芽衣子「こたつでだべろー!」 (39)
・並木芽衣子さんと喜多見柚ちゃんと柊志乃さんのSSです
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~事務所にて
芽衣子「はぁ~……」
志乃「寒いわねぇ……」
芽衣子「そうですね~」
志乃「もうすっかり冬ね」
芽衣子「こたつとお布団が気持ちいい季節になりましたよ~」
志乃「ちょっと前に12月ね、なんて話していたのに」
芽衣子「もうあと2週間で今年も終わりですよ~」
志乃「この週末はクリスマスだし、いよいよ年の瀬って感じね」
芽衣子「ですね~。んー、みかんおいしい~♪」
志乃「……芽衣子ちゃん」
芽衣子「はひ?」モグモグ
志乃「ちょっと気を抜きすぎじゃない?」
芽衣子「そうですかぁ?」
志乃「美里ちゃんみたいな語尾になってるわ。私が言うって相当よ?」
芽衣子「うーん、確かにそうですねー」
志乃「その肯定は少し傷つくわ……」
芽衣子「でも気持ちいいですからしょうがないですよ~、こたつ」ヌクヌク
志乃「顔が緩みっぱなし」
芽衣子「ふへぇへへ」
志乃「気持ちはわかるわ……私だってついさっきまで下半身を丸々こたつの中に入れて寝転がっていたもの」
芽衣子「気持ちいいですよね~」
志乃「……ここが事務所の休憩室でも誰かの目があることに変わりないんだから……まぁ、私は片手にワイングラスを持ってるのだけど」
芽衣子「一気に説得力が」
志乃「そうね、じゃあこの話はなかったことに……」
芽衣子「ダメな大人だー」
志乃「うふふ、それくらいがちょうどいいのよ」
ガチャッ
柚「さむいっ!」
志乃「あら、柚ちゃん。おはよう」
芽衣子「おーはよー」
柚「おはよさむいっ!」
芽衣子「冬だからねー」
志乃「ほら、こたつに入りなさいな」
柚「うー、さむさむ」ゴソゴソ
芽衣子「ん?」
志乃「あら」
柚「あー……あったかー……生き返るぅ……」ギュッ
芽衣子「柚ちゃん?」
柚「芽衣子サンあったかいー……」
芽衣子「むこう空いてるよ?」
柚「や」ギュウッ
志乃「今日の柚ちゃんは随分甘えたがりみたいね」
柚「あったかー……おちつくー……」
志乃「心なしか語彙が少なくなって、まるで雪美ちゃんね」
芽衣子「け、結構力強い」
志乃「芽衣子ちゃん、体温高そうだもの」
柚「人間湯たんぽー」
芽衣子「これは喜んでいいのかな?」
志乃「褒め言葉として受け取ってもいいんじゃないかしら」
志乃「……こうしてみると」
芽衣子「?」
志乃「姉妹みたいね」
芽衣子「私と柚ちゃん?」
志乃「えぇ……外見というより内面が、ね」
芽衣子「へぇー……自分じゃわからないなぁ」
志乃「芽衣子ちゃんは昔、柚ちゃんみたいだったのかもしれないし、柚ちゃんはこれから芽衣子ちゃんみたいになるのかも……うふふ、面白いわね」
芽衣子「もしかしなくても酔ってます?」
志乃「大丈夫よ……今のところは」
柚「ふっかつ!」
柚「あったまったけど芽衣子サンから離れらんない! 不思議!」
志乃「N極とS極かしら?」
柚「足元はこたつ、上半身は芽衣子サンにあっためてもらう柚の完璧な作戦、成功……!」
芽衣子「柚ちゃん、この体勢結構きついよー」
柚「おっと、これはシッケーシッケー。ごめんね、芽衣子サン」
志乃「……それでも体はぴったり芽衣子ちゃんに寄せるのね」
柚「だって芽衣子サンあったかいんだもーん♪」
志乃「じゃあ私も芽衣子ちゃんで暖をとろうかしら」
芽衣子「ここに3人はちょっとキツイかなぁ……」
志乃「冗談よ……私はこれで身も心も暖かいから」
柚「志乃サン、また事務所でお酒飲んでるー」
志乃「ちょっとだけアルコールが入ったぶどうジュースよ」
柚「ならいっか!」
芽衣子「それがワインって言うんですよ」
志乃「あら、手厳しい……」
柚「芽衣子サン、みかん剥いてー」
芽衣子「いいよー、はい」
柚「ほほう、これが本場の和歌山剥きってやつですな」
志乃「それいいわよね……芽衣子ちゃんに教えてもらうまで知らなかったのだけど」
芽衣子「手袋つけたままでも剥けるんですよ。収穫のお手伝いのときにこのやり方を知っているかで味見できるかどうかが決まったり!」
志乃「剥く、というよりは、割るって感じかしら?」
芽衣子「そうですねー。割って剥がすってイメージかな?」
柚「爪の間も汚れないねー。まっ、柚は芽衣子サンに剥いてもらうから関係ないんだけど!」
芽衣子「はい、あーん」
柚「あ~ん♪」パクッ
芽衣子「おいしい?」
柚「おいひ~♪」モグモグ
志乃「姉妹というより親と子供、いや、主人とペットかしら……」
柚「そういえば」
芽衣子「うん?」
柚「もうすぐクリスマス!」
芽衣子「そうだねー」
柚「イヴさんなにくれるのかなー」ワクワク
志乃「サンタじゃなくてイヴちゃんなのね」
柚「だってサンタクロースだよ! イヴ・サンタクロース! ホンモノ!」
志乃「そういえば……ドイツのサンタクロースって双子なのよ。知ってる?」
芽衣子「へぇー、知らなかったです」
柚「柚も知らなーい」
志乃「ひとりは私たちのイメージする赤と白の服を着たサンタで、いい子にプレゼントを配るの。そしてもうひとりは黒い服を着て、悪い子を連れ帰ってしまう……」
柚「ひ、人さらいだ……」
志乃「柚ちゃんは、いい子かしら? それとも……」
柚「ゆ、柚はいい子だから黒いサンタさんなんか来ないよー」
志乃「……プリン」
柚「えっ、あれ志乃サンの?」
志乃「あら……私はプリンしか言ってないのに」
柚「あっ、ズルい!」
芽衣子「あはは……」
柚「ズルいズルい! 謀ったな!」
志乃「柚ちゃんは……悪い子なのかしら?」
柚「ごめんなさい」
志乃「うふふ、いい子ね……」
芽衣子「ちゃんと謝れてえらいえらい」ナデナデ
柚「うぅ~、芽衣子さんの優しさが五臓六腑に染みるよ~」
志乃「私は?」
柚「シノサンモヤサシイデス」
志乃「よろしい……うふふ」
柚「うぅ、みかん食べて忘れる!」
芽衣子「はいはい」
志乃「みかん、なかなか減らないわね……」
芽衣子「あ、うちから送られてきたんですよ、これ」
志乃「和歌山、だったかしら?」
柚「芽衣子サンち、みかん作ってるの?」
芽衣子「おじいちゃんがね。畑持ってるんだー」
柚「みかん食べ放題……!」
芽衣子「あはは、本当にそんな感じだよ。もちろんお手伝いしたら、だけどね」
芽衣子「事務所のみんながみかんよく食べてて、って話したら箱で送られてきちゃって。2箱も」
志乃「2箱はちょっと多いわね……」
柚「手が黄色くなるまで食べなきゃ!」
志乃「あまり食べ過ぎないようにね?」
芽衣子「志乃さんは飲みすぎないように」
志乃「あら、ワインは体にいいのよ」
芽衣子「それは適量の場合、ですからね?」
柚「てきりょーって、どのくらい?」
芽衣子「確かワインなら、グラス2杯くらいだったかなー」
志乃「……」
柚「志乃サンはどれくらい飲んでるの?」
志乃「……今日はまだこれだけね」
柚「1杯? じゃあまだ大丈夫なんだ」
志乃「1本よ」
芽衣子「はいっ、没収!」
志乃「ひどいっ」
柚「ワインの代わりにみかん?」
志乃「ならせめてみかんワインがよかったわ……」
柚「ワインってぶどうだけじゃないの?」
芽衣子「えっと、確か静岡の」
志乃「伊豆太陽みかんワイナリーね……行ったことも飲んだこともまだないのだけれど」
芽衣子「私も話しか聞いたことないんですよねー」
柚「静岡もみかんで有名なの?」
芽衣子「和歌山、愛媛、その次が静岡って順番で収穫量が多いの」
柚「へぇ~」
志乃「確か伊豆でしか買えないのよ、みかんワイン。だからまだ手に入れるきっかけがなくて……」
芽衣子「私もみかん県出身として試したいなーって」
志乃「ネットで注文できるらしいけど、せっかくなら……ねぇ?」
芽衣子「その気持ちすっごいわかりますっ! やっぱりお店で買いたいですよねー!」
柚「そういうものなの?」
志乃「ネットは便利だけどね……たまに使うし」
芽衣子「そうそう。それが粋ってやつだよ、柚ちゃん」
柚「ふぅーん。そういうものなんだー」
志乃「ワインの話してたら飲みたくなってきた……」
芽衣子「ダメですよ」
志乃「まだなにも言ってないのに……」
柚「禁断症状だ!」
志乃「まだそこまでいってない……はずだわ」
芽衣子「そこでトーンダウンしないでくださいよ~」
柚「お酒かー」
志乃「飲みたくても飲んじゃダメよ?」
柚「見ての通りマジメだからねー、それは大丈夫!」
芽衣子「悪い大人に騙されないようにね?」
志乃「芽衣子ちゃん、私の方を見て言わないで……結構ダメージ受けるから……」
柚「でも飲めるようになったら飲んでみたいなーっておもうよー」
芽衣子「そうだねー。飲んでみないとわからないもんね」
志乃「別に飲めなくてもいいけど、飲めたら楽しいわ」
柚「そのときはふたりも付き合ってね!」
芽衣子「もちろん!」
志乃「柚ちゃんがお酒飲める年齢のとき私は……」
芽衣子「お医者さんに止められないように気をつけないとですね?」
志乃「礼子にも同じこと言われたわ……大丈夫、まだ大丈夫……」
柚「自己暗示みたい」
志乃「芽衣子ちゃんは飲む方なの?」
芽衣子「志乃さんほど飲みませんよ?」
志乃「なんだか今日の芽衣子ちゃんトゲがある……」
柚「綺麗なバラにはトゲがある、ってやつだね!」
芽衣子「綺麗なバラなんてそんなー」テレテレ
志乃「芽衣子ちゃんはバラというよりヒマワリ、それか……コスモスかしらね」
芽衣子「コスモスは初めて言われたかも」
志乃「コスモスって可憐な見た目をしているのに強い花なのよ。風で倒されても茎の途中から根を出して、それからまた花を咲かせるの。そんな力強さが芽衣子ちゃんらしくて、それに……」
柚「それに?」
志乃「花言葉が確か……『調和』『乙女の真心』ね……」
芽衣子「乙女の真心……」
志乃「飾り気がなくて女の子らしい部分もある芽衣子ちゃんにぴったりじゃない?」
柚「あー、わかるカモ。調和っていうのも芽衣子サンっぽい!」
芽衣子「そ、そうかな? えへへ、なんだか照れちゃうね」
志乃「特に、あの人の前では『乙女』ね……」
芽衣子「えっ?」
志乃「なんでもないわ、独り言よ。うふふ」
志乃「もちろん色で花言葉は変わってくるけど、花自体の言葉は合ってるはずよ……」
柚「志乃サンがそんなこと知ってるってちょっと意外かも」
志乃「うふふ、伊達にあなたたちよりお姉さんしてないわよ」
芽衣子「お酒のことしか知らないっておもってた」
志乃「ひ、ひどい……褒めたのに……」
芽衣子「ふふっ、冗談ですよ♪」
志乃「……種明かしをすると、前、共演した子に教えて貰っただけなんだけど」
柚「台無しだ!」
志乃「ふぅ、しゃべったら喉乾いたわ……」
芽衣子「……」
志乃「……」
柚「ん?」
芽衣子「ダメですよ」
志乃「まだなにも言ってないじゃない」
芽衣子「目を見ればなんとなくわかります」
志乃「芽衣子ちゃん……なんだかPさんに似てきた?」
芽衣子「えっ!?」
志乃「一緒にいる時間が長いものね……」
柚「オトナな話?」
志乃「そうね、柚ちゃんにはちょっと早いかも」
柚「そっかぁ~」
芽衣子「違いますよっ! 違うからっ!」
志乃「まだ具体的に言ってないのにそんなに否定するなんてまさか……」
芽衣子「志乃さんまた酔ってる!」
志乃「大丈夫、もう1本飲めば元に戻るから……」
柚「お酒飲んで戻るの?」
志乃「酔ってるときが普通だったりするのよ、大人は」
柚「ヘンなのー」
志乃「そう、ヘンよね。あんなに力一杯否定して怪しい……」
芽衣子「う~、柚ちゃん~、志乃さんがいじめる~」
柚「芽衣子サン芽衣子サン」
芽衣子「うん?」
柚「ラクになろ?」
芽衣子「柚ちゃんも味方じゃない!?」
惠「……」
モバP(※以下表記P)「伊集院、どうした。そんなところに立って?」
惠「ううん。平和ね、っておもって」
P「なに言ってんだ」
惠「気にしないで」
P「そういえば、並木は中に?」
惠「急ぎ?」
P「いや、特にそういうわけじゃ」
惠「なら少し時間をあけた方がいいわね」
P「はぁ……」
惠「……そうだ、明日のロケで聞きたいことがあるんだけど」
P「あ、あぁ、わかった」
惠「……ふふ。本当、平和ね」
おわり
今日も事務所はこたつとみかんで平和でした
今作で芽衣子さんのSSが10作目になりました。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
前前前作と前前作と前作です。よかったらこちらもどうぞ。
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