東郷あい「あちらを立てればこちらが立たず」 (72)

18禁かつ若干もどかしい内容になっておりますのでご注意ください




アウトロの余韻がレンガ造りの壁に染み入ってゆく。
静寂の三秒前、そこここから控えめだが心地の良い拍手が起こった。

ぐるりと店内を見回せば、ゆっくりと拍手をする壮年の男性、目を閉じ聴き入るご老人、着飾ってはいるが気怠そうな女性、その女性にしか興味がなさそうな男、グラスを磨くバーテンダー。
バーでの過ごし方は皆それぞれだ。
本業の方のライブの歓声と熱狂とは比べるべくもないが、私はこの雰囲気が非常に気に入っている。

照明の絞られた店内では、ステージから一番遠くの席に座る連れの表情は分からないはずなのだが、彼の真摯な視線がありありと感じられた。

二呼吸の間拍手を受けさせてもらい、マイクを手に取る。


「ありがとう。このステージも次が最後の曲…」


言いながらこのバーのオーナーでもあるバーテンダーに視線を送る。


「最後はオリジナルの曲にしたいのだが…あぁ、お店の雰囲気を壊すような曲ではないことは約束するよ…」


数年来の付き合いのオーナーは「勝手にしろ」と言わんばかりの笑みをたたえて頷いてくれた。


「よかった。オーナー様の許可も出たな、フフッ…。曲名はあえて言わないでおこうか…。どういう曲なのか、耳だけで感じてみるのもまた一興だろう?」


戯言で本音を隠す。
耳だけで感じて欲しいというのも一演者としてはもちろん本心だが、肝心なことは別にある。
…この程度の不義理であればオーナーも赦してくれるだろう。


「……私の想いが届いてくれると幸いだ」


私の記憶が確かなら、彼にこの曲を聴かせるのは今回で2度目だ。
1度目のときは自己紹介がてらレパートリーの一つとして演奏しただけだったが、さて、彼は覚えていてくれただろうか…?

一番遠くの席を強く見つめてから、私はサックスに息を吹き込み始めた―――。



バックヤードで着替えと化粧直しを済ませて数十分ぶりに客席に戻ったのだが、テーブルの上は私がステージに立つ前と変わっていなかった。
どうやら私のステージ中、彼はおつまみにも飲み物にも手を着けていなかったらしい。


P「お疲れ様でした、あいさん。演奏、とっても良かったです」

あい「ありがとう。私もいつになく愉しかったよ」


なんの因果か、普段はアイドルとして煌びやかな世界に生きているが、ふとしたとき無性にこういう世界に浸りたくなることがある。
そんな欲求を発散させてくれるこの場所には本当に感謝しているのだ。


あい「好きに飲み食いしていてくれと言ったのに。まったく君は律儀だな、フフッ」

P「いえ…、あいさんのステージだと思うと、プライベートでもどうしても真剣になってしまって…」

あい「…そうだな。Pくんの熱い眼差しは感じていたよ。ただでさえ気分の高ぶるステージだというのに、君の視線のせいで体が熱くてしょうがなかった。私をこんなに興奮させて君は一体どうしようというんだい?」

P「んふっ!? あ、あいさん、またそんなことを言って…」


いつもの少しだけ際どいやりとり。
初めのころは面白いくらいにたじろいでくれたのに、最近では耐性ができてしまったのか、以前ほど賑やかな反応は見せてくれなくなってしまった。
それどころか…。


P「…ステージのあいさんが素敵すぎて目が離せなかったんですよ。出来ることならもっと間近で興奮したあいさんを見たかったなぁ…あはは」

あい「そ、そうか…それは流石に…困るな…」


それどころか、切り返してくることもある。
ジワリとした胸の奥のかゆみを努めて無視する。
ここが薄暗いバーで良かった。
多少顔色が変わったところで見咎められることはないだろうから。


あい「…で、では改めて、乾杯」

P「乾杯」


逃げるように乾杯で場を仕切りなおした。
グラスを軽く掲げて口をつけ、柄にもなく一気にカクテルグラスを空にしてしまう。


あい「んく、んくっ……ふぅぅぅ……」

P「あいさん、ペース早くないですか? そんなに強くないんですから無理しないでくださいね?」

あい「あぁ、大丈夫。これくらいなら、全然、大丈夫だよ」


とはいえ早速、胸が熱を持ち始めていた。耳もほのかに熱い。
皮膚の上に一枚薄い膜を張ったような感覚がある…だがこれを期待していた。
今日は彼に話したいことがあるのだが、いささか緊張する話なのだ。
私にもお酒の力を借りたいときはある。

あい「Pくん」

P「はい、なんですか…?」

あい「……………」


お酒で気を大きく装っても、それでもいざとなると、尻込みしてしまう。


P「あいさん…?」


いや、いつも通り、私らしくいこう。


あい「さっきの…最後の曲だが……」

P「ぁ………」


Pくんの顔から笑みが消えて、緊張の色を帯びる。
この反応はやはり覚えていてくれていたようだ。


あい「あれは…Pくんに向けて演奏した……。どういう曲か覚えているね?」

P「は、はい…」

あい「私の想いは、君に届いたかな…?」


初めて彼にこの曲を聞かせたとき、これはラブソングなんだと説明した。
『サックス吹きが愛しい人に贈るとしたらどんな曲になるか?』をコンセプトに作曲したんだと。
もっとも、作曲当時はこんな風に実際に使うことになるとは露程も思わなかったが。


P「………」


彼は目を瞑って一度深呼吸し、決心をしたように目を開く。
いつの間にか胸を叩く心臓の音がうるさいほどになっていた。






P「あいさん…ごめんなさい。俺はあいさんの気持ちを受け取ることが出来ません」






あい「………」


あい「…?」



可笑しい。
Pくんの声量は十分であったと思うのだが、言葉の内容が理解できない。
この文脈で何故そんな言葉が出てくるのだろう。
日本語によく似た別の国の言葉だったのかな?
まったくもって可笑しい。


あい「す、すまない、Pくん…よく聞こえなかった…」

P「……俺はあいさんの気持ちに応えられません。ごめんなさい…」

あい「ぇ…………っ」


聞き間違いでも、外国語でもない。
拒否。

何故だ?
私の見込みでは…そう見込みだ、期待なんかじゃない。
『~だったらいいな♪』なんていう都合のいい期待なんかじゃなく、私と彼との関係を客観的に評価した上での見込みでは、承諾の答えが返ってくるはずだったのだが?
何故だ?
何故だ?


あい「なぜだ!?」


P「あ、あいさん…っ?」


驚いた顔のPくん。
気付けば水を打ったように静まり返ったバー。
他の客からの視線を感じる。ひそひそ声もする。
どうやら、自分で思ったよりも大きな声を出してしまって注目の的になってしまったらしい。


あい「ご、ごほん…失礼…」


わざと気障ったらしくグラスを掲げて見せ、なんでもないというアピールをして、どうにかバーの雰囲気を回復させる。
しかし、頭の中は乱れっ放しだ。

彼に恋人がいないのは周知の事実。
私がPくんにスカウトされてからというもの、他の誰よりも長い時間を一緒に過ごしてきたし、最近では際どいジョークを言い合えるほどに気心が知れている。
彼には私の他にも担当する子がいるが、公私に関係なく彼が一番気にしているのは私のことだという自負もある。
それに彼が私に熱の籠った視線を送って来ることがあるのは絶対に私の勘違いではない。
しかも彼は、アイドルの恋愛に関しても『露見しなければ良いのでは』というスタンスの人間だったはずだ。
何故なんだ?


あい「理由を…聞かせてくれないか…?」

P「そ、それは……」

あい「君と良い関係を築けていると思っていたのは私だけだったのかな…?」

P「俺も…っ! そう…思っています…。他に好きな人がいるとか、あいさんがダメだとか、決してそんなことではないです…。俺だってできることなら…できるなら…あいさんと……い、いえ……とにかく、全部俺の個人的な理由のせいで、あいさんの想いに応えることはできないんです………ごめんなさい」

Pくんが何か聞き捨てならないことを言ったような気もしたが、三度目のごめんなさいに完全に打ちのめされてしまって、それどころではない。

あい「ぁ…はぁ…はぁ……」


体に力が入らない。
胸がズキズキと痛む。
高山にいるように頭がクラクラする。
顔の表情が勝手に変わっていく…あぁなんてことだ…私は今涙を流そうとしているのか…!?



あい「く……っ!」


流石に失恋して涙を流すなんてみっともないところは彼には見せられない。
体に残る力をかき集め、どうにか白々しい笑顔を作って口を開く。


あい「あ、は、は、は…。み、見事に振られてしまったなぁ…」

P「あいさん…」


あい「振った張本人の慰めなんていらないよ……。そうだ…今日はとことん飲んでやろう…もちろん、Pくんも付き合ってもらうよ? フフッ…」

P「わかりました…。ただし、潰れるまで飲んじゃ駄目ですよ…?」

あい「あぁ…大丈夫だよ、大丈夫……」



胸の痛みはまだ引かない。
酔えばこの痛みを和らぐだろうと信じて、またグラスをあおった。






「らいじょうぶ…うん…らいじょうぶだから…」

「どこがですかっ!? あぁもう言わんこっちゃない! すみません運転手さん、コレで10分間だけ待っていてもらえませんか? 彼女を部屋に送っていったらすぐに戻ってきますから」


おやおや…最近のアスファルトはこんなに柔らかいのか…脚が沈み込んで抜けないぞ、困ったものだなァ…。
なんだこの地面、急に立ち上がって私に迫ってくるぞ…?


「あいさん!? 危ないっ!」


  ぼすっ


「んぷっ……? あぁ…あららかいなぁ…」

「ふぅ…よかった…あいさん? どこも怪我してないですよね?」

「はいはい…あいさんはげんきらぞ…そんにゃことより…このくっしょんがとっれもきもひいいんら……いいにおいもするひな……すんすん…」

「いや、あいさん!? 嗅がないでください! ほら、しっかりして! あいさん!」

「ゃぁぁああ…いくなぁぁくっしょんん…わらひのくっしょんんんん~~」


クッションの分際で勝手に動いて私から逃れるとは良い度胸だ…それにこのクッションは顔もついているらしいな…。
んん?コイツ…喋ってるぞ…???
よく見ればこの顔には見覚えが………。


「あぇ………?」


目の前にはこちらを心配そうにのぞき込むPくんの顔。


あい「………」


この数時間のことが走馬灯のように脳裡を駆け巡り、なぜ自分が前後不覚になるまで酔ったのかも完全に思い出した。


あい「ぁ…ぅぁ……」

P「あいさん…? 大丈夫ですか…?」


すぐ先の見覚えのある建物は私のマンションだ。


あい「すっ、すまない……もう大丈夫だ、一人で帰れるから…」


彼の脇を通り過ぎようと踏み出した右脚が地面に突き刺さり、あろうことかそのままズブズブと沈み込んでしまう。


P「あぁっ、ダメですって!」

あい「あ、あれ…?」


それは勿論錯覚で、膝に力が入らずただ膝を曲げてしまっただけだった。


P「……失礼しますっ」


Pくんに取られた左腕が彼の肩に掛けられ、右腰に回された腕に力が込められる。
彼の体に密着固定させられ、なんとか立ち上がることができた。


P「このままあいさんの部屋まで連れていきますね」

あい「あっ……す…いや…ありがとう…よろしく頼む…ぅ…く……」


さっき振られたばかりだというのに、しかも痴態といってもいい姿を見せつけてしまって、その尻拭いまでさせてしまっているのに、胸の甘い痛みを抑え込むことが出来ない。
なんという浅ましさだろうか…。
気恥ずかしさと自己嫌悪に顔が上げられない。



マンションのエントランスを抜けエレベーターホールへ。

胸は高鳴り続けている。
甘美な痛痒さ…。
しかしそれが許されるのも今夜までだ。
……。
正面からぶつかり玉砕した。
であれば明日からは、純粋に仕事上の良きパートナーとして振る舞うべきだ。
大人だものな…公私は分けなくては…。
そうだ…明日からは仕事のパートナーとして、こんな風に一方的に甘えることは許されない。
私は東郷あいなのだから。


  ぽーん♪


エレベーターに乗り込む。
鉄の箱に囲まれた狭い密室に私と彼の二人きり…。
あぁ、だめだ…。
脇腹と腕から感じる彼の体温。
鼻腔をくすぐる彼の生々しい匂い。
だめだ、だめだ…意識するな…意識してはいけないのに…。
明日からはもう彼にこんなに近づくことはなくなるんだ。
体で彼の温かさを感じて、汗の匂いを嗅ぐなんてことはなくなるんだ。
あくまで仕事のパートナーとして、一線を引いて彼と付き合わなくてはいけないんだ…。
男性としての彼は諦めなくてはいけないんだ…。


あい「………っ」


そんなの…。
そんなこと……。


  ぽーん♪


あい「……………できるわけがない」


口からまろび出た呟きは間抜けな電子音にかき消されてしまったらしく、Pくんがこちらを気にした様子はない。

彼にもたれ掛かりながら部屋の前までたどり着き、バッグからドアの鍵を取り出す。
その頃には胸の熱はそのままに、つま先から指先に至るすべての感覚が研ぎ冷まされていた。


あい「す
まないが、ベッドまでお願いできるかな?」

だが、浅ましい演技を続けよう。


P「は、はい…。寝室はどちらに?」

あい「あっちだよ…」


廊下の先の正面のドアを指差す。
ドアを進めばリビングで、さらにそこからもう一つドアをくぐればそこが寝室だ。


P「っと……じゃあ、下ろしますね」


まずは私をベッドに腰かけさせようとしてくれているのだろう、ベッドを背にしたまま二人して少しずつ腰を下ろしていく。
彼は私が勢いよく倒れ込んでしまうことを危惧しているのか、ベッドと腰の距離に注意を払っており、彼の表情を観察する私の舐めるような視線に気付いていない。
…好都合だ。


あい「……P…くん…っ!」

P「えっ!?ちょっと…っ!?」


  どさっ! ぎし……っ!

Pくんの不意を突いて彼をベッドに押し倒すのは実に容易かった。
すかさず鼻先同士が触れ合うくらいの間近に顔を近づける。
…近づけて彼の動きを牽制するつもりだったのだが…。


あい「ん…ふっ…ちゅっ…ぇぁむ…んくっ…」

P「んんんん~~~~~っ!!??」


近づく瞬間に誤って唇同士が触れてしまったことで、私の箍が外れてしまった。
経験などほとんどないのに…いや、ない故に衝動に身を任せ、彼のことなどお構いなく一方的に唇を奪ってしまう。
思考もクリアになっていた筈であったが、実のところ私にはそれほどの余裕はなかったらしい。


あい「ちゅぷ………んっ…はぁっ!はぁっ、はぁ……あぁ…いけない…いけないよ、Pくん…」

P「んぐっ!?あっ、あいさんっ!一体なにをっ!?」


想い人の責めるような視線をゼロ距離で浴びながらも興奮が収まりそうもない。


あい「無理なんだよPくん…。振られたからって君を諦めるなんて無理なんだよ…っ」

P「そんな…!? こ、こんなの…あいさんらしくないですっ!」

あい「…いや、これが私だよ…フフッ」

あい「…私は…これまで欲しいと思ったモノはなんだって手に入れてきたんだ。なんだって、だ…。はぁ、はぁ…Pくんだって必ず手に入れてみせる…はぁぁむっ…んちゅぅ…」

P「んぁんん゛ん゛~゛~゛~゛!!??」


彼の後頭部を掻き抱きながら、再び唇を奪う。
押し付ければ押し付けるだけ背骨が甘く痺れていく。
擦り付ければ擦り付けるだけ、しかし、物足りなくなってくる。


あい「はぁぁ…堪らない…。あぁ…Pくん…Pくん…」

P「だ、だめです…っ。お願いです…こんなことやめてください…」

あい「無理矢理なのは申し訳ないと思う…だが悪いようにはしないと約束するから…任せてほしい…」


口の中までは許してくれないが、どうやら彼に私を押し退けるつもりはないらしい。
であればと、一旦上体を起こし自らのジャケットとブラウスを手早く脱ぎ捨てる。
露わになるお揃いのブラ。


P「…だめです…それ以上は…」


彼の制止を無視して背中のブラホックに手を掛け、あっさりと外して乳房を彼の前に曝け出した。
だめだ、などと言いながらも、両方の先端に痛いほどの視線を感じることに羞恥とともに喜びを感じてしまう。


あい「フフ…どう、かな…? 形と色には自信があるのだが…」

P「……あぁ…くそ…やっぱり…だめなんだ………」

あい「?」


Pくんがどこか意気消沈してしまったようにも見えるが…彼も緊張しているということだろう。

体を折り、彼に抱き付く。当然、意識して胸を押し付ける。
顎にキスをし、首を甘噛みし、鎖骨を唾液で濡らす。
少しづつ下へ…。
彼を抱きしめた腕を解き、手のひらで胸を摩りながら脇腹を押し、腹筋の硬さを味わう。
もっと下へ…。
意味ありげに、下へ…。

スラックスのベルトに手が触れたところで一度彼の顔を見やると、彼もこちらを見ていたらしく目が合った。
自分から動くことはしないが、逃げもせず、拒むでもない。
その彼の態度に、なし崩し的にではあるにせよ、受け入れられたと思ったんだ…。


あい「どうやら覚悟を決めてくれたようだね…本当に嬉しいよ…」

P「あいさん…だめだ……っ」

あい「フフッ……では……」



そうして、彼の股間へ手を伸ばし……






  ふにょん




あい「…………ぇ?」


全く予期していなかったその柔らかさに、私が今何をしているのかが分からなくなってしまった……。


  ふに ふに 


あい「あ…あれ……?」


  さわさわ さわさわ ふよん


あい「これは…いったい…?」


試しに周辺を触ってみても、上にも下にも左右にも硬くて大きなモノはなく、あるべきところにはやはり柔らかいままのモノがあるだけだった。
まだ『成長途中』だとかではない。
熱が全く感じられなかった。


あい「Pくん…これはいったい、どうしたんだ…?」


簡略的ながら十分に官能的な愛撫だったはずだ。
容姿にも自信がある、肌も晒している。
にもかかわらず、兆しさえ皆無であるというのは私の知識上あり得ないことだった。


P「…だから、だめだって…言ったじゃないですか…俺は…だめなんですよ…」


自分の腕で顔を覆った彼が呟く…。
その声は消え入りそうなほど小さく、それにもかかわらず悲しみの音色が支配していることがはっきりと分かってしまった。



あい「P…くん……?」



P「お、俺は………インポなんです………ぅっ…くっ………」




腕の隙間から一筋の光が流れ落ちた。
一体全体何が起こっているのか?
いんぽ?
いんぽといったのか、Pくんは。
あのインポのことだろうか?
しかし、それは彼のような健康な男性が罹るものだったのか?


あい「い…いんぽって……?」

P「お、オナニーはできるんです…で、でもいざ誰かとするとなると勃たないんですよ! 勃起できないんです…っ」

P「愛する人を抱けないなんて…こ、こんなに…こんなに惨めな思いをするくらいなら…恋人なんて…いらないっ!いや、俺みたいなふ、不能が!あいさんの恋人になんてなっちゃいけないんですよっ!!」

あい「ぁ……っ」


愛…、愛してくれているのか?
恋人の行為ができないから、愛していても私を慮って身を引こうとしている?
そんなこと…っ!


あい「そんなこと気にしなくていいっ!私は別にできなくたっ」

P「できなくてもいい、なんて、言わないでくださいよ?」

あい「っ!?」

P「初めはそう言ってくれても…すぐに、すぐに……っ!なんでこんな当たり前のことがってっ!愛想を尽かされて…っ!うぅぅっ……」


女である私には男の、しかも、その中でも少数の特有な悩みを本当の意味で理解することはできないのかもしれない。
そして彼が辛い思いをしてきたのは事実なのだろう。


だがしかし。

しかしだ!


Pくんからそんな程度の理由で去っていったような女どもと私を同列に語られるのは心外だ!
我慢できないほどに腹立たしい!

なんていうことだ、Pくんよ。
君は案外私のことを知らないんだな…。
おっと、それは私もだったか。
彼がこんな悩みを抱えていたなんて想像だにしなかったからね。


そうか…お互いまだ知るべきことがあったと、ただそれだけのことだったのか…フフッ。



あい「Pくん」

P「………なんですか、あいさ」

あい「んちゅぅ…はぁぁっむゅぅ…ちゅぅちゅレぉ♥」

P「はぁんん゛ん゛!!???」


彼の私への気持ちが分かった以上、もう何の憂いもない。
遠慮もしない。


P「んぐっ…な、なんなんですか!?俺の話を聞いてましたか…っ?」

あい「はーっ、はーっ……Pくんの…その…イ、インポは…もう治らないのか?」

P「………いえ…医者にも原因は精神的なものと言われていますので…治る可能性はあるらしいです…」

あい「そう…か…ちなみに、精神的というのは?」

P「俺は…怖いんです…。拒絶されるのが、落胆されるのが、振られるのが…。そういった恐怖感がストッパーになっているみたいなんです…」

あい「ほう…ならばどれだけ私がPくんに夢中かを伝えて安心させてやればいいのかな…?」

P「はぁ…? まぁ……要するに、たぶん、そういうことですが……」


言葉にしてしまえば簡単なことに思えるが、本質的にはトラウマの克服だ、実際は難しいのだろう。
だが、可能性がゼロでなければ何も問題はない。


あい「Pくんは否定するかもしれないが敢えて言おう、私は別に君と性交できないとしても構わない!」

P「はは……気持ちは嬉しいですが、言うだけならどうとでも言えますからね……」

あい「とはいえ!できるなら、それに越したことはないと思ってしまう。だから…」

P「……」

あい「あ、そうだ…今日はウチに泊まっていくかい?」

P「ぇ? いえ…帰ります。帰らせてください…」

あい「そうか…。まぁ、今日はそれで良いだろう。だが、明日からは……フフッ…」

P「?」


久方ぶりの難題に胸が躍る。
脳内では解決のための手だてが既にいくつも浮かんでいた。


P「…あの、あいさん…そろそろ胸を隠してください」

あい「ん?」


言われて視線を下方に落とすと露わになったままの乳房が二つ。
Pくんは気まずそうに目をそらしていた。


あい「おっと失敬…」


すぐにブラへと手を伸ばしたが、はたと気付く…。


あい「別に恋人になら見られても構わないよ? ほら…好きに見ていいぞ…?」

P「こ、恋人って…?」

あい「お互い愛し合っていることを確認できたんだ、これはもう恋人という他ないだろう?フフッ」

P「んんん…? ぁぁもう…それでいいです……」


多少投げやりだったのは気に入らないが、言質も取れたことだしOKとしようか。


P「でも…恋人だからって、恥じらいが無くなると見飽きちゃいますよ…?」

あい「な…っ!? み、見るなPくん!」

P「はいはい、あいさんの裸なんてそうそう見飽きたりしませんよ…」


流石は私が見込んだ男だ。
ついさっきまで泣いていたのにこの私に一杯食わせるとは、やるじゃないか。


P「ははは…では、帰ります。おやすみなさい、あいさん…」

あい「あぁ、おやすみ、Pくん。また明日からよろしく頼むよ」


玄関まで行こうとしたが、下着姿だからと遠慮されてしまったためベッドから彼を見送った。




それにしても今夜は想定外のことが起こり過ぎた。
顔の表情が定まらない。ニヤケていいのか、困ればいいのか…。

ベッドに仰向けに大の字になって深呼吸してみれば、下腹部に重い熱がまだ渦巻いていることに気付いた。
彼に好き勝手口づけをして肌まで晒したのだ、無理もない。


あい「フフッ…明日から愉しくなりそうだ……………んっ♥」



―――――
―――




どれだけ衝撃的なことがあっても朝が来れば出社しなければならない。
幸いにも昨日の酒は残っていない。
睡眠時間は十分とは言えないが、それはいつものことだ。
今日の予定はほとんどルーティンワーク、つまり半分寝ていても務まるような楽な日。
にもかかわらず、重要なプレゼンがある日よりも社屋に入る足は重かった。


P「はぁ……」


どんな顔をしてあいさんに会えばいいのか?
想いを告げられて、振って、半ば襲われて、インポがばれて、それでもなぜか恋人になれてしまった。
……意味が分からない。
男前な彼女にふさわしいプロデューサーたろうと、積み上げてきたものが跡形もなく崩れ去ってしまった気がする。
あいさんとのこれからの付き合い方はどうしたらいいのだろうか?どうなるのだろうか?
昨夜から相変わらず空転しっぱなしの思考にうんざりしながら、事務所のドアを開いたのだが…。


「やぁ、来たね。おはよう、Pくん」


俺を出迎えたのは今一番聞きたくない声だった。


P「あいさん…っ!?」


彼女の今日のスケジュール的に、たとえ顔を合わせる機会があったとしてもそれは午後以降だろうと高をくくっていたところへの不意打ち。


あい「フフッ…」


あいさんがはまぶしいくらいの満面の笑みを浮かべながら、椅子から立ち上がる。
よく見れば彼女が座っていたのは俺のデスクの椅子だった…。
既に出社していた数名の同僚も、朝にふさわしくない快活な美声に何事かと顔を上げている。

モデルのようなこなれたキャットウォークで一直線に俺へと近づいてくる麗人。
嫌気がさすほどに面白みのない事務所がいつのまにやら、煌びやかなランウェイへと変貌していた。


P「ぅ…ぁ……っ」


入り口で立ち止まったまま思考停止して微動だに出来ないでいる俺を余所に、あいさんはどんどんと距離を縮め、縮め…縮め…!!


  ぎゅうぅぅ~~~


P「!!!????」


俺の足元に至るまで歩み続け、そのままぶつかるように彼女は抱き着いてきた。
頬を撫でる黒の艶髪から漂うかぐわしい香り。
華奢なくせに柔らかいという半矛盾。
融けてしまいそうなくらい心地の良い彼女の体温。
ショートしっぱなしの貧弱な脳みそ。
ざわつく同僚たち。


P「あっ…いさん……?」


かろうじて動いたのは口だけ。
その問い掛けも彼女は意に介さずゆっくりと一呼吸し、顔を上に向ける。
彼女の吐息が俺の耳をくすぐるのと、俺にしか聞こえない小さな甘い声で囁き始めたのは同時のことだった。


あい「Pくんは昨夜はよく眠れたかい?私はぐっすりだったよ。
  今朝ほど目覚めの良い朝は生まれて初めてだった。Pくん…会いたかったよ。
  フフッ、昨日も日付が変わるまで一緒にいたというのに、早く会いたくて仕方なかったんだ…。
  なんせ君と恋人同士になれたんだから…。
  それで居ても立っても居られずにやることもないのに来てしまったんだ。
  いや、やることはあるな…こうして君に抱き着くことが出来る。
  …そうだ、今日は私の仕事の時間までずっとこうしていて良いかい?
  なぁ、良いだろう?仕事の邪魔はしないから…フフッ、大丈夫だよ冗談さ。
  あぁ~Pくん…今日も素敵だよ」


P「」


あい「でも、こんなに君を近くに感じていると…ぁ…やっぱり…いけないな…
  昨日三回もしたっていうのに…いや、三回もしたからかな?
  Pくんを見ると反射的に下腹部が疼くようになってしまったのかもしれないね…」


P「」


あい「朝の挨拶はこれくらいにして…私はこれからお花摘みに行こうと思うんだが、Pくんはどうする?
  一緒に来るかい?あぁ、多目的トイレの方だよ?
  私が処理するのを見てるだけでもいいし、手伝ってくれてもいいし…それとも…」


  さわっ…ふにょっ


P「」


あい「フフッ…想定内さ。むしろこれで硬くなっているようなら張り合いがない。
  まだまだ始まったばかり…所謂あいさつ代わりのジャブだよ」


P「」


P「」



P「…ハッ!?」



あいさんの囁きが一段落したらしく、耳にかかる吐息が無くなったことで意識を取り戻すことができた。
もしかすると心臓が止まっていたかもしれない。
相変わらず抱き着いたままのあいさん。
怪訝な視線を送って来る同僚たち。
出社と同時に担当アイドルに抱き着かれているという状況。
…どう見ても常軌を逸している。
朝一だというのに、冷や汗が背中をぐっしょり濡らしていた。
もう力技しかない…。


P「あ、あぁぁ~~、ド、ドラマの演技の練習ですねぇ~~。演技の練習、演技の!練習っ!いきなり演技の練習始めちゃうんだもんなぁ~~び、びっくりしちゃいましたよ~~」

あい「………フフッ」

あい「で……どうだったかね?私の演技は」

P「そ、そうですねぇ……反省会をここでやると、他の人のお仕事の邪魔になっちゃいますから……か、会議室に行きましょうか。会議室!さあっ!ほらぁっ!早く…っ!」


  チッ ナンダヨ ドラマノ レンシュウカヨ ツマンネーナァ
  マンガイチニモ トウゴウサンガ アイツニ トカ ソンナワケネーヨナ
  サッ シゴト シゴト~~


あいさんの普段の素行の良さのおかげか、強引すぎる誤魔化しはなんと通ったらしく、同僚たちの興味は目の前の仕事に戻った。
そのことにひとまずは胸をなでおろし、彼女を連れ近場の会議室に入り込む。
そして開口一番…。


P「こらーーーーっ!!!」


  ぽこん


あい「ぁうっ」


叱責の言葉とともに、蟻も殺せないようなやわらかチョップを脳天にお見舞いした。


P「あなたはっ!痴女ですかっ!?」


  ぽこっ

あい「ぅくっ」

P「朝っぱらから事務所で抱き着いて耳元で囁いて…あまつさえ…あまつさえ!!チ…股間を撫でるとかっ!あなたはっ!痴女なんですかっ!?」


  ぽこん

あい「んっ」

P「ふぅ~~ふぅ~~ふぅ~~」

あい「大丈夫だ、問題ないよ。誰からも見えない角度で触ったからね?そこは抜かりないよ。フフッ」


  ぽこんっ


あい「ぅぁん」

P「見られてないならOKって、それまんま変態の論理ですから…」

P「はぁ~~…………あいさんがあんなことをするなんて…なんでこんなことに…」


とりあえず言いたいことを吐き出すと脱力してしまい、がっくりとうなだれてしまった。
あいさんは俺が叩いた頭を形容しがたい表情で撫でている。これは彼女のニヤケ顔なのだろうか…。


あい「意外だったかい?でも、私にとってはいつも通りだよ?」

P「はぁ…?」

あい「目的を達成するために最善手を選択しているに過ぎない。…まぁ、昨日の今日で少々抑えが効かなかったのも事実だが…不快だったかい?」

P「そ、それは…」


あいさんほどの美女に抱き着かれて耳元で囁かれるなんて、普通の男なら歓喜するだろう。ひょっとすると、それだけで射精する奴もいるかもしれない。
生憎、俺にとっては背筋を多少震わせる程度で、やはり下半身の性感には繋がらなかったが。
彼女の匂いと柔らかさと温かさを思い出す…。
あれが不快な筈がない。


P「不快なわけないじゃないですか…。いえ…俺のためを思ってあいさんがしてくれることなら…なんであれ嬉しいですよ…」



そうだ…。
なんだかんだと言いながら俺は嬉しいんだ。
もう何年もセックスできていない。
風俗でもだめ。
これはもう本当に一生無理かもしれないと、ほとんど諦めていた。
あいさんへの想いもずっと秘めたままにしようと思っていた。
それがこの展開だ。
もしかしてあいさんとならば…。

………。

そのときようやく、昨夜のこととこれからのことが俺の中で整理できたような気がした。

P「俺は…実のところ…嬉しいです。あいさんの恋人になれたことが…。あいさんが俺のことを考えてくれるのが…」

P「あいさんとなら…俺も普通に戻れるのかもしれないと期待もしています。あぁ…俺、最低ですね。そんなにヤリたいのかって話ですよね…」

あい「……」

P「でも、どうかお願いします…。どうか俺を助けてください…。俺を…見捨てないでください…」


なんというみっともなさだろう。
自分よりも年下の女性に助けを請い、捨てないで、などと。
しかもそれが心の底からのまったくの本心なのだから。


あい「承知した! いや、承知している!」


自己嫌悪に飲まれる数瞬前に、しかし、彼女はあっけらかんとそう言ってくれた。


あい「昨日も言ったが、私だってできるならしたいさ。だからお互い様なんだよ。キミは安心して私に魅了されればいい。フフッ」

P「あぁ…あいさん…ありがとう…」


  ぎゅうぅぅ…


あい「ぁ……っ」


やっと自分からあいさんを抱きしめることが出来た。
心なしかさっきよりも彼女の体温が高い気がする。

安心する…。
ここ何年かは人を抱きしめたところでインポのことが気になり、むしろ不安になっていたのだが。
ハグがこんなにも心地よいものだったということをようやく思い出した。

あぁ、だけどこれは言っておかないと…。


P「あの…人目のあるところでは、さっきみたいなのはダメですよ…?」

あい「分かっているよ…フフッ」

あい「Pくんへの誘惑は続けていくとして…、それとは別に次のオフだが、一緒に過ごすのはどうかな?」

P「ええ、喜んで」




―――――
―――




あいさんとプライベートで外出したことはこれまでにも何度もあった。
恋人になったからといってその内容は特に変わったりすることはなく、お互いの興味のある場所へ何か所か訪れ、最終的にいつものバーにたどり着く。
これまでと違うのは、バーを出た後に解散とならないこと。
特に示し合わせたわけではないが、自然な流れで俺のマンション前で一緒にタクシーを降り、彼女を部屋に招き入れた。


あい「思ったよりも片付いているみたいだね…フフッ」

P「えぇ、昨日掃除しましたから」

あい「なるほど…君は昨日から私を連れ込む気満々だったというわけだな」

P「うっ…」


してやったりといったようにニッコリ顔の麗人と、図星を突かれ汚い笑いでごまかすしかないみっともない男…。


P「そ、その通りでございます…。今日のために手に入れていた良い紅茶がありますので、じゅ、準備してまいります…」


見透かされた恥ずかしさに居たたまれなくなって、彼女をリビングに残し逃げるようにキッチンへ向かった。

紅茶を用意して戻ると、彼女は上着を脱いで淡い色のワンピースのみの姿になってソファに掛けていた。
平静に戻りかけていた胸の裡が別の意味でまた軽く跳ねそうになる。


P「はい…どうぞ…」

あい「ありがとう、頂きます」

あい「……良い香りだ…んく……うん、美味しい…」

P「あぁ、良かったです。ごくっ…お、我ながらなかなかの味…」


俺もカップに口を付けながら彼女の隣に腰かけた。
何を話すわけでもなく微笑み合いながらこくこくと紅茶を飲む…。
カップの残りが少なくなってきてようやく部屋がしんと静まり返っていることに気付いた。


P「あ、テレビでもつけましょうか…」

そう言ってテーブルの上のリモコンに伸ばした手にあいさんの手が重なる。

あい「いや…それよりも音楽の方が良いな…」

P「…そ、そうですね…じゃあ…」

テレビのリモコンを掴もうとしていた手を、そのまま同じくテーブルの上のオーディオのリモコンに伸ばし操作する。
トラックを何曲分か送りゆったりとしたジャズを出し、音量を調整するまで彼女の手は俺の手に重ねられたままだった。
そしてその操作中、顔に彼女の視線を痛いくらいに感じていた。
あいさんの顔が近くにあり過ぎて、逆にこちらから彼女の方へ向き難い。
リモコンをテーブルに置き、妙な緊張感を感じていると…。


あい「…ん、ちゅ」

P「あっ…」


彼女の顔が更に近づく気配とともに、頬に柔らかいものが当たった。
頬と耳の間に微電流が走る。


あい「……フフッ」


たまらずあいさんに顔を向けてみれば悪戯っぽい笑みを見せてくれる。
心臓を優しく握られたような心地の良い息苦しさに、また彼女に一段と惚れてしまったことに気付いた。


あい「……どれ、私の為に部屋を掃除しておいてくれたPくんに感謝して、マッサージでもしてあげよう…」

P「え? マッサージですか…?」

あい「まずは…手からだな…」


右手があいさんの両手に取られ、人差し指を握られる。


あい「ん…んっ…♪」


  ぎゅぅぅ~~……すぽっ


握られた人差し指が絞られるように圧迫され、そのまま引っ張りながらするっと離される。


P「あ…気持ちいい……」


次は中指に同じことをされる。
そして、薬指、小指、親指…。
指先に淀んでいた血液が循環し始めているように感じられる。

5本の指を圧迫し終わると手のひらが揉みこまれていく。


  ぐにっ ぐに ぎゅぅ くにっ


あい「ここは肝臓のツボ…こっちは…腎臓だったかな…ん♪」


単純な圧迫にも関わらず気持ちがいい。
彼女の指の力ではどう揉まれても気持ちよくにしかならなさそうだ。

あい「よし…こっちの手はこのくらいかな…」


手のひら全体が満遍なく揉み解されると、彼女の手が止まった。
次は左手かと期待したところで、右手が彼女の口元まで持ち上げられ…。


あい「んっ♪ ちゅ、ん、んちゅ♪んっ、ん♪」

P「ぁ……っ」


手のひらと五本の指にキスをされた。


あい「ふぅ…左手を貸してもらえるかな…?」


俺の驚きも無視して何事もなかったように左手にも同様の指圧を加えていく。


  ぎゅぎゅぅぅ~~……すぽんっ
  ぎゅう~~ ぐにっ くにくにっ 
  もみっ ぐに ぐにっ ぎゅうっ……


あい「ふむ…こんなものかな…」


手のひらのマッサージが終わる。
ということはこちらの手にもキスが…と期待が高まり、彼女の唇に不躾な視線を送ってしまった。
彼女のキスを今か今かと待ち構える。
だが、彼女はそのまま動かない。


P「…はぁ…はぁ……ごくっ…」

あい「…………」

P「………?」

あい「そんなに物欲しそうな目をしてどうしたのかな?フフ…」

P「!?」


意地が悪い…。
期待させるようなことをしたのはそっちのくせに…。


P「……っ」


強がってみせようかという考えが浮かんだが、左手が既に求めすぎていて切なさを訴えているのを無視することはできなかった。


P「左手にも、その…き、キスを……」

あい「ほぅ…女にキスを強要するのか、君は…」

P「えっ? いや…そういうつもりじゃなくて……っ」

あい「フフッ……冗談さ」


ようやく左手があいさんの口元まで引き寄せられ、彼女の口づけが始まった。


あい「んっ♪ ちゅ、ちゅ、ちゅぅぅ…、ん♪、んんっ♪………ふぅぅぅ」

左手へのキスを終えた彼女はどこかうっとりとしているように見えた。
ほとんど無意識的に彼女の両手を自分の口元に持っていき彼女がしてくれたのと同様に、いやそれを遥かに超える執拗さで口づけを繰り返した。


あい「ぁ…ぅくっ…んっ…ふぁ……♥」

P「はぁっ、はぁっ、はぁ……んちゅ……っ」


あいさんが手指を満遍なくマッサージしてくれたお返しとばかりに。
手のひらも、指も、甲も、爪も、指先も、指の股も…。


あい「こ、これは…んくっ♥ 悪くないな……んっ、ふ♥」


もっとも、俺なんかのキスではまったく釣り合わないだろうが。


あい「はぁ、は
ぁ…ま、まだマッサージは終わっていないよ…?」

俺にされるがままになっていた両手が彼女の元に帰ってしまう。
それも束の間、彼女に促されるままにワイシャツを脱ぐと、俺の右手首が両手で握られ、揉み解しが始まった。


  ぎゅぅ さすさすっ ぎゅぅぅっ さわっさすさすっ むにゅぅ~~


手首から肘に向かいさらに肩を摩ると彼女の両手が離れる。
そして…。


あい「はぁ、はぁ…んっ、ちゅっ、ちゅ…んっ、んちゅっ、はっ、はぁっ…んっ♥」

P「ぅぁっ…くぅ…」


手にしてくれたのと同じように、腕に、肘に、肩にあいさんの唇が押し付けられていく。
彼女の唇が触れたところがじわぁっと甘く痺れ、一回ごとに胸の鼓動が早まる。


  さすっ ぎゅぅ ぎゅっ さすっ…


あい「はぁ、はぁっ…あぁ…はぁ…っ」


左腕へのマッサージは、初めの手のひらへのものと比べると随分と性急でぞんざいになっていた。
しかし、その代わりとでもいうように…。


あい「んんっ…はぁんちゅ…ちゅぅ~んっ♥ ん、んっ、んっ♥ んん~~~♥」


熱烈なリップサービスがより大きな満足感を与えてくれる。
左肩に長いキスをしてくれたあいさんとねっとりと見つめ合い、今度は俺が彼女の腕を取る。
手首の脈動が唇で感じ取れそうなほど強く押し当て、離すことすら億劫になってそのまま彼女の艶肌を遡上していった。


あい「ふっ…っぅあぁ♥ んふっ…くっ♥ んぁ…っ!」


肘を超えたあたりから、鼻呼吸で取り入れる空気にあいさんの匂いを強く感じ始める。
胸をズキズキと、首筋をゾクゾクとさせる甘い芳香…。


あい「ぅぁ…P…くん…鼻息が…んぁっ…荒い、ぞ……んっ♥」


両腕にキスをし終え、次を催促するように彼女を見つめた。
次はどこにキスをしたいのか?していいのか?


あい「はぁ、はぁっ…んっ、んっ…」

P「んくっ…く、首……っ!?」


首が左右から挟み込まれ、擦るようにしながら揉まれる。
咽喉仏を指先でくすぐられ、さらには鎖骨まで爪先に引っかかれた。
彼女の手が離れ
るとすぐさま抱き着かれ、首にしっとりとしたものを感じる。

あい「はぁっむ♥ ぇあんむっ…はぷ…んちゅうう♥」


最早キスなどという生易しいものではなくなり、ぴちゃぴちゃという音を立てながら、俺の首が舐られていた。
普段の凛とした振る舞いからは想像できないようなはしたない水音が彼女の口から響いている。
彼女の唇と舌と歯と唾液と音と香りのすべてが俺の意識に靄をかけていく。


あい「はぁーー♥ はぁーーっ♥ んっ…」


こちらのターン。
俺がやりやすいように顎を上げて、真っ白な細い首を見せつけてくれた。
いや、これは催促なのかもしれない。
それにしても人間の急所だというのに、なぜこんなにも華奢なのだろう?
しかもこの色、匂い、細さは、雄の視線を惹きつけ噛みつかれるためにそうなっているとしか思えない。
それがご丁寧に差し出されているわけで、本能的な衝動に抗う理由は何もなかった。


P「あぁぁぁんっぐ…」


  がぶりっ


あい「ぅあ…っ!? あっ、あっ♥ ………ぅぁっ♥」


極上のステーキにかぶりつくように、頸動脈ごと柔肌に歯を立て、コリコリとした筋繊維の感触を堪能する。
愚かにも男の前に弱点を晒した女は成す術もなく、身を捩らせることすらできないらしい。


あい「はぁぁっ……はぁぁーーーっ♥」


あいさんの嬌声がもっと聞きたくて、食いちぎるように頸肉を歯で引っ張ってみる。


  ぎりりりぃぃ……


あい「はぁぁっ!? まっ…そ、れはぁ……くぅっ!?」


食い込んだ上下の歯の間を肉がゆっくりと滑る。
肉筋をグチグチと嬲りながら、頸動脈をプチプチと潰しながら…。


  ぎりゅぅぅぅ………カツっ


あい「はぁんんんっ♥」


抉ること叶わず空振りに終わった歯が嵌合の音を鳴らした。
最後に一際大きく震えた彼女は、緩み切った躰を正そうともせず体重を預けてくる。


あい「うっ…はぁっ、はぁっ♥ んぅぅ…キミは…女の躰になんてことを……っ♥」


ついやりすぎてしまったのかと、首筋をよく見てみると歯が蹂躙したエリアは赤みが増していたが出血も内出血もなかった。


P「ぁぁ…良かった…傷はついていないです…でも…はぁ、はぁ…消毒しておかないと……んぁ…」

あい「…ぇ? いやっ、待つんだ。今は……!?」

れるっ…ちゅぷ…じゅるぅるぅ…ちゅるぅれりゅぅっ

あい「ふぅぅぁあぁぁ゛あ゛~~~っ♥」


赤くなっているところだけなんてケチなことはせず、首の可動範囲一杯を消毒液をなすりつける。
まさかこの消毒液が染みて痛むのだろうか?
せっかくゆっくりと動かしてあげているというのに、あいさんは苦しそうに荒い呼吸を繰り返していた。


あい「ぅぁっ、はぁ、はぁん、はぁ…っ♥ もぅぃぃ…も、もういぃからぁっ♥」


息も絶え絶えに懇願するような彼女の声が耳を犯し脳髄を痺れさせた。
あいさんの目は蕩けきっていて、躰は熱っぽく、胸から心臓の鼓動が伝わってくる。
わざわざ触れずとも彼女の秘所がトロトロになっているのが容易に想像できた。
女性を性
交可能にまで感じさせている事実は俺自身の胸の鼓動も早め、昂ぶりが熱渦を巻きながら下腹部へ向かっていく。

P「はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁ」


しかし、へそを超えたあたりで何かに散らされるように急激に減衰してしまい、熱は一切下半身には伝わらない。
下半身への道は断絶していた…。




P「……っ」


なんで…?

なんでそこが越えられない?


なんで!?


ほら見ろ!
こんな美女が目の前で喘いでいるんだぞ!?
彼女をこんなにしたのは俺なんだぞ!?
俺に身を任せてくれているんだぞ!?

ヤリたいだろ!?
ヤリたいに決まってる!


P「く………っ」

あい「ん……はぁ、はぁ……♥」


待て…。
良くない雰囲気だ…。
いつもの良くない感じだ…。
焦るな。
焦るんじゃない。
焦ったところでどうにもならなかったじゃないか。

じゃあ落ち着く?

バカか!?
落ち着いて勃起できるわけないだろ!!


あい「はぁ…はぁ……」


ほら!
勃てよ!
勃て!!
勃ってくれよ!!!
くそ!
勃て!!!
勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て!!!
勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て勃て!!!
お願いだから勃って!
お願いだ!
お願いだ…。
頼むから……。



P「……く……そ……っ」

あい「………」

なんでダメなんだろう…。
なにがダメなんだろう…。
なんで俺はこんなのになってしまったんだろう…。
なんて俺はダメなy あい「こーらっ」


  ぽこんっ♪


P「んぐっ?」


頭頂部への不意の衝撃に、意識が目の前の美女へと引き戻された。
以前俺が彼女にしたのと同じように、優しいチョップが俺の頭に乗っている。


あい「キミはせっかちだな…いや、真面目なのか…?」

P「…あいさん…ごめんなs」


 ぽこっ♪


P「ぐっ?」

あい「ん? 何か言おうとしたのかな?」

P「ごめn」


 ぽこん♪


P「う゛っ」

謝るなということなのだろう…。

P「いや…でも…」


あいさんは俺に無責任に濡らされて、不完全燃焼のまま終わってしまうことになるわけだが…。
他でもない俺の不能のせいで!
申し訳なさ過ぎて切腹したい…。
嗚呼、きっと今ならどんな短小野郎でも俺よりかはあいさんを良くしてあげられるだろう。
勃ったモノを入れて腰を振るだけなんだ。
短小でも一所懸命腰を打ち付けていれば、クリトリスもいくらか刺激されてそれなりに気持ちよくなるだr


  ぼごっ!!!


P「んぎっ!!??」


それまでの戯れとは次元の違う重い斬撃に、見えるはずのない火花が眼前にちらつく。
その射手はなぜかキョトンとした顔をしていた。


あい「おや、すまない。何かとても失礼なことを考えているような気がしてつい力が入ってしまった」

P「い、いえ! 俺は大丈夫ですっ!ありがとうございます!」


たしかに失礼すぎたし卑屈過ぎた…。
もう二度と考えるまい。
何より、次は首の骨が折れるかもしれないし…。


あい「まったく…」

あい「いいかい、Pくん? 君は一つのことだけを考えていればいい」

P「……はい?」

あい「君は私を愛していて、私は君を愛している。それだけを考えていればいい」

P「ぁ……」


恥ずかしい字面なのに、あいさんが言えば何故か格好良く響いてしまうのだからズルい。


あい「君は朝起きた時も通勤中も仕事中も食事中も帰宅後も就寝時もそして私といるときも、ただそう思っていればいい。なにせ事実だからな。そしてそれ以外のことは些末なことだよ」

P「それ……あはは…」


無茶苦茶だと感じつつも実際にそう考えることが出来たらと想像してみれば、暗闇の中に一筋の明かりを見つけたような安心感があった。


あい「フフッ…分かったね?」


誇張表現であることは承知しつつ、こくり、と頷くと何か綺麗なモノが胸にすとんを落ちてきて、淀み切っていた渦をあっさりと一掃してしまった。


P「はぁ……あいさん…」


そして早速胸にあるただ一つのことを口にする。


P「あいさん…愛してます…」

あい「私も愛しているよ、Pくん…」


どちらからともなく抱き合う。
そういえば、あれだけ躰に口づけし合ったというのに肝心なトコロにはまだしてなかったのではなかったか…?
あいさんを見ると、すでに目を閉じて俺を待っていてくれた。


  ちゅ…


小鳥が啄むような軽やかなキスだった。
でも今の俺たちにはそれでも十分で、また無心に抱き合う。



その後の眠るまでのほとんどすべての時間は抱き合って過ごした。



―――――
―――



  ずぞぞ! じゅぶちゅ くちゅうぷずずズズっ!!!


P「はぁひっ…はぁぁうっぅ…っ」


脳を直接啜られているのではないかと錯覚するほどの暴力的なヌメリと水音が右耳朶を嬲る。


あい「じゅりゅるるっ……ぁはぁぁ…んくっ…苦い…♥」


すぐ背後であいさんが軽く喉を鳴らす音に申し訳なさと愉悦を1:9の割合で感じる。
決してきれいなものではないのに、なすりつけた唾液なんてそのままにしておけばいいのに、俺の耳の穴に塗布したのを聞こえよがしに啜って嚥下までして俺という存在を肯定くれる彼女が愛おしい。


あい「さては、何週間か前に私が掃除してやってからほったらかしにしていたな? いけない子だ……はぁぁっむ…ぇれるぷっ♪ぶずずずっ♪」

P「くぁぁぁっ…!!」


ずっと溜めていればまた丹念に耳掃除してもらえるだなんていう浅はかな打算はきっと彼女にはお見通しで…。


あい「フフッ…成人男性のくせに子供みたいに縮こまって…もっといじめたくなってしまうだろう? それとも…」


  ずずずっ! れろぷちゃぁぁ! じゅるるっる♪


P「ぁぁぁぁあ~~~っ!!」

あい「ぷちゅずず♪…もっといじめてほしいのかな…?」


だから、都合よく使われてあげる腹いせに弱点を責めて、俺の情けない姿で溜飲を下げているんだろう。


P「……っ、っ!」


いじめてほしいのか、と聞かれて首を縦に振って懇願してしまう。
恥も外聞もない。
他の誰にもこんな姿見せられない。
あいさんにしか見せられない。
いや、みっともない姿をあいさんに見てもらって、「悪い子だ」って甘く叱られたい。
それで頭が真っ白になるくらい耳を舌と唾液で犯してもらいたい。


あい「まったく…堪え性がないのか、君は…」

P「ぁ、ぅぁ…ぅぁぁ……」

あい「だが…欲求に正直な君は好感が持てる」

あい「ホラ…いくよ? んれぇぇぇぇ…」


  ぐぷちゅ ぐちゅっ♪ ぶちゅ♪ ぐぷっ♪


P「んあっ!? はぁぁ! はぁぁぁっ!!」

あい「んっ♪ んんっ♪ んふっ♥ んっ♥」


あいさんの舌先がリズミカルに耳の穴を出たり入ったり…。


  ずぷっ♪ ずぷちゅ♪ ぷちゅぅ♪ ぶぷっ♪


フェラチオするときみたいに頭ごと上下させながら、ピンと立たせた舌で耳の穴をファックしているんだ。
耳から背骨にかけてがぞわぞわと痺れる。
開きっ放しの口の端から唾液が零れ落ちて、あいさんの膝枕を汚してしまっている。

あい「あぁ…だらしのない口だ……んっ、はぁむっ、ちゅるるるっ♪」

P「んぁぁっむちゅぷっ、はぁっはぁ…んれろぉぉ」


見かねたあいさんにキス、ではなく、ただ唾液を啜られる。
頭がバカになっている俺は彼女のリップの感触を感じるや否や、キスしてくれたんだと勘違いしてしまい、舌を絡めようと突き出すも空振りに終わり切ない。


あい「フフッ…今は耳掃除中だろう? それは、あとでな…ぁむ♥」

P「んぁっ」


チロチロと絡む相手を探して彷徨っていた汚い舌先に、彼女の唇が甘噛みをしてくれた。
物足りないことこの上ないが、ひとまずはそれで我慢しなくては。


あい「そろそろ綿棒で…」


  くりっ くりりっ… ざわざわわっ…


P「ふぁぁ…はわわぁぁぁ…」


綿棒での耳掃除というごく普通のことも、あいさんの手によれば病みつき必至の悦楽だった。


あい「ふやかした甲斐があったな。面白いように良く取れる…」


  ずり…ずずりっ…くすすっ………
  ふぅ~~~~~♥


P「んぁぁ……っ!?」

あい「ん。よし♪ こっちはお終いだ」


最後に涼やかな吐息を吹きかけられて、それで右耳の掃除が終了してしまった。
脳みそと一緒に溶けているのではと心配になるほどドロドロに感じていたのが、火照りつつもすっきりしてしまって無性に寂しい。


P「はぁ…はぁ…」


甘美な時間が途切れ、目を開くとそこは天国ではなくいつもの自室。
ソファに座るあいさんの膝を枕にして寝そべっていた。
訂正…あいさんの膝枕は天国だ。
その天国の時間も半分が過ぎてしまった。
だがもうあと半分ある。
そして、左耳は…。


P「よいっ…と…」


  ぎしりっ


ソファを軋ませて寝返りを打つ。
そうすれば目の前数センチにあいさんの腹部。
視界全てがあいさん。
鼻呼吸すれば濃密な彼女の香りが肺を満たして幸福感と罪悪感が沸き起こった。

あい「こ、こら…そんなに鼻を鳴らすんじゃない」

P「すみません、つい…」

あい「じゃあ、左耳の掃除、はじめようか…」


その言葉だけで期待に意識が蕩けそうだ。
あいさんに狙いを定められている左耳はすでに火照り始めている。
右頬は膝枕のやわらかい感触。
目の前は眼福。
吸い込む空気は天国の香り。

……。

その香りの中にかすかに愛液のものが混じっていることに、数か月たった今でも申し訳なさを禁じ得なかった。


あい「フフッ…じっとしているんだよ……んれぇぇぇ~♥」


耳穴でのセックスがまた始まる。
耳の輪郭を舌先でなぞり、当然のように耳たぶを弄ばれ甘噛みされる。
輪郭近くの溝が丁寧に舐められる。
歪な円を描くようにだんだんと穴に近づいていくベロ。
表側の全面が彼女の唾液で清められる頃には、耳垢をふやかすためという建前などとうに無視され、俺の震えが大きくなる個所を重点的に攻めるようになっていた。


P「ぅ、く…っ、はぁ…はぁ…」

あい「ぇぁんっ♥ ………フム」


耳珠が一撫でされ、やっと耳穴をレイプしてもらえると期待が最高潮を迎えていたのに、何故かあいさんの吐息が遠くなってしまった。
早く早く、とヌメリが待ち遠しくて、耳穴に神経が集中する。


  きゅ♪


P「?」


耳があいさんの指に上下から摘ままれ折り畳まれてしまった…?
そして、再び近づいてくる吐息…。


あい「あ~~~~むっ♪」


  ぐぽぉぉ


P「ぁっ………!!!???」


耳全体が吐息に包まれた瞬間、左側頭部が生温かい何かに抉り取られたような感覚があった。


あい「ぬふっ♪ んん゛~~~んもっ♥」

P「はぅっ!? ふぁぁっ!?」


あいさんの鼻息がゼロ距離で側頭部を駆け巡る。
とにかく「ぞおおおお!」とうるさい。
どうやら左耳がぱっくりとあいさんの口内へと飲み込まれてしまったらしい…。
彼女の柔らかい唇のみっちりとした感触が耳を取り囲んでいる。


P「ぅぁっ!? あっぁぁ!?」


熱い。溶けそうなほどに熱い。
咥えられているのは左耳だけなのに、左側頭部から左肩にかけてのエリアまでもがジンジンとするほど熱い…。


あい「ん゛♪ ぐじゅ…れ゛え゛え゛お゛♪」

P「んぁっ!? はぁっ! ふぁぁ!?」


耳奥以外に行き場のない音が鼓膜を突き抜け脳みその中で暴れまわっている。
彼女のちょっとした呻きが、舌の掠る音が、唾液の流れる音が、一切のロスなく脳幹を犯してくる。


  ずろろろろおお!! ぐぷちゅっっっ!!! ぶぷぁぁっ!!


P「ひぃぃっ! ひぃぃっぁぁ!?」


これ以上ない至近から押し付けられている舌が耳の奥に入り込もうとしている。
耳の穴なんて強引に入ろうとして入れるものでもないのに、でっぷりした舌なんていくらも入り込めるはずがないのに、ゆっくり身をよじりながら…。
その優しい動きゆえに、漏れなく一切の刺激を浴び続けることになってしまっていた。


  ぐずじゅぐっ♪ んぶっ ぶぶぷっ♪ ずぎゅぎゅぐぐっ!!


P「がぁはぁっ!? うぅぅぃいい!? ふぅぅううっ!?」


ちょっとした動きにも敏感に反応して悲鳴を上げてしまう。
まるで人間スピーカー。
あいさんが俺をおもちゃにして遊んでいるんだ。
それならば良い…。
あいさんが愉しいなら、俺はどう使われても文句はない。


あい「ん゛、ん゛ぉっ…ぉっ…ん゛っ…♥」


刺激のタイプが激変する。
舌の動きが止まり、何事かと考えを巡らす間もなく、圧倒的な圧迫感が鼓膜に迫った。


P「あぁぁああああっ!!??」


そして今度は脳みそごと引きずり出されるかのような吸入感。


  ぺこっ…ぽこっ…ぺこっ…ぽこんっ…♪


あいさんの横隔膜と連動して鼓膜が内へ外へ揺すぶられている…!


P「ぅあぁああ……あ、あいさ……それ…だ、め…っ」

あい「ん゛、ぶ…♥」

ただの呼吸でいい歳した男が目を白黒させて悶えているんだ…。
その征服感はそれはもう甘美に違いない。
もし仮に彼女が強く息を吹き込めば鼓膜など簡単に破れ散ってしまうだろう。
耳を丸々咥えられてしまっては、たとえ乱暴に逃れようとしても息を吹き込む方が断然早い。
俺の左耳の生き死には完全にあいさんの手のひらの上、もとい口の中…。
しかし…。


P「はぁっ!はぁぁぁっ!はぁぁぁ~~~っ!」


あいさんにすべてを握られ身を任せているこの状況がたまらなく心地いい。
脳汁がとめどなく溢れ出てくる。
果てしない幸福感…。
あいさんが俺の絶叫する姿を見たいと感じたなら、息を吹き込んでくれて一向に構わないとすら思う。
いやむしろ、吹き込んで吸い込んで、あいさんに俺をズタズタにして欲しいとさえ思ってしまう。
そうすれば…。

……。

そうすれば…?

……。

詮無い、バカげた考えを頭から捨て去る。
そんなことより今はただ、あいさんの口に痛ぶられるのを感じていたい…。


あい「んはぁぁぁ……♥ じゅずずっ♥」

P「ぁっ………」

あい「ん、ふぅぅ……これくらいにしておいてあげようかな♪…とても可愛かったよ? フフッ」


途切れた集中を戻そうとしていたところで左耳が解放されてしまった。
久しぶりに空気に触れた左耳は、右耳とは比較にならないほどにドロドロになっていたので、耳舐めのそもそもの目的としてはもう十分すぎるほどに十分だから仕方ない。


あい「では仕上げに綿棒で…」


  ぐじゅぐちゅ♪ がさっ♪ こそそっ…♪
  こしこし♪
  ふぅ~~~~~♥


ドロドロになっているだろう耳垢を綿棒で撫で取り、耳の周りに残る余分な唾液を拭き取って吐息でフィニッシュ。
それでも、あいさんの膝枕から頭が上げられない…。
暴虐の限りを尽くされた左耳はまだ火照り、頭にもまだ靄がかかっている。
頭を撫でてくれている彼女の手にたっぷり10分ほど甘えさせてもらった。
……。
相も変わらず腹に溜まったドロドロの熱は何処にも行き場がなく、時間とともに自然鎮火するのを待つしかない。


P「………」

しかし、いつまでもそうしてはいられない。
残念なことに、明日の仕事の為に今晩の間に調べものをしておかなくてはならなかった。
もっとも、それ程時間のかかるものではないが。


P「ふぅ~~~~よし! あいさんありがとうございました。おかげさまで目も覚めました」

あい「フフッ。お役に立てたなら本望さ」

P「あいさんは先にお風呂に入っちゃってください。俺は調べものが終わってからにしますから」

あい「…そういうことなら先に入らせてもらうよ」


着替えとバスタオルの用意をして浴室に向かう彼女の後ろ姿を見ながら、そういえばちゃんとしたキスをしそびれてたなぁと、なんだかとても損した気分になってしまった。


P「…やるか」


気持ちを切り替えてリビング壁際のデスクのPCを起動した。







あい「…調子はどうだい?」


お風呂から出てソファで雑誌を読んでいたあいさんに、調べものの進捗を尋ねられる。


P「えぇ…もうあと15、いや10分で終わります」

あい「そう、か……では私は寝室に入っていようかな…」

P「あぁ…すみません、付き合わせてしまって…。あいさんは先に寝ててください」


時計を見てみればもう0時を回っていた。
アイドルの美容にとってはすでに就寝しているべき時刻だろう。


あい「いや、まだ寝ないがね…フフッ」

P「?」


お休みなさいと言う間もなく、あいさんは大きめのバッグを伴ってさっと寝室に入っていってしまった。









そしてそのちょうど10分後、不意にPCがまろやかな電子音を発した。


P「ん? スカイプ通話…?」


表示された小さなウィンドウには「TGA」の文字。


P「あれ? これあいさん、だよな…? なんで?」

ずっと前、彼女の担当になった頃に役に立つこともあるかも、と教え合っていたのだったか。
寝室のドアを見てみても沈黙しているだけ。
……。
とりあえず通話ボタンをクリックすることにした。


あい『…やぁ、Pくん』


通話ウィンドウにさっきまで目の前にいたあいさんの上半身が映っている。
その背景は当然俺の寝室だった。
ベッド脇のコンソール上に自前のノートパソコンを置き、スツールに座って操作しているのだろう。


P「え? あいさん? 一体どうしたんですか?」


ドア一枚を隔てたスカイプなど聞いたことがないしする意味もない。
椅子を立って寝室に向かおうとしたが…。


あい『ああ、そのまま居てほしい。なぁに…たまにはこんな趣向も面白いかと思ってね』

あい『ん……。そうだ。調べもの。調べものは片付いたのかな?』

P「…え、えぇ。ちょうど終わったところです」

あい『そうか…ぁ…お、お疲れ様…』

P「…? いえいえどうも…」


なぜだろう…?
あいさんがいつもより色っぽく見える…?
テレビ電話というのが新鮮だからだろうか?


あい『ん…ふ…そういえば…も、もうすぐ半年…だね』


半年、その一言だけでもなんのことか十分にわかる。
あいさんと恋人になってからそろそろ半年なのだ。


P「…そうですね。あっという間でした…」

あい『提案だ、が…っ…そ、その日にささやかな…んっ…お祝いでもどうかな…?』

P「……ゴクッ」

あい『P…くん…?』

P「え? あ、あぁ、いいですね…やりましょう」


妙に艶めかしい彼女につい見とれてしまった。
よく見れば風呂から出てもう数十分経っているというのに、いまだに頬に赤みがあるようだ。
それに、言葉が微妙に聞き取りにくいのは通信速度の関係かと思っていたが…これは彼女の呼吸が乱れている、のか…?


P「あの…何か…さっきまで筋トレでもしてたんですか?」

あい『ぁ…さ、流石に…ぅくっ…鋭いな…ぁぁっ…』

あい『そ、そうなんだ…。ちょっとした運動を…いっ…今も…っ!し、しっ…して…っ!!』


どうやら今も筋トレの最中らしく、息を切らしながら軽く前かがみになると、前髪がハラハラと乱れ彼女の額と瞳を隠してしまった。
その肩は小刻みに震えている。
たいていのレッスンを涼しげにこなしてしまう彼女がこれほど辛そうなのだ、かなりハードな下半身の筋トレをしているらしい。
足首につけた重りを膝の折り曲げで上下しているのだろうか…?

P「せっかくお風呂入ったのに、また汗かいちゃいますね」

あい『んっ…ふぁっ…! そ、そうだ…な…っ!くっぁ、ぅぁっ…』

P「……あ。あの、もしまたお風呂入るんでしたら…い、一緒に入りませんか? な、なんて…あはは…」

あい『んっ? Pくんと…おっ、お風呂…?』


彼女と入るのは初めてではないが、久しぶりだったので提案するのが妙に恥ずかしかしい。
そんな恥ずかしい提案をされたあいさんは俯けていた顔を画面に向けたが、その顔はさらに上気していた。
トレーニングによるものだとしても、どうしてもそこに色気を見出してしまい思いがけず心臓の鼓動が強くなる。


あい『P、Pくんと…はぁっ…はぁっ…いっ、イイっ…!』

P「……ゴクッ」

あい『はぁっ、はぁっ、はぁぁぁっ……!』

P「…………」


画面越しで目線が合い難いせいなのか、肩で息をし始めより艶めかしく見える彼女にいつも以上に無遠慮な視線を送ってしまっている。


あい『はぁっ…はぁっ…………ん、れぇぇろぉ…』

P「っ!?」


あいさんが指を舐めた。
両手は膝の上に置いているのだろうと思っていたが…その右手を口元まで上げたと思ったら、人差し指と中指、おまけに親指を舐めた…。
もしかすると、あいさんは視線が合い難いWEBカメラの特性を失念して、俺がよそ見をしているとでも思ったのかもしれない。
それはあまりに豪快な…まるで誰にも見られていないと思っているような人目を憚らない舐め方だった。
しかも明らかに唾液で指先を濡らすのが目的の舐め方だった。
そして濡らした指先は画面の下に消えた…。

それでようやくこの状況が理解できた。


P「あいさん…そんなに指を舐めて…ナニ、してるんですか」

あい『え…? な、なぜ? あっ…!!』


カメラの特性のことを思い出したようだがもう遅い。
一度分かってしまえば何故これまで気付かなかったのか不思議なくらいだ。
なるほど、あの表情は辛さに耐えているのではなく快楽に耐えていたのか。


あい『んっ…はしたないところを、はぁっ…見られてしまったな…しかも…バレてしまった、んっ…みたいだね…♥』


今更「何故こんなことを」なんて聞いたりしない。
オナニーの中継なんていう変態じみたことを彼女がする目的なんて、俺のこの胸の高鳴り以外にない。
彼女の腕の微振動が早くなる。

あい『はぁ、はぁぁ♥ ふぅぅぅっ…♥』


  クチュ クチュクチュ…


ノイズに混じって微かな水音も聞こえてきた。


あい『ん…ふふ…P、くん…♥』


画面越しにあいさんと目が合った。
ということは、あいさんは画面ではなくカメラのレンズを見ているのだろう。
自分の官能の表情を俺に真正面から見せてくれようとしているんだ。
俺は画面を通して一方的に彼女の痴態を観察することが出来る…。

……。




まるでAVを観ているみたいだ。




今の状況をそう感じた、その瞬間、血流が下半身へ流入し始めた。


P「っ…!?」


みちみちとズボンの中で膨らんでいく男性器。
インポとはいえそれは生身の人間に対しての話、諦めが入ってからは頻度は激減したがオナニー自体は今もする。
だから勃起自体は不思議ではないのだが、あいさんといるときに勃起したのは間違いなくこれが初めてだった。
あいさんといるときにはすっぱりと切れてしまっている下半身の性感回路がどういうわけか繋がっている。
ひょっとするとこの特異な状況に脳がエラーを起こして「あいさんはここにはいない。よって、このオナニーAVで性欲処理しろ」と言っているのかもしれない。


P「ぁ…はぁ、はぁ……!?」


じわりと重い熱がさらに息子に流れ込む。
このままオナニーをするのは簡単だ。
しかし、すぐ隣にあいさんがいる。
おそらくオマンコをトロトロにして準備万端のあいさんが。
まさに千載一遇のチャンス。
これを無視してこのままオナニーに興じるなど生物としてあり得ない!


あい『はぁぁん♥ あぁ、Pくん♥ Pくぅぅん…♥』


俺の勃起を知らず、痴態を晒し続けてくれているあいさん…。
あぁ…やっとあいさんと…。


P「あいさん…今からそっちに行きます…!」

あい『んっ♥ ……え?』


あいさんの返事も待たず椅子を立ち、寝室のドアを開いた。



  がちゃり!


あい「あっ…! やっ…!?」


驚愕と羞恥の色をにじませた表情だった。
おそらく、今日こうなることまでは予想していなかったのだろう。
ショートパンツは脱ぎ捨て、パンティ一丁でスツールに腰かけて、右手は股に伸びていた。


あい「あ、あぁ、そうか…。ようやく…フフ…」


俺の股間の盛り上がりに気付いたあいさんは、見たこともないくらい優しい笑顔になってくれた。


P「あいさん……んちゅ…」

あい「んぁむ…♥ はぁむ、れろぉ、あむちゅぅぅ…あぁ♥」


彼女と今日初めてのキスを交わす。
ベッドに寝かせパンツをはぎ取ると、案の定すでにアソコはテラテラと妖しくぬめっていた。
陰毛は丁寧に逆三角形に整えられ、ヴァギナはサーモンピンクで美しさすら感じる。


P「はぁ、はぁ…やっと…」

やっとできる。
あいさんという美女に何度となく強烈な誘惑をされてもピクリともしなかったのだ
もうほとんど諦めていた。

でも、やっと…。

やっとセックスできる…。
やった…。

ああ、セックスだ…。

セックス!
セックス!


P「はぁ、はぁ、はぁ」


邪魔なズボンを一刻も早く脱ぎ捨てようと逸る気持ちに、ベルトを緩める手が震えている。
そして、股間のジッパーを下ろそうとしたところで気付いた。




P「え………?」



股間を怒張させていた熱はすでにそこにはなかった…。
急激にしぼんでいく息子。


あい「……?」


だめだ、あいさんに気付かれてしまう。
またがっかりさせてしまう。
そんなのもう嫌だ。

いやだ!

熱はどこにいったんだよ!?
戻って来いよ!
早く!
じゃないと…!


あい「ぁ……」

P「っ…!」


彼女の視線を股間に感じる…しぼんでしまった股間に。

あぁ…もう流石に幻滅されてしまっただろうか…。
でも半年か…何度も気を使ってもらって、その度に失望させて…よく続いた方だと思う…。
あいさん、こんな美人なのに俺みたいなのと付き合ってくれて…。

ほんとうにありがとう。

ありがとうございました…。


自暴自棄な絶望が脳裏を埋め尽くしていく。

助けを求めるように、許しを請うように、情けない顔を彼女に向ければ、彼女はなんでもないって風な笑顔を返してくれて…。


あい「んっ、おいで、Pくん…♥」


両手を広げて俺を呼んでくれた。


  ぎゅうぅぅ~~


緩めたベルトもそのままに、のっそりと彼女の胸に飛び込めば、いつもみたいに優しく抱き締めてくれる。


あい「まだまだこれからさ…」

P「ぅ…く……」


目からこぼれたモノはあいさんのTシャツにすぐに吸い込まれてしまった。




―――――
―――




「「「「 お疲れ様でしたー!!!! 」」」」


スタッフ一同なみなみとビールが注がれたグラスを掲げ、二日間の海外ロケの成功を祝う。
南国のビーチサイドレストランでの打ち上げが始まった。
この南の楽園へはあいさんの新曲のプロモーションビデオの撮影の為に訪れていた。
監督とメイクさんがあいさんを挟み、口々に彼女を称えている。
特にメイクさんはいかにあいさんが格好良いかを鼻息荒く語っていた。

まだ日が暮れ始めたばかり。
お酒にはまだ早い時間だというのにすでに出来上がりつつあるのは、あと数時間もすればほとんどのスタッフは帰りの飛行機に搭乗しなければならないからだ。
今の内にしこたま飲んでおいて、飛行機の中ではぐっすり眠るつもりなんだろう。
ちなみに俺とあいさんだけは明日帰国の途に就くことになっている。

今時珍しいくらいの贅沢なロケだった。
海外というだけでなく不測の事態に備えてスタッフも豊富でスケジュールにも随分と余裕があった。
それもそのはず、トップアイドルの一人となった東郷あいの新曲なのだ、会社が力を入れるのも当然だろう。
また明言はされていないが、このロケは会社に多大な利益をもたらしている彼女(と、自意識過剰でなければ俺も)へのご褒美も兼ねているんだろう。
こじつけのような理由で俺とあいさんの帰国が明日になっているのは、恐らくそういうことなのだ。
その理由をでっちあげてくれた極めて有能な事務員様に感謝しつつ、この瞬間からは純粋に南国の雰囲気を楽しみたい。

相変わらずスタッフに挟まれ褒め殺しに苦笑いしている彼女をはす向かいから盗み見ると、丁度あいさんもこちらを見て目が合った。


  パチッ♪


ウィンクと一緒にグラスを小さく掲げる彼女に、俺もグラスを掲げて返答する。
彼女が着ている涼やかな配色のワンピースはこの国の雰囲気によくマッチしていた。
ありふれたワンピースにも見えるがその実、体のラインがくっきりと出るもので着る人を激しく選びそうだが、あいさんに着こなせないものはないらしい。

……。

そういえば、ブラの肩ひもが見えないな…。
チューブトップブラだろうか?
いや、そのラインすらも出ていない…。
まさか…いくら海外で開放的の気分だからって……。
い、いやヌーブラか、うん、そうだろうな、うん。
こちら側の話題も盛り上がってきたので、そう納得して邪な想像はやめにする。


気付けば太陽はすでに海の中。
レストランにも客が増えてきてどんどん賑やかに。
なぜか打ち上げに他の客も加わりはじめ、場はどんどんカオスに…。
それでも、本当に楽しいひと時だった。






監督「じゃあ、俺たちは…ひっく…さきに日本に帰るから…うぃっく…Pくんたちはせーぜーもう一日楽しめばいいさ…くそぉぉ羨ましいぃぃぃぃ…うっぷ…」

P「あはは…お気をつけてお帰り下さい。帰国したらまたご連絡しますので」

メイク「やらぁぁぁぁ!! とうごうしゃんと離れたくないいぃ!! あたしの王子さまぁぁ~~~!!」

あい「おやおや、聞き分けのない娘だ。せっかく帰ったら改めて今回のご褒美をあげようと思っていたのになぁ。これではオアズケ、かな…?」

メイク「はい、帰ります。私日本に帰って東郷さんを待ってます」


レストランの前で帰国組を見送る。
いずれもなかなかの酔いっぷりだが、旅慣れした人たちだ、たぶん大丈夫だろう。



  ぎゅっ…


彼らの乗るマイクロバスの背が見えなくなる頃、不意に手を握られた。

あい「ホテルの部屋で…飲み直さないか…?」

P「…いいですね」





  きゅぽん♪ トクトクトク……


ワインを注ぐグラスは一つだけ。
肩を寄せ合いながら交互にグラスに口をつける。
他の人の目などないから、マナー違反だろうが知ったことじゃない。


あい「んく……あぁ、とてもいい気分だ……」

P「こくっ…トラブルもなかったし、天気にも恵まれて一安心です」

あい「スタッフと南の空に感謝だな」

P「今回のPV撮影、ホントにただの観光でしたね。観光してるあいさんを撮ってるだけ。この方針がそのまま通るとは自分でも思ってませんでしたよ。ははは」

あい「…んくっ…実に役得だったよ。Pくんにも感謝だ」

P「ごくっ…俺は俺で、あいさんの素敵な表情がたくさん見れて眼福でしたよ。きっと良いPVになります」

あい「フフッ…名プロデューサーの君がそういうなら安心だな…」

P「名プロデューサーだなんて…あいさんの魅力をたくさん知ってるだけですよ……あ、もうお酒はやめておきますか?」

あい「そうだな…ぁ。いや…んくっ…ん~~~」

P「ぁ…んちゅぷ…ごく…」


彼女の口から受け取ったワインは、まろやかさと甘みが増していて極上の味わいだった。


あい「ん、ふ…♥ これで最後だ」


今日の酒量は比較的抑え気味だったはずなのに、一気に酔いが回り始めたような気がする。
口を離した後のあいさんが妖艶に口角を上げたのを見て、今日はこの瞬間からキスが解禁されたことを知った。

見つめ合う彼女の口が何かを期待するようにまだ閉じ切っていなかったので、今度はこちらから口を寄せてみると、舌もするりと入り込んでしまう。


あい「ぁぁん…んぷっ♥はぁぁむっ…ちゅぅる…♥」


粘膜の柔らかさを確認し合うようなまだ余力を残したキス。
体温と心拍数が一段上がったらしい彼女からたまらなく良い匂いがしてくる。


あい「はぁ~~……ほんとうにいい気分だ」


ソファの背もたれにあいさんが倒れ込むと、きしりと控えめな音が鳴った。
今回のロケで目にした景色を反芻しているのだろうか、目を瞑りとても満足げに見える。
部屋に備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注いであいさんに渡そうとしたのだが。


あい「ふむ……」

P「? あ、お水じゃない方が良いですか?」

あい「いや、水がいい。ただし…Pくんに飲ませてほしいな…」


そう言ってグラスを受け取ろうとせず、背もたれから起き上がろうともしない。
どうしたものかと思考を巡らすと、ついさっき彼女にワインを飲ませてもらったのを思い出す。


P「……ごくっ」

あい「フフッ……♪」


水を口に含んだ瞬間、あいさんの薄ピンク色の唇からチロリと舌が覗いたように見えた。


あい「んっ…ごくっ♪ ん、ちゅずずず…こくっ…こくっ……ふぅ」


三度、口移しで飲ませると満足してくれたらしい。
しかし背もたれから起き上がる素振りはない。
室内の暗めの照明があいさんの躰を浮かび上がらせる。
ただでさえ躰のラインの出易い服を着ているというのに、絶妙な照明の陰影のせいで胸のふくらみと腰のくびれが強調されて目に毒だった。


あい「……アイス。アイスクリーム食べたい」

P「アイスですか…あったっけな…?」


どこか子供っぽい響きのあった彼女の要求が可愛らしくて、どうしても応えたくなってしまう。
祈りながら冷蔵庫を漁ると、小さな冷凍室に二つのカップアイスが入っていた。


P「おぉ、ありましたよ」

あい「やったぁ…♪」


スプーンと一緒に渡そうとするも、予想通り受け取ってもらえない。
そこでスプーンに掬ってみたが…。


P「ほらあいさん、アイスですよ? あーんして?」

あい「ぁ………やーだ」


一瞬、口を開けそうになっていたのを俺は見逃さなかったが、見なかったことにしてあげるのが大人の嗜みだろう。


P「えぇ…これも、ですかぁ?」

あい「フフフ~~♪」


諦めて自分でスプーンを咥えアイスを舌に乗せると、ようやく口を開けてくれた。


あい「あぁ~~ん…んんん~~っ!おいしぃ…!」


あいさんの口の中のアイスが溶けるのを待って、三度四度と餌与えをする。


あい「むぐっ…ずずっ…あぁ、垂れ………」

あい「ん♪」


白いアイスの雫で汚れてしまった顎を、こっちに向けてきたので、これはもう舐めとってあげるしかないだろう…。


P「ん、れろっ…。俺も一口もらいますね」

P「あむ………美味いな…」

あい「あー、私のアイス……」


散々食べているというのに、しかも俺が食べさせてあげているというのに、こっちが一口食べただけで可愛いいジト目で抗議してきた。


あい「こらぁ~、私のモノをとるなんて悪いヤツだ~」


ぽむぽむと胸を叩いてくる彼女の仕草があまりに愛らしくて、もっと意地悪してみたくなる気持ちを抑えるのが大変だ。
あいさんはかなり酔いが回ってきているらしい。
……。
ほとんど観光しているだけだったとはいえ二日間カメラを向け続けられたんだから、精神的な疲労は相当溜まっていたのかもしれない。
そんな日ぐらい飲み過ぎてしまっても、誰が非難できるだろうか。
そうでなくとも、あいさんにこれだけ甘えられるのは稀なので、いくらでも労わってあげたくなってしまう。


P「ははは…まったくわがままなお姫様ですね。はい、ご所望のアイスクリームですよ…」


今度はスプーンにアイスを差し出したのだが…。


あい「ぇ…おひめさま…?」


急にぽかんとした顔になるあいさん。
何か変なことを言っただろうか?


あい「おひめさまか…んふふ…お姫様…♪」


どうやらお姫様というのが気に入ったようだ。
普段、カッコいいだとか男前だとか王子様だとか言われることが多いあいさんだから、正反対の意味を持つ言葉に何か思うところがあるんだろう。


あい「…ぁ~~むぐ♪ んん~…」


思い出したように俺が差しだしているスプーンを咥えて、アイスを呑み込んだ彼女の顔が何故か曇っている。


あい「やっぱり……口からが良いな…♥」

P「ぐっ……」


後頭部をガツンと殴られるような暴力的な可愛さに、つい呻きを漏らしてしまった。
こうなってしまってはもうどっちの要望かわからない。
カップが空になるまで何度も餌づけを繰り返した。


あい「ごくっ…んはぁ…はぁ…」

P「はぁ…はぁ……はぁ…」


まともに呼吸する時間も惜しいくらいにアイスを口移しし続けたのだ、大した運動をしてなくても、息が切れるのも当然の結果だろう。
しかしあいさんの瞳にはまだ熱が籠っていて、まだ満足していないことはすぐわかった。


P「次は…どうしましょうか、お姫様?」

あい「あは…♥ んっ…」


姫が何も言わず右手の甲を俺に向けたので、俺も何も言わず甲にキスをする。
もちろん甲だけでなく、手のひらにも、指にも…キスだけでなく甘噛みもお見舞いした。


あい「ふ…はぁぁ……♥」


と、そこで、一年ほど前にも同じようなことをしたのを思い出した。
そしてその日、情けない姿を晒したことも思い出してしまった。


P「……」


そういえば、今日ほど濃厚な触れ合いは半年ぶりくらいだろうか…。
あぁ…その半年前にも自分史に残るくらいの失態を犯したっけ…はは…。
その日以降は…たまにあいさんにドキッとさせられることもあったけど、キスとハグくらいに留めておくことが多かったように思う。
正直なところ…あいさんにもどかしい思いをさせている筈なのを申し訳なく思う一方で、自分自身に失望せずに済んでいたのでどこか安心していた。


  ちゅう…はむっ…ちゅっ…れろっ…


あい「ぁぁぁ…んぁっ…」



……。
今日も失敗するかもしれない。
今日も情けないところを見せてしまうかもしれない。

でも…それがなんだっていうんだろう?

以前よりずっと深くあいさんのことを知っている。
だから、俺がどれだけ格好悪くずっこけても、あいさんはきっと微笑みながら手をさし伸ばしてくれるってことが分かっている。

そう信じられる。

今夜また失敗したところで、彼女との笑い話が一つ増えるだけなんじゃないだろうか?
それに、ここでかっこ悪かった分は他で取り返せばいい。
謙遜しているけど結局のところ、彼女を一番輝かせられるのは俺だし、彼女のことを一番大切に思っているのも俺だ。
公私にわたって彼女を一番喜ばせられるのは俺なんだ。

そうだ。

勃たなかったら口と手で気持ちよくなってもらえばいいじゃないか。
何も勃起にこだわらなくてもいいじゃないか。


P「ははは…」

あい「ん? なにかなぁ?」


バカバカしい考えだ。
でも、これまであれこれ悩んでいたことの方がもっとバカバカしかったんだと気付いて、つい笑ってしまっていた。
そんな一切合切よりも、不思議そうに首をかしげるあいさんが途轍もなく可愛いことの方がよっぽど一大事だ。
そんな簡単なこと理解するのに随分と時間がかかってしまった。


P「いえ…なんでもないです。なんてことはなかったんです…」

あい「んー? まぁいいか…♪」

あいさんの魅力をまた一つ見つけてしまったことに嬉しくなりながら、左手にも熱烈な奉仕をした。


次はどうしましょうかと我儘姫に尋ねると。


あい「ここにも、欲しいな…」


そう言いながら、俺の膝上に脚を載せてきた。
産毛一本生えていない、白く艶のある白磁のような脚。
ふくらはぎの程よい筋肉から足首のキュッと締まった細さに繋がるラインは芸術的だと思う。
ワンピースの裾に隠れている太ももは今はそっとしておいて、膝小僧から左右の脚に交互に口づけを続け、少しづつ足先へ向かっていった。


あい「そ、そんなに必死になって…。はぁん…嬉しくなるじゃないか♥」


足首を超えるときにはくるぶしに何度もして、それに飽き足らず歯を軽く立ててみると、ピクリと震えたくせに逃げようとしないのが堪らなく嬉しい。


あい「ぁ………♥」


足首の先のすべすべの甲にキスしながら彼女の表情を見てみると、どうやらご満悦らしく欲望の滲んだ笑みを隠せていない。

足の指には小さな可愛らしい爪がついていて、しかもそれはよく磨かれている上に嫌味にならない淡色のペディキュアが塗られていた。
人によっては足の指へキスするなど屈辱だと感じるかもしれないが、そんなプライドなど無価値に思えるほどに、むしゃぶりつきたくなる足指だった。


あい「ぁっ、そんなところにまで…し、しなくていいっ♥」

脚にキスをしろと言ってきたあいさんも、せいぜい足の甲までのつもりだったのだろう。
足の指にまで唇を滑らせると、途端に身を捩りだした。
初めて逃げようとした足を掴んで離さない。
一本一本丹念にキスをして、それでも物足りなかったので唾液をまぶしてしまった。


あい「はぁぁ…き、君はヘンタイか…♥」


一瞬、足の裏も舐めたい衝動に駆られたが、そうなるとあいさんの足の裏を舐めているのか、それとも間接的に床を舐めているのか分からなくなりそうだったので、断腸の思いでやめておいた。
また今度、お風呂上りに舐めさせてもらうことにしよう。

次の要望を視線で尋ねると…。


あい「ん……ベッドに連れて行ってほしいな…」

P「お安い御用で」


お姫様向けの抱っこでベッドへ優しく下してあげると、ワンピースの肩ひもをずらし始めたのでついまじまじと見てしまう。


あい「ぁ…ちょっと恥ずかしいから今は見ないでくれ…」


いつになくしおらしく見えるあいさんに胸がゾクッと高鳴り、勢いよく回れ右をした。

そして数秒後振り返ると、パンティ…?いや紐?Tバック?だけを身に着けたあいさんがうつ伏せに寝ていた。
躰のラインが出やすい服を着る際にはTバックが必要なのかもしれないが、男からするともう履いている理由がわからないくらいただの紐だった。
シミ一つない2つの尻たぶの間に食い込む一本線と、パンティとしての体裁を維持するためだけの存在理由しかないような腰の横一文字が、見事なT字をつくっている。
しかし、よくよく見てみれば薄紫のそのラインが、なるほど彼女の肌の白さを殊更に強調していた。
その桃から下へと視線を流せば、さっきキスするのを我慢した太ももが惜しげもなく晒されている。
こんなもの、撫でても舐めても甘美な感触がするに決まっている…。
そして腰より上側へいくと、女性の理想を体現したくびれのカーブがあり、さらに上れば脇腹からはベッドに押し付けられている胸のふくらみの弾力の証拠が覗いていた。


隙がない…全身凶器だ…。


改めて驚愕した。
久しぶりに見る彼女の裸体にクギ付けになってしまう。
こんなにも美しい躰を目の前にして、勃起するしないは最早関係ない。
新雪に理由なく足跡を付けたくなるように、これほどの美躰は汚さずにはいられない。
舐めて、撫でて、しゃぶって、摩って、揉んで、抓って、噛んで、自分のものにしなくては嘘だ。

頬の下で両手を組んで俺を見上げる彼女の目は、俺のどす黒い劣情などとっくに見透かしているはずなのに、それでも尚、早く触れられるのを待っているように見える。
それがさらに俺の欲望に拍車をかけた。


誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように、フラフラと彼女の白い躰に向かっていく。
まずは特に柔らかくて美味しそうな二つの桃に…。


  れぇぇえろぉぉ! じゅるるぅぅ! ぐにゅにゅううう!


あい「あっ…んんんん…っ! か、噛んで…っ!!?」


無防備な白桃にを揉みしだき、舌を押し付け、挙句の果てに噛みつく。
弄ぶようにグニグニと顎に力を入れてやれば、桃尻が不規則に震えて、そのプリンのような震えがさらに食欲を刺激して、腰を押さえつけて夢中になって何か所も歯形をつけてしまった。
どうせしばらくは撮影の仕事はないのだから構わない…。


あい「むっ、無茶なことを…っ♥」


尻たぶに歯を立てた瞬間からはっきりと分かっていたが、あいさんのアソコはもう濡れそぼっているらしい。
鼻腔に絡みつくような愛液の匂いを、これほどまでにはっきりと感じたことは初めてだった。
耳をすませば触らなくても水音が聞こえてきそうなくらい、濃い雌の匂いだ。
もう躰が出来上がってしまって、痛いのも気持ちよく感じてしまう領域かもしれない。


あい「うぁぁっ!? あはぁぁぁあっ、くっぅあああああっ♥」


叫びじみた甘い嬌声が胸に痛いくらいに響いてくる。
いくら滅茶苦茶にしてもし足りない。
愛液の匂いがかき消されるぐらい桃尻と太ももを唾液でベトベトにしてやっても足りない。
背骨に舌を這わせて、震えがひときわ大きくなるところを執拗に舐めまわしてやっても全然足りない。
腰と肩とうなじと脇腹と尻と太ももとふくらはぎにキスマークを付けたらちょっと良かった。
だから次は歯を立ててみたらさらに良かった。


あい「んあぁぁ!!? くっ…ふぅぅぁぁあんんんっ♥」


それでも全然抵抗しないから、どれくらい痛くしたら抵抗するのか気になって、うなじに力一杯噛みついたのに、皮膚が破れる一歩手前になっても気持ちよさそうな声を聴かせてくれた。
だったら他も強く噛まなきゃだめだと思って噛んでたら、何度か大きく震えてそのたびに愛液の匂いが強くなったから、俺がしたことは間違ってなかったんだろう。


あい「んふーーーーっ♥ んふーーーっ♥♥」

P「うわ……」


一旦離れてあいさんの躰を眺めてみて、やり過ぎてしまったことに気付いた。
部屋にはもう愛液なんだか唾液なんだか汗なんだかわからない獣じみた匂いが充満している。
背中も脚も尻も肩も背面も、どこもかしこも、キスマークと歯型が付いてない個所はなかった。


P「……っ」


東郷あいの躰を欲望のままにキズつけてしまった、という罪悪感に正気に戻ったのは一瞬。それは直ぐに背徳感に変質して脳髄を痺れさせた。
更なる快感を求めて次のはけ口に目を付ける。


P「はぁ、はぁ…あいさん? 大丈夫ですか…?」

あい「ふーーーーっ♥ ふーーーーっ♥」


顔をベッドに埋め、顔の左右で手を握り締める彼女は、荒い呼吸を繰り返すばかりで、こちらの問いかけに答える余裕はないらしい。
自分の手で汚した彼女の躰をもうしばらく見ていたいのもあって、彼女が正気に戻るまで頭を撫でながら待つことにした。


あい「ふーー♥ ふーー♥ はぁん…ふぅぅぅ…♥」

P「あ…大丈夫ですか、あいさん?」

あい「き、君は…ケダモノか何かなのかな…? 自分の担当アイドルに傷をつけて愉しむだなんて……」

P「え、でもあいさんだって、何度もイッてませんでしたか? ほら、匂いもすごくて…」

あい「あっ! こ、こらっ、嗅ぐんじゃない!」

P「…酔いがさめてきたみたいですね」

あい「あ……う……」


あいさんは何故か口ごもり、薄暗い部屋でも分かるくらい顔を赤くしている。
子供っぽく我儘を言ったのを思い出したのだろうか。


P「お姫様なあいさん、すっごく可愛かったですよ?」

あい「ぐっ…!? わ、忘れてくれ…。魔が差したんだ…」

P「気にしなくても良いのに…いやでも、他の人には絶対見せないでくださいね?」


他の男にあんなところ見せたら100%襲われてしまうから。


あい「み、見せるわけないだろうっ! あんな恥ずかしいところ…君にしか…」

あい「それに! お…姫だなんだと言っておきながら、吸い付いて噛みついて…いったいどういう了見だい?そんな無礼な家来がいるものか!」

P「あ~それは…あいさんがあんまりに可愛かったので…つい?」

あい「はぁ…Pくんは『つい』で女の体に傷をつけるのか。まったく…」


どうやらあいさんの調子も戻ってきたらしい。
ならもういいだろう。


P「じゃあ、あいさん…」

あい「ん…っ」


彼女の耳元で囁く。


P「ついでに…こっちにも傷をつけて、いいですか…?」

あい「う、くっ……」


ベッドと彼女の腹の間に指を滑り込ませながら、そうお願いした。
あいさんの腹側も汚したいんです、と。


あい「き、君という男は…ほんとうに…」

言葉とは裏腹に、仰向けになるためにコロンと転がってくれた。
おっぱいの大事なトコロは手ブラで、股の奥の秘部は着けている方が卑猥に見える布切れで隠されている。
特に見たい部分を両方とも隠されているのに、これはこれで堪らなくそそる…。
自分の好きな時に暴くことが出来るからだろうか…。
きっと俺は下卑た笑みを浮かべているに違いない。


あい「あ…また足の指を…っ」


足先から始める。
さっきソファでしたのよりもはるかに欲望丸出しに、あいさんの可愛らしい足指を舐って甘噛みした。
甲にキスマークを付けようと思いっきり吸い付いてみるも、肉が薄いせいか跡が付きにくいらしい。
しかも『食いで』がないので噛みつくのもイマイチだ。
俺ももうかなり焦れてしまっていて、早くあいさんの鳴き声が聴きたくてしょうがないので、早々に足の甲は諦め脛に上がった。
しかし、脛も事情は大して変わらなかった。
いくらなんでも骨に歯を立てるわけにはいかない。
ああもう…舌で舐めまわすだけなんて余計にフラストレーションが溜まってしまう!
膝小僧もおざなりに汚して、遂に待望の太ももだ。


あい「ぁ、はぁ…はぁ…っ」


息を切らしながら俺の愛撫をじぃっと見ているあいさんの瞳には、恐怖とも喜悦とも知れない色が渦巻いていた。
その瞳に向けてあんぐりと大きく口を開けて見せてから、太ももにかぶり付いた。


あい「あっ…! はっぁぁああ~~~っ♥」


反射的にヒクつこうとするのさえも許さず、歯の食い込みで動きを制する。
足の甲と脛で思うように跡がつけられなかった鬱憤はここで存分に晴らさせてもらうことにした。


P「あぐあぐ……あ、そうだ……ちゅずずずぅぅうぅ!」

あい「んんんっ、うぅぅぅううう……っ!」


左ももに歯を立てて右ももに吸い付いて、また左ももに歯を立てて右ももに吸い付いて…。
少しづつ上に向かいながら、左ももには歯形を右ももにはキスマークを付けてみた。
左ももには破線がでたらめに走り、右ももには歪な水玉模様が散らばっていく。
思い付きであいさんの躰にヘタクソな落書きをしているようなもので、その罰当たりさが丁度いいスパイスになって胸が痛いくらいに締め付けられて気持ちいい。

足の付け根に唇が触れる頃には、彼女が身じろぎしただけでぷちゅぷちゅとアソコから水音が響くほどで、途轍もない雌臭に溺れそうだった。
股の間に指を突き入れたい衝動を抑え込み、Tバックの横一文字のラインを超える。


あい「はぁぁーー、はぁーー♥ ぁ……」


素通りされて少し残念そうなあいさんに心の中で謝って、ヘソにに舌をねじ込む。
そして他の部位より少し塩味が強めだな、などと考えつつ当然のように腹肉に噛みついていた。


あい「んふぅっあ あっあぁぁぁああ!?」


鍛えているとはいえ女の腹のモチモチ具合は格別だ。
つい顎に力が入ってしまったとしても、きっと誰も責められはしない。
歯形もキスマークも面白いように簡単についてしまう。
くびれにかぶりつき、あばら骨の凹凸を舌先でなぞり、そのまま胸の間を通って最後に喉笛に噛みつく。


あい「んぐぅぅぅう……っ♥」


期待通り、小動物が潰されたような素敵な鳴き声が胸にズキズキと響いた。


P「ふぅぅぅぅ~~……」


これでとりあえず見えているところは全部汚しきってしまったことになる。
あとはおっぱいとアソコだけ。
どちらからいくかというと、それは当然おっぱいだ。
胸を隠しているあいさんの手を掴み、どかしていく。
その最中、そういえば彼女はヌーブラをしているんだっけか、などと打ち上げの時の考察を思い出した。
だが、現れたのはハートマーク…。
おっぱいの先端にはぎらついた赤色のハート型のシールが貼ってあった。


P「うわ…これは……」


あいさんのキャラクターからは程遠い下品な装飾…。
海外の売春婦のイメージが頭をよぎる。
……。
ここまでするのか…。


あい「ぅぅ………っ」


あいさん自身もこれはチャレンジだったようで顔が一段と赤くなったように見えた。


P「あ、あいさん…これはとんでもないですね…とんでもなく下品…とんでもなく卑猥…」

あい「く……」

P「それに、とんでもなく…嬉しいです」

あい「ぇ…?」


まさか俺の為にここまでしてくれるとは…。
自身の高潔なイメージにさえもかなぐり捨て、泥を塗ってまでも俺の興奮を誘おうとしてくれている。
その献身が涙が出そうになるくらい嬉しい。


P「あぁ、嬉しい…。嬉しいです。あいさん、ありがとう…」

あい「そ、うか…喜んでもらえたならやった甲斐があったというものだ…フフッ」


これで息子が立ち上がってくれていたら何も言うことはないのだが、それは望み過ぎというものだろう。


P「あいさん、あの…アレ、信じてもいいですか?」

あい「ん? なんのことかな…?」

P「あの…俺とデキなくても構わないって、言ってくれたことです」

あい「はぁ? 当然だろう? …なんだ、信じてくれていなかったのかい?」

P「う…ごめんなさい…。でも、もうあいさんの言葉を疑ったりはしません…」

あい「ふむ…ならばいいだろう…」

あい「だが、私は諦めたりしないよ? 君をその気にさせるための策はまだ千個以上もあるのだからね? コレもその一つに過ぎないんだよ…フフッ」

P「千個って…全部試すのに何年かかるんですか…」


一日一個試しても2年以上、三日に一個なら8年、一週間に一個なら19年はかかる計算だ。
千個という数の信憑性は…いや、あいさんの言うことだ、きっと本当なんだろう。


あい「さぁてね…君と私にはまだたっぷりと時間があるから心配無用だ。そう、何十年もね…」

P「あいさん……」

あいさんはまだ諦めてなくて、そして同時に、何年でも待つ心構えもある、とそう言ってくれた。
俺という存在がインポであることも含めてあいさんに受け入れられている…。
とどのつまり、インポだから臆病になってたり、勃たなくて焦っていたりしたのは完全に俺の一人相撲だったわけだ。
あいさんは初めからそんなことは、どうでもいいしどうとでもなる、と考えていたんだろう。
本当に大した人だ、また惚れ直してしまった。

もっとも、あいさんのアソコにこれまで何度となく切ない思いをさせてきてしまったことはいまだに申し訳ないのだが、それも今日からは俺の全身全霊の奉仕で贖罪しよう。

……。

そうか…別に今勃てる必要はないんだ…。
来年でも、数年後でも、十年後でも、数十年後でも別にいいんだ…。
いや、別に勃たなくてもいいんだ…。

勃つ・勃たないに関わらず、あいさんはずっと俺の傍にいてくれる。

俺はインポのことなんかでウジウジ悩まず、あいさんの隣にふさわしい男であり続ければいいだけなんだ…。









P「そうか…別に勃たなくても、いいんだ…」








諦観とも達観ともつかないある種の納得が、胸の奥、心の底にすとんと落ち着いた。





その瞬間、ズレていた歯車ががっちりとかみ合ったのが分かった。






「もう大丈夫だ」と確信した。







P「……っ!」



脳の長らく使っていなかった回路に電流が流れ始めた。
背骨に熱い鉄心が撃ち込まれていく。
視覚が嗅覚が味覚が、強烈に脳に訴えかけてくる。
心臓がドクンと強烈に脈打ち、大量の血流が全て下半身へ向かっていく。
胸が早鐘を打ち続けている。
脳に血流が足りないのか、頭がクラクラする。
下半身がたまらなく熱い。





P「ぁ…ぁぁ…そうか…こんなの、絶対無理だった…あいさんとじゃなきゃ絶対に無理だった…」

あい「P、くん…? まさか…?」



さっきまで下品にしか見えなかった赤いハートマークが凄まじいほどのエロスを浴びせてくる。
目を覚ました雄の本能が抗いがたいほどの獣欲を垂れ流している。
目の前の雌の表情に余裕があることが赦せなくなっている。

あぁ…股間がたまらなく窮屈だ…。


P「あいさん…ありがとう…もう大丈夫です…」

あい「あぁ…そうか…。良かった…。Pくん…本当に良かったな…」


俺の股間の盛り上がりを認めたあいさんが、両手を広げて俺を待っている。
彼女に覆いかぶさり、感謝を込めて唇を重ねた。


あい「んんっ♥ はぁぁんむっ…れぇぁむっ♥ ちゅ、ちゅるう…♥」

あい「ん、はぁ、はぁ…Pくん……いいよ…」


耳元で囁かれてしまえばもう我慢の限界だった。
Tシャツ、ズボンと脱ぎボクサーパンツに手を掛けようとしたとき、盛り上がりの先端がすでにあり得ないくら濡れているのに気付く。
構わずパンツも脱ぎ捨てると、予想通り赤黒く膨れ上がった亀頭は我慢汁でテラテラと下品に艶めいていた。
俺のイチモツを目の当たりにした彼女が息を飲む。


あい「それが、Pくんの…なんて、逞しい…」


俺自身見たことのない勃起の仕方だった。
カリは酷く張り出して血管の浮き方は醜いとしか言いようがない。
数年ぶりのセックスでしかもその相手が東郷あいなのだ…最強にガン勃ちするのも当然だろう。


P「…腰、上げられますか?」

あい「んっ……」


腰の紐に指を掛け邪魔な布切れを取り払った。
小さな布切れのくせにやたらと重いのは、言うまでもなくあいさんの愛液が大量に染み込んでいるからだ。
握りしめれば蜜汁を絞り出せそうなくらいのズブズブな濡れ方だった。
最早抑えるものが無くなった彼女の秘所から熱帯雨林を想起させるような濃密な花の香りが漂ってくる。
その花弁に鼻と口を埋め、そのまま果肉に沈んでしまいたいほどの甘い芳香。
テカテカに濡れたピンク色の媚肉は、誰のものよりも美しくてどんなものよりもエロティックだった。


…全てがイチモツに響く。
触れていないのに気持ちがいい。
あいさんの視線で気持ちがいい。
あいさんの吐いた空気が当たって気持ちがいい。
これからあいさんのオマンコに入れられると考えただけでイキそうになる。
そうだ、この感覚だ…。
ようやく取り戻すことが出来た…。


P「はぁっ、はぁっ、はぁっ!……ぁ」


欲望に完璧に乗っ取られる寸前で、ベッドサイドに置いていたバッグからコンドームを取り出す。
平べったいゼリーのようなプラ容器を開けるのに手間取っていると、あいさんの手がそれを押し留めた。


あい「お願いだ…最初だけは…Pくんを直接感じたい…」

P「………ゴクリ」


もし当たってしまったら、なんていう心配が一瞬頭をよぎるが、外で出せば大丈夫だとか、もし中に出してしまってもそうそうできるわけではないし、などと自分を強引に納得させてしまった。
いや、あいさん自身からの「ナマがいい」という申し出なんだ、わざわざ断ることなんて出来るわけがない。


  ぐぷ…っ


あい「ぁぅ…っ♥」


燃えているようにひりつくペニスを彼女の花弁にあてがう。
愛液と我慢汁が混ざりあった個所で俺とあいさんの境界が曖昧になっていく…。
肉ビラがカタツムリの腹足のように亀頭にしゃぶりついて同化し始めているみたいだ。


あい「だ、大丈夫、だ…そのまま、きて……」


ゆっくりと腰を突き入れていく。
あまりに強い幸福感を感じ続けているせいで、少し前から体の感覚が暴走してしまっているのが分かる。
いつ暴発するかわかったものではないから、できるだけゆっくりと…。


  ぐぷぷぷ…ぷちぶちっ♪ 


あい「ぅっくぅぅぅ……っ!!」


やたらと狭い…。
亀頭を押し入れるだけでも相当なキツさだった。
それに、ナマでゆっくり挿入しているためか、何かがわずかに爆ぜているような感触が妙に生々しく伝わってくる。
あいさんの鍛え上げられた肉体ゆえだろうか…?を


  ずぷぷぷぷ……ずむっ♪


あい「はぁぁっ! んんん~~~っ!」

P「うぁっ…! 熱っつぅ…」


腰と腰がくっつくのと同時に、亀頭があいさんの奥に届いた。
やや硬かった入り口付近を抜けた奥は、途轍もない熱さととろみだった。
肉竿の総身が彼女のトロ肉に精一杯抱きしめられていて、動かなくても心地いいし気持ちいい。


あいさんの顔を見てみれば、期待していた喜悦の表情ではなく、どちらかというと苦痛に耐えているような表情で、俺だけ悦に入ってのを恥じた。
しかし、俺のペニスは良くも悪くも標準+α程度で女性に苦痛を強いるレベルのモノではないはずだ。
ならば前戯の段階で何か不手際があったんだろうか?
濡れが不十分だった…?いやそれはないか…。
ならばなぜ…?


P「あいさん、ごめんなさい…。痛いんですよね?。俺久しぶりで上手くできなくて…」

あい「くっ…。い、いや…Pくんのせいではないよ……ふぅ、ふぅ…。初めてだから、しょうがないさ…」

P「…え?」


彼女が何を言っているのか理解できない。


あい「しかし…覚悟していたほどの痛みではないな…。これならしばらくじっとしていれば、Pくんに動いてもらっても大丈夫かな…?」


理解してはいけない。


あい「ふふ…今は痛みよりも、私のヴァージンをPくんに貰っててもらったことの方が、嬉しいな…」

P「ばーじん…?」


そんなまさかと視線を下に落として接合部を見てみれば、透明だった潤滑液にうっすらと朱が混じっていた。
そこでようやく、入り口近くのやたら狭く硬く感じたのとプチプチという感触が、彼女の処女膜を破ったときのモノだということを理解した。
いや、理解してしまった。


P「ぇ…なんで…あいさん、なんで…初めて…?」

あい「ん…?」


目尻にうっすらと涙を浮かべながら、破瓜の痛みもあるだろうに、健気に微笑む彼女がまぶしすぎて、そして何より彼女のヴァージンを自分が破ったという衝撃に一瞬にして下半身の制御が不可能になってしまった。


あい「んぁっ…また、大きく……?」


限界量を超えた血液がペニスに流れ込んでいく。
膨らめば膨らんだだけ、広がった表面積分さらに気持ちよくなる。
パンパンに張り詰めて敏感な竿身が貪欲に膣肉の感触を白濁液の生成に変換していく。
完全に満タン、圧壊寸前だった…。


P「あっ…はぁぁっ……っ!」


一ミリでも動かそうものなら即膣内射精。
ゴムを付けなかったのを今更後悔してしまう。
でもまだ大丈夫だ。
このまま微動だにせず波が過ぎるまでやり過ごして、引きずり出せば問題ない…!



なのに…。


あい「んっ…ふっ……」


チンポをじっと抱きしめていたままだった膣肉が急にグジュグジュと蠢きだした。

P「んぁぁ…!? あ、いさん…? なっにを…?」

あい「ん? 痛みが引いてきたからね。どこに力を入れれば君に喜んでもらえるかを試そうかと…」

P「いっ!いま…ダメ、です…ちょっとでも…うっ、動いたら…出ちゃいます…っ! 落ち着いたら、すぐに抜きますから…くぅ…それまで動かないでください…っ」

あい「………」


お願いだから波が過ぎるまでじっとしていてくれ、という俺の必死の懇願は、だが…。


あい「フフッ……♪」


あいさんの残酷なほどに美しい微笑に、ものの見事に打ち砕かれたことを悟った。
彼女の腕が首に絡みついてきて、顔を彼女の目の前に引き寄せられてしまう。


P「ぅぁぁっ…あいさん……や、やばいんですって……」


しかも引き寄せられるドサクサに紛れて、腰には彼女の脚が絡みつき、引けないようにカニばさみされていた。
この駆け引きは早々に詰んでしまったらしい。


あい「あは…♥」


反則だ…。
美味しそうな舌がチラチラちろちろしているじゃないか…。
大人の女性のくせに、これ以上ないほどの小悪魔的な笑顔なんて反則だ…。
その大人小悪魔が耳元で悪魔の囁きをスタートする。


あい「Pくん♥ Pくん♥ P~く~ん♥」

P「ぐっぅぅぅ……っ」


ただ名前を呼ばれているだけなのに、耳から入り込んだ甘い吐息が首筋を内側から愛撫しているようだ。


あい「なぁ…もう出そうなんだろう? いいよ? 私の中に出してくれて、いいんだよ? 
  我慢している君の顔も素敵だが…きっと気持ちよくなっている顔の方が素敵だろう?
  見たいな…Pくんの素敵なトコロ…」

P「ぐっ……!?」

あい「それにね…今日はいわゆる安全日というやつなんだ。
  大丈夫だよ、Pくんが心配するようなことにはならないさ…。
  それでも不安ならあのお薬飲むから…それでいいだろう?」

P「…ぇ? く、すり…?」

あい「フフッ、アフターピルのことだよ。大人のアイドルには会社から配られてるじゃないか。
  ここにもちゃんと持ってきてるよ? だから……」

P「ぇ…あ…」


あい「……おいで♥ んちゅ♥」


P「………あっ…あっ…ああ…っ!?」


絶望的なほど甘い言葉を耳元で囁き続けられて、最後にダメ押しのキスまでされてついに不可逆点を突破してしまった。
堰を切ったように精液が下腹部内を流動し始める。


P「あ゛っ!あ゛あ゛あ~~っ!」


あい「あはぁ♥ 堕ちた…っ♥」

全神経が肉棒に集中する。
全身は肉棒のために存在して、肉棒が気持ちよくなることを最優先に考えてしまう。
情けないイキ顔を余すところなく彼女に観察されているのに、頬を抑えられているから顔を背けることができない。
いや違う…。
いやらしく口元を歪めて舌なめずりしながら俺を熱く見つめるあいさんが蠱惑的すぎて、目が離せないんだ。
彼女のこの最高にエッチな顔を見ながら中出しをすると決心せざるを得ない。


P「うあああ゛~~っ! あ゛いさんっ! あ゛いさんっ! あ゛い゛さん゛っ!!」

あい「Pくん♥ Pくん♥ あぁ~~可愛い…♥」


果てしなく研ぎ澄まされていくペニスの触覚。
腰は微動だにしていないのにどんどん高まっていく射精感は、きっかけとなるたった少しの刺激さえもないためにどこまでも高まっていくようだった。
視界が急激に狭まっていく。
見ていたいのは彼女の顔だけなのに、その視界すら狭くなっていく。
そして目の前が真っ白になり…溢れた。


  ぶびゅっ!!!
  ぶびゅるるるる~~~~!!!


P「う゛あ゛あ゛あ゛あああっ!!??」

あい「うっ………くぅぅぅっ♥」


我慢に我慢を重ねた末の解放感。
内臓ごと引きずり出されるような放出感。
東郷あいの一番大切な部分を汚している背徳感。
そのすべてを内包した射精の快感が全身に迸った。


  ぶびゅう~~ びゅびゅびゅ~~!


P「あ゛うううっ!! う゛っう゛うう~~っ」


肉棒のヒクつき一つで全身に電流が走る。
思考は不可能。
気持ちよさだけを無心に貪った。


あい「うぁぁんっ♥ んんん…っ!!」


気付けば、彼女に縋りつくように抱き着きながら、必死に腰を彼女の秘部に押し付けていた。
奥を突けば、膣肉がチンポのために蠢いてくれて、その刺激で精液をひり出すことが出来た。
彼女の躰を射精を促すための道具として使っていたことに衝撃を覚えて我に返ったが、それは精液をすべて絞り出した後のことだった。

P「うっ…く…はぁ、はぁ、はぁ……あいさん…すみません、中で出してしまって…」

あい「んっ…ふぅ……大丈夫さ。言った通り薬もある」

あい「それよりも…私の躰は気持ちよかったかい…?」


ストレートにそう聞いてきた彼女の不安と期待と照れの入り混じった表情は、頑張ったテストの採点を待っている小学生みたいに可愛らしく、落ち着き始めた胸がまた苦しくなりそうだった。


P「そ、それは勿論…。最高に気持ちよくて、失神するかと思いましたよ…」

あい「フフッ…それは良かった…本当にね…。私も忘れられない初体験になったよ」


そこでその事実を思い出した。


P「あいさんが、まだ、だったなんて…」

あい「おや? 色恋は苦手だと言ったことはなかったかな…?」

P「てっきり謙遜だと…。本当は普通にそれなりの経験を積んでいるものと思い込んでいました…」

あい「わ、私のことをなんだと思っているんだ…まったく」

P「でも、あいさんの初めてを貰えて…本当に嬉しいです…」


こんな美人の処女を散らせるなんて、いったいどれほどの奇跡なんだろうか…?
宝くじの一等が当たることなんかよりも、よっぽど嬉しい。


あい「そんなにしみじみ言われたら…怒るに怒れないじゃないか…フフッ」


初体験を終えた彼女を労わるように、抱きしめてキスをした。
途方もない幸福感が全身を温かく包む。
彼女も幸せを感じているのが何故か分かった。


あい「それにしても…君のコレはいつになったら小さくなるんだい?」

P「え…?」


言われて気付く。
彼女の中に入れたままだった肉棒が、なんとまだその硬度を失っていなかった。


P「あっ、すみません。抜きます…っ」


少量とはいえ血が出たんだ、しばらくは安静にしておくのが良いだろうと、腰を引いたのだが…。


  ずるぅぅ…っ


あい「はぁん…っ♥」

P「っ!!??」

やたらと下腹部に響く彼女の嬌声に、亀頭を膣内に残したところで腰を止めてしまった。


あい「はぁぁっ…んっ…♥ P、Pくん…? 抜かないのかい…?」

P「……ゴクリ」


そしてあいさんの表情が苦痛を訴えていないのをいいことに、折角引き出した息子をまた中に押し込む。


  ずぷぷぷぷぷっ♪


あい「あ…っ! くぅぅぅんっ♥」


再度響いた彼女の喘ぎに、完全に腹のマグマが煮えたぎりだしたのが分かった。
言った傍から矛盾した行動をとる俺を、目を白黒させながら見つめるあいさんはいまだ状況が分かっていないらしい。
だから男を雄に変えるような甘い声を平気で出す。


  ぱちゅ ぱちゅん♪


あい「はぁっ♥ P、くぅんんんっ!?」

P「はぁ、はぁっ……あいさん…まだ痛みますか?」


  ゆさゆさっ♪ ぱちゅぱちゅん♪


あい「あぁっ♥ くぅぅぅ……っ、ふぁぁぁっ♥」

P「あはは…そうですか…痛くはないんですね?」

あい「はぁんっ!? い、いや…まだ…っ、し、痺れが……んぁっ♥♥」

P「痺れ…ですか…じゃあ、ゆっくり動きますから…辛かったら言ってくださいね?」

あい「あっ、はぁっ♥ ま、まって…ちょっ……んんっ♥」


感触を確かめるようにゆっくりと出し入れする。
痛むとすればきっと処女膜付近だろうから、そこになるべく負担がかからないように角度に注意した。


あい「んっはぁぁっ♥ はぁぁん♥ うぁっ♥」


10回ほど性運動を繰り返せばあいさんの声から強張りが消え、ただひたすらに甘い喘ぎが漏れ出していた。
俺の行為が彼女に快感をもたらしていることがわかり、ひとまず安心した。

一度放精したこともあり、多少の余裕ができた頭で改めて彼女を見てみる。
膣を突かれるという初めての刺激に呑み込まれそうになりつつも、自分を保とうと必死な表情が実にいじらしい…。
首と胸元には歯形とキスマークが散らばっていて、この躰が自分のものなんだと危うく錯覚してしまいそうになる。
そして、おっぱいの先には下品なハートマーク…。


  ぺりぺり……


あい「あっ、はぁ…っ♥ ち、くび…っ」


スケベなのも良いがやっぱり中も見たくなってしまったので、右胸のハートマークだけ剝がしてみる。
出てきたピンク色の乳首はもうピンピンに勃起していて、無意識のうちに口に含んでしまっていた。


  じゅるるっる♪ れるっ♪ ぐにににっ…! 


あい「くぅぅっ……はぁぁぁ~~~っ♥」


歯の間でグニグニと小さな豆を転がすと、あいさんがのけ反る。
噛むのと同時に左乳首をハートの上から思いっきり抓ってみれば、チンポを絞るようにオマンコがきゅうっと締まったので、どうやら甘イキしたらしい。

そしてあばらから腰へとつながるなめらかなくびれの美しいラインが、どうしよもないくらいに俺の欲望を刺激した。
くびれを両側から掴んで、死ぬほど腰を振りたい…。


  つつぅ~~~……がしっ…


あい「あっ……」


手を胸から滑らせてくびれを掴むと、収まるべきところに収まったような気がした。
あいさんのくびれのラインが絶妙に俺の手に馴染んだんだ…。
そして腰を一振り。


  ずむんっ♪


あい「あぐぅぅっ♥♥」


彼女の躰が逃げないようにくびれを引き込みながら突き入れてみれば、その効果は覿面だった。
ごつんという衝撃の後、膣肉は一瞬だけ固まったが、直ぐにだらしないほどにペニスにまとわりついてくるようになった。
そのとき初めて、あいさんの雌の声を聞けたような気がした。

あい「ふぅ~~っ!! うぅぅ~~っ!!」


あいさんにとっては言葉も発せないくらいの衝撃だったらしい。
これから俺がすることが分かっているらしく、必死に顔を横に振って何事かを懇願していた。


P「はぁ、はぁ、はぁ……あいさん…大丈夫ですか? 大丈夫ですよね? いきますよ…?」

あい「だ、だめだっ♥ こ、んなのぉっ…だめにぃぃきまってるぅっ♥」


  ずんっ♪ ずちゅっ♪ ずちゅんっ♪


あい「ひぃぐ うぅ♥ だめぇぇ…こんなのぉ! お゛っ、おかしくっ…おかしくなるっ♥ わたしじゃっ、なくぅぅ、なるぅぅぅんんんっ♥♥」

P「はぁっ、はぁっ! はははっ!! 大丈夫です…っ! 俺が大好きなっ! 可愛いっ! あいさんですよっ!」


言葉に合わせて突き出す腰にあいさんが律儀に感じてくれるのが、もう愉しすぎて歯止めが利かなくなっていた。


あい「ふぅぅぅぅ゛う゛う゛っっっ!!! ぁんん゛ん゛~~~~っっ♥♥」

あい「たっ、たしゅけ…たしゅけれぇぇっ♥ きもちぃぃよくてえぇっ♥ おかしくなるんらぁぁ♥♥」

P「あぁもう! ほんとにっ! 可愛いなぁっ!!」


歯を食いしばりながらも目に愛欲の涙を浮かべてよがっているあいさんが、祈るように胸の前で指を組んでいる。
助けを求めながら俺の動きを止めようとせず、ただひたすらに俺からの刺激を受け入れてくれる様が、妙に女性的に感じてしまった。
そこにはいつもの凛々しさなんか微塵も感じなくて、ただただ可愛いだけの女の子で、そこまで堕としたのは俺だという事実に堪らなく興奮した。


  ずむっ♪ ぱんっ♪ ぱじゅんっ♪


あい「ひぃぃんっ♥ たったしゅけっ♥ Pきゅんっ♥ たしゅけてっ♥♥」

P「はぁっ、はぁっ…! 安心してください。もっと…気持ちよくしてあげますから…っ!」

あい「あ…あぁっ♥ だ、だめっ…らめっ♥ らめらからぁぁっ♥」


くびれを掴み直し、ベッドを踏みしめている膝と足の位置を調整して、本気で腰を振り始める。
力任せという意味じゃなくて、本気であいさんを気持ちよくさせるための腰振り。
あいさんの反応を注意深く観て、気持ちいいトコロと角度を重点的に責めていく。


  ずぷっ ぱんっ ぱちゅん♪ ずぶぶっ♪


あい「あはぁぁんっ♥ うあぁぁん゛♥ Pぃぃくぅぅん…っ♥♥」


素晴らしい…。
乱れながらも美しい。
呻き声さえも歌のように聴こえる。
なんて綺麗なんだ…。

不意に下腹部が疼き始めた。
急に存在感を増す射精欲。
彼女を気持ちよくするつもりが、先に俺がイってしまっては世話がない。
彼女の性感をブーストするために、くびれから手をはなして乳首を責め始めた。


  きゅぅぅぅぅ♪ きゅっ♪


あい「んあぁっぁああっ!!!???」

P「くっ!?」


あいさんへの奇襲は成功したらしく、乳首を抓るのと連動してオマンコがヒクつくように締まった。
その予想外の締まりは俺にも奇襲だったのだが、この期を逃すわけにはいかない。
締りが強くなっている分、感じやすくなっているはずの膣肉に渾身の竿愛撫をたたき込んだ。


  ぱちゅ ぱちゅ ぱちゅん ぱちゅん♪ 


あい「ぐゅぅぅぅああっ!! ああ゛あ゛あ゛っ゛♥♥♥」

P「はぁっ!はぁっ!はぁっ、ぐっ、キツ…っ!!? 」


肉壁がギュウギュウと蠢き、チンポを絞るように絡みついてくる。
ここへきてこの刺激はヤバすぎた。
腰骨に悪寒じみた快感が走り始めた。
射精へのカウントダウンが始まってしまったらしい。


  ぱんっぱんっぱちゅん!ぱんっ!  


あい「あ゛ぁっ♥ あっ♥ あ゛あぁっっ♥♥」


あいさんの感じ方が変わったのが分かった。
快楽の頂上を超えて、もう後は何をきっかけにして雪崩と一緒に絶頂の底まで転げ落ちるか…。
そこであえてピストンの動きを遅くした。
チンポの形をオマンコに刻み込むようにゆっくりと。
チンポの気持ちよさをオマンコに記憶させるようにじっくりと。
あいさんのオーガズムを手招きするように優しく優しくマン肉を愛撫した。

そうすればあっけなかった。


  ずにゅ~~~ ぬろぉ~~~ ずにゅ~~~ ぬりょぉ~~~


あい「ああぁ…くる…くりゅっ♥……はあっ、あっ……♥」

あい「はああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~~~~~~~~っ♥♥♥」


白く細い体をのけ反らせて、腰を痙攣させて、オマンコをヒクつかさせて、あいさんはイってしまった。
潰されたカエルが出しそうな叫び声を上げながら。
俺に具に観察されているとも知らずに、小鼻をぴくぴくさせて寄り目になり涎を垂らしながら。
極めてはしたなくだらしなくイってしまった。
この瞬間ばかりはあいさんですらとても無様でみじめで、だからこそ抱きしめたくて、抱きしめながら俺もイってしまった。


  どぴゅるるる! びゅるるるる~~~!!


あい「はぁむ…♥ Pきゅんっ♥ んちゅううぅ♥ れろぉむちゅぅ…♥」


二度目の膣内射精の間、ずっと抱き合いながらキスをして、出なくなった後もキスをして抱き合って、結局二人してそのまま寝りに落ちた。


翌朝、あいさんに女性の扱い方についてこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
彼女の機嫌を取るためにアレコレしている頃には、自分が長らく不能に悩んでいたことなんてもうとっくに忘れていた。

まったく、げんきんなモノだ。





終わり

何かしら感じてもらえましたら幸いです。

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