宗方(アンテナ)「希望は前に進むんだ!」苗木「え?」 (107)

逆蔵「どうしたんだよ宗方。いきなり苗木誠みてえなことを言い出して」

宗方(アンテナ)「このゲームのルールにおいて人を信じるのは極めて難しい――――だからこそ互いに信じ合わなければ黒幕の思う壺だ」

苗木「宗方さん!」

宗方(アンテナ)「案ずるな。俺がいる限りお前達は誰一人として死なせはせん」シュジンコウオーラ

御手洗(あれ? 宗方さん、頭にアンテナなんてついてたっけ? リアル作画崩壊?)

天願(アカン。このままじゃワシの御手洗くんをプロデュース&人類総幸福化計画が。これは、どげんかせんといかんぞい!)

流流歌「信じ合うとかドチャクソ暑苦しいんだけど。未来機関副会長ならもっと現実的な打開策を出してよ――――はい、よいちゃん」オカシヒョイ

十六夜「いや、今はいい」

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逆蔵「タイムリミットになっても誰も死ななけりゃクリアなんだろ。だったら襲撃者を見つけ出して殺せばいい」

苗木「そんな! なにも殺さなくても。例えば縛って部屋に閉じ込めておくとか別の方法が」

逆蔵「もしテメエが襲撃者なら『超高校級の幸運』で抜け出せるだろ。殺すのが一番確実だ」

天願「……ここにいるのは未来機関の中でも選りすぐりのメンバーじゃ。拘束など意味をなさんじゃろうな。そもそも誰が襲撃者なのか分からんことには」

逆蔵「襲撃者の正体なんてわかり切った事じゃねえか」ペッ

苗木「!」

逆蔵「苗木誠。テメエが『絶望の残党』と組んで俺達をこんな下らねえゲームに参加させた黒幕なんだろ」

苗木「違います! ボクは絶望なんかじゃないし、彼等だってこんなゲームを仕組んだりなんかしてません!」

朝日奈「そうだよ! 証拠もないのに決めつけるなんて酷いよ!」

逆蔵「ああ゛?」ギロッ

天願(でかしたボクサー! これで宗方くんのせいで冷え切っていた疑心暗鬼が再燃する!)

天願(ついでに逆蔵くんが暴力を朝日奈くんに暴力を振るえば、ストッパー役の万代くんと朝日奈くんを纏めて葬り去れて一石二鳥じゃ!)

宗方(アンテナ)「待つんだ、逆蔵」

天願(ひょ?)

宗方「苗木は恐らく襲撃者ではない」

逆蔵「本気で言ってんのか? 苗木誠は『絶望の残党』を匿ったんだぞ!」

流流歌「逆蔵に同意すんのは気に入んないけど、どう考えてもそいつが一番怪しいでしょ」

十六夜「一番怪しい男が一番容疑者である可能性が高い。当然の論理だ」

宗方(アンテナ)「それは違うぞ!!」ロンパ

苗木(あ、それボクと日向くんの決め台詞)

宗方(アンテナ)「もし俺が黒幕なら馬鹿正直に怪しまれている苗木を襲撃者にはしない。逆にまったく怪しまれそうにない者を襲撃者にする」

グレート・ゴズ「……そういえばあのコロシアイ学園生活でも、江ノ島は自分に変装した姉を殺すことで正体を隠蔽していましたね」

宗方(アンテナ)「無論、裏の裏をかいたという事も考えられる。苗木が襲撃者である可能性もゼロではない。だがそれは俺達全員に言えることでもある」

宗方(アンテナ)「苗木を襲撃者と決めつけるのは早計だろう」

黄桜「ふーん。元超高校級の生徒会長の名に恥じぬ名推理だね。その口振りだと副会長には襲撃者についての目星がたっているのかな?」

宗方(アンテナ)「隠しても無意味だから言うが、何人か疑わしいと思う人間はいる。だがそれを今言ったところで余計な疑心を招くだけだ。それに先に済ませなければならないことがある」

万代「済ませておくこと?」

宗方(アンテナ)「この中に指定されたNG行動が厳しいものは名乗り出てくれ」

流流歌「NG行動を? 流流歌たちの弱味を握っておこうってわけ?」

宗方(アンテナ)「そうじゃない。迂闊に行動してNG行動を踏んでしまうような真似は避けたいだけだ。……俺が信じられないなら、信用の証として俺のNG行動を公開しよう」ピッ

逆蔵「お、おい宗方!」

宗方(アンテナ)「俺のNG行動は『扉を開ける』だ。元超高級のお前達ならこれだけで俺を無力化する方法は何通りか思いついただろう」

逆蔵「早まったことしてんじゃねえ! この中にいる裏切り者がお前のNG行動を利用してきたらどうするんだ!」

宗方(アンテナ)「なに。皆の信用を得るためなら安い代償だ。それにお前が隣にいてくれるなら、こんなNG行動は問題にならないだろう?」

逆蔵「む、宗方」キュン

万代「白菜の茎は口に苦しだね。僕も皆を信用するよ! 僕のNG行動は『参加者の暴力を目撃する』だから、乱暴なことはやめてね!」

宗方(アンテナ)「全員。万代の近くで一切の暴力行為は厳禁だ。例え襲撃者相手だったとしてもだ」

朝日奈「私も教えるよ! 私のNG行動は『パンチ、キックを受ける』だから、攻撃する時はせめて肘鉄とか頭突きでお願いね!」

苗木「だ、誰も攻撃なんかしないって」

宗方(アンテナ)「先程のものに朝日奈を追加だ。それと万代は念のため目を瞑っていた方がいいだろう」

万代「わ、分かったよ」ギュッ

宗方(アンテナ)「逆蔵は目が見えない万代のフォローを頼む」

逆蔵「なっ! なんで俺がこいつの面倒を……!」

宗方(アンテナ)「お前が一番信頼して任せられるんだ。頼まれてくれ」

逆蔵「お、おう!」キュン

宗方(アンテナ)「次は忌村。お前は万が一の時のためにバングルの毒の解毒薬を作っておいてくれ」

忌村「け、けど……宗方さん。毒の成分が分からないと……」

朝日奈「バングルを壊して毒を取り出せばいいんじゃないの? なんなら私がバングルを壊すよ!」

霧切「落ち着いて朝日奈さん。黒幕だって馬鹿じゃない。強引に取り外そうとすれば自動的に毒が注射されるような仕組みになってるかもしれないわ」

月光ヶ原(モノミ)『それじゃ毒の解析は、誰かがNG行動を踏んじゃうまで無理なんでちゅかね』

宗方(アンテナ)「いや……生きている人間は無理でも、死んだ人間相手なら問題ないはずだ」

御手洗「死んだ人間……そうか! 雪染先生のバングルなら!」

宗方「忌村! 雪染のバングルを壊して中の毒を出すぞ!」

忌村「は、はぃ!」

宗方(アンテナ)「どうだ忌村。解毒薬は作れそうか?」

忌村「……設備の整った研究施設なら絶対」

宗方(アンテナ)「設備か。生憎とここに忌村の才能に耐えうるだけの設備はないな」

忌村「でも、手持ちの薬で、……調合、します」

宗方(アンテナ)「頼んだぞ」

流流歌「流流歌を裏切った奴の薬なんて……」ボソッ

忌村「う、……っ」ギロッ

宗方(アンテナ)「過去のことでいがみ合うのはよせ」

流流歌「だけどあれのせいで流流歌は希望ヶ峰学園を退学にさせられたんだよ! よいちゃんも一緒に!」

十六夜「希望ヶ峰学園を追われた俺達がどういう風に生きてきたか……卒業できたお前には分かるまい」

宗方(アンテナ)「確かにお前たちの人生について俺は分からん。だが俺はお前達の才能については希望ヶ峰学園以上に認めているつもりだ。だからこそ未来機関にスカウトしたわけだからな」

十六夜「む」

流流歌「……まぁ、そのことに関してはちょびっとだけ感謝してあげてもいいけどさ」

忌村「宗方さん」パァァ

逆蔵(やべえ。なにか新たな強敵が出現した予感が!)

宗方(アンテナ)「それとあの事件のそもそもの元凶は七十七期生の狛枝だ。大体狛枝のせいだ。怨むなら奴を怨め!」

苗木(狛枝先輩……新世界プロジェクトだけじゃなくて現実でもやらかしてたんだなぁ)

霧切(本当に碌なことしかしないわね。あの先輩)

朝日奈(ドーナツ食べたい)

ちょっとドリフターズ見てくるので一時中断します

再開します

宗方(アンテナ)「霧切。さっきお前は一人でこの会議室の中を調べていたな。『元超高校級の探偵』であるお前ならなにか手がかりを見つけたんじゃないのか?」

霧切「貴方に隠し事はできないわね。ええ、見つけたわ。あそこのドアを見てもらえるかしら」

宗方(アンテナ)「ドアだと?」

逆蔵「ドアがどうしたってんだよ! なんも変哲もねえドアじゃねえか!」

霧切「そうなんの『変哲』もないドアだわ。それがおかしいのよ。苗木くん、ここまで言えば分かるわね?」

苗木「そうか。傷がないんだ! 十六夜さんが投げた短剣の傷跡がなくなってる!」

逆蔵「はぁ!? ドアの傷だぁ? そんなもんがこのコロシアイとなんの関係があるんだよ!」

朝日奈「ドアを新品のやつに付け替えただけじゃないの?」

霧切「黒幕がそんなことをする意味がないわ」

朝日奈「それはほら。きっと黒幕は綺麗好きだったんだよ!」

霧切「……苗木くん。貴方はどう考えるのかしら?」

苗木「もしかして……ここはさっきまでボク達がいた会議室じゃないのかも」

逆蔵「どういうことだ! 説明しろ、苗木!」

苗木「ボク達を眠らせている間に、全員を未来機関の施設とそっくり同じな別の建物に移した……とか?」

天願「い、幾らなんでもそれは有り得ないんじゃないかのう」ギクッ

万代「そう、だよ。トウモロコシも木から当たるだよ! 推理が飛びすぎじゃないかな」

流流歌「寝言は寝てから言ってよ」

十六夜(お菓子食べたい……)グゥ

天願(よーしよし。図星をつかれてヒヤッとしたがどうにか施設移動とか無理ゲーなムードになってきたぞい)

宗方(アンテナ)「いや。そうとは決めつけられないはずだ」

天願(宗方ァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!)クワッ

宗方(アンテナ)「人類史上最大最悪の絶望的事件を忘れたか。あれで俺達は何度も非現実的な光景を目の当たりにしてきたはずだ。敵が絶望なら、これくらいはやってのけても不思議じゃない」

グレート・ゴズ「確かに。絶望……それも中核をなした元七十七期生はたった十五人で我々未来機関と互角以上に戦う猛者揃いでしたからね」

黄桜「いやはや。元担任としては耳が痛い話だね」

朝日奈「前のコロシアイでも記憶操作とか学園シェルター化とか信じられないことばっかあったし、私もこのくらいはおかしくないと思うよ!」

宗方(アンテナ)「どうやらもう一度よく施設内を調べる必要がありそうだな。まだなにか手がかりがあるかもしれん」

流流歌「さっき一度調べてなんにも出てこなかったじゃん。無駄じゃないの?」

天願「そうそう、無駄じゃよ」

宗方(アンテナ)「あの時はここを入り口を封鎖されているだけの同じ施設だと思っていた。だがここが『別の施設』ということを念頭に置いて調べれば、気付くことも出てくるかもしれん」

霧切「私も賛成よ。襲撃者を見つけるにせよ脱出を目指すにせよ、ここが何処か分からなければ対応のしようがないわ」

宗方(アンテナ)「では調合中の忌村以外で施設を再調査だ。二人一組……いや念のため三人一組の四ペアに別れよう」

御手洗「三人の四ペアだと一人余りますけど」

宗方(アンテナ)「俺がここに残る。生命線である忌村の護衛も必要だし…………雪染の遺体にもまだ手がかりが残っているかもしれないからな」

苗木「組み分けはどうするんですか?」

流流歌「流流歌はよいちゃんとじゃないと絶対に嫌だからね」

宗方(アンテナ)「逆蔵、万代、霧切。グレート・ゴズ、月光ヶ原、御手洗。十六夜、安藤、苗木。天願、黄桜、朝日奈。この組み分けでいく」

黄桜「派閥毎にばらけさせたのかい?」

月光ヶ原(モノミ)『これならあちし達の中に襲撃者がいても、お互いに見張り合えまちゅね』

宗方(アンテナ)「逆蔵、グレート・ゴズ、十六夜、そして天願会長は戦闘要員だ。万が一の時は他のメンバーを守ってくれ」

逆蔵「守るのが万代と霧切ってのが気に入らねえが、他ならぬお前の頼みだ。任せとけ」

グレート・ゴズ「例え襲撃者が襲ってこようと、このグレート・ゴズが返り討ちにしてやらぁ! どっからでもこいやおらぁ!!」

十六夜「流流歌は命に代えても俺が守る!」キリッ

流流歌「よいちゃん……」

朝日奈「そこは苗木のことも守ってあげてよ」

苗木「あ、あはは……」

天願(あれ? ナチュラルに宗方くんが指揮とってるけど、未来機関のトップってワシだよね?)

宗方(アンテナ)「集合は……そうだな。タイムリミット十分前にしよう。未来機関、解散!」

~タイムリミット十分前~


宗方(アンテナ)「では報告を聞こう。まずは忌村から」

忌村「なんとか、毒の進行を遅らせる薬を作れました……。すみま、せん。解毒薬はここの設備だけじゃ……まだ……」

宗方(アンテナ)「――――いや、よくやってくれた。感謝するぞ忌村。お前のお蔭で俺達の希望は繋がった」ニコッ

忌村「宗方さん…」キュン

逆蔵(くっ! なんだか敵が増えた予感がしやがる!)

宗方(アンテナ)「全員必ず忌村の薬を飲んでおくように。次は逆蔵組、グレート・ゴズ組、十六夜組、天願会長組から報告してくれ」

逆蔵「書庫で秘密の出入口ってのを見つけたぜ」

宗方(アンテナ)「出口だと?」

流流歌「ちょっと出口ってどういうこと! まさかそこに入ったの!?」

逆蔵「そりゃ入るに決まってんだろ。出口さえありゃこんな下らねえコロシアイともおさらばなんだからな。ま、偽物だったんだけどよ」

十六夜「偽物?」

逆蔵「中にあったのは『配電室』だけで外への出口なんてもんはなかったんだよ。大方偽物の出口に期待した俺達をせせら笑おうって魂胆だろうよ」

霧切「補足するとそのドアの向こう側には窓があって外の景色が見えたわ」

苗木「窓があるんじゃそこを突き破れば外に出れるんじゃ」

霧切「無理よ。窓の向こう側は海底だったもの」

黄桜「海底?」

朝日奈「それなら頑張って泳げばなんとかなるんじゃないかな!」

霧切「あの水深の深さから考えて、あそこから脱出できるのは『元超高校級のスイマー』の朝日奈さんくらいよ。代わりに私達は水没する施設と運命を共にすることになるでしょうね」

朝日奈「じゃあ駄目か。私一人だけ助かっても意味なんてないもんね」

霧切「これは確定情報ではなく推理だけど、恐らく黒幕は未来機関の施設の地下にそっくり同じ施設を作ったのよ。これなら窓の向こう側が海底だったことにも説明がつくし、私達をここへ拉致する難易度もぐっと下がるわ」

宗方(アンテナ)「…………――――――そうか」

グレート・ゴズ「私達は手がかりは見つけられませんでしたが、代わりに月光ヶ原さんの協力でモニタールームから外部との連絡に成功しました」

月光ヶ原(モノミ)『運良く第十四支部のかm……十神くんと通信できたので、救援を要請しておきまちたよ』

宗方(アンテナ)「救援が到着するのはいつ頃になる?」

月光ヶ原(モノミ)『流石に最初のタイムリミットまでは無理でちゅけど、次かその次のタイムリミットまでには着くはずでちゅ』

黄桜「つまり……このままだと一人か二人は犠牲になるってわけだ」

グレート・ゴズ「黄桜さん。そんな言い方は」

逆蔵「そう言うならテメエ等はなにか見つけたのか?」

黄桜「悪いね。俺は人を見つけてくるのが仕事で、証拠を見つけてくんのは探偵の領分なんだ」

逆蔵「けっ。要するになんも見つけてねえってことかよ」

天願「すまんのう。非力なワシを許してくれ」スットボケ

朝日奈「ごめんね響子ちゃん。冷蔵庫の中とかダンボールの中とか探したけど、それっぽいのはなかったよ。ドーナツはあったけど」ムシャムシャ

苗木(なんで未来機関の施設にドーナツなんておいてあるんだろ?)

宗方(アンテナ)「十六夜達の組はどうだった?」

流流歌「ふふーん。流流歌とよいちゃんはね、こんなの見つけたよ」ホイ

天願「!!!!????」

御手洗「なっ! それって雪染先生の胸に刺さっていたナイフじゃ!」

十六夜「まったく同じものだ。鍛冶師として断言しよう」

宗方(アンテナ)「それを何処で見つけた?」

苗木「十六夜さんがモニターを壊したら、そこから転がり落ちてきたんです」

万代「モニターから!?」

流流歌「ついでに他のモニターもよいちゃんに壊して貰ったら、全部から同じやつが出てきたよ」

逆蔵「じゃあここのモニターにも…………オラァ!」バキッ

朝日奈「あ、あのナイフが落ちてきたよ!」

宗方(アンテナ)「……どうやら『襲撃者』はモニターにあるナイフを使って、殺人を行っているようだな」

朝日奈「凄いよ十六夜さん! 十六夜さんのファインプレーだね!」

流流歌「おい、流流歌のよいちゃんに色目使ってんじゃねえぞドチャクソ乳女」ギロッ

朝日奈「い、色目なんて使ってないよ!」

黄桜「けどよくモニターが怪しいって分かったね」

十六夜「……鍛冶師としての直感だ」

黄桜「超高校級の鍛冶師たるもの刃物の気配は見逃さないってことか。いやぁ、流石だね」

十六夜(言えない。NG行動のせいで流流歌のおいちいお菓子が食べれない八つ当たりで壊しただけなんて言えない)

宗方(アンテナ)「最後に俺から報告だ。雪染の死体を調査したところ、こんなものが見つかった」

苗木「それって、写真?」

朝日奈「あ、雪染さんが幼稚園の子と遊んであげてるよ」

グレート・ゴズ「未来機関で保護された園児でしょうね。元超高校級の家政婦の雪染さんらしい」

宗方(アンテナ)「雪染らしい、か……」ギリッ

苗木「宗方さん、どうかしたんですか?」

宗方(アンテナ)「こっちの写真を見ても同じことが言えるか?」バッ

苗木「なっ!?」

朝日奈「う、嘘……」

御手洗「子供達が全員殺されて――――なんで雪染先生、笑ってブランコなんかに……『私だよ』って…………うっ!」ゲホッ

グレート・ゴズ「まさか……雪染さんが『絶望の残党』?」

逆蔵「違う! あいつが、雪染はこんなことするような奴じゃねえ!」

宗方(アンテナ)「逆蔵…」

逆蔵「き、きっとあいつはなにか弱味を握られてたんだ! そうに決まってる!」

宗方(アンテナ)「なぁ逆蔵。もしお前の言う通り雪染が弱味を握られていただけだったとして――――あいつは子供を殺して平然と笑っていられるようなやつだったか?」

逆蔵「それは――――」

苗木「きっと雪染さんも七十七期生の先輩たちと同じです。江ノ島に洗脳されて絶望にされてしまったんだ」

霧切「雪染さんは七十七期生の担任だった人よ。七十七期生を絶望化する際に一緒に絶望にさせられていたとしても不思議ではないわ」

宗方(アンテナ)「くそっ! 俺がもっと早くに気付いてやれば……いや、ずっとあいつの側にいてやれば、こんなことには!」

逆蔵「……すまねぇ。全部、俺の責任だ」

宗方(アンテナ)「お前だけのせいでは」

逆蔵「いや俺のせいだ! 俺はあの日、江ノ島がクロだって分かってたのに、あいつに脅されてシロって嘘の報告をしちまったんだ!」

宗方(アンテナ)「なんだと?」

逆蔵「もし俺が自分の恥なんて気にせずに真実を報告してりゃ……雪染だって絶望なんかにならなかったかもしれねえってのに! すまねえ、死んでも詫びきれねえ」

流流歌「はぁ!? じゃあこいつって大戦犯じゃん!」

逆蔵「言い訳はしねえよ。責任とって死ねって言うんなら死ぬ。世界がこんなことになっちまった時から覚悟はしてる」

流流歌「じゃあ死んだら? ついでにアンタが襲撃者だったらゲームもクリアできて一石二鳥だし」

苗木「止めて下さい。悪いのは……全部江ノ島盾子なんです! 仲間同士で争ってなんになるんですか!」

霧切「疑心暗鬼や責任の押し付け合いがどういう結果を齎すか、私たちのコロシアイ中継を見ていた貴方達なら理解してるはずよ」

宗方(アンテナ)「…………二人の言う通りだ。逆蔵、責任云々は後だ。もしお前が責任を感じているなら、俺達の全員生還のために力を尽くしてくれ」

逆蔵「ああ…………死んでもお前だけは」

宗方(アンテナ)「違うだろう?」

逆蔵「――――っ! ああ、死んでも全員こっから生還させてやるよ!」

宗方(アンテナ)「また間違いだ。お前が死んだら全員生還じゃないだろう」

逆蔵「宗方……」キュン

万代「あれ? よく考えるとおかしくない?」

天願「どうしたのかね」

万代「だって雪染さんが『絶望の残党』なら、なんで襲撃者は仲間の『絶望』を最初に殺してるの?」

十六夜「雪染が未来機関のスパイだということを、襲撃者が知らなかっただけだろう」

黄桜「論理的なことが通じないのが『絶望』だからね。最初に仲間を殺すなんて絶望的~、だとか意味の分からない理由でやっちゃったんじゃないかい?」

グレート・ゴズ「……普通ならありえませんが、絶望ならそれくらいの思考はするでしょうね」

霧切「そもそも黒幕が『絶望』という前提が間違っていることも考えられるわ」

十六夜「何を言っている。モノクマを操ってコロシアイを強要させるなど、絶望以外に誰がやる?」

霧切「江ノ島盾子が生まれる前から常人には理解できない猟奇殺人はあったわ。モノクマを使ってコロシアイを強要させるから絶望――――そう考えるのは早計じゃないかしら」

朝日奈「けどもし黒幕が『絶望』じゃないなら、どんな目的でこんなコロシアイを」

霧切「それはまだ分からない。そもそも黒幕が非絶望というのも可能性の一つであって答えではないわ。現段階では敵は『絶望』の可能性が高いわ。ただ安易に可能性を切り捨てて欲しくないだけ」

グレート・ゴズ「……タイムリミットまで後五分ですね」

万代「どうするのこれから! このままじゃこの中の誰かが死んじゃうよ!」

忌村「……私の薬があればNG行動の毒殺は防げるけど……襲撃までは……」

黄桜「十四分の一のロシアンルーレットか。今ほど『幸運』の才能が欲しいと思ったことはないなぁ」

霧切(たしかに狛枝先輩なら十四分の一どころか十四分の十三のロシアンルーレットも成功させそうね)

御手洗「やっぱり念のために全員別々の部屋に移って、扉を封鎖するとかしたほうが」

宗方「案ずるな。俺に良い考えがある」

天願「ほう。それはどんな考えかね?」

宗方「俺がバングルのついた手首を切り落とす。そうすればタイムリミットになっても眠らずに済むはずだ」

苗木「なっ! そんな無茶な!」

天願「……………」

逆蔵「止めろ宗方! 元々俺が悪いんだ、手なら俺が切り落とす!」

グレート・ゴズ「ボクサーの貴方が命である手を失ってどうするんです。切るんならこのグレート・ゴズの腕を切ってからにしろゴラァ!!」

宗方(アンテナ)「レスラーのお前にとっても手は命だろう。俺の才能は『生徒会長』。片腕を失ったところで大した損失じゃない。俺には逆蔵という片腕がもう一本あるからな」

逆蔵「宗方……」キュン

苗木「他に、他に方法はないんですか?」

宗方(アンテナ)「そう悲観するな。俺の腕一本でここにいる仲間の命が助かるなら安い代償だ」

忌村「宗方さん……」

逆蔵「けど、けどよぉ!」

宗方(アンテナ)「それに切り落とした手首は忌村の薬に漬けておいて、ここを出た後に結合する。失敗しても義手にすればいいだけだ。大した問題ではない」

流流歌「……未来機関なんてドチャクソ腐った連中ばっかと思ってたけど、アンタのことはちょっと見直したよ」プイ

宗方(アンテナ)「腕を切るのは十六夜、お前に任せてもいいか? 刃物の扱いなら鍛冶師のお前が一番秀でているだろう」

十六夜「……………鍛冶師としての誇りにかけて、承った」

宗方(アンテナ)「時間も押している。やってくれ」

十六夜「――――せいっ!」スパッ

宗方(アンテナ)「う、ぐ……こんなもの、絶望にさせられた雪染の痛みに比べれば」

逆蔵「宗方ァ!」

忌村「止血を!」

宗方(アンテナ)「それと……俺の手首を、頼む」

忌村「はい! 絶対に、守ります……」

逆蔵「くそっ! 俺の才能がボクサーじゃなくて『医者』とかなら、すぐに手術できたのによ」

宗方(アンテナ)「お前が医者か。……ふっ、似合わんな」

逆蔵「ほっとけ!」

グレート・ゴズ「タイムリミットまで一分をきりましたね」

宗方(アンテナ)「全員。一人一人距離を空けて壁際で眠ってくれ。俺は部屋の中心で襲撃者が起きるのを待つ」

流流歌「流流歌はよいちゃんの隣だからね」

忌村「わたし、は……」

流流歌「……流流歌の隣が空いてるから、勝手に座ればいいじゃん」

忌村「!」パァ

万代「葡萄畑も一つのタネからだね!」

朝日奈「いいこと言うね! その通りだよ!」

霧切「いいことだったの……?」

天願「ワシも適当に腰掛けるとするかのう」

グレート・ゴズ「では私は会長の隣に」

苗木「えーと、空いてるのは……ドアの前か」

宗方(アンテナ)「よし。この配置なら誰が襲撃者でも、目覚めたところを取り押えられる」

グレート・ゴズ「宗方さん。我々の命、貴方に預けましたよ」

宗方(アンテナ)「任された。お前が襲撃者というのはやめてくれよ。お前を取り押えるのは少しばかり骨が折れるからな」

逆蔵「折れるどころか切られてんじゃねえかよ」

宗方(アンテナ)「そうだったな」

バングル『ピンポンパンポーン』

宗方(アンテナ)「時間か」

逆蔵「ああくそ、気合いで我慢してるつもりだったが……眠気が……。頼んだぞ……宗方……」

宗方(アンテナ)「ああ」

天願「やれやれ。麻酔による睡眠が年寄りの体に与える悪影響も考えて欲しいものじゃのう」

宗方(アンテナ)「天願会長」

天願「おやすみ宗方くん。ここまでくれば良い目覚めであることを祈るしかないのう」

宗方(アンテナ)「……言われずとも良い目覚めにしますよ」

天願「それは……重畳……じゃ」

宗方(アンテナ)「ただし貴方にとって良い目覚めが、俺達にとっての良い目覚めと一緒ならば、ですが」

今日はここまで。続きは明日で

再開します

全員『zzz……』

月光ヶ原(モナカ)『(ROM専のモナカは起きてるけど、ここは様子見しておこーうと。組んでて良かったー! 寝たふりモーション!)』

宗方(アンテナ)「ん?」

月光ヶ原『zzz……』

宗方(アンテナ)「……月光ヶ原から視線を感じたが、気のせいか?」

月光ヶ原(モナカ)『(危ない危ない。あとちょっと寝たふりモーションさせるのが遅れてたらばれてたかも)』

宗方(アンテナ)「全員寝たようだな。あとは襲撃者が起きるのを待つまで部屋の中心で待機だ」

宗方(アンテナ)「俺の推理が正しいならこのコロシアイを仕組んだ黒幕は『あの人』だが……」

宗方(アンテナ)「今は参加者全員が同じ部屋にいて、しかも俺という眠っていない者が一人いるという黒幕にとってイレギュラーな状況だ」

宗方(アンテナ)「馬鹿正直に襲撃者を起こすとも考えられんが、どうでる」

苗木「う、」ピクッ

宗方「!」

苗木「あれ……なんでボクだけ……」

宗方(アンテナ)「起きたのは苗木か。――――お前が『襲撃者』だったのか?」

苗木「ち、違います! ボクは『襲撃者』なんかじゃ」

モノクマ『お待たせー、襲撃者さん起きてる?』

苗木「モノクマの声……けど、この部屋のモニターは全部逆蔵さんが壊してるから」

宗方(アンテナ)「廊下のモニターからか」

モノクマ『お待ちかねの襲撃タイムだよ。さあ今日のターゲットはだ~れ~か~な~』

苗木「ボクのハングルが反応してる。そうか、このバングルがモニターとの距離を計測して」

モノクマ『おお、襲撃者さんみーけっ!』

宗方(アンテナ)「モノクマ、一体誰に話しかけているんだ?」

苗木「……あの宗方さん、もしかして廊下に誰かいるとかは」

宗方(アンテナ)「それはない。死んだ雪染も含めてこの施設の人間は全員ここにいる。部屋の外には誰もいないはずだ」

モノクマ『え? 襲撃者じゃないって? 何かの間違いだって?』

苗木「じゃあこれって」

モノクマ『最初はみんなそういうんだよね~。でも襲撃者も悪くないよ。な、な、なんと秘密の特典が付いてくるのだー!』

宗方(アンテナ)「――――録画か」ピコーン

モノクマ『特典てなんだって? 気になる? 気になっちゃうー?』

宗方(アンテナ)「ともかくモニターの所へ行くぞ。そこに答えがあるはずだ」

苗木「はい。どうせモノクマの特典なんて碌なものじゃな」ガチャ

モノクマ『よおーく見てな!』

苗木「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

苗木「………………―――――――――――あ」

宗方(アンテナ)「どうした苗木。ドアを開けた途端に立ち止まって」

苗木「あ、ァァアああああああああああああああああああああああああああああああアアアァァァアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!」

宗方(アンテナ)「(どういうことだ? ドアを開けた……モニターを見た途端にこの暴れよう。余程ショッキングなものを……いやそれにしても尋常な暴れ方ではない!)」

苗木「―――――く、あ」コロン

宗方(アンテナ)「苗木が拾ったあれは、モノクマの短剣! まさか自殺するつもりか!?」

苗木「今、逝くよ」ニタァ

宗方「させん!」カイチョウキック

苗木「がはっ!」

苗木「……う、ボクは……」

宗方(アンテナ)「正気に戻ったか」

苗木「う!」ズキ

宗方(アンテナ)「すまんが正気に戻すために蹴りを入れた。許せとは言わんが、今は怒るのは保留にしておいてくれ」

苗木「いえ……寧ろお礼を言わせて下さい。あのままだったら……ボクは……」

宗方(アンテナ)「何があった? いや何を見た?」

苗木「映っていたのはモノクマが出てくるなんの変哲もない映像でした。でもそれを見ているとコロシアイ学園生活で死んだ桑田くんや舞園さん達のことがフラッシュバックして、猛烈に自殺したい衝動が湧き上がってきて」

宗方(アンテナ)「気付けばモニターから落ちてきた短剣を拾い上げ、自殺しようとしていたと?」

苗木「……はい」

宗方(アンテナ)「自殺……モニターの中の短剣……襲撃者……録画のモノクマ…………はっ!」

苗木「――――まさか『襲撃者』の正体って!?」

宗方(アンテナ)「苗木も気付いたか」

苗木「……ええ。だけどもしこの推理が正しいとしたら、このコロシアイは!」

宗方(アンテナ)「全て……茶番だ」

苗木「こんな、誰がこんなことを」

宗方(アンテナ)「――――苗木。そのことで一つ俺から提案がある」

逆蔵「――――モニターの一番近くにいた人間が、洗脳映像で自殺するだぁ!?」

苗木「はい。それがボクと宗方さんの辿り着いた答えです。ボク達の中に襲撃者なんて最初からいなかったんですよ!」

逆蔵「じゃあなんだ……そんな訳の分からねえ映像を見せられて、雪染はテメエでテメエを殺しちまったっていうのかよ……ふざけんな!」

忌村「見たら自殺するなんて、そんな映像が……あるの?」

苗木「それは実際に自殺しかけたボクが保証します」

朝日奈「自殺しかけたって、大丈夫なの!?」

苗木「宗方さんが寸前で止めてくれたお蔭で助かったよ」ハハハ

霧切「相変わらず悪運が強いわね」フッ

宗方(アンテナ)「洗脳映像に関する技術的なことに関しては専門家に聞いた方が早いだろう。御手洗、元超高校級のアニメーターであるお前ならなにか知っているんじゃないのか?」

御手洗「ち、違う……僕じゃ……僕じゃない!!」

万代「お、落ち着いて。誰も君が犯人って言ってるわけじゃ」

御手洗「僕が、やったんじゃないんだ……僕のアニメを利用したあいつが……江ノ島がやったことなんだ!」

宗方(アンテナ)「江ノ島だと!?」

流流歌「江ノ島って『絶望』の親玉じゃん。なんでそんな大物がドチャクソキモいアニメーターなんかを利用するのよ」

御手洗「……江ノ島は僕の人を感動させるアニメの技術に目を付けて、僕に見た人間を絶望化する映像を作り出したんだよ………」

グレート・ゴズ「どうしてそのようなものを」

御手洗「仕方がなかったんだ! もし拒否すれば生徒会にやらせたのと同じコロシアイを、僕のクラスメイトにもやらせるって脅されてて!」

宗方(アンテナ)「御手洗、確かお前のクラスメイトは」

御手洗「……七十七期生ですよ。今は『絶望の残党』と呼ばれている彼等のことです」

朝日奈「じゃあ七十七期生の先輩たちが絶望に落ちたのは、その絶望のアニメを見せられて洗脳されたからなの……?」

逆蔵「雪染もそのアニメのせいで…!」

苗木「江ノ島、盾子っ!」ギリッ

十六夜「人を絶望化させる映像が作り出せるなら、自殺させる映像があっても不思議ではないか」

霧切「予備学科生の『パレード』もただの不満の爆発にしては余りにも拡大速度が異常だったわ。きっとその洗脳技術が予備学科生の背中を押していたんでしょうね」

御手洗「畜生……僕は皆を笑顔にするための……希望のアニメを作ってたのに……どうしてみんな絶望なんかに使うんだよ……」

苗木「御手洗さん」

御手洗「そうだよ……全部、僕が悪いんだ……僕が江ノ島に屈したりしなければ……っ! 僕が、苗木みたいに強ければ……! 畜生、なんで僕は弱いんだよ!」

宗方(アンテナ)「御手洗」

御手洗「宗方さん、僕を処分するんですか……?」

宗方(アンテナ)「俺は同じ事を二度言うのは好きじゃないが、敢えて言おう。責任云々は後だ」

御手洗「え?」

宗方(アンテナ)「もしお前が責任を感じているなら、俺達の全員生還のために力を尽くしてくれ」

御手洗「僕を、殺さないんですか……? 僕が全ての元凶なのに……」

十六夜「自分の造ったものが人の命を奪ったことに責任を感じる気持ちは分からなくもない。だが俺も流流歌を人質にとられれば、お前と同じことをしただろう」

天願「御手洗くんにはこれからアニメで絶望に落ちた皆を『希望』に変える役目がある。ここで死んでもらっては困るのう」

逆蔵「クラスメイトの命を盾に脅されてたんだろ。だったらテメエの見栄とプライドのために江ノ島に屈した俺よか数百倍はマシだよ」

黄桜「逆蔵くんが宗方くん以外を庇った? 珍しいことがあるもんだね。もしかして偽物とすり替わってたりとか?」

逆蔵「ンなわけねえだろ! 俺は本物の逆蔵十三だ!」

宗方(アンテナ)「洗脳映像についてはもういいだろう。それよりも原因が分かったなら、このゲームを終わらせに行くぞ」

逆蔵「終わらせるっつったってどうすんだよ。まさか施設のモニター全部ぶっ壊すのか?」

流流歌「ドチャクソ面倒なんだけど。モニターが何台あると思ってるの?」

宗方(アンテナ)「モニターを壊す必要はない。逆蔵達の見つけた秘密の出入口だ」

逆蔵「出口ったってあそこにゃ窓と配電室しかねえぞ…………まてよ、配電室?」

グレート・ゴズ「そうか。配電室でブレーカーを落としてしまえば、モニターが作動することもなくなりますね」

黄桜「成程ね。つまり秘密の出入口ってのはある意味じゃ本当だったってことか」

月光ヶ原(モノミ)『襲撃者が誰か分からない参加者には行き止まり。でちゅけど真相を知る人間にはゴールだったわけでちゅね!』

宗方(アンテナ)「行くぞ皆。そこで全ての決着をつけよう」

~配電室~


万代「ここが配電室かー」

流流歌「やっとこのコロシアイともおさらばね。はぁ~あ、流流歌疲れちゃった。はい、よいちゃん」アーン

十六夜「いや、いい」

十六夜(はやく……はやく終わらせてくれ! おいちいお菓子欠乏症が!)プルプル

十六夜(いっそNG行動を踏む覚悟で食べるか? いや俺は『食べ物を口にする』などという戯けたNG行動のせいで忌村の薬を服薬できていない)

十六夜(こんなことなら薬を飲んだふりなどせず、素直にNG行動を申し出て錠剤タイプではなく液体タイプの薬を作ってもらうのだった……!)

十六夜(黒幕め。よりにもよって俺にこんなNG行動を強いるとは! 絶対に許さん!)プルプル

グレート・ゴズ「どうしたんですか十六夜さん。肩が震えていますが」

十六夜「なんでもない。それより早くブレーカーを落とすぞ」

逆蔵「おうよ」

宗方(アンテナ)「――――待つんだ逆蔵。ブレーカーを落とす前にやるべきことがある」

逆蔵「やるべきこと?」

宗方(アンテナ)「黒幕の告発だ」

全員『!!』

万代「待ってよ! 襲撃者は自殺させられてるんじゃなかったの?」

宗方(アンテナ)「襲撃者はな。だが俺達にこのコロシアイを強いた黒幕は別にる。そしてその黒幕は俺達の中に今も潜んでいるんだ!」

朝日奈「う、嘘……この中に黒幕が?」

流流歌「まさか逆蔵?」

逆蔵「ち、違う! 俺じゃねえ!」

流流歌「どうだか。脅されてたなんて真っ赤な嘘で、本当は雪染みたいに絶望に落ちてたんじゃないの?」

月光ヶ原(モノミ)『その論理だと御手洗くんも容疑者候補になってちまいまちゅけど』

御手洗「ち、違う! 映像には僕の技術が使われてたけど、僕は黒幕なんかじゃない!」

宗方(アンテナ)「その通りだ。二人はシロだ」

忌村「それじゃ黒幕は誰、なんですか?」

宗方(アンテナ)「俺達を眠らせコロシアイゲームを仕掛けた真のクロ。その正体は――――」

宗方(アンテナ)「希望ヶ峰学園元学園長にして未来機関創始者! 天願和夫、貴方だ!!」バーン

天願「………………」

朝日奈「嘘っ」

流流歌「え?」

逆蔵「て、天願が黒幕だとぉ!?」

黄桜「いやいやいやいや。君のこれまでの活躍は見事だけどさ、流石にそれはないんじゃないかい?」

グレート・ゴズ「そうです! 天願さんは未来機関のトップなんですよ。こんなコロシアイを強要させるような真似するはずがありません!」

十六夜「天願を庇うわけではないが、俺も同意見だ。絶望からすれば大敵であるはずの天願が、どうして絶望に利するようなことをする?」

苗木「…………」

霧切「――――天願会長をクロと判断した根拠を教えてもらえるかしら? 断言するということは根拠があるのでしょう」

宗方(アンテナ)「当然だ」

宗方(アンテナ)「最初から思い出してくれ。未来機関の会議室に睡眠ガスを流し込み、俺達全員を地下のそっくりな施設へ移動させる。鮮やかな手口だ」

グレート・ゴズ「それは絶望がそれだけの才能を秘めているということでは?」

宗方(アンテナ)「鮮やか過ぎるんだ。十六夜の投げた短剣の傷跡がなければ、誰一人として移動させられたことに気付かないほど精巧な地下施設を用意するなど――――例え江ノ島盾子であっても不可能だ」

黄桜「決めつけは良くないんじゃないかい。現実として地下施設は存在しているわけだしさ」

宗方(アンテナ)「いや外部の人間には不可能でも、内部の人間であれば可能だ」

御手洗「内部の人間……裏切り者……」

宗方(アンテナ)「俺自身を除けば、この施設内の機械設備に手を加える権限をもっているのは、たった一人しかいない。つまり貴方だ、天願会長」

逆蔵「そういや御手洗を未来機関に勧誘したのも天願だったよな」

グレート・ゴズ「襲撃者のトリックに用いられたのは、御手洗さんの映像技術……しかし、それだけでは……」

万代「そうだよ! 天願会長にはこんなゲームを仕掛ける動機がないよ!」

宗方(アンテナ)「洗脳技術なんてものが存在する以上、動機の有無はもはや意味をなさない。重要なのは『どんな理由で?』ではなく『誰なら可能だったか』だ」

苗木「…………天願会長。質問に答えて下さい。貴方が絶望だったんですか?」

天願「ふ、ふふふふふふふふふ」ニヤ

グレート・ゴズ「まさか、本当に!?」

天願「――――それは違うぞい」ロンパ

宗方(噛ませ)「なん……だと……」

天願「さっきから聞いておれば、宗方くんにしては少々短絡的過ぎるのう。生憎じゃがワシは絶望ではないよ」

逆蔵「おい天願! 証拠は揃ってんだ、往生際が悪ぃぞ!」

天願「証拠? しょ・う・こと言ったのかのう? はははははははははははははははははははは、これは傑作じゃ!」

逆蔵「な、なにが可笑しいんだよ!」

天願「元超高校級の探偵である霧切くんならば気づいておるじゃろう? 宗方くんの推理には物的証拠がなに一つ存在しないとのう!」

霧切「……ええ、その通りよ。宗方さんの推理には天願会長がクロだと示す決定的証拠が欠けているわ。これでは天願会長をクロと断定することは無理よ」

宗方(噛ませ)「くっ……! だが貴方しか……貴方しか、黒幕として考えられる人間はいない! ならば貴方が黒幕なのは間違いないはずだ!」

天願「それは違うぞい」ロンパ

天願「クロとして考えられる人物なら、他にもいるじゃろう」

宗方(噛ませ)「なっ! 誰だというのだ、それは!」

天願「君じゃよ」

宗方(噛ませ)「俺……だと……?」

天願「さっき君自身が『証言』したことじゃ。俺自身を除けば、この施設内の機械設備に手を加える権限をもっているのは、たった一人しかいない――――だったかのう?」

グレート・ゴズ「確かに言ってましたが」

天願「つまりワシが犯人でないのならば、犯人は宗方京介しか有り得ないと君は自白しておったのじゃよ!」

天願「そういえば元々この施設は、宗方くんが希望ヶ峰学園の海外分校設立のために建造したものじゃったな。ワシよりも宗方くんの方がこの施設のことを把握しているんじゃないかのう?」

万代「え? どういうことなの? 天願会長は本当はシロなのクロなの?」

忌村「ち、違う! 宗方さんは希望ヶ峰学園を退学にされて行き場を失った私を、未来機関にスカウトしてくれた恩人! クロなんかじゃない!」

朝日奈「忌村さんの言う通りだよ! 宗方さんは自分の手を切ってまで私達を助けてくれたんだよ。そんな人が黒幕なわけないじゃん!」

逆蔵「そうだ、黒幕ならテメエでテメエの首を絞めるようなことする訳がねえ! 適当なことほざいてるんじゃねえぞ爺!」

天願「いやこれまでの流れは全て宗方くんの計画通りなのじゃよ」

逆蔵「ど、どういうことだよ?」

天願「安藤くんや万代くんは余り宗方くんとは仲が良くなかったのう。なのにこのコロシアイゲームではリーダーのワシを差し置いて、宗方くんの指示に従うことを良しとした。それは何故じゃ?」

流流歌「それは」

万代「宗方さんが全員脱出のために僕達を信じてくれたから……」

天願「それが宗方くんの目的じゃ」

万代「え?」

天願「自らコロシアイゲームをプロデュースし、それを自分で解決に導く事によって名声と人望を得る」

天願「これはそのために宗方くんが起こした自作自演の出来レースだったのじゃよ!」

宗方(噛ませ)「違う! まったくの言いがかりだ!」

天願「雪染くんを最初に殺したのは、彼女が『絶望』だということを知ってこの機会に粛清したというところかのう」

天願「そして最後にワシをコロシアイのクロに仕立て上げることで、未来機関を我が物にしようという魂胆だったわけじゃ」

天願「じゃが目論見が外れたのう。ワシは君の悪辣な罠にはかからんぞ」ロンパ

宗方(噛ませ)「ば、馬鹿なぁぁああああああああああああああああ!!」

寝落ちしたので今日はここまでにします。

再開します

宗方(黒幕?)「……………………」

朝日奈「ほ、本当に宗方さんが黒幕だったの?」

流流歌「チッ。やっぱ未来機関はドチャクソ腐ってたんだ。こいつをちょっとでも信用した流流歌が馬鹿みたいだよ」

十六夜「自分の腕を切ったあの覚悟も、俺達を騙すための嘘でしかなかったのか」

苗木「ボク達は貴方の掌の上で、最初から踊らされてたんですか!」

逆蔵「待てよ! 宗方を黒幕扱いしてんじゃねえ! 俺の知る宗方は例え死んだってこんな下種なコロシアイゲームなんざ仕組んだりしねえ!」

宗方(黒幕?)「もういい……」

逆蔵「宗方?」

宗方(黒幕?)「もういいんだ……もう終わりにしよう。こんな茶番は」

逆蔵「お、おい。どうしたんだよ宗方?」

黄桜「それは自白と受け取っていいのかい?」

宗方(黒幕?)「…………なぁ天願」

天願「なにかね?」

宗方(アンテナ)「―――――――『質問』だ。黒幕はお前なのか?」

天願「っ!!」

グレート・ゴズ「この期に及んでなにを」

流流歌「そうだよ! 宗方が黒幕だってはっきりしたばかりじゃん!」

苗木「それは違うよ!」ロンパ

十六夜「どういうことだ?」

苗木「さっき霧切さんが言ったことを思い出して下さい」

万代「えーと、状況証拠だけで物証がないってやつ?」

苗木「はい。これって宗方さんが犯人の場合でも同じことが言えますよね」

万代「!」

霧切「さっき天願会長が語ったことは、あくまで彼の推理でしかないわ。物証といえるものは何一つない」

朝日奈「こんがらがってきたよ。結局、天願会長と宗方さんのどっちがクロなの?」

霧切「現状では『分からない』わ。だってどちらが犯人かを示す証拠がないんだもの」

宗方(アンテナ)「その証拠を暴くための、さっきの俺の質問なんだ」

流流歌「質問って『黒幕はお前なのか』ってドチャクソ直球なやつ? そんなの絶対に違うって言うに決まってるじゃん!」

十六夜「天願がシロならば当然否定するだろうし、クロであっても馬鹿正直に真実を答えるはずがない。自殺行為だ」

宗方(アンテナ)「それは違うぞ!」ロンパ

宗方(アンテナ)「天願は自分の首を絞める結果になろうと馬鹿正直に真実を答えなくてはならない」

十六夜「なに? どういうことだ?」

苗木「思い出して下さい。ボク達には例え自殺行為だろうと従わざるを得ないものがあったはずです」

忌村「まさか……NG行動?」

苗木「はい」

宗方(アンテナ)「天願会長。貴方のNG行動は『質問に嘘で答える』だ!」

朝日奈「そのNG行動なら、嘘は絶対につけないね!」

グレート・ゴズ「ですが宗方さん。どうして天願会長のNG行動を?」

宗方「簡単なことだ。お前達が眠っている間にバングルのNG行動を確認しただけだ」

流流歌「なっ! 偉そうなこと言っててこっそり流流歌達のNG行動を盗み見してたの!?」

宗方(アンテナ)「勘違いするな。俺が確認したのは天願のNG行動だけだ」

苗木「はい。それはボクも保証します」

朝日奈「苗木が?」

苗木「自殺を止められた後、ボクは一足先に宗方さんの推理を聞いたんです。天願さんが一番怪しいっていう推理を」

苗木「それで天願会長がクロなら、なにか証拠を身に着けてないか寝ている間に天願会長の身体検査をしたんです」

宗方(アンテナ)「肝心の証拠を見つけることは出来なかったがな。だがNG行動という突破口を見つけることはできた」

グレート・ゴズ「待って下さい。天願会長のNG行動が本当にそうだとして、ついさっき苗木さんに犯人かどうか聞かれて『違う』と返答していたじゃないですか!」

苗木「それは違うよ!」ロンパ

苗木「グレート・ゴズさん。ボクは『絶望』かどうか尋ねただけです。クロかどうかを質問したんじゃありません!」

宗方(アンテナ)「そして『絶望』=『黒幕』という方程式はない」

霧切「難しく考える必要はないわ。要は天願会長が宗方さんの質問に応えればはっきりすることよ」

御手洗「けど天願会長のバングルが偽物だったらどうするんですか?」

逆蔵「偽物だと? どういうことだ説明しろ、御手洗!」

御手洗「だって黒幕だったら自分のバングルまで素直に毒を仕掛けておく必要なんかないじゃないですか! 自分のだけNG行動を踏んでも大丈夫な、別のバングルを用意すればそれで」

黄桜「一理あるね。もし天願会長がクロだとしたら、嘘をつけないってNG行動は信用を勝ち取るにはうってつけだ」

宗方(アンテナ)「偽物なら偽物でも構わんぞ。もし天願が『違う』と答えたなら、容疑者である俺と天願の二人を両方とも拘束すればいい」

宗方(アンテナ)「どうせブレイカーが落ちればこれ以上のコロシアイは起きないんだ。いずれ未来機関の救助がくるだろう」

宗方(アンテナ)「それから未来機関の施設で全員のバングルを調べればいい。もし天願のバングルに他とは違う仕掛けがしてあったなら、それが物証になるだけだ」

宗方(アンテナ)「もっとも用意周到な貴方のことだ。真実が露見することを避けるため、敢えて俺達と同じバングルをつけているだろうがな!」

天願「………………んんっ」

グレート・ゴズ「天願会長、質問に回答を! 貴方がシロなら違うと仰ってください!」

黄桜「天願さんっ?」

天願「………………んんんんんんんっ」

逆蔵「おい、どうなんだ爺! 宗方の質問に答えやがれ!!」

天願「あはっ…! あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」

朝日奈「ひっ!」

天願「――――そう、ワシじゃよ」


天願「結論から言うと大正解! そう、すべてワシの仕業だったんじゃよ!」

逆蔵「遂に尻尾現しやがったか爺!」

霧切「じゃあこのコロシアイを仕組んだ黒幕は」

天願「ワシじゃよ!」

十六夜「俺にあんなNG行動を押し付けたのも!」

天願「ワシじゃよ!」

逆蔵「雪染を自殺させたのも!」

天願「ワシじゃよ!」

御手洗「僕の技術をコロシアイゲームに使ったのも」

天願「ワシじゃよ! 全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部ぜ~~~んぶっ! このワシの仕業なんじゃよ!!」ニパァ

逆蔵「く、狂ってやがる……」

黄桜「……はは、冗談きついねえ。じゃあなにかい。アンタは好々爺面してずっと俺達を……仁を騙してたってことか?」

天願「騙すとは人聞きが悪いのう。ワシはワシなりのやり方で『希望』を育もうとしただけじゃよ」

グレート・ゴズ「ふざけんなぁ! コロシアイなんぞを強要してなにが『希望』じゃ!! 俺は……おい! そんなもん『希望』なんて認めねぇぞ!!」

天願「…………未来機関の長を務めてきてな、気付いたことがある。絶望の根絶など不可能、絶望を世界からなくすことは決して出来はしないと」

天願「『絶望』ろ『希望』は正反対のようでいてすれすれの紙一重。『絶望』があるからこそ『希望』があり、『希望』があるからこそ『絶望』があるのじゃ」

天願「そして人間というのは本質的に『希望』を抱くより『絶望』に屈する生き物。故に『希望』は『絶望』に勝てん」

苗木「それは違うよ! 希望は、絶望なんかに負けはしない!」

天願「コロシアイ学園生活のことを言っておるのかね? 希望は伝染する、良い言葉じゃ。ワシも感動したよ。じゃがあれは君の周りにいたのが超高校級の才能の持ち主ばかりだったから通用したに過ぎん」

天願「世の大多数の人間は君ほど強くはない。この世界の殆どを占めるのは、なんの才能も持たない弱い人間なんじゃよ」

天願「苗木くん。君の妹が塔和シティで大人たちに示した『希望』が、どんな絶望的熱狂を生み出したかは知っておるじゃろう?」

苗木「っ!」

天願「絶望が絶望を生み、希望すら絶望を生む。それは正にこの世界そのものではないかね」

逆蔵「ぐだぐだ意味の分からねえこと語ってんじゃねえよ! ンなことと今回のコロシアイになんの繋がりがあるんだ!」

天願「そこで御手洗くんのアニメなんじゃよ」

霧切「洗脳映像のことかしら?」

天願「そう! アニメは世界を変える! ジャパニメーション万歳じゃ!!」

天願「御手洗くん。君は自分のアニメが世界を絶望的な絶望に染め上げたことを深く悔いておったな。そんな君なら作っているんじゃないかのう。絶望映像と反対に人々を希望化させる希望のアニメを」

御手洗「うっ!」

宗方(アンテナ)「天願の言っていることは本当なのか、御手洗?」

御手洗「…………はい。確かに、作りました……。だけど使う決心がつかなくて」

天願「君はそのアニメを使うべきじゃ! そもそも今回のコロシアイだって、君がさっさとアニメを公開しないから起きてしまったんじゃよ!」

宗方(アンテナ)「それは……」

天願「そのアニメさえあれば、もう世界中でこのような殺し合いは起きなくなる! 誰も絶望しない、希望だけに満ちた世界が完成するんじゃよ!」

苗木「……違う」

天願「迷う必要なんぞありはせん! さぁ、世界に君のアニメを見せてやるんじゃ!」

宗方(アンテナ)「それは――――」

宗方(アンテナ)「それは違うぞ!」苗木「それは違うよ!」ロンパ

苗木「御手洗さんの迷いは間違いなんかじゃない! 洗脳で絶望を消して、希望だけにした世界なんて――――それこそ絶望そのものだよ!」

宗方(アンテナ)「『絶望』があるから『希望』がある。『絶望』と『希望』は紙一重。どちらもお前がさっき言ったことだ。天願和夫、貴様は自分で自分を否定している!」

天願「青いのう。苗木くんは元より、宗方くんものう。絶望と戦うためなら手段を択ばんだのと言っておいて、後一歩のところでは一線を超えることを躊躇う。そんなんだから『絶望』に勝てないんじゃ」

苗木「そうじゃない! 後一歩のところで踏みとどまったからこそ、宗方さん達は絶望的な世界とも戦ってこれたんだ! 安易な希望に開き直った貴方とは違う!」

天願「青い青い青い青い青い青い青い青い青い青い! 洗脳じゃ! この世界を希望に染め上げるには洗脳こそが一番の最適解なんじゃ!」

宗方(アンテナ)「いい加減にしろ! カムクラプロジェクトの次は洗脳だと!? お前たちはどこまで人の心を馬鹿にするつもりだ!」

天願「ふっ。どうやら平行線のようじゃな。であれば力ずくで従わせるのみ!」シュタッ

十六夜「む、暗器か!?」

逆蔵「往生際の悪い爺だ!」

宗方(アンテナ)「逆蔵、十六夜。手を出すな。俺がやる」シュッ

天願「ぬぅぉぅぅぅぅぅううううううううううううううう!」

宗方(アンテナ)「はぁぁああああああああああああああッ!」

天願「…………ふ、はははは」

宗方(アンテナ)「………………」

天願「腕を上げたのう、宗方くん」ゴフッ

宗方(アンテナ)「貴方が、鈍ったんだ。腕も心も」

天願「そう、かもしれんなぁ。長生きは、するもんじゃないのう」ドサッ

朝日奈「こ、殺しちゃったの」

宗方(アンテナ)「いや。致命傷は避けた。気絶しているだけだろう」

グレート・ゴズ「すみません。私の責任です……会長のボディーガードだったのに、会長の乱心にまるで気付けず」

宗方(アンテナ)「それを言うなら俺だって雪染が絶望に落ちていたことに気付けなかったんだ。お前だけのせいじゃない。きっと俺達全員になにかしらの責任があったんだ」

苗木「そう、ですね」

宗方(アンテナ)「……逆蔵。ブレイカーを落としてくれ。終わりにしよう」

逆蔵「おう」

苗木(逆蔵さんがブレイカーに手をかける。ボクは霧切さん達と一緒に希望ヶ峰学園を『卒業』した時のことを思い出した)

苗木(あの時、扉の先には『未来』がボク達を待っていた。じゃあ『未来』の先にはなにが待ってるんだろうか)

宗方(アンテナ)「分かり切った答えだな」

苗木(宗方さんと目が合う。どうやら宗方さんにはボクの考えていた事なんてお見通しみたいだ。ボク達は声を揃えて言う」

宗方(アンテナ)&苗木「――――希望だ」


苗木(それからのことを語ろうと思う)

苗木(まずコロシアイゲームが終わって直ぐ、ジャバウォック島にいる七十七期生の先輩達が全世界にメッセージを発信した)

苗木(内容は自分達がコロシアイの黒幕だと自白するもの)

苗木(もちろん彼等は黒幕じゃない。だけど未来機関のリーダーである天願さんが黒幕だと、世界は確実に混乱することになる)

苗木(だから先輩たちは自分から泥を被ってくれたんだろう)

苗木(そして数か月後。僕は復興した希望ヶ峰学園の学園長になった)

苗木(大変なことばかりだけど、霧切さん達やあの十神くんもなんだかんだで助けてくれてる)

苗木(それに未来機関から黄桜さんとグレート・ゴズさんが教師として赴任してくれることになった。だからきっとなんとかなるだろう)

苗木(天願会長は表向きには病気のため会長職を引退ということになった。だけど病院に搬送されて三日後に自ら命を絶ったらしい)

苗木(それが天願会長なりのケジメなのか、それとも未来を絶望しての自殺かは分からないけど、グレート・ゴズさんによると死に顔は穏やかなものだったらしい)

苗木(忌村さんと万代さんは今も未来機関で自分の才能を復興に役立てている)

苗木(安藤さんは未来機関を辞めて、自分のお菓子屋を開店したそうだ。十六夜さんは勿論安藤さんと一緒で、結婚式の招待状が学園に届いた)

苗木(取り敢えず末永くお幸せに)

苗木(御手洗さんは未来機関を辞めて、日向くんが目覚めさせた他の七十七期生の先輩たちと一緒にジャバウォック島へ行った)

苗木(驚いたことといえば、月光ヶ原さんの正体がロボットだったのが衝撃だった)

苗木(本物の月光ヶ原さんは既に殺されていて、コロシアイゲームが始まる前から入れ替わっていたらしい)

苗木(ロボットを操っていた『塔和モナカ』はこまるによると宇宙へ逃亡してニートになったとか。正直よく分からない)

苗木(そして宗方さんは――――――)

~雪染の墓~


宗方(アンテナ)「ちさ。苗木が希望ヶ峰学園の学園長になったよ」

宗方(アンテナ)「俺達の夢は自分では叶えられなかったが、希望は繋がったんだな。ほんの少しあいつが羨ましく思ってしまうよ」

逆蔵「おい宗方。そろそろ時間だぞ。苗木の野郎から入学式での挨拶頼まれてんだろ」

宗方(アンテナ)「早いな。もうそんな時間か?」

逆蔵「正確には五分ほどオーバーだな。一応スケジュールには余裕があるが、念のため早く着いてた方がいいだろう」

宗方(アンテナ)「そうか、今行こう」

雪染『――――――――――――頑張ってね、京介』

宗方「!」バッ

逆蔵「どうした、宗方」

宗方「いや、すまん。なんでもない。接合したばかりの手が少し気になっただけだ」

逆蔵「しっかりしてくれよ。未来機関の会長として後輩共にしっかり威厳見せねえとなんねえんだから」

宗方「分かっている」チラッ

雪染『……………………』

宗方「行ってくる、ちさ」

雪染『うん! 行ってらっしゃい、京介』



――――FIN――――

これにて完結です

こっそりネタバレ
宗方のアンテナの正体は雪染の幽霊

このSSまとめへのコメント

1 :  アラン   2017年01月18日 (水) 02:01:23   ID: MJL7m5dZ

何だか、救われた気持ちだよ

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