幸子とクレープを食べに行くだけ (12)
初投稿なのでお手柔らかにお願いします。
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「フフーン、今日も可愛いボクがプロデューサーさんのためにわざわざ出社して来てあげたのですよ!感謝してくださいね。」
気だるさに満ちている昼下がりの午後、俺がプロデュースを任されている輿水幸子がうざ可愛い発言と共に出社してきた。
「あぁ、そうだな。」
と、乱雑なデスク越しに適当な相槌を打ち、ついでに手元にある温くなったブラックコーヒーを一気に飲み干す。
そして、仕事に再び取りかかる前に横目で彼女を見た。どうやら事務所のソファーに座って学校の宿題か何かに取りかかろうとしているようだ。
輿水はいつもそうだ。レッスンや仕事がない日も事務所に顔をだし、こうやってソファーで学校の宿題などを片したりしている。殊勝な事だと思った。
輿水は大層な自信家である。だが、その一方ではコツコツと地道な努力を積み重ねる事を厭わない。
ファンの前のアイドルは煌びやかで華やかさの代名詞の様な存在である。だが日常はむしろその逆だ。
地道で厳しいトレーニングをほぼ毎日繰り返す日々。そんな日常に弱音を吐くアイドルも少なくない。
だが、輿水はデビュー前の下積みをしていた頃から一言も愚痴をこぼさずやってきた。
その努力が実ってきたのか、今ではそれなりに知名度を誇るアイドルになってきていた。
「プロデューサーさん、僕が世界一カワイイのでずっと見てしまうのも仕方がないのですが、そんなに見つめられていたら気になって仕方ないですよ。」
気がついたら輿水は目を細めてこちらに怪訝そうな顔を向けていた。
「あぁ、すまんな。ところで輿水、この後用事があったりするか?」
「いえ特にはないですよ。いったい今日のプロデューサーはどうしたのですか?」
「ちょっと思うところがあってだな…少し外に出ないか?」
「仕方ありませんねぇ、いいですよ。プロデューサーはボクがいないとダメダメですからね!」
満更でもない表情をしている輿水を連れ、事務所を出る。
外は柔らかい夏の残り香の様な日差しが降り注いでいて、気まぐれに吹くそよ風が街路樹の葉をサワサワと音を奏でる。絶好の散歩日和であった。
心地よく歩を進めていると、程なくして目的地であった事務所の近くに新しく出来たクレープ屋に着いた。
「フフーン、プロデューサーさんも幾らか女の子の扱いが分かってきたのですね。いいでしょう、プロデューサーさんには特別にカワイイボクにクレープを奢らせてあげましょう。」
と、憎まれ口を叩く輿水。
いつもならここでデコピンの一発でも食らわせるところだが、年相応に目を輝かせてメニュー表を眺める輿水を見ると、悪い気はしない。数分後、輿水が食べたいと言ったクレープを購入し、近くのベンチに腰をかけた。
「プロデューサーさん、とてもこのクレープ美味しいです。ボク程ではありませんがなかなかセンスがいいですね!」
「そうか、それは良かった。この前三村にこの店が美味しいかどうか聞いた甲斐があったよ。」
満足気な表情を浮かべながらクレープを食べる輿水を見ながら、俺は自販機で買った缶コーヒーのプルトップを小気味良い音と共に開けた。
「それにしてもプロデューサーがアイドルを誘って出掛けるなんて珍しいですね。一体どういう風の吹き回しなのですか。」
「輿水はアイドル活動、学業ともに頑張っているからな。褒美という程大層な物ではないが少しの息抜きになればと思ってな。」
「なるほど、それはとてもいい心がけですね。カワイイボクを大事にするのはプロデューサーの義務ですものね!ですからまた連れてきてくれてもいいんですよ?」
「そうだな。また、時間に余裕がある時な。」
「フフーン!カワイイボクを連れ回せるプロデューサーは世界一の幸せ者ですね。」
そう言って、クレープを片手に持ちながらこちらに満面の笑顔を向けてきた輿水は悔しいが確かに可愛かった。
短いですが読んでくださった方が足らありがとうございました。
限定SSR幸子引けなかった記念です。
誤字すいません。
短いですが読んでくださった方がいましたらありがとうございました。
好意的なコメントありがとうございます。大変励みになりました。
一応、続きの構想は少し有ったので明日の昼頃までに続きをこれまた短いですが投稿したいと思いますのでよろしくお願いします。
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