――藍子の部屋――
北条加蓮「むにゃ……」(藍子の膝の上で寝ている)
高森藍子「~~~♪」(加蓮を膝の上に乗せている)
加蓮「……にゅ……ふふ……」
藍子「加蓮ちゃん、幸せそうな顔してるなぁ……♪」
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――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第41話です。藍子の部屋よりお届けします。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「滑って転びそうな日のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「冬日のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「18時のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「瑞雪の聖夜で」
加蓮「くー……」
藍子(……来てからすぐに、猫さんみたいに体を丸くして。もう、1時間くらいになるかな?)
加蓮「むにゅ……へへぇ……」
藍子(それからずっと、幸せそうに……ときどき、笑っているんです)
加蓮「……すー……」
藍子「ふふ……」ナデナデ
藍子(一生懸命な加蓮ちゃんも、見ていて励まされて、勇気をもらえて……すっごく、大好きだけれど)
藍子(やっぱり、安心している加蓮ちゃんを見る方が、私も安心できちゃうな……)
加蓮「……ふへ……」
藍子「ふへ、じゃないですよー、もー」ツンツンッ
加蓮「ぐにゅ……」
藍子「ふふっ」
藍子(……病院から、お便りが来たそうです。加蓮ちゃんがプレゼントを渡してあげた子と、看護師さんから)
藍子(お礼ってことで、手紙と写真が入っていたみたいですよ)
藍子(それを持って、私に見せに来た加蓮ちゃんは、もうすっごく嬉しそうで! 見て見て、って、何度も言われちゃいましたっ)
藍子(それに――)
藍子(嬉しそう、ってだけじゃなくて……どこか、ほっとしていました)
藍子(今もそう。安心しきった、って顔)
藍子「……もー。クリスマスの、プレゼントを配る前まで、あんなに不安そうな顔をしていたの、どこの誰ですかー?」ツンッ
加蓮「……くぅ……」
藍子「なんちゃってっ」
藍子(気が緩んじゃったのかな……? だから今日は、こうしてぐっすり、お昼寝をしているんでしょうか)
藍子(お話できないのは、ほんのちょっとだけ寂しいけれど。でも、こんなお昼があっても、いいですよね?)
藍子「くふぁ……。加蓮ちゃんを見てたら、私まで眠たくなっちゃった……。一緒に寝ちゃおっかな?」ゴシゴシ
加蓮「んぃー……」ゴロゴロ
藍子「ああっ。転がっちゃダメですよ。膝から落ちちゃいます」ギュ
加蓮「すー……」
藍子「……加蓮ちゃん、こんなに寝相が悪かったかな……? それとも、そんなに面白い夢を見ているのかな?」
藍子「夢の世界に遊びに行けたら、もっと楽しそう。加蓮ちゃんの見ている物、私も見たいのに……」
藍子「なんて、わがままですよねっ」
藍子「きっと、起きた時に教えてくれるから……それを、楽しみにしちゃおっと♪」
加蓮「……みゅ……」
藍子「……」
藍子「写真とか……撮ったら、怒られちゃう、かな?」
藍子「怒られちゃいそう……。で、でもっ! カメラマン系アイドル、高森藍子! ここで退く手はありません!」グッ
藍子「加蓮ちゃんだって、お話すれば分かってくれる……ハズっ」
藍子「じゃあ、早速カメラを――」
藍子「……」
加蓮「……くぅ……」
藍子「ああっ! 動いたら加蓮ちゃんが膝から落ちちゃう……!」
藍子「ここから手を伸ばしても、カメラは掴めないし……」
藍子「……き、今日のところはここまでにしておいてあげますっ!」
藍子「なんてっ。ちょっぴり悪役っぽくなっちゃっいました」
加蓮「…………ふへ……ぁ? ……いこ……」
藍子「……? 加蓮ちゃん? 呼びました……?」
加蓮「……あいこー……」
藍子「あ、やっぱり呼ばれてる。私が夢に出てるのかな?」
藍子「……ふふっ。私ですよー。藍子ですよー」ナデナデ
加蓮「だいじょ……って、……んなに……なくても……」
藍子「……? うーん……『大丈夫だって。そんなに止めなくても』かなぁ?」
藍子「夢の中の私は、加蓮ちゃんを心配しちゃってるんですね。私とおんなじ」
藍子「……わ、私、邪魔者って思われたりしてません……よね?」
加蓮「……ーき……て……し、さ……さんな……よー……」
藍子「『へーきだって。私、』……なんだろ? さ……さん?」
藍子「……サンタさん? サンタさんなんだよ?」
加蓮「よい……みん……、……んとだよー……」
藍子「もしかして、またサンタさんになってるのかも」
藍子「そっか。……不安もいっぱいありましたけれど、加蓮ちゃんにとって、いい思い出になったんですよね。ふふっ」
藍子「本当に良かったですっ。これからもいっぱい、いろんな思い出を作っていきましょうね――」
加蓮「ふへ……」
藍子「……?」
加蓮「……さんだよー……わく……?」
藍子「……な、なんだか雲行きが怪しくなったような」
加蓮「…………ふへへぇ……ふへ……ふへへへ……」
藍子「……」
藍子(だ、ダメな笑顔だこれー!)
加蓮「いいこだねー……こっち……でー……ふへ……」
藍子「……………………」
藍子「えい」ベチッ
加蓮「ひぶっ!?」イタイッ
加蓮「え? え!? ……何!?」キョロキョロ
藍子「…………」ブスー
加蓮「あ、なんかあったかい……あそっか。ここ、藍子の部屋だっけ……?」
加蓮「えーと……、……あっ、藍子だ」
藍子「…………」ブスー
加蓮「……藍子? なんでそんな膨れてんの?」
藍子「別にー。なんでもないでーす」ブスー
加蓮「???」
藍子「こほん。なんだか楽しい夢を見てたみたいですね、加蓮ちゃん」
加蓮「夢……? なんか言ってた? 私」
藍子「はいっ。いっぱい笑ってましたよ」
加蓮「そっか。いまいち覚えてないんだけど、きっと楽しい夢だったんだね。……もったいないなー。覚えてたら、藍子にも話せてたのに」
藍子「覚えていないんですかー? 起きたら教えてもらおう、って思ってたのに」
加蓮「それは残念」
藍子「加蓮ちゃん、ふへへ、って笑っていました」
加蓮「……ふへへ?」
藍子「はい。ふへへ、って」
加蓮「ふへへって」
藍子「怪しい人みたいに」
加蓮「怪しい人みたいに」
加蓮「……怪しい人みたいに!?」
藍子「…………ざんねんだなー、起きたらどんな夢を見てたのか、教えてもらおうって思ってたのになー」ブスー
加蓮「なんかさっきと意味違わない!?」
加蓮「な、何の夢見てたんだろ私。モバP(以下「P」)さんを襲う計画でも立ててたのかな……。今年のクリスマスは、ほら、プレゼントとか、お母さんとのディナーとかでPさんには構えなかったし」
加蓮「……あれ? で、なんで藍子が膨れてんの?」
藍子「さー。なんででしょーねー」
加蓮「うわぉ声が冷え切ってる。でもホントになんで? 私、藍子の悪口でも言ってた?」
藍子「そうじゃありませんけど」
加蓮「藍子のノロマー! とか」
藍子「ぶちっ」
加蓮「まな板ー!」
藍子「ぶちぶちっ」
藍子「……そーいうこと言うんですね。加蓮ちゃん、そーいうこと言うんですね」
加蓮「あれ、これもしかしてマジで怒ってる……? なんか冷気を通りこして闇のオーラっぽいものが見えるんだけど……!?」
藍子「ふふふ……ふふふふふ……」
加蓮「すごい笑い方し始めた!? 誰これ!? 藍子じゃなくて闇子だよ! 藍色じゃなくて闇色だよ!?」
藍子「そういうことを言う加蓮ちゃんなんて……今日はずっとこの家にいてもらって、ストーブや暖房で暖かくして、ご飯でお腹いっぱいになってもらって、ゆっくりお風呂に浸かってもらいますから!」
加蓮「それただの極楽だよね!?」
藍子「今日からきさまも、……えと、ゆ、ゆるふわ乙女になるのだー!」
加蓮「ひ、ひゃー?」
藍子「……」
加蓮「……」
加蓮「……えーと……あ、そうだ。おはよう、藍子」
藍子「おはようございます、加蓮ちゃん。気持ちよく眠れましたか?」
加蓮「おかげさまで。膝、もっかり借りていい?」
藍子「どうぞ~」ポンポン
加蓮「ありがと。……あ、いや、その前に洗面所借りていいかな。顔を洗ってきたくて」
藍子「はーい。温かいお湯で洗ってくださいね」
加蓮「そーするー」ガチャ
<あれ、藍子のお母さん……。お、お邪魔してます――え? それはさっきも聞いた? あ、あはは、そうですね
<……髪の毛が跳ねてる!? あ、えと、せ、洗面所借りますっ!
藍子「……ふふっ。だから、そんなに畏まらなくていいのに」
……。
…………。
加蓮「ただいま」
藍子「おかえりなさい」
加蓮「えいっ」ポフッ
藍子「ひゃっ。いきなり飛び込んで来たらびっくりしますよ~」
加蓮「あはは、ごめんごめん」
藍子「それに、さっきのっ。誰がまな板で誰がのろまですかっ」
加蓮「あはははっ」
藍子「もーっ。……すっかり元通りですね、加蓮ちゃん」ツンッ
加蓮「んふふー」
藍子「にやにやしてる……」
加蓮「やっぱこうして藍子をからかってる方がさー。いつも通りって感じがして、楽しいんだ」
藍子「……ふふっ。どんないつも通りなんですか、それ」
加蓮「私がニヤニヤしててー、藍子があたふたしててー。で、度を越えたら私が頭を下げてごめんなさいって」
藍子「ごめんなさい、って言うところまで、いつも通りなんですね」
加蓮「どんなに親しくても、悪いことをしたら謝らなきゃ。親しいことと何でもしていいことは別物でしょー?」
藍子「最初からしなければいいのに……」
加蓮「色々とやりたいお年頃だからっ」
藍子「それなら、私も色々やってみようかな?」
加蓮「やっちゃえやっちゃえ。加蓮ちゃんの体力なしー! とか、言ってもいいんだよ?」
藍子「言いませんよっ」
加蓮「たはは。でもいきなり藍子にそんなこと言われたらびっくりするかもね。誰これ!? 高森闇子ちゃん!? とか」
藍子「それ、さっきも言っていましたね」
加蓮「藍子の藍って色じゃん。藍色。だから、闇子ちゃん」
藍子「黒とかではないんですか?」
加蓮「黒子って普通にいそうでしょ? 普通にいそうにない名前だから、冗談にできるんだよ」
藍子「なるほどー……」
加蓮「高森闇子ちゃん。どんな子だろうねー」
藍子「どんな子なんでしょう」
加蓮「とりあえず服がこう、ゴシックっぽい」
藍子「まるで蘭子ちゃんみたいっ」
加蓮「そういえば藍子って、読み方次第では"らんこ"って読めるっけ」
藍子「今度、蘭子ちゃんに蘭子ちゃんっぽい話し方を習ってみようかな?」
加蓮「"闇子"と"蘭子"って、漢字にしたら見分けがつかなさそうだね」
藍子「連絡先とかで間違えちゃいそうですね。蘭子ちゃんへのオファーが、私の元に来ちゃいそう」
加蓮「ゴシックロリータな藍子なら見てみたいなぁ。ほら、魔女衣装の時みたいな……ってあれはちょっと違うか」
藍子「雰囲気なら近い……のかも?」
加蓮「やっぱ次はゴスロリだよね! Pさんに相談してみよっかなー」
藍子「じゃあ私は、いっぱい勉強しなきゃ」
加蓮「蘭子ちゃんのところに弟子入りとか」
藍子「はいっ♪」
加蓮「……改めて考えると、藍子にゴスロリってなんか似合わなさそー」
藍子「ええっ。ここまで話が盛り上がったのにっ」
加蓮「藍子のほんわかした笑顔を見てるとね。やっぱり藍子は森ガールの方がいいなぁって。まだ白ドレスの方が似合うよ」
藍子「もー。加蓮ちゃんがそう言うなら、いつも通りの私でいますね」
加蓮「あ、でもやっぱりあれこれ試す藍子を見てるのも楽しそう?」
藍子「どっちですか~っ!」
加蓮「もし私が藍子のプロデューサーになったら大変だね。気まぐれで振り回されちゃう」
藍子「自分で言うなら振り回さないでください~。ついていくのが大変になっちゃいます」
加蓮「それにさー。藍子っていろんな人に愛されてるし、蘭子ちゃんに弟子入りってなったらまたライバル増えそうじゃん? それはなんかやだなー、なんてっ」
藍子「加蓮ちゃんだって愛されてるのに……。それなら、加蓮ちゃんも一緒に弟子入りしますか?」
加蓮「えー、私が厨二病キャラになるの? そういう時期はもう通り過ぎてるんだけど」
藍子「言われてみたら、ゴスロリ……? は、加蓮ちゃんの方が似合う気がしますっ。神秘的な感じとか、ファンタジーって感じとか」
加蓮「……正直」
藍子「正直?」
加蓮「結構興味ある」
藍子「!」
加蓮「はいスマフォを手に取らない」ペチ
藍子「あうっ」
加蓮「興味があるってだけで今はいいよ。なんていうか……ほら、新しいことに挑戦っていうのは少しお休みしたいし」
藍子「お休み?」
加蓮「うん。ちょっと勇気を使いすぎちゃったかも。この前のクリスマスLIVEとか……サンタクロースの件、とか」
藍子「……そうですね。最近の加蓮ちゃんは、ずっと頑張りっぱなしでしたね」
加蓮「今日はこうして藍子の膝の上でお休み」
藍子「猫さんみたいに、ゴロゴロしちゃいましょう」
加蓮「日向ぼっこ?」
藍子「とってもいい天気ですからっ」
加蓮「どうせこうしてればさ、やりたいことなんてすぐ見つかっちゃうよ」
加蓮「知らないことは、まだまだいっぱいあるもん。こんなに自由で……やりたいって思うことは、なんでもできるんだから」
加蓮「その時はまた付き合ってよね、藍子っ」
藍子「はいっ」
加蓮「今日はひたすらごろごろするのだー。頭撫でてー♪」
藍子「はいはい」ナデナデ
加蓮「んふー♪」
□ ■ □ ■ □
藍子「…………♪」ナデナデ
加蓮「…………♪」ナデラレ
加蓮「……あ、そうだ。あのさ、藍子」
藍子「はい。なんですか? 加蓮ちゃん」
加蓮「写真……」
藍子「写真?」
加蓮「ほら、病院の……あの人が、送ってくれた写真なんだけど」
藍子「ふんふん」
加蓮「藍子に預けてていい?」
藍子「私に……?」
加蓮「うん」
藍子「いいですけれど……加蓮ちゃんが持っておいた方がいいんじゃ? だって、そんな大切な写真……」
加蓮「写真、藍子の方が大切にしてくれそうだし」
藍子「でも……」
加蓮「……こんなこと、写真が好きな藍子に言ったら怒られちゃうかもしれないけどさ」
加蓮「私は"思い出"があればそれでいいの。プレゼントを渡してあげた思い出と――あの時、あの子と話したこと。勇気を、あげられたこと」
加蓮「それだけで、私は十分なの」
藍子「…………」
加蓮「それにさ。こういう写真とかって、甘えちゃいそうで」
藍子「甘えちゃう……?」
加蓮「うん。もう終わったこととか、昔のこととか。そういうのに甘えちゃいそうになるんだ、私」
加蓮「私、そんなに強くはなれないし……辛いことや嫌なことがあったら、幸せな思い出に逃げちゃいそうなの」
加蓮「だから、その写真は藍子が持っててよ」
藍子「……甘えてもいいと思いますよ。加蓮ちゃんは、ちょっと自分に厳しすぎます」
加蓮「そうかな」
藍子「そうですっ。つらい時には、逃げちゃってもいいじゃないですか」
加蓮「んー……」
藍子「逃げても、甘えても。加蓮ちゃんなら、また立ち直って、前を向くことだってできるのに……」
加蓮「だとしても、ね。なんか……そーいうの、違う気がして」
藍子「そうですか……」
加蓮「ちょっとね」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……私でいいなら、写真、大切に保存しておきますね」
加蓮「ん。お願い。その方が写真も喜ぶよ」
藍子「でも、それは……決別とは、違いますから」
加蓮「決別?」
藍子「ちゃんと積み重ねておいてくださいね。加蓮ちゃんの中に」
加蓮「うん。それは分かってるよ」
藍子「ならいいですっ。とっておきのアルバムを見つけて、そこにしっかり入れておきますね。見たい時になったら、いつでも言ってください」
加蓮「お願いします」
藍子「……ううん。アルバム、一緒に探しに行きましょ?」
加蓮「これ。写真。……また一緒に探しに行こうね」
藍子「はい。……すごく、幸せそうな顔ですよね。看護師さんも、加蓮ちゃんがプレゼントを渡した子も」
加蓮「うん。……覚えてる? 2人目の子。って、あはは、藍子はそもそも顔も見てないんだっけ」
藍子「加蓮ちゃんから聞いているので、なんとなくイメージは……この子、ですよね?」(写真を指差し)
加蓮「親と上手くいってなくて、話し相手もほとんどいなくて」
藍子「欲しい物を聞き出すまで、時間がすごくかかっちゃったんでしたっけ」
加蓮「その子がもう大はしゃぎだったんだって。加蓮ちゃんからプレゼントをもらえたー! って。1日中、ううん、3日くらいもうずっとニッコニコで」
藍子「ふふっ。なんだか想像できちゃます。すっごくはしゃいでたんだろうなぁ……♪ 写真からも、それが伝わってきますっ」
加蓮「こんなにカメラに寄ってさ。見てよこれ。右手でピース作ってる」
藍子「ほんとだっ」
加蓮「絶対そんなことする子じゃないんだってさ。それは……ね?」
藍子「ふふっ」
>>26 下から2行目の加蓮のセリフの末尾、一部訂正させてください。
誤:~それは……ね?」
正:~それが……ね?」
加蓮「あと、元気になったのは気持ちだけじゃないんだって」
加蓮「まだはっきりとしてないから分からないけど、次の検査とかも期待できるって言ってた。そうそう、もしかしたら親と上手くいくかもしれないって、手紙に書いてあったの」
藍子「わぁ……!」
加蓮「本物の魔法みたいになっちゃった」
藍子「加蓮ちゃんの魔法――」
加蓮「それを読んだらさ。……あはは。つい泣いちゃった」
藍子「……だから、泣いた跡があったんですね」
加蓮「え!? ウソ、そんな跡あった!?」
藍子「ちょっとだけ。じっくり見て、やっと気付けるってくらいですよ。たぶん、ちょっと見ただけならバレないと思いますけれど……」
加蓮「な、ならいいや。……いや藍子に見透かされるってだけでも良くない!」
藍子「何に意地を張ってるんですか……。プレゼントをぜんぶ配り終わった後なんて、加蓮ちゃん、大泣き――」
加蓮「わーわーわーわー! あれはそのっ、そ、その……」
藍子「その?」
加蓮「……忘れろぉ!」
藍子「無理ですっ」
加蓮「ぐぬぬぬぬぬ……」
藍子「落ち着いてください、加蓮ちゃんっ」ナデナデ
加蓮「はふぅ♪ ……ちっがーう! こ、この魔女め……! 人をたぶらかす魔女め!」
藍子「たぶらかすなんてっ」
加蓮「やっぱ悪い魔女じゃん!」
藍子「そんなつもりはないんです~~~っ」
加蓮「ああぁでもここあったかくて頭を上げられない!」
藍子「今日はもう逃しませんよ~♪」ナデナデ
加蓮「闇子め!」
加蓮「……と、とにかくっ、私の話はいいの! 私の話より子供の話!」
藍子「はいっ」
加蓮「ご、ごほんっ。……とにかくさ。写真に映るみんな、すっごくいい笑顔だよね」
藍子「笑顔、ですね」
加蓮「笑い声が聞こえてきそうなくらい」
藍子「ありがとう、って言葉が聞こえちゃうくらいに」
加蓮「なんか、そういうのって……いいよね」
藍子「はい。すごく、いいですよね」
加蓮「いいなぁ」
藍子「うんうんっ」
加蓮「私が、笑顔にできたんだよね……」
藍子「加蓮ちゃんができたんですよ。他の誰でもなく。加蓮ちゃんだから、できたんです」
加蓮「そっか」
藍子「そうですっ」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……あとさ」
藍子「あと?」
加蓮「あの人。看護師の」
藍子「加蓮ちゃんと仲良しの看護師さんですよね。イヴの時は、受付にいた」
加蓮「仲良しっていうか腐れ縁みたいなものだけどね」
藍子「歳の離れた幼馴染、なんてっ」
加蓮「そんないい言葉を使える相手じゃないけどね。どっちかっていうと、親戚の、ちょっと鬱陶しいおばさん?」
藍子「えー。そんな言い方したら怒られちゃいますよ」
加蓮「ちっちゃい頃の私のこととか、聞いてもないのに話し出すし」
藍子「それは……確かに、親戚のおばさんみたいな感じですね」
加蓮「でしょ? そのくせ最後には応援してるって笑顔で言うんだから、憎むに憎めなくて」
藍子「ふんふん」
加蓮「一緒に映ってるじゃん。どの写真にも」
藍子「映ってますね」
加蓮「ほっとしてる」
藍子「ほっとしてますっ」
加蓮「子供の入院患者って、どうやっても気を遣う相手らしいんだ。プレゼントを配る日までの打ち合わせをしてる時に、1回だけそんな話を聞いてさ」
藍子「ってことは、加蓮ちゃんも……」
加蓮「うん。……逆に、素直じゃなくて助かった、なんて。ぶっちゃけられちゃった」
藍子「素直じゃないのに、助かった……?」
加蓮「ねー。変だよね。藍子なんて、私がねじ曲がっているせいで困りまくってるのに、あの人は私が素直じゃないから助かったって言うんだよ」
藍子「ほんとですね♪」
加蓮「……ちょっとは否定してくれてもいーじゃん。せめて悩むとか」
藍子「それで、助かったってどういう意味なんですか?」
加蓮「むぅ。ほら、あんまり素直すぎたら……ほら、痛いとか嫌だとか、素直に言われすぎるのも嫌なんじゃない?」
藍子「あぁ」
加蓮「で、あの人、ずっと子供の入院患者を担当してるんだって。子供ウケがいいから押し付けられてるとかなんとかで」
藍子「昔から、ずっとなんですね」
加蓮「そんなあの人が……すごく……ほっとしてるの、見て」
加蓮「何かできたのは、子供にだけじゃなくて……」
加蓮「もしかしたら、恩返しにもなったのかな、なんて」
藍子「……」ナデナデ
加蓮「あはは……やめてよ。また泣きそうになっちゃうじゃん……」
藍子「……大丈夫ですよ」
加蓮「あはっ……」グスッ
藍子「大丈夫」ナデナデ
加蓮「……もう……。だから思い出に浸って……甘えるの、嫌なのに。どんどん弱くなりそうで……」
藍子「加蓮ちゃんは、弱くなんてなりませんよ」
加蓮「もお……」グスッ
藍子「……」ナデナデ
加蓮「……」ナデラレ
藍子「……」ナデナデ
加蓮「……ぐすっ……」ナデラレ
藍子「……」ナデナデ
加蓮「……」ナデラレ
藍子「……」ナデナデ
加蓮「……」ナデラレ
藍子「……」ナデナデ
加蓮「……しんみりモードしゅーりょー!」
藍子「ひゃわっ」
加蓮「終わり! 終わりったら終わり! 泣いてばっかりいたら藍子にも笑われるもんね!」
藍子「だから笑いませんってばっ」
加蓮「そんなこと言って? 実は?」
藍子「……はい、そうなんです。心の底では……うふ、加蓮ちゃん、また泣いてばっかり――って何言わせるんですかぁ!」
加蓮「やっぱり闇子だ」
藍子「藍子です!」
加蓮「あはははっ。……えと、マジで考えてたりしないよね? 笑ってたりしてないよね?」
藍子「しません! 加蓮ちゃんが演技っぽく言うから、つい乗っちゃっただけですよ。不安になるくらいなら、最初から言わなければいいのに」
加蓮「だって私だし」
藍子「もー」
加蓮「よかった。あ、いや、藍子がそういう子じゃないってのは最初から分かってたけど? うんうん。知ってた知ってた。ま、確認みたいなものだよ。確認って大切だってアイドルやってる時もよく言われるしー」
藍子「そんなこと言って、実は?」
加蓮「……いつも独りになってから思うんだ。藍子の重荷になってないかなって。私、身勝手だもん。もし藍子に迷惑になるなら、いっそ私なんていなくなってしまった方が――って何言わせんのよ」
藍子「ふふふー、仕返しですっ♪」
加蓮「なーんか手のひらの上って感じ」
藍子「手の上じゃなくて、膝の上ですっ」
加蓮「うまいこと言ったつもりかー。相変わらず藍子は強敵だなぁ」
藍子「そうさせたの、加蓮ちゃんですっ。…………あの……本当に思ってたりしませんよね……?」
加蓮「アンタもかいっ」
藍子「つい。演技だって分かってても、加蓮ちゃん、さっきすっごく真剣な表情だったから」
加蓮「演技だからこそマジ顔でやらなきゃ。ホントは……」
藍子「ほ、本当は?」
加蓮「……ぶっちゃけていい?」
藍子「え」
藍子「……あ、えと。は、はい。本当は、どうなんですか?」
加蓮「…………」
藍子「加蓮ちゃん……?」
加蓮「――なんてねっ」
藍子「」ガクッ
加蓮「そんな重い女になる気はないしー? 変にあれこれ考えすぎても疲れるだけだしさ。あと藍子にも怒られそうだし」
藍子「ほっ。……って、も~~~! 本気で心配しちゃったじゃないですか!」ペチペチペチペチ
加蓮「いたいたい、ごめんごめんっ」
藍子「むぅ。罰として、暖かくするのとお腹いっぱいになるのとお風呂に浸かるの、3日間に延長です!」
加蓮「そしたら年越しちゃうよ?」
藍子「一緒にカウントダウンして、初詣に行きましょ?」
加蓮「えー。いいけど」
藍子「あとでお母さんにもお話しておきますね。そうだっ。加蓮ちゃんの分のおせち料理も用意しなきゃ!」
加蓮「……ん? マジな話? 冗談じゃなくて?」
藍子「? 最初から、冗談は言っていませんよ?」
加蓮「あ、そう……。いいや。じゃあ私もお母さんにメールしなきゃ。あ、荷物くらいは取りに帰らせてね?」
藍子「ダメです」
加蓮「えっ」
藍子「代わりに私が取りにいきます。加蓮ちゃんはここにいてください」
加蓮「えっ」
藍子「この家にいてもらって、暖かくするんですから。外は寒いから、加蓮ちゃんを外に出す訳にはいきません」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
加蓮「……や、闇子め!」
藍子「藍子です!」
□ ■ □ ■ □
加蓮「……うん。うん、そういう訳だから、藍子がそっちに行くと思う」
加蓮「なんでって……さあ? なんでだろ。……とにかくそういう訳だから。分かってるって、迷惑はかけないよ。もー、子供じゃないんだから」
加蓮「じゃねっ」ピッ
加蓮「ふぅ」
藍子「電話、終わりましたか?」
加蓮「藍子こそ戻ってきてたんだ。お母さん、何って?」
藍子「オッケーって言ってましたよ。すっごくニコニコしてましたっ」
加蓮「そっか」
藍子「……あと、こっそり相談されちゃいました。加蓮ちゃんが畏まっちゃってるから、もしかしたら怖がられてるのかな? なんて」
加蓮「別にそういう訳じゃなくて……やっぱ緊張するでしょ。友達の親なんて」
加蓮「てか、こっそり相談されたことを私に言っても良かったの?」
藍子「あっ……」
加蓮「しーらないっ」
藍子「加蓮ちゃんのお母さんは、何って?」
加蓮「よく分からなさそーにしてたけどオッケーだって。迷惑かけるなって散々言われちゃった。……あ、でもなんか嬉しそうだったなぁ」
藍子「嬉しそう?」
加蓮「あんまり外泊とかしないし……アイドルになる前とか、友達がぜんぜんいなかったことに心配してたしさ。お母さん」
加蓮「よっと」スマフォヲナゲル
加蓮「……なーんかよく分かんないまま閉じ込められちゃったけどさ」
藍子「ふふ、閉じ込めちゃいました」
加蓮「事務所くらいは行かせてよ? LIVEの準備とかレッスンとかはあるんだし」
藍子「もちろんですよ。一緒に行って、一緒に帰りましょ?」
加蓮「はいはい」
藍子「今年ももうすぐ終わりですけれど、あとちょっとだけ。よろしくお願いしますね、加蓮ちゃんっ♪」
加蓮「あははっ、そこは来年もよろしくって言うところじゃないの?」
藍子「来年のことは、来年になったらで!」
加蓮「藍子だけじゃなくて鬼にまで笑われちゃうもんねー。じゃ、あと数日だけだけど、よろしくっ」
藍子「はーい♪」
おしまい。いちゃごろしてるだけー。
いつも読んでいただき、そしてコメントをしていただき、本当にありがとうございます。
また、毎話まとめて頂いている方にも、心からの感謝を。
(毎度毎度、細かい修正が発生してしまって申し訳ないです……)
今年もありがとうございました。
来年もまた、よろしくお願いします。
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