智絵里「マーキング」まゆ「2ですよぉ」 (119)
※「アイドルマスター シンデレラガールズ」のSS
※キャラ崩壊あり
※人によっては不快感を感じる描写もあるかも
※決して変態的なプレイをする話じゃありませんのであしからず
※健全な純愛物を目指してます
※既出のネタがあるかも
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476819940
一応、前作の続きの様な物
智絵里「マーキング」
智絵里「マーキング」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476481390/)
基本は地の文ありですが、疲れたら台本形式になるかもしれない
前回のあらずじ
事務員、千川ちひろは事務所の所属アイドルの緒方智絵里とその担当プロデューサーの関係に気付いてしまった。
そして『付き合っていない』と言う二人だが、それ以上の行為をする二人に対して辟易するちひろだった。
「はぁ……」
CG(シンデレラガールズ)プロダクションの事務員、千川ちひろは重々しくため息を吐いた。『ため息を吐くと幸せが逃げる』とか言われてはいるが、今のちひろにとってはどうでも良かった。
「本当……毎日疲れるわ……」
ため息を吐いたのは日々の業務に疲れての事もあった。しかし、それ以上に苦悩する事があって吐いた事も事実である。
「あの二人……今日も大丈夫かしら……」
ちひろの心配事はこの事務所の所属アイドルである緒方智絵里とその担当プロデューサーであるPとの関係だった。
あの二人が少しでも限度を超える様な事を仕出かしたら、この事務所は崩壊の一途を辿ってしまう。だからこそ心配せずには要られなかった。
「そもそも……あんな事をするぐらいなら、普通に付き合った方が良いと思うのだけど……」
ちひろが偶然知ってしまった事ではあるが、智絵里とPは互いに好き合っていたのだった。だが、その様な一面は少したりとも表には出してはいない。ちひろが知るまで完全に秘匿されていた。
そしてPの言葉を信じるならば、律儀にもアイドルとその担当という関係を守っていて、交際には至ってはいないとの事である。
しかし、二人はその代わりに『マーキング』と称して、お互いの愛を確認している様だった。
具体的にはプレゼントやご褒美と言って物等を贈り合い、それで相手を飾り合って他を寄せ付けない様にしているのだ。
ちひろが見た中では、しおりやお守りを智絵里が手作りしてPに贈っていた。
特にお守りはその中に自らの髪の毛を入れていた事から、その想いの強さが伺えた。
「今はまだ大丈夫だけど……これからもそうでいてくれる保障はどこにも無いし……はぁ……」
自分達の行く先をちひろは案じ、またため息を吐くのだった。
「ちひろさん、すいません。今、よろしいですか?」
そんな事を考えていると、真向かいに座るちひろの苦悩の全ての元凶でもあるPが声を掛けてきた。
「どうしましたか、プロデューサーさん。まさか、何か厄介事でも起こしたんじゃ……」
あの一件以来、ちひろのPに対する評価はどん底まで落ちていた。今までは信頼を寄せる同僚だったのにそれがこれである。こうなったのも、Pのサイコな性格が起因しているからだ。
「いえ、そんな事はしていませんよ。安心して下さい」
白々しくもそう言うPに、ちひろは『どうだか……』と、いった疑いの眼差しで見つめる。
「本当です。信じて下さいよ」
「だったら、行動で示して下さい。行動で」
「手厳しいなぁ。ははは」
後頭部を右手で掻きながら笑ってそう言うP。それを見たちひろは三度ため息を吐きそうになるが、どうにか堪えてPの言葉の続きを待った。
「それで、ちょっと聞きたい事がありまして……」
Pは自分の机の引き出しを開くと、ちひろには見えないが、そこから何かを取り出した。
「これなんですが……」
そして取り出した何かをちひろに向けて差し出した。ちひろは差し出されたそれを手にとり、それが何なのかを確認する。
「これ……お守りですか?」
それは以前に見た事のある様なお守り。しかし、その造形はその時に見た物とは違っている。まったく別物だった。
前に見た智絵里の手作りのお守りには、薄緑色の袋に四葉のクローバーの刺繍が入っていた。だが、このお守りはピンク色の袋に、真っ赤なハートの模様が刺繍されているのだ。
(何でこんなものを私に……?)
と、思ったが、そこまで理解した所でちひろはPの思惑に気付く。
(そうか……プロデューサーさんは、この新作のお守りを自慢したいのね)
そうに決まってるとちひろは確信する。それ以外に理由が考えれなかった。
「それ……誰のか知りませんか? 今朝、机の上に置いてあったんですが……」
しかし、ちひろの予想は見事に外れた。
「えっ……? 智絵里ちゃんからのプレゼントじゃあ……」
「違います」
念の為に聞いてみたちひろだったが、Pは即答して返した。
「作り方が全然別物ですし、そもそも智絵里が作ったのなら、絶対に四葉のクローバーは入れてきますから」
絶対の自信を持ってそう答えるP。なら、これは誰が作った物なのか……。
「でも、そうか……ちひろさんも知らないか……」
そう言ってPは首を傾げて悩んでいる様子だった。ちひろもあれこれと考えてみるが、さっきので確実だと思っていたせいか、何も浮かんでこなかった。
「もしかすると……誰かの忘れ物かもしれませんね」
悩み抜いた結果、Pはそういった風に結論付けた。確かに考えられるとすれば、それが一番妥当かもしれない。
「という事で、ちひろさん。それ、預かってて下さい」
そして面倒事を押し付ける様に、Pは無情にもちひろに向かってそう言った。
「わ、私ですか!?」
「えぇ。それに俺……今から打ち合わせの為に出掛けないといけなくて……預かっている訳にはいかないんですよ」
それを聞いたちひろは嘘じゃないかと疑い、自然と顔をスケジュール表に向ける。しかし、確かにそこにはその様な予定が書いてあった。
「そんな訳でちひろさん。そのお守りの事……よろしくお願いしますね」
そう言ってPは営業用の鞄を手にとって、事務所から出て行ってしまう。ちひろは反論の余地も与えられず、黙ってその様子を見ているしか出来なかった。
「これ……どうしよう……」
ちひろは手に持つお守りを見つめ、誰に向けるのではなくボソッとそう呟くのだった。
とりあえず今から仕事なのでここまで
続きは帰ってからか昼休みにでも
「ん? 俺の机の上に何か置いてあるな……」
Pは自分の机の上にある物に気付き、それが何かを確認する為に近付いていく。
「これは……花?」
「はい。まゆが持ってきたんですよぉ」
「へぇ、そうなのか。俺、花に関しては詳しくは無いが、それでも綺麗な花だな」
Pはじっくりとブーゲンビリアの花を眺めている。割と好意的に受け取ってくれているPの姿を見て、まゆは嬉しく思った。
「ありがとうな、まゆ。わざわざすまないな」
「ふふっ、そんな事無いですよぉ。まゆはプロデューサーさんの為なら……何だってしますから」
そう言ってまゆは満面の笑みを浮かべる。
「このお花……まゆだと思って、大切にして下さいね……」
「お、おはようございます……」
そうこうしている内に、事務所に次なる来訪者が現れる。ちひろは誰かを確認しようとそこに顔を向けると、そこには間の悪い事に、智絵里が立っていた。
(何て最悪なタイミングでやって来るの……)
ちひろは少しだけ冷や汗を掻く。そして目の前にいるPとまゆの二人を見つめ、この二人の間に智絵里が割って入り、修羅場が起きてしまわない様にと祈った。
「ぷ、プロデューサーさん、まゆちゃん。お、おはようございます」
智絵里は二人の傍まで近付くと、軽く会釈をしてそう言った。
「おはよう、智絵里」
「智絵里ちゃん、おはようございます」
智絵里の事を憎たらしいとまで言っていたまゆも、そういった感情は流石にPの前では出さず、ここでは普通の対応をしている。
(いきなり塩対応とかしなくて良かったわ……)
ちひろは一先ずは出会い頭に問題が起きなかった事を安堵した。だが、まだまだ安心は出来ないが、ちひろにはどうする事もできないので、この流れに身を任せるしか無かった。
「あれ……? プロデューサーさんの机の上にお花が……」
智絵里もそれに気付いたのか、机の上に目を向ける。
「あぁ、これな。まゆが持ってきてくれたんだ」
「ブーゲンビリアってお花なんですよぉ」
智絵里に笑顔を向けるまゆだが、内心は勝ち誇っていた。
(あんな汚らわしい贈り物なんかよりも、まゆの方がずっと素敵なんですよぉ……)
自分の体の一部を入れて贈ってきた智絵里よりも、何てことは無い普通のプレゼントでPを喜ばせた事に、まゆは若干の優位性を感じているのだった。
「ブーゲンビリア……綺麗な花ですね」
智絵里はそんなまゆの思いには気付くはずも無く、ただ目の前にある花を眺めていた。
「まるで……まゆちゃんみたい」
だが、智絵里のその一言を聞いて、まゆはある事に気付く。智絵里は何を思ってその発言をしたのか……恐らくは、ブーゲンビリアの外見だけを見て判断した訳では無いだろう。
(智絵里ちゃん……もしかしなくても、知ってますね……ブーゲンビリアの花言葉を……)
確たる証拠は無いが、まゆはそう確信した。だが、そうであったとしても、まゆの優位性に変わりは無かった。
(まゆの素敵なプレゼントを上回る物なんて無いんですから……)
口に出す事は無く内心でそう思い、まゆはほくそ笑んだ。
「そういえば……私も、プロデューサーさんの為にお花を持ってきたんです」
そう言って智絵里は自分の手荷物を漁り出す。だが、それを見てもまゆは動じなかった。
(智絵里ちゃんが持ってくるお花なんて……クローバーとかそんな物ですよねぇ……)
まゆはそう思いながら、智絵里の動向を黙って見守る。しかし、智絵里の取り出した物はクローバーでは無かった。
(あれは……)
智絵里の取り出したのは白い花弁に紫の斑点の付いた花だった。
「見た事の無い花だな……何て花なんだ?」
花に関して詳しくは無いPは当然その花の事を知らない。だからこそ、それを知る為に智絵里に聞いた。
「こ、これは……ホトトギスのお花です」
「ホトトギスって……あの『鳴かぬなら~』っていうので有名なやつだったか?」
「そ、それは鳥さんの方ですね。でも、その胸の模様に似ているからこういう名前になったそうですよ」
智絵里の豆知識に耳を傾けるP。その様子を見守るまゆは何だか不穏な空気を感じていた。
「このホトトギスって……何だか、私に良く似ていると思うんです」
「そうなのか? 智絵里といったらクローバーだとばかり思ってたけど……」
智絵里=クローバーというイメージはもう既に固定観念として定着している。だからこそ、それ以外のイメージは無いとPは思っていた。それはまゆにしても、ちひろにしてもそうだった。
「ホトトギスの花言葉には……『恥ずかしがり屋さん』っていうのがあって……そこが……私らしいかなって思って……」
「あぁ、なるほど。そういう事なのか」
(それなら……智絵里ちゃんらしいか……)
Pもちひろも、その智絵里の説明を聞いてなるほどと納得した。しかし、まゆだけは納得していなかった。
(ホトトギスの花言葉……それだけじゃ無いですよねぇ……)
まゆは知っていた……ホトトギスに込められた違う花言葉の事を。それ故に、納得はしなかった。
「ねぇ……まゆちゃん……」
まゆが考え事をしていると、智絵里が声を掛けてきた。
「智絵里ちゃん、どうしましたかぁ?」
「私の持ってきたこれも……一緒に、飾ってもいいかな……?」
智絵里の提案にまゆは少しだけ考えた後……
「えぇ。もちろん、いいですよぉ」
微笑みながら、そう言った。しかし、本心としては腹が煮え繰り返る様な思いだった。
「ありがとう、まゆちゃん」
智絵里は直ぐ様持ってきたホトトギスをブーゲンビリアと同じ花瓶に飾りつける。
その光景を見て、まゆは思わず舌打ちが出そうになるが、Pの前という事もあってどうにか堪えた。
「それじゃあ、二人共。そろそろ時間だし、仕事に出かけようか」
「は、はい、プロデューサーさん」
そう言ってPと智絵里は事務所を出ようと動き出す。だが、まゆだけはその場から動かない。
「ん? どうした、まゆ。行かないのか?」
それを不審に思ったPがまゆに声を掛ける。
「すみません、プロデューサーさん。まゆ……少しちひろさんに用があるので……先に行ってて下さい」
「……分かった。それじゃあ、俺達は先に行ってるから、遅くならないようにな」
「はい、分かりました」
そしてPと智絵里の二人は事務所から出て行く。事務所にはまゆとちひろの二人だけとなった。
「……完全にしてやられました」
二人だけになった事を確認すると、まゆはちひろに向けてそう言った。
「智絵里ちゃんの事……少し甘く見てました。案外、彼女……策略家なんですね……」
「……? 私には何だか良く分からないけど……」
ちひろにはただ花を渡しただけとしてしか見えていなかったので、そうは思わなかった。
「今回はまゆの負けですねぇ……悔しいですけど……」
悔しさのあまり、まゆはギュッと拳を握り締める。
「ちひろさん……手伝って貰ったのに、すみません。次は勝ちますので……また今度、お願いします」
そう言ってまゆも事務所を出ようと、出口に向かって歩いていく。だが、途中でその歩みを止めて、振り返ってちひろを見る。
「そうそう。何でまゆが負けたか分からないのなら……ホトトギスの花言葉を調べると分かりますよぉ」
「えっ……?」
「それじゃあ……まゆも、仕事に行ってきますね」
そしてまゆも事務所を出て行き、残るはちひろ一人となった。
「ホトトギスの花言葉……? 一体、何かしら……」
ちひろは言われた通りにそれを調べてみる。
「へぇ……色々とあるのね」
智絵里が言ったので全てかと思ったちひろは、それ以外にもある事に興味を示し、次々と探していく。
そして……その中で一際目に付くものがあった。
「……確かに……これは、ね……」
それを見てちひろは何故、まゆが負けだと言ったのかが納得した。
ホトトギスに込められたもう一つの花言葉……それは……
―――私は永遠にあなたのもの―――
「まゆちゃんもそうだけど……智絵理ちゃんもどこからこういう情報を掴んでくるのかしら……」
修羅場とはならなかったものの、ますます混迷が深まる状況に辟易するちひろだった。
「もっと平和的にいって欲しいものね……」
そう言って頭を抱えるちひろ。彼女に安らぎが訪れる時はあるのだろうか。
とりあえず、今回はここまで
本当に進行が遅くて申し訳ないです
続きはまた、帰ってから……
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