にこ「あんたたち!私についてきなさい!」りんぱな「はいっ!!」 (228)

ラ板の続き

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にこ「あんたたち!私についてきなさい!」りんぱな「はいっ!!」 [無断転載禁止]©2ch.net


埋め荒らしによって落ちてしまったため、こっちで再開させていただきます

花陽「桜がきれいだね、凛ちゃん」

凛「凛達もついに高校生だにゃー!」

凛「かよちんはどんな部活に入るにゃ?」ギュッ

花陽「わっ、凛ちゃんくすぐったいよぉ」

花陽「部活紹介パンフレット、見てみようか」

凛「あっ、凛はこの陸上部がいいにゃー!」

花陽「凛ちゃん早いよぉ。わ、私は……えっと」

花陽「……ん?」


花陽「アイドル……研究部?」

凛「新入生歓迎会、楽しかったにゃ~」

花陽「……そうだね」

凛「特に陸上部の先輩達のコントが最高だったにゃ~」

花陽「講堂で走るわけにはいかないもんね……」

凛「ん?かよちん、なんか元気ないにゃ~」

花陽「だって、アイドル研究部の部活紹介……」

凛「なーんにも無かったね」

花陽「廃部になっちゃったのかなぁ……」

凛「でも、パンフレットにはちゃんと載ってたよ?」

花陽「誤植とか……?」

凛「……ここはひとつ、部室を覗いてみるにゃー!」

凛「ほら、やっぱりまだ廃部になってないにゃ」

花陽「凛ちゃん」

凛「にゃ?」

花陽「ついてきてくれて、ありがとうね」

凛「気にすることないよ、凛とかよちんの仲だにゃ~」

花陽「でも、この後は陸上部の新入生歓迎会……」

凛「まだ時間あるから、大丈夫!」

花陽「凛ちゃんのお世話になってばっかりだね、私……」

凛「そんなことないよ!受験の時なんて、凛の方こそかよちんに甘えてばっかりだったし!」

凛「こうして二人並んでオトノキに通えるのも、かよちんあってのことだにゃ~」

花陽「凛ちゃん……」

凛「さあ、とにかくアイ研の先輩に挨拶だにゃ~!」

トントン

凛「ごめんくーださい!」

花陽「……」

凛「……」

花陽「……お留守、みたいだね」

凛「……」クンクン

花陽「凛ちゃん?」

凛「におう」

凛「ドアノブから、女の子特有の甘いにおいがするにゃー!」

凛「どなたかいませんかー?」トントン

ゴトッ……

凛「!!」

凛「かよちん!」

花陽「……うん!」

花陽「すみません、入部希望の者です……」トントン

凛「出てきなさい!君は完全に包囲されている!」ドンドン

花陽「り、凛ちゃん!」アセアセ

凛「毎朝新聞でーす!今なら洗剤とプロ野球の観戦チケットつきまーす!」ドンドン

凛「地震だー!雷だー!火事だ親父だー!!」ドンドン

凛「奥さーん!いい加減に家賃払ってくださいよーう!」ドンドン

凛「はーなーこさーん!あーそーびーまーしょー!」ドンドン



ガチャッ

にこ「やっかましーい!!」

花陽「ぴゃあ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

にこ「どぅわれが奥華子よ!」

にこ「奥華子なんて“時かけ”の主題歌しか知らないわよ!」

凛「ときかけ?かけそばの一種かにゃ?」

にこ「はぁ~?知らないの?これだからゆとり世代は……」

凛「同じゆとりに言われたくないにゃ」

にこ「“時をかける少女”よ。筒井康隆の傑作ジュブナイル!少しは本読みなさいよ、何度も映像化されてんだから」

にこ「ちなみに私は最近のアニメ映画版より、大林監督の実写版の方が好きね」

花陽「あっ、原田知世さんが主演の」

にこ「へーっ、あんた詳しいのね……って、そうじゃなくて!」

にこ「なんの用よ!」

にこ「……入部希望?」

花陽「はい!こんな身近に、アイドルについて語り合える人がいらっしゃるなんて思いませんでした!」

花陽「オトノキにおけるアイドル研究の先駆者として、是非いろいろご指導ください!お願いします!」

にこ「あ……えっと」

にこ「大変な熱意を抱いているのはわかったわ。私も嬉しい」

にこ「ただ……その、入部はやめときなさい」

花陽「そ、そんな……」

凛「どうしてそんなイジワル言うにゃ!?」

にこ「ここはあんたが思ってるような、高尚な文化部じゃないのよ」

にこ「悪いことは言わないわ。こんなとこで青春を無駄にしないで、別の部活に入りなさい」

花陽「わ、私は……」

花陽「……そんなのイヤです!せっかくアイドル仲間が見つかったのに、このままお別れなんて悲しすぎます!」

花陽「お願いです、入部させてください!」

にこ「ダメよ!」

花陽「この通りです!」

にこ「ダメ!」

凛「どうしても?」

にこ「ダメ!」

凛「そこをひとつ」

にこ「絶対ダメ!」

凛「ダメよ~?」

にこ「ダメダメ!」

凛「ちょっと寒くないかにゃ~?」

にこ「あんたがフったんでしょうが!」

にこ「もー、しょうがないわね~」

にこ「じゃあ、にこのクイズに答えられたら、入部を認めてあげる」

花陽「ほ、本当ですか!」

凛「かよちん、やっちゃえにゃ~!」

にこ「第一問――」

花陽「……」ゴクリ

にこ「アメリカの第21代大統領は?」

凛「……にゃ?」

にこ「第二問!」

にこ「5ガロン入りの容器と3ガロン入りの容器があります。その2つを使い、正確に4ガロンの水を用意しなさい!」

花陽「ちょ、ちょっと待って……」

にこ「第三問!」

にこ「秋葉原に向かう途中に、二人の新入生に出逢いました!新入生はおにぎりを七つ持っていますが、道中二つ食べてしまいました!

さて、秋葉原についた時、おにぎりをいくつ持っているでしょう!?」

花陽「えっと、えっと……」

にこ「……チーン!時間切れです!入部は諦めなさい!さよなら!」

ガチャバタン

凛「ち、ちょっと待つにゃ!」ドンドン

凛「よく考えたら、どの問題も全然アイドル関係ないにゃ!」ガンガン

凛「ここを開けるにゃ~!!」ドッカンドッカン

花陽「……凛ちゃん」



花陽「もう、行こうか」ニコ

凛「かよちん……」

凛「まったく!あの先輩の態度!」プンプン

凛「ぜーったい友達少ないにゃ!」

凛「どうせ活動といったって、アイドルのDVD観るだけにゃ!」

凛「ぷらいべーとでは、下品な形の帽子被ってるに決まってるにゃ!凛の第六感が告げてるにゃ!」

花陽「凛ちゃん、よく知らない人のことを悪く言うのはいけないよぉ……」



花陽(……それにしても)

花陽(私がおにぎり好きだって、どうしてわかったのかな?)

#1 入部

にこ「」ゴソゴソ

にこ「……やっぱりここには落ちてないわね」

にこ「あーあ、せっかくの無理して買った初回限定版の予約特典なのに……」

にこ「部室にもない、家にもない、とすると」

にこ「……どこ行ったのよ、もう!」

コンコン

にこ「!」

にこ「まーた例の1年生かしら」

にこ「何度頼んでも答えは同じよ」

にこ「居留守使っちゃおっと」

コンコン

コンコン

コンコン

にこ「……うっさいわねー」

にこ「はーい!」

ガチャッ

絵里「お忙しいところ、失礼します」

にこ「……これはこれは、生徒会長さん」

絵里「これ、今年度の部費の申請書」

にこ「はい。遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」

絵里「曲がりなりにも部長でしょう?定例会くらいは出席していただきたいわね」

にこ「はいはい。いささか多忙なもので」

絵里「新入生歓迎会にも参加できないほどご多忙なら、そろそろ潮時だと思うんだけど」

にこ「……なんのよ?」

にこ「何が言いたいの?」

絵里「活動実績のない部活に、生徒会がいつまでも部費を割り当てると思ったら大間違いよ。そういうこと」

にこ「……覚えておくわ。だからとっとと帰って」

にこ「……はぁーあ、ムカつくわ」

にこ「あの生徒会長、にこを目の敵にして!」

にこ「このところ、ついてないわねー」

にこ「予約特典は無くすし、生徒会長には絡まれるし……」

にこ「これでまたあの1年生が来たら、ドン底ね」

花陽「……」

凛「かよちん、何を見てるにゃ?」

凛「わ、きれいな缶バッジ」

花陽「これね、いつの間にか私の荷物に紛れ込んでたの」

花陽「ちゃんと持ち主に返したいんだけど、そもそもいつどこで紛れ込んだのかも思い出せなくて……」

凛「交番に届けるのはどうかにゃ?」

花陽「そうだね……それより凛ちゃん、今日は陸上部の初めての練習だったね」

凛「ガンガン飛ばすにゃ!凛の脚にかなう人なんて、三年生にだっていないにゃ~!」

凛「でも、かよちんと一緒に帰れないのは残念だにゃ……」

花陽「途中まで一緒に行こう?」

ドンッ

花陽「あ、ごめんなさい……」

真姫「ちょっと、気をつけなさいよ」

花陽「……すみません」

凛「なんか、性格キツそうな子だにゃ~」

凛「ぶつかったのはお互い様なのに!」プリプリ

花陽「私がどんくさいのがいけないんだよ……」

凛「そういえば、前に似たことがあったよね」

凛「ほら、受験の朝に……」

~~~~~

凛「かよちん、急いでいそいで!」

花陽「凛ちゃん、待ってえ!」

凛「わっ、凛達以外もう誰もいないよ!」

ドンッ

花陽「あ、すみません……」

「いっつー、気をつけなさいよ!」

凛「かよちん、大丈夫!?」

凛「あ、二人の荷物が……」

「あんた達、受験生?しょうがないわね~」ヒョイヒョイ

「ほら、あんたのおにぎり。ラップにくるんで正解だったわね」

花陽「あ、ありがとうございます!本当にすみませんでした!」

「礼はいいから、急ぎなさい!みんなもう会場入りしてるわよ!」

~~~~~

花陽「……あっ」

凛「かよちん?」

花陽「あの時だ!」

トントントン

にこ「……はーい」

にこ「今日はやけに訪問者が多いわね、ったく……」

ガチャッ

花陽「せ、先輩!失礼します!」

にこ「……げ」

花陽「あの、実は――」

にこ「言ったでしょ、入部は絶対に認め……」

花陽「――これのことなんです!」

にこ「へ?……あっ!初回特典の缶バッジ!」

にこ「それ、なんであんたが持ってんの!?」

花陽「先輩、受験の日のことを覚えていますか?」

にこ「あんたがぶつかってきたのよね。実は、こないだ話してる最中に思い出したわ」

にこ「あんたも苦労してるわよね。大事な受験の日なのに、相棒の分までお弁当用意して」

花陽「その……実は、あれ全部私のお弁当なんです……」

にこ「……あの数が、全部?」

花陽「……//」コク

にこ「……なるほどね。あの時あんたの荷物に紛れ込んじゃったのね」

花陽「なにしろ急いでいましたので、ろくに確認もしないで……」

花陽「これ、お返しします!申し訳ありませんでした!」ペコリ

にこ「……」ハァ


にこ「あんたが合格してくれて、本当によかったわ」

にこ「もしも不合格だったら、二度と帰ってこなかったに違いないもの」

にこ「わー、本当に帰ってきたのね♡」スリスリ

にこ「初回限定版の特典なのよ、これ!」

花陽「○○のセカンドアルバム……でしょうか?」

にこ「おっ、わかってるじゃない!そうよ、○○よ!」

にこ「あのセンターが小悪魔的で可愛いのよね~」

花陽「わ、わかりますわかります!」

にこ「……あんた、なかなかやるわね」

にこ「リンカーンみたいな正直さ、そしてアイドルへの情熱!」

にこ「気に入ったわ!袖振りあうもなんとやら、よ!特別に入部を認めてあげる!」

花陽「!!」パァア

にこ「名前を聞いてなかったわね」

花陽「小泉花陽といいます!よろしくお願いします!」

にこ「矢澤にこよ、よろしく」

花陽「……ところで、矢澤先輩」

花陽「正直のエピソードで有名なのはリンカーンじゃなくて、ジョージ・ワシントンです」

にこ「!!///」ボッ

にこ「う、ウケ狙いよ!ツッコミ待ち!あんたの反応が遅いからいけないのよぉ!////」

花陽「……」クスクス

にこ「ぬゎに笑ってんのよぉ!入部取り消すわよ!////」

その頃……

凛「」ゼェゼェ

「星空さん、もうバテたの?」



凛(き、キツい……)

#2 スクールアイドル

凛「さ~て、今日も練習!いっくにゃー!」

花陽「私も部室に行くね」

凛「かよちん、アイ研に入部してから楽しそうだね」

花陽「うん!入学早々に趣味を分かち合える先輩ができて、嬉しいよ!」

凛「どんな活動をしてるにゃ?」

花陽「えっと、まずはアイドルのホットトピックについて語り合って」

凛「うんうん」

花陽「それからアイドルのライブ映像を鑑賞したり、新曲を聴いたり」

凛「ほうほう」

花陽「あとはお菓子食べたり、雑誌の貸し借りしたり……」

花陽「そんなところ、かな」

凛「……」



凛「あんまり楽しくなさそうだにゃー」

花陽「!!」ガーン

花陽「」ズーン


~~~~~

凛「あの人の言う通りだったね。あんまり立派な部活じゃないにゃ」

凛「部員がかよちん含めて二人しかいないのも納得だにゃ~」

凛「かよちん、このままじゃ何もしないうちに高校生活終わっちゃうよ?」

~~~~~


花陽(確かに、凛ちゃんの言う通りだよ……)

花陽(今のまんまじゃ、ただ面白おかしく過ごしているだけで、なんにも生み出せてない)

花陽(せっかく趣味を共有できる先輩が見つかったんだから、何か始めないと!)



花陽「……あれ?部室が開いてない」

花陽「矢澤先輩、どこかな?」

にこ「……にっこにっこにー、にっこにっこにー」

にこ「にっこにっこにー♡」

にこ「あ、今のいい感じ」

にこ「よし、こんなところね!あとはあの1年生の到着を待って」

パチパチパチ

にこ「!?」

花陽「……」ニコニコ

にこ「見てたの!?///」

花陽「はい!」

にこ「ど、どっから!?」

花陽「新技の練習、頑張るぞーっ!……って叫んだところからです」

にこ「最初からじゃないのよ!///」

にこ「入部早々に部長を覗き見だなんて、とんでもない後輩ね」

にこ「あーあ、あれは新入部員歓迎用の隠し技だったのに……」ウジウジ

花陽「ごめんなさい……」

にこ「許さない。やる気無くしたわ」

花陽「……ぱ」

花陽「ぱっなぱっなぱー!」

花陽「ど、どうでしょう」

にこ「なめとんか」

花陽「……くすん」

花陽「でも、よかったです!私と矢澤先輩が同じ志を持っていて!」

にこ「なんのことよ」

花陽「スクールアイドルです!」

花陽「矢澤先輩!二人でスクールアイドルを始めましょう!」

にこ「は、はぁ!?」

花陽「……」キラキラ

にこ「……冗談言ってるわけじゃなさそうね」

にこ「わかったわ。ちょっと来なさい」

にこ「……ではまず、自己紹介、ならびに自己PRをしてください」

花陽「小泉花陽です。好きなものは白いご飯です。アイドル研究の熱意は人一倍です」

にこ「志望動機を教えてください」

花陽「はい、御社……じゃなくて御部の部員としてスクールアイドルの活動にはげみ、アイドルの素晴らしさを世に発信していきたいと考えました」

にこ「あなたにとってアイドル活動とは何ですか?」

花陽「お客さんと笑顔を共有するお仕事です」

にこ「サークル・部活動経験について教えてください」

花陽「先日、御部?に入部しました。以上です」

にこ「最近気になるニュースは何ですか?」

花陽「A-RISEのニューシングルの発売、ならびに日本米の値上がりです」

にこ「なぜ芸能プロダクションを介したプロのアイドルではなく、スクールアイドルを志望したのですか?」

花陽「……えー、プロダクションを介さないことで、学生に相応しい自由でフレッシュなアイドル活動ができると考えました」

にこ「では、あなたがスクールアイドルの活動に求めているものを具体的に挙げてください」

花陽「たとえば、手作りの衣装や自主製作のPV……です」

にこ「わかりました。では最後に、何か言いたいことはありますか?」

花陽「なぜ就活風なのでしょうか」

にこ「はい、面接は以上よ」

花陽「よかった、採用ですね」

にこ「まだ何も言ってないでしょ!いいからまずは聞きなさい」

花陽「……」ゴクリ

にこ「……ただの想い出作りや自己啓発」

にこ「そんな甘い考えでこの部活に来て、音をあげて辞めていった奴らが何人もいるわ」

にこ「私は、これまで何度も何度もそういう連中に失望させられてきた」

にこ「もう、これ以上ガッカリしたくないのよね」

花陽「……やっぱり、ダメでしょうか」

にこ「……とはいえ」

花陽「!!」

にこ「あんたは自分から、スクールアイドルの活動をしようと呼びかけてくれた」

にこ「少なくとも、他人任せで日和見主義なあいつらとは違う」

にこ「私ももう三年生。これがラストチャンスね」

にこ「いいわ!やってみましょう、スクールアイドル」

花陽「あ……ありがとうございます、矢澤先輩!」

にこ「……その矢澤先輩っての、いい加減やめなさいよ」

にこ「私には、にこっていう可愛い名前があるのよ!これからはにこにー先輩と呼びなさい!」

花陽「はい、にこ先輩!」

にこ「ちがーう!にこにー先輩!」

にこ(……やれやれ、助かったわ)

にこ(まさか花陽の方から言い出してくれるなんてね)

にこ(こういうのを、渡りに船っていうのかしら)

にこ(なにしろ、とうとうあのムカつく生徒会長から、最後通牒を突きつけられちゃったもの)ピラッ



拝啓
アイドル研究部・矢澤にこ部長殿

一ヶ月以内に然るべき活動実績を提示しない場合、部活動継続の意志がないものと見なし、自動的に廃部とさせていただきます(要約)

敬具
生徒会長・絢瀬絵里

その頃……

凛「……」

「星空さん。あなたの脚の速さは認めるわ。新入生にしては上出来よ」

「だけどね……私達は駅伝大会を目指してるの。つまりチームプレイを重んじているわけ」

「そこんところ勘違いされたままだと、全体に迷惑がかかるの。自覚して?」

凛「……はい。わかってますにゃ」

「だったら、なんで学校帰りにラーメンなんて食べに行ったの?」

「入学して早々に買い食いする神経が信じられないわ」

「あと、その語尾」

「ふざけてるようにしか聞こえないから、やめろって言ったよね?」

「ほんっと、社会出たら苦労するよ?」

凛「うぅ……」

#3 結成!にこりんぱな

凛「Zzz……Zzz……」

凛「んっ……むにゃ」

凛「今……何時?」

凛「……に、にゃにゃにゃ!?」

凛「しまった……完全に寝坊したにゃ~」

凛「はぁ……また先輩に怒られる」トボトボ

凛「朝練を無断欠席するなんて、サイテーだよ……」

凛「かよちん、今ごろ何してるのかにゃ?」

凛「まだ朝ごはん食べてるかにゃ?だったら一声かければよかったかな」

凛「でもこの間、かよちんに偉そうなこと言っちゃったし……」

凛「……認めたくないけど」

凛「なんか、かよちんが……羨ましいな」


オーッホッホッホ!

ニコセンパイ、マッテェ!


凛「……にゃん?」

にこ「ほーらほらほら、捕まえてみなさいよ!」

花陽「ま、待って……」ハァハァ

にこ「なーにバテてんのよ!私の足についていけないようじゃ、前途多難ね!」

にこ「いい!?アイドルは体力勝負の世界よ!どんなに疲れても、それを顔に出しちゃダメなんだから!」

にこ「男坂、あと五往復!完走するまでおにぎりは食べちゃダメ!」

花陽「そんなぁ……ダレカタスケテー!」


凛「ちょっと待っててー!」バーン

花陽「り、凛ちゃん!?」

にこ「あれー?あんた、花陽の相棒の」

凛「先輩!ちょっと年上だからって、後輩をいじめるなんてみっともないよ!」

花陽「凛ちゃん、それはちが……」

凛「だいたい、偉そうにしてるわりには速くないし、フォームもめちゃくちゃだし、大したことないにゃ~」ププ

にこ「なっ……ぬゎんですってえ!?」

凛「悔しかったら凛を捕まえてみるにゃ~♪」ダッ

にこ「まっ、待ちなさーい!!」ダッ

花陽「」ボーゼン

にこ「」ゼェゼェ

花陽「つ、疲れた……」

凛「完全勝利♪」ブイ

凛「さあ、これに懲りたら二度とかよちんに威張らないと約束するにゃー!」

にこ「……もうっ、バカー!」

にこ「あんたのせいで、せっかくの“ウサギと亀作戦”が台無しよ!」

凛「にゃ?」

にこ「序盤だけ大幅にリードして、最後は先輩らしく新入部員に勝ちを譲るつもりだったのに!」

にこ「どうしてくれるのよ、優しくてカッコいい先輩を演じられないじゃない!」

凛「それ、本人の前でバラしちゃう?」

にこ「あっ」

花陽「にこ先輩、大丈夫です。わかってますから」

花陽「にこ先輩のこと、尊敬してますよ」ナデナデ

にこ「うぅ……はーなーよー」ウルウル

凛「あーっ!凛に断りなくかよちんに甘えちゃダメーっ!」

グゥーッ

花陽「あっ……///」

凛「……」

にこ「……はいはい、朝ごはんにしましょ」

凛「あーんっ」

凛「♪」モグモグ

にこ「……か、からっ!何よこれ、辛すぎ!」

花陽「本番・博多産の激辛明太子です」

にこ「にこ、辛いのはダメなのに……」

にこ「そこの陸上部、あんたの梅干しとトレードしなさいよ」

凛「星空凛!齧りかけと交換なんてヤだよ!」

花陽「あの、残してもいいですから……」シュン

にこ「はぁ?イヤよ。食べ物を粗末にするのって大嫌いなの」モグモグ

にこ「……うー、やっぱり辛い」

花陽「はい、お茶をどうぞ」

凛「凛も凛もー!」

凛「ところで、二人は朝から何をしてたにゃ?」

凛「ふーん、スクールアイドルっていうの始めたんだ」

花陽「今日は第一回目の朝練だったの」

にこ「まだグループ名も決まってないけどね」

凛「二人だけなんだから、シンプルに決めていいんじゃないかにゃ」カキカキ

凛「ほら!ローマ字で“NICO ando HANAYO”!カッコいいでしょ!」

にこ「なーんかチャゲアスみたいね」

にこ「ちなみに私は、Brother SunとSister Moonの二枚が好きよ」

花陽「凛ちゃん、andの綴り間違ってる……」

凛「にゃ!?」

にこ「あ、ほんとだ!」

にこ「グループ名を考えてくれたのは感謝するけど、実はもう一人部員がほしいと思ってたとこなのよね」

凛「どうして?」

花陽「A-RISEって知ってる?UTX学院のセミプロアイドルグループなんだけど」

凛「UTXなら知ってるにゃ。かよちんも一時入学を考えてたよね」

花陽「初ライブと初PVは、そのA-RISEの曲を使わせてもらうことにしたの」

にこ「ホントはオリジナル曲で踊りたいけど、残念ながらそこまでは手が回りそうにないのよ」

花陽「ただ……A-RISEの曲を使うには、ちょっと問題があって」

にこ「A-RISEって、三人グループなのよね」

凛「ふーん、なるほどにゃ~」



にこ「……ねー、あんた」

にこ「FA権を行使して、うちに来る気はない?」

凛「にゃ!?」

凛「凛は二人みたいに可愛くないから、アイドルなんて無理だよ……」

花陽「そんなことないよ、凛ちゃんは可愛いよ!」

にこ「それに、体力もムダにあるし、素質は十分だと思うんだけど」

凛「ムダは余計だよ!」

凛「それに、FA移籍したら補償を取られるんだよ?知らないの?」

にこ「し、知ってるわよ!」

凛「人的補償はにこ先輩かにゃ~?」

にこ「ぬゎんでよ!私部長なんだけど!?」

花陽「……」クスクス

キーンコーンカーンコーン

にこ「あっ、やばっ!」

花陽「大変です!もうこんな時間!」

にこ「入学早々遅刻なんて、シャレにならないわよ!?」

凛「走るにゃー!」

花陽「ま、待ってぇ……」

にこ「ほら、しっかり走りなさいよ!」



凛(……)タッタッ

凛(スクールアイドルかぁ)

凛(どう考えても、凛には向いてないよ)

凛(……でも、さっき)

凛(誰かと走るのが、一緒に身体を動かすことが)

凛(久しぶりに、楽しいと思えたんだよね……)

放課後――

凛「」スゥーハァー

凛「……よし!」

凛「ちゃんとごめんなさいして許してもらって、午後の練習は頑張るにゃ!」

凛「いざ、部室へ突入!」



「――あの星空さんさ」

凛「ん?」

「あんまり見たことないタイプだよね」

「ね。なんか変わってるっていうか」

「語尾も変だし、可愛いと思ってんのかな」

「凛は可愛い猫ちゃんだにゃ~。朝練サボってごめんなさいにゃ~」

「うわキモw」

「今日も来んのかなぁ」

「正直、つきあってらんないよね」



凛「……」

一方、秋葉原――


にこ「あーあ、今月号は買っておきたかったわ」

花陽「にこ先輩、もしよかったら、私が……」

にこ「ストップ。お金の貸し借りはあんまりしたくないのよ。特に相手が可愛い後輩ならね」

にこ「それに、別にピンチってわけじゃないのよ。ちょっと企画してることがあるだけで」

花陽「……にこ先輩、それってもしかして」

にこ「おーっと、それ以上はわかってても言わないのがエチケットよ」

にこ「じゃ、また明日ね」

花陽「はいっ、今日もお疲れ様でした!」ペコリ

にこ「さーて、ハナマサあたりで晩ごはんのお買いものしましょ」

にこ「……ん?」



凛「……」トボトボ

凛「……お母さんが買ってくれた新しいシューズ」

凛「ムダになっちゃったね」

凛「お母さん……ごめん」

凛「~~~っ!」ブンッ

ポン

にこ「それは空き缶用のごみ箱でしょ」

凛「……にこ先輩」

にこ「ジュースとシューズを間違えた、なんて面白くないわよ?」

にこ「何があったのよ」

凛「……先輩には関係ないにゃ」

にこ「ホントは気づいてほしいけど、愛しのかよちんに心配かけるのはイヤ」

にこ「……どう、図星でしょ?」

凛「っ!」

にこ「ちょっと、つきあって」

ことり「お帰りなさいませ♪」

にこ「ミナリンスキーさん、私にはいつものを。あんたは?」

凛「……」

にこ「……あと、こっちにイチゴミルクを」

ことり「かしこまりました、お嬢様♪」

にこ「どう、可愛いでしょ?ここの制服」

凛「……うん」

にこ「ここ、たまにメイドさんのライブなんかも開催されるのよ」

にこ「いいなぁ~。にこにーもここの制服着て、踊ってみたいなぁ~」キャルン

凛「……なんの用ですか?」

にこ「……まったく」

にこ「なら、単刀直入に言うわ。何があったのか吐いちゃいなさい」

にこ「なーんか気持ち悪いのよ。朝とのテンションの落差が」

凛「……さっきも言ったけど、にこ先輩には関係ない」

にこ「あるわよ。私達の朝練に飛び入り参加したんだから」

にこ「大丈夫よ。あんたの相棒には、内緒にしといてあげる」

凛「……」

ことり「お待たせしました。ブレンドコーヒーとイチゴミルクです♪」

にこ「ありがとう」

ことり「お嬢様、お砂糖とミルクです」

にこ「今日は結構よ」ズズ

にこ「うわっ、あっつ!苦っ!?」

凛「かっこつけ」

にこ「い、言ったわね!?」

凛「……ふふっ」

にこ「あ、笑った」

にこ「やっぱその方が、あんたらしいわ」

~~~~~

にこ「……なーるほどね。先輩の陰口聞いちゃったの」

凛「うん……」

にこ「キツいわよね、そういうの。わかるわ」

凛「にこ先輩も、似たようなことがあったの?」

にこ「一年の時にね。意識の低いアイドル仲間をどやしつけたら、逆恨みされたのよ」

にこ「自分に関する陰口を聞くほど辛いことってないわよね。一時、かるーく人間不信になったもん」

にこ「それで他人が信じられなくなって、気がついたら部室に一人きり。一時の私は、アイドル失格の精神状態だったわ」

凛「そう、なんだ」

にこ「……それにしても、あんたも度胸あるわよね」

にこ「初対面の先輩相手にも、その猫キャラを通せるなんて。なかなか大したものよ」

凛「皮肉?」

にこ「本心よ」

にこ「その度胸を、陰湿な運動部なんかで燻らせるのはもったいないわ」



にこ「そこで改めて聞くけど――私達と一緒に、アイドル活動してみない?」

凛「……さっきも言ったけど」

凛「アイドルなんて、凛には向いてなくて、」

にこ「じゃあ、聞くけど」

にこ「あんたにとって、アイドルのお仕事ってどういうイメージなの?」

凛「えっと……顔が可愛くて、綺麗な衣装が似合って……」

にこ「はい、0点」

凛「……むー」

にこ「じゃあ、模範解答を教えてあげる」

にこ「いい?アイドルっていうのは――お客さんを笑顔にする仕事よ」

にこ「あんたの相棒は、お客さんと笑顔を共有する仕事って言ってたわ」

にこ「断言するわ、あんたにはアイドルの素質がある」

にこ「底抜けに明るいところも、ちょっとバカっぽいところも、その猫キャラも」

にこ「お客さんを笑顔にできる、立派な才能よ」

にこ「それに」

にこ「あんたみたいに、ボケもツッコミもこなせる人がいてくれると、もっと楽しくなるわね」

にこ「花陽は大人しすぎるのよ」

にこ「……あと」

にこ「調子にのってほしくないから、一回しか言わないけど」

にこ「あんた……普通に可愛いわよ」

凛「!!」

にこ「……さ!話はおしまい!///」

にこ「ここは私が、先輩らしくカッコよくおごってあげるから」

にこ「さっさとそれ、飲んじゃいなさい」




凛「……」グシグシ

凛「うんっ!」ニコッ

にこ「ごちそうさまです」

凛「ごちそうさまだにゃ!」

ことり「お会計、1800円になります♪」

にこ「……げ」

凛「にこ先輩?」

にこ「あの……やっぱり割り勘にしてくれない?」

凛「はぁ……カッコ悪いにゃ~」

にこ「わ、悪かったわよぉ!」

ことり「……」クスクス

数日後――

凛「……」ナデナデ

凛(お母さんが買ってくれたシューズ)

凛(捨てようなんて考えて、ごめんね)

凛(たまに弱気になっちゃう凛だけど)

凛(これからも、よろしくね!)



花陽「……凛ちゃん、もう入っていいって!」

凛「よーし、行くにゃーっ!」

にこ「えー、それでは!」

にこ「これより、新入部員の歓迎会を始めます!」

パチパチパチ

凛「いよっ、部長!」

花陽「ありがとうございます!」

にこ「こっちこそありがとう!ああ、嬉しいわ……やっとスタートラインに立てたんだもの」ジーン

にこ「思えば今までの二年間、決して楽ではありませんでした。苦難の連続でした」

にこ「か弱いにこにとって、現実はあまりにも過酷で――」

凛「かよちん、これおいしいにゃ~」モグモグ

花陽「こっちもおすすめだよ、凛ちゃん」

にこ「聞きなさいよぉ!」

#4 ファーストライブ

絵里「……」カタカタ

検索ワード『矢澤にこ ブログ』

絵里「……」カチッ


にこにーのアイ活日記@音ノ木坂

新着記事:新入部員が来ました!!!!!!


絵里「!」

絵里「……ふーん、よかったわね」

花陽「ええっ、廃部にナッチャウノォ!?」

にこ「今月中に、何らかの活動実績を見せないとね」

にこ「新入部員二人だけじゃ、たぶんあの生徒会長を納得させるには不十分ね」

凛「あんまりだにゃ~!凛なんて入部したばっかりなのにぃ!」

にこ「なーに弱気になってんのよ、要は真面目にアイドル活動すればいいのよ」

花陽「……つまり」

にこ「そう!」


にこ「私達のファーストライブよ!」

凛「お、おぉー!」

にこ「……とはいうものの」

凛「?」

花陽「曲はA-RISEのものを使うとして……」

にこ「問題は、衣装とステージよね」

凛「凛、お裁縫はあんまり得意じゃないにゃ~」

にこ「私が一応、衣装を製作してはいるけど……今月中に仕上げるのはちょっと厳しいわね」

凛「制服で踊るのはどうかにゃ?それで講堂を舞台にすれば手っ取り早いよ!」

にこ「……それができたら、苦労はしないんだけどね」ハァ

凛「にゃん?」

花陽「実は――」

以下、回想

~~~~~

絵里「講堂の使用?認められないわね」

にこ「どうしてよ!」

花陽「私達のアイドル活動のために、どうしても使わせていただきたいんです!」

絵里「これを見て」ピラッ

にこ「……講堂使用の予約一覧表?」

花陽「なるほど、来月までぎっしりです……演劇部に軽音部に……」

絵里「あなた達がもう少し早く行動を起こしていれば、あるいは融通を利かせてあげられたかもしれないわね」

にこ「しょうがないでしょ、最近やっとメンバーが集まったんだから」

絵里「メンバーを集める努力をしてこなかった、あなたの責任よ」

にこ「っ!」

絵里「ともかく、講堂をステージにするのは諦めて」

~~~~~



にこ「あーっ、もう!頭にくるわね!」

花陽「にこ先輩、お茶をどうぞ」コト

にこ「……ありがと」

凛「じゃあ、グラウンドはどうかにゃ?あるいはミュージシャンみたいに路上ライブとか」

花陽「初ライブのステージは、天候に左右されない屋内がいいなって思ってたの」

にこ「それに、路上ライブはちょっとね……」

凛「?」

にこ「ほら、この辺ってUTXのお膝元でしょ?」

にこ「他校の生徒がテリトリー内で自由に振る舞うのを、好まない連中っているのよね」

にこ「最悪の場合、ファンがつく前にネガキャンの嵐で活動自粛……なんてことも無いとは言い切れないのよ」

凛「難しいことはよくわかんないけど」

凛「ステージを選ぶのって、大変なんだね……」

にこ「……ま、今は部の存続が最優先だから、質より量と割り切るのもアリだけどね」

花陽「凛ちゃんの言う通り、制服を着てグラウンドで踊るのも楽しいかもしれないね」

にこ「あー、私、グラウンドは絶対に反対」

凛「なんで?」

にこ「あのムカつく生徒会長に、使用許可の申請するのイヤだもん」

花陽「あ、あはは……」

絵里「」カキカキ

絵里「……はぁ」

希「えーりち」

絵里「……希」

希「ため息なんてついてたら、運気が逃げてまうよ」

希「にこっちのことやろ?」

絵里「……見てたの?」

希「あんな意地悪しなくても、よかったんやない?」

絵里「なによ、予約でいっぱいなのは事実よ」

希「何をそんなにイライラしてるん?」

絵里「イライラなんてしてないわ」

希「ほんとは、面白くないんやないの?」

絵里「……何がよ」ジト

希「アイドル研究部が、軌道に乗ったこと」

絵里「わ、私には関係な……」

希「ウチは、今のにこっちを応援してるよ」

希「肩の力が抜けてるし、目も去年よりずっと穏やかになった」

希「さて、えりちはいつ穏やかになれるかな?」

絵里「……ふん」

にこ「……はい、今日はここまでにしましょう。お疲れ様」

りんぱな「お疲れ様です!」

にこ「簡単に撮った映像を見返したけど、あんた達やっぱり筋がいいわよ」

にこ「花陽は大人しい性格がそのままパフォーマンスに表れていて、庇護欲をそそるプラス要素になってるわ」

花陽「あ、ありがとうございます……//」

にこ「凛は反対に自由奔放でちょっと子供っぽくて、微笑ましい印象を観る人に与えるわね」

凛「それ、ほめられてるのかにゃ~?」

にこ「……ま、二人ともこの私と比べたらまだまだだけど!

可愛さにアダルトな美しさ、そして小悪魔翌要素!三拍子揃ったにこちゃんの前では、あんた達なんてまるで」

花陽「本番でミスしたらどうしよう……」

凛「凛がフォローするから大丈夫にゃ~」

にこ「聞きなさいっつの!」

秋葉原にて――

凛「帰りに風龍でラーメン食べてくにゃ~」

にこ「はぁ?嫌よ、アキバといったらケバブでしょ?」

花陽「わ、私はゴーゴーカレーがいいな」

にこ「はぁ……それにしても」

にこ「どっかに衣装とステージを両方提供してくれる、素敵な人がいないかしら」

凛「そんな人が簡単に見つかったら、こんなに苦労しないにゃ~」



「――こんにちは♪」

ことり「スカウトに来ちゃいました♪」ニコニコ

にこ「はい?」

ことり「私達と短期アルバイトをしてみませんか?」



花陽「音ノ木坂の制服です」ヒソヒソ

凛「にこ先輩、知り合いの方?」ヒソヒソ

にこ「マズいわね、記憶にないわ」ヒソヒソ

花陽「初ライブの前から新規ファンを獲得するなんて……さすがにこ先輩、です!」ヒソヒソ

凛「でも、スカウトって言ってたにゃ 」ヒソヒソ



ことり「?」

にこ「あのー、失礼ですが、どなたでしょう?」

ことり「あっ、今は制服だったっけ」テヘ

ことり「……お帰りなさいませ、お嬢様♪」

凛「……あっ!」

にこ「ミナリンスキーさん!?」

数日後――

凛「ど……どう?」

花陽「わぁ、可愛い♡」

ことり「とっても似合ってるよ♪」

凛「そうかなぁ……?」

にこ「……それにしても、驚いたわ」

にこ「まさかあのミナリンスキーさんが、年下だったなんて」

ことり「南ことりです。学校でもよろしくお願いします」ペコリ

にこ「あ、矢澤にこ……です。こっちは星空凛と小泉花陽。よろしく……お願いします」

ことり「敬語なんて使わないでください、先輩♪」

にこ「いや……職場ではむしろ後輩だし、その」メソラシ

にこ(なーんか、調子狂うわね……)

花陽「♪~」ギュッギュッ

凛「///」コチコチ

花陽「りんりん」

凛「///」モジモジ

花陽「りんりーん?」

凛「にゃっ……は、はいっ!」

花陽「5番テーブルのお嬢様におにぎりをお届けしてくるね」

凛「う、うん!厨房は任せて!」



凛「……ほっ」

にこ「りんりん」

凛「!」ギクッ

にこ「あんた今、これでフロアに出なくてすむって安心したでしょ?」

凛「そ、そんなことないよっ!」

凛(りんりん、って……)

凛(かよちんもにこ先輩も、馴染むのが早すぎるよぅ……)

にこ(……ふむ)



花陽「お待たせいたしました、お嬢様」

花陽「ぱなよん特製の、愛愛おにぎりです」

花陽「それではご一緒に、せーの」

花陽「美味しくなぁれ、萌え萌えキューン♡」

「萌え萌えキューン!」



にこ(花陽……じゃなかった)

にこ(ぱなよんは意外と適応が早いわね。もっと恥ずかしがると思ってたのに)

にこ(それに比べて……)チラッ



凛「お……お嬢様。お待たせしました……」

凛「それではこれより、入国の儀式として、きゃっ……キャンドルを灯しますね//」



にこ(凛……りんりんはまだ、照れが残ってるわね)

にこ(途中で噛んでるわよ。キャンドルを噛んどる)

にこ(ま、これもギャップ萌えと考えればアリね)

ことり「お嬢様が一名お帰り(ご来店)でーす♪」

にこ「は、はーいっ!」

にこ(チャンス到来!)



にこ「にっこにっこにー♡

あなたのハートに、にこにこにー!

笑顔届ける宇宙No.1メイド、にこにーです!

あなたに届け、にっこりの魔法!

にこにー特製、笑顔の呪文!

にこにーにこにーにこにこにー♡

ほら、楽しくなったでしょっ?ニコ♡」


「……に、にこにこにー」ヒキッ



~~~~~

ことり「にこにー」

にこ「……はい」セイザ

ことり「やりすぎはダメだよ?」ニコ

にこ「はい……」ペコリ

凛「にこにー、後輩に叱られてるにゃ~」

にこ「うっさい!職場では先輩だっつの!」

にこ「あんたこそ、控え室に戻った途端に本調子になってんじゃないわよ!」

花陽「大丈夫、今日のりんりんは可愛いよ!」

凛「もぉ、かよち……ぱなよんまで」

にこ「……さて、あんた達」



にこ「そろそろ今日のメインイベントだけど、いい?」

花陽「……」コク

凛「……」ゴクリ

にこ「衣装とステージの問題が、同時に解決された」

にこ「これはとっても、幸運なことだと思うの」

にこ「この舞台を提供してくれたミナリンスキーさんに、そして観に来てくれたお客さんに感謝の気持ちを込めて」

にこ「私達のファーストライブ、絶対に成功させるわよ!」

花陽「は、はいっ!」

凛「テンション上げてくにゃ~!」

ことり「撮影の方は、私に任せて♪」

にこ「本当に、ありがとうございます」ペコリ

ことり「ところで、皆さんのグループ名は……」

にこ「へ?……あっ!」

花陽「大変です、すっかり忘れてました!」

凛「しょうがないにゃ~、こんなこともあろうかと凛が考えてきたにゃ」

凛「ミナリンスキーさん、グループ名は“NICO and HANAYO and RIN”で」

にこ「長い!しかも本名バレしてる!却下!」

花陽「音ノ木坂学院アイドル研究部では……」

にこ「ダメよ、可愛さが足りない!」

凛「もうっ!じゃあにこにーが決めるにゃ~!」

ことり「あの、そろそろ時間が……」

にこ「えーい、もう!」

にこ「決めたわ!」

その頃……

海未「穂乃果、急いでください!」

穂乃果「もー、そんなに慌てなくてもいいじゃん」

海未「せっかくことりが招待してくれたんですよ!見逃したら申し訳が立ちません!」

穂乃果「でもさー。そのスペシャルライブって、ことりちゃんは出演しないんでしょ?」

海未「音ノ木坂のアイドル研究部による、初公演だそうです」

海未「学舎を共にする校友として、観ないわけにはいかないでしょう」

穂乃果「へぇー、おんなじオトノキの子なんだ」

穂乃果「……確かに、応援してあげないとね!」

ギィ……

カランカラン♪

海未「どうやら、間に合ったようですね」

穂乃果「あっ、ことりちゃんだ!おーい!」

海未「しーっ!」

ことり「ご主人様、お嬢様!お集まりいただきありがとうございます♪」

ことり「お待たせしました、本日のメインイベントを開催します!」

ことり「彗星の如く現れた、期待のスクールアイドルグループ――」

ことり「“にこりんぱな”の三人による、スペシャルライブです!」


ワァアアアアアアアアアア!!

にこ「にこにーにこにーにこにこにー♪宇宙No.1アイドルのにこにーでーす♡」

凛「り、りんりんです!よろしくお願いしま……するにゃーっ!」

花陽「はじめまして、ぱなよんです。……が、頑張ります!」

にこ「皆さん、今日は――」

にこ「私達の初ライブ、思いっきり楽しんでいってくださーい!ニコ♡」


ワァアアアアアアアアアア!!

ウォオオオオオオオオオオオオ!!!!

ことり「●REC」



穂乃果(おおー、可愛い!)

穂乃果(いいなぁ、私もなんだか一緒に踊りたくなってきたよ!)ウズウズ

穂乃果「ねーっ、海未ちゃん!」

穂乃果「私達も、スクールアイドルやってみない?」

海未「にこにーにりんりん、それにぱなよん……ですか」

穂乃果「……海未ちゃーん?」

海未「……にっこにこ……ココロりんりん……はなばなしい」ブツブツ

海未「……それは予感、それはキセキ……」ボソボソ

海未「ふむ」

海未「……いけそうです!」カキカキカキカキ

穂乃果「……」クスッ

ハーイ!ハーイ!ハーイ!ハーイ!

穂乃果「はーい!はーい!はーい!はーい!」ブンブン

後日――

凛「よく撮れてるにゃ~」

ことり「頑張っちゃいました♪」

凛「かよちんも一緒に観るにゃー!」

花陽「な、なんだか恥ずかしくて……//」

凛「ミナリンスキーさん!」

ことり「違うよ、凛ちゃん」

ことり「今の私は、ただのことりです♪」

凛「ことり先輩!」

凛「招待してくれて、ありがとうね!」

ことり「こちらこそ、ありがとう♪」

ことり「おかげで人手不足が解消されたし、幼なじみ二人も喜んでた♪」

花陽「幼なじみがいらっしゃってたんですか!?」

凛「どんな人か見てみたいにゃ~」

ガチャッ

にこ「みんな、お待たせ!」

凛「あっ、にこ先輩」

にこ「タブレットをありがとうね、花陽」

花陽「そ、それで!」

にこ「ふっふっふ……」

にこ「あの生徒会長に、配信した動画と寄せられた沢山の応援コメントを突きつけてやったわ!」

凛「……ということは?」

にこ「そう!廃部はなし!!」

花陽「……ほっ」

凛「やったにゃ~!!」

ことり「♪」パチパチパチ

にこ「そして!」

にこ「衣装とステージを提供してもらったにもかかわらず、さらにバイト代までいただいてしまいました!」

凛「……お、おお!こんなに!?」

花陽「すごいです!」

にこ「これだけあれば、欲しかったあのグッズやこのグッズも……」キシシシ

にこ「……と言いたいところだけど、もうすぐ夏休み!部活で夏休みといったら、アレしかないでしょ!」

花陽「……ま、まさか!」

にこ「そう!」



にこ「合宿をするわよ!」

凛「テンション上がってきたにゃーっ!」

以上がラブライブ板で投下した分です
続きは随時投下していきます

#5 にこりんまきぱな


凛:テンション下がるにゃ……

にこ:仕方ないでしょ。38℃も熱があんだから

にこ:来年またあるから、それまで待ちなさい

凛:一年生の校外学習は人生に一度きりだよ!

凛:お母さんは朝から用事でいないし

凛:かよちんは心配だし

にこ:花陽なら大丈夫よ

にこ:それにしても

凛:何?

にこ:バカは風邪引かないって、大ウソね

凛:にこちゃんに言われたくない

にこ:覚えてなさいよ

にこ:(スタンプ)

凛:(スタンプ)

先生「遅いぞ、早くバスに乗れ」

花陽「すみません……」パタパタ

「おっ、ぱなよん!!」

「はなちゃん、遅いよーっ!」

花陽「お弁当つくるのに、時間かけすぎちゃって……//」

「かよちーん、ライブ映像観たよ!」

「大佐ーっ!サインください!」

花陽「大佐!?」


花陽(どこの席もいっぱい……)

花陽(どこかに、空いてる席は……)

花陽(……あ)

真姫「……」ポツン

花陽「あ、あの……」

真姫「何」

花陽「お隣、空いてますか?」

真姫「見ればわかるでしょ」

花陽「……そこ、いいですか?」

真姫「好きにすれば?」

花陽「あうぅ……」

にこ「既読無視なんて気にしないから、いい加減に寝なさい……っと」

にこ「送信」

絵里「今日は久しぶりに一人なのね」

にこ「……あんたには関係ないでしょ」

絵里「そうね、関係なかったわ」

にこ「なんか用?」

絵里「別に。気を遣ってあげただけよ」

にこ「嫌いな相手にまで気遣いをするなんて、生徒会長って意外と暇なのね」

絵里「……嫌いなんて言った覚えはないわ」

にこ「私はあんたのこと、大っ嫌いだけどね」

絵里「……!」

にこ「一年の頃から何かと絡んできて、目障りなのよ」

絵里「……そう、悪かったわ。もう話しかけない」

絵里「ただ、これだけは覚えておいて」

絵里「人を選り好みするアイドルなんて、私は認めない。ニセモノよ」

にこ「なんですって!?」

絵里「……」ツカツカツカ

にこ「待ちなさい!もう一度言ってみなさいよ!」



希「……」

ブロロロロ……

ガイドさん「皆さん、おはようございます」

\おはようございまーす!/

ガイドさん「お忘れ物は無いですか?」

\ありませーん!!/

ガイドさん「STAP細胞は?」

\ありまぁす!!/

真姫「……」シャンシャカシャカシャカ

花陽「あ、あの……」

真姫「何よ」

花陽「そんな大きな音で聴いてたら、耳を悪くしちゃいます……」

真姫「……音漏れしてるなら、そう言えばいいでしょ」

花陽「ご、ごめんね」

真姫「なんであなたが謝るのよ。悪いのは私でしょ」

花陽「え、えっと……」

真姫「イミワカンナイ」フイッ



花陽(……西木野さん)

花陽(普通にお話して、みたいな……)

凛「」ピコピコ

エビマシンガァン!

オッケェイ!

凛「」ガチャガチャ

ンノォオオオウ……

凛「はぁ……退屈だにゃ~」

凛「えっくしょい!」

凛「やっぱり寝よう……」ズピーッ

ランチタイム――

「一緒に食べよー♡」

「そっちのシート入れて?」

「いいよー♪」

真姫「……」ポツン

真姫「……」ゴソゴソ

真姫「……あ、あら?」

真姫「え、ちょっと……」ガサゴソガサゴソ

真姫「……嘘でしょ」



真姫「……お弁当忘れた」

「これおいしーよ!」

「交換しよ♡」



真姫「……ぐすっ」

花陽「西木野さん」

真姫「あによ……」グシグシ

花陽「これ、召し上がれ」

真姫「……受け取れないわ。あなたの分でしょ」

花陽「私、いつもつい多めに作ってきちゃうの」

花陽「食べてくれると、嬉しいな」

花陽「♡」モグモグ

真姫「……はむっ」

花陽「どう、かな」

真姫「……もう少し塩を使ってもいいんじゃないかしら」

花陽「ごめんね。私、白いお米そのままの味が好きだから……」

真姫「でも……あったかいわ」

花陽「あったかい、かな」

真姫「あったかいわよ」

真姫「あったかくて、優しい味がする」

真姫「本当に……ありがとう」

花陽「どういたしまして♡」

真姫「あと、さっきは……ごめんなさい」

花陽「?」キョトン

真姫「小泉さんの手は」

花陽「あっ、花陽でいいよ!」

真姫「花陽の手は……丸みがあって柔らかいわね」ギュッ

花陽「ぴゃっ//」

真姫「美味しさの秘訣は、この優しい手ね」ニギニギ

花陽「西木野さんの手も、優しい感じがするよ」

真姫「……そう、かしら」

花陽「ほっそりと繊細で――音楽家さんみたい」

真姫「私、ピアノを弾いてるの」

花陽「ええっ、ピアニストさんなの!?」

真姫「ピアニストなんて、大層なものじゃないけど……」

真姫「一応、作曲なんかもしてるわ」カミノケクルクル

花陽「すごい!すごいよ西木野さん!かっこいい!」ギュッ

真姫「////」

花陽「今日ね、ほんとは不安だったの」

花陽「幼なじみの凛ちゃんがお休みだったから」

花陽「でも……やっぱり来てよかった!」

花陽「だって、こうして西木野さんとお話しできるから!」

真姫「私も、花陽がお弁当をわけてくれて助かったわ」

花陽「今日は私達の友情記念日だね!」

真姫「そうね……ところで」

花陽「?」

真姫「私はあなたを名前で呼んでるんだから」

真姫「あなたも私のこと、真姫って呼んでよ」

花陽「そうだね!――よろしく、真姫ちゃん!」

真姫「♪」ニッコリ

Prrrr

ピッ

にこ「花陽?お疲れ」

にこ「今どこよ?……えっ、まだ高速なの?」

にこ「……あー、そうね。確かに東名高速っていっつも渋滞するのよね。私の代から変わってないわ」

にこ「うん……うん……そっか、よかったわね」

にこ「……オーケー。凛もいないし、今日の練習はキャンセルってことで」

にこ「連絡ありがと。……ところで」



にこ「凛の住所、教えてくれない?」

なんか中途半端だけど、今夜はひとまずここまで

花陽「……そうそう。その信号を右に曲がってね。すぐ大きなけやきの木が見えてくるから」

花陽「……え、けやきを知らないの!?……ご、ごめんね。そんなつもりじゃ……」

花陽「……とにかく、遠目にもわかるほど大きな木なの」

花陽「その大きな木がある公園の、すぐそばだから……大丈夫、にこ先輩なら見つけられます!」

花陽「……うん。本当にありがとうね。凛ちゃんも喜ぶと思う」

花陽「明日もよろしくね。失礼します」

ピッ

真姫「部活の先輩?」

花陽「うん、幼なじみのお見舞いに行ってくれるんだって」

真姫「ふーん、優しいのね」

花陽「優しいし頼りになるし、時々面白いし、とってもいい先輩だよ!」

真姫「そんなにいい先輩なら、ちょっと会ってみたいかもね」

花陽「……」ジーッ

真姫「な、何よ」

花陽「真姫ちゃんって大人っぽいけど、とっても可愛いよね」

真姫「は、はぁ!?///」

花陽「私達のグループに入ってくれたら、にこ先輩も喜んでくれると思うんだけど……」

真姫「な、何言ってるのよ!イミワカンナイ!///」プイッ

花陽(可愛い)

凛「Zzz……Zzz……」

凛「……んっ」ビクッ



~~~~~

……全体に迷惑がかかるの

……社会出たら苦労するよ?

ピンポーン

……なんか変わってるっていうか

……可愛いと思ってんのかな

……キモw

ピンポーン

……今日も来んのかなぁ

……つきあってらんないよね

ピンポーン

~~~~~



凛「……ゔー、ゔー」

ゴメンクダサーイ

オジャマシマース

凛「ごめんなさい……ごめんなさい……」

にこ「凛、凛」

凛「ごめんなさ……」

にこ「起きなさい」

凛「……あ、あれ?」パチ

凛「にこ先輩?」

にこ「鍵が開いてるのに応答がなかったから、勝手に上がらせてもらったわ」

にこ「悪かったわね」

凛「……」フルフル

にこ「うなされてたわよ。怖い夢でも見たの?」

凛「そ、そんなことない……」

凛「それより、どうしてにこ先輩がここに?」

にこ「花陽に教えてもらったのよ」

にこ「お見舞いに来てあげたわよ」

にこ「迷惑なら、すぐ退散するけど」

凛「……」フルフル

にこ「ほら、いろいろ買ってきてあげたわよ」ドサッ

にこ「ヤクルトにポカリスエット、定番の桃缶、それにリンゴとバナナ」

凛「……このリンゴ、ところどころ黒ずんでるにゃ」

にこ「いわゆる、おつとめ品よ。まだ食べられる食材が廃棄されずにすむし、何より安上がりなのよ」

凛「普通、そんなのをお見舞い品にするかにゃー?」

にこ「うっさいわね。今から剥いてあげるから、黙って待ってなさい」

にこ「♪~」シャリシャリ

凛「……にこ先輩」

にこ「んー?」

凛「凛も髪を伸ばした方が、いいのかな」

にこ「なんで?」

凛「だって、凛の髪……男の子みたいだもん」

にこ「誰かにそう言われたの?」

凛「小学校の頃の男子とか、他にもいろんな人から……」

にこ「あんたも苦労してんのね」

凛「それに、学校のみんなはもっと女の子らしいヘアスタイルだし、テレビや雑誌のアイドルだって――」

にこ「……」ハァ

にこ「確かにオシャレを追い求めるのは、アイドルとして正しいことよ」

にこ「ただね、これだけは言っとくわ」

にこ「周りにあわせて、自分をねじ曲げるのはやめなさい」

にこ「それはあんたに備わってる美質を損ねることよ」

にこ「髪を伸ばしたいなら、伸ばせばいいわ」

にこ「だけど、みんな長くしてるから……なんていい加減な理由で伸ばすのは感心しないわね」

凛「……」ジーッ

にこ「何よ」

凛「今日のにこ先輩、いつもよりずっと先輩らしいにゃ~」

にこ「あんたの減らず口は、いつもよりキレがないわね」

にこ「はい、どうぞ」コトッ

凛「……にこ先輩」

にこ「んー?」

凛「凛、にこ先輩やかよちんに迷惑かけてない?」

にこ「はぁ?何よそれ」

凛「だって、凛は二人と違って、アイドルのことなんてちっとも知らないし……」

にこ「ははーん」

にこ「大方、怖い先輩の夢でも見たんでしょ」

凛「ど、どうしてわかったの!?」

にこ「寝ながら謝ってるんだもん、察しがつくわよ」

凛「……ひとの寝言を聞くなんて、悪趣味だにゃ」

にこ「しょおがないでしょ、聞こえちゃったんだから」

にこ「ま、ともかくよく聞きなさい」

にこ「自分を迷惑だなんて考えるのはもうやめなさいよ」

にこ「そんなネガティブなアイドルなんて、誰も笑顔に出来ないわよ」

にこ「前も言ったけど、あんたの取り柄は明るさと少しのおバカっぽさなんだから」

にこ「アイ活をするには、十分すぎる取り柄よ」

にこ「だから……とにかく、アイドル活動は絶対に続けなさい!」

にこ「それに……」

にこ「私としては――あんたにずっとそばにいてほしいわ」

凛「!!」

にこ「さ、私はそろそろ帰るわね」

にこ「帰ってちび達のために……」

ギュ

にこ「……なによ」

凛「……///」ヒシッ

にこ「あんた、なんか顔が赤くない?また熱上がったんじゃないの?」

凛「ずるいにゃ」

にこ「何がよ」

凛「言いたいことだけいって、さっさと帰っちゃうなんて……」

にこ「仕方ないでしょ、だって」

凛「一人にしないで」

凛「凛だって」

凛「にこ先輩に、ずっとそばにいてほしい……」

にこ「は、はぁ!?///」

にこ(なんなのよ!今日の凛は!?)

にこ(風邪なの、風邪のせいなの!?)

にこ(認めたくないけど……)

にこ(めちゃくちゃ、可愛いんだけど!?///)


凛「……」ウルウル

にこ「……ま、」

にこ「まったく、しょうがないわね~//」

にこ「いいわ。あんたが寝つくまで、ずっと一緒にいてあげる」

にこ「だから、とっとと寝なさいよ!」プイ

にこ「なんなら、子守唄でも歌ってあげようか?」

凛「にこ先輩の好きなアイドルソングばっかり聞かされそうだから、いらないにゃ」

にこ「……すぅ、すぅ……」

凛「自分が先に寝てるにゃ~」

凛「疲れてたのかな……?」

凛「にこ先輩」ユサユサ

にこ「……んぅ……」

凛「……にこちゃん」

凛「おやすみ……」

にこ「すぅ、すぅ……」

凛「……Zzz」モッギュー

後日――

花陽「凛ちゃんが回復したのはよかったけど、」

花陽「今度はにこ先輩が、お風邪なんて……」

花陽「凛ちゃんのお風邪が伝染っちゃったのかな」

花陽「今日も練習はお休みだね」

花陽「凛ちゃん、放課後はお見舞いに行こうね」

凛「……」

花陽「凛ちゃーん?」



凛「……やだ///」フイッ

投下完了
気安く書ける番外編的な話のつもりが、やたら手間がかかった


次はようやく合宿編です

#6 にこにーとエリーチカ


真姫「」ポチポチ

真姫「……これが花陽の言っていた、アイドル研究部の公式アカウントね」

真姫「インターネットを通じて世界中にアピールしなきゃいけないなんて、スクールアイドルも大変ね」

真姫「ちょっと覗いてみましょう」

音ノ木坂学院アイドル研究部公式
@Otonoki_love25

説明:音ノ木坂学院アイドル研究部の公式アカウントです。部員募集中です。白いお米が好きな方は特に歓迎します。


@Otonoki_love25
可愛い猫見つけた

@Otonoki_love25
三人でラーメン食べに来たなう

@Otonoki_love25
ほうれん草
豚挽き肉250グラム
お風呂場の電球
トイレットペーパー

@Otonoki_love25
バルス!!!!!!!!!!!!!!



真姫「……何よこれ、アイドルに関係ないことばっかりじゃない」

真姫「誰が投稿してるのかしら、不真面目ね」

真姫「もっと見てみましょう」



@Otonoki_love25
もうすぐ合宿。今から楽しみで寝れないにゃー!!



真姫「ふーん、合宿に行くのね」

真姫「……」

真姫「羨ましくなんて、ないんだから」カミノケクルクル

凛「待ちに待った合宿だにゃー!」

花陽「空気が澄んでいて気持ちいいね!おにぎりがおいしく食べれそうです!」

にこ「はぁ……あんた達ってホントに子供ね」

にこ「いい、遊びに来たんじゃないのよ?

今回の合宿にはPVの撮影という、ちゃんとした目的があるんだから」

にこ「それにわざわざ東京から遠く離れたここを選んだのには、もう一つ理由があるわ。花陽、その理由とは?」

花陽「路上ライブ、です!」

にこ「その通り!UTXの影響力が及ばないここなら、存分に歌って踊ってアピールできるわよ!」

にこ「そしてもちろん、にこは不動のセンター!

配信した動画が評価されれば、いずれ大手芸能事務所からお声がかかって――きししし♡」

凛「心の声が丸聞こえだにゃ~」

ガァアアアアアアアア

ガロロロロロロ……

にこ「しゅっぱーつ!」

にこ「花陽!この電車、窓が開くわよ!東京ではめったにないわね!」

花陽「電車じゃないよ、にこ先輩。これは気動車といって、ディーゼルエンジンで……」

にこ「わーっ!風が冷たくて気持ちいい♡」

にこ「一面の田園風景、そしてこの青空!なんだか歌いたい気分ね!」

にこ「あーっ、見てみて、あれ野生の鹿じゃないの!?すごーい、初めて見た!」

凛「自分が一番はしゃいでるにゃ~」

花陽「……」クスクス

絵里「……」ポチポチ

絵里「!」


@Otonoki_love25
合宿初日。東京とは景色が全然違う


絵里「そう、合宿に行ってるの」

絵里「来年は受験なのに、呑気ね」


――私はあんたのこと、大っ嫌いだけどね


絵里「……はぁ」

ブーンブブッ

絵里「あら、メール」

絵里「!!」

絵里「いけない!すっかり忘れてたわ!」ガタッ

穂乃果「あーっ、絵里ちゃん遅いよ!」

海未「あなたが遅刻とは、珍しいですね」

絵里「ごめんなさい、ぼんやりしていたものだから」

ことり「まあまあ。主役はちょっぴり遅れてくるものだよ♪」

海未「そうですね……では、そろそろ始めましょう」

海未「前・生徒会長のお疲れ様会です!」

穂乃果「絵里ちゃん!今までご苦労様でした!」

パチパチパチパチパチ

絵里「とっても嬉しいわ。私のために、こんな会を開いてくれるなんて」

絵里「それに、あなた達は優秀な役員だったわ。本当に感謝してる」

穂乃果「わーい!絵里ちゃんに褒められたー!」

海未「穂乃果は少し謙遜なさい!あなたのミスが何度余計な仕事を増やしたと思っているんですか!」

穂乃果「ぅええー、海未ちゃんがいじめるー!」

ことり「まあまあンミチャー」

絵里「そうよ。穂乃果の働きに助けられたことだって何回もあったわ」

海未「絵里がそうおっしゃるなら、それでいいのですが……」

絵里「次期会長は、あなた達三人の中から選ぼうと思うの。みんなそのつもりでいてね」

ことり「ハノケチェン、会長になるかもしれないんだって!よかったね♪」

穂乃果「うーん、会長かぁ」

穂乃果「やっぱり生徒会との両立は難しいよね……」

海未「またその話ですか?やれやれ……」

絵里「何の話?」

ことり「ハノケチェンはね、スクールアイドルに憧れてるの」

海未「以前観に行ったライブが、どうしても忘れられないそうです」

穂乃果「だってすごいんだよ!私達と同じ高校生なのに、舞台の上ですっごくキラキラ輝いてて……」

穂乃果「ねーっ、やっぱりやろうよ、スクールアイドルー!」

海未「いけません!夢みたいなことばかり言ってないで、まずは書類のミスを無くす努力をなさい!」

ことり「ンミチャー、あの子達のために書いてる詞は完成したの?」

海未「なっ!?なぜあなたがそれを!?///」

ことり「♪」

穂乃果「ねー、絵里ちゃんはどう思う?」

絵里「確かに、海未の言う通りね。生徒会とスクールアイドルの両立はすごく難しいと思うわ」

穂乃果「むう……」

絵里「とはいえ、私には穂乃果の気持ちもわかるの」

絵里「女の子なら、一回くらいはアイドルになってみたいわよね。素敵な衣装を着て、きれいなステージで踊って」

海未「意外ですね。絵里がアイドルに理解があるなんて」

絵里「私って、そんなに堅物なイメージかしら……」

絵里「ところで、穂乃果をとろけさせたそのアイドルグループはなんという名前なの?」

穂乃果「にこりんぱな、だよ!」

絵里「!!」

海未「私達と同じ、音ノ木坂の生徒だそうです。面識があるのはことりだけですが」

ことり「私がスカウトしたの。ライブのおかげで、お客さんも大喜びだったよ♪」

絵里「そ、そうなの……」

穂乃果「絵里ちゃん?」

絵里「ああ、ごめんなさい。なんでもないわ」

その晩――

絵里(……)

――私は認めない。ニセモノよ

――同じ高校生なのに、舞台の上ですっごくキラキラ輝いてて……

絵里(私は知ってるわ)

絵里(穂乃果は優しい子だけど、ただのお世辞であんなに誰かを絶賛したりはしない)

絵里(にこ、前言撤回をしなくちゃいけないわね)

絵里(あなたは素晴らしいグループを作ったのね。紛い物なんかじゃない、本物のスクールアイドルグループを)

絵里(そして、そのグループは)



絵里(……私なんて、必要としていないのよね)

一方――

凛「なんで宿泊施設がただのビジネスホテルにゃ……」

にこ「しょおがないでしょ。移動費がバカにならなかったのよ」

凛「ウソだよ!移動手段なんて青春18きっぷ(普通列車のみ5日間乗り放題)なのに!」

凛「にこ先輩はドケチだにゃー!凛は飛行機に乗りたかったのに!温泉だって入りたいのにぃ!」

花陽「まあまあ、凛ちゃん。文句ばっかり言っちゃダメだよ」

花陽「私は楽しいよ、にこ先輩!合宿費のやりくりご苦労様です!」

にこ「うぅ……花陽、労ってくれるのはあんただけよ……」クスンクスン

花陽「よしよし」ナデナデ

凛「しゃーっ!!」プンスカ

にこ「さて、そろそろミーティングを始めるけど……飲み物とお茶菓子くらいは用意してもいいわよね」

花陽「あっ、じゃあ私が買ってくるね!」

にこ「いや、ここは私が行くわ」

凛「ううん、凛が行くよ」

花陽「大丈夫、二人は休んでて!」

花陽「行ってきます!」

にこりん「あっ……」

ガチャバタン



にこ「……」

凛「……」

にこ「……座りなさいよ」

凛「……うん」

凛「ねえ、にこちゃん」

にこ「何よ」

凛「この間は、ありがとうね」

にこ「何がよ」

凛「お見舞いのこと」

にこ「ああ、あの日ね」

にこ「あの後は散々だったわ。あんたの風邪が伝染っちゃって」

凛「……ごめんね」

にこ「べ、別に……そんなつもりで言ったわけじゃないわ」

凛「……」

にこ「……」



にこりん(気まずい……)

にこ「……あんたさ」

にこ「この間、私のことをちゃん付けで呼ばなかった?」

凛「にゃっ!?……よ、よ、呼んでないよ!」

にこ「ふーん。そのわりに動揺してるけど」

凛「ど、動揺なんて……」

にこ「まあいいわ。何となくそんな気がしただけ」

にこ「……ただ」

にこ「私は別に気にしないから、呼びたければちゃん付けにしてもいいわよ」

凛「じ、じゃあ……にこ、ちゃん」

にこ「!!////」ボッ

凛「なっ、なんでそこで赤くなっちゃうの!?///」カァア

にこ「うっさい!赤くなんかなってないわよ!///」

にこ「あーっ、もう!」

にこ「花陽は遅いわね!テレビでも見るわ!」

凛「あっ、凛はライオンズ戦の途中経過が見たいにゃ~」

にこ「ここ、BS映らないわよ」

凛「あれ?このプレミアムチャンネルって何かにゃ?」ピッ

にこ「あっ、バカっ!」



アンッ……アッ♡アッ♡アッ♡アッ♡



凛「にゃあああああああああ!!!!////」

にこ「きゃああああああああ!!!!////」

ガチャ

花陽「お待たせしました!」ツヤツヤ

花陽「こっちのコンビニって面白いの!

東京では売ってないおにぎりがたくさんあって、つい目移りしちゃって……」

花陽「……あ、あれ?」

花陽「二人とも、寝ちゃったのかな」



にこ「////」

凛「////」

翌朝――

花陽「絶好のアイ活日和、です!」

花陽「さあ、今日もいっぱい練習して、明日の大通り公園でのライブに備えましょう!」

にこ「そ、そうね」

凛「うん……」

花陽「?」

にこ「……さ、さあ!今日も練習、いっくにゃー!//」

凛「そ、それ凛のセリフ!//」

花陽(なんで顔が赤いの!?)

花陽(二人とも、何があったの?)

花陽(……はっ、まさか!)

花陽(もしかして、昨夜コンビニに行っている間に、つい一線を踏み越えて……!)

花陽(ダメだよ……それはアイドルとしてダメだよ!丸刈り謝罪もやむ無しだよぉ!)

花陽(……でも)

花陽(二人が、それで幸せになれるなら……)

花陽(私は……)



トントン

にこ「……何よ」

花陽「にこちゃん」

花陽「凛ちゃんを、幸せにしてあげてね」グスッ

にこ「は、はぁ!?///」

中断

進まないにゃ~

予備校――

絵里「……」カリカリ

ポキッ

絵里「……」カチカチ

絵里「……」カリカリ

ポキッ

絵里「……!」イラッ

絵里「……」カチカチカチカチカチカチカチカチ

ミーンミンミンミンミン

絵里「……暑いわね」

希「えーりち」

絵里「……希」

希「夏期講習、お疲れさん」

希「この後、予定はあるん?」

絵里「何もないわ」

希「ほな、ウチとちょっとお茶しよっ!」

喫茶店――

「ご注文をどうぞ」

絵里「私はアイスティーを。希は?」

希「ウチはレスカ!」

「かしこまりました」

絵里「レスカ?」

希「レモンスカッシュの略称よ。ウチのおかげで、また一つ賢くなれたやん?」

絵里「……用件はそのムダ知識の披露?」

希「つれないなぁ。ウチだって前会長に労いの言葉をかけたかったんよ?」

絵里「この間のお疲れ様会には出席しなかったくせに……」

希「まだそのタイミングじゃない、カードがそう告げたんや」

絵里「何よそれ」

希「ま、ともかく今までご苦労さん」

希「これで肩の荷が下りたんちゃう?」

絵里「そうもいかないわ。来年は受験だもの」

希「考えるべきことは、受験だけ?」

絵里「何が言いたいのよ」

希「このままでええの?にこっちとのこと」

絵里「……やっぱり。言うと思ったわ」ハァ

絵里「第六感かしら。何となく予感がしたのよね」

希「スピリチュアルやね」

希「にこっち、最近とっても楽しそうやね」

絵里「みたいね」

希「アイ研の公式アカウント、見てる?」

絵里「そんなの見るほど、暇じゃないわ」

希「ところで、最近にこっちの姿を見ないんやけど、どこに行ったんかな?」

絵里「どうして私が知ってるのよ」

希「心配やなぁ。もしかして、何かの事件に巻き込まれて……」

絵里「そんなわけないでしょ。ただの部活の合宿よ」

希「あれー?なんでえりちが合宿のことなんて知ってるん?」

絵里「!!」ハッ

希「……」ニマニマ

絵里「カマをかけたわね!ずるいわよ!」

希「本当に、素直やないんやから」

絵里「……ふん」

希「肝心な時に不器用で、へそ曲がりで……」

希「えりちは一年の頃から、ちっとも変わってないなぁ」

絵里「さっきから、何が言いたいのよ」

絵里「希は、私にどうしてほしいの?私に何を期待してるのよ?」

希「ウチは、えりちが一番したいことをしてほしい。悔いが残らないよう、好きなことを好きなようにやってほしい」

希「それだけよ」

絵里「……してるわよ。好きなこと」

希「してない」

絵里「してるわよ!」

希「してない!」

「……お待たせしました。レモンスカッシュとアイスティーです」

希「どうも」

絵里「……はぁ」

絵里「じゃあ、何を根拠にそう思ったのか言ってみなさいよ」

希「……」スッ

絵里「……な」

希「観念し。ネタは上がってるんよ」

絵里「なんであなたがそれを持ってるのよ!」

絵里「捨てたはずなのに……」ハァ

回想

絵里・一年次

~~~~~

絵里「大変だったわね。元気出しなさい」

絵里「……こんな言い方は高飛車かしら」

絵里「大変そうねぇ。元気出しなさいよぉ」

絵里「……今度は皮肉っぽいかしら」

絵里「言葉って難しいわね。同じ意味でも、ニュアンス一つで与える印象が全然違ってきちゃう」

絵里「これからは、もう少しその辺りにも気をつけないと」

絵里「アイドル活動は、お客さんとのコミュニケーションが大切だもの!」

絵里「よし!迷っていても仕方ないわ!」

絵里「絢瀬、いっきまーす!」

絵里「……今の、誰にも見られてないわよね?///」キョロキョロ

絵里「あっ、あれはちゃんと入ってるかしら」

絵里「……やっぱり!いけないいけない、危うく忘れるところだったわ」

絵里「大事な届けを忘れて行ったら、入部早々にポンコツ扱いされちゃうわね」クスクス

コンコン

絵里「……」ワクワク

絵里「?」

コンコン

絵里「……」ドキドキ

ガチャ

にこ「……何か用?」

絵里「大変そうね。元気出し……」

にこ「冷やかしなら帰ってほしいんだけど」

にこ「こっちは忙しいんだから」

絵里「忙しいって……どうせアイドルの動画を観るくらいしか、することないんでしょ?」

にこ「あんた、ケンカ売りに来たの?」

絵里「ごめんなさい、別にそんなつもりじゃ……」

にこ「なら、とっとと要件を言いなさいよ」

絵里「……何よ、そんな言い方はないでしょ?」カチン

絵里「せっかくあなたの窮状を察して、ここまで来てあげたのに」

にこ「はぁ?“あげた”って何よ。その上から目線、すっごいムカつくんだけど」

絵里「いちいち突っかかるのね。私があなたに何をしたっていうのよ」

にこ「大して親しくもないあんたに、何かをしてもらういわれなんて無いんだけど?」

絵里「心外ね、教室では普通に言葉を交わす仲じゃな……」

にこ「――ははーん。わかったわ」



にこ「あんた、あいつらの差し金でここに来たんでしょ」

にこ「一人で部室にいる私のことを、みんなで笑おうって魂胆ね」

絵里「な、何を言ってるの?」

にこ「おあいにく様。私はあんた達なんかに負けない!」

にこ「もともと、こんな学校なんて私の居場所じゃないのよ!」

絵里「!!」

にこ「笑いたきゃ笑いなさいよ!うちにお金さえあれば、今頃はUTXで充実したアイドル活動が出来てたのよ!

でなきゃ誰が好き好んで、こんな陰湿で意識の低い弱小校なんかに――」



絵里「……そう。わかったわ」ワナワナ

絵里「邪魔して悪かったわね。高潔なアイドル活動とやらを、どうぞお一人で続けてちょうだい」

絵里「……」

希「あれ、えりち」

希「意外と早かったね。アイドル研究部はどうやった?」

希「……えりち?」

ビリッ

絵里「……っ!」ポイッ

希「ちょ!?」

絵里「……」ツカツカツカ

希「えりち、待って!何があったん?」

~~~~~



絵里「……今となっては、にこの気持ちもわかるのよ」

絵里「家の事情で第一志望に進学できず、せっかく立ち上げたアイドル研究部では失望を味わって」

絵里「少々荒んでしまうのも、仕方のないことよね」

絵里「それでも……私はどうしても許すことが出来なかったの」

絵里「大好きなこの学校を、貶されたことが」

希「えりちは……本当は、頼ってほしかったんやろ?」

希「にこっちの助けになりたかったんやろ?」

絵里「……そうね」

絵里「だけど、あの子って強情だから」

絵里「たまに発破をかけに行っても、最後は結局ケンカになっちゃって」

希「強情で不器用なのは、お互い様やん?」

絵里「……意地悪」

絵里「でも、よかったわ」

絵里「可愛い新入部員が二人もできて、ようやく今までの忍耐が報われたんだから」

絵里「私の出る幕はないわね」

希「心から、そう思ってる?」

絵里「あ、当たり前でしょ」

希「なら、この入部届けは出任せだったん?」ピラッ

絵里「……中身、読んだわね」

希「し、仕方ないやん。テープで補修する時に、つい」

絵里「希って、時々本当に悪趣味よね」ハァ

希「えりち……そろそろ素直になったらどう?」

希「ただの同情で、ここまで心のこもった入部届けは書けないはずよ」

希「本当は憧れてたんやろ――アイドルに」

希「にこっちと一緒に、アイドル活動したかったんやろ?」

絵里「……」

「お冷や、お注ぎしますね」

希「どうもどうも」

絵里「……ひとつ、聞いていい?」

希「ええよ」

絵里「私が好きなことを、好きなようにやるとして」

絵里「希はどうするのよ」

希「ウチはえりちの進む道なら、どこまでだってお伴するよ。一蓮托生や♡」

絵里「じゃあ、あるいは二人揃って……」

希「ええやん!きっと喜ぶよ」

絵里「もう三年生も後半よ?普通はありえないわよ、こんな時期に……」

希「ウチらの成績なら、大丈夫♪」

絵里「楽天的ね……」

その頃――

にこ「ぐぬぬぬ……」

凛「もう忘れようよ……」

にこ「ムリよ!100円よ、100円!?」

にこ「ぬゎんでこのご時世に汲み取り式のお便所があるのよ!」

花陽「さすがに諦めるしかないよね。水洗トイレでもためらうのに……」

にこ「あーん、にこの100円玉ー!」

凛「さすがに見苦しすぎるにゃ~」

@Otonoki_love25
PV撮影、無事に終わりました!
大通り公園でのライブも大成功でした!見に来てくれたお客さん、ありがとうにゃー!(>ω<)/

@Otonoki_love25
現地でスクールアイドル志望の女の子と知り合いました!とっても可愛い姉妹です!
画像はアップできないけど、妹さんの方がうちのリーダーにそっくりだにゃー!(>ω<)/


絵里「……くすっ」

絵里「合宿、楽しかったみたいね」

絵里「にこにとって、最初で最後の合宿……」



――ウチは、えりちが一番したいことをしてほしい。悔いが残らないよう、好きなことを好きなようにやってほしい

――えりち……そろそろ素直になったらどう?

――にこっちと一緒に、アイドル活動したかったんやろ?



絵里「……」

絵里「私が今、一番したいことは……」

絵里「……だけど」



絵里「今更、どうすればいいのよ……」

同じ頃――

真姫「……」ポチポチ

真姫「あっ、更新されてるわ」

真姫「ライブは大丈夫だったみたいね、よかった」

真姫「過去の投稿も見てみましょう」


@Otonoki_love25
味噌ラーメンなう。さすがは本場!おいしいにゃ~(>ω<)/

@Otonoki_love25
一面のひまわり畑。夏だにゃ~

@Otonoki_love25
キツネ発見!!!!!!!

@Otonoki_love25
日本一美味しいソフトクリームなう

@Otonoki_love25
ガラス細工のお店に来ました。リーダーがうっかり何か割らないか、とっても心配です



真姫「……ナニコレ、イミワカンナイ」

真姫「ただの観光旅行じゃない」

真姫「ア  イ  ド  ル  要  素  は  ?」

今夜はここまで
合宿回(エリーチカ回)でした

今までで一番、手間のかかるSSです

#7 ラブライブ

にこ「♪~」ミシンカタカタ

にこ「……できた!」

にこ「ちょっと時間かけすぎちゃったけど、その甲斐はあったわね」

にこ「これでもう、借り物のメイド服や制服で妥協しなくてすむわ!」

にこ「私達の……オリジナル衣装よ!」

にこ「……」ズズー

にこ「ひと働きした後のお茶は美味しいわ」ホゥ

にこ「あの子達とアイドル活動を始めて、もうじき半年になるのね。早いもんだわ」

にこ「そして、私があの子達と過ごせる時間は、あと半年しか残されてないのよね……」

にこ「残り少ない高校生活、何か記念になることがしたいわね」

にこ「……にこっていつから、こんなセンチになっちゃったのかしら」

にこ「最近、ちょっとたるんでるかも」

にこ「あの子達に弱いところを見せるわけにはいかないわ。少し運動して、気を引き閉めないと」ウンウン

ガチャバッタン

花陽「にこ先輩!」

にこ「どわっ!!」

花陽「大変です!」

にこ「な、何なのよ!寿命が縮んだじゃない!」

花陽「事件です!スクールアイドル界を揺るがす大事件です!とにかく大変なんです!」

にこ「何なのよ、いったい……はっ!」

にこ「まさかA-RISEの解散宣言!?」

花陽「違います!」

にこ「それともSMAPの解散宣言!?」

花陽「それも違います!」

にこ「もしかして……ASKAが逮捕されたなんて言わないわよね!?」

花陽「違います、違います違います違います!とにかくまずは、このニュースを見てください!」

にこ「……これって!」

花陽「わかりましたか!?行きましょう、にこ先輩!」

にこ「ど、どこへよ!」

花陽「決まってます、UTXです!あそこなら必ず募集要項があります!」ズルズル

にこ「ちょっと、腕引っ張らないで!にこは走りたくなんかないのよぉ~!」ズルズル

冒頭のみ投下
次回、一気に完結させたいです
でも明日は忘年会だから、再開はおそらく明後日以降になります

凛「ラブライブ大会?」

花陽「そう!それはスクールアイドルの祭典、野球で例えるなら甲子園大会!」

花陽「今回はなんと!大会の様子がネット中継されるだけでなく、全国各地でパブリックビューイングまで催されるそうです!」

凛「よくわかんないけど、なんかすごいにゃ~!」

凛「凛は出てみたい!どこまで行けるか、実力を試してみようよ!」

花陽「それに、全国各地のスクールアイドルを間近に見る機会なんてめったにありません!」

花陽「出ましょう、ラブライブ大会!にこ先輩、エントリーのご決断を!」

凛「にこ先輩!」

にこ「……」

花陽「……にこ先輩?」

にこ「もちろんよ……そういいたいところだけど」

にこ「ちょっと、この要項をよく読んでみなさい」ピラッ

凛「どれどれ?」


なお、今回の予選において使用できる楽曲は、未発表のオリジナル曲のみとさせていただきます。ご了承ください。


にこ「ね?」

花陽「……え」

凛「えぇ~~~~~!?」

花陽「終わった……終わりました」シクシク

にこ「たぶん、前回大会が予想以上にエントリー数が多かったのね。予選の段階で厳選するつもりなのよ」

凛「で、でも!これってどう考えても音楽科のある高校とか、プロにコネがあるお金持ちの学校の方が有利だよね!?」

凛「こんなのフェアじゃないよ!運営に抗議するにゃー!」

にこ「今更ルールに難癖つけたって、しょうがないでしょ」

花陽「でも、今から作詞と作曲を始めるなんて……」

凛「凛、現代文は英語よりは得意だよ!……だけど」

にこ「しょおがないわね~。ここは私が秘密裏に作っていた“にこにーにこちゃん”という詞を」

凛「ともかく、やるしかないよ!」

花陽「そうだね……なんとかしなくちゃ」

にこ「スルーすんなー!」

~~~~~

真姫「え?作曲を習いたい?」

花陽「うん。真姫ちゃんなら詳しいかなって」

真姫「教えるのは別にいいけど……花陽、楽譜なんて読めるの?」

花陽「う……」

真姫「……何があったのよ」

花陽「な、なんでもないの!なんでも……」

凛「……放課後のチーズバーガー、熱々のラーメン」

凛「ホイップたっぷりのワッフル」

凛「みんな私のお気に入り」

凛「モフモフの背中、ぷにぷにの肉球」

凛「みんな私のお気に入り……」



凛「……もーっ、こんな丸パクリはダメだよ!」

にこ「……にこにーにこにーにこにこにー」

にこ「明るい笑顔のにこにこにー、お日様笑顔のにこにこにー」

にこ「はぁ……ダメね」

にこ「何か書こうとすると、どうしてもパパが作ってくれたこの詞が浮かんできちゃう」



にこ「情けないわね、私」

にこ「未だにパパのことを吹っ切れないなんて……やっぱりちょっとたるんでるわ」

数日後――

凛「かよちん、作曲はどう?」

花陽「……」フルフル

凛「凛もさっぱりだにゃ~」

凛「この際、にこ先輩が作詞した“にこにーにこちゃん”で妥協するしか……」

にこ「あんたあれ、本気にしてたの?」

凛「えーっ、じゃあ」

にこ「冗談に決まってるでしょ。そんな素敵な詞があったらとっくに披露してるわよ」

花陽「やっぱり、今から運営にお願いするしか……」

にこ「ね、あんた達」



にこ「無理して出なくても、いいんじゃないかしら」

りんぱな「!!」

にこ「やっぱり、素人がその場しのぎで作った詞と曲を披露するなんて、お客さんに失礼だと思うの」

花陽「でも……」

凛「にこ先輩はそれでいいの?」

にこ「ちょっと待ちなさいよ。私は、ってどういうことよ」

にこ「もしかして……あんた達、私のためにオリジナル曲を作って、私のために大会に出ようとか考えてんじゃないの?」

凛「……」

花陽「……」

にこ「図星ね」

にこ「まったく、なんにもわかってないわね」

にこ「凛、あんたにはちゃんと説明したはずよ。アイドルのお仕事とは?」

凛「お客さんを、笑顔にすること……だっけ」

にこ「そう!」

にこ「スクールアイドルをやるのは、お客さんのため?それとも私のため?」

にこ「花陽、あんたはその辺わきまえてると思ってたんだけど」

花陽「……ごめんなさい」

にこ「こんな基本すら見落とす部員は、どのみち大会に連れていくわけにはいかない」

にこ「エントリーはナシよ。今日はこれで解散。家に帰って、頭を冷やしなさい」

凛「で、でも!」

花陽「……凛ちゃん」

花陽「にこ先輩の言う通りだよ……今日のところは帰ろう?」

花陽「ね?」

凛「かよちん……」

花陽「ほら、行こう」

凛「……」

バタン……



にこ「……はぁ」

にこ「また、やっちゃった」

にこ「どうして私って、こんな言い方しかできないのよ」

にこ「あの子達は、私のために……それなのに」

にこ「花陽、凛……ありがとう」



にこ「……ごめんね」

帰り道――

凛「……かよちんは、どう思う?」

花陽「にこ先輩の言ったことは正しいよ」

花陽「私達はスクールアイドルだから……私情に流されて、お客さんを二の次にするなんてダメ」

花陽「それに、私達が作ったへたっぴな曲なんて、お客さんに聴かせちゃいけないよ」

凛「じゃあ、かよちんは……このまま大会に出られなくてもいいんだね」

花陽「……」

凛「凛は、そんなの絶対ヤだ」

凛「凛は二人みたいに、立派なアイドルにはなれない」

凛「アイドルの心得なんて知ったこっちゃないよ」

凛「凛がラブライブに出たいのは、お客さんのためじゃない!凛達三人のためだよ!」

凛「だって……この三人で過ごせる時間、あと半年しかないんだよ!?」

凛「残り少ないにこちゃんとの時間……凛は、悔いなんて絶対に残したくない!」

花陽「……にこ“ちゃん”?」

凛「あっ……//」バッ

凛「と、とにかく!凛はあきらめたくない!あきらめない!」

花陽「でも、今のにこ先輩は絶対に許してくれないと思う……」

花陽「……だから、私達だけで勝手に動いちゃおっか」

凛「それでも!……え、えっ?」

花陽「私も、凛ちゃんと気持ちは同じなの」

花陽「ちょっと無茶な挑戦でも、それがアイドルとして正しくないことでも」

花陽「にこ先輩と過ごせる時間を、大切にしたい。後悔なんてしたくないの」

凛「……じゃあ!」



花陽「きっと後で、いっぱい叱られちゃうね」

凛「二人いっしょなら、ちっとも怖くないにゃ~!」

花陽「……」カキカキ

凛「ねえ、かよちん」

花陽「うん」

凛「やっぱりこれって、他力本願じゃないかにゃ?」

花陽「凛ちゃん。たとえば部員が3人しかいない野球部は、甲子園に行けるかな?」

凛「そんなのムリにゃ~」

花陽「そうだよね。スクールアイドルだって同じだよ」

花陽「ナインが揃わないと甲子園には行けないし、作詞や作曲ができる人がいないとラブライブには出られない」

花陽「今からメンバーを集めることを、恥じる必要なんてないと思うの」

凛「なるほど」

花陽「あっ、ちなみに他力本願って言葉、本来は“人任せ”って意味じゃないんだって!気を付けてね!」

凛「うぅ、今までずっと誤用してたにゃ……」

花陽「……できました!」

凛「さっすが絵を描くことが趣味のかよちん!上手だにゃ~」

花陽「凛ちゃん、プロフィール欄を説明調で読まないで……」

凛「あとはこれを掲示板に貼るだけだよ!」

花陽「それにしても、この“I WANT YOU”ってフレーズ……」

凛「凛でも知ってる有名なアイドルソングから借りてきたにゃー!」

花陽「でも……なんだかアイドル研究部の勧誘ポスターというより」

花陽「第一次世界大戦の募兵ポスターみたいだね……」



I WANT YOU
FOR アイドル研究部

急募!作詞と作曲ができる人

※入部説明会を開催します。
日時:×月×日3時

おいしいお菓子とおにぎりを用意して、お待ちしています!!

とりあえずここまで
明日、完結予定です


今日中に終えたかった……

凛「かよちん、どう?」

花陽「ちょっとナナメになってるかも」

凛「じゃあ、こっち側を下げてみるにゃ」

絵里「何してるの?」

凛「あっ」

花陽「会長さん……」

絵里「生徒会の許可印がないポスターを、勝手に掲示板に貼ってはダメよ」

花陽「ご、ごめんなさい……」

凛「じゃあ、許可印くーださい!」

絵里「悪いけど、私にはもうその権限はないの」

絵里「引退したのよ」

凛「そんなぁ……」

絵里「……ちょっと、ついてきて」

生徒会室――

ポン

海未「はい、許可印です」

絵里「次からはちゃんと事前に申請するのよ」

凛「はーい!気を付けるにゃ~」

穂乃果「あれっ、なになに?またイベントやるの?」ヒョコッ

ことり「わぁ、可愛いポスター♡」ヒョコッ

凛「あーっ!ミナリンスキーさん!」

ことり「ノンノン。今はただの南ことりです♪」

穂乃果「ファーストライブ見に行ったよ!とっても可愛かった!」

花陽「あ……ありがとうございます///」

穂乃果「おっ、部員募集してるんだ!」

穂乃果「ねーっ、海未ちゃん!やっぱりやろうよ、スクールアイド……」

海未「いけません!」

穂乃果「ぶーっ……」

花陽「あ、あの!」

花陽「ポスターにも書いたんですけど、私達……」

穂乃果「……そっかー、オリジナル曲が無いと大会に出られないんだ」

花陽「にこ先輩にとっては、今年が最後のチャンスで……」

凛「戦って負けるのなら仕方ないけど……チャレンジすらできずに諦めるなんてイヤにゃ……」

絵里「……」

ことり「ンミチャー、ちょうどよかったね。作った詞を披露するチャンスだよ♪」

海未「こ、ことり!」

穂乃果「そうだよ!海未ちゃん三人のために何か書いてたじゃん!」

海未「も、もう!人が悪いですよ、二人とも!///」

絵里「……ちょっと、いいかしら」

絵里「海未。このポスターを生徒の人数分、縮小コピーして。早ければ明日のホームルームで配布できるわ」

海未「はい!」

絵里「ことりは新聞部と交渉して。アイドル研究部の宣伝を、今月号に載せてもらえるかもしれない」

ことり「任せて♪」

絵里「穂乃果はオトノキのウェブサイトを更新して。部活紹介のページでアイドル研究部を盛大にアピールするのよ」

穂乃果「わかった!」

花陽「あ……ありがとうございますありがとうございます!」ペコペコ

凛「なーんだ。生徒会長さん、じゃなかった前会長さんとってもいい人だね」

凛「廃部にするぞ~!なんて脅かすから、もっと怖い人かと思ってたにゃー!」

絵里「……あの時は悪かったわ。あなた達がここまで本気だとは思ってなかったのよ」

絵里「さあ、もう行きなさい。あなた達は練習があるでしょ」

りんぱな「はいっ!」

ガチャッ

バタン


穂乃果「……ね、海未ちゃん」

穂乃果「私、きちんと生徒会の仕事する。ミスもゼロにするよ!」

穂乃果「それに、勉強だって頑張る!もう試験前に海未ちゃんに助けてもらったりしない!」

穂乃果「一度始めたら、最後までちゃんとやり遂げるから!」

穂乃果「お願い!私がスクールアイドルやるのを認めて!」

海未「で、ですが……」

ことり「ンミチャー」

ことり「私からも、お願い」

穂乃果「!ことりちゃん!!」

海未「ことりまで……」

ことり「ンミチャーには、あの子達の窮地を救う力があるの」

ことり「それに……もう借り物の衣装で妥協してほしくない。あの子達のために衣装を作ってあげたい!」

ことり「私もスクールアイドル、やってみたい!」

穂乃果「海未ちゃん!」

ことり「ンミチャー、おねがぁい!」



海未「……はぁ」

海未「しばらく、考える時間を下さい」

翌朝――

真姫「ちょっと花陽!」

花陽「おはよう、真姫ちゃん」

真姫「おはようじゃないわよ!」

真姫「見たわよ、あのポスター!」

真姫「どうして最初から私に助けを求めてくれないのよ!作曲できる人が必要なんでしょ!」

花陽「め、メンバーじゃない子の曲を使ったら、大会のルールに抵触するかもしれなくて……」オロオロ

花陽「ご、ごめんね」

真姫「はぁ……わかったわ」

真姫「じゃあ、私もアイドル研究部のメンバーになればいいんでしょ」

花陽「!!」

花陽「い、いいの!?」

真姫「昨日、パパに言われたのよ」

真姫「高校生なのに部活もしないでピアノばっかり弾いてるのは、不健全だって」

真姫「親って本当に身勝手よね。ついこの間までは、勉強勉強ってうるさかったくせに……」

真姫「学年トップの成績表を突きつけたら、途端にこれよ」

花陽「……」ウルウル

真姫「……あによ///」カミノケクルクル

花陽「真姫ちゃん……ありがとう。本当にありがとうね」グスッ

真姫「何よ、泣くことはないでしょ」プイッ

花陽「だって……」

真姫「それに、お礼なんていらないわ」

真姫「私達は――友達でしょ?」

花陽「……うんっ!」ニコッ

絵里「……」カキカキ

希「えーりちっ」

絵里「わっ」

希「ポスター、見たよ。願ったり叶ったりやん」

希「運命がようやく、えりちの味方をしてくれたね」

絵里「……そうね」

希「どれどれ、ちゃんと書いてる?」ペラッ

絵里「ちょっと、勝手に読まないでよ」

希「……なんか、内容が淡白やね」

絵里「いいでしょ、どうせ事務的な手続きなんだから」

希「それはそうやけど……」



希(……せや!)ニシシ

説明会・当日――

にこ「どぉいうつもり?」

花陽「……」

にこ「私に黙って、こんなことして」

にこ「あんた達がいくら小細工したって、私は……」

凛「大会のための新歓って、誰が言ったのかにゃ?」

にこ「……はぁ?」

凛「凛達は来年に向けて、今から手を打ってるだけだよ」

凛「にこ先輩が卒業しちゃったら、かよちんと凛の二人だけになっちゃうもん」

にこ「ふん、見え透いたウソを……」

にこ「……まあいいわ」

にこ「あんたのウソを信じるとして……これで誰も来なかったら、いい面の皮じゃない」

花陽「絶対に来ます!真姫ちゃんは約束を守る子です!」

凛「来る!きっと来る!」

にこ「ちょっ、やめなさいよ」

にこ「違うものがテレビから出てきたら、どうす……」

ガチャ

穂乃果「たのもーっ!」

海未「ちゃんと挨拶なさい!」

ことり「失礼します♪」

にこ「みっ、ミナリンスキーさん!?」

ことり「ノンノン、南ことりです♪」

穂乃果「私は高坂穂乃果!二年生です!」

海未「同じく二年生の、園田海未と申します」

穂乃果「……せーっの!」

ことほのうみ「私達を、入部させて下さい!」

にこ「!!」

凛「お、おぉ!」

花陽「わぁ……」

穂乃果「ライブを見た時から、ずっとスクールアイドルに憧れてました!」

穂乃果「気合いと情熱なら、誰にも負けないつもりです!」

ことり「衣装づくりのお手伝いなら、ことりにお任せです!」

ことり「……あと、接客のこともね♪」

海未「……///」モジモジ

穂乃果「ほら、海未ちゃん」

海未「や、やっぱりやめませんか?」

海未「あれは人様にお見せできるものじゃ……」

ことり「だーめ♪」

穂乃果「海未ちゃんから皆さんに、お土産があるそうでーす!」バッ

海未「あっ、こら穂乃果!」



凛「ノート?……わっ!これ!」

花陽「私達の詞、です……」ジワッ

海未「うぅう……///」

ことり「ンミチャーはね、先輩方のためにずーっとこれを作ってたの」

ことり「よほどあのライブで感動したんだね♪」

花陽「あ……ありがとうございます……」グスグス

凛「かよちん、もう泣いてるにゃ~」

花陽「だって……」

凛「まだまだ感動するのは早いよ」

ガチャ

凛「……ほら!」



真姫「ごめんなさい。遅くなったわ」

真姫「もう少し早く着くはずだったんだけど……外に変な人が二人いて」

穂乃果「へ、変な人!?」

ことり「ま、まさか不審者……?」

海未「……降りかかる火の粉は、払わねばなりませんね」

海未「ご安心ください、皆さん」

海未「私、こう見えて剣道の心得があるんですよ」

真姫「ち、ちょっと」

……イマサラナニイッテ

ダッテ……



穂乃果「むむ……確かに、怪しい会話が聞こえるね」

海未「合図をしたら、扉を勢いよく開けてください」

海未「いささか卑怯ではありますが……奇襲攻撃をしかけます」

凛「……」ゴクリ

真姫「あの、だから」

海未「……今です!」

凛「それっ!」

ガチャッ

希「わーっ!」ドスン

絵里「きゃっ!」ドスン

希「いたたた……」

絵里「びっくりした……」

穂乃果「あれーっ、絵里ちゃんだ!」

凛「なーんだ、元会長さんにゃ~」

ことり「絵里ちゃん、大丈夫?」

絵里「寿命が縮んだわ……」

海未「あ、あなたが変な人なんて言うからです!///」

真姫「西木野真姫よ。人の話を聞かないからこうなったんでしょ」

希「……おっ、だいぶ集まっとるね」

花陽「に……にこ先輩」ウルウル

花陽「入部希望者です……新入部員がこんなに来てくれました!」

花陽「これで、ラブライブだって……」



にこ「」ボーゼン

花陽「にこ先輩?」

にこ「」

凛「おーい」サッサッ

にこ「」

花陽「ダメです!反応ありません!」

穂乃果「部長、完全に沈黙!」

真姫「ここまでね……」

海未「誰か、水持ってきてください!」



絵里「……にこ」

にこ「はっ」

穂乃果「部長、再起動!」

花陽「そんな、動けるはずありません!」

希「しっ、静かに!」

希「……今、大事なところなんよ」



にこ「あ、あんた……」

絵里「ごめんなさい」ペコリ

にこ「……なんであんたが謝るのよ」

絵里「私が、素直じゃないから」

絵里「私が、不器用だったから」

絵里「今まであなたに、さんざん辛い思いをさせてしまった」

絵里「私は……本当は」

絵里「あなたに、頼ってほしかったの」

絵里「あなたが、私に泣きついてくれることを期待していたの」

絵里「一緒に、アイドルしてくれないかって」

絵里「だけどあなたは、私が思っているより……ずっと強かった」

絵里「誰にも頼らず、なんでも一人で抱え込んで……」

絵里「歯がゆかった。悔しかったわ」

絵里「それでつい、突っかかるようなことばかり言っちゃって」

絵里「自分の気持ちに向き合う努力を……怠ってしまったの」

絵里「もう、そういうのは終わりにするわ」

絵里「にこ、私は!」

絵里「あなたと……アイドル活動がしたい!」

にこ「!!」

絵里「だから……」スッ

絵里「……?」

絵里「あ、あら?」

にこ「?」

絵里「確かに、ここに入れておいたのに」

絵里「どこ行ったのよ、私の入部届け!」

希「にこっち、これ」スッ

にこ「……何よ、この破れた手紙は」

希「えりちの入部届けよ」

絵里「ちょっと、それじゃなくて……あっ!」

絵里「希、あなたの仕業ね!」

希「本当は、一年のあの時に渡すはずだったんよ」

希「読んでみて。そして受け取ったって」

希「えりちのアイドルに対する情熱、にこっちへの想い……」

にこ「……」ピラッ



にこ「……!」

絵里「……にこ」

にこ「~~~~~っ!!」ヒシッ

絵里「わ、ちょっ」

にこ「……ごめん」

にこ「ひどいことばっかり言って、ごめん」

にこ「二年半も放置しちゃって、ごめん」

ポタッ

にこ「あんたは……こんなにも、私のことを……」

にこ「なのに……私は、あんな……」

ポタッ

ポタッ

にこ「本当に、ごめんね……」

絵里「……」ヨシヨシ

にこ「ぁああああああ……」ボロボロ

花陽「……ぐすっ……」

穂乃果「絵里ちゃん……なんかよくわかんないけど、よかったねぇ……」エグエグ

ことり「……はい、ハンカチ♪」

海未「青春ですね」

真姫「……意味わかんない。どういうことなのよ」プイッ

希「……」グシグシ

凛「むー」グヌヌヌ



絵里「そんなに自分を責めないで」

絵里「やり直せるわよ、私達」

にこ「でも、もう半年しかないのよ」

絵里「半年“も”あるのよ」

絵里「だから、絶対に」

絵里「行くわよ――ラブライブ!」

にこ「!!」

絵里「夢は大きく、優勝よ!」

にこ「……」グシグシ



にこ「そうね!」ニコッ

~~~~~

花陽「……以上で、説明会を終えさせていただきます」

にこ「何か、質問はある?」

穂乃果「はいっ!」

にこ「穂乃果だったわね、どうぞ」

穂乃果「あの、今日はライブはないんですか?」

にこ「はぁ?ライブ?」

真姫「そうね。作曲のためにも、あなた達の実際のパフォーマンスを見ておきたいわ」

海未「前回のライブには、とてもインスピレーションを刺激されました。また見せていただければ幸いです」

にこ「そんなこと言っても、ステージがまだ……」

絵里「大丈夫、講堂が空いてるわ。今日はどこの部活も使ってないはずよ」

希「スピリチュアルやね」ポチポチ

絵里「希、何してるの?」

希「ちょっとね」

凛「やろうよ、新歓ライブ!」

花陽「にこ先輩が作った衣装を披露する、絶好のチャンスです!」

ことり「わぁ、見てみたい♡」

にこ「……まったく、しょうがないわね~」



にこ「先に行って待ってなさい。準備してるから」

ギィ……

ザワザワザワザワ

海未「……おや?」

穂乃果「あ、あれっ?」

ことり「わぁ、すごーい♪」

穂乃果「お客さんがいっぱいだよ!どうして!?」

海未「私達だけしか知らないはずですが……?」

真姫「ちょっと誰よ、情報をSNSに流したのは」

絵里「……希、またあなたね」

希「ウチは大したことはしてないよ」

希「えりち達の大宣伝の賜物や」

絵里「……もう」クスッ

舞台袖――

ザワザワザワザワ

凛「なっ、なんかお客さんがいっぱい来てるよ!?」

花陽「ど、どうして……?」アワアワ

にこ「うろたえるんじゃないわよ、最高の舞台じゃない」

にこ「それより、私の衣装はどう?」

花陽「とっても素敵です……」

凛「凛に似合ってるかなぁ……」

花陽「大丈夫!とっても可愛いよ!」

凛「そ、そうかにゃ」

花陽「うぅ、緊張してきました……」

凛「にこちゃ……先輩、何か一言!」

にこ「……そうね」

ギュッ

花陽「ぴゃっ」

凛「あっ……///」

にこ「あんた達……感謝してるわ」

にこ「もしもあんた達がいなかったら、私は今でも一人ぼっちだった」

にこ「スクールアイドルをすることも、絵里と仲直りすることもなかった」

にこ「本当に……ありがとう」グスッ

花陽「……」ナデナデ

凛「また泣いてるにゃ~」

にこ「うっさい!泣いてないわよ!//」

にこ「……」グシグシ

にこ「さあ、そろそろ時間よ!」

にこ「新入部員が……お客さんが待ってるわ!」

にこ「心の準備はいい?」

凛「バッチリだよ!」

にこ「最高のライブにするわよ!」

花陽「わかってます!」

にこ「……よし!行くわよ!」



にこ「あんたたち!私についてきなさい!」

りんぱな「はいっ!!」



おしまい

やっと終わった……。
数多くの支援レス、ありがとうございました。
前スレでイラストを提供してくれたプーアル茶には、特に感謝申し上げます。
そしてこのSSを書くきっかけを与えてくれた、前スレの1にも(一応)感謝。

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