それ町サスペンス劇場 倒れた乙女 絵画の謎を追え!【それでも町は廻っている】 (18)

それでも町は廻っているSS

※歩鳥達が大学生でのお話。ネタバレもあるので単行本派は注意。



それは季節の変わり目の時の事であった………



隣町の絵画展に室伏涼…涼ちんの描いた絵も展示される事になった。


事件はその時、起きたのである。



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紺 邸


「おはよ~~~」カツッカツッ



紺「ね~、ママ。ふたば今日いつもよりも早起き出来たよ!えらい?」テシシ



桐絵「あ…」

紺「んにゃ?」



歩鳥「………」


紺「………」



紺「…」ガチャ

歩鳥「無言のまま逃げた!!」

桐絵「あ…あの子…甘えん坊だから…」ホホホ



歩鳥「もう見られたのこれで二回目なんだから逃げなくたっていいじゃないですか!」

紺「うっせぇ、ボケ!!!」



紺「…で、大学はどうなんだよ」

歩鳥「おお、キリッとした顔に戻った」

紺「いいから答えろ!つーか忘れろ!!」

歩鳥「あはは……や~、昨日も怒られましたよ~えへへ」

紺「えへへじゃねぇよ…大学生にもなって怒られてんじゃねぇよ…お前は」

紺「そうだ、真田とはどうなの?休みなら誘ってやれよ」

歩鳥「真田とは夕方からシーサイドで食べに行く予定ですけど」

紺「もっと他のとこ行ったらどうだよ…まぁいいや」

歩鳥「あ、先輩も一緒に来ますか?」

紺「アホか、行かねぇよ!…ったく…真田をどう見てんのお前…」



夕方

シーサイド


歩鳥「さてさて、皆さんお揃いですね…では今日は私の新作料理を披露しようと思います!」

真田「え!?一緒に食べるんじゃなかったの!?」

歩鳥「だから、私の新作料理を食べるんだよ…皆で」

真田「は…はは…」


真田父「皆っつーか、いつものメンバーしかいねぇけどな」

荒井「いつまでも変わらないなぁ、歩鳥ちゃん」

菊池「つーか、許可もらったのかよ」

ウキ「この前、緊急で店の手伝いしてもらったからね…まあ、そのお返しにでも今日は好き勝手させてやるよ」


歩鳥「さてと、なに作るかな~」カツッカツッ

真田父「作るもんすら考えて無かったのかよ!?」

荒井「うわぁ…一気に不安に…」

菊池「歩鳥ちゃんの場合、考えてても考えてなくても同じな気もするけどな」

ウキ「いや、前よりはだいぶマシになってるよ」

真田「うん、そうそう前よりは」

荒井「え!?」

真田父「マジかよ!?」

菊池「美味いのか!?」

真田「あ…や…それは…」

ウキ「…まあ…マシにはなってるよ…」

荒井「美味しくは無いんだ…」


歩鳥「………」カツッカツッカツッ

真田「あれ?戻ってきた」

ウキ「どうしたんだい?」

歩鳥「申し訳ありませんでした…」ボロボロ

真田「え、な、なに泣いてんの!?」

ウキ「おい、この子ちょっと酔っ払ってんじゃないのかい?」

真田「なんで!?」


荒井「あ、歩鳥ちゃん持ってるのお酒のビンだよ!」

歩鳥「調味料だと思って味見したらお酒でした…ごめんなさい…」ボロボロ

真田「そういや、酔うと泣き出すんだったな…」

菊池「そもそも酒と間違えんなよ…」

歩鳥「勝手にシーサイドで自作料理を作ろうとしてごめんなさい…」ボロボロ

ウキ「はあ、もう…わかったから座ってな」

歩鳥「紺先輩の引っ越し先勘違いしてごめんなさい…」

真田「どうしよう…」

ウキ「水でもぶっかけるかい?」

荒井「さすがにそれは可哀想だよ」


歩鳥「おにぎり呼ばわりしてごめんなさい…」

真田「ん?」

歩鳥「ボーナスってなんだよう……」ボロボロ

歩鳥「うう~……皆が私を知らないの怖いよ~……」ボロボロ

ウキ「はぁ?何の話してんだい?この子は」

真田父「酔っ払ってるだけだろ、気にすんな」

歩鳥「うう…先生方を騒ぎに巻き込んでごめんなさい…」ボロボロ

真田「…もしかしてナメ子の事か?」

歩鳥「中学生の時、ゼッケンに鼻水つけてごめんなさい……友達の本を汚してごめんなさい………」

歩鳥「頭突きかましてごめんなさい…」ボロボロ

荒井「もうそっとしとこうよ」

ウキ「そのうち覚めるだろ」

真田父「おい、広章。家に連れて帰って休ませるとか言うなよ」

真田「い、言わねぇよ!?ちょっと黙ってろよ親父!」


その頃…日付を同じくして


隣町の絵画展

友人「ごめんね~、付き合わせちゃって」

辰野「いいよ、暇だったし」

針原「あ、辰野さん。あれじゃない?」

辰野「なにが?」

針原「嵐山さんの友達の…室伏涼って人が描いた絵」

辰野「ああ…歩鳥の友達のあいつか…」



ジー



辰野「…やっぱりあの人の絵は私には良さがわからんわ。気味悪いっていうか」

友人「えー、私は好きだよ」

針原「私も好きではないけど…個性的な絵だとは思うわ」

辰野「…」



辰野「なんだろ…何か、頭クラクラする…って言うか…ガンガンしてきたような…」

針原「え?」

辰野「…何か、寒い…」

友人「ど、どうしたの!?」

辰野「絵見てたら…頭痛くなってきて……何か寒気するし…」

針原「ちょっと、大丈夫なの?辰野さん。汗出てるわよ」

辰野「はあ…はあ……」

辰野「うっ!!」ガクッ

針原「辰野さん!?」

辰野「だ…だめ…吐きそう………帰りたい…」

針原「辰野さん!」

翌日


歩鳥「ふー、今日は特に予定ないし…タッツンでも誘って涼ちんの絵見に行こうかな」

プルルルル…プルルルル…

歩鳥「…あれ、電話出ないな。何でだろ?」


歩鳥「仕方ない、針原さんにかけてみるか」


ガチャ

歩鳥「あ、もしもし。針原さーん?」

針原『あら、嵐山さん。どうしたの?』

歩鳥「さっきタッツンに電話したんだけど出なくて~」

針原『あ、それがね、辰野さん昨日倒れちゃって…』

歩鳥「倒れた!?」

針原『昨日、他の友達と辰野さんと私で絵画展に行ってて…あなたの友達の室伏涼さんの絵を見てる時に、気持ち悪いって言い出して…』

歩鳥「!!」

針原『それで今日は家で寝込んでるの…たぶん今は電話に出られないくらいに不調なのよ』

歩鳥「…涼ちんの絵を…見てたら…?」



その瞬間、歩鳥が思い出したのはあの時の…森秋邸での記憶

森秋先生の祖父の絵を見て涼ちんが語っていた「人を洗脳する絵」「見た人間を殺す絵」

そして…

あの狂気に満ちたような涼ちんの眼………



歩鳥「………」

針原『あら、黙っちゃってどうしたの?嵐山さん』

歩鳥「ごめん、いったん切るね」

針原『ええ、じゃあまたね』

歩鳥「うん、じゃあね」


歩鳥「…」

歩鳥「まさか…」



カチャカチャ


歩鳥「…」


父「ん?どうした歩鳥。浮かない顔をして」

母「いつもは幸せそうにご飯食べてるのにどうしたの?」

歩鳥「えっと…ちょっと考え事」

タケル「…何か悩みでもあるの?姉ちゃん」

歩鳥「悩みとは違うけど…んー…」

ユキ子「姉ちゃん、からあげ一個やるから元気だせ」

歩鳥「ははは、ありがと…でもユキ子が食いな」



アンティーク亀井堂

静「…絵で人を殺せるかって~?急に何言い出すんだよお前は~~」

歩鳥「えっと…もしもの話だよ」

静「…そういえば歩鳥の友達に絵描きいるとか言ってたよね?室伏涼だっけ?」

歩鳥「!え、静姉ちゃん知ってたっけ!?」

静「前に聞いたよ~。ほら、お前が『少女A』だかの演劇の脚本を『オチまで考えて書いてきたけど面白いかわからないから』って私に見せに来た時だよ」



歩鳥「あ、あの時ね!」

静「室伏涼ちゃんと関係あるの?」

歩鳥「…実はさ…」




静「…へ~…」

歩鳥「だからさ、もしかしたら涼ちんは『人を[ピーーー]絵』を完成させようとしているのかも知れないんだよ!」

静「わかったわかった、まずは落ち着きなさい歩鳥」

歩鳥「タッツンが倒れたのに落ち着いて居られないよ!」

静「…あのさ、私思った事があるんだけど~…」

静「…ま、いいや。とりあえず私もその絵を見せてみたまえよ」

歩鳥「そんな、静姉ちゃんまで倒れたりしたら…」

静「まずは自分で確かめてみなきゃダメだろ?」



絵画展


ザッザッザッ…

静「これが問題の絵な訳~?」

歩鳥「うん、室伏涼って名前が描いてあるし…これだと思う」

静「確かに気持ちのいい絵ではないけど~…」

歩鳥「森秋先生の祖父の絵画にを見た時、様子が変だったんだよ…絵で人を洗脳するとか[ピーーー]とか…」

静「………」

静「で…歩鳥、他に倒れた人はいるのか?」

歩鳥「へ?」

静「いや、へ?じゃなくて…他に倒れた人はいないの?」

歩鳥「うん、針原さんは無事だって…他の人が倒れた話もまだ聞いてないし…」

静「なあ…歩鳥…」

歩鳥「うん」

静「お前また…」
歩鳥「他の人が倒れる前に涼ちんを止めないと!」

静「いやそうじゃなく…」

歩鳥「静姉ちゃん、私…探偵に憧れていて。前は事件が起こらないかとか、いつも考えてた」

静「…」

歩鳥「でもね、溝口先生の件で…事件が起きても皆が傷付くだけって気が付いた。私は子供だった」

静「…」

歩鳥「…私は今でも探偵は好きだし、出来たらなりたいと思ってる。でも…事件を楽しんだらダメなんだよね」

静「…」

歩鳥「静姉ちゃん…私は…」

歩鳥「私は、友達として、涼ちんを止めてあげたい。これ以上誰も傷付けたくないし…涼ちんも好きだから」

静「…ああ…」

歩鳥「行ってくるよ!」ダダダッ

静「…」

静「歩鳥…」

シーサイド前


ザッ ザッ ザッ

歩鳥「…涼ちん…私が…止めてあげなきゃ」ハアハア
ジャリッジャリッ


歩鳥「!」





涼「…」



歩鳥「!!シーサイドの中に涼ちんがいる!!」ザッ


カランコロン!

歩鳥「涼ちん!!」ザッ


ウキ「おや、歩鳥」


涼「あ、君い!久しぶりだね!」

歩鳥「久しぶり…でも、今は大事な話があるの」ザッ

真田「どうしたんだ?嵐山…真剣な顔して」

紺「…そいつ、歩鳥に用があって来たんだってよ」

歩鳥「!紺先輩と真田も来てたんだ…」

涼「そうそう、君!私の絵は見てくれた!?」

歩鳥「その絵!今すぐ展示するのは止めて!!」

紺「!?」

真田「!?」

涼「…はあ?」

歩鳥「はあ?じゃないよ!私は真剣なんだよ!」

涼「ごめん、ちょっとどういう事かわからないんだけど…」

真田「と、とりあえず落ち着けよ嵐山…」

紺「何があったんだよ?」

歩鳥「…タッツンが倒れたの」

涼「ああ、眼鏡の子?」

歩鳥「涼ちんの絵を見て、倒れたんだよ…」

紺「はあ?」

歩鳥「前に言ってたよね…森秋先生の家での、人を洗脳したりする絵の話…」

涼「ああ、そんな事あったねぇ」

歩鳥「涼ちん…そんな絵は描かないで!お願いだから!」

涼「…あ」

歩鳥「…」

涼「…あぁ……あは、はっ!あはははははは!」

歩鳥「!!」

涼「あはははははははは!!あは、あは…ははははは!!あ、あんた…あんた本当に楽しいねぇ、あはははははは!!」

歩鳥「わ、笑い事じゃないよ!!」

涼「き…君、変わんないね本当…あはははははは!く、苦しい…お腹苦しい!」ゲラゲラ

歩鳥「笑わないでよ!真面目に…」

紺「…おい、歩鳥」

歩鳥「先輩、今は大事な話してるから…」

紺「風邪だよ」

歩鳥「え?」



紺「タッツン倒れたのな…」





紺「風邪だよ」





歩鳥「…」

歩鳥「え?」

紺「さっき私がメールで辰野に聞いてみたんだ」

真田「そしたらさ…風邪だってさ」

ウキ「そういえば今は季節の変わり目だからねぇ」



歩鳥「………」



歩鳥「え?」



涼「あは、あは、あはははははは!!君…最高~!」ゲラゲラ





ウキ「………」

紺「………」

真田「………」

歩鳥「………」

涼「………」



歩鳥「つまり………たまたま、絵を見ていた時に風邪が悪化して……倒れた…だけ?」

涼「そうだね!」

紺「いつもの早とちりって訳だな」

真田「あはは…」

ウキ「歩鳥、こんなときはどうするんだい?」



歩鳥「う…うう…っ」




歩鳥「申し訳ありませんでした………っ!!!」




おしまい

ちなみに、少女Aの台本を静さんに見せたという話は、14巻『続・夢現小説』の事です

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