歩兵「はあ・・・」ポーン「どうした、兄弟」(17)


歩「やっぱりこのままじゃ駄目だと思うんですよ」

ポーン「いや、お前は前にまっすぐ進んでれば十分だよ」

ポーン「あいつらを見てみろ、すぐ白黒入れ替わって油断も隙もありゃしねえ」

オセロ「サーセンwwwww」

歩「でも、ポーンさんって凄いじゃないですか?」

ポーン「ああん?前にいる敵すら倒せねえぞ?」

歩「何言ってるんですか、最初に二歩進める、斜めの敵を倒せる、最後の段に行けば女王様」

歩「『アンパッサン』とかいうお洒落な超絶秘技もあるらしいじゃないですか」

ポーン「そう言われると照れちまうな」

歩「でしょう?」


歩「僕なんて『ふがいない』とか『ふへいのない戦い』とか親父ギャグ枠ですよ」

歩「ポーンさんは戦いの決着を決める鍵だというのに、僕らは毎日突き捨てられてばっかり」

歩「あーあ。生まれ変わったらチェスになりたいですねえ」

ポーン「なってみるか?」

歩「え?良いんですか?」

ポーン「俺はD列で、だいたい戦いに巻き込まれて即死してるんだ」

ポーン「あっと驚かせてやれ!」

歩「は・・・はい!」


キング「というわけで、交換留学生でやってきたミスター・歩兵だ。仲良くするように」

クイーン「わーお!じゃぱにーずさむらーい!」

ビショップ「ぽるふぁぼーん!じゅぜー?」

ルーク「だすいひとあーねんしゅばーげん!」

歩「わわわ・・・頑張るで候!!」

RNBQKBNR
PPPPPPPP

PPPPHPPP
RNBQKBNR

歩「いくぜ!おりゃああ!」

H
PPPP PPP
RNBQKBNR

ポーン「足が遅すぎる、使えねえな」

歩「」

キング「ま、まあ様子を見ることにしよう!」

RNBQKB R
PPPP PPP
N
P
H

PPPP PPP
RNBQKBNR

歩(うう・・・随分遅れてしまった)

歩(一手損はチェスでは致命傷に等しいと聞く・・・遅れを取り戻さないと!)

敵ナイト「ヒャッハー!!ほれほれ、殺されちまうぜー!?」

敵ポーン「ブヒャヒャ!うっかり駒を落としたんでしゅかあ?」

歩「僕の主人を馬鹿にするなあ!!」

----H
PPPP PPP
RNBQKBNR

ポーン「足が遅すぎる、使えねえな」

歩「」

キング「ま、まあ様子を見ることにしよう!」

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歩(うう・・・随分遅れてしまった)

歩(一手損はチェスでは致命傷に等しいと聞く・・・遅れを取り戻さないと!)

敵ナイト「ヒャッハー!!ほれほれ、殺されちまうぜー!?」

敵ポーン「ブヒャヒャ!うっかり駒を落としたんでしゅかあ?」

歩「僕の主人を馬鹿にするなあ!!」

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PPPP PPP
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----H<どりゃああ!!

PPPP PPP
RNBQKBNR

敵「「「「!!!???!?」」」」

歩「そして、打つ!どうだ!参ったか!」

RNBQKB R
PPPP PPP

---NH
--P<コンニチハ!

PPPP PPP
RNBQKBNR

敵ポーン「おい、裏切ったのかテメエ!」

元ポーン「何を言ってるです?もともと私は敵デース!」

敵キング「ううむ。中央を完全に取られては戦いにならぬ。レザインだ」

キング「我軍の勝利だ!」

クイーン「やったわね、留学生!」


一方その頃・・・

「佐藤九段1五ポーン」

「!?」

「田中七冠、さすがに驚きが隠せませんね」

「ええ、ヨーロッパ出身の外国人選手を使ったおかげでしょうね」

将棋界には助っ人外国人旋風が巻き起こっていた。

歩兵「すっかり人気者なっちゃったね」

ポーン「おう、俺もどこに配置されるかで戦況を握る鍵になっちまった」

歩「やっぱりポーンさんは凄いや!僕は最近足の遅さを咎められて二軍にされちゃった」

歩「敵陣に入って成金にしかなれなかったときのマスターの絶望する顔はもう見たくないよ」

ポーン「・・・なんだ、悲しいことを言うなよ」

歩「斜めの駒は取れるようになったけどね。これじゃあ役不足だってさ」

ポーン「しょうがねえなあ。お前が花形になれる場所がここにあるだろ」


はさみ将棋「おいでよ!」

歩「あれは飲んだくれの集まりだよ、まっとうなマスターのすることじゃない」

はさみ「」ガーン

ポーン「そうだったのか。思慮を欠いた発言だった。済まない」

歩「いや、僕も強く当たってしまったね。どこか良い就職先ないかな」

白「やあ、君にぴったりの職場があるよ」

歩「うわ!?真っ白おばけ!!」

白「僕の名前はハク!麻雀のカギを握る重要な牌さ!」

ポーン「行ってこいよ坊主」

白「僕は君の代わりにこっそり盤上でたむろしておくよ」


はさみ将棋「おいでよ!」

歩「あれは飲んだくれの集まりだよ、まっとうなマスターのすることじゃない」

はさみ「」ガーン

ポーン「そうだったのか。思慮を欠いた発言だった。済まない」

歩「いや、僕も強く当たってしまったね。どこか良い就職先ないかな」

白「やあ、君にぴったりの職場があるよ」

歩「うわ!?真っ白おばけ!!」

白「僕の名前はハク!麻雀のカギを握る重要な牌さ!」

ポーン「行ってこいよ坊主」

白「僕は君の代わりにこっそり盤上でたむろしておくよ」


中「白兄さんの紹介で日本からやってきた歩君だ。みんな仲良くするように」

○「やっぱり日本出身は地味アルネー。もっとカラフルじゃないと駄目アルヨ」

萬「一種類の字牌なんて何の役にも立たないアル。とんだクズ牌ネ」

|||「我、成緑一色。尓不要。」

歩(ううう・・・このぐらいのイビリに負けないぞ!)

○○○萬萬萬萬萬|||中中歩<コンニチハ!

マスター(うわあ・・・一巡目で中捨てたの完全に裏目ってるわあ)

マスター(しかも駒の形が5角形のままかよ。バレバレじゃねえか!)

マスター(まあいいや。なんとか放銃だけは避けないと)


歩「ご主人様に捨てられてしまった・・・」

歩「でも、転んでもただで起きないのが武士道だ!」

○○○萬萬萬萬萬|||中中中<ニーハオ!

マスター「ん?あれ・・・?」

マスター(一巡目の捨て牌が歩に代わってやがる、一体どういうことだ!?)

上家「あー。留学生アルネ」

下家「形が違うから場所バレバレアルけど、予測可能回避不可能ネ」

対面「うわあ。俺親なんだけど」

マスター「ツモ!四暗刻だぞい!」

歩(やったああ!対面がトンで優勝だ!!)

中「それで河から流れて帰っていってしまったんですよ」

白「うーん。やはり我々の業界は象牙質で出来たタフさが必要だよなあ」


ポーン「どうだ、麻雀は楽しかったか」

歩「楽しかったけど、捨てられないと役に立たないってのは辛いものがあるね」

囲碁「話は聞いたぞ、最近留学してるんだってな」

歩「ええ」

囲碁「どうだ、うちでも少し働いてみないか」

歩「この際だからやってみましょう」

+○●+
○●○●
++++
++++

歩(えーと・・・囲碁は陣取りゲームなんだよな)

石「さくっときめちゃいな、大将!」

歩「よし!歩、行きます!」


+○●+
○●○●
+歩+++
++++

石「あ、あれ?」

歩「ん?」


● ●+
○● ●
++●+
++++

石「」「」「う、うわあ・・・」

歩「え?え?何か僕悪いことしました!?」

石「一言で言うとね、陣を取られた上に石も取られて\(^o^)/オワタ」

歩「がーん、だなあ・・・」


ポーン「どうだった?」

歩「結局、自分の居場所は将棋にしかないって気づいたよ」

ポーン「やっとそのことに気づいたか。やれやれだぜ」

歩「斜めの駒が取れる、捨駒を召喚できる、異次元空間に逃げ込める」

歩「これぐらいしか能のない僕は、やっぱり将棋で地味に生きるしか無いんだよ」

ポーン「え・・・それって、おま」

歩「じゃあ、行ってくるよ!」


こうして武者修行を終えた歩は、佐藤九段の2筋の歩として戦列復帰を果たした。

「田中七冠、これはうっかりしてたんじゃないですかね」

「他の歩と見分けがつきませんからね・・・斜めに動かれては角将を丸損です」

佐藤九段の名人奪取、そして不死鳥のような復活の原動力となった。

「田中四冠、これは厳しいか」

「取ったはずの金将がいつの間にか佐藤三冠のものになっていました。一体どんな魔法でしょう!?」

後世の人は『名人は歩の使い方がうますぎた』と語り継いだという。

「ああ・・・!とうとう田中王将、無冠になってしまいました!」

「そして、佐藤七冠王の誕生です!!」

「いやあ。あそこで歩がマス目の交差に置かれて4マス塞がれてしまいましたからね」

「王の周囲は駒の置けない亜空間となってしまいました。これでは投了もやむ無しでしょう」

おわれ!

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