【ごちうさ】チノ「花を育てます」 (59)
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┃┃┃┃ ――種まく人――
┗┻━月
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ラビットハウスの裏庭
チノ「植える鉢はこれがちょうどいいですね。ココアさんはこちらをどうぞ」
ココア「結構大きい鉢なんだね」
チノ「しっかり根を張る種類らしいので。冬は家の中ですけど春に屋外に出すので、動かせるサイズだと鉢はこのくらいだと思います」
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数日前、ラビットハウス
チノ「花の種、ですか?」
青山「ええ、ご近所の方から最近いただきまして」
青山「先日万年筆を見つけて頂いたお礼です。よろしければ、受け取ってください」
チノ「ありがとうございます」
青山「育て方はこの紙に書いてあります。ちょうど今頃に植えるといいみたいですよ」
チノ「そうなんですか。今度蒔いてみますね」
ココア「なになに? チノちゃん、このコーヒー豆、随分丸っこいね」
チノ「ココアさん、これはコーヒー豆じゃないです」
青山「一応マメ科らしいですよ」
ココア「商品開発?」
チノ「これは観賞用です。間違って焙煎したりしないでくださいね」
ココア「豆の観賞とは、ハイレベルだ……! チマメ隊を結成するだけあって、マメのプロ、マメマイスターだね!」
チノ「マメマイスターって噛みそう……愛でるのは花です!」
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ココア「どんな花が咲くのか、今から楽しみだね~」
チノ「そうですね」
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┃┃┃┃ ――無作為抽出、あるいはひとつの通過儀礼――
┗┛┗月
鉢植えの前
ココア「チノちゃん、種をまいたところは全部芽がちゃんと出てきたね」
チノ「そろそろ間引きをした方がいいですね」
ココア「なんだかかわいそう。どうしてもしなきゃだめかな?」
チノ「元気に育ってもらうためには、仕方のないことです」
ココア「そうだね……。肉を切らせて骨を断つって言うし」
チノ「それはちょっと意味が違いませんか」
ココア「せっかくだし、ティッピーにおいしく頂いてもらったらどうかな」
チノ「有毒です。神経毒があるそうなのでやめてください」
ココア「そ、そんな危険なものを栽培して、お縄についちゃったりしないかな」
チノ「多分市販品ですし……。間引いたら、庭に埋めてあげましょう」
ココア「そうだね」
ココア「『ここは俺が間引かれる。マメ太郎、お前は故郷の恋人のためにも、必ず生き残れ!』」
ココア「『なっ……! マメ助、お、お前だって、もうすぐ妹が結婚するって……!』」
ココア「『なに、あいつはしっかり者だからな。俺がいなくともやっていけるさ』」
ココア「『ぐ、あぁあ……時間、みたいだ。お前に出会えて、よかったぜ……! ぐはあぁっ!』」
ココア「『マメ助ええぇぇぇえ!』」
ココア「『ちくしょう、こんなことって、こんなことって……!』」
チノ「ココアさん、なりきるのはやめてください。というか、彼らはまだ生後間もないはずでは」
ココア「えへへ」
チノ「……」
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Υ ◇ / { ヽ \〃》 ! ,,.. -───- ..,,
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/:.:.:.:.) )) ) ヽ /⌒)人ヽ⌒ ' _, 〉イ::...)く` (_人_人___( Υ
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,. -─‐/⌒ヽ \___ヽノノ | 〃 ((__人__( | r‐リ
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:.:.:.:.:.: ( ̄ ̄ ̄ ̄) ( ̄ ̄) {ヾ 《/ /:::: ̄ / / ( ノ三ニヽ
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┃┃┏┫ ――命名の作法――
┗┻━月
鉢植えの前
ココア「順調に育ってるねぇ」
チノ「そうですね」
ココア「チノちゃん熱心にお世話してるもんね」
チノ「ココアさんはもう少し気にかけてください。まあ、ついでなので手間ではありませんが」
ココア「わたしだって、ちゃんと気にしてるよ。微笑みをあげたりしてるし」
チノ「認識では現実は変わりません。大切なのは行動、もっと言うと、水と日光と肥料です」
ココア「えへへ……そういえば、この子たちはなんていう名前なの?」
チノ「品種ですか?」
ココア「そうじゃなくって、わたしならニンゲンじゃなくてココアとか、そういう名前」
チノ「あ、そっちですか。いえ、特に考えていませんでした」
ココア「例えばこの、やけに真っすぐ育っている子は、チノちゃんなら何て名前にする?」
チノ「そうですね。品種名をもじって『トピー』なんてどうですか」
ココア「あはは、人間だから『ヒューマ』みたいな命名法だね」
チノ「聞いておいてバカにするとは、どういう了見ですか」
ココア「ううん、バカになんてしてないよ。素直そうでかわいい名前!」
ココア「ちなみに『ピー』は『豆』の意味らしいよ。トピーは日本語にするとト豆」
ココア「ホトココアとマヤちゃん、メグちゃんの組み合わせみたいだね。トマメ隊」
チノ「それを言うならコマメ隊では。几帳面そうな響きと裏腹に、すごく茶番感があります」
ココア「ちゃ、茶番!?」
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┃┃ ――憩いのひと時提供型アイドル『チノ』――
┗月
ラビットハウス、開店前
リゼ「そういえば、青山さんからもらった種って、植えたのか?」
チノ「ええ、後で見ますか?」
ココア「なにせチノちゃんと私の愛情を浴びてるからね、ドバドバ成長してるよ!」
リゼ「その成長の仕方だと、街が花に飲み込まれそうだな」
ココア「ねぇチノちゃん、知ってる? この花って、遺伝子の実験でも使われたんだよ」
チノ「そうなんですか。どんな実験ですか?」
ココア「多分、今年習うと思うけど、生き物の個性の遺伝の仕方には『メンデルの法則』っていうのがあってね」
ココア「例えば、人間の子供の血液型もその法則にしたがって決まるんだけど」
ココア「いくつか例外があって、そのひとつがこの花の色なの」
リゼ「そうなのか。マメのしわの話くらいしか知らなかったな」
チノ「普段に何げなく見ているものにも、隠された秩序があるというのは興味深いです」
ココア「私たちのお父さんたちが、私たちくらいの歳のころに流行った歌で、この花の赤い種類が有名になったんだけどね」
リゼ「テレビの音楽番組で流れたりするな」
ココア「そのころにはまだ、赤っぽい品種はあっても、真紅っていうのはなかったんだ」
チノ「普通は白かピンクですよね。信号機の緑を『アオ』と呼んだりしますし、豊かな表現です」
ココア「でもね、がんばって品種改良を続けた結果、なんと二十年後に本当に、真っ赤な品種ができたんだって!」
チノ「へぇ、二十年って、半生を賭けた仕事ですね。それほどまでに人の心を揺らす歌ということでしょうか……。すごいです」
ココア「チノちゃんもアイドルになって『赤いティッピー』っていう歌を大ヒットさせれば、真っ赤なウサギが本当にできちゃうかもしれないよ」
チノ「わたしはバリスタになります」
リゼ(なんだか血まみれみたいで不気味だ……)
ココア「でも、結構適正あると思うよ。お風呂の鼻歌が時々聞こえてるけど、歌が上手だし、かわいくて、踊りは今からでもバレエ教室に通えば……」
チノ「え、あれ聞こえてたんですか!?」
ココア「みんなにも聴かせたいくらいだよ~。でも、独り占めも悪くないかも」
チノ(気づかなかった……)
ココア「『みんなの妹』として席巻し、人気の絶頂で突然の引退。その後はアイドルの経験を生かして喫茶店を経営って感じでどうかな。YOU! やっちゃいなYO!」
ココア「いやでも、それだと私がチノちゃんの姉の立場を独占できない……! まいったな」
チノ「勝手にまいっててください。リゼさん、ちょっと倉庫に行くので手伝って下さい」
リゼ「あ、あぁ。わかった」
ココア「あれ、なんだかチノちゃんが冷たいYO……」
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┃┏┫ ――直撃の不安――
┗━月
学校、放課後
チノ(雪も溶けてきたので、そろそろいいかと思い鉢を外に出しましたが……)
チノ(これから結構激しい雨になる予報だったのを忘れていました。しかも、風も強いですし心配です)
チノ(今日は急いでかえろうかな)
チノ「マヤさん、メグさん。すみません、今日は急ぐので、先に帰ります。それではまた明日」
メグ「わかったよ。バイバイ、チノちゃん」
マヤ「じゃあね、チノ。……走っていっちゃった。チノにしては珍しい」
メグ「よっぽど急いでるんだね~」
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街路
チノ(朝から曇ってはいましたが、急に雨が降り始めてきました)
チノ(もう少しで家ですし、折りたたみ傘はありますが、このまま走って帰ってしまいましょう)
チノ(最近は少し暖かくなってはきましたが、やっぱり濡れると寒い……)
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ラビットハウス
ココア「あ、チノちゃんおかえり~……って、どうしたの!? そんなに濡れて、息を切らして。傘が無かったの!?」
チノ「はあ、はあ……ただいまです。すみません、少しあとでいいですか? ちょっと庭を見てきます」
ココア「庭って……、あ、待って。ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃうよ!」
チノ(無事かな……)
チノ(苗は無事でした。鉢も石で固定したので、一安心です)ブルブル
チノ(濡れた服が冷たいですね……はやく着替えよう)
ココア「チノちゃん! とりあえずお風呂沸かしたから、すぐ制服脱いで入って!」
チノ「あ、ココアさん。……すみません」
ココア「話はあとで聞くから!」
チノ「ココアさん、あがりました。お風呂ありがとうございました。」
ココア「いいよ、暖まった?」
チノ「おかげさまで」
ココア「折りたたみ傘って持ってなかったっけ? あると便利だよ。今度買いにいこっか」
チノ「あ、いえ。傘は持ってたんです」
ココア「そっか。貸しちゃった?」
チノ「いえ、その……昨日庭に出した苗が無事かどうか気になって、つい」
ココア「え!? それで濡れて走って帰ってきたの?」
チノ「……」
ココア「……チノちゃん、ちょっと暖かくなってきたとはいえ、濡れたら病気になっちゃうよ」
ココア「チノちゃんが倒れたら、元も子もないよ」
ココア「生き物の世話をするには、まず自分が元気じゃないとだめなんだよ」
チノ「はい……」
ココア「私も一緒に育ててるんだし、もっと気を配ればよかった。ごめんね、チノちゃん」
チノ「……」
チノ「でも、もしかしたら、何もかも台無しになってたかもしれないじゃないですか」
ココア「え?」
チノ「どれだけ手塩にかけても、大切に守ってきても、ほんの些細な偶然で理不尽に、失われることだってあるじゃないですか」
チノ「あの花は植え替えに弱いんです。もし鉢が倒れて土がこぼれでもしたら、そのまま死んでしまったかもしれません」
チノ「そして、さっき鉢を固定したことで、それが防がれたかもしれない」
チノ「私が数日風邪をひくくらいで、そうならなかったのなら」
チノ「私はそれを間違っているとは思いません」
ココア「チノちゃん……」
チノ「私の体調を気遣って頂いたことは感謝します。ですが、その忠告は受け入れられません」
ココア(そうか、チノちゃんが思い浮かべているのは、きっと……)
チノ「……」
チノ「遅くなってすみませんでした。お店に、戻りましょう」
ココア「……うん」
l^ヽ ヽ ./ ,∧ o 三 o / ヽ*
ヽ ミ_,入z、,_ / /l!,rヘ、 Y‐.r' u ノ 1 _/
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_,..-‐'‐ ` V lN /::::::ヘ ' ヽ .r'フ' ^;ニュ-l/_} } l ー-ヘ、
ヘヽv、r‐'^__,.......、 j ^} .{:::.:::.::} ` /:::.:::ヽ .j .゙ i j!
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ミ ミ-'^ ̄/ ,:' . :゙{.V _j≧≡三三三ミ=xz‐'^: / .,r=、: . '、  ̄`i
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┣┓┃ ――封印されし少女と兎――
┗━月
裏庭
チノ(そろそろツルが伸びてきたので、ネットを立ててからませることにします)
ココア「ねぇチノちゃん、知ってる? マメ科の植物は根っこには根粒菌っていうのがいるんだよ」
チノ「金竜菌? なんだか強そうですね」
ココア「普通の生き物には栄養にできない空気中の窒素を肥料に変える働きがあってね」
ココア「マメ科の植物を育てたあとの土は、他の植物がよく育つんだよ」
ココア「昔はシロツメクサがよく使われてたみたい」
チノ「そうなんですか。じゃあ、この鉢でそのうち別の花を育ててみてもいいかもしれませんね」
ココア「まずはちゃんと咲かせないとね。ネットはこんな感じでいいかな」
チノ「多分大丈夫だと思います」
ココア「このネットにツルが絡むんだよね」
チノ「そうですね」
ココア「それなら……」
ココア「この『ほぼ等身大チノちゃん抱き枕』を代わりに立てておけば、こっちに絡みつくのかな」
チノ「いつの間にそんなものを」
ココア「なんだか眠れる森の美女みたいでロマンティック!」
チノ「茨が絡んでいたのはお城だったと思いますが」
チノ「というか、水やりするたびに私が漏らしたみたいになって最悪です。やめてください」
ココア「そっか……じゃあ、こっちのティッピーぬいぐるみにしよう。セクシーティッピーの降臨だよ!」
チノ「それならかまいません」
ティッピー「やめんか!」
ココア「チノちゃんがノリ突っ込み!?」
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}人 : : : 圦 ゚乂゚Y゚ノ 乂Υソ’/: :Кヽ;′
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┗┓┃ ――優雅なハーブの育て方――
┗月
裏庭、朝
チノ(順調に育ってきました)
チノ(ココアさんは相変わらずお世話をさぼり気味ですが。今もまだ多分寝てます)
チノ(病気にもかかってませんし、アブラムシもついていません)
チノ(このままうまく咲いてくれるといいですけど)
チノ(そういえば、植物の育て方について、この前みなさんと話しましたね……)
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ココア「そういえば、シャロちゃんってハーブを合法的に育ててるんでしょ?」
シャロ「その言い方やめなさいよ!」
ココア「こうするとよく育つっていう裏ワザ知ってたりする?」
シャロ「そうねぇ。ハーブは種から育てるのは難しいらしいけど、私は苗を買ってきてるし」
シャロ「ほとんど雑草みたいなものだから、あんまり手をかける必要もないしねぇ」
リゼ「野菜の工場生産では、植物が吸収しやすい波長の光をLEDで当てたりするってきいたことあるぞ」
チノ「できれば太陽光で自然に育ってほしいです」
千夜「歌を聴かせるのはどうかしら」
ココア「歌?」
千夜「ええ。シャロちゃんも庭をいじりながら、たまに歌ってるもの。恋愛の歌が多いあたり、シャロちゃんもお年頃なのね」
シャロ「聴いてるんじゃないわよ!」
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チノ(歌……)
チノ(効果あるのかな)
チノ(……)
チノ「お天気で心が変わるから……♪」
チノ「晴れたらもっと苦いカフェ……♪」
チノ「挑戦、してみよう♪」
ココア「挑戦、してみよう♪」
チノ「!?」
ココア「違う世界、見えるかも♪」
チノ「コ、ココアさん」
ココア「晴れたよどっかでかけよう♪……あれ、歌わないの?」
チノ「なんでこういう時ばかり、都合よく現れるんですか!」
ココア「最近は一人でお風呂に入ってる時も歌ってくれなくなったから、寂しかったんだよ」
ココア「やっぱり上手だね。癒し効果バツグンだよ~」
ココア「この子もきっと健やかにに育つね」
チノ「知りません……朝食の準備をしてきます!」
ココア「あ、待ってよ~」
__ ┐
r y'´ `ヽ
ノ ・_,_,・ )ハ、
「「「{ ノ ノr‐ァ
〉 ゝ 人/⌒ ⌒ヽ
_て二ヽト、 ___ イ Y ',
/ ヽ /l { ! Ll_ \ ヽ
/ / //7レイ'ト ! j ハハ i ><ヽ ヽ
レ′ l/>< ∧ハzヘ レ'〒ミ、V∧〉 〉/ 〉
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. 〈 Ⅵ i | 辷ソ , `´,,,│i | /
ヽ | | ハ ''' 、 , ハ! | /
\ l l トへ イ ノ j /
\ ∨! ヽ \二 ェ‐ エ y7 ノ /
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{ i ヽ l::‐::く:.:.:.:}::{:.:.:.:>:∧Y l
|│ ヽ!∧/:.\:!∧:.:./. . . } i }
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Vハ ヽ ∧ . . . . . . i i. . . . . . .! //
Vハ ヽ ∧. . . . . . i i. . . . . . j//
\ \へヘ 〉. . . . . .i i. . . . . .〈
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┣┓┃ ――Unhappy go lucky!――
┗━月
ラビットハウス
チノ(ようやくつぼみが膨らんできました)
チノ(ですが、最近曇りが続いています)
チノ(あまりに曇りや雨が続くと、咲かずにつぼみが落ちてしまうらしいので、心配です)
チノ(ティッピーにコーヒーでお天気占いをしてもらっていますが……)
ティッピー「五分五分じゃのう」
チノ「そうですか……」
ココア「ここは私に任せてもらおうかな!」
リゼ「いや、ココアのコーヒー占いはちょっと」
ココア「靴飛ばしで占うよ!」
チノ「ココアさんはブーツでは」
ココア「横に倒れたら晴れ、立ったら曇り、さかさまに立ったら雨だよ」
チノ「なんですかそれ。絶対晴れじゃないですか」
ココア「さあ表に出て……えいっ!」
リゼ「さかさまに……」
チノ「立ってる……」
ティッピー「どういうことじゃ……」
ココア「うええぇえ!? こんなはずじゃないのに~」
夜、チノの部屋
チノ(まぁ、天気なんて人間にはどうしようもありませんよね)
チノ(祈りながら待ちましょう)
ココア「チノちゃん、ちょっといい?」コンコン
チノ「どうぞ、ココアさん」
ココア「ふふふのふ、どうしても明日晴れてほしい、そんなあなたにピッタリなものをご用意いたしました」
ココア「じゃーん!」
チノ「布、ですか?」
ココア「うん。てるてる坊主を作ろう!」
ココア「よし、できた!」
チノ「ココアさんはいっぱい作りましたね」
ココア「チノちゃんとマヤちゃん、メグちゃんをモチーフにしたチマメ坊主だよ!」
チノ「てるてる坊主って、左目は晴れたときに入れるんですよ。ダルマと同じです」
ココア「え、そうなの? でもこっちの方がかわいいよ」
チノ「それはまあ、そうですね」
ココア「ティッピー坊主も作ったよ!」
チノ「お手玉みたいです」
ココア「チノちゃんのは芸術点が高いね。印象主義のかほりを感じるよ!」
チノ「どうせうまくないですよ……」
ココア「そんなことないって! 私は好きだな~。私が太陽なら、思わず二度見しにくるもん」
チノ「そうですか、ありがとうございます」
ココア「てるてる坊主にお祈りするときは、歌を歌わないとだめなんだよ」
ココア「お天道様にホットなソウルを、爽快なメロディに乗せてお届けしなくちゃね!」
チノ「そんなノリノリな曲でしたっけ……?」
ココア「それではご一緒に。てるてる坊主、てる坊主~、あーした天気にしておくれ~♪」
チノ「それでも曇~って泣いたなら~そなたの首を~チョンと切るぞ~♪」
ココア「ええ!? てるてる坊主の歌って、そんな歌詞だったの!?」
チノ「三番目はそうですよ」
ココア「どうしよう、ティッピー坊主は首が無いから切れないよ!」
チノ「いや、本当に切断するという意味ではないはずですよ。一緒に悲しもう、くらいの意味で」
ココア「そっか~、なら安心だね」
ココア「晴れるといいね」
チノ「ええ、そうですね」
翌日、チノの部屋
チノ(晴れました)
チノ(雨の予報だったにもかかわらず、です……ココアさんの力なのでしょうか)
チノ(庭に向かうわたしは、自然と足を早めてしまいます)
チノ(咲いたかな……)
裏庭
チノ(庭にはまだ水たまりが残っています)
チノ(雨に濡れた葉っぱがきらきらと輝いて)
チノ(そして、昨日より大きくなった、白とピンクの――)
チノ「あっ――!」
. / //./ / ヽ ヽ
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|| | | K、| | i | _L.,ト、 | _j^Yヽゝ |
|∧ l ∧| `|八 /´∧ | | `1ヘ._) |
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\ト',〃^ヾ _ノしJ∨ ム :} |/
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{ { | i八 :':':':'厶イ イ : |
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|,二 ||ト、|∨j {/´ \\`T´ /
L、 |リ ソ ノ_ノ| \Vハ、
イ 人 ´ r‐1 V/ハ
{ | ー ノ } | /,} V/ハ
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┃┃┃ ――握りこぶしに立てた親指が示すは”ぐっじょぶ”――
┗━月
裏庭
チノ(きれいに咲いた花を、みなさんが見に来てくれました)
リゼ「見事なものだな。こんなに咲かせるなんて」
ココア「そりゃあもう、チノちゃんが手塩にかけて育てたからね!」
マヤ「ココアが威張るのかよー」
チノ「ココアさんは、結構ほったらかしてましたけどね」
メグ「チノちゃんの鉢の花のほうが、少し大きいんだね」
チノ「日の当たり具合でしょうか。これにならって、私もココアさんより大きくなります」
ココア「そんなぁ、チノちゃんはちっちゃいままでいいんだよ?」
チノ「絶対に追い抜きます」
マヤ「じゃあ私も」
メグ「わたしも~」
チノ「そしたらココアさんが逆に妹みたいですね」
メグ「もふもふしてあげるからね」
ココア「それはそれで、アリかも……?」
チノ「私はしないので」
ココア「がぁーん、現状維持で、なにとぞ……!」
ココア「そうだ、この花でハーブティーを作ったらどうかな」
チノ「前にも言いましたが、神経毒がありますよ」
ココア「バレない程度に混ぜておけば、お客さんは『なんかダルいから帰りたくないな』と思って、いっぱい注文してくれるかもよ」
リゼ「そんな繁盛のさせ方は嫌だ」
チノ「同感です」
マヤ「それ作って投げつけたら、相手を麻痺の状態異常にできるんじゃない?」
千夜「毒じゃないかしら」
ココア「混乱じゃないかな」
リゼ「いつ使うんだ、それ……」
マヤ「うーん、ティッピーに使って倒したら、経験値入るんじゃないかな。自発的に飲みそうだし」
ティッピー「そんなの、絶対に飲んだりせんわ!」
チノ「あの、ティッピーは一応ご老体なので、優しくお願いします」
千夜「この花、ひらひらして可憐ね。それに、上品な甘い香りが素敵だわ」
リゼ「100年ほど昔の外国の王女様がこの花が大好きで、あらゆる祭典で飾ったらしい。それで有名になったんだってさ」
ココア「そういわれると、どことなく気品を感じるね」
シャロ「独特な花びらの形をしてるわよね。飛び立とうとするチョウチョみたい」
チノ「金魚の尾びれみたいにも見えます」
千夜「本当にきれいね。永遠に咲き続けてくれたらいいのに」
シャロ「あらゆる物事には始まりがあり、終わりがくるものよ。だからこそ輝けるものなの」
千夜「そう。シャロちゃんの片思いも、いつかは終わりがくるのね」
ココア「え!? シャロちゃん好きな人いるの!?」
リゼ「へー、バイト先の先輩とかか?」
シャロ「あれは別に、そういう意味じゃなくって、憧れというか、そういうのよ!」
ココア「はじめは純粋な憧れだった気持ちも、先輩とともに時を過ごすにつれ、いつしか別の、甘くて苦い感情へと変わっていった。しかし少女は知っている、じきに別れが訪れることを。そのことをおもい、少女は今夜も一人枕を濡らすのだった……」
シャロ「だーかーらー、そんなんじゃないの!」
千夜「あらあら、真っ赤よ」
ココア「乙女だ!」
シャロ「もー!!」
チノ「……」
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l {~ミ、 /// l/ // / / / 、 Y
い \ ∥/ /l! /-‐- // //| } l
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\ `ミー-----‐{ / ハlf~沁l / //Y ∨ |j /
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\ ..ィ" 人{ l { '' , (r炒〉 /! l {/
`''ー-ミ `ー---‐'''" -‐''" _} 人 、 「l ''' /イ〉l /| {
 ̄ ̄ ̄/ } ⌒ート..._ } }///ノ ノ / l |
//{⌒::~く/⌒~<〉/ハ/ ー=彡イ /ノ l 人
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// / / / く::::::::\/ / / / ノ }-‐''" ノ
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八 人 \__ノ j >'" xィ" ├{ { / ̄l::::}
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j l  ̄ { {ol /:::/ \ / /‐-....
/ { { 八 !l l \/ / /:.:.:.:.:.:.:.`丶、
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┗┫┃ ――死してなお生きるもの――
┗月
ラビットハウス
ココア「チノちゃん、ちょっといい?」
チノ「はい、何でしょうか」
ココア「チノちゃんが育ててたお花なんだけど」
チノ「っ……」
ココア「枯れてきちゃったし……そろそろ供養してあげない?」
チノ「そう、ですね」
ココア「……」
チノ「……」
ココア「私がやっておこうか? 水やりとか、肥料とか、ほとんどチノちゃんにしてもらってたし」
チノ「いえ、最後まで私が責任を持ちます」
ココア「そう?」
チノ「……」
チノ「……やっぱり、少しだけ手伝ってもらっていいですか?」
裏庭
ココア「じゃあ、やろっか。かわいそうだけど、ちぎって埋めてあげよう」
チノ「あの、ココアさん」
チノ「少しだけ、話を聞いてもらえますか」
ココア「うん、いいよ」
チノ「例えば、文化祭があった日の、次の日の登校。あるいは、卒業した小学校の前を通り過ぎること」
チノ「そういったことが、私は苦手です。言いたいこと、わかりますか?」
ココア「うん、なんとなく」
チノ「どんな幸せにも、ピークがある。いつかは必ず失われる」
チノ「当たり前のことです。でも、わたしにはそれが、なにより耐え難かった」
チノ「ならば、最初から何も得なければよいのではないか。苦痛の無いことを幸せと定義するべきではないかと」
チノ「そう考え、人付き合いを避けていました」
チノ「……ココアさんの部屋、今でこそ平気ですが、ココアさんが来る前は入れなかったんです」
チノ「母の、部屋だったんです」
チノ「あるべきひとの永遠の不在を、その冷えた空気から感じてしまって……」
チノ「このスイートピーの鉢も、そうです。片づけたあとの空間を」
チノ「地面に残る、植木鉢の跡を見るのが怖かったんです」
チノ「中学校では、マヤさん、メグさんという大切な友達ができました。ですが、高校はもしかしたら別々になるかもしれません」
チノ「ココアさんたちにしてもそうです。今が楽しい分だけ、嬉しいことが増えるほどに、別れが辛くなります」
チノ「この花、スイートピーの花言葉は『離別』……」
ココア「……」
チノ「ですが、ココアさんたちと過ごしているうちに、考えが変わりました」
チノ「別れるから、離れてしまうから、自分からどこへだって会いに行くべきなのだと」
チノ「枯れてしまったスイートピーに引導を渡すのは、私の役目です」
ココア「……そっか」
チノ「それでも、頭ではわかっていても、やっぱり怖いんです」
チノ「だから……少しだけ、勇気をください、ココアさん」
ココア「チノちゃん……」
ココア「いいよ、あげる」ギュッ
チノ(ココアさんの手、あったかい……。私の手も、ココアさんはあったかいと思ってくれているでしょうか)
ココア「スイートピーにはね、別の花言葉があることも、知ってる?」
チノ「えっと、確か……」
ココア「『門出』、『はじまりの祝福』。こっちに来て、よく見てごらん? これを割ってみるとね」ペキ
チノ「これは、種、ですか?」
ココア「どんな些細なことでも、なかったことになんて、ならないんだよ」
ココア「チノちゃんなら、きっと大丈夫」
チノ「ココアさん……」
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/ ____ ,.- 、く_,ノ∨:{. : ._/斗― { / - :.,_}\:::::::::/;:::::::::::..
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| /:\.:.: V.斗\:.ヽ:.:.: | |ソ:{x=ミ __、ノィ : / . : . }:V| ヽ:::::.
――‐- ._ ! / イ:斗‐:.|.ヽ.:.} j」 ヽ:.}:.:.:リ トN 、、、 ⌒ヾ ノ:ノY: .i| ハ:j | ':::!
`V / /:.:.:| L| ヽLVノ __ jノ,∠ ┴┴- _{⌒y ``` 、_,ノ. ノj/::ノ| |::|
/ / //{:.:.:.:.| __ y'⌒'´ `丶、-―<: .__,∠、∠、| |::|
. O / /' //:人.:.八y'⌒` __,/ \: . /:::ヽ::::}:::::::ヽ| |::|
/ イ { イ:{:(:.:.:.\:.:ゝ'"/´ ′ ´ ̄ ̄¨丶、::::::V:::::::::ノ| |::|
/./ | ,ゝ!八\.:.:.:.ヽン´__, ・ ・ 、―- 〉::::}ー-く | |::|
' ./ | ./ / `ヽ)ヽ:人 / ⊂⊃-┬――‐- ⊂⊃ \ /::::;ノ:::::::::}`|、__ノ:/
| _rッ┴ト.⊥__ >'´\ / j.| /| | i | `丶、 〈::::/:::::::::::/Y`-'′
|,イ(ソ⌒´ /へ>i´ / /ハ 从/_,レ j | ト、j_,,|\ ∨Y´):::/ ト、
__ノフj_ソ: : __ //: :/=∨ / /!|ノ.i∨ 7{´ | 人,| /l人 | \| `T ーr 、 Vく:::/ }ノ { __
(jイ( ( :/::::`Y^O `ヽ {/ /从 | V ___ |レ ___ | | ∧ }、K/ ノヽ }_`ニ=--
-‐(=! )}:{:::::::::::::} '^ ノ\ー∨{ /ヘ|ヽj === ===j j / }ノ ソ \_..ゝ''´ ___
\(ハ V人:::::::;ノ_...イ) ̄`ヽ `'<>‐- 、∧ :':':': ′ :':':': ノノj , -―-≦、⌒¨ \ /´ -―‐
(ヘ マ : 「「 /: . : ∧. : . / : : : : \、ヽ Y人__ノ) ‘` ー=彡ノ// ,. } } }/
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┗┻━月 ――あるマメとチノのその後――
学校、放課後
マヤ「チノ、メグ、一緒に帰ろ!」
メグ「うん、帰ろう」
チノ「あの、ちょっといいですか? お二人に渡したいものが」
メグ「なに~?」
チノ「これです」
メグ「封筒……お手紙?」
マヤ「中に何か入ってるね。開けてみてもいい?」
チノ「どうぞ」
マヤ「これは、種?」
チノ「ええ。庭で育ててたスイートピーの種です。よければ、どうぞ」
メグ「ありがとう、チノちゃん。あれきれいだったよね~。」
マヤ「種が採れるまで育てるなんて、チノすごい!」
チノ「ちゃんと水をあげてたら大丈夫ですよ。今の時期に植えるといいみたいです」
メグ「じゃあ、帰ったら早速蒔いてみるね」
マヤ「今度何かお返ししなきゃね~」
チノ「……いえ、もう頂いてますから」ボソッ
メグ「? チノちゃん今何か言った?」
チノ「いえ、なんでもありません。帰りましょう」
マヤ「そうだね、レッツゴー!」
『心に春が来た日は』
おしまい
このSSまとめへのコメント
すばらしい...