兄「お前ちょっと最近かわいくなったよな」 (86)
妹「は?何言ってんの、気持ち悪いんだけど」
兄「いや…なんていうか…大人びたっていうか…」
妹「はいはい、どうでもいいから」
妹「ご飯作ってるんだからさっさと食べちゃってよ」
兄「…おう」
兄「ウマそうだな、流石俺の妹!良いお嫁さんになれるぞ!」
妹「はぁ…オーバーリアクションすぎ…」
妹「こんなの女として当然よ…」
妹「どうでもいいからさっさと食べちゃってよ、洗い物は早く済ませたいの」
兄「お…おう」
妹「……」ジー
兄「……」モグモグ
妹「……」ジー
兄「なんだよ」
妹「な、なんでもないわよ!馬鹿!」
妹「そういえば今週の週末あいてる?」
兄「ん、週末?」
妹「空いてるの!?空いてないの!?」
兄「空いてない」
妹「は、はぁ!?」
兄「え?俺なんかおかしい事言ったか」
妹「…な、なんでもない…」
兄「……」
妹「……」
兄「なんでそんなに辛そうな顔してんだよ…」
妹「し…してない!」
兄「してる」
妹「してない!馬鹿ッ!」
妹「はやくご飯食べちゃいなさいよ!のろまっ!!」
兄「言われなくても食べるよ…」
妹「どうせ男友達と映画でも見に行くんでしょ!」
妹「家族との関係より友人関係を優先させるなんて本当最低っ!!」
兄「いや、別に男友達じゃないんだけど」
妹「…見栄はらなくてもいいから」
兄「いや、彼女だから」
妹「はッ!!??」
妹「な、なんで兄に彼女が居るのよ!!おかしいでしょ!!」
兄「おかしくねえよ」
妹「おかしい!」
妹「中学の頃は全然いなかったじゃない!」
兄「俺もそういうのに興味なかったからな」
妹「き…昨日だって!ぜんぜん彼女が居るような感じじゃなかった!」
兄「そうか?別に隠してないけど」
兄「第一、家族に公表する馬鹿がどれくらい少ないか」
妹「……っ」
妹「あぁ…そう言う事…」
妹「嘘なんだ、そうでも言わないと私を納得させられないからデマカセ言ってるんでしょ」
妹「やっぱり兄は…昔っから嘘つくのが下手だよね」
妹「第一、兄に彼女なんかできる訳ないじゃない」
兄「は?それはあまりにも失礼だろ」
妹「本当の事じゃない、友達だってそう多くはないんでしょ?」
兄「それは…そうだけど…」
妹「だったら彼女なんて夢のまた夢よ」
妹「本当だって言うんなら、その彼女がどんな人なんか言ってみなさいよ、童貞」
兄「むっ…」
兄「いくらなんでも俺を舐めすぎだぞ、妹」
妹「だったら証拠だしなさいよ、証拠」
妹「まぁ、嘘を付いてる人間にはだせっこないけどね」
兄「はぁ…めんどくさいなぁ…」
兄「どういう事話せばいいんだ…」
兄「性格?容姿?口癖?身長?」
妹「じゃ…じゃあ、付き合った理由でも言ってみなさいよ」
兄「……」
妹「どうしたの?言わないの?」
妹「はぁ…呆れたっ…嘘付くんならもうちょっと設定を練ってから」
兄「告白されて…」
妹「は?」
兄「だから…告白…されて…」
妹「こ…告白…?だ…誰が…」
兄「俺が…///」
妹「ど…どうせ!ブサイクな女なんでしょ!!」
妹「い、居る居る!クラスに一人は居るよね!」
妹「人気のある人の輪に入りたくて好きでもない顔がそこそこの男に告白したりとか!」
妹「よ、よくあるわよね!!」
妹「ま…まぁ…どうせ、妄想なんだろうけど…」
兄「ブスじゃねえよ…」
妹「は…?」
兄「ブスなんかじゃねえよ…あの子は…」
妹「じゃあ証拠出しなさいよ」
兄「え?」
妹「そこまで言うなら証拠出しなさいよ!」
兄「そ…それは…」
妹「ふーん…やっぱり嘘なんじゃない!」
兄「う、嘘じゃねえよ!」
妹「まだ言うんだ、じゃあその彼女の名前教えなさいよ」
妹「特別に見に行ってやるから…兄の学校と私の学校って同じでしょ?」
兄「……」ボソボソッ
妹「何? 聞こえない!」
兄「…やっぱやめる…」
妹「はぁ!?ここまで来てそれはないでしょ!」
妹「言いなさいよ!名前くらい!!男でしょ!」
兄「い…いやでも…」
兄「その…恥ずかしいし…」
妹「やっぱいないんだ…」
妹「ま、大体そんな気はしてたけどね、私の兄ながら私服のセンスはださいし」
妹「コミュニケーション能力も低いし、勉強もてんで駄目だし、スポーツもできないし」
妹「こんなのに彼女なんか最初からできる訳ないわよね、ごめんね 夢壊しちゃって」
兄「……っ…だよ…」
妹「だから聞こえないって、あ…架空の名前出して逃げるのはなしよ?」
兄「同じクラスの女さんだって言ってるだろうがッッ!!」
妹「…は?」
兄「もういい!食器!流しに置いとくからな!」
妹「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!」
兄「…は、恥ずかしいってさっき言っただろうが…ほっといてくれ…」
妹「女さんってどういう事よッ!!な、なんでアンタなんかとあの人が!!」
妹「知ってるの?あの人、私の部活の!陸上部のリーダーで、成績もトップクラスよ!」
妹「それにスタイルも抜群だし!性格も良いって評判だし!!偏差値も相当高いって!」
妹「だからあの人は…モテモテで、月に1人や2人には告白されるの!」
妹「でもその人達は全員断られてるの!!」
妹「な、なのに!」
妹「なのになんでアンタがあの人の彼氏なのよ!!常識的におかしいでしょ!!」
妹「あ…そうだ…またお得意の妄想なんだ…」
妹「き、気持ち悪い!もてないからってアンタは、現実からも逃げるんだ!」
兄「はぁ…だから言いたくなかったんだよ…」
兄「じゃあ俺は部屋に居るから、風呂入っててくれ」
妹「ちょ、ちょっと待ってよ!う…嘘なんだよね?そ…そうだよね?」
妹「…ッ!!こ、答えなさいよ!馬鹿兄!」
兄「お前がそう思うならそれでいいじゃんか…」
兄「どうせ俺が何言ってもお前は否定するんだろ?」
兄「じゃあもうそれでいいよ…疲れてんだよ…今日は…」
妹「帰宅部が何言ってんのよ!本当の事言いなさいよ!!本当の事を!」
兄「だから…」
妹「あ…携帯…見せなさいよ」
妹「彼女だったらメールアドレスぐらい持ってるよね?」
兄「は…!? や、やだよ!」
妹 「いいから見せて!」
兄「嫌だ!は、放せ!馬鹿!」
妹「ちょっと携帯見るだけじゃん!」
兄「それが嫌なんだよ!」
妹「嫌じゃないわよ!嫌じゃ!!」
兄「嫌なもんは嫌なんだよ!!」
グググググッ
兄「は、はなせ!!」
妹「い…嫌よ!!…み、見せなさいよ!!」
兄「く、クソォォ!!」
妹「う…うぅぅ!!」
兄(やっぱり女の子の力だ…このまま行けば押し通せる!…)
妹「うっ…!」
バッ!
妹「あっ…!」
兄「は?」
ドタンッ!
兄「っ…てて……」
兄「手の力、急に抜くなよ…危ないだろうが…」
兄「…いてて……」
兄「い…妹…?」
妹「……」
兄「それ、俺の携帯じゃねえか!」
兄「く…くそ!返せ!」
妹「……」
兄「どうだ?分かったかよ!満足したらもう俺に彼女の話なんか振るなよ!」
兄「分かったな!」
妹「…ど、どうして兄が女さんのアドレスを持ってるの…?」
妹「お、おかしいよね?普段女子と会話してない兄がなんで…」
兄「だから彼女だって言っただろ…」
兄「もういい…寝る…」
兄「絶対に部屋にはいるなよ!」
女友「もうっ!恥ずかしがってないで行きなよ!」
女「で…でも…」
女友「もうっ…めんどくさいなぁ…!」
女友「兄くん!兄くんだよね?ちょっとこっち来て!」
女「ちょ、ちょっと!や、やめてよ!」
女友「もうちょい素直になりなよ!好きなんでしょ?」
女「…うん」
女友「じゃあここで一発勝負しないと終わらないし始まらないでしょ?」
女友「女の子なら覚悟持って、ね?」
女「……」
女「わ、私…頑張って、見る…」
女友「うんうん!その調子その調子!」
兄「…? な…何かな…?君達、別のクラスの子…?」
女「その…兄くん…話、いいかな?」
兄「ぼ…ぼく?」
女「そ…そのね…兄くん…」
兄「う…うん…」
兄(なんで俺…こんなドキドキしてんだよ…)
兄(女の子に雑用を頼まれるなんてよくある事だろ…なんでこんなにドキドキしてんだよ…)
女「ず…ずっとね…兄くん…」
兄「う…うん…」
兄(あぁ…頼むから早く終わってくれ!緊張しすぎて辛い!クソ!クソ!)
女「あ…あぁ!…スーハー スーハー…」
女「…その、良ければ付き合ってください!」
兄「……」
兄「え?」
女「その…前からずっと…好きでした」
兄「え…えと…え?」
女「だ…駄目ですか?私じゃ…」
兄「い、いや!そんな事はないよ! で、でも…」
兄「俺なんかが…君の…いや…ドッキリ…?だよね…?」
女「……ドッキリじゃないです…」
兄「そ、そうなんだ…」
女「はい…」
兄「……」
兄「お…俺は…」
女「その…今週の日曜日…隣街まで行きませんか?」
兄「隣町かぁ でもああいう所ってオシャレした人が行く所じゃない?」
兄「俺…格好良い服ないんだよなぁ…」
女「だ、だったら!」
女「私が服、選んで上げます!」
女「そうすれば…また行くとき…恥ずかしく…ないでしょ…?」
兄「……」
兄「…あ、ありがとう」
________
兄(今思えば夢みたいな話だった…)
兄(俺なんかが、こんな幸せでいいんだろうか…)
兄(初じめての彼女ができて…すごく可愛くて…こんなに幸せになって…)
兄(あぁ!!考えてても仕方ない!!)
兄「寝る…」
妹「お風呂、空いたよ?」
妹「……」
妹「あ、兄ー?」
妹「……」
妹「……ごくりっ」
ガチャッ
妹「お、おにいちゃんー?…」
妹「お、起きてるー?」
「………」
妹「え、えへへ…」
妹「一緒に寝ても、いいよね?」
妹「お兄ちゃんあったかい」
兄「……」
妹「ねえ、ぎゅうってしていい?ぎゅうって」
兄「……」
妹「えへへ、…ありがとう!」
ぎ ゅ う う
妹「こうするともっとあったかいよ…」
兄「……」
妹「お兄ちゃんもあったかい?」
兄「……」
妹「うんうん…そうだよね…お兄ちゃんも年頃の男の子だもんねっ」
妹「もっともっと愛してくれてもいいんだよぉっ」
兄「……」
妹「そういえば、お兄ちゃん、彼女…できちゃったんだよね…」
妹「ちょっと寂しい…」
兄「……」
妹「お兄ちゃんも寂しい?」
兄「……」
妹「んぅ…寂しくないんだ…いいもん…私はお兄ちゃんの一番なんだもん」
妹「今日も可愛いって言ってくれたよね!」
兄「……」
妹「うんうん!だから私はお兄ちゃんの一番なの!」
妹「でももっと…もっと好きになってほしい…」
妹「他の女の子の事なんか頭に入らないぐらいもっと…」
妹「お兄ちゃんも愛してもらえて嬉しい?」
兄「……」
妹「うん…ずっとずっと好きだからね…お兄ちゃん…だからもっと…」
兄「ふぁぁ…!!」
兄「良く寝た…はぁ…」
兄「……」
兄「軽くシャワー浴びるか…」
兄「……」
妹「ぁ……」
兄「っ……」
妹「…ぁ、ぁの…」
兄「…な、なんだよ…」
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