モバP「アブラカタブラ替言葉」 (68)
モバマスSSです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482500909
事務所
美嘉「ふぅ…」
P「お疲れ様」
美嘉「あっ、お疲れー。どうだったアタシ?」
P「良かったぞ」
美嘉「具体的には?」
P「表情が良かった」
美嘉「ふーん?」
P「他の人は分からないが、俺は目を惹く表情だと思ったな」
美嘉「なるほど、なるほど」
美嘉「あ、あれだね…若干ハズい」
P「言ってる方はもっと恥ずかしいがな」
美嘉「あはは。顔赤い~」
P「参ったな」ポリポリ
莉嘉「PくんPくんっ!リカも褒めて褒めて!」
P「あぁ、莉嘉も良かったぞ」
莉嘉「うんっ!いつかお姉ちゃんより凄いって言わせてみるんだから!」
P「おー頑張ってな」
美嘉「アタシも頑張らないとっ!」
莉嘉「お姉ちゃんは、ちょっと足踏みしといてよー」ブーブー
美嘉「まだまだ莉嘉には負けられないからね!」
>>2
冒頭 ですが、事務所ではなく車内です。
申し訳ございません。
車内
莉嘉「あ、Pくん見て見て!」
P「どうした?」
莉嘉「あのポスター!」
P「…あー。この間撮った化粧品のポスターだな。もう出たのか」
美嘉「あ、周子じゃん」
P「肌白いからイメージにぴったりだよな」
美嘉「映えるねー」
莉嘉「可愛いねー。そういえば、この間お姉ちゃんのもあったよね」
P「ポスターか?」
莉嘉「うんっ!池袋だったかなぁ…お姉ちゃんと一緒の時に見たんだ!」
美嘉「そんなこともあったかもね」
美嘉(自分があそこまで大きくバーンで出されると正直結構ハズいかも…)
P「確かにこの間美嘉のも見たな」
美嘉「うぇ。見たの?」
P「そら見るだろう」
美嘉「まぁ、その為に撮ってる訳だもんね」
莉嘉「アタシが知ってる人がそういうトコに出ると凄いなーって思うなー」
P「莉嘉も今にきっとそうなるさ」
莉嘉「うん。そこはPクンを信じるねっ」
莉嘉「でもでも、ちょっとだけユーエツ感があったりするんだ」
P「お?」
美嘉「うん?」
莉嘉「例えば、シューコちゃんが割と事務所だとのんびりしてたりするとかってのはファンの人は知らないじゃん!」
莉嘉「そこのとこはユーエツ感あるなぁって」
P「あぁなるほど」
美嘉「そういうことね」
莉嘉「うんっ。あ、でも、杏ちゃんがだらだらしてるのは皆知ってそう……」
美嘉「そりゃ違いないね」アハハ
P「そもそも杏がこういうので出ることは少なそうだな」
莉嘉「……」スゥ
美嘉「ありゃ、寝ちゃった」
P「まぁ、疲れたんだろう」
美嘉「そりゃ、アタシですら疲れたしね」
P「美嘉も寝ていいぞ?」
美嘉「…大丈夫。今寝たら夜寝れなくなりそうだし」
P「そうか。ならいいが」
美嘉「うん。アタシらの家までお願いね★」
P「分かってるって」
美嘉「オッケー」
美嘉「アレだね。莉嘉も言ってたけど」
P「ん?」
美嘉「ああやって街中で事務所の子のポスター見ると不思議な感覚になるよね」
P「まぁ、そうだな」
美嘉「アタシらにはああいう仕事ないの?」
P「向こうのオファー次第かもな。美嘉はこの間やっただろ?」
美嘉「ま。そうだけど」
P「でも、美嘉も莉嘉も雑誌の表紙飾ったりしてるから本屋に行ったら良くポスター貼られてるぞ?」
美嘉「よく見てんね」
P「まぁ、実際売れるか気になるからな」
美嘉「信じてないってこと?」
P「と言うか、売れていれば更に色々な場所に売り込みが出来るからさ」
美嘉「なっるほどねー」
美嘉「アイドルの世界も椅子取りゲームみたいなもんなのかな?」
P「椅子取りゲームか。言いえて妙だな」
美嘉「アタシもたまには上手いこと言うでしょ?」
P「そうだな」
美嘉「たまには。ってトコは否定しないんだ」
P「悪いな」
美嘉「ま。いいけどね」アハハ
P「確かに椅子取りゲームかもしれないけど、ゲームとは違う所があるのも事実だな」
美嘉「お?」
P「椅子は増やせるからな」
美嘉「……そーだね」
P「そこはもしかしたら美嘉達が関係ない所の話かもしれないけどな」
美嘉「そーだね。アタシがどうこうしてって感じじゃないカモ」
美嘉「椅子取りゲームなら苦手じゃないんだけどねぇ…ゲームなら」
P「それじゃ、お疲れ様」
美嘉「ん。ありがとねー」
莉嘉「……ありがとPクン」
P「まだ寝惚けてるな…」
莉嘉「うん…ばいばい」
事務所
P「ただいま戻りました」
ちひろ「おかえりなさい」
P「ふぅ…ちひろさんも遅くまでお疲れ様です」
ちひろ「プロデューサーさんこそ」
P「まぁ、仕事ですからね」
ちひろ「えぇ。仕事ですから」
ちひろ「そう言えば、最近は新しい子はスカウトしてきませんね」
P「これ以上は無理そうな気がしますしね」
ちひろ「確かにまぁ、それは思います」
ちひろ(現状でもよく回ってるなぁ…と思いますし)
P「今は皆もある程度しっかりしてきたんで、何とか回ってるんですが、また最初から教えるとなると地味に……」
ちひろ「余裕が出来てからですね」
P「そうですね。それしかないです」
ちひろ「ちなみにスカウトっていきなり名刺渡して…からやるんですか?」
P「まず身分を明かさないとこのご時世危ない人ですから」
ちひろ「確かにまぁ…危ない人ですよねぇ」
P「警察沙汰になりかねないですし」
ちひろ「あはは…私は迎えに行きませんよ」
P「アイドルの誰かに迎えに来て貰うしかなくなりますね」
ちひろ「…やっぱり私が行きます」
P「まぁ、そういうことはしないので大丈夫ですよ」
ちひろ「そうですよね。分かってて言ってます」
ちひろ「でも、ビビッとでしたっけ? 直感でスカウトする子を選んでるって聞きましたけど」
P「街中だとそうですね。勿論オーディションとかだとちゃんと色々テストありますから違いますね」
ちひろ「それで他の事務所のアイドルとかスカウトしちゃったことないんですか?」
P「あー……ないと思います」
ちひろ「ん?」
ちひろ(今、間がありましたね)
P「ないです。凛が一瞬そうかなと思いましたが、違いました」
ちひろ「あぁ、なるほどそういうことでしたか」
P「えぇ。そうですね」
ちひろ「けど、偶然そういう人に声掛けてなかっただけでそういう可能性もあったんですよね」
P「それは勿論そうですが…どうかされたんですか?」
ちひろ「いやですね。取り合いになっちゃったら嫌だなぁって」
P「アイドルの取り合いですか?」
ちひろ「そうですそうです。業界における事務所の強さも違う訳ですし」
P「まぁ、そんな簡単にどうこう出来るものじゃないとは思いますけどね」
ちひろ「それはそうですがない話じゃないですからね」
ちひろ「言い方が悪いかもしれませんが、燻ってる子が他の事務所のプロデュースで輝く可能性もある訳ですし」
P「その通りですね」
ちひろ「ですよねぇ。まだ小さい子が多いので甘い言葉に惑わされたりしないかなとかちょっと思っちゃうこともあるんですよね」
P「甘い言葉ですか」
ちひろ「『ウチならもっと輝かせてあげるよ』とかそういう類の」
P「あぁ、そういうことですか。理解しました」
ちひろ「ま。ウチの事務所の子たちはそういうのは大丈夫だとは思いますけどね」
車内
P「――とまぁ、そんな話を事務所でちひろさんとしてたんだ」
杏「ふーん」
周子「なんで今そんな話を?」
P「いや、ふと思い出してな」
周子「何を?」
P「話し終わった時にタイミング良く入ってきた二人がいたことを」
杏「ふーん。随分な偶然だね」
周子「そうだね」
P「本当だよな」
杏「ま。少なくとも杏はアレだね。今のプロデューサーより家が近い人じゃなきゃ移っていかないね」
杏「実質不可能なのでこの仮定は無意味」
周子「同棲する以外ないね」
杏「あー……」
P「杏が誰かと同棲するのは想像出来ないな」
杏「杏の何を知ってるのさ」
杏「と思ったけど、結構知ってるよね」
P「まぁな。そりゃプロデューサーだし」
杏「アイドルの家の台所周りを把握してるプロデューサーはあんまりいないと思うよ」
周子「ちゃっかり、あたしのトコも知ってるよね」
P「たまに呼んでくれるからな」
周子「たまにご飯作り過ぎることあるんだよね。テキトーに作ってると」
周子「んー。あたしも杏じゃないけどないね」
周子「蛇の甘言に惑わされるシューコちゃんじゃありません」
P「向こうの方がいい条件の事務所だとしてもか?」
周子「うーん……今の言い方はNGだよ。Pさんらしくもない」
P「悪いな」
周子「まったくもう…疲れてるなら休みなよ」
P「そうだな。今日は帰ってすぐ寝るよ」
周子「そーして」
杏「飴食べる?」
P「ありがとな」
周子「あ、そうだ。魔法の言葉教えてあげようか」
P「魔法の言葉?」
周子「アブラカタブラってね」
杏「アブラマシマシみたいだね」
P「胸焼けしそうだ」
周子「ま。そんなことは置いといて。Pさんの一言でそんな心配は杞憂になるよ」
P「なんて言えばいいんだ?」
周子「『俺と一緒にいてくれ』ってね」
杏「言ってて恥ずかしくないの?」
周子「きゃー、恥ずかし―い」
杏「わざとらしい」
周子「わざとだしね」
P「まるでプロポーズだな」
周子「そこまでの意味はないって。ただ、Pさんがプロデュースしたい。って言えばいい話ってこと」
杏「なるほどねー」
P「なるほどな」
P(初心に帰る的な感じか)
P「誰がスカウトしたんだ。って話だもんな」
周子「まぁ、そーゆーこと」
数日後
街中
「よろしいでしょうか?」
美嘉「アタシ?」
「はい」
美嘉「急いでるんで…ムリです」
「そうでしたか。名刺だけでも受け取って頂けませんか?」
美嘉「えっと。そういうの興味ないんで」
美嘉(ってか、アイドルやってるんだけどアタシ)
「お願いします」
美嘉「あ、はい。それじゃ頂きます。それじゃ」ダッ
バス内
美嘉「なんだったんだろ。見た目普通の人ぽかったけど…」
美嘉「聞いたことある事務所の気がするけど」
美嘉「……あー思い出した」
美嘉(結構大手っぽいトコだ)
美嘉「ウチより規模は大きかったハズ…うわ。良い所にある」
美嘉「だけど、なんでアタシに声掛けたんだろ?」
美嘉「ま。いっか。関係ないし」
事務所
美嘉「――てなことがあったよ」アハハ
P「そうなのか」
ちひろ「何もなかったからいいですけど気を付けて下さいね」
美嘉「大丈夫だって。引き抜きとかは受けないから」
P「そっちじゃないが…まぁいいか」
美嘉「うん。ヘーキヘーキ」
美嘉「ちょっと焦った?」
P「焦ってないと言ったら嘘だな」
美嘉「ふーん。そうなんだ。意外だね」
P「そうか?」
美嘉「だって。アタシらよか他の子と一緒にいるじゃん」
P「そうか?」
美嘉「そうだって。莉嘉が愚痴ってたよ『Pクンまたいないのー?』って」
P「悪いな」
美嘉「ま。アタシは大人だから言わないけどね」
ちひろ「まだまだ美嘉ちゃんも子供ですよ」
美嘉「子供じゃないって」
ちひろ「ふふふ。そうでしたか。それは失礼しました」
美嘉「む。Pさんからも言ってやってよ」
P「美嘉はいいお姉さんだよな」
美嘉「…ありがと」
ちひろ(大人か子供かの話はスルーしましたね)
ちひろ(莉嘉ちゃんがそう言ったのは事実でしょうけど、美嘉ちゃんも言ってる気がします)
ちひろ(だって、姉妹ですから)
美嘉「ただ、ちょっとショックだったよねー」
P「なにが?」
美嘉「ほら、アタシだってアイドルやってテレビとか雑誌出てるのにスカウトの名刺貰うなんてさ」
美嘉「なんか、まだ有名になり切れてないのかなぁって」
P「それはないと思うが」
美嘉「そうかな? 騒がれ過ぎて買い物とか出来ないのは嫌だけど、全く反応されないのも微妙という何とも言えない感じなんだけどね」
P「言わんとしてることは分かる」
美嘉「さっすが、アタシのプロデューサーだね★」
美嘉「そう言えば、この間原宿でさ――」
ちひろ「……」ジー
ちひろ(すっごい美嘉ちゃん楽しそう)
莉嘉「ち、ひ、ろ、さーん」
ちひろ「わっ!ど、どうしました?」
莉嘉「ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
ちひろ「えっと、私で分かることなら」
莉嘉「えっとね。会社って色々あるよね」
ちひろ「ありますね」
莉嘉「会社の強さ?って言うのかな、どういう会社が強いのかなって」
ちひろ「強いですか? 会社が潰れないとかそういう…?」
莉嘉「えっと…パワーがある会社ってどういう会社なのかなって」
ちひろ「えーと…質問の答えになってるか分かりませんが……」
ちひろ「会社規模が大きかったり、そこで働いてる人が多かったりすると強いと思いますよ」
莉嘉「ふむふむ」メモメモ
ちひろ「細かい話は難しい話になっちゃうんで割愛しますけど……いきなりどうしました?」
莉嘉「あ、えっと。社会の授業で聞いてきてって言われて!」
ちひろ「あぁなるほど! それだったらプロデューサーさんより私に聞いて正解かもしれませんね」
莉嘉「そうなの?」
ちひろ「ま。私は事務員なので……」
莉嘉「あーなるほど!うんうん。ありがとねっ!」
ちひろ「はーい。私で良ければまた質問に答えますね」
事務所
ちひろ「コーヒーどうぞ」
P「あ、わざわざありがとうございます」
ちひろ「別に構いませんよ♪」
P「機嫌良さそうですね。何かありましたか?」
ちひろ「ちょっと莉嘉ちゃんに頼りにされちゃいました」
P「お。どういうことですか?」
ちひろ「なんでも学校の授業の宿題で、どういう会社が大きいかとか聞いてきてって言われたみたいです」
P「中学生にしては結構難しいことやりますね」
ちひろ「ですよね。私もどう説明したら分かり易いか分からなかったです」
P「いずれにしても俺達が学生だった頃より授業も複雑になってるんでしょうね」
ちひろ「そうですねぇ。会社なんて学生の時考えたことなかったですし」
P「懐かしい話です」
ちひろ「ちなみに円周率は?」
P「3.14です」
美嘉の部屋
美嘉「はいはい。それじゃね~」ピッ
美嘉「……はー。そろそろ寝ようかなー」
美嘉「スカウトかぁ」
美嘉(例えば、あの時スカウトされてなかったら今回スカウトされたトコに行ってたのかな)
美嘉「いや、でも、あんなことやってくる人なんてそうそういないか」アハハ
美嘉「結局ダサくなかったね。ガッコの友達も応援してくれてるし」
ガチャ
莉嘉「おねーちゃーん」
美嘉「ん?どしたの?」
莉嘉「…ちょっと良い?」
美嘉「なに?改まって」
莉嘉「……Pクンとアイドルのお仕事どっちが好き?」
美嘉「んん!?」
美嘉「なにその比較」
莉嘉「どっちかなーって」アハハ
美嘉(どうかしたのかな…?)
美嘉「んー。そりゃアイドルの仕事でしょ。今ケッコー乗ってるし」
美嘉「莉嘉だってそうじゃないの?」
莉嘉「そーだよ。そーだもん」
莉嘉「アイドルの仕事もPクンも大好きだもん」
美嘉「…どうしたの?」
莉嘉「んー……」
莉嘉「アイドルの世界も椅子取りゲームってPくんとこの間話してたでしょ」
美嘉「あ、莉嘉起きてたんだ」
莉嘉「うん。半分くらい寝惚けてたけどねー」
莉嘉「アタシもお姉ちゃんと同じ答えかな。だから、アタシも考えてみたんだ」
美嘉「なにを?」
莉嘉「えっと…もっとお姉ちゃんとアタシが活躍出来る所があるんじゃないかって」
美嘉「……どこかにスカウトでもされたの?」
莉嘉「…!お姉ちゃんはエスパー?」
美嘉「アイドルはエスパーなの。ってのは冗談で、アタシもついこの間スカウトされちゃってね」
莉嘉「同じトコかな…?ココなんだけど」
美嘉「ビンゴ。同じトコ。アタシは急いでたし話してすらいないけど莉嘉は?」
莉嘉「えっと、バス待ってる所だったからちょっとだけお話はしたかな」
美嘉「そっか。それで、莉嘉なりに色々考えたんだね」
莉嘉「うん。ちひろさんに会社の話とか聞いてみた」
莉嘉「会社の規模?は向こうの方が凄いみたいで、この間一緒だった子はそこに所属してた」
莉嘉「勿論、Pくんと一緒にお仕事するのは楽しいけど……」
美嘉「……莉嘉が判断してそっちに行くなら止めないよ。事務所は違っても仕事は出来るし」
莉嘉「お姉ちゃんは?」
美嘉「アタシは今の事務所が合ってるみたいだしね。移る気はないよ」アハハ
莉嘉「そっか……」
莉嘉「じゃ、アタシもまだまだPくんと一緒に仕事したいしお姉ちゃんと同じ事務所に居ようっと!」
美嘉「そっかそっか」
莉嘉「コレはもう使わないね」ポイッ
莉嘉「ねっねっ! やっぱりPくんがいるから的なカンジ?」
美嘉「……ヒミツ」
莉嘉「えー!」
美嘉「いや、いくら莉嘉と言えども言えないこともあるって!」
莉嘉「ブーブー」
美嘉「んー……それじゃ、ヒントあげるから!」
莉嘉「答えは?」
美嘉「教えない」
莉嘉「なんのためのヒントー!?」
美嘉「まぁまぁ」クスクス
莉嘉「むぅ…ゼッタイPくん絡みだと思ったのに!」
美嘉「それだけじゃないってカンジかな」
莉嘉「Pくんも原因なのは否定しないの?」
美嘉「…うん」
莉嘉「ホント?」
美嘉「莉嘉には嘘吐かないって」
莉嘉「あ、もうこんな時間だ!それじゃおやすみー!」
美嘉「おやすみー」
美嘉「……」
P宅
ピリリリ
P「はい、もしもし」
美嘉『あ、もしもし?美嘉だけどー』
P「どうした?」
美嘉『あ、やっ、ちょっと連絡しただけ』
美嘉『もしかして…もう寝るトコだったりした?』
P「いや、録画したドラマを見てた所だ」
美嘉『誰が出てるの?』
P「ん?この間美嘉と莉嘉が出てたドラマ」
美嘉『なっ…!』
P「いや、評判は良かったみたいなんだが俺は見れてなくてさ」
P「流石に仕事中に見るのは時間なくてな」
美嘉『そ、そうなんだ…あはは』
P「なんなら感想でも言おうか?」
美嘉『ゼッタイ言わないで!』
美嘉(どっちの感想でも恥ずかしくてヤバイって)
P「そうか。上手いと思うけどなぁ…」
美嘉『そ、そう?』
美嘉(って普通に感想話し始めちゃった)
P「ちょっと初々しい感じが出てな。莉嘉の方が腕白だったな」
美嘉『まぁ、そうだよねー』
P「悪いな。それでどうした?」
美嘉『ん?電話した理由?』
P「なんかあったんだろ?」
美嘉『んー。あったっちゃあったね』
P「話してラクになるななら聞くぞ」
美嘉『……莉嘉が他の事務所からスカウトされたんだって』
P「……」
美嘉『あ、もう大丈夫だから。アタシが抜けないって言ったら莉嘉も抜けないって』
P「そうなのか」
美嘉『ん。でもね。それで良かったのかなって』
P「ん?」
美嘉『なんかね。勿論莉嘉が変なトコに行かないように見てるのも大事なことなんだけど』
美嘉『アタシがいるから。アタシがやってたから。そういう理由で縛りたくないなって』
美嘉『アタシは美嘉で、あの子は莉嘉。名前は似てるかもしれないし、血は繋がってる。だけど同じじゃないからさ』
P「…優しいな」
美嘉『アタシはズルいだけだと思うよ。もっと活躍出来る場所かも……。そう思ったのには何か理由があったのかもね』
P「悪いな。俺が不甲斐ないばかりに」
美嘉『そういう訳じゃないんだけどさ。莉嘉もどこまでホンキだったか分からないし』
美嘉『それだけ。ちょっと誰かに話したかったんだ。ありがと』
P「こっちこそありがとな」
美嘉『なんでそっちがお礼言うの』クスクス
美嘉『ま。アタシと莉嘉を今後もよろしくね』
P「こちらこそ」
P「魔法って信じるか?」
美嘉『アタシの出たドラマでそんなシーンあったっけ?』
P「あ、それはもう見終わった」
美嘉『そ。魔法かー。ファンタジックで良いよねー』
P「魔法の言葉ってのをこの間聞いてさ」
美嘉『なになに?どういうの?』
P「初心に帰る言葉なんだけどな…」
美嘉『うんうん?』
P「『叶うなら美嘉も莉嘉も、俺がプロデュースしたい』」
美嘉『……』ブツン
P「美嘉?おーい…切れたな」
P(話してる途中にボタン押したか…?)
美嘉の部屋
美嘉「……」
美嘉「……」
美嘉「び、びっくりして電話切っちゃった」ドキドキ
美嘉「い、いや、プロデューサーとして当たり前のことを言っただけだって」
美嘉「変なイミなんてない!って変なイミってなに!?」
美嘉「とりあえず落ち着かないと」フゥ
美嘉「……魔法かぁ」
美嘉(そういうタイプの魔法ね)
翌日
事務所
莉嘉「Pくんおっはー」
P「おっはー」
莉嘉「今日はノリいいね!」
P「いつもノリがいいだろ?」
莉嘉「そうだっけ?」アハハ
P「今日はツインテールじゃないのか」
莉嘉「お。Pくんは女ゴコロを良く分かってるねー」
P「それほどでもないさ」
莉嘉「またまた~」
莉嘉「あ、そうだPくん」
P「どうした?」
莉嘉「今度デートしよっ!」
ちひろ「ぶっ!」ゴホゴホ
P「デート?」
莉嘉「うん。お出かけしよっ! 月に行ってみたいの!」
P「月かぁ…遠いな」
莉嘉「大丈夫だって!ウサミン星は近いみたいだし!」
莉嘉「今度いこー! それじゃあレッスン行ってくるね。バイバーイ!」
ちひろ「大丈夫ですか?」
P「なにがですか?」
ちひろ「月に行くんですよね?」
P「…菜々さんに頼らないとですね」
ちひろ「菜々ちゃんはきっとウサミン星の行き方しか知らないと思いますよ」
P「言われてみればそうですね」
ちひろ「全くもう……」ヤレヤレ
車内
P「――そんな話が今朝方あってな」
美嘉「へー…月行くの?」
P「流石に行けないなぁ」
美嘉「ふーん。アタシはどっちでもいいけど莉嘉泣かせたら許さないからね♪」
P「分かってるって」
美嘉「ならいいけど」
P「それより、一つ聞いていいか?」
美嘉「ん?なに?」
P「なんで、ずっと窓見てるんだ?そっちに何かあるか?」
美嘉「んー…ないかな」
美嘉(昨日のセリフ思い出したら顔なんか見れないって…)ハァ
美嘉「あ」
P「どうした?」
美嘉「なんか、ココで今日お祭りやるみたいだよ」
P「そうなのか?」
美嘉「うん。なんか看板があるし、準備してる」
P「お、本当だ。書いてあるな」
美嘉「仕事終わって時間あったら行かない?」
P「構わないぞ」
美嘉「ありがと」
P「仕事が終わったらだけどな」
美嘉「大丈夫だって」アハハ
美嘉「アタシはカリスマギャルの城ケ崎美嘉だから」
夕方
P「まさか本当に終わるとはな」
P(モチベーションってのは凄いな…)
美嘉「ま。こんなものでしょ」
P「それじゃ、車停めて祭りに行くか」
美嘉「そーだね」
美嘉「なんかこういうのドキドキしない?」
P「ドキドキ?」
美嘉「えーと、ほら、ガッコ抜け出してなんかやってるみたいで」
P「あぁ、なるほどな」
美嘉「別に浴衣とか気合い入った格好じゃないのもポイントが高いよね」
P「あくまでたまたまだからな」
美嘉「そそ。そーいうこと」
美嘉「ちなみに、こういうトコって来ることあるの?」
P「最近はないな。車を運転しながら脇目で見たことならあるが」
美嘉「だよねー。アタシも最近はなかったかなー。あ、綿菓子食べる?」
P「俺はいいや。美嘉が食べたいならいいぞ」
美嘉「へへっ。それじゃお言葉に甘えて…」
P(考えてみたらまだ高校生だもんな)
美嘉「反対側からなら食べてもいいけど…どう?」
P「一口だけ貰うな」
P(甘い…昔は袋一杯食べてたんだよなぁ)
P「俺も歳を取ったのか…」
美嘉「綿菓子を食べた感想じゃないよねゼッタイ」
P「綿菓子は美味しかったな」
美嘉「溶けてなくなるのが良いよねー」
P「そうだな。祭りっぽい」
美嘉「確かにお祭り以外で食べることないかも」
美嘉「やっぱり、男の人は焼きそばとかたこ焼きの方が好きなの?」
P「まぁ、祭りと言えば買ってたかもな」
美嘉「ふーん……買う?」
P「そうだな。たこ焼きでも買うか…美嘉も食べるか?」
美嘉「ん。二個くらいくれたら嬉しい…カモ」
P「そうか。それじゃ、買ってくる」
美嘉「あ、人が多いから…その…」ギュ
P「一緒に行くか」
美嘉「うん!」
P「美味いな…」
美嘉「美味しーね」
P「ただ…熱いな」
美嘉「口の中ヤケドしそ…」
P「もう手遅れな気がする」ヒリヒリ
ポツ…ポツ
美嘉「え?」
P「雨か?」
美嘉「ちょっと、雨宿りしないと!」
神社
美嘉「いやー、雨降られちゃったね」アハハ
P「そうだな。すぐ止むといいが」
美嘉「ホントだよね」
ザワザワザワザワ
P「他の人もこっち来たな」
P(あんまり、悪目立ちするとマズい…)
P「美嘉。帽子あるなら…ってないわな」
美嘉「うん。全部車の中に…クシュン」
P「寒いか?」
美嘉「あ、ううん。平気」
P「とりあえずこれでも着てくれ」
美嘉「へ?」
P「風邪引かないようにな」
美嘉「あ、うん。ありがと」
P「走った方がいいか?いや、これだと止むか…?」ブツブツ
美嘉「あ、小ぶりになってきた」
P「そうだな。走って――」
美嘉「もうちょっとだけ、ここにいない?」
P「ん?」
美嘉「い、今、走って転んでも危ないし」
P「まあ、それもそうか」
美嘉「うん。そうそう」
美嘉(雨の中走ったら流石に化粧が…Pさんにはそんなの見せられないし)
美嘉「裏側人が少なそうだよ」
P「そっちに避難するか」
美嘉「祭りやってる側と全然雰囲気違うねー」
P「いかにも神社って感じの雰囲気だな」
美嘉「耳を澄ますと祭りっぽい音が聞こえるのもいいね」
P「静寂と喧騒の間だな」
美嘉「これ暖かいねありがと」
P「お役に立ててなにより」
美嘉「役立ってるよ」
美嘉「…昨日はありがとね」
P「なにが?」
美嘉「いや、莉嘉の話」
美嘉「あの時のアタシの答えは合ってたのかなぁって思うんだ」
P「結局は、莉嘉がどう思うかだけだ」
美嘉「そうなんだけどね。ただ、それは莉嘉に言っちゃダメだからね」
P「そうだな」
美嘉「うん」
美嘉「……そう言えば泰葉ちゃんの時もこんな感じだったの?」
P「泰葉の時?」
美嘉「ほら、お母さんが来て事務所移籍するとかなんとかって」
P「あったな」
美嘉「何とかなったみたいで良かったけど」
P「まぁ、あれとは少し毛色が違うけどな」
美嘉「そうなんだ」
P「あぁ」
美嘉「雨止まないね」
P「あと一息だな」
美嘉「こういう雨って意外に濡れちゃうよね」
P「意外とな」
美嘉「そう言えば聞きたかったんだけどさ」
P「ん?」
美嘉「あの魔法の言葉ってどっから出てきたの?」
P「魔法の?」
美嘉「電話の時に言ってた」
P「俺が――」
美嘉「ストップ。言わなくていいから」
P「そうか」
美嘉「うん。ビックリするから」
美嘉(てか、絶対この場から逃げる)
P「アイドルがいなくなりそうになった時に掛ける魔法の言葉らしい」
美嘉「…ん?」ピク
P「どうかしたか?」
美嘉「それ言ったのはちひろさん…じゃないよね。ってことは……」
P「周子だ」
美嘉「あー……なるほど。なるほどね」ウンウン
美嘉(なんとなく予想がつく)
美嘉「今度、それ周子に言ってあげてね」
P「ん?分かった」
美嘉「魔法を…掛けてあげてよ」
美嘉「なんか久しぶりだね」
P「ん?」
美嘉「こうやって話すのはいつ以来かなと」
P「そうだな」
美嘉「アタシより後に入った人も気づいたら並ばれて…とか考えるとなんかやるせないよねぇ」
P「誰かに勝った負けたの世界ばかりじゃないけどな」
美嘉「そうかな?人気投票とかで露骨に数字が出る訳だけど」
P「例えばそうだな……得意な分野は人それぞれある訳で」
P「文香が美嘉と同じ土俵で戦って勝つのは不可能だと思うぞ」
美嘉「ま。あんまり想像つかないね」
P「逆もまた然りかもしれないが」
美嘉「…そっちは分かんないけどね」
P「アイドルやってる以上は上を目指すのは当然だけどな」
美嘉「そりゃそうっしょ」
P「その為にプロデューサーがいる訳で」
美嘉「でも、そのプロデューサーはたまに他のアイドルプロデュースしてるよね」クスクス
P「それはしょうがないだろ」
美嘉「敵か味方か分からないね」
P「少なくとも今は味方だ」
美嘉「そーだね。フフッ」
美嘉「……ねぇ」
P「どうした?」
美嘉「上着貸して貰ってありがと」
P「気にするな」
美嘉「ただ、えっとね。その…まだちょっと寒い」
P「風邪でも引いたか?」
P(流石にYシャツは貸せないな…)
美嘉「あ、そこまでじゃないと思うんだけど……ちょっと近づいていい?」
P「どうぞ」
美嘉「ん…」ススス
美嘉(ヤバい。近い!体あっつ…!)ドキドキ
P(体熱いな…ちょっと熱でも出たか?)
美嘉(やば。なんかこっち見てるし、バレた?)
P「……」
美嘉「……」カァァ
P「なんか…ヘンだな俺達」
美嘉「…ん?」
P「いや、なんでもない」ポリポリ
美嘉「あ、もしかして…ちょっとは、意識してる?」
P「さぁな。おっ、雨止んだみたいだ。そろそろ帰ろうか」
美嘉「……うん」
美嘉(答えてくれてもいいのに…ケチ)
車内
P「……すまん」
美嘉「意外に目が悪いんだ」
P「いや、そんなことはないはずなんだが」
美嘉「まだ、雨降ってたね」
P「すまん」
美嘉「ちょっ!こっち見るのは禁止!」
P「え――」
美嘉「いや、ちょっと化粧落ちてて…流石に素顔は恥ずかしいって言うか…その…分かって!」
P「わ、悪いな」
美嘉「ま、車の中まで持ったのは良かったけど」
美嘉「んー…まだこっち見ちゃダメだからね」
P「運転してるから見れないって」
美嘉「そのまま運転しといて」
P「了解」
美嘉(こんなもんでいっか…)
美嘉「いいよ。ナチュラルメイク気味だからジッと見るのはNGだけど」
P「あとで見るな」
美嘉「あんまりハードルあげられるとヤバいからほどほどにね」
P「はいはい」
P「よし、事務所着いたな」
美嘉「…どう?」
P「いいんじゃないか?」
美嘉「ホント?イケてなくない?」
P「大丈夫だよ。自信持ってくれ」
美嘉「ふ、ふーん。これもアイドルやってるからかな」
P「どういうことだ?」
美嘉「素顔も磨かれたかなって」
美嘉「ただ、こんなの見せるのは莉嘉とPさんだけだからね」
美嘉「秘密ってことにしといて」
美嘉「事務所行く前にしっかり化粧するつもりだし」
P「他の人にも見せてやればいいのに」
美嘉「素顔ってのは誰でも彼でも見せるもんじゃないの」
美嘉「女の子は秘密を持ってこそ綺麗になるんだからね」ニコッ
エレベーター
P「あ、そうだ。一ついいか?」
美嘉「ん?なに?」
P「祭りに行ってて帰るの遅くなったってのはちひろさんには秘密な」
美嘉「オッケー★」
美嘉「アタシらだけの秘密ってことにしとくね」
P「そうしておいてくれ」
美嘉「うんうん。余計なこと言われても困るし」
美嘉「なんか二人だけの秘密っていいね」
事務所
ちひろ「あ、おかえりなさい」
P「ただいま戻りました」
ちひろ「あれ?美嘉ちゃんは?」
P「トイレでも行ったんじゃないですかね。一緒には帰ってきましたよ」
ちひろ「そうですか。急に雨降ってきましたけど大丈夫でしたか?」
P「えぇ、問題ありませんでしたよ」
『――続いてのニュースです』
ちひろ「あ、そうそうコレ見ましたか?」
P「なんですか?」
ちひろ「なんでも有名なプロダクションと酷似した名前で女の子をスカウトしてた所が摘発されたみたいですよ」
P「そうなんですね」
ちひろ「点が一個足りないとか似たような字面の感じを使ってみたいな感じですかね?」
P「どうなんでしょうね」
ちひろ「…スカウトには気を付けて下さいね」
P「そうですね。ちゃんとした所でもそう思われたらNGですから」
ちひろ「えぇ。そうですね」
翌日
事務所
P「ただい――」
美嘉「お帰りなさい」
P「お、おう?」
美嘉「どうか…しましたか?」
P「美嘉…だよな?」
美嘉「はい」
P「……あぁ、なるほど」
P「文香の真似か」
美嘉「そ。アタシだって、やろうと思えばお淑やかーに出来るんだからね」
P「持ってる本はファッション誌か」
美嘉「アタシはアタシだからね。いきなり小難しそうな本読んでてもビックリするでしょ?」
P「莉嘉が飛んできそうだな」
美嘉「だよね。こんな感じの髪で来たことなかったから結構新鮮だったよ」
美嘉「なんとなく想像でぽい恰好してみたけど決まってるでしょ?」
P「そうだな。驚いた」
美嘉「スカウトでもしたくなった?」
P「そうだな」
美嘉「アタシを舐めないでね」ニヤリ
美嘉「そう言えば一つ思い出したことあるんだけど」
P「ん?」
美嘉「シンデレラってのは、アタシの中で取りたいものじゃなくてさ」
美嘉「取らなきゃいけないものだったね★」ニコ
終わりです。
読んで下さった方ありがとうございました。
申し遅れましたが、古典シリーズになります。
今年はあと一回くらいは投稿出来ればと思ってます。
失礼いたしました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません