輝子「いつもと違う、誕生日」 (27)

シンデレラガールズSS

地文あり


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明日は、6月6日。

天気予報では、一日中どんよりとして湿度が高いそうだ。

キノコにとっては、良い天気。

そして一応私、星輝子の誕生日。

と言っても、他の人には特にイベントでもなんでもない日。

だから明日も何もない。

ぼっちの私にとって、誕生日はただの節目。

まぁ特に自分から明日が誕生日なんて他の人に言ってないし、知らなくて当然。

明日の夕食が私の好きな物が出てくる位かな、いつもと違うのは。

だから明日は何もない。

学校に行って、放課後事務所に行く位。

いつもとあんまり変わらない、平凡な日常。

今までの誕生日と同じ。

ぼっちーぼっちーぼっちのこー、きのこーだいすきーほししょうこー。

6月6日。

天気予報通り、雨は降っていないけど、湿度が高くじめじめとした蒸し暑い日。

私はいつも通り学校へ行く。

いつも通り授業を受けて、いつも通り一人でお昼を食べる。

そのはずだったんだけど。

女子クラスメイト1「星さん、星さん」

輝子「ふひっ!?なななな、なにっ?」

一度も話したことのない、クラスメイト。

な、何だろう…?

女子クラスメイト2「お誕生日、おめでとう!」

女子クラスメイト3「おめでとー!!」

女子クラスメイト1「おめでとう、星さん!」

輝子「…へ?」

え、今なんて言った…?

お誕生日、おめでとう…?

女子クラスメイト1「…あれ?」

女子クラスメイト2「ちょっとー?今日本当に星さんの誕生日なの?」

女子クラスメイト3「ええ!?あ、あのー星さん?今日、星さんの誕生日、だよねぇ…?」

輝子「そ、そうだけど…な、ななな、なんで、知ってる、の?」

女子クラスメイト1「よかったー!星さんの反応が薄いから間違っているのかと思ったー」

女子クラスメイト2「ホントホントー」

女子クラスメイト3「星さんの事務所のHPで見たんだー!」

ほ、ホームページ…そんなところに公表されていたのか…初めて知った。

輝子「そ、そうか…あ、ありがとう」

初めてだな、親以外にこうやって誕生日おめでとうなんて言われたの。

女子クラスメイト1「それでね!これ、お誕生日プレゼント!」

女子クラスメイト2「3人で作ったの!」

女子クラスメイト3「星さん、この前のMステでキノコが好きって言ってたから、これ!」

渡されたのは、きのこの形をしたぬいぐるみ。

パッチワークが毒キノコっぽい感じで、イカす。

女子クラスメイト1「あんまり見栄えは良くないけど…」

女子クラスメイト2「これでも一応手芸部だからさ、私たち」

女子クラスメイト3「どう?どう?」

そんなの、勿論決まっている。

輝子「う、嬉しい、凄く、嬉しい、よ」

女子クラスメイト1「本当!?良かったー!!」

女子クラスメイト2「いやー我ながら少ない資材でよく出来たと思うよ」

女子クラスメイト3「発案者は、私です。いやー良かった良かった!」

は、初めてだな、こうやってクラスメイトに誕生日プレゼント貰ったのって…

しかも手作り。ヤバイ、顔がにやける。

輝子「フヒ、フヒヒ…」

女子クラスメイト3「出た!その笑い!!Mステの時もやってたよねー!」

輝子「そ、そういえば、さっきも言ってたけど、み、見てたの?」

知ってる人に見られていたなんて、なんだか、恥ずかしいな…

女子クラスメイト1「見たよ見たよ!すっごくカッコよかったよ!!毒茸伝説!!」

女子クラスメイト2「うんうん、確かにいつもの星さんは近寄りがたくてミステリアスでクールな感じでカッコいいんだけどさ」

私がミステリアス…?クール…?ただのぼっちなだけなんだけど…


女子クラスメイト3「あの衣装!あの歌!あのパフォーマンス!!もうカッコよすぎ!!」

女子クラスメイト3「あの後タモさんに趣味のキノコのこと聞かれてすっごく話してたの凄かったよねー」

輝子「あー…あれ、か。あれ後で、プ、プロデューサーに、怒られたな…」

女子クラスメイト1「ええー!そうなの?」

輝子「う、うん。な、生なのに、尺取りすぎって…」

女子クラスメイト2「へぇーそうなんだ、そんなこと言われるんだー」

女子クラスメイト3「えええーあのキノコトーク面白かったのにー」

女子クラスメイト1「タモさん爆笑してたね、いやー凄いねーとか言って」

輝子「う、うん。あの後、またおいで、って言われた…」

女子三人「すごーい!!」

わ…び、びっくりした…

他の人が、こっち見てる…少し、恥ずかしい。

女子クラスメイト3「ねぇねぇ星さん、輝子ちゃんって呼んでいい?」

輝子「い、いいけど…」

女子クラスメイト1「あ、私も私も!」

女子クラスメイト2「私もいいかな、輝子さん」

輝子「う、うん、いいよ」

事務所以外で名前で呼ばれるの、久々だな。

というよりも学校でこうやって同級生と話すのが久々か。


女子クラスメイト1「輝子ちゃん今日の放課後空いてる?」

女子クラスメイト3「暇ならお誕生日カラオケパーティーでもしないー?」

輝子「あ…今日は、その、あの、ほ、放課後、じ、事務所に行かなくちゃ、いけない…」

女子クラスメイト2「ほらやっぱり、急に誘うからだよ」

輝子「ご、ごめん、せ、折角誘って、く、くれたのに…」

女子クラスメイト3「いやいや!こっちこそ急に誘っちゃってゴメン!!」

女子クラスメイト1「今度空いてるとき教えてよ!一緒に遊ぼ!」

輝子「う、うん、わかった…」

キーンコーンカーンコーン

お昼の終わりを告げる、チャイムが鳴る。

3人がまたねーと自分の席に戻る。

去年までは、こんなことはなかった。

凄いな、アイドルってやつは…

これも、親友のおかげかな…?



学校が終わりさっきの3人に別れを告げて、ケータイを取り出す。

しょうこ『学校、終わった』

親友『お、そうか。近くにいるから校門の前でちょっと待ってろ』

いつも通り、要件だけの短いメールのやりとり。

親友が来るまで、鞄からイヤホンを取り出しケータイでメタルを聞きながら暇を潰す。

やはりメタルは良い、このギターサウンドは、好き。

頭をからっぽにして、目を瞑りただ音だけに集中する。

頭が、真っ白に、なる。

心が、透明に、なる。

意識が、身体から、離れていく。



突然、肩にトンッと何かで軽く叩かれた。

輝子「!!?」

ビクッ!!と身体を強張らせ、カッっと目を見開く。

そこに居たのは、親友だった。

P「――――」

何か言っている、あ、そうか、イヤホン取らなきゃ。

P「おーい、輝子さーん?聞こえてるー?」

輝子「ご、ごめん、聞こえてなかった…」

P「おいおい、こんなところでそんなに集中して音楽聞くなよー危ないぞー?」

輝子「うぅ…ごめん…」

P「ま、いいさ。ほら車に乗った乗った」


私を助手席に乗せて、走り出す。

放課後にお仕事があるときはいつも、こんな感じ。

親友が迎えに来てくれる、たまに他のアイドルの人だったりするけど。

そう、いつも通り、いつも通り。

輝子「そ、そういえば、親友」

P「んー?どうしたー?」

輝子「今日は、な、何の仕事なんだ?わ、私今日のは聞かされて、な、ない」

P「そうだっけ?今日は仕事じゃなくて事務所で明日の打ち合わせー」

輝子「そ、そうか、そうだったのか」

明日はインディヴィジュアルズのライブの予行練習だっけ…

でも今更予行練習でなんで打ち合わせするんだろう…?

少し引っ掛かるところがあるけど、まぁ、いいか。

いつも通りの車内の空気、いつも通り、いつも通り。

だけど。

さっき誕生日を祝われたから、少し期待してしまう。


輝子「あの、親友…」

P「ん?どーした?」

輝子「あの、その…な、なんでも、ない…」

P「ん、そーか。うし、もうちょっとで事務所に着くな」

輝子「あ、ああ、そうだな…」

自分の想像以上に舞い上がっているな、私。

さっきのを思い出しただけで、顔がにやける。

輝子「フヒ、フヒヒヒヒ…」

P「ど、どうした輝子」

輝子「フヒッ!?な、なんでもない…」

声に出してしまっていたらしい、イケナイ、イケナイ。

でも、あんなことされたら、誰だって嬉しく、なる。


事務所に到着、親友が車を駐車場に止めるからと、先に降ろされた。

待つのもアレなので、先に私一人で事務所へと向かう。

きのこーきのこーぼっちのこーほししょうこー

ひとりーひとりーぼっちのこーほししょうこー

きのこーだいすきーほししょうこー

小声で口ずさみながら、階段を昇る。

少し重たい、事務所の扉を開ける。

あれ、扉の前に誰か―――

パーン!!パーン!!パーン!!!!

輝子「!!!??」

ちひろ「おめでとう!輝子ちゃん!!」

藍子「お誕生日おめでとう、輝子ちゃん」

裕子「サイキック!クラッカー!!サイキック!!お誕生日おめでとう!!」パーン

茜「うおおおおおおおお!!輝子ちゃん!!!おめでとう!!!!ございます!!!!!」

輝子「え?…え?」

何…?何だ…?

幸子「何ぼけっとしているんですか、輝子さん」

輝子「さ、幸子…こ、これはいったい…?」

小梅「しょ、輝子さん、こっち、こっち」

小梅に腕を引っ張られる。

待って、待って、まだ状況が把握できない。

えーっと、つまり、これは皆が祝ってくれているのか…?

私を…?

小梅と幸子に引っ張られて、事務所のテーブルに連れてかれる。

輝子「おぉ…ケーキ…」

愛梨「あ、輝子ちゃん!どうですかっ!かな子ちゃんと一緒に作ったお誕生日ケーキ♪」

かな子「輝子ちゃん意識してキノコの形にしてみたんだけど、どうかな?」

輝子「す、すごい…」

キレイなきのこ型だ、凄いなこんなことも出来るのか。

みりあ「ねぇねぇ!輝子ちゃん!火を消して!!はやくっはやくっ♪」

未央「待った待った!その前に!」

輝子「…?」



卯月「せーの!」

全員「Happy birthday to you」

全員「Happy birthday to you」

全員「Happy birthday, dear 輝子ちゃんー」

全員「Happy birthday to you」

全員「おめでとー!!輝子ちゃん!!」

輝子「フ、フヒ、み、皆…」

ヤバい、顔がにやける。

だって、こんなことされたら、誰だって嬉しい。

未央「さぁさぁ!火を消して!!」

輝子「う、うん」

大きく、息を吸い込む。

輝子「ふ、ふぅー」

あ、一本火が残った。

卯月「もう一回!」

輝子「ふぅー!!」

今度はちゃんと、消えた。

全員「おめでとうー!!」


凛「おめでとう輝子、はいこれ」

輝子「り、凛…」

加蓮「私と奈緒も一緒に選んで買ったんだよ」

奈緒「おう、このキノコスカルのネックレス、中々いいだろ?」

輝子「う、うん…カワイイ…ありがとう、3人共」

夏樹「ほー中々いいの貰ったな」

李衣菜「ウッヒョー!カッコいいねーそれ!」

輝子「夏樹さん、李衣菜ちゃん…」

李衣菜(あれ?なんでなつきちはさんで私はちゃんなんだろ?)

夏樹「ほら、誕生日プレゼント」

輝子「わっ、あ、ありがと…DVD?」

夏樹「あぁ、この前そのバンドのライブDVDが欲しいって言ってただろ?」

輝子「!!ヒャッハアアアア!!大好きだぜえええええええ夏樹いいいいいい!!!」

李衣菜「輝子ちゃん、うるさいっ」

輝子「あ、すいません」

李衣菜「でもロックだよー、いいよー!」

輝子「え、あ、はい」

夏樹「相変わらずだりーは…」


美玲「よっ輝子、誕生日おめでとうこれプレゼントな」

乃々「これ、もりくぼからの誕生日プレゼントです…もりくぼが好きなマンガです…」

輝子「あ、ありがとう2人とも」

小梅「輝子ちゃん…おめでとう…」

幸子「フフーン!輝子さん!おめでとうございます!」

小梅「こ、これ、2人で作ったの…」

幸子「十時さんや三村さん達には及ばないかもしれませんが、食べてみてください」

輝子「フヒ、小梅、幸子…ありがとう」

2人が持っているのはタルトのケーキ。

タルトの上に目玉が沢山乗っている、正直、グロい。

あんまり目玉を目を合わせないようにして一口、ぱくり。

輝子「おいしい…おいしいよ、2人とも」

ぱぁぁっと笑顔になる2人、カワイイ。

小梅「よ、よかった…フフ」

幸子「当然ですね!カワイイボクと小梅さんが作ったのですから!」

輝子「フヒ、フヒヒ」

ヤバイ、楽しい、嬉しい。


P「よーうやってるか?」

輝子「あ、し、親友…」

P「おぉ輝子、おめでとう。なんか色々貰ってんな」

輝子「親友…騙したな…」

P「ナンノコトカナー」

輝子「フ、フヒヒ、ありがとう親友」

P「俺はなにもやってないぞ」

輝子「いや、親友のおかげだ。去年までは、違ってたからな…」

P「…俺は舞台を整えてやってるだけだ」

輝子「フヒ…?」

P「今この状況は輝子、お前が作り出したものだよ」

輝子「親友…」

私はふと、鞄にしまっていたクラスメイトに貰ったぬいぐるみを取り出す。

P「おー手作りかぁー、誰が作ったんだ?」

輝子「クラスの子」

P「へぇー!そりゃあいいな!」

輝子「フヒ、す、凄く、う、嬉しかった…」

きのこーきのこーぼっちのこーほししょうこー

ひとりーひとりーぼっちのこーほししょうこー
 
きのこーだいすきーほししょうこー

でもさいきんーぼっちじゃないー


6月6日、雨は降っていないけど、湿度が高くじめじめとした蒸し暑い日。

キノコにとっては、良い天気。

一応私、星輝子の誕生日。

いつもと変わらないはずだった、誕生日。

何も変わらない、ぼっちの私にとって、誕生日はただの節目だった今日。

日常と何一つ変わらない、何もない誕生日。

だけど今日は。

今までと、いつもと違う、誕生日。



終わり

以上です。

輝子誕生日おめでとう!

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