輝子「歌うために……トモダチを殺すしかない……!」 (25)


星輝子は独りぼっちだった。

独りぼっちだったからこそ、怒ることができた。

怒りをメタルの響きに乗せ、観客にぶつけることが出来た。


だがしかし、輝子はもう独りぼっちではなくなってしまった。

アイドルを続けていくうちに、仲間が、友達が出来た。

増えて行った。

湿った闇の中に、光が差し、輝子を照らし出してしまった。

故に……


星輝子は、リア充に怒ることが出来なくなった。

彼女は、恵まれた環境を作り上げてしまったことにより、怒りのパワーを失ってしまったのだ。


取り戻さなくてはならない。

自らの「アイドル」を。「輝き」を。「怒り」を。

そのために、失わなくてはならない。

大切な仲間を、友達を。

大切だからこそ。


だから……



輝子『きょ、今日は……このラジオで、机の下の同志の作品を読む……』


乃々「ひいい~~~~っ!!?」


――森久保乃々、羞恥により憤死


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1481292323


今回ちょっと人が死ぬので

耐性の無い方はご注意ください。


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美玲「ノノ……何で死んだんだッ……!!」グスグス

輝子「美玲ちゃん……」

美玲「!」グシグシ

美玲「なんだ、キノコかよッ! 一体何の用……」


シュッ


美玲「……あ……!?」バタン


それは、目にも止まらぬ早業だった。

早坂美玲は左目に眼帯を装着している。

輝子はそれを、コンマ1秒もない内に……


外し。

右目に当て。

左右逆に装着した。


人間の目は、左右で微妙に視野のズレが生じる。

それは、通常ならば脳で当たり前のように処理される情報の誤差。

しかし、ズレが生じた瞬間はあまりにも早く

限りなくゼロに近いΔtにより相対的に限りなく無限大まで膨れ上がった情報量は……


早坂美玲の脳を焼き切った。


――早坂美玲、脳死


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輝子「なあ、親友……」

P「どうした幸子?」

輝子「ボノノちゃんが死んで……美玲ちゃんも死んで……」

輝子「まゆさんが不安がっているのを、知っているか……?」

P「……ああ」

輝子「……慰めてやってくれ」

輝子「アイドルとプロデューサーの関係は、私にも分かる……」

輝子「だけど、今だけは……!」

輝子「一人の男として、まゆさんを支えてやってくれ……!!」

P「……!」


P「……分かった。俺に任せろ」

輝子「フフ……せめてものプレゼントだ……これを持っていけ」


輝子が親友に渡したのは、一本のキノコだった。

それもただのキノコではない。

強力な催淫効果を持つキノコだった。



まゆ「あっ、あっ、あっ……! P、さあん……!!」



砂漠の生き物に大量の水を与えると、中毒を起こして死に至る。

佐久間まゆは、アタックこそすれど、自分と愛しのプロデューサーの関係は弁えていた。

だからこそ飢えていた。

そんな佐久間まゆに、あふれんばかりの愛を注いでしまえば……



――佐久間まゆ、Pからの愛情で中毒死

――プロデューサー、テクノブレイク


~彼女は、とても安らかな死に顔をしていた~


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幸子は殺せそうになかったので、大気圏外に追放した。


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輝子「李衣菜ちゃんは、トモダチだから……私が得たロックの何たるかを、教えよう……」

李衣菜「え! ホント!? 教えて教えて!」

輝子「ロックとは……



キノコだ」


その日から、李衣菜は仁奈からキノコの着ぐるみを借りてライブを行うようになった。

本人は知る由もないが、その着ぐるみの造形が妙に卑猥だったことにより

ファンが彼女を見る目は、次第に痛々しいものと生々しいものに変わっていった。


その全てを見届けた夏樹は……ついにストレス性の[編集済]で喉を詰まらせた。

そして彼女自身の不幸か、はたまた手間の省けた輝子の幸運か


夏樹の[省略]現場には涼も居合わせてしまっていた。


――木村夏樹、[検閲済]により窒息死

――松永涼、もらい[以下略]により窒息死


――多田李衣菜、順調に乗せられて雷雨の中でライブを決行し感電死


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数日後、星輝子を除くゼッケンズ4名の遺体が発見された。


検死の結果

堀裕子および日野茜は丸太のような固い棒状のもので頭部を殴打されていた。

高森藍子は胴体に若干の擦り傷のほか、極度のストレスによる急性の内臓障害と吐血の痕が発見された。

十時愛梨は打撲痕こそなかったものの、全裸で発見され胸部に擦り傷と凍傷が確認された。


尚…堀裕子、日野茜→高森藍子→十時愛梨の順に死亡したものと思われる。


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輝子「これ……奈緒さんに、プレゼントだ……」

奈緒「ん? なんだこれ?」

輝子「お土産の、シャンプーだ……奈緒さんに似合う、香りだと思ってな……」

奈緒「へー! 今日使ってみるよ! ありがとなー!」


奈緒に渡したシャンプーは、ただのシャンプーではない。

それは強力な増毛成分を多分に含んだ育毛シャンプーだった。

急激に成長した奈緒の体中の毛は、彼女自身、そして……

仲間たちを巻き込んで毛玉の中に閉じ込めた。


二ホンミツバチは、スズメバチを殺す球を作り上げる。


――神谷奈緒、毛玉に籠った熱で焼死

――島村卯月ほかNGの面々、巻き込まれて焼死

――北条加蓮、巻き込まれたものの熱がこもる前に心肺停止


輝子「智絵里ちゃん……チョップを見せてくれ」

智絵里「は、はいっ。チョップですっ」


ズバッ


輝子「……すごい威力だ。これなら……」

輝子「じゃ、じゃあ智絵里ちゃん。次はあの的に向かって、全力で……」

智絵里「? え、えいっ」ビュッ


智絵里が全力のチョップを放った瞬間、輝子は的をひっこめた。

行き場を失ったチョップは、ちょうど地面と水平の方向に飛んでいく。

それは紐で選手に繋がれたハンマーのごとく、地球の外周に沿ってなめらかなカーブを描く。

運悪く進路に立っていた人間達を巻き込みながら衝撃波は……


ちょうど智絵里の背後へと迫っていた。


――緒方智絵里ほかアイドル数十名、ちえりんチョップにより斬死


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輝子「杏さん……今日は何もかも私に任せて、ゆっくりしていてくれ……」

杏「おっけー、任せたー」


輝子のやった事は、ただ心を込めて杏をもてなした。

それだけだった。


だが、真に心のこもったおもてなしは杏を極度のリラックス状態に陥れ……


――双葉杏、心臓や脳を含む全身の活動を停止


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輝子「……あとは、君だけだ……」

小梅「……そっか……」

輝子「……やっぱり、気付いていたのか。今までの殺人が、すべて私の犯行だと……」

小梅「うん……とっても優しい、殺し方だったから……」

小梅「なるべく、傷つけないように、苦しませないような殺し方……人を思いやった、殺し方だったから……」

輝子「……優しい、もんか……」

輝子「私は……自分のために、トモダチを殺し続けたんだぞ……!!」

小梅「……それでも……私は、輝子ちゃんを……」

小梅「……優しい人だって、思うよ……?」

輝子「ッ……!!」


小梅「……もう、いいよ……」

小梅「私のこと、考えなくていいから……」

小梅「ライブ、応援してる……!」


輝子「……」グス

輝子「……ありがとう」

輝子「絶対、絶対……私が生きてきた中で、一番のライブにしてやるから……」

輝子「皆の死を、決して無駄にはしないから……!」


小梅「うん……!」


輝子「……それじゃあ、さよならだ……」スッ

小梅「いいよ……来て……!!」



輝子「―――――破ァーーー!!」

小梅「うああぁぁあああぁぁぁぁ……」ジュウウウウ


――白坂小梅、除霊完了


輝子「……芳乃さんから教わったコレ……すごいな」

輝子「私も少しダメージを喰らったが……小梅ちゃんが、服だけ残して、跡形もなく……」


輝子「……フフ」


輝子「……そうだ……『これ』だ……」


輝子「……フフフッ」


輝子「……ヒィイイイイイイイイヤッハアアアアアアアア!!!!」



輝子「チクショオオオオオオオオ!!」


輝子「こんなもののために! 皆を殺しやがってエエェエェエエエエエ!!」


輝子「返せ! 返せよお!!」


輝子「こんな怒り! 何の価値があるってって言うんだよォオオオオオオオオッ!!!」


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理不尽な理由で、トモダチ全てを死に追いやった自分への怒り。

仲間に恵まれたにもかかわらず、その価値に気付いていない者達への怒り。

その価値を痛いほど知り、渇望しているにもかかわらず、仲間を得られぬ独りぼっちの者がいる世界への怒り。


たった一日もその身に背負えそうにないほどの大きな怒りは、ドーム中を爆音で揺らし。

訪れた観客、そしてそれをテレビ越しに見届けた視聴者たちを通じて……

世界は、輝子の真っ赤な怒りで染まっていく。


そして伝説が生まれたのだった。


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――――――――――――――――――――


――幸子は――

2度と地球へは戻れなかった…。

カワイイと生物の中間の生命体となり、永遠に宇宙空間をさまようのだ。

そしてカワイイと思っても死ねないので


――そのうち幸子は考えるのをやめた。


~END~


終わり。

クソss失礼しました。

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