ミカサ「守る」(52)
進撃SSです
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*(調査兵団訓練所内、講堂)
ネス「今日の長距離索敵陣形の演習だが、まだまだ不十分だ」
ネス「お前達新兵の役目は予備の馬の併走と伝達だ」
ネス「巨人と接近するのは初列索敵班であり」
ネス「お前達がいきなり巨人と遭遇する可能性は低い」
ネス「だが、何度も繰り返している通り、この陣形の要は」
ネス「エルヴィン団長がどれだけ速やかに情報を把握するか」
ネス「エルヴィン団長の指示をどれだけ的確に全兵士に行き渡らせるか」
ネス「この二点にある」
ネス「これは壁外調査の根本」
ネス「『いかに巨人と戦わないか』に通じる」
ネス「煙弾による情報伝達に自ずから限界がある以上」
ネス「お前達新兵による伝達も重要な役目であることを心得てもらいたい」
ネス「しかし残念ながら昨日の演習では円滑な伝達が出来たとは言い難い」
ネス「伝達先が分からなくなった者」
サシャ「…」
ネス「伝達内容を忘れてしまった者」
コニー「…」
ネス「伝達内容を深読みして違う内容にしてしまった者」
アルミン「…」
ネス「他にも色々と不満な点はある」
クリスタ「…」←声が小さいと叱られた
ジャン「…」←口笛が鳴らなくて叱られた
ライナー「…」←特に理由も無く叱られた
ネス「…要するに全体的にまだまだお前達は未熟だということだ」
ネス「まぁ、壁外調査まではまだ三週間ある」
ネス「各人がそれぞれ問題意識を持って取り組めば大丈夫だ」
ネス「…お前達も不安だろう。何といっても初めての壁外調査だからな」
新兵「……」
ネス「手は上げなくていいが、この前の初陣で小便漏らしたヤツはいるか?」
新兵「???」
ネス「調査兵団の腕利き二人は初陣で小便を空中に撒き散らした」ニヤリ
新兵「クスクス」 ハックション×2
ネス「分かるか?初めは皆そんなもんだ」
ネス「巨人がお前達の前に現れたら俺達ベテランが守ってやる」
ネス「だから安心しろ」
ネス「長距離索敵陣形に慣れること。自分の役割を把握すること」
ネス「まずはこの二点に取り組んでくれ」
ネス「…この六日間、ぶっ通しの訓練で疲れはピークの筈だ」
ネス「明日は休日とする。焦る気持ちはあるだろうがゆっくり休め」
ネス「それでは今日はここまで。全員起立!!心臓を捧げよ!!」ビシッ
新兵 「ありがとうございました!!」ビシッ
*(調査兵団訓練所内、談話室)
ライナー「とりあえずは一段落ってとこか」
コニー「とにかく疲れたぜ」グテッ
ジョン「頭を使う訓練だからな、伝達忘れ」
コニー「うるせー、口笛鳴らせねえで叱られたクセに」
ジョン「バカ野郎、あれはバカ馬が悪いんだ、口笛は関係ねえ」
クリスタ「だめだよジャン。馬はみんな賢いしかわいいんだよ」
ユミル「お~お~クリスタは馬にも優しいねえ」グリグリ
クリスタ「やめてよ~」
アルミン(馬にも優しい女神)
ライナー(結婚したい)
サシャ「あんな組織だった動き、無理ですよ~」グテーッ
アルミン「慣れるしかないよね。実際、あの陣形はよく出来てる」
アルミン「広範囲に展開した兵士を円滑に運用するためには最適だよ」
アルミン「注目すべき点は…」
コニー「やめてくれ~、もう戦術講義は沢山だ~」
ジャン「お前はもう少し頭を使え」
ライナー「あっはっは。コニーの場合はそうだな。だが、アルミン、そこまで分かってるなら」
アルミン「…言わないで。陣形の凄さに舞い上がってたんだ」ズーン
アルミン「役目を全うするのは基本だからね。気をつけるよ」ズーン
サシャ「…あれ、ミカサは?」
ユミル「さっき向こうに歩いていったぜ?」
クリスタ「なんか元気無かったよね」
ユミル「愛しのエレンに会えなくて落ち込んでんじゃねえの」ケラケラ
クリスタ「そんなこと言わないの」メッ
アルミン(怒っても女神)
ライナー(入籍しよう)
サシャ「ちょっと心配ですね~」
ジャン「よし、それなら俺が」
ユミル「お前は口笛の練習でもしてろ」
ジャン「」
アルミン「僕が話してこようか?」
サシャ「それがいいですよ」
ジャン「…」ブヒュー ブヒュー
ジャン「鳴らねぇ」ネッチョオオ
*(調査兵団訓練所、演習場脇のベンチ)
ミカサ「…」
アルミン「ミカサ、ここにいたんだね」
ミカサ「アルミン」
アルミン「元気が無いんじゃないかって、皆が心配してたよ」
ミカサ「ごめんなさい」
アルミン「別に謝ることじゃないよ。キツかったからね、訓練」
ミカサ「…」
アルミン「…やっぱり、エレンのことが心配?」
ミカサ「うん」
アルミン「念願の調査兵団になれたんだもの、元気にやってるさ」
ミカサ「あの刈り上げチビにいじめられてるかも」ゴゴゴ
アルミン「え、えっと、リヴァイ兵長のことかな?」
ミカサ「もしもエレンの身に何かあったら」ゴゴゴ
アルミン「ミ、ミカサ、目が怖いよ。深呼吸しようか」
ミカサ「分かった」スーハースーハー
ミカサ「落ち着いた」
アルミン「大丈夫だって。エルヴィン団長も言ってたろ、エレンの重要性は」
アルミン「エレンを痛めつけて喜ぶのは巨人側なんだから」
アルミン「その内ひょっこり会えるって」
ミカサ「だといいけど」ハァ
アルミン「だからさ、元気出そうよ」
アルミン「ミカサが元気無いって聞いたらエレンも心配するよ?」
ミカサ「エレンに心配をかけるのはとてもいけないこと」
アルミン「でしょ?僕達はもう訓練兵じゃないんだからしっかりしないとね」
ミカサ「…」
ミカサ「アルミン、あなたの考えが聞きたい」
アルミン「何だい?」
ミカサ「アルミンはどうして兵士になったの?」
アルミン「理由?…父さんや母さんを死に追いやっためちゃくちゃな奪還作戦」
アルミン「あれを強行した王政があることを考えるとじっとしていられない」
アルミン「こんな状況を黙ってみていられないってところが本音かな」
アルミン「もちろん、僕は未だに体力不足だし、どこまでやれるか分からない」
アルミン「エレンやミカサ、他の人たちの足手まといにならないように頑張るのが精一杯なんだけどね」
アルミン「人類のために何か出来ることがあるんじゃないか」
アルミン「教科書的な答えかも知れないけど」
アルミン「やっぱりその辺りの答えに落ち着くんじゃないかな」
ミカサ「……」
ミカサ「アルミンは立派。ちゃんとした動機がある」
アルミン「いや、でも、エレンやミカサと離れたくないっていう理由もあるんだよ」
ミカサ「それでもアルミンは必死に頑張ってる」
ミカサ「私はそうじゃない」
アルミン「…どういうこと?」
ミカサ「兵士になったのも、調査兵団に入ったのも、エレンを守るため」
アルミン「そうだよね」
ミカサ「人類全体のためとか、そういう動機は希薄」
アルミン「えっ、そうなの?」
ミカサ「もちろん理屈では分かってる」
ミカサ「巨人によって私達人類が苦しめられている」
ミカサ「巨人と戦う者がいなければならないことは当然」
ミカサ「でも、私にとって戦う理由はエレンを守ること」
ミカサ「それなのに今はエレンから離れている」
ミカサ「調査兵団に入って実感したのだけれど」
ミカサ「必ずしもエレンの側にいられるわけではなさそう」
ミカサ「これではエレンを守れない」
ミカサ「人類を守るのも大切なことだけれど」
ミカサ「私にはいまいち実感できない」
ミカサ「兵士として私はどうなのか」
アルミン「う~ん…」
アルミン「ミカサが戦うのは人類のためではない?」
ミカサ「それは違う。人類を守るのは兵士として最も大切な役目」
アルミン「なるほど。要するにミカサは、エレンを守る、みたいに、守る対象が具体的じゃないとピンとこないんだね」
ミカサ「そう。エレンを守りたいし、訓練兵時代の同期も守りたいし、調査兵団の仲間も守りたい」
ミカサ「もちろんアルミンも守りたい」
ミカサ「でも、人類を守るというのがよく分からない」
アルミン「う~ん、難しいね。確かに『人類』って言われても全員と知り合いなわけじゃないしね」
アルミン「見知らぬ人を守るっていうのは実感しにくい話だ」
アルミン「でも、ミカサも分かっている様に、兵士はやっぱり人類の為に戦わねばならない筈なんだ」
アルミン「それを、今すぐに実感出来ないのは仕方ないと思う」
アルミン「ミカサはこれまでエレンを守るために頑張ってきたんだから」
アルミン「ミカサの疑問は少しづつ解決していくしかないんじゃないかな」
ミカサ「解決出来るんだろうか」シュン
アルミン(いい傾向の筈なんだよね)
アルミン(これまでのミカサはエレンばかりに目がいっていた)
アルミン(エレンを大切に思うことは当然なんだけど、いずれ限界が来る)
アルミン(それはミカサの為にもエレンの為にもならない)
アルミン(訓練兵としての生活で、ミカサは僕達以外の人達との交流が増えた)
アルミン(自然、僕達以外にも思い入れのある人が出来た)
アルミン(ミカサの性格ならそういった人達も守りたくなるだろう)
アルミン(ミカサは今、そういう自分の変化に戸惑っているんだ)
アルミン(助けてあげたいけど、見守るべきかな)
アルミン(僕の言葉だけで納得出来るものでもないんだから)
アルミン(…でも、悩みすぎるってのもよくないよね)
アルミン「ミカサ、明日は休日だよね」
ミカサ「え?」
アルミン「さっきも言ったように、ミカサの疑問は結構難しい問題だと思う」
アルミン「少しづつ自分の答えを見つけていくしかないんだ」
ミカサ「アルミンでも難しいなら、私では無理かもしれない…」
アルミン「大丈夫だって。その点は僕が保証するよ」
アルミン「きっとミカサなら納得のいく答えを見つけられる筈さ」
アルミン「でも、余り悩みすぎるのは良くないと思う」
アルミン「皆も心配しているし、エレンだってそれは望まないんじゃないかな」
ミカサ「それはそう思う」
アルミン「明日、トロスト区へ遊びに行ったらどうだい?気晴らしに」
ミカサ「…トロスト区に?ごめんなさい、とてもそんな気分じゃない…」シュン
アルミン「うん、そうだろうね。でも、実はね」
ミカサ「実は?」
アルミン「サシャがひどく落ち込んでるんだ」
ミカサ「サシャが?」
アルミン「ほら、陣形の変化についていけなくて、叱られていただろ?」
アルミン「『訓練兵団で何やって来たんだ!!』って」
アルミン「先輩からキツく叱られたらしくって」
アルミン「相当に堪えたらしい。だから」
アルミン「サシャにも気分転換が必要かなって」
ミカサ「…」
アルミン「お互いの気晴らしの為にさ」
アルミン「街に遊びにいくのはいい事だと思うんだ」
ミカサ「サシャが落ち込んでいるのは心配」
ミカサ「余り気が進まないけど」
ミカサ「アルミンがそう言うなら、夕食の時に誘ってみる」
*(調査兵団駐屯所内、食堂裏)
アルミン「……という訳なんだ」
サシャ「なるほど。やっぱりミカサは真面目な人ですね」
クリスタ「ミカサがそういう事を考えるって、いい事なんだよね?」
アルミン「うん、すごくいい傾向だと思うよ」
クリスタ「そうだよね。私も協力しようか?」
サシャ「それは助かります。ミカサはいい人ですけど口数が少ないので間が持たないかも知れませんから」
アルミン「ということは、サシャは街に出ることには賛成?」
サシャ「もちろんですよ。おいしいものも食べたいですし」ジュル
アルミン「クリスタ、それじゃ君も同行してもらえるかな」
クリスタ「いいよ。ミカサが悩んでいるの可哀想だもん」
ユミル「ちょっと待て。お前も疲れているだろうが。休め休め」
クリスタ「え、ユミルは来ないの?」
ユミル「へ?」
クリスタ「そっか~、残念だな~」チラ
ユミル「おい待て。何でそうなる。…分かったよ、私も行く。いいだろ?」
クリスタ「でも、ミカサに変なこと言っちゃだめだよ?」
ユミル「愛しのエレンが~、とかだろ?分かってるよ」
アルミン(ユミルの動かし方がうまいな)
アルミン「うん、四人ぐらいがちょうどいいんじゃないかな」
クリスタ「アルミンは来ないの?」
アルミン「うん、残念だけど(本当に残念だけど)、僕といるとエレンのことを考えてしまう筈だから」
クリスタ「分かった。それじゃ四人で楽しんでこよっか」
サシャ「何を食べましょうかね~」ジュルジュル
ユミル「お前にはそれしかないのか。ああ、それと」
サシャ「それと?」
ユミル「お前、今日の夕食は半分しか食うなよ?」
サシャ「ど、どうしてですか!?あり得ませんよ!?」
ユミル「『ひどく落ち込んでる』んだろ?飯をばくばく食ってたらおかしいじゃねえか」
サシャ「う…、それはそうですけど…」
クリスタ「明日はサシャの好きな店で食べよう?ね?」
サシャ「はぁ…、分かりました」ズーン
アルミン(うまいこと落ち込んでくれたね、サシャ)
*(調査兵団駐屯所内、食堂)
サシャ「うぅ…、半分、半分…」グスッ
ユミル「半分食えるだけでもありがたく思え」
クリスタ「サシャ、少しの辛抱だから」
ミカサ「…ここ、座っていい?」
クリスタ「あっ、ミ、ミカサ、どこ行ってたの?空いてるから座って」
ミカサ「ありがとう。ちょっと外の風に当たっていた」
クリスタ「何か疲れてる?」
ミカサ「少し。でも、大丈夫。それよりサシャが落ち込んでいるみたいだけど」
クリスタ「う、うん。ちょっとね…」
ユミル「脳味噌が芋だから陣形が分からねぇんだとよ」ケラケラ
クリスタ「もう、ユミルっ。演習で叱られたのがショックみたい…」
ミカサ「そう…。サシャ、パン食べる?」
サシャ「パァッ……、い、いや、折角ですけど」グスッグスッ
クリスタ(あれ?本気で泣いてる?)
ユミル(…少し胸が痛む)
ミカサ「だいぶ重症みたい」
クリスタ「そ、そうみたい」
ミカサ「サシャ、明日の予定は?」
サシャ「…い、今は何も考えられません…」
ミカサ「明日、街においしいものを食べに行こう」
サシャ「行きます!!」ガバッ
ミカサ「急に元気に…?」
ユミル(馬鹿…)
クリスタ(もしかして、我を忘れちゃった!?よし、私が)
クリスタ「いいなぁ~。ねぇ、私も行っていい?」
ユミル「クリスタが行くなら私もだ。いいよな、ミカサ?」
ミカサ「もちろん。断る理由は無い」
サシャ「(あかん、演技を忘れとった)皆さんありがとうございます…。絶対に元気になると思いますから…」グスッ
ユミル(とってつけた様な演技しやがって…)
ミカサ「それじゃあ、明日の昼前に屯所を出よう」
*(翌日、トロスト区中心部)
クリスタ「もうすっかり街は落ち着いてるね」
サシャ「良かったですね~、頑張った甲斐がありましたね」
ユミル「喉元過ぎればってヤツじゃねえの?」
クリスタ「そんなこと言っちゃ駄目。私達が頑張って皆が平和に暮らせればそれでいいじゃない」
ユミル「へいへい。我々兵士は皆様のために頑張りますよ~ってか」
クリスタ「もうっ」
ミカサ(皆、ちゃんと分かっている。分かっていないのは私だけ…?)
ミカサ「…」
クリスタ(考え込んでるな~、ミカサ。どうしよっかな…)
ユミル「おい」ボソ
クリスタ「え?」
ユミル「お前まで悩むな」ボソボソ
ユミル「アルミンも言ってたろ?簡単に答えは見つからないって」ボソボソ
ユミル「今日はあくまで気晴らしだ、気晴らし」ボソボソ
クリスタ「分かった」ボソボソ
クリスタ「こ、こうして色々見てまわるのも楽しいね」
ミカサ「…ええ。被害が最小限に抑えられて良かった」
クリスタ「ミカサ、もの凄く活躍したんでしょ?」
ミカサ「兵士として全力を尽くしただけ」
クリスタ「謙虚だなぁ、ミカサは」
ミカサ「我を忘れて暴走してしまった。あれは反省している」
クリスタ「ま、まぁ初陣なら仕方ないよ。ほら、ネス班長も昨日言ってたじゃん」
クリスタ「調査兵団の腕利き二人が、その」ゴニョゴニョ
ユミル「ああん?聞こえないぜ、クリスタ?声は大きく、じゃなかったっけ」ニヤニヤ
ミカサ「ユミル、クリスタをいじめるのはよくない」
ユミル「へっ、小便を漏らしたぐらい恥ずかしくないだろ」
サシャ「え?ユミル?」
ユミル「あん?」
サシャ「お漏らしが恥ずかしくない…?」キョトン
ユミル「アホか!!そんな意味じゃねえよ!!」
クリスタ「え~?だってさっきそう言わなかった?」ニヤニヤ
ユミル「お前、今、曲解しただろ…」
ユミル「『小便を漏らした』って口に出すぐらい恥ずかしくないって言ったんだ、私は」グリグリ
クリスタ「い~た~い~」
サシャ「あ~、そういう事だったんですか。私はてっきり…」
サシャ「あははははは、おかしー」
ユミル「てめえはてめえで気づくのが遅いんだよ!!」
ミカサ(サシャ、元気そう。良かった)
サシャ「笑いすぎてお腹がすいてきました。そろそろ食べませんか?」ジュル
クリスタ「そうだね、サシャならどこかいい店知ってるでしょ?」
サシャ「そうですねぇ…、昨日は余り食べられませんでしたから…」
ユミル(クリスタから夕食後にパンを貰っていただろが、芋女)
サシャ「おいしいパンを食べられる店がいいですね!!」
サシャ「ここからすぐですよ、行きましょう!!焼きたてですよ!!」
クリスタ「サシャは本当に好きだなぁ…」
ミカサ「元気になったみたいでなにより」
クリスタ「え?あ、ああ、そうだね。安心だね!!」
・・・・・・・・・・
サシャ「ここですよ、ここ!!」
クリスタ「『マガジン亭』?」
サシャ「ここは厨房でパンを作っていますから、焼きたてのパンが食べられるんです」
サシャ「他の料理も最高ですよ~」
クリスタ「へえ、それは楽しみだね~」
サシャ「そうでしょうそうでしょう」フーッ
ユミル「その顔やめろ」
ミカサ「席は空いているみたいだし、入ろう」ガチャッカランカラン
店長「いらっしゃいませ~。お、姉ちゃん、また来てくれたな」
サシャ「こんにちは~。おいしいパンは焼けてますか~?」
店長「あったりまえだろ~。今日も焼きたてだよ~」
クリスタ「あの、こちらのお店は大丈夫だったんですか、その、巨人が…」
店長「ああ、幸いね。この通りさ」
店長「一時はどうなることかと思ったんだけどね」
店長「姉ちゃん達もこっちのよく食う姉ちゃんと同じかい?」
クリスタ「え?」
店長「この姉ちゃん、兵士なんだろ?あんたら同僚じゃないのかい?」
サシャ「そうですよ~。私達、同期なんです」
店長「そうか~、あんたらのおかげで助かったよ。おかげで今日もパンを焼ける」
サシャ「ここのパンを守るためなら体張りますよ、私」フーッ
ミカサ(私達のおかげ?私達はこの人を守ったの…?)
店長「頼もしいねぇ。…ところで、あんたらはどこに所属しているんだい?」
クリスタ「私達、調査兵団に所属しています」
店長「調査兵団か。巨人を倒すためにあの恐ろしい壁の外に出るんだろ?俺には真似出来ないぜ」
店長「あんたらのこと、悪く言う馬鹿もいるけど、俺は応援してるから」
クリスタ「ありがとうございます。精一杯兵士の勤めを果たします」ビシッ
店長「若いのにしっかりしてるねぇ」
店長「あ、つい話しこんじまった。ごめんよ。さあさあ、奥のテーブルに」
店長「街を守ってくれたお礼だ。今日はサービスするよ!!」
・・・・・・・・・・
サシャ「いつもながら最高でした~」ポンポン
ユミル「お前の胃はどうなってんだ…」
クリスタ「いつも以上に食べたね~、サシャ」
クリスタ「でも、これだけおいしかったらたくさん食べてしまうのも分かるよ」
クリスタ「ユミル、ミカサ、どうだった?」
ユミル「ああ、うまかったよ(今度はクリスタと二人で来よう)」
ミカサ「とてもおいしかった。サシャはいい店を知っている」
クリスタ「そうでしょ」フーッ
ユミル「おい、何でお前が誇らしげなんだ…」
サシャ「ああ~、満足です。明日からの演習だって楽勝ですよ」
ユミル「そんな事言ってるとまた叱られるぞ」
サシャ「た、大丈夫ですよ、多分…」
ミカサ「サシャ、心配しないで。後で陣形の流れを教える」
サシャ「助かります、本当のこと言うとさっぱり分かってないんです…」
クリスタ「良かったね、サシャ。私は大きな声を出すようにしなくっちゃ」
ミカサ「クリスタは少し恥ずかしがり」
ミカサ「伝達内容は恥ずかしい内容ではないから自信を持って」
ユミル「そうそう、別に『小べ・・・
クリスタ「ユミルっ食事中!!」
ユミル「す、すまん」
サシャ「あははは。さ、それじゃそろそろ出ましょうか」
・・・・・・・・・・
クリスタ「だいぶおまけしてもらったね」
サシャ「あの店長、いい人なんですよ」
クリスタ「また来ようね」
ユミル「よし、クリスタ、今度はふた…」
クリスタ「皆で来ようね!!絶対においしいって言うよ!!」
ユミル「」
サシャ「さて、次はどこのお店で食べますか?」
ユミル「お前な…」
サシャ「冗談ですよ。私だってもう満腹ですから…」
クリスタ「あそこの公園に行かない?」
ユミル「腹ごなしに散歩でもするかな」
ミカサ「異存は無い」
*(公園)
サシャ「クレープ!!出店にクレープが!!」
ユミル「お前、満腹じゃなかったのかよ…」
サシャ「別腹です!!」
ユミル「…待っててやるから、行ってこい」
クリスタ「サシャは相変わらずだね~」
少女「おねぇちゃん!!」
四人「!?」
少女「おねぇちゃん、私だよ!!」ダキッ
ミカサ「あなたは…、あの時の…」
クリスタ「ミカサ、この娘の知り合い?」
ミカサ「この前の戦いで、少し」
少女「私、おねぇちゃんに助けてもらったんだよ!!」
少女「おねぇちゃん、凄かったんだよ~!!」
少女「ピューって飛んできて、巨人をやっつけてくれたの!!」
少女「私、巨人が走ってきた時、怖くって泣いちゃった」
少女「お母さんがぎゅっと抱きしめてくれたけど、ぶるぶる震えていて」
少女「そこにね、おねぇちゃんが来てくれて!!」
少女「みんな助かったんだよ!!」
少女「それからね、それからね!!」
少女「いじわるなおじさん達をめってして!!」
少女「後でみんな、おねぇちゃんのこと、すごいすごいって!!」
少女「おねぇちゃんのおかげで助かったって!!」
少女「おねぇちゃん、ほんとうにありがとう!!」
サシャ「ミカサ、そうだったんですか?」
ミカサ「ええ」
ミカサ「……」
ミカサ(…そうか)
ミカサ(…そういう事か)
ミカサ「…」 (しゃがんで、女の子の目の高さに)
ミカサ「もしもまた、巨人が現れても大丈夫」
ミカサ「そんな時は私が。私達兵士が」
ミカサ「いつでも駆けつける」
ミカサ「守ってあげる」
ミカサ「あなただけじゃない」
ミカサ「あなたのお母さんも」
ミカサ「ここに住んでいる皆を守る」
ミカサ「それが兵士の役目」
少女「おねぇちゃん、かっこいい…」
ミカサ「…」ニコッ
少女「私、大きくなったら兵士になるね!!」
ユミル「お~お~、兵士は大変だぞ~」
少女「うん、知ってるよ!!お父さんも兵士だもん!!」
少女「おねえちゃんみたいに強くなって、私、みんなを守るの!!」
クリスタ「ようし、それじゃ、お姉ちゃん達、あなたのこと待ってるよ」
サシャ「たくさん食べて、しっかり運動しなきゃ駄目ですよ」
ユミル「お前は食べ過ぎだけどな」ボソ
少女「それじゃ私、行くね!!向こうで友達が待ってるから!!」
ミカサ「ええ、思いっきり遊んでくればいい」
タッタッタ クルリ
少女「おねぇちゃん!!」ビシッ(敬礼)
ミカサ「…」ビシッ(敬礼)
少女「またね!!」
タッタッタ ミンナーオマタセー
ミカサ「…」
ユミル「かっこいい、だとよ。良かったじゃねえか」
サシャ「あ、忘れてましたね」
クリスタ「何が?」
サシャ「あの娘の名前。それに、ミカサの名前を教えるの」
ミカサ「いい」
サシャ「いいんですか?」
サシャ「まぁ、あの娘、兵士になるって言ってましたからね」
サシャ「その内、会えますよね」
ミカサ「…」
クリスタ(ううん、違う。ミカサが名前を聞かなかったのは、多分…)
ユミル「そろそろ帰るか」
ミカサ「そうしよう」
サシャ「はっ!!クレープ!!」
ユミル「…行ってこい」
クリスタ(ミカサの表情が明るい…)
クリスタ(…そうだよね。そういう事だよね)
※(翌日夕方、調査兵団演習場)
コニー「ふい~っ、今日も終わった終わった」
ユミル「今日も叱られた叱られた、じゃねえのか」
コニー「うるせえ、今日は一回だけだ」
アルミン「クリスタもサシャも今日は大丈夫だったね」
クリスタ「えへへ」
アルミン(女神)
ライナー(ここに二人の新居を建てよう)
サシャ「昨日ミカサに色々教えてもらえましたから」
アルミン「そうだったんだ、よかったね」ニコニコ
ミカサ「アルミン」
アルミン「何だい、ミカサ?」
ミカサ「昨晩は話せなかったから」
アルミン「そうだったよね、街は楽しかった?」
ミカサ「とても。それで、何となく分かった気がする」
アルミン「分かった気がする?」
ミカサ「私達が戦うことで、平和に暮らせる人達がいるという事」
アルミン(おお)
ミカサ「私の知らない人がこの国にはたくさんいる」
ミカサ「家族でも仲間でもない、知らない人」
ミカサ「あの戦いで、知らず知らずの内に」
ミカサ「私は知らな人達を守っていた」
ミカサ「皆が笑って暮らせる為に戦うのは」
ミカサ「とてもやりがいのある事だと思う」
アルミン「うん、その通りだと思うよ」
ミカサ「エレンは私の『家族』。とても大切な人」
ミカサ「私が一番守りたい人」
ミカサ「エレンが危険な目に遭ったら、私は我を忘れるだろう」
アルミン「…それはしょうがないよ」
ミカサ「そう、こればかりは譲れない」
ミカサ「でも、はじめからエレンだけを守ろうとするのは違う筈」
ミカサ「アルミンも、他の仲間も、知らない人も」
ミカサ「私の力には限りがあるけれど」
ミカサ「出来るかぎり守りたいと思う」
アルミン「うん、うん」
ミカサ「まだ、『人類』の為というのはよく分からない」
ミカサ「それでも、私は戦っていこうと思う」
アルミン「素晴らしい考え方だと思うよ、ミカサ」
ミカサ「昨日、街に出てよかった」
アルミン「僕も勧めた甲斐があったよ」
エレン「オイ!」
ミカサ「!!」ビクッ
アルミン「エレン!」
エレン「しばらく振りに会った気がするぞ」
ミカサ「何か…ひどいことはされなかったの?」ギュッ
ミカサ「体を隅々まで調べ尽くされたとか精神的な苦痛を受けたとか」
エレン「ね…ねぇよ、そんなことは」
ミカサ「…あのチビは調子に乗りすぎた…」ゴゴゴ
ミカサ「いつか私が然るべき報いを…」ゴゴゴ
エレン「…まさかリヴァイ兵長のことを言ってるのか?」
*(夜、調査兵団宿舎)
アルミン「…ふう」
アルミン(エレンに会うと元のミカサに戻っちゃうんだな)
アルミン(ま、ミカサにとっては本当に『久しぶり』って感じだろうから)
アルミン(あんな風になるのは当たり前かな)
アルミン(でも、大丈夫だよね)
アルミン(クリスタから聞いた話では)
アルミン(ミカサはとてもいい経験をしたみたいだから)
アルミン(エレンもリヴァイ班で鍛えられているみたいだし)
アルミン(皆も少しづつ調査兵として向上している)
アルミン(僕も負けてられないや)
アルミン「……」
アルミン(…それにしても)チラッ
ライナー「おい、ジャン!!」
コニー「うるせえんだよ!!」
ジャン「…」ブヒュピーー ブヒュピーー
ベルトルト「あれは…?」
ライナー「口笛の練習らしい…」
ジャン「少し…音が出た」ネッチョオオ
完
以上です。
トロスト区攻防戦の少女の敬礼のシーンが好きだったので
そこからイメージを膨らませてみました。
ありがとうございました。
おっつ
乙!
原作補完っぽくてすごく良い
もしかしてミカサ誕生日の人かな?
乙
こういう話すげー好きだわ
このSSまとめへのコメント
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