千川ちひろ「初雪の後、ファミレスみたいな事務所」 (10)

溜まりきった休暇を消化している間に、随分と早い初雪が訪れました

ここのところ続いてる異常気象に大地震。まるで世紀末のようですが、私は今日から何食わぬ顔でお仕事を再開します

「今年の秋は随分短かったなあ…」

異常気象なんて言うけど、結局言うことは去年と変わりませんね



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極寒の廊下を抜けて、ようやくオフィスへのドアが見えます

ようやく、と言ってもほんの僅かの時間です。突き刺すような冷気の中だと廊下って随分長く感じるんですよね

………………。

それにしても入り口ってこんなドアだったかな?

今目の前にあるのは、簡単な磨りガラスのはめ込まれた木製のドア。もっと地味な鉄製のドアだったような気がするんですが……

記憶違いか、それともオフィスの場所自体間違えたのか

あまりにも久しぶりの休暇だったからボケちゃったんでしょうか?

再度確認。やはり場所は間違っていません

ドアに飾ってあるプレートには「OFFICE」と「OPEN」の文字。こんなプレートも記憶にありませんが、どうやら事務所に類するものであることは間違いなさそうです

ちょっとした改装かもしれません。私は一か八か入ってみることにしました


志保「いらっしゃいませー♪」


「あ…間違えました」


開けかけた扉を思わず閉めてしまいました。なんか今ウェイターさんがいませんでした?

一呼吸おいて、もう一度ドアを開いてみます


志保「いらっしゃいませ!」


「え、えっと…一人、です?」


どう見てもファミレスです。とってもスタイルの良いウェイターさんが一人


モバP「おー、おはようございます」


奥のテーブルにパソコンと書類を広げているサラリーマンが一人


智香「~♪」パタパタ


向かい合って座る女の子。スポーツバッグが置いてあるから、部活終わりの学生さんかな?


泰葉「……」パラ・・・


別の席にはノートを広げる女の子。こちらは勉強中といった感じ


比奈「」クタァ・・・


それと、突っ伏したまま動かない……漫画家さん?

「いや、なんですかコレ」


ええ、本当は分かっていますとも。ここはたしかに私の勤める芸能事務所です

あのサラリーマンは同僚のプロデューサーさんだし、テーブルの女の子達もウェイターさんも、よく見知ったウチのアイドルです

ただ……


「何なんですかコレ!?」

P「何って…改装したんですよ。ちひろさんがいない間に」

「はぁ!!?」


何を言っているんでしょうこの人。私に一言も相談無く?


P「安心してください。上には話通してありますし、全部私物か手製の品なので金かけてません」

「あ、そういうことならいいか……じゃなくて!」

はぁ…この人常識がいくらか欠けてるんだった……


P「それと、ちひろさんのデスクそこなんで」


とっとと話を切り上げたいと言わんばかりにプロデューサーさんが指さしたのは入り口横のデスクです


「思いっきり『お会計』って書いてんじゃねえか」

P「大体あってるでしょう?」

「誰がレジだ」


黙って頭を抱えるしかないのかもしれません

比奈「っっっ!」ガタッ


突然体を跳ねさせて比奈ちゃんが目を覚まします


比奈「っあー…寝てた。ココ居心地良すぎるっスねー…」

P「おう、時間バッチリ。今から支度したら丁度良い時間にスタジオ入れるぞ」

比奈「うへぇ……起き抜けに仕事の話っスか」

泰葉「とりあえず顔洗った方がいいですよ?」

比奈「はーい……」


あ、仕事自体はごく普通にこなしてるんですね……そりゃそうか

一旦終わらせて後日仕切り直すことにします
なんでこんな不慣れな書き方に挑戦してしまったんだろう…

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