少年「この推理小説、面白いな」ワクワク (17)

少年「大金持ちのおじさんが、屋敷にいる時に誰かにピストルで殺されたっていう、話で」

少年「ストーリーはありきたりなんだけど、これ、本当に犯人がわからない」ワクワク




医者「いいえ、私は犯人ではありません」

医者「確かに私は薬と間違えて毒をカバンの中に入れて持ってましたけど、ピストルは持ってませんでしたし」

医者「それに、大富豪が殺された時刻には、私は千キロ離れたロンドンにいたんですよ。私には完璧なアリバイがある!」


メイド「いいえ、私は犯人ではありません」

メイド「確かに私は腹が立つ事があるとピストルを乱射する癖がありますけど」

メイド「でも、旦那様が殺された時には、私はスペインでフラメンコを踊っていました。私には完璧なアリバイがあります!」


妻「私は犯人ではありません」

妻「確かに夫を殺して細切れにしてやりたいほど憎んでましたし、綿密な殺害計画を練り上げてはいましたが」

妻「でも、私は夫が殺された時には、南極でペンギンと遊んでました。私には完璧なアリバイがあります!」


愛人「違うわよ、私は犯人じゃないわ」

愛人「確かにスナイパーライフルを持ってるし、私の狙撃の腕はオリンピック級だけど」

愛人「でも、あの人が殺された時には、私は宇宙船に乗って月面へと降り立っていたわ。私には完璧なアリバイがあるのよ」フフフ




少年「本当に容疑者全員のアリバイが完璧なんだよな」ワクワク

少年「一体、誰がどんな方法で大富豪を殺したんだろう。謎解きの場面はまだかな」ワクワク

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探偵「皆さん、静粛に」



少年「あ、探偵が出てきた! もうすぐ謎解きだ!」ペラッ



探偵「大富豪さん、殺害事件。その犯人がわかりました」

全員「な、何だってー!」



少年「誰なの? それで、どんなトリックを使ったんだ?」ワクワク



探偵「犯人は……」


少年「」ゴクッ


探偵「タメゴローさん、あなたです!」ビシッ

タメゴロー「ぐっ!」



少年「誰だよ!!?」

探偵「彼は大富豪さんの家の近所に住む、カマボコを作っている職人です」

全員「な、何だってー!!」

タメゴロー「くそっ……。そこまでバレてたのか……!」



少年「普通のオッサンじゃん! 今まで一度も出てこなかったじゃん!」バンバンッ



探偵「彼はその日、大事に作っていたカマボコを大富豪さんがゴリラの餌にしているのを目撃してついカッとなり……」

探偵「近くに落ちていた、メイドが乱射した後に放置した拳銃を手に取って、大富豪さんを撃ち抜いたんです」

タメゴロー「ちくしょう! 何でそれがわかった! 誰も見てなかったはずなのに!」

探偵「ええ、まるでわかりませんでしたよ。たった今、あなたが自白するまではね」

タメゴロー「はっ! しまった!」

探偵「ふふっ。墓穴を掘るとは正にこの事! 適当に言っただけなのに、それがドンピシャとは!」

探偵「これでこの事件は解決ですね。この私の名推理によって!」ババンッ

【完】



少年「ふざけんなあああっ!! ちっくしょーっっ!!!」ビリッ!!

【後日】


少年「ああもう。この前はひどい目にあった」

少年「あんなのインチキだよ。推理でも何でもないし!」


少年「でも、今読んでる推理小説は、前のと違って面白いぞ」

少年「今度は密室の謎だ。鍵がかかった部屋の中で、若い男が殺されてる」

少年「犯人はきっとこの人の恋人なんだろうけど、密室の謎がどうしても解けなくて逮捕できないでいる」

少年「この女の人はどうやってあの完璧な密室を作ったんだろう」ワクワク



恋人「だから、私は犯人じゃないって言ってるでしょ!」

恋人「私はやってないわ! ピアノ線を使ってドアノブを内側から開けて殺害した後、何食わぬ顔して戻ってきてなんかいないわよ!」

恋人「どうしても私がやったって言うなら、密室のトリックを解いてみなさいよ! まあ、あんた逹みたいな無能な警察なんかには絶対に解けないトリックだけどね!」フフン



少年「本当にわかんないんだよな。この人、どうやって密室を作ったんだ?」ワクワク

探偵「皆さん、静粛に」



少年「あ、探偵が出てきた! もうすぐ謎解きだ!」ペラッ



探偵「イケメンさん、殺害事件。その密室の謎がわかりました」

恋人「な、何ですってー!」



少年「どんなトリックを使ったの? 楽しみだなあ」ワクワク



探偵「犯人は……」


少年「」ゴクッ


探偵「タメゴローさん、あなたです!」ビシッ

タメゴロー「ぐっ!」



少年「またお前かよ!!?」

探偵「彼は殺人犯として刑務所に入れられていたのですが、そこを脱獄していまして」

恋人「な、何ですってー!!」

タメゴロー「くそっ……。バレてやがる……!」



少年「ていうか、何でまたタメゴローが出てきてるの!? これ、同じ作家が書いたシリーズ物なの!?」



探偵「彼は脱獄した後、イケメンさんの家に潜伏していたんです。それが見つかって口封じにイケメンさんを殺害した……」

探偵「そして、彼が隠れていた場所は……」

探偵「この家にある七つの隠し部屋の一つ、ここです!」ババンッ



少年「そこ、普通のアパートなんだけど!? 何で隠し部屋が七つもあるの!?」バンバンッ



タメゴロー「ちくしょう! 何でそれがわかった! この七つの隠し部屋は警察すら見つけられなかったってのに!」

探偵「ええ、巧妙に隠されていました。ですが、私のこの鋭い勘によってあっさりと見つけました」

タメゴロー「くそうっ! 何て凄い勘の持ち主なんだ!」

探偵「ふふっ。私のヤマカンは世界一と呼ばれていますから」

探偵「これでこの事件は解決です。この私の名推理によってね!」ババンッ

【完】



少年「ふざけんなあああっ!! ちっくしょーっっ!!!」ビリッ!!

【後日】


少年「ああもう。二回もひどい目にあったよ……」

少年「あんなのインチキだよ。推理小説でも何でもないし!」


少年「だから、今度はあの作家以外の推理小説を買ってきた」

少年「今度のはかなり本格的な推理小説だ。あんなインチキ作家のとは全然違う」

少年「謎の連続殺人……。吹雪で山荘に閉じ込められた人が次々と死んでいく話なんだけど」

少年「これ、犯人が誰かも、どうやって殺したのかも全くわからない。特に殺害方法が謎なんだ」

少年「殺された人は全員、窒息死している。なのに、被害者には首を絞めた跡や、毒や病気の痕跡が全くないんだ」

少年「まるで、突然部屋の中から酸素がなくなって死んだとしか思えない」

少年「一体、犯人は誰なんだ? そして、どうやって殺したんだろう?」



謎の中国人「いいえ、ワタシ何も知らないアル!」

謎の中国人「証拠が絶対に残らない、酸欠になる毒なんか持ってないアルヨ! アレ、蛙を美少女に変える薬ネ!」


覆面をしたロシア人「わたし、何も知りまセーン!」

覆面をしたロシア人「祖国に古くから伝わる、首を絞めた跡が全く残らない幻の絞め技なんてマスターしてないデース!」


浮いてるインド人「わたし、日本語わからないヨガ」

浮いてるインド人「ヨガの秘術で窒息死させる事なんて不可能ヨガ。無実ヨガ」



少年「一体、どんな方法で、誰が犯人なんだろう? 楽しみだなあ」ワクワク

探偵「皆さん、聞いて下さい」



少年「あ、探偵が出てきた! もうすぐ謎解きだ!」ペラッ



探偵「この一連の連続殺人事件。その犯人と動機が全てわかりました」

全員「な、何だってーアルヨ!!」


少年「誰なの? それで、どんな方法で殺したんだろう?」ワクワク



探偵「この連続殺人の犯人は……」


少年「」ゴクッ


探偵「タメゴローさん、あなたです!」ビシッ

タメゴロー「ぐっ!」



少年「おかしいだろっ!!?」

探偵「彼は二件の殺人を犯した後、刑務所に入れられていたのですが、そこで超能力に目覚めて牢を脱獄したのです」

全員「な、何だってー!!」

タメゴロー「くそっ……。バレてやがる……!」



少年「超能力って何!? 推理小説に出しちゃいけないものでしょ、それ!」

少年「大体何でこの小説にタメゴローが出てきてるの!? 作者違うじゃんか! 流行ってるの、タメゴロー!?」



探偵「そして、彼は脱獄した後、この山荘にたまたま辿り着き……」

探偵「超能力によって透明人間と化して潜伏していたのですが……」

探偵「しかし! なんという悲劇!」

探偵「彼の超能力が暴走してしまい、その為、次々と人が窒息死で死んでいったのです!」ババンッ



少年「全部、超能力じゃん!? ダメでしょ、そんなの!? 推理じゃないよ、こんなの!!」バンバンッ



タメゴロー「ちくしょう! 何でそれがわかった! 俺が超能力者だって事は誰も知らないのに!」

探偵「ええ、全く気がつきませんでした。ですが、実は私もたまたま昨日、超能力に目覚め、それに気が付いたのです!」

タメゴロー「くそうっ! 何て強運の持ち主なんだ!」

探偵「ふふっ。私の超能力にかかればこんな事件などたちどころに解決です」

探偵「これでこの事件は終わりですね。この私の名推理によって!」ババンッ

【完】



少年「最終的には全部超能力かよっ!! ちっくしょーっっ!!!」ビリッ!!

【後日】


少年「ああもう。まさか三回もひどい目にあうなんて思わなかった……」

少年「後で調べたら、あの推理小説を書いたの、例の作家だった。ペンネームを変えたらしい」

少年「もう嫌になってきたから、逆に今度はあの作家の最新作を買ってきた。どうせ、犯人はタメゴローに決まってるから、今度はどんなインチキな方法を使うか予想してやる」

少年「そして、タメゴローは謎解きのタイミングまで絶対に出てこないから、その前に出てくる容疑者は全員シロだ。今度は真面目に推理なんかしてやらないんだから」



刑務官「さあ出ろ、タメゴロー。お前も遂に年貢の納め時だ」

タメゴロー「ちくしょう! ちくしょう!」トボトボ



少年「と思ったら、冒頭からタメゴローが出てきてるの!?」

少年「ああもう、裏をかかれた!」ペラッ

少年「しかも、タメゴロー、普通に死刑にされかけてる! このままだと死んじゃうよ! 犯人がいなくなっちゃう!」ペラッ



タメゴロー「ははっ……。これで俺も終わりか。つまらない人生だったな……」

タメゴロー「そう。思い出せば俺の一生は……」



少年「何これ!? その後、延々とタメゴローの生涯が回想みたいな感じで書かれてるんだけど!?」ペラッ


少年「学生時代は不良で、その後、ヤクザに。組長にまで上り詰めたと思ったら、部下の裏切りにあって半死半生状態に」ペラッ

少年「だけど、凄腕の医者に助けられて、それからは心を入れかえてカマボコ職人に」ペラッ

少年「その後、若くて美しい奥さんが出来たと思ったら、結婚詐欺で全財産無くしてるよ」ペラッ

少年「店も売り出す羽目になって、借金だらけ。夜逃げしてホームレス生活を五年も続けて、でも、顔は醜いけど心は美しい女の人と出会って……」ペラッ

少年「ていうか、長いよ! もう半分以上読んだけど全部タメゴローの話なんだけど!?」ペラッ、ペラッ

少年「これ、推理小説だよね!? いつになったら事件が起きるの!?」ペラッ、ペラッ



タメゴロー「ああ、走馬灯の様にこれまでの人生が頭の中を駆け抜けていった……」

タメゴロー「そうか、これが死ぬという事か……」

タメゴロー「ろくな人生じゃなかったな……」

タメゴロー「ぐふっ……」ガクッ


【完】


少年「推理しろよっ!! ちっくしょー!!!」ビリッ!!

つづく?

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