【ガルパン】西住みほ「IV号対空戦車?」 (835)
・キャラ崩壊あり
・独自設定あり
・時系列ごっちゃ(たぶん大学選抜戦以降)
やってやるぞ!
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◆ 1 IV号対空自走砲
【生徒会室】
みほ「無人機…ですか」
杏「そうそう。新しいルールが追加されたんだよねー」
柚子「第二次大戦中の航空機をオートパイロット化した物の使用が許可されたの」
桃「つまり次回の公式戦から無人機による上空からの攻撃および偵察が可能となったわけだ」
優花里「それでは東京大空襲みたいにB-29で絨毯爆撃も可能になったってわけですね…」
沙織「えーっ!?そんなの勝てっこないよー!」
柚子「あっ、でもね、1試合で使える航空機は3機までだし、搭載できる爆弾は3つまでになっているからそこまで酷くはないと思うよ」
麻子「いずれにせよ脅威であることには変わりないがな」
みほ「でも大洗に無人機なんてありませんよね…」
杏「そうなんだよねー。ウチには無人機なんてハイテクなモンはないし、新たに買うってのも厳しいだろうねー」
柚子「今季の予算はもう決まりましたからね…」
みほ「ですよね…。だけど相手は積極的に無人機を導入してくるはずです」
みほ「戦車も上空からの攻撃には手も足も出ないので、圧倒的に有利な航空機を使わない手はありませんから」
優花里「鈍足な戦車が航空機から逃げるのは困難ですし、爆撃はモロに食らえばマウスも戦闘不能にしちゃいますからねぇ…」
麻子「無人機が導入できる学校と、そうでない学校でますます戦力差が出るわけだな」
華「そんな…」
みほ「………」
桃「…そこでだな」
あんこうチーム「?」
桃「確かに現時点で我が校に無人機を導入することは出来ない。…その代わりに別の方法で無人機への対策をとることにした」
沙織「…対策?」
杏「要するに地上から航空機をバーン! って撃ち落とせばいいのよ」
麻子「そんなことが可能なのか?」
桃「第二次大戦では航空機に対抗するべく対空機関砲や高射砲といった対空兵器が開発された。それを戦車に搭載する!」
優花里「それって対空戦車のことですよね?」
杏「ぴんぽーんぴんぽーん♪」
沙織「対空戦車?」
華「空でも飛ぶのでしょうか?」
麻子「流石にそれはないと思うが…」
優花里「読んで字のごとく対空射撃をする戦車のことですね。戦車に高射砲や対空機関砲を搭載して敵機の飛行を妨害したり撃墜したりする戦車です」
華「そんな戦車まであるのですね」
桃「そこでだ。我々生徒会が話し合った結果、我が校の戦車の1つを対空用に改造することが決まった」
みほ「あの…」
杏「んー、どうしたの西住ちゃん?」
みほ「その無人機についてもう少し詳しいルールを聞きたいんですけど」
杏「あー、なるほどね。かーしまぁ頼んだ~」
桃「はっ!今回新ルールとして適用されるのは以下の通りだ。
・ 無人機や爆弾は第二次大戦中に存在したもので、尚且つ連盟公認のものを使用。
・ 1試合3機まで。爆弾は1機3つまで。1機の爆弾合計搭載重量1,000kg未満であること。
・ 無人機は投入戦車数にカウントする。つまり3機導入する場合戦車は3輌減らす。
・ 殲滅戦では無人機はカウントしない。無人機が残っても戦車が全滅すれば負け
・ 地上攻撃・偵察ができる。無人機による特攻は禁止。
・ 目標への追尾、照準合わせや攻撃は参加選手による遠隔操作で行う
・ 地上からの攻撃で無人機を戦闘不能にできる。行動不能判定が出ると同時に無人機からパラシュートが開くようになる
・ 戦争ではなく競技だから安全!(重要)
以上!」
みほ「ありがとうございます」
華「使用する無人機や爆弾は細かく規定されているのですね」
柚子「そうしないとさっき秋山さんが言ったような理不尽なことになっちゃうからね」
麻子「明記しないとサンダースあたりがフィールドの地形変えるほど爆弾落としてきそうだもんな」
優花里「それも十分笑えないですが、サンダースだともっとえげつない物を…」
沙織「?」
みほ「それはあまり言わないほうが良いと思うな…」
華「爆撃と言うから物凄く怖いイメージがありましたが、しっかり安全面に配慮したルールなのですね」
桃「実際の戦争ではないからな。怪我人が出たら戦車道の存続が危ぶまれる」
杏「一体どんな仕組みになってるんだろうね~」モグモグ
柚子「それは言わないお約束です!」
桃「…さて、話を対空戦車に戻す。先程も言ったように、我が校の戦車を1つ対空用に改造する」
みほ「まさか…」
杏「その1つってのが西住ちゃんたちのIV号戦車ね♪」
華・麻子・優花里・沙織「!?」
みほ「やっぱり…」
柚子「ごめんね。毎回急な決定で…」
みほ「本当ですね。もう少し情報伝達を徹底した方がいいと思いますよ?」ジトッ
杏「ほらさー、こういうのってサプライズが大事じゃない?」モグモク
みほ「そういうの結構なんですが?」ギロッ
杏「うっ…ごめんよ西住ちゃん」ポロッ..
沙織(うわぁ…みぽりん怒ってる)
桃「…ゴホン!これからは従来通りの対戦車戦術に加え対空戦術も求められる。ゆえに戦術の大幅な見直しが必要となる。その点を十分考慮してほしい」
柚子「取り急ぎあんこうチームの皆には集まってもらったけど、この話については明日ミーティングを開いてチーム全体で共有するね」
杏「以上。ということで今日の会議おしまい!」
【翌日 ミーティング】
桃「………以上だ!」
ザワザワ ガヤガヤ
梓「戦車だけでなく無人機まで出てくるなんて…」
典子「強烈なスパイクが来るのか!燃えてきたぞ!!」
そど子「空から監視されるんだから風紀を乱すわけにはいかないわ!」
パゾ美「無人機で空から見回り出来たら良いのにね」
カエサル「まるでアクソナ川の戦いだ」
左衛門佐「島原の乱に決まってるだろ」
エルヴィン「バトル・オブ・ブリテンだろう」
おりょう「マレー沖海戦ぜよ」
「「「それだ!!」」」
ねこにゃー「上空援護機を要請する!」
ももがー「俺が攻撃を行う!」
ぴよたん「敵の潜水艦を発見!」
「「駄目だ!!」」
杏「あ、そうだ。自動車部からIV号完成したって報告来たけど見たい人いる?」
全員「「「「「「はーい!」」」」」」
あゆみ「どんな戦車かなー?」
あや「隊長たちが乗るからきっとカッコいいやつだよー!」
優季「じゃぁじゃぁ武部先輩モテモテになるかも?!」
桂利奈「それはないと思うけど西住隊長絶対喜ぶよ!」
紗希「………」ポケー
【戦車倉庫】
全員「………」
典子「なんというか…思ってたのと違う」
あけび「うん…」
妙子「戦車っていうより…」
忍「壁ね…」
みほ「」
左衛門佐「古式神道の結界…」
カエサル「コロッセウムだろう…」
エルヴィン「ベルリンの壁というべきだ…」
おりょう「押し入れのフスマだな」
「「「それだ…」」」
みほ「」
あや「四角いね」
あゆみ「カッコわるーい」
優季「これじゃますますモテないかも…」
桂利奈「あい…」
紗希「………」
みほ「」
沙織「もうみぽりん!しっかりしてってば!」ユサユサ
華「あの…これって本当に戦車ですか」
麻子「下の方はIV号の面影があるが、何なんだこの壁は」
杏「まぁまぁ。自動車部いわく、対空車両にするにはまず砲塔撤去しないといけないんだってさー」
桃「で、新しくプラットフォーム構築して、対空兵器を乗せるわけだ」
柚子「でもそれだけじゃ乗員を保護できないから四方を装甲板で覆うようにしたの」
優花里「まさかのメーベルワーゲン…」
麻子「秋山さん、これは本当に対空戦車なのか?」
優花里「はい…厳密には対空『自走砲』ですね」
華「自走砲?戦車とは違うのですか?」
カエサル「我々のIII号突撃砲や会長らのヘッツァー同様に回転式砲塔を持たない装甲車両だな」
エルヴィン「厳密に言うと我々は突撃砲、会長たちのは駆逐戦車だが、そのへんはややこしいから割愛する。要は大砲が走っていれば自走砲だと思っておけば問題ない」
華「色んな種類の車両があるのですね!」
優花里「コホン!メーベルワーゲンはIV号戦車の車体を使用した対空車両でして、皆さんが唖然した4枚の装甲板は走行時、対空射撃時、地上攻撃時に応じて3パターンに展開できるようになってます」
優花里「で、この装甲板を立てた状態が家具を運搬する車両に見えるからメーベルワーゲン(=家具運搬車)が車輌名として採用されました」
沙織「へぇーそうなんだー」
杏「んじゃ、さっそく装甲板展開してみてよっか!」モグモグ
華「えっ?」
杏「だってさー、このまんまじゃさすがに中に入れないじゃない?」モグモグ
優花里「よじ登れば何とかいけそうですけどね」
みほ「スカートだからちょっと…」
優花里「だからこそ!ささ、西住どのお先にどうぞ!」フスフス
みほ「装甲板展開してから乗ろうか?」ギッ
優花里「キャウン…」
杏「おーいレオポンチーム、頼むよー!」
レオポン「「「「りょーかーい!」」」」
沙織(ウチらがやるんじゃないのね…)
ナカジマ「はい、完了!」
華「思ったより時間かかるのですね」
優花里「装甲板は重たいですからね。戦闘時はほとんど展開したままです」
沙織「それじゃ装甲板の意味なくない?!」
優花里「あはは…それがこの戦車の問題点なんですよねぇ…」
カエサル「十字架だな」
エルヴィン「ヴァルケンクロイツだろ」
左衛門佐「島津の家紋に決まっている」
おりょう「段ボール箱だな」
「「「それだ!!」」」
沙織「それじゃない!!」ガァァッ
みほ「中に乗ってるのが対空用の武器なんですよね?」
杏「そだよー」
優花里「これは『2cm Flakvierling38』ですね。映画『プライベート・ライアン』の終盤に出てきた20ミリ機関砲を4つにした対空機関砲で、驚異的な射撃能力ゆえに連合軍から『魔の4連装』と恐れられました」
麻子「単純に4つの砲で射撃すればかなりの弾幕を張ることが出来るな」
優花里「あっ、でも4門による射撃は緊急時のみで、通常は対角線上の2門を使用します。そうすることで撃ち切ってリロードする間にもう一対が稼働できますから!」
麻子「そうなのか」
優花里「ただ、弾倉式で1門20発しかないので、戦闘中は頻繁にリロードするんですよねぇ」
沙織「よく見ると機関砲の座席3つあるね?」
優花里「ええ。砲手1名と装填手が2名で運用しますから」
華「そうなると装填手が一人増えることになりますが、どうしましょう?」
みほ「砲手と装填手は今まで通り華さんと優花里さんにお願いします。それでもう一人の装填手は私が車長と兼任しようと思うんだけれど…」
沙織「だよねー」
麻子「まぁそうなるだろうな」
優花里「西住殿と一緒に装填手が出来るなんて不肖秋山優花里、光栄でありますっ!」キラキラ
みほ「わかりました。会長、こちらは役割分担が決まりました。次回からは対空戦闘も含めた練習をしていきます」
杏「おっけーい!」モグモグ
【翌日・練習】
みほ「2時方向上空に敵機飛来!」
優花里「リロードは任せて下さい!」
華「わかりました」キュルキュル
みほ「射撃用意……撃て!」
ダダダダダダダダダ!!
優花里「リロードします!」カチン ゴトッ カチャン
ダダダダダダダダ!! ドーーーン!!
みほ「目標撃破!」
華「ふぅ……」
優花里「見事な射撃でしたよ五十鈴殿!」
華「うふふ、ありがとうございます。でも、相手はバルーンのようにじっとしてくれませんものね」
みほ「うん。無人機を狙うにはただ照準器を標的に合わせるだけじゃダメ。敵機の速度や距離、予想進路に応じて偏差射撃しないといけない」
麻子「遠く離れた戦車相手で苦労するのだからな。高いところを高速で飛来する無人機の撃墜は至難の業だ」
みほ「もちろん撃墜出来ればそれが理想だけど、対空戦車の役割は敵機の攻撃を失敗させることだからね」
沙織「うまいこと外して弾切れになれば戦闘不能と同じだもんねー」
麻子「上手くいけばだがな」
オーイ! ニシズミチャーン!
みほ「あっ、会長が呼んでるからちょっと行ってきます」
優花里「いってらっしゃいですっ!」
華「うふふ……足で踏んで射撃……気持ちいいです」ウットリ
沙織「地上から無人機落としたらモテるかな?」キラキラ
麻子「そんなわけないだろ」
杏「さっきねアンチョビ高校のアンツィオから練習試合の申し込みが来てさー」
みほ「逆ですよ。アンツィオ高校のアンチョビさん」
杏「あははは。でねー、チョビ子のやつが無人機導入したらしくて嬉々と『練習相手になってくれ』ってさー」
みほ「ノリと勢いとご飯のことしか頭にないのに何で無人機なんか導入したんでしょうかね?コンロや鍋でも買ってれば良いのに」
柚子「西住さん…?最近ちょっと愚痴っぽくなってない?」オロオロ
みほ「気のせいです」キッパリ
柚子「ぁぅ…」
【戦車倉庫前】
みほ「…ということで、明日はアンツィオ戦です」
全員「」
梓「いろいろ端折ってますね…」
優季「明日は彼氏と映画行く日だったのにぃ!」
あや「また脳内彼氏?」
紗希「………」ボーッ
典子「こうなったら根性で無人機もろとも撃墜だ!」
忍「飛んできたタマはレシーブして!」
あけび「トスして!」
妙子「スパイクで決まりねっ!」
バレー部「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
カエサル「またひなちゃんに会える////」ワクテカ
左衛門佐「カエサルが乙女の顔してるぞ!?」
おりょう「元から女ぜよ」
ナカジマ「じゃぁ急いで整備しないとな!」
ツチヤ「ウチらのポルシェここ最近キゲンわるいからねぇ。アレの日かなぁ?」
スズキ「確かに鉄臭いよねー」
ホシノ「また漏れてんのかなぁヤダなぁ…」
みほ「それで、作戦なのですが、対戦車戦に関しては前回のアンツィオ戦と同様です」
みほ「…ただし、相手は無人機を使用してきますので、上空からこちらの主力戦車を狙って来ます」
みほ「なのでなるべく上空から発見されにくい森の中を中心に移動し、偵察はアヒルさん、うさぎさん、カモさんチームを中心に展開していきます」
そど子・典子・梓「「「了解!」」」
みほ「私たちあんこうチームは今回は対空戦車の試験も兼ねて主力戦車隊に付随して無人機の攻撃の妨害または撃墜に専念します」
みほ「大まかな作戦は以上です。それでは明日朝6時に集合ですので遅れないように来てくださいね」
「「「「お疲れ様でした!」」」」
【翌日早朝】
ヤッテヤル ヤッテヤル ヤーーッテヤルゼ
ピッ
みほ「はい、西住です」
沙織『もしもしみぽりん?!また麻子が起きてくれないの!』
みほ「やっぱり…」
『早く起きないとおばぁに制服着せて代わりに参加させるよ!!』
『お、おばぁは無理だ…そして私も無理だ…』zzz
みほ「…今から私もそっちに行くね。それじゃぁ」ピッ
みほ「ハァ……」
優花里「冷泉殿ですか?」
みほ「うん…沙織さんが起こしに行ったけど起きないらしくて…」
華「朝6時に集合するのは普通の人でも辛いですもんね」
優花里「6時起床でも辛いのに6時集合ですからねぇ。麻子殿の気持ち良くわかります」アハハ…
みほ「会長、麻子さんを起こしに行くのでヘッツアーお借りしますね?」
杏「ん?いいけどIV号じゃダメなの?」
みほ「空砲を目覚まし代わりに使うので機関砲じゃダメなんですよ」
杏「おおっと忘れてたよ。今IV号"対空"戦車になってるんだよねー」アッハハハ
優花里「正確にはIV号対空"自走砲"ですけどね」
杏「そうそう」アハハハ
みほ「私たちは麻子さんを起こしに行きますが、会長は少し眠ったほうがいいと思います。20ミリ機関砲を何発命中させれば眠りますか小山先輩?」
柚子「ええっ!?…その…5発くらい…かな?」オロオロ
杏「やめてってば」
【麻子の家】
沙織「起きてよ麻子ぉ!」ガサガサ
麻子「あと5分と8時間…」zzzz
沙織「それじゃ試合終わっちゃうよ!」
ズガァァァァァァァァァァン!!
沙織「ひぃっ!?」ビクッ
ナンダナンダ!?
ガヤガヤ
ザワザワ
優花里「おはようございます冷泉殿!お迎えにあがりましたっ!」
華「さぁさぁ、行きますよ麻子さん」
麻子「おぉ…ごくろうだった…そしてお休み」バタッ
沙織「麻子ぉ!!」
華「空砲でも起きないなんて相当ですね…」
みほ「……」
みほ「仕方ないですね」ガサゴソ
優花里「…西住殿?」
みほ(拡声器)『あーあー、麻子さん、西住です聞こえますか?あまり時間がないので端的に言います』ピーピーガーガー
みほ『起きてくれないなら次は榴弾を撃ちます』
優花里「」
華「」
沙織「」
みほ『部屋の中はちょっと大変なことになりますが、補償が効くそうなのでこちらも心置きなく使えます』
沙織「ちょっと麻子お願いだから早く起きて!家ごと吹っ飛ばされちゃうよ!!」キィィ
みほ『優花里さん、装填お願いします』
優花里「ええっ!?本当にやるんですかっ?!」
みほ『そうですけど?』
華「みほさんの目が本気です…」
優花里「そ、装填完了ぉ?!」ガシャコン
みほ『砲撃用意…5…4…3…2…』
ガヤガヤ
ワ゛ーッ!ニゲロォォ!! ママー!アレナニシテルノー?マァマー!! ハヤクニゲルノヨ!!
ザワザワ
麻子「わっわかった!!起きるからやめろォォォ!!」バサッ ガタン ドタッ
みほ「では準備して行きましょうか」ニコッ
沙織「…みぽりん…あんた鬼だよ…」
優花里「ふぇぇ…」
華「うっ…このニオイ…」
【試合会場】
アンチョビ「杏ぅ~久しぶり!今日は正々堂々戦おうなー!」ワッハッハ
杏「無人機使っといて正々堂々もないだろー」アハハハ
カルパッチョ「タカちゃーん♪」キャッキャ
カエサル「ヒナちゃーん♪」ウフフ
ペパロニ「ハラ減った…」ギュルル
典子「都こんぶ食べる?」モシャモシャ
アンチョビ「お、西住!今日はよろしく頼むなー!」アクシュ
みほ「こちらこそよろしくお願いしますね急な練習試合を入れてくれたアンチョビさん」グギギボキボキ
アンチョビ「痛い!痛い!痛い!いだぁぁぁぁぁい!!」ギャァァ
沙織「みぽりん笑顔でアンチョビさんの手握りつぶしてるよ…」オロオロ
麻子「ここ最近の西住さんの苛立ちっぷりは相当なもんだな」
優花里「IV号がメーベルワーゲンになってから急変しましたよね」
華「そんなにメーベルワーゲンがお気に召さなかったのでしょうか?」ハテ?
【練習試合】
みほ「作戦は昨日説明した通りです。無人機はもちろんですが、敵戦車にも十分注意を」
みほ「移動はなるべく上空から捕捉されにくい森林を中心に、平地では十分車間距離をあけて空爆による被害の軽減に努めてください」
みほ「また、隊長車より対空攻撃で無人機の妨害、あわよくば撃墜に努めますが、必ずしも効果があるとは言えません」
みほ「各車両の広角射撃も場合によっては当たらずとも威嚇や妨害になります。臨機応変に対応してください」
全員「「「はい!!」」」
みほ「それでは 作戦開始です パンツァー・フォー!」
【アンツィオ側】
アンチョビ「無人機の操作は任せたぞカルパッチョ」ヒリヒリ
カルパッチョ「はいドゥーチェ(手がすごいことに…)」
ペパロニ「それでアンチョビ姐さん、今回はどうするんスか?」
アンチョビ「さっき説明したばっかだろぉが!まずはコイツ(無人機)で上空から敵の主力戦車を撃破!その後は上空から監視して敵の動向を探る!そして包囲して集中攻撃!」
ペパロニ「なるほど!姐さんさすがっス」
カルパッチョ(この説明これで5回目だけど…)
アンチョビ「ぷしし!大洗も我らの秘密兵器『フォルゴレ』の前には為す術もないだろう。アンツィオ高校は弱くな…じゃなくて強い!!」ヒリヒリ
アンチョビ「勝った者だけがパスタを持ち帰る!行くぞお前たち!!」
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドーテ イ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
アンチョビ「おおい!いつまでもやってないで早く行くぞ!!」
ペパロニ「…ところで姐さん?」
アンチョビ「おうよ!」ヒリヒリ
ペパロニ「無人機導入するおカネどっから調達してきたんスか?」
アンチョビ「え゛っ?!」
ペパロニ「?」
アンチョビ「あ、あー…それはだな…」
ペパロニ「はい」
アンチョビ「が、学園艦の中になぜかあったんだよなぜか!」シレッ
ペパロニ「おおっ!そうなんスか!」
カルパッチョ(絶対嘘だ…)
アンチョビ「おうよ…!(さすがに来年度予算前借りで購入したなんて言えん…)」
【大洗側】
沙織「あんこうチームより各車両、上空からの攻撃に備えて車両の間隔を十分にとってください。無人機はもちろん戦車にも警戒を怠らずに」
『了解!』
麻子「うちらは他の戦車に随伴すればいいんだよな?」
みほ「はい、お願いします」
優花里「いよいよですねぇ…」
華「わたくし、なんだかドキドキしてまいりました…!」
ブロロロロロロロロ
典子『ッ!こちらアヒルさんチーム!敵の無人機の飛行音が聞こえます!』
カエサル『さっそくお出ましか!』
そど子『こちらカモさんチーム、こちらも音を確認しました!』
梓『ウサギさんチームより同じく…あっ、遠方に機影見えます!結構な高度を飛来しています。おそらく攻撃に入る前の索敵段階です!』
優花里「来ましたね…!」
華「はい…!」
みほ「無人機はいきなり攻撃せず最初は偵察から入って標的や侵入経路を決めるはずなので、私達は攻撃直前の高度を落としたところを狙います」
みほ「全車両、敵の無人機が攻撃を仕掛けてきます。衝撃に備えてください!」
『了解!!』
グォォォォォォォォォォン
典子『敵機、降下してきます!』
梓『無人機、通過していきました!気をつけてください!』
みほ「ッ! 無人機の狙いはポルシェティーガー!レオポンさん気をつけて!!」
ホシノ「よりによってウチらかよッ!おいツチヤ!なんとか回避しろ!!」
ツチヤ「わ、わかったやってみる!」
グオオオオオオオオオオオ
ナカジマ「来るぞ!!」
ツチヤ「うわああああああ!!」
みほ「撃て!!」
ダダダダダダダダ!!
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
シュポッ!
ホシノ「…おい、お前ら大丈夫か?」ボロッ
スズキ「なんとかね…」ケホッ
ツチヤ「死ぬかと思った…」
ナカジマ「申し訳ない隊長…後は頼んだ…」
カエサル「今のヒナちゃんだよ!絶対ヒナちゃんがやったよ!やっぱヒナちゃんすごいよ!!」キラキラ
左衛門佐「見事な攻撃なり。敵ながら天晴」
エルヴィン「敵を褒めてどうする!!」
沙織「うそぉ…いきなりポルシェティーガーやられちゃったよ…」
優花里「やっぱり無人機は強いですねぇ…一撃で戦闘不能です」
華「申し訳ありません…私が至らなかったばかりにレオポンさんチームが…」
麻子「次があるさ。気を落とすことはない」
みほ「うん。こればかりは仕方ないよ」
みほ(でも…)
カルパッチョ「ポルシェティーガー撃破しました!」
ペパロニ「うおおおおお!やるじゃねーかカルパッチョ!!」
アンチョビ「ようし!そのまま次の戦車も走行不能にしてやれ!」
ペパロニ「さすがの大洗も無人機相手には手も足も出ねーっスよ!」ワハハハハ
カルパッチョ「ただ…」
アンチョビ「ん?どうした?」
カルパッチョ「こちらも相手の攻撃を受けて撃墜されました…」
アンチョビ「なっなにぃぃぃ!!?」ガーン
みほ(無人機を撃墜できたから、まずは一安心かな)
みほ(その後はアンツィオチームの奇襲などもありましたが、全車両は無事で、大洗チームが勝ちました)
【試合終了後】
アンチョビ「ははは…また負けてしまったか」
ペパロニ「ドンマイっス姐さん!次こそ勝ちますよ!」
カルパッチョ「申し訳ありませんドゥーチェ。私が対空戦車の存在を知らなかったために…」
アンチョビ「気にすることはないぞカルパッチョ!試合には負けたが良い戦訓になったじゃないか!」
「おーいチョビ子ーおつかれっ」
アンチョビ「チョビ子じゃない!アンチョビだっ!…にしても今回もまたやられてしまったな杏」
杏「ウチもポルシェティーガーやられた時はどうなるかなーと思ったけどねー。西住ちゃんがいてくれたおかげで助かったよ!」
アンチョビ「次は対空戦車を真っ先に狙うからな!」アハハ
杏「西住ちゃんが素直にやられてくれるかなー」ニシシ
みほ「お疲れ様です。アンチョビさん」
杏チョビ「「ぴぃっ!?」」ビクッ
ペパロニ「…どうしたんスか姐さん?」
アンチョビ「に、西住…アハハ…ゴホン。今回はやられたよ。対空戦車の攻撃、さすがだったな」サッ
カルパッチョ(ドゥーチェ、利き手後ろに隠しちゃったよ…)
みほ「そうですね。私も初戦でいきなり成果が出るとは思いませんでした」
杏「西住ちゃん…」
みほ「でも、私たちのポルシェティーガーが瞬く間に戦闘不能になったことを考えると、対空戦車があっても無人機が優位であることには変わりありません」
アンチョビ「そうだなぁ。うまく使いこなせば相手の主力を潰せるし、一気に3機で来られたらワンサイドゲームも十分あり得るもんなぁ」
みほ「なので私たちは無人機が無いなりに対空戦車による対策をもっと模索していく必要があるということを今回学びました」
アンチョビ「そうか。ウチらも無人機持ってるからって過信するなということを学んだぞ」
みほ「今回の急な試合には驚きましたが、おかげでいい戦闘データが取れました」
アンチョビ「こちらも色々学ばせてもらったぞ! …よし、試合も終わったし、お前らー!パーティーの準備だ!湯を沸かせーい!!」
ハーイ!!
杏「西住ちゃんのキゲンも戻ったみたいで一安心だねー」
柚子「会長が急な企画ばかりするからですよ」アハハ
桃「仕方あるまい。向こうは待ってくれんのだからな」
杏「だねぇ」
みほ「……あれ?優花里さんその腕…」
優花里「えっ?…あぁ、コレですか?ポルシェティーガーがやられた時に飛んできた破片が掠っただけです。ツバでもつけておけばすぐ治りますよー」
華「いけませんわ。バイ菌が入ってしまいます。」包帯クルクル
優花里「えへへ…申し訳ないです」ワシャワシャ
みほ「………」
麻子「西住さん」
みほ「えっ?あ…私ですか?」
麻子「まだまだ色々ありそうだな」
みほ「! …そうですね。例えば麻子さんの早起きとか」
麻子「…それは勘弁してくれ。特に今朝みたいなことはな」
沙織「和やかな会話だけどホント怖かったんだからねアレは!」
みほ「えへへ」
沙織「えへへじゃないよ!」ヤダモー
一旦ここで区切ります
,,,,,--‐--‐--‐---、,,
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}へ x 、_: :> { ̄ ̄ 7 フ二∠ニ ____ >- 、二ゝ┴
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イ二、 _ l/> ―< |` // / ハ ` ー
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._// \ ヽく ∧ニニニ7 //l / _ -――
イ/ 入_ 〉ノ \ ∧ 十 / /イ | l/ ∠ -―< ̄
あ、続きですよね? 今やります
◆2 風は二度吹く
【翌日 生徒会室】
みほ「…ということがありました」
柚子「秋山さんが負傷ですか…」
みほ「幸い掠り傷ですが、乗員がむき出しである以上、ケガのリスクは大きくなります
桃「装甲板を展開するのが駄目ならば立てたら良いだろう?対空射撃用に角度をつけられたはずだ」
柚子「でもそれだと視界が限られちゃうよ桃ちゃん」
桃「ケガ人を出すわけにはいかないんだ仕方ないだろう。…あと桃ちゃん言うな!」
杏「なるほどねー。よしわかった!」モグモグ
みほ「?」
桃「会長、何か良い案でも?」
杏「もう一回自動車部に相談してみるよ」
みほ「えっ?」
杏「私はメーベルワーゲンの戦車っぽくないカタチが何となく好きだけど、安全は優先しないといけないからねー」
みほ「はい! お願いします」
柚子「私からもお願いします。安全は第一ですもんね」
桃「柚子に同じく。お願いします会長」
【とある喫茶店】
みほ「…という話をしたんだ」
優花里「かたじけないです西住殿…」
華「勝つも大事かもしれませんが、皆さんの安全があってこそですものね」
麻子「全くだ。あんなオープントップなところに砲弾が飛んで来ると思うと気が気でない」
みほ(…………ん?)
沙織「でも改善策が見つかったらメーベルワーゲンどうなるのかなー」
優花里「おそらく、」
「あら、みほじゃない」
みほ「あれ? お姉ちゃんとエリカさん?」
まほ「久しぶりだな。みほ」
みほ「大学選抜戦以来だね」
優花里「黒森峰のお二方、今日は偵察ですか?」
まほ「いや。大洗の会長に用があってきた」
エリカ「アンツィオ高校相手に善戦したそうね」
みほ「うん。なんとか勝てた…かな」
エリカ「興味深いわね。あなた達の無人機はどんなのかしら?」
みほ「実は無人機は持ってないんだ」
エリ「えっ」
まほ「えっ」
みほ「対空戦車で無人機を撃墜したの」
エリカ「ええっ!?」
まほ「なんだと?」
優花里「文面だとアッサリしてますが、実際は物凄いことですよね」
麻子「誰と話してるんだ秋山さん?」
まほ「…確かにゲパルトなら撃墜は可能かもしれん。機関砲の射程外に敵機がいても地対空ミサイルでカバーできるからな」
エリカ「でもそれって大戦後の対空自走砲じゃないですか!………まさかみほ、アンタ…!」
みほ「ううん違うの。私たちが乗ってたのはメーベルワーゲンだよ」
エリカ「メーベル?排ガス規制問題で話題になった車か何か?」
まほ「それはフォルクスワーゲンだ。…私たちに白旗を揚げさせたあのIV号が今はそんなことになっているとはな…」
みほ「私も驚いたよ。なにしろIV号が"箱"になってたんだから」アハハハ
華「お花を活けるのにピッタリな形状でしたけどね」ウフフ
沙織「ラフレシアでも活けるつもりなの?」
優花里「でも装甲板に草木で覆って偽装するメーベルワーゲンの写真はありますよ武部殿」
麻子「それは活け花とは言わんと思うが」
華「エリカさん、このハンバーグケーキというのは美味しいのでしょうか?」
エリカ「知らないわよ」
ヤッテヤル ヤッテヤル ヤーーッテヤルゼ
ピッ
みほ「はいもしもし」
柚子『小山です。いま大丈夫ですか?』
みほ「はい、大丈夫ですよ」
柚子『えっとですね、メーベルワーゲンの件で自動車部からあんこうチームの皆に相談したいことがあるとのことで、明日戦車倉庫に集合して欲しいそうなの』
みほ「わかりました。」
柚子『よろしくお願いしますね』
みほ「はい、ありがとうございます。失礼します」ピッ
沙織「生徒会から?」
みほ「うん。メーベルワーゲンの件で相談があるからみんな集合だって」
優花里「気になりますねぇ」
エリカ「キューベルワーゲンがどうなるか知らないけど、試合の時は容赦しないから覚悟することね」フフン
まほ「キューベルワーゲンは私達が乗って来た車だろう」ハァ…
華「このハンバーグパフェってのは…」
エリカ「だから知らないってば!」
【翌日 戦車倉庫】
ナカジマ「隊長たちが乗るメーベルワーゲンの装甲板は射撃時は視界・射界を確保する関係で展開しているんだよね?」
みほ「はい。でも装甲板を展開すると今度は乗員が剥き出しになって、流れ弾や破片に当たってケガをする危険性があります」
ナカジマ「そうなると、従来の戦車のように機関砲と一緒に周囲を覆う装甲板も回転するような形にすれば良いのかな」
沙織「周りが装甲板で覆われていたら破片が飛んできても大丈夫だよね」
ツチヤ「調べてみたら、第二次大戦中にメーベルワーゲン以降の対空戦車が出来上がるまで『つなぎ』として作られてたヤツがあるのよ。それを作ろうと思ってねー」
みほ「つなぎ…ですか」
ツチヤ「あ、つなぎって言ってもウチらが着てるコレじゃないよ」アハハ
麻子「そりゃそうだ」
ホシノ「…で、ソイツだったら機関砲の旋回と連動して砲塔も動くからメーベルワーゲンみたいに装甲板を展開させる必要が無くなるわけだし、乗員がむき出しになる心配はないよ」
華「まぁ、それは頼もしいですわね!」
スズキ「ただね、そうなるとメーベルワーゲン用に広げた車体上部を元のIV号用に戻さないといけないんだ」
スズキ「あと、砲塔の中はちょっと狭いかもだけど良いかな?」
麻子「そこは安全には変えられないだろうな」
みほ「みんなが安全なら私は賛成です」
優花里「私も賛成であります!」
麻子「同じく」
沙織「もちろんっ!」
華「賛成ですわ」
杏「どうやら全会一致みたいだね。めでたしめでたし」モグモグ
沙織「あっ、会長」
杏「ウチらもウチらなりに調べてみたんだけどさー、メーベルワーゲンはIV号ベースの対空戦車の中では古い方なんだよねー」
華「そうなのですか?」
杏「だから問題とかも色々出てくるわけよ」
杏「で、当然問題をほったらかしにしておくわけにはいかないから、少しずつ改良していったって感じかなー?」
麻子「戦車に限らず様々な物が試行錯誤を繰り返して改良され進化を遂げていくからな」
杏「そうそう♪ まぁとりあえず丸く収まったみたいだし、あとは自動車部に任せるねー」
ホシノ「がってん承知之助!」
ツチヤ「うっわオヤジ臭っ」
ホシノ「ッせーよ!」
【戦車倉庫の自動車部】
ホシノ「んじゃ、今日も徹夜でカスタムするか」
スズキ「おっしゃ!」
ナカジマ「まずは車体上部を元に戻すところからだなー」
杏「あー君たち、ちょっといいかなー?」
ツチヤ「あれ会長?どうしたんです?」
杏「君たちが乗ってるポルシェティーガーのターレットリングってまだ予備ある?」
ホシノ「ええ、うちらのポルシェはあちこち壊れるんでパーツは余分に用意していますけど、それが何か?」
杏「IV号のも結構摩耗してたからさ、車体を元に戻す時にポルシェちゃんのヤツ組み込んで欲しいのよ」
自動車部「えっ?!」
ツチヤ「なんでまた??」
スズキ「ウチらが見た時はそんなに摩耗してませんでしたよ?」
杏「後々のために…ね?」
ツチヤ「?」
ナカジマ「交換と言いましてもティーガーのリングはIV号のより大きいから大幅な加工が必要ですよ?」
スズキ「そのまま組み込むとまずハッチに干渉しますし」
杏「うん知ってる。だからさ、リングの拡大に伴ってハッチや他の部分も適応させてほしいんだ」
ツチヤ「会長…?」
杏「だから頼んだよ」
ナカジマ「…わかりました」
ホシノ「ちょっとナカジマ!?」
ナカジマ「なんか知らんけどさ、会長もいろいろ考えてるみたいだね」
ホシノ「…そっか」
ツチヤ「そっけないフリして色々考えてるんだね会長も」
スズキ「頑張ってるところ見られるの好きじゃなさそうだしねあの人」
杏「あ、来週プラウダと練習試合することになったからそれまでに間に合わせてねん♪」
ナカジマ「」
ホシノ「」
スズキ「」
ツチヤ「」
ホシノ「やっぱなンも考えてねーじゃン!!」ガァァッ
【数日後 戦車倉庫】
ワイワイ ガヤガヤ
沙織「ほえー」
華「なんだか算盤の珠みたいですね」
ナカジマ「機関砲を囲うように九角形の砲塔を搭載してあるからね。機関砲と砲塔の旋回は連動して行われるよ」
麻子「確かに狭そうだがこれなら乗員は安全だろう」
みほ「うん。メーベルワーゲンに比べるとスリムになったね」
スズキ「機関砲の砲身部分には切り欠きが入ってるから、上空への射撃はもちろん、地上の戦車にも水平射撃できるよ」
麻子「撃破とはいかなくても扇動には使えそうだな」
沙織「ねーねーゆかりん、この戦車にも名前ってあるの?」
優花里「はい、『IV号対空自走砲 ヴィルベルヴィント』ですね!」
華「ヴィル…?」
優花里「ヴィルベルヴィントです。ドイツ語で『つむじ風』という意味で、メーベルワーゲンよりも確実に乗員を保護するのと、対空戦車の不足を補うために開発された戦車であります!」
麻子「なるほど」
優花里「でも新規に作ったものではなく、修理などで戦場から戻ってきたIV号戦車の車体に砲塔を載せただけの即席対空戦車なので生産性は良かったそうですよ」
ホシノ「懸念されてた安全面はクリアしたし、試しに運転してみたらどうよ?」
みほ「そうですね。せっかくですので……ところで」
みほ「レオポンさんたち、何かあったんですか?」
ホシノ・ナカジマ・スズキ・ツチヤ「」ゲッソリ
みほ「なんか…月へ行ってきた人みたい…?」
優花里「話によると三日三晩寝ずに作業してくださったそうですよ」
沙織「えっ…」
麻子「私達のために尽力してくれるのは有り難いが、何もそこまで無茶をしなくても」
優花里「なんでも次はプラウダと練習試合するからそれまでに間に合わせろとのことで…」
みほ「………ハァ」
華(またみほさん怒ってる…)オロオロ
優花里「と、とりあえず乗ってみましょうよ!」
~~
沙織「…あれれ?ハッチが斜めになってる?」
麻子「それに前方にシフトしたようだな」
ツチヤ「砲塔を乗っける関係で少し前に移動させたよ」
みほ「………」
沙織「そうなんだ。まぁそのうち慣れるよね!」
優花里「やっぱりちょっと…」
華「狭いですわね…」
みほ「うん…」
【戦車倉庫前】
桃「…ということで来週はプラウダと練習試合を行う!各人万全の体制で臨むように!以上!」
桂利奈「えーまた練習試合ぃ?」
優季「今週こそ遊園地行こうと思ったのに!」
あや「隣に彼氏がいるという設定で?」
紗希「………」ボーッ
柚子「…ホント毎回ごめんね」アセアセ
みほ「…で、会長はご不在と?」イライラ
桃「ここ最近会長はあちこち走り回っててほとんど不在の時が多い」
みほ「何もせず干し芋ばかり食べてるから大慌てでダイエットですかね?」
沙織(みぽりんめっちゃ毒づいてるよ…)
柚子「そうじゃないの。他校や戦車連盟関係者とか手当たり次第訪問してるみたい」
みほ「何のために?」
桃「わからん。だがたまに戻ってきたと思ったら真剣な面持ちで資料を読み漁ったりして迂闊に話しかけられる状態ではなかった」
柚子「何というか、怒った時の西住さんみたいな感じね。ちょうど今みたいに」フフッ
みほ「本人の前でよく言えますね」アハハ
桃・沙織・その他大勢(私もそう思う…)
みほ「では来週のプラウダ戦まで時間がないので練習をします」
桃「その練習についてなんだが」
みほ「はい?」
桃「我々カメチームとカバチームが西住たちあんこうチームのサポートとしてつく」
みほ「えっ…どういうことですか?」
柚子「詳しいことはわからないけど、会長からそう指示があったの。だからお願い西住さん」
桃「会長は試合までに戻ってくるはずだ。聞きたいことがあればその時に聞けばいい」
みほ「………わかりました。カメさんチームとカバさんチームは私達あんこうチームのサポート役としてお願いします」
【試合会場】
梓「うぅ…やっぱここは寒いね…」ガタガタ
紗希「………」ブルブル
桂利奈「あい…」
あや「鼻水が凍ってツララになりそう」
あゆみ「何それきったなーい!」
優季「もーあやはフケツだなぁ~」
ねこにゃー「この雪景色見るたびに思い出すんだ…何度も谷に落ちてボーナス探したあの頃を…」
ぴよたん「ダチョウを連れて行くのに苦労したっちゃ…」
ももがー「坂の上にいるオランウータンに何度もやられたナリぃ…」
エルヴィン「ハリコフ冬の戦いだな…」
左衛門佐「海ノ口城の戦いだろう…」
おりょう「八甲田山ぜよ…」
カエサル「この雪、ヒナちゃんの肌みたいに真っ白だなぁ…」
左衛門佐「おまえは何を言っているんだ」
沙織「なんか…寒いせいでみんな元気ないよね…」ガタガタ
麻子「寒い眠い…」
優花里「ああっダメですよ冷泉殿!こんなところで寝たら凍え死んじゃいますっ!」
華「温かい飲み物、いかがです?」
ナカジマ「寒いとエンジンの掛かりわるいから今のうちに暖めておくかねぇ」
ツチヤ「ひぇぇ装甲つめたい」
スズキ「こんなことだったらカーエアコンつけるべきだったな」
ホシノ「ついでにラジオもつけときゃ快適だな…」
そど子「こ、こういう時こそ人間の本性が出て風紀が乱れがちになるのよパゾ美、ゴモヨ」
パゾ美「風紀もだけど風邪に注意しないといけないよね」
ゴモヨ「ヘクチッ!」
典子「皆もっと寄ろう。そうすれば暖かいよ」
あけび「まるで押しくら饅頭ですねー」
妙子「キャプテンちっちゃいから潰れないか心配です」
典子「ちっちゃくないよ!…ちょっと平均より下なだけだよ!」
忍(たまにキャプテンが先輩じゃなく弟に見える時があるのよねぇ)
ガヤガヤ ザワザワ
みほ「えっと皆さん、試合前にお話があります」
シーン
みほ「昨日寝る前にテレビを見たんですが、その時に、その、あのハッ…ハッ…」
みほ「ハーーーーーーーックショイ!!」
みほ「ズビビ…失礼しました。その時に昔やってたどっ、ど、どりふえっ、ふぁっ、ファ、」
みほ「ブァァァァァァァァァックショイ!!!!」
みほ「…ドリフのだ…大爆笑というヒッ」
みほ「ビェェェェェェェェェェックショイ!!!!!」
みほ「…ふぉりふのだいひゃくひょぉがあいまひて」フニャラフニャラ
ワーッハッハッハ!!
「やだもー!みぽりんったらお父さんみたい!」
「今のはカールグスタフ級でしたよ西住殿!」
「いいぞーもっとやれー!」
「よっ隊長日本一!」
ワハハハハハハ!!!
カチューシャ「ものすんごい砲声が聞こえたけど試合開始から攻撃を仕掛けるつもり?ミホーシャ」
みほ「あっ、カチューシャさんとノンナさん」
ノンナ「привет там Как дела」
カチューシャ「この前の公式戦では負けちゃったけど、今回は負けないんだからね?練習試合なんて思わずに全力でかかってきなさい!」
みほ「はい。元よりそのつもりです」
カチューシャ「そうそう。それでこそミホーシャよ! そうだ、せっかくだから負けた方には罰ゲームってのはどうかしら?」ニコッ
みほ「えっ、罰ゲームですか?!」
カチューシャ「そうよ!負けた方は勝った方の言うことをな~んでも聞くのよ!」
優季「もしウチたちが勝って『カチューシャから路上駐車に改名しろ』って言ったら変えるんですか?」
カチューシャ「ま、まぁルールだから従うわよ…」
あけび「『ノンナさんを肩車しろ』というのも?」
カチューシャ「…な、なんとかやってみるわよ」
ノンナ「ちなみに過去にやってもらいましたが、お尻に力を入れ過ぎて「ノンナぁぁ!!」
あゆみ「じゃぁじゃぁ『卒業までずっとランドセル装備』は?!」
忍「『ジュニアアイドルのオーディションに応募する』も?」
ツチヤ「ってことは『日雇いバイトして指定口座に給料振り込む』もOKですよね!?」
カチューシャ「さっきから何なのよアンタたちは!!」ウガァァァ
沙織「ノンナさん…」ボソッ
ノンナ「何でしょう」
沙織「私、将来カチューシャさんのような娘が欲しいです」ホッコリ
ノンナ「Товарищ, но я также согласен」グッ
---------------------------------------
【しほの家】
しほ「…!」ピクッ
まほ「どうされました?」
しほ「西住家に新たな家族が誕生しそうな予感がしただけよ」
まほ「………はい?」
しほ「そうね。もしも孫ができるのなら」
しほ「 西住かほ なんてどうかしら」
まほ「良いと思います(…かほ??)」
しほ「孫ができたら肩車して散歩にでも行きたいわね。あなたやみほが幼かった頃のように」ズズズアチチ
まほ(……私を嫁にもらってくれる人いるのだろうか)ズーン
---------------------------------------
【プラウダ側】
カチューシャ「ねぇノンナ」
ノンナ「はい」
カチューシャ「ミホーシャたちは無人機を持ってないわ」
ノンナ「ですが、その対抗策として対空戦車を所有しています」
カチューシャ「ええ知ってるわ。アンツィオ高校との練習試合で勝利に導いたやつね」
カチューシャ「でも対空戦車は1輌。対してこっちは無人機が3つ」
ノンナ「…ハンデですか?」
カチューシャ「そんなことしたって意味がないの」
ノンナ「?」
カチューシャ「さっきも言ったけど、この試合だけは容赦なくミホーシャたちを叩き潰すのよ!」
ノンナ「公式戦ならともかく、練習試合で?」
カチューシャ「そうよ。練習試合だからこそなのよ」
ノンナ「……カチューシャ、もう少し詳しい説明をお願いします」
カチューシャ「そうね…」
カチューシャ「罰ゲームがイヤだからよ!!」
ノンナ「そうですか…」ハァ…
カチューシャ「名前を違法駐車にしろとかランドセルとかプラウダの隊長のメンツ丸つぶれじゃないの!絶対イヤよ!」
ノンナ「カチューシャが私を肩車するという罰ゲームでしたら歓迎ですよ」
カチューシャ「……前にやったじゃないのよ」
ノンナ「そうですね。下着を1枚処分するほど頑張っt 「ノンナァァァァァァ!!!!」
【試合後 大洗チーム】
典子「根性だけではダメなのか…!」
忍「強豪校のスパイクは受けきれなかった…」
優季「ッグ…ヒッグ…」ポロポロ
梓「みんな…泣くことないよ…練習試合なんだから…」
ねこにゃー「バルバトス3人相手にしたみたいだったにゃぁ…」
ももがー「硬いし強いしで太刀打ち出来ないっちゃ」
麻子「これが無人機の有無の差なんだな…」
優花里「まるで戦争末期の日本です…」
みほ「………」
沙織「みぽりん…」
みほ(私たちはプラウダ高校に文字通り"完敗"した)
みほ(試合が始まってからたった10分で3機の無人機が嘲笑うように戦車を攻撃して次々に行動不能に。同時に地上戦車によって包囲され私達は為す術もなく敗北)
みほ(そしてなにより…)
みほ「ヴィルベルヴィントの攻撃がほとんど効かなかった…」
カチューシャ「そうよミホーシャ!」
みほ「っ…! カチューシャさん…!」
カチューシャ「これが無人機なの。有ると無いとでは大違いなんだから」
ノンナ「…」
カチューシャ「あなた達の対空戦車ではカチューシャたちのシュトゥルムモビークは落とせないの」
カチューシャ「カチューシャたちだけではないわ。サンダースもグロリアーナも」
みほ「…ッ!」
カチューシャ「約束通り罰ゲームは受けてもらうわよ?決まったら教えるから楽しみにしてなさい」
カチューシャ「じゃね?ピロシキ」
ノンナ「до свидания」
みほ「ッ…グッ…ウゥッ…」ポロポロ
ノンナ「これで良かったんですよね」
カチューシャ「えぇ…そうよ」
カチューシャ「…無人機の使用が許可されてどこの学校も戦車戦から無人機戦になっちゃってる」
みほ・カチューシャ「………こんなの"戦車道"じゃない(わ)」
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\\/ / __/\
/・ / ヽ
/ O | * ',
/ 0 | |
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└―‐一\___| |___/
いったんここでくぎります(´・ω・`(⊃*⊂)
書き溜めしてるからもうちょっとまっててね
/ ハ\i:i.、
,' / i ヽ:i\
. _,.イi! / / ',, ノ }i:i:i\
. /i:i:i:i:i{.:.、 , ;; ' ';:i:i:i:i:i\,
'⌒'ー'”:;;ヽヽ:::ヤ"⌒"' "'ヽ i⌒ー'"”
;彳 {::N::ヽ i:.、 ! データによると
/ { 人! 'ヽ:} _. ! }、 , ' λ 私の出番はなさそうね
' ' _,.ィ''" ,ム;ハ/ \.
. ⌒_、 ' .ィ斗イ 〃;、,、 \.
ャト。、 'ぅ:;り' ゙/Y :| |、 \ \
代:ソ `" ' / / /.//:、 . \ \
Ⅸ" ' "" ' '/ ,ヽ、 ヽ \
>,ゝ., っ .イ / , / ⌒ヾ、 ' \
〃>、 ≧=-イ( >=‐-、 / ハ:. .\
. リ'火^>― 、.イ ヾー=彳'y' , }\ \
( )ーy' Xi i. ハ. \ ヽ
ソ / .〈 Ⅵi;. ム \
/ .//.iイ ヽ、 Ⅴ' ヽ ., \ i
. ' ' / .从 ハ ゝ、 ∨ ヽ ノ
{ 冫人 .|. ):、 , } ./
. { / ヽ ! '⌒ヽ ,.イ: ノ '´
弋 / ,ノ .乂 ,' }ゝ<
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. . . ル三.\.. ..|.7T ` \|\:ト.斗hミ.小|. .│
\/ ̄\\∨l/斗‐弍 ヒツノ }/|. 从 もしもしポリスメン?
火⌒コi| |人.^i弋rツ ′ |/
く. ./\Х く.. .|乂_ ` l
〈`¦...人_>rー个ー _ , 人
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. 人_〈|│ヽ. \\ .>‐ 、} |丿
八 \゙く/⌒ \_/
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│: : : : : : :./. : : : : : : : /\「 1|: : : : : :|
あ、再開しますね
【週明け・大洗女子学園】
みほ「………」
優花里「西住殿…確かに試合には負けました。でもこれは公式戦じゃありませんのでそこまで気を落とされなくても…」
沙織「そうだよみぽりん! 次の公式戦で挽回しようよ!ねっ?」
華「沙織さんの言う通りですみほさん。これでオシマイではありません」
みほ「………どうやって」
華「えっ?」
みほ「どうやって対空砲火の通じない無人機相手に立ち回れば良いの?!しかも1機じゃない!3機もいるのにどうやって!!」
華「…ッ!!」
沙織「みぽりん?!」オロオロ
みほ「皆も見たでしょっ!? 私達の攻撃で相手ビクともしなかったんだよ!! それどころか相手は赤子の手を捻るように私達の戦車を次々に行動不能にした!!」
みほ「これでこの先サンダース、聖グロ、黒森峰みんな当たり前のように無人機使ってくる相手にどう勝てって言うの!?」
麻子「お、落ち着こう西住さん!」
みほ「落ち着いていられるわけ無いでしょう!? 2度の廃校の危機乗り越えたと思ったら試合のルールが変わって無人機が出てきて空から戦車を攻撃して私達は手も足も出ない!!」
みほ「これのどこが戦車道なの?! 私達どうしろというの?! ねぇ誰か教えてよ!!!」
優花里・華・麻子・沙織「………」
みほ「………って、皆に怒ることじゃないよね………ごめんなさい……」
麻子「私達こそ西住さんの気持ち知らず軽はずみなことを言ってしまって済まない…」
沙織「ごめんねみぽりん…」
華「ごめんなさい」
優花里「申し訳ありません西住殿…」
杏「おー、荒れてるねぇ西住ちゃん」
沙織「か、会長?!」
華「会長、今は…」
みほ「何か、用ですか?」
杏「西住ちゃんにお客さんが来ているよ。待たせるといけないから行ったげて」
みほ「……わかりました」
ガチャ バタン
杏「………ふぅ」
沙織「会長…」
杏「んー?」
沙織「私達、どうすればいいの…」グスッ…
杏「なるようにしかならないねぇ…」
華「そんな………」
杏(やれやれ…カチューシャの"罰ゲーム"は重たいねぇ…)
【大洗女子学園 校門】
カチューシャ「また会ったわねミホーシャ」
みほ「…何の用ですか?」
カチューシャ「あなたも試合の前と後とでは全然違うわね」
みほ「………」
カチューシャ「罰ゲームよ」
みほ「そうですか」
カチューシャ「ええ」
カチューシャ「カチューシャを肩車しなさい!」
【学園艦】
カチューシャ「ここは静かで良いわね」
みほ「………」
カチューシャ「…アナタもわかってると思うけど、先週は練習試合とはいえ微塵も容赦せず叩き潰せと指示をしたつもりよ」
みほ「………」
カチューシャ「そしてその結果がアレ」
みほ「………」
カチューシャ「無人機を所持する学校とそうでない学校の差ってわけね」
カチューシャ「ミホーシャ達は対空戦車を持っていたことで1機しか無人機を持ってないアンツィオには勝てたけど、3機持ってるカチューシャ達にはあのザマよ」
みほ「…まだ嬲り足りないんですか?嫌な人ですね」
カチューシャ「おかしいと思わないかしら?」
みほ「………はい?」
カチューシャ「だってこんなの"戦車"道でも何でも無いじゃない」
カチューシャ「戦車同士で戦うから戦車道。なのに無人機が出て来たらそれはもう別の競技でしょう?」
カチューシャ「今まで"戦車だけなら…"って戦力差があっても辛うじてやって来れた学校も無人機のせいでますます戦力に差がでちゃったしね」
カチューシャ「ミホーシャ達のように対空戦車があるならまだしも、それが無ければ無人機への対抗手段は皆無よ。ゼッタイ無理」
カチューシャ「仮にあったとしてもミホーシャたちの今の対空戦車ではカチューシャたちのシュトゥルムモビークは落とせない。サンダースやグロリアーナ、黒森峰相手でも同じね」
カチューシャ「対策として装甲化された機体を選ぶ。あるいは対空砲火が届かない高高度から狙うわね」
カチューシャ「だから弱小校は爆撃から逃げる傍ら戦車の相手もしないといけない。だけど空から偵察で行動は丸裸。この絶対的不利は覆らないんだから」
みほ「………一体何が言いたいんですか?」
カチューシャ「明らかに弱小校"だけ"を蹴落とす理不尽なルール改定だと思わないかしら?」
みほ「…!」
みほ「…高校の資金で優劣がついているのは元からですよね?私たち大洗は寄せ集めの戦車なのに対し、強豪校は強力な戦車を数多く保有している」
カチューシャ「それでもミホーシャ達はそんな強豪校に勝ってきたじゃない」
みほ「………」
カチューシャ「そうよ。たとえ貧弱な戦車でも戦術次第で重戦車を行動不能にすることだって出来た」
カチューシャ「黒森峰相手でもティーガー、エレファント、ヤークトティーガー、さらにはマウスだって撃破出来たアナタたちがその証拠よ」
カチューシャ「でもね、無人機だと話が違ってくるわ。高いところを高速で飛来する相手じゃ攻撃にすらならないもの。土俵違いも甚だしいわ」
カチューシャ「つまり無人機があると無いという時点ですでに勝負は決まっているのよ」
みほ「カチューシャさん、私に何が言いたいんですか?」
カチューシャ「そうね…ハッキリ言うべきよね」
カチューシャ「結論だけ言うと大洗は3度目の廃校の危機に瀕しているのよ」
みほ「なッ!!?」
カチューシャ「大洗だけじゃないわね。無人機を導入できない高校や無人機を維持するのがやっとの高校もよ」
カチューシャ「無人機を惜しみなく使う強豪に全く歯が立たないってのは何度も言ったわね。だから弱小チームは今後もひたすら負け続けるの」
カチューシャ「負け続ければ戦車道への期待・関心が失われてやがて廃れていく。同時にそれは高校そのものの活性化を削ぐことになるわ」
カチューシャ「そして活気を失った高校はやがて生徒数が減って廃校に…ってわけ」
みほ「そんな…」
カチューシャ「あなたも薄々気づいてたでしょう?公正中立であるべき競技に実力じゃなくおカネで優劣が決まるようなルールが追加された時点で」
~~~~~~~~
麻子『無人機が導入できる学校と、そうでない学校でますます戦力差が出るわけだな』
華『そんな…』
みほ『………』
~~~~~~~~
みほ「…!!」
カチューシャ「お金を払って強い武器をゲットして相手より優位になるってのはゲームではよくあるけど、それを戦車道に持ち込むのはおかしいじゃない?」
みほ「そんな事したらいずれ戦車道そのものが無くなってしまうじゃないですか!」
カチューシャ「…恐らく、文科省は強豪チームだけを生き残らせて、その中から更に優秀な選手を集めたいんだと思うの」
カチューシャ「そのために弱小校は見捨て、強豪校だけに選手育成や設備投資の予算を集中ってところね」
カチューシャ「数年後に開催される世界選手権のために」
みほ「わ、私たちは廃校撤回したはずです!!」
カチューシャ「えぇ。だから文科省は前みたいに『廃校します』とは直接言って来ないわよね?」
カチューシャ「書面で約束した以上、それを反故にすることは日本国文科省そのものの沽券に関わるわ」
カチューシャ「だから無人機という"自ら手を汚さず弱小校が勝手に廃れていくシステム"を作ったのよ」
みほ「ひどい!! ひどすぎる!!!!」
ガヤガヤ ガヤガヤ
カチューシャ「ちょっと近所迷惑よ。落ち着きなさいミホーシャ」
みほ「だってこんなのおかしいじゃないですか!」
カチューシャ「吠えたところで何も変わらないわよ今は」
みほ「ぐっ…」
カチューシャ「勝ちなさい」
みほ「…はい?」
カチューシャ「ただでさえ強豪なチームに無人機が加わった絶望的な状況も"大洗女子はは戦術で覆せる"というのをアナタ自身が証明するの」
カチューシャ「そうすれば文科省も考えを変えざるを得ないわ」
カチューシャ「だから"勝ちなさい"」
みほ「でもこの間の練習試合で対空戦車だけじゃ歯が立たなかったじゃないですか!さっきと言ってること矛盾してますよ!」
カチューシャ「えぇ。20ミリじゃシュトゥルムモビークは落とせないわ」
みほ「だったら…!」
カチューシャ「あなたたちのIV号対空戦車ってもっと凄いの搭載できるの知らないの?」
みほ「え…?」
カチューシャ「IV号対空戦車、もといドイツの防空能力は最初こそ『魔の四連装』と言われた20ミリで十分威力を発揮できたわ」
カチューシャ「でも連合軍もバカじゃないから対策や開発を重ねてたか~い所を飛来したり機体を装甲化して対抗したんだから」
カチューシャ「それであなたたちの対空戦車がカチューシャのシュトゥルムモビークを落とせなかったように、ドイツも20ミリの威力不足に苛まれたの」
みほ「じゃぁどうすれば…」
カチューシャ「まだ解らないのかしら?威力不足なら威力を強化させれば良いだけ」
みほ「…」
ヤッテヤル ヤッテヤル ヤーーーッテヤルゾ
みほ「すいません電話が」
カチューシャ「構わないわよ」スタッ
ピッ
みほ「もしもし…はい……わかりました…はい…失礼します」
ピッ
みほ「ごめんなさい。会長から話があるそうなのでそろそろ…」
カチューシャ「ええ、楽しかったわ」
みほ「色々ありがとうございました」
カチューシャ「お礼なら角谷杏に言いなさい。彼女あちこち飛び回ってたわよ。無人機のように」
みほ「?…わかりました。そうします」
カチューシャ「あ、あとね」
みほ「?」
カチューシャ「対空戦車は1輌じゃダメ」
みほ「え?」
カチューシャ「1輌だけなら行動不能になった時点でオシマイじゃない。相手は最大3機使うんだから」
カチューシャ「別の対空戦車で威嚇射撃して飛行を妨害し、本命の対空戦車で撃ち落とす方が生存率は高くなるわ」
~~~~~~~~~~
『我々カメチームとカバチームが西住たちあんこうチームのサポートとしてつく』
~~~~~~~~~~
みほ(会長…これを見越した上であの指示を!?)
カチューシャ「あとは貴女たち次第よ。せいぜいカチューシャをガッカリさせないで頂戴」
みほ「はい…!」
カチューシャ「それじゃぁね~ピロシキ~♪」
【二人の帰り道】
ノンナ「おかえりなさいカチューシャ」
カチューシャ「ただいまノンナ」
ノンナ「罰ゲーム楽しんで来ましたか?」
カチューシャ「その言い方だとカチューシャが罰ゲーム受けたみたいじゃないの!」
ノンナ「それにしても随分優しい罰ゲームでしたね」
カチューシャ「なにがよ?」
ノンナ「普段だったら土下座だのシベリア送り25ルーブルだの言うあなたが『肩車させる』で済ますんですから」
カチューシャ「違うわよ?」
ノンナ「えっ」
カチューシャ「そもそもカチューシャの罰ゲームはミホーシャが相手じゃないもの」
ノンナ「どういうことですか?」
カチューシャ「罰ゲームの相手は角谷杏。そして内容は『ミホーシャに"プラウダ(真実)"を教える』よ!」
ノンナ「!」
カチューシャ「誰かに気づかれることなく物事を進めたがる彼女にとってはいい罰ゲームでしょう?」ニシシ
ノンナ「そうですね。…ですが」
カチューシャ「なによ…」
ノンナ「それは角谷さんがみほさんに言えば良いのであって、わざわざカチューシャが出向く必要はなかったのでは?」
カチューシャ「うるっさいわね!良いじゃないの別に!!」
【大洗女子学園 生徒会室】
ガチャ
沙織「あっ、みぽりん!」
華「お帰りなさい。みほさん」
優花里「待ってましたよ西住殿!」
麻子「待ちくたびれて寝そうになったぞ」
沙織「ちょっと寝てたじゃない」
みほ「皆さん、ただいま」
杏「おー、さっきまでの荒れっぷりがウソのように元通りだねー。やっぱに西住ちゃんはキリッとした表情が似合うと思うよ」
みほ「あ、ありがとうございます。…それで、お話というのは?」
杏「うん、西住ちゃん以外のあんこうの皆には文科省の件含めてもう話したんだけど」
杏「IV号対空戦車をアップグレードするよ」
みほ「!」
桃「先のプラウダ戦でヴィルベルヴィントの威力不足が浮き彫りになった。そのため、20ミリ機関砲より強力な対空兵器を導入する」
みほ「でも、そんな予算は…」
杏「西住流家元」
みほ「ッ!!!」
優花里「遂に、そこにたどり着いたわけですね…!」
杏「まぁつまり西住ちゃんのお母さんだね。無人機の件で話をしたらこの"改悪"が相当アタマに来てたみたいでさー」
杏「また蝶野さんと一緒に文科省の役人ンとこに交渉しに行ったそうなんだ」
杏「でもさすがに世界大会が出てくると戦車道連盟から国家単位の話になるわけで、難航しているみたいなのよねぇ…だから」
『戦車道において無人機は邪道中の邪道。完膚なきまでに叩き潰しなさい』
杏「…ってね」
杏「立場上から特定の学校だけ贔屓には出来ないけれど、間接的に対空戦車開発の支援はしてくれるってさ」
みほ「お母さん…」
杏「んでも、機材を取り寄せるには時間が掛かるからということで先ずは単純な火力強化として…えーと…秋山ちゃん、アレの名前何だっけ?」
優花里「はい、『3.7cm Flak43』であります!20ミリ対空機関砲よりも更に大きい37ミリ機関砲弾を使用した単装型の対空機関砲です!」
杏「そうそう。Flak43」
優花里「3.7cm対空機関砲は Flak18/36/37 とありますが、Flak43は作動方式を変更して従来のものよりも連射速度が向上し、しかも軽量化に成功した対空機関砲の傑作です!!」
杏「そんな凄い対空機関砲を"先ずは"貸してやるって言うものだから驚いたよー」
みほ「でも、搭載は…」
桃「幸いヴィルベルヴィントの砲塔をFlak43と乗員が収まるものに交換するだけで実装できるから時間はかからない」
杏「ひとまずこれで単純にIV号対空戦車の威力不足が解決したね」
杏「ただ…」
みほ「ただ…?」
杏「家元さん、Flak43を貸してくれるって時に"先ずは"って確かに言ったんだよね」
みほ「………」
杏「これが意味することってさぁ…」
杏「暗に『後々Flak43以上に強力なものをくれてやる』ってことじゃない?」
みほ「……っ…」
杏「…お母さんは西住ちゃんを見捨ててはいないんだよね?」
みほ「………」
みほ「…………おかあ…さん…」ポロポロ
優花里「目頭が熱くなりますねぇ…」ウルウル
桃「ぅぅ…」グスッ
柚子「桃ちゃん泣かないの」
麻子「良かった…本当に良かった…西住さん…」
杏「………というのがまず一つ」
全員「え?」
杏「いくらあんこうチームの対空戦車が強化されるって言ってもたった1輌しかないわけだからねぇ。行動不能になったら即・オシマイじゃん?」
杏「だからもう2輌対空戦車を増やそうと思うんだ」
あんこう・桃・柚子「ええっ?!」
桃「そっ、それは初耳です!説明を!!」
柚子「戦車の導入は急には無理ですよ?!」
みほ「だから『カメさんチームとカバさんチーム』なんですね」
杏「そーゆーこと♪」
柚子・桃「あっ…!」
杏「III突に今まで西住ちゃん達が使ってたヴィルベルヴィントの砲塔を流用して『III号対空戦車』を作って1輌」
杏「それでヴィルベルヴィント用の予備の20ミリ対空機関砲1門をウチら38(t)に搭載して『38(t)対空戦車』をつくる。これが2輌」
杏「以降、ウチらカメチームとカバチームは対空戦車小隊として西住ちゃん達の射撃サポートをする」
杏「ここまでで何か質問ある?」
秋山「あのぉ…」
杏「はい、秋山ちゃん!」
優花里「III突にしろヘッツァーにしろ、対空機関砲を搭載するには車体上部を変えないといけないと思うのですが」
杏「うん。そうだよ?」
優花里「その車体はどうやって?」
杏「黒森峰からシャーシだけ安く譲ってもらったから、あとはそれをいつものように自動車部に任せればオッケーだよ」
沙織「そっか!アンツィオ高校と試合した次の日に黒森峰の隊長と副隊長が来てた理由ってそれなんだね!」
杏「ぴんぽんぴんぽん♪」
優花里「なるほど!」
杏「自動車部にはもう話しつけてあるから今日明日くらいに1輌は完成すると思うよー」
沙織「えーっ自動車部すごい!」
麻子「毎度ながら彼女たちには頭が上がらないな」
杏「にしてもさ…」
全員「?」
杏「西住ちゃんやっぱお母さん似だね」
みほ「え?」
杏「話をしてる時の家元さんさ、平生を装いながらコメカミに青スジ浮かべてて凄い殺気だったよ」ハハハ
優花里「うわぁ…想像するだけで鳥肌たちます」
麻子「ウチのおばぁもそんな感じだな…」ゾワッ
華「生きた心地がしませんわね」
みほ「…」
杏「あたしもあン時ばかりは命の危険を感じたよ」
沙織「それじゃ旦那様逃げちゃうよー!」ヤダモー
桃「恐らく尻に敷かれているに違いない」
柚子「恐妻家ですよね」
ワハハハハハハ!
みほ「あははは」カタカタカタ
全員「」ビクッ
優花里「どどどうされましたにすず、西住殿?!」オロオロ
みほ「ううん、何でもありませんよ?」ニコッ
優花里「ひぇっ!」ガタガタ
みほ「大口叩きの会長も3.7cmなら1発かな~って思っただけです」ニコニコ
杏「西住ちゃんには一本取られたよ」アハハ
みほ「」ニコニコ
杏「アハハハハ」
みほ「」ニコニコ
杏「アハ…ハ」
みほ「?」ニコニコ
杏「…ゴメンってば」
優花里(今の西住殿は確実に間違った方向で西住流を発揮しているのであります…)ガタガタ
【数日後 戦車倉庫】
ワイワイ ガヤガヤ
桂利奈「前とあまり変わってないね」
梓「そんなことないよ、砲塔おっきくなってる」
あや「砲が4つから1つに減っちゃったね」
妙子「こうやって並んでるとまるで兄弟みたい」
あけび「III号とIV号だからねぇ」
忍「キャプテン」
典子「ん、どした?」
忍「『お姉ちゃん』って言ってみてください」
典子「え…おねえちゃん??」キョトン
忍「ッ!」ガシッ
典子「わっ!いきなり抱きつくな!」
沙織「ゆかりん、いつもの!」
優花里「かしこまりましたっ!」
優花里「まずIV号の方ですがこちらは『IV号対空戦車 オストヴィント』と言います」
優花里「あ、オストヴィントはドイツ語で"東の風"という意味ですね」
麻子「ヴィルベルヴィントからのオストヴィントなのだな」
優花里「名前は似ているのですが、どちらかというとメーベルワーゲンの上位機種ですね」
華「ではヴィルベルヴィントの方は?」
優花里「ヴィルベルヴィントはオストヴィントや他の対空戦車の不足を補うための"つなぎ"として作られた説が濃厚です」
沙織「へぇーそうなんだ」
優花里「それで、次のIII号対空戦車(仮称)なのですが」
優花里「ヴィルベルヴィントを強化する計画が出た際に、従来のヴィルベルヴィントの砲塔をゴッソリIII号に移動させたようなモノですね」
麻子「強化というのはオストヴィントの事か?」
優花里「いえ、オストヴィントとは別でして、ヴィルベルヴィントの機関砲を20ミリ4門から30ミリ4門にしたものを搭載する計画があったんですよ」
麻子「ほう」
優花里「この強化型は『ツェルシュテーラー45』と呼ばれたのですが、量産には至らず、試作型が1輌のみ製作されるだけで終わりました」
沙織「そのツェル何とかが生産されなかったからIII号対空戦車も生産されなかったんじゃないの?」
優花里「その通りです!結果としてヴィルベルヴィントの生産が続いたためIII号対空戦車も試作で終わりました」
華「となるとなかなか貴重な戦車なのではないでしょうか?」
優花里「そうなんですよ!ですからここでお目にかかれるとは夢にも思いませんでした!!」
カエサル「装填手は私とエルヴィン、砲手は左衛門佐といったところか」
エルヴィン「戦車長と通信手に加えて装填手もか。これは大仕事だな」
左衛門佐「おおお!動く!砲塔が動くぞ!!」キュラキュラ
カエサル「ちょっ、そんな回すなおい!」グルグル
おりょう「ハチの巣に されてボコボコ さようなら」
エルヴィン「なんか此方がやられたみたいだなそれ…」グルグル
優花里「そしてこちらのヘッツァー改め、『38(t)対空戦車』なんですけど」
沙織「…あれ?」
優花里「んっ?どうなさいました沙織殿?」
沙織「この戦車ってゆかりんの部屋になかったっけ?」
優花里「おおっ!よくご存知で!!」
華「はて、どれのことでしょうか?」
優花里「ブルムベアの隣の子ですよぉ~」ウフフ
華(ブルムベア…どれでしたっけ…)
麻子「秋山さん、ひとまずコッチの戦車についてだな」
優花里「おっと、失礼しました」
優花里「38(t)対空戦車はその名の通り38(t)戦車を流用した対空戦車であります」
沙織「この38(t)もヘッツァーになったり対空戦車になったりと大変よねー」アハハ
麻子「本当に大変なのは戦車じゃなく自動車部の方だと思うがな」
優花里「…ただ、ドイツにおける"対空戦車"はヴィルベルヴィント以降ですので、この車両も正確には"対空自走砲"の部類に入ります」
華「でもヘッツァーは部品の互換性の関係で38(t)からの改造は無かったと聞きますが」
沙織「それもきっと自動車部が何とかしてくれたんじゃない?」
麻子「自動車部はもはや重工業部に変えたほうがいいんじゃないか?」
沙織「あはは…工業高校も真っ青だよね…」
優花里「……開発の目的は、メーベルワーゲンの武装を20ミリから37ミリに変更する間の対空戦車不足を補うためでして…」
沙織「じゃぁこの38(t)も自動車部が無理くりやったのかなぁ」
麻子「その可能性は濃厚だな」
華「自動車部の皆さんには頭が上がりませんわね」
みほ「うん、もう少し自動車部のみんなを大切にした方がいいと思うな」
華「今度自動車部の皆さんも誘ってお食事でもいかがでしょう?」
優花里「……搭載される武装は単装の2cm Flak38を搭載しており…」
沙織「ところで自動車部にお願いすればもっと強力なモノ作れるんじゃない?!」
華「私達のIV号にも128ミリ砲搭載して下さるかもしれませんわね」
みほ「うーん、足回りが悲鳴あげそうだなぁ」ハハハ
麻子「操縦する立場としては笑うに笑えん話だな」
優花里「」ブワッ
沙織「あっ!? ご、ごめんねゆかりん?!ちゃんと聞いてるから泣かないで!」
麻子「何も泣くことではないじゃないか。ほら」 つ [ハンカチーフ]
優花里「どうぜわだじなんでぇぇぇぇぇ…」ズビビ
みほ「ゆ、ゆかりさん泣かないで! ほーら!期間限定の肢体切断ボコだよぉ~」
沙織「なにそれ怖いよみぽりん!あたしが泣きそうだよ!!」
華「お腹すきましたわね…」
杏「あーみんな、お楽しみのところ悪いけど」
エルヴィン「どうされた会長?」
杏「来月から公式戦が始まるから、各自シッカリ準備しておいてねー?」
みほ「えっ、こんな時期に公式戦なんてありましたっけ?」
杏「そうなんだよね。かぁーしまー」
桃「はいっ! 戦車道に無人機が導入されたと同時に、大会運営のスケジュールにも変化があった」
桃「無人機導入が決定したとはいえ、まだまだ課題は多いであろうからだ」
桃「そのため戦車道連盟は無人機に関する問題点・改善点の可視化を図り、今後のルール改定の指標として新たに大会を設定したというものだ」
優花里「無人機が導入されてから最初の公式試合ですね…!」
桃「…が、それはあくまで表向きの話だろうな」
全員「!!」
桃「わかっているとは思うが、無人機や戦車道のレギュレーション調整を名目に、文科省の本当の狙いは弱小校の切り捨て…」
桃「つまりここでの敗北は廃校につながる!」
「役人はまたウチら騙したのかよ!!」
「ひどい!!」
「あたしたちあんだけ頑張ったのに!!」
ワーワー!!!
桃「だからッ!」
全員「!」
桃「我々の戦車道として磨き上げられた実力の前には小手先の無人機やルール改定など意味を成さないことを文科省に叩きつけてやるのだ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
※補足:他のチームには桃ちゃんと柚子ちゃんが説明しました。
優花里「すごいですね。士気爆上げしてますよ!」
カエサル「河嶋殿はいつの間にこんなリーダーシップ発揮できるようになったんだろう」
左衛門佐「大学選抜チームと戦ったことで色々学ぶことがあったのだろう」
おりょう「ポンコツって言われてたのがウソみたいぜよ」
エルヴィン「副会長は名ばかりではなかったようだな」
優花里「え?河嶋殿は副会長ではなく広報ですよ?」
おりょう「えっ」
カエサル「えっ」
左衛門佐「えっ」
エルヴィン「えっ」
河嶋「き、貴ッ様らァァァァァァァ!!!」
カバ「うわあああああ逃げろ!!」スタタタタ
杏「んー…どういうわけかみんな間違えるんだよねぇ」モグモグ
優花里「まぁ…誰もが一度は錯誤するでしょうから…」ハハハ…
杏「広報とか副会長って名札つくっちゃう?」
柚子(肩身が狭い…)←副会長
杏「んで、大会の抽選もあるからねー。西住ちゃん」
みほ「あ、はい! それで抽選は?」
杏「明日だねー」
みほ「」
沙織(一方で会長は相変わらずだよね…)
【翌日 生徒会室】
みほ「私達は2回戦から出場となりました」
沙織「一試合分日程が開くから、その間に練習とか色々出来るしラッキーじゃん♪」
華「2回戦はどちらと当たるのでしょうか?」
みほ「1回戦の勝利チームとだから、知波単学園か聖グロリアーナ女学院のどちらかだね」
沙織「まず聖グロリアーナが勝つでしょうからダージリンさんのところかぁ」
麻子「聖グロには今まで一度も勝ったことが無い。いきなり強敵とまみえることになるのか…」
優花里「どうなるでしょうかねぇ…」
沙織「うん…」
みほ「?」
【戦車倉庫前】
典子「いきなり聖グロと対決ですか…」
みほ「まだ決まったわけじゃないけれど、おそらくは」
エルヴィン「直接対決は最初の練習試合以来だったな」
優花里「ダージリン殿との一騎打ちまで持ち込めたあの試合、紅茶よりも熱かったです!!」
梓「あ、あのとき私たちが逃げてなかったら…!」
沙織「ウサギさんチームはあれから急成長じゃない!巷では重戦車キラーなんて異名がつけられてるくらいだし!」
優季「もっと頑張れば恋人キラーにだってなれますよね沙織せんぱ…あれ」
沙織「エーンター エーンター ミッショーン ハヤク カレシクダサイ イーッショーケーンメー」ズーン
あゆみ「ちょっと沙織先輩落ち込んじゃったじゃない優季のおバカ!」
優季「沙織先輩!そんなに不貞腐れるとシュールストレミングみたいになっちゃいますよぉー!」
沙織「」~∞ プーン
あや「全然フォローになってないよ優季のおバカ!」
優季「おバカおバカうるさいよッ!!」
桂利奈「何の話でしたっけ?」ハテ
麻子「次の対戦相手のことだろ」
紗希「」ボー
みほ(それから私たちは大会に向けて戦術を練ったり、対空戦・対戦車戦を想定した訓練を行いました)
みほ(新たに2輌の対空戦車が加わったこともあり、そしてずば抜けた射撃精度を誇る華さんも更に精度をアップさせ、大洗の防空能力は飛躍的に向上しました)
みほ(もちろん他のチームも各々の役目を果たすべく練習を行い、チーム全体が日に日に強くなっているのを誰もが実感するほどになりました)
みほ(そんな中で予期せぬ事が起きてしまったのでした…)
【戦車倉庫前】
「今日の練習もアツかった!」
「最近ポルシェ機嫌が良くなってきたな」
「ますますムキムキだももー」
「もぉ~あやはバカだな~」ケラケラ
ワイワイガヤガヤ
「にしずみどのおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」ダダダ
みほ「ふぇっ、優花里さん?!どうしたんですかそんなに慌てて」
優花里「ゼェゼェ…にしずみどのゼェゼェ…オェ ゲホッ」
麻子「ひとまず落ち着こう。ほら」つ[水]
優花里「き、恐縮ですぅ…」ゴクゴク プハァー
沙織「いつもながらすごい形相で走ってたけど一体どうしたの?」
優花里「そ、それが…聖グロリアーナが…」
華「聖グロリアーナがどうかなさったのですか?」
沙織「まさか秘密兵器でも投入したの?!」
麻子「これ以上何を持ち出す気だ…」
優花里「違うんです…違うんですよぉぉ…!」
みほ「…何があったの優花里さん?」
優花里「聖グロリアーナが惨敗しましたぁぁぁ!!」
「ええええええええええええええええええええ!?」
◆ 3 東の風 VS 神風
ということでまた書き溜めて来ます
書き溜めしているからもうちょっとだけ待っててね
. . ´: : : : : : : : : : : ` . .、
. . ´ : :/: : : : : : / : : :_: : : \
. /: : : :/ : : : : : : : : : : :/ ヽ: : : \
, : : : : : / : : : : : : : /: : : :/ i: : : : :`、
/: : : : : :/ : : : : : : : /: :/}厂 _lハ : : : : : .
/: : : : : :/ : : : : : : : /Ⅳ _|{ ||`: : : i: : : .
. /: : : : : : i: : : : : : : : :i ィ笊ぅ ノ' l : : :i: : : i 特殊カーボンを身に纏って
//: : : : : |八: : : : : i :| {{弋 り fぅx |:i : :|: :i: :| 階段から転がり落ちたら
/: : : : : : : :∧: :|: : Ⅳ ,,,, 以 }从:./ /|: ; さぞ楽しいだろうなぁ
. /: /| : : : : { (刈\l ' ,,,/}/: / |/
. {/ |∧: : : \ー` _ j: : : :/ …と思う紗希ちゃんでした。
}ハ: : : :  ̄ヽ イ/}/
Vヽ∧: :} ゝ . イ刈
Ⅵ `f7爪/レ′
/ `ヽ |
_ -=ニ¨ 廴__ト、
. /⌒ヽ ヽ マニ†i}\
i \ \ マニリ ハ
. /| マ=-`===--v-彳j}i
| 丶三≧==f斧Y八
L.| ∨  ̄ ̄込入 }i
| / /ニ冂ニ刈
| / /ニニ/ |ニニ〉
お待たせしました 再開します
河嶋「いや、惨敗って…」
柚子「聞き間違いだよね?ねっ?」
杏「大本営発表ってヤツじゃないのー?知波単だけに」モグモグ
優花里「そうならどれだけ良かったかと…」
エルヴィン「どういうことだグデーリアン!どう聞き間違えたら強豪の聖グロが突撃バカの知波単に"惨敗"するというのだ!」
カエサル「いくら何でも番狂わせが過ぎるぞグデーリアン!これではレウクトラの戦いではないか!!」
左衛門佐「いや、源平合戦だろうな」
おりょう「番狂わせと言ったら日露戦争ぜよ」
優花里「なんでここでマレー沖海戦が出てこないんですか!!」
「「「「それだっ!!!!」」」」
杏「あー…茶番はそのへんにしようよ」
杏「んで、どういうことなのかなー?秋山ちゃん?」
優花里「私も試合を直接見たわけではないので詳しいことはわかりません」
優花里「ですが、観戦した方の話を聞くと…」
杏「うんうん」モグモグ
優花里「知波単学園は一切吶喊・突撃をしなかったそうです」
全員「え…」
忍「気合と根性ならどこにも負けないの知波単学園が突撃しないなんてあり得ません!」
あけび「ネットがないバレーくらいあり得ないですよ!」
妙子「キャプテンが実は男の子だった! ってくらいおかしな話です!」
忍「あ…それはあってもいいと思うけれど」ブツブツ
典子「私は女だっつーの!証拠見せたろうかッ!!」
ワイワイ ガヤガヤ ザワザワ
アーダ コーダ ソーダ ドーラ
杏「んー…ラチが明かないねぇ…」
柚子「一旦場所を移した方が…」
杏「そだね。かーしま」
桃「はっ!あんこうチームと各車両の車長は生徒会室に集合!それ以外は射撃練習!!」
「「「はいぃっ!」」」
【会長室 ホワイトボード前】
杏「んじゃ秋山ちゃん、続きをお願い」
優花里「はい…。先程も言いましたように、まず知波単は"伝統"とも言える吶喊および突撃を一切しなかったそうです」
エルヴィン「何度聞いても信じがたいな」
典子「突撃しない知波単なんて知波単じゃないですよ!」
梓「一体どんな戦術を取ったんですか?!」
ナカジマ「知波単もエンジンとか足回りをカスタマイズしたのかなぁ?」
ねこにゃー「ゲームで日本の戦車は何度か使ったことあったケド、正直あれで対戦は勝てないにゃー…」
優花里「私も戦車の性能や戦術を鑑みて知波単学園がそこまで強いとは思いませんでした」
そど子「あんな暴走族みたいな突撃なんて風紀が乱れるだけよ!」
エルヴィン「知波単学園には失礼だが、計画性のない突撃は戦力の消耗を早めるだけだ」
麻子「その戦法で過去に準決勝まで行ったそうだが、どう勝ったのか知りたいくらいだ」
優花里「突撃をした!…ならまだわかるのですが、先程も言いましたように知波単学園は突撃をしませんでした」
全員「…?」
優花里「どうやら知波単学園は戦術を大幅に見直したようです」
優花里「そしてそれは無人機導入から…」
優花里「知波単学園はもう私達が知ってる知波単学園じゃないのかもしれません…」
全員「…?」
エルヴィン「歯切れが悪いなグデーリアン、人思いにズバッと言ってくれないか?」
優花里「…そうですね」
優花里「無人機が導入された今、知波単は文句なしで強豪高です」
全員「!!?」ガヤガヤ
エルヴィン「おいおい…強豪とは随分言ってくれるではないか…」
梓「確かに強豪の聖グロリアーナに勝ちましたが、たった1回の勝利でそれは言い過ぎなのでは?」
優花里「これが"辛うじて勝てた"なら仰る通りだと思います。ですが現実は"完勝"でして…」
典子「完勝…いい響きですね」
みほ「優花里さん?」
優花里「なんでしょう西住殿?」
みほ「試合日程が決まった時に優花里さんが言った
『どうなるでしょうかねぇ…』
というのはもしかして…」
優花里「えぇ…」
優花里「もしかしたら聖グロリアーナは負けるかも…って…」
沙織「もー!そういうことは早く言ってよ!焦らすなんて大人のテクニックだよゆかりん!」
麻子「そう言うな。あの時は誰もが聖グロが勝つと疑わなかったんだぞ。言ったところでどうなる」
ナカジマ「今までの経験からそう考えるのは突飛な話ではないからねぇ。秋山さんが話を渋るのもわかるよ」
優花里「そう言って頂けると助かります。私も戦車に関しては聖グロリアーナの方が戦車の性能も戦術も上だと思っていたので…」
梓「あの…知波単学園の無人機ってそんなに強いんですか?」
エルヴィン「知波単学園ということは日本の航空機……まさか!」
優花里「零式艦上戦闘機、通称"零戦"はご存知ですよね?」
全員「!」
典子「それ聞いたことがあります!」
梓「私も聞いたことがあります!映画でも出ますよね!『トラ・トラ・トラ!』とか『永遠の0』とか!」
ねこにゃー「戦車と違って零戦はスコア稼ぎやすかったよ」
優花里「日本を代表するだけでなく、世界的に有名な戦闘機の1つというのは皆さんもご存知の通りです」
エルヴィン「ミリタリーマニアなら知らないと恥をかくほどの名機であろう!」
優花里「知波単学園はまずこの零戦をはじめ、更にも優れた航空機があります」
沙織「まだあるの?!」
優花里「私が思うに、もしも戦車ではなく航空機主体の"航空道"なんて競技があるとしたら」
優花里「知波単学園は全国5本指に入るでしょう」
みほ「さすがに航空道なんてのは聞いたことがないなぁ」
優花里「私が今考えた架空の競技ですからね」エヘヘ
エルヴィン「うム…無人機によって怪物になってしまったわけか…」
優花里「はい…。無人機導入と聞いて、真っ先に脳裏に浮かんだのが知波単学園でした」
優花里「数ある学校の中、無人機によって最も恩恵を受けた高校と言って良いでしょう」
杏「戦車はイマイチでも航空機は有名なのいろいろあるからねぇー」
優花里「もしかしたら、聖グロリアーナより苦戦を強いられるかもしれません」
典子「いきなりそんな怪物が相手だなんてどうすれば良いんですか!」
優花里「とにかく、情報収集と無人機対策ですねぇ…」
杏「秋山ちゃん、またお願いしてもいーい?」
優花里「はい!顔はバレちゃってますがやってみます!」
みほ(私の方でも何か情報を集められないかな)
【同日夜 みほの部屋】
プルルル プルルル ガチャ
『はい』
みほ「急な電話すみません。大洗の西住です」
『あら、お久しぶりねみほさん。このタイミングということは次の試合への情報収集かしら?』
みほ「はい…。今日試合の結果を聞いて皆驚いてまして…」
『ふふ、無理もありませんわ。私だって今も驚いているぐらいですもの』
みほ「あの…!こんなタイミングで申し訳ありませんが…その…知波単学園との戦いについて教えて頂けないでしょうか…」
『ええ、構いませんことよ』
みほ「! ありがとうございます…」
みほ「アッサムさん!」
アッサム『ふふっ。大洗の隊長さんに頼りにされるとは名誉なことですわね』
みほ「あはは…恐れ入ります」
アッサム『貴女もご存知の通り、聖グロリアーナは知波単学園にコテンパンにやられてしまいましたわ』
アッサム『私たち聖グロリアーナがまさかの一回戦敗退。歴史的な屈辱ですの…』
みほ「…知波単学園の皆さんには失礼な言い方になりますが、私達も聖グロリアーナが勝つものだと思っていました」
アッサム『ええ。私達もそのつもりでしてよ』
アッサム『けれど、結果はご存知の通り…』
みほ「正直今でも信じられないくらいです」
みほ「…それでお聞きしたいのですが、あの試合で一体何があったのですか?」
アッサム『特筆すべきはやはり知波単学園の無人機』
アッサム『いずれも並外れたスペックであることに加え、恐ろしいまでに洗練された操縦者の腕ですわね』
みほ「操縦者の腕?」
アッサム『えぇ。無人機とて勝手に飛行して勝手に攻撃するお利口さんではありませんわ。必ず操作する者が必要ですの』
アッサム『陸を走る戦車と違い、遥か上空を飛ぶ航空機に人を乗せるのは安全面に問題があるから"無人機"として運用していることはご存知でして?』
みほ「はい。競技とはいえ運用方法が運用方法なので、万が一のことがあると死亡事故に繋がりかねません」
アッサム『そう。だから競技参加者がパイロットよろしく無人機を"遠隔操作で"操縦しますの』
アッサム『それゆえ無人機の性能だけでなく、操縦者の手腕も求められますわ』
アッサム『知波単学園が所有する航空機がそこそこハイスペックであることは確か』
アッサム『でも、操縦者が未熟なら本来の性能を発揮できず宝の持ち腐れになりますものね』
みほ「つまり…"エースパイロット"がいると…?」
アッサム『ご名答ですわ。同じ無人機の操縦者を務めた者として鳥肌が立つほどの手練がいらっしゃることは確かです』
アッサム『蝶のように舞い、蜂のように刺す。彼女たちの飛行技術はそう表現できますわね』
みほ「なるほど…」
アッサム『ただ…』
みほ「?」
アッサム『意外だったのは知波単学園が一切の突撃を行わなかったことですわね』
みほ「その情報はこちらも入手しています。やっぱり皆驚いていました」
アッサム『今回の知波単には驚かされてばかりですわ。まさか私達が"突撃"するハメになるとは』
みほ「ええっ!?」
アッサム『ふふっ。突撃は誇張ですが、本来なら突撃してくるであろう知波単の戦車を待ち構えて全方位から攻撃するつもりでしたの』
みほ「多分私たちも知波単学園と戦うならば似たような作戦を考えたと思います」
アッサム『…でも、どれだけ待てども想い人が来てくれないので、此方から出迎えることに』
アッサム『そして気づいたら私達はまんまとスズメバチの巣の中に…』
みほ「!」
アッサム『突撃を返り討ちにするどころか、こちらが蜂の巣を突いてしまう結果になるとはあの時誰も想像できなかったわ』
みほ(アッサムさん…口調こそ柔らかいけれど、やっぱり悔しかったんだよね…)
アッサム『知波単の戦法はまさに"ニンジャ"。私達が戦車の所在を確認できた頃には残存戦力は殆ど残っていませんでした』
みほ「えっ、でも無人機から地上の戦車の位置を把握できますよね?」
アッサム『残念なことに、無人機隊は知波単の無人機を相手にするのに精一杯で偵察の余裕はありませんでしたの…』
みほ「そんな…!」
アッサム『それに…』
みほ「まだあるんですか!?」
みほ「……なるほど、色々有意義な情報が集まりました」
アッサム『ふふっ。ダージリンの"親友"からのお願い事ですもの。誠意に対応せねば何を言われるかわかりませんわ』
みほ「えへへ……あっ!その、ダージリンさんですが、やっぱり…」
アッサム『えぇ…試合終了直後は呆然としておりましたわね…』
みほ「やっぱり…」
アッサム『でも、どこか清々しい表情をしていたわ』
みほ「えっ?」
アッサム『彼女ったら"知波単の隊長さんに恋をしてしまいそうだわ"…って。いったい何人に恋をすれば気が済むんだかあの人は』ハァ…
みほ「そ、そうなんですか」アハハ…
アッサム『あんな清々しいダージリンを見たのはあなた達と練習試合をした時以来ですわね』
失礼
>>185の後に以下が入ります
アッサム『後から解ったことですが、どの戦車も地形や森林を最大限に利用して隠蔽し、互いの死角を補うように配置されておりましたの』
アッサム『似たような戦術はプラウダ高校の包囲網にもありますが、とり効率的に集中砲火を浴びせられるような構造になっておりました』
みほ「話を聞く限りでは無人機だけでなく地上の戦車戦も従来のものと大きく変わっていますね」
アッサム『ええ。知波単学園は突撃するものだと思い込み、知波単学園の大規模な戦術改革に気づけなかったのが最大の敗因ですわ』
アッサム『今の知波単学園の隊長…西さんでしたわね』
アッサム『どのようにしてあの血の気の多いチームを改革なさったのでしょうね…』
みほ「それは私も気になるところです」
アッサム『直接本人から聞いてみてはいかがでして?』フフッ
みほ「えっ?」
アッサム『まだ結成したばかりの大洗女子学園が、私達を最後の1輌まで追い詰めたあの時とよく似ていますの』
みほ「あの時は聖グロリアーナ相手に私達もあそこまで頑張れるとは思いませんでした」エヘヘ
アッサム『それでも私達が窮地に追いやられた事には変わりありませんわ』
アッサム『思えばダージリンが好敵手に紅茶をプレゼントしたのもあの時以来。色んなことが重なっていますわね』
みほ「そうなんですか?」
アッサム『相手の隊長さんが"饅頭に紅茶は合いますでしょうか?"と言った時のダージリンの引きつった顔は印象的でしたわね』ウフフ
みほ「お饅頭食べながら飲む緑茶は格別ですからね」クスッ
アッサム『……あなたも同じことを言うのね』フフ…フ
みほ「……っと、もうこんな時間?! 長々と話し込んじゃってすいません」
アッサム『いえいえこちらこそ。有意義な時間を過ごすことが出来ましたわ』
みほ「本当に色々教えて下さってありがとうございました」ペコリ
アッサム『どういたしまして。"西同士"の戦い、楽しみにしていますわ』
みほ「はい!ありがとうございました!」
ガチャ
【同日同時刻 生徒会室】
桃「~~~」カタカタ ブツブツ
柚子「あれ?桃ちゃんまだ調べ物?」
桃「昼にあんな話を聞いて何もしないわけにはいかんだろう」カタカタ
柚子「そうだよねー。…でも、無理はダメだよ?」
桃「…それは私じゃなく会長に言って欲しい」
柚子「…会長あれからまたあちこち訪問してるけど、今度は何をするのかな?」
桃「わからん…元々何かやるのを人に見られるのが好きじゃない方だからな」
柚子「新しい戦車をタダで貰えるよう交渉してくれたら良いのにね」
桃「無理難題を言うなよ…」
柚子「ところで桃ちゃん?」
桃「何だ?」
1:戦車内でオナラしたけど質問ある?(475)
2:安価で家元に突撃する(654)
3:………(91)
4:戦車道履修者だけど隊長が可愛すぎて生きるのが辛い(139)
5:ボコの魅力を教えるスレ(2)
6:家元の娘に話しかけたら警察が来た件(334)
7:「ガルパン エレファント」でググると武装親衛隊のまとめブログが出てくるんだが(123)
8:マウス壊れたwwwwwwwww(150)
9:全力で姐さんを留年させる(57)
10:スマホ買ったけど娘がライン既読スルーする件(503)
柚子「…一体何をしてるの?」
桃「じょ、情報収集だ!」ッターン
柚子(…素直に休憩してるって言えばいいのに)
桃「…ん?」
柚子「どうしたの桃ちゃん?」
桃「これ…」
知波単学園が最強の無人機を導入したらしい(12)
桃「どう思う?」
柚子「とりあえず、見てみようよ?ね?」
桃「…わかった」カチッ
ギャアァァァァァァァァァァァアァァ!!!!!
桃「うわああああああああああああああああああああ!!!!」ガタッバンゴン
柚子「いやあああああああああああああああああああああ!!!!」ズテン
【翌日 会長室 ホワイトボード前】
みほ「…というのがアッサムさんからの情報です」
ナカジマ「機体だけでなく操縦手も凄いのかぁ…気になるねぇ」
梓「わ、私達だって戦車の操縦は負けてません!」
典子「地上は待ち伏せ、空からは空襲…てんてこ舞いですね…」
桃「無人機が脅威なのは勿論だが、待ち伏せに関してはそのポイントに行かなければ良いんじゃないか?」
みほ「そうなんですよね。…ただ、そうした場合の無人機がどういう行動を取るかが気になるところです」
みほ「それに殲滅戦ですから、どちらかが全滅しない限り試合が続くわけですからね…」
梓「えっ?今回ってフラッグ戦じゃないんですか?」
杏「あー。その説明してなかったねぇ。かーしまぁ」
桃「はっ。先日説明したように今回の試合は無人機を含めたレギュレーション調整の側面もある」
桃「そのため、フラッグ戦ではすぐに決着がついてしまい、調整のための資料が集まらないそうだ」
桃「そういった事情から一回戦及び二回戦までは投入戦車10輌の殲滅戦としたそうだ」
みほ「という事は準決勝以降は従来のようにフラッグ戦となって戦車も15輌、20輌になるということですか?」
杏「そだよー」
柚子「弱小校を配慮したフラッグ戦は無人機を導入した後だと試合の早期決着に拍車をかけるなんて皮肉だよね…」
みほ「なるほど…試合形式は把握しました」
沙織「………ところで桃ちゃん先輩、頭ケガしてるみたいだけど何かあったんですか?」
桃「桃ちゃん言うなっての!」
柚子「昨晩イスから転げ落ちたんだよね桃ちゃん」クスクス
桃「そういうお前も"ふぇぇ桃ちゃぁん…"とか言いながら腰抜かしてただろうが!」
柚子「あーっ!桃ちゃん何でそれ言うの?!」
桃「おっお互い様だ!!」
ギャーギャー
杏「お前たち2人揃って何してんのさ……」
優花里「ひゃっほぉぉぉぉぉい!!おっまたせしましたぁぁぁぁぁぁ!!」バァァァァァン!!!
桃「うわっ?!」
柚子「きゃっ!?」
杏「おー!おかえりー秋山ちゃん」
沙織「ちょっとみぽりん!壁ドンじゃなくドアドンは反則だよっ!!」
華「まぁずいぶんダイナミックですわね」ウフフ
麻子「ダイナミックにも程があるだろう州知事じゃあるまし」
ドア「」チーン
みほ「あぁ…ドアが…」
優花里「あっ…失礼しました!」
典子「良いスマッシュだ…!」
エルヴィン「まさにドアノッカーだなグデーリアン!」
そど子「感心してる場合じゃないでしょ!設備の損壊は立派な校則違反よ!」
杏「私も何度かドア蹴り開けてたけど、吹っ飛ばしたことは無いねぇ…」
柚子「また経費が…」
優花里「そんなことより!知波単学園の情報持ってきました!!」
杏「お、待ってましたー」
桃(そんな事って…ドア修理するのいくら掛かると思ってんだ…)
【秋山優花里潜入レポート】
- 平成の激動 知波単学園潜入 -
優花里『というわけで今回は知波単学園に潜入します…』
麻子「毎度ながら即席とは思えない凝った編集だな」
優花里「えへへ。帰りの船の中で編集しちゃいました」
典子「秋山さんにバレー部のPV動画作ってもらいたいなぁ…」
沙織「ゆかりんのオールバック初めて見たよ」
華「これはこれで魅力的ですわね」フフ
優花里「さすがに面識のある学校なので少し変装してみました」
みほ(この優花里さん可愛い…ボコみたい///)
優花里『こちらは知波単学園の戦車倉庫です。なかな広いですねぇ~。
優花里『ご覧の通り保有戦車は結構な数あります』
優花里『おっ、知波単学園の名前にもある"チハたん"こと九七式中戦車があります!あっ、向こうには"ハゴたん"こと九五式軽戦車も!』
優花里『これはまるで博物館にいる気分ですねぇ~!』キラキラ
沙織「本当に博物館にいるみたいなテンションだよね」
麻子「楽しそうで何よりだ」
華「まるでボコについて語るみほさんみたいですわね」フフ
みほ「えっ?あ、ボコは凄いですよ!何と言っても満身創痍になっても挫けずに立上がって…」
杏「まま、西住ちゃん、今は動画に集中しよーよ?」
みほ「あ…ごめんなさい…///」カァァ
麻子(……珍しいこともあるもんだな)
優花里『おっ、あちら無人機らしきものが見えます。ちょっと近づいてみますね』
優花里『ふむ…陸軍の傑作機といわれた四式戦闘機"疾風"ですね』
優花里『その隣には海軍機の"零戦"こと零式艦上戦闘機、そして紫電改』
優花里『…おおっ!試作型の"烈風"じゃないですか!こっちは和製コメートこと"秋水"!あそこには75mm高射砲を搭載した"キ109"まで!!』ヒャッホォォイ!!
優花里『そしてその奥には…ん?』
優花里『…一式陸上攻撃機?』
優花里『ふーむ…。おそらく機動性の高い零戦や紫電改、四式、烈風、秋水のうちいずれか2機で対無人機戦を繰り広げ、』
優花里『一式陸上攻撃機やキ109で対地攻撃をするという運用なのでしょうかねぇ?』
優花里『おや?横にシートが掛かったモノがあります。一体何が入ってるんでしょう?』ペラッ
『おい貴様!そこで何をしている!!』
優花里『わっ!見つかりました!!以上で潜入レポートを終了します』ダダダッ
劇終
協力:サークルKサンクス
協賛:大洗女子学園 生徒会
撮影・編集:秋山優花里
優花里「潜入レポートは以上です」
杏「毎度ながらジェームズボンドも映画も真っ青の偵察任務だねぇー」パチパチ
桃「し、心臓に悪すぎるっ!見ていてヒヤヒヤしたぞ!」
柚子「昨日のアレみたいだったねー」
桃「お前はそれから頭を離せこの腰抜けがー!!」
柚子「腰抜けって桃ちゃんひどい!!」
ギャーギャー!
杏(おまえら2人は昨日何をしてたのさ……)
エルヴィン「海軍機、陸軍機は大体わかったが、秋水やキ109まで持ってるのか…なかなマニアックだな知波単…!」
梓「これだけあると試合当日にどの無人機を使ってくるかわかりませんよね…」
典子「聖グロは無人機を持っていたので対無人機策を講じていましたが、私達は無人機を持っていないので、いずれも爆撃してくるのでは?」
優花里「ええ、零戦も爆装型がありますし、その可能性は濃厚でしょう」
麻子「なんだか知れば知るほど逆に希望が薄れていく気がするな…」
沙織「そんな状況今まで何度でもあったじゃない!」
華「そうですよ麻子さん。私達は何度も困難を乗り越えてきました。時間はまだまだありますのでじっくり作戦を考えていけば良いのですよ」
優花里(西殿…あなたは一体…)
【時は遡り、聖グロリアーナ戦後の知波単】
アナウンス『勝者、知波単学園!』
オオオオオオオオオオ!!
バンザァァァァァァァァァァァァイ!!!!!!!
西「勝ったんだ…聖グロリアーナに……」
玉田「隊長殿!我々の完全勝利ですぞ!」
細見「聖グロの騎士道に我ら知波単の武士道が勝った瞬間であります!」
西「あぁ…そうだね…」
福田「西隊長殿?どうされたでありますか?」
西「えっ?…あぁ、ははっ…まだ勝ったという実感が湧かないだけだよ」
福田「そうでありましたか!」
西「あぁ…」
西(………)
~~~~~~~~~
「ここは海軍機を導入すべきだ!地上攻撃は元より敵機との戦闘では機動力が物を言う!」
「それなら陸軍機のがある!機動性はもとより海軍のものより耐久性に優れている」
ガヤガヤ
「隊長殿!ここは海軍機"紫電改"を是非!」
「いや、隊長殿は陸軍機をお気に召すはずだ!!」
西「ま、まぁまぁお前たち、それぞれ1機ずつ導入すればいいじゃないか」
「おお!さすが隊長殿!」
「見事なご決断であります!!」
ワイワイガヤガヤ
「あ、あのっ!無人機は3機まで良いとありますが、残りの1機は」
「そうだ!福田の言う通り!陸軍機2機で連携を取れば百戦危うからずですぞ隊長殿!!」
「それこそ"我ニ追イ付ク敵機ナシ"と鬼畜米英を圧倒せしめた海軍機を2個置くべき!!」
ガヤガヤ ガヤガヤ
西「諸君!」
「!」
西「このまま陸よ海よと啀み合ったところで埒が明かない。ひとまず無人機の話は置いといて、戦車についての戦略を練ろうではないか」
「しかし隊長殿、無人機は我が知波単の戦力を大幅に向上させるのですぞ!」
「ここで話をつけねば何時すべきと言うのですか!」
西「無人機は3機まで許可されているだろう。なら陸から1つ、海から1つ、残りの1つは私が決めよう」
「…なるほど!」
西「それで諸君。来る聖グロリアーナ戦に向け、我が知波単の戦車運用について提案がある」
「………」
西「まず戦車部隊は地形を最大限に利用した奇襲作戦とする」
西「岩の陰に潜み、草木に隠れ、敵戦車が通過するのをじっと待ち、通過したところを討つ」
西「つぎに無人機については敵機の迎撃に専念する」
西「あわよくば敵機迎撃できた場合、以降は上空より敵戦車の偵察、誘導、そして爆撃を行う。そして…」
西「本作戦において一切の突撃・吶喊および玉砕を禁ずる」
「!!!」
「隊長殿!それは我が校の伝統に背く行為ですぞ!!」
「何故そのような卑怯者の戦法を採用せねばならんのですかッ!!」
「た、隊長殿…これはどういう…」オロオロ
西「この作戦が我が校の伝統に背を向けるものというのは百も承知だ」
西「だが、先のエキシビジョンマッチ、そして大学選抜戦を経て我々は新たな戦い方を講じる必要性を十二分に感じたのだ」
西「知波単が知波単として生きるためには変わらなければいけない…!」
「勇猛果敢に突撃するのが知波単魂ですぞ!その結果儚く散ったとしても!」
「知波単の精神に反してまで得る勝利に何の価値があるというのですか!!」
「あんまりです隊長殿!!」
「見損ないましたぞ!!」
西「"皇国ノ興廃此一戦ニ有リ"」
「…!!」
西「…負けたらそれでお終いだよ。」
「………」
~~~~~~~~~~~~~~~
西(…そう。負けたらお終いなんだ)
西(だから勝たなくちゃ…何としてでも…)
福田「西隊長殿…?」
西「……ん…?」
福田「なんだか顔色が優れないであります」
西「あぁ、大丈夫だ。すまないな」
西(でも、今回は無事に勝つことができた…)フゥ…
【大会当日 試合会場】
西「お久しぶりです。西住殿」ビシッ
みほ「こちらこそお久しぶりです西さん。先日の大学選抜戦ではお世話になりました」ペコリ
西「いえ、あの時はいろいろ粗相してしまい、謝罪せねばと…」フカブカ
みほ「いえいえ、とんでもない。西さんや知波単学園の力もあってこその勝利です」
西「あはは…あの試合では私も色々学ばされました」
西「その時の戦訓をこの試合で発揮できればと思う所存であります」
みほ「ところで西さん、なんか顔色が」
審判「それでは試合を開始します!」
西「では試合でお会いしませう!」
審判「両チーム、礼!」
全員「よろしくお願いします!!」
西「………」
西「………フゥ…」
みほ(………西さん…???)
【観戦席】
オレンジペコ「始まりましたね」
ダージリン「えぇ…」
オレンジペコ「ダージリン様?」
ダージリン「…えっ?」
オレンジペコ「なんだか上の空ですね?何かあったのですか?」
ダージリン「そうね……こんな格言を知っているかしら」
ダージリン「空を道とし、道を空とみる」
オレンジペコ「宮本武蔵ですね」
ダージリン「彼女は悩んでいるようね……」
オレンジペコ「そうですか?」
ダージリン「えぇ…」
ダージリン「オレンジペコ、この試合はしっかり見ておきなさい」
オレンジペコ「? わかりました」
【大会 大洗チーム】
みほ「今回の試合会場は森林地帯と山岳地帯が入り組んだような地形になっています」
典子「アンツィオ高校と戦った時みたいですね」
梓「奇襲攻撃をするのに有利な地形です」
エルヴィン「同時にこちらも森林に隠れたら無人機に見つかりにくくなるな」
みほ「だけど、無人機の死角になるのを見越した配置になっている可能性も十分あります」
みほ「相手がどこに潜んでいるか分からないので、移動は細心の注意を払いながら行います」
みほ「ウサギさんチーム、アヒルさんチームは二手に分かれて偵察をお願いします」
みほ「視覚だけでなく五感全てをフル活用し、僅かな変化も見落とさないようにして下さい」
みほ「同時に、敵の戦車を発見したら深追いせず即座に連絡してください。迎撃チームが駆けつけます」
典子「アヒルチーム了解しました!」
梓「同じくウサギチーム了解です!」
みほ「幸い知波単学園の戦車の火力は聖グロリアーナと比べると劣っています」
みほ「万が一集中砲火に見舞われた場合は慌てずに一旦退却して体勢を立て直しましょう」
みほ「カバさんチーム、カメさんチームは私達あんこうと行動を共に、敵機を発見次第迎撃態勢に入ります」
エルヴィン「心得た!」
杏「おっけーい!」
みほ「そして敵が攻撃態勢に入ったら一斉射撃し、これを妨害します」
みほ「陸だけでなく空も警戒しないといけないので、各車両間の連携はより緊密に行います。どんな小さなことでも報告してください」
全員「了解!!」
みほ「それでは、パンツァー・フォー!」
【ウサギさんチーム】
ガタン ゴトン
あゆみ「うぁっ!桂利奈ちゃんもっと安全運転!」
桂利奈「道がデコボコしてるから仕方ないよー!」
梓「山岳地帯を抜ければ揺れはおさまると思うから、それまで頑張ろう!」
優季「これなら沙織先輩のクッション1つ借りればよかったなぁ」
桂利奈「座るとブーッ!ってオナラみたいな音が鳴るやつー?」
あや「違うよ。まんなかに穴のあいたクッションだよ」
あゆみ「えーっ!?沙織先輩って痔なの?!」
優季「わかんないけどぉ、あのクッション使うってことはぁ」
沙織『こ ち ら あんこうチーム!ウサギさんチーム状況報告をお願いします!!』
ウサギ「ひゃぃっ!?」
優季「こちらウサギチーム、今のところ異常なしです!」
あや「優季が沙織先輩のこと痔って言ってましたー!」
優季「アタシ言ってません!沙織先輩のこと痔だって言ったのはあやとあゆみですぅ!」
沙織『』ブチッ
沙織『あんたたち!あたしの悪口言ってないでちゃんと報告するっ!!』
ウサギ「わーん!ごめんなさいママー!」
沙織『まだママじゃない!お姉さんって言って!!』
みほ『まぁまぁ…沙織さん落ち着いて…』
みほ『ウサギさんチームには引き続き周辺の偵察をお願いします』
みほ『繰り返しになりますが、僅かな変化でも教えてください』
梓「了解です!」
グオーン...
梓「! こちらウサギさんチーム!無人機の飛行音が聞こ
「撃て!!」
ドォォン!! ズガァァァン!!
キャァァァァ!!!
シュパッ!
アナウンス『大洗女子チーム M3 Lee 走行不能!』
沙織『ウサギさんチーム?!応答願います!!』
梓「こちらウサギさんチーム…申し訳ありません…やられてしまいました…」
優季「ごめんなさい沙織先輩ぃ…敵に全然気づかなかったぁ…」グスン
沙織『…了解しました、ケガ人はいませんか?大丈夫ですか?』
梓「はい、何とか大丈夫です」
優季「大丈夫ですぅ…」グスン
あや「メガネ割れたけど大丈夫です!」
あゆみ「紗希も無事って言ってます!」
梓「お役に立てずに申し訳ありません…あとは、あとはお願いします!!!」
【大洗 あんこうチーム】
沙織「良かった…みんな無事だって」ホッ
華「ウサギさんチームが抵抗する間もなくやられてしまうなんて…」
麻子「無線から流れた音からして、至近距離から複数の車両にやられたそうだな」
みほ「ウサギさんチームがいたのはXXX地点。ここから数キロ離れた場所」
みほ「もしも情報が本当ならその周辺を攻撃拠点として展開しているはず…」
優花里「あとウサギさんチームから無人機が動き出したのと情報もあります。いよいよですよ…!」
みほ「うん…ここからだよね」
優花里(本当にいよいよですね…西殿…)
みほ「…各チーム、先程ウサギさんチームより無人機の飛行音を確認したとの連絡が入りました」
みほ「これより対空戦車小隊は上空の警戒にあたります」
全員『了解!!』
杏『いよいよだねぇー』
エルヴィン『ここが腕の見せ所だ!!』
華「花を活ける時のように狙いすまして迎撃します…!」
典子『敵機発見!!2機確認できました!こちらに向かって飛んで来ています!!』
みほ「了解!カバさんチームおよびカメさんチームは射撃体勢に入ってください」
みほ「それ以外の車両はなるべくジグザグに移動しつつ、上空からの攻撃を回避できそうな場所に退避してください!」
全員『了解!』
優花里「あれは海軍機の紫電改と陸軍機の疾風ですね…!」
麻子「おかしいな。3機投入してくると思ったのだが」
優花里「ひょっとしたらまだ今は使う時じゃないのかもしれませんね」
麻子「どういうことだ?」
優花里「本当に怖いのは紫電改でもなく疾風でもなく」
ナカジマ『1機急降下してくるッ!!!』
グオォォォォォォォォォオォォォン!
みほ「対空戦闘開始!!」
ダダダダダダダダダ!!!
ズン! バズン! ズゥン!
左衛門佐『くそっ!当たらん!!』
エルヴィン『いいから撃ち続けろ!!』
おりょう『当たらずとも攻撃を阻害できれば御の字ぜよ!』
華「くっ…当たりません…!」
みほ「華さん!相手は回避して立て直す際に若干ですが隙が発生します。そこを撃ってください!」
みほ「私達のオストヴィントが無人機迎撃の本命です!」
華「承知しましたわ…!」ウィーン
グォオオオオオオオオオオオオオオオ
典子『アリクイさん危ない!!』
ねこにゃー『うえっ?!ボクたち!?』
みほ「アリクイさん!衝撃に備えて!!!」
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンン!!!!
ねこにゃー『うわぁぁっ!!』
桃『くっそがぁぁ!!!』
ダンダンダンダンダンダン!!!!
チュィーン! ガコン!カン!!
ナカジマ『流れ弾こっちに当たってるよっ!!』
杏『河嶋ストップ!!』
桃『ッ!』
グオォォォォォォン
ねこにゃー『……あれっ?!攻撃されなかったにゃ!?』
みほ「アリクイさんチーム!大丈夫ですか?」
ねこにゃー『う、うん…攻撃されなかったから大丈夫…』
桃『済まない……敵機を狙うつもりが味方に……』
ナカジマ『ウチらは大丈夫だよ。でも今のが装甲の薄い戦車に来るとマズいかもね…』
典子『き、気合で機関砲弾も耐えてみせます…たぶん…』
カエサル『にしてもなんて無茶な操縦だ!一歩間違えればそのまま地面や戦車に激突していたぞ!』
左衛門佐『それにあんな急接近されては味方誤射する危険もある!』
おりょう『しかし何故敵さんはあれだけ接近しておきながら攻撃してこなかったぜよ?
エルヴィン『わからん。だが敵は間違いなく手練だ』
そど子『それより無人機は?!』
典子『対空砲火を避けながら逃げていきました』
そど子『違うわ!もう1機の方よ!』
みほ「安心してください、もう1機はまだ攻撃態勢に入ってないみたいです」
みほ「私達の様子をうかがうように上空を旋回しています」
みほ「ただ、今ので無人機はギリギリまで高度を落として私達とスレスレの所まで来ることがわかりました」
みほ「おそらく先程は攻撃に向けての様子見段階で、次から本格的に攻撃を仕掛けてくると思います」
全員『………!』
【知波単学園 西絹代】
西「良くやった玉田、見事だった!」
玉田『光栄であります。しかし、何故攻撃の指示を下さなかったのです?』
西「地面ギリギリまで急降下し、その後は戦車の脇を通過」
西「その過程にて大洗の対空車両がどう動くかを知りたかった」
西「少々強引な手法だったけど、そのお蔭で敵さんの対空戦車は急な砲塔の旋回に難があるように見えたんだ」
西「だから今度は敵さんの後方より紫電を向かわせ、同時に細見の疾風で側面から叩く」
細見『して、私はどの車両を狙いましょう?』
西「まずは対空戦車を狙え」
細見『了解しました!!』
福田『西隊長殿!私の出番はまだでありますかっ!?』
西「まぁ慌てるな。急いてはことを仕損じるだけだ。来るべき時が来たら呼ぶ」
福田『わかったでありますっ!』
アナウンス『大洗女子チーム、38(t)対空戦車 走行不能!』
【聖グロリアーナ 観戦席】
オレンジペコ「知波単学園の無人機が1輌やりました!今のところ無傷ですね…!」
ダージリン「えぇ。本当に怖いわね」
オレンジペコ「はい、知波単学園がここまで戦術を変えるなんて今でも信じられないです」
ダージリン「違うわ」
オレンジペコ「…えっ?」
ダージリン「怖いのは知波単学園じゃない。西絹代よ」
オレンジペコ「?」
ダージリン「かつて知波単学園はその突撃で準決勝まで勝ち進んだ実績があるのよ」
ダージリン「それから勇猛果敢に突撃することを良しとする伝統が築き上げられた」
ダージリン「そんな知波単学園の象徴とも言うべきものを彼女は変えたのよ」
オレンジペコ「お言葉ですが、私は知波単学園の突撃には戦術的価値を見い出せません」
ダージリン「それについては彼女も疑問を抱いていたと思うわ」
ダージリン「伝統を守る事と試合に勝つ事、2つを天秤にかけて彼女は悩んでたでしょうね」
ダージリン「でも、だからといって"やめます"の一言で簡単にやめられるような物ではないわ」
オレンジペコ「そうでしょうか…?」
ダージリン「私が"ティータイムをやめます"と言ったとして、それが無理なのと同じよ?」
ダージリン「OG会から非難轟々で隊長をクビになってしまうわ」
オレンジペコ「そ、そこまでですか?!」
ダージリン「えぇ。伝統ってそれくらい重たいものなのよ」
オレンジペコ「…」
ダージリン「それを彼女は変えたの。自らの手で…」
ダージリン「見てみなさいな。知波単の戦車がまだ全然姿を見せていない」
ダージリン「にもかかわらず既に大洗の車両を2つも走行不能にしている」
オレンジペコ「た、たしかに…!」
ダージリン「伝統や仕来りを抑え、独自の路線を開拓し、そして成果を出す。並大抵のことではないわ」
オレンジペコ「それを隊長の西さんが一人で…」
ダージリン「ええ。人並み外れた血の滲むような思いをしたでしょうね」
ダージリン「一体どうちゃったのかしらね。彼女は」
ダージリン(本当にどうしちゃったのかしら)
ダージリン(エキシビジョンマッチ、大学選抜チーム戦、あなたが私達の前に現れた時からそうだった)
ダージリン(皆の前で明るく振る舞っているあなたがほんの一瞬だけ見せる、何かに追い詰められているような憔悴しきったような表情)
ダージリン(そんな狂気を背負ったあなたがあの知波単学園をここまで怪物に変貌させた)
ダージリン(貴女の隊長としての顔が薄いメッキだとしても、願わくば剥がれて欲しくはないわね…)
ダージリン(………)
ダージリン「西絹代……本当に怖い人ね…」ボソッ
【大洗 あんこうチーム】
みほ「カメさんチーム!ケガ人はいませんか?!」
杏『なんとかねー。にしても凄い攻撃だねぇ』
桃『ぁ…ぅ…』
柚子『落ち着いて桃ちゃん!生きてるから!』
杏『毎度毎度本ッ当に申し訳ないけど、あとは頼んだよ西住ちゃん』
みほ「はい…!」
みほ(これで6対7…無人機を入れると6対10…)
みほ(やっぱり相手も対空戦車から先に走行不能にしようとしている)
みほ(となれば…)
みほ「みなさん!一旦YYY地点に避難します!無人機に居場所がバレないようスモークを使います!」
全車輌『了解!』
みほ「それでは…もくもく作戦開始!」
全車輌『もくもく作戦開始!』
プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
【YYY地点 大洗女子】
ナカジマ「無事に退避出来たみたいだね」
エルヴィン「ここなら木々が鬱蒼としている。上空から発見されることはまず無いだろう」
典子「周囲を確認したけど、敵戦車はいませんでした」
ねこにゃー「でも、これからどうすればいいにゃー?」
みほ「プラウダ高校との戦いを思い出してください」
みほ「あの時私達は敵の包囲網に入った後に一時停戦しましたよね?」
エルヴィン「あぁ、私とグデーリアンが偵察に行ったあの時だな!」
みほ「はい。そして今回も対プラウダ戦のようにウサギさんチームが迎撃されたXXX地点へ3組の偵察班を出します」
みほ「そして知波単学園の戦車の正確な位置を確認。位置が確認次第、XXX地点へ向かいます」
みほ「ただ、今回はプラウダ高校戦と決定的に違う点があります」
全員「?」
みほ「それは"停戦状態"でないこと」
みほ「前回は停戦状態だったため、敵も油断していたり、時間の猶予がありました」
みほ「しかし今回は作戦行動中の偵察です。無人機はもちろん、戦車もこちらの動向を警戒している状態です」
みほ「ですから偵察は細心の注意を払うのと同時に、素早く行わなければなりません」
典子「シビアですね…」
みほ「なので、前回の偵察経験者4名と新規の2名から選出し、1組2名の偵察班を編成します。編成は以下の通りです」
偵察班
・典子 麻子
・エルヴィン 優花里
・左衛門佐 そど子
エルヴィン「またしてもグデーリアンと共に斥候出来るのか!」
麻子「…お手柔らかに頼むぞ磯辺さん」
典子「こちらこそ!」
そど子「偵察だからといって風紀の乱れは許さないからね!」
左衛門佐「お…応」
みほ「先述の通り、前回の偵察経験者に加え、今回は新規に左衛門佐さんと磯辺さんを加えました」
優花里「なぜこのお二方なのですか西住殿?」
エルヴィン「愚問だぞグデーリアン!左衛門佐は忍道履修者だ」
カエサル「いわば偵察・スパイ任務のスペシャリスト!」
おりょう「前回の偵察で選ばれなかったのが不思議なくらいぜよ」
みほ「はい。エルヴィンさん達の言う通り、偵察能力・潜伏能力に長けた方を選抜しました」
典子「では私はどういった理由でしょうか!」ワクワク
みほ「えっ?…あー…えーと…」
典子「?」ワクワク
みほ「ば、ばれーぼぉるで培った俊敏な動きは迅速な作戦行動に向いているからです」
典子「なるほど!」
優花里(西住殿、なんか目が泳いでませんかね?)ヒソヒソ
エルヴィン(オマケに少しイントネーションがおかしいな)ヒソヒソ
左衛門佐(大方、取ってつけた理由で、本命は別にあるのだろう)ヒソヒソ
典子「♪」チンマリ
エ・左・優(………なるほど。"ちっちゃい"からか)
みほ(20分ほど経過して、偵察隊が全員帰還しました)
みほ(そして、彼女たちの報告を元に、XXX地点の敵戦車の配置場所を掌握)
みほ(XXX地点に草木で偽装した戦車が2輌…おそらくウサギさんチームを撃破した戦車)
みほ(そしてその奥、山道にも偽装された戦車が1輌)
みほ(確認できたのはこれだけ)
みほ(これら全てを撃破したとして、残るは4輌…)
みほ(そして問題はXXX地点へ移動する際に無人機をどう回避するか…)
みほ「これよりXXX地点へ向かい、敵車両の攻撃を行います」
みほ「レオポンさんチーム、アヒルさんチームの2輌を第一群としてXXX地点に侵攻」
みほ「次いで後続部隊としてアリクイさんチーム、カモさんチームを時間差で投入」
みほ「最後にカバさんチームと私達あんこうチームによる三段階で行きます」
みほ「敵の戦車は7輌ですが1輌ずつ確実に走行不能にしてから次の目標を狙ってください」
【大洗偵察隊帰還後 知波単学園 西絹代】
西(次の攻撃も玉田、細見の健闘により見事に決まった)
西(自軍損害なし、敵対空戦車1輌戦闘不能。これで7対6)
西(これで良い。このまま次の手を講じれば良いんだ…)
福田『隊長殿?体が震えているであります?』
西「ははは。武者震いってやつさ。今日は少し冷えるしな」
福田『そうでありましたか!』
西「あぁ。」
『隊長殿ーっ!こちらはいつまで待機すればいいですか?!』
『待ちくたびれて水飴のようにドロドロになりそうです!』
西「そうだな。次の手を使おう」
『おおっ!突撃ですか!』
『まっておりました!!』
『いつでも準備はできております!!』
西「違う。」
『…!』
西「敵さんが動き次第、引き続き玉田・細見の二名の無人機で大洗の車両を煽動する」
西「目的は撃破ではなく時間稼ぎとして」
細見『時間稼ぎでありますか?!』
西「ああ。その間に待機している戦車部隊は全車両XXX地点より少し離れたZZZ地帯へ移動する」
西「そして同様に戦車を偽装・隠蔽し、再び攻撃命令が下るまで待機せよ」
西「なお、移動・配置が完了次第、無人機部隊は時間稼ぎの煽動から、敵戦車をXXX地点へ誘い込む」
西「戦車部隊は攻撃の合図と同時に一斉射撃。最後まで徹底抗戦だ」
「隊長殿!私が先行して敵さんをおびき寄せましょう!」
西「それは要らんだろうな」
「! …ですが隊長!」
西「相手は大洗の西住隊長だ。恐らく聖グロリアーナの戦いでこちらの手の内は読んでいるはずだろう」
西「だとしたら安直な挑発など何の意味も持たないよ」
「…わかりました」
西「玉田・細見、出来るだけ時間を稼いでくれ」
玉田・細見『了解しました』
西「それでは戦車部隊は速やかにZZZ地帯へ移動!」
【観客席 聖グロリアーナ】
オレンジペコ「完璧です…!大洗女子の偵察を知っていたかのように配置を変えました!」
ダージリン「………」
オレンジペコ「…あまり疑いたくはないのですが、知波単学園は無線機の盗聴を…」
ダージリン「どこに盗聴器があるのかしら?」
オレンジペコ「…!じゃぁ…」
ダージリン「これは"彼女のもの"よ」
オレンジペコ「!」
ダージリン「盗聴でもなければズルでもない」
ダージリン「紛れもなく彼女が積み重ねてきた努力の結晶。いわば、これが彼女の"伝統"よ」
オレンジペコ「………」
ダージリン「言ったでしょう? "この試合はしっかり見ておきなさい" と」
オレンジペコ「は、はい!」
ダージリン「この試合には彼女の全てが詰まってるわ……」
【大会 あんこうチーム】
グォオオオオオオオオオオオオオオオオオン
典子『1機また攻撃態勢に入りました!!』
ナカジマ『高度を落としてきた!気をつけて!!』
みほ「対空攻撃 開始!!」
ズガガガガガガガガガガガ!!
エルヴィン『よし!攻撃を阻止できた!』
みほ「そのまま敵機を狙ってください!無人機の帰投は撃墜のチャンスです」
みほ「その他の車輌はそのままXXX地点へ向かって下さい!」
華「わかりましたわ…!」
ズン!! バズン!! バズン!!
シュポッ!!
華「っ!!」ドキッ
アナウンス『知波単学園チーム 紫電改 飛行不能!』
優花里「五十鈴殿!オストヴィントが紫電改を撃破しました!やりましたねぇ!!」
ナカジマ『すごいよ!無人機落としたよ!』
ねこにゃー『おぉぉ…真っ二つだにゃー…』
華「えぇ…!残るはもう1機。なんだかわたくし、ドキドキして参りましたわ…!」ウィーン
優花里「西住殿、各車両に伝令をお願いします」
みほ「はい?」
優花里「ここまで知波単学園は無人機は2機しか発見できませんでしたが、本来ならもう1機来るはずです」
優花里「その1機だけは絶対に見逃さないようにと」
みほ「? わかりました。沙織さんお願いします」
沙織「了解。あんこうチームより全車両に伝令です――」
麻子「確かに。3機まで良いはずだったな」
華「となると最後の1機は何故出てこないのでしょう?」
沙織「こちらに配慮して2機まで~ってことじゃない?」
優花里「そんなはずありません。」
沙織「…!」
優花里「本当に怖いのは最後の1機で何を使ってくるかなんです…」
みほ「最後の1機?」
麻子「秋山さん、説明してくれないか?」
優花里「知波単学園に潜入して無人機を発見したときに違和感があったんです…」
華「違和感ですか?」
優花里「零戦、紫電改、疾風、烈風、秋水、キ109…これら戦闘機の中にあった一式陸上攻撃機」
沙織「何その一式…って?」
優花里「一式陸上攻撃機は爆撃機に分類される航空機です」
優花里「爆撃機なので戦闘機のような高度な飛行能力はありませんが、その分大量の爆弾や防御火器を搭載できます」
麻子「別段おかしいようには思えないが?」
優花里「無人機に関するレギュレーションを思い出してください」
みほ「確か"爆弾は1機3つまで。1機の爆弾合計搭載重量1,000kg未満であること"だったよね」
優花里「その通りです。爆弾の搭載に制限がある以上、このような爆撃機を選ぶのは"主砲が使えないティーガー"を試合に持ち込むようなものです」
優花里「十分な爆撃が出来ない反面、無人機や対空戦車の的になるわけですからね…」
華「確かに、本来の使い方が出来ないのであれば宝の持ち腐れになりますね」
優花里「なので対戦車用に爆弾が搭載出来て、尚且つ対無人機戦用に飛行能力に長けた戦闘機を選ぶのが定石です」
沙織「じゃぁ最後の1機は戦闘機を使ってくるんじゃないの?」
優花里「もしそうだとしたら出し惜しみせず最初から3機編成で仕掛けてくるかと思います」
みほ「確かに」
麻子「仮に最後の1機がその一式陸上攻撃機だとして何か不味いことでもあるのか?」
優花里「一式陸上攻撃機が最後の1つだとしたら搭載する爆弾はおそらく」
優花里「特攻兵器"桜花"です」
みほ「桜花って…あの…」
優花里「兵士の犠牲を前提に開発された兵器です」
優花里「輸送機…この場合は一式陸上攻撃機が牽引して射程範囲まで接近したら切り離し」
優花里「その後は搭載されたロケットエンジンを作動させて誘導し、敵艦に激突させます」
優花里「実戦での成果は芳しく無かったですが、人間という最高精度の誘導装置を搭載したロケットミサイルが桜花です………」
優花里「無人機で言えば桜花を射出したあと、操作するように制御できるわけです」
優花里「…となれば第二次世界大戦中に開発されたどの国の爆弾よりも高性能な誘導ミサイルとなるわけです…!」
優花里「なので、桜花を使用することは、最強で最凶の爆弾を使用するということになるんです!」
華「そんなに恐ろしい兵器があったのですね…」
優花里「戦車道は戦争ではなく競技です…しかし競技だからといって持ち込んで良い物と悪い物がある!!」
麻子「そもそも、だ。無人機の制限は3機なのだろう?だとしたら一式陸上攻撃機だけで制限を超えてしまうはずだが?」
沙織「そ、そうだよ!制限を超えたらその時点で反則になっちゃうじゃない!」
優花里「無人機ではなく"爆弾"として扱われていたら話は別です」
麻子・沙織「あっ…!」
優花里「この試合で桜花が出て来るとしたら…それは"認められた"兵器となるわけです」
優花里「人の死を前提に運用される外道な兵器を!!」
優花里「知波単学園は試合を有利に進める道具の一つとしか見てないんですッ!!!」
沙織「ひどい!」
麻子「腐ってる…!」
華「名前は素敵なのにそんな恐ろしいモノだなんて…」
みほ「………」
優花里「だから…その外道が"成果"を出さないよう、私達は最後の1機だけは何としてでも撃墜しなければいけないんです…」
優花里「もしも桜花を使うなら知波単学園は
ナカジマ『こちらレオポンチーム、もう間もなくXXX地点に到着するよ』
みほ「あっ…はい!事前に説明したとおり、まずは偵察班が確認した3つの車両を順番に発見次第攻撃・走行不能にしてください」
ナカジマ『了解!』
みほ「恐らく同時に敵も猛反撃してくると思います。無理そうでしたら深追いせず、後退して味方と合流してください」
典子『了解しました!』
グオォォォォォォォォォォォォン!
ねこにゃー『ああっ!レオポンさん気をつけて無人機がぁぁ!』
ナカジマ『またコッチに来るのかよ!!』
みほ「ッ!レオポンさん!!」
典子『かァァァァァァァァわにしィィィィィィィィィィィィ!!!』
忍『うおああああああああああああ!!!』
ギギィィィィィィィィィィ!!!!
ズガァァァァァァァァァァァン!!!!!!
シュポッ!!
アナウンス『大洗女子チーム 八九式中戦車 走行不能!』
華「逃がしませんわ!!」
ドウン!!バズン!! ガシャーン!!
シュポッ!!
アナウンス『知波単学園チーム 四式戦闘機 飛行不能!』
ツチヤ『…あれ…ウチらまだ生きてる…?』
ホシノ『あ、アヒルさんチームが盾になってくれたみたいだよ!』
ナカジマ『っ! おーい!アヒルさんチーム、無事か?!』
妙子『こちらアヒルチーム、全員無事です!』
忍『な…なんとか間に合った…』フゥ…
あけび『滑り込みセーフな逆リベロでした…』
ナカジマ『ばっ、ばかっ!無茶なことして!ケガしたらどうするのさ!』
典子『ごめんなさい!でもここでレオポンさん失ったら一気にピンチになると思ったんですっ!』
ナカジマ『だからって……全く無茶しすぎだよ…』
スズキ『まぁまぁ。今はアヒルさんチームの根性に感謝して彼女たちのポイント無駄にしないよう生き延びること優先にしよ?』
ホシノ『一応あんこうチームが仇を取ったしね』
ツチヤ『咄嗟にあの判断は流石だなぁと思うよ』
ナカジマ『う…うん。ありがとうね、アヒルさんチーム』
典子『隊長、レオポンさん、あとは頼みました!』
ナカジマ『りょーかい!!』
みほ「わかりました!…レオポンさんチーム、一旦後退して、後続車両と合流してください」
みほ「編成を変更します。第一部隊を主力としてレオポンさんチーム、アリクイさんチーム、そしてカモさんチームの3輌編成で敵を叩きます」
みほ「敵は間違いなく奇襲をしてきます。戦車の弱点である上面装甲および後部パネルを狙われないよう互いに死角をフォローする形で移動してください」
みほ「もし敵を確認できたら車体は垂直ではなくなるべく斜めに向けて、避弾経始を最大限活用してください」
ナカジマ『レオポン了解!』
そど子『カモ了解しました!』
ねこにゃー『アリクイも了解だにゃー!』
【大会 知波単学園】
玉田『こちらの無人機がやられました!!』
細見『申し訳ありません…疾風も撃ち落とされました…』
西「……やはりか」
西(最後の1機…どうする…!?)フラ…
砲手「隊長殿、気分がすぐれないでありますか?!」
西「一瞬クラッとしただけだ。大丈夫だよ。ありがとう」
砲手「そうでありますか…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西「無人機…ですか?」
連盟関係者「ええ。新しいルールが追加されてね」
連盟関係者「第二次大戦中の航空機をオートパイロット化した物の使用が許可されたんだ」
連盟関係者「つまり次回の公式戦から無人機による上空からの攻撃や偵察が可能となったわけだよ」
西「そうですか…」
連盟関係者「まぁ、まだ新設されたばかりだ。分からないことは多いかもしれない。その時は気軽に問い合わせてくれると良いよ」
西「わかりました」
---------------------------------
「ここは海軍機を導入すべきだ!地上攻撃は元より敵機との戦闘では機動力が物を言う!」
「それなら陸軍機がある!機動性はもとより海軍のものより耐久性に優れているぞ!」
ガヤガヤ
西「無人機は3機まで許可されているだろう。なら陸から1つ、海から1つ、残りの1つは私が決めよう」
---------------------------------
西「残りの1つ…かぁ」
プルルル プルルル
西「…まぁ、通るわけはないだろうけどね」ハハハ
プルルル プルルル ガチャッ
「こちら日本戦車道連盟です」
西「あ、私、知波単学園 戦車道の隊長をしています西と申します」
西「この度は新しく追加された無人機において、とある機体がどのように扱われるのかを知りたくてですね…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「重戦車2輌、中戦車1輌、XXX地点に到達しました!攻撃しますか!?」
西「…ハッ!……ま、待て…ギリギリまで…引き付けろ」
「攻撃しなければあっという間に陣地を奪われてしまいます!」
西「敵が…最前線を通過するまで待て…」
「……了解」
【大会 あんこうチーム】
みほ「えっ、戦車がいない…?」
左衛門佐『馬鹿なっ!確かにあの場所には2輌配置されていたはずだぞ!?』
そど子『ええ、偵察のときは確かにこの位置にいたはずなのにモヌケの殻よ!』
麻子「見間違いじゃないのか?」
そど子『そんなわけないじゃない!』
ねこにゃー『でも確かに戦車がいたような形跡はあるよね』
ナカジマ『履帯の跡を見るとこの先に移動したみたいだよ。隊長、どうする?』
みほ「わかりました。引き続き、先行組3輌は最大限警戒しながら追跡してください」
みほ「こちらも無人機が来る気配がないようなのでそのまま後を追います」
レオポン・カモ・アリクイ『了解!』
みほ「カバさんチーム、私達について来てください」
エルヴィン『心得た!』
ガタン! ゴトン! バン!
ねこにゃー『カモさんチーム、大丈夫にゃー?』
そど子『だ、大丈夫。ちょっと操作を誤っただけ…ほらゴモヨ!しっかり操縦なさい!』
ナカジマ『この辺はデコボコしているからね。足元取られないよう注意だよ』
ねこにゃー『戦車だけじゃなく地面も注意なんてトコトン恵まれないにゃー…』
カタン………カタン………カタン………ガコン
【大会 知波単学園】
ホラゴモヨ!シッカリシナサイ!!
『西隊長、最後の1輌が我々を通過しました!』
西「………」
『西隊長?』
『隊長殿!応答してください!!』
西「よし…」
『!』
西「じゃ…みんな、行こっか。」
西「攻撃開始!!」
『攻撃開始!』 『攻撃開始ぃ!!』 『攻撃開始!!!』
【大会 あんこうチーム】
コウゲキカイシ!!!!
ナカジマ『っ!!』
ズガァン!! ズドン!!
そど子『きゃぁぁぁ!』
みほ「ッ!皆さん大丈夫ですか!」
ナカジマ『四方八方から砲弾が飛んできてる!距離かなり近い!辛うじて持ち堪えてるけど、他の車輌含めてそんなに持たないかもしれない!』
みほ「わかりました!直ちに向かいます!」
ねこにゃー『わわわわ…』
そど子『ゴモヨ!アリクイさんチームのそばに寄って!彼女たちを守るのよ!!』
ゴモヨ『わかったよそど子!』
みほ「アリクイさんチーム!聞こえますか!!」
ねこにゃー『は、はい聞こえるにゃ!』
みほ「敵は多方向から撃ってきますが、焦らず標的を1つに絞ってください!」
みほ「1輌でも走行不能に出来ればそれだけ負担が減ります!」
ねこにゃー『わ、わかった!やってみる!』
みほ「! カバさんチーム!聞こえますか」
エルヴィン『こちらカバさんチーム聞こえているぞ』
みほ「前方に敵戦車が2輌います。幸いまだこちらには気付いていません」
みほ「私達は右奥の戦車を狙うので、カバさんチームは手前の戦車をお願いします!」
エルヴィン『心得た!』
バババババ
みほ「っ!」
麻子「気づかれたか…!」
優花里「後部機銃です!主砲が反対側を向いている証拠です!今のうちに攻撃を!!」
華「っ!」
ズドン! バズン! バズン!!
シュポッ!
アナウンス『知波単学園チーム、九五式軽戦車 走行不能!』
シュポッ!
アナウンス『知波単学園チーム、九五式軽戦車 走行不能!』
みほ「こちらあんこうチーム、1輌撃破しました!」
エルヴィン『こちらカバチーム、同じく1輌撃破!これで残るは5…』
アナウンス『大洗女子チーム 三式中戦車 走行不能!』
エルヴィン『くそッ!!』
ねこにゃー『西住さん…申し訳ないにゃー……ちょっと!ボク達もう動けないから撃たないで!!』
みほ(これで4対5…いや4対6かな…)
【大会 知波単学園】
西「ぅ…ぁ……」
玉田『隊長殿!ここはもう持ちそうにありません!次の命令を!!』
福田『最後の1機を使いましょう!』
細見『福田に同意であります!一式陸攻で敵さんの戦車を叩きましょうぞ!』
西「……っ…!」
玉田『今ならまだ対処できます!絨毯爆撃で重戦車を駆逐しませう!』
西(確かに…たしかにアレなら重戦車も叩ける…叩けるけど…)カタカタ…
ドクン…ドクン…
西(………)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「残念ですが、そちらの機体は規定により使用することは出来ません」
西「あはは、やっぱりそうですよね」
「はい。ただ、この場合、航空機ではなく搭載兵器として見なされますので、搭載する爆弾が規定値を超えず、」
西「えっ…?」
「無人機に搭載する形での運用でしたら使用が認められます」
西「え…」
「…?」
西「…あ!…そうなると無人機としてのカウントはされない…ということでしょうか
「そうなります」
西「………とすると、投下後は…」
「別の端末で操作して誘導する形となり、誘導ミサイルとして使用が可能です」
西「……そ…うなんですか」
「はい。ロケットによる推進機能はありますが、元となった機体の運用は航空機としてではなく搭載兵器として扱われていますので」
西「あ…ありがとうございました」
「それでは、またご不明な点がございましたらお気軽にどうぞ」
ツー ツー ツー ツー
西(どうして…)
西(どうして私はあんなことを聞いたのだろう…)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西(起動すれば…一式陸上攻撃機が動く…)
西(あとは射程範囲まで…接近して、切り離し…)
西(もう一つの端末で操作すれば…)
西(全無人機中、最高精度の…"誘導ミサイル"が発射される)フラッ…
福田『た、隊長殿…!?』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西「学長殿、西です。お呼びでしょうか?」
「おー、西君か。忙しい中済まないね」
西「して、ご用件とは…?」
「今日呼んだのは他でもない、重要な話があってだな」
西「重要な話でありますか?」
「…実はね、言い辛いことなんだけど………」
西「はい?」
「知波単学園はね、戦車道を廃止することにしたよ」
西「なっ!? どういうことですかッ!!!」ダン!!
「うん。ここ数年の大会の実績を見るとね、ほぼ一回戦敗退なんだよね」
西「ですが!過去には準決勝進出という実績があります!」
「それはずっと昔のことじゃないか。君たちには申し訳ないけど、ここ最近は全くと言って良い程成果を出せていない」
「学園艦の運営もあるしね、無理に成果が出せない科目を必修にしても仕方がないと思うんだ」
西「それでは私達はどうなるんですか!!」
「残念だけれど、戦車道履修者は来年度は他の必修科目に変更ってことになるね…」
西「待ってください!あまりに唐突過ぎます!」
「そんなことはないよ。私はもう何年も前からずっと待ってたよ」
西「え…」
「君たちが成果を出してくれるのを」
西「…!」
「でもね、期待するのも疲れてしまったよ」
西「そんな…!」
「成果が出せないのなら無理に続けず、他のところで才能を開花させるのも選択の一つだよ」
西「………」
西「でしたら…」
「ん?」
西「でしたら、成果が出せたら戦車道は続けてもいいという事ですよね…?」
「そうだけど、今のままじゃムリだと思うなぁ…」
西「…わかりました」
西「次の大会で成果を挙げましょう…!」
西「そして、その時は戦車道の廃止を撤回して頂きます!!」
「…わかった。そこまで言うならね」
西「あ、ありがとうございます!」
「ただし!」
西「っ!」
「成果が出せなかったら…その時は申し訳ないが決断してもらうよ…」
西「……承知、しました」
「私だって学生の希望を潰すような真似は極力したくないと思っている」
「でもね、時には重大な決断をしなくちゃいけない時もある」
「それだけは肝に銘じてほしい」
西「………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西(そう…負けたら…おしまい…)
西(私…達の戦車道も…)
西(知波単の伝統もみんn)
西「ゥグ!?ゴボッ!!ゲォッ!!」ビシャァァァ
砲撃手「うっ!隊長殿っ?!」
西「グボッ、オゴェッ!!!」ビチャビチャ
装填手「隊長殿!だ、大丈夫でありますか」
西「ゲホッ……ダ…イジョブ…」ハァハァ
操縦手「えっ?えっ?? どうしたでありますか?」
西「…なンでもない…ハァ…ハァ…ちょっと…乗り物酔い…しただけ…ハァ…ハァ…」フラ…
装填手「フラフラですよ隊長殿!休んだ方が良いのであります!」
西「大丈夫だから…」ハァ…ハァ…
アナウンス『大洗女子チーム ルノーB1 Bis 走行不能!』
アナウンス『知波単学園チーム 九七式中戦車 走行不能!』
玉田『聞こえてますか隊長?!敵がすぐそばまで来ています!!』
福田『敵のぽるしぇてぃーがーにこちらの攻撃が効かないであります!!』
細見『隊長!隊長!!!!』
西「………うん…」
西「………使おっか…アレ…」フラッ…
【大会 大洗女子チーム】
アナウンス『大洗女子チーム ルノーB1 Bis 走行不能!』
みほ(これで3対5!)
みほ「レオポンさん!数の上ではこちらが不利ですが、火力・防御面ではこちらが上です!なんとか持ちこたえてください!!」
ナカジマ『がっ、頑張るよ!!』
ホシノ『すごい音…ロッカーに閉じ込められて袋叩きにされてるみたいだ』
ツチヤ『ンなこと言ってないで早く撃てよ!』
スズキ『装填完了!ぶっ放せぇ!!』
ズガァァァァァァァァン!!
ポシュッ!
アナウンス『知波単学園チーム 九七式中戦車 走行不能!』
ホシノ『よっしゃ!!…あと幾つだ?』
みほ「戦車は残り3車両です!」
エルヴィン『よし!追いついたぞ!!』
優花里(…何故使ってこないんです?!)
【 "ダージリン" 】
玉田『隊長!福田がやられました!!』
細見『戦車の数が追いつかれてしまいましたよ隊長殿!!』
西「………」クラッ…
玉田『隊長殿!!!!』
西「ハッ! …あ、…あぁ」
細見『もうこのままでは持ちません!』
西(そう…だ…)
西(もう…知波単学園は持たない…)
西(これで…これで決着をつけよう…)
西(………端末…と、)
西「ん…この箱は…?」パカッ
― Dear my Friend
Darjeeling
装填手「隊長殿何をしてるんですか!早く端末を!!」
西「………ティーカップ…?何でこんなところに…?」
砲撃手「忘れたんですか?前回の試合で聖グロリアーナの隊長さんから貰ったじゃないですか!」
西「……聖グロリアーナの……隊長…」
西「………ダージリン……?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バンザァァァァァァァァイ!!
西「あっ…!」
ダージリン「おめでとう知波単学園の隊長さん。敵ながら見事な戦略でしたわ」
西「恐縮です…その…」
ダージリン「ダージリンと申しますの」
西「失礼しました、ダージリン殿」
西「…あ、私は西という者です。西絹代です」ペコリ
ダージリン「西さん、ね。よろしければこれを」スッ
西「? こちらは一体…?」
オレンジペコ「我が聖グロリアーナは好敵手にティーセットを贈呈する"伝統"がございます」
西「!」
アッサム「フフッ…あなたはダージリンが認めた好敵手でしてよ。…次は負けませんわよ?」
ダージリン「今度はあなた達の"伝統"を見てみたいわね…」
西「あ…ありがとうございます…!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
西「………」
西「………ダージリン…殿」スッ
西「…私たちの伝統…だもんなぁ………」スクッ
装填手・砲撃手「???」
西「細見、玉田、まだ戦車は動くか?」
細見『こちら細見!まだ大丈夫であります!』
玉田『同じく!ですがこのままでは…』
西「"戦局ハ最後ノ関頭ニ直面セリ"」
細見・玉田・各搭乗員「!!!」
細見『…隊長!!』
玉田『見せてやりましょう、知波単魂を…!』
砲手「突撃して潔く散りましょう!」
装填手「知波単魂を世に知らしめましょうぞ!!」
西「これより、最後の攻撃を敢行する」
西「吶喊!!」
ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!
西「いざ、突撃!!!」
『知波単学園バンザァァァァァァァイ!!!!!』
ワーーーーーー!!!!
西(…そう。これで良いんだ…)ハァ…ハァ…
イッセイニ オリテキタゾ!!
ホシノ!ハヤクウテッ!!
ソウテンガ マニアワナイ!!!
ニシズミタイチョォ!!!!
西(…潔く…散ろ……う…………)バタッ
ウォォォォォォオォォォォォォォォォォオォォォォォ!!!!
バンザァァァァァァァァァァァァイ!!
ポシュッ!! ポシュッ!!
西(……………)
ミポリン!! ミギカラキテル!!!
ホウトウノセンカイガマニアイマセン!!
ウワァァァァァァァ!!
ッ! ミンナツカマッテ!!!
ズドン!!!!
ガッシャァァァァァァァァァァァァン!!!!
◆4 雷と球電
ということで、一旦ここで区切ります。
またチャージしてきます。
西ダジはいいぞ(伏線
あ、ちゃんと書き溜めしてますからね。待っててね
ん、それじゃぁ再開しよっか
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
シュパッ!!!
アナウンス『大洗チーム、IV号対空戦車 走行不能!』
みほ「……みんな大丈夫?」
麻子「お、おぉ…なんとか…」
沙織「やだもぉ…いくら男の子からでもあんな強烈アタック受け止められないよぉ…」
華「ジンジン来ます……」
優花里「ゲホッ…」
みほ「良かった…全員無事…だよね…?」
西「………」
砲手「くぅ……あ!隊長殿!大洗の西住殿を倒しました!!」
装填手「やりました!我らが知波単魂はあの大洗の将をも撃破することが証明されました!!」
西「………」
操縦手「隊長殿!我々の戦車はまだ走行可能です!」
通信手「このまま次の戦車を撃破しましょうぞ!!」
西「………」
砲手「……隊長殿…?」
ポタ…ポタ…
砲手「ん?何かこぼれているでありま……」
西「………」
ポタ...ポタ...
砲手「!!! ちっ、血が!!隊長殿!!しっかりしてください!!隊長殿ぉぉぉぉ!!!」
モニター『隊長殿!!しっかりしてください!!隊長殿ぉぉぉぉ!!!』
オレンジペコ「うわぁ…顔が血で真っ赤に……」
オレンジペコ「突撃の衝突でぶつけちゃったんでしょうか…」
オレンジペコ「ダージリン様、この場合は残った戦車が多い方が勝ちですか?」クルッ
オレンジペコ「あれ…ダージリン様?」
― 大洗です!停戦を申し出ます!沙織さん!全車両に攻撃停止命令と停戦命令をお願いします!
― わ、わかった!全車両、攻撃停止!繰り返します!全車両攻撃停止!!!
― あぁぁぁ…血が…血がぁぁぁぁぁぁ!!!
― ごめんなさい隊長殿…ごめんなさい…ごめんなさい…!!
西(………)
― 血が全然止まらないでありますっ!!
― 左腕が変な向きに曲がってるよぉ…
― 落ち着いてください!今は手当を!
― 医療班です彼女を担架に乗せます!
― 道を開けてください!
西(………)
― 知波単の隊長さん、まるで泣いてるみたい
― ち、ちょっと桂利奈ちゃん!!
― だって血なのに目から溢れる涙みたいだよぉ
― 優季ちゃんまで!!不謹慎だよッ!!!
西(………)
― あの時の約束…覚えてくれたのね…?
西(………)
西(………ダージリン…さん……)
試合は西さんの負傷によって急遽中止に。
後に2対1で生存車両が知波単学園を上回り、私たち大洗の勝利が決定しました。
"辛勝"の文字通り、あらゆる意味で辛い勝利でした。
勝ちを喜ぶ人がいなければ、負けを悲しむ人もいない。
あとに残ったのは虚無感だけ。
そして…西さんは………
【同日 病院の待合室】
福田「隊長殿はまだ意識が戻られないのであります…」
みほ「そうですか…」
細見「私達が…隊長を…追い詰めたせいで……」ポロポロ
華「そんなに自分を追い詰めないでください…!」
玉田「お医者様によると、頭部の強打、左腕と左足、肋骨の骨折に加え、疲労で相当衰弱していたとのことであります…」
優花里「無茶苦茶です…!」
福田「それに砲手殿によると、突撃前には既に意識が無かったとのことであります…」
華「それではあの衝撃をモロに受けてしまったのでは!?」
沙織「そんなことしたら死んじゃうよ!」
麻子「沙織」
沙織「あ…その、ゴメンなさい…」
玉田「隊長殿は聖グロリアーナ戦よりも以前から疲れたような顔をしておられました…
玉田「最初はただの疲れかと思ったのですが、徐々に…やつれたような表情になって………」グスン
みほ「一体何が西さんをそんなに追い詰めたんですか?」
玉田「私たちが尋ねても…"大丈夫だよ"と言うだけで……答えてくれませんでした……」ポロポロ
みほ「そうですか…」
その後、私達を含め、各高校の隊長たちがお見舞に訪れたようです。
色とりどりの花束
西さんが好きだった和菓子
ぬいぐるみ
メッセージカード
西さんの病室はお見舞品で埋め尽くされ、病院の一室とは思えないくらいとても華やかになりました。
いつ西さんが戻ってきてもいいように…。
まほ「あの時は私達が勝ったけれど、みほをも破った今のあなたと戦ったらどうなっているだろうか」
まほ「出来ればもう一度、あなたとお手合わせ願いたかった…」
エリカ「みほに続いて西絹代…また手強い相手が増えましたね…」
小梅「これはウカウカしていられません」
西「………」
カチューシャ「ばっかみたい。試合で無茶して死にでもしたら元も子もないじゃないの」
ノンナ「…」
カチューシャ「いーい?戦車道は競技であって戦争じゃないんだからね!隊長ならぜーったいに忘れちゃダメな事なんだから!」
カチューシャ「…」
カチューシャ「………でも見直したわ。あの突撃バカの知波単がダージリンやミホーシャ相手に大したものよ?」
カチューシャ「…このカチューシャ様が褒めたんだから感謝しなさいよね!」
カチューシャ「また来るわよ。キヌーシャ」
ノンナ「До свидания」フカブカ
西「………」
ペパロニ「キレイな顔してるっすね…」
アンチョビ「あぁ…顔の傷も残らなければ良いんだが」
ペパロニ「ちゃんと生きてますよね?寝ているだけっすよね?」
アンチョビ「当たり前だろ。こんな良いヤツが簡単に死ぬわけないだろ」
カルパッチョ「本当に綺麗な寝顔ですよね…西さん」
カルパッチョ(でも、なんだか悲しそうな顔…どうしてだろ?)
西「………」
アキ「この病室は風通しが良いね」
ミカ「風が彼女に会いたがっているのかもしれないね」ポロロン
ミッコ「どゆこと?」
ミカ「さぁね。風にでも聞いてごらん」ポロロン
アキ「相変わらずだねミカは…」
ミカ「でも、彼女にとっては向かい風だったのかもしれないね」
ミッコ「???」
西「………」
ケイ「キヌヨ、試合お疲れ様。最ッ高にエキサイトな試合だったわ」
アリサ「…私も彼女みたいになればタカシも振り返るかな」
ナオミ「根底にある考え方から見直す必要がありそうね」
アリサ「そんなぁ…」
ケイ「今はゆっくり休んでちょうだい」
ケイ「目が冷めたら今度はウチにも遊びにおいでよ。ね?」
西「………」
杏「まっさかウチの西住ちゃんが倒されるなんてねぇ…」
桃「いつもながらギリギリな戦いでした」
柚子「負けてもおかしくなかったくらいですからね…」
杏「きっと西ちゃんも何かデッカイもん背負ってたんだと思うよ…」
桃「そうなんですか?」
杏「詳しいことはわっかんない。…んだけど、何となくそんな気がするんだよねぇ」
杏「うちらも同じ経験してるしさ」
西「………」
【数日後】
みほ「失礼します…あっ」
ダージリン「あら、みほさんじゃない」
みほ「お久しぶりですダージリンさん」ペコリ
ダージリン「ええ。何日ぶりかしら?」
みほ「というと…試合、見ていらしたんですね?」
ダージリン「ええ。もちろんよ」
みほ「なんというか…勝ったのに素直に喜べない試合でした…」
ダージリン「あら?それは負けた私に対する嫌がらせかしら?」
みほ「えっ?ち、違います!」
ダージリン「シーッ。お静かに。ここは病室よ?」
みほ「あ、ごめんなさい…」
ダージリン「ふふ。勝ったからにはね、先に進むしかないわ」
みほ「そうですね。ここで負けるわけには行かないですから」
みほ「西さんの為にも…」
ダージリン「そうね…。そうしてくれると私も…そして彼女も喜ぶと思うわ」
みほ「はい。…あ、お見舞の品持ってきたのですが、置き場所は…」
ダージリン「空いているスペースに置けば良いわよ」
ダージリン「…といっても"お友達"がたくさん置いて行ったからあまり置き場所が無いかもしれないけど」クスッ
みほ「すごいですね。有名人みたいです」
ダージリン「ええ。彼女はすっかり有名人よ。……ところで、花やお見舞品はわかるれど」
みほ「ん?」
ダージリン「そのツギハギだらけのテディベアは一体何かしら?」
みほ「コレですか?ボコって言うんです!」キラキラ
ダージリン(うっ…急に目が輝き出したわね…)
みほ「あっ、ボコっていうのはボコられグマのボコのことでして」
みほ「ケンカは弱くて毎回負けてしまうんですけど、諦めずに何度も何度も相手に立ち向かうんですよ」
みほ「アニメやCD、映画化もしていて今度は実写ドラマ化するんです」
みほ「それでもし良かったらダージリンさんや西さんとも一緒に観に行きたいなぁって…」
ダージリン「…いつか、気が向いたら…ね…」
みほ「はい」ニコニコ
ダージリン(彼女の意外な一面を知ってしまったわ……)
みほ「…西さんもきっと、ボコみたいにまた立ち上がって元気になってくれるって、私信じてますから」
ダージリン「ご心配なさらずとも、絹代さんはすぐ元気になりますわ」
みほ「はい…!」
みほ(もう一つボコが…彼女も来てくれたんだね)
みほ「あ、あとコレを」ヨッコイショ
ダージリン「…砲弾?」
みほ「はい。最後の最後で私達のIV号を走行不能にした西さんの一撃です」コトン
ダージリン「ふふ。彼女もあなたを落とした数少ない一人ね」
みほ「あはは、西さんには私達の弱点を突かれちゃいましたから」
ダージリン「…弱点?」
みほ「はい。砲塔の右側面をやられました」
ダージリン「あら?IV号の砲塔とてそう簡単に貫けないはずでしてよ?」
みほ「確かに、H型仕様だった頃なら砲塔の装甲やシュルツェンがあるので決定打ではなかったかもしれません」
みほ「でも今はオストヴィントとして砲塔の装甲板がかなり薄くなってます」
ダージリン「なるほどね。でも反撃はしたのでしょう?」
みほ「反撃も試みましたが、攻撃が奇襲によるもので対応が遅れてしまったのと、オストヴィントの砲塔が手動旋回だったために間に合いませんでした」
ダージリン「あら。それは残念ですわね」
みほ「…以上のことから西さんには完全に私達の弱点を突く形でやられてしまったわけで」
みほ「試合は辛うじて勝てましたが、今思うと私は西さんには負けちゃったんだなぁって…」
ダージリン「そう…」
ダージリン(あなたの最後の一発は、この大会で最も大きな意味を持つ一発になるかもしれないわね…)
みほ「聖グロとの戦いもあって、一切の油断はしませんでしたが、それでもこういう結果になったので本当に知波単学園の変化には驚いています」
ダージリン「私も彼女の豹変には恐怖すら覚えたわ」
みほ「一体何があったのでしょう…」
ダージリン「それはわからないわ」
ダージリン「でも、彼女の顔色を見る限り、あまり良いお話ではなさそうね…」
みほ「そうですか…」
ダージリン「彼女も貴方と似たような立場だったからなのかもしれないわ」
みほ「えっ?」
ダージリン「人の上に立つ者として色んなものを抱えてたって事よ」
みほ「…」
ダージリン「貴方は貴方の戦い方で大洗を引っ張っていきなさい」
ダージリン「次の試合もあるでしょうからね」
みほ「はいっ!」
ダージリン「…さて、そろそろ面会時間が終わるから行きましょう」
みほ「そうですね。あ、ティーセット、そのままで良いんですか?」
ダージリン「ええ。ちゃんと洗浄してあるからこのままで良いわ」
みほ「持って帰らないのですか?」
ダージリン「明日もお見舞いに行くつもりですもの」
みほ「もしかして、ダージリンさん…」
ダージリン「…」
みほ「試合終わって退屈だったりします?」ハテ
ダージリン「………言ってくれますわね…」ワナワナ
【翌日 大洗女子学園 会長室】
沙織「次の相手はどこなのみぽりん?」モグモグ
みほ「えーっと、ヴァイキング水産高校とサンダース大付属のどちらか勝った方だね」パクパク
麻子「ヴァイキング水産高校は知らないが、サンダースとなればまた強豪校じゃないか」モソモソ
華「一難去ってまた一難ですわね…」ズズ
優花里「ケイさんが『正々堂々戦うよ』って無人機ナシで来てくれたら良いんですが」ガリガリ
みほ「どうかなぁ…」ゴクゴク
杏「……キミたちココで何してんのさ」
優花里「あれ?会長殿こそこんな所でどうされたんです~?」
杏「そりゃコッチのセリフだよ。腐ってもココ生徒会長室だよ?」
みほ「あはは…ごめんなさい。最近はここに居る時間が長いせいですっかり…」
華「生徒会長室はどことなく居心地良いですもんね」ウフフ
杏「んー、ここを気に入ってくれるのは嬉しいけどさー」
杏「無断使用は良くないね~ってのと、」
杏「花の女子高生がホームレスよろしく地べたに段ボールや新聞紙広げて食事するのってどうかと思うよ?」
沙織「やっぱり会長の言う通りだよみぽりん!こんなの絶対おかしいよ!」
みほ「えぇ…そうかなぁ。絨毯が汚れたらいけないからと思ったんだけど…」
華「ランチマットやナフキンを使えば良かったのでは…?」
優花里「あるいはドイツ軍が使ったようなハーフテントとかですね」
麻子「いや、それはちょっと違うと思うが…」
杏「人のこと言えないけど、もう少し女の子らしく生きた方がいい思うなぁー。特に西住ちゃんは」
沙織「みぽりん試合に勝って少し気が抜けてるんだよきっと」
みほ「えっえっ!?そんなに私たるんでる?!」アタフタ
杏(戦車降りればどことなく抜けてるのは前からだけどね…)
麻子「どちらかというとたるんでるのはお前の方だろ」ブニッ
沙織「ちょっと!お腹摘まないでよ!」
華「あらあらうふふ」
杏「…それでさ、」
沙織「どうしたんですか?」
みほ「ご、ごめんなさい!すぐ片付…!」
みほ「………また悪いニュースですか?」
沙織「えっ?みぽりん?!」
杏「ありゃりゃ。顔に出ちゃったか。こういうところは鋭いもんね西住ちゃん」
みほ「…車長を集めましょうか」
桃「その必要はない。私達が招集した」
柚子「みんな昼食中に呼び出しちゃってゴメンね?」
杏「わかっちゃいたけどさ、イジワルな変更だよねぇー」ハァ
エルヴィン「会長、今度は一体何があったし」
梓「変更ってことは私達にとって不利なルール変更でもされたのですか…?」
杏「そゆことだね。端的に言うと」
杏「対空戦車が全部使用禁止になった」
全員「!!!」
ナカジマ「何それ!ウチらの改造がいけなかったってこと!?」
エルヴィン「冗談ではないぞ会長!何で我々の対空戦車が認められないんだ!!」
優花里「エルヴィン殿の言う通りです!悪意があるにも程があります!!」
梓「こんなの酷すぎますよ会長!!」
杏「ちょい待ち。ルールを変えたの私じゃないから。私に怒んないで欲しいな」
優花里「…も、申し訳ありません」
エルヴィン「感情的になってしまった。かたじけない」
梓「すみませんでした…」
ナカジマ「すいません…」
杏「うん。…で、どーやらウチらは知波単学園に勝って色々浮かれてたらしいね」
そど子「そんな!風紀が乱れてたってことですか?!」
麻子「あのギリギリの試合で浮かれる要素なんて何一つ無いと思うが?」
沙織「麻子の言う通りですよ会長。全ッ然余裕なんてなかったんだから!」
杏「…というより、無人機が導入されてからずっと浮かれてたと思うんだ」
優花里「えっ?」
杏「なにしろ戦車道のルールを根本的に理解してなかったんだからねぇ」
全員「?!」
みほ「…ルールですか?」
杏「うん。ルール」
みほ(戦車道のルール…無人機…対空戦車………)
------------------------------------
華「勝つも大事かもしれませんが、皆さんの安全があってこそですものね」
麻子「全くだ。あんなオープントップなところに砲弾が飛んで来ると思うと気が気でない」
みほ(…………ん?)
------------------------------------
みほ「…あっ!」
杏「西住ちゃんは気付いたみたいだけどさ」
杏「そもそもウチらが使ってる対空戦車は本来なら競技で使用が認められないモノだったんだよねぇ」
華「えっ…」
優花里「どういうことですかっ?!」
杏「"協議(競技)に参加する戦車には連盟が公認する判定装置を搭載しなければならない"」
杏「"また、競技者保護のため、乗員室は連盟公認の装甲材で覆い安全対策を施すことを条件とする"」
杏「…戦車道のルール "3-02追加装備" ね」
エルヴィン「つまりIII号対空戦車やオストヴィント、38(t)対空戦車は安全面で不備があるが故に本来は使用禁止だというのか」
杏「そういうことだねぇ」
梓「でも使用禁止なら許可が降りないわけですから試合でも使えなかったはずです」
梓「だから本当にダメなら知波単学園との試合で使用出来なかったのでは?」
ナカジマ「澤さんの言う通りですよ。承認されたからこの間の知波単戦で使えたわけですよね?」
杏「うん」
杏「だから"ルールが変わった"って事」
ナカジマ「えっ!?」
杏「覚えてるかなー?」
杏「今回の試合は公式戦だけど、同時に無人機に関する問題点・改善点を見つけて、ルールの改定の目安にするという目的もあるって」
みほ「つまり知波単学園との試合を経てオープントップ車輌、私達の対空戦車が安全性に欠けると判断された…という事ですね?」
杏「残念ながらそういう事だねぇ…」
杏「ウチらにとっちゃピンポイントで叩かれたようなルール改変なんだけどさぁ」
杏「冷静になって考えてみると納得できちゃうからタチ悪いんだよねー」
典子「これじゃ後出しジャンケンです!」
ねこにゃー「こんな弱い者イジメみたいなルール改定のどこに納得出来るところがあるにゃー…」
ナカジマ「ちょっと納得出来ないなぁ…」
杏「じゃあ考えてみてよ?」
杏「"無人機が投下した爆弾が車輌の砲塔に着弾した"」
杏「普通の戦車ならまだしも、これが天蓋が無いオープントップな車輌だったらかなりヤバいことだと思わない?」
典子「あっ…」
エルヴィン「た、たしかに…」
麻子「ほぼ間違いなく大惨事になるだろうな」
ねこにゃー「それで爆弾が炸裂したら砲塔にいた人ミンチになっちゃうよぉ…」
沙織「うわぁ…」
杏「さすがにそこまでグロい事にはならないと信じたいけどさ、搭載してる爆弾って何十キロ何百キロって重量なわけじゃん?」
杏「そんなカタマリが数百メートル上空から落下して頭のてっぺんに直撃したら」
杏「間違いなく死ぬよ?」
全員「」ゾワッ
杏「それに安全面だけでなく、着弾時のダメージ判定も天蓋によって計測されるわけだしねぇ」
杏「そういった諸々の事情を鑑みると、理不尽と言っちゃ理不尽だけど、妥当な変更だと思うわけよ」
みほ「…悔しいですけど、私も会長と同じ考えです」
みほ「戦車道は選手が安全であるべきですから…」
典子「…確かに」
ねこにゃー「もしも死傷者が出たら戦車道そのもののが無くなっちゃうかも…」
そど子「ルールは守らないと風紀が乱れてしまいますもんね…」
エルヴィン「ふむ…。ルールだから守らねばならないのは良くわかった」
エルヴィン「…が、そのルールを守った上で今後はどう無人機に対抗すべきか」
ナカジマ「対空戦車はウチらが元に戻すから良いとして、問題はそこですよ」
梓「無人機への対抗策が無くなっちゃいますもんね‥」
杏「うん。自動車部には毎度毎度悪いけど、まず38(t)対空戦車はヘッツァーに、III号対空戦車はIII号突撃砲に戻して」
杏「西住ちゃん達あんこうチームはそのままIV号対空戦車として使おう」
全員「!?」
典子「ですが、対空戦車はオープントップだから規定に反するって…」
そど子「まさかルールを破れなんて言いませんよね?!」
杏「もちろんルールは守るよ。その上で対空戦車も使用する」
梓「しかし、対空戦車はオープントップですから…」
杏「だからさ、オープントップじゃない対空戦車を作るのよ」
全員「!」
杏「また、"西住流家元"に助けてもらったよ」
みほ「………」
みほ「まだ"IV号対空戦車はある"ということですか?」
杏「そゆことー」
桃「会長、小山より機材が届いたと連絡が入りました」
杏「さっすが。対応が早いねぇ~」
華「今度は一体どんなのに変わるのでしょうか?」
麻子「オープントップじゃないというのだからちゃんと天蓋付きの対空戦車なのだろう?」
沙織「でも、今まで無人機狙うときって砲身を上に向けてたじゃない?天蓋があると砲身上に向けられなくならない?」
華「それに上空の様子も確認しづらくなりますね」
優花里「だから砲塔ごと上下左右に動かしちゃうんですよ」
沙織「えっ?そんなこと出来るの?!」
優花里「最後に残ったIV号対空戦車なら出来ますね」
みほ「最後のIV号対空戦車?」
優花里「そうです。メーベルワーゲン、ヴィルベルヴィント、オストヴィントのような"つなぎ"の対空戦車ではなく」
優花里「ドイツの対空戦車の"本命"と言われた対空戦車です」
あんこう「!」
エルヴィン「アレか…!」
梓「アレ?!"アレ"って何です?!」
沙織「本命って、相当スゴいんじゃない!?」
優花里「会長殿がいう次のIV号対空戦車はもちろん…」
優花里「"クーゲルブリッツ"ですよねっ!」
杏「うん。そんなような名前だったよ」
華「クーゲルブリッツ?」
沙織「ゆかりん!いつもの!!」
優花里「はい!クーゲルブリッツは新規に設計されたIV号戦車ベースの車体に、ドイツの潜水艦"Uボート"に搭載予定だった3cm連装対空機関砲塔をベースに新規設計した砲塔を搭載した対空戦車です」
優花里「この砲塔は二重構造になっていて、外側の砲塔で左右に旋回し、内側にある円形状の砲塔で上下の俯仰を行います」
優花里「砲塔が丸い形状をしていることから"クーゲルブリッツ(球電)"という名前がつけられました」
優花里「そして、搭載する3cm機関砲は航空機関砲である"Mk103"を対空機関砲にしたFlaK103/38です」
エルヴィン「対航空機および対戦車兵器としてFw190やHs129の一部のバリエーションに搭載されていたヤツだな」
優花里「さすがですエルヴィン殿!…ただ、銃身の加熱を考慮して航空機搭載型より発射数は抑えられていますけどね」
優花里「それでも毎分420~850発という驚異的な発射速度を誇ります」
優花里「1発の威力は3.7cmのオストヴィントより劣りますが、発射速度が圧倒的に勝っているので火力は格段に向上していますっ!」
全員「おおーっ!!」
麻子「つまり、ヴィルベルヴィントの連射速度とオストヴィントの威力、それぞれの利点を両立したような戦車だな」
優花里「まさにその通りです冷泉殿ぉ!」
優花里「また、ヴィルベルヴィントやオストヴィントは砲塔の旋回も手動だったために、航空機に追いつかないという欠点がありました」
華「旋回の遅さには何度も悩まされていました」
みほ「知波単学園の時それがやられた原因でもあったよね」
優花里「なので改善策としてクーゲルブリッツは機械式旋回装置が搭載されています!」
華「まぁ!それは有り難いですわね」
沙織「ところで"新規に設計されたIV号戦車"というののは?」
優花里「実は、元のUボート用の砲塔はそのままでは搭載出来ないので、それをベースに新規設計されたものをIV号戦車の車体に搭載を予定していたのですが」
優花里「それでも砲塔が大きいために、既存のIV号戦車の砲塔リングを拡大する必要がありました」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
杏「君たちが乗ってるポルシェティーガーのターレットリングってまだ予備ある?」
ホシノ「ええ、うちらのポルシェはあちこち壊れるんでパーツは余分に用意していますけど、それが何か?」
杏「IV号のも結構摩耗してたからさ、車体を元に戻すついでにポルシェちゃんのヤツ組み込んで欲しいのよ」
自動車部「えっ?!」
ツチヤ「なんでまた?」
スズキ「ウチらが見た時はそんなに摩耗してませんでしたよ?」
杏「後々のために…ね?」
ツチヤ「?」
ナカジマ「交換と言いましてもティーガーのリングはIV号のより大きいから結構な加工が必要ですよ?」
ナカジマ「そのまま組み込むとまずハッチに干渉しますし」
杏「うん知ってる。だからさ、リングの拡大に伴ってハッチや他の部分も適応させてほしい」
ツチヤ「会長…?」
杏「だから頼んだよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ナカジマ「そうか!だからポルシェティーガーの砲塔リングを!」
優花里「!!…よくご存知ですねナカジマ殿!」
優花里「IV号戦車の砲塔リングでは小さいので、砲塔リングはティーガーのサイズを採用しました」
優花里「ですが、もちろんそのままでは取り付けられないので、適用させるために車体も新規設計したのです」
優花里「そしてリング拡大に伴って干渉するハッチの位置も変更しました」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
沙織「…あれ?ハッチが斜めになってる?」
麻子「というより少し前方にシフトしたようだな」
ツチヤ「砲塔を乗っける関係で少し前に移動させたよ」
みほ「…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ「なるほど…操縦手席と通信手席のハッチの位置が変わってたのはそのためだったんだ…!」
ナカジマ「でもさ、ウチらが砲塔リング交換したのって、ヴィルベルヴィントに改造する時だったんだよね」
みほ「ということは、あのとき既に会長はこの事態を予測してたってこと?!」
梓「さすがです会長…!」
ねこにゃー「人工知能も真っ青の先読みだにゃぁー」
典子「ところでその会長はどこへ?」
ナカジマ「あれ?さっきまでいたのに…?」
ヤーッテヤルヤーッテヤルヤーーーッテヤルゾ♪
みほ「ん?」ピッ
みほ「はいもしもし」
杏『西住ちゃーん、IV号出来たよー。倉庫にあるからおいでよー。んじゃ』
ツー ツー ツー
みほ「あ、ちょっと会長!?」
みほ「………」
みほ「あの…IV号対空戦車の改造終わったそうです…」
全員「!?」ガタッ
【戦車倉庫】
優花里「おおお!これこそ紛うことなきクーゲルブリッツです!!」キラキラ
麻子「近未来的な形をした砲塔だな」
優花里「このSFチックな砲塔こそがクーゲルブリッツの醍醐味なのですよ!」
沙織「あはは。砲塔以外はほぼIV号だからね」
華「オストヴィントと比べるとやや車高が低くなりましたね」
優花里「砲塔の半分は車体に隠れているのでその分車高を抑えられたということですね」
沙織「でもさー、さっき機材届いたって報告あったのに改造するの早すぎじゃない?!」
杏「まぁ、砲塔取っ替えるだけだったからねぇ~。楽勝だったよ!」
柚子「作業は私がやったんですけどね…」
ホシノ「副会長がやったのは掛け声だけでしょう」
ツチヤ「クレーン動かしたり装置組んだのはウチらだしね。毎度ながら」
スズキ「旋回装置組むの楽しかったから良いけどね」
ナカジマ「いいなぁ、私も組みたかったよ…」
杏「ま、そういうわけだからいつも通り乗ってみてよ」
優花里「そうですね!お言葉に甘えて乗ってみましょうよ西住殿!」キラキラ
みほ「わかったから落ち着いて優花里さん」アハハ
華「本当に戦車がお好きなのですね」ウフフ
優花里「いかがです乗り心地は?」
みほ「うん、悪くないと思うよ」
華「砲身を上下に動かすのはこれですね」クイッ
ウィーン!
みほ「わっ!」
優花里「左右はもちろん、上下の動きも砲塔ごと行われるので、砲身が上を向いているときは私達も上を向くようになってます」
みほ「ビックリしたぁ…」
華「なんだかジェットコースターに乗ってるような気分ですね」
優花里「あはは。あのカタンカタンって登ってる時の体勢ですよねー!」
杏「自動車部いわく、砲塔旋回の装置も弄ったそうだから、砲塔の旋回も早くなってるらしーよ」
みほ「そうなんですか…わわっ!」ウィーン
華「本当ですね!これなら無人機にも追いつけそうです」ウィーン
優花里「実物のクーゲルブリッツが360度回転するのに14秒ほどでしたが、これなら7秒くらいで一周できそうですね」ウィーン
みほ「華さんストップ!すとウグッ!」ウィーン
優花里「わっわっ!!こんなところで吐いちゃダメですよ西住殿ぉ!?」ウィーン
華「なかなか楽しいですわねうふふ」ウィーン
沙織「あはは。砲塔がタイムショックの回転椅子みたいになってる」
麻子「見てるこっちが酔いそうになる…」
華「ごめんなさい。やりすぎました」
みほ「はぅぅ…目が回る…」フラフラ
沙織「ちょっとみぽりん大丈夫…?」
優花里「あ、あそこまで堪能して貰えれば…クーゲルブリッツもさぞ満足でしょうね……」フラフラ
華「ええ。それはもう。気持ち良いくらいに砲塔の旋回がスムーズでして」
みほ「私は気持ち悪い…」フゥ…フゥ…
優花里「クイズタイムショックの回転イス状態でしたね…」フラフラ
麻子「戦車に乗り慣れた西住さんを酔わすなんてどれだけ無茶したんだ…」
杏「どうよ西住ちゃんクーゲルブリッツは?」
みほ「気持ち悪いです……」ウップ
杏「うぇっ?!」ガーン
華「会長さん、撃墜されちゃいましたね…」
優花里「西住殿に嫌悪感あふれる顔で"気持ち悪い"なんて言われたら首吊るレベルのショックですからね…」
華「ショックで会長がますます小さくなっちゃいましたね…」
みほ「はふぅ…」
優花里「ほぉーら大丈夫ですよぉー西住殿~」スリスリ サスサス
みほ「……どさくさに紛れてお尻触らないでよぉ…」
華「あれ…ところでこの機関砲は二人で操作するのですか?」
優花里「実を言うとそうなんですよ」
優花里「今までは砲手一人、装填手一人でしたが、こちらは砲手2人で運用します」
優花里「ベルトリンク式の砲弾が左右それぞれ600発ありますので、今までの対空戦車と違って弾幕が途切れにくいのも特徴ですね」
華「チマチマとリロードする必要が無いのは有り難いですわね」
みほ「ゲームセンターのガンシューティングゲームを2人で協力するみたいだね」
優花里「ですので次回からは私も五十鈴殿のお手伝いをさせていただきます!」ビシッ
沙織「一人を二人で狙うなんてやだも~!」
麻子「おまえは何を言っているんだ」
みほ(そんなこんなで日時は経過し、第二戦目となりました)
みほ(相手はサンダース大学付属高校…)
みほ(今度はどんな航空機が出てくるのでしょうか………)
…ということで、また書き溜めてます。
今更だけど読みにくいとかあったら教えてネ
クリスマスは華さんがイモの食い過ぎでダウンしたため中止になった。
ということで再開します
【大会当日 試合会場】
ケイ「ミッホぉ~!」ダキッ
みほ「わっケイさん!?お、お久しぶりですっ!」ドキドキ
ケイ「お久しぶりねー!元気してた?」
みほ「ええ、それはもう毎日毎日ハッスルしてました」アハハ
ケイ「あっははは!それはGoodね!やっぱ楽しまなくっちゃ」グッ
みほ「えへへ。今日はよろしくお願いしますね」
ケイ「こちらこそっ!」グッ
華「こんにちは。ナオミさん」
ナオミ「ハロー。ハナ、久しぶり」
華「また貴女とお手合わせ出来る日が来ること、心よりお待ちしておりました」
ナオミ「奇遇ね。私もだ」
華「あの一戦、とても刺激的でしたわ。今思い出してもとてもジンジンするほどです」
ナオミ「ハナの狙撃こそ最高にクールだった。だからこうしてまた戦えるのが嬉しい」
華「ええ。同じ砲手として全力でお相手いたします」
ナオミ「ああ、本当に楽しみだ。ゾクゾクする」
華「うふふ」
ケイ「それじゃ、試合でね~ See you again~!」フリフリ
みほ「はい!」
みほ「…さてと」
「試合が楽しみねミホーシャ」
「こんにちは。西住さん」
みほ「あっ、カチューシャさん、ノンナさん。来てたんですね」
カチューシャ「ええ。ルール改定じゃしょーが無いけど、サンダース相手に1輌の対空戦車じゃ厳しいわね」
カチューシャ「でも、ミホーシャなら何とかするわよねぇ~?」ニヤリ
みほ「はい。かなり不利な状況に変わりないですが、やれることは全力でやるつもりです」
カチューシャ「それでこそミホーシャよ。頑張りなさい」
カチューシャ「カチューシャたちはシッカリ観ているから楽しませてちょうだい」
みほ「はい、頑張ります!」
カチューシャ「それじゃぁね~ピロシキ~」フリフリ
ノンナ「ダスビダーニャ」ペコリ
スタスタ
ノンナ「この試合、どう思いますか?同志カチューシャ」
カチューシャ「………無理ね」
ノンナ「そうですか…」
カチューシャ「残念だけど、あの対空戦車じゃケイ達の無人機は落とせない」
ノンナ「………」
カチューシャ「残念だけど、ミホーシャ達もここまでよ…」
【そして試合が始まり】
キュラキュラキュラキュラ
ガタッ ゴトッ
沙織「わっ!ま、麻子!もうちょっと丁寧に運転してよぉ!」
麻子「木が多いから仕方ない。我慢しろ」
みほ「無人機がどう出るかわからない以上、迂闊に開けたところは走れないけど、その分振動も大きいから…」
沙織「お尻痛いよぉ…」
華「あら、クッションを敷いていませんでしたっけ?」
沙織「あのクッション、優季ちゃんが『これ可愛いぃ~!先輩下さい~!』って取られたよぉ…」
麻子「…確かアレって座るとブゥゥって音しなかったか?」
優花里「そんな危険なクッションがあるんですか?!」
沙織「ちょっと前にUFOキャッチャーで取った景品なんだけど、かわいい見た目に騙されてヒドイ目にあったクッションなんだよねぇ…」
沙織「アレのせいで麻子ったら私が本当にしたっていうし…」
華「よほど本物にソックリな音なんですね」
麻子「というよりは沙織の日頃の行いだな」
沙織「なによ!アタシがいつそんな事したって言うの?!」
みほ「まぁまぁ…」アハハ…
ブゥゥゥゥゥ!!!
あんこう「!!?」
麻子「……おい、沙織」
沙織「今の私じゃないよっ?!」
華「ですが音は沙織さんの方から…」
みほ「あの…出来れば外で出して欲しい…かな…」
優花里「車内でBC兵器の使用はちょっと…」
沙織「違うって!…あっ、ウサギさんチームだ!あの子たちまた無線入れっぱなしにしてる!」
華「無線越しでも聞こえるなんて相当大きな音なのですね…」
優花里「あはは…」
【ウサギさんチーム】
ブゥゥゥゥゥ!!!
優季「ふぇぇっ!?」
あゆみ「ち、ちょっと今オナラしたの誰?!」
桂利奈「あいぃ!?私じゃないよぉっ?!」
あや「私も違うよ!」
あゆみ「私も違うし梓のはこんな音じゃないから!」
梓「ええっ?!」
あや「………優季ぃ」ジトー
優季「ち、違うよ!このクッションだよぉ!!」ブゥゥ!ブゥゥ!
あゆみ「何度もお尻でブチブチやってると本当にしてるみたい…」
優季「違うってば!沙織先輩から貰ったこのクッションだってばぁ!」ブゥゥ!!
桂利奈「そっち見えないから音だけしか聞こえないけど、"ホンモノ"の音だよソレ」
あや「うん。優季がオナラしてるみたい。というかオナラしたと思ってる。今でも」
優季「何度も違うって説明してるのに理解しないあやはホントばかだねぇ」イライラ
あや「うるさい!オナラっ娘!!」ガァァァ
優季「うるさくないもん!沙織先輩のオナラだもん!」キィィッ
あゆみ「いやいや、沙織先輩のオナラじゃなくてクッションだよね」
梓「み、みんなその辺にしてそろそろ…」
優季「沙織先輩だって人のいない所でこれくらい豪快にやってるよぉ!!」
あや「うっ……想像したらちょっと…ヤダ」
あゆみ「でも実際有り得そうだから怖いよねー」
桂利奈「沙織先輩ってオナラするの?」ハテ?
優季「するもん!『やだもぉ///』とか言いながら ブゥゥブチィィ!! みたいな感じでしてるもん!多分!!」
あや「うわぁ…」
あゆみ「くさそう…」
桂利奈「あぃぃ…」
沙織『 マ セ ガ キ さ ん チ ー ム 状 況 報 告 を お 願 い し ま す 』
ウサギ『きゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?』
梓(だから言ったのに。というかマセガキって…)
沙織『無線入れたまま私のウワサ話をするなんていい度胸ねぇ?』
あや「ち、違うんです!オナラしたのは優季なんです!」
優季「オナラじゃないって言ってるでしょぉ!このクッションだってぇ!!」ブゥゥゥゥ!!
あゆみ「だからお尻動かして鳴らすとホンモノみたいだってば」
優季「うるさいっ!このクッションが悪いんだもんっ!」
沙織『お黙りィッ!!!!』キィィィン
マセガキ「ひゃいっ!!!!」
沙織『無線入れたままくっちゃべってるヒマがあンなら状況報告入れなさいっ!!!!!』ガオォォォ!!
優季「うわぁぁぁぁぁぁんごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
あや「もうしないから許してぇぇぇぇぇ!!」
紗希「………」ボーッ
あゆみ「紗希も『もうしません』って言ってますっ!!」
沙織『あとアタシはそんな下品なオナラしないっ!!!!』
みほ『まぁまぁ沙織さん落ち着いて…』
優季「でもでも!したくなった時はどうすればいいんですかぁ!」
沙織『そん時は誰もいないところでコッソリすればいいのっ!!!』
あゆみ「ブゥゥブチィィッ!! なんてでっかいのしたらバレちゃいません?」
沙織『だからそんなおっきな音でしないってーのっ!!!!』ガァァァァ!!
【あんこうチーム】
優花里「お、落ち着いてください武部殿…」
沙織「ダメだよ!あの子達ちょっと甘やかすとすぐにだらしなくなるんだから!!」
沙織「それにあの子たち盛大な勘違いしてるし!!!」
麻子「そっちか…」
華「まるで肝っ玉母さんとドラ息子ですね」ウフフ
麻子「嫁の貰い手が無いのに"母さん"は疑問の余地があるけどな」
沙織「あるもん!男の子たちと会う機会が無いだけだもん!!」
みほ「ま、まぁまぁ………」アハハ
みほ(………)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ「現時点でサンダース側がどんな無人機を使ってくるかは不明です」
みほ「なので私達は陸空問わず全方向から攻撃が来るものだと思い、十分な車間距離と厳重な警戒で臨みます」
みほ「移動についてはなるべく上空から捕捉されにくい森林を中心にお願いします」
みほ「ただし、相手もそれを見越した上で森林に車輌を配備している可能性もあります」
みほ「なのでウサギさんチーム、アヒルさんチームには偵察車両として先導してもらい、それに続く形で他の車輌も移動します」
みほ「そして今回はレオポンさんチームのポルシェティーガーをフラッグ車に指定します」
『了解』
みほ「こちらからは以上です」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ(無人機、戦車、どちらにしても手強いことには変わりない…)
典子『西住隊長!無人機を発見しました!!』
みほ「! アヒルさんチーム、出来るだけ詳しく無人機の位置・特徴をお願いします」
典子『私たちの前方からゆっくりこっちに向かってきています!』
みほ「えっ…ゆっくり??」
典子『何と言えば良いのかわからないけど、こっちに気づいてないのか、何の警戒もしてないかのように飛んでます!』
みほ「…? 了解しました。引き続き監視をお願いします」
みほ「全車両、先頭のアヒルさんチームより無人機出現の報告がありました」
みほ「いわく"ゆっくり"向かってきているとのことですが、こちらを確認できていない、あるいは罠の可能性も考えられます。一切油断しないでください」
全車両『了解!』
みほ(ゆっくり…気になるなぁ)
梓『西住隊長!こちらも無人機を確認できました!確かにゆっくり飛んでいます!』
みほ「了解です!」
沙織「…さっきからみんな"ゆっくり"飛んでいるって言うけど一体どういうことなの?」
みほ「わからないけど、油断は出来ないよね」
ねこにゃー『隊長、ボクたちからも無人機が見えるよ。…でも』
みほ「はい?」
ねこにゃー『アレは本当に試合に参加している無人機なのかなぁ…?』
みほ「えっ?どういうことですか??」
ねこにゃー『なんかあまりにノンビリ飛んでいるから試合で使う無人機とは関係ないような気がして…』
みほ「はぁ…。他に何か特徴はありますか?」
ねこにゃー『んー…遠いからよくわからないけど、戦闘機というより旅客機みたいだにゃー』
みほ「…?」
エルヴィン『旅客機だと…?』
みほ「エルヴィンさん?」
エルヴィン『アリクイさんチーム、それは間違いないか?』
ねこにゃー『え…うん、戦闘機って感じじゃないかな…多分』
エルヴィン『隊長、至急防空体制を取ったほうが良いぞ』
みほ「えっ!?」
エルヴィン『グデーリアン!聞こえるか!あちらはのんびり飛んでるかもしれないが、我々はのんびりしてる暇はない!』
優花里「ど、どういうことですかエルヴィン殿!?」
エルヴィン『"スーパーフォートレス"だぞ!』
優花里「なっ…!」
優花里「武部殿っ!全車輌に今すぐ隠れるよう指示してくださいっ!!」
沙織「落ち着いてゆかりん!私たちは一応無人機から確認できない森林地帯にいるから」
華「優花里さん、そのスーパーフォートレスとは…?」
優花里「B-29ですよっ!!」
全員「!!!」
麻子「おい…B-29って日本を焼け野原にした…!」
優花里「そうです…日本各地への大空襲、広島・長崎への原爆投下で使われた戦略爆撃機です…!」
麻子「おばぁが子供の頃、雨みたいに降ってくる焼夷弾から逃げてたって………」サーッ
華「恐ろしい…」
沙織「そ、そんなの来たら試合会場焼け野原になっちゃうじゃない!!」
みほ「みんな落ち着いて! 試合のルールで使用出来る爆弾は1機3つまでだから」
優花里「た…確かに…大空襲のようにはならないかと思います…」
麻子「となれば爆弾を搭載出来る数が限られているのに何故B-29なんだ?」
典子『こちらアヒルチーム!もうまもなく無人機が到達します!』
みほ「了解しました!各車両は引き続き全周囲警戒をお願いします」
みほ「これよりあんこうチームは無人機撃墜のための対空攻撃を行います!」
『了解!!』
みほ「麻子さん、なるべく車体が見えない程度に上空の射界が確保できる場所まで移動お願いします」
麻子「…わかった」ガコン ブロロロ...
華「射撃準備、完了しています」
優花里「こちらも準備オッケーです西住殿!」
みほ「わかりました。目標・B-29。撃て!!」
ダダダダダダダダダダ!!!
ダダダダダダダダダダ!!!
杏『おー、1輌なのになかなか弾幕張るねぇ』
桃『機関砲身が2つなのでオストヴィントよりは強力な弾幕を張れるはずです』
柚子『あとは当たってくれれば良いけど…』
ダダダダダダダダダ
ダダダ
華「優花里さん、止めて下さい!」
ピタッ
優花里「…どうされましたか五十鈴殿?」
華「…」
みほ「華さん…?」
華「こちらの攻撃が…一切届いておりません…」
みほ・優花里「!!」
華「移動速度を読んだ上での射撃をしているつもりなのですが…」
華「無人機の高度が高すぎるせいで、こちらの砲弾が届かないのです………」
みほ「そんな…」
優花里「………西住殿」
みほ「はい?」
優花里「クーゲルブリッツの3cm連装対空機関砲(3cm Flakzwilling103/38)の有効射程は5,700m…」
優花里「オストヴィントに搭載された3.7cm Flak43でも最大射程6,500mです…」
みほ「うん…?」
優花里「それに対してB-29は飛ぼうと思えば高度10,000mを飛ぶことが可能です」
みほ「!! ということは…」
優花里「ええ。五十鈴殿のおっしゃる通り」
優花里「我々の攻撃は届きません…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
優花里「それでは東京大空襲みたいにB-29で絨毯爆撃も可能になったってわけですね…」
沙織「えーっ!?そんなの勝てっこないよー!」
柚子「あっ、でもね、1試合で使える航空機は3機までだし、搭載できる爆弾は3つまでになっているからそこまで酷くはないと思うよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ「………」
麻子「なるほど…B-29を選んだ理由は"高度"か…」
沙織「攻撃届かないんじゃどうしようもないじゃない!」
優花里「ええ。実際に日本では陸上におけるB-29への対抗手段は一部の大口径の高射砲を除いて皆無でした」
みほ「でも、あの高さから爆弾を落として戦車に命中させるのはまず無理だと思う」
麻子「こちらの攻撃は届かないが、向こうも攻撃を命中させられない…ということか」
みほ「うん。だから相手は必ず高度を落としてくるか、別の無人機を使ってくるはず」
優花里「確かに、絨毯爆撃時は高度は1500m~3000mだった言われています。その時を狙えば…!」
みほ「なのでひとまず今はB-29は無視し、ほかの戦車・無人機への警戒へ変更します」
沙織「わ、わかった!」
優花里「了解です…!」
華「………」
みほ「隊長車より全車輌へ。いま上空に見える無人機は現時点で対空戦車の攻撃が当たらないため保留とします」
みほ「ただ、無人機が攻撃する場合は高度を落とすはずなので、そのタイミングを狙って攻撃をするつもりです」
みほ「なので引き続き無人機・戦車の警戒は続けると同時に次の目標を探します」
全車両『了解!!』
梓『こ、こちらウサギチーム!!平原から戦車が14輌こっちに向かって来ています!!』
みほ「っ!!」
優花里「フラッグ輌だけ残して全投入ですかっ!」
梓『距離としてはまだまだ遠いですが、どうしま』
バキューン!!
ズガァァァン!!!
あや『えっ、うそ!?発見された!!?』
梓『うっ!?』
優季『このままじゃ森林ごとなぎ倒されちゃうよぉ!』
みほ「ウサギさんチーム、後退して味方と合流してください!」
【サンダース側】
ズガァァァァン
ドガアァァァン
ケイ「あ゛ぁぁぁぁぁも゛うっ!!!」ウガーッ!!
アリサ『た、隊長?!』
ケイ「こんなの全然フェアじゃ無いじゃない~!!!」ウガァァァァ
アリサ『えっ?!』
ケイ「だって相手は無人機持ってないんだよ?!なのにこっちは無人機使って!」
ケイ「しかも唯一の対抗手段の対空戦車も攻撃が届かないような高度を飛んでるって卑怯にも程が有るわよっ!!」
アリサ『で、ですが…』
ケイ「こんなので勝ったってちっとも嬉しくない~~~っ!!」ジタバタ
アリサ『ま、まぁそうですけど…これもルールの範疇ですし…』
ケイ「NO!! ルールだからって何でもかんでもやって良いってわけじゃないよっ!!」
アリサ『うっ…』
ケイ「相手は無人機に対抗できない!なのにこっちはほぼ全車両で一斉攻撃なんて完全にイジメっ子の考えだよっ!!」ジタバタ
アリサ『い、いやでもフラッグ車残して全車両で進撃しろって言ったの隊長じゃ…』
ケイ「うぐ…。そうだけど!そうなんだけど!やっぱこんなのフェアじゃないわよ!」
ケイ「もっとこう…最ッ高にCOOLでHOTでEXCITINGな試合をしたいの!!」
アリサ『は、はぁ…(COOLでHOT…どっちなんだろ??)』
ケイ「ちょっと新しい作戦考えるまで全車両待機っ!!」
『Yes Mam!』
アリサ(あはははは…)
ナオミ『Hey mam. 私に考えがある』
ケイ「んー、言ってごらん」ジトー
ナオミ『………(説明中)』
ケイ「………」
ケイ「…ナオミ……あなた……」
アリサ『えっ?ちょっとそんなの良いの?!』
ナオミ『隊長がご満悦なんだ。悪くない』
アリサ『そ…そうなの…?(ご満悦なのかな??)』
ナオミ『それじゃ行ってくる。ちょっとの間ハニーのお守りを頼む』スタッ
ナオミ『Hey パーティー会場まで送ってくれないか』
ブロロロロロロロロ
アリサ『…アタシもナオミみたいになればタカシ振り返ってくれるかな…』
ケイ「アリサはアリサのままで良いのよ」
【大洗側】
梓『あれ…? サンダースの攻撃が止まりました…?』
みほ「えっ?」
梓『さっきまでの袋叩き状態がウソみたいです』
みほ(どういうこと…?)
梓『隊長、私達でもう一度森を出る手前まで進んで様子を見ようと思うのですが』
みほ「…そうですね。お願いします」
みほ「ただ、相手の行動が読めないので注意してください」
みほ「もしかしたら本隊へ誘い込むための"エサ"を撒いている可能性もあります」
みほ「なので少しでも違和感があったら深追いせず即座に連絡をお願いします」
梓『了解しました!』
みほ「全車輌で攻めてくるのか、それともいくつかの小隊に分かれて来るか」ウムムム…
優花里「どちらにせよウサギさんチームの情報次第ですねぇ」
華「無人機も攻撃することなく私達の上空をずっとグルグル回っているだけですし…色々気味が悪いですね…」
麻子「さっきの攻撃でおおよその位置は特定できただろうしな」
~数分後~
梓『こちらウサギさんチーム。前方から戦車が1輌だけ接近してきます』
みほ「了解。おそらく我々を誘い出すための罠でしょうから、挑発には乗らず有効射程に入った場合のみ攻g
あや『あれ?なんか戦車の上に人が乗ってる?』
みほ「えっ…?」
優花里「戦車の上…タンクデサント?」
桂利奈『ホントだぁー!砲身に座ってるねー』
梓『あっ!あの人ファイアフライに乗ってた…!』
あや『よく見たら何か掲げてる?』
紗希『………はた…』
桂利奈『ホントだ!片手に白旗持ってるよ!』
みほ「わかりました。攻撃はせずに相手の話を聞いてあげて下さい」
梓『了解です』
【ウサギさんチーム】
梓「ちょっと行ってくるね」
あや「梓一人で大丈夫?」
梓「大丈夫…だと思う」
紗希「………」
スタッ
ナオミ「Hey お嬢さんちょっと良いかい?」
梓「これは一体どういうことでしょう…?」
ナオミ「警戒しなくていい。こちらに攻撃の意思はない」
梓「えっと…」
ナオミ「サンダースの砲手ナオミだ。よろしく」
梓「あっ、大洗の澤梓です。ウサギチームの戦車長です」
ナオミ「オーケイ。ここに来たのは他でもない。これからのことについて話し合おうと思って来た」
梓「これからのこと…ですか?」
ナオミ「ああ。キミたちの隊長と話がしたい」
梓「えっ…隊長とですか?」
ナオミ「そう。だからトランシーバーを借りれないかな?」
梓「…ちょっと待っててください」タタタッ
梓「こちらウサギチーム。先程やってきたナオミさんから隊長たちと話がしたいそうです」
梓「それでM3リーの無線機を使いたいとのことですが…」
みほ『わかりました。無線機の使用を許可します』
梓「了解しました」
梓「ナオミさん、隊長から許可がおりたのでこちらへどうぞ」
ナオミ「ありがとう」
ナオミ「ハロー。こちらサンダースのナオミ。聞こえるかい?」
みほ『こちら大洗の西住です。ナオミさん、聞こえています』
ナオミ「OK。サンダースより"ラブレター"を渡しに来た」
みほ『ラブレター?』
『ラブレター?!やだもーみぽりんったら~!』
『ちょっと黙ってろ』
みほ『その"ラブレター"の内容というのは?』
ナオミ「これよりサンダースは最長で1時間、攻撃をせず待機する」
みほ『どういうことですか?!』
ナオミ「私たちの可愛い"天使"が飛んでいるのがわかるだろう?」
みほ『B-29、無人機のことですよね』
ナオミ「あぁ。私達は彼女の"恋"の行方を見守ることにした」
みほ『…』
ナオミ「人の"恋路"を邪魔するのはナンセンスだからね」
みほ『…』
ナオミ「彼女の恋の行方が決まった時、私たちは改めてパーティーを開催する」
みほ『つまり、無人機を撃墜するかあるいは撃墜できず1時間が経過したら行動を再開するということですよね?』
ナオミ「その通り。タイムリミットは最大で1時間」
ナオミ「無人機から上がる白旗か、無人機が落とす爆弾の炸裂音…このどちらかが合図だと思って欲しい」
みほ『わかりました』
ナオミ「オーケイ。何か質問は?」
みほ『この作戦は、ケイさんが考えたのですか?』
ナオミ「答えはNoだ。隊長からの許可は貰っているが、この作戦の立案と責任は全て私にある」
みほ『…?』
『無線、少し良いですか?』
みほ『ん…どうぞ』
華『こんにちはナオミさん。IV号戦車・砲手の五十鈴華です』
ナオミ『ハロー、ハナ。ナオミだ。また話ができて嬉しいよ』
華『私もです。…つかぬ事をお伺いしますが、なぜこのような作戦を考案されたのでしょう?』
ナオミ「理由は2つある」
ナオミ「1つは攻撃の届かない無人機と戦車で相手を蹂躙するアンフェアな戦いは望まないという、我々サンダースの"総意"」
華『ではもう一つは?』
ナオミ「砲手としての個人的な"興味" だ」
華『!』
ナオミ「さっきも言ったが、この作戦の責任はすべて私にある」
ナオミ「批判も罵声も全て私が受けよう」
華『なぜそこまでして…』
ナオミ「言っただろう。砲手としての"興味"だと」
華『興味…あの無人機がどうなるかという事でしょうか?』
ナオミ「ああ。私は見てみたい。1万メートルの"遠距離恋愛"の行方をね」
華『………』
華『わかりました』
ナオミ「もう一つ。」
華『?』
ナオミ「"一途"だ」
あんこうチーム『???』
優花里『えええええ!!それじゃ他の無人機出てこないんですかぁ?!』
みほ『優花里さん?!』
ナオミ「その通りさ。さすがだ」
優花里『ヘルキャットは?サンダーボルトは?!ムスタングは!!?』
ナオミ「ない」キッパリ
優花里『そんなぁ…見てみたかったのにぃぃ…』ショボン
みほ(今は見たくないなぁ…)
ナオミ「ウチに遊びに来たらいくらでも見せてあげるさ。オッドボール軍曹」
優花里『その呼び名はやめてくださいよぉ…』メソメソ
ナオミ「…さて、こちらからは以上だ」
みほ『わかりました』
ナオミ「それじゃ通信を切るよ。See you again」
ブツッ
ナオミ「待たせたねお嬢さんたち」
梓「いえ、色々驚いて開いた口が塞がりませんでした」
ナオミ「たまにはこういう方法も悪くはないだろう?」
梓「ええ…」
優季「本当に無人機ってあの子だけなんです?」
ナオミ「この試合で使うはB-29のみだ。これは断言する」
ナオミ「それにスクラップになると判っていながら残りを投入するのはナンセンスだ」
あゆみ「え…どういう事ですか?」
ナオミ「わからないのかい?」
ナオミ「"ハナ"がいるだろう?」
ウサギ「!!」
梓「五十鈴先輩が…」
桂利奈「あぇ…?お話終わったの?」ウトウト
優季「桂利奈ちゃん寝てたの?!」
桂利奈「…アニメ見てたら夜が明けてて」ファァ
あや「試合の前日くらい早く寝ないとダメだよ~!」
ナオミ「待たせてしまってすまない」
桂利奈「んぅ…じゃぁ降りよっか」ネムネム
あや「え?どうして??」
桂利奈「だって試合終わったんだもん。みんな待ってるよ」ノビー
優季「え?」
あゆみ「え?」
ナオミ「え?」
桂利奈「あい?」
梓「まだ終わってないよ?」
桂利奈「え…でもサンダースの人が白旗もってきたってことは…」
桂利奈「降参しまーす!!」
桂利奈「…って事じゃないの?」
ナオミ「…」
梓「…」
あや「…」
紗希「…」
桂利奈「…あり??」ハテナ
【あんこうチーム】
麻子「西住さん、どう思う?」
みほ「そうですね…喜んで良いのか悪いのか複雑な心境です」
沙織「無人機は1つだけというのと、1時間サンダースは攻撃しないというのは助かるけれど」
華「かといって、あの無人機(B-29)に現時点で手も足も出ない事には変わりありません」
みほ「………麻子さん」
麻子「どうした?西住さん」
みほ「航空機の飛行速度や高度を割り出すための計算って出来ますか?」
麻子「…出来ないこともないと思うが、どうして?」
沙織「仮に割り出したとしても、クーゲルブリッツの砲弾届かないんでしょう?」
みほ「………」
みほ「沙織さん」
沙織「ひゃいっ!?ごごごめんなさいっ!!」ビクッ
みほ「え…?あっ、そ、その、ごめんなさい…無線を…」オロオロ
沙織「え?あ、あははそうだよね!無線だよね!」カチャカチャ
優花里「お、落ち着きましょう二人とも…」
華「同じチームとはいえ会話が噛み合わないこともありますもんね」ウフフ
麻子「…ここ最近特に噛み合わなくなってる気がするのは私の杞憂か?」
みほ「あんこうチームより全車両へ」
みほ「先ほど、サンダースのナオミさんより伝達がありました。内容は次の通りです」
みほ「1、サンダース側は最大で1時間攻撃をせず待機する」
みほ「2、あるいは1時間以内に無人機が撃墜された場合、行動を再開する」
みほ「3、サンダース側が投入した無人機は現在飛行中のB-29のみ」
みほ「以上です。そのためこれより保留していた無人機の迎撃を再開します」
エルヴィン『あいつはクーゲルブリッツの射程外を飛んでいるのだろう?』
典子『一体どうやって迎撃を?!もしかして竹槍ですか?!』
そど子『いくらなんでも竹槍じゃムリよ!』
みほ「一つだけ、方法があります…!」
全車『!』
…ということでまた書き溜めます
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-=ミ∨:i:i:i∠./ マ:)-=ニ^⌒\
/ [:i:i:〕:i:i/ マi:i:i:i:i:\ ヽ
/ //:i:i:∧/ ∨i:i:i:i:i:i:\. |
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:. ∨i:i:i:i/ ::::l|∧ ::::小 辷ソ |/ 辷ソ´/:::::/|/::::/ ∨/
::. ∨i:/ ::::::::|八{\八 /// . /// 厶イ:|li::::/:: /
':. ∨ .:::::::::|li \|Τu / |│|l::::::: / 足がしびれた…
. '::. ::::::\|l |个::... ⊂ニ=ー ´ |厶|/::: /}
':::::.....:::::::::::八__|厶イ〕 ーr<,_____亡::7:: .:::/
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{ ヘ 丶 、`つ _ノ 、丶\ヽ\
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`ー'⌒´ `⌒ー'´
年内に終わらせることできなくてすまぬ…すまぬ…(´;ω;`)
みんな、来年もよろしくお願いしますだ
みんなあけましておめでとうだぜ。
2017年もよろしくなんだぜ。
それでは再開するぜ。
グギリ
ボキッ
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\\/ く/ / / ̄ ̄|、
\、) 〈/ .′ ト / | \
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/ / ノ~ ̄ ̄ ̄\|\_,,. イ __/八
| ト、 〃 / \.′ \
人 /ヽ|\jj ∧{, トヘ |\
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j___ し > | ̄ ̄| \ / ̄\{
厂 ̄ / ∨/ ∧ /
/ 〈/ \′ \ /
桃『西住隊長!それは本当なのか?!』
みほ「はい…上手くいくかはどうかわかりませんけど、一つだけ」
典子『可能性があるならやってみるだけやってみましょうよ!!』
そど子『私も磯辺さんに同意です!あんなフラフラ飛んでるのがいつまでもいたら気が揉めるわ!』
カエサル『して、どのように?』
みほ「そうですね。まず全車両、私達がいるAA地点に集合してください」
全員『了解!』
【AA地点】
みほ(残り時間は50分)
みほ「みんな集まりましたね」
典子「それで、無人機を落とす方法というのは?!」
みほ「はい、これからあの無人機を落とす作戦について説明します」
全員「…」ドキドキ
みほ「簡単に言うと、」
みほ「戦車の弾をあの無人機に命中させます」
全員「?!」
ねこにゃー「西住さん…?」
そど子「さっき対空戦車の弾が届かないって言ってたじゃない!」
杏「そりゃ面白そうだねぇ」モグモグ
みほ「違うんです。対空戦車ではなく"戦車で"です」
梓「そんなこと出来るんですか?!」
典子「対空戦車で当てるよりもっと根性いると思います!」
ナカジマ「さすがに戦車でアレ狙うような改造はしてないよ?」
エルヴィン「…」チラッ
ナカジマ「えっ…なに?」ザッ..
沙織「ちょっとこんな時にケンカはやめ……??」
エルヴィン「なるほど…"コレか"」
ナカジマ・沙織・その他全員「???」
みほ「はい」
みほ「ポルシェティーガーを即席の対空戦車として運用します」
全員「!!?」
優花里「いくら何でもそれは………あ!」
エルヴィン「思い出したかグデーリアン」ニヤリ
優花里「ええ…お恥ずかしながら」エヘヘ
桃「こらっ!お前たちだけで納得してないで説明しろっ!」
エルヴィン「説明して差し上げるのだグデーリアン」フフッ
優花里「あはは。たまにはエルヴィン殿からご説明を~」エヘヘ
みほ「………」
エルヴィン「! ぽっ、ポルシェティーガーの主砲はだな、56口径8.8cmKwK36ってのは知ってるよなみんなっ?!」オロオロ
優花里「ち、ティーガーIと同じ戦車砲ですっ!」ビクビク
ナカジマ「うん、それは知ってるよ」
ホシノ「自慢じゃないけど、大洗の戦車の中では一番強力なヤツだ」
スズキ「ちゃんと当たれば大抵の戦車は倒せるよね」
あけび「羨ましい……」
忍「砲だけ交換してほしいかも…」
妙子「それちゃんと走れるのかな…」
典子「そこは根性だ」
エルヴィン「ならば、その8.8cm戦車砲が"高射砲"を車載用に改設計されたものというのは知っているか?」
ツチヤ「えっ、そうなの?」
優花里「連合軍を恐れさせた"アハトアハト"の異名をもつ『8.8cm Flak18/36/37』が元となります」
梓「つまり、ポルシェティーガーをその8.8cmの高射砲みたいに扱って無人機を落とせということですね?!」
優花里・エルヴィン「それだぁっ!!!」ビシッ
梓(おお…なんかちょっと爽快)
みほ「今のお二人の解説でこれからやろうとする事は大体わかったかと思います」
エルヴィン「ただ、いくら元が高射砲だからといって、高射砲と戦車砲では幾分と事情が違うぞ」
みほ「ええ」
優花里「恐縮ですが、それについてはエルヴィン殿の言う通りです」
優花里「まず戦車砲は高射砲のような仰角がつけられません」
優花里「つぎに、戦車砲で使う徹甲弾の命中はまず無理でしょうし、軟目標や陣地破壊で使われているような榴弾も命中しないと炸裂しません」
エルヴィン「高射砲の弾は予め決めておいた時間で作動する『時限信管』がついたモノを使うからな」
優花里「そして何より高射砲部隊が使うような着弾観測装置もありません」
みほ「それらについても順を追って説明します」
みほ「まず仰角の問題ですが、確かにポルシェティーガー、もとい戦車は高射砲のような仰角を取ることはできません」
みほ「なので砲ではなく車体を傾けることで仰角を稼ぎます」
ツチヤ「一体どうやって?」
みほ「対戦車壕のように地面を掘り下げて、そこにポルシェティーガーを落とし込みます」
ホシノ「なかなかえげつないな…」
みほ「もちろん作戦終了後は皆で牽引して引き上げるつもりなので、その点は安心してください」
みほ「つぎに着弾の観測ですが、これはコンピュータの代わりに麻子さんにお願いします」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ「………麻子さん」
麻子「どうした?西住さん」
みほ「航空機の飛行速度や高度を割り出すための計算って出来ますか?」
麻子「…出来ないこともないと思うが、どうして?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
麻子「…さっきのアレはそういうことだったのか」
みほ「はい。麻子さんには無人機の飛行高度、飛行速度から砲弾が無人機まで到達する時間を算出してもらいます」
そど子「冷泉さんそんな事できるの!?」
麻子「出来んこともないはずだ」
そど子「一体どうやって!」
麻子「やれば出来る」
※もちろん筆者はそんな算出方法知りません。
優花里「でも…最後の砲弾については…」
ナカジマ「砲弾なら一応あるけど…」
優花里「えっ!?」
ツチヤ「会長が入れといてって言ったから一応持って来たんだよね」
優花里「会長!これは一体…??」
杏「まぁまぁ。念のためってことでねぇー」
オー!!
サスガデス カイチョウ!!
ヤッパタヨリニナルネ!
アイー
【回想 自動車部】
ナカジマ「…よし。38(t)もようやく終わった」
ツチヤ「一度作ったものを戻すのはちょっと残念だけどねぇ」
スズキ「仕方ないよ。ルールだもん」
ホシノ「おーい弁当買ってきたぞ」
ツチヤ「今日は何買ってきたの?」
ホシノ「のり弁」
ツチヤ「またかよ…」
ホシノ「仕方ないだろ予算カッツカツなんだから」
ツチヤ「カツ食べたいよぉ…」
ナカジマ「まぁこれでも回ってる方だと思うよ」
ホシノ「回ってるってか回してるんだよ。無理させて」
スズキ「ははは…」
ナカジマ「まぁ、学園艦中に放置された戦車を回収して、乗り回せるようにしろって指示に比べればコレくらいマシだよ」モグモグ
ツチヤ「IV号や38(t)、三式はまだいいさ。他の戦車なんて酷いったらありゃしない」パリッ
ツチヤ「M3はウサギ小屋を解体しないと出せなかったし、八九式に至ってはバラして何度もクレーンで崖から回収して組み立てて…」
ホシノ「アレは酷かったわ」
ナカジマ「で、それらを1日でやれっていうんだからねぇ。ブラック企業も真っ青だよ」
ホシノ「なんでまたあんな所に放置したのか、前に乗ってた人に小一時間問い詰めたくなるね」
スズキ「それらはまだ良いよ。回収して多少整備すればいいだけなんだから」
スズキ「問題はB1や3突っしょ。川に沈んだままずっと放置されてたから」
ホシノ・ナカジマ・ツチヤ「あぁー…」
スズキ「放置するにせよせめて草むらとかに置いとけばいいものをねー」
ホシノ「水の中に沈んだまんまだから電装系やバッテリーもみんなパー」
ツチヤ「パーツのチェックもネジ1本単位でやらなきゃいけなかったもんね」
ナカジマ「寺田さんの気持ちが何となく分かるよ…」
ホシノ「正直あのスクラップを戻せたのが不思議だな」
スズキ「まぁウチらのポルシェも大概だけどね…」
ホシノ「ツチヤのセッティングは雑だからなぁ」
ツチヤ「いや!あれは走らせないとわかんなかったじゃない!」
ナカジマ「レオポンなのにライオン(ランオン)だったもんねー」
アハハハハハハハ!!!
杏「やぁやぁごっくろうさ~ん♪」
レオポン「げぇっ!!!?」
杏「…いや、さすがに満場一致で"げぇっ!!!?"はヘコむよキミたち」
ツチヤ「だって会うたびに無茶な要求するじゃないっすかぁ!」
杏「あん時ゃ廃校の危機に瀕してたからねぇ。コッチも必死だったよ」
ナカジマ「それで今回はどんなご用で?」
杏「うん、砲弾が届いたからね。渡しとこうと思って」
スズキ「砲弾?不備はなかったと思いますけど?」
杏「いんや、普段使う弾とはちょいと違うやつなんだ」
レオポン「?」
杏「君らレオポンが使う8.8cm砲弾なんだけど、入れておくだけ入れておいてよ」
杏「使わないならそれでもいいからさ」
ナカジマ「一体どんな弾なんです?」
杏「西住ちゃんから頼まれた砲弾だよ」
ツチヤ「隊長から?」
杏「うん、頼んだよ」
杏「校門前に置いといたからね~」
ツチヤ「え?倉庫まで持ってきてくれたんじゃ…?」
杏「あはは。なんか『時間外配達だ』って配達員さん怒って帰っちゃった」
スズキ「えっ…えっ?」
杏「んじゃそーゆーことで」ヒラヒラ
ナカジマ「」
スズキ「」
ホシノ「」
ツチヤ「」
ホシノ「やっぱ無茶な要求してンじゃねーか!!!」ガァァァァ
【そして再び試合会場 AA地点】
全員「………」
桃「あの…会長……」
あや「一瞬すごいって思ったけど、会長ただ注文しただけですよね…」
妙子「特大サーブ打とうとしたら思いっきり空振ったような気分です…」
杏「その持ち上げて落とすみたいなのやめようよ。結構来るから…」
ツチヤ「あのあと雨降り出してさぁ、ビショ濡れになりながら砲弾運んだんだよねぇ」
ホシノ「さすが"雨のナカジマ"だなぁって笑うしかなかったなぁ。笑えなかったけど」
スズキ「しかも砲弾が入ってる木箱も開封するのに時間かかったし」
ナカジマ「おまけに砲弾そのものが重いから足腰がねぇ」
全員「」ジトー
杏「…その…悪かったよ。ホント」スマンガナ
ナカジマ「それで隊長、これは一体どんな砲弾なのかな?」
みほ「はい。先程少し話にも出てきたように、予め設定した秒数で作動する信管を搭載した榴弾です」
みほ「つまり無人機が飛行している高度まで到達したら炸裂するよう設定することで、破片によって無人機を攻撃・撃破するのが目的です」
全員「おおおお!!」
みほ「ただ、無人機に近い場所で作動させないと撃墜には至りません」
みほ「なので、砲弾の到達秒数を出すために無人機の高度や速度をより正確に算出すること、無人機のそばに砲弾を飛ばすことがカギとなります」
麻子(なかなか責任重大だな…)
みほ「なのでまずこれから行うことは、ポルシェティーガーを傾けるための対戦車壕を作ります」
みほ「あんこうチーム・レオポンさんチーム以外の皆さんには、車載のスコップを用意して穴を掘っていただきます」
みほ「塹壕が完成次第、ポルシェティーガーはただちに塹壕に入り射撃準備をします」
みほ「そして攻撃・撃墜を確認したらすぐにポルシェティーガーを引っ張り出し、行動を再開するサンダース車輌を迎え撃ちます!」
みほ「作戦については以上です」
みほ「それではこれよりディグダグ作戦の開始です!!」
全員「うおおおおおお!!!」
ガシガシガシ ガシガシガシ
「根性で掘り進めぇぇぇぇぇぇぇ!!」ホル
「連続スマッシュだぁぁぁぁぁぁぁ!!」モットホル
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」サラニホル
ザクッ ザクッ ザクッ
「掘って、破裂させて、引っ張る…確かにディグダグだっちゃ」
「西住隊長ってレトロゲーム好きもも?」
「アーケード好きかもしれないにゃー」
ザッ ザッ ザッ ザッ
「きゃぁぁぁ!!ミミズ出てきたぁ!!」
「えぇぇぇぇぇぇ!!!?」
「スコップで土ごとすくってポイしようよ!」
「桂利奈ちゃん任せた!」
「あぃぃぃぃ!?」
「………」トントン
「どうしたの紗希ちゃん?」
「………むかで」ビローン
「「「「「ぎゃぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」
ザクッ グサッ ザシュ ズガッ
「まるでプラトーンのような陣地構築だな」
「穴掘りといえば硫黄島からの手紙ぜよ」
「それならランボー2 怒りの脱出の序盤だろう」
「いいや大脱走だ!」
「「「「それだぁ!!!」」」
サクサク モグモグ サクサク モグモグ
「いやぁ~泥ンコプロレス大会以来だねぇ」
「…あれはもう当分やりたくないです…」
「プフッ…桃ちゃんったら…フフ…会長にフェイスロック食らって…アハッ…たもんねー」
「ほぉー。柚子はあのフェイスロックの怖さを知らんようだな」ギチギチ
「ちょっと!桃ちゃんやめ・・・やめて痛い痛いやめ…ぐぐぐ…!」ジタバタ
「時間ないんだから早く穴掘りしろよお前ら…」
みほ(残り時間はあと30分…)
みほ「レオポンさんチームには大変申し訳無いんですが、搭乗員の交代をお願いしたいのです」
ナカジマ「なーんだそんなことか」ハハハ
みほ「えっ?」
ナカジマ「会長みたいに無茶なこと言うのかと思って少し身構えたけど、それくらいならお安い御用だよ」
ツチヤ「会長だったら『今すぐポルシェティーガーを対空戦車にカスタマイズしろ』とか言いかねないもんねー」
スズキ「会長なら言うだろなぁー」
ホシノ「うんうん」
みほ「うーん確かに言いそう…」ハハ
杏(失礼な!あたしだってこの状況でそんなこと言わんよ!)サクサクホリホリ
ホシノ「それで、ウチらはどうすれば良いの?」
みほ「簡単に説明すると、操縦手のツチヤさん以外はあんこうのクーゲルブリッツへ移動をお願いします」
ツチヤ「えっ?私は残るの?」
みほ「はい。操縦をお願います」
ナカジマ「確かにポルシェは他の人にはなかなか扱えないもんね」
みほ「そしてあんこうチームからポルシェティーガーへ移動するメンバーは華さん、優花里さん、麻子さんです」
みほ「ポルシェティーガーでのそれぞれの担当は、
・操縦手…‥…ツチヤさん
・砲 手………華さん
・装填手………優花里さん
・観測手………麻子さん
…といった形になります」
ナカジマ「ポルシェティーガーの装填手ならスズキの方が適任じゃないのかな?」
スズキ「8.8cm砲弾は重たいよー?」ハハハ
みほ「本来ならそうしたいのですが、今回は時限信管を設定する上で、砲弾に詳しい優花里さんを抜擢しました」
ナカジマ「あぁーなるほどね!」
優花里「砲弾については任せてください!」ビシッ
みほ「そして、無人機の高度・位置の算出、そこから砲弾の到達時間の割り出しは麻子さんにお願いします」
麻子「こんなのは初めてだが、やってみるだけやってみよう」
みほ「そしてこれら全ての条件が揃ったとき、華さんに射撃をお願いします」
華「承知いたしました」
みほ「作戦は以上です。質問はありますか」
全員「…」
「はい!質問!」
みほ「はい」
沙織「あたしは何をすればいいの?」
みほ「あっ!…忘れてました」
沙織「も~っ!ひどいよみぽりん!」プクー
アハハハハハハハ!!
みほ「では沙織さんもクーゲルブリッツの方で今までと同じように通信手として作戦終了後の指示伝達をお願いできるかな?」
沙織「おっけーい」
みほ「さて、一通り説明をしましたので私達も穴を掘るのを手伝います」
優花里「了解ですぅ!」つ[スコップ]
沙織「あれ。そんなスコップ戦車についてたっけ?」
優花里「いえ、これは私の自前品ですよ?」
麻子「普段からそんなの持ち歩いてるのか…?」
優花里「ええ。ドイツ軍御用達のスコップです!」
優花里「これさえあれば塹壕構築だけでなく白兵戦で武器として使うことも出来ます!」
麻子「さすがに戦車道で白兵戦は勘弁だけどな」
エルヴィン「ふはははは!甘いなグデーリアン!」
優花里「なんですっt…あああーっ!!?」
エルヴィン「ドイツ軍のスコップと言ったらクラップ・シュパーテンだろう!」ジャーン
優花里「おおおおおおお!!高コスト故に生産中止となった折りたたみ式スコップではありませんか!!よく手に入れましたね!!」キラキラ
エルヴィン「はっはっは!コイツはなかなか高かったぞ!それだけに良い仕事をしてくれる!!」
優花里「羨ましいですぅ~!90度に固定すれば鍬みたいな使い方も出来るんですよねぇ!!」キラキラ
エルヴィン「そうとも!塹壕掘りには欠かせないアイテムさ!」
優花里「どこで手に入れたんですかぁ!?」キラキラ
エルヴィン「オークションで払い下げ品を見つけたんだ。もう1つ出品されてたから今がチャンスだぞ!」
優花里「いやっほおおおおおい!!ちょっと入札してき…」
みほ「…」ニコニコ
優花里「あっ、ごご、ごめんなさいっ!塹壕掘り終えてから入札しますーっ!!」ザッザッザッザッ
エルヴィン「も、申し訳ない隊長!すぐに取り掛かるっ!!」ガサッガサッガサッ
みほ「あ、うん…」
みほ("みんなと仲良く楽しく戦車道出来て良かったなぁ~"って思ってただけなのに……)ズーン
沙織(みぽりんの笑顔はたまにものすごく怖い時があるんだよね…)
【残り25分】
梓「西住隊長!ポルシェ埋められるくらいの穴が出来ました!」
典子「結構掘りましたよっ!」
みほ「皆さん、本当にお疲れ様でした」ペコリ
みほ「ではポルシェティーガーを塹壕へ移動させますので、先程のメンバーは乗ってください」
麻子「わかった」
優花里「行きましょう!」
華「いよいよですね」
みほ「ツチヤさん、準備できたら運転お願いします」
ツチヤ『おっけーい!』
ブロロロロロロ...
みほ「オーライ オーライ そのまま真っすぐ下がってください!」
ブロロロロロロロロ
ツチヤ『いよぉーし…ゆっくり…ゆっくりだぞぉ…』
ツチヤ『にしてもこんな車庫入れは初めてだなぁ~』
ツチヤ『…って、うぉっ!?なんかすんごい傾いてる?!』
みほ「はい。その角度で対空射撃を行います」
ツチヤ『うぇぇ!隊長たちこんな角度でクーゲルブリッツ乗ってたの?!』
優花里『慣れればどうってことありませんよー!』
華『空を見上げての射撃は開放感がありますわよ』ウフフ
ツチヤ『えぇーマジかぁ…』
麻子『まぁツチヤさんのそれが普通の反応だ』
【残り20分 ポルシェティーガー】
みほ『よし…ポルシェティーガーの準備も出来たので、ツチヤさん、華さん、優花里さん、麻子さん、あとはお願いします』
麻子「わかった」
華「かしこまりました」
優花里「了解ですっ!」
ツチヤ「りょーかい!」
麻子「この角度でずっと待機はさすがにしんどいな…」
優花里「私や五十鈴殿は射撃をしてたのでこの角度は慣れっこですが、そうでない方にはちょっとキツいかもですねぇ」
麻子「そうだな。この体勢はなかなか辛い。私もなるべく早く戻せるよう善処する」
ツチヤ「お願いするよ…結構背中がつらいんだコレ…」
華「ちょうどこの位置なら無人機も確認できますね」
麻子「その無人機なんだが、先程から様子を見ていた限り、特に高度を上げたり下げたりはしていないようだ」
優花里「と言いますと?」
麻子「輪を描くようにここら一帯をずっとグルグル旋回している感じだな」
華「つまり、私達の様子を伺っていると?」
麻子「恐らくはな」
ツチヤ「なんかずっと監視されている感じで気味が悪いね…」
麻子「ああ。…だが高度が一定ならばその分狙いやすくもなる」
みほ『皆さん、聞こえますか?』
麻子「聞こえているぞ西住さん」
みほ『タイムリミットまであと17分です!』
Pティーガー搭乗メンバー「!」
みほ『こちらは作戦終了後すぐ動けるよう牽引の準備が終わりました』
ツチヤ「了解…!」
みほ『これより麻子さんは無人機の高度・速度から砲弾到達予想時間を算出』
麻子「おう」
みほ『優花里さんは算出結果に従い、砲弾の時限信管を設定し装填』
優花里「了解でありますっ!」
みほ『最後に華さんは目標・無人機に砲撃を行ってください』
華「わかりました」
みほ『目標撃破後は速やかに引き上げます。坂道発進になりますが、お願いします』
ツチヤ「おっけーい…!」
ナカジマ『あ、ツチヤ、この間みたいにベタ踏みはやめたほうがいいよ』
スズキ『すぐエンジン火ぃ吹くからねー』
ホシノ『ゆっくりでいいよ~』
ツチヤ「だぁぁ!わぁってるってーの!!」
レオポン(ツチヤ除く)『あっはははははは!』
ツチヤ「アイツら好き放題言いやがってぇぇぇぇ!!!」
麻子「それでは秋山さん、まずは砲弾について教えて欲しい」
優花里「はい。使用弾薬は----で重量--kg、初速は秒速---mです」
麻子「ありがとう。次にB-29の速度についてだが、わかるだろうか?」
優花里「B-29は最大速度が時速576km、巡航速度が時速350kmとのことです」
麻子「ふむ…。B-29の全長は?」
優花里「全長が30.2mで幅43.1mです」
麻子「あと、今日の気温と湿度出来ればお願いしたい」
優花里「えーとですね………気温が--度、湿度は--%ですね」ケータイポチポチ
麻子「………ふむ」
麻子「秋山さん、まずは--秒後に信管が作動するように設定してほしい」
麻子「おそらく速度は---km/h、高度が-,---mだろう」
優花里「了解です…あ」
麻子「どうした?」
優花里「ヒューズセッターが…」
麻子「ヒューズセッター?」
優花里「信管を設定するための工具です…あれがないと信管が…」
ツチヤ「お、その工具なら砲弾ラック近くの雑具入れに置いてあるよー」
優花里「本当ですか?!」
ツチヤ「うん。砲弾と一緒に入ってたからねー」
ガサゴソ…
優花里「あ!見つかりました!これですっ!!……ではさっそく」キリキリ
※余談ですが、アハトアハトでお馴染みの高射砲『8.8cm Flak』と、ティーガーIなどの戦車砲『56口径8.8cm KwK36』は発火方式が異なるため砲弾の互換性は無いそうです。
※その他構造がおかしい・設定がおかしい等ありますが、そこは各自脳内補完でお願いします。
優花里「いよいしょー!」ガコン
優花里「装填完了です」フゥ
麻子「こちら冷泉。射撃準備が整った」
みほ『了解です。射撃は麻子さん或いは華さんのどちらかの判断でお願いします』
みほ『残り時間はあと10分!お願いします!』
麻子「了解」
麻子「先程言ったとおり、速度は---km/h、高度は-,---mほどだ。偏差射撃については五十鈴さんに任せる」
麻子「砲撃は五十鈴さんの判断でお願いする」
華「かしこまりました」ウィーン
華「………」クイックイッ
華「………いきます」カチッ
ズガァァァァァァァァァァァァン!!!!
麻子「…」
ツチヤ「…」
優花里「…」
華「…申し訳ありません…」
麻子「気にしないでくれ。1発で命中させろと言う方がおかしいのだから」
優花里「気を落とさず次、行きましょう!」
華「はい…!」
麻子(確かにポルシェティーガーなら砲弾は届きそうだ)
麻子(問題は正確に無人機へ砲弾を近づけられるか…)
麻子(それにしてもこちらが攻撃したにもかかわらず、無人機の航路に変化が無い…)
麻子(サンダースは無人機から地上の監視はしていないのか?)
麻子「高度・速度ともに変化なし。先ほどと同じ設定で行こう」
優花里「了解です」キリキリ…ガコン
華「………」
優花里「装填完了!」
華「………」
麻子「五十鈴さん、準備オッケーだ」
華「………」
ウィーン
麻子「………」
キュラキュラ…
華「…………………」
キュラキュラ
華「…………………」
麻子(あと5分…まだか五十鈴さん…!)
華「……………………………っ」
カチッ
ズガァァァァァァァァァァァァン!!!
華「………………ハァ……」ガクッ
麻子「くっ…ダメだったか……」
華「………疲れましたわね」ニコッ
麻子「え…?」
アナウンス『サンダース大付属高校 B-29・飛行不能!』
麻子「おおお!!」
優花里「やりました!!やりましたよ五十鈴殿っ!!!」
ツチヤ「すげぇ!本当に当てちゃったよ!!」
麻子「ははは……すごい…!!」ボーゼン
優花里「西住殿ぉ!やりま
西住『至急迎撃態勢に入ってください!』
優花里「っ!」
麻子「気を抜くのはまだ早い。迎撃と同時にサンダースが行動を再開する」
ツチヤ「了解!! 動くよ!つかまって!」ブルルルルルル
みほ『これよりサンダース戦車の迎撃を行…!!! みんなつかま
ガシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!
ザザーッ
麻子「西住さん?…おい!どうした?!」
アナウンス『大洗女子チーム IV号対空戦車クーゲルブリッツ 走行不能』
麻子「西住さん!!!」
エルヴィン『隊長、一体何があった!!?』
ねこにゃー『こ、こちらアリクイさんチーム…西住さんたちの戦車にB-29の主翼が…』
梓『ええっ!?さっき撃ち落とした無人機が落ちてきたんですか?!』
優花里「砕けたB-29の一部が落ちてきたみたいですね…」
華「そんな…!」
典子『それより炎上してる!早く消化しないと!!』
麻子「西住さん!沙織!聞こえるか!?応答してくれ!!!」
ザザッ
みほ『こちら…ザザッ…西住です…ザッ…全員無事です』
麻子「良かった…全員無事で…」ホッ
優花里「西住殿…」グスッ
みほ『すみません…ザッ…あとはお願いします…』
みほ『…冷泉さん』
麻子「えっ?」
ザーーーッ
【観客席】
カチューシャ「うそ………」
ノンナ「………неимоверный」
カチューシャ「あの子たちB-29落としちゃったわよ!一体どうやって!!」
ノンナ「ここからでは遠すぎてよくわかりません」
ノンナ「…が、B-29は爆発に巻き込まれて機体を損傷した結果、飛行不能になったようです」
カチューシャ「何よそれ…」
ノンナ「爆発…………っ!!」
カチューシャ「クーゲルブリッツの攻撃じゃ爆発なんてしないでしょうし、そもそも攻撃は届かないわよ」
カチューシャ「戦車の砲弾で狙うなら話は別だけど」
ノンナ「それです」
カチューシャ「はぁ?」
ノンナ「彼女たちはまさに戦車の砲弾でB-29を撃墜したのです………」
カチューシャ「はぁーっ?!そんなこと出来るわけないじゃない!」
ノンナ「えぇ…普通だったらまず無理でしょう…」
カチューシャ「だったらどうしてそんなこと言うのよ…!」
ノンナ「だから驚いているのです…」
カチューシャ「っ…!」
カチューシャ「………もし、実現できるとしたら…一体誰が」
ノンナ「私が知る限り、恐らく五十鈴さんです」
カチューシャ「五十鈴…ミホーシャのところの砲手だった子かしら?」
ノンナ「はい」
カチューシャ「そう言われてみると納得できちゃうのが不思議ね…」
ノンナ「………
」
ノンナ(私のライバルはナオミさんだけだと思ってた…思い込んでいた)
ノンナ(しかし、今ではそれ以上に強敵が…)
ノンナ(私は…この2人に勝てるのでしょうか………)カタカタ
カチューシャ「ノンナ…?」
ノンナ「…………забавно…!」カタカタ
カチューシャ「ノンナ!」
ノンナ「! どうしましたか同志カチューシャ?」
カチューシャ「トイレなら我慢しないで早く行きなさい…」
ノンナ「…いえ、武者震いです。トイレを我慢してるわけではありません」
【サンダース側】
アリサ『ひぇぇぇぇ!落としちゃったよB-29を!!』
ナオミ『Unbelievable......』
ケイ「ほらアナタたち!行くわよ!!」
アリサ『行くってどこにですかぁ?!』
ケイ「忘れたの?無人機が撃墜されたと同時に行動を再開するって言ったじゃない」
アリサ『あ…そうでしたね!』
ケイ「ここからが本番よ!Go Ahead!!」
アリサ『隊長…どうして…』
ケイ「ん?」
アリサ『どうしてB-29が撃墜されたというのにそんなに冷静でいられるんですかぁ!!』
ケイ「んー、だってさぁ」
ケイ「相手にはミホや優秀な選手がいっぱいいるんだよ?」
アリサ『っ!!』
ケイ「だから私としては"落としちゃうよね"って感じよ?」
アリサ『そんな…!』
ケイ「相手を過小評価しちゃダメよ!」
アリサ『そ、そうですけど!』
ケイ「ホラホラ!わかったなら出撃準備する!」
アリサ『あ、アイアイサー!』
ナオミ『………おい、アリサ』
アリサ『ひぃっ!?な、何よぉ…』ガタガタ
ナオミ『"彼女"は…どれくらいの高度を飛んでた?』
アリサ『こ、高度ぉ!?大体9,200mくらいだったと思うわよっ!』
ナオミ『そうか………』
アリサ『…ナオミ?』
ナオミ『さすがだハナ…素晴らしい…!』
アリサ『ナオミ…!?』
ナオミ『紛れもなく彼女はプロだ。それも超S級の!』
ケイ「アナタがそこまで言うなんて相当ね!」
ナオミ『あぁ…砲手としてのプライドを引き裂かれた悔しさと、超人的な狙撃を見ることができた喜びで頭がどうかしてしまいそうだ!』
ケイ「わ~お!最高にExcitingしてるわねー!」
ナオミ『そんな…大丈夫なの?』
ナオミ『ただ一つ言えることは……』
ナオミ『この作戦を立案して本当に良かった………!!!』
ケイ「ふふっ。満足したようね!」
ナオミ『あぁ。もはや勝敗なんてどうでもいい。早くハナに会いたい…!』
ケイ「あっははは!彼女に首ったけねー!それじゃぁ、行っくわよー!!」
「「「「「Yeah!!!」」」」」
アナウンス『大洗女子チーム IV号対空戦車クーゲルブリッツ 走行不能』
ケイ「…あれ?」
さてさて、一旦ここでまた区切ります。
【大洗女子 Pティーガー】
麻子(マズい…。無人機撃破の代償に西住さんたちを失ったのはあまりに痛すぎる…)
麻子(それに…)
麻子(何故西住さんは最後に私に『お願いします』と言ったのだ?!)
典子『冷泉さん!私達はどうしましょう?』
梓『もうまもなくサンダース車両が到達するかと思います!』
麻子「つ、つまり私が西住さんの代役を務めろと?!」
杏『急だけどこういうこともあるからねぇ…』
そど子『悔しいけど命令違反は風紀を乱すから今はあなたに従うわ!』
カエサル『もちろん各車両でも個々の判断はする!だが司令塔は必要だ!頼む冷泉さん!!』
麻子(お、おのれB-29…とんでもない置き土産を…)カタカタ...
華「ふふ…心配はいりませんよ」
麻子「えっ?」
華「冷泉さんはあのB-29を落としたのですから」
麻子「い、いや、落としたのは五十鈴さんじゃないか」
華「冷泉さんの指揮がなければ無理でした」
麻子「し…しかし私は…」
華「もちろん、優花里さんもツチヤさんも、私だって、あれだけ困難な相手に打ち勝つだけの実力はありますわ」
華「でも、それらは冷泉さんの指揮からスタートしたものです」
華「ですから、心配は何もいりません」ニコ
優花里「五十鈴殿の仰る通りですよ冷泉殿!」
ツチヤ「私はチームは違うけどさ、全然やれる自身あるよ。冷泉さんのおかげだね」
麻子「そ、そうか…みんな頼むぞ…!」
優花里「はいっ!」
華「ええ!」
ツチヤ「りょーかい!」
麻子「こちら冷泉、西住さんに代わり、臨時の隊長をすることになった」
麻子「西住さんのようにはいかないが、やれる限りのことをやる。どうか皆、頼む」ペコッ
全車輌『了解!!』
そど子『上手くやりなさいよ!れま子!!』
麻子「ああ…やってみる。あとれま子はよせそど子」
麻子「おそらくサンダースは、先程のポルシェティーガーの砲撃で、こちらのおおよその位置は把握したと思う」
麻子「だから各車両はなるべくここから離れる形で散開して欲しい」
麻子「アヒルさんチーム、ウサギさんチームは先頭を走り、森林を抜ける一歩手前まで進み、偵察をお願いしたい」
麻子「無人機はもういない。残るは戦車だけだ…頑張ろう!」
全車輌『了解!!』
麻子「では、パンツァー・フォー!」
麻子「さて…」
麻子(ああは言ったものの、車長なんて初めてだ。どうしたものか…)
麻子(しかもよりによってポルシェティーガーはフラッグ車。私の采配ミス1つで即終了なんてことも十分あり得る……)
麻子(こんな胃に大穴が開きそうなことをずっとやってきたのか西住さんは…)
麻子(手腕もさることながら、責任能力も相当のものだ…)
ツチヤ「それで、どうしようか?」
麻子「あ…あぁ。我々はなるべく遮蔽物に隠れながら他の味方車両の後を付いていこう」
ツチヤ「あいよー!」ブロロロ
ズガァァァン
ズドォォォン
梓『こちらウサギさんチーム!先程のような一斉射撃をまた受けています!』
麻子「こちら隊長車。了解した!窪みや岩陰などを利用して砲弾の回避を優先してくれ」
梓『わかりまs ズガァァァァァン!!! ポシュッ!
アナウンス『大洗女子チーム M3リー 走行不能!』
麻子「っ!! ウサギさんチーム!ケガは無いか?!」
梓『なんとか全員無事です!すみませんが後はお願いしますっ…!』
麻子「了解した。無事で何よりだ…」
麻子「こちら隊長車。最前線のウサギさんチームより、サンダースによる一斉砲撃を確認とのこと」
麻子「距離はまだ近くないため、挑発行為の可能性もある。遮蔽物に隠れるなど流れ弾の回避をお願いする」
『了解しました!』
麻子(くそっ…後輩が私よりも前線で奮闘したというのに…)
杏『うっひゃー!こりゃぁまるで花火大会だよ!サンダースは弾を惜しまずに撃ってくるねぇ!』
麻子「どうやらそのようだな。だが、向こうと違いこちらは闇雲に撃つものなら居場所を教えることになると思う」
麻子「砲撃は慎重に、そして撃ったら速やかにその場を離れてくれ」
桃『了解。一番先頭の車両を狙ってみる』
ズドォォォン!
アナウンス『サンダース大学付属高校 M4シャーマン 走行不能!』
桃『やった…!』
杏『よくやったかーしまぁ』
柚子『すごい!桃ちゃんが当てた…!』
桃『よし次は…』
ズガァァァァァァァァン!!!
ポシュッ!
アナウンス『大洗女子 ヘッツァー走行不能!』
杏『…冷泉ちゃん、本っ当にゴメン!!』
麻子「構わない。それよりみんな無事か?」
杏『なんとかねー。しかし河嶋が当てるとはねぇ』
桃『できるのならば1輌いきたかった……』
柚子『冷泉さん、あとはお願いします…!』
麻子(今度は生徒会の御三方か…)
麻子(このままじゃ他のチームも餌食になってしまう)
優花里「冷泉殿!」
麻子「お、おう?」
優花里「今の2輌が撃破された時ですが、音からしてシャーマン・ファイアフライです」
華「!」
麻子「シャーマン・ファイアフライ…確か前回の大会のサンダース戦で撃たれた車輌だったな?」
優花里「ええ。搭載してる17ポンド砲はティーガーIの正面装甲すらも貫通できるほどです!」
優花里「ただ、強力な砲弾なため火薬量が多く、音や煙がすごいのと、装填速度に時間がかかるのが難点ですけどね」
麻子「なるほど。ならば…」
優花里「"当たらなければどうということはない"と言いたいところなのですが…」
麻子「っ…!」
華「ファイアフライの砲手はナオミさんです」
麻子「ナオミさん…先程交信してきた人か」
華「はい。サンダースが誇る名砲手です…!」
麻子「厄介な戦車に厄介な砲弾。厄介だ…!」
ズバァァァァァァァン!!
ズガァァァァァァァン!!!
華「!!!」
ツチヤ「っ!こっちまで飛んで来たか!」
麻子「外れたものの至近弾だ。危なかった…」フゥ...
優花里「今の音!やっぱりファイアフライですよっ!」
麻子「なっ…ということは…」
華「結構な距離からの攻撃ですが、偶然ではなく、確実に狙われています…!」
麻子「ぐっ…!」
麻子「ポルシェティーガーより冷泉。全車輌に聞いて欲しい」
麻子「先程よりサンダース側から断続的な攻撃を受けているが、その中でシャーマン・ファイアフライと思われる攻撃は、より正確に私達を狙ってきている」
麻子「だから常に射程内にいるものだと思い、地形や遮蔽物を最大限利用して回避に徹してくれ!」
全車輌『了解!』
麻子「…って、しまった!ここじゃロクな遮蔽物がない!」
麻子「迂闊だった…私の判断ミスだっ…!」
優花里「落ち着いてください。砲弾が飛んできた位置を確認し、車体を傾けることでダメージを軽減させられます」
麻子「わかった、やってみる…!」
麻子(砲弾は確かあちらから飛んできた。…となれば)
麻子「ツチヤさん。車体を左に30度傾けてほしい」
ツチヤ「あいよ任せて!」グイッ ガコン
麻子「くそっ…私としたことが…!」
優花里「大丈夫です!まだやられたわけじゃありません!」
麻子「っ…そうだな。済まない」
華「………」
ズガァァァァァァァァァァァァン!!!
ガコーーーーン!!!
麻子「うわぁっ!!」
優花里「大丈夫です!命中こそしましたが決定打にはなってません!!」
優花里「100mmの装甲と避弾経始が助けてくれましたよ!」
麻子「そ…そうか…!」
ツチヤ「大丈夫だよ!この子やったら頑丈だからさ!」
優花里「ですよねー!黒森峰戦ではお世話になりましたよ!」
華「………」
麻子「ど、どうした、五十鈴さん…?」
華「見えましたわ…」
麻子「見えた…?」
華「シャーマン・ファイアフライです」
麻子「!!」
優花里「徹甲弾、装填完了です!」
麻子「遠方に戦車がたくさんいるのは私にも確認できた」
麻子「だが、ファイアフライがどこにいるかまではわからない…」
優花里「ファイアフライは他のM4A1シャーマンよりも砲身が長いヤツです!」
麻子「長いやつ?ここからだとどれも同じに見えるぞ…?」
優花里「あ…ひょっとしたら砲身に迷彩塗装してるのかもしれないです!」
麻子「迷彩塗装?」
優花里「ええ。ファイアフライはティーガーを撃破できる数少ない戦車だけに、ドイツにとって要注意戦車だったわけですよ」
優花里「そのため真っ先に狙われるから、砲身の下半分にカウンターシェイドという迷彩塗装を施して背景と同化することで砲身が短く見えるように偽装したのです」
麻子「な、なるほど…!」
華「ご安心ください。私にはもう見えてます。距離は2,200mほどでしょう…!」キュラキュラ…
優花里「ティーガーの砲弾Pzgr40は射程2000mで110mmの装甲板を貫通すると言われています。これならいけるかもしれません!」
麻子「なるほど。五十鈴さんの方は行けそうか?」
華「10,000mの後だとすごく近く感じますね」
優花里「さすがです…!」
麻子「隊長なのにこんな体たらくで申し訳ない…。五十鈴さん、砲撃を頼む!」
華「承知いたしました…!」
麻子(おそらくラストチャンスだ…ここで外せば終わる!)
ズガァァァァァァァァァァァァン
シュポッ!
アナウンス『サンダース大付属 シャーマン・ファイアフライ 走行不能!』
優花里「いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉう!!!」
麻子「やった…!」
ツチヤ「おーさっすがぁ!」
華「いえ、まだです!!」
麻子「っ!」
華「目標、フラッグ車」
麻子(確かにフラッグ車の旗が見える。…だが、その前に複数の戦車が護衛でついている…いけるのか…?)
ガコン
優花里「次弾装填完了!」
華「………」
カチッ
ズガァァァァァン
シュポッ!
アナウンス『サンダース大付属高校 M4A1シャーマン 走行不能!』
アナウンス『フラッグ車走行不能により、勝者・大洗女子学園!』
優花里「お、お見事です…五十鈴殿っ…!」
華「うふふ。やりました」ニコッ
麻子「………勝った…」
麻子「…勝った………勝った……!」ヘナヘナ
優花里「ええ!私たち勝ちましたよっ!!!」
華「ふふっ。麻子さんの采配のお陰ですわ」
麻子「そんな……私は何も………」
麻子「それどころか危うく窮地に追いやるところだった…」
華「そんなことはありません」
麻子「えっ…?」
華「この位置からでないとファイアフライとフラッグ車は狙えませんでしたわ」
麻子「そ…そうなの…か?」
華「ええ。遮蔽物に隠れながらだとどうしても攻撃範囲が狭まってしまいます」
華「マゴマゴしている間にほかの味方車両が撃たれていたかもしれません」
華「それにファイアフライもフラッグ車も他の車輌に隠れるような位置でした」
華「ですが、この位置からだといずれの車輌も狙える"隙間"がありました」
麻子「そうなのか…」
ツチヤ「そう考えると被害を最小限に押さえて、同時に危険車両と最重要目標を同時に倒すことに貢献したわけだよねー」
華「ええ。そうですわね」フフッ
優花里「西住殿の代役、しっかり果たせてましたよ冷泉殿!」
麻子「そ、そうか」ヘナッ
優花里「おぉっと!」ガシッ
麻子「す、すまん…体に力が…」
優花里「えへへ。お疲れ様です冷泉殿」
麻子「あ、あぁ…本当に疲れた。眠い」ウトウト
「皆さぁーーーん!お疲れ様でしたーー!!」
優花里「お、西住殿ですよ! おーーーーい!!」ヒラヒラ
みほ「麻子さん!本当にありがとうございましたっ…!」フカブカ
麻子「いや、私は皆に助けられた側だ。例を言うべきは私のほうだ」
麻子「秋山さん、ツチヤさん、そして五十鈴さん、本当にありがとう」
華「ふふふ」
優花里「えへへー冷泉殿にもお礼言われちゃいました~!」ワシャワシャ
ツチヤ「普段と違うメンツもなんだか新鮮だったよ!」
ナカジマ「ウチのツチヤがご迷惑おかけしてなかったかな?」
麻子「とんでもない。むしろ助けられた方だ」
スズキ「ならいいけど、ツチヤ一旦スイッチ入ると暴走すっからねー」
麻子「どちらかというと暴走しかけたのは私の方だった」
ホシノ「エンジンよりも熱しやすいもんなーツチヤ」
ツチヤ「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
ナカジマ「うわっ!オーバーヒートだ!!」
ホシノ「こりゃいかん!熱暴走してる!」
スズキ「またレオポンなのにライオンか!」
「こんの野郎ォォォォォォ!!!」ガァァァァァ
ホシノ「うわっ!暴走車両がコッチ突っ込んでくるぞー!」アハハハ
スズキ「逃げるしかないっしょー!」スタコラサッサ
ナカジマ「戦略的撤退ー!」ハハハハ
ツチヤ「お前らなんか嫌いだーっ!私ゃ明日からあんこうチームの操縦手やるっ!!」ダダダダ
麻子「まて、それじゃ私が困る…!」
ワッハハハハハハッハッハ!!!
優花里「自動車部の皆さんもなかなか個性的ですねぇ~」
華「あらあら。私達も負けてませんわ」
麻子「張り合うところなのか…それ?」
みほ「麻子さん」
麻子「ん?」
みほ「麻子さんがいなかったらこの試合は負けてたと思う。だから…」
みほ「本当に、ありがとう…!」
麻子(これが屈託のない笑顔ってやつだな。なかなか良いものだ)
優花里(羨ましいですぅ冷泉殿ぉ…)
麻子「まぁ…その、西住さんと比べると全然だが、勝てて今ではホッとしている」
麻子「ただ…」
みほ「?」
麻子「西住さんはあんな心臓に悪い事を今までやって来たんだなぁ…と思った」
みほ「えへへ。私は黒森峰の時からの事もあったし、大洗の皆は良い人ばかりだから、それで助けられてたかな」
麻子「なるほど…。ただこんな心臓に悪いのは当分カンベンだ」
麻子「だからこれからは操縦手として西住さんが倒れないよう全力を尽くそう」
みほ「えー。また私が倒れたらお願いしようと思ってたのに…」ショボン
麻子「なっ!か、勘弁してくれ…。あのような役はおしゃべりな沙織の方が向いている」
みほ「そういえば沙織さんは…?」
華「沙織さんでしたらあちらにいますよ」
沙織「いーい?試合中は周囲の状況確認や報告することに専念する!」
沙織「浮気性なオンナは男運さがるんだからねっ!!」
優季「はーい沙織先輩!質問!」
沙織「なーに優季ちゃん?」
優季「沙織先輩は浮気性じゃないのにどうして男運悪いんですかぁ?」
沙織「男運が悪いんじゃない!!男がいないだけッ!!!」
紗希「………」ツンツン
沙織「ん?どうしたの紗希ちゃん?」
紗希「……………むかで」ビローン
沙織「いっやぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
あゆみ「紗希ちゃんその子まだ持ってたの!!?」
桂利奈「沙織先輩もムカデ苦手なんだぁ」
梓「いや、誰だって苦手だと思うよ…」
麻子「…いじられキャラだな」
優花里「わりかし性に合っているような気もしますけどね」
みほ「あははは」
華「しっかり先輩してますわね」ウフフ
「ミッホーーー!」
みほ「あ…ケイさん!」
ケイ「ん~~~Congratulations!!!」ムギュゥゥゥ
みほ「んごがっがあが…!」ミシミシ
麻子「なんかすごい音がしてるぞ…」
華「あらあらうふふっ」
ケイ「やっぱミホすごいよー!Strong womanだよっ!」
みほ「えへへ。そうですか?」
ケイ「そりゃもう!!なんてったって戦車で無人機落としちゃうんだもん!最っ高にCoolよ!!!」
みほ「でも、実際に落としたのは私ではなく華さんや、麻子さん、優花里さん達なんですよ」
ケイ「へ?そうなの?」
みほ「ええ。種明かしをすると、麻子さんが無人機の速度と高度を算出して、砲弾が到達するまでの時間を割り出して」
ケイ「ほほう?」
みほ「優花里さんが砲弾の信管をセットして」
ケイ「ふむふむ」
みほ「そして最後に華さんが狙い撃つ」
ケイ「…」
みほ「…といった感じですね」
ケイ「ちなみにそれを提案したのは」
みほ「…一応私です」エヘヘ
ケイ「やっぱミホ凄いじゃない~!!」ムギュゥゥゥ
みほ「んごがっがあが…」ミシミシグキッ
ケイ「…あれ?でも信管ってセットするだけで準備オッケーなんじゃないの?」
みほ「え?」
ケイ「え?」
みほ「???」
ケイ「ホラ、高周波発振機から出る電波の反射を利用したやつがあるでしょう?」
ケイ「あれなら砲弾が無人機に接近するだけで自動的に作動してくれるじゃない」
みほ「そんなのあるんですか?」
ケイ「ええっ?!」
優花里「それはアメリカが開発した"近接信管"ですよね」
ケイ「そうそう!それよ!」
みほ「あっ、私達が使ってたのはゼンマイで作動する時限式のものなんですよ」
ケイ「Whats'?!!!」
みほ「なので、無人機の速度や距離から砲弾到達秒数を出して、それで信管を設定する…という流れだったんです」
ケイ「…」
みほ「ですから、本当にすごいのは、やっぱり皆さんなんですよね」ニコッ
ケイ「Greeeeat!!!!!」ムギュウ!!!!!!
みほ「んごがっがあがごげっんががっ…ぐ、ぐるじ…しぬぅ…」パンパン
ケイ「ミホも大洗も最高すぎる!!こんなExcitingな試合ホント初めて!!戦車道やっててホント良かったわっ!!」ギュウウウウ
みほ「えへへへ…」ミシミシ
ナオミ「ヘイヘイ隊長。感動したら抱きつくクセはそろそろ直すべきだ」
ケイ「えー。だってぇ」
アリサ「だってもヘチマもありません!西住さんクチャクチャになってますよ!」
ケイ「ほぉーアリサ?さては嫉妬してるなぁ?」ニヤニヤ
アリサ「し て ま せ ん っ !」
ケイ「ミホは私のものだもんねー」ニシシ
優花里「ちょっと待ってください!西住殿は私達大洗のものです!」グイッ
みほ「あう…」
ケイ「あっズルいぞオッドボール軍曹!学校が同じだからって独り占めは反則よ!」グイグイ
みほ「はう…」
優花里「だーめーでーすぅ!西住殿がいなくなったら大洗ピンチになっちゃいますぅ!」グイッ
みほ「ふぇ…」
クシャクシャ ギュウギュウ ワシャワシャ
麻子「大丈夫なのだろうか西住さん…」
ナオミ「私も西住さんみたいになればタカシ振り向いてくれるかなぁ…」
麻子「タカシ?コーラのことか?」
ナオミ「それはペプシよ!!」
ナオミ「ハナ…」
華「! ナオミさん…」
ナオミ「私の完敗だ。あの砲撃、本当にお見事だった…!」
華「私も、あのような砲撃が成功するとは思ってもいませんでした」
ナオミ「私もだ。無茶な要求をしたとは重々承知だが、それでも対抗手段がなければ"無敵"の無人機を、戦車だけの学校がどうすべきか…知りたかった」
ナオミ「そして君がそれを教えてくれた」
華「もう一度やれと言われて成功できる自信はありません」
華「ですが、0パーセントではありませんので、これでまた一つ無人機への対抗手段が見つかりましたわ」
ナオミ「あぁ、そうだな。そして…その…済まなかった」
華「えっ?」
ナオミ「私の興味とは言え、君や大洗女子を試すような真似事をしてしまった」
華「私も最初あのような提案をされた時は驚きましたわ」
華「でも、無人機を持たない、つまり明らかに戦力差のある相手に対等に戦おうという意思表示として受け取らせて頂きました」
華「そこには純粋に戦車道をする者としての、直向きな心があります」
華「それはまるでまっすぐ茎を伸ばすヒマワリのように」
ナオミ「ありがとう…ハナ」
華「ただ、一つ気になったのですが」
ナオミ「何かな?」
華「もしも私達が無人機を撃破できず、1時間が経過してしまった場合、どうなっていたのかと思いまして」
ナオミ「たらればの話になってしまうが、恐らくは無人機はそのまま放置して、そのまま戦車のみで戦っていたはずだ」
華「えっ、そうなんですか?」
ナオミ「ああ」
ナオミ「これら一連の試合が無人機の性能や今後の改善点を洗い出すために設定されたという事情もあり、無人機を保有する学校は必ず無人機を参戦させないといけない」
ナオミ「だから、私達は無人機を使った」
華「…」
ナオミ「だが、無人機を持たない学校相手に無人機を使うのはアンフェア」
ナオミ「それが隊長の考えだ」
華「そうなのですね…!」
グゥゥゥゥゥ
華「はぅ…////」
ナオミ「ははは。いい砲撃音だ」
華「神経を使いすぎたのでお腹が空いてしまいましたわ…」
ナオミ「それはいい。隊長がパーティーを企画したからたらふく食べて行ってくれ」
華「本当ですか!」パァァ
みほ(こうして、私達はサンダース戦も何とか勝つことができました)
みほ(対空戦車の攻撃が届かない無人機への新たな対抗手段も見つかり)
みほ(…次も同じことが出来るかというと、保証はできませんが、それでも道は開けたことには変わりありません)
みほ(麻子さんの高精度な演算、優花里さんの膨大な知識、華さんの職人技とも呼べる砲撃)
みほ(大会が進むにつれて欠点が見え、そして改善し、新しい可能性を生み出す)
みほ(戦車道は私達に様々なことを教えてくれました…!)
杏「おしまいっ!」
みほ「ええーっ?!」
杏「ん?」
みほ「まだ決勝戦残ってるじゃないですか!」
杏「あっ、そうだったごめんごめん~」ニャハハ
みほ(全くもう会長ったら…)ヤレヤレ
柚子「それで、決勝戦はどこと対戦なんだっけ?」
桃「プラウダ高校と黒森峰女学園がこれから戦う。その勝者とだ」
みほ(カチューシャさんか、それともお姉ちゃんか…)
オーケイわかった丸山さん。私が悪かった
だからその手に持ったムカデをこちらに近づけないでくれ
沙織。そうだ沙織がムカデ好きだったぞ。
アイツならムカデみせたら「やだもー!」とか言って喜ぶはずだ。
_,. -―- .,_
. ´_______ ` 、
/∠二二二二二二.\ \
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/.:::│: 八:.:: |:: :: :: ::.::.|、::: :: ::/|::::|:: :: |
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┌ |::|: ∧::.::|z干干|∧:: /干‐|/\|::∧ :: |
〈\ | │ |::| :: : \〉  ̄ ,∨ ニニ^メ、>′.::: │
..〈\\\ | │ l∧::: :: ト- /.: :::::/.:: |
\\\\」 │ ∧::::::|入 ,. _/.:.::.::./.::::: /
\ ′ 人 /.: :: :: |:::::`: 、 `⌒′> .::.::.:/ ./.::::/
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 ̄ ̄\ .イ ̄「 ¦  ̄\_____ // ̄「 ̄「 Т 了 |/| ̄::/ .::.:/.::::/
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ヽ:..: 〃 |____/ ̄ ̄ `7ニニニ/\/ |: l>く______/|
∨__{{_/ /.: :: ::::/.:.::..′ |: 人__∧\_/ |/│
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: :: :: :: .: :: :: :| く/ ∧|¦| / |
│:/.: :│:: : /| く___∧」|│l /. |
|/| : ::│:: / ∧L> /. : |
ということでまた書き溜めてきます。
乙
野暮だが>>479のナオミはアリサで良いのよな?
>>486
誤字ですすいません。
(誤)
ナオミ「私も西住さんみたいになればタカシ振り向いてくれるかなぁ…」
麻子「タカシ?コーラのことか?」
ナオミ「それはペプシよ!!」
↓
(正)
アリサ「私も西住さんみたいになればタカシ振り向いてくれるかなぁ…」
麻子「タカシ?コーラのことか?」
アリサ「それはペプシよ!!」
みんな待たせてごめんよ。
書き溜めが少したまったからまた書いていくよ
ここから先はキャラ崩壊とか地の文とか入るけど許してネ
* まとめてくれるブログさん
まとめる際に>>479のミスは>>487を移植・訂正してくれるとうれしいです。
◆最終章 "天上人"
【戦車倉庫・自動車部】
ナカジマ「………ということなんですよ」
柚子「そんな…じゃぁIV号は」
ナカジマ「えぇ…直せないことはないんですけど…」
ナカジマ「確実に決勝戦には間に合いませんね」
桃「くッ…」
ホシノ「なにしろ無人機の主翼がモロに直撃して、エンジン周辺やら砲塔旋回に使われる装置やらが全滅でして…」
スズキ「乗員を防護するカーボンコーティングもかなり損傷が激しいですよ」
ツチヤ「不謹慎な言い方になっちゃうけど、よく皆さん無事だったなって思うくらい車体がメチャクチャになってます」
桃「そこを何とかならんのか!」
ナカジマ「流石に今回ばかりは……」
ホシノ「パーツがあればまだしも、国内にそういったパーツがあまり流通していないんで、それらを取り寄せるのに時間がかかるんですよね」
スズキ「今までの対空戦車のパーツもドイツとのルートがある隊長のお母さんの手配のおかげで何とかなったけど」
スズキ「これを個々でやれってなれば数ヶ月はかかると思いますよ」
桃「くそッ!」
杏「………」
桃「こんな時にあんこうチームのIV号戦車が使えなくなるなんて…!」
柚子「どうしよう…。戦車を新しく導入する予算もないし………」
桃「そもそも原因はサンダースの無人機の落下だろう?ならばサンダースに…」
杏「いんや、無理だと思うよー?」
桃「えっ?」
杏「仮にサンダースに非があって、賠償を支払うとなったとしても、今大会中じゃ間に合わないだろうからさ」
杏「異議申し立てがあったらまず両校や戦車連盟を交えた検証が行われて、それで改めて判断するって流れだから、決勝戦までには間に合わないねぇ」
柚子「そんなぁ…」
杏「かといって、戦車を新しく買うお金もないと。いやはや参ったねぇ…」
柚子「…」
桃「…」
杏(ほんと、参ったよ)
【会長室】
桃「…ということで、IV号が大破したために、決勝戦までの修復が困難になってしまった」
柚子「自動車部にも確認したけれど、無理だって…」
あんこう「えええええーっ!!」
優花里「それじゃ私達は決勝戦どうなるんですか!?」
桃「それを決めるためにお前達を呼んだ」
沙織「私あの時IV号…じゃなくてクーゲルブリッツに乗ってたけど、あの衝撃はヤバかったよ!」
みほ「あれだけの損傷を受けておいて乗員が全員無事だったのが本当に不幸中の幸いです」
柚子「ええ。皆が無事で本当によかったよね」
桃「うむ。ただ、これからのことをどうするか。それが問題だ」
麻子「そちらで何か代案はあるのか?」
柚子「他の車両に振り分けるくらいしか…」
華「そうですよね…」
みほ「ところで、会長は?」
桃「会長は出かけている」
沙織「もーっ!会長ってばいつもこんな時にいないんだからー!」
華「まぁまぁ。沙織さん」
麻子「怒ったところで何も変わらん。それよりも解決策を考えるほうが先だ」
優花里「冷泉殿のおっしゃる通りです。こちらでも出来ることを探しましょう」
みほ「そうだね」
【西住流戦車道家元】
菊代「それでは、家元をお呼びいたしますので、お待ち下さい」ペコリ
杏「ありがとうございます」
杏(前にも来たことがあったけど、やっぱり広いお屋敷だなぁ)
ガララッ
杏「! お久しぶりです。西住さん」
しほ「ええ。お久しぶり。うちの娘は元気にやっているかしら?」
杏「ええ。私が不甲斐ないばかりに、いつも助けられています」
しほ「そう。良かった」
杏「ええ」
しほ「…」
杏「…」
しほ「それで、お話というのは?」
杏「実を言いますと、先日のサンダース戦にてみほさん達が乗るIV号戦車が大破してしまいました」
しほ「…」
杏「幸い乗員は全員無事なので、その点だけは安心して下さい」
しほ「そう」
杏「…が、IV号戦車の損壊はかなりのもので、修復には時間がかかり決勝戦までに復旧させることが不可能となりました」
杏「そこで、西住さんの方からIV号戦車の代わりとなる戦車をお借りすることは出来ないかと思いまして…」
しほ「申し訳ないけれど、その要望にはお応えできないわ」
杏「ですが…!」
しほ「確かにあなた達には様々な機材を提供してきました」
しほ「しかし、"戦車をくれ"となると話は別」
しほ「一戦車道の流派が特定の学校だけに贔屓をするのはタブー」
杏「そこをなんとか!お願いしますっ!!」フカブカ
しほ「…そうね」
杏「…!」
しほ「菊代さん」
菊代「はーい」スタスタ
しほ「車体と砲身が欲しいそうよ」
菊代「かしこまりました。少々お待ちください」スタスタ
杏「あ、ありがとうございます!!」
しほ「ヒントはあげたわ。あとは貴方の力でそれを形にしなさい」
杏「え…ヒントですか?」
菊代「お待たせしました。どうぞお受け取りください」サッ
杏「…? これは一体?」
しほ「私から出来るのはこれだけ」
杏「さっきの車体と砲身というのは…?」
しほ「先にも言った通り、"ヒントはあげた"と」
杏「?」
しほ「あとは全て、あなたが探しなさい」
杏「はぁ」
しほ「ただし、最高の物を得るには最高の苦痛が必要」
杏「えっ?どういうことですか?」
しほ「とある高校の生徒は自分の戦車道を貫き通すために自ら狂いに行った」
しほ「その結果、その生徒がいる高校は瞬く間に強豪校になった」
しほ「代償としてその生徒は壊れてしまったけれども」
杏「………」
しほ「犠牲なくして、大きな勝利を得ることは出来ない」
しほ「あなたは自分が守りたいと思ったものの為にそこまで出来るのかしら?」
そこから私の仕事は始まった。
「戦車が壊れたからちょーだい」なんて甘ったれたことが西住流の家元に通じるなんてこれっぽっちも思っていない。
だから門前払いを食らうと思っていた。
しかし、門前払いの代わりに渡されたのは1つの封筒。
私はまずこれが何を意味するのかを調べることから始めることにした。
なんとなく想像はついていた。
杏「クルップ、ヘンシェル、ラインメタルねぇ…」
何度でも言うよ。なんとなく想像はついていた。
家元から渡された封筒の中に入っていた用紙には、黒森峰でも投入されているドイツの戦車や高射砲を"当時"製造していた会社の情報が記載されていた。
当時の面影がそのまま残っているとは思えないが、戦車道が盛んに行われるようになったことで、それらの産業も再び息を吹き返したのだろう。
そうでなければ黒森峰がティーガーやマウスなんてものを所有できるはずがない。
黒森峰はドイツと交流があった。だからそのルートを通じて戦車に関するやり取りが出来て、強力な戦車やその運用術を得られたのだろう。
そして私はそのルートを紹介してもらったに過ぎない。
西住ちゃん達あんこうチームが乗る『IV号戦車』を修復する、あるいは代替品を譲ってもらうには現時点ではこれを利用するしかないというのは大体わかった。
………が、何かが引っかかる。
杏「んじゃー小山、河嶋。後は頼んだ」
ちょいと出張するからしばらく頼むわー
そう言ったら河嶋も小山もすごい形相で驚いた。お前ら目玉飛び出てるぞ…。
小山はオロオロするし、河嶋に至っては「私も連れてってください~!!」なんて号泣しだす始末。
お前ら、副会長と広報として2年ちょいやって来ただろうが。今さら私がいなくたって問題ないだろうに…。
ひとまず練習については、西住ちゃんを中心にお願いすることにした。
…といっても肝心の西住ちゃん達あんこうチームの戦車が無いから、それぞれのチームの車両の空いているポジションにあんこうメンバーがローテーション形式で乗るよう提案した。
特にカモ、アリクイ、レオポンは空席は勿論、試合の経験数がほかのチームよりも少ない。それに私が抜けたカメも課題は残っている。
なのでそれらに優秀なあんこうチームの皆が交代で乗ることで、各々が培ったノウハウをそのチームに伝授し、弱点を可視化・改善することが目的だ。
前回の試合のように、自分たちの戦車だけ乗っていれば良いというわけでもなさそうだしね。
…と言う旨を西住ちゃんに話したらスンナリと納得してくれた。
決勝戦はプラウダか黒森峰のどちらか。どっちが勝つにしろウチらにとっちゃ厄介だ。前回までのような幸運は二度と訪れないと思っていい。
ましてや戦車だけでなく、無人機まで出てくるんだから、むしろ貧乏神に惚れられたと言ってもいいくらいだよね。早くあんこうのIV号戦車を用意しなくては。
………ん??
やはり何かが引っかかるが、今はドイツへ行くための準備をしないと。
のんびりしたいところだが、残された時間はあまりない。
戦車道や生徒会の関係で海外には何度か行ったこともあるけど、それはあくまで「見学」としてだ。今回に限っては何もかも自分で決定しないといけない。
貴重な体験なんだけど、正直面倒くさい。家で干し芋貪りながらゴロゴロしていたい。
念のため西住ちゃんには出張の行き先を教えておいた。行き先だけね。
そしたら昔の友人がいるから紹介すると言ってくれた。
どうやらその子は生まれはドイツらしく、日本に来るまでは向こうで戦車道らしいことをやっていたそうな。
で、その子も近いうちにドイツへ帰国するというから、一緒に行くよう説得したらしい。
西住ちゃん曰く「気難しいけど根はいい子だから」とのことだけど…まぁ現地で通訳をお願いしようかな。英語ならまだしもさすがにドイツ語は無理だ。
………私も通訳も無しによくドイツへ行こうと思ったよなぁ。我ながら無茶をするもんだ。
「あなたが角谷杏さん?」
西住ちゃんの"お友達"とは空港で対面した。
赤髪のツインテールの彼女は"中須賀エミ"という日独ハーフの子で、小学生時代の西住ちゃんの同級生とのことだ。
簡単に自己紹介したあと、ドイツ行きの飛行機に乗り込んだ。
中須賀ちゃんが何でドイツに?と訪ねるから「西住ちゃんの戦車がB-29に壊された」と色々端折って説明した。
そしたら彼女は『相変わらず無茶をするのねあの子…』という。それについては私も同意する。
だが『無人機相手に戦車で挑もうなんてバカだ』とまで言うもんだから、その西住ちゃんがそのB-29をポルシェティーガーで落としたと言ってやったら今度は物凄く驚いてた。
驚くのはわかる。私だって未だに信じられないくらいだもん。
…でも機内でデカい声で「うええっ!?」はちょいとマズいよ?
他の乗客がすごい顔でこちらを見てっからさ。
エミ「一体どうやって落としたのよっ!?」
ものすごい形相で詰め寄って来るので、あの時の試合を説明してみた。
そうしたら「ありえない……カリウスでもそんなことしないわ…」と、今度は魂ここにあらず状態。
この子もなかなか個性的な子ではある。ウチの学校に来ていたらさぞ面白かっただろうなぁ。主に西住ちゃんが。
飛行機の窓から外の景色を眺めてみると、陸がずっと下の方に見える。
あんな下の方からこちら目がけて砲弾が飛んできて、爆発して撃墜されると思うとものすごく怖い。
戦車同士の戦いでもそう何キロも離れて撃ち合うわけじゃない。なのに8km以上離れた上空の獲物を撃墜するのだから、もはや戦車道を超えた戦いだ。
そんな正確な射撃能力があれば黒森峰やプラウダの戦車も遠方から撃ち抜くことが出来るよね。
…………。
もうずっと何かが引っかかっている。
重大な何かだ。そいつが喉に刺さった骨みたいに取れそうで取れない。もどかしい。
エミ「ところでIV号じゃないとダメなの?」
杏「んー?」
エミ「代わりの戦車。何でIV号なの?」
モヤモヤしていると中須賀ちゃんが訪ねてきた。
何でって…そりゃそうだろう、西住ちゃん達のシンボルの戦車なんだよ?
だから違う戦車だったら…
……ん?
何でIV号じゃないとダメなんだろ?
確かに西住ちゃん達あんこうチームが乗っているのはIV号戦車だ。
そのIV号戦車は対無人機戦闘を想定して様々な"IV号対空戦車"としてカスタマイズしてきた。
メーベルワーゲン
ヴィルベルヴィント
オストヴィント
そしてクーゲルブリッツ。
20mm、30mm、37mm…それぞれの対空機関砲は、無人機に当たりさえすればそれなりのダメージは与えられるだろう。…当たりさえすればだが。
…だが、それらのカスタマイズは確かに無人機戦闘での対抗策にはなったが、対戦車戦闘では活躍するのだろうか?
いかんせん相手は無人機抜いて戦車だけ見ても強豪校のツートップだ。
ここで前回ほとんど役に立たなかったクーゲルブリッツを「直ったから使ってよー」といったところで、それがこの2校のいずれかを相手にした時有利になるのだろうか?
対空戦車として対無人機に限定すれば多少の効果はあるかもしれない。
しかし、その対空戦車の砲撃は戦車の装甲相手だと…
それに西住ちゃんたちあんこうチームは大洗の"切り札"と言っても良い。
もちろん他のみんなも、うちの河嶋も小山も優秀だが、あんこうたちは更にその上を行く。
まさに切り札といえる存在だ。
彼女たちは無人機を相手にしても戦車を相手にしても柔軟な発想と機転によって勝ち上がってきた。
んむっ?!
無人機を相手にしても戦車を相手にしても?!
杏「それだぁぁぁぁぁっ!!!」ガタッ!
どーしようもないバカだ私は。こんなことも忘れてたなんて!
無人機が導入されて数ヶ月、私達はずっと無人機の対策しか考えていなかった。
無人機を保有しないウチらにとって相手の無人機の存在が圧倒的に不利だったがために!
しかし、私達が相手にしなければいけなかったのは"戦車"なのだ。
いや、戦車"も"というべきだ。戦車を相手にして、無人機はオマケくらいの認識でなければいけなかった!!
無人機落としてバンザーイで終わる話ではなかった!
なのに…
対戦車戦闘を疎かにして貴重な戦力削って無人機対策に傾倒してしまっていた!!
そしてその役割をあろうことか大洗女子の"切り札"あんこうチームを主体に………!
エミ「ち、ちょっとどうしたのよ?」
杏「…そういうことだ!!やっとわかったぞっ!!」
エミ「だから何がよ!!」
CA「お静かに願います」
杏・エミ「あ…すいません…」
おいこら中須賀ちゃん。あんたのせいで怒られただろーが。ンだからはしゃぐなつったろーに…。
え?あたしのせい?………悪かったよ。
エミ「…で、どうしたのよ?」ヒソヒソ
杏「よくよく考えたらさ、IV号じゃなくてもいーじゃんって思ったわけよ」ボソ
エミ「ほらね。どうせドイツ行くんならパンターとかティーガーとか持っていけば良いじゃない」
杏「んなもん簡単に手に入ったら苦労しないよ」
エミ「まぁね」
杏「…」
そりゃそうだ。
パンターだろうがティーガーだろうが戦車が簡単に手に入るんならあたしゃドイツになんぞ行かぬわ。家でテレビ見ながら干し芋食べてるよ。
杏「まぁ、あとで西住ちゃんに相談してみるよ…」
エミ「あ、第二次世界大戦後に出た戦車は試合じゃ使えないからね?厳密には1945年…」
杏「わぁっとるわいンなこたぁ」
エミ「えぇーホントにぃ?」
こいつめ…あたしゃ腐っても廃校の危機に瀕した学校で、戦車道復活させるためにアレコレやって来たんだぞ?
そんなルールくらいわかってるっちゅーの。
………天蓋付いてない対空戦車つかってたのはアレだけど。
【空港】
疲れた。
さすがに12時間のフライトはしんどい。ノンビリ寝転がれる無人機が欲しいよ。
おケイ、スーパーギャラクシー貸してくんないかなぁ。操縦手つきで。
エミ「それで、まずは何処から行くの?」
杏「あん?」
エミ「いや、だって時間ないでしょ」
杏「決勝戦までまだ時間あるからへーきへーき」
ぶっちゃけると1ヶ月きった。正直ヤバい。
エミ「私来週には日本に戻るよ?」
杏「ふぁっ!?」ガタッ
エミ「みほから聞いてなかったの?」
杏「西住ちゃんそんなこと一言も言ってなかったよ!」
おーい西住ちゃん、こりゃどういうことかなぁー?
「ドイツのお友達が一緒に行く」ってのは聞いたけど、その子の滞在期間が一週間ってのは聞いてないぞ?
…まぁ聞かなかった私も悪いけどさ!
ピリリリリ
ピリリリリ
…っと電話だ。西住ちゃんからだね。
杏「もしもーし」
みほ『こんばんは。西住です』
杏「おっ。そっちは夜かぁ?こっち今早朝だよ。ぐーでんもーげん」
みほ『えっ?あ、おはようございます』
杏「そっち何とかなりそー?」
みほ『ええ。指示通り交代で各車輌に乗ってます』
みほ『そのおかげで各々の改善点も色々見つかりました』
杏「おーそりゃ良かった!ところでさ、」
みほ『はい?』
杏「西住ちゃんたちの戦車なんだけどさ」
杏「IV号じゃなくてもいい?」
みほ『えっ?!』
そう。これは西住ちゃんに伝えとかないといけない事なんだよね。
次の試合ではIV号戦車が出てこないということ。
そして…
無人機も戦車も破壊できる超強力な戦車が必要だということ。
ということで、また書き溜めつくってきます
_ -──‐-───- _
__r‐/ : : : : : : : : : : : : : : :`: : `'く⌒L
{:::::/、/: : /⌒ : : / : く: : : : : :\∧::::ノ
∧/∨: : : : : :/ミ∨:/彡ヘ : : : : : ∨Vヘ
|: |∨: : : : : :/⌒゙¨^¨゙´ ̄`|: : : : : : : Ⅵ: : .
|: i/.: : : :|: :/ |:/|∧: : : : |: : |
|: : : : : :│¬ト イ厂| |: : : :| :| : :|
|: | : : : 八|斗=ミ ィニ=ミ |.: : : | :| : :| じゃーんけーんぽん
|: | :| : : l〃 r'゚iハ r'゚iハ 》: : :/|/: : :|
|: :V\八ヽ弋.ソ , 弋.ソ 厶イ| : : : :│ n
|: : : :人 ゝ:::::: _ ::::::,_ノ゙| : : : :│ | | /゙}
|: : : : : :トーヘ t _ツ .イ リ : : : :│ |│ ' /
|: : : : : :| 个: . _ _ イ! / : : :/ : | │{/,/
; : : : : :リ (⌒}  ̄ {⌒) / : : :/ : : レ'⌒V゙`}__
/.: : : : :/ _,.ィブ _7゙⌒7 : : :/>r7 `て_ノ ノ
/.: : : : :厶,r<「 |{¬ '´/ / : : :/ / {{、__,、└ァ'′
|: : : : : :| | {{ マニニニ7 / : : :/ {{ 从 ア´〉
|: : : : l: | ∧ \ † /__,/|: : : :| \∧/ /
|: : : :人| | (\ニ二二∨ー一く|: : : :| _r冖ト--ヘ_/
|ハ : :| ヽ「 \___ノ___人__/\ : |八: : |
. / \| _] 乂 ノ ∨ \|
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\::...::..ノ.: :: :: :/.: :: :: :: :/.: :: :: :: :: :: :: :: ::|:::::::::|::::::::::::::::::::\___..ィ
フ.: :: :: /.:/.: :: :: ::/.: :: :: :: :: :: :: :: :: ::/::::::::::|::::::|::::::l::::::::::::::::/
ヽ::.::´::ノ::::::/.:/.:::/:/:::.:: :: :: :: :::::: :: :: ::::/::::::::::::::|::::::|::::::l:::::::.\
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)へ:::::::::::::::::\`_:::::::: ' ::::::::: ノ::::::::ノ:::ノ::(⌒ 、 __〈 / / \
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_`-リ\\ 、 ノ //≦‐ーーュ__ _\_⌒´ヽー、__!__/ l
_ --ヘ ̄ ヾ‐> ‐-‐ ´ </ //  ̄> ´ / ‐rー 、_ /
/ / ̄ ̄ ̄\ | ` -‐ ´ ノ // / / / 〉\ /
また誤字ってた…
>>445
× ナオミ『そんな…大丈夫なの?』
○ アリサ『そんな…大丈夫なの?』
訂正・脳内補完おねがいしますorz
みほ『………』
案の定西住ちゃんは黙り込んだ。
そりゃそうだ。IV号戦車は彼女たちあんこうチームの「戦車道」を象徴する戦車といって良い。
西住ちゃんたちが最初に乗って今日まで様々な戦いを勝ち抜いて、二度の廃校の危機から救った由緒ある戦車だ。
それを「IV号じゃなくてもいい?」なんて言ってしまうのはあまりにも無礼だ。
…だけど、今のIV号戦車、そしてIV号対空戦車じゃ戦車と無人機を相手に戦い抜くには力不足なんだよね。
みほ『そうですよね…私も薄々感じていました』
みほ『ここ最近の私達は無人機にばかり気を取られて、肝心の対戦車対策が疎かになりつつある。と』
みほ『今まではそれでも良かったかもしれませんが、決勝戦となると…』
そうなんだよね。
知波単学園の戦車は装甲が薄いから対空戦車(オストヴィント)の砲弾が通った。
サンダースはクーゲルブリッツの弾がB-29へ届かなくて、西住ちゃんが機転を利かせて入れ替えたポルシェティーガーで五十鈴ちゃんが無人機やエース車とフラッグ車を叩いた。
あのサンダースの試合に関しては「完勝」と言っても良いくらいの成果だった。
だが、決勝戦でそういったものが通じるとは思えない。
黒森峰にしろプラウダにしろ、火力、装甲どちらも強力な戦車ばかりだ。
『対空戦車』では勝ち目がない。
戦車の質だけでなく、プラウダにはカチューシャ、黒森峰には西住ちゃんの姉・西住まほといった優秀な指揮官がいる。
戦車良し
指揮良し
兵士良し
そこに更に無人機というオマケがついて、もはや"勝てる要素がない"といった状態なんだよね。
そうなると、「IV号戦車(対空戦車か?)直ったよ~」じゃあまり有利にはならない。
もっと強力な戦車…無人機が来ても重戦車が来ても相手に出来るようなヤツが必要なのよ!
みほ『………わかりました』
杏「!」
みほ『IV号に乗れないのは残念ですが、会長に選定をお任せします』
杏「おっけーい」
みほ『その…無人機も戦車も相手にできる戦車、楽しみにしてます』クスッ
杏「あ、今笑ったなこのやろ~」ハハハ
みほ『いえ、笑っていませんよ。フフフ』
杏「やっぱ笑ってるじゃないかぁ!いいもんね!トビッキリの戦車持ってきて西住ちゃんのアゴ外してやっからさぁ!」
みほ『楽しみにしてます』
杏「あいよー。そいじゃ」
ガッ!
杏「ちょっ!何すんのさ?!」
いきなり中須賀ちゃんが私の携帯をひったくった。
どうやら西住ちゃんと話がしたいんだろう。
んだが、「ちょっと代わって」くらい言って欲しかったよそこは…。
エミ「久しぶりね。みほ」
みほ『あっ!その声は………』
エミ「…」
みほ『………』
エミ「エミよ!中須賀エミ!!」
みほ『あ、あっ、エミちゃんだぁ!お久しぶりだねぇ!』
エミ「忘れてたでしょ」
みほ『…ごめんなさい』シュン
エミ「まったく…」
エミ「…まぁ、相変わらず元気そうで良かったわよ」
みほ『えへへ。試合のルールが変わって振り回されてたかな』
エミ「無人機、ね」
みほ『…うん』
エミ「最初聞いたときは耳を疑ったわ」
みほ『実を言うと私も…』
エミ「戦車で競い合うのが戦車道なのに、そこに航空機が乱入したらもう戦車道でも何でもないじゃないの!って」
みほ『うん…』
エミ「普通の戦車じゃ空からの攻撃への対抗手段なんて無いし、あったとしても無人機相手に不利なのは変わらないし」
みほ『そうだよね…』
"無人機"は戦車道を履修する者全員が違和感を抱いている。
中須賀ちゃん、西住ちゃんはもとより、ケイもチョビ子もダージリンもカチューシャも、無人機によって恩恵を受けた西ちゃんも………。
もちろん私もだ。
なぜならそこには無人機を導入できない学校をふるいにかけるという"政治的"な意図が見え隠れするからだ。
だからこそ私達はそういった理不尽に勝たなくちゃいけないんだよねぇ。
学園艦の統廃合を目論む汚い連中に学校を潰されないように。
そして戦車道が汚染されないように。
エミ「…で、しかも角谷さんいわく、大洗女子は無人機を持っていないと」
みほ『あはは…実を言うと無人機を導入する予算がないらしくて』
エミ「ハイテクな誘導装置を組み込む分戦車よりも高いからね無人機は」
みほ『会長が干し芋減らせば買えるかも?』アハハ
エミ「どんだけ干し芋にお金使ってんのさ…」
聞こえてんぞ西住ちゃん。
干し芋減らしたカネで無人機が買えるならわざわざドイツにゃ行かん。
…あ、そういえば干し芋がもう無い。近くに売ってないかなぁ?
みほ『エミちゃんの学校は持ってるの?』
エミ「持ってないわよ。持ってたとしてもウチのバカタレ共が使えるわけ無いでしょ」
みほ『あはは。瞳ちゃんだったら』
エミ「一番ダメ。あの子10秒で墜落させるから」
みほ『えーヒドい!』
なんだか楽しそうだなぁ二人とも。ちょいと疎外感。
こんなことなら河嶋と小山も連れてくるべきだったかなぁ。
そもそもあいつら二人以外に友達いたっけかな?
まぁケイとはよく話すし、チョビ子も会った時はよろしくやってるし。
でも友達かと言われると、うーむ…
…ダメだ。なんか悲しくなってきた。この話はよそう。
エミ「…で、本当に良いのね?」
みほ『え?』
エミ「IV号」
みほ『あっ…うん。今回ばかりは仕方ないよ』
エミ「そう。なら良いけど」
みほ『うん。そっちは何か検討ついてるの?』
エミ「全っ然」キッパリ
みほ『ぅ…』
エミ「まず"代わりの戦車探す"ってだけでいきなりドイツに行くってのがあり得ない」
エミ「仕事辛いからってスキルもコネもなく会社辞めてフリーランスや起業するくらいあり得ない」
みほ『あはは…わかりやすい例えだね』
ムッカつくなぁコイツ!
何がムカつくって?例えが的確ですんげぇ分かりやすいところだよ!!
アタシだって何かする時ゃ事前準備くらいするさ。
色んなことが立て続けに起きるから準備するヒマが無いだけで!!
エミ「そもそも戦車も決まってない、予算もない、コネもないで"戦車くれ"が無理」
みほ『うん…』
エミ「あなた以上に無茶なことやってるよコッチは」シレッ
みほ『その…なんというか、うちの会長が迷惑かけてごめんなさい…』
エミ「全くよ」
みほ『会長は色々ぶっ飛んでいるけど、その…悪い人じゃないからよろしくお願いねエミちゃん』
エミ「まぁ通訳と戦車についての知識くらいは提供するわ」
おのれ黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって…!
チョビ子といい、ウサギのメガネといい、この小娘といい、どうしてツインテールの女はこうも傍若無人なヤツが多いんだか!
カワイイで許されるのは今のうちだぞマジで。そのうち"お局様"にそのツインテール食いちぎられっからなァ!!
エミ「それじゃ、もう一回角谷さんに代わるわね」
みほ『あ、うん』
エミ「はい」
杏「やぁやぁ。随分楽しそうに話してたねー」
みほ『ええ。何しろ小学生時代からの付き合いですから』
杏「へー。となれば中須賀ちゃんの事なんでも知ってるわけだよねぇ?」
みほ『うーん…まぁ、多少は…』
杏「そっかぁ」ニタァ
杏「中須賀ちゃんにまつわる面白い話とかないの?」ニヤ
エミ「ちょっと!」
みほ『えーと…』
ヘっヘっヘ。さっきのお返しだもんねー!
中須賀ちゃんが横で何か言ってるけど知らんぷりぃ~♪
どんな面白話が聞けるかなぁーうししし。
みほ『そういえば、小学生時代にエミちゃんカギ閉めずにトイレに入って』
みほ『知らずに扉開けたらウ●チぶら下げたエミちゃんがいて』
みほ『顔真っ赤にして踏ん張ってる姿が印象的だったり…』
杏「」
みほ『他にもお昼ごはん食べたあとに猛ダッシュしたせいで、校庭でゲロゲロ吐いてたこともあったり…』
杏「」
みほ『あとは帰宅途中に我慢できなくなって、近くの雑木林で…』
杏「」
エミ「何暴露してんのよぉぉ!!!///」ガァァァ
…予想を遥かに超えるドギツイ暴露だよ西住ちゃん。
あたしゃてっきり『寝ぼけて片方だけ髪の毛結ぶの忘れてた』みたいなソフトなのを予想してたよ。
金輪際西住ちゃんに他人の過去話をさせるのはやめよう。被害者が不登校になりかねん。
その後は大洗の練習の状況とかを聞いたり、あんこうの戦車について軽く話した。
西住ちゃんもどんな戦車が来るのか(一応)気になっているらしく、
『とても期待していますからね!』
と言うので『無人機も戦車も蹴散らせるヤツ持っていくから任せといて!』と言って電話を切った。
だが…
杏「………どうしよ…」ズーン
電話じゃ大見得切ってあんな事言ったけど、戦車も無人機も相手に出来る戦車なんぞあたしゃ知らんぞ!
そもそも知ってたところで、その戦車を手に入れる術もない!
ホントどうしよ………。
エミ「随分無茶なこと言うのねぇ」
杏「悔しいけど中須賀ちゃんの言うとおりだよ…」
エミ「ひとまずホテルに行ってチェックインしない?」
杏「…そだね」
到着したばかりなのに早くもこのザマだよ。先が思いやられるなぁ。
んでも、ウダウダ言ってもしょうがないので、とりあえずホテルに行くことにした。
長旅で疲れていることもあるし、計画ナシであちこち行くのも時間の無駄になる。今日はゆっくり今後の計画について考えることにした。
【ホテルの部屋】
ドイツのホテルは日本のホテルとは違っていかにも"西洋"って感じがする。
まぁ西洋だから西洋っぽいのは当たり前だけどね。
ただ、ドイツなのにどこにも干し芋が置いてないのは解せない。あとでアンケート書いとこう。
エミ「まずは『エッセン』へ行ってみたらどうかしら?」
杏「エッセンねぇ…」
地図を広げてエッセンがどこにあるかを確認する。
現在地は『デュッセルドルフ』だから、公共交通機関を使えば30分ほどで行ける距離だ。
ちなみに当初の計画ではフランクフルト行きの飛行機に乗る予定だったが、中須賀ちゃんの要望でデュッセルドルフに変更して現在に至る。
確かに、フランクフルトからエッセンまで結構な距離だし、デュッセルドルフを選んだのは正解だ。土地勘のある中須賀ちゃんが頼もしいねぇ。
んで、件のエッセンに何があるかというと
クルップだ。
戦時中はIV号戦車、ティーガー、そしてマウス、列車砲といったドイツを代表する有名な兵器の開発・設計・製造に関わっており、ドイツ戦車を語る上で欠かせない重工企業だ。
また戦車以外にも高射砲で有名な『8.8cm Flak』を作っている。
戦後はティッセン社と合併して"ティッセンクルップ"という名前になり、相変わらず世界一デカい採掘機を作ってたりしていて、巨大なマシン作りに定評のある会社だ。
今回の私達が求める『戦車も無人機も相手にできる戦車』というニーズを満たすモノを作ってくれるに違いない。
そうと決まればささっとクルップに行ってみるかね。通訳については中須賀ちゃんに任せればいいしね。
…あ、「作ってくれるに違いない」ってのは技術的な意味でだよ。ウチらのために協力してくれるかってのは別の話。
杏「…んでもさぁ、いくら戦車作ってた企業だからって、見ず知らずの人間に『戦車作って!強いの!!』って頼まれて『わかりました!』って言うかねぇ?」
エミ「まず無理ね」キッパリ
一切期待してなかったけど、こうも即答されると心に来るものがあるよ…。
そもそも、
IV号の代替となる戦車目当てにドイツに来たのは良い。
欲しい戦車の構想が全然決まってないのもまだ良い。
一番問題なのはそれを"作 っ て も ら う"ことなんだよ!!!
普通に考えりゃわかるけど、戦車ってものすーっごいコストかかるわけよ?
そんなモンを何処のウマのホネかもわからん女子高生に「つおい戦車ちょーだい!」って頼まれて快諾するバカが何処にいるの?って話だよ。
それで首を縦に振る人がいるなら"ウラ"があるんじゃないかと逆に不安になる。
エミ「でも、それを何とかしないと来た意味がないでしょう?」
杏「まぁねー」
『何とかしないと』で何とか出来たら生徒会はいらん。
とは言っても中須賀ちゃんの言う通り、何とかしない事にゃどうにもならない。
…どーしてこうも理不尽な事ばかり起きるかねぇ大洗は。
エミ「で、結局どんな戦車作るか決まったの?」
杏「ティーガーとかマウスみたいなのが貰えれば良いかなぁってくらい?」
エミ「ハァ…」
思いっきり溜め息つかれた。
そもそも"戦車道"については調べまくったけど、肝心の戦車については
ティーガー強ぇぇぇぇ
マウスでけぇぇぇぇぇ
くらいしか知らん。
…あっコイツめ!また溜め息つきやがった!!
杏「んでも戦車も無人機も攻撃するってなりゃそんくらい強力なヤツが必要じゃない?」
エミ「確かにティーガーやマウスの主砲は強力よ。大半の戦車をアウトレンジから撃破出来るくらいにね」
杏「だろー?」
エミ「でも、無人機はどうするのよ?」
杏「あえ?」
エミ「ティーガーやマウスの"戦車砲"じゃ対空攻撃は無理よ」
杏「でも西住ちゃん達アレでB-29落としてたし…」
エミ「あんなもん例外中の例外よ!」
まぁ確かに。あん時はサンダースの"特別ルール"によって助けられたわけで。
黒森峰やプラウダ相手にノンビリ穴掘りやる余裕なんてまず無いわけだ。
戦車の知識が無い自分を呪いたくなる。秋山ちゃん連れて来れば良かった。
エミ「ひとまず、車体についてはティーガーやマウス級のものが必要ね」
エミ「さすがにIV号やパンターじゃ大きな砲は搭載出来ないでしょうし」
杏「ほうほう」
エミ「…で、搭載する砲はアハト・アハトみたいなの」
杏「アハトアハト?」
エミ「8.8cm Flakの事。ティーガーの主砲のベースにもなった高射砲よ」
杏「なるほどねぇ」
そういえばサンダース戦の時にも言ってたなソレ。
高射砲だったヤツを敵戦車に向けて撃ったら撃破できたって話。
1つで航空機も戦車も対処できる理想の砲だ。
エミ「で、ここで問題になるのが"砲塔"ね」
杏「え?砲塔?」
エミ「そう。無人機撃墜のための高射砲を搭載するとなれば、当然従来の戦車のような砲塔じゃダメ」
杏「それは砲を上に向けるから?」
エミ「その通りよ。もし仮にアハトアハトを搭載するとなれば」
エミ「砲塔はオリジナルになるわ」
確かに、今までカスタマイズしてきたIV号対空戦車たちも無人機を倒すために砲を空に向けて射撃していた。
メーベルワーゲンやヴィルベルヴィント、オストヴィントはオープントップだったから、そのまま砲身をただ上に向ければ良かった。
しかしこれらのオープントップな対空戦車は後にルール改定によって使用できなくなった。
その代案としてのクーゲルブリッツは、従来の対空戦車と違い密閉型の砲塔になってて、ジャイロコンパスのように砲塔ごと上下左右に動かした。
…しかし、大型の高射砲を搭載した砲塔は、左右はともかくどうやって上下に動かせば良いのさ!?
エミ「…一つだけ、心当たりがあるわ」
杏「どんなの?」
エミ「"ゲラート554"という砲塔があるのよ」
杏「なにそれ?」
エミ「クーゲルブリッツと合わせて、もう一つの本命となるはずだった対空戦車の砲塔よ」
杏「!」
エミ「…だけど、その砲塔は結局モックアップしか作られず、試作にすら至らなかった幻の対空戦車よ」
杏「幻の対空戦車?」
エミ「V号対空戦車 "ケーリアン" ね」
V号対空戦車ケーリアン
V号戦車、つまり"パンター"をベースにした対空戦車だ。
対空戦車といえばIV号戦車ばかりを想像しがちだが、IV号よりも車体の大きいパンターでも対空戦車が計画されていたそうだ。
そして、そのパンター対空戦車も様々な種類が検討されていたが、その中でも最も完成に近かったのがこの「ケーリアン」という。
当初このケーリアンには、メーベルワーゲンやオストヴィントに搭載されていたような3.7cm Flak43対空機関砲を2連装にしたものが搭載されるはずだった。
しかし実際は連合軍の空襲により工場が破壊され、ベースとなるパンターの生産すら危うい状況となり、最終的に砲塔のモックアップが作られただけで実現はしなかった。
また、実現しなかったもう一つの理由には搭載兵器の変更があったから。
というのも車体に対して武装が貧弱という理由で、搭載兵器を"5.5cm対空機関砲"にするよう計画が変更されたそうだ。
この5.5cm対空機関砲は『ゲラート58』という名称で開発が進められており、試作はされたものの、実用化する前に終戦を迎えた。
ゲラート58の元となった対空機関砲に『5cm Flak41』というものが存在し、こちらは3.7cmと8.8cmの射程のギャップを埋めるために作られたそうで、あのメーベルワーゲンの搭載兵器の候補にもなったらしい。
杏「へぇー中須賀ちゃんって意外に戦車について詳しいんだね」
エミ「意外って何よ。これくらい、"こっち"じゃ普通なんだから」
杏「こっちって?」
エミ「ドイツのことよ!」
新たにわかったことが2つ。
まず1つは対空戦車はIV号だけでなくV号(パンター)でも計画されていたという点。
そしてもう一つは…
私は、私が思っている以上に無謀なことをしているという点。
考えてもみてほしい。
あのV号戦車ケーリアンでさえ試作にすら達しなかったのだ。
ティーガーやマウスをベースにした対空戦車なんてまず存在しないだろう。
しかし、黒森峰やプラウダの戦車を叩き、なおかつ対空攻撃もするという無茶苦茶な条件を満たそうとなれば、ケーリアン以上のものが必要となる。
5.5cmじゃティーガーは叩けない。
エミ「限りなく無理に近い無理ね」
杏「…あたしもそう思うよ」
もしここで『こういう戦車があるよ!』って言ってくれる人がいるなら今すぐ私のところに来てほしい。
…もっとも来たところで「私が考えた最強の戦車」計画が出来ただけで、その次の「作ってもらう」という壁が立ちはだかるけどさ。
さすがに手詰まりだ。どうしようもない。
はるばるドイツにまでやって来て、教えてもらった会社へ交渉をする以前の段階でこんな事になるのだったら日本で悶絶していればよかった。
本当に頭が冴えない。
こういうとき西住ちゃんだったらどうしていただろうか。
エミ「…だったらさ」
エミ「車体と砲だけ既存のものを選んで、砲塔はオリジナルにすれば良くない?」
杏「は?」
エミ「だから、砲塔はオリジナルにするの」
杏「???」
エミ「要は車体と砲だけ何とかして、あとはそれを搭載するための砲塔を新規設計するのよ」
アンタは何を言っているんだ?
砲塔を新規設計するって?
そんなことしたらレギュレーションに引っかかるじゃないか。
この子ちゃんとルール理解してるのかね?
*****************************************
参加可能なのは、1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた車輌と、同時期にそれらを搭載される予定だった部材のみを使用した車輌のみとする。
それを満たしていれば、実際には存在しなかった部材同士の組み合わせは認められる。
計画段階車両に関しては、個別に連盟と協議を行うこととする。
但し、部品等が調達不能等の理由により再現が困難な場合は、連盟が認める範囲において改造することが認められる。
3-01 参加車輌 戦車道試合規則(日本戦車道連盟)
****************************************
…ん?
計画段階車両に関しては、個別に連盟と協議を行うこととする???
杏「…中須賀ちゃん」
エミ「なにかしら?」
杏「例えばさ、戦時中にドイツのお偉いさん達ってさ…」
杏「ティーガーやマウスをベースにした対空戦車って考えると思う?」
エミ「思う」
珍しく中須賀ちゃんが"肯定的に"断言した。
ということでまた書き溜め作ってきます。
エミ「だってIV号だけでは飽き足らず、V号対空戦車なんて作ろうと計画してたのよ?」
エミ「時間とか物資といった事情が許されるのならば、パンターでもマウスでも対空戦車は計画されてもおかしくないわ」
杏「確かにねぇ」
エミ「ティーガーやマウスをベースにした対空戦車なんだから、搭載する砲もそこそ強力なものになるはず」
エミ「そうなれば私達が考えるように1つの車輌で戦車と航空機を対応できるわけだからね。極端な話」
エミ「場合によっては通常のティーガーやマウスといった"戦車"以上の仕事をする可能性だってあるはずよ」
杏「なるほど…」
エミ「あとは言わなくてもわかるよね?」
んー。ひとまず理事長さんに聞いてみるか。
児玉『お電話代わりました。日本戦車道連盟、児玉です』
杏「お忙しい中失礼します。私、大洗女子学園の角谷杏と申します」
児玉『おぉ、大洗の角谷君か。先日はどうも』
杏「先日の件につきましては本当にありがとうございました」
児玉『いえいえ、こちらこそ。久方ぶりに白熱した試合を見ることが出来たよ』
杏「お陰様で大洗女子は今も元気に戦車道を嗜んでいます。これも理事長や関係者の皆様のおかげです」
児玉『それは良かった。今は丁度大会中で、しかも次が決勝戦ときた。楽しみにしておるよ』
杏「ありがとうございます。それで、お電話の内容ですが、戦車道のルールに関する相談がありまして」
児玉『相談?』
杏「はい。戦車道における試合で使用する戦車についての相談です」
私は理事長さんに現在に至るまでの事情を説明した。
先日の試合で我が校のエースが乗る戦車が大破し、次の決勝戦までに修復するのが困難なこと
そのため新しい戦車が必要となり、代替の戦車を求めてドイツにいること
そして、
既存の戦車をベースに、新しい戦車を作ろうとしていること。
児玉『………』
杏「この件について、理事長の考えをお伺いしたいのです」
児玉『なるほどねぇ』
杏「…」
児玉『そのベースとなる戦車は…少なくとも"試作"開発に着手しているというのは間違いないのだね?』
杏「はい」
児玉『そして、その戦車に搭載する砲は"戦車砲"ではなく"高射砲"であり、こちらも試作への着手に至ってたものと』
杏「ええ。おっしゃる通りです」
児玉『ただ、その車輌と砲を結びつける"砲塔"だけが存在せず、再現するには新規に設計する必要があると』
杏「はい。この砲塔こそが今回の相談となります」
児玉『うーむ………』
杏「如何でしょう?」
児玉『………難しいねぇ』
杏「!! それはどういう…」
児玉『判断が難しい。という意味だね』
杏「使用許可を出すのが難しい…という意味ではなく、"可か不可かの判断が難しい"、という意味ですか?」
児玉『うむ…。車体と砲はOKだけれども、砲塔がね…。かなりグレーゾーンなのだよ』
杏「…」
児玉『ちなみに、その戦車はまだ完成してはおらんのだね?』
杏「はい。戦車道連盟の許可が降り次第、交渉に入ろうと考えています」
児玉『そうか…。なら』
杏「?」
児玉『その計画はやめた方が良い』
杏「なっ…」
児玉『君が一生懸命やっているのはわかるよ』
児玉『…ただね?』
児玉『君が提示した案件を、許可すべきか否かを理事会でまず決める』
児玉『通った場合、改めて各方面へ製造を依頼するという流れになると思う』
児玉『…しかし、それでは決勝戦にはまず間に合わない』
杏「っ…!」
児玉『だから悪いことは言わない。…やめておきなさい』
杏「ですが…!」
児玉『私だってこのようなことは言いたくない』
児玉『だが、実現不可能なものに時間を浪費するのは得策じゃない』
杏「………」
杏「この提案に、西住流家元が関わっているとしてもですか?」
児玉『…なに?』
杏「一点、お伝えし忘れた事があります」
杏「破損した戦車の修復が間に合わないと判断した時、私は西住流家元のもとへ足を運びました」
児玉『…』
杏「そして相談した結果、残念ながら戦車をお借りすることは出来ませんでした」
児玉『そうだろうね。西住流家元とは言え、一つの学校へ安々と戦車を貸与するとは思えまい』
杏「…しかし」
児玉『?』
杏「戦車の代わりに、一通の封筒を頂きました」
児玉『封筒?』
杏「はい。本来なら丁重にお断りされ、手ぶらで帰るところなのですが」
杏「どういうわけか、西住さんは私に封筒を差し出した」
杏「かつてドイツの戦車を製造していた企業の情報が記載された一枚の用紙が入った封筒を…」
児玉『…』
杏「そして、西住流家元は確かにこう言いました」
― ヒントはあげたわ。あとは貴方の力でそれを形にしなさい
児玉『………』
杏「これが何を意味するかはまだわかりません」
杏「ただ、一つ言えることは」
杏「西住流家元は首を横には振らなかったということです」
児玉『………そうか』
杏「…」
児玉『西住さんはそこまでしてくれたんだね』
杏「…!」
"そこまで"…?
児玉『…わかった。私も一肌脱ぎましょう』
杏「!!」
児玉『ひとまず、その作りたい戦車の"概要"を私のところへ送って来なさい』
児玉『ベース車輌、搭載する砲の種類、そして砲塔について、出来るだけ詳しくまとめたものをね』
杏「ありがとうございます!!」
児玉『ただし、』
杏「っ!」
児玉『まだOKを出したわけじゃない』
児玉『あくまで、まず資料を見てから判断。…という流れだよ?』
児玉『だから糠喜びだけはしないで欲しい』
杏「わかりました」
児玉『…しかし、大洗女子は不思議だねぇ』
杏「えっ?」
児玉『無限の可能性を秘めている』
杏「…」
児玉『何故、こんな良い学校を廃校にしたがるのか、私は理解に苦しむよ』
児玉『文科省は戦車道世界大会のために優秀な生徒だけに予算を集中させたがっておる』
児玉『だが…』
児玉『本当に、我々年配者が手塩にかけて育てないといけないのは』
児玉『君たち全ての若者達なのだよ』
杏「………」
児玉『縛る必要なんてない。伸び伸びと戦車道を楽しんで欲しいものだ』
児玉『その中で戦車道の概念を理解し、技術を身に着け、少しずつ育ってくれたら良い』
児玉『そうすれば、本当の意味で素晴らしい人物が誕生する』
杏「……………」
児玉『それが、私が望む戦車道だよ』
杏「………たとえ」
児玉『うん』
杏「たとえ何度、廃校を宣告されても、わたし達は撤回のために、全力を尽くします…!」
児玉『済まないね。勝手な大人たちのせいで苦労かけてしまって』
杏「…」
児玉『今の日本には目先のことに囚われ過ぎて、本当に大事なものを見失っている』
児玉『残念ながらお役所の人間はそれが理解できていない』
児玉『だから、君たちが徹甲弾のように硬い頭の彼らに、本当に大切なものを教えてやって欲しい』
杏「はい」
児玉『頼んだよ…』
杏「それが私の戦車道です」
西住ちゃんのように優れたリーダーシップは発揮できない。
秋山ちゃんのように戦車の知識もロクにない。
だけど私は私なりの方法で、彼女たちが心から愛した"道"を守りたい。
その為だったら何だってしよう。
杏「あと、もう一つだけ、お願いがあります」
杏「いやぁーお待たせお待たせ」
エミ「ずいぶん遅かったわね?」
杏「連盟にかけるついでに、ウチの生徒会にもちょっと電話しててねぇ」
エミ「ふーん。で、どうだったの?」
杏「大漁だったよー」
エミ「やったじゃない」
杏「ホントだよー。なにしろ」
杏「ひっさびさのお通じだったからねぇー。いっぱい出たよ」
エミ「………は?」
杏「冗談。まずは"資料"を送ってほしいとのことだよ」
エミ「…そう」
ベースとなる戦車は何にするか
搭載する砲はどうするか
そしてその2つを結ぶための砲塔はどうするか
私と中須賀ちゃんは"設計図"を作った。
そして翌日、朝一番にその設計図を戦車道連盟へ送信した。
その結果、
・1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた車輌をベースにしている
・1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた高射砲を搭載している
この2点が認められ、"砲塔の問題は無事にパスした"という返事が戻ってきた。
私達が提案した戦車の大まかな概要は、
・ティーガーやマウスのような、「重戦車」の車体
・8.8cm Flakのような実在する「高射砲」を搭載する
・「V号対空戦車 ケーリアン」のような砲身を上空へ向けられる旋回式砲塔
この3点だ。
ひょっとしたら完成品は試作設計とはかけ離れたものになるかもしれない。
しかし上記の範囲内であれば連盟はOKだという。
そしてもう一つ、報告を逐一戦車道連盟に必ず入れること…というのが条件だ。
これで私達はまず第一の関門を突破したことになる。
しかし、これは序の口にすぎない。
次は、"戦車を作ってもらう"という最大の関門が待ち受けている。
●Tips
杏「I号戦車、II号戦車、III号戦車、そして西住ちゃんたちがのるのがIV号戦車だね」
エミ「そうよ?」
杏「んで、V号がパンター、VI号がティーガー」
エミ「ええ」
杏「ってことはマウスはVII号ってわけか」
エミ「違うわよ」
杏「え?」
エミ「マウスはVIII号」
杏「それじゃVII号は?」
エミ「"レーヴェ"と呼ばれる70トン級あるいは90トン級の重戦車が計画されてたけど」
エミ「マウスとか他の戦車と平行して開発・生産するのは国家資源の浪費ってことで開発は中止になったのよ」
杏「ふーん。そうなんだ」
ということでまた書き溜め作ってくるよ
【翌朝 ホテル レストラン】
朝食なう。
レストランのバイキングにてドイツ料理に舌鼓を打ちながら今日の計画を練る。
特に干し芋が切れてから芋不足に陥ってたので、ポテト料理をひたすら食べた。
中須賀ちゃんから『イモ女』なんて呼ばれたけど気にしない。
なにしろイモだからね。イモはいいぞ!
あ、あとソーセージも美味しかった。河島や小山にも食べさせてやりたいなぁ。
エミ「…にしても良く食べるわね」
杏「1つ関門をパスして安心したせいか急にお腹が空いちゃってねぇ~」モグモグ
エミ「それは良いけど。…そんなにイモばっかり食べて飽きないの?」ズズ...
杏「全っ然?」モグモグ
エミ「…そう」
杏「ふぅ…。そんで、まずはクルップ社だよねー?」
エミ「ええ。そうよ」
杏「んー」
エミ「なによ?」
杏「アポ無しで戦車つくって下さいってどう考えても無理だよなぁ…って」
エミ「そうね」
わかってる。わかってるよ。
でも、そんなアッサリと否定されるとホント悲しいのよ…。
せめて『やってみなければわかりません!可能性がある限り進みましょう!』って西住ちゃんみたいなこと言って欲しいなぁ…。
エミ「みほも両手あげて降伏するレベルの無理難題に取っかかろうとしてるのよ私達は…」
杏「ぐぅ…」
エミ「でも、仮に私達の第一要求が通らないとしても、何か他のところで有益な情報が得られるかもしれないわ」
杏「まぁねぇ…(それもあまり期待しちゃいかん気がするけど)」
結局のところ、当たって砕けろだ。
私達はレストランを後にして、クルップ社のあるエッセンへ向かった。
【クルップ社 応接室】
………やっぱりな。
行く前から予想はできていた。
見ず知らずの小娘に『お金ないけど超強力な戦車作ってよ』と言われて『無理』以外の回答を期待する方がおかしい。
そんな無茶ぶりが出来るのはヒトラーくらいだ。応対してくれたスタッフさんに鼻で笑われたよ。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛どうしよ!!
こんなんじゃ他の会社行っても同じ結果になるだけだし。
そもそもこうなるなんてドイツ行く前からわかってたし!
なんで家元もあんな紙切れ渡したんだよっ!
素直に門前払いされた方が良かったよクルップみたいに!!
エミ「………」
中須賀ちゃんも呆れてるよ。予想通りな展開だけに。
私が中須賀ちゃんの立場だとしても『行く前からわかってたのに何でわざわざドイツ来たの?バカなの?』ってなるもん…。
杏「…帰ろう。さすがに無謀だったよ」
エミ「…」
杏「中須賀ちゃん?」
エミ「*****,**************?」
「***…*************」
エミ「***!**********,**********」
「*********」
エミ「*****」
え…なに?何の話してるの??
ドイツ語わかんないよ。
え?なんであんたら握手してんの?!
………もしかして、
エミ「車体、何とかなるかもしれない」
杏「ちょっ、何とかなるってどういうことよ?!!」
エミ「落ち着きなさい…」
「HAHAHA」
スタッフの人にまた笑われちまったよ…。だけどそんなことはどうでもいい。
誰がどう考えても「無理」しか返って来ないようなお願いしてるのに"何とかなる"ってどういうことさ?!
まさか中須賀ちゃん………
ヒトラーの孫とか?
エミ「そんなわけないでしょーが!!!」
杏「あはは。そーだよねー」
「HAHAHAHA」
エミ「まったく…」
ブチ切れ方はそっくりだけど、黙っておこう。
そんなことより、説明してもらおうか中須賀ちゃん
エミ「さすがに戦車を作れってのは無理だけどさ」
杏「うん」
エミ「戦車道やってるドイツの学校から借りることは可能かもしれないってこと」
杏「!」
エミ「だから、クルップ社製の戦車を使ってる学校を紹介してもらうのよ」
その手があったか!!
何度も言うけど、"かつて戦車作ってたから"という理由だけで、一企業にノーマネーで1から戦車作れというのはまず無理。時間的にも(会社が負担する)コスト的にも。
で、作るのがダメなら、既に完成している戦車を借りれば良かったのだ。…どうしてそんな簡単なこと思いつかなかったんだろう。
そしてどーしてそっちを最初に教えてくんなかったんだよあんのクソババア!!!
エミ「いや、いきなり学校に行っても貸してもらえないわよ?」
杏「えっ?」
エミ「考えてもみなさいよ。身元の分からない他国の人間が急に『戦車貸して』で『ハイ、どーぞ』なんてなると思う?」
杏「確かに…」
エミ「仮にも実弾を発射する兵器なんだから、簡単に借りれたら色々マズイわよ」
中須賀ちゃんの言うとおりだ。
何処の馬の骨かもわからん輩にホイホイ戦車を貸してしまうのはあまりに危険だ。
相手が反社会的勢力だったらテロに繋がりかねないし、そうでなくても借りパクされる可能性だってある。
戦車を借りパクって聞いたことないけど、実際されたらかなりヤバいだろう。
なにせドイツ戦車はどれも非常にスペックが高い。先進国ならまだしも途上国では余裕で戦力となりうるのだから。
まぁ戦車をパクられる学校があったらそこの隊長は相当マヌケだけどね。
…そういった事情から本来なら学校単位で申請するものなんだってさ。納得。
じゃぁ何でウチらがそのやり取り出来るって?そりゃあ私が生徒会長だからだよ。
こう見えて大洗女子や学園艦に関する一定の権限を持ってる。だから今回こーやってあちこち走り回ってるわけよ。
西住ちゃんは元西住流の子だし戦車も詳しいけど、こういった学校単位でするような交渉権の類は一切持ってないからねー(西住ちゃんに限った話じゃないけど)。
ちなみにあたしが死んだら小山と河島が学校や学園艦の運営・管理を引き継ぐことになる(大丈夫かなぁ…)。
杏「…ということは、ここに来たのはその学校とウチらを結ぶための何かしらの"コネ"を作るためと?」
エミ「その通り」つ[書類]ドッサリ
杏「うっわ…なにこれ…」
エミ「借用書みたいなものよ」
杏「めっちゃ分厚いじゃん…」ゲンナリ
エミ「それだけ厳重なの」
おっかしいなぁ…ドイツに来たのに日本の商社みたいな事やってっぞ?
こーいうのはPCでササッと入力とかじゃダメなのかねぇ…。
え?筆跡鑑定?あーそっか…。
1時間ほどかけてよーやく書類を全部書き終えた。右腕がプルプル震えてる。
本来こういう書類の作成とかはぜーんぶ小山に丸投げしてたし(もう少し手伝ったほうが良いのかな?)、私が何か作る時はだいたいパソコンだったから手書きで書類を作成するのは久しぶりだよ。
ひとまずこれでクルップ社からの紹介状を入手出来るので幾分スムーズに話が進みそうだ。
…いや、幾分どころではない。一気に話が進んだ。
『作ってもらう』と『貸してもらう』は違うが、『戦車を入手する』という目的は同じだ。
だが、1から作るよりも既に完成しているものを借りた方がコストも時間もかからない。
これは当初の計画よりも早く目的が1つ達成できるかもしれない…!
さて、どの学校に行くのかと中須賀ちゃんに訪ねたところ、ニーダーザクセン州ノルトハイム郡バート・ガンダースハイム市(長ったらしいなぁ…)にあるヴィルヘルム女学院が良いという。
話によると、そこは戦車道で優勝常連校と言われてる強豪中の強豪なんだそうだ。
日本で言う黒森峰みたいなものだろうか。西住ちゃんに聞いたらわかるかな?
何にせよ強豪校ならば強力な戦車も保有しているだろうし、行ってみる価値は大いにある。
【ヴィルヘルム女学院】
というわけで学校に到着したよ。
なんというか、豪華だね。さすが優勝常連校だけはある。
聖グロみたいな華やかさと黒森峰の荘厳さ混ぜた何かよくわからない感じだよ。
杏「」ヘトヘト
エミ「」ヘトヘト
あー…うん。
"というわけで学校に到着したよ"って軽々しく言ってっけどさ、実際のところエッセンからココまで電車で方道3時間近くかかるのよ。
まぁ疲れたわホント…。河島に丸投げしたい。しないけど。
学校の中に仮眠室無いかなぁ。マッサージチェア付きがいいなぁ。
エミ「あるわけないでしょ…」
杏「だよね…」ショボン
ひとまず来賓用の入り口から施設へ入り、通りすがりの学校関係者に用件を伝えた。
最初『何言ってんだこいつ』みたいな顔してたけど、クルップからの紹介状を出したら急に表情が明るくなった。クルップパワーすげー。
だけど中須賀ちゃんが『何で最初から(紹介状)出さないのよ』ってジトーっと睨んできた。
いきなり出したって面白くないじゃん?人を散々コケにする相手が急に慌てふためくところ見たら何かスカッとしない?
………悪趣味って言われた。
【ヴィルヘルム女学院 戦車倉庫】
私たちは学校の戦車倉庫へ案内された。
いや、倉庫というよりはスーパーマーケットだねーこりゃ。
あちこちに世界各国の戦車が"陳列"されている。うらやましい。
杏「うっひゃー。サンダースの倉庫みたいにいっぱいあるねぇ」
エミ「サンダースどころか黒森峰だって敵わないわよ」
杏「へぇ。さすがドイツ一の高校だけあるよ」
エミ「何言ってんの?」
杏「ふぇ?」
エミ「世界一よ」
杏「え?」
エミ「世界大会でドイツ代表選手を最も多く輩出している学校なのよ」
杏「そーなの?」
エミ「そうよ。だからこの学校は実質戦車道において"世界一"なの」
杏「世界大会ねぇ…ウチらにとっては遠い世界の話だよ」
エミ「でしょうね」
杏「…」
世界は本当に広い。
私達は目の前の学校の存続の危機のために必死になっている。
なのにこの学校が見ているのは世界だ。
いかに自分たちが小さな枠に押し込まれているかがわかる。
エミ「これが世界との違いよ」
杏「…」
エミ「残念ながら日本の戦車道は世界各国から大きく遅れをとっているわ」
エミ「だから、世界選手権大会に出たところで初戦敗退、良くて一回戦勝利が関の山ってとこかしら」
杏「そりゃ残念だね」
エミ「社会人チームが大学選抜チームに負け、その大学選抜チームが高校生チームに負ける」
エミ「言い方は悪いけど、このザマでは世界を相手に戦えない」
杏「………」
エミ「だから、文科省が本腰を入れて選手育成に躍起になっていて」
エミ「その結果、弱小校を"間引く"政策にシフトしつつあると」
エミ「日本代表選手を育成するべく、強豪校に予算を集中させるためにね」
杏「削られる側としちゃ笑えないねぇ」
エミ「だから生き残りたければ"結果"で示すしかないのよ」
杏「そだね」
ウチらは二度も結果を出してきた。
にも関わらずまだこんな姑息な手段を使ってまで潰そうとしている。
アンタら文科省が納得する"結果"って一体何なのさ?!
エミ「日本人は礼儀だの情けだのそういったものを尊重しているわ」
エミ「それは悪いことじゃないけど。世界を相手にした勝負じゃそれは何の役にも立たない」
杏「…」
エミ「勝つか負けるか。それだけ。それ以外は何も必要ない」
杏「でもねぇ」
エミ「なに?」
杏「確かに日本の戦車道はせいぜい日本でしか通用しないレベルだと思うよー」
杏「んだけどさ、自分たちの中で守りたいモノ、大切にしたいモノの為に一生懸命になる」
杏「そんな小さな世界が悪いとは思えないんだよねぇ」
エミ「…」
西住ちゃんが前を向いて最初の号令をかけた。
西ちゃんが涙を流して最期の吶喊をした…
自分や仲間の"道"を守るために先頭に立って。
あんなの見せられたら世界なんてもうどうでもいい。
彼女たちが守りたいものを皆で一緒に守りたいよ。
あの子たちが胸に抱える"情熱"は、血も涙もない灰色の成果主義なんかでかき消して欲しくはないよ…。
日本人はそういった"情"にもろいせいか、勝負師になれないのかもしれないけどさ。
でもその情が様々な形になって人の心に染み渡るから、極東の小さな島国が弱いながらも愛される国になった。
その場しのぎの対応や慌ててやるような目先の成果主義だけじゃ何もつかめないし何も守れない。
地道に積み重ねてきた静かな歴史こそが、ビクともしない屈強な柱になるんだよ。
エミ「でもウチらがやってることは戦車を貰うという"その場しのぎ"な対応だよね」
杏「………うるさいな…」
…なんにせよ、今は世界の道よりも私達の道をこじ開けるほうが先だ。
ぼく「よし、また書き溜めを作ろう」
さて、今日も続きを書いていこう。
しばらく戦車を眺めていたら、この学校の責任者がやってきた。
軽く自己紹介を済ませたら「何がほしいの?」と聞いてきたので、ティーガーやマウスといった強力な戦車が欲しいと言った。…中須賀ちゃん経由で。
すると「ティーガーはともかくマウスはオススメしないよ?」と返事が帰ってきた(通訳:中須賀エミ)
杏「えっ、マウスダメなの?あんな強い戦車なのに?」
エミ「確かに強力だけど実戦ではまず使えないわね」
杏「ふぇ?なんで?」
エミ「不要な長物だから」
杏「えー。確かに車体は大きいけどさ、あんだけの火力と装甲があればどんな戦車にでも勝てるじゃん!」
エミ「重い・ノロい・使えないの3拍子そろった欠陥品よあんなもの」
杏「えぇ…」
エミ「マウスはね、火力…というより防御力のために全てを犠牲にした一辺倒な戦車なの」
杏「へー?」
エミ「"ソ連はティーガーやパンターを超える強力な戦車を用意するだろう"というヒトラーの警戒心から生まれた鉄のカタマリよ」
エミ「最大速度はたったの20kg。試験走行の段階でエンジンが故障」
エミ「もし仮に戦場に出たとしても同じようなトラブルはおそらく発生するはずよ」
エミ「で、発生したらその超重量が災いして回収も出来ない」
エミ「仮に故障しないとしても、マウスを動かすには大量の燃料が必要となるわ」
エミ「もっともそれ以前にマウスを作るだけで膨大な人員と資材を消費する」
エミ「…後半は私達には関係ないけど、とにかく"史上最大の戦車"ってだけで完全にお荷物でしかないわ」
エミ「だからマウスは論外よ。わかった?」
杏「おっ、西住ちゃんたちのIV号だ。でもなんか車体の表面デコボコしてんなー?」
エミ「聞けェェェェェ!!!」ガァァァァッ
わかったわかった。要するにマウスは"使いもんにならん"ってことでしょ?
ならば私が「ティガーかマウスか」って言った時にどーしてそれを言わなかったのさ…。
え?固定砲台にするならマウスでも良いって?…それはちょっとねぇ…。
杏「…となるとやっぱティーガー?」
エミ「うーん…」
杏「おやおや、随分と優柔不断だねぇ?」
エミ「ええ…。仮に8.8cm高射砲を載せるとしたらティーガーじゃ少し小さいから」
杏「いや、ティーガーが小さいって、ティーガーも8.8cm砲載せてるじゃない?」
エミ「砲塔を上に向けるとなるとまた事情が変わってくるのよ」
杏「あぁ…そうか」
確かにティーガーは8.8cm高射砲生まれの戦車砲を搭載しているが、それは狭い砲塔内に収められるようアレンジしたものなのだ。
一方で今回はそのまま高射砲を載せる。…いや、砲塔に収まるよう多少は改良はすると思うけど。
しかし、そうなれば砲塔も当然大きくなるだろうし、大きくなった砲塔を支えるために車体もより大きいものが必要となる。
マウスがダメでティーガーもダメ。他に何があるのだろうか…。
エミ「**********」
「******」
エミ「**?*******」
「*****…,********」
エミ「*******」
まーたドイツ語で何か喋ってる…。
英語ならまだしもドイツ語なんて一言たりともわかんないよ。"ぐーでんもーげん"くらいしか。
ほら中須賀ちゃん。何話してたのか教えてよ。
エミ「ひとまず車体、決まったわよ」
杏「え゛っ!?ちょっと待ってよ!」
エミ「なによ…」
杏「なによじゃないよ!どんなのかわからないまま決定は流石に困るって…!」
エミ「心配ないわよ」
杏「えぇ…」
こうして私の知らんところでベースとなる戦車が決まった。…解せぬ。
ティーガーでもない。マウスでもない。だけど高重量な高射砲を搭載するためにベースとなる戦車の名前は…
『エントビックルングストーペン・フォンダーツ・スーパーシュワール』
エミ「…随分カタコトね」
杏「だってドイツ語わかんないんだもん」
エミ「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーンって言う外国人レベルよ」
杏「うっさいなぁ…。んなことよりこの戦車初めて見るんだけど何ていうの?」
エミ「この戦車はね、"E-100"って言うの」
杏「ほうほう。随分でかいねぇ」
エミ「この戦車もマウスと同じく"超重戦車"カテゴリに含まれる戦車なのよ」
杏「ってことはやっぱ重たいの?」
エミ「そうね。完成してたら130~140トンになると言われているわ」
杏「…結局マウスと変わんなくない?」
エミ「そんなことないわよ。30トンも違えば足回りの負担ぜんぜん違うんだから」
エミ「それにE-100は最大時速40キロは出せるしね」
杏「ほうほう」
杏「そういえばE-100はパンターとかティーガーみたいな動物の名前じゃないんだ?」
エミ「ええ。ひょっとしたら将来的に名前が付けられたのかもしれないけど、そうなる前に戦争が終わったからね」
杏「そーなんだ」
エミ「他にもE-75とか、E-50とかE-25、E-10といった数パターンあるわ」
エミ「これらの戦車は生産性を高めるために構成部品を共有化し、また重量を標準化するという試みのもと計画された」
杏「計画ってことは結局作られなかったの?」
エミ「ええ。E-100の車体が試作されただけ」
杏「なるほどね。試作されたってことは戦車道のルール的にはおっけーなのかねぇ」
エミ「おそらくね。何なら聞いてみたら?」
杏「あいよー。…って、結局借りるのOKなの?」
エミ「ええ。元々世界各国の戦車道のある学校に貸してたりするからその辺は大丈夫よ」
杏「そっかそっか。んじゃいっちょ聞いてみますかねぇ」
『E-100』か…。そんな戦車があったなんて知らなかったよ。
ひとまず"ハンコ"を押す前に理事長にこの件を相談した。どうやら児玉さんはこの戦車のことを知っているみたいだ。
なんでもマウスと同じ砲を搭載するか、更に大きい15cm砲を搭載する予定だったとか、それよりも大きい17cm戦車砲(こちらは大きすぎるので駆逐戦車のような固定式戦闘室に収める形だったそうだ)まで計画されていたそうだ。
なかなか興味深い話だけど、今はそれよりこのE-100がOKなのかどうかを知りたいのですよ理事長。
児玉『おめでとう。車体はOKだよ』
杏「本当ですか!?」
児玉『あぁ、車体はね。残るは搭載する砲と砲塔だね』
杏「ええ」
児玉『ただ…時間的に間に合うのかい?』
杏「それは…やってみなければわかりません」
児玉『そうだね。もし間に合わないのならば、最悪E-100に既存の砲塔を流用して運用するしかない』
杏「えぇ…」
児玉『わかった。それじゃ引き続き頑張って。何かあったら報告だけはしっかり頼むよ?』
杏「はい。ありがとうございます」
児玉『あ、そうだ』
杏「はい?」
児玉『いかんいかん。肝心なことを忘れとったよ。年を取るといかんねぇ…』
杏「何でしょう?」
児玉『今回の車体や、そのあとの戦車関連のものは日本大使館経由で防衛省へ送ってほしい』
杏「防衛省?」
児玉『うむ。戦車道で使うからとはいえ、モノは戦車でしかも海外から持ってくるとなれば正当な手続きをしないと色々厄介なことになるのだよ』
杏「そうなのですね…(いわゆる大人の事情ってヤツか)」
児玉『それに特殊カーボンや判定装置なども含め、もう一度チェックしておきたいからね』
杏「わかりました」
児玉『まぁこのあたりは先方さんに聞いてみたらわかると思う。よろしく頼むよ』
杏「はい。ありがとうございます」
いよっしゃぁぁぁぁぁ!車体オケー!!!!
最初の難関突破したぞー!!
なんだか優勝した時の気分だよ。まだ優勝してないのに。
でも念願の戦車(の車体)ゲットだよ?一気に話が進んだよ!!
エミ「」ペチッ
杏「あいたっ!何すんのさ!?」
エミ「」ドンッ
[書類の束]
杏「うげっ!!」
エミ「」つ[ペン]
杏「…これを全部書けと?」
エミ「」コクリ
杏「」
クルップ社で書いた時よりも書類の量が多いじゃないか…。
曰く戦車をレンタルする件に加え、その戦車をドイツから日本へ送るための手続きに関する書類も含まれているとか。A4用紙1枚で済ませてちょ…。
文句を言っても始まらんので、私は履歴書のような書類をひたすら書き続けた。
一方で中須賀ちゃんは戦車に乗ったり、生徒と会話をしている。うらやましいなぁ…。
エミ「早くしてよ。日が暮れちゃうじゃない」
ちったァ手伝えよゴルァァァァァァ!!!
その後私は日が暮れるまでひたすら書類を書き続けた。なんだか反省文書かされる悪ガキの気分だった。
書類を提出したら担当者曰く責任持って"速達"で日本へ届けるとのこと。任せたよー。
杏「もう今日は右手使わんよ………」プルプル
エミ「どうやってドアの扉あけるのよ?」
杏「左手使う」
エミ「ご飯は?」
杏「中須賀ちゃん食べさせて」アーン
エミ「嫌よ」
杏「今からホテルまでまた電車で3時間かぁ…」ゲンナリ
エミ「あー、そのことなんだけど」
杏「んー?」
エミ「なんか航空科の人がホテルまで送ってくれるそうよ」
杏「マジで?!」パァァ
バリバリバリバリ
ヒュインヒュインヒュインヒュイン
航空科パイロット「キタデ」グッ
杏「うおーヘリコプターだ!」キラキラ
エミ「ほら、はしゃいでないで乗るわよ」
バリバリバリバリバリバリ
杏「すげー!早ぇぇぇぇぇ!!」キラキラ
航空科パイロット「セヤロ」グッ
エミ「わかったから。少し落ち着きなさい…」ハハハ
【夜 ホテル前】
航空科パイロット「マタノ」グッ
杏「ありがとー!」ダンケダンケ
エミ「ははは…」
恐ろしいほどサービス旺盛な学校だった。
片道3時間だったものがヘリだとたったの1時間だ。こりゃぁ良いや~。
ところでさっきのヘリ何ていう名前なんだろ?
エミ「"ティーガー"よ」
ティーガー?!
…あ、なんだ。ティーガーという名前のヘリコプターなのね。びっくりした。
にしてもパッと見た感じ2人乗りっぽいのに3人も乗れたし最近のヘリって技術が進んでるんだなー。
………。
深くは考えないようにしよう。
杏「…ところで無人機として出たりしないよねアレ?」
エミ「戦後のヘリなんだから出ないわよ」
とりあえず今日のノルマ(?)は達成できた。
大収穫と言ってもいい。なにせ、一番の課題である戦車の入手が決まったからだ。
ひとまず西住ちゃんに連絡しとこーっと。
みほ『………もしもし…』
杏「西住ちゃーん!ぐーでんもーげん!」
みほ『…はぁい…どうもぉ…』
杏「聞いてよ西住ちゃん!戦車の車体手に入ったよ!!」
みほ『…そうでふか……』
…ありゃ?なんか全然興味なさそうだよ?
というか何か声に元気がない…。風邪でも引いちゃったのかな?
…え?時差?日本とドイツって時差どんくらい?
ほうほう。日本のが8時間進んでるとな?
ってことは今こっちがだいたい夜の8時くらいだから………
げぇっ!朝の4時じゃん!!
西住ちゃんゴメンっ!!!
みほ『あのぉ…あとでも良いですかぁ…寝ますぅ……』
杏「う、うん。後でね…」
みほ『ぁぃ…おやうみなひゃ』
ツーツー
その日西住ちゃんは寝坊したらしい。ほんとごめん。後で遅刻ノーカンにしとくから許して。
…でもさぁ、
西住ちゃんの寝起きの声メッチャ可愛かった!!!
いでぇっ?!なっ何すんのさいきなり!!?
【ホテル 部屋】
エミ「あー疲れた…」
杏「同じく。特に右手が」
エミ「でも良かったじゃない」
杏「だねー。手段は違ったけど、目的は達成できた」
エミ「作るよりも借りる。この方が時間もコストも節約できる」
杏「うんうん。感謝してるよー中須賀ちゃん」
エミ「布団の上で寝っ転がって言われても説得力無いわよ…」ヤレヤレ
杏「ごろごろ~」
エミ「こっち来るな!ここは私のエリアよ!」
エミ「それで、次は"砲"ね」
杏「そだねー」
エミ「ともなればやっぱりアハト・アハトかしら」
杏「そういえばずっとアハアハの一点張りだけどさ、その他に高射砲って無かったの?」
エミ「あることはあるけど…」
杏「例えば?」
エミ「まず10.5cm Flak38(39)」
杏「ほほう」
エミ「これは8.8cm Flakの後継種として開発された高射砲ね」
エミ「で、もう一つは12.8cm Flak40」
エミ「こっちはドイツ最大の高射砲なんだけど、重すぎるから移動はほぼ不可能ということで、ドイツの主要都市の高射砲塔に設置したもの」
杏「12.8cmともなればさぞ強力だろうねぇ」
エミ「マウスやヤークトティーガーに搭載されてる12.8cmPak44(KwK44)が連合軍の主力戦車の正面を3,500m離れた場所から貫通できるというからね」
エミ「おそらくそれ以上に強力だと思うわよ」
杏「え、同じ12.8cmなのに??」
エミ「同じ12.8cmだけど、マウスやヤークトティーガーのは55口径で、Flak40は61口径だから、砲身が長い分威力も上がるのよ」
杏「へー。だから同じ7.5cmでもIV号とパンターとでは違うんだねぇ」
エミ「そういうこと」
杏「でもさ…」
エミ「んー」
杏「それって、E-100に乗せられないんだよね?重たすぎて」
エミ「えぇ…」
杏「…ちなみに10.5cmの方は?」
エミ「厳しいと思うわよ。何しろ8.8cm flakの倍以上の重量なんだから」
杏「そっかぁ…」
エミ「ただね、8.8cmでも十分よ」
杏「え?そうなの?」
エミ「ティーガーIIやエレファント、ヤークトパンターに搭載されている71口径8.8cm戦車砲でも」
エミ「55口径 12.8cm戦車砲と同じように3,500m以上離れた場所から連合軍の主力戦車の正面装甲を貫通出来るとされているわ」
杏「!」
エミ「ティーガーIの56口径とティーガーIIの71口径。同じ8.8cmでも188cmも砲身長が違えば威力は全然違うわね」
エミ「しかもティーガーIIは砲身長を伸ばした分、装薬も増やしている」
杏「へー勉強になるねぇ」シミジミ
エミ「ひとまず、明日はラインメタルへ行ってみましょう」
杏「そうだね。今回みたいにまた貸してもらえるかもしれないしね」
エミ「………」
杏「どったの?」
エミ「いや…なんでもないわ」
杏「?」
エミ(…悔しいけどここまでね……)
●Tips
そど子「ちょっと冷泉さん!今日もまた遅刻じゃないの!」
麻子「私は朝は無理だから仕方ない…」フラ...
そど子「そんなの関係ないわよ!このままじゃ本当に留年になるわよ!」
麻子「遅刻日数はリセットしたから問題ない…」ウツラウツラ
そど子「とにかく!ちゃんと早く寝て早く起きれるようにしなさい!生活習慣の乱れは風紀の乱れになるんだから!」
麻子「考えておこう……」
そど子「全く。前の試合で隊長やってたとは思えないわね。あなたも西住さんを見ならないなさい!」
みほ「うわぁぁぁぁぁ遅くなってすみませぇぇぇぇん!!」ヒーン
そど子「」
麻子「西住さんが何だってそど子?」
そど子「…もう…おしまいよ………」ヘナヘナ
麻子「お、おいしっかりしろそど子…!」
麻子(そど子がグレてもらっては困るから明日は早く起きるか…)
ということで本日はここまでです。
【デュッセルドルフ ラインメタル社】
昨日と同じように朝食を済ませた私達は、その足でラインメタル社のあるデュッセルドルフへ向かった。
8.8cm高射砲はクルップ社が製造しているのだが、このラインメタル社もまた8.8cm高射砲の前身でもあり、後世の高射砲のモデルとなる『8.8cm Kw Flak』をクルップ社と開発していたそうだ
なお、この頃はまだラインメタルじゃなく『エーアハルト』という社名だったらしい。
そんなラインメタルは現在は44口径の120mm砲を開発・製造し、一部を除き西側諸国の主力戦車の砲身として採用されている。
日本の90式戦車に搭載されているものもラインメタル製をライセンス生産したものだ。
…さすがに戦後の戦車砲はレギュレーション違反だから使えないけどね。
エミ「………」
杏「やっぱり"作ってもらう"は駄目だったね…」
エミ「ええ…」
杏「正直車体の時と同じように"作ってくれ"には期待してなかったよ」
杏「だからさ、また紹介してもらおうよ。高射砲を提供している学校を」
エミ「無理よ」
杏「え?どうしてさ?」
杏「車体の時みたいに借りればいいじゃん?」
エミ「それが出来たら苦労はしないわ…」
杏「どういうこと?」
エミ「車体と違って高射砲は砲塔用に再設計しないといけないんだから」
杏「!!」
そうだった…。
高射砲はそのまま搭載するのではなく、砲塔内に収まるようにアレンジを加えないといけないんだった…。
砲塔内に収まるように改造するだけだから、砲身や発射機構に手を加えないのでレギュレーション違反にはならない。
しかし、その改造は"借り物"では出来ないのだ…!
なぜなら、改良した時点でそれはもう借り物ではなくなってしまうのだから………。
エミ「残念だけど…これまでよ…」
杏「ちょっ!まだ他に方法あるかもしんないじゃん!」
エミ「一から作らないといけないのだから、それが無理となったらお手上げなのよ…」
杏「じ、じゃぁ他の会社当たってお願いすれば!」
エミ「クルップやラインメタルみたいな大手企業ですら『作れ』が無理なのに、」
エミ「それ以外のメーカーが請け負ってくれるとは思えないわ…」
杏「それじゃぁ…」
エミ「だから言ったじゃない…」
エミ「お手上げ…って」
杏「!!!」
そんな…私たちここまでやってきたのに…。
車体の件が上手く行ったから次も何とかなると思ってたのに…。
なのに…
ここまで来て手詰まりだなんてあんまりだよ………
エミ「角谷さんに謝らないといけないわ…」
杏「…えっ?」
エミ「私はこうなることを知ってたから…」
杏「じゃぁどうしてもっと早く言ってくれなかったのさ!!」
エミ「私もそう思うわ…あの時ハッキリと言ってやればよかったと…」
エミ「でも…言えなかった…車体が手に入ってあんなに嬉しそうにしているあなたには…」
杏「だけど…!」
エミ「あなたからこの話を聞いたとき、車体はまず何とかなるだろうと思った」
エミ「なぜなら、車体だけは借りることができるから」
エミ「そして実際に借りることができ、次のステップに進めた」
杏「…」
エミ「でも、本当の問題はここからだったの」
エミ「さっきも言った通り、借りれる車体と違って、砲身は原型のままでは搭載出来ないから手を加えないといけない」
エミ「そしてそれは"借りる"ではなく"作る"でないと実現できない」
エミ「高射砲だけじゃない。砲塔も1から作らないといけない」
エミ「そして、それらの実現が不可能となった今、私達の計画は失敗したことになるわ」
エミ「………無謀だった…最初から………」
杏「ッ!!!」
ピリリリリ
ピリリリリ
…また西住ちゃんからだ。恐らく昨夜電話したことについてだろう。
こんな事になってしまった以上どう電話に出ればいいかわからない…。
ピリリリリ
ピリリリリ
エミ「…出なよ」
杏「出ても何も言えやしないよ…」
サッ
杏「あっ!」
ピッ
みほ『もしもし、西住です』
エミ「みほ…」
みほ『あっ、その声はエミちゃんだね?』
みほ『明け方に戦車確保できたって電話きたけど、それって本当?夢じゃないよね?!』
エミ「えぇ。本当よ」
みほ『凄いよエミちゃん!こんなにも早く戦車を手に入れることができ』
エミ「みほ」
みほ『え、はい?』
エミ「残念だけど………」
エミ「私達の計画は失敗したわ」
みほ『ええっ!?ど、どういうこと?!』
エミ「最初から無理だった」
みほ『で、でも車体を手に入れたのだから…!』
エミ「今回は事情が全然違うわ」
みほ『そんな…』
エミ「あなたや角谷さんには悪いけど、今回ばかりはどうしようもない…」
みほ『………』
エミ「………ごめん」
みほ『………』
みほ『ううん、仕方ないよ。…色々お願いしちゃってこっちの方こそゴメンね………』
エミ「それじゃぁ…またね…」
みほ『うん…』
ピッ
【ホテルの部屋】
私達はそのまま来た道を引き返した。その間私達が一言も会話を交わすことはなかった。
私も中須賀ちゃんも虚無感に苛まれてもはや何もしようとも思わない。
大はしゃぎしていた昨日の自分がまるでピエロのように見える。
車体は借りれるのだから大してハードルは高くない。車体よりもそこへ搭載する高射砲からが最大の難関だった。
なにしろ戦車内に収容できるよう1から設計しないといけなかったのだから。
そうなると車体のように借りるのではなく、"作る"でないと実現できない。
そして、それはラインメタルやクルップですらノーと言うものだ。他の企業がやってくれるとは到底思えない。
更に砲身だけでなく砲塔も同じように1から設計しないといけない。
そうなると高射砲が砲塔に収まるよう入念に調整しなければならず、企業間での連携も必要不可欠だ。
課題が多すぎる…。
私たちは気がついたらホテルに着いて、気がついたらベッドへ倒れ込んで、ただただボーッとしていた。
一気に疲れが出たせいでそこから先のことは覚えていない。
わたしも中須賀ちゃんもそのまま現実から逃げるように眠りについた…。
このまま目が冷めなければいいのに…。
また書き溜めてくるよ
なかなか進まなくてすまぬ・・・すまぬ・・・(´;ω;`)
ピリリリ ピリリリ ピリリリ
杏「…ん……」
いま何時…?
夜中の1時か…。こんな時間に誰が電話かけてくるんだよ…。
ディスプレイを見たら非通知になっている。どうせロクな電話じゃない。無視しよう
ピリリリ ピリリリ ピリリリ
エミ「…うるさいから早く出てよ…」
杏「…切れるのを待つよ」
ピリリリ ピリリリ ピリリリ
エミ「…全然切れないじゃない」
杏「しつこいなぁ…」
エミ「緊急の電話じゃないの…?」
私はしびれを切らして通話ボタンを押した。
そして電話の相手に「誰さ…」と嫌悪に満ちた声で問いかけた。
『あっ、やっと出てくれた…もしもし…!』
杏「いま何時だと思ってるのさ…っていうかどちらさん」
『ご、ごめんなさい…その…西住です』
杏「んー…西住ちゃん?非通知になってっけど?」
『じ、実は携帯電話の調子が悪くて…』
杏「あっそう…んで何の用?」
『あの…会長…怒ってます?』
杏「…怒ってないよ。眠いだけ」
『うぅ…やっぱり怒ってる…』
杏「…それで、なんかあったの?」
『はい。話によると戦車が見つかったとのことで…』
杏「戦車は見つかったよ。…だけど、期待しないで」
『え…』
杏「私が馬鹿だった。車体が見つかっただけで浮かれてた」
眠いけど、面倒なんだけど、それでも西住ちゃんには伝えておかないとダメだから、私は今回の計画が失敗したことを伝えた。
杏「…というわけ」
『…』
『えーと…、車体は借りれたので大丈夫だったけれど、砲は砲塔に収めるために加工しないといけないから、借りるのではなく作らないと不可能…と』
『でも、クルップ社もラインメタル社もそれがダメな以上、頼るアテが無くて手詰まり…ということですよね?』
杏「そのとおりだよ。…私が馬鹿だった」
『…』
杏「車体を確保する以前から前途多難だってのはわかってた」
杏「んだけど、やらないことにはどうにもなんないから奔走してみたよ」
杏「けどさ、やっぱりダメなもんはダメなんだねぇ」
杏「…ごめんよ」
『あの…その件なんですけど…』
杏「…何かな?」
『ドイツではなく日本の企業に依頼してみてはいかがでしょう?』
杏「………は?」
『あの…ですから、日本の企業に製作を依頼してみてはと…』
杏「西住ちゃん、今はそういう冗談あまり聞きたくないんだけどさ?」
杏「ドイツの戦車を作るためにドイツに来て、どーして日本の企業が出てくんの?」
杏「ふざけてんなら怒るよ?」
『いえ、そういうつもりでは…』
杏「悪いねぇ西住ちゃん。今は眠いし気が立ってるから冗談を流す余裕は無いんだよ」
『実を言うと…』
『砲や砲塔を作れる会社に幾つか心当たりがありまして』
杏「…へぇ」
『それはですね…』
西住ちゃんはこう言いたいのだ。
"ドイツの会社がダメなら、日本の会社を使え" と。
そして、西住ちゃんにはそれらの会社に心当たりがあると。
けどさ…、
『まず…』
杏「ちょっと待って、メモするから。………うん、良いよ」
『まずシラヌイ重工という会社があります』
杏「へぇ。どんな会社?」
『ここでは戦車で使われる均質圧延装甲板を作っています。なので砲塔はここで手配しましょう』
杏「ずいぶん簡単に言ってくれるねぇ…」
『つぎにツクバ製鋼所という会社。高射砲の砲身はここにお願いしてみて下さい』
杏「(無視かよ…)えーと、次がツクバ製鋼所と」
杏「ツクバって茨城県の筑波だよね?そんな会社あったかなぁ…」
『10式戦車の砲身を作っている会社といえば納得いただけるかと思います』
杏「へー。そりゃすごいね」
※ここで紹介する企業は実在しない架空のものです。
『次にヒトエ技研。高射砲用の砲弾…徹甲弾と対空用の信管付き榴弾、及びそれらの装薬はこの会社なら出来ます』
杏「ヒトエ技研ね」
『また、高射砲の砲身以外のパーツ。駐退機および復座機、尾栓、砲架などですね。これらはシマキ金属へ』
杏「うん」
『そして最後になりますが、これらの砲から砲塔まで一連の設計についてはチトセ設計にお願いしてください』
杏「んーわかった」
『こちらからは以上です』
杏「あのさ西住ちゃん」
『何でしょう?』
杏「そーやって企業名を並べてくれるのは良いんだけどね」
杏「お金も時間もかかる事をタダでやってくれる保証はどこにあんの?」
『えっ…』
杏「ウチらはさぁ、現地に行ってダメ元でお願いしてみたよ?」
杏「だけど結局門前払いだった」
杏「現地で実際に作ってる会社がダメだったモノをどうして無関係な日本の会社がタダで引き受けてくれるのさ?」
杏「その辺を私にわかるよう説明して欲しいねぇ」
『…』
杏「西住ちゃんさ、言うのは誰にでも出来る。んだけど実行するのはまた別の話よ?」
杏「悪いけどさ、これは無
『可能性がある限り進まないとダメなんです!!』
杏「…」
『会長は一生懸命になって車体を確保しました。これは大きすぎる一歩なんです!』
『そしてこの一歩を足掛かりに、とにかく私達はひたすら走るしかないんです!』
『走るのを止めたらそれこそ全部おしまいなんです!血を吐くような想いをしてこなしてきた事も全部無駄になってしまうんです…!』
『だから…!!』
杏「………」
………そうだねぇ。
西住ちゃん、いっつもウチらの前に立ってピンチを救ってくれたよね。
私がこんなじゃ頑張ってる西住ちゃんや皆にも申し訳ないねぇ。
せっかくここまで来たんだし、1%でも可能性があるんならやってみよう。
『あ、ありがとうございます!』
杏「それで、他にウチらの方で何か出来ることはあるかな?」
『あ、それなのですが』
杏「うんうん」
『もう一度、高射砲や砲塔について情報が欲しいので、ドイツの会社の方へ行って欲しいのです』
杏「ん?また行くの?」
『ええ。今度は"資料"を貰って来て下さい』
杏「資料?どんなの?」
『ざっくりいうと、砲塔や高射砲の設計図です』
『砲塔については装甲厚、材質、砲や搭乗員を載せるために必要な寸法』
『そして高射砲を上に向けるための仕組みもお願いします』
杏「なるほどね」
『同じように高射砲についても、砲身からその発射機構、そして砲を支える砲架などすべての設計図があると良いです』
『もちろん使用する弾薬の種類、寸法、火薬の種類についても』
『…とにかく読めば誰でも対空戦車が作れるくらい詳しいモノが良いです!』
杏「あはは。誰でも作れる資料があるなら私が高射砲つくるよ」
『あ…そうですよね…えへへ』
杏「まったく西住ちゃんらしいねぇ~」
『でも、資料は詳しいに越したことはありませんのでお願い致します』
杏「なるほどね~。わかった、やってみるよ」
『ありがとうございます!』
やっぱり西住ちゃんだよ。
私が諦めかけた時に助けてくれる。
絶対無理だと思ってたのに、また可能性を見出してくれる。
西住ちゃんが頑張ってる以上、私が何もしないわけにはいかないよね。
エミ「………」
エミ「ちょっと代わって」
杏「ん、いいよ。ほい」
エミ「もしもし」
『ふぇっ!?』
エミ「どうしたのよそんなに驚いて…」
『あ、あの…えっと…』
エミ「ちょっと…みほ?」
『ご、ごめんなさい!また次の機会にっ!』プツッ
ツー... ツー... ツー...
エミ「………」
杏「どったの?」
エミ「今の電話、みほじゃなかった」
杏「えっ…」
杏「い、いや、声も話し方も西住ちゃんだったよ!?」
エミ「確かにソックリだった」
エミ「でも、私が出た瞬間、相手はなぜか取り乱した」
エミ「本物のみほだったら私がいるって知ってるからあんなに驚いたりはしない」
エミ「あの反応…"知らない人"を相手にした時のものよ」
杏「!! …じゃぁ今の相手は誰なのさ!?」
エミ「私が知るわけないじゃない…」
杏「…」
エミ「…でも、さっきの話、やってみる価値はありそうよ」
杏「そうだね。資料だけなら貰えると思う」
エミ「もう一度、まずはラインメタルへ行きましょう」
電話に出たのは確かに西住ちゃんの声だった。
でも、違うとなれば一体誰なんだ…?
そして何故私たちに情報を提供した!?
【翌朝 ラインメタル社】
私達は再びラインメタルへ訪れた。
担当者からは『また君らか。もう話すことはない。帰ってくれ』と言われた。
しかし、事情を説明するとなんとか話を聞いてくれた。表情からはYESかNOかはわからない。
ただ、設計図とはいえ、扱うものが大砲、すなわち兵器なわけだ。簡単には譲っては貰えないだろう。
そして、返ってきたのは…
大量の書類だ。
言わなくてもわかる。今までと同じようにこの書類の山を作成して提出すれば良いだけのことだ。
右手が少し疲れるだけで私が欲しいものが手に入る。こんなのお安い御用だよ。
そうしてまた1時間ほどかけて書類の山を書き終えた。
書類を受け取った担当者はそのまま事務所へ行き、10分ほどして戻ってきた。
戻ってきた担当者から私はUSBメモリを1つ受け取った。この中に目当てのモノが入っている。
念のためパソコンを借りてその場で中身をチェックした。
砲身、砲架、砲弾…高射砲の情報が詳しく記載された"設計図"だ。
これだけの情報があれば高射砲は再現することは可能だろう。
エミ「…Flak41」
杏「ん?どうしたの」
エミ「私達がイメージするアハトアハトとは少し違うモノが来たわね」
杏「えっ?」
エミ「"アハトアハト"、"8.8cm 高射砲"といえば大体がクルップ社の『8.8cm Flak18/36/37』を想像するはず」
エミ「最初の型である『Flak18』」
エミ「発射方向の切り替えを電源式にして砲身の交換も容易にした『Flak36』」
エミ「観測点から砲へ射撃諸元を送るためのアナログコンピュータを搭載した『Flak37』」
エミ「だいたいこの3つ」
杏「ふむふむ」
エミ「でも、この『Flak41』はクルップ社の8.8cmのバリエーションとは別で、従来の8.8cm Flakの後継種としてラインメタルが開発していた高射砲なの」
杏「ほほう?」
エミ「56口径のFlak18/36.37と違って砲弾とかの互換性は無いけれど、より強力な砲弾を使う74口径という長砲身の高射砲よ」
杏「74口径ってことは71口径のティーガーIIよりも砲身が長いわけだね」
エミ「ええ。…初期不良や生産遅延が発生してあまり日の目を見なかったけど、このFlak41は、」
エミ「12.8cm Flak40に匹敵する最強クラスの高射砲よ…!」
杏「!」
エミ「これなら無人機はもちろん、戦車相手でも十分よ」
杏「良いねぇ良いねぇ!」
エミ(よくよく考えたらクルップじゃなくラインメタルだから自社のFlak41を出すのは当然ね)
高射砲を作るための設計図を無事に入手することが出来た。
そしてもう一つ『砲塔』の設計図だが、こちらも同じくラインメタルの担当者に相談したところ、『試作レベル』とのことだが1つ資料を提供してくれた。
それはかつてラインメタルが開発を行っていた『ゲラート554』だった。
前に話したけど、ゲラート554はパンターをベースにした対空戦車『ケーリアン』の砲塔だ。
搭載車両も搭載砲も全く違うが、このゲラート554をベースにすれば砲身を上空に向ける砲塔のヒントは得られるはず。
試作レベルと担当者は言うが、設計図は砲塔の構造を詳しく書き記してあり、資材と設備さえあればこの資料をもとにケーリアンの砲塔は十分再現できるであろう。
Flak41とゲラート554。
どちらもラインメタルが開発した機材だ。
初期不良や開発の遅れなど日の目を見なかったこれら2つの機材。
もし私達がこれらを使って成果を挙げられたら当時のエンジニアたちは喜ぶだろうか。
ともあれ、これで高射砲と砲身の資料が手に入った。
あとはこれを西住ちゃん…のソックリさんに教えてもらった会社に提供すればいい。
…ただ、どうやって、誰に依頼すればいいだろうか。
昨夜かかってきた電話は非通知だったから折り返しができない。
なのでひとまず、ここまでの進展も含め、理事長に電話で相談してみるか。
杏「…という出来事がありました」
児玉『ふむ…』
杏「電話の相手が誰かはわかりません」
杏「ですが、その人の指示に従い、砲塔と高射砲の製作に必要であろう設計図を入手しました」
杏「可能性がある限りは挑戦しようと思います」
児玉『うん』
杏「…」
児玉『そうだねぇ………』
杏「…」
児玉『お疲れ様』
杏「えっ………?」
児玉『お疲れ様。と言ったのだよ』
杏「あの、それはどういう意味でしょうか…?」
児玉『あとはその資料を私のところへ転送したら君の仕事は終わりだよ』
杏「それって…もしかして…!」
児玉『うむ。君が言った会社には既に話がついている。あとは資料だけだよ』
杏「!!!」
児玉『よく頑張ったね。見事だ』
杏「あ…あ…」
杏「ありがとうございます!!!!」
理事長との電話を終えたあと、すぐにメールで資料を送信した。
暫くしたら連盟いや、理事長から
『受理しました。お疲れ様。気をつけて帰国してください』
という返事が帰ってきた。
これでようやく私たちの役目は終わった………。
杏「………」
エミ「泣いてるの?」
杏「……んなわけないじゃん」
エミ「はいはい」
エミ「………まぁ」
杏「ん」
エミ「悪くなかったわよ。今回の旅」
杏「…」
杏「中須賀ちゃんには色々お世話になったね」
杏「ありがと」
エミ「勘違いしないでよ?みほがどーーーしてもって電話越しに土下座するから来てやっただけなんだから」
杏「まぁそういう事にしておいてあげるよ」
エミ「ちょっと、それどういうことよ!」
ピリリリ ピリリリ
エミ「ほら、電話鳴ってるわよ」
杏「わかってるよ。…おっ、今度は西住ちゃんだ」
エミ「ちゃんと"本人か"確認してよ?」
杏「あいよ」
ピッ
みほ『も、もしもし…西住です…?』
杏「おー西住ちゃん!ぐーでんもーげん!」
みほ『ふぇっ?会長…?』
杏「あー、ちょっと良い?」
みほ『え、あ、はい?』
杏「さて問題です。私の横にいる小生意気なツインテの女の子の名前はなーーーんだ?」
エミ「小生意気って何よっ!!」
みほ『え…中須賀エミちゃんですよね?』
杏「ピンポンピンポ~ン!んじゃ次の問題」
杏「河嶋が至近距離で外した時に小山は何て言ったでしょ~?」
みほ『ええっ?!えーと………も、桃ちゃんそこで外すぅ?!』
杏「おー正解!今の声録音したから後でかぁしまに聴かせてやろう」ニシシ
みほ『だ、ダメですっ!!』
杏「え~、どうしよっかな~」
みほ『あの…そんなことよりも』
杏「あはは。ごめんごめん」
みほ『戦車は…やっぱり…?』
杏「うん。私の仕事は終わったよ」
みほ『そうですか………』
杏「だから次の試合、ものすごい対空戦車が来るから!」
みほ『ふぇっ!?』
杏「いやぁ~頑張った甲斐があったねぇ」
みほ『ほ、本当ですか?!』
杏「ミンナニハナイショダヨー」
みほ『え…わかりました…?』
杏「これでウチらの役目は終わったから数日後にはソッチ戻るよ」
みほ『は、はい!お疲れ様です。そしてありがとうございます!』
杏「どーいたしまして~」
エミ「ほとんどやったの私だけどね…」ヤレヤレ
杏「それで、そっちは何か変わった事とか無い?」
みほ『特にこれといったことは無いはずです。ただ、』
みほ『決勝戦の相手は黒森峰になりました』
杏「んーそっか。楽しみだねぇ」
みほ「はい…!」
杏「わかった。お土産楽しみにしといてよー」
みほ「ええ。楽しみにしていますよ」エヘヘ
杏「あいよー。そいじゃーねー」
ピッ
エミ「…」
杏「…」
エミ「…?」
杏「…お土産、干し芋でもいいよね?」
エミ「私がみほだったら撃つね」
杏「えぇ…」
…さて、私たちの役目は終わった。
思い返せば西住流家元から1つの封筒を貰ったことがきっかけでアチコチ走り回ってた。
最初は無理だとわかっていながらも、やらないことには始まらないと強引に突破口をこじ開けた。
車体の製作が無理なら借りればいい。
借りるのが無理なら設計図を提供してもらえばいい。
道は一つじゃない。
よくよく考えれば今まで何度も無理だと思った道を何とか通ってきた。
今に始まったことじゃないんだよね。
杏「そういえば中須賀ちゃんさー」
エミ「何かしら?」
杏「帰国したあとはどうすんのー?」
エミ「そうね…特にコレといった予定はないけれど…また戦車の練習かな」
杏「そっかー」
エミ「角谷さん達は次が決勝なんでしょ?」
杏「まぁねー」
エミ「相手は結局どっちなの?」
杏「さっき西住ちゃんから黒森峰が勝ったってさー」
エミ「そう………」
杏「…」
杏「あ、そうだ中須賀ちゃん」
エミ「なに?」
杏「帰国したらさ、ウチに来ない?」
エミ「"ウチ"?」
杏「そそ。大洗女子学園」
エミ「別にいいけど…?」
杏「おっけー」
翌朝私達は日本行きの飛行機に乗り、再び12時間の空の旅を満喫…はしてないか。
いやぁもう疲れたよ。クッタクタ。あちこち走り回ったせいで旅客機のシートが快適すぎるほどだよ。
私も中須賀ちゃんも爆睡してて気がついたら空港に到着してた。
【大洗女子学園】
空が少しずつ茜色になる頃に我が学園いや楽園に到着した。
ただいま大洗女子学園。愛してる大洗女子学園。
杏「いやぁ~懐かしいねぇ~大洗女子学園」シミジミ
エミ「ほんの数日前までいたじゃない」
桃「かかか会長ぉぉぉぉぉぉぉおっぉぉぉぉぉお!!!」
杏「たっだいまぁ~♪」
柚子「お帰りなさい会長」
杏「ごくろーさん。私がいない間大丈夫だった?」
柚子「それが…」
学校に入って早々河嶋が号泣しながら抱きついてきた。こらこら鼻水がつくじゃないか。
緊急の電話が無かったから特に何もなかったとは思うが、小山の様子がなにかおかしい。
なんか、嫌な予感がするなぁ…
【戦車倉庫前】
杏「やぁー久しぶりだねみんな」
ナカジマ「会長…帰ってたんですね…」ハァ...
典子「…今頃ノコノコ帰ってくるなんて、随分と根性ありますね」ジトッ
杏「え…?」
梓「西住隊長たちの戦車が無くてピンチだというのに…今の今までどこに行ってたんですか…!」
杏「え、え…?!」
カエサル「見損なったぞ会長!これが生徒会のやることなのか!!!」
杏「」
ワーワー
ガヤガヤ
帰ってきて早々、私は戦車道メンバーから非難轟々罵声の嵐を浴びた。
日頃から顰蹙を買うような事はしてたし、こういった袋叩きにあう覚悟はあったけど…
流石に今回ばかりは何か様子がおかしい。
みほ「あっ会長、帰ってたのですね!」
杏「あ、うん…。ただいまだよ西住ちゃん…」
みほ「?」
杏「あのさ、私に向けられるこの冷たい視線の理由は一体…」
みほ「あれ?会長まだ説明してなかったんですか?」
杏「へ?」
みほ「戦車探すためドイツに行ってたって」
杏「…は?」
みほ「いえ、会長が『ミンナニハナイショダヨ』というので…」
杏「」
アホかああああああああああああああ!!!
私が『ミンナニハナイショダヨ』って言ったのは、ドイツで迷走しまくってる事についてだよ!
戦車探しに行ってること自体を内緒にしろなんて一言も言ってねーし!!!
みほ「うえええええ?!」
こっちがうえええええ?!だよ西住ちゃんっ!!
おかげであたしゃ完全に悪役じゃないか!文科省の役人並にクズだよ今の私!!
つーか河嶋も小山もどーして何も説明しなかったのさ!!
河島「知りませんでした…」
小山「出張に行くとしか聞いてなかったので…」オロオロ
ぐぬ…。
とにかく皆に事情を説明して西住ちゃん!お願いだから!
【数分後】
ナカジマ「なーんだ。そういう事だったんですね」ハハハ
典子「さすが会長です!根性ハンパないですっ!!」
梓「も、もちろん私は信じてました…!」アセアセ
カエサル「水臭いぞ会長。そういう事なら先に言えば良いものを」
やれやれ。ボロクソに言ってたクセによく言うよあんたら。
でもとりあえず誤解はとけたみたいだから安心したよ。
…これからは行き先と目的はちゃんと伝えておこう
エミ「あのさ、こっちがやれやれなんだけど」
杏「あれ?」
エミ「あれ?じゃないわよ!いつまで待たせんのよ!!」
すっかり忘れてたわ。中須賀ちゃんがいること。
そうだね。んじゃ、ちょっと生徒会室行こっか。
【会長室】
小山「どうぞ」コトン
エミ「あ、ありがとう…ございます」
杏「かーしまぁ。例の件はちゃんとやっといたよね?」
桃「はっ。問題ありません」
杏「よしよし」
エミ「それで、話って?」
杏「うん。そうだね率直に言うとね」
杏「中須賀ちゃんには大洗に短期転校してもらいたいんだよね」
エミ「はぁ!?」
そう。対空戦車を探す傍ら進めていた、もう一つの私の仕事。
それは中須賀ちゃんを大洗女子に短期間転校させ、戦力となってもらうこと。
そのため私は戦車道連盟に相談したり、河嶋らに水面下で交渉を任せてた。
彼女を大洗女子へ転校させる理由はさっきも言ったように対黒森峰戦における戦力の増強。
そしてもう一つは
作った対空戦車は彼女にも乗ってほしいからだ。
ハッキリ言うよ。
今回の対空戦車は全て彼女による功績だ。
大まかな設計、車体の選択、各社への交渉…。何から何まで中須賀ちゃんがいたから成功したのだ。
私は横にいたが戦車の知識もない。ドイツ語も喋れない。正直何一つ役に立たなかった。
だから多大なる功績を残してくれた彼女に対し『戦車完成したねバンザイ。それじゃバイバイ』というのは無礼すぎる。
中須賀ちゃんが生み出した戦車だからこそ、中須賀ちゃんに乗って欲しいのだ。
エミ「………」
杏「もちろん、強制じゃないよ。中須賀ちゃん次第ね」
エミ「………」
エミ「わかったわ」
杏「!」
エミ「…恐らく、その対空戦車は6人乗りになるでしょうから」
エミ「私が装填手の一人をやればちょうど6人」
杏「やってくれるかな。中須賀ちゃん」
エミ「ええ」
杏「交渉成立だねぃ♪」
中須賀ちゃんが快諾してくれたので、さっそく転校手続きを行った。
書類は2~3枚程度なので私が書いたアレに比べれば随分楽だ。
そして彼女に大洗女子の制服を渡した。うんうん。似合ってるよ。
ようこそ大洗女子学園へ。
エミ「………」
小山「中須賀さん?どうしたの?」
エミ「えっ?あぁ…何でもないです」
エミ(………私はこの時が来るのを待っていた?)
【再び戦車倉庫】
杏「というわけで、中須賀ちゃんが短期転校することになったから」
一同「おおおおおおおおおおおお!」
小山「ず、ずいぶんザックリですね…」ハハ...
沙織「久しぶりだねエミりんっ!」
エミ「え、えぇ…(エミりん…)」
みほ「またエミちゃんと一緒に戦車に乗れるなんて嬉しいよ!」
エミ「そうね。何年ぶりかしら」
みほ「IV号に乗ってお姉ちゃんたち相手に戦った時以来かな?」
エミ「時間が立つのは早いわね…」シンミリ
優花里「ぅぅ…西住殿と幼馴染だなんて中須賀殿が羨ましいです…」
沙織「ねぇねぇエミりん、昔のみぽりんってどんな感じだったの?」
麻子「こら。人の過去を詮索するな」
エミ「そうね…今以上にヤンチャで」
みほ「ふぇっ?!」
沙織「ほぉほぉ」キラキラ
エミ「戦車の中で大きな音たててオナラしたり」
華「え…」チラッ
沙織「や、やだもぉ…」チラッ
みほ「ち、ちょっとエミちゃん!!!/////」カァァァ
エミ「この間のお返しよ」フフン
あんこうチームはもちろん、皆の反応は良好だ。
歴女チームは歴史上の名コンビに例え、
バレー部は即戦力だと言って勧誘するし、
1年生は勝手に2人をカップリングするという三者三様の反応だ。
あとは中須賀ちゃんが個性的な大洗女子の皆と打ち解けられるかだね。
でも、とりあえず…
これで私の役目は終わった。
あとは西住ちゃんにバトンタッチしよう。
●Tips
決勝戦の3日前に私達の対空戦車がやってきた。
E-100の車体にマウスのような巨大な砲塔が載っている。
車体前面はマウスと同じ200mm、後面は150mm。
側面は120mmに加え、着脱式の追加装甲が付いている。
砲塔も上面を除いて200mmという極めて堅牢な作りになっている。
そして一番驚いたのは、その砲塔に8.8cm Flak41が2つ搭載されていたことだ。
搭載する砲は1つだけと思っていた。ところが設計が見直され、砲の数を増やしたというのだ。
中須賀ちゃんに教えてもらったようにFlak41は大戦中で最強クラスの高射砲の1つだ。
それは無人機はもちろん、戦車を相手にしても十二分な威力と言っていた。
マウスに匹敵する装甲に、ティーガーIIと同等あるいはそれ以上の砲が2つ。
まさしく最強クラスの対空戦車が大洗女子学園に届いた。
当然その戦車を見た者全員があまりのインパクトに唖然としている。
戦車に詳しい秋山ちゃんやエルヴィンちゃんはもちろん、西住ちゃんもだ。
今回の対空戦車開発に携わった中須賀ちゃんですら開いた口が塞がらないのだ。
なお、この対空戦車は設計から製作まで連盟関係者が立ち会いのもと進められたとのこと。
つまりレギュレーションに関する心配は皆無だ。
E-100 対空戦車。
こいつが大戦中に完成していたら一体どうなっていただろうか…。
― 西住さんのお姉さんのチームの相手が 私の姉のチームだったんだから
― あのとき撃った戦車の車長は あなたですよね
エミ(私はこの時が来るのを待っていた)
エミ(姉さんを打ち負かした相手…西住まほともう一度戦えるから)
― あんなこと言われたら……絶対勝たせてあげないと
― だから…ッ もっかい勝負しなさいよ……っ!!!
― 負けて悔しいって思うことはあっても 寂しいと思うことなかったのに
エミ(私はこの時が来るのを待っていた)
エミ(ベルウォールの皆が勝てなかった相手…黒森峰ともう一度戦えるから)
― お互い自分の"戦車道"を見つけたそのときに…また会お!
― みほ 約束を果たしましょう
― 約束が果たせてよかった また必ずやりましょ
― うん…また"約束"だね
エミ(私はこの時が来るのを待っていた)
エミ(私に戦車道を教えてくれたみほとの約束、もう一度果たせるから)
◆最終章 2 リトルアーミー
ということでなんとか戦車完成したから書き溜め作ってきますよー。
< ゆかりん、E-100対空戦車ってどんなの?
. /: : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : \: : : :\
/: : : //: : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : \
. /: : //: : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : ::l : : : : : \
/: /: /: : : : : : : : /: : : : : : /:∧: : : :/: : : : |: : :\ : : : :ー‐ァ
. \ー‐入: : : : !: : : : :/: :/ /: : : : /:/ 斗‐-ム、 |: : |: : : : :`ー: :<
フ: : :/: : : :|: :-‐/―- ./: :/: //__」: :/ |: : |: : |: : : : : : マ´: : 、ヽ
「∨:/: :/: : : : :|: : :/|/ァZニ、ニ ‐'/ ニ-レ ミ//|: :/: : : : : :|: |: : : | l |
| l!l: /:|:/: : : :∨/ イ 「丿ハ ´ Lノ:: | 》//: : : : : : :l /: : : |//
| | | |l |:|: : : : : \ヘヽ弋ーノ 乂ーノ イ: : : : : : : :://: : |: //
| | ヽ∨:\: : : : :ト ゝ , /_彡: : : : : :/: : : // (………どう説明すれば…)
| |_ ∨: |\: : : :>‐ ___ ∪ 7―---: : ア: :彡 '´ノ
/ ヽr ┐ヽ`ヽミ: : :込、 ∨ ノ //: : : : イ:/
/ ‐-、 / / )人{、:> 、 . イl: :イ///{(
. / `ヽ |/ / `}` トミi― ´ |∠
. l ュ‐ /ノ l /ノ| ∨\
」└- | ノ __rァ' ´ ̄ / | / \
ちなみに、E-100対空戦車は『E-100 flakpanzer』で画像検索すると出て来るよ
…架空の対空戦車だけどネ
【決勝戦の3日前 戦車倉庫】
スゲー
デケー
カッケェー
みほ「」ポカーン
優花里「さすがの西住殿も開いた口が塞がりませんね」アハハ
沙織「みぽりんだけじゃなくここにいる全員が ( ゚д゚ ) って顔だよ」
エミ「無理もないわよ…一緒に戦車探した私ですら砲身が2つもつくなんて思わなかったんだから…」
全員「」ポカーン
華「黒森峰のマウス並に大きいですわね」
麻子「話によるとマウスに匹敵する装甲に、ティーガーIIに匹敵する砲が2つだったか」
麻子「いくら連盟立ち会いのもと製作が行われたとはいえ、こんなもんが出たらド肝を抜かすだろうな」
沙織「この戦車見た人の反応がちょっと楽しみだったりする~」アハッ
みほ「あはは…会長の言った通り、ものスゴい戦車が来ちゃったね」
杏「うしし。凄いでしょ♪」
エミ「あなたはイモ食べてただけじゃない…」ハァ
沙織「会長とエミりんが並んでると姉妹っぽく見えるの私だけ?」
優花里「わかります。初めて中須賀殿を見たとき会長のお姉様かと思ったほどです」
麻子「会長のが年上なのにな」
華「会長、小さいですからね」ウフフ
杏「おいこら聞こえてっぞ」
沙織「せっかくだからみんなで乗ってみようよ!」
みほ「そうだね」
優花里「こんなおっきい戦車間近で見るのはクビンカ以来ですっ!」ワクテカ
エミ「見るだけじゃないわ。乗れるわよ」フフフ
優花里「ひやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」
みほ「あはは。優花里さん嬉しそうだね」
華「8.8cm砲…早く撃ってみたいです」ドキドキ
沙織「華はこの間撃ったじゃない」アハハ
麻子「こんな鉄の塊が果たして動くのだろうか…」
エミ「大きい分クセはあるから今のうちに慣らしておかないと試合当日に不要の長物になってしまうわね」
みほ「そうだよね。今のうちに一杯練習しようね」
【大洗女子学園 練習場】
ドゥルルルルルル.....
麻子「お、重い…IV号とは全然違うぞ…」
エミ「そりゃそうよ。IV号の6倍も重量あるんだから」
麻子「何というか…力士を満載したトラックみたいな重量感だ」グヌヌ...
沙織「なっ!あたしそんなに重くないわよ!」
麻子「お前なんぞコイツ(E-100)に比べたら屁でもない」
沙織「もー!麻子きたない!」ヤダモー
エミ「ゆっくり、ね。IV号と違ってこの子は無茶するとすぐに減速機やエンジンがお釈迦になるわ」
麻子「了解だ」ガコン
優花里「重いといえば砲弾も8.8cmなので重量が…」ヌォォ
みほ「足に落とさないよう注意してね」
華「早く撃ってみたいです」ソワソワ
エミ「そうね。ちょうど前方にM3 Leeがあるから試しに撃ってみる?」
優季『ふぇっ!?ウチらぁ?!』
あや『ほら!優季が沙織先輩の悪口言ったから先輩たち怒っちゃったじゃない!!』
優季『それ絶対違うよぉ!』
梓『た、隊長との勝負…!』ドキドキ
あゆみ『梓しっかりして!無理ゲーだから!』
みほ「え、エミちゃん…?」
エミ「冗談よ。心配しないで」
沙織「さすがに後輩にそんなイジワルしないよ」アハハ
沙織「それに弱い者いじめはモテない人のやる行為だしね!」
ウサギ『』ホッ
桂利奈『あれ?でも沙織先輩がモテないのは?』ハテ
あゆみ『ちょっ!桂利奈ちゃん!!』
沙織「華。やっぱ撃っていいよ。2発とも」シレッ
華「えっ、良いのですか?!」オロオロ
ウサギ『いやああああああああああああああ!!』
麻子「沙織、そのへんにしておけ」
沙織「ぶぅ」
紗希『………』ボー
【数分後】
沙織「皆さん、聞いてください」ザザッ
沙織「E-100対空戦車の運行をテストするので」ザッ
杏『へ?う●こする?』
沙織「う・ん・こ・う!!!///」ザザッ
アハハハハ!
カイチョウッタラァ!!
ヤダモォォォォ!!!
エルヴィン『あまり賛同したくはないが…その、確かにそう聞こえたぞ…?』
沙織「うn…そんなこと言うわけ無いでしょっ!」ザザー
杏『なんかさー、そっちノイズ酷くない?』
優季『確かにザーザー言ってますぅ。なんか雨降ってるみたい』
沙織「えー?」ザザッ
ねこにゃー『なんか力尽きたサイボーグみたいだにゃー』
優花里「周波数は大丈夫ですよね?」
沙織「うん。合ってるよ?」
麻子「一応こんなでもアマチュア無線の資格所持者だ。そんなミスはしないはず」
沙織「こんなでもって何よー!」
みほ「まぁまぁ」アハハ
< オーイ! タケベサーン!!
優花里「おや?ナカジマ殿が呼んでますよ武部殿」
沙織「はーい?」カチャッ
ナカジマ「ちょっと冷泉さんに"変速機"あるかどうか聞いてみてよ」
沙織「麻子、ヘンソーキってある?」
麻子「ヘンソウ?変速機だろう?…そんなものなかったはずだが?」
沙織「無いみたいですー」
ナカジマ「やっぱりか」
沙織「???」
みほ「あっ…」
優花里「なるほど…」
エミ「マジか…」
沙織「えっ?なになに!?」
エミ「もしかして、"ガス・エレクトリック方式"ってことでしょう?」
ナカジマ「そーゆーこと!たぶん発電機の電磁波が無線機と引っかかってノイズ発生してるんだと思うよー」
沙織「えーっ!?それじゃ通信どうすんのよー!」ヤダモー
みほ「あはは」
エミ「はは…」
優花里「えへへ」
沙織「え?なによ?アタシ何かヘンなこと言った?!」
ナカジマ「あっはっは♪」
沙織「ぴぃっ?!」ビクッ
ナカジマ「ウ チ ら が 直 し た げ る ♡」ニッコリ
沙織「で、出来るの?…っていうかすんごい嬉しそう?!」ゾワーッ
みほ「出来るというか、」
優花里「ナカジマ殿たちレオポンさんの、」
エミ「ポルシェティーガーも、」
ナカジマ「ガス・エレクトリック方式だからね!!」バーン!
ツチヤ・ホシノ・スズキ「イエーーーーーーイ!!!」
沙織「うわっ!いつの間にぃ?!」ビクッ
「おいホシノ見ろよ!!マイバッハHL234 V型12気筒液冷エンジンだぞ!!!」パァァァ
「うぉぉぉぉぉぉすげぇぇぇぇ!!これウチの子にも入れようぜ!!!800馬力出るぞ!!!」カチャカチャ
「これなら普通の車とレースしても勝てるっしょ!!」
「レオポンチームからチーターチームに改名だなっ!!」
「名前変わってもツチヤはライオン(ランオン)だけどなっ!」
「しつけーよバッキャロー!!!」ガァァ!
「「「ワハハハハハハハハハ!!」」」
ワイワイ ガヤガヤ
みほ「あはは…」
沙織「なんだか水を得た魚のようだね…」
優花里「さすがレオポン殿ですね。何というかこの国の自動車業界は安泰です」アハハ
華「うふふ。大変結構でございます」
エミ「内部見たことなかったけど、ムッチャクチャな構造してるのね…」
麻子「zzz...」
ナカジマ「はい、直ったよ!」
エミ「早っ!?」
沙織「もしもーし?」
杏『お、ノイズ無くなったよーいい感じぃー!』ピースピース
優季『こっちも大丈夫ですぅ~』
そど子『良い返事よ!』
ねこにゃー『こっちもおっけーだにゃー』
沙織「それでは、こちらの無線機も改善しましたので、本題に入ります」
沙織「E-100対空戦車の運行をテストするので、これより紅白戦を行おうと思います!」
全員『』
カエサル『ちょっとまだ無線の調子悪いみたいだ。よく聞こえないな』シレッ
沙織「あ、カルパッチョさんだ」
カエサル『ヒナちゃん?!どこどこ?!』ガタッ
沙織「聞こえてんじゃない!!」
カエサル『あっ、しまっ…!』
エルヴィン『このバカタレがっ!』
桃『おおおお、おい!それはつまりわ、我々にそそ、ソイツの的になれってことk 『かぁーしま落ち着け』
ナカジマ『ウチらのポルシェがちっさく見えるから凄いよね…』ハハハ
妙子『私達でも根性さえあれば撃破…できるのかなぁ……』
エミ「チーム編成なんだけどさ」
みほ「うん」
エミ「私達 vs 全員で行ってみない?」
みほ「えっ!?」
優花里「いっ、1対7ですかぁ?!」
エミ「ええ。黒森峰も私達の戦車を知ったら真っ先に潰そうとしてくるわ」
みほ「確かに」
沙織「こんな戦車が試合会場に出てきたら注目の的だもんねー」
麻子「見つかったら逃げ切るのはまず無理だな」
エミ「そうよ。だから1対多数の戦闘に慣れておかないといけない」
エミ「この戦車1つで黒森峰を壊滅させるくらいにね」ニタァ...
みほ「あはは…そうだよね(またエミちゃん悪いこと考えてる顔してるよ)」
華「それならたくさん撃てるので楽しみです」フフッ
沙織「あんこうチームより全車輛へ」
沙織「ただいま話し合った結果、私達あんこうチームとそれ以外というチーム分けにしようと思います」
全員『』
桃『くぉるぁぁ西住ぃ!!貴様やっぱり我々を的に『落ち着けかぁーしま。イモ食べろイモ』
梓『に、西住隊長、それはどういう…』
みほ「はい。やはり我々の対空戦車はあらゆる意味で目立つため真っ先に狙われるでしょう」
みほ「そのため、1対多数を想定した練習を行おうと思った次第です」
みほ「ですから、皆さん」
みほ「全力で私の"首"を取りに来てください!」
全員『!!!』
エミ(言うようになったじゃない…)フッ
杏『言うね~西住ちゃん』モグモグ
桃『フフフ面白い。ならばお望みどおりその首頂戴するぞ西住!!』
柚子『逆に桃ちゃんがクビにならないようにね?』
桃『そりゃどういう意味だっ!!』
あや『西住隊長すっごい自信だねー』
桂利奈『あんなでっかいのに乗ってたら誰でも自信ついちゃうよ!』
あゆみ『主砲はおっきいし装甲は硬いもんね…』
優季『あんな大っきいの無理だよぉ…』
紗希『………』
梓『でも、味方と上手く連携して接近して弱点を狙えばきっといけるっ!』
優季『ねぇ梓ぁ?』
梓『ん?』
優季『もしも私たちが西住隊長やっつけたらどうするぅ?』
梓『へ?どうするって?』
優季『きっと"さすが澤さん!私の自慢の後輩です!"って言うかも~』
梓『………』
あや『何かご褒美もらえるかもよー?』
梓『………』
梓『いい?!何が何でも私達が西住隊長の首とか色々もぎ取りに行くよ!!』
あゆみ(首とか色々って何だろ…)ヒソヒソ
あや(体操服とか?)ヒソヒソ
桂利奈(あい?替え持ってないの?)ヒソヒソ
優季(もぉ~梓はエッチねぇー)ヒソヒソ
梓『う、うるさーーーーい!!!!』ガァァァ
カエサル『シモ・ヘイヘだな』
左衛門佐『ここは上杉謙信だろう』
エルヴィン『いやオットー・カリウスだろ』
おりょう『西住小次郎しかいないぜよ』
『『『それだ!!!』』』
あけび『あのE-100って戦車、6人乗りなんですよね?』
典子『そうだな。砲が2つで装填手も2人いるみたいだよ』
妙子『となると砲塔内結構狭いんじゃ?』
典子『んー…まぁそうだろうねぇ』
忍『』ジー
あけび『』ジー
妙子『』ジー
典子『な、何だよお前たち…』
エミ「ふふふっ。どうやら皆やる気マンマンのようね」
みほ(あはは…そうかなぁ…)
エミ「ほら、西住隊長」ポン
みほ「えっ?あ、はい!」
エミ「号令かけちゃいなさいよ」
みほ「そうだね。…それでは皆さん、試合は5分後にスタートします」
みほ「各車輌、万全の準備をした上で私達にかかってきてください!」
みほ「こちらも一切の手を抜くことなくお相手致しますっ!!」
全車輛『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
みほ「それではご武運を!パンツァー・フォー!!」
【紅白試合 あんこうチーム】
みほ「来ましたね」
優花里「さすが綺麗な隊列を組んでますねぇ!」
みほ「うん。あれだけ速度を合わせて隊列を乱さないで動けるなんて凄い…!」
華「聖グロリアーナとの練習試合を思い出しますわ」
沙織「ウチらがあんな綺麗な隊列を組めるなんてあの時は思わなかったなぁ」
みほ「うん。いっぱい練習した甲斐があったよね!」
エミ「…」←疎外感
みほ「あ、え、エミちゃんごめん…」アセアセ
エミ「…いいわよ別に」ムスッ
優花里「こちらの砲だとこの距離は届くのでしょうか?」
みほ「そこは戦術と腕かな?」
華「先頭は89式、その後ろに三式とヘッツァー」
優花里「どうやら二手に分かれるみたいですねぇ」
エミ「妥当な判断ね。全車輛で攻めたとして、こちらの危険領域に達するまでにアウトレンジから壊滅できる」
沙織「そんなこと出来るの?!」
エミ「撃ってみればわかるわよ」
華「いいですか?」ワクワク
みほ「うん。華さんの判断でお願いします」
華「わかりました」
カチッ
ズガァァァァァァァァァァン!!!!
ズシャーーン!!
華「…」
エミ「外れたわね」
華「………」
麻子「らしくないな。ずいぶん見当違いな所に飛んでいったぞ?」
みほ「華さん…?」
華「…全然違います」
みほ「違う?」
華「はい…。何と言いますか…」
華「全然落ちないのです」
みほ「落ちない??」
華「砲弾は放物線を描いて飛んでいきます」
華「なので、遠方の戦車を狙う時は、砲身を上に向けて山なりに撃たなければなりません」
みほ「うん」
華「そのため…8.8cmということもあり、先日のポルシェティーガーの時と同じ照準合わせで狙ったつもりですが…」
華「それでも弾が落ちませんでした」
沙織「それって凄いの?」
麻子「今ので砲弾が落ちないということは、少なくともポルシェティーガーの8.8cm砲よりも高いエネルギーを持っているという証拠だ」
沙織「えっ、すごいくない?!」
みほ「つまり、今の弾はポルシェティーガーの砲だったら落ちて狙ったところに命中したということかな?」
華「はい」
優花里「五十鈴殿があれだけ外してしまうほど弾道に差が出るなんて…」
エミ「それがFlak41よ」
みほ「エミちゃん…?」
エミ「口径も違えば装薬量も違う」
エミ「初速も威力も何もかもがティーガーのソレとは段違い。もはや既存の砲とは別モンと考えたほうが良いわ」
優花里「そんなに凄いんですねFlak41…」
華「もう1発、宜しいでしょうか?」
みほ「うん。お願い華さん」
エミ「五十鈴さん」
華「はい。何でしょうか?」
エミ「"Pak43"および"KwK43"の砲口初速、被帽徹甲弾を使ったときが1,000/sで」
エミ「タングステン弾芯の合成硬核徹甲弾(高速徹甲弾)を使えば1130m/sになるわ」
華「はい」
エミ「これは距離2,000mで185mmの均質圧延装甲を貫通でき」
みほ「っ…!」
エミ「1,000mも接近すれば貫通力は245mmにも達する」
華「ええ」
みほ「つまり黒森峰のティーガーを正面から撃破できる」
華「なっ…!」
エミ「ただ…」
華「ただ?」
エミ「それはあくまで"Pak43"の数値であって、砲身長や装薬量の増えた"Flak41"なら更に貫通力は増すはず」
エミ「しかも当時の数値がそれで、現代技術で作った砲なら更に精度や性能はアップしていると見て良いわ」
エミ「そう考えるとティーガーIどころか、」
エミ「ヤークトティーガーの250mm装甲板も800m以下でブチ抜ける」
華「!!!」
みほ「実際はそこまで上手くいくとは思わないね。返り討ちにあっちゃうから」
みほ「それにヤークトティーガーは側面が80mmだから、わざわざ危険を冒して正面を狙う必要は無いかな」アハハ
エミ「…う、うるさいわよ!///」カァァ
優花里「でも、黒森峰の重戦車相手に不足はないことは分かりました!」
華「ええ。ティーガーやパンターをこの手でスクラップにしてみたいですわ」フフッ
沙織「あっ!相手チーム方向を変えたよ!森の方へ向かっていく!」
華「かしこまりました…」キュラキュラ...
カチッ
ズガァァァァァァァァァァン!!!!!!
シュパッ!
みほ「アリクイさんの三式に命中しました!」
優花里「凄いです五十鈴殿!たった1発で弾道を修正できるなんて!」
エミ「ほら!秋山さん装填!」
優花里「あっ、り、了解でありますっ!」ガコン
エミ(ホントよね…)
エミ(たった1発撃っただけで弾道のクセを把握しちゃうなんて)
エミ(みほ、あなたの仲間たち、タダ者じゃないわよ…!)
みほ(その後、距離にして1,500mほどのアウトレンジ射撃で装甲の薄い89式やM3リー、ヘッツァーを相次いで撃破)
みほ(二手に分かれた挟撃もE-100の装甲は一切受け付けず、ポルシェティーガー、ルノーB1、三突と撃破)
みほ(結論を言うと紅白戦は私達が勝ちました。完勝です)
みほ(強力な高射砲を搭載し、強靭な装甲を纏うE-100対空戦車は、"陸上戦艦"の名に相応しい力を発揮しました)
みほ(…なお、試合後には皆さんから強すぎるだの不死身の分隊長だのチートだの非難轟々でした。その点については本当に申し訳ありません…)
みほ(同時にこの戦車のイレギュラーな性能には皆が納得しており、これなら黒森峰の猛獣を倒せると誰もが確信していました)
みほ(しかし、操縦は麻子さんはもちろん、ポルシェティーガーのツチヤさんでさえ"横着い"と言わせるほどで)
みほ(Flak41や堅牢な装甲を纏った砲塔は華さんを以てしても"扱いづらい…"と評価され)
みほ(変速機の負荷を軽減させるためのガス・エレクトリック方式は、沙織さんより"無線のノイズひどい!"という副作用をもたらしました)
みほ(…まぁこれは改善したけどね)
みほ(何にせよ、このイレギュラーな戦車は、様々な代償をと引き換えにその力を発揮しているということは誰もが理解していました)
みほ(それから私達は3日間、一 対 全員の"ボコボコ作戦"を中心に、時間の許す限り練習に明け暮れました)
みほ(その結果、麻子さんはIV号の時と同じくらい操縦技術を身に着け、)
みほ(華さんは1,500m以上の命中率が向上)
みほ(それ以外の車輌も命中精度、操縦技術、連携が向上し、ますます能力の向上を実感しました)
みほ(戦車の数や性能は他の強豪校に劣りますが、そこを戦術と腕でカバーすべく、個々の能力の底上げに努めた3日間でした)
みほ(そして、決勝戦の日がやってきました)
ということで、またチャージをしてまいります。
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i ゝi::|ヽ:::::|ゝi  ̄ ノ ゝ、| ̄ ̄ィ∥ i:::::ノ:;ノ .|:::::::: : :|
. i: ::::::| |\|\i ‐‐ ´ , -、 ̄ ̄u''ノ// |:::::::: : :|
i: : ::::| | :::| 、 r ´ 丿 ノ"::;/ |::::::: : ::| Flak41を直撃しても
. i: : ::::| | :::| >  ̄ イ::;/ .|:::::: : : | メガネが割れる程度で済む大野さん(※イメージ)
i: : :::::| .| :::| >--< |/ |:::::: : : |
|: : :::::| | :::| ._| |_ |::::::: : :|
|゙ ̄ ̄||::::| /_/ > ` ‐- _ i:::::::. ::|
| ||:::| , ィ ' ´ i‐‐- -‐‐/ / /冫‐、 i:::::::: :|
| ||::| / !. !. |=====/ /// i i::::::::.|
| ||:| i \\ |. † / // / i i::::::::|
●Tips
エミ「ねぇ、角谷さん」
杏「んー?」
エミ「結局、あの電話の相手は誰かわかったの?」
杏「いや?」
エミ「そう…」
みほ「あの、私のニセモノなんですよね…」オロオロ
優花里「信じられないですねぇ…西住殿ソックリさんがいるなんて…」
杏「そうそう。あまりにソックリだから中須賀ちゃんが冗談言ってるんじゃないかと思うほどだよ」
エミ「いや、明らかに違ったわよ」
みほ「えぇ…」
杏「で、その西住ちゃんのソックリさんに、会社紹介されて、それを連盟の児玉さんに話した結果、コイツが完成したってわけよ」
E-100 対空戦車
みほ「その会社とは?」
杏「砲塔の装甲がシラヌイ重厚、高射砲の砲身がツクバ製鋼所、ヒトエ技研に砲弾、高射砲の残りがシマキ金属。あと何だったっけ?」
エミ「チトセ設計よ。砲塔や砲身の設計の」
杏「そうそう」
柚子「そんな会社ありましたっけ?」
エミ「えっ?」
桃「一応あることはあるみたいだが」
杏「そりゃ無かったらコイツ作れないでしょ」
みほ「………」
優花里「どうされました西住殿?」
みほ「私…電話の相手、わかりました…」
全員「えええっ!?」
シラヌイ重工
ツクバ製鋼所
ヒトエ技研
シマキ金属
チトセ設計
不知火重厚
筑波製鋼所
単 技研
四万騎金属
千歳 設計
皆は気付いてくれたよね?
●Tipsおしまい
さて、また再開します。
今回から少しオリキャラが入ってきます。ご了承くださいませ。
【決勝戦当日 試合会場 広場】
麻子「………夜戦と言うものがあって良いと思うのだが…」フラ...
沙織「あはは…麻子じゃなくても6時集合は辛いよね」
華「お腹すきましたわね」
エミ「…さっきオニギリ食べたじゃない。5つも」ヤレヤレ
優花里「」ファァ
「ふふっ。随分大きなあくびですこと」
優花里「ほぇ?」ポケー
アッサム「御機嫌よう。大洗の皆様」
オレンジペコ「おはようございます」ペコリ
沙織「お早うございます。その……セイロンさんでしたっけ?」
アッサム「っぐ…!だからアッサムですってば!」グヌヌ
沙織「ふぁっ?!ご、ごめんなさいーっ!!」ワタワタ
オレンジペコ「どういうわけか色んな方に間違えられるんですよね…」アハハ
アッサム「笑い声じゃありませんのよ!」
華(その節は大変失礼しました…)
みほ「あれ?そういえばダージリンさんは?」
沙織「ホントだ。ダージリンさんいない??」
アッサム「ああ…」
オレンジペコ「あ…あの…」
みほ「?」
「ダージリン様は現在、静養中でございます」
優花里「えっ?そうなのですか!?」
アッサム「ええ。…ちょっと体調を崩されて」
オレンジペコ「何しろここ最近は忙しかったですからね…」
みほ「そうなんですか…」
沙織「だんだん寒くなって来たし、私達も気を付けないとだねー」
優花里「ところであなたは…」
華「確か…初めてお会いする方ですよね?」
「ご挨拶が遅れました」
ヴェニフーキ「聖グロリアーナ隊長車・砲手の"ヴェニフーキ"と申します」
ヴェニフーキ「どうぞ、お見知りおきを」
華「ヴェニフーキさんですね。私、大洗女子の隊長車の砲手を務める五十鈴華です。宜しくお願い致します」フカブカ
みほ「よろしくお願いします」ペコリ
沙織「あれ?でも隊長車の砲手って確かアッサムさんじゃ?」
麻子「ダージリンさんが休養中だから配置が変わったのだろう」
沙織「麻子起きてたの?」
麻子「寝ながら聞いてた」
オレンジペコ「器用ですね」クスッ
アッサム「先述の事情により、今は私がグロリアーナの車長と隊長を兼任しています」
アッサム「それ故、空いた砲手席にはこのヴェニフーキに座ってもらった次第ですわ」
華「そうでしたか。同じ砲手としていつかお手合わせ出来ればです」
ヴェニフーキ「ええ。その時は是非」
優花里「ときにヴェニフーキ殿はエキシビション戦や大学選抜戦ではお会いしなかったですよね?」
ヴェニフーキ「はい。今までは家の都合でイギリスへ留学しておりました」
ヴェニフーキ「そして丁度この大会の準決勝が終わる頃こちらへ転校し、今後はこちらでお世話になります」
華「まぁ。帰国子女ですのね!」
アッサム「さて、大洗の皆様、朝早くのご活動でしょうから、気付けとしてお目覚めのコーヒーでも如何でしょう?」フフッ
オレンジペコ「お食事も用意してありますよ」
華「お食事?!ありがとうございます!」ガタッ
エミ「わっ?!」ビクッ
麻子「おぉ…有り難い…」スピー
優花里「あはは。冷泉殿ったら寝ながら喋ってますよ」
オレンジペコ「き、器用ですね…」ハハ...
沙織「へー。聖グロもコーヒーとか飲むんだぁ」
アッサム「どういうわけか、コーヒー嫌いのダージリンが唯一飲む銘柄ですわ」
優花里「それは凄く美味しいんでしょうね!」キラキラ
エミ(COFFEE SHIRATORI…か)
エミ(良かったわね。キリマンジェロ)
ヴェニフーキ「ところで、西住さん」
みほ「はい、何でしょう?」
ヴェニフーキ「先日の試合で、戦車が再起不能になったとお聞きしましたのですが」
オレンジペコ「無人機が落ちて壊れちゃったんですよね…」
みほ「はい。でもうちの生徒会長のお陰で代替車輌をなんとか手配することが出来ました」
オレンジペコ「! 良かったぁ…」ホッ
ヴェニフーキ「間に合って良かったです」
沙織「ふふふ。すっごい戦車ですからね!きっと見たら驚きますよ!」
オレンジペコ「ええ!とても楽しみです!」ワクワクペコペコ
アッサム「そういえば他の方は?」
みほ「あ、時間がくるまで自由行動としていますので、各自で朝食など取られているかと」
アッサム「そうでしたのね。てっきりここにいる人で全員かと」フフッ
オレンジペコ「そんなわけないじゃないですかぁ…」ジトッ
みほ「あははは。私達だけで試合には勝てませんよ」
【グロリアーナとのお茶会の後】
優花里「ふぅ。お腹いっぱいですっ!」ポンポン
華「ふふ。腹七分目といったところですね」
エミ「あなたは食べ過ぎよ。どこに入っていくのよ…」
麻子「コーヒーも美味しかった。あれなら毎朝飲めるぞ」
沙織「ミルクと砂糖ガンガン入れてたくせに」アハハ
優花里「聖グロというと紅茶ってイメージですけど、コーヒーを飲む人もいるみたいですよ」
みほ「そこは人それぞれかな」
沙織「そ・れ・よ・りっ!転校生のヴェニフーキさん超カッコ良かったよねっ!!」キラキラ
優花里「そ、そうでしたか?私はちょっぴり苦手なタイプかもです…」アハハ
沙織「銀色のストレートヘアに赤い目、そしてクールっていうか冷静沈着っていうかぁ~~~」ヤダモー!
みほ「髪の色はエリカさんに似てたけど、エリカさんより上品な感じだったね」
優花里(何気に酷いこと言いますね西住殿…)
沙織「あの雰囲気たまんないよ~!あれで男だったら私落ちちゃう~~!」ヤダモー!!
華「ふふ。沙織さんはヴェニフーキさんのような方が好みなのですね」
麻子「うむ。あの落ち着きは沙織に少し分けて欲しいくらいだな」
沙織「ちょっと麻子!それどういう事よ!!」
アハハハハハハ
優花里「目つきも鋭かったですね。有無を言わせないオーラ放ってました…!」
沙織「あのギラリとした目が良いんだってば~!」
みほ「私はちょっと…」アハハ
エミ「あなたはお母さんによく"ギラリ"とされてるもんね…」
みほ「うん…」
華「あらゆる意味で聖グロにはいないタイプでしたね」
沙織「確かに。お嬢様とはちょっと違うかな?何というか…"ゴシック"って感じ?」
麻子「なんだその例えは。…まぁわからんこともないが」
エミ(転校生かぁ…)
「また会ったわね。みほ」
みほ「あっ、エリカさんとお姉ちゃん!」
エミ「!」ピクッ
まほ「元気そうだな。みほ」
みほ「うん。お姉ちゃんたちも元気だった?」
まほ「まぁ…そこそこn
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
全員「」ビクッ
「ナカスガエミ!?なんでアナタがここに!?」
エミ「っ!この声…!」
「ここで会ったが <ツネッ> あいでででで!!!?」
エリカ「はしゃぐんじゃない!!」
エミ「ツェスカ…!」
― 会えるかもとは思ってたけど…まさかこんな形にとはねッ
― やっぱりあなたは最低ね
― ……じゃぁ私も こんなチームいらないわ
エミ(………)
エミ「そういえばあなたも黒森峰だったもんね」
ツェスカ「忘れてたのかよ!…というかエミはどうして大洗に…?」
エミ「転校よ短期の。またすぐにベルウォールに戻るわ」
ツェスカ「そう…。まぁいいわ。今回もあなたをコテンパンにしてやるから覚悟してなさい!!!」
エリカ「静かにしなさい!」ツネッ
ツェスカ「いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」ジタバタ
エミ「…相変わらずね」
みほ「エリカさんの手を焼かせるなんて凄いなぁ…」ハハハ...
まほ「中須賀さんも久しぶり。前回の優勝記念杯以来だな」
エミ「ええ。お久しぶりです」
エミ「………ん?」
まほ「?」
エミ「確か、引退されたのでは?」
まほ「ああ。本来ならそうなるが、無人機の件があって、もう一度戦車に乗ることにした」
エミ「そうなんですか」
みほ「てっきりエリカさんが泣きついたのかと」アハハ
エリカ「ちょっとそれどういう意味よ!」
まほ「あはは。そろそろエリカにも頑張ってもらわないとな」
エリカ「た、隊長!私だって…!」
まほ「…それで、どういうわけか戦車道に"邪魔者"が入ってきたせいで、我々も色々手を焼いてね」
エミ「無人機ですよね。私もあり得ない改定だと思っています」
みほ「お姉ちゃん達もやっぱり無人機を…」
まほ「ああ。試合となっては話は別。我々は3機の無人機をフル投入して全力で挑むつもりだ」
優花里「…あの、つかぬ事を伺いますが」
まほ「何かな?」
優花里「"スツーカ"、出ますでしょうか?」
まほ「えっ?」
優花里「スツーカです。ユンカースのJu78です」
まほ「あぁ…。そいつは準決勝では使用したが、今回は出さないつもりだ」
優花里「そうですか…」シュン
みほ「それって優花里さん好きな機体とか?」
優花里「急降下爆撃機といえばJu78!Ju78といえば"カノーネンフォーゲル"ことJu78Gですっ!」
優花里「あの"ソ連人民最大の敵"とまで言わしめたルーデル閣下が!牛乳飲んで赤軍戦車をバタバタと倒していくっ!!」
優花里「くぅぅぅ!たまんないですぅ~~!!」ワシャワシャ
みほ「へ、へぇ…」
エミ「私達はバタバタ倒される側なんだけど」
みほ「やめてよ縁起でもない」アハハ...
まほ「確かに有名な機体ではあるが、それはエースが乗っていたからだろう」
まほ「実際に使った者は"操縦が恐ろしく難しい機体"と言っていた」
みほ「そうなんだ。やっぱりエースが使うから凄いんだよね」
まほ「そうだな。そしてそれは戦車でも言えること」
みほ「うん。そうだよね」
まほ「そして、みほ」
みほ「ん?」
まほ「戦車道において無人機は誰も"歓迎していない"」
みほ「………」
みほ「そうだね」
まほ「だがルールである以上、私達はそれを使わなければならない……」
みほ「!」
まほ「だから…悔いのないよう全力でかかってこい」
みほ「勿論だよ」
まほ「…さて、それでは我々は準備に戻る。みほ、そして大洗の皆、試合で会おう」
みほ「うん、あとでね」
みほ「………」
みほ(お姉ちゃんも本当は無人機なんか使いたくないんだね………)
「西住さん」
みほ「え、はい?」
ヴェニフーキ「…」
みほ「あ…えっと、ヴェニフーキさん…??」
ヴェニフーキ「試合まで時間があります。差し支えなければお話を」
みほ「はい?」
沙織「ヴェニフーキさんに口説かれてるのみぽりんっ?!」
ヴェニフーキ「…」
麻子「お前は引っ込んでろ」ゲシッ
沙織「痛いっ!!?」
ヴェニフーキ「…」
みほ「?」
ヴェニフーキ「場所を変えましょう」
【試合会場 ???】
ヴェニフーキ「…」スタスタ
みほ「あの…お話って…?」
ヴェニフーキ「そうですね。ここでなら」
みほ(結構離れちゃったよ…一体何を話すんだろ…)
ヴェニフーキ「西住さん」
みほ「は、はいっ!?」ビクッ
ヴェニフーキ「決勝戦、勝てそうですか?」
みほ「え…。その、」
みほ「ここまで来たからには勝つつもりで臨みます」
ヴェニフーキ「そう」
みほ「…」
ヴェニフーキ「…」
みほ「あの、お話ってこれだけですか…?」
ヴェニフーキ「この試合、」
ヴェニフーキ「あなたは99%負ける」
みほ「っ!!!」
ヴェニフーキ「…」
みほ「それを…」
みほ「………それをわざわざ言うために私をここへ呼んだのですか?」
ヴェニフーキ「いえ」
みほ「だったらどうしてそんなことを…!」
ヴェニフーキ「私がお話しすべきことは、99%ではなく、1%の方」
みほ「はい…?」
ヴェニフーキ「確かに99%負けるとは言いました」
ヴェニフーキ「しかし、残りの1%で成功すれば」
ヴェニフーキ「大洗は黒森峰に完勝します」
みほ「なっ…」
ヴェニフーキ「…」
みほ「か、完勝って…その…」
ヴェニフーキ「読んで字の如く、圧倒的な差をつけて勝つことです」
みほ「い、言ってることの意味がわかりません!」
みほ「99%負けると言ったと思えば1%で完勝だなんて誰が信じるんですか!」
みほ「相手は優勝常連校の黒森峰ですよ?! 前回の大会でもギリギリだったのに完勝なんて!」
みほ「それに今回は無人機も出てきます!どう
ヴェニフーキ「無人機などもはや敵ではない」
みほ「えっ…!?」
ヴェニフーキ「これを」サッ
みほ「これは試合会場の地図…ですよね…?」
ヴェニフーキ「はい」
みほ「これが何か…」
ヴェニフーキ「「この会場の中に一箇所だけ」
みほ「…?」
ヴェニフーキ「黒森峰を一方的に葬れる場所があります」
みほ「なっ!!?」
ヴェニフーキ「そこをあなたが、あなたの戦車が押さえれば、大洗女子の勝ち」
ヴェニフーキ「そうでなければ負け」
みほ「そ、その場所って…」
ヴェニフーキ「申し訳ありませんが、私の助言はここまで」
みほ「…」
ヴェニフーキ「では、時間ですので戻りましょう」
【 http://i.imgur.com/33eMmBk.png 】
みほ(この広大な会場にたった一箇所だけ………!?)
今回はここまでです。
乙
オリキャラは良いんだけど
アッサムはポジション奪われてたの?
まぁ、話に関係無いから良いんだけど
>>752
アッサムのポジは>>734の通りですね。
・ダージリンが静養中なので聖グロの隊長および隊長車(チャーチル歩兵戦車)の車長が不在になる
・なのでアッサムが臨時の隊長および隊長車の車長をする(つまりダージリンの代わり)
・しかしそうなると(砲手だったアッサムが戦車長になるので)砲手席が空く
・なので謎の転校生ヴェニフーキが砲手として代役を務める
・みんな大好きペコ太郎はそのまま装填手。
と言った感じですね。分かりにくくてスマソ。
ダー様はきっと今頃自室でクシュンクシュン言ってる頃だと思います。たぶん。
わざわざオリキャラだす必要ある?
>>755
それはストーリーが進むにつれて明らかになるでしょう
さて、それでは続きを書いていきます。
【試合会場 選手待機場所】
沙織「いよいよだね…」
華「ええ。私、なんだか緊張してまいりました…」
麻子「前回はギリギリ勝ったが、今回はどうなるだろうか」
エミ「今回は無人機もあるし相当厳しい戦いになるわね」
優花里「そうそう。無人機で思い出しました」
エミ「ん?」
優花里「無人機といえば先程のやり取りで一部情報に誤りがありました。すみません…」
エミ「へ?」
× Ju78
○ Ju87
優花里「不肖・秋山優花里、まだまだ修行が足りませんっ!!」
エミ「う、うん…?」
※本当は>>1が間違いました。すみませんm(__)m
みほ「…」ブツブツ
優花里「あっ、西住殿が戻ってきました」
沙織「もー!みぽりんったらこんな時に何処行ってた…の…?」
みほ「…」ジー
沙織「みぽりん…?」
優花里「西住殿が見ておられるのは試合会場の地図ですよね?」
華「随分熱心に見ておられますね…」
沙織「み・ぽ・り・ん・っ!!」
みほ「ふぇっ!?あ、えっ…?」
華「あの、大丈夫ですか?」
みほ「うん、ごめんなさい」
沙織「もーっ!試合前だってのにどうしちゃったのよー!」
みほ「…ちょっと、ね?」
麻子「周りに全然気付かなくなるほど地図を眺めて一体どうしたんだ?」
みほ「えっとね、どうやって攻めようかなぁって…」
麻子「そうか…。だがあまり煮詰めすぎてもいけないから程々にな?」
みほ「うん、ありがと」
みほ(確かに。1箇所だけ、怪しいところがある…)
みほ(でも本当にココだという確証は無い)
みほ(もしも間違えたら、その時点で負け…!?)
みほ(やっぱり、セオリー通り行くか。………いや、それとも…)
エミ「………」
エミ「みほ」
みほ「…」ブツブツ
エミ「みほッ!!」
みほ「ふぇぅっ!?え、エミちゃん?!」ドキドキ
エミ「話しなさいよ」
みほ「えっ?」
エミ「あの女と何を話したのか」
みほ「あはは…」
エミ「私にも話せない事なの?」
みほ「えっ……」
エミ「初対面の人間とは話せて、何年も前から友達やってきた私や」
エミ「ずっとチームやってきた皆に話せないことって何?」
みほ「…」
エミ「…」
みほ「…実はね」
あんこうチーム「…」
エミ「たった、1箇所だけねぇ…」
優花里「そしてその1箇所を見つければ"完勝"すると…」
麻子「信じがたい話だ」
華「私も麻子さんと同じです。あの黒森峰を相手に完勝だなんて…」
沙織「胡散臭いよね。なんか一攫千金の儲け話みたい」
みほ「…」
エミ「で、あなたはその1箇所に心当たりはあるの?」
みほ「うん…」
みほ「私はここだと思った」ポン
全員「………?」
麻子「西住さん、そこは前線から結構離れた場所に見えるが…?」
沙織「そうだよね。私は川の周辺じゃないかなーって思ったよ」
みほ「私もこの地図だけじゃ断定は出来ない。だから行ってみないと…」
優花里「難しいですねぇ…」
みほ「うん…」
エミ「行きなよ」
みほ「ふぇ…?」
エミ「行きなよ。あなたがそう思うならそれで良いじゃない」
みほ「………」
沙織「そうだよね。私達みぽりんのおかげでいつも助かってるもんね」
麻子「仮にこの試合に敗れたとしても即廃校となるわけでもない」
麻子「以前よりかは気楽に行けるだろう」
華「ええ。大船に乗ったつもりで行きましょう」
優花里「私はどこまでも西住殿についていきますよっ!」
みほ「みんな………」
エミ「ふふ。決まりね!」
みほ「うん!………スゥ」
みほ「それでは皆さん!これが最後の試合です!全力で行きましょう!!!」
みほ「パンツァー・フォー!!!」
全員「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
エミ「び、びっくりさせないでよ…」ビクビク
みほ「…ごめん」
エミ(まったく。鋭いんだか抜けてるんだか…)
【試合開始後 あんこうチーム】
みほ「各車輌、移動しながら聞いてください」
みほ「地図を見てわかるように、北西が大洗、北東が黒森峰のスタート位置となります」
みほ「また、これは中央を流れる2つの川を挟むように西側が私達、東側が黒森峰となるため、川にかかる2つの橋の周辺が激戦区と予想されます」
【 http://i.imgur.com/kVBMpb9.png 】
みほ「しかし橋の上は長い一本道で遮蔽物も一切ありません」
みほ「そのため格好の的になるので、私達は橋を渡らず対岸からの攻撃を行います」
みほ「一方で黒森峰は厚い装甲を盾に橋を渡り、こちら側へと侵攻するでしょう」
みほ「2つ橋に2つの部隊で挟撃を仕掛けてくると予想されます」
【 http://i.imgur.com/E6txAY7.png 】
みほ「しかし、我々がこれを阻止しようと水際作戦を実行すると、今度は無人機による空からの攻撃が来ます」
みほ「なので対岸からの攻撃にはなりますが、川岸ではなく、その数百メートル手前の住宅街を遮蔽物として上手く利用して下さい」
カエサル『ポン・デュ・ガールか』
おりょう『メクロン河永久橋ことクウェー川鉄橋ぜよ』
左衛門佐『いいや、壬申の乱の決戦場となった瀬田の唐橋だろう』
エルヴィン『何を言ってるんだ!これこそまさにレマゲン鉄橋だろうが!!』
『『『それだぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』
みほ「そして配置についてですが」
みほ「橋が2つあるため、こちらも隊を2つに分けます」
みほ「まず黒森峰側が直進するであろう【ルート①】にウサギさんチーム、カモさんチーム、カバさんチーム」
みほ「次に迂回路となる【ルート②】はアヒルさんチーム、レオポンさんチーム、アリクイさんチームにお願いします」
みほ「そして、ルート間のギャップを埋めるためにカメさんチームには間へ入って頂きます」
みほ「カメさんチームは2つの隊だけではカバーしきれない情報の収集・伝達を中心に、」
みほ「また必要に応じて時間稼ぎとしての挑発もお願いします」
杏『おっけーい』
【 http://i.imgur.com/33d0FkX.png 】
みほ「なお、私達あんこうチームは皆さんとは別の場所で待機します」
ナカジマ『えっ?隊長たち一緒じゃないの?!』
そど子『それはどういうことなのかしら?』
ねこにゃー『黒森峰の戦車に対抗できる数少ない戦車なのに…』
みほ「はい。あんこうチームは戦車だけでなく無人機を叩かないといけません」
みほ「なので皆さんが配置につく市街地では上空の視界を確保できないため、少し離れた場所にある開けたエリアで攻撃を行います」
みほ「代替策として、アヒルさんチームおよびウサギさんチームに、それぞれの区間の指揮車輌をお願いします」
みほ「指揮車輌は情報収集に特化し、得た情報を素早く正確に他車輌との共有を心がけてください」
梓『わかりました!』
典子『了解です!気合と根性で指揮しましょう!!』
みほ「先にも言いましたが、大洗チームの防衛ラインは岸ではなく、その後ろの住宅街です」
みほ「ここで爆撃および砲撃を回避しながら攻撃をします」
みほ「また、戦車が橋を渡り切ったとしても、入り組んだ住宅街ならば奇襲という形で至近距離から側面を狙えます」
みほ「もちろん撃破できれば御の字ですが、距離、火力、装甲を鑑みると一筋縄ではいきません」
みほ「そのため、最初は撃破のための戦闘ではなく、侵攻を遅らせるための戦闘を意識してください」
杏『また履帯を狙えばいいんだねー』ウシシ
エルヴィン『ふむ。弁慶ならぬ重戦車の泣き所だな』
ナカジマ『同じ重戦車乗りとして同情するよ』アハハ...
みほ「こちらからは以上です。各車輌健闘を祈ります!」
全員『了解!!!』
エミ「向こうは任せちゃって大丈夫なの?」
みほ「うん。ウサギさんチームやアヒルさんチームはもちろん、他の皆も優秀な人たちばかりだから」
優花里「何と言ってもウサギ殿はあのヤークトティーガーやエレファントを撃破したんですからねぇ!」
エミ「ええっ!?あのM3リーで!?どうやって!!」
みほ「あはは。あとでゆっくり説明するよ」
エミ「…そう? 何にしろ、私は大洗女子についてはまだまだ分からないことだらけだから、そっち方面は任せるわよ」
みほ「うん」
沙織「じゃぁエミりんは何をするの?」
エミ「え、私?」
沙織「うん」
エミ「そうね。みほがいつオナラしても良いようにベンチレーターを作動させるわ」
みほ「ちょっとエミちゃん!!!」
沙織「あらやだぁ~無線入れっぱなしだった~ てへぺろ☆」
みほ「えええええ!!!?」
アハハハハハハハハハ
みほ(確証はどこにもない)
みほ(でも…)
みほ(恐らく、ここしかない…)
【 http://i.imgur.com/6jStWLT.png 】
典子『こちらアヒルさんチーム。配置につきました!』
梓『同じくウサギさんチームも準備完了です!』
杏『こっちもおっけーだよ。いつでもカバー入れるからねー』
みほ「了解です。私達もまもなく配置場所へ到着します」
みほ「ただ、先述の通り、現時点でそちらの状況が判別しづらいため、」
みほ「各車輌はそれぞれの前線指揮官を中心に行動判断を一任します」
全員『了解!!』
【あんこうチーム 配置場所】
沙織「これがみぽりんの言ってた場所…」
麻子「なんというか…」
華「円柱状の建造物ですよね…?」
エミ「何でこんなものがココにあるのよ………」
【 http://i.imgur.com/xq6SvOo.png 】
優花里「この建物の最上階に上手く戦車を移動できれば無人機を撃墜しやすそうですね」
エミ「当たり前じゃない」
優花里「えっ?」
エミ「だってこの建物の本来の目的がソレなんだから」
華「どういうことですか?」
エミ「こっちが"どういうことなの"って聞きたいわよ」
エミ「何でこんなところに"高射砲塔"があるのかって」
沙織「高射砲塔?」
エミ「ええ。名前通り高射砲や対空機関砲を全周囲に配置した塔よ」
エミ「ドイツの主要都市やヨーロッパの大都市を爆撃から守るためにつくられた防空要塞」
麻子「確かに道中の建物は西洋風のものばかりだった。ここはそういったのを模倣した都市なのかもしれんな」
エミ「だからといって高射砲塔まで再現するのかしら…」
麻子「そこまではわからん…。だが、高射砲塔なら対無人機戦闘で大いに活躍するんじゃないか?」
エミ「そうね。問題はこの馬鹿デカいE-100対空戦車が乗るかだけど」
優花里「ひとまず内部を見てみましょう」
みほ「うん。ちょうどあっちに戦車が通れそうな入り口もあるしね」
【高射砲塔 内部】
沙織「…何かちょっと気味が悪いね」
華「窓のない建物の中にいる気分です」
エミ「高射砲塔は分厚い鉄筋コンクリートで造られているから、この中にいれば無人機の爆撃なんて屁じゃないわ」
麻子「しかし同時に攻撃もできないな」
みほ「ひとまずどうやってE-100対空戦車を最上階まで持っていくか考えよう」
エミ「ええ。IV号戦車よりも重たい"12.8cm Flakzwilling40"を最上階まで運搬するんだから何かしら仕組みがあるはずよ」
優花里「皆さぁーん!こちらに業務用のエレベーターがありましたー!」
エミ「一体どんな構造になってんのよこの高射砲塔…」
麻子「おそらく高射砲塔を再現して、それとは別に何かしらの都市設備を兼ねているのだろう」
麻子「災害が起きれば避難所にもなるだろうしな」
エミ「…」
沙織「そんなことより!そのエレベーターを動かせば最上階まで行けるかも!?」
エミ「戦車の重量が耐えられるといいわね」
みほ「大丈夫かなぁ…」
優花里「それでは動かしますよー!」
ガクン
ゴゴゴゴゴゴゴゴ.....
沙織「あはは。エレベーターが悲鳴あげてるね」
エミ「そりゃそうよ。いくらなんでも150トンを持ち上げるんだから」
麻子「途中で真っ逆さまにならんことを祈ろう」
【高射砲塔 屋上】
エミ「…た、耐えた…!?」
みほ「あはは…本当に頑丈なんだね高射砲塔って」
エミ「…もう深く考えるのはやめるわ。試合に集中できなくなる」
みほ「う、うん…」
優花里「さすが高射砲塔というだけあって見晴らしが良いですねぇ」
華「試合じゃなくてもこういった景色のいい場所は足を運びたくなります」
麻子「ここなら全周囲見渡せるから無人機が相手でもある程度は応戦できそうだ」
沙織「そうだね。これだけ高かったらすぐ無人機の場所がわか
みほ「いや、違う」
麻子「んっ?」
優花里「西住殿…?」
みほ「ほら、あれ…」
クルッ
全員「あっ…」
エミ「………どうやら、あなたは"正解"を選んだみたいね」
みほ「うん…」
― 黒森峰を一方的に葬れる場所があります
みほ(地図を見たとき、そこそこ高いし視界も良いから無人機を叩きやすい場所だと思った)
みほ(そしていざ現物を確認したら、それは都市防衛を目的として建設された高射砲塔だった)
みほ(これを活用すれば本来の用途通りに使えば防空能力は向上する)
みほ(…そう思っていた)
みほ(でも、それは本当の目的ではなかった…)
みほ(ヴェニフーキさんはこの事を言ってたんだ…!!)
【 http://i.imgur.com/QxPIWvR.png 】
今回はここまでです。
【本筋とは関係ない余談】
(レスにもあったように)試合会場はオーストリアのウィーン(高射砲塔はアウガルテン公園にあるやつ)をモデルにした"きっとどこかにある場所"です。
・巨大な戦車が入れる入口がある
・150トン超える超重戦車が持ち上げられるエレベーターがある
などなど、この世界の高射砲塔やその他もろもろは、実物のものとは違うみたいですが。。
なお高射砲塔は他にもドイツのベルリンやハンブルクにもありますが、
・戦車道の試合会場
・黒森峰に完勝する
という2点を鑑みた結果、地理的にウィーンが適していたので選んでみた次第です。
GoogleMapを起動させるとPCがパンクしそうでした。
よし、いきましょう(よし、いきましょう)
華「ここから橋まで、おおよそ1,300~2,200mほどでしょうか」
優花里「結構な距離ですねぇ…」
麻子「普段の対戦車戦闘がだいたい500mほどだったからな」
華「うふふ。ここ最近は1,000mを超える射撃ばかりですね」
沙織「サンダースの時なんて1,000mどころか10,000m近かったもんね」
エミ「え゛っ!?」
みほ「あはは。B-29落とした時のことだよ」
エミ「無理よそんなの!!」
みほ「でも実際に撃破したもんね」
エミ「うぇぇ…」
優花里「10,000m級に隠れがちですが、そのあとに2,000m超えの狙撃を2回やった点も忘れてはいけませんよ」アハハ
エミ「ふぁっ!?」
沙織「そうだよねぇ。サンダース相手にあんなあっけなく勝っちゃうなんて思わなかったもんね」
エミ「…い、五十鈴さんも名門の人なの?!」
華「戦車道ではなく華道ですけどね」フフッ
エミ「えっ…えええ?!」
沙織「華道やっているせいか射撃時の集中力ハンパないんだよね」
エミ「」
みほ「私も華さんの潜在能力には驚かされてるかな」
華「恐縮です」フフッ
エミ「…みほ。あなたのチーム、日本代表選手になれるわよ…」
みほ「えへへ。みんな凄いもんね」
沙織「日本代表選手かぁ…やっぱりモテるのかなぁ」
麻子「持つものがなければ選ばれんだろうな」
沙織「上手いこと言わなくていいのっ!」
エミ「…で、ここから橋の上までは狙えそうなの?」
華「遠くを狙う機会に恵まれていたおかげで、遠距離への攻撃はだんだんとコツを掴んできました」
エミ「そ、それは頼もしいわね…」
華「それに、ここからだとちょうど一直線上に位置する橋の上」
華「狙いがつけやすいのはもちろん、相手は逃げられない…」
華「いけると思います」
沙織「すごい華…。どんどん強くなっていくね…!」
華「楽しいことに夢中になるとどんどん技術は身に付きますよ」
みほ「あはは。それじゃああまり時間もないし、狙撃の準備に入ろう」
華「はい」ニコッ
麻子「五十鈴さん、角度はこれくらいかな?」
華「これだと砲弾が上を通り過ぎてしまいます、もう少し前方へお願いします」
麻子「わかった」ガコン
優花里「今のところ無人機は確認できません」
沙織「やるなら今のうちだよね」
エミ「黒森峰は橋を渡り始めたようね」
みほ「うん。あとは上手くこっちに来てくれるかだね」
典子『こちらアヒルさんチーム!【ルート②】の中ほどに敵車両を確認!』
典子『先頭にティーガーII、その後ろにパンターが2輌、そのあとにフラッグ車のティーガーIです!」』
みほ「了解です。こちらからも【ルート②】にて複数車両を確認出来ます」
華「同じく確認できました。…ただ、まだ距離は遠いので、もう少し寄せたいです」
エミ「どれくらいまで接近させるの?」
華「そうですね…今のところ1,800mほどですから、これを1,500mまで縮めたいです」
エミ「それならティーガーIの正面はブチぬけるでしょうね」
ガコン
優花里「高速徹甲弾、装填完了です」
ガコン
エミ「こっちもOK」
華「ありがとうございます」
梓『こちらウサギさんチーム!【ルート①】からも先頭にヤークトティーガー、その後ろにパンター複数確認できました』
梓『あっ、その後ろにはティーガーIIもエレファントもいます!』
優季『橋が崩れちゃうよぉ』
みほ「わかりました!」
みほ「引き続き、"抵抗するけど全く歯が立たなくて焦ってる感じ"で防衛ラインを守ってください!」
みほ「目的は相手車両の接近です!それではオロオロ作戦開始!」
全車輌『オロオロ作戦開始!』
優花里「っ! 遠方に無人機を確認。いよいよ動き出しましたよ…!」
みほ「華さん!」
華「ええ」
みほ「うん!お願い!」
みほ「目標、フラッグ車 ティーガーI」
華「うっ…」
優花里「ん?五十鈴殿?」
エミ「…どうしたの?」
華「距離にしておおよそ1,600m…微妙ですね」
みほ「微妙?」
エミ「一応、2,000mでも153mmは貫けるから大丈夫だと思うど…」
華「ええ。…ですが、確実に仕留めたいのです」
華「せめて、砲塔が横を向いてくれたら…」
みほ「カメさんチーム!ティーガーIを挑発して下さい!!」
杏『おっけーい。小山ぁ頼んだぞ~』
ズドォォォォォン!!
ガシャーーーン!!
杏『うっひゃぁ!めーっちゃ狙われてるよー西住ちゃん!』
柚子『あぁ…建物が…』
みほ「挑発に引っかかってる証拠です!このまま続けましょう!」
杏『んでも撃破は無理っぽいよ?どーする?』
みほ「構いません!そのまま続けてください!!」
杏『あはは。西住ちゃんもなかなか無茶を言うようになったねー』
桃『に、西住ぃ!!貴様私達を見殺しにするつもりかぁぁぁぁ!!!』
柚子『あぁ…やっぱり色々迷惑かけたこと根に持ってるのかなぁ…』オロオロ
みほ「ち、違うんです!ティーガーIの砲塔の向きを変えることが目的なんです!」
杏『わかってるって西住ちゃん。とりあえずやれるだけやってみるよ』
みほ「はい、お願いします!」
杏『ダメだ西住ちゃん!相手もさすがに挑発だって気づいてるよコレ!』
杏『全ッ然見向きもしてくんない!』
みほ「っ…!」
典子『西住隊長!私達もカメさんチームに援護します!!』
典子『おそらく1輌だけじゃ挑発かもしれませんが、複数でやれば多少は反応するでしょうから!!』
みほ「はい!お願いします!!」
典子『レオポンさん、アリクイさん!カメさんチームと合流して橋へ攻撃をします!』
典子『私についてきてください!!』
ねこにゃー『了解だにゃー!』
ナカジマ『殿は任せて!』
エミ「ティーガーIが停止した!!」
優花里「砲塔も動きました!これで側面を狙えます!!」
みほ「うん! 華さん、チャンスです!」
華「かしこまりました…!」
麻子「車体の向きや角度は問題ないか?」
華「ええ、バッチリです」
沙織「一旦無線OFFにするよ」プツッ
華「お心遣い感謝します。では、いきます…!」
「………」
キュラキュラキュラ
「………」
ウィーン
「………」
「………」
カチッ
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
アナウンス『黒森峰フラッグ車、走行不能』
アナウンス『よって、大洗女子学園の勝利!!』
みほ(その瞬間、全てが沈黙した)
みほ(私達を除く、ほぼ全ての人が『何が起こったの!?』と唖然した)
みほ(華さんの弾は、黒森峰のフラッグ車であるティーガーIの砲塔右側面に命中し、撃破)
みほ(私達は、黒森峰を相手に、本当に"完勝"した)
みほ(高校戦車道最強といわれた黒森峰を相手に…)
みほ(今でも信じられない………)
◆ エピローグ
沙織「私達、勝った…の?」
優花里「先程のアナウンスは偽装工作だったりしませんよね…?」
華「いえ。砲弾は確かにティーガーIの砲塔右側面命中しました」
沙織「…冷静に考えるとそれも相当凄いけどね」
華「ふふ。相手が遠ければ遠いほど狙うのが楽しくなりますわね」
沙織「へぇ~。華も追うタイプだったんだ」
麻子「…狙撃の話だろ。お前の恋愛観とはまた別だ」
エミ「みほ、いつまで沈黙してるのよ」
みほ「え…あぁ…うん…」
『こちら黒森峰フラッグ車。試合の終了に伴い交信をする』
沙織「えっ?」
梓『西住隊長、黒森峰から通信が入りました!』
典子『こちらにも通信が入ってます』
エルヴィン『こちらカバチーム。同じく通信が聞こえる』
ナカジマ『こっちにも来てるよ』
みほ「この声…お姉ちゃん…!」
エミ「どうやら、まほさんは全車輌に通信しているようね」
『こちらのフラッグ車であるティーガーIは、被弾により走行不能となった』
『…我々の、完敗だ』
全員「『!!!』」
エルヴィン『お、おい、今なんと?!』
ねこにゃー『ボクたち勝ったの…?!』
梓『西住隊長…これは相手側のダミー情報なのでは?!』
ナカジマ『ええっ、ダミーなんですか!?』
そど子『ちょっと!そんなのルール違反じゃない!』
沙織「大洗全車輌へ、黒森峰側の無線は試合終了に伴い発信されたものです」
沙織「よって、この内容は試合戦術における偽装通信ではありません」
沙織「我々あんこうチームは、黒森峰女学園からの通信に対し、最大限の敬意を表しこれを受信いたします」
全員『…!』
『ご理解いただき感謝する』
『大洗女子の隊長にお尋ねしたい。我々はどの位置から撃たれただろうか?』
沙織「…」チラッ
みほ「…」
みほ「XXX-YYY地点にある高射砲塔…高台からです」
みほ「今から上空に向かって撃ちます」
『…』
みほ「ゆかりさん、エミちゃん。対空砲弾をお願い。信管の設定はお任せします」
優花里・エミ「了解」
ガコン ガコン
優花里「装填完了」
エミ「同じく装填完了」
みほ「…華さん、お願いします」
華「かしこまりました」
ズガァァァァァァァァァン
ズガァァァァァァァァァァン
みほ「………」
『こちら黒森峰フラッグ車。砲撃を確認。射撃位置を特定した』
『見事だ………!』
【戦車を降りて...】
まほ「確かに、この高射砲塔からだと見下ろす形で橋の上を狙える」
みほ「…」
まほ「対してこちらのいかなる攻撃も届かないだろう」
みほ「…」
まほ「こんな場所があったとはな…」
みほ「どうして、無人機を使わなかったの?」
まほ「はは。もっと早く投入すればよかったかな」
みほ「…使いたくなかったんだね…やっぱり」
まほ「そうかもしれん。だが、仮にあの状況で無人機を使ったとしても」
まほ「恐らくみほがいた場所ではなく、対岸の防衛ラインを崩すことに専念していた」
みほ「で、でも!そこに私達がいないってわかれば…!」
まほ「あぁ。もっと広域を偵察しただろう。だが、その段階で既に手遅れだっただろうな」
まほ「いずれにせよ、高射砲塔はノーマークだった」
みほ「そっか……」
まほ「みほ」
みほ「はい…」
まほ「おめでとう」
みほ「う、うん…ありがと」
まほ「どうした?お前は我々に勝って優勝したんだぞ」
みほ「うん…。未だに勝ったって実感が湧かないんだ…」
まほ「それは我々も同じだ」
まほ「まさか1輌も撃破することなく敗れるなんて思いもしなかった」
みほ「………」
みほ「実は………」
みほ(私はお姉ちゃんに全てを話しました)
みほ(試合が始まる前に勝敗が決まっていたこと)
みほ(そしてそれは私の考えではなかったこと)
まほ「………」
みほ「………」
まほ「………さすがだな」
みほ「えっ…?」
まほ「確かに、みほに助言した者は恐ろしいほど観察力・洞察力に長けた人物だろう」
まほ「しかし、その助言から実際に"答え"を導き出したのは、他でもないみほだ」
みほ「!」
まほ「どの相手と、どこの会場で試合をしても、同様な『完勝』を実現できる条件は必ず存在すると私は思っている」
まほ「だから誰だって『こうすれば完勝できる』と言うことは可能だ」
みほ「で…でも…」
まほ「だが、そう宣告するのと実際にその条件を見つけ、遂行するのとでは話は全く違う」
まほ「そして、お前は確かに自分の経験をもとにそのポイントを見つけた」
まほ「みほだから見つけられた」
まほ「だから、さすがだよ。みほ」
みほ「…」
みほ「…まだ……終わってないから」
まほ「えっ?」
みほ「……こんな試合……ナシだから……」ポロポロ
まほ「みほ…!」
みほ「無人機なんて…余計なものがあったから…まともに戦えなかった………」
みほ「だから……だから………もう一度…今度は無人機ナシで………」
まほ「あぁ…わかった」ギュッ
みほ「…ヒッグ……」
まほ「泣くな。隊長がそんな顔では皆が浮かばれんだろう」ナデナデ
みほ「…だって………」
まほ「この試合はお前の勝ちだ。だが、我々もまだ終わったわけではない」
まほ「今度は私の意思を受け継いだエリカが隊長となって、またみほたちの前に立ちはだかる」
まほ「その時、私はまたみほと戦える」
みほ「……ッ…」
まほ「その時が来るまで私はエリカや他の隊員をしっかり育てよう」
まほ「だから、みほも次の世代を育てろ」
みほ「お姉ちゃん……!」
エミ「へへ…いい話じゃない」
優花里「ええ…目頭が熱くなりますねぇ!」
エミ「何にせよ………これで私の役目も終わったかな」
沙織「えっ?」
エミ「私は短期転校だから、試合が終わってからはまたベルウォール生よ」
エミ「…ちょっと寂しいけれど、私にも帰る場所があるからね」
華「エミさん」ダキッ
エミ「わっ!?ち、ちょっと五十鈴さん!?」ギュゥゥゥ
華「楽しかったですわ!とーっても!!」ウフフフ
沙織「あ!華ばっかりずるい!私も!」ムギュッ
エミ「ごぶッ!?」
優花里「中須賀殿もすっかりあんこうチームですねぇ!」
麻子「全くだ。短期転校というのが惜しい」
エミ「私もよ。あの時はこうやってみほたちと一緒に戦車が乗れるなんて思いもしなかった」
エミ「なんていうか…運命なのかな。色んな所で繋がってる」
麻子「あぁ。運命というのは本当にわからん。なにせ私が西住さんに代わって隊長をやる事もあったのだから…」
沙織「あのときは私も『麻子でいいの!?』ってなったよ」
麻子「まぁお前がやるよりは100万倍マシだがな」シレッ
沙織「ちょっとそれどういう意味よ!!」
優花里「まぁまぁ」アハハ
みほ「みんなごめんね。待たせちゃって」
エミ「良いわよ。こういう時くらい」
みほ「えへへ」
「ミホーシャぁ!!」
みほ「ふぇっ!?」
カチューシャ「どういう事か説明しなさいっ!あの黒森峰をコテンパンにしちゃうなんて!!」
みほ「え、えっとぉ…」
「まぁまぁ。ミホが困ってるじゃない」
みほ「あっケイさ
ケイ「Congratulationsミホぉ~~~!凄かったよさっきの1発ぅ!」ギュゥゥゥッ
みほ「んがががぐごががががギブギブ…!」ミシミシ
カチューシャ「ちょっとケイ!あんたこそミホーシャ困らせてるじゃない!」
アハハハハハ!
「優勝おめでとう!こりゃぁ盛大にお祝いしないとなっ!」
みほ「あ、アンチョビさんも観てたんですね!」ミシミシ
アンチョビ「おうよ!何しろ大洗女子の試合だからな!」
みほ「えへへ。いつもありがとうございます」
アンチョビ「うむうむ。勝利を祝って盛大にパーティだ!」
みほ「ええっ!良いんですか?!」
アンチョビ「おうよ、遠慮するな!い、いや、ちょっとは遠慮してくれ…。いや、やっぱ気にするな!こういう時はケチケチせずパーッとやるのが一番だ!」
ケイ「あははっ。ウチからもお祝いするよ!…あの時のお詫びも兼ねてねっ!」
カチューシャ「だったらカチューシャたちも盛大に振る舞うわよ!ノンナが!!」
まほ「本当に強くなったな、みほ」
みほ「お姉ちゃん…」
まほ「気づいたらお前の周りには多くの仲間がいる」
まほ「黒森峰を去ったときは心配だったが、今はもう大丈夫だろう」
みほ「うん…」
しほ「ええ。強くなったわね。みほ」
みほ「げぇぇっ!!お母さん!!?」
しほ「げぇっとは心外ね」
みほ「ど、どうしてこんなところに?!」
しほ「娘たちが戦う決勝戦を、親である私が見に行くのはそんなに珍しい事かしら?」
みほ「い、いやそんな事はないけど!そんな事はないけどっ!」オロオロ
しほ「先程の戦い、実に様々なことを考えさせられたわ」
みほ「え」
しほ「なので、ゆっくり話を聞かせてもらいましょう」
みほ「お、お姉ちゃん…!」
まほ「ははは。良いじゃないかこういう時くらい」
みほ「はぅ…」
まほ(何だかんだいって、お母様もみほと過ごす機会を探しているからな)
「ふふ。一家お揃いで微笑ましいです」
みほ「あ、アッサムさん!?」
アッサム「おめでとうございます。みほさん」
オレンジペコ「凄かったです!さっきの遠距離射撃!」
みほ「あ、ありがとうございますの!」
まほ("の"…?)
アッサム「あなたの戦い方は常に計算外なので、私達も多くのことを学ばさせて頂います」
オレンジペコ「今回の試合もものすごく勉強になりました」
みほ「い、いえいえそれほどでも…!」
アッサム「ふふっ。早起きして会場に来た甲斐がありました」
オレンジペコ「はい!眠気なんて吹っ飛んじゃうほど熱い試合でした!」
みほ「あの。ところで…ヴェニフーキさんは?」
沙織「そういえばヴェニフーキさんがいない?!」
アッサム「あぁ、ヴェニフーキでしたら、みほさんたちの戦車が射撃をした直後に帰りましたわ」
みほ「そうですか…」
アッサム「どうかされまして?」
みほ「あ。いえいえ、何でもないです」
オレンジペコ「そういえばヴェニフーキ様より伝言があります」
みほ「ふぇ?ヴェニフーキさんから?」
沙織「………」
オレンジペコ「はい。みほさんへ "おめでとうございます" と」
みほ「あ、ありがとうございます…!」
みほ(こうして、各校の皆さんに祝福されながら、私達の"対空"戦車道は優勝という形で無事に幕を閉じた)
みほ(無人機というイレギュラーなルール改変から始まり、それに抗う形でIV号対空戦車の投入)
みほ(メーベルワーゲンから始まった対空戦闘と、そこから学んだ搭乗員の安全性)
みほ(次のヴィルベルヴィントが教えてくれた航空機の圧倒的優位)
みほ(気が緩みかけた私達を軌道修正してくれたオストヴィント)
みほ(常識に囚われない新たな戦い方を模索するきっかけとなったクーゲルブリッツ)
みほ(そして…)
みほ(イレギュラーなルール改変に対抗する形で誕生したE-100対空戦車というイレギュラー)
みほ(一言に対空戦車といえど、そこには色んな思惑があった)
みほ(多くの困難が立ちはだかり、その度に乗り越えてきた)
みほ(別に無人機じゃなくてもいい。対空戦車じゃなくてもいい)
みほ(確かに言えることは)
みほ(私達はどんな困難が訪れても、きっとまた乗り越えていける)
みほ(それが私達の戦車道だから)
おしまい
● Tips
「…私です」
「ええ。たった今試合が終わりましたよ。大洗の完勝です」
「そうですね。やはり西住さんたちは凄いです」
「それで、今からそっちに行ってもいいですか?」
「ありがとうございます。すぐに向かいますね」
「ん?こちらですか?」
「残念ながら、振り出しに戻ってしまいました」
「アッサムさんだと思っていたのですが…」
「…ええ。ご心配なく。必ず突き止めますので」
「はは。あなたが納得しても、私の腹の虫が収まらないでしょうね」
「ええ。続きはそっちへ行ってからにしましょう」
ヴェニフーキ「ダージリン」
もう一つの戦いが静かに始まろうとしている。
おしまい ?
対空戦車が好きだから50レス程度でガルパンSS書こうと思ったらこんなに長くなってしまった。
ガバガバ設定だけど読んでくれた人にありがとう
レスしてくれた人にもありがとう
きっとツッコミどころ満載だけど、ひとまずこのSSはここで完結させて、HTML化依頼をします。
ちなみに過去に書いたSS↓
【ガルパン】みほ「猛特訓です!」
【ガルパン】みほ「猛特訓です!」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474376201/)
あ、もうまとめられちゃったから少し種明かしすると
オリキャラだけど、オリキャラじゃないんですよね。実は。
続きはWEBで
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