12月25日



モバＰ「むぅーーーー」


ちひろ「……」カタカタ


モバＰ「もぉーーーー」


ちひろ「……」カタカタ　


モバＰ「んなぁーーー」


ちひろ「何ですかさっきから！仕事してくださいよ！」


モバＰ「あぁ～すいませんちょっと悩み事が」


ちひろ「……プロデューサーさんがそこまで深刻に悩むのは珍しいですね。
大変な問題なんですか？」


モバＰ「大変な問題ですね」


ちひろ「何について悩んでるんですか？」


モバＰ「有馬記念の買い目ですね」


ちひろ「は？」


モバＰ「あっしまった」


ちひろ「この、年の瀬の、忙しい時に……！」


モバＰ「いやー違うんです。
有馬、ありま、えーと、ありまぁ？とかなんとか、そういうのと言い間違えたんですな」


ちひろ「言い間違え先も定かじゃないじゃないですか！」


モバＰ「あっ、いかん、昼休みですよ。
自分ちょっとツインターボしますね。では」ﾀﾞｯ


ちひろ「あっこら！プロデューサーさん！
……ツインターボするって何かしら？」


※ツインターボ→四半世紀昔にいた逃げ馬。
レースが始まると同時に凄まじいハイペースで突っ走り、
最後の直線でターボエンジンを逆噴射する

モバＰ「さて誰を軸にしたものか。
キタサンブラックでいいのかなあ」

※軸→レースで活躍しそうな何頭かのうち、最も確度が高いと予想される馬のこと。
馬券予想の中心となる。
「アタマ」ともいう。
対）→ヒモ


堀裕子「おやプロデューサー。お昼ご飯ですか？」ﾃﾃﾃｰ


モバＰ「おー、そうなんだけど、……。
お前に聞いても分かるわけないかあ」


裕子「おや？おやおや？今のは私の学力に対する挑戦ですね？」


モバＰ「いや違うよ。
ん！そうだ、ユッコ、お前、未来予知も出来るのか？」


裕子「もちろん出来ますん！」


モバＰ「曖昧な事を元気いっぱいに言うな」


裕子「まあやるだけやってみましょうか」


モバＰ「頼むよ。じゃあ、１から１６の数字で、気になる数字はある？」


裕子「気になる数字……分かりました。

占ってみましょう！」


モバＰ「お前いま占いって言っちゃったなぁ……」


裕子「むむむむーーん！」


モバＰ「……」


裕子「むんむむむんむんむーん」


モバＰ「……」


裕子「むむむんむむむん」


モバＰ「どのぐらいかかるの？」


裕子「２時間くらいですかね？」


モバＰ「後でまた来るわ」

社員食堂


モバＰ「……」

モバＰ「これはひどい争いだあ」


川島瑞樹「サトノダイヤモンドがキレだけが取り柄のスローペース専門ですって！
もう１回言ってみなさいよ！」


片桐早苗「出馬表にそう書いてるじゃないの！見えないの！」


瑞樹「あなたは出馬表ばっかみてるからダメなのよ！

この馬体見てよ、一切のムダがなくてぇ、しなやかな筋肉質ぅ……☆

サトイモ君はどう見てもロングスパート型のステイヤーよ！」


早苗「サトイモ君呼びに全部持ってかれるわ」


瑞樹「早苗こそ、ジャパンカップで痛い目を見てからのキタサンブラック後追いとか、
どんなつまらない馬券よ、全然わからないわ！」


早苗「あたしは自分の間違いを認めただけよ！何よあれ、逃げて差すとか反則じゃない……

悔しい……っ！でも外すと馬券にならない……っ！」


瑞樹「早苗……」


早苗「2400のリアルスティールなんか２度と買わないんだから……！」


瑞樹「ジャパンカップでも後追いしとんのかい」

※キレ→レースのラスト600ｍほどの間に、優れた最高速度を集中的に発揮する特性のこと。

※ロングスパート→レースのラスト800ｍや1000ｍを、高速で走り抜けること。
スタミナに優れた馬の戦法。

※ステイヤー→2400ｍ以上の距離を得意とする馬のこと。

※後追い→後追い馬券。全く注目していなかった馬が結果を出したため、
次のレースでは何食わぬ顔でその馬の馬券を買うこと。
買うのも屈辱だが、それをハズすと死にたくなる

モバＰ「おーい二人とも、ちょっと落ち着い」

兵藤レナ「展開予想を忘れてるんじゃないかしら！？」バーーン


早苗・瑞樹「出たなラップ厨」


レナ「それはマキノちゃんでしょう！私は展開厨！
肝心なのは展開よ。展開を読まなければ予想する意味なんてないわ。
さあシミュレーション開始よ！」


早苗「望むところよ」

瑞樹「待ってました」


モバＰ（ノリが良いなぁ）


レナ「瑞樹さん、実況して」


瑞樹「がしゃこん！ゲートが開きました」


早苗「すぐよねアンタ」


レナ「まずマルターズアポジーが行くわね」


瑞樹「マルターズアポジー出ムチを打って、スルスルスルスル～っと先頭に立つわよ」


早苗「実況のクセが強いわ」


レナ「武豊はどうせ好スタートだからキタサンが２番手ね。
アポジーはセーフティリードを取ってペースを落とす。
他の馬も、キタサンに絡むと競り潰されるから、スローペースになる。

という事は……」


早苗「４コーナーまでに、先行馬がポジション取りに殺到するわね！」

レナ「そうなるわね」


瑞樹「……だ、そうよ～」


早苗「実況サボるな」

レナ「サトノダイヤモンドは外枠だから無理して先行しない……かな」　


早苗「ルメールはやるわよ、たぶん。瑞樹ちゃん、どう思う？」


瑞樹「うーん……。


……外からサトノダイヤモンドが被せて行くわよ～」


早苗「行った」


レナ「行ったわね」


瑞樹「１週目のスタンド前、喝采を受けて先頭を行きますマルターズアポジー、
３馬身ほど開いてキタサンブラック、
ぴったりマークしていますゴールドアクター。

ヤマカツエースが続きまして、その外にサウンズオブアース、
さらに外に並びかけているサトノダイヤモンド早目の競馬」


早苗「うまいうまい」


レナ「あら、なんだかこれ、先行してる人気馬で決まってしまうんじゃない？」


早苗「んっ……？先行の人気馬で決まる！？

ここから先行勢が脱落する可能性は？」


レナ「いやもうペース落ち着いちゃってるし」


瑞樹「……」

早苗「……」




瑞樹「穴馬が突っ込んで来るように、」

早苗「都合よく練り直しなさい」


レナ「それシミュレーションする意味ある！？」


瑞樹「あるわよ」

早苗「夢とオッズが膨らむじゃないの」


レナ「それもう予想じゃなくて願望よね！」

５分後



早苗「キタサンとサトイモ両方沈めてどうすんのよ！バカね！」

瑞樹「さっぱり予想が立たないじゃないの！」

レナ「わがまま過ぎる」


瑞樹「どっちかを上手いこと沈めるのよ」

レナ「サトイモなら簡単に沈められるけど」

瑞樹「良いわよ」

レナ「川島さん、サトイモのファンだったんじゃ？」

瑞樹「関係ないわよ。倍率が上がればそれでいいのよ」

早苗「わかるわ」

レナ「ムチャクチャだもう」

５分後



安部菜々「ナナはＪＫなので競馬はよく分からないですけど、
お稽古のタイムが大事かなって、ビビッと閃きましたよ！」


早苗「うるっさいわよ！何がお稽古よ！調教と言え！」

菜々「何でこんな荒れてるんですか！？」

瑞樹「調教厨のしかもＪＫごときは引っ込んでなさいよ！」


菜々「ＪＫごときとは失礼な！これでもアドマイヤベガのダービーから競馬を見ている17年選手ですよ！」


瑞樹「生後１か月から見とんのかい」

レナ（ＴＴＧの有馬とか言い出したらどうしようかと思った）


ナナ「ナナお奨めの調教一番馬はミッキークイーンです！キャハッ☆」


早苗「もう調教って言ったよ」

瑞樹「一番も何も今回の調教で何が分かるのよ。
初めて見たわよ、「モヤで見えなかったから計測不能」って！調教厨は引っ込んでなさいよ！」


モバＰ（ふーむミッキークイーンねー。あぁ～また買い目が増えちゃったなぁ）


※ＴＴＧ→テンポイント・トウショウボーイ・グリーングラスの３頭のこと。
ＴＴＧの有馬記念は1977年。日本競馬史上最高の名勝負とされる

５分後



楓「クリスマス……サンタ……、うーん」


瑞樹「……」

早苗「ダジャレ馬券を考えてるわね」


楓「クリスマス、サンタクロース、サンタ……。
あっ、キタサン、サンタ」

瑞樹「しょうもない事を思い付いたなー」

楓「有馬記念、有馬、ありま……」

瑞樹「……」


楓「ありま、まあり、まりあ、……あっ、マリア。
ん？６１回……１６。
……１６番！有馬６１回・１６番マリア！！」

瑞樹「おっ」

早苗「いい手だねぇ」

菜々「うんうんうん」


モバＰ（けっこう好き。マリアライトね）

５分後


裕子「プロデューサー！見えました！」


モバＰ「おっ、早かったな。で、何番だ？」

裕子「１と２と６と10と11と14です！ちょっと多かったですね☆」

モバＰ「ほほー。お前分かっててやってるな？」

５分後


メアリー・コクラン「一番強い馬？グラスワンダーに決まってるでショ？」

市原仁奈「スペシャルウィークがつえーですよ！」

ヘレン「心まで……エルコンドル！」


早苗「９８世代基地の水掛け論が始まっちゃったよ！」

瑞樹「なんかひと味違う論客ね」


大西由里子「ユリユリはダート馬が好きだじぇ！！！！！！
セイヤッセイヤッ」


早苗「たぶんだけど違う何かの話をしてるわね」


モバＰ（ダーク一家の話！？）にゅっ



※９８世代基地の水掛け論→
1998年から2001年の期間において、最も強いのはどの世代か、あるいはどの馬かを話し合うという競馬板恒例の泥沼論争。
早い段階で罵り合いになる。

５分後



モバＰ（なんだか話を聞くほどに買い目が増えていくなあ……

うーーーーん）


バーーン！！

佐藤心「みーんなー！有馬の本命はもう決まったかなー？
はぁとのオススメはー、キタサンブラックの単勝だぞ☆
キタサンブラックだぞ☆」

小日向美穂「キタサンブラックやぞ！」


早苗「推奨されんでも分かっとるわ！」

瑞樹「なんでキタサンを推すのかしら？根拠は？」


心「そんなの無いんだぞ☆勝つったら勝つんだぞ☆」

美穂「勝つんやぞ！」

早苗「ハーーー！？」

瑞樹「こっちはねぇ願望なんか聞き飽きたのよ。

高配当。それだけが私たちを動かすのよ！」

心「願望じゃねーか」

早苗「根拠を持って来なさい。キタサンブラックが馬群に沈む根拠をね！」

心「馬群に沈む根拠！？勝つって言ってるだろ！
いいからキタサン買って！買えよ☆」

早苗・瑞樹「もう勘弁して！」

レナ「誰か茄子ちゃん呼んできてー」



モバＰ（なんであんな強引に推すんだろう？）

５分後

早苗「もうなんか疲れてきた……」

瑞樹「急に疲れが来るわよね……」

早苗「何でここまでして馬券買わなきゃならないのかしら……」

瑞樹「早苗それ毎週同じこと言ってるわよ」


早苗「もういい。もういいわ！有馬記念なのよ！

好きな馬を買うべきよ！

だから……

もう好きな馬っていうかもう……


大穴を狙うべきよ！」


瑞樹「早苗、待ってたわ、その言葉を」


早苗「ならば」

瑞樹「ええ」


早苗「マルターズアポジーから」

瑞樹「馬単総流しよ！」


早苗「みんなもそれで良いわね！？」


「「「(もうそれで)いいです」」」


えい！えい！おー！
えい！えい！おー！

モバＰ「やけくそだな」


モバＰ（……おっ？

あぁそうか、キタサンブラックのお母さんの名前って……）


モバＰ（よしよし。ロマンを失えば競馬はただのデータ分析だ）

モバＰ（その単勝に乗らせてもらうか）

早苗「あっ、プロデューサー君、買い目決まった？」

瑞樹「プロデューサー君も夢に乗らない？」

モバＰ「いやあ、俺はキタサンブラックの単勝で大勝負」


瑞樹「キタサン？根拠は？」　

モバＰ「母の愛だよ」

早苗「ちょっともう訳分からないこと言うのやめてくれない？
しょっぴくわよ！」

瑞樹「私の心をもてあそぶのやめてよ！」


モバＰ「あんたたちのめり込み過ぎなんだよ。あっ、中継始まるよ」

早苗・瑞樹「おりゃあーーー！！！」

『キタサンブラック先頭！キタサンブラック先頭！
しかしサトノダイヤモンド追い上げる！
２頭全く並んだ！
キタサンブラックか！サトノダイヤモンドか！

サトノダイヤモンドか！


サトノダイヤモンド１着～』

　　　もんぎゃーー
　　　＼　　　　／
　　　　＼　　／
　　　┌────┐
　　　│３４６　│
　　　│　　　　│
───┴────┴────

しーーん


早苗「……」
早苗「み、瑞樹ちゃん、生きてる……？」


瑞樹「肋骨が何本か……あと左腕が何本かいったわ……」


レナ「左何本あるのよ」


早苗「心配要らないわ……片腕があればマークシートは埋められるでしょ」

瑞樹「ええ、倒れてなんかいられないわ。私たちには待っているものね」


早苗・瑞樹「東京大賞典が！！」


レナ・菜々「えぇ～～～……」

モバＰ「おはよう、心」

心「おはようプロデューサー！朝からはぁとに会えるなんてぇ、プロデューサーの果報者☆嬉しいだろ☆」

モバＰ「いや果報じゃないよ、昨日はひどい目にあったな、お互い……」

心「ひどい目？何のこと？」

モバＰ「え？だってほら、昨日有馬記念でキタサン負けてさ。
単勝馬券が紙くずになったろ」


心「あー…………ふふ」


モバＰ「ん？」



心「でんでんでんでん……

スウィーティ～」ｼﾞｬｰﾝ



モバＰ「複勝買ってやがった」ﾊﾞﾀｰﾝ


心「ありまぁプロデューサーが気絶しちゃった。記念ショットー☆」ﾊﾟｼｬｰ



おわり