頼光「誓いましょう……マスター、わたくしは貴方を我が子のように愛します。ですから、どうか、あなたも母を裏切らないように。そんなことになったら……わたくし、何をしてしまうか分かりません」
酒呑童子「はあ……そないに見つめるの堪忍やわあ。骨抜いて、酒に溶かして呑み干したくなるわあ」
ジャンヌオルタ「そう、つまりアンタ、炎に焼かれたいのね。いいわ、いいわよ。そのうちそうしてあげるから。まぁ、その時になって後悔するわよ絶対。それでもしないなら、地獄の底まで付き合ってもらうから」
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ぐだお「やはりヤバい」
小次郎「くっ……ふふっふふふふふはははははは!」
ぐだお「小次郎うるさい。っていうか何でいるの? 呼んでないんだけど」
小次郎「冷たいことを言うな主殿。我ら第一の戦いから主殿を支え続けた古き三柱、今更隠し事は無しでござろう。なぁお前達?」
呪腕のハサン「お主と一緒に扱われるのは正直心外であるのだが……」
カエサル「全くである。そこのサムライは話を実に実に面倒にしてくれる故、はかりごとまつりごとの場には姿を見せないでほしいものだ」
小次郎「何かがおかしいでござるな?」
カエサル「貴様のこれまでの行動を考えると当然であろうよ」
ぐだお「で、いつも通りそろそろ女性陣に殺されそうな訳なんだが」
カエサル「貴様は本当にロクでもない女ばかり召喚するな。多くの女を愛した私でさえ持て余すじゃじゃ馬ばかりを。余の仕事が楽になるのは歓迎だが」
ハサン「最早女難の相などと笑っている場合ではありませんな」
小次郎「そもそもそこな主殿があっちへふらふらこっちへふらふらせずにマシュ殿にでも一途な態度を貫けば良い話だろうに」
ぐだお「人を最低の屑野郎扱いするのは止めてくれないか!」
ハサン「魔術師殿の人懐っこさや辛抱強さ、器の広さなど全てひっくるめた人徳故に為せることでありましょうぞ」
カエサル「……歴史に名を刻んだ英雄など、みな等しく面倒くさくて歪さを抱えているもの。それに根気強く接していく気力はまぁ見事という他ない。加えて、歴史に名を刻んだ女など英雄よりも悪女の方が遥かに多いにも関わらずな。愚鈍なまでに真っ直ぐ突き進む我らがマスターの光に導かれる闇も多かろう」
ぐだお「お、おお……急にどうした、なんだ、褒めてるんだよね?」
カエサル「褒めてもけなしてもおらん。幸か不幸か、貴様は人を引き寄せる性質だと言っているのだ。私のような良識あるサーヴァントにとって貴様は危なっかしくて、傍にいてやらぬと見てられんのだ。そして、貴様の恐れを知らぬ、敗北を恐れぬ無謀で愚直な行動は屈折したサーヴァントの捻じ曲がった性根すら折ってしまう。今更これを直せと言っても無理であろう。というよりはそれだけが貴様の取り柄故な」
ぐだお「……褒められてるんだよな?」
ハサン「恐らくは」
カエサル「ええい、何故分からんのだ!? 貴様人柄だけは優れているのだから改める必要はないと言っているのだ!」
ぐだお「えっ、あっ、ありがとうございます」
ハサン「しかし、その人の良さ故に女性陣達の熱烈アプローチに困っている、ということですな」
小次郎「実にいつも通りであるよ」
ぐだお「アプローチに困っていると言うよりは……いや、まぁ、そういうことか。中には過激過ぎて命の危険を感じてもいるし……で、まぁこれをどうしたものかと相談しようとハサンとカエサルに来てもらったワケなんだけど」
ぐだお「だから呼んでないって言ってるだろ。お前の所為で過去何回酷い目に遭ったと思ってるんだ」
小次郎「はて、何の事やら。まぁ、ほれ。水でも飲んで落ち着かれよ」
ぐだお「ああ、ありがとう……」ゴクゴク
ぐだお「酒じゃねーか佐々木ィ!」
カエサル「またか貴様。同じ手口で何回目だ?」
小次郎「何度も同じ手に引っかかるマスターが悪いだろう」
ハサン「危機管理能力っ……魔術師殿、危機管理能力っ……! 本当に危うい時は一流なのにっ……!」
ぐだお「うえぇ、気分悪い……吐きそう……」
小次郎「まぁここは主殿の部屋である故、嘔吐しても構いわせぬが」
ハサン「主殿、私が佐々木を押さえておきます故、吐くならばこやつにぶちまけてやるがよろしい」
小次郎「なっこのされこうべ! 何をするのだ!?」
ぐだお「ひ……日頃の恨み……ウッ」
小次郎「ま、待てよ主殿。部屋を汚すのはよくない、厠なり洗面所なり行った方が良くはないか?」
カエサル「貴様30秒前の発言を忘れたのか?」
小次郎「それとこれとは話が別だろう!?」
ぐだお「うえぇ……駄目だ、佐々木と同じ空間にいるとデカい声を出した拍子に胃の中身も出てきそう。ちょっと外に出て酔いを醒ましてくる」
ハサン「では主殿、お供を……行ってしまわれた。速いな」
カエサル「まぁ、そこまでするのは過保護であろうよ。アイツもそこまで馬鹿ではない、その内帰ってくる」
小次郎「……」
ハサン「……どうされた、小次郎殿。冷やかしに行くと言うのならば流石に止めさせてもらうが」
小次郎「いや……酒瓶が、どうにも見当たらぬ」
ハサン「えっ」
ニトクリス「……マスター、酷く具合が悪そうですが。強くあるのも主の務め。体調が優れないのならば今すぐ床に就いて体を休めなさい」
ニトクリス「……は? 部屋には馬鹿がいるから戻りたくない?」
ニトクリス「言っている意味がよく分かりませんが……ならば、私の部屋へ。部屋と言っても空き部屋を勝手に使っているだけですが」
ニトクリス「……私の肩に掴まることを許しましょう。全く、ファラオの身体を止まり木扱いなどと無礼にもほどがある行為です。分かっているのですか?」
ニトクリス「……ええ、ええ。感謝の言葉は素直に受け取りましょう。私とて、自らが素直でないことは分かっていますし、反省しているつもりです」
ニトクリス「さ、マスター。私の身体に掴まりなさい。ええ、ええ、心配ありません。あの部屋には誰も来ませんので、私と貴方の二人きりです。落ち着くまでは、暗黒に囚われることの無い様に私が傍で見守っていましょう」
チュンチュン
ぐだお「……はっ!?」ガバァッ
ぐだお「ううっ……頭が痛い……」
ぐだお「ここは……どこだ。カルデアはカルデアみたいだけど」
ニトクリス「……目覚めましたか、マスター」
ぐだお「ニトクリス?」
ニトクリス「暗黒に囚われる事の無いように、とは言いましたが……その必要はなかったようですね」
ニトクリス「昨夜の貴方は……その、とても……逞しかったです。あの様子ならば……私の支えは必要ないかもしれませんが。それでも私は貴方の傍にいるので……必要とあれば、存分に頼りなさい」
ぐだお「……?」
ニトクリス「かっ顔をあまり見るものではありません! どうしても昨晩の事を思い出すので、恥ずかしいこと極まりない……!」
ぐだお(あっ)
ぐだお「やってしまった」
ハサン「えぇ……(困惑)」
カエサル「貴様、なんともまぁ……」
小次郎「いっそ開き直って百人切りでも目指してみたらどうか。流石の某もそこまでやったかは記憶に無い。数えていた訳でもござらんが」
ぐだお「黙れ佐々木」
ハサン「主殿……こう言うのも今更ではあるが、飲酒は控えた方がいいのでは……」
ぐだお「好きで飲んだ記憶はあんまりないんだ……本当なんだ……」
カエサル「馬鹿ではない、と思ったはずなのだがなぁ……この私の慧眼も曇ったのだろうか」
ぐだお「とにかく、もう酒は飲まない。同じ過ちは繰り返さない。これ以上はまたバトルロワイヤルが起きる」
ハサン「思い出したくありませんな」
ぐだお「本当にな。うん、止めようこの話は……ウプッ」
小次郎「二日酔いか?」
ぐだお「たぶん……気分が悪い。ちょっと医療室に行ってくるよ……」
ナイチンゲール「司令官、患部はどこですか? 切断の準備ならば既に終わっています」
ぐだお「なんでさ」
ぐだお(俺は彼女に対してまだ何も言っていない。医療室に入ると何故かナイチンゲールが目の前に立っていて、開口一番切断する気で話を進められている)
ナイチンゲール「切断ではないと。ではどこの負傷ですか。患部、症状を速やかに述べなさい。治療とは時間の勝負です、さぁ早く言いなさい!」チャキッ
ぐだお(拳銃を突きつけられるのも割と慣れてしまった)
ぐだお「外傷じゃあない。気分が悪いんだ。軽い頭痛と、胃にも違和感が」
ナイチンゲール「なるほど……情報が不足してはいますが、まずは消毒しましょう」
ぐだお「はい。手を洗えばいい? 消毒液風呂は出来れば勘弁してもらいたいんだけど」
ナイチンゲール「それでは胃は消毒できないわ」
ぐだお「ん?」
ナイチンゲール「純度95%のエタノールがあります。飲みなさい」
ぐだお「えっ」
ナイチンゲール「さぁ早く。時は一刻を争うとは既に言ったはず。それとも、ボトルを持てない程体調が良くないと言うのなら、私が飲ませます。ジッとしていて」
ぐだお「ちょ、ちょっと待って」
ぐだお「ンーッ! ンーッ!」
ぐだお「……ハッ!?」
ぐだお「頭が痛いと言うレベルではない……ここは……どこのベッドだ?」
ナイチンゲール「目が覚めましたね。気分はどうですか、司令官」
ぐだお「あぁ……良くなったよ。ありがとう」
ぐだお(寧ろ頭痛は酷くなっているんだけど黙っておこう)
ナイチンゲール「それは良かった。私も全力を尽くした甲斐があったというもの」
ぐだお「……俺が意識飛ばしてる間もずっと見てくれていたのか?」
ナイチンゲール「当然。患者から目を離すことは出来ません。ここに患者は貴方一人だったので、一時も視線を外すことはありませんでした」
ぐだお「……そっか。その、ありがとう。やっぱり君はクリミアの――」
パァン!
ナイチンゲール「その名で呼ぶなと以前にも言ったはずですが」
ぐだお「わ、分かってる。分かってるよフローレンス。俺もいきなりの発砲は止めろって何回も言ってるハズなんだけどな……」
ナイチンゲール「何か?」
ぐだお「何も。具合は良くなったから、行くよ、ありがとう」
ナイチンゲール「……」
ナイチンゲール「知識としては知っていたつもりだけれど、あんなに大きくなるものなのね」
茨木童子「汝……酷く臭うぞ。酒……の、匂いであるようだが。初めてだぞ、酒の匂いを酷いと感じたのは」
ぐだお「茨木……あぁ、うん、まぁ、酷いアルコールを飲まされたのは間違いない」
茨木「んん? まどろっこしい言い方をするでない。要は不味い酒を飲まされたのだろう? んん……酷い匂いだ。吾も臭いだけで悪酔いしそうだ」
ぐだお「ごめん……やっぱ消毒液の臭いだよな。ちょっと酔いを醒ましてくるよ……」
茨木「……まぁ待て。酒と言えば我ら鬼。斯様話を聞かされては黙っておけぬ。汝に本物の酒と言うものを飲ませてやろう」
ぐだお「えっ?」
茨木「何、気にするでない。酒は本来美味いものだ。底の底、大外れを引かされたからといって酒を嫌われてはかなわん。酒好きとしてな」
ぐだお「……茨城、そんなに気風のいい性格だったっけ?」
茨木「なああああああっ!? 貴様、吾を愚弄する気かっ!?」
ぐだお「あっごめん、そんなつもりは全く無かったんだけど。何かいつもと違うなって」
茨木「うぐぐ……良かろう、まどろっこしいのは好かんと言ったのも吾よ。吾は……なんだ、汝と酒が飲みたいの、だ! これでいいか!?」
茨木「汝は吾を恐れん。吾は鬼だぞ? 幾度と京を襲った大江の山の鬼の首魁よ。人間になしてきた仇の数は計り知れぬ。いくら時が経ったとはいえ、我らは変わらず害悪の象徴よ。その吾を前にしても汝は退かぬ。媚びぬ。その度胸が気に入ったのだ。大江山に連れ帰りたいぐらいにはな」
ぐだお「誘拐はちょっと」
茨木「くはは。吾は鬼ぞ。欲しいものは必ず奪う。覚悟しておけ」
ぐだお「……分かったよ、どうやって連れて帰るのか知らないけど、気持ちは嬉しいし」
茨木「そうであろうそうであろう? くははっ、やはり真っ直ぐな言葉が一番心地良い。さぁ、ついてこい。酒呑と呑むつもりだったとっておきを飲ませてやる」
ぐだお「いいのか?」
茨木「……まぁ、酒呑の分も残しておけば平気であろう」
茨木「汝、面の割には飲めるではないか! ほうら、どんどん飲め!」
茨木「良いだろう、特別に吾が直接汝に飲ませてやろう! 瓢箪から直接だがな!
」
茨木「きゃっはははは! いいぞいいぞ、やはり汝は愉快な人間だ! 必ず大江の山に連れて帰るから覚悟しておけよ!」
茨木「ん? どうした。吾に触れたいのかぁ? 物好きな人間よ、そんなに角が気になるか」
茨木「あっ汝どこをめくろうとしている!? やめぬか人間!」
茨木「ちょ、ちょちょちょちょっと待て、落ち着け、何だそれは!?」
茨木「あ、いや、早まるなよ、やぶさかでは無い、が……汝に下手な真似をすると酒呑に殺されそうで……」
茨木「な、なななな何を言うか!? はぁ!? 汝、さては相当なうつけであるな!?」
茨木「……ええい、ままよ! 舐められたままで大江の鬼が引き下がるものか! さぁ来い、汝の全て、吾の全身全霊で受け止めてやろう!」
チュンチュン
ぐだお「……zzz」
茨木「……くはは。まだ寝ておる。呑気なものよ」
茨木「おい人間、聞いておるか。いややはり聞くな」
茨木「吾は世界がどうなろうとたいして興味はない。最期のその刹那まで面白おかしく過ごせればそれでいい」
茨木「が……汝は人間であるが、気に入った。少しばかり本気を出してやろう」
茨木「……吾は必ず汝を奪うぞ。覚えておけ、人間」
酒呑童子「茨木ぃ?」
茨木「げえっ酒呑!? 」
酒呑「なんやのその反応。傷つくわぁ」
茨木「あっいや、そういうつもりじゃあ……そ、それより、吾に何か用か!?」
酒呑「別にぃ? 暇やったさかい、旦那はんで遊ぼかなと思てたんやけど、お先に茨城と遊んでおいたならしょうがへんなぁ」
茨木「あー……これはだな、そのー……」
酒呑「茨木。旦那はん、もろてくけどよろしおすなぁ?」
茨木「お、おう……好きにすればいい、が」
酒呑「そない顔せんでも分かっとるよ、骨抜いて返したりはせんから安心しなはれ」
酒呑「ふふ。ほんま旦那はんは大した男どすなぁ。茨木を本気にさせるなんて」
茨木「なっ!? 何を言うか酒呑! 吾は別に……!」
酒呑「言いなはるな言いなはるな。言葉にすると逃げて行ってしまうさかいな。欲しいもんは自分の力で手に入れな」
茨木「自分の……」
酒呑「ほな、旦那はん借りていくさかい。ほなな」
茨木「……おう」
ぐだお「ここどこだよぉ」
酒呑「目ぇ覚ましたんやね、旦那はん」
ぐだお「……酒呑? ここどこ? 何か明らかに外だし月が紅いし桜が吹雪いてるんだけど……茨木は?」
酒呑「もう、野暮なこと言わへんの。茨木と遊んだんなら次はうちとも遊んでおくんなまし」
ぐだお「酒の相手をしろってこと? それは別にいいんだけど……」
酒呑「えらい頼もしいこと言いはるようになって、うちも嬉しいわぁ。さ、たーんと飲んでや」
ぐだお「えっ俺も飲むの?」
酒呑「そらそやろ。うち一人で飲むなんて寂しいわぁ。そないいけずなこと、旦那はんは言わへんよねぇ?」
ぐだお「……今更だし。飲まなきゃここから返してくれないだろ?」
酒呑「話の分かる旦那はんで嬉しいわぁ。ささ、杯を持ちはって。うちの酌で飲めるなんて幸せな人やねぇ」
ぐだお「そうかもね……はい、ありがとう。それじゃあ……いただきます」グイッ
酒呑「おぉ~。良い呑みっぷりどすなぁ。うちの呑み干せる様になってなぁとは言うたけど、本当に飲みはってくれるなんて嬉しいわぁ」
酒呑「……旦那はん? 旦那はんてば。聞いてはりますの?」
酒呑「うちの酒はまだ強かったやろか?」
酒呑「……どないしはったの。そないに見つめるの堪忍やわあ。骨抜いて、酒に
溶かして呑み干したくなるわあ」
酒呑「んっ……もう。普段いけずな癖にこないな時ばぁっかり粋なんやから」
酒呑「ま、うちはその方がええけどなぁ。ほうら、旦那はん、おいでやす」
チュンチュン
酒呑「……可愛い顔して寝てはるわ。あれだけ好き勝手しはった癖になぁ」
酒呑「……ん。牛臭くなってきたなぁ。一時でも旦那はんを渡すのは癪やけど、下手なことしたら巻き込んでまうしなぁ……はぁ。ここは一旦退こか。マスターの為に身を引けるのがほんまにええおなごやさかい」
ぐだお「頭痛にも慣れてきたもんだ」
頼光「あら。長い居眠りでしたね。全くもう、お寝坊さんなんですから」
ぐだお「……頼光? どうしてここに?」
頼光「マスターが蟲に連れ去られたと聞いたので、いてもいられなくなって……追いかけてやって参りました」
ぐだお「あっ……そうなんだ……」
頼光「ええ。蟲は逃がしてしまいましたが……マスターの保護が優先だと思ったので。こうしてお傍で、目を覚ますのを待っておりました。お体の具合はどうですか?」
ぐだお「うん、まぁ大丈夫」
ぐだお(体調が悪いなんて言ったら頼光は絶対可愛がりモードに入る。そうなって一晩中撫で回されてすんだらいい方だ)
頼光「ところで、マスター……お酒の匂いに混じって、うっすらと、でもしっかり蟲の臭いがします」
ぐだお(終わったーーーーー! 空振り三振ゲームセット! ロスタイム無し!)
頼光「その臭い……私の匂いでかき消して差し上げます。マスター……いいえ、あなた」
ぐだお「えっ、酒は?」
頼光「お酒……ですか? はい、お飲みになりたいのでしたら、お付き合い致しますが」
ぐだお「あ、いや……別に飲みたい訳でも無いんだけど……流れと言うか、必要な儀式的な……」
頼光「ふふっ、おかしな人。私を求めるのに、流れも勢いも必要ありません。ただその意志さえあれば、私を愛して頂いてよろしいのですよ?」
ぐだお「えっ? いや、その、いつも意識が無かったから突然言われても困るというか……」
頼光「では……私から、あなたを頂いてもよろしいでしょうか?」
ぐだお「えっ」
頼光「大丈夫。母に身をゆだねて……全て任せて、体を楽に……」
ぐだお「えっ、あ、ちょっと待って、まだ覚悟が……あーっ駄目だって頼光! あーっ!」
カエサル「貴様、ついに……」
ぐだお「何も言わないでくれ。頼む」
小次郎「…………」
ぐだお「引くなよッ! 何割かお前の所為だからなっ!」
ハサン「何割か、な辺り魔術師殿の負わされた責任を感じますな……」
ぐだお「やめてくれ」
スカサハ「おい、いるか?」
ぐだお「おわっ!? スカサハか。急に扉を開けるのは止めてくれ、ビックリするから……」
スカサハ「はっ、6つ時代を救っておいて、扉に怯えるか。不思議な奴だな、お前は」
スカサハ「それにしても、この面子は……猥談でもしていたか?」
小次郎「するような面子に見えるか?」
カエサル(あながち間違ってもおらぬが……)
ぐだお「で、スカサハ。水着姿で、何か用か?」
スカサハ「ふむ。あの島で過ごした間、お前は私が与えた鍛錬を全て成し遂げた。その褒美をまだくれてやっておらぬことを思い出してな」
ぐだお「ああ……それはもう別にいいって」
スカサハ「そういう訳にもいかぬ。お主は私の弟子ではない……分かっていたつもりだが、浮かれてつい鍛えようとしてしまった。実際もう少しでクリードの餌になっていた訳だからな。影の国の女王と言えど、今はお主のサーヴァント。失態は挽回しておきたい」
ぐだお「そんなの、別に戦闘で挽回してもらえば……」
スカサハ「それではつまらんだろう。元々戦いしか脳の無い女だからな。戦でお主の道を切り開くのは普段通りの私だ」
ぐだお「でも……」
スカサハ「ええい、まどろっこしい奴め。大人しくついてこいと言っている」
ぐだお「うわっ!? ちょっと待って! 小脇に抱えないでください! 気軽に運ばないでください!」
スカサハ「では、我らが主を暫し借りていくぞ」
ぐだお「セカンドバッグ感覚で軽々しないでください!」
スカサハ「さて、と」ガチャリ
ぐだお「何で鍵をかける必要があるんですか?」
スカサハ「邪魔が入ってはつまらんからな」
ぐだお「はぁ」
スカサハ「さて、褒美は何が欲しい?」
ぐだお「だから、さっきから言ってるじゃないか。いつも通り戦ってくれればそれでいいって」
スカサハ「本当に欲の無い男だな、お主。この格好でそこらを出歩けば男どもの視線が突き刺さるのだがな」
ぐだお「それはまぁ、そうでしょうね」
スカサハ「ふむ。その反応と言い、視線を反らすところと言い、私に魅力が無い訳ではなさそうだ」
ぐだお「うん、それだけは無い。スカサハは目が覚めるぐらいの美人だし」
スカサハ「ほぉう。凡愚の言葉ならば興味はないが、お主からの言葉ならば素直に受け取っておこう。ふふっ」
ぐだお(笑顔が眩しい。やはり目が覚める程の美人だ)
スカサハ「しかし、何もいらぬと言われると困ったものだな……甲斐性無しめ」
ぐだお(褒めたのに何で怒られるんだろう)
スカサハ「では、強制的に褒美をくれてやることにしよう」
ぐだお「……何でにじり寄ってくるんです?」
スカサハ「おいおい、水着の女が密室を作ってやったのだぞ? 分かるだろう」
ぐだお(分かるけども)
スカサハ「以前、聞いたな。お前が求めるものは私の槍か、それとも、とな。あの時はその気も無かったが……今なら言える。私は、貴様に求められれば叶えてやれる」
ぐだお「……」
スカサハ「いや、この物言いは卑怯だな。聞け、マスター。私はお前が欲しい」
ぐだお(限界までにじり寄って来たスカサハが枝垂れかかってきて、伸ばされた細い指が俺の顎に触れる)
ぐだお「……」
~~
スカサハ「……ん。朝か。ふむ……ふぅん。悪く、無かった。いや……いや、何でもない。どれ、顔を見せろ。もう少しお主の顔が見たい」
ジャンヌオルタ「ふふふ……こんな朝っぱらからワインなんてあの聖女様には出来ないでしょう」
ぐだお「何やってるの?」
オルタ「ひっ誰よ!? って、なんだアンタか……何よ、私に用でもある訳?」
ぐだお「そういう訳でも無いけど。何か朝っぱらから一人で楽しそうだなって」
オルタ「う、うるさいわね……いいじゃない別に、朝っぱらから一人で飲酒したって」
ぐだお「悪ぶってるの?」
オルタ「違うわよッ! ただ暇だから聖女様には出来ない事をやろうと思って……」
ぐだお「その暇つぶしはどうかと思うけど……」
オルタ「うっさい!」
ぐだお「っていうか、朝っぱらとか言ってるけどジャンヌ・ダルクに飲酒の習慣があったかどうか自体怪しいと思うんだけど……」
オルタ「……そんなことはもうどうでもいいことです。あの女に出来ないことをまた一つ思いつきました」
ぐだお「そうですか。では邪魔しない様に帰りますね」
オルタ「待ちなさい」
ぐだお「……嫌な予感がするから帰りたいんです」
オルタ「マスターに朝っぱらから飲酒させる……! これはあの聖女様には出来ないでしょう……! あぁ、背徳感で背筋がゾクゾクするわ」
ぐだお「やっぱり」
オルタ「さぁ飲みなさい! 文句は言わない! さっさと飲む!」
ぐだお「あっ、ちょっと待って無理矢理は良くないと思ゴボゴボゴボ」
オルタ「喋りながら飲むのね……」
ぐだお「……」
オルタ「……何よ、どうしたってのよ。もしかして酔ってるワケ?」
ぐだお「……」
オルタ「だとしたら私としてはとっても気分が良いのですけれど。何か言ったらどうなの?」
ぐだお「……」
オルタ「ちょっと、聞いてる?」
オルタ「って、ちょっと待ちなさい、何よそれ!?」
オルタ「こ、来ないでよ! 何する気!? 確かに聖処女様にはできないでしょうけど、それはちょっと、待ちなさいってば! ちょっと! 焼き尽くすわよ!?」
オルタ「ま、待って、ダメ……」
ぐだお「……また記憶が無い」
オルタ「アンタッ、このド畜生ッ!」
ぐだお「いたっ!? 何で殴るんだよ!?」
オルタ「あんなことッ! されてッ! この程度で済んでるんだから感謝しなさいよッ!」
ぐだお「あっ……(察し)」
オルタ「冗談じゃないわよっ、ったく……アンタ」
ぐだお「はい」
オルタ「せっ……責任……とりなさいよね……」
ぐだお(マジか)
オルタ「いつか私が燃え尽きるその時まで、共にあり続けなさいっ……私の最期の瞬間、アンタも一緒に燃えてもらうわ。地獄の底まで付き合ってもらうから、覚悟なさい」
ぐだお「恥ずかしながら生きて戻りました」
小次郎「いや、これから死ぬところであろう」
ハサン「よくもまぁ、ここまで性質の悪い女性ばかり呼び寄せるものですな、魔術師殿は」
カエサル「いや、もう性質が悪いとか関係ないであろう……寧ろたちが悪いのは我らがマスターよ」
ぐだお「最近ようやく自覚が芽生えました。以後禁酒します」
カエサル「手遅れだろうがな」
小次郎「それな」
ぐだお「やっぱりテメェだけは道連れにしてやるぞ佐々木ィィィィィィィィ!」
小次郎「はっはははは。追いかけっこでもしてみるか。ほうれ捕まえてみろ、マスター!」
ぐだお「さぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁぁきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
カエサル「……毎度毎度、愉快なことよな」
ハサン「どうせ我らが骨を折ることになる」
茨木「汝! 決めたぞ、吾は絶対絶対絶対絶対に汝を大江山に連れ帰る!」
酒呑「あら茨木。独り占めは良いこととは言えまへんなぁ?」
茨木「げぇっ酒呑!?」
頼光「蟲の臭いと、羽音……マスターに近づく害虫は排除します。それがマスターの為……ねぇ、あなた?」
茨木「げぇっ牛女!?」
酒呑「あんた、そないな可愛げのないこと言いはるさかい、旦那はんに嫌われるんよ?」
頼光「なっ……!? マスター、母の事を嫌ってなどいませんよね? ね!?」
酒呑「頭の中まで乳が詰まっとるんやろか。今のうちに聖杯の力でもつこうて大江山に飛んでみよか?」
オルタ「はあ!? こいつの人生は私の物よ。最期の瞬間は共に燃え尽きるのが定めなんだから」
ハサン「大変なことになっているなぁ」
カエサル「うむ。しかし実際あれらを相手に我らが出来ることなどあるまい。あの女たちが加減を知っていることを祈るだけよ」
ハサン「知っているのとする気があるのは別のことではないだろうか……」
カエサル「……」
ハサン「死ぬ気で、魔術師殿の救出を試みるか……」
カエサル「まぁ、全く動かないのも後の体面に響くか。僅かでも動いた、という事実は肝要なことであるな……」
ハサン「佐々木はどうする?」
カエサル「今回も今回とて発端ではある。見つけ次第斬り捨ててしまおう」
ハサン「承知した。では、参るか……!」
カエサル「うむ。地獄と言うものは今、我らの目の前にある。賽は投げられた!」
終わりです
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エリちゃんブレイブ楽しみですね
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