトゥルフ神話』の邪神までいるの!?」
「どういう理由かは私もよく…(そういえばレジーヌさんはどうやって「ショゴス」と…)」
「で、その…ニャルラ?に皆「並行世界」に飛ばされたってこと?」
「恐らく、そうかも知れません…
 急に目の前が真っ暗になって、皆さんの声しか聞こえませんでしたけど、
 ご主人様やシェイドさん達も同じ状況になっていたようでしたから」
「うーん……私の能力で……えっと、」
「あ、ミナワと申します」
「ミナワちゃんを元の世界に戻してあげることはできるけど…
 問題は残りの皆よねぇ」

サクヤ―この世界の裂邪―は「ダークマター」の能力で極小規模のブラックホールを生成できる
だがそれだけでなく、ブラックホールをくぐることで、
重力に潰されることなくワームホールを通して数多の「並行世界」へと移動ができるのだ
しかしながら、そもそもどこへ行ったか分からない裂邪達を無限に空いた虫食い穴から探すとなれば、
それこそ海に逃げ出した6匹のメダカを探すようなものである

「そう、ですね……私一人で戻ったとしても、ニャルラトテップには…
 いえでも、ご主人様ならきっと、散らばった皆を探しにやってきてくれると思います」
「それが出来たらもはや“神”ね…でも、奇跡って奴は案外起こるもんよ
 その時が来るまでここにいなよ、歓迎するわ」
「ありがとうございます!」
「ちょっと待ってね、お母さんに伝えてくる」
「あ、でしたら私もご挨拶を」

部屋を出て階段を下り、2人は台所へ
そこには見覚えのある後ろ姿があり、洗い物をしているところだった

「お母さん、目が覚めたよ。ミナワちゃん」
「この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ございません」
「うふふ♪ いいのよ気にしなくて
 随分丁寧な子ねぇ、今時珍しいわ」
「それで、「並行世界」から飛んできた上に友達と逸れちゃったらしいから、
 元の世界の友達が迎えにくるまで暫く泊めてあげて良い?」
「あら、他所の世界では「並行世界」の旅行が流行ってるの?
 でも大変ね、ゆっくりしていきなさい」
「え、えっと、お世話になります
 (ちょっと待って下さいご主人様でもそんな日常会話やったことありませんでしたけど?)」
「あらいけない、じゃがいも切らしてるの忘れてたわ」
「私行ってくるよ」
「わ、私も行きます!」

「部屋で待っててもいいのに」、という言葉も振り切り、半ば強引にサクヤについていくミナワ
そうしなければ気が収まらなかったのだ
あまりにも不自然だったのだ
裂邪は自分が契約者だということは両親に隠していたし、
両親が既に気づいていたことを知っても尚、都市伝説に関わる話を家庭に持ち込むことはなかった
それが当然だった
都市伝説とは、一般社会に埋もれた荒唐無稽な御伽噺
それが当たり前だったのだ
だが今のサクヤの会話を聞いて違和感を覚えた
まるで都市伝説という存在が当たり前になっているようじゃないか、と
確認せねばならなかった
ここは「並行世界」―――己の世界とは似て非なる異世界
決定的に何かが、違う
疑念を巡らせながら、2人の歩みは東区の住宅街を抜け、南区の商業地帯へと運ばれる

「ほ……ほえええええええええええぇぇぇぇぇ!?」

ミナワが奇声をあげるのも無理はなかった
大通りを行き交う人込み
賑やかな南区ではごく普通の光景だ
問題は、その人込みの“内訳”だった
人間、「口裂け女」、「注射男」、人間、人間、「切り裂きジャック」、人間、「トイレの花子さん」……
一般人の中に都市伝説が、平然と歩いている
中には友人や家族のように談笑したり、都市伝説がお店で働いていたり
労働する都市伝説や契約者は能力を披露している者達もいた

「…ど、どしたの?」
「どうしたもこうしたもないですよ!
 何ですかこれっ……どうして都市伝説が人間社会に溶け込んじゃってるんですか!?」
「え、何でって…あ、もしかして“そっち”は違うの?」
「へ?」
「えーと、私が小学校入ってすぐくらいの時かなぁ
 ニュースにもなったけど、「口裂け女」が爆発的に増えてあちこちで学校閉鎖が相次いで
 それで「組織」がとある声明を発表したの
 『都市伝説を秘匿にし続ければ、新たな都市伝説が生まれ続ける
  今後は都市伝説の存在を公表し、人間社会の一員として生活してもらう』ってね」
「うそ……でも人を襲う都市伝説もいますよね?」
「最初は凄かったよ、「組織」のトップクラスの人が世界中に散らばって治安維持に尽力してさ
 今じゃ一部の「組織」構成員はヒーローやアイドル級に称えられてるの
 私も持ってるよー“赤い幼星”ローゼ・ラインハルト様のブロマイド♪ 握手会も行ったし♪」
「そ、そうなんですか…(正直ローゼさんがすごい位置にいらっしゃるの忘れがちなんですよねー)」
「それで、ローゼ様達のご活躍に加えて、元々人を襲うことをしなかったごく僅かな都市伝説の存在もあり、
 人々の認識が少しずつ変わっていって、今みたいに穏やかな都市伝説が増えていったの」
「なるほど…(“ローゼ様”がツボりそうで怖いです)
 そういえば人込みに交じってお巡りさんや黒服さんが結構歩いてますね」
「警察と「組織」が連携してるからね
 色々法律も変わったからまー覚えるのが大変で」
「学生さんも大変ですね;」
「この間高校卒業したけどね
 やーでもあれから3年経ったんだ、もう一人の私は元気?」
「はい、あの後色々ありまして、今「組織」に雇われて頑張ってます」
「え、「組織」に雇われて?」
「そうですね、私の世界の話もしましょうか」

ガールズトークに花を咲かせながら、2人はスーパーマーケットの自動ドアをくぐった



   ...to be continued

しまった名前欄にタイトル書くの忘れてた!(

という訳でミナワちゃん
しかもUFO裂邪に続いておにゃのこ裂邪が再登場
久々に書くもんでミナワの言動が色々アレだけど、性格もアレだから許してくれ
彼女も色々あったんだ(マテヤ

 
鳥居の人、お疲れ様です
遂に桐生院兄弟が東区に現れたか!
これは「ピエロ」も収穫待ちのスイカのように
ばっさばっさとやられて……東区放火組は意外と短時間で解決しそうですね
了解です! 住宅街だが行くしかない、あの二人が東区放火会場に向かうかもです

ところで「ピエロ」は夜の東区でめっちゃ暴れていますが一般人はこの光景を見てるのかな?
「ピエロ」は一般人を巻き込む気満々ですが、誰かがきっと人払いとか施してるのでしょう、きっと
(住宅街で人払いとは一体どういうことなのか)


そしてシャドーマンの人、お疲れ様です
うっはぁ、ミナワちゃん回だぁぁーっ!!(素)
ここでれっちゃん(さくやさん)が出てくるとは……元の世界に戻るとしたら、彼女が鍵になるのでしょうか
こちらの世界は都市伝説バレしてる世界か、一見平和そうですがここから何か一波乱ありそうなのがおそろしい所
「組織」の人々が有名な世界だと知って真っ先に思い出したのが
昔、避難所で話題になった(?)「組織」黒服ののアイドル化計画ですが、この世界ではまさか……
 

おはよう。鳥居の人とシャドーマンの人乙ですー
よーし、場所は東区か。「ライダー」がそっちへとひかりちゃんを送るよー
そしてシャドーマンの人のミナワちゃん回は……なるほど、都市伝説がバレてる世界ときたか

>「ピエロ」は一般人を巻き込む気満々ですが、誰かがきっと人払いとか施してるのでしょう、きっと
人払い、ってか「異常なものが見えない」状態……にでもしてるんじゃないかな、多分
過去に、秀雄がドラゴンの姿晒した際に周りに気づかれないようにしたみたいに

何?それだと放火されて逃げられないかもしれないって?
放火されたら流石に気づくし「ピエロの変なのが放火した」って流石に認識するんじゃないかな
ただし、都市伝説、ではなくあくまでピエロの格好した奴が放火したって認識するし新聞とかにもそうやって載るだけで

 
花子さんの人ありがとうございます
裏も確認しました。ううむ、ヤバい!(笑顔)
早渡が彼女を連れて行ったらたいへんなことになるな!
あ、でも散歩中のポチと鉢合わせしないとは言えないわけで……
しかし彼女は実体があっていわば幽霊では無い、か
ポチはおりこうさんっぽいので犬が苦手な子にはくうきをよんでくれる……だろうか??
 

 



   この話は>>827(鳥居の人)の続きになります



 

 


 学校町東区、中央高校近辺


「おや」


 南区へ向かう車内で
 「アブラカダブラ」の契約者は勘付いた


「『海から』の。あの子が『観測』を使ったらしい」
「君の網にでも引っ掛かったのかい?」
「東区だ。痕跡を見つけた。二人。『組織』の気配がする」
「いいねえ。楽しくなってきた」


 二人のやり取りに、「ピエロ」は急ブレーキを踏みつつハンドルを切った


「すんませんッセンセ方! ただいま東区に向かうッす!」

「いや、その必要は無いよ。僕らが“直接”行く
 どうやら東区では『シェキナー』の矢が雨霰のように降り注いで君らの同胞を殺してるようだからね
 尤も、君らが死地に飛び込んで殺されることに快感を覚えるのなら僕らとて無理に止めたりはしないが」

「え、ええ~……」
「オレ達、放火チームみたいな性癖じゃ無いしなァ」


 「カダブラ」の言葉に
 車内の「ピエロ」は互いに目配せをしながら困惑した笑みを浮かべた

 「ピエロ」達のやり取りを耳にしながら
 「カダブラ」は「海からやってくるモノ」の契約者に視線を送る


「『海から』の、確認だが未だ“カウンター”は発動していないんだな?」
「まーだだよ」

「じゃあそろそろ発動してくれ
 イレギュラーが立て続けに二匹も現れているんだ
 君があの子に惚れたからって任務の方を蔑ろにしてもらっちゃあ困るよ」

「大丈夫大丈夫
 ひかりちゃんのことだって任務の一部なんだから
 さっきみたいに手を抜いたりしないさ。ねえ『カブダラ』の」


 何が可笑しいのか「海から」の契約者は笑いを押し殺している


「終了条件はたったの二つ
 ひかりちゃんが俺を[ピーーー]か
 俺の世界にひかりちゃんを引き入れるか」

「本当に入れ込んでもらっちゃあ困るよ? 君には大役があるんだからな」


 笑いに堪え続ける同僚を尻目に
 「カブダラ」の契約者はやれやれと大仰に頭を振った




 「海からやってくるモノ」の契約者が保有する能力の一つに“カウンター”と呼ばれるものがある
 尤もこの“カウンター”、彼の同僚達からは専ら「攻勢防壁」という俗称で呼ばれている

 “カウンター”とは要するに、射程圏内で「観測」を含めた予知・察知系契約者が
 各自の能力を発動した際にカウンター発動する能力だ

 その能力は予知・察知系の能力者を錯乱させ、あるいは発狂から強制的に自殺させる

 早い話が、「海から」の射程圏内で予知・察知を使用した際に反撃を行う能力である
 更に付け加えると“カウンター”の能力は、丁度学校町全域をカバーする射程を有している

 「海から」の契約者が学校町へやって来たこと
 それはつまり、該当契約者の能力発動に対する封殺・牽制を意味する



 

 

「楽しみでならないよ。ひかりちゃんと会うのが」


 笑いを堪え過ぎたのか、「海から」の契約者は目尻に涙を浮かべている


「全く、これだからロリコンは嫌なんだ」
「君だって子供を飼うようになれば分かるよ、『カダブラ』の」
「君は何時だってあの位の年頃の子に発情しているだろう!」


 「カダブラ」の契約者は彼の言葉に苦笑を浮かべながら
 彼らの顔色を窺っている「ピエロ」達の方を見やった


「じゃあ僕らは行くので後は任せるよ」
「「「はいー! かしこまりー!!」」」




 その瞬間に車中から「カダブラ」と「海から」の契約者は消失
 東区の住宅街の只中に出現した




「早速『シェキナー』の洗礼だな」


 「シェキナー」の洗礼、とはつまり
 出現したばかりの彼らの頭上から降り掛かる無数の矢だ

 光り輝く軌道は闇夜の中にあって非常に視認しやすい
 上空からの攻撃は当然、この二人組にも襲い掛かった

 しかし
 この契約者達は意に介さない
 それもその筈、頭上の矢は彼らを貫通しなかった
 まるで二人組の頭上に不可視の傘が開かれているかのように
 頭上数メートルの位置で「シェキナー」の矢が消失しているではないか


「あれに関してもコメントしておくと
 正直、『教会』が保有して良い代物では無いと思うのだけどね」

「それよりひかりちゃんだ。匂いが近づいてきている」
「ガソリンの灼ける臭いしかしないようだが?」
「いいや、そっちじゃない。確かに近いよ」
「なるほど、痕跡の元の方かな」


 二人の契約者は世間話でもするかのような体で歩を進める
 上空からは流星群の如き「シェキナー」の矢による面の攻撃だ
 冷えた大気に混じるガソリンとアスファルトの焦げる臭いが鼻を衝いた


「『海から』の、今の内にやっておけ」
「“カウンター”かい? 了解した」


 「カダブラ」の要請に「海から」の契約者は今までと同じく微笑んで応じる


 このとき
 「海から」の笑みに僅かだが悪意が混じった


「これより、“カウンター”を発動する
 これ以後、町内の察知系能力者には俺の世界を見せて[ピーーー]」


 「海から」の言葉に「カダブラ」は嗤った
 この二人の契約者は学校町東区を徘徊する
 現時点の目的は、痕跡の追尾と新宮ひかりの発見
 そして彼女の牽制、あるいは、その存在の抹消である





□■□

 
鳥居の人と花子さんの人に土下座でございますorz
お待たせしました! あの二人組を学校町東区に出現させました

現時点で彼らは桐生院兄弟の存在を察知していますが、兄弟の位置までは歩いて移動です
その気になれば空間転移できると思うが、本人達は移動すら楽しんでいる
あと相変わらず勝手なことを言っている

そして「海からやってくるモノ」の契約者は
この話を以って>>743で挙げた能力①を開始しました

ちなみに影響の(1)(2)は時間経過で自然回復しますが
(3)(4)になると自力での回復は困難(治療が必要)になるので気をつけて!
 

次世代の人乙でーす
きたか……そしてあの性癖は放火組だけだったか(ピエロ全部がそれだとちょびっとだけ思ってた顔)

もさもさ続きを書いている。人狼お遊びネタもちょっと待ってねー

あと、次世代の人に聞こうと思って忘れてた
放火組なピエロさん逹って、頭かぱぁって開いて脳みそ調べるのってできるかな(情報収集的な意味で)

>>834
>ポチはおりこうさんっぽいので犬が苦手な子にはくうきをよんでくれる……だろうか??
これなー、彼女は本来「死んだはずの人」なので、唸る可能性あるのよなぁ
それなのに人狼回で東ちゃんも後で来るみたいな事言ってるのにポチいるんだぜ()
「先生」にポチ用のおやつだしてもらってポチの気を引いておこう

 
>>839
ありがとうございます
では早速回答しますね!

>きたか……そしてあの性癖は放火組だけだったか(ピエロ全部がそれだとちょびっとだけ思ってた顔)
ご安心ください
車内の「ピエロ」は自分の性癖を偽って嘘を吐いているかもです
ただまあ「ピエロ」各個体で異様な程性癖がバラけているっぽいので、まあねえ……

>放火組なピエロさん逹って、頭かぱぁって開いて脳みそ調べるのってできるかな(情報収集的な意味で)
彼ら「ピエロ」は殺せば死体が消滅する都市伝説的な存在です
なので消滅させずに脳を弄り回す技術を「先生」達が持っていらっしゃるなら可能でございます

ただし
彼ら「ピエロ」の頭の中を調べてもですね……碌な情報が出てこないと思いますよ
「女の子レイプしながら[ピーーー]」「ごまだれ」「楽しい」「生肉食べたい」「可愛い男の子レイプしたい」「楽しい」「掘りたい」
☝大方こういう情報しか出てこない
これは彼ら「ピエロ」に肝心の情報が渡されていないことを意味します
「ピエロ」の側は学校町勢力に優秀な精神干渉系契約者が居ることも把握しているのでその対策ですね
脳みそクチュクチュだの電気ショックだのされると、最悪「気持ちイよォォォーッ♥♥♥」とか言い出す危険性すらある

>これなー、彼女は本来「死んだはずの人」なので、唸る可能性あるのよなぁ
クッ、やはり逃げられぬか……!

>それなのに人狼回で東ちゃんも後で来るみたいな事言ってるのにポチいるんだぜ()
それも気になったのですが
……果たしてかなえちゃんは大丈夫なのだろうか!?(>>823的な意味で)
 

>>840
>ただまあ「ピエロ」各個体で異様な程性癖がバラけているっぽいので、まあねえ……
(生ぬるい視線で見守る)

>彼ら「ピエロ」の頭の中を調べてもですね……碌な情報が出てこないと思いますよ
まぁ、ろくな情報でるかどうかもわからんので、一応調べるしかないのよなぁ
調べて「あ、特に情報ないな」ってわかったら、繋がりある面子に「雑魚調べても何もないよ」って伝えて調査の手間省くだけだし

>クッ、やはり逃げられぬか……!
ポチ(めっちゃ唸りながらちぎれんばかりに尻尾を振っている)

>……果たしてかなえちゃんは大丈夫なのだろうか!?(>>823的な意味で)
とりあえず、俺、東ちゃん来るあたりまで書く予定ないのですが(後で来るよ、ってシチュだけ用意した感じ)人狼でみんなで遊ぶ時以前に遭遇したことあるかどうかで変わるなぁ
今回が初遭遇になる場合、傍に直斗とかもいるんで上手に落ち着かせると思う

待て、突っ込みそびれた
「ごまだれ」ってなんでや

 



●前回
>>801-802



 

 



 遠倉千十はその日、早目に移動教室へ来ていた
 昼休みを挟んで午後の授業なので教室にはまだ人が疎らだ

 普段は友達と一緒にお昼を過ごすのだが
 その日は約束があり、人目も少ない移動教室で待っていたのだ


「ごめん、千十。待った?」


 待ち人が来た
 遠倉はううんと首を振って応える
 お弁当を持って教室に入って来たのは彼女のクラスメイトだ

 肩ほどまでの髪を揺らして眼鏡を掛けたその少女は
 遠倉の隣に着席すると、済まなさそうに笑った





「じゃあ、もう長らく連絡が無いんだ」
「うん。最後にメールがあったのが梅雨の前だから、三ヶ月くらいかな」


 二人はそれぞれ弁当を広げて会話している
 窓の外は生憎の雨だ
 予報では昼前に晴れるという話だったが
 雲行きを見るに、まだまだ当分振りそうな感じだった


「千十も気を付けなさいよ
 最近の学校町は変なの増えてるから」

「大丈夫。最近はちゃんと大通りから帰るようにしてるし」

「バイトは遅くまでなんでしょう?」

「でも大丈夫だよ。大通りで見掛けたことってあんまり無いから」

「あんまり、ってことは。やっぱり大通りでも見るわけ?」

「あっ、違うの。ただ、大通りから奥の方の道を見るとたまに見掛けたりするだけで」


 遠倉は手にしたサンドイッチから隣の少女に顔を向ける
 少女はミートボールを口に放り込んで咀嚼していた


「んむ。危ないときは電話してよ?」

「ありがとう。ありすちゃんも無理しちゃ駄目だよ」

「分かってるわよ。前みたいに無茶はしないし」


 一息吐きながら少女は遠倉の方を向いた
 ありす、とは眼鏡少女の名前である


「にしても、最近は本当に物騒よ
 先週なんか『偽警官』が私の所にやって来てさ」

「大丈夫だったの……!?」

「大丈夫よ。あ、でも、言動が変質者のそれだったから大丈夫じゃないわね」



 

 

「変質者って……」


 不安そうな顔をしている遠倉に
 巻き卵を頬張りながら眼鏡少女はひらひらと手を振る


「大丈夫。やっつけて適当に放置しといたから」


 大方、「組織」か「首塚」の人が拘束してくれたでしょ
 それだけ言って彼女は大して気にした素振りを見せない

 遠倉は不安げな表情のまま
 教室内に居る他の人の耳に聞こえぬよう声を潜めた


「『赤マント』に、『モスマン』に、それから……」

「『狐』ね」

「ありすちゃん、絶対に無理しちゃ駄目だよ?
 『狐』のことは、あの人達、教えてくれなかったけど
 すごく危ないんでしょう? 仲間も多いみたいだから」

「安心して千十、『狐』はヤバいんだから私もまず逃げるわ」


 ありすの返事に遠倉はこくこくと何度も頷く
 噛んだプチトマトを飲み込みながらありすは嘆息する


「しっかし、本当に何なのかしらね
 『狐』が野放しだなんて、ちゃんと仕事して欲しいんだけど」

「うん、どうなんだろうね」


 ありすの言葉に遠倉は力なく返事をする


「被害、出ないでほしいな」

「本当それよね。事件が起こってからじゃ遅いんだし」

「……ありすちゃんは、怖くない?」

「うん? 『狐』のこと?」

「ううん、都市伝説と、“戦う”こと」

「ああ、うん」


 遠倉千十はありすの横顔をじっと見詰める
 彼女は何処か遠くを見ていた


「まあ。怖いかな。ちょっとは」


 しかし、遠倉は知っている
 彼女、日向ありすはそう言いながらも
 矢張り都市伝説相手に戦えるのだということを



 ありすちゃんは凄いな



 遠倉はそれを言葉に出せず、視線を落とした




□□■

 



遠倉千十
 東区の南側にある高校に在籍する一年生
 最近の悩みは「部屋着を買い足した方がいいかな」

 好きな物:おからハンバーグ、プリン・ゼリー系全般、ドーナツ
 嫌いな物:怖い人・物(老若男女問わず)、都市伝説、契約者



日向ありす
 遠倉と同じ東区高校の一年生で契約者
 最近の悩みは「読みたい本が絶版でしかも近隣の図書館にも置いてない」

 好きな物:勉強、図書館、安倍川餅
 嫌いな物:チャラい奴、馴れ馴れしい男子、自分自身、犬









 

次世代の人乙でーす
「狐」伸ばしに関しては「だったらてめぇら探してみろやオラァ!!」って天地がキレそう

これまでのあらすじ(>>811-814 )

人狼やろうぜ!

 人狼
 「汝は人狼なりや?(Are You a Werewolf?)」と言う名称でアメリカから発売されたパーティーゲームが一番有名であろうか
 元となった遊戯や同種のパーティーゲーム、オンラインプレイできるゲームと多々あるが、総じて「人狼ゲーム」等とも呼ばれる
 簡単に言えば、参加者は「村人」側と「人狼」側にわかれ、人狼は村人に気づかれぬよう潜み続け、毎晩一人を食らう。村人は潜んでいる人狼を見つけ出し、全て処刑しきる。人狼を全て処刑すれば村人の勝利。村人の数を自分達と同じ数まで減らせば人狼の勝利、と言うルールだ
 細かい選択ルールやら追加役職やらもろもろある訳だが、簡単に言えばそんなところである
 村人側に要求されるのは推理力、人外側に要求されるのは偽り出し抜く力
 どうあがいても、頭を使うゲームである
 参加人数によってはガッツリと運の要素も絡んでくるが、この人数であれば推理力の方が優先される

「ルールは、だいたいこんなとこ。どう、できそう?」
「なんだったら、最初は観戦するっす?それで基本的な流れはわかると思うっすけど」
「いや、だいたいはわかったし、とりあえずやってみる。これ、多分経験した方が早そうだし」

 優と憐に、そう答える早渡
 そう、彼の巻によれば、恐らくこの遊戯、経験を摘んだほうが有利になりやすい
 大体のセオリーがわかってきた方が、推理がやりやすい為だ……もちろん、そのセオリー通りに動かない相手もいる為、油断はできないが

「坊主も参加するんだったら、12人村……狐も入るな」

 鬼灯のその言葉に、早渡は一瞬、反応しかける
 ……「狐」
 そう、今回、彼も参加するこの人狼と言うゲームの役職に狐……妖狐等と呼ばれる役職・陣営も存在するのだ
 当然、あの「狐」とは関わりがない。関わりはない、が、やはり「狐」と言う単語には、一瞬反応しかける
 早渡のそんな様子に「先生」がにこりと笑って提案する

「狐と言う名称に何か感じるのであれば、別の呼び方にするかい?ゲームによっては呼び名違うしね。ハムスター人間とk「狐でお願いします」おや、そうかい?」

 ハムスター人間は流石に嫌らしい
 冗談みたいな名称だが、ルールによっては「妖狐」のポジションを「ハムスター人間」と呼ぶのだ

「初心者がうっかり狐引き当てると厳しいかもしれませんね」
「そん時はそん時だろ。頑張れ、って事で」

 龍哉は、万が一早渡が狐の役職を引いてしまった場合を心配してくれているようだが、直斗はあまり気にしている様子はない
 「経験するのが一番」と言うスタンスなのだろう
 実際、人狼は「こう言うように動こう」と思っても、いざやってみると思った通りにいかない、と言う事が多々ある。まずは経験するのが一番なのだ。どのような役職であれ

「じゃ、カード配るぞ。配役は人狼二人、狂人一人。占い・霊能・狩人それぞれ一人ずつ。残りは全員村人。役職欠けはなし。素村の騙りは最終日以外禁止。リアル狂人行為禁止。晃とかなえは契約都市伝説から助言もらうのも禁止」

 役職が書かれたカードが配られていく
 自分の元に配られたカードを他の人に見せないように確認。自分の役職を把握し、ゲーム開始だ
 まずは「夜時間」と呼ばれる時間に、人狼は襲う相手を、村人サイドの特殊役職は能力を発動する相手を宣言する……のだが、基本、初日、人狼は襲う相手を選べない(初日は俗に「初日犠牲者」「身代わり君」等と呼ばれる者が犠牲となる事が決まっている、もしくは誰も襲われない為)。そこから、「狩人」と呼ばれる人狼の襲撃から毎晩一人だけ村人を守れる役職もまた、初日は能力を発動できない
 よって、初日に能力を発動できるのは「占い師」のみだ。村人一人を夜に占い、その人物が村人か人狼かを見抜くと言う、村人にとって非常に重要となる役職。「占い師」を引いた者は、GMに誰を占うかを指差して指示。GMは、その人物が「村人」であるか「人狼」であるかを「占い師」へと伝えた
 それが終わったら、次は人狼二人がそれぞれ、仲間を確認。行動方針は限られた時間内に筆談で行う
 ……なお、ネットのようなオンライン上ではなく対面式でゲームをやっている為、顔を上げる等の気配で誰が特殊役職を引いたかバレないよう、それぞれの座っている席は放していた。それでも気配を察知してしまうような者もこの場にはいる為、ポチが皆の足元をうろちょろして気をそらしている。ポチはそれくらいは指示されれば実行できる賢い子犬なのだ。疲れたら遠慮なく眠るのが欠点だが
 さて、それらの確認が終われば、まずは最初の「昼時間」が開始される

「……それじゃあ。夜が明ける。うさんくさい白衣が死体で発見された」

 人狼を見抜くゲームが、このようにGMの合図でスタートした

「占い師CO(カミングアウト)、占い結果、「先生」白!」
「俺が占い師だ!占った対象は「先生」、結果、村人!」

 昼時間開始と同時に、占い師が即座に結果を伝える
 これはよくある事だ
 一人しかいないはずの占い師が二人出るのも、人狼においてはよくある事だ
 ここまではいい。よくある事だから
 ただ

「あれ?」
「……初日、犠牲者なしだったはず」

 そう
 「昼時間」開始時、GMを担当している鬼灯はこう言った。「白衣がしたいで発見された」と
 事実、「先生」は死亡者席の方に移動して「解せぬ」と言う顔をしていた

 「初日犠牲者なし」と言うルールにしていた以上、初日は死者なしのはず
 それなのに、死者が出た
 ……この事実が示すことは、一つ

「…もしかして、「先生」、妖狐引いた?」

 神子がぼそり、そう口にする
 そう、今回のルールにて採用されていた第三勢力「妖狐」
 その能力は、人狼に襲われても死ぬ事がないと言うもの。ただし、占い師に占われてしまった場合、問答無用で死亡する。通称「呪殺」等と呼ばれるものだ
 そして、先程「占い師」を名乗った二人は、どちらが本物かはさておきどちらも「先生」を占ったと宣言
 ……すなわち

「……初日呪殺」

「え、それってありえるのか?」

 ぽそ、と呟いた晃の言葉に思わず問いかける早渡
 ありえる、と晃はそのまま頷いた

「実際、「先生」死亡者席の方に移動してるし……そういう事なんでしょうね」
「これで、占い師の結果が割れてりゃ、その場で偽物がわかったんだがな」

 優と遥の言葉が続く
 そう、先程占い師を名乗った二人は、どちらも「先生」を占ったと宣言したのだ
 「先生」が妖狐であり、かつ初日犠牲者なしのはずなのに死体になっている以上、占い師が「先生」を占ったのは確実
 ここで、本物ではない占い師が「先生」以外を占ったと宣言していれば、そちらは偽物だと確定されるのだ
 今回の場合、どちらも「先生」を占ったと宣言した為、偽物を見抜く判断材料にはならないが

「俺は、「先生」が敵サイドだったら厄介だと思って占ったけど」
「俺も。「先生」、こういうゲーム強そうだな、と」

 占い師を名乗ったのは、直斗と早渡
 それぞれの「先生」を占った理由はこの通りだ
 死亡者席の「先生」が二人の言い分を引いて「解せぬ」顔を続行している

「まぁ、妖狐がもういないってのは安心できていいっすね。おうどん(陽子陣営勝利)の心配しなくてすむっすから」

 どちらが真占いか、と言うことはさておき、妖狐陣営の勝利がなくなった事実を喜ぶ憐
 村人側としても人狼側としても、妖狐陣営勝利は悔しい事態なので、先に妖狐が始末できたのは嬉しい事なのだ。妖狐陣営からしてみれば悔しいだろうが

「とりあえず、白進行なんだし、霊能出てもいいな。霊能誰だ?」

 灰人が、「霊能」に名乗り出るように促した
 すると

「あ、霊能私」
「俺だ、霊能」

 神子と慶次の声が、被った
 両者とも、む、と言う表情で互いを見る

「占い二人に霊能二人……」
「これは、どちらかに狼がいますね」

 かなえの言葉に、龍哉がそう続けた
 妖狐がいない以上、役職を騙っているのは狂人と人狼しかいない
 占いか霊能の中に、人外が紛れ込んでいる、と言うことになる

「占い真狂の霊能真狼か……?」
「狂人潜伏でどっちも人狼の騙りとか」
「そんな大胆な戦法とってくる人狼いたら負けでいいわよ。狂人は人狼と相談できないんだし、まず、騙りで出てると見ていいでしょ」

 それぞれ、推理し、それを口に出す
 こうして、村人は隠れている人狼を見つけ出し、人狼は村人逹を巧みに混乱させて勝利を狙うのだ

「占いと霊能の真偽は一旦、置いておいた方がいいんじゃねぇのか?」
「そうっすね。今日はグレランにして、明日以降占いの真偽詰めていく感じにしたいっすね」

 占い師も霊能も、まだどちらが真であるか決めかねる場面
 そんな時、誰を吊り上げるべきかとなった場合、よくとられるのが「占いから白であると言われている者以外」…つまりはグレーの者から適当に投票すると言う手段。「グレラン」等と呼ばれるやり方だ
 ゲームが進んでいくとグレランと言う行為は危険だが、序盤はこうするのが一番だ

「グレランって、どういう基準で投票すればいいんだ?」

 グレーゾーンの中から誰か適当に、となっても、完全初心者の早渡はどう判断して投票すれば良いのかピンと来ない
 なので、正直に尋ねてみた
 そうすると

「直感でしょうか」

 と、答えたのが龍哉

「気に食わないやつ」

 と答えたのが遥

「発言省みて怪しいと思ったやつ」

 と、答えたのが慶次
 遥の回答は「ちょっと待て」と突っ込むものとしておいておくとして、ようは最初の投票なんて、よほど失言していない限りは勘だ
 他にもステルス吊りやら多弁吊りやら、人によっtグレランの投票基準は様々である。ひどい場合だと「隣だから」とかそんな理由で投票する者もいる

「と、言うか。「狩人」が誰かわからない以上、「狩人」吊る危険性あるんじゃ」
「その時はその時よ」

 そう、特殊役職の中、唯一、誰も名乗り出ていない「狩人」
 人狼の襲撃から誰か一人を護衛して護るこの役職は、通常、積極的に名乗り出る役職ではない
 正体がバレた瞬間、自らを護衛できない「狩人」はそのまま狼に喰われるパターンが多いからだ
 

「…さて、昼時間終了。投票だ」

 鬼灯がそう宣言する
 投票相手は紙に名前を書いて、GMに手渡す形で行った
 その結果、一日目、吊られたのは

「優だな」
「あらー……まぁ、仕方ないわね」

 票がバラけた中、唯一2票もらった優が脱落
 優はそのまま死亡者席に移動した
 そのまま、何やら「先生」とぼそぼそと話し出す。まだゲームを続けている面子には聞こえない程度の声量なので聞こえることはない

 昼時間、終了
 ーーー夜時間へと突入する
 「占い師」が占い先を指定。「狩人」が護衛先を指定。ついでに「狩人」であることの証明に使う「狩人日記」を書いておく
 そうしてから、人狼が襲撃先を指定。簡単な相談

 二度目の夜時間が終わり、二度目の昼時間へと突入する
 二度目の昼時間、昨晩の人狼の襲撃による死者は

「え?誰も死んでいない?」

 死亡者席へと移動した者は誰もいない
 人狼は「襲撃しない」と言う行動をとることはできない為、こうして死者がいない、と言うことは

「護衛成功の犠牲者なしか?」
「あぁ、そうだ」

 灰人の質問に、鬼灯がそう答えた
 そう、「狩人」の護衛先と人狼の襲撃先が一致。犠牲者が出なかったのだ
 村人は誰も犠牲とならなかった為、村人に有利な状況となる

「狩人誰かわからないけど、よくやった!占い結果、かなえ、人狼!」
「吊り数余裕ができるんだったか、護衛成功すると。えーと、占い先は荒神……あ、憐の方。占い結果村人」

 …………

「ん?」
「え、わ、私?」

 直斗が「人狼だ」と示した相手は、かなえ
 かなえはおたおたとした表情を浮かべる

「かなえ占った理由は、前の昼時間で発言少ない気がしたから。ステルスかと思って」
「……こっちは、結構喋ってるな、と思って占い先を決めた」

 直斗、早渡、それぞれ占った理由も述べる
 発言数が少ない、多い。どちらも疑われる事があるのだから、人狼というものは発言のさじ加減も難しいのだ

「占い先どっちも了解っすー。んー、かなっちが黒……」
「…ここは、かなえ吊って、霊能に結果見てもらうのが早いか?」

 憐、灰人、それぞれがそう口にした
 直斗と早渡、どちらが真の占いかはまだ判断しきれないが、かなえを吊って霊能に村人だったか人狼だったか判断してもらう、と言うことだ
 そうする事で。直斗が真であるかどうか、推理の材料となる

「と言うか、昨晩の結果は……」
「「優は村人」」
「だよな」

 なお、昨晩グレランで吊られた優の結果はこの通りである
 うんうん、と死亡者席に座る優が霊能二人が口にした結果に頷いている

「あー。でも。そうやって色を見る、となると。霊能が人狼に襲われるんじゃないか?」
「……それ、ない、と思う」

 早渡の懸念に、晃がぽそ、と反論した

「……この状況、人狼が霊能襲うの、危険。自白になりかねない」
「自白?」
「今、霊能は二人名乗り出てるでしょ?この状況で片方の霊能を食べちゃうと、生き残った方が人狼だって言ってるようなものになるのよ」

 神子の説明に、あぁ、と納得する早渡
 なるほど、霊能のどちらかは狂人、もしくは人狼

 本物の霊能を食べてしまうと、もう一方は「偽物」と言う事になる
 霊能の片方が狂人であったのだとしても、人狼がどちらかを襲って食ってしまえば疑いがむく可能性は否定できない
 ……もちろん、そうした「セオリー」を逆手に取った作戦もあるのだが

「ちなみに、かなえさん。実は狩人だった、と言うような宣言はありますか?」
「えっと、その……ない、です」

 龍哉に問われ、おろおろしながらかなえはそう答えた

「護衛成功で余裕あるし、今日はかなえ吊りで霊能に結果見てもらおうぜ」
「……まぁ、その手が一番だよな」

 他、特に誰か異論を唱えることもなく
 昼時間二回目。かなえ吊りに決定
 三回目の夜時間は、先程の寄る時間と同じ流れで進んでいき
 ……三回目の昼時間

「晃は死体で発見された」
「………むぅ」

 晃が人狼に襲撃され、死亡者席に移動
 みなの周りをうろちょろするのに疲れたのか、ポチもいつの間にか優の膝の上に移動していた
 「先生」がそんなポチに指先でちょっかいを出して、前足でべっち、と叩かれている

「「霊能結果、かなえは人狼!」」

 犠牲者発表の後、神子と慶次が同時に霊能結果を宣言
 結果は、どちらもかなえは人狼だった、と言うもの
 そして、占いの結果だが

「占い結果、早渡は村人!潜伏人狼は見つけたし、確実に人狼いそうなとこから占った。多分、早渡は狂人で霊能のどっちかだな」
「占い結果、獄門寺は村人……俺視点だとまだ狼見つけてなかったから、グレーから占ったんだが……」

 このようにわかれた
 霊能、占い、双方の結果を合わせて早渡が偽……とは、まだ言い切れない
 なにせ、占いのふりをした狂人が騙った結果が、たまたま人狼にヒット、ということもありえるからだ
 時折、本物の占い並の仕事をする狂人がいるから困る

 さて、この日は誰を吊るか、話し合いが始まるわけだが

「はーい。霊能ロラを提案するっすー」

 と、ぴ!と憐が宣言した
 霊能ロラ。霊能ローラー。すなわち、霊能を名乗る者を順番に全員吊るす。そういう戦法だ
 長所は、人外が隠れている場合確実に一人は吊れる事。欠点は、本物の霊能も吊ってしまう事

「え、どうして霊能を?人外が隠れてる可能性なら、占いでも……」
「霊能はー、もうお仕事終了してるっすからー」

 疑問を口にした早渡に、憐はへらりとした表情でそう答えた
 憐のその言葉に、慶次がはっとした表情になる

「あー……あぁ、そうか。確かに役割終了してるな。人狼を一人見つけ出してっから」

 霊能の能力は、吊った相手が村人であったか人狼であったかを見抜くこと
 かなえが人狼であった、と言う結果を見つけ出した霊能は、もう仕事が終わっているのだ
 なにせ、残る人狼はあと一人。その人狼を吊り上げた時点で村の勝利が確定し、ゲーム終了である

 もしも、かなえが村人だったのか狼だったのか、霊能二人の結果が割れていた場合はまた別の考え方をしなければいけないのだが、霊能二人の結果は「かなえは人狼」で同じだった

「役職欠けなしっすから、占いが真狼で霊能が狂狼って心配はないっすしね。遠慮なくローラーできるっす」
「役職欠けなしだったとしても、そんな配役の村あったら嫌だわ。ない訳じゃないけど」

 ……他、特に有益な意見は出ない
 早渡は何やら思考を巡らせ、何か言いたそうにしているがうまく案が出ないらしい
 神子は「霊能の仕事終わったし。それが妥当ね」と言う態度。慶次も同じく

 ………昼時間終了
 霊能のどちらを先に吊るか、と言う話にはならなかった為、それぞれが霊能どちらかに投票
 結果

「慶次吊り………村に人狼はいなくなった。村人側の勝利だ」
「あー……こっち先に吊られたか」

 仕方ねぇわ、と言う顔の慶次
 勝利した村人サイドの面子は、よっしゃあ!と嬉しそうだ

「負けたー……なるほど、こういう感じでやるのか」
「……狂人、そっちか」

 慶次の言葉に、ぱたん、と突っ伏した早渡がそうだよ、と答えた
 狂人は人狼陣営勝利が勝利条件の為、村人側が勝利した場合、生き残っていても敗北となるのだ

「お、お疲れ様……えっと、私達、最初に直斗君を襲撃したけど。狩人、誰だったの?」
「僕です。初日からずっと、直斗を護衛しておりました」

 かなえの問いには、龍哉がそう答えた
 どうぞ、と狩人日記を公開。確かに、直斗を連続護衛している

「え、こっち信じてもらえてなかった?」
「いえ、最初は占い師のどちらか、と思いまして。直斗の護衛が成功したので、そのまま続けました」

 護衛成功、と言うことは人外ではない事は確かと言う事になる(妖狐が生き残っていた場合は別だが)
 運良く最初の護衛が成功したのであれば、その相手を護り続けるのは狩人として間違っている戦法ではないのだ

「はい、皆お疲れ様であるよ。うーん、妖狐を引けたので思い切り好き勝手やろうと思っていたが初日呪殺とは。実に残念」
「初日に呪殺できてよかった」

 えー、と不満そうな「先生」だが、この人物が妖狐を引いて好き勝手動いた場合、村人側も人狼側も両方引っ掻き回すこと確実な為、初日に呪殺できてよかった、としか言いようがない
 そもそも、妖狐は村人人狼どちらも引っ掻き回すのが生き残るコツなので、「先生」のやり方が間違っている訳でもないが

「しゅうっち、初心者なのに狂人お疲れ様ー、っす。どうっす?人狼やってみた感想は」
「あ、えーっと……と、言うか。待って。「しゅうっち」って」
「しゅうっちの事っすよー?」

 へらん、といつもの調子の笑顔で早渡に話しかける憐
 ……微妙に、遥から睨むような視線が早渡に飛んでいるが、気づかないほうが幸せだろう

 遊びを終えた後の子供達の平和な光景に、大人二人は穏やかに、笑った






to be … ?

主に次世代ーズの人に焼き土下座
思ったよりも長くなっちまった人狼お遊びネタ、これで終了です
微妙にどころかがっつり後々の伏線ぶっこんだ前半と違って、今回の後半はそう言うの一切なしです

花子さんの人、お疲れ様です
そしてありがとうございます
うむ★ 中の人の心が薄暗い所為か、すべてが伏線にみえる!!(おーめーめーぐーるぐるー♪)
早渡は凶人だったか! 許せないね! 嘘吐き野郎は早く吊さなくっちゃ……
本当にありがとうございます。後ほど改めて色々確認させてください!

>>847
落ち着いて下さい天地さん!
たかだかお昼時の女子高生同士のお喋りですよ!
そうは言ってもこの時の天地さんのストレスは半端なもんじゃないんだろうなあ……

「組織」所属のサスガ少年「普通の高校生の雑談に、都市伝説だの狐だの変質者だのという単語は登場しない筈だが」

変態(仮)の早渡「○○! ○○! ○○○! ○○○○○○○○○○○○○○○○○!!(好きな言葉を入れよう!)
         クソッ! 俺がコロンブスだったら○○○○○○○○○○○○○!! ○みたいに! ○○○○○の○○○みたいにッ!!(好きな言葉を入れよう!)

人面犬の半井「こういうストレスってよ、まず頭皮にくるんだよなぁ……」

天地さん……無理しないでね……
 

>>855
>うむ★ 中の人の心が薄暗い所為か、すべてが伏線にみえる!!(おーめーめーぐーるぐるー♪)
大丈夫、伏線あるのは以前投稿した前半だけや

>早渡は凶人だったか! 許せないね! 嘘吐き野郎は早く吊さなくっちゃ……
直斗「狂人だってわかったら放置推奨」
 狂人もカウント的には村人だからね。破綻したりで狂人ってわかったら放置が一番

>そうは言ってもこの時の天地さんのストレスは半端なもんじゃないんだろうなあ……
「狐」絡み、赤マントの大増殖、盟主様絡み、ピエロ絡み、「もう面倒だし、学校街毎まとめて始末しようぜ」とか言い出した過激派への焼入れ
などなど、仕事ががっつりきてて天地じゃなくともかなり大変な時期ですね
天地のストレス爆発したらハッピートリガースイッチ入るぞ

Q ところで、「バビロンの大淫婦」絡みと言う単語が出ていませんでしたが
A 大したことない事案(と言うか、ほぼ「教会」の方の仕事)なのでそこは大して気にしてなかった。むしろ淫婦追ってきたジェルトヴァの方が頭痛案件

 
次世代ーズです
改めて読み直すと早渡が最初から飛ばしてて中の人も思わず(早渡の癖に生意気だぞ!)と思った次第です
良い案配です。花子さんの人ありがとう
狂人って人狼陣営だけど村人判定だったのね、思い切り思い違いをしていた……
それはそれとして早渡(狂人ではなく早渡本人)は吊さないとね
神子さんの洞察力の高さとか優さんのさり気ない気遣いとかも心に染み入る良い回でした

読解が正しければ人狼陣営はかなえちゃんと慶次さんに早渡か
意味深なものを感じるのは気のせいデスヨネ?

さあて、ここからどうしたものか
和やかムードの所へこれから東一葉がやってくる予定だがこの後の展開が全くみえない
軽ーい感じで流すか、それとも三年前の事件に話が及ぶか……
花子さんの人から何かご要望はあります?
 

>>857
>改めて読み直すと早渡が最初から飛ばしてて中の人も思わず(早渡の癖に生意気だぞ!)と思った次第です
人狼初心者で狂人引いてここまでできたらすごい方だと思うの
初心者って事で、わりと質問飛ばすポジにもさせてもらいました

>狂人って人狼陣営だけど村人判定だったのね、思い切り思い違いをしていた……
陣営的には人狼だけど、判定的には村人ですからね(占い師が占った結果も「村人」と出るので)
三人残ってて村人、狂人、人狼、だとまだ村人のほうが多いから勝負つかないですし(狂人が「自分狂人だよ!狼だれ?」って聞いたら人狼も村人も「自分が狼だ!」って言い出して狂人を混乱させるフラグ)

>それはそれとして早渡(狂人ではなく早渡本人)は吊さないとね
吊るさないであげてよぉ!

>意味深なものを感じるのは気のせいデスヨネ?
あ、特に意味ないです
配役は、「先生」は喋らせると面倒くさいから妖狐にして初日呪殺しようって以外は特に意味深なものなし

>意味深なものを感じるのは気のせいデスヨネ?
要望は特には
時期的に、以前早渡君に情報渡した時より情報増えてるのでそれ聞きたいなら聞いてもいいですし、三年前の事件に話が及べばそれにきちんと答えるですよ
もちろん、軽く流すでも問題ないです
東ちゃんから見ると、中学校からの仲良しグループが揃ってるの見ると「今も仲良しなんだな」とか「今でも目立ってるのかな」って感じるかも

Q ところで、ポチ、東ちゃんに唸りそうだけど大丈夫か?
A 憐か「先生」がポチにオヤツあげると速攻でそっちに気を引かれるので大丈夫だ問題ない

>>858
ありがとうございます
了解! 少々時間を頂こう

はじめに
大変お待たせしました……!
>>517の人とアクマの人(>>657)に感謝申し上げますorz

>>701で宣言した通り>>517の人に回答します
(二週間以上経過してしまった……)
では行きます




Q.沢渡君はホモ疑惑が浮上してますが結局男と女のどっちが好きなんですか?
 そろそろもげますか?
 (P.N.男子の金玉潰したい さんより)


A.

地の「皆さんこんばんは!」 ニコニコ
早渡(……どちらさま?)

地の「こんな形で登場するとは思っていませんでした!
    『次世代ーズ』の地の文の内、主に登場人物が潜り込んだ地の文以外の地の文を担当している地の文おじさんです
    本来、私は『おモらしぃズ(仮)』で満を持して登場する予定だったのだが、予定が爆発しちゃってね!
    急遽しゃしゃり出てくることになったの! あと、地の文おじさんと『次世代ーズ』の中の人はイコールじゃないからね!
    そこんとこ、ヨロシクね!」 ニコニコ

早渡(いや、あの……どちらさま?)

地の「さて! ありがたいことに『ラジオde都市伝説NEO』で取り上げて頂いたお便りについて
    便乗する形でこちらからも回答することにしました! いや、是が非でもさせて頂く所存でございます」 (真顔)

早渡「あの、ちょっといいですか?」

早渡「誰も突っ込まないから言うけど、『男子の金玉潰したい』さんって
    ペンネームの時点で不穏過ぎるよね……? めっちゃ怖いんだけど……」

地の「して
    早渡は男と女のどっちが好きなん?」

早渡「んん、……じゃあ、改めまして
    この場を借りてはっきり言っておきます
    俺は女の子の方が好きだよ!? 何だよホモ疑惑って!!
    浮上してないよ!? 何なの!? どういうこと!? 怒っていい!?」

地の「>>517の人!
    >>452-458のネタに言及して下さりありがとうございました!
    早渡は当時メンタルに余裕無かったみたいで自分を客観的に見れなかったようですね!」



Q.どういう女の子が好きですか? 好きなタイプは?


地の「ほらほらァ、話題を振られてるぞォ!?」
早渡「えっ、なに急に。勘弁してよ」



Q.今まで出会った女の子の中では誰が好きですか?


早渡「えっ? えっ?」

地の「君さ、なんか>>248で高奈クンの巨乳を前にして卑猥な葛藤してるよね?
    え? なに? 好きなの? おっぱいが。そこんとこどうなの? え?」

早渡「はい? えっ??」



Q.>>248で「お前が望みに望んだ巨乳女子」というワードが登場しますが、(色々)盛り上がりましたか?


早渡「ちょっと待ておい!! これもうそろそろセクハラだろ!?」
地の「盛り上がったって、気分の方? そーれーとーもー??」 (満面の笑顔)
早渡「答えられるかこんなの!! ノーコメント! ノーコメントでお願いします!!」
地の「すいませんね、早渡はシャイ(死語)なのでね。これくらいにしてあげようね」 デヘデヘ
 

 

地の「それはそれとして
    『ラジオde都市伝説NEO』の方でも既に取り上げて頂いているのだが
    そこで出た結論としては『基本女好きだが両刀の素質アリ』らしいけど、どう?」 (急に真面目な顔で)

早渡「えっ? 「どう?」ってなんですか?
    両刀って、いやあの。無いですからね?
    可愛ければ男でもOKみたいな趣味は俺には無いですからね!?

    だから、つまりですよ?

    >ではお答えしますけど、作中描写を見た感じ普通に女の子好きみたい

    真相はまさしくこれなんで、俺には変な趣味は無いんだよ本当に!!

    なので

    >可愛い男の子だったら意外にコロッといくんじゃないかしら

    こっちは無いですから! マジでこれっぽっちの可能性も無いですから!!」



地の「……えー、本人はこう言ってるけど
    これ以上の真相は今後の『次世代ーズ』本編の展開をお楽しみに! ということで! アクマの人さん! ありがとう!」 (笑顔)

早渡(この怪しいオッサン、めっちゃ悪意に満ちた顔してんだが、何なの……)



Q.それで、そろそろ早渡はもげますか?


早渡「もげる、って何ですか……?」

地の「結論から申し上げますと、もげます」

早渡「はい?」

地の「もげろ! 的な意味合いで、彼はもげます
    当分先の話だし、そのとき、彼の魂が救済されるかは分からん。が、とにかくもげます!
    お約束しましょう! 絶対にもぎ取る。 『次世代ーズ』の全身全霊を掛けて殺ります!!」 (しっこくの意志で成し遂げる)

早渡「あの、えっ?」

地の「さーらーにー!
    今後の展開で早渡は色々もげるかもなので
    楽しみにしていてくれよな!! (ピンクか赤的な意味で)」

早渡「えっ?」

地の「実際に時間軸が最も新しいエピソードでは、早渡は手首からあぼーん(婉曲表現)してるので
    まあ彼は頑張り屋ですからね! もっともっと頑張ってもらわないとね!!」

早渡(もげるって何だ……? 何がもげるんだ……? ムスコか? 俺のムスコなのか!?)


地の「ではでは! 今晩はこの辺で! グッバイ!!」

早渡「あ、お疲れ様でした……」

早渡(何だったの本当に……)






□□■






改めまして、>>517の人とアクマの人に感謝申し上げますorz
 


思ったよりピエロ書くのめんどくさいな
ピエロのテンションあげようとするとこっちのテンション下がる
なにこの等価交換


まぁ変態ピエロの台詞消してそれなりの最後を与えればいいか

「どうもこんにちは、黄昏裂邪です
 ニャル編とかやってて忙しいはずなんだけど時間戻して2017年3月24日ですわ」

「…まさかと思うが明日の話か?」

「そうなんですよ明日なんですよ
 ニャル編で遊戯王の世界とか出しちゃってるし、てかそれ以前から皆さんご存知でしょうがね
 作者の馬鹿が遊戯王大好きなんですよ、俺等もやってますがね
 で、明日2017年3月25日ってのが記念すべき『マスタールール4』の施行日なんですわ
 という訳でちょっと休憩がてらに日常回かっこ笑いかっことじ、というわけで
 題して『れっきゅんと学ぼう!リンク召喚ってなんやねん!?』!!」

(何でこいつ変な喋り方してんだ?)

「あれでござんしょ? リンクなんとかが増えるってぇ話でござんしたね?」

「そうそう、初代からいる通常、効果、融合、儀式モンスター、
 加えて時代毎に追加されたシンクロ(以下“S”)、エクシーズ(以下“X”)、ペンデュラム(以下“P”)モンスター
 そして今回満を持して登場する、その名も『リンクモンスター』!」

「同時期追加、新種族、『サイバース』、謎、であります」

「色が儀式モンスターと被っちゃってるのが残念ですよねー」

「もうちょっと捻って欲しかったよな
 さて、そのリンクモンスターとは何ぞや?と説明する前に
 解説すべきは『マスタールール4』というルールそのもの
 一番大きな変更として、プレイフィールドが大きく変わった」

「デッキ、EXデッキ、墓地、フィールドカードゾーンは変更なし、だが…
 モンスターゾーンが名称を『メインモンスターゾーン』に変更
 更にフィールドの両端にあったPカードゾーンが魔法&罠ゾーンの両端と統合
 そして、両者のメインモンスターゾーンの間に、新たに『EXモンスターゾーン』が設置された」

「えくすとらもんすたー? 融合とかシンクロとかか?」

「その通り、こっからが大事な話だ
 今回からEXデッキから特殊召喚されるモンスター達、
 即ち融合モンスターSモンスターXモンスター今回のリンクモンスター、
 そしてフィールドから離れてEXデッキに加わったPモンスター、
 これらは全てこの『EXモンスターゾーン』にしか特殊召喚できません」

「………は?」

「Pモンスターを5体同時にP召喚だとか、複数のモンスターで連続X召喚だとか、
 相手のフィールドも相手の墓地さえも利用して連続融合召喚だとか
 SチューナーとSモンスター2体でリミットオーバーアクセンシンクロォ!!だとか、
 今まで俺達やってきた色んなプレイングが出来なくなったんだ
 一 切 で き な く な っ た ん だ ! ! 」

「な、なんだってー!!??」

「理解不能理解不能理解不能理解不能」

「あ、ビオ君が壊れた」

「そりゃかつての『クリフォート』、今の『セフィラ』もとんでもないデッキでござんしたし」

「てかそりゃねぇだろ!? 俺様の『シューティング・スター・ドラゴン』は!?
 『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』なんてまだ手に入れたばっかだぞ!?」

「シンクロは大打撃だな」

「大丈夫ですよ、頑張れば出せますって」

「テメェ等やけに冷静だな!?」

「えーだって儀式は関係ありませんし
 寧ろEXデッキのモンスターって『影霊衣』の餌食ですしー……そもそもただの生贄ですし?」

「エクシーズ型の『幻影騎士団』も影響はあるが…私は基本ランクアップ中心だからな」

「墓地からの特殊召喚が制限された訳じゃありゃせんし、『インフェルノイド』は大絶賛炎上中でい!!」

「『召喚獣』としては、『エリュシオン』がフィールド融合できなくなったのが痛いかな?
 『召喚魔術』があればクリアできるけどね」

「大ダメージ俺様とビオだけか!?」

「ぶっちゃけ俺もだよ…『ズァーク』デッキ、割と楽しかったのに元の家臣従騎三幻神に戻したわ
 だが安心しろ! ミナワも言ってたけど頑張ればできるようになるんだ!」

「何だと!? それを先に教えろよ!」

「へるぷ、みー、であります」

(ポーカーフェイスなのにビオさんが焦ってるのが分かっちゃうのが怖いです)

「というわけでお待たせしました、今回の主役『リンクモンスター』です!
 カード枠は儀式と似たような青だが、機械的な模様が描かれててどっちかってぇと背景に近い
 その点は宇宙みたいなカード枠になってるXモンスターと共通するな」

「『リンクモンスター』の特徴は主に4つ
 レベルがランクが存在せず、代わりに『LINK-』という数字の存在
 カードに『リンクマーカー』と呼ばれる矢印の存在
 攻撃力のみ持っており、守備力を持っていない…故に守備表示が存在しない」

「お? 『月の書』で裏守備表示にもならないんで?」

「はい、因みに唯一“裏側攻撃表示”に出来た『闇の訪れ』も此度の裁定で裏守備表示に変更になっちゃって、
 遠回しに『月の書』の下位互換にされたという可哀そうな事件もありました」

「『リンク召喚』の方法は? シンクロ等と変わりはないのかね?」

「簡単に言えばレベルに縛りがなくなったシンクロ+エクシーズ、といったところか
 『リンクモンスターカード』に記載された素材を、そのモンスターの『LINK-』の数だけ墓地に送ることで『リンク召喚』は出来上がる
 例えば…『デコード・トーカー』というリンクモンスターは、
 効果モンスター2体以上を必要とするLINK-3のモンスター
 これは効果モンスター3体を墓地に送ればいい
 この場合、シンクロと同じで『マクロコスモス』等があれば、素材は除外されるがリンク召喚は行える」

「ふむ、効果モンスター2体“以上”? 妙な書き方だね」

「『LINK-』の数だけ必要なら、3体って書きやすよね?」

「『リンクモンスター』は“リンク”し続けるんだ
 『LINK-』は自身の素材の数だけでなく、“自身を素材とした場合に扱う数”も意味する
 『ハニーボット』というLINK-2の効果モンスターを素材とすれば、
 効果モンスター2体だけで『デコード・トーカー』がリンク召喚できるようになる」

「へぇ、そりゃ面白ぇな」

「さあてこっからだぞ
 こいつらの『リンクマーカー』は、『リンクモンスター』の『LINK-』の数だけ存在する
 例えば『デコード・トーカー』は上・右下・左下の、3つの『リンクマーカー』を持つ
 この『リンクマーカー』の指し示す方向に、EXデッキからモンスターを特殊召喚できるんだ!」

「な、何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

「……『リンクモンスター』、追加召喚、展開範囲、増加」

「そう、『リンクマーカー』を繋げていけば、Sモンスターが3体必要な『シューティング・クェーサー・ドラゴン』や、
 Xモンスターが2体以上必要な『No.93 希望皇ホープ・カイザー』も召喚可能
 5体並べるのはもはや不可能だが、Pモンスター大量展開も狙えるぞ!」

「万歳、であります」

「よし、希望が見えてきたぜ! 風属性のリンクモンスターとっと出せぇ!!」

「んー、でも既存のテーマに全く関係ないカードを入れなくちゃいけないのって嫌じゃないですか?」

「そうだな。かつて猛威を振るった『クリフォート』も、
 Pカードを破壊し続けなければ殆どリンク召喚できないだろう」

「ここでまさかのリンクペンデュラムモンスターが出たら俺はコナミに敬意を表するね
 『アポクリフォート・トフ・ボフ・ハセク』、ボスキャラっぽい!」

「…マスターのジョークはさておき
 『BF』のような大量展開からの連続S召喚を目的としたデッキは廃るだろうね」

「逆に、融合や儀式がほんの少しでも日が照るんじゃありゃせんかねぇ」

「てか狙いはそこだと思うよ
 皆忘れてるだろうけど、昔の遊戯王はこんなんじゃなかった
 多くのカードを犠牲にして、やっと召喚した『F・G・D』や『青眼の究極竜』、『神炎皇ウリア』
 ターンと墓地を積み重ねた時の勝利こそが至高な訳よ
 シンクロが登場してからは如何に場にモンスターを並べて、如何に早く終わらせるか
 決闘の高速化が始まった瞬間ですわ
 エクシーズからのペンデュラムなんてマジで末期でしたよ
 勝負を決めるカード、つまり“切り札”ってのはたった1枚で良いんだよ
 どんなに手間をかけても、それを召喚することに意味がある
 リンク召喚ってのは、確かに勝利の瞬間からは遠ざかるが、
 それはある意味、勝利という楽しみの瞬間までを、出来るだけ先延ばしにする為の、
 この『遊戯王OCG』というゲームをじっくり味わう為の手段だったのではないかと
 俺はそう思うわけですよ」

「流石に20年近くやってウン十万近く使ってきた人のいうことはちょっとやばいですね」

「あのねミナワちゃん、中の人事情をさらっというのやめようか」

「てへ♪」

「そういえば……EXモンスターゾーンは2つあるそうだが、これは両方使えるのかね?」

「本来は両プレイヤーどちらか一つを使用できるのだが
 『エクストラリンク』と言って、リンクマーカーを繋げていけば両方のEXモンスターゾーンを使用できるようになる
 …まあ、実際に行うとすれば最低3枚のリンクモンスターが必要で、手間はかかるが」

「…ハッキング、であります」

「あ、ビオにスイッチ入ったぞ」

「リンクモンスター中心デッキ、面白そうでござんすねぇ」

「我々も、今の内に戦術を改めなければならないな
 今後を如何に乗り切るか、リンクモンスターはどのくらい必要なのか」

「練習相手はお任せください! 皆さん凍てつかせちゃいます♪」

「いやいや、あっしが焼き尽くしちまっても良いですかい?」

「鬼かテメェ等は!」

「ところでビオ君、本当にリンクデッキ作る気かい?」

「サイバースガジェットサイバースガジェットサイバースガジェットサイクロンハーピィの羽根箒神の宣告」

「何か早速レシピ考えてるなー
 ぶっちゃけ俺も『ズァーク』潰しちゃったけど、今後の『覇王眷竜』の出方次第で作り直す予定
 勿論『リンク』も交えてね
 最後になったけど、ニャル編のナユタの話はあくまで“2015年3月”の話だから、
 明日以降書いたとしてもマスタールール“3”やってるからな!
 という訳で、決闘はルールを守って楽しくやろうぜ! またな!」


   ...終われ

という訳で明日はカードショップに開店直後に突撃しなきゃならん
ダメなんだ……リンクがなきゃダメなんだ…(病気

人狼、気になるんだけどやっぱ多人数だよなぁ
花子さんとかの人みたく何らかのコミュニティないとリアルじゃ厳しそう

なんか色々やってて次の話まだ書けてないやもうちょい待ってな!な俺です
次世代ーズの人とシャドーマンの人乙なのですよ

早渡君へ
そういう事言ってても「こんな可愛い子が女の子のはずがない」みたいにクラスチェンジする人もいない訳じゃないから油断は禁物な!
とりあえず可愛い男の子系キャラ出す事あったら積極的に早渡君と接触させよう

遊戯王はがっつりルール変わるらしいですね
手を出してないんでピンとこなくて申し訳ないが、環境ガラッと変わるってなると大変だろうなぁ


>>862
ここに「ダメだ、俺は純粋だからピエロの変態敵セリフが書けぬ………っならば、喋らせる暇もなく始末してしまえばいいじゃない」ってなった俺がいます

>>866
>人狼、気になるんだけどやっぱ多人数だよなぁ
んーと、俺、「月下人狼」と「るる鯖」で人狼やった事あるのですが、後者ですと最低人数3人から出来ますね(実体験)
「月下人狼」だと、最低人数五人かな(ただし、通常配役ではなく「闇鍋」と言う月下特有特殊配役)
もしも人狼やりたいなら一応、月下かるる鯖でなら村立てられなくもない。月下では村たてた事あるがるる鯖では建てた事ないんで建て方とか勉強してからになるけど
るる鯖とか、「初心者歓迎」の野良村もあるので、ルールしっかり把握してからそういうトコに飛び込むって手もある。親切な人が多い村かどうかはその時の運によるが

やる気ない黒服の人乙でーす
名前メーカーとかは名前思い追加無い時に実に便利なのだ
グッパイピエロ逹。サービスしてもらえてよかったね!

さて、もうちょいでこっちも何やら投下するね

 ーーーーちゃぽんっ

「まぁ、それぞれ役割というものが存在する故。どの問題も、おそらくは適任者が片付けると思うのだけれどね」

 ちゃぽんっ。ちゃぷんっ

 除染作業を終えた後、「先生」は一人ふらふらと学校街の中を歩き回っていた
 川沿いをゆっくりと、白衣をひらめかせながら、携帯で誰かと会話しながら歩き続ける

「その点で言えば、「狐」関連は完全に適任者逹がいつでも動けるようにしている故。「狐」連中はもはや詰みだ。そもそも、この学校町で何かしら厄介事を越している時点で詰みだと言う事はさておいてね」

 ちゃぽ、ちゃぽぽんっ
 ゆっくり、ゆっくりと
 川沿いを歩きながら、「先生」は何やらぽいぽい、と川に投げ込んでいく
 投げ込まれたそれらは、川に沈むことなくぷかぷか、ぷかぷかと浮かんでいた

「ピエロ連中関連も、「怪奇同盟」のトップの暴走案件も。「赤マント」大量発生から連なる子供の失踪事件も………どれも、場所がこの学校町であると言う時点で、私から見ればどうしようもなく、黒幕にとっては詰んでいる事態としか思えんがね。この街で何か起こそう等と、正気の沙汰ではない。自殺願望者か愚か者でもなければやらんわ。発狂中だった私とて、学校街は避けただろう」

 ちゃぷん………っちゃぽん
 「先生」が川に投げ込んでいるのは、瓢箪だった
 中身の入っていない、蓋がされた瓢箪が。ぽいぽい、ぽいぽいと川へと放り込まれる
 ぷかぷか、ゆらゆら
 沈むことなく瓢箪は浮かび、ただ流されていく
 前方から何やら騒がしい声が聞こえてきているのだが、それを気に留めた様子もなく、「先生」はその作業を続け、携帯での会話も続けている
 当然、まるで無警戒に、不用心に、喋りながら歩いているようにしか見えない「先生」にピエロ逹は気づく
 悪趣味に笑いながら、そちらへと火を向けようと

「無茶言わんでくれ。私は非戦闘員だぞ?」

 …ピエロ逹の様子が、おかしくなる
 何やら苦しげに、酸素を求めるように口をぱくぱくとさせながら倒れ始めた
 バチバチと、「先生」の周囲に赤黒い光がのぼり、ピエロ逹の周囲の空気へとちょっかいをだす
 ピエロ逹の周辺だけ、酸素を延々と水素とくっつけて水へと錬成し、ピエロ逹へと呼吸を許さない
 ……いや、一人だけ、かろうじて死なない程度には呼吸を許されていた
 ギリギリラインの酸素濃度を維持された状態で、ピエロは倒れ込む

「私は、あえて言うなら「保険」のようなものだ。物語というものにおける問題の対処法を作者が考えついていなかった時、「こいつならどうにかできるだろう」と言うように用意されている手段の一つ。私の立場はそのようなものにすぎん。本来の正しい「主役」が存在するのであれば、私の出番等、モブも同然でしかないのだよ」

 ちゃぽんっ
 瓢箪を投げ込みながら、「先生」はかろうじて呼吸を許していたピエロへと近づき、その首根っこを掴んだ
 その細身からは信じられない力で、ずるずると路地裏へと引きずり込んでいく

「故に。今現在も、私はその「保険」としての役割をはたすべく、「保険」となりえる行動をとっているつもりだ。まぁ、私でも「保険」にならんようだったら、もういっそ「レジスタンス」から「奇跡」か「ピーターパン」でも呼んで…………あ、駄目?」

 ぺいっ
 路地裏の奥にピエロを投げ込みながら、携帯の向こう側の人物の言葉に「先生」は面白がっているように笑う

「ですよねー。知ってる。彼らを呼んだら、それこそ「物語」は台無しであろうて。「デウス・エクス・マキナ」契約者や概念殺しができるような者呼んだらそうなる。が、最終手段は本当、それだぞ?それぞれの「主役」に頑張ってもらうしかあるまいて。誰がそれかは知らんが」

 す、と「先生」は路地裏に座り込む
 ぺふ、とピエロの頭を自分の膝の上に載せると、白衣の内側からメスを取り出した
 ……ばちばちと、「先生」から登る赤黒い光がピエロを包み込む

「あ、それじゃあ。今からちょっとピエロの頭の中覗くな。情報手に入り次第、リアルタイムで情報を送る故、すまんがそのまま繋いでおいてくれ」

 いつもとおりの軽い口調でそう言いながら
 さっくし、「先生」はピエロの頭へとメスをいれはじめた



.




 バイクの轟音が鳴り響く
 ひかりをサイドカーに載せたまま、「ライダー」は東区に向かってバイクを走らせていた
 彼女の身内が東区にいるようなので、そちらへと送ろうとしているのだ
 途中、ピエロの石像の間をくぐり抜けながら、スピードを落とした様子はない

「さっきから、時々空がピカピカ光ってっし、派手にやってんなぁ」

 半ば他人事のようにそう言いながら、「ライダー」は目的地へと向かう
 サイドカーに乗るひかりは、先程通り過ぎたピエロ逹の石像を見て……そうして、「ライダー」を見上げた

「あのね、おじちゃま……」
「あ、俺、ガールから見るとおじさん認定……まぁいいや。なんだ?」
「うん。えっとね。おじちゃまは、もしかして…」

 ……何か、ひかりが言いかけて
 しかし、「ライダー」はそっと、それを制した

「やめとけ、ガール。契約都市伝説の力、今はヘタに使うな。あの場に居た、なんかロリコンの気配を感じなくもない奴。あいつの能力がガールの能力に思い切りカウンターかましてきそうな予感がする」
「おじちゃまは、それを感じ取っているのは能力じゃないの?」
「俺のは百%ただの直感だから、感知系やら何やらへのカウンターは刺さらないのさ」

 悪戯っぽく笑い、そう答える「ライダー」
 事実、彼の契約都市伝説は感知系の能力はない
 本当に、直感で言っているのだ
 と、言うか、この男。そもそも直感頼りに動くことが多い
 それでなんとかなっているのだから、本能に基づいた直感がかなり強いのだろう

「それと……俺ん事も、あんま能力で探ったりしないほうがいいぜ。俺は別に構わないが、怖いおじさんとかが怒りに来るかもしれないからな」
「「レジスタンス」だから?」
「そう。内緒の事が一杯だからな」

 少し、バイクのスピードが上がる

「少なくとも、今回この街で起きている多々の厄介事。その全てに「レジスタンス」は反逆する。そう覚えておいてくれりゃいい」

 敵ではないのだ、と
 それだけは明確にしたいと言うようにそう告げながら、「ライダー」は夜の街にバイクを走らせ続けた



「………はい、駄目ー。ろくな情報ないね!そっちでも、情報引っ張り出そうと思わんほうが良いだろう。時間の無駄だ」

 丁寧にピエロの脳みそを開き、ぐちゅぐちゅと引っ掻き回して探っていた「先生」だったが、お手上げというように携帯で話している相手にそう告げた
 脳を開かれた状態になりながらも、ピエロは命をつながれていた
 しかし、感じているはずの痛みを喜んでいる様子もない
 ……何も、感じなくされていた
 全ての感覚を、先に殺されている
 指一本動かせず、ただか細く呼吸した植物人間のような状態だ

「歩きまわってる最中、他のピエロと明らかに違う動きをしている者がいくつかいた。恐らく「通り悪魔」の御仁辺りが、本拠地に戻ってそっちに放火するよう唆したのであろ。あの御仁、「悪魔の囁き」から教わって割合細かくその手の唆しできたはずであるし」

 メスについた血やら何やらを拭い、白衣の内側にしまい込む
 そうしてから、「先生」はそっと、脳を開いたピエロを撫でた
 撫でる手のひらからばちばちと赤黒い光が生まれ、ピエロの体はぐじゅぐじゅに溶けていく

「ピエロの情報探るなら、そうやって本拠地に向かっているピエロの後をそっとつけていって、本拠地突き止めるほうが早いやかもしれんね。ただ、危険度は洒落にならんと思う故、実行する場合は計画的にね」

 ぐじゅぐじゅ、ぐじゅぐじゅと
 ピエロを溶かしきり、さて、と「先生」は立ち上がる

「では、私は引き続き、私がやるべき作業へと戻るよ。また何かあったら連絡してくれ」

 誰と連絡しあっていたのやら、そのように会話を打ち切ると
 「先生」は再び川沿いを歩きはじめ、川へと空の瓢箪投げ込んでいく

「……ひたえの瓢の、南風ふ吹けば……」

 ゆるゆると、その口から歌のような、呪文のような言葉が漏れて
 ちゃぷりっ、川に浮かぶ瓢箪は、決して沈むことなくぷかぷか、浮かび続けていた







to be … ?

主に次世代の人とアクマの人への焼き土下座完了
「先生」がピエロの脳みそぐちゅぐちゅして「あ、ろくに情報ないわー」と判断。それを何処かへと伝えました
この情報は「組織」「首塚」「教会」「獄門寺組」「マッドガッサー一味」「レジスタンス」へと伝わります。恐らくは「怪奇同盟」へも「組織」から伝わるかと
ついでに、「先生」が、学校町内の川へと、中身の入っていない瓢箪をぽいぽいと投げ入れ始めました
……どうやら、日本の古い呪術的なものを行っているようです
詳しくは後で避難所の都市伝説豆知識とかのスレに書けたらいいな

 
やる気のない黒服の人、お疲れ様です
Yナンバーの二人(人....?)が対「ピエロ」に参戦か
非常に良いと思います! 「ピエロ」の言動がそれっぽい
これは時間軸上だと日付変わる頃には鎮静化に向かってるかな?

あと>>862についてですが
いっそのこと、「ピエロ」のテンションを下げて
やる気のない黒服側のテンションを上げてみるのはどうでしょうか!?
ただテンション上げるとやの人の空気感にマッチするかどうかは分からない……

花子さんの人もお疲れ様です
「先生」、とうとう「ピエロ」を開頭したのか
以前話してた瓢の呪術も投入と
「ピエロ」の方はまだ碌な情報は出ないでしょうが、日付が変わると「きつねばんざい」とか
「どくたーへーすてぃんぐ」とか思わせぶりな情報の断片が出るかもしれない

書いてて気づいて今更ですが
この時間「ピエロ」が暴れているということは
相対的に「狐」配下への警戒が薄くなって、却って行動しやすくなる……?

色々と「狐」本戦当日の夕方から物々しいことになりそうなので、先に土下座致します

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131646.jpg
(素材:「いらすとや」(www.irasutoya.com)さん)




シャドーマンの人もお疲れ様です
新登場というリンクモンスターとYouTubeの広告でよく見るデュエルリンクスはなんか関連性が……!?
と調べてみたらあんまり関係はなかったみたいだ

ひとまず公式サイトの解説を見に行きました
現行ルールをあまり知らない次世代ーズでも分かった気になれる、非常に理解しやすい説明だった
(注意しよう! 「分かった気になれる」と「理解した」は意味がかなり違うんだ!!)
ただ今回のルール適用で各所では阿鼻叫喚の騒ぎのようですね
リンクモンスターに守備表示存在しないって、つまりこれは攻撃全振りなのか

もう一度シャドーマンの人の話読み返してマーカーの存在に気付いた
なんということだ……
 

やる気のない黒服の人乙ですー
敵の情報を集めるのも大変なのだ

>>880
(鬼灯が「魔が差す」発動させたピエロを「先生」が爆弾にすると言う案をギリギリでボツったのがこちらになります)

>以前話してた瓢の呪術も投入と
これに関してですが、正直、「先生」が盟主様の暴走に水神の類が関わっていると確信してる、って事なんですよね
以前ぶん投げた人狼で遊ぼうねたの前編(みんなが集まってきた方)で診療所の休憩室に日本書紀とかがあったのは、瓢の呪術について調べていたせいなのでしょう
………じゃあ、どうして「先生」は、水神が絡んでいるってわかったのでしょう?
「先生」は日本の古い神話とか民話の類には詳しくないはずです。果たして、知る機会はあったのでしょうか?どうやって知ったのでしょう?

>「ピエロ」の方はまだ碌な情報は出ないでしょうが、日付が変わると「きつねばんざい」とか
狐が「何こいつら知らない」って顔しない事を信じて…!

>「どくたーへーすてぃんぐ」とか思わせぶりな情報の断片が出るかもしれない
(あ、やべぇ。こっちは俺がわからない可能性があるぞ)

>相対的に「狐」配下への警戒が薄くなって、却って行動しやすくなる……?
(視線をそらす)

>色々と「狐」本戦当日の夕方から物々しいことになりそうなので、先に土下座致します
んー、今構想してっけど、「狐」本戦当日も夕暮れが夜へと移り変わる頃になりそうかな
そうじゃないと、流石に遥が飛んだら目立ちそうだし

>>826
おお……シャドーマンの人、ありがとう……
wikiで確認したところ「ハンニバル・ヘースティングス」と「ヘースティング」で表記ゆれがありましたが
多分、「ヘースティングス」が正しいのではないかな(ですよね?)
それでも「ピエロ」は「どくたーへーすてぃんぐ」か、単に「博士」と呼びます


>>880
>>いっそのこと、「ピエロ」のテンションを下げて
>>やる気のない黒服側のテンションを上げてみるのはどうでしょうか!?

ヤエル「アッハハハハ! もっと鳴きなさい! 家畜は家畜らしく!! アッハハハハハハハハ!!」 バシーン パパパパシーン
ピエロず「ブヒィィィィ!!!」

こうですか
それともユリのテンション上げて
静かにウフフフって笑いながら素手で内臓掴んだりかき混ぜたりして情報聞き出す方向性?

>>「どくたーへーすてぃんぐ」とか思わせぶりな情報の断片が出るかもしれない

組織の現ナンバーズとか主要人物言わないだけましかしら


>>881
>>敵の情報を集めるのも大変なのだ

上位No.のサキュバスが、精神も身体も壊れるまで魅了かけても、欠片も情報が出てこない
こんだけ能力使っても組織への報告で伝えることが、ピエロの行動とか性格くらいしかないっていう
さらにヤエルにからかわれてむくれたユリが人狩り行こうぜって言っても仕方無い


まぁ雑魚が情報を持ってないっていう情報のほうが重要なのかも知れんけど



話の後はとりあえず魅了でピエロの意識がこっち向くので、
広範囲にピエロ用に調整した魅了(他の人に影響が無いとは言ってない)流しながら二人で散歩してるんじゃないすかね

しばらく顔を出せなかったのでザッと関係ありそうな部分を読んで一言

水神様詰んだんじゃなかろうか(今まで詰んでいなかったとは言っていない)

無名の神に過剰戦力すぎるんだよなぁ……
これはチラ裏で書いた「蛇神(アステカの姿)」も視野に入れるべき……?
アクマ「それやると本当に収集がつかないと思うんだけど」

>>892
>無名の神に過剰戦力すぎるんだよなぁ……
過剰戦力……?(こっちで現状、水神が原因と気づいている事が明確になっていてかつ対策をやっている二人を見て)

ちなみに、「先生」が瓢の呪術の一環で川にぽいぽいと空の瓢箪投げ入れてるけど、なにせ日本の呪術は本格的に学んだ訳ではなく、戦技披露会の後辺りから突貫で学んで身につけた知識です
急ごしらえのそれが水神にどれだけ影響を及ぼせるかは、アクマの人様のご判断しだいかと

なお、「狐」最終決戦当日、水神の方に動きが見え、かつ、それに対して有効的な手を打てているものがいないと判断した場合、「先生」が水神への嫌がらせ第二弾を開始します

 


●前回
>>844-845
※この話は作中時間軸で【9月】の出来事です



 

 



「離してぇぇぇーっっ!!」


 朝から降り続けた雨は夕方に入る前に止んだが
 今も空は曇ったままで、地面は未だに濡れたままだ

 そして夕方を迎えたこの日
 学校町、東区に位置する小さな公園で
 マジカル☆ソレイユは逆さまに吊るされていた


「下ろしなさいったらぁぁぁーっ!」
「だめクマ。ぜーったいに離さないクマ」


 幸か不幸か公園には彼女ら以外に人の気配は無い
 つまりソレイユの醜態を目撃する者がこの場に居ないのであり
 それは同時に彼女の窮地を助ける者が存在しないことを意味していた

 木の陰に吊り下げられたソレイユを見上げるのは
 愛らしいデザインで、意外とサイズの大きなテディベアだ

 そして先に断っておくが
 このクマのぬいぐるみこそソレイユを逆さ吊りにした実行犯である!


「こんなエッチな格好の女の子を放っとくほどクマも甲斐性無しじゃないクマ
 今からヌルヌルのベチョベチョにしてやるクマ。泣いても絶対に逃がさないクマー」

「いやぁぁぁぁぁー、離せバカぁぁぁぁぁぁぁぁーっっ!!」

「うそクマ! 喜んでるクマ! ホントは襲われたかったんだクマ!
 ドスケベな格好で日のある内からお散歩だなんて
 ヘンタイ以外の何者でもないクマ!!」

「わっ、私は変態なんかじゃないっ! 違うわよぉっ!!」


 吊るされながらソレイユはそう喚く
 足首に絡みついた毛のような物を振り解こうと
 必死に身を捩っている所為なのか、彼女の顔は真っ赤だ

 丁度彼女の吊り下げられている真下には
 先程まで彼女が身に付けていた羽織りものが
 そして地面に落ちた羽織りものの上に彼女の杖が乗っていた
 両方とも彼女が吊り上げられたときに取り落としたものなのは言うまでも無い

 ソレイユは今、スクール水着のような露出の高い格好を
 というよりもスクール水着そのものに身を包み
 白い長手袋と膝が隠れる程度の白のソックスを着用していた


 果たして彼女はこのような格好で恥ずかしくないのだろうか?
 顔が真っ赤なのは必死に喚いたためだけの理由からなのだろうか?
 かなりの声量で喚いているが人目を引かないか気にならないのだろうか?

 木陰に吊るされた少女、マジカル☆ソレイユ
 彼女自身についても、彼女の状況についても、謎は尽きない


「クマーん♥ 格好がドスケベなら中身もきっとドスケベなはずだクマー♥」


 テディベアは気味の悪い声色で身をくねらせている
 一体、如何にしてソレイユを拘束し、吊り下げたのだろうか?
 そもそもクマのぬいぐるみが人語を話すとはどういうことなのか?

 先程から卑猥な言動を止めることの無いテディベア
 これについても、謎は尽きない





 

 



「うっ、くっ! こんな変態クマなんかにぃぃっ……!」


 ソレイユは拘束から脱しようと必死に体を捩っているが
 足首に絡みついた物はびくともせず、彼女の体が大きく揺れるだけだ


「クマぁ♥ これまで色々やってきたけどこんな展開は初めてクマ!
 可憐な魔法少女気取りの女の子は己の体に快楽を刻みつけられて
 もう二度と日常には戻ってこれない展開になってしまうだなんて……ッ!
 しかも快楽を刻みつけるのは紛れもなくこの俺っ! いかんっ! 昂奮してきたァっ!」

「わっ、私は、魔法少女なんかじゃないって言っ、ひぃぃっ!?」


 テディベアの言葉に反抗しようとしたソレイユの声は
 しかし、彼女自身の悲鳴によって遮られてしまった

 無理もない

 今やテディベアの体からは無数の黒い触手のようなものが生え出ており
 それが非常に気持ち悪い挙動と共にソレイユの体へゆっくりと、しかし着実に伸び始めたからだ!

 そう、この黒い触手のような物こそが彼女を拘束して吊り下げた物の正体であり
 これから実行される卑猥な展開にてメインを張るR-18な暗黒存在なのであり
 テディベアの有する都市伝説由来の能力なのである!


「グホホぉーッ♥ これからハードコアなエロゲーも真っ青な
 グチュグチュのドゥルッドゥルなヌルヌルプレイをギアトップでお送りするクマーッ!!」

「いや、イヤぁぁぁっっ!! やめてっ!! 来ないでぇぇぇぇぇっっ!!!」


 いよいよテディベアから伸びる触手がソレイユに達しそうになり
 彼女は半狂乱になって絶叫する。が、その光景を目にする者は誰も居ない!
 ソレイユは無我夢中で杖腕をクマのぬいぐるみに突き出した
 彼女の中に残されていた僅かな冷静さが理性と勇気をフル稼働させる
 彼女にとってこれは奥の手であり、一度発動すると色々と後が無くなってしまう!
 しかしこの窮地を脱しなければ他ならぬ自分がR-18な大惨事に見舞われてしまうのだ!
 リスクを冒してでもこのテディベアの姿をした邪悪を抹殺しなければ大変なことになってしまう!

 マジカル☆ソレイユが覚悟を固めて、奥の手を発動しようとした、その瞬間だ!!


「   玉兎、十六式 ―― 『"影" 鳥 "闇" 猿』   」

「クマぁあ゙あ゙っ!!??」


 地面から伸びる無数の黒い“手”がテディベアを捕らえ、中空に押し上げたのだ!
 テディベアの体は今や黒い“手”によって宙に浮き
 追い討ちのように突き出した一際大きな二つの“手”によって包まれるように拘束されてしまった!

 声の方へとソレイユは無意識に顔を向けていた
 公園のジャングルジムの上、そこに佇むのは見知った顔の腐れ縁だ!


「あ、あなたっ……! ノクターン!?」
「下ろすわよ、ソレイユ」


 やけに冷静な声色に澄まし顔の少女はソレイユの醜態に視線を向けている
 そのとき、不意にソレイユの体を重力方向への軽い衝撃が襲った
 彼女の足首を拘束していた筈の触手はいつの間にか切断され
 代わりに黒い“手”が彼女の体を掴んでいたのだ


「えっ!? あっちょっちょっと!!」


 ソレイユの体はそのままゆっくりと地面へ下ろされていく
 彼女は咄嗟に両手を伸ばして地面へ接地、脳天が大地へ衝突するのを回避!

 

 



「クマぁぁぁぁっっ!! 油断したクマっ!! 仲間が来るのは計算外だったクマーっ!!」


 拘束されて宙に浮いたテディベアの方はというと、表情を少しも変えずに
 しかし焦ったように喚いているのだが、どこか嬉しそうな様子なのは気の所為だろうか?


「うぐっ、こっ! このぉっ!!」


 無事着地したソレイユは地面に落ちていた杖を拾い上げると
 涙目のままで杖を真っ直ぐテディベアに向けて構える!


「レン・レヴェットぉっ!          (矢を放って!)」
「ほぎゃぁぁぁあああ゙あ゙あ゙っっ!?!?!?!?」


 呪文と同時に杖の先から赤い閃光が発射! テディベアに直撃した!
 途端にテディベアは黒い“手”の中で炎上し始めたのだ!
 同時に黒い“手”も徐々に形を崩していくではないか!


「やっぱり、炎だと、解けてしまうわね」


 ジャングルジムに立つ少女の呟きなどお構いなしに
 ソレイユは涙目で燃え上がるクマのぬいぐるみを睨みつける


「クマぁぁああ゙あ゙っ♥ 無念だクマぁっ♥
 しかしっ! たとえこのクマが滅びようとも、第二第三のクマが現れるクマぁっ!!」

「全部まとめて燃やしてやるわよぉっっ!!」

「クマぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああンンっっ♥♥♥」


 声高な断末魔と共に炎上するテディベアの全身が青白い光に包まれ始めた
 この変態なクマのぬいぐるみも遂に消滅のときを迎えた
 ソレイユの一撃が致命的だったのだ

 かくしてテディベアは消滅した
 燃えカスも残さず全て消え去ったのである


「お疲れ様」


 少女はそう告げてジャングルジムから地面へと音もなく降り立った
 制服であろうブラウスの上からは影のように黒いエプロンを着用している
 この少女はマジカル★ノクターン、本名を高奈夜と言い
 物理的な干渉が可能な影を操る、「シャドーピープル」の契約者である

 そんな高奈、もといノクターンに対し、ソレイユは涙目の睨み顔を向けた


「ちょっと!! あなたっ!! ノクターンッ!! いつから居たのよッッ!?」
「貴女が、クマさんに、吊るされた辺りから、かしら」
「割かし最初からじゃないのよっ!?」


 ソレイユは可愛い形相のまま
 ぺぺぺぺぺっ! とノクターンに指を突き付け非難し始めた


「み、見てたんなら助けてくれたっていいでしょッ!!」
「状況確認よ」


 しれっと返事するノクターンを依然涙目のままで睨みつける
 ソレイユは口の中で剣呑な唸り声を上げているが
 それ以上非難の言葉を繰り出せないようだ

 

 



「今回は、私が来なかったら、危なかったわね」


 ソレイユの文句などどこ吹く風
 ノクターンは曇り空を見上げながらそんなことを言う


「無茶は程々に、ね。ソレイユ」
「おおおおっ大きなお世話よぉぉぉっ!! だっ、大体あなたにはっ関係ないでしょぉっ!?」


 噛み付くように喚くソレイユであったが
 その様子は冷静なノクターンと比べると少々微笑ましいものがあった


「あのクマさん、消滅しては、いないわよ」
「分かってるてば!! っっのぉ、あの変態クマ! 絶対に本体見つけてはっ倒してやる……!」
「可哀想な人。ミイラ取りが、闇に呑まれて、ミイラになるなんて、ね」


 怒りに燃えるソレイユにはノクターンの呟きなど耳に入らなかったようだ
 意味深長なことを口にしたノクターンは公園の入り口の方を眺めているが
 その視線の先に何やら蠢く影があったことなど、ソレイユが気づく筈も無い


「じゃあ。私はもう、行くわ。次は、吊るされないように。気を付けて、ね」
「だからぁっ!! そーゆーのぉっ! 大きなお世話だってばぁっ!!」


 先程から「なんで早く助けなかった」だの、「大きなお世話」だの
 話してる内容が錯乱気味なソレイユに背を向けて
 ノクターンは悠々と公園を後にする


 一人残されたソレイユは去りゆくノクターンの背中を睨みながら
 口の中でもごもごと何やら唸っていたが
 やがて、口をへの字に曲げてがっくりと肩を落とした


「助けて貰ったことには感謝……してるけどっ!
 なんでアイツが来ると、こう、調子が狂うのかしら……」


 相変わらず口から唸り声を上げているが
 その声は先程と比べてどこか情けない感じだ
 地面に落ちたままの羽織りものを拾い上げると
 彼女は重い足取りで公園のトイレへと入っていった












マジカル☆ソレイユ
 メルヘン存在では無い
 彼女は都市伝説と契約した能力者である
 最近の悩みは「町内に変質者が増えてきて困る」


マジカル★ノクターン
 本名は高奈夜
 「シャドーピープル」の契約者で町外の私立高校二年生
 最近の悩みは「深夜に掛かってくる無言電話(全部違う番号)が増えて困る」





□□■

 
続くです
 

 



 診療所で皆と別れた後、俺は公園にいた
 まだまだ残暑が厳しく、夕方だというのに熱気が酷い
 夕闇時と呼ぶには暮れ過ぎた、もうそろそろ夜の闇が這い寄る頃合だ

 公園のベンチに座ったまま、微かに夕陽を受けて赤く染まる雲を眺める

 花房君に誘われて「先生」の診療所へ行き、彼の言葉通り、一緒に遊ぶことになった
 それだけと言えばそれだけなのだが、今日もまたすごい疲労感が押し寄せている
 疲れを感じるが決して悪いわけではないこの感じ、何というか懐かしい感覚だ

 息を吐いて目を閉じた

 今日は花房君の友達と一緒に「人狼」をやった
 「人狼」派生のやつは幾つか遊んだ覚えもあるが
 遠い昔の話だし、「人狼」そのものはやったことが無かった

 今日来るのは全員都市伝説の事を知ってる面子、彼はそう言った
 つまり、今日一緒に遊んだ皆は、全員都市伝説関係者だということだ
 一応自己紹介もあったが、そのときは誰も都市伝説関係の話題に触れなかった
 だけど恐らく、俺も都市伝説関係者なんだということは花房君を通して知っているんだろう

 あの中からは「組織」臭がした
 あのワイルド野郎も診療所に来ていたし不思議なことでは無い
 ただ、強弱は別としてワイルド野郎以外からも「組織」のニオイを感じた
 あの丸っこい印象の女の子もそうだろう
 姿勢から見るに何らかの武道をやっているようだった
 ニオイから探りを入れることもできたろうが、俺にはそんな気は無かった
 「組織」関連にはもう自分から足を突っ込むことは止めた方がいい、危険だ

 ポチのこと、「教会」のこと、そしてホオズキさんっぽい人のこと
 色々気になることが多過ぎたが、もう全て先程の話だ
 いや、もう少しあの場で話を聞いておけばよかった
 やっぱりあの人ホオズキさんじゃ無かったのか、とか

 普段の俺なら、中央高校組はイケメンと美女が多いなあ、だの
 やっぱり商業じゃなくて中央高校に行っとけば良かったなあ、だの
 その辺の感想で終わるはずなんだがな、色々と気にし過ぎなんだろうか

 だが
 やっぱり流せないのは東ちゃんの一件だ
 多分、東ちゃんをあの場に誘ったのは花房君だろう
 ということは、あの場の全員は事情を知っていたのか?
 一度死んだ彼女が、都市伝説として存在するんだということを

 「人狼」を終えた後、東ちゃんが診療所へやって来た
 「先生」は平時と変わらない様子だったが、あのとき明らかに場の空気が変わった

 東ちゃんは最初に会ったときのように頭から血を流してはいなかった
 制服が血で汚れているのも、上から羽織ったジャージで隠していた
 ただ、東ちゃんの目には光が無く、表情もどこか虚ろな笑顔だった
 はっきり言って中学で話したときのような快活さは無かった

 女の子たちと何か話していたが、東ちゃんはずっと微笑んでいた
 誰かがそんな彼女に鋭い視線を向けているのを肌で感じた
 だが俺はそれが誰なのかを確認することはしなかった
 というか、怖くて出来なかった

 花房君からの誘いが余りにも唐突だったので
 何か準備するって時間は無かったが、それでも何とかお土産を持って行った
 俺が持ち込んだのは南区のケーキ屋で売ってるやたら大きいと有名なフルーツロールケーキだ
 女の子にはまあまあ好評だったようで良かった

 ただ、当たり前というか
 東ちゃんはお菓子に一切を手付けなかった
 出されていたお茶にも口を付けていないようだった

 あれはまずいんじゃないかと思う
 これは憶測だが、“取り込まれかけ”だとしたら
 あのまま彼女を放っておくのはよくないんじゃないか





 

 

 どうする
 “取り込まれかけ”のANは“飲まれかけ”の契約者とは訳が違う

 脳裏に浮かんだのはワイルド野郎と丸っこい女の子だ
 「人狼」後に人狼陣営で話をする機会が少しだけあったが
 東ちゃんがやって来た後だったのでロクな会話にはならなかった
 ワイルド野郎は以前のようにあからさまに東ちゃんを警戒していたし
 丸っこい子、紅ちゃんも何故か動揺を押し隠しているような様子だった

 もしも、だ
 「組織」が東ちゃんの存在を把握したとして
 彼らはどう動き、彼女をどのように“処置”するのか
 その“処置”ってのが話に聞く“処分”だったとしたら、だ

 どうする

 いっそ、放っておくか?
 彼女はアンラッキーガールだ
 確か花房君は彼女をそんな風に評した
 死んだ後に、今度は「繰り返す飛び降り」に取り込まれて
 結局、東ちゃんは都市伝説として「組織」に“処分”されるんだと


    彼女、「繰り返す飛び降り」
    やっぱ、まだいるみたいだ
    「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」からは解放されてるようだが
    完全に「繰り返す飛び降り」になっちまってるみたいだ

    あ?
    ああ、目撃情報あると思ったら、やっぱりそうか
    人を襲っていないにしても、後で穏健派辺りが様子見した方が


 先日の花房とワイルド野郎の会話を思い起こす
 「組織」が動くのも時間の問題だ。いや、もう捕捉されていると見た方がいい
 そんな中に俺が飛び込めば、「組織」は俺をも捕捉するだろう。間違いなく、だ


「やあ、こんばんは」


 取り留めのなく考えが濁流のように流れる俺の脳みそに
 そのとき、不意に横槍が入った

 声の主を見る
 いつの間にか彼は俺の横に腰掛けていた

 九月だというのにコートを着込んだ怪しげなおっさんだ
 いや、秋とはいえまだ暑いこの天気でコートだ、怪しすぎる
 この人いつから俺の横に居たんだ、てか何なんだこの人、怖い
 しかもよく夕闇の中でよくよく目を凝らすと、何やらスマイリー☺なお面を被っていた

 間違いない、これってお関わり合いになったらヤバいタイプの人だ


「ふふふ、いないなーい、ばああー!」
「っ!?」


 不意打ちに思わず息を飲みそうになった
 おっさんがいきなりお面を外したからだ

 その顔には何も無かった

 夕闇より更に暗い闇で塗りつぶされている
 そういう風にしか表現できない顔だった


「おお、驚いてくれたようだね
 最近の小学生ときたら全く驚いてくれなくってね
 驚くどころかオジサンを警察に通報しようとする有り様だ、全く
 キミはオジサンの欲しい反応を素直に返してくれて嬉しいよ。気分がいい!」


 何やら一方的にまくし立てられたが、何? 警察?
 そうですね、俺も今すぐにアンタのことを通報してもいいかな?
 

 



「何、ちょっとした手品さ。種も仕掛けもありだ
 これはこういう特殊メイクでな、まるで顔面に穴が開いてるようだろう?
 オジサンはこういう人を驚かせることが趣味でね、反応が楽しみでついついやってしまうんだ」

「はあ」

「急に驚かせてしまって悪かったね
 お詫びにと言ってはなんだが、一つ心理テストに付き合ってくれないかな?」

「はあ」


 俺の気持ちを軽く無視してそんな提案を切り出してきた
 待ってくれ、前の文と後の文が全く繋がっていないが気の所為じゃないよな?
 「驚かせてしまって悪かった」、なるほどこれは理解できる
 「お詫びに」で繋いでその後に続く言葉は「心理テストに付き合ってくれ」だと?
 おかしい。うん、おかしいし、それってこのおっさんの要求じゃねーか、何だこれは


「キミは旅人だ
 あるとき、キミは巨大な蜘蛛の巣に引っ掛かってしまった
 キミは巣から逃れようと一生懸命体を動かすが、ますます蜘蛛の糸が絡まってしまう」


 おっさんは俺の意向などガン無視で何やら話し出した
 仕方ない。いつでもダッシュで逃げられるように構えつつ、一応耳は貸すことにする


「幸か不幸か、巣の主人である巨大な蜘蛛はどこかに行ってしまったようだ
 そうは言ってもいつ戻ってくるのかは分からない。逃げ出せるなら早い方がいい
 さて、そんなキミを遠巻きに眺めている者たちがいた
 キミは彼らのことを知っているかもしれない。知らないのかもしれない」


 このおっさん、俺にそれっぽい話をしつつ隙を見計らって何かする積りじゃないのか
 何かで耳にした話では少し前にそういう詐欺も流行ったそうじゃないか
 警戒してもし過ぎることは無いだろう


「一人は、古き者の末裔だ。彼はキミと関わる積りも拒む積りも無いが、キミの様子を面白がって見ている
 一人は、キミの敵だ。キミの命を狙う仇であり、キミが破滅するそのときが来るのを今か今かと待っている
 一人は、キミと同じく、旅人だ。危険に関わらないのが彼らの生き方で、キミがどうなるかを見定めようとする
 一人は、悠久を生きる古き者だ。キミが死のうが生きようが彼は構わない。ただキミの末路は気になるようだ
 一人は、その土地に住まう者だ。キミを助け出すことが彼らにとって得になるわけではない。故に静観している」


 なるほど、おっかない話だ
 こんな話を初対面の俺にいきなり振ってくるおっさんも十分おっかない


「さて、ここで問題だ
 この中で、キミを蜘蛛の巣から助け出すのは何人かな?」


 

 「0人ですかね」

「おや、即答だね
 いいのかな? それがキミの答えで」

「はあ、まあ」

 適当に返事をしつつ、おっさんの様子も窺った
 どうも怪しいぞこの人、俺は感覚を無理矢理押し拡げた

 おかしい、都市伝説のニオイは無い
 つまりこのおっさんは契約者でも都市伝説も無い
 普通の人間だ、ということか? だが怪しすぎだぞ、このおっさん


「仕方ない、種明かしをしよう
 この心理テストで分かるのは、『キミがどれだけ周囲を信頼しているか』なんだ
 助けてくれると答えた人数によって周囲への信頼度が分かる問題なのだよ
 キミは0人と答えたが、周りをそれほど信用していない、か、友達が居ないのかな?」


 今度は何やらちょっと失礼なことを言い出したぞ
 まあ確かに俺が周りを信頼しているかなんて尋ねられたら
 何と答えるのか、正直俺にも分からない所があるんだけれども


「いけないねえ、周囲への盲目的な信頼こそがかけがえの無い絆を生み出すというものだよ
 裏から述べるなら、周囲を疑ってばかりいるといつまで経っても真実に辿り着くことができず
 逆に真に疑うべきものが見えなくなってしまい結果的にキミを破滅へと追いやるものなのだよ」


 気の所為だろうか
 このおっさん、顔が無い癖に凄く趣味の悪い笑顔でニヤついている
 そんな感じがするが


「いけないねえ、その様子ではキミはまだ気づいていないようだ
 例えば最近キミが会った女の子がバイト先の店長に夜な夜な何をされているのか
 女という生き物はつぐづく度し難い物でねえ、キミはまだ若く愚か故にきっと知り得ないだろうが
 あの子自身も気付かぬままに熟れた花を咲かせ、中の蜜を汚らわしく吸われながら官能に身を震わせるだなんて、ねえ」

「はあ」


 何だ、今の
 何か今、俺が馬鹿にされたような気がするが、何だ
 あと、何だかすごく大事な所を土足で踏み込まれたような
 嫌な気分と、あと、何だろうな、この、胸騒ぎのような、これは

 目の前のおっさんは、小さく肩を震わせていた
 嗤いたいのを懸命に堪えているようだった
 俺にはそんな風にしか見えなかった


「ぬぁーんて、まあ全部嘘なんですけどね!」

「はあ」

「はっはっは、いやあ悪い悪い
 キミのような反応が可愛い少年を見るとついつい揶揄いたくなってしまってね
 ちょっと怒ったかな? すまないねえ、悪ノリするのがオジサンの癖でねえ、許してほしい」

「はあ」


 何なんだこのおっさん
 いや、騙されるな。隠蔽が完璧過ぎた
 こいつはAN契約者だ、契約ANの“波”だけを完全に隠し切っていたようだ
 どうやら本当に楽しくて仕方無かったらしい、こいつが嗤ってる間だけ、僅かに“波”が漏れ出た

 隠蔽のできる、都市伝説契約者だ
 感情の揺らぎで隠蔽していた“波”が漏れ出たとはいえ
 技量的には遥かに上を行く筈だ。これ以上関わるべきでは無い
 「組織」のニオイは無かった、ならば何だ。何故、俺に話し掛けてきた


「あの子が店長にナニされてるかはその内キミにも分かるだろうさ
 なに、店長のワガママに付き合わされているだけだ、いやあ、揶揄って悪かった
 それとなんだ、キミはもう少し周囲に心を開いた方がいいよ。その方が絶対上手くいく
 何故なら、キミの敵の中にでさえ、キミが生き延びてくれることを願う者すら存在するのだから!」

「ぬあーんて、全部嘘なんですけどね。それも嘘なんっすか?」

「おお? 信頼されていないようだな。駄目じゃないか、目の前の大人くらい信頼してくれても!
 オジサンはキミの味方だよ、少年。ほら、もっと心を開いて開いて。オープンマインドこそが大切だよ!」
 

 

 俺は立ち上がった
 纏まりの無い思考に水を差された挙句
 変な話の所為で、何というか、すっかりそれどころじゃなくなった


「おお? 本当に怒ってしまったかな? 悪いことをした。折角だから何か奢ろうか?」
「やー、いいっす。もう遅いんで。帰るっす」


 生憎だが嘘吐きの都市伝説契約者の話を聞いてる程俺もお人好しでは無い
 それに“波”を隠蔽して俺に話し掛けてきた不審者とくれば、早々に退いた方がいい

 尤も
 このおっさんが俺に襲い掛かってくるとなれば
 こちらとしても嬉しいし、遠慮なく殺り合えるんだけどな

 お望みとあらば


 陽は完全に堕ちた。ここからは夜の世界だ
 いつの間に点灯していた街灯の光を受けて、不審者もベンチから立ち上がっていた

 不審者はおもむろに顔に手を掛けた
 お面を外すかのような動きで、顔面に拡がった闇が取り外される
 特殊メイクだとか言っていたがどうやらあれもお面のような物だったらしい
 不審者の素顔は、どこにでもいる普通のおっさんだった
 いや、もしやそのおっさんフェイスも実はお面か?


「すまなかった」
「いえ、俺も良い気分転換になったっす」


 まあ嘘なんですけどね
 俺としては早々にこの場を立ち去りたい気分だ
 今のところはこの不審者から敵意は一切感じられない、としてもだ


「もし良ければ、最後に一つだけ。いいかな?」
「なんすか?」
「五年前の事件を覚えているか?」


 目の前のおっさん、つまり不審者はもう嗤ってなかった


「五年前、って『テロ』のことっすかね」
「ああとも」


 おっさんはどちらかと言うと真面目な表情で俺に相対している
 まあ、その表情さえも嘘なのかもしれないが


「あの事件は本来、学校町で起こるべきものだったんだ
 あのときは幾つかの必然が錯綜した帰結として、東海の都市が惨劇の舞台となった
 しかし、ワタシの勘が正しければ、あの事件と近しいことが、いずれこの町にも起きるだろう」

「はあ」

「ワタシは元ジャーナリストでね、志半ばにして筆を折った只の負け犬だ
 今はジャーナリストを気取っていたあの頃の一切を抹殺したくてたまらない
 それでも次の世代に残したい、いや、残さねばならないものがまだあるんだ」

「……まさか、それも嘘なんすか?」

「どう受け取ってくれたって構わない。だが、これだけは覚えておいてくれ
 キミがこの町で生きる以上、惨劇と悪意は常に忍び寄ってくるものなのだ
 そのとき、キミがどう動くのか、何を守るのかは、キミ自身が決めねばならない」

「はあ」

「キミと話が出来て良かった。お互いに生き延びたら、いずれまた逢おう」



 

 



 結局、言いたい放題話した後で
 おっさん顔の不審者は肩で風を切るように公園を去って行った

 俺の方が先に出て行く積りだったのに、どうしてこうなった
 しかもあのおっさん、公園出るときなんかカッコつけてたな

 なんというか、色んな意味で敗けた気がする
 謎の敗北感がたまんない

 この不快な感情を俺はどうすればいい


 そうだ、あのおっさんは俺が不審者と思えば不審者なんだ
 なので不審者に声を掛けられたという体で警察に相談しとこう
 この町のお廻りさんだって未成年の不審者事案に動いてくれる筈だ
 もうあんな怪しいおっさんをこれ以上この町にのさばらせちゃいけない


 俺はこの決意を固めて公園を出た
 家には帰らず、最寄りの交番へレッツゴーだ
 無論あのおっさん顔の不審者に遭遇したと届け出る為に決まってる
 覚悟しとけよおっさん、もうこの町で変な真似できないようにしてやるからな!

 しかし
 公園へ向かう道中
 あのおっさんが口にした内容が
 俺の頭のどこかで反芻されていた


 五年前のテロと近しいことが、いずれ、学校町で起きる


 そう、五年前
 東海地方のある地方都市で大規模な殺人事件が起きた
 俺がまだ「七尾」の施設に居た頃の話だ、あのときは大騒ぎになった
 後に「テロ」と呼ばれるようになったこの事件は、情報統制のお陰か「テロ」として扱われている

 でも実際はそうじゃない
 あれは都市伝説勢力同士によって引き起こされた殺戮だった
 結果として、関係の無い人達が沢山死んで、未だに傷跡を残したままだ
 事件の首謀者は「都遣」と「楽団」、いずれも今やテロ団体として見做されている
 恐らくは「組織」からも討伐対象として完全にマークされている筈だ

 だが、どうだろうか、どうだろうな
 五年前のテロと同じことが学校町で起きる?
 ひょっとしてこれもあの不審者の嘘なんじゃないだろうか?
 怒ったと思われた俺を宥める為に真面目な話をして誤魔化そうとしたとか?

 あり得そうだ
 大体、学校町は「組織」の本拠地だ
 五年前、あの事件が発生した際、「組織」の対応は完全に後手に回っていたと聞いている
 「組織」とはいえ、流石に同じような失態を繰り返すとは思えないし
 それ以前に兆候を見逃すとも思えない

 やっぱり、去り際に確認すべきだったな
 今の話、どこからどこまでが嘘なんですか、ってな

 まあいい
 気にする必要は全く無い
 今はあのおっさんを警察に報告することだけを考えよう

 不意に花房君の顔が浮かんだ
 あいつにこの話を振って反応を窺ってみるかな
 まあ、そんなことはあり得ないと返されるかもしれないが



 東ちゃんの件は、家に帰ってから、もう一度考えよう






□□■

 


早渡脩寿
 南区の商業高校に在籍する一年生
 同世代の女子の身体への興味が尽きないお年頃
 「次世代ーズ」が開始する年の四月に学校町へ越してきた
 学校町へ来た理由は九宮空七を殺したという「狐」の末路を見届ける為だが
 彼は「組織」所属となってこの町に住んだ九宮と「七尾」首席研究員の痕跡を追っていた

 最近の悩みは「『組織』所属のヤツと関わる機会が増えて、何だかこわい」

 好きな物:女体、スケベコンテンツ、料理
 嫌いな物:「組織」、「教会」、「狐」、クソ野郎



一宮テロ
 「次世代ーズ」開始のおよそ五年ほど前に発生した大規模な殺傷事件
 この事件は惨劇の場となった地方都市の名を取って呼ばれることとなった
 表向きは当地方を拠点とした暴力団同士の抗争という形で情報統制が行われたが
 真相は都市伝説関係勢力、「都遣」と「楽団」との間で発生した“エフェクター”を巡る争奪戦である

 その市街戦により勢力双方のみならず無関係の民間人を含む大多数の死傷者が発生し
 事件の余波で当地方一帯と関東地方の一部が停電に陥り、社会インフラが一時混乱を極める事態となった



 

 

早渡の「嫌いな物」の項に、「組織」と「教会」と「狐」が同列で並んでいますが
「組織」と「狐」ともかく、「教会」はやや「嫌い」のベクトルが異なります
早渡は「教会」関係者に対して確認を取りたいことがあります(全然急ぎではない)
詳しくは裏の>>521をご覧ください

本編で全く触れられなかったが
早渡の好感度が高いのは憐さんに対してですね
やっぱり触れるべきだったな……

早渡からの呼び方については裏の>>522に残しました
良ければご確認ください






 

 

 まずはお礼を……!

 やの人、夢魔の部隊で「ピエロ」に対応してくれてありがとうございます!
 改めてお礼に行きます! レスも返しますね!
 「ピエロ」に加えもっと色々出てきます

 花子さんの人、すまん! そしてお待たせしました
 >>849-853の続きを書きました
 次世代ーズが色々余計なことを言ってしまい詰まってないか心配ですが
 便宜を図れるだけのことはしておこうと考えています(主に「ピエロ」の方)

 改めて参りますの

 

次世代ーズの人乙ですのー
詳しい感想は明日(日付的には今日)としてとりあえず取り急ぎ確認レス置いておきます
東ちゃん、目にハイライトない状態っぽいけど、「戦技披露会」が終わった後(ハロウィン終了後、ようは「バビロンの大淫婦」とかが死亡する直前時期)でもその状態って事でオッケーかな?

 

>>917
回答します!

>東ちゃん、目にハイライトない状態っぽいけど、「戦技披露会」が終わった後(ハロウィン終了後、ようは「バビロンの大淫婦」とかが死亡する直前時期)でもその状態って事でオッケーかな?

いいえ、「バビロン」死亡直前時期の東一葉はハイライトありの元気な状態となります

東一葉がハイライト無しな状態なのは、東区中学で会ってから、以後
診療所に遊びに行った日(「人狼」回のことです)を挟んで、大体一(~二?)週間前後の時期です
ハイライト無しな状態は、早渡がもう一度東一葉に会いに行くときまで続きます
その後は元の元気な東一葉に戻ります

なので、ハイライト無しな彼女に会いたいとすれば
丁度この一週間前後の期間が旬な感じです
勿論、要望等で時期をずらすことは可能だ

そして、「バビロン」の頃はハイライトありの元気な東一葉の状態ですね

そもそも、何故彼女がハイライト無しな状態になってしまったかというと
それは中学の屋上で自分とサクリさんが飛び降りる再現映像を見たショックのため、ですね
彼女は早渡や直斗くんと会ったあの日、自分から「話に混ぜて」と言いましたが
再現映像を見ることで彼女自身がどんなショックを受けるのか
結果どんな影響が自分に生じるのかを彼女はあまり深く考えていなかったのです

 

 

花子さんの人
確認の為に整理します
以下の時系列の通りでよろしいでしょうか
「人狼」イベントがあるのは【11月】ということですね
次世代ーズはこれを【9月】の出来事だと思い込んでいました
ということは>>806>>808辺りの意図も取り落としていることになりますね……

花子さんの人、本当に申し訳ございませんでした……



●九月
・早渡、東中で東一葉と出会う   ☜ 東一葉 マグロ目期間 ここから
・早渡、診療所で「先生」から話を聞く

 ・(破棄)23話 …… 「人狼」イベントをこの時点だと思っていたorz

・上記の一~二週間以内の夜に取り込まれ(?)小イベント発生
 ・その夜の内に、東一葉は「自分」を取り戻す   ☜ 東一葉 マグロ目期間 ここまで
 ・そしてその夜の内に居候先を確保

※これ以降、生前と変わらぬ元気な東一葉のまま


●十月



●十一月

・戦技披露会開催

 ・※本来の「人狼」イベントはココ! (ですよね?)

・バビロンの大淫婦、死亡
・「狐」本戦?


 

 

というわけで、改めてですが
>>908-913を破棄して書き直します
もうしばらくお時間を頂きたい所です(早ければ本日、最悪水曜25時以降)


【11月】時点でリライトしますと、当然内容が大きく変わります
以下は要点のみ行きます


⓪【11月】時点の東一葉は以前より元気になった状態です
 目のハイライトもそのままに、飲食も普通に行う(?)外見の上では生者です


①東一葉が中央高校組に確認したいのは1点だけです
 「サクリが飛び降りた後のことを教えてほしい」
 この問いに幾らか小さな質問が付随するかもですが
 彼女がまず聞きたいのはこの点です


②東一葉は現状だと「狐」本戦に関与する予定はありません
 【11月】時点だと、彼女は自分が足手まといになると自覚しており
 更に居候先に迷惑が掛かるかも、という理由で「狐」に関しては静観の予定です
 この点で何かありましたらどうぞ


③早渡は【11月】時点でも「組織」関係者を警戒しています
 いくつかの事情が重なって、幾分か「組織」への敵意は薄らいだにも関わらず、です
 9月の頃にように挙動不審になるほど動揺や警戒することはありませんが
 「組織」関係者の前で東が①のことを訊き出したりしないかと心配しています
 (この時点で早渡は、東が①について質問したいことを知っています)
 要するに早渡は東が「組織」の対処の対象にならないかを心配しています
 そのため、 主に 角田と紅の反応を注意しています


まずは①の部分を固めて投下する予定です!
花子さんの人、本当に申し訳ない!!
次回からクロスに関わる話の投下は、時系列の宣言を必ずやる事にします……!


 

>>927-927
>以下の時系列の通りでよろしいでしょうか
はい、その時系列ですね
いや、こっちこそ本当申し訳ない
>>806とか辺りできちんと時系列確認できてると思ってしまった。思い込みいかんね
>>808については人狼やろうぜ!より前の時間軸(早渡君が「先生」から話し聞いた翌日くらい)のイメージだったのです

>もうしばらくお時間を頂きたい所です(早ければ本日、最悪水曜25時以降)
無理せずゆっくりでいいのよ

>まずは①の部分を固めて投下する予定です!
はーい、了解しました
①に関しては、あっさり答えてくれるだろうから問題ないな


時間軸誤解させたお詫びとして避難所の裏設定スレ辺りで何かしら情報公開しよう
何か聞きたい事あったら言ってくだされば公開しますー

 

花子さんの人へ
本日投下が間に合いそうにないので、せめて以下を出します



「狐」の死に目を見届けたい
そう話していた早渡についてですが
ここで彼の具体的な目標についてばらします

「狐」本戦の前に直斗君と話せるなら早渡の口から語られますが
早渡は「狐」の死か消滅に間に合わなくとも、実は何の問題もありません

彼が一番やりたいことは
「狐」勢力の構成員について把握している人員に接触し
その中に「九宮空七」がいないかを確認することです
まあ十中八九「誰それ?」となるでしょうが仕方がない

早渡が「狐」勢力に「九宮空七」が加わっていないことを確認すると
次は「狐」勢力が殺害してきた中に「九宮空七」がいないかを確認しようとします※

そのときの状況によって早渡の行く末が決定します
行き着く先はいずれも一緒です

「狐」本戦によって万一に構成員が全滅し、話を聞ける者がいない場合は
また別の道に逸れることになります



>>929
ありがとうございます
この方向で定めますがツッコミあれば遠慮なくお願いします
>>818で提案して頂いたモノをお願いしようか悩みましたが、>>818はまだ保留にさせて下さい
あとはちょっとした点ですが、今診療所にいる面々が早渡といよっち先輩をどう呼ぶのか
もし分かるのであれば教えて頂きたいです

あと1点だけ
【9月時点】のエピソードで同じ東中出身の遠倉千十が紅さんと会う話を今後書くかもしれません
つまり、【11月】時点だと紅さんは「次世代ーズ」に登場する連中の顔と名前を知っている可能性が……
この点もひとまず先にお伝えしておきます……前々から話だけ出してたとはいえ、重ねてすいません……

 

 

○前回の話

>>811-814 花子さんの人
>>849-853 花子さんの人



○時系列

●九月
・早渡、東中でいよっち先輩と出会う
・花房らと共に三年前の事件の「再現」に立ち会う
・早渡、診療所で「先生」から話を聞く


・いよっち先輩、自分を取り戻す
 その夜の内に居候先を確保する

・∂ナンバー、「肉屋」の侵入を予知



●十月
・「ピエロ」、学校町へ侵入



●十一月

・戦技披露会開催

・「人狼」イベント   ☜ 今回の話はココ!

・バビロンの大淫婦、死亡
・「狐」本戦?


 

 



 そして「人狼」が終わった
 俺にしては凄く頑張った方だと思う
 自分でも驚くほど真面目にやったよね、ある意味全力だったよね?

 まあいい、とにかく終わったんだ
 ただ誘ってもらった手前、口に出す積りは絶対無いが
 俺はこの「人狼」ってゲームをあんまり好きになれない感じだ
 昔っからこの手のゲームは嫌いじゃない、だけど「人狼」って響きはどこか苦手だ
 そうは言っても俺が当たったのは「狂人」、これは確か「人狼」陣営の役職だったよな

 まあ、いい
 とにかく終わったんだ
 俺は頑張った、今はそれを噛みしめよう
 次やるときはもっと上手いことやろう、敗けられねえ

 それで、だ
 肝心の花房直斗がどっか行った
 俺はあいつに話をつけなきゃいけないんだが
 いつの間に抜け出したのか席から居なくなっていた
 てか、「人狼」が終わった後、部屋にいた半数近くが部屋から出てってしまった
 みんな何処へ行ったんだろう?

 予定ではそろそろいよっち先輩がこっちに着く
 先輩は今日の席で色々と聞きたいことがあるらしい
 花房君もそこの所は把握してる筈なんだが
 何だか色々不安になってきた

 不安ってのは勿論、三年前の事件についてだ
 いよっち先輩は何より事件の真相を知りたがっている
 彼女は自分が死んだ後の顛末について知っていないようだ
 恐らく花房君もそこの所を配慮してこの場に先輩を呼んだんだろう

 正直、その席に俺が居てもいいのか不安だ
 だがそれより気掛かりなのが「組織」関係者の反応だった

 俺は角田慶次の方を盗み見た
 奴は紅ちゃんと何か話しているようだ

 三年前のあの事件には「狐」が関与している
 いよっち先輩は事件の当事者だ
 だが彼女が事件の真相を知ることを、「組織」がどう認識するかは分からない
 加えて、事件の真相を知ることで先輩にも何らかの変調が起こる危険性は否定できない
 丁度、九月に事件の再現を見たショックで彼女が「取り込まれ」かけたように、だ
 万一、いよっち先輩がそのような素振りを見せたとき
 「組織」関係者がどういう反応をするのかは全く分からない

 角田から視線を外す

 紅ちゃんはともかく、角田の人は確か強硬派所属だったか?
 少しでも先輩の様子に不安要素を感じたら「対処」すべき対象として見做すのか
 そこの所が俺には不明だった

 勿論俺だって打てる手は打った
 先輩が「取り込まれ」ないようにするための対策だ
 だけどそれで万全だと自信をもって言えない辺りが怖い所だ
 なので一応その点も含めて彼に相談をしておきたかったんだが
 事前に渾身のメール送っといたのに、何故だか花房君からスルーされ
 診療所に来たタイミングで話し掛けようとしたが「大丈夫」だとだけ笑顔で返された

 別に疑っているわけじゃ無い
 実際、花房君が大丈夫と言うからには大丈夫なんだろうが
 俺は不安なんだよ!! 花房君!! せめて大丈夫な理由を説明して!!
 大体あいつって何なんだろう、友達と一緒のときもいつもあの笑顔で過ごしてんだろうか

 右に居るのは携帯を弄ってる広瀬(晃)ちゃんだ
 広瀬(優)ちゃんとは双子らしい、確かに二人はどことなく似ている
 何か集中してるっぽいし邪魔しちゃ悪いな、声は掛けずそのままにしておく

 左に居るのは憐ちゃんだ
 花房君とはまた違った笑顔を浮かべてる子だ
 そして俺のことを「しゅーっち」と呼んだ子でもある

 最初は面くらったが
 何というかこう、謎の嬉しみが込み上げてくる
 

 

「しゅーっち、どうしたっす?」
「え、あっいや何でもないよ。ええと、花房君はどこ行ったかな、って」
「トイレじゃねーっす?」


 なるほどトイレね
 そうとくれば押し掛けるとするか
 ついでにこのタイミングで憐ちゃんに訊いてみようか
 花房君っていつもあんな感じでニコニコしてんのか、ってな

 いや、止めとこう
 さっきから日景の目が怖い
 てか何なの、俺は特に何もしてないんだが
 めっちゃ鋭い視線を常時俺にぶつけてくるんだが

 憐ちゃんはポチを抱っこして時折くすぐったりしている
 が、不意にポチが唸り声を上げ始めた、めっちゃ尻尾をブンブン振り回している
 何だろう、排泄でも催したんだろうか
 てか怖い、ポチ怖い、歯茎を剥き出しにして唸ってる
 何だこれ、怖い、これはもうケルベロスとでも呼んだ方が良い気がする


「そろそろ時間っすねー、ちょっとポチにおやつあげてくるっすー」


 へらんとした顔のまま、憐ちゃんはポチを抱え直すと
 そのまま部屋から出て行ってしまった

 不意に日景と視線が合う
 こいつの外見は憐ちゃんとはまた違った意味で日本人離れしている
 金髪に目が綺麗なヒスイの色で、加えて体格が良過ぎで、俺を睨む目つきもヤバい
 そうだな、憐ちゃんがキューピッドだとするならこいつはまるで……いや今の無し!! 考えるな俺!!


「……花房君、探しに行く」


 それだけ伝える
 が、日景は無言で俺を睨んでるようだ
 何なのキミ、俺が何したって言うんだ、ポチとは別の意味で怖い

 俺は逃げるように部屋を後にした
























 

 


 果たしてトイレには誰も居なかった
 花房君がここに来た様子も無さそうだ
 ぬう、まさか入れ違いで戻ったとかじゃないよな
 だとしても途中で出くわす筈だ、なのでそれは無い

 診療所は特段広い訳では無いので直ぐ見つかると思ってたが
 どうやら甘かったようだな
 俺は部屋に戻らず、診療所の給湯室のような一角を覗いてみた


「早渡君、いい所に。ケーキ切っといたわよ」
「あ、あー。広瀬ちゃんか」


 双子のもう一人、広瀬(優)ちゃんが居た
 見ればロールケーキを切り分けていたようだ
 俺が診療所に来る途中、学校近くのケーキ屋で買ったロールケーキだ
 やたら大きいと評判のフルーツロールで、味は良いけどお値段も良い感じの一品
 みんなで食べるには丁度良いだろうと持ち込んだんだ
 広瀬ちゃんが切り分けてくれていたとは


「お皿とフォーク持ってくれる? 私ケーキ運ぶから」
「OK、ああ広瀬ちゃん、花房君見なかった?」
「……トイレじゃない?」


 ああうん、トイレね。そこに居なかったんだが
 あと返答に何か間を感じたけど気の所為かな


「待ってれば戻ってくるわよ。部屋に行きましょ。じゃ、これお願い」


 広瀬ちゃんに促され、取り分け用の皿とフォークを持って後に続く
 うん? 部屋の中が何だか賑やかだな


『でねー、早渡後輩が中に飛び込むと、其処には!』
『店長さんに迫られてるバイトちゃんが居たとか?』
『あー、ほとんど正解! メイド服を持った店長さんが立ってたってワケ』
『で、早渡がその店長をボコボコに?』
『ううん、違うよ。早渡後輩はメイド服を見るなり興奮したように息が荒くなってだねー』
『ちなみにその店長ってのは? 女? 女なのか?』
『あー惜しい! 雰囲気オネエ系男子って感じ? 口調は普通なんだけど』
『うっわぁ……』


 中からいよっち先輩の声が聞こえる
 しかも俺の話で盛り上がってるっぽいな

 何を話してんだ、いよっち先輩


「すっかり有名人じゃない」


 広瀬ちゃんの言葉を華麗に聞き流し部屋へ突入する

 居た
 いよっち先輩が来てた
 いつの間に来たんだ!?
 しかも花房君も戻っていた
 というか部屋に全員揃っていた

 どういうことなの


「話題の変態が来たぞ」
「手当たり次第男に目を付けてんのか、この変態野郎は」


 発言者はそれぞれ日景と角田君ですね?
 よく分かりませんが、先生の悪口ですか??
 怒りますよ? 泣きますよ? 全く何だってんだ
 

 

 目だけ動かして二人の顔を確認するが
 両者とも負けず劣らずのえらい形相で俺に熱い眼差しを送っている


「いよっち先輩? 何の話してたの?」
「んー? 早渡後輩が店長さんに迫ったときの話?」
「話を歪曲すんのやめろ!! 誤解もいいとこだよ!?」


 もう既に俺に対する数名の視線が、痛い
 違う、違うんだ、俺はそっち系の人間じゃ無いんだ
 頼むからそんな目で俺を見ないで

 一体誰が俺に視線を向けてるのか確認する勇気はもう無い
 皿とフォークをテーブルに置いて自分の席に着いた

 俺が睨みつけるのはただ一人だ
 そう、花房直斗。お前だ

 大丈夫と言ったからには大丈夫なんだろうが
 本当の本当に大丈夫なんだろうな!?

 勿論、口に出してそんなことを叫べる筈も無く
 こうしていよっち先輩が到着し、全員揃ってしまった以上
 俺が余計な口を開くと事態が厄介なことになりそうなので黙るしかない

 花房君はというと、相変わらずのニコニコ顔でいよっち先輩の方を向いたままだった


 これから
 三年前の話になるのだろうか
 いよっち先輩が中央高校組にそれを尋ねるのか
 「組織」の関係者は、そんな彼女をどのように捉えるのか


「えへへ、今日は誘ってくれてありがとね」


 いよっち先輩のお礼を耳にしながら
 俺は口を閉ざし、場の全員を観察することにした


























□■□

 

花子さんの人に土下座でございますorz

やった、ついにやっとです
いよっち先輩が診療所にやってきて、三年前のことを尋ねます
直斗君は余裕を崩すことは無いと踏んだので
「大丈夫」だと言わせましたが本当に大丈夫だろうか……
裏も確認しました。呼び方リストをありがとうございます
今回もガンガン活用させて頂きました

水曜日の25時以降っつったのに3日オーバー
過去話分を見返しながら書きましたが突っ込みあったら遠慮なくお願いします!



前回破棄した23話は【9月】想定で書いてましたが
こっちは完全に【11月】を想定して書いています
【9月】と【11月】での変化は以下の通り


①いよっち先輩はハイライトありの本来の明るい性格で
 ケーキも普通に食べるし、普通に早渡をいじって遊びます

②早渡は「東ちゃん」から「いよっち先輩」に呼び方が変わっています
 本人に先輩と呼ぶように言われているためです

③早渡にはとある事情から「組織」の大まかな情報が与えられました
 慶次さんと紅ちゃんの所属もこのとき知りました

④表に出すことはありませんが
 早渡はとある人物の入れ知恵により
 「先生」に対してほんの少しだけ距離を置いています
 完全に不信なわけでもなく、完全に心服しているわけでもないって状況です



で、この後どういう展開になるのか
「次世代ーズ」で想定しているのはこんな感じでしょうか


① 直斗君が「大丈夫」と言った通り
  いよっち先輩が「組織」関係者の前で三年前の質問しても良いなら
  彼女は以下のことを尋ねます

  「サクリが飛び降りた後のことを教えてほしい」
  もっと言うと「サクリが飛び降りた後、事件がどうなったのか、犯人がどうなったのか、教えてほしい」
  そして、「みんながあの事件にどういう風に関わったのか教えてほしい」といったことを訊きます


② 実は大丈夫じゃなかった場合
  いよっち先輩は唐突に「早渡後輩の気になる人クイズ」を始めます

  「面白クンの早渡後輩には、なんと、現在気になる人がいます!
  さて、それは一体誰なんでしょーか!!」
  内心いじられてんなあと思いながら早渡は
  「今一番気になるのはお花ちゃん(直斗君を指す)かな」とか答えます


 別に大丈夫な場合でも②→①の順で進んでも一向に問題ありません
 花子さんとかの人の判断を仰ぎたい
 

 
暫し憩った後に反省会をする
 

今月、投下できるかどうか微妙なラインに立ちつつある俺です。スレ投下用ネタパワーが圧倒的に足りない……ッ!

次世代ーズの人乙ですのー
続きもさもさ抗争していくとですよ
いよっち先輩のせいで早渡君のホモ疑惑がパワーアップだ!どうする早渡君!!!

とりあえず、これ以上ホモ疑惑強まりそうなのは早渡君に申し訳ないんで②は使わず①の方向性で考えていくとですよー
ついでに、早渡君やいよっち先輩的に知りたい事とか、作者的に知りたい事あったらそっちの情報も提示しますえー
時期的に、だいぶ色々情報提示できるようになってるから

 


返信が遅れてしまいすいません……


>>939
ありがとうございます
よし! ならば>>818をお願いします!

>とりあえず、これ以上ホモ疑惑強まりそうなのは早渡君に申し訳ないんで②は使わず①の方向性で考えていくとですよー
了解です
いよっち先輩が知りたいのは
表向きは明らかになってない事件のいきさつと
みんながあの時どんだけ危ない目に遭って、どんだけ危ないことをしたのか、です

この時の早渡はどうだろうか
彼が発言しても良さげな雰囲気なら以下のことを尋ねます

「みんなは『狐』の配下も全員[ピーーー]積りかな?」
(答えがYesでもNoでも)「もしできるなら配下の奴と話がしたいんだ。聞き出したいことがある」

【9月】の時点で直斗君には中学校で
狐は俺の初恋の人の仇だかんな!! 振られたけどさ!!と伝えてあるので(>>457辺り)
それ絡みかな? と推測はされるんでしょうけど、早渡本人に直接訊き返したら「……うん」って答える筈


 

 


○前回の話

>>901-904 次世代ーズ

※この話は作中時間軸で【9月】の出来事です
※この話は前回の話と繋がりはありません




○時系列

●九月
・早渡、「組織」所属契約者と戦闘

・早渡、東中でいよっち先輩と出会う
・花房らと共に三年前の事件の「再現」に立ち会う
・早渡、診療所で「先生」から話を聞く

                         ☜ 今回の話はここです

・いよっち先輩、自分を取り戻す
 その夜の内に居候先を確保する

・∂ナンバー、「肉屋」の侵入を予知



●十月
・「ピエロ」、学校町へ侵入



●十一月

・戦技披露会開催

・診療所で「人狼」イベント
 「人狼」終了後、いよっち先輩が遊びに来る

・バビロンの大淫婦、死亡
・「狐」本戦?




 

 



 ∂-No.0は憂鬱な顔のまま廊下を歩いていた

 柔らかな亜麻色の髪を幾重にも緩く巻いており、歩く度にそれが揺れる
 彼女の碧眼も物憂げな表情の中にあっては何処となく陰って見えた

 普段の彼女はその美貌からか見る者に何処か冷たい印象を与える
 尤も今の様子ではそうした冷たさすら、暗然とした雰囲気の中で影を潜めていた


「あー、ボス。また溜息吐いてます」


 半ば非難するような声色だ
 No.0の後ろに随うスーツの女子が発したものだ
 この若い女子はNo.0の秘書を担当している黒服である


「幸せ逃げちゃうって言うじゃないですかー。またイヤミ言われちゃいますよー?」
「そうね、気をつけます」


 部下の言葉にNo.0は曖昧に微笑んで応じた
 外部の、それも過激派相手には決して見せない顔だ


「それにしても脅迫の積りなんですかねー、ほんと頭にくる」
「彼らは私達のオブザーバーですからある程度は仕方ありません」
「……ボス、まさか、さっきのアレに従っちゃうんですか? やーですよ、そんな」
「ええ、ですから『ある程度』は仕方ないのです。『ある程度』から先は私達の裁量になります」


 それはNo.0と部下との静かな会話だ
 しかしこのとき、No.0の言葉には僅かな戦意が滲んでいた
 それをこの秘書の黒服がどれほど察したのかは定かでない


「もう、私達は私達で動いちゃいましょうよボス、イエスマンは駄目って仰ってたじゃないですか」
「そう焦ってはいけませんよ、何事においてもです」
「いっそ“狐”の件に着手するというのは?」
「あれは穏健派が専属で担当する問題です、大丈夫。すべきことはまだ沢山あります」
「むー、“狐”の件を解決できたら絶対キャピタルナンバーに迫れますって、絶対ですよー!」


 逸る秘書の言い分もわかる
 ここで功績を上げればオブザーバーからある程度解放されるのではないか、という算段だ
 しかし、その点はもう少し慎重にやらなければならないだろう
 むしろ逆に、更に首輪を掛けれられる危険性が無いわけでは無いのだ
 未だに全ては彼らの手の内だ

 フンフンと鼻息の荒い秘書に微笑みながらも
 ∂-No.0はこれから先の流れについて懸念せずにはいられなかった

 先程の“会合”ではオブザーバーから「あまり勝手をし過ぎぬように」と釘を刺された
 彼らの言い分を言葉通りの意味で受け取ってはならない
 それは「我々の手駒であることを忘れるな」という脅迫に近いニュアンスを帯びているからだ

 どうしたものか
 ボスである彼女は苦悩は当分晴れることは無いだろう






 

 



 ∂ナンバー
 数年前に結成された「組織」の新設ナンバーだ
 表向きは次期の黒服を養成する長期計画を試す等の口実で設置された

 「組織」で憂慮されてきた問題の一つに黒服の質の低下があった
 穏健派は早くからその対策に手を打ち始めていた

 しかしその問題についても
 これまで過激派、あるいは強硬派と呼ばれる「組織」内の派閥が
 後のことを考えずにやりたい放題やって来た、その当然の帰結なのであり
 尻拭いを穏健派がしなくてはならなかったのだ、そうはっきりと批判する者すら存在する

 彼ら∂ナンバーは
 黒服を養成して質を向上させる数々のプログラムが
 有用であったのかどうかを見極めるために結成されたナンバーである

 表向きはそのように説明されている

 だが実態はそうでは無かった
 ∂ナンバーは表向き、穏健派に親和的なナンバーとして見做されている
 しかしながら彼ら∂ナンバーのバックに付いているのは旧過激派、旧強硬派であった

 ここ十数年の間に「組織」穏健派は内部の政治で徐々に優位性を高めつつあった
 それに伴い、暗黒面に与する後ろ暗い派閥は力を削がれ、あるいは直接に排除された

 過激派や強硬派はこうした穏健派の情勢に反発し
 穏健派の施策を平然と無視する者や、無意味な襲撃行為に手を出す輩も存在した
 一方、彼らの中には穏健派の理念や思想を受け入れ、穏健派への転向を装う者も存在した

 ∂ナンバーの背後に控えるのは、そうした融和主義の黒服達だ
 彼らの大きな目的は、穏健派に取り入ることでその内部へと潜り込み
 元々過激派や強硬派で培われた思想を密かに植え付け、育んでいくこと
 そして最終的には穏健派を元々の過激派や強硬派に作り替えていくことだった

 彼らにとって∂ナンバーとはそうした目的の為の駒でしか無い
 むしろ∂ナンバーは彼らの熱烈な推薦によって創出されたナンバーである
 それ故に∂ナンバーの構成員には元穏健派所属の黒服だけでは無く
 強硬派や過激派所属の黒服も所属しているのだ

 No.0は内部に監視の目があることを悟っていた
 しかし現状に甘んじるわけには、いかなかったのだ
 無論、成立の経緯が経緯だけあって穏健派の助力を乞うことは難しい
 融和主義の黒服達の目論見に寛容であるほど、穏健派も愚かでは無いからだ
 加えて彼女自身の出身は、今なお“瑕疵ある穏健派”と評されているPナンバーだ

 だが、それでも成し遂げなければならない
 人と、都市伝説との、「共生」とは何であるのか
 その回答困難な問いに対する彼女自身の答えを出す為に

 それに今、∂ナンバー内部には敵だけでは無い
 頼もしい仲間が存在するのだということも、彼女は知っている

 No.0の憂いは未だ晴れない
 しかし、彼女の胸中には決意の火が揺らめいていた










□□■

 



∂ナンバー
 一応内部の理念的には穏健派
 だが∂ナンバーには穏健派出身者と
 過激派や強硬派の出身者が混在している
 ここ数年の内に新設されたナンバーなのでNo.にまだまだ空きがある
 「組織」の過去なんか全く知らない、新しく加入した黒服も一人か二人は存在する



∂-No.0
 亜麻色の髪を縦巻きロールにした女性黒服
 元々は穏健派(Pナンバー)所属の黒服であった
 彼女を見る者の印象は大体「ドSっぽい」か「性格キツそう」
 オブザーバーである過激派や強硬派のオッサンを前にすると言動が硬くなるので
 より性格がキツそうに見え、そんな女を屈服させたいオッサン共の加虐心を掻き立てる結果となる

 現場とオブザーバーの板挟みにより何箇所か内臓をヤっている
 なので辛い物や刺激的な物を受け付けない体質となってしまった

 最近の悩みは「休んでも疲れが取れない」



秘書
 No.は現時点で不明
 元々の所属は穏健派のようだ
 ∂-No.0の秘書を担当している女子黒服
 スーツを着ていなければ未成年に思われるらしい
 ちょっとは気にしているのでお子様呼ばわりされるとムッとする

 最近の悩みは「週末の誘いを断るいい感じの言い訳が思いつかない」



 

剣裁「どうもー、剣裁in作者(最近病気になったりならなかったり、1日12時間寝てたりする)でーす」
正義「お久しぶりです。正義です」

●Wiki編集したので、マヤの予言編を振り返る
https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5155.html

正義「……って題は分かったけど、作者自身は把握できてるの?」
剣裁「実は俺、全然知らないんだよ; 終わったのか、時系列的に何処と何処が繋がるのか。
   兄者に迷惑だから、一応メインディッシュな部分だけ突貫で書いただけなんだ」
正義「それで、wikiでは『X1話』になってるんだね……本当は何話なんだろ……」

剣裁「今回は、俺が担当した『舞い降りた大王』パートのみを語っていこうと思います」
正義「よろしくお願いしまーす」


●「セイギ」

正義「さっそくボクが死ぬんだけど、恨みでもあったの?」
剣裁「辛辣だな。申し訳ないけど、この時には筋書きが完成してたからな」
正義「へぇ、どんなの?」

 1.正義が【アンゴルモアの大王】に変身
 2.なぜか【太陽の歴石】の予言を無効にして攻撃できる【アンゴルモアの大王】
 3.アンゴルモア大勝利! 希望の未来へレディ・ゴー!

剣裁「ほら」
正義「ほらじゃない」

正義「まず、ボクが死ぬなんて何処にも書いてないし、なんで変身する必要があったんだよ?」
剣裁「お前、死んでから口悪くなってない?
   まず、『裂邪が変身するから、正義にも変身させたい』って願望があったんだよ」
正義「そんな事言ってたね。それで見つけたのがアンゴルモアだっけ」
剣裁「んで、偶然『マヤの予言編』ってネタが来ちゃったから、この機会にお披露目となったわけだ」

正義「でもそれってボクが死ぬ理由にならないよね?」
剣裁「ノストラダムスの大予言、思い出してみ?」
正義「えっと、大王が降ってきて、【アンゴルモアの大王】を蘇らせる……あっ」

剣裁「『蘇らせる』んだよ、よく分からない何かを。だから死というプロセスが必要だった。
   仮に『称号として付与する』だけなら、大王が出し渋ってた理由が分からなくなる」
正義「相応のリスクを考えた結果、ボクが死んで、生き返る事になったと……。」
剣裁「だから正義が死ぬ過程は、勢いだけで書き上げたんだよね。変なところもあると思う」

●「ケツイ」

正義「でもさ、生き返るって分かると……この辺りから茶番臭がしない?」
剣裁「書いてる本人が一番気にしてるから、言わないでやってくれ。
   『この後、正義生き返るんだよな……』って思う度、この設定に後悔して公開した」

正義「その割には、しっかり書いてくれたね」
剣裁「人が死ぬんだ。それは一生に一度の、重大な事件さ。それを雑に書いてたまるか。
   全ての命に物語があって、それに終止符が打たれる。仮とはいえ、正義だって同じ。
   書いている間は、正義が死んだものとして皆に喋らせたし、大王も死ぬつもりで“決意”させたよ。」
正義「一応、『ちゃんとコロしてくれて、ありがとう』と言っておくね」


●「サトリ」

剣裁「で、ここでは一旦、正義抜きで【太陽の歴石】に挑む」
正義「皆、がんばってジャガーを倒したんだよね」
剣裁「無尽蔵のザコを考えてくれた兄者に感謝だ。今後のためにも、覚えておくべき手法だなぁ」
正義「奈海に至っては、【太陽の歴石】に攻撃したし……」

剣裁「だが勝てない。コインの予知能力では、【太陽の歴石】の予言には無力と“悟る”」
正義「ここは確か、お兄さんと相談しつつ進めたんだっけ」
剣裁「うむ。改めて読むと、【太陽の歴石】は奈海たちで遊んでいたんだなと思えてくる。
   あれほど予言できると、相手に希望を与えてからひっくり返すぐらいしか、娯楽がないのかね」

正義「そして、奈海がやられそうになったところで……ボクの出番」


●「ヒトリ」

正義「とうとう、ボクが【アンゴルモアの大王】となって【太陽の歴石】に立ち向かうよ」
剣裁「で、なんで最初は単独で立ち向かったんだ?」
正義「なんで書いた本人が知らないんだよ……」

正義「【恐怖の大王】の能力は、『全ての力を注いで、人間を【アンゴルモアの大王】にする』ことでしょ?」
剣裁「だから大王は、自分の命を犠牲にして正義を蘇らせたんだよな」
正義「でも【アンゴルモアの大王】の能力は、実はボクも大王も知らなかった。
   なら『都合のいい能力をつくってしまえばいい』んだ」

正義「【アンゴルモアの大王】は『ひとり』では戦えない。
   多くの仲間と、そしてなにより掛け替えのない相棒が必要……。
   【アンゴルモアの大王】には、『掛け替えのない相棒を召喚する』能力がある……」
剣裁「そんな事、可能だったのか?」
正義「ボクは【アンゴルモアの大王】である以前に、『大王の契約者』だからね。
   それに、ボクの中には大王の力が残ってた。消えないうちに、それを取り出したかったんだ」

剣裁「それが成功して、次に繋がると」


●「キズナ」

正義「もう今生の怨み、もとい前世の怨みを込めて滅多打ちだよ」
剣裁「雑。まぁ書きたい放題書いたけどさ」

剣裁「筋書きにもあるけど、『正義に予言は効かない』とだけ兄者に言われてたんだよね」
正義「そうだったの?」
剣裁「最初は、『アンゴルモアの予言力の方が強い』とかいう設定で行く予定だった。
   でもインパクトに欠けるから、別案を色々考えてた」

正義「最終的に、勢いで『ボクが死んでいるから』って言っちゃったけど」
剣裁「俺が考え付く中で、一番トンチが効いてる理屈だと思う。もう他の理屈は出てこないな」

正義「そんな事より、ボク達の“絆”だよ。あいつには無い力で戦ったんだ」
剣裁「そんな事て。あのチームワークは書いていて面白かったよ」

正義「勇弥くんの秘密兵器、あれって何度も造れるよね?」
剣裁「あんな兵器量産したら、地球が滅びるわ。いや、滅亡系都市伝説だったなお前」
正義「十文字さんも十文字家の設定が生えて、刀を使いだすし」
剣裁「麻夜を守りつつ【太陽の歴石】に攻撃する、という重要な役割も担ったな」
正義「奈海とコインちゃんも、未来予知でサポートしてくれたし」
剣裁「あの状況で勝てない敵って、なんだろうな……」

正義「やっぱり、皆との絆が一番だよ」
剣裁「……」

●「サイゴ」……?

正義「で、“最後”はどうなるの?」
剣裁「それが……たぶん本スレを見ていない間に、マヤの予言編が終わってたんだ。
   漢が何かすると聞いていたんだが、Wikiのどこに載っているのか分からず……」
正義「あぁ、それで書けてなかったんだ」
剣裁「病気の件もあるけどな。結局落ち着いたの、つい最近だぜ」

剣裁「そういう事情で、これを読んでいる兄者が居たら、いつかまとめてあげてください(小声」


●「ソノゴ」

――――――

正義「……また、皆と戦いたいな」
剣裁「……分かってるよ。リブート計画を進める。
   その為には、観測し忘れている時間軸を観測しなおさないといけない」
正義「それって……」

剣裁「『沖縄編』、そして『黄昏の呪い編』、この2つを彼に書かせる。
   そうすれば、『マヤの予言編』に、そして“その後”へと物語が繋がるはずだ」
正義「剣裁……!」
剣裁「作者なら、さっき出て行ったよ。彼にもやるべき事があるんだとさ」

正義「行こう、大王が待ってる!」
剣裁「おいおい、あいつはもう―――」






―――つづくといいなぁ

「んんにゃむにゃ……旦那ァ、そいつぁ反則でさぁ……」
「モシモシ」
「んにゃ?」

赤い髪に細目の青年―――ウィルは、何者かに揺り動かされて目が覚める
いつの間にかソファの上で寝ていたようだが、
それよりもまず気になったのは、自分を起こした存在についてだ

「……あれ?」
「モシ?」

ちょこん
ウィルの腹の上に乗っかったそれは、簡単に言えば“生きた蝋燭”
マシュマロのような丸い体に手と目がついており、頭の上には美しい青い炎が揺らめく
見た感じは生き物だが、地球上にこんな生き物は存在し得ない
しかし、ウィルは知っていた

「…もしかして、ヒトモシでござんすか?」
「モシッ!」

ヒトモシ ろうそくポケモン
ふだん ほのおは きえているが 
ひとや ポケモンの せいめいりょくを すいとると ほのおは きらめく

何故ウィルがヒトモシを知っているのか、それは単純明快
彼らは裂邪に『ポケットモンスター』シリーズを買い与えられている上に、
炎タイプを好んで使う彼にとって、ヒトモシの最終進化形であるシャンデラは相棒と呼べる存在だ
そして、だからこそ、このヒトモシが特別なヒトモシであることが分かる
通常、紫の炎が揺らめくヒトモシだが、先に述べたように炎は青色だ
細かいところを言えば、黄色い筈の瞳もどちらかと言えば黄緑に近い色をしている
珍しい、色違い個体である

「しっかし何でポケモンがこんな間近に? ゲームの世界にでも入っちまいやしたかねぇ?」
「モシ?」
「おっ、起きたかい? 随分眠ってたね」

突如、声をかけられた
見たところ20代後半か、30代前半程の若い男性
色のついた眼鏡をかけ、細身ながら軽装から見える身体は鍛えられており、
肌も日に焼けていることから、スポーツマンか何かかと思えた
そして、最初はヒトモシのせいかと思ったが、少々蒸し暑い事にも気が付いた

「おっと、失礼致しやすが、一体どちらさんd」
「4時間だ!!」
「え、えっと何のことで?」
「僕が海岸で君を見つけてから4時間が経っている
 何故か身体は乾いてるようだったけど、風邪を引くかも知れないからね」
「そいつぁ、随分と世話になっちまいやしたねぇ
 あっしはウィルと申しやす」
「僕はククイ。 ポケモン博士をやっている。 ここは僕の研究所さ」
「ぽ、ポケモン?……あー、ここは何て地方でい?」
「アローラ地方のメレメレ島だ」

アローラ? メレメレ?
2015年3月現在で発売されたシリーズで最も最近に登場した新地方はカロス地方である
ウィルにとっては聞き慣れない地方だった

「(旦那が何時ぞや言っていた「並行世界」ってぇ奴ですかねぇ…)
 あ、それとこのヒトモシは」
「モシ」
「君の傍からくっついて離れないんだ
 ヒトモシはこの地方には生息していないから、君のポケモンかと思ったけど…違ったかい?
 そういえば、モンスターボールを持っていないようだったけど」
「えー、話せば長くなっちまいやすが、構いやせんか?」

はっきり言って、ウィルは嘘がつけないタイプである
彼はククイに、自分の身に起こったことを全て話した
自分はこの世界の人間でないこと
別の世界から飛ばされてきたかも知れないこと
ただ、流石にこの世界がゲームになっていることは言いにくかったようだ

「―――――――ってなぁ訳で……信じてもらえやすかね?」

「いやぁ、実に興味深い!
 もしかしたら、僕も力になれるかも知れないよ」
「え、本当でござんすか?」
「“ウルトラホール”と呼ばれる現象がある
 いわば空間に出来る大きな穴なんだが、その先は別の世界と繋がっていると考えられているんだ
 現に、その穴を通って現れる“UB(ウルトラビースト)”というポケモン達は、
 この世界のポケモンとは違った生態や形態をもったものが多いそうだ
「とうとうポケモンシリーズもパラレルワールドなんて持ち出しちまったんですかい」
「? な、何のことかな?」
「いやこっちの話でさあ
 して、その“ウルトラホール”ってのは、自力で開けられるもんなんですかい?」
「現在では、特定のポケモン…つまり“UB”の手によってしか開けることは不可能だろう
 けど、僕の奥さんがアーカラ島の空間研究所で“ウルトラホール”の研究をしていてね
 船で行けばすぐだし、良ければ一緒に行ってみないかい?」
「良いんですかい? 研究所が空いちまいやすけど」
「僕はどちらかというとフィールドワークが多いからね
 それに、困った時はお互い様さ
 単純に研究者としての興味もあるけどね」
「あっしにとっても、右も左もわからねぇ土地でさあ、ありがてえ」
「モシモシ」
「お、お前さんも来やすか?」
「モシ!」
「ははは、気に入られてるね。良ければモンスターボールをあげようか」
「モ~シ~!!」
「ありゃ、何か嫌がってやすね」
「おや、偶にそういうポケモンもいるんだが…一応君が持っておくといい
 何かあると大変だからね」
「面目ねえ、何から何まで」
「いやいや。それじゃ、行こうか
 港はこの先のハウオリシティにある」

海岸沿いの賑やかな街であるハウオリシティを、
途中の店で売っていたマラサダと呼ばれる菓子パンで空腹を満たしながら歩き、
ウィル一行はポートエリアの乗船場で船に乗った
目指すは次の島、アーカラ島へ
果たして、ウィルは元の世界に戻る手がかりを見つけることができるのか



   ...to be continued

という訳で今回はウィルの話
話の中で2015年なのに去年発売された『サン&ムーン』の設定を使ったのは、この内容の通り
ウルトラホールの存在が一番こっちの話とリンクさせやすくさせてるっていう
事実、『サン&ムーン』本編でパラレルワールドから来たらしいキャラがいるし



ついでに報告
『神力秘詞』の例の話、代理板に上がってませんでした☆
当時直投下しやがったみたいです、過去の俺の馬鹿野郎!
今度は過去ログ漁りの旅が始まるお……

かたじけねえ! かたじけねえ!
懐かしいなー暫く読んで遊ぼう

すまぬ弟よ、今日は仕事だったのだ
19日と25日だったらできるぜ
25日は嫁もいるし

>>957
俺も読み返したりしないと、正義や剣裁に怒られるなぁ……

>19日と25日だったらできるぜ
チラ裏の件(特に就活云々のところ)で、先方の返信次第では大丈夫。またメールするわ

あとSkypeの件。不具合でログインできないんだっけ?
今のPCで昔のアカウント入力して
「パスワードを忘れた」→「他のユーザーが自分の~」を選択すれば、解決するかもしれん
理由は……『その他』にでも適当に書いておけ

「おじちゃま、止めて!」
 ひかりの声に、ライダーはバイクを止める。
「どうした、ガール」
 少女の視線の先を辿ると、高校生くらいの男子がふたり、こちらに駆け寄ってくるのが「ライダー」にも確認できた。が。
「ボーイたちはたしか、ο(オウ)Noの関係者だね、この子の知り合いか」
「ええ」
 答えたのは真降。轟九はといえば、後ろから迫りつつあるピエロ集団に相対しようと体勢を整える…が。
「おにいちゃまたち、まかせて!」
 叫んでひかりが手鏡を宙にかざす。

「ふぁいやー!」

 都市伝説「アルキメデスの鏡」彼女の母親である幻も操ったそれを、彼女は生まれ持った器なのか、視認する範囲であれば、自在に光と熱を操ることが出来た。

「おお!燃えてる燃えてる!」
「ひゃっはー!火を付ける手間が省けたってもんだぜ」
「そう言うおまえも燃え…」

 ピエロ達が火を付けるために持ってきた可燃物ごと、盛大に燃え上がった。

「ひかりちゃん、これはやり過ぎだよ…」
「え?そっかな」
「ガール、これは下手をすると町にも火が移るパターンだよ」
「それはさせませんよ」
 真降はそう言うと一歩前に踏み出し、目の前の地面にたん、と手を付いた。
「これは…」
 真降を中心とした半円状に、みるみる地面が凍り付いていく。
 「雪女」彼は氷と冷気を自在に操る。その能力の高さは、同じ雪女の能力を持つ父、桐生院蘇芳ですら一目おいていた。
「みんなこおっちゃったー!」
 光と化して四散する暇すら与えられなかったピエロ達はもとより、彼等が持参していた、引火用の可燃物すら氷の中に封じ込められていた。
「ま、こんなところですか」
 真降は言うと、端正な顔に人好きのする笑顔を浮かべてライダーに振り向く。
「ひかりちゃんをここまで無事送り届けていただいてありがとうございました。…で、どうしましょう?」
 彼の指さす先には、先ほどと同数か、さらに大量のピエロ達の姿があった。



続く?

皆様乙でーす
全然こっちに来れてない上に書けて無くてごめんな
鳥居の人のお話の続きだけでも近日中に投下するです
えぇ、「ライダー」こっから離脱させんと

「俺ぁ、そろそろ「先生」と合流したいとこなんだが」

 真降の言葉に、「ライダー」はそう答えた
 ピエロを真っ直ぐに見据え、笑う

「あれくらいなら突破できっから、そっちが大丈夫そうなら、「先生」と合流するまでさ。大丈夫か?」
「こちらは問題ありませんが……大丈夫なんですか?」
「平気平気。伊達に堂々と「レジスタンス」所属を名乗っちゃいないさ」

 そう、「ライダー」は己の正体を隠すことなく、堂々と「レジスタンス」所属を名乗っている
 この学校街においては、今のところ誰かに名前を名乗る事はほとんどしていないものの、調べられれば名前だって簡単に知られるだろう
 「レジスタンス」所属でそこまで堂々としているのは、そう簡単に殺されることはないという自信の現れでもあるのだ
 潜入捜査系にくっそほども向いていないので堂々とせざるを得ない、と言う事情もあるが

「あぁ、そうだ。せっかくだし、伝えとく」
「何を?」
「「先生」にも言ったんだが。この街、なーんか、妙な感じがすんだよ。気配っつか、流れっつか?ジャパンにしちゃあ、水からもちょっと違和感感じるしよ」

 とんとんっ、とつま先で軽く地面をたたきながら、「ライダー」は真降逹にそう伝えた
 彼が感じる違和感は、完全に彼の直感が元となって感じられたものであり、「ライダー」自身にも具体的にどのような違和感であるのかは伝えきれない
 だが、多少は「組織」にも伝える必要があるだろう、とも考えていた
 つい先日の「戦技披露会」の裏側において、いくつかの組織が学校町の現状やらについて話し合った際、それについてに一応報告はされていたと思うが、「組織」所属の者にその辺りまで伝わっているとは限らない

 故に、伝えた
 この違和感は、少しでも誰かに伝えておくべきだろう
 何かあった時、すぐに対応できるように

「一応、「先生」が「自分にできる範囲で対処しとく」とは言ってたから大丈夫とは思うが、本当念のためな」
「「先生」を信頼しているんですね」
「そりゃあ、もちろん」

 「ライダー」は笑う
 そうして、はっきりと、こう答えた

「「先生」は、俺の命の恩人だからな!」

 「ライダー」の(上司から勝手に借りてきた)バイクが唸りを上げる
 ひかりを載せるために取り付けていたサイドカーを切り離すと、バイクは一気に加速して

「飛んだーーーーーっ!!??」

 そのツッコミをしたのは、その場にいる誰であったのだろうか
 「ライダー」のバイクは当たり前のようにスカイバイクモードになって空へと飛び上がると、ピエロ逹をあっという間に飛越し、夜の闇の中へと爆音鳴らしながら去っていってしまったのだった



to be … ?

とりあえず、「ライダー」を離脱させましたー
多分こいつは、このまま「先生」と合流しにいきます

なんでバイクが空飛んだのかって?
「先生」が改造したせいです


―――2011年10月28日

 事件は、その日の夕刻前に始まった。

https://www29.atwiki.jp/legends/pages/4542.html
 神崎 麻夜の誕生日。何気ない、それでいて特別な日常が続くと思っていた最中、突風と共に奴らは現れた。

 赤いダウンコートを着た、白髪交じりの壮年の男性、【ククルカン】
 暴れる麻夜を抑えつけている、パンク風のチャラチャラした金髪の青年、【フラカン】
 冷たい目をした冷静そうな20代後半程の男性、【イシュムカネー】
 長い黒髪を揺らす、口数の少なそうな妙齢の女性、【イシュピヤコック】

 【マヤ神話】の神々が、麻夜を攫うために、黄昏 裂邪の前に現れたのだ。
 麻夜を【太陽の歴石】の器とし、『マヤの予言』を成就するために。

 裂邪は麻夜を救うため、シェイド・ミナワ・理夢・ウィル……そして【レヴァテイン】と融合して立ち向かう。
 その圧倒的な力で【フラカン】を蹂躙するが、他の神々にその隙を突かれてしまった。

 創造神【ククルカン】は、人と都市伝説との『繋がり』さえも創造できたのだ。
 それにより麻夜は【太陽の歴石】と契約したことになり……その意識さえも、乗っ取られてしまう。

 麻夜を乗っ取った【太陽の歴石】は、彼女の幼気すらも使いこなし、強化された破滅の力を行使する。
 裂邪はその破滅の力を前に、なす術もなく、いよいよ全身全霊を賭けた一撃を放つ。
 しかしそれさえも、最終破滅の前には無力だった―――


 ―――麻夜を救うため、“R-No.0”ローゼ・ラインハルトを初め、
 黄昏 正義、日向 勇弥、心星 奈海、コイン、十文字 楓、そして【恐怖の大王】が立ち向かう。

 しかし【太陽の歴石】は、既に麻夜の身体を完全に支配していた。
 自らである石板を現出させ、それを鎧に変えて麻夜に纏わせる。
 魂と器を一体化させた【太陽の歴石】は、予言の力で正義達を翻弄する。

 それでもなお諦めない正義に対し、【太陽の歴石】は滅びの時を告げる。
 洪水の力を指先に圧縮した、水の弾丸を奈海へ目掛けて放つ―――


https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5155.html
 奈海を唯一かばえたのは、正義だけだった。
 水の弾丸は剣を砕き、正義の胸を貫いた。

 正義を治療しようと勇弥達が考えるも、大王が制止する。
 正義に、寿命が訪れたのだ。

 不完全な《底抜けの器》では、【恐怖の大王】と契約するには不充分だった。
 それでもなお、誰かを守りたいという思いから、正義は戦い続けた。

 認めきれない正義の死に、大王は思わず、その名を大きな声で叫んだ―――


https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5156.html
 正義の死に駆け付けた【タナトス】。
 【モイラ】さえも、その死を予知できなかったと彼は告げる。
 そして正義を黄泉へ案内すると告げ、その場を去った。

 正義の死。それでもなお、変わらぬ未来。
 ……いや、そんなはずはない。
 勇弥達は、奈海や皆を救った正義のために、もう一度立ち上がる。

 そして大王もまた、自分にできる事を成すと決意する―――


https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5157.html
 黄泉の世界。正義の前に現れたのは、【タナトス】。
 彼はギリシャの神々でさえも【太陽の歴石】には敵わなかったと告げる。
 そしてこのぐらいしか恩を返せないと言い、案内を始めた途端、黄泉に異変が起こる。

 一方、地上ではジャガーの群れを一掃する勇弥達が居た。
 そして奈海は、その怒りのままにジャガーを全滅させ、【太陽の歴石】に立ち向かう。
 しかしそれさえも、予言の前では無力だと悟り、奈海は力尽きて倒れてしまう。

 誰もが諦めたその時、現れたのは、王の風貌を纏った―――


https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5158.html
 黄泉で起きた異変、それはあの世とこの世を繋ぐゲートだった。
 【タナトス】はとっさに正義を呼ぶが、既に正義は謎の光に包まれ、彼は弾き飛ばされてしまう。
 そして正義の前に現れたのは、どこか様子がおかしい大王の姿だった。

 地上では、王の風貌を纏った正義が、【太陽の歴石】を翻弄する。
 その圧倒的な力を見せつけ、自分は【アンゴルモアの大王】として蘇ったと告げる正義。

 しかしそれでも正義は敵わなかった。【アンゴルモアの大王】も、独りでは無力なのだ。
 多くの仲間の力があって、初めて勝利すると、正義は説く。
 そして力を貸してほしいと叫んだ時、【恐怖の大王】が再び空より舞い降りた―――


https://www29.atwiki.jp/legends/pages/5159.html
 正義の復活を切っ掛けに、自体は大きく変化した。
 【太陽の歴石】は攻撃を一切通せず、正義達の攻撃だけが炸裂する。
 勇弥の砲撃が、楓の斬撃が、陰の計算が、カウントの保護能力が、コインの予知能力が、奈海の祈りが……。
 仲間の絆の力が、正義に、【アンゴルモアの大王】に力を与えた。

 しかし、『麻夜を救う』という本当の勝利は、未だ見えないままだった―――


 これが、後に『マヤの予言』と呼ばれる事件の軌跡である。


 そして、今。



―――未来を救う、全てのピースがここに集う―――



マヤの予言編「キセキ」

あらすじ兼、次回予告です~ まとめてみると、壮大な戦いしてたんだねぇ……
そして。何事もなければ、本日『サイゴ』を上げてしまいます。よろしくお願いします~

>>952-954
兄者おつ~。サンムーンの方に理解者が居てよかったな。話がスムーズに感じた
そしてヒトモシは、いったい何だろうな? なんか気になる

>>963
鳥居の方、おつですー。ピエロを燃やして冷やす……冷しゃぶ?
しかし可燃物を使って燃やすなんて、酷いなぁ(おまいう

>>966
花子さんとかの方、おつですー。そしてライダーさんも一旦お疲れさまです?
次世代には、飛ぶバイクがあるのか……いいなぁ(歪んだ認識

>>968
リアル大事に、書ける時にね
俺もなかなか続きとか書けてないんだし


>地の文にこんなこと言われちゃうなんて
一応な、「レジスタンス」所属だとはっきり名言しているあいつがその地に現れる事で、「レジスタンス」が首突っ込みに来たぞ、って牽制になるって意味もあるんですよ
しかしそれよりも何よりも潜入捜査にくっそ向いていない現実

>>971
あらすじと次回予告乙ですの
>そしてライダーさんも一旦お疲れさまです?
まだまだ学校町には在留し続けますし、何かしらに首つっこみはするけれど、ひかりちゃん達とは別行動です

>次世代には、飛ぶバイクがあるのか……いいなぁ(歪んだ認識
「先生」が改造してくれたおかげなのであって、流石に飛ぶバイクはまだ普通に販売してはいない、と、思う

>>969-970の続き)

漢「麻夜!!」

 その声が深い森の中で木霊し、正義はその拳を止めた。
 そこに居たのは、真っ白な翼を背に生やした[神崎 漢(かんざきアヤ)]。
 少女のような衣服を着ており、顔立ちからも誤解されやすいが、れっきとした少年である。

麻夜「っぬぅ、今度は何者だ!?」
正義「漢くん…!」
漢「麻夜……遅くなってごめん……迎えに来たよ」

 そして何より、正義達の従兄弟であり……[神崎 麻夜(かんざきマヤ)]の兄である。
 漢はその翼を消滅させ、ゆっくりと森に降り立った。
 そして、今にも泣き出しそうな表情で、【太陽の歴石】……いや、麻夜を見据えた。

正義「(漢くんの声なら、麻夜ちゃんに届くかもしれない。届くはずだ!)」

 正義は兄妹の絆をもとに、そう確信した。
 対称的に、【太陽の暦石】は暫し考えた後、小さく鼻で哂った。

麻夜「……あぁ、この娘(ニクタイ)の家族か?
   残念だがもうこれは我のものだ、貴様の声など疾うに届いておらん。
   もはやこれは我の傀儡が如きものとなって―――――」



漢「黙ってて!!」



 か細くも、力強い声が響く。
 その気魄のせいか、【太陽の暦石】も一瞬だけ、たじろいだ様に見えた。

漢「…貴方に話してるんじゃない……僕は、麻夜と話がしたいんだ!」

 希望に満ちた、真っ直ぐな瞳。
 漢は諦めていない。正義の確信はより強くなった。
 漢は、漢の声は、麻夜を目覚めさせてくれるに違いない。

麻夜「……そうか……そうか………やっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…
   下らん!! これから我が、直々に、貴様等を滅ぼしてやろうと言うのだぞ!?
   言いたい事があるのなら、後(アノヨ)で言えば良かろう!!」

 それが気に入らなかったか、【太陽の歴石】は右掌から業火を噴き出し、漢を狙う。
 正義はとっさに、白雲から土砂降りを起こして沈下させた。

麻夜「っち、邪魔をするな!」
正義「どっちが!!」

 風を纏う拳と大剣が、甲高い音を散らして交わる。







楓「あの子はいったい……?」
奈海「神崎漢くん。正義くんの従兄弟で、麻夜ちゃんのお兄さんよ。」
勇弥「(男だったのか……。)」
コイン「たしか、【漢字の成り立ち】と契約しているんだっけ。」

 遠巻きに見ていた4人は、状況についていけず、分析を始めていた。

勇弥「……おそらく、だが。あいつこそが勝利のカギだろうな。」
楓「黄昏は、明らかにあの子をかばっている。そして攻撃もほとんどしていない。」

 勇弥と楓は、薄々察していた。このまま攻撃しても、勝てない事に。
 【太陽の歴石】を倒すこと自体は、おそらく可能だと考えていた。
 しかし、本当の勝利は『麻夜を救う事』。そのためにできる事は、自分達にはなかった。

コイン「信じよう。麻夜ちゃんの意思が、あいつに勝つ事を。」
奈海「お願い……!」

 コインと奈海は、ただ祈り続けた。けれど無力とは思わなかった。
 祈る事で、望む事で、未来は変わる。そんな奇跡を目の当たりにしたのだから。






.

漢「麻夜、聞こえる? 僕だよ、漢だよ!」

 漢の声が聞こえると、正義は少し姿勢を低く構えた。
 【太陽の歴石】に、麻夜に、漢の姿が見えるように。

漢「今日は、麻夜の誕生日だったんだ……覚えてた?」

 しかし、【太陽の歴石】に邪魔はさせなかった。
 麻夜の視線を意識しつつも、【太陽の歴石】の攻撃は全て受け止めた。

漢「麻夜が裂兄ぃと出かけてる間に、バースデーケーキ、作って待ってたんだよ?」

 漢はじっと見つめながら、麻夜に語り続ける。

麻夜「無駄だと言うのが分からんか!? 己の滅びの時を、静かに待っておれ!」

 【太陽の歴石】は痺れを切らし、またも漢に業火を飛ばす。
 しかし白雲より大王が現れ、マントで業火を受け止めた。

正義「無駄なんかじゃない! 漢くんの声は絶対に、麻夜ちゃんにも届く!!」

 続けて正義が【太陽の歴石】を食い止める。
 だが、大王はアシストしつつも、まだ足りないと踏んでいた。

大王「(正義、気づいているのだろう? 歴石との契約が、簡単に切れるものだと思うか?)」
正義「……。」
大王「(仮に意識を取り戻せても、それだけで解決はしない。)」

 大王はより先を見ていた。意識を取り戻した麻夜に、【太陽の歴石】が何をするのかを。
 それでも漢は、麻夜に語り続ける。

漢「僕は……弱くて、泣き虫で、友達も全然出来なくて……
  今日もすぐに麻夜を助けに行けなくて……頼りないお兄ちゃんだけど……」

 正義も同じく先を見ていた。【太陽の歴石】を破滅させるには、同じ破滅の力が必要だと。
 なおも漢は、麻夜に語り続ける。

漢「でも、麻夜は僕と違って、強かったから……麻夜がいつも励ましてくれたから……
  麻夜がいつも傍にいてくれたから、今日まで楽しくやってこれたんだよ」

 大王も、正義も勘づいていた。あとひとつ、ピースが欠けている事に。
 けれども漢は、麻夜を信じ続けた。

漢「麻夜がいないと………ほんとに、ダメなお兄ちゃんだよね………
  麻夜がいないと、生きていけないよ………」



――――――――――――――――――――すな



 その時、正義は微かに声を聞いた。
 同時に【太陽の歴石】が頭を抱え、正義の攻撃を受けて仰け反る。

正義「(い、今の声は……。)」
漢「帰って来てよ、麻夜……麻夜は、そんなのに負けちゃうような弱い子じゃ、無いよね?
  麻夜はとっても、強い子だから………帰って来てくれるよね……?」

 正義は、誰かがこの戦闘に介入している事に気づいた。
 漢が気づいているかは分からないが、まだ……自分達には、仲間がいる。

正義「(大王! 今から準備しよう!)」
大王「(良いのか正義? 準備するだけでも、力を消費するが……)」
正義「(構わない! きっとチャンスは、今しかないから!)」

 大王はゆっくりと頷くと、その場から姿を消す。
 正義は、上空よりもはるか上を意識し、雲を展開する。
 それは、先ほどから作っていた白雲ではなく、宇宙を彷彿とさせる禍々しい雲だった。

麻夜「ぐっ………ま、た………強く…………!?」
漢「お願いだよ、麻夜………そんな奴に負けないで………皆でケーキ食べようよ………麻夜ぁ!!!」

 【太陽の歴石】は、いよいよ頭を抱え込んで苦しみ出した。
 正義はただ、宙を覆う雲を展開し続ける。











―――― 我 の 部 下(モノ) に 手 を 出 す な ! ――――










正義「(【首塚】!? この戦いに、力を貸してくれたんだ……!)」
麻夜「あ、の…………祟り神風情、がぁ…………!!!」



???「まさかこの期に及んで将門に感謝する事になろうとはな」



 声がしたのは「太陽の暦石」の真後ろ、少し離れた処だった。
 黒一色の服を右目から流れる紅に僅かに染めた少年。

漢「あ……!!」
麻夜「貴様……生きて………!?」







裂邪「お前の、所為で…大切な約束を守れなかったじゃねぇか!!」






 闇から現れたのは、黄昏 裂邪。その声、立ち振る舞いからは、怒りが滲み出ているのが目に見えて分かった。
 正義がその姿を見て驚いていると、一瞬目が合った。



―――この場は任せろ―――



 なんとなく、正義はそう言われた気がした。
 その瞬間、正義はその場から姿を消す。












~~~成層圏~~~


 地球と宇宙の狭間で、その雲は展開されていた。
 その雲の中から、黄昏正義が舞い降りる。

正義「(ずいぶん、高いところまで来ちゃったな……)」
大王「(今になって引き返すか?)」
正義「(冗談。それよりごめんね。そんな姿にして……)」

 そう考えながら、正義は雲を見つめる。

 これこそが【恐怖の大王】の真の姿だ。
 正義がよく知る『大王』とは、【恐怖の大王】が世界征服を行うための仮の姿。
 そして、【アンゴルモアの大王】となった今、この【恐怖の大王】の力は正義のための力である。

 世界を滅亡させる力……しかし、【アンゴルモアの大王】は違う。
 破壊者を、守護者に変える。その願いで、コントロールして見せる。
 今、『正義の心』が試される―――




正義「行くよ! 大王!」

―――雲から降りてきたのは、巨大な隕石だった。



 隕石はゆっくりと降下し、正義にぶつかる。



 その瞬間、隕石は淡く輝き、正義の身体に吸収されていく。






――――――X.terminate Angolmois






 その身体は紅く燃え盛り、まさに隕石そのものとなった。
 そのまま飛び蹴りをするような体勢で、地上へと降下していく。



―――馬鹿な………馬鹿な!?―――



 その時、正義は『声』を聞いた。明らかに力を失った、【太陽の歴石】の声だ。

正義「お兄ちゃんが、やってくれたんだ……」

 あの時の視線は、きっとそういう意味だったのだろう。
 兄はやるべき事を果たした。ならば。

正義「ボクは、ボクにできる事を……!」












~~~地上~~~


楓「あれは、隕石!?」
コイン「違うよ! あれは……」
勇弥「正義ィ!」
奈海「正義くん!」




 地上が見えてくると、麻夜を支える漢、正義を見守る仲間達、そして……バラバラになった【太陽の歴石】が居た。



裂邪「やれぇぇぇぇぇぇぇ!! 正義ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」



 シェイドの能力で空高く跳ね上げられた、瓦礫のような石板は、正義の軌道とちょうど重なった。



歴石《……う、嘘だ………こんな事があって……》


正義「いっけええええええええええええええええええ!!!」


歴石《我が予言は……絶対に狂わないイイイイイイイイイイイ!!》


正義&大王「「 未来は……お前のものじゃない!! 」」






―――トワイライト・ジャスティス―――
――― 黄 昏    正 義  ―――









 【太陽の歴石】と呼ばれた予言の石板は、木っ端微塵に消え去った。
 最後に残ったのは、黄昏正義、【恐怖の大王】、そして……共に戦った仲間達だった。

正義「……終わった……?」

 言い終えると、正義は倒れこんでしまった。大王が受け止めると、どうやら眠ったようだ。
 大王は、塵になった【太陽の歴石】を見つめるように、呟く。

大王「【太陽の歴石】……。何故お前に、今日までしか時が刻まれていなかったのか、やっと分かったよ。」

 正義を地面に寝かせると、大王はゆっくりと、【太陽の歴石】があった場所へ歩いていく。

大王「未来とは、『未だ来ない』もの。だからこそ人は未来に思いを馳せ、現在を生きる。
   そして現在は過去となり、歴史に刻まれる。」


大王「マヤ文明は、それに気づいたんだ。だから辞めたんだ。未来を、刻む事を。」


大王「【太陽の歴石】、お前は不要になったんだ……。
   これからの未来は、現在を生きる人間達の手で刻んでいく。」


大王「……あえて言わせてもらおう。」






―――最期まで、お疲れさま、だ―――






マヤの予言編第X5話「サイゴ」―完―

>>973-980 という訳で、今度の今度こそ、「サイゴ」が終わりました。お粗末様です。
あとは兄者と再相談し、「Wiki完全版」を投稿するか否かって感じですかね~
自分は就活などもあるので、落ち着いたら色々できたらな……と思います。

それでは、また

>>972
おつありです~

>まだまだ学校町には在留し続けますし、何かしらに首つっこみはするけれど、ひかりちゃん達とは別行動です
>「先生」が改造してくれたおかげなのであって、流石に飛ぶバイクはまだ普通に販売してはいない、と、思う
そうでした。別行動するだけでしたね……
しかし、これで飛ぶバイクが一般販売される時代が現実に来たら、思い出して笑いそう

休日到来
そろそろ新スレ立ててくるー

ベルベリオン様! 新しいスレよ!

都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1495934148/)

さて、埋める為の話書いてくるわ

突然に起こった視界不良
自らの眼前に浮かぶ、ぽっかりと空いた闇
彼女はそれに、飲み込まれるようにして入っていった
時間にして2時間程度だろうか、もっとかも知れないが、
彼女の闇の中の旅は光との邂逅により終わりを告げる
人間であれば凄まじい脱力感と睡魔に襲われることになるだろうが、彼女はそうではなかった
彼女は―――ビオは非常に眩しく煌びやかな、しかし無機質な…そんな不思議な世界に降り立った

「……記憶中枢検索……物質世界,No………電脳世界,でありますか?」

電脳世界とは、言わばネットの中に広がる世界である
だがここはかつて問題となったオンラインゲーム『COA』の異空間等とは少し異なり、
街並みも森も洞窟も―――自然の面影は何処にもなく、
ただ光が走り回る細い通り道が幾千も駆け巡り、ただ光が駆け抜けていくだけの空間だった
少し前に、彼女は裂邪達と似たような空間に赴いたことがあった
それはビオ自身の力で出入りが出来たのだが、

「………脱出方法……検索不能? 物質世界,所在皆無?
 ボス,他メンバー,接続薄弱,極々遠方? 理解不能?」

つまり
この世界には裂邪も、他もメンバーもいないらしく、
ましてや彼女達の生活する物質世界すらも存在しない
電脳世界だけが広がる謎の世界に来てしまったらしい

「フフフ、驚いているようだね……まるで“人間”みたいだ」

声、同時に銃声
咄嗟に避けたビオの元いた場所に、雷光を放つ弾丸がぶつかった
足元は抉れたが、ピカピカと目障りに瞬きながら、すぐに穴は塞がってゆく

「ここは僕の求めた世界
 最も、“君が知らない僕”が作り上げた世界だ
 僕が成し得なかったことを、ね」

見たことのある姿だった
兵器を片手に、白衣を纏う青年の姿
それは人の形をしているが、その笑顔は感情が籠っていない
まさに人の皮を被った何かだった
それこそが、ビオを作り上げた張本人にして、元「組織」の構成員

「……β-No.0……?」
「覚えていたみたいだね
 まあ、機械が物事を忘れるなんて有り得ない事だ
 データを削除しない限りは」

更に青年―β-No.0はレールガンを打ち込む
すかさずビオは鋼の大蛇へと変貌し、弾丸をその装甲で弾いた
巨体はβ-No.0をぐるりと囲うと、機関砲を一点に向け、一斉に機関銃が放たれる
しかし、にやりと笑うβ-No.0は電磁フィールドを展開し、
弾丸を受け止めながら、ひらりと空間を舞い、ビオとの距離を取った

「あぁ、やはり君は僕の最高傑作だった…人間に誑かされなければ」
《質問。此処ハ何処.デアリマスカ?》
「言っただろう? 「並行世界」さ、僕があの『βガンダムMk-ⅩⅠ』で作り上げた、ね
 けど張本人は何故か何処にもいなかった……それは流石に僕も分からない」
《……β-No.0…貴官ハ死ンダ、デアリマス》
「僕も生かされてるなんて思ってなかったよ
 君達同様、ニャルラトテップの駒に過ぎないってことさ」
《…協力者》
「昔の話さ
 とは言え、“XADOMEN計画”から手を引き、「組織」に入っても尚、
 何をしようと必ずニャルラトテップの筋書き通りになる
 結局、君も君の契約者も……黄昏裂邪もそうなるのさ」
《運命,変更可能…決定不可能》

4基のドリルが床に穴を開け、ビオの巨体が穴に沈んでゆく
かと思えば、β-No.0の頭上から鋼の大蛇がドリルを向けて突っ込んできた

「……全く、“潜行不可能”な兵器を都市伝説化したからと言って…曲解にも程があるね」

次の瞬間、気味悪く明滅する光条がビオを襲う
ビオは光条に押され、落下して横たわり、人間の姿に戻ってしまった

「…損傷軽微…増援?」
「パパ! 大丈夫!?」

現れたのは、β-No.0を“パパ”と呼ぶ少女
腰まで届くクィンタプルテールの黒髪に、露出度の高い黒と緑を基調とした衣装
ビオは見覚えがあったが、同時に先程β-No.0に向けたのと同じ疑問が生まれた

「…照合……終音ミサ……?」
「フフフ、君の知ってるミサじゃない
 この世界の「ミサウィルス」から作り上げた、この世界のミサだよ」
「あれ悪い奴! パパ虐める! ミサの敵!!」
「そうだよミサ。美しく壊してあげなさい。フフフフ……」

ミサの手が気味悪く明滅し、β-No.0の兵器が雷光を放つ
ビオは基本的に感情がなく無表情だが、頭の中ではこの状況から逃げる術を検索し続けてきた
いや、そもそも逃げ場はあるのだろうか?
ここは、この世界は相手の庭のようなものだというのに?
一か八か―――――検索結果がそう至った瞬間だった

「…生命反応?」
「なっ!?」
「パパぁ!!」

飛ぶ斬撃、避ける3人
ミサに押され、倒れ伏した身体を起こしたβ-No.0が見たものは、
ふわふわと浮かぶ黄金色の球体が、ビオと共に黒い闇に飲まれ、消えゆく瞬間だった

「っ……逃げちゃった、ミサの敵」
「成程、はっきりとしたよ
 この世界の僕がいない理由が」
「? パパ、何のこと?」
「全く、しぶといね。人間というのは……」

笑みを浮かべるβ-No.0だが、その目からは怒りが露になっていた
その場にはただ、行き交う光がびかびかと走り去るだけだった



   ...to be continued

久々に登場、β-No.0
ついでにむかーし単発で出した終音ミサも登場
ビオが会ったことある体で進んでるけど、ごめん、書いてないだけで本当は『俺は幻牙』で登場する予定だったorz

電脳世界ってのはまぁネットの世界だが
「赤い部屋」みたいなネット系都市伝説とかが自由に行けるイメージ
β-No.0はその電脳世界しかない世界を作ろうとしてた
何故って? 理由はないんですよ、馬鹿みたいでしょ(微笑

兄者スレ建て乙~

>>984-986
ビオ回も乙。β-No.0とは懐かしいものが出てきたな
電脳世界かぁ。勇弥も設定上は創れるんだよな。たぶん入るのも可能?

>β-No.0はその電脳世界しかない世界を作ろうとしてた
ネットワーク世界って、現実世界にあるサーバーのおかげで成り立ってるのに……って思ったけど
都市伝説がサーバーを担っていたら、現実世界なんて要らないのか?(哲学

「……マスター?」

最初は嘲りでしかなかった
かつて、都市伝説に飲まれたことで記憶を失い、人々を殺し続けていた自分に立ち向かい、
そして契約を結ぶ事によって実質的に封じた、契約者―――黄昏裂邪のことを、そう呼んだ
しかしその後、記憶を取り戻し、断罪を求めた自分を、彼は生かし、“家族”と呼んだ
最早それは、蔑称ではない
心から敬愛する、たった一人の恩師に対する敬称
そう、たった一人の

「マスター?」
「あ………いや、すまない。気が動転してしまっていた
 君がゼロ、かね? 驚いたよ……僕が世話になった者に、よく似ている」
「へぇ、それは是非会ってみたいね
 その通り、俺は神越 恭一(カミコエ・キョウイチ)…皆から“ゼロ”と呼ばれてる」
「ナユタだ。どうやら君に助けられたようだね。ありがとう、世話になった」
「んな改まんなくていいよ、それより決闘したくてうずうずしてんだ
 まぁでも目覚めたばっかだし、運動がてら島を案内するよ
 幸運にも休校日だしな」
「あぁ、それは興味深い。お言葉に甘えよう」
「ん、俺達も付き添うか?」
「大丈夫だ、あーてか英雄、それと京也と運命も
 後で部室に来てくれ、他の奴等も集めてな」
「なんや? 休みやのに仕事かいな?」
「ハァー!? お前まで抜け駆けか!?」
「まあまあ、説明は後でするからよ
 んじゃ行くか、ナユタ」

軽く頷き、ナユタは恭一の後を追うように歩き出した
背後からは暫く運命が騒ぎ立てる声が聞こえたが、英雄が宥めて声が散っていくのが分かった
鬱蒼とした森の中を、2人は歩いてゆく

「……オッケー、もういいだろう」
「む?」
「何か隠してるな?」
「ッ!?」
「これはあくまで勘だ、違うなら聞き逃してくれ。笑うなよ?
 ナユタは「パラレルワールド」からやってきた
 それでそっちの世界の、俺そっくりな奴と知り合いだ……違うか?」
「……君は一体何者だね?」
「ただの学生で、決闘者だよ
 強いて言うなら、なんとなーく俺と似たような香りが漂ってる気がしただけだ」
「…では僕も一つ聞かせてもらおう」
「どうぞ」
「さっきからずっと隣で飛んでる赤いトカゲは何だね?」
「俺はトカゲじゃッ―――――――――何っ!?」
「ああこいつはトカ―――――――――ゲッ!?」

固まった
そう、ずっとだった
恭一の周りを、ふわふわとまんまるっちい赤いトカゲが飛び回っているのだ
あえてポケモンで例えるなら、フカマルを赤く塗って目つきを悪くさせた感じだ

「……お、おい…ちょっと待て、俺が見えてるのか?」
「うん、何ならお返ししようか。これは僕の勘だ
 君はもしや…デュエルモンスターズの精霊、という奴では?」
「「お前一体何モンだ!?」」
「いや君がさっき述べたばかりだろう…
 通りすがりの決闘者だ、あまりに近く、あまりにも遠いところからのね」

そう言いながら、何とも言えない予感がナユタの脳裏を過ぎった
こういう取り巻きが、あと5匹ぐらいいるのかも知れない、と
何故なら自分が裂邪のそれだからだ

「……そうだな、それもあとで話するとしよう
 とりあえずついてきてくれ」
「仰せの儘に」
「いやそんなかしこまらなくても」
「…失礼、口癖が出てしまった」

若干顔を赤らめながら、ナユタは恭一の後ろについてゆく
森を抜けると、大きなアカデミア校舎があった
校門をくぐって校舎に入っていくが、あちらこちらで決闘をやっている生徒達がいる

「おー、やってるやってる。皆熱心だなぁ」
「今日は休校日と言ってなかったかね?」
「血の気が多い奴ばっかなんだよ「そりゃお前な」何だと!?」
「この学校では決闘すると勝敗に関わらずポイントが貰えてな
 ポイントでカードが買えるから、強いカードを求めて皆必死なんだ」
「へぇ、ゲームみたいだね…」

何気ない会話の中、ナユタは妙な違和感を抱いた
それはソリッドビジョンに映し出されたモンスターや、飛び交う生徒達の言葉からだ

「儀式召喚! 『クラブ・タートル』!」

「融合召喚! 『双頭の雷龍』!」

「シンクロ召喚! 『エンシェント・ホーリー・ワイバーン』!」

「融合召喚! 『ヒューマノイド・ドレイク』!」

「シンクロ召喚! 『スクラップ・デス・デーモン』!」

「儀式召喚! 『ダンシング・ソルジャー』!」

「……一つ聞いていいかね」
「ん? どした?」
「何故誰もエクシーズやペンデュラムを使わないのか」
「え、何それ新しいカード?」
「あ、把握した、僕が悪かった」
(お、おい! テメェ、ナユタってったな!?)
(?)
(この次元は融合とシンクロしかねえ! そういう世界だ! いいな!?)
(あー君は他の次元とか分かるんだね。覚えておくよ)

疑問が晴れたところで

「着いた。ここが俺達の部室だ」

『ファントム・フューチャーズ』という厨二臭い名前が書かれた扉を恭一が開けると、
そこはナユタが概ね予想した通りの光景が広がっていた
割と広い部屋に本棚やソファ、テーブル
そして青、緑、黄色の3匹のトカゲと、
白衣の天使のような白髪の青年と、骨の鎧を纏った紫色の髪の人相の悪い青年がいた
トカゲ6匹じゃなかった―――内心がっかりなナユタだった
2人に気づいて、青いトカゲが口を開く

「やあゼロ、遅かったね……そちらは? どうやら僕等が見えてるみたいだけど」
「そうらしい。 ナユタ、紹介するよ。 こいつらは―――」

恭一の紹介をまとめると
赤いトカゲが、ブレイズ
青いトカゲが、フリーズ
緑のトカゲが、ストーム
黄色いトカゲが、デザート
白衣の天使が、ミカエル
人相の悪い青年が、ルシファ
というそうだ
どれも“デュエルモンスターズの精霊”と呼ばれているもので、
中でも“六滅神”という特別なモンスターらしい

「…随分壮大だね」
「まあ作者が中学時代に作った設定だからな」
「メタ話どうも」
「おいゼロぉ! それと赤トカゲ!! 俺様を待たせるなんてどういう了見だ、あ゙ぁ!?」
「…ルシファ、客の前だ、少し黙れ」
(うわぁ、ルシファの声、完全に理夢君だ…)
「赤トカゲじゃねぇ!! 俺はブレイズだ!」
「ウヒヒ、まあまあ押さえろって。お前等、もう気づいてると思うけど」
「む……あまり良くない気配が蠢いているで御座る」
「わーい、僕が遊ぶー♪」
(緑は忍者で黄色は無邪気か……)
「えーと、とりあえず掴んだ情報な
 見たことのないカードを使う生徒を目撃したって話だ
 その決闘で負けた生徒は今2人、保健室で昏睡状態
 しかもこの3時間くらいの間で突然に、だ」
「…3時間? それって」
「そうだ、ナユタ…お前を海岸で見つけたのが4時間前
 多分、同じ頃に“何か”があったんだ」

ナユタの脳裏に浮かぶ、黒い影
恐らく、“あいつ”しかいない

「…心当たりがあるのか?」
「すまないが、これは僕の――――」

「ゼロ! 大変や!」

がちゃ!!と勢いよく扉が開け放たれ、血相を変えた京也と英雄、運命が入ってくる
何やら事件があったようだが、恭一は非常にあっけらかんとしていた

「…あれ、3人だけ? 他の皆は?」
「ハァ? 作者の都合で、これ以上キャラ増やすと読者がパニックになるからって」
(そんなに多いのかファントム・フューチャーズ……)
「そんなことより!! 2年の霧島団布(キリシマ・ダンプ)が暴れてんだ!」
「団布が? でもあいつ、いつも暴れてるし」
「それが変なんだ、見たこともない黒いカードを使って…負けた生徒が気絶しちまって!」
「黒いカード?」
「ッ!! 失礼、それは同じレベルのモンスターを重ねて召喚されたかい!?」
「えっ……あ、あぁ、確かそうだった」
「ちょっと待って欲しいこの次元でそのカードは」
「いやそれより何故エクシーズの存在を存じているで御座るか?」
「恭一、行こう! その噂の真相を、確かめに!」
「そうだな! 来いブレイズ!」
「OKィ恭一!」
「えー僕達はー!?」
「設定紹介だけだ! キャラが多いと作者の筆が止まるからな!」
「君達そろそろメタ発言は控えたまえ!?」

怒鳴りながらも、ナユタは走る
元の世界に戻る、可能性に向って―――



   ...to be continued

という訳で戻ってナユタ編
『ファントム・フューチャーズ』は合計12人いらっしゃるんですがぶっちゃけ3人くらい名前が出てこない(
ゼロにくっついてる精霊達は『電王』に感化されて作った奴です
裂邪の都市伝説達と同じ由来です
つまりはそういうことです(ぁ

ちょっと散髪行ってくる

>>987
細けぇこたぁry
と思ったけど『βガンダムMk-ⅩⅠ』がサーバになってるんだろう、多分
「ダイソン球」で無限の太陽エネルギー! 脱出しても生命の存在が許されない宇宙空間!
よくあるあれね、「本物の空を見に行こう」ってストーリーの話が出来そうな世界、主に絶望しかないけど



 人は噂した、「人を襲う、口が大きく裂けた女が居る」と。

 人は噂した、「落ちた食べ物は、3秒以内ならセーフだ」と。


 人は否定した、「そんなものは実在しない」と。

 人は否定した、「それは非科学的だ」と。


 『Meme(ミーム)』。それは人類が進化の過程で獲得した、遺伝情報の一種。
 ミームは『文化』『技術』『情報』として人類の生存のために繁栄し、時に姿かたちを変えた。

 そのミームのひとつに、『都市伝説』というものがあった。
 それらは情報としての生存能力に長けていた……つまり、人の記憶に残りやすく、強い伝達能力を持っていた。

 だが、そんな都市伝説も『科学』の進歩にはついていけなくなった。
 科学が、都市伝説を駆逐しようと動き始めたのだ。


「はぁ、はぁ……。」


 さて、質問である。
 もし仮に……「ミームが意思を持っていたら」、彼らはどのような行動に出るだろうか?

 例えば……『科学のミーム』を超える力を『都市伝説のミーム』が欲する……かもしれない。


「はぁ、はぁ……。」


 『都市伝説のミーム』は、進化の時を迎えていたのだ。


「 ド コ ダ ? 」


 男は追われていたのだ。『口の裂けた女』に。
 あのホラ話でしかなかった、【口裂け女】に。

「なぜだ、なぜ居るんだ? なぜ……俺なんだ!?」

 彼女は「私は綺麗か」と男に尋ねた。男は返答を誤り、綺麗だと答えた。
 その結果、追われる身となった。おそらく、死ぬ時まで。




 偶然、男は物陰に隠れることに成功した。
 しかし【口裂け女】を振り切ったわけではない。視界にこそ入らないが、その気配のようなものを感じる。
 彷徨いながらも、確実にこちらへと近づいている。

「はぁ……はぁ……。」

 しかし、男は肉体的にも精神的にも疲労していた。
 音をたてないようにと考えつつも、物陰で荒い呼吸を続ける。

 ふと、懐に入れた携帯電話が震え出す。
 取り出すと、1本の電話が入っていた。

「もしもし。すまないが、今は忙しいんだ。」

 そう言って切ろうとした時だった。


≪私、メリー。 今ね、あなたの後ろにいるの。≫


 男がとっさに振り返ると、居なかったはずの少女が、そこに立っていた。
 いや……少女ではない。その肌は不自然なほど青白かった。その目は一見、髪で隠れているようだったが、その陰は闇のように深く、まるで目なんて存在しないようだった。少女のように見えるが、少女ではないナニカだ。

 思わず男は腰を抜かし、後ずさりする。
 男には覚えがあった。身に覚えのない電話、そしてメリーという名前……【メリーさんの電話】と呼ばれる怪談だ。
 しかし記憶が正しければ、もっと段階を経て近づいてくるはずだ。いきなり真後ろに現れるはずがない。

 いや……そもそも、実在するはずがない。あの【口裂け女】のように。

「くっ、【口裂け女】に【メリーさん】……!? ふ、ふざけるなッ!」

 目の前で崩れていく現実に、震える声で怒鳴る。
 しかし恐怖のあまり、大きな声も出ない。
 そんな男に【メリーさん】らしき少女が歩み寄る。

「来るなッ……!」


「ねぇ、あのさ。契約してよ」


 男は聞きなれない言葉を聞いた。『契約』……この【メリーさん】と、だろうか?

「なんだ、それは? 俺の命を奪う契約か?」
「逆。私の命を保護する契約。代わりに、私が貴方を守ってあげる。」

 ずいぶん都合のいい話だ。【口裂け女】から自分を守ってくれるとは。
 男は当然のように警戒した。

「信じないのも自由だけど、そんな余裕が貴方にあるの?」
「……分かっているさ。」

 それも事実だ。男には、【口裂け女】をどうにかできる力はない。
 だが、その力がこの子にあるのだろうか? 本当に……。

「早くして。私のミームが変わる前に。」

 もう、駄目で元々だ。やるしかない。

「け、契約だ。契約しろ、【メリーさん】!」
「……ありがとう。」

 一瞬、【メリーさん】の体が揺らぎ、可愛らしい姿や禍々しい姿がちらつく。
 しかし淡く発光すると、その姿は先ほどよりも、はっきりとした少女の姿になった。

「じゃあ、とりあえず倒してくるね。」




「 ド コ ダ ? 」

 【口裂け女】は男を探していた。
 そうする事でしか、自己を保つ事ができないのだ。

 与えられたミームの通りに動くしかない。
 それが、彼らの運命なのだ。

「 キ コ エ ル 」

 【口裂け女】は電話の着信音を聞いた。この近くにいるのは、あの男だろう。
 そうでなくても良い。人を襲えば、ミームを維持し自己を保存できるのだから。

「 ソ コ カ 」


 そこにあったのは、置き去りにされた携帯電話だった。
 電話は繋がっており、スピーカーから声が聞こえてくる。




≪私、メリー。今、あなたの後ろにいるの。≫




「 メ リ ー ? 」

「遅いよ。」

 【メリーさん】は、【口裂け女】の真後ろに現れたと同時に飛び上がり、ナイフを首元に突き刺す。
 【口裂け女】は、刺された場所からどす黒い何かを吹き出し、もがき苦しみだす。
 やがてその存在は、存在した証も残さず、完全に消滅した。

「……やったのか?」
「はい、返すね。」

 事が終わったことを確認するために現れた男に、【メリーさん】は携帯電話を投げる。
 男はそれを受け取り、【メリーさん】を見つめる。

「どういう事なんだ? 俺を襲うし、携帯電話を投げ返すし、でも死体は消えて、痕跡もない……。
 お前達は……何者なんだ?」
「契約してくれたんだもの、知る義務があるよね。……教えてあげる。」



「私たちは『Urban Legend Servant』。契約して、人間に仕える『伝説使途(アーバント)』。」
「アーバント……?」




 人は噂した、「人と契約し、自己を保つミーム―伝説使途―が存在する」と。

 人は噂した、「伝説使途はミームを糧に生まれ、ミームを糧に生きる」と。


 人は肯定した、「それは実在する」と。

 人は肯定した、「それは科学的だ」と。




 これは、『伝説使途』と契約し、『伝説使途』と戦う者達の物語―――

と、若干スレチと思いつつ、埋め用のシナリオ投下
このスレの設定を拝借しつつ、いくつかの設定を用語化して整理したTest Worldですニャ
一応、未完成の1本と、脳内プロット数話がまだあったり

>>988-991
あの頃は結構、色々なものに影響されたわな
そもそも遊戯王のSS自体、そういうのを他所で見かけたから始めたんだし。オリカとかも作ったなぁ
……今も変わってねぇな

>よくあるあれね、「本物の空を見に行こう」ってストーリーの話が出来そうな世界、主に絶望しかないけど
本物の空(虚)

 
大王の人と影の人、お疲れ様です!
ヤバいよヤバいよ、一気に投下されてるよ!
「ミサウィルス」の子が登場したとなってそわそわが止まらない次世代ーズの中の人です

先に一週間遅れの続きを投下します
 

 


 この話は【11月】の【「バビロンの大淫婦」消滅後】の時点です
 この話は>>963(鳥居の人)、>>966(花子さんの人)の続きになります



 

 

 学校町の契約者によって抹消された「ピエロ」、多数
 「シェキナー」の矢によって抹消された「ピエロ」、それ以上に多数
 加えて隊から自発的に失踪した「ピエロ」も、数は多くに無いにせよ存在する
 失踪の理由は明らかだ、学校町の契約者、あるいは都市伝説に精神干渉の使い手がいる
 「ピエロ」の人員が奪われているのだ

 しかし
 そうは言っても「ピエロ」の規模は衰える様子は無い
 少なくない数が消されたとはいえ、彼ら「ピエロ」の勢いは未だ衰えていなかった


「もっとぉ! んん゙も゙っどぉ゙ぉ゙ぉ゙!!」
「ンひっ♥ はぁん、まだ足ンねぇ!」
「もっと俺を穴だらけにしてぇぇぇぇぇぇぇぇんンンっ!!」


 「シェキナー」の矢を我先に浴びようと「ピエロ」達が嬌声を上げる中
 安全地帯から状況を見守っていた小隊長格の道化は焦りを感じていた

 どうもおかしい
 そろそろ撤退の合図が出る頃だが、未だに連絡は無い
 それだけではない、状況が状況とはいえ先程から非契約者に遭遇する機会が全くと呼んで良い程、無かったのだ

 周辺の偵察情報が確かなら「組織」はまだ本格的に展開していない
 だが、住宅街に「シェキナー」の矢を雨霰のように注ぎ込む真似が出来るということは
 恐らく学校町の契約者共が自発的に「人払い」かそれに類する措置を講じているものと見做すべきだろう


「それとも俺達、泳がされてるかな?」
「隊長、連絡来たっすよ!!」


 部下と思しき若い「ピエロ」が、携帯から顔を離し、押し殺した声で小隊長に呼び掛ける


「撤退はせずにさらに『ピエロ』を送り込むって話っす!!」
「は!? 予定が変わったのか!?」
「ボス直々の命令だそうっす!!」


 ボス直々の命令だと!?
 一体どうなってる、小隊長は若干の混乱を催していた
 確か予定ではぎりぎりまで「組織」の目を欺くべく隠密優先で作戦を展開する筈だった
 それが今になってここまで派手に繰り広げるとはどういうことだ? もう「組織」を気にする必要は無いということか?


(ジョーは何を考えてるんだ)


 小隊長の逡巡は長く続きはしない


「やべえっす! 『レジスタンス』の奴がバイクで飛行してやがるって連絡が!」
「っ!? 今のは確かか!?」
「マジっすマジっす! 近くにあの“槍”の女の子がいるって報告が!!」
「今すぐセンセ方に回線を繋げ!!」
『その必要はないよ』
「「!!??」」


 「ピエロ」らの回線に混じってきたその声は、他ならぬ「アブラカダブラ」の契約者のものだ















 

 



「しっかし『レジスタンス』も目立つ真似をしてくれる」
「さっき工場でひかりちゃん連れてった『ライダー』だろ? わざわざ教えてくれたんだ、感謝しないと」

 東区の一角に彼らは居た
 先程まで「ピエロ」を利用しながら「ロンギヌス」の契約者、新宮ひかりを捜索していたが
 「レジスタンス」の人員と思しき者の飛翔によっておおよその位置が絞り込めた


「濃厚なひかりちゃんの匂いもするし、これはもうビンゴだね」


 相変わらず人の好さそうな笑みを浮かべた中年男性は
 しかしながら、何やら変態じみた台詞を口にした

 その横に居る「アブラカダブラ」の契約者は
 真横の相棒、「海からやってくるモノ」の契約者に一瞥もくれず夜空を仰いでいる
 彼が視線を向ける先は無論、数分前に「ライダー」が飛行して去った方角だ

 今回の件に関して
 「レジスタンス」が露骨と言って良い勢いで割り込んできたということは


「まさか本格的に介入する気かな? この町で現在進行中のイベント全てに」
「なあ、どっちだと思う?」


 相変わらず人の話を聞かない「やってくるモノ」の契約者は
 先程と変わらぬ微笑を浮かべたままだ


「ひかりちゃんは右と左、どっちに『入ってる』と思う?」


 「やってくるモノ」の契約者が意味不明な台詞を吐くのは今に始まったことでは無い
 それなりに付き合いが長いとはいえ、知らない方が幸せな部分というのもある


「『海から』の、一応聞いとくが『モノ』を発現する気かな?」
「まさか」


 「カダブラ」は真横の相棒の内部に黒い狂喜が膨れ上がるのを見抜いた


「そんなことしたら、ひかりちゃんも俺もダメになっちゃうだろ? 最初は優しくいかないと」
「そうだな、僕としてはあのお嬢さんにお早く退場して貰いたいが」


 お喋りの内に既に準備は整った
 最早これ以上の猶予は不要だろう



 二人はその直後、新宮ひかりと桐生院兄弟の後方に“転移”した
 相互の距離は、およそ100数メートル弱



















□■□

 
鳥居の人と花子さんの人に土下座でございます
いくら何でも時間かかりすぎた……
ひかりちゃんが遣りやすいように先攻を鳥居の人へ、でございます
ここから先は存分にどうぞ!


今投下したのと大体同じ時間帯に
別の場所で起きてることについてはその内投下したいですが
嬉しくないR-18とR-18Gになりそう

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