P「響の八重歯が折れた……だと?」 (31)
美希「そう……なの」
P「響のあの芸術のような美しさと鋭さを兼ね備えた八重歯が……」
貴音「折れて……しまったの……です……」
P「………」
美希「………」
貴音「………」
P「あふぅ」バタン!!
美希「プロデューサー!?」
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P「う……うぅ……」プルプルプル
美希「ダメなの……あまりのショックで、ひきつけを起こしているの!」
貴音「なんと痛ましい……しかし気持ちは痛いほどわかります……」
P「…ひ、響ぃぃ~……」プルプルプル
美希「四肢を痙攣させて白目を剥いた状態でも響の名前を呼んでるの……」
貴音「なんと気持ち悪……いえ、気持ちは痛いほどわかります……」
P「もうだめだぁ……おしまいだぁ……」ガクガクガク
美希「ベジータが出てきたの」
貴音「意外と余裕そうですね」
P「ふぅ、少々取り乱してしまった」
美希「正気に戻ってよかったの」
貴音「はい」
P「二人とも……みっともないところを、見せてしまったな」ハハハ
美希「トラウマ級の汚物を見せられたの」
貴音「はい……」
P「まあ、それは置いといて……響の八重歯が折れたって……本当なのか?」
美希「本当だよ、ポッキリ折れちゃったの」
P「そうなのか?貴音」
貴音「はい、本当です。先程、響を見たときに確認しました」
P「そうか……本当なのか……」
美希「なんで貴音に聞き直したのかな?」
P「マズいことに……なったな」
貴音「はい、不味いことに……なりました」
P「よりによって八重歯か……」
美希「よりによって八重歯なの……」
P「響の八重歯が折れたということは、つまり」
P「響の魅力の半分が失われたということか」
貴音「いえ、響の魅力の7割が失われました」
美希「全部無くなったの、八重歯のない響なんて響じゃないの!」
響「3人とも自分に謝れぇ!!」
響「黙って聞いてれば好き勝手言って!いい加減にしろ!」
美希「あ、響の残りカスなの」
響「やめろ!人に向かって残りカスとか言うな!!」
美希「え~、でも八重歯のない響って、響じゃないって思うな~
だって八重歯が無いんだよ?それを響って呼ぶのは八重歯と響に申し訳ないことだって思うの」
響「なんだその超理論は!?人をなんだと思っているんだ!?」
貴音「言いすぎですよ、美希」
響「貴音!そうだ言ってやれ!」
貴音「それは響(7割引)に失礼というものです」
響「貴音!ちょっと黙れ!」
貴音「おや?響(7割引)どうかしましたか?」キョトン
響「貴音がどうかしてるんだけどね!名前に値引きシールを付けられるとは思わなかったぞ!?」
貴音「なんと!面妖な……」
響「面妖!本当に面妖だぞ!」
P「響……」
響「あ、プロデューサーも言い過ぎ――」
P「響ぃぃぃぃぃぃぃ!!」ブワッ
響「――うぎゃああ!き、急に泣き出して……どうしたんだ!?」
P「八重歯がぁ!!八重歯がなああああい!無くなっているぅ!!!」
響「え?無いって……歯の先端部分が、少し欠けただけだぞ?」
P「先端の鋭さが無くなった八重歯なんて、八重歯じゃない!!」
響「ええぇ!?」
美希「そうなの!そんなの八重歯じゃないの!ただの歯なの!!」
響「歯ならいいんじゃないのか?」
美希「そういうことを言ってるんじゃないの!残りカスのバカ!もう知らないの!!」
響「ええぇ……」
P「うおぉぉぉぉぉ!!」ブワッ
美希「なのぉぉぉぉぉ!!」ブワッ
響「ふ、2人とも泣きすぎじゃないか?」
貴音「響(8割引)……皆、八重歯が失われて傷ついているのです……少し黙ってもらえますか?」
響「いま、一番傷ついているのは 間違いなく自分だけどな!」
P「うぅ……」グス
美希「なのぉ……」グス
響「ようやく落ち着いてくれた……」
P「なあ美希知ってるか?あの八重歯を育てたのは……俺なんだぜ」ヘヘ
響「いや、なんかよくわからないことを言い出したぞ?」
美希「よく知ってるの。プロデューサー……ずっと付きっきりでレッスンしてたよね」
響「こっちも変なこと言い出したぞ?」
P「なんだ、知っていたのか……」フフ
美希「もちろんなの……響が事務所で昼寝をした時、よくヤスリで八重歯を削って整えていたよね」フフ
響「おいぃぃぃ!!なんかとんでもないことを言い出したぞ!?」
P「響に気付かれないように、あの形に持っていくのに半年もかかったよ……」ヘヘ
美希「響のキラキラだった八重歯が、プロデューサーのおかげで ギザギザになったの!」
響「なんか歯に違和感があると思ったらプロデューサーのせいだったのか!!」
貴音「あの八重歯の鋭さと美しさは、プロデューサーの影の努力によって支えられていたのですね……」ホロリ
P「あとは……『唇を閉じた状態で八重歯だけ出す』レッスンは苦労したなぁ」ハハハ
美希「アレを見たときは、プロデューサーには一生敵わないと思ったの」フフフ
貴音「真、素晴らしき れっすんでした」フフ
響「あれ地味に難しかったぞ、下唇が歯に当たって痛かったし……なんであんなレッスンをしたんだろ?」
P「はは、でもそんな苦労も響の八重歯の為なら……八重歯が……八重……八重歯ぁぁぁぁぁ!!!」ウワァァ!
響「また始まった!」
美希「なのぉぉぉぉぉぉ!!」ウワァァ!
響「そっちも始まった!」
貴音「最早、今生に未練はありません……」ナムアミダブツ
響「こっちは終わりそうだぞ!!」
P「……なぜだ……なぜ八重歯を殺したんだ!答えろ響!!」
響「八重歯を殺すって、スゴイ日本語が出てきたぞ!?」
美希「教えて!なぜ八重歯は死ななきゃならなかったの!?」
響「え~っと……八重歯が欠けた理由を話せばいいんだよね?
日本語がぶっ飛びすぎて、よくわからなくなってきたんだけど?」
貴音「お願いです、冥土の土産に教えてください」
響「冥土の土産にされるのなら、言いたくはないな……」
P「早く!!」
響「わ、わかったさ!言うから、そんな血走った目で見ないでほしいぞ……」
美希「………」
響「え~っとね、事務所にインスタントの袋麺があって、さっきそれでラーメンを作ろうとしたんだ」
貴音「………」
響「その袋麺の袋が中々破けなくてさ、ハサミもその場になかったから」
P「………」
響「仕方なく歯で袋を噛み切ろうと強く噛んだら………」
美希「………」
貴音「………」
P「………」
響「………歯が割れちゃったんだ」
3人「「「馬鹿ーーーーーー!!」」」
美希「予想以上にアホらしい理由だったの!!」
貴音「響(9割引)、貴女には失望しました!!」
響「う、うぅ……」
P「というか、噛み切るなら普通は前歯を使うだろ!!なぜ八重歯でやった!?」
響「いや……八重歯が一番鋭くて噛み切りやすそうだったから……」
美希「なんてこったなの!」
貴音「プロデューサーの影の努力が、このような結果をもたらすとは……まさに悲劇!!」
P「あふぅ」バタン!!
響「ぷ、プロデューサーが倒れたぞ!?」
美希「でも、アイドルが歯を割るなんて、アイドルとしての自覚が足りないって思うな~」
響「え?倒れたプロデューサーを無視して普通にダメ出しするのか?」
貴音「そうですね、『芸能人は歯が命』と昔から申しますし、軽率な行動であったのは確かです」
響「うぅ……た、確かに軽率だったと思うけど……」
美希「なんなの?そこまでラーメンが食べたかったの?」
響「いや、もうお昼だったからさ……3人共お腹空いたかな~?って思って」
貴音「え?」
響「それで皆の分のラーメンを作ろうとしたら……」
美希「………」
貴音「………」
響「割れて……欠けちゃったんだ……」シュン
美希「………」
貴音「………」
美希「響……なんて良い娘なの」ヨシヨシ
響「う、うがー!なんで自分の頭を撫でるの!?」
貴音「ふふふ、そんなことだろうと思っていました。私は信じておりましたよ」ヨシヨシ
響「さっき失望したとか言ってたよね?ね?」
美希「大丈夫、他のみんなが響を見捨てても、ミキは見捨てないから」ヨシヨシ
響「え?なに?自分は見捨てられることが決定してるの!?」
貴音「私もです。例え八重歯が無くとも響は響ですから」ヨシヨシ
響「スゴイな~、さっきまで自分に値引きシールを付けてた人と、同一人物とは思えないな~」
<ガチャ
真美「たっだいま→」
亜美「ただい…うおっ兄ちゃん!?なんで床に寝てるのさ?」
P「う……うぅ……うぅ~」プルプルプル
真美「震えているよ……」
亜美「まるで生まれたての子鹿のようだね……」
美希「おかえり亜美真美」ヨシヨシ
貴音「2人ともおかえりなさい」ヨシヨシ
響「お、おかえり~」
真美「そしてひびきんの頭を撫でてる2人!」
亜美「その顔は聖母のようにとても優しかった!」
真美「へぇ~ひびきんの歯欠けちゃったんだ~」
亜美「おお!先っちょ部分が見事になくなっていますなぁ」
美希「2人共、あまり響を責めないであげてほしいの」
貴音「そうです、いま誰よりも傷ついているのは響なのですから……」
響「………」
真美「いや別に責めたりしないけどね」
亜美「それよりもひびきんの『お前らが言うな』的な視線が2人に向いてるのが気になるYO」
美希「響はこれから八重歯の無い人生を、歩むことになるんだね……」ホロリ
貴音「真、険しい道のりですね……」ホロリ
真美「なんで?欠けた歯なんて くっつければいいじゃん」
美希「……え?」
貴音「欠けた歯は戻すことができるのですか!?」
亜美「程度にもよるけどできるよ」
真美「ひびきん、欠けた方の歯はまだある?」
響「一応取っておいたけど……」
亜美「それくらいの かけらなら、歯科用の接着剤でくっつくんじゃないかな」
真美「それ持って早く歯科病院に行ってきなよ」
亜美「あと欠けた歯は湿らせたガーゼで包んでおくといいよ」
響「う、うん」
美希「………」
貴音「………」
P「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」ガバッ
真美「うわ!急に起き上がった!」
P「震えて寝てる場合じゃねぇ!響、病院までスグに行くぞぉ!!」
美希「そうなの!急ぐの響!」
貴音「そうです!事は一刻を争いますよ!!」
響「わ、わかったさ」
P「それじゃあ行ってくる!」
響「行ってきます」
<バタン!
美希「プロデューサー……あとは頼んだの……」
貴音「ご武運を……」
真美「キメているところ悪いけどさ」
亜美「病院に行くとか、誰も思いつかなかったの?」
美希「まったく思いつかなかったの!」
貴音「八重歯が失われたという衝撃で……考えが及びませんでした」
真美「2人とも、どんだけショックを受けてるのさ……」
亜美「いや……兄ちゃんとひびきん本人も含めたら、4人ともだよ真美……」
その後、響の八重歯は無事くっつきましたとさ
おわり
終わりです
ありがとうございました
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